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令和2(行ケ)10086審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和2年12月23日
事件種別 民事
当事者 原告ウィルファーム株式会社
被告特許庁長官
法令 商標権
商標法4条1項11号5回
キーワード 審決16回
拒絶査定不服審判1回
優先権1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等(弁論の全趣旨) ⑴ 原告は,平成29年11月22日,「AZURE」の文字を標準文字で表し てなる商標(以下「本願商標」という。)について,指定商品ないし指定役務 を第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料」,第5類「薬剤(農薬 に当たるものを除く。),サプリメント」,第35類「化粧品・歯磨き及びせ っけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供, 香料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薫料 の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤及び 医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供, サプリメントの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提 供,飲食料品(酒類を除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対 する便益の提供」,第44類「美容,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプ ラクティック,きゅう,柔道整復,はり治療,医療情報の提供,健康診断,栄 養の指導,介護,医療用機械器具の貸与,美容院用または理髪店用の機械器具 の貸与」とする商標登録出願をした。

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判決文

令和2年12月23日判決言渡

令和2年(行ケ)第10086号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 令和2年11月11日

判 決

原 告 ウィルファーム株式会社

訴訟代理人弁理士 小 林 正 樹

被 告 特 許 庁 長 官

指 定 代 理 人 青 野 紀 子

山 田 正 樹

石 塚 利 恵

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が不服2020-1707号事件について令和2年6月8日にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等(弁論の全趣旨)

⑴ 原告は,平成29年11月22日,「AZURE」の文字を標準文字で表してなる商標(以下「本願商標」という。)について,指定商品ないし指定役務を第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料」,第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。),サプリメント」,第35類「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,香料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薫料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,サプリメントの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食料品(酒類を除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」,第44類「美容,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり治療,医療情報の提供,健康診断,栄養の指導,介護,医療用機械器具の貸与,美容院用または理髪店用の機械器具の貸与」とする商標登録出願をした。

(2) 原告は,令和元年10月31日付けの拒絶査定を受けたため,令和2年2月7日,拒絶査定不服審判を請求した。特許庁は上記請求を不服2020-1707号事件として審理を行い,同年6月8日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月23日,原告に送達された。

(3) 原告は,令和2年7月21日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。その要旨は,本願商標は,本願の出願日前の商標登録出願に係る「AZULE」の文字を標準文字で表してなる登録商標(商標登録第5454302号。出願日・平成22年9月30日,優先権主張・平成22年8月26日米国,登録日・平成23年12月2日,指定商品ないし指定役務・第10類「心臓カテーテル,血管カテーテル,カテーテル用ガイドワイヤ,カテーテル挿入用装置,ステント,その他の医療用機械器具」,第44類「医療情報の提供,医療用機械器具の貸与」。以下「引用商標」という。乙1)と類似する商標であり,本願の指定役務中の第44類「医療情報の提供,健康診断,医療用機械器具の貸与」は,引用商標の指定役務中の第44類「医療情報の提供,医療用機械器具の貸与」と同一又は類似の役務であるから,本願商標は,商標法4条1項11号に該当し,登録することができないというものである。取消事由本願商標の商標法4条1項11号該当性の判断の誤り

第3 当事者の主張

(原告の主張)

(1) 本願商標の称呼の認定の誤り

本件審決は,本願商標の称呼について,商標がそれ自体あまり知られていない欧文字からなる場合,英語風又はローマ字風の読み方に倣って称呼されるとみるのが自然であり,本願商標は,英語風の読み方に倣って「アジュア」の称呼を生ずるほか,ローマ字風の読み方に倣って「アズレ」の称呼をも生ずるというのが相当であると判断した。しかし,本願商標は,「pure」,「cure」,「secure」等の語尾に「ure」を有する英単語と同様に英語として自然な文字の並びであることに加え,例えば広く知られているマイクロソフト社のクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」に使用されているように,我が国において認知されている語といえるため,英語の読み方に倣って称呼されるとみるのが自然である。そうすると,本願商標は,英語の読み方に倣うと,語尾に「ure」を有する英単語の「pure(ピュア)」,「cure(キュア)」,「secure(セキュア)」等と同様に「アジュア」の称呼か「アジュール」の称呼を生ずるのが自然である。

(2) 本願商標と引用商標の類否判断の誤り

ア 外観について本件審決は,本願商標と引用商標は,いずれも標準文字で表された欧文字の5文字からなるものであって,語頭を含めた3文字目までの「AZU」及び語尾の「E」のつづりを共通にする一方,異なるところは,4文字目の「R」の文字と「L」の文字との差にすぎないから,全体の外観において類似するものであると判断した。しかしながら,本願商標と引用商標は,5文字という少ない文字構成からなる商標において,4文字目の「L」と「R」において相違するものであることから,当該差異が全体に与える影響は大きい。本願商標と引用商標の共通の指定役務である第44類「医療情報の提供,医療用機械器具の貸与」という医療を扱う分野においては,人の命にも関わることであることから,常に細心の注意力が求められる。このような場面では,「L」 「R」との相違は容易に判別できるもので,両商標は,外観上,区別し得るものである。イ 称呼について本件審決は,本願商標と引用商標とは,「アズレ」の称呼を共通にするものであると判断した。しかし,前記(1)のとおり,本願商標は,「アジュア」あるいは「アジュール」と称呼されるのに対して,引用商標は,造語でありローマ字風の読み方に倣って「アズレ」と称呼されるため,本願商標と引用商標とは,称呼が相違する。ウ 観念について本件審決は,本願商標と引用商標とは,両者とも特定の観念を生じないから,観念については比較できないと判断した。しかし,本願商標は,「空色,青空」の観念を有するのに対して,引用商標は,造語であり特定の観念を生じないため,本願商標と引用商標とは,観念が相違する。エ 本願商標と引用商標の類否アないしウによれば,本願商標と引用商標とは,外観,称呼,観念のいずれにおいても類似しない。

(3) 小括

以上によれば,本願商標は,引用商標に類似しないから,本願商標は,商標法4条1項11号に該当しない。したがって,本願商標の同号該当性を認めた本件審決の判断には誤りがある。

(被告の主張)

(1) 本願商標の称呼の認定について

「AZURE」の文字は,「空色,青空」の意味を有し,「アジュア」と発音される英語(乙2)として辞書に載録された既成語ではあるが,我が国において,中学校義務教育期間,あるいは高等学校における教育期間等に学ぶべき必須の英単語には含まれておらず,比較的難しい英単語であること(乙3ないし8),また,本願の指定役務の需要者には,一般の消費者も含まれることから,これら取引者,需要者を基準にすると,上記辞書における語義が広く一般に知られたものということはできない。さらに,本願の指定役務の分野において,「AZURE」の文字が,特定の意味合いを有する語として知られているとの事情も見いだせない。そうすると,「AZURE」の文字に接する取引者,需要者が,直ちに「空色,青空」の意味を想起することが一般的であるとまではいい難いことから,本願商標は特定の意味合いを想起させない一種の造語として看取されることも少なくないものといえる。一般に,欧文字で構成される馴染みのない語の称呼を特定する場合,我が国におけるローマ字教育の状況及び英語の普及率や使用頻度が他の外国語に比べて非常に高いことに照らせば,これに接する取引者,需要者は,自己の有するローマ字及び英語の知識を基に,当該欧文字の読みを特定して称呼する場合が多いということができる。そして,「AZURE」の文字は,母音と子音の規則的な並び方から,ローマ字表記を容易に想起させ,その構成文字に相応して,ローマ字読みの「アズレ」との称呼が自然に生じる。また,「AZURE」の文字を英語読みする場合,その構成中の「URE」を含む英単語として「sure」(シュア)や「cure」(キュア)が,我が国においてよく知られた英単語であることから,それらの英語の発音に即して,「アジュア」と称呼されるものといえる。さらに,本願商標と同一のつづりからなる語を,特定の分野において,「アズール」と称呼している事例も見受けられ(乙9ないし22),そのような発音に馴染みのある需要者が本願商標に接した場合,「アズール」の称呼をも生じるといえる。なお,原告が例示する「Microsoft Azure」と称するマイクロソフト社のクラウドサービスの需要者は,主にIT業界の従業者が考えられるところ,それらの需要者の間でも,当該「Azure」の文字について,「アジュア」のほか,「アズレ」と称呼する者,「アズール」と称呼する者も一定数いることが見受けられ(乙9ないし14,26) このことは,, 一般に,欧文字で構成される馴染みのない語の称呼を特定する場合,需要者は,自己の有するローマ字及び英語の知識や,自己の有する知見を基に,当該欧文字の読みを特定して称呼するということを裏付けるものといえる。以上によれば,本願商標は,構成文字に相応して,「アジュア」の称呼の他に,「アズレ」又は「アズール」の称呼をも生じるというべきである。したがって,原告の上記主張は,失当である。

(2) 本願商標と引用商標の類否判断について

ア 外観について(ア) 本願商標及び引用商標は,いずれも標準文字で表された5文字のアルファベットからなるものであり,4文字目を除いては,同じA, U,Z,Eのアルファベットが,同じ順序で配され,使用される文字とその配列が近似している。また,両商標は,等間隔のアルファベットにより,ひとかたまりでまとまりよく構成されている。使用される文字とその配列が近似していることから,両商標は,外観において,相紛らわしいものといえる。(イ) 確かに,医療の現場においては,誤処方,誤調剤等のないように,医師や薬剤師等には,高度の注意力が要求されている。しかし,だからといって,およそ医療に関する指定役務の取引者,需要者である医師,薬剤師等の医療関係者であれば,名称について混同するおそれはないということはできないのであって,現に,厚生労働省の医療安全対策ネットワーク事業の下で報告された「ヒヤリ・ハット事例収集・分析」(乙27)においては,例えば,名称について混同した事例として,薬剤名の称呼及び外観が似ていたことを要因とする事例や,医療材料の名称確認が不十分であったことを要因とする事例も報告されている(乙28ないし34)。そうすると,医療の現場では,医療関係者が,一般に高度の注意力が要求されていることを考慮しても,なお,本願商標と引用商標を時と所を異にして離隔的に観察した場合,両商標は,外観において,相紛らわしいというべきである。まして,役務の需要者には,医療患者や,病気の予防・健康の増進を求める一般の消費者も含まれるため,これらの一般の消費者が通常有する注意力を踏まえると,本願商標と引用商標とは,外観において,相紛らわしいものである。イ 称呼について前記⑴のとおり,本願商標からは,「アジュア」の称呼の他に,「アズレ」又は「アズール」の称呼をも生じ,引用商標からは,ローマ字風の読み方に倣って「アズレ」の称呼が生じるほか,「AZULE」の文字を英語読みする場合,その構成中の「ULE」を含む英単語として「rule」(ルール),「schedule」(スケジュール)や「module」(モジュール)が,我が国においてよく知られた英単語であることから,それらの英語の発音に即して,「アズール」の称呼も生じる。そうすると,本願商標と引用商標とは,「アズレ」又は「アズール」の称呼において,共通する。よって,本願商標と引用商標とは,称呼においても類似するものである。ウ 観念について前記(1)のとおり,「AZURE」の文字は,我が国において,中学校義務教育期間,あるいは高等学校における教育期間等に学ぶべき必須の英単語には含まれておらず,比較的難しい英単語であること,また,本願の指定役務(「健康診断」等)の需要者には,一般の消費者も含まれることから,これら取引者,需要者を基準にすると,上記辞書における語義が広く一般に知られたものということはできない。そうすると,必ずしも,本願商標から特段の観念が生じるとはいえない。よって,本願商標と引用商標とは,観念において比較できないものである。エ 本願商標と引用商標の類否前記アないしウによれば,本願商標と引用商標とは,観念において比較できないものの,外観は紛らわしいものであり,共通の称呼を生じるものである。本願の指定役務と引用商標の指定役務の需要者である一般の消費者が通常有する注意力を踏まえると,これらの一般の消費者が必ずしも商標の構成を細部にわたって記憶して取引するとはいえないことから,本願商標と引用商標を時と所を異にして離隔的に観察した場合,役務の出所の誤認混同を生ずるおそれがあるといえる。したがって,本願商標と引用商標とは,互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。

(3) 本願の指定役務と引用商標の指定役務の類否について

本願の指定役務である第44類「医療情報の提供,健康診断,医療用機械器具の貸与」は,引用商標の指定役務の第44類「医療情報の提供,医療用機械器具の貸与」と同一又は類似する役務である。

(4) 小括

以上によれば,本願商標は,引用商標に類似する商標であり,かつ,引用商標の指定役務と同一又は類似する役務について使用するものであるから,本願商標は,商標法4条1項11号に該当する。したがって,本願商標の同号該当性を認めた本件審決の判断には誤りはない。

第4 当裁判所の判断

本願商標の称呼の認定の誤りについて

(1) 本願商標は,「AZURE」の欧文字を表してなる。「azure」は,「空色,青空」の意味を有し,「アジュア」と発音される英単語として辞書(乙2。ジーニアス英和辞典 第5版,2014年12月25日発行。)に掲載されているが,中学生向け(乙2ないし6)や高校生向け(乙7)の学習書で覚えておくべき単語として挙げられていないことはもちろん,TOEICの制作機関が提供するボキャブラリーブック(乙8。国際的なビジネスの場で一般的に使われる語彙を集めている。 でも取り扱われておらず,) 我が国においてその意味が広く一般に知られている語とは認められず,また,本願商標の指定商品・指定役務の分野において,特定の意味合いを有する語として知られているとの事情も見いだせない。そうすると,需要者から,一種の造語として看取されることもあるものといえる。それ自体あまり知られていない欧文字からなる商標は,一般的には,我が国において広く親しまれている英語風又はローマ字風の読み方に倣って称呼されるとみるのが自然であるから,本願商標は,英語風の読み方に倣って「アジュア」の称呼を生ずるほか,ローマ字風の読み方に倣って「アズレ」の称呼をも生ずると認めるのが相当である。

(2) 原告は,本願商標は,「pure」,「cure」,「secure」等の語尾に「ure」を有する英単語と同様に,英語として自然な文字の並びであることに加え,広く知られているマイクロソフト社のクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」に使用されているように,我が国において認知されている語といえるため,英語の読み方に倣って称呼されるとみるのが自然であると主張する。しかし,前記(1)で判断したところに照らせば,「azure」は,「pure」,「cure」,「secure」等の英単語のように一般に知られているとは認められない。そして,マイクロソフト社のクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」については,一般のビジネスにおいて幅広く使われていると認めるに足りる証拠はない上,「Azure」の称呼も,「アジュア」のほか「アズレ」とされる場合,「アズール」とされる場合もあり(乙9ないし14,26),大手企業が上記クラウドプラットフォームを採用する場合に「アズール」と呼んでいる場合もある(乙10,11)。また,イギリスの自動車のブランド「AZURE」も「アズール」と称呼され(乙15ないし19),ステッドマン医学大辞典第5版(乙21,2002年2月20日)では一群の異染性塩基性青色メチルチオニン又はフェノチアジン色素を示す用語「azure」を「アズール」と称呼し,南山堂医学大辞典第20版(乙22,2015年4月1日)は,「アズール」の語を,英語azureに由来し,アズール顆粒やギムザ染色を示すものとして挙げている。したがって,引用商標から「アジュア」の称呼のみが生じるとはいえず,原告の主張は採用できない。本願商標と引用商標の類否判断の誤りについて⑴ 外観についてア 本願商標は「AZURE」と,引用商標は「AZULE」と,いずれも標準文字で表された欧文字の大文字の5文字からなる。両者は,4文字目の「R」と「L」を除き一致するので,全体として類似するというべきである。イ 原告は,5文字という少ない文字構成からなる商標において,4文字目の「L」と「R」において相違するものであることから,当該差異が全体に与える影響は大きいと主張するが,表音文字である英文字において,当該差異が大きいものとはいえない。また,原告は,常に細心の注意力が求められる本願商標と引用商標に共通する指定役務である第44類「医療情報の提供,医療用機械器具の貸与」という医療を扱う分野においては,人の命にも関わることであることから,「L」と「R」の相違は容易に判別できると主張する。しかし,同指定役務の需要者である医療従事者でも,薬剤名の間違いによる投与ミス等が報告されている(乙27ないし34)。また,前記指定役務の需要者には,医療情報の提供や,医療用機械器具の貸与を受ける一般の消費者を含むものであり,その場合は,両商標を注意深く観察して役務の出所を識別するというよりは,むしろ,商標全体から受ける印象ないし認識によって役務の出所を識別する場合が少なくないものといえ,欧文字からなる一般に知られていない語相互の一文字の差異の判別が容易であるとはいえない。したがって,原告の主張は採用できない。(2) 称呼についてア 前記1⑴のとおり,本願商標は,英語風の読み方に倣って「アジュア」の称呼を生ずるほか,ローマ字風の読み方に倣って「アズレ」の称呼をも生ずる。また,イギリスの自動車のブランドや,医学用語に由来して,「アズール」の称呼が生じる場合もあるといえる。引用商標は,辞書等に掲載のない語であり,また,本願商標の指定商品・指定役務の分野において,特定の意味合いを有する語として知られているとの事情も見いだせないから,一種の造語として看取されるものであるところ,前記1(1)のとおり,それ自体あまり知られていない欧文字からなる商標は,一般的には,英語風又はローマ字風の読み方に倣って称呼されるとみるのが自然であるから,引用商標は,ローマ字風の読み方に倣って,「アズレ」の称呼が生じる。よって,本願商標と引用商標とは,「アズレ」の称呼を共通にし,称呼において類似するものであるということができる。イ 原告は,本願商標は,「アジュア」あるいは「アジュール」と称呼される(なお,「アジュール」との称呼を生ずる根拠については何らの説明もない。)のに対して,引用商標は,造語でありローマ字風の読み方に倣って「アズレ」と称呼されるため,本願商標と引用商標とは,称呼が相違すると主張するが,本願商標においてローマ字風の読み方に倣って「アズレ」の称呼をも生じることは前示のとおりであって,採用できない。

(3) 観念についてア 本願商標に係る「AZURE」が英語として我が国で広く認識されているとはいえないことは前記1⑴認定のとおりであり,引用商標が一種の造語として認識されることは前記⑵アのとおりであるから,本願商標と引用商標は,いずれも特定の観念を生じない。そうすると,本願商標と引用商標は観念において比較できない。イ 原告は,本願商標は,「空色,青空」の観念を有するのに対して,引用商標は,造語であり特定の観念を生じないため,本願商標と引用商標とは,観念が相違すると主張するが,本願商標に係る「AZURE」が英語として我が国で広く認識されているとはいえないことは前示のとおりであるから,「空色,青空」の観念が生ずるとはいえず,採用できない。

⑷ 本願商標と引用商標の類否について本願商標と引用商標とは,観念において比較できないとしても,外観において類似し,「アズレ」の称呼を共通にするものであり,これらを総合すれば,互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。本願の指定役務と引用商標の指定役務の類否について本願の指定役務のうち,第44類「医療情報の提供,健康診断,医療用機械器具の貸与」は,引用商標の指定役務のうち,第44類「医療情報の提供,医療用機械器具の貸与」と同一又は類似の役務である。結論以上によれば,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした本件審決の判断に誤りはない。そうすると,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。したがって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官 菅 野 雅 之

裁判官 本 吉 弘 行

裁判官 岡 山 忠 広

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