平成30(行ケ)10034審決取消請求事件
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裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
平成31年3月20日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告DIC株式会社設樂隆一 原告メルクパテントゲゼルシクテルハフツング
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対象物 |
液晶表示デバイス |
法令 |
特許権
特許法164条の27回 特許法29条1項3号3回 特許法153条1回 特許法134条の21回 特許法36条6項1号1回 特許法29条2項1回
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キーワード |
審決156回 無効35回 進歩性31回 新規性25回 実施7回 無効審判6回 刊行物4回 訂正審判2回 特許権1回 優先権1回
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主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事件の概要 |
1 特許庁における手続の経緯
⑴ 原告は,平成9年6月18日,発明の名称を「液晶表示デバイス」とする発
明について特許出願をし(パリ条約による優先権主張外国庁受理:1996年(平
成8年)7月1日,欧州特許庁(EP)),平成18年7月14日,設定登録を受
けた(特許第3828158号。請求項の数15。以下「本件特許」という。)。
⑵ 被告は,平成26年4月11日,特許庁に対し,本件特許に係る請求項1及
び4~14について無効審判請求をし,無効2014-800056号事件として
係属した。 |
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判決文
平成31年3月20日判決言渡
平成30年(行ケ)第10034号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成31年2月20日
判 決
原 告 メルク パテント ゲゼルシ
ャフト ミット ベシュレン
クテル ハフツング
同訴訟代理人弁理士 葛 和 清 司
塩 崎 進
杉 江 顕 一
井 上 純 一 郎
木 村 伸 也
小 田 切 美 紗
矢 後 知 美
松 浦 綾 子
大 栗 由 美
千 野 櫻 子
木 羽 邦 敏
被 告 D I C 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 塚 原 朋 一
設 樂 隆 一
寺 下 雄 介
柳 本 高 廣
同 弁理士 長 谷 川 芳 樹
清 水 義 憲
吉 住 和 之
中 塚 岳
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を
30日と定める。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が無効2014-800056号事件について平成29年11月6日にし
た審決のうち,特許第3828158号の請求項1,4ないし14,25ないし3
4に係る部分を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯
⑴ 原告は,平成9年6月18日,発明の名称を「液晶表示デバイス」とする発
明について特許出願をし(パリ条約による優先権主張外国庁受理:1996年(平
成8年)7月1日,欧州特許庁(EP)),平成18年7月14日,設定登録を受
けた(特許第3828158号。請求項の数15。以下「本件特許」という。)。
⑵ 被告は,平成26年4月11日,特許庁に対し,本件特許に係る請求項1及
び4~14について無効審判請求をし,無効2014-800056号事件として
係属した。
⑶ 原告は,平成29年3月21日,他の請求項の記載を引用する請求項の記載
を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること(特許法134条の2第1項
4号)等を内容とする訂正請求をした(甲67。以下「本件訂正」という。)。そ
の結果,本件における無効審判請求の対象となる特許は,請求項1,4~14及び
25~34に係るものとなった。
⑷ 特許庁は,同年11月6日,本件訂正を認めた上,「特許第3828158
号の請求項1,4ないし14,25ないし34に記載された発明についての特許を
無効とする。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)
をし,その謄本は,同月16日,原告に送達された(なお,出訴期間として90日
が附加された。)。
⑸ 原告は,本件審決を不服として,平成30年3月15日,本件訴えを提起し
た。
2 特許請求の範囲の記載
本件訂正に係る本件特許の特許請求の範囲請求項1,4~14及び25~34の
記載は,別紙1「特許請求の範囲」記載のとおりである(以下,請求項の順に「本
件訂正発明1」などといい,これらの発明を併せて「本件訂正発明」という。)。
本件訂正後の明細書(甲67添付の訂正明細書)及び図面(甲38)を併せて「本
件訂正明細書」という。
3 本件審決の理由の要旨
⑴ 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,①
本件訂正発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではないから,これらの発明
についての特許は,特許法36条6項1号に規定する要件(以下「サポート要件」
という。)を満たしていない特許出願に対してされたものであり,②本件訂正発明
14は,後記引用例記載の発明(以下「引用発明1A」という。)と実質的に区別
することができないから,特許法29条1項3号に該当し,③(ⅰ)本件訂正発明
4,8,10,12,14,26,31及び33は,引用発明1A並びに甲1,9
及び19に記載の事項と本件優先日時点の常套手段に基づいて,(ⅱ)本件訂正発
明6及び7は,引用例記載の別の発明(以下「引用発明1B」という。)並びに甲
1及び9に記載の事項と本件優先日当時の常套手段に基づいて,それぞれ当業者が
容易に想到し得るものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けるこ
とができないものであり,無効にすべきものである,などというものである。
引用例:欧州特許出願公開第659865号明細書(甲1。1995年(平成7
年)6月28日公開)
⑵ サポート要件適合性に関する判断
本件審決は,サポート要件適合性につき,おおむね以下のとおり判断した。
ア 本件訂正発明の解決しようとする課題
本件訂正発明の解決しようとする課題は,「偏光板の光学的性質を広い視角範囲
にわたり増強させ,組み立てが容易であり,重合性液晶組成物が高融点を示し配向
および重合に高温を要するという欠点を有していないホメオトロピック配向または
傾斜したホメオトロピック配向を有する補償膜の提供,このような補償膜を備えた
液晶表示デバイスの提供,並びにこのような補償膜を調製できる重合性メソゲン物
質の混合物の提供」にあるものと認められる。
イ 詳細な説明に記載された発明
一般に「化学物質の発明の有用性をその化学構造だけから予測することは困難で
あり,試験してみなければ判明しないことは当業者の広く認識しているところであ
る。したがって,化学物質の発明の有用性を知るには,実際に試験を行い,その試
験結果から,当業者にその有用性が認識できることを必要とする。」とされている。
そして,全文訂正明細書の発明の詳細な説明の例1A~例3の具体例として化合
物⑴~⑻が記載され,そのうちの化合物⑴~⑹について,「本明細書に記載の補償
板として使用することができるホメオトロピック配向を有するポリマーフィルム」
が得られたという試験結果が示されているところ,化合物⑴~⑻は,いずれも「P
-(Sp-X) n -MG-R」で示される「式 I」において,Pが重合性基として
のアクリレート基(CH 2 =CHCOO-)であり,Spが炭素数3又は6個の直
鎖状アルキレン基〔-(CH 2 ) 3 -又は-(CH 2 ) 6 -〕であり,Xが-O-で
あり,nが1であり,MGがメソゲン基である場合の反応性メソゲン化合物に該当
する。すなわち,当該「式I」で表される化合物において,P,Sp,Xがそれぞ
れ上記以外のものについては,当該化合物の有用性を当業者が認識できる程度の記
載が,本件訂正明細書の発明の詳細な説明に見当たらない。
また,本件訂正明細書の発明の詳細な説明には,良好な配向を備えたポリマーフ
ィルムを得るためには,重合性メソゲン物質の混合物の液晶相でホメオトロピック
配向又は傾斜したホメオトロピック配向状態で重合を行うべきであり,好ましくは
100℃又はそれ以下の低融点を有する重合性混合物を使用する必要があり,これ
により低温で混合物の液晶相において硬化を行うことができる旨の記載がなされて
いるところ,当該「式I」で表される化合物の全てが,良好な配向を備えたポリマ
ーフィルムを得るために必要な物性(好ましくは100℃以下の低融点を有する重
合性メソゲン物質の混合物を形成し得る物性)を有し,これらが「ホメオトロピッ
クまたは傾斜したホメオトロピック分子配向を有する補償膜」を好適に作製できる
範囲にあることを裏付ける記載は,本件訂正明細書の発明の詳細な説明に見当たら
ない。
ウ 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比
本件訂正発明のいずれについても,化合物⑴~⑹以外のメソゲンの全てが,実際
に合成して使用することができ,これらが「ホメオトロピックまたは傾斜したホメ
オトロピック分子配向を有する補償膜」を好適に作製できる範囲にあることを当業
者が認識できる程度に裏付ける記載は,本件訂正明細書の発明の詳細な説明に見当
たらない。
そして,本件訂正明細書の記載によれば,本件訂正発明の式 I(又は I’)の反
応性メソゲン化合物のうち,100℃以下の低融点を有さないものが「ホメオトロ
ピックまたは傾斜したホメオトロピック分子配向を有する補償膜」の提供をできる
範囲にあると解することはできない。
また,メソゲンの分子量や立体構造や極性基の有無等によっても,その反応性メ
ソゲン物質としての物性が大きく異なることも当業者の技術常識であるところ,上
記各本件訂正発明の式I(又は I’)の反応性メソゲン化合物の全てが「ホメオト
ロピックまたは傾斜したホメオトロピック分子配向を有する補償膜」,そのような
「補償膜を備えた液晶表示デバイス」ないしそのような「補償膜を調整できる重合
性メソゲン物質の混合物」の提供をできる範囲にあるといえる本件特許の出願時の
技術常識の存在も見当たらない。
したがって,本件訂正発明に係る本件訂正後の各請求項の記載は,いずれも,発
明の詳細な説明の記載により当業者がその課題を解決できると認識できる範囲のも
のであるとは認められず,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術
常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認め
られない。
⑶ 引用発明及びこれと本件訂正発明との対比
本件審決は,引用発明1A及び1Bにつき,別紙2「引用発明」記載のとおり認
定した。
また,本件審決は,各引用発明と本件訂正発明4,6~8,10,12,14,
26,31及び33との一致点・相違点につき,別紙3「一致点・相違点」記載の
とおり認定した。
⑷ 本件審決に至る審判の経緯
ア 審判長は,平成27年11月4日,平成26年8月20日付け訂正請求(甲
43)を認めた上,「特許第3828158号の請求項1,4ないし7,9,11,
13,14に係る発明についての特許を無効とする。特許第3828158号の請
求項8,10,12に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決
の予告をした(甲57。以下「第1予告」という。)。
イ 審判長は,さらに,平成28年12月13日,同年2月8日付け訂正請求
(甲59)を認めた上,「特許第3828158号の請求項1,4ないし14,2
5ないし32に記載された発明についての特許を無効とする。」との審決の予告を
した(甲66。以下「第2予告」という。)。
4 取消事由
⑴ 手続違背(取消事由1)
⑵ サポート要件の判断の誤り(取消事由2)
⑶ 新規性及び進歩性の判断の誤り(取消事由3)
ア 本件訂正発明14に係る新規性判断の誤り(取消事由3-1)
イ 本件訂正発明4,8,10,12,14,26,31及び33に係る進歩性
判断の誤り(取消事由3-2)
ウ 本件訂正発明6及び7に係る進歩性判断の誤り(取消事由3-3)
第3 当事者の主張
1 取消事由1(手続違背)について
〔原告の主張〕
⑴ 本件審決が,第2予告で認定された課題と異なる認定をしたこと
ア 本件審決は,本件訂正発明の課題を前記第2の3⑵アのとおり認定した。
しかし,本件訂正発明の課題につき,第2予告では,「補償膜において,広い視
野範囲にわたり,例えば輝度の増大といった光学的性質を改善すること」及び「補
償膜を構成する重合性液晶組成物を製造するにあたり,配向,及び重合に高温を要
しないものとすること」にあるとして,2点を並列に挙げていた。本件審決はこれ
をひとまとめにしており,第2予告の認定とは明らかに異なる。
また,「高温を要しないこと」につき,第2予告では,「本件訂正発明1の「式
I」の定義を満たすメソゲンの全てが「ホメオトロピックまたは傾斜したホメオト
ロピック分子配向を有する補償膜」を好適に作製できる範囲にあるとは認められな
い」としていた。本件審決の認定は,第2予告と異なると共に,本件訂正明細書の
記載とも異なる。
さらに,第1予告では,課題につき第2予告と同様の認定がされていたところ,
当時の訂正発明のいずれもサポート要件を満たすものとして通知されている。この
ため,第1予告以降,サポート要件についてさほど議論はなされなかった。しかも,
サポート要件に係る判断が第2予告で覆った具体的な理由も示されていない。
このような経緯を踏まえると,第2予告のサポート要件違反の理由につき,低融
点を必要条件とし,また融点とホメオトロピック配向性との関係性を前提とするも
のに本件審決で変化する理由について,第2予告の文脈からは推測できない。
イ 以上のとおり,本件審決は,サポート要件に関し,第2予告に至るまで低融
点であることが課題解決のための必要条件であることや融点とホメオトロピック配
向性との関係性が前提となっていることを明確に提示しないままなされたものであ
り,原告からその点に関する主張立証や訂正請求の機会を奪った点で,特許法16
4条の2第1項の規定に反する。
⑵ 第2予告で指摘していない式 I の例をサポート要件違反の根拠としたこと
本件審決は,本件訂正明細書の例1A~例3の化合物⑴~⑹以外のメソゲンの例
として,括弧書で例を挙げた上,ホメオトロピック又は傾斜したホメオトロピック
分子配向を有する補償膜を好適に作製できる範囲にあるとは認められず,本件訂正
発明の課題を解決できないなどと判断した。
しかし,本件審決が示す例は,いずれも技術常識からは通常あり得ない置換基の
組合せに基づくものである。
また,第2予告では,前記化合物⑴~⑹以外のメソゲンは本件訂正発明の課題を
解決できない旨の指摘がされてはいるものの,その例は一切記載されていない。
そもそも,本件審決で例示された前記メソゲン化合物については,審尋での質問
に対して原告が回答したところ,第2予告において,そのようなメソゲン化合物の
例について言及されなかったとの経緯がある。こうした経緯からは,このような技
術常識に反するメソゲン化合物についての問題は特段の訂正請求を要することなく
解消したものと解するのが相当であり,仮にその点になお疑義があるとすれば更な
る審決の予告が当然なされるべきである。
しかるに,本件審決は,一旦解消した問題を不意打ち的に蒸し返して判断したも
のであり,原告から問題点の解消に係る主張立証や訂正請求の機会を奪った点で,
特許法164条の2第1項の規定に反する。
⑶ 進歩性要件につき,本件訂正発明に係る好適なホメオトロピック配向の効果
の有無を最後まで認定することなく審決した点に審理不尽があること
本件審決は,いずれの本件訂正発明についても,原告が主張した効果を認めるの
か認めないのか,何をもって当業者が予測し得る範囲なのかなど,効果の具体的な
評価検討を行わなかった。
発明の進歩性の認定には,通常,効果の有無の認定,評価,判断が不可欠なとこ
ろ,本件審決は,これとは異なる手法によって進歩性を判断し,その特殊な審理手
法を採用する理由も述べていない。この点で,本件審決は,審決をするのに熟した
とはいえないにもかかわらずされたものであり,審理不尽により特許法164条の
2第1項の規定に反する。
⑷ 第2予告で認定された引用発明が本件審決では別の発明にすり替わったこと
ア 本件訂正発明14の新規性要件の判断において,第2予告及び本件審決は,
いずれも本件訂正発明14と引用例記載の発明との対比により,本件訂正発明14
には新規性欠如の無効理由がある旨を判断した。
しかし,第2予告における引用発明は引用例の実施例16等の記載に基づいて認
定されたのに対し,本件審決における引用発明は,第2予告の引用発明から更に引
用例の実施例41及び42の記載を考慮して認定された。このため,原告は,本件
審決の判断について,あらかじめ訂正請求の機会や意見申立ての機会を与えられな
かった。
このことと,上記変更の理由が述べられていない審理不尽が相俟って,本件審決
は,特許法164条の2第1項の規定に反する。
⑸ 第2予告での新規性欠如との理由が本件審決では新規性欠如かつ進歩性欠如
という理由に変化したこと
本来,ある特許発明について新規性違反の無効理由があると認められる場合,当
該特許発明について進歩性違反の無効理由はもはや存在し得ず,新規性違反と進歩
性違反との無効理由が同時に存在することはあり得ない。
したがって,本件審決による新規性違反と進歩性違反との両論併記自体,無効理
由として不備である。
また,第2予告の無効理由と本件審決の無効理由は,実質上も形式上も一致して
いない。
これらの点から,本件審決は,特許法164条の2第1項の規定に反する。
〔被告の主張〕
⑴ 本件審決の認定した課題と第2予告の認定した課題との対比
ア 本件審決が認定した本件訂正発明と第2予告が認定した本件訂正前の発明と
は,その認定した課題は同じであり,発明を無効とする理由も実質的に同じである
から,本件審決が判断の対象とした無効理由は「審判の請求を理由があるとする審
決の予告をしていないもの」(特許法施行規則50条の6の2第3号)に当たらな
い。
したがって,この点について,第3の審決の予告をせずに本件審決をしたことに
手続上の違法はない。
⑵ 本件審決中の例示について
第2予告において,本件訂正明細書記載の例1A~例3の化合物⑴~⑹以外のメ
ソゲン化合物の例につき言及がなかったとしても,前記のとおり,第2予告及び本
件審決の対象とする無効理由は同一である。
また,「技術常識に反するメソゲン化合物についての問題は特段の訂正請求を要
することなく解消」するわけがなく,そのようなメソゲンを含む化合物⑴~⑹以外
の式 I のメソゲン化合物について指摘する第2予告がされたのであれば,それに対
応して訂正請求すべきは当然である。原告は,にもかかわらず訂正をしなかったの
であり,第3の審決の予告をする必要はない。
したがって,この点につき,本件審決は,特許法164条の2第1項の規定に反
しない。
⑶ 第2予告及び本件審決における,新規性及び進歩性に係る無効理由の対比
ア 第2予告における引用発明1Aと本件審決における引用発明1Aは,主に重
合性液晶組成物(F)を用いる点で一致し,後者の引用発明1Aを得るための重合
性液晶組成物(F-3)に含まれる式(N-a)の化合物は,任意成分である第3
の単官能(メタ)アクリレート化合物の一つにすぎない。また,前者の引用発明1
Aを得るための重合性液晶組成物(F-1)と後者の重合性液晶組成物(F-3)
は,いずれも配向させる前のものである。
したがって,第2予告と本件審決がそれぞれ対象とする無効理由は,実質的に同
じである。
そうすると,本件審決が判断の対象とした無効理由は,「審判の請求を理由があ
るとする審決の予告をしていないもの」(特許法施行規則50条の6の2第3号)
には当たらず,第3の審決の予告をせずに審決したことに手続上の違法はない。
イ 効果の参酌について
原告が甲34-1に基づいて主張する効果は本件訂正明細書に記載されておらず,
本件訂正発明4それ自体は,「ホメオトロピックまたは傾斜したホメオトロピック
配向を有する」ものにすぎない。このような本件訂正発明4の効果は,引用例の記
載から予測し得る範囲内のものである。
したがって,本件審決の時点において,本件無効審判事件は「審決をするのに熟
した場合」にあったとするのが合理的かつ自然である。
ウ 本件訂正発明14について
(ア) 前記のとおり,本件審決における本件訂正発明14についての,引用発明
1Aとの対比及び判断における無効理由は,第2予告のそれと実質的に同じである。
原告は,第2予告の記載を見れば,本件訂正前の発明14が本件審決の引用発明1
Aを得るための重合性液晶組成物(F-3)とも同じ物であり,特許法29条1項
3号に該当すると当然に推論できたのであって,原告は,この点につきあらかじめ
訂正請求の機会や意見申立ての機会を与えられていたというべきである。
(イ) 第2予告で示された新規性欠如との理由が,本件審決では新規性欠如と進
歩性欠如に変化したことについては,本件訂正発明14が,「ホメオトロピック分
子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有する少なくとも1つのアニソ
トロピックポリマー層を含む補償膜の調製に用いられるための」という発明特定事
項を有するものになったことによるものであり,このことは,本件審決及び第2予
告の対象とする無効理由が実質的に同一であることとは関係がない。本件審決の
「本件訂正発明14についての特許は,無効理由2により無効とするべきものであ
る。」との判断は,あくまで予備的なものにすぎない。
2 取消事由2(サポート要件の判断の誤り)について
〔原告の主張〕
⑴ 本件訂正発明の課題の認定
ア 本件訂正明細書の記載から把握される本件訂正発明の課題
(ア) 本件訂正明細書は,「本発明の課題の一つは,これらの性質を有する補償
膜を提供することである。」などとし,本件訂正発明(請求項に記載の構成)に従
い,「ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピック配向を有する補償膜」
を提供することが,その課題を解決する手段であるとしている。前記「これらの性
質を有する補償膜」とは,「ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピッ
ク配向を有する補償膜」であるから,本件訂正発明の課題は,「ホメオトロピック
配向または傾斜したホメオトロピック配向を有する補償膜を提供すること」にほか
ならない。
(イ) 本件訂正明細書には,重合に高温を要する場合の問題点や広帯域反射型コ
レステリック偏光板用としての問題点等が指摘され,それらの欠点を有していない
ことが望まれる旨の記載は見られる。
しかし,高温を要しないことや重合性液晶混合物の融点が100℃以下であるこ
とが本件訂正発明にとっての必要条件であること,広帯域反射型コレステリック偏
光板用として用いることができないと本件訂正発明が成り立たないこと,高温を要
するとホメオトロピック配向又は傾斜したホメオトロピック配向を有する補償膜を
提供できないことなどについて,本件訂正明細書から読み取ることはできない。
イ 本件審決における課題の認定
本件審決は,本件訂正明細書には「良好な配向を備えたポリマーフィルムを得る
ためには,重合性メソゲン物質の混合物の液晶層でホメオトロピック配向または傾
斜したホメオトロピック配向状態で重合を行うべきであり,好ましくは100℃ま
たはそれ以下の低融点を有する重合性混合物を使用する必要があり,これにより低
温で混合物の液晶相において硬化を行うことができる」旨及び「良好なホメオトロ
ピック配向を備えたポリマーフィルムを得るためには,100℃以下の低融点を有
する重合性混合物を使用することが必要である」旨の記載がされていると認定した
が,そのような記載はない。本件訂正明細書は,「低融点を有する重合性混合物を
使用する必要がある」のではなく,そのような混合物を「使用すると好ましい」と
しているのである。その「好ましい」理由は,重合操作を容易にするためや大量生
産に重要であるからであって,低融点であることがホメオトロピック配向を有する
ポリマーフィルム製造の必要条件である旨本件訂正明細書が記載しているとする本
件審決の認定は誤りである。
よって,本件審決には,解決すべき課題に関する認定に誤りがある。
⑵ サポート要件に関する判断の誤り
ア 前記のとおり,本件訂正発明の課題は,「ホメオトロピック配向または傾斜
したホメオトロピック配向を有する補償膜を提供すること,このような補償膜を備
えた液晶表示デバイスを提供すること,このような補償膜を作製するのに用いられ
る重合性液晶混合物を提供すること」である。したがって,本件において,サポー
ト要件は,本件訂正発明が,その課題である広い視野範囲にわたる光学的性質の改
善を解決する,好適なホメオトロピック配向性を有する補償膜を提供するものであ
るか否かによって判断されるべきである。
そして,本件訂正発明の式 I で表される重合性メソゲン化合物のスペーサー基の
有無が好適なホメオトロピック配向性を決定付ける傾向を示すことは,本件訂正明
細書の記載や実験レポ-ト(甲34-1)により実証されている。
したがって,本件訂正発明は,「ホメオトロピックまたは傾斜したホメオトロピ
ック分子配向を有する補償膜」によって,「補償膜において,広い視野範囲にわた
り,例えば輝度の増大といった光学的性質を改善する」という課題を解決するもの
である。
イ 他方,本件審決は,「高温を要するもの」が存在するという甲1及び9を根
拠にして,課題を解決できないと判断している。
しかし,甲9には,一般式(R-2)に相当する化合物には高融点のメソゲン化
合物が含まれる旨記載されるにとどまる。
また,甲1は,融点が80℃以下程度の液晶組成物を用いると,作製される光学
異方フィルムのメソゲンの配向が「不均一となる」ことを述べているにすぎない。
この「融点が80℃以下」という事項は,本件訂正明細書の記載によれば好ましい
融点の範囲内であり,特に好ましい60℃以下の範囲ではないにすぎない。そもそ
も,本件訂正明細書には,100℃以下でないとホメオトロピック配向を備えたポ
リマーフィルムを得られないなどとは記載されていない。さらに,「配向が不均一」
とは,メソゲンの配向が,場所によらず均等であるのではなく,場所場所で同じで
はない状態になることをいうのであって,「配向が不均一」であることは,ホメオ
トロピック配向にならないことを意味しない。したがって,甲1の記載は,本件訂
正発明が本件訂正明細書記載の課題を解決できないとする証拠にはならない。
ウ 以上のとおり,本件審決は本件訂正明細書の記載を読み誤り,その記載から
把握されるべき課題を誤認し,また,甲1記載の従来技術の理解を誤ったことに基
づき,本件訂正発明の課題を誤って認定した。このような認定に基づきなされた本
件審決によるサポート要件違反の判断は,それ自体失当である。
⑶ 式Iの反応性メソゲンの全てがホメオトロピック又は傾斜したホメオトロピ
ック分子配向を有する補償膜を好適に作製できる範囲にないとの認定について
前記のとおり,サポート要件の充足性の認定に際し,本件訂正明細書の例1A~
例3の化合物⑴~⑹以外のメソゲンの例として本件審決が挙げた例は,技術常識か
らは通常あり得ない置換基の組合せに基づくものばかりであり,審尋に対する原告
の回答により既に解消した問題点である。また,本件審決は,前記例示されたもの
以外の化合物を例示しておらず,あるとしてもそのような化合物に基づくサポート
要件違反の理由も具体的に指摘していない。
そうである以上,サポート要件違反の根拠はない。
また,サポート要件の充足性の判断に当たり,出願時における技術分野の技術常
識及び本件訂正発明の具体的な検討を行うことなく,本件訂正明細書に記載された
化合物が特許請求の範囲に記載された化合物の一部にとどまることをもって,直ち
にサポート要件充足性を否定することは許されないところ,本件審決は,この点に
おいても審理不尽の違法がある。
⑷ 小括
以上のとおり,本件審決は,本件訂正明細書の記載の解釈を誤り,本件訂正発明
が解決しようとする課題を誤って認定したことに基づきサポート要件違反とした点
で違法である。
〔被告の主張〕
⑴ 本件訂正発明の解決しようとする課題及び課題解決について
ア 本件訂正明細書の記載に接した当業者には,本件訂正発明の解決しようとす
る課題が,本件審決が認定したとおりであると理解される。
イ 本件訂正発明の式 I で表される化合物は,共通する化学構造がない極めて広
範なものである。このような本件訂正発明で用いられるメソゲンは,アクリレート
基以外の重合性基,例えばメタクリレート基を有するものであってよいが,本件訂
正明細書には,当業者が当該メソゲンの有用性を認識できる程度の記載はない。そ
れどころか,当該メソゲンは良好な配向という点では有用でないというのが当業者
の認識であった。そうすると,当業者は,当該メソゲンが「ホメオトロピックまた
は傾斜したホメオトロピック分子配向を有する補償膜」を好適に作製できる範囲に
あるなどとは推論しない。
また,本件訂正明細書の記載から,当業者は,上記課題を解決し,良好なホメオ
トロピック配向を備えたポリマーフィルムを得るためには,低融点を有する重合性
混合物を使用することが必要であると推論する。実際,様々な文献において,高融
点の重合性化合物については,これを用いて作成される光学異方フィルムのメソゲ
ンの配向が不均一になるといった欠点があることが指摘されている。これに対し,
本件訂正発明は,配向させる重合性メソゲン物質の混合物が高融点のものであって
よく,しかも,上記課題を解決するための発明特定事項も有していない。そうする
と,当業者は,本件訂正発明につき,上記課題を解決するものではなく,良好な配
向を備えるものでもないと認識する。
さらに,本件訂正明細書記載の例1Aのポリマーフィルムは光学的に透明である
が,それを用いた図3の装置のリターデーションは対称ではない。しかも,フィル
ムは,配向性が悪いと光の散乱により不透明になることは,当業者の技術常識であ
る。このため,本件訂正明細書の記載に接した当業者は,極めて広範な本件訂正発
明が,対称なリターデーションを有し光学的に透明であるという効果を奏するもの
であるとも認識しない。
ウ 原告は,本件訂正発明の課題につき,「ホメオトロピック配向または傾斜し
たホメオトロピック配向を有する補償膜を提供すること」にほかならないなどと主
張する。
しかし,本件訂正明細書の「本発明の課題の一つは,これらの性質を有する補償
膜を提供することにある」,「これらの課題が,本発明に従い」の記載における
「これらの性質」,「これらの課題」とは,先行する「JP05-142531に
記載されているような液晶の配向はしばしば,達成が困難であり,また高温を要す
る。…。しかしながら,この刊行物に記載されている1種のみの重合性化合物を含
有する重合性液晶組成物は一般に,高融点を示し,従って配向および重合に高温を
要し,これはこのような膜を製造する場合,重要な欠点である。」との記載を受け
たものであって,この後にある「ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロ
ピック配向を有する補償膜を提供することによって達成することができる。」との
記載を受けたものでないことは,当業者に明白である。
したがって,原告の主張は,本件訂正明細書の記載に基づかない主張である。
⑵ サポート要件に関する判断について
ア この点に関する原告の主張は,その前提とする本件訂正発明の課題について
の誤った理解に基づくものである。
イ 「配向が不均一」であることはホメオトロピック配向にならないことを意味
するか否かは,本件訂正発明が前記課題を解決するものではなく,良好な配向を備
えるものでもないという本件訂正明細書の記載に接した当業者の認識を左右するも
のではない。
ウ 本件審決の例示について
本件審決が括弧内で示した例示につき,第2予告で指摘がないことをもって既に
解消したものと理解されるか否かは,第2予告で指摘された問題点が解消されたか
否かとは関係がない。
第2予告が指摘した「化合物⑴~⑹以外のメソゲン…の全てが「ホメオトロピッ
クまたは傾斜したホメオトロピック分子配向を有する補償膜」を好適に作製できる
範囲にあるとは認められない。」という問題点は,本件訂正によって解消されてい
ない。また,本件審決が括弧内で示した例示が「技術常識からは通常あり得ない置
換基の組み合わせに基づくものばかり」であるのであれば,原告は,極めて広範な
本件訂正発明1の「式 I」の定義を満たすメソゲンの全てが「ホメオトロピックま
たは傾斜したホメオトロピック分子配向を有する補償膜」を好適に作製できる範囲
にはないと知りながら,訂正する機会を何度も与えられても訂正をしなかったこと
になる。
3 取消事由3(新規性及び進歩性の判断の誤り)について
〔原告の主張〕
⑴ 本件訂正発明14に係る新規性判断の誤り(取消事由3-1)について
ア 本件審決は,引用発明1Aについて,「重合性液晶組成物」という「物」の
用途には,ホメオトロピック配向した光学異方フィルムの調製に用いられる用途も
含まれているとした上で,本件訂正発明14と引用発明1Aの用途の相違につき実
質的な差異があるとは認められないと判断した。
しかし,引用発明1Aの重合性液晶組成物は,これを光重合させて得られるフィ
ルムがツイステッドネマチック配向の光学異方フィルムであると明確に定義される
ものであるから,上記用途も含まれると認定することは,引用発明1Aを本件訂正
発明14との対比に際して再び定義し直すに等しく,許容されない。また,相違点
15に係る認定とも矛盾する。
イ 用途発明として新規性が認められることについて
本件訂正発明14の重合性メソゲン物質の混合物は,これを「ホメオトロピック
分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有する少なくとも1つのアニ
ソトロピックポリマー層を含む補償膜の調製に用いられるため」という用途に供す
ることにより,重合性メソゲン物質の混合物を基板に塗布しただけで,光学的に透
明であり,垂直入射で見た場合に複屈折を伴わず,かつ視角の増大とともに増加す
る複屈折率を伴う,メソゲン基のホメオトロピック配向を示す,好適なホメオトロ
ピック配向補償膜等が得られる,という属性が発見されたものである。このような
属性はいかなる文献にも記載されていない。したがって,本件訂正発明14の用途
は,未知の属性である。
また,本件訂正発明14の重合性メソゲン物質の上記属性により見出された用途
は,従来知られている範囲とは異なる新たなものといえる。
以上より,仮に,引用発明1Aから重合性液晶組成物(F-4)の発明を認定す
ることができたとしても,用途限定が付された本件訂正発明14は,引用発明1A
と文言上明確に相違する。
⑵ 本件訂正発明4,8,10,12,14,26,31及び33に係る進歩性
判断の誤り(取消事由3-2)について
ア 本件訂正発明4について
(ア) 相違点の認定について
a 本件審決は,本件訂正発明4と引用発明1Aの相違点として相違点2~4を
挙げているところ,相違点を細かく分断していること自体が適切ではない。むしろ,
相違点2~4を統合した「本質的にa1,a2,b,c,dからなることを特徴と
する重合性メソゲン物質の混合物の重合あるいは共重合によって得られる少なくと
も一つのアニソトロピックポリマー層がホメオトロピックまたは傾斜したホメオト
ロピック分子配向を有することを特徴とし,補償膜が2枚または3枚以上のアニソ
トロピックポリマー層を含み,これらの層の少なくとも1枚がホメオトロピックま
たは傾斜したホメオトロピック分子配向を有する複合補償膜である」ことを相違点
(以下「相違点A」という。)とすべきである。
b そうすれば,本件審決とは異なり,ホメオトロピック分子配向を有するアニ
ソトロピックポリマー層の形成に好適な重合性メソゲン物質の混合物を選択的に用
いて調製されたホメオトロピック分子配向を有する複合補償膜を採用する動機付け
を,単に引用例に(6m)化合物が記載されていることをもって導くことはできな
かったはずである。
c 本件審決は,相違点2~4のいずれについても,ホメオトロピック分子配向
を有するアニソトロピックポリマー層の形成に好適な重合性メソゲン物質の混合物
を選択的に用いたホメオトロピック分子配向を有する複合補償膜を採用することに
より格別な効果を奏することについて考慮することなく,進歩性欠如の結論に至っ
ている。
しかし,そもそも本件訂正発明は,所定のSp-X基を有する式Iの化合物自体
の特性に基づき,本質的に当該化合物からなる混合物を基板に塗布するだけで好適
なホメオトロピック配向光学補償膜を調製できるという新しい発見に基づき完成し
た発明であって,所定のSp-X基を有する化合物から本質的になる混合物をホメ
オトロピック配向光学補償膜の調製のために選択的に用いること自体に格別の意義
がある。引用例を含む本件優先日前のいずれの文献にも,このような混合物をホメ
オトロピック配向光学補償膜の調製のために用いた例は見当たらない。
d 引用発明1Aは,所定のSp-X基を有する化合物から本質的になる混合物
から調製された光学補償膜を配置する液晶表示デバイスに係るものであるが,その
光学補償膜はあくまでもツイステッドネマチック配向補償板であって,ホメオトロ
ピック配向補償板を示唆するものでも,その好適なホメオトロピック配向性を呈す
ることを示唆するものでもない。したがって,本件訂正発明4が奏する効果を考慮
すれば,相違点Aに係る構成は容易に想到できない。
(イ) 各相違点に係る構成の容易想到性の判断の誤り
a 相違点2について
前記のとおり,引用発明1Aは,ツイステッドネマチック配向補償板を配置する
液晶表示素子の発明であって,ホメオトロピック配向補償板を配置する液晶表示素
子に係るものではなく,これを示唆するものでもない。
また,一般式(R-2)の化合物については,100%の量で用いた場合の例に
おいて,予期しない熱重合に起因して光学異方性フィルムの配向が不均一になると
いう欠点が指摘されている。このため,これを引用発明1Aの「重合性液晶化合物」
に更に含むようにすることにつき,少なくとも積極的な動機付けは阻害されている。
これを含むようにするとの示唆があるとしても,その示唆が,敢えて引用発明1A
におけるツイステッドネマチック配向補償板の調製のための動機付けになるとする
根拠はない。まして,ツイステッドネマチック配向補償板をホメオトロピック配向
補償膜に代え,その調製のために(R-2)化合物を更に含ませることは,どこに
も示唆がない。
b 相違点3について
引用発明1Aは,所定のSp-X基を有する化合物から本質的になる混合物から
調製された光学補償膜を配置する液晶表示デバイスに係るものであるが,前記のと
おり,その光学補償膜はあくまでもツイステッドネマチック配向補償板であって,
ホメオトロピック配向補償板を配置するものではなく,また,これを示唆するもの
でも,その好適なホメオトロピック配向性を呈することを示唆するものでもない。
c 相違点4について
前記のとおり,引用発明1Aのツイステッドネマチック配向補償板をホメオトロ
ピック配向補償板とすることは容易ではなく,たとえ本件審決で認定されるような
常套手段が存在したとしても,そもそもこのような常套手段をホメオトロピック配
向補償板に適用する動機付けはない。
(ウ) 小括
以上のとおり,本件訂正発明4の引用発明1Aに対する進歩性に係る本件審決の
判断には誤りがある。
イ 本件訂正発明14について
本件審決は,仮に用途限定に関する相違点15に実質的な差異があるとしても,
引用例の記載から,「ホメオトロピック配向」とすることは当業者が容易に想到し
得ると判断した。
しかし,引用発明1Aの光学補償膜はあくまでもツイステッドネマチック配向補
償板であって,ホメオトロピック配向補償板を示唆するものでも,その好適なホメ
オトロピック配向性を呈することを示唆するものでもないこと,本件訂正発明14
は,所定のSp-X基を有する式 I の化合物自体の特性に基づき,本質的に当該化
合物からなる混合物を基板に塗布するだけで好適なホメオトロピック配向光学補償
膜を調製できるという効果を奏するものであり,引用例を含む本件優先日前のいず
れの文献にも,このような混合物をホメオトロピック配向光学補償膜の調製のため
に用いた例は見当たらないことは,いずれも前記のとおりである。
したがって,相違点15に基づく本件訂正発明14の進歩性に関する本件審決の
認定,判断は誤りである。
ウ 本件訂正発明8,10,12及び26について
本件審決が,相違点を相違点9と3,相違点12と3又は相違点2と3のように
細かく分断していること自体が適切でない。すなわち,相違点2及び3を分けて認
定することが誤りであることは,前記のとおりである。また,相違点9及び12は,
Sp-X基を有する式 I の化合物の存否に関する相違点である点で,相違点2と同
様の趣旨であるから,相違点2及び3と同様に考えられる。
したがって,本件訂正発明8,10,12及び26の進歩性に関する本件審決の
判断には誤りがある。
エ 本件訂正発明31及び33について
本件審決が相違点を相違点9と3又は相違点12と3のように細かく分断して認
定することが誤りであることは,前記のとおりである。
したがって,本件訂正発明31及び33の進歩性に関する本件審決の判断には誤
りがある。
⑶ 本件訂正発明6及び7に係る進歩性判断の誤り(取消事由3-3)について
本件訂正発明6及び7は,式Iの化合物が,Sp-Xとして「炭素原子1~3個
を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であって,…により置き換えられてよ
く」を有するのに対し,本件審決は相違点6を認定するにとどまり,本件訂正発明
6及び7の発明特定事項である炭素原子数の範囲を看過した。
このため,(R-2)化合物は,少なくとも本件訂正発明6及び7に特定される
Sp-X基の要件を満たさず,仮にこのような化合物を添加することが当業者にと
って容易であったとしても,その結果として得られる引用発明1Bを変形した光学
異方フィルムと本件訂正発明6及び7とは,相違点6が依然として残存する。
したがって,この点に関する本件審決の認定,判断は誤りである。
〔被告の主張〕
⑴ 本件訂正発明14に係る新規性判断の誤り(取消事由3-1)について
ア 引用発明1Aを得るための重合性液晶組成物(F-3)は,配向させる前の
ものであって,「少なくとも2つの6員環を有する液晶性骨格を部分構造として有
する環状アルコール,フェノール又は芳香族ヒドロキシ化合物の(メタ)アクリル
酸エステルである第一の単官能(メタ)アクリレートを含有し,室温で液晶相を示
すことを特徴とする重合性液晶組成物」の一例である。引用例には,このような重
合性液晶組成物をホメオトロピック配向させた後重合させてもよい旨記載されてい
るから,その記載に接した当業者は,引用発明1Aを得るための重合性液晶組成物
(F-3)が,「ツイステッドネマチック配向を有するアニソトロピックポリマー
層を含む補償膜」の調製だけでなく,「ホメオトロピック配向の光学異方フィルム」
の調製にも用いられるものと理解する。
そして,この用途は,本件訂正発明14の「ホメオトロピック分子配向または傾
斜したホメオトロピック分子配向を有する少なくとも1つのアニソトロピックポリ
マー層を含む補償膜の調製に用いられる」に相当する。
したがって,引用発明1Aを得るための重合性液晶組成物は,本件訂正発明14
と実質的に同じ物である。
イ 用途発明について
「光学的に透明であり,…ホメオトロピック配向」は,本件訂正明細書記載の例
1Aの混合物を「シクロペンタノン中に溶解し,…硬化させ」て形成したアニソト
ロピックポリマーフィルムの効果であって,当該混合物それ自体の属性ではない。
そして,本件訂正明細書の記載から,極めて広範な本件訂正発明14に係る混合物
それ自体の属性が当業者に既知の「メソゲン」という性質であることは理解できる
が,当該混合物それ自体の「未知の属性」については全く記載がない。
また,引用例には,引用発明1Aを得るための重合性液晶組成物が,ホメオトロ
ピック配向した光学異方フィルムを得るのに有用であることが記載されていること
から,本件訂正発明14の用途は,従来知られている範囲と異なる新たなものでも
ない。
⑵ 本件訂正発明4,8,10,12,14,26,31及び33に係る進歩性
判断の誤り(取消事由3-2)について
ア 本件訂正発明4について
(ア) 原告は,本件審決が相違点2~4を認定したことにつき,相違点を細かく
分断していること自体適切ではないなどと主張する。
しかし,そもそも,本件訂正発明4の発明特定事項はそれぞれ本件訂正発明4の
課題を解決する技術的手段として一体不可分のものではない。
したがって,相違点を細かく分断していることが適切か否かという以前に,本件
審決が相違点を細かく分断しているということはできない。
(イ) 本件訂正発明4が奏する効果を考慮するとしても,それは当業者が予測し
得る範囲内のものである。
(ウ) 各相違点に係る構成の容易想到性について
a 相違点2について
原告主張に係る「一般式(R-2)の化合物」についての背景技術は,引用発明
1Aの重合性液晶組成物に「一般式(R-2)の化合物」を含むようにしてみる積
極的な動機付けがあることとは関係がない。引用発明1Aを得るための重合性液晶
組成物は,「機械的強度及び耐熱性に優れ,均一でムラのない光学異方フィルムを
提供」することを課題の一つとする「少なくとも2つの6員環を有する液晶性骨格
を部分構造として有する環状アルコール,フェノール又は芳香族ヒドロキシ化合物
の(メタ)アクリル酸エステルである第一の単官能(メタ)アクリレートを含有し,
室温で液晶相を示すことを特徴とする重合性液晶組成物」の一例であり,甲9の内
容を知る当業者には,これが機械的強度と耐熱性で有利になる一般式(R-2)の
化合物を含んでいてもよいと理解される以上,引用発明1Aを得るための重合性液
晶組成物(F-3)にも,室温付近で液晶相を示す範囲で「(R-2)化合物を含
むようにしてみるという示唆」があるといえる。また,引用例に,(R-2)化合
物を更に含ませることなどが直接明記されていないとしても,引用発明1Aを得る
ための「重合性液晶組成物」に,室温付近で液晶相を示す範囲で,一般式(R-2)
の化合物を課題達成に必要な量で更に含むようにしてみることは,課題の共通性が
あるという点で十分な動機付けがある。
b 相違点3について
引用発明1Aは,「ツイステッドネマチック配向の光学異方フィルム」を配置す
るものであるが,それを得るための重合性液晶組成物(F-3)は配向させる前の
ものであって,「少なくとも2つの6員環を有する液晶性骨格を部分構造として有
する環状アルコール,フェノール又は芳香族ヒドロキシ化合物の(メタ)アクリル
酸エステルである第一の単官能(メタ)アクリレートを含有し,室温で液晶相を示
すことを特徴とする重合性液晶組成物」の一例である。引用例には,このような重
合性液晶組成物をホメオトロピック配向させた後重合させてもよい旨が記載されて
おり,引用発明1Aを得るための重合性液晶組成物(F-3)から「ホメオトロピ
ック配向の光学異方フィルム」を必要に応じ得ることの示唆がされている。
また,極めて広範な本件訂正発明4は,好適なホメオトロピック配向性を呈する
ものではない。
c 相違点4について
上記a,bから,引用発明1Aのツイステッドネマチック配向補償板をホメオト
ロピック配向補償板とすることは容易である。
また,引用例によれば,光学異方フィルムは位相差板として使用できるものであ
って,本件審決で認定されるような常套手段をホメオトロピック配向補償板に適用
することは,動機付け云々以前に当業者が適宜行う範囲内のことであるし,当業者
には,位相差板として使用するのに上記常套手段をホメオトロピック配向補償板に
適用する動機もある。
イ 本件訂正発明14について
原告主張に係る「本件訂正発明14の混合物をホメオトロピック配向光学補償膜
の調製のために選択的に用いることの意義」は,本件訂正明細書に記載がない。
ウ 本件訂正発明8,10,12,26,31及び33について
前記ア(ア)と同様である。
⑶ 本件訂正発明6及び7に係る進歩性判断の誤り(取消事由3-3)について
ア 本件審決が,「炭素原子数の範囲」も含め「少なくとも2個の重合性官能基
を有する少なくとも1種のメソゲン」を相違点と認定していることは明らかである。
イ 引用発明1Bの重合性液晶組成物に,甲9記載のモノマー6mのジアクリレ
ート化合物を更に含むようにしてみることは,引用例に明確な示唆があるという点
で,十分な動機付けがある。
さらに,甲9によれば,当該モノマー6mはあくまで別紙4「化学式・図面等目
録」記載1⑴の一般化学式で示されたモノマーの一つであり,引用例で含んでいて
もよいとされるジアクリレート化合物は,その一般化学式のxが4,5,6,8,
10,11であるモノマーのみであるとは当業者には解されない。
そうすると,モノマー6mすなわち機械的強度と耐熱性の問題を解決できる一般
式(R-2)の化合物以外のLCモノマーについて検討し,機械的強度と耐熱性の
観点から好適なxのものを採用して,それが引用発明1Bの「重合性液晶組成物」
に室温付近で液晶相を示す範囲で含まれるようにしてみることも,当業者にとって
は特段困難なことではない。
また,xが1~3のLCモノマーを採用したことに技術的意義は見いだせない。
第4 当裁判所の判断
1 本件訂正発明
⑴ 本件訂正発明に係る特許請求の範囲は,前記第2の2記載のとおりである。
また,本件訂正明細書(甲67添付の訂正明細書)には,おおむね以下の記載があ
る(なお,図面(甲38)及び化合物の化学式は別紙4「化学式・図面等目録」記
載1⑵及び2を参照)。
ア 技術分野,従来技術及び解決しようとする課題
(ア) 本発明は,液晶セルおよび少なくとも1枚の補償膜または偏光板と少なく
とも1枚の補償膜を有する光学補償板との組合わせを含み,該補償膜は
a)少なくとも1個の重合性官能基を有する少なくとも1種のメソゲンを
b)開始剤
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,
の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物の重合あるいは共重合によって得られる少なくとも
1つのアニソトロピックポリマー層を含む液晶表示デバイスであって,上記アニソ
トロピックポリマー層がホメオトロピックまたは傾斜したホメオトロピック分子配
向を有することを特徴とする,前記液晶表示デバイスに関する。
本発明はまた,該補償膜の製造方法に関する。本発明はさらにまた,該補償膜の
製造に使用される重合性メソゲン物質の混合物に関する。本発明はまた,広帯域反
射型偏光板により透過される光の位相リターデーションの視角依存性を補償するた
めに,該補償膜を使用することに関する。(1頁4行目~19行目)
(イ) EP0606940は,…広い波長範囲にわたり輝度の高い直線偏光され
た光を生じさせるコレステリック反射型偏光板を開示している。しかしながら,こ
の偏光板の光学的性質,例えば輝度およびコントラスト比は,視角が大きくなるの
に従い相当に劣化される。
従って,上記したもののような広帯域コレステリック反射型偏光板と一緒に使用
した場合,広い視角範囲にわたり当該偏光板の光学的性質を改善する補償膜を利用
できることが望まれていた。
補償膜は従来技術で開示されている。…反応性メソゲンの重合混合物から形成さ
れた補償膜はまた,開示されている。
例えば,JP05-142531には,膜の垂直方向に配向されているネマティ
ック液晶ポリマーを含む補償板が記載されている。この補償板はガラスセルでホメ
オトロピック配向される液晶を配向させることによって形成される。しかしながら,
JP05-142531に記載されているような液晶の配向はしばしば,達成が困
難であり,また高温を要する。さらにまた,…ガラスセルで重合させ,引き続きガ
ラス板を取り除く方法は複雑であり,工業的大規模製造に適していない。
Heynderickx, Broer 等による Mol.Cryst.Liq.Cryst.,203(1991),113~126 頁に
は,非カイラルメソゲンジアクリレートとカイラルドープ剤との重合混合物から形
成されたSTN用の補償膜が形成されている。…しかしながら,この刊行物に記載
されている1種のみの重合性化合物を含有する重合性液晶組成物は一般に,高融点
を示し,従って配向および重合に高温を要し,これはこのような膜を製造する場合,
重要な欠点である。
さらにまた,JP05-142531および Heynderickx, Broer 等による刊行
物に記載されている補償板は,…液晶ディスプレイと組合わされている広帯域反射
型コレステリック偏光板の補償用にデザインされていない。従って,広帯域コレス
テリック反射型偏光板と一緒に使用した場合,この偏光板の光学的性質を広い視角
範囲にわたり増強させ,組み立てが容易であり,かつまた前記の従来技術の補償膜
の欠点を有していない補償膜に対する格別の要求が存在している。(1頁最終行~
3頁3行目)
(ウ) 本発明の課題の一つは,これらの性質を有する補償膜を提供することにあ
る。本発明のもう一つの課題は,このような補償膜を備えた液晶表示デバイスを提
供することにある。本発明のその他の課題は,以下の詳細な説明から当業者にとっ
て直に明白である。
これらの課題が,本発明に従い,ホメオトロピック配向または傾斜したホメオト
ロピック配向を有する補償膜を提供することによって達成することができることが
見出された。(3頁4行目~10行目)
イ 好適な実施の態様
(ア) 好適態様において,重合性混合物は,1個の重合性基を有する反応性メソ
ゲン化合物を含有する。これらの化合物は一般に,容易にまた安価に合成すること
ができる。さらにまた,一反応性化合物のみを含有する混合物は,二反応性化合物
を含有する混合物に比較して,望ましくない自発的重合に対して高い安定性を示す。
もう一つの好適態様において,重合性混合物は,2個または3個以上の重合性官
能基を有する反応性メソゲン化合物(多官能性化合物)を含有する。このような混
合物を重合させると,三次元ポリマー網状構造体が形成される。このような網状構
造体から形成された補償膜は自己支持性であり,また機械的安定性および熱に対す
る安定性を示し,およびまたその物理的性質の温度依存性は小さい。(6頁10行
目~20行目)
(イ) 本発明による重合性混合物は,層形態で少なくとも1枚の基板上に塗布し,
配向させ,次いで重合させる。基板としては,例えばガラスまたは石英のシート,
あるいはプラスティックフィルムまたはシートを使用することができる。重合前,
重合中,および(または)重合後に,塗布混合物の上に第二の基板を配置すること
もできる。…
ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピック配向を得るために,メソ
ゲン物質は好ましくは,配向層を担持する基板上に塗布する。…本発明の好適態様
において,シリカ塗布プラスティックフィルムを基板として使用する。
本発明による重合性メソゲン混合物の重合は,これを熱または活性照射線にさら
すことによって生じさせる。活性照射は,光,X-線またはガンマ線の照射あるい
は高エネルギー粒子,例えばイオンまたは電子の照射を意味する。特に,紫外線光
を使用すると好ましい。(7頁4行目~最終行)
(ウ) 良好な配向を備えたポリマーフィルムを得るためには,この重合を重合性
メソゲン物質の混合物の液晶相でホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロ
ピック配向状態で行うべきである。従って,低融点,好ましくは100℃またはそ
れ以下,特に60℃またはそれ以下の融点を有する重合性混合物を使用すると好ま
しく,これにより低温で混合物の液晶相において硬化を行うことができる。これに
よりまた,重合操作を容易にすることができ,これは大量生産の場合に特に重要で
ある。100℃以下の硬化温度が好適である。60℃以下の硬化温度は特に好まし
い。(8頁26行目~9頁4行目)
ウ 好適態様において使用される反応性メソゲン化合物
本発明の好適態様において,重合性メソゲン物質の混合物に使用される反応性メ
ソゲン化合物は,下記式 I で表わされる化合物である:
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有するスペーサー基であり,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO-O-か
ら選択される基または単結合であり,
nは,0または1であり,
MGは,メソゲン基またはメソゲン支持基であり,…,そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,…あるいはRはまた,
ハロゲンまたはシアノであるか,あるいは独立して,P-(Sp-X) n -につい
て示されている意味の一つを有する。(11頁19行目~12頁24行目)
エ 実施例
前記および下記の例において,別段の記載がないかぎり,温度は全部が未補正で
あって,摂氏度で示されており,そして部およびパーセンテージは全部が重量によ
る。下記の略号を使用して,化合物の液晶相挙動を示す:
K=結晶;N=ネマティック;S=スメクティック;Ch=コレステリック;I
=アイソトロピック。これらの記号間の数値は相転移温度を摂氏度で示すものであ
る。
例1A
下記の混合物を調製する:
化合物⑴ 24.5%
化合物⑵ 24.5%
化合物⑶ 24.5%
化合物⑷ 24.5%
イルガキュア651 2.0%
(Irgacure)
イルガキュアは市販の光開始剤である(Ciba Geigy AG)。化合物⑴の製造はD
E195,04,224に記載されている。化合物⑵~⑷は同様にして製造するこ
とができる。…
補償膜を製造するために,この混合物をシクロペンタノン中に溶解し,…濾過し
た。この試料を,…ガラス上に塗布し…,次いで窒素雰囲気下に50℃で溶剤を蒸
発させた。この混合物を次いで,窒素雰囲気下に,70mW/cm 2 の照度を有す
る紫外線光に5分間さらすことによって硬化させ,3ミクロンの厚さを有するアニ
ソトロピックポリマーフィルムを形成した。
このポリマーフィルムは,偏光光学顕微鏡下で,光学的に透明であり,垂直入射
で見た場合,複屈折を伴わず,かつ視角の増大とともに増加する複屈折率を伴う,
メソゲン基のホメオトロピック配向を示した。
このホメオトロピック薄膜を有するガラス板を,接着層により広波長帯域コレス
テリック薄膜のシートに接着させた。
この広波長帯域反射型偏光膜は,反応性コレステリックメソゲン化合物の重合し
た混合物からなる。この偏光板は,多種のピッチ長さのコレステリックラセンを示
し,そして約260nmの帯域をもって,…広い反射帯域を有していた。…
例1B
下記の測定において,反射型偏光板51および1Aの本発明によるホメオトロピ
ック補償膜52,四分の一波長薄膜(QWF)53および直線偏光板54(偏光軸
はQWFの固定軸に対して45°である)を備えている…装置を通過する,市販L
CDバックライト50からの光の輝度を,或る視角範囲(-60°~+60°)で
ミノルタ(Minolta)CS-100 カラーカメラ55を用いて測定した。この測定値を図
4に示す。
第一に,反射型偏光板51,QWF53および直線偏光板54からなり,本発明
による補償膜52を備えていない未補償偏光板組合わせにかかわる結果(曲線4b)
を,直線偏光板54を単独で用いた同一装置(曲線4a)と比較した。…約44%
の明度の増加,すなわち輝度の増加が垂直方向…で測定された。しかしながら,視
野角が大きくなるに従う,反射型偏光板それ自体による位相リターデーションの増
加は,測定された輝度の顕著な減少を引き起こした。これは36°のクロスオーバ
ー角で直線偏光板について測定された数値と一致した。
次いで,この結果を,反射型偏光板51,本発明によるホメオトロピック補償膜
52,QWF53および直線偏光板54からなる補償偏光板組合わせ(4c)と比
較した。クロスオーバー角は補償膜を用いない場合の約36°から補償膜を用いた
場合の約47°に増加した。曲線4b(未補償)と曲線4c(補償済)とを比較し
た場合,ホメオトロピック補償膜を使用した場合に,全視角にわたり輝度が格別に
増大されることを見ることができる。
図5は,補償済試料(5b)および未補償試料(5a)にかかわる色度差…を示
している。曲線5bに示されているように,補償膜は,補償膜を用いない試料(曲
線5a)と比較して,角度の増大に従い,色度差を減少させる。…
例2
下記の混合物を調製する:
化合物⑸ 69%
化合物⑹ 19%
イルガキュア651 12%
(Irgacure)
二反応性化合物⑸は,WO93/22397に記載されている化合物の合成と同
様にして製造することができる。化合物⑹は,化合物⑴~⑷と同様にして製造する
ことができる。…
この混合物のシクロペンタノン中20%溶液を,シリカ塗布PET基板上に塗布
し,次いで溶剤を蒸発させた。この混合物を60℃で紫外線光にさらすことによっ
て硬化させ,ホメオトロピック配向膜を得た。この膜を,例1Bに記載の装置で補
償膜として使用した場合,60°のクロスオーバー角が見出された。
例3
下記の混合物を調製する:
化合物⑸ 40%
化合物⑺ 10%
化合物⑻ 46%
イルガキュア907 4%
(Irgacure)
イルガキュアは,市販の光開始剤である(Ciba Geigy AG)。化合物⑺および⑻
は,化合物⑴~⑷と同様にして製造することができる。
本明細書に記載の補償板として使用することができるホメオトロピック配向を有
するポリマーフィルムを,例1Aに記載のとおりに,上記混合物の塗布,配向およ
び硬化により製造した。
前記諸例は,前記例で用いられているものの代わりに,一般的または具体的に記
載されている反応剤および(または)本発明の操作条件を用いて同様の成功をもっ
て反復することができる。
前記記載から,当業者は本発明の本質的特徴を容易に確認することができ,また
本発明の精神および範囲から逸脱することなく,各種用途および状態に適合させる
ために,本発明を変更および修正することができるものとする。(22頁15行目
~26頁最終行)
⑵ 本件訂正発明の概要
前記⑴認定の記載によれば,本件訂正発明の概要は,以下のとおりのものと認め
られる。
ア 本件訂正発明は,液晶セル及び少なくとも1枚の補償膜又は偏光板と少なく
とも1枚の補償膜を有する光学補償板との組合せを含み,該補償膜は少なくとも1
個の重合性官能基を有する少なくとも1種のメソゲン,開始材,必要に応じて2個
又は3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物及び必要に応じて安定剤を
含む,重合性メソゲン物質の混合物の重合又は共重合によって得られる少なくとも
1つのアニソトロピックポリマー層を含む液晶表示デバイスであって,上記アニソ
トロピックポリマー層がホメオトロピック又は傾斜したホメオトロピック分子配向
を有することを特徴とする,前記液晶表示デバイス,該補償膜の製造方法,及び該
補償膜の製造に使用される重合性メソゲン物質の混合物に関する。
従来技術として,広い波長範囲にわたり輝度の高い直線偏光された光を生じさせ
るコレステリック反射型偏光板が開示されているが,この偏光板の光学的性質,例
えば輝度及びコントラスト比は,視角が大きくなるのに従い相当に劣化される。し
たがって,広帯域コレステリック反射型偏光板と一緒に使用した場合,広い視角範
囲にわたり当該偏光板の光学的性質を改善する補償膜が望まれていたところ,本件
訂正発明に従い,ホメオトロピック配向又は傾斜したホメオトロピック配向を有す
る補償膜を提供することによって達成することができることが見出された。
イ 本件訂正発明の好適態様において,2個又は3個以上の重合性官能基を有す
る反応性メソゲン化合物を含有する重合性混合物を重合させると,三次元ポリマー
網状構造体が形成される。このような網状構造体から形成された補償膜は自己支持
性であり,また機械的安定性及び熱に対する安定性を示し,及びまたその物理的性
質の温度依存性は小さい。
本件訂正発明による重合性混合物は,層形態で少なくとも1枚の基板上に塗布し,
配向させ,次いで重合させる。基板としては,例えばガラス又は石英のシート,あ
るいはプラスティックフィルム又はシートを使用することができる。
ホメオトロピック配向又は傾斜したホメオトロピック配向を得るために,メソゲ
ン物質は好ましくは,配向層を担持する基板上に塗布する。
また,本件訂正発明による重合性メソゲン混合物の重合は,これを熱又は活性照
射線にさらすことによって生じさせる。活性照射は,光,X-線又はガンマ線等の
照射を意味し,特に,紫外線光を使用すると好ましい。
良好な配向を備えたポリマーフィルムを得るためには,この重合を重合性メソゲ
ン物質の混合物の液晶相でホメオトロピック配向又は傾斜したホメオトロピック配
向状態で行うべきである。したがって,低融点,好ましくは100℃又はそれ以下
の融点を有する重合性混合物を使用すると好ましく,これにより低温で混合物の液
晶相において硬化を行うことができる。これによりまた,重合操作を容易にするこ
とができ,これは大量生産の場合に特に重要である。
ウ 例1Aに示す重合体混合物をシクロペンタノン中に溶解し,ガラス上に塗布
し,窒素雰囲気下に50℃で溶剤を蒸発させた上,窒素雰囲気下に,70mW/c
m 2 の照度を有する紫外線光に5分間さらすことによって硬化させ,3ミクロンの
厚さを有するアニソトロピックポリマーフィルムを形成した。
このポリマーフィルムは,偏光光学顕微鏡下で,光学的に透明であり,垂直入射
で見た場合,複屈折を伴わないメソゲン基のホメオトロピック配向を示し,また,
視角の増大とともに増加する複屈折率を伴う,メソゲン基のホメオトロピック配向
を示した。このホメオトロピック薄膜を有するガラス板を,接着層により広波長帯
域コレステリック薄膜のシートに接着させた。
このホメオトロピック補償膜を使用した場合,全視角にわたり輝度が格別に増大
される。また,補償膜は,補償膜を用いない試料と比較して,角度の増大に従い,
色度差を減少させる。
例2では,2個の重合性官能基を有するメソゲン(化合物⑸)を含む混合物を重
合させて得られるホメオトロピック配向膜を補償膜とした。
2 取消事由1(手続違背)について
⑴ 審判長は,特許無効審判の事件が審決をするのに熟した場合,審判の請求に
理由があると認めるときその他の経済産業省令で定めるときは,審決の予告を当事
者等にしなければならない(特許法164条の2第1項)。上記「経済産業省令で
定めるとき」として,特許法施行規則50条の6の2が規定されている。同条3号
は,同条1号又は2号に掲げる審決の予告をした後であって事件が審決をするのに
熟した場合にあっては,「当該審決の予告をしたときまでに当事者…が申し立てた
理由又は特許法153条第2項の規定により審理の結果が通知された理由(当該理
由により審判の請求を理由があるとする審決の予告をしていないものに限る。)に
よって,審判官が審判の請求に理由があると認めるとき」は,審決の予告をしなけ
ればならない旨規定する。
この規定によれば,先に行われた審決の予告までに当事者が申し立てた理由のう
ち,当該予告において判断が留保され又は有効と判断された理由につき特許を無効
にすべきものと判断する場合のように,「当該理由により審判の請求を理由がある
とする審決の予告をしていない」場合は,実質的に訂正の機会が与えられなかった
ものであり,再度の審決の予告をしなければならない。他方,そうでない場合,す
なわち,先に行われた審決の予告と実質的に同じ内容の理由により特許を無効にす
べきものと判断する場合のように,実質的に訂正の機会が与えられていた場合は,
審判長は,更に審決の予告をする必要はないものと解される。審決予告の制度は,
特許無効審判の審決に対する審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求につき,それに
起因する特許庁と裁判所との間の事件の往復による審理の遅延ひいては審決の確定
の遅延を解消する一方で,特許無効審判の審判合議体が審決において示した特許の
有効性の判断を踏まえた訂正の機会を得られるという利点を確保するために,審決
取消訴訟提起後の訂正審判の請求を禁止することと併せて設けられたものであると
ころ,上記の解釈は,この制度趣旨にかなうものである。
⑵ 第1予告及び第2予告の内容等
ア 第1予告
第1予告で示された認定判断のうち,サポート要件に係る部分は,以下のとおり
である。
(ア) 本件特許に係る発明の課題
「補償膜において,広い視野範囲にわたり,例えば輝度の増大といった光学的性
質を改善すること」,及び「補償膜を構成する重合性液晶組成物を製造するにあた
り,配向,及び重合に高温を要しないものとすること」である。
(イ) 判断
a 「補償膜において,広い視野範囲にわたり,例えば輝度の増大といった光学
的性質を改善する」という課題は,「ホメオトロピック配向または傾斜したホメオ
トロピック配向を有する補償膜」とすることにより解決されるものである。
b 当時の請求項1記載の発明は,「補償膜において,広い視野範囲にわたり,
例えば輝度の増大といった光学的性質を改善する」という課題を解決するものであ
る。
また,当該発明の発明特定事項は全文訂正明細書に記載されている。
したがって,当該発明は,発明の詳細な説明において,発明の課題が解決できる
ことを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえない。
c 当時の請求項4~14記載の発明についても同様である。
d したがって,当時の請求項1,4~14記載の発明は,発明の詳細な説明に
記載されたものではないとはいえない。
イ 第2予告
第1予告を受け,原告は,平成28年2月8日付け訂正請求を行った。第2予告
は,これを受けて行われた。
(ア) サポート要件について
a 当時の請求項1,4~14及び25~32の解決しようとする課題
上記ア(ア)に同じ。
b 当該課題を解決するための手段
「重合性メソゲン物質の混合物の重合あるいは共重合によって得られる少なくと
も1つのアニソトロピックポリマー層がホメオトロピックまたは傾斜したホメオト
ロピック分子配向を有する補償膜,および該補償膜を備えた液晶表示デバイスの提
供」をするものである。
c 判断
(a) 当時の請求項1記載の発明の「式 I」の定義を満たすメソゲンの全てが
「ホメオトロピック又は傾斜したホメオトロピック分子配向を有する補償膜」を好
適に作製できる範囲にあるとは認められない。
当該発明の「式 I」を満たすメソゲンの中には,置換基における炭素数が1つ違
うだけでも,その液晶としての物性が大きく異なる場合が存在しており,メソゲン
の分子量や立体構造や極性基の有無などによっても,その液晶としての物性が大き
く異なることも当業者の技術常識であるから,当時の全文訂正明細書の例1A~例
2において試験された化合物⑴~⑹以外のメソゲンの全てが「ホメオトロピックま
たは傾斜したホメオトロピック分子配向を有する補償膜」を好適に作製できる範囲
にあるとは認められない。
⒝ 当時の請求項4~14及び25~32記載の発明についても同様である。
⒞ したがって,当時の請求項1,4~14及び25~32記載の発明は,発明
の詳細な説明に記載されたものではない。
(イ) 新規性及び進歩性について
a 引用発明の認定
第2予告において認定された甲1記載の発明(以下「甲1の2発明」,「甲1の
3発明」という。)は,以下のとおりである。
(a) 甲1の2発明
偏光板と液晶セルの間に光学補償板として使用できる光学異方フィルムを配置す
る液晶表示素子であって,前記光学異方フィルムは,下記の式(I)の化合物25
重量部,
下記の式(m)の化合物25重量部,
下記の式(a)の化合物50重量部
からなる重合性液晶組成物99重量部と光重合開始材1重量部から成る重合性液
晶組成物を光重合させて得られた,ホモジニアス配向の光学異方フィルムである,
前記液晶表示素子(判決注:上記式(I),(m)及び(a)は,別紙2「引用発
明」記載1のものと同一である。)。
⒝ 甲1の3発明
重合性液晶組成物を光重合させて得られた,光学補償板として使用することがで
きるホメオトロピック配向の光学異方フィルムであって,下記の式(a)の化合物
50重量部,
及び下記の式(d)の化合物50重量部
からなる重合性液晶組成物100重量部と光重合開始剤1重量部からなる重合性
液晶組成物を,2枚のガラス基板の間に挟持させ,ホメオトロピック配向している
ことを確認した後,紫外線を照射して光重合させて得られた,前記光学異方フィル
ム(判決注:上記式(a)及び(d)は,別紙2「引用発明」記載2のものと同一
である。)。
b 当時の請求項14記載の発明について
当時の請求項14記載の発明は,甲1の2発明であるから,特許法29条1項3
号に該当する。
(ウ) 第2予告を受け,原告は,本件訂正請求を行った。
⑶ サポート要件について
ア 本件審決と第2予告は,いずれもサポート要件につき,特許請求の範囲の記
載は,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件訂正発明の課題を解決できると
認識できる範囲のものであるとは認められず,また,その記載や示唆がなくとも当
業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲の
ものであるとも認められないとして,サポート要件に適合しないと判断したもので
ある。
イ 本件訂正発明の解決しようとする課題
(ア) 本件審決が認定した本件訂正発明の解決しようとする課題は,前記第2の
3⑵アのとおりである。また,第2予告が認定した本件訂正発明の解決しようとす
る課題は,前記⑵イ(ア)aのとおりである。
(イ) 本件審決と第2予告がそれぞれ認定した本件訂正発明の解決しようとする
課題は,表現こそ異なるものの,実質的には同じ内容を意味するものと理解される。
ウ 以上によれば,サポート要件との関係では,サポート要件違反により審判の
請求を理由があるとする第2予告の後,原告には実質的に訂正の機会が与えられた
ものといえるから,更に審決の予告をすべき場合には当たらない。
⑷ 新規性及び進歩性について
ア 本件審決及び第2予告において判断の対象とされた新規性・進歩性の判断に
当たり対比される主引用例は,いずれも甲1(引用例)であり,同一である。
イ 引用発明の認定
(ア) 本件審決の認定した引用発明1A及び1Bは,前記第2の3⑶のとおりで
ある。また,第2予告が認定した甲1の2発明及び甲1の3発明は,前記⑵イ(イ)
aのとおりである。
(イ) 引用発明1Bと甲1の3発明とを対比すると,本件審決の認定と第2予告
の認定は同一である。他方,引用発明1Aと甲1の2発明については,本件審決で
は式(N-a)の化合物を含むのに対し,第2予告ではこれを含まない点その他の
点で,液晶表示素子に係る混合物を構成する重合性液晶組成物の一部が相違する。
しかし,甲1を主引用例として認定された引用発明に基づき,新規性又は進歩性
が欠如するとの無効理由により審判の請求を理由があるとする第2予告により,上
記無効理由に関しては,実質的に見て原告に訂正の機会が与えられたものといえる。
よって,新規性及び進歩性との関係では,第2予告の後更に審決の予告をすべき
場合には当たらない。
⑸ まとめ
以上のとおり,本件審決は,第2予告をしたときまでに当事者が申し立てた理由
で,当該理由により審判の請求を理由があるとする審決の予告をしたものを判断の
対象としたものであり,「当該理由により審判の請求を理由があるとする審決の予
告をしていないとき」に該当しないから,第2予告の後更に審決の予告をしなけれ
ばならない場合には当たらない。
したがって,再度の審決の予告をしないまま審決をしたことにつき,本件審決に
違法はない。
⑹ 原告の主張について
ア 原告は,本件審決が認定した本件訂正発明の課題は第2予告で認定されたも
のと異なるなどと主張する。
しかし,本件訂正明細書においては,液晶表示デバイスの補償膜に係る従来技術
及びそれが抱える欠点等につき前記1⑴ア(イ)のとおり説明し,これを受ける形で,
「本発明の課題の一つは」などとして,前記1⑴ア(ウ)のとおり,解決しようとす
る課題及び本件訂正発明がこの課題を解決できる旨が記載されている。本件審決は,
これを踏まえ,本件訂正発明の課題を認定したものと理解される。
他方,第2予告においても,これらと同旨の記載が当時の全文訂正明細書にある
ことを根拠に,発明の課題の認定が行われている。
このことと,第2予告の認定において,「補償膜において,…光学的性質を改善
すること」と「補償膜を構成する…高温を要しないものとすること」とは「及び」
により接続されていることを踏まえると,本件審決と第2予告とがそれぞれ認定し
た発明の課題が異なるものということはできない。
なお,原告は,課題の認定につき,第1予告では,第2予告と同様の認定がされ
ながらサポート要件を満たすものとして通知されていたために,それ以降サポート
要件についての議論はさほどされなかったなどといった経緯から,第2予告のサポ
ート要件違反の理由につき,本件審決において変化する理由は推測できないなどと
指摘する。
しかし,上記のとおり,本件審決と第2予告とで認定した発明の課題が異なると
はいえない上,特許法施行規則50条の6の2第3号に基づく審決の予告と理解さ
れる第2予告においてサポート要件違反とする理由が明確に示され,原告もこれに
対する反論を現に行っていること(甲68-1)に鑑みると,第1予告の内容がど
うであれ,第1予告から第2予告,その後の本件審決へと至る経緯を考慮しても,
本件審決に先立ち,第3の審決の予告を行って原告に主張立証や訂正の機会を与え
なければならないとはいえない。
イ 原告は,本件審決が第2予告で指摘していない式 I の例をサポート要件違反
の根拠とし,また,審尋における質問に対する回答によって一旦解消した問題を不
意打ち的に蒸し返して判断したなどと主張する。
しかし,本件審決が括弧書で示した化合物は,実施例記載の具体的な化合物⑴~
⑹以外のメソゲンが本件訂正発明の課題を解決しないことを説明するための例示に
すぎず,その記載の有無が結論に影響を及ぼすものではない。その意味で,これら
が第2予告において示されていなかったとしても,再度の審決の予告を行い訂正の
機会を与える必要性を裏付けるものとはいえない。
また,原告主張に係る審尋における審判合議体の質問で例示された化合物に関し
ては,「その「重合性基(P)」がアクリレート基であるとした場合に,その「P
-Sp-」の選択肢として,例えば「CH 2 CHCOO-O-(CH 2 ) m -」や
「CH 2CHOO-OCOO-(CH 2 ) m -」のような化学構造のものまでもが本
件第2訂正発明1の範囲に含まれてしまいます。」とされている。他方,本件審決
で例示されたものは,「Pがプロペニルエーテル基又はエポキシ基であり,Spが
-O-CH 2 -C≡CH 2 -O-であり,Xが-O-である場合のメソゲン物質」
(本件訂正発明1)や「Pがプロペニルエーテル基であり,Spが-O-CH 2 -
C≡C-CH 2-O-CH 2-O-COO-CH 2 -CO-S-であり,Xが-O-
である場合のメソゲン物質」(本件訂正発明4,5,7,8,10~14,25~
34),「Pがプロペニルエーテル基であり,Spが-O-CH 2 -O-であり,
Xが-O-である場合のメソゲン物質」(本件訂正発明6)であり,第2予告で例
示された化合物と一致しない。そうである以上,上記「解決済み」との原告の主張
は,その前提を欠く。
ウ 原告は,本件訂正発明に係る好適なホメオトロピック配向の効果の有無を認
定することがないまま審決に至った点で,本件審決には審理不尽があるなどと主張
する。
しかし,本件審決は,本件訂正発明のうち進歩性を欠くとしたものについては,
いずれもその判断において,発明の効果につき「当業者が予測し得る範囲内のもの
である。」旨の判断を示している。そうである以上,本件審決に至る審理において
本件訂正発明の効果に関する検討が行われていないとはいえない。
エ 原告は,第2予告における引用発明が本件審決において別の発明にすり替わ
っており,その変更の理由も述べられていないことと併せ,本件審決には手続違背
があるなどと主張する。
しかし,本件審決における引用発明1Aと第2予告における甲1の2発明とで相
違があるとしても,実質的に見て,第2予告により原告には訂正の機会が与えられ
たものといえることは,前記のとおりである。
オ 原告は,本件訂正発明14につき,第2予告では新規性欠如との理由が示さ
れていたのに対し,本件審決では新規性及び進歩性欠如の理由が示されており,無
効理由が実質上も形式上も一致していないなどと主張する。
しかし,第2予告においても,その当時の訂正発明14につき新規性欠如及び進
歩性欠如がいずれも無効理由として主張され,判断の対象とされていた(甲66)。
このこと及び第2予告後に請求項14の訂正を含む本件訂正請求が行われたことに
鑑みると,審判合議体が審決に当たり新規性についてのみならず進歩性についても
判断を示す必要があると考えたとしても,再度更に審決の予告をして原告に訂正の
機会を与える必要があるとはいえない。
カ 以上のとおり,これらの点に関する原告の主張はいずれも理由がない。
⑺ 小括
したがって,取消事由1は理由がない。
3 取消事由2(サポート要件違反の判断の誤り)について
⑴ 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲
の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,
発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当
該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,発明の詳
細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課
題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもので
ある。そして,サポート要件の存在は,特許権者が証明責任を負うものと解される。
⑵ 本件訂正発明が解決しようとする課題
ア 本件訂正明細書には,前記1⑴ア(イ)及び(ウ)の記載があり,また,本件訂
正発明の具体的な例として,メソゲン化合物⑴~⑷を用いた例1A及び例1B,メ
ソゲン化合物⑸,⑹を用いた例2,メソゲン化合物⑸,⑺,⑻を用いた例3が記載
されている(前記1⑴エ)。
イ これらの記載によれば,本件訂正発明の解決しようとする課題は,「偏光板
の光学的性質を広い視角範囲にわたり増強させ,組立てが容易であり,重合性メソ
ゲン物質の混合物が高融点を示し配向及び重合に高温を要するという欠点を有して
いない補償膜の提供,及びこのような補償膜を備えた液晶表示デバイスの提供」に
あるものと認めるのが相当である。そして,本件訂正発明は,このような課題を解
決するための手段として,特定の構造を有するメソゲン化合物を含む混合物の重合
によって構成されるホメオトロピック配向又は傾斜したホメオトロピック配向を有
する補償膜を用いたものであると認められる。
ウ 原告は,本件訂正発明が解決しようとする課題は,「ホメオトロピック配向
または傾斜したホメオトロピック配向を有する補償膜を提供すること」であって,
高温を要しないことや重合性液晶混合物の融点が低いことは必要条件ではないなど
と主張する。
しかし,「ホメオトロピック配向」とは「アニソトロピックポリマー層の光学対
称軸が層に対して垂直に配向されているか,あるいは本質的に配向されていること」
を,「傾斜したホメオトロピック配向」とは「上記層の光学対称軸が層平面に対し
て90度よりも小さいが,45度よりも大きく,好ましくは60度よりも大きく,
特に75度よりも大きい範囲にあるチルト角を有すること」を意味するものである
(本件訂正明細書4頁14行目~22行目)。補償膜等の光学異方性フィルム(偏
光板)においては,その用途によって,ホメオトロピック配向のほかに,水平方向
(ホモジニアス配向)など,種々の配向のものが用いられることは技術常識である
(甲1-2,25,26等)ことに鑑みれば,本件訂正発明は,単に,ホメオトロ
ピック配向又は傾斜したホメオトロピック配向を有する補償膜を得たものではなく,
式 I に係るスペーサー基など,特定の構造を有するメソゲン化合物を用いて,好適
なホメオトロピック配向又は傾斜したホメオトロピック配向を有する補償膜を提供
することによって,光学的性質の改善や生産性の向上等を図ったものと理解するこ
とが,本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載に沿うものというべきである。
したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。
⑶ 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比
ア 前記のとおり,特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには,
明細書の発明の詳細な説明に,当該発明の課題が解決できることを当業者において
認識できるように記載しなければならない。そして,本件訂正発明におけるメソゲ
ン化合物a,a1,a2を定義する式 I ないし I’は,請求項によってその具体的
内容を多少異にするものの,いずれも当該式を構成する重合性基P,スペーサー基
Sp,結合基X,メソゲン基MG,末端基Rといった基本骨格部分において非常に
多くの化合物を含む表現である上,これらに結合する置換基の選択肢も考慮すれば,
その組合せによって膨大な数の化合物を表現し得るものとなっている。
このような場合に,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合する
ためには,発明の詳細な説明は,上記式が示す範囲と得られる効果との関係の技術
的な意味が,特許出願時において,具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程
度に記載するか,又は,特許出願時の技術常識を参酌して,当該式が示す範囲内で
あれば,所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に,具体例を開示
して記載することを要するものと解するのが相当である。換言すれば,発明の詳細
な説明に,当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる程度に,具体例を開
示せず,特許出願時の当業者の技術常識を参酌しても,特許請求の範囲に記載され
た発明の範囲まで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できる
とはいえない場合,サポート要件に適合するとはいえない。
イ 前記のとおり,本件訂正発明におけるメソゲン化合物a,a1,a2を定義
する式 I ないし I’は,その組合せによって膨大な数の化合物を表現し得るものと
なっている。
他方,本件訂正発明の実施例である例1A~例3においてメソゲン化合物として
用いられている化合物⑴~⑻は,いずれも式 I において,重合性基Pがアクリレー
ト基(CH 2 =CHCOO-),Sp(スペーサー基)が炭素数3又は6個の直鎖
状アルキレン基,Xが-O-,nが1という,化学構造が類似するごく限られた化
合物に限られる。
例えば,重合性基Pがメタクリレート基であるモノマーを含むと安定な配向を得
にくくなる場合が生じてくることが知られている(乙4)。また,例えばスペーサ
ー基Spを構成する(その一部の置換えも含む。)アルキレン基として炭素数が1
の場合と20の場合とでは化合物の特性が大きく異なることが予測されることなど,
配合するメソゲン化合物の化学構造がその配向性や配向膜の特性に影響することは,
現に引用例において様々な構造の化合物につき検討されていることからもうかがわ
れるように,本件優先日当時における当業者の認識であったと考えられる。そうす
ると,本件訂正明細書の発明の詳細な説明における他の記載を参酌しても,補償膜
の調製に用いる混合物につき,上記具体例として示された化合物とは構造が異なる
化合物を成分とする混合物に係る本件訂正発明の範囲にまで拡張ないし一般化した
場合,すなわち本件訂正発明に係る式 I で表される広範な重合性メソゲン化合物の
いずれかを含む混合物とした場合に,これによって,前記認定に係る本件訂正発明
の課題を解決するような補償膜として好適なフィルムが得られるとはいえない。
したがって,本件訂正明細書の発明の詳細な説明に開示されている内容からは,
本件特許の特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発
明であり,本件訂正発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとは
いえない。そのように認識できる範囲のものというべき本件特許出願時の技術常識
を認めるに足りる証拠もない。
ウ 本件訂正発明の解決しようとする課題のうち,「高融点を示し配向および重
合に高温を要するという欠点を有していない」点について,本件訂正明細書の発明
の詳細な説明には,「低融点,好ましくは100℃またはそれ以下,特に60℃ま
たはそれ以下の融点を有する重合性混合物を使用すると好ましく,これにより低温
で混合物の液晶相において硬化を行うことができる。…60℃以下の硬化温度は特
に好ましい。」との記載がある。加えて,実施例(例1A)には,基板に塗布し,
50℃で溶剤を蒸発させることによってホメオトロピック配向膜を得られることが
示されている。もっとも,「高温を要するという欠点」を回避し得る融点を具体的
に特定する記載はない。
他方,本件訂正明細書で液晶の配向に高温を要する例として掲げたJP05-1
42531(乙1)の【化2】で表される化合物について,引用例には,「108
~211℃という非常に高い温度範囲でネマチック相を示し,実際にこの化合物を
含有する重合性組成物を液晶状態で重合して作製した光学異方フィルム(カラー偏
光板)は外観も不均一であり,むらが生じる欠点があった。」と記載されている。
また,本件訂正明細書で同様に「高融点を有し,従って配向および重合に高温を要」
するものとして例示された Heynderickx, Broer 等の刊行物(乙2)に記載されて
いる‘Scheme 1’の化合物については,引用例にも,「一般式(R-2)において,
R 5 がメチル基の化合物80重量部及びR 5 が水素原子の化合物20重量部から成
る液晶組成物は,80~121℃と室温よりかなり高い温度範囲でネマチック層を
示し,また予期しない熱重合に起因してこのような重合性液晶組成物を用いて作製
される光学異方フィルムのメソゲンの配向が不均一となるという欠点があった。」
と記載されている。ところが,これらの化合物はいずれも,本件訂正発明に係る式
I で定義される広範な化合物に含まれるのであって,本件訂正明細書の内部でいわ
ば記載内容に矛盾を生じている。
そうすると,本件訂正発明に係る式 I で定義されるメソゲン化合物を含む混合物
は,その全てが本件訂正発明の課題を解決し得る「高融点を示し配向および重合に
高温を要するという欠点を有していない」ものとはいえない。その点からも,本件
訂正明細書の発明の詳細な説明に開示されている内容からは,本件特許の特許請求
の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明であり,本件訂正
発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとはいえず,また,その
ように認識できる範囲のものというべき本件特許出願時の技術常識を認めるに足り
る証拠もない。
エ 小括
以上より,本件訂正発明は,いずれも発明の詳細な説明に記載されたものとはい
えない。
オ 原告の主張について
(ア) 前記のとおり,本件訂正発明の解決しようとする課題に関する原告の主張
は採用できないから,これを前提とするサポート要件に関する判断の誤りに係る原
告の主張は採用できない。
(イ) 原告は,融点が80℃以下程度の液晶組成物を用いると,「作製される光
学異方フィルムのメソゲンの配向が不均一となる」とする引用例の記載につき,
「配向が不均一」であることはホメオトロピック配向にならないことを意味しない
などと主張する。
しかし,仮に原告が主張するように「配向が不均一」とはホメオトロピック配向
にならないことを意味するものではなく,場所場所で不均一である状態を意味する
ものであったとしても,補償膜等の光学異方フィルムとして均一な光学特性が求め
られることは技術常識であり,配向が不均一となることによって膜の透明性が損な
われれば,これと組み合わせて用いる偏光板の光学的性質を広い視覚にわたり増強
するとの本件訂正発明の課題を解決しないことは明らかである。
(ウ) 原告は,本件審決がホメオトロピック分子配向を有する補償膜を好適に作
製できる範囲にあるとは認められないとして例示した化合物は,技術常識からは通
常あり得ない置換基の組合せに基づくものばかりであるなどと主張する。
しかし,例示に係る化合物が通常あり得ない置換基の組合せに基づくものばかり
であるとする具体的な理由は示されていないし,当該例示につき審尋に対する原告
の回答によって既に解消した問題点であるとはいえないことは,前記のとおりであ
る。
(エ) 以上のとおり,この点に関する原告の主張は採用できない。
⑷ 小括
したがって,本件訂正発明は,いずれも発明の詳細な説明に記載されたものであ
るとはいえないから,これらの発明に係る特許は,サポート要件を満たしていない。
これと同旨の本件審決の判断に誤りはなく,取消事由2は理由がない。
4 結論
よって,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由がないからこ
れを棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 高 部 眞 規 子
裁判官 杉 浦 正 樹
裁判官 片 瀬 亮
(別紙1)
特許請求の範囲
1.液晶セルおよび少なくとも1枚の補償膜または偏光板と少なくとも1枚の補
償膜を有する光学補償板との組合せを含む液晶表示デバイスであって,該補償膜は
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1個または
2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも2種
のメソゲン75~99重量%を
b)開始剤
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,
の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物の重合あるいは共重合によって得られる少なくとも
1つのアニソトロピックポリマー層を含み,上記アニソトロピックポリマー層がホ
メオトロピックまたは傾斜したホメオトロピック分子配向を有することを特徴とす
る,前記液晶表示デバイス。
4.液晶セルおよび少なくとも1枚の補償膜または偏光板と少なくとも1枚の補
償膜を有する光学補償板との組合わせを含む液晶表示デバイスであって,該補償膜
は
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,―CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノであるか,あるいは独立して,
P-(Sp-X) n -について示されている意味の一つを有する,
で表される化合物から選択される,少なくとも1個の重合性官能基を有する少な
くとも1種のメソゲンを
b)開始剤
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,
の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物の重合あるいは共重合によって得られる少なくとも
1つのアニソトロピックポリマー層を含み,上記アニソトロピックポリマー層がホ
メオトロピックまたは傾斜したホメオトロピック分子配向を有することを特徴と
し,補償膜が2枚または3枚以上のアニソトロピックポリマー層を含み,これらの
層の少なくとも1枚がホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピック配向
を有する複合補償膜であることを特徴とし,
該重合性メソゲン物質の混合物が,本質的に
a1)1個の重合性官能基を有する少なくとも1種の式 I および II に従うメソ
ゲンを15~85重量%,
a2)2個または3個以上の重合性官能基を有する少なくとも1種の式 I および
II に従うメソゲンを10~80重量%,
b)開始剤を0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物を0~20重
量%,および
d)安定剤を0~1000ppm
からなることを特徴とする,
前記液晶表示デバイス。
5.液晶セルおよび少なくとも1枚の補償膜または偏光板と少なくとも1枚の補
償膜を有する光学補償板との組合わせを含む液晶表示デバイスであって,該補償膜
は
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1個または
2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,―CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,少なくとも1個の重合性官能基を有する少な
くとも1種のメソゲンを
b)開始剤
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,
の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物の重合あるいは共重合によって得られる少なくとも
1つのアニソトロピックポリマー層を含み,上記アニソトロピックポリマー層がホ
メオトロピックまたは傾斜したホメオトロピック分子配向を有することを特徴と
し,補償膜が2枚または3枚以上のアニソトロピックポリマー層を含み,これらの
層の少なくとも1枚がホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピック配向
を有する複合補償膜であることを特徴とし,
複合補償膜の少なくとも1層が,これらの層の少なくとも1つの別の層の光学対
称軸とは異なる配向の光学対称軸を有することを特徴とし,
該重合性メソゲン物質の混合物が,本質的に
a1)1個の重合性官能基を有する少なくとも2種の式 I および II に従うメソ
ゲンを75~99重量%,
b)開始剤を0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物を0~20重
量%,および
d)安定剤を0~1000ppm
からなることを特徴とする,
前記液晶表示デバイス。
6.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有す
る少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
A)
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~3個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH-,
-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO-,-
CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-CH=
CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,メソゲン基またはメソゲン支持基であり,この基は好ましくは,下記式
II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,P-(Sp-X) n-について示されている意味の一つを有する,
で表される化合物から選択される,少なくとも2個の重合性官能基を有する少な
くとも1種のメソゲンを
b)開始剤,
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物を,少なくとも1つの基板上に層形態で塗布し,
B)この混合物を,ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピック配向
に配向させ,
C)この混合物を熱または活性照射線にさらすことによって重合させ,
D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも1回以上反復し,次
いで,
E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または両方を取り除く,ことに
よって得られることを特徴とする,前記補償膜。
7.少なくとも1つの基板がプラスティックフィルムであることを特徴とする,
請求項6に記載の補償膜。
8.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有す
る少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
A)
a)式 I’
P-(Sp-X) n-MG-R I’
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,メソゲン基またはメソゲン支持基であり,この基は好ましくは,下記式
II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも1種
のメソゲン,
および
式I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~3個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH-,
-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO-,-
CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-CH=
CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,P-(Sp-X) n-について示されている意味の一つを有する,
で表される化合物から選択される,2個または3個以上の重合性官能基を有する
少なくとも1種のメソゲンを
b)開始剤,
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物を,少なくとも1つの基板上に層形態で塗布し,
B)この混合物を,ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピック配向
に配向させ,
C)この混合物を熱または活性照射線にさらすことによって重合させ,
D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも1回以上反復し,次
いで,
E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または両方を取り除く,ことに
よって得られることを特徴とする,前記補償膜。
9.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有す
る少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
A)
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1個または
2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上CH 2 基はまたそ
れぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも2種
のメソゲン75~99重量%を
b)開始剤,
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,の存在下において含有する重合性メソゲン物質の混
合物を,少なくとも1つの基板上に層形態で塗布し,
B)この混合物を,ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピック配向
に配向させ,
C)この混合物を熱または活性照射線にさらすことによって重合させ,
D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも1回以上反復し,次
いで,
E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または両方を取り除く,ことに
よって得られることを特徴とする,前記補償膜。
10.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
該補償膜が,
A)
a1)式 I’
P-(Sp-X) n-MG-R I’
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個の
CH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,メソゲン基またはメソゲン支持基であり,この基は好ましくは,下記式
II’に従い選択され:
-(A1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II’
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも1種
のメソゲン15~85重量%,および
a2)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~3個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH-,
-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO-,-
CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-CH=
CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,メソゲン基またはメソゲン支持基であり,この基は好ましくは,下記式
II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,P-(Sp-X) n-について示されている意味の一つを有する,
で表される化合物から選択される,少なくとも2個の重合性官能基を有する少な
くとも1種のメソゲン10~80重量%を
b)開始剤0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物0~20重
量%,および
d)安定剤0~1000ppm,の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物を,少なくとも1つの基板上に層形態で塗布し,
B)この混合物を,ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピック配向
に配向させ,
C)この混合物を熱または活性照射線にさらすことによって重合させ,
D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも1回以上反復し,次
いで,
E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または両方を取り除く,こと
によって得られ,
該重合した材料が,三次元網状構造体を形成していることを特徴とする,前記補
償膜。
11.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
A)
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
てこの基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個の
CH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,メソゲン基またはメソゲン支持基であり,この基は好ましくは,下記式
II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノであるか,あるいは独立して,
P-(Sp-X) n -について示されている意味の一つを有する,
で表される化合物から選択される,少なくとも1個の重合性官能基を有する少な
くとも1種のメソゲンを,
b)開始剤
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物を,配向層を担持しない少なくとも1つの基板上に
層形態で塗布することにより,ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピ
ック配向に配向させ,
C)この混合物を熱または活性照射線にさらすことによって重合させ,
D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも1回以上反復し,次
いで,
E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または両方を取り除く,ことに
よって得られることを特徴とする,前記補償膜。
12.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
該補償膜が,
A)
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノであるか,あるいは独立して,
P-(Sp-X) n -について示されている意味の一つを有する,
で表される化合物から選択される,少なくとも1個の重合性官能基を有する少な
くとも1種のメソゲンを
b)開始剤,
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物を,少なくとも1つの基板上に層形態で塗布し,
B)この混合物を,ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピック配向
に配向させ,
C)この混合物を熱または活性照射線にさらすことによって重合させ,
D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも1回以上反復し,次
いで,
E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または両方を取り除く,ことに
よって得られ,
該重合性メソゲン物質の混合物が本質的に下記成分からなることを特徴とする,
前記補償膜:
a1)1個の重合性官能基を有する少なくとも1種の式 I および II に従うメソ
ゲンを15~85重量%,
a2)2個または3個以上の重合性官能基を有する少なくとも1種の式 I および
II によるメソゲンを10~80重量%,
b)開始剤を0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物を0~20重
量%,および
d)安定剤を0~1000ppm。
13.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
A)
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1個または
2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも2種
のメソゲンを
b)開始剤,
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,
の存在下において含有する重合性メソゲン物質の混合物を,少なくとも1つの基
板上に層形態で塗布し,
B)この混合物を,ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピック配向
に転向させ,
C)この混合物を熱または活性照射線にさらすことによって重合させ,
D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも1回以上反復し,次
いで,
E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または両方を取り除く,ことに
よって得られることを特徴とし,
重合性メソゲン物質の混合物が,本質的に下記成分からなることを特徴とする前
記補償膜:
a1)1個の重合性官能基を有する少なくとも2種の式 I および II に従うメソ
ゲンを75~99重量%,
b)開始剤を0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物を0~20重
量%,および
d)安定剤を0~1000ppm。
14.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜の調製に用いられ
るための重合性メソゲン物質の混合物であって,
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,メソゲン基またはメソゲン支持基であり,この基は好ましくは,下記式
II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノであるか,あるいは独立して,
P-(Sp-X) n -について示されている意味のーつを有する,
で表される化合物から選択される,少なくとも1個の重合性官能基を有する少な
くとも1種のメソゲン,
b)開始剤
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤
を含む,前記混合物。
25.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
該補償膜が,
A)
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノであるか,あるいは独立して,
P-(Sp-X) n -について示されている意味の一つを有する,
で表される化合物から選択される,少なくとも 1 個の重合性官能基を有する少な
くとも1種のメソゲンを
b)開始剤,
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物を,配向層を担持しない少なくとも1つの基板上に
層形態で塗布することにより,ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピ
ック配向に配向させ,
C)この混合物を熱または活性照射線にさらすことによって重合させ,
D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも1回以上反復し,次
いで,
E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または両方を取り除く,ことに
よって得られ,
該重合性メソゲン物質の混合物が本質的に下記成分からなることを特徴とする,
前記補償膜:
a1)1個の重合性官能基を有する少なくとも1種の式 I および II に従うメソ
ゲンを15~85重量%,
a2)2個または3個以上の重合性官能基を有する少なくとも1種の式 I および
II によるメソゲンを10~80重量%,
b)開始剤を0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物を0~20重
量%,および
d)安定剤を0~1000ppm。
26.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
該補償膜が
A)本質的に
a1)式 I’
P-(Sp-X) n-MG-R I’
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II’に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II’
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1個または
2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも1種
の式 I’および II’に従うメソゲン15~85重量%,および
a2)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~3個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH-,
-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO-,-
CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-CH=
CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,P-(Sp-X) n-について示されている意味の一つを有する,
で表される化合物から選択される,2個または3個以上の重合性官能基を有する
少なくとも1種の式 I および II によるメソゲンを10~80重量%
b)開始剤0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物0~20重
量%,および
d)安定剤0~1000ppmからなる,
重合性メソゲン物質の混合物を,少なくとも1つの基板上に層形態で塗布し,
B)この混合物を,ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピック配向
に配向させ,
C)この混合物を熱または活性照射線にさらすことによって重合させ,
D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも1回以上反復し,次
いで,
E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または両方を取り除く,ことに
よって得られ,
重合した材料が,三次元網状構造体を形成していることを特徴とする,前記補償
膜。
27.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
該補償膜が,
A)
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1個または
2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも2種
のメソゲンを
b)開始剤,
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,
の存在下において含有する重合性メソゲン物質の混合物を,配向層を担持しない
少なくとも1つの基板上に層形態で塗布することにより,ホメオトロピック配向ま
たは傾斜したホメオトロピック配向に配向させ,
C)この混合物を熱または活性照射線にさらすことによって重合させ,
D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも1回以上反復し,次
いで,
E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または両方を取り除く,ことに
よって得られることを特徴とし,
重合性メソゲン物質の混合物が,本質的に下記成分からなることを特徴とする前
記補償膜:
a1)1個の重合性官能基を有する少なくとも2種の式 I および II に従うメソ
ゲンを75~99重量%,
b)開始剤を0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物を0~20重
量%,および
d)安定剤を0~1000ppm。
28.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
該補償膜が,
A)
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1個または
2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも2種
のメソゲンを,
b)開始剤
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物を,少なくとも1つの基板上に層形態で塗布し,
B)この混合物を,ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピック配向
に配向させ,
C)この混合物を熱または活性照射線にさらすことによって重合させ,
D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも1回以上反復し,次
いで,
E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または両方を取り除く,ことに
よって得られることを特徴とし,
重合性メソゲン物質の混合物が,下記成分を含有することを特徴とする前記補償
膜:
a1)1個の重合性官能基を有する少なくとも2種の式 I および II に従うメソ
ゲンを75~99重量%,
b)開始剤を0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物を0~20重
量%,および
d)安定剤を0~1000ppm。
29.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜の調製に用いられ
るための,重合性メソゲン物質の混合物であって,
該補償膜が,
A)
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,メソゲン基またはメソゲン支持基であり,この基は好ましくは,下記式
II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノであるか,あるいは独立して,
P-(Sp-X) n -について示されている意味の一つを有する,
で表される化合物から選択される,少なくとも1個の重合性官能基を有する少な
くとも1種のメソゲンを,
b)開始剤
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物を,配向層を担持しない少なくとも1つの基板上に
層形態で塗布することにより,ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピ
ック配向に配向させ,
C)この混合物を熱または活性照射線にさらすことによって重合させ,
D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも1回以上反復し,次
いで,
E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または両方を取り除く,ことに
よって得られることを特徴とする,
前記混合物。
30.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜の調製に用いられ
るための重合性メソゲン物質の混合物であって,
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1個または
2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも2種
のメソゲン75~99重量%,
b)開始剤
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤
を含む,前記混合物。
31.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜の調製に用いられ
るための重合性メソゲン物質の混合物であって,
a1)式 I’
P-(Sp-X) n-MG-R I’
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II’に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II’
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1個または
2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも1種
のメソゲン,および
a2)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~3個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH-,
-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO-,-
CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-CH=
CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,メソゲン基またはメソゲン支持基であり,この基は好ましくは,下記式
II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,P-(Sp-X) n-について示されている意味の一つを有する,
で表される化合物から選択される,2個または3個以上の重合性官能基を有する
少なくとも1種のメソゲン,
b)開始剤,
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤
を含む,前記混合物。
32.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜の調製に用いられ
るための重合性メソゲン物質の混合物であって,
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1個または
2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも2種
のメソゲン75~99重量%,
b)開始剤0.01~5重量%
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物0~20重
量%,および
d)安定剤0~1000ppmを含む,
前記混合物。
33.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜の調製に用いられ
るための重合性メソゲン物質の混合物であって,本質的に
a)式 I’
P-(Sp-X) n-MG-R I’
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II’に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II’
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1または2
個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも1種
の式 I’および II’に従うメソゲン15~85重量%,
a2)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~3個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH-,
-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO-,-
CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-CH=
CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,P-(Sp-X) n-について示されている意味の一つを有する,
で表される化合物から選択される,2個または3個以上の重合性官能基を有する
少なくとも1種の式 I および II によるメソゲンを10~80重量%,
b)開始剤を0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物を0~20重
量%,および
d)安定剤を0~1000ppm。
からなることを特徴とする,
前記混合物。
34.ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有
する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜の調製に用いられ
るための重合性メソゲン物質の混合物であって,本質的に,
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1個または
2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも2種
のメソゲン75~99重量%,
b)開始剤0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物0~20重
量%,および
d)安定剤0~1000ppm,
からなることを特徴とする,前記混合物。
(別紙2)
引用発明
1 引用発明1A
偏光板と液晶セルの間に光学補償板として使用できる光学異方フィルムを配置
する液晶表示素子であって,前記光学異方フィルムは,下記の式(I)の化合物1
5重量部,
下記の式(m)の化合物15重量部,
下記の式(a)の化合物30重量部,
及び下記の式(N-a)の化合物40重量部,
からなる重合性液晶組成物99重量部と光重合開始剤1重量部からなる重合性
液晶組成物を光重合させて得られた,ツイステッドネマチック配向の光学異方フィ
ルムである,前記液晶表示素子。
2 引用発明1B
重合性液晶組成物を光重合させて得られた,光学補償板として使用することが
できるホメオトロピック配向の光学異方フィルムであって,下記の式(a)の化合
物50重量部,
及び下記の式(d)の化合物50重量部
からなる重合性液晶組成物100重量部と光重合開始剤1重量部からなる重合
性液晶組成物を,2枚のガラス基板の間に挟持させ,ホメオトロピック配向してい
ることを確認した後,紫外線を照射して光重合させて得られた,前記光学異方フィ
ルム。
(別紙3)
一致点・相違点
1 本件訂正発明4
本件訂正発明4と引用発明1Aの一致点・相違点は,以下のとおりである。
⑴ 一致点
液晶セルおよび少なくとも1枚の補償膜または偏光板と少なくとも1枚の補償膜
を有する光学補償板との組合わせを含む液晶表示デバイスであって,該補償膜は
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,―CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノであるか,あるいは独立して,
P-(Sp-X) n -について示されている意味の一つを有する,
で表される化合物から選択される,少なくとも1個の重合性官能基を有する少な
くとも1種のメソゲンを
b)開始剤
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,
の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物の重合あるいは共重合によって得られる少なくとも
1つのアニソトロピックポリマー層を含み,
該重合性メソゲン物質の混合物が,本質的に
a1)1個の重合性官能基を有する少なくとも1種の式 I および II に従うメソ
ゲンを15~85重量%,
b)開始剤を0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物を0~20重
量%,および
d)安定剤を0~1000ppm
からなる,前記液晶表示デバイス。
⑵ 相違点
ア 相違点2
本件訂正発明4は「a2)2個または3個以上の重合性官能基を有する少なくと
も1種の式 I および II に従うメソゲン」を「10~80重量%」の範囲で含むの
に対して,引用発明1Aはそのような「2個または3個以上の重合性官能基を有す
るメソゲン」を含むものではない点。
イ 相違点3
本件訂正発明4は「アニソトロピックポリマー層」が「ホメオトロピックまたは
傾斜したホメオトロピック分子配向」を有するのに対して,引用発明1Aは「ツイ
ステッドネマチック配向」を有するものである点。
ウ 相違点4
本件訂正発明4は「補償膜が2枚または3枚以上のアニソトロピックポリマー層
を含み,これらの層の少なくとも1層がホメオトロピック配向または傾斜したホメ
オトロピック配向を有する複合補償膜である」ことを特徴とするのに対して,引用
発明1Aは,このような特徴を有するものではない点。
2 本件訂正発明6
本件訂正発明6と引用発明1Bの一致点・相違点は,以下のとおりである。
⑴ 一致点
ホメオトロピック分子配向または傾斜したホメオトロピック分子配向を有する少
なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
A)
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~3個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,さらに,1個のCH 2 基または隣接していない2個のCH 2 基が,
-O-,-S-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-
CO-,-O-COO-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,
-CH(CN)-,-CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていても
よく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,メソゲン基またはメソゲン支持基であり,この基は好ましくは,下記式
II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rを有する,
で表される化合物から選択される,重合性官能基を有する少なくとも1種のメソ
ゲンを
b)開始剤,
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物を,少なくとも1つの基板上に層形態で配置し,
B)この混合物を,ホメオトロピック配向または傾斜したホメオトロピック配向
に配向させ,
C)この混合物を熱または活性照射線にさらすことによって重合させ,
D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも1回以上反復し,次
いで,
E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または両方を取り除く,ことに
よって得られる,前記補償膜。
⑵ 相違点
ア 相違点6
本件訂正発明6は,式 I で表される化合物のSpが「少なくとも1個のCH 2基
を残すことを条件」とし,なおかつ「Rは,P-(Sp-X) n -について示され
ている意味の一つを有する」という「少なくとも2個の重合性官能基を有する少な
くとも1種のメソゲン」を含むのに対して,引用発明1Bはそのような「少なくと
も2個の重合性官能基を有するメソゲン」を含むものではない点。
イ 相違点7
重合性メソゲン物質の混合物の「配置」が,本件訂正発明6では「塗布」である
のに対し,引用発明1Bでは「挟持」である点。
3 本件訂正発明7
本件訂正発明7と引用発明1Bは,相違点6及び7に加え,以下の相違点8にお
いて相違する。
相違点8:本件訂正発明7は,少なくとも1つの基板が「プラスティックフィル
ム」であるのに対し,引用発明1Bは,その点につき,明らかでない点。
4 本件訂正発明8
本件訂正発明8と引用発明1Aとの一致点・相違点は,以下のとおりである。
⑴ 一致点
少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
A)
a)式 I’
P-(Sp-X) n-MG-R I’
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,メソゲン基またはメソゲン支持基であり,この基は好ましくは,下記式
II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも1種
のメソゲンを,
b)開始剤,
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,の存在下において含む,
を特徴とする,前記補償膜。
⑵ 相違点
相違点3のほか,以下の相違点9及び10において相違する。
ア 相違点9
本件訂正発明8は「式 I…で表される化合物から選択される,2個または3個以
上の重合性官能基を有する少なくとも1種のメソゲン」を含むのに対して,引用発
明1Aはそのような「2個または3個以上の重合性官能基を有するメソゲン」を含
むものではない点。
イ 相違点10
本件訂正発明8は「A)重合性メソゲン物質の混合物を,少なくとも1つの基板
上に層形態で塗布し,B)この混合物を,ホメオトロピック配向または傾斜したホ
メオトロピック配向に配向させ,C)この混合物を熱または活性照射線にさらすこ
とによって重合させ,D)必要に応じて,工程A),B)およびC)を少なくとも
1回以上反復し,次いで,E)必要に応じて,重合した材料から基板の一方または
両方を取り除く,ことによって得られる」のに対して,引用発明1Aは,これら
A)~E)の製造方法により補償膜という物の発明を特定するものではない点。
5 本件訂正発明10
本件訂正発明10と引用発明1Aの一致点・相違点は,以下のとおりである。
⑴ 一致点
少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
該補償膜が,
A)
a1)式 I’
P-(Sp-X) n-MG-R I’
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個の
CH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,メソゲン基またはメソゲン支持基であり,この基は好ましくは,下記式
II’に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II’
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも1種
のメソゲン15~85重量%を
b)開始剤0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物0~20重
量%,および
d)安定剤0~1000ppm,の存在下において含む,
重合性メソゲン物質の混合物を配向させた,前記補償膜。
⑵ 相違点
相違点3及び10のほか,以下の相違点12及び13において相違する。
ア 相違点12
本件訂正発明10は「a2)式 I…で表される化合物から選択される,少なくと
も2個の重合性官能基を有する少なくとも1種のメソゲン」を「10~80重
量%」の範囲で含むのに対して,引用発明1Aはそのような「少なくとも2個の重
合性官能基を有するメソゲン」を含むものではない点。
イ 相違点13
本件訂正発明10は「重合した材料が,三次元網状構造体を形成」するのに対し
て,引用発明1Aは,三次元網状構造体を形成するものとして特定されていない
点。
6 本件訂正発明12
本件訂正発明12と引用発明1Aの一致点・相違点は,以下のとおりである。
⑴ 一致点
少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
該補償膜が,
A)
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノであるか,あるいは独立して,
P-(Sp-X) n -について示されている意味の一つを有する,
で表される化合物から選択される,少なくとも1個の重合性官能基を有する少な
くとも1種のメソゲンを
b)開始剤,
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤,の存在下において含み,
該重合性メソゲン物質の混合物が本質的に下記成分からなる,前記補償膜:
a1)1個の重合性官能基を有する少なくとも1種の式 I および II に従うメソ
ゲンを15~85重量%,
b)開始剤を0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物を0~20重
量%,および
d)安定剤を0~1000ppm。
⑵ 相違点
相違点2,3及び10において相違する。
7 本件訂正発明14
本件訂正発明14と引用発明1Aの一致点・相違点は,以下のとおりである。
⑴ 一致点
少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜の調製に用いられる
ための重合性メソゲン物質の混合物であって,
a)式 I
P-(Sp-X) n-MG-R I
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,メソゲン基またはメソゲン支持基であり,この基は好ましくは,下記式
II に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレ
ン-2,6-ジイル基であり,これらの基は全部が未置換であるか,あるいは1個
または2個以上のハロゲン,シアノまたはニトロ基により,あるいは炭素原子1~
7個を有するアルキル基,アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されてい
てもよく,これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換
されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノであるか,あるいは独立して,
P-(Sp-X) n -について示されている意味のーつを有する,
で表される化合物から選択される,少なくとも1個の重合性官能基を有する少な
くとも1種のメソゲン,
b)開始剤
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤
を含む,前記混合物。
⑵ 相違点
相違点15:本件訂正発明14は「ホメオトロピック分子配向または傾斜したホ
メオトロピック分子配向を有する少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を
含む補償膜の調製に用いられるため」の重合性メソゲン物質の混合物であるのに対
して,引用発明1Aは「ツイステッドネマチック配向を有するアニソトロピックポ
リマー層を含む補償膜の調製に用いられるため」の混合物である点。
8 本件訂正発明26
本件訂正発明26と引用発明1Aの一致点・相違点は,以下のとおりである。
⑴ 一致点
少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜であって,
該補償膜が
A)本質的に
a1)式 I’
P-(Sp-X) n-MG-R I’
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II’に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II’
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1個または
2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも1種
の式 I’および II’に従うメソゲン15~85重量%
b)開始剤0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物0~20重
量%,および
d)安定剤0~1000ppmからなる,
重合性メソゲン物質の混合物を配向させた,前記補償膜。
⑵ 相違点
相違点12,3及び10において相違する。
9 本件訂正発明31
本件訂正発明31と引用発明1Aの一致点・相違点は,以下のとおりである。
⑴ 一致点
少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜の調製に用いられる
ための重合性メソゲン物質の混合物であって,
a1)式 I’
P-(Sp-X) n-MG-R I’
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II’に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II’
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1個または
2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも1種
のメソゲン,
b)開始剤,
c)必要に応じて,2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合
物,および
d)必要に応じて,安定剤
を含む,前記混合物。
⑵ 相違点
相違点9及び3において相違する。
10 本件訂正発明33
本件訂正発明33と引用発明1Aの一致点・相違点は,以下のとおりである。
⑴ 一致点
少なくとも1つのアニソトロピックポリマー層を含む補償膜の調製に用いられる
ための重合性メソゲン物質の混合物であって,本質的に
a)式 I’
P-(Sp-X) n-MG-R I’
式中,
Pは,重合性基であり,
Spは,炭素原子1~20個を有する直鎖状または分枝鎖状アルキレン基であっ
て,この基中,少なくとも1個のCH 2 基を残すことを条件として,さらに,1個
のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基が,-O-,-S-,-NH
-,-N(CH 3 )-,-CO-,-O-CO-,-S-CO-,-O-COO
-,-CO-S-,-CO-O-,-CH(ハロゲン)-,-CH(CN)-,-
CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよく,
Xは,-O-,-S-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCOO-また
は単結合であり,
nは,1であり,
MGは,下記式 II’に従い選択され:
-(A 1 -Z1 ) m -A 2-Z2 -A 3 - II’
(式中,
A 1,A 2およびA 3 は相互に独立して,1,4-フェニレン基であり,この基中
に存在する1個または2個以上のCH基はまた,Nにより置き換えられていてもよ
く,あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり,この基中に存在する1個のCH
2 基または隣接していない2個のCH 2 基はまた,Oおよび(または)Sにより置
き換えられていてもよく,あるいは1,4-シクロヘキセニレン基であり,これら
の基は全部が未置換であるか,あるいは1個または2個以上のハロゲン,シアノま
たはニトロ基により,あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基,アルコキシ
基またはアルカノイル基により置換されていてもよく,これらの基中の1または2
個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく,
Z 1 およびZ 2 はそれぞれ独立して,-COO-,-OCO-,-CH 2 CH 2
-,-OCH 2 -,-CH 2 O-,-CH=CH-,-C≡C-,-CH=CH-
COO-,-OCO-CH=CH-または単結合であり,そして
mは,0,1または2である),そして
Rは,25個までの炭素原子を有するアルキル基であり,この基は未置換である
か,あるいは1個または2個以上のハロゲンまたはCNにより置換されており,こ
の基中に存在する1個のCH 2 基または隣接していない2個以上のCH 2 基はまた
それぞれ相互に独立して,酸素原子が相互に直接結合しない様相で,-O-,-S
-,-NH-,-N(CH 3 )-,-CO-,-COO-,-OCO-,-OCO
-O-,-S-CO-,-CO-S-または-C≡C-により置き換えられていて
もよく,あるいはRはまた,ハロゲンまたはシアノである,
で表される化合物から選択される,1個の重合性官能基を有する少なくとも1種
の式 I’および II’に従うメソゲン15~85重量%,
b)開始剤を0.01~5重量%,
c)2個または3個以上の重合性官能基を有する非メソゲン化合物を0~20重
量%,および
d)安定剤を0~1000ppm。
からなる,
前記混合物。
⑵ 相違点
相違点12及び3において相違する。
(別紙4)
化学式・図面等目録
1 化学式
⑴
⑵
2 図面
⑴ 図4
⑵ 図5
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