知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和1(行ケ)10151 審決取消請求事件

この記事をはてなブックマークに追加

令和1(行ケ)10151審決取消請求事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和2年5月20日
事件種別 民事
当事者 原告アップルインコーポレイテッド
被告特許庁長官
法令 商標権
商標法4条1項11号1回
キーワード 審決19回
主文 1 特許庁が不服2019-1895号事件について令和元年6月25日に
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要 1 本件は,原告が,出願した商標について拒絶査定を受けたことから,不服審 判請求をしたところ,請求は成り立たない旨の審決がされたので,その取消しを求 める事案である。

▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 商標権に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

令和2年5月20日判決言渡
令和元年(行ケ)第10151号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和2年2月19日
判 決
原 告 アップル インコーポレイテッド
同訴訟代理人弁理士 宮 永 栄
佐 々 木 香 織
被 告 特許庁長官
同 指 定 代 理 人 山 根 ま り 子
半 田 正 人
大 森 友 子
豊 田 純 一
主 文
1 特許庁が不服2019-1895号事件について令和元年6月25日に
した審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は,原告が,出願した商標について拒絶査定を受けたことから,不服審
判請求をしたところ,請求は成り立たない旨の審決がされたので,その取消しを求
める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨に
より認められる事実)
(1) 原告は,平成29年11月6日に,指定商品を「第9類 アプリケーショ
ン開発用コンピュータソフトウェア,他のコンピュータソフトウェア用アプリケー
ションの開発に使用されるコンピュータソフトウェア,コンピュータソフトウェア」
(以下「本件指定商品」という。)として,「CORE ML」の文字を標準文字で
表してなる商標(以下「本願商標」という。)について,商標登録出願(商願20
17-145606号)をした(甲1)ところ,平成30年11月9日付けで拒絶
査定を受けた(甲5。以下,同拒絶査定を「本件拒絶査定」という。)ので,平成
31年2月12日に,不服審判請求をした(甲6。不服2019-1895号)。
(2) 特許庁は,前記(1)の不服審判請求について,令和元年6月25日に,「本
件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,
本件審決の謄本は,同年7月9日に原告に送達された。
3 本件審決の理由の要点
(1) 本願商標
本願商標は,「CORE ML」の文字を標準文字で表してなるところ,「COR
E」の文字と「ML」の文字とを,両文字の間に1文字分の空白を介してなるもの
であるから,両文字を組み合わせたものと容易に看取,把握されるといえるもので
ある。
そして,本願商標の構成中,前半の「CORE」の文字部分は,「ものの中心部。
中核。核心。」の意を有する語であって,我が国においても広く知られている語であ
り,本件指定商品との関係では,その商品の普通名称や品質等を表示するものであ
るなど,商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないと見るべき事情は見当た
らないというべきである。
他方,本願商標の構成中,後半の「ML」の文字部分は,証拠(甲6~17)に
よると,本件指定商品のコンピュータソフトウェアを取り扱う業界において,
「Ma
chine Learning(機械学習) の略語を表すものとして広く使用され

ていることが認められる。
そうすると,本願商標の構成中,後半の「ML」の文字部分は,本件指定商品と
の関係において,商品が「Machine Learning(機械学習)」を内容
とするものであることを,取引者,需要者に理解させるものであって,商品の品質
を表す語として認識されるにすぎないものであるから,商品の出所識別標識として
の機能が極めて弱いか,又はその機能を発揮しない。
以上より,本願商標は,その構成中,前半の「CORE」の文字部分が強く支配
的な印象を与えるものとみるのが相当であるから,当該文字部分を要部として抽出
し,この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許
される。
したがって,本願商標は,構成全体より生じる「コアエムエル」の称呼のほか,
その要部である「CORE」の文字に相応して「コア」の称呼及び「ものの中心部」
の観念を生じる。
(2) 引用商標
ア 登録第5611369号商標(以下「引用商標1」という。甲10)は,
「CORE」の文字を標準文字で表してなり,平成25年4月17日に登録出願,
第9類「加工ガラス(建築用のものを除く。,写真機械器具,映画機械器具,光学

機械器具,測定機械器具,電池,電子応用機械器具及びその部品,眼鏡,レコード,
メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-R
OM,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル」
を指定商品として,同年8月30日に設定登録され,現に有効に存続しているもの
である。
引用商標1は,
「CORE」の文字を標準文字で表してなるから,当該文字に相応
して,「コア」の称呼及び「ものの中心部」の観念を生じるものである。
イ 登録第5611370号商標(以下「引用商標2」といい,引用商標1
と引用商標2を併せて「引用商標」という。甲10)は,
「コア」の文字を標準文字
で表してなり,平成25年4月17日に登録出願,第9類「加工ガラス(建築用の
ものを除く。,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,電池,

電子応用機械器具及びその部品,眼鏡,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動
演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用し
て受信し,及び保存することができる音楽ファイル」を指定商品として,同年8月
30日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
引用商標2は,コア」
「 の文字を標準文字で表してなるから,当該文字に相応して,
「コア」の称呼及び「ものの中心部」の観念を生じるものである。
(3) 本願商標と引用商標の類否
ア 本願商標の要部である「CORE」の文字部分と引用商標1とは,標準
文字でありかつ同一の文字からなるものである。
また,両者は,称呼及び観念についても,
「コア」の称呼及び「ものの中心部」の
観念を同一にするものである。
そうすると,本願商標の要部である「CORE」の文字部分と引用商標1とは,
外観,称呼及び観念において同一であるから,本願商標は,引用商標1と互いに類
似する商標というべきである。
イ 本願商標の要部である「CORE」の文字部分と引用商標2を比較する
と,外観については,それぞれ欧文字又は片仮名の態様であり,差異を有するもの
であるが,当該差異は,欧文字からなる商標をその読みに対応した片仮名で代替的
に表記することが一般に行われているから,特段印象付けられるものではない。
そして,本願商標の要部と引用商標2とは,称呼及び観念については,
「コア」の
称呼及び「ものの中心部」の観念を同一にするものである。
そうすると,本願商標の要部と引用商標2とは,称呼,観念を同一にするもので
あって,外観における差異も特段印象付けられるものではないから,本願商標は,
引用商標2と互いに類似する商標というべきである。
(4) 本件指定商品と引用商標の指定商品の類否
本件指定商品「アプリケーション開発用コンピュータソフトウェア,他のコンピ
ュータソフトウェア用アプリケーションの開発に使用されるコンピュータソフトウ
ェア,コンピュータソフトウェア」は,引用商標の指定商品中「電子応用機械器具
及びその部品」と同一又は類似する商品であることが明らかである。
(5) 以上より,本願商標と引用商標とは類似する商標であり,かつ,本願商標
は,引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものである。
したがって,本願商標は,商標法4条1項11号に該当する。
4 原告の主張する審決取消事由
(1) 取消事由1(本願商標の認定の誤り)
ア 結合商標の要部抽出の誤り
結合商標の外観,称呼及び観念の認定については,商標の構成部分の一部を抽出
し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,
その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な
印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての
称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないと解するのが妥当
とするところ,本件審決では本願商標の称呼及び観念の認定について当該結合商標
の類否の判断に則した判断がされておらず,本願商標の外観,称呼及び観念の認定
に誤りがある。
イ 本願商標の構成中「CORE」文字部分について
本件審決は,本願商標の構成中の「CORE」の文字が,CPU等のコンピュー
タハードウェアとの関係において,
「プロセッサコア」や「コアファイル」を意味す
るものとしても,本件指定商品(コンピュータソフトウェア等)との関係では,商
品の出所識別標識としての機能が弱いということはできないと判断している。「コ
アファイル」とは,プログラムファイルのことであり,コンピュータプログラム又
はソフトウェアの一種である。ところが,特許庁は,コアファイルをハードウェア
の一種と認識し,コンピュータソフトウェア等との関係では商品の出所識別標識と
しての機能が弱いということはできないと判断している。このように,被告がコア
ファイルをコンピュータハードウェアと誤って捉えたように,コンピュータソフト
ウェアとコンピュータハードウェアは密接な関係にあり,コンピュータハードウェ
アとコンピュータソフトウェアで,出所識別標識として機能するか,記述的な言葉
であるかを分けることは失当である。コンピュータソフトウェアとコンピュータハ
ードウェアが同一の企業にて製造 提供されている例も多く
・ (甲14~20)また,

コンピュータに関する用語辞典ではコンピュータソフトウェアとコンピュータハー
ドウェアをまとめて掲載している(甲21~24)。
したがって,コンピュータハードウェアに関する用語の理解度・識別性は,コン
ピュータソフトウェアのそれと共通にしていると認定されるべきである。そして,
「CORE」の語は,コンピュータ分野にて用いられる言葉である(甲25)から,
本質的な識別力は弱く,需要者をして強く支配的な言葉とは認識されない。
なお,商標としても「CORE」の文字がコンピュータの分野で多く採用されて
いる。特許情報プラットフォームにおいて,
「CORE」の文字又は「コア」の称呼
を含む登録例を確認すると320件存在している(甲26,27)。ここから「CO
RE」の文字が商標としても採用されがちな単語であることが把握できる。
ウ 本願商標の構成中「ML」文字部分について
本件審決は,本願商標の構成中の「ML」文字部分について,本件指定商品のコ
ンピュータソフトウェアを取り扱う業界において,「Machine Learn
ing(機械学習) の略語を表すものとして広く使用されていることが認められる

と認定している。
しかし,コンピュータの分野では「ML」は他の意味で用いられる場合も少なく
ない。例えば,IT用語辞典では「ML」はメーリングリストと紹介されている(甲
28) また,
。 コンピュータ形式言語としてある「HTML」,
「XML」,
「SGML」
の「ML」部分は「markup language」の略語として知られ,
「ML」
として用いられている(甲29)。
このようにコンピュータの分野で「ML」は多義的な言葉である。
日本では,人工知能でコンピュータにデータからルールなどを学習させる手法を
「機械学習」と称するのが一般的であり,
「ML」は機械学習の英語である「マシー
ンラーニング(Machine Learning) を暗示する場合があるにすぎ

ない。
したがって,本件審決の上記判断は誤りである。
エ 取引の実情
出願人及び需要者は本願商標全体を一体不可分の商標として用いている(甲8の
14~22,甲30~33)。
オ 小括
以上のとおり,本願商標を構成する文字「CORE」及び「ML」はいずれもコ
ンピュータの分野において一定の意味合いを理解させる語ではあるものの,「ML」
の語を捨象する事情があるとは見受けられない。むしろ,各語から一定の意味合い
を理解し得ることから,商標全体から「中核の機械学習,中核となる機械学習」の
ような意味合いや「中核のメーリングリスト,中核のマークアップ言語」が想起さ
れ得るといえる。
また,本願商標全体から生じる称呼「コアエムエル」は冗長ではない。
したがって,本願商標は全体を一体不可分とみるべきで,本願商標「CORE M
L」の構成中「ML」の部分を捨象して「CORE」の部分を要部と認定した本件
審決は誤りである。
(2) 取消事由2(本願商標と引用商標の類否判断の誤り)
上記(1)のとおり,本願商標は「CORE ML」の構成全体で一体と捉えるべき
ものであり,「コアエムエル」の称呼のみが生じ,「中核の機械学習」のような意味
合いが想起されるものである。本願商標と引用商標1,2との対比についての本件
審決の判断は,以下のとおり誤っている。
ア 引用商標1との対比について
引用商標1の「CORE」から生じる称呼は「コア」であり,広辞苑等に載録さ
れた「ものの中心部。中核。核心。」の意味合い,又は上記IT用語辞典に載録され
た「プロセッサコア」や「コアファイル」の意味を理解させるものである。
本願商標については上記のとおりであり,
「ML」の語の有無によって,引用商標
1は,本願商標とは外観及び称呼が明らかに異なる。
このように,本願商標は引用商標1と非類似の商標であるにもかかわらず,引用
商標1と類似の商標であると認定した点において本件審決は誤りである。
イ 引用商標2との対比について
引用商標2「コア」においても引用商標1と同様,広辞苑等に載録された「もの
の中心部。中核。核心。」の意味合い,又は上記IT用語辞典に載録された「プロセ
ッサコア」や「コアファイル」の意味を理解させるものである。
本願商標については上記のとおりであり,
「ML」の語の有無によって,引用商標
2は,本願商標とは外観及び称呼が明らかに異なる。
このように,本願商標は引用商標2と非類似の商標であるにもかかわらず,引用
商標2と類似の商標であると認定した点において本件審決は誤りである。
5 被告の主張
(1) 取消事由1(本願商標の認定の誤り)について
ア 本願商標
(ア) 本願商標の構成態様について
本願商標は,「CORE ML」の文字を標準文字で表してなるところ,これは,
「CORE」の文字と「ML」の文字との間に1文字分の空白を有するものである
から,本願商標は,両文字を組み合わせた結合商標であると容易に看取,把握され
るものである。
そして,上記のとおり,本願商標は,
「CORE」の文字と「ML」の文字との間
に,1文字分の空白を有するため,これらの文字は,視覚上,明確に分離して観察
されるといえる。
(イ) 本願商標の構成中の「CORE」の文字について
本願商標の構成中の「CORE」の文字は,欧文字であるとしても,
「広辞苑 第
七版」をはじめとする我が国の代表的な国語辞典において,「コア【core】」の
項に,「ものの中心部。中核。核心。」の意味を有する語として載録されていること
から,広く一般に知られている語である(乙3~5)。
そして,
「CORE(core)」の文字や「CORE(core)」の表音である
「コア」の文字は,上記の意味を有することから,ものの中心部や核心を表現する
場合に,普通に使用される場合があるものの,本願商標の指定商品である「コンピ
ュータソフトウェア」を含むコンピュータに関する用語が多数掲載された辞典や辞
書等を参照しても,これらの辞典等には,「CORE(core)」及び「コア」の
文字が,「コンピュータソフトウェア」の普通名称や「コンピュータソフトウェア」
の品質等を表示する語として載録されていない(甲8,11,25,乙6~14)。
そうすると,本願商標の構成中の「CORE」の文字は,本願商標の指定商品と
の関係において,商品の普通名称や品質等を表示する語であるとする事情は見当た
らない。
(ウ) 本願商標の構成中の「ML」の文字について
本願商標の構成中の「ML」の文字は,欧文字の「M」と「L」の各文字を組み
合わせたものと容易に把握できるところ,本件指定商品の「コンピュータソフトウ
ェア」を取り扱う業界において,同文字は,
「Machine Learning(機
械学習)」の略語を表すものとして,甲8の各記事の他,新聞記事において,広く使
用されている実情がある(乙15~22)。
(エ) コンピュータを取り扱う業界における取引の実情
本件指定商品の「コンピュータソフトウェア」を含むコンピュータを取り扱う業
界において,
「Azure ML」
(甲8)のほか,例えば,
「Amazon ML」,
「Windows ML」「BigQuery
, ML」「Java-ML」「Co
, ,
metML」「Arm
, ML」「Runway
, ML」「pyspark.ml」
, ,
「Google Developers ML」等のように,ブランドの名称など
の商品名(商標)に,機械学習(Machine Learning)の略称であ
る「ML」の欧文字を結合し,そのブランド名称等の使用者が提供する機械学習(M
achine Learning)に関するコンピュータソフトウェア,それを使
用するプラットフォームの名称を表すものとして,実際に使用されている例が多数
見受けられる(乙23~32)。これらの使用例からすると,本願商標の指定商品と
の関係においては,ある文字を,空白等を介して「ML」の文字と組み合わせてな
るものは,
「ML」の文字を,
「Machine Learning(機械学習)」の
略称として捉えられるというのが自然である。
(オ) 小括
これらの事情を踏まえると,本願商標の構成中の「ML」の文字は,本件指定商
品との関係において,その指定商品が「Machine Learning(機械
学習) を行うための商品であることを需要者に理解させるものであって,
」 商品の品
質・用途を表す語として認識されるにすぎず,商品の出所識別標識としての機能が
ないか又は極めて弱いものであることから,本願商標の構成中の「ML」の文字は,
商品の出所識別標識としての独立した称呼及び観念は生じない。
他方,本願商標の構成中の「CORE」の文字は,本願商標の指定商品との関係
において,商品の普通名称や品質等を表示する語であるとする事情は見当たらない。
そうすると,本願商標は,その構成中の「CORE」の文字が,需要者に対し商
品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり,他方,その構成中
の「ML」の文字は,商品の出所識別標識としての独立した称呼及び観念が生じな
いものであることから,本願商標は,その構成中の「CORE」の文字を要部とし
て抽出し,これと引用商標とを比較して商標の類否を判断することも許されるもの
である。
したがって,本願商標は,構成文字全体から生じる「コアエムエル」の称呼のほ
か,その要部である「CORE」に相応して「コア」の称呼及び「ものの中心部」
の観念が生じるものである。
よって,取消事由1は理由がない。
(2) 取消事由2(本願商標と引用商標の類否判断の誤り)について
ア 前記(1)のとおり,本願商標は,その構成中の「CORE」の文字を要部
として抽出し,これと引用商標とを比較して商標の類否を判断することも許される
ものであり,本願商標は,構成文字全体から生じる「コアエムエル」の称呼のほか,
その要部である「CORE」に相応して「コア」の称呼及び「ものの中心部」の観
念が生じるものである。
イ 引用商標
(ア) 引用商標1
引用商標1は,
「CORE」の文字を標準文字で表してなるから,当該文字に相応
して,「コア」の称呼及び「ものの中心部」の観念を生じるものである。
(イ) 引用商標2
引用商標2は,コア」
「 の文字を標準文字で表してなるから,当該文字に相応して,
「コア」の称呼及び「ものの中心部」の観念を生じるものである。
ウ 本願商標と引用商標の類否について
(ア) 本願商標と引用商標1の類否について
本願商標の要部である「CORE」の文字と引用商標1は,共に,標準文字で表
してなるものであり,かつ,その構成文字も同一である。
また,本願商標の要部である「CORE」と引用商標1は,
「コア」の称呼及び「も
のの中心部」の観念を同一にするものである。
そうすると,本願商標の要部である「CORE」の文字と引用商標1とは,外観,
称呼及び観念において同一であるから,本願商標は,引用商標1と類似する商標で
ある。
(イ) 本願商標と引用商標2の類否について
本願商標の要部である「CORE」と引用商標2を対比観察した場合,外観にお
いて相違するが,本願商標の要部である「CORE」の文字から生ずる「コア」の
称呼及び「ものの中心部」の観念と引用商標2から生ずる「コア」の称呼及び「も
のの中心部」の観念は,同一である。
そうすると,本願商標の要部である「CORE」の文字と引用商標2とは,外観
において相違するとしても,称呼及び観念を同一にするものであるから,本願商標
は,引用商標2と類似する商標である。
エ したがって,本件審決の本願商標と引用商標の類否判断に誤りはなく,
取消事由2は理由がない。
第3 当裁判所の判断
1 取消事由1(本願商標の認定の誤り)について
(1) 前記第2の2(1)のとおり,本願商標は,「CORE ML」の文字を標準
文字で表してなる商標であり,「CORE」の文字と「ML」の文字とからなる結
合商標である。
複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部
分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判
断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識とし
て強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識
別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,原則として許
されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5
日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第10
3号平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成
19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号
561頁)。
そこで,本件商標と引用商標との類否の判断に当たって,本件商標の一部である
「CORE」の部分を抽出して,引用商標と比較することができるかについて,以
下,検討する。
(2) まず,
「CORE」「ML」の語の意味内容及び使用状況,本願商標の使用

状況につき,判断の基準時である本件審決時までに存した証拠に基づき認定する。
ア 「CORE」の語について
後掲証拠によると,各種辞典等に以下のとおりの記載があることが認められるが,
「ウィキペディア」「コンピュータ略語一覧」平成31年3月14日。
の ( 甲8の2),
「デジタル用語事典2000-2001年版」平成12年3月20日,
( 日経BP社。
乙6)「コンピュータ&情報通信用語事典」
, (平成13年7月25日,株式会社オー
ム社。乙7)「最新・基本パソコン用語事典(平成21年4月15日,株式会社秀

和システム。乙9)「IT用語図鑑」
, (令和元年5月13日,株式会社翔泳社。乙1
1)には,「CORE」又は「コア」の項目はない。
(ア) 広辞苑第7版(平成30年1月12日,株式会社岩波書店。乙3)
「コア【core】①ものの中心部。中核。核心。②建物の中央部で,共用施設・
設備スペース・構造用耐力壁などが集められたところ。
・・・③鋳物の中子 なかご。④
(コイルなどの)鉄心てつしん。⑤地球の核。
・・・⑥試錐(ボーリング)によって採
取した円柱状の土壌や岩石の試料。・・・」との記載がある。
(イ) 大辞林第3版(平成18年10月27日,株式会社三省堂。乙4)
「コア〖core〗①物の中心部。中心となる部分。核。中核。②地球の核。③
コイルなどの鉄心。④鋳物の中子なかご。⑤原子炉の炉心。⑥建物で,共用施設をま
とめて設置した所。・・・」との記載がある。
(ウ) 大辞泉第2版(平成24年11月7日,株式会社小学館。乙5)には,
以下のとおりの記載がある。
a 「コア〖core〗①物の中心部。中核。②地球の核。③鋳物の中
空部分をつくるための鋳型。中子なかご。④物の芯に鉄を入れたもの。鉄心。⑤コア
システムの建築物で,共用施設をまとめた部分。⑥地層をドリルなどでくり抜いて
採取した,堆積土のサンプル。・・・」
b 「コア〖CORE〗・・・人種平等会議。人種・信教・性別・年齢・
障害の有無,性的傾向,宗教または民族的背景にかかわらず,すべての人々に平等
をもたらすことを目的とする。1942年に結成。本部はニューヨーク。」
(エ) 「現代用語の基礎知識2019」(平成31年1月1日,自由国民社。
乙10)
「コア〔core〕(1)核。物の中心部。鉄心。(2)あらゆる教育科目の中心とな
る科目(コアカリキュラム)。(3)ボーリングや細い穴あけ用の道具で得られた地層
やその他の物のサンプル。」との記載がある。
(オ) 「IT用語辞典e-Words」のウェブサイトの「コア【core】」
の項目(平成31年3月27日。甲25)には,以下のとおりの記載がある。
a 「コアとは,核,芯,中心,核心などの意味を持つ英単語。日本語
の外来語としても複合的な構造物の中心部分のことを指す用例が多い。」
b 「マイクロプロセッサのコア
マイクロプロセッサ(CPU/MPU)の内部で,独立して機能する演算・制御
装置のことをプロセッサコアあるいは略してコアという。複数のコアを搭載したプ
ロセッサをマルチコアプロセッサという。・・・
また,
・・・米インテル(Intel)社の主力のx86系マイクロプロセッサの
製品シリーズ名を「Intel Core」(インテル・コア)という。・・・」
c 「コアダンプ
一部のオペレーティングシステム(OS)では,実行中のプログラムがエラーで
強制終了する際に,その時点でプログラムが使用しているメモリ空間の内容を丸ご
と写し取ってファイルに保存したものをコアダンプ(core dump)あるい
はコアファイル(core file)という。・・・」
d 「光ファイバーのコア
光ファイバーの透明な芯材のうち,光信号を伝達する中心部の細い芯線をコアと
いう。・・・」
e 「ネットワークのコア
大規模な通信ネットワークで,中心部の基幹回線網のことをコア(コアネットワ
ーク),末端部をエッジ(エッジネットワーク)ということがある。」
(カ) 「IT用語辞典e-Words」のウェブサイトの「コア【core】」
の項目(平成11年9月4日。甲4の21枚目)には,以下のとおりの記載がある。
a 「コアとは,核,芯,中心,核心などの意味を持つ英単語。」
b 「単にコアと言った場合は,マルチコアプロセッサにおけるプロセ
ッサコアや,Intel社のIntel Coreシリーズのマイクロプロセッサ
製品,UNIX系OSでプログラムが不正終了したときメモリやレジスタの内容を
ディスクに記録したファイル(コアファイル)のことを指す場合が多い。」
(キ) 「「分かりそう」で「分からない」でも「分かった」気になれるIT用
語辞典」のウェブサイト(平成28年6月2日。甲11)
「コアファイル(coreファイル)
(英:core file)とは」「UNI

X系のパソコンにおいて,プログラムが異常終了した際に出力される「core」
という名前のファイルのこと」との記載がある。
(ク) 「Qiita」のウェブサイト(平成29年10月16日。甲12)
「[Linux]coreファイルについて」との見出しの下,「coreファイ
ルとはプロセスが異常終了した時のメモリ内容をダンプしたもの。各変数の値やス
レッドの状態,終了した時のソースコードの行数などを確認することができる」と
の記載がある。
イ 「ML」の語について
後掲証拠によると,新聞やウェブサイト等に以下のとおりの記載があることが認
められる。なお,「ウィキペディア」の「コンピュータ略語一覧」には,「ML」の
項目はない(平成31年3月14日。甲8の2)。
(ア) 日本経済新聞朝刊(平成30年1月18日。乙15)
「グーグル,AI活用手軽に,利用企業,専門家要らず,わずかな材料で画像分
析。」との見出しの下,「米グーグルは17日,クラウド経由で企業が簡単に人口知
能(AI)を活用できるサービスを始めると発表した。
・・・新サービス「クラウド
オートML(機械学習)」を17日朝から一部顧客を対象にサービスを始めた。」と
の記載がある。
(イ) 化学工業日報(平成30年6月1日。乙16)
「栗田工業,AI・機械学習で水道管劣化予測,米ソフトVBを子会社化」との
見出しの下,
「栗田工業は,米国のフラクタ・インクに出資し子会社化した。29日
に開催した取締役会で決議し,同社および出資者との間で出資契約を締結した。こ
れによりフラクタ・インクの100%子会社でAI/ML(人工知能・機械学習)
を用いた水道管劣化予測ソフトウエアサービスを展開しているフラクタ社も傘下に
収め,水処理ソリユーションの基盤強化を図る。」との記載がある。
(ウ) 日経産業新聞(平成30年10月24日。乙17)
「深層学習,4年が生んだ進化,翻訳・自動言語処理,グーグル,事業利用続々
(モバイルの達人)」との見出しの下,「グーグルは高度なプログラミング能力を必
要とせず,画像をアップロードすると自動的に画像を認識するAIモデルを作成す
る「オートMLビジョン」を公開した。MLはマシンラーニングの略だ。さらに自
然言語処理や翻訳に使えるサービスも公開した。」との記載がある。
(エ) 「FujiSankei Business i.(平成31年1月

3日。乙18)
「【ジェーンズ・ディフェンス・ウオッチ】AIの進化が諜報活動を一変」との見
出しの下,
「AI研究は80年代後半,徐々に衰退したが2000年代に入りコンピ
ューターの能力が向上,マシンラーニング(機械学習=ML)として知られるよう
になると,AIに対する関心が高くなり再び注目が集まるようになった。MLでは
コンピューターが自ら「学習する」。そして,アナリストがオープンソースでアクセ
スするデータ量に圧倒され,その中からより多くのデータを分析する場合,MLは
効果的かつより良いパフォーマンスを発揮する。」との記載がある。
(オ) 日経産業新聞(令和元年6月18日。乙19)
「WiL共同創業者兼CEO伊佐山元 外国人誘致,最後の好機(新風シリコン
バレー)」との見出しの下,
「今はやりのAI(人工知能),ML(機械学習)などは
対象となる。」との記載がある。
(カ) 「平成30年版 情報通信白書 第2部」(甲8の3)
「「AI」に関しては,2017年(平成29年)6月に国連と国連専門機関な
どが中心となって開催したAIに関するワークショップをきっかけとして,同年1
1月にFG ML5G(5Gを含む将来のネットワークのための機械学習(ML:
Machine Learning)に関するフォーカスグループ(FG))が第
13回研究委員会(SG13)配下に設置されるなど,ネットワーク分野における
AIの活用に関する研究が本格的に開始された。」との記載がある。
(キ) 内閣府食品安全委員会のウェブサイト(平成31年3月11日。甲8
の6)
「過去20年間にわたり,機械学習(ML)は,特に大量のデータや大規模で多
次元の異種データセットが利用可能であり,及び/又は推奨される数学的手法がな
い状況において,データから自動的に学習することを目的として,ますます重要に
なっている。」との記載がある。
(ク) 国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発戦略センターのウェブサ
イト(平成31年3月11日。甲8の7)
「無線周波数(RF)スペクトルはますます混雑の度合いを増している。DAR
PAの新規プログラム「無線周波数機械学習システム(RFMLS)」では,最先
端の機械学習(ML)がこの混雑の中であらゆる信号の把握に役立つかどうかを吟
味する。」との記載がある。
(ケ) 国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発戦略センターのウェブサ
イト(甲8の8)
「ソフトウェア工学×機械学習~ディペンダブルな機械学習ソフトウェア・シス
テム開発に向けて~」との見出しの下,「IoT+AIとあるがIoT+MLの方
がよい。」との記載があり,さらに,上記記載の下に記載された図面中に,「In
ternet of Things(IoT)+」の記載の右横に,「人工知能(A
I)」と「機械学習(ML)」との記載がある。
(コ) 「DMM INSIDE」のウェブサイト(平成30年9月20日。
甲8の12)
「Google Cloud Platformを活用したMachine L
earningハンズオン」との見出しの下,
「DMMでは,社内の業務効率や顧客
向けサービスの品質改善のためにMachine Learning(ML)を活
用しており,そこで,AI部は,専門性の高いML技術の研究開発や,社内のML
活用推進活動をしています。」との記載がある。
(サ) 「IT用語辞典e-Words」のウェブサイト(平成27年10月
8日。甲28)。
「メーリングリスト【mailing list】ML」との項目がある。
(シ) 「DAIKO CREA」のウェブサイト(平成28年2月8日。甲
29)。
「・ ・SGMLが一般的によく知られているXMLやHTMLとどう違うのか,

社内外からたまに問い合わせがあるので簡潔にまとめてみました。
・・・相違点の前
に共通点として,いずれもマークアップ言語(MarkupLanguage)に
分類されます。因みにSGML,XML,HTMLの「ML」はこの「マークアッ
プ言語(MarkupLanguage)のMとLの略です。」との記載がある。
(ス) アイティメディア株式会社のウェブサイト(平成30年3月27日。
乙24)
「Windows 10で機械学習ライブラリを実行するための「Window
s ML」とは何か」との見出しの下,
「米Microsoftは3月7日(現地時
間)に,学習済みの機械学習ライブラリをWindows上でローカルに動作させ
るためのAPI「Windows ML(Machine Learning)」を
発表した。」との記載がある。
(セ) 「TechCrunch Japan」のウェブサイト(平成30年
4月6日。乙26)
「CometMLは「機械学習のためのGitHub」になることを狙う」との
見出しの下に,
「Comet.mlは,データサイエンティストと開発者たちが,自
身の書く機械学習モデルのモニタリング,比較,そして最適化を簡単に行えるよう
にする。,
」「このサービスが提供するのは,機械学習(ML)実験コードとその結果
をまとめることのできるダッシュボードだ。」との記載がある。
(ソ) 株式会社インプレスのウェブサイト(平成30年5月23日。乙27)
「後藤弘茂のWeekly海外ニュース」 Armが機械学習専用プロセッサ

, 「A
rm ML」を投入へ」「マシンラーニングに特化したArm
, MLプロセッサ」
の各見出しの下,
「Armがついにマシンラーニング(ML:機械学習)専用プロセ
ッサのIPを正式にリリースする。Armの「Arm MLプロセッサ(Mach
ine Learning Processor)は,最近,各社から次々に登場
している「ニューラルネットワークプロセッサ(NPU)」と同じく,ニューラルネ
ットワーク(Neural Network:NN)を低電力かつ高パフォーマン
スに実行する。CPUやGPU,DSPの拡張ではなく,最初からML処理専用に
設計された専用アーキテクチャだ。」との記載がある。
(タ) 「しーたけの気まぐれ備忘録」のウェブサイト(平成25年5月23
日。乙30)
「Java Machine Learning Library(Java-
ML)はじめ」との見出しの下,
「Javaから扱える機械学習ライブラリを見つけ
たので使ってみた」との記載がある。
(チ) 「け日記」のウェブサイト(平成30年9月15日。乙32)
「PySparkでMLを使って機械学習する」との見出しの下,
「MLパッケー
ジ(pyspark.ml)は機械学習用のパッケージです。」との記載がある。
(ツ) 「cloud.google.com」のウェブサイト(平成31年3月7日。甲8の
9)
「Google Cloud Machine Learning(ML)En
gineは,デベロッパーやデータサイエンティストが優れた機械学習モデルを構
築し,本番環境にデプロイできるようにするマネージドサービスです。Cloud
ML Engineにはトレーニングと予測の機能があり,これらを組み合わせて
使うことも,それぞれを個別に使うこともできます。」との記載がある。
(テ) 「Qiita」のウェブサイト(平成30年10月10日。甲8の1
1)
「Automated Machine Learning(@Azure M
L)を試す」「Auto
, ML(Automated Machine Lear
ning)とは」との各見出しの下,
「・・・Automated Machine
Learning(以下AML)とは現実世界の課題を機械学習に適応させる二者
間の自動化プロセスである。」との記載がある。
(3) 以上を前提に検討する。
ア 「CORE」について
前記(2)アのとおり,「CORE」の語には,「ものの中心部,中核,核心」,「建
物の中央部で,共用施設・設備スペース・構造用耐力壁などが集められたところ」,
「地球の核」「試錐
, (ボーリング)によって採取した円柱状の土壌や岩石の試料」,
「一部のオペレーションシステムでプログラムが不正に終了したとき,メモリの内
容をまるごと保存したファイル(コアファイル,コアダンプ)」,「マイクロプロ
セッサのコア」,「Intel社の商品であるCOREシリーズ」等の多様な意味
があるが,前記(2)アのとおり,多くのコンピュータ関連の用語辞典等には,「CO
RE」や「コア」の項目が掲載されていない。
上記の意味のうち,「コアファイル」,「コアダンプ」,「マイクロプロセッサ
のコア」,「Intel社の商品であるCOREシリーズ」は,コンピュータ関連
の用語であるが,「CORE」の語がコンピュータソフトウェアである本件指定商
品に使用された場合は,コンピュータハードウェアを意味する「マイクロプロセッ
サのコア」やコンピュータハードウェアの商品名である「Intel社の商品であ
るCOREシリーズ」を意味するものとは認識されないというべきであるし,「コ
アファイル」や「コアダンプ」も一部のオペレーションシステムで用いられている
用語にすぎず,「コアファイル」や「コアダンプ」と認識されるとも認められない。
また,「CORE」の語が本件指定商品に使用された場合,「中心部,中核,核
心」などの一般の辞書に掲載されている意味のどれとも認識されないか,認識され
るとしても,せいぜい「中心部,中核,核心」という意味と認識されるにすぎない
というべきである。
イ 「ML」について
(ア) 前記(2)イの認定からすると,「ML」の語には,「マシーンラーニン
グ(Machine Learning)」,「メーリングリスト(mailin
g list)」,「マークアップ言語(MarkupLanguage)」の略語
の意味があることが認められる。
しかし,①本件において,一般的な辞書に,「ML」の項目が存在することの証
拠は提出されていないこと,②前記(2)イのとおり,「ML」の語が「マシーンラー
ニング(Machine Learning)」の略語として使用された例は一定
数存するが,それらの使用例においては,必ず,「機械学習」という語と共に使用
されていること,③コンピュータ関連の用語辞典の中には,「ML」の項目が存在
するものがあるものの,同項目が存在しないものもあり(「ウィキペディア」のウ
ェブサイトの「コンピュータ略語一覧」),同項目を設けている用語辞典(「IT
用語辞典e-Words」)では,「ML」は「メーリングリスト」の意味である
と説明されていることからすると,「ML」の語が何らの説明もなく使用された場
合,「マシーンラーニング(Machine Learning)」の略語を意味
すると認識されるとはいえないというべきである。また,ブランド名と「ML」を
結合し,「ML」を「Machine Learning」として用いる例がある
としても,
「CORE」のみでは,本件指定商品との関係ではブランド名とは認めら
れないから,そのことを根拠に本願商標の「ML」が「Machine Lear
ning」と認識されると認めることもできない。
また,上記のとおり,コンピュータ関連の用語辞典には,「ML」を「マークア
ップ言語」を意味するものと説明しているものはないこと,本件証拠上,「ML」
の語が
「マークアップ言語」の略語の意味として使用されていると認められる例は,
「SGML」「XML」「HTML」のみであることからすると,
, , 「CORE」の語
の次に一文字開けて「ML」の語を配置した場合に,
「ML」の語が「マークアップ
言語」と認識されるとはいえないというべきである。
さらに,上記のとおり,「ML」の語が「メーリングリスト(mailing l
ist)」の略語の意味を有することは「IT用語辞典e-Words」に記載さ
れているが,他に,
「ML」の語が「メーリングリスト」の意味で使用されている例
を示す証拠は提出されていないことからすると,「ML」の語が「メーリングリス
ト(mailing list)」の略語の意味として認識されるということもで
きない。
(イ) 以上からすると,本件指定商品に,
「CORE」の語の末尾に1文字開
けて「ML」を配した語が使用された場合,
「ML」から,何らかの観念が生じると
認めることはできない。
ウ 以上のア,イで判示したところからすると,本願商標が本件指定商品に
使用された場合,「CORE」の語からは,せいぜい「中心部,中核,核心」とい
った一般的な意味が認識されるにすぎず,「CORE」の部分が出所識別標識とし
て強く支配的な印象を与えるということはできないのに対し,「ML」の語からは
特定の観念を生じることはなく,「ML」の部分が「CORE」の部分に比べて特
段出所識別標識としての機能が弱いということはできない。
また,本願商標の外観上も,
「CORE」と「ML」は,いずれも,同じ大きさの
標準文字で構成されており,その間に1文字開いているだけであるから,別個独立
の商標と認識されるものではない。
さらに,称呼においても,本願商標は,一連に発音されるものと認められる。
したがって,本願商標と引用商標との類否を判断するに当たっては,本願商標全
体と引用商標を対比すべきであり,本願商標から「CORE」の部分を抽出し,こ
れを引用商標と対比してその類否を判断することは許されないというべきである。
したがって,原告の主張する取消事由1は理由がある。
2 取消事由2(本願商標と引用商標の類否判断の誤り)について
本願商標からは,
「コアエムエル」の称呼が生じ,引用商標1,2からは,
「コア」
の称呼が生じるところ,その音数は大きく異なっていることからすると,その差異
は大きいというべきである。
また,本願商標の「CORE ML」と引用商標1の「CORE」及び引用商標
2の「コア」とは,その外観が異なる。
本願商標の「CORE ML」の「CORE」の部分と,引用商標1の「COR
E」及び引用商標2の「コア」では,「中心部,中核,核心」といった観念が生じ
る点で,観念が共通することがあるものの,上記のとおり,本願商標と引用商標1,
2とは,称呼と外観において異なっており,称呼における差異は大きいことからす
ると,本願商標は,引用商標のいずれとも類似していないというべきであり,原告
の主張する取消事由2は理由がある。
第4 結論
以上の次第で,原告の請求は理由があるから,本件審決を取り消すこととして,
主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
森 義 之
裁判官
佐 野 信
裁判官
熊 谷 大 輔

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

今週の知財セミナー (2月24日~3月2日)

2月26日(水) - 東京 港区

実務に則した欧州特許の取得方法

来週の知財セミナー (3月3日~3月9日)

3月4日(火) -

特許とAI

3月6日(木) - 東京 港区

研究開発と特許

3月7日(金) - 東京 港区

知りたかったインド特許の実務

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

オネスト国際特許事務所

東京都新宿区西新宿8-1-9 シンコービル 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

なむら特許技術士事務所

茨城県龍ヶ崎市長山6-11-11 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 訴訟 鑑定 コンサルティング 

今知的財産事務所

東京都港区新橋6-20-4 新橋パインビル5階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 訴訟 鑑定 コンサルティング