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平成31(ワ)99発信者情報開示請求事件

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裁判所 認容 東京地方裁判所
裁判年月日 令和1年7月17日
事件種別 民事
当事者 被告GMOインターネット株式会社
法令 著作権
著作権法32条1項3回
キーワード 侵害15回
損害賠償4回
主文 1 被告は,原告に対し,別紙1発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要 1 事案の要旨 本件は,①原告が,被告の運用するレンタルサーバ上に開設された別紙2ウェブ ページ目録記載のウェブページ(以下「本件ウェブページ」という。)に掲載された20 別紙4侵害行為目録記載1の画像(以下「本件画像」という。)によって,別紙3著 作物目録記載のウェブ広告(以下「本件広告」という。)についての原告の著作権 (複製権)が侵害されたことが明らかであり,また,これと選択的に,②本件ウェ ブページに掲載された別紙4侵害行為目録記載2の各記載(以下,これらを一括し て「本件各記載」という。)によって,原告の社会的評価が低下し,信用が毀損され25 たことが明らかであり,本件画像及び本件各記載の掲載者(以下「本件発信者」と いう。)に対する損害賠償請求等を行うために,被告の保有する別紙1発信者情報目 録記載の発信者情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示が必要であると主張 して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報 の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき, 本件発信者情報の開示を求める事案である。5 2 前提事実(当事者間に争いがない又は後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容

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判決文

令和元年7月17日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成31年(ワ)第99号 発信者情報開示請求事件
口頭弁論終結日 令和元年5月29日
判 決
5 原 告 株式会社トップ・トレン ド
同訴訟代理人弁護士 寺 尾 幸 治
被 告 GMOインターネット株式会社
同訴訟代理人弁護士 川 﨑 友 紀
同 八 木 優 大
10 同訴訟復代理人弁護士 松 井 将 征
主 文
1 被告は,原告に対し,別紙1発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
15 第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
1 事案の要旨
本件は,①原告が,被告の運用するレンタルサーバ上に開設された別紙2ウェブ
20 ページ目録記載のウェブページ(以下「本件ウェブページ」という。)に掲載された
別紙4侵害行為目録記載1の画像(以下「本件画像」という。)によって,別紙3著
作物目録記載のウェブ広告(以下「本件広告」という。)についての原告の著作権
(複製権)が侵害されたことが明らかであり,また,これと選択的に,②本件ウェ
ブページに掲載された別紙4侵害行為目録記載2の各記載(以下,これらを一括し
25 て「本件各記載」という。)によって,原告の社会的評価が低下し,信用が毀損され
たことが明らかであり,本件画像及び本件各記載の掲載者(以下「本件発信者」と
いう。)に対する損害賠償請求等を行うために,被告の保有する別紙1発信者情報目
録記載の発信者情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示が必要であると主張
して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報
の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,
5 本件発信者情報の開示を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いがない又は後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容
易に認められる事実)
⑴ 当事者
ア 原告は,インターネットを利用した各種情報提供サービス等を営む株式会社
10 である。
イ 被告は,第三者がウェブページ等を運営するためのサーバを提供するホステ
ィング事業等を営む株式会社である。
⑵ 本件広告
原告は,利用者に競艇の予想情報を提供するウェブサイト(以下「競艇予想サイ
15 ト」といい,原告が開設しているものを「原告サイト」という。)を開設し,そのト
ップページに,別紙3著作物目録記載のとおりの本件広告を掲載している(甲1)。
⑶ 本件発信者の行為
ア 本件ウェブページは,「比較競艇.net」と題するウェブサイトを構成する
ウェブページの一つであり,これらは被告が運用するレンタルサーバ上に開設され
20 ている(甲2,3)。
イ 本件発信者は,本件ウェブページを開設し,その中に,平成30年12月2
6日までに本件画像を掲載した(甲3)。
⑷ 被告の本件発信者情報の保有等
被告は,本件画像の掲載について,本件発信者情報を保有している。
25 3 争点
⑴ 原告の著作権(複製権)が侵害されたことが明らかであるか(争点1)
⑵ 原告の社会的評価が低下し,信用が毀損されたことが明らかであるか(争点
2)
⑶ 本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由はあるか(争点3)
4 争点に対する当事者の主張
5 ⑴ 争点1(原告の著作権(複製権)が侵害されたことが明らかであるか)につ
いて
【原告の主張】
以下のとおり,本件画像の本件ウェブページへの掲載によって,原告の著作権
(複製権)が侵害されたことは明らかである。
10 ア 本件広告は,「徹底!当日主義!!徹底!現場主義!!」等の個性的なキャッ
チコピー及び説明文等に,会議室で整然と並んで座る8名の人物を被写体とする個
性的な写真(以下,本件広告のうち,原告が主張する写真を「本件写真」という。)
等を組み合わせて配置し,配色し,思想又は感情を創作的に表現したものであるか
ら,著作物性が認められる。
15 イ 原告は,平成16年4月,日本情報コンサルタンツ株式会社の制作した本件
広告のキャッチコピー及び説明文の著作権の譲渡を受け,平成19年4月,株式会
社オフィスキューブが撮影した本件写真の著作権の譲渡を受けたものであるから,
本件広告について著作権を有する。
ウ 本件発信者は,本件ウェブページに,本件広告をそのままコピーした本件画
20 像を掲載しており,本件広告についての原告の著作権(複製権)を侵害した。
エ 本件画像を掲載しなくても,原告サイトのURLを添付するなどすれば,競
艇予想サイトの批評という目的を達することができることなどに照らせば,本件画
像の本件ウェブページへの掲載は,公正な慣行に合致せず,引用の目的上正当な範
囲内で行われたものでもないから,適法な引用(著作権法32条1項)に当たらな
25 い。
【被告の主張】
以下のとおり,原告の著作権(複製権)が侵害されたことが明らかであるとはい
えない。
ア 本件広告のキャッチコピーは,ごく短いものであり,筆者の個性が表れてい
るとはいえず,その他の説明文や写真の配置等も,ありふれており,創作的な表現
5 であるとはいえないから,本件広告には著作物性が認められない。
イ 本件広告に著作物性が認められるとしても,原告が本件広告について著作権
を有するかは明らかでない。
ウ 本件画像は,本件広告に依拠して作成されたものか明らかでなく,また,画
質が粗く,本件広告の本質的な特徴を直接感得することもできないから,本件広告
10 を複製したものとはいえない。
エ 本件ウェブページにおいて,本件画像は,他のコンテンツと明瞭に区別して
認識することができ,かつ,他のコンテンツと主従関係が認められる。また,競艇
予想サイトを批評する前提として,原告サイトがどのような形式のウェブサイトで
あるかを掲載することは重要である。さらに,本件画像の横には原告サイトのUR
15 Lも記載されている。したがって,本件画像の掲載は,公正な慣行に合致するもの
であり,かつ,引用の目的上正当な範囲内で行われたものであるから,適法な引用
(著作権法32条1項)に該当する。
⑵ 争点2(原告の社会的評価が低下し,信用が毀損されたことが明らかである
か)について
20 【原告の主張】
本件発信者が本件ウェブページに本件各記載を掲載したことにより,原告の社会
的地位が低下し,信用が毀損された。本件各記載の掲載に公益目的は認められず,
違法性阻却事由は認められない。したがって,原告の社会的地位が低下し,信用が
毀損されたことは明らかである。
25 【被告の主張】
争う。本件各記載の掲載により,原告の社会的評価が低下し,信用が毀損された
とはいえない。また,本件各記載の掲載は,原告の批評という公益目的によるもの
であり,違法性阻却事由が認められる。
⑶ 争点3(本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由はあるか)について
【原告の主張】
5 原告は,本件発信者に対して不法行為による損害賠償等を請求する予定であり,
そのためには本件発信者情報の開示を受ける必要があるから,本件発信者情報の開
示を受けるべき正当な理由がある。
【被告の主張】
不知又は争う。
10 第3 当裁判所の判断
1 争点1(原告の著作権(複製権)が侵害されたことが明らかであるか)につ
いて
⑴ 本件広告の著作物性について
前記第2の2⑵のとおり,本件広告は,競艇予想サイトである原告サイトのトッ
15 プページに掲載されたウェブ広告であり,別紙3著作物目録のとおり,「競艇予想の
プロ集団 TOP TREND」という標題の下に,会議室のような場所でテーブ
ルを囲んで着席している8名の人物を被写体とする本件写真が大きく表示されてい
るほか,「徹底!当日主義!!徹底!現場主義!!」 「
, 『勝てる!』『獲れる!』」と
いったキャッチコピーや説明文が表示されている。
20 そして,本件広告の構成要素のうち,少なくとも,本件写真については,被写体
の選択,構図等において,撮影者の思想又は感情が創作的に表現されているという
ことができるから,写真の著作物として認められるべきものであり,そうである以
上,本件広告を全体として見た場合に一定の個性が発揮されていることは否定し難
く,本件広告について,著作物性が認められるというべきである。
25 ⑵ 本件広告の著作権者について
証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,本件広告は,原告サイトのトップペー
ジに掲載されていたものであり,本件広告の右下には,「Copyright 2004-2018」と
して,原告の名称の英語表記と合致する「Top trend Co..Ltd.」との表示がされてお
り,「Copyright」が著作権を意味する語として一般的に用いられ,原告の名称の英
語表記も原告を示すものとして一般的に理解し得るものと認められるから,原告は,
5 本件広告に,その名称が著作者名として通常の方法により表示されている者である
ということができ,著作者と推定され,これを覆すに足りる証拠はないから,本件
広告について著作権を有すると認められる。
⑶ 複製権侵害について
証拠(甲1,3)及び弁論の全趣旨によれば,本件画像は,原告サイトに掲載さ
10 れた本件広告をそのまま縮小して本件ウェブページに掲載したものであると認めら
れ,本件広告の特徴的部分である本件写真を覚知することができる。
したがって,本件画像は,本件広告に依拠して再製したものであり,本件発信者
は,本件画像の掲載に際し,本件広告を複製したものと認められる。
⑷ 違法性阻却事由の不存在(適法な引用の成否)について
15 ア 証拠(甲2,3)及び弁論の全趣旨によれば,本件ウェブページは,競艇予
想サイトの批評を目的とするものであり,本件画像は,原告サイトを批評するため
に掲載されたものと認められる。
しかしながら,批評の対象となる原告サイトを特定する必要があるとしても,そ
のために,原告サイトの名称やURLを掲載することに加えて,本件広告を複製し
20 て掲載する必要性が高いとはいえないから,本件画像の掲載が,引用の目的上正当
な範囲内のものであるとはいえない。
したがって,本件画像の掲載は,適法な引用(著作権法32条1項)には当たら
ない。
イ そして,本件全証拠によっても,本件画像の掲載について,その他の違法性
25 阻却事由をうかがわせる事情は認められない。
⑸ 小括
以上によれば,本件発信者が本件ウェブページに本件画像を掲載したことにより,
本件広告についての原告の著作権(複製権)が侵害されたことが明らかであるとい
うべきである。
2 争点3(本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由はあるか)について
5 前記1によれば,原告は,本件発信者に対し,著作権(複製権)侵害を理由とす
る不法行為に基づく損害賠償請求をするために被告が保有する,本件ウェブページ
に係る本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるものと認められる。
3 結論
以上のとおり,本件画像の掲載による原告の権利侵害が明白であるところ,本件
10 発信者情報は上記権利侵害に係る発信者情報に該当し,その開示を受けるべき正当
な理由があるといえるから,被告は,開示関係役務提供者として本件発信者情報を
開示すべき義務を負う。
よって,原告の請求は理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり
判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
20 山 田 真 紀
裁判官
25 矢 野 紀 夫
裁判官
西 山 芳 樹
(別紙1)
発信者情報目録
被告が管理するサーバコンピュータにおいて,別紙2ウェブページ目録記載のウ
5 ェブページを開設する者に関する情報であって,次に掲げるもの。
1 氏名又は名称
2 住所
3 電子メールアドレス
(別紙2)
ウェブページ目録
名称 「比較競艇.net」
5 URL http://以下省略
(別紙3)
著作物目録
(略)
(別紙4)
侵害行為目録
1 次の画像
5 (略)

2 次の各記載
⑴ 「悪評」
⑵ 「このサイト,上手いこと法のギリギリやってる,信じたらバカみるょ。」
⑶ 「トップトレンド!?まだ懲りずにバカな事してるんやな!絶対に入会した
20 らバカ見るよ。全て嘘。何もかもが嘘で固められているから,頭おかしぃ連中なん
か相手にするもんじゃない。」
⑷ 「ここで1文目から“ねつ造”ともとれる情報が記載されている。」

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