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平成30(行ケ)10049審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成31年2月6日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社MTG
原告株式会社ファイブスター西村啓
対象物 美容器
法令 特許権
キーワード 審決40回
実施11回
進歩性7回
無効4回
分割1回
無効審判1回
主文 原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯 ⑴ 被告は,平成26年9月26日,発明の名称を「美容器」とする発明につい て特許出願をし(平成23年11月16日にした特願2011-250915号の 分割出願(特願2014-197056号)),平成27年12月4日,設定登録 を受けた(特許第5847904号。請求項の数2。以下「本件特許」という。)。 ⑵ 原告は,平成29年8月1日,特許庁に対し,本件特許について無効審判請 求をし,無効2017-800102号事件として係属した。

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判決文

平成31年2月6日判決言渡
平成30年(行ケ)第10049号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成30年12月25日
判 決

原 告 株式会社ファイブスター

同訴訟代理人弁護士 冨 宅 恵
西 村 啓
同 弁理士 高 山 嘉 成

被 告 株 式 会 社 M T G

同訴訟代理人弁護士 關 健 一
同 弁理士 小 林 徳 夫
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が無効2017-800102号について平成30年3月29日にした審
決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯
⑴ 被告は,平成26年9月26日,発明の名称を「美容器」とする発明につい
て特許出願をし(平成23年11月16日にした特願2011-250915号の

分割出願(特願2014-197056号)),平成27年12月4日,設定登録
を受けた(特許第5847904号。請求項の数2。以下「本件特許」という。)。
⑵ 原告は,平成29年8月1日,特許庁に対し,本件特許について無効審判請
求をし,無効2017-800102号事件として係属した。
⑶ 特許庁は,平成30年3月29日,「本件審判の請求は,成り立たない。」
との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本
は,同年4月9日,原告に送達された。
⑷ 原告は,本件審決を不服として,同月13日,本件訴えを提起した。
2 特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである(以下,請求項の順に
「本件発明1」などといい,本件発明1及び同2を併せて「本件発明」という。
「/」は改行部分を示す(以下同じ)。)。その明細書及び図面(甲16)を併せ
て「本件明細書」という。
【請求項1】
基端においてハンドルに抜け止め固定された支持軸と,/前記支持軸の先端側に
回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用
を付与するようにした美容器において,/前記回転体は基端側にのみ穴を有し,回
転体は,その内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け
部材を介して支持されており,/軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる
先端で支持軸に抜け止めされ,/前記軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突
き出るとともに,軸受け部材は係止爪の前記基端側に鍔部を有しており,同係止爪
は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くな
る斜面を有し,/前記回転体は内周に前記係止爪に係合可能な段差部を有し,前記
段差部は前記係止爪の前記基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との
間に位置することを特徴とする美容器。
【請求項2】

前記軸受け部材は合成樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の美容器。
3 本件審決の理由の要旨
⑴ 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,①
本件発明1は,欧州特許出願公開第0674894号(甲1の1。1995年10
月4日公開。以下「引用例1」という。)記載の発明(以下「引用発明1」とい
う。)及び甲2~13の1に記載の事項に基づいて,原出願前に当業者が容易に発
明をすることができたものとはいえない,また,②本件発明2は,本件発明1の特
定事項を全て有しつつ更に限定したものであり,上記①と同じく,当業者が容易に
発明をすることができたものとはいえない,などというものである。
⑵ 本件発明1と引用発明1との対比
本件審決は,引用発明1及びこれと本件発明1との一致点,相違点につき,以下
のとおり認定した。
ア 引用発明1
基端においてグリップ1に支持された軸2と,軸2に回動可能に軸支されたマッ
サージローラ4とを備え,そのマッサージローラ4により身体に対してマッサージ
効果を付与するようにしたマッサージ器において,/マッサージローラ4は基端側
及び先端側に穴を有し,マッサージローラ4は,その内部に軸2の先端が位置する
貫通状態で軸2に鞘3を介して軸支されており,/鞘3は,マッサージローラ4の
基端側の穴とは反対側となる先端で軸2に抜け止めされ,/鞘3からは隆起10が
突き出るとともに,/鞘3は隆起10の基端側に鍔部を有しており,/マッサージ
ローラ4は内周に隆起10に係合可能な段差部を有し,段差部は隆起10の基端側
に係止されるとともに隆起10と鍔部との間に位置するマッサージ器。
イ 一致点
基端においてハンドルに支持された支持軸と,/前記支持軸の先端側に回転可能
に支持された回転体とを備え,その回転体により身体に対して美容的作用を付与す
るようにした美容器において,/前記回転体は基端側に穴を有し,回転体は,その

内部に前記支持軸の先端が位置する状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持さ
れており,/軸受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け
止めされ,/前記軸受け部材からは突出係止部が突き出るとともに,軸受け部材は
突出係止部の前記基端側に鍔部を有しており,/前記回転体は内周に突出係止部に
係合可能な段差部を有し,前記段差部は突出係止部の前記基端側に係止されるとと
もに,前記突出係止部と前記鍔部との間に位置する,美容器。
ウ 相違点
(ア) 相違点1
本件発明1においては,支持軸が,基端においてハンドルに抜け止め固定されて
いるのに対して,引用発明1においては,軸2が,グリップ1に支持されているも
のの,基端においてグリップ1に抜け止め固定されているかが不明である点。
(イ) 相違点2
本件発明1においては,軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとと
もに,同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心と
の距離が短くなる斜面を有し,かつ,回転体の段差部が前記係止爪の前記基端側に
係止されるものであるのに対して,引用発明1においては,鞘3から隆起10が突
き出るとともに,マッサージローラ4の段差部が隆起10の基端側に係止されるも
のであるものの,隆起10が弾性変形可能であるかが不明であり,かつ,隆起10
は,先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる
斜面を有するものではない点。
(ウ) 相違点3
本件発明1においては,回転体が基端側にのみ穴を有し,かつ,回転体が,非貫
通状態で支持軸に支持されているのに対して,引用発明1においては,マッサージ
ローラ4が基端側及び先端側に穴を有し,かつ,マッサージローラ4が,貫通状態
で軸2に支持されている点。
⑶ 甲3~6に記載された技術事項

本件審決は,甲3~6に記載された技術事項として,以下の事項を認定した。
ア 甲3の1(米国特許出願公開第2010/191161号。)
ロックピン240にプラグ200,220を介して回転可能に支持されたモジュ
ール140により,身体をマッサージするマッサージ器において,プラグ200は,
外方に延びる突起205を含む弾性的なラッチアーム204を含むと共に,ラッチ
アーム204の基端側にフランジ201を有しており,ラッチアーム204の突起
205は先端側に向かうほどプラグ200におけるモジュール140の回転中心と
の距離が短くなる斜面を有し,モジュール140は,内周に,ラッチアーム204
と噛み合うラッチ凹部を有すること。(以下「甲3技術」という。)
イ 甲4(登録実用新案第3159255号公報。平成22年5月13日発行)
ローラ保持部4の先端側に回転自在に保持されたローラ部5を備え,ローラ部5
により皮膚を刺激することができるようにした美容ローラにおいて,ローラ部5は,
フェライトインジェクション磁石から形成され,基端側にのみ穴を有し,かつ,そ
の内部にローラ保持部4の先端が位置する非貫通状態でローラ保持部4にベアリン
グ8を介して支持されていること。(以下「甲4技術」という。)
ウ 甲5(特開2010-131090号公報)
連結軸11の先端部に回転可能に支持されたローラー4を備え,ローラー4を顔
面に接触させ回転させて美顔にする美顔用マッサージ器において,ローラー4はチ
タニウム製であり,基端側にのみ穴を有し,かつ,その内部に連結軸11の先端が
位置する非貫通状態で連結軸11にL型ベアリング13及びベアリング12を介し
て支持されていること。 (以下「甲5技術」という。)
エ 甲6(「綜説 組立/分解性を考慮したスナップフィット設計およびバーチ
ャルリアリティ環境における製品評価」日本接着学会誌 vol.43 No.4,P149-157。平
成19年4月1日発行)
先端に向かって下がる斜面を有する保持部と撓み部とを含むカンチレバーロック。
(以下「甲6技術」という。)

4 取消事由
⑴ 本件発明1の進歩性の判断の誤り(取消事由1)
ア 相違点2の容易想到性に係る判断の誤り
イ 相違点3の容易想到性に係る判断の誤り
⑵ 本件発明2の進歩性の判断の誤り(取消事由2)
第3 当事者の主張
1 取消事由1(本件発明1の進歩性の判断の誤り)について
〔原告の主張〕
⑴ 相違点2の容易想到性に係る判断の誤り
ア 引用発明1に甲3技術を適用する動機付け
(ア) 本件審決は,引用発明1の隆起10と,甲3技術の「ラッチアーム204」
とは,結合構造における役割が異なるとして,引用発明1に甲3技術を適用する動
機付けは存在しないと判断した。
しかし,甲3技術は,ロックピン240にプラグ200,220を介して回転可
能に支持されたモジュール140により,身体をマッサージするマッサージ器に関
するものである。他方,引用発明1も,軸2に鞘3を介して回転可能に支持された
マッサージローラ4によって,身体をマッサージするマッサージ器である。そして,
甲3技術のプラグ200,220と引用発明1の鞘3とは,共に,スナップ結合に
よって,それぞれ,モジュール140及びマッサージローラ4を回転可能に支持す
るものである。
そうすると,いずれもスナップ結合によって回転体を回転可能に支持するマッサ
ージ器であることを動機付けとして,引用発明1に対して,甲3技術のラッチアー
ム204を用いたスナップ結合の技術を適用することは,当業者が容易になし得る。
(イ) 本件審決は,引用発明1の隆起10と,甲6技術の「カンチレバーロック」
とは,結合構造における役割が異なるとして,引用発明1に甲6技術を適用する動
機付けは存在しないと判断した。

しかし,甲6には,ロックの例として,「先端に向かって下がる斜面を有する保
持部と撓み部とを含むカンチレバーロック」だけでなく,「円筒状のうねとそれに
対となった部分の撓みによるアニュラロック」も開示されている。引用発明1にお
ける鞘3の隆起10とマッサージローラ4の凹部8とは,「アニュラロック」によ
るスナップ結合である。他方,甲3技術には,「カンチレバーロック」に類似した
「ラッチアーム204」が用いられている。
また,甲6によると,スナップ結合として,「カンチレバーロック」と「アニュ
ラロック」とを設計者が適宜選択していることが開示されており,この設計手法は,
本件特許の原出願時の技術水準を構成している。そうすると,引用発明1の「アニ
ュラロック」によるスナップ結合の構造を甲3技術の「カンチレバーロック」によ
るスナップ結合の構造に置き換えることについて,動機付けが存在する。
以上のとおり,甲6を出願時の技術水準を示す引用文献として適用すれば,引用
発明1の鞘3に対して甲3技術の「ラッチアーム204」を適用することには,動
機付けが存在することになる。
イ 阻害要因の不存在
(ア) 結合の外れやすさについて
本件審決は,引用発明1の隆起10を甲3技術のラッチアーム204又は甲6技
術の係止爪に置き換えた場合,結合した状態が外れやすいものとなることが明らか
であるとして,阻害要因が存在すると判断した。
しかし,上記判断は,物理の法則を無視した誤った評価である。すなわち,マッ
サージローラ4が容易に抜けるか否かの主たる要因は,マッサージローラ4と鞘3
との間に生じる摩擦係数μと垂直抗力Nにあるところ,摩擦係数μは,マッサージ
ローラ4及び鞘3の素材や表面処理の状態だけでなく,マッサージローラ4と鞘3
との間のはめ合い公差によっても決定される。このため,隆起10が存在しないマ
ッサージ器であっても容易にマッサージローラ4が抜けないように摩擦係数μを調
整することは,当業者にとって単なる設計事項にすぎない。

引用例1においても,隆起10が存在しなくてもマッサージローラ4が抜けるこ
とがないことを前提に発明が構成されており,マッサージローラ4をより抜けにく
くするために,補助的に隆起10が設けられているものとして理解しなければなら
ない。そうである以上,隆起10の部分をラッチアーム204の突起205に置き
換えたところで,マッサージローラ4が外れやすくなることはない。
また,ラッチアーム204の突起205を用いた方が,引用発明1の隆起10を
用いた場合に比べて,マッサージローラ4が抜けにくくなると考えられる。少なく
とも,引用発明1における隆起10を,甲3技術のラッチアーム204の突起20
5に置き換えたからといって,マッサージローラ4の結合が外れやすくなるとの結
論を導くことはできない。
したがって,当該置換えに阻害要因が存在するとはいえない。このことは,引用
発明1における隆起10を甲6技術の係止爪を用いた構成とすることに関しても同
様である。
(イ) 甲3技術のロックピンとの関係について
本件審決は,甲3技術のロックピンを外さなければラッチアーム204の突起2
05が弾性変形することはなく,スナップ結合を解除することができないため,引
用発明1に甲3技術を適用することに阻害要因が存在すると判断した。
しかし,引用発明1のマッサージローラ4は弾性材料であるため,ラッチアーム
204の突起205が弾性変形しなくとも,マッサージローラ4の径が拡大するこ
とでスナップ結合を解除することができる。そうである以上,甲3技術のロックピ
ンを外さないとスナップ結合が解除されないということが,甲3技術を引用発明1
に適用することの阻害要因とはならない。
また,係止爪を弾性変形させるために所定のクリアランスを設けることが技術常
識であるとすれば,甲3技術を引用発明1に適用する際にクリアランスを設け,ロ
ックピンを外さなくてもラッチアーム204の突起205を弾性変形させることに
よりスナップ結合を解除することは,容易に想到することができる。その点でも,

ロックピンを外さないとスナップ結合が解除されない構成であることが甲3技術を
引用発明1に適用する阻害要因とはならない。
ウ 以上より,相違点2に係る本件発明1の構成は,引用発明1及び甲3技術か
ら,又はこれらと甲6技術から,当業者が容易に想到することができるものである。
したがって,相違点2の容易想到性に係る本件審決の判断には誤りがある。
⑵ 相違点3の容易想到性に係る判断の誤り
ア 主位的主張
本件特許の原出願当時,弾性材料で形成されたローラを基端側にのみ穴を有する
非貫通状態の構成とすることは技術常識であり,当業者は,引用例1のみで相違点
3に係る本件発明1の構成を容易に想到することができる。
イ 予備的主張
(ア) 甲4技術及び甲5技術の認定の誤り
甲4及び5には,弾性材料ではないローラを用いたマッサージ器において,ロー
ラを基端側にのみ穴を有する非貫通状態の構成とすることが開示されている。他方,
ローラを用いて肌をマッサージすることにより美容効果を得ようとするマッサージ
器において,弾性材料で形成されたローラを基端側にのみ穴を有する非貫通状態の
構成とすることは,本件特許の原出願時の技術常識である。この技術常識と甲4及
び5の記載とを併せると,回転可能なローラを用いて肌をマッサージし,美容効果
を期待するマッサージ器において,ローラが弾性材料であるか否かを問わず,ロー
ラを基端側にのみ穴を有する非貫通状態の構成とすることは,広く周知となってい
た技術的事項といえる。
そうすると,甲4には,甲4技術ではなく,「ローラ保持部4の先端側に回転可
能に保持されたローラ部5を備え,ローラ部5により皮膚を刺激することができる
ようにした美容ローラにおいて,ローラ部5は,基端側にのみ穴を有し,その内部
にローラ保持部4の先端が位置する非貫通状態でローラ保持部4にベアリング8を
介して支持されていること。」が記載されていると認定されるべきである(以下

「甲4’技術」という。)。同様に,甲5には,甲5技術ではなく,「連結軸11
の先端部に回転可能に支持されたローラー4を備え,ローラー4を顔面に接触させ
回転させて美顔にする美顔用マッサージ器において,ローラー4は,基端側にのみ
穴を有し,その内部に連結軸11の先端が位置する非貫通状態で連結軸11にL型
ベアリング13及びベアリング12を介して支持されていること。」が記載されて
いると認定されるべきである(以下「甲5’技術」という。)。
(イ) 動機付けについて
美容用マッサージ器において,弾性材料で形成されたローラについて基端側のみ
穴を有する非貫通構造にするという技術常識を考慮すれば,引用発明1におけるマ
ッサージローラ4に対して,甲4’技術及び甲5’技術として開示されているロー
ラを非貫通状態の構造とする技術的思想を適用する動機付けが存在する。
(ウ) 阻害要因について
本件審決は,引用発明1のマッサージローラ4を,非弾性材料から構成される甲
4技術のローラ部5及び甲5技術のローラー4に置き換えることで,マッサージロ
ーラ4の先端側が柔軟に変形しないことになること,そのため,マッサージローラ
4の先端部が身体輪郭に適用することができるという効果を低減することという2
つの阻害要因が存在すると判断した。
しかし,甲4及び5は,前記のとおり,広く美容用マッサージ器に使用するロー
ラとして非貫通状態のローラを開示しており(甲4’技術,甲5’技術),引用発
明1のマッサージローラ4の材質を弾性材料で構成して非貫通状態とすることがで
きるから,第1の阻害要因は存在しない。
また,引用例1の請求項1においては,マッサージローラ4が「柔軟に変形可能
な中空ローラ」であると特定されており,これにより身体輪郭に適応することがで
きるのであるから,マッサージローラ4を非貫通としても,マッサージローラ4が
中空で,かつ,柔軟に変形可能な弾性材料で形成されている以上,マッサージロー
ラ4の先端部だけが柔軟に変形することがなくなるということはなく,第2の阻害

要因も存在しない。
(エ) 以上のとおり,引用発明1のマッサージローラ4に対し,甲4’技術又は
甲5’技術のローラを非貫通状態の構造とする技術的思想を適用することには,動
機付けが存在し,阻害要因は存在しない。
よって,当業者は,甲4’技術又は甲5’技術により,相違点3に係る本件発明
1の構成を容易に想到することができる。
ウ したがって,相違点3の容易想到性に係る本件審決の判断には誤りがある。
〔被告の主張〕
⑴ 本件審決について
本件審決は,引用発明1の認定にあたり,本件発明1の「軸受け部材から突き出
る弾性変形可能な係止爪」の「弾性変形可能」に対応する認定がされていないこと
などから,引用発明1の認定には誤りがあり,このため,これと本件発明1との一
致点,相違点1及び同2の認定にも誤りがあることとなる。引用発明1は,正しく
は,以下のとおり認定されるべきである。もっとも,これをもって本件審決の違法
性を主張する趣旨ではなく,進歩性の判断において本件審決が前提とする「マッサ
ージローラ」が「弾性変形可能」であることを引用発明1の認定に含めるべきとす
るものであるにとどまり,本件審決の結論に誤りはない。
基端においてグリップ1に支持された軸2と,軸2に回動可能に軸支されたマッ
サージローラ4とを備え,そのマッサージローラ4により身体に対してマッサージ
効果を付与するようにしたマッサージ器において,/マッサージローラ4は基端側
及び先端側に穴を有し,マッサージローラ4は,その内部に軸2の先端が位置する
貫通状態で軸2に鞘3を介して軸支されており,/鞘3は,マッサージローラ4の
基端側の穴とは反対側となる先端で軸2に抜け止めされ,/鞘3からは隆起10が
突き出るとともに,/鞘3は隆起10の基端側に鍔部を有しており,/弾性変形可
能なマッサージローラ4は内周に隆起10に係合可能な段差部を有し,段差部は隆
起10の基端側に係止されるとともに隆起10と鍔部との間に位置するマッサージ

器(以下「引用発明1’」という。)。
⑵ 相違点2の容易想到性に係る判断の誤りについて
ア 引用発明に甲3技術を適用する動機付けについて
(ア) 引用発明1’を前提とすると,引用発明1’が,「段差部は隆起10の基
端側に係止されるとともに隆起10と鍔部との間に位置する」構成を採用し得るの
は,マッサージローラ4が「弾性変形可能」なためであり,鞘3をマッサージロー
ラ4に装着する際に,主としてマッサージローラ4が拡径状態に変形して,マッサ
ージローラ4の段差部が,鞘3の隆起10を乗り越えることによるものである。他
方,マッサージローラ4自らが弾性変形するのであるから,係止の際に隆起10が
弾性変形する必要はない。また,隆起10は,マッサージローラ4を鞘3から抜け
にくくする抜け止めであることを考慮すれば,隆起10は弾性変形可能なマッサー
ジローラ4に対して変形しないことが必要である。
このように,引用発明1’は,マッサージローラ4と鞘3との結合において,マ
ッサージローラ4が弾性変形し,鞘3の隆起10は弾性変形しない技術である。
これに対し,甲3技術においては,プラグ200とモジュール140との支持に
関して,プラグ200に形成されたラッチアーム204が弾性変形し,これに噛み
合うラッチ凹部を有するモジュール140は弾性変形しないと認められる。
上記のとおり,引用発明1’は,鞘3に係止するマッサージローラ4自体が弾性
変形するのであるから,これに係止する隆起10を弾性変形する構成とする必要は
なく,引用発明1’の隆起10を甲3技術の「弾性変形するラッチアーム204」
に置き換える動機付けはない。
したがって,引用発明1’を甲3技術に基づき相違点2に係る本件発明1の構成
とすることは,当業者にとって容易ではない。
(イ) 前記のとおり,引用発明1’は,外側のマッサージローラ4が弾性変形し,
内側の鞘3の隆起10は弾性変形しない構成である。仮に,引用発明1’の鞘3の
隆起10とマッサージローラ4との関係が,甲6記載の「アニュラロック」に相当

するとすれば,外筒に相当する引用発明1’のマッサージローラ4が弾性変形し,
内筒に相当する鞘3が弾性変形しない構成となる。
他方,カンチレバーロックは,「たわみ部と保持部」を有する構成が弾性変形す
る機構である。このため,アニュラロックの係止構造をカンチレバーロックに変更
するとすれば,機能からみて,アニュラロックの弾性変形する構成(外筒)がカン
チレバーロックの弾性変形する構成(たわみ部と保持部)に置き換わることとなる。
そうすると,カンチレバーロックの構成を引用発明1’に適用するとすれば,カ
ンチレバーロックの弾性変形する構成(たわみ部と保持部)は引用発明1’におい
て弾性変形するマッサージローラ4に形成されることになって,鞘3の隆起10が
弾性変形する構成とはならない。
また,引用発明1’において,マッサージローラ4は,それ自体が弾性変形する
のであるから,カンチレバーロックの構成を採用する必要がない。
したがって,甲6を考慮したとしても,引用発明1’の鞘3の隆起10に甲3技
術の弾性変形するラッチアーム204の構成を採用する動機付けはなく,引用発明
1’を相違点2に係る本件発明1の構成とすることは当業者にとって容易ではない。
イ 阻害要因の不存在について
(ア) 結合の外れやすさについて
a 隆起10が引用例1において必須とされていないこととマッサージローラ4
の外れやすさとは全く関係がない。
b 引用発明1’の隆起10はマッサージローラ4に係止して鞘3からマッサー
ジローラ4を抜けにくくしているのであるから,隆起10がない場合,隆起10が
ある場合に比べてマッサージローラ4が抜け易くなることは自明である。
また,引用発明1’の隆起10に変えて甲3技術のラッチアーム204を適用す
ると,マッサージローラ4が鞘3から抜ける方向に移動した際,マッサージローラ
4の段差部が,ラッチアーム204の形状に変形しつつ,ラッチアーム204の突
起205を径方向内方に押圧するため,ラッチアーム204は弾性変形して鞘3内

に潜ってしまい,抜け止めとして機能しない。
このため,引用発明1’の隆起10に代えて甲3技術の弾性変形するラッチアー
ム204を採用すると,マッサシージローラ4に十分係止することができず,本来
の機能が発揮されなくなる。
したがって,引用発明1’における隆起10の技術的意義を考慮すれば,隆起1
0に変えて甲3技術の弾性変形するラッチアーム204を採用することには阻害要
因が存在する。
c 原告は,ラッチアーム204の突起205を用いた方が,引用発明1’の隆
起10を用いた場合に比べてマッサージローラ4が抜けにくくなると考え得る旨主
張する。
しかし,この主張は,本件審決が認定した構成ではなく,実施例レベルの具体的
形状に基づくものと理解されるところ,本件審決は,引用発明1’や甲3技術につ
いて,それぞれ「隆起10」,「外方に延びる突起205」としか認定しておらず,
具体的形状を認定していない。
したがって,原告の上記主張は,本件審決の認定に係る引用発明1’や甲3技術
に基づかない主張である。
(イ) 甲3技術のロックピンとの関係について
a 原告は,甲3技術のロックピンを外さないとスナップ結合が解除されないこ
とは,甲3技術を引用発明1’に適用する阻害要因にはならない旨主張する。
しかし,本件審決は,引用発明1’に甲3技術を適用する「動機付けがない」と
判断する中でロックピンに言及しているのであって,「阻害要因がある」と判断し
ているのではない。
b 甲3技術のラッチアーム204が弾性変形するのは,プラグ200に結合さ
れるモジュール140が弾性変形せず,そのままではプラグ200の突起205と
モジュール140との係合ができないために,プラグ200にあえて弾性変形する
ラッチアーム204を設けたものと理解できる。また,ロックピン240を使用す

るのは,ロックピン240にてラッチアーム204の弾性変形を規制しなければプ
ラグ200とモジュール140との支持が不十分になるためである。
これに対し,引用発明1’のマッサージローラ4はそれ自体が弾性変形するので
あるから,マッサージローラ4に結合する鞘3の隆起10を弾性変形する構成とす
る動機付けは全く存在しない。
c クリアランスを設け,ロックピン240を外さなくてもラッチアーム204
を弾性変形させるようにすることによりスナップ結合を解除するものとすると,ラ
ッチアーム204の弾性変形を規制するというロックピン240の技術的意義を没
却することとなり,そのような構成を採用する動機付けはない。
⑶ 相違点3の容易想到性に係る判断の誤りについて
ア 主位的主張について
(ア) 引用例1の記載によれば,引用発明1’が相違点3に係る構成を有するの
は,弾性変形可能なマッサージローラの自由端部(先端側)を中空とすることによ
り,当該自由端部を,身体の輪郭に追随して変形できるように柔軟に変形可能とす
るという点において技術的意義を有するためであることがわかる。
仮に,マッサージローラ4の自由端部を非貫通とすれば,当該部分の柔軟性が低
下し,上記技術的意義を達成することができなくなることは明らかである。
したがって,引用発明1’においてそのような変更を行う動機付けはない。
(イ) 弾性材料で形成されたローラ基端側にのみ穴を有する非貫通形状とするこ
とは本件特許の原出願時の技術常識であったと原告が主張する甲25~29には,
ローラの自由端部を非貫通形状としても,貫通状態と同等に身体の輪郭に追随して
変形できるよう柔軟に変形可能である旨の開示はない。また,前記のとおり,ロー
ラの自由端部を非貫通形状とすれば,当該部分の柔軟性が低下することは自明であ
る。
したがって,相違点3に係る本件発明1’の構成は技術常識であるとはいえず,
引用発明1’を弾性材料で形成されたローラ基端側にのみ穴を有する非貫通形状の

構成とする動機付けはない。
イ 予備的主張について
(ア) 甲4技術及び甲5技術の認定の誤りについて
前記のとおり,引用例1記載の発明は,引用発明1’と認定されるべきものであ
り,これに対応して,甲4技術及び甲5技術の認定にあたり,非弾性材料であるこ
とを意味する「ローラ部5は,フェライトインジェクション磁石」,「ローラ4は
チタニウム製であ」るとした点で,本件審決に誤りはない。
(イ) 動機付けについて
前記のとおり,引用発明1’が相違点3に係る構成を有することは,弾性変形可
能なマッサージローラの自由端部(先端側)を中空とすることにより,当該自由端
部を,身体の輪郭に追随して変形できるように柔軟に変形可能とするという技術的
意義を有する。
このため,仮に甲4及び5記載の技術が,原告が主張するとおり,弾性・非弾性
を問わず基端側にのみ穴を有する非貫通状態の構造を有するローラとして認定し得
るとしても(甲4’技術,甲5’技術),マッサージローラ4の自由端を非貫通と
すれば,同部分の柔軟性が低下し,非貫通とした技術的意義が達成できなくなるこ
とは明らかであり,そのような変更を行う動機付けはない。
(ウ) 阻害要因について
前記のとおり,引用発明1’のマッサージローラ4について自由端部を非貫通と
すれば,当該部分の柔軟性が低下し,非貫通とした技術的意義が没却されるのであ
るから,そのような変更を行うことには阻害要因が存在する。
また,マッサージローラ4を非貫通とすれば同時に「中空」ではなくなるから,
引用例1の請求項1の記載を考慮しても,マッサージローラ4を非貫通とする構成
は採用し得ない。
2 取消事由2(本件発明2の進歩性の判断の誤り)
〔原告の主張〕

相違点2及び3の容易想到性に係る本件審決の判断に誤りがあることは,前記1
のとおりである。また,プラスチック製である引用発明1の鞘3及び甲3のプラグ
240に基づいて,軸受部材を合成樹脂製のものとすることは,当業者にとって容
易である。
したがって,本件発明2に関する本件審決の判断は誤りである。
〔被告の主張〕
本件発明2は本件発明1の従属項であるところ,本件発明1についての本件審決
の判断に誤りがないのと同様に,本件発明2についての判断にも誤りはない。
第4 当裁判所の判断
1 本件発明
⑴ 本件発明に係る特許請求の範囲は,前記第2の2記載のとおりである。また,
本件明細書(甲16)には,以下の記載がある(なお,図面は別紙図面目録記載の
1参照)。
ア 技術分野
この発明は,回転体を身体上で転動させることにより,使用者に対して美肌効果
等の美容的作用を付与するようにした美容器に関するものである。(【0001】)
イ 背景技術
従来,この種の美容器としては,例えば特許文献1に開示されるような構成が提
案されている。この従来構成の美容器においては,ハンドルの先端に二叉部が設け
られている。二叉部の先端には回転体が支持されている。そして,各回転体を身体
の皮膚に押し付けて回転させることにより,身体に対して美肌効果等の美容的作用
が付与されるとしている。(【0002】)
ウ 発明が解決しようとする課題
前記特許文献1においては,回転体を支持するための軸等の支持構造は開示され
ていない。
この発明の目的は,回転体を支持軸に対して回転可能に支持することができる美

容器を提供することにある。(【0004】)
エ 課題を解決するための手段
上記の目的を達成するために,この発明は,基端において抜け止め固定された支
持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,その回転体
により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器である。(【000
5】)
また,前記回転体は基端側にのみ穴を有し,回転体は,その内部に前記支持軸の
先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており,軸
受け部材は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされ,前記
軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪
の前記基端側に鍔部を有しており,同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材
における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,前記回転体は内周に前
記係止爪に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止
されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置する。(【0006】)
前記の構成において,前記軸受け部材は合成樹脂製である。(【0007】)
オ 発明の効果
以上のように,この発明によれば,回転体を支持軸に対して回転可能に支持する
ことができる…という効果を発揮する。(【0008】)
カ 発明を実施するための形態
図4に示すように,前記各支持軸20の突出端部には,合成樹脂よりなる円筒状
の軸受け部材25が嵌合されて,ストップリング26により抜け止め固定されてい
る。…図4及び図8に示すように,各軸受け部材25の外周には,一対の弾性変形
可能な係止爪25aが突設されている。各支持軸20上の軸受け部材25には,ほ
ぼ球体状をなす一対の回転体27が回転可能に嵌挿支持されている。そして,前記
各回転体27は,合成樹脂よりなる芯材28と,その芯材28の先端内周に嵌着さ
れた合成樹脂よりなるキャップ材29と,芯材28及びキャップ材29の外周に被

覆成形された合成樹脂よりなる外被材30とより構成されている。…芯材28の内
周には,前記軸受け部材25の係止爪25aに係合可能な段差部28aが形成され
ている。そして,回転体27が軸受け部材25に嵌挿された状態で,係止爪25a
が段差部28aに係合され,回転体27が軸受け部材25に対して抜け止め保持さ
れている。(【0015】)
⑵ 本件発明の特徴
前記⑴の本件明細書の各記載から,本件発明の特徴は,以下のとおりのものと認
められる。
ア 発明の属する技術分野
本件発明は,回転体を身体上で転動させることにより,使用者に対して美肌効果
等の美容的作用を付与するようにした美容器に関するものである(【0001】)。
イ 発明が解決しようとする課題
従来構成の美容器においては,ハンドルの先端に二叉部が設けられ,二叉部の先
端には回転体が支持されており,各回転体を身体の皮膚に押し付けて回転させるこ
とにより,身体に対して美肌効果等の美容的作用が付与されるとしている。しかし,
この構成を開示する特許文献には,回転体を支持するための軸等の支持構造は開示
されていない。本件発明の目的は,回転体を支持軸に対して回転可能に支持するこ
とができる美容器を提供することにある(【0002】,【0004】)。
ウ 課題を解決するための手段
前記目的を達成するために,本件発明1は,基端においてハンドルに抜け止め固
定された支持軸と,前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え,
その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において,
前記回転体は基端側にのみ穴を有し,回転体は,その内部に前記支持軸の先端が位
置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており,軸受け部材
は,前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされ,前記軸受け部
材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに,軸受け部材は係止爪の前記基

端側に鍔部を有しており,同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における
回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有し,前記回転体は内周に前記係止爪
に係合可能な段差部を有し,前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止されると
ともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置することを特徴とする美容器としたもの
である。
また,本件発明2は,本件発明1の特定事項に加え,前記軸受け部材は合成樹脂
製であることを特徴とする美容器としたものである(特許請求の範囲請求項1及び
2,【0005】~【0007】)。
エ 発明の効果
本件発明によれば,回転体を支持軸に対して回転可能に支持することができると
いう効果を発揮する(【0008】)。
2 取消事由1(本件発明1の進歩性の判断の誤り)について
⑴ 引用発明1
ア 引用例1には,以下の記載がある(なお,図面は別紙図面目録記載の2参
照)。
(ア) 発明の名称

(イ) 要約
マッサージ器はハンドグリップ⑴を有し,該ハンドグリップ⑴は,その上にマッ
サージローラ⑷を回動可能に軸支する軸⑵を支持する。当該マッサージローラ⑷は
柔軟に変形可能な中空ローラとして形成され,軸⑵上の一方の側に片持ちで支持さ
れる。当該マッサージローラ⑷はさらに,グリップ⑴の反対側で軸⑵から突出する。

(ウ) 技術分野
本発明は,ハンドグリップを有するマッサージ器に関し,該ハンドグリップが,
その外装面上に個々のマッサージ突起を備えるマッサージローラを,その上に回動

可能に軸支する軸を支持するマッサージ器に関する。(第1欄1行目~5行目)
(エ) 背景技術及び発明が解決しようとする課題
上記のようなマッサージ器は例えば欧州特許第0282173号明細書に記載さ
れている。このマッサージ器の場合,マッサージローラはその両端がグリップのフ
ォークのアーム内に支持される。これによって非常に安定した軸受けが生じ,それ
はマッサージ器を大きな身体面のマッサージに使用するとき,及びそのとき著しい
力を行使したいとき有利である。しかしこの公知のマッサージ器を顔のマッサージ
に使用すると,その前に片方のアームと突起した身体部分がぶつかるために,マッ
サージローラを支持するアームにより,マッサージローラを突起した身体部分の近
くまで導くことができない点が不利であることに気づくであろう。
欧州特許出願公開0346942号明細書もすでに,単一のローラ体を支持する
軸がグリップに対して一直線上に配置されたマッサージ器を記載している。そのよ
うな機器は例えば鼻または目の領域の比較的近くまで転動することができる。しか
しそのときローラ体を超えるまで延びる軸の自由前端面で突起した身体部分に達す
ると,肌を損傷しうる危険が生じる。
本発明の課題は,冒頭で述べた種類のマッサージ器を,マッサージローラで,怪
我の危険性を生じさせずに,突起した身体部分に可能な限り近くに達することがで
きるように形成することにある。(第1欄6行目~36行目)
(オ) 課題を解決するための手段
この課題は本発明によって,マッサージローラが柔軟に変形する中空ローラとし
て形成され,軸上の一方の側に片持ちで支持され,及びマッサージローラがグリッ
プの反対側で軸から突出することによって解決される。(第1欄37行目~42行
目)
(カ) 発明の効果
a そのようなマッサージ器の場合,部材がグリップの反対側のマッサージロー
ラの前端面を超えて突出することはない。そのためマッサージローラをその自由前

端面とともに直接突起する身体部分まで導くことができる。マッサージローラが中
空ローラから形成されており,弾性材料から成るため,その軸を超えて突出する自
由端部は柔軟に変形されることができ,それによってマッサージローラは身体輪郭
に適応することができ,それはマッサージの効果を改善し,急な方向転換を伴う,
例えば鼻領域または眼窩の始まる領域などの主要部分に達する可能性を促進する。
本発明のマッサージ器により,怪我の危険性なく,例えば目のすぐ近くまで肌にロ
ールマッサージを施すことが可能になる。(第1欄43行目~第2欄3行目)
b 本発明の有利な発展形態により軸上に鞘が回動可能に軸支され,この鞘の上
に鞘に対して回動不能にマッサージローラが保持されるとき,構造的に特に簡単に
マッサージ器が形成される。これによって鞘用に,回動時に発生する軸上の滑動摩
擦に最適な材料を選ぶことができ,マッサージローラ用にはマッサージ効果に最適
な材料を使用する。(第2欄4行目~14行目)
c 本発明の別の発展形態により,マッサージローラの内径が鞘と軸から突出す
る領域で他の領域より大きいとき,マッサージローラの自由端は特に容易く柔軟に
変形可能である。なぜならそれによってこの軸から突出する領域が横断面でその他
の領域に対して縮小されるため,より少ない抵抗モーメントを有するためである。
(第2欄15行目~23行目)
d 鞘がその外装面に周囲を巡る隆起を,それに対応して,マッサージローラが
その内装面に周囲を巡る凹部を備えるとき,マッサージローラの鞘上での軸方向保
持は非常に簡単にスナップ結合によって行われる。この実施形態は摩滅した際,ま
たは清掃のために,マッサージローラを容易に交換することを可能とする。(第2
欄29行目~37行目)
(キ) 発明を実施するための形態
a 図1で全体として示されるマッサージ器はグリップ1に共軸に軸2を有し,
それに回動可能に鞘3が軸支される。この鞘3上に中空筒によって形成されたマッ
サージローラ4が着座する。本発明にとって重要なのは,マッサージローラ4が軸

2の自由端を超えて突出すること,及び弾性材料から成ることである。軸2がその
自由端に,鞘3をグリップ1の端部とそれ自体の間で軸方向に固定するヘッド5を
有することが,付加的に図1で見ることができる。(第2欄51行目~第3欄3行
目)
b 図2の右領域では,マッサージローラ4の内径が一領域の一端部で他の領域
に対して直径拡大部7で大きくなっていることが見てとれる。…直径拡大部7に向
き合う端部の近くの,マッサージローラ4の内装面に周囲を巡る凹部8がある。
(第3欄8行目~17行目)
c 図4には,マッサージローラ4を押し開けると凹部8に達する周囲を巡る隆
起10が示される。(第3欄27行目~30行目)
イ 引用発明1の認定
(ア) 前記アの各記載によれば,引用例1には,本件審決の認定のとおりの引用
発明1が記載されていると認められる(前記第2の3⑵ア)。
(イ) 被告は,引用発明1の認定にあたり,本件発明1の「軸受け部材から突き
出る弾性変形可能な係止爪」の「弾性変形可能」に対応する認定がされていないこ
となどから,本件審決の認定には誤りがあると主張する。
しかし,引用例1記載の「マッサージローラ4」は,本件発明1の「回転体」に
相当し,また,引用例1記載の「隆起10」は,本件発明1の「弾性変形可能な係
止爪」と,「突出係止部」である点で共通するといえる。このうち,「マッサージ
ローラ4」は,引用例1において弾性変形可能なものとされているのに対し,「回
転体」については,弾性変形可能か否かは発明特定事項とされていない。
そうすると,引用発明1の認定にあたり,「マッサージローラ4」につき「弾性
変形可能」か否かの点を含めなかったとしても,これをもって直ちに誤りというこ
とはできない。被告の主張も,本件審決の違法をいうものではなく,その判断の前
提を明らかにすべきであるとの趣旨にとどまる。
したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。

⑵ 本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点
本件発明1と引用発明1とを対比すると,引用発明1の「マッサージ器」は本件
発明1の「美容器」に,「グリップ1」は「ハンドル」に,「軸2」は「支持軸」
に,「マッサージローラ4」は「回転体」に,「回動可能」は「回転可能」に,
「軸支」は「支持」に,「マッサージ効果」は「美容的作用」に,「鞘3」は「軸
受け部材」に,それぞれ相当する。また,引用発明1の「隆起10」は,本件発明
1の「係止爪」と,「突出係止部」である点で共通する。
そうすると,本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は,本件審決の認定
のとおりと認められる(前記第2の3⑵イ,ウ)。
⑶ 甲2~13の1の各記載について
甲2~13には,それぞれ以下の記載がある(なお,図面は別紙図面目録記載の
各項参照)。
ア 甲2(国際特許公開第2011/004627号。平成23年1月13日公
開)
(ア) この発明は,回転可能なローラを人体上を転動させることにより,美肌効
果等の美容効果を得る美容器に関する。
(イ) 図1及び図4に示されるように,前記ハンドル12の芯材13において二
叉部12aに対応する部分には,一対のローラ支持軸17が設けられている。これ
らのローラ支持軸17の基端部(図4の右側の端部)は芯材13の中心部に形成さ
れた空間に嵌入され,同ローラ支持軸17の先端部(図4の左側の端部)は,二叉
部12aから突出している。…ローラ支持軸17は金属材料により形成され,その
両端部にはネジ部17aが形成されている。([0019])
図1及び図4に示すように,前記両ローラ支持軸17には,円筒状をなすローラ
18がそれぞれ各一対の軸受19を介して回転可能に支持されている。…ローラ支
持軸17の先端のネジ部17aには,ローラ18がローラ支持軸17から抜けるこ
とを防止するための雌ネジ部材20が螺合されている。([0020])

イ 甲3(米国特許出願公開第2010/0191161号)
(ア) 本発明は,包括的には,体操,特にエクササイズ器具に関する。(【00
01】)
(イ) 課題を解決するための手段
a 本発明によるエクササイズ器具は,任意の好適なタイプのエクササイズ器具
として構成することができる。例えば,器具は,例えばマッサージ器具等の筋骨格
処置器具として構成することができ…る。(【0018】)
エクササイズ器具が構成される器具の特定のタイプに関係なく,器具は,それら
の特定の必要性及び要件に合うようにユーザによって構成することができる。例え
ば,エクササイズ器具がマッサージ器具として構成される場合,マッサージ器具は,
様々な人々に合うように,又は,人の身体の特定の部分をマッサージするために使
用することができるように,複数の様々な方法で構成することができる。(【00
20】)
b 図17を参照すると,本発明の第2の好ましい実施形態によるエクササイズ
器具のロッドモジュール100が実質的に円筒形の形状である。(【0116】)
複数の等間隔に離間した平行な円形開口106が,ロッドモジュール100を通
って横方向に延びる。開口106は,モジュール100を通って延びる開口105
に対して垂直である。また,開口106は開口105に交差する。(【0119】)
c 本発明の第2の好ましい実施形態による多機能エクササイズ器具の中間の球
状のボールモジュール140が,図21及び図22に示されている。(【013
3】)
モジュール140は,モジュール140の中心を通るようにモジュール140を
貫通する円形開口141を含む。加えて,モジュール140は,開口141に対し
て垂直であり,開口141に交差するまでモジュール140内のみに延びる円形開
口142を含む。(【0135】)
開口141及び142は,それらの長さとは別に,互いに同一である。各開口1

41,142は,より幅広の部分144の下に凹んだより幅狭の部分143を含む。
より幅狭の部分143は,より幅広の部分144からより幅狭の部分143内に延
びる4つの平行な周方向に離間した溝145を含む。(【0136】)
d 図29は,モジュール100,120,130,140のうちの2つを任意
の組み合わせで一緒に固定するために使用することができるプラグ200を示して
いる。プラグ200は,プラスチックから製造され,2つの円筒部分202間に位
置付けられる円形のフランジ201を含む。それぞれのより幅狭の円筒部分203
が,円筒部分202のそれぞれから延びる。より幅狭の部分203のそれぞれは,
1対の直径方向に対向する弾性的なラッチアーム204を含む。各ラッチアーム2
04は,アーム204の端に位置付けられ,プラグ200から外方に延びる突起2
05を含む。円形開口206が,プラグ200の一端からプラグ200の他端まで
延びる。(【0151】)
2つのモジュール100,120,130,140を,プラグ200の各端を各
モジュールのそれぞれの開口に挿入することによって,プラグ200と一緒に着脱
可能に固定することができる。プラグ200が開口に挿入されると,プラグ200
のより幅狭の部分203は,開口のより幅狭の部分によって受け入れられ,プラグ
200のより幅広の部分202は,開口のより幅広の部分によって受け入れられる。
(【0152】)
プラグ200が開口に挿入されると,開口のより幅狭の部分が各ラッチアーム2
04の突起205に対して押圧されることで,弾性的なラッチアーム204が互い
に向かって移動する。プラグ200が開口に完全に挿入されると,突起205は,
ラッチアーム204がそれらの元の位置に跳ねてラッチ凹部と噛み合うように開口
のラッチ凹部によって受け入れられる。ラッチアーム204及びラッチ凹部はした
がって,プラグ200がモジュールの開口から意図せず引き出されることを阻止す
ることが可能である。(【0153】)
ラッチアーム204及びラッチ凹部は,プラグ200が開口から意図せず引き出

されることを阻止することが可能であるが,プラグ200は,それにもかかわらず,
ラッチアーム204及びラッチ凹部が互いに噛み合う場合であっても開口に対して
依然として回転することが可能である。(【0155】)
図31は,プラグ200と同様のプラグ220を示している。(【0160】)
プラグ220は,そのより幅狭の円筒部分203がプラグ200のより幅狭の円
筒部分よりも長いという点でプラグ200とは異なる。また,プラグ220の円筒
部分203は複数の溝204をそれぞれ含む。(【0161】)
e 図33を参照すると,本発明の第2の好ましい実施形態による多機能エクサ
サイズ器具のロックピン240が,細長い円筒シャフト241を含む。シャフト2
41は,第1の部分242,第2の部分243及び第3の部分244を含む。実質
的に平坦なプラスチックヘッド245が,シャフト241の第3の部分244とオ
ーバーモールドされる。(【0165】)
ロックピン240のシャフト241の第1の部分242の直径は,モジュール1
00,120,130,140及びプラグ154,200,210,220及び2
30を通って延びる開口の直径よりも僅かに小さいため,シャフト241は,それ
らの開口を通して挿入されることが可能である。(【0166】)
ロックピン240のシャフト241が,モジュール100,120,130,1
40のうちの1つの開口にそれ自体が挿入されたプラグ154,200,210,
220又は230に挿入されると,シャフト241は,プラグのラッチアームがモ
ジュールの開口のラッチ凹部と離脱することを防止することが可能である。ロック
ピン240は,ラッチアームがラッチ凹部と離脱することを防止することによって,
プラグが開口から意図せず取り外されることを防止するか又は少なくとも更に阻止
することが可能である。ロックピンはしたがって,プラグがモジュールの開口から
意図せず引き出されることにつながり得るラッチ凹部からのラッチアームの意図し
ない離脱のリスクを高める可能性がある比較的高い捩り荷重に器具が晒される使用
に特に好適である。(【0168】)

図34は,ロックピン240のシャフト241が,開口141の一端を通して中
間のボールモジュール140に,及び,モジュール140に対して固定されるよう
にそれ自体が開口141の他端に挿入されているプラグ200の開口206に挿入
されているときのロックピン240を示している。(【0169】)
開口141によって受け入れられるプラグ200のラッチアーム204の突起2
05は,開口141内に位置付けられるラッチ凹部250によってそれぞれ受け入
れられるため,プラグ200はそれによって,開口141から引き出されることが
阻止される。ロックピン240のシャフト241は,ラッチアーム204が互いに
向かって押されて突起205をラッチ凹部250から取り外すことを防止する。ラ
ッチアーム204は,ロックピン240がプラグ200から取り外されると,上述
したように専ら移動することができる。【0170】
ウ 甲4(登録実用新案第3159255号公報。平成22年5月13日発行)
(ア) 本考案は,磁気を発生するローラによって皮膚,特に顔の皮膚を刺激する
ことによって美容効果を上げることのできるマグネット美容ローラに関する。
(【0001】)
(イ) 前記ローラ部は,磁石,特にフェライトインジェクション磁石からなる円
筒状のもので,その先端部は,球面突出状に形成されることを特徴とする。さらに,
前記ローラ部の側面には,軸方向に所定の間隔で,樹脂リングが配設されるもので
ある。尚,樹脂リングとしては,フッ素樹脂リング,テフロン(登録商標)(PT
FE)リング等があるが,シリコンリングが望ましい。また,天然ゴム等の天然由
来の樹脂からなるリングであっても良いものである。 【0012】
( )
これによって,ローラ部の先端が球面突出状に形成されることから,ローラ部端
部で顔面等の皮膚を刺激することも可能となるものである。また,ローラ部がフェ
ライトインジェクション磁石によって形成されているので,磁気による血行促進効
果を得ることができるものである。さらにまた,ローラ部側面に樹脂リングを配設
したことによって,ローラ部と皮膚との摩擦抵抗を向上させることができるため,

ローラ部を確実に回転させることが可能となるものである。また,ローラ部の側面
と樹脂リングによって,皮膚との接触面に凹凸が形成されることから,皮膚への刺
激を向上させることもできるものである。 【0013】
( )
(ウ) 本考案に係るマグネット美容ローラ1は,図1に示すように,柄本体部2
と,ローラ部5とによって構成される。 【0019】
( )
前記柄本体部2は,…使用者によって保持される把持部3と,…ローラ保持部4
とによって構成され,さらにローラ保持部4は,前記把持部3から分かれて延出す
る大径部4aと,その先端に一体に形成された小径部4bとによって構成される。
この小径部4bには,下記するベアリング8が固着される。 【0020】
( )
前記ローラ部5は,図4に示すように,フェライトインジェクション磁石から円
筒状に形成され,一端に球面状に突出する先端部51を一体に具備するローラ本体
部50と,このローラ本体部50の側面52に装着された複数の樹脂リング6とに
よって構成される。この樹脂リング6は,シリコンリングであり,前記側面52の
軸方向に所定の間隔で形成された環状溝55に装着されるものである。 【002

2】)
また,前記ローラ部5のローラ本体部50には,軸方向に形成された小径孔53
と大径孔54とが連設され,小径孔53には前記ローラ保持部4の小径部4bが挿
通され,大径孔54には前記小径部4bに固着されたベアリング8が挿入され,前
記大径孔54の内周面に固定される。これによって,前記ローラ部5は,前記ロー
ラ保持部4に対して回転自在に保持されるものである。 【0023】
( )
エ 甲5(特開2010-131090号公報)
(ア) 本発明は,ゲルマニウムの半導体を,肌アレルギーを起こし難いチタニウ
ム製ローラーに突設し,このローラーを顔面に接触させ回転させて美顔にする美顔
用マッサージ器に関するものである。(【0001】)
(イ) 本発明は,ローラー部と,把手部と,ローラー部と把手部とを連結する連
結軸部とよりなる美顔用マッサージ器であって,ローラー部はチタニウム製円筒形

ローラーでローラーの先端を閉塞し,ローラーの円周を4等分した外周面の軸線方
向に円弧溝を刻設してローラーの外周面に4個の凸面を形成し,凸面に小穴を凹設
し,前記小穴に表面を研磨したゲルマニウム粒子を突設し,ローラーの先端面にも
表面を研磨したゲルマニウム粒子を突設し,ローラー外周面のゲルマニウム粒子と
相隣る凸面のゲルマニウム粒子とを軸線方向で同位置にならないようにずらして配
置した美顔用マッサージ器である。(【0010】)
本発明の美顔用マッサージ器は,ローラー部1と,把手部2と,ローラー部1と
把手部2とを連結する連結軸部3とよりなる。(【0011】)
把手5の中空部10には把手5の先端中央から突出させた連結軸部3の連結軸1
1を突出させ,連結軸11の先端部にベアリング12を圧入し,連結軸11の基端
にはL型ベアリング13を回転自在に嵌着し,円周溝14に座金15を嵌めてL型
ベアリング13を連結軸11に固着し,この連結軸部3をローラー4の中空部10
に,ベアリング12を回転自在で,L型ベアリング13を圧入して挿入する。ロー
ラー部1と連結軸部3の構成は至極単純であるが,連結するという目的が達成でき
る。(【0016】)
オ 甲6(「綜説 組立/分解性を考慮したスナップフィット設計およびバーチ
ャルリアリティ環境における製品評価」日本接着学会誌 Vol.43 No.4,P149-157。平
成19年4月1日発行)
「2.7 スナップフィットの分類」(151頁右欄25行目)の項に,以下の
記載がある。
(ア) 「⑵ ロック ロックは柔軟性を必要とするために強度が低くなりやすい。
そのためロックは取付け方向と反対の方向に拘束する場合に使用され,他の方向は
ロケータにより拘束する場合が多い。ロックは図8に示す5種類に分類できる。」
(152頁右欄6行目~10行目)
(イ) 「(a)カンチレバーロック カンチレバーロックは最も一般的なスナップフ
ィットであり,図9に示すように,組立/分解を可能にするための撓み部と拘束す

るための保持部から構成される。」(152頁右欄11行目~14行目)
(ウ) 「(e)アニュラロック アニュラロックは組立と保持の際に円筒状のうねと
それに対となった部分の撓みによるものである。」(153頁右欄9行目~11行
目)
カ 甲7(特開2002-340001号公報)
この一実施の形態の樹脂製のフランジ付き滑り軸受11は,ファクシミリ装置の
紙送り機構の支持板12に貫通形成された円形の軸受挿通孔12aに嵌合する円筒
状の筒部11aと,該筒部11aの基端部外周から半径方向外方に向かって張り出
して設けられて前記支持板12への当接によって前記筒部11aの軸方向の位置決
めを果たすフランジ11bと,筒部11aの外周に突出する弾性係止片11cとを,
合成樹脂により一体成形したもので,筒部11aに挿通された軸を回転自在に支承
する。(【0017】)
キ 甲8(実願昭57-98165号(実開昭59-4819号)のマイクロフ
ィルム)
本考案の目的は回転軸をスラスト,法線方向に移動しないよう確実に保持し,且
つ軸受自身もスラスト,法線,円周方向にガタつかないこと,内径面の潤滑性が良
く片当りがないこと及び軸曲率に近い中心スペースを有すること等の軸受の性能を
損なうことのない軸受を得るにある。(3頁16行目~4頁1行目)
本考案に於いては第6図(a),⒝に示すように回転軸用筒状軸受本体1の軸方向
の一端部に均一肉厚のフランジ3を一体に形成し,フランジ3を除く筒状軸受本体
1部分に円筒形スペース2の軸に平行に延びる水平の切り込み溝4を2ヶ所以上,
円周方向に均等に配分して形成し,上記筒状軸受本体1の外周には上記フランジ3
と反対側に前記溝4の位置に対応して軸方向に延びる断面山形の爪5を設ける。
(4頁11行目~19行目)
ク 甲9(実公平8-9455号公報)
(ア) 1は合成樹脂製の軸受であり,該軸受1は円筒部10と該円筒部10の一

方の端部外周面に径方向外方に延設された鍔部11と該円筒部10の外周面に該外
周面から鍔部11側に斜方向に延設された 1 つの舌片部12と該舌片部12の端部
に該鍔部11側に向けて延設された係合片部13と該係合片部13に該鍔部11裏
面との隙間t1,t2,t3を漸次縮小するように形成された複数個の段部14
(本実施例においては3個)とを備えている。(2頁4欄36行目~43行目)
(イ) 上述した固定構造において,該軸受1は係止片部13が取付部材2の円孔
20に連なって形成された切欠き溝22に係合することによりその円周方向の回転
が阻止されて回り止め手段を形成し,また鍔部11裏面と係止片部13の段部14
との隙間に該取付部材2を挟持することによりその軸方向の移動が阻止されて該軸
受の抜け止め手段を形成する。(3頁5欄26行目~32行目)
ケ 甲10(実願昭59-200825号(実開昭61-112120号)のマ
イクロフィルム)
フレーム1にモールドベアリング4が矢印Bの方向に挿入される。モールドベア
リング4の嵌合部分には5で示す爪が設けられており,モールドベアリング4が挿
入される時,フレーム1の穴の縁で押されてモールドベアリング4の本体内に引っ
込められるが,モールドベアリング4がフレーム1に押し付けられた時点で,爪5
のバネ性により飛び出す。
従ってモールドベアリング4を組立てる場合,モールドベアリング4をフレーム
1に十分に押し込むのみで良い。(4頁8行目~18行目)
コ 甲11(特開昭61-244923号公報)
第1図,第2図は本発明の一実施例の斜視図と,これをフレームに固定した時
の断面図,第3図はその要部の断面図,第4図はこれに用いるロッカーの斜視図を
示す。図において1は軸受本体,2は軸の貫通孔,3はフレームに固定するため軸
受本体1の外周に設けられたフック部,4は該フック部3と軸の貫通孔2との間に
設けられたロッカー5を挿入するための間隙である。
このような軸受をフレーム6に固定するには,フレーム6の取付穴に本軸受フッ

ク部3の方向から挿入すれば,フック部3の傾斜部7と間隙4のためフック部3は
たわみ簡単にフレーム6の穴に挿入でき,その後間隙4に第4図に示すロッカー5
を挿入すれば軸受は固定される。(1頁右下欄13行目~2頁左上欄6行目)
サ 甲12(登録実用新案第3166202号公報。平成23年2月24日発行)
(ア) 本考案は,マッサージローラーの構造に関し,特にY字形のマッサージロ
ーラーの構造に関する。(【0001】)
(イ) 最良実施例として,各ローラーは接続部品,内柱,二つのベアリング,軸
受及び,外カバーを具有し,各ローラー3の接続部品31は球状ヘッド22を通じ
て互いに嵌合して固定する。また,接続部品31はハンドル2の軸を中心とするあ
る角度に開いて,該二つのベアリング33をそれぞれ軸受34の両端に設置し,且
つ二つのベアリング33と軸受34を同時に接続部品31の外側に套設する。該内
柱32をしっかりと二つのベアリング33及び軸受34の外側に套設し,外カバー
35の中に,しっかりと内柱32を嵌合することで,二つのベアリング33,外カ
バー35及び内柱32が回転可能の構造となる。該ローラーの外カバーの表面に若
干の磁石を嵌め込む。【0007】
シ 甲13の1(中国実用新案明細書第201814806号。平成23年5月
4日公告)
(ア) 折り畳み式Y字形構造のマッサージ棒において,ハンドル⑴と,マッサー
ジヘッド⑵と,回転リンク⑶とからなり,ハンドル⑴は折り畳み式回転リンク⑶を
介してマッサージヘッド⑵と連結され,ハンドル⑴下端に回転連結式調節ハンドル
⑷を内蔵し,ハンドル⑴上端に凹状係止溝が開設されており,回転リンク⑶の一端
はねじA⑸とキャップA⑹およびキャップB⑺によりハンドル⑴上端の凹状係止溝
内に係合され,他端はねじB⑻とキャップC⑼とを介してマッサージヘッドの屈曲
リンク⑽と連結され,マッサージヘッド⑵は,屈曲リンク⑽および2組の軸受⑾,
軸スリーブ⑿,マッサージローラ⒀,および固定ねじ⒁を備え,軸受⑾と軸スリー
ブ⑿は屈曲リンク⑽の両端に固定設置され,その外部にマッサージローラ⒀を嵌接

し,マッサージヘッド⑵と,固定されたマッサージヘッドリンク⑶とがY字形状を
なすことを特徴とする折り畳み式Y字形構造のマッサージ棒。(【請求項1】)
(イ) 本考案はハンドル,マッサージヘッド,および回転リンクからなる。ハン
ドルは折り畳み式回転リンクを介してマッサージヘッドと連結され,ハンドル下端
に回転連結式調節ハンドルを内蔵し,ハンドル上端に凹状係止溝が開設されており,
回転リンクの一端はねじAとキャップAおよびキャップBによりハンドル上端の凹
状係止溝内に係合し,他端はねじBとキャップCとを介してマッサージヘッドの屈
曲リンクと連結され,マッサージヘッドは,屈曲リンクおよび2組の軸受,軸スリ
ーブ,マッサージローラ,および固定ねじを備え,軸受と軸スリーブが屈曲リンク
の両端に固定設置され,その外部にマッサージローラを嵌接し,マッサージヘッド
と,固定されたマッサージヘッドリンクとがY字形状をなす。(【0004】)
⑷ 相違点2の容易想到性について
ア 引用発明1は,従来のマッサージ器では,顔のマッサージに使用すると,マ
ッサージローラを支持するアームにより,マッサージローラを突起した身体部分の
近くまで導くことができない点で不利があることや,ローラ体を超えるまで延びる
軸の自由前端面で突起した身体部分に達すると肌を損傷し得る危険が生じることか
ら,マッサージローラで怪我の危険を生じさせずに,突起した身体部分に可能な限
り近くに達することができるように形成することを課題とし,マッサージローラが
柔軟に変形する中空ローラとして形成されること,軸上の一方の側に片持ちで支持
されること,及びマッサージローラがグリップの反対側で軸から突出することをそ
の課題解決手段とする(前記⑴ア(エ),(オ))。すなわち,マッサージローラが柔
軟に変形する弾性材料であることは,引用発明1にとって重要な事項であり(前記
⑴ア(キ)a),むしろ不可欠というべき構成である。
また,本件発明1の「軸受け部材」に対応する引用発明1の「鞘3」がその外装
面に周囲を巡る隆起10を備えるとともに,これに対応して,マッサージローラ4
が,その内装面に周囲を巡る凹部8を備えることで,マッサージローラ4は,スナ

ップ結合によって,鞘3上で軸方向に保持される(前記⑴ア(カ)d)。そして,鞘
3の外装面に設けられる隆起10は,マッサージローラ4を押し開けて凹部8に達
するものである(前記⑴ア(キ)c)。
そうすると,引用発明1において,マッサージローラ4の材質が柔軟に変形する
弾性部材であることは,その課題解決に不可欠の構成であるとともに,スナップ結
合により鞘上で軸方向に保持するためにも不可欠の構成であることが理解できる。
イ 甲3の適用
甲3には,前記⑶イのとおりの記載があるところ,これらの記載によれば,本件
審決が認定した甲3技術が記載されているといえる。ただし,ロックピン240は,
そのシャフト241がプラグ200,220に挿入されて,プラグのラッチアーム
204がラッチ凹部と離脱するのを防止するものであって(前記⑶イ(イ)e),モ
ジュールを支持するものではないから,これをもって本件発明1の「支持軸」に相
当する部材ということはできない。
そうすると,甲3のプラグ200,220は,フランジ201及びラッチアーム
204に突起205を有するものであるものの,それ自体が2つのモジュールを固
定するものであって,軸と回転体との間に介在することで回転体を軸に対して回転
自在に支持する軸受け部材として機能するものではない。
また,甲3には,ロックピン240を挿入することで,プラグ200,220の
ラッチアーム204の突起205がモジュール140の開口のラッチ凹部から離脱
するのを防止すること,モジュール140を取り外す際には,ロックピン240を
取り外してからラッチアーム204の突起205のラッチ凹部との係合を解除し,
モジュール140を取り外す必要があること(前記⑶イ(イ)e),モジュール14
0の先端側には,ロックピン240を挿入するための開口が必要とされること(前
記⑶イ(イ)c,e)が記載されていることから,ロックピン240が挿入されるプ
ラグ200,220は,非貫通状態の回転体を支持するために用いることを想定し
ているとはいえない。

以上のとおり,甲3のプラグ200,220は,それ自体が2つのモジュールを
固定するものであって,軸と回転体との間に介在することで,回転体を軸に対して
回転自在に支持する軸受け部材として機能するものではないから,そもそも引用発
明1の軸とマッサージローラとの間に配置され,軸受け部材として機能する鞘3を
プラグ200,220に置き換える動機付けは存在しない。また,仮に,引用発明
1の軸2に支持される鞘3をプラグ200,220に置き換えた場合,プラグ20
0,220の内部に軸2が挿入された状態となることで,ロックピンを挿入した場
合と同様に,プラグのラッチアームがラッチ凹部と離脱するのを防止するよう,ラ
ッチアームの内方への移動が固定されてしまい,マッサージローラを装着する際に,
ラッチアームが意味をなさないこととなる。このため,引用発明1の鞘を,あえて,
鞘3の隆起10に対して複雑な構成であるラッチアームを有するプラグに置き換え
る動機付けはない。
ウ 甲6の適用
甲6には,前記⑶オのとおりの記載があるところ,これによれば,位置決めと固
定を行うことで部品の取付けを可能にする機械的な締結部品である「スナップフィ
ット」の1分類である「ロック」は更に5種類に分類され,これに当たるものとし
て「カンチレバーロック」と「アニュラロック」が挙げられるとともに,図8には,
それぞれの形態が示されている。このため,甲6からは,撓み部と保持部とからな
るカンチレバーを用いた締結手段であるカンチレバーロックと,円筒状のうねとそ
れと対になった部分の撓みによる締結手段であるアニュラロックとが,スナップフ
ィットにおけるロックの類型として同列に扱われていたことが認識できる。
もっとも,2つの部材をスナップ係合する際,一方の部材が弾性を有するもので
あれば係合させる機能としては十分であり,両方の部材が弾性を有するものとする
ことが周知技術であると認めるに足りる証拠はない。
そして,前記のとおり,引用発明1において,マッサージローラが弾性材料から
なることは,その目的に照らして不可欠な構成であり,しかもその弾性の程度は,

鞘3の外装面に設けられる隆起10が,押し開けて凹部8に達することができる程
度のものである。そうである以上,あえて,鞘3の外装面に設けられる隆起10を,
弾性を有するカンチレバー状のものに変更する動機付けはない。
エ 以上より,引用発明1に甲3を適用することにより,相違点2に係る本件発
明1の構成を得ることは,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。このこと
は,甲6記載の事項を考慮すると否とにより異ならない。
オ 原告の主張について
(ア) 原告は,いずれもスナップ結合によって回転体を回転可能に支持するマッ
サージ器であることを動機付けとして,引用発明1に対し,甲3技術のラッチアー
ム204を用いたスナップ結合の技術を適用することは,当業者が容易になし得る
旨主張する。
しかし,引用発明1の鞘3を甲3のラッチアーム204を有するプラグ200,
220に置き換える動機付けがないことは前記のとおりである。
仮に,原告の主張が,引用発明1の隆起10とマッサージローラ4の凹部8との
係合を,スナップ結合として共通する技術であるカンチレバーに置き換えることが
できるという趣旨のものであったとしても,引用発明1のマッサージローラは,前
記のとおり弾性材料からなるものであることが不可欠な構成であるところ,2つの
部材をスナップ結合する際に,両方の部材がともに弾性を有するものとすることま
でが周知技術とはいえないこともまた前記のとおりである。
そもそも,スナップ結合をする部材の両方が弾性を有するものとしてしまうと,
係合部において双方に変形を生じてしまい,一方のみが弾性を有する場合に比べて
係合力が弱まり外れやすくなるという不都合が生じるおそれがあることは明らかで
あるから,そのような改変をする動機付けはない。
(イ) 原告は,引用発明1のマッサージローラが鞘から抜けるか否かは,両者間
の静止摩擦によって決定されるものであって,鞘の隆起10は補助的に設けられて
いるにすぎず,また,ラッチアーム204の突起205を用いた方が,引用発明1

の隆起10を用いた場合に比べ,マッサージローラ4が抜けにくくなるなどとして,
引用発明1の隆起10を甲3技術のラッチアーム204又は甲6技術の係止爪に置
き換えることに阻害要因はないと主張する。
しかし,鞘が隆起10を有するか否かによってマッサージローラの抜けにくさに
違いが生じることは明らかである。また,引用例1には,鞘の隆起とマッサージロ
ーラの凹部との係合を設けることで,マッサージローラを容易に交換することが可
能となること(前記⑴ア(カ)d)も記載されているところ,例えば,全体の摩擦係
数が増大するように,マッサージローラの内径を鞘の外径よりもやや小さく設定す
ることで,鞘を締め付ける形の嵌め合いとすると,マッサージローラの取り外しや
装着の際に継続的に大きな力を要し,マッサージローラの交換作業が円滑に行えな
いおそれが生じることとなる。これらの事情を考慮すると,鞘の隆起10をもって
補助的に設けられたものにすぎないということはできない。
また,マッサージローラ4は,弾性材料により形成されるものであり,これを鞘
に装着する際には,鞘の隆起により押し開けられる程度に変形するものであるから,
装着された状態のマッサージローラ4を引っ張った際には,段差部が,係合部の形
状に合わせて変形し得るものと考えられる。このような変形によって,当該段差部
がラッチアーム204の突起205を径方向内方に押圧するよう作用し,係合を解
除するおそれがあることは否定できない。しかも,引用発明1の隆起は円周方向の
全周にわたり連続したものとなっているのに対し,ラッチアームは,円周方向に複
数設けられ得るにすぎず,全周にわたって連続するものとはならないから,マッサ
ージローラにかかる引っ張り力がラッチアームの箇所のみに集中することで,全周
にわたる隆起を有する場合に比べて,段差部が当該箇所において変形しやすくなる
とも考えられる。
(ウ) 原告は,甲3技術のロックピンを外さなくても,弾性材料であるマッサー
ジローラが変形することによりスナップ結合を解除できるから,ロックピンを外さ
なければ係合を解除できないとはいえず,また,係止爪を弾性変形させるためにク

リアランスを設けることが技術常識であるならば,甲3技術を引用発明1に適用す
る際にクリアランスを設けることで,ロックピンを外さなくてもラッチアーム20
4の突起205を弾性変形させることにより,スナップ結合を解除することを容易
に想到し得るなどと主張する。
しかし,ロックピンを外さなくてもマッサージローラの弾性変形により係合を解
除し得るとの主張は,ラッチアーム204の突起205を用いた方が,よりマッサ
ージローラ4が抜けにくくなるとの原告の主張(前記第3の1〔原告の主張〕⑴イ
(ア))と矛盾する。また,ロックピンを外さなくても係合を解除できることは,ラ
ッチアームとラッチ凹部との離脱防止というロックピンの技術的意義(前記⑶イ
(イ)e)を損なうものであるから,このような改変をする動機付けはないというべ
きである。ラッチアームとロックピンの間にクリアランスを設け,ロックピンの存
在にかかわらずラッチアームの変形を許容することも,同様にロックピンの技術的
意義を損なわせるものであるから,やはりこのような改変をする動機付けはない。
(エ) したがって,上記の点に関する原告の主張はいずれも採用できない。
(オ) なお,甲2,12及び13の1には,いずれも相違点2に係る事項の記載
はない。また,甲7~11は,いずれもその構成から,板状の物体に形成された挿
通孔に嵌合し,その円筒状に中空となっている内径部に,支持されるべき回転軸を
挿通する軸受け部材に関するものであり,本件発明1とは異なる場面で適用される
ものであることから,引用発明1の隆起10をこれらの係止爪に置き換えることは,
当業者が容易に想到することができるものではない。
⑸ 相違点3の容易想到性について
ア 前記⑷アのとおり,引用発明1は,マッサージローラで怪我の危険を生じさ
せずに,突起した身体部分に可能な限り近くに達することができるように形成する
ことを課題とし,マッサージローラが柔軟に変形する中空ローラとして形成される
こと,軸上の一方の側に片持ちで支持されること,及びマッサージローラがグリッ
プの反対側で軸から突出することをその課題解決手段とする。このため,マッサー

ジローラ4が柔軟性を有する弾性部材からなることと,中空ローラとして形成され
ることとの両方が,マッサージローラ4の先端部における柔軟性を確保し,怪我の
危険を生じさせないようにするために不可欠の構成といえる。
相違点3は,本件発明1の「回転体」,引用発明1の「マッサージローラ」が非
貫通状態であるか否かに関するものであるところ,引用発明1のマッサージローラ
4を非貫通状態,すなわち,先端部において閉じた形態のものとすることは,先端
がマッサージローラと同じ弾性部材又は他の部材により閉塞されることを意味する。
この場合,マッサージローラが中空,すなわち回転体が貫通状態のものに比べて,
その先端部における柔軟性が損なわれることは明らかである。
そうすると,回転体を非貫通状態とした美容器が技術常識として存在したとして
も,先端が柔軟に変形する中空ローラであることに技術的意義を有する引用発明1
のマッサージローラ4に,これを非貫通状態とする技術常識を適用する動機付けが
あるということはできず,むしろ,このような改変には阻害要因があるというべき
である。
イ 以上より,甲4又は5記載の技術につき,仮に原告主張に係る甲4’技術及
び甲5’技術のとおり理解したとしても,これらを引用発明1に適用することによ
り相違点3に係る本件発明1の構成を得ることは,当業者が容易に想到し得たこと
とはいえない。
ウ 原告の主張について
(ア) 原告は,本件特許の原出願当時,弾性材料で形成されたローラを基端側に
のみ穴を有する非貫通状態の構成とすることは技術常識であり,引用発明1のマッ
サージローラ4を非貫通状態とすることは,本件特許の原出願時の技術常識であっ
て,当業者は,引用例1のみで相違点3に係る本件発明1の構成を容易に想到する
ことができたなどと主張する。
しかし,回転体を非貫通状態とした美容器が技術常識として存在したとしても,
引用発明1のマッサージローラ4に,非貫通状態とする技術常識を適用する動機付

けがあるとはいえず,むしろこのような改変には阻害要因があるというべきである
ことは,前記のとおりである。
(イ) 原告は,引用発明1に,甲4’技術及び甲5’技術を適用することによっ
て,相違点3に係る本件発明1の構成を容易に想到することができる旨主張する。
しかし,甲4及び5に記載されたローラは,いずれも非弾性材料で形成されたも
のであって(前記⑶ウ(イ),(ウ),エ(ア),(イ)),ローラを弾性材料で形成するこ
とを開示ないし示唆するものではなく,また,ローラを非貫通状態としても先端部
における柔軟性を確保し得ることを示すものでもない。そうである以上,本件審決
の甲4技術及び甲5技術の認定に誤りはなく,また,前記(ア)と同じく,引用発明
1のマッサージローラ4に,非貫通状態とする技術常識を適用する動機付けがある
とはいえず,むしろ阻害要因があるというべきである。
(ウ) したがって,上記の点に関する原告の主張はいずれも採用できない。
(エ) なお,甲12及び13の1には,ローラー3(甲12)又はマッサージヘ
ッド⑵(甲13の1)が基端側にのみ穴を有し,非貫通状態で支持軸に支持された
構成が記載されているが,いずれもその先端側が閉塞されていることがうかがわれ,
また,これが柔軟に変形可能であることを示す記載はないことから,同様に解され
る。このことは,甲25~29についても同様である。
また,甲2及び3,6~11には,いずれも相違点3に係る事項の記載はない。
⑹ 小括
以上のとおり,引用発明1に,甲2~13の1の各記載事項を適用することによ
り,相違点2及び3に係る本件発明1の構成を当業者が容易に想到し得たというこ
とはできない。これと同旨の本件審決の判断に誤りはないから,取消事由1は理由
がない。
3 取消事由2(本件発明2の進歩性の判断の誤り)について
本件発明2は,本件発明1の発明特定事項の全てを含み,軸受け部材の材質を合
成樹脂製のものと限定するものであるところ,本件発明1に係る特許を無効にする

ことができないとした本件審決の判断に誤りはないから,本件発明2に係る特許に
ついても,本件審決の判断に誤りはない。取消事由2は理由がない。
4 結論
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判
決する。
知的財産高等裁判所第1部


裁判長裁判官 高 部 眞 規 子


裁判官 杉 浦 正 樹


裁判官 片 瀬 亮


(別紙)
図面目録

1 本件明細書の図面

図4


図8


2 引用例1の図面
図1


図2


図4


3 甲3の図面

図17

図21


図29


図33


図34 図35


4 甲4の図面
図1 図2 図4


5 甲5の図面

図1


図6


6 甲6の図面

図8


7 甲12の図面
図2 図4


8 甲13の1の図面
図3

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