ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和1(ワ)24290 損害賠償及び特許権使用の実施料の支払い請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 東京地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和2年1月17日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 対象物 | 水栓エルボ挟み込み連結固定具及び25取り付け足 |
| 法令 |
特許権 特許法112条4項1回 |
| キーワード | 実施16回 特許権7回 優先権1回 損害賠償1回 |
| 主文 | 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 本件は,原告が,被告に対し,原告・被告の共有特許に係る実施品を被告が製 造・販売したとして,原被告間の共同出願契約に基づき,平成9年7月1日から 平成29年6月30日までの間の実施料額の一部である100万円の支払を求20 める事案である。 |
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令和2年1月17日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和元年(ワ)第24290号 損害賠償及び特許権使用の実施料の支払い請求事件
口頭弁論終結日 令和元年11月22日
判 決
原 告 X
被 告 T O T O 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 熊 倉 禎 男
𠮷 田 和 彦
小 林 正 和
西 村 英 和
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は,原告に対し,100万円を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は,原告が,被告に対し,原告・被告の共有特許に係る実施品を被告が製造・販売したとして,原被告間の共同出願契約に基づき,平成9年7月1日から平成29年6月30日までの間の実施料額の一部である100万円の支払を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定することができる事実)
(1) 原告は,平成5年11月30日,Y弁理士(以下「Y弁理士」という。)に委任して,特許庁に対し,考案の名称を「水栓エルボ挟み込み連結固定具及び取り付け足」とする考案(以下「本件考案」という。)に係る実用新案登録の出願をした(実願平5-71726号)。(乙5)
(2) 原告は,平成6年2月2日,Y弁理士に委任して,特許庁に対し,発明の名称を「水栓エルボ連結固定具及び取付足」とする発明(以下「本件発明」という。)に係る特許出願をしたが(特願平6-29130号。以下「本件特許出
5 願」という。),その際,前項の実用登録出願に基づく優先権を主張した。(甲1,乙5,11)
(3) 原告は,平成6年11月30日,被告(当時の商号は東陶機器株式会社)との間で,本件考案,本件発明ほか1件の発明(以下,併せて「本件発明等」という。)についての特許を受ける権利を持分各2分の1とする共有とすること(1条),被告が本件発明等の特許出願の手続,登録までの諸手続及び登録された場合の権利の維持保全に関する手続を行うこと(2条),本件発明等に基づいて得られる特許権の実施のうち製造については原則として被告のみが行い,被告が製造販売をする場合,被告が原告に対して実施料を支払うこと(3条及び別表番号1)などを内容とする共同出願契約(以下「本件契約」という。)を締結し,被告に対し,本件発明に係る特許を受ける権利の一部を譲渡した。(甲6,乙6,7)
(4) 被告は,平成6年12月20日付けで,本件契約に基づき,Y弁理士に依頼して,本件特許出願の出願人名義を被告に変更する旨の届出をした。(乙8,9)
(5) 本件特許出願につき,平成9年8月1日,発明の名称を「水栓エルボ連結固定具」とし,特許権者を原告及び被告とする特許権(以下「本件特許権」といい,これに係る特許を「本件特許」という。)の設定登録がされた。ア 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項の記載内容は,別紙請求項目録記載のとおりである。(甲1,乙11)イ 各請求項を構成要件に分説すると,以下のとおりである(以下,それぞれを「構成要件A-1」などという。)。【請求項1】A-1 合成樹脂で形成され,前面に湯水混合水栓を接続する2個の水栓エルボを嵌合する凹部を一定間隔をおいて有する後部固定部と,B-1 後面に2個の水栓エルボを嵌合する凹部を一定間隔をおいて有し,
5 各凹部上部に水栓エルボの一端部と嵌合す保持穴を有する前部固定部とを有するC ことを特徴とする水栓エルボ連結固定具。【請求項2】A-2 合成樹脂で直方体状に形成され,前面中央部に設けられた凹部に複数の取付穴を有する取付部と,B-2 取付部の両側に設けられ,湯水混合水栓を接続する2個の水栓エルボの各端部を前面と下面に位置して一定間隔をおいて埋込んだ保持部とを有するC ことを特徴とする水栓エルボ連結固定具。【請求項3】A-3 合成樹脂で箱状に形成され,前面中央部には複数の取付穴を有する取付部と,B-3 取付部の両側に突出して設けられ,湯水混合水栓を接続する2個の水栓エルボの各端部を前面と下面に位置して一定間隔をおいて埋込んだ保持部と,D 保持部の下部に設けられ前面を開口した箱状の作業空間部とを有するC ことを特徴とする水栓エルボ連結固定具。【請求項4】A-4 合成樹脂で形成され,前面に湯水混合水栓を接続する2個の水栓エルボを嵌合する凹部を,湯水混合水栓の接続部の間隔と同じ間隔をおいて有する後部固定部と,B-4 後面に2個の水栓エルボを嵌合する凹部を,湯水混合水栓の接続部の間隔と同じ間隔をおいて有し,各凹部上部に水栓エルボの一端部と嵌合す保持穴を有する前部固定部とを有し,
5 E 保持された水栓エルボと湯水混合水栓とを直管状の取付足で接続するC ことを特徴とする水栓エルボ連結固定具。【請求項5】F 上記保持部に埋め込んだ2個の水栓エルボの間隔を湯水混合水栓の接続部の間隔と同じ間隔とし,埋め込んだ2個の水栓エルボと湯水混合水栓とを直管状の取付足で接続するG 請求項2又は3記載の水栓エルボ連結固定具。【請求項6】H 上記取付足に水量調節用のボールバルブを有するI 請求項4又は5記載の水栓エルボ連結固定具。
(6) 原告と被告は,本件特許権の設定登録の際の費用を半額ずつ負担したが,その後,被告は,平成13年8月6日付けで,Y弁理士に対し,本件特許に係る維持費用は被告が負担する旨の通知をし,それ以降は,被告が同費用を全額負担するようになった。被告は,平成18年8月1日までに平成19年度分の特許料を納付せず,追納可能期間内に追納もしなかったため,本件特許権は,特許法112条4項により,平成18年8月1日をもって消滅したものとみなされた。(甲2,乙10)3 当事者の主張(原告の主張)被告は,平成9年7月1日から平成29年6月30日までの間,シャワーセット(ユニットバスに組み付けるもの)を製造・販売して本件発明を実施した。原告が本件契約に基づき受けるべき実施料の額は,少なくとも月額100万円程度になるはずである。本訴では,その一部である100万円の支払を求める。(被告の主張)原告の主張は否認し争う。被告は,本件発明を実施していない。
5 被告のユニットバスであるHSシリーズのT/S/Nタイプ等で用いられている回転防止材(以下「被告製品」という。)は,被告が平成7年頃から汎用的に使用してきたものであり,原告はこれが本件発明の「水栓エルボ連結固定具」に相当すると主張するものと推察される。しかるに,(1)本件発明における「水栓エルボ連結固定具」は,①後部固定部及び前部固定部,又は②直方体状あるいは箱状の取付部及び保持部という2部材から構成されているのに対し,被告製品は,断面コの字型の1つの部材から構成されている点,(2)本件発明における「水栓エルボ連結固定具」は,合成樹脂(プラスチック)からなるものであるのに対し,被告製品は,SGCCという溶融亜鉛メッキ鋼板である点という2点で構成を異にし,被告製品は,少なくとも請求項1の構成要件A-1,B-1,請求項2の構成要件A-1,B-2,請求項3の構成要件A-3,B-3及び請求項4の構成要件A-4,B-4の各構成を有しない。したがって,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属さず,他に本件発明の実施品は存在しない。
第3 当裁判所の判断
1 本件発明の特許請求の範囲の各請求項の記載内容からすれば,構成要件A-1
及びA-4の「合成樹脂で形成され」,構成要件A-2の「合成樹脂で直方体状に形成され」並びに構成要件A-3の「合成樹脂で箱状に形成され」とは,「水栓エルボ連結固定具」が合成樹脂で上記のとおり形成されていることを意味すると解するのが自然である。そして,本件特許に係る明細書の「課題を解決するための手段」の項に,「この発明に係る水栓エルボ連結固定具は,合成樹脂で形成され・・・」(段落【0008】),「また第2の発明に係る水栓エルボ連結固定具は,合成樹脂で直方体状に形成され・・・」(段落【0009】)とあり,「実施例」の項に「図に示すように,水栓エルボ連結固定具1は後部固定部2と前部固定部3とを有する。
5 後部固定部2と前部固定部3は例えばエボキシ樹脂やポリアミド樹脂等の機械
的な強度を有する合成樹脂で直方体に形成され・・・」(段落【0015】),「図に示すように,水栓エルボ連結固定具1aは合成樹脂で直方体状に形成され・・・」(段落【0021】),「図に示すように,水栓エルボ連結固定具1bは合成樹脂で箱状に形成され・・・」(段落【0024】)と記載されていることからすれば,本件発明においては,水栓エルボ連結固定具が,合成樹脂(いわゆるプラスチック)で形成されているものとして特定されていると認められる。
2 原告が,どの請求項に基づいて被告が本件発明を実施していると主張している
のか,また,本件発明の実施品であるとする水栓エルボ連結固定具が具体的に被告のいかなる製品を指すのかは明らかではないが,全ての請求項に記載の発明についての実施を問題とし,また,実施品が被告製品を指すとしても,証拠(乙12・X-11頁,乙13~15)によれば,被告製品の材質は,SGCC(溶融亜鉛めっき鋼板)であって,合成樹脂ではないことが認められるから,被告製品は,少なくとも,本件発明(請求項1~4に記載の各発明及びそれらの従属項である請求項5及び6に記載の発明)の構成要件A-1,A-2,A-3,A-4,G,Iのいずれも充足しないことが明らかである。また,他に,被告が本件発明を実施していることを認めるに足りる証拠はない。したがって,被告が本件発明の実施をしているとは認められないから,このことを前提とする原告の請求は理由がない。
3 よって,原告の請求は,その余の点につき判断するまでもなく,理由がないか
ら,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第40部裁判長裁判官佐 藤 達 文裁判官三 井 大 有裁判官𠮷 野 俊 太 郎別紙請求項目録【請求項1】
5 合成樹脂で形成され,前面に湯水混合水栓を接続する2個の水栓エルボを嵌合する
凹部を一定間隔をおいて有する後部固定部と,後面に2個の水栓エルボを嵌合する凹部を一定間隔をおいて有し,各凹部上部に水栓エルボの一端部と嵌合す保持穴を有する前部固定部とを有することを特徴とする水栓エルボ連結固定具。【請求項2】合成樹脂で直方体状に形成され,前面中央部に設けられた凹部に複数の取付穴を有する取付部と,取付部の両側に設けられ,湯水混合水栓を接続する2個の水栓エルボの各端部を前面と下面に位置して一定間隔をおいて埋込んだ保持部とを有することを特徴とする水栓エルボ連結固定具。【請求項3】合成樹脂で箱状に形成され,前面中央部には複数の取付穴を有する取付部と,取付部の両側に突出して設けられ,湯水混合水栓を接続する2個の水栓エルボの各端部を前面と下面に位置して一定間隔をおいて埋込んだ保持部と,保持部の下部に設けられ前面を開口した箱状の作業空間部とを有することを特徴とする水栓エルボ連結固定具。【請求項4】合成樹脂で形成され,前面に湯水混合水栓を接続する2個の水栓エルボを嵌合する凹部を,湯水混合水栓の接続部の間隔と同じ間隔をおいて有する後部固定部と,後面に2個の水栓エルボを嵌合する凹部を,湯水混合水栓の接続部の間隔と同じ間隔をおいて有し,各凹部上部に水栓エルボの一端部と嵌合す保持穴を有する前部固定部とを有し,保持された水栓エルボと湯水混合水栓とを直管状の取付足で接続することを特徴とする水栓エルボ連結固定具。【請求項5】上記保持部に埋め込んだ2個の水栓エルボの間隔を湯水混合水栓の接続部の間隔と同じ間隔とし,埋め込んだ2個の水栓エルボと湯水混合水栓とを直管状の取付足で接続する請求項2又は3記載の水栓エルボ連結固定具。【請求項6】上記取付足に水量調節用のボールバルブを有する請求項4又は5記載の水栓エルボ連結固定具。
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