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令和2(行ケ)10076審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和2年12月15日
事件種別 民事
当事者 原告エバラ食品工業株式会社
被告特許庁長官
法令 商標権
キーワード 審決40回
実施1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯 ⑴ 原告は,平成27年5月20日,次のとおり,位置商標に係る商標登録出 願を行った(商願2015-47397号)(以下「本願」という。)。 【商標登録を受けようとする商標】 【商標の詳細な説明】 商標登録を受けようとする商標は,標章を付する位置が特定された位置商 標であり,商品を封入した容器の胴部中央よりやや上から首部にかけて配さ れた立体的形状からなる。前記立体的形状は容器周縁に連続して配された縦 長の菱形形状であり,各々の菱形形状は中央に向かって窪んでいる。なお破 線部分は商品容器の一例を示したものであり,商標登録を受けようとする商 標を構成する要素ではない。 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】 第30類 調味料 ⑵ 特許庁は,平成29年4月10日付けで拒絶査定をした。

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判決文

令和2年12月15日判決言渡

令和2年(行ケ)第10076号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 令和2年10月8日

判 決

原 告 エバラ食品工業株式会社

同訴訟代理人弁理士 中 山 俊 彦

被 告 特 許 庁 長 官

同 指 定 代 理 人 石 塚 利 恵

同 半 田 正 人

同 小 出 浩 子

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が不服2017-10633号事件について令和2年3月30日にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯

⑴ 原告は,平成27年5月20日,次のとおり,位置商標に係る商標登録出願を行った(商願2015-47397号)(以下「本願」という。。)【商標登録を受けようとする商標】【商標の詳細な説明】商標登録を受けようとする商標は,標章を付する位置が特定された位置商標であり,商品を封入した容器の胴部中央よりやや上から首部にかけて配された立体的形状からなる。前記立体的形状は容器周縁に連続して配された縦長の菱形形状であり,各々の菱形形状は中央に向かって窪んでいる。なお破線部分は商品容器の一例を示したものであり,商標登録を受けようとする商標を構成する要素ではない。【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】

第30類 調味料

⑵ 特許庁は,平成29年4月10日付けで拒絶査定をした。

⑶ 原告は,平成29年7月18日,拒絶査定に対する審判請求を行った(不

服2017-10633号)。

⑷ 原告は,平成29年7月18日付け手続補正書により,本願の指定商品を,

第30類「焼肉のたれ」と補正した

⑸ 特許庁は,令和2年3月30日付けで,

「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。

⑹ 原告は,令和2年5月25日,審決謄本の送達を受け,同年6月23日,

審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。審決の理由の要旨審決は,別紙審決写しのとおりであり,その理由の要旨は,次のとおりである。

⑴ 商標法(以下,条文は商標法の条文を示す。)3条1項3号該当性について

本願商標を構成する立体的形状及びそれを付す位置は,需要者において,その商品の包装容器について商品の機能又は美観に資することなどを目的として一般に広く行われている立体的な装飾の一類型として認識し得る範囲のものというべきであり,それ自体が単独で商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として認識されることはないとみるのが相当である。したがって,本願商標は,商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから,3条1項3号に該当する。

⑵ 3条2項に規定する要件の具備について

商品の容器の胴部中央よりやや上から首部にかけての周縁の位置に本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものが付された「エバラ焼肉のたれ黄金の味」と称する商品が,昭和53年6月以降,全国で販売され,広告宣伝もされ,平成27年度の焼肉のたれ市場において3割を超えるシェアを有するものであるとしても,上記商品については,その広告宣伝等を含めて使用されている「エバラ」の文字からなる標章又は「黄金の味」の文字からなる標章が商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として需要者に認識されているといえる一方,その容器の胴部中央よりやや上から首部にかけての周縁の位置に付された本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものがそのような標識として需要者に認識されているとはいえない。したがって,本願商標は,使用がされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められず,3条2項に規定する要件を具備するものとは認められない。

第3

(原告の主張)

(審決取消事由)

1 3条1項3号該当性に関する判断の誤り

同一の商品又は商品群に統一した外観パッケージを採用することにより,その外観パッケージが出所表示として機能する余地がある。そして,一般の取引者・需要者が商品の容器の形状・模様や特定位置に配置された形状・模様に基づいて商品を識別することは日常的に起こることである。そのため,商品の容器の形状・模様や特定位置に配置された形状・模様が,一般的に広く行われているものでなく,その構成要素が独特であれば,識別機能が認められる。本願商標は,連続した縦長の菱形の立体的形状が容器の胴部中央よりやや上から首部にかけて配されるものであり,特定位置に配された凹凸を有する立体的形状は特殊な形状であり,本願商標の位置,形状は,誰もが採択する形状ではなく,識別標識としての機能を有する。したがって,本願商標は商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから3条1項3号に該当するとの審決の判断は誤りである。

2 3条2項に規定する要件の具備に関する判断の誤り

⑴ 本願商標の使用

ア 使用態様原告は,本願商標を,その指定商品である焼肉のたれの容器に使用してきたが,焼肉のたれという指定商品の特性上,需要者は,購買又は使用に当たって容器それ自体を目にし,実際に繰り返し触れており,宣伝広告等の中で本願商標が殊更特徴として取り上げられていなくても,こうした日常の行動の中で,無意識に自然と,本願商標を構成する立体的形状に基づいてその商品の出所を識別するようになる。イ 使用実績原告は本願商標を,その製造販売に係る「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品のうち一般消費者向けの容量のものに,昭和53年6月の発売当初より現在に至るまで40年以上にわたり,容器がガラス瓶からPETボトルに変更されたもののその前後を通じて,継続して使用している。「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」の平成27年の出荷本数は約4000万本で,焼肉のたれ市場におけるシェアは約4割を占める。本願商標が使用された商品の販売実績は平成27年(2015年)に約20億円(210g)及び約94億8000万円(400g)となり,本願商標が使用された商品の同年度の出荷額は,原告の全出荷額の24%を占め,SRIデータ(株式会社インテージによる全国小売店パネル調査におけるPOSデータ)の「焼肉のたれ群」を対象とする金額構成比で36.2%を占める。

⑵ 位置商標を出所識別標識として強く印象付ける行為の有無

位置商標である出願商標が使用されている商品に,出願商標以外の標章が表示されていたとしても,使用により出願商標が識別力を有するに至っているか否かの判断に当たっては, 出願商標部分のみが独立して自他商品の識別標識として認識されるに至っているかどうかを検討すべきであり,使用者が殊更それを強く印象付けるような宣伝広告を行うことは要件ではない。そのため,本願商標を使用した商品には,本願商標を構成する立体的形状が付されているとともに,ラベルに,原告のハウスマークである「エバラ」の標章及び商品名である「黄金の味」の標章等が表示されているが,本願商標が使用により識別力を有するに至っているか否かの判断に当たっては,本願商標のみが独立して自他商品の識別標識として認識されるに至っているかどうかを検討すべきであり,原告が殊更本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものを強く印象付けるような宣伝広告を行うことは要件ではない。原告は「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品のテレビCMを放映し,その末尾には本願商標が使用された商品が映し出された。また,本願商標が使用された商品の写真を掲載したパンフレット,チラシ,製品案内を多数配布し,あるいは,製菓会社,食品会社とのコラボレーション企画により,それらの会社の商品の包装に本願商標が使用された商品の写真が掲載されて販売され,さらに,原告は「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品を用いたレシピを紹介したムックについてレシピ考案及び監修を行い,そのムックにも本願商標が使用された商品の写真が掲載された。審決は,原告が提出した上記の宣伝広告活動に関する証拠(テレビCM,パンフレット,チラシ,製品案内,ムック等)に,本願商標を使用した商品の写真が表示され,「エバラ」の標章及び商品名である「黄金の味」の標章等が示されている一方で,本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るもの自体を商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付ける 表示等が見当たらないことに基づいて,本願商標が使用により識別力を有するに至っていないと判断した(7頁26~30行目,8頁15~19行目,8頁36行目~9頁1行目,9頁15~19行目,11頁5~9行目)。また,審決は,本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものは,需要者にとって商品の機能又は美観に資することなどを目的として一般に広く行われている立体的な装飾の一類型として認識し得る範囲のものであり,たとえ長年にわたりそれが使用されていたとしても,需要者がそれを商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として認識することはない旨説示した(15頁26~28行目,16頁19~2行目,17頁1~3行目,6~12行目)。しかし,これらの判断及び説示は,本願商標が使用により識別力を有するに至っているか否かの判断に当たって,原告が殊更本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものを強く印象付けるような宣伝広告を行うことを要件としたものであり,誤りである。

⑶ アンケート調査

ア 審決は,原告が調査会社である株式会社マーケティングアプリケーションズに依頼して行った「『黄金の味』ボトルデザイン想起調査」と題するアンケート調査(以下「本件アンケート」という。その調査結果報告書(2017年6月20日付け)は甲24である。 について,) 「回答者に示された容器の写真は,中身やラベルは外してあるものの,そのキャップ部を含め,容器全体の形状(輪郭)が特定されているものである一方,本願商標は,別掲1のとおりの構成からなる位置商標であり,その容器全体の形状(輪郭)が特定されていないものであるから,両者の間には,視覚上の印象に少なからず影響を及ぼす差異が存するとみるのが相当であることに加え,回答者が当該写真に係る容器のどの部分(全体又は一部)をもって回答したかは不明であり,これをもって,本願商標が自他商品の識別標識として機能するか否かを推し量ることはできない。」(12頁8~16行目)と説示する。しかし,本件アンケートでは,本願商標が使用された商品のラベルを剥離した状態の容器がアンケートの対象とされたところ,そのような容器の特徴的部分が本願商標を構成する立体的形状であることは明白であり,回答者が上記立体的形状を無視して回答することは全くありえない。加えて,本件アンケートは,他製品との対比の中で行っているから,本願商標が使用された商品の容器についてのみ,位置商標として特定する要素だけを取り出して視覚的要素として提示するような設問自体が成立し得ない。したがって,審決の上記説示は誤りである。イ 審決は,本件アンケートについて,「本件商品の容器については,『純粋想起』において,『黄金の味/黄金のたれ/黄金』と回答した者は2%にとどまる上,『エバラ 黄金の味』という具体的な選択肢が与えられた『助成想起』においても,正答率が66%にとどまる。(12頁」~20行目)と説示し,本願商標が使用された商品の容器は識別機能が低い旨説示する。しかし,本願商標が使用された商品の容器を示して商品名を自由に答える場合(純粋想起)に,「黄金の味/黄金のたれ/黄金」と答えた者は28%,「エバラ/エバラ焼き肉のたれ」と答えた者は36%であり(甲24〔4頁〕 ,原告が出所であると正しく識別)した者は,これらの合計の64%であるから,本願商標が使用された商品の容器は識別機能を有する。したがって,審決の上記説示は誤りである。また,審決は,原告が出所であると識別した者が64%であることに関連して,「請求人の製造,販売する商品において,その商品の容器の表面に本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るもの(標章)が付されているのは,専ら本件商品である」旨説示するが(18頁10~1行目),そのことは,回答者の64%が本願商標を構成する立体的形状を出所表示として正しく識別したことを何ら否定するものではない。したがって,審決の上記説示は誤りである。さらに,審決は,『エバラ「 黄金の味』という具体的な選択肢が与えられた『助成想起』においても,正答率が66%にとどまることに照らせば,それらの程度はいずれも高いものとはいえない。」(18頁14~行目)と説示する。しかし,本願商標が使用された商品の容器を示して商品名を自由に答える場合(純粋想起)に正しく出所を識別している者の割合は,前記のとおり合計64%と極めて高く,また,具体的な商品名を示した選択肢が与えられた上で答える場合(助成想起)の結果によれば,本件アンケートが実施された平成29年(2017年)時点での本願商標が使用された商品のシェア以上に,原告が出所であることが認識されていたことになるから,これらの数字は,原告以外の出所の商品を購入する需要者に対しても本願商標が浸透してい たことを意味しており,本願商標を構成する立体的形状が識別標識として機能していることを示す。したがって,審決の上記説示は誤りである。

⑷ 店舗での陳列

審決は,「請求人は,商品が陳列台の下段に配置されたときは,その商品のラベルがはっきりと視認できないとするが,本件商品が食品であって,誤った商品選択により健康に影響が及ぶ場合があることからすれば,需要者が商品選択をする際には,少なくとも商品の出所を確認すべく,商品のラベル上の表示に注目するとみるのが相当である」(16頁12~16行目)から本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものは自他商品を識別する標識として機能しない旨説示する。しかし,一の商品に標章が複数用いられることが一般に広く行われていることは審決(15頁13~15行目)も認めるところであり,上記の説示は,あたかも単一の標章しか標識として機能しないことを前提とする点で,誤っている。実際に需要者が購買決定するに当たっては,一の商品から複数の情報をインプットし,自己の希望に合致するものか否かを判断して購入するか否かを決定するから,その過程において容器形状やその一部が識別標識として機能し得ることは自明であり,商品の陳列状況によっては,まず一部の容器形状が識別標識として需要者に認識されることも通常起こり得ることである。審決の上記説示は,容器形状は,それが殊更積極的に識別標識として宣伝広告されていなければ識別標識たりえないという先入観を前提とした判断であり,誤りである。

⑸ 3条2項に規定する要件の具備

したがって,本願商標は3条2項に規定する要件を具備するものとは認められないとの審決の判断は誤りである。

第4 被告の反論

1 3条1項3号該当性に関する判断の誤りに対し

(原告の主張)

は争う。商品等の形状は,同種の商品が,その機能又は美観上の理由から採用すると予測される範囲を超えた形状である等の特段の事情のない限り,普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,3条1項3号に該当すると解すべきである。液体状の商品を封入する包装容器は,機能の観点から,細口で縦長のものが採択,使用されることが多いが,そのような商品の性質から要求される一定の制約の下においても,様々な形状の包装容器が存在し,これらの包装容器の表面に立体的形状による装飾を付したもの,中でも連続する菱形形状(このような形状は「ダイヤカット」とも称される。)を付したものが存在する。焼肉のたれの包装容器についても,包装容器の表面に立体的形状による装飾を付したものが存在し,連続する立体的な菱形形状を付したものが存在する。そして,原告自身も,ウェブサイトにおいて,本願商標を構成する立体的形状が包装容器の機能や美観に資するものである旨述べ,その旨新聞でも報道されている。そうすると,本願商標を構成する立体的形状は,同種の商品が,その機能又は美観上の理由から採用すると予測される範囲のものであり,その範囲を超えた形状であると認めるに足りる特段の事情は存在しない。したがって,本願商標は,商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり,3条1項3号に該当するものであって,同旨の審決の判断に誤りはない。

2 3条2項に規定する要件の具備に関する判断の誤りに対し

(原告の主張)

は争う。

⑴ 本願商標の使用

ア 使用態様原告は,昭和53年6月以来「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品を全国で販売し,本願商標を構成する立体的形状は,上記商品の一形態である210g(発売開始~平成27年),400g(昭和54年~平成29年7月),360g及び480g(平成29年7月~)のものに使用されている。本願商標が使用された商品の容器の胴部には,原告のハウスマークである「エバラ」の標章,商品名である「黄金の味」の標章,商品の内容を示す「焼肉のたれ」「甘口」「中辛」又は「辛口」の文字等が表示されたラ, ,ベルが貼付されており,需要者は,出所識別標識として,強く支配的な印象を与える「エバラ」及び「黄金の味」の標章に着目するが,包装容器の一部である本願商標を構成する立体的形状に注目して出所識別標識と認識する可能性は極めて低い。イ 使用実績原告は,本願商標が使用された商品の販売実績が平成27年(2015年)に約20億円(210g)及び約94億8000万円(400g)となった旨主張し,同年度の出荷額は,原告の全出荷額の24%を占め,SRIデータの「焼肉のたれ群」を対象とする金額構成比で36.2%を占める旨主張する。しかし,これらの主張を裏付けるものとして提出された証拠(甲13,14)は信用性に乏しい。

⑵ 位置商標を出所識別標識として強く印象付ける行為の有無

原告は「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品のテレビCMを放映し,その末尾には本願商標が使用された商品が映し出されるが,本願商標を構成する立体的形状が視認できるように映し出される時間は短い上,本願商標について,それを商品又は包装容器に係る特徴として言及するなど,視聴者に対し,本願商標を商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような映像又は音声はない。「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品についてラジオCMが行われたとしても,聴取者が,商品に付された本願商標を構成する立体的形状を認識することは困難である。原告は,本願商標が使用された商品の写真を掲載したパンフレット,チラシ,製品案内を制作し,また,製菓会社,食品会社とのコラボレーション企画により,それらの会社の商品の包装に本願商標が使用された商品の写真が掲載されて販売され,さらに,「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品を用いたレシピを紹介したムックについてレシピ考案及び監修を行い,そこにも本願商標が使用された商品の写真が掲載されたが,それらのいずれにおいても,本願商標を商品又は包装容器に係る特徴として述べるなど,本願商標を商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような記載等はなかった。本願商標が使用された商品について,需要者は,出所識別標識として,強く支配的な印象を与えるラベル上の「エバラ」及び「黄金の味」の標章に着目するものの,包装容器の一部である本願商標を構成する立体的形状に注目して出所識別標識と認識する可能性は極めて低く,上記のとおり,原告による宣伝広告活動において,本願商標を商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような表示等がなかったことからすると,本願商標が使用された商品が一定の販売実績や市場シェアを有しており,宣伝広告活動が継続されているとしても,本願商標を構成する立体的形状が出所識別標識として周知されるに至ったとは認められず,その形状が出所を識別させるものとなったとも認められず,同旨の審決の判断,説示に誤りはない。

⑶ アンケート調査

ア 本件アンケートは,対象者が一般の需要者でなく現在の購買者に限定されている点,回答者には本願商標が使用された商品の容器全体の形状が示されており,そのうちどの部分に着目して回答がされたか不明である点などで,調査対象,調査方法が適切ではない。したがって,同旨の審決の説示に誤りはない。イ 本件アンケートによれば,本願商標が使用された商品の容器を示して商品名を自由に答える場合(純粋想起)に「黄金の味/黄金のたれ/黄金」と回答した者が28%,具体的な商品名を示した選択肢が与えられた上で答える場合(助成想起) 「エバラに 黄金の味」と回答した者が66%であり,市販の焼き肉用調味料を購入する者を対象とした調査結果としては,正答率が低い。そのため,本件アンケートによって,本願商標を構成する立体的形状が出所識別機能を有することが裏付けられたとはいえず,同旨の審決の説示に誤りはない。

⑷ 店舗での陳列

本願商標の指定商品は焼き肉のたれであり食品であるから,需要者は商品の出所を確認するためにラベルに注目するものであり,また,本願商標が使用された商品が店舗で陳列された写真(甲25~28)によっても,本願商標を構成する立体的形状が需要者に強い印象を与えるとはいえず,他の様々な形状の包装容器とともに陳列された場合に本願商標を構成する立体的形状が識別力を発揮するとはいえないから,本願商標が使用された商品が店舗で長年陳列されたことによって,本願商標を構成する立体的形状が需要者に自他商品を識別する標識として認識されるに至ったとは認められない。したがって,同旨の審決の説示に誤りはない。

⑸ 3条2項に規定する要件の具備

したがって,本願商標は3条2項に規定する要件を具備するものとは認められないとの審決の判断に誤りはない。

第5 当裁判所の判断

1 3条1項3号該当性について

⑴ 判断の枠組み

3条1項3号は,その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,形状(包装の形状を含む。・・・),生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴,数量若しくは価格又はその役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途,態様,提供の方法若しくは時期その他の特徴,数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は,商標登録を受けることができない旨を規定しているが,これは,同号掲記の標章は,商品の産地,販売地その他の特性を表示,記述する標章であって,取引に際してこれらを使用する必要性が高く,誰もがその使用を欲するものであるから,特定人による独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,これらの標章は,一般的に使用される標章であって,多くの場合,自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないことから,登録を許さないとしたものである。同号掲記の標章のうち商品等の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品等の美観をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって,その反面として,商品・役務の出所を表示し自他商品・役務を識別する標識として用いられるものは少なく,需要者としても,商品等の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能や美観を際立たせるために選択されたものと認識するものであり,出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。また,商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状は,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを必要とし,その使用を欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは,公益上の観点から適切でないといえる。したがって,商品等の形状は,同種の商品が,その機能又は美観上の理由から採用すると予測される範囲を超えた形状である等の特段の事情のない限り,普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,3条1項3号に該当すると解するのが相当である。

⑵ 包装容器の表面に付された連続する縦長の菱形形状

ア 液体状の商品の包装容器に付された形状飲食料品を取り扱う業界において,液体状の商品を封入する包装容器は,持ちやすさ,注ぎやすさ,飲みやすさ等の観点から,細口で縦長のものが採択,使用されることが多い。しかし,このような商品の性質から要求される一定の制約の下においても,様々な形状の包装容器が存在し(乙1~乙5) これらの包装容器の表面に立体的形状による装飾を付したもの,, 中でも連続する菱形形状(ダイヤカット)を付したものが,次のとおり認められる。

① 「大塚製薬の公式通販 オオツカ・プラスワン」のウェブサイト(乙

6)において,「オロナミンC誕生物語Ⅱ」(1頁)の見出しの下,「美しさに加え濡れても滑らないようにとほどこされたびんのダイヤカット。」(2頁)の記載とともに,連続する菱形形状が胴部中央よりやや上部に付され,その下に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された飲料の瓶の写真が掲載されている。

② 「小岩井乳業株式会社」のウェブサイト(乙7)において,『小岩井

「カラダへの贈りもの プラズマ乳酸菌のむヨーグルト』 2012年12月4日(火)新発売」(1頁緑字)の見出しの下,「商品特長」欄の「スタイリッシュなシルエットにダイヤカットをあしらった,手に持ちやすい新容器を採用。(1頁)の記載とともに,連続する菱形形状が上部に」付され,その下に商品名が目立つ態様で表示された飲料の容器の写真が掲載されている。

③ 「ヤマトマテリアル株式会社」のウェブサイト(乙8)において,

「オリジナル商品 食品関連」(1頁)の見出しの下,「ダイヤカットが入ったスリムなドレッシングボトル。(1頁)の記載とともに,連続する菱」形形状が下部に付され,その上に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された調味料の容器の写真が掲載されている。そうすると,液体状の商品の包装容器の上部又は下部に,連続する菱形形状を付すことは,取引上普通に採択,使用されているものと認められる。そして,そのいずれの場合においても,その包装容器の連続する菱形形状の上又は下に,商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付され又は商品名が目立つ態様で表示されているものと認められることや,①,②の各記載等に照らしてみると,菱形形状は,持ちやすさなどの機能や美観の観点から採用されているものと考えられる。イ 焼肉のたれに係る包装容器に付された形状(ア) 焼肉のたれに係る包装容器の表面の装飾本願商標の指定商品は「焼肉のたれ」であるところ,焼肉のたれの包装容器について,その表面に立体的形状による装飾を付したものが,次のとおり認められる。

① 「日本ハム株式会社」のウェブサイト(乙9)において,

「焼肉たれ甘口」(1枚目)「焼肉たれ, 中辛」(2枚目)「焼肉たれ, 辛口」(3枚目)「焼肉たれ, 味噌味」(4枚目)の見出しの下,連続する斜めの筋状の立体的形状が上部に付され,その下に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された瓶の写真が掲載されている。

② 「楽天市場」のウェブサイト(乙10)において,

「プルコギ韓国風焼肉タレ」(1枚目)の見出しの下,連続する斜めの筋状の立体的形状が上部に付され,その下に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された容器の写真が掲載されている。

③ 「市川地域ブランド協議会」のウェブサイト(乙11)において,

「梨の焼き肉のたれ」(1枚目)の見出しの下,連続する斜めの筋状の立体的形状が上部に付され,その下に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された容器の写真が掲載されている。

④ 「Amazon」のウェブサイト(乙12)において,

「戸村本店 戸村の焼肉のたれ 600g」(1枚目)の見出しの下,連続する斜めの筋状の立体的形状が下部に付され,その上に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された容器の写真が掲載されている。

⑤ 「叙々苑プレミアムショップ」のウェブサイト(乙13)において,

「叙々苑 焼肉の塩だれ」(1枚目)の見出しの下,連続する縦の筋状の立体的形状が上部に付され,その下に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された容器の写真が掲載されている。

⑥ 「わが街とくさんネット」のウェブサイト(乙15)において,

「島根県名産品 たれ 焼肉のたれ 200g×6」(1枚目)の見出しの下,連続する縦の筋状の立体的形状が上部に付され,その下に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された瓶の写真が掲載されている。

⑦ 「川島町生活改善グループ連絡協議会」のウェブサイト(乙16)

において,「焼き肉のたれ 川島特産ニンニク入り!【川島町生活改善グループ連絡協議会】(1枚目)の見出しの下,連続する縦の筋状の」立体的形状が上部に付され,その下に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された瓶の写真(2枚目)が掲載されている(乙16)。そうすると,焼肉のたれの包装容器の上部又は下部の表面に立体的形状による装飾を付すことは,取引上普通に採択,使用されているものと認められる。そして,そのいずれの場合においても,その包装容器の表面の立体的形状による装飾の上又は下に,商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付されているものと認められること等からすれば,これらの筋状の形状も,機能や美観の観点から採用されているものと推認される。(イ) 焼肉のたれに係る包装容器に付された菱形形状焼肉のたれの包装容器の表面に付す立体的装飾の一類型として連続する立体的な菱形形状を用いるものが,次のとおり認められる。

① 「コスモ食品株式会社」のウェブサイト(乙17)において,

「北の方から 焼肉のたれ 中辛350g」(1枚目),「北の方から 焼肉のたれ 薬膳 中辛350g」(3枚目)の見出しの下,連続する縦長の菱形の立体的形状が下部に付され,その上に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された容器の写真が掲載されている。

② 「フードレーベル」のウェブサイト(乙18)において,

「焼肉トラジ 焼肉のたれ 240g」の見出しの下,連続する縦長の菱形の立体的形状が下部に付され,その上に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された容器の写真が掲載されている。

③ 「Amazon」のウェブサイト(乙19)において,

「成城石井 焼肉のたれ 350g」(1枚目)の見出しの下,連続する縦長の菱形の立体的形状が包装容器の下部に付され,その上に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された容器の写真が掲載されている。

④ 「Amazon」のウェブサイト(乙20)において,

「焼肉チャンピオン 焼肉のたれ 240g」(1枚目)の見出しの下,連続する縦長の菱形の立体的形状が蓋部及び下部に付され,その間の中央部分に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された容器の写真が掲載されている。そうすると,焼肉のたれの包装容器の上部又は下部の表面に,連続する縦長の菱形形状を付すことは,取引上普通に採択,使用されているものと認められる。そして,そのいずれの場合においても,その包装容器の表面の連続する縦長の菱形形状の上又は下に,商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付されているものと認められること等からすれば,これらの菱形形状も,機能や美観の観点から採用されているものと推認される。ウ 本願商標を構成する形状に関する原告の説明原告は,本願商標を構成する形状に関して次のとおり説明していることが認められる。

① 原告のウェブサイト(乙21)において,

「エバラの真髄 黄金の味開発ストーリー」(1枚目)の見出しの下,『黄金の味』のネーミングの由「来とダイヤモンドカット容器」(1枚目)の項目に,『黄金の味』の容器「の特徴であるダイヤモンドカットは,香水やブランデーのボトルのような『高級感』『見栄えの良さ』を意識したデザイン性と,ダイヤモンドカットのビンの耐衝撃性・耐久性に優れている点を重視して,採用されました。(2枚目)という記載がある。」

② 「日本食糧新聞」(2017年6月16日付け)(乙22)において,

「焼肉のたれ特集:メーカー動向=エバラ食品工業 主力『黄金の味』大幅刷新」の見出しの下,「今期は,1978年の発売以来はじめて『黄金の味』シリーズを大幅リニューアルする。(本文9行目)「新開発の」 ,PETボトル容器には,現行瓶に設けられたダイヤモンドカットを再現。軽くて持ちやすいという利便性と,衝撃に強く,耐久性にも優れた機能性を備え,店頭や食卓でも見栄えするデザインとなっている。(21~」23行目)という記載がある。上記の「日本食糧新聞」の記事は,原告の商品に関する詳細な内容に及んでいることから,原告に対する取材に基づくものであると推認され,その記事の内容は,原告の説明に基づくものであると認められる。そうすると,原告自身,本願商標を構成する形状について,包装容器の機能や美観に資するものであると説明し,新聞においてそのように報道されていたものと認められる。エ 形状の採択,使用の趣旨以上を総合すると,包装容器の表面に付された連続する縦長の菱形の立体的形状は,液体状の商品及びそのうちの焼き肉のたれの包装容器について,機能や美観に資するものとして,取引上普通に採択,使用されている立体的な装飾の一つであり,その位置は,包装容器の上部又は下部が一般的であることが認められる。そして,実際の使用例においては,いずれの場合も,その立体的形状の上又は下に,商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付されていることが認められ,需要者は,そのようなラベルによって商品名等を容易に認識することができるものと認められる。

⑶ 3条1項3号該当性

本願商標は,標章を付する位置が特定された位置商標であり,商品を封入した容器の胴部中央よりやや上から首部にかけて配された立体的形状からなり,その立体的形状は容器周縁に連続して配された縦長の菱形形状であり,各々の菱形形状は中央に向かって窪んでいるものである。前記⑵エのとおり,包装容器の表面に付された連続する縦長の菱形の立体的形状は,焼き肉のたれの包装容器について,機能や美観に資するものとして,取引上普通に採択,使用されている立体的な装飾の一つであり,その位置は,包装容器の上部又は下部が一般的である上に,その形状に,格別に斬新な特徴があるとまではいえないことからすると,本願商標を構成する立体的形状及びそれを付す位置は,需要者及び取引者において,商品の機能又は美観上の理由により採用されたものと予測し得る範囲のものであると認められる。本願商標の図の破線部分は商品容器の一例を示したものであり,商標を構成する要素ではなく,また,本願商標は,その立体的形状の下に商品名等が記載されたラベルを貼付することを構成自体に含むものではないが,本願商標は,容器の胴部中央よりやや上から首部にかけて配されており,指定商品が焼き肉のたれであることからすると,その下に商品名等が記載されたラベルが貼付されることは容易に予測されるものであり,そのような観点からしても,本願商標を構成する立体的形状は,需要者及び取引者において,出所の識別ではなく機能や美観に資するものとして採択,使用されていると認識されるものと認められる。そうすると,本願商標を構成する立体的形状は,同種の商品が,その機能又は美観上の理由から採用すると予測される範囲のものであり,その範囲を超えた形状であると認めるに足りる特段の事情は存在しない。したがって,本願商標は,商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり,3条1項3号に該当すると認められる。

⑷

(原告の主張)

の検討原告は,商品の容器の形状・模様や特定位置に配置された形状・模様が一般的に広く行われているものでなく,その構成要素が独特であれば,識別機能が認められると主張し,本願商標の位置,形状は誰もが採択する形状ではなく,識別標識としての機能を有する旨主張する(前記第3,1)。しかし,本願商標と全く同一の位置,形状の模様を付した容器が,原告のもの以外になかったとしても,それにより直ちに本願商標に識別力が認められるものではない。前記⑴のとおり,3条1項3号の趣旨に照らせば,商品等の形状は,同種の商品が,その機能又は美観上の理由から採用すると予測される範囲を超えた形状である等の特段の事情のない限り,同号に該当するというべきであり,全く同一の位置,形状の模様を付した容器が他にないということだけでは,上記の特段の事情が存在するとはいえないから,原告の上記主張は採用できない。原告は,3条1項3号該当性についてるる主張するが,いずれも採用することができない。

⑸ 小括

したがって,本願商標が3条1項3号に該当するとの審決の判断に誤りはない。3条2項に規定する要件の具備に関する判断の誤り

⑴ 判断の枠組み

立体的形状からなる位置商標が使用により自他商品識別力を獲得したといえるかどうかは,当該商標の形状,その使用期間及び使用地域,当該商標が付された商品の販売数量やその広告の期間及び規模並びに当該商標の形状に類似した形状を有する他の商品の存否などの事情を総合考慮して判断すべきである。

⑵ 本願商標の使用

ア 使用態様本願商標を構成する立体的形状は,原告の「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品のうち,210g(発売開始~平成27年),400g(昭和54年~平成29年7月) 360g及び480g, (平成29年7月~)のものに使用されている(後記イ(イ)。以下,本願商標を構成する立体的形状が使用されているこれらの製品をまとめて「本願商標使用商品」という。。本願商標使用商品は,その容器の胴部中央よりやや上から首部にか)けて,容器周縁に連続して縦長の菱形形状が配され各々の菱形形状は中央に向かって窪んでいるという本願商標を構成する立体的形状が付されているとともに,その立体的形状のすぐ下の胴部の中ほどから下部にかけてラベルが貼付されており,そのラベルの正面側には,原告のハウスマークである「エバラ」の標章,商品名である「黄金の味」の標章,商品の内容を示す「焼肉のたれ」「甘口」「中辛」又は「辛口」の文字等が表示され, ,ており,このうち「黄金の味」の標章は,金色又は黄色の色彩で大書されている(甲1〔78頁〕,甲3~甲6,甲9の1~4,甲11,甲20,甲29)。イ 使用期間等(ア) 「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品の製造販売原告は,昭和33年5月に設立され,その頃ソースやケチャップの製造,販売を開始し,昭和40年代から焼き肉のたれを販売していた。原告は,昭和53年(1978年)6月に「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」(甘口・中辛,210g)という商品を全国で発売し,同年10月にはその「辛口」を発売した。これらの商品には,本願商標が使用された。(甲1,甲2,甲4,甲29)その後,「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品(甘口・中辛・辛口)については,容量の追加又は変更が,昭和54年400g追加(甲3,甲5),昭和62年590g追加(甲3),平成6年920g追加(甲3),平成20年150g追加(甲9の2〔7枚目〕,平成29年7月4)00gの販売を終了し360g及び480gに変更(乙23) 平成29,年40㎖追加(乙24)のように行われた。また,平成15年以降,業務用のもの(1ℓ,1550g,4.8kg)が発売された(甲9の1~4)。その間,平成9年(甲3),平成23年(甲3,甲9の3)及び平成29年7月に瓶の容器包装のデザイン変更が行われ,このうち同月の変更は,容器の材質をガラスからペットに変更するものであったが(乙22,乙23),本願商標を構成する立体的形状は,終始一貫して包装容器に付されていた(甲1,甲3,甲5,甲6,甲9の1~4,甲29,乙22,乙23)。現在では,「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品は,本願商標を使用したものを含め,様々な包装容器で販売されている(甲9の4,乙23,乙24)。(イ) 包装容器「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品のうち,本願商標使用商品は,発売開始から平成27年まで販売されていた容量210gのもの(甲3,甲4,甲6),昭和54年に追加されて平成29年7月まで販売されていた400gのもの(甲3,甲5,甲6),並びに平成29年7月以降に販売されている360g及び480gのものである(乙23) 一。方,「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品のうちプチサイズ(42g×3個入)のものは,小分け容器が封入された長方形の包装袋である(乙24)。パーティーサイズ(590g)や容量920gのものの容器はペットボトルであり,その表面に何らの立体的装飾はなく,容量1ℓの業務用のものの容器もペットボトルであるが,その上半分に横線の立体的形状が付されている。容量1550gの業務用のものの容器は持ち手が成形されたボトル型のプラスチック容器であり,その表面には何らの装飾もない。容量4.8kgのものの容器は,上部にひも状の持ち手が付いた直方体型のものである。(甲9の1~4)。ウ 販売実績原告の売上高は,昭和54年3月に100億円を突破した後,昭和59年3月に200億円を突破し,平成2年3月に300億円を突破し,平成27年度には507億0800万円となり,そのうち食品事業による売上が445億6900万円となり,更にそのうち,「エバラ焼肉のたれ」「エ,バラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品を含む肉まわり調味料群の売上が171億0300万円を占めている(甲1,甲3,甲12,甲29)。また,原告が製造,販売する「エバラ焼肉のたれ」「エバラ焼肉のたれ,黄金の味」という商品が含まれる商品分野「焼肉のたれ」における平成25年(2013年)4月から平成26年(2014年)3月までの間の原告の市場シェアは,54.2%であった(甲11)。さらに,本願商標使用商品は,発売当初から全国で販売されていたところ(甲1,甲2,甲4,甲5,甲20,甲21の1~5,甲29),平成10年から平成27年にかけての販売実績は,210gのものは平成10年に約55億3000万円であったが,その後に漸減し,平成27年に約20億円となり,他方,400gのものは,平成10年に約71億4000万円であったが,その後に漸増し,平成27年に約94億8000万円となった(甲14)。そして,平成27年度には,本願商標使用商品の出荷額は,原告の全出荷額の24%(210gの4.2%と400gの19.8%の合計,甲13)を占め,また,SRIデータ(株式会社インテージによる全国小売店パネル調査におけるPOSデータ)の「焼肉のたれ群」を対象とする金額構成比では36.2%を占め(210gの9.7%と400gの26.5%の合計,甲13),さらに,同年度の「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品の出荷本数は約4000万本であって,焼肉のたれ市場におけるシェアは約4割であった(乙23)。エ 宣伝実績(ア) テレビCM原告は,本願商標使用商品について,その発売時(昭和53年6月)以降,芸能人を起用するなどしてテレビCMを制作し,全国的に放映していた(甲1,甲4,甲5,甲16~甲18,甲29,甲30,甲34の1,2,甲35,甲36)。これらのテレビCMのうち,その全体の内容が明らかなもの(甲16中の「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」のCM及び他の商品とともに「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」が宣伝されているCM,甲34の1)は,CM末尾に本願商標使用商品の外観正面は映し出されるものの,その商品容器の表面の本願商標を構成する立体的形状が視認できるように映し出される時間は短く,かつその映し出される時間のほとんどにおいて,「エバラ黄金の味」又は「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」等のテロップが表示されると同時にその音声も流れているものであった。(イ) ラジオCM原告は,ラジオを通じて本願商標使用商品の宣伝広告を行った(甲35,〔71,72枚目〕。)(ウ) パンフレット,チラシa 原告は,本願商標使用商品である「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」(甘口・中辛,210g)の昭和53年6月の発売に先立ち,その商品の特長や仕様,販売促進活動の概要等を知らせる販売店向けの「フルーツたっぷり/エバラ焼肉のたれ黄金の味/〔新発売!!〕 を見出」しとするパンフレット(甲4)を制作し,また,本願商標使用商品である「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」(甘口・中辛,400g)の昭和54年の追加発売に先立ち,その商品の特長や仕様,販売促進活動の概要等を知らせる販売店向けの「おいしさでっかく新発売!!/エバラ焼肉のたれ黄金の味 大型登場」を見出しとするパンフレット(甲5)を制作し,配布した。これらのパンフレットは,いずれも表紙に本願商標使用商品の外観正面の写真が掲載されていた。b 原告は,平成12年11月に,「我が家はいつでもやっぱり黄金の味!/エバラ黄金の味」を見出しとする本願商標使用商品に係るチラシ(甲6)を2万3000部制作し,配布した。このチラシの表面には,商品の変更点を示す「黄金らしさをさらに追求!! すっきりした甘さとコクのバランスがさらにおいしくなりました」及び「キラリ輝く金ラベル! 輝く新ラベルでお客様へのアピール度アップ アイキャッチ効果が抜群です」という記載とともに,本願商標使用商品の外観正面の写真が掲載されていた。このチラシの裏面には,商品の変更点として,エコ対応樹脂ヒンジキャップの採用に関する記載のほか,本願商標使用商品を用いた料理例(写真)や商品規格の記載があり,商品規格の欄に本願商標使用商品の写真が掲載されていた。(エ) 製品案内原告は,製品案内のパンフレットを,平成15年7月に7000部(甲9の1),平成20年7月に5000部(甲9の2),平成23年7月に1万2000部(甲9の3),平成27年12月に1万0100部(甲9の4),それぞれ制作し,配布した。これらの製品案内は,原告が製造販売する家庭用及び業務用の各種商品ごとの概要,規格及び外観正面等を販売店等に知らせるものであり,そのいずれにおいても,本願商標使用商品が味や容量ごとに区分けされ,その外観正面の写真が掲載されていた。(オ) 各種コラボレーション企画a 原告は,森永製菓株式会社とコラボレーションを行い,平成21年2月3日から同年5月末日頃までの間,同社のスナック菓子である「おっとっと」という商品の新フレーバーとして「やきにく味」が全国で販売され,その包装袋には,本願商標使用商品の外観正面の写真が表示された(甲38,甲39)。b 原告は,サンヨー食品株式会社とコラボレーションを行い,平成22年5月24日に,同社のカップ焼きそばとして,「サッポロ一番 焼肉のたれ焼そば」という商品が発売され,その包装に,本願商標使用商品(中辛)の外観正面の写真が表示された(甲42,甲43)。c 原告は,ジャパンフリトレー株式会社とコラボレーションを行い,平成23年9月から平成24年6月までの間,同社のスナック菓子である「チートス(Chee-tos)」という商品の一種としてコラボレーション商品が1万8000ケース(12袋/ケース)販売され,その包装袋には,本願商標使用商品(中辛)の外観正面の写真と,そのラベル部分が表示された(甲40,甲55)。d 原告は,株式会社なとりとコラボレーションを行い,平成30年6月4日から同年10月31日までの間,同社のビーフジャーキー製品として,「焼肉のたれ味ビーフジャーキー」という商品が全国で17万袋販売され,その包装袋に,本願商標使用商品(中辛)の外観正面の写真が表示された(甲41,甲55)。(カ) ムックの監修等原告は,学研パブリッシングが平成25年3月27日に「GAKKEN HIT MOOK/エバラ焼肉のたれ 黄金の味 使いきりレシピ」と題するムックを発行するに当たり,レシピ考案及び監修にかかわった。上記ムックは,「エバラ焼肉のたれ 黄金の味」という商品を用いた各種料理のレシピが主な内容であるが,同商品が1978年の誕生から35年が過ぎて今では年間3700万本(2011年実績)を出荷するロングセラー商品に成長した旨の記載,同商品には3つの味(甘口・中辛・辛口)及び3つのサイズ(210g,400g,590g)がある旨の記載,同商品の特徴等の記載もあり,本願商標使用商品の外観正面の写真が掲載されていた。(甲20)オ アンケート調査原告は,調査会社である株式会社マーケティングアプリケーションズに依頼して,本願商標使用商品の無色容器(文字等の平面標章が付されておらず,中身も充填されていないもの)を提示した際に需要者がどの程度本願商標使用商品である「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」を想起するかを把握するために,『黄金の味』ボトルデザイン想起調査」と題する本件ア「ンケートを行った。調査対象者は,「20歳~69歳,男女,全国,市販の焼肉用調味料を年に1本以上自分自身で購入する人」であり,サンプル数は1000名であった。その調査結果報告書(2017年6月20日付け)によれば,その結果は次のとおりであった。(甲24)(ア) 「純粋想起」として,本願商標使用商品を含む4種の商品の容器(文字等の平面標章が付されておらず,中身も充填されていないが,キャップ部の形状や色彩を含め,容器全体の形状(輪郭)が特定されているもの。 の写真を示した上で,) それぞれについて思い浮かんだ焼肉用調味料の商品名を答えさせる質問に対し,本願商標使用商品の容器について,「黄金の味/黄金のたれ/黄金」と回答した者は28%,「エバラ/エバラ焼肉のたれ」と回答した者は36%であった。(イ) 「助成想起」として,「エバラ 黄金の味」「モランボン, ジャン」,「キッコーマン わが家は焼肉屋さん」,「叙々苑 焼肉のたれ」 「わ及びからない」の選択肢を示した上で,前記(ア)で述べた4種の容器の写真のそれぞれについて,当てはまると思う商品名を答えさせる質問に対し,本願商標使用商品の容器の写真について,「エバラ 黄金の味」を選択した者は66%であった。(ウ) 「誤認/販売意向」として,「このボトルデザインで『エバラ 黄金の味』ではない別の焼肉用調味料が発売されたら,あなたは『エバラ 黄金の味』と間違えると思いますか。 との質問に対し,」 「間違えると思う」と回答した者は14%,たぶん間違えると思う」「 と回答した者は19%,「どちらともいえない」と回答した者は36%,「たぶん間違えないと思う」と回答した者は21%,「間違えないと思う」と回答した者は11%であった。また,「では,あなたは,『エバラ 黄金の味』ではない別の焼肉調味料がこのボトルデザインで発売することについて,どう思いますか。 と」の質問に対し,「発売しないでほしい」と回答した者は9%,「どちらかというと発売しないでほしい」と回答した者は21%,「特に何も思わない」と回答した者が70%であった。なお,上記の「発売しないでほしい」又は「どちらかというと発売しないでほしい」と回答した者において,その回答をした理由は,「エバラ焼肉のたれといえばこのボトルだというイメージが強いから。, ちゃん」「と見ずに商品を手にとって間違えて買ってしまいそうだから。, クリス」「タル部分が黄金の味のトレードマークだから」などであった。

⑶ 識別機能の有無

ア 一般に,食用又は飲用の液体の包装容器である瓶又はペットボトル等の容器にはラベルが貼付されており,ラベルには,商品名,製造者,販売者を示す標章や文字,商品の内容を示す文字等が記載されており,商品名,製造者,販売者を示す標章や文字は,目立つ態様で記載されていることが往々にしてあり,需要者がラベルによって商品を特定したり商品の出所を認識することは,顕著な事実である。そのため,需要者は,食用又は飲用の液体の包装容器である瓶又はペットボトル等の容器を見るときにラベルに注意を払うものと認められ,ラベルの記載が需要者に強い印象を与えるものと認められる。そして,本願商標使用商品についてみても,その態様は前記⑵アのとおりであり,それによれば,本願商標使用商品は,ラベルに記載された「エバラ」や「黄金の味」の標章が需要者に強い印象を与え,需要者は,出所識別標識として,ラベルの「エバラ」や「黄金の味」の標章部分に着目するものと認められる。このように,ラベルに記載された標章や文字が需要者に強い印象を与え,出所識別機能を果たしており,他方,本願商標が,焼き肉のたれの包装容器について機能や美観に資するものとして取引上普通に採択,使用されている立体的な装飾の一つである連続する縦長の菱形の立体的形状からなり(前記1⑵エ) ラベルに近接し,た位置に配置され(前記⑵ア) ラベルが強い印象を与える反面でラベル以,外の出所を表示する標識としては認識されにくい状況にあることからすると,本願商標使用商品において,本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されるとは認められない。イ(ア) 原告は,昭和53年6月から本願商標使用商品を販売しており(前記⑵イ(ア)),平成27年度の本願商標使用商品の販売実績は,210gのものが約20億円,400gのものが約94億8000万円であり(前記⑵ウ),平成27年度の「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品の出荷本数は4000万本,焼き肉のたれ市場におけるシェアは約4割であった(前記⑵ウ)。なお,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品には,本願商標使用商品とは異なる包装容器のものもあるが(前記⑵イ(イ)) 本願商標使用商品は業務用ではなく一般消費者向けで,あり(前記⑵イ(イ)),宣伝の対象となっていること(前記⑵エ)からすると,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品のうち多くの部分を本願商標使用商品が占めると推認される。このように,本願商標を構成する立体的形状は,約40年にわたって本願商標使用商品に使用されており,本願商標使用商品の売上は相当額に及んでおり,出荷本数や同種商品中におけるシェアは,相当に及んでいたものと認められる。また,本願商標使用商品は,テレビCM,ラジオCM,パンフレット,チラシ,製品案内,各種コラボレーション企画,ムックにおいて宣伝広告されており(前記⑵エ),それらの数は,全体として相当数に及んでいたものと認められる。このように,本願商標使用商品の販売実績,宣伝広告実績は相当程度に及んでおり,それにより,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品名や,その製造販売者が「エバラ」こと原告であることは,消費者に知られるようになったものと推認される。(イ)a しかし,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品のうち多くの部分を本願商標使用商品が占めると推認されるものの(前記(ア)),その一方で,本願商標使用商品とは異なる包装の商品もあること(前記⑵イ(イ))からすると,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品が広く知られたとしても,それが常に本願商標使用商品と結びつくものとはいい切れない。b また,前記アのとおり,本願商標使用商品の態様に照らして,本願商標使用商品において,自他商品識別機能を果たしているのはラベルであり,本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されるとは認められないことからすると,本願商標使用商品の販売実績が相当に及んでいても,それによって,本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されているものとは認められない。さらに,実際に行われた宣伝広告においては,テレビCMにおいて,本願商標使用商品の容器表面の本願商標を構成する立体的形状が視認できるように映し出される時間は短いものと認められるから(前記

⑵エ(ア)) テレビCMによって本願商標を構成する立体的形状が需要

,者に印象付けられたとは認められないし,本願商標が商品容器表面に付された立体的形状からなる位置商標であることからすると,ラジオCMによって,聴取者が,本願商標を構成する立体的形状を認識することは困難であったと認められる。また,テレビCMには本願商標使用商品の外観正面が映し出され(前記⑵エ(ア)),パンフレット,チラシ(前記⑵エ(ウ)),製品案内(前記⑵エ(エ)),各種コラボレーション企画による商品(前記⑵エ(オ)),ムック(前記⑵エ(カ))には,本願商標使用商品の外観正面の写真が掲載又は表示されたが,前記アのとおり,本願商標使用商品において,本願商標を構成する立体的形状は,出所を識別させる標識として認識されるとは認めることができず,また,これらの宣伝広告において,本願商標を構成する立体的形状を,商品又はその容器の特徴としてうたうなど,その立体的形状自体を商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような告知や表示が存在したとは認められない。そうすると,上記の宣伝広告において本願商標使用商品の外観正面が映し出され,外観正面の写真が掲載又は表示されたとしても,それによって,本願商標を構成する立体的形状が,出所を識別させる標識として認識されるようになったとは認められない。なお,原告は,平成22年4月から平成23年3月までの間,株式会社横浜エージェンシーを通じて,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品について,「モバイルレシピ」の提供,新聞や雑誌等への出稿,テレビCMの制作,店頭又はイベント広告用資材の制作等の宣伝広告活動を行ったことが認められるが(甲19,甲35,36),テレビCMについては上記に述べたとおりであるし,その他の宣伝広告活動の具体的な内容は明らかでないから,それらによって本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されるようになったとは認められない。(ウ) 本件アンケートによれば,本願商標使用商品を含む4種の商品の容器の写真を示した上で,それぞれについて思い浮かんだ焼肉用調味料の商品名を答えさせる質問(純粋想起)に対し,本願商標使用商品の容器について,「黄金の味/黄金のたれ/黄金」と回答した者は28%,「エバラ/エバラ焼肉のたれ」と回答した者は36%であり,また,具体的な複数の商品名の選択肢を示した上で,本願商標使用商品を含む4種の商品の容器の写真のそれぞれについて,当てはまると思う商品名を答えさせる質問(助成想起)に対し,本願商標使用商品の容器の写真について「エバラ 黄金の味」を選択した者は66%であった。そして,アンケートの手法に関して,本件アンケートは,他製品の容器全体と本願商標使用商品の容器全体を比較するという手法をとっているところ,本願商標は商品容器の一部に付される立体的形状であるから,その部分のみを他製品と比較するのは難しい面があり,そのような立体的形状の識別性を確認するために,本件アンケートのように,他製品の容器全体と本願商標使用商品の容器全体を比較するという手法も,そのような手法自体が一概に不相当とはいい切れない。しかし,上記のように容器全体を比較する場合には,容器全体の形状や,本願商標を構成する立体的形状以外の部分による印象も識別に寄与することも考慮に入れなければならない。本件アンケートの質問においては,本願商標使用商品の容器を含めて4種の商品の容器が示されたが(①~④,甲24〔4~6頁〕,そのうちの2種(②,③)は全高が低)く,全高に比して直径が太く,全体として太めな印象を与えるものであるのに対し,本願商標使用商品を含む2種(①,④)は直径に比べて全高が高く,細めな印象を与えるもので,これらは,全体のおおまかな形状において印象を大きく異にするものである。また,全高が高いもの(①,

④)のうち,本願商標使用商品とは別のもの(④)は,キャップの直径

が容器の上半分の直径と同じであり,キャップも含めた容器全体が,下半分で太く上半分で少し細く構成され,キャップも含めて全体として統一的で単純化された造形が印象付けられる。これに対し,本願商標使用商品(①)は,容器の本体は,上半分が下半分よりも直径が細く,更に一番上に,本体より直径の小さなキャップが設けられており,形状において,キャップは本体とは別個に識別できる構成であり,容器全体として,キャップの操作性に配慮した機能的な印象を生じる。このように,本願商標使用商品の容器は,その全体の形状において,比較の対象とされた他の商品の容器とは異なる特徴を有し,異なった印象を与えるものである。そのため,本件アンケートにおいて,容器全体を比較して,本願商標使用商品の容器について,原告の商品であると回答した者や,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品であると回答した者が相当程度いたとしても,それらの者は,容器全体から受ける印象によって識別した可能性が相当程度あり,本願商標を構成する立体的形状により識別したものと認めることはできない。なお,本件アンケートにおいては,本願商標使用商品の容器の写真上に,本願商標を構成する立体的形状と同一の部分を囲む赤枠が表示されているが(甲24,〔4,5頁〕,写真)には容器全体が表示されているから,赤枠が表示されていることにより,本願商標を構成する立体的形状と同一の部分により識別がされたと認めることはできない。また,本件アンケートにおいて示された,本願商標使用商品とは別の全高が高い容器(④)は,容器の表面に立体的形状が付されていないものと認められる(甲24,〔4,6頁〕。しかし,焼肉のたれの包装容器)について表面に立体的形状による装飾を付したものが存在し(前記1⑵イ(ア)),また焼肉のたれの包装容器の表面に付す立体的装飾の一類型として連続する立体的な菱形形状を用いたものが存在し(前記1⑵イ(イ)),しかも前記1⑵イ(ア),前記1⑵イ(イ)に掲記の証拠(乙9~乙13,乙~乙20)によれば,これらの容器は,いずれも直径に比べて全高が高いものであると認められることからすると,本願商標を構成する立体的形状に識別力があるというためには,本願商標使用商品の容器と同様に全高が高く,なおかつ包装容器の表面に立体的形状による装飾を付したもの又は包装容器の表面に付す立体的装飾の一類型として連続する立体的な菱形形状を用いたものとの関係でも,本願商標を構成する立体的形状に識別力があることが立証されなければならない。しかし,本件アンケートにおいては,本願商標使用商品の容器と比較する対象として,本願商標使用商品の容器と同様に全高が高く,なおかつ包装容器の表面に立体的形状による装飾を付したもの又は包装容器の表面に付す立体的装飾の一類型として連続する立体的な菱形形状を用いたものは示されていないから,そのようなものとの関係で本願商標を構成する立体的形状に識別力があることは立証されていない。そうすると,本件アンケートは,本願商標の識別力の有無を立証するという観点からすると,本願商標使用商品の容器と比較の対象とされた容器の選択において相当とはいえないものと認められ,本件アンケ―トの結果は,本願商標を構成する立体的形状に識別機能があることを立証するものとは認められず,その識別機能を判断する上で重視することはできない。ウ 前記ア,イで検討したところによれば,本願商標を構成する立体的形状は本願商標使用商品において使用され,本願商標使用商品は相当数販売され,その宣伝広告も行われてきたが,本願商標は,使用により自他商品識別力を獲得したとは認められず,したがって,使用をされた結果需要者が原告の業務に係る商品であることを認識することができるものに当たらないから,3条2項に規定する要件を具備しているとは認められない。

⑷

(原告の主張)

の検討ア 本願商標の使用原告は,本願商標の焼肉のたれという指定商品の特性上,需要者は購買又は使用に当たって容器それ自体を目にし,実際に繰り返し触れているから,宣伝広告等の中で本願商標が殊更特徴として取り上げられていなくても,需要者は,こうした日常の行動の中で,無意識に自然と,本願商標を構成する立体的形状に基づいてその商品の出所を識別するようになると主張する(前記第3,2⑴ア)。しかし,前記⑶アのとおり,本願商標使用商品において,本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されるとは認められないから,本願商標の指定商品が焼肉のたれであり,その商品の性質上,需要者が購買又は使用に当たって容器それ自体を目にし,実際に繰り返し触れることを考慮しても,需要者が本願商標を構成する立体的形状に基づいて商品の出所を識別するとは認められない。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。イ 位置商標を出所識別標識として強く印象付ける行為の有無原告は,位置商標である出願商標が使用されている商品に,出願商標以外の標章が表示されていたとしても,使用により出願商標が識別力を有するに至っているか否かの判断に当たっては,出願商標部分のみが独立して自他商品の識別標識として認識されるに至っているかどうかを検討すべきであり,使用者が殊更それを強く印象付けるような宣伝広告を行うことは要件ではないと主張し,審決の判断及び説示は,本願商標が使用により識別力を有するに至っているか否かの判断に当たって,原告が殊更本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものを強く印象付けるような宣伝広告を行うことを要件と したものであり,誤りであると主張する(前記第3,2⑵)。しかし,前記⑶アのとおり,本願商標使用商品において,本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されるとは認められないから,テレビCMに本願商標使用商品の外観正面が短時間映し出され(前記⑵エ(ア)),パンフレット,チラシ(前記⑵エ(ウ)),製品案内(前記⑵エ(エ)),各種コラボレーション企画による商品(前記⑵エ(オ)),ムック(前記⑵エ(カ))に本願商標使用商品の外観正面の写真が掲載又は表示されたとしても,それによって直ちに,本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されるようになったとは認められない。したがって,仮に宣伝広告中に,本願商標を構成する立体的形状自体を商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付ける表示又は記載等が存在したならば,それによって,本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されるようになると評価する余地もあり得るとしても,そのような表示又は記載等が全く認められない以上,本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されるようになったとは認められない。審決は,これと同旨の説示,判断をしたものであり,使用者が殊更出願商標部分を強く印象付けるような宣伝広告を行うことを,使用による識別力の取得の一般的要件として要求するものではない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。ウ アンケート調査原告は,審決の本件アンケートに関する説示について,誤りである旨主張する(前記第3,2⑶)。しかし,本件アンケートに関しては前記

⑶イ(ウ)のとおりであり,本件アンケートにおいて,容器全体を比較して,

本願商標使用商品の容器について,原告の商品であると回答した者,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品であると回答した者が相当程度いたとしても,それらの者は,容器全体から受ける印象によって識別した可能性が相当程度あり,本願商標を構成する立体的形状により識別したものと認めることはできず,また,本件アンケートによっては,本願商標使用商品の容器と同様に全高が高く,なおかつ包装容器の表面に立体的形状による装飾を付したもの又は包装容器の表面に付す立体的装飾の一類型として連続する立体的な菱形形状を用いたものとの関係で本願商標を構成する立体的形状に識別力があることは立証されておらず,本件アンケートの結果は,本願商標を構成する立体的形状に識別機能があることを立証するものとは認められない。そうすると,審決の本件アンケートに関する説示は誤りであるとは認められず,原告の上記主張は,採用することができない。エ 店舗での陳列原告は,審決が,需要者が商品選択をする際には,少なくとも商品の出所を確認すべく商品のラベル上の表示に注目するとみるのが相当であり,本願商標を構成する立体的形状と同一視し得るものは自他商品を識別する標識として機能しない旨説示したことについて ,一つの商品に標章が複数用いられることは一般に広く行われていることであり ,商品の陳列状況によってはまず一部の容器形状が識別標識として需要者に認識されることも通常起こり得ることであって,審決の説示は誤りである旨主張する(前記第3,2⑷)。しかし,需要者は,食用又は飲用の液体の包装容器である瓶又はペットボトル等の容器を見るときにラベルに注意を払うものと認められるから,(前記⑶ア),ラベルがよく見えず本願商標を構成する立体的形状のみが見える状態で本願商標使用商品が店舗で陳列されていた場合には,需要者はラベルを確認して商品を識別するものと推認される。そして,前記⑶アのとおり,本願商標使用商品において,本願商標を構成する立体的形状は出所を識別させる標識として認識されるとは認められない。したがって,審決の説示に誤りはなく,原告の上記主張は,採用することはできない。オ 原告は,3条2項に規定する要件の具備についてるる主張するが,いずれも採用することができない。

⑸ 小括

したがって,本願商標は3条2項に規定する要件を具備するものとは認められないとの審決の判断に誤りはない。結論以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,審決に,これを取り消すべき違法はない。よって,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第3部裁判長裁判官鶴 岡 稔 彦裁判官上 田 卓 哉裁判官中 平 健

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