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令和1(行ケ)10078審決取消請求事件

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裁判所 審決取消 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和2年1月28日
事件種別 民事
当事者 被告メリタオイローパゲゼルシテルハフツングウントコ
原告ハイテック
法令 商標権
商標法50条3回
キーワード 商標権24回
審決7回
許諾2回
主文 1 特許庁が取消2018-670040号事件について平成31年2月4日にした審決を取り消す。
2 被告に対し,この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告は,以下の商標(以下「本件商標」という。)に係る国際登録第121 7328号の商標権者である。

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判決文

令和2年1月28日判決言渡
令和元年(行ケ)第10078号 審決取消(商標)請求事件
口頭弁論終結日 令和元年11月11日
判 決
原 告 ハ イ テ ッ ク
(HYTECK société par actions simplifiée)
訴訟代理人弁理士 松 本 康 伸
同 小 川 稚 加 美
被 告 メリタ オイローパ ゲゼルシ
ャフト ミット ベシュレンク
テル ハフツング ウント コ
ンパニー コマンディートゲゼ
ルシャフト
(Melitta Europa GmbH & Co. KG)
訴訟代理人弁護士 松 永 章 吾
訴訟代理人弁理士 山 崎 和 香 子
主 文
1 特許庁が取消2018-670040号事件について平成31年2月4日にし
た審決を取り消す。
2 被告に対し,この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を
30日と定める。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文と同旨
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
⑴ 原告は,以下の商標(以下「本件商標」という。)に係る国際登録第121
7328号の商標権者である。
商標 (彩色あり)
国際登録 第1217328号
国際登録日 2013年12月18日
登録日(国内)2015年10月2日
区分 第3類,第5類,第11類,第21類,第29類,第41
類,第42類,第44類
⑵ 被告は,平成30年10月5日,特許庁に対し,継続して3年以上日本国内
において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者が本件商標の指定商品中,
第21類「Utensils and containers for household or kitchen use; brushes
(except paintbrushes); bottles; glasses (receptacles)」について本件商
標の使用をした事実が存在しないとして,商標法50条第1項に基づき商標登
録の取消しを求めて審判請求(以下「本件請求」という。)をした。本件請求
の登録日は平成30年10月19日である。
⑶ 特許庁は,平成31年2月4日,「国際登録第1217328号商標の指定
商品及び指定役務中,第21類「Utensils and containers for household
or kitchen use; brushes (except paintbrushes); bottles; glasses
(receptacles)」についての商標登録を取り消す。審判費用は,被請求人の負
担とする。」との審決をし,その謄本は,平成31年2月7日に原告宛てに発
送して送達された。原告(被請求人)のため出訴期間として90日が附加され
た。
⑷ 原告は,令和元年6月5日,審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。
2 審決の理由の要旨
被告(請求人)が,上記指定商品につき本件商標の登録は商標法50条の規定
により取り消されるべきであると主張したのに対し,原告(被請求人)は答弁せ
ず,商標の使用の証明などをしないから,上記指定商品につき本件商標の登録は
取り消されるべきである。
第3 原告の主張(審決の取消事由)
1 商標の機能及び取引の実情に照らせば,
外国に存する商標権者である流通者又
は販売者が,登録商標を付した商品を日本国内に向けて流通させ又は販売するこ
とも,日本国内において商標権者が登録商標を使用することに当たる。
2 以下のとおり,本件商標は,本件請求に係る指定商品のうち utensils and
containers for household or kitchen use(家庭用または台所用の器具及び容
器),bottles(瓶)及び glasses (receptacles)(ガラス製容器)(以下,こ
れら3種の商品を併せて「使用立証対象商品」という。)について,本件請求の
登録日である平成30年10月19日の前3年の間(以下「本件要証期間」とい
う。)に,日本国内において商標権者によって使用されたというべきである。
⑴ ランジュビオを通じた販売
オンラインショップ「l'Ange bio」(以下「ランジュビオ」という。)は,
フランス在住の日本人が運営するオンラインショップであり,日本語で運営さ
れ,日本向けに商品販売を行っている。
原告は,本件要証期間中に,本件請求に係る指定商品のうち,使用立証対象
商品に該当する商品をランジュビオに販売した。そして,ランジュビオは,本
件要証期間中に,原告から購入したこれらの商品を,日本の需要者に販売する
ために自店のウェブサイトに掲載し,需要者の注文に応じて販売した。実際に
取引される商品に付されたラベルには本件商標が表示され,ラベルが付された
状態で商品が需要者に譲り渡されていた。
⑵ マルキーズを通じた販売
アロマショップ「MARQUISE」(以下「マルキーズ」という。)は,愛媛県松
山市所在の株式会社マルキーズが運営するアロマ商品の販売店であり,松山市
内と神戸市内に実店舗を構え,実店舗及びオンラインショップで商品の販売を
行っている。
マルキーズは,本件要証期間中に,本件請求に係る商品のうち,使用立証対
象商品に該当する商品を原告から仕入れ,日本国内で譲渡のために展示し,販
売した。実際に取引される商品に付されたラベルには本件商標が表示され,ラ
ベルが付された状態で商品が需要者に譲り渡されていた。
第4 被告の反論
1 商標法50条が規定する登録商標の不使用取消審判制度の趣旨は,商標法の
保護は商標の使用によって蓄積された信用に対し与えられるのが本来的な姿であ
るところ,一定期間登録商標の使用をしていない場合には,そのような信用が発
生しないか,又は消滅してその保護すべき対象がなくなること,及び不使用に係
る登録商標に対して排他的独占的な権利を与えておく理由はなく,かつ,その存
在により商標的使用を希望する第三者の商標選択の余地を狭めることから,その
ような商標登録を取り消すことにある。そして,商標権者のみならず商標権者か
ら登録商標の使用許諾を受けた商標使用権者の使用による業務上の信用も究極
的には商標権者の信用に帰するといえるほか,登録商標の取消という権利者に対
する制裁は,商標権者及び登録商標の使用を許諾された商標使用権者がいずれも
登録商標を使用しなかったことによって正当化しうることから,商標法第50条
1項は「日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも
が使用をしていないこと」を商標登録取消審判の要件としているのである。
上記の不使用取消審判制度の趣旨に鑑みれば,商標権者及び商標使用権者以
外の第三者による日本国内での使用を安易に商標権者又は商標使用権者による
使用と同視してはならず,かかる評価は極めて例外的かつ厳格に行う必要があ
る。具体的には,商標権者又は商標使用権者が,登録商標を付した商品の譲受人
が日本国内でこれを販売することを単に事実として認識していただけでは足り
ず,少なくとも商標権者又は商標使用権者が,第三者と締結する販売代理店契約
等に基づき第三者が商標権者を代理して日本国内で販売することを契約上認識
していることが必要であると解すべきである。
2 上記1のとおりの解釈を前提にすると,以下のとおり,原告の主張立証によっ
ては,本件商標が商標権者又は商標使用権者によって使用されたとは認定できな
い。
⑴ ランジュビオを通じた販売について
原告が,ランジュビオの運営者との間で,使用立証対象商品を日本国内で販
売することを内容とする販売代理店契約を締結していたという事実は主張立
証されていないから,原告が,ランジュビオの運営者が使用立証対象商品を日
本国内で販売することを契約上認識していたとはいえない。
また,原告がフランス国内で商品を販売した相手とランジュビオの運営者と
の人格同一性は証拠上立証されていないこと,ランジュビオのウェブサイトは
日本国内の顧客に向けて日本語のみで構築されておりその内容をフランス法
人の原告が認識していたとも思われないことによれば,原告が,その販売した
商品がランジュビオによって日本国内で販売されることを事実上も認識してい
たとはいえない。
⑵ マルキーズを通じた販売について
本件商標の使用権者でない第三者であるマルキーズによる日本国内での使
用立証対象商品の販売の事実をもって,商標権者である原告が日本国内におい
て本件商標を使用したものとすることの法的根拠は明らかでない。よって,マ
ルキーズによる使用立証対象商品の販売は,原告による日本国内での本件商標
の使用にあたらない。
第5 裁判所の判断
1 証拠によれば,以下の事実を認定することができる。
⑴ ランジュビオは,フランスに在住する日本人Aが運営するオンラインショッ
プであり,日本語で運営され,日本向けに商品販売を行っている。(甲7,3
8)
⑵ Aは,氏名のアルファベット表記としてAを用いている。(甲40)
⑶ 原告は,Aに対し,2013年(平成25年)から,本件商標を付した瓶や
スパチュラ(化粧品や料理に用いる「へら」)を含むさまざまな製品を販売し
てきた。この販売に当たり,原告は,A がランジュビオを運営していること
及びランジュビオが上記製品を日本で消費者向けに販売していることを認識し
ていた。(甲41)
⑷ 本件要証期間中の2016年(平成28年)3月1日,原告はプラスチック
製の瓶及びガラス製の容器をAに販売した。(甲12,17,18)
⑸ 本件要証期間中の同年2月から2018年(平成30年)8月までの間のラ
ンジュビオのウェブページには,原告製品である瓶やガラス製容器が販売商品
として掲載され,日本円で価格が表示されている。(甲21ないし26)
⑹ 本件要証期間中の2016年3月のランジュビオのウェブページには,原告
製品であるスパチュラが販売商品として掲載され,用途の一つとして「お料理
に」と記載され,日本円で価格が表示されている。(甲19,20)
⑺ 原告が販売する製品の本体又は包装には,本件商標が直接表示されるか,本
件商標を表示したタグ又はラベルが付されるかしている。(甲27,38,3
9の各枝番)
2 上記1の各事実を総合すると,原告は,ランジュビオに対し,日本において消
費者に販売されることを認識しつつ本件商標を付して使用立証対象商品を譲渡
し,ランジュビオは,本件要証期間中に,本件商標を付した状態で日本の消費者
に対して本件使用対象商品を譲渡した事実を推認することができるし,少なくと
も,ランジュビオが譲渡のための展示をしたことは明らかである。
かかる事実によれば,本件商標は,本件要証期間内に,商標権者である原告に
よって,日本国内で,使用立証対象商品に,使用されたものと評価することがで
きる。
3 被告の主張について
⑴ 被告は,商標権者が商標の使用をしたというためには,商標権者が,登録商
標を付した商品の譲受人が日本国内でこれを販売することを単に事実として
認識していただけでは足りず,少なくとも商標権者が,第三者と締結する販売
代理店契約等に基づき第三者が商標権者を代理して日本国内で販売すること
を契約上認識していることが必要である旨主張する。
しかしながら,商標権者が,日本国内で販売されることを認識しつつ商標を
付した商品を譲渡し,実際に,その商標が付されたまま当該商品が日本国内で
販売されたのであれば,日本国内における上記商標の使用(商標を付した商品
の譲渡)は,商標権者の意思に基づく「使用」といえるから,それ以上に,被
告のいう「契約上」の「認識」なるものを要求する根拠はないというべきであ
る。したがって,被告の主張は失当である。
⑵ 被告は,原告による上記1の各事実の証明は不十分である旨主張するが,か
かる主張を受けて原告が補充的に行った立証の内容を加味すれば,
証明が十分
になされたといえる。
⑶ したがって,被告の上記各主張はいずれも採用することができない。
4 よって,審決には誤りがあり,原告の請求は理由があるからこれを認容するこ
ととして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
鶴 岡 稔 彦
裁判官
上 田 卓 哉
裁判官
石 神 有 吾

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