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平成29(ワ)36763損害賠償請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和2年10月29日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社ナオコ
被告株式会社ビームテック
対象物 LED電灯装置
法令 特許権
特許法36条6項1号4回
特許法29条1項2号4回
特許法36条6項2号3回
特許法29条の23回
特許法102条3項3回
特許法44条1項2回
特許法29条1項3号1回
特許法29条1項1回
特許法104条の31回
キーワード 特許権22回
無効21回
実施21回
分割11回
新規性7回
進歩性4回
損害賠償2回
侵害2回
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 本件は,発明の名称を「LED電灯装置」とする各特許(特許第53178 48号及び同第5677520号)に係る特許権者である原告が,被告の製造 販売等に係るLED電球は,上記各特許に係る特許請求の範囲の記載文言を充5 足し,その特許発明の技術的範囲に属すると主張して,不法行為による損害賠 償請求権に基づき,被告に対し,1100万円(上記各特許権につき,それぞ れ特許法102条3項により算定した損害額の合計1億5887万円の一部で ある1000万円,弁護士・弁理士費用相当額100万円)及びこれに対する 平成29年11月20日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年10 5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

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判決文

令和2年10月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成29年(ワ)第36763号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和2年1月14日
判 決
原 告 株 式 会 社 ナ オ コ
同訴訟代理人弁護士 梅 園 裕 之
菅 尋 史
10 上 田 有 美
沼 澤 周
草 深 充 彦
同補佐人弁理士 保 坂 俊
15 被 告 株式会社ビームテック
同訴訟代理人弁護士 渡 邊 昌 裕
加 藤 博 太 郎
同訴訟復代理人弁護士 浅 川 拓 也
20 同訴訟代理人弁理士 吉 田 雅 比 呂
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
25 第1 請求
被告は,原告に対し,1100万円及びこれに対する平成29年11月20
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,発明の名称を「LED電灯装置」とする各特許(特許第53178
48号及び同第5677520号)に係る特許権者である原告が,被告の製造
5 販売等に係るLED電球は,上記各特許に係る特許請求の範囲の記載文言を充
足し,その特許発明の技術的範囲に属すると主張して,不法行為による損害賠
償請求権に基づき,被告に対し,1100万円(上記各特許権につき,それぞ
れ特許法102条3項により算定した損害額の合計1億5887万円の一部で
ある1000万円,弁護士・弁理士費用相当額100万円)及びこれに対する
10 平成29年11月20日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年
5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか,末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨に
より容易に認定できる事実)
当事者
15 ア 原告は,主にIT製品等の企画・製作・販売等を行う株式会社である。
イ 被告は,電子機器,照明・音響機器の販売等を目的とする株式会社であ
る。
本件特許権1,2
株式会社タキオンは,平成25年8月,原告に対し,次のアの特許権(以
20 下「本件特許権1」という。),及び,イの特許権(以下「本件特許権2」
という。)に係る特許を受ける権利を,それぞれ譲渡した(甲6)。
ア 本件特許権1
発明の名称 LED電灯装置
特許番号 特許第5317848号
25 登録日 平成25年7月19日
出願番号 特願2009-150481号(以下「本件出願1」と
いう。)
出願日 平成21年6月25日
公開番号 特開2011-9021号
公開日 平成23年1月13日
5 イ 本件特許権2
発明の名称 LED電灯装置
特許番号 特許第5677520号
登録日 平成27年1月9日
出願番号 特願2013-143536号(以下「本件出願2」と
10 いう。)
出願日 平成25年7月9日
分割の表示 特願2009-150481号(本件出願1)の分割
原出願日 平成21年6月25日
本件各発明
15 ア 本件特許権1の特許請求の範囲のうち,請求項1(以下「本件発明1」
という。)は,「複数のLEDを面状に配置したLED光源,前記LED
光源を支持する支持体,および前記支持体に取付けて前記LED光源を覆
う光透過性のカバー部材を備え,前記カバー部材は光源に対向する面が凹
曲面状の反射面になっており,前記カバー部材の前記反射面は,前記LE
20 D光源から受けた光を反射するとともに,前記支持体と前記カバー部材と
の間の空間に焦点を有することを特徴とし,さらに,前記LED光源から
の光の一部は前記カバー部材を透過し前記カバー部材の外側に発散すると
ともに,前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材の反射面におい
て反射し,前記反射光によって前記面状LED光源の像を前記カバー部材
25 の内側に結像し,前記像を結像した光はさらに前記カバー部材に入射して,
当該光の一部が前記カバー部材を透過し前記カバー部材の外側に発散する
ことを特徴とするLED電灯装置。」であり,これを構成要件に分説する
と,次のとおりとなる。
A 複数のLEDを面状に配置したLED光源,前記LED光源を支持す
る支持体,および前記支持体に取付けて前記LED光源を覆う光透過
5 性のカバー部材を備え,
B 前記カバー部材は光源に対向する面が凹曲面状の反射面になっており,
C 前記カバー部材の前記反射面は,前記LED光源から受けた光を反射
するとともに,前記支持体と前記カバー部材との間の空間に焦点を有
することを特徴とし,さらに,
10 D 前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材を透過し前記カバー
部材の外側に発散するとともに,
E 前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材の反射面において反
射し,前記反射光によって前記面状LED光源の像を前記カバー部材
の内側に結像し,
15 F 前記像を結像した光はさらに前記カバー部材に入射して,当該光の一
部が前記カバー部材を透過し前記カバー部材の外側に発散することを
特徴とする
H LED電灯装置。
イ 本件特許権2の特許請求の範囲のうち,請求項1(以下「本件発明2-
20 1」という。)は,「LED光源,前記LED光源を支持する支持体,お
よび前記支持体に取付けて前記LED光源を覆う光透過性のカバー部材を
備え,前記カバー部材は光源に対向する面が凹曲面状の反射面になってお
り,前記カバー部材の前記反射面は,前記LED光源から受けた光を反射
するとともに,前記支持体と前記カバー部材との間の空間に焦点を有する
25 ことを特徴とし,前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材を透過
し前記カバー部材の外側に発散するとともに,前記LED光源からの光の
一部は前記カバー部材の反射面において反射し,前記反射光および/また
はLED光源からの光によって前記LED光源の像を前記カバー部材の内
側に結像し,前記結像した光の一部または全部はさらに前記カバー部材に
入射して,当該光の一部が前記カバー部材を透過し前記カバー部材の外側
5 に発散することを特徴とし,さらに前記LED光源は前記カバー部材の下
部位置と同じ位置かまたはそれよりも低い位置に配置されていることを特
徴とするLED電灯装置。」であり,これを構成要件に分説すると,次の
とおりとなる(構成要件B,D,Hについては本件発明1と同一であるか
ら,「B」「D」「H」と記載し,本件発明1にない構成要件Gはそのま
10 ま「G」と記載し,その余については,本件発明1と一部異なることから,
「A’」「C’」「E’」「F’」と記載した。)。
A’ LED光源,前記LED光源を支持する支持体,および前記支持体に
取付けて前記LED光源を覆う光透過性のカバー部材を備え,
B 前記カバー部材は光源に対向する面が凹曲面状の反射面になっており,
15 C’ 前記カバー部材の前記反射面は,前記LED光源から受けた光を反射
するとともに,前記支持体と前記カバー部材との間の空間に焦点を有
することを特徴とし,
D 前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材を透過し前記カバー
部材の外側に発散するとともに,
20 E’ 前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材の反射面において反
射し,前記反射光および/またはLED光源からの光によって前記L
ED光源の像を前記カバー部材の内側に結像し,
F’ 前記結像した光の一部または全部はさらに前記カバー部材に入射して,
当該光の一部が前記カバー部材を透過し前記カバー部材の外側に発散
25 することを特徴とし,さらに
G 前記LED光源は前記カバー部材の下部位置と同じ位置かまたはそれ
よりも低い位置に配置されていることを特徴とする
H LED電灯装置。
ウ 本件特許権2の特許請求の範囲のうち,請求項2(以下「本件発明2-
2」という。)は,「前記結像は,前記カバー部材の下部位置よりも上部
5 に形成されていることを特徴とする,請求項1に記載のLED電灯装
置。」であり,構成要件の分説は,次のとおりとなる。
I 前記結像は,前記カバー部材の下部位置よりも上部に形成されている
ことを特徴とする,請求項1(判決注,本件発明2-1)に記載のL
ED電灯装置。
10 エ 本件特許権2の特許請求の範囲のうち,請求項3(以下「本件発明2-
3」という。)は,「LED光源,前記LED光源を支持する支持体,お
よび前記支持体に取付けて前記LED光源を覆う光透過性のカバー部材を
備え,前記カバー部材は光源に対向する面が凹曲面状の反射面になってお
り,前記カバー部材の前記反射面は,前記LED光源から受けた光を反射
15 するとともに,前記支持体と前記カバー部材との間の空間に焦点を有する
ことを特徴とし,前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材を透過
し前記カバー部材の外側に発散するとともに,前記LED光源からの光の
一部は前記カバー部材の反射面において反射し,前記反射光および/また
はLED光源からの光によって前記LED光源の像を前記カバー部材の内
20 側に結像し,前記結像した光の一部または全部はさらに前記カバー部材に
入射して,当該光の一部が前記カバー部材を透過し前記カバー部材の外側
に発散することを特徴とし,さらに前記LED光源は,前記カバー部材の
赤道位置よりも低い位置に配置されていることを特徴とするLED電灯装
置。」であり,これを構成要件に分説すると,次のとおりとなる(構成要
25 件G’のほかは,本件発明2-1と同一である。)。
A’ LED光源,前記LED光源を支持する支持体,および前記支持体に
取付けて前記LED光源を覆う光透過性のカバー部材を備え,
B 前記カバー部材は光源に対向する面が凹曲面状の反射面になっており,
C’ 前記カバー部材の前記反射面は,前記LED光源から受けた光を反射
するとともに,前記支持体と前記カバー部材との間の空間に焦点を有
5 することを特徴とし,
D 前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材を透過し前記カバー
部材の外側に発散するとともに,
E’ 前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材の反射面において反
射し,前記反射光および/またはLED光源からの光によって前記L
10 ED光源の像を前記カバー部材の内側に結像し,
F’ 前記結像した光の一部または全部はさらに前記カバー部材に入射して,
当該光の一部が前記カバー部材を透過し前記カバー部材の外側に発散
することを特徴とし,さらに
G’ 前記LED光源は,前記カバー部材の赤道位置よりも低い位置に配置
15 されていることを特徴とする
H LED電灯装置。
オ 本件特許権2の特許請求の範囲のうち,請求項4(以下,「本件発明2
-4」といい,本件発明2-1ないし2-3と併せて「本件発明2」とい
う。また,本件発明1と本件発明2とを併せて「本件各発明」といい,そ
20 の各明細書(図面を含む。)を特に区別せずに,「本件明細書」というこ
とがある。)は,「前記結像は,前記カバー部材の赤道位置より上部に形
成されていることを特徴とする,請求項3に記載のLED電灯装置。」で
あり,構成要件の分説は,次のとおりとなる。
I’ 前記結像は,前記カバー部材の赤道位置より上部に形成されているこ
25 とを特徴とする,請求項3(判決注;本件発明2-3)に記載のLE
D電灯装置。
被告の行為
被告は,遅くとも平成25年5月から,別紙被告製品説明書①ないし⑩の
型番欄記載の各LED製品(以下,これらの製品を上記説明書ごとにまとめ
て「被告製品①」などという。)を輸入,販売している。
5 被告製品①ないし⑩の各構成と本件各発明との対比
ア 被告製品①ないし⑩は,別紙被告製品説明書①ないし⑩記載の各構成を
それぞれ有している。
イ 被告製品①,⑦,⑩は,本件発明1に係る構成要件BないしD及びHを
(構成要件A,E,Fの充足性に争いがある。),本件発明2-1及び2
10 -2に係る構成要件A’,B,C’,D,E’,H及びIを(構成要件F’,
Gの充足性に争いがある。),本件発明2-3及び2-4に係る構成要件
A’,B,C’,D,E’,G’,H及びI’を(構成要件F’の充足性に争い
がある。),それぞれ充足している。
ウ 被告製品②,③,⑤は,本件発明1に係る構成要件BないしD及びHを,
15 (構成要件A,E,Fの充足性に争いがある。),本件発明2-1及び2
-2に係る構成要件A’,B,C’,D,E’及びGないしIを(構成要件
F’の充足性に争いがある。),本件発明2-3及び2-4に係る構成要
件A’,B,C’,D,E’,G’,H及びI’を(構成要件F’の充足性に争
いがある。),それぞれ充足している。
20 エ 被告製品⑥,⑨は,本件発明1に係る構成要件BないしD,F及びHを
(構成要件A,Eの充足性に争いがある。),本件発明2-1及び2-2
に係る構成要件A’,B,C’,D,E’,F’及びGないしIを(全構成要
件の充足性につき争いがない。),本件発明2-3及び2-4との関係で
はA’,B,C’,D,E’,F’及びHを(構成要件G’の充足性に争いがあ
25 る。),それぞれ充足している。
オ 被告製品④は,本件発明1,2-3及び2-4に係る各構成要件を全て
充足し,同各発明の技術的範囲に属するが,本件発明2-1,2-2に係
る構成要件Gを充足せず,同各発明の技術的範囲に属しない。
カ 被告製品⑧は,本件各発明に係る各構成要件を全て充足し,本件各発明
の技術的範囲に属する。
5 先行製品・先行文献の存在
ア 東芝ライテック株式会社は,本件出願1の出願日(本件特許権2の原出
願日)である平成21年6月25日より前の日である同年3月18日,L
ED電球である「一般電球形4.3W」(型名:LEL-AW4L,LE
L-AW4N。以下,両製品を併せて「東芝製品」という。)を発売した
10 (乙11の1及び2。後記争点 の公然実施発明の有無に係るものとして
摘示した事実)。
イ 特願2008-144881号の特許出願 (以下「先行出願」とい
う。)は,本件出願1の出願日(本件特許権2の原出願日)である平成2
1年6月25日より前に特許出願され,同日より後に出願公開(特開20
15 09-295299号(以下「引例1」ということがある。)。乙1の
4)された(後記争点 の構成要件A,Eの充足性,及び,争点 の拡大
先願要件違反の有無に係るものとして摘示した事実)。
2 争点
被告製品①ないし③,⑤ないし⑦,⑨及び⑩は本件発明1の構成要件Aの
20 「複数のLEDを面状に配置したLED光源」及び構成要件Eの「前記面状
LED光源」を充足するか
被告製品①ないし③,⑤,⑦及び⑩は本件発明1の構成要件F及び本件発
明2の構成要件F’の「光の一部が前記カバー部材を透過し前記カバー部材
の外側に発散する」を充足するか
25 被告製品①,⑦及び⑩は本件発明2-1及び2-2の構成要件Gを充足す
るか
被告製品⑥及び⑨は本件発明2-3の構成要件G’及び本件発明2-4の
構成要件I’の「赤道位置」を備えるか
本件各発明はサポート要件(特許法36条6項1号)に違反し無効にされ
るべきものか
5 本件各発明は明確性要件(特許法36条6項2号)に違反し無効にされる
べきものか
本件各発明は公然実施された発明(特許法29条1項2号)として新規性
を欠き無効にされるべきものか
本件各発明は拡大先願要件(特許法29条の2)に違反し無効にされるべ
10 きものか
本件発明2は分割出願要件(特許法44条1項)に違反し新規性・進歩性
を欠き無効にされるべきものか
原告の損害の額
3 争点についての当事者の主張
15 被告製品①ないし③,⑤ないし⑦,⑨及び⑩は本件発明1の構成
要件Aの「複数のLEDを面状に配置したLED光源」及び構成要件Eの
「前記面状LED光源」を充足するか)について
【原告の主張】
ア 構成要件A及びEの「面」は,「直線上にない3点」,「1つの直線と
20 その上にない1点」,「平行な2直線」又は「交わる2直線」のうち,ど
れか1つの条件があれば構成し得るところ,被告製品①ないし③,⑤ない
し⑦,⑨及び⑩においては,3個以上のLEDチップが同一平面である支
持体の上端面上の,同一直線上にならない位置に配置されているから,支
持体の上端面における1つの面を構成している。そして,構成要件A,E
25 の「面状」とは,「面のように見える態様で」という意味であると理解さ
れるところ,上記各被告製品においては,電球の支持体の上端面という極
めて狭い部分に複数のLEDチップが配置されているから,1つの点では
なく,面のように感得される。さらに,上記各被告製品においては,平ら
なLEDチップが選択されており,個々のLEDチップ自体が一定の面積
を有して「面状」になり,それが複数,配置されることによってLED光
5 源が「面状」に配置されているといえる。
このように,上記各被告製品においては,LED光源が「面状」に配置
されているといえるから,構成要件A,Eの上記各文言を充足する。
イ 本件発明1の審査過程においては,引例1に基づく特許法29条の2の
規定による拒絶理由通知(乙1の1)がされたのに対し,出願人たる原告
10 は,その意見書(乙1の3)において,本件発明1は「面発光」のLED
光源であり,引例1と異なることを述べた。被告は,このことを捉えて,
構成要件A及びEのLED光源は「面発光」のものに限定解釈すべきであ
る以上,COB(チップオンボード)型のみを意味することとなり,砲弾
型やSMD(表面実装)型を含まず,上記各被告製品も構成要件A及びE
15 を充足しないものである旨主張するが,失当である。なぜなら,原告が上
記意見書で用いた「面発光」の語は,上記拒絶理由通知で示された引例1
において「結像」が開示されていることを否定し,本件発明1が単なる1
点からの光束の交錯ではなく,複数のLEDを面状に配置した光源が一定
の面積を有して結像することを示すために用いられた表現にすぎず,それ
20 以上に本件発明1の技術的範囲を限定するものではないからである。また,
面状に配置された複数のLEDが発光すれば面状に発光することは明らか
であり,本件明細書には,COB型のみを本件発明1のLED光源とする
ような記載も示唆もないから,本件発明1のLED光源がCOB型のみに
限定される根拠もない。
25 【被告の主張】
構成要件Aの「複数のLEDを面状に配置したLED光源」は,その文言
のみを見れば,砲弾型や狭義のSMD(表面実装)型(単一のLEDを面実
装する構成)を除外するものではないが,原告は,本件発明1の出願経過に
おいて,本件発明1のLED光源は,拒絶理由通知で示された引例1のLE
D光源(複数の点光源のLEDチップが同一平面上に配置されたLED光
5 源)とは根本的に異なり,一定の面積を有する面発光を示すものである旨説
明していたものである。このことからすれば,構成要件Aの「複数のLED
を面状に配置したLED光源」は,一定の面積を有する面発光を示すもの,
すなわち,COB(チップオンボード)型に限定解釈すべきであり,砲弾型
や狭義のSMD(表面実装)型を含まないというべきであり,仮にCOB型
10 (チップオンボード)型を明示するものでないとしても,少なくとも,面発
光のLED光源を意味すると解すべきである。
しかるに,被告製品①ないし③,⑤ないし⑦,⑨及び⑩は,いずれも点光
源(狭義のSMD(表面実装)型)が同一平面上に点在して配置され,点発
光しかしないものであって,COB(チップオンボード)型にも,面発光の
15 LED光源にも該当しないから,上記各被告製品は構成要件Aの「複数のL
EDを面状に配置したLED光源」を充足せず,ひいては,構成要件Eの
「前記面状LED光源」も充足しない。
(被告製品①ないし③,⑤,⑦及び⑩は本件発明1の構成要件F及
び本件発明2の構成要件F’の「光の一部が前記カバー部材を透過し前記カ
20 バー部材の外側に発散する」を充足するか)について
【原告の主張】
ア 構成要件F及びF’の「光の一部が前記カバー部材を透過し前記カバー
部材の外側に発散する」とは,像を結像した光が樹脂カバーを透過して外
側に発散していれば足りるところ,被告製品①ないし③,⑤,⑦及び⑩に
25 おいて,LEDチップからの光のうち,像を結像した光が樹脂カバーを透
過して外側に発散していることは当事者間に争いがないから,上記各被告
製品は,構成要件F及びF’を充足する。
イ これに対し,被告は,構成要件F及びF’について,カバー部材の外側
から観測した人間が内側空間の結像を視認できる態様で,透過・発散して
いることを要するというように限定解釈すべきである旨主張するが,失当
5 である。
なぜなら,本件各発明が,従来のLED電球においては,光源が支持体
の位置にあることにより,フィラメント型電球のフィラメントに相当する
位置に光源が見えず,下方(支持体側方向)に十分に配光されないことも
相まって,通常のフィラメント型電球と比較すると違和感があるという技
10 術的課題に対し,LED電球において,実光源とは別の結像による疑似光
源を内部空間のより上方に作り,かつ,支持体の位置とは別位置に何らか
の光源が存在するかのように感得させることにより,この違和感を少なく
するという作用効果を奏するものであることからすると,疑似光源である
結像そのものを視認できる場合に限定されるものとはいえないからである。
15 また,本件明細書には,結像自体がある程度の光の広がりを見せることが
あることや,疑似光源からの光が入射するカバー部材にコーティングや研
磨処理等を施している場合があることが記載されているから,カバー部材
に入射して透過し,発散される光は疑似光源からの光の一部にすぎず,カ
バー部材の外側から疑似光源を明確に視認できる状態とは限らないことが
20 明らかである。
【被告の主張】
ア 本件発明1は,従来のLED電球については,従来からあるフィラメン
ト型の電球と同等に扱えるように,フィラメント型の電球と外形を同様に
しているが,電球の中で点灯するフィラメント(光源)に相当するものが
25 見えず違和感があったので,光源として見える位置を現実の光源の位置と
異なる位置に見えるLED電灯装置を提供するという課題があったところ,
この課題を解決するため,カバー部材と支持部材との間の空間に光源の虚
像を結像させ,この結像をカバー部材の外側から観察した人間に,カバー
部材の内側空間にあたかも光源が存在するかのように感じられるようにし
たという作用効果を奏するようにしたものである。
5 しかして,構成要件Fの文言を,その字句どおりに,結像した光がカバ
ー部材を透過・発散すれば足りると理解してしまうと,例えば,その発散
量が極めて微量であって,結像をカバー部材の外側から観測した人間に,
カバー部材の内側空間にあたかも光源が存在するように感じられないよう
なLED電灯装置も本件発明1に含まれてしまうため,妥当ではない。
10 したがって,構成要件Fは,カバー部材の外側から観測した人間が内側
空間の結像を視認できる態様で透過・発散していることを要するものとい
うべきであるところ,被告製品①ないし③,⑤,⑦及び⑩は,樹脂カバー
の外側から観察しても結像を視認することができないから,構成要件Fを
充足しない。
15 イ また,本件出願2は本件出願1の分割出願であって,本件出願2の明細
書の記載内容は,個別の請求項に対応する部分以外,本件出願1の明細書
の記載内容と同一であるから,被告製品①ないし③,⑤,⑦及び⑩は,構
成要件Fを充足しないのと同様に,構成要件F’も充足しない。
(被告製品①,⑦及び⑩は本件発明2-1及び2-2の構成要件G
20 を充足するか)について
【原告の主張】
ア 被告製品⑦について
本件発明2-1及び2-2の構成要件Gにいう「前記LED光源は前
記カバー部材の下部位置と同じ位置かまたはそれよりも低い位置に配置
25 されていることを特徴とする」について,その「カバー部材」とは,
「光透過性のカバー部材」(構成要件A’)であって,「LED光源から
の光の一部は前記カバー部材を透過し前記カバー部材の外側に発散する
とともに」(同D),「(結像した疑似光源の)光の一部が前記カバー
部材を透過し前記カバー部材の外側に発散することを特徴と」(同
F’)するものである。
5 しかして,被告製品⑦の樹脂カバーのうち,透けて見えない肉厚部に
ついては,光を透過するという「カバー部材」の機能を果たしておらず,
「カバー部材」には含まれないから,樹脂カバーの下端の位置は,光を
透過する部分と肉厚部との境界線(肉厚部の上端)となる。
そして,被告製品⑦のLEDチップの下端は樹脂カバーの下端よりも
10 低い位置にあるか,社会通念上,同じ位置にあることから,被告製品⑦
は,構成要件Gを充足する。
これに対し,被告は,構成要件Gについて,光源が2個あるように見
える違和感を解消するという作用効果を奏するものであるとして,LE
D光源の位置について,LEDチップの上端面を基準に判断すべきであ
15 る旨主張するが,失当である。なぜなら,光源が2か所見えるLED電
球の違和感については本件明細書に記載されておらず,構成要件Gはそ
のような違和感を解消するという作用効果を想定していないからである。
すなわち,構成要件Gは,実光源をより下方に位置させる構成を加える
ことにより,疑似光源である結像をカバー部材の内部空間のより上方に
20 形成させようとしたものであって,カバー部材の外側から見た光源の個
数を問題にしたものではない。
イ 被告製品①及び⑩について
被告は,被告製品①及び⑩について,構成要件Gの充足性を自白して
いるところ,被告による自白の撤回は,その要件を満たさない(原告の
25 同意はなく,反真実かつ錯誤による自白であるともいえない。)ため認
められないというべきである。
この点を措くとしても,被告製品①及び⑩についても,被告製品⑦と
同様に,LEDチップの下端は樹脂カバーの下端と同じか,それよりも
低い位置にあることから,構成要件Gを充足するというべきである。
【被告の主張】
5 ア 本件発明2-1及び2-2の構成要件Gにいう「前記LED光源は前記
カバー部材の下部位置と同じ位置かまたはそれよりも低い位置に配置され
ていることを特徴とする」については,そのカバー部材が光を透過させる
ものであることが前提となるが,被告製品①,⑦及び⑩の肉厚部は,いず
れも光を透過させるものである。そうすると,構成要件Gの「カバー部材
10 の下部位置」に当たるのは,被告製品①,⑦及び⑩の肉厚部の下端である
というべきである。
イ 他方,構成要件GにおけるLED光源の位置については,本件明細書で
は,LEDチップからの光は当該LEDチップの上端面のみから出射され
るものとして記載されていること,LEDチップの上端面がカバー部材の
15 下部位置よりも高い位置にはみ出して配置されたLED電灯装置では,結
像のほかにLED光源自体も外側から見えることになり,従来のフィラメ
ント電球と比較したときの違和感を解消するという課題を解決できないこ
とから,LEDチップの上端面を基準として判断すべきである。
ウ そうすると,被告製品①については,LED光源の位置の解釈いかんに
20 かかわらず,そもそもLEDチップ全体が肉厚部の下端よりも高い位置に
あることから,構成要件Gを充足しないことになる。また,被告製品⑦及
び⑩については,いずれもLEDチップの上端面が肉厚部の下端よりも高
い位置にあることから,構成要件Gを充足しないことになる。
争点 (被告製品⑥及び⑨は本件発明2-3の構成要件G’及び本件発明
25 2-4の構成要件I’の「赤道位置」を備えるか)について
【原告の主張】
ア 構成要件G’,及びI’にいう「赤道」とは,地球を回転楕円体であると
想定した上で,地軸の中央を垂直に横切る平面を赤道面とし,その赤道面
が地球の表面と交わってできる仮定上の線を指すところ,本件明細書によ
れば,本件発明2-3及び2-4が対象とするカバー部材には,その縦断
5 面が略楕円状である回転楕円体が含まれることが明らかであるから,構成
要件G’ 及びI’にいう「赤道」とは,カバー部材の形状に最も近い幾何
学的立体としての回転楕円体を想定し,その地軸(回転軸)の中央を垂直
に横切る平面と立体表面とが交わってできる線を意味することになる。
しかして,被告製品⑥及び⑨においては,その樹脂カバーについて回転
10 楕円体を想定することができるから,構成要件G’及びI’の「赤道位
置」を備えるといえる。
イ これに対し,被告は,本件明細書にある略楕円状の記載からすれば,本
件発明2-3及び2-4においては,楕円状の下部が支持部を取り付ける
ために一部欠けていたり,下端が多少曲がっていたりするものについて許
15 容されているにすぎない旨主張するが,失当である。なぜなら,本件明細
書にある略楕円状の記載は,本件発明2-3及び2-4の実施形態の一例
を図示等したものにすぎず,略楕円状が例示された形状に限定されるもの
ではないからである。そして,被告製品⑥及び⑨は,その上端に半球状の
天蓋を有する形状であり,当該半球状の部分を円周の一部として含む回転
20 楕円体を想定することは可能であるから,構成要件G’及びI’の「赤道位
置」を備えるといえる。
【被告の主張】
構成要件G’,及びI’には「赤道位置」との文言があるところ,「赤
道」との文言の一般的意義は,「地球が南北両極から90度を隔てた大圏」
25 というものであるから,構成要件G’及びI’の「赤道位置」とは,LED
電球のカバー部材を地球と同様の球体等であると仮定できる場合において,
その赤道に相当する位置を意味すると解される。
この点,原告は,球体以外の回転楕円体であっても「赤道位置」を観念し
得ると主張するが,本件明細書にある略楕円状の記載からすれば,回転楕円
体の場合は,楕円状の下部が支持部を取り付けるために一部欠けていたり,
5 下端が多少曲がっていたりするものについて許容されているにすぎず,楕円
形と同一ではない楕円形類似形状まで許容されているものではない。
しかるに,被告製品⑥及び⑨の樹脂カバーは,その上端に半球状の天蓋を
有する略円筒形状であって,球体であると仮定することができず,また,下
部が欠けた楕円形状とも明らかに異なるから,赤道に相当する位置を有しな
10 いものであり,そうすると,被告製品⑥及び⑨は,構成要件G’及びI’の
「赤道位置」を備えるとはいえない。
(本件各発明はサポート要件(特許法36条6項1号)に違反し無
効にされるべきものか)について
【被告の主張】
15 ア 本件発明1は,従来のLED電球については,従来からあるフィラメン
ト型の電球と同等に扱えるように,フィラメント型の電球と外形を同様に
しているが,電球の中で点灯するフィラメント(光源)に相当するものが
見えず違和感があったので,光源として見える位置を現実の光源の位置と
異なる位置に見えるLED電灯装置を提供することを課題とするものであ
20 り(本件明細書(甲3)の【0002】【0006】【0008】),本
件明細書(甲3)に開示されているLED電灯装置の発明は,「カバー部
材と支持部材との間の空間に光源の虚像を結像させ,この結像をカバー部
材の外側から観測した人間に,カバー部材の内側空間にあたかも光源が存
在するように感じられるようにしたという作用効果を奏するものである
25 (本件明細書(甲3)の【0014】)。
しかるに,本件発明1の構成要件Fを字句どおりに読めば,結像した光
がカバー部材を透過して発散していればよく,例えば,その透過量が極め
て微量,あるいは,広く発散(拡散)してしまい,結像をカバー部材の外
側から観察した人間に,カバー部材の内側空間にあたかも光源が存在する
ように感じられないものも含まれることになる。
5 しかしながら,そのようなLED電灯装置では,本件発明1の課題(光
源として見える位置を現実の光源の位置と異なる位置に見えるLED電灯
装置を提供する)を解決できないことが明らかである。
したがって,本件発明1は,本件明細書(甲3)において発明の課題が
解決できることを当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知
10 識を有する者)が認識できるように記載された範囲を超えるものであって,
特許法36条6項1号の規定に反して特許されたものであり,その特許は
同法123条1項4号の規定により無効にされるべきものである。
イ また,本件発明2についても,その構成要件F’は構成要件Fと実質的
に同一であるところ,本件出願2は本件出願1の分割出願であって,本件
15 明細書(甲5。本件出願2の明細書)の記載内容は,個別の請求項に対応
する部分以外,本件明細書(甲3。本件出願1の明細書)の記載内容と同
一である。そうすると,本件発明2についても,本件発明1と同様に,本
件明細書(甲5)において発明の課題が解決できることを当業者が認識で
きるように記載された範囲を超えるものであって,特許法36条6項1号
20 の規定に反して特許されたものであり,その特許は同法123条1項4号
の規定により無効にされるべきものである。
【原告の主張】
被告は,本件各発明は,結像をカバー部材の外側から観察した人間に,カ
バー部材の内側空間にあたかも光源が存在するように感じられないものも含
25 む点において,サポート要件を満たしていない旨主張するが,失当である。
なぜなら,本件各発明は,従来のLED電球においては,光源が支持体の
位置にあることにより,フィラメント型電球のフィラメントに相当する位置
に光源が見えず,下方(支持体側方向)に十分に配光されないことも相まっ
て,通常のフィラメント型電球と比較すると違和感があったという技術的課
題が生じていたので,これを解決するため,LED電球において,実光源と
5 は別の結像による疑似光源を内部空間のより上方に作り,かつ,支持体の位
置とは別の位置に何らかの光源が存在するかのように感得させることにより,
この違和感を少なくするという作用効果を奏するようにしたものであるとこ
ろ,そうであれば,本件各発明において,結像自体は感得されるべき対象で
はなく,LED電球の実光源の位置である支持体の位置とは異なる位置に何
10 らかの光源が存在するように感じることができれば足りるというべきである
からである。
(本件各発明は明確性要件(特許法36条6項2号)に違反し無効
にされるべきものか)について
【被告の主張】
15 ア 本件発明1の構成要件F及び本件発明2の構成要件F’に関するもの
本件発明1は,光源として見える位置を現実の光源の位置(支持体の
位置)と異なる位置に見えるLED電灯装置を提供する,という発明の
課題を解決していない電球を包含している。すなわち,カバー部材の外
側から見ると光源があたかもカバー部材の内側空間にあるように見える,
20 という作用効果を奏するためには,本件発明1の構成要件Fに「前記結
像(光の塊)の存在を認識できる態様で」という発明特定事項が不足し,
本件発明1は明確性を欠いているということができる。このことは,本
件発明2(構成要件F’)についても同様である。
したがって,本件各発明は,特許法36条6項2号の規定に反して特
25 許されたものであり,その特許は同法123条1項4号の規定により無
効にされるべきものである。
イ 本件発明2-3の構成要件G’及び2-4の構成要件I’に関するもの
本件明細書(甲5)を見ても,「赤道」に関する記載や図面における
図示がなく,辞書を参照してもその意味内容を一義的に理解できないか
ら,構成要件G’に係る「赤道位置」という文言は不明確である。
5 仮に,「赤道位置」とは,LED電球のカバー部材を地球と同様の球
体であると仮定した場合に赤道に相当する位置を意味すると善解したと
しても,本件明細書(甲5)に記載されている略ラグビーボール形状に
つき,上記のような意味で「赤道位置」を観念することはできず,構成
要件G’及びI’に係る「赤道位置」という文言が不明確であることに変
10 わりはない。
したがって,本件発明2-3及び2-4は,特許法36条6項2号の
規定に反して特許されたものであり,その特許は同法123条1項4号
の規定により無効にされるべきものである。
【原告の主張】
15 ア 本件発明1の構成要件F及び本件発明2の構成要件F’に関するもの
前記のとおり,本件各発明は,電球の外部から結像(光の塊)の存在を
認識できる態様のものに限られないから,それが発明特定事項として記載
されていないからといって,本件各発明が明確性を欠くことにはならない。
イ 本件発明2-3の構成要件G’及び本件発明2-4の構成要件I’に関す
20 るもの
本件明細書(甲5)には,カバー部材の形状を回転楕円体とする記載や
図があることを踏まえると,構成要件G’の「赤道」とは,カバー部材の
形状に最も近い幾何学的立体としての回転楕円体を想定し,その地軸(回
転軸)の中央を垂直に横切る平面と立体表面とが交わってできる線を意味
25 するといえ,その「赤道」の高さが「赤道位置」であることが明らかであ
る。そうすると,本件発明2-3及び2-4につき明確性が欠けることに
はならない。
(本件各発明は公然実施された発明(特許法29条1項2号)とし
て新規性を欠き無効にされるべきものか)について
【被告の主張】
5 本件各発明は,次のとおり,東芝製品により公然実施された発明であると
いえ,特許法29条1項2号の規定に反して特許されたものであるから,そ
の特許は同法123条1項2号の規定により無効にされるべきものである。
ア 東芝製品と本件発明1との対比
東芝製品の構成は,本件発明1の構成要件に対応させると,次のとお
10 りである。
a 4個のLEDチップを支持体の上端面上に所定の間隔を開けて点在
して配置しているLED光源,LED光源を支持する支持体,及び
支持体に取り付けてLED光源を覆う光透過性のカバー部材を備え,
b カバー部材は光源に対向する面が凹曲面状の反射面になっており,
15 c カバー部材の反射面は,LED光源から受けた光を反射するととも
に,支持体とカバー部材との間の空間に焦点を有し,さらに,
d LED光源からの光の一部はカバー部材を透過しカバー部材の外側
に発散するとともに,
e LED光源からの光の一部はカバー部材の反射面において反射し,
20 反射光によって前記上端面上に配置されたLED光源の像をカバー
部材の内側に結像し,
f 像を結像した光はさらにカバー部材に入射して,当該光の一部がカ
バー部材を透過しカバー部材の外側に発散する
h LED電球。
25 東芝製品の「LEDチップ」,「LED光源」,「支持体」,「光透
過性のカバー部材」,「反射面」,「焦点」,「像」及び「LED電
球」は,本件発明1の「LED」,「LED光源」,「支持体」,「光
透過性のカバー部材」,「反射面」,「焦点」,「像」及び「LED電
灯装置」にそれぞれ相当し,東芝製品において複数個のLEDチップが
同一平面上に配置されていることは,本件発明1の構成要件A及びFの
5 「面状」に相当するから,東芝製品の構成は本件発明1の構成要件と全
てにおいて一致する。
したがって,本件発明1は,東芝製品により公然実施された発明であ
る。
イ 東芝製品と本件発明2-1との対比
10 東芝製品の構成は,本件発明2-1の構成要件に対応させると,次の
とおりである。
a’ LED光源,LED光源を支持する支持体,及び支持体に取り付け
てLED光源を覆う光透過性のカバー部材を備え,
b カバー部材は光源に対向する面が凹曲面状の反射面になっており,
15 c’ カバー部材の反射面は,LED光源から受けた光を反射するととも
に,支持体とカバー部材との間の空間に焦点を有し,
d LED光源からの光の一部はカバー部材を透過しカバー部材の外側
に発散するとともに,
e’ LED光源からの光の一部はカバー部材の反射面において反射し,
20 反射光及び/又はLED光源からの光によってLED光源の像をカ
バー部材の内側に結像し,
f’ 結像した光の一部又は全部はさらにカバー部材に入射して,当該光
の一部がカバー部材を透過しカバー部材の外側に発散し,
g LED光源は,カバー部材の下部位置よりも低い位置に配置されて
25 いる
h LED電球。
東芝製品の「LED光源」,「支持体」,「光透過性のカバー部材」,
「反射面」,「焦点」,「像」及び「LED電球」は,本件発明2-1
の「LED光源」,「支持体」,「光透過性のカバー部材」,「反射
面」,「焦点」,「像」及び「LED電灯装置」にそれぞれ相当し,東
5 芝製品においてLED光源がカバー部材の下部位置よりも低い位置に配
置されていることは,本件発明2-1の構成要件Gに相当するから,東
芝製品の構成は本件発明2-1の構成要件と全てにおいて一致する。
したがって,本件発明2-1は,東芝製品により公然実施された発明
である。
10 ウ 東芝製品と本件発明2-2との対比
東芝製品の構成は,本件発明2-2の構成要件に対応させると,次の
とおりであり,これは,本件発明2-2の構成要件Iに相当するから,
東芝製品の構成は本件発明2-2の構成要件と一致する。
i 結像は,カバー部材の下部位置よりも上部に形成されている,前記
15 LED電球。
したがって,本件発明2-2は,東芝製品により公然実施された発明
である。
エ 東芝製品と本件発明2-3との対比
東芝製品の構成は,本件発明2-3の構成要件に対応させると,次の
20 とおりである。
a’ LED光源,LED光源を支持する支持体,及び支持体に取り付け
てLED光源を覆う光透過性のカバー部材を備え,
b カバー部材は光源に対向する面が凹曲面状の反射面になっており,
c’ カバー部材の反射面は,LED光源から受けた光を反射するととも
25 に,支持体とカバー部材との間の空間に焦点を有し,
d LED光源からの光の一部はカバー部材を透過しカバー部材の外側
に発散するとともに,
e’ LED光源からの光の一部はカバー部材の反射面において反射し,
反射光及び/又はLED光源からの光によってLED光源の像をカ
バー部材の内側に結像し,
5 f’ 結像した光の一部又は全部はさらにカバー部材に入射して,当該光
の一部がカバー部材を透過しカバー部材の外側に発散し,
g’ LED光源は,カバー部材の赤道位置よりも低い位置に配置されて
いる
h LED電球。
10 東芝製品の「LED光源」,「支持体」,「光透過性のカバー部材」,
「反射面」,「焦点」,「像」及び「LED電球」は,本件発明2-3
の「LED光源」,「支持体」,「光透過性のカバー部材」,「反射
面」,「焦点」,「像」及び「LED電灯装置」にそれぞれ相当し,東
芝製品においてLED光源がカバー部材の赤道位置よりも低い位置に配
15 置されていることは,本件発明2-3の構成要件G’に相当するから,
東芝製品の構成は本件発明2-3の構成要件と全てにおいて一致する。
したがって,本件発明2-3は,東芝製品により公然実施された発明
である。
オ 東芝製品と本件発明2-4との対比
20 東芝製品の構成は,本件発明2-4の構成要件に対応させると,次の
とおりであり,これは,本件発明2-4の構成要件I’に相当するから,
東芝製品の構成は本件発明2-4の構成要件と一致する。
i’ 結像は,カバー部材の赤道位置より上部に形成されている,前記エ

25 したがって,本件発明2-4は,東芝製品により公然実施された発明
である。
カ 原告の主張について
原告は,東芝製品においては結像が形成されておらず,カバー内部で発
光しているように見えるものは,LED光源から出た光がカバー部材の内
側表面に反射して映り込んだものにすぎないとし,その根拠として,東芝
5 製品に結像が形成されているとすれば,当該結像は,どの角度から見ても
同じ位置に同じ形状で視認できるはずであるのに,そのようにはなってい
ないなど縷々主張するが,いずれも失当である。
なぜなら,原告の上記主張は,結像の位置は,LEDの設置位置とカバ
ー部材の中心により一義的に定まるものであることを前提とするが,この
10 前提は,光軸がカバー部材の形状に基づいて1本だけに確定され,その光
軸に基づいて算出される結像しか形成されないと考えている点において誤
りがあるからである。すなわち,光軸は,凹面鏡において,観察する位置
との関係で,結像の位置を算出するために適宜設定される仮想線にすぎず,
LED電球でいえば,カバー部材の球の中心を通ってカバー部材に向かっ
15 て引くことができる無数の仮想線の全てが光軸となり得るものであって,
この無数の光軸ごとに,異なる位置に結像が形成されることになるもので
ある。
【原告の主張】
ア 東芝製品の構成のうち,構成eの「反射光によって前記上端面上に配置
20 されたLED光源の像をカバー部材の内側に結像し」の部分,構成e’の
「反射光及び/又はLED光源からの光によってLED光源の像をカバー
部材の内側に結像し」の部分,構成f(「像を結像した光はさらにカバー
部材に入射して,当該光の一部がカバー部材を透過しカバー部材の外側に
発散する」),構成f’( 「結像した光の一部又は全部はさらにカバー部
25 材に入射して,当該光の一部がカバー部材を透過しカバー部材の外側に発
散し,」),構成i(「結像は,カバー部材の下部位置よりも上部に形成
されている,前記のLED電球」),構成i’ (「結像は,カバー部材の
赤道位置より上部に形成されている,前記のLED電球」)はいずれも否
認し,争う。
東芝製品では,カバー部材が光を適切かつ十分に反射していないために,
5 結像が形成されていない。すなわち,理論上,形状的に焦点を持っていた
としても,東芝製品においては,カバー部材が適切に光を反射せず,吸収,
拡散,不規則な乱反射が多いために,結像を形成し得るに十分な反射光が
得られていないものである。
イ 東芝製品において光軸となり得るのは,凹面鏡であるカバー部材の中心,
10 焦点,球の中心を通る対称軸の1本のみであるから,東芝製品に結像が形
成されているとすれば,当該結像は,どの角度から見ても同じ位置に同じ
形状で視認できるはずである。また,LEDの配置位置やカバー部材の形
状からすれば,理論上想定される結像の位置はカバー部材の内部空間のか
なり低い位置になるはずであり,さらに,東芝製品ではLEDが4つ配置
15 されているから,4つの結像が形成されなければならない。
しかるに,東芝製品を点灯させて内部を見ると,見る角度によって,カ
バー内部の上部に見える発光の位置や形状が変化する上,当該発光は焦点
付近よりも上方に見えており,また,カバー内部の上部に見える発光は1
個のみである。これらの点からすれば,東芝製品においては結像が形成さ
20 れておらず,カバー内部で発光しているように見えるものは,LED光源
から出た光がカバー部材の内側表面に反射して映り込んだものにすぎない
ことが明らかである。
(本件各発明は拡大先願要件(特許法29条の2)に違反し無効に
されるべきものか)について
25 【被告の主張】
本件各発明は,次のとおり,先行出願(引例1)の当初明細書(特許請求
の範囲,図面を含む。乙1の4)に記載された発明(以下「先願発明」とい
う。)と同一であり,特許法29条の2の規定に反して特許されたものであ
るから,その特許は同法123条1項2号の規定により無効にされるべきも
のである。
5 ア 先願発明と本件発明1との対比
上記当初明細書によれば,先願発明の構成は,次のとおりである。
a 複数の点光源LEDを本体部の上端面上に点在して配置しているL
ED,LEDを支持する本体部,及び本体部に取り付けてLEDを
覆う光透過性のカバーを備え,
10 b カバーは光源に対向する面が凹曲面状の反射面になっており,
c カバーの反射面は,LEDから受けた光を反射するとともに,本体
部とカバーとの間の空間に焦点を有し,さらに,
d LEDからの光の一部はカバーを透過しカバーの外側に発散すると
ともに,
15 e LEDからの光の一部はカバーの反射面において反射し,反射光に
よって前記上端面上に配置されたLEDの像をカバーの内側に結像
し,
f 像を結像した光はさらにカバーに入射して,当該光の一部がカバー
を透過しカバーの外側に発散する
20 h 照明体。
先願発明の「点光源LED」,「LED」,「本体部」,「光透過性
のカバー」,「反射面」,「焦点」,「像」及び「照明体」は,本件発
明1の「LED」,「LED光源」,「支持体」,「光透過性のカバー
部材」,「反射面」,「焦点」,「像」及び「LED電灯装置」にそれ
25 ぞれ相当し,先願発明の「複数の点光源LEDを本体部の上端面上に点
在して配置している」ことは,本件発明1の構成要件A及びFの「面
状」に相当するから,先願発明は本件発明1と一致し,相違点はない。
したがって,本件発明1は,先願発明と同一である。
イ 先願発明と本件発明2-1との対比
先行出願の当初明細書によれば,先願発明の構成は,次のとおりであ
5 る。
a’ LED,LEDを支持する本体部,及び本体部に取り付けてLED
を覆う光透過性のカバーを備え,
b カバーは光源に対向する面が凹曲面状の反射面になっており,
c’ カバーの反射面は,LEDから受けた光を反射するとともに,本体
10 部とカバーとの間の空間に焦点を有し,
d LEDからの光の一部はカバーを透過しカバーの外側に発散すると
ともに,
e’ LEDからの光の一部はカバーの反射面において反射し,反射光及
び/又はLEDからの光によってLEDの像をカバーの内側に結像
15 し,
f’ 結像した光の一部又は全部はさらにカバーに入射して,当該光の一
部がカバーを透過しカバーの外側に発散し,
g LEDは,カバーの下部位置よりも低い位置に配置されている
h 照明体。
20 先願発明の「LED」,「本体部」,「光透過性のカバー」,「反射
面」,「焦点」,「像」及び「照明体」は,本件発明2-1の「LED
光源」,「支持体」,「光透過性のカバー部材」,「反射面」,「焦
点」,「像」及び「LED電灯装置」にそれぞれ相当し,先願発明の
「LEDは,カバーの下部位置よりも低い位置に配置されている」こと
25 は,本件発明2-1の構成要件Gに相当するから,先願発明は本件発明
2-1と一致し,相違点はない。
したがって,本件発明2-1は,先願発明と同一である。
ウ 先願発明と本件発明2-2との対比
先行出願の当初明細書によれば,先願発明の構成は,次のとおりであ
り,これは,本件発明2-2の構成要件Iに相当するから,先願発明は
5 本件発明2-2と一致し,相違点はない。

の照明体。
したがって,本件発明2-2は,先願発明と同一である。
エ 先願発明と本件発明2-3との対比
10 先行出願の当初明細書によれば,先願発明の構成は,次のとおりであ
る。
a’ LED,LEDを支持する本体部,及び本体部に取り付けてLED
を覆う光透過性のカバーを備え,
b カバーは光源に対向する面が凹曲面状の反射面になっており,
15 c’ カバーの反射面は,LEDから受けた光を反射するとともに,本体
部とカバーとの間の空間に焦点を有し,
d LEDからの光の一部はカバーを透過しカバーの外側に発散すると
ともに,
e’ LEDからの光の一部はカバーの反射面において反射し,反射光及
20 び/又はLEDからの光によってLEDの像をカバーの内側に結像
し,
f’ 結像した光の一部又は全部はさらにカバーに入射して,当該光の一
部がカバーを透過しカバーの外側に発散し,
g’ LEDは,カバーの赤道位置よりも低い位置に配置されている
25 h 照明体。
先願発明の「LED」,「本体部」,「光透過性のカバー」,「反射
面」,「焦点」,「像」及び「照明体」は,本件発明2-3の「LED
光源」,「支持体」,「光透過性のカバー部材」,「反射面」,「焦
点」,「像」及び「LED電灯装置」にそれぞれ相当し,先願発明の
「LEDは,カバーの赤道位置よりも低い位置に配置されている」こと
5 は,本件発明2-3の構成要件G’に相当するから,先願発明は本件発
明2-3と一致し,相違点はない。
したがって,本件発明2-3は,先願発明と同一である。
オ 先願発明と本件発明2-4との対比
先行出願の当初明細書によれば,先願発明の構成は,次のとおりであ
10 り,これは,本件発明2-4の構成要件I’に相当するから,先願発明
は本件発明2-4と一致し,相違点はない。
i’
照明体。
したがって,本件発明2-4は,先願発明と同一である。
15 カ 原告の主張について
これに対し,原告は,先行出願の当初明細書には,本件発明1の構成
要件Aに相当する構成aの「複数の点光源LEDを本体部の上端面上に
点在して配置している」ことが記載されていない旨主張する。
しかしながら,仮に,上記記載がなかったとしても,1つのLED電
20 球において,複数の点光源LEDを取り付けることは技術常識であるし,
複数の点光源LEDを分散して配置することは周知技術であるから,先
願発明と本件発明 1 とは実質的に同一であるといえる。
また,原告は,先行出願の当初明細書には,「焦点」や「結像」に関
する記載がない旨主張する。
25 しかしながら,先行出願の当初明細書には,球体状のカバーの内側表
面で反射を生じさせている図が示されているところ,カバーの半径2分
の1の位置に焦点が生じ,結像の位置を計算できることは技術常識であ
るから,先行出願の当初明細書には,「焦点」及び「結像」が記載され,
あるいは,記載されているに等しいというべきである。
【原告の主張】
5 ア 先行出願の当初の明細書には,「点光源であるLED6」との記載はあ
るが,この記載を文字どおりに読めば,上記LED6が1つの点光源であ
ると解釈できる。その他,先行出願の当初明細書を見ても,上記LED6
が複数の点光源LEDから構成されたLEDであることを示す記載はない。
したがって,先行出願の当初明細書には,先願発明の構成要件aのうち
10 「複数の点光源LEDを本体部の上端面上に点在して配置している」との
構成は開示されていない。
イ 先行出願の当初明細書には,「焦点」や「結像」に関する記載は一切な
い。すなわち,光の反射面の形状が曲面であるだけでは,その反射面が焦
点を有するか明らかとはいえないところ,先行出願の当初明細書の例示は
15 全て点光源を用いたものであり,1点のLED光源から出た光,あるいは
カバーからの反射光の一部を直線で図示しているだけであるから,その交
わっている点が「焦点」を記載したものであるかは明らかでなく,「結
像」についても言及がない。
また,仮に先行出願の当初明細書に図示されている構造が理論上,焦点
20 を有するものであったとしても,焦点を通る光によって結像を生じさせる
ためのカバー部材の構成に関する記載が一切ないから,「結像」が記載さ
れているとはいえない。
したがって,先願発明につき,構成c,c’,e,e’,f,f’,i,
i’を有すると認定することはできない。
25 (本件発明2は分割出願要件(特許法44条1項)に違反し新規
性・進歩性を欠き無効にされるべきものか)について
【被告の主張】
ア 本件発明2-1の構成要件Gの「同じ位置」に関するもの
本件出願2は本件出願1の分割出願であるが,本件出願1の当初明細書
には,本件発明2-1の構成要件Gの「前記LED光源は前記カバー部材
5 の下部位置と同じ位置…に配置されている…」との文言に関する記載がな
いから,特許法44条1項の分割出願要件に違反するものである。
そうすると,本件発明2の特許性の判断等の基準となる出願日は,本件
出願2の現実の出願日(平成25年7月9日)となるところ,その出願日
より前に出願公開されている本件出願1の公開特許公報には,本件発明2
10 と同様の発明が開示されている。また,構成要件Gの「同じ位置」が相違
点であったとしても,設計事項にすぎない。
したがって,本件発明2は,特許法29条1項3号又は同条2項の規定
に反して特許されたものであるから,新規性・進歩性を欠き,その特許は
同法123条1項2号の規定により無効にされるべきものである。
15 イ の予備的主張に関するもの
原告は,本件発明2-1の構成要件G(争点(3))に関し,LEDチッ
プの一部がカバー部材の下部位置より上方にはみ出していても,ほかの部
分がその位置と同じか,それより下方にあればよいとして,被告製品①,
⑦,⑩は本件発明2-1の技術的範囲に属する旨主張する。
20 前記のとおり,原告の上記主張は理由がないが,仮に上記を前提として
も,本件出願2の親出願である本件出願1の当初明細書には,LEDチッ
プの一部がカバー部材の下部位置より上方にはみ出している構成が開示さ
れていないから,本件出願2は,本件出願 1 の当初明細書に記載されてい
ない事項を含み,特許法44条1項の分割出願要件に違反することとなる。
25 したがって,上記アの場合と同様に,本件発明2は,特許法29条1項
3号又は同条2項の規定に反して特許されたものであるから,新規性・進
歩性を欠き,その特許は同法123条1項2号の規定により無効にされる
べきものである。
【原告の主張】
ア 本件発明2-1の構成要件Gの「同じ位置」に関するもの
5 構成要件Gの「同じ位置」とは「カバー部材の下部位置」のことである
ところ,本件出願1の当初明細書には,「支持体」及び「カバー部材」が
図示されている。そして,当該支持体とカバー部材との境界の高さが「カ
バー部材の下部位置」である以上,「同じ位置」に関する記載が存するも
のであるといえ,本件出願2について,分割出願要件違反はない。
10 イ 関するもの
被告の上記主張は失当である。構成要件Gについては,実光源がカバー
部材の下部位置と同じ位置より上方にはみ出していようがいまいが,カバ
ー部材の下部位置と同じ位置又はより低い位置において実光源が光を発し
ていればよいのであり,本件出願1の当初明細書には,この構成が記載さ
15 れている。本件出願2について,分割出願要件違反はない。
(原告の損害の額)について
【原告の主張】
ア 本件特許権1に基づくもの 3155万円
本件発明1の技術的範囲に属する被告製品の平均年間売上額は,2億6
20 290万円を下らないところ,これに,相当実施料率として4%,及び,
実施期間4.25年の一部である3年をそれぞれ乗じた額である3155
万円が,被告による本件特許権1の侵害行為により原告が被った損害額で
ある(特許法102条3項,民法709条)。
イ 本件特許権2に基づくもの 1 億2732万円
25 本件発明2の技術的範囲に属する被告製品の平均年間売上額は,2億8
935万円を下らないところ,これに,相当実施料率として各発明4%,
及び,実施期間2.75年を乗じた額である1億2732万円(本件発明
2-1ないし2-4のそれぞれにつき,各3183万円であるから,合計
額は同3183万円の4倍である1億2732万円)が,被告による本件
特許権2の侵害行為により原告が被った損害額である(特許法102条3
5 項,民法709条)。
ウ 上記ア,イを合計した損害額は,1億5887万円であるところ,原告
は,このうちの一部である1000万円を本件訴訟において請求する。ま
た,本件訴訟において要する弁護士・弁理士費用相当額は,本件事案の内
容等に照らし,上記請求額の1割である100万円を下らない。 そうす
10 ると,原告が本件訴訟において請求する損害額は,それらを合計した額で
ある1100万円となる。
【被告の主張】
いずれも否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
15 1 本件各発明について
本件各発明に係る特許請求の範囲は,前記第2の1(3)のとおりであると
ころ,本件明細書(甲3,5)には,次の記載がある。
ア 技術分野
【0001】本発明は,LED電灯装置に関するものである。
20 イ 背景技術
【0002】近年,一般家庭用の照明としてLED(Light Em
itting Diode;発光ダイオード)を用いたLED電灯装置
が普及している。この種のLED電灯装置では,従来からあるフィラメ
ント型の電球と同等に扱えるように,フィラメント型の電球と外形を同
25 様にしているものがある(以下「LED電球」という)。
【0003】このLED電球は,プラグ(支持体)にLEDを設けてあ
り,プラグにLEDを覆うように半球状の光透過性のカバー部材(ガラ
ス)を設けて構成されている。
ウ 発明が解決しようとする課題
【0006】しかし,従来のLED電球は,カバーが半球状となってい
5 るのでフィラメント型の電球と外形のみが同じになっているだけで,電
球の中で点灯するフィラメント(光源)に相当するものが見えなかった
ので,従来のフィラメント型電球と比較すると違和感があった。
【0008】本発明は,上記事情に鑑みてなされたものであり,光源と
して見える位置を現実の光源の位置と異なる位置に見えるLED電灯装
10 置の提供を目的とする。
エ 課題を解決するための手段
【0009】上記課題を解決するため,第1の発明は,光源と,光源を
支持する支持体と,支持体に取付けて光源を覆う光透過性のカバー部材
とを備え,光源はLEDであり,カバー部材は光源に対向する面が凹面
15 状の反射面になっており,カバー部材の前記反射面は,光源から受けた
光を支持体とカバー部材との間の空間に焦点を有し,光源の虚像をカバ
ー部材の内側に結像することを特徴とする。
オ 発明の効果
【0014】第1の発明によれば,光源が支持体上にあるにも拘らず,
20 光源の虚像をカバー部材と支持部材との間の空間に結像しているので,
カバー部材の外側から見ると光源があたかもカバー部材の内側空間にあ
るように見える。
カ 発明を実施するための形態
【0017】…第1実施の形態に係るLED電灯装置1は,電球型のL
25 ED電灯装置であり,図1に示すように,一端部に光源3を設けた支持
体(プラグ)5と,支持体5に取り付けて光源3を覆うカバー部材7と
から構成されている。
【0025】カバー部材7の反射面17は凹状の略半球面を成しており,
反射光が球面の半径Rの略1/2の距離fで焦点Fを結ぶようにしてあ
る。
5 【0027】…LED電灯装置1において,光源3が点灯すると,光源
3から発せられた光は,カバー部材7にあたりそのほとんどはカバー部
材7を透過して発散する。
【0028】光源3からカバー部材7に向かう光のうち,図1に示すよ
うに,一部はカバー部材7の反射面17で反射されて焦点に向かい,焦
10 点F近傍で結像して光源の虚像3Aが形成される。
【0029】本実施の形態では,光源3の虚像3aは反射面17から正
確に焦点に結像するものでなく,反射面17の焦点に多少のずれがある
ので,鮮明な輪郭でなく不鮮明にボヤーとした輪郭の虚像3Aとなる。
【0030】従って,第1実施の形態によれば,LED電灯装置1の光
15 源として見える位置を現実の光源3の位置から虚像3の位置に変えるこ
とができ,点灯したLED電灯装置1をカバー部材7の外側から見ると,
半球状のカバー部材7の内側空間に光源3があるように見える。
このような本件各発明に係る特許請求の範囲及び本件明細書の各記載によ
れば,本件各発明は,プラグ(支持体)にLEDとこれを覆う半球状の光透
20 過性のカバー部材を設けて構成されたLED電球において,従来技術におい
ては,電球の中で点灯するフィラメント(光源)に相当するものが見えなか
ったので,フィラメント型電球と比較すると違和感があったという技術的課
題が生じていたところ,これを解決するため,本件各発明の構成を採用し,
もって,LED電球の光源として見える位置を現実の光源の位置からカバー
25 部材の内部空間の位置に変えるようにして,点灯したLED電球をカバー部
材の外側から見ると,半球状のカバー部材の内側空間に光源があるように見
えるようにしたという技術的思想のものであると認められる。
以上を前提に,以下検討する。本件事案に鑑み,まず,本件特許の無効の
抗弁の成否に係る争点のうち争点 について検討する。
2 争点 (本件各発明は公然実施された発明(特許法29条1項2号)として
5 新規性を欠き無効にされるべきものか)について
前記第2の1 アのとおり,東芝ライテック株式会社は,本件出願1の出
願日(本件発明2に係る原出願日。平成21年6月25日)より前の日であ
る平成21年3月18日,LED電球である「一般電球形4.3W」(型
名:LEL-AW4L,LEL-AW4N。東芝製品)を発売した(乙11
10 の1及び2)。
そうすると,本件各発明と東芝製品の構成とを対比し,両者が同一といえ
るのであれば,本件各発明は公然実施された発明(特許法29条1項2号)
として新規性を欠き無効とされるべきこととなる。そこで,以下,本件各発
明と東芝製品の構成とを対比する。
15 本件発明1と東芝製品の構成との対比
ア 証拠(乙11の1ないし4,乙12,23の1及び2)及び弁論の全趣
旨によれば,東芝製品は,次の構成を備えることが認められる。
一般電球型のLED電球であって,口金,樹脂ケース,本体,リング,
LED基板,グローブを備えている。口金を下,グローブを上にした状
20 態のとき(以下,上下の方向については同様とする。),リングは本体
上端面の外周部分に,LED基板は本体上端面のリングの内側に,それ
ぞれ設置されており,グローブはリングにはめ込まれている。
LED基板は,略円形状で,その円の略直角に交わる2本の直径の円
周近くにLEDチップが1個ずつ合計4個配置されている。その高さ
25 (LEDチップを含む。)は,リングの高さを超えていない。
グローブ(カバー部材)は,光透過性を有する樹脂製で,中空の球体
を半分にした半球体と,その半球体と底面を共有し高さが上記半球体の
半径の2分の1弱である円錐台の側面部分とを組み合わせた形状をして
いる。また,その内側表面(LEDチップに対向する面)は凹曲面状の
反射面になっており,LEDチップからの光の一部を反射する。
5 LEDチップからの光の一部は,グローブ(カバー部材)を透過しグ
ローブ(カバー部材)の外側に発散する。
イ しかして,東芝製品の「LEDチップ」「LED基板」は本件発明1の
「LED光源」に,東芝製品の「本体」「リング」は本件発明1の「支持
体」に,東芝製品の「グローブ」は本件発明1の「カバー部材」に相当す
10 るものである。
この点,東芝製品の上記ア の構成と,本件発明1の「複数のLEDを
面状に配置したLED光源」(構成要件A)の構成との同一性については,
次のとおりである。
すなわち,「複数のLEDを面状に配置したLED光源」という文言に
15 ついては,その「面状」という文言に照らし,複数のLED(当該LED
チップの型は限定されていない。)が一定の広がりをもって配置されてい
れば足りることが読み取れるが,当該複数のLEDの間に隙間が存しない
ものに限定する旨は読み取れない。さらに,本件明細書の記載をみても,
上記のように限定することを根拠付ける記載は見当たらず,前記の本件発
20 明1の技術的思想に鑑みても,本件発明1は,複数のLEDを一定の広が
りをもって配置した光源とした構成によって,この光をカバー部材で反射
させて一定程度の範囲の部分に結像させ,LED電球の光源がカバー部材
の内部空間の位置にあるように見えるようにしたものであるといえ,当該
構成である以上,当該LEDの間に隙間が存しているか否かにかかわらず,
25 その課題解決手段として欠けるところはないというべきである。
このように,本件特許権1の特許請求の範囲の文言の一般的意義,本件
明細書の記載,本件発明1の技術的思想からすれば,本件発明1に係る構
成要件Aの「複数のLEDを面状に配置」とは,複数のLEDが一定の平
面的広がりをもって配置されている構成であれば足りるものであって,当
該複数のLEDの間に隙間が存しないものに限定されないというべきであ
5 る。しかるところ,東芝製品においても,上記ア のとおり,その略円形
状のLED基板において,その円の略直角に交わる2本の直径の円周近く
にLEDチップが1個ずつ合計4個配置されているというのであるから,
複数のLEDが一定の平面的広がりをもって配置されている構成であると
いえる。そうすると,両者は異なるものではなく,上記の点における東芝
10 製品の構成と本件発明1とは同一のものということができる。
ウ そして,このような東芝製品は,本件発明1の「複数のLEDを面状に
配置したLED光源,前記LED光源を支持する支持体,および前記支持
体に取付けて前記LED光源を覆う光透過性のカバー部材を備え,」(構
成要件A),「前記カバー部材は光源に対向する面が凹曲面状の反射面に
15 なっており,」(構成要件B),「前記カバー部材の前記反射面は,前記
LED光源から受けた光を反射するとともに,」(構成要件Cの一部),
「前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材を透過し前記カバー部
材の外側に発散するとともに,」(構成要件D),「前記LED光源から
の光の一部は前記カバー部材の反射面において反射し,」(構成要件Eの
20 一部),「LED電灯装置」(構成要件H)との各構成を備えるものであ
る。
そうすると,本件発明1は,「前記支持体と前記カバー部材との間の空
間に焦点を有することを特徴とし,」(構成要件Cの一部),「前記反射
光によって前記面状LED光源の像を前記カバー部材の内側に結像し,」
25 (構成要件Eの一部),「前記像を結像した光はさらに前記カバー部材に
入射して,当該光の一部が前記カバー部材を透過し前記カバー部材の外側
に発散することを特徴とする」(構成要件F)という各構成を備えるとこ
ろ,東芝製品が,このような構成を備えるといえるのであれば,本件発明
と東芝製品の構成が同一といえることとなるので,この点について,続け
て検討する。
5 エ この点につき,証拠(甲58,79,乙22の4,36の2)及び弁論
の全趣旨によれば,中空の球の一部である凹面鏡によってできる物体の結
像は,当該物体が焦点(当該球の半径の2分の1の位置)より遠い位置に
あるときに,当該物体から出た光線が曲面に入射して反射の法則に従って
反射され,反射された光線同士が交差することにより形成されるものであ
10 ること,これを東芝製品に当てはめると,理論上,グローブの頂点と半球
体部分の底面の中心とを通る直線を光軸として,LEDチップの光の像は,
半球体部分の底面より少し上方で結像することが認められる。
そこで,東芝製品において,実際上,LEDチップの光の像が半球体
部分の底面より少し上方で結像しているかにつき検討するに,証拠(乙
15 23の1,28の1)によれば,グローブの縦半分あるいは下部の一部
を切除した東芝製品を用いて,グローブの半球体部分の内側に,その底
面と平行にスクリーンを差し込んで上下させると,グローブの内側表面
で反射され,上記スクリーンの上面に映り込んだLEDチップからの光
が,上記スクリーンがグローブの半球体部分の上部にあるときには拡散
20 し,その底面より少し上方にあるときには収束し,それより少し底面に
近い位置にあるときに拡散していることが認められる。そうすると,L
EDチップから出た光線は,グローブの内側表面で反射された後,その
半球体部分の底面より少し上方で交差していると認められるから,LE
Dチップの結像がグローブの半球体部分の底面より少し上方に形成され
25 ているものと認められる。
この点,原告は,グローブの縦半分を切除した東芝製品では,LED
チップの光の像は,理論上の位置(グローブの半球体部分の底面より少
し上方)では結像しない旨主張するところ,甲第58号証には,これに
沿う図面(図6)がある。
しかしながら,上記図面は,LEDチップからの光がグローブの切除
5 された部分でのみ反射されることを前提にしたものであるところ,証拠
(乙47の1及び2)によれば,東芝製品において,LEDチップから
の光は,配光角が約150ないし170度であり,ほぼ均一に拡散され
て指向性もないことが認められるから,LEDチップからの光はグロー
ブの残存部分の内側表面でも反射されると考えられる。そうすると,L
10 EDチップからの光がグローブの切除された部分でのみ反射されること
を前提とする上記図面はその前提を誤ったものであるから
定は左右されない。
また,原告は,東芝製品のカバー部材の内側表面は,光を吸収,拡散
又は乱反射するため,東芝製品において結像は形成されない旨主張する。
15 しかしながら,東芝製品において,カバー部材の内側表面が,何ら凹
面鏡として働かないことを認めるに足りる証拠はない。また,グローブ
の一部を切除して半球体部分の内側を観察すると,対向する内側表面に,
LEDチップの光の像が重なって見える(甲49の写真3-2ないし3
-4,7-1・2,甲79の図1-2,2-2)ことから,LEDチッ
20 プの光の像は東芝製品において理論上結像すると考えられる位置よりも
遠くまで反射されていると認められる。そうすると,仮にLEDチップ
からの光の一部がグローブの内側表面で吸収,拡散又は乱反射されたと
しても,その程度は結像を形成することができなくなるほどのものであ
るとは認められないから,原告の上記主張は採用できない。
25 その他,原告は,LEDチップの光の像が結像ではなくグローブの内
側表面上に映り込んでいるものであることについて縷々主張立証するが,
るものはない。
以上のとおり,東芝製品においては,LEDチップの光の像は,理論
上,グローブの半球体部分の底面より少し上方で結像すると考えられる
5 ところ,実際上も,LEDチップの光の像が理論上,結像すると考えら
れる位置と概ね一致する位置で結像していると認められる。
オ 以上によれば,東芝製品は,そのグローブの半球体部分の内側表面が凹
面鏡(これは,本体上端部(LED基板)とグローブとの間の空間に焦点
を有するものである。)として働くことによって,4つのLEDチップか
10 ら出た光線が当該面に入射して反射の法則に従って反射され,反射された
光線同士が交差することにより,当該LEDチップの結像が形成され,さ
らにその光線はグローブを透過して外側に発散するという構成を有するも
のというべきである。
そうすると,このような東芝製品は,本件発明1における,「前記支持
15 体と前記カバー部材との間の空間に焦点を有することを特徴とし,」(構
成要件Cの一部),「前記反射光によって前記面状LED光源の像を前記
カバー部材の内側に結像し,」(構成要件Eの一部),「前記像を結像し
た光はさらに前記カバー部材に入射して,当該光の一部が前記カバー部材
を透過し前記カバー部材の外側に発散することを特徴とする」(構成要件
20 F)という各構成をいずれも備えているということができ,そうである以
上,これと前記説示を併せれば,本件発明1と東芝製品の構成とに異なる
ところはないといえ,両者は同一の構成のものであるというべきである。
本件発明2-1及び2-2と東芝製品の構成との対比
前記 エの説示に照らし,東芝製品は,本件発明2-1における「前記支
25 持体と前記カバー部材との間の空間に焦点を有する」(構成要件C’の一
部),「前記反射光および/またはLED光源からの光によって前記LED
光源の像を前記カバー部材の内側に結像し」(構成要件E’の一部)及び
「前記結像した光の一部または全部はさらに前記カバー部材に入射して,当
該光の一部が前記カバー部材を透過し前記カバー部材の外側に発散すること
を特徴とし」(構成要件F’)という各構成,並びに本件発明2-2におけ
5 る上記各構成に対応する部分(構成要件Iの一部)を備えているものという
ことができる。また,前記 アないしウの説示に照らし,東芝製品は,本件
発明2-1及び2-2のその余の各構成(本件発明2-1の構成要件A’,
B,C’の「前記カバー部材の前記反射面は,前記LED光源から受けた光
を反射する」の部分,D,E’の「前記LED光源からの光の一部は前記カ
10 バー部材の反射面において反射し」の部分,G及びHを含む,本件発明2-
1及び2-2のその余の全ての各構成)を備えているものということができ
る。
したがって,本件発明2-1及び2-2と東芝製品の構成とに異なる
ところはなく,両者は同一の構成のものであるというべきである。
15 本件発明2-3及び2-4と東芝製品の構成との対比
前記 エの説示に照らし,東芝製品は,本件発明2-3における「前記支
持体と前記カバー部材との間の空間に焦点を有する」(構成要件C’の一
部),「前記反射光および/またはLED光源からの光によって前記LED
光源の像を前記カバー部材の内側に結像し」(構成要件E’の一部)及び
20 「前記結像した光の一部または全部はさらに前記カバー部材に入射して,当
該光の一部が前記カバー部材を透過し前記カバー部材の外側に発散すること
を特徴とし」(構成要件F’),並びに本件発明2-4における上記各構成
に対応する部分(構成要件I’の一部)を備えているものということができ
る。また,前記 アないしウの説示に照らし,東芝製品は,本件発明2-3
25 及び2-4のその余の各構成(本件発明2-3の構成要件A’,B,C’の
「前記カバー部材の前記反射面は,前記LED光源から受けた光を反射す
る」の部分,D,E’の「前記LED光源からの光の一部は前記カバー部材
の反射面において反射し」の部分,G’及びHを含む,本件発明2-3及び
2-4のその余の全ての各構成)を備えているものということができる。
したがって,本件発明2-3及び2-4と東芝製品の構成とに異なる
5 ところはなく,両者は同一の構成のものであるというべきである。
小括
以上によれば,本件各発明と東芝製品の構成とを対比した結果,本件各発
明のいずれについても東芝製品の構成と同一といえるものであるから,本件
各発明は,いずれも東芝製品により公然実施された発明であって,特許法2
10 9条1項2号の規定に反して特許されたものであると認められる。
したがって,本件各発明に係る特許はいずれも同法123条1項2号の規
定により無効にされるべきものである。
3 結論
よって,特許法104条の3第1項の規定により,原告は,被告らに対し,
15 本件特許権を行使することができない以上,原告の本件請求は,その余の争点
について判断するまでもなく全て理由がないからいずれも棄却することとして,
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 田 中 孝 一
裁判官 横 山 真 通
裁判官本井修平は,てん補につき,署名押印できない。
裁判長裁判官 田 中 孝 一

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