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平成31(ワ)8400発信者情報開示請求事件

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裁判所 認容 東京地方裁判所
裁判年月日 令和1年7月30日
事件種別 民事
当事者 被告ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
原告創価学会
法令 著作権
著作権法32条1項5回
著作権法15条1項1回
キーワード 侵害5回
損害賠償3回
主文 1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。20
事件の概要 本件は,原告が,被告の提供するインターネット接続サービスを介してイン25 ターネット上のウェブサイトに投稿された別紙投稿記事目録記載の投稿記事 (以下「本件記事」という。)中の写真は,原告が著作権を有する別紙写真目録 の写真(以下「本件写真」という。)と実質的に同一のものであるから,本件記 事を投稿した行為は本件写真に係る原告の著作権(公衆送信権)を侵害するも のであることが明らかであるとして,経由プロバイダである被告に対し,特定 電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法5 律(以下「法」という。)4条1項に基づき,本件記事の投稿に関する別紙発信 者情報目録記載の情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案 である。

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判決文

令和元年7月30日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成31年(ワ)第8400号 発信者情報開示請求事件

口頭弁論終結日 令和元年6月11日

判 決

原 告 創 価 学 会

同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 西 口 伸 良

同 堀 田 正 明

同 甲 斐 伸 明

同 大 原 良 明

被 告 ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社

同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 横 山 経 通

同 渡 邉 峻

主 文

1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せ

よ。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

主文第1項と同旨

第2 事案の概要

本件は,原告が,被告の提供するインターネット接続サービスを介してインターネット上のウェブサイトに投稿された別紙投稿記事目録記載の 投稿記事(以下「本件記事」という。)中の写真は,原告が著作権を有する別紙写真目録の写真(以下「本件写真」という。)と実質的に同一のものであるから,本件記事を投稿した行為は本件写真に係る原告の著作権(公衆送信権)を侵害するものであることが明らかであるとして,経由プロバイダである被告に対し,特定

5 電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき,本件記事の投稿に関する別紙発信者情報目録記載の情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。1 前提事実(証拠等を掲げていないものは当事者間に争いがない。)

(1) 当事者ア 原告は,宗教法人法に基づき設立された宗教法人である(弁論の全趣旨)。イ 被告は,電気通信事業を営む株式会社である。

(2) 本件記事の投稿等ア 氏名不詳者は,別紙投稿記事目録の「投稿日時」欄記載の日時に,インターネット上のレンタル掲示板サービス「teacup.」において本件記事を投稿した(甲1ないし3)。イ 本件記事が投稿されたときに割り当てられたIPアドレスである別紙投稿記事目録の「投稿時IPアドレス」欄記載のIPアドレスは,被告が管理している(甲3,4)。ウ 本件記事に掲載された写真は,本件写真の左部及び下部の一部が切り取られているほかは,本件写真と同一のものである(甲1,5)。2 争点

(1) 権利侵害の明白性ア 本件写真の著作物性(争点1)イ 本件写真の著作者が原告であること(争点2)ウ 著作権法32条1項の「引用」が成立しないこと(争点3)

(2) 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無(争点4)

第3 争点に対する当事者の主張

1 争点1(本件写真の著作物性)について

(原告の主張)

5 本件写真は,当時,原告の一事業部門である聖教新聞社報道局の職員であっ

たA(以下「A」という。)が,平成30年11月18日,原告の施設である甲記念講堂において,世界広布新時代第39回本部幹部会が行われている会場の様子を撮影したものである。Aは,カメラマンとしての経験を生かして,上記施設において,多数の会員が参加して盛大に幹部会が開催されている様子を,撮影方向,構図,シャッタースピード,タイミング,絞りなどに工夫を凝らし,的確なタイミングを捉えて本件写真を撮影したものである。そうすると,本件写真は,Aの思想,感情が表現された創作性を有する著作物である。

(被告の主張)

不知又は争う。

2 争点2(本件写真の著作者が原告であること)について

(原告の主張)

世界広布新時代第39回本部幹部会の様子を撮影した本件写真は,平成30年11月19日付けの聖教新聞の1面に原告名義で公表された。聖教新聞社は,原告の就業規則及び聖教新聞社管理運営規程に基づいて運営されており,原告の一事業部門に当たることから,Aは原告の職員である。そうすると,本件写真は,原告の発意に基づき,原告の業務に従事する者が職務上作成する著作物であり,原告が自己の著作の名義の下に公表するものであるから,本件写真の著作者は原告である。

(被告の主張)

不知又は争う。

3 争点3(著作権法32条1項の「引用」が成立しないこと)について

(原告の主張)

本件記事には,投稿者の実名は示されておらず,本件写真についての具体的な言及や論評もない。そうすると,本件記事に本件写真を掲載することは,公正な慣行に合致するものということはできず,また,報道,批評,研究その他

5 の引用の目的上正当な範囲内で行われたものということもできないから,著作

権法32条1項の「引用」は成立しない。

(被告の主張)

本件写真は,原告の集会で,B会長のスピーチに対して拍手がほとんどないという本件記事における投稿者の主張,意見を補足して説明することを目的として掲載されたものであり,本件記事における文章部分と本件写真が明瞭に区別され,前者に主眼が置かれていることも明らかである。そして,投稿者の主張,意見を具体的にするためには,B会長のスピーチの様子を撮影した本件写真を引用することが必要であるから,本件記事における本件写真の引用は必要かつ最小限度で行われたものといえる。したがって,本件写真の引用は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われたものであるといえるから,著作権法32条1項の「引用」が成立する。

4 争点4(発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について

(原告の主張)

原告は,本件記事を投稿した者に対する損害賠償請求,削除要求等を行うため,被告に対して発信者情報の開示を求めるものであるから,正当な理由がある。

(被告の主張)

争う。

第4 当裁判所の判断

1 認定事実(末尾に掲げた証拠等により認定した。)

(1) 聖教新聞社は,宗教法人法6条2項に定める「公益事業以外の事業」として,機関紙その他の出版及び販売業を行う原告の収益事業部門の呼称であり,聖教新聞を発行している(甲6,7)。

(2) 原告の就業規則には,「職員が職務上の行為として著作した著作物の著作

5 権は,法人に帰属する。」との規定がある(甲8)。

(3) 聖教新聞社の報道局の職員であったAは,平成30年11月18日,(住所は省略)所在の原告の施設である甲記念講堂において,原告が開催した世界広布新時代第39回本部幹部会の様子を 原告において記録し利用するため撮影した。本件写真はAが同会の様子を撮影した写真の一枚である(甲5,7,弁論の全趣旨)。

(4) 本件写真は,平成30年11月19日付けの聖教新聞の1面に掲載された(甲5,6)。

2 権利侵害の明白性について(1) 争点1(本件写真の著作物性)について上記1(3)で認定したとおり,本件写真は世界広布新時代第39回本部幹部会の様子を撮影したものであるところ,講演者とともに,参加者及び会場のおおむね全体が写るように講演者の斜め後方から撮影されており,被写体の選択,構図,カメラアングル等に撮影したAの個性が表れているものと認められる。したがって,本件写真は思想又は感情を創作的に表現したものとして,その著作物性が肯定できるものというべきである。(2) 争点2(本件写真の著作者が原告であること)について上記1(1)ないし(3)の認定事実によれば,本件写真は,原告の発意に基づき,原告の業務に従事する者が職務上作成した著作物であり,原告が自己の著作の名義の下に公表したものと認められる。そして,原告の就業規則に別段の定めもないから,著作権法15条1項に基づき,本件写真の著作者は原告であるといえる。(3) 争点3(著作権法32条1項の引用が成立しないこと)について前記のとおり,本件記事中の写真は本件写真の左部及び下部の一部が切り取られているほかは,本件写真と同一のものであると認められるところ,被告は,本件写真の引用は投稿者の主張,意見を補足して説明するために必要

5 かつ最小限度で行われたものであるから,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われたものであるから,著作権法32条1項の「引用」が成立すると主張する。しかし,本件記事の投稿内容を見ても,投稿者の主張,意見は判然とせず,被告が主張するように,投稿者の摘示したい事実がB会長のスピーチに対して拍手がほとんどないことであったとしても,本件記事に掲載された写真はスピーチの一場面を収めたものにすぎず,同写真の性質上,これをもって拍手の多寡を補足して説明するものとはいえないから,本件写真を引用する必要性は認められない。したがって,本件記事の投稿に当たり本件写真を引用したことが,公正な慣行に合致するものであるとか,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内のものであると認めることはできない。したがって,本件において,著作権法32条1項の「引用」は成立しない。そして,本件証拠上,他に原告の著作権を制限する事由は認められない。(4) 前記前提事実(2)及び上記(1)ないし(3)の説示によれば,本件記事の投稿により,本件写真に係る原告の公衆送信権が侵害されたことは明らかであるといえる。

3 争点4(発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について前記前提事実(2)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件記事の投稿につき,法4条1項の「開示関係役務提供者」に該当し,本件発信者情報を保有していることが認められる。そして,上記2で説示したとおり,本件記事の投稿により原告の公衆送信権が侵害されたことは明らかであるから,原告が本件記事の投稿者に対する損害賠償請求等を行うために,被告に対して本件発信者情報の開示を求めることには正当な理由がある。

4 結論以上によれば,原告の請求は理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第47部

裁判長裁判官 田 中 孝 一

裁判官 奥 俊 彦

裁判官 本 井 修 平

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