ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成31(ワ)5391 不正競争行為差止等請求事件
| 裁判所 | 東京地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和1年10月3日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 法令 |
不正競争 |
| キーワード | 差止2回 損害賠償1回 商標権1回 |
| 主文 | |
| 事件の概要 | 本件は,原告が,原告の販売する別紙「原告商品等表示目録」記載の標章が25 付され,又は形態的特徴を有するサーボモータ(以下,同目録1-1ないし同 1-3に対応する商品を「原告商品1」,同目録2-1ないし同2-3に対応す る商品を「原告商品2」といい,併せて「原告商品」ともいう。)の標章又は形 態が原告の商品等表示として需要者の間に広く認識される状態に至っていたと ころ,被告が販売を開始した別紙「被告商品等表示目録」記載の標章が付され, 又は形態的特徴を有するサーボモータ(以下,同目録1-1ないし同1-3に5 対応する商品を「被告商品1」,同目録2-1ないし同2-3に対応する商品を 「被告商品2」といい,併せて「被告商品」ともいう。)の標章又は形態は原告 商品の標章又は形態と類似し,これと混同を生じさせるから,被告による被告 商品の販売等は,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号の不 正競争行為に当たる旨主張して,被告に対し,同法3条1項及び2項に基づき,10 被告商品の譲渡等の差止め及び商品表示の抹消を求める(前記第1の1ないし 3)と共に,同法4条に基づき,損害賠償金12万2629円及びこれに対す る訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損 |
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令和元年10月3日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成31年(ワ)第5391号 不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和元年7月2日
判 決
原 告 梅 本 合 同 会 社
被 告
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告は,サーボモータについて,別紙「被告商品等表示目録」記載の商品表示を使用してはならない。2 被告は,別紙「被告商品等表示目録」記載の商品表示を使用したサーボモータを譲渡し,引き渡し,又は譲渡若しくは引渡しのために展示(電磁的方法により提供する行為を含む。以下同じ。)してはならない。3 被告は,その製造又は販売するサーボモータから,別紙「被告商品等表示目録」記載の各商品表示を抹消せよ。4 被告は,原告に対し,12万2629円及びこれに対する平成31年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が,原告の販売する別紙「原告商品等表示目録」記載の標章が付され,又は形態的特徴を有するサーボモータ(以下,同目録1-1ないし同1-3に対応する商品を「原告商品1」 同目録2-1ないし同2-3に対応す,る商品を「原告商品2」といい,併せて「原告商品」ともいう。)の標章又は形態が原告の商品等表示として需要者の間に広く認識される状態に至っていたところ,被告が販売を開始した別紙「被告商品等表示目録」記載の標章が付され,
5 又は形態的特徴を有するサーボモータ(以下,同目録1-1ないし同1-3に対応する商品を「被告商品1」 同目録2-1ないし同2-3に対応する商品を,「被告商品2」といい,併せて「被告商品」ともいう。)の標章又は形態は原告商品の標章又は形態と類似し,これと混同を生じさせるから,被告による被告商品の販売等は,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号の不正競争行為に当たる旨主張して,被告に対し,同法3条1項及び2項に基づき,被告商品の譲渡等の差止め及び商品表示の抹消を求める(前記第1の1ないし3)と共に,同法4条に基づき,損害賠償金12万2629円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(前記第1の4)事案である。1 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨から認められる事実)
(1) 原告は,ラジオコントロール模型用サーボモータ等電子部品の輸入及び販売を行う会社であり,原告商品1及び原告商品2を販売している。
(2) 原告商品1は,別紙「原告商品等表示目録」記載1-1(以下「原告表示1-1」といい,同目録記載1-2ないし同2-3の各表示をそれぞれ「原告表示1-2」ないし「原告表示2-3」という。)の型番で,原告表示1-2の外観を有し,筐体上部に原告表示1-3のラベルが貼付されている。同ラベルは,長方形のフィルムを素材として,細い枠線で囲まれた3行の文字列が印字され,1行目には紫色の地に銀色の文字で「Towerpro」,2行目には黒色の地に銀色の文字で原告表示1-1の型番(「MG996R」,)3行目には紫色の地に銀色の文字で「DIGI HI TORQUE」の各文字列が表示されている。原告商品2は,原告表示2-1の型番で,原告表示2-2の外観を有し,筐体上部に原告表示2-3のラベルが貼付されている。同ラベルは,長方形のフィルムを素材として,細い枠線で囲まれた3行の文字列が印字され,1
5 行目には黒色の地に金色の文字で「TowerPro」 2行目には金色の地,に黒色の文字で原告表示2-1の型番 「MG995」,( ) 3行目には黒色の地に金色の文字で「DIGI HI-SPEED」の各文字列が表示されている。
(3) 被告は,平成30年11月24日から同年12月21日にかけて,インターネット上のオークションサイトにおいて,「(出品者ID省略) の出品者I」Dで,被告商品を出品した。(出品者IDにつき甲22,被告商品1につき甲9ないし10,14,17,21,被告商品2につき,甲11ないし13,20,23,24)
(4) 被告商品1は,別紙「被告商品等表示目録」記載1-1(以下「被告表示1-1」といい,同目録記載1-2ないし同2-3の各表示をそれぞれ「被告表示1-2」ないし「被告表示2-3」という。)の型番で,被告表示1-2の外観を有し,筐体上部に被告表示1-3のラベルが貼付されている。同ラベルは,長方形のフィルムを素材として,細い枠線で囲まれた3行の文字列が印字され,1行目には紫色の地に白色の文字で「TZT」,2行目には黒色の地に白色の文字で被告表示1-1の型番 「MG996R」,( ) 3行目には紫色の地に白色の文字で「DIGI HI TORQUE」の各文字列が表示されている。被告商品2は,被告表示2-1の型番で,被告表示2-2の外観を有し,筐体上部に被告表示2-3のラベルが貼付されている。同ラベルは,長方形のフィルムを素材として,細い枠線で囲まれた3行の文字列が印字され,1行目には黒色の地に金色の文字で「TZT」 2行目には金色の地に黒色の文,字で被告表示2-1の型番 「MG995」,( ) 3行目には黒色の地に金色の文字で「DIGI HI-SPEED」の各文字列が表示されている。2 争点
(1) 不競法2条1項1号所定の不正競争行為の成否(争点1)
5 ア 原告商品の標章又は形態が周知な商品等表示といえるか(争点1-1)イ 類似性及び混同のおそれの有無(争点1-2)
(2) 被告の故意又は過失の有無(争点2)
(3) 損害額(争点3)3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点1-1(原告商品の標章又は形態が周知な商品等表示といえるか)について[原告の主張]ア 商品等表示性原告は,原告表示1-1ないし同2-3を,原告の輸入する商品であることを示す表示として,原告製品に付している。これらの表示は,いずれも他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有している。なお,「TOWER PRO」は,原告商品のブランド名であり,原告が商標権者である(商標登録第5781098号)。イ 周知性原告商品は,雑誌等の出版物及びブログ等オンラインの媒体において頻繁に使用例が掲載されていること,オンライン通販市場で最大の売上高を有するアマゾンジャパン合同会社に卸売りし,同社の運営する通販サイト「Amazon.co.jp」の売上げランキングにおいて上位を独占していること,(所在地省略)の小売店での販売実績の上位であること等からすれば,原告表示1-1ないし同2-3は,国内の電子工作の分野の需要者やオンライン通販におけるラジオコントロールサーボモータの需要者の間に広く認識されている。[被告の主張]「MG996R」及び「MG995」のサーボは,原告のブランド以外の多くのブランドから販売されている。
5 また,原告商品の周知性は極めて低い。雑誌広告もなく,誌面で紹介されておらず,さらに,ラジコン模型専門店で展示・販売されているのを見たこともない。原告が指摘するアマゾンのランキングについては,大手メーカーのサーボが10位以内に1つもないことなどに照らし,これを重視することはできない。
(2) 争点1-2(類似性及び混同のおそれの有無)について[原告の主張]被告表示1-1ないし同2-3は,次のとおり原告表示1-1ないし同2-3と一致ないし類似し,混同のおそれを生じさせる。ア 被告表示1-1ないし同1-3について被告表示1-1は原告表示1-1と一致し,被告表示1-2は原告表示1-2に類似する。被告表示1-3は,1行目の文字を除いて原告表示1-3と称呼及び外観が一致する。イ 被告表示2-1ないし同2-3について被告表示2-1は原告表示2-1と一致し,原告表示1-1と類似する。被告表示2-2は原告表示2-2及び原告表示1-2に類似する。被告表示2-3は,1行目の文字を除いて原告表示2-3と称呼及び外観が一致する。[被告の主張]被告商品は「TZT」サーボであって,「Tower Pro」サーボではなく,被告表示1-1ないし同2-3と原告表示1-1ないし同2-3とは類似しておらず,混同のおそれもない。
(3) 争点2(被告の故意又は過失の有無)について[原告の主張]被告がオークションサイトに出品しているのは全てラジオコントロール用模型の部品であること,原告商品の新製品がオークションサイトのラジオコ
5 ントロール用模型の部品のカテゴリーに多数出品されていることからすれば,当該商品を専門に扱う被告が原告表示を知らなかったと考えるのは不自然である。また,上記オークションサイトでは,同じ商品名の商品が関連商品として表示されることから,遅くとも2018年(平成30年)11月24日までに被告は原告が原告表示を使用していることを容易に知り得た。さらに,2018年(平成30年)12月14日に,原告は被告に対し,原告商品の偽造品である旨を通知し,被告は応答しているから,遅くとも上記の時点から被告は,原告が原告表示を使用していることを知っていた。したがって,被告には,故意又は過失がある。[被告の主張]上記主張は争う。
(4) 争点3(損害額)について[原告の主張]原告には,合計12万2629円の損害が発生した。ア 不競法5条2項により推定される損害額被告は,2018年(平成30年)11月24日から同年12月20日までの間,少なくとも被告商品2個を,1個当たり600円で販売したところ,被告商品の1個当たりの推定原価が65円35銭であり,1個あたりの利益額が534円65銭であることからすれば,被告は,被告商品の販売により1069円の利益を得た。イ 試買費用原告は,被告商品の調査に当たり,被告商品を購入し,商品価格と送料の合計1560円を支出した。ウ 信用損害被告商品がオークションで販売されることにより,原告の営業上の信用及び商品の信用が毀損され,又はそのおそれが生じた。この損害は12万
5 円を下らない。[被告の主張]上記主張は争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(不競法2条1項1号所定の不正競争行為の成否)について
(1) 原告商品の標章又は形態が周知な商品等表示といえるか(争点1-1)に
ついて原告は,原告表示1-1ないし同2-3につき,原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されている旨を主張する。しかしながら,次のとおり,原告主張に係る各表示は,いずれも原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されているとは認められない。ア 原告表示1-2及び同2-2について原告主張に係る原告表示1-2及び同2-2は,いずれもサーボモータの外観を示したものであるところ,原告は,これらが単に原告表示1-1及び同2-1の型番が表示され,又は原告表示1-3及び同2-3のラベルが貼付された状態を説明したものにとどまるものではなく,各サーボモータの形態自体が,原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されている旨を主張しているものとして,以下検討する。この点,不競法2条1項1号にいう「商品等表示」とは,人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいい,しかして,商品の形態は,これに付される商標等とは異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではない。そうすると,このような商品の形態自体が不競法2条1項1号の「商品等表示」に該当するためには,①商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,②その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な広告宣伝や
5 爆発的な販売実績等により,需要者においてその形態を有する商品が特定
の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)を要するものと解するのが相当である。これを本件について見るに,原告表示1-2及び同2-2のいずれについても,他のサーボモータの形態と対比して客観的に異なる顕著な特徴を具体的に含んでいることを的確に認めるに足りる証拠はないものであって,同形態が上記①の特別顕著性を有しているとは認められないというべきである。したがって,原告表示1-2及び同2-2はいずれも不競法2条1項1号にいう「商品等表示」に当たるとはいえない。イ その他の表示について原告は,原告表示1-1ないし同2-3の表示が周知性を有することの根拠として,原告商品が各種媒体において頻繁に使用例が掲載されていること,最大手のオンライン通販市場の売上げランキングにおいて上位を独占していること,(所在地省略)の小売店での販売実績の上位であること等を挙げる。しかしながら,各種媒体における掲載状況や小売店での販売実績については,これを具体的に認めるに足りる客観的な証拠はなく,また,オンライン通販市場での売上げランキングについても,期間が限定された,断片的な資料(甲7)が提出されているにすぎず,その他本件全証拠を精査しても,原告主張に係るその他の表示(原告表示1-1,同1-3,同2-1及び同2-3)の付された商品を見た需要者において,商品の出所が原告であると認識する状況になるまでに至っているものと認めるには足りないというべきである。したがって,原告主張に係るその他の表示は,いずれも原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されているとは認められず,不競法2条1
5 項1号にいう「他人の商品等表示(中略)として需要者の間に広く認識さ
れているもの」に当たるとはいえない。
(2) 類似性,混同のおそれの有無(争点1-2)について
以上の説示によれば,原告の請求はいずれも既に理由がないものであるが,なお念のため,原告表示1-3及び同2-3と被告表示1-3及び同2-3との類似性及び混同のおそれの有無につき検討する。この点,各表示とも横書き3行の文字列で構成されており,原告表示1-3は1行目が「Towerpro」,2行目が「MG996R」,3行目が「DIGI HI TORQUE」と表示されているのに対し,被告表示1-3は1行目が「TZT」と表示されており,2行目及び3行目は原告表示1-3と同様の文字が表示されている。また,原告表示2-3は1行目が「TowerPro」,2行目が「MG995」3行目が, 「DIGI HI-SPEED」と表示されているのに対し,被告表示2-3は1行目が「TZT」と表示されており,2行目及び3行目は原告表示2-3と同様の文字が表示されている。しかして,商標の類否ないし混同のおそれの有無は,同一又は類似の商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察して決すべきものであるところ,原告表示1-3と被告表示1-3及び原告表示2-3と被告表示2-3とをそれぞれ対比すると,1行目の表示が全く異なる文字列で構成され,この部分の外観,観念,称呼が異なることは明らかであり,また,2行目の「MG996R」及び「MG995」や3行目の「DIGI HI TORQUE」 「DIGI及び HI-SPEED」は一致しているが,これは,上記各表示が使用される商品であるサーボモータの型番や性状を示す部分にすぎないと認められる。以上に照らし,サーボモータに係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察
5 すれば,表示全体として,原告表示1-3と被告表示1-3及び原告表示2
-3と被告表示2-3とが類似しているとは認め難いというほかなく,混同のおそれがあるということもできない。
(3) 以上によれば,被告による被告商品の販売行為等は,不競法2条1項1号
所定の不正競争行為に当たらない。
2 結論
よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第47部裁判長裁判官 田 中 孝 一裁判官 横 山 真 通裁判官 奥 俊 彦(別紙)被告商品等表示目録1-11-21-32-12-22-3(別紙)原告商品等表示目録1-11-21-32-12-22-3
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