ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成29(ワ)849 意匠権侵害差止等請求事件
裁判所 | 請求棄却 大阪地方裁判所 |
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裁判年月日 | 平成31年3月28日 |
事件種別 | 民事 |
当事者 | 被告有限会社シーガル |
法令 |
意匠権 意匠法4条2項4回 意匠法37条1項1回 意匠法29条1回 意匠法24条2項1回 |
キーワード | 意匠権13回 実施11回 新規性9回 無効8回 侵害7回 無効審判3回 差止2回 |
主文 | 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。事 実 及 び 理 由15第1 請求 1 被告は,原告に対し,1077万5660円及びこれに対する平成29年3月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,別紙「被告物件目録」記載のアイコスケースを製造し,販売してはならない。20 3 被告は,その本店,営業所及び構造に存する同目録記載のアイコスケース及びその半製品を破棄し,同アイコスケースの製造に必要な模型を除去せよ。第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,後記本件意匠権を有する原告が,後記被告各製品を販売している被告に25対し,後記被告各製品の販売が後記本件意匠権を侵害するとして,意匠法37条1項に基づき被告各製品の製造販売の差止め,同条2項に基づき被告各製品の破棄等を請求し,意匠権侵害の不法行為に基づき,損害の賠償及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年3月28日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲証拠又は弁論の全趣旨により容易5に認められる事実)(1) 当事者等ア 原告は,衣料品,日用品雑貨の販売及び輸出入等を目的とする株式会社である(甲1)。イ 被告は,業として,装飾装身具の製造及び製品の企画,販売等をしてい10る有限会社である。(2) 本件意匠権についてア 原告は,次の意匠権(以下「本件意匠権」といい,その登録に係る意匠を「本件意匠」という。)を保有しており,その構成は,別紙「本件意匠及び被告意匠の構成」に【本件意匠】として掲げられているとおりである(甲4の3)。15登録番号 第1557315号出願日 平成28年6月20日出願番号 意願2016-013111登録日 平成28年7月29日意匠に係る物品 電子タバコケース20イ 本件意匠権に係る意匠公報には,次のような説明が記載されている(甲4の1)。(ア) 意匠に係る物品の説明本願意匠に係る物品は,加熱式電子タバコ収納用の電子タバコケースである。本物品に適用される電子タバコは,専用紙巻タバコを喫煙用加熱ホルダーにセ25ットして電気加熱して喫煙に供する方式のものである。(イ) 意匠の説明本願意匠は,六面図及び参考斜視図(注:添付省略)に示す如く,大小2つの収納部を重ねた構造を成し,背面側の大型収納部には喫煙用加熱ホルダーを挿入して充電する携帯用充電器を収納し,正面側の小型収納部には喫煙用ホルダーにセットする専用紙巻きタバコのパッケージを収納する。背面部の上端を正面まで延5長して成るベルトの先端の金属製バックルは,小型収納部の正面板内に内蔵した磁石に吸着して着脱可能に固定される。なお,底面中央に設けた孔は,大型収納部に収納した状態の携帯用充電器のコネクタに電源アダプタの充電ケーブルを接続するためのものである。また,大型収納部の左側面に設けた窓部は,携帯用充電器の充電量表示部を外部から視認可能とするためのものである。10(3) IQOSについてア 平成28年4月当時,既に加熱式電子タバコであるIQOS(iQOSと表記されることもあるが,本判決では「IQOS」と表記する。)が販売されていた。イ 使用方法(甲3,乙7の1,乙8)(ア) 喫煙する時15IQOS専用たばこスティックをホルダーに挿入し,ホルダーの電源ボタンを長押しすると加熱が始まり,約20秒間経過すると,喫煙することができる。そして,一定の時間が経過するか,決められた回数吸い込むと,自動的に電源がオフになる。その後,たばこスティックをホルダーから取り出し,廃棄する。20なお,たばこスティックは箱(パッケージないしカートリッジ。以下「タバコパッケージ」という。)に入れられて販売されている。(イ) ホルダーとポケットチャージャーの充電上記(ア)のとおり,使用者が喫煙するに当たって電気を使用するため,その使用者は,ホルダーを予めポケットチャージャー(以下「携帯用充電器」というこ25とがある。)に装填し,約4分間,充電する必要がある。そして,そのポケットチャージャー自体も充電しておく必要があり,ポケットチャージャーには,USBケーブル接続端子が設けられており,それを使用してポケットチャージャーを充電する(フル充電時にはホルダーを20回程度充電できる。)。その側面にはディスプレイが設けられており,ポケットチャージャーの充電中にはその充電状態を示すディスプレイに白色ライトが点滅し,充電が完了したら白色ライトが点灯し,故障の可5能性があるときは赤色ライトが点灯する。また,それとは別に,ホルダーの充電状態を示すディスプレイも設けられており,充電中は白色ライトが点滅し,充電が完了すると白色ライトが点灯し,ホルダーの充電が必要な場合は赤色ライトが点灯する。なお,喫煙して,ホルダーから使用済みのたばこスティックを取り出した後は,10ホルダーをポケットチャージャーに戻すことになっている。(ウ) ホルダーのメンテナンスIQOSのユーザーガイド(乙8の10頁)では,「最適な性能を維持して安定した味わいを楽しむために,たばこスティックを20本使用するごとにホルダーのクリーニングをしてください。」と記載してある。15そのクリーニングには,IQOSクリーナーブラシ(以下,単に「クリーナー」という。)又はIQOSクリーニングスティックを使用することとされており,クリーナーは,加熱ブレード用ブラシとキャップ用ブラシが一体となった物で,中心をつまみ,両端を引くと2つのブラシに分かれる構造となっている。(エ) タバコパッケージと携帯用充電器の形状等20タバコパッケージの長辺にはたばこスティックの取出口があり,そこを開口してたばこスティックを取り出す。また,携帯用充電器は,上部の半分が開口する形状となっており,そこにホルダーを挿入して使用する。携帯用充電器は,タバコパッケージと横幅はほぼ同じであるが,タバコパッケージよりも縦に長い形状をしている(甲3の2参照)。25(4) 原告による原告製品の販売等についてア 原告は,平成28年5月8日から,本件意匠の実施品である電子タバコケース(IQOS専用のケースで,商品名「iQOS Case」)(以下「原告製品」という。)を楽天市場内で運営するウェブショップ「デザインカバー工房」にて販売している(甲5,乙3)。イ 原告は,平成28年5月30日付けで意匠の登録出願(意願2016-5011081)をし,その際,新規性喪失の例外証明書提出書を提出するとともに,それに同月31日付けの新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書を添付した。この証明書には,原告製品は原告が楽天市場内で運営するウェブショップ「デザインカバー工房」にて同月8日より販売しており,最初の受注は同月9日である旨10が記載されている。そして,本件意匠の登録出願は意匠法4条2項の規定の適用を受けようとすることを願書に明記してされ,原告は,同年6月20日,新規性喪失の例外証明書提出書を提出するとともに,上記証明書を援用した(甲4の1,乙2,3)。(5) 被告の行為及び被告各製品について15ア 被告は,遅くとも平成28年7月10日から,別紙「被告物件目録」記載のアイコスケース(以下,各製品をまとめて「被告各製品」といい,各製品を同別紙の番号により「被告製品1」などという。)を販売しており,これは本件意匠に係る物品である電子タバコケースに相当する。したがって,被告各製品の物品は本件意匠に係る物品と同一である(乙35,48)。20イ 被告各製品の構成は,別紙「本件意匠及び被告意匠の構成」に【別紙物件目録1】ないし【別紙物件目録6】(それぞれ,被告製品1ないし6に対応している。)として掲げられているとおりである(以下,被告各製品の意匠を「被告意匠」といい,それぞれの製品の意匠を製品の番号により「被告意匠1」などという)。25 3 争点(1) 被告意匠は本件意匠に類似するか(争点1)(2) 本件意匠は意匠登録無効審判により無効にされるべきものか(争点2)(3) 被告による先使用権の成否(争点3)(4) 本件意匠権侵害の不法行為による原告の損害額(争点4)第3 争点に関する当事者の主張5 1 争点1(被告意匠は本件意匠に類似するか)について(原告の主張)(1) 本件意匠及び被告意匠の構成態様について本件意匠の構成態様は,別紙「本件意匠の構成態様」の「原告の主張」欄,被告意匠の構成態様は,別紙「被告意匠の構成態様」の「原告の主張」欄記載のとお10りである。(2) 本件意匠の要部について本件意匠の需要者は,意匠のデザイン全体に注目するほか,電子タバコケースはベルト通し等にぶら下げて持ち歩くことが想定されていることから,特に正面視を重視する。そして,周知又は公知意匠(甲6の1,乙1の3ないし9,乙40の153ないし9)を参酌すると,本件意匠の要部は,少なくとも,次のとおりである。なお,仮にこれらが公知になっていたとしても,要部とは需要者の注意を惹きつける部分であるから,これらが要部になる。ア 上段にタバコパッケージと同じ大きさの小型収納部を設け,下段に携帯用充電器と同じ大きさの大型収納部が設けられていること。20イ 背面の生地を正面中心部まで伸長させた半楕円形であり,かつ,幅が小型収納部の幅よりも狭いベルトが設置されていること。(3) 本件意匠と被告意匠の類否についてア 本件意匠と被告意匠は,いずれも上段にタバコパッケージと同じ大きさの小型収納部を設け,下段に携帯用充電器と同じ大きさの大型収納部が設けられて25いるほか,ベルトが背面の生地を正面中心部まで伸長させた半楕円形であり,かつ,幅が小型収納部の幅よりも狭い。このように,両意匠は,要部において共通しているし,その美感はいずれも単純で無駄がなく,その点でも共通している。イ 被告の主張について確かに,被告意匠の小型収納部は,本件意匠と異なり,底面部に位置しているが,小型収納部の設置位置は容易に改変できる軽微な差異であり,その位置を底5面部にそろえることによって機能に差が生じるにすぎず,美感に差異は生じない。また,被告はベルトの金属製の留め具の差異を指摘しているが,需要者がベルトについて惹かれるのは,その形状が中心であり,その留め具は磁石による開閉を容易にする機能を保持させるためのものにすぎず,金属製の留め具が付いているか否かは,美感に差異を生じさせるものではない。10さらに,被告が使用した生地は既に存在しているものをそのまま使用したものにすぎず,その模様や色彩を新たに造ったわけではないから,それらが美感に差異を生じさせるものではない。ウ 以上より,本件意匠と被告意匠は類似している。(被告の主張)15(1) 本件意匠及び被告意匠の構成態様について本件意匠の構成態様は,別紙「本件意匠の構成態様」の「被告の主張」欄,被告意匠の構成態様は,別紙「被告意匠の構成態様」の「被告の主張」欄記載のとおりである。IQOSの物品の性質及び使用態様からは,IQOSを定期的にクリーナーで清掃するこ20とが求められるのであり,需要者としても,そのクリーナーを持ち歩けるか否かは,注意を惹きやすい部分であるから,被告各製品の小型収納部にクリーナーを収納できる点は基本的構成態様となる。また,そのような構成態様とすることで,本件意匠とデザイン性が大きく異なるほか,IQOSが取り出しやすく,ケースのみで直立させることができ,使用態様からしても,上記点は基本的構成態様となる。25(2) 本件意匠の要部について本件意匠に係る物品及び被告各製品は,どちらも電子タバコ(IQOS)用のケースであるから,購入者の各コメント(甲7ないし12)を参酌すると,その需要者が製品の選択に当たって注意を払う点は,製品の外観であり,また特に正面視にあるものと考えられる。そのため,本件意匠の要部は大型収納部と小型収納部の位置関係を中心とした正面視及び側面視にあり,これを前提に全体として美感の共通性5を判断することとなる。そして,本件意匠は平成28年6月20日に出願されたものであるが,別紙「引用意匠」記載のとおり,本件意匠の登録出願前において本件意匠と同一又は類似するデザインの電子タバコケースが,既に複数,インターネットを通じて出品され,一般消費者向けに販売されていた(以下,各意匠を同別紙の番号により「引用意匠101」などという。)。後記争点2のとおり,本件意匠は引用意匠1及び2と同一であり,引用意匠3ないし9と類似であるから,本件意匠の意匠登録には無効理由があるが,仮にこのうち原告が本件意匠の実施品であり,新規性喪失の例外であると主張する引用意匠1及び2を除き,引用意匠3ないし9において具備されている各要素(別紙「引用意匠」の各欄参照)を考慮すると,仮に本件意匠に新規な創作部分15を認める場合には,大型収納部と小型収納部の位置関係,すなわち,大型収納部と小型収納部の底部がそろっておらず,一方で両収納部の開口部の位置が同一に設置されて,正面及び側面から観察した際に段をなす構造となっている点である。(3) 本件意匠と被告意匠の類否についてア 本件意匠及び被告意匠の差異点は,以下のとおりである。20(ア) 基本的構成態様における差異点① 本件意匠は大型収納部と小型収納部の設置位置が,開口部の高さをそろえてあるのに対し,被告意匠は両収納部の底面の位置をそろえていることでクリーナーも収納できる点② 背面部に設置されているケース本体を吊り下げるための部品の形状25(イ) 具体的構成態様における差異点① 本件意匠が背面から伸長されるベルトの先端近く(ケースの中央部分)に金属製の留め具が設置されている一方,被告意匠のベルト表面にはいかなる留め具も設置されていない点② 本件意匠の背面は平坦である一方,被告意匠の背面にはベルト通しが設置されている点5イ 上記(2)記載のことを踏まえると,本件意匠と被告意匠の構成態様に共通点があることによって,両意匠が類似しているとの判断にはならない。一方,両意匠の差異点である大型収納部と小型収納部の設置位置の相違(基本的構成態様に係る差異点①)に関し,正面及び側面から観察した場合,本件意匠は中央部分が段差状に高くなっているのに対し,被告意匠は,全体的に長方形状をして10おり,よりシンプルな印象を与える。また,本件意匠の大小の収納部が形成する段差は,本件意匠の中央部分の一番注目を集める部分にあり,また意匠全体に占める割合についても小さくない。さらに,本件意匠においては,各収納部の取り出し口(収納口)の高さが同じであり,小型収納部にはタバコパッケージが収納してあることから,大型収納部に携帯用充電器を収納したままホルダーを取り出すことは容15易でない。以上によれば,上記差異点が与える印象は両意匠の共通点が有する美感を凌駕するものであるため,両意匠は類似しないものといえる。また,両意匠の具体的構成態様に係る差異点①は,既に公知となっていた意匠であるが,本件意匠の要部の一つが正面視であることに鑑みれば,この差異が需要者をして注目を惹く点となり得るし,また金属製の留め具はケース中心で非常に目立20つ場所に設置されていることから,需要者の注目を惹きやすく,上記差異は両意匠が非類似であることを示している。ウ 予備的主張本件意匠の生地は一般的な動物の皮を模した生地であり,本件意匠そのものの構造が与える美感にとって大きな影響を与えるものではない。一方で,被告意匠252ないし6は,それぞれデニム,ダイヤ,ハート,バラの花及び鋲(スタッズ)のキルティングないし柄付の生地を用いて製作されており,これらの生地はいずれも特徴的で,また意匠の全体に係るものであるから,被告意匠2ないし6そのものの構成態様が与える美感にも大きな影響を与える。したがって,仮に被告意匠1が本件意匠と類似と判断される場合であっても,被告意匠2ないし6は本件意匠とは全く異なる生地を用いていることによって,両意5匠の共通点を凌駕する程度に別異性が認められるというべきであるから,それらの意匠と本件意匠との類似性は認められない。エ 以上より,本件意匠と被告意匠(少なくとも被告意匠2ないし6)は非類似である。 2 争点2(本件意匠は意匠登録無効審判により無効にされるべきものか)につ10いて(被告の主張)(1) 引用意匠1ないし9はいずれも本件意匠の登録出願時に公知であり,いずれもその物品は電子タバコ(IQOS)用のケースで,別紙「引用意匠」の内容等を踏まえると,引用意匠1及び2は本件意匠と同一であるし,引用意匠3ないし9は本15件意匠と類似する。なお,原告はベルトの差異を指摘しているが,それは要部及び基本的構成態様に関するものではなく,むしろそれらの意匠には金属の留め具が付されるなどしているから,本件意匠と同様の美感を有している。また,正面視及び背面視において長方形状の立体構造である点,大小2つの収納部を重ねた構造である点並びに背面部の上部を正面まで伸長させたベルトを備えて20いる点の基本的構成態様を同一にする。そして,原告が要部として指摘する本件意匠の構成は引用意匠においても備えられており,本件意匠はその引用意匠の構成を単純に組み合わせただけのものである。乙15ないし18には,ベルトの先端が背面部よりも細くなっている製品や,収納部の下方の両端(四隅)に孔が開いているスマートフォン用ケースが複数掲載さ25れている。IQOSのケースを作成する業者(当業者)は,特にIQOSのケースの製造販売を専門としているわけではなく,被告と同様に,スマートフォンを含む様々な電化製品のカバーを製造販売しているのが一般的である。したがって,被告同様,スマートフォン用のカバーをIQOS用のカバーに転用することは当業者であれば誰でも思いつくことであり,IQOS用のカバーを上記のようなものとすることは,公然知られた形状にありふれた手法によって造形することに他ならず,創作非容易性を欠く。5以上より,本件意匠はその出願時点において新規性又は創作非容易性を欠くものであるから,無効とされるべきものである。(2) 原告は引用意匠1及び2に係る商品は自らが販売したものであるとして,意匠法4条2項が適用されると主張しているが,不知又は否認し,争う。引用意匠1及び2に係る商品は,ヤフーオークションにおいて出品されていたが,10原告が特許庁に提出した証明書には,同オークションで販売を行ったとする記載はなく,各出品は第三者がしたものである。そして,意匠法4条2項は,真に意匠の権利者の手によって直接的に当該意匠が公知に至った場合にのみ適用されるべき規定であり,第三者の関与がある場合には,同条1項による新規性喪失の例外の申請がある場合を除き,同条2項の適用は否定15されるべきである。ところが,本件意匠について,同条1項による新規性喪失の例外の申請はされていない。(原告の主張)(1) 被告の主張は否認し,争う。(2) 新規性喪失の例外20引用意匠1及び2は本件意匠と同一であるが,それに係る商品はいずれも原告が出品者に販売したものである。したがって,それらの引用意匠が公開されたのは,原告の行為に起因するものであるから,意匠法4条2項が適用される。(3) 本件意匠が引用意匠3ないし9と類似していないことア 引用意匠3,5及び7の正面のベルトは,背面部と同じ幅であるのに対25し,本件意匠の正面のベルトは,背面部よりも細くなっている。また,引用意匠3及び7は正面部に紐が付いているのに対し,本件意匠は紐が付いていない。そして,引用意匠3は,IQOS専用の紙巻きタバコパッケージを左側から収納するものであるのに対し,本件意匠は上部から収納する。それら以外にも差異点があり,要部において差異があることになるから,引用意匠3,5及び7は,本件意匠の「おしゃれ」,「かっこいい」という美感と共通しない。したがって,上記各引用意匠は,本件意5匠と類似しない。イ 本件意匠では,背面の生地を正面中心部まで伸長させた半楕円形であり,かつ,幅が小型収納部の幅よりも狭いベルトが設置されている。これに対し,引用意匠4は,上部から正面中心部まで伸長したベルトの形状が,本件意匠と異なり,三つ編みのような形になっている。また,引用意匠6及び9は,10正面中心部まで伸長したベルトの幅が,本件意匠と異なり,小型収納部の幅と同じである。さらに,引用意匠8は,正面中心部まで伸長したベルトの形状が,本件意匠と異なり,ひし形となっている。なお,金属の留め具は要部でない。以上のようにベルトに関する差異があるところ,ベルトに関する差異は要部に関する差異である上に,基本的構成態様に関するものであるから,本件意匠と上記各15引用意匠は美感を異にしており,類似しない。ウ 以上より,本件意匠と引用意匠3ないし9は,類似しない。(4) 創作の非容易性があること本件意匠に係る当業者は,電子タバコケースを製造したり販売したりする者であり,スマートフォンのケースを製造販売する業者はこれに含まれない。そして,20本件意匠のベルトは半楕円形であり,かつ幅が小型収納部の幅よりも狭く,ベルト自体は長方形型であり,平坦であるが,引用意匠3ないし9を組み合わせても本件意匠のベルトの形状が形成されることはない。本件意匠は原告が自ら作成したものであり,公知意匠には本件意匠に類するものはなく,容易に創作することができる意匠の例にも当たらない。25したがって,創作の非容易性が認められる。(5) 以上より,本件意匠は意匠登録無効審判により無効にされるべきものではない。 3 争点3(被告による先使用権の成否)について(被告の主張)(1) 被告意匠を独自開発したこと5被告意匠は,被告及び中国における製造業者が試行錯誤を重ねて創作したものであり,本件意匠に接することなく,独自に開発したものである。ア すなわち,IQOSが販売された際に,被告代表者は,携帯電話ホルダー等の小物入れを改良して,IQOSのケースを制作することができると考え,中国の製造業者に委託していた製品の一つである携帯電話のケース(乙11)をIQOSのケース10用として流用することを計画した。そして,被告は,平成28年5月4日から同月7日まで,中国を訪れ,中国の製造業者(シャインカラー社)といかなるIQOSのケースを作成するかについて協議した。協議においては,実際の使い勝手を考慮し,2つの収納部を別々又は左右とするのではなく,大型収納部の上に小型収納部を設置する現在のデザインとした。この15ようなデザインとしたのは,中国におけるスマートフォンの携帯電話用ケースでは大型収納部の上に小型収納部を設置するデザインがあり(乙15),被告においても,同様の携帯電話用ケースの販売を計画していたため,このデザインを流用しようと考えたからであった。ただ,上記のような経緯をたどったため,乙15のデザインに倣い,被告各製品の背面側にはベルト通しが設置されている。20また,クリーナーを正面側収納部に収納し,タバコパッケージを取りやすくする構造にするため,2つの収納部の開口部の高さは一致させないこととした。次に,背面からのベルトについては,中国の製造業者がブラックベリー用ケースのデザイン(乙17)を有していたこと,被告のメイン商品がベルト付きの手帳型スマートフォンケース(乙18,50)であり,メイン商品とデザイン的に関連付25けたかったため,これらの商品に倣ってベルトを着けることとした。以上の協議を踏まえ,被告は,中国の製造業者に対し,IQOSケースの見本品(サンプル)を作成するように依頼した。イ 中国の製造業者は,上記協議を踏まえ,試作品を作成するなどして小型収容部の大きさ,設置位置,底面の空間部分の大きさなどについて様々な工夫をし,同年6月15日,IQOSケースの見本品を被告に提示した。これに対し,被告は,外5ポケット(小型収納部)を底部まで下げるように要望するとともに,裏生地を被告でメイン商品となっていたスマートフォンケース(乙18,50)に合わせて欲しい旨を要望した。また,被告は,これらの修正を踏まえたIQOSケースについて,ライチ柄14色で,それぞれ100個の,合計1400個を発注した。そして,中国の製造業者は,同月17日,被告の指示を踏まえたIQOSケースの製10品を作成した。当該製品は,被告の意図したとおりのものであったので,被告は,インターネット等でアップして販売の準備をするために,ライチ柄の14色の製品について,各色最低1個ずつ受け取り,日本に持ち帰った。(2) 本件意匠の登録出願前に日本国内で被告意匠の実施である事業ないし事業の準備をしたこと15原告は,平成28年6月20日に,本件意匠の登録出願を行ったが,上記(1)のとおり,被告は同月15日には,被告各製品の発注を中国の製造業者に行っていた。また,被告は同月18日には,羽田空港において,被告のホームページの作成,受発注の管理をする会社との間で,IQOSケースのインターネット上での販売に向けて協議をするとともに,同月19日には,訴外株式会社IMP(以下「IMP社」と20いう。)の社長と協議の上,一部の製品について「OKAYAMA DENIMU」とのマークを付けて売ることにし,被告各製品を40個販売(譲渡)した。その後,同月28日,中国の製造業者は被告各製品を完成させ,同月30日に日系商社を通じ,被告に対して被告各製品を発送するとともに,請求書を送付した。そして,同年7月1日には輸入許可がおり,被告は後日これを受領し,同月上旬に25は,被告各製品をホームページにアップして,その販売を開始した。以上のとおり,原告が本件意匠の登録出願をした同年6月20日の時点で,既に被告意匠に係る製品が出来上がっており,1400個という量産の発注も行っていたこと,加えて,その製品を日本に持ち帰り(これは輸入に当たる。),日本国内の業者と,その後の展開についての相談を行い,被告各製品を販売していたから,既にその意匠に関する製品の製造を実施し,また販売に係る事業の即時実施の意図を5有しており,その意図が客観的に認識される程度に表明されていたものといえる。(3) 以上より,被告は,被告意匠について,先使用権に基づく通常実施権を有する。(原告の主張)(1) 被告の主張は否認し,争う。10(2) 本件意匠は,平成28年5月8日に楽天市場で公開されたところ,被告意匠は本件意匠のデットコピーであり,中国の現状等に加え,一般的に製品を販売する際には,他の業者の販売価格を参考にすることに照らせば,被告代表者は本件意匠を知っていたと強く推認できる。また,被告は,同年6月20日の時点では,製造,譲渡,使用,輸入等をしてお15らず,実際に被告各製品の販売を開始したのは,同年7月1日以降である。そのため,被告が日本国内において,意匠の即時実施の意図を有し,かつ,その意図が客観的に認識される態様,程度において表明されたのは,同日以降であった。したがって,被告は,同年6月20日時点では,「現に日本国内においてその意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業をしている者」にも「事業の準備をしている者」20にも当たらない。 4 争点4(本件意匠権侵害の不法行為による原告の損害額)について(原告の主張)原告は,平成28年5月8日から,原告製品を販売しており,同年6月末までは,その売上げが順調に伸びていた。しかし,被告が同年7月頃から,被告各製品の販25売を始めたことから,売上げが下がってしまった。同年6月の売上げは378万4800円であったところ,同額を前提に,同年7月から同年12月までの売上減少額を計算すると,合計1539万3800円であった。そして,原告の利益率は売上額の7割であるから,本件意匠権侵害の不法行為による原告の損害は,1077万5660円である。(被告の主張)5原告の主張は不知又は否認し,争う。仮に原告に損害が発生したとしても,被告意匠と類似する意匠の商品や,本件意匠とは異なる意匠の多様なIQOSケースが販売されており,被告の行為のみによって,原告主張の損害が発生したものではないから,被告の行為と原告の損害との間には因果関係がない。第4 当裁判所の判断10 1 争点1(被告意匠は本件意匠に類似するか)について(1) 登録意匠とそれ以外の意匠との類否の判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされており(意匠法24条2項),この類否の判断は,両意匠を全体的に観察することを要するが,意匠に係る物品の用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,当該意匠に係る物品15の看者となる需要者が視覚を通じて注意を惹きやすい部分を把握し,この部分を中心に対比した上で,両意匠が全体的な美感を共通にするか否かによって類否を決するのが相当であると解される。(2) 本件意匠の構成態様前提事実記載のとおり,本件意匠の構成は,別紙「本件意匠及び被告意匠の構20成」に【本件意匠】として掲げられているとおりである。そして,これによると,本件意匠の構成態様は,別紙「本件意匠の構成態様」の「裁判所の認定」欄記載のとおりと認めるのが相当である。この点について,原告と被告は,ともに本件意匠の基本的構成態様として2つの収納部の開口部の位置(高さ)が同じであることを挙げ,また,原告はベルトの具25体的形状を基本的構成態様としているが,基本的構成態様とは,意匠を大つかみに把握した全体的な骨格であるから,本件意匠の基本的構成態様としては,前記のとおり認定するのが相当である。(3) 本件意匠の要部ア 本件意匠に係る物品である電子タバコケースの用途,使用態様等本件意匠権に係る意匠公報における「意匠に係る物品の説明」及び「意匠の5説明」によれば,本件意匠に係る物品である電子タバコケースは,加熱式電子タバコを収納するためのケースであり,その需要者は,加熱式電子タバコの使用者(喫煙者)と認められる。この電子タバコは,専用紙巻タバコを喫煙用加熱ホルダーにセットして電気加熱して喫煙に供する方式のものであり,このうち専用紙巻タバコはタバコパッケージ10に入れられており,また喫煙用加熱ホルダーは充電のために携帯用充電器に挿入される。そして,電子タバコケースには,タバコパッケージと携帯用充電器が収納され,需要者は外出時等には,これらを収容した電子タバコケースをズボンのベルトや鞄等に取り付けて,持ち歩くことになるものと認められる。15以上のような使用態様に照らせば,本件意匠に係る物品である電子タバコケースの需要者は,主として,本件意匠の正面視から見た意匠に注目するものと考えられる。イ 公知意匠(ア) 引用意匠1及び2について20引用意匠1が本件意匠と同一の意匠であることにつき当事者間に争いがないが,これは株式会社UJ-FACTORYが平成28年5月17日に,ヤフーオークションに出品した商品に係る意匠であるところ(乙1の1の1,5,40の1の1),同社は原告に対して同月18日に原告製品を注文しており(甲17),それに先立って原告がサンプルを渡したこと(弁論の全趣旨),落札が終了したのは同月19日である25ことを踏まえると,上記出品された商品は原告が同社に対して販売した原告製品であると推認される。そうすると,引用意匠1は原告の行為に起因して公開されたものと認められるから,新規性喪失の例外に関する意匠4条2項の趣旨に照らせば,引用意匠1を本件意匠の要部認定に当たって参酌することは許されないというべきである。なお,被告は同項について,真に意匠の権利者の手によって直接的に当該意匠が公知に至った場合にのみ適用されるべき規定であるなどと主張しているが,5同項の「起因して」という文言に照らし,採用できない。また,引用意匠2も本件意匠と同一の意匠であることにつき当事者間に争いがないが,これは「reborn2009_k_k_k」というIDを有する者が同年6月2日に,ヤフーオークションに出品した商品に係る意匠である(乙1の2の1,40の2の1)。同オークションの出品者情報からは,この出品者がどこの業者であるのか確認でき10ないようだが,「リボーン」という屋号で個人事業を営んでいる者が同月1日に原告製品を注文しており(甲18),上記出品された商品は原告が同人に対して販売した原告製品であると推認される。したがって,引用意匠2についても,本件意匠の要部認定に当たって参酌することは許されないというべきである。(イ) 甲6記載の意匠について15甲6記載の各意匠(本件意匠を除く。以下同じ。)の登録日は不明であるが,いずれも本件意匠の構成態様とは相当異なっているから,次の引用意匠3ないし9以上に参酌する必要があるとは認められない。(ウ) 引用意匠3ないし9についてa 引用意匠3ないし9は,本件意匠の登録出願がされた平成28年620月20日よりも前にヤフーオークションに出品された商品に係る意匠であり,いずれの商品もIQOSのケースとして販売されたものであるから,本件意匠に係る物品である電子タバコケースに相当する。また,いずれも大まかに言えば,その輪郭が長方形状で,携帯用充電器とタバコパッケージを大小の重ね合わせた収納部に分けて収納し,背面部の上端を正面まで伸長させたベルトを備えるタイプの商品に係る意25匠であるから,本件意匠の基本的構成態様を概ね備えているといえる(以上につき,乙1の3ないし9,乙40の3ないし9)。b そして,これらの引用意匠を本件意匠と対比すると,その差異点と共通点は,別紙「本件意匠と引用意匠の対比」のとおりである。(エ) 乙15ないし18について被告はスマートフォンのケースの意匠である乙15ないし18も参酌すべ5きである旨主張しているが,スマートフォンと電子タバコとでは厚みや大きさが異り,それに応じてケース全体の視覚的印象も異なるから,上記の引用意匠3ないし9以上にそれらを公知意匠として参酌する必要があるとは認められない。ウ 本件意匠の要部について(ア) 前記認定・判示によれば,本件意匠の基本的構成態様は,概ね引用意10匠3ないし9にも見られるものであるが,本件意匠は,各収納部がそこに収納されるタバコパッケージや携帯用充電器の幅や高さとほぼ同じ大きさとされており,その結果,電子タバコケース全体として,無駄のない細身の長方形となっている。また,外観からタバコパッケージや携帯用充電器がほぼ見えないため,きちんと収納されているという印象も受けることになり,これらによりスマートでシンプルとい15う印象を生じさせている。これに対し,引用意匠3ないし9は,一部の方向からの写真しかないため,受ける印象が異なり得るものの,同じ長方形でも全体的に大きく,厚みもあるという印象を感じざるを得ない。そして,このような印象の相違が生じる原因としては,前記認定の各収納部の大きさの差異があることがうかがわれる。また,引用意匠3ないし9では,小型収納部又は大型収納部の双方又は一部が20そこに収納されるバッケージや携帯用充電器全体を覆う形態となっておらず,ベルトを装着した状態でも,外観からタバコパッケージや携帯用充電器の相当な部分が見えるものがあるところ,そのような形態であることによって,ケースとしてのスマートさやシンプルさを感じにくくなっていると認められる。さらに,引用意匠3ないし9には,本件意匠のように,背面部の上端を正面まで25伸長させたベルトについて,その幅が絞り込まれながら大半均一で,小型収納部の幅よりも細くなっており,かつ,伸長が正面中心部までとなっているものは見当たらない。そして,本件意匠は,この構成に加え,輪郭が細長状の長方形状になっていることにより,細長状の大型収納部,それより小さい小型収納部,さらに幅の細いベルトが上側で3層に重なり,ベルトにより両収納部の正面が覆われず,ベルトの幅が大半均一で平坦であることから,前記の無駄のない細身の長方形状と合わさ5って,全体としてスマートでシンプルな印象を与えるものとなっている。これに対し,引用意匠3ないし9のうち,ベルトの幅が背面部の幅と同じであるもの(引用意匠3,5ないし7及び9)については,正面の全部又は上側が幅広のベルトで覆われるために,全体としてのっぺりとした印象を与えるものとなっている。また,引用意匠8は,ベルトが底部まで伸長している上,先端の尖ったギザギザ様の形状10になっていることから,装飾的な印象が生じ,本件意匠のようなシンプルな印象は生じず,引用意匠4は,ベルトの幅や長さは本件意匠とほぼ同様であるが,2本の細い革を編み込んだ形状になっていることから装飾性が強く,やはり本件意匠のようなシンプルな印象は生じない。以上からすると,本件意匠は,各収納部がそこに収納されるタバコパッケージや15携帯用充電器の幅や高さとほぼ同じ大きさとされているとともに,背面部の上端を正面まで伸長したベルトについて,その幅が絞り込まれながら大半均一で,小型収納部の幅よりも細くなっており,かつ,伸長が正面中心部までとなっている点に主たる特徴があるといえ,この構成が主たる要部であると認めるのが相当である。(イ) また,本件意匠では,小型収納部の底部が大型収納部の底部よりも上20側に設置されており,正面視及び側面視において段をなし,それに対応して,大型収納部と小型収納部の開口部の高さがほぼ同じである点(すなわち,小型収納部が大型収納部の上部側に設けられている点)も,引用意匠3ないし9には見られない点である。もっとも,両収納部が段をなしているものは引用意匠5,7及び9にも見られるから,前記(ア)で述べた点に比べると特徴性は弱いが,それらの引用意匠で25は底部の高さの差は小さく,小型収納部の開口部は大型収納部の開口部のやや下にある点で本件意匠と異なっており,本件意匠は上記引用意匠よりもやや不安定な印象を生じている。したがって,この点も副次的には本件意匠の要部と認めるのが相当である。そして,これら以外の点は,引用意匠3ないし9にも見られる点や,引用意匠3ないし9と大きな相違のない点であるから,要部であるとは認められない。5(ウ) 原告の主張について原告は,小型収納部の設置位置は軽微な差異であるから,その点は要部に含まれないものとしている。しかし,上記のとおり,この点の本件意匠3ない9の構成は引用意匠の構成とも異なるものであり,それにより印象に与える影響があることは否定できないし,需要者が注目する正面部の意匠に係る形態であるから,副10次的ではあっても要部に当たると認めるのが相当である。(エ) 被告の主張について被告は,本件意匠に引用意匠と異なる新規な創作部分を認めるとすると,大型収納部と小型収納部の底部がそろっておらず,一方で両収納部の開口部の位置が同一の高さに設置されている点であると主張する。しかし,先に主たる要部とし15て認定した点は,先に述べたとおり引用意匠3ないし9には見られない大きな特徴であり,それによりその引用意匠には見られないスマートでシンプルであるとの印象を与えるものであるから,上記の点は副次的な特徴にとどまるというべきである。また,被告は,ベルトの先端近くに金属製の留め具が設置されていることが本件意匠の要部になると主張している。しかし,前記認定のとおり,背面部の上端を正20面中心部まで伸長させて形成したベルトの表面の先端近くに金属製の留め具が設置されたものは公知意匠として見られるし,本件意匠の金属製の留め具は,引用意匠3,4及び6ないし9における金属製の留め具と対比すると,大きさは小さく,それ自体に装飾も施されていないから,その形状が特徴的ともいえない。そして,前記判示のとおり,金属製の留め具が設置されているベルトの形状自体が本件意匠の25要部になることも考えると,金属製の留め具を本件意匠の要部とみることはできない。また,被告は,本件意匠を正面視した場合には,どこにタバコパッケージが入っているかは分からないとして,各収納部の大きさは要部とならないと主張している。しかし,各収納部は,本件意匠に係る物品である電子タバコケースにおいて,正面視した場合に大きな面積を占める部分であるから,その大きさが本件意匠の美感に5与える影響は大きいというべきであるし,需要者がタバコパッケージ等を出し入れする際に着目する部分であるから,使用態様の面からしても,各収納部の大きさが印象に与える影響は小さくない。また,本件意匠の各収納部の大きさが引用意匠3ないし9との印象の相違の原因と考えられることは前記のとおりである。したがって,被告の上記主張は採用できない。10(4) 被告意匠の構成態様前提事実記載のとおり,被告意匠の構成は,別紙「本件意匠及び被告意匠の構成」に【別紙物件目録1】ないし【別紙物件目録6】として掲げられているとおりである。そして,これによると,被告意匠の構成態様は,別紙「被告意匠の構成態様」の「裁判所の認定」欄記載のとおりと認めるのが相当である。15この点について,被告は,被告意匠の基本的構成態様として,小型収納部にクリーナーを収納できることを主張しているが,「構成態様」とはあくまでも意匠に係る形態のことをいうところ,被告主張の上記事項は実際上の使用態様を踏まえた主張になっており,構成態様の主張として適切とはいえず,被告主張の点は前記認定の構成態様を前提とした類否の判断において検討するのが相当である。20(5) 本件意匠と被告意匠との対比ア 先に認定した本件意匠の構成態様と被告意匠の構成態様を対比すると,別紙「本件意匠と被告意匠の対比」のとおりであり,同別紙の下線部が差異点,それ以外が共通点と認められる。イ 意匠の類否25(ア) 上記アによれば,基本的構成態様については共通しているといえる(同エについては,意匠としては実質的に共通していると認められる。)。また,具体的構成態様については,各収納部の底部と開口部(収納口)の位置関係(同イの一部,ウ),大型収容部の左側面窓部の透明のフィルムの有無(同オの一部),ベルトの金属製の留め具の有無等(同ク),背面部の形態(同ケ)及び表面の色や生地(同コ)を除き,共通している。5そして,共通点のうちベルトの形状(具体的構成態様キ)及び各収納部の大きさ(具体的構成態様ア)は本件意匠の主たる要部であり,それにより,被告意匠には,本件意匠と同様のスマートでシンプルという印象が生じている(なお,被告意匠のベルトは,本件意匠のベルトよりも数㎜程度太いが,それによって以上の判断は左右されない。)。10他方,本件意匠と被告意匠とは,各収納部の底部と開口部の位置関係(具体的構成態様イの一部,ウ)という副次的な要部において相違しており,確かに,被告意匠では,各収納部の底部の位置がほぼそろえられていることによって,本件意匠と対比すると,よりまとまりのある印象を与えているということはできる。しかし,本件意匠の要部の検討で述べたとおり,引用意匠3ないし9と対比した場合の本件15意匠の大きな特徴は,各収納部やベルトの形態(主たる要部)によってスマートでシンプルな印象を与えるという点にあり,被告意匠が各収納部の底部と開口部の位置の差異によって,よりまとまりのある印象を与えているとの点は,上記のスマートでシンプルな印象の範囲内での相違にすぎず,それによって本件意匠と被告意匠の美感が異なるものになったとまでいうことはできない。なお,原告は,原告製品20とは異なり,小型収納部の底部を大型収納部の底部とそろえた製品を販売するに至ったが,これによって以上の判断は左右されない。この点について,被告は,原告製品と被告各製品を購入した者がインターネットに書き込んだコメントの内容が異なっている旨主張し,乙37を提出しているが,意匠に関するコメントは必ずしも多くないし,被告製品1の「おしゃれ」とか「か25っこいい」というのが上記のスマート又はシンプルさを排斥するものとまで認めることはできないから,これによって前記判断が左右されるとはいえない。また,被告は,被告意匠では両収納部の底部の位置がほぼそろえられ,小型収納部の開口部が大型収納部の開口部よりも下側にあることから,小型収納部にクリーナーを収納できることを指摘するが,それは,そのような使い方もできるという程度のものにすぎず,そのことによって小型収納部の形状自体が新規なものになって5いるというわけでもないから,その点によって前記判断が左右されるとはいえない。(イ) また,本件意匠と被告意匠のその他の差異点は,要部に関するものではないことなどから,それによって本件意匠と被告意匠の美感が異なるものになるとも認められない。この点,被告は,被告意匠2ないし6に関し,生地に関する差異点(具体的構成10態様コ)によって,共通点を凌駕する程度に別異性が認められるとも主張しているが,本件意匠は生地の態様に特徴のあるものでなく,被告意匠2ないし6も生地に顕著な特徴があるとはいえないし,本件意匠に係る物品は電子タバコケースであるから,需要者がまず着目するのは製品の形状であり,基本的にはケースの生地や色が美感に与える影響が大きいとはいえないから,その差異点が上記共通点による美15感を凌駕すると認めることはできない。ウ したがって,本件意匠と被告意匠とは一致点の印象が差異点の印象を凌駕し,類似していると認めるのが相当である。 2 争点2(被告による先使用権の成否)について(1) 被告各製品の開発経過について,被告代表者は概ね次のように陳述(乙4208,49)及び供述している。ア 被告では,従前から携帯電話のケース等の革製品の製造及び販売を業としており,革製や合皮等の携帯電話ホルダーやスマートフォンホルダー等の小物入れを開発し,中国の業者に製造委託し,日本国内に輸入し,販売しており,セパレート型のIQOSケース(乙12,32)も開発していたことから,平成28年4月,25同年9月に開催される東京インターナショナルギフト・ショー秋2016に新しいIQOSケースを出展することを企図した。イ そこで,被告代表者は,同年5月4日から同月7日まで数種の商品の開発打合せのために中国を訪問した際,同月4日,中国にある日系商社であるコペック社の担当者らとともに,広州市にある製造委託先であるシャインカラー社を訪れ,IQOSのケースの開発等について,従前からあった携帯電話(いわゆるガラケーやス5マートフォン)やIQOSのケース(乙11ないし13,15ないし17等)を参考にしつつ,新たに開発するIQOSのケースの形態等について協議した。そして,いくつかの案を検討した結果,被告代表者は,中国で2段重ねのスマートフォンケース(乙15)がよく売れていたことなどもあって,タバコパッケージを収納する部分と携帯用充電器を収納する部分とを重ね合わせる案とし,以前に被告が販売を計画10していた携帯電話用ケース(乙16)等を参考に背面にベルト通しを設け,当時被告が販売していた手帳型のスマートフォンケース(乙18,50)を参考にして背面の上端から正面まで伸長するベルトの形状を決め,シャインカラー社の担当者に対し,サンプル(見本品)を製作するよう依頼した。ウ 被告代表者は,同年6月15日から同月18日まで数種の商品の開発打15合せのために中国に行き,同月15日,コペック社の担当者らとともに,シャインカラー社を訪れた。同社は,上記イの打合せ結果を踏まえ,この日までにIQOSのケースのサンプル(小型収納部と大型収納部を重ね合わせたもの)を製作しており,被告代表者らに対し,そのサンプルを提示した。被告代表者はそのサンプルを見て,イでの指示に比べて,小型収納部の底部が大20型収納部の底部よりも若干,上に設置されていたため,シャインカラー社の担当者に対し,小型収納部の底部分にタバコクリーナー等が入れられるように小型収納部の底部を大型収納部の底部と同じ位置まで下げることや,裏の生地を改め,ハイクラス(合成皮革のライチ柄)にするよう希望し,再度サンプルを製作するよう依頼するとともに,ハートキルト,キルト及びデニムの生地を用いたサンプルを製作す25ることを依頼した。そして,被告は,遅くとも同月16日までには,シャインカラー社に対し,ハイクラスのライチ柄で14色,各100個ずつ(合計1400個)製造するよう委託した。エ シャインカラー社では,同月17日までには,上記ウの被告代表者からの希望を反映したサンプルを製作し,被告代表者は,同日,シャインカラー社から5上記ウで製造を委託した商品を各色少なくとも1個ずつ受け取り,それを日本国内に持ち帰った。また,中国の商社も3色分を2個ずつ合計6個購入した。オ 被告代表者は,同月18日に日本に帰国し,羽田空港において,被告の製品の販売サイトの管理の委託を受けている会社の代表者と,被告各製品のインターネット上での販売に向けた協議をした。10また,被告代表者は,同月19日,「OKAYAMA DENIMU」とのロゴを用いたIQOSのケース(被告製品2)を販売するために,IMP社の代表者と協議をし,上記ロゴを用いた商品を販売することの了解を得るとともに,ロゴを用いた被告製品2について合計40個の販売の注文を受けた(この注文分については同年8月2日に納品された。)。15カ コペック社は,同月24日までに,シャインカラー社から,ハートキルト,キルト,デニムの生地を用いた被告各製品のサンプル各2パックを受け取り,これを被告に発送した。キ シャインカラー社は製造を委託された被告各製品を完成させ,それを中国の日系商社(コペック社でない会社)に引き渡し,同商社は,同月30日,被告20に対し,被告各製品(ハイクラスの生地を用いたもの)1400パックを発送するとともに,その製造委託に係る費用を含む請求書を発行した。ク 同年7月1日,被告各製品について輸入が許可され,その後,被告は中国から輸入された被告各製品を受け取った。ケ 被告は,遅くとも同月10日までには,楽天市場において,被告各製品25の販売を開始した。(2) 上記の被告代表者の陳述及び供述のとおりであるとすると,被告は,本件意匠の登録出願日である平成28年6月20日の時点で,原告製品とは関係なく被告各製品のデザインを決定し,その製造委託の発注までをシャインカラー社に対して行うとともに,IMP社から被告製品2の販売を受注していたことになるから,少なくとも日本国内において被告意匠の実施である事業の準備をしていたことにな5る。そこで,上記の被告代表者の陳述及び供述の信用性について検討する。ア まず,前記(1)エ以下の同年6月17日以後の経緯について裏付け証拠の有無を見ると,①同月17日にシャインカラー社がコペック社から電子タバコケース6個(3色×2個)を受注した伝票(乙21),②シャインカラー社の代表者が撮影した同月17日から20日付けの被告各製品の写真(乙23),③同月18日に被10告が羽田空港でハイクラスのIQOSケースのデニム仕様についてIMP社と翌日に岡山で協議する旨を記した被告代表者の手帳(乙31),④同月19日に被告代表者がIMP社の代表者と協議をしたことについて,両者の協議内容を記載した議事録(乙24,45及び46)があり,特に④の議事録では,両者の代表者の連名で,被告各製品の絵も描かれた上で,それに「岡山デニム」のロゴを入れたもの3種類15計40個を単価1000円で初回ロット時に納品することが記載されるとともに,両社の代表者による確認印及びコメントが付されている(なお,このときの40個の納品については,被告のIMP社宛の同年8月2日付けの納品書[乙47]がある。)。また,⑤同月21日にコペック社の担当者が被告代表者ほかに送信した電子メー20ル(乙33)では,被告代表者が同年6月15日から同月18日の訪中時に注文したものを含む注文残商品のリストが添付されており,その中には,同月16日にシャインカラー社に発注した電子タバコケース14色・1400個,単価3.2米ドル(合計4480米ドル)との記載があり,⑥同月24日にコペック社がケースサンプル各2パックを被告に発送した旨を伝えた電子メール(乙34)には,被告各25製品の写真も添付されている。そして,⑦同月30日のインボイス(乙26)では,「PJ MOBILE PHONE CASE」1400パック,単価3.2米ドル,合計448米ドルを含む物品が中国から岡山に向けて輸出されたことが記載され,その日本での輸入手続については同年7月1日付けの輸入許可通知書(乙27)があり,⑧楽天市場で同月10日に被告各製品の購入を受け付けた旨の楽天市場のウェブページの検索結果(乙35)がある。5これらからすると,被告代表者の供述する経過のうち,同年6月17日にシャインカラー社が被告各製品のサンプルを製作し,それを被告代表者が日本に持ち帰ってIMP社と販売のための協議をし,被告各製品が同月7月初めに輸入されて同月10日には販売されたこと(前記(1)エ以下)については,被告各製品の販売に至るまでの時間的経過として自然であり,随所に裏付け証拠もあるといえるから,これ10を信用することができる。そして,このように同年6月17日の時点で被告各製品のサンプルが完成していたことからすると,時期的に考えて,同月15日に被告代表者がシャインカラー社に対して,サンプルについて,小型収納部の底部を大型収納部の底部と同じ位置まで下げることや,裏の生地をハイクラス(合成皮革のライチ柄)にするよう修正指15示し,ハイクラスのライチ柄で1400個を製造するよう委託したとの被告代表者の打合せノート(乙30の4ないし6),コペック担当者の手帳メモ(乙19)及びシャインカラー社の証明書(乙22)の記載は,これを信用することができるというべきである。イ ところで,原告製品は同年5月8日に発売されたから,創作者である被20告代表者が本件意匠を知らないで被告意匠を創作したといえるためには,同日以前の被告の開発状況が重要になる。そして,被告代表者の陳述及び供述では,シャインカラー社と最初に協議したのは同年5月4日であり,そこでデザインを決めてサンプル製作を指示した次の協議が上記の同年6月15日とされているから,同年5月4日の時点での協議内容(前記(1)イ)の信用性が重要となる。25(ア) まず,被告各製品の開発についてのシャインカラー社との協議が平成28年5月4日に行われたことについては,被告代表者の打合せノートの5月4日の記載(乙30の1及び2)がある。そして,同ノートの記載については,前記のとおり同年6月初旬ころないし同月15日の記載(乙30の4ないし6)が信用し得ると認められることから,被告代表者が日常業務の上で作成していたものとして基本的に信用できると考えられる。また,被告代表者が同年4月から5月にかけて5新規のIQOSケースの開発を考えたということには,被告が同年4月当時,セパレートタイプのIQOSケースを開発し,同商品が同年5月18日までに販売されていたと認められること(乙32)から,時期的にもあり得ることである。(イ) そこで,乙30の1の記載を見ると,「サンプル」として,①「セパレート」,②「ガラ携のベルトケース」,③「2段のスマホケース」が記載されている10から,これらを見ながら協議したと認められるところ,①が被告が開発していたセパレートタイプ(乙12,32)であり,③が中国で販売されていた2段重ねタイプ(乙15,16)であると認められる。このうち②は,「実用NG?」と記載されているから候補から外れたと認められ,被告代表者も同旨を述べている。次に,①については,「充のみ」と「充+カートリッヂ(タバコ)」の2通りが検討された記15載となっており,これが特段排除された記載はない。しかし,被告代表者は,セパレートタイプは,金具で無理矢理つなげる点や男性的で客層を狭くする点に難点があったことや,被告代表者の息子が作った商品であるために真似をしたくないとの思いがあったと供述しており,この供述は自然かつ合理的なものである。そうすると,この協議において,①のタイプは採用されず,③の2段重ねタイプが採用され20たとの被告代表者の陳述及び供述は信用できると考えられ,その場合,乙15及び16の例のとおり,大型収納部と小型収納部を同方向に重ね,それらの幅や高さをタバコパッケージや携帯用充電器の大きさとほぼ同じようにするのは自然なことである。そして,乙30の1においては,「別でクリーナーやミニUSBケーブル」との記25載があるから,クリーナーを入れられるようにしたり,ミニUSBケーブルを通す孔を設けたりすることが検討されたと認められるところ,前者の点からすると,被告各製品のように両収納部の底部の位置をそろえることにより,小型収納部の上部に余裕空間を設けるのが合理的であり,そのようにすることが乙15及び16の例からも自然であるから,このような方針となった旨の被告代表者の陳述及び供述は信用し得る。なお,前記のとおり後の同年6月15日の時点で,被告代表者は,サ5ンプルに対して小型収納部の底部を大型収納部の底部と同じ位置まで下げるよう指示しているが,この点について,被告代表者は,サンプルで底がそろっていなかったのは,その方が縫製が楽であることから,シャインカラー社が構造的に楽なものを作ったためであると供述しており,この点も被告代表者の同陳述及び供述と整合的である。10また,背面部の上端を正面まで伸長させたベルトについても,絞り込まれて幅が細く,正面まで伸長させるものは乙15及び17にもあり,被告自身が販売し,人気のあった手帳型の携帯電話のケースでは先端が半楕円形であって,平坦で,その幅が均一で,細いベルトが備えられていたから(乙18,50),被告代表者が被告意匠のベルトの形状等に着想することは自然なことといえる。そして,このことは,15前記の同年6月15日のサンプルのチェック時には,ベルトについて修正指示がなかったこととも整合的である。また,底部の携帯充電器用の孔や左側面の窓部についても,前者については上記のとおり同年5月4日の打合せにおいて協議されていたことであり,その発想からすると後者についても協議されていても不合理ではない。20なお,前記のとおり,被告代表者は,同年6月15日のサンプルのチェック時に,裏の生地をハイクラス(合成皮革のライチ柄)にするよう修正指示しているが,同年5月4日の打合せノートでも「ライチ柄(ハイクラス)」とされている(乙30の1)から,その指示も同日の指示に従うよう求めたにすぎないと認められる。そして,被告代表者は,このときの訪中時に,シャインカラー社に対してサンプ25ルを発注したことは,乙30の2から認められる。以上のとおり,被告代表者は被告各製品の開発(被告意匠の創作)過程について具体的な供述をしており,その内容は各証拠とも整合していること,同年5月4日の協議から同年6月15日のサンプル確認まで何らかの連絡協議が行われたともうかがわれず,かえって,被告代表者の月に1回程度訪中しているとの供述は,1回の訪中時に数日をかけて数社との打合せをしていること(乙30)と整合している5ことを考慮すると,被告意匠を同年5月4日の協議の時点で創作していた旨の被告代表者の陳述及び供述は,その信用性を認めることができる。ウ 原告の主張について原告は,原告製品が平成28年5月8日から楽天市場において販売されており,楽天市場で1位にランクインしたことがあることや,中国で模倣品が製造され10ていること(甲15,16)を指摘し,被告代表者が本件意匠を知っていたと主張している。しかし,製品の開発過程で他社製品を参照することは一般的に行われることではあるが,前記のとおり本件では,原告製品が発売されるより前に被告代表者がシャインカラー社に対して被告各製品のサンプル製作を指示していたことにつき相応の15裏付け証拠があることからすると,原告製品とは関係なく被告各製品を開発した旨の被告代表者の陳述及び供述は信用し得るというべきであり,原告主張の事情は,上記認定を左右するに足りるものではない。また,中国の実情(甲15,16)も一般論にすぎず,被告代表者が本件意匠を知っていたことを直ちに推認させるものとはいえない。20(3) 以上の検討からすると,被告は,本件意匠の登録出願日までに,本件意匠を知らないで被告意匠を創作し,一部の被告各製品の製造の委託をシャインカラー社に発注し,これは被告が日本国内で被告各製品の販売を行うためにされたことであり,またIMP社から被告製品2の販売を受注するに至っていたと認められるから,被告は,少なくとも日本国内において被告意匠の実施である事業の準備を行っ25ていたというべきである。したがって,被告は,意匠法29条の先使用による通常実施権を有するところ,本件での被告各製品はいずれも本件意匠の登録出願の際に準備をしていた被告意匠及び事業の目的の範囲内にあると認められるから,被告による被告各製品の販売は,本件意匠権を侵害しない。 3 結論5以上より,原告の請求はいずれも理由がないから,棄却することとして,主文のとおり判決する。大阪地方裁判所第26民事部裁判長裁判官髙 松 宏 之裁判官野 上 誠 一裁判官大 門 宏 一 郎25別 紙被告物件目録 1 被告物件目録1製品の名称 アイコスケース商品番号 SOHCOT635 2 被告物件目録2製品の名称 アイコスケース商品番号 SOHCOT67 3 被告物件目録3製品の名称 アイコスケース10商品番号 SOHCOT68 4 被告物件目録4製品の名称 アイコスケース商品番号 SOHCOT69 5 被告物件目録515製品の名称 アイコスケース商品番号 SOHCOT70 6 被告物件目録6製品の名称 アイコスケース商品番号 SOHCOT7120以 上(別紙)第1 正面図【本件意匠】【別紙物件目録1】 【別紙物件目録2】【別紙物件目録3】 【別紙物件目録4】【別紙物件目録5】 【別紙物件目録6】本件意匠及び被告意匠の構成第2 背面図【本件意匠】【別紙物件目録1】 【別紙物件目録2】【別紙物件目録3】 【別紙物件目録4】【別紙物件目録5】 【別紙物件目録6】第3 右側面図【本件意匠】【別紙物件目録1】 【別紙物件目録2】【別紙物件目録3】 【別紙物件目録4】【別紙物件目録5】 【別紙物件目録6】第4 左側面図【本件意匠】【別紙物件目録1】 【別紙物件目録2】【別紙物件目録3】 【別紙物件目録4】【別紙物件目録5】 【別紙物件目録6】第5 平面図【本件意匠】【別紙物件目録1】 【別紙物件目録2】【別紙物件目録3】 【別紙物件目録4】【別紙物件目録5】 【別紙物件目録6】第6 底面図【本件意匠】【別紙物件目録1】 【別紙物件目録2】【別紙物件目録3】 【別紙物件目録4】【別紙物件目録5】 【別紙物件目録6】(別紙)本件意匠の構成態様ア正面視及び背面視において長方形状の立体構造であること。ア正面視及び背面視においてその輪郭は長方形状である。イ開口部の位置が同位置である大小2つの収納部を重ねた構造であること。ア携帯用充電器と同サイズの大型収納部と,タバコパッケージと同サイズの小型収納部の大小2つの収納部が両収納部の開口部の高さを合わせた状態で前後に重ね合い一体となっている点イ正面側に小型収納部が,背面側に大型収納部が重ね合わせて設置されている。ウ背面部の上部を正面中心部まで伸長した,小型収納部の幅よりも細い半楕円形のベルトを備えていること。イ背面の生地を正面中心部まで伸長させた扇形状のベルトを備えている点ウ背面部の上端を正面まで伸長させたベルトを備えている。ウ背面部にケース本体を吊り下げるための半楕円形のバネ式フックがついている点エ背面部に半楕円形のバネ式フックが設置されている。ア背面側に携帯用充電器と同じ大きさの収納部があり,正面側にタバコパッケージと同じ大きさの収納部があること。ア大型収納部の幅や高さは携帯用充電器とほぼ同じであり,小型収納部の幅や高さはタバコパッケージとほぼ同じである。各収納部の幅はほぼ同一である。イ 両収納部の収納部が上部にあること。 ア両収納部の開口部が上部に設置されている点イ大型収納部と小型収納部の開口部(収納口)は上側に設置されており,その高さはほぼ同じである。ウ小型収納部の底部は大型収納部の底部よりも上側に設置されており,正面視及び側面視において段をなしている。ウ小型収納部の四隅に孔が空いていること。イ小型収納部の左右に孔が開いている点エ 小型収納部の四隅が切り欠かれている。エ大型収納部の左側面には,透明のフィルムが設置された窓部があること。オ大型収納部左側面に携帯用充電器の残電量を確認するための窓部が設置され,透明のフィルムが備え付けられている点オ大型収納部の左側面には,透明のフィルムが備え付けられた窓部が設置されている。オ底面中央に,携帯用充電器のプラグと同じ大きさの孔があいていること。エ大型収納部底面に充電用孔が開いている点カ大型収納部の底面中央に携帯用充電器のプラグとほぼ同じ大きさの孔が開いている。キベルトは平坦で,背面部の上端から絞り込まれて正面中心部まで伸長し,その幅は大半均一で,小型収納部の幅よりも細く,先端が半楕円形をしている。カベルトの先端には金属製の留め具があること。ウ背面部から伸長されたベルトの先端近くに金属製の留め具が設置されている点クベルトの表面の先端近くに金属製の留め具(バックル)が設置されているキ 背面部は平らであること。 カ 背面部が平坦である点 ケ 背面部は平坦である。コ表面は薄茶色であり,一般的な動物の皮を模した生地が用いられている。基本的構成態様原告の主張 被告の主張 裁判所の認定具体的構成態様(別紙)被告意匠の構成態様ア正面視及び背面視において長方形状の立体構造であること。ア正面視及び背面視においてその輪郭は長方形状である。イ小型収納部が底面部に設置されている大小2つの収納部を重ねた構造であること。ア携帯用充電器と同サイズの大型収納部と,タバコパッケージと同サイズの小型収納部の大小2つの収納部が両収納部の底面部の高さをそろえた状態で前後に重なり合うように一体となっていることで,小型収納部にクリーナーも収納できる点イ正面側に小型収納部が,背面側に大型収納部が重ね合わせて設置されている。ウ背面部の上部を正面中心部まで伸長した,小型収納部の幅よりも細い半楕円形のベルトを備えていること。イ背面の生地を正面中心部まで伸長させた扇形状のベルトを備えている点ウ背面部の上端を正面まで伸長させたベルトを備えている。ウ背面部にケース本体を吊り下げるためのカラビナがついている点エ 背面部にカラビナが設置されている。ア背面側に携帯用充電器と同じ大きさの収納部があり,正面側にタバコパッケージと同じ大きさの収納部があること。ア大型収納部の幅や高さは携帯用充電器とほぼ同じであり,小型収納部の幅や高さはタバコパッケージとほぼ同じである。各収納部の幅はほぼ同一である。イ 両収納部の収納部が上部にあること。 ア両収納部の開口部が上部に設置されている点イ大型収納部と小型収納部の開口部(収納口)は上側に設置されており,小型収納部の開口部が大型収納部の開口部よりも下側に設置されている。ウ両収納部の底部の位置はほぼそろえられている。ウ小型収納部の四隅に孔が空いていること。イ小型収納部の左右に孔が開いている点エ 小型収納部の四隅が切り欠かれている。エ大型収納部の左側面に窓部があること。エ大型収納部左側面に携帯用充電器の残電量を確認するための窓部が設置されている点オ大型収納部の左側面には,空洞の窓部が設置されている。オ底面中央に,携帯用充電器のプラグと同じ大きさの孔があいていること。ウ大型収納部底面に充電用孔が開いている点カ大型収納部の底面中央に携帯用充電器のプラグとほぼ同じ大きさの孔が開いている。キベルトは平坦で,背面部の上端から絞り込まれて正面中心部まで伸長し,その幅は大半均一で,小型収納部の幅よりも細く,先端が半楕円形をしている。ク ベルトの表面の先端部分は平坦である。カ背面部にベルト通しがあるものがあること。オ背面部にベルト通しが設置されている点ケ被告意匠1,2,4ないし6では,背面部に幅約5㎝のベルト通しが設置されている。被告意匠3では,背面部が平坦である。コ被告意匠2ないし6では,デニム,ダイヤ,ハート,バラの花及び鋲(スタッズ)のキルティングないし柄付の生地が用いられている。被告意匠1では,無地の生地が用いられている。また,被告意匠の表面の色は,別紙「本件意匠及び被告意匠の構成」の【別紙物件目録1】ないし【別紙物件目録6】のとおりである。原告の主張 被告の主張 裁判所の認定基本的構成態様具体的構成態様別紙証拠番号 写真 名称・他オークション開始日出品者背面からベルト2段構造底面充電用孔左側面充電量確認用の孔ベルトのアクセサリーパーツベルトの止め方ベルト形状原告意匠(甲4)出願日H28.6.20〇 〇2段縦 〇 〇 〇 磁石 絞り込み乙1の1,40の1IQOSアイコケースブラックレザーH28.5.17 uj_factory5 〇 〇2段縦 〇 〇 〇 磁石 絞り込み乙1の2,40の2IQOS専用 デニムケース 電子タバコフック付きH28.6.2reborn2009_k_k_k〇 〇2段縦 〇 〇 〇 磁石 絞り込み乙1の3,40の3IQOSアイコケースレザーH27.10.29ulutrara19○ ○ 2段横 ○ ○ ○ 紐 同じ幅乙1の4,40の4iqos アイコス 本体収納 ケース 送込真鍮コンチョH28.6.15 nuscloser ○ ○ 2段縦 ○ ○ ○ 磁石 絞り込み乙1の5,40の5iQOS アイコス レザーケース 牛革白 特注品 1H28.2.5momotya…○ ○ 2段縦 なし なし なし 磁石 同じ幅乙1の6,40の6アイコス iqos 本体収納 レザー ケース ターコイズH28.6.12 nyscloser ○ ○ 2段縦 ○ ○ ○ 磁石先端ラウンド乙1の7,40の7iQOS アイコス レザーケース 栃木レザー キャメルH28.2.23 makagio4 ○ ○ 2段横 ○ ○ ○ 紐 同じ幅乙1の8,40の8iQOS(アイコス)レザーヌメ革ケース コンチョ付H28.6.12 jonn7111 ○ ○ 2段縦 なし なし ○ 磁石 絞り込み乙1の9,40の9栃木レザー iQOS(アイコス)ヌメ革ケースビンテージ風H28.6.2namasterao1961○○ 2段縦○ ○ ○ 磁石 絞り込み引用意匠(別紙)本件意匠と引用意匠の対比引用意匠3 引用意匠4 引用意匠5 引用意匠6 引用意匠7 引用意匠8 引用意匠9ア正面視及び背面視においてその輪郭は長方形状である。同じ。ただし,長方形の形は異なる。同じ。ただし,長方形の形は異なり,上部の両端は斜めになっている。同じ。ただし,長方形の形は異なる。 同じ。ただし,長方形の形は異なる。 同じ。ただし,長方形の形は異なる。 同じ。ただし,長方形の形は異なる。 同じ。ただし,長方形の形は異なる。イ正面側に小型収納部が,背面側に大型収納部が重ね合わせて設置されている。同じ 同じ 同じ 同じ 同じ 同じ 同じウ背面部の上端を正面まで伸長させたベルトを備えている。同じ 同じ 同じ 同じ 同じ 同じ 同じエ背面部に半楕円形のバネ式フックが設置されている。なし 同じ 同じ 同じ 同じ なし なしア大型収納部の幅や高さは携帯用充電器とほぼ同じであり,小型収納部の幅や高さはタバコパッケージとほぼ同じである。各収納部の幅はほぼ同一である。大型収納部の高さは携帯用充電器よりも小さく,小型収納部の幅はタバコパッケージよりも小さい。小型収納部の幅は大型収納部よりも小さい。大型収納部の高さは携帯用充電器よりも小さく,小型収納部の高さはタバコパッケージよりも小さい。両収納部の幅はほぼ同一である。大型収納部の高さは携帯用充電器よりも小さく,小型収納部の高さはタバコパッケージよりも小さい。小型収納部の幅は大型収納部よりも小さい。大型収納部の高さは携帯用充電器よりも小さく,小型収納部の高さはタバコパッケージよりも小さい。両収納部の幅はほぼ同一である。大型収納部の高さは携帯用充電器よりも小さく,小型収納部の幅はタバコパッケージよりも小さい。小型収納部の幅は大型収納部よりも小さい。大型収納部の高さは携帯用充電器よりも小さく,小型収納部の高さはタバコパッケージよりも小さい。小型収納部の幅は大型収納部よりも小さい。大型収納部の高さは携帯用充電器よりも小さく,小型収納部の高さはタバコパッケージよりも小さい。両収納部の幅はほぼ同一である。イ大型収納部と小型収納部の開口部(収納口)は上側に設置されており,その高さはほぼ同じである。ウ小型収納部の底部は大型収納部の底部よりも上側に設置されており,正面視及び側面視において段をなしている。エ小型収納部の四隅が切り欠かれている。オ大型収納部の左側面には,透明のフィルムが備え付けられた窓部が設置されている。なし 左側面に窓部あり なし 左側面に窓部あり 右側面に窓部あり なし 右側面に窓部ありカ大型収納部の底面中央に携帯用充電器のプラグとほぼ同じ大きさの孔が開いている。なし 充電器用の孔あり なし 充電器用の孔あり 充電器用の孔あり なし 充電器用の孔ありキベルトは平坦で,背面部の上端から絞り込まれて正面中心部まで伸長し,その幅は大半均一で,小型収納部の幅よりも細く,先端が半楕円形をしている。ベルトについて,平坦で,長さは正面中央までであるが,幅は絞り込まれずに,背面部と同じかやや拡がる幅となっている。先端は隅丸の角形である。ベルトについて,長さは正面中央付近までであり,幅も絞り込まれて,小型収納部の幅よりも細いが,2本の細い革を編み込んだ形状になっている。先端は半楕円形である。ベルトについて,平坦で,長さは正面中央までであるが,幅は絞り込まれずに,背面部と同じ幅となっている。先端は隅丸の角形である。ベルトについて,平坦で,長さは正面部の底面まで伸長し,幅も絞り込まれずに,背面部と同じとなっている。先端は半楕円形である。ベルトについて,平坦で,長さは正面部の底面付近まで伸長し,幅も絞り込まれずに,背面部と同じとなっている。先端は半楕円形である。ベルトについて,平坦で,長さは正面部の底面まで伸長し,幅は絞り込まれて,小型収納部の幅よりも細いが,先端の尖ったギザギザ様の形状になっている。ベルトについて,平坦で,長さは正面部の底面まで伸長し,幅も絞り込まれずに,背面部と同じとなっている。先端は尖っている。クベルトの表面の先端近くに金属製の留め具(バックル)が設置されている同じ 同じ 表面にはなし 同じ 同じ 同じ 同じケ 背面部は平坦である。 不明 同じ 同じ 同じ 同じ 同じ 背面部にベルト通しありコ表面は薄茶色であり,一般的な動物の皮を模した生地が用いられている。白色のレザー生地 黒色のレザー生地 白色のレザー生地 黒色のレザー生地 茶色のレザー生地 白様のレザー生地 茶色のレザー生地小型収納部の底部は大型収納部の底部よりもやや上にあって若干の段差があり,小型収納部の開口部(収納口)が右横側に設置され,その隅部に切欠きはない。小型収納部の底部の高さは大型収納部の底部とほぼ同じだが,小型収納部の開口部は大型収納部の下にあり,その下部が切り欠かれている。小型収納部の底部は大型収納部の底部よりもやや上にあって若干の段差があり,小型収納部の開口部は大型収納部の下にあり,その隅部に切欠きはない。基本的構成態様具体的構成態様本件意匠小型収納部の底部の高さは大型収納部の底部とほぼ同じだが,小型収納部の上面部は大型収納部のやや下にあり,小型収納部の開口部(収納口)が左横側に設置されており,その右下隅が切り欠かれている。小型収納部の底部の高さは大型収納部の底部とほぼ同じだが,小型収納部の開口部は大型収納部の下にあり,その下部の左右の切り欠きも大きい。小型収納部の底部の高さは大型収納部の底部よりもやや上にあって若干の段差があり,小型収納部の開口部は大型収納部の下にあり,その隅部に切欠きはない。小型収納部の底部の高さは大型収納部の底部とほぼ同じだが,小型収納部の開口部は大型収納部のやや下にあり,その下部の左右の切り欠きも大きい。(別紙)本件意匠と被告意匠の対比ア正面視及び背面視においてその輪郭は長方形状である。ア正面視及び背面視においてその輪郭は長方形状である。イ正面側に小型収納部が,背面側に大型収納部が重ね合わせて設置されている。イ正面側に小型収納部が,背面側に大型収納部が重ね合わせて設置されている。ウ背面部の上端を正面まで伸長させたベルトを備えている。ウ背面部の上端を正面まで伸長させたベルトを備えている。エ背面部に半楕円形のバネ式フックが設置されている。エ 背面部にカラビナが設置されている。ア大型収納部の幅や高さは携帯用充電器とほぼ同じであり,小型収納部の幅や高さはタバコパッケージとほぼ同じである。各収納部の幅はほぼ同一である。ア大型収納部の幅や高さは携帯用充電器とほぼ同じであり,小型収納部の幅や高さはタバコパッケージとほぼ同じである。各収納部の幅はほぼ同一である。イ大型収納部と小型収納部の開口部(収納口)は上側に設置されており,その高さはほぼ同じである。イ大型収納部と小型収納部の開口部(収納口)は上側に設置されており,小型収納部の開口部が大型収納部の開口部よりも下側に設置されている。ウ小型収納部の底部は大型収納部の底部よりも上側に設置されており,正面視及び側面視において段をなしている。ウ両収納部の底部の位置はほぼそろえられている。エ 小型収納部の四隅が切り欠かれている。 エ 小型収納部の四隅が切り欠かれている。オ大型収納部の左側面には,透明のフィルムが備え付けられた窓部が設置されている。オ大型収納部の左側面には,空洞の窓部が設置されている。カ大型収納部の底面中央に携帯用充電器のプラグとほぼ同じ大きさの孔が開いている。カ大型収納部の底面中央に携帯用充電器のプラグとほぼ同じ大きさの孔が開いている。キベルトは平坦で,背面部の上端から絞り込まれて正面中心部まで伸長し,その幅は大半均一で,小型収納部の幅よりも細く,先端が半楕円形をしている。キベルトは平坦で,背面部の上端から絞り込まれて正面中心部まで伸長し,その幅は大半均一で,小型収納部の幅よりも細く,先端が半楕円形をしている。クベルトの表面の先端近くに金属製の留め具(バックル)が設置されているク ベルトの表面の先端部分は平坦である。ケ 背面部は平坦である。 ケ被告意匠1,2,4ないし6では,背面部に幅約5㎝のベルト通しが設置されている。被告意匠3では,背面部が平坦である。コ表面は薄茶色であり,一般的な動物の皮を模した生地が用いられている。コ被告意匠2ないし6では,デニム,ダイヤ,ハート,バラの花及び鋲(スタッズ)のキルティングないし柄付の生地が用いられている。被告意匠1では,無地の生地が用いられている。また,被告意匠の表面の色は,別紙「本件意匠及び被告意匠の構成」の【別紙物件目録1】ないし【別紙物件目録6】のとおりである。被告意匠本件意匠基本的構成態様具体的構成態様 |
事件の概要 | 1 事案の概要 本件は,後記本件意匠権を有する原告が,後記被告各製品を販売している被告に25 対し,後記被告各製品の販売が後記本件意匠権を侵害するとして,意匠法37条1 項に基づき被告各製品の製造販売の差止め,同条2項に基づき被告各製品の破棄等 を請求し,意匠権侵害の不法行為に基づき,損害の賠償及びこれに対する不法行為 の後の日である平成29年3月28日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法 所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。 |
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