令和1(ワ)26712不当利得返還等請求事件
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裁判所 |
請求棄却 東京地方裁判所
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裁判年月日 |
令和2年11月17日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
その他
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キーワード |
損害賠償1回
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主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事件の概要 |
本件は,原告が,被告に対し,被告がインターネットウェブサイト上に開設20
した被告経営に係る店舗のホームページに虚偽の事実を掲載したことにより,
原告は信用を毀損されて損害を被ったと主張して,不法行為による損害賠償請
求権に基づき,500万円及びこれに対する不法行為より後の日である令和元
年9月1日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定
の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。25 |
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判決文
令和2年11月17日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
令和元年(ワ)第26712号 不当利得返還等請求事件
口頭弁論終結日 令和2年10月8日
判 決
原 告
同訴訟復代理人弁護士 横 内 淑 郎
被 告
10 同 訴 訟 代 理 人 弁 護士 有 賀 大 輔
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
15 第1 請求等
1 被告は,原告に対し,500万円及びこれに対する令和元年9月1日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 仮執行宣言
第2 事案の概要
20 本件は,原告が,被告に対し,被告がインターネットウェブサイト上に開設
した被告経営に係る店舗のホームページに虚偽の事実を掲載したことにより,
原告は信用を毀損されて損害を被ったと主張して,不法行為による損害賠償請
求権に基づき,500万円及びこれに対する不法行為より後の日である令和元
年9月1日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定
25 の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証
拠は文末に括弧で付記した。)
⑴ 原告は,平成25年10月頃,(住所は省略)において「マシェリスタジ
オ」という名称の子供写真館(以下「マシェリスタジオ」という。)を開店
した。(争いがない事実のほか,甲4,9,10)
5 被告は,(住所は省略)において「コフレホーム」という名称の雑貨店
(以下「コフレホーム」という。)を経営する傍ら,マシェリスタジオの従業
員として稼働した。(争いがない事実のほか,甲1,10)
A(以下「A」という。)は,カメラマンであり,マシェリスタジオの従
業員として稼働した。(甲10,乙3,弁論の全趣旨)
10 ⑵ マシェリスタジオは,異なる仕様(天空,花壇等)の複数の部屋を用意し,
このうち客が選択した部屋において一定の時間内に撮影した写真の全てを納
品するという手法により写真撮影を行っていたところ,人気が出て,一定先
まで予約が入るようになった。(争いがない)
⑶ 被告は,平成26年4月頃,マシェリスタジオを退職し,コフレホームに
15 写真館を併設した。
被告は,平成28年10月頃,インターネットウェブサイト上に開設した
コフレホームのホームページに,「2013年マシェリスタジオをA氏と立
ち上げる」との記載(以下「本件記載」という。)を掲載した。
被告は,令和元年8月頃,本件記載を削除した。
20 (本項につき,争いがない事実のほか,甲1,弁論の全趣旨)
⑷ マシェリスタジオは現在閉鎖されている。(争いがない)
2 争点及び争点に関する当事者の主張
本件の争点は,
①被告が本件記載により原告の信用を毀損したか。
25 ②損害の発生及び額
である。
⑴ 争点①(被告が本件記載により原告の信用を毀損したか。)について
(原告の主張)
被告は,被告及びAが,実際には原告の被用者であったにすぎないにもか
かわらず,マシェリホームの創業者である旨の虚偽の本件記載をし,これを
5 見た者にその旨誤信させ,「マシェリスタジオの『開設者』,『先駆者』,
『創業者』である」との原告の信用に疑念を抱かせ,これを毀損した。
(被告の主張)
否認する。
本件記載は虚偽ではない。マシェリスタジオは,カメラマンである被告及
10 びAが事業を計画して開店に至ったものであり,原告は,同事業計画に出資
したにすぎない上,平成26年5月9日にAに対しマシェリスタジオに係る
事業を譲渡した。
⑵ 争点②(損害の発生及び額)について
(原告の主張)
15 原告は,マシェリスタジオと同種のスタジオの立ち上げ等を計画していた
ところ,被告による信用毀損により,新規出店や事業拡大を妨害されてこれ
らを行うことができず,得べかりし利益500万円を失うという損害を被っ
た。
(被告の主張)
20 否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
前提事実,証拠(各項末尾に掲記したほか,甲9~11,乙2,3。ただし,
いずれも後記認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば次の各事
25 実が認められる。
⑴ 原告と被告は,被告が夫と共に運営していた柔道教室に原告の子が通って
いたことから知り合った。
⑵ 被告は,原告に対し,スタジオを立ち上げることについて,原告と一緒に
やりたい旨を述べていた。原告は,平成25年10月頃,マシェリスタジオ
の開店に当たり資金を拠出し,その従業員として,B,A及び被告を雇用し
5 た。そして,原告及びBは事務を,Aはスタジオにおける写真撮影を,被告
は写真撮影の補助のほかスタジオの現場の仕事全般を行った。
⑶ 被告は,平成26年4月頃,マシェリスタジオを退職し,コフレホームに
写真館を併設した。
⑷ 本件記載が掲載されたウェブページは,被告が「フォトスタジオ コフレ
10 ホーム」を自ら紹介,宣伝等するものであり,本件記載のほか,「得意とす
る洋裁を活かし2008年にハンドメイドショップCoffretをOPEN!」,
「スタジオではカメラマンとしても活躍」,「プライベートでは3児のママ」
などの記載があった。また,同ページから,コフレホームにおける写真撮影
の予約をすることができるページに移動することができる構成になっていた。
15 (甲1)
2 争点①(被告が本件記載により原告の信用を毀損したか。)について
マシェリスタジオは,原告が出資して開店したものといえる。しかし,被告
及びAは,同開店に当たりマシェリスタジオの従業員として雇用され,原告及
びBが事務を行った一方,Aはカメラマンとしてスタジオにおける写真撮影を
20 行い,被告は写真撮影の補助のほか現場の仕事全般を行っていた(前記1⑵)。
そうすると,被告及びAは少なくとも開店当時の従業員としてスタジオの現場
の仕事全般を担っていて,マシェリスタジオの立ち上げに関与したとも評価で
き,本件記載が虚偽であるとまではいえない。そして,本件記載は,被告が自
らの業務の紹介,宣伝等をしているウェブページにおいて被告がマシェリスタ
25 ジオに関与したことを述べるものであって(同⑷),原告がマシェリスタジオ
の開店等に関与していないと述べるものでもなく,本件記載によって原告に対
する社会的信頼が低下するものともいえない。
以上によれば,被告が本件記載により違法に原告の信用を毀損したとは認め
るに足りない。
第4 結論
5 以上の次第で,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由
がないからこれを棄却すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
10 裁判長裁判官 柴 田 義 明
裁判官 佐 伯 良 子
裁判官 棚 井 啓
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