知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成30(ワ)14843 著作権侵害差止等請求事件

この記事をはてなブックマークに追加

平成30(ワ)14843著作権侵害差止等請求事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 認容 東京地方裁判所
裁判年月日 令和1年9月18日
事件種別 民事
法令 著作権
著作権法114条3項9回
著作権法115条3回
民法190条1項3回
著作権法112条2項2回
著作権法112条1項2回
民法709条1回
民法704条1回
キーワード 侵害60回
差止6回
損害賠償2回
主文 1 被告は,別紙2原告写真目録記載1ないし61及び別紙3被告写真目録記載1ないし156の各写真を複製し,公衆送信してはならない。
2 被告は,前項の各写真のデータを廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,30万5000円及びこれに対する平成30年2月109日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
6 この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。15
事件の概要 1 事案の要旨5 本件は,原告が,原告代表者によりその職務上撮影された別紙2原告写真目録 記載1ないし61の各写真(以下,番号順に「本件写真1」などといい,これら を一括して「本件各写真」という。)は著作物であり,被告において,本件各写 真を複製し,その複製物である別紙3被告写真目録記載1ないし156の各写真 (以下,番号順に「被告写真1」などといい,これらを一括して「被告各写真」10 という。また,本件各写真と被告各写真を併せて「本件各写真等」という。)を 運営するウェブサイトに掲載して公衆送信して原告の著作権(複製権又は翻案権, 公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害したなどと 主張して,被告に対し,①著作権法112条1項に基づき,本件各写真等の複製, 改変,公衆送信の差止め(請求の趣旨1項),②同条2項に基づき,本件各写真15 等のデータの廃棄,その実態の報告,紙媒体による著作権侵害の調査,報告(請 求の趣旨2項,3項),③民法709条(対象期間は平成28年7月26日から 平成30年1月25日までである。)に基づき,損害金51万0600円(著作 権侵害につき46万3800円,著作者人格権侵害につき4万6800円の各損

▶ 著作権に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

令和元年9月18日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成30年(ワ)第14843号 著作権侵害差止等請求事件

口頭弁論終結日 令和元年7月3日

判 決

当事者の表示 別紙1当事者目録記載のとおり

主 文

1 被告は,別紙2原告写真目録記載1ないし61及び別紙3被告写真目録記

載1ないし156の各写真を複製し,公衆送信してはならない。

2 被告は,前項の各写真のデータを廃棄せよ。

3 被告は,原告に対し,30万5000円及びこれに対する平成30年2月

9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

5 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告の負担とし,その余を被告の負担

とする。

6 この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 被告は,別紙2原告写真目録記載1ないし61及び別紙3被告写真目録記載1ないし156の各写真を,複製し,改変し,又は公衆送信してはならない。2 被告は,前項の各写真のデータを廃棄し,原告に対し,その実態を報告せよ。3 被告は,原告に対し,被告が紙媒体等で原告の著作権を侵害していないか調査して報告せよ。4 被告は,被告が運営するウェブサイト(http:// 以下省略)のトップページに,別紙4謝罪広告目録記載の文章を3か月間掲載せよ。5 被告は,原告に対し,51万0600円及びこれに対する平成30年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。6 被告は,原告に対し,73万9497円及びこれに対する平成30年1月31日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

5 1 事案の要旨本件は,原告が,原告代表者によりその職務上撮影された別紙2原告写真目録記載1ないし61の各写真(以下,番号順に「本件写真1」などといい,これらを一括して「本件各写真」という。)は著作物であり,被告において,本件各写真を複製し,その複製物である別紙3被告写真目録記載1ないし156の各写真(以下,番号順に「被告写真1」などといい,これらを一括して「被告各写真」という。また,本件各写真と被告各写真を併せて「本件各写真等」という。)を運営するウェブサイトに掲載して公衆送信して原告の著作権(複製権又は翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害したなどと主張して,被告に対し,①著作権法112条1項に基づき,本件各写真等の複製,改変,公衆送信の差止め(請求の趣旨1項),②同条2項に基づき,本件各写真等のデータの廃棄,その実態の報告,紙媒体による著作権侵害の調査,報告(請求の趣旨2項,3項),③民法709条(対象期間は平成28年7月26日から平成30年1月25日までである。)に基づき,損害金51万0600円(著作権侵害につき46万3800円,著作者人格権侵害につき4万6800円の各損害金の合計額)及びこれに対する平成30年2月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(請求の趣旨5項),④主位的に民法190条1項に基づき,予備的に同法703条,704条(いずれの請求も対象期間は上記③と同じである。)に基づき,73万9497円及びこれに対する平成30年1月31日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金又は民法704条前段所定の利息の支払(請求の趣旨6項),⑤著作権法115条に基づき,被告の運営するウェブサイトへの謝罪広告の掲載(請求の趣旨4項)を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(以下,書証番号は特記しない限り枝番の記載を省略する。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

5 ⑴ 当事者ア 原告は,家具・食器・雑貨・インテリア品・玩具等の販売・通信販売等を目的とする株式会社である。イ 被告は,楽器並びにその部品類の販売等を目的とする株式会社である。

⑵ 本件各写真原告は,インターネット上で音楽雑貨等を販売しており,自ら運営するウェブサイト(以下「原告ウェブサイト」という。)上の別紙5商品等一覧の「商品」欄記載の各商品(以下,これらを一括して「本件各商品」という。)を含む商品を販売するページにおいて,販売促進のため,本件各商品の形態を示すものとして,本件各商品を被写体とする本件各写真を掲載している。本件各写真は,原告代表者が,平成20年8月から平成28年7月2日にかけて,原告の発意に基づき職務上作成したものである(甲30,33)。

⑶ 被告の行為被告は,インターネット上で音楽雑貨等を販売しており,自ら運営するウェブサイト(以下「被告ウェブサイト」という。)に,平成30年1月25日まで,少なくとも,被告写真8を掲載していた(甲1。その他の被告各写真が掲載されていたかについては後述のとおり争いがある。)。

⑷ 被告に対する請求原告は,平成30年1月24日頃,同日付け内容証明郵便により,被告に対し,原告ウェブサイトに掲載している原告の著作物である写真を被告が無断で複製等して被告ウェブサイトで商行為に利用しているなどとして,解決金の支払等を請求した(甲3)。3 争点

⑴ 本件各写真は著作物であるといえるか(争点1)

⑵ 著作権(複製権又は翻案権,公衆送信権)侵害及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)侵害の成否,又はそのおそれの有無(争点2)

5 ⑶ データの廃棄に係る報告,紙媒体による侵害の有無に係る調査及び報告の必要性(争点3)

⑷ 損害の発生の有無及びその額(争点4)

⑸ 返還すべき果実又は不当利得の存否及びその額(争点5)

⑹ 謝罪広告の必要性(争点6)

第3 争点に対する当事者の主張

1 争点1(本件各写真は著作物であるといえるか)について

【

(原告の主張)

】本件各写真は,原告代表者が,カメラアングル,レンズの焦点距離,被写界深度,ライティングを決め,複数の光源とレフ板を組み合わせて影をコントロールするなどして撮影した写真素材について,色彩補正,トリミング等のレタッチを行って制作したものであり,創作性を有するから,著作物である。【

(被告の主張)

】否認ないし争う。本件各写真は,いずれも,販売用の商品1点のみを被写体とし,被写体を中央に配置し,又は拡大した程度の構図のものであって,カメラアングルも工夫に欠け,背景等も一般的なものであるから,創作性はなく,著作物であるとはいえない。取り分け,本件写真42ないし44は,商品を上から撮影しているだけであり,本件写真45,46,50ないし52も,商品の販売用の写真として一般的なものであるから,これらに創作性が認められないことは明らかである。

2 争点2(著作権(複製権又は翻案権,公衆送信権)侵害及び著作者人格権

(氏名表示権,同一性保持権)侵害の成否,又はそのおそれの有無)について【

(原告の主張)

】

⑴ 著作権侵害

被告は,少なくとも,平成28年7月26日から平成30年1月25日まで,被告各写真を被告ウェブサイトに掲載して公衆送信した。被告各写真は,本件各写真を複製し,又は翻案したものであるから,被告は,原告の本件各写真についての複

5 製権又は翻案権及び公衆送信権を侵害したものである。

⑵ 著作者人格権侵害

ア 氏名表示権被告は,被告各写真を被告ウェブサイトに掲載して公衆送信するに際し,著作者名として原告の名称を表示しておらず,原告の本件各写真についての氏名表示権を侵害した。イ 同一性保持権被告は,本件各写真の画素数を変更し,不可逆圧縮により改変して,著しく画質を劣化させて被告各写真を作成しており,被告のこの行為は,画質についての原告の意図を無視して本件各写真を変更し,又は改変したものであるから,原告の本件各写真についての同一性保持権を侵害するものである。

⑶ 侵害のおそれ

被告は,今後も本件各写真等を複製し,改変し,又は公衆送信するおそれがある。【

(被告の主張)

】

⑴ 著作権侵害

被告が被告写真8を被告ウェブサイトに掲載して公衆送信したことは認め,その余は否認ないし争う。

⑵ 著作者人格権侵害

ア 氏名表示権争う。イ 同一性保持権争う。本件各写真と被告各写真は,構図,色合い等が同じであるから,画質が微妙に異なるという程度の変更によって,通常人において名誉感情を害されるものではなく,原告の本件各写真についての同一性保持権を侵害するものではない。

⑶ 侵害のおそれ

争う。

5 3 争点3(データの廃棄に係る報告,紙媒体による侵害の有無に係る調査及び

報告の必要性)について【

(原告の主張)

】デジタルデータは,複製,保存,隠ぺいが容易であり,侵害行為を予防するためには,被告に本件各写真等のデータの廃棄を求めるだけでは不十分であって,データの廃棄に係る報告,紙媒体による侵害の有無に係る調査及び報告をさせる必要があるから,上記調査及び報告は,著作権法112条2項に規定する侵害の予防に必要な措置である。【

(被告の主張)

】争う。

4 争点4(損害の発生の有無及びその額)について

【

(原告の主張)

】

⑴ 本件各写真の使用料相当額に係る損害(著作権法114条3項)は,①複製

権侵害につき18万3000円(3000円×61枚),②公衆送信権侵害につき28万0800円(100円×156枚×18か月),③同一性保持権(翻案権)侵害につき3万9000円(250円×156枚),④氏名表示権侵害につき7800円(50円×156枚)の合計51万0600円である。

⑵ 前記⑴の損害額は,株式会社アマナイメージズ(以下「アマナイメージズ」

という。)のデジタル写真レンタルサービスに係る価格表(甲19)によっても裏付けられている。すなわち,アマナイメージズの価格表において,画像素材1点当たりの使用期間1年までの使用単価は3万8880円,使用期間3年までの使用単価は6万0480円,無断使用した場合には使用料金の200%を請求できるとされており,同表によれば,本件各写真の使用料相当額は前記⑴よりはるかに高額である。【

(被告の主張)

】

⑴ 本件各写真の創作性の程度の低さなどに照らせば,販売用の広告写真1枚当

5 たりの使用料相当額はせいぜい1000円程度であり,そうすると,本件各写真の

使用料相当額に係る損害(著作権法114条3項)は,合計6万1000円である。

⑵ また,被告において有限会社学遊社(以下「学遊社」という。)に本件各写

真と同じカットでプロカメラマンによる写真撮影の見積りを依頼したところ,ライティングを施すことを含む見積額が8万円であったから,本件各写真の使用料相当額に係る損害(著作権法114条3項)は,高くても合計8万円である。

5 争点5(返還すべき果実又は不当利得の存否及びその額)について

【

(原告の主張)

】被告が被告ウェブサイトで販売していた本件各商品は,本件各写真がなければ販売できないものであり,被告は,原告の著作物である本件各写真を悪意によって占有し,これらを被告各写真として被告ウェブサイトで公開したことにより,本件各商品の受注利益を得た。被告ウェブサイトにおいて,毎月,1000円未満の商品は10個,3000円未満の商品は5個,3000円以上の商品は2個販売されていたとすると,被告各写真の掲載期間における本件各商品の売上(税抜)は296万2800円であり,対応する仕入額は182万1600円であって,粗利は114万1200円であるから,その6割に相当する68万4720円に消費税額5万4777円を加えた73万9497円を原告に分配するのが公平である。よって,上記73万9497円は,民法190条1項に基づいて返還されるべき果実,又は同法703条に基づく不当利得である。【

(被告の主張)

】否認ないし争う。

6 争点6(謝罪広告の必要性)について

【

(原告の主張)

】原告ウェブサイトは,原告独自のものとして制作され,その仕上がりや表現性を高く評価されていたものであるが,本件各写真の複製物である被告各写真が出回っ

5 たことにより,原告ウェブサイトの独自性が損なわれ,原告の名誉感情が侵害され

た。また,原告及び被告は音楽愛好家という同一の顧客層を対象としており,原告ウェブサイトの独自性に対する顧客の信頼は著しく損なわれている。したがって,著作権法115条所定の措置として,被告ウェブサイトに別紙4謝罪広告目録記載の文章を掲載する必要がある。【

(被告の主張)

】否認ないし争う。

第4 当裁判所の判断

1 争点1(本件各写真は著作物であるといえるか)について

⑴ 本件各写真は,本件各商品を販売するために撮影されたものであると認められるところ(甲33),以下のとおり,いずれも,商品の特性に応じて,被写体の配置,構図・カメラアングルの設定,被写体と光線との関係,陰影の付け方,背景等の写真の表現上の諸要素につき相応の工夫がされており,撮影者の思想又は感情が創作的に表現されているということができる。ア すなわち,本件写真1ないし4は,ト音記号,楽譜又は楽器の柄のネクタイを被写体とするものであり,ネクタイの下端部を手前にして波打つように配置され,背景はネクタイの下端部が配置された写真下部を白色,写真上部を暗い灰色又は黒色とし,陰影が明確に付されるなどして,ネクタイの柄や質感を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができる。イ 本件写真5ないし10は,弦楽器の柄のコインケース等の商品を被写体とするものであり,本件写真5,7,9は,商品を中央に配置して全体を撮影したもの,本件写真6,8,10は,柄の部分を大きく撮影したものであって,商品の配置の仕方や陰影の付し方により,商品の質感や弦楽器の柄を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができる。

5 ウ 本件写真11ないし40は,楽器を演奏する動物等の置物を被写体とするものであり,本件写真11,14,17,20,23,26,29,32,35,38は,商品の前方を正面から撮影したもの,本件写真12,15,18,21,24,27,30,33,36,39は,商品の後方を斜め上から撮影したもの,本件写真13,16,19,22,25,28,31,34,37,40は,動物等の顔を斜め上から大きく撮影したものであって,背景は緑色,白色又はそれらのグラデーションとし,陰影を付すなどして,動物等の表情や演奏態様等を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができる。エ 本件写真41ないし44は,鍵盤等の柄のフロアマットを被写体とするものであり,本件写真41及び43は,四角形状の商品の形態に沿って商品のみを大きく撮影したもの,本件写真42及び44は,その一部を大きく撮影したものであって,生地の質感や鍵盤等の柄を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができる。オ 本件写真45ないし50は,写譜用のペンを被写体とするものであり,本件写真45,47,49は,商品を中央に配置して全体を撮影したもの,本件写真46,48,50は,ペンの先端部分を大きく撮影したものであって,商品に光を反射させ,背景を白色とし,陰影を付すなどして,商品の質感や細かい模様を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができる。カ 本件写真51及び52は,写譜用のペンの替芯(5本)及びそのケースを被写体とするものであり,ケースから突出する替芯につき長さを変えた状態で大きく撮影したものであって,背景を白色とし,陰影を付すなどして,商品の形状を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができる。キ 本件写真53ないし61は,トランペット等の楽器の柄の黒色クリアファイ

5 ルを被写体とするものであり,本件写真53,55,57,59は,商品を中央に配置して全体を撮影し,柄の部分に光を反射させ,背景は黒色を基調とし,陰影を付すなどしたもの,本件写真54,56,58,60は,柄の部分を大きく撮影したものであって,トランペット等の楽器の柄を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができる。また,本件写真61は,商品を中央に配置して柄のない方向から全体を撮影したものであり,背景を白色と黒色のグラデーションとし,陰影を付すなどして,商品の形状を視覚的に認識しやすいものとなっており,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができる。ク 以上のとおり,本件各写真には,商品の販売用の写真として相応の工夫がされており,撮影者の思想又は感情が創作的に表現されているということができる。

⑵ 被告は,本件各写真が著作物であることを争い,取り分け,本件写真42ないし44は商品を上から撮影しているだけであり,本件写真45,46,50ないし52は商品の販売用の写真として一般的なものであるから,これらに創作性が認められないことは明らかである旨主張するが,前記のとおり,本件各写真には,商品の販売用の写真として相応の工夫がされており,撮影者の思想又は感情が創作的に表現されているということができるのであって,被告の上記主張は採用することができない。

⑶ 以上によれば,本件各写真には創作性が認められ,前記前提事実⑵のとおり,これらは原告代表者によって原告の発意に基づき職務上作成されたものであるから,いずれも,原告の著作物であると認められる。

2 争点2(著作権(複製権又は翻案権,公衆送信権)侵害及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)侵害の成否,又はそのおそれの有無)について⑴ 著作権侵害の成否ア(ア) 証拠(甲1,20,34,37)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告各写真を被告ウェブサイト上の本件各写真を販売するページにおいて,本件各商

5 品の形態等を示して販売を促進するために掲載しており,掲載期間の終期は平成30年1月25日であったこと,被告写真1ないし4については,少なくとも,平成28年7月4日の時点で,被告ウェブサイトに掲載されていたことが認められる。これらに加えて,被告が被告ウェブサイトで本件各商品の販売を開始した時期につき別紙5写真等一覧の「販売開始時期(被告)」欄のとおり主張していること,一般にウェブサイト上で商品を販売する際に商品の写真など形態を示すものを掲載しないとは考え難いことに照らせば,被告各写真の掲載期間の始期は,同欄のとおりであったと推認するのが相当である。(イ) そして,被告各写真は,別紙3被告写真目録のとおりであり,いずれも,本件各写真と画素数が異なるとしても,前記のとおり,被告ウェブサイト上で販売対象である本件各商品の形態を示すものとして掲載されており,限定的な大きさで表示されるものとして作成されたと推認され,実際にそのように表示されていると認められる(甲20,30)ことからすれば,本件各写真に修正等を加えた新たな創作的表現であるというのではなく,別紙5商品等一覧の該当欄に対応する本件各写真と実質的に同一のものとして,本件各写真に依拠して有形的に再製されたものであると認めることができる。(ウ) したがって,被告は,被告各写真を被告ウェブサイトに掲載するに当たり,本件各写真を複製して原告の本件各写真についての複製権を侵害したと認められ,また,被告各写真を被告ウェブサイトに掲載して公衆送信したことにより,原告の本件各写真についての公衆送信権を侵害したと認められる。イ 原告は,被告各写真が被告ウェブサイトに掲載されていた期間について,平成28年7月26日から平成30年1月25日までであると主張するが,前記アの推認を覆すに足る証拠はない。⑵ 著作者人格権侵害の成否ア 証拠(甲1,20,37)によれば,被告ウェブサイトや被告各写真には,被告各写真の掲載期間中,原告の実名若しくは変名が表示されていなかったと認め

5 られるから,被告は,被告各写真を被告ウェブサイトに掲載して公衆送信するに際し,原告の氏名表示権を侵害したと認められる。イ 被告各写真が本件各写真と画素数が異なるとしても,前記第2の2⑵のとおり,本件各写真がウェブサイト上で商品販売促進用に限定的な大きさで表示されるものとして作成されていること,被告各写真も前記⑴ア(イ)にみたとおりに作成され,表示されていることからすれば,当該画素数の変更が原告の意に反するものであるとまでは認められず,その他これを認めるに足る証拠はないから,被告が原告の同一性保持権を侵害したとは認められない。⑶ 侵害のおそれの有無ア 前記のとおり,被告は,本件各商品の販売促進のための写真として,同様に本件各商品をウェブサイト上で販売していた競業関係にある原告において販売促進のために用いていた本件各写真を利用しており,本件各写真の点数も61に上るのであって,このような著作権侵害行為の態様に加えて,本件各写真と被告各写真が実質的に同一のものであること,被告が現在も著作権侵害の事実を争っていることなどに照らせば,被告には,今後も,本件各写真の複製や被告各写真の公衆送信のみならず,被告各写真の複製や本件各写真の公衆送信による原告の著作権(複製権,公衆送信権)侵害のおそれがあると認められる。イ 原告は,本件各写真等の改変の差止めも求めているが,本件各写真等の改変によって原告のいかなる権利が侵害されるか明らかでなく,仮に,翻案権侵害又は同一性保持権侵害をいうものであるとしても,前記⑴及び⑵における検討に照らせば,上記の侵害のおそれがあるとまでは認められず,本件全証拠によっても,本件各写真等の改変による原告の本件各写真についての著作権又は著作者人格権侵害のおそれがあるとは認められない。

3 争点3(データの廃棄に係る報告,紙媒体による侵害の有無に係る調査及び報告の必要性)について原告は,著作権法112条2項に定める著作権等の侵害の予防に必要な措置とし

5 て,本件各写真等のデータの廃棄に加えて,その実態の報告,紙媒体による侵害の有無に係る調査及び報告を求めるが,本件各写真等のデータの廃棄を超えて,被告にそのような調査及び報告をさせることが本件各写真等の複製及び公衆送信に係る差止請求権の実現のために必要な範囲内のものであるとはいえないから,上記のような調査及び報告の必要性を認めることはできない。

4 争点4(損害の発生の有無及びその額)について⑴ 前記のとおり,被告は,原告の著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害しており,これらについて,少なくとも,過失があると認められるから,不法行為による損害賠償責任を負っているところ,原告は,本件各写真の使用料相当額に係る損害(著作権法114条3項)として,著作権侵害に係るものにつき合計46万3800円,著作者人格権侵害に係るものにつき合計4万6800円の損害が生じたと主張する。⑵ そこで検討すると,前記のとおり,被告は,原告が本件各写真を原告ウェブサイトに掲載することによって販売していた本件各商品を,本件各写真と実質的に同一の被告各写真を被告ウェブサイトに掲載することによって販売していたものであり,このような被告各写真の使用態様に加えて,被告各写真の掲載期間は長いもので1年6か月にわたること,証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,画像素材の販売業者である「ペイレスイメージズ」のウェブサイトでは,画像素材の単品での購入価格が432円から5400円までとされていると認められることなど,本件訴訟に現れた事情を考慮すると,本件各写真の複製及び公衆送信につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は,写真1枚当たり5000円と認めるのが相当である。もっとも,原告の氏名表示権が侵害されたことによって,別途の財産的損害が生じたと認めるに足りない。⑶ア これに対し,原告は,アマナイメージズの価格表において,画像素材1点当たりの使用期間1年までの使用単価は3万8880円,使用期間3年までの使用単価は6万0480円,無断使用した場合には使用料金の200%を請求できると

5 されていることを主張するが,弁論の全趣旨によれば,アマナイメージズは,画像素材のレンタルや販売を業とする株式会社であると認められるのに対し,本件各写真はレンタルや販売を目的として撮影されたものではないから,原告が主張する価格表について本件各写真の複製及び公衆送信に係る著作権法114条3項所定の損害額の算定に当たって大きく考慮することは相当とはいえない。イ 他方で,被告は,①本件各写真の創作性の程度の低さなどに照らせば,販売用の広告写真1枚当たりの使用料相当額はせいぜい1000円程度である,②被告において学遊社に本件各写真と同じカットでプロカメラマンによる写真撮影の見積りを依頼したところ,ライティングを施すことを含む見積額が8万円であったから,本件各写真の使用料相当額に係る損害は高くても合計8万円である旨主張する。しかしながら,①については,前記のとおり,本件各写真は,商品の販売用の写真として相応の工夫がされているということができるから,創作性の程度が低いことを理由として著作権法114条3項所定の損害額を著しく低額にすべきであるということはできない。②については,証拠(甲41,乙3)及び弁論の全趣旨によれば,学遊社は,被告から提供を受けた本件各写真をサンプルとして参照し,本件各写真に対応する61カットの写真を半日でまとめて撮影した場合の撮影料を見積もったものと認められるところ,学遊社の見積りは,本件各写真をサンプルとして参照しているため,被写体の配置,カメラアングル・構図等を検討する必要はなく,また,半日でまとめて撮影しているため,複数日にわたって撮影されたと認められる本件各写真と比べて撮影費用が低額となっているとみる余地があることなどからすれば,見積額が8万円であるからといって,本件各写真の複製及び公衆送信に係る著作権法114条3項所定の損害額が同程度であるということはできない。

⑷ そうすると,本件各写真の複製及び公衆送信につき受けるべき金銭の額(著作権法114条3項)は,合計30万5000円(5000円×61枚)であると認められる。

5 5 争点5(返還すべき果実又は不当利得の存否及びその額)について原告は,被告は,原告の著作物である本件各写真を悪意によって占有し,これを被告各写真として被告ウェブサイトで公開したことにより,本件各商品の受注利益を得たとして,主位的に民法190条1項に基づき,予備的に同法703条,704条に基づき,73万9497円等の支払を求めるが,物の占有に関する民法190条1項が無体財産権である著作権の侵害の場面に適用されるか否かについては措くとしても,本件各写真の占有又は利用によって被告が受注利益に相当する果実又は利得を得たと認めることはできない。

6 争点6(謝罪広告の必要性)について原告は,被告の行為により原告の名誉感情が侵害されたなどとして,著作権法115条所定の名誉回復等の措置として,被告ウェブサイトに別紙4謝罪広告目録記載の文章を掲載する必要がある旨主張する。しかしながら,著作権法115条における著作者の名誉声望とは,著作者がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価,すなわち社会的名誉声望を指すものであって,人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価,すなわち名誉感情は含まれないものと解されるから(最高裁昭和58年(オ)第516号同61年5月30日第二小法廷判決・民集40巻4号725頁参照),原告の請求が主観的な名誉感情の侵害を理由とするものであれば,もとより採用することはできず,また,本件全証拠によっても,原告の社会的名誉声望が侵害されたとは認められず,差止めや損害賠償等に加えて,著作権法115条所定の名誉回復等の措置を認める必要があるとも認められない。

7 小括以上のとおり,被告は,原告の本件各写真についての著作権(複製権,公衆送信権)を侵害したものであり,今後も,本件各写真等の複製,公衆送信による著作権(複製権,公衆送信権)侵害のおそれがあると認められるから,原告の著作権法112条1項,同条2項に基づく請求は,被告に対し,本件各写真等の複製,公衆送

5 信の差止め,本件各写真等のデータの廃棄を求める限度で理由がある。また,本件各写真の複製及び公衆送信に係る損害は合計30万5000円であるから,原告の民法709条に基づく請求は,被告に対し,30万5000円及びこれに対する不法行為後である平成30年2月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

第5 結論

よって,原告の請求は,主文第1項ないし第3項の限度で理由があるからこれらを認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第29部

裁判長裁判官

山 田 真 紀

裁判官

矢 野 紀 夫

裁判官

西 山 芳 樹

(別紙一覧)

別紙1 当事者目録

別紙2 原告写真目録

別紙3 被告写真目録

別紙4 謝罪広告目録

別紙5 商品等一覧

(別紙1)

当事者目録原 告 株 式 会 社 プ レ リ ュ ー ド

5 被 告 株 式 会 社 ア ン ダ ン テ同訴訟代理人弁護士 長 野 哲 久同 長 野 修 一同 正 畠 大 生同 長 野 英 樹

(別紙2) 原告写真目録は省略

(別紙3) 被告写真目録は省略

(別紙4)

謝罪広告目録株式会社アンダンテは,株式会社プレリュード殿が音楽愛好家のための精魂を込めて制作しているウェブサイトから,著作者の制作意図を無視する形で自社の利益のために写真を無断盗用いたしました。関係各位に謹んでお詫び申し上げると共に,爾後の再発防止をお約束いたします。

(別紙5)商品等一覧は省略

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

今週の知財セミナー (11月2日~11月8日)

11月5日(木) - オンライン

第69回東北大学知財セミナー

11月5日(木) - 東京 港

研究開発戦略と知的財産

来週の知財セミナー (11月9日~11月15日)

11月11日(水) - 大阪 大阪市

実務におけるノウハウ管理基礎

11月12日(木) - 大阪 大阪

特許侵害予防調査の基礎

11月12日(木) - オンライン

営業秘密管理セミナー

11月13日(金) - オンライン

米国での特許権利化(機械)

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

デライブ知的財産事務所

〒210-0024 神奈川県川崎市川崎区日進町3-4 unicoA 303 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

角田特許事務所

〒130-0022 東京都墨田区江東橋4-24-5 協新ビル402 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

特許業務法人 広江アソシエイツ特許事務所

〒500-8368 岐阜県 岐阜市 宇佐3丁目4番3号 4-3,Usa 3-Chome, Gifu-City, 500-8368 JAPAN 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング