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平成30(ネ)10089損害賠償請求控訴事件

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裁判所 一部認容 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 令和1年9月18日
事件種別 民事
当事者 控訴人株式会社アールシーコア原雅宣
被控訴人株式会社秀和住研 株式会社秀和
法令 その他
民法724条2回
民法166条1項1回
不正競争防止法4条1回
キーワード 損害賠償44回
無効7回
侵害4回
許諾1回
主文 1 控訴人の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。⑴ 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して600万円及びこれに対する平成28年12月19日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。⑵ 控訴人のその余の請求を棄却する。
2 控訴人の当審における追加請求について⑴ 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して1800万円及びこれに対する平成28年12月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。⑵ 控訴人のその余の当審における追加請求を棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを5分し,その1を被控訴人らの連帯負担とし,その余を控訴人の負担とする。
4 この判決は,第1項⑴,第2項⑴に限り,仮に執行することができる。
事件の概要 1 事案の要旨 ⑴ 本件は,ログハウスを中心とする企画型住宅の設計をし,販売会社(販社) を通じて顧客に販売している控訴人が,控訴人の販社であった被控訴人らにおいて, 控訴人の商品の展示場で勧誘した顧客に自らの商品である建物を販売するなどした ことは,販社契約上の義務の違反に当たると主張して,① 平成12年から平成1 7年まで控訴人の販社であった被控訴人秀和住研に対し,債務不履行による損害賠 償請求権に基づき,419万2894円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め, ② 平成17年以降控訴人の販社となった被控訴人秀和については債務不履行によ る損害賠償請求権に基づき,その債務を連帯保証した被控訴人秀和住研については 保証債務履行請求権に基づき,被控訴人らに対し,1億1788万3739円及び これに対する遅延損害金の連帯支払を求めた事案である(遅延損害金はいずれも訴 状送達の日の翌日である平成28年12月19日を起算日とし,商事法定利率であ る年6分の割合による。)。 ⑵ 原審は,控訴人の主張した2つの契約上の義務のうち,① 販社は模倣品を 取り扱ってはならない義務(模倣品非取扱義務)について,被控訴人らにおいて建

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判決文

令和元年9月18日判決言渡

平成30年(ネ)第10089号 損害賠償請求控訴事件(原審 東京地方裁判所

平成28年(ワ)第39372号)

口頭弁論終結日 令和元年6月5日

判 決

控 訴 人 株式会社アールシーコア

同訴訟代理人弁護士 相 良 朋 紀

原 雅 宣

佐 藤 力 哉

彈 塚 寛 之

被 控 訴 人 株 式 会 社 秀 和 住 研

(以下「被控訴人秀和住研」という。)

被 控 訴 人 株 式 会 社 秀 和

(以下「被控訴人秀和」という。)

上記両名訴訟代理人弁護士 川 上 邦 久

主 文

1 控訴人の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。

⑴ 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して600万円及びこれ

に対する平成28年12月19日から支払済みまで年6分の割

合による金員を支払え。

⑵ 控訴人のその余の請求を棄却する。

2 控訴人の当審における追加請求について

⑴ 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して1800万円及びこ

れに対する平成28年12月19日から支払済みまで年5分の

割合による金員を支払え。

⑵ 控訴人のその余の当審における追加請求を棄却する。

3 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを5分し,その1を被控

訴人らの連帯負担とし,その余を控訴人の負担とする。

4 この判決は,第1項⑴,第2項⑴に限り,仮に執行することが

できる。

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判

1 控訴の趣旨

⑴ 原判決を取り消す。

⑵ア 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して1億1788万3739円及びこれに対する平成28年12月19日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。イ 被控訴人秀和住研は,控訴人に対し,419万2894円及びこれに対する平成28年12月19日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

⑶ 当審における追加請求ア 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して1億1788万3739円及びこれに対する平成28年12月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。イ 被控訴人秀和住研は,控訴人に対し,419万2894円及びこれに対する平成28年12月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(控訴人は,当審において,債務不履行による損害賠償請求(⑵アイ)に加え,予備的請求として,不法行為による損害賠償請求(⑶アイ)を追加した。)2 控訴の趣旨に対する答弁

⑴ 本件控訴を棄却する。

⑵ 控訴人の当審における追加請求をいずれも棄却する。

第2 事案の概要等(特に断らない限り,略称は原判決に従う。)

1 事案の要旨

⑴ 本件は,ログハウスを中心とする企画型住宅の設計をし,販売会社(販社)を通じて顧客に販売している控訴人が,控訴人の販社であった被控訴人らにおいて,控訴人の商品の展示場で勧誘した顧客に自らの商品である建物を販売するなどしたことは,販社契約上の義務の違反に当たると主張して,① 平成12年から平成1年まで控訴人の販社であった被控訴人秀和住研に対し,債務不履行による損害賠償請求権に基づき,419万2894円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め,

② 平成17年以降控訴人の販社となった被控訴人秀和については債務不履行による損害賠償請求権に基づき,その債務を連帯保証した被控訴人秀和住研については保証債務履行請求権に基づき,被控訴人らに対し,1億1788万3739円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求めた事案である(遅延損害金はいずれも訴状送達の日の翌日である平成28年12月19日を起算日とし,商事法定利率である年6分の割合による。)。

⑵ 原審は,控訴人の主張した2つの契約上の義務のうち,① 販社は模倣品を取り扱ってはならない義務(模倣品非取扱義務)について,被控訴人らにおいて建築し顧客に提供した本件各建物はいずれも販社契約上の模倣品に該当しないとして,被控訴人らの義務違反を認めず,また,② ストックされた顧客情報を他に流用してはならない義務(ストック顧客情報非流用義務)については,本件各建物のうち一部との関係で,控訴人秀和に義務違反が認められるものの,控訴人の主張する逸失利益との間に相当因果関係が認められないと判断し,控訴人の被控訴人らに対する各請求をいずれも理由がないものとして棄却した。そこで,控訴人が本件控訴を提起した。

⑶ 控訴人は,当審において,① 債務不履行による損害賠償請求を主位的請求とし,販社である被控訴人らの義務として,専従義務(新主張の追加),他社競合商品取扱禁止義務及び顧客情報漏洩禁止義務の3つを選択的に主張し,予備的に,

② 不法行為による損害賠償請求として上記①の請求と同額の金員(ただし,遅延損害金の割合は年5分)の支払を求める請求を追加する旨の申立てをした。なお,控訴人は,以上に加えて,不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求を予備的に追加する旨の申立てもしたが,その訴え変更については,平成31年3月1日の第1回口頭弁論期日において,民訴法143条4項により,これを許さない旨の決定がされた。2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)

⑴ 当事者ア 控訴人は,東京都に本店を有する,住宅用木材及び資材の製造・販売等を業とする株式会社である。イ 被控訴人秀和住研は,平成2年7月17日に設立された,青森県八戸市に本店を有する,建築工事等を業とする株式会社である。ウ 被控訴人秀和は,平成17年7月1日に被控訴人秀和住研の子会社として,「株式会社ビッグフット秀和」の商号で設立された,土木,建築工事及び不動産の販売等を業とする株式会社であり,被控訴人秀和住研と代表者が共通である。

⑵ 販社契約の締結及びその内容ア 控訴人は,「ビックフット」(平成20年4月まで)又は「BESS」(ベス。同月以降)のブランド名で,ログハウスを中心とする企画型住宅を設計し,住宅用の木材及び資材を販売会社(販社)に供給し,販社は,顧客を勧誘し,控訴人から供給された木材及び資材を使用して住宅を建築して,顧客に販売している(以下,時期を問わず,この事業を「ビッグフット事業」といい,顧客に販売される建物を「ビッグフット商品」という。。)イ 被控訴人秀和住研は,平成12年9月30日,控訴人との間で,「ビッグフット地区販社契約」を締結し,その後契約の更新をした。各契約の内容は,別紙1「販社契約及び販社規約の規定変更の経緯等」に記載されたとおりである(以下,各契約を,上記別紙の「販社契約」欄の「番号」欄の記載に従い,「販社契約1」などという。。)ウ 被控訴人秀和は,平成17年7月1日,控訴人との間で,販社契約5を締結して新たに控訴人の販社となり,その販社契約に基づき控訴人に対して負うこととなる一切の債務を,従前販社であった被控訴人秀和住研が書面で連帯保証した(甲)。販社契約5は,その後,別紙1に記載されたとおり更新された。

⑶ 販社である被控訴人らによる自らの商品の建築等控訴人の販社であった被控訴人らは,別紙2「関係顧客一覧表」に記載されたとおり,平成16年6月27日から平成28年5月8日までの間に,30件にわたり,控訴人の商品の展示場で勧誘し,いずれもストック顧客として登録された顧客に対し,自らの商品の建築請負契約を締結し,提供した(以下,対象となった各建物を併せて「本件各建物」といい,個別の建物を指す場合には,同別紙の「番号」欄の記載に従い「本件建物1」などといい,対応する顧客を「本件顧客1」などという。甲42,45,乙23)。

⑷ 販社契約の終了控訴人は,平成28年3月17日,上記⑶の被控訴人らの行為が,当時効力を有していた販社契約10の28条⑴「本契約を継続し難い重大な事由」に該当するとして,販社である被控訴人秀和に対し,販社契約10を解除する旨の意思表示をし(以下「本件解除」という。甲53ないし58),控訴人と被控訴人らとの契約関係は終了した。3 争点

⑴ 主位的請求についてア 被控訴人らの債務不履行の有無(争点1-1)イ 控訴人の損害の有無及び額(争点1-2)ウ 損害賠償請求権の消滅時効の成否(争点1-3)

⑵ 予備的請求(当審における追加請求)についてア 被控訴人らの不法行為の成否(争点2-1)イ 控訴人の損害の有無及び額(争点2-2)ウ 損害賠償請求権の消滅時効の成否(争点2-3)

第3 当事者の主張

1 被控訴人らの債務不履行の有無(争点1-1)について

〔控訴人の主張〕

⑴ 事実関係

ア 平成16年に販社であった被控訴人秀和住研は,その運営するビッグフット秋田展示場に来場した本件顧客1に対し,被控訴人秀和住研の商品の販売活動をし,同年6月27日,同顧客との間で本件建物1に係る建築請負契約を締結し,設計・施工を行った。イ 平成17年以降に販社であった被控訴人秀和は,同年11月1日から平成2年12月28日にかけて,上記展示場に来場した本件顧客3ないし27に対し,また,平成26年5月31日から平成28年5月8日にかけて,その運営するビッグフット青森展示場に来場した本件顧客28ないし30に対し,関連会社である被控訴人秀和住研の商品の販売活動を行い,その結果,同社に上記各顧客との間で本件建物3ないし30に係る建築請負契約を締結させ,設計・施工を行わせた。

⑵ 被控訴人秀和住研の販社契約上の義務の違反

ア 専従義務の違反(当審における新たな主張)平成16年6月27日当時効力を有していた販社契約4によれば,販社は,展示場をビッグフット事業単独の専用のものとし,専任の組織体制を設置しなければならないとされていた(第3条(展示場・組織体制・業績管理等))。上記契約の趣旨からすれば,これは販社の専従義務を定めたものであると解される。ビッグフット秋田展示場に来場した本件顧客1に対して自らの商品の建築請負契約を締結するなどした被控訴人秀和住研は,販社の専従義務に違反している。イ 他社競合商品取扱禁止義務の違反(原審において「模倣品非取扱義務の違反」とされていたものと同じ)販社契約4によれば,販社は,模倣品に限らず,他社競合商品を扱ってはならないとされていた(第5条(対象商品と競合商品取扱いの禁止))。上記契約の趣旨からすれば,ここでいう「競合」とはビッグフット商品と顧客層が重複することを意味し,「他社競合商品」とは同商品と顧客層が重複する,控訴人以外の商品を意味するものと解される。本件建物1は,自然派由来の木材を多用した個性的な住宅であり,その商品特性からみて類型的にビッグフット商品と顧客層が重複するものであるから,「他社競合商品」に該当する。他者競合商品を取り扱った被控訴人秀和住研は,販社の他社競合商品取扱禁止義務に違反している。ウ 顧客情報漏洩禁止義務の違反(原審において「ストック顧客情報非流用義務の違反」とされていたものと同じ)販社契約4によれば,販社は,控訴人の保有するストック顧客情報を流用し,又は第三者に漏洩してはならないとされていた(第22条(秘密の遵守))。上記契約の趣旨からすれば,ビッグフット事業において登録された顧客との間でビッグフット商品以外の商品を販売することは,同義務に違反するものとして許されない。登録された本件顧客1に対して自らの商品の建築請負契約を締結した被控訴人秀和住研は,販社の顧客情報漏洩禁止義務に違反している。

⑶ 被控訴人秀和の販社契約上の各義務の違反

ア 本件建物3ないし27平成18年1月1日から平成23年12月31日までの期間に効力を有していた販社契約5ないし8には,販社契約4と同様に,販社の専従義務,他社競合商品取扱禁止義務及び顧客情報漏洩禁止義務の各義務が定められていた。被控訴人秀和は,ビッグフット秋田展示場に来場した本件顧客3ないし27に対して自らの商品を提供した点において専従義務に違反し,他者競合商品を取り扱った点において他社競合商品取扱禁止義務に違反し,登録された上記各顧客に対して自らの商品を提供した点において顧客情報漏洩禁止義務に違反している。イ 本件建物28ないし30平成26年1月1日以降効力を有していた販社契約10には,それまでの各販社契約と同様に,販社の専従義務,他社競合商品取扱禁止義務及び顧客情報漏洩禁止義務の各義務が定められているほか,販社は,契約終了時から6か月間,本契約による営業場所において,控訴人と同一ないし類似の事業を行ってはならないことが定められていた(第30条(契約終了後の競業避止義務)。)被控訴人秀和は,本件建物28を本件顧客28に提供したことにつき,専従義務及び顧客情報漏洩禁止義務に違反し,本件建物29を本件顧客29に提供したことにつき,専従義務及び顧客情報漏洩禁止義務のほか,他社競合商品取扱禁止義務に違反し,平成28年5月8日に本件建物30を本件顧客30に提供したことについては,契約終了後の競業避止義務及び顧客情報漏洩禁止義務に違反する。〔被控訴人らの主張〕

⑴ 時機に後れた攻撃方法の却下

専従義務の違反をいう控訴人の主張は,控訴審において初めてされたものであり,時機に後れて提出された攻撃方法である。提出がその時機に後れたことについて控訴人には重大な過失があり,その審理により訴訟の完結を遅延させることになるから,主張は民訴法157条1項により却下されるべきである。

⑵ 認否及び反論

ア 事実関係,控訴人が挙げる各約定の存在は認め,控訴人の主張は争う。イ 控訴人の主張するような専従義務及び他社競合商品取扱禁止義務は,販社契約の各約定において定められたことはない。被控訴人秀和住研は,控訴人と販社契約を締結する以前から住宅事業を営んでおり,最初に締結した販社契約1でも,従前からの事業を継続することは禁止されていなかった。また,被控訴人らが顧客に提供した商品は,販社契約上禁止された「模倣品」には該当しない。ウ 秘密保持の対象は,当初,事業運営ノウハウに限られていた。控訴人の主張する顧客情報漏洩禁止義務に関する約定としては,平成24年1月1日付け販社契約9の第5条において,登録されたストック顧客を販社の関係会社に紹介するなどの流用をすることが初めて禁止され,販社契約10においても同旨の約定が引き継がれたが,これらより前の販社契約にそのような義務が明記されたことはなかった。エ 上記ウのストック顧客情報流用禁止規定(第5条)は,ビッグフット事業のために5億円を超える支出をした被控訴人秀和が,事業継続のために契約の改訂を拒絶できない状態に乗じて創設されたものであるから,控訴人がその優越的地位を濫用したものとして公序良俗に反し,無効である。オ 被控訴人秀和住研は,ビッグフットの展示場に来訪した顧客に対し,ビッグフット商品の販売活動を行ったが,予算的な制約から同商品の販売は不可能だと判断せざるを得ない顧客に対し,その要望を踏まえた別の住戸の建築をし提供したものであり,控訴人の利益を侵害する関係にもないことからすれば,販社契約の債務不履行による損害賠償請求は,その前提を欠くというべきである。

2 控訴人の損害の有無及び額(争点1-2)について

〔控訴人の主張〕

⑴ 模倣品の取扱いに係る本件損害賠償合意及び本件違約金規定

被控訴人秀和(その代表者は被控訴人秀和住研の代表者でもある。)は,平成18年6月14日,控訴人との間で,販社が模倣品と判定された商品を取り扱っていたことが発覚した場合には,当該物件請負額の20%相当の損害賠償金を支払わなければならない旨合意した(本件損害賠償合意)。また,ビッグフット販社規約書(2年版)には,本件損害賠償合意と同旨の違約金規定(本件違約金規定)があり,平成19年1月1日から適用された。そして,平成28年3月16日開催の幹部販社会議において,本件建物1ないしがいずれもビッグフット商品の模倣品であると判定され,同年9月14日開催の幹部販社会議において,本件建物28ないし30についても同様の判定がされた。したがって,被控訴人らは,本件各建物の全てに係る損害賠償として,以下の(ア)ないし(ウ)のとおり,本件損害賠償合意又は本件違約金規定の内容に従って算定される額の金員を支払うべきことになる。(ア) 被控訴人秀和住研による本件建物1の請負金額は,被控訴人秀和住研がビッグフット商品の建築を請け負った際の金額を下回らないと考えられるから,ビッグフット商品の建築請負金額を基準とすべきである。被控訴人らが秋田県内において平成16年から平成23年までの間にビッグフット商品を建築した際の請負代金の平均額は2096万4470円であるから,被控訴人秀和住研が控訴人に対して賠償すべき損害の額は,419万2894円となる。(計算式)2096万4470円×20%×1件=419万2894円(イ) 被控訴人秀和による本件建物3ないし27の請負金額につき,上記(ア)と同様に,ビッグフット商品を建築した際の請負代金の平均額2096万4470円を基準とすると,被控訴人秀和が控訴人に対して賠償すべき損害の額は,1億04万2350円となる。(計算式)2096万4470円×20%×25件=1億0482万2350円(ウ) 被控訴人秀和が青森県内で建築を請け負った本件建物28ないし30に係る請負金額は,被控訴人秀和がビッグフット商品の建築を請け負った際の請負金額を下回らないと考えられるから,青森県内における平成26年11月から平成28年3月17日までのビッグフット商品の平均請負金額である2176万8982円を基準とすると,被控訴人秀和が控訴人に対して賠償すべき損害の額は,1306万1389円となる。(計算式)2176万8982円×20%×3件=1306万1389円

⑵ 逸失利益

本件損害賠償合意又は本件違約金規定がないとしても,控訴人には,被控訴人らが控訴人の商品の展示場で勧誘した顧客に対して自らの商品を提供したことにより,本来得られたはずの利益が得られなかったという逸失利益に相当する損害が生じており,この損害は被控訴人らの行為と相当因果関係がある。本来得られたはずの利益とは,各顧客との間で,販社契約に従ってビッグフット商品が販売された場合に,販社契約に基づいて支払われるキット販売利益及びロイヤリティの合計であり,別紙3「損害目録」のとおり,その額は合計6782万6208円を下らない。〔被控訴人らの主張〕

⑴ 本件損害賠償合意及び本件違約金規定について

事実は否認し,主張は争う。ア 模倣品の取扱いに係る本件損害賠償合意は存在しない。仮に,本件損害賠償合意が存在するとしても,同合意は,控訴人の主張によっても,控訴人と被控訴人秀和との間でされており,被控訴人秀和住研との間の合意ではないから,被控訴人秀和住研が販社であった当時の建物販売について合意の効力を受けることはない。イ 本件違約金規定は,ビッグフット事業のために5億円を超える支出をした被控訴人秀和が,事業継続のために契約の改訂を拒絶できない状態に乗じて創設されたものであるから,控訴人がその優越的地位を濫用したものとして公序良俗に反し,無効である。仮に,本件違約金規定が無効でないとしても,その要件を充足していないから,本件に適用されることはない。

⑵ 逸失利益について

控訴人は,現実に発生した損害を具体的に主張し,立証しなければ,逸失利益に係る損害の賠償を求めることはできないが,本件においてその主張立証はない。本件各建物を建築した顧客は,資力の関係で,ビッグフット商品の建築を断念した顧客であり,このことは,ビッグフット商品の請負金額と本件各建物の請負金額との差が大きいことから明らかである。そのような資力が乏しい顧客にはビッグフット商品の請負契約を締結することはできないから,本件事実関係の下では,控訴人において本来得られたはずの利益はない。また,控訴人の主張する逸失利益が被控訴人らの行為と相当因果関係を有することもない。

3 損害賠償請求権の消滅時効の成否(争点1-3)について

〔被控訴人らの主張〕

⑴ 控訴人の主張する各損害賠償請求権のうち,本件建物1,3ないし27の建

築等に係るものは,いずれも各請負契約締結の日から起算して5年の経過により商法522条の時効が完成した。被控訴人らは,控訴人に対し,令和元年6月5日の本件口頭弁論期日において,上記時効を援用するとの意思表示をした。

⑵ 控訴人の後記の主張⑴⑶はいずれも争う。

〔控訴人の主張〕

⑴ 時効の援用は,時機に後れたものとして却下されるべきである。

⑵ 消滅時効の起算点は争う。

模倣品に関する販社の義務違反については,オーナー会議等において「模倣品」と判定された時点で,違反物件に係る請負代金の20%が損害として確定されることになるから,本件債務不履行に基づく損害賠償請求権の損害が確定し,この時から,控訴人において,債務不履行による損害賠償請求権を行使できる状態になる。オーナー会議において本件各建物が「模倣品」と認定された日は,本件建物1からまでについて平成28年3月16日,本件建物28から30までについて同年月14日である。よって,消滅時効は完成していない。

⑶ 仮に時効が完成しているとしても,被控訴人らは,本件各建物に関する請負

契約の締結等の事実を控訴人に対して一切隠匿し,他社競合商品の取扱禁止義務や専従義務に違反している事実が発覚しないようにしており,控訴人が本件債務不履行に基づく損害賠償請求権について消滅時効を中断するための措置を講じることを妨害しているから,その援用は,権利の濫用に当たり,許されない。

4 被控訴人らの不法行為の成否(争点2-1)について

〔控訴人の主張〕被控訴人らの各行為は,販社契約上の義務違反に当たるだけでなく,控訴人の営業上の利益を違法に侵害するものとして,不法行為(本件建物3ないし30については共同不法行為)も構成する。すなわち,① 顧客情報は,個人情報そのものであり,それを取得した事業者自身ですら,事前に定めた取得目的外に利用したり,同意なく第三者に提供したりすることは原則として認められていないから,被控訴人らにおいて顧客情報を漏洩することは,控訴人の「権利」も「侵害」する。また,② 他社競合商品の取扱い及び③ 専従義務に違反する各請負契約締結行為についても,ビッグフットの展示場は,控訴人のビッグフット商品を体験させ販売することを目的として設けられているから,この展示場においてビッグフット商品の販売に専従せず,他社競合商品を取り扱うことは,商取引の公正を著しく害する違法性を有する行為である。〔被控訴人らの主張〕不法行為の主張は,被控訴人らの行為が販社契約上の義務違反に当たることを前提としなければ成り立たないはずのものである。被控訴人らの行為が販社契約上の義務違反に当たらないことは先に主張したとおりであり,そうである以上,被控訴人らには控訴人に対する不法行為を構成するような行為はない。

5 控訴人の損害の有無及び額(争点2-2)について

〔控訴人の主張〕控訴人には,被控訴人らの不法行為により,本来得られたはずの利益を得られないという逸失利益に相当する損害が生じている。その額は,別紙3のとおり,合計万6208円を下らない。〔被控訴人らの主張〕債務不履行による損害賠償請求についてと同様に争う。本件において,控訴人に利益の逸失はない。

6 損害賠償請求権の消滅時効の成否(争点2-3)について

〔被控訴人らの主張〕

⑴ 控訴人の主張する不法行為については,控訴人が被控訴人らから各年度の終

了から3か月以内に業務の報告を受けて,その時に不法行為に係る加害者及び損害を知ったから,上記各日から起算して3年が経過した損害賠償請求権について民法条前段の消滅時効が完成した。被控訴人らは,控訴人に対し,令和元年6月日の本件口頭弁論期日において,上記時効を援用するとの意思表示をした。

⑵ 控訴人の後記の主張⑴⑶はいずれも争う。

〔控訴人の主張〕

⑴ 消滅時効の援用は,時機に後れたものとして却下されるべきである。

⑵ 消滅時効の起算点は争う。

控訴人は,被控訴人らの元社員から,被控訴人らの違反行為を通報する書簡(甲)を平成27年12月24日に受領し,その後,調査を行った結果,① 顧客情報の漏洩禁止義務違反行為,② 他社競合商品の取扱い,③ 展示場における専従義務に違反する各請負契約締結行為等の詳細が判明したのである。控訴人が上記日以前において不法行為に係る「損害及び加害者を知った」ことはなく,不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は経過していない。

⑶ 仮に,不法行為に基づく損害賠償請求権の時効が完成しているとしても,債

務不履行による損害賠償請求権についてと同様に,その時効の援用は,権利の濫用に当たり,許されない。

第4 当裁判所の判断

1 認定事実前記前提事実(前記第2の2)に加え,証拠(各項に掲げたもののほか,甲13,137,161,164,乙20,21,原審証人A,同B,同C,被控訴人ら代表者)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められ,証拠中以下の認定に反する部分は採用しない。

⑴ 控訴人の業務の内容控訴人は,ログハウスを中心とする企画型住宅(ビッグフット商品)を設計し,全国に展開した販社に住宅用の木材及び資材を供給し,販社から顧客に住宅を提供するという業態で事業を行っている。控訴人は,展示場に来場し又は資料請求をした顧客を,データベースに登録して「ストック顧客」と呼び,その情報を上記事業に活用していた。

⑵ 被控訴人秀和住研との販社契約の締結ア 控訴人は,青森・下北,八戸エリアを地区(商圏エリア)とするビッグフット商品の販社として,被控訴人秀和住研と販社契約を締結することとし,平成12年9月30日,被控訴人秀和住研との間で,次の(ア)ないし(コ)を含む「ビッグフット地区販社契約」(販社契約1。甲80)を締結した。(ア) 控訴人は,本部として,商品の開発及び価格の設定,資材キットの供給,全国的な宣伝及び広報,地区販社に対する販売ノウハウ等の提供及び指導,施工における技術指導,その他事業運営ノウハウの提供を行う(第2条・本部の業務)。(イ) 被控訴人秀和住研は,青森・下北,八戸エリアを地区(商圏エリア)とし,商圏エリア内にモデルハウスを設け,控訴人の指定する専用のパソコン及びアプリケーションを導入して,商品の販売等を行う(第3条・地区販社の組織体制)。(ウ) 対象商品は,ビッグフットログハウス等の控訴人の開発したビッグフット商品及び控訴人の選定したインテリア関連商品とし,被控訴人秀和住研は,控訴人の許可する特別な場合を除いて,他社競合商品を取り扱わない(第4条 対象商品)・ 。(エ) 控訴人が被控訴人秀和住研にビッグフット商品のキットを販売すること等に係る取引条件について定める(第5条・取引条件)。(オ) 控訴人は,事業運営上のルールとブランドイメージの統一を図るため,システム,基準等に係る規約を年度ごとに制定し,被控訴人秀和住研は,規約を遵守する(第8条・規約の制定及び遵守)。(カ) 控訴人は,互いに利益を上げ,全販社間の公平を図るため,毎年11月度の販社会議において翌年のビッグフットマーケティング指数を発表し,被控訴人秀和住研は,それに基づいて翌年の販売計画を作成する(第9条・年間販売計画)。(キ) 被控訴人秀和住研は,控訴人に対し,毎月の営業状況報告,前年の営業実績報告を行い,控訴人は,同報告に基づき,被控訴人秀和住研に経営指導を行う(第条・報告の義務)。(ク) 被控訴人秀和住研は,ビッグフットの商標を使用するときは,事前に控訴人の許可を得なければならず,担当する商圏エリア外での宣伝広告活動についても,控訴人の許可を要する(第13条・商標の使用等)。(ケ) 被控訴人秀和住研は,本契約に基づいて知った事業運営上のノウハウを一切に他に洩らさないものとし,契約の終了後も同様とし,これに違反したときは,控訴人の被る損害の責を負う(第17条・秘密の遵守)。(コ) 本契約は,締結の日から2年間存続し,以後2年ごとに双方協議の上更新を行う(第19条・契約期間)。イ 販社契約1は,平成13年1月1日付けで更新され(販社契約2。甲94),さらに,平成14年1月1日付け(販社契約3。甲95)及び平成16年1月1日付け(販社契約4。甲96)でそれぞれ更新された。ウ 販社契約4の約定のうち本件に関係するものは次のとおりである。(ア) 被控訴人秀和住研は,事業の開始に当たり,ビッグフット事業単独の展示場を開設し,専任の組織体等を設け,ビッグフット事業の業績管理を被控訴人秀和住研の展開する他事業と分離,独立して行う(第3条・展示場・組織体制・業績管理等)。(イ) 対象商品は,ビッグフットログハウス等の控訴人の開発したビッグフット商品及び控訴人の選定した関連商品とし,被控訴人秀和住研は,控訴人の許可する特別な場合を除いて,他社競合商品を取り扱わない(第5条・対象商品と競合商品取扱いの禁止)。(ウ) 控訴人が被控訴人秀和住研にビッグフット商品のキットを販売する際の価格は,(キットの定価)×(仕切率)「 」の算式により求められ,ビッグフット商品が販売された場合には,被控訴人秀和住研は,控訴人に対し,請負代金額の3%に相当するロイヤリティを支払う(第6条・取引条件,別表B)。(エ) 被控訴人秀和住研は,本契約に基づいて知った事業運営上のノウハウを一切に他に洩らさないものとし,契約の終了後も同様とし,これに違反したときは,控訴人の被る損害の責を負う(第22条・秘密の遵守)。(オ) 被控訴人秀和住研は,契約終了時から6か月間,本契約による営業場所において,控訴人と同一ないし類似の事業を行うことができない(第26条・契約終了後の競業避止義務)。エ 被控訴人秀和住研は,販社契約4の期間中である平成16年6月27日,本件顧客1との間で,本件建物1に係る建築請負契約を締結した。

⑶ ビッグフット秀和の設立と販社の地位の承継ア 被控訴人秀和住研は,平成17年7月1日付けで子会社である被控訴人秀和(当時の商号は「株式会社ビッグフット秀和」)を設立した。控訴人との販社契約については,新たに設立された被控訴人秀和と控訴人との間で,「ビッグフット販社基本契約」(販社契約5。甲97)が締結されて従前の契約を更新し,その控訴人に対する債務を被控訴人秀和住研が書面をもって連帯保証した。なお,ビッグフット秀和の設立は,控訴人から勧められたものであり,控訴人からは,さらに,一部出資をするので,今後の事業は全て控訴人の承認を得るようにと求められたが,被控訴人秀和住研は,この提案を断った(乙20)。イ 被控訴人秀和住研は,別紙1記載のとおり,販社契約5の期間中に4件(本件建物2ないし5),顧客との間で建物の建築請負契約を締結した。

⑷ 控訴人における商品管理等の強化等ア 販社契約5は,平成18年1月1日,更新され(販社契約6。甲81) 特に,,販社の業務として,販社がビッグフット事業以外の活動は行わないことが明確にされた(第2条)。これは,当時,販社がビッグフット事業とは別に類似の商品を扱う例のあることが知られていたためである。イ 販社の1つである株式会社ウッディハウスは,山形地区をエリアとしていたが,同年5月21日付けの「お詫び状」と題する書面で,控訴人に対し,ビッグフット商品と意匠,デザイン及び間取りにおいて酷似する商品を販売していた事実を確認し,同様のことを行わないことを誓約するなどした(甲84)。ウ 控訴人においては,定期的に「ビッグフット幹部販社会議」が開催されていたところ,同年6月14日に開催された会議には,幹部販社からの構成員として被控訴人らの代表者も出席し,上記イの事実が報告されるとともに,ビッグフット商品のブランド管理が議題の一つとして取り上げられ,模倣品を販売することの禁止が確認された(甲85,86)。エ 「ビッグフット販社規約書(2007年版)」は,平成19年1月1日に効力を生じたところ,同規約には,販社の契約上の義務違反に係る賠償額の予定として,販社が模倣品と判定された商品を取り扱っていたことが発覚した場合には,当該物件請負額の20%相当の損害賠償金を支払わなければならないとの本件違約金規定が設けられた(甲138)。オ 販社契約6は,平成20年1月1日には,ブランド名を「BESS」と改めて更新され(「BESS販社基本契約」(販社契約7。甲98),競合商品の扱いに)関し,販社「の関係会社を含み」他社競合商品の取扱いができないと改められた(第条)。同契約は,平成22年1月1日に更新された(販社契約8。甲99)。なお,販社契約7からは,ビッグフット商品の販売につき販社である被控訴人秀和の支払うべきロイヤリティの割合が,請負代金額の4%とされた(第6条・販社取引条件,「BESS販社規約書(2008年版)第7条。甲139)。カ 被控訴人秀和住研は,別紙1記載のとおり,販社契約6の期間中に7件(本件建物6ないし11,13),販社契約7の期間中に9件(本件建物12,14ないし21),販社契約8の期間中に6件(本件建物22ないし27),顧客との間で建物の建築請負契約を締結した。

⑸ 平成24年以降の事実の経過ア 販社契約8は,平成24年1月1日に更新され(販社契約9。甲100),ビッグフット事業において登録されたストック顧客を販社の関連会社に紹介して流用することはできないことが明記された(第5条後段)。イ 控訴人,被控訴人秀和及び被控訴人秀和住研は,平成26年1月1日,「BESS販社基本契約」(販社契約10。甲23)を締結した。販社契約9からの変更点として,被控訴人秀和は,本契約に基づいて知ったビッグフット事業の運営ノウハウ,その他控訴人が秘密として指定した情報及び顧客情報を第三者に一切漏洩してはならず,また本契約に基づくビッグフット事業の遂行以外の目的に使用しないものとし,本契約の終了後も同様とする(第25条・秘密保持と流用禁止)との約定が設けられた。ウ 販社契約10の締結に関連する平成27年1月1日付け「BESS販社規約書(2015年版)」の内容についても,販社である被控訴人秀和において異議なく同意された(甲24)。もっとも,販社契約10における他社競合商品取扱禁止義務については,本部である控訴人と各販社との間で,なお運用上の疑義があったことから,平成27年7月22日開催のオーナー会議において協議され,その結果,取扱禁止の対象となる競合類似商品の定義は,① 自然志向,いわゆる木の家等でかつ価格帯も近く,結果として対象客層が似通っていること,② ビッグフットの商談のバッティングがあり,競合対象となりやすいこと,③ デザイン面等(表現,セールストーク等を含む。)で模倣懸念があり,顧客の混同を招くおそれがあること,の3点において確定された(甲114)。エ 被控訴人秀和住研は,平成26年5月31日に本件顧客28との間で本件建物28の,平成27年9月7日に本件顧客29との間で本件建物29の,建築請負契約をそれぞれ締結した(甲45)。オ 控訴人及び被控訴人秀和は,平成28年1月1日付けで販社契約10の契約期間の終期を平成27年12月31日から平成28年3月31日に変更する旨合意した(甲36)。平成28年3月16日開催の幹部販社会議において,本件建物1ないし27を含む商品が販社契約上の模倣品であると判定された(甲53)。控訴人は,これを受けて,同月17日,被控訴人らによる販売が「本契約を継続し難い重大な事由」に該当するとして,被控訴人秀和に対し,販社契約を解除する旨の意思表示をし(甲56),販社契約10は,この頃,終了した。カ 被控訴人秀和住研は,販社契約10の終了後である平成28年5月8日,本件顧客30との間で,本件建物30の建築請負契約を締結した(甲45)。キ 被控訴人秀和の商号は,控訴人からの要求を受け(甲74ないし77),同年月1日付で「株式会社ビッグフット秀和」から「株式会社秀和」に変更された(甲)。その後,同月14日開催の幹部販社会議において,本件建物28ないし30についても模倣品であるとの判定がされた(甲58)。控訴人は,同年11月21日,本件訴えを提起した。

⑹ 被控訴人らによる販社契約に基づくビッグフット商品の販売実績等被控訴人らのビッグフット商品の販売実績は,秋田の展示場における平成17年月から平成23年12月までの間の販売実績をみると,134件(契約額平均2万4470円。甲62),青森の展示場における平成26年11月から平成2年2月までの間の販売実績をみると,24件(契約額平均2176万8982円。甲63)であった。

2 主位的請求(債務不履行による損害賠償請求)について⑴ 事案に鑑み,消滅時効の成否(争点1-3)から判断する。ア 控訴人の請求は,販社であった被控訴人秀和住研又は被控訴人秀和が,販社契約上の義務に違反して,自らの製品である本件建物1,3ないし30の建築請負契約を締結して,顧客にビッグフット商品でない建物を提供したことを理由とする,債務不履行による損害賠償の請求である。その消滅時効は,権利を行使することができる時から進行する(民法166条1項)。ここでいう「権利を行使することができる時」とは,権利を行使するのに法律上の障害がなくなった時をいい,権利者が権利の存在を知らない場合であっても時効は進行するものと解される。控訴人の主張する上記債務不履行による各損害賠償請求権は,期限の定めのない債権であるので,その成立の時が「権利を行使することができる時」に当たり,その時から消滅時効が進行する。控訴人の主張する債務不履行による各損害賠償請求権のうち,本件建物1,3ないし27の建築に係るものは,いずれも各請負契約締結の日から5年の経過により商法522条の時効が完成している。そして,被控訴人らが控訴人に対して,令和元年6月5日の本件口頭弁論期日において,上記時効を援用するとの意思表示をしたことにより,時効により消滅した。控訴人は,模倣品に関する販社の義務違反については,オーナー会議等において「模倣品」と判定された時点から起算されると主張するが,上記説示したところに照らし,主張は採用することができない。イ 控訴人は,被控訴人らが契約上の義務違反行為を発覚しないようにしていたので,時効の援用は,権利の濫用に当たり,許されないと主張する。しかし,一般に契約当事者間の債権債務関係は,時効による規律になじむものであり,商人間であれば,よりそのようにいうことができる。前記1の認定事実に照らしても,本件において時効の援用が権利の濫用に当たるとまではいえない。ウ 控訴人は,被控訴人らによる時効の援用が,訴訟上,時機に後れた攻撃防御方法の提出に当たり,却下されるべきであるとも主張するが,それにより訴訟の完結を遅延すると認められないから,却下することはしない。エ まとめ以上によれば,債務不履行については,本件建物28ないし30の建築請負契約に限り,検討すれば足りる。⑵ 被控訴人秀和の債務不履行の有無(争点1-1)ア 本件建物28及び29について(ア) 販社であった被控訴人秀和は,平成26年5月31日,その運営するビッグフット青森展示場に来場した本件顧客28に対し,また,平成27年9月7日,上記展示場に来場した本件顧客29に対し,それぞれ被控訴人秀和住研の商品の販売活動を行い,同社に上記各顧客との間で上記各建物に係る建築請負契約を締結させ,設計・施工を行わせたというのである。(イ) この当時効力を有していた販社契約10には,以下のとおり,販社の義務が定められていた。① 専従義務被控訴人秀和は,ビッグフット事業を開始するに当たり,同事業単独の展示場を開設し,専任の組織体制を設け,同事業の業績管理を被控訴人秀和の展開する他事業と分離,独立して行う(第3条)。② 顧客情報漏洩禁止義務被控訴人秀和は,ビッグフット事業において登録したストック顧客とビッグフット以外の建築請負契約を締結し,被控訴人秀和の関係会社等に紹介するなど,ストック顧客を流用することはできず(第5条後段),本契約に基づき知り得た控訴人の構築するシステム及び基準等のビッグフット事業運営ノウハウ,その他控訴人が秘密情報として指定した情報並びに顧客情報を第三者(同事業の遂行に携わる者以外の被控訴人秀和の内部の者を含む。)に一切漏洩してはならず,また本契約に基づく同事業の遂行以外の目的に使用しないものとし,契約終了後も同様とする(第条⑴)。③ 他社競合商品取扱禁止義務本契約に基づく対象商品は控訴人の開発したビッグフット商品及び控訴人の選定した関連商品とし,被控訴人秀和は,控訴人の許可する特別な場合を除き,被控訴人秀和の関係会社を含み他社競合商品(ログハウス及び控訴人が定めるビッグフット類似商品)の取扱いができない(第5条前段)。(ウ) 被控訴人らは,このうち顧客情報漏洩禁止義務について,その根拠規定は,被控訴人秀和がビッグフット事業のために5億円を超える支出をし,販社契約の継続のために契約の改訂を拒絶できない状態に乗じて創設されたから,控訴人がその優越的地位を濫用して設けたものとして公序良俗に反し,無効であると主張する。しかしながら,控訴人においてストック顧客情報流用禁止規定を設けることには,販社契約の目的に照らして相応の合理性があり,その内容も販社の義務として不当といえないことからすれば,顧客情報漏洩禁止義務を定めた規定が,公序良俗に反し無効であると評価することはできない。(エ) また,販社契約10の他社競合商品取扱禁止義務における競合商品の意義について,前記認定事実のとおり,なお本部と販社との間で明確な共通認識に至らず,平成27年7月のオーナー会議において,① 自然志向,いわゆる木の家等でかつ価格帯も近く,結果として対象客層が似通っていること,② ビッグフットの商談のバッティングがあり,競合対象となりやすいこと,③ デザイン面等(表現,セールストーク等を含む。)で模倣懸念があり,顧客の混同を招くおそれがあること,の3点において確定したという事実経過に照らすと,上記平成27年7月のオーナー会議の時以降,契約上,販社を法的に拘束する義務が生じたと認めるのが相当であり,控訴人も,この時よりも前に建築請負契約が締結された本件建物28については,他社競合商品取扱禁止義務の違反を主張していない。(オ) よって,被控訴人秀和は,被控訴人秀和住研に本件建物28の建築請負契約を締結させたことにつき,専従義務及び顧客情報漏洩禁止義務に違反したものと認められ,また,同様に本件建物29の建築請負契約を締結させたことにつき,専従義務,顧客情報漏洩禁止義務及び他社競合商品取扱禁止義務に違反したものと認められる。イ 本件建物30について(ア) 前記認定事実(1⑸イ,オ,カ)のとおり,販社契約10は,平成28年月17日頃,控訴人による解除によって終了したが,販社であった被控訴人秀和は,その6か月以内である同年5月8日,被控訴人秀和住研に本件顧客30との間で建物の建築請負契約を締結させた。(イ) この当時既に販社契約10は終了していたが,同契約には,顧客情報漏洩は,契約の終了後も禁止されること(第25条⑴),契約終了後の競業避止義務として,販社は契約終了時から6か月間は本契約による営業場所において控訴人の営業と同一ないし類似の事業を行うことができないこと(第30条)が定められていた。(ウ) よって,被控訴人秀和は,被控訴人秀和住研に本件建物30の建築請負契約を締結させたことにつき,顧客情報漏洩禁止義務及び契約終了後の競業避止義務に違反したものと認められる。ウ その余の被控訴人らの主張について被控訴人らは,専従義務の主張が控訴審において初めてされた点をとらえて,時機に後れた攻撃方法に当たり訴訟上却下されるべきであるとも主張する。しかし,原審において契約に関する事実関係について審理が尽くされており,専従義務の主張は,別の法的観点を当てはめるだけのことであり,その審理により訴訟の完結を遅延すると認められないから,これを却下することはしない。⑶ 控訴人の損害の有無及び額(争点1-2)ア 本件建物29について(ア) 本件建物29に係る建築請負契約の締結については,前記⑵のとおり,専従義務,顧客情報漏洩禁止義務のほか,他社競合商品取扱禁止義務の違反が認められ,本件違約金規定の適用があることから,控訴人は,具体的な損害の発生を主張立証することなく,請負代金額の20%の賠償を求めることができる。(イ) 被控訴人らは,本件違約金規定は,被控訴人秀和が販社契約のために5億円を超える多額の支出をし,同契約の継続のために契約の改訂を拒絶できない状態に乗じて創設されたものであるから,控訴人がその優越的地位を濫用して設けたものとして公序良俗に反し,無効であると主張する。しかしながら,一般に,賠償額の予定は,契約を遵守させるとともに,損害の有無ないし額をめぐる二次的な係争を避けるために合理性があり,請負代金額の2%という違約金の額も不当とはいえないことからすれば,本件違約金規定が,公序良俗に反し無効であると評価することはできない。(ウ) 本件建物29に係る請負代金の額は,証拠(乙30の28)によれば,税込みで2000万円であると認められるから,控訴人は,その20%に相当する4万円の賠償を求めることができる。イ 本件建物28及び30について(ア) 本件建物28及び30に係る建築請負契約の締結(本件建物28につき専従義務及び顧客情報漏洩禁止義務の違反,本件建物30につき顧客情報漏洩禁止義務及び契約終了後の競業避止義務の違反)については,本件違約金規定の適用はない。(イ) 控訴人は,損害として,別紙3「損害目録」記載のとおり,販社契約に従い各顧客にビッグフット商品が販売されていれば得られたキット販売利益及びロイヤリティの合計(本件建物28につき315万1587円,本件建物30につき2万6704円)の喪失を主張する。そこで判断するに,民法上,損害賠償の範囲に関して,逸失利益のような消極的損害の賠償責任が認められるためには,被害者がその消極的損害に係る将来の利益を取得することが確実であることを要し,また,相当因果関係の有無からしても,因果関係に争いがある場合には,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係が高度の蓋然性をもって是認し得ることが必要であると解される。ビッグフット事業では,展示場に来場し又は資料請求をした顧客をデータベースに登録し,直ちに販売ができなくても,「ストック顧客」と呼んで活用を図っていたというのであるが,被控訴人らの商品が販売されていなければ,登録された顧客情報が残っているというだけのことであり,控訴人が上記の利益を受けられるものではない。このようにしてみると,登録された顧客に対し,ビッグフット商品を販売して所定の利益を取得することは,確実であるとも,その高度の蓋然性があるともいえないから,控訴人の上記の主張はその前提を欠いている。(ウ) 他方,本件の販社契約のもとでストックされた顧客情報は,将来ビッグフット商品を販売することのできる可能性を含んでいるという意味において財産的価値を有し,この点からすれば,被控訴人らが各顧客に自らの提供する建物を販売したことは,上記の可能性を低下させ又は失わせるものとして,控訴人に対して財産的損害を生じさせたというべきである。なお,被控訴人らは,財産的損害の発生を争い,本件各建物の建築等をした相手は,ビッグフット商品を購入するには資力の面で支障があった顧客に限られるから,控訴人に損害は生じない旨主張するが,顧客が安価な商品を選択する理由には,客観的に資力が足りないということのほかにも様々なものがあり得るところであり,本件において控訴人に損害が生じないと断定することはできない。そこで,次に,上記財産的損害の額を算定すべきところ,将来ビッグフット商品を販売することのできる可能性の低下ないし喪失という損害の性質上その額を立証することは極めて困難であると認められる。販社契約に基づくビッグフット商品の販売実績に関しては,前記認定(1⑹)のとおり,秋田の展示場における平成17年4月から平成23年12月までの間の販売実績が134件,青森の展示場における平成26年11月から平成28年2月までの間の販売実績が24件であったというのであるが,販売件数と顧客登録との相関関係を示す的確な証拠はない。そこで,上記財産的損害については,将来ビッグフット商品を販売することのできる可能性の金銭的評価であることを踏まえつつ,秋田及び青森における販売実績として,販売されたビッグフット商品の契約額の平均が2000万円程度であること(前記1⑹),ビッグフット商品の建築請負契約を締結することができた場合には,販社から控訴人に対し,請負代金の3~4%のロイヤリティが支払われ,控訴人が提供するキットが用いられることにより,控訴人に利益が生じること,控訴人と被控訴人らとの間では,他社競合商品を取り扱ったことに対する違約金として,請負金額の20%とする旨の本件違約金規定が有効に設けられ,違約金の額が40万円と算定される例(本件建物29)があったこと,その他本件に現れた一切の事情を総合的に考慮し,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき,民訴法2条により,相当な損害額は各建物につき100万円(合計200万円)と認める。ウ まとめ本件建物28ないし30に係る建築請負契約の締結等に係る債務不履行により,被控訴人秀和において賠償すべき控訴人の損害の額は,上記アの400万円及びイの200万円の合計である600万円となる。そして,被控訴人秀和住研は,連帯保証契約に基づき,上記と同額を支払うべきである。

3 予備的請求(不法行為による損害賠償請求)について⑴ 被控訴人らの不法行為の成否(争点2-1)ア 控訴人と各販社とは,大きくとらえれば,本部である控訴人が事業運営上のノウハウを提供し,住宅のブランド使用を許諾し,ブランドの管理や販社の業績の監督をし,販社はその対価を支払うことを中核とする継続的な契約関係にあり,比較的高額な商品を扱うという業務の性質上,一度勧誘した顧客を登録し,長く関係を維持継続する必要もある。これらの趣旨は,契約書の約定を全体として合目的的に解釈すれば,平成12年に最初に締結された販社契約1にも含まれていたと解する余地があるが,各販社の契約上の義務の存在や内容は必ずしも明確でないため徹底せず,平成18年頃までは,被控訴人ら以外の販社の中にも顧客に類似商品を販売する事例があったというのである。もっとも,前記認定事実のとおり,控訴人と各販社との間では,次第に契約関係の適正を図ることが強く意識されるようになり,平成18年6月14日に開催された会議において,被控訴人らの代表者も参加して協議がされ,その結果,他社競合の意義についてなお明確さを欠くものであったにせよ,ビッグフット商品のブランド管理や顧客管理に反する行為を行わないことが確認されたことが認められる。これらの事実関係を踏まえると,各販社は,平成18年6月15日以降,過去にビッグフット商品の販売の勧誘をし,登録された顧客に対して,ビッグフット商品とは別の商品を販売してはならないという注意義務を負うに至ったものであり,被控訴人秀和が,代表者を共通にする被控訴人秀和住研に,ビッグフット展示場に来場した顧客との間で本件建物10ないし30の建築請負契約を締結させたこと,及び,被控訴人秀和住研が建築請負契約を締結したことは,いずれも商取引の公正を著しく害する違法性を有するものというべきである。他方,これより前の時期に締結された建物の建築請負契約について不法行為を構成するような注意義務を基礎付けるに足りる的確な主張立証はない。イ 被控訴人らは,販社契約上の義務の違反を強く争うとともに,より緊密な関係にある契約当事者間において契約違反と評価されない行為について不法行為が成立することはない旨主張するが,契約による保護と不法行為による保護とはその趣旨目的を異にするから,そのように一概にいうことはできない。ウ 以上によれば,本件各建物の建築請負契約のうち,平成18年6月15日以降にされた本件建物10ないし30に係るものについては,被控訴人らがその注意義務に反し,控訴人の営業上の利益を侵害したものとして,被控訴人らの共同不法行為を構成するというべきである。⑵ 控訴人の損害の有無及び額(争点2-2)ア 本件建物10ないし27について控訴人は,債務不履行による損害賠償請求と同様に,本件顧客10ないし27との間で販社契約に従ってビッグフット商品が販売されていれば得られたキット販売利益及びロイヤリティの合計として,別紙3「損害目録」記載のとおり約200万円から約300万円の金額を主張する。債務不履行による損害との関係で検討したとおり,キット販売利益及びロイヤリティの額をもってそのまま控訴人の逸失利益として認めることはできない。しかしながら,被控訴人らが登録顧客に自らの商品を提供したことは,ビッグフット商品の販売可能性を低下させ又は失わせるものとして,不法行為との関係でも控訴人の財産的損害に当たり,そのような損害の性質上その額を立証することが極めて困難であることに加え,先に債務不履行による損害賠償との関係で考慮したのと同様の事実関係等,その他本件に現れた一切の事情を総合的に考慮し,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき,民訴法248条により,相当な損害額として,各建物につき100万円(合計1800万円)を認定する。イ 本件建物28ないし30について前記2⑶のとおり,本件建物28及び30については,債務不履行により賠償すべき損害額が各100万円と認定され,同29については本件違約金規定により4万円の賠償が認められるところ,不法行為を根拠としてもこれを上回る損害は認められない。ウ まとめ以上によれば,本件建物10ないし27の建築に係る被控訴人らの共同不法行為により賠償すべき控訴人の損害の額は,合計1800万円となる。⑶ 損害賠償請求権の消滅時効の成否(争点2-3)被控訴人らは,控訴人の不法行為による損害賠償請求権について民法724条前段の3年の消滅時効を援用する。しかし,証拠(甲41,202)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,被控訴人らの元従業員から,被控訴人らの違反行為を通報する書簡を平成27年12月2日に受領したことが認められ,不法行為の被害者である控訴人がこれより前に損害及び加害者を知ったと認めるに足りる証拠はない。他方,控訴人が不法行為による損害賠償請求権を行使する旨を記載した控訴理由書を平成30年12月21日に裁判所に提出したことは,記録上明らかである。したがって,消滅時効は完成していない。

4 結論以上によれば,控訴人の原審における各請求は,被控訴人らに対し,連帯して6万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その限度で認容すべきところ,これを棄却した原判決は一部失当であって,本件控訴は一部理由があるから,そのように原判決を変更し,また,控訴人が当審において追加した各請求は,被控訴人らに対し,連帯して1800万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余を棄却することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第1部

裁判長裁判官 高 部 眞 規 子

裁判官 小 林 康 彦

裁判官 関 根 澄 子

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