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令和1(ネ)10052損害賠償等請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 令和1年12月19日
事件種別 民事
当事者 被告)IPsoftJapan株式会社忠津充
控訴人(一審原告)X江間布実子
被控訴人(一審被告)IPsoftJapan株式会社忠津充
法令 特許権
特許法100条1項1回
特許法70条1回
キーワード 実施29回
新規性18回
特許権2回
侵害2回
進歩性2回
損害賠償2回
差止1回
間接侵害1回
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事件の概要 1 本件は,控訴人が,控訴人の有する本件各特許権に係る特許発明の技術的範 囲に属する原判決別紙1記載の製品(本件製品)を被控訴人が製造販売等する行為 が本件各特許権の直接侵害又は間接侵害に当たるなどと主張して,被控訴人に対し, 特許法100条1項に基づく本件製品の製造,譲渡等の差止めと,民法709条,特 許法102条3項に基づく損害賠償として4500万円及びこれに対する不法行為 の後の日である平成29年5月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民 法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

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判決文

令和元年12月19日判決言渡
令和元年(ネ)第10052号 損害賠償等請求控訴事件(原審 東京地方裁判所平
成29年(ワ)第15518号)
口頭弁論終結日 令和元年10月17日
判 決

控訴人(一審原告) X
同訴訟代理人弁護士 石 下 雅 樹
江 間 布 実 子
渡 辺 知 博
永 野 真 理 子
益 弘 圭

被控訴人(一審被告) IPsoft Japan株式会社

同訴訟代理人弁護士 荻 原 雄 二
忠 津 充
御 器 谷 修 平
同補佐人弁理士 小 菅 一 弘
渡 邉 聡
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
以下,用語の略称及び略称の意味は,原判決に従い,原判決の引用部分の「別紙」
をすべて「原判決別紙」と改める。なお,書証番号は,特記しない限り枝番をすべて
含む。
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,4500万円及びこれに対する平成29年5月
18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被控訴人は,原判決別紙1製品目録記載の製品を製造し,使用し,譲渡し,貸
し渡し,輸入し,若しくは輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならな
い。
第2 事案の概要
1 本件は,控訴人が,控訴人の有する本件各特許権に係る特許発明の技術的範
囲に属する原判決別紙1記載の製品(本件製品)を被控訴人が製造販売等する行為
が本件各特許権の直接侵害又は間接侵害に当たるなどと主張して,被控訴人に対し,
特許法100条1項に基づく本件製品の製造,譲渡等の差止めと,民法709条,特
許法102条3項に基づく損害賠償として4500万円及びこれに対する不法行為
の後の日である平成29年5月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民
法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原判決が,本件製品は本件各特許に係る発明の技術的範囲に属しないとして,控
訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人が控訴した。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中に掲記した証拠及び弁論の全
趣旨により認定することができる事実)
原判決「事実及び理由」の第2の2に記載のとおりであるから,これを引用する。
3 争点及びこれに関する当事者の主張
次のとおり原判決を補正し,当審における当事者の主張を付加するほかは,原判
決「事実及び理由」の第2の3及び第3のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決の補正
ア 原判決9頁24行目の「以下「アメリア」という。」を,「以下,「アメ
リア」又は「本件装置」という。」に改める。
イ 原判決10頁4行目及び13頁6行目の「アメリア」を,いずれも「本件
装置」に改める。
ウ 原判決13頁7行目の「本件製品を組み込んだ装置(以下「本件装置」と
いう。)」を,「本件装置」に改める。
エ 原判決41頁19行目において引用する原判決64頁2行目の「乙8~
10公報」を,「乙8~乙10公報」に改める。
(2) 当審における控訴人の主張
ア 争点1(被控訴人による本件製品の製造販売等の有無)について
株式会社アイ・ティ・アールの調査報告書(甲82)によると,被控訴人の製品・
サービス情報として「Amelia V3」とされており,売上金額及び保守費の製品・サー
ビス名も「Amelia」とされている。したがって,被控訴人は本件製品を譲渡しており,
少なくとも譲渡の申出をしている。
イ 争点2-1(構成要件1Aの充足性)(本件装置が『画像情報を対応する
パターンに変換するパターン変換機』を有するか)について
(ア) 構成要件1Aは,画像情報を取得する機能の有無に限らず,「画像情
報・・・を対応するパターンに変換するパターン変換器」である。そして,本件発明
1における「パターン」は,画像,音声及び言語に係わる事象の特徴を計算機が処理
できる「1」,「0」等の何らかの信号の組合せに変換したものという意味で使用さ
れている。基本的には「データ」という意味であるが,計算機が処理できる「事象や
概念に対応するデータ」という意味で「パターン」という用語が使用されている。
(イ) 原判決は,「本件装置がアメリアの感情に対応した画像を予め保有し
ているのであれば,それは既にアメリアが利用できるデータ形式で保有しているも
のと解するのが自然であり,更に異なるデータ形式に変換する必要があるとは考え
難い。」と判断した。
しかし,控訴人が原審において「アメリアの様々な表情(嬉しい,悲しい,怒って
いる等)に対応する複数の画像を作成し,アメリアを構成するソフトウェアが処理
できるデータ形式で,各表情に対応した「一塊のデータ」(=画像パターン)を記録
する」と述べたのは,本件装置がアメリアの感情に対応した画像を表示する一手法
として説明したものであり,本件装置の手法として特定又は限定したものではない。
被控訴人は,アメリアはいわゆるコンピュータグラフィックで生成されているも
のと推測されると主張しているところ,本件製品のパンフレット(甲11の2の1
0頁)には本件製品は感情的な対応力を有することが記載されており,EQ(共感指
数)に基づいてアメリアの表情に関する画像情報(顔の輪郭や顔のパーツに関する
画像情報)を生成し,この画像情報から表示するための画素データ(画像パターンに
対応する)に変換し,ディスプレイに表示していることが分かる。被控訴人も,「本
件装置内部で生成したパターン化されている画像に関する情報から,ディスプレイ
に表示するための画素データを作成する」と主張しており,本件装置内部において
パターン化された画像に関する情報が生成されていることを認めている。
したがって,EQ(共感指数)に基づいて生成されたアメリアの表情に関する画像
情報(顔の輪郭や顔のパーツに関する画像情報)は,ディスプレイに表示するための
画素データに変換されているから,本件装置は「画像情報をパターンに変換する」機
能を有している。
よって,本件製品は,構成要件1Aを充足する。
ウ 争点2-2(構成要件1Bの充足性)(本件装置は『パターンの変更』を
する『パターン制御器』を有するか)について
(ア) 本件製品の紹介ビデオ(甲79)には,アメリアが銀行の「顧客サポ
ート」を担当し,顧客に対し,「設定を更新しましょうか?」と発言しており,設定
した情報を更新(=変更)できることが示されているから,本件装置は情報(=パタ
ーン)を更新(=変更)する機能を有している。また,上記ビデオでは,アメリアが
銀行の「顧客サポート」を担当し,顧客の当座預金口座からA氏へ1000ドルの送
金処理,すなわち,送金処理に伴う,顧客の口座情報(残高等)の更新も実施してい
ることが示されているから,本件装置は情報の変更を行う機能を有している。仮に,
本件製品が,アメリアと連携したシステムを利用することにより,本処理(残高の変
更)を実施している場合でも,本件装置が情報の変更を行う機能を有していること
になる。
(イ) 本件製品のパンフレット(甲11の2の9頁)には,
「処理ステップの
自立学習」,
「アメリアは, ・
・ ・与えられた情報の処理マップを自分で作成します。,

「彼女は自分の知識の限界も認識しており,自力で問題に対処できない場合,人間
の同僚にその問題を引き渡します。,
」「アメリアは,賢い従業員と同様に,同僚の様
子を見て特定の状況に対する最善の手順を見つけます。,
」「自分の知能を用いること
で,彼女は観察したやりとりのナレッジマップを作成し,将来似たような場面に遭
遇したとき人間が介入しなくともそのマップを応用できるようにします。」との記載
があり,本件製品の紹介ビデオ(甲80)には,
「アメリアは彼女が観察している全
ての処理に関して,新しい処理ステップを動的に生成します。そして,生成した処理
ステップの使用を彼女の管理者が了承すると,直ぐに彼女は同様の質問に対して自
分自身で対応できるようになります。」との説明がある。
これらには,アメリアは回答できなかった質問に対しても,学習することで回答
できること,すなわち,アメリアは学習により回答内容(言語)を更新(=変更)で
きるようになることが示されており,
「回答内容」についてパターンの変更が実施さ
れている。
したがって,本件装置は,
「言語(=パターン)の変更」を行う機能を有している。
(ウ) 本件製品のパンフレット(甲11の2の11頁)には,「彼女は文章
をパーツに分解して,各単語の役割と,他の単語との関係を解釈することができる
ようになりました。 との記載があり,
」 米IPsoft社ウェブサイトの本件製品の
紹介ページ(甲81)に掲載されている図には,文章がパーツに分解されている様子
が示されている。
「文章をパーツに分解する」とは,「文章(=文,パターン)」を「パーツ(文要
素や単語)」に分解するという「変更」を実施することであるから,これらは,本件
装置が「文章(=文,パターン)の変更」を行う機能を有していることを示している。
(エ) 以上によると,本件装置は「パターンの変更」をする機能を有してい
るから,構成要件1Bを充足する。
エ 争点2-4(構成要件1Dの充足性)
(本件装置が『有用と判断した情報』
を『自律的に記録している』といえるか)について
(ア) 原判決は,「本件発明1は,有用と判断した情報のみを記録すること
が前提とされていると解するのが相当である」と判断したが,
「のみ」という文言は,
本件発明1の請求項には記載されていない。請求項に記載されていない「のみ」とい
う文言を付加して,本件発明1の範囲を著しく狭めるのは不当である。
また,本件明細書等1の段落【0030】の「価値の低い情報(誤記修正)は記録
しないこととする。これにより,有用な情報が逐次蓄積され,膨大な知識がパターン
記録器に構成されていくことになる。 とは,
」 本件発明1の運用の仕方について説明
したものである。すなわち,「価値の低い情報を記録しないこととすれば,有用な情
報が逐次蓄積されるような運用が可能である」という意味であり,「価値の低い情報
は記録できない」構成であることを示したものではない。「価値の低い情報は記録で
きない」構成とすることが,本質的に意味があるならば,「のみ」の文言が請求項に
当然,入っているはずである。しかし,本件発明1の請求項には「のみ」の文言は入
っていない。
したがって,本件発明1を「有用と判断した情報のみを自律的に記録していく自
律型思考パターン生成機」と解釈することは,請求項の文言に反するだけではなく,
明細書にも記載されていない条件を付加することで,不当に本件発明1の技術的範
囲を狭めるものであるため,特許法70条の解釈を誤ったものである。
(イ) 甲31(日本オラクルのウェブサイト)及び38(日経BPネット・
スペシャルの記事)には,アメリアが,「業務に特化した情報を学習するため,業務
に不要な情報での不必要な学習や成長はしない」との記載があり,アメリアが業務
に必要な情報のみ選択して学習することが示されており,「本件装置が入力された
情報の入力性について判断し,有用な情報のみを記録するとの機能を備えているこ
とを示す記載は存在」している。
このことから,仮に,本件発明1の請求項の文言を「有用と判断した情報のみを自
律的に記録していく自律型思考パターン生成機」と解釈したとしても,甲31及び
38の記載から,本件装置は上記文言を充足する。
(ウ) 本件発明1の構成要件1Dを,文言どおり「有用と判断した情報を自
律的に記録していく自律型思考パターン生成機」であるとすると,以下のとおり,本
件装置は構成要件1Dを充足する。
a 本件製品の紹介ビデオ(甲80)には,「アメリアは確からしさをも
って回答できないようなことを質問された場合,・・・人間の同僚に連絡し,同僚と
顧客の会話を単に観察するだけで,将来どのようにすれば良いのかを学習するので
す。」,「アメリアは彼女が観察している全ての処理に関して,新しい処理ステップ
を動的に生成します。そして,生成した処理ステップの使用を彼女の管理者が了承
すると,直ぐに彼女は同様の質問に対して自分自身で対応できるようになります。」
との説明があり,アメリアは自分自身で回答できない質問に遭遇した場合(=新規
の質問に遭遇した場合),人間の同僚に連絡し,同僚と顧客の会話を観察すること
で,どのように対応すればよいかを学習し,観察の結果,言語で示された処理が新た
に生成され,この処理はアメリアの管理者が使用を了承すると,知識として記録さ
れることが示されている。
また,本件製品のパンフレット(甲11の2の3頁)には,「アメリアは人間の同
僚と顧客の間で行われるやりとりを観察して仕事を覚えることもでき,起こってい
る出来事に関する処理マップを自分で作成します。彼女はその知識を保存・応用し,
似たような状況を解決するための方法を自分自身で決定します。」との記載がある
から,本件装置は,情報の有用性を識別し,知識を獲得していることが分かる。
これらによると,本件装置は,情報の価値を分析(誰から得た情報か,関心ある情
報かを識別)し,有用な情報(新たに作成した処理マップ)を自律的に記録している
といえる。
b また,
「質問」は経験や知識に追加する有用な情報である。本件製品
のパンフレット(甲11の2)には,
「彼女が知っている情報の本体に立ち返ること
で,自然言語で述べられた質問を元に事実を明らかにするための的確な質問を発し,
人間と同じように問題の明確な性質を顕在化させることができるのです。(11頁)
」 ,
「サービスデスクでは,多種多様な質問や要求を処理しなければならないことがあ
ります。迅速に学習し,問題の根本を見極めるための的確な質問ができる能力を持
ったアメリアは,
・・・顧客の質問を受け付け,顧客が求めていることを理解し,問
題を明らかにするために必要な質問を投げかけることで,答えを提示することがで
きます。」
(6頁)との記載があり,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)には,
「全
ての質問がアメリアの経験や知識に加えられる」との説明がある。また,本件製品の
紹介ビデオ(甲80)には,
「アメリアは確からしさをもって回答できないようなこ
とを質問された場合,推測で回答するようなことはありません。彼女は人間の同僚
に連絡し,同僚と顧客の会話を単に観察するだけで,将来どのようにすれば良いの
かを学習するのです。,
」「生成した処理ステップの使用を彼女の管理者が了承すると,
直ぐに彼女は同様の質問に対して自分自身で対応できるようになります。」などの説
明があり,本件製品の紹介ビデオ(甲79)には,アメリアがどの銀行口座の設定を
更新するかを顧客に質問し,顧客が「両方をお願いします」と回答すると,両方の銀
行口座をペーパーレスに更新すると回答していることが示されている。これらによ
ると,本件装置は情報の価値(情報の種類(質問文等))を分析し,有用な情報(質
問や回答)を経験や知識として自立的に記憶している。
なお,本件製品の紹介ビデオ(甲80)の上記説明によると,管理者が了承するの
は「処理ステップの使用」であり,新しい処理ステップに関しては,アメリアの管理
者が了承する前に,既に自律的に生成されており,記録されていることになる。
(エ) 以上によると,本件装置は「有用と判断した情報を自律的に記録」す
る機能を有しているから,構成要件1Dを充足する。
オ 争点3(本件発明2-1の構成要件2C,本件発明2-3の構成要件2
C’及び本件発明2-6の構成要件2C’’の充足性)について
(ア) 原判決は,本件装置は,「入力した言語情報・・・を評価」したこと
に基づいて「自律的に知識を獲得」ないし「自律的に知識を構築」するものと認める
ことはできないので,本件発明2-1の構成要件2C,本件発明2-3の構成要件
2C’及び本件発明2-6の構成要件2C’’(構成要件2C等)を充足しないと判
断したが,そもそも,構成要件2C等の「評価」 「自律的に知識を獲得」
と ないし「自
律的に知識を構築」の関係は,並列である。
(イ) 仮に,構成要件2C等を「評価」し,「自律的に知識を獲得」し,そ
して「自律的に知識を構築」する(直列の関係)と解釈することにした場合において
も,本件装置は,以下のとおり,構成要件2C等を充足する。
a 意味の評価について
本件製品のパンフレット(甲11の2)には,「アメリアは何を言われたかだけで
なく,それが何を意味しているかも理解します。彼女は同じ言葉の異なる用法を見
分けるために文脈をあてはめることで,暗示されている意味を完全に理解します。」
(3頁),「アメリアは顧客の質問を受け付け,顧客が求めていることを理解し,問
題を明らかにするために必要な質問を投げかけることで,答えを提示することがで
きます。」(6頁)との記載がある。また,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)
には,「全ての質問がアメリアの経験や知識に加えられる」との説明があり,本件製
品の紹介ビデオ(甲79)の画像1には,アメリアの「質問」に対する顧客の「回答」
も記録されている。
これらによると,本件装置は,「同じ言葉の異なる用法」の中から「最も文脈にあ
てはまる用法」を見分ける機能を有しているから,「意味を評価する」機能を有して
いる。また,「多種多様な質問や要求を受け付け」,「顧客が求めていることを理解
(=意味を評価)し,問題を明らかにするために必要な質問を投げかけ」,「投げか
けた質問」及び「回答」を記録して知識を獲得するという一連の動作を実施している
から,本件装置は,「意味を評価し,経験や知識とする質問や回答を知識として獲得
している」,すなわち,情報(意味)を評価し,そして知識の獲得を実施していると
いえる。
なお,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)の「全ての質問がアメリアの経験や
知識に加えられる」との説明については,「意味を評価し,その結果に基づいて自律
的に有益な知識を獲得する機能を有し,全ての質問を知識として加える」というケ
ースはあり得るのであるから,本件装置が「意味を評価する」機能を有することに反
するものではない。
b 新規性の評価について
本件製品のパンフレット(甲11の2の9頁)には,
「処理ステップの自立学習」,
「アメリアは,時間がかかるプログラミングを介さずに,与えられた情報の処理マ
ップを自分で作成します。彼女は自分の知識の限界も認識しており,自分で問題に
対処できない場合,人間の同僚にその問題を引き渡します。,
」「アメリアは,賢い従
業員と同様に,同僚の様子を見て特定の状況に対する最善の手順を見つけます。 ・
・ ・
彼女は観察したやりとりのナレッジマップを作成し,将来似たような場面に遭遇し
たとき人間が介入しなくともそのマップを応用できるようにします。」との記載があ
り,本件製品の紹介ビデオ(甲80)には,
「アメリアは,
・・・同僚と顧客の会話を
単に観察するだけで,将来どのようにすれば良いのかを学習するのです。,
」「アメリ
アは彼女が観察している全ての処理に関して,新しい処理ステップを動的に生成し
ます。そして,生成した処理ステップの使用を彼女の管理者が了承すると,直ぐに彼
女は同様の質問に対して自分自身で対応できるようになります。」との説明がある。
これらによると,本件装置は,遭遇した状況が知識として記録している場面と「似
たような場面」でない,自分自身で回答できない質問に遭遇した場合(新規の質問に
遭遇した場合)と判断すると(=新規の場面,新規の問題と評価すると),同僚に連
絡し,同僚と顧客との会話を観察し,やりとりのナレッジマップを作成し,将来その
マップを応用できるようにしている(=そのマップを記録している)こと,すなわ
ち,情報を評価(新規性)し,そして知識の獲得を実施していることが分かる。
なお,本件製品の紹介ビデオ(甲80)の上記記載によると,管理者が了承するの
は「処理ステップの使用」であり,新しい処理ステップに関しては,アメリアの管理
者が了承する前に,既に自律的に生成されており,記録されている。
c 真偽の評価について
本件製品の紹介ビデオ(甲80)には,本件装置が,顧客が求めていることを理解
し,問題を明らかにするために必要な質問を実施する処理ステップが示されており,
本件製品の紹介ビデオ(甲79)には,アメリアの「質問」に対する顧客の「回答」
も記録されていることが示されており,本件製品のパンフレット(甲11の2の1
1頁)には,
「知識に対して積極的に論理を当てはめることにより,アメリアは問題
を解決することもできます。,
」「事実を明らかにするための的確な質問を発し,問題
の明確な性質を顕在化させることができる」「その問題をなるべく早急に解決する

ため,プロセス全体の各ステップにおいてどのような行動をとる必要があるのかを
自分で決定することができます。」との記載があり,本件製品の紹介ビデオ(甲12
の図5)には,
「全ての質問がアメリアの経験や知識に加えられる」との説明がある。
これらは,本件装置が,顧客が求めていることを理解し,
「事実を明らかにするた
めの的確な質問を発し,問題の明確な性質を顕在化させる(=真偽を評価する)」こ
とや,
「事実を明らかにするための的確な質問」及び「回答」を記録して知識を獲得
するという一連の動作を実施していることを示しており,本件装置は,的確な質問
を発して,
「真実を明らかにする」機能(=真偽を評価する機能)を有しているとい
える。
また,本件装置は,知識に対して論理を当てはめ,プロセス全体の各ステップを自
律的に進め,論理的な結論を得ているが,これを行うためには,本件装置は,何が真
であり,何が偽であるかを評価する必要がある。
したがって,本件装置は「情報を評価(真偽)し,そして知識の獲得を実施してい
る」といえる。
なお,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)の「全ての質問がアメリアの経験や
知識に加えられる」との説明については,「真偽を評価し,その結果に基づいて自律
的に有益な知識を獲得する機能を有し,全ての質問を知識として加える」というケ
ースはあり得るのであるから,本件装置が「真偽を評価する」機能を有することに反
するものではない。
d 論理の妥当性について
① 本件製品のパンフレット(甲11の2の11頁)には,「論理的な
結論」,「知識に対して積極的に論理を当てはめることにより,アメリアは問題を解
決することもできます。彼女が知っている情報の本体に立ち返ることで,自然言語
で述べられた質問を元に事実を明らかにするための明確な質問を発し,人間と同じ
ように問題の明確な性質を顕在化させることができるのです。 との記載があり,
」 本
件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)には,「全ての質問がアメリアの経験や知識に
加えられる」との説明があり,本件製品の紹介ビデオ(甲79)では,アメリアの「質
問」に対する顧客の「回答」も記録されており,これらによると,本件装置が「積極
的に論理を当てはめ」,「事実を明らかにするための明確な質問を発し」,「問題の
明確な性質を顕在化し」,「論理的な結論を得て」,「事実を明らかにするための的
確な質問」及び「回答」を記録して知識を獲得するという一連の動作を実施している
ことが分かる。すなわち,本件装置は「情報を評価(論理の妥当性)し,そして知識
の獲得を実施している」のである。
なお,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)の「全ての質問がアメリアの経験や
知識に加えられる」との説明については,「論理の妥当性を評価し,その結果に基づ
いて自律的に有益な知識を獲得する機能を有し,全ての質問を知識として加える」
というケースはあり得るのであるから,本件装置が「論理の妥当性を評価する」機能
を有することに反するものではない。
② 本件製品のパンフレット(甲11の2の3頁)には,「アメリア
は,・・・論理を適用し,暗示されている内容を推定し,経験を通して学び,感情す
らも察知します。」との記載があるから,本件装置は「論理を適用し(=論理の妥当
性を評価し),経験を通して学習している(=記録している)。」といえる。すなわ
ち,
「言語情報の論理の妥当性を評価し,経験した内容を知識として獲得している。」
のである。
以上より,本件装置は「情報を評価(論理の妥当性)し,そして知識の獲得を実施
している」といえる。
③ 本件製品の紹介ビデオ(甲79)には,アメリアは,顧客の回答が
「はい(yes)」なら,受取人リストに追加し,回答が「いいえ(no)」なら,受取
人リストに追加しないという条件付き処理(論理的な処理)を実施し,受取人リスト
に情報を追加する(=知識を記録する)処理を行っていること,すなわち,論理的に
対応し,情報を記録していることが示されている。
これは,本件装置が「情報を評価(論理の妥当性)し,そして知識の獲得を実施し
ている」ことを示している。
(ウ) 以上より,本件装置は構成要件2C等を充足する。
カ 争点4-2(構成要件3Cの充足性)について
原判決は,本件発明1の構成要件1Bについて判示したのと同様の理由から,本
件製品が「パターンの変更」をする機能を有しているとは認められないので,同製品
は構成要件3Cを充足しないと判断した。
しかし,被控訴人は,本件発明3に関し,本件製品の説明パンフレット(乙12)
には,構成要件3AからJが開示されており,仮に構成要件3Bが開示されていな
いとしても,乙12発明に乙7発明を適用することにより,当業者が容易に想到し
得たものであるから進歩性を欠くと主張し(原審被告準備書面(6)36頁~45頁),
本件製品が構成要件3Cを充足することを認めていたのであり,原判決はこの点を
見落としている。また,前記のとおり,本件製品は「パターンの変更」をする機能を
有している。したがって,本件製品が構成要件3Cを充足しないとの原判決の判断
には,誤りがある。
(3) 当審における被控訴人の主張
ア 争点1(被控訴人による本件製品の製造販売等の有無)について
原判決は,本件製品について作成された日本語版パンフレット(甲11の2)にお
いて,被控訴人が問合せ先として表示されていること等の事実を認定し,被控訴人
が本件製品の譲渡又は貸渡しの申出を行っていたものと認定している。
しかし,被控訴人は,日本国内において,本件訴訟提起時より,本件製品に関する
事業を一切展開していない。被控訴人においては,本件訴訟提起時より現在に至る
まで,本件製品に関する営業,導入,保守等のサービスを行う部署又は担当者は存在
せず,現時点の被控訴人の体制では本件製品に関する事業を展開することはおよそ
不可能である。被控訴人が日本国内において行っていたのは,本件製品に関する米
IPsoft社の,日本における窓口業務のみにすぎず,問合せを受けたとしても,
米IPsoft社担当者に引き継ぐだけで譲渡等は行っていないのであるから,問
合せ先としてパンフレットに被控訴人が表示されていても,被控訴人が譲渡の意思
を外部へ表明したとはいえない。また,平成28年7月の日本オラクル開催のセミ
ナーでは,Bは米IPsoft社のチーフ・コマーシャル・オフィサーと共に講演を
行ったにすぎない。なお,Bは,平成30年3月23日付けで被控訴人の代表取締役
を退任し,後任の日本在住の取締役も日本において営業活動を行っていない。
したがって,原判決の上記の事実認定には誤りがある。
イ 争点2-1(構成要件1Aの充足性)について
本件発明1は,有用と判断した情報を自律的に記録していく自律型思考パターン
生成機という知能機械(【請求項1】【0001】
, )であり,有用と判断できる画像情
報等を対象として,計算機で扱える知識として蓄積するためにパターン化するもの
である。
これに対し,本件装置はカメラのような画像検出器は有しておらず(乙5),取得
した画像情報をパターンに変換するような,構成要件1Aでいうパターン変換器は
有さない。
控訴人は,アメリアの表情に関する画像情報(顔の輪郭や顔のパーツに関する情
報)を生成し,画素データに変換することが構成要件1Aに相当すると主張するが,
それは本件装置の内部で処理している作動内容を意味するにすぎず,入力された有
用な画像情報を対象として,計算機で扱える知識として蓄積するためにパターン化
するものではない。本件装置内部で生成したパターン化されている画像に関する情
報から,ディスプレイに表示するための画素データを作成する処理を行っているに
すぎない。
したがって,控訴人の主張は理由がなく,本件装置は構成要件1Aを充足しない。
ウ 争点2-2(構成要件1Bの充足性)について
(ア) 本件発明1は,有用と判断した情報を自律的に記録していく自律型思
考パターン生成機という知能機械(【請求項1】,【0001】)であり,有用な情
報を対象として,計算機で扱える知識として蓄積するためにパターン化するもので
あるから,パターンとは,計算機たる検出器が識別することができる信号の組合せ
に変換したものである。
そして,構成要件1Bは「パターンの設定,変更およびパターンとパターンの結合
関係を生成するパターン制御器と,」であり,パターン制御器は,パターンを設定す
ること,パターンとパターンの結合関係を生成することだけでなく,パターン自体
を変更することも実施することが特定されている。
パターンは,情報をパターン化したものであり,情報毎に信号のパターンを設定
する処理,知識を向上させるためにパターン間の結合関係を生成する処理は必要か
もしれないが,既に記録されているパターンとしての信号は,それ自身が何らかの
情報と対応づけられた信号であるから,この信号に対して改めて何らかの変更をす
る必要性はない。
(イ) 控訴人は,本件装置では顧客の銀行口座に関するペーパーレスの設定
や,送金に伴う残高の更新をする処理を行うことが可能であるから,パターンを変
更する機能を有すると主張する。
しかし,ペーパーレスの設定は,本件装置が顧客の銀行口座の情報に対して,ペー
パーレスで処理を実施するという設定情報を結合させること,すなわち,結合関係
を生成することを意味している。また,残高の更新は,顧客の銀行口座の情報に対し
て,現在の残高の金額と結合関係を生成させる処理を行うことを意味するものであ
る。
「パターンの変更」とは,例えば,ペーパーレスを意味するものとして設定した
「1」,「0」の組み合わせ信号のパターンを,同じペーパーレスを意味するものと
して,他の「1」,「0」の組合せ信号に変更することを意味するが,本件装置はそ
のような処理を行うものではない。
(ウ) 控訴人は,当初回答できなかった同じ質問に対し,学習の結果として
回答できるようになったことも「パターンの変更」に該当すると主張するが,それ
は,答えられなかった質問と,それに対する回答の間に新たに結合関係が生成され
たからであり,例えば質問内容を表す「1」,「0」の組合せ信号パターン自体が,
他の信号パターンに変更されたわけではない。
同様に,控訴人は,文章をパーツに分解することも「パターンの変更」に相当する
と主張するが,それは単語同士の結合関係を見直したものであって,ある「単語」に
ついて,それを表す組合せ信号パターン自体が変更されたわけではない。
(エ) 以上によると,本件装置はパターンを変更するパターン制御器を有す
るとはいえないので,構成要件1Bを充足しない。
エ 争点2-4(構成要件1Dの充足性)について
(ア) 本件発明1は,有用と判断した情報を自律的に記録していく自律型思
考パターン生成機という知能機械(【請求項1】,【0001】)であって,価値の
低い情報は記録せず,有用な情報を順次蓄積して知識を記録していく 【0030】
( )
ものであり,本件装置は有用と判断した情報を自律的に記録する構成を備えないか
ら,原判決の判断に誤りはない。
(イ) 控訴人は,請求項には「のみ」との記載はないから,原判決は誤りで
ある旨主張するが,請求項では「有用と判断した情報を自律的に記録していく」とさ
れているところ,有用と判断していない情報を記録する構成となっているのであれ
ば,この構成の特定が全くの無意味となるのは明らかである。
本件明細書等1に,価値の高い情報は記録し,価値の低い情報は記録しないと説
明されている上で,請求項において「有用と判断した情報」を記録するとされている
のであるから,本件発明1は情報の価値を分析した上で,有用と判断した情報を自
律的に選択して記録する構成となっていると解するほかない。
(ウ) 甲31の1頁には,「業務に特化した情報を学習するため,業務に不
要な情報での不必要な学習や成長はしない。」との記載はあるが,「有用と判断した
情報を自律的に記録していく」と説明しているものではないし,そもそも甲31は,
被控訴人や米IPsoft社とは何の関係もない日本オラクルが,その宣伝のため
に掲示したウェブサイト上の記事であり,本件装置の構成を示す証拠となるもので
はない。
なお,本件装置は,顧客毎に,例えば金融分野あるいは建築分野など,ある程度定
まった業務において使用されるものになる。その場合,蓄積される知識は,当然,業
務に特化したものになるし,業務に不要な情報での不必要な学習や成長はしないか
ら,甲31の記載はこのようなことを述べたものとも考えられる。
(エ) 控訴人は,質問は経験や知識に追加する有用な情報であり,本件装置
は,「質問」を有用な情報であると識別し,経験や知識としてすべて記録していると
して,本件製品のパンフレットや紹介ビデオ(甲11の2,甲12,79及び80)
を提示する。
しかし,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)には,「全ての質問がアメリアの
経験や知識に加えられる」と説明されており,全ての質問が知識として加えられる
のであれば,有用性を判断し,有用と判断したものを自律的に記録することにはな
らない。
本件製品のパンフレット(甲11の2)には,的確な質問を発することの記載はあ
るが,有用性を判断し,有用と判断した情報を自律的に記録することの説明はない。
本件製品の紹介ビデオ(甲80)には,質問をして処理マップを生成することの説
明はあるが,この処理については,「生成した処理ステップの使用を管理者が了承す
ると,直ぐに彼女は同様の質問に対して自分自身で対応できるようになります。 と

されており,本件装置では情報の記録を行うか否かを管理者の判断に委ねているの
であるから,有用性を判断した結果に基づいて,「自律的に知識を獲得」していると
いうことができない。
さらに,本件製品の紹介ビデオ(甲79)には,顧客の指示に従い情報を更新する
ことの記載はあるが,情報の有用性を判断し,有用と判断した情報を自律的に記録
することとは何の関係もない。
したがって,控訴人の主張は理由がなく,本件装置が構成要件1Dを充足すると
いうことはできない。
オ 争点3(構成要件2C等の充足性)について
(ア) 本件発明2は,言語情報の意味,新規性,真偽,論理の妥当性等を評
価し,自律的に知識を獲得し,問題解決のための知能を向上させる人工知能に関す
るものであり(【0001】),機械に構築した知識により新規に獲得した情報を評
価(新規性,信憑性,価値等)することは困難であり,機械内部に系統立った知識を
構築することは従来困難であった 【0011】 という課題を解決するものである。
( )
そのために,入力された言語情報の新規性,既に記録している知識との整合・不整
合,論理の妥当性等を評価し,有益な情報であると判断した場合には知識に逐次追
加していくことにより,有益な知識を蓄積し,知識の向上を実現する構成としてい
る(【0017】,【0019】,【0021】,【0022】)。
これにより,自律的に知識を獲得して知能を獲得させるべく,新規性のある,又は
信憑性のある知識に基づいた系統立った知識を構築することができるという意義を
有する(【0045】)ものである。
したがって,原判決の判断に誤りはない。
(イ) 控訴人は,「評価」と「自律的に知識を獲得」又は「自律的に知識を
構築する」が直列の関係と解釈することにした場合においても,本件装置は構成要
件2C等を充足すると主張している。
構成要件2C等の「入力した言語情報の意味,新規性,真偽および論理の妥当性を
評価」によると,本件発明2の人工知能装置は,入力した言語情報について,意味を
評価する機能,新規性を評価する機能,真偽を評価する機能,論理の妥当性を評価す
る機能の全ての機能を有することが特定されている。しかし,本件装置は何れの機
能も有せず,また,評価に基づいて自律的に知識を獲得するものともいえない。
a 意味の評価について
控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載及び本件製品の紹介ビデ
オ(甲12)の説明により,本件装置は「意味を評価し,情報(意味)を評価し,そ
して知識の獲得を実施している」旨主張する。
しかし,「評価」とは,「①品物の価格を定めること。また評定した価格。②善悪・
美醜・優劣などの価値を判じ定めること。特に,高く価値を定めること。」(広辞苑
第六版)との意味であり,特に,価値を判じて定めることを行う必要がある。
これに対し,「言葉の意味を理解する」とは,言葉が何を指し示しているか分かる
ことであるから,「言葉の意味を理解する」機能を有するからといって,「評価」し
ていることにはならない。
したがって,本件装置が「言葉の意味を理解する」とされていることをもって,
「意味を評価する」機能を備えるとした控訴人の主張は誤りである。
また,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)の「全ての質問がアメリアの経験や
知識に加えられる」との説明のとおり,全ての質問が知識に加えられるのであれば,
意味を評価し,その結果に基づいて自律的に有益な知識を獲得するということにな
らないのは明らかである。
よって,控訴人の「意味の評価」及び評価結果に基づく「知識の獲得」を本件装置
は有しているとの主張は誤りである。
b 新規性の評価について
控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載及び本件製品の紹介ビデ
オ(甲80)の説明を基に,本件装置は,情報を評価(新規性)し,知識の獲得を実
施している旨主張する。
しかし,本件製品のパンフレット(甲11の2)には,自分で問題に対処できない
場合に同僚に問題を引き渡すとされており,本件製品の紹介ビデオ(甲80)でも,
回答できないことを質問された場合に同僚に連絡するとされており,あくまでも提
示されている問題に対して,回答を用意しているか否かを判断しているだけであり,
新規性の評価を行っているわけではない。
例えば,チャーハンのレシピを保有していながら,「焼き飯の作り方を教えて欲し
い」と質問されたときに,焼き飯のレシピを保持していないとして,人間の同僚に問
題を引き渡したとしても,それはレシピに関する新規性を評価しているものではな
い。単に,回答できる知識として用意しているか否か判断しているだけなのである。
本件製品のパンフレット(甲11の2の9頁) 「彼女は観察したやり取りのナレ

ッジマップを作成し,将来似たような場面に遭遇したとき人間が介入しなくともそ
のマップを応用できるようにします。」との記載も,同僚に引き継いだ結果,チャー
ハンのレシピと焼き飯のレシピが類似する(実際は同じ)との知識を獲得すること
によって,次回に同様の質問を受けた場合に回答を用意しているとの判断をすると
いうことであって,レシピに関して新規性を評価しているわけではない。
また,本件製品の紹介ビデオ(甲80)の説明によると,本件装置では,知識とし
て獲得するには管理者の了承が必要であり,知識の獲得をするか否かを管理者の判
断に委ねているということであるから,評価結果に基づいて,「自律的に知識を獲
得」しているということができない。
したがって,控訴人の「新規性の評価」及び評価結果に基づく「知識の獲得」を本
件装置は有しているとの主張は誤りである。
c 真偽の評価について
控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載及び本件製品の紹介ビデ
オ(甲12の図5)の説明に基づき,本件装置は,真偽を評価し,知識の獲得を実施
している旨主張する。
構成要件2C等における「真偽を評価する」機能は,正確には「入力した言語情報
の真偽を評価」する機能である。本件製品のパンフレット(甲11の2)に記載され
た,事実を明らかにする目的で的確な質問をすることは,あくまでも質問をするこ
とであって,入力した言語情報の真偽を評価することとは何の関係もない。また,同
パンフレットの記載によると,「問題の明確な性質を顕在化させる」のであり,これ
また入力した言語情報の真偽を評価することとは何の関係もない。
したがって,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載により本件装置が「入
力した言語情報の真偽を評価」する機能を有しているということはできない。
また,本件製品のビデオ(甲12の図5)の説明によると,「全ての質問がアメリ
アの経験や知識に加えられる」のであり,全ての質問が知識に加えられるのであれ
ば,真偽を評価し,その結果に基づいて自律的に有益な知識を獲得するということ
にならないのは明らかである。
したがって,控訴人の本件装置が構成要件2C等の「真偽の評価」及び評価結果に
基づく「知識の獲得」を本件装置は有しているとの主張は誤りである。
d 論理の妥当性について
控訴人は,①本件製品のパンフレット(甲11の2)の「知識に対して積極的に論
理を当てはめる」との記載や本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)の説明,②本件
製品のパンフレット(甲11の2)の「論理を適用し」,「経験を通して学び」との
記載,③本件製品の紹介ビデオ(甲79)の受取人リストに追加するかしないかとい
うことの説明に基づき,本件装置は論理の妥当性を評価し,知識の獲得を実施して
いる旨主張する。
構成要件2C等における「論理の妥当性を評価する」機能は,「入力した言語情報
の論理の妥当性を評価」する機能である。
本件製品のパンフレット(甲11の2)に記載された,「論理を適用し」は,あく
までも本件装置内部で行われる処理を説明したものであって,入力した言語情報の
論理の妥当性を評価することとは何も関係がない。それによって「問題を解決する」
のであり,これも,入力した言語情報の論理の妥当性を評価することとは何の関係
もない。「経験を通して学」ぶことは,論理の妥当性を評価した結果として知識を獲
得することとは何の関係もない。
また,上記紹介ビデオ(甲79)は,本件装置により実施される処理を説明したも
のであって,入力した言語情報の論理の妥当性を評価することとは何の関係もない。
上記紹介ビデオの説明は,受取人リストにAさんを追加するものであって,入力し
た言語情報の論理の妥当性を評価することとは何の関係もない。受取人リストにA
さんを追加することは,論理の妥当性を評価した結果として知識を獲得することと
は何の関係もない。
さらに,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)の説明によると,「全ての質問が
アメリアの経験や知識に加えられる」のであり,全ての質問が知識に加えられるの
であれば,論理の妥当性を評価し,その結果に基づいて自律的に有益な知識を獲得
するということにならないのは明らかである。
したがって,控訴人の本件装置が構成要件2C等の「論理の妥当性の評価」及び評
価結果に基づく「知識の獲得」を本件装置は有しているとの主張は誤りである。
カ 争点4(構成要件3Cの充足性)について
本件装置は「パターンの変更」をする機能を有していないから,構成要件3Cを充
足しないとした原判決の判断に誤りはない。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の請求はいずれも棄却すべきものと判断する。その理由
は,次のとおり原判決を補正し,当審における当事者の主張に対する判断を付加す
るほかは,原判決「事実及び理由」の第4の1~4記載のとおりであるから,これを
引用する。
2 原判決の補正
(1) 原判決43頁の2行目から3行目にかけての「記載されていた。 の次に,

「(甲34の1)」を加える。
(2) 原判決44頁19行目の次に,行を改めて,次のとおり加える。
「ケ 株式会社アイ・ティ・アールが平成30年12月に発行した「ITR MARKET
VIEW AI市場2018」には,平成30年9月3日から同年11月23日までの調査期間
において,ITRアナリストによるベンダーへのインタビュー調査,プレスリリー
ス,財務諸表など公開情報,ITRが保有する情報などを基にした調査結果が記載
されており,被控訴人の「製品・サービス情報」として,「Amelia V3」(初期出荷
平成28年10月,出荷時期 平成29年12月,分類 AIプラットフォーム)と
記載され,
「売上金額・保守費・社数推移」欄にも「製品・サービス名」として「Amelia」
と記載されていた。(甲82)」
(3) 原判決45頁10行目及び51頁20行目の「アメリア」 いずれも
を, 「本
件装置」に改める。
(4) 原判決54頁24行目の「本件製品等」を「本件製品」に改める。
3 当審における当事者の主張に対する判断
(1) 争点1(被控訴人による本件製品の製造販売等の有無)について
被控訴人は,本件製品の譲渡又は貸出しの申出を行っていたものではないと主張
するが,被控訴人が本件製品の譲渡又は貸出しの申出を行っていたものと認められ
ることは,原判決「事実及び理由」の第4の1が説示するとおりであり,このことは,
被控訴人に本件製品に関する部署や担当者がいないとしても左右されない。
したがって,被控訴人の主張を採用することはできない。
(2) 争点2-1(構成要件1Aの充足性)について
ア 控訴人は,構成要件1Aは,画像情報を取得する機能の有無に限らず,
「画像情報 ・ を対応するパターンに変換するパターン変換器」
・・ であると主張する。
本件発明1の構成要件1Aは,「画像情報,音声情報および言語を対応するパター
ンに変換するパターン変換器と,パターンを記録するパターン記録器と, というも

のであるところ,画像情報を取得する機能の有無に限らないという控訴人の主張に
よると,本件発明1は,パターンに変換する画像情報が取得されたものでない場合
には,パターン変換器は,予め保持している画像情報を対応するパターンに変換す
るものということになるが,このとき画像情報は,パターンに変換されることも,ま
た,パターンとして記録されることもなく,画像情報として予め保持されていたも
のということになる。
しかし,本件発明1の特許請求の範囲及び本件明細書等1には,画像情報が,パタ
ーンに変換されることも,また,パターンとして記録されることもなく,予め保持さ
れたものであるとは読み取ることができる記載はない上,かえって,本件明細書等
1の段落【0017】には,「【課題を解決するための手段】(請求項1に対応)」
として,「この発明における思考パターン生成機は画像情報,音声情報および言語を
パターンに変換する。画像情報は画像検出器により検出され,対象物に応じたパタ
ーンに変換される。・・・」と記載され,画像検出器により検出されるものとされて
いる。
したがって,本件発明1の構成要件1Aが,画像情報を取得する機能の有無に限
らないとの控訴人の主張を採用することはできない。
そして,本件装置が,外部から入力された表情等に関する画像をパターンに変換
する機能を有していると認めるに足りる証拠がないことは,原判決「事実及び理由」
の第4の2(2)イに判示するとおりである。
よって,本件装置が構成要件1Aを充足していると認めることはできない。
イ 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載や被控訴人の主
張によると,本件装置内部で生成したパターン化されている画像に関する情報(画
像情報)からディスプレイに表示するための画素データ(画像パターン)に変換され
ていることが分かると主張する。
しかし,構成要件1Aの「パターン変換器」が行うものとして記載された「画像情
報・・・を対応するパターンに変換する」処理でいうところの「パターン」とは,画
像,音声及び言語に係る事象の特徴を,計算機たる検出器が識別することができる
「1」,「0」等の何らかの信号の組合せに変換したものを意味すると解されること
は,原判決「事実及び理由」の第4の2(1)アが判示するとおりである。
そして,本件装置が,「本件装置内部で生成したパターン化されている画像に関す
る情報から,ディスプレイに表示するための画素データを作成する」としても,この
ことが,画像,音声及び言語に係る事象の特徴を,計算機たる検出器が識別すること
ができる信号の組合せに変換する処理に当たらないことは明らかである。
したがって,控訴人の主張を採用することはできない。
ウ 以上によると,本件製品が構成1Aを充足すると認めることはできない。
(3) 争点2-2(構成要件1Bの充足性)について
ア 控訴人は,本件製品の紹介ビデオ(甲79)によると,顧客の銀行口座に
関する情報に対応するデータにパターンの変更が行われているから,本件装置はパ
ターンを変更していると主張する。
しかし,「パターン」とは,画像,音声及び言語に係る事象の特徴が計算機たる検
出器が識別することのできる信号の組合せに変換されたものであり,「パターンの
変更」とは,このような信号の組合せ自体を変更するものである(原判決「事実及び
理由」の第4の2(3)ア)。顧客の銀行口座に関する情報に変更が行われているとし
ても,このようなことは,パターンとパターンの結合関係を変更することによって
も行うことができるから,本件装置の内部において,上記のような意味での「パター
ンの変更」が行われていることを示すとは直ちに認められず,控訴人の主張を採用
することはできない。
イ 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載や,本件製品の
紹介ビデオ(甲80)の説明によると,本件装置は「質問」に対し,学習の前と後で
回答内容が更新できるため,「回答内容」についてパターンの変更が実施されている
と主張する。
しかし,本件装置が回答内容を更新しているということは,入力された言語情報
に対応する回答が変更されたということになるが,「言語に係る事象の特徴が変換
された信号の組合せ」が変更されたのか否かは明らかではないから,控訴人の主張
を採用することはできない。
ウ 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)や本件製品の紹介ペー
ジ(甲81)に,「アメリアが文章をパーツに分解して,各単語の役割と,他の単語
との関係を解釈する」とある点について,本件装置は,「文章(=文,パターン)」
を「パーツ(文要素や単語) に分解するという
」 「変更」を実施していると主張する。
しかし,本件装置が,「文章(=文,パターン)」を「パーツ(文要素や単語)」
に分解するということは,文章を,文要素や単語に分解して認識していることを意
味しているにすぎないとも考えられ,言語の「パターン」を変更しているとは直ちに
認められない。
エ 以上によると,本件装置が構成要件1Bを充足するとは認められない。
(4) 争点2-4(構成要件1Dの充足性)について
ア 控訴人は,原判決が構成要件1Dについて,「有用と判断した情報のみを
記録する」として,「のみ」を含むクレーム解釈をしたことが,請求項に記載のない
ことを含めたものであり,誤りがあると主張する。
しかし,「有用と判断した情報のみを記録する」と解釈すべきことは,原判決「事
実及び理由」の第4の2(4)アが判示するとおりであり,控訴人の主張を採用するこ
とはできない。
イ 控訴人は,甲31及び38に「業務に特化した情報を学習するため,業務
に不要な情報での不必要な学習や成長はしない」との記載があることから,本件装
置が有用な情報のみを記録するとの機能を備えていると主張する。
しかし,価値ある入力した情報のみを記録するということをしなくても,入力さ
れたそれぞれの情報の結合関係を生成しながら知識体系を構築することは可能であ
る上,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)には,「全ての質問がアメリアの経験
や知識に加えられる」との説明があるから,「業務に特化した情報を学習するため,
業務に不要な情報での不必要な学習や成長はしない」からといって,本件装置が構
成要件1Dの「有用な情報のみを記録している」とは認められない。
ウ 控訴人は,本件製品の紹介ビデオの説明(甲12の図5,甲79,80)
やパンフレットの記載(甲11の2)によると,本件装置は,入力した情報の価値を
分析し,有用な情報を自律的に記録していると主張する。
しかし,上記の紹介ビデオの説明やパンフレットの記載は,アメリアが同僚と顧
客のやりとりを観察し,処理マップを自分で作成するというものや顧客に必要な質
問を投げかけ,それに対する顧客の回答に応答するというものであり,それから直
ちに有用な情報を取捨選択し有用な情報のみを記録しているとは認められない上,
本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)には,「全ての質問がアメリアの経験や知識
に加えられる」との説明があるから,本件製品が構成要件1Dの「有用な情報のみを
記録している」とは認められない。
エ 以上によると,本件装置が構成1Dを充足すると認めることはできない。
(5) 争点3(構成要件2C等の充足性)について
ア 控訴人は,構成要件2C等の「評価」 「自律的に知識を獲得」
と ないし「自
律的に知識を構築」の関係は並列であると主張するが,控訴人の上記主張を採用す
ることができないことは,原判決「事実及び理由」の第4の3(2)ア及びイが判示す
るとおりである。
したがって,構成要件2C等の「評価」と「自律的に知識を獲得」ないし「自律的
に知識を構築」の関係が並列であるとの控訴人の主張を採用することはできない。
イ 控訴人は,前記関係が直列の関係であるとしても,本件装置が構成要件
2C等を充足すると主張する。
(ア) 意味の評価について
控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載や本件製品の紹介ビデオ
(甲12の図5)の説明などから,本件装置は,「同じ言葉の異なる用法」の中から
「最も文脈にあてはまる用法」がどれかを評価し,知識を構築しており,本件装置
は,情報(意味)を評価し,知識の獲得を実施していると主張する。
しかし,本件製品のパンフレット(甲11の2の3頁)の「彼女は同じ言葉の異な
る用法を見分けるために文脈をあてはめることで,暗示されている意味を完全に理
解します。」との記載は,本件装置が,文脈をあてはめて言葉の用法を見分けている
というにすぎず,本件装置が情報(意味)を評価した上で,その評価を踏まえて妥当
性が確認された情報を知識として獲得していることを示していると認めることはで
きない。
また,本件製品の説明ビデオ(甲12の図5)によると,「全ての質問がアメリア
の経験や知識に加えられる」のであるから,本件装置が,意味を評価した上で,その
評価を踏まえて妥当性が確認された情報を知識として獲得していると認めることは
できない。
これに対し,控訴人は,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)の上記説明につい
て,意味を評価し,その結果に基づいて自律的に有益な知識を獲得する機能を有し,
全ての質問を知識として加えるというケースはあり得ると主張するが,上記の説明
は,単に全ての質問を知識として加えるという意味に理解するほかなく,本件装置
が意味を評価した上で全ての質問を知識として加えるという意味に理解することは
できないから,控訴人の主張を採用することはできない。
(イ) 新規性の評価について
a 控訴人は,本件製品のパンフレットの(甲11の2)の記載からする
と,本件装置は,遭遇した状況が知識として記録している場面と似ておらず,自分で
問題に対処できないことを識別する機能を有するから,新規性を評価し,知識の獲
得を実施している旨主張する。
しかし,本件発明2は,「自律的に知識を獲得」するというものであり,人の手を
介することを予定しているものではない。しかるところ,本件製品のパンフレット
(甲11の2の9頁)には,「自力で問題に対処できない場合,人間の同僚にその問
題を引き継ぎます。 と記載されていて,
」 人間の同僚が介入することが予定されてい
る上,本件装置がその後同僚の様子を見て特定の状況に対する最善の手順を見つけ
ることがあるとしても,本件製品の紹介ビデオ(甲80)では,「生成した処理ステ
ップの使用を管理者が了承すると,直ぐに彼女は同様の質問に対して自分自身で対
応できるようになります」と記載されていて,管理者が了承しないと,知識として獲
得されないから,本件装置が「自律的に知識を獲得」するということはできない。
仮に,控訴人が主張するように,新しい処理ステップに関しては,本件装置の管理
者が了承する前に,既に生成し,記録しているとしても,本件装置の管理者が了承し
なかった処理ステップまでが知識として獲得されるものではないから,本件装置が
「自律的に知識を獲得」すると認めることはできない。
b なお,本件製品の説明ビデオ(甲12の図5)によると,「全ての質
問がアメリアの経験や知識に加えられる」のであるから,本件装置が,新規性を評価
した上で,その評価を踏まえて妥当性が確認された情報を知識として獲得している
と認めることはできないことは,上記(ア)と同様である。
(ウ) 真偽を評価する機能
a 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)や紹介ビデオ(甲
12の図5,甲79,80)には,本件装置が的確な質問を発して,
「真実を明らか
にする」機能(=真偽を評価する機能)を有していることが示されていると主張す
る。
しかし,本件製品のパンフレット(甲11の2)には,「問題の根本を見極めるた
めの的確な質問ができる能力を持った」 「問題を明らかにするために必要な質問を

投げかけることで,答えを提示することができます。」(6頁)との記載や,「事実
を明らかにするための的確な質問を発し,人間と同じように問題の明確な性質を顕
在化させることができるのです。」(11頁)との記載があるところ,これらの記載
と本件製品の紹介ビデオ(甲79,80)によると,本件装置の質問は,顧客の要望
を明らかにするためのものであって,真偽を判断するためのものであるとは認めら
れないから,本件装置が,真偽を判断した上で,自律的に知識を獲得していると認め
ることはできない。
b 控訴人は,知識に対して論理を当てはめ,プロセス全体の各ステッ
プを自律的に進め,論理的な結論を得るためには,本件装置は,何が真であり,何が
偽であるかを評価する必要があると主張する。
しかし,論理的な結論を得るためには,情報間の結合関係を正確にする必要はあ
るが,必ずしも入力した言語情報の真偽の妥当性を評価する必要性は認められない。
c なお,本件製品の説明ビデオ(甲12の図5)によると,「全ての質
問がアメリアの経験や知識に加えられる」のであるから,本件装置が,真偽を評価し
た上で,その評価を踏まえて妥当性が確認された情報を知識として獲得していると
認めることはできないことは,前記(ア)と同様である。
(エ) 論理の妥当性について
a 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載や,本件製
品の紹介ビデオ(甲79)によると,本件装置は,「積極的に論理を当てはめ」 「事

実を明らかにするための明確な質問を発し」 「問題の明確な性質を顕在化し」 「論
, ,
理的な結論を得て」,「事実を明らかにするための的確な質問」及び「回答」を記録
して知識を獲得するという一連の動作を実施していることが分かるから,本件装置
は,情報を評価(論理の妥当性)し,知識の獲得を実施していると主張する。
しかし,
「論理的な結論」「知識に対して積極的に論理を当てはめることにより,

アメリアは問題を解決することもできます。彼女が知っている情報の本体に立ち返
ることで,自然言語で述べられた質問を元に事実を明らかにするための的確な質問
を発し,人間と同じように問題の明確な性質を顕在化させることができるのです。」
との本件製品のパンフレット(甲11の2の11頁)の記載や,アメリアの「質問」
に対する顧客の「回答」が記録された本件製品の紹介ビデオ(甲79)からは,本件
装置が入力した言語情報の論理の妥当性を確認しているとまでは読み取れないし,
また,論理的な結論を得るためには,情報間の結合関係を正確にする必要はあるが,
必ずしも入力した言語情報の論理の妥当性を評価する必要性は認められないから,
控訴人の主張を採用することはできない。
b 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載によると,
本件装置は,論理を適用し(=論理の妥当性を評価し),経験を通して学習している
(=記録している),すなわち,言語情報の論理の妥当性を評価し,経験した内容を
知識として獲得していると主張する。
しかし,本件装置が,「・・・論理を適用し,暗示されている内容を推定し,経験
を通して学び,感情すらも察知」(甲11の2の3頁)するものであるとしても,こ
のことから本件装置が入力した言語情報の論理の妥当性を評価しているとは直ちに
認められないから,控訴人の主張は採用できない。
c 控訴人は,本件製品の紹介ビデオ(甲79)には,本件装置が条件付
き処理を実施していることから,論理的に対応し,情報を記録していると主張する。
しかし,本件装置が,顧客の回答が「はい(yes)」なら,受取人リストに追加し,
回答が「いいえ(no) なら,
」 受取人リストに追加しないという処理をするとしても,
このことは,顧客の回答に基づいた処理をしていることを示すにすぎず,本件装置
が論理の妥当性を評価しているとは認められない。
d なお,本件製品の説明ビデオ(甲12の図5)によると,「全ての質
問がアメリアの経験や知識に加えられる」のであるから,本件装置が,論理性を評価
した上で,その評価を踏まえて妥当性が確認された情報を知識として獲得している
と認めることはできないことは,前記(ア)と同様である。
(オ) 以上から,本件装置が構成要件2C等を充足していると認めることは
できない。
(6) 争点4-2(構成要件3Cの充足性)について
控訴人は,本件装置はパターンの変更をする機能を有していると主張するが,こ
れが認められないことは前記(3)アのとおりである。
控訴人は,被控訴人は,乙12発明に基づき本件発明3が新規性又は進歩性を欠
くと主張しており,本件製品が構成要件3Cを充足することを認めていると主張す
るが,被控訴人は,「かかる原告の主張に従えば,乙12の3頁等にも同じ記載があ
るから,乙12は構成要件Cを備える。」と主張していたものであり(原審被告準備
書面(6)38頁),本件製品が構成要件3Cを充足することを認めていると評価する
ことはできない。
(7) まとめ
以上によると,本件装置が,本件発明1~3の技術的範囲に含まれるとは認めら
れない。
第4 結論
前記第3で判断したところによると,控訴人の請求は,その余の点を判断するま
でもなく,理由がないことになるから,原判決は相当である。よって,本件控訴を棄
却することとして,主文のとおり判決する。


知的財産高等裁判所第2部


裁判長裁判官
森 義 之


裁判官
眞 鍋 美 穂 子

裁判官
佐 野 信

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