令和1(ワ)22379商標権侵害差止等請求事件
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裁判所 |
東京地方裁判所
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裁判年月日 |
令和2年1月22日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
原告三井不動産株式会社 被告株式会社三井開発
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法令 |
商標権
商標法36条1項2回 商標法37条1項1回 不正競争防止法2条1項2号1回 不正競争防止法2条1項1号1回
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キーワード |
商標権12回 侵害9回 差止4回
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主文 |
1 被告は,広告媒体,価格表又は取引書類において,「三井開発」を含む標章を
2 被告は,「株式会社三井開発」との商号を使用してはならない。15
3 被告は,東京法務局台東出張所平成29年3月10日受付でされた被告の設
4 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事件の概要 |
別紙請求の原因のとおり。
第2 被告の商標権侵害 |
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判決文
令和2年1月22日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和元年(ワ)第22379号 商標権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和元年12月23日
判 決
原 告 三 井 不 動 産 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 渡 辺 光
岸 慶 憲
10 被 告 株 式 会 社 三 井 開 発
主 文
1 被告は,広告媒体,価格表又は取引書類において,「三井開発」を含む標章を
使用してはならない。
15 2 被告は,「株式会社三井開発」との商号を使用してはならない。
3 被告は,東京法務局台東出張所平成29年3月10日受付でされた被告の設
立登記中,商号「株式会社三井開発」の抹消登記手続をせよ。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
20 第1 請求
主文同旨
第2 請求の原因
別紙請求の原因のとおり。
第3 当裁判所の判断
25 1 被告は,適式の呼出しを受けながら,本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書
その他の準備書面を提出しない。したがって,被告において請求原因事実を争うこ
とを明らかにしないものとして,これを自白したものとみなす。
2 以上によれば,被告の行為は不正競争防止法2条1項2号の不正競争に該当
し,原告の同法に基づく請求はいずれも理由があるから,これらを認容することと
して主文のとおり判決する。
5 このうち主文第1項に係る部分については,原告が不正競争防止法に基づく請求
と商標権侵害に基づく請求を選択的にするところ,不正競争防止法に基づく請求に
ついて判断し,これを認容したものである。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
山 田 真 紀
裁判官
矢 野 紀 夫
裁判官
西 山 芳 樹
別紙
請求の原因
第1 当事者
5 1 原告は,オフィスビル,商業施設,ホテルリゾートの開発といった不動産開
発を主たる事業とする企業である。
2 被告は,不動産の売買,賃貸及びその仲介を事業とする企業である。
第2 被告の商標権侵害
10 1 原告の商標権
原告は,別紙商標権目録記載の,商標登録第3047727号(以下「原告登録
商標」という)の商標権(以下「原告商標権」という)を有している。
2 被告の行為
被告は,「株式会社三井開発」の商号の下,不動産の売買,賃貸及びその仲介の事
15 業を行っている。実際に,被告は,遅くとも平成30年3月8日までに,「三井開発」
(以下「被告標章」という)を名乗って,複数の一般消費者に不動産の売買を持ち
かけていることから,少なくとも被告標章を,広告,価格表及び取引書類に付して
展示,頒布するおそれがある。
なお,被告は,土地の訪問販売を行っていたところ,事前に,土地の売買契約の
20 締結について勧誘をする目的であることを明かしていなかったなどのため,特定商
取引に関する法律7条1項に基づく指示を受けている。また,かかる指示は,公示
送達によって,送達されたことからすると,少なくとも平成30年10月31日当
時,被告の住所,居所その他送達をすべき場所が知れなかった。
3 商標の類似性と指定役務の同一性
25 被告標章「三井開発」のうち,「開発」は,業務内容を示す一般名称であることか
ら,被告標章の要部は,「三井」である。
一方で,原告登録商標のうち,「不動産」は,業務内容を示す一般名称であること
から,原告登録商標の要部は,「三井」であり,被告標章の要部と同一である。
したがって,被告標章と原告登録商標は,類似する。
また,被告の業務である不動産の売買,賃貸及びその仲介は,原告登録商標の指
5 定役務である土地及び建物の貸与,売買及びその仲介と同一である。
4 小括
よって,被告は,原告商標権を侵害するおそれがある(商標法37条1項)。
第3 被告の不正競争行為
10 1 原告表示の周知性・著名性
(1) 原告は,東証一部上場企業であり,「三井不動産」(以下「原告表示」と
いう)を用いて,事業を行っているところ,原告の営業収益は,次の通りであり,
不動産開発業界において1位の売上高である。
2019年:約1兆8612億円
15 2018年:約1兆7511億円
2017年:約1兆7044億円
2016年:約1兆5680億円
2015年:約1兆5290億円
(2) 原告は,原告表示と同一である原告登録商標に基づいて,以下の防護標
20 章登録を取得している。
登録番号 第3047727号防護01号
商標 三井不動産
登録日 平成14年5月10日
(3) 原告は,原告表示の下で,霞が関ビルディング,ららぽーと,三井ガー
25 デンホテルズといった数々の大型施設の開発を行った。
(4) 上記より,原告表示は,日本全国において,原告の営業又は商品を表示
するものとして著名であり,少なくとも需要者の間に広く認識されている。
2 類似性
被告商号「株式会社三井開発」のうち,「株式会社」は,会社形態を表示する一般
名称であり,「開発」は,業務内容を示す一般名称であることから,被告商号の要部
5 は,
「三井」である。
したがって,第2の3に記載した原告登録商標と被告標章の類似性と同様に,原
告表示と被告商号は,類似する。
3 混同
原告表示と被告商号は,その要部において全く同一であり,全体として高い類似
10 性がある上に,原告の事業と被告の事業は,不動産の貸与,売買及びその仲介とい
う点で同一である。また,上記1に記載したとおり,原告は,日本全国において知
られており,原告表示は,著名である。
そのため,被告と取引をする者は,被告が原告の関連会社であると誤認するおそ
れがある。
15 4 小括
したがって,上記第2の2に記載した行為を行った被告は,不正競争防止法2条
1項1号及び2号に規定される不正競争によって,原告の営業上の利益を侵害する
おそれがある。
20 第4 差止請求権等
以上のとおり,被告は,原告登録商標に係る商標権を侵害するおそれがあると共
に,不正競争行為により,原告の営業上の利益を侵害するおそれがある。
したがって,原告は,被告に対し,商標法36条1項及び不正競争防止法3条1
項に基づき,被告標章の使用を差し止める権利,不正競争防止法3条1項に基づき,
25 被告商号の使用を差し止める権利並びに,同条2項に基づき,被告商号の抹消登記
請求権を有する。
第5 本件訴訟に至る経緯
原告は,原告商標権侵害及び不正競争行為を理由として,被告標章及び被告商号
の使用中止並びに商号の変更を請求するため,令和元年5月29日に,登記簿上の
5 被告住所及び被告代表者の住所のそれぞれに対して,内容証明郵便及びレターパッ
クライトにより,警告書を送付した。このうち,被告代表者宛ての住所に対するレ
ターパックライトのみ配達された。しかしながら,その余は返送された。
原告は,上記のとおり,警告書を被告及び被告代表者に送付したが,結局,被告
から何らの回答がなかったことから,やむを得ず,本件訴訟を提起した次第である。
第6 まとめ
よって,原告は,被告に対し,原告商標権の侵害及び不正競争行為を理由として,
商標法36条1項及び不正競争防止法3条1項に基づき,広告媒体,価格表又は取
引書類における被告標章の使用の差止めを,不正競争防止法3条1項に基づき,被
15 告商号の使用の差止めを,並びに,同条2項に基づき,被告商号の抹消登記手続き
を求める。
以 上
別紙
商標権目録
5 登録番号 第3047727号
出願日 平成4年9月18日
登録日 平成7年5月31日
商標
10 商品・役務の区分 第36類
指定役務 土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地
の情報の提供等
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