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令和2(行ケ)10147審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和3年6月29日
事件種別 民事
当事者 原告グリー株式会社
被告特許庁長官
対象物 ゲームプログラム,ゲーム処理方法および情報処理装置
法令 特許権
特許法17条の24回
特許法29条2項1回
キーワード 審決48回
実施9回
進歩性4回
分割3回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事件の概要 本件は,特許出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴 訟である。争点は,補正要件の有無及び補正後の請求項1~9に係る特許発明の進 歩性の有無である。

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判決文

令和3年6月29日判決言渡

令和2年(行ケ)第10147号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 令和3年5月25日

判 決

原 告 グ リ ー 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 大 野 聖 二

小 林 英 了

同訴訟代理人弁理士 松 野 知 紘

被 告 特 許 庁 長 官

同 指 定 代 理 人 古 川 直 樹

藤 本 義 仁

尾 崎 淳 史

青 木 良 憲

山 田 啓 之

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は,原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が不服2019-8313号事件について令和2年11月17日にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

本件は,特許出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,補正要件の有無及び補正後の請求項1~9に係る特許発明の進歩性の有無である。1 特許庁における手続の経緯等原告は,発明の名称を「ゲームプログラム,ゲーム処理方法および情報処理装置」とする発明(請求項1~8)について,平成29年5月9日に特許出願(特願20-92933号。以下,「当初出願」といい,願書に最初に添付された明細書及び図面〔甲3〕を「当初明細書」という。)をした。当初出願は,原告が,平成25年5月24日(以下,「分割原出願日」という。)に出願した特願2013-109695号の一部を平成27年1月14日に新たな特許出願とした特願2015-5412号の一部を平成27年11月19日に新たな特許出願とした特願2015-226355号の一部を平成28年7月28日に新たな出願とした特願2016-148932号の一部を新たな特許出願としたものである。当初出願については,平成30年3月23日付けで拒絶理由が通知され,同年6月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され,同年8月22日付けで拒絶理由が通知され,同年11月5日付けで意見書及び手続補正書(甲4)が提出され,平成年3月29日付けで拒絶査定(以下,「本件拒絶査定」という。)がされた。原告は,令和元年6月24日付けで,本件拒絶査定に対する不服審判の請求をし(以下,「本件審判」という。甲5),特許庁は,上記請求を不服2019-831号として審理した。その後,令和2年2月17日付けで拒絶理由が通知され(甲6),同年4月1日付けで意見書(甲8)及び手続補正書(甲7)が提出され,同年6月29日付けで拒絶理由が通知され(甲9),同年8月28日付けで意見書(甲11)及び手続補正書(甲10)が提出された(以下,この補正を「本件補正」という。 。)特許庁は,同年11月17日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下,「本件審決」という。)をし,その謄本は同年12月2日に原告に送達された。2 当初出願の特許請求の範囲(甲3)【請求項1】コンピュータに,アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定機能と,前記アイテムをユーザに対応付けて記憶装置に記憶させるアイテム付与機能と,前記アイテム付与機能によって対応付けられたアイテムのアイテム情報,および,前記条件設定機能によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較機能と,前記比較機能によって比較された結果,前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしている場合,前記アイテムを,当該アイテムの価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換機能と,前記変換機能によって数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを,前記アイテムを強化するための特定のアイテムに変換するアイテム変換機能と,を実現させ,前記特定のアイテムの個数を減じることに応じて,前記アイテムの強化が行われるゲームプログラム。【請求項2】前記特定のアイテムは,前記ユーザに対応付けて個数とともに前記記憶装置に記憶される,ことを特徴とする請求項1に記載のゲームプログラム。【請求項3】前記特定のアイテムは,前記アイテムの経験値に変換可能に設定される,ことを特徴とする請求項1または2に記載のゲームプログラム。【請求項4】前記特定のアイテムは,前記特定のアイテムの個数に応じて,前記アイテムのパラメータを変化させるアイテムである,ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のゲームプログラム。【請求項5】前記特定のアイテムは,前記アイテムの数値に基づいて,当該特定のアイテムのレベルが変動するように設定されている,ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のゲームプログラム。【請求項6】前記特定のアイテムは,前記アイテムの数値に基づいて,当該特定のアイテムの数が変動するように設定されている,ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のゲームプログラム。【請求項7】コンピュータに,アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定ステップと,前記アイテムをユーザに対応付けて記憶装置に記憶させるアイテム付与ステップと,前記アイテム付与ステップにて対応付けられたアイテムのアイテム情報,および,前記条件設定機能によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較ステップと,前記比較ステップにて比較された結果,前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしている場合,前記アイテムを,当該アイテムの価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換ステップと,前記変換ステップによって数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを,前記アイテムを強化するための特定のアイテムに変換するアイテム変換ステップと,を実行させ,前記特定のアイテムの個数を減じることに応じて,前記アイテムの強化が行われるゲーム処理方法。【請求項8】アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定部と,前記アイテムをユーザに対応付けて記憶装置に記憶させるアイテム付与部と,前記アイテム付与部によって対応付けられたアイテムのアイテム情報,および,前記条件設定機能によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較部と,前記比較部によって比較された結果,前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしている場合,前記アイテムを,当該アイテムの価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換部と,前記変換部によって数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを,前記アイテムを強化するための特定のアイテムに変換するアイテム変換部と,を備え,前記特定のアイテムの個数を減じることに応じて,前記アイテムの強化が行われる情報処理装置。3 本件補正後の特許請求の範囲(甲10。以下,請求項1~9に係る発明を,それぞれ,「本願発明1」~「本願発明9」といい,併せて「本願発明」ということもある。)【請求項1】コンピュータに,アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定機能と,前記アイテムがユーザに付与された際に自動的に,前記アイテムのアイテム情報,および,前記条件設定機能によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較機能と,前記比較機能によって比較された結果,前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしているアイテムを,当該アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換機能と,前記変換機能によって数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換機能と,前記特定のアイテムを,前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能とを実現させるゲームプログラム。【請求項2】前記アイテム記憶機能は,前記特定のアイテムを,前記フィルタリング条件を満たしていないアイテムとともに前記アイテムボックスに対応付けて記憶する請求項に記載のゲームプログラム。【請求項3】前記特定のアイテムは,他のアイテムを強化するためのアイテムであり,かつ,前記特定のアイテムの個数に応じて,前記他のアイテムのパラメータを変化させるアイテムであることを特徴とする請求項1または2に記載のゲームプログラム。【請求項4】前記特定のアイテムは,前記アイテムの数値に基づいて,当該特定のアイテムの個数が変動するように設定されていることを特徴とする請求項1,2または3に記載のゲームプログラム。【請求項5】前記価値情報は,前記アイテムのレアリティ情報であることを特徴とする請求項から4のいずれか一項に記載のゲームプログラム。【請求項6】前記アイテムボックスは,対応付けが可能なアイテムの種類の数に上限が設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のゲームプログラム。【請求項7】前記アイテム記憶機能は,さらに,前記比較機能によって比較された結果前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしていないアイテムをアイテムボックスに対応付けて記憶することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のゲームプログラム。【請求項8】コンピュータに,アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定ステップと,前記アイテムがユーザに付与された際に自動的に,前記アイテムのアイテム情報,および,前記条件設定ステップにおいて設定されたフィルタリング条件を比較する比較ステップと,前記比較ステップにて比較された結果,前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしているアイテムを,当該アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換ステップと,前記変換ステップによって数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換ステップと,前記特定のアイテムを,前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶ステップとを実行させるゲーム処理方法。【請求項9】アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定部と,前記アイテムがユーザに付与された際に自動的に,前記アイテムのアイテム情報,および,前記条件設定部によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較部と,前記比較部によって比較された結果,前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしているアイテムを,当該アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換部と,前記変換部によって数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換部と,前記特定のアイテムを,前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶部とを備える情報処理装置。4 本件審決の理由

(1) 特許法17条の2第3項についてア 本願発明1には,令和2年4月1日付け手続補正書により,「前記特定のアイテムを,前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能」との発明特定事項(以下,「新たな発明特定事項」という。)が追加され,本件補正後にも新たな発明特定事項が記載されている。当初明細書の段落【0051】を参酌すると,付与されたアイテムを所持しすぎるとアイテムボックスが満杯になるのであるから,新たな発明特定事項の「アイテムボックスに対応付けて」とは,アイテムボックスに収納することと解される。そうすると,本件補正により,補正後の請求項1(本願発明1)は,「特定のアイテムを,ユーザに関連付けられたアイテムボックスに収納して保持する機能」を包含するものとなった。イ 当初明細書には,「ユーザに付与されたアイテムを特定アイテムに変換する」目的に関して,以下の記載がある。【0051】このような構成とすることにより,新アイテム入手時のユーザの利便性を向上させることができる。具体的には,ユーザは,付与される様々な種類の不要なアイテムを,1つの特定のアイテムに変換して所持することができるため,不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる。【0052】また,上限なくユーザが特定のアイテムを所持可能とすることで,特定アイテムを貯蓄する事が可能となり,ユーザの好きなタイミングで特定アイテムを使用する事ができるようになる。結果,一度に複数の特定のアイテムを使用して他アイテムを強化させる操作を行うことで,当該強化対象となる他アイテムの経験値を一度で大きく変化させる等,ユーザの選択肢を広げる事ができる。ウ 当初明細書の上記記載によると,当初明細書には,「特定のアイテム」をユーザが所持し,不要なアイテムを「特定のアイテム」に変換して所持することにより,不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になることが防がれることは記載されているものの,ユーザが所持する「特定のアイテム」が,アイテムボックスに収納されることは記載されておらず,アイテムボックスに特定アイテムの収納上限が設けられていることまでが記載されているということはできない。一方,当初明細書に「特定のアイテム」について,「上限なく所持可能」とする旨が記載されていることからすると,「特定のアイテム」は,アイテムボックスに収納されるものではなく,「特定のアイテム」についての各ユーザの所持数は,アイテムボックスとは,別に管理されているものであると解される。また,原告が主張するように,「特定のアイテム」が「アイテムボックス」に収納されるものであるとすると,不要なアイテムを「特定のアイテム」に変換したとしても,アイテムボックスに収納する以上,「特定のアイテム」によってアイテムボックスが占有されることになってしまうのであるから,不要なアイテムを「特定のアイテム」に変換することにより,ユーザのアイテムボックスが満杯になることを防ぐという,本願発明における「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの技術的意義を損なうものとなる。したがって,これらの記載に接した当業者は,「特定のアイテム」は,アイテムボックスに収納されるものであることが,当初明細書に記載されたものと認識することはないものと解するのが相当である。そうすると,当初明細書には,「特定のアイテムを,ユーザに関連付けられたアイテムボックスに収納して保持する機能」は記載されているとは認められず,また,当初明細書から,「特定のアイテムを,ユーザに関連付けられたアイテムボックスに収納して保持する機能」が想定されていたとする理由も見当たらない。本件補正は,当業者によって当初明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであって,当初明細書に記載した事項の範囲内でするものとはいえないから,特許法17条の2第3項の要件を満たさない。エ 請求項8及び9並びに請求項1を引用する請求項2~7についての本件補正は,同じ理由により,特許法17条の2第3項の要件を満たさない。オ 原告は,令和2年8月28日付け意見書(甲11)で,「本願の『付与される様々な種類の不要なアイテムを,1つの特定のアイテムに変換して所持することができるため,不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる。』という記載から読み取れることは,『不要なアイテムをアイテムボックスに収納しない』ということであって,『特定のアイテムをアイテムボックスに収納しない』ということではありません。また,アイテムボックスはアイテムを収納するものであるから,『収納しない』と明言された『不要なアイテム』以外は当然収納されると解するのが適切です。」と主張する。また,原告は,令和2年4月1日付け意見書(甲8)で,「本願の『特定のアイテム』は,『遊戯ポイント』のような単なる『数値』ではなく,対応付けが可能なアイテムの数に上限が設けられたアイテムボックスに保管される(対応付けて記憶される)『物』という概念を有するものです。」と主張する。原告が主張するように,「特定のアイテム」が「物」という概念を有するものであって,アイテムボックスは,「収納しない」と明言された「不要なアイテム」以外は当然収納されると解するのであれば,不要なアイテムを特定のアイテムに変換しても,「物」という概念でアイテムボックスに収容することとなる。そうすると,アイテムボックスが満杯になることを防ぐことができなくなってしまうとともに,保有することができるカードの数には上限があることから,新アイテムを入手することさえできなくなってしまい,本願発明の課題である「新アイテム入手時のユーザの利便性を向上」させることを解決できると当業者が認識し得ないこととなる。原告の「対応付けが可能なアイテムの数に上限が設けられたアイテムボックス」との主張は,当初明細書の「上限なくユーザが特定のアイテムを所持可能」との記載と整合しないものであるから,『特定のアイテムをアイテムボックスに収容しな「い』ということではない」との主張は,理由がない。

(2) 特許法29条2項についてア 引用文献に記載された発明について(ア) 分割原出願日(平成25年5月24日)前に発行された特許5086号公報(甲1)には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されている。「サーバー装置10及びユーザー端末20を共働させることにより,カード自動売却処理を実行させるゲームプログラムであって,ゲームカードに関する情報であるカード情報には,ゲームカードに対応付けられたキャラクターの名前,キャラクター画像,レアリティ,売却ポイント,初期攻撃力,初期防御力などの各種初期パラメーター等が,含まれ,ゲームカードのカード情報に含まれるレアリティ毎に売却ポイントが設定されており,自動売却処理は,ユーザーが,ユーザー端末20の端末入力部23を操作することにより,自動売却の対象となるゲームカード,すなわち,ユーザーにとって不要となるゲームカードを予め指定し,前記不要となるゲームカードの指定は,キャラクターの種類,レアリティ,職種,初期攻撃力又は初期防御力が閾値以下,売却ポイントが閾値以下など,複数のゲームカードに共通するカード情報により不要となるゲームカードを指定することであり,サーバー装置10における判定部112は,カード付与処理によりユーザーに付与されたゲームカードと,指定されている不要となるゲームカードとを比較することにより,付与されたゲームカードをユーザーの所有する所有カードとするか否かを判定し,一致する場合には,不要となるゲームカードとして決定し,一致しない場合には,ユーザーに所有させるゲームカードとして決定し,サーバー装置10における記録部113は,ユーザーに付与された付与カードを,所有カード情報に追加して記録し,サーバー装置10における制御部11は,判定部112が付与されたゲームカードを不要となるゲームカードとして決定した場合には,付与されたゲームカードをユーザーの所有カードとしない処理を行い,かつ,不要となった付与されたゲームカードを不要となったゲームカードの価値に相当する売却ポイントを遊戯ポイントに変換してユーザーに付与するポイント付与処理を実行する,ゲームプログラム。」(イ) 分割原出願日(平成25年5月24日)前に出願公開された特開20-116937号公報(甲2)には,次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されている。「主人公のキャラクタが無事すべての敵キャラクタを倒した場合には,これら倒した敵のキャラクタの数およびこれらの経験値を基にして,戦闘によって得られた経験値を算出するステップ,表示画面上の所定の位置に取得アイテムウィンドウが開かれ,ここに取得した経験値を保有したアイテム(以下,成長アイテムという。)が表示されるステップ,ディスプレイの表示画面上には,主人公のキャラクタが表示され,その手前に成長アイテムが配置され,主人公のキャラクタはこの成長アイテムを拾うことができるし,これを拾わずに他の場所へと移動することも可能であり,主人公のキャラクタが成長アイテムを拾うと,その時点で表示画面上に選択ウィンドウが表示されるステップ,選択ウィンドウには,カーソルが表示されており,成長アイテムを自分の経験値に加算するか,通常のアイテムとして保持するかを選択させるようにしており,通常のアイテムとして保持する決定が行われた場合には,これを主人公のキャラクタが保持している通常のアイテムと同様に1つのアイテムとして保持するステップ,からなる戦闘モードの処理方法。」イ 引用発明1を主引用例とする本願発明1の進歩性について(ア) 本願発明1と引用発明1の一致点及び相違点<一致点>「コンピュータに,アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定機能と,前記アイテムがユーザに付与された際に自動的に,前記アイテムのアイテム情報,および,前記条件設定機能によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較機能と,前記比較機能によって比較された結果,前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしているアイテムを,当該アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換機能と,前記変換機能によって数値化された前記アイテムの数値を,前記ユーザに対応付けて記憶するアイテム記憶機能とを実現させるゲームプログラム。」<相違点>本願発明1が,アイテムを「所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換機能」と,「前記特定のアイテムを,前記ユーザに関連付けられたアイテムボックス」に対応付けて記憶するアイテム記憶機能とを,実現させるゲームプログラムであるのに対し,引用発明1は,「ゲームカードの価値に相当する遊戯ポイント」を「ユーザー」に付与するポイント付与処理を実行する,ゲームプログラムである点。(イ) 相違点についての判断引用発明2の「経験値」及び「成長アイテム」は,本願発明1の「アイテムの数値」及び「『アイテムの数値』に基づいて,『アイテム』を変換した『一種類の特定のアイテム』」に相当する。引用発明1の「遊戯ポイント」と引用発明2の「成長アイテム」に設定された「経験値」とは,キャラクタを強化するために所定量消費されるポイントである点で共通するから,引用発明1において,不要なゲームカードを遊戯ポイントに変換することに代えて,引用発明2の技術を適用して,当該遊戯ポイントが設定されたアイテムである「成長アイテム」を生成し,当該「成長アイテム」をユーザーの所有物とすることは,当業者が容易になし得るものといえる。その際,価値の等しい一種類の「成長アイテム」を複数個所有するのか,価値の異なる「成長アイテム」を一個所有するのかは,「成長アイテム」の所有個数の上限に合わせて,当業者が適宜設定し得る設計的事項といえるものである。そして,引用発明1は,ユーザーに付与された付与カードを,サーバー装置10における記録部113に追加して記録しているところ,その形態をどのようなものにするかは,当業者が適宜採用し得る設計的事項といえる。そうすると,引用発明1に,引用発明2を適用し,上記相違点に係る構成とすることは,当業者が容易になし得るものである。そして,本願発明1の発明特定事項によって奏される効果も,引用発明1及び引用発明2から,当業者が予測し得る範囲内のものである。(ウ) 原告の主張に対する判断原告は,甲2における「経験値設定物」は,経験値に応じて生成される(甲2の段落【0033】【0072】等)ものであり,甲1に適用したとしても,本願発,明1の「価値の等しい一種類のアイテム」には相当しないと主張する。しかし,引用発明2の「経験値設定物」は,遊戯ポイントが設定されることとなるのであるから,所定個数の価値の等しい一種類の「経験値設定物」とすることは,当業者が適宜選択し得る事項である。(エ) 以上によると,本願発明1は,引用発明1及び引用発明2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 原告主張の審決取消理由

1 取消事由1(新規事項追加についての判断の誤り)について

(1) 新たな発明特定事項における「特定のアイテムを・・・アイテムボックス

に対応付けて記憶する」とは,「特定のアイテム」を「アイテムボックス」に収納して保持することを意味しており,新たな発明特定事項を追加した本件補正は,以下のとおり,新たな技術的事項を導入するものではない。

(2) 当初明細書の段落【0051】には,変換された一つの「特定のアイテム」

を所持すること,不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことが開示されている。甲12(特開2005-305043号公報)の段落【0029】には,「キャラクタが入手したアイテムは,アイテムボックスなどのアイテム収納手段によって,RAM13に格納され,,」 甲13(特開2002-278691号公報)の段落【0】には,「アイテムボックスには,自分の大切なアイテムをしまっておくことができる。,甲14」 (特開2002-52253号公報)の段落【0048】には,「アイテムボックス画面40は送信側プレイヤーが収集済のアイテムを一覧表示するもの」と記載されているとおり,「アイテムボックス」とは,ユーザが保有するアイテムを入れる(収納する)ものとして,ゲーム分野で慣用されている語である。そして,当初明細書の段落【0051】には,「1つの特定のアイテムを所持できる」ことにより,「不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる」ことが記載されており,両者は原因と結果の関係にあるから,アイテムの所持とアイテムボックスへの収納とが関連するものであることは文理上明らかであり,また,当初明細書には,「特定のアイテム」を「アイテムボックス」に所持する(アイテムボックスに収納する)ことを排除する記載はない。本件審決は,「1つの特定のアイテムを所持できる」ことと「不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる」ことを別個独立したものとして捉えており,当初明細書の段落【0051】の読み方として誤っている。段落【0051】には,不要なアイテムを一つの特定のアイテムに変換してアイテムボックスに収容する技術的事項が開示されており,新たな発明特定事項が開示されている。

(3)ア(ア) 本件審決は,当初明細書の段落【0052】の記載を引用して,

「アイテムボックスに特定アイテムの収納上限が設けられていることまでが記載されているということはできない。」と判断した。しかし,令和2年4月1日付け手続補正書の【請求項1】に記載された発明は,「前記アイテムボックスは,対応付けが可能なアイテムの数に上限が設けられ」という発明特定事項を含んでいたが,同年8月28日付け手続補正書の【請求項1】に記載された発明(本願発明1)は,「前記アイテムボックスは,対応付けが可能なアイテムの数に上限が設けられ」という発明特定事項を含まない。そのため,「アイテムボックスに特定アイテムの収納上限が設けられている」ことが当初明細書に記載されているか否かは,本件補正が新規事項の追加に該当するか否かとは無関係である。本件審決は,原告が令和2年4月1日付け手続補正書(甲7)と同日に提出した意見書(甲8)の主張に言及しているが,この意見書(甲8)は,「前記アイテムボックスは,対応付けが可能なアイテムの数に上限が設けられ」との発明特定事項を含んでいた令和2年4月1日付け手続補正書による補正前の発明を前提として意見を述べたものにすぎず,本願発明1を前提とした主張ではない。(イ) もっとも,当初明細書の段落【0031】【0040】及び【005,】には,この特定のアイテムは,「 上限なくユーザが所持可能とすることができる。」との記載がある。「できる」とは「可能だ」の意味であり(甲15),「可能」とは (し「ようと思えば)できる」の意味である(甲16)から,当初明細書の段落【003】 「この特定のアイテムは,等の 上限なくユーザが所持可能とすることができる。」との記載から,当業者は,ユーザが所持可能な「特定のアイテムの」数に上限がない場合のみならず,「特定のアイテム」の数に上限があってもよい場合も包含するものと理解する。したがって,当初明細書には,ユーザが所持できる「特定のアイテム」の数に上限がない態様のみならず,ユーザが所持できる「特定のアイテム」の数に上限がある技術的事項の開示がある。仮に,新たな発明特定事項が,ユーザが所持できる「特定のアイテム」の数に上限があることを導入するものであるとしても,ユーザが所持できる「特定のアイテム」の数に上限があることも当初明細書に開示されているのであるから,新規事項の追加にはならない。イ 本件審決は,当初明細書において,「特定のアイテム」は,アイテムボックスに収納されるものではなく,特定のアイテム」「 についての各ユーザの所持数は,アイテムボックスとは,別に管理されているものであると判断した。(ア) 当初明細書の段落【0052】は,「また,上限なくユーザが特定のアイテムを所持可能とすることで」と記載しており(判決注:下線部は原告による。以下,

(原告の主張)

の記載部分において同じ。 ,段落【0051】の記載に加え,更)に「上限なくユーザが特定のアイテムを所持可能とする」という構成を付加的に採用してもよいこと,その付加的な構成によって「特定アイテムを貯蓄する事が可能となり,ユーザの好きなタイミングで特定アイテムを使用する事ができる」という効果があることを述べたにすぎない。新たな発明特定事項が当初明細書に明確に記載されているか否かは,段落【00】の記載に基づいて判断できることであり,段落【0052】の記載に左右されるものではない。(イ) また,ユーザが所持できる「特定のアイテム」の数に上限がないのであれば,「アイテムボックス」に入りきらない「特定のアイテム」が生じた場合には,「アイテムボックス」とは別に管理すればよく,全ての「特定のアイテム」を「アイテムボックス」と別に管理する必要はない。あるいは,「特定のアイテム」をカウント外として「アイテムボックス」に収納すれば済むのであり,「特定のアイテム」を「アイテムボックス」と別に管理する必要性もない。ウ 本件審決は,「特定のアイテム」が「アイテムボックス」に収納されるものであるとすると,「特定のアイテム」によってもアイテムボックスが占有されることになってしまうから,不要なアイテムを「特定のアイテム」に変換することにより,ユーザのアイテムボックスが満杯になることを防ぐという,本願発明における「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの技術的意義が損なわれると判断した。しかし,本願発明1の課題は,「新アイテム入手時のユーザの利便性を向上させること」(当初明細書の段落【0010】 であり,) このような課題を解決するために,本願発明1は,「新アイテム」として不要なアイテムが付与された場合に,自動的に数値化し,更には自動的に特定のアイテムに変換することによって,ユーザ操作なしで不要なアイテムを持たずに済む(その結果,不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐ)という点で利便性を向上させたものである。そうすると,「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの技術的意義は「ユーザ操作なしで不要なアイテムを持たずに済む」ということであり,特定のアイテムをアイテムボックスに入れて所持したとしても,「ユーザ操作なしで不要なアイテムを持たずに済む」という技術的意義は損なわれないから,本件審決の上記判断は誤りである。また,当初明細書の段落【0051】の記載によると,「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの従たる技術的意義は,「アイテムボックスが満杯になるのを防ぐ」ことではなく,「不要なアイテムによりアイテムボックスが満杯になるのを防ぐ」ことである。段落【0051】に記載された「不要なアイテムによりアイテムボックスが満杯になるのを防ぐ」ことの裏返しとして,「不要でないアイテム(必要なアイテム)によりアイテムボックスが満杯になる」ことは許容されている。そして,「特定のアイテム」とは,アイテムを強化したり,アイテムの経験値に変換できたり,アイテムのパラメータを変化させたり,アイテムのレベルや数を変動させることができるものであり,ユーザにとって有用であって「不要なアイテム」ではない。また,特定のアイテムによりアイテムボックスが満杯になる」「としても,「ユーザ操作なしで不要なアイテムを持たずに済む」という技術的意義が損なわれることはない。このように正しく認定した技術的意義を前提とすると,「特定のアイテム」が「アイテムボックス」に収納されると解したとしても,「不要なアイテムによりアイテムボックスが満杯になるのを防ぐ」ことはできるのであり,上記の正しい技術的意義を損なうことはない。したがって,当初明細書には,ユーザが所持できる「特定のアイテム」の数に上限がない態様しか開示されていないとしても,そのような「特定のアイテム」 「アをイテムボックス」に収納するという「新たな発明特定事項」を導入する補正は新規事項の追加に該当しない。

2 取消事由2(甲1を主引用例とする進歩性についての判断の誤り)について

(1) 本願発明1の内容

ア 本願発明1は,以下のとおりである。コンピュータに,アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定機能と,前記アイテムがユーザに付与された際に自動的に,前記アイテムのアイテム情報,および,前記条件設定機能によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較機能と,前記比較機能によって比較された結果,前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしているアイテムを,当該アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換機能と,前記変換機能によって数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換機能と,前記特定のアイテムを,前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能とを実現させるゲームプログラム。イ 上記アによると,本願発明1における「比較機能」「変換機能」「ア, ,イテム変換機能」及び「アイテム記憶機能」は,いずれも「アイテムがユーザに付与された際に自動的に」実現されるものとされており,いずれの機能も,ユーザの命令がなくても「コンピュータ」が自動で行うものである。また,本件審判請求時の【請求項1】は,平成30年11月5日付け手続補正書(甲4)に記載されたものであり,「前記アイテムがユーザに付与された際に自動的に」との発明特定事項を含んでいなかった。この【請求項1】に対し,令和2年2月17日付け拒絶理由通知(甲6)において,「請求項1の『アイテム付与機能』『比較機能』『数値化する変換機能』及, ,び『アイテム変換機能』について,発明の詳細な説明には,都度ユーザの命令がなくてもサーバ装置が自動で行う機能であることは記載されているものの,自動で行う機能以外のもの(例えば,都度ユーザの命令に対してサーバ装置が行う機能)は記載も示唆もされていない。」としてサポート要件違反とされた。原告は,令和2年4月1日付け手続補正書(甲7)を提出して,【請求項1】に,「前記アイテムがユーザに付与された際に自動的に」との発明特定事項を導入することでサポート要件違反は撤回された。このように,本願発明1は,「アイテムがユーザに付与された際に,自動的に,アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換機能」と,「アイテムがユーザに付与された際に,自動的に,前記特定のアイテムを,前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能」とを実現させるものであって,「アイテム変換機能」及び「アイテム記憶機能」は,ユーザの命令がなくても実行されるものである。

(2) 引用発明1と本願発明1の相違点の認定

引用発明1の「自動売却処理」は,あくまで不要となるカードをユーザーの所有カードとすることなく遊戯ポイントに変換する処理にすぎず,本件審決が認定した相違点においても,本願発明1の「アイテム変換機能」及び「アイテム記憶機能」に相当する構成を,引用発明1が有していないことに争いはない。上記(1)のとおり,本願発明1の「アイテム変換機能」 「アイテム記憶機能」及びは,アイテムがユーザに付与された際に,「 自動的に」実現される機能であるから,相違点は,以下のとおりに認定すべきである(本件審決の認定と異なる箇所に下線を付した。。)本願発明1が,「アイテムがユーザに付与された際に,自動的に,アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換機能」と,「アイテムがユーザに付与された際に,自動的に,前記特定のアイテムを,前記ユーザに関連付けられたアイテムボックス」に対応付けて記憶するアイテム記憶機能とを,実現させるゲームプログラムであるのに対し,引用発明1は,「ゲームカードの価値に相当する遊戯ポイント」を「ユーザー」に付与するポイント付与処理を実行する,ゲームプログラムである点。

(3) 容易想到性の判断の誤りについて

ア 引用発明2の認定(ア) 甲2には以下の記載がある。a 「図5は,この成長アイテムが表示された表示画面を示したものである。ディスプレイ22(図2)の表示画面81上には,主人公のキャラクタが表示され,その手前に成長アイテム83が配置されている。主人公のキャラクタ82はこの成長アイテム83を拾うことができるし,これを拾わずに他の場所へと移動することも可能である。(段落【0034】」 )b 「図7は,選択ウィンドウの表示された状態を示したものである。表示画面81には,成長アイテム83の用途を選択するための選択ウィンドウ9が表示される。選択ウィンドウ91には,カーソル92が表示されており,成長アイテムを自分の経験値に加算するか,通常のアイテムとして保持するかを選択させるようにしている。カーソル92の移動は方向キー62(図3)で行い,○ボタン64(図3)で選択内容の決定を行うようになっている。(段落【00」】)c 図3(「方向キー」の記載と赤色の枠は原告による。)方向キー(イ) 上記(ア)aによると,「主人公キャラクタ82」は「成長アイテム8」を拾うことができるし,拾わずに他の場所へと移動することも可能であるところ,「成長アイテム83」を拾うか否かの選択はプレイヤの操作によって行われると解するのが自然である。また,上記(ア)bによると,カーソル92を方向キー62によって移動させることによって「成長アイテムを自分の経験値に加算するか,通常のアイテムとして保持するか」を選択させるところ,方向キー62によるカーソル92の移動はプレイヤの操作によって行われると解するのが自然である。本件審決で認定された引用発明2は,「成長アイテム」を拾うか否かの選択,及び,「成長アイテム」を自分の経験値に加算するか通常のアイテムとして保持するかの選択を,「プレイヤの操作によって」行うことが脱落しており,正しくない。引用発明2は,以下のとおりに認定されるべきである(本件審決の認定と異なる箇所に下線を付した。。)「主人公のキャラクタが無事すべての敵キャラクタを倒した場合には,これら倒した敵のキャラクタの数およびこれらの経験値を基にして,戦闘によって得られた経験値を算出するステップ,表示画面上の所定の位置に取得アイテムウィンドウが開かれ,ここに取得した経験値を保有したアイテム(以下,成長アイテムという。が表示されるステップ,)ディスプレイの表示画面上には,主人公のキャラクタが表示され,その手前に成長アイテムが配置され,プレイヤの操作に応じて主人公のキャラクタはこの成長アイテムを拾うことができるし,これを拾わずに他の場所へと移動することも可能であり,主人公のキャラクタが成長アイテムを拾うと,その時点で表示画面上に選択ウィンドウが表示されるステップ,選択ウィンドウには,カーソルが表示されており,プレイヤの操作に応じて成長アイテムを自分の経験値に加算するか,通常のアイテムとして保持するかを選択させるようにしており,通常のアイテムとして保持する決定が行われた場合には,これを主人公のキャラクタが保持している通常のアイテムと同様に1つのアイテムとして保持するステップ,からなる戦闘モードの処理方法。」イ 引用発明2を引用発明1に適用する動機付けがないこと(ア) 本件審決には,引用発明2を引用発明1に適用する動機付けが存在すると判断した理由が示されていない。引用発明1の「遊戯ポイント」と引用発明2の「成長アイテム」に設定された「経験値」とは,キャラクタを強化するために所定量消費されるポイントである点で共通することをもって動機付けがあると判断したとも考えられる。しかし,引用発明1の「遊戯ポイント」は,ゲームカードの価値に相当するポイントであり,当該ゲームポイントを売却した際にユーザーが取得するものである(甲1の段落【0047】。また,) 「遊戯ポイント」はカードの合成に用いられるものであり(甲1の段落【0097】,別のキャラクタを生成するために用い)られるものであり,「キャラクタを強化するため」のものではない。一方,引用発明2の「成長アイテムに設定された経験値」は,敵キャラクタに設定された値であり,当該敵キャラクタを倒した際にユーザが取得するものである(甲2の段落【0033】。また,) 「成長アイテムに設定された経験値」は,本件審決が認定したとおり「キャラクタを強化するため」に用いられるものである。このように,引用発明1の「遊戯ポイント」と引用発明2の「成長アイテムに設定された経験値」は,その取得方法も用途も互いに異なるものであり,「共通する」ものではない。したがって,引用発明1と引用発明2との間に動機付けとなるような共通点はない。(イ) 本件審決は,引用発明1において,不要なゲームカードを遊戯ポイントに変換することに代えて,引用発明2の技術を適用して,当該遊戯ポイントが設定されたアイテムである「成長アイテム」を生成し,当該「成長アイテム」をユーザーの所有物とすることは,当業者が容易になし得たことと判断した。しかし,引用発明1の「遊戯ポイント」は,「合成」に用いられるものであり,引用発明1において,「不要なゲームカードを遊戯ポイントに変換すること」に代えて,「成長アイテムをユーザーの所有物」としてしまうと,そのユーザーは「遊戯ポイント」を保有できず,合成を行うことができなくなってしまうから,引用発明1における合成処理ができなくなるようにしてまで,引用発明2を引用発明に適用する動機付けはない。ウ 引用発明1に引用発明2を適用しても相違点に係る本願発明1の構成に至らないこと(ア) 相違点に係る本願発明1の構成は,アイテムがユーザに付与された際に,自動的に(都度のユーザの命令がなくても),アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換し,かつ,自動的に(都度のユーザの命令がなくても),特定のアイテムをアイテムボックスに対応付けて記憶するものである。一方,引用発明2は,「成長アイテム」を拾うか否かの選択,及び,「成長アイテム」を自分の経験値に加算するか通常のアイテムのとして保持するかの選択を,「プレイヤの操作によって」行うものである。したがって,引用発明1に引用発明2を適用し,引用発明2の「成長アイテム」が本願発明の「特定のアイテム」に相当するとしても,少なくとも相違点に係る本願発明1の構成における,①アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換すること,②その変換が自動的に実現されること,③特定のアイテムの記憶が自動的に実現されることには至らない。これらは設計事項等というべきものではなく,当業者であっても容易に想到できた事項ではない。(イ) 本件審決は,上記①に関して,価値の等しい一種類の「成長アイテム」を複数個所有するのか,価値の異なる「成長アイテム」を一個所有するのかは,「成長アイテム」の所有個数の上限に合わせて,当業者が適宜設定し得る設計的事項といえると判断した。しかし,本件審決は,設計的事項であると判断するに当たり,具体的な根拠を何ら示していない。「価値」という概念すら記載されていない甲1及び甲2から,上記①の構成を採用することは,当業者において容易に想到できるものではない。また,甲2の以下の記載によると,甲2では,「経験値」を「成長アイテム」に変換するに当たって,「主人公のキャラクタのHP経験値に割り当てるための成長アイテム」「町の発展のための成長アイテム」「特定の対象物あるいは能力値, ,に振り分ける成長アイテム」「値の減算された成長アイテム」「その値に相当す, ,る別の成長アイテム」といった互いに種類が異なる(異質であり,価値が異なる)成長アイテムに変換することが記載されているにすぎず,「所定個数の価値の等しい一種類の」成長アイテムに変換するという上記①の構成を排除している。「【0071】発明の変形可能性【0072】以上説明した実施例では敵のキャラクタを倒したとき,これを主人公のキャラクタが成長アイテム83として所持することにしたが,複数の敵のキャラクタを倒した場合にはこれに応じて複数の成長アイテムを所持するようにしてもよい。この場合には,たとえば第1の成長アイテムを主人公のキャラクタのHP経験値にそのまま割り当て,第2の成長アイテムを町の発展のために使用するといったように一つの戦いで生じた複数の成長アイテムをそれぞれ異なった目的に使用することも可能である。【0073】更にこのアイデアを発展させて,1つの成長アイテムを複数の成長アイテムに分化させたり,1つの成長アイテムの一部を特定の対象物あるいは能力値に振り分けて,残りを値の減算された成長アイテムあるいはその値に相当する別の成長アイテムに変化させて,これを所持できるようにしてもよい。この場合に,所持した成長アイテムは後で他の目的に使用することができることはもちろんである。」被告は,甲2の段落【0073】における「1つの成長アイテムを複数の成長アイテムに分化させたり」との記載を指摘して,引用発明1に引用発明2を適用して,上記①の構成に至る旨主張する。ここでの「分化」とはいかなる意味か明確ではないが,1つの成長アイテムを」「との記載からすると,「経験値」を「1つの成長アイテム」に変換した上で,その後の何らかのタイミングで「複数の成長アイテムに分化」させることしか読み取れず,本願発明の「所定個数の・・・特定のアイテムに変換する」に相当するものではない。また,被告は,「分化させる複数の成長アイテムが互いに同じものであるか否かは明確ではないものの,1つの成長アイテムを複数の同じ成長アイテムに分化させることが示唆されているといえる」とも主張するが,「複数の同じ成長アイテムに分化させることが示唆されている」といはいえない。むしろ,甲2の段落【0】「複数の成長アイテムをそれぞれ異なった目的に使用することも可能」のとの記載からすると,分化された複数の成長アイテムは異なった目的に使用ができるものであって,本願発明の「一種類の特定のアイテム」に相当するものではない。(ウ) 上記②及び③に関しては,本願発明は,「自動的に」という構成によって「新アイテム入手時のユーザの利便性を向上させる」という課題(当初明細書の段落【0010】)が解決されるという技術的意義を有するから,設計的事項などというべきものではない。

第4

(被告の主張)

1 取消事由1(新規事項追加についての判断の誤り)について

(1) 本願発明の「アイテムボックス」と「特定のアイテム」について

ア(ア) 当初明細書の段落【0051】の「ユーザのアイテムボックス」との記載からすると,「アイテムボックス」は,ユーザごとに設けられたものであり,ユーザに関連付けられているものである。(イ) 当初明細書の段落【0051】の「不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になる」(判決注:下線は被告による。以下,

(被告の主張)

の記載部分において同じ。)との記載によると,「アイテムボックス」は,不要なアイテムにより満杯となってしまうものであることが理解できるが,アイテムが「不要なアイテム」であるか否かはユーザの主観によるものであることに照らすと,アイテムボックスに収納される「アイテム」とは,当該アイテムボックスが対応付けられるユーザに「付与される」「アイテム」であるといえる。(ウ) 当初明細書の段落【0051】の「不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になる」との記載について,一般に「満杯」が「容器が中身で一杯であること。予定した数量に達していること。 (広辞苑第6版)の意味であ」ること,そして,上記(イ)も踏まえると,ここでのアイテムボックスは,収納することができる「付与される様々な種類のアイテム」の数に上限が設けられているものである。イ(ア) 「特定のアイテム」は,数値化されたアイテムの数値に基づいて,アイテムから変換され,ユーザに付与されるものである(【請求項1】【請求項7】, ,【請求項8】 段落, 【0011】,【0017】,【0018】,【0030】,【0031】,【0039】【0040】【0048】【0050】【0073】の[1][9], , , , , ,[10]。)(イ) 「特定のアイテム」は,アイテム付与部によって付与されるアイテムを強化するためのものである(【請求項1】【請求項7】【請求項8】, , ,段落【00】【0017】【0018】【0049】【0056】【0057】【007, , , , , ,】の[1][9][10]。, , )(ウ) 「特定のアイテム」は,ユーザに対応付けて個数とともに記憶装置に記憶される(【請求項2】,段落【0012】。)(エ) 「特定のアイテム」は,アイテムの経験値に変換可能に設定される(【請求項3】,段落【0013】【0056】【0073】の[3]。, , )(オ) 「特定のアイテム」は,特定のアイテムの個数に応じて,アイテムのパラメータを変化させるアイテムである(【請求項4】,段落【0014】【005,】。)(カ) 「特定のアイテム」は,アイテムの数値に基づいて,当該特定のアイテムのレベル及び/又は数が変動するように設定されている 【請求項5】( ,【請求項】,段落【0015】【0016】【0030】【0048】【0053】【00, , , , ,】の[6][7]。, )(キ) 「特定のアイテム」は,上限なくユーザが所持可能とすることができるものである(段落【0031】【0040】【0050】【0052】 。, , , )(ク) 「特定のアイテム」は,少なくとも,アイテム付与部によって付与される上述したアイテム(以下,「他アイテム」という。)とは異なる種類のアイテムである(段落【0049】。)(ケ) 段落【0051】には,「このような構成とすることにより,・・・」と記載され,「このような構成」が,段落【0048】~【0050】に記載の構成を指すものといえることからすると,上記(ア),(イ),(カ),(キ)の構成とすることにより,ユーザは,付与される様々な種類の不要なアイテムを,一つの特定のアイテムに変換して所持することができるため,不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる(段落【0051】。)(コ) 上限なくユーザが「特定のアイテム」を所持可能とすることで,「特定のアイテム」を貯蓄することが可能となり,ユーザの好きなタイミングで「特定のアイテム」を使用することができるようになる(段落【0052】。)

(2) 当初明細書に記載の「アイテムボックス」が,収納上限を設けていること

ア アイテムボックスについて当初明細書において唯一記載されている段落【0051】の「アイテムボックス」は,上記(1)のとおりのものであり,(a)ユーザごとに設けられたものであって,ユーザに関連付けられている,(b)ユーザに付与される「アイテム」がアイテムボックスに収納される,(c)アイテムボックスに収納することができる「アイテム」の数には上限が設けられている,という仕様を有するものである。イ 甲12~14について甲12の段落【0029】の「そして,キャラクタが入手したアイテムは,アイテムボックスなどのアイテム収納手段によって,RAM13に格納され,ゲームを中断するときには,カートリッジ25のRAM19内にセーブデータとして格納される。また,キャラクタが一度に所有出来るアイテム数には一定の限度が設定されており,本実施例のゲームソフトウエアBGPの場合には,キャラクタは最大12個のアイテムを一度に所有することが出来る。 との記載及び段落」 【0030】 「アのイテムは,キャラクタ等が使用しない限り,アイテムボックスに格納されたままで,無くならないので,仮に最大数のアイテムを所持した場合には,プレーヤはそれ以上,プレーヤが操作するキャラクタに対してアイテムを所持させることは出来なくなり,何らかのアイテムをゲーム世界の中で捨てたり,売ったりして,満杯状態のアイテムボックスに空席を設ける必要が生じる。」との記載によると,甲12の「アイテムボックス」は,最大12個という上限を設けたアイテムを収納する手段であるといえる。甲13の段落【0161】の「絵本ページの『もちもの』アイコンをクリックすると,図20に示すように,自己のPCキャラクタのアイテム袋が表示される。キャラクタが持っているアイテムを知ることができる。キャラクタは所有しているアイテムを使用できる。プレイヤはアイテムウインドウを開き,使用したいアイテムをタブレットとペンで選択する。アイテムには,使用するとなくなる物と,何回でも使用できる物がある。アイテムの入手は,お店のNPCキャラクタから買う,地面を掘って取得する,オブジェクトを触って取得する等による。 との記載及び段落」【0162】 「ABCタウンでは,の プレイヤはそれぞれ自分の部屋(マンション)を持つことができる。マンションの中では,自分プライベートの空間を持つことができる。ここで,特定の友達とのチャット,アイテムボックス設置,eメール交換などが可能である。マンションにはいるには,カギ(パスワード)が必要で,特定の友達にパスワードを教えることで部屋に招くことが可能である。なお,マンション内にはその部屋の主人がいないと他人は入ることができない。この部屋の中でチャットを行えば第三者に知られずに会話を楽しむことが可能である。アイテムボックスには,自分の大切なアイテムをしまっておくことができる。また,部屋の中には,タウンのお店で買った家具をおくことができる。また,部屋の内装を変更することができる。」との記載によると,甲13の「アイテムボックス」は,アイテム袋にある自己のPCキャラクタのアイテムをしまっておくことができるものであるといえる。甲14の段落【0048】の「図4(a)は送信側プレイヤーが送信側ゲーム機の入力装置4に対して所定の操作を行なうことによりモニタ3に表示されるアイテムボックス画面40を示している。アイテムボックス画面40は送信側プレイヤーが収集済のアイテムを一覧表示するものであり,図4(a)の例ではアイテムとして『クッキーのかざりもの』,『クリスマスブーツ』,『カメハメハのおうかん』,『アボリジニのマスク』及び『トラブルドール』が表示されている。ゲームの実行中,各ゲーム機1のRAM13にはそのゲーム機1のプレイヤーに関するアイテムの収集状況を特定するための収集データが記録される。収集データは入力装置4に対するプレイヤーのセーブ操作に応じてユーザ用メモリ19にも記録される。収集データは,例えば各アイテムをプレイヤーが所持しているか否かを判別するアイテム毎のフラグとして構成してもよいし,プレイヤーが収集済のアイテムの番号等を直接指定するデータとして構成してもよい。」との記載によると,甲14の「アイテムボックス画面」は,送信側プレイヤーが収集済のアイテムを一覧表示するものであるから,「アイテムボックス」は,収集済のアイテムを格納しておくものであるといえる。これらによると,「アイテムボックス」は,アイテムを収納するものとしてゲーム分野で慣用されている語であるとはいえるものの,「アイテムボックス」という記載をもって,アイテムボックスに収納できるアイテムの数に所定の上限が設けられているか否か,アイテムボックスが必ずすべてのアイテムを収納するものであるか否か,といった特定の仕様が一義的に決まるものではない。当初明細書に記載の「アイテムボックス」の解釈に当たっては,当初明細書に記載の「アイテムボックス」が収納上限を設けているという仕様を有していることを前提としているものといえ,甲12~14の記載は,当初明細書等に記載の「アイテムボックス」が収納上限を設けているという前提に対して何らの影響を与えるものとはいえない。ウ 原告は,本願発明1は「アイテムボックスに特定アイテムの収納上限が設けられ」ることを特定しているわけではないから,「アイテムボックスに特定アイテムの収納上限が設けられている」ことが当初明細書に記載されているか否かは,本件補正が新規事項の追加に該当するか否かとは無関係である旨主張する。しかし,当初明細書において唯一アイテムボックスに関して記載されている段落【0051】における「アイテムボックス」に関する記載からは,当該「アイテムボックス」に収納上限が設けられているものであることが読み取れるのみであるから,「アイテムボックス」に特定アイテムを収納するとした場合には,特定アイテムの収納上限が設けられることになるとの解釈が,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを判断する際に考慮すべき事項である。なお,新規事項の追加の判断は,補正により追加された事項が,当初明細書に記載された事項から導き出される全ての技術的事項との関係から,新たな技術的事項が導入されたものであるか否かであるから,本願発明1において「アイテムボックスに特定アイテムの収納上限が設けられ」ることを特定しているか否かは,新たな技術的事項を導入するものであるか否かの判断に影響するものではない。エ 原告は,令和2年4月1日付け意見書(甲8)と当初明細書等の記載が整合するか否かは,本件補正が新規事項の追加に該当するか否かとは無関係である旨主張する。しかし,原告は,同意見書(甲8)において,当初明細書に記載の「アイテムボックス」には収納上限が設けられているということを前提とした主張をしているため,同意見書の主張と,当初明細書との記載とが整合しているか否かは,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを判断する際に検討すべき事項であって,無関係というべきではない。

(3) 「特定のアイテム」について

ア 当初明細書の段落【0051】には,「・・・具体的には,ユーザは,付与される様々な種類の不要なアイテムを,1つの特定のアイテムに変換して所持することができるため,・・・」として,「付与される様々な種類の不要なアイテム」を「1つの」「特定アイテム」に変換して所持することが記載されているところ,「1つの」特定のアイテムが,「1個の」特定のアイテムのことを意味するのか,「1種類の」特定のアイテムのことを意味するのかは当初明細書には記載されていない。しかし,当初明細書の【図3】において,レアリティが「R」のカードが3個の「特定のアイテム」に変換され,レアリティが「N」のカードが2個の「特定のアイテム」に変換されることが看取でき,すべてのカードが「『1個の』特定のアイテム」に変換されるものではないことを踏まえると,当初明細書の段落【0051】に記載の「1つの」特定のアイテムは,「1種類の」特定のアイテムのことを意味すると解することができる。本件審決は,1つの」「 特定のアイテムについて,直接的に言及していないものの,「特定のアイテム」が「1種類」であることを当然の前提とした上で,判断している。イ 当初明細書には,「特定のアイテム」が「上限なくユーザが所持可能とすることができる」ものであることが記載されているとともに,当初明細書には「特定のアイテム」を上限なくユーザが所持可能とするという構成をとることによって,ユーザは,付与される様々な種類の不要なアイテムを,一つの特定のアイテムに変換して所持することができるため,不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができることが記載されている。これらの記載によると,本願発明における「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの技術的意義は,不要なアイテムを,上限なくユーザが所持可能とすることができる「特定のアイテム」に変換することによって,収納することができるアイテムの数に上限が設けられている「ユーザのアイテムボックス」が満杯になることを防ぐことであると理解される。ウ 上記イのような「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの技術的意義に照らすと,当初明細書等に記載の「アイテムボックス」は,収納上限が設けられているものであるのに対し,当初明細書に記載の「特定のアイテム」は,「上限なくユーザが所持可能とすることができる」ものであるから,「アイテムボックス」に収納される「アイテム」と,「特定のアイテム」とでは,所持可能な数に上限があるかないかという点で,アイテムの性質が異なるといえる。また,当初明細書には,「特定のアイテム」が「他アイテム」とは異なる種類のアイテムであることが説明されている。当初明細書の記載に接した当業者は,そこに記載された収納上限が設けられている「アイテムボックス」に,上限なくユーザが所持可能とするようにされた「特定のアイテム」が収納されると認識することはなく,上限なくユーザが所持可能とするようにされた「特定のアイテム」は,収納上限のある「アイテムボックス」とは別に管理するものであると認識するというべきである。また,「特定のアイテム」と,「ユーザに付与される」「他のアイテム」とは異なる種類のアイテムであることが説明されており,「特定のアイテム」とユーザに付与されるアイテムとでは,所持可能な数に上限があるかないかという点で,アイテムの性質が異なるものと理解されることからしても,「ユーザ」に付与される「他のアイテム」がアイテムボックスに収納されるものであるからといって,特定のアイテム」「がアイテムボックスに収納されるものであると当然に理解するものとはいえない。以上によると,当初明細書の記載は,上限なくユーザが所持可能とすることができる「特定のアイテム」を収納上限のある「アイテムボックス」に所持する(アイテムボックスに収納する)ことを排除していると評価できる。エ 原告が主張するように,本願発明において,「特定のアイテム」が「アイテムボックス」に収納されるものであると解した場合には,当初明細書の段落【0】にのみ記載されているところの「アイテムボックス」には収納上限が設けられているのであるから,不要なアイテムを「特定のアイテム」に変換したとしても,(複数個の)1種類の「特定のアイテム」が不要なアイテムとして変換されたアイテムの代わりにアイテムボックスに収納されることとなる以上,(複数個の)「特定のアイテム」によりアイテムボックスが占有されることになるのであるから,アイテムボックスが満杯になることを防ぐことができなくなってしまうこととなり,不要なアイテムを「特定のアイテム」に変換することにより,ユーザのアイテムボックスが満杯になることを防ぐという「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの技術的意義を損なうものといえる。オ 原告は,アイテムの所持とアイテムボックスへの収納とが関連すると主張する。しかし,上記(2)の「アイテムボックス」に関する前提や上記イの本願発明における「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの技術的意義を踏まえると,当初明細書の段落【0051】の記載は,ユーザに付与された不要なアイテムを特定のアイテムに変換して,変換した特定のアイテムをアイテムボックスに入れることなく上限なしに所持できるようにすることにより,ユーザのアイテムボックスが満杯になることを防ぐという,原因と結果の関係を示しているというべきである。本件審決は,「1つの特定のアイテムを所持できる」ことと「不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる」ことを,当初明細書の記載を踏まえて,両者を関連付けた上で判断を行っているから,「1つの特定のアイテムを所持できる」ことと「不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる」ことを別個独立したものとして捉えているとの

(原告の主張)

は誤りである。カ 原告は,当初明細書の段落【0052】は,段落【0051】の記載に加え,更に「上限なくユーザが特定のアイテムを所持可能とする」という構成を付加的に採用してもよいこと,その付加的な構成によって「特定アイテムを貯蓄する事が可能となり,ユーザの好きなタイミングで特定アイテムを使用する事ができる」という効果があることを述べたにすぎないから,新たな発明特定事項が当初明細書に明確に記載されているか否かは,段落【0052】の記載に左右されるものではない旨主張する。しかし,新規事項の追加の判断は,補正により追加された事項が,当初明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであるか否かである以上,本件審決において,当初明細書の段落【0051】だけでなく,段落【0052】を含めた当初明細書のすべての記載を総合的に判断して,「アイテムボックス」及び「特定のアイテム」,並びに,本願発明における「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの技術的意義を解釈して,新規事項の追加の判断を行ったことに,誤りはない。なお,本件審決は,本願発明において,「特定のアイテム」 「アイテムボックス」がに収納されるものであると解した場合には,不要なアイテムを「特定のアイテム」に変換することにより,ユーザのアイテムボックスが満杯になることを防ぐという「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの技術的意義を損なうものであると判断しており,当該判断においては,「特定のアイテム」が「上限なくユーザが特定のアイテムを所持可能とする」ものであるか否かに関係なく,「特定のアイテム」を「アイテムボックス」に対応付けて記憶する事項が新規事項であると判断している。

(4) 以上のとおり,当初明細書には,「特定のアイテム」が「アイテムボック

ス」に収納されることが記載されているとはいえず,また,当初明細書の記載から,「特定のアイテム」が「アイテムボックス」に収納されることが自明であったともいえないから,「特定のアイテム」を「アイテムボックス」に対応付けて記憶する事項を追加する補正が,当業者によって当初明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるとした本件審決の判断に誤りはない。

2 取消事由2(甲1を主引用例とする進歩性についての判断の誤り)について

(1) 相違点の認定について

本件審決は,引用発明1の「自動売却処理」が,「売却ポイントを遊戯ポイントに変換」して,「ユーザーに付与する」処理までを含んでいること,すなわち,引用発明1においては「ユーザーに付与する」処理が「自動売却処理」として,サーバー装置10における制御部11により自動的に行われていることを認定している。その上で,本件審決は,引用発明1の「ゲームプログラム」は,「カード自動売却処理を実行させる」ものであって,ユーザーに付与されたゲームカードを対象に実行されるものであるから,本願発明1の「ゲームプログラム」と引用発明1の「ゲームプログラム」とは,「アイテムがユーザに付与された際に自動的に」「コンピュータに」特定の機能を実行させるものとの概念で共通するとしており,本願発明1における「アイテム変換機能」及び「アイテム記憶機能」を含む一連の機能を自動的に実行させることと,引用発明1における「自動売却処理」が,「ユーザに付与する」処理が制御部により自動的に行われていることを共通するものとして認定している。そうすると,「アイテムがユーザに付与された際に自動的に」という点を一致点として認定している本件審決は,相違点の認定において,

(原告の主張)

する誤りはない。

(2) 引用発明2の認定について

原告は,本件審決の引用発明2の認定は,「成長アイテム」を拾うか否かの選択,及び,「成長アイテム」を自分の経験値に加算するか通常のアイテムとして保持するかの選択を「プレイヤの操作によって」行うことが脱落していると主張する。しかし,本件審決は,引用発明2の技術は,本願発明1の「前記変換機能によって数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換機能」に対応する技術である,「ゲーム内で得られる『経験値』という所定の価値を有する情報を,『経験値』という所定の価値を有する『成長アイテム』という別のアイテムに変換して生成し,当該生成した別のアイテムをユーザが保持する」という技術であると認定している。原告が引用発明2の認定において脱落しているとする 『成長アイテム』「 を拾うか否かの選択,及び,『成長アイテム』を自分の経験値に加算するか通常のアイテムとして保持するかの選択を『プレイヤの操作によって』行う」というような,「成長アイテム」をゲーム内においてどのようにして取得するかという点は,本件審決における容易想到性の判断に当たって引用する技術事項に関係するものではないから,

(原告の主張)

する点は,本件審決の相違点の想到容易性の判断において影響を及ぼすものではない。また,本件審決は,引用発明2について,「ディスプレイの表示画面上には,主人公のキャラクタが表示され,その手前に成長アイテムが配置され,主人公のキャラクタはこの成長アイテムを拾うことができるし,これを拾わずに他の場所へと移動することも可能であり」 及び,, 「選択ウィンドウには,カーソルが表示されており,成長アイテムを自分の経験値に加算するか,通常のアイテムとして保持するかを選択させるようにしており,」と認定している。「成長アイテムが配置され」た状態において,主人公のキャラクタが「成長アイテム」を拾うことも,拾わずに移動することもできるという事項は,プレイヤの操作によって行われることが前提であるといえること,及び,「選択ウィンドウ」が,通常,プレイヤに所定の選択を行わせるために表示されるものであることからすると,本件審決における引用発明2の認定は,『成長アイテム』を拾うか否かの選択,及び,「 『成長アイテム』を自分の経験値に加算するか通常のアイテムとして保持するかの選択を『プレイヤの操作によって』行う」点について,いずれも「プレイヤの操作に応じて」行われることを前提として包含しているといえるから,本件審決における引用発明2の認定において,原告の主張する誤りはない。

(3) 引用発明2を引用発明1に適用する動機付けがないとする

(原告の主張)

についてア 引用発明1に対して適用する引用発明2の技術は,本願発明1の「前記変換機能によって数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換機能」に対応する技術である,「ゲーム内で得られる『経験値』という所定の価値を有する情報を,「経験値」という所定の価値を有する『成長アイテム』という別のアイテムに変換して生成し,当該生成したアイテムをユーザが保持する」という技術である。原告が引用発明2を引用発明1に適用する動機付けに必要であると主張する,引用発明1の「遊戯ポイント」と引用発明2の「成長アイテムに設定された経験値」の取得方法が「共通する」という点は,本件審決における容易想到性の判断に当たって引用する技術事項に関係するものではないから,

(原告の主張)

する点は,本件審決の相違点の想到容易性の判断において影響を及ぼすものではない。イ 引用発明1における「遊戯ポイント」の用途について,甲1の段落【0】【0098】及び【0125】の記載によると,遊戯ポイントが所定のポ,イント数以上ある場合に許可されるゲームカードの合成処理は,メインカードの能力パラメーターを高めるため,すなわち,本件審決において認定したとおり「キャラクタを強化するため」のものであるといえ,原告が主張するような「別のキャラクタを生成するため」のものではないから,引用発明1の「遊戯ポイント」は,本件審決において認定したとおり,「キャラクタを強化するため」に用いられるものである。そして,引用発明2の「成長アイテム」が,本件審決において認定したとおり,「キャラクタを強化するため」のものである点については争いがないことを踏まえると,引用発明1と引用発明2における,ゲーム内で得られる所定の価値を有する情報の用途は,「キャラクタを強化するため」のもので共通し,かつ,それにより,引用発明1と引用発明2とは,ゲーム内で得られる所定の価値を有する情報を用いることでキャラクタを強化するという作用の面でも共通するから,引用発明1における「遊戯ポイント」として,ゲーム内で得られる所定の価値を有する「キャラクタを強化するため」の情報であるという点で,当該「遊戯ポイント」と共通する引用発明2の「成長アイテム」を採用しようとすることは,当業者であれば当然に想起できたものである。ウ 原告は,引用発明1における合成処理ができなくなるようにしてまで,引用発明2を引用発明1に適用する動機付けはないと主張する。しかし,本件審決における容易想到性の判断において,引用発明1に対して適用する引用発明2の技術は,本願発明1の「前記変換機能によって数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換機能」に対応する技術である,「ゲーム内で得られる『経験値』という所定の価値を有する情報を,『経験値』という所定の価値を有する『成長アイテム』という別のアイテムに変換して生成し,当該生成したアイテムをユーザが保持する」という技術である。本件審決は,引用発明1に対して引用発明2の上記技術を適用することで,合成処理の際に用いる情報として,「遊戯ポイント」という情報を,当該遊戯ポイントが設定された「成長アイテム」という情報に変更することが容易であると判断しているのであって,ゲームカードの合成処理をする「遊戯ポイント」をユーザに付与するのに代えて,ゲームカードの合成処理を行わない他の機能を有する「成長アイテム」をユーザに付与する構成を採用することが容易であると判断しているわけではない。なお,引用発明1の「遊戯ポイント」の取得方法について,甲1の段落【004】には,このようにして勝敗が決定されることによって対戦ゲームが終了すると,「対戦内容や対戦結果に基づいて,ユーザーに対してゲームカードや遊戯ポイントが付与される。したがって,ユーザーは,この対戦型カードゲームを行うことにより,自らが所有するゲームカードの所有数や遊戯ポイントを増加させることができる。」と記載されているから,引用発明1の「遊戯ポイント」は,原告が主張する,ゲームカードを売却した際だけでなく,対戦ゲームの対戦内容や対戦結果に基づいても,ユーザーが取得することができるものである。引用発明1の「遊戯ポイント」と引用発明2の「成長アイテムに設定された経験値」は,いずれも対戦ゲームの対戦内容や対戦結果に基づいて取得する点で共通するものともいえる。エ 原告は,引用発明1に引用発明2を適用しても,相違点に係る本願発明の構成には至らないと主張する。(ア) 「①アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換する」という構成について本件審決における容易想到性の判断において,引用発明1に対して適用する引用発明2の技術は,本願発明1の「前記変換機能によって数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換するアイテム変換機能」に対応する技術である,「ゲーム内で得られる『経験値』という所定の価値を有する情報を,『経験値』という所定の価値を有する『成長アイテム』という別のアイテムに変換して生成し,当該生成したアイテムをユーザが保持する」という技術である。甲2の段落【0073】に,「1つの成長アイテムを複数の成長アイテムに分化させたり, と記載されていることからすると,」 分化させる複数の成長アイテムが互いに同じものであるか否かは明確ではないものの,一つの成長アイテムを複数の同じ成長アイテムに分化させることが示唆されているといえる。したがって,甲2の記載が「①アイテムを所定個数の価値の等しい一種類の特定のアイテムに変換すること」を排除しているとはいえないとともに,引用発明2の技術を引用発明1に適用するに当たり,一つの成長アイテムを生成するか,分化させた複数の同じ成長アイテムを生成するかは,ゲームの内容に応じて当業者が適宜決定すべき設計的事項にすぎない。また,実生活においても,たとえば,1万円という価値のお金を,所持及び使用に便利なように一万円札や五千円札,一円玉などの所定の価値のアイテムとして流通させたり,銀行間取引などで情報として取引する際に「円」という一種類の価値単位における「10,000」という数値情報として取り扱ったりすることは,いずれも日常的に行われている一般常識であるから,ある数値を有する価値を,所持及び使用に便利なように所定の価値単位のアイテムとして管理するか,一種類の価値単位の数値情報として管理するかは適宜なし得る程度のことにすぎない。所持及び使用に便利なように所定の価値単位のアイテムとして管理する場合において,たとえば,1万円という価値を,1万円を価値単位とする紙幣である一万円札1枚として所持することも,一万円札とは異なる種類の紙幣であって,千円を価値単位とする紙幣である千円札10枚として所持することも,いずれもごく一般的に行われている一般常識にすぎないことからすると,ある数値を有する価値を所持及び使用に便利なように所定の価値単位のアイテムとして管理する場合に,どのような価値単位を採用するかは,所持及び使用の目的に応じて適宜選択し得る程度のものであるといえる。このような一般常識を踏まえると,引用発明1において,不要なゲームカードを遊戯ポイントに変換することに代えて,引用発明2の技術を適用して,当該遊戯ポイントが設定されたアイテムである「成長アイテム」を生成し,当該「成長アイテム」をユーザーの所有物とする際に,価値の等しい一種類の「成長アイテム」を複数個所有する「形態」でユーザに付与するか,それとも,価値の異なる「成長アイテム」を一個所有する「形態」でユーザに付与するかは,ゲームの内容や当該アイテムの所持及び使用の態様に応じて当業者が適宜決定すべき設計的事項にすぎない。(イ) 「②その変換が自動的に実現されること及び③特定のアイテムの記憶が自動的に実現されること」という構成について前記のとおり,「アイテムがユーザに付与された際に自動的に」という点については相違点ではなく一致点として認定したことを踏まえた,本件審決が認定した相違点の判断に誤りはないから,原告の「②その変換が自動的に実現されること及び③特定のアイテムの記憶が自動的に実現されること」が当業者であっても容易に想到できた事項ではないとの主張は,その前提において誤りである。

第5 当裁判所の判断

1 本願発明について

(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載は,前記第2の3のとおりであるほ

か,当初明細書(甲3)には,次の記載がある。【技術分野】【0001】本発明は,ゲームプログラム,ゲーム処理方法および情報処理装置に関し,アイテムを用いてユーザがプレイするゲームのゲームプログラム,ゲーム処理方法,および,このゲームを提供する情報処理装置に関する。【背景技術】【0002】近年,スマートフォンやタブレット等の電子デバイスの普及に伴い,これら電子デバイスでプレイするためのゲームが盛んに開発されている。【0003】このようなゲームの一例として,ユーザがゲーム内で収集したカードを用いて,他のユーザまたはコンピュータと対戦を行うカードゲームが挙げられる。【0004】このようなカードゲームにおいて,ユーザは,ゲームの進行に伴って様々な種類のカードを入手することになる。特に,カードの希少度を示すレアリティが低いカードは容易に入手可能であることから,ユーザは,低レアリティのカードを大量に保有した状態になり易い。【0005】しかしながら,ユーザが保有することができるカードの数には上限があるため,ユーザは,自身にとって不要なカードの処理方法をカード毎に指定しなければならず,操作が煩雑であるという問題があった。【0006】これに対し,特許文献1には,ユーザが予め設定した属性情報に基づいて,入手したカードを,強化対象となるカードに自動的に合成して強化する技術が開示されている。かかる技術によれば,ユーザの操作入力に要する手間を大幅に軽減することができる。【0007】しかしながら,上記技術では,強化対象となるカードを強化するタイミングを自由に選択することはできなかった。さらに,ユーザが保有するカードのすべてを限界まで強化した後は,上記技術による効果が発揮され得なかった。【0008】また,他の技術として,入手したカードを,自動的に経験値に変換する技術も存在する。しかしながら,かかる技術においては,本来トレードを通じて他のユーザへ送ることができたはずのアイテムを,トレード不可なアイテムとしてしまっている。これは,マーケット機能を実装するゲームにとっては,アイテムの価値の低下を招くものであった。【先行技術文献】【特許文献】【0009】【特許文献1】特許第5153960号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0010】本発明の目的は,上記問題を解決し,新アイテム入手時のユーザの利便性を向上させることにある。【課題を解決するための手段】【0011】本発明のゲームプログラムは,コンピュータに,アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定機能と,アイテムをユーザに対応付けて記憶装置に記憶させるアイテム付与機能と,アイテム付与機能によって対応付けられたアイテムのアイテム情報,および,条件設定機能によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較機能と,比較機能によって比較された結果,アイテム情報がフィルタリング条件を満たしている場合,アイテムを,当該アイテムの価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換機能と,変換機能によって数値化されたアイテムの数値に基づいて,アイテムを,アイテムを強化するための特定のアイテムに変換するアイテム変換機能とを実現させ,特定のアイテムの個数を減じることに応じて,アイテムの強化が行われる。【0012】当該特定のアイテムは,ユーザに対応付けて個数とともに記憶装置に記憶されることを特徴としてもよい。【0013】当該特定のアイテムは,アイテムの経験値に変換可能に設定されることを特徴としてもよい。【0014】当該特定のアイテムは,特定のアイテムの個数に応じて,アイテムのパラメータを変化させるアイテムであることを特徴としてもよい。【0015】当該特定のアイテムは,アイテムの数値に基づいて,当該特定のアイテムのレベルが変動するように設定されていることを特徴としてもよい。【0016】当該特定のアイテムは,アイテムの数値に基づいて,当該特定のアイテムの数が変動するように設定されていることを特徴としてもよい。【0017】本発明のゲーム処理方法は,コンピュータに,アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定ステップと,アイテムをユーザに対応付けて記憶装置に記憶させるアイテム付与ステップと,アイテム付与ステップにて対応付けられたアイテムのアイテム情報,および,条件設定機能によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較ステップと,比較ステップにて比較された結果,アイテム情報がフィルタリング条件を満たしている場合,アイテムを,当該アイテムの価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換ステップと,変換ステップによって数値化されたアイテムの数値に基づいて,アイテムを,アイテムを強化するための特定のアイテムに変換するアイテム変換ステップとを実行させ,特定のアイテムの個数を減じることに応じて,アイテムの強化が行われる。【0018】本発明の情報処理装置は,アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を設定する条件設定部と,アイテムをユーザに対応付けて記憶装置に記憶させるアイテム付与部と,アイテム付与部によって対応付けられたアイテムのアイテム情報,および,条件設定機能によって設定されたフィルタリング条件を比較する比較部と,比較部によって比較された結果,アイテム情報がフィルタリング条件を満たしている場合,アイテムを,当該アイテムの価値情報毎に異なる設定情報に対応付けて数値化する変換部と,変換部によって数値化されたアイテムの数値に基づいて,アイテムを,アイテムを強化するための特定のアイテムに変換するアイテム変換部とを備え,特定のアイテムの個数を減じることに応じて,アイテムの強化が行われる。【発明の効果】【0019】本発明のゲームプログラム,ゲーム処理方法および情報処理装置によれば,新アイテム入手時のユーザの利便性を向上させることができる。【発明を実施するための形態】【0021】本発明のゲームプログラムおよびゲーム処理方法の実施形態について,図面を参照しながら説明する。【0022】本発明のゲームプログラムは,アイテムを用いてユーザがプレイするゲームのゲームプログラムであって,コンピュータに,条件登録機能と,アイテム付与機能と,比較機能と,パラメータ変換機能と,アイテム変換機能と,特定アイテム付与機能とを実現させるためのものである。【0023】本実施形態において,アイテムとは,ゲーム内でユーザが使用するカードを意味するが,後述するアイテム情報を有するものであれば,これに限られるものではない。【0024】アイテム情報とは,上記アイテムが有する情報の全てを含み,例えば,レベル,攻撃力,レアリティ等の情報のことを言う。なお,レアリティとは,ゲーム内におけるアイテムの希少度を示す尺度である。【0025】図1は,本発明のゲームプログラム100の一例を示すフローチャートである。条件登録機能では,アイテム情報に関するフィルタリング条件を登録する(STEP110) このアイテム情報は,。 ユーザまたは後述する情報処理装置によって選択されることができる。この機能は,後述する条件登録部で実現されることができる。【0026】アイテム付与機能では,ユーザに,アイテムを付与する(STEP120)。この機能は,後述するアイテム付与部で実現されることができる。このアイテムは,例えば,戦闘ゲーム内において,戦闘に勝利した賞品として付与される他,「ガチャ」と呼ばれる有料または無料のゲームやイベント等で付与されることができる。【0027】比較機能では,アイテム付与機能によって付与されたアイテムのアイテム情報,および,条件登録機能によって登録されたフィルタリング条件を比較する(STEP130)。この機能は,後述する比較部で実現されることができる。【0028】パラメータ変換機能では,比較機能によって比較された結果,アイテム情報がフィルタリング条件を満たしている場合,アイテムを,該アイテムのアイテム情報に基づいて数値化する(STEP140)。この機能は,後述するパラメータ変換部で実現されることができる。アイテム情報がフィルタリング条件を満たしている場合とは,例えば,フィルタリング条件が,「レアリティがR以下」と設定されているとき,レアリティがNまたはRのカードは,上記フィルタリング条件を満たす。そして,このフィルタリング条件を満たしたカードは,このレアリティに基づいて,数値で表現されることができる。この数値は,レアリティが高い程大きいものとすることができる。【0029】なお,比較機能によって比較された結果,アイテム情報がフィルタリング条件を満たしていない場合には,アイテムは,そのままユーザに付与される。【0030】アイテム変換機能では,パラメータ変換機能によって数値化されたアイテムの数値に基づいて,アイテムを,特定のアイテムに変換する(STEP150)。すなわち,アイテムの数値に応じて,変換される特定のアイテムの数やレベルが変動する。この機能は,後述するアイテム変換部で実現されることができる。【0031】特定アイテム付与機能では,アイテム変換機能によって変換された特定のアイテムを,ユーザに付与する(STEP160)。この機能は,後述する特定アイテム付与部で実現されることができる。この特定のアイテムは,上限なくユーザが所持可能とすることができる。【0032】本発明のゲームプログラムは,コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されて提供することができる。記録媒体としては,CD-ROM,DVD等,コンピュータが読み取り可能なものであれば特に限定されるものではない。【0033】また,本発明のゲーム処理方法は,アイテムを用いてユーザがプレイするゲームのゲーム処理方法であって,条件登録ステップと,アイテム付与ステップと,比較ステップと,パラメータ変換ステップと,アイテム変換ステップと,特定アイテム付与ステップとを備えるものである。【0034】条件登録ステップは,アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を登録する。このアイテム情報は,ユーザまたは後述する情報処理装置によって選択されることができる。このステップは,後述する条件登録部によって実行されることができる。例えば,アイテム情報が,N,R,S,SSの順に希少度が高くなるレアリティであるとすると,フィルタリング条件は,「レアリティがR以下」等と設定することができる。【0035】アイテム付与ステップは,ユーザに,アイテムを付与する。このステップは,後述するアイテム付与部によって実行されることができる。このアイテムは,例えば,戦闘ゲーム内において,戦闘に勝利した賞品として付与される他,「ガチャ」と呼ばれる有料または無料のゲームやイベント等で付与されることができる。【0036】比較ステップは,アイテム付与ステップによって付与されたアイテムのアイテム情報,および,条件登録ステップによって登録されたフィルタリング条件を比較する。このステップは,後述する比較部で実行されることができる。【0037】パラメータ変換ステップは,比較ステップによって比較された結果,アイテム情報がフィルタリング条件を満たしている場合,アイテムを,該アイテムのアイテム情報に基づいて数値化する。このステップは,後述するパラメータ変換部で実行されることができる。アイテム情報がフィルタリング条件を満たしている場合とは,例えば,フィルタリング条件が,「レアリティがR以下」と設定されているとき,レアリティがNまたはRのカードは,上記フィルタリング条件を満たす。そして,このフィルタリング条件を満たしたカードは,このレアリティに基づいて,数値で表現されることができる。この数値は,レアリティが高い程大きいものとすることができる。【0038】なお,比較ステップによって比較された結果,アイテム情報がフィルタリング条件を満たしていない場合には,アイテムは,そのままユーザに付与される。【0039】アイテム変換ステップは,パラメータ変換ステップによって数値化されたアイテムの数値に基づいて,アイテムを,特定のアイテムに変換する。すなわち,アイテムの数値に応じて,変換される特定のアイテムの数やレベルが変動する。このステップは,後述するアイテム変換部で実行されることができる。【0040】特定アイテム付与ステップは,アイテム変換ステップによって変換された特定のアイテムを,ユーザに付与する。このステップは,後述する特定アイテム付与部で実行されることができる。この特定のアイテムは,上限なくユーザが所持可能とすることができる。【0041】続いて,本発明の情報処理装置の実施形態について,図面を参照しながら説明する。【0042】図2は,本発明の情報処理装置の一例を示すブロック図である。図2に示すように,本発明の情報処理装置200は,アイテムを用いてユーザがプレイするゲームを提供する情報処理装置であって,条件登録部210と,アイテム付与部220と,比較部230と,パラメータ変換部240と,アイテム変換部と,特定アイテム付与部260とを備える。【0043】条件登録部210は,アイテム情報に関するフィルタリング条件を登録する。このアイテム情報は,ユーザまたは上記情報処理装置によって選択されることができる。例えば,アイテム情報が,N,R,S,SSの順に希少度が高くなるレアリティであるとすると,フィルタリング条件は,「レアリティがR以下」等と設定することができる。【0044】アイテム付与部220は,ユーザに,上述したアイテムを付与する。このアイテムは,例えば,戦闘ゲーム内において,戦闘に勝利した賞品として付与される他,「ガチャ」と呼ばれる有料または無料のゲームやイベント等で付与されることができる。【0045】比較部230は,アイテム付与部220によって付与されたアイテムのアイテム情報,および,条件登録部210によって登録されたフィルタリング条件を比較する。【0046】パラメータ変換部240は,比較部230によって比較された結果,アイテム情報がフィルタリング条件を満たしている場合,アイテムを,このアイテムのアイテム情報に基づいて数値化する。アイテム情報がフィルタリング条件を満たしている場合とは,例えば,フィルタリング条件が,「レアリティがR以下」と設定されているとき,レアリティがNまたはRのカードは,上記フィルタリング条件を満たす。そして,このフィルタリング条件を満たしたカードは,このレアリティに基づいて,数値で表現されることができる。この数値は,レアリティが高い程大きいものとすることができる。【0047】なお,比較部230によって比較された結果,アイテム情報がフィルタリング条件を満たしていない場合には,アイテムは,そのままユーザに付与される。【0048】アイテム変換部250は,パラメータ変換部240によって数値化されたアイテムの数値に基づいて,このアイテムを,特定のアイテムに変換する。すなわち,アイテムの数値に応じて,変換される特定のアイテムの数やレベルが変動する。【0049】特定のアイテムとは,少なくとも,アイテム付与部220によって付与される上述したアイテム(以下,「他アイテム」と言う。 とは異なる種類のアイテムを言う。)例えば,他アイテムが戦闘ゲーム内において,戦闘に使用される事を目的としたカードとすると,特定のアイテムは,経験値に変換可能なアイテムや,当該戦闘に使用される事を目的としたカードとの合成を目的としたアイテム等の,他アイテムを強化するためのアイテムとすることができる。詳細については後述する。【0050】特定アイテム付与部260は,アイテム変換部250によって変換された特定のアイテムを,ユーザに付与する。この特定のアイテムは,上限なくユーザが所持可能とすることができる。【0051】このような構成とすることにより,新アイテム入手時のユーザの利便性を向上させることができる。具体的には,ユーザは,付与される様々な種類の不要なアイテムを,1つの特定のアイテムに変換して所持することができるため,不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる。【0052】また,上限なくユーザが特定のアイテムを所持可能とすることで,特定アイテムを貯蓄する事が可能となり,ユーザの好きなタイミングで特定アイテムを使用する事ができるようになる。結果,一度に複数の特定のアイテムを使用して他アイテムを強化させる操作を行うことで,当該強化対象となる他アイテムの経験値を一度で大きく変化させる等,ユーザの選択肢を広げる事ができる。【0053】図3は,付与されたアイテムが特定のアイテムに変換されるイメージを示す図であり,付与された4枚のカードのうち,ユーザによって設定されたレアリティの低いカードが,その価値に応じて特定のアイテムに変換される例を示したものである。【0073】〔付記事項〕上述したところは,代表的な実施形態の例を示したものであって,本発明はこの実施形態に限定されるものではない。以下に,本願の原出願に係る特許請求の範囲に記載された発明を付記する。[1]アイテムを用いてユーザがプレイするゲームのゲームプログラムであって,コンピュータに,前記アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を登録する条件登録機能と,前記ユーザに,前記アイテムを付与するアイテム付与機能と,前記アイテム付与機能によって前記ユーザに対応付けられたアイテムのアイテム情報,および,前記条件登録機能によって登録されたフィルタリング条件を比較する比較機能と,前記比較機能によって比較された結果,前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしている場合,前記アイテムを自動で数値化するパラメータ変換機能と,前記パラメータ変換機能によって自動で数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを,経験値に変換可能なアイテムである特定のアイテムに変換するアイテム変換機能と,前記アイテム変換機能によって変換された前記特定のアイテムを,前記ユーザに付与する特定アイテム付与機能とを実現させ,前記特定のアイテムは,所定のタイミングで使用されることにより,前記アイテムを強化することが可能であるゲームプログラム。[2]前記特定のアイテムは,所定のタイミングで使用されることにより,前記アイテムのレベルを更新することが可能であることを特徴とする[1]記載のゲームプログラム。[3]前記特定のアイテムは,所定のタイミングで使用されることにより,前記アイテムの経験値に変換可能であることを特徴とする[1]または[2]に記載のゲームプログラム。[4]前記特定のアイテムは,前記アイテムの個数とは異なる当該特定のアイテムの個数を減じることに応じて,前記アイテムを強化することが可能であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のゲームプログラム。[5]前記特定のアイテムは,1種類であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載のゲームプログラム。[6]前記アイテム変換機能は,前記アイテムの数値に基づいて,変換すべき特定のアイテムのレベルを変動させることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載のゲームプログラム。[7]前記アイテム変換機能は,前記アイテムの数値に基づいて,変換すべき特定のアイテムの数を変動させることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載のゲームプログラム。[8]前記フィルタリング条件は,前記アイテムのアイテム情報に含まれる価値情報に関する条件であることを特徴とする[1]乃至[7]のいずれかに記載のゲームプログラム。[9]アイテムを用いてユーザがプレイするゲームのゲーム処理方法であって,コンピュータに,前記アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を登録する条件登録ステップと,前記ユーザに,前記アイテムを付与するアイテム付与ステップと,前記アイテム付与機能によって前記ユーザに対応付けられたアイテムのアイテム情報および,前記条件登録機能によって登録されたフィルタリング条件を比較する比較ステップと,前記比較機能によって比較された結果,前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしている場合,前記アイテムを自動で数値化するパラメータ変換ステップと,前記パラメータ変換機能によって自動で数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを,経験値に変換可能なアイテムである特定のアイテムに変換するアイテム変換ステップと,前記アイテム変換機能によって変換された前記特定のアイテムを,前記ユーザに付与する特定アイテム付与ステップとを実行させ,前記特定のアイテムは,所定のタイミングで使用されることにより,前記アイテムを強化することが可能であるゲーム処理方法。[10]アイテムを用いてユーザがプレイするゲームを提供する情報処理装置であって,前記アイテムのアイテム情報に関するフィルタリング条件を登録する条件登録部と,前記ユーザに,前記アイテムを付与するアイテム付与部と,前記アイテム付与機能によって前記ユーザに対応付けられたアイテムのアイテム情報,および,前記条件登録機能によって登録されたフィルタリング条件を比較する比較部と,前記比較機能によって比較された結果,前記アイテム情報が前記フィルタリング条件を満たしている場合,前記アイテムを自動で数値化するパラメータ変換部と,前記パラメータ変換機能によって自動で数値化された前記アイテムの数値に基づいて,前記アイテムを,経験値に変換可能なアイテムである特定のアイテムに変換するアイテム変換部と,前記アイテム変換機能によって変換された前記特定のアイテムを,前記ユーザに付与する特定アイテム付与部とを実行させ,前記特定のアイテムは,所定のタイミングで使用されることにより,前記アイテムを強化することが可能である情報処理装置。【図1】【図2】【図3】

(2) 上記(1)によると,本願発明は,次のようなものであると認められる。

スマートフォンやタブレット等の電子デバイスでプレイするカードゲームにおいて,ユーザは,ゲームの進行に伴って様々な種類のカードを入手することになるが,カードの希少度を示すレアリティが低いカードは容易に入手可能であることから,ユーザは,低レアリティのカードを大量に保有した状態になり易い(段落【000】~【0004】。)そして,ユーザが保有することができるカードの数には上限があるので,ユーザが予め設定した属性情報に基づいて,入手したカードを,強化対象となるカードに自動的に合成して強化する技術があり,この技術によると,ユーザの操作入力に要する手間を大幅に軽減することができるが,強化対象となるカードを強化するタイミングを自由に選択することはできなかったし,ユーザが保有するカードのすべてを限界まで強化した後は,上記技術による効果が発揮され得ず(段落【0006】,【0007】,また,入手したカードを,自動的に経験値に変換する技術において)は,本来トレードを通じて他のユーザへ送ることができたはずのアイテムを,トレード不可なアイテムとしてしまい,マーケット機能を実装するゲームにとっては,アイテムの価値の低下を招く(段落【0008】)という問題があった。本発明の目的は,上記問題を解決し,新アイテム入手時のユーザの利便性を向上させることにある(段落【0010】。)本発明の実施形態において,アイテムとは,ゲーム内でユーザが使用するカードを意味するが,アイテム情報を有するものであれば,これに限られるものではない(段落【0023】。アイテム付与機能では,ユーザに,アイテムを付与する(S)TEP120)。このアイテムは,例えば,戦闘ゲーム内において,戦闘に勝利した賞品として付与される他,「ガチャ」と呼ばれる有料又は無料のゲームやイベント等で付与されることができる(段落【0026】。比較機能では,アイテム付与機能)によって付与されたアイテムのアイテム情報,および,条件登録機能によって登録されたフィルタリング条件を比較する(STEP130)(段落【0027】。パラ)メータ変換機能では,比較機能によって比較された結果,アイテム情報がフィルタリング条件を満たしている場合,アイテムを,該アイテムのアイテム情報に基づいて数値化する(STEP140)(段落【0028】。なお,比較機能によって比較)された結果,アイテム情報がフィルタリング条件を満たしていない場合には,アイテムは,そのままユーザに付与される(段落【0029】。) アイテム変換機能では,パラメータ変換機能によって数値化されたアイテムの数値に基づいて,アイテムを,「特定のアイテム」に変換する(STEP150)(段落【0030】。)「特定のアイテム」とは,少なくとも,アイテム付与部220によって付与される上述したアイテム(以下,「他アイテム」という。)とは異なる種類のアイテムをいう。例えば,他アイテムが戦闘ゲーム内において,戦闘に使用される事を目的としたカードとすると,「特定のアイテム」は,経験値に変換可能なアイテムや,当該戦闘に使用されることを目的としたカードとの合成を目的としたアイテム等の,他アイテムを強化するためのアイテムとすることができる(段落【0049】。特定アイテム付与部)は,アイテム変換部250によって変換された「特定のアイテム」を,ユーザに付与する。この「特定のアイテム」は,上限なくユーザが所持可能とすることができる(段落【0050】。)このような構成とすることにより,ユーザは,付与される様々な種類の不要なアイテムを,一つの「特定のアイテム」に変換して所持することができるため,不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる(段落【0051】。また,上限なくユーザが「特定のアイテム」を所持可能とす)ることで,「特定のアイテム」を貯蓄することが可能となり,ユーザの好きなタイミングで「特定のアイテム」を使用することができるようになる(段落【0052】。)

2 取消事由1(新規事項追加についての判断の誤り)について

(1) 証拠(甲7,10)によると,当初出願については,令和2年4月1日付

け補正によって,「前記特定のアイテムを,前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能」との新たな発明特定事項が追加され,それが本件補正でも維持されていたことが認められる。「前記特定のアイテムを,前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能」との記載からすると,新たな発明特定事項は,「特定のアイテム」 「アイテムボックス」を という名前のついたものに記憶させる,すなわち,「特定のアイテム」を「ユーザに関連付けられたアイテムボックス」に収納することをいうと解することができる。したがって,新たな発明特定事項は,『特定のアイテム』を『ユーザに関連付け「られたアイテムボックス』に収納する」ことを特定していると認められる。

(2) 当初明細書には,「アイテムボックス」について,段落【0051】にの

み記載がある。そして,「不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる」との記載から,当初明細書に記載された「アイテムボックス」は,アイテムを収納するための構成であって,かつ,アイテムの収納上限が設けられているものと認められる。このことは,「ユーザが保有することができるカードの数には上限がある」(段落【0005】)との記載とも整合すると認められる。一方,当初明細書には「特定のアイテム」について,アイテム付与部によって付与されるアイテムとは異なる種類のアイテム(段落【0049】)であり,アイテム付与部により実行されるアイテム付与ステップによってユーザに付与された「アイテム」が,アイテム変換ステップにより変換され(段落【0026】【0035】, ,【0039】【0048】,特定アイテム付与ステップによりユーザに付与される, )(段落【0040】【0050】, )ものであって,上限なくユーザが所持可能とすることができるものである(段落【0031】,【0040】,【0050】,【0052】)と記載されている。そして,収納上限が設けられているアイテムボックスに「特定のアイテム」を収納すると,特定のアイテム」「 を上限なくユーザが所持することは不可能であるから,当初明細書に接した当業者は,「特定のアイテム」は,「アイテムボックスに収納して保持する」ものではないと理解すると解される。そうすると,『特定のアイテム』を『アイテムボックス』に収納して保持するこ「と」を意味する「前記特定のアイテムを,前記ユーザに関連付けられたアイテムボックスに対応付けて記憶するアイテム記憶機能」との新たな発明特定事項は,当業者によって当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内のものであるとはいえない。

(3)ア これに対し,原告は,当初明細書の段落【0051】には,「1つの特

定のアイテムを所持できる」ことにより,「不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる」ことが記載されているから,アイテムの所持とアイテムボックスへの収納とが関連するものであることは文理上明らかであり,本件審決の認定は,「1つの特定のアイテムを所持できる」ことと「不要なアイテムによりユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる」ことを別個独立したものとして捉えており,当初明細書の段落【0051】の読み方として誤っていると主張する。しかし,当初明細書の段落【0051】は,他アイテムによってアイテムボックスが満杯になることを防ぐことを記載しているのみであり,「特定のアイテム」がアイテムボックスに収納されることを記載していると読むことはできない。そして,上記(2)のとおり,当初明細書に接した当業者は,「アイテム付与部によって付与されるアイテムとは異なる種類のアイテムである『特定のアイテム』を『アイテムボックス』に収納して保持する」とは理解しないと認められる。イ 原告は,当初明細書の段落【0031】 【0040】及び【0050】,の「この特定のアイテムは,上限なくユーザが所持可能とすることができる。」との記載から,「できる」とは,(しようと思えば)できる」の意味であり,当業者は,「ユーザが所持可能な「特定のアイテムの」数に上限がない場合のみならず,「特定のアイテム」の数に上限があってもよい場合も包含するものと理解すると主張する。しかし,当初明細書において,「しようと思う(上限なく所持可能とすることができる)」ことの主体は,ゲームをプレイするユーザである。そして,ゲームプログラムにおいて,収納して保持することができる「特定のアイテム」の数に上限があると,ゲームをプレイするユーザがしようと思っても,特定のアイテムを「上限なくユーザが所持可能とすること」はできないことになる。そうすると,「この特定のアイテムは,上限なくユーザが所持可能とすることができる。 というのは,」 ゲームプログラムにおいて上限なく所持することができることを意味するものと認められるのであり,ゲームプログラムにおいて上限がある場合を包含するということはできず,前記(2)のとおり,当初明細書に接した当業者は,「アイテム付与部によって付与されるアイテムとは異なる種類のアイテムである『特定のアイテム』を『アイテムボックス』に収納して保持する」とは理解しないと認められる。ウ 原告は,当初明細書の段落【0052】は,段落【0051】の記載に加え,更に「上限なくユーザが特定のアイテムを所持可能とする」という構成を付加的に採用してもよいこと,その付加的な構成によって「特定アイテムを貯蓄する事が可能となり,ユーザの好きなタイミングで特定アイテムを使用する事ができる」という効果があることを述べたにすぎないと主張する。しかし,当初明細書の段落【0052】は,段落【0031】【0040】及び,【0050】と同様に,「特定のアイテム」は,上限なくユーザが所持可能であるとしか読むことはできず,当初明細書において上限なく所持する構成が付加的な構成であると認めることはできない。エ 原告は,「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの技術的意義は,「アイテムボックスが満杯になるのを防ぐ」ことではなく,「不要なアイテムによりアイテムボックスが満杯になるのを防ぐ」ことである(段落【0】)から,特定のアイテムのような「不要でないアイテム(必要なアイテム)によりアイテムボックスが満杯になる」ことは許容されていると主張する。確かに,当初明細書において,比較機能によって比較された結果,アイテム情報がフィルタリング条件を満たしていない場合には,アイテムはそのままユーザに付与されるのである(段落【0029】)から,「必要なアイテム」によって,アイテムボックスが満杯になることは許容されているといえる。しかし,前記(2)のとおり,当初明細書に接した当業者は,アイテム付与部によって付与されるアイテムとは異なる種類のアイテムである「特定のアイテム」は,「付与される様々な種類の不要なアイテム」(段落【0051】)とはいえないが,「アイテムボックス」に収納して保持するものではないと理解すると解されるから,原告の上記主張は,前記(2)の判断を左右するものではない。オ 原告は,「特定のアイテムをアイテムボックスに入れて所持したとしても,「ユーザ操作なしで不要なアイテムを持たずに済む」という本願発明1の技術的意義は損なわれないから,「特定のアイテム」は,「アイテムボックス」に収納されるものではないとの判断は誤りであると主張する。確かに,「特定のアイテム」をアイテムボックスに入れて所持したとしても,「ユーザ操作なしで不要なアイテムを持たずに済む」という本願発明1の技術的意義は損なわれるものではないが,前記(2)のとおり,当初明細書に接した当業者は,アイテム付与部によって付与されるアイテムとは異なる種類のアイテムである「特定のアイテム」は,「アイテムボックスに収納して保持する」ものではないと理解すると解されるから,原告の上記主張を採用することはできない。カ 原告は,ユーザが所持できる「特定のアイテム」の数に上限がないのであれば,「アイテムボックス」に入りきらない「特定のアイテム」が生じた場合には,「アイテムボックス」とは別に管理すればよく,全ての「特定のアイテム」について「アイテムボックス」とは別に管理する必要はないと主張するが,当初明細書において,「アイテムボックス」に入りきらない「特定のアイテム」が生じた場合に,「アイテムボックス」とは別に管理することは何ら記載も示唆もされていないから,原告の上記主張を採用することはできない。キ その他の

(原告の主張)

は,前記(2)の判断を左右するものではないことは,既に判示したところから明らかである。

(4) 以上によると,新たな発明特定事項は,当初明細書に記載されているもの

ではないから,本件補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲でするものとはいえず,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。そうすると,その余の点を判断するまでもなく,本件補正を認めず,本件拒絶査定に違法はないとした本件審決の判断には誤りはないから,原告の請求には理由がない。よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官森 義 之裁判官中 島 朋 宏裁判官眞鍋美穂子は,填補のため,署名押印することができない。裁判長裁判官森 義 之

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