平成29(ワ)44181特許権侵害差止等請求事件
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裁判所 |
東京地方裁判所
|
裁判年月日 |
令和1年9月18日 |
事件種別 |
民事 |
対象物 |
電子メール送信装置及び電子メール送信制御方法 |
法令 |
特許権
特許法36条6項1号2回 特許法126条2回 特許法36条6項2号2回 特許法101条1号2回 特許法102条2項1回
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キーワード |
分割409回 進歩性173回 侵害62回 新規性58回 無効50回 間接侵害31回 特許権19回 実施14回 無効審判5回 差止2回 刊行物1回 損害賠償1回
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主文 |
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事件の概要 |
1 本件は,原告が,被告は,別紙1物件目録記載の被告製品を製造販売等するこ
とによって原告の特許権(特許第4613238号及び特許第5307281号)
を侵害しており,また,かかる行為が原告の特許権の間接侵害(特許法101条
1号,2号,4号又は5号)に該当するなどと主張して,被告に対し,特許法15
00条1項に基づく被告製品の製造,販売及び販売の申出の差止め並びに同条2
項に基づく被告製品の廃棄を求めるとともに,民法709条及び特許法102条
2項に基づく損害賠償として9億5767万8572円の一部である1億円及
びこれに対する不法行為の後の日である平成30年1月10日(訴状送達の日の
翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め10
る事案である。 |
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判決文
令和元年9月18日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成29年(ワ)第44181号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和元年7月10日
判 決
5 原 告 キヤノンITソリューションズ
株式会社
同訴訟代理人弁護士 鮫 島 正 洋
和 田 祐 造
高 橋 正 憲
10 杉 尾 雄 一
被 告 デジタルアーツ株式会社
同訴訟代理人弁護士 大 野 聖 二
大 野 浩 之
同訴訟代理人弁理士 松 野 知 紘
15 主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
20 1 被告は,別紙1物件目録記載の被告製品を製造し,販売し,販売の申出をして
はならない。
2 被告は,別紙1物件目録記載の被告製品を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成30年1月10日から支払
済みまで年5分の割合による金員を支払え。
25 4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 仮執行宣言
第2 事案の概要
1 本件は,原告が,被告は,別紙1物件目録記載の被告製品を製造販売等するこ
とによって原告の特許権(特許第4613238号及び特許第5307281号)
を侵害しており,また,かかる行為が原告の特許権の間接侵害(特許法101条
5 1号,2号,4号又は5号)に該当するなどと主張して,被告に対し,特許法1
00条1項に基づく被告製品の製造,販売及び販売の申出の差止め並びに同条2
項に基づく被告製品の廃棄を求めるとともに,民法709条及び特許法102条
2項に基づく損害賠償として9億5767万8572円の一部である1億円及
びこれに対する不法行為の後の日である平成30年1月10日(訴状送達の日の
10 翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め
る事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨
により認定することができる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合に
は,特に断らない限り,枝番を含むものとする。)
15 (1) 当事者
ア 原告は,電子メールの管理に用いるソフトウェアの開発,製造,販売等を
業とする株式会社である。
イ 被告は,企業や官公庁向けの電子メールの管理に用いるソフトウェアの製
造,販売等を業とする株式会社である。
20 (2) 原告の特許権
ア 原告は,以下の2件の特許権(以下,それぞれを符号の順に「本件特許権
1」などといい,併せて「本件各特許権」という。)を有している(以下,
本件各特許権に係る特許をそれぞれ符号に従い「本件特許1」などといい,
併せて「本件各特許」という。)。(甲1~4)
25 (ア) 本件特許権1
特許番号:特許第4613238号
発明の名称:情報処理装置およびその制御方法,プログラム
出願日:平成20年12月16日
登録日:平成22年10月22日
(イ) 本件特許権2
5 特許番号:特許第5307281号
発明の名称:情報処理装置およびその制御方法,プログラム
原出願日:平成20年12月16日
出願日:平成24年8月31日(特願2010-232053の分割)
登録日:平成25年7月5日
10 イ 本件特許1の特許請求の範囲の請求項1~5,7,9~13の記載は,別
紙2に記載のとおりである(以下,請求項の符号の順に,
「本件発明1-1」
などといい,併せて「本件発明1」という。)(甲2)
ウ 本件発明1を構成要件に分説すると,それぞれ以下のとおりである。
(ア) 本件発明1-1(請求項1)
15 11A 端末装置から電子メールを受信し,該電子メールの送出を制御す
る情報処理装置であって,
11B 電子メールの送出に係る制御内容を示す送出制御情報を,前記電
子メールの送信元と送信先とに対応付けた制御ルールを記憶する
記憶手段と,
20 11C 複数の送信先が設定された電子メールを前記端末装置から受信
する受信手段と,
11D 前記受信手段で受信した電子メールに設定された複数の送信先
を個々の送信先に分割する分割手段と,
11E 前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手段で分
25 割された送信先と送信元とに従って,当該分割された送信先に対す
る電子メールの送出に係る制御内容を決定する決定手段と,
11F 前記決定手段で決定された制御内容で,当該分割された送信先に
対する前記電子メールの送信制御を行う制御手段と,
11G を備えることを特徴とする情報処理装置。
(イ) 本件発明1-2(請求項2)
5 12A 前記記憶手段に記憶されている制御ルールは,前記電子メールの
送出に係る制御内容を示す送出制御情報を,前記電子メールの送信
元と送信先との組に対応付けられており,
12B 前記決定手段は,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,
前記分割手段で分割された送信先と送信元との組に従って,当該分
10 割された送信先に対する電子メールの送出に係る制御内容を決定
する
12C ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
(ウ) 本件発明1-3(請求項3)
13A 前記記憶手段に記憶されている送出制御情報には,電子メールの
15 送出を保留する制御内容を含む
13B ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
(エ) 本件発明1-4(請求項4)
14A 前記記憶手段に記憶されている送出制御情報には,電子メールを
送出する制御内容を含む
20 14B ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報処
理装置。
(オ) 本件発明1-5(請求項5)
15A 前記記憶手段に記憶された,電子メールの送出を保留する制御内
容の送出制御情報は,更に,電子メールの送出を保留する保留時間
25 を含み,
15B 前記制御手段は,前記決定手段で決定された制御内容が電子メー
ルの送出を保留する制御内容であり,かつ,当該制御内容の送出制
御情報に前記保留時間が含まれている場合に,前記分割された送信
先に対する電子メールの送出を,該保留時間,保留する
15C ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の情報処
5 理装置。
(カ) 本件発明1-6(請求項7)
16A 前記分割手段は,前記受信手段で受信した,複数の送信先が設定
された電子メールのエンベロープ情報を,各送信先の各々を個別の
送信先とするエンベロープ情報に分割し,
10 16B 前記決定手段は,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,
前記分割手段で分割されることにより得られるエンベロープ情報
とに従って,当該エンベロープ情報を含む電子メールの送出に係る
制御内容を決定し,
16C 前記制御手段は,前記決定手段で決定された制御内容で,当該エ
15 ンベロープ情報を含む電子メールの送出制御を行う
16D ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の情報処
理装置。
(キ) 本件発明1-7(請求項9)
17A 前記決定手段で送出が保留されることが決定された,前記分割さ
20 れた送信先に対する電子メールの削除指示を受け付ける削除受付
手段と,
17B 前記削除受付手段で当該電子メールの削除指示を受け付けた場
合に,当該電子メールを削除する削除手段と,
17C を更に備えることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に
25 記載の情報処理装置。
(ク) 本件発明1-8(請求項10)
18A 前記決定手段で送出が保留されることが決定された,前記分割さ
れた送信先に対する電子メールの送信指示を受け付ける送信受付
手段と,
18B 前記送信受付手段で当該電子メールの送信指示を受け付けた場
5 合に,当該電子メールを送出する送出手段と,
18C を更に備えることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に
記載の情報処理装置。
(ケ) 本件発明1-9(請求項11)
19A 前記記憶手段に記憶された制御ルールには,更に,前記電子メー
10 ルの送出を保留する制御内容の送出制御情報に対応して,当該保留
された旨を示す電子メールの通知先が設定されており,
19B 前記制御手段は,更に,前記決定手段で,前記分割された少なく
とも1つの送信先に対する電子メールが保留されることが決定さ
れた場合に,前記送出制御情報に対応した通知先を送信先とする,
15 当該電子メールが保留された旨を示す新規の電子メールを送信す
る
19C ことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の情報
処理装置。
(コ) 本件発明1-10(請求項12)
20 110A 電子メールの送出に係る制御内容を示す送出制御情報を,前記
電子メールの送信元と送信先とに対応付けた制御ルールを記憶す
る記憶手段を備えており,端末装置から電子メールを受信し,該電
子メールの送出を制御する情報処理装置の制御方法であって,
110B 前記情報処理装置の受信手段が,複数の送信先が設定された電
25 子メールを前記端末装置から受信する受信工程と,
110C 前記情報処理装置の分割手段が,前記受信工程で受信した電子
メールに設定された複数の送信先を個々の送信先に分割する分割
工程と,
110D 前記情報処理装置の決定手段が,前記記憶手段に記憶されてい
る制御ルールと,前記分割工程で分割された送信先と送信元とに従
5 って,当該分割された送信先に対する電子メールの送出に係る制御
内容を決定する決定工程と,
110E 前記情報処理装置の制御手段が,前記決定工程で決定された制
御内容で,当該分割された送信先に対する前記電子メールの送信制
御を行う制御工程と,
10 110F を備えることを特徴とする情報処理装置の制御方法。
(サ) 本件発明1-11(請求項13)
111A 端末装置から電子メールを受信し,該電子メールの送出を制御
する情報処理装置で実行可能なプログラムあって,
111B 前記情報処理装置を,
15 111C 電子メールの送出に係る制御内容を示す送出制御情報を,前記
電子メールの送信元と送信先とに対応付けた制御ルールを記憶す
る記憶手段,
111D 複数の送信先が設定された電子メールを前記端末装置から受
信する受信手段,
20 111E 前記受信手段で受信した電子メールに設定された複数の送信
先を個々の送信先に分割する分割手段,
111F 前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手段で
分割された送信先と送信元とに従って,当該分割された送信先に対
する電子メールの送出に係る制御内容を決定する決定手段,
25 111G 前記決定手段で決定された制御内容で,当該分割された送信先
に対する前記電子メールの送信制御を行う制御手段,
111H として機能させることを特徴とするプログラム。
エ 被告は,平成31年2月14日,特許庁に対し,本件特許1に係る無効審
判請求をし,現在も係属中である(無効2019-800013号)。原告
は,令和元年5月10日,特許庁に対し,特許請求の範囲の請求項3,4,
5 7及び13について訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。本
件訂正に係る訂正後の上記各請求項の記載は,別紙3のとおりである(訂正
部分に下線を付した(オにおいて同じ。)。以下,訂正後の請求項3を「本
件訂正発明1-3」,同4を「本件訂正発明1-4」,同7を「本件訂正発
明1-6」,同13を「本件訂正発明1-11」といい,併せて「本件訂正
10 発明1」という。)。(甲40~42)
オ 本件訂正発明1を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
(ア) 本件訂正発明1-3(請求項3)
13A1 前記分割手段は,前記受信手段で受信した電子メールに設定され
た複数の送信先のすべてを個々の送信先に分割し,
15 13A2 前記決定手段は,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,
前記分割手段で分割された送信先と送信元とに従って,当該分割さ
れたすべての個々の送信先に対する電子メールの送出に係る制御
内容を決定し,
13A3 前記記憶手段に記憶されている送出制御情報には,電子メールの
20 送出を保留する制御内容を含む
13B ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
(イ) 本件訂正発明1-4(請求項4)
14A1 前記記憶手段に記憶されている制御ルールは,電子メールのすべ
ての送信先に共通して,前記制御内容の決定に用いられるものであ
25 り,
14A2 前記記憶手段に記憶されている送出制御情報には,電子メールを
送出する制御内容を含む
14B’ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
(ウ) 本件訂正発明1-6(請求項7)
16A’ 前記分割手段は,前記受信手段で受信した,複数の送信先が設定
5 された電子メールのエンベロープ情報を,各送信先の各々を個別の
送信先とするエンベロープ情報に分割し,かつ,当該電子メールの
ヘッダ情報を分割せず,
16B 前記決定手段は,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,
前記分割手段で分割されることにより得られるエンベロープ情報
10 とに従って,当該エンベロープ情報を含む電子メールの送出に係る
制御内容を決定し,
16C 前記制御手段は,前記決定手段で決定された制御内容で,当該エ
ンベロープ情報を含む電子メールの送出制御を行う
16D ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の情報処
15 理装置。
(エ) 本件訂正発明1-11(請求項13)
111A 端末装置から電子メールを受信し,該電子メールの送出を制御
する情報処理装置で実行可能なプログラムあって,
111B 前記情報処理装置を,
20 111C 電子メールの送出に係る制御内容を示す送出制御情報を,前記
電子メールの送信元と送信先とに対応付けた制御ルールを記憶す
る記憶手段,
111D 複数の送信先が設定された電子メールを前記端末装置から受
信する受信手段,
25 111E 前記受信手段で受信した電子メールに設定された複数の送信
先を個々の送信先に分割する分割手段,
111F 前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手段で
分割された送信先と送信元とに従って,当該分割された送信先に対
する電子メールの送出に係る制御内容を決定する決定手段,
111G 前記決定手段で決定された制御内容で,当該分割された送信先
5 に対する前記電子メールの送信制御を行う制御手段,
111H’ として機能させるプログラムにおいて,
111I 前記記憶手段に記憶されている制御ルールは,電子メールのす
べての送信先に共通して,前記制御内容の決定に用いられるもので
あり,
10 111J 前記分割手段は,前記受信手段で受信した,複数の送信先が設
定された電子メールのエンベロープ情報を,各送信先の各々を個別
の送信先とするエンベロープ情報に分割し,かつ,当該電子メール
のヘッダ情報を分割せず,
111K 前記決定手段は,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,
15 前記分割手段で分割されることにより得られるエンベロープ情報
とに従って,当該エンベロープ情報を含む電子メールの送出に係る
制御内容を決定し,
111L 前記制御手段は,前記決定手段で決定された制御内容で,当該
エンベロープ情報を含む電子メールの送出制御を行う
20 111M ことを特徴とするプログラム。
カ 本件特許2の特許請求の範囲の請求項1,4,5,7,8の記載は,別紙
4のとおりである(以下,請求項の符号の順に,「本件発明2-1」などと
いい,併せて「本件発明2」という。)。(甲4)
キ 本件発明2を構成要件に分説すると,それぞれ以下のとおりである。
25 (ア) 本件発明2-1(請求項1)
21A 電子メールに対する送信制御を行う情報処理装置であって,
21B 電子メールの送出又は保留を示す送信制御内容と,該送信制御内
容を適用する条件とのペアを1以上含む制御ルールを記憶する制
御ルール記憶手段と,
21C 複数の送信先が設定された電子メールから,前記複数の送信先が
5 個別に設定された複数の個別メールを生成する個別メール生成手
段と,
21D 前記制御ルールに従って,前記複数の個別メールの各々に対する
送信制御内容を決定する決定手段と,
21E 前記決定手段によりいずれの個別メールが保留されると決定さ
10 れたかを認識可能にすべく,個別メールが保留されることが決定さ
れた旨を前記複数の送信先が設定された電子メールの送信元に通
知する通知手段と,
21F を備えることを特徴とする情報処理装置。
(イ) 本件発明2-2(請求項4)
15 22A 個別メールが保留されることが決定された前記旨を通知する他
の通知先を設定する通知先設定手段を更に備え,
22B 前記通知手段は,個別メールが保留されることが決定された前記
旨を前記通知先設定手段で設定された前記他の通知先に更に通知
する
20 22C ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報
処理装置。
(ウ) 本件発明2-3(請求項5)
23A 前記決定手段により保留されると決定された個別メールに対す
る操作指示を受け付ける受付手段と,
25 23B 前記受付手段で受け付けた操作指示に従った送信制御を,前記決
定手段により保留されると決定された個別メールに対して実行す
る送信制御手段と,
23C を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項
に記載の情報処理装置。
(エ) 本件発明2-4(請求項7)
5 24A 電子メールに対する送信制御を行う情報処理装置の制御方法で
あって,
24B 制御ルール記憶手段が,電子メールの送出又は保留を示す送信制
御内容と,該送信制御内容を適用する条件とのペアを1以上含む制
御ルールを記憶する制御ルール記憶工程と,
10 24C 個別メール生成手段が,複数の送信先が設定された電子メールか
ら,前記複数の送信先が個別に設定された複数の個別メールを生成
する個別メール生成工程と,
24D 決定手段が,前記制御ルールに従って,前記複数の個別メールの
各々に対する送信制御内容を決定する決定工程と,
15 24E 通知手段が,前記決定工程によりいずれの個別メールが保留され
ると決定されたかを認識可能にすべく,個別メールが保留されるこ
とが決定された旨を前記複数の送信先が設定された電子メールの
送信元に通知する通知工程と,
24F を含むことを特徴とする情報処理装置の制御方法。
20 (オ) 本件発明2-5(請求項8)
25A 電子メールに対する送信制御を行う情報処理装置で実行される
プログラムであって,前記プログラムは前記情報処理装置を,
25B 電子メールの送出又は保留を示す送信制御内容と,該送信制御内
容を適用する条件とのペアを1以上含む制御ルールを記憶する制
25 御ルール記憶手段,
25C 複数の送信先が設定された電子メールから,前記複数の送信先が
個別に設定された複数の個別メールを生成する個別メール生成手
段,
25D 前記制御ルールに従って,前記複数の個別メールの各々に対する
送信制御内容を決定する決定手段,
5 25E 前記決定手段によりいずれの個別メールが保留されると決定さ
れたかを認識可能にすべく,個別メールが保留されることが決定さ
れた旨を前記複数の送信先が設定された電子メールの送信元に通
知する通知手段,
25F として機能させることを特徴とするプログラム。
10 (3) 被告の行為及び被告製品の構成等
ア 被告は,別紙1物件目録記載の各被告製品を製造販売し,販売の申出をし
ていた。(甲5~8,25~29)
イ 被告製品をインストールしたサーバ(以下「被告装置」という。),被告
製品及び被告製品を用いたサーバコンピュータの制御方法(以下「被告方法」
15 といい,被告装置及び被告製品と併せて「被告装置等」という。 の構成は,
)
別紙5のとおりである(以下,それぞれを「構成11a」などという。)。
ウ 被告装置は,本件発明1-1の構成要件11A,11C,本件発明1-3
の構成要件13A,本件発明1-4の構成要件14A,本件発明1-5の1
5A,本件発明1-9の構成要件19A,本件発明2-1の構成要件21A
20 を充足する(被告はその余の構成要件充足性についても争うが,本件の主要
な争点は後記3記載のとおりである。)。
(4) 先行文献
本件特許1の出願日であり本件特許2の原出願日である平成20年12月
16日より前に,以下の文献が存在した。
25 ア 発明の名称を「電子メール送信装置及び電子メール送信制御方法」とする
公開特許公報(特開2006-185094,平成18年7月13日公開。
乙14。以下「乙14公報」といい,同文献に記載された発明を「乙14発
明」という。)
イ 発明の名称を「メール送受信プログラムおよびメール送受信装置」とする
公開特許公報(特開2007-65787,平成19年3月15日公開。乙
5 16。以下「乙16公報」といい,同文献に記載された発明を「乙16発明」
という。)
3 争点
(1) 被告装置等の本件発明1の技術的範囲への属否等(争点1)
ア 被告装置等の構成要件11D,110C及び111E(以下,併せて「構
10 成要件11D等」という。)の充足性(争点1-1)
イ 均等侵害の成否(争点1-2)
ウ 本件発明1-1~1-10につき,間接侵害の成否(争点1-3)
(2) 被告装置等の本件発明2の技術的範囲への属否等(争点2)
ア 被告装置等の構成要件21C,24C及び25C(以下,併せて「構成要
15 件21C等」という。)の充足性(争点2-1)
イ 均等侵害の成否(争点2-2)
ウ 本件発明2-1~2-4につき,間接侵害の成否(争点2-3)
(3) 本件各特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争
点3)
20 ア 乙7号証(以下「乙7文献」という。)に記載された発明(以下「乙7発
明」という。)に基づく新規性又は進歩性の欠如(争点3-1)
イ 乙13号証(以下「乙13文献」という。)に記載された発明(以下「乙
13発明」という。)に基づく進歩性の欠如(争点3-2)
ウ 乙14発明に基づく新規性又は進歩性の欠如(争点3-3)
25 エ 乙16発明に基づく進歩性の欠如(争点3-4)
オ 明確性要件違反(争点3-5)
カ サポート要件違反(争点3-6)
(4) 本件発明1-3,1-4,1-6及び1-11につき,訂正の再抗弁の成否
(争点4)
(5) 原告の損害額(争点5)
5 第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1-1(被告装置等が本件発明1の技術的範囲に属するか)について
(原告の主張)
構成要件11D等(「受信した電子メールに設定された複数の送信先を個々の
送信先に分割する分割手段(構成要件110Cの場合は「分割工程」)と,」)
10 における「送信先」にはドメインを含むから,被告装置の構成11d,被告方法
の構成110c及び被告製品の構成111e(以下,併せて「構成要件11d」
という。)は,それぞれ構成要件11D等を充足する。
(1) 「送信先」の意義
本件特許1の願書に添付した特許請求の範囲,明細書の発明の詳細な説明及
15 び図面(以下「本件明細書等1」という。)の記載によれば,本件発明1にお
ける「送信先」とは,電子メールを送信した際にそれを受け取る先を意味し,
電子メールアドレスとドメインが含まれる。
ア 特許請求の範囲の記載
本件発明1に係る特許請求の範囲における「送信先」には,文言上,これ
20 を「電子メールアドレス」に限定するなどの限定は付されていない。
イ 本件明細書等1の段落【0041】及び【図5】の記載
電子メールアドレスは,「@」を挟んでユーザ名とドメインから構成される
が,ドメインとは,ネットワーク上に存在するコンピュータの所属を表すも
ので,ドメインのみにより,ネットワーク上の電子メールの送信先たるメー
25 ルサーバが特定され,ドメインに加えユーザ名が定まること(電子メールア
ドレスが定まること)によって,当該メールサーバ内のどのメールボックス
に電子メールが届くかが確定する(甲23・56頁,195頁)。
本件明細書等1の【図5】に記載の制御ルールには,送信先である「受信
者」として,「x@x.co.jp」及び「*@zzz.co.jp」が記載されている。このう
ち,前者は電子メールアドレスを意味し,後者の@より後ろの「zzz.co.jp」
5 はドメインを表すから,「*@zzz.co.jp」は,ドメインのみが定まっているこ
とを表す。つまり,「*@zzz.co.jp」は,送信先としてのドメインを意味し,
【図5】には,「制御ルール」の「送信先」にドメインが含まれることが記
載されているということができる。
10 【図5】
そうすると,制御ルールを規定した構成要件11Bにいう「送信先」は,
電子メールを送信した際にそれを受け取る先を意味し,少なくとも電子メー
ルアドレスとドメインを含むものである。
そして,構成要件11D等の「送信先」の意義を,構成要件11Bの「送
15 信先」と別異に解すべき理由はないから,構成要件11D等の「送信先」に
も電子メールアドレス及びドメインが含まれると解するのが相当である。
ウ 本件明細書等1の段落【0061】及び【図4】の記載
本件明細書等1の【図4】のS402には「メールをエンベロープ受信者
単位に独立したメールの集合を作る」旨が示され, 【0061】 「各
段落 には
20 宛先(受信者)のそれぞれを単一の宛先としたエンベロープをそれぞれ生成
する」旨が記載されている。ここにいう「宛先」は「宛名の場所」を意味し
(甲34),ドメインは「コンピュータの住所をあらわしたもの」であって
「住所」は「場所」に含まれるから(甲23・57頁),ドメインにより特
定されるメールサーバが上記段落の「宛先」に含まれることは明らかである。
そうすると,電子メールの分割に関する本件明細書等1の段落【0061】
及び【図4】の記載に照らしても,電子メールを分割する対象としての構成
5 要件11D等の「送信先」にはドメインが含まれるということができる。
エ 電子メールをドメイン単位で分割する場合でも本件発明1の課題を解決
できること
本件発明1は,本件明細書等1の段落【0003】に記載の従来技術(特
開2005-277976号公報。乙15。以下「乙15公報」という。)を
10 前提とするものである(段落【0005】)。
すなわち,乙15公報の明細書によれば,即配信リスト(項目203)及
び送信不要リスト(項目205)には,「宛先」としてメールアドレスのみ
ならずドメインを設定し得ることが記載されているから(段落【0032】,
【図2】),乙15公報における「宛先」には,「電子メールアドレス」の
15 みならず「ドメイン」も含まれる。
【図2】
上記の従来技術においては,受信したメッセージ単位でしか保留の可否を
判断できないことから,誤送信の可能性がある送信先が含まれる場合(ドメ
インが「bbb.bbb.co.jp」の送信先が含まれる場合),その他の送信先(ドメ
インが「yyy.yyy.com」の送信先)に対する送信までもが保留されることに
なる。
5 本件発明1は,かかる従来技術の課題を解決するために,電子メールの複
数の送信先を個々の送信先に分割する分割手段を設け,決定手段において分
割された送信先に対する電子メールの送出に係る制御内容を決定するもの
とし,制御手段において分割された送信先に対する電子メールの送信制御を
行うこととしたものであるが,従来技術における課題は,分割する単位を電
10 子メールアドレスとしてもドメインとしても解決することができる。
a1@yyy.yyy.com a2@yyy.yyy.com,Ⓒ
b1@bbb.bbb.co.jp,Ⓓb2@bbb.bbb.co.jpが設定された電子メールについて,
ドメインが「bbb.bbb.co.jp」であるものは保留される場合,従来技術では,
この電子メールはⒸ及びⒹを含むことから全ての電子メールの送信が保留
15 されることになるが,本件発明1では,分割単位を電子メールアドレスとド
メインのいずれにしても,ドメインが「yyy.yyy.com
信されるから,送信が効率化されており,従来技術の課題は解決される。
オ 被告の主張に対する反論
(ア) 被告は,「*@zzz.co.jp」はドメインを意味するとはいえないと主張す
20 る。
しかし,電子メールアドレスは,例えば,本件明細書等1の【図5】の
「tanaka@zzz.co.jp」のようにユーザ名が特定されているものであり,ユ
ーザ名を含まない「*@zzz.co.jp」は電子メールアドレスではない。両者は
明確に区別されて記載されており,「*@zzz.co.jp」がドメインを意味する
25 ことは,複数の特許文献(甲30の【図4】,甲31の段落【0061】
及び【図4】,甲32の段落【0094】及び【図7】,乙15公報の段
落【0032】及び【図2】)にこれを裏付ける記載があること,被告が,
自身の行った特許出願において,「***@a.co.jp」を,ドメイン名を意味す
るものとして用いていること(甲24の【図4】)からしても明らかであ
る。
5 (イ) 被告は,本件明細書等1に「ドメイン」という文言が記載されていない
と主張する。
しかし,前記のとおり,同明細書等の【図5】や段落【0040】,【0
041】の記載を踏まえれば,同明細書等には「送信先」に「電子メール
アドレス」及び「ドメイン」が含まれていることが記載されているという
10 ことができる。送信先の分割に関する本件明細書等1の段落【0064】
や【0068】に「ドメイン」が明示されていないのは,あえて繰り返し
述べる必要がなかったからにすぎない。
(ウ) 被告は,「ドメイン」が特定されただけでは電子メールを送信できない
と主張する。
15 しかし,「送信先」 「電子メールを送信した際にそれを受け取る先」
は,
を意味するから,「送信先」に該当するか否かは,「電子メールを受け取
る先」に当たるか否かにより判断すべきものであり,電子メールを送信で
きるか否かにより判断すべきものではない。
また,本件発明1は,電子メールの送出の制御に係る発明であり,「送
20 信先」は,構成要件11Bにおいては当該送出の制御ルールの要素にすぎ
ず,構成要件11D等においては当該送出の制御に関する分割手段による
分割の単位にすぎないから,これらの構成要件における「送信先」は,送
出の制御に係る制御ルールや分割の単位として用いることができるか否
かが問題となり得るにしても,電子メールを送信できるか否かは問題とな
25 らない。
(エ) 被告は,本件明細書等1の段落【0002】に「電子メールは,送信者
と受信者がエンドツーエンドで電子メッセージを交換するもの」と記載さ
れていることから,「受信者」はドメインを含まないと主張する。
しかし,同段落においては,段落【0040】及び【0041】のよう
に「受信者(宛先)」とされずに単に「受信者」とされているから,電子
5 メッセージを交換する主体(人)そのものを表す意味で用いられているも
のである。
(オ) 被告は,「送信先」にドメインを含むと解釈すると,発明が解決しよう
とする課題を解決できないと主張する。
しかし,本件明細書等1の段落【0005】には,本件発明1の課題と
10 して,「宛先に応じた電子メールの送出制御を行うことにより効率よく電
子メールを創出させる仕組みを提供すること」が記載されており,送信先
(宛先)にドメインが含まれていたとしても,当該送信先(宛先)たるド
メインに応じた電子メールの送出制御を行うことにより効率良く電子メ
ールを創出させる仕組みが提供されることになる。
15 例えば,㋐aaa@abc.com,㋑bbb@abc.com,㋒ccc@abc.com,㋓eee@xyz.c
omの4件の電子メールアドレスの送信先に電子メールを送信する際に,㋓
の送信先のみ送信を保留したい場面を考えると,㋐~㋒の送信先への電子
メールは送信され,保留する必要がある㋓のみが保留されるから,ドメイ
ンごとに分割する場合でも,電子メールの送出を効率化できる。
20 被告は,送信先の電子メールアドレスが①(ユーザ名は省略)@yahoo.com,
②(ユーザ名は省略)@yahoo.com,③(ユーザ名は省略)@yahoo.com,④
(ユーザ名は省略)@yahoo.com,⑤(ユーザ名は省略)@gmail.comの5つ
であり,②のみ送信を保留すべき場合を挙げて,「送信先」にドメインを
含むと解釈すると上記課題が解決できないと主張するが,本件発明1は,
25 いかなる場合でも電子メールの送出制御を効率的に行うことを課題と設
定しているのではない。上記の場合であっても,送信を保留する必要がな
い⑤が送信される点では効率良く電子メールが送信されているので,本件
発明1の課題は解決されているということができる。
(2) 被告装置等との対比
被告装置等の構成11d等においては,「複数の宛先の電子メールアドレス
5 が設定された電子メール」を「宛先のドメイン毎の電子メールに分割する」た
めに,「複数の宛先」は「ドメイン毎の個々の宛先」に分割されるところ,「複
数の宛先」は構成要件11D等の「複数の送信先」に,「ドメイン毎の個々の
宛先」は「個々の送信先」に該当し,「宛先のドメイン毎に分割する分割部」
は,「個々の送信先に分割する分割手段」に該当する。
10 したがって,被告装置等の構成11d等は,構成要件11D等を充足する。
(被告の主張)
構成要件11D等の「電子メールに設定された複数の送信先を個々の送信先に
分割する」とは,電子メールに設定された複数の送信先を電子メールアドレスご
とに分割することを意味するが,被告装置等においては,電子メールの送信先を,
15 電子メールアドレスごとではなく,ドメインごとに分割するものであるから,被
告装置等は構成要件11D等を充足しない。
(1) 「送信先」の意義について
本件明細書等1の記載並びに本件発明1が解決しようとする課題及び効果
からすれば,「個々の送信先」とは「一つ一つの送信先」,すなわち「一つ一
20 つの電子メールアドレス」であり,「個々の送信先に分割する」とは,電子メ
ールアドレスごとに分割することを意味し,ドメインごとに分割することを意
味しない。
ア 「受信者」,「宛先」及び「送信先」の意義
本件明細書等1に「受信者(宛先)」(段落【0040】等)や「送信先
25 (受信者)」(段落【0064】等)との記載が多数あることからして,「受
信者」,「宛先」及び「送信先」は同義語として用いられている。
ここで,「送信先」とは「送信する先」であり,「先」とは「行き着く目
的地」であるが(広辞苑第6版。乙3),電子メールを送信する際の「目的
地」はメールサーバではなくメールボックスであるから,電子メールの「送
信先」は,メールサーバを特定するためのドメインではなく,メールボック
5 スを特定する電子メールアドレスである。
また,メールアドレスとは「電子メールを送受信するための宛先」である
から(広辞苑第6版。乙5。最新標準パソコン用語事典(乙4)も同同旨),
電子メールの送信制御技術の技術分野において,「宛先」は,電子メールア
ドレスを指す。
10 イ 送信先の分割に関する本件明細書等1の記載
本件明細書等の段落【0059】~【0061】には,制御ルールの「分
割評価」により,電子メールに設定された複数の宛先のそれぞれを単一の宛
先としたエンベロープをそれぞれ生成すると判定した場合(分割評価が「t
rue」(真)の場合)には,取得した電子メールのエンベロープに含まれ
15 る各宛先(受信者)を単一の宛先とするエンベロープを生成する旨が記載さ
れている。
また,段落【0064】~【0068】には「”エンベロープ”は,…電
子メールの配送に使われる送信元(発信者)の電子メールアドレスと送信先
(受信者)の電子メールアドレスとを含む情報である」,「エンベロープに
20 送信先(受信者) の電子メールアドレスとして設定されている「A」「B」
, ,
「C」のそれぞれを単一の宛先とするエンベロープ情報をそれぞれ生成す
る」,「1通の電子メールのエンベロープ情報に複数の送信先の電子メール
アドレスがある場合,その送信先の電子メールアドレスのそれぞれが単独に
送信先に設定されたエンベロープをそれぞれ生成し」など,送信先(受信者)
25 が「ドメイン」ではなく「電子メールアドレス」である旨の記載がある。
そして,このように個々の電子メールアドレスからなる送信先に分割され
た後で,条件定義部を用いたS405が行われるが,これについては,段落
【0071】に,S402で電子メールアドレスごとに分割された個々の電
子メールに対して,「条件定義部の条件に合致するかどうかを判定する」こ
とが明記されている。
5 さらに,段落【0131】には「エンベロープ受信者アドレスがB,Cで
あった電子メールが,エンベロープ受信者Bの電子メールとエンベロープ受
信者Cの電子メールに分割される」との記載がある。アクション適用エント
リリストに関する【図13】においても,「メールメッセージ(宛先)」と
して示されているのは電子メールアドレスであって,ドメインではない。し
10 かも,これらの電子メールアドレスのドメインはいずれも同一であるから,
このことも,本件発明1が,ドメインごとに保留等の制御を行うのではなく,
個別の電子メールアドレスごとにかかる制御をしていることを裏付けてい
る。
【図13】
以上の記載によれば,「送信先」として電子メールアドレスのみが想定さ
れていることは明らかであるから,本件発明1における「送信先」は,電子
メールアドレスを指し,「個々の送信先に分割」とは,電子メールアドレス
20 ごとに分割することを意味する。
一方,本件明細書等1の【図12】には,複数の宛先を含む電子メールを
作成することについての開示はなく,他の部分を含め,同明細書等には「ド
メイン」という用語は一切記載されていない。かえって,段落【0100】
には,「「送信状況」に示される宛先のユーザ名は,ステップS1404で
25 取得したアクション適用エントリデータのメールメッセージ(宛先)に含ま
れる電子メールのヘッダ部の宛先アドレス部(宛先)に含まれるユーザ名か
ら取得される」との記載があり,ユーザ名を含むのはドメインではなく電子
メールアドレスであるから,「宛先」や「送信先」にドメインを含まないこ
とが明示されている。
したがって,「送信先」がドメインを含むと解釈することはできない。
5 ウ 本件発明1が解決しようとする課題及び効果
本件明細書等1の段落【0003】~【0005】及び【0008】の記
載によれば,本件発明1は,従来技術では,送信メール保留装置が受信した
メッセージ単位でしか保留の可否を判断することができず,複数の送信先が
記載された電子メールに誤送信の可能性がある送信先が1つでも含まれて
10 いれば,その他の送信先に対するメール送信までもが保留,取消しされてし
まうとの課題を解決すべく,複数の送信先が設定された電子メールを個々の
送信先に分割し(構成要件11D等),分割された送信先ごとに送信制御を
行う(構成要件11F,110E及び111G)ことにより,「保留等する
必要がある送信先には送信を保留等し,その他の送信先には送信することが
15 でき,電子メールを効率よく送出できる」という効果を奏するにしたものと
認められる。
この課題は,「送信先」が電子メールアドレスであり,「個々の送信先に
分割」というのが「電子メールアドレス毎に分割」することであって初めて
解決される。
20 例えば,乙15公報では,即配信リストに登録されている宛先への電子メ
ールは即配信され,同リストに登録されていない宛先への電子メールは一時
的に保留されることが記載されているが(請求項1,段落【0033】,【図
2】),即配信リストに登録されている「xxxxxx@xxx.xxx.co.jp」と,同一
ドメインの「abcdef@xxx.xxx.co.jp」とが送信先に指定された電子メールを
25 送信した場合,本来であれば前者は保留することなく送信できるにもかかわ
らず,宛先に後者が含まれていることから,電子メール全体が保留されるこ
とになるが,本件発明1では,個々のメールアドレスごとに分割することか
ら,後者を保留しつつ前者を即送信することができ,上記課題を解決し得る
ことになる。
一方,「送信先」が「ドメイン」を含み,「個々の送信先に分割」が「ド
5 メイン毎に分割」することであると仮定すると,上記課題は解決されない。
例えば,送信先の電子メールアドレスが①(ユーザ名は省略)@yahoo.com,
②(ユーザ名は省略)@yahoo.com,③(ユーザ名は省略)@yahoo.com,④(ユ
ーザ名は省略)@yahoo.com, (ユーザ名は省略)
⑤ @gmail.comの5つであり,
②のみ送信を保留すべき場合,上記の仮定の下では,電子メールは,ドメイ
10 ンがyahoo.comである①~④とgmail.comである⑤の2つに分割され,②を含
む前者の送信が保留され,後者のみが送信されることになる。すなわち,送
信を保留する必要のない①, ④が保留されてしまうという非効率が生じ,
③,
上記課題が解決されないことになる。
また,「ドメイン」が特定されただけでは,宛先不明となって電子メール
15 を送信できないから,誤送信を問題とする余地がない。本件発明1の「送信
先」に宛先不明となるものが含まれないことは,「ユーザによる電子メール
の誤送信を低減可能とすると共に,宛先に応じた電子メールの送出制御を行
うことにより効率よく電子メールを送出させる」(段落【0008】)とい
う本件発明1の効果に照らし明らかである。
20 これらからしても,「送信先」は電子メールアドレスであって,ドメイン
を含まず,「個々の送信先に分割」とは,「電子メールアドレス毎に分割」
することであると解釈すべきである。
エ 原告の主張について
(ア) 原告は,本件明細書等1の段落【0041】の記載を根拠に,
25 「*@zzz.co.jp」は送信先としてのドメインを意味し,【図5】には「制御
ルール」の「送信先」にドメインが含まれることが記載されていると主張
する。
しかし,【0041】の記載は,「「発信者(送信元)」,「受信者(宛
先)」には,それぞれ電子メールアドレスを複数設定することができ,ア
スタリスクなどのメタ文字(ワイルドカード)を使うことによって任意の
5 文字列を表すこともできる」というものであるが,「アスタリスクなどの
メタ文字(ワイルドカード)」には何らかの文字が入ることが示されてい
るのであり,このように「@」の左側に「文字列」が入るものは,電子メー
ルアドレスであって,ドメインではない。このことは,発明の名称を「電
子メールシステム及び電子メールサーバ」とする公開特許公報(特開20
10 07-148984,平成19年6月14日公開。乙10。以下「乙10
公報」という。)の【図3】に以下のとおり記載されていることからも明
らかである。
また,段落【0041】は「条件定義部」に関する記載であり,条件を
決める際に「*@zzz.co.jp」等を用い得ることが示されているにすぎない。
すなわち,本件明細書等1の段落【0041】の「「発信者(送信元)」,
20 「受信者(宛先)」には,それぞれ電子メールアドレスを複数設定するこ
とができ,アスタリスクなどのメタ文字(ワイルドカード)を使うことに
よって任意の文字列を表すこともできる。」という記載は,条件定義部で
の判定として「ユーザ名」(@の左側)を考慮せずに条件が合致するかどう
かを判断できることが記載されているにすぎず,複数の送信先が含まれた
25 電子メールを分割することについて「*@zzz.co.jp」等が用いられるとい
った,電子メールを分割する態様を説明・開示するものではない。原告の
主張は,個々の送信先に分割する場面と,制御ルールが適用されるかを判
断する場面とを混同するものである。
【図5】
5 さらに,上記の【図5】では,「ID」欄2の「*@zzz.co.jp」のほかに,
「ID」欄4のように「x@x.co.jp」及び「y@y.co.jp」も併記されている
が,仮に分割がドメインごとに行われるのであれば,上記のような記載を
すると,「x.co.jp」及び「y.co.jp」といった個別の電子メールアドレス
と同じドメインを持つその他の電子メールアドレスが保留等されること
10 になるから,個別の電子メールアドレスを条件定義部に記載する意味はな
いことになる。このように,個別の電子メールアドレスを条件定義部の受
信者として指定することが開示されている【図5】を自然に解釈すれば,
分割は,個別の電子メールアドレスごとに行われると解するほかはない。
(イ) 原告は,文献(甲30~32,乙15)や被告の公開特許公報(甲24。
15 以下「甲24公報」という。)の記載を根拠にして,本件明細書等1の【図
5】における「*@zzz.co.jp」が「ドメイン」を意味すると主張する。
しかし,上記文献は,いずれも当該文献内において「*」を用いてドメイ
ンを表すことを定義しているにすぎない。また,甲24公報の明細書の発
明の詳細な説明の段落【0037】と【図4】の記載を併せ読めば,【図
20 4】に記載の「***@a.co.jp」が電子メールアドレスであり,その一部の
「a.co.jp」がドメインであると理解することができる。
(ウ) 原告は,「送信先」にドメインも含むと解しても,複数の送信先が設定
された電子メールにおいて送信先が異なるドメインの場合には課題を解
決できると主張する。
しかし,本件明細書等1の段落【0004】の「複数の送信先が記載さ
れた電子メールに対しては,誤送信の可能性がある送信先が1つでも含ま
5 れていれば,その他の送信先に対するメール送信までもが保留,取り消し
がされることとなる」との記載は,複数の送信先のドメインが同一である
か否かにかかわらず,その他の送信先に対するメール送信までもが保留等
されることを問題とするものであることが明らかである。
この点,「送信先」が「電子メールアドレス」であれば,特定の場合に
10 限らず,電子メールの送出効率化という課題を解決できるが,原告の主張
するように「送信先」が「ドメイン」を含むのであれば,「複数の電子メ
ールアドレスが異なるドメインを有する場合」という特定の場合でしか上
記課題を解決できないこととなるので,「送信先」は,「電子メールアド
レス」であって「ドメイン」を含まないと解するのが自然であり,あえて
15 特定の場合にしか課題を解決できない「ドメイン」を含むと解する理由は
ない。
また,原告は, a1@yyy.yyy.com a2@yyy.yyy.com,Ⓒb1@b
bb.bbb.co.jp,Ⓓb2@bbb.bbb.co.jpが設定された電子メールの例を挙げ,
本件発明1では,分割単位を電子メールアドレスとドメインのいずれにし
20 ても,ドメインが「yyy.yyy.com
が効率化されており,従来技術の課題は解決されると主張する。
子メールアドレスが含まれるから,構成要件11D等の「個々の送信先に
25 分割する」という本件発明1の文言に合致しない。
(2) 被告装置等との対比
本件発明1の構成要件11D等における「個々の送信先に分割する」とは,
電子メールを「電子メールアドレス毎」に分割することを意味するのに対し,
被告装置等の構成11d等においては,電子メールを「ドメイン毎」に分割す
るものであるから,被告装置等は,構成要件11D等を充足しない。
5 2 争点1-2(本件発明1に係る均等侵害の成否)について
(原告の主張)
被告装置等の構成11d等における「ドメイン毎」の部分が本件発明1の構成
要件11D等における「個々の送信先」に文言上該当せず,この点が相違すると
しても,両者は均等であるから,被告装置は本件発明1-1の技術的範囲に属す
10 る。そして,同様の理由により,被告装置は本件発明1-2~11の技術的範囲
に属する。
(1) 第1要件
本件発明1-1は,従来技術においては「メッセージ単位」でしか送信又は
保留の判断ができなかったのに対し(段落【0004】),「送信先」単位で
15 送信又は保留の判断をすることにより,電子メールの誤送信を低減可能とする
ととともに,効率よく電子メールを送出させる仕組みを提供したのである(段
落【0006】,【0008】)。そして,本件特許1の特許メモ(乙9)に
は,既存の文献に,
「電子メールの送出に係る制御内容を示す送出制御情報を,
前記電子メールの送信元と送信先とに対応付けた制御ルールを記憶する記憶
20 手段」,「前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手段で分割
された送信先と送信元とに従って,当該分割された送信先に対する電子メール
の送出に係る制御内容を決定する決定手段」について記載されていない旨が記
載されている。
このような本件発明1-1の課題及び解決手段とその効果並びに先行技術
25 に照らすと,本件発明1の本質的部分は,「送出制御内容を,電子メールの送
信元と送信先とに対応付けた制御ルールと,分割された電子メールの送信先と
送信元とに従って,分割された送信先に対する電子メールの送出に係る制御内
容を決定すること」にある。
一方,本件発明1-1と被告装置との相違部分(以下「本件相違部分」とい
う。)は,「本件発明1-1は,電子メールを分割する単位を電子メールアド
5 レスとし,電子メールアドレス単位で電子メールの送出に係る制御内容を決定
するのに対し,被告装置は,電子メールを分割する単位をドメインとし,ドメ
イン単位で電子メールの送出に係る制御内容を決定する部分」であるが,電子
メールを分割し送出に係る制御内容を決定する単位を電子メールアドレス単
位とするかドメイン単位とするかという点は,従来技術に見られない特有の技
10 術思想を構成する特徴部分とはいえず,本件発明1の本質的部分には当たらな
い。
したがって,被告装置等は均等の第1要件を充足する。
(2) 第2要件
本件発明1-1の目的,作用効果は,①ユーザによる電子メールの誤送信を
15 低減可能とすると共に,②宛先に応じた電子メールの送出制御を行うことによ
り効率よく電子メールを送出させることである(段落【0008】)。
一方,被告装置は,構成11b及び11eのとおり,フィルター条件に該当
する電子メールに対しアクションを決定することができることから,上記①の
効果を得ることができる。また,被告装置は,構成11d及び11eのとおり,
20 複数の宛先の電子メールアドレスが設定された電子メールを宛先のドメイン
ごとの電子メールに分割し,宛先のドメインごとに分割された電子メールに対
し,フィルター条件に該当した場合のアクションを行うことができるものであ
ることから,分割前の電子メールの送信先に保留の送信先が含まれていたとし
ても,当該送信先のドメインと異なるドメインの電子メールを送出することが
25 できる点で,上記②の効果を得ることができる。
被告は,被告装置が行う電子メールの送出制御は電子メールアドレス単位で
はなくドメイン単位であることを理由に第2要件を充足しないと主張するが,
「送信先」単位で送信又は保留の判断ができれば,本件発明1の作用効果を奏
することができ,その効果の大小や量的な強弱の差異によって,均等の第2要
件が否定されることはない。
5 したがって,本件相違部分にかかわらず,被告装置は,本件発明1-1と同
一の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏するものといえるから,
第2要件を充足する。
(3) 第3要件
被告が被告装置等を製造している時点における従来技術として,発明の名称
10 を「メールシステム,メールサーバ,クライアント装置,メールシステムの制
御方法,プログラム及び記録媒体」とする公開特許公報(特開2013-13
7734,平成25年7月11日公開。甲35。以下「甲35公報」という。)
の明細書の発明の詳細な説明の段落【0049】及び【0052】には,電子
メールに設定された複数の送信先をグループに分けて,各グループに所属する
15 送信先が設定された電子メールを作成し送信する技術が開示されており,グル
ープの単位として,ドメイン単位とすることが記載されている。そして,段落
【0132】の「メールアドレスのドメインに限らず,「メールアドレスのド
メイン」…のいずれにおいても設定可能な実施例として説明する。」との記載
から,ドメインごとに分割し,送信をする場合に,これを電子メールアドレス
20 ごとに分割し,送信することに変更することが,実施形態の変更の一態様とし
て記載されている。
このように,電子メールの送出制御システムにおいて,複数の送信先が設定
された電子メールを,グループごとに分割し,送信する際に,グループの単位
を電子メールアドレスごととドメインごとに適宜変更することが可能である
25 ことが既に知られていることからすると,電子メールアドレスごとに分割して,
電子メールアドレスごとに送出制御をする場面において,その分割及び送出制
御を行う単位を,個々の送信先である電子メールアドレス単位から,同じく
個々の送信先であるドメイン単位に置換することは,当業者が適宜変更し得る。
したがって,本件相違部分に置換することは,当業者が被告装置等の製造等
の開始時点において容易に想到できるから,均等の第3要件を充足する。
5 (4) 第4要件
被告装置は本件発明1-1の特許出願時の公知技術と同一又は当業者が同
技術に基づいて当該出願時に容易に推考できたものではないから,均等の第4
要件を充足する。
(5) 第5要件
10 被告装置が本件発明1-1の技術的範囲から意識的に除外されたものであ
るなどの特段の事情は存在しないから,均等の第5要件を充足する。
(被告の主張)
被告装置等は,少なくとも均等の第1,第2及び第4要件を満たさないので,
均等侵害は成立しない。
15 (1) 第1要件
本件発明1-1の本質的部分は,「送出制御情報を,電子メールの送信元と
宛先の電子メールアドレスとに対応付けた制御ルールと,分割された電子メー
ルの宛先の電子メールアドレスと送信元とに従って,分割された宛先の電子メ
ールアドレスに対する電子メールの送出に係る制御内容を決定すること」であ
20 り,要は,宛先の電子メールアドレスごとに電子メールを分割し,宛先の電子
メールアドレスに従って制御内容を決定する点にある。このことは,本件明細
書等1の段落【0004】に「誤送信の可能性がある送信先が1つでも含まれ
ていれば,その他の送信先に対するメール送信までもが保留,取り消しがされ
ることとなる」と明記された本件発明1の課題の解決が,送信先を個々の電子
25 メールアドレスに分割することで初めて可能になることからも明らかである。
したがって,本件相違部分は,本件発明1-1の本質的部分に関するもので
あるから,第1要件を充足しない。
(2) 第2要件
本件発明1-1は,
「電子メールを分割する単位を電子メールアドレスとし,
電子メールアドレス単位で電子メールの送出に係る制御内容を決定する」こと
5 により,電子メールアドレス単位で電子メールの送出制御を行うことが可能に
なるという作用効果を奏するのに対し,被告装置は,「電子メールを分割する
単位をドメインとし,ドメイン単位で電子メールの送出に係る制御内容を決定
する」ため,ドメイン単位で電子メールの送出を行うことが可能になるにすぎ
ず,電子メールアドレス単位で電子メールの送出制御を行うことができない。
10 このように,本件相違部分に起因して,被告装置は本件発明1-1と同一の
作用効果を奏さないから,均等の第2要件を満たさない。
(3) 第4要件
被告装置は乙7発明,乙13発明,乙14発明,乙16発明及びIronPortな
る公然実施発明と同一又は同各発明から容易に推考できたものであるから,第
15 4要件を満たさない。
3 争点1-3(本件発明1-1~1-10につき,間接侵害の成否)について
(原告の主張)
被告が被告製品を製造販売等する行為は,特許法101条1号又は2号(以下,
それぞれを単に「1号」などという。)に基づき本件発明1-1~1-9に係る
20 特許権を侵害するものとみなされ,同法101条4号又は5号(以下,それぞれ
を単に「4号」などという。)に基づき本件発明1-10に係る特許権を侵害す
るものとみなされる。
(1) 1号に基づく間接侵害の成立
ア 被告製品は,情報処理装置にインストールして用いられるソフトウェアで
25 あり,被告製品をインストールした被告装置は,本件発明1-1~1-9の
技術的範囲に属する。そして,ユーザが被告から被告製品を購入し,これを
パソコンにインストールする行為は,本件発明1-1~1-9に係る情報処
理装置を生産する行為に該当するから,被告製品は,これらの発明に係る情
報処理装置の生産に用いる物であって,それ以外の用途がない。
したがって,被告製品は,「特許が物の発明についてされている場合にお
5 いて」,「その物の生産にのみ用いる物」に該当し,被告が被告製品を製造
販売等する行為は,1号の間接侵害を構成する。
イ 被告は,被告製品には電子メールの送受信制御以外にも電子メールの「全
文保存と検索」や「スパムメール対策」という実用的な他の用途が存在する
から,1号の間接侵害は成立しないと主張する。
10 しかし,1号の「その物の生産にのみ用いる物」に該当するか否かは,特
許発明に係る物に用いる物に,当該特許発明を実施しない使用方法自体が存
する場合,当該特許発明を実施しない機能のみを使用し続けながら,当該特
許発明を実施する機能は全く使用しないという使用形態が,その物の経済的,
商業的又は実用的な使用形態として認められるか否かにより判断すべきで
15 あるところ(知財高裁平成22年(ネ)第10089号同23年6月23日
判決参照) 被告製品における
, 「電子メールの送受信制御」 「MailFilter」
( )
機能は最も重要かつ中心的なものであるから,この機能を用いずに,電子メ
ールの全文保存と検索や,スパムメール対策の機能のみを使用し続けること
が実用的な使用形態とは考えられない。
20 (2) 2号に基づく間接侵害
ア 被告製品を情報処理装置にインストールすることにより,被告製品の備え
る機能を情報処理装置に実行させることができるから,被告製品は,本件発
明の情報処理装置の生産に用いられる物に当たる。
2号の「その発明による課題の解決に不可欠なもの」とは,従来技術に見
25 られない特徴的技術手段について,当該手段を特徴付けている特有の構成な
いし成分を直接もたらす,特徴的な部材,原料,道具等をいうところ,本件
発明1-1~1-9は,保留される送信先が含まれる電子メールを分割して,
分割したメール単位で送出を制御するという点に,従来技術に見られない特
徴的技術手段が存在する。そして,被告製品は,少なくとも,保留される送
信先が含まれる電子メールを分割して,分割したメール単位で送出を制御す
5 る機能を有することから,本件発明1との関係において,従来技術に見られ
ない特徴的技術的手段について,当該手段を特徴付けている特有の構成を直
接もたらす,特徴的な部材に該当する。
それゆえ,被告製品は,2号の定める「その発明による課題の解決に不可
欠なもの」に当たる。
10 イ 原告は,平成29年2月3日,被告に対し,「弊社所有の特許権に関する
件」と題する書面を送付して本件特許権1に基づく警告を行っており,被告
は,遅くとも同月6日にこれを受領しているから(甲10),本件発明1が
特許発明であること及び被告製品がその発明の実施に用いられることの各
事実を認識するに至っており,その上で,被告製品の製造販売等をしている
15 ということができる。
ウ したがって,被告が被告製品を製造販売等する行為は,2号の間接侵害を
構成する。
(3) 4号及び5号に基づく間接侵害
ア 前記(1)と同様の理由により,被告が被告製品を製造販売等する行為は,
20 4号の間接侵害を構成する。また,前記(2)と同様の理由により,被告が被告
製品を製造販売等する行為は,5号の間接侵害を構成する。
イ 被告は,被告製品が「その方法の使用に用いる物の生産に用いる物」にす
ぎないから,4号及び5号の間接侵害が成立しないと主張する。
しかし,4号及び5号の間接侵害は,「その物自体を利用して特許発明に
25 係る方法を実施することが可能である物」であるか否かにかかわらず,それ
が生産,譲渡される場合に当該特許発明の侵害行為を誘発する蓋然性が極め
て高いものについては成立すると解すべきである。そして,ソフトウェアと
パソコンは共働するものであるが,パソコンを制御するのはソフトウェアで
あり,方法の発明を実現するのは実質的にはソフトウェアと考えられ,ソフ
トウェアが生産,譲渡等されれば,本件特許権の侵害行為を誘発する蓋然性
5 が極めて高いことに変わりはないから,被告製品は,「その方法の使用にの
み用いる物」,「その方法の使用に用いる物」に該当する。
(被告の主張)
被告装置は,本件発明1-1~1-9の技術的範囲に属しないから,被告が被
告製品を製造販売等する行為は1号及び2号の間接侵害に該当しないし,本件発
10 明1-10の技術的範囲に属しないから,上記行為は4号及び5号の間接侵害を
構成しない。また,以下の点からも,被告の行為は間接侵害を構成しない。
(1) 1号について
1号に基づく間接侵害が成立するには,「その物の生産にのみ用いる物」に
該当することを要するが,ここで「のみ」とは,社会通念上,経済的,商業的
15 又は実用的に他の用途がないことをいう。しかるに,被告製品には,「電子メ
ールの送受信制御」のみならず,電子メールの「全文保存と検索」や「スパム
メール対策」を行うこともできるのであり,こうした機能を有するサーバを生
産するという実用的な他の用途が存在するから,1号に基づく間接侵害は成立
しない。
20 (2) 2号について
被告製品が有する機能は,「保留される送信先が含まれる電子メールをドメ
イン毎に分割して,分割したドメイン単位で送出を制御する」ものであり,保
留する必要がない電子メールアドレスに対する送信が保留されてしまうため
に,本件発明1の上記課題を解決することができないから,「その発明による
25 課題の解決に不可欠なもの」に該当せず,2号に基づく間接侵害は成立しない。
(3) 4号及び5号について
4号及び5号の間接侵害が成立するためには,被告が製造販売等する物が,
「その方法の使用に用いる物の生産に用いる物」に当たるのでは足りず,「そ
の方法の使用に用いる物」に該当することを要する(知財高裁平成17年(ネ)
第10040号同年9月30日判決参照)。
5 しかるに,被告製品は,被告装置の生産に用いられるものであって,仮に,
被告装置が「その方法の使用に用いる物」であるとしても,被告製品は,「そ
の方法の使用に用いる物の生産に用いる物」であるにすぎないから,4号及び
5号に基づく間接侵害は成立しない。
また,被告製品は,前記(1)と同様の理由により,4号の「その方法の使用に
10 のみ用いる物」に当たらず,また,前記(2)と同様の理由により,5号の「その
発明による課題の解決に不可欠なもの」にも当たらないから,この点からも,
4号及び5号に基づく間接侵害は成立しない。
4 争点2-1(被告装置等の構成要件21C等の充足性)について
(原告の主張)
15 構成要件21C等における「送信先」にはドメインを含むから,被告装置の構
成21c,被告方法の構成24c及び被告製品の構成25c(以下,併せて「構
成21c等」という。)は,それぞれ構成要件21C等を充足する。なお,本件
発明1に関する原告の主張は本件発明2についても妥当する。
(1) 「送信先」の意義
20 本件特許2の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明及び図面(以下「本
件明細書等2」という。)における段落【0039】及び【図5】(本件明細
書等1の段落【0037】及び【図5】と同内容)によれば,前記1(原告の
主張)(1)アと同様の理由により,「送信先」は,電子メールを送信した際にそ
れを受け取る先を意味し,少なくとも電子メールアドレスとドメインを含む。
25 (2) 「個別メールを生成する」の意義
「個別」とは,「一つずつ別に」の意味であるから(広辞苑第6版,甲9),
「前記複数の送信先が個別に設定された複数の個別メールを生成する」とは,
「電子メールに設定された複数の送信先が一つずつ別に設定された複数の電
子メールを生成する」ことを意味する。
被告は,「複数の送信先が一つずつ別に設定された複数の」個別メールは,
5 電子メールアドレスごとに分割されなければならないと主張するが,例えば,
㋐aaa@abc.com,㋑bbb@abc.com,㋒ccc@abc.com,㋓eee@xyz.comの4件の電子
メールアドレスの送信先に電子メールを送信する場合,複数の送信先であるド
メイン(abc.com,xyz.com)が一つずつ別に設定された複数の個別メールが生
成されることから,「前記複数の送信先が個別に設定された複数の個別メール
10 を生成する」に該当するということができる。
また,被告の主張を前提としても,上記の例で,宛先を㋐~㋒とする電子メ
ールと,宛先を㋓とする電子メールという一つずつ別の電子メールに,一つず
つ別の送信先であるドメイン「abc.com」 「xyz.com」
, が設定されることから,
ドメインごとに分割する場合でも,一つずつ別の送信先が設定された,一つず
15 つ別のメールが生成されている。
(3) 被告装置等との対比
被告装置等の構成21c等の「複数の宛先の電子メールアドレスが設定され
た電子メール」は,構成要件21C等前段の「複数の送信先が設定された電子
メール」に該当する。
20 また,被告装置等の構成21c等の「宛先のドメイン毎に分割して宛先のド
メイン毎の電子メールを生成する」とは,「複数の宛先の電子メールアドレス
が設定された電子メール」を宛先のドメインごとに分割して宛先が一つずつ別
に設定された複数の電子メールを生成することにほかならないので,構成要件
21C等後段の「複数の送信先が個別に設定された複数の個別メールを生成す
25 る」に当たる。
この点,被告は,同構成要件前段及び後段の「送信先」は同義と解すべきと
ころ,原告の主張によればこれらの「送信先」という語が異なる意義を有する
ことになると主張するが,電子メールアドレスは,「@」を挟んでユーザ名とド
メインから構成され,ドメインを包含するものであるから,送信先に電子メー
ルアドレスを設定することは,ドメインを設定することでもある。そうすると,
5 構成要件21C等前段及び後段の「送信先」が同義であるとしても,構成要件
21C等後段の「送信先」にドメインが含まれるとの解釈を妨げるものではな
い。
そして,被告装置等は,「ドメインが異なる複数の送信先の電子メールアド
レス」が設定された電子メールを受信した場合には,「電子メールアドレス毎
10 に送出を制御する」ものである。
したがって,被告装置等の構成21c等は,構成要件21C等を充足する。
(被告の主張)
被告装置等の構成21c等は宛先のドメインごとの電子メールを生成するも
のであるから,構成要件21C等を充足しない。
15 (1) 「送信先」の意義について
本件特許2は,本件特許1の孫出願であり(乙2),本件明細書等2には,
本件明細書等1と同様の記載があるところ,「送信先」は電子メールアドレス
を指し,ドメインを含まないことは前記1(被告の主張)(1)のとおりである。
原告は,構成要件21C等における前段の「送信先」は被告装置等の「電子
20 メールアドレスに該当し,後段の「前記送信先」は被告装置等の「ドメイン」
に該当すると主張するが,構成要件21C等は,「複数の送信先が設定された
電子メールから,前記複数の送信先が個別に設定された複数の個別メールを生
成する」構成であるところ,前段の「複数の送信先」と後段の「前記複数の送
信先」とは同じもの,すなわちいずれも電子メールアドレスを指していると解
25 すべきである。
この点について,原告は,電子メールアドレスがドメインを包含するなどと
して,仮に構成要件21C等前段及び後段の「送信先」が同義であるとしても,
被告装置等の構成21c等は構成要件21C等を充足すると主張するが,「電
子メールアドレス」と「ドメイン」は異なるものであるから,原告の主張は失
当である。
5 (2) 「個別メールを生成する」の意義について
「個別」とは「一つずつ別に」という意味であるところ,構成要件21C等
は,「前記複数の送信先が個別に設定された複数の個別メールを生成する」と
規定する。ここで,1番目の「個別」は「送信先」が一つずつ別に設定される
ことを意味し,2番目の「個別」は「メール」が一つずつ別であることを意味
10 するから,特許請求の範囲の記載に忠実に従って解釈をすると,「個別メール
を生成する」とは,一つずつ別の送信先が設定された一つずつ別のメールを生
成することを意味する。ドメインごとに分割したものは複数の電子メールアド
レスを含み得るものであるから,「一つずつ別のメール」には当たらない。
そして,被告装置等の構成21cは,「複数の宛先の電子メールアドレスが
15 設定された電子メールを,宛先のドメイン毎に分割して宛先のドメイン毎の電
子メールを生成する」のであるから,構成要件21C等を充足しない。
5 争点2-2(本件発明2に係る均等侵害の成否)について
(原告の主張)
本件発明2-1は,個別メール生成手段において生成する電子メールの送信先
20 の単位を電子メールアドレスとし,決定手段において,電子メールアドレス単位
で電子メールの制御内容を決定するのに対し,被告装置は,個別メール生成手段
において生成する電子メールの送信先の単位をドメイン単位とし,決定手段にお
いて,ドメイン単位で電子メールの制御内容を決定する点で相違するが,この相
違部分は本件相違部分と同一である。
25 したがって,前記2(原告の主張)と同様の理由により,両者は均等であるか
ら,被告装置は本件発明2-1の技術的範囲に属し,同様の理由により,被告装
置等は本件発明2-2~2-5の技術的範囲に属する。
(被告の主張)
争う。
6 争点2-3(本件発明2-1~2-4につき,間接侵害の成否)について
5 (原告の主張)
前記3(原告の主張)と同様の理由により,被告が被告製品を製造販売等する
行為は,1号又は2号に基づき本件発明2-1~2-3に係る特許権を侵害する
ものとみなされ,4号又は5号に基づき本件発明2-4に係る特許権を侵害する
ものとみなされる。
10 (被告の主張)
被告装置は,本件発明2-1~2-3の技術的範囲に属しないから,被告が被
告製品を製造販売等する行為は1号及び2号の間接侵害に該当しないし,本件発
明2-4の技術的範囲に属しないから,上記行為は4号及び5号の間接侵害を構
成しない。また,前記3(被告の主張)(1)~(3)と同様の理由によっても被告の
15 行為は間接侵害に該当しない。
7 争点3(本件発明1が特許無効審判により無効にされるべきものと認められる
か)について
この点に関する当事者の主張は,別紙6に記載のとおりである。
8 争点4(本件発明1-3,1-4,1-6及び1-11につき,訂正の再抗弁
20 の成否)について
この点に関する当事者の主張は,別紙7に記載のとおりである。
9 争点5(原告の損害額)について
(原告の主張)
原告は,被告の行為により,以下のとおり,合計9億7767万8572円の
25 損害を受けたが,以下の(1)の一部である1億円を請求する。発生した損害額と
請求金額の製品ごとの割付けは,別紙8のとおりである。
(1) 特許法102条2項に基づく損害 9億5767万8572円
被告が,本件特許権1の設定登録後,平成30年3月15日までに製造し,
販売した被告製品の売上総額は,23億9419万6430円を下らず,被告
製品に関する被告の利益率は,40%を下らないから,被告が上記期間中に得
5 た利益額は,9億5767万8572円を下らない。
(2) 弁護士費用相当損害金 2000万円
(被告の主張)
争う。
第4 当裁判所の判断
10 1 本件各発明の内容
(1) 本件明細書等1(甲2)及び本件明細書等2(甲4)には以下の記載がある
(本件明細書等1の段落番号や図面番号を「【0001】①」,本件明細書等
2の段落番号等を「【0001】②」などと記載する。なお,明白な誤記は修
正した。)。
15 ア 技術分野
「本発明は,電子メールの送信制御技術,特に,端末から受信した電子メ
ールの送出制御に関するものである。」(段落【0001】①②)
イ 背景技術
「一般的に,電子メールの送受信システムにおいては,送信者が電子メー
20 ルの送信を行った後,送信先アドレスの間違いや,添付ファイルの付け忘れ,
添付ファイルの付け間違いなどに気付いても,送信を取り消すための手段が
用意されていない。また,電子メールは,送信者と受信者がエンドツーエン
ドで電子メッセージを交換するものであり,途中で第三者が送信内容を確認
する手段がない。」(段落【0002】①②)
25 「そこで,例えば,特許文献1では,メール送受信端末とメール配送装置
との間に配される送信メール保留装置において,電子メールを保留する技術
が提案されている。具体的には,送信メール保留装置は,保留すると設定さ
れている送信先アドレスをもつ電子メールを受信した場合には,受信した電
子メールを送信者へ送信して内容を確認させる。そして,送信者が当該電子
メールを誤送と判断した場合,特定アドレスへ電子メールを送ることで前述
5 の電子メールの外部への送信を取り消すことを提案している。
【特許文献1】特開2005-277976号公報(判決注:乙15公報)」
(段落【0003】①②,特許文献1の記載につき段落【0004】②)
ウ 発明が解決しようとする課題
「しかしながら,特許文献1に記載の技術においては,送信メール保留装
10 置は受信したメッセージ単位でしか保留の可否を判断することができない。
そのため,複数の送信先が記載された電子メールに対しては,誤送信の可能
性がある送信先が1つでも含まれていれば,その他の送信先に対するメール
送信までもが保留,取り消しがされることとなる。また,誤送信の可能性が
ある電子メールの確認や削除等の管理操作は,当該電子メールの送信者のみ
15 に限定されている。さらに,保留されたメールを確認したのち,修正する必
要がないと判断された場合であっても,設定された送信遅延時間が経過する
まで送出することができない。」(段落【0004】①,【0005】②)
「本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり,ユーザによる電子メ
ールの誤送信を低減可能とすると共に,宛先に応じた電子メールの送出制御
20 を行うことにより効率よく電子メールを送出させる仕組みを提供すること
を目的とする。」(段落【0005】①)
「本発明は,複数の送信先が設定された電子メールを送信先毎に分けて送
信制御を行う場合,当該電子メールの送信元に,個別メールが保留されるこ
とが決定された旨を通知し,いずれの個別メールが保留されると決定された
25 かを認識可能にする仕組みを提供することを目的とする。」(段落【000
6】②)
エ 発明の効果
「本発明によれば,ユーザによる電子メールの誤送信を低減可能とすると
共に,宛先に応じた電子メールの送出制御を行うことにより効率よく電子メ
ールを送出させることができる。」(段落【0008】①)
5 「本発明によれば,複数の送信先が設定された電子メールを送信先毎に分
けて送信制御を行う場合,当該電子メールの送信元に個別メールが保留され
ることが決定された旨を通知し,いずれの個別メールが保留されると決定さ
れたかを認識可能にすることができる。」(段落【0009】②)
オ 発明を実施するための最良の形態
10 (ア) 第1実施形態
「本発明に係る情報処理装置の第1実施形態として,メール中継装置を
例に挙げて以下に説明する。」(段落【0010】①,【0012】②)
a システムの全体構成
「図1は,第1実施形態に係るメール中継装置を含む電子メール送信
15 システムの全体構成を示す図である。」(段落【0011】①,【00
13】②)
【図1】①②
「メールシステムは,メール送受信端末(端末装置)110とメール
20 中継装置150とメール配送装置190とから構成される。メール送受
信端末110とメール中継装置150とメール配送装置190とはそ
れぞれネットワークを介して相互に通信可能に接続されている。」(段
落【0012】①,【0014】②)
「メール送受信端末110から送信された電子メールは,該電子メー
5 ルの宛先に設定されたメールアドレスに従って,メール中継装置150
とメール配送装置190とを介して,該宛先である不図示の他のメール
送受信端末に送信される。」(段落【0013】①,【0015】②)
「電子メールの送受信を行うメール送受信端末110は,ユーザが各
種操作指示を行う情報処理装置である。メール送受信端末110は,ネ
10 ットワークを介して,メール中継装置150とデータの送受信が可能で
ある。メール送受信端末110は,メール送受信部111と管理操作部
112とを備えている。」(段落【0014】①,【0016】②)
「メール送受信部111は,メール中継装置150に電子メールを送
信する機能と,メール中継装置150から電子メールを受信する機能と
15 を備えている。」(段落【0015】①,【0017】②)
「管理操作部112は,メール中継装置150の制御ルール設定部1
54に対して,メール中継装置150の記憶手段に記憶された制御ルー
ルに対する変更などの操作指示を行う機能を備えている。…すなわち,
管理操作部112は,メール送受信端末110から送信(発信)される
20 電子メールを,直ちに送信することなく一時保留するか,又は, (宛
中継
先に向けて直ちに送出)するか等が設定された制御ルールの登録,編集,
削除,閲覧などを,制御ルール設定部154に対して指示する機能を備
えている。」(段落【0016】①,【0018】②)
「また,管理操作部112は,メール中継装置150の記憶手段(保
25 留メール保存部158)に保留された電子メールの閲覧,削除, ( 中
送信
継) などの操作指示を保留メール管理処理部155に対して実行する
機能を備えている。」(段落【0017】①,【0019】②)
「メール中継装置150は,メール送受信端末110から送信された
電子メールをメール配信装置に中継するか,一時保留するか等を判定し,
判定結果に基づいて,メール配送装置190にメールを転送する。メー
5 ル中継装置150は,メール受信処理部151,ルール適用処理部15
2,メール送信処理部153,制御ルール設定部154,保留メール管
理処理部155を備えている。」(段落【0019】①,【0021】
②)
「メール中継装置150は,外部メモリ211などの記憶手段に,制
10 御ルール保存部156,ユーザアカウントデータベース157,保留メ
ール保存部158の記憶領域を備えている。」(段落【0020】①,
【0022】②)
「メール受信処理部151は,メール送受信端末110が送信した電
子メールを取得する機能を備える。」(段落【0021】①,【002
15 3】②)
「ルール適用処理部152は,メール受信処理部151で取得した電
子メールが,制御ルール保存部156に記憶された制御ルールに示され
る各種条件に一致するか否かを判定し,一致する制御ルールがあると判
定された場合は,当該制御ルールに設定されたアクション(電子メール
20 の中継又は保留)を当該電子メールに対して適用する機能を備える。」
(段落【0022】①,【0024】②)
「メール送信処理部153は,電子メールをメール配送装置190へ
送信する機能を備える。つまり,ルール適用処理部152において中継
すると判定された電子メール,または,所定の保留時間が経過した保留
25 電子メールを送信する機能部である。」(段落【0023】①,【00
25】②)
「制御ルール設定部154は,メール送受信端末110の管理操作部
112から,制御ルール保存部156に記憶された制御ルールの登録,
編集,削除,閲覧など操作指示を受け付ける機能,及び,当該操作指示
に従って,制御ルール保存部156に記憶された制御ルールの登録,編
5 集,削除,閲覧などの処理を実行する機能を備える。また,制御ルール
設定部154は,例えばHTTP又はHTTPSに対応したWebサー
バの機能を利用して実現される。」(段落【0024】①,【0026】
②)
「また,制御ルール設定部154は,ユーザアカウントデータベース
10 157に記憶されたユーザ情報(利用者(ユーザ)を識別するユーザ識
別子(例えば,利用者のユーザ名など)と,パスワード)を用いて,メ
ール送受信端末110を操作する利用者を認証する機能を備える。(段
」
落【0025】①,【0027】②)
「保留メール管理処理部155は,メール送受信端末110から受け
15 付けた指示に従い,保留メール保存部158に保留されている電子メー
ルの送出,又は削除,又は保留延長を行う機能を備える。」(段落【0
026】①,【0028】②)
「制御ルール保存部156は,ルール適用処理部152で用いられる
制御ルールが記憶されている記憶領域である。ユーザアカウントデータ
20 ベース157は,外部メモリ211などの記憶手段に記憶されており,
利用者( ユーザ) を識別するユーザ識別子(例えば,利用者のユーザ
名など)と,パスワードと,該ユーザの電子メールアドレスとがそれぞ
れ互いに紐付いて記憶されている。保留メール保存部158は,ルール
適用処理部152で保留すると判定された電子メールを保留する記憶
25 領域である。」(段落【0027】①,【0029】②)
b メール中継装置の動作
「図3は,メール中継装置150のCPU20
1が実行する電子メールの送信制御処理を示す
フローチャートである。」(段落【0034】①,
5 【0036】②)
「ステップS301では,メール送受信端末1
10が送信した電子メールを,メール中継装置1
50のメール受信処理部151が受信する。メー
ル受信処理部151は受信した電子メールをル
10 ール適用処理部152に渡し,ルール適用処理 【図3】①②
部152がステップS302以降の処理を実行する。」(段落【003
5】①,【0037】②)
「ステップS302では,ルール適用処理部152は,制御ルール保
存部156に記憶された全ての制御ルール(制御ルールリスト)をRA
15 Mなどのメモリに読み込む。そして,全ての制御ルールのリストをメモ
リに読み込んだ後,アクション適用エントリバッファを初期化する。」
(段落【0036】①,【0038】②)
「図5は,制御ルールのリストの一例を示す図である。ここでは,ル
ールとは,「ID」,「ユーザID」,「条件定義部」,「分割評価」,
20 「アクション定義部」,「管理者」から構成された1レコードの情報で
ある。」(段落【0037】①,【0039】②)
【図5】①②
「ここで読み込まれた制御ルールは,図5に示すように,「ID」を
キーに降順にソートされたリスト形式で記憶保持される。この「ID」
に設定された番号は,後述する[S303~S306で実行されるルー
5 ル適用処理]を実行する際に用いられる制御ルールの順番を示している。
すなわち,制御ルール内の「ID」は,ルール適用処理(S303~S
306)で,制御ルールを適用する優先度(順番)を示している。」(段
落【0038】①,【0040】②)
「・「ユーザID」は,該ユーザIDが含まれる制御ルールを登録し
10 た利用者のユーザ識別子である。」(段落【0039】①,【0041】
②)
「・「条件定義部」は,「発信者(送信元)」,「受信者(宛先)」,
「その他条件」から構成される。「発信者(送信元)」には,メール送
受信端末110から取得する電子メールの送信元の電子メールアドレ
15 ス(発信者情報)が設定されている。「受信者(宛先)」には,メール
送受信端末110から取得する電子メールの宛先(To,Cc,Bcc)
の電子メールアドレス(受信者情報) が設定されている。
「その他条件」
には,メール送受信端末110から取得する電子メールから得られる電
子メールアドレス以外の電子メールを特定するための条件(情報)が設
20 定されている。例えば,「その他条件」には,通常電子メールの送受信
をフィルタリングするシステムで電子メールを特定するために使用さ
れる情報が設定できるものとする。具体的には,添付ファイルの有無や
添付ファイルのファイル名,ファイルタイプ(ファイルの拡張子など)
やファイルサイズや電子メール全体のデータサイズなどが設定可能で
25 ある。」(段落【0040】①,【0042】②)
「なお,「発信者(送信元)」,「受信者(宛先)」には,それぞれ
電子メールアドレスを複数設定することができ,アスタリスクなどのメ
タ文字(ワイルドカード)を使うことによって任意の文字列を表すこと
もできる。」(段落【0041】①,【0043】②)
「・「分割評価」には,メール送受信端末110から取得した電子メ
5 ールに設定された複数の宛先毎のそれぞれを宛先とした電子メールを
生成するか否かを示す真偽値(True,False)が設定される。
すなわち,後述するステップS402の処理を実行するのか,それとも
ステップS403の処理を実行するのかを判定するための条件が設定
されている。」(段落【0042】①,【0044】②)
10 「・「アクション定義部」(送出制御情報)は,「アクション」およ
び「遅延時間」から構成される。「アクション」には,条件定義部に設
定された各条件に合致する電子メールに対する処理を示す情報(送出制
御内容)が設定されている。図5の例では,「中継」と設定されている
場合,電子メールを即時に中継(送出)するが,「保留」と設定されて
15 いる場合は,電子メールを保留することを示している。「遅延時間」に
は,「アクション」に「保留」と設定され,電子メールの送信が保留さ
れた場合の保留限度時間(送出制御内容)が設定されている。例えば,
メール送受信端末110から取得した電子メールが,制御ルールの条件
定義部に設定された条件を満たし,その条件に対応した「アクション」
20 が「保留」で「遅延時間」が「10m」と制御ルールに設定されている
場合,当該電子メールを直ぐに送信せず,10分間,当該電子メールを
保留メール保存部158に記憶する。即ち,当該電子メールを10分間
遅らせて送信する。」(段落【0043】①,【0045】②)
「つまり,「遅延時間」に設定された時間の間,電子メールの送出が
25 保留されることとなる。なお,「アクション」欄が「中継」のときは,
「遅延時間」に設定された値は無効とする。また,「アクション」欄が
「保留」で,かつ「遅延時間」に値が設定されていない場合,電子メー
ルの保留が無期限に行われる。この場合,外部装置(他のメール送受信
端末など)から送出指示がなされるまで電子メールが保留される。 (段
」
落【0044】①,【0046】②)
5 「・「管理者」には,電子メールがその制御ルールの条件定義部に合
致し,該電子メールが保留される場合に,該電子メールが保留された旨
を通知する通知先(通知先受信者情報)と,その通知先のユーザの権限
情報とが設定されている。さらに,メール送受信端末110から受信し
た電子メールの宛先に設定された同報者宛ての電子メールに,後述する
10 「保留制御に関する情報」を挿入するか否かを示す同報者識別子が設定
されている。なお,図5の例では,同報者識別子は<rcpt>で示さ
れている。同報者識別子が設定されている場合は,「保留制御に関する
情報」を同報者宛ての電子メールに挿入することを示している。」(段
落【0045】①,【0047】②)
15 「ここで,通知先としては,管理者識別子(ユーザ識別子),発信者
識別子などが設定可能である。管理者識別子(管理者のユーザ識別子)
とは,管理者を識別する管理者名(管理者のユーザ名)である。また,
発信者識別子とは,保留された電子メールを送信した送信元(発信者)
を示す情報である。なお,図5の例では,発信者識別子は<from>
20 で示されている。」(段落【0046】①,【0048】②)
「ステップS303では,ルール適用処理部152は,制御ルールリ
ストの中から,最も優先度が高い(IDの値が最小の)制御ルールを1
つ(1レコード)選択する。」(段落【0050】①,【0052】②)
「ステップS304では,ルール適用処理部152は,ステップS3
25 01で取得した電子メールに対して,ステップS303で選択した制御
ルールの適用処理を実行する。…」(段落【0051】①,【0053】
②)
「ステップS308では,アクション適用エントリバッファに記憶さ
れている情報に基づいてメールの送出処理又は保留処理を行う。 (段
…」
落【0054】①,【0056】②)
5 「図13は,アクション適用エントリバッファに記憶されるデータを
示す図である。」(段落【0055】①,【0057】②)
【図13】①②
「具体的には,アクション適用エントリバッファには,ステップS4
10 07又はステップS408で実行した中継(送出)処理又は保留処理の
処理単位である電子メールのデータ(メールメッセージ(宛先))に対
し,当該電子メールの送出予定日時と,当該電子メールに合致した制御
ルールのIDとがそれぞれ対応付けられて記憶されている。 (段落
」 【0
056】①,【0058】②)
15 「以降では,アクション適用エントリバッファに記憶されるデータを
アクション適用エントリリストと言い,アクション適用エントリリスト
内の各レコードのデータをアクション適用エントリデータと言う。図1
3に示すアクション適用エントリリスト内のメールメッセージ(宛先)
には,上述した通り,ステップS407又はステップS408で実行し
20 た中継(即時送出)処理又は保留処理の処理単位である電子メールが記
憶されている。」(段落【0057】①,【0059】②)
c ルール適用処理(S304)の詳細動作
「図4は,ステップS304の電
子メールのルール適用処理の詳細
処理を示すフローチャートである。
以下の動作は,メール中継装置15
5 0のCPU201が各種制御プロ
グラムを実行することにより実現
される。」(段落【0058】①,
【0060】②)
「ステップS401では,ルール
10 適用処理部152は,ステップS3
03で選択された制御ルールの「分
割評価」が「true」(真)か,
それとも「false」(偽)か, 【図4】①②
を判定する。すなわち,制御ルールの「分割評価」が「true」(真)
15 か否かを判定することにより,電子メールに設定された複数の宛先のそ
れぞれを単一の宛先としたエンベロープをそれぞれ生成するか否かを
判定する。」(段落【0059】①,【0061】②)
「そして,電子メールに設定された複数の宛先のそれぞれを単一の宛
先としたエンベロープをそれぞれ生成すると判定した場合(制御ルール
20 の「分割評価」が「true」(真)と設定されている場合)は(ステ
ップS401:YES),ステップS402に処理を移行する。一方,
電子メールに設定された複数の宛先のそれぞれを単一の宛先としたエ
ンベロープをそれぞれ生成しないと判定した場合(制御ルールの「分割
評価」が「false」(偽)と設定されている場合)は(ステップS
25 401:NO),ステップS403に処理を移行する。」(段落【00
60】①,【0062】②)
「ステップS402では,制御ルールの「分割評価」が「true」
(真)と設定されている場合,ルール適用処理部152は,ステップS
301で取得した電子メールのエンベロープに含まれる各宛先(受信者)
のそれぞれを単一の宛先としたエンベロープをそれぞれ生成する。(段
」
5 落【0061】①,【0063】②)
「図12は,電子メールの各宛先(受信者)のそれぞれを宛先とした
エンベロープの生成(ステップS402)を説明する図である。120
1は,ステップS301で取得した電子メールのデータを示している。」
(段落【0062】①,【0064】②)
【図12】①②
「図12の電子メールのデータ1201は,エンベロープ部の情報(エ
ンベロープとも言う)とヘッダ部の情報(ヘッダともいう)と本文とか
ら構成されることを示している。1201には,エンベロープ部の情報
15 とヘッダ部の情報と本文とを示したが,添付ファイルなどを含めてもよ
い。」(段落【0063】①,【0065】②)
「なお,”エンベロープ”は,メール送受信端末110のメールクラ
イアント等では通常表示はされないが,実際の電子メールの配送に使わ
れる送信元(発信者)の電子メールアドレスと送信先(受信者)の電子
メールアドレスとを含む情報である。」(段落【0064】①,【00
66】②)
5 「1201では,エンベロープに,送信元(発信者)の電子メールア
ドレスとして「X」が設定され,送信先(受信者)の電子メールアドレ
スとして,「A」,「B」,「C」が設定されている。」(段落【00
65】①,【0067】②)
「ステップS402では,このエンベロープに送信先(受信者) の電
10 子メールアドレスとして設定されている「A」,「B」,「C」のそれ
ぞれを単一の宛先とするエンベロープ情報をそれぞれ生成する。」(段
落【0066】①,【0068】②)
「すなわち,送信元(発信者)が「X」で送信先(受信者)が「A」
のエンベロープ情報1202と,送信元(発信者)が「X」で送信先(受
15 信者) 「B」
が のエンベロープ情報1203と,送信元(発信者) 「X」
が
で送信先(受信者) 「C」
が のエンベロープ情報1204とを生成する。」
(段落【0067】①,【0069】②)
「このように,ステップS402では,ステップS301で取得した
1通の電子メールのエンベロープ情報に複数の送信先の電子メールア
20 ドレスがある場合,その送信先の電子メールアドレスのそれぞれが単独
に送信先に設定されたエンベロープをそれぞれ生成し,複数の電子メー
ルの集合(エンベロープの集合)を生成する。なお,ステップS301
で取得した1通の電子メールのエンベロープの送信先の電子メールア
ドレスが1つのみの場合であっても,ステップS402では,その1つ
25 の電子メールアドレス(1つのエンベロープ)のみの電子メールの集合
(エンベロープの集合)を生成する。ルール適用処理部152は,ステ
ップS402でエンベロープを生成すると,処理をステップS404に
移行する。」(段落【0068】①,【0070】②)
「ステップS403では,電子メールに設定された各宛先のそれぞれ
を単一の宛先としたエンベロープをそれぞれ生成しないと判定し,ステ
5 ップS301で受信した1つの電子メール(1つのエンベロープ)から
なる電子メールの集合を生成する。つまり,ステップS403の処理は,
これ以降の各処理に対してステップS402の結果と同様に処理でき
るようにするための処理である。」(段落【0069】①,【0071】
②)
10 「ステップS404では,ルール適用処理部152は,未適用メール
を蓄積するための未適用メール用バッファを初期化する。そして,ルー
ル適用処理部152は,ステップS402又はステップS403で生成
されたエンベロープ(電子メール)の集合の中から,1つのエンベロー
プを取得してステップS405へ進む。なお,ステップS404~ステ
15 ップS410の処理は,メール集合の要素毎に繰り返し実行される。」
(段落【0070】①,【0072】②)
「ステップS405では,ルール適用処理部152は,ステップS3
03で選択された制御ルールの条件定義部の条件とステップS404
で取得したエンベローブを含む電子メールのデータとを照合し,該条件
20 定義部の条件に合致するかどうかを判定する。なお,ここでは,制御ル
ールの「条件定義部」に設定された「発信者(送信元)」,「受信者(宛
先)」,「その他条件」に示す条件を全て満たすか否かを判定する。」
(段落【0071】①,【0073】②)
「そして,ルール適用処理部152は,ステップS405で合致する
25 と判定された場合(ステップS405:YES) ,ステップS406に
処理を移行し,合致しないと判定された場合は(ステップS405:N
O),ステップS409に処理を移行する。」(段落【0072】①,
【0074】②)
「ステップS406では,ルール適用処理部152は,制御ルールを
参照し,合致した条件定義部の条件に対応した「アクション」の値が「中
5 継」か,それとも「保留」か,を判定する。ステップS406で,「ア
クション」の値が「中継」と判定した場合は(ステップS406 中継) ,
:
ステップS407に処理を移行し,一方,「アクション」の値が「保留」
と判定した場合は(ステップS406:保留),ステップS408に処
理を移行する。」(段落【0073】①,【0075】②)
10 「ステップS407では,ルール適用処理部152は,ステップS4
04で取得したエンベローブの情報を含む電子メールのデータ(ヘッダ
や本文など)と,電子メールの送出予定日時が即時であることを示す情
報と,ステップS405で判定した制御ルールのIDとをアクション適
用エントリバッファ内のアクション適用エントリリストに記憶する。」
15 (段落【0074】①,【0076】②)
「具体的には,アクション適用エントリリストの「メールメッセージ
(宛先)」にステップS404で取得したエンベローブの情報を含む電
子メールのデータが記憶され,アクション適用エントリリストの「送出
予定日時」に,電子メールの送出予定日時が即時であることを示す情報
20 (図13の例では「即時」)が記憶され,アクション適用エントリリス
トの「適用ルールID」には,ステップS405で用いた制御ルールの
ID(図13の例では「3」)が記憶される。」(段落【0075】①,
【0077】②)
「ステップS408では,ルール適用処理部152は,まず,ステッ
25 プS406でアクション」の値が「保留」と判定された制御ルールの「遅
延時間」を制御ルールリスト(図5)から取得する。そして,ステップ
S301で電子メールを受信した「受信日時」と,ここで取得した「遅
延時間」とから「送出予定時間」を算出する。例えば,受信日時が「2
008年10月01日12時40分10秒」で,遅延時間が「10分」
の場合は,その和を算出し「送出予定時間」を「2008年10月01
5 日12時50分10秒」とする。」(段落【0076】①,【0078】
②)
「そして,ルール適用処理部152は,ステップS404で取得した
エンベローブの情報を含む電子メールのデータと,ここで算出された送
出予定時間と,ステップS405で判定した制御ルールのIDとをアク
10 ション適用エントリバッファ内のアクション適用エントリリストに記
憶する。」(段落【0077】①,【0079】②)
「具体的には,ステップS407の中継処理と同様に,図13に示す
アクション適用エントリリストの「メールメッセージ(宛先)」にステ
ップS404で取得したエンベローブの情報を含む電子メールのデー
15 タが記憶され,アクション適用エントリリストの「送出予定日時」に,
算出された送出予定時間(図13の例では,「2008/10/1 1
2:50:10」)が記憶され,「適用ルールID」にステップS40
5で判定した制御ルールのID(図13の例では「21」)が記憶され
る。」(段落【0078】①,【0080】②)
20 「なお,ステップS406で「アクション」の値が「保留」と判定さ
れた制御ルールの「遅延時間」に値が設定されていない場合,これは無
期限に保留することを示しているので,この場合は,アクション適用エ
ントリリストの「送出予定日時」に期限が無いことを示す情報が記憶さ
れる(図13の例では「期限なし」が記憶される)。」(段落【007
25 9】①,【0081】②)
「ステップS409では,ステップS404で取得したエンベローブ
を含む電子メールのデータを,ステップS404で初期化された未適用
メール用バッファに記憶する。」(段落【0080】①,【0082】
②)
「ステップS411では,ルール適用処理部152は,未適用メール
5 用バッファの中に電子メールのデータがあるか否かを判定する。そして,
未適用メール用バッファの中に電子メールのデータがあると判定され
た場合は(ステップS411:YES),未適用メール用バッファに記
憶された1又は複数のエンベロープの送信先の電子メールアドレス全
てを1つのエンベロープの送信先に設定した電子メールを生成する。こ
10 れはステップS402で実行した処理の逆の処理に相当する。一方,未
適用メール用バッファの中に電子メールのデータが無いと判定された
場合は(ステップS411:NO) ,処理をステップS305に移行す
る」(段落【0081】①,【0083】②)
d アクション実行処理(S308)の詳細動作
15 「図14は,ステップS308の電子メールへのアクション実行処理
の詳細処理を示すフローチャートである。以下の動作は,メール中継装
置150のCPU201が各種制御プログラムを実行することにより
実現される。」(段落【0082】①,【0084】②)
「ステップS1401では,
ルール適用処理部152 は,
同報者向けメッセージバッフ
ァを初期化し,記憶されている
5 データをクリアする。」(段落
【0083】①,【0085】
②)
「ステップS1402では,
ルール適用処理部152は,ア
10 クション適用エントリリスト
内の各アクション適用エント
リデータを送出予定日時の遅
い順にソート(並び替え)する。
このソート処理により,アクシ
15 ョン適用エントリデータは,上 【図14】①②
位のレコードから,アクションが保留で遅延時間が指定されていない
(無期限に保留される)電子メール,遅延時間が長い電子メール(所定
時間よりも遅延時間が長い電子メール) 遅延時間が短い電子メール
, (所
定時間よりも遅延時間が短い電子メール),アクションが中継(送出)
20 の電子メール(送出予定日時が即時である電子メール)という順に並べ
られる。ソート(整列)されたアクション適用エントリリスト内のアク
ション適用エントリデータ全てを実行するまで,後述するステップS1
403からステップS1412までの繰り返し処理を実行する。」(段
落【0084】①,【0086】②)
25 「ステップS1404では,ルール適用処理部152は,ソートされ
たアクション適用エントリリストの先頭から(送出予定日時の遅いアク
ション適用エントリデータから)アクション適用エントリデータを取得
する。」(段落【0085】①,【0087】②)
「ステップS1405では,ルール適用処理部152は,取得したア
クション適用エントリデータのメールメッセージに記憶されている電
5 子メールのヘッダに,同報者向けメッセージバッファに記憶されたデー
タ(保留制御に関する情報)を挿入する。そして,データ(保留制御に
関する情報)が挿入された電子メールを,ステップS1404で取得し
たアクション適用エントリデータのメールメッセージ(宛先)に記憶す
る。なお,同報者向けメッセージバッファに該データが記憶されていな
10 い場合は,電子メールのヘッダに該データを挿入しない。」(段落【0
086】①,【0088】②)
「ここで,「保留制御に関する情報」とは,「保留された電子メール
の送信者(発信者)名」又は「保留された電子メールの送信元の電子メ
ールアドレス」,ステップS301で電子メールを取得した「日時(受
15 信日時)」,「送出予定日時」,誰宛の電子メールが保留されたのかを
示す「送信状況」,通知先(宛先)又は同報者の権限情報に対応した管
理画面へのリンク先(URLなど)を示す「リンク情報」などのそれぞ
れの情報を指す。なお,管理画面の詳細については図10を参照して後
述する。」(段落【0087】①,【0089】②)
20 「ステップS1406では,ルール適用処理部152は,ステップS
1404で取得したアクション適用エントリデータの送出予定日時が
「即時」(中継)であるか否かを判定する。即ち,取得したアクション
適用エントリデータが保留する電子メールであるか否かを判定する。そ
して,保留する電子メールではないと判定された場合は(ステップS1
25 406:NO),メール送信処理部153は,ステップS1405で記
憶されたアクション適用エントリデータ内の,データ(保留制御に関す
る情報)が挿入された電子メールの送出を直ちに実行する(ステップS
1413)。一方,保留する電子メールと判定された場合は(ステップ
S1406:YES),ステップS1407に進む。」(段落【008
8】①,【0090】②)
5 (2) 本件発明1の内容
本件特許1の特許請求の範囲及び本件明細書等1の記載によれば,請求項1
に係る本件発明1-1は,①端末装置から受信した電子メールの送出を制御す
る情報処理装置の発明であって,②乙15公報など従来技術では,送信メール
保留装置が受信したメッセージ単位でしか保留の可否を判断できないために,
10 複数の送信先が記載された電子メールに誤送信の可能性がある送信先が1つ
でも含まれていると,その他の送信先に対するメール送信までもが保留された
り取り消されたりするという課題を解決するため,③受信した電子メールに設
定された複数の送信先を個々の送信先に分割し,電子メールの送出に係る制御
内容を示す送出制御情報を電子メールの送信元と送信先とに対応付けた制御
15 ルールと,分割した送信先と送信元とに従って,当該分割された送信先に対す
る電子メールの送出制御を行うことにより,④ユーザによる電子メールの誤送
信を低減可能とするとともに,宛先に応じた電子メールの送出制御を行うこと
により効率よく電子メールを送出させることを目的とする発明であると認め
られる。
20 (3) 本件発明2の内容
本件特許2の特許請求の範囲及び本件明細書等2の記載によれば,請求項1
に係る本件発明2-1は,①電子メールに対する送信制御を行う情報処理装置
の発明であって,②乙15公報など従来技術では,送信メール保留装置が受信
したメッセージ単位でしか保留の可否を判断できないために,複数の送信先が
25 記載された電子メールに誤送信の可能性がある送信先が1つでも含まれてい
ると,その他の送信先に対するメール送信までもが保留されたり取り消された
りするという課題を解決するため,③複数の送信先が設定された電子メールか
ら,前記複数の送信先が個別に設定された複数の個別メールを生成し,電子メ
ールの送出又は保留を示す送信制御内容と該送信制御内容を適用する条件と
のペアを1以上含む制御ルールに従って,複数の個別メールの各々に対する送
5 信制御を行うとともに,いずれの個別メールについて保留されることが決定さ
れたのかを認識可能とするために,その旨を電子メールの送信元に通知するこ
とにより,④複数の送信先が設定された電子メールを送信先毎に分けて送信制
御を行うとともに,当該電子メールの送信元が,いずれの個別メールが保留さ
れると決定されたかを認識可能にすることを目的とする発明であると認めら
10 れる。
2 争点1-1(被告装置等の構成要件11D等の充足性)について
当裁判所は,以下のとおり,構成要件11D等における「送信先」は「電子メ
ールアドレス」のみを指し,「ドメイン」を含まないから,被告装置等の構成1
1d等は構成要件11D等を充足しないと判断する。
15 (1) 「送信先」の解釈について
ア 特許請求の範囲の記載
構成要件11Dは「前記受信手段で受信した電子メールに設定された複数
の送信先を個々の送信先に分割する分割手段と, ,
」 構成要件110Cは「前
記受信工程で受信した電子メールに設定された複数の送信先を個々の送信
20 先に分割する分割工程と,」,構成要件111Eは「前記受信手段で受信し
た電子メールに設定された複数の送信先を個々の送信先に分割する分割手
段,」というものである。
そして,特許請求の範囲の記載全体についてみると,本件発明1-1,1
-10及び1-11においては,「電子メールの送出に係る制御内容を示す
25 送出制御情報を,前記電子メールの送信元と送信先とに対応付けた制御ルー
ル」(構成要件11B,110A,111C),「複数の送信先が設定され
た電子メールを前記端末装置から受信する」(構成要件11C,110B,
111D),「受信した電子メールに設定された複数の送信先を個々の送信
先に分割する」(構成要件11D,110C,111E),「当該分割され
た送信先に対する電子メールの送出に係る制御内容を決定する」(構成要件
5 11E,110D,111F),「当該分割された送信先に対する前記電子
メールの送信制御を行う」(構成要件11F,110E,111G)等の記
載がある。
証拠(甲23,乙4,5)及び弁論の全趣旨によれば,①インターネット
におけるドメインとは,インターネット上のコンピュータの所属(住所)を
10 示すもので数字の羅列からなるIPアドレスをアルファベット等を用いて
わかりやすく表記したものであること,②電子メールの仕組みは,固有の電
子メールアドレスを有する送信者が作成した電子メールを送信用メールサ
ーバ(smtpサーバ)に送信し,これを同サーバが受信側のメールサーバ
(popサーバ等)に転送し,受信者が同サーバに届いた電子メールを確認
15 することによりこれを受信するものであって,送信者と受信者がエンドツー
エンドでメッセージを交換するものであること(段落【0002】①②参照),
③電子メールアドレスとは,インターネット上の電子メールの送受信の宛先
を意味するものであることが認められる。
そして,電子メールアドレスが,右の図(乙
20 10・【図3】)に記載されているように,
「@」を挟み,左側のユーザ名と右側のドメ
イン名で構成されていることについて当事者
間に争いはないところ,ユーザ名は,特定の
ドメイン名を有するメールサーバに存在する多数のメールボックスのうち,
25 当該ユーザが使用するメールボックスを特定するものであるということが
できる。
特許請求の範囲にいう「送信先」が電子メールアドレスを意味するか,ド
メインを含むのかは,上記の記載に照らし,その文言上一義的に明らかであ
るということはできない。しかし,送信先の「先」とは「行き着く目的地」
を意味し(乙3),上記のとおり,電子メールは送信者と受信者がエンドツ
5 ーエンドでメッセージを交換するものであって,ドメインを特定するのみで
は電子メールは受信者に届かず,ユーザ名と右側のドメイン名で構成されて
いる電子メールアドレスを特定して初めて受信者は電子メールを受信でき
ることに照らすと,本件発明1-1における「送信先」とは,電子メールの
送信先である電子メールアドレスを指すと解するのが自然である。
10 イ 本件明細書等1の記載
(ア) 続いて,本件明細書等1の記載(段落【0058】~【0068】)を
参酌すると,同明細書等には,電子メールに設定された複数の送信先を
個々の送信先に分割する構成(構成要件11D等)に関して,「制御ルー
ルの「分割評価」が「true」(真)か否かを判定することにより,電
15 子メールに設定された複数の宛先のそれぞれを単一の宛先としたエンベ
ロープをそれぞれ生成するか否かを判定する。」(段落【0059】),
「制御ルールの「分割評価」が「true」(真)と設定されている場合,
…取得した電子メールのエンベロープに含まれる各宛先(受信者)のそれ
ぞれを単一の宛先としたエンベロープをそれぞれ生成する。」(段落【0
20 061】),「取得した1通の電子メールのエンベロープ情報に複数の送
信先の電子メールアドレスがある場合,その送信先の電子メールアドレス
のそれぞれが単独に送信先に設定されたエンベロープをそれぞれ生成し,
複数の電子メールの集合(エンベロープの集合)を生成する。」(段落【0
068】)などの記載がある。
25 また,「電子メールの各宛先(受信者)のそれぞれを宛先としたエンベ
ロープの生成…を説明する図」(段落【0062】)である【図12】に
は,エンベロープに,送信元(発信者)の電子メールアドレスとして「X」
が設定され,送信先(受信者)の電子メールアドレスとして,
「A」「B」
, ,
「C」が設定されている例において,このエンベロープに送信先(受信者)
の電子メールアドレスとして設定されている「A」,「B」,「C」のそ
5 れぞれを単一の宛先とするエンベロープ情報をそれぞれ生成することが
図示されている(段落【0065】,【0066】)。
このように,本件明細書等1には,電子メールに複数の送信先の電子メ
ールアドレスがある場合,これを送信先の電子メールアドレスごとに分割
し,送信先の電子メールアドレスのそれぞれが単独に送信先に設定された
10 エンベロープを生成することが記載されており,ドメインごとに分割する
構成を示唆する記載は存在しない。
【図12】①②
(イ) 次に,本件発明1の課題及び作用効果についてみるに,本件明細書等1
15 には,「特許文献1に記載の技術においては,送信メール保留装置は受信
したメッセージ単位でしか保留の可否を判断することができない。そのた
め,複数の送信先が記載された電子メールに対しては,誤送信の可能性が
ある送信先が1つでも含まれていれば,その他の送信先に対するメール送
信までもが保留,取り消しがされることとなる。」(段落【0004】),
「本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり,ユーザによる電子メ
ールの誤送信を低減可能とすると共に,宛先に応じた電子メールの送出制
5 御を行うことにより効率よく電子メールを送出させる仕組みを提供する
ことを目的とする。」(段落【0005】)との記載がある。
このように,本件発明1は,「誤送信の可能性がある送信先が1つでも
含まれていれば,その他の送信先に対するメール送信までもが保留,取り
消しがされることとなる」という問題点の解決を図るものであるところ,
10 同課題は,複数の送信先を電子メールアドレスごとに分割し,それぞれの
電子メールアドレスについて保留,取消しをするかどうかの判断をし,そ
れに従った制御を行うことにより解決されることは明らかである。
これに対し,送信先をドメインごとに分割する構成とすると,例えば,
送信先の電子メールアドレスが①(ユーザ名は省略)@yahoo.com,②(ユ
15 ーザ名は省略)@yahoo.com,③(ユーザ名は省略)@yahoo.com,④(ユー
ザ名は省略)@yahoo.com,⑤(ユーザ名は省略)@gmail.comであり,②の
み送信を保留すべき場合,電子メールは,そのドメインごとに①~④と⑤
の2つに分割され,⑤は送信されるものの,送信を保留する必要のない①,
③,④が保留されるという結果となる。そうすると,送信先をドメインご
20 とに分割する構成の場合には,電子メールの送出が一部効率化されるもの
の,「誤送信の可能性がある送信先が1つでも含まれていれば,その他の
送信先に対するメール送信までもが保留,取り消しがされることとなる」
という問題点は解消し得ないことになる。
本件発明1がその問題点を解決し得ない構成を含むとは考え難く,これ
25 に前記判示の特許請求の範囲の記載及び送信先の分割に関する本件明細
書等1の記載(上記(ア))も考え併せると,構成要件11D等の「電子メー
ルに設定された複数の送信先を個々の送信先に分割する」とは,電子メー
ルに設定された複数の送信先を電子メールアドレスごとに分割すること
を意味すると解するのが相当である。
(ウ) さらに,本件明細書等1の「メール中継装置の動作」の項における【図
5 5】(制御ルールのリストの一例)に関し,「「条件定義部」は,「発信
者(送信元)」,「受信者(宛先)」,「その他条件」から構成され…「発
信者(送信元)」には,…電子メールの送信元の電子メールアドレス(発
信者情報)が設定され…「受信者(宛先)」には,…電子メールの宛先(T
o,Cc,Bcc)の電子メールアドレス(受信者情報) が設定されてい
10 る」(段落【0040】),「「発信者(送信元)」,「受信者(宛先)」
には,それぞれ電子メールアドレスを複数設定することができ,アスタリ
スクなどのメタ文字(ワイルドカード)を使うことによって任意の文字列
を表すこともできる」(段落【0041】)として,制御ルールが,「発
信者(送信元)」の電子メールアドレスと,「受信者(宛先)」すなわち
15 送信先の電子メールアドレスとに対応付けられること(構成要件11B参
照)が明記されている。
また,本件明細書等1の段落【0054】~【0057】には,電子メ
ールの中継(送出)又は保留といった送信制御(構成要件11F等)に関
し,アクション適用エントリバッファにステップS407又はS408で
20 実行した中継又は保留の処理単位である電子メールのデータ(メールメッ
セージ(宛先))ごとのデータが記憶され,これに基づきステップS30
8においてメールの送出処理又は保留処理を行うことが記載され,上記の
記 憶 さ れ る デ ー タ の 例 示 で あ る 【 図 1 3 】 に は 「 xx@zzz.co.jp 」 ,
「yy@zzz.co.jp」及び「ss@zzz.co.jp」という@以下が同一の電子メール
25 アドレスが記載され,これらの電子メールごとにそれぞれ処理がされるこ
とが示されている。
加えて,「動作シナリオ」の項においても,「制御ルールZのメール適
用処理ステップS304において,まずステップS402でエンベロープ
受信者アドレスがB,Cであった電子メールが,エンベロープ受信者Bの
電子メールとエンベロープ受信者Cの電子メールに分割される」
(段落【0
5 131】)と記載されている。
このように,本件明細書等1における送信先の分割に関する記載以外の
部分(例えば,制御ルールの設定,電子メールの送信制御,一連の動作シ
ナリオ等)においても,一貫して「送信先」が電子メールアドレスである
ことを前提とする記載がなされている一方,「送信先」にドメインを含む
10 ことを示唆する記載は存在しないことからすると,本件発明1における
「送信先」は,電子メールの宛先である電子メールアドレスを意味し,ド
メインを含まないものというべきである。
ウ 原告の主張について
(ア) 原告は,制御ルールのリストの例示である【図5】の「条件定義部」の
15 「受信者」欄に,「*@zzz.co.jp」が定められており,これはドメインを表
すものであるから,「送信先」には電子メールアドレスのみならず,ドメ
インを含むと主張する。
しかし,前記のとおり,本件明細書等1には,制御ルールに関し,「「条
件定義部」は,「発信者(送信元)」,「受信者(宛先)」,「その他条
20 件」から構成される。…「受信者(宛先)」には,メール送受信端末11
0から取得する電子メールの宛先(To,Cc,Bcc)の電子メールア
ドレス(受信者情報) が設定されている」(段落【0040】),「「発
信者(送信元)」,「受信者(宛先)」には,それぞれ電子メールアドレ
スを複数設定することができ,アスタリスクなどのメタ文字(ワイルドカ
25 ード)を使うことによって任意の文字列を表すこともできる」(段落【0
041】 と記載されており,
) これらの記載によれば, 「*@zzz.co.jp」
上記
は,ドメインを意味するのではなく,「*」に任意の文字列を含み,ドメイ
ン名を「zzz.co.jp」とする複数の電子メールアドレスを意味するという
べきである。
原告は,「*@zzz.co.jp」がドメインを意味することは,複数の特許文献
5 (甲24,30~32,乙15)などの記載からも裏付けられると主張す
るが,特許請求の範囲や発明の詳細な説明において使用される言葉の意義
は各発明により異なることから,構成要件11D等の「送信先」の意義は
本件特許に係る特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載に基づいて
解釈されるべきである。本件明細書等1の「*@zzz.co.jp」がドメインを意
10 味すると解し得ないことは上記判示のとおりであり,原告の挙げる他の文
献等の記載は上記結論を左右するものではない。
(イ) 原告は,本件明細書等の段落【0061】及び【図4】のステップS4
02には,「受信者」の「宛先」単位で電子メールの分割をすることを記
載しているが「受信者」の「宛先」にはドメインも含まれると主張する。
15 しかし,段落【0061】には「各宛先(受信者)のそれぞれを単一の
宛先としたエンベロープをそれぞれ生成する」と記載されているところ,
同エンベロープの生成を説明する【図12】には,送信先(受信者) の電
子メールアドレスとして設定されている「A」,「B」,「C」のそれぞ
れを単一の宛先とするエンベロープ情報をそれぞれ生成することが図示
20 されているのであるから,同段落の「各宛先(受信者)」とは電子メール
アドレスを意味するというべきである。
(ウ) 原告は,本件明細書等1の段落【0003】に記載の従来技術である乙
15公報における「宛先」には「電子メールアドレス」又は「ドメイン」
であることが記載されており,本件発明1において分割する単位をドメイ
25 ンとしてもこの従来技術の課題を解決することができると主張する。
そこで,乙15公報をみるに,その段落【0032】には,【図2】の
「項目203,205にあっては,アカウントを*として,ドメインのみ
を指定するとした設定も可能である」と記載されているが,ここにいう項
目203は送信メールの一時保留機能を利用する場合であって,一時保留
せずに,即配信したいメールアドレスの即配信リストを設定する項目であ
5 り,同図の項目205は,全ての送信保留中メールを本人(送信者)に配
送する場合であって,配送を希望しない送信保留中メールを本人(送信者)
に送信しないメールアドレスの送信不要リストを設定する項目である(段
落【0030】)。
10 【図2】
このように,項目203及び同205は即配信又は送信不要リストを設
定するためのものであるから,段落【0032】の趣旨は,一時保留せず
に即配信したいメールアドレスの即配信リスト(項目203)や,送信保
留中メールを本人(送信者)に送信しないメールアドレスの送信不要リス
15 ト(項目205)に,任意のドメイン名を有する複数のメールアドレスを
一括して設定することも可能であることを述べたものにすぎず,電子メー
ルの「宛先」にドメインが含まれることを示すものということはできない。
そうすると,同段落の記載をもって従来技術である乙15公報における
「宛先」に「ドメイン」が含まれると解することはできないので,原告の
上記主張は前提において採用し得ないというべきである。
(エ) 原告は,電子メールをドメイン単位で分割する場合でも本件発明1の課
題を解決し得ると主張する。
5 しかし,電子メールをドメイン単位で分割するとなると,同一ドメイン
の複数の電子メールのうち,一つのみの送出を保留すべきような場合に上
記課題を解決し得ないことは,前記判示のとおりである。
原告は,本件発明1はいかなる場合でも電子メールの送出制御を効率的
に行うことを課題と設定しているのではないと主張するが,本件発明1が
10 その課題を解決し得ない構成を含むとは考え難く,特許請求の範囲及び本
件明細書等1の記載に照らしても,「送信先」にドメインを含むとは解し
得ないことも,前記判示のとおりである。
エ 以上のとおり,構成要件11D等における「送信先」は「電子メールアド
レス」のみを指し,「ドメイン」を含まないと解することが相当である。
15 (2) 被告装置等との対比
構成要件11D等における「送信先」は,「電子メールアドレス」のみを指
し,「ドメイン」を含まないところ,構成11d等は,「受信部で受信した複
数の宛先の電子メールアドレスが設定された電子メールを,宛先のドメイン毎
の電子メールに分割する」ものであるから,被告装置等は構成要件11D等を
20 充足しない。
3 争点1-2(均等侵害の成否)について
(1) 特許請求の範囲に記載された構成に,相手方が製造等をする製品又は用いる
方法(対象製品等)と異なる部分が存する場合であっても,①当該部分が特許
発明の本質的部分ではなく(第1要件),②当該部分を対象製品等におけるも
25 のと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏
するものであって(第2要件),③そのように置き換えることに,当業者が,
対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり
(第3要件),④対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同
一又は当業者が当該出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件),か
つ,⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識
5 的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき(第5要件)は,当
該対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許
発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)
第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁,
最高裁平成28年(受)第1242号同29年3月24日第二小法廷判決・民
10 集71巻3号359頁参照)。
(2) 本件発明1と被告装置等との相違点は,本件発明1では,複数の送信先が設
定された電子メールを電子メールアドレスごとに分割するのに対し,被告装置
等では,ドメインごとに分割する点にあるところ,原告は,被告装置等の上記
構成は本件発明1の構成と均等なものとして,本件発明1の技術的範囲に属す
15 ると主張する。
この点について,当裁判所は,以下のとおり,被告装置等が均等の第1要件
を充足しないから,その余の点につき判断するまでもなく,原告の均等侵害の
主張は理由がないと判断する。
ア 特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載,特に明細書
20 記載の従来技術との比較から認定されるべきであるところ(知財高裁平成2
7年(ネ)第10014号同28年3月25日判決) 本件明細書等1には,
,
従来技術の「複数の送信先が記載された電子メールに対しては,誤送信の可
能性がある送信先が1つでも含まれていれば,その他の送信先に対するメー
ル送信までもが保留,取り消しがされることとなる」(段落【0004】)
25 という課題を解決するため,電子メールに設定された複数の送信先を個々の
送信先に分割し,記憶手段に記憶されている制御ルール等に従って,電子メ
ールの送出に係る制御内容を決定し,決定された制御内容に従って電子メー
ルの送信制御を行うなどの構成を備えることにより,「ユーザによる電子メ
ールの誤送信を低減可能とすると共に,宛先に応じた電子メールの送出制御
を行うことにより効率よく電子メールを送出させることができる」
(段落【0
5 008】)などの効果を奏するものである。
イ 原告は,本件特許1の特許メモ(乙9)などを根拠に,本件発明1の本質
的部分は,「送出制御内容を,電子メールの送信元と送信先とに対応付けた
制御ルールと,分割された電子メールの送信先と送信元とに従って,分割さ
れた送信先に対する電子メールの送出に係る制御内容を決定すること」(構
10 成要件11E)にあると主張する。
しかし,本件発明1の従来技術として挙げられているのは乙15公報であ
り,本件明細書等1に記載されている課題は「複数の送信先が記載された電
子メールに対しては,誤送信の可能性がある送信先が1つでも含まれていれ
ば,その他の送信先に対するメール送信までもが保留,取り消しがされるこ
15 ととなる」というものであるところ,同課題を解決するためには,電子メー
ルに設定された複数の送信先を電子メールアドレスごとに分割した上で,制
御ルールを適用することが不可欠である。そうすると,構成要件11D等に
係る構成は本件発明1の本質的部分というべきである。
原告は,特許メモ(乙9)の記載を根拠とするが,同メモには,本件特許
20 の出願時の複数の公知文献に本件発明1に係る構成が記載されているかど
うかが記載されているにすぎず,本件発明1の従来技術として挙げられた乙
15公報との対比がされているものではなく,また,本件発明1の本質的部
分の所在を検討するものでもないので,同メモに基づいて,本件発明1の本
質的部分が構成要件11Eに係る構成にあるということはできない。
25 ウ したがって,被告装置は第1要件を充足せず,同様の理由により,被告方
法及び被告製品も第1要件を充足しない。
4 争点1-3(本件発明1-1~1-10につき,間接侵害の成否)について
被告装置は本件発明1-1~1-9の技術的範囲に属しないから,被告製品は
1号の「その物の生産にのみ用いる物」及び2号の「その物の生産に用いる物」
のいずれにも当たらない。
5 また,被告方法は本件発明1-10の技術的範囲に属しないから,被告製品は
4号の「その方法の使用にのみ用いる物」及び5号の「その方法の使用に用いる
物」のいずれにも当たらない。
したがって,原告の間接侵害の主張は,全て理由がない。
5 争点2-1(被告装置等の構成要件21C等の充足性)について
10 当裁判所は,以下のとおり,構成要件21C等における「送信先」についても
「電子メールアドレス」のみを指し「ドメイン」を含まないので,被告装置等の
構成21c等は構成要件21C等を充足しないと判断する。
(1) 送信先の解釈について
ア 特許請求の範囲の記載
15 構成要件21Cは「複数の送信先が設定された電子メールから,前記複数
の送信先が個別に設定された複数の個別メールを生成する個別メール生成
手段と,」,構成要件24Cは「個別メール生成手段が,複数の送信先が設
定された電子メールから,前記複数の送信先が個別に設定された複数の個別
メールを生成する個別メール生成工程と,」,構成要件25Cは「複数の送
20 信先が設定された電子メールから,前記複数の送信先が個別に設定された複
数の個別メールを生成する個別メール生成手段,」というものである。
構成要件21C等前段の「複数の送信先が設定された電子メールから,」
にいう「送信先」は,前記のとおり,「送信先」が電子メールの宛先を意味
し,送信者と受信者がエンドツーエンドでメッセージを交換するものである
25 などの電子メールの前記仕組みに鑑みると,電子メールアドレスを意味する
と解すべきであるところ,同構成要件後段の「前記複数の送信先が個別に設
定された複数の個別メール」の「送信先」は前段の「送信先」と同義である
ことは明らかである。そうすると,同構成要件の「送信先」はいずれも電子
メールアドレスを意味すると解するのが相当である。
また,同構成要件の「個別」とは「一つずつ別に」との意味を有すること
5 (広辞苑第6版。甲9)も考え併せると,複数の送信先が設定された電子メ
ールについて,複数の送信先が一つずつ別に設定された複数の個別メールを
生成(分割)した後,当該生成された一つずつ別のメールの送出(送信)に
関する制御が行われるものと解するのが自然である。
イ 本件明細書等2の記載
10 本件特許2は本件特許1の孫出願であるところ(乙2),本件明細書等2
の「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」欄には,本件明細書等
1と同内容の記載があり(段落【0002】②~【0005】②),本件特
許1及び2は「複数の送信先が記載された電子メールに対しては,誤送信の
可能性がある送信先が1つでも含まれていれば,その他の送信先に対するメ
15 ール送信までもが保留,取り消しがされることとなる。」との課題を共有し
ている。そして,本件明細書等2の実施例に関する記載(段落【0011】
②~【0149】②,【図1】②~【図14】②)は本件明細書等1のもの
と同一である(甲2,4)。
そうすると,本件発明1と同様,本件発明2における「送信先」も「電子
20 メールアドレス」を意味し,ドメインを含まないものと認めるのが相当であ
る。
ウ 原告の主張について
(ア) 原告は,ドメインごとに送信先を分割する場合であっても,複数の送信
先であるドメインが一つずつ別に設定された複数の個別メールが生成さ
25 れることになるから,「前記複数の送信先が個別に設定された複数の個別
メールを生成する」に該当するということができると主張する。
しかし,構成要件21C等の「個別に」とは,その通常の意味に照らす
と「一つずつ別に」との意味を有すべきことは前記判示のとおりであり,
複数の送信先をドメイン単位で分割し,各単位が複数の電子メールを包含
する態様が「個別に」に当たると解することはできない。
5 また,送信先をドメインごとに分割する構成の場合には,「誤送信の可
能性がある送信先が1つでも含まれていれば,その他の送信先に対するメ
ール送信までもが保留,取り消しがされることとなる」という問題点は解
消し得ないことになるのであり,本件発明2がその問題点を解決し得ない
構成を含むとは考え難いことも,前記判示のとおりである。
10 (イ) 原告は,仮に構成要件21C等前段及び後段の「送信先」が同義である
としても,電子メールアドレスはドメインを包含するので,被告装置等の
構成21c等は構成要件21C等を充足すると主張するが,前記2(1)ア
記載のとおり,ドメインと電子メールアドレスは異なる技術的意義を有す
るものであり,電子メールアドレスがドメインを包含するということはで
15 きない。
(ウ) 以上のとおり,構成要件21C等の「前記複数の送信先が個別に設定さ
れた複数の個別メールを生成する」とは,複数の電子メールアドレスの一
つずつをそれぞれ宛先に設定した電子メールを生成することを意味する
というべきであり,原告の上記主張はいずれも採用し得ない。
20 (2) 被告装置等との対比
構成要件21C等における「送信先」は,「電子メールアドレス」のみを指
し,「ドメイン」を含まないところ,構成21c等は,「複数の宛先の電子メ
ールアドレスが設定された電子メールを,宛先のドメイン毎に分割して宛先の
ドメイン毎の電子メールを生成する」ものであるから,被告装置等は構成要件
25 21C等を充足しない。
6 争点2-2(本件発明2に係る均等侵害の成否)について
本件発明2-1と被告装置との相違点は,本件発明2-1では,個別メール生
成手段において生成する電子メールの送信先の単位を電子メールアドレスとし,
決定手段において電子メールアドレス単位で電子メールの制御内容を決定する
のに対し,被告装置では,個別メール生成手段において生成する電子メールの送
5 信先の単位をドメイン単位とし,決定手段においてドメイン単位で電子メールの
制御内容を決定する点にあるところ,原告は,被告装置の上記構成は本件発明2
-1の構成と均等なものとして,その技術的範囲に属すると主張する。
しかし,前記3と同様の理由から,複数の送信先が設定された電子メールから
電子メールアドレス単位で個別メールを生成することは,本件発明2-1の課題
10 解決に不可欠な構成であり,本件発明2-1の本質的部分に当たるというべきで
ある。
したがって,被告装置は第1要件を充足せず,同様の理由により,被告方法及
び被告製品も第1要件を充足しないから,その余の点につき判断するまでもなく,
原告の本件発明2に係る均等侵害の主張は理由がない。
15 7 争点2-3(本件発明2-1~2-4につき,間接侵害の成否)について
被告装置は本件発明2-1~2-3の技術的範囲に属しないから,被告製品は
1号の「その物の生産にのみ用いる物」及び2号の「その物の生産に用いる物」
のいずれにも当たらない。
また,被告方法は本件発明2-4の技術的範囲に属しないから,被告製品は4
20 号の「その方法の使用にのみ用いる物」及び5号の「その方法の使用に用いる物」
のいずれにも当たらない。
したがって,原告の間接侵害の主張は,全て理由がない。
8 結論
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれ
25 も理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
佐 藤 達 文
裁判官
三 井 大 有
裁判官
今 野 智 紀
別紙1
物件目録
被告製品:以下のいずれかの型番のソフトウェア(ただし,「m-FILTER A
5 rchive」を含み「m-FILTER Anti-Spam」及び「m-FILTE
R MailFilter」を含まない製品と,「m-FILTER Anti-Spa
m」を含み「m-FILTER Archive」及び「m-FILTER MailF
ilter」を含まない製品は除く。)。
1 「m-FILTER」Ver.4.30R01
10 2 「m-FILTER」Ver.4.30R02
3 「m-FILTER」Ver.4.40R01
4 「m-FILTER」Ver.4.40R02
5 「m-FILTER」Ver.4.40R03
6 「m-FILTER」Ver.4.50R01
15 7 「m-FILTER」Ver.4.60R01
8 「m-FILTER」Ver.4.70R01
9 「m-FILTER」Ver.4.70R02
10 「m-FILTER」Ver.4.70R03
11 「m-FILTER」Ver.4.80R01
20 12 「m-FILTER」Ver.4.81R01
13 「m-FILTER」Ver.4.82R01
14 「m-FILTER」Ver.4.82R02
15 「m-FILTER」Ver.4.82R03
16 「m-FILTER」Ver.5.00R01
25 17 「m-FILTER」Ver.5.01R01
18 「m-FILTER」Ver.5.01R02
別紙2
本件特許1の請求項1~5,7,9~13の記載内容
【請求項1】
5 端末装置から電子メールを受信し,該電子メールの送出を制御する情報処理装置で
あって,
電子メールの送出に係る制御内容を示す送出制御情報を,前記電子メールの送信元
と送信先とに対応付けた制御ルールを記憶する記憶手段と,
複数の送信先が設定された電子メールを前記端末装置から受信する受信手段と,
10 前記受信手段で受信した電子メールに設定された複数の送信先を個々の送信先に
分割する分割手段と,
前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手段で分割された送信先と
送信元とに従って,当該分割された送信先に対する電子メールの送出に係る制御内容
を決定する決定手段と,
15 前記決定手段で決定された制御内容で,当該分割された送信先に対する前記電子メ
ールの送信制御を行う制御手段と,
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
20 前記記憶手段に記憶されている制御ルールは,前記電子メールの送出に係る制御内
容を示す送出制御情報を,前記電子メールの送信元と送信先との組に対応付けられて
おり, 前記決定手段は,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手
段で分割された送信先と送信元との組に従って,当該分割された送信先に対する電子
メールの送出に係る制御内容を決定することを特徴とする請求項1に記載の情報処
25 理装置。
【請求項3】
前記記憶手段に記憶されている送出制御情報には,電子メールの送出を保留する制
御内容を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
5 【請求項4】
前記記憶手段に記憶されている送出制御情報には,電子メールを送出する制御内容
を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
10 前記記憶手段に記憶された,電子メールの送出を保留する制御内容の送出制御情報
は,更に,電子メールの送出を保留する保留時間を含み,
前記制御手段は,前記決定手段で決定された制御内容が電子メールの送出を保留す
る制御内容であり,かつ,当該制御内容の送出制御情報に前記保留時間が含まれてい
る場合に,前記分割された送信先に対する電子メールの送出を,該保留時間,保留す
15 ることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記分割手段は,前記受信手段で受信した,複数の送信先が設定された電子メール
のエンベロープ情報を,各送信先の各々を個別の送信先とするエンベロープ情報に分
20 割し,
前記決定手段は,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手段で分
割されることにより得られるエンベロープ情報とに従って,当該エンベロープ情報を
含む電子メールの送出に係る制御内容を決定し,
前記制御手段は,前記決定手段で決定された制御内容で,当該エンベロープ情報を
25 含む電子メールの送出制御を行うことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に
記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記決定手段で送出が保留されることが決定された,前記分割された送信先に対す
る電子メールの削除指示を受け付ける削除受付手段と,
5 前記削除受付手段で当該電子メールの削除指示を受け付けた場合に,当該電子メー
ルを削除する削除手段と,
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
10 前記決定手段で送出が保留されることが決定された,前記分割された送信先に対す
る電子メールの送信指示を受け付ける送信受付手段と,
前記送信受付手段で当該電子メールの送信指示を受け付けた場合に,当該電子メー
ルを送出する送出手段と,
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記記憶手段に記憶された制御ルールには,更に,前記電子メールの送出を保留す
る制御内容の送出制御情報に対応して,当該保留された旨を示す電子メールの通知先
が設定されており,
20 前記制御手段は,更に,前記決定手段で,前記分割された少なくとも1つの送信先
に対する電子メールが保留されることが決定された場合に,前記送出制御情報に対応
した通知先を送信先とする,当該電子メールが保留された旨を示す新規の電子メール
を送信することを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の情報処理装置。
25 【請求項12】
電子メールの送出に係る制御内容を示す送出制御情報を,前記電子メールの送信元
と送信先とに対応付けた制御ルールを記憶する記憶手段を備えており,端末装置から
電子メールを受信し,該電子メールの送出を制御する情報処理装置の制御方法であっ
て,
前記情報処理装置の受信手段が,複数の送信先が設定された電子メールを前記端末
5 装置から受信する受信工程と,
前記情報処理装置の分割手段が,前記受信工程で受信した電子メールに設定された
複数の送信先を個々の送信先に分割する分割工程と,
前記情報処理装置の決定手段が,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前
記分割工程で分割された送信先と送信元とに従って,当該分割された送信先に対する
10 電子メールの送出に係る制御内容を決定する決定工程と,
前記情報処理装置の制御手段が,前記決定工程で決定された制御内容で,当該分割
された送信先に対する前記電子メールの送信制御を行う制御工程と,
を備えることを特徴とする情報処理装置の制御方法。
15 【請求項13】
端末装置から電子メールを受信し,該電子メールの送出を制御する情報処理装置で
実行可能なプログラムあって,
前記情報処理装置を,
電子メールの送出に係る制御内容を示す送出制御情報を,前記電子メールの送信元
20 と送信先とに対応付けた制御ルールを記憶する記憶手段,
複数の送信先が設定された電子メールを前記端末装置から受信する受信手段,
前記受信手段で受信した電子メールに設定された複数の送信先を個々の送信先に
分割する分割手段,
前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手段で分割された送信先と
25 送信元とに従って,当該分割された送信先に対する電子メールの送出に係る制御内容
を決定する決定手段,
前記決定手段で決定された制御内容で,当該分割された送信先に対する前記電子メ
ールの送信制御を行う制御手段,
として機能させることを特徴とするプログラム。
別紙3
本件訂正後の本件特許1の請求項3,4,7及び13の記載内容
【請求項3】
5 前記分割手段は,前記受信手段で受信した電子メールに設定された複数の送信先の
すべてを個々の送信先に分割し,
前記決定手段は,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手段で分
割された送信先と送信元とに従って,当該分割されたすべての個々の送信先に対する
電子メールの送出に係る制御内容を決定し,
10 前記記憶手段に記憶されている送出制御情報には,電子メールの送出を保留する制
御内容を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶されている制御ルールは,電子メールのすべての送信先に共通
15 して,前記制御内容の決定に用いられるものであり,
前記記憶手段に記憶されている送出制御情報には,電子メールを送出する制御内容
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
20 前記分割手段は,前記受信手段で受信した,複数の送信先が設定された電子メール
のエンベロープ情報を,各送信先の各々を個別の送信先とするエンベロープ情報に分
割し,かつ,当該電子メールのヘッダ情報を分割せず,
前記決定手段は,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手段で分
割されることにより得られるエンベロープ情報とに従って,当該エンベロープ情報を
25 含む電子メールの送出に係る制御内容を決定し,
前記制御手段は,前記決定手段で決定された制御内容で,当該エンベロープ情報を
含む電子メールの送出制御を行うことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に
記載の情報処理装置。
【請求項13】
5 端末装置から電子メールを受信し,該電子メールの送出を制御する情報処理装置で
実行可能なプログラムあって,
前記情報処理装置を,
電子メールの送出に係る制御内容を示す送出制御情報を,前記電子メールの送信元
と送信先とに対応付けた制御ルールを記憶する記憶手段,
10 複数の送信先が設定された電子メールを前記端末装置から受信する受信手段,
前記受信手段で受信した電子メールに設定された複数の送信先を個々の送信先に
分割する分割手段,
前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手段で分割された送信先と
送信元とに従って,当該分割された送信先に対する電子メールの送出に係る制御内容
15 を決定する決定手段,
前記決定手段で決定された制御内容で,当該分割された送信先に対する前記電子メ
ールの送信制御を行う制御手段,
として機能させるプログラムにおいて,
前記記憶手段に記憶されている制御ルールは,電子メールのすべての送信先に共通
20 して,前記制御内容の決定に用いられるものであり,
前記分割手段は,前記受信手段で受信した,複数の送信先が設定された電子メール
のエンベロープ情報を,各送信先の各々を個別の送信先とするエンベロープ情報に分
割し,かつ,当該電子メールのヘッダ情報を分割せず,
前記決定手段は,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手段で分
25 割されることにより得られるエンベロープ情報とに従って,当該エンベロープ情報を
含む電子メールの送出に係る制御内容を決定し,
前記制御手段は,前記決定手段で決定された制御内容で,当該エンベロープ情報を
含む電子メールの送出制御を行うことを特徴とするプログラム。
別紙4
本件特許2の請求項1,4,5,7及び8の記載内容
【請求項1】
5 電子メールに対する送信制御を行う情報処理装置であって,
電子メールの送出又は保留を示す送信制御内容と,該送信制御内容を適用する条件
とのペアを1以上含む制御ルールを記憶する制御ルール記憶手段と,
複数の送信先が設定された電子メールから,前記複数の送信先が個別に設定された
複数の個別メールを生成する個別メール生成手段と,
10 前記制御ルールに従って,前記複数の個別メールの各々に対する送信制御内容を決
定する決定手段と,
前記決定手段によりいずれの個別メールが保留されると決定されたかを認識可能
にすべく,個別メールが保留されることが決定された旨を前記複数の送信先が設定さ
れた電子メールの送信元に通知する通知手段と,
15 を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
個別メールが保留されることが決定された前記旨を通知する他の通知先を設定す
る通知先設定手段を更に備え,
20 前記通知手段は,個別メールが保留されることが決定された前記旨を前記通知先設
定手段で設定された前記他の通知先に更に通知する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
25 前記決定手段により保留されると決定された個別メールに対する操作指示を受け
付ける受付手段と,
前記受付手段で受け付けた操作指示に従った送信制御を,前記決定手段により保留
されると決定された個別メールに対して実行する送信制御手段と,
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報処理装
置。
【請求項7】
電子メールに対する送信制御を行う情報処理装置の制御方法であって,
制御ルール記憶手段が,電子メールの送出又は保留を示す送信制御内容と,該送信
制御内容を適用する条件とのペアを1以上含む制御ルールを記憶する制御ルール記
10 憶工程と,
個別メール生成手段が,複数の送信先が設定された電子メールから,前記複数の送
信先が個別に設定された複数の個別メールを生成する個別メール生成工程と,
決定手段が,前記制御ルールに従って,前記複数の個別メールの各々に対する送信
制御内容を決定する決定工程と,
15 通知手段が,前記決定工程によりいずれの個別メールが保留されると決定されたか
を認識可能にすべく,個別メールが保留されることが決定された旨を前記複数の送信
先が設定された電子メールの送信元に通知する通知工程と,
を含むことを特徴とする情報処理装置の制御方法。
20 【請求項8】
電子メールに対する送信制御を行う情報処理装置で実行されるプログラムであっ
て,前記プログラムは前記情報処理装置を,
電子メールの送出又は保留を示す送信制御内容と,該送信制御内容を適用する条件
とのペアを1以上含む制御ルールを記憶する制御ルール記憶手段,
25 複数の送信先が設定された電子メールから,前記複数の送信先が個別に設定された
複数の個別メールを生成する個別メール生成手段,
前記制御ルールに従って,前記複数の個別メールの各々に対する送信制御内容を決
定する決定手段,
前記決定手段によりいずれの個別メールが保留されると決定されたかを認識可能
にすべく,個別メールが保留されることが決定された旨を前記複数の送信先が設定さ
5 れた電子メールの送信元に通知する通知手段,
として機能させることを特徴とするプログラム。
別紙5
イ号物件目録
第1 被告装置
1 本件発明1-1と対比する構成
5 11a クライアントが送信した電子メールを受信し,上記電子メールの送信を
制御するサーバであって,
11b 電子メールの宛先及び差出人を設定可能なフィルター条件と,上記フィ
ルター条件に該当した場合のアクションとを設定した送受信ルールを記
憶する記憶部と,
10 11c 複数の宛先の電子メールアドレスが設定された電子メールをクライア
ントから受信する受信部と,
11d 受信部で受信した複数の宛先の電子メールアドレスが設定された電子
メールを,宛先のドメイン毎の電子メールに分割する分割部と,
11e 記憶部に記憶されている送受信ルールと,分割部でドメイン毎に分割さ
15 れた電子メールの宛先,及び差出人に従って,上記ドメイン毎に分割され
た電子メールに対して実行するアクションをドメイン毎に決定する決定
部と,
11f 分割部でドメイン毎に分割された電子メールに対して,決定部で決定さ
れたアクションをドメイン毎に実行する制御部と,
20 11g を備えるサーバ。
2 本件発明1-2と対比する構成
12a 記憶部に記憶されている送受信ルールは,フィルター条件に該当した場
合のアクションが,電子メールの宛先及び差出人の組に対応付けられてお
25 り,
12b 決定部は,記憶部に記憶されている送受信ルールと,分割部でドメイン
毎に分割された電子メールの宛先及び差出人の組に従って,上記ドメイン
毎に分割された電子メールに対して実行するアクションをドメイン毎に
決定する
12c 構成11a~11gを備えたサーバ。
3 本件発明1-3と対比する構成
13a 記憶部に記憶されている送受信ルールにおけるアクションは,電子メー
ルの送信を保留することを含む
13b 構成11a~11gを備えたサーバ。
10 4 本件発明1-4と対比する構成
14a 記憶部に記憶されている送受信ルールにおけるアクションは,電子メー
ルを送信することを含む
14b 構成11a~11gを備えたサーバ。
15 5 本件発明1-5と対比する構成
15a 記憶部に記憶された送受信ルールにおける,電子メールの送信を保留す
るアクションは,指定したメールサーバ経由で,電子メールを送信するリ
レーを含み,電子メールの送信を入力した時間分だけ一時的に遅延させて
送信する送信ディレイを設定可能であり,
20 15b 制御部は,決定部で決定されたアクションが電子メールの送信又はリレ
ーである場合に,分割部でドメイン毎に分割された電子メールの送信を入
力した時間分だけ一時的に遅延させて送信する
15c 構成11a~11gを備えたサーバ。
25 6 本件発明1-6と対比する構成
16a 分割部は,受信部で受信した,複数の宛先の電子メールアドレスが設定
された電子メールのエンベロープ情報を,宛先のドメイン毎のエンベロー
プ情報に分割し,
16b 決定部は,記憶部に記憶されている送受信ルールと,宛先のドメイン毎
のエンベロープ情報とに従って,当該エンベロープ情報を含む電子メール
5 に対して実行するアクションをドメイン毎に決定し,
16c 制御部は,当該エンベロープ情報を含む電子メールに対して,決定部で
ドメイン毎に決定されたアクションをドメイン毎に実行する
16d 構成11a~11gを備えたサーバ。
10 7 本件発明1-7と対比する構成
17a 決定部で送信が保留されることが決定された,ドメイン毎に分割された
電子メールの削除指示を受け付ける削除受付部と,
17b 削除受付部で当該電子メールの削除指示を受け付けた場合に,当該電子
メールを削除する削除部と,
15 17c を更に備える,構成11a~11gを備えたサーバ。
8 本件発明1-8と対比する構成
18a 決定部で送信が保留されることが決定された,ドメイン毎に分割された
電子メールの送信指示を受け付ける送信受付部と,
20 18b 送信受付部で当該電子メールの送信指示を受け付けた場合に,当該電子
メールを送信する送信部と,
18c を更に備える,構成11a~11gを備えたサーバ。
9 本件発明1-9と対比する構成
25 19a 記憶部に記憶された送受信ルールには,電子メールの送信を保留するア
クションに対応して,当該保留された旨を示す新たな電子メールの送信先
となる電子メールアドレスが設定されており,
19b 制御部は,決定部で,少なくとも1つのドメインに対する電子メールが
保留されることが決定された場合に,設定された電子メールアドレスに上
記新たな電子メールを送信する
5 19c 構成11a~11gを備えたサーバ。
10 本件発明2-1と対比する構成
21a 電子メールの送信を制御するサーバであって,
21b 電子メールに対する送信,削除,保留又はリレーのアクションと,各ア
10 クションを適用する条件と,のペアを複数含む送受信ルールを記憶する記
憶部と,
21c 複数の宛先の電子メールアドレスが設定された電子メールを,宛先のド
メイン毎に分割して宛先のドメイン毎の電子メールを生成する生成部と,
21d 送受信ルールに従って,宛先のドメイン毎の電子メールに対するアクシ
15 ョンをドメイン毎に決定する決定部と,
21e 決定部により,少なくとも1つのドメインに対して,ドメイン毎の電子
メールの送信を保留することが決定された場合に,送信が保留された旨の
新たな電子メールを,上記複数の宛先の電子メールアドレスが設定された
電子メールの差出人の電子メールアドレスに送信する送信部と,
20 21f を備えたサーバ。
11 本件発明2-2と対比する構成
22a 少なくとも1つのドメインに対して,ドメイン毎の電子メールの送信が
保留された旨の新たな電子メールの宛先を,上記差出人の電子メールアド
25 レスとは別に設定する宛先設定部を備え,
22b 送信部は,送信が保留された旨の新たな電子メールを,宛先設定部で設
定された電子メールアドレスに送信する
22c 構成21a~21fを備えたサーバ。
12 本件発明2-3と対比する構成
5 23a 決定部により,保留されると決定された,宛先のドメイン毎の電子メー
ルに対する送信又は削除の指示を受け付ける受付部と,
23b 受付部で受け付けた指示に応じて,保留されると決定された,宛先のド
メイン毎の電子メールを送信又は削除する送信制御部と,
23c を備える,構成21a~21fを備えたサーバ。
13 本件訂正発明1-3と対比する構成
13a1 分割部は,受信部で受信した電子メールに設定された複数の宛先の電
子メールアドレスのすべてを,宛先のドメイン毎の電子メールに分割し,
13a2 決定部は,記憶部に記憶されている送受信ルールと,分割部でドメイ
15 ン毎に分割された電子メールの宛先及び差出人に従って,上記ドメイン毎
に分割されたすべての電子メールに対して実行するアクションを決定し,
13a3 記憶部に記憶されている送受信ルールにおけるアクションは,全ての
電子メールアドレスに対し,電子メールの送信を保留することを含む
13b 構成11a~11gを備えたサーバ。
14 本件訂正発明1-4と対比する構成
14a1 記憶部に記憶されている送受信ルールは,すべての電子メールアドレ
スに共通して,アクションの決定に用いられるものであり,
14a2 記憶部に記憶されている送受信ルールにおけるアクションは,電子メ
25 ールを送信することを含む
14b 構成11a~11gを備えたサーバ。
15 本件特許発明1-6と対比する構成
16a’分割部は,受信部で受信した,複数の宛先の電子メールアドレスが設定
された電子メールのエンベロープ情報を,宛先のドメイン毎のエンベロー
5 プ情報に分割し,かつ,当該電子メールのヘッダ情報を分割せず,
16b 決定部は,記憶部に記憶されている送受信ルールと,宛先のドメイン毎
のエンベロープ情報とに従って,当該エンベロープ情報を含む電子メール
に対して実行するアクションを決定し,
16c 制御部は,当該エンベロープ情報を含む電子メールに対して,決定部で
10 決定されたアクションを実行する
16d 構成11a~11gを備えたサーバ。
第2 被告方法
1 本件発明1-10と対比する構成
15 110a 電子メールの宛先及び差出人を設定可能なフィルター条件と,上記フ
ィルター条件に該当した場合のアクションとを設定した送受信ルールを
記憶する記憶部を備えており,クライアントが送信した電子メールを受信
し,上記電子メールの送信を制御するサーバの制御方法であって,
110b サーバの受信部が,複数の宛先の電子メールアドレスが設定された電
20 子メールをクライアントから受信する受信工程と,
110c サーバの分割部が,受信工程で受信した複数の宛先の電子メールアド
レスが設定された電子メールを,宛先のドメイン毎の電子メールに分割す
る分割工程と,
110d サーバの決定部が,記憶部に記憶されている送受信ルールと,分割工
25 程でドメイン毎に分割された電子メールの宛先及び差出人に従って,上記
ドメイン毎に分割された電子メールに対して実行するアクションをドメ
イン毎に決定する決定工程と,
110e サーバの制御部が,分割工程でドメイン毎に分割された電子メールに
対して,決定工程で決定されたアクションをドメイン毎に実行する制御工
程と,
5 110f を備えるサーバの制御方法。
2 本件発明2-4と対比する構成
24a 電子メールの送信を制御するサーバの制御方法であって,
24b 記憶部が,電子メールに対する送信,削除,保留又はリレーのアクショ
10 ンと,各アクションを適用する条件と,のペアを複数含む送受信ルールを
記憶する記憶工程と,
24c 生成部が,複数の宛先の電子メールアドレスが設定された電子メールを,
宛先のドメイン毎に分割して宛先のドメイン毎の電子メールを生成する
生成工程と,
15 24d 決定部が,送受信ルールに従って,宛先のドメイン毎の電子メールに対
するアクションをドメイン毎に決定する決定工程と,
24e 送信部が,決定工程により,少なくとも1つのドメインに対して,宛先
のドメイン毎の電子メールの送信を保留することが決定された場合に,送
信が保留された旨の新たな電子メールを,上記複数の宛先の電子メールア
20 ドレスが設定された電子メールの差出人の電子メールアドレスに送信す
る送信部と,
24f を備えたサーバの制御方法。
第3 被告製品
25 1 本件発明1-11と対比する構成
111a クライアントが送信した電子メールを受信し,上記電子メールの送信
を制御するサーバで実行可能なプログラムであって,
111b サーバを,
111c 電子メールの宛先及び差出人を設定可能なフィルター条件と,上記フ
ィルター条件に該当した場合のアクションとを設定した送受信ルールを
5 記憶する記憶部,
111d 複数の宛先の電子メールアドレスが設定された電子メールをクライ
アントから受信する受信部,
111e 受信部で受信した複数の宛先の電子メールアドレスが設定された電
子メールを,宛先のドメイン毎の電子メールに分割する分割部,
10 111f 記憶部に記憶されている送受信ルールと,分割部でドメイン毎に分割
された電子メールの宛先及び差出人に従って,上記ドメイン毎に分割され
た電子メールに対して実行するアクションをドメイン毎に決定する決定
部,
111g 分割部でドメイン毎に分割された電子メールに対して,決定部で決定
15 されたアクションをドメイン毎に実行する制御部,
111h として機能させるプログラム。
2 本件発明2-5と対比する構成
25a 電子メールの送信を制御するサーバで実行されるプログラムであって,
20 このプログラムはサーバを,
25b 電子メールに対する送信,削除,保留又はリレーのアクションと,各ア
クションを適用する条件と,のペアを複数含む送受信ルールを記憶する記
憶部,
25c 複数の宛先の電子メールアドレスが設定された電子メールを,宛先のド
25 メイン毎に分割して宛先のドメイン毎の電子メールを生成する生成部,
25d 送受信ルールに従って,宛先のドメイン毎の電子メールに対するアクシ
ョンをドメイン毎に決定する決定部,
25e 少なくとも1つのドメインに対して,ドメイン毎の電子メールの送信を
保留することが決定された場合に,送信が保留された旨の新たな電子メー
ルを,上記複数の宛先の電子メールアドレスが設定された電子メールの差
5 出人の電子メールアドレスに送信する送信部,
25f として機能させるプログラム。
3 本件訂正発明1-11と対比する構成
111a クライアントが送信した電子メールを受信し,上記電子メールの送信
10 を制御するサーバで実行可能なプログラムであって,
111b サーバを,
111c 電子メールの宛先及び差出人を設定可能なフィルター条件と,上記フ
ィルター条件に該当した場合のアクションとを設定した送受信ルールを
記憶する記憶部,
15 111d 複数の宛先の電子メールアドレスが設定された電子メールをクライ
アントから受信する受信部,
111e 受信部で受信した複数の宛先の電子メールアドレスが設定された電
子メールを,宛先のドメイン毎の電子メールに分割する分割部,
111f 記憶部に記憶されている送受信ルールと,分割部でドメイン毎に分割
20 された電子メールの宛先及び差出人に従って,上記ドメイン毎に分割され
た電子メールに対して実行するアクションを決定する決定部,
111g 分割部でドメイン毎に分割された電子メールに対して,決定部で決定
されたアクションを実行する制御部,
111h’として機能させるプログラムにおいて,
25 111i 記憶部に記憶されている制御ルールは,すべての電子メールアドレス
に共通して,アクションの決定に用いられるものであり,
111j 分割部は,受信部で受信した,複数の宛先の電子メールアドレスが設
定された電子メールのエンベロープ情報を,宛先のドメイン毎のエンベロ
ープ情報に分割し,かつ,当該電子メールのヘッダ情報を分割せず,
111k 決定部は,記憶部に記憶されている送受信ルールと,宛先のドメイン
5 毎のエンベロープ情報とに従って,当該エンベロープ情報を含む電子メー
ルに対して実行するアクションを決定し,
111l 制御部は,当該エンベロープ情報を含む電子メールに対して,決定部
で決定されたアクションを実行する
111m ことを特徴とするプログラム。
別紙6
争点3(本件各特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)
に関する当事者の主張
1 争点3-1(乙7発明に基づく新規性又は進歩性の欠如)について
5 (被告の主張)
(1) 原告が充足論で主張するように,本件発明1に係る「個々の送信先」及び本
件発明2に係る「個別メール」に複数のメールアドレスが設定される態様も含
まれると解する場合,平成18年7月1日に発行された乙7文献(IronPort
AsyncOSTM 4.7 USER GUIDE)の165~175頁,365頁~375頁,16
10 6頁・表7-1,168頁・図7-2,171頁・表7-2,173頁・表7
-3等)が開示する乙7発明は,本件各発明と同一の発明であるから,本件各
発明は新規性を欠く。仮に,新規性を欠くということができないとしても,乙
7発明と本件各発明の相違点は微差にすぎないから,本件各発明は進歩性を欠
く。
15 なお,乙7文献記載の製品「IronPort」(以下「乙7製品」という。)は本
件各特許の原出願日より前に販売されていたのであるから,本件各特許は同製
品の販売による公然実施に基づき,同様に新規性又は進歩性を欠如するもので
ある。
ア 本件発明1-1との対比
20 (ア) 乙7発明の内容を本件発明1-1に対応する形で表すと,以下のとおり
である。
11a1 端末装置からメッセージを受信し,メッセージの送信を制御す
る電子メールセキュリティアプライアンスであって,
11b1 コンテンツフィルタの条件としてエンベロープ送信者及びエン
25 ベロープ受信者を設定した場合には,メッセージの送信に係る保
留等のアクションを,エンベロープ送信者及びエンベロープ受信
者に対応付けてルールとして記憶し,
11c1 複数の送信先が設定されたメッセージを端末装置から受信し,
11d1 メッセージに設定された複数の送信先を,ポリシーに応じて分
裂し ,
5 11e1 11b1で記憶されているルールと,エンベロープ送信者及びエ
ンベロープ受信者とに従って,分裂された送信先に対するアクシ
ョンが決定され,
11f1 決定されたアクションが,分裂された送信先に対するメッセー
ジに行われる
10 11g1 電子メールセキュリティアプライアンス。
(イ) このように,乙7発明には本件発明1-1の各構成要素に対応する構成
が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明1-1は,新規性
を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
15 明1-1は進歩性を有しない。
イ 本件発明1-2との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明1-2に対応する形で表すと,以下のとおり
である。
12a1 エンベロープ送信者とエンベロープ受信者を組としてコンテン
20 ツフィルタの条件として設定した場合には,11b1で記憶され
ているルールは,メッセージの送信に係る保留等の制御内容が,
エンベロープ送信者とエンベロープ受信者との組に対応付けら
れており,
12b1 11b1で記憶されているルールと,ポリシーに応じて分裂され
25 たエンベロープ送信者とエンベロープ受信者との組に従って,分
裂されたエンベロープ受信者に対するメッセージの送信に係る
アクションが決定される,
12c1 電子メールセキュリティアプライアンス。
(イ) このように,乙7発明には本件発明1-2の各構成要素に対応する構成
が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明1-2は,新規性
5 を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
明1-2は進歩性を有しない。
ウ 本件発明1-3との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明1-3に対応する形で表すと,以下のとおり
10 である。
13a1 コンテンツフィルタのアクションには隔離が含まれている,
13b1 電子メールセキュリティアプライアンス。
(イ) このように,乙7発明には本件発明1-3の各構成要素に対応する構成
が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明1-3は,新規性
15 を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
明1-3は進歩性を有しない。
エ 本件発明1-4との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明1-4に対応する形で表すと,以下のとおり
20 である。
14a1 コンテンツフィルタのアクションには配信が含まれている,
14b1 電子メールセキュリティアプライアンス。
(イ) このように,乙7発明には本件発明1-4の各構成要素に対応する構成
が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明1-4は,新規性
25 を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
明1-4は進歩性を有しない。
オ 本件発明1-5との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明1-5に対応する形で表すと,以下のとおり
である。
5 15a1 隔離されたメッセージを隔離するための保留時間を記憶でき,
15b1 コンテンツフィルタのアクションとして隔離されたメッセージ
は,保留時間の間,隔離された後でリリースされる,
15c1 電子メールセキュリティアプライアンス。
(イ) このように,乙7発明には本件発明1-5の各構成要素に対応する構成
10 が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明1-5は,新規性
を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
明1-5は進歩性を有しない。
カ 本件発明1-6との対比
15 (ア) 乙7発明の内容を本件発明1-6に対応する形で表すと,以下のとおり
である。
16a1 メッセージに設定された複数の送信先を,ポリシーに応じて分
裂し,
16b1 11b1で記憶されているルールと,分裂された後のメッセージ
20 におけるエンベロープ情報とに従って,当該メッセージに対する
アクションを決定し,
16c1 決定されたコンテンツフィルタのアクションで,当該エンベロ
ープ送信者に対するメッセージの送信に対する制御を行う,
16d1 電子メールセキュリティアプライアンス。
25 (イ) このように,乙7発明には本件発明1-6の各構成要素に対応する構成
が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明1-6は,新規性
を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
明1-6は進歩性を有しない。
キ 本件発明1-7との対比
5 (ア) 乙7発明の内容を本件発明1-7に対応する形で表すと,以下のとおり
である。
17a1 隔離された分裂後のメッセージに対して削除を選択でき,
17b1 削除が選択された場合には,隔離されている当該メッセージが
削除される,
10 17c1 電子メールセキュリティアプライアンス。
(イ) このように,乙7発明には本件発明1-7の各構成要素に対応する構成
が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明1-7は,新規性
を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
15 明1-7は進歩性を有しない。
ク 本件発明1-8との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明1-8に対応する形で表すと,以下のとおり
である。
18a1 隔離された分裂後のメッセージに対してリリースを選択でき,
20 18b1 リリースが選択された場合には,隔離されている当該メッセー
ジがリリースされて配信される,
18c1 電子メールセキュリティアプライアンス。
(イ) このように,乙7発明には本件発明1-8の各構成要素に対応する構成
が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明1-8は,新規性
25 を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
明1-8は進歩性を有しない。
ケ 本件発明1-9との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明1-9に対応する形で表すと,以下のとおり
である。
5 19a1 ①コンテンツフィルタのアクションとして「隔離」と「通知」
を選択した場合には,隔離するとともに他の受信者へメッセージ
が通知されるようにすることができ,
②コンテンツフィルタのある条件に対するアクションとして「複
製して隔離」を選択して最終アクションとして「バウンス」を選
10 択した場合には,当該ある条件に合致したメッセージを隔離する
とともにメッセージを送信者に送り返すことができ,
19b1 19a1のようにコンテンツフィルタのアクションを設定した
場合において,コンテンツフィルタの条件に基づいて分裂後のメ
ッセージが隔離されたときには,①他の受信者へメッセージが通
15 知される,及び/又は②送信者にメッセージが戻される,
19c1 電子メールセキュリティアプライアンス。
(イ) このように,乙7発明には本件発明1-9の各構成要素に対応する構成
が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明1-9は,新規性
を欠く。
20 仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
明1-9は進歩性を有しない。
コ 本件発明1-10との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明1-10に対応する形で表すと,以下のとお
りである。
25 110a1 コンテンツフィルタの条件としてエンベロープ送信者及びエ
ンベロープ受信者を設定した場合には,メッセージの送信に係
る制御内容を示すアクションを,メッセージのエンベロープ送
信者とエンベロープ受信者とに対応付けたコンテンツフィル
タの条件を記憶し,端末装置からメッセージを受信し,メッセ
ージの送信を制御する電子メールセキュリティアプライアン
5 スの制御方法であって,
110b1 複数の送信先が設定されたメッセージを端末装置から受信す
る工程と,
110c1 メッセージに設定された複数の送信先を,ポリシーに応じて
分裂する工程と,
10 110d1 設定されたコンテンツフィルタのアクションと,エンベロー
プ送信者及びエンベロープ受信者に関する条件に基づいて制
御内容を決定する工程と,
110e1 決定されたコンテンツフィルタの制御内容で,分裂された送
信先に対するメッセージの送信制御を行う工程と,
15 110f1 を備える電子メールセキュリティアプライアンスの制御方法。
(イ) このように,乙7発明には本件発明1-10の各構成要素に対応する構
成が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明1-10は,新
規性を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
20 明1-10は進歩性を有しない。
サ 本件発明1-11との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明1-11に対応する形で表すと,以下のとお
りである。
111a1 端末装置からメッセージを受信し,当該メッセージの送出を
25 制御する電子メールセキュリティアプライアンスで実行可能
なプログラムあって,
111b1 電子メールセキュリティアプライアンスを,
111c1 コンテンツフィルタの条件としてエンベロープ送信者及びエ
ンベロープ受信者を設定した場合には,メッセージの送信に係
る制御内容を示すアクションを,メッセージのエンベロープ送
5 信者とエンベロープ受信者とに対応付けたコンテンツフィル
タの条件を記憶し,
111d1 複数の送信先が設定されたメッセージを端末装置から受信し,
111e1 メッセージに設定された複数の送信先を,ポリシーに応じて
分裂し,
10 111f1 設定されたコンテンツフィルタのアクションと,エンベロー
プ送信者及びエンベロープ受信者に関する条件に基づいて制
御内容を決定し,
111g1 決定されたコンテンツフィルタの制御内容で,分裂された送
信先に対するメッセージの送信制御が行う,
15 111h1 ように機能させるプログラム。
(イ) このように,乙7発明には本件発明1-11の各構成要素に対応する構
成が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明1-11は,新
規性を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
20 明1-11は進歩性を有しない。
シ 本件発明2-1との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明2-1に対応する形で表すと,以下のとおり
である。
21a1 メッセージの送信を制御する電子メールセキュリティアプライ
25 アンスであって,
21b1 コンテンツフィルタのアクションを設定して記憶でき,またこ
れらのアクションが行われるコンテンツフィルタの条件を設定
して記憶でき,
21c1 複数の送信先が設定されたメッセージを,ポリシーに応じて分
裂し,
5 21d1 分裂されたメッセージに対してコンテンツフィルタが適用され,
コンテンツフィルタの条件と当該条件に対応するアクションが
適用され,
21e 1 ①コンテンツフィルタのある条件に対するアクションとして
「複製して」隔離を選択して最終アクションとして「バウンス」
10 を選択した場合には,当該ある条件に合致したメッセージを隔離
するとともに当該メッセージを送信者に送り返すことで,隔離さ
れたメッセージを認識可能とし,また
②コンテンツフィルタのある条件に対するアクションとして
「隔離」及び「通知」を選択し,「通知」として「送信者」を選
15 択した場合には,当該ある条件に合致したメッセージを隔離する
とともに送信者に通知する,
21f1 電子メールセキュリティアプライアンス。
(イ) このように,乙7発明には本件発明2-1の各構成要素に対応する構成
が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明2-1は,新規性
20 を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
明2-1は進歩性を有しない。
ス 本件発明2-2との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明2-2に対応する形で表すと,以下のとおり
25 である。
22a1 コンテンツフィルタのアクションとして隔離と通知を選択する
ことで,コンテンツフィルタの条件に合致するメッセージを隔離
するとともに,人事部門,法務部門等の他の受信者へメッセージ
を通知するように設定でき,
22b1 コンテンツフィルタのアクションとして隔離及び通知を選択し
5 た場合には,人事部門,法務部門等の他の受信者へ当該メッセー
ジを報告する,
22c1 電子メールセキュリティアプライアンス。
(イ) このように,乙7発明には本件発明2-2の各構成要素に対応する構成
が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明2-2は,新規性
10 を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
明2-2は進歩性を有しない。
セ 本件発明2-3との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明2-3に対応する形で表すと,以下のとおり
15 である。
23a1 隔離された分裂後のメッセージに対して削除,リリース,スケ
ジュールエディットの遅延を選択でき,
23b1 選択された削除,リリース又はスケジュールエディットの遅延
を,隔離された分裂後のメッセージに対して行う,
20 23c1 電子メールセキュリティアプライアンス。
(イ) このように,乙7発明には本件発明2-3の各構成要素に対応する構成
が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明2-3は,新規性
を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
25 明2-3は進歩性を有しない。
ソ 本件発明2-4との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明2-4に対応する形で表すと,以下のとおり
である。
24a1 メッセージの送信を制御する電子メールセキュリティアプライ
アンスの制御方法であって,
5 24b1 コンテンツフィルタのアクションとして隔離を設定するととも
に,コンテンツフィルタの最終アクションとして配信を設定して
記憶し,またこれらのアクションが行われるコンテンツフィルタ
の条件を設定して記憶する工程と,
24c1 複数の送信先が設定されたメッセージを,ポリシーに応じて分
10 裂する工程と,
24d1 分裂されたメッセージに対してコンテンツフィルタが適用され,
コンテンツフィルタの条件と当該条件に対応するアクションが
適用される工程と,
24e1 コンテンツフィルタのある条件に対するアクションとして隔離
15 を選択して最終アクションとしてバウンスを選択した場合には,
当該ある条件に合致したメッセージを隔離するとともに当該メ
ッセージを送信者に送り返すことで,隔離されたメッセージを認
識可能とする工程と,
24f1 を有する電子メールセキュリティアプライアンスの制御方法。
20 (イ) このように,乙7発明には本件発明2-4の各構成要素に対応する構成
が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明2-4は,新規性
を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
明2-4は進歩性を有しない。
25 タ 本件発明2-5との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明2-5に対応する形で表すと,以下のとおり
である。
25a1 メッセージの送信を制御する電子メールセキュリティアプライ
アンスで実行されるプログラムであって,プログラムは電子メー
ルセキュリティアプライアンスを,
5 25b1 コンテンツフィルタのアクションとして隔離を設定するととも
に,コンテンツフィルタの最終アクションとして配信を設定して
記憶でき,またこれらのアクションが行われるコンテンツフィル
タの条件を設定して記憶でき,
25c1 複数の送信先が設定されたメッセージを,ポリシーに応じて分
10 裂し,
25d1 分裂されたメッセージに対してコンテンツフィルタが適用され,
コンテンツフィルタの条件と当該条件に対応するアクションが
適用され,
25e1 コンテンツフィルタのある条件に対するアクションとして隔離
15 を選択して最終アクションとしてバウンスを選択した場合には,
当該ある条件に合致したメッセージを隔離するとともに当該メ
ッセージを送信者に送り返すことで,隔離されたメッセージを認
識可能とする
25f1 ように機能させるプログラム。
20 (イ) このように,乙7発明には本件発明2-5の各構成要素に対応する構成
が開示されており,両者に相違点はないから,本件発明2-5は,新規性
を欠く。
仮に,両者間に相違点があるとしても,その差は微差にすぎず,本件発
明2-5は進歩性を有しない。
25 (2) 本件発明1の「個々の送信先」及び本件発明2の「個別メール」をそれぞれ
文言どおり解釈する場合,乙7発明にはメッセージをポリシーごとに分割する
ことが開示されており,電子メールを個々の送信先に分割することが周知技術
であること(乙8,10,11,12)からすると,当業者であれば,電子メ
ールを個々の送信先に分割することに想到することは容易であるから,本件各
発明は,それぞれ進歩性を欠く。
5 ア 電子メールを個々の送信先に分割することが周知技術であること
(ア) 発明の名称を「電子メール送信方法,電子メール送信プログラムおよび
電子メール送信装置」とする公開特許公報(特開2004-207785,
平成16年7月22日公開。乙8。以下「乙8公報」という。)の特許請
求の範囲の請求項1には,複数のアドレスを個々のアドレスに分割し,電
10 子メールの「Toヘッダ」に設定されたアドレスを分割された個々のアド
レスに置換し,置換後のそれぞれのアドレスで特定されるものに対して電
子メールを送信することが開示されている。
また,乙8公報の明細書の発明の詳細な説明の段落【0038】~【0
040】及び【図4】には,個々の電子メールに分割されて送信される具
15 体的な例も開示されている。
なお,特許メモ(乙9)においても,乙8公報に関して,上記請求項1
には,メールヘッダに設定された複数のアドレスを個々のアドレスに分割
し,電子メールを分割されたアドレスの個数分だけ複製して送信すること
について記載されている旨の認定がされている。
20 (イ) 発明の名称を「電子メールシステム及び電子メールサーバ」とする公開
特許公報(特開2007-148984,平成19年6月14日公開。乙
10。以下「乙10公報」という。)の特許請求の範囲の請求項1及び7
には,メーリングリストのアドレスを複数の個別の宛先電子メールアドレ
スに変換することだけではなく,個別に分割されたグループ別に制御する
25 こと(遅延させること)も開示されている。
また,乙10公報の明細書の発明の詳細な説明の段落【0059】 【0
,
060】及び【図6】には,個別電子メールアドレスをドメインに応じて
分類することが開示され,段落【0072】~【0078】及び【図8】
には,個別の宛先電子メールアドレスに変換し,グループ別に遅延させる
ことが開示されている。
5 なお,特許メモ(乙9)においても,乙10公報に関して,請求項1及
び7等には,メーリングリストのアドレスを複数の個別の宛先電子メール
アドレスに変換し,前記複数の個別の宛先電子メールアドレスを複数のグ
ループに分割し,分割したグループごとに電子メールの出力を遅延させる
ことについて記載されている旨の認定がされている。
10 (ウ) 発明の名称を「電子メール配送システム及び電子メール配送プログラム」
とする公開特許公報(特開2007-267248,平成19年10月1
1日公開。乙11。以下「乙11公報」という。)の特許請求の範囲の請
求項1,明細書の発明の詳細な説明の段落【0041】及び【図1】には,
メールアドレス取得手段が取得した送信先メールアドレスの各々に対し
15 て個別にメールデータが配送されるように当該送信先メールアドレスを
含むエンベロープを生成することが開示されている。
また,個別送信処理を示すフローチャートが【図4】に示され,その説
明が段落【0043】~【0048】でされるとともに,送信先メールア
ドレスが一つずつ取得される態様が【図5】に示され,その説明が段落【0
20 053】及び【0054】でされている。
なお,特許メモ(乙9)においても,乙11に対応する国際航海第20
07/114286に関して,エンベロープ情報に含まれている送信先メ
ールアドレスの各々に個別にメールデータを送信することについて記載
されている旨の認定がされている。
25 (エ) 発明の名称を「同報メールシステム」とする公開特許公報(特開200
7-156836,平成19年6月21日公開。乙12。以下「乙12公
報」という。)の特許請求の範囲の請求項1には,複数の宛先アドレス毎
に新たなメールヘッダを生成して,電子メールの本文を組み合わせた個別
電子メールを宛先アドレスのメールサーバに対して送信することが開示
されている。
5 なお,特許メモ(乙9)においても,乙12公報に関して,メールヘッ
ダに挿入された複数の宛先アドレスを読み出して,各宛先アドレス毎に新
たなメールヘッダを生成して送信することについて記載されている。」と
認定されている。
イ 本件各発明が進歩性を欠くこと
10 前記のとおり,乙7発明にはメッセージをポリシー毎に分割することが開
示されているところ,電子メールを個々の送信先に分割することが周知技術
であること(乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報及び乙12公報)
からすると,メッセージをポリシー毎に分割する乙7発明において,当業者
は,電子メールを個々の送信先に分割することを容易に想到することができ
15 るから,本件各発明は進歩性を欠き,無効とされるべきものである。
(原告の主張)
乙7発明に基づいて本件各発明の新規性や進歩性が否定されることはない。な
お,乙7文献なる刊行物がいつの時点で存在したのか不明であるから,そもそも
乙7文献は引用適格を欠く。
20 (1) 本件発明1について
ア 本件発明1-1との対比
(ア) 乙7文献(164頁30~33行目,166頁1~5行目,167頁2
1行目~168頁5行目,168頁下から6行目~169頁2行目,19
5頁・図7-24等)の記載によれば,乙7発明の内容を本件発明1-1
25 に対応する形で表すと,以下のとおりである。
11a1 端末装置から受信メッセージ及び送信メッセージを含むメッ
セージを受信し,メッセージの送出を制御する電子メールセキュ
リティアプライアンスであって,
11b1 大多数のメッセージを処理するためのディフォルトポリシー
並びに例外的な少数のメッセージを処理するためのエンベロー
5 プ送信者及びエンベロープ受信者を対応付けた受信ポリシー及
び送信ポリシーを記憶すると共に,ポリシー毎に,メッセージの
送出に係るアクションを,エンベロープ送信者及びエンベロープ
受信者に対応付けたコンテンツフィルタを記憶し,
11c1 複数の送信先が設定されたメッセージを端末装置から受信し,
10 11d1 受信メッセージに設定された複数の送信先に対するメッセー
ジを受信ポリシーに応じて分裂し,送信メッセージに設定された
複数の送信先に対するメッセージを送信ポリシーに応じて分裂
し,受信ポリシー及び送信ポリシーに該当しなかったメッセージ
をディフォルトポリシーに応じて分裂せず,
15 11e1 11d1でポリシーに応じて分裂された送信先に対するメッセ
ージのアクションを,当該ポリシーに対応するコンテンツフィル
タと,当該分裂されたメッセージに設定されたエンベロープ送信
者及びエンベロープ受信者とに従って,決定し,
11f1 決定されたアクションが,分裂された送信先に対するメッセー
20 ジに行われる
11g1 電子メールセキュリティアプライアンス。
(イ) 相違点
本件発明1-1と乙7発明には以下の相違点があるから,本件発明1-
1は新規性がある。
25 a 相違点1-1-1
本件発明1-1は,「電子メールに設定された複数の送信先を個々の
送信先に分割する」
(11D)ものであるのに対し,乙7発明1-1は,
「受信メッセージに設定された複数の送信先に対するメッセージを受
信ポリシーに応じて分裂し,送信メッセージに設定された複数の送信先
に対するメッセージを送信ポリシーに応じて分裂し,受信ポリシー及び
5 送信ポリシーに該当しなかったメッセージをデフォルトポリシーに応
じて分裂」(11d1)するにすぎず,乙7発明1-1は,「個々の送信
先に分割」するものとはいえない点(以下の図参照。)。
b 相違点1-1-2
10 本件発明1-1は,「制御ルール…に従って,当該分割された送信先
に対する電子メールの送出に係る制御内容を決定する」(11E)もの
であるのに対し,乙7発明1-1は,「11d1でポリシーに応じて分
裂された送信先に対するメッセージのアクションを,当該ポリシーに対
応するコンテンツフィルタ…に従って,決定」(11e1)するものであ
15 り,乙7発明は,送信先毎に分割された送信先に対する電子メールの送
出を決定するものではない点。
c 相違点1-1-3
送出制御を,本件発明1-1は,「個々の送信先に」「分割された送
信先に対する前記電子メール」(11D,11F)に対して行うのに対
5 し,乙7発明1-1は,「ポリシーに応じて」「分裂された送信先に対
するメッセージ」(11d1,11f1)に対して行うものであり,乙7
発明1-1は,「個々の送信先に」「分割された送信先に対する前記電
子メール」送出制御を行うものとはいえない点。
(ウ) 進歩性
10 相違点1-1-1乃至相違点1-1-3は,当業者が容易に想到できる
ものではないことから,本件発明1-1は,進歩性を有する。
イ 本件発明1-2~1-8との対比
本件発明1-2乃至本件発明1-8は,乙7発明と,少なくとも,相違点
1-1-1~相違点1-1-3で異なることから,本件発明1-1と同様に
15 新規性及び進歩性を有する。
ウ 本件発明1-9との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明1-9に対応する形で表すと,以下のとおり
である。
19a1 コンテンツフィルタには,ある条件に対する非最終アクション
20 として隔離を選択して最終アクションとしてバウンスを設定が
でき,
19b1 19a1のようにコンテンツフィルタのアクションを設定した
場合において,当該ある条件に合致したメッセージを隔離した後,
当該メッセージを送信者に送り返される,
5 19c1 電子メールセキュリティアプライアンス。
(イ) 相違点
本件発明1-9と乙7発明は,相違点1-1-1~1-1-3で異なる
ほか,以下の点で相違するから,本件発明1-9は新規性がある。
a 相違点1-1-4
10 本件発明1-9は,「前記電子メールの送出を保留する制御内容の送
出制御情報に対応して,当該保留された旨を示す電子メールの通知先」
(19A)を設定できるのに対し,乙7発明1-9は,「ある条件に対
する非最終アクションとして隔離を選択して最終アクションとしてバ
ウンス」(19a1)を設定できるものである点。
15 b 相違点1-1-5
電子メールの送信を保留する決定がされた場合に,本件発明1-9は,
「前記送出制御情報に対応した通知先を送信先とする,当該電子メール
が保留された旨を示す新規の電子メールを送信する」(19B)のに対
し,乙7発明1-9は,その後,「メッセージを送信者に送り返」(1
20 9B1)すものである点。
(ウ) 進歩性
相違点1-1-1~相違点1-1-3は,前記のとおり,当業者が容易
に想到できるものではないし,また,相違点1-1-4乃び相違点1-1
-5は,相違点に係る構成が存在しないことから,当業者が容易に想到で
25 きるものではないから,本件発明1-9は,進歩性を有する。
エ 本件発明1-10との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明1-10に対応する形で表すと,以下のとお
りである。
110a1 大多数のメッセージを処理するためのディフォルトポリシ
ー並びに例外的な少数のメッセージを処理するためのエンベロ
5 ープ送信者及びエンベロープ受信者を対応付けた受信ポリシー
及び送信ポリシーを記憶すると共に,ポリシー毎に,メッセージ
の送出に係るアクションを,エンベロープ送信者及びエンベロー
プ受信者に対応付けたコンテンツフィルタを記憶し,端末装置か
ら受信メッセージ及び送信メッセージを含むメッセージを受信
10 し,メッセージの送出を制御する電子メールセキュリティアプラ
イアンスの制御方法であって,
110b1 複数の送信先が設定されたメッセージを端末装置から受信
する工程と,
110c1 受信メッセージに設定された複数の送信先に対するメッセ
15 ージを受信ポリシーに応じて分裂し,送信メッセージに設定され
た複数の送信先に対するメッセージを送信ポリシーに応じて分
裂し,受信ポリシー及び送信ポリシーに該当しなかったメッセー
ジをディフォルトポリシーに応じて分裂しない工程と,
110d1 110c1でポリシーに応じて分裂された送信先に対するメ
20 ッセージのアクションを,当該ポリシーに対応するコンテンツフ
ィルタと,当該分裂されたメッセージに設定されたエンベロープ
送信者及びエンベロープ受信者とに従って,決定する工程と,
110e1 決定されたコンテンツフィルタの制御内容で,分裂された送
信先に対するメッセージの通信制御を行う工程と,
25 110f1 を備える電子メールセキュリティアプライアンスの制御方法。
(イ) 新規性及び進歩性
本件発明1-10は,乙7発明と,少なくとも,相違点1-1-1~相
違点1-1-3と同様の点で異なるから,本件発明1-1と同様の理由に
より,新規性及び進歩性を有する。
オ 本件発明1-11との対比
5 (ア) 乙7発明の内容を本件発明1-11に対応する形で表すと,以下のとお
りである。
111a1 端末装置から受信メッセージ及び送信メッセージを含むメ
ッセージを受信し,メッセージの送出を制御する電子メールセキ
ュリティアプライアンスで実行可能なプログラムあって,
10 111b1 電子メールセキュリティアプライアンスを,
111c1 大多数のメッセージを処理するためのディフォルトポリシ
ー並びに例外的な少数のメッセージを処理するためのエンベロ
ープ送信者及びエンベロープ受信者を対応付けた受信ポリシー
及び送信ポリシーを記憶すると共に,ポリシー毎に,メッセージ
15 の送出に係るアクションを,エンベロープ送信者及びエンベロー
プ受信者とに対応付けたコンテンツフィルタを記憶し,
111d1 複数の送信先が設定されたメッセージを端末装置から受信
し,
111e1 受信メッセージに設定された複数の送信先に対するメッセ
20 ージを受信ポリシーに応じて分裂し,送信メッセージに設定され
た複数の送信先に対するメッセージを送信ポリシーに応じて分
裂し,受信ポリシー及び送信ポリシーに該当しなかったメッセー
ジをディフォルトポリシーに応じて分裂せず,
111f1 111d1でポリシーに応じて分裂された送信先に対するメ
25 ッセージのアクションを,当該ポリシーに対応するコンテンツフ
ィルタと,当該分裂されたメッセージに設定されたエンベロープ
送信者及びエンベロープ受信者とに従って,決定し,
111g1 決定されたコンテンツフィルタの制御内容で,分裂された送
信先に対するメッセージの通信制御を行う,
111h1 ように機能させるプログラム。
5 (イ) 新規性及び進歩性
本件発明1-11は,乙7発明と,少なくとも,相違点1-1-1~相
違点1-1-3と同様の点で異なることから,本件発明1-1と同様の理
由により,新規性及び進歩性を有する。
(2) 本件発明2
10 ア 本件発明2-1との対比
(ア) 乙7文献(173頁下から4行目~174頁3行目,174頁・表7-
3,175頁・表7-4,365頁1~4行目)の記載によれば,乙7発
明の内容を本件発明2-1に対応する形で表すと,以下のとおりである。
21a1 メッセージの送出を制御する電子メールセキュリティアプラ
15 イアンスであって,
21b1 大多数のメッセージを処理するためのディフォルトポリシー並
びに例外的な少数のメッセージを処理するためのエンベロープ
送信者及びエンベロープ受信者を対応付けた受信ポリシー及び
送信ポリシーを記憶し,かつ,ポリシー毎に,電子メールの隔離
20 を示す非最終アクション及び電子メールの配信又はバウンスを
示す最終アクションと,アクションが適用される条件とを対応付
けたコンテンツフィルタを記憶でき,
21c1 受信メッセージに設定された複数の送信先に対するメッセージ
を受信ポリシーに応じて分裂し,送信メッセージに設定された複
25 数の送信先に対するメッセージを送信ポリシーに応じて分裂し,
受信ポリシー及び送信ポリシーに該当しなかったメッセージを
ディフォルトポリシーに応じて分裂せず,
21d1 ポリシーに応じて分裂されたメッセージに対して当該ポリシ
ーに対応するコンテンツフィルタが適用され,当該分裂されたメ
ッセージに対するアクションが適用され,
5 21e1 コンテンツフィルタのある条件に対する非最終アクションと
して隔離を選択して最終アクションとしてバウンスを選択した
場合には,当該ある条件に合致したメッセージを隔離した後,当
該メッセージを送信者に送り返す
21f1 電子メールセキュリティアプライアンス。
10 (イ) 相違点
本件発明2-1と乙7発明は,少なくとも以下の点で相違するから,本
件発明2-2は新規性を有する。
a 相違点1-2-1
本件発明2-1は,「前記複数の送信先が個別に設定された複数の個
15 別メールを生成する個別メール生成手段」(21C)であるのに対し,
乙7発明は,「受信メッセージに設定された複数の送信先に対するメッ
セージを受信ポリシーに応じて分裂し,送信メッセージに設定された複
数の送信先に対するメッセージを送信ポリシーに応じて分裂し,受信ポ
リシー及び送信ポリシーに該当しなかったメッセージをデフォルトポ
20 リシーに応じて分裂」(21c1)しないものである点。
b 相違点1-2-2
本件発明2-1は,「前記制御ルールに従って,前記複数の個別メー
ルの各々に対する送信制御内容を決定する決定手段」(21D)である
のに対し,乙7発明は,「ポリシーに応じて分裂されたメッセージに対
25 して当該ポリシーに対応するコンテンツフィルタが適用され,当該分裂
されたメッセージに対するアクションが適用され」(21d 1)るもの
である点。
c 相違点1-2-3
本件発明2-1は,「前記決定手段によりいずれの個別メールが保留
されると決定されたかを認識可能にすべく,個別メールが保留されるこ
5 とが決定された旨を前記複数の送信先が設定された電子メールの送信
元に通知する通知手段」(21E)であるのに対し,乙7発明は,「コ
ンテンツフィルタのある条件に対する非最終アクションとして隔離を
選択して最終アクションとしてバウンスを選択した場合には,当該ある
条件に合致したメッセージを隔離した後,当該メッセージを送信者に送
10 り返す」(21e1)ものである点。
(ウ) 進歩性
相違点1-2-1~相違点1-2-3は,当業者が容易に想到できるも
のではないから,本件発明2-1は,進歩性を有する。
イ 本件発明2-2との対比
15 (ア) 乙7文献(366頁22~24行目,374頁16~17行目,376
頁1~5行目・図15-7,377頁4~5行目)によれば,乙7発明の
内容を本件発明2-2に対応する形で表すと,以下のとおりである。
22a1 コンテンツフィルタの非最終アクションとして隔離が適用さ
れたメッセージについて,人事部門,法務部門等の担当者が,メ
20 ッセージの送信又は削除のアクションを選択することができ,
22b1 人事部門,法務部門等の担当者が,隔離されたメッセージに対
し,メッセージの送信又は削除のアクションを選択した場合,隔
離されたメッセージが送信又は削除される,
22c1 電子メールセキュリティアプライアンス。
25 (イ) 相違点
本件発明2-2と乙7発明は,相違点1-2-1~1-2-3で異なる
のか,以下の点で相違するから,本件発明2―2は新規性を有する。
a 相違点1-2-4
本件発明2-2は,「個別メールが保留されることが決定された前記
旨を通知する他の通知先を設定する通知先設定手段」(22A)を備え
5 るのに対し,乙7発明2-2は,これを備えない点。
b 相違点1-2-5
本件発明2-2は,「前記通知手段は,個別メールが保留されること
が決定された前記旨を前記通知先設定手段で設定された前記他の通知
先に更に通知する」(22B)構成を備えるのに対し,乙7発明2-2
10 は,これを備えない点。
(ウ) 進歩性
相違点1-2-1~相違点1-2-5は,当業者が容易に想到できるも
のではないから,本件発明2-2は,進歩性を有する。
ウ 本件発明2-3との対比
15 本件発明2-3は,乙7発明と,少なくとも相違点1-2-1乃至相違点
1-2-3で異なるから,本件発明2-1と同様に新規性及び進歩性を有す
る。
エ 本件発明2-4との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明2-4と対応する形で表すと,以下のとおり
20 である。
24a1 メッセージの送出を制御する電子メールセキュリティアプラ
イアンスの制御方法であって,
24b1 大多数のメッセージを処理するためのディフォルトポリシー並
びに例外的な少数のメッセージを処理するためのエンベロープ
25 送信者及びエンベロープ受信者を対応付けた受信ポリシー及び
送信ポリシーを記憶し,かつ,ポリシー毎に,電子メールの隔離
を示す非最終アクション及び電子メールの配信又はバウンスを
示す最終アクションと,アクションが適用される条件とを対応付
けたコンテンツフィルタを記憶する工程と,
24c1 受信メッセージに設定された複数の送信先に対するメッセージ
5 を受信ポリシーに応じて分裂し,送信メッセージに設定された複
数の送信先に対するメッセージを送信ポリシーに応じて分裂し,
受信ポリシー及び送信ポリシーに該当しなかったメッセージを
ディフォルトポリシーに応じて分裂しない工程と,
24d1 ポリシーに応じて分裂されたメッセージに対して当該ポリシ
10 ーに対応するコンテンツフィルタが適用され,当該分裂されたメ
ッセージに対するアクションが適用される工程と,
24e1 コンテンツフィルタのある条件に対する非最終アクションと
して隔離を選択して最終アクションとしてバウンスを選択した
場合には,当該ある条件に合致したメッセージを隔離した後,当
15 該メッセージを送信者に送り返す工程と,
24f1 を有する電子メールセキュリティアプライアンスの制御方法。
(イ) 新規性及び進歩性
本件発明2-4は,乙7発明と,少なくとも相違点1-2-1~相違点
1-2-3と同様の点で異なるから,本件発明2-1と同様に新規性及び
20 進歩性を有する。
オ 本件発明2-5との対比
(ア) 乙7発明の内容を本件発明2-5と対応する形で表すと,以下のとおり
である。
25a1 メッセージの送出を制御する電子メールセキュリティアプラ
25 イアンスで実行されるプログラムであって,
25b1 大多数のメッセージを処理するためのディフォルトポリシー並
びに例外的な少数のメッセージを処理するためのエンベロープ
送信者及びエンベロープ受信者を対応付けた受信ポリシー及び
送信ポリシーを記憶し,かつ,ポリシー毎に,電子メールの隔離
を示す非最終アクション及び電子メールの配信又はバウンスを
5 示す最終アクションと,アクションが適用される条件とを対応付
けたコンテンツフィルタを記憶でき,
25c1 受信メッセージに設定された複数の送信先に対するメッセージ
を受信ポリシーに応じて分裂し,送信メッセージに設定された複
数の送信先に対するメッセージを送信ポリシーに応じて分裂し,
10 受信ポリシー及び送信ポリシーに該当しなかったメッセージを
ディフォルトポリシーに応じて分裂せず,
25d1 ポリシーに応じて分裂されたメッセージに対して当該ポリシ
ーに対応するコンテンツフィルタが適用され,当該分裂されたメ
ッセージに対するアクションが適用され,
15 25e1 コンテンツフィルタのある条件に対する非最終アクションと
して隔離を選択して最終アクションとしてバウンスを選択した
場合には,当該ある条件に合致したメッセージを隔離した後,当
該メッセージを送信者に送り返す
25f1 ように記憶させるプログラム。
20 (イ) 新規性及び進歩性
本件発明2-5は,乙7発明2-5と,少なくとも相違点1-2-1~
相違点1-2-3と同様の点で異なるから,本件発明2-1と同様に新規
性及び進歩性を有する。
2 争点3-2(乙13発明に基づく進歩性の欠如)について
25 (被告の主張)
原告が充足論で主張するように,本件発明1に係る「個々の送信先」及び本件
発明2に係る「個別メール」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれ
ると解する場合,本件各発明は,被告製品の旧バージョンに関するマニュアルで
ある乙13文献(「m-FILTER」インストールマニュアル第2版,平成1
9年2月15日発行)の21~27頁,57頁,134頁,144頁,145頁,
5 178頁,184頁及び188頁等に記載の乙13発明と,乙7文献,乙10公
報及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を
有しない。
また,上記「個々の送信先」及び「個別メール」を文言どおり解釈する場合に
は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報並びに乙8公報,乙1
10 1公報及び乙12公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩
性を有しない。
(1) 本件発明1-1との対比
ア 乙13発明の内容を本件発明1-1に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙13発明には構成要件11A~11C及び11E~11Gに対応
15 する各構成が開示されている。
11a2 端末装置から電子メールを受信し,当該電子メールの送信を制御
する電子メールのメールフィルタリング装置であって,
11b2 フィルター条件として差出人と宛先を設定した場合には,電子メ
ールの送信に係る保留等の制御内容を,差出人と宛先とに対応付け
20 たルールとして記憶し,
11c2 複数の送信先が設定された電子メールを端末装置から受信でき,
11e2 11b2で記憶されているルールと,差出人と宛先とに従って,当
該差出人に対する電子メールの送信に係る,保留等の制御内容を決
定し,
25 11f2 決定された保留等の制御内容で,送信先に対する電子メールの送
信制御を行う,
11g2 メールフィルタリング装置。
イ あるカテゴリーに属する送信先に対する電子メールを分割して保留する
ことは周知技術であること
(ア) 前記のとおり,乙7文献には,ポリシー毎に電子メールを分割して,隔
5 離(保留)することが開示されている。
(イ) 前記のとおり,乙10公報には,個別に分割されたグループ別に遅延さ
せることが開示されている。
(ウ) 発明の名称を「電子メール送信装置及び電子メール送信制御方法」とす
る公開特許公報(特開2006-185094,平成18年7月13日公
10 開。乙14。以下「乙14公報」という。)の特許請求の範囲の請求項1
には,所定の区分の該当する送信メールを保留メールとしてメール保存部
に保存し,所定の時間経過後,保留メールを送信することが開示されてい
る。
また,乙14公報の明細書の発明の詳細な説明の段落【0051】には,
15 メールを送信する際に,所定の区分に該当する送信メールのみ,一定時間
実際のメール送信処理を保留することや保留時間が経過した場合は,自動
的に,かつユーザに意識させることなくメール送信処理を再開させること,
段落【0053】には,ユーザが「一時保留」に設定した送信先への送信
メールのみ保留することがそれぞれ開示されているから,所定の区分に属
20 する送信先を分割して保留することが示唆されており,前記のとおり,電
子メールを分割することが周知技術であることからすると,乙14公報に
は,所定の区分に属する送信先を分割して保留することが実質的には開示
されている。そして,【図4】には,保留時間が経過すると電子メールが
送信されることが開示されている。
25 ウ あるカテゴリーに属する送信先に対する電子メールを分割して保留する
ことは,乙7文献及び乙10公報に明確に開示され,乙14公報に実質的に
開示されている周知技術である。
乙13発明には,「宛先」をフィルタリングの条件として設定できること
が開示されているから,「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定さ
れる態様も含まれると解する場合,乙13発明において,あるカテゴリーに
5 属する送信先に対する電子メールの送信を保留するために,ポリシー毎に電
子メールを分割したり,グループ毎に電子メールを分割したり,所定の区分
ごとに電子メールを分割したりすることは,当業者が容易に想到することが
できるから,本件発明1-1は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に基づき進歩性を有しない。
10 また,あるカテゴリーに属する送信先に対する電子メールを分割して保留
することが周知技術であること,電子メールを個々の送信先に分割すること
は周知技術であること(乙8公報,乙10公報,乙11公報及び乙12公報)
からして,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,「宛先」をフィル
タリングの条件として設定できることができる乙13文献において,電子メ
15 ールの送信を送信先毎に保留するために,電子メールを個々の送信先に分割
することは,当業者が容易に想到することができるから,本件発明1-1は,
乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
及び乙14公報に基づき進歩性を有しない。
(2) 本件発明1-2との対比
20 ア 乙13発明には,以下のとおり,本件発明1-2に対応する各構成が開示
されている。
12a2 フィルター条件として差出人と宛先を設定した場合には,差出人
及び宛先に基づいてアクションが紐づけられており,
12b2 フィルター条件として差出人と宛先を設定した場合には,アクシ
25 ョンと,差出人及び宛先とに基づいて,送信先に対する電子メール
の制御内容を決定する,
12c2 メールフィルタリング装置。
イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
解する場合,本件発明1-2は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を欠
5 く。
また,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明1-2は,
乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性
を欠く。
10 (3) 本件発明1-3との対比
ア 乙13発明には,以下のとおり,本件発明1-3に対応する各構成が開示
されている。
13a2 アクションとして保留が含まれている
13b2 メールフィルタリング装置。
15 イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
解する場合,本件発明1-3は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を欠
く。
また,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明1-3は,
20 乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性
を欠く。
(4) 本件発明1-4との対比
ア 乙13発明には,以下のとおり,本件発明1-4に対応する各構成が開示
25 されている。
14a2 アクションとして送信が含まれている
14b2 メールフィルタリング装置。
イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
解する場合,本件発明1-4は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を欠
5 く。
また,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明1-4は,
乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性
を欠く。
10 (5) 本件発明1-5との対比
ア 保留が設定された場合に,保留時間だけ電子メールを保留し,保留時間が
経過した後で当該電子メールを送信することは,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に開示されている周知技術である。
また,発明の名称を「電子メール誤送信防止方法」とする公開特許公報(特
15 開2005-277976,平成17年10月6日公開。乙15。以下「乙
15公報」という。 の明細書の発明の詳細な説明の段落
) 【0041】には,
一時保留時間を経過すると配信処理が行われることが開示されている。
イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
解する場合,本件発明1-5は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報,乙
20 14公報及び乙15公報に基づき当業者が容易に想到することができるか
ら,進歩性を欠く。
また,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明1-4は,
乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報,
乙14公報及び乙15公報に基づき当業者が容易に想到することができる
25 から,進歩性を欠く。
(6) 本件発明1-6との対比
ア 乙7文献,乙10公報及び乙14公報で開示されているように,あるカテ
ゴリーに属する送信先に対する電子メールを分割して保留することは周知
技術であり,乙8公報,乙10公報,乙11公報及び乙12公報で開示され
ているように,電子メールを個々の送信先に分割することは周知技術である。
5 イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
解する場合,本件発明1-6は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を欠
く。
また,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明1-6は,
10 乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性
を欠く。
(7) 本件発明1-7との対比
ア 乙13発明には,以下のとおり,本件発明1-7に対応する各構成が開示
15 されている。
17a2 保留された電子メールに対して削除を選択でき,
17b2 削除が選択された場合には,保留されている当該電子メールが削
除される,
17c2 メールフィルタリング装置。
20 イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
解する場合,本件発明1-7は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を欠
く。
また,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明1-7は,
25 乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性
を欠く。
(8) 本件発明1-8との対比
ア 乙13発明には,以下のとおり,本件発明1-5に対応する各構成が開示
されている。
5 18a2 保留された電子メールに対して送信を選択でき,
18b2 送信が選択された場合には,保留されている当該電子メールが送
信される,
18c2 メールフィルタリング装置。
イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
10 解する場合,本件発明1-8は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を欠
く。
また,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明1-8は,
乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
15 及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性
を欠く。
(9) 本件発明1-9との対比
ア 乙13発明には,以下のとおり,本件発明1-9に対応する各構成が開示
されている。
20 19a2 アクションとして保留を設定するとともに通知先を指定した場合
には,保留された場合に当該通知先に通知をするようにでき,
19b2 送信先に対する電子メールが保留されることが決定された場合に,
通知先を送信先とする,アクションに応じた件名とメッセージ等を
示す新規の電子メールを送信する,
25 19c2 メールフィルタリング装置。
イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
解する場合,本件発明1-9は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を欠
く。
また,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明1-9は,
5 乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性
を欠く。
(10) 本件発明1-10との対比
ア 乙13発明の内容を本件発明1-10に対応する形で表すと,以下のとお
10 りであり,乙13発明には,構成要件110A,110B,110D~11
0Fに対応する各構成が開示されている。
110a2 フィルター条件として差出人と宛先を設定した場合には,電子
メールの送信に係る保留等の制御内容を,差出人と宛先とに対応
付けたフィルター条件を記憶し,端末装置から電子メールを受信
15 し,当該電子メールの送信を制御する電子メールのメールフィル
タリング装置の制御方法であって,
110b2 複数の送信先が設定された電子メールを端末装置から受信する
工程と,
110d2 記憶されている保留等の制御ルールと,差出人と宛先とに従っ
20 て,当該差出人に対する電子メールの送信に係る,保留等の制御
内容を決定する工程と,
110e2 決定された保留等の制御内容で,送信先に対する電子メールの
送信制御を行う工程と,
110f2 を備えるメールフィルタリング装置の制御方法。
25 イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
解する場合,本件発明1-10は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及
び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を
欠く。
また,
「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明1-10は,
乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
5 及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性
を欠く。
(11) 本件発明1-11との対比
ア 乙13発明の内容を本件発明1-11に対応する形で表すと,以下のとお
りであり,乙13発明には,構成要件111A~111D及び111F~1
10 11Hに対応する各構成が開示されている。
111a2 端末装置から電子メールを受信し,当該電子メールの送信を制
御するメールフィルタリング装置で実行可能なプログラムであ
って,
111b2 メールフィルタリング装置を,
15 111c2 フィルター条件として差出人と宛先を設定した場合には,電子
メールの送信に係る保留等の制御内容を,差出人と宛先とに対応
付けたフィルター条件を記憶し,
111d2 複数の送信先が設定された電子メールを端末装置から受信し,
111f2 記憶されている保留等の制御ルールと,差出人と宛先とに従っ
20 て,当該差出人に対する電子メールの送信に係る,保留等の制御
内容を決定し,
111g2 決定された保留等の制御内容で,送信先に対する電子メールの
送信制御を行う,
111h2 ように機能させるプログラム。
25 イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
解する場合,本件発明1-11は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及
び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を
欠く。
また,
「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明1-11は,
乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
5 及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性
を欠く。
(12) 本件発明2-1との対比
ア 乙13発明の内容を本件発明2-1に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙13発明には,構成要件21A,21B,21D~21Fに対応
10 する各構成が開示されている。
21a2 電子メールの送信を制御する電子メールのメールフィルタリング
装置であって,
21b2 送信,保留等のアクションと,当該アクションを実行するための
フィルター条件とを記憶し,
15 21d2 送信,保留等のアクション及び当該アクションを実行するための
フィルター条件に従って,送信制御内容を決定し,
21e2 差出人を対象として通知することを選択した場合であって,アク
ションとして保留が選択された場合において電子メールが保留さ
れた場合には,保留されたことを示す通知が差出人に出されること
20 で,保留されたメッセージを認識可能とする
21f2 メールフィルタリング装置。
イ あるカテゴリーに属する送信先に対する電子メールを分割して保留する
ことが乙7文献及び乙10公報に明確に開示され,乙14公報に実質的に開
示されている周知技術である。
25 乙13発明には,「宛先」をフィルタリングの条件として設定できること
が開示されているから,「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定さ
れる態様も含まれると解する場合,乙13発明において,あるカテゴリーに
属する送信先に対する電子メールの送信を保留するために,ポリシー毎に電
子メールを分割したり,グループ毎に電子メールを分割したり,所定の区分
ごとに電子メールを分割したりすることは,当業者が容易に想到することが
5 できるから,本件発明2-1は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に基づき進歩性を有しない。
また,あるカテゴリーに属する送信先に対する電子メールを分割して保留
することが周知技術であること,電子メールを個々の送信先に分割すること
は周知技術であること(乙8公報,乙10公報,乙11公報及び乙12公報)
10 からして,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,「宛先」をフィル
タリングの条件として設定できることができる乙13文献において,電子メ
ールの送信を送信先毎に保留するために,電子メールを個々の送信先に分割
することは,当業者が容易に想到することができるから,本件発明2-1は,
乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
15 及び乙14公報に基づき進歩性を有しない。
(13) 本件発明2-2との対比
ア 乙13発明には,以下のとおり,本件発明2-2に対応する各構成が開示
されている。
22a2 差出人以外の管理者,宛先又は指定アドレスを対象として通知す
20 ることを選択でき,
22b2 アクションとして保留を設定するとともに差出人以外の管理者,
宛先又は指定アドレスを通知先として指定した場合に,電子メール
が保留されたときには,保留されたことを示す通知が管理者,宛先
又は指定アドレスに出される,
25 22c2 メールフィルタリング装置。
イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
解する場合,本件発明2-2は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を欠
く。
また,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明2-2は,
5 乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性
を欠く。
(14) 本件発明2-3との対比
ア 乙13発明には,以下のとおり,本件発明2-2に対応する各構成が開示
10 されている。
23a2 保留された電子メールに対して削除又は送信を選択でき,
23b2 選択された削除又は送信を,保留された電子メールに対して行う,
23c2 メールフィルタリング装置。
イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
15 解する場合,本件発明2-3は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を欠
く。
また,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明2-3は,
乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
20 及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性
を欠く。
(15) 本件発明2-4との対比
ア 乙13発明の内容を本件発明2-4に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙13発明には,構成要件24A,24B,24D~24Fに対応
25 する各構成が開示されている。
24a2 電子メールの送信を制御する電子メールのメールフィルタリング
装置の制御方法であって,
24b2 送信,保留等のアクションと,当該アクションを実行するための
フィルター条件とを記憶する工程と
24d2 送信,保留等のアクション及び当該アクションを実行するための
5 フィルター条件に従って,送信制御内容を決定する工程と,
24e2 差出人を対象として通知することを選択した場合であって,アク
ションとして保留が選択された場合において電子メールが保留さ
れた場合には,保留されたことを示す通知が差出人に出されること
で,保留されたメッセージを認識可能とする
10 24f2 メールフィルタリング装置の制御方法。
イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
解する場合,本件発明2-4は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を欠
く。
15 また,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明2-4は,
乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性
を欠く。
(16) 本件発明2-5との対比
20 ア 乙13発明の内容を本件発明2-5に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙13発明には,構成要件25A,25B,25D~25Fに対応
する各構成が開示されている。
25a2 電子メールの送信を制御する電子メールのメールフィルタリング
装置で実行されるプログラムであって,当該プログラムはメールフ
25 ィルタリング装置を,
25b2 送信,保留等のアクションと,当該アクションを実行するための
フィルター条件とを記憶し
25d2 送信,保留等のアクション及び当該アクションを実行するための
フィルター条件に従って,送信制御内容を決定し,
25e2 差出人を対象として通知することを選択した場合であって,アク
5 ションとして保留が選択された場合において電子メールが保留さ
れた場合には,保留されたことを示す通知が差出人に出されること
で,保留されたメッセージを認識可能とする
25f2 機能させるプログラム。
イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
10 解する場合,本件発明2-5は,乙13発明と,乙7文献,乙10公報及び
乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を欠
く。
また,「個々の送信先」を文言どおり解釈する場合,本件発明2-5は,
乙13発明と,乙7文献,乙8公報,乙10公報,乙11公報,乙12公報
15 及び乙14公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性
を欠く。
(原告の主張)
乙13発明に基づいて本件各発明の新規性や進歩性が否定されることはない。
(1) 本件発明1について
20 ア 本件発明1-1との対比
(ア) 乙13発明を構成要件11Eに対応させると,以下のとおりである。
11e2 11b2で記憶されているルールと,差出人と宛先とに従っ
て,当該差出人に対する電子メールの送出に係る,保留等の制
御内容を決定し,
25 (イ) 相違点
本件発明1-1は,乙13発明と以下の点で相違するから,新規性を有
する。
a 相違点2-1-1
本件発明1-1は,「前記受信手段で受信した電子メールに設定され
た複数の送信先を個々の送信先に分割する分割手段」(11D)を備え
5 るのに対し,乙13発明1-1は,これを備えない点。
b 相違点制御内容を決定するに際し,本件発明1-1は,「分割手段で
分割された送信先と送信元とに従って,当該分割された送信先に対する」
(11E)電子メールの送出に係る制御内容を決定しているのに対し,
乙13発明1-1は,単に「差出人と宛先とに従って,当該差出人に対
10 する」(11e2)電子メールの送出に係る制御内容を決定しているに
過ぎない点。
(ウ) 進歩性
相違点2-1-1及び2-1-2は,当業者が容易に想到できるもので
はないから,本件発明2-2は,進歩性を有する。
15 イ 本件発明1-2~1-11との対比
本件発明1-2乃至本件発明1-11は,乙13発明と,少なくとも相違
点2-1-1及び相違点2-1-2で異なることから,本件発明1-1と同
様に新規性及び進歩性を有する。
(2) 本件発明2
20 ア 本件発明2-1との対比
(ア) 乙13発明を構成要件21D,21Eに対応させると,以下のとおりで
ある。
21d2 送信,保留等のアクション及び当該アクションを実行するた
めのフィルター条件に従って,送信制御内容を決定し,
25 21e2 差出人を対象として通知することを選択した場合であって,ア
クションとして保留が選択された場合において電子メールが
保留された場合には,保留されたことを示す通知が差出人に出
されることで,保留されたメッセージを認識可能とする
(イ) 相違点
本件発明2-1は,乙13発明と以下の点で相違するから,新規性を有
5 する。
a 相違点2-2-1
本件発明2-1は,「複数の送信先が設定された電子メールから,前
記複数の送信先が個別に設定された複数の個別メールを生成する個別
メール生成手段」(21C)を備えるのに対し,乙13発明2-1は,
10 これを備えない点。
b 相違点2-2-2
制御内容を決定するに際し,本件発明2-1は,「前記制御ルールに
従って,前記複数の個別メールの各々に対する送信制御内容を決定」
(2
1D)するものであるのに対し,乙13発明2-1は,「フィルター条
15 件に従って,」電子メールの「送信制御内容を決定」(21d2)するも
のである点。
c 相違点2-2-3
保留されたことを認識可能とする対象が,本件発明1-1は,「個別
メール」(21E)であるのに対し,乙13発明2-1は,「電子メー
20 ル」(11e2)である点。
(ウ) 進歩性
相違点2-2-1乃至相違点2-2-3は,当業者が容易に想到できる
ものではないことから,本件発明2-1は,進歩性を有する。
イ 本件発明2-2~2-5
25 本件発明2-2~2-5は,乙13発明と,少なくとも相違点2-2-1
~2-2-3で異なるから,本件発明2-1と同様に新規性及び進歩性を有
する。
3 争点3-3(乙14発明に基づく新規性又は進歩性の欠如)について
(被告の主張)
(1) 原告が充足論で主張するように,本件発明1に係る「個々の送信先」及び本
5 件発明2に係る「個別メール」に複数のメールアドレスが設定される態様も含
まれると解する場合,本件発明2-1,2-4及び2-5は,乙14公報の特
許請求の範囲の請求項9及び13,明細書の発明の詳細な説明の段落【003
5】~【0037】,【0050】,【0051】,【0053】,【006
3】及び【0071】並びに【図4】,【図8】及び【図10】等に記載の乙
10 14発明と同一であるから新規性がなく,たとえそうでなくても,本件各発明
は,乙7文献,乙10公報及び乙13文献等に基づき当業者が容易に想到する
ことができるから,進歩性を有しない。
ア 本件発明1-1との対比
(ア) 乙14発明の内容を本件発明1-1に対応する形で表すと,以下のとお
15 りであり,乙14発明には,構成要件11A,11C及び11D,11F
及び11Gに対応する各構成が開示されている。
11a3 端末装置から電子メールを受信し,該電子メールの送信を制御
する電子メール送信装置であって,
11b’3 電子メールの送信に係る保留等の制御と,所定の区分とを対
20 応付けてルールとして記憶し,
11c3 複数の送信先が設定された電子メールを端末装置から受信する
送信処理部と,を備え,
11d3 所定の区分に従って送信先を分割し,
11e’3 11b’ で記憶されているルールと,
3 所定の区分とに従って,
25 送信処理部が保留するかどうかを決定し,
11f3 決定された保留するか否かに従って,送信先に対する電子メー
ルの送信制御を行う,
11g3 を備える電子メール送信装置。
(イ) 送信元と送信先とを制御の条件とすること(構成要件11B及び11E
に対応する構成)は,乙7文献及び乙13文献において従前から行われて
5 いるから,送信先による分類,メールの内容による分類,メールの重要度・
機密度による分類等の様々な態様で分類できることが開示されている乙
14発明において,上記構成は,当業者が容易に想到することができるも
のであり,本件発明1-1は,乙14と,乙7文献及び乙13文献に基づ
き進歩性を有しない。
10 仮に,乙14発明が構成要件11Dを開示していないとしても,所定の
区分に属する送信先に対する電子メールを分割して保留することが少な
くとも示唆されている乙14発明において,あるカテゴリーに属する送信
先に対する電子メールを分割して保留することは,当業者が容易に想到す
ることができるものであるから,本件発明1-1は,乙14発明と,乙7
15 文献,乙10公報及び乙13文献に基づき進歩性を有しない。
イ 本件発明1-2との対比
乙7文献及び乙13文献では,制御ルールと,送信先と送信元との組に従
って,送信先に対する電子メールの送信に係る制御内容を決定することが開
示されており,前記ア(イ)と同様の理由から,本件発明1-2は,乙14発明
20 と,乙7文献及び乙13文献に基づき,又は,乙14発明と,乙7文献,乙
10公報及び乙13文献に基づき,当業者が容易に想到するものができるか
ら,進歩性を有しない。
ウ 本件発明1-3との対比
乙14公報には電子メールが一時保留されることが開示されており,前記
25 ア(イ)と同様の理由から,本件発明1-3は,乙14発明と,乙7文献及び乙
13文献に基づき,又は,乙14発明と,乙7文献,乙10公報及び乙13
文献に基づき,当業者が容易に想到するものができるから,進歩性を有しな
い。
エ 本件発明1-4との対比
乙14公報には送信先に応じて「即時送信」という処理がなされることが
5 開示されており,前記ア(イ)と同様の理由から,本件発明1-4は,乙14発
明と,乙7文献及び乙13文献に基づき,又は,乙14発明と,乙7文献,
乙10公報及び乙13文献に基づき,当業者が容易に想到するものができる
から,進歩性を有しない。
オ 本件発明1-5との対比
10 乙14公報には保留された電子メールの送信が保留時間だけ保留される
ことが開示されており,前記ア(イ)と同様の理由から,本件発明1-5は,乙
14発明と,乙7文献及び乙13文献に基づき,又は,乙14発明と,乙7
文献,乙10公報及び乙13文献に基づき,当業者が容易に想到するものが
できるから,進歩性を有しない。
15 カ 本件発明1-6との対比
原告が充足論で主張するように,ドメイン毎に分割する態様も「各送信先
の各々を個別の送信先とするエンベロープ情報に分割」する態様に該当する
のであれば,この点において乙14発明と本件発明1-6は相違しないから,
前記ア(イ)と同様の理由から,本件発明1-6は,乙14発明と,乙7文献及
20 び乙13文献に基づき,又は,乙14発明と,乙7文献,乙10公報及び乙
13文献に基づき,当業者が容易に想到するものができるから,進歩性を有
しない。
キ 本件発明1-7との対比
乙14公報には送信中止の指示を受けると保留メールが削除されること
25 が開示されており,前記ア(イ)と同様の理由から,本件発明1-7は,乙14
発明と,乙7文献及び乙13文献に基づき,又は,乙14発明と,乙7文献,
乙10公報及び乙13文献に基づき,当業者が容易に想到するものができる
から,進歩性を有しない。
ク 本件発明1-8との対比
乙14公報には所定の時間経過前において保留解除指示に基づいて保留
5 メールを送信することが開示されており,前記ア(イ)と同様の理由から,本
件発明1-8は,乙14発明と,乙7文献及び乙13文献に基づき,又は,
乙14発明と,乙7文献,乙10公報及び乙13文献に基づき,当業者が容
易に想到するものができるから,進歩性を有しない。
ケ 本件発明1-9との対比
10 乙14公報の明細書の発明の詳細な説明の段落【0071】や,乙15公
報及び乙16公報には,保留されたことを送信先に通知することが開示され
ており,前記ア(イ)と同様の理由から,本件発明1-9は,乙14発明と,乙
7文献及び乙13文献(あるいは更に乙15公報及び乙16公報)に基づき,
又は,乙14発明と,乙7文献,乙10公報及び乙13文献(あるいは更に
15 乙15公報及び乙16公報)に基づき,当業者が容易に想到するものができ
るから,進歩性を有しない。
コ 本件発明1-10との対比
(ア) 乙14発明の内容を本件発明1-10に対応する形で表すと,以下のと
おりであり,乙14発明には,構成要件110B,110C,110E及
20 び110Fに対応する各構成が開示されている。
110a’3 電子メールの送信に係る保留等の制御内容を,所定の区分
に対応付けたルールとして記憶し,端末装置から電子メール
を受信し,当該電子メールの送信を制御する電子メール送信
装置の制御方法であって,
25 110b3 複数の送信先が設定された電子メールを端末装置から受信す
る工程と,
110c3 複数の送信先が設定された電子メールを,所定の区分に従っ
て分割する工程と,
110d’3 保留等の制御ルールと保留区分設定部に記憶されている所
定の区分に従って,電子メールの送信の制御を決定する工程,
5 110e3 決定された保留するか否かの制御内容に従って,送信先に対
する電子メールの送信制御を行う工程と,
110f3 を備える電子メール送信装置の制御方法。
(イ) 前記ア(イ)と同様の理由から,本件発明1-10は,乙14発明と,乙
7文献及び乙13文献に基づき,又は,乙14発明と,乙7文献,乙10
10 公報及び乙13文献に基づき,当業者が容易に想到するものができるから,
進歩性を有しない。
サ 本件発明1-11との対比
(ア) 乙14発明の内容を本件発明1-11に対応する形で表すと,以下のと
おりであり,乙14発明には,構成要件111A,111B,111D,
15 111E,111G及び111Hに対応する各構成が開示されている。
111a3 端末装置から電子メールを受信し,当該電子メールの送信を
制御する電子メール送信装置で実行可能なプログラムであっ
て,
111b3 電子メール送信装置を,
20 111c’3 電子メールの送信に係る保留等の制御内容を,所定の区分
に対応付けたルールとして記憶し,
111d3 複数の送信先が設定された電子メールを端末装置から受信し,
111e3 複数の送信先が設定された電子メールを,所定の区分に従っ
て分割し,
25 111f’3 保留等の制御ルールと保留区分設定部に記憶されている所
定の区分に従って,電子メールの送信の制御を決定し,
111g3 決定された保留するか否かの制御内容に従って,送信先に対
する電子メールの送信制御を行う,
111h3 ように機能させるプログラム。
(イ) 前記ア(イ)と同様の理由から,本件発明1-11は,乙14発明と,乙
5 7文献及び乙13文献に基づき,又は,乙14発明と,乙7文献,乙10
公報及び乙13文献に基づき,当業者が容易に想到するものができるから,
進歩性を有しない。
シ 本件発明2-1との対比
(ア) 乙14発明の内容を本件発明2-1に対応する形で表すと,以下のとお
10 りであり,乙14発明には,本件発明2-1の全ての構成要件が開示され
ているから,本件発明2-1は新規性を有しない。
21a3 電子メールに対する送信制御を行う電子メール送信装置であっ
て,
21b3 電子メールの送信又は保留を示す送信制御内容と,送信制御内
15 容を適用する所定の区分とのペアを1以上含む制御ルールを記
憶する保留区分設定部を備え,
21c3 複数の送信先が設定された電子メールを,所定の区分に従って
分割し,
21d3 送信先の属する区分に従って,保留するかどうかを決定し,
20 21e3 電子メールが保留された場合,保留メールの送信可否を確認す
る確認通知を送信元に送信する
21f3 電子メール送信装置。
(イ) 仮に,乙14発明が本件発明2-1の構成要件21Cを開示していない
としても,所定の区分に属する送信先に対する電子メールを保留すること
25 を示唆している乙14公報において,乙7文献及び乙10公報で開示され
ているように,あるカテゴリーに属する送信先に対する電子メールを分割
して保留することは,当業者が容易に想到するから,本件発明2-1は進
歩性を有しない。
(ウ) 仮に,乙14発明では保留時間が経過した後で通知される態様となって
いることから,構成要件21Eを開示していないとしても,保留時間を待
5 つことなく保留されたことを送信先に通知することは周知技術である。す
なわち,保留されたことを送信先に通知することは乙7文献及び乙13文
献に開示されており,乙15公報の請求項1には保留中の電子メールが送
信保留中メールとして送信元のメール送受信端末に送信されること,明細
書の発明の詳細な説明の段落【0040】には,一時保留状態となった場
10 合に送信者に通知がされることがそれぞれ開示されており,段落【004
8】,【0049】等では,保留された旨の通知を受け取った送信者は適
宜修正することができ,一時保留中メールの削除依頼となる電子メールの
送信がなければ,一時保留時間が経過した後,送信メールの宛先への配信
が実行されることが開示されている。さらに,乙16公報にも,保留され
15 たことを送信先に通知することが開示されている。
乙14公報には,保留時間が満了した場合に通知を行うことが開示され
ているのであるから,仮に乙14発明が構成要件21Eを開示していない
としても,乙14発明において,乙7文献,乙13文献,乙15公報及び
乙16公報に記載の周知技術を適用し,保留が決定された際に通知を行う
20 ことは当業者が容易に想到するから,本件発明2-1は進歩性を有しない。
ス 本件発明2-2との対比
保留されたことを送信先とは異なる通知先に通知することは,乙7文献及
び乙13文献に記載されているように従来から行われている周知技術であ
るから,本件発明2-2は,乙14発明と,乙7文献及び乙10公報に基づ
25 き,又は乙14発明と,乙7文献,乙13文献,乙15公報及び乙16公報
に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を有しない。
セ 本件発明2-3との対比
乙14公報の明細書の発明の詳細な説明の段落【0050】には送信中止
の指示を受けると保留メールを削除することが開示されているから,本件発
明2-3は,乙14発明と,乙7文献及び乙10公報に基づき,又は乙14
5 発明と,乙7文献,乙13文献,乙15公報及び乙16公報に基づき当業者
が容易に想到することができるから,進歩性を有しない。
ソ 本件発明2-4との対比
(ア) 乙14発明の内容を本件発明2-4に対応する形で表すと,以下のとお
りであり,乙14発明には,本件発明2-4の全ての構成要件が開示され
10 ているから,本件発明2-4は新規性を有しない。
24a3 電子メールに対する送信制御を行う電子メール送信装置の制御
方法であって,
24b3 電子メールの送信又は保留を示す送信制御内容と,送信制御内
容を適用する所定の区分とのペアを1以上含む制御ルールを記
15 憶する工程と,
24c3 複数の送信先が設定された電子メールを,所定の区分に従って
分割する工程と,
24d3 送信先の属する区分に従って,保留するかどうかを決定する工
程と,
20 24e3 電子メールが保留された場合,保留メールの送信可否を確認す
る確認通知を送信元に送信する
24f3 電子メール送信装置の制御方法。
(イ) 仮に,乙14発明が構成要件24Cを開示していないとしても,本件発
明2-1と同様に,本件発明2-4は,乙14発明と,乙7文献及び乙1
25 0公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を有し
ない。
また,仮に,乙14発明が構成要件24Eを開示していないとしても,
本件発明2-1と同様に,本件発明2-4は,乙14発明と,乙7文献,
乙13文献,乙15公報及び乙16公報に基づき当業者が容易に想到する
ことができるから,進歩性を有しない。
5 タ 本件発明2-5との対比
(ア) 乙14発明の内容を本件発明2-4に対応する形で表すと,以下のとお
りであり,乙14発明には,本件発明2-5の全ての構成要件が開示され
ているから,本件発明2-5は新規性を有しない。
25a3 電子メールに対する送信制御を行う電子メール送信装置で実行
10 されるプログラムであって,当該プログラムは電子メール送信装
置を,
25b3 電子メールの送信又は保留を示す送信制御内容と,送信制御内
容を適用する所定の区分とのペアを1以上含む制御ルールを記
憶し,
15 25c3 複数の送信先が設定された電子メールを,所定の区分に従って
分割し,
25d3 送信先の属する区分に従って,保留するかどうかを決定し,
25e3 電子メールが保留された場合,保留メールの送信可否を確認す
る確認通知を送信元に送信する
20 25f3 ように機能させるプログラム。
(イ) 仮に,乙14発明が構成要件25Cを開示していないとしても,本件発
明2-1と同様に,本件発明2-5は,乙14発明と,乙7文献及び乙1
0公報に基づき当業者が容易に想到することができるから,進歩性を有し
ない。
25 また,仮に,乙14発明が構成要件24Eを開示していないとしても,
本件発明2-1と同様に,本件発明2-5は,乙14発明と,乙7文献,
乙13文献,乙15公報及び乙16公報に基づき当業者が容易に想到する
ことができるから,進歩性を有しない。
(2) 本件発明1の「個々の送信先」及び本件発明2の「個別メール」をそれぞれ
文言どおり解釈する場合,乙7発明にはメッセージをポリシーごとに分割する
5 ことが開示されており,電子メールを個々の送信先に分割することが周知技術
であること(乙8,10,11,12)等からすると,当業者であれば,電子
メールを個々の送信先に分割することに想到することは容易であるから,本件
各発明は,それぞれ進歩性を欠く。
ア 本件発明1-1,1-10及び1-11との対比
10 あるカテゴリーに属する送信先に対する電子メールを分割して保留する
ことは,乙7文献及び乙10公報に明確に開示され,乙14公報に実質的に
開示されている周知技術であり,電子メールを個々の送信先に分割すること
も周知技術であること(乙8公報,乙10公報,乙11公報及び乙12公報)
からすれば,あるカテゴリーに属する送信先に対する電子メールを分割して
15 保留することが示唆されている乙14発明を主引用発明とした場合,個々の
送信先毎に保留させるために電子メールを個々の送信先に分割することは,
当業者が容易に想到することができるから,本件発明1-1,1-10及び
1-11は,進歩性を有しない。
イ 本件発明1-2~1-8との対比
20 前記アと同様の理由により,本件発明1-2~1-8は,進歩性を有しな
い。
ウ 本件発明1-9との対比
前記アと同様に,本件発明1-9は,乙14発明と,乙7文献,乙10公
報及び乙13文献並びに乙8公報,乙11公報及び乙12公報に基づき,又
25 は,乙14発明と,乙7文献,乙8公報及び乙10公報,乙8公報,乙11
公報及び乙12公報並びに乙15公報に基づき容易に想到することができ
るから,進歩性を有しない。
エ 本件発明2-1,2-4及び2-5との対比
前記アと同様に,本件発明2-1,2-4及び2-5は,乙14発明と,
乙7文献及び乙10公報並びに乙8公報,乙11公報及び乙12公報に基づ
5 き,又は,乙14発明と,乙7文献,乙13文献,乙15公報及び乙16公
報並びに乙8公報,乙10公報,乙11公報及び乙12公報に基づき容易に
想到することができるから,進歩性を有しない。
オ 本件発明2-2との対比
前記のとおり,保留されたことを送信先とは異なる通知先に通知すること
10 は周知技術であるから,本件発明2-2は,乙14発明と,乙7文献及び乙
10公報並びに乙8公報,乙11公報及び乙12公報に基づき,又は,乙1
4発明と,乙7文献,乙13文献,乙15公報及び乙16公報並びに乙8公
報,乙10公報,乙11公報及び乙12公報に基づき容易に想到することが
できるから,進歩性を有しない。
15 カ 本件発明2-3との対比
前記のとおり,乙14発明は,送信中止の指示を受けると保留メールを削
除することを開示しているから,本件発明2-3は,乙14発明と,乙7文
献及び乙10公報並びに乙8公報,乙11公報及び乙12公報に基づき,又
は,乙14発明と,乙7文献,乙13文献,乙15公報及び乙16公報並び
20 に乙8公報,乙10公報,乙11公報及び乙12公報に基づき容易に想到す
ることができるから,進歩性を有しない。
(原告の主張)
乙14発明に基づいて本件各発明の新規性や進歩性が否定されることはない。
(1) 本件発明1について
25 ア 本件発明1-1との対比
(ア) 乙14発明を本件発明1-1と対応する形で表すと,以下のとおりであ
る。なお,乙14発明に構成要件11Dに対応する構成はない。
11a3 端末装置から電子メールを受信し,該電子メールの送信を制御
する電子メール送信装置であって,
11b'3 電子メールの送信に係る保留等の制御と,所定の区分とを対応
5 付けてルールとして記憶し,
11c3 複数の送信先が設定された電子メールを端末装置から受信する
送信処理部と,を備え,
11e'3 11b'3で記憶されているルールに従って,送信処理部が保留
するかどうかを決定し,
10 11f3 決定された保留するか否かに従って,送信先に対する電子メー
ルの送信制御を行う,
11g3 を備える電子メール送信装置。
(イ) 相違点
本件発明1-1は,乙14発明と以下の点で相違するから,新規性を有
15 する。
a 相違点3-1-1
本件発明1-1は,「電子メールの送信元と送信先とに対応付けた制
御ルール」(11B)であるのに対し,乙14発明1-1は,「電子メ
ールの送信に係る保留等の制御と,所定の区分とを対応付け」た「ルー
20 ル」(11b'3)である点。
b 相違点3-1-2
本件発明1-1は,「前記受信手段で受信した電子メールに設定され
た複数の送信先を個々の送信先に分割する分割手段」(11D)を備え
るのに対し,乙14発明1-1は,これを備えない点。
25 c 相違点3-1-3
本件発明1-1は,「前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,
前記分割手段で分割された送信先と送信元とに従って,当該分割された
送信先に対する電子メールの送出に係る制御内容を決定」(11E)す
るのに対し,乙14発明1-1は,「11b'3で記憶されているルール
に従って ,送信処理部が保留するかどうかを決定」(11e'3)するも
5 のである点。
d 相違点3-1-4
本件発明1-1は,「分割された送信先に対する前記電子メールの送
信制御を行う」(11F)のに対し,乙14発明1-1は,「送信先に
対する電子メールの送信制御」(11f3)するものである点。
10 (ウ) 進歩性
当業者は,相違点3-1-1~3-1-3を容易に想到することができ
ないから,本件発明1-1は進歩性がある。
イ 本件発明1-2との対比
本件発明1-2は,乙14発明1-1と,少なくとも相違点3-1-1~
15 3-1-4で異なるから,本件発明1-1と同様に新規性及び進歩性を有す
る。
また,乙14発明1-1は,送信先やメール内容等の特定の要素の「分類」
に基づき送出を制御するものであるのに対し,本件発明1-2は,「電子メ
ールの送信元と送信先との組」(12A)といった複数の異なる要素の組み
20 合わせに基づき送出を制御するものである点でも相違し,当業者はこの点も
容易に想到することができない。
ウ 本件発明1-3~1-5との対比
本件発明1-3~1-5は,乙14発明と,少なくとも相違点3-1-1
~3-1-4で異なるから,本件発明1-1と同様に新規性及び進歩性を有
25 する。
エ 本件発明1-6との対比
本件発明1-6は,乙14発明と,少なくとも相違点3-1-1~3-1
-4で異なるから,本件発明1-1と同様に新規性及び進歩性を有する。
また,乙14発明には,本件発明1-6における「エンベロープ情報」に
関する記載は見当たらないから,この点でも本件発明1-6と乙14発明1
5 -1は相違し,当業者はこの点も容易に想到することができない。
オ 本件発明1-7及び1-8との対比
本件発明1-7及び本件発明1-8は,乙14発明1-1と,少なくとも
相違点3-1-1~3-1-4で異なるから,本件発明1-1と同様に新規
性及び進歩性を有する。
10 カ 本件発明1-9との対比
(ア) 本件発明1-9は,乙14発明1-1と,少なくとも相違点3-1-1
~3-1-4で異なるから,本件発明1-1と同様に新規性及び進歩性を
有する。
(イ) 本件発明1-9は,「保留された旨を示す電子メールの通知先が設定」
15 (19A)されているのに対し,乙14公報に,かかる通知先を設定する
ことができる旨の記載は見当たらないことから,乙14発明は,かかる構
成を備えない点でも相違する。
さらに,本件発明1-9は,「電子メールが保留されることが決定され
た場合に…当該電子メールが保留された旨を示す新規の電子メールを送
20 信する」(19B)ものであり,新規の電子メールで,電子メールが保留
された旨を通知するものである。これに対し,乙14公報には,「S14
で保留時間の満了を通知」(【0071】)としか記載されておらず,乙
14発明は,本件発明1-9のように「新規の電子メール」で通知するも
のでなければ,「保留された旨」を通知するものでもない(乙14発明は
25 「保留時間の満了」を通知するものであり,「保留された旨」を通知する
ものではない)点で相違する。
これらの相違点は,乙7文献,乙13公報,乙15公報及び乙16公報
に記載されたものではないから,当業者は,これらの文献に基づき,これ
らの相違点を容易に想到することができない。
キ 本件発明1-10との対比
5 (ア) 乙14発明の内容を本件発明1-10と対応する形で表すと,以下のと
おりである。なお,乙14発明に,構成要件110Cに対応する構成はな
い。
111a3 端末装置から電子メールを受信し,当該電子メールの送信を
制御する電子メール送信装置で実行可能なプログラムあって,
10 111b3 電子メール送信装置を,
111c'3 電子メールの送信に係る保留等の制御内容を,所定の区分に
対応付けたルールとして記憶し,
111d3 複数の送信先が設定されたメッセージを端末装置から受信
し,
15 111f'3 111c'3で記憶されているルールに従って,電子メールの
送信の制御を決定し,
111g3 決定された保留するか否かの制御内容に従って,送信先に対
する電子メールの通信制御を行う,
111h3 ように機能させるプログラム。
20 (イ) 新規性及び進歩性
本件発明1-11は,乙14発明1-11と,少なくとも相違点3-1
-1及び3-1-4と同様の点で異なるから,本件発明1-1と同様に新
規性及び進歩性を有する。
(2) 本件発明2
25 ア 本件発明2-1との対比
(ア) 乙14発明は電子メールを分割しないから,被告が認定する21c3を
備えない。
また,乙14公報には,「S14で保留時間の満了を通知」(【007
1】)としか記載されていないことから,構成21e3は,「送信メールの
保留時間が満了した場合,保留期間が満了したメールの送信可否を確認す
5 る確認通知を送信元に送信する」となる。
(イ) 相違点
本件発明2-1は,以下の点で乙14発明と相違するから新規性がある。
a 相違点3-2-1
本件発明2-1は,「複数の送信先が設定された電子メールから,前
10 記複数の送信先が個別に設定された複数の個別メールを生成する個別
メール生成手段と,」(21C)を備えるのに対し,乙14発明は,こ
れを備えない点。
b 相違点3-2-2
本件発明2-1は,「前記決定手段によりいずれの個別メールが保留
15 されると決定されたかを認識可能にすべく,個別メールが保留されるこ
とが決定された旨を…通知」(21E)するものであるのに対し,乙1
4発明2-1は,「保留期間が満了したメールの送信可否を確認する確
認通知」であり,前者は,保留されることの決定を通知するものである
のに対し,後者は,保留期間が満了したことを通知するものである点。
20 (ウ) 当業者は,相違点3-2-1及び3-2-2を容易に想到することがで
きないから,本件発明2-1は進歩性がある。
イ 本件発明2-2及び2-3について
前記アと同様の理由により,当業者は,本件発明2-1を容易に想到する
ことができないことから,本件発明2-2及び本件発明2-3をも容易に想
25 到することができない。
ウ 本件発明2-4及び2-5について
前記アと同様の理由により,当業者は,本件発明2-4及び本件発明2-
5を容易に想到することができない。
4 争点3-4(乙16発明に基づく進歩性の欠如)について
(被告の主張)
5 原告が充足論で主張するように,本件発明1に係る「個々の送信先」及び本件
発明2に係る「個別メール」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれ
ると解する場合,本件各発明は,乙16公報の特許請求の範囲の請求項1,明細
書の発明の詳細な説明の段落【0025】,【0026】,【0029】,【0
043】,【0047】,【0055】,【0056】,【0074】,【00
10 76】及び【0077】並びに【図1】,【図13】,【図14】及び【図19】
等に記載の乙16発明と,周知技術に基づき当業者が容易に想到することができ
るから,進歩性を有しない。
また,上記「個々の送信先」及び「個別メール」を文言どおり解釈する場合に
は,乙16発明と,周知技術に基づき当業者が容易に想到することができるから,
15 進歩性を有しない。
(1) 本件発明1-1との対比
ア 乙16発明の内容を本件発明1-1に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙16発明には構成要件11A~11C及び11E~11Gに対応
する各構成が開示されている。
20 11a4 端末装置から電子メールを受信し,電子メールの送信を制御する
メール送受信装置であって,
11b4 電子メールの送信に係る保留等の制御と,送信先と送信者とに対
応付けてルールとして記憶し,
11c4 複数の送信先が設定された電子メールを端末装置から受信し,
25 11e4 11b4で記憶されているルールに基づき,送信先のメールアド
レスのドメインが送信者の組織のドメインと同一であるか否かを
判断し,当該電子メールを保留するか,承認せずに送信するかを決
定し,
11f4 決定された制御内容で,送信先に対する電子メールの送信制御を
行う,
5 11g4 メール送受信装置。
イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
解する場合,組織内外で保留するかどうかを決定することを開示している乙
16発明において,複数の電子メールアドレスが設定された場合に,組織内
の電子メールを保留せず,組織外の電子メールだけを保留するために,乙7
10 及び乙10で明確に開示され,乙14で実質的に開示されているように複数
の宛先を含む電子メールを分割することは,当業者が容易に想到することが
できるから,本件発明1-1は,進歩性を有しない。
「個々の送信先」を文言どおり解釈した場合,組織内外で保留するかどう
かを決定することが開示されている乙16発明において,乙7文献,乙10
15 公報及び乙14公報並びに乙8公報,乙11公報及び乙12公報に基づいて,
電子メールの送信を送信者毎に保留するために,電子メールを個々の送信先
に分割することは,当業者が容易に想到することができるから,本件発明1
-1は,進歩性を有しない。
(2) 本件発明1-2との対比
20 ア 乙16発明の内容を本件発明1-2に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙16発明には構成要件12A~12Cに対応する各構成が開示さ
れている。
12a4 送信される電子メールを保留するかどうかは,送信先のメールア
ドレスのドメインが送信者の組織のドメインと同一であるか否か
25 を比較することで行われ,
12b4 送信先のメールアドレスのドメインが送信者の組織のドメインと
同一の場合には電子メールを保留し,異なる場合には電子メール
を保留しないことを決定する,
12c4 メール送受信装置。
イ 本件発明1-2は,本件発明1-1と同様,①侵害論による原告の主張を
5 前提とした場合には,乙16発明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報
により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものであり,②被告が主張
しているように「個々の送信先」を文言どおり解釈した場合には,乙16発
明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報,並びに乙8公報,乙11公報
及び乙12公報により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものである。
10 (3) 本件発明1-3との対比
ア 乙16発明の内容を本件発明1-3に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙16発明には構成要件13A,13Bに対応する各構成が開示さ
れている。
13a4 送信制御の態様には保留が含まれている
15 13b4 メール送受信装置。
イ 本件発明1-3は,本件発明1-1と同様,①侵害論による原告の主張を
前提とした場合には,乙16発明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報
により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものであり,②被告が主張
しているように「個々の送信先」を文言どおり解釈した場合には,乙16発
20 明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報,並びに乙8公報,乙11公報
及び乙12公報により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものである。
(4) 本件発明1-4との対比
ア 乙16発明の内容を本件発明1-4に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙16発明には構成要件14A,14Bに対応する各構成が開示さ
25 れている。
14a4 送信制御の態様には保留せずに送信が含まれている
14b4 メール送受信装置。
イ 本件発明1-4は,本件発明1-1と同様,①侵害論による原告の主張を
前提とした場合には,乙16発明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報
により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものであり,②被告が主張
5 しているように「個々の送信先」を文言どおり解釈した場合には,乙16発
明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報,並びに乙8公報,乙11公報
及び乙12公報により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものである。
(5) 本件発明1-5との対比
無効理由2等で既に主張しているように,保留が設定された場合に,保留時
10 間だけ電子メールを保留し,保留時間が経過した後で当該電子メールを送信す
ることは,乙7文献,乙10公報,乙14公報及び乙15公報で開示されてお
り,周知技術であるから,本件発明1-5は,①侵害論による原告の主張を前
提とした場合には,乙16発明と,乙7文献,乙10公報,乙14公報及び乙
15公報により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものであり,②被告
15 が主張しているように「個々の送信先」を文言どおり解釈した場合には,乙1
6発明と,乙7文献,乙10公報,乙14公報及び乙15公報,並びに乙8公
報,乙11公報及び乙12公報により進歩性を有しておらず,無効とされるべ
きものである。
(6) 本件発明1-6との対比
20 乙7文献,乙10公報及び乙14公報で開示されているように,あるカテゴ
リーに属する送信先に対する電子メールを分割して保留することは周知技術
であり,また,乙8公報,乙10公報,乙11公報及び乙12公報で開示され
ているように,電子メールを個々の送信先に分割することは周知技術であるか
ら,本件発明1-6は,本件発明1-1と同様,①侵害論による原告の主張を
25 前提とした場合には,乙16発明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報に
より進歩性を有しておらず,無効とされるべきものであり,②被告が主張して
いるように「個々の送信先」を文言どおり解釈した場合には,乙16発明と,
乙7文献,乙10公報及び乙14公報,並びに乙8公報,乙11公報及び乙1
2公報により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものである。
(7) 本件発明1-7との対比
5 保留中の電子メールを削除する態様は,無効理由1~3の各主引用発明であ
る乙7文献,乙13及び乙14公報の他,乙15公報でも開示されているよう
に周知技術であるから,本件発明1-7は,①侵害論による原告の主張を前提
とした場合には,乙16発明と,乙7文献,乙10公報,乙14公報,乙15
公報及び乙13文献により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものであ
10 り,②被告が主張しているように「個々の送信先」を文言どおり解釈した場合
には,乙16発明と,乙7文献,乙10公報,乙14公報,乙15公報及び乙
13,並びに乙8公報,乙11公報及び乙12公報により進歩性を有しておら
ず,無効とされるべきものである。
(8) 本件発明1-8との対比
15 ア 乙16発明の内容を本件発明1-8に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙16発明には構成要件18A~18Cに対応する各構成が開示さ
れている。
18a4 保留された電子メールに対して承認を受け付け,
18b4 承認を受けた場合には,組織外に当該電子メールを送信する,
20 18c4 メール送受信装置。
イ 本件発明1-8は,本件発明1-1と同様,①侵害論による原告の主張を
前提とした場合には,乙16発明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報
により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものであり,②被告が主張
しているように「個々の送信先」を文言どおり解釈した場合には,乙16発
25 明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報,並びに乙8公報,乙11公報
及び乙12公報により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものである。
(9) 本件発明1-9との対比
ア 乙16発明の内容を本件発明1-9に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙16発明には構成要件19A~19Cに対応する各構成が開示さ
れている。
5 19a4 選択した承認者に対して,電子メールの組織外への送信が保留さ
れていることを電子メールで通知することを設定可能となり,
19b4 承認のために電子メールが保留された場合には,そのことが承認
者に対して電子メールで通知される
19c4 メール送受信装置。
10 イ 本件発明1-9は,本件発明1-1と同様,①侵害論による原告の主張を
前提とした場合には,乙16発明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報
により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものであり,②被告が主張
しているように「個々の送信先」を文言どおり解釈した場合には,乙16発
明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報,並びに乙8公報,乙11公報
15 及び乙12公報により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものである。
(10) 本件発明1-10との対比
ア 乙16発明の内容を本件発明1-10に対応する形で表すと,以下のとお
りであり,乙16発明には構成要件110A~110Fに対応する各構成が
開示されている。
20 110a4 電子メールの送信に係る保留等の制御内容を,電子メールの送
信者と送信先とに対応付けたルールとして記憶し,端末装置から電
子メールを受信し,電子メールの送信を制御するメール送受信装置
の制御方法であって,
110b4 複数の送信先が設定された電子メールを端末装置から受信する
25 工程と,
110d4 送信先のメールアドレスのドメインが送信者の組織のドメイン
と同一であるか否かを比較し,送信先と送信者とに従って,当該電
子メールを保留するか,承認せずに送信するかを決定する工程と,
110e4 決定された制御内容で,送信先に対する電子メールの送信制御
を行う工程と,
5 110f4 を備えるメール送受信装置の制御方法。
イ 本件発明1-10は,①侵害論による原告の主張を前提とした場合には,
乙16発明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報により進歩性を有して
おらず,無効とされるべきものであり,②被告が主張しているように「個々
の送信先」を文言どおり解釈した場合には,乙16発明と,乙7文献,乙1
10 0公報及び乙14公報,並びに乙8公報,乙11公報及び乙12公報により
進歩性を有しておらず,無効とされるべきものである。
(11) 本件発明1-11との対比
ア 乙16発明の内容を本件発明1-11に対応する形で表すと,以下のとお
りであり,乙16発明には構成要件111A~111Hに対応する各構成が
15 開示されている。
111a4 端末装置から電子メールを受信し,電子メールの送信を制御す
るメール送受信装置の制御方法であって,
111b4 メール送受信装置を,
111c4 電子メールの送信に係る保留等の制御内容を,電子メールの送
20 信者と送信先とに対応付けたルールとして記憶し,
111d4 複数の送信先が設定された電子メールを端末装置から受信し,
111f4 送信先のメールアドレスのドメインが送信者の組織のドメイン
と同一であるか否かを比較し,送信先と送信者とに従って,当該電
子メールを保留するか,承認せずに送信するかを決定し,
25 111g4 決定された制御内容で,送信先に対する電子メールの送信制御
を行う,
111h4 よう機能させるプログラム。
イ 本件発明1-11は,①侵害論による原告の主張を前提とした場合には,
乙16発明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報により進歩性を有して
おらず,無効とされるべきものであり,②被告が主張しているように「個々
5 の送信先」を文言どおり解釈した場合には,乙16発明と,乙7文献,乙1
0公報及び乙14公報,並びに乙8公報,乙11公報及び乙12公報により
進歩性を有しておらず,無効とされるべきものである。
(12) 本件発明2-1との対比
ア 乙16発明の内容を本件発明2-1に対応する形で表すと,以下のとおり
10 であり,乙16発明には構成要件21A~21Fに対応する各構成が開示さ
れている。
21a4 電子メールの送信を制御するメール送受信装置であって,
21b4 送信先が送信者に対して組織外である場合には電子メールを保留
し,送信先が送信者に対して組織内である場合には電子メールを保
15 留しないという,送信制御内容と条件とのペアを1つ以上含むルー
ルを記憶し,
21d4 送信先が送信者に対して組織内である場合には電子メールを保留
しないというルールに従って,電子メールを保留するか保留せずに
送信するかを決定し,
20 21e4 電子メールが保留されている場合には,メール送信画面において
「申請中」と表示され,メールが外部への送信の承認を待っている
状態であることが示されて,送信者に対してその旨を通知する,
21f4 メール送受信装置。
イ 「個々の送信先」に複数のメールアドレスが設定される態様も含まれると
25 解する場合,組織内外で保留するかどうかを決定することを開示している乙
16発明において,複数の電子メールアドレスが設定された場合に,組織内
の電子メールを保留せず,組織外の電子メールだけを保留するために,乙7
及び乙10で明確に開示され,乙14で実質的に開示されているように複数
の宛先を含む電子メールを分割することは,当業者が容易に想到することが
できるから,本件発明2-1は,進歩性を有しない。
5 「個々の送信先」を文言どおり解釈した場合,組織内外で保留するかどう
かを決定することが開示されている乙16発明において,乙7文献,乙10
公報及び乙14公報並びに乙8公報,乙11公報及び乙12公報に基づいて,
電子メールの送信を送信者毎に保留するために,電子メールを個々の送信先
に分割することは,当業者が容易に想到することができるから,本件発明2
10 -1は,進歩性を有しない。
(13) 本件発明2-2との対比
ア 乙16発明の内容を本件発明2-2に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙16発明には構成要件22A~22Cに対応する各構成が開示さ
れている。
15 22a4 選択した承認者に対して,電子メールの組織外への送信が保留さ
れていることを電子メールで通知することを設定可能となり,
22b4 承認のために電子メールが保留された場合には,そのことが承認
者に対して電子メールで通知される
22c4 メール送受信装置。
20 イ 本件発明2-2は,本件発明2-1と同様,①侵害論による原告の主張を
前提とした場合には,乙16発明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報
により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものであり,②被告が主張
しているように「個別メール」を文言どおり解釈した場合には,乙16発明
と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報,並びに乙8公報,乙11公報及
25 び乙12公報により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものである。
(14) 本件発明2-3との対比
ア 乙16発明の内容を本件発明2-3に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙16発明には構成要件23A~23Cに対応する各構成が開示さ
れている。
23a4 保留された電子メールに対して承認(「可決」)又は「否決」を選
5 択でき,
23b4 承認(「可決」)された場合には保留されていた電子メールを組
織外に送信し,「否決」された場合には,送信されずにメール送受
信装置に残されるように処理する,
23c4 メール送受信装置。
10 イ 本件発明2-3は,本件発明2-1と同様,①侵害論による原告の主張を
前提とした場合には,乙16発明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報
により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものであり,②被告が主張
しているように「個別メール」を文言どおり解釈した場合には,乙16発明
と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報,並びに乙8公報,乙11公報及
15 び乙12公報により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものである。
(15)本件発明2-4との対比
ア 乙16発明の内容を本件発明2-4に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙16発明には構成要件24A~24Fに対応する各構成が開示さ
れている。
20 24a4 電子メールの送信を制御するメール送受信装置の制御方法であっ
て,
24b4 送信先が送信者に対して組織外である場合には電子メールを保留
し,送信先が送信者に対して組織内である場合には電子メールを保
留しないという,送信制御内容と条件とのペアを1つ以上含むルー
25 ルを記憶する工程と,
24d4 送信先が送信者に対して組織内である場合には電子メールを保留
しないというルールに従って,電子メールを保留するか保留せずに
送信するかを決定する工程と,
24e4 電子メールが保留されている場合には,メール送信画面において
「申請中」と表示され,メールが外部への送信の承認を待っている
5 状態であることが示されて,送信者に対してその旨を通知する工程
と,
24f4 メール送受信装置の制御方法。
イ 本件発明2-4は,本件発明2-1と同様,①侵害論による原告の主張を
前提とした場合には,乙16発明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報
10 により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものであり,②被告が主張
しているように「個別メール」を文言どおり解釈した場合には,乙16発明
と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報,並びに乙8公報,乙11公報及
び乙12公報により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものである。
(16) 本件発明2-5との対比
15 ア 乙16発明の内容を本件発明2-5に対応する形で表すと,以下のとおり
であり,乙16発明には構成要件25A~25Fに対応する各構成が開示さ
れている。
25a4 電子メールの送信を制御するメール送受信装置で実行されるプロ
グラムであって,プログラムはメール送受信装置を,
20 25b4 送信先が送信者に対して組織外である場合には電子メールを保留
し,送信先が送信者に対して組織内である場合には電子メールを保
留しないという,送信制御内容と条件とのペアを1つ以上含むルー
ルを記憶し,
25d4 送信先が送信者に対して組織内である場合には電子メールを保留
25 しないというルールに従って,電子メールを保留するか保留せずに
送信するかを決定し,
25e4 電子メールが保留されている場合には,メール送信画面において
「申請中」と表示され,メールが外部への送信の承認を待っている
状態であることが示されて,送信者に対してその旨を通知する,
25f4 ように機能させるプログラム。
5 イ 本件発明2-5は,本件発明2-1と同様,①侵害論による原告の主張を
前提とした場合には,乙16発明と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報
により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものであり,②被告が主張
しているように「個別メール」を文言どおり解釈した場合には,乙16発明
と,乙7文献,乙10公報及び乙14公報,並びに乙8公報,乙11公報及
10 び乙12公報により進歩性を有しておらず,無効とされるべきものである。
(原告の主張)
乙16発明に基づいて,本件各発明の新規性及び進歩性が否定されることはな
い。
(1) 本件発明1
15 ア 本件発明1-1との対比
(ア) 乙16公報(請求項1,段落【0025】,【0055】)によれば,
乙16発明の内容を本件発明1-1に対応する形で表すと,以下のとおり
である。
11a₄ 端末装置から電子メールを受信し,電子メールの送信を制御す
20 るメール送受信装置であって,
11b₄ 電子メールの送信に係る保留等の制御と,送信先とに対応付け
てルールとして記憶し,
11c₄ 複数の送信先が設定された電子メールを端末装置から受信し,
11e₄ 11b4で記憶されているルールに基づき,送信先のメールアド
25 レスのドメインが送信者の組織のドメインと同一であるか否か
を判断し,当該電子メールを保留するか,承認せずに送信するか
を決定し,
11f₄ 決定された制御内容で,送信先に対する電子メールの送信制御
を行う,
11g₄ メール送受信装置。
5 (イ) 相違点
a 相違点4-1-1
本件発明1-1は,
「送信元と送信先とに対応付けた制御ルール」
(1
1B)であるのに対し,乙16発明1-1は,「送信先とに対応付けて
ルール」(11b4)である点。
10 b 相違点4-1-2
本件発明1-1は,「前記受信手段で受信した電子メールに設定され
た複数の送信先を個々の送信先に分割する分割手段」(11D)を備え
るのに対し,乙16発明1-1は,これを備えない点。
c 相違点4-1-3
15 本件発明1-1は,「前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,
前記分割手段で分割された送信先と送信元とに従って,当該分割された
送信先に対する電子メールの送出に係る制御内容を決定」(11E)す
るのに対し,乙14発明1-1は,「11b4で記憶されているルールに
基づき,送信先のメールアドレスのドメインが送信者の組織のドメイン
20 と同一であるか否かを判断し,当該電子メールを保留するか,承認せず
に送信するかを決定」(11e4)するものである点。
d 本件発明1-1は,「分割された送信先に対する前記電子メールの送
信制御を行う」(11F)のに対し,乙16発明1-1は,「送信先に
対する電子メールの送信制御」(11f4)するものである点。
25 (ウ) 当業者は,相違点4-1-1~4-1-4を容易に想到することができ
ないから,本件発明1-1は進歩性がある。
イ 本件発明1-2~1-9との対比
本件発明1-2~1-9は,乙16発明と,少なくとも相違点4-1-1
~4-1-4で異なるから,本件発明1-1と同様に進歩性を有する。
ウ 本件発明1-10との対比
5 (ア) 乙16発明の内容を本件発明1-10に対応する形で表すと,以下のと
おりである。
110a₄ 電子メールの送信に係る保留等の制御内容を,電子メールの
送信先とに対応付けたルールとして記憶し,端末装置から電子
メールを受信し,電子メールの送信を制御するメール送受信装
10 置の制御方法であって,
110b₄ 複数の送信先が設定された電子メールを端末装置から受信
する工程と,
110d₄ 送信先のメールアドレスのドメインが送信者の組織のドメ
インと同一であるか否かを比較し,送信先と送信者とに従って,
15 当該電子メールを保留するか,承認せずに送信するかを決定す
る工程と,
110e₄ 決定された制御内容で,送倍先に対する電子メールの送信制
御を行う工程と,
110f₄ を備えるメール送受信装置の制御方法。
20 (イ) 本件発明1-10は,乙16発明と,少なくとも相違点4-1-1~4
-1-4で異なるから,本件発明1-1と同様に進歩性を有する。
エ 本件発明1-11との対比
(ア) 乙16発明の内容を本件発明1-11に対応する形で表すと,以下のと
おりである。
25 111a₄ 端末装置から電子メールを受信し,電子メールの送信を制御
するメール送受信装置の制御方法であって,
111b₄ メール送受信装置を,
111c₄ 電子メールの送信に係る保留等の制御内容を,電子メールの
送信先とに対応付けたルールとして記憶し,
111d₄ 複数の送信先が設定された電子メールを端末装置から受信
5 し,
111f₄ 送信先のメールアドレスのドメインが送信者の組織のドメ
インと同一であるか否かを比較し,送信先と送信者とに従って,
当該電子メールを保留するか,承認せずに送信するかを決定し,
111g₄ 決定された制御内容で,送信先に対する電子メールの送信制
10 御を行う,
111h₄ よう機能させるプログラム。
(イ) 本件発明1-11は,乙16発明と,少なくとも相違点4-1-1~4
-1-4で異なるから,本件発明1-1と同様に進歩性を有する。
(2) 本件発明2
15 ア 本件発明2-1との対比
(ア) 乙16発明の内容を本件発明2-1に対応する形で表すと,以下のとお
りである。
21a₄ 電子メールの送信を制御するメール送受信装置であって,
21b₄ 送信先が送信者に対して組織外である場合には電子メールを保
20 留し,送信先が送信者に対して組織内である場合には電子メール
を保留しないという,送信制御内容と条件とのペアを1つ以上含
むルールを記憶し,
21d₄ 送信先が送信者に対して組織内である場合には電子メールを保
留しないというルールに従って,電子メールを保留するか保留せ
25 ずに送信するかを決定し,
21e₄ 電子メールが保留されている場合には,メール送信画面におい
て「申請中」と表示され,メールが外部への送信の承認を待って
いる状態であることを表示する,
21f₄ メール送受信装置。
(イ) 相違点
5 本件発明2-1は,乙16発明と以下の点で相違する。
a 相違点4-2-1
本件発明2-1は,「前記複数の送信先が個別に設定された複数の個
別メールを生成する個別メール生成手段」
(21C)を備えるのに対し,
乙16発明2-1は,これを備えない点。
10 b 相違点4-2-2
本件発明2-1は,「個別メール」(21D)の送信制御内容を決定
するのに対し,乙16発明2-1は,「電子メール」(21d₄)を保留
するか否かを決定するものである点。
c 相違点4-2-3
15 本件発明2-1は,「個別メール」の保留を「通知する通知手段」(2
1E)であるのに対し,乙16発明2-1は,「電子メール」の保留を
「表示する」(21e₄)ものである点。
(ウ) 進歩性
相違点4-2-1~4-2-3は,当業者が容易に想到できるものでは
20 ないから,本件発明2-1は進歩性を有する。
イ 本件発明2-2及び2-3
本件発明2-2及び2-3は,乙16発明と,少なくとも相違点4-2-
1~相違点4-2-3で異なるから,本件発明2-1と同様に進歩性を有す
る。
25 ウ 本件発明2-4
(ア) 乙16発明の内容を本件発明2-4に対応する形で表すと,以下のとお
りである。
24a₄ 電子メールの送信を制御するメール送受信装置の制御方法であ
って,
24b₄ 送信先が送信者に対して組織外である場合には電子メールを保
5 留し,送信先が送信者に対して組織内である場合には電子メール
を保留しないという,送信制御内容と条件とのペアを1つ以上含
むルールを記憶する工程と,
24d₄ 送信先が送信者に対して組織内である場合には電子メールを保
留しないというルールに従って,電子メールを保留するか保留せ
10 ずに送信するかを決定する工程と,
24e₄ 電子メールが保留されている場合には,メール送信画面におい
て「申請中」と表示され,メールが外部への送信の承認を待ってい
る状態であることを表示する工程と,
24f₄ メール送受信装置の制御方法。
15 (イ) 進歩性
本件発明2-4は,乙16発明と,少なくとも相違点4-2-1~相違
点4-2-3で異なるから,本件発明2-1と同様に進歩性を有する。
エ 本件発明2-5
(ア) 乙16発明の内容を本件発明2-5に対応する形で表すと,以下のとお
20 りである。
25a₄ 電子メールの送信を制御するメール送受信装置で実行されるプ
ログラムであって,プログラムはメール送受信装置を,
25b₄ 送信先が送信者に対して組織外である場合には電子メールを保
留し,送信先が送信者に対して組織内である場合には電子メール
25 を保留しないという,送信制御内容と条件とのペアを1つ以上含
むルールを記憶し,
25d₄ 送信先が送信者に対して組織内である場合には電子メールを保
留しないというルールに従って,電子メールを保留するか保留せ
ずに送信するかを決定し,
25e₄ 電子メールが保留されている場合には,メール送信画面におい
5 て「申請中」と表示され,メールが外部への送信の承認を待ってい
る状態であることを表示する,
25f₄ ように機能させるプログラム。
(イ) 進歩性
本件発明2-5は,乙16発明と,少なくとも相違点4-2-1~相違
10 点4-2-3で異なるから,本件発明2-1と同様に進歩性を有する。
5 争点3-5(明確性要件違反)
(被告の主張)
(1) 本件発明1-1の「個々の送信先」及び本件発明2-1の「個別メール」に
関する明確性要件欠如
15 仮に「送信先」に「ドメイン」が含まれると解釈するのであれば,例えば乙
7文献のように「シナリオ」毎に分割したメールが本件発明1-1における
「個々の送信先」や本件発明2-1における「複数の送信先が個別に設定され
た複数の個別メール」に該当することになると考えられ,乙14公報のように
「所定の区分」毎に分割したメールが本件発明1-1における「個々の送信先」
20 や本件発明2-1における「複数の送信先が個別に設定された複数の個別メー
ル」に該当することになると考えられるが,そうすると,どのような態様まで
が「個々の送信先」及び「個別メール」に該当することになるのかは不明であ
って,本件発明1-1における「個々の送信先」や本件発明2-1における「複
数の送信先が個別に設定された複数の個別メール」の意味するところが不明確
25 となり,本件発明1-1及び本件発明2-1における権利の外郭が不明確とな
る。
したがって,本件発明1-1~1-11及び本件発明2-1~2-5は,不
明確ゆえ無効とされるべきである(特許法36条6項2号,123条1項4号)。
(2) 本件発明2-1の「電子メールの送出又は保留を示す送信制御内容」に関す
る明確性要件欠如
5 原告は,本件発明2-1の構成要件21Bにつき,「電子メールの送出又は
保留を示す送信制御内容」とは「電子メールの送出」と「電子メールの保留」
の少なくともいずれか一方を含むものと解釈しているが,かかる解釈を前提と
すると,構成要件21Bは「電子メールの保留を示すが,電子メールの送出を
示さない送信制御内容」を包含している。
10 そして,本件発明2-1は「個別メールの各々に対する送信制御内容を決定
する」(構成要件21C参照)ものであるところ,送信制御内容が「電子メー
ルの送出」を示さない以上,個別メールが送出されることはないが,送信制御
内容として個別メールを送出しない「電子メールに対する送信制御を行う情報
処理装置」(構成要件21A)とはいかなるものか不明確である。
15 また,被告の上記解釈を前提とすると,構成要件21Bは「電子メールの送
出を示すが,電子メールの保留を示さない送信制御内容」を包含している。そ
して,本件発明2-1は「個別メールの各々に対する送信制御内容を決定する」
(構成要件21C参照)ものであるが,送信制御内容が「電子メールの保留」
を示さない以上,個別メールが保留されることはない。一方で,本件発明2-
20 1は「いずれの個別メールが保留されると決定されたかを」
(構成要件21E)
との構成を有しており,個別メールが保留されることが前提となっている。送
信制御内容として個別メールを保留しない本件発明2-1において,どのよう
にして個別メールが「保留されると決定され」るのか不明確である。
したがって,原告が主張する上記解釈を採るのであれば,本件発明1-1~
25 1-11及び本件発明2-1~2-5は,不明確ゆえ無効とされるべきである
(特許法36条6項2号,123条1項4号)。
(原告の主張)
(1) 本件発明1-1の「個々の送信先」及び本件発明2-1の「個別メール」に
ついて
「送信先」に「ドメイン」が含まれることは,本件特許権1の【図5】等に
5 おいて,明確に記載されているから,「個々の送信先」及び「個別メール」は
不明確ではない。
(2) 本件発明2-1の「電子メールの送出又は保留を示す送信制御内容」につい
て
「電子メールの送出又は保留を示す送信制御内容」(構成要件21B)のと
10 おり,電子メールを「送出」又は「保留」することが「送信制御」に含まれる
ことが前提であることからすると,「電子メールに対する送信制御を行う情報
処理装置」(構成要件21A)とは,電子メールを「送出」又は「保留」する
制御を行う情報処理装置である。したがって,個別メールを送出せず,保留す
る場合でも,電子メールに対する送信制御を行っていることから,「電子メー
15 ルに対する送信制御を行う情報処理装置」がいかなるものかは明らかである。
また,「送信制御内容」には,電子メールの「送出」又は「保留」があり(構
成要件21B),「決定手段」は個別メールの「送信制御内容」を決定するも
のであることから,個別メールについて送信又は保留のいずれかが決定される。
したがって,個別メールが「保留されると決定」(構成要件21E)されるの
20 は,「決定手段」が個別メールを保留すると決定した場合であり,「通知手段」
は,個別メールが保留されると決定された場合に通知するものである(構成要
件21E)から,個別メールについて送信されると決定された場合は,「保留
されると決定」されなくてもよい。
以上のとおり,本件発明2-1の「電子メールの送出又は保留を示す送信制
25 御内容」は,不明確ではない。
6 争点3-6(サポート要件違反)について
(被告の主張)
(1) 本件発明1-1の「送信先に分割」及び本件発明2-1の「送信先が個別に
設定された個別メールの生成」に関するサポート要件欠如
本件明細書等1及び2では,個々の送信先に電子メールを分割することだけ
5 が開示されており,ドメイン毎に電子メールを分割することは全く開示されて
おらず,ドメイン毎に電子メールを分割するのであれば,当業者であっても本
件発明1及び2は当該発明の課題を解決できると認識できない。
したがって,仮に本件発明1及び2の権利範囲にドメイン毎に電子メールを
分割する態様を含めて解釈した場合には,本件明細書に記載されていない内容
10 まで権利範囲を拡張することとなるから,このような解釈を仮に採るのであれ
ば,本件発明1-1~1-11及び本件発明2-1~2-5の各々はサポート
要件に違反し無効とされるべきである(特許法36条6項1号,123条1項
4号)。
(2) 本件発明2-1の「電子メールの送出又は保留を示す送信制御内容」に関す
15 るサポート要件欠如
前記のとおり,原告の解釈を前提とすると,構成要件21Bは「電子メール
の保留を示すが,電子メールの送出を示さない送信制御内容」及び「電子メー
ルの送出を示すが,電子メールの保留を示さない送信制御内容」を包含するが,
本件明細書等1及び2では,送信制御内容が電子メールの保留及び送出の「両
20 方」を示すことだけが開示されており,保留及び送出の一方のみを示すことは
全く開示されていないし,また,送信制御内容として保留及び送出の両方が可
能であり,個別メールを保留するか送出するかを決定するからこそ,「個別メ
ールが保留されることが決定された旨を通知し,いずれの個別メールが保留さ
れると決定されたかを認識可能にする仕組みを提供する」(本件明細書等2の
25 段落【0006】)」という課題を解決できるのであり,送信制御内容が保留
のみ,あるいは,送出のみである場合に,かかる課題をいかにして解決できる
のか当業者であっても認識できない。
したがって,原告が主張する「「電子メールの送出又は保留を示す送信制御
内容」とは「電子メールの送出」と「電子メールの保留」の少なくともいずれ
か一方を含む」という解釈を採るのであれば,本件発明1-1~1-11及び
5 本件発明2-1~2-5の各々はサポート要件に違反し無効とされるべきで
ある(特許法36条6項1号,123条1項4号)。
(原告の主張)
(1) 本件発明1-1の「送信先に分割」及び本件発明2-1の「送信先が個別に
設定された個別メールの生成」について
10 電子メールを分割する対象としての「送信先」にドメインが含まれることは,
本件明細書等12の段落【0061】及び【図4】に明確に記載されている。
また,ドメイン毎に分割した場合に,「x.co.jp」あるいは「y.co.
jp」と同じドメインの電子メールアドレスを宛先とする電子メールが保留さ
れたとしても,これらと異なるドメインの電子メールドレスを宛先とする電子
15 メールは送信されることから,乙15公報の課題を解決することはできるし,
段落【0006】により,当業者は,本件特許発明の当該課題を解決できると
認識できる。本件発明2についても同様である。
したがって,この点についてのサポート要件違反はない。
(2) 本件発明2-1の「電子メールの送出又は保留を示す送信制御内容」につい
20 て
本件明細書等1の段落【0043】及び【図5】には,送出制御情報が保留
又は送出の一方のみを示すことが開示されている。また,送信制御内容が保留
のみ,あるいは,送出のみというのは,【図5】における1つのIDに設定さ
れる送信制御内容は,保留のみか,あるいは送出のみかということであること
25 から,1つのIDに1つのアクションとして送出又は保留が設定された場合に
課題を解決できることを,当業者は,容易に認識することができる。本件発明
2についても同様である。
したがって,この点についてのサポート要件違反はない。
別紙7
争点4(本件発明1-3,1-4,1-6及び1-11につき,訂正の再抗弁の成
否)に関する当事者の主張
(原告の主張)
5 1 本件訂正請求における訂正事項は,以下の訂正事項1~6のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3に,
「 前記記憶手段に記憶されている送出制御情報には, 」と記載されている
のを,
10 「 前記分割手段は,前記受信手段で受信した電子メールに設定された複数の
送信先のすべてを個々の送信先に分割し,
前記決定手段は,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手段
で分割された送信先と送信元とに従って,当該分割されたすべての個々の送信先
に対する電子メールの送出に係る制御内容を決定し,
15 前記記憶手段に記憶されている送出制御情報には, 」
に訂正する(下線部が訂正箇所。以下,同様とする。)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に,
「 前記記憶手段に記憶されている送出制御情報には, 」と記載されている
20 のを,
「 前記記憶手段に記憶されている制御ルールは,電子メールのすべての送信
先に共通して,前記制御内容の決定に用いられるものであり,
前記記憶手段に記憶されている送出制御情報には, 」
に訂正し,
25 「 請求項1乃至3の何れか1項に記載 」
と記載されているのを,
「 請求項1又は2に記載 」
に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に,
5 「 各送信先の各々を個別の送信先とするエンベロープ情報に分割し, 」
と記載されているのを,
「 各送信先の各々を個別の送信先とするエンベロープ情報に分割し,
かつ,当該電子メールのヘッダ情報を分割せず, 」
に訂正する。
10 (4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項13に,
「 として機能させることを特徴とするプログラム。 」
と記載されているのを,
「 として機能させるプログラムにおいて,前記記憶手段に記憶されている制
15 御ルールは,電子メールのすべての送信先に共通して,前記制御内容の決定に用
いられるものであり,前記分割手段は,前記受信手段で受信した,複数の送信先
が設定された電子メールのエンベロープ情報を,各送信先の各々を個別の送信先
とするエンベロープ情報に分割し,かつ,当該電子メールのヘッダ情報を分割せ
ず,前記決定手段は,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手
20 段で分割されることにより得られるエンベロープ情報とに従って,当該エンベロ
ープ情報を含む電子メールの送出に係る制御内容を決定し,前記制御手段は,前
記決定手段で決定された制御内容で,当該エンベロープ情報を含む電子メールの
送出制御を行うことを特徴とするプログラム。 」
に訂正する。
25 (5) 訂正事項5
明細書の段落【0007】に,
「 として機能させる。 」
と記載されているのを,
「 として機能させるプログラムにおいて,前記記憶手段に記憶されている制
御ルールは,電子メールのすべての送信先に共通して,前記制御内容の決定に用
5 いられるものであり,前記分割手段は,前記受信手段で受信した,複数の送信先
が設定された電子メールのエンベロープ情報を,各送信先の各々を個別の送信先
とするエンベロープ情報に分割し,かつ,当該電子メールのヘッダ情報を分割せ
ず,前記決定手段は,前記記憶手段に記憶されている制御ルールと,前記分割手
段で分割されることにより得られるエンベロープ情報とに従って,当該エンベロ
10 ープ情報を含む電子メールの送出に係る制御内容を決定し,前記制御手段は,前
記決定手段で決定された制御内容で,当該エンベロープ情報を含む電子メールの
送出制御を行う。 」
に訂正する。
2 訂正事項が訂正要件を満たすこと
15 訂正事項1~4は,いずれも特許請求の範囲を減縮しようとするものであり,い
ずれも願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の
訂正であるし,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではなく,特許
出願の際に独立して特許を受けることができるものであるから,特許法126条の
規定に適合している。
20 訂正事項5は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって,願書に添付し
た明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるし,実質
上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,,特許法126条の
規定に適合している。
3 本件訂正発明1には無効理由がないこと
25 訂正事項の付加により,これまでに被告が無効論において公知技術と同一又は公
知技術から容易想到であることを主張していない新たな構成要件が付加されるこ
とから,本件訂正により,本件訂正発明1に被告が主張する無効理由が存在しない。
4 被告装置及び被告製品が本件各訂正発明の技術的範囲に属すること
本件訂正発明1-3,1-4及び1-6の構成要件は前記前提事実(2)オ(ア)~
(ウ)のとおりであり,これらと対比する被告装置の構成は別紙5イ号物件目録記載
5 第1の13~15のとおりであって,被告装置は本件訂正発明1-3,1-4及び
1-6を充足する。
また,本件訂正発明1-11の構成要件は前記前提事実(2)オ(エ)のとおりであり,
これと対比する被告製品の構成は同目録記載第3の3のとおりであって,被告製品
は本件訂正発明1-11を充足する。
10 (被告の主張)
本件訂正によっても被告が主張する無効理由はいずれも解消されないから,本件
訂正発明1に係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
別紙8
被告製品 発生した損害額 請求金額
「m-FILTER」
¥11,331,147 ¥11,331,147
Ver.4.30R01
「m-FILTER」
¥49,731,147 ¥49,731,147
Ver.4.30R02
「m-FILTER」
¥7,554,098 ¥7,554,098
Ver.4.40R01
「m-FILTER」
¥45,324,590 ¥17,383,608
Ver.4.40R02
「m-FILTER」
¥34,622,950 ¥1,000,000
Ver.4.40R03
「m-FILTER」
¥40,288,524 ¥1,000,000
Ver.4.50R01
「m-FILTER」
¥86,147,765 ¥1,000,000
Ver.4.60R01
「m-FILTER」
¥28,405,479 ¥1,000,000
Ver.4.70R01
「m-FILTER」
¥12,309,041 ¥1,000,000
Ver.4.70R02
「m-FILTER」
¥87,110,136 ¥1,000,000
Ver.4.70R03
「m-FILTER」
¥72,907,397 ¥1,000,000
Ver.4.80R01
「m-FILTER」
¥146,761,643 ¥1,000,000
Ver.4.81R01
「m-FILTER」
¥144,527,079 ¥1,000,000
Ver.4.82R01
「m-FILTER」
¥15,907,068 ¥1,000,000
Ver.4.82R02
「m-FILTER」
¥12,952,898 ¥1,000,000
Ver.4.82R03
「m-FILTER」
¥69,991,101 ¥1,000,000
Ver.5.00R01
「m-FILTER」
¥39,994,915 ¥1,000,000
Ver.5.01R01
「m-FILTER」
¥51,811,594 ¥1,000,000
Ver.5.01R02
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