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平成30(ワ)13927特許権侵害差止請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 令和2年2月5日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社MRSホールディングズ
被告LINEPay株式会社
対象物 クレジットカード管理システム
法令 特許権
特許法36条6項2号1回
特許法36条6項1号1回
特許法100条1項1回
キーワード 無効48回
実施35回
侵害26回
新規性13回
進歩性12回
無効審判9回
特許権7回
差止2回
間接侵害2回
審決1回
分割1回
抵触1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 本件は,原告が,被告は,被告が管理する別紙1物件目録記載のコンピュータ25 システム(以下「被告コンピュータシステム」という。)を使用して被告のモバ イル送金・決済サービスを提供することにより,原告の有する特許権を侵害して いると主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づき,被告コンピュータ システムの使用の差止めを求める事案である。

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判決文

令和2年2月5日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成30年(ワ)第13927号 特許権侵害差止請求事件

口頭弁論終結日 令和元年12月6日

判 決

原 告 株式会社MRSホールディングズ

同訴訟代理人弁護士 髙 﨑 仁

坂 本 誉 幸

村 島 大 介

同訴訟代理人弁理士 塩 谷 英 明

被 告 LINE Pay株式会 社

同訴訟代理人弁護士 服 部 誠

大 西 ひ と み

同訴訟復代理人弁護士 岩 間 智 女

同訴訟代理人弁理士 中 村 佳 正

同 補 佐 人 弁 理 士 相 田 義 明

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 被告は,別紙1物件目録記載のコンピュータシステムを使用してはならない。2 訴訟費用は被告の負担とする。3 仮執行宣言

第2 事案の概要

1 本件は,原告が,被告は,被告が管理する別紙1物件目録記載のコンピュータシステム(以下「被告コンピュータシステム」という。)を使用して被告のモバイル送金・決済サービスを提供することにより,原告の有する特許権を侵害していると主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づき,被告コンピュータシステムの使用の差止めを求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨

5 により認定することができる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断らない限り,枝番を含むものとする。)

(1) 当事者ア 原告は,特許発明の開発,特許出願支援,特許に関するコンサルタント等を業とする株式会社である。イ 被告は,モバイル送金・決済サービスである「LINE Pay」(以下「被告サービス」という。)を運営する株式会社である。被告は,被告サービスを提供するに際して,被告コンピュータシステムを管理・使用している。

(2) 原告の特許権ア 原告は,以下の特許権(以下「本件特許権」といい,これに係る特許を「本件特許」という。)を有している。(甲1,2)発明の名称:ホワイトカード使用限度額引上げシステム,およびその動作方法特許番号:特許第5775663号出願日:平成21年9月16日登録日:平成27年7月10日イ 原告が本件発明に係る特許査定を受けるまでの経過は以下のとおりである。(ア) 原告は,平成24年9月10日,特許庁に対し,本件特許出願について審査請求をした。(甲2)(イ) 特許庁は,原告に対し,平成25年12月6日付け拒絶理由通知書(以下「本件拒絶理由通知書」という。)により,拒絶理由を通知した。これに対し,原告は,平成26年2月5日,特許庁に対し,本件拒絶理由通知書に対する意見書を提出したが,特許庁は,平成26年7月9日付けで本件特許出願について拒絶査定(以下「本件拒絶査定」という。)をした。(甲6,乙1)

5 (ウ) 原告は,平成26年8月20日,特許庁に対し,審判請求書(以下「本件審判請求書」という。)を提出し,本件拒絶査定を不服とする審判の申立てをしたところ,特許庁は,平成27年6月19日,原査定を取り消し,本願は特許をすべきものである旨の審決をした。(甲1,2,乙2)ウ 本件特許に係る特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)の請求項1は,以下のとおりである(以下,同項に係る発明を「本件発明」という。)。「使用限度額をホワイトカードに紐づけられた入金額に応じて引き上げることが可能で,受金にのみ利用可能な受金IDと,消費使用に利用可能な消費使用IDとの二種類のIDがあらかじめ紐付けられているホワイトカードに対する入金システムであって,ホワイトカードに対する入金に際して,入金すべきホワイトカードの受金IDを取得する受金ID取得部と,そのホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報である入金受付情報を取得する入金受付情報取得部と取得した受金IDと,入金受付情報とを関連付けて出力する出力部と,を有するホワイトカード使用限度額引上指示装置と,受金IDと関連付けられた入金受付情報をホワイトカード使用限度額引上指示装置から受信する受信部と,受信した入金受付情報に関連付けられたホワイトカード受金IDと紐付けられている消費使用IDをホワイトカードID管理装置から取得する消費使用ID取得部と,取得した消費使用IDと関連付けた使用限度額引上額を含む引上命令を送信する引上命令送信部と,を有する引上命令装置と,

5 消費使用IDと受金IDとを紐付けた紐付テーブルを保持する紐付テーブル保持部と,引上命令装置から受金IDを受信する受金ID受信部と,受信した受金IDに紐付けられている消費使用IDを紐付テーブルから取得して引上命令装置に送信する消費使用ID送信部と,を有するホワイトカードID管理装置と,からなるホワイトカード使用限度額引き上げシステム。」エ 本件発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである(以下,それぞれを,符号に従い「構成要件A」などという。なお,構成要件B1-1~B2,構成要件C1-1~C2,構成要件D1-1~D2をそれぞれ併せて「構成要件B」などという場合がある。)。A 使用限度額をホワイトカードに紐づけられた入金額に応じて引き上げることが可能で,受金にのみ利用可能な受金IDと,消費使用に利用可能な消費使用IDとの二種類のIDがあらかじめ紐付けられているホワイトカードに対する入金システムであって,B1-1 ホワイトカードに対する入金に際して,入金すべきホワイトカードの受金IDを取得する受金ID取得部と,B1-2 そのホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報である入金受付情報を取得する入金受付情報取得部とB1-3 取得した受金IDと,入金受付情報とを関連付けて出力する出力部と,B2 を有するホワイトカード使用限度額引上指示装置と,C1-1 受金IDと関連付けられた入金受付情報をホワイトカード使用限度額引上指示装置から受信する受信部と,C1-2 受信した入金受付情報に関連付けられたホワイトカード受金I

5 Dと紐付けられている消費使用IDをホワイトカードID管理装置から取得する消費使用ID取得部と,C1-3 取得した消費使用IDと関連付けた使用限度額引上額を含む引上命令を送信する引上命令送信部と,C2 を有する引上命令装置と,D1-1 消費使用IDと受金IDとを紐付けた紐付テーブルを保持する紐付テーブル保持部と,D1-2 引上命令装置から受金IDを受信する受金ID受信部と,D1-3 受信した受金IDに紐付けられている消費使用IDを紐付テーブルから取得して引上命令装置に送信する消費使用ID送信部と,D2 を有するホワイトカードID管理装置と,E からなるホワイトカード使用限度額引き上げシステム。

(3) 被告サービスの概要等ア 被告サービスについて被告サービスは,訴外LINE株式会社が提供する無料通話・無料メールアプリである「LINE」を通じて,被告サービスのユーザ間の送金や,提携サービス・店舗での決済を行うことができる,モバイル送金・決済サービスである。被告サービスは,LINEのアカウントを有するユーザが,LINE Payアカウントを登録して,利用することができる。LINE Payアカウントには,LINE CashアカウントとLI

5 NE Moneyアカウントの2種類がある。ユーザが最初に作成するのがLINE Cashアカウントであり,これにより,電子マネーの購入,電子マネーを用いた店舗での決済等が可能になるほか,他のユーザから電子マネーを譲り受けること(受金)が可能となる。LINE Cashアカウントを保有するユーザは,本人確認(銀行口座の登録)をすることで,LINE Moneyアカウントを作成することができ,これを作成すると,更に電子マネーの譲渡(送金)等もすることができるようになる。なお,同一ユーザがLINE CashアカウントとLINE Moneyアカウントを併有することはできない。LINE Payカードは,被告サービスのために使用されるプリペイドカードであり,ユーザは,同カードに刻印された番号を提携サービス・店舗に提供することで,LINE Cashアカウント又はLINE Moneyアカウントに紐付けられた電子マネーの入金額の範囲で,物品の購入等の決済をすることができる。イ 被告サービスの機能及びシステム等(ア) 送金機能別紙物件目録記載1の「LINE Payアカウントを有するユーザが携帯端末等を使用して他のユーザのLINE Payアカウントに電子

5 マネーを送金する機能」(以下「本件送金機能」という。)の概要は,別紙2-1のとおりである(ただし,画面は現在のものと異なる場合がある。(イ)及び(ウ)につき同じ。)。本件送金機能を実現する被告サービスのシステム(以下「本件送金システム」という。)は,被告コンピュータシステムに加え,被告以外の第三者が管理する送金者のスマートフォン及びPOSレジ等を用いたシステムである。本件送金システムにおいては,送金すべき金額の電子マネーが送金者のアカウント内にあればよく,送金指示の際に実際に入金のための支払があったことは要しないため,実際に入金のための支払があったことを示す情報である本件発明の「入金受付情報」(構成要件B1-2,B1-3,C1-1,C1-2)の構成を有しない。(甲4)(イ) 入金機能別紙物件目録記載2の「訴外株式会社ファミリーマートの運営するコンビニエンスストアにおいてユーザのLINE Payアカウントに電子マネーを入金する機能」(以下「本件入金機能」という。)の概要は,別紙2-2のとおりである。本件入金機能を実現する被告サービスのシステム(以下「本件入金システム」という。)は,被告コンピュータシステムに加え,被告以外の第三者が管理する送金者のスマートフォン及びPOSレジ等を用いたシステムである。(甲5)(ウ) 振替入金機能別紙物件目録記載3の「ユーザが「LINE Pay」サービスにおいて登録した銀行口座から口座振替の方法によりLINE Moneyアカウントに電子マネーを入金する機能」(以下「本件振替入金機能」という。)の概要は,別紙2-3のとおりである。

5 本件振替入金機能を実現する被告サービスのシステム(以下「本件振替入金システム」といい,本件送金システム及び本件入金システムと併せて「本件各システム」という。)は,被告コンピュータシステムに加え,被告以外の第三者が管理する送金者のスマートフォン及び訴外株式会社日本カードネットワーク(以下「日本カードネットワーク」という。)の「リアルタイム口座振替サービス」を用いたシステムである。(甲10)

(4) 先行文献本件特許の出願日である平成21年9月16日より前に,以下の文献が存在した。ア 発明の名称を「クレジットカード管理システム」とする公開特許公報(特開2006-59193号,平成18年3月2日公開。乙8。以下「乙8公報」といい,同公報に記載された発明を「乙8発明」という。)。なお,乙8公報は,本件特許公報において,従来技術として挙示されている。イ 発明の名称を「クレジットカード利用可否判定システムおよび方法,クレジットカード処理システムおよび方法…」とする公開特許公報(2004-102787号,平成16年4月2日公開。乙9。以下「乙9公報」といい,同公報に記載された発明を「乙9発明」という。)ウ 発明の名称を「携帯電話を利用した金融取引サービス方法および金融取引サービスシステム」とする公開特許公報(2007-317173号,平成19年12月6日公開。乙10。以下「乙10公報」という。)エ 発明の名称を「口座管理システム及び口座管理方法」とする公開特許公報(特開2009-86946号,平成21年4月23日公開。乙12。以下「乙12公報」という。)オ 発明の名称を「電子商取引システム,電子商取引方法」とする公開特許公報(特開2007-42080号,平成19年2月15日公開。乙13。以下「乙13公報」という。)

5 カ 発明の名称を「電子商取引システム」とする公開特許公報(特開2006-285824号,平成18年10月19日公開。乙14。以下「乙14公報」という。)キ 発明の名称を「電子決済サービス及び決済サービス方法」とする公開特許公報(特開2002-279323号,平成14年9月27日公開。乙15。以下「乙15公報」という。)ク 発明の名称を「口座振込管理方法及び口座振込管理プログラム」とする公開特許公報(特開2004-280179号,平成16年10月7日公開。乙16。以下「乙16公報」という。)ケ 発明の名称を「電子マネーシステム」とする公開特許公報(特開2007-41731号,平成19年2月15日公開。乙17。以下「乙17公報」といい,同公報に記載された発明を「乙17発明」という。)コ 「安心・簡単・お得 おサイフケータイをはじめよう!」と題する文献(監修:神尾寿,著者:房野麻子,発行所:株式会社メディア・テック出版,平成18年5月17日第1刷発行。乙18。以下「乙18文献」といい,これに記載された入金システムを「乙18入金システム」,これに記載された送金システムを「乙18送金システム」 乙18入金システムに係る発明を, 「乙18入金発明」,乙18送金システムに係る発明を「乙18送金発明」とそれぞれいう。)サ 「ネットバンキング 完璧利用法」と題する文献(著者:臼井秀利,発行所:株式会社心交社,平成15年10月20日第1刷発行。乙20。以下「乙20文献」といい,同公報に記載された発明を「乙20発明」という。)3 争点原告は,本件発明と本件各システムの各構成の対比につき,別紙3-1~3-3のとおり主張して,本件送金システムについては,構成要件B1-2等の「入金受付情報」という構成を充足しないが,均等侵害が成立し,本件入金システム

5 については主位的に文言侵害,予備的に均等侵害が,本件振替入金システムについては主位的に文言侵害,予備的に均等侵害がそれぞれ成立すると主張するところ,本件における主要な争点は,以下のとおりである。

(1) 本件各システムが本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)ア 本件各システムが「使用限度額」,「ホワイトカード」(構成要件A,B1-1,B1-2,B2,C1-1,C1-2,D-2,E)に係る構成を有するか(争点1-1)イ 本件各システムが「受金IDと…消費使用IDとの二種類のIDがあらかじめ紐付けられているホワイトカード」 「受金ID」, 及び「消費使用ID」(構成要件A,B1-1,B1-3,C1-1,C1-2,C1-3,D1-1,D1-2,D1-3)に係る構成を有するか(争点1-2)ウ 本件各システムが「ホワイトカードに対する入金システム」(構成要件A)に係る構成を有するか(争点1-3)エ 本件振替入金システムが「受金ID取得部」(構成要件B1-1)に係る構成を有するか(争点1-4)オ 本件振替入金システムが「ホワイトカード使用限度額引上げ指示装置」(構成要件B2)に係る構成を有するか(争点1-5)カ 本件送金システムに係る均等侵害の成否(争点1-6)キ 本件振替入金システムに係る均等侵害の成否(争点1-7)

(2) 被告が本件発明を実施しているか(争点2)ア 被告が本件送金システム及び本件入金システム(以下,併せて「本件送金システム等」という。)においてホワイトカード使用限度額引上指示装置に係る構成を実施しているか(争点2-1)イ 被告が本件発明を日本国内で実施しているか(争点2-2)

(3) 本件発明が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争点3)

5 ア 無効理由1(乙9発明に基づく進歩性欠如1)(争点3-1)イ 無効理由2(乙9発明に基づく進歩性欠如2)(争点3-2)ウ 無効理由3(乙17発明に基づく新規性欠如)(争点3-3)エ 無効理由4(乙18入金発明に基づく新規性欠如)(争点3-4)オ 無効理由5(乙18送金発明に基づく進歩性欠如)(争点3-5)カ 無効理由6(乙20発明に基づく新規性欠如)(争点3-6)キ 無効理由7(サポート要件違反)(争点3-7)ク 無効理由8(明確性要件違反)(争点3-8)

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点1-1(本件各システムが「使用限度額」,「ホワイトカード」(構成要

件A等)に係る構成を有するか)について

(原告の主張)

本件発明における「使用限度額」とは,ホワイトカードを店頭で提示するなどして,買い物に使用できる限度額であり,「ホワイトカード」は,「商品購入などに際して決済のために使用されるカード」,「買い物などの支払に利用することができるカード」を意味しており,クレジットカードに限定されない。本件各システムでは,受金者のLINE Payカードに対応したLINE Payアカウントへの入金額に応じて,物品の決済等を行う際の限度額を引き上げることができ,LINE Payカードは,本件各システムを含む被告サービスによって管理されるカードであるから,本件各システムは,「使用限度額」及び「ホワイトカード」に係る構成を有する。

(1) 本件発明の課題,作用効果等について

本件特許の明細書及び図面(以下「本件明細書等」といい,単に段落番号及び図の符号が記載されている場合は本件明細書等の対応箇所をいうものとする。)には,「使用限度額に関しては契約時にある程度固定されるため,限度額の引上げなどの変更がなかなかできない,あるいは煩雑な手続きが必要とな

5 る」という従来技術の課題(段落【0003】)は,乙8公報記載の発明によ

って解決済みであるが(段落【0003】,【0004】),乙8公報記載の発明によっても,使用限度額の変更はあらかじめ定められた使用限度額内での利用実績に応じて算出変更されるため,他者からの送金を受金することなどでユーザの所持金が当該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えたとしても,所定の手続を経なければそれが使用限度額に反映されないという課題のあることが記載されている(段落【0005】)。本件発明は,上記の課題,すなわち,「他者からの送金の受金等によるユーザの所持金の増加を速やかに使用限度額に反映させること」という課題を解決することを目的とするものであり,他者からの送金の受金等による所持金の増加を速やかに使用限度額に反映させることができるようにするものであって,「使用限度額」そのものの問題ではなく,使用限度額の変更方法に関する問題を課題とするものである。そして,本件発明は,段落【0006】に記載されているように,上記課題を解決するために,「当該カードに対する入金を適時受付可能に管理する機能」を備えるものであり,これにより「他者からの送金の受金等による所持金の増加を速やかに使用限度額に反映させること」ができる。また,本件発明では,カードへの入金時に入金先を指定するID(携帯電話番号等)と,実際にカードにて支払をする際に利用する消費使用IDとが別であるため,送金者などに消費使用IDを知らせなくとも受金を行うことができ,安全に受金と消費を行う構成を採用することが可能となる(段落【0001】,【0006】,【0027】)。

(2) 「使用限度額」について

ア 本件明細書等の段落【0001】に「本発明は,商品購入などに際して決済のために使用されるカードに関して,その使用限度額を適宜変更可能とし,さらにその変更を安全に行うための技術に関する。」とあることから,「使

5 用限度額」とは,「商品購入などに際して決済のために使用されるカード」

の「使用限度額」を意味する。そして,本件明細書等に「使用限度額」に関する定義は特に記載されていないから,当該文言は,その有する普通の意味を持つものとして解釈される(特許法施行規則様式29備考8(乙23)参照)。したがって,「使用限度額」は,カードを「使用」するに当たっての「限度額」のことを意味する。イ 被告は,本件明細書等の段落【0002】等に基づき,「使用限度額」は「クレジットカードにおける使用限度額」を意味し,クレジットカードにおいて契約時に設定される所定期間内で使用可能な金額であって,ある程度固定されるものであると主張する。しかし,同段落には,クレジットカードでは,使用限度額がユーザの支払能力などに応じて所定期間内で使用可能な金額として設定されることが記載されているにすぎない。同段落の「使用可能な金額(使用限度額)」は,カードを「使用」するに当たっての「限度額」を意味すると解すべきである。そもそも,クレジットカード決済は,信用供与に基づく利用限度額の範囲内での後払い決済であるから,電子マネー等のように金銭価値の購入時点で代金の入金があるわけではない。本件発明は,ホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報である入金受付情報に従って使用限度額を引き上げるもので,従来技術にとらわれず,利用可能な金額が増えたことを利用限度額にリアルタイムに反映する新しいカード使用限度額引き上げシステムを提供するものであって,クレジットカードの改良発明でもクレジット決済を前提とするものでもない。このことは,本件明細書等の段落【0001】,【0016】,【0036】にクレジットカードに限定されない旨の記載があることからも明らかである。また,段落【0002】~【0005】は「クレジットカード」という語

5 を用いて背景技術等の説明をしているのに対し,段落【0006】以降はわ

ざわざ「ホワイトカード」という語を用いて説明しているが,これは,本件発明の発明者が,クレジットカードとは全く異なるカードに関する発明を意識していたからにほかならない。さらに,本件明細書等の実施例において,クレジットカードを想定した記載があるのは段落【0026】のみであるが,同段落は,本件発明の作用効果を説明するために,出願当時に普及していた周知技術であるクレジットカードを実施例として取り上げたものにすぎない。また,同段落では,「カードを発行する信販会社などの装置」に向けて使用限度額引上命令が出力される構成が記載されているところ,「信販会社」というのはクレジットカードを想定したものであるが,ここでは「信販会社など」として「信販会社」が例示であることが明示されているから,信販会社以外の会社以外の会社がホワイトカードを発行する場合も想定されている。実際,段落【0028】には,「上記説明における各装置を管理する主体は一例であって,それ以外の主体によって管理されても良い」と明示的に注記されているから,ホワイトカードの発行会社には,例えばプリペイドカードの発行・管理会社なども該当し得る。このように,本件発明の使用限度額は,クレジットカードにおける使用限度額に限定されない。ウ 被告は,電子マネーやデビット取引等では本件発明の課題に直面せず,本件発明の作用効果を奏し得ないから,LINE Payアカウントのような電子マネーのアカウント残高やデビット取引等の口座残高は「使用限度額」に含まれないと主張する。しかし,本件発明の課題は,前記のとおり,「ユーザの所持金の増加を速やかに使用限度額に反映させる」というものであるところ,これを本件送金システムにつきみると,他者から受け取った金額を電子マネーのプリペイド

5 カードにチャージするためには,最初に送金者が受金者に手渡し又は銀行振

込等で現金を渡し,次に受金者が当該現金を電子マネーとしてチャージすることになるが,そのような方法は煩雑であり,リアルタイムで使用限度額を増額することもできない。本件入金システムおよび本件振替入金システムにつきみると,JCBやVISA等の国際的なクレジットカード会社のネットワークを利用しているプリペイドカード(LINE PayカードはJCBのネットワークを利用している(甲13)。)は,キャッシュカードと規格が異なるため,銀行ATMで当該ネットワークを利用したカードを用いて電子マネーをチャージすることができない場合が多く(甲14の1),同様の問題はコンビニエンスストアのPOSレジにも存在している。このように,電子マネーを用いたプリペイドカードにも「ユーザの所持金の増加を速やかに使用限度額に反映させる」という課題が存在する。また,デビット取引の使用限度額は銀行口座残高であり,これを増加させるためには銀行での振込などの手続を経る必要があり,入金処理が行われるまで一定の時間が必要となる。それゆえ,デビット取引においても本件発明の課題は存在する。デビット取引ではクレジットカード取引のようにカード会社等が立替払いをすることはなく,情報処理センター等を経由して銀行口座から即時に決済されるため,クレジットカード取引と異なり与信の制限枠がなく(甲7の1) デビット取引における使用限度額はクレジットカードの取引限度額, (貸出限度額)とは性格が異なるが,カードを「使用」するに当たっての「限度額」であることに変わりがない。そのため,本件拒絶査定においても,「キャッシュカードを用いるデビット取引においては銀行口座の残高が利用限度額」と記載されているように,本件特許の出願経過においては,デビット取引における利用限度額が本件発明の「使用限度額」に該当することが前提とされていた(甲6,乙2・4,5,9,10頁)。

5 以上のとおり,電子マネーやデビット取引等においても本件発明の課題は

妥当し,本件発明の構成を採用することにより当該課題を解決することができる。エ 被告は,送金者が受金者に現金を手渡し,それを電子マネーとしてチャージすることまで段落【0005】の「所定の手続き」に含まれると考えることはできないとも主張するが,上記手順は原告が例示として示したものにすぎない。実際の手続方法は電子マネーごとに異なるはずであるが,他者から受金した際に,受金者がこれを電子マネーとして利用するために何らかの「所定の手続き」が必要となることは否定し得ない。オ 被告は,本件発明は「使用限度額」が減少する(引き下げ方向に変動する)ことを想定していないが,電子マネー等のアカウント残高は「引下げ」方向にも変動(減少)するものであるから,本件発明の「使用限度額に電子マネー等のアカウント残高が含まれると解することはできないと主張する。しかし,特許発明の構成要件を充足するのであれば,付加部分があっても当該発明の技術的範囲に属することになるのであり,本件各システムが使用限度額を引き上げる構成を備えている以上,仮に使用限度額を引き下げる機能を有していても,本件各システムは本件発明の技術的範囲に属する。本件発明において使用限度額が減少することが想定されているか否かは,侵害の成否とは無関係である。また,本件発明における使用限度額は,使用により消費されるため,入出金に伴い都度増減するから,この点からも被告の上記主張は失当である。カ 被告は,本件の出願経過において,①原告が口座の「残高」に応じて利用限度額が決まるデビット取引とは異なり,本件発明における使用限度額は「入金を受け付けた旨の情報」に応じて決まる旨を説明して特許査定を受けているから,本件発明の「使用限度額」は,都度変動(増減)する銀行口座等の「残高」と異なり,ある程度固定されているものを指す,②原告がデビ

5 ット取引では送金者がイニシアチブを取って受金者のカード利用限度額を

引き上げることができないことを理由にデビット取引と本件発明が相違すると説明しているから,デビット取引における残高を本件発明の対象から除外していると主張する。しかし,上記①については,デビット取引では,使用限度額であるカード発行銀行の口座残高を増額するためには,現金が当該銀行口座に着金している必要があるが,当該着金のためには送金処理や受金処理等が必要であり,引上命令が発せられても直ちに使用限度額が増加しない可能性があるのに対し,本件発明では,そのような着金が不要であり,引上命令により直ちに使用限度額が増加する点を相違点として指摘したものであり,使用限度額が都度変動(増減)するか否か,固定されているか否かとは無関係である。本件発明は,入金受付情報に基づいて使用限度額を引き上げるものであるから,そのような構成を有するものである限り,使用限度額が都度変動するものであろうと,固定されたものであろうと,本件発明の技術的範囲に属することになる。上記②についても,原告は,同様の趣旨を述べたにすぎず,デビット取引における「残高」を本件発明の対象から除外する趣旨ではない。

(3) 「ホワイトカード」について

ア 本件明細書等の段落【0001】の上記記載に加え,「買い物などの支払に利用することができるカード」(段落【0016】)との記載,「「ホワイトカード」とは,本システムによって管理されるカードをいい,もちろんその名称はホワイトカードに限定されない」(段落【0036】)との記載によると,「ホワイトカード」は,「商品購入などに際して決済のために使用されるカード」,「買い物などの支払に利用することができるカード」を意味する。「ホワイトカード」がクレジットカードと同義なのであれば,特許請求の範囲においても「クレジットカード」と記載すれば足りるのに,あ

5 えて「ホワイトカード」という別の語を用いていることに加え,上記各段落

に記載されたカードがクレジットカードより広い概念のものであることからしても,「ホワイトカード」はクレジットカードに限定されないと解すべきである。イ 被告は,「ホワイトカード」という用語は一般的なクレジットカードを意味するものとして用いられていると主張するが,「ホワイトカード」の意義が本件明細書等の前記各段落に記載されている以上,これと異なる文言解釈をする余地はない。また,印刷前のテレホンカード等にも「ホワイトカード」という用語が使用される(甲16)など,「ホワイトカード」は,カード業界において様々に用いられる用語であり,一義的にクレジットカードを意味するものではない。被告が指摘する書証(乙6,7)においては,ゴールドカード等の上位グレードに対する一般グレードを意味する用語として「ホワイトカード」という用語が用いられているが,本件発明における「ホワイトカード」は,上位グレードのカードとの対比で使用されているわけではないから,上記書証を根拠に「ホワイトカード」の意義を解釈することはできない。

(4) 本件各システムが「使用限度額」及び「ホワイトカード」の構成を有するこ

とア 本件各システムの充足性本件送金システム及び本件入金システムでは,受金者のLINE Payカードに対応したLINE Cashアカウントへの入金額に応じて,本件振替入金システムでは,ユーザのLINE Payカードに対応したLINE Moneyアカウントへの入金額に応じて,いずれも物品の決済等を行う際の限度額を引き上げることができるが,この限度額が「使用限度額」に当たる。また,LINE Payカードは,本件各システムを含む被告サービスに

5 よって管理されるカードであるから,「ホワイトカード」に該当する。

イ 被告は,「使用限度額」は「引上命令装置」が「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」から「入金受付情報」を受信することで「引上命令を送信する」ことによって引き上げられるものでなければならないが,本件各システムはこうした構成を有しないとも主張する。しかし,本件送金システムでは,被告サービスのユーザ間で電子マネーが譲渡されるだけで直ちに譲り受けたユーザの使用限度額が増加され,現実の着金は不要である。本件入金システムでは,ユーザがコンビニエンスストアで現金を支払った段階では,当該現金は決済代行業者により代理受領されただけで,被告に着金していないが,当該ユーザのLINE Payアカウントの使用限度額は支払金額分だけ直ちに増額される。本件振替入金システムでは,下図のとおり,ユーザの振替入金指示により,当該ユーザの銀行口座から,銀行別段口座に金額が振替入金されるが,この段階では被告の銀行口座には着金していない。銀行別段預金から実際に被告の銀行口座に着金するのは翌営業日であるが(甲12・3頁),銀行別段口座に金額が振替入金される段階で,当該ユーザのLINE Payアカウントの使用限度額は,直ちに増額される。

(1)銀行口座の登録

(2)銀行口座・入金額の送信

LINE Pay

(6)LINE Moneyアカウント

の残高増加ユーザ

(3)銀行口座・入金額

の送信

(5)入金受付情報の送信

A銀行ユーザの口座

(4)振替入金

(7)指定入金額の入金

銀行別段口座 LINE Pay(株)の口座(※) 図中の(1)~(7)は、本文中の5(1)~(7)に対応する。このように,本件各システムにおいては,現実の着金よりも前に,引上命令により,直ちに各アカウント口座の電子マネー残高が増加するのであるから,本件各システムは,「使用限度額」に係る構成を有する。5

(被告の主張)

本件発明における「使用限度額」は,カードの契約時に設定される,所定期間内で使用可能な金額であって,ある程度固定されるものであり,少なくとも,都度変動(増減)して固定されない電子マネーやデビット取引等の口座残高はこれに含まれない。また,本件発明における「ホワイトカード」は,かかる「使用限度額」が設定されたカードであり,かかるカードとして想定されているものはクレジットカードである。被告サービスは電子マネーに関するものであり,LINE Payカードはクレジットカードではないから,本件各システムは,「使用限度額」及び「ホワイトカード」に係る構成を有しない。

(1) 本件発明の課題,作用効果等について

ア 本件明細書等によれば,本件発明の課題は,①「従来のクレジットカードにおいては,その使用限度額に関しては契約時にある程度固定されるため,限度額の引上げなどの変更がなかなかできない,あるいは煩雑な手続きが必要となる」(段落【0003】),②「他者からの送金を受金することなどでユーザの所持金が当該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えたとしても,カード会社に逐一連絡などして所定の手続きを経なければそれが使用限度額に反映されることは無い。そのため,その増加分を反映させたク

5 レジットカードの利用をすることができない」(段落【0005】)という

ものである。段落【0003】の「ある程度固定される」とは,発明の課題に関する他の記載と併せて読めば,「使用限度額」を引き上げるためには煩雑ないし所定の手続を必要とすることを意味すると理解できる。それゆえ,本件発明は,ユーザの所持金が「使用限度額」より多くても,「使用限度額」までしかカードを使用することができず,「使用限度額」はカード会社に逐一連絡する等の所定の手続(煩雑な手続)を経なければ引き上げられないことを課題とするものであるといえる。この課題は,上記各段落の記載に照らせば,ユーザの所持金が増えた後,特許請求の範囲の記載に即していえば「入金を受け付けた」後における課題である。本件発明は,かかる課題を解決し,他者からの送金などによってリアルタイムに(煩雑な所定の手続を要することなく)カードの「使用限度額」を引き上げるという作用効果を奏するものである(段落【0016】)。すなわち,クレジットカードは,信販会社がカードの利用者に信用を供与するものであるところ,当業者であれば,本件発明の課題及び作用効果は,「ユーザの所持金が当該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えた」こと(段落【0005】)や「他者から送金などを受金することでユーザの手元にある利用可能な金額が増えたこと」によって利用者の信用力が増加した場合に,そのことを,信販会社が供与する信用の限度額である「ホワイトカードの使用限度額」にリアルタイムに(煩雑な所定の手続を要することなく)反映させるものであると理解し得る。そうすると,本件発明は,ユーザの所持金が「使用限度額」より多くても,「使用限度額」までしかカードを使用することができず,「使用限度額」はカード会社に逐一連絡する等の所定の手続(煩雑な手続)を経なければ引き上げられないという課題を解決するため,「他者からの送金などを受金する

5 ことで」ユーザの所持金が増加した場合には,「使用限度額を引き上げる」

(段落【0006】)ことを可能にした点に意義がある。つまり,本件発明は,「使用限度額」が「設定」された従来のクレジットが有する特徴,すなわち,カードの発行会社(信販会社)がユーザに信用を供与し,ユーザの所持金が「使用限度額」より少なくても,「設定された」「使用限度額」の中であれば自由に買い物を行うことができる(段落【0002】)という利点を維持したまま,ユーザの所持金が増加した場合に,従来はカード会社に逐一連絡する等の所定の手続(煩雑な手続)を経なければ「使用限度額」に増加分が反映されなかったところ,本件特許請求の範囲に規定された構成を採用することで,「ホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報」に基づいて,所定の手続(煩雑な手続)を経ることなく,「使用限度額」を「引き上げること」を可能とする発明である。これに対し,電子マネーを用いたプリペイドカード取引は,カードの利用者がカードの発行会社に前払い等をするものであって,クレジットカードとは逆に利用者が発行会社に信用を供与するものであるから,利用者の信用力は全く問題にならない。本件発明の課題,課題解決手段及び作用効果は,クレジットカードに特有のものであって,都度変動(増減)する口座残高の金額の範囲内で買い物などの支払に利用できる電子マネーを用いたプリペイドカード取引とは無関係のものである。それゆえ,電子マネーやデビット取引等においては,上記の課題に直面せず,その作用効果も奏しない。イ 原告は,段落【0003】記載の前記ア①の課題が従来技術(乙8公報)によって解決済みであると主張するが,段落【0005】に記載されているとおり,乙8公報記載の従来技術は,「あらかじめ定められた使用限度額内での利用実績に応じて」使用限度額を変更するという限りで課題を解決するものであって,「他者からの送金を受金することなどでユーザの所持金が当

5 該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えた」というようなケースに

おいて,クレジットカードの使用限度額の「引上げなどの変更がなかなかできない,あるいは煩雑な手続きが必要となる」という課題は解決されない。ウ 原告は,本件発明の課題が「ユーザの所持金の増加を速やかに使用限度額に反映させる」点にあるなどと主張するが,段落【0005】には,「カード会社に逐一連絡などして所定の手続きを経なければ」使用限度額に反映されないとある以上,上記「所定の手続き」に関する点を捨象して,恣意的に課題を上位概念化することはできない。「所定の手続き」は,使用限度額を引き上げるためにユーザが「カード会社に逐一連絡など」して行うものであり,「煩雑な手続き」(段落【0003】)を意味するから,例えば送金者が受金者に現金を手渡し,それを電子マネーとしてチャージするということまで「所定の手続き」に含まれると考えることはできない。電子マネーを他者から受金した際に,電子マネーのプリペイドカードを使用できる額を増加させるためにユーザに課される手続は存在せず,自動的に電子マネーのアカウント(口座)残高が増加するだけであり,同様に,銀行振込等により受金した際に,デビットカードを使用できる額を増加させるためにユーザに課される手続も存在せず,自動的に口座残高が増加するだけである。

(2) 「使用限度額」について

ア 本件明細書等の段落【0002】には,「使用限度額」が,クレジットカードにおいて契約時に設定される「所定期間内で使用可能な金額」であると明確に定義づけられており,本件明細書等にこれに反する記載は存在しない。そして,本件発明の課題及びその解決手段に係る段落【0002】,【0003】,【0005】,【0006】の記載や,作用効果に関する段落【0016】,【0026】,【0027】,【0088】の記載に鑑みれば,本件発明における「使用限度額」は,従来において,カード会社への連絡等

5 の煩雑ないし所定の手続を要するという意味で「ある程度固定されたもの」

であり,本件発明を採用することで,かかる手続が省略できるもの(すなわち,本件発明を実施することで引き上げることが可能となるもの)である必要がある。したがって,本件発明における「使用限度額」とは,従来のクレジットカードにおける「利用限度額」(乙3)と同義であり,クレジットカードの取引限度額(貸出限度枠)であって,カード会員に対して認められる信用供与の上限である。すなわち,クレジットカードにおいて契約時に設定される,所定期間内で使用可能な金額であって,ある程度固定されるものであり,少なくとも,都度変動(増減)して固定されない電子マネーやデビット取引等の口座残高はこれに含まれない。イ 本件明細書等において,段落【0023】,【0025】~【0027】,【図1】に記載された実施例では,コンビニエンスストアのレジで1万円が支払われると,店頭端末で,「実際に入金がなされた旨を示す情報である入金受付情報」が生成され,その情報に基づき,「例えばカードを発行する信販会社などの装置に対してカードの使用限度額を引上げる命令」が出力されることで,当該「カードについて「1万円」の入金があったことが信販会社などにて確認され,当該カードをその1万円分増加した限度額内で使用することができる」こと,すなわち,当該「カードの使用限度額を引上げることができる」ことが記載されている。ここで,「使用限度額」を引き上げるのは,カードに紐づく口座残高を管理する金融機関等ではなく,「カードを発行する信販会社など」である。このように,本件明細書等においては,「信販会社」など,クレジットカードを想定した記載が存在する一方で,クレジットカードに紐づく引き落とし口座の残高やその口座残高を管理する金融機関については一切記載がないから,電子マネーやデビット取引等,カードを使用できる額が,カードの

5 ユーザの所持金の額(カードに紐づく口座残高)と常に一致する構成は,本

件発明の技術的範囲に含まれない。ウ 本件発明の構成要件の記載に鑑みれば,本件発明が想定しているのは,「入金受付情報」に基づく「使用限度額」の「引上げ」のみであって,出金による引下げ方向への変更は一切想定されていないから,本件発明における「使用限度額」は,一定の場合に引き上げられることのみを前提にした概念であると理解することができる。これに対し,電子マネーやデビット取引等の口座残高は,出金(引落し,引出し等)の都度,「引下げ」方向にも変動(減少)するものであるから,本件発明における「使用限度額」に電子マネー等の口座残高が含まれると解することはできない。エ 原告は,本件審判請求書(乙2)において,口座残高に応じて利用限度額が決まるデビット取引とは異なり,本件発明における使用限度額は「入金を受け付けた旨の情報」に応じて決まる旨を説明して特許査定を受けている。「使用限度額」が都度変動する口座残高を含むとすれば,かかる変動を考慮しなければならないが,本件発明では「使用限度額」が固定されたものとして設定されているからこそ,かかる変動を考慮することなく,「入金を受け付けた旨の情報」のみに基づいて一義的に使用限度額が決まることになる。それゆえ,出願経過を参酌すれば,本件発明の「使用限度額」は,都度変動(増減)する銀行口座等の「残高」とは異なり,ある程度固定されており,「入金を受け付けた旨の情報」によって引き上げられ,確定するものを指す。また,原告は,本件審判請求書において,銀行口座の残高が利用限度額となるため送金者がイニシアチブを取って受金者のカード利用限度額を引上げさせることができないデビット取引と対比して,本件発明においては,送金者がイニシアチブをとって受金者のカード利用限度額を引上げさせることが可能になると主張した上で,デビット取引と,「入金を受け付けた旨の

5 情報」に基づいて利用限度額が決まる本件発明とは相違する旨を明瞭に指摘

しているが,かかる原告の陳述は,デビット取引における残高を本件発明の対象から除外しているとしか理解することができないものである。オ 本件発明においては,送金者がコンビニエンスストアのレジで入金額を支払うなど,実際に送金者による入金処理がなされた時点で入金受付情報が送信され(段落【0023】等),それによって,当該入金が受金者の口座残高に反映される前であっても,引上命令が送信され,「使用限度額」を引き上げることができる(段落【0026】,【0027】等)。また,本件拒絶査定(甲6)において,特許庁審査官が銀行口座の残高によって「使用限度額」が決まると理解していたのに対し,原告は,本件審判請求書において,本件発明では銀行口座の残高に応じて「使用限度額」が決まるのではなく,入金受付情報によって「使用限度額」が決まる点が引用技術との相違点であると主張し,これにより特許査定を受けている。このように,本件発明の「使用限度額」は,「引上命令装置」が「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」から「入金受付情報」を受信することで「引上命令を送信する」ことによって,引き上げられるものでなければならない。これに対し,本件各システムが入金受付情報ないし送金指示受付情報を受信することで引上命令を送信し,それによりLINE Payカードを使用できる額が引き上げられていることの立証はない。●(省略)●したがって,仮に,「ホワイトカード」がクレジットカードに限定されず,「使用限度額」がクレジットカードに設定されるものに限定されないとしても,本件各システムは,本件発明の規定する「使用限度額」に係る構成を有しない。

(3) 「ホワイトカード」について

ア 構成要件B1-2には,「ホワイトカードの使用限度額」と明記されているところ,本件明細書等において,ホワイトカードの「使用限度額」がクレ

5 ジットカードに設定されるものとして明確に定義されていること(段落【0

002】)からすれば,本件発明における「ホワイトカード」がクレジットカードを意味することは自明である。また,本件特許出願前から,一般的に,「ホワイトカード」という用語は,一般的なクレジットカードを意味するものとして用いられていることからしても,本件発明における「ホワイトカード」は,クレジットカードを意味すると解するほかない。イ 本件明細書等に記載された実施例からも,本件発明がクレジットカードを想定したものであることが明らかである。すなわち,段落【0026】 「例のえばカードを発行する信販会社などの装置」は引上命令の送信先であるところ,引上命令の送信先は,段落【0048】では「ホワイトカードを発行し管理する会社のサーバ装置など」と記載されている。そして,これと同義である「ホワイトカードの管理会社のサーバ装置」に関しては,同装置に使用限度額を確認するためのリクエスト送信と確認レスポンスの返信に「通常のクレジットカードの使用限度額の確認システム」を転用できると記載されている(段落【0107】)。「通常のクレジットカードの使用限度額の確認システム」を保有するのは,クレジットカード発行会社(信販会社)であるから,「ホワイトカードの管理会社」(段落【0107】),「ホワイトカードを発行し管理する会社」(段落【0048】),「カードを発行する信販会社」(段落【0026】)は,いずれも,クレジットカード発行会社であることが前提とされていると理解できる。段落【0026】の「例えばカードを発行する信販会社などの装置に対してカードの使用限度額を引上げる命令を出力する」という記載において「信販会社など」とされているのは,信販会社の装置に対して直接「カードの使用限度額を引上げる命令を出力する」場合だけでなく,他の主体が管理する装置に対して同命令を出力し,当該他の主体の装置が信販会社の装置に当該情報を送信することや(段落【0024】 参照),信販会社が他社に使用限

5 度額の引上げを委託しており,当該委託先の会社の装置に対して上記命令が

出力されることもあり得るからに他ならない(なお,概念図である【図1】(d)において「信販会社など」と記載されているのも同じ理由である。 。)ウ また,本件発明の「使用限度額」を引き上げるという機能に鑑みれば,本件発明の「ホワイトカード」は「使用限度額」が設定されたものでなければならないが,本件各システムは「使用限度額」に係る構成を有しないから,「ホワイトカード」に係る構成も有しない。エ 原告は,本件明細書等の段落【0001】,【0016】,【0036】に「ホワイトカード」の意義が記載されており,「ホワイトカード」はクレジットカードに限定されないと主張する。しかし,段落【0001】の記載は,技術分野を端的に記載したものにすぎない上,本件発明の「使用限度額」を引き上げるという機能に鑑みれば,本件発明の「ホワイトカード」は「使用限度額」が設定されたものでなければならない。「使用限度額」については段落【0002】に明確に定義されており,段落【0001】における「使用限度額」もこれと同義に解すべきであるから,同段落の記載をもって,「ホワイトカード」がクレジットカードに限定されない根拠とすることはできない。段落【0016】についても,本件発明の課題がクレジットカードの利用に関するものであることからすれば,同段落は,本件発明の構成を採用して「使用限度額」を引き上げることによって,買い物などの支払に利用することができるクレジットカードをユーザに提供することができることを意味するものである。段落【0036】の記載も,「名称」が「ホワイトカードに限定されない」ということ以上のさしたる意味はない。オ 原告は,甲16を根拠として,「ホワイトカード」はカード業界において様々な意味で用いられる用語であると主張する。

5 しかし,甲16が開示するのはプリント方法の発明であって,「ホワイト

カード」という用語は,印刷前の無地のカードを意味するものとして使用されているところ,本件発明における「ホワイトカード」は印刷前の無地のカードとは無縁であるから,同号証は本件発明における「ホワイトカード」の意義を解釈する上で参酌するに値しない。また,同号証の「ホワイトカード」には,具体的にはテレホンカード等が含まれるが,テレホンカードは,それに対して入金されるものでも使用限度額があるものでもないから,その意味でも本件発明とは無関係である。

2 争点1-2(本件各システムが「受金IDと…消費使用IDとの二種類のID

があらかじめ紐付けられているホワイトカード」,「受金ID」及び「消費使用ID」(構成要件A等)に係る構成を有するか)について

(原告の主張)

本件発明において,「受金ID」とは受金にのみ利用可能なIDであり,「消費使用ID」とは消費使用に利用可能なIDであるところ,本件各システムにおけるLINE Payカードは,「受金IDと…消費使用IDとの二種類のIDがあらかじめ紐付けられているホワイトカード」に当たるから,本件各システムはかかる構成を有する。

(1) 「受金ID」の意義

ア 本件発明において,「受金ID」とは,受金にのみ利用可能なIDであり,「受金にのみ利用可能」とは,ホワイトカードとの関係において受金にのみ利用され,消費使用には利用されないという意味であって,ホワイトカードと関係のない場面において利用されるIDも含まれる(段落【0036】 。)ここで,受金に「のみ」とは,消費機能IDとしての機能を併有しないという意味である。イ 被告は,「受金ID」が,入金先であるホワイトカードを指定するIDであると主張するが,誤りである。本件発明では,消費使用IDとホワイトカ

5 ードが連携していることが前提とされているため,消費使用IDと受金ID

が「あらかじめ紐付けられ」れば,ホワイトカードと受金IDとの間に連携関係が発生する。構成要件B1-1の「入金すべきホワイトカードの受金ID」との記載は,このホワイトカードと受金IDとの連携関係を前提とするものである。この連携関係は,受金IDによって入金すべきホワイトカードがどのユーザのカードであるかをシステム側が特定できるということであって,受金IDそれ自体が「入金先であるホワイトカードを指定」するものでなければならないということではない。ウ 被告は,本件発明が利用者の信用力が増加した場合に当該増加を使用限度額にリアルタイムに反映させるものであるとした上で,①利用者の自己への送入金は信用力が増加しないとか,②受金IDは送金者にとって他者のホワイトカードを指定するIDでなければならず,送金者と受金者が同一の構成は,本件発明の技術的範囲から除外されているなどと主張する。しかし,上記①につき,本件発明は,「使用限度額の変更は,予め定められた使用限度額内での利用実績に応じて算出変更される」(段落【0005】)という従来技術の問題に着想を得たものであり,利用可能な金額が増えたことを利用限度額にリアルタイムに反映するものであって,利用者の信用力が増加した場合に技術的範囲を限定する根拠はない。上記②についても,例えば国際的なクレジット会社のネットワークを利用しているプリペイドカードについて,銀行ATMで当該ネットワークを利用したカードを用いて電子マネーをチャージすることはできない(甲14)など,送金者と受金者が同一の構成であっても,利用可能な金額が増えたことをカードの利用限度額にリアルタイムに反映できないという課題は存在しており,本件発明の構成を採用すれば,この課題を解決することができる。また,送金者がホワイトカード使用限度額引上指示装置に入力するのは受金IDであるから,本件発明では,送金者と受金者が同一の場合であっても,

5 受金IDと消費使用IDを別々のIDとして両者を関連付けて管理するこ

とで,安全に受金と消費を行うことができる(段落【0006】)。このように,送金者と受金者が同一の構成であっても本件発明の課題は存在し,その作用効果を奏するから,当該構成を本件発明の技術的範囲から除外する理由はない。段落【0028】は,本件発明の装置につき,物理的に様々な構成とすることができることを認めているから,当該構成の一つの態様として,送金者と受金者が同一の構成とすることも許容している。

(2) 「消費使用ID」の意義

本件発明において,「消費使用ID」とは,物品の決裁等の消費使用に利用可能なIDである(段落【0006】)。

(3) 「あらかじめ紐付けられている」の意義

ア 「あらかじめ」とは「まえもって」を意味するところ(甲8),本件発明は,他者からの送金などを受金することで使用限度額を引上げることができるよう,カードに対する入金を適時受付可能にするとともに,その際に受金にのみ利用可能な受金IDと,消費使用に利用可能な消費使用IDとを別々のIDとし,両者を関連付けて管理することで安全に受金と消費を行うことができるようにするものである(【0006】)。具体的には,本件発明のユーザがホワイトカードへの送金又は入金(以下「入金等」という。)をする際に,ユーザはホワイトカード使用限度額引上指示装置に受金ID及び入金額を入力し,入金額を支払うのみで,ホワイトカード使用限度額引上指示装置,引上命令装置及びホワイトカードID管理装置の作用により,受金IDと紐付けられた消費使用IDの問合せが行われ,当該消費使用IDで識別されるホワイトカードについて入金等が反映されるという仕組みであり(【0022】~【0026】参照),また,受金IDと消費使用IDが別であるため,入金等をする者などに消費使用IDを知らせなくとも受金を行うことができ,安全に受金と消費を行うことができる

5 (【0027】参照)。

このような本件発明の作用効果に照らせば,受金IDと消費使用IDの紐付きは,入金等の際に存在すれば足りるから,本件発明における「あらかじめ」とは,「入金等が行われる時点よりまえもって」という意味である。イ そして,本件発明において,あらかじめ紐付けられているのは,受金IDと消費使用IDとの間であって,ホワイトカードとの間ではない(構成要件A)。本件明細書等の段落【0023】,【0026】に記載されているように,ユーザβの携帯電話番号(受金ID)を入力してコンビニのレジにて金銭を支払うと,消費使用IDで識別されるホワイトカードの使用限度額が当該額分だけ増加するから,受金ID及び消費使用IDは,それぞれホワイトカードと対応関係にあるが,これは,消費使用IDとホワイトカードとの連携の問題であり,「あらかじめ」の紐づけが必要とされる受金ID及び消費使用IDとの間の問題ではない。

(4) 本件送金システムについて

ア 本件送金システムでは,送金者は受金者をLINEアカウントで特定する。LINEアカウントは,LINE Payカードとの関係においては,受金者を特定するために利用され,物品の決済等に利用されることはないから,「受金ID」に該当する。また,受金者は,送金額だけ増額したLINE Cashアカウント内の電子マネーを用いて物品の決済等を行うことができるから,同アカウントは「消費使用ID」に該当する。そして,LINE Payカードは前記のとおり「ホワイトカード」に該当する。送金者が送金の際に受金者のLINEアカウント(受金ID)を選択し,送金が完了すると,受金者のLINE Cashアカウント(消費使用ID)内の電子マネーの残高が増加し,当該アカウントに対応するLINE Payカードの使用限度額が増加するから,LINE Payカードに対応しているLINEアカウント(受金ID)とLINECashアカウント(消費

5 使用ID)は,あらかじめ紐付けられている。

したがって,本件送金システムは,「受金IDと…消費使用IDとの二種類のIDがあらかじめ紐付けられているホワイトカード」との構成を有する。イ 被告は,本件送金システムにおいて,LINEアカウントは取得しているもののLINE Cashアカウントを取得していないユーザに送金手続を開始することが可能であり,送金手続を開始した時点においいてLINEアカウント(受金ID)とLINE Cashアカウント(消費使用ID)が紐付いていない場合があり得ると主張する。しかし,LINE Payカードは,ユーザがLINE Cashアカウントを有することを前提として,初めて発行・アクティベートされるのであって,被告が主張する上記のようなユーザは,そもそもLINE Payカードは発行されないし,仮に発行されていてもアクティベートされていないから,「ホワイトカード」を有しておらず,本件発明の技術的範囲の対象外である。受金者がLINE Payカードを有している場合には,当該ユーザについては,送金手続を開始した時点で,LINEアカウント(受金ID)とLINE Cashアカウント(消費使用ID)は必ず紐付けられている。ウ 被告は,消費使用IDが①ホワイトカードの利用者がホワイトカードにて支払をする際等に利用する消費使用に利用可能なIDであって,②基本的にはホワイトカードの利用者及びシステムの一部管理者のみが知っている情報であるとした上で,LINE Payアカウント等はこれに該当しないと主張する。上記①に関する

(被告の主張)

は,要するに,LINE Payカードの利用者が同カードでの支払の際に利用するのは券面に印字されたカード番号であり,LINE Payアカウントではないから,①に当たらないというものである。しかし,ユーザによるカード利用の結果,LINE Payアカウントの

5 残高が減少する以上,当該アカウントが「ホワイトカードにて支払をする際

等に利用されている」のは明らかである。すなわち,本件発明では,消費使用IDの残高が増額すれば,ホワイトカードの使用限度額も増加するように,消費使用IDとホワイトカードとの間には連携関係が存在するが,その具体的な方法については何ら特定されていないから,例えば,ホワイトカードの券面に消費使用IDそのものを印字することで両者を連携させてもいいし,別の番号を振って,当該番号を介して両者を連携させてもいいのである。このように,消費使用IDとホワイトカードとの連携方法は様々なものがあり得るのであって,この点の

(被告の主張)

は,本件各システムでは,連携方法の一つの態様としてホワイトカードに消費使用IDと異なる番号を振っているというにすぎず,これをもって構成要件充足性が否定されるものではない。上記②については,本件発明では,受金IDに入金を行う者が消費使用IDを知っている場合も技術的範囲に含むから,この点の被告主張は前提に誤りがある。また,この点に関し,被告は,LINE Payアカウントは送金者に知られてLINE Payカードの消費に使用されることはないと主張するが,そのような悪用のおそれが無いのは,正に,ホワイトカードに別の番号(JCBカードの券面に印字されたカード番号)を振ることで,各アカウントの情報が秘匿されているからにほかならない。②に係る被告の主張を前提としても,LINE Payアカウントは②に該当する。エ 上記ウに係る被告主張によれば,LINE Payカード(JCBカード)券面に印字されたカード番号が消費使用IDに該当することになるが,その場合でも本件各システムは本件発明の技術的範囲に属する。すなわち,本件発明の構成要件には「ホワイトカード」という技術事項が含まれているので,ユーザがLINE Payカードを保有していることが,本件発明の文言侵害の成立には不可欠である。そして,LINE Payカード券面に印字されたカード番号が消費使用IDに該当するとの構成の下

5 では,当該カードを保有していれば,当該ユーザは必ず消費使用IDを保有

していることになる。本件各システムにおいては,受金IDに基づいて入金すれば,LINEPayアカウントの残高が増加するから,受金IDと上記アカウントは紐付いている。そして,●(省略)●当該アカウントと当該カード番号は紐付いて管理されている。したがって,LINE Payカードを保有するユーザにおいて,受金IDと当該カード番号はあらかじめ(遅くともユーザが受金IDへの送金手続を開始する時点において)紐付けられているといえる。

(5) 本件入金システムについて

本件入金システムでは,送金者が「予約番号(申込番号)」をFamiポートに入力し,当該装置から印刷されたバーコードをコンビニエンスストアの店員がPOSレジに読み込ませ,入金金額を送金者から受け取った上で所要の処理を行うと,受金者のLINE Cashアカウントに当該金額と同額が入金される。こうしたPOSレジ等での処理の結果,受金者が入金先として特定されるのは,送金者の入力した「予約番号(申込番号)」によって,受金者が一意に特定されるからであり,「予約番号(申込番号)」は,受金にのみ利用され,物品の決済等の場面では利用されないから,「予約番号(申込番号)」は「受金ID」に該当する。また,LINE Payカードの利用者は,送金者からの入金額だけ増額したLINE Cashアカウント内の電子マネーを用いて物品の決済を行うことができるから,LINE Cashアカウントは「消費使用ID」に該当する。LINE Payカードは前記のとおり「ホワイトカード」に該当するところ,受金者のアカウントへの入金が可能であるためには,「予約番号(申込番

5 号)」(受金ID)とLINE Cashアカウント(消費使用ID)があら

かじめ紐付けられ,前者から後者を特定することが可能となっている必要があるが,本件入金機能においては,「予約番号(申込番号)」(受金ID)は,受金者側のユーザが被告サービスに加入していなければ発行されず,被告サービスに加入した時点で当該ユーザには必ずLINE Cashアカウント(消費使用ID)が生成されているから,ユーザが「「予約番号(申込番号)」(受金ID)への送金手続を開始する時点において,既にLINE Cashアカウント(消費使用ID)は存在している。そして,「予約番号(申込番号)」を用いて入金すれば,LINE Cashアカウントの電子マネーの額が増額するから,両IDは,ユーザが受インターネットIDへの送金手続を開始する時点において紐付いている。したがって,本件入金システムは,「受金IDと…消費使用IDとの二種類のIDがあらかじめ紐付けられているホワイトカード」との構成を有する。

(6) 本件振替入金システムについて

ア 本件振替入金機能の利用に際して,ユーザがユーザ銀行口座を選択し,入金額を指定すると,ユーザのLINE Moneyアカウントに指定入金額分の電子マネーが入金される。これは,ユーザが選択したユーザ銀行口座の情報(銀行名,支店名及び口座番号等)によって入金先のLINE Moneyアカウントが特定されるからである。本件振替入金システムでは,ユーザ銀行口座の口座情報は受金にのみ利用され,物品の決済等の場面では利用されないから,当該情報は,「受金ID」に該当する。また,LINE Payカードの利用者は,指定金額分だけ増額したLINE Moneyアカウント内の電子マネーを用いて物品の決済等を行うことができるから,LINE Moneyアカウントは「消費使用ID」に該当する。LINE Payカードは前記のとおり「ホワイトカード」に該当すると

5 ころ,ユーザのアカウントへの入金が可能であるためには,ユーザ銀行口座

の情報(受金ID)とLINE Moneyアカウント(消費使用ID)があらかじめ紐付けられ,前者から後者を特定することが可能となっている必要があるが,本件振替入金機能を用いるためには,受金者側のユーザが被告サービスに加入していなければならない。そして,本件振替入金機能を用いる際には,当該ユーザには必ずLINEMoneyアカウント(消費使用ID)が生成されており,銀行から入金を受け付けた旨の情報が被告サーバに送信されると,当該情報に含まれるユーザの口座情報(受金ID)に基づいてLINE Moneyアカウント(消費使用ID)の電子マネーの額が増額するから,両IDは,ユーザが受金IDへの送金手続を開始する時点において紐付いている。したがって,本件振替入金システムは,「受金IDと…消費使用IDとの二種類のIDがあらかじめ紐付けられているホワイトカード」との構成を有する。イ 被告は,本件各システムにおいて受金者を特定するために用いているのはユーザ銀行口座の口座情報ではなく,LINE Moneyアカウントに係る情報であると主張するが,本件振替入金システムでは,銀行別段口座への振替入金が完了すると,入金を受け付けた旨の情報が,まずは,ユーザ銀行から日本カードネットワークに,次いで,日本カードネットワークから被告へ送信される。本件各システムでは,当該情報に基づいてどのユーザのLINE Moneyアカウントの電子マネー残高を増額させるかを決定するが,そのためには,増額させる対象であるアカウントに関するLINE Moneyアカウントに係る情報のみでは無理であり,入金受付情報とLINE Moneyアカウントを紐付けて,どのアカウントに幾らの電子マネーを増額するかを特定することが必要なはずである。この紐付け(受金者の特定)のための情報として,ユーザ銀行口座の口座情報を使用しなければ,ど

5 のユーザのアカウントについて増額するかを特定することはできないから,

本件振替入金システムにおいて,ユーザ銀行口座の口座情報を使わずにLINE Moneyアカウントに係る情報のみで受金者が特定されるとは考えられない。仮に,被告が主張するような態様でLINE Moneyアカウントの電子マネーが増額するのだとしても,本件振替入金システムでは送金者と受金者は同一であるから,ユーザ銀行口座の口座情報が送金者を特定するということは,当該口座情報は受金者を特定するものでもある。それゆえ,この場合でも,ユーザ銀行口座の口座情報は受金IDとして機能しており,受金IDに該当する。ウ 被告は,本件発明におけるユーザ銀行口座の口座情報は,LINE Moneyアカウントにおける受金だけでなく,LINE Moneyアカウントからの出金を行う際にも利用することができるから,「受金ID」に該当しないと主張する。しかし,前記のとおり,「受金にのみ利用可能」とは「消費使用IDとしての機能を併有しない」ということであり,本件振替入金システムにおけるユーザ銀行口座の口座情報は,消費使用IDとしての機能を併有していない。なお,ユーザが銀行口座に対する出金指示をしたことにより,LINEMoneyを現金化して出金できるとしても,当該手続において,ユーザ銀行口座の口座情報は,LINE Payカードを利用した物品購入等の際の消費使用IDとして使用されているわけではない。

(被告の主張)

本件各システムは,「受金IDと…消費使用IDとの二種類のIDがあらかじめ紐付けられているホワイトカード」の構成を有しない。

(1) 受金IDについて

ア 本件発明における「受金ID」は,①入金先であるホワイトカードを指定

5 するIDであって,②受金にのみ利用可能なIDである。

上記①につき,構成要件B1-1に「ホワイトカードに対する入金に際して,入金すべきホワイトカードの受金ID」とあることに加え,本件明細書等の段落【0022】,【0023】,【0027】,【0037】及び【図3】の記載からすれば,本件発明における受金IDは,ホワイトカードに対する入金に際し,入金先のホワイトカードを指定するIDでなければならない。さらに,本件発明は,前記のとおり,「ユーザの所持金が当該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えた」こと(段落【0005】)や「他者から送金などを受金することでユーザの手元にある利用可能な金額が増えたこと」によって利用者の信用力が増加した場合に,そのことを,信販会社が供与する信用の限度額である「ホワイトカードの使用限度額」にリアルタイムに(煩雑な所定の手続を要することなく)反映させるという作用効果を有する(段落【0016】)。これに対し,自己への送金・入金は,自己の口座から自己の他の口座に資金を移動させるだけで,ユーザの所持金が増えるものではなく,信用力を増加させるものでもない。このように,本件発明においては,送金者と受金者は異なることが前提となっており,「受金ID」は,送金者から見て,入金先である他者のホワイトカードを指定するIDでなければならない。上記②については,構成要件Aに「受金にのみ利用可能な受金ID」とあることに加え,本件明細書等の段落【0036】の記載からすれば,本件発明における受金IDは,受金にのみ利用可能なIDをいう。「受金ID」は,受金にのみ利用可能なIDであり,「受金にのみ利用可能」とは,「ホワイトカードとの関係において受金にのみ利用され消費使用には利用されない」という意味であり(段落【0036】),あるIDが,消費使用IDとして使用されている場合に限らず,「ホワイトカードとの関係において消費使用

5 に利用」されている場合には,「受金にのみ利用可能」には当たらない。

イ 本件振替入金システムにおいて実現されるのは,ユーザが登録した銀行口座から口座振替の方法により当該ユーザのLINE Moneyアカウントに入金することであるが,ここで,ユーザ銀行口座の口座情報とは,振替元(入金元)の情報にほかならず,受金者を特定するために用いられるのは,LINE Moneyアカウントに係る情報である。それゆえ,本件振替に入金システムにおけるユーザ銀行口座の口座情報は,入金先であるホワイトカードを指定するIDとして使用されていないから,上記①を満たさず,「受金ID」に該当しない。また,本件振替入金システムにおけるユーザ銀行口座の口座情報は,送金者自身に関する情報であるし,LINE Payカードに紐づいたLINEMoneyアカウントの電子マネーを現金化して出金する際に出金先として利用されるから,ユーザ銀行口座の口座情報は,LINE Payカードとの関係において,出金という消費使用に利用されている。したがって,ユーザ銀行口座の口座情報は,受金にのみ利用可能なIDではないから,上記②を満たさず,「受金ID」に当たらない。ウ 原告は,本件振替入金システムにつき,受金者の特定のための情報としてユーザ銀行口座の口座情報を使用しなければ,どのユーザのアカウントについて増額するかを特定することはできないはずであると主張する。しかし,●(省略)●のであるから,ユーザ銀行口座の口座情報は,送金者(振替元,入金元)の特定のための情報としては必要でも,受金者(増額させる対象であるアカウント)の特定のためには必要でない。

(2) 消費使用IDについて

ア 本件特許請求の範囲及び本件明細書等の段落【0002】 【0006】, ,【0025】~【0027】,【0039】,【0046】,【0047】,【0056】,【0057】及び【図4】の記載によれば,本件発明におけ

5 る「消費使用ID」とは,「秘密のカードID:0123」のように,①ホ

ワイトカードの利用者がホワイトカードにて支払をする際等に利用する消費使用に利用可能なIDであって,②送金者に知られるとホワイトカードの消費に使用されてしまうおそれがあることから,基本的にはホワイトカードの利用者及びシステムの一部管理者のみが知っている情報を意味しており,具体的には,クレジットカードの券面に印字されたカード番号のようなものを指す。また,本件発明において,送金者と受金者とが同一となり得る構成は排除されているから,本件発明における「消費使用ID」は,送金者以外の他者のホワイトカードに関する情報でなければならない。イ しかるに,本件送金システム及び本件入金システムにおけるLINE Cashアカウント,本件振替入金システムにおけるLINE Moneyアカウントは,以下のとおり,上記①,②のいずれにも該当しないから,「消費使用ID」に当たらない。(ア) 本件各システムにおいて,LINE Payカードの利用者がこれにより支払をする際に利用するのは,LINE Payカード(JCBカード)の券面に印字されたカード番号であって,LINE Cashアカウント及びLINE Moneyアカウント(LINE Payアカウント)ではない。店舗のレジで読み取られるカード情報はLINE Payカードのカード番号であり,インターネットショッピングの場合にも同カード番号を入力するのであって,LINE Payアカウントは,LINE Payカードの利用者がこれによって支払をする際等に利用するものではないから,上記①に該当しない。そもそも,LINE Payアカウントにおける「アカウント」 「口は,座」そのものに当たる概念であり,口座を特定するIDではないから,これを消費使用に利用可能なIDということ自体無理がある。

5 なお,LINE Payカード(JCBカード)の券面に印字されたカ

ード番号が「消費使用ID」に該当すると解する場合,●(省略)●少なくとも構成要件C1-2及びC1-3を充足しない。(イ) LINE Payアカウントは,送金者が知ったとしても,LINEPayカードの消費に使用されることはないから,上記②にも当たらない。ウ また,本件振替入金システムにおいては,送金者と受金者とが同一であって,LINE Moneyアカウントは,送金者自身に関する情報であるから,「消費使用ID」に当たらない。

(3) 「あらかじめ紐付けられている」について

ア 原告は,本件発明においてあらかじめ紐付けられているのは受金IDと消費使用IDとの間であって,ホワイトカードとの間ではないと主張する。しかし,構成要件Aの記載からすれば,受金IDと消費使用IDが,それぞれ,あらかじめ,ホワイトカードと紐付けられていると理解し得る。その上,原告も,これにつき,出願経過において,本件発明では2つのIDとホワイトカードが紐付けられていることが前提とされていることを明確に説明している(乙2・2頁)から,本件発明における受金IDと消費使用IDは,それぞれ,あらかじめ,ホワイトカードと紐付けられていなければならない。原告がこれと異なる解釈を主張するのは,禁反言の原則に抵触する。イ 構成要件Aの「あらかじめ紐付けられ」との要件は,本件審判請求書により補正されたもので,原告は,引用技術2(受取人の携帯電話番号を用いて受取人の口座番号を特定して,入金を行うシステム)と異なり,本件発明においては,送金先の受金IDを知るユーザが,送金手続を開始した時点において,確実に送金を行うことができることを明らかにするために,「あらかじめ紐付けられ」との補正を行った旨を明瞭に陳述し(乙2),これにより特許査定を得たものである。かかる出願経過に鑑みれば,「あらかじめ紐付けられ」とは,遅くともユ

5 ーザが受金IDへの送金手続を開始する時点において紐付いている必要が

あることを意味するというべきである。ウ 本件発明においては,受金ID(例えばメールアドレス)と消費使用ID(例えば銀行口座)があらかじめ紐付けられている状態に作られた装置であるから,受金動作が確実であり,確実にホワイトカードに対する入金を行うことができる。そして,本件発明は,「使用限度額をホワイトカードに紐づけられた入金額に応じて引き上げることが可能」な「入金システム」であって,あくまで「ホワイトカード使用限度額引き上げシステム」なのであるから,「確実に利用限度額を引き上げることができる」との作用効果は,ホワイトカードに紐付けられた入金額において実現されている必要がある。これに対し,本件送金システムにおいては,LINEアカウントは取得しているもののLINE Cashアカウントを取得していないユーザが多数存在するところ,そのようなユーザに対する送金手続も可能である(いわばサーバにおいて保留された状態となる。)。すなわち,本件送金システムにおいては,ユーザによる送金手続の開始時に,LINE アカウントとLINE Cashアカウントが紐付けられていない場合が想定されている。この場合,当該ユーザは受金できず,それゆえ受金動作が確実とはいえない。本件送金システムは,原告が本件発明との相違を強調した引用技術2と同様の課題を有するものであるから,構成要件Aを充足しない。エ 本件発明は,受金ID及び消費使用IDがあらかじめ紐付けられたカードに対する入金を前提とする「ホワイトカード使用限度額引き上げシステム」であるから,カードを前提としないシステムを許容する構成を含まない。これに対し,本件各システムは,LINE Payカードの発行の有無を問わず送受金を可能とする構成を採用しているから,LINE Payカード及びLINE Cashアカウントを取得しているユーザと,それらの双

5 方ないし一方を取得していないユーザとを分離することなく一体的に取り

扱うシステムであって,両者を分離して本件送金システムを認定することはできず,本件発明が規定するシステムとは本質的に性質を異にする。本件振替入金システムについても,ユーザ銀行口座の口座情報及びLINE Moneyアカウントは,LINE Payカードとあらかじめ紐付けられたものではない。

3 争点1-3(本件各システムが「ホワイトカードに対する入金システム」(構

成要件A)に係る構成を有するか)について

(原告の主張)

LINE Payカードがホワイトカードに該当する以上,本件各システムが「ホワイトカードに対する入金システム」に係る構成を有するのは自明である。本件各システムにおいてカードが存在する場合の構成が本件発明の技術的範囲に属する以上,当該システムがカードを前提としない構成でも機能するとしても,それは付加部分にすぎず,侵害の成否には関係しない。

(被告の主張)

本件発明は,「ホワイトカードに対する入金システム」(構成要件A)に係る発明であるから,カードを前提としないシステムを許容する構成を含まない。本件各システムは,LINE Payカードを発行せずともシステムを利用できるように構成されており,カードを前提としたシステムではなく,LINEPayアカウントに対する送金ないし入金がなされるのであって,このことは,事後にLINE Payカードが発行された場合も変わらないから,本件各システムは,本件発明が規定する「ホワイトカードに対する入金システム」とは本質的に性質を異にする。したがって,本件各システムは,本件発明の構成要件A及びB1-1を充足しない。

4 争点1-4(本件振替入金システムが「受金ID取得部」

(構成要件B1-1)

5 に係る構成を有するか)について

(原告の主張)

ユーザのLINE Moneyアカウントへの入金が可能であるためには,当該アカウントに対する入金に際して,被告サーバにおいてユーザを特定するユーザ銀行口座の口座情報を取得する必要があるから,本件振替入金システムは,受金ID(ユーザ銀行口座の口座情報)取得部を有する。被告は,本件振替入金システムにおいて受金者を特定するために用いているのはユーザ銀行口座の口座情報ではないと主張するが,前記2

(原告の主張)

(6)イ

記載のとおり,ユーザ銀行口座の口座情報を使用しなければ,どのユーザのアカウントについて増額するかを特定することができないはずである。被告は,ユーザ銀行口座の口座情報が送金者の特定のために必要であることは認めているところ,本件振替入金システムにおいて送金者と受金者は常に同一人であるから,被告主張によっても当該口座情報は受金者を特定するものということができる。また,本件振替入金システムにおいては,被告サーバにチャージ依頼が通知された時点でユーザ銀行口座の口座情報が被告サーバに送信されるところ(別紙2-3・1(4)~(9)),

(被告の主張)

によれば●(省略)●その場合でもユーザ銀行口座の口座情報が受金者を特定していることは否定されない。

(被告の主張)

ユーザ銀行口座の口座情報は「受金ID」に該当しないし,被告はLINE Payカードのユーザ銀行口座の口座情報を事前に取得しているために当該カードに対する入金に際してこれを取得する必要がないから,被告サーバはユーザのLINE Moneyアカウントに対する入金に際してユーザ銀行口座の口座情報を取得しない。したがって,本件振替入金システムは,「受金ID取得部」に係る構成を有しない。

5 争点1-5(本件振替入金システムが「ホワイトカード使用限度額引上指示装

5 置」(構成要件B2)に係る構成を有するか)について

(原告の主張)

本件振替入金システムにおける被告サーバは,受金ID取得部(構成要件B1-1),入金受付情報取得部(構成要件B1-2)及び出力部(構成要件B1-3)に係る構成を有するから,ホワイトカード使用限度額引上指示装置に該当する。なお,本件振替入金システムにおいては,ホワイトカード使用限度額引上指示装置(構成要件B2),引上命令装置(構成要件C2)及びホワイトカードID管理装置(構成要件D2)はいずれも被告サーバである。

(1) 被告サーバがホワイトカード使用限度額引上指示装置に係る構成を有する

ことア 受金ID取得部(構成要件B1-1)について前記4

(原告の主張)

記載のとおり,本件振替入金システムは,受金ID取得部に係る構成を有する。イ 入金受付情報取得部(構成要件B1-2)についてユーザが,入金する際にスマートフォン等を操作して入金額を入力すると,ユーザ銀行口座から銀行別段口座へと指定入金額の振替入金が行われ,ユーザのLINE Payカードの使用限度額が指定入金額分だけ引き上げられる。これは,被告が,ユーザ銀行から,当該振替入金が完了した旨の情報を受信しているからである。ユーザ銀行口座から銀行別段口座への指定入金額の振替入金が完了した旨の情報は,ホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報であるから,「入金受付情報」に該当する。このように,本件振替入金機能を実現する被告サーバは,入金受付情報を取得する機能を有するから,本件振替入金システムは,入金受付情報取得部に係る構成を有する。ウ 出力部(構成要件B1-3)について本件振替入金システムにおいては,入金操作が完了すると,ユーザについ

5 て,指定入金額分だけ,LINE Moneyアカウント内の電子マネーの

残高が増加するから,被告サーバにおいて,ユーザ銀行口座の口座情報と入金受付情報とが関連付けて出力され,当該出力された情報に基づいてユーザのLINE Moneyアカウントへの入金処理が行われている。このように,本件振替入金システムは,出力部に係る構成を有する。エ 本件振替入金システムは,前記ア~ウの構成を有するから,ホワイトカード使用限度額引上指示装置に係る構成を有する。

(2)

(被告の主張)

についてア 被告は,ホワイトカード使用限度額引上指示装置は引上命令装置とは別個の独立した装置であると主張する。しかし,本件明細書等の段落【0028】には,複数の装置が物理的に一の装置として実現されてもよいことが明記されているから,被告の上記主張は失当である。この点に関連して,被告は,審判請求書(乙2)の記載を指摘するが,原告は,同指摘部分において,ホワイトカード使用限度額引上指示装置と引上命令装置の有するべき技術事項が異なっていること,ホワイトカード使用限度額引上指示装置の構成要件に消費使用ID取得部が含まれていないこと,両装置を分離する構成を採ることで取引の安全を確保することが可能になることを述べたものであって,同部分は,両装置が物理的に一つの装置であってもよいとの上記段落の記載を否定する趣旨ではない。イ 被告は,ホワイトカード使用限度額引上指示装置で生成される入金受付情報が実際の支払を受け付ける側の装置で生成されることが前提となっていると主張する。しかし,本件振替入金機能において,ユーザ銀行口座から銀行別段口座への指定入金額の振替入金処理が完了すると,入金を受け付けた旨の入金受付情報が,ユーザ銀行から日本カードネットワークを介して被告サーバに対し

5 送信され,被告サーバにおいて当該情報を受信するのであって,本件振替入

金機能における入金受付情報は,ユーザ銀行において「生成」され,被告サーバにおいて「取得」されているのであるから,被告の上記主張は前提において誤っている。ウ 被告は,ホワイトカード使用限度額引上指示装置は消費使用IDを取得しない装置を指すと主張する。しかし,本件発明においては,複数の装置が物理的に一の装置として実現されてもよいとされているのであるから,仮に被告サーバが物理的に一つのサーバであるとしても,本件発明の技術的範囲の属否を検討する際には,各装置の機能を有する単位で装置を区切って各構成要件の充足の有無が検討されることになる。被告の上記主張も失当である。

(被告の主張)

本件発明における「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」は,「引上命令装置」とは別個独立した装置であるから,原告主張のように,被告サーバが「引上命令装置」に該当するのであれば,これが「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」に該当することはない。また,実際に,被告サーバは「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」に該当しない。なお,本件振替入金機能の実質的な実施主体は,日本カードネットワークと金融機関であって,被告ではない。

(1) ホワイトカード使用限度額引上指示装置が引上命令装置とは別個独立した

装置であること等本件発明におけるホワイトカード使用限度額引上指示装置は,「ホワイトカードに対する入金に際して,入金すべきホワイトカードの受金IDを取得する受金ID取得部」(構成要件B1-1)を有し,ホワイトカード使用限度額引上指示装置で取得した受金IDと紐付けられている消費使用IDを取得するのは「引上命令装置」(その中の「消費使用ID取得部」)である(構成要件

5 C1-2)。

また,本件明細書等の段落【0022】,【0023】,【0033】,【0034】,【0040】の記載によれば,本件発明における「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」は,「引上命令装置」(構成要件C2)に該当する中央処理装置の間で情報を有線,無線,あるいは基盤接続によって入出力する装置であって,中央処理装置とは別個独立した装置である。そして,ホワイトカード使用限度額引上指示装置で生成される入金受付情報は,実際の金銭の支払を受け付ける側の装置で生成されることが前提とされているから,ホワイトカード使用限度額引上指示装置は,実際の金銭の支払を受け付ける側,例えば店頭端末や携帯端末等に組み込まれて実現されるものである。このことは,原告が,①本件発明においては,ホワイトカード使用限度額引上指示装置が引上命令装置とは独立して存在していること,②当該構成を取ることで,ホワイトカード使用限度額引上指示装置では,受金IDを取得するものの消費使用IDを取得することはあり得ず,それにより安全な取引の実現が可能となることを,本件審判請求書において明確に述べていたこと(乙2)によっても裏付けられる。そうすると,本件発明におけるホワイトカード使用限度額引上指示装置は,実際に金銭の支払を受け付ける側の装置であり,中央処理装置である引上命令装置とは別個独立した装置であって消費使用IDを取得しないものを指すというべきである。

(2) 被告サーバが「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」に該当しないこと。

被告サーバは,実際の金銭の支払を受け付ける側の装置ではない上,原告が「受金ID」に相当すると主張するユーザ銀行口座の口座情報だけでなく,原告が「消費使用ID」に相当すると主張するLINE Moneyアカウントも当然に取得している。このように,本件振替入金システムは,ホワイトカー

5 ド使用限度額引上指示装置と引上命令装置とを別個独立の装置とすることで,

ホワイトカード使用限度額引上指示装置では消費使用IDを取得せず,安全な取引の実現を可能とする本件発明とは,本質的に異なっている。したがって,被告サーバが「引上命令装置」に該当するのであれば,被告サーバは,「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」に該当しない。

(3)

(原告の主張)

について原告は,本件明細書等の段落【0028】の記載を根拠として,本件発明においては,複数の装置が物理的に一の装置として実現されてもよいとされていると主張するが,同段落が許容するのは,単一の装置が「引上命令装置」 「ホとワイトカードID管理装置」の機能を併せ有していてもよいということであって,ホワイトカード使用限度額引上指示装置の意義に照らせば,同装置の機能を有する装置が引上命令装置やホワイトカードID管理装置の機能を併有することは禁止されていると理解すべきである。

6 争点1-6(本件送金システムに係る均等侵害の成否)について

(原告の主張)

本件発明は,「入金受付情報」(構成要件B1-2,B1-3,C1-1,C1-2)の構成を有しないが,本件送金システムの構成は,以下のとおり均等の要件をいずれも充足し,本件発明の構成と均等であるから,本件送金システムは,本件発明の技術的範囲に属する。

(1) 第1要件

ア 本件発明は,他者からの送金などを受金することで使用限度額を引き上げることができるよう,当該カードに対する入金を随時受付可能に管理する機能を備えるカード使用限度額引き上げシステムを提供することを課題とするものである。当該課題を解決するため,同発明においては,相互に独立した,ホワイトカードの利用者が消費使用に利用可能な消費使用IDと,利用者が受金にのみ利用可能な受金IDとをあらかじめ紐付け,システム内に保

5 持した上で,送金者は受金者を受金IDで特定して送金し,当該受金IDに

紐付けられた送金額相当額を消費使用IDに関連付けられたカードの使用限度額として引き上げる構成としている。この構成により,本件発明は,他者から送金などを受金することでユーザの手元にある利用可能な金額が増えたことをリアルタイムに反映することができ,また,受金IDと消費使用IDとを別々のIDとすることで安全に受金と消費を行うことができるという作用効果を奏する。以上からすれば,本件発明の本質的部分は,相互に独立した,ホワイトカードの利用者が消費使用に利用可能な消費使用IDと,利用者が受金にのみ利用可能な受金IDとがあらかじめ紐付けられ,システム内に保持されている構成において,当該ホワイトカードの使用限度額を引き上げるという点にある。イ 本件発明の「入金受付情報」は,実際に入金のための支払があったことを示す情報であるのに対し(段落【0040】),本件送金システムでは,送金指示の際に実際に入金のための支払があったことは要しない。しかし,送金する際に送金額について実際に支払があったか否か(すなわち送金額の由来)は,本件発明の本質的部分とは関係がない。したがって,本件送金システムは,均等の第1要件を充足する。

(2) 第2要件

本件発明の「入金受付情報」を「送金指示受付情報」に置換しても,他者から送金などを受金することでユーザの手元にある利用可能な金額が増えたことをリアルタイムに反映することができ,安全に受金と消費を行うことができる。このように,上記の置換をしても,本件発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏するから,本件送金システムは,均等の第2要件を充足する。

5 (3) 第3要件

送金する際に,送金額について実際に支払があったことを要する構成にするか否かは,当業者が適宜選択する設計事項にすぎない。「入金受付情報」 「送を金指示受付情報」と置き換えることは,被告サービス提供が開始された時点において当業者が容易に想到することができるものであるから,本件送金システムは均等の第3要件を充足する。

(4) 第4要件

本件送金システムは,本件発明の特許出願時における公知技術と同一でもないし,当業者が出願時に容易に推考し得たものでもない。

(5) 第5要件

原告において,本件発明の技術的範囲から,本件送金システムの態様を意識的に除外したとの事情は存しない。

(被告の主張)

本件送金システムは,少なくとも均等の第1要件,第2要件及び第5要件を充足しないから,均等侵害は成立しない。

(1) 第1要件

ア 本件明細書等に記載されている本件発明の課題,課題解決手段及び作用効果,出願経過における従来技術と本件発明との相違に関する原告の説明からすれば,本件発明においては,「入金受付情報」が,実際に入金のための支払があったことを示す情報であり,かつ,同情報の授受の前提として,実際に入金のための支払がなされていることが,従来技術にない課題解決手段であるとともに,「送金などの受金によって一時的に増えた金額を元にカードを利用した支払をすることができる。また,そのための受金を安全に行うことができる。」(段落【0088】)との本件発明の作用効果を奏する前提となっているということができる。このため,「入金受付情報」に係る構成も,本件発明の本質的部分というべきである。

5 しかるに,本件送金システムは,「入金受付情報」に係る構成を採用して

おらず,上記作用効果も奏しないから,均等の第1要件を充足しない。イ 仮に,本質的部分に関する

(原告の主張)

を前提としても,被告送金システムにおいては,「使用限度額」を引き上げる構成を採用しておらず,また,LINEアカウントやLINE Cashアカウントは,いずれもLINEPayカードにあらかじめ紐付けられていないから,本件発明と本件送金システムは,本質的部分を異にし,均等の第1要件を充足しない。

(2) 第2要件

被告送金システムでは,「使用限度額」を引き上げる構成を採用していないから,どのような要件の置換を行っても,本件発明の目的を達成することも,同一の作用効果を奏することもなく,均等の第2要件を充足しない。

(3) 第5要件

原告は,本件特許の出願経過において,「入金受付情報」を用いた本件発明の構成では,従来技術と異なり,口座の残高引上処理を待たずに利用限度額を引き上げることができることを強調して(乙2) 本件特許を取得しているが,,本件発明においてかかる効果を得られるのは,「お金を受け取った」ことが前提となって,その旨を知らせる「入金受付情報」が発出されるからである。したがって,原告は,出願経過において,「入金受付情報」が発出される時点において入金のための支払がなされている構成のみを,本件発明の技術的範囲と捉えている旨を表明しているのであって,それ以外の構成は本件発明の技術的範囲から意識的に除外したものというべきである。したがって,実際に入金のための支払があったことを要しない本件送金システムの態様は,本件発明の技術的範囲から意識的に除外されており,均等の第5要件を充足しない。

7 争点1-7(本件振替入金システムに係る均等侵害の成否)について

(原告の主張)

5 仮に,本件振替入金システムにおいて,入金受付情報と関連付けて出力される

のが入金操作を開始する前に作成される受金IDではないとしても(構成要件B1-3,C1-1,C1-2,D1-2,D1-3の非充足),同システムの構成は,本件発明の構成と均等であるから,本件発明の技術的範囲に属する。

(1) 本件発明と本件振替入金システムとの相違点

被告は,本件振替入金システムの電子マネー残高の増額の仕組みにつき,●(省略)●と主張する。上記主張によると,本件発明と本件振替入金システムとは,以下の点で相違することになる。●(省略)●(構成要件B1-3,C1-1,C1-2,D1-2,D1-3)

(2) 均等侵害の要件の充足

以下のとおり,被告主張の構成に従ったとしても,本件振替入金システムは,均等侵害の要件をいずれも充足する。ア 第1要件本件発明の本質的部分は,前記のとおり,相互に独立した,ホワイトカードの利用者が消費使用に利用可能な消費使用IDと,利用者が受金にのみ利用可能な受金IDとがあらかじめ紐付けられ,システム内に保持されている構成において,当該ホワイトカードの使用限度額を引き上げるという点にある。

(被告の主張)

の構成では,入金操作が完了すると,ユーザ銀行口座から銀行別段口座に指定入金額の振替入金が行われ,ユーザのLINE Moneyアカウント内の電子マネーが指定入金額分だけ増加するから,●(省略)●したがって,本件振替入金システムは,均等の第1要件を充足する。イ 第2要件本件発明の目的は,他者から送金などを受金することでユーザの手元にあ

5 る利用可能な金額が増えたことをリアルタイムに反映することができ,安全

に受金と消費を行うことができることにある。●(省略)●置換しても,当該目的を達成することができ,同一の作用効果を奏する。したがって,本件振替入金システムは,均等の第2要件を充足する。ウ 第3要件●(省略)●は,被告サービスの提供が開始された時点において,当業者が容易に置換できるものである。したがって,本件振替入金システムは,均等の第3要件を充足する。エ 第4要件本件振替入金システムは,本件発明の特許出願時における公知技術と同一でもないし,当業者が出願時に容易に推考し得たものでもない。オ 第5要件原告において,本件発明の技術的範囲から,本件振替入金システムの態様を意識的に除外したとの事情は存在しない。

(被告の主張)

本件振替入金システムは,均等侵害の第1要件,第2要件及び第5要件を充足しないから,均等侵害は成立しない。

(1) 第1要件

本件発明においては,受金IDと消費使用IDとが遅くともユーザが受金IDへの送金手続を開始する時点において紐付いている必要があるが,本件振替入金システムでは,●(省略)●原告主張の「消費使用IDと…受金IDとがあらかじめ紐付けられ,システム内に保持されている構成」を有しない。したがって,本件振替入金システムは,均等の第1要件を満たさない。

(2) 第2要件

本件発明においては,受金IDと消費使用IDが,遅くとも送金手続を開始する時点において紐付けられていることによって,確実に入金を行うことがで

5 きる(乙2)のであるから,●(省略)●置換した場合には,原告主張の本件

発明の目的である安全な受金を達成することができない。したがって,本件振替入金システムは,均等の第2要件を満たさない。

(3) 第5要件

原告は,審査過程において,受金IDと消費使用IDとが「あらかじめ」紐付けられている旨の補正を行うに際し,「本件補正は,本願発明に用いられるホワイトカードと二つのIDとの紐付けがなされる時期を限定する内容の減縮補正であり」とその意義を説明し(乙2・2頁),かかる経過を経て特許査定を受けているから,受金IDと消費使用IDとが「あらかじめ」紐付けられている構成を有しない態様を意識的に除外したといえる。したがって,受金IDと消費使用IDとがあらかじめ紐付けられていない本件振替入金システムは,均等の第5要件を満たさない。

8 争点2(被告が本件発明を実施しているか)について

(1) 争点2-1(被告が本件送金システム等においてホワイトカード使用限度額

引上指示装置に係る構成を実施しているか)について

(原告の主張)

本件におけるホワイトカード使用限度額引上指示装置(ユーザのスマートフォン,ファミリーマートのコンビニエンスストアのPOSレジ等)は,被告以外の第三者が保有・操作し得るものであるが,本件では,以下のとおり,本件発明の全工程が被告自身により実施されている場合と同視し得る。ア 本件送金システムについて(ア) 本件送金システムを用いて他のユーザに送金するためには,送金者たるユーザは,受金者のLINEアカウント(受金ID)を自己のスマートフォンに入力した上で,LINE Payカードの使用限度額を引き上げようとする額の送金指示を入力し,当該スマートフォンは受金者のLINEアカウント(受金ID)と当該金額を関連付けて出力することになるが,

5 これらの工程は,被告が自社サービスの内容として定めたものである。

このように,ユーザが被告の定めた手順に従ってスマートフォン(構成要件B2)を操作すれば,構成要件B1-1~B1-3に記載された手順が必ず履践されるから,被告は,ユーザを道具として上記各構成要件を実施していると評価できる。(イ) 被告コンピュータシステムは,LINE Payカードの保有者が決済等に利用可能なLINE Cashアカウントと,当該保有者が受金に利用可能なLINEアカウントとを紐付ける構成を構築するものであり,本件送金システムにおいて枢要な機能を果たしている。一方,本件送金システムを用いて送金するためにユーザが操作する携帯端末は,あらかじめ被告の定めた手続順序に従って必要な入力を行うためだけのものであり,本件送金システムにおいては従たる位置付けの装置である。また,被告は,被告サービスの加盟店から手数料を受け取っており,当該サービスから営業上の利益を得ている。したがって,被告コンピュータシステムの管理主体である被告は,本件送金システム全体を支配管理していると評価できる。イ 本件入金システムについて(ア) 前記ア(ア)におけるユーザと同様,本件入金システムにおいて,コンビニエンスストアの店員が,被告の定めた手続順序に従ってPOSレジ等(構成要件B2)を操作すれば,構成要件B1-1~B1-3に記載された手順が必ず履践されるから,被告は,当該店員を道具として上記各構成要件を実施していると評価できる。(イ) 被告コンピュータシステムは,受金IDと消費使用IDとを紐付ける構成を構築するものであり,本件入金システムにおいてその全体を支配管理していると評価できる。

(被告の主張)

5 原告は,「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」(構成要件B)に係る

構成として,本件送金システムについてはユーザの端末装置(送金者のスマートフォン),本件入金システムについてはコンビニエンスストアのPOSレジ等と対応付けているが,これらの構成は,ユーザないしコンビニエンスストアが管理,実施するものであって,被告は一切実施していない。原告は,道具理論及び支配管理論に基づく主張をするが,特許権の侵害は,業として特許発明を実施することにより成立するのが原則であり,複数の者による侵害については間接侵害の規定(法101条)がある。間接侵害の規定は,侵害の限界を画する作用を果たすために限定列挙されているのであるし,原告は,本件特許請求の範囲を単独の主体が全ての構成要件を充足するように記載することもできたのに,そうしなかったのであるから,安易に拡張解釈をすべきではない。本件においては,ユーザないしコンビニエンスストア等の行為がなければ本件発明の技術的範囲に属することはないから,被告の行為のみによって本件特許権を侵害すると評価することはできない。

(2) 争点2-2(被告が本件発明を日本国内で実施しているか)について

●(省略)●

9 争点3(本件発明が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)

について別紙4のとおり

第4 当裁判所の判断

1 本件発明の内容等について

(1) 本件明細書等(甲2)には,以下の記載が存在する。ア 技術分野「本発明は,商品購入などに際して決済のために使用されるカードに関して,その使用限度額を適宜変更可能とし,さらにその変更を安全に行うための技術に関する。」(段落【0001】)

5 イ 背景技術「従来,ユーザは信販会社と契約し交付されるいわゆる「クレジットカード」を利用することで,現金を持たずに買い物をすることができる。このクレジットカードは,契約時に例えばユーザの支払能力などに応じて所定期間内で使用可能な金額(使用限度額)が設定され,その使用限度額の中であれば,このクレジットカードを店頭で提示したり,ネットショップにてカード番号を入力したりすることで自由に買い物を行うことができるようになっている。」(段落【0002】)「しかし上記従来のクレジットカードにおいては,その使用限度額に関しては契約時にある程度固定されるため,限度額の引上げなどの変更がなかなかできない,あるいは煩雑な手続きが必要となる,という課題がある。そこで下記特許文献1には,そのクレジットカードの使用限度額を利用実績に応じて算出変更する技術が開示されている。」(段落【0003】)ウ 先行技術文献(特許文献)特開2006-059193公報(乙8公報)エ 発明が解決しようとする課題「しかし,上記従来技術における使用限度額の変更は,予め定められた使用限度額内での利用実績に応じて算出変更されるものであり,以下のようなケースには対応できないという課題がある。すなわち他者からの送金を受金することなどでユーザの所持金が当該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えたとしても,カード会社に逐一連絡などして所定の手続きを経なければそれが使用限度額に反映されることは無い。そのため,その増加分を反映させたクレジットカードの利用をすることができない,という課題である。」(段落【0005】)オ 発明の効果「以上のような構成をとる本発明によって,他者から送金などを受金する

5 ことでユーザの手元にある利用可能な金額が増えたことをリアルタイムに反映し,それを買い物などの支払に利用することができるカードをユーザに提供することができる。」(段落【0016】)カ 発明を実施するための形態「以下に,図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお,本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲において,種々なる態様で実施しうる。」(段落【0018】)「図1は,本実施例のホワイトカード使用限度額引き上げシステムにおけるカードの利用形態の一例を説明するための概念図である。例えば,ユーザαがユーザβに1万円の入金を行おうと考えた。そこでユーザαは,自身の携帯端末などを利用して本システムによる使用限度額引上サービスを利用するためのWebサイトにアクセスする。そして入金先のユーザβの携帯電話番号とその入金額とを当該Webサイトの画面に入力し,さらに自身のユーザIDやパスワードなどと合せて登録処理を行う。すると当該Webサイトを管理するサーバ装置では,入力された情報を元に認証コードを生成し,データベースに蓄積保持する。」(段落【0022】)【図1】「そして図1(a)に示すように,ユーザαがコンビニなどを訪れ本サービスを実際に利用する際に,ユーザIDやパスワードなどを入力し認証コードの返信リクエストを行う。そして上記サーバ装置にてユーザIDとパスワ

5 ードの組を元に登録ユーザである旨の認証が為されると,データベースに蓄積保持されている認証コードがユーザの携帯端末などに返信される。そしてコンビニなどの店頭端末(ホワイトカード使用限度額引上指示装置)に当該認証コードを読取らせることにより,ユーザβの携帯電話番号および入金額を入力する。そしてその金額分の金銭をコンビニのレジにて支払う。すると店頭端末では,その実際に入金がなされた旨を示す情報である入金受付情報を生成し,図1(b)に示すように,その入金受付情報と入金先を特定するためのβの携帯電話番号とを関連付けて,カードの使用限度額を引上げるための命令を出力する装置(引上命令装置)に対して送信する。」(段落【0023】)

5 「もちろん,引上命令装置への情報送信に関しては,第三や第四の装置を介して送信されても良いし,直接送信されても良い。」(段落【0024】)「すると,その引上命令装置では,図1(c)に示すように例えば本システムの管理者が管理する装置(ホワイトカードID管理装置)に対して携帯電話番号を転送し,入金すべきホワイトカードの消費使用IDについて問合せを行う。そしてホワイトカードID管理装置では携帯電話番号等の入金用のIDと,カードを消費使用する際のIDとを紐付けて管理しており,上記引上命令装置からの問合せに応じてカードの消費使用IDを返信する。(段」落【0025】)「そして図1(d)に示すように,引上命令装置ではその返信された消費使用IDとともに,例えばカードを発行する信販会社などの装置に対してカードの使用限度額を引上げる命令を出力する。すると,当該消費使用IDで識別されるカードについて「1万円」の入金があったことが信販会社などにて確認され,当該カードをその1万円分増加した限度額内で使用することができる,という具合である。」(段落【0026】)「このようにして,本システムを利用することで,他者からの入金などに応じてリアルタイムにカードの使用限度額を引上げることができる。また,カードへの入金時に入金先を指定するID(携帯電話番号等)と,実際にカードにて支払いをする際に消費使用IDとが別であるため,送金者などに消費使用IDを知らせなくとも受金を行うことができるので,安全に受金と消費を行うことができる。」(段落【0027】)「なお,上記説明における各装置を管理する主体は一例であって,それ以外の主体によって管理されても良いし,例えば引上命令装置とホワイトカード管理装置が一の主体によって管理されても良い。例えばセキュリティ上,引上命令装置はカードを発行する機関ごとに一つずつ設置されるケースが考えられるが,もちろん統一的に一の主体が管理しても良い。また,逆にホ

5 ワイトカードID管理装置は,サービス提供者が統合的に管理するケースが考えられるが,カードを発行する機関ごとに一つずつ設置されるなどしても良い。また,例えば引上命令装置とホワイトカード管理装置など複数の装置が物理的に一の装置として実現されていても良いし,逆に一の装置が物理的に複数の装置を組み合わせて実現されても良い。また,最初のユーザ登録などに応じた認証コードの生成など無しに,ホワイトカード使用限度額引上指示装置に直接ユーザαの携帯電話番号および入金額などが入力されるよう構成しても良い。」(段落【0028】)「図2は,本実施例のホワイトカード使用限度額引き上げ 【図2】システムにおける機能ブロックの一例を表す図である。なお,以下に記載する本システムを構成する各装置の機能ブロックは,ハードウェア,ソフトウェア,又はハードウェア及びソフトウェアの両方として実現され得る。具体的には,コンピュータを利用するものであれば,CPUや主メモリ,バス,あるいは二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ,CDやDVDなどの記憶メディアとそれらメディアの読取ドライブなど),情報入力に利用される入力デバイス,印刷機器や表示装置,その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部,またその外部周辺装置用のインターフェース,通信用インターフェース,

5 それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム,ユーザ・インターフェース用アプリケーションなどが挙げられる。」(段落【0030】)「そして主メモリ上に展開したプログラムに従ったCPUの演算処理によって,入力デバイスやその他インターフェースなどから入力され,メモリやハードディスク上に保持されているデータなどが加工,蓄積されたり,上記各ハードウェアやソフトウェアを制御するための命令が生成されたりする。また,この発明はシステムとして実現できるのみでなく,方法としても実現可能である。また,このような発明の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに,そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品,及び同製品を固定した記録媒体も,当然にこの発明の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である) 」。(段落【0031】)「そして本実施例のホワイトカード使用限度額引き上げシステムは,「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」(0200)と,「引上命令装置」(0210)と,「ホワイトカードID管理装置」(0220)と,からなる。」(段落【0032】)「まず,「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」の構成要件について説明する。なお,この「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」は,下記構成要件を備え,中央処理装置との間で情報を有線,無線,あるいは基盤接続によって入出力する装置をいい,例えばコンビニやサービスステーション,旅行代理店,その他各種店舗など設置された店頭端末に組み込まれ実現することができる。あるいは,エンドユーザの利用するPC(パーソナル・コンピュータ)や携帯電話やゲーム端末などの携帯端末などに組み込まれ実現することもできる。」(段落【0034】)「そして図2にあるように,「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」

5 (0200)は,「受金ID取得部」(0201)と,「入金受付情報取得部」(0202)と,「出力部」(0203)と,を有する。」(段落【0035】)「「受金ID取得部」(0201)は,ホワイトカードに対する入金に際して,入金すべきホワイトカードの受金IDを取得する機能を有する。なお「ホワイトカード」とは,本システムによって管理されるカードをいい,もちろんその名称はホワイトカードに限定されない。また,「受金ID」とは,受金にのみ利用可能なIDをいう。ただし「受金にのみ利用可能」とは,ホワイトカードとの関係において受金にのみ利用され消費使用には利用されない,という意味であり,ホワイトカードとの関係の無い場面において各種利用がなされるIDも含まれる。したがって例えば受金用に発行される専用IDのほか,携帯/固定電話番号や電子メールアドレス,住民基本台帳番号なども含まれる。」(段落【0036】)「そして,この受金ID取得部は,例えばGUIやその他入力デバイス,あるいはバーコードリーダなどの情報読取装置などによって実現することができる。具体的に,例えば上記例のようにコンビニの店頭端末にて実現されるのであれば,GUIなどを介して直接受金IDが入力され取得する形態が挙げられる。また,図3に示すようにユーザの携帯電話など別の端末にて入力されコード変換された受金IDを,店頭端末のコードリーダで読取る,あるいはユーザの携帯端末に入力されたそれら情報を近距離無線通信で受信するなどの形態も挙げられる。また,そのコードは,受金IDのほか入金予定額なども含み変換されたコードであっても良い。また,その受金IDなどを含み生成されたコードは,複数に分割生成されており,この受金ID取得部では,その複数のコードを取得することで受金IDな

5 どを取得するよう構成しても良い。」(段落【0037】)「また,前述のように携帯電話などのユーザ端末そのものがホワイトカード使用限度額引上指示装【図3】置であっても良く,その場合,そのユーザ端末の「受金ID取得部」に例えばGUIなどを介して直接この受金IDが入力されると良い。」(段落【0038】)「そして,ここで受付ける受金IDが後述するホワイトカードの消費使用IDとは別であるため,ホワイトカードの利用者以外の者は,受金IDを知っていたとしてもホワイトカードを消費に使用することができない。したがって本システムにおけるカードの管理において,その受金と消費を安全に行うことができる,という具合である。」(段落【0039】)「「入金受付情報取得部」(0202)は,入金受付情報を取得する機能を有する。「入金受付情報」とは,そのホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報をいう。つまり,この入金受付情報は実際に入金のための支払があったことを示す情報である。そのためこの入金受付情報の生成は,コンビニやサービスステーション,旅行代理店,その他の店舗など実際の金銭の支払を受付ける側の装置で生成されることを前提とする。」(段落【0040】)「したがって,例えば当該店舗などの店頭端末やサーバ装置で入金があったことを確認すると,それに応じて入金受付情報が生成され,ホワイトカード使用限度額引上指示装置である当該店頭端末などに取得される。あるいは,ホワイトカード使用限度額引上指示装置が携帯電話などであれば,その店頭端末などで生成されたその情報が,通信やその他の情報読取手段によって携帯電話の「入金受付情報取得部」に取得される,という具合である。」(段

5 落【0041】)「「出力部」(0203)は,取得した受金IDと,入金受付情報とを関連付けて出力する機能を有し,例えばネットワークなどを介して次の引上命令装置にこれら情報を送信する,という具合である。」(段落【0042】)「次に,図2に戻り「引上命令装置」の構成要件について説明する。この図2にあるように,「引上命令装置」(0210)は,「受信部」(0211)と,「消費使用ID取得部」(0212)と,「引上命令送信部」(0213)と,を有する。」(段落【0044】)「「受信部」(0211)は,受金IDと関連付けられた入金受付情報をホワイトカード使用限度額引上指示装置から受信する機能を有し,例えばネットワーク網などを介してホワイトカード使用限度額引上指示装置からこれら情報を受信する,という具合である。」(段落【0045】)「「消費使用ID取得部」(0212)は,受信した入金受付情報に関連付けられたホワイトカード受金IDと紐付けられている消費使用IDをホワイトカードID管理装置から取得する機能を有する。 「消費使用ID」なおは,ホワイトカードの利用者が消費使用に利用可能な消費使用IDをいい,基本的にはホワイトカードの利用者およびシステムの一部管理者以外には知りえない機密情報であることを前提とする。」(段落【0046】)「このように,ホワイトカードID管理装置にて,ホワイトカードの利用者以外が入金に利用するために知っている受金ID(例えば携帯電話番号:090-xxx-xxxx)を,利用者しか知らない消費使用ID(例えば秘密のカードID:0123)にコンバートすることで,このホワイトカードによる受金と消費を安全に行うことができる。なおホワイトカードID管理装置における受金IDから消費使用IDへのコンバート処理の詳細については,次のホワイトカードID管理装置の構成要件の説明にて記載する。」(段落【0047】)

5 「「引上命令送信部」(0213)は,取得した消費使用IDと関連付けた使用限度額引上額を含む引上命令を送信する機能を有する。具体的には,例えば「カードID:0123のカードに関して1万円の使用限度額を引上げる」といった命令を,ホワイトカードを発行し管理する会社のサーバ装置などに送信する,という具合である。そして,その引上命令を受信したサーバ装置では,そのホワイトカードの使用限度額を1万円分引き上げ,買い物などで利用できるよう管理することができる。なお,「使用限度額引上額」は入金された額面そのままでも良いし,手数料などを引いた額面や何らかの特典によって増加された額面などであっても良い。」(段落【0048】)「なお,この引上命令装置は,上記のように実際にカードの使用限度額を引上げるためのトリガーとなる引上命令を送信する装置である。そのため,例えばその管理者などに悪意ある者がいると,不正に(ホワイトカード使用限度額引上指示装置からの受金IDと入金受付情報の受信が無いにも関わらず)自己の受金IDを対象とする引上命令を生成し送信することなども想定される。そこで,本発明のホワイトカード使用限度額引上げシステムでは,この引上命令装置を物理的に2以上用意し,それぞれを別の管理主体に管理させるよう構成しても良い。」(段落【0049】)「すなわち,第一の引上命令装置を専用に管理する主体のほかに,例えば上記概要で記載したような認証コードの発行主体のもとにも上記構成を備える第二の引上命令装置を設置しておく。そして,認証コードの発行主体の装置が前述のようにユーザ登録などに応じて認証コードを生成し,それをコンビニなどの店頭端末に送信した際に,当該認証コードに関連付けて入金受付情報の返信待ち状態となるよう構成する。そしてホワイトカード使用限度額引上指示装置からの受金IDと入金受付情報を,第一と第二双方(さらに

第三,第四・ ・)

・ の引上命令装置に対して出力されるよう構成することで,2以上の主体が別々に管理する引上命令装置に受金IDと入金受付情報を

5 受信するよう構成する。」(段落【0050】)「そして,それぞれの引上命令送信部において装置や管理主体のIDを含む引上命令を送信するよう構成する。このように構成することで実施例2で後述するホワイトカード管理サーバ装置では,受信した引上命令のIDを確認し,双方からの引上命令が揃わなければ後述するような使用限度額の引上処理を行わない,という具合である。」(段落【0051】)「このような構成をとることで,引上命令装置のいずれかの管理主体に悪意ある者がいたとしても協力者を探す必要があるなど容易には不正を働くことができず,その抑止力とすることができる。」(段落【0052】)「次に,「ホワイトカードID管理装置」の構成要件について説明する。図2にあるように,「ホワイトカードID管理装置」(0220)は,「紐付テーブル保持部」(0221)と,「受金ID受信部」(0222)と,「消費使用ID送信部」(0223)と,を有する。」(段落【0054】)「「紐付テーブル保持部」(0221)は,消費使用IDと受金IDとを紐付けた紐付テーブルを保持する機能を有し,例えばハードディスクドライブなどの各種記憶媒体によって実現することができる。」(段落【0055】)「図4は,この紐付テーブルの一例を表す概念図である。この図にあるように,例えば携帯電話番号「090- 【図4】xxx-xxxx」を受金IDとし,それに対して消費使用ID「0123」が関連付けられている。あるいは受金IDである電子メールアドレス「α@yyy.ne.jp」に対して消費使用ID「1234」,あるいは専用ID「USER-001」に対して消費使用ID「5432」が関連付けられ

5 ている,という具合である。」(段落【0056】)「このようにして,送金者に消費使用IDを知らせなくても,携帯電話番号などを指定することで安全に受金し,ホワイトカードの使用限度額を引上げることができる。」(段落【0057】)「また,この紐付テーブルにて保持される消費使用IDについては,固定ID(実際の消費使用に利用されるカードID)と変動ID(1回のみの使いきりID)の2種類を合せて管理するよう構成し,引上命令装置に対して実際の消費に利用されるIDを知らせないよう構成し,そのセキュリティ性を高めても良い。例えば,受金IDを受信した際に,固定IDとは別に1回きりの変動IDを新規に生成し,その変動IDを消費使用IDとして引上命令装置に送信する。そして,その変動IDと固定IDの組を,実際に引上命令にしたがって使用限度額を引上げて管理する例えばホワイトカードの発行管理者のサーバ装置に対して送信する,という具合である。」(段落【0058】)「「受金ID受信部」(0222)は,引上命令装置から受金IDを受信する機能を有し,例えばネットワーク網などを介して受信する,という具合である。また,このホワイトカードID管理装置と引上命令装置が物理的に1つの装置で実現されている場合には,バス線などを介して内部的に情報を送受信するよう構成すると良い。」(段落【0059】)「「消費使用ID送信部」(0223)は,受信した受金IDに紐付けられている消費使用IDを紐付テーブルから取得して引上命令装置に送信する機能を有し,例えばCPUなどの論理演算処理によって上記テーブルを検索し,該当する消費使用IDをネットワーク網(あるいは内部バス線)などを介して返信する,という具合である。」(段落【0060】)「このように本実施例のホワイトカード使用限度額引き上げシステムによって,送金などの受金によって一時的に増えた金額を元にカードを利用した

5 支払をすることができる。また,そのための受金を安全に行うことができる。」(段落【0061】)「なお,上記実施例では,ホワイトカード使用限度額引上指示装置から出力される受金IDと入金受付情報の出力先は引上命令装置として説明したが,ホワイトカードID管理装置に送信するよう構成しても良い。その場合,ホワイトカードID管理装置は引上命令装置を介さず直接受信した受金IDを消費使用IDにコンバートして,それを引上命令装置に入金受付情報と合せて送信する,といった処理を行うことになる。このように,本発明において各構成要件は様々な装置上に設けることができる。」(段落【0062】)「図8は,本実施例のホワイトカード使用限度額引き上げシステムにおける処理の流れの一例を表すフローチャートである。なお,以下に示すステップは,上記のような計算機の各ハードウェア構成によって実行されるステップであっても良いし,媒体に記録され計算機を制御するための【図8】プログラムを構成する処理ステップであっても構わない。」(段落【0082】)「この図にあるように,まず,例えばコンビニの店頭端末やユーザの携帯端末などのホワイトカード使用限度額引上指示装置にて,入金すべきホワイトカードの受金IDを取得する(ステップS0801)。その後,実際の支払などで入金を受け付けた旨の入金受付情報をその入金額を含み取得する

5 (ステップS0802)と,取得した受金IDと,入金受付情報とを関連付けて出力する(ステップS0803)。」(段落【0083】)「そして,引上命令装置にて,受金IDと関連付けられた入金受付情報をホワイトカード使用限度額引上指示装置から受信する(ステップS0811)と,受信した入金受付情報に関連付けられたホワイトカード受金IDをホワイトカードID管理装置に送信する(ステップS0812)。」(段落【0084】)「するとホワイトカードID管理装置にて,引上命令装置から受金IDを受信し(ステップS0821),予め保持されている紐付テーブルを参照して消費使用IDを取得する(ステップS0822)。そしてその消費使用IDを引上命令装置に返信する(ステップS0823) 」。 (段落【0085】)「そして,引上命令装置では返信された消費使用IDを取得し(ステップS0813),その取得した消費使用IDと使用限度額引上額を含む引上命令を送信する(ステップS0814)。」(段落【0086】)「本実施例のホワイトカード使用限度額引き上げシステムによって,送金などの受金によって一時的に増えた金額を元にカードを利用した支払をすることができる。また,そのための受金を安全に行うことができる。」(段落【0088】)「本実施例のホワイトカード使用限度額引き上げシステムは,さらに以下のような構成を有することで,入金受付情報(実際の金銭の入金があったことを示す情報)の取得無しに,カードの使用限度額が引上げられたユーザβが,その引上分を別のユーザγに譲渡できるよう構成しても良い。」(段落【0105】)「具体的には,「引上命令装置」が,今までに送信した引上命令の履歴を保持する「引上命令送信履歴保持部」と,引上命令によって変更された使用限度額が残っているか否か確認情報を取得する「使用限度額確認情報取得部」

5 と,を有する。」(段落【0106】)「そして例えば,ユーザβがWebアクセスなどで直接この引上命令装置にアクセスし,ユーザγの携帯電話番号とその譲渡金額とを入力する。すると引上命令装置は,ユーザβのIDをキーとして「引上命令送信履歴保持部」を参照し,ユーザβのカード宛の引上命令が今までに送信されたか否かを判断する。そして実際にユーザβのカード宛に引上命令が送信されていれば,ホワイトカードの管理会社のサーバ装置に対して,その引上命令で変更されたカードの使用限度額が譲渡金額分残っているか否かを確認するためのリクエストを送信する。なお,この確認リクエストの送信及び確認レスポンスの返信は,通常のクレジットカードの使用限度額の確認システムなどを転用して実現しても良い。」(段落【0107】)「そして,「使用限度額が譲渡金額分残っている」とのレスポンスを「使用限度額確認情報取得部」にて取得した場合,それを入金受付情報の代わりとしてユーザγに対する使用限度額変更のための入金が実際にある(残っている)と判断し,引上命令を送信する,という具合である。もちろん,その場合ユーザβの使用限度額はその譲渡分引下げられ,使用できないよう構成すると良い。」(段落【0108】)

(2) 本件特許請求の範囲及び前記(1)の記載によれば,本件発明は,①商品購入などに際して決済のために使用されるホワイトカードの使用限度額引き上げシステムに関する発明であり,②クレジットカードの使用限度額が契約時にある程度固定されるため,限度額の引上げ等の変更が困難ないし煩雑な手続を要し,他者からの送金を受金することなどでユーザの所持金が当該クレジットカードの平均所得以上に増えたとしても,カード会社に逐一連絡などして所定の手続を経なければそれが使用限度額に反映されないため,その増加分を反映させたクレジットカードの利用をすることができないことを課題とし,③(a)ホワイトカードに対する入金に際して,ホワイトカード使用限度額引上指示装置

5 が,取得した受金IDとホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金受付情報とを関連付けて出力し,(b)引上命令装置は,これらを受信すると当該受金IDをホワイトカードID管理装置に送信し,(c)ホワイトカードID管理装置は,これを受信すると,あらかじめ保持されている紐付テーブルを参照して取得した消費使用IDを引上命令装置に返信し,(d)引上命令装置は,取得した消費使用IDと使用限度引上額を含む引上命令を送信するというシステムを採用することにより,④他者から送金などを受金することでユーザの手元にある利用可能な金額が増えたことをリアルタイムに反映し,それを買い物などの支払に利用することができるカードをユーザに提供することができるとともに,安全に受金と消費を行うことができるという効果を得られることを特徴とする発明であると認められる。

2 争点1-1(本件各システムが「使用限度額」,「ホワイトカード」(構成要件A等)に係る構成を有するか)について(1) 構成要件A等の「ホワイトカード」及び「使用限度額」の意義ア 構成要件A等の「使用限度額」の意義については,特許請求の範囲の上記記載からは一義的には明らかではないが,本件明細書等の段落【0002】には,「このクレジットカードは,契約時に例えばユーザの支払能力などに応じて所定期間内で使用可能な金額(使用限度額)が設定され,その使用限度額の中であれば,このクレジットカードを店頭で提示したり,ネットショップにてカード番号を入力したりすることで自由に買い物を行うことができる」(判決注:下線を付加)と記載されているところ,同記載によれば,本件発明にいう「使用限度額」は,ユーザとの契約時にその支払能力(すなわち信用力)に応じて設定される金額であり,月単位等の所定期間内において使用可能な上限額であると認められる。本件明細書等には,さらに,「しかし上記従来のクレジットカードにおいては,その使用限度額に関しては契約時にある程度固定されるため,限度額

5 の引上げなどの変更がなかなかできない,あるいは煩雑な手続きが必要となる,という課題がある。そこで下記特許文献1(判決注:乙8公報)には,そのクレジットカードの使用限度額を利用実績に応じて算出変更する技術が開示されている。」(段落【0003】),「しかし,上記従来技術における使用限度額の変更は,予め定められた使用限度額内での利用実績に応じて算出変更されるものであり,以下のようなケースには対応できないという課題がある。すなわち他者からの送金を受金することなどでユーザの所持金が当該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えたとしても,カード会社に逐一連絡などして所定の手続きを経なければそれが使用限度額に反映されることは無い。そのため,その増加分を反映させたクレジットカードの利用をすることができない,という課題である。」(段落【0005】),「以上の課題を解決するために,本発明は,他者からの送金などを受金することで使用限度額を引上げることができるよう,当該カードに対する入金を適時受付可能に管理する機能を備えるホワイトカード使用限度額引き上げシステムを提供する。」(段落【0006】),「本発明によって,他者から送金などを受金することでユーザの手元にある利用可能な金額が増えたことをリアルタイムに反映し,それを買い物などの支払に利用することができるカードをユーザに提供することができる。」(段落【0016】)との記載がある(判決注:下線を付加)。そして,上記従来技術として挙げられている乙8発明は,発明の名称を「クレジットカード管理システム」とし,クレジットカード利用限度額を適正に設定することなどを課題とするものである。本件明細書等の上記記載によれば,本件発明にいう「使用限度額」は,ユーザとの契約時にその金額が「ある程度固定される」ものであり,その金額の範囲内であれば自由に買い物等ができるものの,他者からの送金を受金することなどでユーザの所持金が契約時より増えたとしても,カード会社に連

5 絡などして所定の手続を経なければ限度額の引上げを行うことができないものであると認められる。そうすると,電子マネーが入出金するたびに,それを反映して使用可能な金額が変動するプリペイドカード等の使用可能金額は,本件発明の「使用限度額」には当たらないというべきである。イ 本件発明の「ホワイトカード」の意義に関し,本件特許請求の範囲には明示的な記載はないが,乙6,7によれば,一般的に,ホワイトカードは,「カード会社が個人向けに発行する最もベーシックなクレジットカード」(乙6)を意味するものと認められる。この点に関し,本件明細書等には,「従来,ユーザは信販会社と契約し交付されるいわゆる「クレジットカード」を利用することで,現金を持たずに買い物をすることができる。このクレジットカードは,契約時に例えばユーザの支払能力などに応じて所定期間内で使用可能な金額(使用限度額)が設定され,その使用限度額の中であれば,このクレジットカードを店頭で提示したり,ネットショップにてカード番号を入力したりすることで自由に買い物を行うことができるようになっている。」(段落【0002】),「しかし上記従来のクレジットカードにおいては,その使用限度額に関しては契約時にある程度固定されるため,限度額の引上げなどの変更がなかなかできない,あるいは煩雑な手続きが必要となる,という課題がある。そこで下記特許文献1には,そのクレジットカードの使用限度額を利用実績に応じて算出変更する技術が開示されている。」(段落【0003】),「他者からの送金を受金することなどでユーザの所持金が当該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えたとしても,カード会社に逐一連絡などして所定の手続きを経なければそれが使用限度額に反映されることは無い。そのため,その増加分を反映させたクレジットカードの利用をすることができない,という課題である。」(段落【0005】),「例えばカードを発行する信販会社などの装置に対してカードの使用限度額を引上げる命令を出力する。すると,

5 当該消費使用IDで識別されるカードについて「1万円」の入金があったことが信販会社などにて確認され,」(段落【0026】),「この確認リクエストの送信及び確認レスポンスの返信は,通常のクレジットカードの使用限度額の確認システムなどを転用して実現しても良い。」(段落【0107】)などの記載が存在する(判決注:下線を付加)。前記判示の「ホワイトカード」の一般的な意義に加え,本件明細書等における上記各記載,特に本件発明の課題がクレジット契約時に設定された使用限度額の引上げにあることなどによれば,本件発明の「ホワイトカード」は,クレジットカードを意味すると解することが相当である。他方,同明細書等には「ホワイトカード」がプリペイドカードやデビットカードを含む旨の明示的な記載又はそれを前提とする記載は存在しないことに照らすと,本件発明における「ホワイトカード」がプリペイドカード等を含むと解することはできない。ウ したがって,本件発明における「ホワイトカード」はクレジットカードを意味し,「使用限度額」とは,「契約時に設定されてある程度固定される,所定期間内で使用可能な金額」を意味するものというべきである。(2) 原告の主張について原告は,本件発明にいう「使用限度額」とは,「カードを使用するに当たっての限度額」 すなわち買い物に使用できる限度額であり,, 「ホワイトカード」はクレジットカードに限定されないと主張するが,以下のとおり,原告の主張は採用し得ない。ア 原告は,本件発明の課題について「使用限度額に関しては契約時にある程度固定されるため,限度額の引上げなどの変更がなかなかできない,あるいは煩雑な手続きが必要となる」という従来技術の課題(段落【0003】)は乙8発明により解決済みであり,本件発明の課題は,他者からの送金の受金等によるユーザの所持金の増加を速やかに使用限度額に反映させること

5 にある(段落【0005】)と主張する。しかし,本件明細書等には「従来のクレジットカードにおいては,その使用限度額に関しては契約時にある程度固定されるため,限度額の引上げなどの変更がなかなかできない,あるいは煩雑な手続きが必要となる,という課題がある。…特許文献1(判決注:乙8公報)には,そのクレジットカードの使用限度額を利用実績に応じて算出変更する技術が開示されている。(段」落【0003】),「しかし,上記従来技術における使用限度額の変更は,予め定められた使用限度額内での利用実績に応じて算出変更されるものであり,以下のようなケースには対応できないという課題がある。すなわち他者からの送金を受金することなどでユーザの所持金が当該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えたとしても,カード会社に逐一連絡などして所定の手続きを経なければそれが使用限度額に反映されることは無い。そのため,その増加分を反映させたクレジットカードの利用をすることができない,という課題である。」(段落【0005】)との記載がある。上記記載によれば,乙8公報に記載された従来技術は,「予め定められた使用限度額内での利用実績に応じて算出変更」することにより使用限度額を変更することを可能にするものであるが,それでは「他者からの送金を受金することなどでユーザの所持金が当該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えたとしても,カード会社に逐一連絡などして所定の手続きを経なければそれが使用限度額に反映され」ないという課題を解決し得ないことから,本件発明は,本件特許請求の範囲に規定された構成を採用することにより,ホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報に基づいて,所定の手続(煩雑な手続)を経ることなく,使用限度額を引き上げることを可能としたものと認められる。このように,乙8発明は,本件明細書等の段落【0003】に記載された課題の一部を解決するものにすぎず,本件発明は乙8発明により解決し得な

5 かった課題の解決を図るものであることに照らすと,本件発明にいう「使用限度額」は,乙8公報の「クレジットカード利用限度額」(段落【0005】等)と同義であると解するのが自然である。イ 原告は,本件送金システムにおいて他者から受け取った金額を電子マネーのプリペイドカードにチャージするためには,最初に送金者が受金者に手渡し又は銀行振込等で現金を渡し,次に受金者が当該現金を電子マネーとしてチャージすることになるが,そのような方法は煩雑であり,リアルタイムで使用限度額を増額することもできないので,電子マネーを用いたプリペイドカードにも「ユーザの所持金の増加を速やかに使用限度額に反映させる」という課題が存在すると主張する。しかし,本件発明の課題は,「他者からの送金を受金することなどでユーザの所持金が当該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えたとしても,カード会社に逐一連絡などして所定の手続きを経なければそれが使用限度額に反映されることは無い。」(段落【0005】)というものであり,契約時に使用限度額が固定されているため,ユーザが他社からの送金を受金しても,使用限度額を変更するには,カード会社に連絡して所定の手続が蹴ることが必要となる点が「煩雑」であるとするものである。これに対し,プリペイドカードについては,ユーザが受け取った現金等が電子マネーとしてチャージされると使用限度額が増額されるのであって,その使用可能額を変更するための手続等を要しないのであるから,本件発明と同様の課題には直面していないというべきである。原告は,上記のとおり,電子マネーをプリペイドカードにチャージするまでの手続も段落【0005】の「所定の手続き」に当たるとするが,同手続は,送金を受金した後に,契約時に固定された使用限度額を変更するための手続を意味するものであり,プリペイドカードに電子マネーをチャージするための手続は,「所定の手続き」には該当しない。

5 ウ 原告は,「使用限度額」の意義につき,本件明細書等に「使用限度額」に関する定義は記載されていないから,その語の通常の意義に照らして解釈されるべきであり,そうすると,「使用限度額」とは,買い物に使用するに当たっての限度額を意味すると主張する。しかし,「使用限度額」との語の意義は多様であり,クレジットカードの利用限度額を意味することもあれば,単に使用することが可能な残高を意味することもあり,更には両者を包含することもあり得るなど,その意義は一義的には定まらないところ,段落【0002】には,「使用限度額」の意義について,「契約時に例えばユーザの支払能力などに応じて所定期間内で使用可能な金額」と記載されていることは,前記判示のとおりである。同記載によれば,本件発明にいう「使用限度額」とは,ユーザの支払能力などに応じて所定期間内で使用可能な金額として設定されるものと解するのが相当である。エ(ア) 原告は,「ホワイトカード」の意義につき,本件明細書等に「本発明は,商品購入などに際して決済のために使用されるカードに関して,その使用限度額を適宜変更可能とし,さらにその変更を安全に行うための技術に関する。」(段落【0001】),「買い物などの支払に利用することができるカード」(段落【0016】),「「ホワイトカード」とは,本システムによって管理されるカードをいい,もちろんその名称はホワイトカードに限定されない」(段落【0036】)などと記載されていることによれば,「ホワイトカード」は,「商品購入などに際して決済のために使用されるカード」,「買い物などの支払に利用することができるカード」を意味すると主張する。しかし,本件明細書等の段落【0001】及び【0016】の「カード」とは「ホワイトカード」であるところ,「ホワイトカード」が一般的にクレジットカードを意味することは前記判示のとおりであり,また,本件発

5 明の効果に関する記載は「ホワイトカード」がクレジットカードである旨の記載がある一方,本件明細書等には「ホワイトカード」がプリペイドカード等を含む旨の記載は存在しないことは前記判示のとおりである。そうすると,段落【0001】及び【0016】の記載から直ちに本件発明の「ホワイトカード」がプリペイドカード等を含むものであると認めることはできない。また, 「ホワイトカード」「 …の名称はホワイトカードに限定されない」(段落【0036】) との記載は,カードの名称が「ホワイトカード」に限定されないことを意味するにすぎず,同記載をもって,本件発明の「ホワイトカード」がクレジットカードに限定されないと解することはできない。(イ) 原告は,印刷前のテレホンカード等にも「ホワイトカード」という用語が使用されていること(甲16公報)を指摘するが,同公報は,発明の名称を「ホワイトカードのプリント方法」とするものであり,同公報にいう「ホワイトカード」 印刷前の無地のカードを意味するものであるから,は,同公報の記載を参酌して,本件発明における「ホワイトカード」の意義を定めることは相当ではない。(ウ) 原告は,本件明細書等の段落【0002】~【0005】が「クレジットカード」という語を用いて背景技術等の説明をしているのに対し,段落【0006】以降が「ホワイトカード」という語を用いて説明しているのは,本件発明の発明者がクレジットカードとは全く異なるカードに関する発明を意識していたからであると主張する。しかし,本件明細書等の段落【0002】~【0005】は,単なる背景技術等の説明にとどまらず,本件発明の課題に関する記載であるから,同各段落における「クレジットカード」との記載が単なる例示であると解することはできず,また,本件明細書等の実施例に関する段落【0026】

5 においても「カードを発行する信販会社などの装置に対してカードの使用限度額を引上げる命令を出力する…と,…「1万円」の入金があったことが信販会社などにて確認され,当該カードをその1万円分増加した限度額内で使用することができる」と記載され,当該カードがクレジットカードであることが前提とされている。これに対し,原告は,同段落に信販会社「など」と記載されていることや,段落【0028】に「上記説明における各装置を管理する主体は一例であって,それ以外の主体によって管理されても良い」と記載されていることなどを根拠に,ホワイトカードの発行会社には,プリペイドカードの発行・管理会社なども含み得ると主張するが,本件明細書にはプリペイドカードなどクレジットカード以外のカードに係る記載は存在しないことに照らすと,同段落の「信販会社など」はクレジットカードの発行会社を意味すると解するのが相当である。オ 以上のとおり,原告の上記主張はいずれも採用し得ない。

(3) 本件各システムの充足性ア 前記前提事実,証拠(甲3~5,10~13,乙4,27)及び弁論の全趣旨によれば,被告サービスは,電子マネーを用いたモバイル送金・決済サービスであって,送金・入金及び振替入金の各機能に用いるLINE Payカードは電子マネーに係るプリペイドカードであり,LINE Payアカウントにおいて決済等に使用できる金額は,常に当該アカウントの残高と一致する(なお,LINE Cashアカウントは,残高の上限が10万円と定められている。)と認めることができる。イ そうすると,前記の各機能に用いるLINE Payカードは,クレジットカードではないから,「ホワイトカード」に当たらない。また,上記LINE Payカードが決済等に使用できる金額は,常に当該アカウントの残高と一致するから,これが契約時に設定されてある程度固定される,所定期

5 間内で使用可能な金額であるとはいうことはできず,「使用限度額」の構成を有するとも認められない。ウ したがって,本件各システムが,構成要件A等の「ホワイトカード」及び「使用限度額」の構成を有するとは認められないので,本件発明の技術的範囲に属するということはできない(なお,原告の均等侵害の主張は上記構成要件の非充足を前提とするものではないので,判断することを要しない。 。)

3 よって,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部

裁判長裁判官

佐 藤 達 文

裁判官

三 井 大 有

裁判官

? 野 俊 太 郎

別紙1

物件目録「LINE Pay」サービスにおいて以下の機能を実現するコンピュータシステム

1 LINE Payアカウントを有するユーザが携帯端末等を使用して他のユーザのLINE Payアカウントに電子マネーを送金する機能

2 訴外株式会社ファミリーマートの運営するコンビニエンスストアにおいてユーザのLINE Payアカウントに電子マネーを入金する機能

3 ユーザが「LINE Pay」サービスにおいて登録した銀行口座から口座振替の方法によりLINE Moneyアカウントに電子マネーを入金する機能以上

別紙2-1

本件送金機能の概要1 ユーザが,スマートフォン上でLINEを起動させ,下記の画面を表示する。2 前記画像中の上段・中央の「送金」ボタンを選択すると,送金先候補として,LINEアカウントが表示される。送金先のLINEアカウントの左横をタップすると,以下の画面のように「✔」のマークが付される。3 前記画像中の右上の「選択」ボタンを押すと,以下の画面に遷移する。

4 前記画像中の金額のアイコンをタップし,送金額(本件では100円)を入力すると,以下の画面に遷移する。

5 前記画像中の下部の「次へ」というアイコンをタップすると,以下の画面に遷移する。この画面では,受金者のLINEアカウントと送金額が同一画面で表示されている。

6 前記画像中の下部の「送金」というアイコンをタップした後,パスワード入力画面でパスワードを入力すると,以下の画面に遷移する。

7 前記画像中の中心部の「確認」というアイコンをタップすると,送金者の端末には以下の送金メッセージが表示される。

8 また,受金者の端末には以下の送金メッセージが表示される。

別紙2-2

本件入金機能の概要1 受金者がスマートフォン上でLINEを起動し,LINE Payを選択すると,以下の画面が表示される。2 上記画面の上段・左側の「チャージ」ボタンを受金者が押すと,以下の画面に遷移する。この画面では入金方法の候補が表示されている。3 上記画面において受金者が「コンビニ」を選択すると,以下の画面に遷移する。当該画面は入金額を設定する画面であり,受金者は任意の金額(以下の画面では1000円)を入力する。4 上記画面の下部の「チャージ」ボタンを押すと,以下の画面に遷移する。当該画面では,入金する際に必要となる「受付番号」及び「予約番号(申込番号)」が表示される。受金者は送金者にこれらの番号を通知する(以下では,送金者と受金者が異なる例を用いて説明するが,同様のステップにより,送金者は自己のアカウン5 トに入金することもできる。)。5 受金者から「受付番号」及び「予約番号(申込番号)」の通知を受けた送金者が,ファミリーマートの店舗内に設置されているFamiポートを使用して該当サービスを選択し,第1番号入力画面で「受付番号」(以下の画面では「150071」)を入力する。6 送金者が第2番号入力画面で「予約番号(申込番号)」(以下の画面では「04167398656」)を入力する。7 以下のご注文商品一覧の画面が表示される。送金者は,①「お客様氏名」の欄に受金者の氏名,②「合計金額」の欄に入金額が各々記載されていることを確認し(下記赤枠部分参照),右下の「OK」ボタンを押す。8 7で「OK」ボタンを押すと,Famiポートから,Famiポート申込券が発券される。Famiポート申込券の中部にはバーコードが印刷されている。

9 送金者は,8のFamiポート申込券をファミリーマートの店員に提示し,店員は,当該申込券に印刷されたバーコードを,POSレジのバーコードリーダで読み取る。読み取りが完了すると,送金者は,店員に入金額である1000円を支払う。支払後に送金者に発行される領収書は以下のとおりである。受金者の氏名の下に,送金者の入力した「予約番号(申込番号)」(本件では「04167398656」)が記載されている(下記赤枠部分参照)。

10 9の完了直後,受金者のLINE Cashアカウント内の電子マネーの残高が,送金者から入金があった額(本件では1000円)だけ増加する。

別紙2-3

本件振替入金機能の概要本件振替入金機能は,ユーザが当該機能を用いて電子マネーを自分のLINE M5 oneyアカウントに入金するステップと,訴外株式会社日本カードネットワーク(以下「日本カードネットワーク」という。)の「リアルタイム口座振替サービス」により実現される。1 ユーザが本件振替入金機能を用いて電子マネーをLINE Moneyアカウントに入金するステップは,以下のとおりである(甲10号証)。(1) スマートフォンで被告サービスを起動し,下記の画面を表示する。(2) 前記画面の「銀行口座」ボタンを押すと,下記の画面に遷移する。(3) 前記画面で,ユーザが銀行口座の登録を希望する銀行を選択すると,以下の画面に遷移するので,口座情報を入力する。(4) 前記画面において,口座情報の入力を完了し,さらに所定の入力を完了すると,下記の画面に遷移する。この時点で,被告サービスにおいて,ユーザが本件振替入金機能を利用する際に用いる銀行口座(以下,当該銀行口座を「ユーザ銀行口座」といい,ユーザ銀行口座を管理する銀行を「ユーザ銀行」という。)が登録5 される。(5) ユーザ銀行口座の登録完了後に被告サービスを起動すると,以下の画面が表示される。(6) 前記画面の「チャージ」ボタンを押すと,以下の画面に遷移する。(7) 前記画面の「銀行口座」ボタンを押すと,以下の画面に遷移し,ユーザ銀行口座が画面に表示される。(8) 前記画面に表示されているユーザ銀行口座を選択すると,以下の画面に遷移する。この画面で入金額を指定する。この検証では,入金額として100円を指定した。(9) 前記画面において,入金額を指定し(以下では,ここで指定した入金額を「指定入金額」という。),「チャージ」ボタンを押すと,以下の画面に遷移する。この時点でユーザのLINE Moneyアカウントへの指定入金額の入金処理が行われている。(10) 前記の入金処理が完了すると,ユーザのLINE Moneyアカウント内の残高が指定入金額分増加する。(11) 前記(10)の後のユーザ銀行口座の入出金明細は以下のとおりである。下記のとおり「ラインペイ(カ」(すなわち被告)名義の銀行口座に向けて指定入金額が入金された旨が表示される。2 上記のステップのうち,1(8)~(11)のステップを図にすると,以下のとおりである。(8)銀行口座・入金額の送信LINE Pay(9)(10)LINE Moneyアカウントユーザ の残高増加A銀行A銀行 B銀行(11)指定入金額の入金ユーザの口座 LINE Pay(株)の口座(※) 図中の(8)~(11)は、本文中の2(8)~(11)に対応する。なお,ユーザ銀行口座の入出金明細からは,被告の保有する銀行口座(以下「被告の銀行口座」という。)が「A銀行」内にあるか否かが不明であるので,上記図では,便宜上,「B銀行」としている。3 上記図中の,ユーザ銀行口座から被告の銀行口座への振替入金において,被告は日本カードネットワークの提供するリアルタイム口座振替サービスを利用している(甲11)。リアルタイム口座振替サービスは,口座振替契約を有する預金者の銀行口座から即時に口座振替により資金決済を実現するサービスであり,その概要は以下のとおりである(甲12・3頁)。当該サービスの概要を,上記1で述べたステップに沿って説明する。(1) 上記図において,「導入企業」は被告を,「CARDNET」は日本カードネットワークを,「金融機関」はユーザ銀行を,「利用者口座」はユーザ銀行口座5 を,「収納企業口座」は被告の銀行口座を指す。なお,導入企業である被告は,ユーザ銀行内に自社の銀行口座を持つことが前提とされている。(2) まず,ユーザがユーザ銀行口座及び入金額を指定した上で「チャージ」ボタンを押すと,被告(導入企業)において当該ユーザ銀行口座の情報及び指定入金額を含む納付書情報が作成される(上記図の◇)。(3) 次に,当該納付書情報が,日本カードネットワークを介して,被告からユーザ銀行へと送信される(上記図の◇~◇)。2 4(4) ユーザ銀行が当該納付書情報を受信すると,ユーザ銀行口座から指定入金額分が銀行別段口座へと振替入金される(上記図の◇)。(5) 銀行別段口座への振替入金が完了すると,入金を受け付けた旨の情報が,日本カードネットワークを介して,ユーザ銀行から被告へと送信される(上記図の◇~◇)。(6) その後,銀行別段口座から,同一銀行内の被告の銀行口座へと指定入金額分が入金される(上記図の◇)。

別紙3-1

本件発明と本件送金システムの各構成の対比1 構成要件A5 以下のとおり,本件送金システムは,構成要件Aを充足する。(1) 本件発明において,「使用限度額」とは,ホワイトカードを店頭で提示する等により,買い物に使用できる限度額である(【0002】参照。)。本件送金システムでは,受金者のLINE Payカードに対応したLINECashアカウントへの入金額に応じて,物品の決済等を行う際の限度額を引き上げることができる。(2) 本件発明において,「受金ID」とは受金にのみ利用可能なIDであるところ,「受金にのみ利用可能」とは,ホワイトカードとの関係において受金にのみ利用され,消費使用には利用されないという意味であり,ホワイトカードと関係の無い場面において利用されるIDも含まれる(【0036】)。本件送金システムでは,送金者は受金者をLINEアカウントで特定し,当該アカウントは,LINE Payカードとの関係においては,受金者を特定するためのみに利用され,物品の決済等に利用されることはない。そのため,当該アカウントは「受金ID」に該当する。(3) 本件発明において「消費使用ID」とは消費使用に利用可能なIDである 【0(006】)。本件送金システムでは,受金者は,送金額だけ増額したLINE Cashアカウント内の電子マネーを用いて物品の決済等を行うことができる。そのため,LINE Cashアカウントは「消費使用ID」に該当する。(4) LINE Payカードは本件送金システムを含む被告サービスによって管理されるカードであるから,「ホワイトカード」に該当する(【0036】)。送金者は,送金の際に受金者のLINEアカウント(受金ID)を選択する。そして,送金が完了すると,受金者のLINE Cashアカウント(消費使用ID)内の電子マネーの残高が増加し,当該アカウントに対応するLINE Payカードの使用限度額が増加する。したがって,LINE Payカードに対応しているLINEアカウント(受金ID)とLINE Cashアカウント(消5 費使用ID)は,あらかじめ紐付けられている。(5) 本件送金システムがホワイトカード「に対する入金システム」を充足することは自明である。2 構成要件B1-1送金する際に,送金者はスマートフォンを操作して受金者のLINEアカウント(受金ID)を選択・入力する。したがって,本件送金システムは,構成要件B1-1を充足する。3 構成要件B1-2送金する際に,送金者はスマートフォンを操作して受金者への送金額を入力する。送金が完了すると,受金者のLINE Payカードの使用限度額は送金額だけ引き上げられる。したがって,送金者のスマートフォンは,LINE Payカードの使用限度額を引き上げようとする額の送金指示を受け付けた旨の情報を取得する機能を有する。一方,本件送金システムでは,送金すべき金額の電子マネーが送金者のアカウント内にあればよく,送金指示の際に実際に入金のための支払があったことは要しない。「入金受付情報」は,実際に入金のための支払があったことを示す情報であるとされている(【0040】)。そのため,本件発明と本件送金システムは,送金額に関する情報が,実際に入金を受け付けた旨の情報であるか(本件発明の「入金受付情報」),送金者のアカウント内にある電子マネーの送金指示を受け付けた旨の情報(以下「送金指示受付情報」という。 であるか) (本件送金システムの場合),という点において,相違する(以下の対比では,「入金受付情報」に関する相違についての指摘は省略する。)。4 構成要件B1-3送金が完了すると,送金者のスマートフォンで選択されたLINEアカウントで特定される受金者について,送金額だけ,LINE Cashアカウント内の電子マネーの残高が増加する。5 したがって,送金者のスマートフォンが,受金者のLINEアカウントと送金額を関連付けて出力していることは明らかであり,本件送金システムは,構成要件B1-3を充足する。5 構成要件B2「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」は,携帯電話などの携帯端末に組み込むことができる(【0034】)から,送金者のスマートフォンは当該装置に該当する。したがって,本件送金システムは,構成要件B2を充足する。6 構成要件C1-1構成要件B1-3で述べた送金が可能であるのは,被告コンピュータシステムが,送金者のスマートフォンから,受金者のLINEアカウントに関連づけられた送金指示受付情報を受信し,当該情報に基づいて送金処理を実行したからである。したがって,本件送金システムは構成要件C1-1を充足する。7 構成要件C1-2構成要件B1-3及びC1-1で述べた送金が可能であるのは,被告コンピュータシステムが,送金指示受付情報に関連づけられた受金者のLINEアカウント(受金ID)に対応するLINE Cashアカウント(消費使用ID)を取得し,当該アカウントへの送金処理を実行したからである。したがって,本件送金システムは,構成要件C1-2を充足する。8 構成要件C1-3送金が完了すると,受金者のLINE Cashアカウント(消費使用ID)内の電子マネーの残高が増加する。これは,被告コンピュータシステムから受金者のLINE Cashアカウント内の電子マネーの残高を送金額だけ増やす旨の命令が送信されたからである。したがって,本件送金システムは,構成要件C1-3を充足する。9 構成要件C25 前記6~8で述べたことから,被告コンピュータシステムが構成要件C2の「引上命令装置」に該当する構成を含むことは明らかである。したがって,本件送金システムは,構成要件C2を充足する。10 構成要件D1-11(4)で述べたとおり,LINE Payカードに対応しているLINEアカウント(受金ID)とLINE Cashアカウント(消費使用ID)は,あらかじめ紐付けられている。当該紐付けを保持する紐付けテーブルが,被告コンピュータシステムによって保持されていることは明らかである。したがって,本件送金システムは,構成要件D1-1を充足する。

11 構成要件D1-2既述のとおり,送金が完了すると,送金者のスマートフォンで選択されたLINEアカウントで特定される受金者について,送金額だけ,LINE Cashアカウント内の電子マネーの残高が増加する。これは,被告コンピュータシステムが,受金者のLINE Cashアカウント(消費使用ID)を取得する前提として,受金者のLINEアカウント(受金ID)を取得しているからである。したがって,本件送金システムは,構成要件D1-2を充足する。

12 構成要件D1-3既述のとおり,送金が完了すると,受金者のLINEアカウント(受金ID)に対応するLINE Cashアカウント(消費使用ID)内の電子マネーの残高が増加する。これは,被告コンピュータシステムが,受金者のLINEアカウント(受金ID)に対応するLINE Cashアカウント(消費使用ID)を取得して,当該アカウントを「引上命令装置」に送信したからである。したがって,本件送金システムは,構成要件D1-3を充足する。

13 構成要件D2前記10~12で前述したことから,被告コンピュータシステムは「ホワイトカードID管理装置」に該当する構成を含むことは明らかである(本件発明では複数の装5 置が物理的に一の装置として実現されていてもよいし,逆に一の装置が物理的に複数の装置を組み合わせて実現されてもよい(【0028】)から,被告コンピュータシステムは,単一の装置が「引上命令装置」と「ホワイトカードID管理装置」の両者の機能を併せて有していてもよく,別々の装置が上記装置の機能を実現していてもよい。)。したがって,本件送金システムは,構成要件D2を充足する。

14 構成要件E前述したことから,本件送金システムが構成要件Eを充足するのは自明である。

別紙3-2

本件発明と本件入金システムの各構成の対比1 構成要件A以下のとおり,本件入金システムは,構成要件Aを充足する。5 (1) 本件入金システムでは,受金者のLINE Payカードに対応したLINECashアカウントへの入金額に応じて,物品の決済等を行う際の使用限度額を引き上げることができる。(2) 本件入金システムでは,送金者が「予約番号(申込番号)」をFamiポートに入力し,当該装置から印刷されたバーコードをコンビニエンスストアの店員がPOSレジに読み込ませ,入金金額を送金者から受け取った上で所要の処理を行うと,受金者のLINE Cashアカウントに当該金額と同額が入金される。このようにPOSレジ等(後記2で定義される。)での処理の結果,受金者が入金先として特定されるのは,送金者の入力した「予約番号(申込番号)」(別紙2-2の6では「04167398656」)によって,受金者が一意に特定されるからである。「予約番号(申込番号) によって受金者が特定されることは,」①送金者が上記番号を入力すると,Famiポートの画面上に受金者の氏名が表示されること及び②入金後に送金者が受け取る領収書に,受金者の氏名のすぐ下に「予約番号(申込番号)」が記載されていること等からも裏付けられる(「受付番号」は,コンビニ決済の代行処理を行う業者(本件では「株式会社イーコンテクスト」 のサーバコンピュータを呼び出すための番号であると考えられる。 。) )「予約番号(申込番号)」は受金にのみ利用され,物品の決済等の場面では利用されない。以上から,「予約番号(申込番号)」は「受金ID」に該当する。(3) 本件入金システムでは,LINE Payカードの利用者は,送金者からの入金額だけ増額したLINE Cashアカウント内の電子マネーを用いて物品の決済等を行うことができる。そのため,LINE Cashアカウントは「消費使用ID」に該当する。(4) LINE Payカードは,本件入金システムを含む被告サービスによって管理されるカードであり,本件発明の「ホワイトカード」に該当する 【0036】 。( )前記(2)で述べた受金者のアカウントへの入金が可能であるためには,「予約番5 号(申込番号) (受金ID)とLINE」 Cashアカウント(消費使用ID)があらかじめ紐づけられ,前者から後者を特定することが可能となっている必要がある。(5) 本件入金システムがホワイトカード「に対する入金システム」を充足することは自明である。2 構成要件B1-11(2)及び(4)で述べた受金者のアカウントへの入金が可能であるためには,POSレジ等(POSレジは単に入金を受け付ける機能を果たすのみであり,当該POSレジと連携する別の装置が当該番号を取得している可能性がある。当該装置が存在する場合,両装置を併せて「POSレジ等」という。なお,当該装置が存在しない場合でも,POSレジを単独で「POSレジ等」と呼称することがある。)が受金者を特定する「予約番号(申込番号)」を取得する必要がある。POSレジ等が当該番号を取得していることは,POSレジ等での処理の完了後に送金者が受領する領収書に「予約番号(申込番号)」が記載されていることからも裏付けられる。したがって,本件入金システムは,構成要件B1-1を充足する。3 構成要件B1-2送金者がPOSレジにて入金額を支払うと,受金者のLINE Payカードの使用限度額は入金額だけ引き上げられるから,したがって,POSレジ等は,LINE Payカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報を取得する機能を有している。したがって,本件入金システムは構成要件B1-2を充足する。4 構成要件B1-3POSレジ等での操作が完了すると,受金者について,入金額だけ,LINE Cashアカウント内の電子マネーの残高が増加するから,本件入金システムでは,POSレジ等から(受金者を特定する)「予約番号(申込番号)」と入金受付情報とが関連付けて出力され,当該出力された情報に基づいて受金者のアカウントへの5 入金処理が行われている。したがって,本件入金システムは,構成要件B1-3を充足する。5 構成要件B2「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」は,コンビニエンスストアなどに設置された店頭端末に組み込まれ実現することができる 【0034】 。( ) そのため,POSレジ等は当該装置に該当する。したがって,本件入金システムは構成要件B2を充足する。6 構成要件C1-1構成要件B1-3で述べた受金者のLINE Cashアカウントへの入金が可能であるのは,被告コンピュータシステムが,「予約番号(申込番号)」と関連付けられた入金受付情報をPOSレジ等から受信し,当該情報に基づいて入金処理を実行したからである。したがって,本件入金システムは構成要件C1-1を充足する。7 構成要件C1-2構成要件B1-3及びC1-1で述べた受金者のLINE Cashアカウントへの入金が可能であるのは,被告コンピュータシステムが,入金受付情報に関連付けられた「予約番号(申込番号)」と紐付けられているLINE Cashアカウント(消費使用ID)をシステム内で取得し,当該アカウントへの入金処理を実行したからである。したがって,本件入金システムは,構成要件C1-2を充足する。8 構成要件C1-3入金が完了すると,受金者のLINE Cashアカウント(消費使用ID)内の電子マネーの残高が送金者からの入金額だけ増加する。これは,被告コンピュータシステムから,受金者のLINE Cashアカウント内の電子マネーの残高を送金者からの入金額だけ増やす旨の命令が送信されたからである。したがって,本件入金システムは,構成要件C1-3を充足する。5 9 構成要件C2前記6~8で述べたことから,被告コンピュータシステムが構成要件C2の「引上命令装置」に該当する構成を含むことは明らかである。10 構成要件D1-1前記1(4)で述べたとおり,LINE Cashアカウント(消費使用ID)と「予約番号(申込番号)」(受金ID)とは,あらかじめ紐付けられている。これらの2つのIDを紐付けた紐付けテーブルが,被告コンピュータシステムによって保持されていることは明らかである。したがって,本件入金システムは,構成要件D1-1を充足する。11 構成要件D1-2既述のとおり,入金が完了すると,受金者について,入金額だけ,LINE Cashアカウント内の電子マネーの残高が増加する。これは,被告コンピュータシステムが,受金者のLINE Cashアカウント(消費使用ID)を取得する前提として,「予約番号(申込番号)」(受金ID)を受信しているからである。したがって,本件入金システムは,構成要件D1-2を充足する。12 構成要件D1-3既述のとおり,入金が完了すると,受金者について,入金額だけ,LINE Cashアカウント内の電子マネーの残高が増加する。これは,被告コンピュータシステムが,「予約番号(申込番号)」(受金ID)に紐付けられているLINE Cashアカウント(消費使用ID)を取得し,当該アカウントを「引上命令装置」に送信したからである。したがって,本件入金システムは,構成要件D1-3を充足する。13 構成要件D2前記10~12で述べたことから,被告コンピュータシステムは「ホワイトカードID管理装置」に該当する構成を含むことは明らかである。したがって,本件入金システムは,構成要件D2を充足する。14 構成要件E前述したことから,本件入金システムが構成要件Eを充足するのは自明である。

別紙3-3

本件発明と本件振替入金システムの各構成の対比1 構成要件A以下のとおり,本件振替入金システムは,構成要件Aを充足する。5 (1) 本件振替入金システムは,ユーザのLINE Payカードに対応したLINE Moneyアカウントへの入金額に応じて,物品の決済等を行う際の使用限度額を引き上げることができる。(2)ア 本件振替入金機能の利用に際して,ユーザは,ユーザ銀行口座を選択し,入金額を指定する。すると,ユーザのLINE Moneyアカウントに指定入金額分の電子マネーが入金される。これは,ユーザが選択したユーザ銀行口座の情報(銀行名,支店名及び口座番号等)によって入金先のLINE Moneyアカウントが特定されるからである。イ 前記アで述べたことは,以下の点から裏付けることができる。本件振替入金機能では,ユーザ銀行において振替入金処理が完了すると,入金を受け付けた旨の情報,例えば「甲銀行乙支店の××口座から○○円の入金があった」旨の情報が被告に送信される。当該情報に基づいて被告コンピュータシステムはどのユーザのLINE Moneyアカウントの残高を増加させるかを判断するが,上記情報のうち,受金者を特定できる情報は,ユーザ銀行口座の情報(上記例で言えば「甲銀行乙支店の××口座」)である。したがって,ユーザ銀行口座の情報は当該ユーザを識別するIDとして使用されている。ウ 本件振替入金機能では,ユーザ銀行口座の口座情報は受金にのみ利用され,物品の決済等の場面では利用されない。したがって,当該情報は「受金ID」に該当する。(3) 本件振替入金システムでは,LINE Payカードの利用者は,指定入金額分だけ増額したLINE Moneyアカウント内の電子マネーを用いて物品の決済等を行うことができる。そのため,LINE Moneyアカウントは「消費使用ID」に該当する。(4) LINE Payカードは本件振替入金システムを含む被告サービスによって管理されるカードであり,本件特許発明の「ホワイトカード」に該当する 【0(5 036】)。(2)で述べたユーザのアカウントへの入金が可能であるためには,ユーザ銀行口座の情報(受金ID)とLINE Moneyアカウント(消費使用ID)があらかじめ紐づけられ,前者から後者を特定することが可能となっている必要がある。(5) 本件振替入金システムがホワイトカード「に対する入金システム」を充足することは自明である。を充足することは自明である。2 構成要件B1-1前記1(2)及び(4)で述べたユーザのアカウントへの入金が可能であるためには,当該アカウントに対する入金に際して,被告サーバにおいてユーザを特定するユーザ銀行口座の口座情報を取得する必要がある。したがって,本件振替入金システムは,構成要件B1-1を充足する。3 構成要件B1-2入金する際に,ユーザはスマートフォン等を操作して入金額を入力する。その結果,ユーザ銀行口座から銀行別段口座へと指定入金額の振替入金が行われ,ユーザのLINE Payカードの使用限度額は指定入金額分だけ引き上げられる。これは,被告がユーザ銀行から,当該振替入金が完了した旨の情報を受信しているからである。ユーザ銀行口座から銀行別段口座への指定入金額の振替入金が完了した旨の情報は,ホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報であるから,「入金受付情報」に該当する。そのため,本件振替入金機能を実現する被告サーバは,入金受付情報を取得する機能を有する。したがって,本件振替入金システムは構成要件B1-2を充足する。4 構成要件B1-3入金操作が完了すると,ユーザについて,指定入金額分だけ,LINE Moneyアカウント内の電子マネーの残高が増加するから,本件振替入金システムでは,5 被告サーバにおいて,ユーザ銀行口座の口座情報と入金受付情報とが関連付けて出力され,当該出力された情報に基づいてユーザのLINE Moneyアカウントへの入金処理が行われている。したがって,本件振替入金システムは,構成要件B1-3を充足する。5 構成要件B2前記2~4で述べたことから,被告コンピュータシステムが構成要件B2の「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」に該当する構成を含むことは明らかである。6 構成要件C1-1構成要件B1-3で述べた入金が可能であるのは,被告サーバが,被告コンピュータシステムから,ユーザ銀行口座の情報に関連付けられた入金受付情報を受信し,当該情報に基づいてユーザのLINE Moneyアカウントへの入金処理を実行したからである。したがって,本件振替入金システムは構成要件C1-1を充足する。7 構成要件C1-2構成要件B1-3及びC1-1で述べた入金が可能であるのは,被告サーバが,入金受付情報に関連付けられたユーザ銀行口座の口座情報(受金ID)に対応するLINE Moneyアカウント(消費使用ID)を取得し,当該アカウントへの入金処理を実行したからである。したがって,本件振替入金システムは構成要件C1-2を充足する。8 構成要件C1-3入金が完了すると,ユーザのLINE Moneyアカウント(消費使用ID)内の電子マネーの残高が増加する。これは,被告サーバからユーザのLINE Moneyアカウント内の電子マネーの残高を指定入金額分だけ増やす旨の命令が送信されたからである。したがって,本件振替入金システムは構成要件C1-3を充足する。9 構成要件C25 前記6~8で述べたことから,被告コンピュータシステムが構成要件C2の「引上命令装置」に該当する構成を含むことは明らかである。したがって,本件振替入金システムは,構成要件C2を充足する。10 構成要件D1-1前記1(4)で述べたとおり,LINE Payカードに対応しているユーザの銀行口座の口座情報(受金ID)とLINE Moneyアカウント(消費使用ID)は,あらかじめ紐付けられている。当該紐付けを保持する紐付けテーブルが,被告サーバによって保持されていることは明らかである。したがって,本件振替入金システムは構成要件D1-1を充足する。11 構成要件D1-2既述のとおり,入金が完了すると,ユーザ銀行口座の情報で特定されるユーザについて,指定入金額分だけ,LINE Moneyアカウント内の電子マネーの残高が増加する。これは,被告サーバが,ユーザのLINE Moneyアカウント(消費使用ID)を取得する前提として,ユーザ銀行口座の情報(受金ID)を取得しているからである。したがって,本件振替入金システムは構成要件D1-2を充足する。12 構成要件D1-3既述のとおり,入金が完了すると,ユーザ銀行口座の情報(受金ID)に紐付けられているLINE Moneyアカウント(消費使用ID)内の電子マネーの残高が増加する。これは,被告サーバが,ユーザ銀行口座の情報(受金ID)に対応するLINE Moneyアカウント(消費使用ID)を取得して,当該アカウントを「引上命令装置」に送信したからである。したがって,本件振替入金システムは構成要件D1-3を充足する。13 構成要件D2前記10~12で述べたことから,被告コンピュータシステムが「ホワイトカードID管理装置」に該当する構成を含むことは明らかである。したがって,本件振替入金システムは構成要件D2を充足する。14 構成要件E前述したことから,本件振替入金システムが構成要件Eを充足するのは自明である。

別紙4

争点3(本件発明が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について1 争点3-1(無効理由1(乙9発明に基づく進歩性欠如1))について5 (被告の主張)本件発明は,乙9発明と,乙10公報,日本経済新聞の記事(乙11・左欄「新マネー考 第1部 電子が開く新世界(5)」。以下「乙11記事」という。)及び乙12公報に記載の周知技術に基づき当業者が容易に想到し得たものであるから,本件特許は,進歩性欠如により無効にされるべきものである。なお,無効理由1は,本件発明に係るシステムは1つの装置として実現されてもよいとの原告の主張を前提とする予備的主張である。(1) 乙9発明の内容乙9公報の段落【0001】,【0005】,【0008】~【0012】,【0024】~【0030】,【0042】,【0043】,【0047】及び【0048】並びに【図1】,【図2】及び【図7】の記載によれば,乙9発明の内容は,以下のとおりと認められる。a クレジットカードの利用限度額に基づいて当該カードの利用可否を判定するシステムに係る発明であって,b1-1 クレジットカードの引落し口座に入金をするに際して,引落し口座の口座番号の情報を取得する手段と,b1-2 その引落し口座の残高を引き上げようとする入金金額の情報を取得する手段とb1-3 取得した引落し口座の口座番号と入金金額の情報を出力する手段と,b2 を有する,クレジットカードに入金を指示する手段と,c1-1 引落し口座の口座番号の情報と関連付けられた入金金額の情報を受信する手段と,c1-3 引落し口座の口座番号で特定される口座の残高に,入金金額の加算を指示する手段と,c2 を有する手段と,d1-2 入金金額の情報を受信する手段と,5 d2 を有する手段と,e からなる,クレジットカードの利用限度額を引き上げるシステム。(2) 一致点本件発明と乙9発明とは,以下の構成を有する点で一致する。a 使用限度額をホワイトカードに紐づけられた入金額に応じて引き上げることが可能で,受金に利用可能な受金IDと,消費使用に利用可能な受金ID(=消費使用ID)を用いたホワイトカードに対する入金システムであって,b1-1 ホワイトカードに対する入金に際して,入金すべきホワイトカードの受金IDを取得する受金ID取得部と,b1-2 そのホワイトカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報である入金受付情報を取得する入金受付情報取得部とb1-3 取得した受金IDと,入金受付情報とを関連付けて出力する出力部と,b2 を有するホワイトカード使用限度額引上指示装置と,c1-1 受金IDと関連付けられた入金受付情報をホワイトカード使用限度額引上指示装置から受信する受信部と,c1-3 消費使用IDと関連付けた使用限度額引上額を含む引上命令を送信する引上命令送信部と,c2 を有する引上命令装置と,d1-2 引上命令装置から受金IDを受信する受金ID受信部と,d1-3 受信した受金ID(=消費使用ID)を引上命令装置に送信する消費使用ID送信部と,d2 を有するホワイトカードID管理装置と,e からなるホワイトカード使用限度額引き上げシステム。(3) 相違点本件発明と乙9発明は,以下の点で相違する。ア 相違点15 本件発明では,受金にのみ利用可能な受金IDと,これとは異なる消費使用に利用可能な消費使用IDがあらかじめ紐付けられている(構成要件A)のに対し,乙9発明では,受金IDと消費IDに共通の「引落し口座の口座番号」を使用している点。イ 相違点2乙9発明には,本件発明の構成要件C1-2の「受信した入金受付情報に関連付けられたホワイトカード受金IDと紐付けられている消費使用IDをホワイトカードID管理装置から取得する消費使用ID取得部」に係る構成がない点。ウ 相違点3乙9発明には,本件発明の構成要件D1-1の「消費使用IDと受金IDとを紐付けた紐付テーブルを保持する紐付テーブル保持部」,及び,構成要件D1-3の「受信した受金IDに紐付けられている消費使用IDを紐付テーブルから取得」する構成がない点。(4) 相違点の検討相違点1~3は,いずれも,本件発明が,ホワイトカードの受金にのみ利用可能な受金IDとホワイトカードの消費使用に利用可能な消費使用IDの二種類のIDを用いたことにより生じたものであり,相互に関連しているところ,クレジットカード(ホワイトカード)の引落し口座への入金のために,受金にのみ利用可能な受金IDを消費使用に利用可能な消費使用IDとは別に用いる技術は,本件特許の出願前に周知の技術であった(乙10公報の【請求項1】,段落【0001】~【0007】,【0011】,【0061】,【0072】,【0074】,【0080】,【0174】及び【図8】,乙11記事,乙12公報の段落【0001】,【0046】及び【0047】)。そして,乙9発明に当該周知技術を適用することにより,別表1の構成要件A,C1-2,D1-1及びD1-3に関する記載のとおり,相違点1~3に係る構5 成が得られる。したがって,本件発明は,乙9発明及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明し得たものである。(5) 原告は,LINE Payカード(JCB)の券面に印刷されたカード番号について,LINEPayカードを保有するユーザにおいて,受金ID(LINEアカウント等)と当該カード番号はあらかじめ紐付けられているから,当該カード番号も消費使用IDに該当すると主張するが,これによれば,乙9発明も,入金は口座番号を特定することにより,消費使用はクレジットカードのクレジットカード番号を示すことによりそれぞれ行うものであり,かつ,口座番号とクレジットカード番号はあらかじめ紐付けられているから,口座番号が本件発明の「受金ID」に,クレジットカード番号が「消費使用ID」に該当することになり,本件発明の構成を備えることになる。したがって,かかる原告の主張を前提とすると,本件発明は,乙9発明に基づき新規性を欠くことになる。(原告の主張)乙9発明に被告主張の周知技術を組み合わせても,相違点に係る技術的構成には到達し得ないから,本件発明が,乙9発明と周知技術に基づき当業者が容易に想到することができたものであるとはいうことはできず,本件特許は,進歩性欠如により無効にされるべきものではない。(1) 乙9発明は,クレジット決済を前提とする発明であり(乙9公報の段落【0001】),信販会社による信用供与及び後払い決済を前提とする技術思想に立つものである。これに対し,本件発明は,他者からの送金を受金することなどでユーザの所持金が当該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えたとしても,カード会社に逐一連絡などして所定の手続を経なければそれが使用限度額に反映されないという課題を解決することを目的とするものである。そうすると,乙9発明は,新しい送受金のスキームを提供する本件発明とは技術思想を全く異に5 し,本件発明の課題も何ら開示していないから,進歩性検討の前提としての主引例としての適格性を欠いている。(2) 本件発明は,受金にのみ利用可能な受金IDと,消費使用に利用可能な消費使用IDとの二種類のIDがあらかじめ紐付けられているという構成を含むが,乙9発明は,「引落し口座の口座番号」という一種類のIDを開示するにとどまり,二種類のIDを開示したり示唆したりするものではないから,上記二種類のIDを用いるという構成を採用すべき動機付けが存在しない。(3) 乙9発明は,単に,限度額設定規則に従って,口座取引情報からクレジットカードの利用限度額を決定することを開示するものにすぎず(乙9公報の段落【0042】,【0043】),それゆえ,クレジットカードの利用限度額の引上額は,引落し口座への入金額と同額ではなく,引落し口座が入金を受け付けたとしても,それは,クレジットカードの利用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けたことを意味しない。このため,乙9発明が,本件発明の「入金受付情報」及び「入金受付情報取得部」並びに「引上命令」及び「引上命令送信部」を開示しているということはできず,乙10公報等にもこれらに相当する構成は開示されていない。したがって,仮に乙9発明に被告主張の周知技術を組み合わせることができたとしても,上記相違点に係る技術的構成には到達し得ない。2 争点3-2(無効理由2(乙9発明に基づく進歩性欠如2))について(被告の主張)本件発明は,乙9発明と,乙13~16各公報に記載の周知技術に基づき当業者が容易に想到することができたものであるから,本件特許は,進歩性欠如により無効にされるべきものである。なお,無効理由1は,本件入金システムが本件発明の技術的範囲に属し,本件入金機能において入金の際に必要となる「予約番号(申込番号)」が本件発明の「受金ID」に該当するとの原告の主張を前提とした場合の予備的主張である。5 (1) 乙9発明の内容,本件発明と乙9発明の一致点及び相違点は,前記1(被告の主張)(1)~(3)に記載のとおりである。(2) 相違点の検討相違点1~3は,前記のとおり,いずれも,本件発明が,ホワイトカードの受金にのみ利用可能な受金IDとホワイトカードの消費使用に利用可能な消費使用IDの二種類のIDを用いたことにより生じたものであり,相互に関連しているところ,クレジットカードの引落し口座への入金(振込)のために,受金にのみ利用可能な「仮口座番号」を,消費使用に利用可能な「本口座番号」とは別に用いる技術は,本件特許の出願前に周知の技術であった(乙13公報の【要約】,【請求項1】,段落【0003】,【0004】,【0030】,【0031】,【0043】及び【図5】,乙14公報の【要約】,【請求項1】,【請求項7】,段落【0008】,【0022】及び【図12】,乙15公報の【請求項4】,段落【0030】及び【0035】,乙16公報の【要約】,【請求項1】,【請求項2】,段落【0005】及び【0007】)。乙9発明に当該周知技術を適用すると,相違点1~3に係る一連の構成が得られるので,本件発明は,乙9発明及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものである。(原告の主張)前記1(原告の主張)と同様の理由により,乙9発明に被告主張の周知技術を組み合わせても,相違点に係る技術的構成には到達し得ないから,本件発明が,乙9発明と周知技術に基づき当業者が容易に想到することができたものであるとはいうことはできず,本件特許は,進歩性欠如により無効にされるべきものではない。3 争点3-3(無効理由3(乙17発明に基づく新規性欠如))について(被告の主張)本件発明は,乙17発明と同一であるから,本件特許は新規性欠如により無効にされるべきものである。5 なお,無効理由3は,本件発明の「使用限度額」に電子マネー等のアカウント残高が含まれ,本件振替入金システムが本件発明の技術的範囲に属するとの原告主張を前提とした場合の予備的主張である。(1) 乙17発明の内容乙17公報の【請求項1】,【請求項2】,段落【0001】,【0005】,【0011】~【0014】,【0019】,【0020】,【0024】,【0048】~【0051】,【0053】~【0063】及び【図1】によれば,本件発明の内容は,以下のとおりである。a 携帯電話(携帯端末)に装着されたICカードの電子マネーの残高をチャージ額に応じて引き上げることが可能で,電子マネーのチャージに使用するチャージ元の銀行名(銀行口座)と,アミューズメント場での発券に使用する携帯IDとがあらかじめ紐付けられている電子マネーシステムであって,b1-1 ICカードに対する電子マネーのチャージに際して,電子マネーのチャージ元の銀行名(銀行口座)の情報を取得する手段と,b1-2 そのICカードの電子マネーの残高を引き上げようとするチャージ額の情報を取得する手段とb1-3 取得した電子マネーのチャージ元の銀行名(銀行口座)と,チャージ額の情報を出力する手段と,b2 を有する,ICカードに電子マネーのチャージを指示する手段と,c1-1 電子マネーのチャージ元の銀行名(銀行口座)の情報と関連付けられたチャージ額の情報を受信する手段と,c1-2 受信した電子マネーのチャージ元の銀行名(銀行口座)と紐付けられている携帯IDを取得する手段と,c1-3 携帯IDで特定される携帯電話(携帯端末)に装着されたICカードの電子マネーの残高に,チャージ額の加算を指示する手段と,c2 を有する手段と,5 d1-1 携帯IDと電子マネーのチャージ元の銀行名(口座番号)等の情報(登録情報)を予め登録する手段と,d1-2 チャージ元の銀行名(銀行口座)の情報を受信する手段と,d1-3 チャージ元の銀行名(銀行口座)に対応する携帯IDを登録情報に基づいて取得する手段と,d2 を有する手段と,e からなる,電子マネーの残高を引き上げる電子マネーシステム。(2) 本件発明と乙17発明とを対比すると,以下のとおり,両発明は同一である。ア 原告の主張によれば,電子マネーを用いるプリペイドカードは,本件発明の「ホワイトカード」に当たるから,乙17発明の「携帯電話に装着されたICカード」は,本件発明の「ホワイトカード」に相当する。イ 原告の主張によれば,本件発明の「使用限度額」は,クレジットカードの取引限度額に限定されず,カードを使用するに当たっての限度額のことであるから,乙17発明の「チャージ残高」は,本件発明の「使用限度額」に相当する。ウ 原告の主張によれば,電子マネーのチャージ元の「ユーザ銀行口座の口座情報」は,本件発明の「受金ID」に当たるから,乙17発明の「銀行名(銀行口座)」は,本件発明の「受金ID」に相当する。エ 乙17発明の「携帯ID」は,アミューズメント場での発券に使用する識別情報であるから,本件発明の「消費使用ID」に相当する。オ 乙17発明に係る電子マネーシステムが受けた「チャージ額」は,本件発明の「入金受付情報」に相当する。カ 乙17発明は,電子マネーのチャージ元の銀行名(銀行口座)とチャージ額の情報を受けて,携帯電話に装着されたICカードに電子マネーをチャージするように指示する手段を備えているから,本件発明の「ホワイトカード使用限度引上指示装置」に相当する構成を備えている。キ 乙17発明は,電子マネーのチャージ元の銀行名(銀行口座)の情報と関連5 付けられたチャージ額の情報を受信し,受信した送金元の銀行名(銀行口座)と紐付けられている携帯IDを取得し,当該携帯IDで特定される携帯電話(携帯端末)に装着されたICカードの電子マネーの残高に,チャージ額の加算を指示する手段を備えているから,本件発明の「引上命令装置」に相当する構成を備えている。ク 乙17発明では,携帯IDと電子マネーのチャージ元の銀行名(口座番号)等の登録情報を予め登録する手段と,チャージを行うに際して,チャージされるICカードを装着した携帯IDを取得する手段が備えられている。そして,取得された携帯IDの情報は,電子マネーをICカードにチャージするために電子マネーシステム内において送信されることは当然であるから,乙17発明は,本件発明の「消費使用ID送信部」に相当する構成を備えている。そうすると,乙17発明は,本件発明の「ホワイトカードID管理装置」に相当する構成を備えているということができる。(原告の主張)本件発明は,乙17発明と同一ではなく,新規性を有する。(1) 乙17発明は,携帯IDという一種類のIDを用いてICカードに電子マネーをチャージする発明である(乙17公報の段落【0049】,【0053】~【0060】,【0080】及び【0083】)から,本件発明の二種類のID(受金ID及び消費使用ID)を開示していない点で,本件発明と異なる。(2) 乙17発明において,ユーザが,決済開始メールを受信したICカード付携帯端末110の銀行選択画面1400で銀行を選択した後,チャージ額入力画面1500で携帯ID等を入力すると,ICカード111内のCPUによる所定の認証を経て,ICカード月携帯端末110のCPU1010は,選択した銀行と電子マネーのチャージ額を電子マネーサーバ123に送信し,電子マネーサーバ123は,ICカード付携帯端末110から送信された情報を受信して,指示された銀行140の口座管理コンピュータ141に送信する(乙17公報の段落【05 053】~【0059】)。上記において,ユーザがICカード付携帯端末110を操作している段階では,構成要件B1-2の「入金受付情報」に相当し得る情報は存在しないから,ICカード付携帯端末110は,本件発明の「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」に該当しない。そして,本件発明は,「取得した受金IDと,入金受付情報とを関連付けて出力する出力部と,」との構成(構成要件B1-3)を有するのに対し,乙17発明においては,口座管理コンピュータ141が電子マネーサーバ123から送信されたチャージ額を手数料とともに引落し処理した後,引き落とされたチャージ額と手数料を電子マネーサーバ123に送信する旨を開示するにすぎず(乙17公報の段落【0059】),口座管理コンピュータ141が受信したチャージ額に関連付けられた銀行口座を電子マネーサーバ123から取得することを開示も示唆もしていない。したがって,乙17発明は,「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」を開示していない点で,本件発明と異なる。また,乙17発明には,電子マネーサーバ123から取得した携帯IDと関連付けた使用限度額引上額を含む引上命令を送信すること(構成要件C1-3)について,何ら開示も示唆もないから,「引上命令装置」も開示していない点でも,本件発明と異なる。(3) 構成要件B1-2に関して,被告の主張に基づけば,乙17発明における電子マネーサーバ123が本件発明の「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」に対応付けることになり,電子マネーサーバ123がICカード付携帯端末110から受けたチャージ額は,そのICカード111のチャージ額を引き上げようとする額の入金を受け付けた旨の情報でなければならないが,電子マネーサーバ123は,ICカード付携帯端末110からチャージ額を受けた時点では,いまだ入金を受け付けたわけではないから,当該チャージ額は,本件発明の「入金受付情報」に該当しない。また,仮に,電子マネーサーバ123が口座管理コンピュータ141から受け5 たチャージ額を,本件発明の「入金受付情報」に対応付けると,電子マネーサーバ123は,銀行口座と当該チャージ額とを口座管理コンピュータ141に送信していない。したがって,乙17発明は,本件発明の「入金受付情報取得部」を開示していない点で,本件発明と異なる。4 争点3-4(無効理由4(乙18入金発明に基づく新規性欠如))について(被告の主張)本件発明は,乙18入金発明と同一であるから,本件特許は新規性欠如により無効にされるべきものである。なお,無効理由4は,本件発明の「使用限度額」に電子マネー等のアカウント残高が含まれ,本件振替入金システムが本件発明の技術的範囲に属するという原告主張を前提とした場合の予備的主張である。(1) 乙18入金発明の内容乙18文献の15~17,60~64,69~74及び80頁の記載によれば,乙18文献には,以下の発明が記載されている。a Edyカード(Edyを利用するためのICチップ及びICアプリが内蔵されているおサイフケータイ)の電子マネーの残高をチャージ額に応じて引き上げることが可能で,チャージに使用するクレジットカード(番号)と,Edyを使って買い物等をする際に使用するEdy番号とがあらかじめ紐付けられている入金システムであって,b1-1 Edyカードに対する電子マネーのチャージに際して,クレジットカード(番号)の情報を取得する手段と,b1-2 そのEdyカードの電子マネーの残高を引き上げようとするチャージ額の情報を取得する手段とb1-3 取得したクレジットカード(番号)と,チャージ額の情報を出力する手段と,5 b2 を有する,Edyカードの残高の引上げを指示する手段と,c1-1 クレジットカード(番号)の情報と関連付けられたチャージ額の情報を受信する手段と,c1-2 受信したクレジットカード(番号)と紐付けられているEdy番号を取得する手段と,c1-3 Edy番号で特定されるEdyカードの電子マネーの残高に,チャージ額の加算を指示する手段と,c2 を有する手段と,d1-1 Edy番号とクレジットカード(番号)等が予め登録されており(紐付けされており),d1-2 チャージ額の情報を受信する手段と,d1-3 チャージ額を加算するに際して,クレジットカード(番号)に対応するEdy番号を取得する手段と,d2 を有する手段と,e からなる,電子マネーの残高を引き上げるEdyカード残高引き上げシステム。(2) 本件発明と乙18入金発明とを対比すると,別表2のとおり,両発明は同一である。(原告の主張)本件発明は,乙18入金発明と同一ではないから,新規性を有し,新規性欠如により特許無効審判により無効にされるべきものではない。(1) 乙18入金発明が,クレジット決済を前提にした発明である(乙18文献・73,74頁)のに対し,本件発明は,クレジット決済を前提にした発明ではなく,受金によってユーザの手元にある利用可能な金額が増えたことをリアルタイムに反映させるようにした発明である(本件明細書等の段落【0016】)から,本件発明と乙18入金発明は,技術思想を異にする別発明である。5 (2) 乙18入金発明の「おサイフケータイ」は,そもそも「カード」ではないから,本件発明の「ホワイトカード」に相当せず,この点のみを見ても,本件発明は,乙18入金発明と同一でない。(3) 乙18入金発明において,クレジットカードを使ってのオンラインチャージによりEdyカードにチャージされた金額は,クレジットカード会社の信用供与による与信額に基づくものであって,Edyの運営会社は,その与信額に対応する電子マネーの金額分を当該Edyカードの残高に付け替えているにすぎず,ユーザからEdyカードへのチャージの依頼があった時点では,Edyの運営会社はEdyカードの使用限度額を引き上げようとする額の入金を受け付けたわけではないから,かかる電子マネーのチャージは,本件発明の「入金受付情報」ではない。それゆえ,乙18入金発明は,本件発明の「入金受付情報取得部」に係る構成を有しない。したがって,乙18入金発明は,この点で本件発明と異なる。5 争点3-5(無効理由5(乙18送金発明に基づく進歩性欠如))について(被告の主張)本件発明は,乙18送金発明と,乙11記事,乙12公報,及び乙19~21号証の各文献に記載された周知技術とに基づき当業者が容易に想到することができたものであるから,本件特許は,進歩性欠如により無効にされるべきものである。なお,無効理由5は,本件発明の「使用限度額」に電子マネー等のアカウント残高が含まれ,本件送金システムが本件発明の技術的範囲に属するとの主張を前提とした場合の予備的主張である。(1) 乙18送金発明の内容乙18文献の62,63,81,82頁によれば,乙18文献には,以下の発明が記載されている。a Edyカード(Edyを利用するためのICチップ及びICアプリが内蔵されているおサイフケータイ)の電子マネーの残高を送金額に応じて引き上げる5 ことが可能で,送金及び受金に使用するEdy番号があらかじめ紐付けられているEdyカードに対する送金システムであって,b1-1 Edyカードに対する電子マネーの送金に際して,Edy番号を取得する手段と,b1-2 そのEdyカードの電子マネーの残高を引き上げようとする送金額の情報を取得する手段とb1-3 取得したEdy番号と,送金額の情報を出力する手段と,b2 を有するEdyカードの使用限度額の引上げを指示する手段と,c1-1 Edy番号と関連付けられた送金額の情報を受信する手段と,c1-3 電子口座で特定されるEdyカードの電子マネーの残高に,送金額の加算を指示する手段と,c2 を有する手段と,d1-2 受金者のEdy番号を受信する手段と,d1-3 送金額を加算するに際して,Edy番号を送信する手段と,d2 を有する手段と,e からなる,電子マネーの残高を引き上げるEdyカード残高引き上げシステム。(2) 乙18送金発明は,以下の相違点1~3で相違するが,その余は一致する。ア 相違点1本件発明は,受金にのみ利用可能な受金IDと,消費使用に利用可能な消費使用IDとの二種類のIDがあらかじめ紐付けられているホワイトカードに対する入金システムであるのに対し(構成要件A),乙18送金発明は,受金及び消費使用に利用可能なEdy番号があらかじめ紐づけられているEdyカードに対する送金システムである点。イ 相違点2乙18送金発明には,本件発明の構成要件C1-2の「受信した入金受付情5 報に関連付けられたホワイトカード受金IDと紐付けられている消費使用IDをホワイトカードID管理装置から取得する消費使用ID取得部」の構成がない点。ウ 相違点3乙18送金発明には,本件発明の構成要件D1-1の「消費使用IDと受金IDとを紐付けた紐付テーブルを保持する紐付テーブル保持部」,及び,構成要件D1-3の「受信した受金IDに紐付けられている消費使用IDを紐付テーブルから取得」する構成がない点。(3) 相違点の検討ア 周知技術乙11記事,乙12公報の段落【0001】,【0005】,【0006】,【0046】,【0047】,【0050】及び【図4】,「WEB-FB メルマネ・マスペイメントサービス[即時モード]ご利用の手引き」(乙19・1,11,16,25及び26頁),乙20文献の39,40,57及び58頁,「PayPal FOR DUMMIES」(乙21・10~12及び59頁)によれば,「電子マネーシステムにおいてユーザ間で送金を行う際に,あらかじめシステムに登録された受金者の携帯電話の電話番号やメールアドレスを指定することによって当該受金者の電子口座への送金を行う技術」が周知であったと認められる。イ 乙18送金発明においては,送金の際に相手のEdy番号を知らなければならないといった,Edy番号を受金IDとして採用することの利便性上の課題が指摘されており(乙22),これは当業者であれば当然に認識し得た技術上の課題であるから,当業者においては,前記アの周知技術を乙18送金発明に適用し,おサイフケータイがそもそも備えている(つまり,送金システムないしEdyカード残高引き上げシステム上でEdyカードにあらかじめ紐付けられている)携帯電話番号や携帯メールアドレス(乙18文献の71頁参照)5 を,受金IDに採用して本件発明に想到することは,極めて容易なことといえる。この結果,乙18送金発明に適用された携帯電話番号や携帯メールアドレスは,Edyカードとの関係において受金にのみ利用される「受金にのみ利用可能なID」となる。そして,乙18送金発明に前記アの周知技術を適用すると,携帯電話番号や携帯メールアドレス(受金にのみ利用可能なID)と入金金額の情報とが,携帯電話端末を通じてシステムに入力され,システム内で,入力された金額が,入力された電子メールアドレスとあらかじめ紐付けられているEdy番号(消費使用ID)に係る電子口座に入金される(口座の残高が引き上げられる)ことになり,前記各相違点に係る構成が自動的に備わる。したがって,本件発明は,乙18送金発明及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものである。(原告の主張)乙18送金発明に被告主張の周知技術を組み合わせても,相違点に係る技術的構成には到達し得ないから,本件発明が,乙18送金発明と周知技術に基づき当業者が容易に想到し得たということはできない。(1) 本件発明は,「受金にのみ利用可能な受金IDと,消費使用に利用可能な消費使用IDとの二種類のIDがあらかじめ紐付けられている」という構成を含み,さらに,これに関連して,各構成要件間で有機的一体性を持って構成されたものであるのに対し,乙18送金発明は,電子マネーの送受金に際して,電子マネーの受取先のIDとして,消費使用にも用いることができるEdy番号を入力する構成を開示するにすぎない。乙18送金発明は,Edy番号という一種類のIDのみを用いるシステムを前提とするもので,このような乙18送金発明には,あらかじめ紐付けられている二種類のIDを用いる本件特許発明の構成を開示又は示唆するものではないから,この点で本件発明と異なっている。そして,Edyでは,おサイフケータイのFeliCaチップに電子マネーが5 格納・管理されるため,ユーザのEdy番号が他人に知られたとしても,おサイフケータイがユーザの手元にあれば,Edyの電子マネーが不正使用されるおそれはなく,乙18発明におけるEdy to Edyでも同様である。それゆえ,Edy to Edyでは,そもそもEdy番号を隠蔽しようという動機付けがなく,これを隠蔽するためにメールアドレスや電話番号という別のIDを用いる動機付けは存在しない。また,当該構成を採用することについては,Edyサービスの基本思想の重大な変更を伴うばかりか,相当の設計変更も必要となるから,こうした変更を行うことについては阻害要因がある。(2) 乙18送金発明には,実際の入金を前提とする「入金受付情報」が存在せず,原告主張の周知技術にも当該技術事項の開示はないから,この点でも本件発明と異なっている。したがって,乙18送金発明に原告主張の周知技術を適用しても,当該相違点に係る技術的構成には到達し得ない。6 争点3-6(無効理由6(乙20発明に基づく新規性欠如))について(被告の主張)本件発明は,乙20発明と同一であるから,本件特許は新規性欠如により無効にされるべきものである。なお,無効理由6は,本件発明の「使用限度額」に電子マネー等のアカウント残高が含まれ,本件送金システムが本件発明の技術的範囲に属するという原告主張を前提とした場合の予備的主張である。(1) 乙20発明の内容乙20文献の39,40,43,46~48,57,58,62,68~70,72及び73頁によれば,乙20文献には,以下の発明が記載されている。a クレジット機能付きイーバンクカードの電子マネーの残高を送金額に応じて引き上げることが可能で,送金に使用するEメールアドレスと,クレジット5 カード機能付きイーバンクカードを使って買い物等をする際に使用する口座番号とがあらかじめ紐付けられている送金システムであって,b1-1 クレジット機能付きイーバンクカードに対する電子マネーの送金に際して,Eメールアドレスの情報を取得する手段と,b1-2 そのクレジット機能付きイーバンクカードの使用限度額の引上げを指示する手段とb1-3 取得したEメールアドレスと,送金額の情報を出力する手段と,b2 を有する,クレジット機能付きイーバンクカードに電子マネーの送金を指示する手段と,c1-1 Eメールアドレスと関連付けられた送金額の情報を受信する手段と,c1-2 受信したEメールアドレスと紐付けられている口座番号を取得する手段と,c1-3 口座番号で特定される電子口座の電子マネーの残高に,送金額の加算を指示する手段と,c2 を有する手段と,d1-1 口座番号とEメールアドレスが予め登録されており(紐付けされており),d1-2 送金額の情報を受信する手段と,d1-3 送金額を加算するに際して,Eメールアドレスに対応する口座番号を取得する手段と,d2 を有する手段と,e からなる,電子マネーの残高を引き上げるクレジット機能付きイーバンクカード残高引き上げシステム。(2) 本件発明と乙20発明とを対比すると,別表3のとおり,両発明は同一である。(原告の主張)本件発明は,乙20発明と同一ではないから,新規性を有し,新規性欠如により5 特許無効審判により無効にされるべきものではない。(1) 乙20発明は,送金人が,「メルマネ」画面で,受取人のメールアドレス及び送金金額等を入力し,確認ボタンを選択し,受取人が送られたEメールからアクセスして自身の銀行口座に振り込み,現金化する旨を開示する(乙20文献・58頁)のであり,イーバンク銀行を介して送金人からEメールを受け取った受取人が,Eメールを開封してイーバンク銀行のサイトにアクセスし,そこで振り込み手続をすることで,送金人の銀行口座から自身の口座に入金(振替)がなされ,この時点で,入金を受け付けた旨の情報が認識される。それゆえ,ユーザが,「メルマネ」画面から受取人のメールアドレス及び送金金額等を発出した時点の当該送金金額は,本件発明の「入金受付情報」ではない。したがって,乙20発明は,本件発明の「入金受付情報取得部」及び「出力部」を開示しておらず,必然的に,「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」も開示していない。また,Eメールを受け取った受取人の振り込み手続により自身の銀行口座への入金(振替)があったことをもって,本件発明の「入金受付情報」に相当する情報を取得したと解するのであれば,乙20発明は,当該入金の時点では,もはや,Eメールアドレスと当該情報とを関連付けて出力することはないから,結局,乙20発明は,「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」を開示していない。したがって,乙20発明は,この点で本件発明と異なる。(2) 本件発明の「引上命令装置」は,「受金IDと関連付けられた入金受付情報をホワイトカード使用限度額引上指示装置から受信する受信部」を有していなければならないところ,乙20発明は,前記のとおり,本件特許発明の「入金受付情報」を開示していないから,必然的に,上記の「受信部」を開示していない。また,仮に,乙20発明において,受取人の振込手続により自身の銀行口座への入金をもって入金を受け付けた情報を取得したと解するのであれば,当該情報に関連付けられたEメールアドレスと紐付けられている口座番号を何らかのID管5 理装置から取得しなければならないところ,受取人の銀行口座には既に入金があったのであるから,乙20発明の構成間には連関性がない。このように,乙20発明は,「ホワイトカード使用限度額引上指示装置」に相当する構成を何ら開示していないから,必然的に,本件発明の「引上命令装置」に相当する構成も開示していない。したがって,乙20発明は,これらの点で本件発明と異なる。7 争点3-7(無効理由7(サポート要件違反))について(被告の主張)原告の主張によれば,本件発明は,本件明細書等の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できないものを包含するから,本件特許請求の範囲の請求項1の記載は,サポート要件(特許法36条6項1号)に適合せず,特許無効審判により無効にされるべきものである。本件明細書等の「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の説明においては,一貫して「クレジットカード」の使用限度額の変更に伴う課題が,本件発明が解決しようとする課題であるとしており(段落【0002】~【0005】),その課題解決手段は,上記のような制限のあるホワイトカード(一般の用語例からしても,クレジットカードを意味する。)の「使用限度額」を引き上げるシステムを提供することにあると説明している(段落【0006】,【0007】)。発明の効果についての記載(段落【0016】)や,実施例1(段落【0021】~【0088】),実施例2(段落【0089】~【0120】),及び実施例3(段落【0121】~【0165】)についても,上記の課題認識を前提としたものと理解することができる。原告は,本件発明が,クレジットカードに限定されず,電子マネーを用いたプリペイドカードやデビット取引を行うものも含むと主張するが,特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件を満たすためには,特許請求の範囲に記載された発明が,明細書に記載された発明で,明細書の記載により当業者が当該発明の課題を解決で5 きると認識できる範囲のものでなければならない(知財高裁平成17年(行ケ)第10042号同年11月11日判決)。しかるに,本件明細書等の発明の詳細な説明にはクレジットカードについての記述しかない上,プリペイドカードやデビットカードには上記課題は存在しない。したがって,本件特許請求の範囲の請求項1の記載は,サポート要件に適合しない。(原告の主張)本件特許請求の範囲の請求項1の記載は,サポート要件に適合するから,特許無効審判により無効にされるべきものではない。すなわち,本件発明の課題は,他者からの送金の受金等によるユーザの所持金の増加を速やかに使用限度額に反映させることができるようにすることであり,本件明細書等の発明の詳細な説明には,本件発明の具体的構成及び作用効果が記載されているから,これによって,当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得ることは明らかである。原告は,本件発明の課題を曲解しており,この点に関する原告の主張は失当である。したがって,本件発明は,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから,本件特許請求の範囲の請求項1の記載は,サポート要件を満たす。8 争点3-8(無効理由8(明確性要件違反))について(被告の主張)本件特許請求の範囲の請求項1の記載は,そこに用いられている「使用限度額」及び「受金にのみ利用可能な受金ID」の用語の意味内容が定まらず,明確性の要件(特許法36条6項2号)を満たさないから,特許無効審判により無効にされるべきものである。(1) 「使用限度額」について本件明細書等の「背景技術」 「発明が解決しようとする課題」及び の説明では,5 クレジットカードの使用限度額の変更の問題点として,「ユーザの所持金が当該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えたとしても,カード会社に逐一連絡などして所定の手続きを経なければそれが使用限度額に反映されることは無い」ことが挙げられており(段落【0005】),この記載は,「使用限度額」が,カードの口座残高そのものとは明確に異なる概念であることを前提としたものと理解できる。しかるに,原告は,本件発明の「ホワイトカード」にクレジットカードだけでなく,プリペイドカード(電子マネーを用いたものを含む。)やデビットカードなど,残高に応じて使用限度額が都度増減するものも含まれるものと主張する。このように,原告は,「使用限度額」の意味する範囲を,本件発明が解決しようとする課題とは関係のないものにまで際限なく広げようとしており,原告の主張によれば,「使用限度額」の用語の意味内容は定まらないから,明確性の要件を満たさない。(2) 「受金にのみ利用可能な受金ID」について「受金にのみ利用可能な受金ID」とは,これに係る本件明細書等における説明(段落【0006】,【0007】,【0036】,【0047】及び【0056】)によれば,「受金のみに利用可能な入金すべきホワイトカードを特定するための情報」を意味するものと理解できる。しかるに,原告の主張によれば,本件発明の「受金にのみ利用可能な受金ID」には,①LINEアカウント,②ファミリーマートに備えられているFamiポート(マルチメディアステーション)でFamiポート申込券を発見するために必要な「予約番号(申込番号)」,③ユーザ銀行口座の口座情報などが含まれるところ,①はLINEサービスを利用するために必要な識別が番号であり,②はコンビニエンスストアでの支払のために一時的に必要となる番号であり,③は振替元のユーザ銀行口座の口座番号等であり,これらは全く属性が異なる。そして,原告は,本件振替入金システムでは送金者と受金者が同一であるから,ユーザ銀5 行口座の口座情報が送金者を特定するということは,当該口座情報は受金者を特定するものであるということである旨を主張している。そうすると,何らかの形で受金者と結び付けられていれば,「受金ID」に該当することになり,「受金ID」の範囲が際限なく広がって,その外延が定まらないから,原告の主張によれば,「受金ID」の用語の意味内容が定まらないことになるしたがって,原告の主張を前提とすると,本件特許請求の範囲の請求項1の記載は,明確性の要件を満たさない。(原告の主張)本件特許請求の範囲の請求項1の記載は,明確性の要件を満たすから,特許無効審判により無効にされるべきものではない。なお,この点の被告の主張は,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。(1) 「使用限度額」について本件明細書等の段落【0005】等の記載は,ユーザの所持金が増加しても速やかに使用限度額に反映されないという従来技術における課題を指摘するものである。銀行口座の残高を使用限度額とするデビット取引であっても,ユーザの所持金の増加を速やかに使用限度額に反映させられないという課題は存在し,本件特許発明の構成を採用すれば,上記の課題を解決することができ,本件特許発明の作用効果を奏することができる。それゆえ,使用限度額」の用語の意味内容も,本件明細書等に接した当業者であれば,本件特許の出願時の技術常識を考慮して,それらの意味内容を理解でき,明確である。(2) 「受金にのみ利用可能な受金ID」について本件発明の「受金にのみ利用可能な受金ID」の意味内容は,本件特許請求の範囲や本件明細書等の段落【0036】の記載から明確である。被告は,「受金にのみ利用可能な受金ID」が「受金のみに利用可能な入金すべきホワイトカードを特定するための情報」を意味すると理解できる旨の主張をするが,本件発明の「受金のみに利用可能な受金ID」とは,本件特許請求の範囲に記載のとおりのものであって,本件明細書等にもこれに矛盾する記載はないから,被告が前提とする理解自体が誤っている。

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