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令和2(行ケ)10047審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和3年1月20日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社健人
被告株式会社マルサプリ
法令 商標権
商標法4条1項11号6回
商標法4条1項15号4回
キーワード 審決17回
無効3回
無効審判1回
実施1回
商標権1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告は,以下のとおりの登録第6074049号商標(以下「本件商 標」という。)の商標権者である(甲1,51)。 商標の構成 KOREKARADA(標準文字) 登録出願日 平成30年6月19日 登録査定日 平成30年8月7日 設定登録日 平成30年8月24日 指 定 商 品 第5類「サプリメント」 ⑵ 原告は,令和元年11月6日,本件商標について商標登録無効審判を請求 した(甲51)。 特許庁は,上記請求を無効2019-890065号事件として審理を行 い,令和2年3月18日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決 (以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月26日,原告に送達 された。 ⑶ 原告は,令和2年4月18日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起

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判決文

令和3年1月20日判決言渡
令和2年(行ケ)第10047号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和2年11月24日
判 決
原 告 株 式 会 社 健 人
訴訟代理人弁護士 多 田 竜 一
被 告 株 式 会 社 マ ル サ プ リ
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2019-890065号事件について令和2年3月18日に
した審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
(1) 被告は,以下のとおりの登録第6074049号商標(以下「本件商
標」という。)の商標権者である(甲1,51)。
商標の構成 KOREKARADA(標準文字)
登録出願日 平成30年6月19日
登録査定日 平成30年8月7日
設定登録日 平成30年8月24日
指定商品 第5類「サプリメント」
⑵ 原告は,令和元年11月6日,本件商標について商標登録無効審判を請求
した(甲51)。
特許庁は,上記請求を無効2019-890065号事件として審理を行
い,令和2年3月18日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決
(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月26日,原告に送達
された。
⑶ 原告は,令和2年4月18日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起
した。
2 本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。
その要旨は,①本件商標と「ココカラダ」の文字を標準文字により書してな
る登録第5569271号商標(登録出願日平成24年10月10日,設定登
録日平成25年3月29日,指定商品第5類「サプリメント」 以下
。 「引用商標」
という。甲2,53)は,観念において比較できない上,外観において明確に
区別でき,称呼において明瞭に聴別できることを総合すれば,相紛れるおそれ
のない非類似の商標というべきであるから,本件商標は,商標法4条1項11
号に該当しない,②別紙記載1及び2の各標章(以下,それぞれを「使用標章
1」 「使用標章2」という。甲3,6)又は引用商標は,本件商標の登録出願

時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品を表示する商標として,需
要者の間に広く認識されていたとは認められないこと,本件商標と引用商標は,
上記のとおり,相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異のものであ
り,本件商標と使用標章1又は使用標章2は,外観,称呼及び観念の観点から
総合勘案して相紛れるおそれのないものであって,別異のものであることから
すると,本件商標をその指定商品「サプリメント」について使用したときに,
これに接する需要者が原告や使用標章1,使用標章2又は引用商標を連想,想
起することはなく,その商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らか
の関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所につい
て混同を生ずるおそれはないから,本件商標は,同項15号に該当しないとい
うものである。
第3 原告主張の取消事由
1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)
(1) 引用商標の周知性の判断の誤り
ア 原告は,平成24年4月12日,クエン酸を配合した飲料サプリとして,
「ココカラダ クエン酸」の名称の商品を発売した後,これまでに6種類
のサプリメント商品と1種類の化粧品(消毒液)を「ココカラダ」の名称
で販売している(以下,これらの商品を併せて「「ココカラダ」の商品」
という場合がある。)。
原告は,引用商標を付した「ココカラダ」の商品を専用のウェブサイト
(甲8)で販売している。また,ドン・キホーテ,ヤオコー,ダイエー,
イオンなどの有名実店舗でも,「ココカラダ」の商品が販売されている。
「ココカラダ」の商品の累計売上額は,通常販売価格ベースで1億63
66万円(消費税抜き)に上る。
イ 原告は,モンドセレクションの金賞受賞(甲4)やアンチドーピング検
査の実施(甲5)などによって「ココカラダ」のブランドイメージの構築
を図ってきたほか,「ココカラダ」の商品がスポーツ系サプリメントであ
ることから,ダーツ,ビリヤード,ボクシング,フットサル,格闘技(K
1)といったプロスポーツ選手をサポートしている。中でもダーツやビリ
ヤードは,日本ランキング1位の選手を含む多数の選手のスポンサーを務
めており,選手が試合で着用するユニフォームの肩や胸の部分には,「コ
コカラダ」のロゴが掲載されている。
また,原告は,スポーツ選手以外にも,有名な歌手・モデルをイメージ
タレントに起用して,パンフレットの作成配布,都心での動画広告,イベ
ントの開催参加といった大きなプロモーションを行ってきた。
そして,スポーツ選手や芸能人については,彼らがインスタグラムやツ
イッターなどの各種SNSへの投稿を行うことで,彼らのインスタグラム
等をフォローする何万というフォロワーへの広報宣伝にもなっている。
ウ 以上のような原告による引用商標を付した「ココカラダ」の商品の販売
実績及び積極的な広報プロモーション活動によって,引用商標は,本件商
標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品を表示す
るものとして,需要者であるスポーツ愛好家の間に広く認識され,周知で
あった。
したがって,引用商標の周知性を否定した本件審決の判断は誤りである。
(2) 本件商標と引用商標の類否判断の誤り
ア 本件商標と引用商標の外観は,構成文字種において欧文字と片仮名とい
う差異を有する。
しかし,商標の使用において,商標の構成文字を同一の称呼が生じる範
囲内でローマ字を平仮名,片仮名,漢字表記にしたり,あるいは,その逆
にするという文字種の変換はごく普通に行われていること,実際,原告が
販売する「ココカラダ」の商品のパッケージにはローマ字で「KoKoK
ARADA」と併記することも多いこと(甲9ないし11)などからする
と,欧文字か片仮名かという構成文字種の違いは,本件商標と引用商標の
類否を判断する上で重要なメルクマールではない。
イ 本件商標から生じる称呼は,「コレカラダ」であり,引用商標から生じ
る称呼は,「ココカラダ」である。そして,両称呼は,音の数が同じ5音
であり,その5音は1音毎に長短や強弱にほとんど差がなく,5音が平坦
な抑揚となる点で共通すること,聴別に大きな影響を与えるのは語頭と語
尾であるが,両称呼は,5音のうち4音を共通にし,かつ,第1音である
「コ」や最終音の「ダ」も共通することからすると,両商標の称呼は類似
しており,一定の状況で聞き間違いが発生するおそれを否定できない。
ウ(ア) 本件商標の構成中,「KORE」の文字部分は,近称の指示代名詞
である「これ」の語を欧文字で表したものと理解でき,話し手のそばに
ある物,話し手が存在している時,話し手が現にいる場所などをさす語
である。また,本件商標の構成中,「KARADA」の文字部分は,人
の肉体や健康を示す「からだ」を欧文字で表したものと理解できる。
一方,引用商標の構成中,「ココ(ここ)」の文字部分も,「これ」
と同様に近称の指示代名詞であり,話し手が現にいる場所,話し手が存
在している時をさす語であり,「カラダ」の文字部分は,人の肉体や健
康を示すものと理解できる。
このほか,語句の末尾に「だ」を付加する場合は,その前の語句を断
定的に用いる語である。
加えて,本件商標の指定商品「サプリメント」は,広義には,健康食
品の一種であるが,狭義には,栄養補助や健康補助を目的に特定成分が
濃縮された錠剤やカプセル形態の製品をさすことに照らすと,本件商標
が「サプリメント」に使用された場合には,需要者は,まず,本件商標
の構成中の「KARADA」の文字部分から人の肉体や健康を想起し,
さらに「KOREKARA(DA)」の文字部分から「今から(だ)」
という意味合いが想起され,その結果,「今から健康を増進しよう」,
「今から身体を鍛えよう」という観念を生じる。
一方,引用商標が「サプリメント」に使用された場合には,まず,引
用商標の構成中の「カラダ」の文字部分から人の肉体や健康を想起し,
さらに「ココカラ(ダ)」の文字部分から「今から(だ)」という意味
合いが想起され,その結果,「今から健康を増進しよう」,「今から身
体を鍛えよう」という観念を生じる。
このように,本件商標と引用商標は,「今から健康を増進しよう」,
「今から身体を鍛えよう」という観念が生じる点で共通する。
(イ) この点に関し本件審決は,本件商標及び引用商標は,いずれも一連
の造語を表したものとして認識され,特定の観念を生じない旨判断した
が,指定商品であるサプリメントとの結合によって想起される観念につ
いて考慮していない点で誤りがある。
(3) 小括
以上のとおり,本件商標と引用商標は,外観は相違するが,称呼が類似し,
観念が同一であること,さらに,前記⑴のとおり,引用商標は,原告の業務
に係る商品を表示するものとして,需要者であるスポーツ愛好家の間に広く
認識されているという取引の実情があることをも考慮して全体的に考察すれ
ば,本件商標と引用商標が本件商標の指定商品「サプリメント」に使用され
た場合には,その商品の出所について誤認混同が生ずるおそれがあるから,
本件商標と引用商標は全体として類似する。
したがって,本件商標は,商標法4条1項11号に該当するから,これを
否定した本件審決の判断は誤りである。
2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)
引用商標は,心(こころ)と体(からだ)を掛け合わせ,その音の響きから,
「ここからだ」,「まだまだ諦めない」という意味も含有した造語であり,独
創性がある。
また,前記1(1)ウのとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査
定時において,原告の業務に係る商品を表示するものとして,需要者であるス
ポーツ愛好家の間に広く認識され,周知であった。
さらに,本件商標と引用商標は,少なくとも称呼や観念において類似する面
がある。
加えて,引用商標を付した原告の商品と本件商標を付した被告の商品は,商
品の用途や目的,成分,用法,販売方法等において共通し(甲10,11,2
4,35),同一又は密接な関連性を有するものであり,需要者が共通するこ
と,本件商標を付した被告の商品のパッケージは,原告の商品のパッケージと
比べて,形状,図柄,キャッチコピーなどその外観において類似点が多く,広
報プロモーション活動の方法も似通っていること(甲13,36,37),本
件商標の指定商品「サプリメント」は,スポーツ愛好家が日常的に摂取する性
質の商品であり,その需要者が特別の専門的知識経験を有する者ではないから,
これを購入するに際して払われる注意力は,さほど高いものではないことを総
合的に考慮すると,本件商標を上記指定商品に使用したときは,その商品が原
告の商品と誤認混同する可能性があるから,本件商標は,原告の業務に係る商
品と混同を生ずるおそれがある商標であるといえる。
したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するから,これを否
定した本件審決の判断は誤りである。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について
(1) 引用商標の周知性について
原告は,原告による引用商標を付した「ココカラダ」の商品の販売実績及
び積極的な広報プロモーション活動によって,引用商標は,本件商標の登録
出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品を表示するものとし
て,需要者であるスポーツ愛好家の間に広く認識され,周知であったから,
引用商標の周知性を否定した本件審決の判断は誤りである旨主張するので,
以下において判断する。
ア 本件商標の指定商品「サプリメント」は,
「栄養補助食品。体に欠乏しや
すいビタミン・ミネラル・アミノ酸・不飽和脂肪酸などを,錠剤・カプセ
ル・飲料などの形にしたもの。サプリ。(広辞苑(第七版)
」 )をいい,いわ
ゆる「健康食品」に分類されることからすると,需要者は,一般消費者で
あるものと認められる。
したがって,需要者をスポーツ愛好家のみに限定する原告の主張は採用
することができない。
イ 証拠(甲3,6ないし11,16,19ないし50)及び弁論の全趣旨
によれば,①原告は,株式会社コーワリミテッド(以下「コーワリミテッ
ド」という。)とともに商品の企画開発を行い,平成24年(2012年)
4月12日,
「ココカラダ クエン酸粉末飲料 500g」を発売した後,
平成25年(2013年)2月2日に「ココカラダ 非変性Ⅱ型コラーゲ
ン 60粒」を,平成27年(2015年)2月16日に「ココカラダ 1
0g×7包」を,同年5月18日に「ココカラダ アミノ酸 5g×30
包」を,平成29年(2017年)7月1日に「ココカラダ 濃縮ウコン
プラス 90粒」及び「ココカラダ HMB FULL MAX 240
粒」を発売したこと,②「ココカラダ クエン酸粉末飲料 500g」及
び「ココカラダ 10g×7包」のパッケージには,別紙記載1のとおり,
赤色で表された「ココ」の文字と「カラダ」の文字とを2列に縦書きに書
してなる使用標章1(甲3,9,10)が,「ココカラダ 非変性Ⅱ型コ
ラーゲン 60粒」のパッケージには,青色を背景色とする白抜き文字の
「ココ」と「カラダ」とを2列に縦書きに書してなる標章(甲3,24)
が,「ココカラダ アミノ酸 5g×30包」及び「ココカラダ HMB
FULL MAX 240粒」のパッケージには,赤色を背景色とする白
抜き文字の「ココ」と「カラダ」とを2列に縦書きに書してなる標章(甲
3,11,24)が付されていること,③原告は,「ココカラダ」の商品
の公式ウェブサイト(甲8,9)を開設していること,④原告又はコーワ
リミテッドは,スーパーマーケット,ドラッグストア,ダーツバー,ネッ
トカフェ,ビリヤード遊技場などに使用標章1等を付した原告の商品を販
売していることが認められる。
一方で,原告提出の「ココカラダブランド販売開始からの実績」と題す
る書面(甲50)には,16種の商品について,
「2012年4月~202
0年9月まで」の約8年6か月間における販売数量が合計9万9482個,
税抜売上合計額が1億6316万5480円である旨の記載があるが,こ
のうち,上記①の商品については,販売数量が合計3万0891個,税抜
売上合計額は9859万3180円であり,1年当たりでみると,販売数
量は約3634個,税抜売上合計額は約1159万9198円にとどまっ
ている。また,サプリメント市場全体の市場規模や原告の商品のシェアに
ついての主張立証はない。
そうすると,原告による使用標章1等を付した原告の商品の販売実績か
ら,需要者である一般消費者はもとより,スポーツ愛好家の間においても,
当該商品が広く認識されていたことを根拠付けることはできない。
ウ 次に,原告は,使用標章1等を付した原告の商品に係る広報プロモーシ
ョン活動として,原告が,ダーツ,ビリヤード,ボクシング,フットサル,
格闘技(K1)といったプロスポーツ選手をサポートし,中でもダーツや
ビリヤードは,日本ランキング1位の選手を含む多数の選手のスポンサー
を務めており,選手が試合で着用するユニフォームの肩や胸の部分には,
「ココカラダ」のロゴが掲載されていること,スポーツ選手以外にも,有
名な歌手・モデルをイメージタレントに起用して,パンフレットの作成配
布,都心での動画広告,イベントの開催参加といった大きなプロモーショ
ンを行ってきたことなどを挙げ,これに沿う証拠(甲6,16,24ない
し32等)もあるが,パンフレットの配布数量,動画広告の具体的な状況,
イベントの具体的な開催状況等についての具体的な主張証拠はないこと
に照らすと,原告が挙げる証拠から,需要者である一般消費者はもとより,
スポーツ愛好家の間においても,使用標章1等を付した原告の商品が広く
認識されていたことを根拠付けることはできない。
エ 以上によれば,原告による使用標章1等を付した原告の商品の販売実績
及び広報プロモーション活動によって,当該商品が,本件商標の登録出願
時及び登録査定時において,需要者である一般消費者はもとより,スポー
ツ愛好家の間においても,広く認識されていたものと認めることはできな
いし,ましてや,引用商標が原告の業務に係る商品を表示するものとして,
需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。他にこれ
を認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告の前記主張は理由がない。
⑵ 本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標は,「KOREKARADA」の欧文字10字を標準文字で書
してなり,その構成文字に相応して「コレカラダ」の一連の称呼が自然に
生じる。
本件商標を構成する「KOREKARADA」の文字は,一般の辞書等
に掲載されていない造語であるが,その称呼の「コレカラダ」から「今か
らだ」ほどの意味合いを連想,想起させるものと認められる。
イ 引用商標は,「ココカラダ」の片仮名5字を標準文字で書してなり,そ
の構成文字に相応して「ココカラダ」の称呼が生じる。
引用商標を構成する「ココカラダ」の文字は,一般の辞書等に掲載され
ていない造語であるが,その構成文字から「ここ(この場所)からだ」あ
るいは「ここ(この時点)からだ」ほどの意味合いを連想,想起させるも
のと認められる。
ウ 本件商標と引用商標を対比すると,本件商標は,「KOREKARAD
A」の欧文字10字からなるのに対し,引用商標は,「ココカラダ」の片
仮名5字からなるものであり,このような構成文字の種類及び文字数の差
異から,両商標は,外観上明瞭に区別することができ,外観において明ら
かに相違する。
次に,本件商標からは「コレカラダ」の称呼が生じるのに対し,引用商
標からは「ココカラダ」の称呼が生じるところ,語頭の「ココ」と「コレ」
の音の違いによって両者は明瞭に聴別できるから,両商標は,称呼におい
て明らかに相違する。
以上のとおり,本件商標と引用商標は,外観及び称呼において明らかに
相違することに照らすならば,本件商標から「今からだ」ほどの意味合い
を連想,想起させ,引用商標から「ここ(この時点)からだ」ほどの意味
合いを連想,想起させる点で観念において類似する面があることを勘案し
ても,本件商標と引用商標を本件商標の指定商品「サプリメント」に使用
したときに,その出所について誤認混同を生じるおそれがあるものと認め
ることはできないから,本件商標は,引用商標に類似する商標であるとい
うことはできない。
したがって,本件商標は,商標法4条1項11号に該当するものとは認
められない。
エ これに対し,原告は,本件商標と引用商標は,外観は相違するが,称呼
が類似し,観念が同一であること,引用商標は,原告の業務に係る商品を
表示するものとして,需要者であるスポーツ愛好家の間に広く認識されて
いるという取引の実情があることをも考慮して全体的に考察すれば,本件
商標と引用商標が本件商標の指定商品「サプリメント」に使用された場合
には,その商品の出所について誤認混同が生ずるおそれがあるから,本件
商標と引用商標は全体として類似している旨主張する。
しかしながら,前記(1)認定のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願
時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品を表示するものとして,
需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
また,前記ウ認定のとおり,本件商標と引用商標は,外観及び称呼にお
いて明らかに相違することに照らすならば,観念において類似する面があ
ることを勘案しても,本件商標と引用商標を本件商標の指定商品「サプリ
メント」に使用したときに,その出所について誤認混同を生じるおそれが
あるものと認めることはできない。
したがって,原告の上記主張は採用することはできない。
⑶ 小括
以上のとおり,本件商標は商標法4条1項11号に該当するものとは認め
られないから,これと同旨の本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消
事由1は理由がない。
2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について
(1) 本件商標の商標法4条1項15号該当性について
原告は,①引用商標は,
「ここからだ」,「まだまだ諦めない」という意味
も含有した造語であり,独創性があること,②引用商標は,本件商標の登録
出願時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品を表示するものとし
て,需要者であるスポーツ愛好家の間に周知であったこと,③本件商標と引
用商標は,少なくとも称呼や観念において類似する面があること,④引用商
標を付した原告の商品と本件商標を付した被告の商品は,商品の用途や目的,
成分,用法,販売方法等において共通し,同一又は密接な関連性を有するも
のであり,需要者が共通すること,⑤本件商標を付した被告の商品のパッケ
ージは,原告の商品のパッケージと比べて,形状,図柄,キャッチコピーな
どその外観において類似点が多く,広報プロモーション活動の方法も似通っ
ていること,⑥本件商標の指定商品「サプリメント」は,スポーツ愛好家が
日常的に摂取する性質の商品であり,その需要者が特別の専門的知識経験を
有する者ではないから,これを購入するに際して払われる注意力は,さほど
高いものではないことを総合的に考慮すると,本件商標を上記指定商品に使
用したときは,その商品が原告の商品と誤認混同する可能性があり,本件商
標は,原告の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であり,商標
法4条1項15号に該当するから,これを否定した本件審決の判断は誤りで
ある旨主張する。
しかしながら,前記1(1)認定のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願
時及び登録査定時において,原告の業務に係る商品を表示するものとして,
需要者の間に広く認識されていたものとは認められず,また,前記1(2)ウ認
定のとおり,本件商標と引用商標は,観念において類似する面があるといえ
るものの,外観及び称呼において明らかに相違する。
そうすると,その余の点について判断するまでもなく,本件商標をその指
定商品「サプリメント」について使用したときに,これに接する需要者がそ
の商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の
業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるお
それがあるものと認めることはできない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(2) 小括
以上のとおり,本件商標は商標法4条1項15号に該当するものとは認め
られないから,これと同旨の本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消
事由2は理由がない。
3 結論
以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれ
を取り消すべき違法は認められない。
したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 大 鷹 一 郎
裁判官 小 林 康 彦
裁判官 高 橋 彩
(別紙)
1 使用標章1
2 使用標章2

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