ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成30(行ケ)10046 審決取消請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 平成30年9月26日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 被告株式会社スヴェンソン 原告X |
| 法令 |
商標権 商標法2条3項8号12回 商標法50条1回 商標法50条1項1回 |
| キーワード | 審決27回 商標権1回 |
| 主文 | 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告は,以下の商標(登録第5614489号。以下「本件商標」という。) の商標権者である(甲1,38)。 商 標 別紙1記載のとおり 登録出願日 平成25年5月1日 設定登録日 平成25年9月13日 指 定 商 品 第16類「絵はがき,楽譜,カタログ,カレンダー,雑誌,時 刻表,書籍,新聞,地図,日記帳,ニューズレター,パンフレ ット」 第26類「つけかつら,頭飾品,ヘアネット,ヘアピン,ヘア バンド,髪止め,元結」 (2) 原告は,平成28年9月26日,本件商標の指定商品中,第26類「つけ かつら,頭飾品,ヘアネット,ヘアピン,ヘアバンド,髪止め,元結」に係 る商標登録について,商標法50条1項所定の商標登録取消審判(以下「本 件審判」という。)を請求し,同年10月14日,その登録がされた。 |
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平成30年9月26日判決言渡
平成30年(行ケ)第10046号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成30年7月23日
判 決
原 告 X
訴訟代理人弁護士 畝 本 卓 弥
訴訟代理人弁理士 畝 本 正 一
同 畝 本 継 立
同 沖 田 正 樹
被 告 株式会社スヴェンソン
訴訟代理人弁理士 吉 田 正 義
同 梅 村 裕 明
同 吉 田 安 子
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が取消2016-300666号事件について平成30年2月27日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
(1) 被告は,以下の商標(登録第5614489号。 「本件商標」以下 という。)の商標権者である(甲1,38)。商 標 別紙1記載のとおり登録出願日 平成25年5月1日設定登録日 平成25年9月13日指 定 商 品 第16類「絵はがき,楽譜,カタログ,カレンダー,雑誌,時刻表,書籍,新聞,地図,日記帳,ニューズレター,パンフレット」
第26類「つけかつら,頭飾品,ヘアネット,ヘアピン,ヘア
バンド,髪止め,元結」
(2) 原告は,平成28年9月26日,本件商標の指定商品中,第26類「つけかつら,頭飾品,ヘアネット,ヘアピン,ヘアバンド,髪止め,元結」に係る商標登録について,商標法50条1項所定の商標登録取消審判(以下「本件審判」という。)を請求し,同年10月14日,その登録がされた。特許庁は,本件審判の請求を取消2016-300666号事件として審理し,平成30年2月27日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年3月8日,原告に送達された。
(3) 原告は,平成30年4月6日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。その要旨は,被告が,本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に,日本国内において,別紙2記載の使用商標(以下「本件使用商標」という。)を付した付箋紙(以下「本件付箋紙」という。甲4,乙1)を,医療に関係した学会の総会等の併設展示会において被告が販売する商品「ウィッグ」を展示した各展示ブースで来訪者に対し販促品として無償配布した行為は,商標法2条3項8号の「商品に関する広告に標章を付して頒布する行為」に該当し,本件審判の請求に係る指定商品中の「つけかつら,頭飾品」に含まれる上記商品に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことを証明したものと認められるから,本件商標の登録は,同法50条の規定により取り消すことはできないというものである。取消事由本件商標の使用の事実の判断の誤り
第3 当事者の主張
(原告の主張)
(1) 本件使用商標の認定判断の誤り
本件審決は,本件付箋紙の表紙カバーの内側,見開き内面部分(別紙3の図2)から本件使用商標(別紙2)に相当する部分を商標として抽出し,これが自他商品識別標識としての機能を果たしている旨認定判断したが,以下のとおり,見開き内面部分に接した看者は,本件使用商標に相当する部分を他の記載から区別して独立した商標として認識することはできないし,仮に本件使用商標を商標として認識することができたとしても,本件使用商標は商品の出所識別標識としての機能を果たしておらず,商標的に使用されていないから,上記認定判断は誤りである。ア 本件付箋紙は,別紙3のとおり,二つ折りの表紙カバーが付いた付箋紙であり,表紙カバーは,その外側の見開き表面部分(図1)とその内側の見開き内面部分(図2)から構成されている。まず,本件付箋紙に接した者が最初に目にする見開き表面部分(別紙3の図1)の右側の表紙に相当する部分(以下「表紙部分」という。)には,中央にキャラクター図形が大きく掲載され,下部に被告の名称を欧文字で表記した「SVENSON」の文字部分が,上部に「「どうしよう」に応えます。」との文章部分が,キャラクター図形の右上にキャラクターの名称と読める「Wiggy」及び「スヴェンソン公式キャラクター」の文字部分が記載されている。また,見開き表面部分の左側の裏表紙に相当する部分(以下「裏表紙部分」という。)には,複数のキャラクター図形とともに,中央の白抜き円形部分に女性の髪をハサミで切ろうとしている様子の絵柄が描かれている。一方で,表紙部分及び裏表紙部分のいずれにも,具体的な商品に関する記載はなく,本件商標の指定商品である「ウィッグ」に関する情報の記載も一切ない。そうすると,本件付箋紙に接した者は,表紙部分及び裏表紙部分から,「SVENSON」の文字部分あるいはキャラクター図形部分を商標として認識するとともに,本件付箋紙は,被告そのものを広告するためのノベルティ(販促品)と認識するものといえる。イ 次に,本件付箋紙の見開き内面部分(別紙3の図2)の左側には,「Wiggy」という名称のキャラクター図形,このキャラクターに関連する他の二つのキャラクター図形,キャラクターに関する設定内容及びデザインについての説明文章が記載されている。そして,見開き内面部分の「スヴェンソンのウィッグを使用した患者さまの/「嬉しい」という気持ちから生まれた/体がウィッグの形をした妖精です。」(「/」は改行を意味する。以下同じ。)との文章が,他の文章部分より大きく目立つように記載されている上,上記文章を囲むピンク色の破線様の装飾の下側部分がキャラクター図形の上部と重なり合っているため,上記文章とキャラクター図形の一体性を印象付ける態様となっている。他方で,本件使用商標に相当する部分のうち,「ウィッギー」及び「Wiggy」の文字部分並びに「両腕に抱えたハートは,/いつも患者さまの気持ちと/共にあることを表しています。」との文章部分は特に目立つものとはいえず,他の説明等に完全に埋没している。また,見開き内面部分には,具体的な商品に関する記載や,本件商標の指定商品である「ウィッグ」に関する情報の記載もないのみならず,本件審決は,本件使用商標の上記文章部分は,キャラクター図形におけるハート型が表している意味内容を単に説明する文章であると理解されるに過ぎず,これらの部分から出所識別標識としての称呼及び観念が生じないものと認められる旨判断し(13頁11行~14行),上記文章部分が商品の出所識別標識として機能し得ないことを自ら述べている。そうすると,本件付箋紙に接した者は,見開き内面部分から,本件使用商標に相当する部分を独立した商標として認識することはできないし,また,仮に本件使用商標を商標として認識することができたとしても,本件使用商標は商品の出所識別標識としての機能を果たしていないから,商標的に使用されているとはいえない。ウ 以上によれば,本件付箋紙から本件使用商標を商標として抽出し,これが自他商品識別標識としての機能を果たしているとした本件審決の認定判断は誤りである。
(2) 本件使用商標と本件商標の社会通念上の同一性の判断の誤り
仮に本件付箋紙から本件使用商標を抽出認定できるとしても,以下のとおり,本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標に当たらない。すなわち,本件使用商標と本件商標は,キャラクター図形の右下に配された文字列の2行目が,本件使用商標では「いつも患者さまの気持ちと」であるのに対し,本件商標では「いつもお客さまの気持ちと」である点で構成する文字列が異なり,また,本件使用商標では,キャラクター図形のハート型と文章との間に赤色の引き出し線が描かれているのに対し,本件商標にはこのような線が存在しない点で,外観において相違する。次に,本件使用商標と本件商標は,上記のとおり,構成する文字列が異なるため,称呼においても相違する。さらに,「患者さま」の気持ちと「お客さま」の気持ちとではその意味する内容が異なるから,本件使用商標と本件商標は,観念においても相違する。以上のとおり,本件使用商標と本件商標は,外観,称呼及び観念がいずれも相違するから,本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標に当たらない。したがって,これと異なる本件審決の判断は誤りである。
(3) 本件付箋紙の配布行為の商標法2条3項8号該当性の判断の誤り
本件審決は,被告は,商品「ウィッグ」を販売する会社であること,本件付箋紙は,第22回日本乳癌学会学術総会及び第12回日本乳癌学会近畿地方会の併設展示会において被告が販売する商品「ウィッグ」を展示した各展示ブースで来訪者に対し販促品として無償配布(頒布)されたこと,本件付箋紙の見開き表面部分には,被告の名称が表示され,キャラクター図形が「Wiggy」と称する被告の公式キャラクターであると理解できる表示があること,本件付箋紙の見開き内面部分の左側には,「スヴェンソンのウィッグを使用した患者さまの/「嬉しい」という気持ちから生まれた/体がウィッグの形をした妖精です。」との文章の記載とともに,本件使用商標が掲載されており,これは本件使用商標について被告の商品「ウィッグ」との関係を示唆する文章であると容易に理解できることからすると,本件付箋紙は,商品「ウィッグ」に関する広告媒体としての役割を果たしているといえるから,被告は,商品「ウィッグ」に関する宣伝広告品(販促品)として,本件付箋紙を使用したものと認めるのが相当であり,被告による上記使用行為は,商標法2条3項8号所定の「商品に関する広告に標章を付して頒布する行為」に該当する旨判断した。しかしながら,本件商標は,被告のウェブサイト,被告が運営する通販サイト, 「ウィッグ」商品 のいずれにも,これまで一切使用されたことはなく,被告の公式キャラクターも,これまで商品「ウィッグ」に使用されたことはなかったこと(甲10,29ないし37)に照らすと,被告が商品「ウィッグ」を販売してきたこと,被告が展示会において商品「ウィッグ」を展示したこと,見開き表面部分(表紙部分)に被告の名称を表記した本件付箋紙を被告の出展する展示ブースへの来訪者に宣伝用の販促品として無償配布したことは,被告と商品「ウィッグ」とのつながりを示すものに過ぎず,これらから本件使用商標と商品「ウィッグ」とのつながりは全く認識されることはないから,本件付箋紙は,被告そのものを広告するためのノベルティ(販促品)と認識されるにとどまるものといえる。また,そもそも本件付箋紙には商品「ウィッグ」の宣伝広告といえる内容の記載はないのみならず,本件付箋紙の見開き内面部分の上記文章の記載は,「ウィッグ」の語が含まれているというだけであって商品自体を宣伝したものではなく,「ウィッグ」の前に「スヴェンソンの」と付いているように,被告と商品「ウィッグ」との関係を強調したものであり,上記文章中の「体がウィッグの形をした」との記載も,キャラクター図形のデザインについての説明に過ぎないから,これをもって,本件使用商標と商品「ウィッグ」とのつながりを示すものとはいえない。以上のとおり,本件付箋紙は,単なる被告を宣伝広告するノベルティ(販促品)に過ぎず,商品「ウィッグ」の宣伝広告とはいえないし,商品「ウィッグ」との具体的関係において使用されているものとはいえないから,商標法2条3項8号所定の「商品に関する広告」に該当しない。したがって,被告による本件付箋紙の配布行為は,商標法2条3項8号に該当しないから,本件審決の上記判断は誤りである。
(4) 小括
以上によれば,被告は,要証期間内において,被告が本件審判の請求に係る指定商品に含まれる商品「ウィッグ」に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標を使用したことを証明したとはいえないから,本件商標の登録は商標法50条の規定により取り消されるべきである。
(被告の主張)
(1) 本件使用商標の認定判断の誤りの主張に対し
ア 本件使用商標は,本件付箋紙の見開き内面部分(別紙3の図2)の左側のほぼ中央付近の目立つ位置に掲載され,左側半分のキャラクター図形の高さに収まるように,右側半分の片仮名文字の「ウィッギー」,欧文字の「Wiggy」及び「両腕に抱えたハートは,/いつも患者さまの気持ちと/共にあることを表しています。」との文章部分の大きさを調整して配しているため,外観構成がまとまりよく一体的に表されている。また,本件使用商標の上部の 「スヴェンソンのウィッグを使用した患者さまの/「嬉しい」という気持ちから生まれた/体がウィッグの形をした妖精です。」との文章は本件使用商標と重なることなく隙間を設けて配され,本件使用商標の下部の「昼間はスヴェンソンの/各サ ロンに,夜は本社企画部周辺に/現れるというウワサ。」との文章や,「ウィッギーパパ」及び「ウィッギーママ」の文 章が配された 他 のキャラクターも,本件使用商標と重なることなく隙間を設けて配 されており,このように本件使用商標は,他の文章やキャラクター と重なっていない。そうすると,本件付箋紙の見開き 内面部分に接した者は,本件使用商標を特別に注意をひく部分として認識することができるから, 見開 き 内面部分から本 件 使 用 商 標 を 独 立 し た 商 標 と し て 認 識 す る こ とができるとともに,本件使用商標は,自他商品識別標識及び商品 の出所識別標識として機能し得るものといえる 。したがって,本件審決が,本件付箋紙から本件使用商標を商標として抽出し,これが自他商品識別標識としての機能を果たしている旨の認定判断をしたことに誤りはない。イ この点に関し,原告は,本件使用商標に相当する部分のうち,「ウィッギー」及び「Wiggy」の文字部分並びに「両腕に抱えたハートは,/いつも患者さまの気持ちと/共にあることを表しています。」の文章部分は特に目立つものとはいえず,他の説明等に完全に埋没しているから,本件付箋紙に接した者が,見開き内面部分から,本件使用商標に相当する部分を独立した商標として認識することができるものではないこと,本件審決は,上記文章部分は,キャラクター図形におけるハート型が表している意味内容を単に説明する文章であると理解されるに過ぎず,これらの部分から出所識別標識としての称呼及び観念が生じないものと認められる旨判断し,商品の出所識別標識として機能し得ないことを自ら述べていることなどを理由として,本件付箋紙から本件使用商標を商標として抽出し,これが自他商品識別標識としての機能を果たしているとした本件審決の認定判断は誤りである旨主張する。しかしながら,前記アのとおり,本件使用商標は,本件付箋紙の見開き内面部分において,他の文章やキャラクターと重なっていないから,他の説明等に完全に埋没しているとはいえないし,また,ピンク色の破線様の装飾の下側部分がキャラクター図形の上部と重なり合っているか ら と いって,本件使用商標が認識できないほど埋没しているということもできない。さらに,本件審決が出所識別標識としての称呼及び観念が生じないと判断した「これらの部分」とは,本件使用商標の上記文章部分そのものではなく,本件商標と本件使用商標の主な相違点と認定した,本件商標では「お客」と記載されている部分が,本件使用商標では「患者」と記載 されている部分と,本件使用商標では キャラクター図形中のハート 型と上記文章部分とを関連付けるように赤色の引き出し線が付され ている部分を示すものである。 仮に「これらの部分」が本件使用商標の上記文章部分そのものを示すものであるとしても,本件審決は,上記文章部分を含む本件使用商標全体としての外観から生じる出所識別標識までも否定するものではない。したがって,原告の上記主張は理由がない。
(2) 本件使用商標と本件商標の社会通念上の同一性の判断の誤りの主張に対
し本件使用商標の「両腕に抱えたハートは,/いつも患者さまの気持ちと/共にあることを表してい ます。 との文章部分と本件商標の」 「両腕に抱えたハートは,/いつもお客さまの気持ちと/共にあることを表しています。」との文章部分とは,いずれも3行に横書きされた文章であって,文字数,文字色及び書体が同じ構成態様となっており,2行目のほぼ中央に位置する「お客」の2文字が相違するだけである。この2文字の違いは,本件商標と本件使用商標の全体を比較すると,外観上大きな違いとは認識されない。また,被 告 が 第 22 回 日 本 乳 癌 学 会学術 総 会 及 び 第 1 2回日 本 乳 癌学 会 近 畿 地 方 会 の 併設展示会に設 置 し た 展 示 ブ ー ス で 来 訪 者 に 対 し て宣伝 広告している主な商品は医療用「ウィッグ」であること,当該「ウィッグ」を使用する者は,抗癌剤の副作用により頭髪が抜けてしまった癌患者であり,被告にとっての「お客さま」は,正に「患者さま」であることからすると,「お客」と「患者」との違いにより実質的な意味合いが変わるものではない。さらに,本件使用商標のその余の構成態様は,本件商標と共通しているため,本件使用商標における上記文章部分とハート型の図形とを結ぶ赤色の引き出し線が配されていることは,小さな違いであり,本件付箋紙の見開き内面部分に接する者にとって注意を ひく部分とはいえない。以上のとおり,本件使用商標は,上記文章部分に「患者」と記載されている点とハート型の図形と上記文章部分とを結ぶ赤色の引き出し線が付されている点で本件商標と相違しているものの,いずれも,本件付箋紙の見開き内面部分に接する者にとって注意をひく部分とはいえ ない から , 本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標に当たるとした本件審決の判断に誤りはない。
(3) 本件付箋紙の配布行為の商標法2条3項8号該当性の判断の誤りの主張
に対し本件付箋紙の見開き内面部分に付された 「スヴェンソンのウィッグを使用した患者さまの/「嬉しい」という気持ちから生まれた/体がウィッグの形をした妖精です。」との文章は , 抗 癌剤 の影 響で 頭髪 が抜け てし まった「患者さま」でも,ウィッグを使用することで,好ましい頭髪を取り戻すことができ,「嬉しい」気持ちを「患者さま」が持つことができることを示唆するものであり,商品「ウィッグ」についての宣伝広告といえる内容である。また,本件付箋紙の見開き内面部分には,商品「ウィッグ」に関係する上記文章が付されているとともに,この文章の直下に本件使用商標が付されていることから,これを目にした者は,本件使用商標とウィッグとの強い結び付きを認識することができる。そして,被告は,本件付箋紙を商品「ウィッグ」の広告媒体として,学会の展示ブースで来訪者に無償配布したのであるから,被告の上記行為は,商品「ウィッグ」に関する広告に本件使用商標を付して頒布する行為(商標法2条3項8号)に該当する。した がっ て, 本件審 決に おけ る 商標法2条3項8号該当性の判断に 誤りはない。
(4) 小括
以上によれば,被告は,要証期間内に日本国内において,本件審判の請求に係る指定商品に含まれる商品「ウィッグ」に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標を使用したものといえるから,原告主張の取消事由は理由がない。
第4 当裁判所の判断
1 認定事実証拠(甲6ないし8,10,12ないし15,29,37,38,乙1)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1) 被告は,理容,美容,育毛,発毛商品,化粧品の輸入販売等を目的とする株式会社である。被告は,平成15年4月から,女性用ウィッグの販売を開始するとともに,医療用ウィッグの販売を開始した。
(2) 被告は,平成26年2月28日ころ,株式会社エムツーカンパニーに発注した,二つ折りの表紙カバーが付いた3種類(イエロー・ピンク・ブルー)の付箋紙のセットである本件付箋紙(乙1)4000部の納品(甲6)を受けた。
(3) 被告は,平成26年7月10日から12日まで大阪市内の大阪国際会議場で開催された第22回日本乳癌学会学術総会において,併設展示会に出展した。被告は,その展示ブースにおいて,被告の販売する医療用ウィッグ等の商品を展示した。被告は,上記展示ブースを訪れた総会の参加者(医療従事者等)に対し,商品カタログを配布したほか,販促品として,本件付箋紙を無償で配布した。その後,被告は,同年11月29日に京都市内の「みやこめっせ」で開催された第12回日本乳癌学会近畿地方会において,併設展示会に出展した。被告は,上記と同様に,その展示ブースにおいて,被告の販売する医療用ウィッグ等の商品を展示し,上記展示ブースを訪れた近畿地方会の参加者に対し,販促品として,本件付箋紙を無償で配布した。本件使用商標の認定判断について(1)ア 本件付箋紙(乙1)は,二つ折りの表紙カバーが付いた3種類(イエロー・ピンク・ブルー)の付箋紙のセットであり,表紙カバーは,別紙3のとおり,表紙部分(図1の右側)及び裏表紙部分(図1の左側)に相当する見開き表面部分とその内側の見開き内面部分(図2)から構成されている。見開き内面部分の右側(裏表紙部分の裏側)には,台紙の上に上記3種類の付箋紙が貼り付けられている。本件付箋紙の表紙部分(別紙3の図1の右側)には,上段に「「どうしよう」に/応えます。」との2行書きの黒色の文字列が,中央にキャラクター図形が,下段に「SVENSON」の文字部分の記載があり,キャラクター図形の右上部には「スヴェンソン公式キャラクター」及び「Wiggy」の文字部分の記載がある。この「Wiggy」の文字部分の「i」を構成する点(「・」)はハートで表されている。本件付箋紙の表紙部分から,上記キャラクター図形のキャラクター(以下「本件キャラクター」という。)は,スヴェンソンの公式キャラクターであり,その名称が「Wiggy」であることを理解できる。イ 本件付箋紙の見開き内面部分の左側(表紙部分の裏側)(別紙3の図2の左側)には,①上段において,2本のピンク色の破線様の装飾の間に「スヴェンソンのウィッグを使用した患者さまの/「嬉しい」という気持ちから生まれた/体がウィッグの形をした妖精です。」との3行書きの黒色の文字列が記載され,②中央において,左側半分を占める本件キャラクターの図形が,右側半分の上段部を占める「Wiggy」(「i」を構成する点(「・」)はハート表記。特に断りのない限り,以下同じ。)及び「ウィッギー」の文字部分が,右側半分の下段部を占める「両腕に抱えたハートは,/いつも患者さまの気持ちと/共にあることを表しています。」との3行書きされた点線による下線付きのピンク色の文字列が,本件キャラクターの図形の真下に「昼間はスヴェンソンの /各サロンに,夜は本社企画部周辺に /現れるというウワサ。」との 3行書きの茶褐色の文字列が記載され,本件キャラクターの図形の「ハート」部分から上記下線付きのピンク色の文字列の1行目の冒頭にかけてピンク色の引き出し線が付されており,③下段において,右側に二つのキャラクター図形並びにそれぞれ図形の下に「ウィッギーパパ」及び「ウィッギーママ」の文字部分が,左側に「Profile」の文字部分の下に本件キャラクターの「性別」,「年齢」,「誕生日」,「性格」,「口癖」及び「好きなこと」に関する情報が記載されている。(2) そこで,本件付箋紙の見開き 内面部分から本件使用商標(別紙2)を抽出し,これを商標として認識できるかについて検討するに,前記(1)イの認定事実によれば,本件付箋紙の見開き 内面部分の左側(別紙3の図2の左側)には,中央の目立つ位置に本件キャラクターの図形及び「Wiggy」及び「ウィッギー」の文字部分が記載され,上記文字部分の下に記載された「両腕に抱えたハートは,/いつも患者さまの気持ちと/共にあることを表しています。」との3行書きされた点線による下線付きのピンク色の文字列と本件キャラクターの図形の「ハート」部分とを関連付けるようにピンク色の引き出し線が付されており,しかも,上記文字部分及び上記ピンク色の文字列は,本件キャラクターの図形の右隣に近接してまとまりよく配置されていることが認められるから,本件キャラクターの図形,上記文字部分,上記ピンク色の文字列及び上記引き出し線は,相互に関連するひとまとまりのものとして,本件付箋紙の見開き 内面部分に接した看者の注意をひくものといえる。そうすると,本件キャラクターの図形,上記文字部分,上記ピンク色の文字列及び上記引き出し線から構成される本件使用商標(別紙2)を本件付箋紙の見開き 内面部分の他の記載部分から分離して観察し,図形及び文字から成る結合商標として認識できるものと認められる。また,本件付箋紙の見開き 内面部分には,本件キャラクターの図形の上方に「スヴェンソンのウィッグを使用した患者さまの/「嬉しい」という気持ちから生まれた/体がウィッグの形をした妖精です。」との3行書きの黒色の文字列が記載されており,本件付箋紙の見開き内面部分に接した看者は,上記黒色の文字列から本件キャラクターは「スヴェンソンのウィッグ」商品を広告宣伝するためのキャラクターであり,上記商品の出所識別標識として用いられることを認識することができるから,本件キャラクターの図形を構成に含む本件使用商標は,全体として「スヴェンソンのウィッグ」商品の出所識別標識として認識することができる態様で使用されているものと認められる。したがって,本件付箋紙から本件使用商標を商標として抽出し,これが自他商品識別標識としての機能を果たしているとした本件審決の認定判断に誤りはない。(3) これに対し原告は,①本件使用商標に相当する部分のうち,「ウィッギー」及び「Wiggy」の文字部分並びに「両腕に抱えたハートは,/いつも患者さまの気持ちと/共にあることを表しています。」の文章部分は特に目立つものとはいえず,他の説明等に完全に埋没しているから,本件付箋紙に接した者が,見開き内面部分から,本件使用商標に相当する部分のみを抽出し,これを商標として認識することはできない,②本件付箋紙の見開き内面部分には,具体的な商品に関する記載や,本件商標の指定商品である「ウィッグ」に関する情報の記載もないのみならず,本件審決は,上記文章部分は,キャラクター図形におけるハート型が表している意味内容を単に説明する文章であると理解されるに過ぎず,これらの部分から出所識別標識としての称呼及び観念が生じないものと認められる旨判断し,商品の出所識別標識として機能し得ないことを自ら述べているなどとして,本件付箋紙に接した者は,見開き内面部分から,本件使用商標に相当する部分を独立した商標として認識することはできないし,仮に本件使用商標を商標として認識することができたとしても,本件使用商標は商品の出所識別標識としての機能を果たしていないから,商標的に使用されているとはいえない旨主張する。しかしながら,上記①の点については,前記(2)認定のとおり,本件キャラクターの図形,上記文字部分,上記文章部分(ピンク色の文字列)及びピンク色の引き出し線から構成される本件使用商標は,相互に関連するひとまとまりのものとして,見開き 内面部分の他の記載部分から分離して観察することができるから,商標として認識することができるものである。なお,別紙3の図2のとおり,「スヴェンソンのウィッグを使用した患者さまの/「嬉しい」という気持ちから生まれた/体がウィッグの形をした妖精です。」との3行書きの黒色の文字列を囲むピンク色の破線様の装飾の下側部分が本件キャラクターの図形の「りぼん」部分の背後で一部重なり合っているが,このことは,上記認定を左右するものではない。また,別紙3の図2のとおり,本件使用商標のうち,上記文字部分は,中央の右側半分の上段部を占める態様で目立つように記載され,上記文章部分(ピンク色の文字列)は,他の文字列と離れた位置にピンク色の文字色で下線付きで記載されているから,上記文字部分及び上記文章部分(ピンク色の文字列)が他の説明等に埋没しているものとはいえない。次に,上記②の点については,本件付箋紙の見開き内面部分には,「ウィッグ」に関する具体的な商品情報の記載はないが,前記(2)認定のとおり,上記3行書きの黒色の文字列から本件キャラクターは「スヴェンソンのウィッグ」商品を広告宣伝するためのキャラクターであり,上記商品の出所識別標識として用いられることを認識することができるから,本件キャラクターの図形を構成に含む本件使用商標は,全体として「スヴェンソンのウィッグ」の商品の出所識別標識として認識することができる態様で使用されているものであり,商標的に使用されているものといえる。また,原告が指摘する本件審決の上記判断部分は,本件使用商標を構成する一部分から出所識別標識としての称呼及び観念が生じないことを述べたものであって,本件使用商標が全体として商品の出所識別標識として機能することを否定する趣旨のものではない。以上のとおり,上記①及び②の点はいずれも理由がないから,原告の上記主張は採用することができない。本件使用商標と本件商標の社会通念上の同一性について(1) 本件商標は,別紙1記載のとおり,左側半分を占めるキャラクターの図形部分と,右側半分の上段部を占める「Wiggy」及び「ウィッギー」の文字部分と,右側半分の下段部を占める「両腕に抱えたハートは,/いつもお客さまの気持ちと/共にあることを表しています。」との3行書きされた点線による下線付きのピンク色の文字列部分とから構成される結合商標である。本件使用商標は,別紙2記載のとおり,左側半分を占めるキャラクター(本件キャラクター)の図形部分と,右側半分の上段部を占める「Wiggy」及び「ウィッギー」の文字部分と,「両腕に抱えたハートは,/いつも患者さまの気持ちと/共にあることを表しています。」との3行書きされた点線による下線付きのピンク色の文字列部分と,上記図形部分の「ハート」部分から上記文字列の1行目の冒頭にかけて付されたピンク色の引き出し線とから構成される結合商標である。本件商標と本件使用商標とを対比すると,①本件商標の上記ピンク色の文字列に「お客さま」と記載されている部分が,本件使用商標の上記ピンク色の文字列では「患者さま」と記載されている点,②本件商標には上記図形部分の「ハート」部分からピンク色の引き出し線が付されていないのに対し,本件使用商標ではこれが付されている点で相違するが,その余の構成態様は共通するものと認められる。しかるところ,本件商標の上記ピンク色の文字列と本件使用商標の上記ピンク色の文字列は,いずれも3行にわたる文章(合計37文字)であり,文字の大きさ,文字色,書体,下線付きである点でも共通していることに照らすと,本件商標の全体と本件使用商標の全体を対比する中で,上記各ピンク色の文字列における「お客さま」の4文字と「患者さま」の4文字の違いにより,外観上異なる印象をもたらすものとはいえないし,ピンク色の引き出し線の有無についても同様であるから,両商標の外観における差異は微差に過ぎない。また,被告が販売する医療用ウィッグ(前記1(1))における「お客」は,「患者」を意味するから,上記各ピンク色の文字列(文章全体)から把握される内容は実質的に同一であるといえる。さらに,本件使用商標のピンク色の引き出し線は,本件キャラクターの図形の「ハート」部分と上記ピンク色の文字列とを関連付けるために付されているものと認識されるから,上記引き出し線自体から出所識別標識としての称呼又は観念を生じるものではない。以上によれば,本件商標と本件使用商標は,上記①及び②の点で相違するが,その余の構成態様を共通にするものであり,上記相違点は両商標の外観,称呼及び観念の共通性に実質的な影響を及ぼすものとはいえないから,本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であると認められる。したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。(2) これに対し原告は,本件商標と本件使用商標は,前記(1)①及び②の点で相違することを理由に,外観,称呼及び観念のいずれも相違するから,本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標に当たらない旨主張する。しかしながら,前記(1)で説示したとおり,上記相違点は両商標の外観,称呼及び観念の共通性に実質的な影響を及ぼすものとはいえず,本件使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標であると認められるから,原告の上記主張は理由がない。本件付箋紙の配布行為の商標法2条3項8号該当性について(1) 前記1の認定事実によれば,被告は,要証期間内である平成26年7月10日から12日まで大阪市内の大阪国際会議場で開催された第22回日本乳癌学会学術総会及び同年11月29日に京都市内の「みやこめっせ」で開催された第12回日本乳癌学会近畿地方会において,各併設展示会の展示ブースに被告の販売する医療用ウィッグ等の商品を展示し,上記展示ブースを訪れた総会等の参加者(医療従事者等)に対し,商品カタログを配布したほか,販促品として,本件付箋紙を無償で配布したことが認められる。上記認定事実によれば,被告による本件付箋紙の配布行為は,上記各併設展示会の展示ブースにおいて,被告の販売する医療用ウィッグ等の商品の広告の一環として行われたものと認められる。そして,本件付箋紙の見開き内面部分に掲載された本件使用商標は,全体として「スヴェンソンのウィッグ」商品の出所識別標識として認識することができる態様で使用されているものと認められることは,前記2(2)認定のとおりである。そうすると,本件付箋紙は,被告の販売する医療用ウィッグ等の商品 「ス(ヴェンソンのウィッグ」商品)の広告媒体に当たるものであって,被告による本件付箋紙の配布行為は,上記商 品 に 関す る広 告に 本件 使用商 標を 付して頒布する行為(商標法2条3項8号)に該当するものと認められる。した がっ て, 本件審 決に おけ る 商標法2条3項8号該当性の判断に 誤りはない。(2) こ れに対 し原告 は,① 本件商標は,被告のウェブサイト,被告が運営する通販サイト,商品「ウィッグ」のいずれにも,これまで一切使用されたことはなく,被告の公式キャラクターも,これまで商品「ウィッグ」に使用されたことはなかったことに照らすと,本件付箋紙は,被告そのものを広告するためのノベルティ(販促品)と認識されるにとどまる,②本件付箋紙の見開き内面部分の文章の記載は,「ウィッグ」の語が含まれているというだけであって,商品自体を宣伝したものではなく,「ウィッグ」の前に「スヴェンソンの」と付いているように,被告と商品「ウィッグ」との関係を強調したものであり,本件使用商標と商品「ウィッグ」とのつながりを示すものとはいえないなどとして,本件付箋紙は,単なる被告を宣伝広告するノベルティ(販促品)に過ぎず,商品「ウィッグ」の宣伝広告とはいえないし,商品「ウィッグ」との具体的関係において使用されているものとはいえないから,本件付箋紙は,商標法2条3項8号所定の「商品に関する広告」に該当せず,被告による本件付箋紙の配布行為は,同号に該当しない旨主張する。しかしながら,前記(1)認定のとおり,被告による本件付箋紙の配布行為は,前記各併設展示会の展示ブースにおいて,被告の販売する医療用ウィッグ等の商品の広告の一環として行われたものであり,本件付箋紙は,被告の販売する医療用ウィッグ等の商品(「スヴェンソンのウィッグ」商品)の広告媒体に当たり,上記商品に関する広告に該当するものと認められる。もっとも,本件付箋紙の表紙部分を含む本件付箋紙全体の記載内容(前記(1))に照らすと,本件付箋紙は,被告それ自体を広告する広告媒体としての機能をも有するものと認められるが,そのことは,本件付箋紙が上記商品に関する広告に該当することを否定する事情になるものではない。また,本件付箋紙に「ウィッグ」に関する具体的な商品情報の記載がないことは,本件使用商標が本件付箋紙において「スヴェンソンのウィッグ」商品の出所識別標識として認識することができる態様で使用されているとの認定の妨げになるものではなく(前記2(3)),しかも,被告による本件付箋紙の配布行為は,前記各併設展示会の展示ブースにおいて,被告の販売する医療用ウィッグ等の商品の展示とともに行われたのであるから,本件付箋紙の配布を受けた参加者は,本件付箋紙は,上記商品の広告のために配布されたものと認識したものと認められる。したがって,原告の上記主張は理由がない。結論以上によれば,被告は,要証期間内に日本国内において,本件審判の請求に係る指定商品中の「つけかつら,頭飾品」に含まれる医療用ウィッグの商品に関する広告に本件使用商標を付して頒布することにより,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認められるから,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 大 鷹 一 郎
裁判官 古 河 謙 一
裁判官 関 根 澄 子
(別紙1)
(別紙2)
(別紙3)
【図1】【図2】
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