ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和2(ワ)12113 発信者情報開示請求事件
| 裁判所 | 認容 東京地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和2年12月9日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告創価学会 被告株式会社TOKAIコミュニケーションズ |
| 法令 |
著作権 著作権法32条1項4回 著作権法21条1回 |
| キーワード | 侵害47回 損害賠償2回 |
| 主文 | 1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 本件は,原告が,別紙投稿記事目録記載のIPアドレス(以下「本件IPア ドレス」という。)を利用している被告に対し,氏名不詳者(以下「本件発信 者」という。)が,ツイッター上に写真を含む投稿(以下「本件投稿」とい う。)をし,別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)に対する 原告の著作権(公衆送信権)を侵害したことが明らかであるとして,特定電気 通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以 下「法」という。)4条1項に基づき,別紙発信者情報目録記載の各情報(以 下「本件情報」という。)の開示を求める事案である。 |
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令和2年12月9日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
令和2年(ワ)第12113号 発信者情報開示請求事件
口頭弁論終結日 令和2年10月16日
判 決
原 告 創 価 学 会
同訴訟代理人弁護士 西 口 伸 良
堀 田 正 明
甲 斐 伸 明
大 原 良 明
被 告 株式会社TOKAIコミュニケーションズ
同訴訟代理人弁護士 松 尾 栄 蔵
村 上 諭 志
星 野 公 紀
主 文
1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は,原告が,別紙投稿記事目録記載のIPアドレス(以下「本件IPアドレス」という。)を利用している被告に対し,氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)が,ツイッター上に写真を含む投稿(以下「本件投稿」という。)をし,別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)に対する原告の著作権(公衆送信権)を侵害したことが明らかであるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき,別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件情報」という。)の開示を求める事案である。前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断らない限り,枝番を含むものとする。)
(1) 当事者ア 原告は,宗教法人である。イ 被告は,電気通信事業を営む株式会社である。
(2) 本件写真本件写真(甲5)は,原告の職員が職務上撮影し,原告が発行する平成30年8月22日付け聖教新聞(甲6)において,「池田先生ご夫妻が信越の友のもとへ。小説『新・人間革命』の執筆開始から25周年の今月6日,長野研修道場で」とのキャプションを付して掲載された写真であり,原告が著作権を有する著作物である(甲7,甲8)。
(3) 本件投稿本件発信者は,ツイッター上にアカウント(以下「本件アカウント」という。)を開設し,別紙投稿記事目録記載アカウント名を用いるなどしていた者であるが,同記載の投稿日時欄記載の日時に同記載「本文」以下の文書に写真(以下「本件投稿写真」という。)を付して投稿した(甲1,乙8)。本件投稿写真は,本件写真の一部をトリミングするなどしたものであった。
(4) 本件IPアドレスア 東京地方裁判所は,原告の申立てに基づき,令和元年10月11日,ツイッターを運営するツイッターインターナショナルカンパニー(以下「ツイッター社」という。)に対し,本件アカウントにログインがあった際の情報(IPアドレス並びに年月日及び時刻)であって,当該決定がツイッター社に送達された日の正午(日本標準時)時点から遡って3か月以内(ただし,本件投稿の直前のログイン時以降)のものすべてについて,仮の開示を命じる仮処分決定をした(甲2)。イ ツイッター社は,前記仮処分決定に基づき,令和元年10月31日,原告に対し,本件アカウントに係る各ログインの際のIPアドレス並びに年月日及び時刻の情報を開示した(甲3)。これによれば,本件投稿の直前にされたログイン(以下「本件ログイン」という。)は,被告が利用する本件IPアドレス(甲4の1,2)を通じ,同年8月23日午前8時19分58秒にされたものであった。ただし,その余のログインには,被告の利用しないIPアドレス(乙5)を経由するものも含まれていた。ウ 被告は,本件訴訟提起後の令和2年3月26日付けで,本件IPアドレスの割り当てを受けていた被告サービスの加入者に宛てて,法4条2項所定の意見を聴取する書面を送付したが,本件発信者は,同年4月7日付けで,被告に対し,「加入者のご家族・同居人」として,著作権法32条1項に該当する事由があるため,「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことがあるとき」とはいえないとして,発信者情報の開示に同意しない旨の回答(乙8)を返送した。争点
(1) 本件情報の発信者情報該当性(争点1)
(2) 被告の開示関係役務提供者該当性(争点2)
(3) 本件投稿による権利侵害の明白性(争点3)
第3 争点に関する当事者の主張
争点1(本件情報の発信者情報該当性)について〔
(原告の主張)
〕
(1) 本件発信者は,被告が,本件ログインをした者に対してした意見照会に対
し,「私が発信した情報です」と印字された回答書を用い,「発信者は…コメントを付して投稿した」として,本件投稿をしたことを認めた上,引用の抗弁を主張している。したがって,本件ログインをした者が,本件投稿をした本件発信者であることは明らかである。
(2) このように,本件ログインは,本件投稿のためにされたログインであるか
ら,本件ログインに係る情報は,法4条1項の「発信者情報」に当たる。本件ログインのように,侵害に係る投稿の直前のログインであれば,当該ログインのまま,当該投稿がされたと考えることができるから,当該ログインに係る情報こそが,同項の「侵害情報」に当たると理解すべきである。
(3) ツイッター社は,投稿の際のアクセスログを保存しておらず,ログインの
際のアクセスログしか開示しない。被告が主張するように,ログインの際の情報であれば,およそ開示の対象とならないというのは,硬直した法解釈であり,妥当ではない。〔
(被告の主張)
〕
(1) 本件情報のようなログインの際の情報は「発信者情報」に当たらない。
ア 法4条1項及び同条の委任を受けた総務省令が発信者情報の開示請求の対象を定める趣旨は,発信者のプライバシーや表現の自由,通信の秘密等に配慮し,発信者情報と権利侵害の強い関連性を厳格に求めることとしたものにあると解される。これらの法令の「侵害に係る」「侵害情報の送信に係る」という文言に照らすと,法4条1項の「発信者情報」は,権利を侵害したとされる情報の発信行為を行った際の発信者にかかる情報に限られると解されるのが相当である。イ これに対し,本件情報のようなログインの際の情報は,侵害情報の発信者以外の第三者によるログインの際のものである可能性を否定し得ず,法令等が許容する範囲を超えて個人のプライバシーや表現の自由が制約されるおそれがあること,また,ログイン自体は何らの侵害行為も構成しないことからすれば,仮に,その発信者情報が開示されることにより侵害情報の発信者が特定される可能性があるとしても,発信者情報開示請求の対象にはならないというべきである。したがって,本件情報は,法4条1項に定める「発信者情報」に当たらず,開示の対象とはならない。
(2) 本件ログインをした者が本件発信者であるとは限らないこと
ア 仮に,ログインの際の情報が開示の対象とされる場合であっても,前記の法令の趣旨を踏まえれば,当該ログインの機会に,権利を侵害したとする情報が投稿されたことが立証される必要があるというべきである。そして,ツイッターは,その仕様上,同時に一人しかログインできないわけではなく,パスワードを知っていれば,複数の者が同一のアカウントに二重にログインし,別人が同時にツイートすることも可能である。イ これを本件についてみるに,本件投稿に近接し,複数のIPアドレスからログインが行われ,その中には被告以外のプロバイダを経由したアクセスも含まれていることなどからすれば,本件アカウントが複数のユーザーの共有であり,また,本件ログイン以前のログインによって,本件各記事の投稿が行われた可能性も十分にある。したがって,本件情報は,法4条1項の「発信者情報」に当たらず,開示の対象とはならない。争点2(被告の開示関係役務提供者該当性)について〔
(原告の主張)
〕前記のとおり,被告の提供する通信サービスを利用し,かつ,被告からの意見照会に回答した者が,本件投稿をしたことを認めているのであるから,本件投稿が,被告の管理するサーバを経由したものであることは明らかである。したがって,被告は,法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たる。〔
(被告の主張)
〕仮に,本件ログインをした者と本件発信者とが同一人であったとしても,本件投稿が,被告のサーバを経由して行われたとは限らない。実際,本件投稿と近接する令和元年8月21日午後7時47分のログインは,被告が利用しないエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社に割り当てられたIPアドレスを経由している。被告が,本件投稿の用に供された特定電気通信設備を用いる「特定電気通信役務提供者」であると断定することはできない。したがって,被告が,法4条1項の「開示関係役務提供者」であるということもできない。争点3(本件投稿による権利侵害の明白性)について〔
(原告の主張)
〕
(1) 複製に当たること
ア 本件写真は,池田名誉会長夫妻が激励のために原告の長野研修道場に訪れた際,原告の職員が,会長夫妻を拍手で歓迎する信越地方の会員の歓喜の笑顔を捉え,その感動の様子が全国の会員にも伝わるよう,カメラマンとしての経験を活かし,撮影方向,構図,シャッタースピード,タイミング,絞りなどに工夫を凝らし,的確なタイミングを捉えて撮影したものであり,その思想,感情を表現する創作性を有する。イ 本件投稿写真は,会員が拍手をして会長夫妻を歓迎している様子が分かるものであり,人物の位置,服装,手の位置,背景,撮影アングルなどに本件写真との明らかな同一性を有し,本件写真の内容及び形式を覚知させるに足り,その部分に創作性を看取することができるものであるから,本件写真の複製物である。したがって,原告に無断でされた本件投稿は,原告の本件写真に対する公衆送信権を侵害する。
(2) 引用に当たらないこと
ア 被告は,引用の抗弁を主張するが,本件投稿に係る記事は,投稿者の実名も示さず,その大部分を本件投稿写真が占め,写真に対する論評もないのであるから,量・質の両面において,文章部分が主であり,写真部分が従であるという関係にはない。また,出所も明示されていない。イ 被告は,本件投稿に係る記事が,写真に写された自動車がレンタカーであるか否かという批評・感想を述べるものであるとするが,写真自体に対する批評は何らなされていない上,本件写真を引用したところでレンタカーであるか否かの結論が出るわけでもないから,その引用の必要性は乏しかったといえる。また,そのような感想を述べるためだけであれば,自動車の部分だけを示せば十分であり,会員が拍手をして池田名誉会長夫妻を歓迎している様子が分かる範囲まで掲載する必要性もない。ウ 加えて,本件投稿写真は,著作者名が付記されていない点,本件写真の周囲の部分を削除し,縦横比を変更したものである点において,明らかに著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害する態様で掲載されたものであり,本件投稿に係る記事は,著作権法32条1項にいう「公正な慣行に合致」し,かつ,「引用の目的上正当な範囲内」において「引用」をしたものということはできない。〔
(被告の主張)
〕
(1) 複製に当たらないこと
本件投稿写真は,「車もレンタル?!」というコメントとともに投稿されたように,「車」に焦点を置いて本件写真を利用したものにすぎず,原告が本件写真の創作性のポイントとする会員の歓喜の笑顔,感動の様子を伝えるものではない。その画質も粗いため,カメラマンとしての経験が活かしたという細部の表現は感得できない。このように,本件投稿写真は,本件写真の創作性があるとされる部分を再製したものではないから,複製権侵害は成立せず,少なくとも,それが明らかであるとはいえない。
(2) 引用に当たること
ア 本件投稿は,「池田名誉会長が乗っていた車は,レンタルしたものなのか,学会員に姿を見せるためにわざわざ購入したものなのか。」という点を問題とし,創価学会という日本有数の宗教法人の象徴的な存在である池田名誉会長が,その業務として行った長野研修道場への訪問に際しての費用のあり方について,一般市民に議論の題材を提示するものであり,「報道,批評」等の目的によることは明らかである。このようにして批評・感想を述べることは,表現の自由として保護され,社会通念上も妥当とされるものであって,「公正な慣行」に合致する。イ そして,その目的を達成するためにも,本件投稿写真を利用した方が閲覧者にとって具体的なイメージが付きやすく,有用であることは明らかであるから,本件投稿において,本件写真を引用する必要性はあったものというべきである。まして,本件投稿写真は,写り込んでいた学会員のプライバシーにも配慮し,主眼となる「車」に絞って,一部をトリミングしているのであるから,必要最小限度の範囲に限って引用されているということができる。他方,これによって,原告に経済的損害が生じることもないのであるから,本件投稿は「正当な範囲」にある。ウ 原告は,写真と記事の量的な主従を問題とするが,ツイッターというサービスの性質上,写真と記事の投稿スペースについてはあらかじめ決まっており,投稿者が自らの意思でこれを左右できるものではないから,本件投稿において,量的な主従関係を議論することに意味はない。むしろ,上記のように,本件投稿のコメント部分は,一般市民に議論の題材を提示するという報道・批評等の目的によるものであること,コメント部分が,本件発信者の意見・主張であり,メインの部分であるのに対し,本件投稿写真は,これを補足するため,必要最小限度の範囲に抑えて引用されていることを重視すべきである。エ 以上によれば,本件投稿写真を掲載したことは,著作権法32条1項の「引用」として,適法なものということができるので,原告が主張する権利侵害が明白なものであるということはできない。なお,原告は,本件写真がトリミングされていることについて,著作者人格権の侵害に当たると主張するが,上記のとおり,本件投稿写真は,適法と認められる引用において,本件写真のうち,必要な範囲の画像部分をトリミングしたにすぎないので,著作者人格権との関係においても,違法性が阻却される。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(本件情報の発信者情報該当性)について
(1) 被告は,法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」とは,権利を侵害したとされる情報の発信行為を行った際の発信者に係る情報に限られるとの解釈を前提とした上で,本件情報は,本件ログインの際の情報にすぎず,本件投稿が行われた際の情報ではないから,本件情報は,同条項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」に当たらないと主張する。ア 確かに,前提事実記載のとおり,本件投稿は,令和元年8月23日午前8時49分,本件アカウントに投稿されたものであるのに対し,本件IPアドレスは,ツイッター社が,同月23日午前8時19分,本件アカウントに本件ログインが行われた際に使用されたIPアドレスとして開示されたものであるから,本件情報は,本件ログインの際のIPアドレス等から把握される発信者情報であり,本件投稿の発信行為が行われた際のIPアドレス等から把握される発信者情報として特定されるものではない。イ しかし,法4条1項は,「権利侵害時の発信者情報」あるいは「権利が侵害された際の発信者情報」など,権利を侵害する行為の際に使用された情報に限定した規定をせず,「権利の侵害に係る発信者情報」と規定している。「係る」という語が,「関係する」又は「かかわる」との意味を有することに照らすと,同条項の「権利の侵害に係る発信者情報」とは,侵害情報が発信された際に割り当てられたIPアドレス等から把握される発信者情報に限らず,権利侵害との結びつきがあり,権利侵害者の特定に資する通信から把握される発信者情報を含むと解するのが相当である。ウ また,法4条の趣旨は,特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害を受けた者が,情報の発信者のプライバシー,表現の自由,通信の秘密に配慮した厳格な要件の下で,当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対して発信者情報の開示を請求することができるものとすることにより,加害者の特定を可能にして被害者の権利の救済を図ることにあると解されるところ(最高裁平成21年(受)第1049号同22年4月8日第一小法廷判決・民集64巻3号676頁),侵害情報そのものの発信時点ではなく,その前後に割り当てられたIPアドレス等から把握される発信者情報であっても,それが当該侵害情報の発信者のものと認められる場合には,当該発信者のプライバシー,通信の秘密等の保護の必要性の程度に比べ,当該侵害情報の被害者の権利の救済を図る必要性がより高いというべきである。エ さらに,ツイッター社は,個々の投稿に係るIPアドレス等のログを保存していないことがうかがわれるが,侵害情報そのものの発信時点に割り当てられたIPアドレス等から把握される発信者情報でなければ,法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」に当たらないとすれば,権利を侵害されたことは明白であるにもかかわらず,サイト運営者のログの保存方法等によって,発信者情報開示請求の成否が左右されることになり,侵害情報が発信された時点のIPアドレス等が保存されていない場合,被害者は権利行使を断念せざるを得なくなる。法4条が,このようにサイト運営者のログの保存方法等によって,被害者の権利救済の可否が左右されることを想定し,これを容認しているとは考え難い。オ 以上によれば,本件情報のように,侵害情報が送信される直前のログインの際のIPアドレス等から把握される発信者情報であっても,それが侵害情報の発信者のものと認められるのであれば,法4条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」に当たると解するのが相当である。
(2) 被告は,ログインの際の情報が,発信者情報開示請求の対象になり得るとしても,ツイッターの仕様上,複数の者が同一のアカウントに二重にログインすることも可能であるから,本件ログインをした者が本件発信者であるとは限らないとして,本件ログインの際のIPアドレス等から把握される発信者情報が,本件発信者のものであることを争う。ア しかし,本件アカウントのプロフィールの記述や本件投稿の内容などを見ても(甲1),本件アカウントが,複数の者の共用であることをうかがわせるような部分は見当たらない。また,本件発信者が,法4条2項の意見聴取に対してした回答(乙8)にも,そのような事情をうかがわせるような記載はない。むしろ,前提事実のとおり,本件ログインが,本件投稿の約30分前にされたものであることからすれば,本件投稿は,本件ログインをした者が,そのログイン状態を利用してしたものと推認するのが自然であり,この推認を妨げる事情は見当たらない。イ なお,ツイッター社の開示情報によれば,本件アカウントに対する182回(約2か月間)のログインのうち,本件IPアドレスによらないものは77件に上る(甲3の2)。しかし,被告が,他社の保有するものであると立証するIPアドレス(乙5)は,そのうちの2件にすぎない。同一人であっても,固定回線の外,加入する携帯電話会社の回線や旅行先のホテルの回線等を通じ,インターネットにアクセスをすることは通常のことであるから,前記の事実をもって,本件アカウントが共用のものであると推認することもできない。
(3) 以上によれば,この点に関する被告の主張は採用することができない。争点2(被告の開示関係役務提供者該当性)について被告は,本件投稿が,被告の特定電気通信設備を経由して行われたとは限らないとして,開示関係役務提供者該当性を争うが,本件投稿が,本件ログインによるログイン状態を利用してされたものであることは,争点1で認定したとおりであるから,本件投稿は,被告の特定電気通信設備を経由したものであったと認められる。争点3(本件投稿による権利侵害の明白性)について(1) 本件投稿写真が,本件写真をトリミングするなどした上,これに依拠して再製されたものであることは特に争いがない。そして,本件写真は,原告の名誉会長夫妻が,原告の施設を訪れた際,多数の会員らが拍手で迎え,同夫妻らが車中から応じる様子を撮影した報道写真であり,その場面を効果的に表現するため,撮影方法等に工夫がされたものであると認められるものであるのに対し,本件投稿写真は,本件写真の相当部分を切り出し,本件写真が表現する前記の場面のうち,同夫妻ら及び同会員らの相当数の様子を十分に覚知し得るものである。そうすると,本件投稿写真は,本件写真の創作性がある部分を再製したものであり,これを「複製」(著作権法21条)したものであるということができる。(2) 被告は,本件投稿に際し本件投稿写真を掲載したことが適法な引用(著作権法32条1項)に当たるから,その権利を侵害したことが明白なものであるとはいえないと主張するが,他人の著作物を引用した利用が許されるためには,その方法や態様が,報道,批評,研究等の引用目的との関係で,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであり,かつ,引用して利用することが公正な慣行に合致することが必要である。本件投稿に係る記事の文章部分は,別紙投稿記事目録「本文」欄記載のとおりであり,本件投稿写真中の「車」に言及するものであるとは認められるが,その趣旨は明確でない。本件発信者は,被告に対し,当該文章は,「車はレンタルなのか,買ったものなのかどちらかなのだろう。」という批評又は感想を述べる意図であったと回答するが(乙8),そのような単なる感想を述べるために本件投稿写真を掲載する必要性が高いともいえない。これに加え,本件投稿写真が,独立して鑑賞の対象となり得る程度の大きさであるのに対し,前記の文章部分は,別紙投稿記事目録「本文」欄記載の短い3文(28文字)にすぎないこと,本件写真の出所が何ら記載されていないことからすれば,その引用の方法及び態様が,引用目的との関係で社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるということはできない。また,それが公正な慣行に合致すると認めるに足りる事情も存在しない。なお,被告は,ツイッターの性質上,投稿スペースが決まっており,量的な主従関係を議論することに意味はないと主張するが,前記した文章部分の分量が,ツイッターの仕様に制約された結果であると認めるに足りる証拠はなく,また,仮にその分量がツイッターの仕様に制約された結果であるとしても,本件掲載写真を掲載する必要性に乏しいこと,本件写真の出所が明示されていないことなどに照らすと,そのような事情は上記結論を左右するものではない。(3) 以上のとおり,本件投稿写真の掲載は,適法な引用であるということはできず,その他に権利制限事由が存在することもうかがわれないから,本件発信者が,本件写真を複製した本件投稿写真を掲載したことにより,本件写真に対する原告の著作権(公衆送信権)を侵害したことは明らかである。結論以上によれば,原告は,本件発信者に対し,著作権(公衆送信権)を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有し,その権利を行使するため,本件情報(なお,先に認定したところによれば,別紙発信者情報目録記載の「別紙投稿記事目録「IPアドレス」欄記載のIPアドレスを同目録「ログイン日時」欄記載の日時頃に使用して送信された同目録「本文」欄記載の侵害情報の送信に係る者」は,「別紙投稿記事目録「IPアドレス」欄記載のIPアドレスを同目録記載のログイン日時頃に被告から割り当てられていた契約者」を意味することになる。)の開示が必要である。よって,本訴請求は理由があるから,これらを認容することとし,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
佐 藤 達 文
裁判官
三 井 大 有
裁判官
? 野 俊 太 郎
(別紙)
発 信 者 情 報 目 録
別紙投稿記事目録「IPアドレス」欄記載のIPアドレスを同目録「ログイン日
時」欄記載の日時頃に使用して送信された同目録「本文」欄記載の侵害情報の送信に係る者に関する情報であって,次に掲げるもの氏名又は名称住所
(別紙)
投 稿 記 事 目 録URL (URLは省略)投稿日時 (日本標準時)2019 年 8 月 23 日 08:48名前 Aアカウント名 Bログイン日時 (協定世界時)2019 年 8 月 22 日 23:19:58(日本標準時)2019 年 8 月 23 日 08:19:58IPアドレス 27.95.231.206本文去年の写真です。車もレンタル?!いちいち買うのですかね?
(別紙)
写 真 目 録
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