令和2(ネ)10066損害賠償請求,不正競争行為等差止請求控訴事件
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裁判所 |
控訴棄却 知的財産高等裁判所東京地方裁判所
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裁判年月日 |
令和3年6月24日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
不正競争
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キーワード |
損害賠償3回 差止2回 侵害2回 無効1回
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主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して15万9903円及びこれに対する
3 被控訴人Y2及び同Y3は,原判決別紙顧客情報目録記載の顧客情報を利用25
4 被控訴人Y2及び同Y3は,前項の顧客情報を廃棄せよ。
1 事案の概要
2項に基づき原判決別紙顧客情報目録記載の情報(控訴人主張顧客情報)の使15
2 前提事実
3 「争点」及び「争点に関する当事者の主張」
9行目末尾までを「これは,被控訴人Y2が知り合いの弁護士(被控訴人
1 原判決の補正10
20)。」
8行目の「顧客カルテ」を「顧客カルテに記載された情報」とそれぞれ改め
2 当審における控訴人の補充主張について
1において本件施術履歴を控訴人の営業秘密と考えていたとまで認めること |
事件の概要 |
1 事案の概要
本件は,まつげエクステンション(化学繊維等から作製された人工毛を専用
の接着剤でまつげにつける手法。以下「まつげエクステ」という。)の専門店5
を営む法人である控訴人が,その元従業員である被控訴人Y1に対しては,同
人が控訴人の顧客に関する情報を取得したことについて,この行為は営業秘密
の不正取得であるから不競法2条1項4号所定の不正競争行為に当たるとして,
また,被控訴人Y2及び同Y3に対しては,同人らが共同経営するまつげエク
ステサロンにおいて,営業秘密が被控訴人Y1により不正取得されたことを知10
りながら,又は重過失によりそれを知らないで上記営業秘密を取得,使用等し
たことについて,不競法2条1項5号所定の不正競争行為に当たるとして,被
控訴人ら対して不競法4条に基づく損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の
支払を求めるとともに,被控訴人Y2及び同Y3に対して不競法3条1項及び
2項に基づき原判決別紙顧客情報目録記載の情報(控訴人主張顧客情報)の使15
用の差止め及び廃棄を求める事案である。 |
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判決文
令和3年6月24日判決言渡
令和2年(ネ)第10066号 損害賠償請求,不正競争行為等差止請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成31年(ワ)第10672号,同第10673号)
口頭弁論終結日 令和3年5月13日
5 判 決
控 訴 人 株式会社リリーラッシュ
10 被 控 訴 人 Y1
被 控 訴 人 Y2
被 控 訴 人 Y3
15 上記3名訴訟代理人弁護士 井 口 敦
同 川 井 田 渚
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
20 事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して15万9903円及びこれに対する
平成31年4月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
25 3 被控訴人Y2及び同Y3は,原判決別紙顧客情報目録記載の顧客情報を利用
してはならない。
4 被控訴人Y2及び同Y3は,前項の顧客情報を廃棄せよ。
第2 事案の概要等(略称は,特に断りのない限り原判決に従う。)
1 事案の概要
本件は,まつげエクステンション(化学繊維等から作製された人工毛を専用
5 の接着剤でまつげにつける手法。以下「まつげエクステ」という。)の専門店
を営む法人である控訴人が,その元従業員である被控訴人Y1に対しては,同
人が控訴人の顧客に関する情報を取得したことについて,この行為は営業秘密
の不正取得であるから不競法2条1項4号所定の不正競争行為に当たるとして,
また,被控訴人Y2及び同Y3に対しては,同人らが共同経営するまつげエク
10 ステサロンにおいて,営業秘密が被控訴人Y1により不正取得されたことを知
りながら,又は重過失によりそれを知らないで上記営業秘密を取得,使用等し
たことについて,不競法2条1項5号所定の不正競争行為に当たるとして,被
控訴人ら対して不競法4条に基づく損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の
支払を求めるとともに,被控訴人Y2及び同Y3に対して不競法3条1項及び
15 2項に基づき原判決別紙顧客情報目録記載の情報(控訴人主張顧客情報)の使
用の差止め及び廃棄を求める事案である。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人は,これを不服とし
て,本件控訴を提起した。
2 前提事実
20 以下のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」第2の2記載のと
おりであるから,これを引用する。
⑴ 2頁22行目末尾に行を改め次のとおり加える。
「 控訴人の従業員数は,十数名程度である(乙1,27)。」
⑵ 3頁1行目の「被告Y3は,」の次に「被控訴人Y2の妻であり,」を加
25 え,同3行目の「アイリスト」を「顧客に対するまつげエクステの施術者(以
下「アイリスト」という。)」と,同11行目の「顧客カルテを送信する」
を「顧客カルテ(顧客ごとに顧客情報が裏表に記載された用紙)を撮影して
送信する」とそれぞれ改める。
3 「争点」及び「争点に関する当事者の主張」
原判決を(1)のとおり補正し,当審における控訴人の補充主張を(2)のとおり
5 付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第2の3及び4に記載するとおり
であるから,これを引用する。
(1)ア 4頁4行目及び5頁8行目の各「本件施術履歴を含む顧客カルテ」をい
ずれも「本件施術履歴」と改め,4頁8行目の「他の情報」の次に「を記
録した媒体」を加え,同25行目の「顧客カルテ」を「本件施術履歴」と
10 改める。
イ 5頁11行目の「私用の」を「私用(私物。以下同じ。)の」と改め,
同21行目の「顧客カルテ」の次に「に記載された情報」を,同23行目
の「原告代表者が」の次に「強いて」をそれぞれ加え,同25行目の「見
たことがないから無効である」を「見たことがない」と改める。
15 ウ 6頁2行目の「原告では,」を「被控訴人Y1は,控訴人の店舗間にお
いては,」と,同3行目の「送信されていたため」を「送信することが頻
繁に行われていたため」と,同7行目から8行目の「これらは,」から同
9行目末尾までを「これは,被控訴人Y2が知り合いの弁護士(被控訴人
代理人弁護士井口敦)から受けた,顧客情報を持ち出していなければ顧客
20 の引き抜きにはならないとのアドバイスを被控訴人Y2から伝え聞いた
被控訴人Y1が,心配になってあわてて送信したものであり,本件施術履
歴が営業秘密であることを前提とした行動ではない。 とそれぞれ改める。
」
エ 7頁8行目から9行目の「本件送信行為について悪意であり,少なくと
も重過失があったといえる。」を「本件送信行為を知って,又は本件送信
25 行為があったことを重大な過失により知らないで本件施術履歴を取得,使
用等したといえる。」と,同22行目の「被告Y2」を「被控訴人Y3」
とそれぞれ改める。
(2) 当審における控訴人の補充主張
ア 原判決は,いつからマル秘シールが貼られていたか明らかではないし,
マル秘シールの大きさや文字が同じであることは,訴訟提起後にされた写
5 真撮影時に比較的近接した時期に一斉に貼付されたことと矛盾しない旨
判断する。しかし,通常,紛争が現実化してから証拠書類を収集するもの
であるから,訴訟提起前からマル秘シールが張られていたことを示す写真
がないのは不自然ではないし,マル秘シールの大きさやそこに記載されて
いる手書きの文字が同じなのは,同じシールを大量に購入し,購入したシ
10 ールに同じ従業員があらかじめ「秘」の文字を記載したからであり,一部
異なった手書き文字となっているのは,あらかじめ手書きしておいたシー
ルがなくなったので,別の従業員が手書きしたからである。控訴人の提出
する証拠に不整合な点はなく,マル秘シールは,被控訴人Y1が控訴人の
店舗に在籍していた時から貼付されていたものといえる。
15 イ LINEのカルテ共有用グループは,控訴人代表者が許可した者だけが
送信を行うことができ,許可の対象は控訴人の従業員に限定される。この
ように顧客カルテの画像を共有するのは控訴人の従業員に限られている
以上,従業員の送信について店長の許可や特別な手続がなかったとしても,
本件送信行為時に控訴人方の従業員でなかった被控訴人Y1に対する関
20 係で秘密管理性が否定されるいわれはない。
ウ 顧客カルテの管理マニュアル,就業規則,入社時誓約書中の記載によれ
ば,漏えい等が禁止される「秘密情報」は顧客情報又は顧客に関する情報
であり,それが顧客カルテに記載された情報を指すことは当然に認識でき
る状況であり,施術履歴は顧客カルテに記載された情報であるから,本件
25 施術履歴は「秘密情報」である。
エ 平成30年1月20日,被控訴人Y1がAに対して送信した,「私に友
達のカルテ送ったことだけは内緒でお願いします!」,「それがバレるか
どうかで左右されるっぽい!」というメッセージの内容からみて,被控訴
人Y1が顧客カルテに記載された情報を「秘密情報」と認識していたこと
は明らかである。
5 第3 当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由
は,原判決を1のとおり補正し,当審における控訴人の補充主張に対する判断
を2のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第3に記載するとお
りであるから,これを引用する。
10 1 原判決の補正
⑴ 8頁1行目から2行目及び同2行目の各「不正に取得,使用等」をいずれ
も「不正に取得」と,同3行目の「使用,開示等」を「取得,使用等」とそ
れぞれ改める。
⑵ 9頁3行目の「保管されていた。」の次に「顧客カルテは顧客番号順にバ
15 インダーに綴られ,バインダーの背表紙にはそのバインダーに綴られている
顧客カルテの顧客番号の範囲が記載されていた。」を,同6行目の「甲6」
の次に「,41」を,同8行目の「「秘」と」の次に「手書きで」をそれぞ
れ加え,同17行目の「照合することにより,」から18行目の「なってい
た」までを「照合することができた」と改める。
20 ⑶ 10頁7行目の「1日当たり」から11行目末尾までを「1日当たり0な
いし数件程度であり,年間で約1万8000名来店する顧客の1割程度を下
回らない。(甲39,乙21,22,原審証人B)」
⑷ 13頁10行目の「被告Y1に対し,」の次に「直ちに被控訴人ら店舗で
の就業をとりやめること,競業避止義務違反に基づく損害賠償請求や,」を
25 加え,同11行目の「不競法」を「不競法違反」と改め,同12行目の「被
告Y2に対し,」の次に「競業避止義務に違反していることを知りながら被
控訴人Y1を勤務させている上に,」を加え,同14行目及び同26行目の
各「被告Y2や被告Y3」を「被控訴人Y2」といずれも改める。
⑸ 14頁8行目から9行目の「雇用契約上の競業避止義務違反に基づく」を
「主位的には雇用契約上の競業避止義務違反に基づき,予備的には不競法違
5 反に基づく」と,同14行目の「秘密情報」を「入社時誓約書(甲7)に定
めた「秘密情報」」とそれぞれ改め,同15行目の「この点について,」の
次に「入社時誓約書の「秘密として管理」は不競法2条6項の「秘密として
管理」と同義であると解釈されることを前提として,」を加える。
⑹ 14頁18行目末尾に行を改め次のとおり加える。
10 「 控訴人は,上記控訴審判決に対して上告及び上告受理の申立てをしたが(最
高裁判所令和元年(オ)第1525号,令和元年(受)第1876号),最
高裁判所は,令和2年1月31日,上告棄却・上告不受理の決定をした(乙
20)。」
⑺ 14頁19行目冒頭に「ス 」を加え,同23行目末尾に行を改め次のと
15 おり加える。
「 控訴人は,上記第一審判決に対して控訴をしたが(東京高等裁判所令和2
年(ネ)第3665号),東京高等裁判所は,令和3年4月8日,控訴人の
控訴を棄却する判決をし,同判決はそのころ確定した(乙28,29)。」
⑻ 15頁6行目から7行目の「供述と整合する」を「供述を裏付ける」と,
20 同9行目の「示すと考えられる」を「示す」とそれぞれ改め,同10行目の
「最後の一冊を除き」の次に「手書きされた」を加える。
⑼ 16頁4行目の「全従業員の」の次に「私用の」を加え,同5行目の「送
信され,保存される」を「送信される」と,同10行目の「送信され,保存
され」を「送信され」と,同15行目の「顧客情報」を「顧客カルテ」とそ
25 れぞれ改め,同21行目の「全従業員の」から同24行目末尾までを「全従
業員の私用のスマートフォン等に顧客カルテの画像が保存され得る状況であ
るにもかかわらず,実効的な管理手段をとった形跡はないが,そもそも,事
業主が従業員の私用のスマートフォン等の中身を勝手に調べようとすること
自体が許されるはずもなく,私用のスマートフォン等で撮影を許していたこ
と自体が実効的な管理手段をとり得なくしていたというべきである。」と改
5 める。
⑽ 17頁4行目から5行目の「顧客カルテやその施術利益が秘密であること」
を「顧客カルテに記載された情報が秘密として管理されていること」と,同
8行目の「顧客カルテ」を「顧客カルテに記載された情報」とそれぞれ改め
る。
10 ⑾ 17頁10行目冒頭から18頁20行目末尾までを次のとおり改める。
「 ウ 上記のとおり,顧客カルテは,その画像が日常的に従業員の私用ス
マートフォン等に特段の制約もなく記録され続けていたのであり,控
訴人の営業期間を通じれば顧客の範囲及びその数は相当多数かつ広範
なものに至っているとうかがわれる一方,その漏出,拡散等を防止す
15 る格別な手段がとられていたとは認められない。そうすると,このよ
うな顧客カルテの利用状況に鑑みて,少なくとも,特に従業員間で共
有を図られていたと推察される顧客カルテの施術履歴部分は,不競法
に定める秘密管理性の要件を満たしていないというべきである。
エ 控訴人は,①顧客カルテの取扱方法を制限し,従業員に対して顧客
20 情報の管理について注意喚起をしていた,②就業規則,入社時誓約書
等で従業員に対して顧客情報の持出しを禁じていた,③組織としての
秘密管理体制を築いていた,④防犯カメラを設置するなどして顧客情
報の不正取得等の防止策をとっていたので,顧客カルテに記載された
情報は秘密管理性を有している旨主張する。
25 しかしながら,前記ウのとおり,少なくとも施術履歴については,
控訴人の容認の下に秘密として管理されていない実態にあったのであ
るから,仮に,控訴人主張のような秘密管理に関する規定,誓約,体
制,設備等が整えられていたとしても,施術履歴に関する限りは,客
観的にみて秘密として管理されている対象外と認識され得るにとどま
るというべきである。
5 したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(5) 以上によると,本件施術履歴は,秘密管理性を欠くのであるから,そ
の余の点について判断するまでもなく,営業秘密であるとは認められな
い。したがって,本件送信行為が営業秘密の侵害に係る不正競争行為に
該当する余地はないから,控訴人の被控訴人Y1に対する請求は,理由
10 がない。」
(12) 18頁24行目冒頭から19頁3行目末尾までを次のとおり改める。
「 前記2で説示したとおり,本件施術履歴は,秘密管理性を欠くため営業
秘密とは認められないから,被控訴人Y2及び被控訴人Y3の不正競争行
為の前提となる被控訴人Y1の営業秘密不正取得行為は認められず,被控
15 訴人Y2及び被控訴人Y3が,営業秘密不正取得行為が介在したことを知
って,又は重大な過失より知らないで営業秘密を取得したり,その取得し
た営業秘密を使用し,若しくは開示する行為をすることもない。」
2 当審における控訴人の補充主張について
(1) 前記第2の3⑵アの主張について
20 被控訴人Y1が控訴人の店舗に在籍時に,顧客カルテを綴ったバインダー
の背表紙にマル秘シールが貼付されていたことに疑念が持たれる理由の要点
は,バインダーに一貫性がないのに手書きのマル秘シールが一貫しており,
バインダーの据置時期とシールの貼付時期にズレがあると推認される点にあ
り,手書きのマル秘シールが作製された理由のみを明らかにしても,上記疑
25 念が解消されるものではないし,マル秘シールを貼付した時期が明らかにな
るものでもない。また,顧客カルテを綴ったバインダーの背表紙にマル秘シ
ールが貼付されていたとしても,それと並行し,私用のスマートフォン等で
の顧客カルテの撮影が現に行われていたのであり,この撮影行為がマル秘シ
ールによる秘密指定に反することとされていたわけではないから,いずれに
せよ上記貼付の有無が直ちに結論を左右するものではない。
5 したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(2) 前記第2の3⑵イの主張について
カルテ共有用グループを控訴人の従業員に限定し,控訴人がグループを管
理していたとしても,従業員の私用のスマートフォン等の中身を控訴人が管
理できる関係にはならないから,そもそも,グループのメンバーを控訴人の
10 従業員に限定したことと秘密管理性の有無とが直ちに関係するわけではない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(3) 前記第2の3⑵ウの主張について
本件は,不競法2条6項の営業秘密の侵害の有無が問題となっているもの
であるから,本件施術履歴が同項の趣旨からみて秘密として管理されている
15 かを論じるべきものであり,顧客カルテの管理マニュアル,就業規則,入社
時誓約書等の記載内容がこの秘密管理性の解釈の観点から問題になることが
あるとしても,上記各規定の「秘密情報」等に本件施術履歴が含まれるか否
かは,約定に基づく請求をしているわけではない本件の結論を左右しない。
なお,引用に係る原判決第3の2(2)ク及びケにおいて認定した事実をも
20 とにして,被控訴人Y1と顧客であるC及びDとの関係,本件施術履歴の送
信に至る経緯,同履歴の利用状況等を総合勘案すれば,本件施術履歴が上記
各規定の「秘密情報」に直ちに該当するとは認め難いし,また,このような
情報が取得,使用等されたことにより控訴人に損害が生じたとも認め難いの
で,念のために付言する。
25 したがって,いずれにしても,控訴人の上記主張は,採用することができ
ない。
(4) 前記第2の3⑵エの主張について
秘密管理性は,従業員全体の認識可能性も含めて客観的観点から定めるべ
きものであり,従業員個々が実際にどのような認識であったか否かに影響さ
れるものではないから,被控訴人Y1において本件施術履歴を控訴人の営業
5 秘密と考えていたか否かは,秘密管理性の有無についての結論を左右しない。
なお,付言するに,控訴人主張の送信メッセージの内容から,被控訴人Y
1において本件施術履歴を控訴人の営業秘密と考えていたとまで認めること
はできない。
したがって,いずれにしても,控訴人の上記主張は,採用することができ
10 ない。
第4 結論
以上のとおり,控訴人の請求は理由がないから,控訴人の請求をいずれも棄
却した原判決は相当である。
したがって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文の
15 とおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
20 裁判長裁判官
菅 野 雅 之
25 裁判官
本 吉 弘 行
裁判官
5 中 村 恭
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