ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成30(ワ)12609 特許権侵害差止請求事件
| 裁判所 | 東京地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和1年10月9日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 法令 |
特許権 特許法101条1号4回 特許法101条2号1回 |
| キーワード | 実施31回 進歩性27回 特許権23回 無効22回 侵害13回 差止11回 無効審判11回 優先権8回 訂正審判8回 間接侵害5回 審決4回 |
| 主文 | 1 被告は,別紙2被告製品目録記載1及び2の各スマートフォン用アプリケーションの作成,使用,譲渡等(譲渡,貸渡し,電気通信回線を通じた提供)又は譲渡等の申出(ダウンロード用の画面をウェブサイトに表示すること及び同画面へのリンクを他の画面へ表示10することを含む。)をしてはならない。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は,仮に執行することができる。 |
| 事件の概要 | 1 事案の要旨........................................................ 4 2 前提事実.......................................................... 6 3 争点.............................................................. 920 第2 事案の概要 |
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令和元年10月9日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成30年(ワ)第12609号 特許権侵害差止請求事件
口頭弁論終結日 令和元年7月8日
判 決
当事者の表示 別紙1当事者目録記載のとおり
主 文
1 被告は,別紙2被告製品目録記載1及び2の各スマートフォン用
アプリケーションの作成,使用,譲渡等(譲渡,貸渡し,電気通信
回線を通じた提供)又は譲渡等の申出(ダウンロード用の画面をウ
ェブサイトに表示すること及び同画面へのリンクを他の画面へ表示
することを含む。)をしてはならない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
目次
第1 請求 ............................................................ 4
第2 事案の概要 ...................................................... 4
1 事案の要旨 ........................................................ 42 前提事実 .......................................................... 63 争点 .............................................................. 9
第3 争点に対する当事者の主張 ....................................... 10
1 争点1(本件アプリは本件発明1の技術的範囲に属するか)について .. 10
⑴ 争点1-1(本件アプリは構成要件1Bを充足するか)について ...... 10
【
(原告の主張)
】 ....................................................... 10【
(被告の主張)
】 ....................................................... 10
⑵ 争点1-2(本件アプリは構成要件1Dを充足するか)について ...... 11
【
(原告の主張)
】 ....................................................... 11【
(被告の主張)
】 ....................................................... 11
2 争点2(本件スマートフォンは本件発明2の技術的範囲に属するか)につい
5 て ................................................................... 12
⑴ 争点2-1(本件スマートフォンは構成要件2Aを充足するか)について12
【
(原告の主張)
】 ....................................................... 12【
(被告の主張)
】 ....................................................... 12
⑵ 争点2-2(本件スマートフォンは構成要件2Cを充足するか)について13
【
(原告の主張)
】 ....................................................... 13【
(被告の主張)
】 ....................................................... 13
3 争点3(本件特許権2について,特許法101条1号及び同条2号の間接侵
害は成立するか)について ............................................. 14【
(原告の主張)
】 ....................................................... 14【
(被告の主張)
】 ....................................................... 14
4 争点4(本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものか)につい
て ................................................................... 14
⑴ 争点4-1(本件発明1は乙2公報により進歩性を欠くか)について .. 14
【
(被告の主張)
】 ....................................................... 14【
(原告の主張)
】 ....................................................... 18
⑵ 争点4-2(本件発明1は乙9公報により進歩性を欠くか)について .. 20
【
(被告の主張)
】 ....................................................... 21【
(原告の主張)
】 ....................................................... 24
5 争点5(本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものか)につい
て ................................................................... 26
⑴ 争点5-1(本件発明2は乙2公報により進歩性を欠くか)について .. 26
【
(被告の主張)
】 ....................................................... 26【
(原告の主張)
】 ....................................................... 27
⑵ 争点5-2(本件発明2は乙9公報により進歩性を欠くか)について .. 29
【
(被告の主張)
】 ....................................................... 29
5 【
(原告の主張)
】 ....................................................... 30
6 争点6(差止めの必要性は認められるか)について................... 31
【
(原告の主張)
】 ....................................................... 32【
(被告の主張)
】 ....................................................... 32
第3 争点に対する当事者の主張
1 争点1(本件アプリは本件発明1の技術的範囲に属するか)について
⑴ 争点1-1(本件アプリは構成要件1Bを充足するか)について
【
(原告の主張)
】案内音声を音響IDと重畳させて放音し,当該案内音声を識別するものとして音響IDを使用することは,典型的な音響IDの使用方法であって,被告は,顧客に対し,そのような態様で本件アプリを使用することを積極的に促していることなどからすると,本件アプリは,「案内音声と当該案内音声を識別するIDコードを含む音響IDとを含有する音響を収音し,当該音響からIDコードを抽出する情報抽出手段」(構成1b)を備えており,構成要件1Bを充足する。【
(被告の主張)
】構成1bは否認する。被告サービスにおいて,被告は,放音される音響やIDコードの識別対象を決定しておらず,これらを選択,決定しているのは顧客であって,いずれも「案内音声」に限られるものではない。本件アプリの利用場面の中で,最も多くの需要が見込まれているのは商品説明の場合であるが,商品説明において,放音装置から音声が発せられることは必須ではなく,かえって,音声が放音される
5 とスマートフォンに表示される情報を理解する妨げになる。
したがって,本件アプリは構成要件1Bを充足するとはいえない。
⑵ 争点1-2(本件アプリは構成要件1Dを充足するか)について
【
(原告の主張)
】ア 被告は,アナウンスに関連する情報を多言語で提供する用途に本件アプリを使用することを宣伝していることなどからすると,本件アプリは,「前記案内音声の発音内容を表す関連情報であって,前記リクエスト情報に含まれるIDコードに対応するとともに,6個までのアプリ使用言語に対応する複数の情報のうち,前記リクエスト情報のアプリ使用言語に対応する情報を受信する受信手段」(構成1d)を備えており,構成要件1Dを充足する。イ 「関連情報」は,構成要件1Dのとおり「相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求の言語情報で指定された言語に対応する」ものであり,
第1言語で発音される案内音声の発音内容を第1言語で表した文字列に限定されな
い。【
(被告の主張)
】ア 構成1dは否認する。被告サービスにおいて,被告は,本件スマートフォンが受信する情報を決定しておらず,これを選択,決定しているのは顧客であって,構成要件1D所定のものに限られない。本件アプリに係るシステムは実証実験の段階にあったが,被告は,同実験において,本件アプリを用いて「案内音声である再生対象音の発音内容」を関連情報として出力したことはなく,外国語に翻訳した内容を関連情報として出力したこともない。また,被告は,今後,顧客に対し,案内音声である再生対象音の発音内容を表す他国語の関連情報を提供することを禁ずる旨の約束をする意思がある。イ 原告は,本件訂正審判請求1に当たり,特許請求の範囲に「前記案内音声である再生対象音の発音内容を表す関連情報であって」との文言を追加する旨の訂正事項が明細書の記載事項の範囲内であることを示す根拠として,本件特許1に係る
5 明細書(以下「本件明細書1」という。)の段落【0041】(以下,公報,明細
書の段落については,単に「【0041】」などと示す。)を挙げているところ,同段落には,第1実施形態の態様1として,第2言語に翻訳することなく,第1言語の指定文字列のまま関連情報Qとすることが記載されていることなどからすると,「関連情報」は,第1言語で発音される案内音声の発音内容を第1言語で表した文字列であると解すべきであるが,前記アのとおり,本件アプリが受信する情報は,そのような文字列を表す情報に限られない。ウ 以上より,本件アプリは構成要件1Dを充足するとはいえない。
2 争点2(本件スマートフォンは本件発明2の技術的範囲に属するか)につい
て
⑴ 争点2-1(本件スマートフォンは構成要件2Aを充足するか)について
【
(原告の主張)
】
第1言語の案内音声を音響IDと重畳させて放音し,当該案内音声を識別するも
のとして音響IDを使用することは,典型的な音響IDの使用方法であって,被告は,顧客に対し,そのような態様で本件アプリを使用することを積極的に促していることなどからすると,本件スマートフォンは,「第1言語の案内音声と当該案内音声を識別するIDコードを示す音響IDとを含む音響を収音する収音装置」(構成2a)を備えており,構成要件2Aを充足する。【
(被告の主張)
】構成2aは否認する。被告サービスにおいて,本件スマートフォンは,音響を放音するシステムから独立したものであり,収音される音響やIDコードの識別対象を選択,決定しているのは顧客であって,いずれも「第1言語の案内音声である再生対象音」に限られるものではない。したがって,本件スマートフォンは構成要件2Aを充足するとはいえない。
⑵ 争点2-2(本件スマートフォンは構成要件2Cを充足するか)について
【
(原告の主張)
】
5 ア 被告は,アナウンスに関連する情報を多言語で提供する用途に本件アプリを
使用することを宣伝していることなどからすると,本件スマートフォンは,「前記情報抽出部が抽出したIDコードに対応し,前記案内音声が表す発音内容を前記第1言語とは異なる第2言語で表現した情報の所在を示すURLを受信する通信部」(構成2c)を備えており,構成要件2Cを充足する。イ URLによって所在が示される情報は,構成要件2Cのとおり「情報抽出部が抽出した識別情報に対応し,前記案内音声である再生対象音が表す発音内容を前記第1言語とは異なる第2言語で表現した」ものであり,第1言語の案内音声の発音内容を第2言語に機械翻訳した変換文字列に限定されない。【
(被告の主張)
】ア 構成2cは否認する。被告サービスにおいて,被告は,本件スマートフォンが受信する情報を決定しておらず,これを選択,決定しているのは顧客であって,構成要件2C所定のものに限られない。被告は,本件アプリに係る実証実験において,本件スマートフォンによって,第1言語の案内音声を収音し,第2言語の情報として「案内音声である再生対象音が表す発音内容」の所在を示すURLを受信したことはない。また,被告は,今後,顧客に対し,案内音声である第1言語の再生対象音が表す発音内容を第2言語で表現した情報を提供することを禁ずる旨の約束をする意思があるイ 原告は,本件訂正審判請求2に当たり,特許請求の範囲の「前記再生対象音が表す情報」を「前記案内音声である再生対象音が表す発音内容」と訂正する旨の訂正事項が明細書の記載事項の範囲内であることを示す根拠として,本件特許2に係る明細書の【0046】を挙げているところ,同段落には,第1実施形態の態様6として,図15を示しつつ,案内音声の発音内容を表現する文字列を関連情報Qとして生成することが記載されているほか,同【0047】には,第1実施例の態様7として,図16を示しつつ,機械翻訳により案内音声を第2言語で表現した変換文字列を関連情報Qとして生成することが記載されていることからすると,「前
5 記案内音声である再生対象音が表す発音内容を前記第1言語とは異なる第2言語で
表現した情報」は,第1言語の案内音声の発音内容を第2言語に機械翻訳した変換文字列であると解されるが,前記アのとおり,本件スマートフォンが受信する情報は,この文字列に限られない。ウ 以上より,本件スマートフォンは構成要件2Cを充足するとはいえない。
3 争点3(本件特許権2について,特許法101条1号及び同条2号の間接侵
害は成立するか)について【
(原告の主張)
】
⑴ 本件アプリは,本件発明2の技術的範囲に属する端末装置の生産にのみ用い
る物であるから,被告による本件アプリの作成,譲渡等及び譲渡等の申出は,特許法101条1号の間接侵害に当たる。
⑵ 本件アプリは,本件発明2による課題の解決に不可欠なものであり,被告は,
本件発明2が特許発明であること及び本件アプリが本件発明2の実施に用いられることを認識しているから,被告による本件アプリの作成,譲渡等及び譲渡等の申出は,特許法101条2号の間接侵害に当たる。【
(被告の主張)
】否認ないし争う。
4 争点4(本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものか)につい
て
⑴ 争点4-1(本件発明1は乙2公報により進歩性を欠くか)について
【
(被告の主張)
】以下のとおり,本件発明1は,本件優先日1前に公開された乙2公報記載の発明(以下,本件発明1に対応する発明を「乙2発明1」という。)等に基づき,当業者が容易に想到し得たものであり,進歩性を欠く。ア 乙2発明1(ア) 乙2公報には,別紙7「主張対比表(乙2公報,乙9公報関係)」記載1⑴
5 「
(被告の主張)
」欄のとおり,相違点1-1ないし同1-4において本件発明1と相違するものの,その余の構成で一致する乙2発明1が開示されている。(イ) 相違点に関する
(原告の主張)
に対する反論は次のとおりである。a 相違点1-1(構成要件1B)乙2発明1の「IDコード」は,番組と同時に,番組の放送音声という「再生対象音」も識別しているから,「再生対象音の識別情報」が放音される点では本件発明1と相違しない。b 相違点1-2(構成要件1C)乙2発明1では,ユーザがボタンスイッチを押した時刻は「端末装置にて指定された…情報」に該当するから,「端末装置にて指定された…情報」が「言語を示す言語情報」であるか「ボタンスイッチの操作タイミングを示す情報」であるかの点でのみ本件発明1と相違する。c 相違点1-3(構成要件1D①)乙2発明1で,携帯端末装置が受信する情報は,番組の特定の場面に対応する放送音声に関連するものであるから,端末装置が受信する「関連情報」が「再生対象音」である点では本件発明1と相違しない。d 相違点1-4(構成要件1D②)構成要件1Dの「相異なる言語に対応する複数の関連情報」は同時に存在する必要はないと解すべきところ,乙2発明1では,番組中の相異なる場面に対応する「複数の関連情報」が存在し,そのうち選ばれた情報を受信しているから,「関連情報」が対応しているのが「言語」であるか「場面」であるかの点でのみ本件発明1と相違する。イ 乙4課題乙4公報には,放音装置を備えた従来の無人ガイド装置における多言語に対応した外国人への音声サービスの提供という公知の課題(以下「乙4課題」という。)が記載されている。
5 ウ 容易想到性
(ア) 乙2公報は,音響IDとインターネットを用いて,放音装置から放音された音響IDによって識別される識別対象の情報に対し,これと関連する任意の関連情報をサーバから端末装置に供給できる技術(以下「乙2技術」という。)を開示しているところ,本件発明1も乙2技術を採用するものであり,相違点1-1ないし同1-4は,①識別対象,②複数の関連情報の選択条件,③関連情報の内容に係る相違にすぎず,当業者が適宜設定できるものである。(イ) また,以下のとおり,当業者は,乙2技術を乙4課題の解決に応用して,相違点1-1ないし同1-4に係る本件発明1の構成を容易に想到し得た。a 乙2技術を乙4課題の解決に応用する動機付け
①乙4公報に記載された発明(以下「乙4発明」という。)は,放音装置を利用
した情報提供技術という乙2技術と同じ技術分野に属するものであること,②乙2技術は汎用性の高い技術であり,様々な放音装置を含むシステムに利用されていたこと(乙11ないし13),③端末装置とサーバとの通信システムを利用する情報提供技術は周知のものであったこと(乙2,5,6,8,11ないし13等)などによれば,当業者において,乙2技術を乙4課題の解決に応用する動機付けがある。b 相違点1-1(構成要件1B)乙4課題は,放音装置から放音される音声ガイドについて,多言語に対応した情報を提供する技術に係るものであり,音声ガイドは「案内音声」に相当するから,当業者において,乙2技術を乙4課題の解決に応用するに当たり,「案内音声」を識別する構成を採用することにより,相違点1-1に係る本件発明1の構成を容易に想到し得た。c 相違点1-2(構成要件1C)当業者において,乙2技術を乙4課題の解決に応用するに当たり,外国人のユーザが指定する言語を複数の異なる言語の中から端末装置で指定し,識別情報(IDコード)と共に指定された言語情報をID解決サーバに送信する構成を採用するこ
5 とにより,相違点1-2に係る本件発明1の構成を容易に想到し得た。
d 相違点1-3(構成要件1D①)当業者において,乙2技術を乙4課題の解決に応用するに当たり,ユーザに提供される「関連情報」として音声ガイドの内容を多言語化した情報とする構成を採用することにより,相違点1-3に係る本件発明1の構成を容易に想到し得た。e 相違点1-4(構成要件1D②)乙5公報には,元文書に対して多言語の翻訳文を同じ識別情報に紐付けて管理し,識別情報と言語情報により特定の言語の翻訳文を選択するという翻訳文書の管理に関する技術が開示されており,乙6公報,乙8公報にも同種の技術が開示されていることからすると,上記技術は周知のものであった(以下,この技術を「周知技術(乙5)」という。)。そして,周知技術(乙5)は,情報提供システムという点で乙2発明1と同じ技術分野に属するものであり,翻訳情報の提供を課題とする点で乙4課題と共通するから,当業者において,乙2技術を乙4課題の解決に応用するに当たり,周知技術(乙5)を踏まえ,乙2発明1のID解決サーバが受信したIDコードと言語情報に基づいてID/URL対応テーブルを検索し,対応するURLを端末装置に送信するとともに,ユーザが指定した言語に対応する音声ガイド情報を当該URLで指示されるコンテンツサーバから端末装置が受信する構成を採用することにより,相違点1-4に係る本件発明1の構成を容易に想到し得た。エ 本件発明1の作用効果アナウンスが聞こえる範囲内の外国人の乗客に限定して適切に情報を伝達することを可能にするという本件発明1の作用効果は,識別情報として音響IDを用いることに由来するものであって,そのような作用効果は乙11公報ないし乙13公報等にも示されており,顕著なものではない。【
(原告の主張)
】以下のとおり,本件発明1は,乙2発明1等に基づき進歩性を欠くとはいえない。ア 乙2発明1
5 (ア) 乙2発明1は,別紙7「主張対比表(乙2公報,乙9公報関係)」記載1⑴
「
(原告の主張)
」欄のとおり,相違点1-1ないし同1-4において本件発明1と相違する。(イ) 相違点に関する
(被告の主張)
に対する反論は次のとおりである。a 相違点1-1(構成要件1B)乙2発明1のIDコードは,放送中の番組を識別するものであり「再生対象音」を識別していない点でも本件発明1と相違する。b 相違点1-2(構成要件1C)乙2発明1では,携帯端末装置からID解決サーバにボタンスイッチを操作するタイミングに関する情報が送られることはない。また,構成要件1C及び同1Dの文言に照らせば,「端末装置にて指定された」情報は,同時に選び得る複数の関連情報の中から指定されたものであると解すべきところ,乙2発明1で,ユーザがボタンスイッチを押した時刻は,同時に選び得る複数の関連情報の中から指定されたものではないから,「端末装置にて指定された」情報に該当しない。したがって,乙2発明1では,ID解決サーバに「端末装置にて指定された」情報が送信されない点でも本件発明1と相違する。c 相違点1-3(構成要件1D①)乙2発明1の携帯端末装置が受信する関連情報は,放送中の番組の場面に関連するものであり「再生対象音」でない点でも本件発明1と相違する。d 相違点1-4(構成要件1D②)前記bのとおり,乙2発明1では,ID解決サーバに「端末装置にて指定された」情報は送信されず,また,ユーザがボタンスイッチを押した時刻は,複数存在する関連情報の中から指定するものではなく,ユーザが選択することができる「相異なる」事項は存在しないから,その点でも本件発明1と相違する。イ 乙4課題乙4公報に,被告が主張する乙4課題は記載されていない。乙4発明は,利用者
5 が携帯する携帯型音声再生受信器による音声ガイドサービスにおいて「目的の対象
物以外のガイド音声を受信し利用者に誤った情報を提供する」ことを防ぐことを課題とするものである。ウ 容易想到性(ア) 乙2発明1と乙4課題等を結び付ける動機付けa 容易想到性に関する
(被告の主張)
は,乙2発明1の具体的な構成を離れ,その内容を抽象化した上で都合のいい形で認定し,その部分だけを他の用途に応用するというものであり,妥当でない。b また,①乙2発明1及び乙4発明の目的及び構成は,本件発明1とは本質的に異なるものであること,②乙2発明1は,音響IDによりテレビ番組を識別し,当該テレビ番組の場面ごとに異なるURLを特定するという具体的構成を有するものであるのに対し,乙4発明は,携帯型音声再生受信器による音声ガイドサービスに関するものであり,ネットワークによる情報の取得は行わないものであり,技術分野が異なることなどからして,乙2発明1と乙4課題を結び付ける動機付けは存在しない。c 乙5公報に記載された発明(以下「乙5発明」という。)は,文書等の掲載物を様々な言語に翻訳して提供する装置等に関する発明であり,「再生対象音」のような音声やその翻訳は想定されていないものであるから,乙2発明1と技術分野が同じとはいえない。また,乙6公報に記載された発明(以下「乙6発明」という。)及び乙8公報に記載された発明(以下「乙8発明」という。)は,情報を取得する装置が受信機である点,放送音声が音響IDを含まない点などで乙2発明1と相違している。したがって,乙2発明1と乙5発明,乙6発明及び乙8発明を結び付ける動機付けは存在しない。(イ) 乙2発明1に対する乙4発明の適用また,以下のとおり,仮に,乙2発明1に乙4発明を適用しても,相違点1-1ないし同1-4に係る本件発明1の構成に到達しない。
5 a 相違点1-1(構成要件1B)
乙4発明のID符号は,展示対象物とあらかじめ紐付けられており,「案内音声である再生対象音」を識別するものではないから,これを乙2発明1に適用しても,相違点1-1に係る本件発明1の構成に到達しない。b 相違点1-2(構成要件1C)乙4発明では,ネットワークを介した情報の取得は行われず,サーバに情報を送信することはないから,これを乙2発明1に適用しても,相違点1-2に係る本件発明1の構成に到達しない。c 相違点1-3(構成要件1D①)乙4発明では,「案内音声である再生対象音の発音内容を表す関連情報」は存在しないから,これを乙2発明1に適用しても,相違点1-3に係る本件発明1の構成に到達しない。d 相違点1-4(構成要件1D②)乙4発明では,ネットワークを介した情報の取得は行われないから,これを乙2発明1に適用しても,相違点1-4に係る本件発明1の構成に到達しない。エ 本件発明1の作用効果本件発明1は,「再生対象音の識別情報を含む音響を収音する」ことと,「識別情報に対応するとともに,端末装置にて指定された言語に対応する関連情報を出力する」ことを組み合わせることにより,アナウンスが聞こえる範囲内の外国人の乗客に限定して適切に情報を伝達することを可能にするという顕著な作用効果を奏するものであり,乙2発明1とは本質的に異なる。
⑵ 争点4-2(本件発明1は乙9公報により進歩性を欠くか)について
【
(被告の主張)
】以下のとおり,本件発明1は,本件優先日1前に公開された乙9公報記載の発明(以下,本件発明1に対応する発明を「乙9発明1」という。)に基づき,これに乙10公報記載の発明(以下「乙10発明」という。)を組み合わせるなどして,
5 当業者が容易に想到し得たものであり,進歩性を欠く。
ア 乙9発明1(ア) 乙9公報には,別紙7「主張対比表(乙2公報,乙9公報関係)」記載2⑴「
(被告の主張)
」欄のとおり,相違点1-5ないし同1-7において本件発明1と相違するものの,その余の構成で一致する乙9発明1が開示されている。(イ) 相違点に関する
(原告の主張)
に対する反論は次のとおりである。a 相違点1-7(構成要件1D②)乙9発明1において,端末装置が受信する「次の観光スポットに移動するための道案内情報」は,ガイド音声が対応する現在の観光スポットの関連情報であるから,原告が主張する相違点1-7は誤りである。b 相違点1-8(構成要件1B)乙9発明1において,観光スポットと当該観光スポットに設置されたスピーカから放音されるガイド音声は一対一で対応しているから,IDコードが観光スポットを識別することと当該観光スポットのガイド音声を識別することは同じことであり,原告が主張する相違点1-8は認められない。イ 乙10発明乙10発明は,次のようなものである。すなわち,①管理記号は情報タグが設置されている観光地を識別する記号であり,携帯電話・情報端末には所定の言語を指定する番号が記録されている。②観光案内サーバは,管理記号と言語を指定する番号を設定して,対応する言語による観光案内の音声データを予め格納している。③観光客が携帯電話・情報端末により観光地に設置されている情報タグから観光地名と管理記号を読み取ると,観光案内サーバにアクセスして,言語を指定する番号と管理記号を送信し,観光案内サーバは言語を指定する番号と管理記号に基づいて,当該観光地の指定された外国語による案内の音声データを携帯電話・情報端末に送信する。ウ 容易想到性
5 (ア) 乙9公報は,音響IDとインターネットを用いて,放音装置から放音された
音響IDによって識別される識別対象の情報に対し,これと関連する任意の関連情報をサーバから端末装置に供給できる技術(以下「乙9技術」という。)を開示しているところ,本件発明1も乙9技術を採用するものであり,相違点1-5ないし同1-7は,①情報要求に含まれる情報の内容,②複数の関連情報の選択条件,③関連情報の内容に係る相違にすぎず,当業者が適宜設定できるものである。(イ) また,以下のとおり,当業者は,乙9発明1に,①乙10発明又は乙5公報及び乙10公報記載の周知技術,並びに②乙14公報ないし乙17公報記載の周知技術(以下,②の周知技術を「周知技術(乙14等)」ということがあり,①及び
②を一括して「乙10発明等」ということがある。)を組み合わせるなどして,相
違点1-5ないし同1-7に係る本件発明1の構成を容易に想到し得た。a 乙9発明1に乙10発明を組み合わせる動機付け
(a) ①乙9発明1と乙10発明は,いずれも,端末装置とサーバとのインターネ
ットを介した情報通信技術を利用して観光案内情報を提供するシステムに関する同じ技術分野に属すること,②乙10発明の課題は,外国人観光客が自国の言語で観光地の案内情報を簡単かつ迅速に取得できるようにすることにあり,このような課題は,本件優先日1当時,観光案内システム全般に共通する周知の課題であったことなどによれば,当業者において,乙9発明1を,同じ技術分野において周知の課題を開示する乙10発明と組み合わせる動機付けがあった。
(b) 乙5発明と乙10発明は,いずれも翻訳情報を提供するシステムという同じ
技術分野に属し,ユーザの指定する言語で情報を提供することを課題とし,当該課題を解決するために,同じ内容に対応する複数の翻訳データを共通の識別情報により紐付けて管理し,識別情報とユーザ端末装置から送信される言語情報により特定されるユーザの指定する言語に対応した翻訳データをインターネットを介して提供する構成を採用している点で共通しており,このような課題及び当該課題の解決手段は周知であったから,乙10発明と同じ技術分野に属する乙9発明1に乙5発明
5 を適用することも容易であった。
(c) 乙14公報ないし乙17公報によれば,案内音声の発音内容を多言語で表す
システムは周知であった(周知技術(乙14等)。)b 相違点1-5(構成要件1C)当業者は,乙9発明1に基づき,外国人観光客に簡単かつ迅速に自国の言語による観光地情報を提供しようとすると,ガイド音声を識別するIDコードとともに端末装置で指定された言語情報をID解決サーバに送信する構成を採用することにより,相違点1-5に係る本件発明1の構成を容易に想到し得た。c 相違点1-6(構成要件1D①)当業者は,乙9発明1に基づき,外国人観光客に簡単かつ迅速に自国の言語による観光地情報を提供しようとすると,端末装置が受信する関連情報は,放音されるガイド音声に対応し,かつ,ユーザの指定した特定の言語の情報であるから,端末装置が受信する関連情報につき,識別情報に対応するとともに「相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,情報要求の言語情報が指定された言語」にも対応する構成を採用することにより,相違点1-6に係る本件発明1の構成を容易に想到し得た。d 相違点1-7(構成要件1D②)乙14公報ないし乙17公報にあるように,本件優先日1当時,情報を多数の利用者に同時に提供するために様々な場面で利用されるアナウンスシステムにおいて,再生される各種の案内音声内容を各利用者の理解できる言語で提供することに対するニーズが存在することは周知であったから,当業者は,乙9発明1に基づき,外国人観光客に簡単かつ迅速に自国の言語による観光地情報を提供しようとすると,スピーカから放音される観光スポットのガイド音声の発音内容についても,外国人観光客に自国の言語により提供する構成を採用することにより,相違点1-7に係る本件発明1の構成を容易に想到し得た。エ 本件発明1の作用効果
5 前記⑴【
(被告の主張)
】エのとおり,本件発明1の作用効果は顕著なものではない。【
(原告の主張)
】以下のとおり,本件発明1は,乙9発明1等に基づき進歩性を欠くとはいえない。ア 乙9発明1(ア) 乙9発明1は,別紙7「主張対比表(乙2公報,乙9公報関係)」記載2⑴「
(原告の主張)
」欄のとおり,相違点1-5ないし同1-8において本件発明1と相違する。(イ) 相違点に関する
(被告の主張)
に対する反論は次のとおりである。a 相違点1-7(構成要件1D②)乙9発明1において,携帯端末装置が受信する情報は「次の観光スポットへ移動するための道案内情報」であるが,これは「放音されたガイド音声が対応する観光スポット」に関するものではないから,被告が主張する相違点1-7は誤りである。b 相違点1-8(構成要件1B)乙9発明1のIDコードは,観光スポットを識別し,「次の観光スポットへ移動するための道案内情報」と対応付けられているものであって,各案内装置から放音されるガイド音声を識別するものではないから,「識別情報」が「第1言語の案内音声である再生対象音」を識別するものではない点でも本件発明1と相違する。イ 乙10発明乙10発明は,観光地名と管理番号の両方と言語を指定する番号に基づいて案内の音声データを特定するものであるから,
(被告の主張)
(前記【
(被告の主張)
】イ③)は不正確である。ウ 容易想到性(ア) 乙9発明1と乙10発明等を結び付ける動機付けa 乙10発明は,音声の受信によって識別情報を取得するものではないから,音響を収音し,音響に含まれていた音響IDをデコードしてIDコードを取得する乙9発明1とは技術思想が異なり,課題も異なるから,両発明を組み合わせる動機
5 付けは存在しない。
b 乙5発明は,放音される音声は想定されておらず,放音される案内音声に対応する翻訳情報も想定されていないから,乙9発明1に結び付くものではない。c 被告が主張する周知技術(乙14等)は,インターネットを介して識別情報をサーバに提供し,サーバから関連情報を取得するものではないなど,乙9発明1に結び付くものではない。(イ) 乙9発明1に対する乙10発明等の適用また,以下のとおり,乙9発明1に乙10発明等を組み合わせても,本件発明1の構成に到達しない。a 相違点1-5(構成要件1C)乙10発明の管理記号は,観光地の情報タグと紐付けられており,「再生対象音」を識別するものではなく,「再生対象音」を識別する識別情報をサーバに送信することもないから,これを乙9発明1に組み合わせても,相違点1-5に係る本件発明1の構成に到達しない。b 相違点1-7(構成要件1D②)乙10発明では,「再生対象音」の識別情報をサーバに送信することはなく,「再生対象音」の識別情報に対応する関連情報を受信することもないから,これを乙9発明1に組み合わせても,相違点1-7に係る本件発明1の構成に到達しない。c 相違点1-8(構成要件1B)前記aのとおり,乙10発明の管理記号は「再生対象音」を識別するものではない。また,乙9発明1において,放音されるガイド音声はIDコードに対応しておらず,道案内情報を表示するに当たって何の役割も果たしていないから,乙10発明を組み合わせても,乙9発明1のIDコードの性質が「再生対象音」を識別するものに変容することはなく,相違点1-8に係る本件発明1の構成に到達しない。エ 本件発明1の作用効果前記⑴【
(原告の主張)
】エのとおり,本件発明1は顕著な作用効果を奏する。
5 5 争点5(本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものか)につい
て
⑴ 争点5-1(本件発明2は乙2公報により進歩性を欠くか)について
【
(被告の主張)
】以下のとおり,本件発明2は,①本件優先日2前に公開された乙2公報記載の発明(以下,本件発明2に対応する発明を「乙2発明2」という。)に基づき,又は
②これらを乙4課題の解決に応用して,当業者が容易に想到し得たものであり,進
歩性を欠く。ア 乙2発明2(ア) 乙2公報には,別紙7「主張対比表(乙2公報,乙9公報関係)」記載1⑵「
(被告の主張)
」欄のとおり,相違点2-1及び同2-2において本件発明2と相違するものの,その余の構成で一致する乙2発明2が開示されている。(イ) 相違点2-2に関し,乙2発明2のIDコードは,番組と同時に,番組の放送音声という「再生対象音」も識別しているから,「再生対象音」の識別の点では本件発明2と相違しない。イ 容易想到性①提供される情報の内容や収音される音響の内容に係る構成は,乙2技術を利用する目的に応じて決定されるものであり,技術的意義のある構成ではないから,当業者は,乙2発明2に基づき,相違点2-1及び同2-2に係る本件発明2に係る構成を容易に想到し得た。ウ 容易想到性②また,以下のとおり,当業者は,乙2技術を乙4課題の解決に応用して,相違点2-1及び同2-2に係る本件発明2の構成を容易に想到し得た。(ア) 乙2技術を乙4課題の解決に応用する動機付け前記4⑴【
(被告の主張)
】ウ(イ)aのとおり,当業者において,乙2技術を乙4課題の解決に応用する動機付けがあった。
5 (イ) 相違点2-1
前記4⑴【
(被告の主張)
】ウ(イ)c及びeと同様に,当業者において,乙2技術を乙4課題の解決に応用するに当たり,第1言語の音声ガイドが表現する内容をユーザが指定した言語(第2言語)で表現した情報の所在を示すURLを提供する構成を採用することにより,相違点2-1に係る本件発明2の構成を容易に想到し得た。(ウ) 相違点2-2前記4⑴【
(被告の主張)
】ウ(イ)bと同様に,当業者において,乙2技術を乙4課題の解決に応用するに当たり,音声ガイドに係る構成を採用することにより,相違点2-2に係る本件発明2の構成を容易に想到し得た。エ 本件発明2の作用効果アナウンスが聞こえる範囲内の外国人の乗客に限定して適切に情報を伝達することを可能にするという本件発明2の作用効果は,識別情報として音響IDを用いることに由来するものであって,そのような作用効果は乙11公報ないし乙13公報等にも示されており,顕著なものではない。【
(原告の主張)
】以下のとおり,本件発明2は,乙2発明2等に基づき進歩性を欠くとはいえない。ア 乙2発明2(ア) 乙2発明2は,別紙7「主張対比表(乙2公報,乙9公報関係)」記載1⑵「
(原告の主張)
」欄のとおり,相違点2-1及び同2-2において本件発明2と相違する。(イ) 相違点2-2に関し,乙2発明2のIDコードは,放送中の番組を識別するものであり「再生対象音」を識別していない点でも本件発明2と相違する。イ 容易想到性①乙2発明2は,放送内容に関する情報を取得した利用者が,更に放送内容に関連する情報を取得することを可能とする発明であるのに対し,本件発明2は,再生対象音の意味内容を異なる言語で取得することを可能とすることを目的とするもので
5 あるから,両者は本質的に課題が異なり,また,本件発明2は,URLを「前記案
内音声である再生対象音が表す発音内容を前記第1言語とは異なる第2言語で表現した情報」の所在を示すものとすることにより,端末装置において,第2言語で表現した情報を取得可能とするという効果を奏するから,相違点2-1に係る本件発明2の構成は重要なものであり,当業者において,乙2発明2に基づき,容易に想到し得たものではない。ウ 容易想到性②(ア) 乙2発明2と乙4課題を結び付ける動機付け前記4⑴【
(原告の主張)
】ウ(ア)と同様に,乙2発明2と乙4課題を結び付ける動機付けは存在しない。(イ) 乙2発明2に対する乙4発明の適用また,以下のとおり,仮に,乙2発明2に乙4発明を適用しても,相違点2-1及び同2-2に係る本件発明2の構成に到達しない。a 相違点2-1(構成要件2C)乙4発明は,選択した言語に関する情報を外部から取得するものではなく,「再生対象音が表す発音内容を前記第1言語とは異なる第2言語で表現した情報」の所在を示すURLに係る構成を有するものではないから,これを乙4発明に適用しても,相違点2-1に係る本件発明2の構成に到達しない。b 相違点2-2(構成要件2A)乙4発明のID符号は,あらかじめ展示対象物と紐付けられており,「案内音声である再生対象音」を識別するものではないから,これを乙4発明に適用しても,相違点2-2に係る本件発明2の構成に到達しない。エ 本件発明2の作用効果本件発明2は,「案内音声である再生対象音の識別情報を含む音響を収音する」ことと,「識別情報に対応するとともに,端末装置にて指定された言語に対応する関連情報の所在を示すURLを受信する」ことを組み合わせることにより,アナウ
5 ンスが聞こえる範囲内の外国人の乗客に限定して適切に情報を伝達することを可能
にするという顕著な作用効果を奏するものであり,乙2発明2とは本質的に異なる。
⑵ 争点5-2(本件発明2は乙9公報により進歩性を欠くか)について
【
(被告の主張)
】以下のとおり,本件発明2は,①本件優先日2前に公開された乙9公報記載の発明(以下,本件発明2に対応する発明を「乙9発明2」という。)に基づき,又は
②乙9発明2に乙10発明を組み合わせるなどして,当業者が容易に想到し得たも
のであり,進歩性を欠く。ア 乙9発明2(ア) 乙9公報には,別紙7「主張対比表(乙2公報,乙9公報関係)」記載2⑵「
(被告の主張)
」欄のとおり,相違点2-3において本件発明2と相違するものの,その余の構成で一致する乙9発明2が開示されている。(イ) 相違点に関する
(原告の主張)
に対する反論は次のとおりである。a 相違点2-3(構成要件2C)乙9発明2において,端末装置が受信する情報は「次の観光スポットに移動するために用いる道案内情報」であるが,これはガイド音声が対応する現在の観光スポットの関連情報であるから,原告が主張する相違点2-3は誤りである。b 相違点2-4(構成要件2A)乙9発明2において,観光スポットと当該観光スポットに設置されたスピーカから放音されるガイド音声は一対一に対応しているから,観光スポットを識別することは「第1言語の案内音声である再生対象音」であるガイド音声を識別することと同じであって,原告が主張する相違点2-4は認められない。イ 容易想到性①本件発明2と乙9発明2は,URLが所在を示す情報の内容しか相違しないところ,URLが所在を示す情報を適宜変更することが困難であったとはいえないから,当業者は,乙9発明2に基づき,相違点2-3に係る本件発明2の構成を容易に想
5 到し得た。
ウ 容易想到性②また,前記4⑵【
(被告の主張)
】ウ(イ)と同様に,当業者は,乙9発明2に乙10発明等を組み合わせるなどして,相違点2-3に係る本件発明2の構成を容易に想到し得た。エ 本件発明2の作用効果前記⑴【
(被告の主張)
】エのとおり,本件発明2の作用効果は顕著なものではない。【
(原告の主張)
】以下のとおり,本件発明2は,乙9発明2等に基づき進歩性を欠くとはいえない。ア 乙9発明2(ア) 乙9発明2は,別紙7「主張対比表(乙2公報,乙9公報関係)」記載2⑵「
(原告の主張)
」欄のとおり,相違点2-3及び同2-4において本件発明2と相違する。(イ) 相違点に関する
(被告の主張)
に対する反論は次のとおりである。a 相違点2-3(構成要件2C)乙9発明2において,携帯端末装置が受信する情報は「次の観光スポットへ移動するための道案内情報」であるが,これは「放音されたガイド音声が対応する観光スポット」に関するものではないから,被告が主張する相違点2-3は誤りである。b 相違点2-4(構成要件2A)乙9発明2のIDコードは,観光スポットを識別し,「次の観光スポットへ移動するための道案内情報」と対応付けられているものであって,各案内装置から放音されるガイド音声を識別するものではないから,「識別情報」が「第1言語の案内音声である再生対象音」を識別するものではない点でも本件発明2と相違する。イ 容易想到性①乙9発明2で放音されるガイド音声の内容は,URLによって所在が示される情報の内容とは関係がないのに対し,本件発明2は,「第1言語の案内音声である再
5 生対象音」を識別する識別情報を用いるとともに,URLを「前記案内音声である
再生対象音が表す発音内容を前記第1言語とは異なる第2言語で表現した情報の所在」を示すものとすることにより,端末装置において,案内音声である再生対象音が表す発音内容を第1言語とは異なる第2言語で表現した情報を取得可能とするという効果が奏されるから,相違点2-3に係る本件発明2の構成は重要なものであり,当業者において,乙9発明2に基づき,容易に想到し得たものではない。ウ 容易想到性②また,以下のとおり,乙9発明2に乙10発明等を組み合わせても,本件発明2の構成に到達しない。a 相違点2-3(構成要件2C)乙10発明の管理記号は,観光地の情報タグと紐付けられており,「再生対象音」が表す発音内容を送信するものではないから,これを乙9発明2に組み合わせても,相違点2-3に係る本件発明2の構成に到達しない。b 相違点2-4(構成要件2A)乙10発明の管理記号は「案内音声である再生対象音」を識別するものではない。また,乙9発明2において,放音されるガイド音声はIDコードに対応しておらず,道案内情報を表示するに当たって何の役割も果たしていないから,乙10発明を組み合わせても,乙9発明2のIDコードが「再生対象音」を識別するものに変容することはなく,相違点2-4に係る本件発明2の構成に到達しない。エ 本件発明2の作用効果前記⑴【
(原告の主張)
】エのとおり,本件発明2は顕著な作用効果を奏する。
6 争点6(差止めの必要性は認められるか)について
【
(原告の主張)
】被告は,本件アプリの作成等によって本件各特許権を侵害し,現在も,ウェブサイトにその説明や広告を掲載していること(甲5,6),本件訴訟において本件アプリが本件各発明の技術的範囲に属することを争っていること,本件アプリの配信
5 が一時的に停止されているとしても,いつでも配信を再開することができる状態に
あることなどに照らせば,本件アプリについて差止めの必要性が認められる。【
(被告の主張)
】
①本件口頭弁論終結時点において,本件アプリに係るサービスは実用化されてい
なかったこと,②被告は,平成30年5月以降,本件アプリの配信を中止し,多言語で情報配信を行う機能を取り除いた新たなスマートフォン用アプリケーション(以下「本件新アプリ」という。)を配信しており,本件訴訟の結果によって本件アプリに係る事業を再開するか否かを決定する予定であること,③被告は,今後,顧客に対し,案内音声である再生対象音の発音内容を表す他国語の関連情報を提供することを禁ずる旨の約束や,案内音声である第1言語の再生対象音が表す発音内容を第2言語で表現した情報を提供することを禁ずる旨の約束をする意思があることなどに照らせば,本件アプリについて差止めの必要性は認められない。
第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また,第3実
施形態では,言語が相違するN個の関連情報Qの何れかが選択的に端末装置12に提供されるから,使用言語が相違する多様な利用者が理解可能な関連情報Qを提供できるという利点がある。なお,以上の説明では,各言語の音声を表す関連情報Q
5 を例示したが,案内音声を各言語で表現した文字列(変換文字列)を表す関連情報
Qを利用する構成も採用され得る。…」
⑵ 本件発明1の概要
前記第2の2⑵ア(ウ)認定の特許請求の範囲,前記⑴認定の本件明細書1の発明の詳細な説明,図面,弁論の全趣旨に照らすと,本件発明1は,概要,以下のとおりのものであると認められる。ア 本件発明1は,端末装置の利用者に情報を提供する技術に関する(【0001】)。イ 従来から,美術館や博物館等の展示施設において利用者を案内する各種の技術が提案されていたが,各展示物の識別符号が電波や赤外線で発信装置から送信されるものであったため,電波や赤外線を利用した無線通信のための専用の通信機器を設置する必要があった。本件発明1は,そのような問題を踏まえてされたものであり,無線通信のための専用の通信機器を必要とせずに多様な情報を利用者に提供することを目的とする(【0002】,【0004】)。ウ 本件発明1は,①案内音声である再生対象音を表す音響信号と当該案内音声である再生対象音の識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号に応じて放音された音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出手段,②情報抽出手段が抽出した識別情報を含む情報要求を送信する送信手段,③情報要求に含まれる識別情報に対応するとともに案内音声である再生対象音に関連する複数の関連情報のいずれかを受信する受信手段,④受信手段が受信した関連情報を出力する出力手段としてコンピュータを機能させることにより,赤外線や電波を利用した無線通信に専用される通信機器を必要とせずに,案内音声である再生対象音の識別情報に対応する関連情報を利用者に提供することを可能とする(【0005】)。エ 以上に加えて,本件発明1は,前記送信手段が,当該端末装置にて指定された言語を示す言語情報を含む情報要求を送信し,前記受信手段が,情報要求の識別情報に対応するとともに相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち情報要求の
5 言語情報で指定された言語に対応する関連情報を受信するという構成を採用するこ
とにより,相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち情報要求の言語情報で指定された言語に対応する関連情報を受信することができ,使用言語が相違する多様な利用者が理解可能な関連情報を提供できるという効果を奏するものである(【0006】等)。
2 本件アプリの広告等について
証拠(甲6,7)によれば,次の事実が認められる。
⑴ 被告作成の「Sound Insight(サウンドインサイト)」と題す
る本件アプリを用いたシステムに関する広告(甲6。以下「本件広告」という。)には,次のとおり記載されていた。ア ①「映像・音声にのせて,情報配信」,②「動画・音楽などの音に人間には聞こえない音波信号(音波ID)を埋め込み,テレビ・サイネージ・スピーカー等から再生し,スマートフォンアプリで音波信号(音波ID)を受信する事により,紐づいた情報をスマートフォン上に自動表示」,③(音波信号に紐づく情報を表示する手順の一つとして)「映像・音声に重畳した音波信号を発する」イ ①「音で情報を配信」,②「『Sound Insight』は,人には聞こえない音波信号(音波ID)を使い,映像や音に合わせてアプリを連動できます。利用者が信号音を意識することなくスマートフォン上に情報を表示します。」ウ 「多言語で配信可能 日本語のほか,英語,中国語,台湾語,韓国語,ロシア語など多言語で情報配信できます。」エ (使用例の一つとして)「バスの車内案内では 多国語で停留所情報や地域の情報を案内できます。」
⑵ 本件アプリのダウンロード用のウェブサイト(甲7。「本件ダウンロードサ
イト」という。)には,次のとおり記載されていた。「『サウンドインサイト』は,空港,駅,電車,バスなどの様々な場所に設置された各種スピーカーから送信された音波を,専用アプリをインストールしたスマー
5 トフォンで受信することで,関連する情報を自動で表示させることのできるサービ
スです。…『サウンドインサイト』の活用により,…外国人観光客へ空港・駅などのアナウンスに関連する情報を多言語で情報提供する『言語支援用途』…などで活用いただくことができます。」
3 争点1(本件アプリは本件発明1の技術的範囲に属するか)について
⑴ 争点1-1(本件アプリは構成要件1Bを充足するか)について
ア 構成要件1Bに対応する本件アプリの構成に係る事実認定(ア) 前記第2の2⑸ア(ア)のとおり,本件アプリは,スピーカー等の放音装置から,識別情報であるIDコードを表す音響IDを含む音響が放音されると,これを収音し,当該音響IDからIDコードを検出するものとしてスマートフォンを機能させるものであるところ,前記2⑴のとおり,本件広告には,「映像・音声にのせて」,「動画・音楽などの音」に埋め込んで,「映像・音声に重畳」させて音響IDを放音することが記載されているほか,使用例の一つとして,バスの車内案内では多言語で停留所情報等を提供することができることが記載されていること,同⑵のとおり,本件ダウンロードサイトには,本件アプリは,空港,駅,電車,バス等に設置された放音装置から送信された音波を,スマートフォンで受信することで,関連する情報を自動で表示させることのできるサービスを提供するものであることが記載されていることなどからすると,被告から音響IDの提供を受けた顧客において,案内音声を識別するものとしてIDコードを使用し,これを案内音声とともに放音装置から放音することは,本件アプリにつき想定されていた使用形態の一つであるというべきである。そうすると,本件アプリは「案内音声と当該案内音声を識別するIDコードを含む音響IDとを含有する音響を収音し,当該音響からIDコードを抽出する情報抽出手段」(構成1b)を備えていると認めるのが相当である。(イ) 被告は,本件アプリが構成1bを備えていることを否認し,その理由として,
①被告サービスにおいて,被告は,放音される音響やIDコードの識別対象を決定
5 しておらず,これらを選択,決定しているのは顧客であって,いずれも「案内音声」
に限られるものではないこと,②本件アプリの利用場面の中で,最も多くの需要が見込まれているのは商品説明の場合であるが,商品説明において,放音装置から音声が発せられることは必須ではなく,かえって,音声が放音されるとスマートフォンに表示される情報を理解する妨げになることを主張する。しかしながら,被告の上記①の主張は,構成要件1B所定の音響が放音されない場合があることを指摘するにとどまるものであり,前記(ア)のとおり,本件広告においても,案内音声を収音する使用形態を回避させるような記述はなく,むしろ,そのような使用形態を想定したものとなっていたというべきであるから,前記認定を覆すに足りないというべきである。また,被告の上記②の主張について,本件アプリにつき最も多くの需要が見込まれていたのが商品説明の場面であったとしても,被告において,そのような使用形態に特化したものとして本件アプリを広告宣伝していたものでもなく,前記認定を覆すに足りない。イ 構成要件1Bに係るあてはめ以上の認定を踏まえて検討すると,構成1bの「案内音声」は,本件発明1の「案内音声である再生対象音を表す音響信号」に対応し,構成1bの「案内音声を識別するIDコードを含む音響ID」は,本件発明1の「案内音声である再生対象音の識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号」に対応する。そして,本件発明1は,コンピュータを所定の手段として機能させるプログラムに係る発明であり,構成要件1Bは,放音された所定の音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出手段を規定するものであるから,構成要件1B所定の音響が放音された場合に,これを収音し,識別信号を抽出する手段としてコンピュータを機能させるプログラムであれば,これと異なる用途でコンピュータを機能させ得るとしても,又は音響が放音されない場面があるとしても,同構成要件を充足すると解すべきところ,本件アプリは,同所定の音響を収音し,当該音響からI
5 Dコードを抽出するものとしてスマートフォンを機能させるものであるから,放音
される音響やIDコードの識別対象を選択しているのが顧客であり,音響が放音されない使用方法が選択され得るとしても,構成要件1Bを充足する。
⑵ 争点1-2(本件アプリは構成要件1Dを充足するか)について
ア 構成要件1Dの「関連情報」の言語の解釈(ア) 構成要件1Dは,「関連情報」について,「前記案内音声である再生対象音の発音内容を表す関連情報であって,前記情報要求に含まれる識別情報に対応するとともに相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求の言語情報で指定された言語に対応する関連情報」と規定しているから,「関連情報」の言語は,相異なる言語に対応するものの中から情報要求の言語情報で指定された言語に対応するものと解すべきである。(イ) 被告は,「関連情報」は,第1言語で発音される案内音声の発音内容を第1言語で表した文字列であると解すべきであるとし,その理由として,原告が本件訂正審判請求1の際に訂正事項が明細書の記載事項の範囲内であることを示す根拠として本件明細書1の【0041】を挙げていたことを指摘するが,構成要件1Dは上記のとおりのものであるから,「関連情報」が案内音声の言語と同一のものであると解するのは文言上無理がある。また,同段落には,第2言語に翻訳することなく,第1言語の指定文字列のまま関連情報Qとする実施例が開示されているが,これは第1実施形態の変形例の一つ(態様1)にすぎず,原告が本件訂正審判請求1の際に同段落を指摘したからといって,当該実施例の態様に限定して「関連情報」の言語について解釈するのは相当でない。イ 構成要件1Dに対応する本件アプリの構成に係る事実認定(ア) 前記第2の2⑸ア(ウ)及び同イのとおり,本件アプリは,管理サーバから,リクエスト情報に含まれるIDコード及びアプリ使用言語の情報に対応する情報の所在を示すものとして送信されるアクセス先URLを受信するものとしてスマートフォンを機能させるものであり,管理サーバには,1個のIDコードに対応させて,
5 6個までのアプリ使用言語に対応するURLを記憶することができるところ,前記
2⑴のとおり,本件広告には,日本語のほか,英語,中国語,台湾語,韓国語,ロシア語など多言語で情報配信できることが記載されており,使用例の一つとして,バスの車内案内では多言語で停留所情報等を提供することができることが記載されていること,同⑵のとおり,本件ダウンロードサイトには,外国人観光客に対して,空港・駅等のアナウンスに関連する情報を多言語で情報提供する用途に用いることができることが記載されていることなどからすると,顧客において,リクエスト情報に含まれるIDコードに対応する案内音声の発音内容を表す情報について,当該案内音声とは異なる言語に対応する複数の情報を管理サーバに記憶させ,リクエスト情報に含まれるアプリ使用言語に対応する情報をスマートフォンに送信するようにすることは,本件アプリにつき想定されていた使用態様の一つであるというべきである。そうすると,本件アプリは,「前記案内音声の発音内容を表す関連情報であって,前記リクエスト情報に含まれるIDコードに対応するとともに,6個までのアプリ使用言語に対応する複数の情報のうち,前記リクエスト情報のアプリ使用言語に対応する情報を受信する受信手段」(構成1d)を備えていると認めるのが相当である。(イ) 被告は,本件アプリが構成1dを備えていることを否認し,その理由として,
①被告サービスにおいて,被告は,本件スマートフォンが受信する情報を決定して
おらず,これを選択,決定しているのは顧客であって,構成要件1D所定のものに限られないこと,②被告は,本件アプリに係る実証実験において,本件アプリを用いて「案内音声である再生対象音の発音内容」を関連情報として出力したことはなく,外国語に翻訳した内容を関連情報として出力したこともないこと,③被告は,今後,顧客に対し,案内音声である再生対象音の発音内容を表す他国語の関連情報を提供することを禁ずる旨の約束をする意思があることを主張する。しかしながら,被告の上記①の主張は,本件スマートフォンの受信する情報が構成要件1D所定の情報ではない場合があることを指摘するにとどまるものであり,
5 前記(ア)のとおり,本件広告及び本件ダウンロードサイトにおいても,案内音声の
発音内容を表し,リクエスト情報に含まれるアプリ使用言語に対応する情報を受信する使用形態を回避させるような記述はなく,むしろ,そのような使用形態を想定したものとなっていたというべきであるから,被告の実証実験では同構成要件所定の情報を受信しなかったこと(上記②),被告が今後も同構成要件所定の使用態様で本件アプリを使用しないことを約束する意思を有していること(上記③)を併せ考慮しても,前記認定を覆すに足りないというべきである。ウ 構成要件1Dに係るあてはめ構成要件1Bにおいて規定するとおりにコンピュータを機能させるものであれば,同構成要件を充足するとの前記⑴イにおける検討と同様に,構成要件1D所定の情報を受信する手段としてコンピュータを機能させるプログラムであれば,受信する情報が同構成要件所定のものではない場面があるとしても,同構成要件を充足すると解すべきところ,本件アプリは,構成1dを備えており,スマートフォンを「前記案内音声の発音内容を表す関連情報であって,前記リクエスト情報に含まれるIDコードに対応するとともに,6個までのアプリ使用言語に対応する複数の情報のうち,前記リクエスト情報のアプリ使用言語に対応する情報を受信する受信手段」として機能させるものであるから,本件スマートフォンが受信する情報を選択しているのが顧客であるとしても,構成要件1Dを充足する。
4 争点4(本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものか)につい
て
⑴ 争点4-1(本件発明1は乙2公報により進歩性を欠くか)について
ア 乙2発明1の内容等に係る事実認定(ア) 乙2公報乙2公報には,次の記載があり,図1,3,4は,別紙9「乙2公報の図面」のとおりである(乙2)。a 技術分野
5 「【0001】
この発明は,テレビ等で番組放送中にその番組に関連した情報を提供する情報提供システムおよびこの情報提供システムに用いられる携帯端末装置に関する。」b 発明が解決しようとする課題「【0005】この発明は,音響による識別情報を用いて,ユーザが使用する携帯端末装置に放送に関連した情報を表示することで更なる情報の取得を容易にした情報提供システムおよび携帯端末装置を提供することを目的とする。」c 発明を実施するための形態「【0012】…図1は,情報提供システムの構成を説明する図である。【0013】この情報提供システムは,テレビ1で放送される番組の複数のシーンに関連する情報を,テレビ1の視聴者であるスマートフォン2のユーザ6(視聴者)に提供するシステムである。【0014】まず,本実施形態の概要を説明する。本発明の放音装置であるテレビ(TV)1が,番組の放送中に本発明の識別情報である音響IDを放音する。この音響IDは,放送中の番組に対応するものであり,放送音声に重畳されて放音される。放音された音響IDは,本発明の携帯端末装置であるスマートフォン2によって受信される。スマートフォン2は,音声信号である音響IDをIDコードにデコードして記憶する。番組を視聴しているユーザ6は,番組を視聴し興味ある場面が映し出されると,スマートフォン2を操作する(たとえばボタンを押下する)。このときの操作により,スマートフォン2は記憶していたIDコードをID解決サーバ4に送信する。ID解決サーバ4は,スマートフォン2から受信したIDコードおよび受信時刻でID/URL対応テーブル40を検索し対応するURLをスマートフォン2に返信
5 する。この対応するURLは,ユーザ6がスマートフォン2を操作したときに放送
されていた(テレビ1の画面に映し出されていた,または音声で再生されていた)場面に関連する情報を提供するインターネットサイトのURLである。…スマートフォン2は,ID解決サーバ4からURLを受信すると,そのURLで指示されるコンテンツサーバ5にアクセスし,そのURLに保存されているコンテンツをスマートフォン2上で再生(表示)する。【0015】ここで,音響IDとは,空気等の媒質の振動である音波を媒体として伝送されるIDコードである。音響IDは,この実施形態では,テレビ番組の音声に重畳されてテレビ1のスピーカから放音される。…【0018】図3はスマートフォン2の本願発明に関係する部分のみを取り出した機能ブロック図である。…【0019】制御部22には,アプリケーションプログラムとの協働により音響ID処理部23およびウェブブラウザ24が設けられている。音響ID処理部23は,収音して得られた音声信号を,拡散変調に用いられた拡散符号を係数とする整合フィルタに通すことによってIDコードを復調する処理部,ネットワーク通信部25を制御してID解決サーバ4およびコンテンツサーバ5と通信する処理部などからなっている。…ウェブブラウザ24は,音響ID処理部23が取得したURLにアクセスしてウェブページを表示する。【0020】GPS測位部26は,GPSを用いて自己の位置を測定し,位置情報としてURL取得部24に入力する。また,時計27は,音響IDを含んだ音声の収音時,または,ID解決サーバ4との通信時の時刻を計測して時刻情報としてURL取得部24に入力する。…また,操作部28はたとえば表示部29の表面に設けられたタ
5 ッチパネルであり,ボタンスイッチ28Aを含んでいる。ボタンスイッチ28Aは,
ユーザ6が,番組を視聴している際に興味ある場面が映し出されたときに操作する操作子である。【0021】上記音響ID処理部23は,音響IDアプリケーションと制御部22との協働により実現される。音響IDアプリケーションは,収音した音声から音響IDを分離・デコードして記憶する機能,ユーザ6の操作に応じてIDコードをID解決サーバ4に送信して対応するURLを取得する機能を実現するアプリケーションソフトである。…【0022】スマートフォン2の制御部22は,音響ID処理部23により音響IDをデコードしてID記憶部22Aに記憶する。ユーザ6によってボタンスイッチ23A(判決注:28Aの誤記であると認める。)が操作されると,記憶しているIDコードをネットワーク3を介してID解決サーバ4に送信する。このIDコードの送信に応じて,ID解決サーバ4からURLを受信する。制御部22は,このURLをウェブブラウザ24に渡し用いてコンテンツサーバ5にアクセスし,所定のコンテンツを表示する。【0023】ID解決サーバ4は,ID/URL対応テーブル40を備えており,受信した音響IDおよび受信時刻でID/URL対応テーブル40を検索し,対応するURLを読み出してスマートフォン2に返信する。このように,たとえば4桁の数字などの短いIDコードをURLに変換することにより,送信レートの高くない音響によるデータ送信であっても,長いURLにユーザ6のスマートフォン2を導くことが可能になる。【0025】図4は,ID/URL対応テーブル40を示す図である。このID/URL対応
5 テーブル40は,1つのテレビ番組(旅番組A)のためのテーブルを示している。
このID/URL対応テーブル40には,このテレビ番組のID「0000」とIDコードの受信時間帯に対応づけてURLが記憶されている。各欄の時間帯は,番組内で「風景」「女性」「食事」「宿泊」の映像が表示または音声が放音される時間帯であり,これらの時間帯に対応して,これらの映像または音声に関連する「その風景の場所を訪れるための観光ガイドのURL」,「その女性が着ていた衣服の通販サイトのURL」,「その食堂のメニュー等を紹介するグルメガイドのURL」,「そのホテルを予約するサイトのURL」が記憶されている。【0026】1つのシーンの時間帯を更に細分化して,それぞれ異なるURLを対応づけてもよい。すなわち,同じシーンであってもユーザがボタンスイッチ23A(判決注:28Aの誤記であると認める。)を操作するタイミングに応じて異なるURLに導くようにしてもよい。当然,各URLはそのシーンに関連するコンテンツを提供するURLであることが好ましい。【0033】以上のフローチャートでは,スマートフォン2からIDを受信したID解決サーバ4が受信時刻を読み出してID/URL対応テーブル40を検索するようにしているが,スマートフォン2がID解決サーバ4に対して音響IDを受信した時刻情報を送信するようにしてもよい。この場合でも,この時刻情報が本発明における「受信時の時刻情報」に対応する。」(イ) 乙2発明1前記(ア)によれば,乙2発明1は,放送中のテレビ番組に関連した情報を提供する情報提供システムに用いられる携帯端末装置に関するものであり(【0001】),テレビ番組の場面を識別する音声信号である音響IDを用い,ID解決サーバを介して当該場面に関連する情報を取得することを容易にした携帯端末装置等を提供することを目的とするものであって(【0005】等),本件発明1に対応
5 する構成として,次の各構成を有すると認められる。
「携帯端末装置を,放送中のテレビ番組の放送音声と重畳して放音される,当該番組の場面を識別する音声信号である音響IDを収音し,前記音響IDからIDコードにデコードする情報抽出手段,携帯端末装置に記憶されたIDコードをID解決サーバに送信する送信手段,前記IDコード及び前記ID解決サーバが当該IDコードを受信した時刻に基づいて当該ID解決サーバによりID/URL対応テーブルにおいて検索された対応するURLを受信し,放送されたテレビ番組の場面に関連する情報を当該URLで指示されるコンテンツサーバから受信する受信手段,及び,前記受信手段が受信した情報を携帯端末装置上で表示する出力手段として機能させるプログラム。」(ウ) 乙2発明1と本件発明1の対比乙2発明1と本件発明1を対比すると,これらは,次のaの点で一致し,少なくとも,次のbの点で相違すると認められる。a 一致点「コンピュータを,再生対象音を表す音響信号と識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号に応じて放音された音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出手段,前記情報抽出手段が抽出した識別情報を含む情報要求を送信する送信手段,前記情報要求に含まれる識別情報に対応する関連情報を受信する受信手段,および,前記受信手段が受信した関連情報を出力する出力手段として機能させるプログラム。」b 相違点
(a) 相違点1-1(構成要件1B)
5 本件発明1では,「案内音声…を表す音響信号」と「当該案内音声である再生対
象音の識別情報」が放音されるのに対し,乙2発明1では,「放送中のテレビ番組の放送音声」と「当該番組に対応し,当該番組の場面を識別する音声信号である音響ID」が放音される点
(b) 相違点1-2(構成要件1C)
本件発明1では,端末装置からサーバに送信される「情報要求」に含まれる情報は,「識別情報」と「当該端末装置にて指定された言語を示す言語情報」であるのに対し,乙2発明1では,携帯端末装置からID解決サーバに送信される情報は「IDコード」のみであり,「端末装置にて指定された言語を示す言語情報」は含まれない点
(c) 相違点1-3(構成要件1D①)
本件発明1では,端末装置が受信する「関連情報」は,「案内音声である再生対象音の発音内容を表す」のに対し,乙2発明1では,「放送されたテレビ番組の場面」に関連する内容を表す点
(d) 相違点1-4(構成要件1D②)
本件発明1では,端末装置が受信する「関連情報」は,「相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求の言語情報で指定された言語に対応する関連情報」であるのに対し,乙2発明1では,携帯端末装置がこれに対応する情報を受信しない点(エ) 相違点に関する
(被告の主張)
についてa 相違点1-1(構成要件1B)被告は,乙2発明1の「IDコード」は,番組と同時に,番組の放送音声という「再生対象音」も識別しているから,「再生対象音の識別情報」が放音される点では本件発明1と相違しない旨主張する。しかしながら,乙2公報に「この音響IDは,放送中の番組に対応するものであり,放送音声に重畳されて放音される。」(【0014】)と記載されており,I
5 D/URL対応テーブルを示す図4においても,受信時間帯に対応する番組の「シ
ーン」が特定されていること(【0025】)などからすると,乙2発明1の「IDコード」は,放送中の番組に対応し,当該番組の場面を識別する音声信号であって,番組の放送音声を識別するものではないから,本件発明1の「再生対象音の識別情報」に対応する構成を有するものとは認められない。b 相違点1-2(構成要件1C)被告は,乙2発明1では,ユーザがボタンスイッチを押した時刻は「端末装置にて指定された…情報」に該当するから,「端末装置にて指定された…情報」が「言語を示す言語情報」であるか「ボタンスイッチの操作タイミングを示す情報」であるかの点でのみ本件発明1と相違する旨主張する。しかしながら,乙2公報に「番組を視聴しているユーザ6は,番組を視聴し興味ある場面が映し出されると,スマートフォン2を操作する(たとえばボタンを押下する)。このときの操作により,スマートフォン2は記憶していたIDコードをID解決サーバ4に送信する。(【0014】)と記載されていることなどからする」と,乙2発明1において,携帯端末装置から送信される情報はIDコードのみであり,ID解決サーバは当該IDコード及び受信時刻で対応するURLを検索するものであるから,本件発明1の「端末装置にて指定された…情報」に対応する構成を有するとは認められないというべきである。c 相違点1-3(構成要件1D①)被告は,乙2発明1で,携帯端末装置が受信する情報は,番組の特定の場面に対応する放送音声に関連するものであるから,端末装置が受信する「関連情報」が「再生対象音」である点では本件発明1と相違しない旨主張する。しかしながら,乙2公報に「この対応するURLは,ユーザ6がスマートフォン2を操作したときに放送されていた(テレビ1の画面に映し出されていた,または音声で再生されていた)場面に関連する情報を提供するインターネットサイトのURLである。(【0014】)と記載されていることなどからすると,乙2発明1」
5 において,携帯端末装置が受信する情報は,放送されたテレビ番組の場面に関連す
るものであり,放送音声に関連する情報であるとは認められない。d 相違点1-4(構成要件1D②)被告は,乙2発明1では,番組中の相異なる場面に対応する「複数の関連情報」が存在し,そのうち選ばれた情報を受信しているから,「関連情報」が対応しているのが「言語」であるか「場面」であるかの点でのみ本件発明1と相違する旨主張する。しかしながら,乙2発明1において,携帯端末装置が受信する放送中の番組の場面に関する情報は「相異なる言語に対応する」ものでもないから,ID解決サーバに番組内の相異なる場面に対応する情報が複数記憶されていたとしても,これを構成要件1Dの「相異なる言語に対応する複数の関連情報」との構成に対応するものと認めることはできない。イ 乙4発明の内容等に係る事実認定(ア) 乙4公報乙4公報には,次の記載があり,図1は,別紙10「乙4公報の図面」のとおりである(乙4)。a 技術分野「【0001】この発明は,美術館や博物館などの展示物の説明に,利用者が携帯する携帯型音声再生受信器による音声ガイドサービスに関するものである。…」b 発明が解決しようとする課題「【0005】…[特許文献1]の技術によれば,情報の伝達に電波を使用するため,対象物に対する利用範囲を特定することが困難であり,目的の対象物以外のガイド音声を受信し利用者に誤った情報を提供する恐れがある。【0007】
5 これらのシステムを複数の言語に対応するためには多数のチャンネルの割り当てが
必要となり,チャンネル数の限度や,受信チャンネルまたは対象物のガイド音声の選択操作を利用者が行うシステム等の課題がある。」c 課題を解決するための手段「【0008】図1に本発明のシステムの俯瞰図を示す。展示物(A,B,C)1~3にそれぞれ固有のIDが一定の間隔で赤外線等の無線通信波のID符号を発信するID発信機4,5,6を受信域7,8,9のとなるよう設置する。【0009】利用者10が携帯する携帯受信機11が発信域7に入ると展示物(A)に設置されたID発信機のIDを受信し,この受信IDがトリガー(スタート)信号となって展示物(A)の音声ガイドが自動的にスタートする。【0010】利用者10は展示物(A)の音声ガイドが終了し,次の展示物(B)の受信域に入ると展示物(B)の音声ガイドが自動的にスタートし,利用者は携帯受信機11の操作なしに順次展示物の音声ガイドを聴取できる。【0012】…音声ガイドを多くの言語に対応するため,目的の複数言語に翻訳された全展示対象物の音声ガイドをデータ化し,一連のユニーク(単独)ID符号(以下IDという)を割り当てたデジタル音声データファイルとして音声データメモリーカード17に蓄積する。【0014】対象物から発信するIDの通信媒体に,指向性や遮断のし易さから赤外線を利用することにより,情報提供するIDの受信範囲を限定することが容易になるため,隣接する対象展示物との混信を回避した音声ガイドシステムを可能にした。」d 発明を実施するための形態
5 「【0020】
「実施形態の効果」この実施形態により,携帯受信器に蓄積された多言語の音声データの中から,あらかじめ再生する言語を選択しておけば多くの外国人利用者にも携帯受信器を操作することなく,ガイド音声を提供できる。」(イ) 乙4発明の概要前記(ア)によれば,乙4公報には,概要,次のとおりの内容の乙4発明が開示されていると認められる。すなわち,乙4発明は,利用者が携帯する携帯型音声再生受信器を用いた美術館や博物館等の展示物に係る音声ガイドサービスに関するものであ り(【0001】),①電波によって情報を伝達する従来技術によると,対象物以外のガイド音声を受信して利用者に誤った情報を提供するおそれがあったこと(【0005】)を踏まえ,展示物に固有のIDを赤外線等の無線通信波によって発信するID発信機を展示物ごとに一定の間隔で設置し,利用者が携帯する携帯受信器が発信域に入ると上記IDを受信し,展示物の音声ガイドが自動的に再生される構成を採用することにより,情報提供するIDの受信範囲を限定することが容易になり,隣接する対象展示物との混信を回避した音声ガイドシステムを可能とするという作用効果を奏するものであり(【0008】ないし【0010】,【0014】),また,②そのシステムを複数の言語に対応させようとすると,多数のチャンネルの割当てが必要となり,その選択操作を利用者が行う必要があったこと(【0007】)を踏まえ,多言語に翻訳された音声ガイドのデータを携帯受信器に蓄積し,その中から再生する言語を選択するという構成を採用することにより,多くの外国人利用者にも携帯受信器を操作することなくガイド音声を提供することができるという作用効果を奏するものである(【0012】,【0020】)。ウ 乙5発明の内容等に係る事実認定(ア) 乙5公報
5 乙5公報には,次の記載があり,図1,5,9は,別紙11「乙5公報の図面」
のとおりである(乙5)。a 技術分野「【0001】本発明は,公共の場所などに掲載された文書等の掲載物を,様々な言語に翻訳して提供する情報提供装置,情報提供方法,及びコンピュータプログラムに関する。」b 発明が解決しようとする課題「【0006】本発明は,このような問題を解決するために,文書の内容を様々な言語で利用者に正しく提供できる技術を提供することを,主たる課題とする。」c 発明を実施するための形態「【0015】図1は,本発明の情報提供装置を含む情報提供システムの全体構成図である。この情報提供システムは,インターネット等のネットワークNを介してデータの送受信が相互に可能に接続された,情報提供装置1,掲載文書の翻訳を依頼する複数のクライアントの各々に備えられるクライアント端末装置2,及び翻訳文を利用するユーザが所持するユーザ端末装置3を備えている。【0025】図5は,…コード画像50の例示図である。コード画像50は,2次元コード51と,複数の言語の各々と1対1に対応する言語コード52とをその内容として含む画像である。…【0035】…図9は,ユーザ端末装置3が翻訳ファイルにアクセスして翻訳文の内容を読むときの処理手順図である。ユーザは,…文書5のコード画像50を,ユーザ端末装置3に付属のカメラ機能を利用して読み取る。ユーザ端末装置3は,コード画像50の2次元コード51を
5 解読して,2次元コードにより特定される情報提供装置1に保存された翻訳ファイ
ルにアクセスする。…【0038】…ユーザが他の言語の翻訳文を読みたい場合には,コード画像50の言語コード52から,所望の言語を選択すれば良い。…」(イ) 乙5発明の概要前記(ア)によれば,乙5公報には,概要,次のとおりの内容の乙5発明が開示されていると認められる。すなわち,乙5発明は,公共の場所等に掲載された文書等の掲載物を様々な言語に翻訳して提供する情報提供装置等に関するものであり(【0001】),文書の内容を様々な言語で利用者に正しく提供することを主たる課題とし(【0006】),2次元コードと複数の言語に対応する言語コードをその内容として含むコード画像をユーザ端末装置によって読み取り,ユーザにおいて所望の言語を選択するなどして,インターネットを介して,文書等の掲載物の翻訳ファイルにアクセスというものである(【0015】,【0025】,【0035】,【0038】)。エ 容易想到性についての判断被告は,①乙2公報は,音響IDとインターネットを用いて,放音装置から放音された音響IDによって識別される識別対象の情報に対し,これと関連する任意の関連情報をサーバから端末装置に供給できる乙2技術を開示しているところ,本件発明1も乙2技術を採用するものであり,相違点1-1ないし同1-4は,識別対象,複数の関連情報の選択条件,関連情報の内容に係る相違にすぎず,当業者が適宜設定できるものである旨主張するとともに,②当業者は,乙2技術を乙4課題の解決に応用して,相違点1-1ないし同1-4に係る本件発明1の構成を容易に想到し得た旨主張する。しかしながら,まず,被告の上記①の主張については,前記1⑵認定のとおり,本件発明1は,コンピュータを,(ⅰ)放音される「案内音声である再生対象音」と
5 「当該案内音声である再生対象音の識別情報」を含む音響を収音して識別情報を抽
出する情報抽出手段,(ⅱ)サーバに対し,抽出した識別情報とともに「端末装置にて指定された言語を示す言語情報」を含む情報要求を送信する送信手段,(ⅲ)「前記案内音声である再生対象音の発音内容を表」し,情報要求に含まれる識別情報に対応するとともに「相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求の言語情報で指定された言語に対応する関連情報」を受信する受信手段,(ⅳ)受信手段が受信した関連情報を出力する出力手段として機能させるプログラムの発明であり,乙2公報等に音響IDとインターネットを利用するという点で本件発明1と同様の構成を有する情報提供技術が開示されていたとしても,その手順や方法を具体的に特定し,使用言語が相違する多様な利用者が理解可能な関連情報を提供できるという効果を奏するものとした点において技術的意義が認められるものであるから,相違点1-1ないし同1-4に係る本件発明1の構成が当業者において適宜設定できる事項であるということはできない。また,被告の上記②の主張については,前記イのとおり,乙4公報に,発明が解決しようとする課題の一つとして,システムを複数の言語に対応させること(以下,単に「乙4発明の課題」という。)が記載されているものの,以下のとおり,乙2発明1を乙4発明の課題に組み合わせる動機付けは認められず,仮に,乙4発明の課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照するなどして乙2発明1の構成に変更を加えたとしても相違点1-1ないし同1-4に係る本件発明1の構成に到達しないから,採用することができない。(ア) 乙2発明1を乙4発明の課題を組み合わせる動機付けa 前記のとおり,乙2発明1は,放送中のテレビ番組に関連した情報を提供する情報提供システムに用いられる携帯端末装置に関するものであり,放送中のテレビ番組の場面を識別する音声信号である音響IDを用い,ID解決サーバを介して当該場面に関連する情報を取得するものであるのに対し,前記イ(イ)のとおり,乙4発明は,利用者が携帯する携帯型音声再生受信器を用いた美術館や博物館等の展
5 示物に係る音声ガイドサービスに関するものであり,展示物に固有のIDを赤外線
等の無線通信波によって発信し,携帯受信器が発信域に入ると上記IDを受信し,展示物の音声ガイドが自動的に再生されるものであり,サーバに接続してインターネットを介して情報を取得する構成を有しないから,両発明は,想定される使用場面や発明の基本的な構成が異なっており,乙2発明1を乙4発明の課題に組み合わせる動機付けは認められない。b 被告は,①乙4発明は,放音装置を利用した情報提供技術という乙2技術と同じ技術分野に属するものであること,②乙2技術は汎用性の高い技術であり,様々な放音装置を含むシステムに利用されていたこと(乙11ないし13),③端末装置とサーバとの通信システムを利用する情報提供技術は周知のものであったこと(乙2,5,6,8,11ないし13等)などによれば,当業者において,乙2技術を乙4課題の解決に応用する動機付けがある旨主張する。しかしながら,乙2発明1と乙4発明がいずれも放音装置を利用した情報提供技術であるという限りで技術分野に共通性が認められ,また,本件優先日1当時,音響IDとインターネットを利用し,又は端末装置とサーバとの通信システムを利用する情報提供技術が乙2公報以外の公開特許公報に開示されていたとしても,いずれも乙4発明とは想定される使用場面や発明の基本的な構成が異なることは前記のとおりであり,乙4発明の課題の解決のみを取り上げて乙2発明1を適用する動機付けがあると認めるに足りない。(イ) 乙2発明1に対する乙4発明等の適用また,以下のとおり,乙4発明の課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照するなどして乙2発明1の構成に変更を加えたとしても,本件発明1の構成に到達しない。a 相違点1-1(構成要件1B)
(a) 前記のとおり,乙4発明は,展示物ごとに設置されたID発信機から赤外線
等の無線通信波によって展示物に固有のIDが発信されるものであり,「案内音声…を表す音響信号」を放音するものではなく,「当該案内音声である再生対象音の
5 識別情報」を含む音響信号を放音するものでもないから,乙4発明の構成を参照し
て乙2発明1の構成に変更を加えたとしても,相違点1-1に係る本件発明1の構成に到達しない。
(b) 被告は,乙4発明の音声ガイドは「案内音声」に相当するから,「案内音声」
を識別する構成を採用することは容易であった旨主張するが,上記のとおり,乙4発明のIDは展示物を識別するものであり,当該展示物に係る音声ガイドを識別するものではないから,乙4発明は「案内音声」を識別する構成を開示するものではない。b 相違点1-2(構成要件1C)前記のとおり,乙4発明は,サーバに接続してインターネットを介して情報を取得するという構成を有しないものであり,端末装置からサーバに「識別情報」と「当該端末装置にて指定された言語を示す言語情報」が送信されることはないから,乙4発明の課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照して乙2発明1の構成に変更を加えることによって,相違点1-2に係る本件発明1の構成に到達することはない。c 相違点1-3(構成要件1D①)前記のとおり,乙4発明は,サーバに接続してインターネットを介して情報を取得するという構成を有しておらず,IDによって識別される展示物のガイド音声を再生するものであって,端末装置が「案内音声である再生対象音の発音内容を表す」情報を受信することはないから,乙4発明の課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照して乙2発明1の構成に変更を加えることによって,相違点1-3に係る本件発明1の構成に到達することはない。d 相違点1-4(構成要件1D②)前記のとおり,乙4発明は,多言語に翻訳された音声ガイドのデータを携帯受信器に蓄積し,その中から再生する言語を選択することによって,IDによって識別される展示物のガイド音声を所定の言語で再生するという構成を有するものの,サーバに接続してインターネットを介して情報を取得するという構成を有していない
5 から,端末装置が「相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求
の言語情報で指定された言語に対応する関連情報」を受信することはなく,乙4発明の構成を参照して乙2発明1の構成に変更を加えることによって,相違点1-4に係る本件発明1の構成に到達することはない。(ウ) 被告が主張する周知技術(乙5)被告は,相違点1-4について,乙5公報には,元文書に対して多言語の翻訳文を同じ識別情報に紐付けて管理し,識別情報と言語情報により特定の言語の翻訳文を選択するという翻訳文書の管理に関する周知技術(乙5)が開示されているところ,周知技術(乙5)は,情報提供システムという点で乙2発明1と同じ技術分野に属するものであり,翻訳情報の提供を課題とする点で乙4課題と共通するから,当業者において,乙2技術を乙4課題の解決に応用するに当たり,周知技術(乙5)を踏まえ,本件発明1の構成を容易に想到し得た旨主張する。しかしながら,前記のとおり,乙2発明1は,放送中のテレビ番組に関連した情報を提供する情報提供システムに用いられる携帯端末装置に関するものであり,音響IDを用いて情報を取得するものであるのに対し,前記のとおり,乙5発明は,2次元コードと言語コードを含むコード画像を用いて,公共の場所等に掲載された文書等の掲載物の内容を所望の言語に翻訳して取得する装置等に関するものであり,音響IDを用いるものではないから,両発明は,想定される使用場面や発明の基本となる構成が異なるというべきであり,これらを組み合わせる動機付けがあるとは認め難い。また,被告が乙5発明と同種の技術が開示されていると主張する乙6公報及び乙8公報に記載されている発明は,いずれも音響IDを用いて情報を取得するものではなく,情報を受信する装置がテレビ等の受信機である点で,乙2発明1とは発明の基本となる構成が異なるというべきであるから,これらを組み合わせる動機付けがあるとは認め難い。また,仮に,これらの発明を乙2発明1に適用したとしても,上記のとおり,乙5発明,乙6発明,乙8発明は,いずれも音響IDを用いて情報を取得するもので
5 はなく,「案内音声である再生対象音」の放音やこれに関連する情報を取得するも
のでもないから,少なくとも,相違点1-1及び同1-3に係る本件発明1の構成には到達しない。オ 小括以上によれば,本件発明1は,当業者が本件優先日1当時,乙2発明1等に基づき容易に発明をすることができたものとは認められないから,乙2発明1等に基づき進歩性を欠くとはいえない。
⑵ 争点4-2(本件発明1は乙9公報により進歩性を欠くか)について
ア 乙9発明1(ア) 乙9公報乙9公報には,次の記載があり,図1,2,8は,別紙12「乙9公報の図面」のとおりである(乙9)。a 技術分野「【0001】この発明は,音声を用いたIDコードの通信により情報を提供する情報提供システムおよび情報提供システムなどに用いられる携帯端末装置に関する。」b 発明が解決しようとする課題「【0005】上述の,音声を収音してデジタル信号に変換し,このデジタルの音声信号をフィルタリングすることによって音響IDを抽出し,これをデコードしてIDコードを取得するというデコード処理は,携帯端末装置にとって大きな電力を消費する処理である。しかしながら,携帯端末装置はバッテリ駆動であるため,電力の消耗は極力抑える必要がある。したがって,観光地やショッピングモールなどにいる間ずっと,または,テレビを見ている間ずっと携帯端末装置のデコード機能をオンさせておくことは好ましいことではなかった。【0006】
5 この発明は,音声を用いて情報を送信する音響通信システムにおいて,音響ID
を受信してIDコードにデコードするデコード機能のオン/オフを適宜制御することが可能な携帯端末装置を提供することを目的とする。」c 発明を実施するための形態「【0015】…図1は,案内システムの構成を説明する図である。この案内システムは,たとえば観光地などに設置されるシステムであり,案内装置1,携帯端末装置2およびコンテンツサーバ4を有している。案内装置1は,観光地の複数の観光スポット(地点)にそれぞれ設けられる。スマートフォン2は,この観光地を訪れるユーザ6が所持するものである。コンテンツサーバ4は,インターネットなどのネットワーク3を介して携帯端末装置2と接続される。なお,携帯端末装置2としては,情報端末機能を有する多機能携帯電話であるスマートフォンを用いることが可能である。【0016】案内装置1はスピーカ16…を備え,このスピーカ16からその観光スポットを解説するガイド音声を放音する。この案内音声により,観光客であるユーザ6は,その観光スポットの詳細を知ることができる。【0017】そして,この案内音声に音響ID50が重畳されており,案内装置1は,案内音声と音響ID50を合成した音声をスピーカ16から放音する。音響ID50は,18~20kHzの高い周波数帯域の音声信号からなり,ユーザ6が所持する携帯端末装置2が所定のコンテンツ52を取得するための情報を含むものである。携帯端末装置2は,この音響ID50を収音してデコードする機能,デコードしたIDコード51を用いてコンテンツサーバ4にアクセスする機能,および,このIDコード51に対応するコンテンツ52である道案内情報を取得して表示部に表示する機能を有している。道案内情報は,現在,ユーザ6がいる観光スポット(案内装置
5 1の所在地)から次の観光スポットへ移動するための案内情報であり,携帯端末装
置2の表示部25…に表示する画像,および/または,オーディオアンプ27で再生される音声などからなる。【0018】観光地には複数の観光スポットが存在し,各観光スポットにはそれぞれ案内装置1が設置されている。それぞれの案内装置1は,その地点(観光スポット)のガイド音声を放音すると同時に,その地点を示すIDコード51を音響ID50として放音する。コンテンツサーバ4のコンテンツデータベース40(図2参照)には,そのIDコード51の地点から次の地点(観光スポット)へ至るための道案内情報が記憶されている。コンテンツサーバ4は,携帯端末装置2からIDコード51を受信すると,そのIDコード51に対応する道案内情報を返信する。【0035】上記実施形態は,図8(A)に示すように,携帯端末装置2にコンテンツサーバ4のURL53を記憶しておき,携帯端末装置2が,音響ID50を収音してIDコード51をデコードしたとき,このIDコード51をコンテンツサーバ4に送信し,その返信としてコンテンツ52を取得する形態であった。しかし,音響ID50を用いてコンテンツサーバ4からコンテンツ52を取得するシステムは,図8(A)に示した形態以外の形態,たとえば図8(B)…に示す形態でも実現可能である。【0036】図8(B)の形態では,携帯端末装置2にID解決サーバ7のURL54を記憶しておく。ID解決サーバ7は,携帯端末装置2からIDコード51を受信し,このIDコード51に対応するコンテンツサーバ4のURL53を携帯端末装置2に返信するサーバである。携帯端末装置2が,音響ID50を収音してIDコード51をデコードしたとき,このIDコード51をID解決サーバ7に送信して,その返信として対応するコンテンツサーバ4のURL53を取得する。携帯端末装置2
5 は,このURL53を用いてコンテンツサーバ4にアクセスすることによりコンテ
ンツ52を取得する。このときIDコード51をコンテンツサーバ4に送信してこれに対応するコンテンツ52を取得するようにしてもよい。」(イ) 乙9発明1の認定前記(ア)によれば,乙9発明1は,音声を用いたIDコードの通信により情報を提供する情報提供システム等に用いられる携帯端末装置等に関するものであり(【0001】 ,音声を用いて情報を送信する音響通信システムにおいて,音響I)Dを受信してIDコードにデコードするデコード機能のオン/オフを適宜制御することが可能な携帯端末装置を提供することを目的とするものであって(【0006】),本件発明1に対応する構成として,次の各構成を有すると認められる。「携帯端末装置を,複数の観光スポットに設置されている案内装置のスピーカによって当該観光スポットを解説するガイド音声と重畳して放音される,当該観光スポットを識別するIDコードを示す音響IDを収音し,前記音響IDからIDコードにデコードする情報抽出手段,携帯端末装置からデコードしたIDコードをID解決サーバに送信する送信手段,前記IDコードに対応するURLをID解決サーバから受信し,次の観光スポットへ移動するための道案内情報をコンテンツサーバから受信する受信手段,及び,前記受信手段が受信した情報を携帯端末装置上で表示する出力手段として機能させるプログラム。」(ウ) 乙9発明1と本件発明1の対比乙9発明1と本件発明1を対比すると,これらは,次のaの点で一致し,少なくとも,次のbの点で相違すると認められる。a 一致点「コンピュータを,案内音声である再生対象音を表す音響信号に応じて放音された音響を収音した収
5 音信号から識別情報を抽出する情報抽出手段,
前記情報抽出手段が抽出した識別情報を含む情報要求を送信する送信手段,前記情報要求に含まれる識別情報に対応する関連情報を受信する受信手段,および,前記受信手段が受信した関連情報を出力する出力手段として機能させるプログラム。」b 相違点
(a) 相違点1-5(構成要件1C)
本件発明1では,端末装置からサーバに送信される「情報要求」に含まれる情報は,「識別情報」と「当該端末装置にて指定された言語を示す言語情報」であるのに対し,乙9発明1では,携帯端末装置からID解決サーバに送信される情報は「IDコード」のみであり,「端末装置にて指定された言語を示す言語情報」は含まれない点
(b) 相違点1-6(構成要件1D①)
本件発明1では,端末装置が受信する「関連情報」は,「相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求の言語情報で指定された言語に対応する関連情報」であるのに対し,乙9発明1では,携帯端末装置がこれに対応する情報を受信しない点
(c) 相違点1-7(構成要件1D②)
本件発明1では,端末装置が受信する「関連情報」は,「前記案内音声である再生対象音の発音内容を表す」のに対し,乙9発明1では,携帯端末装置が受信する情報は,「次の観光スポットへ移動するための道案内情報」である点
(d) 相違点1-8(構成要件1B)
本件発明1の「識別情報」は「当該案内音声である再生対象音」を識別するものであるのに対し,乙9発明1の「IDコード」は,現在の観光スポットを識別するものである点
5 (エ) 相違点に関する
(被告の主張)
a 相違点1-7(構成要件1D②)被告は,乙9発明1において,端末装置が受信する「次の観光スポットに移動するための道案内情報」は,ガイド音声が対応する現在の観光スポットの関連情報であり,そのように相違点を認定すべきである旨主張するが,「次の観光スポットに移動するための道案内情報」は「前記案内音声である再生対象音の発音内容を表す」情報に当たらない以上,相違点1-7は前記のとおり認定するのが相当である。b 相違点1-8(構成要件1B)被告は,乙9発明1において,観光スポットと当該観光スポットに設置されたスピーカから放音されるガイド音声は一対一で対応しているから,IDコードが観光スポットを識別することと当該観光スポットのガイド音声を識別することは同じことであり,相違点1-8は認められない旨主張する。しかしながら,乙9公報の【0018】に「それぞれの案内装置1は,その地点(観光スポット)のガイド音声を放音すると同時に,その地点を示すIDコード51を音響ID50として放音する。」と記載されており,図2に「ID」が「地点名」,すなわち,観光スポットごとに付されることが示されていることなどに照らせば,乙9発明1の「IDコード」が識別しているのは当該観光スポットであると認めるのが相当であり,当該観光スポットを解説するガイド音声を識別するものであると認めることはできない。イ 乙10発明(ア) 乙10公報乙10公報には,次の記載があり,図1,2は,別紙13「乙10公報の図面」のとおりである(乙10)。a 技術分野「【0001】本発明は,外国語による観光案内システムに関し,特に外人観光客等が,持参す
5 る携帯電話等の携帯電話・情報端末(スマートフォン)を用いて,観光地等に設置
されている案内板や・看板などに貼付された情報タグから,またはこの携帯電話・情報端末が得たGPSによる位置情報に基づきインターネットを介して前記観光地に関する案内音声及び文字・図形からなる説明データを取得し,この説明データを複数の言語により構成し,いずれかの言語を択一的に選択して取得するようにした観光案内システムの技術分野に関する。」b 発明が解決しようとする課題「【0005】しかしながら,前記従来の携帯電話や情報端末を用いた観光案内ガイドのシステムでは,観光案内情報は,観光案内提供WEBサイトから自動的に送られてくるので,各国から訪れる観光客の言語に即時正確に対応することができなかった。観光客が自国の言語による観光案内情報を得るまでに複数の操作が必要となり,簡単,かつ,迅速に自国の言語による観光地情報を得ることができないという問題がある,ここに本発明が解決しようとする課題がある。【0006】外国人用の観光バスでは,現在の場所や次の観光地の情報などが複数の言語で案内されている。この場合,例えば録音テープなどを用いて,同じ内容の案内を複数の言語で準備し,外国人の言語に合わせて,当該言語の録音部分を再生するものであった。そのためにバスを降りた観光スポットでの案内には適さないものであった。」c 特許請求の範囲請求項1「各地に分散する観光地の案内を観光客に提供する観光システムにおいて,インターネットを介して互いに通信可能な前記観光客が携帯する複数の携帯電話・情報端末と,離隔した地域に設けられる観光案内サーバーとからなり,前記観光案内サーバーには,インターネット上のWEBアドレス及び観光地名及びその組となる管理記号と,各種言語による案内欄とを設定し,
5 この言語による案内欄には各国の言語を指定する複数の番号と,この番号にそれ
ぞれ対応する外国語による観光案内の音声データとを当該観光地が存続する期間はほぼ同一内容を保つようにそれぞれ予め格納し,前記携帯電話・情報端末には光学式文字読取装置を設け,前記所定の言語を指定する番号とを前記観光客が交代する毎に変更可能に予め記録し,前記観光地には情報タグを設置し,この情報タグには前記観光案内サーバーに設定された観光地名及び管理記号に対応する画像を予め光学上読み取り可能に表示し,観光客が前記観光地に到着し,前記携帯電話・情報端末を情報タグに接近させて光学式文字読取装置により,観光地名と管理記号を読み取り,その後前記予め記録したWEBアドレスに従って,インターネット上で前記観光案内サーバーにアクセスし,前記言語を指定する番号と読み取った前記管理記号を前記観光案内サーバーに送信し,前記観光案内サーバーはこれら番号と前記名称と管理記号に基づき,該当する観光地の指定された外国語による案内の音声データを読み出してインターネットを介して前記携帯電話・情報端末に送信し,記携帯電話・情報端末では受信した外国語による案内を観光客に報知させることを特徴とする外国語による観光案内システム。」(イ) 乙10発明の概要前記(ア)によれば,乙10公報には,概要,次のとおりの内容の乙10発明が開示されていると認められる。すなわち,乙10発明は,外国語による観光案内システム,取り分け,外国人観光客等が持参する携帯電話・情報端末を用いて,観光地等に設置されている案内板等に貼付された情報タグ等から,インターネットを介して前記観光地に関する案内音声及び文字・図形からなる説明データを取得し,この説明データを複数の言語によって構成し,いずれかの言語を択一的に選択して取得するようにした観光案内システムに関するものであり(【0001】),従来の携帯電話や情報端末を用いた観光案内ガイドのシステムでは,各国から訪れる観光客の言語に即時正確に対応す
5 ることができず,観光客が簡単かつ迅速に自国の言語による観光地情報を得ること
ができないという課題があったことを踏まえ(【0005】,【0006】),観光地の案内板等に設置された情報タグから,観光客の携帯電話・端末装置によって観光地名及び観光地を識別する管理記号を読み取り,観光案内サーバーにアクセスして,当該管理記号と携帯電話・端末装置に記憶されている言語を指定する番号を観光案内サーバーに送信し,観光案内サーバーから指定された言語による観光案内の音声データを受信するという構成を採用したものである(特許請求の範囲請求項1等)。ウ 容易想到性についての判断被告は,①乙9公報は,音響IDとインターネットを用いて,放音装置から放音された音響IDによって識別される識別対象の情報に対し,これと関連する任意の関連情報をサーバから端末装置に供給できる乙9技術を開示しているところ,本件発明1も乙9技術を採用するものであり,相違点1-5ないし同1-7は,情報要求に含まれる情報の内容,複数の関連情報の選択条件,関連情報の内容に係る相違にすぎず,当業者が適宜設定できるものである旨主張するとともに,②当業者は,乙9発明1に,乙10発明又は乙5公報及び乙10公報記載の周知技術,並びに周知技術(乙14等)を組み合わせるなどして,相違点1-5ないし同1-7に係る本件発明1の構成を容易に想到し得た旨主張する。しかしながら,まず,被告の上記①の主張については,前記⑴エと同様に,乙9公報等に音響IDとインターネットを用いた同種の情報提供が開示されていたとしても,本件発明1は,その手順や方法を具体的に特定し,使用言語が相違する多様な利用者が理解可能な関連情報を提供できるという効果を奏するものとした点において技術的意義が認められるものであるから,相違点1-5ないし同1-7に係る本件発明1の構成が当業者において適宜設定できる事項であるということはできない。また,被告の上記②の主張については,以下のとおり,乙9発明1に乙10発明
5 又は乙10公報及び乙5公報に記載された技術を適用したとしても,本件発明1の
構成に到達することはなく,被告が主張する周知技術(乙14等)は認められず,乙14公報等に記載された各発明の一部分を抽出して組み合わせるべき示唆を認めることもできないから,採用することができない。(ア) 乙9発明1に対する乙10発明又は乙10公報及び乙5公報に記載された技術の適用前記のとおり,乙9発明1は,再生対象音に係る音響信号から情報を抽出するものであるのに対し,乙10発明は,情報タグから情報を読み取るものであって,乙10発明において用いられている情報タグを乙9発明1に適用すると,音響信号から情報を抽出するとの構成自体が失われるのであるから,当該構成を維持しながらその他の構成についてのみ乙9発明1に乙10発明を組み合わせる動機付けがあるといえるかについては疑問が残るところである。また,前記のとおり,乙5公報に記載された技術は,コード画像から情報を読み取るものであるから,これを乙9発明1に適用すると,音響信号から情報を抽出するとの構成自体が失われることは乙10発明の情報タグを適用する場合と同様である。さらに,以下のとおり,乙9発明1に乙10発明又は乙10公報及び乙5公報に記載された技術を適用したとしても,少なくとも,相違点1-7及び同1-8に係る本件発明1の構成に到達しない。a 相違点1-7(構成要件1D②)前記のとおり,乙10発明は,観光客の携帯電話・端末装置によって観光地の案内板等に設置された情報タグから読み取った管理記号等を観光案内サーバーに送信し,観光案内サーバーから指定された言語による観光案内の音声データを受信するものであり,携帯電話・端末装置が受信する情報は「前記案内音声である再生対象音の発音内容を表す」ものではなく,乙10公報及び乙5公報にそのような情報を受信する技術は開示されていないから,乙9発明1に乙10発明又は乙10公報及
5 び乙5公報に記載された技術を適用したとしても,相違点1-7に係る本件発明1
の構成に到達しない。b 相違点1-8(構成要件1B)前記のとおり,乙10発明は,観光地の案内板等に設置された情報タグには,観光地名及び観光地を識別する管理記号が表示されており,観光客の携帯電話・端末装置によって読み取る構成を有するものの,情報タグは「当該案内音声である再生対象音」を識別するものではなく,乙10公報及び乙5公報にそのような技術は開示されていないから,乙9発明1に乙10発明又は乙10公報及び乙5公報に記載された技術を適用したとしても,相違点1-8に係る本件発明1の構成に到達しない。(イ) 被告が主張する周知技術(乙14等)被告は,乙14公報ないし乙17公報にあるように,本件優先日1当時,情報を多数の利用者に同時に提供するために様々な場面で利用されるアナウンスシステムにおいて,再生される各種の案内音声内容を各利用者の理解できる言語で提供することに対するニーズが存在することは周知であったから,当業者は,乙9発明1に基づき,外国人観光客に簡単かつ迅速に自国の言語による観光地情報を提供しようとすると,スピーカから放音される観光スポットのガイド音声の発音内容についても,外国人観光客に自国の言語により提供する構成を採用することにより,本件発明1の構成を容易に想到し得た旨主張する。被告は,相違点1-7について上記のとおり主張するものの,その趣旨は相違点1-6に係る容易想到性を含むものであると解されるところ,乙14公報に記載された発明は,コンテンツの再生と同期して音響信号を放音するものであって(乙14【0007】等),サーバに接続してインターネットを介して情報を取得するものではないのに対し,乙15公報ないし乙17公報に記載された発明は,いずれも音響IDを用いるものではなく,また,乙16公報及び乙17公報に記載された発明は,いずれもサーバに接続してインターネットを介して情報を取得するものでは
5 ないなど,想定される使用場面や発明の基本的な構成が異なるものであるから,乙
14公報ないし乙17公報に記載された各発明に基づき一体的な周知技術を認定することは困難であり,そうであれば,それぞれの発明の一部分を抽出して組み合わせるべき示唆がなければこれらに記載された発明を適宜に組み合わせて乙9発明1に適用して相違点1-6及び同1-7に係る本件発明1の構成に到達することが容易であるということはできない。乙14公報ないし乙17公報に記載された各発明の一部分を抽出して組み合わせるべき示唆を認めることはできない。エ 小括以上によれば,本件発明1は,当業者が本件優先日1当時,乙9発明1等に基づき容易に発明をすることができたものとは認められないから,乙9発明1等に基づき進歩性を欠くとはいえない。
5 争点6(差止めの必要性は認められるか)について
被告は,本件アプリについて差止めの必要性は認められないとし,その理由として,①本件口頭弁論終結時点において,本件アプリに係るサービスは実用化されていなかったこと,②被告は,平成30年5月以降,本件アプリの配信を中止し,多言語で情報配信を行う機能を取り除いた本件新アプリを配信しており,本件訴訟の結果によって本件アプリに係る事業を再開するか否かを決定する予定であること,
③被告は,今後,顧客に対し,案内音声である再生対象音の発音内容を表す他国語
の関連情報を提供することを禁ずる旨の約束や,案内音声である第1言語の再生対象音が表す発音内容を第2言語で表現した情報を提供することを禁ずる旨の約束をする意思があることを主張する。しかしながら,前記認定のとおり,本件アプリは,本件発明1の技術的範囲に属し,本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものとは認められないから,前記第2の2⑷のとおり,被告は,少なくとも,平成29年5月頃から平成30年6月頃まで,本件アプリを作成し,譲渡等及び譲渡等の申出をし,平成28年6月から平成29年3月までの間に3回にわたり本件アプリを使用することによって本
5 件特許権1を侵害していたものである。
これらに加えて,被告が本件訴訟において本件アプリが本件発明1の技術的範囲に属することを否認して争い,本件特許1について特許無効審判により無効にされるべきであると主張していること,弁論の全趣旨によれば,被告は,現在も,ウェブサイトに本件アプリの説明や広告を掲載していると認められ,被告が本件アプリの作成等を再開することが物理的に不可能な状況にあるとは認められないことなども考慮すると,被告は,今後,本件特許権1を侵害するおそれがあるものというべきであるから,原告が被告に対し,その侵害の予防のため,本件アプリの作成等の差止を求める必要性は認められるものというべきである。
第5 結論
以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官山 田 真 紀裁判官神 谷 厚 毅裁判官西 山 芳 樹(別紙一覧)別紙1 当事者目録別紙2 被告製品目録別紙3 特許請求の範囲(本件特許1)
5 別紙4 特許請求の範囲(本件特許2)
別紙5 本件アプリの構成別紙6 本件スマートフォンの構成別紙7 主張対比表(乙2公報,乙9公報関係)別紙8 本件明細書1の図面別紙9 乙2公報の図面別紙10 乙4公報の図面別紙11 乙5公報の図面別紙12 乙9公報の図面別紙13 乙10公報の図面(別紙1)当事者目録原 告 ヤ マ ハ 株 式 会 社
5 同訴訟代理人弁護士 三 村 量 一
同 上 田 一 郎同 中 島 慧同 福 原 裕 次 郎同補佐人弁理士 相 田 義 明被 告 株式会社コンピューター・ビジネス同訴訟代理人弁護士 尾 崎 英 男同 上 野 潤 一同 佐 々 木 郁(別紙2)被告製品目録
1 スマートフォン用アプリケーション「Sound Insight」
2 同「サウンドインサイト防災」
(別紙3)特許請求の範囲(本件特許1)コンピュータを,
5 案内音声である再生対象音を表す音響信号と当該案内音声である再生対象音の識
別情報を含む変調信号とを含有する音響信号に応じて放音された音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出手段,前記情報抽出手段が抽出した識別情報と,当該端末装置にて指定された言語を示す言語情報とを含む情報要求を送信する送信手段,前記案内音声である再生対象音の発音内容を表す関連情報であって,前記情報要求に含まれる識別情報に対応するとともに相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求の言語情報で指定された言語に対応する関連情報を受信する受信手段,および,前記受信手段が受信した関連情報を前記案内音声の放音とともに出力する出力手段として機能させるプログラム。(別紙4)特許請求の範囲(本件特許2)
第1言語の案内音声である再生対象音と当該案内音声である再生対象音の識別情
5 報を示す音響成分とを含む音響を収音する収音装置と,
前記収音装置が収音した音響から前記識別情報を抽出する情報抽出部と,前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応し,前記案内音声である再生対象音が表す発音内容を前記第1言語とは異なる第2言語で表現した情報の所在を示すURLを受信する通信部とを具備する端末装置。(別紙5)本件アプリの構成1a スマートフォンを,
5 1b 案内音声と当該案内音声を識別するIDコードを含む音響IDとを含有す
る音響を収音し,当該音響からIDコードを抽出する情報抽出手段,1c 前記情報抽出手段が抽出したIDコードとアプリ使用言語を含むリクエスト情報を送信する送信手段,1d 前記案内音声の発音内容を表す関連情報であって,前記リクエスト情報に含まれるIDコードに対応するとともに,6個までのアプリ使用言語に対応する複数の情報のうち,前記リクエスト情報のアプリ使用言語に対応する情報を受信する受信手段,及び,1e 前記受信手段が受信した情報を前記案内音声の放音とともにブラウザで表示する表示手段1f として機能させるプログラム。(別紙6)本件スマートフォンの構成2a 第1言語の案内音声と当該案内音声を識別するIDコードを示す音響ID
5 とを含む音響を収音する収音装置
2b 前記収音装置が収音した音響から前記IDコードを抽出する情報抽出部と,2c 前記情報抽出部が抽出したIDコードに対応し,前記案内音声が表す発音内容を前記第1言語とは異なる第2言語で表現した情報の所在を示すURLを受信する通信部と2d を具備するスマートフォン。(別紙7)主張対比表(乙2公報,乙9公報関係)
1 乙2公報関係
⑴ 本件発明1と乙2発明1の相違点
(被告の主張)
(原告の主張)
相 違 点 1 - 1 本件発明1では,再生対象音 本 件 発 明 1 で は , 識 別 情 報 は( 構 成 要 件 1 は「案内音声」であるのに対 「案内音声である再生対象音」B) し,乙2発明1では,番組の を識別するのに対し,乙2発明放送音声である点 1では,IDコードは放送中の番組を識別する点相 違 点 1 - 2 本件発明1では,識別情報と 本件発明1では,端末装置から( 構 成 要 件 1 共に端末装置からサーバに送 サーバに送信される情報要求にC) 信される情報要求に含まれる は「情報抽出手段が抽出した識「端末装置にて指定された」 別情報」と「端末装置にて指定情 報 は 「 言 語 を 示 す 言 語 情 された言語を示す言語情報」と報」であるのに対し,乙2発 いう2種類のデータが含まれる明1では,ボタンスイッチの のに対し,乙2発明1では,携操作タイミングを示す情報で 帯端末装置からID解決サーバある点 に送信されるデータ(情報)は携帯端末装置に記憶されたIDコードのみであり,当該携帯端末装置において指定されたデータ(情報)は送信されない点相 違 点 1 - 3 本件発明1では,端末装置が 本件発明1では,端末装置が受( 構 成 要 件 1 受信する識別情報に対応する 信する関連情報は「案内音声でD①) 関連情報は「案内音声…の発 ある再生対象音の発音内容を表音内容を表す」のに対し,乙 す 」 の に 対 し , 乙 2 発 明 1 で2発明1では,放送の音声に は,携帯端末装置が受信する情関連する内容を表す点 報は放送されたテレビ番組の場面に関連する内容を表す情報である点相 違 点 1 - 4 本件発明1では,関連情報は 本件発明1では,「情報要求に( 構 成 要 件 1 「相異なる言語に対応する複 含まれる識別情報に対応するとD②) 数の関連情報のうち,前記情 ともに相異なる言語に対応する報要求の言語情報で指定され 複数の関連情報のうち,前記情た 言 語 」 に 対 応 す る の に 対 報要求の言語情報で指定されたし,乙2発明1では,番組中 言語に対応する関連情報」をコの相異なる場面に対応する複 ン ピ ュ ー タ が 受 信 す る の に 対数の関連情報のうち,情報要 し,乙2発明1では,相異なる求で送られたIDコードの受 言語に対応する複数の関連情報信時刻に相当する時間帯に放 は用意されておらず,指定され送されていた場面に対応する た言語に対応する情報は受信さ点 れない点
⑵ 本件発明2と乙2発明2の相違点
(被告の主張)
(原告の主張)
相 違 点 2 - 1 本件発明2のURLは,「案 本件発明2のURLは,「(第( 構 成 要 件 2 内音声である再生対象音が表 1言語の)案内音声である再生C) す発音内容を前記第1言語と 対象音が表す発音内容を前記第は異なる第2言語で表現した 1言語とは異なる第2言語で表情 報 」 の 所 在 を 示 す の に 対 現した情報」の所在を示すのにし,乙2発明2のURLは, 対し,乙2発明2のURLは,テレビ番組の場面に関連する テレビ番組の場面に関連する情情報の所在を示すものである 報の所在を示すものである点点相 違 点 2 - 2 本件発明2では,再生対象音 本 件 発 明 2 で は , 識 別 情 報 は( 構 成 要 件 2 は「案内音声」であるのに対 「第1言語の案内音声である再A) し,乙2発明2では,番組の 生 対 象 音 」 を 識 別 す る の に 対放送音声である点 し,乙2発明2では,IDコードは放送中のテレビ番組を識別する点乙9公報関係
⑴ 本件発明1と乙9発明1の相違点
(被告の主張)
(原告の主張)
相 違 点 1 - 5 本件発明1では,端末装置か 本件発明1では,端末装置から( 構 成 要 件 1 らサーバに送信される情報要 サーバに送信される情報要求にC) 求において,識別情報と「端 おいて,「情報抽出手段が抽出末装置にて指定された言語を した識別情報」と「端末装置に示す言語情報」が送信される て指定された言語を示す言語情のに対し,乙9発明1では, 報」が送信されるのに対し,乙端末装置から送信される情報 9発明1では,携帯端末装置かは識別情報だけであり,端末 ら送信される情報はIDコード装置にて指定された情報は送 だけであり,当該携帯端末装置信されない点 において指定された情報は送信されない点相 違 点 1 - 6 本件発明1では,端末装置が 本件発明1では,端末装置が受( 構 成 要 件 1 受信する識別情報に対応する 信する関連情報が「識別情報」D①) 関連情報は「相異なる言語に と「言語情報」の双方に対応す対応する複数の関連情報のう るのに対し,乙9発明1では,ち,前記情報要求の言語情報 携帯端末装置が受信する情報がが指定された言語」にも対応 IDコードのみに対応する点するのに対し,乙9発明1では,識別情報に対応するだけである点相 違 点 1 - 7 本件発明1では,端末装置が 本件発明1で,端末装置が受信( 構 成 要 件 1 受信する識別情報に対応する する関連情報は,「案内音声でD②) 関連情報は「案内音声…の発 ある再生対象音の発音内容を表音内容を表す」のに対し,乙 す関連情報であって,…情報要9発明1では,ガイド音声が 求の言語情報で指定された言語対応する観光スポットに関す に対応する関連情報」であるのる道案内情報を表す点 に対し,乙9発明1で,携帯端末装置が受信する情報は,次の観光スポットへ移動するための道案内情報である点相違点1-8 本件発明1の識別情報は,「案(構成要件1 内音声である再生対象音」を識B) 別するものであるのに対し,乙9発明1のIDコードは,観光スポットを識別するものであり,ガイド音声の内容とは関係がない次の観光スポットへ移動するための道案内情報と対応付けられている点
⑵ 本件発明2と乙9発明2の相違点
(被告の主張)
(原告の主張)
相 違 点 2 - 3 本件発明2では,URLが所 本件発明2では,受信されるU( 構 成 要 件 2 在を示す情報は「再生対象音 RLは「情報抽出部が抽出したC) が表す発音内容を前記第1言 識別情報に対応し,前記案内音語とは異なる第2言語で表現 声である再生対象音が表す発音した情報」であるのに対し, 内容を前記第1言語とは異なる乙9発明2では,放音された 第2言語で表現した情報」の所ガイド音声に対応する情報で 在を示すのに対し,乙9発明2あるが,次の観光スポットへ では,情報抽出部がデコードしの道案内情報である点 たIDコードに対応する次の観光スポットへ移動するための道案内情報の所在を示すものである点相違点2-4 本件発明2の識別情報は,「第(構成要件2 1言語の案内音声である再生対A) 象音」を識別するのに対し,乙9発明2のIDコードは,ガイド音声が放音される観光スポットを識別するものであり,次の観光スポットへ移動するための道案内情報と対応付けられている点(別紙8)本件明細書1の図面【図1】【図2】【図3】【図8】【図10】【図19】(別紙9)乙2公報の図面【図1】【図3】【図4】(別紙10)乙4公報の図面(別紙11)乙5公報の図面(別紙12)乙9公報の図面【図1】【図2】【図8】(別紙13)乙10公報の図面【図1】【図2】【図4】
第4 当裁判所の判断 ................................................. 32
1 本件発明1について ............................................... 32
⑴ 本件明細書1の発明の詳細な説明 ................................... 32
⑵ 本件発明1の概要 ................................................. 38
2 本件アプリの広告等について ....................................... 39
3 争点1(本件アプリは本件発明1の技術的範囲に属するか)について .. 40⑴ 争点1-1(本件アプリは構成要件1Bを充足するか)について ...... 40⑵ 争点1-2(本件アプリは構成要件1Dを充足するか)について ...... 42
4 争点4(本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものか)について ................................................................... 44⑴ 争点4-1(本件発明1は乙2公報により進歩性を欠くか)について .. 44⑵ 争点4-2(本件発明1は乙9公報により進歩性を欠くか)について .. 61
5 争点6(差止めの必要性は認められるか)について................... 72
第5 結論 ........................................................... 73
(別紙1) ........................................................... 76(別紙2) ........................................................... 77(別紙3) ........................................................... 78(別紙4) ........................................................... 79(別紙5) ........................................................... 80(別紙6) ........................................................... 81(別紙7) ........................................................... 82(別紙8) ........................................................... 88
5 (別紙9) ........................................................... 90(別紙10) ......................................................... 91(別紙11) ......................................................... 92(別紙12) ......................................................... 93(別紙13) ......................................................... 94
第1 請求
主文第1項と同旨
第2 事案の概要
1 事案の要旨⑴ 本件は,特許第5871088号の特許権(以下「本件特許権1」といい,この特許を「本件特許1」という。)及び特許第6170645号の特許権(以下「本件特許権2」といい,この特許を「本件特許2」という。)を有する原告が,別紙2被告製品目録記載1及び2の各スマートフォン用アプリケーション(以下,これらを一括して「本件アプリ」という。)は本件特許1の特許請求の範囲請求項9記載の発明(以下「本件発明1」という。)の技術的範囲に属し,被告による本件アプリの作成,使用,譲渡等(譲渡,貸渡し,電気通信回線を通じた提供をいう。以下同じ。)又は譲渡等の申出(ダウンロード用の画面をウェブサイトに表示すること及び同画面へのリンクを他の画面へ表示することを含む。以下同じ。また,これらの行為を一括して「作成等」という。)は本件特許権1を侵害する,本件アプリをインストールしたスマートフォン(以下「本件スマートフォン」)は本件特許2の特許請求の範囲請求項4記載の発明(以下「本件発明2」といい,本件発明1と一括して「本件各発明」という。)の技術的範囲に属し,又は被告による本件アプリの作成,譲渡等若しくは譲渡等の申出は本件特許権2の間接侵害(特許法101条1号,同条2号)に当たると主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づき,本件アプリの作成等の差止めを求める事案である。本件特許権1の侵害によ
5 る請求と本件特許権2の侵害による請求とは選択的なものである。⑵ 被告は,本件アプリが本件発明1の技術的範囲に属すること,本件スマートフォンが本件発明2の技術的範囲に属することを否認するとともに,本件特許1及び2(以下,これらを一括して「本件各特許」といい,これらに係る特許権を一括して「本件各特許権」という。)は,いずれも,次の各公開特許公報及び公表特許公報(以下,書証番号に対応させて「乙2公報」などということがある。)記載の発明,周知技術等に基づき進歩性を欠くことを理由として,特許無効審判により無効にされるべきであり,本件各特許権により権利行使は認められない旨主張して争っている。ア 特開2012-227631号公報(乙2)イ 特開2011-109629号公報(乙4)ウ 特開2013-68995号公報(乙5)エ 特開2004-235734号公報(乙6)オ 特開2002-27429号公報(乙8)カ 特開2013-5377号公報(乙9)キ 特開2012-38278号公報(乙10)ク 特開2012-227921号公報(乙11)ケ 特開2012-155706号公報(乙12)コ 特開2012-227909号公報(乙13)サ 特開2010-117605号公報(乙14)シ 特表2006-512647号公報(乙15)ス 特開2000-207170号公報(乙16)セ 特開平9-146585号公報(乙17)
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(以下,書証番号は特記しない限り枝番の記載を省略する。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
5 ⑴ 当事者ア 原告は,コンピューターソフトの制作及び製造並びに販売等を目的とする株式会社である。イ 被告は,コンピュータ・ソフトウェアの開発,販売等を目的とする株式会社である。⑵ 本件各特許権ア 本件特許権1(ア) 原告は,次の内容の本件特許権1を有している。出願日 平成27年4月28日優先日 平成26年7月29日(以下,本件特許1との関係で「本件優先日1」という。)優先権主張番号 特願2014-154118優先権主張国 日本国優先日 平成26年10月24日優先権主張番号 特願2014-217346優先権主張国 日本国登録日 平成28年1月22日特許番号 特許第5871088号発明の名称 端末装置,情報提供システム,情報提供方法およびプログラム(イ) 原告は,平成30年3月14日,本件特許1の特許請求の範囲について訂正審判の請求(以下「本件訂正審判請求1」という。)をし,同年5月1日,原告の請求どおりに訂正を認める旨の審決がされ,同審決は確定した(甲15,17)。(ウ) 訂正後の本件特許1の特許請求の範囲請求項9は,別紙3「特許請求の範囲(本件特許1)」のとおりである(下線部は訂正部分である。以下同じ。)。イ 本件特許権2(ア) 原告は,次の内容の本件特許権2を有している。
5 出願日 平成29年5月25日優先日 平成26年7月29日(以下,本件特許2との関係で「本件優先日2」という。)優先権主張番号 特願2014-154118優先権主張国 日本国優先日 平成26年10月24日優先権主張番号 特願2014-217346優先権主張国 日本国登録日 平成29年7月7日特許番号 特許第6170645号発明の名称 情報管理システムおよび端末装置(イ) 原告は,平成30年3月14日,本件特許2の特許請求の範囲について訂正審判の請求(以下「本件訂正審判請求2」という。)をし,同年5月1日,原告の請求どおりに訂正を認める旨の審決がされ,同審決は確定した(甲16,18)。(ウ) 訂正後の本件特許2の特許請求の範囲請求項4は,別紙4「特許請求の範囲(本件特許2)」のとおりである。
⑶ 本件各発明の構成要件の分説ア 本件発明1本件発明1は,次のとおり,構成要件に分説することができる(以下,分説に係る各構成要件を符号に対応させて「構成要件1A」などという。以下同じ。)。1A コンピュータを,1B 案内音声である再生対象音を表す音響信号と当該案内音声である再生対象音の識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号に応じて放音された音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出手段,1C 前記情報抽出手段が抽出した識別情報と,当該端末装置にて指定された言語を示す言語情報とを含む情報要求を送信する送信手段,
5 1D 前記案内音声である再生対象音の発音内容を表す関連情報であって,前記情報要求に含まれる識別情報に対応するとともに相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求の言語情報で指定された言語に対応する関連情報を受信する受信手段,および,1E 前記受信手段が受信した関連情報を前記案内音声の放音とともに出力する出力手段1F として機能させるプログラム。イ 本件発明2は,次のとおり,構成要件に分説することができる。2A 第1言語の案内音声である再生対象音と当該案内音声である再生対象音の識別情報を示す音響成分とを含む音響を収音する収音装置と,2B 前記収音装置が収音した音響から前記識別情報を抽出する情報抽出部と,2C 前記情報抽出部が抽出した識別情報に対応し,前記案内音声である再生対象音が表す発音内容を前記第1言語とは異なる第2言語で表現した情報の所在を示すURLを受信する通信部と2D を具備する端末装置。
⑷ 被告の行為被告は,遅くとも平成29年5月頃から平成30年6月頃まで,本件アプリを作成し,ダウンロード用のウェブサイトを介してスマートフォン利用者に配信することにより,本件アプリの譲渡等及び譲渡等の申出をしていた。また,被告は,平成28年6月,同年10月及び平成29年3月にそれぞれ開催された展示会等において,本件アプリを使用した(甲5ないし8,10)。
⑸ 本件アプリの構成等ア 本件アプリは,スマートフォンにインストールされて利用されるアプリケーションであり,被告が提供するサービス(以下「被告サービス」という。)において,本件スマートフォンを次のように機能させるプログラムである。(ア) スピーカー等の放音装置から,識別情報であるIDコードを表す音響IDを
5 含む音響が放音されると,これを収音し,当該音響IDからIDコードを検出する。(イ) 検出されたIDコード及びアプリ使用言語の情報を含むリクエスト情報を作成し,被告が管理するサーバ(以下「管理サーバ」という。)に送信する。(ウ) 管理サーバから,リクエスト情報に含まれるIDコード及びアプリ使用言語の情報に対応する情報の所在を示すものとして送信されるアクセス先URLを受信する。(エ) 上記アクセス先URLに係るサーバにアクセスして情報を取得し,これをブラウザに表示して出力する。イ 被告サービスにおいて,被告から音響IDの提供を受け,放音装置から音響IDを含む音響を放音し,IDコード及びアプリ使用言語の情報に対応するURLを決定し,管理サーバにその対応関係を記憶しているのは,被告と契約を締結した被告の顧客(以下,単に「顧客」という。)であり,顧客は,1個のIDコードに対応させて,6個までのアプリ使用言語に対応する各URLを管理サーバに記憶することができる。ウ 本件アプリは,別紙5「本件アプリの構成」記載の各構成(以下,符号に対応させて「構成1a」などという。)のうち,構成1a,1c,1e,1fを備えており,構成要件1A,1C,1E,1Fを充足する。エ 本件スマートフォンは,別紙6「本件スマートフォンの構成」記載の各構成(以下,符号に対応させて「構成2a」などという。)のうち,構成2b,2dを備えており,構成要件2B,2Dを充足する。
3 争点⑴ 本件アプリは本件発明1の技術的範囲に属するか(争点1)ア 本件アプリは構成要件1Bを充足するか(争点1-1)イ 本件アプリは構成要件1Dを充足するか(争点1-2)⑵ 本件スマートフォンは本件発明2の技術的範囲に属するか(争点2)ア 本件スマートフォンは構成要件2Aを充足するか(争点2-1)
5 イ 本件スマートフォンは構成要件2Cを充足するか(争点2-2)⑶ 本件特許権2について,特許法101条1号及び同条2号の間接侵害は成立するか(争点3)⑷ 本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものか(争点4)ア 本件発明1は乙2公報により進歩性を欠くか(争点4-1)イ 本件発明1は乙9公報により進歩性を欠くか(争点4-2)⑸ 本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものか(争点5)ア 本件発明2は乙2公報により進歩性を欠くか(争点5-1)イ 本件発明2は乙9公報により進歩性を欠くか(争点5-2)
⑹ 差止めの必要性は認められるか(争点6)
第4 当裁判所の判断
1 本件発明1について⑴ 本件明細書1の発明の詳細な説明本件明細書1の発明の詳細な説明は,概要,次のとおりであり,図1ないし3,8,10,19は,別紙8「本件明細書1の図面」のとおりである(甲3の2)。ア 技術分野「【0001】本発明は,端末装置の利用者に情報を提供する技術に関する。」イ 背景技術「【0002】美術館や博物館等の展示施設にて利用者を案内する各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には,美術館や博物館等の各展示物の近傍に設置された発信装置と,利用者が携帯する携帯受信機とを利用した自動再生音声ガイドシステムが開示されている。発信装置は,展示物に固有の識別符号を電波または赤外線
5 により間欠的に周囲に送信する。携帯受信機は,自身の記録媒体に事前に記憶された複数の案内音声のうち,発信装置から受信した識別符号に対応する案内音声を再生する。先行技術1によれば,発信装置からの電波や赤外線が到達する範囲内(展示物の周囲)に携帯受信機が移動して識別符号を受信することを契機として,当該範囲内の展示物を解説する案内音声が再生される。」ウ 発明が解決しようとする課題「【0004】しかし,特許文献1の技術では,各展示物の識別符号が電波または赤外線で発信装置から送信されるから,電波や赤外線を授受するための専用の通信機器を発信装置や携帯受信機に設置する必要があるという問題がある。なお,以上の説明では,美術館や博物館等の展示施設を例示したが,電車やバス等の交通機関の音声案内等,利用者に様々な情報を提供する任意の状況において同様の問題が発生し得る。以上の事情を考慮して,本発明は,無線通信のための専用の通信機器を必要とせずに多様な情報を利用者に提供することを目的とする。」エ 課題を解決するための手段「【0005】以上の課題を解決するために,本発明の第1態様に係る端末装置は,再生対象音を表す音響信号と当該再生対象音の識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号に応じて放音された音響を収音して収音信号を生成する収音手段と,収音手段が生成した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出手段と,情報抽出手段が抽出した識別情報を含む情報要求を送信する送信手段と,情報要求に含まれる識別情報に対応するとともに再生対象音に関連する複数の関連情報の何れかを受信する受信手段と,受信手段が受信した関連情報を出力する出力手段とを具備する。以上の構成では,再生対象音を表す音響信号と当該再生対象音の識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号に応じて放音された音響を収音した収音信号から識別情報が抽出される。すなわち,再生対象音とともに放音される音響を利用した音響通信で識別情
5 報が端末装置に通知される。したがって,赤外線や電波を利用した無線通信に専用される通信機器を必要とせずに,再生対象音の識別情報に対応する関連情報を利用者に提供することが可能である。【0006】本発明の好適な態様において,送信手段は,当該端末装置にて指定された言語を示す言語情報を含む情報要求を送信し,受信手段は,情報要求の識別情報に対応するとともに相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち情報要求の言語情報で指定された言語に対応する関連情報を受信する。以上の態様では,相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち情報要求の言語情報で指定された言語に対応する関連情報が受信されるから,使用言語が相違する多様な利用者が理解可能な関連情報を提供できるという利点がある。また,端末装置のOSの言語設定で指定された言語を示す言語情報を利用すれば,利用者が言語を指定する必要がないという利点もある。」オ 発明を実施するための形態(ア) 第1実施形態「【0012】図1に例示される通り,第1実施形態の情報提供システム10は,情報管理システム14と放音システム16とを具備する。放音システム16は,展示施設Mに設置されて施設の音声案内に利用される。具体的には,図1に例示される通り,第1実施形態の放音システム16は,特定の言語(以下「第1言語」という)で利用者を案内する音声(以下「案内音声」という)を放音するとともに,案内音声に事前に付与された識別情報Dを端末装置12に通知する。案内音声は,例えば,展示物を解説する音声や展示施設M内の順路を案内する音響である。案内音声の識別情報Dは,無線による情報通信で端末装置12に通知される。第1実施形態では,空気振動としての音響(音波)を伝送媒体とする音響通信で放音システム16から端末装置12に識別情報Dを通知する場合を例示する。すなわち,識別情報Dは案内音
5 声とともに音響として放音システム16から放射される。【0013】他方,情報管理システム14は,端末装置12に提供される情報を管理するコンピュータシステムである。端末装置12は,移動体通信網やインターネット等を含む通信網18を介して情報管理システム14と通信可能である。図1に例示される通り,端末装置12は,放音システム16から通知された識別情報Dを含む情報要求Rを情報管理システム14に送信する。情報管理システム14は,通信網18を介して受信した情報要求Rで指定された識別情報Dに対応する関連情報Qを要求元の端末装置12に送信する。関連情報Qは,案内音声に関連する情報である。第1実施形態では,案内音声で発音される第1言語の案内を他言語(以下「第2言語」という)に変換した翻訳を示す関連情報Qが端末装置12に提供される。したがって,第1言語を理解可能な利用者は,案内音声の聴取により展示施設Mの案内を把握し,第2言語を理解可能な利用者は,関連情報Qを参照することで展示施設Mの案内を把握する。…【0017】…図3に例示される通り,第1実施形態の関連情報取得部24は,管理者が指示した第1言語の指定文字列に対する機械翻訳(自動翻訳)により,展示施設Mの案内を第2言語で表現した文字列(以下「変換文字列」という)を関連情報Qとして生成する。…【0018】図2の識別情報設定部26は,案内音声の再生とともに放音システム16から端末装置12に通知される識別情報Dを設定する。識別情報Dは,案内音声を識別するための固有の符号であり,案内音声毎に設定される。…【0023】図2の対応管理部34は,識別情報設定部26が案内音声毎に設定した識別情報Dと,関連情報取得部24が当該案内音声について取得した関連情報Qとを対応さ
5 せて記憶装置144に格納する。…【0024】図2の情報提供部36は,識別情報Dを含む情報要求Rを端末装置12から受信し,記憶装置144に記憶された複数の関連情報Qのうち,情報要求Rで指定される識別情報Dに対応する関連情報Qを選択して要求元の端末装置12に送信する。…【0033】…送信部542は,情報抽出部51が収音信号Xから抽出した識別情報Dを含む情報要求Rを情報管理システム14に送信する。他方,受信部544は,情報要求Rに応じて情報管理システム14から送信された関連情報Qを受信する。…【0034】図8の出力装置58は,受信部544が情報管理システム14から受信した関連情報Qを出力する。第1実施形態の出力装置58は,関連情報Qが示す第2言語の変換文字列を表示する表示装置である。すなわち,放音システム16の放音装置166による第1言語の案内音声の再生に並行して,端末装置12では第2言語の変換文字列が表示される。したがって,端末装置12の利用者は,第1言語を理解できない場合でも第2言語の変換文字列を視認することで展示物の案内を把握することが可能である。」(イ) 第1実施形態の変形例(態様1)「【0041】…図10に例示された態様1において,…関連情報Qは,案内音声と共通の第1言語で当該案内音声の発音内容を表現する文字列である。以上の構成では,放音システム16による案内音声の再生に並行して端末装置12では当該案内音声の発音内容の文字列が表示される。したがって,難聴者(聴覚障碍者)が案内音声の内容を確認できるという利点がある。」(ウ) 第3実施形態
5 「【0059】…図19は,本発明の第3実施形態の動作の説明図である。図19に例示される通り,第3実施形態における情報管理システム14の記憶装置144には,音響信号SGで表現される案内音声の識別情報D毎に複数(N個)の関連情報Q(Q1,Q2,……)が記憶される。具体的には,第1言語の案内音声を第1言語以外の相異なる言語で表現した音声を表すN個の関連情報Qが,当該案内音声の1個の識別情報Dに対応付けて記憶される。…【0060】他方,放音システム16が放音した音響を収音した収音信号Xから情報抽出部51が識別情報Dを抽出すると,端末装置12の送信部542は,識別情報Dと言語情報Lとを包含する情報要求Rを情報管理システム14に送信する(SB3)。…【0061】情報管理システム14の情報提供部36は,端末装置12から情報要求Rを受信すると,情報要求Rで指定される識別情報Dに対応して記憶装置164に記憶されたN個の関連情報Qのうち,情報要求Rで指定される言語情報Lが示す言語の関連情報Qを選択し(SB4),当該関連情報Qを要求元の端末装置12に送信する(SB5)。端末装置12の受信部544は,情報管理システム14から送信された関連情報Qを受信し(SB6),出力装置58(放音装置166)は,関連情報Qが示す案内音声を放音する(SB7)。以上の説明から理解される通り,第1言語の案内音声の再生に並行して,第1言語以外のN種類の言語のうち言語情報Lで指定された1種類の言語の案内音声が端末装置12の出力装置58から出力される。【0062】
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