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平成29(ワ)18010特許権侵害差止請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和2年12月18日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社アイペックス
被告イッツ・コミュニケーションズ株式会社
対象物 通信回線を用いた情報供給システム
法令 特許権
特許法102条3項7回
特許法29条2項5回
特許法29条1項3号4回
特許法39条2項4回
特許法100条1項1回
特許法100条2項1回
特許法102条1回
特許法29条1項2号1回
特許法44条2項1回
特許法36条4項1号1回
特許法36条6項1号1回
特許法39条1回
特許法1条1回
キーワード 無効127回
実施79回
分割51回
進歩性38回
ライセンス26回
特許権24回
新規性23回
許諾19回
差止16回
無効審判12回
侵害12回
損害賠償5回
主文 1 被告は,別紙物件目録(2)記載の「インテリジェントホームシステム」と称
2 被告は,原告に対し,811万8606円及びこれに対する平成30年10月
16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用はこれを20分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担と
5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。5
事件の概要 1 事案の概要 本件は,発明の名称を「通信回線を用いた情報供給システム」とする特許権(特 許第3701962号。以下,「本件特許権1」といい,この特許を「本件特許1」 といい,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書1」と いう。)及び発明の名称を「通信回線を用いた情報供給システム」とする特許権25 (特許第3701963号。以下,「本件特許権2」といい,この特許を「本件特 許2」といい,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書 2」という。本件特許1及び本件特許2を「本件各特許」といい,本件明細書1 及び本件明細書2を「本件明細書」と総称することがある。)の特許権者である原 告が,被告の提供する情報供給システムは本件特許1の請求項1及び2並びに本 件特許2の請求項1の発明の技術的範囲に属するものであると主張して,被告に5 対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告システムの構築等の差止め及 び被告システムに用いる機器並びにデータの廃棄等を求めるとともに,民法70 9条に基づき,損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。

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判決文

令和2年12月18日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

平成29年(ワ)第18010号 特許権侵害差止請求事件

口頭弁論終結日 令和2年10月6日

判 決

原 告 株 式 会 社 ア イ ペ ッ ク ス

上記訴訟代理人弁護士 宍 戸 充

上記訴訟代理人弁理士 堅 田 多 恵 子

同 林 道 広

上 記 補 佐 人 弁 理 士 重 信 和 男

同 林 修 身

同 大 久 保 岳 彦

被 告 イッツ・コミュニケーションズ株式会社

上記訴訟代理人弁護士 ? 田 和 彦

同 高 石 秀 樹

同 外 村 玲 子

上記訴訟代理人弁理士 須 田 洋 之

上 記 補 佐 人 弁 理 士 山 崎 貴 明

主 文

1 被告は,別紙物件目録(2)記載の「インテリジェントホームシステム」と称

する情報供給システムを構築し,使用し,譲渡し,輸出し,または貸し渡し,又

は譲渡及び貸し渡しの申出をしてはならない。

2 被告は,原告に対し,811万8606円及びこれに対する平成30年10月

16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

4 訴訟費用はこれを20分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担と

する。

5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 被告は,別紙物件目録(1)記載の「インテリジェントホームシステム」と称する情報供給システムを構築し,使用し,譲渡し,輸出し,または貸し渡し,又は譲渡及び貸し渡しの申出をしてはならない。2 被告は,別紙物件目録(1)記載の「インテリジェントホームシステム」と称する情報供給システムに用いるインテリジェントホームゲートウェイを廃棄せよ。3 被告は,別紙物件目録(1)記載の「インテリジェントホームシステム」と称する情報供給システムにおいて「インテリジェントホーム」と称するサービスを提供するためのサーバーのソフトウェア及びデータを消去せよ。4 被告は,原告に対し,6億6000万円及びこれに対する平成30年10月16日(平成30年10月12日付け訴えの変更申立書送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等

1 事案の概要本件は,発明の名称を「通信回線を用いた情報供給システム」とする特許権(特許第3701962号。以下,「本件特許権1」といい,この特許を「本件特許1」といい,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書1」という。)及び発明の名称を「通信回線を用いた情報供給システム」とする特許権(特許第3701963号。以下,「本件特許権2」といい,この特許を「本件特許2」といい,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書2」という。本件特許1及び本件特許2を「本件各特許」といい,本件明細書1及び本件明細書2を「本件明細書」と総称することがある。 の特許権者である原)告が,被告の提供する情報供給システムは本件特許1の請求項1及び2並びに本件特許2の請求項1の発明の技術的範囲に属するものであると主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告システムの構築等の差止め及び被告システムに用いる機器並びにデータの廃棄等を求めるとともに,民法709条に基づき,損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)原告は,電気通信事業法に基づく一般第二種電気通信事業,電気通信機器及びコンピューターシステムの販売並びに賃貸等を営業目的とする株式会社である。(甲1)被告は,放送法による一般放送事業,電気通信事業法による電気通信事業,情報システムに関するサービス提供,開発及びコンサルティング事業等を目的とする株式会社であり,ケーブルテレビ事業,インターネット接続事業,電話事業等を展開している。原告は,以下の本件特許権1及び本件特許権2を有している。ア 本件特許権1(甲3-2,4)特許番号 第3701962号原出願日 平成13年6月22日(特願2003-419617号の分割)出願日 平成17年2月15日(特願2005-37078号)公開日 平成17年7月28日(特開2005-204327号)登録日 平成17年7月22日発明の名称 通信回線を用いた情報供給システムイ 本件特許権2(甲5-2,6)特許番号 第3701963号原出願日 平成13年6月22日(特願2003-419617号の分割)出願日 平成17年2月15日(特願2005-37081号)公開日 平成17年8月18日(特開2005-223932号)登録日 平成17年7月22日発明の名称 通信回線を用いた情報供給システム本件特許権1の請求項1に記載された発明ア 本件特許1の請求項1の記載は以下のとおりである(以下,同請求項に記載された発明を「本件発明1(1)」という。。)「インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置されている管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって,前記管理コンピュータ側には,監視目的に応じて適宜選択される監視手段を有する監視端末側に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベースを備え,前記監視端末側は前記管理コンピュータ側と前記通信回線網を介して接続可能とされており,前記管理コンピュータ側は,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号,ID番号,アドレスデータ,パスワード,さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つからなる利用者IDである特定情報を入手する手段と,この入手した特定情報が,前記利用者データベースに予め登録された監視端末情報に対応するか否かの検索を行う手段と,前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけていく手段と,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末側によって得られた情報を入手する手段と,この監視端末側から入手した情報を,インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスした利用者に供給する手段と,特定できる監視端末側から前記管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して接続する接続処理を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段と,を備えていることを特徴とする通信回線を用いた情報供給システム。」イ 本件発明1(1)を構成要件に分説すると,以下のとおりである(以下,分説された各構成を「構成要件1(1)A」又は「1(1)A」などと表記することがある。。)1(1)A インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置されている管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって,1(1)B 前記管理コンピュータ側には,監視目的に応じて適宜選択される監視手段を有する監視端末側に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベースを備え,1(1)C 前記監視端末側は前記管理コンピュータ側と前記通信回線網を介して接続可能とされており,1(1)D 前記管理コンピュータ側は,i インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号,ID番号,アドレスデータ,パスワード,さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つからなる利用者IDである特定情報を入手する手段と,ⅱ この入手した特定情報が,前記利用者データベースに予め登録された監視端末情報に対応するか否かの検索を行う手段と,ⅲ 前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけていく手段と,ⅳ インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末側によって得られた情報を入手する手段と,ⅴ この監視端末側から入手した情報を,インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスした利用者に供給する手段と,ⅵ 特定できる監視端末側から前記管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して接続する接続処理を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段と,を備えている1(1)E ことを特徴とする通信回線を用いた情報供給システム。本件特許権1の請求項2に記載された発明ア 本件特許1の請求項2の記載は以下のとおりである(以下,同請求項に記載された発明を「本件発明1(2)」という。。)「前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,前記管理コンピュータ側がインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけ,前記管理コンピュータが,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末側によって得られた情報を入手するステップ時,監視端末側に接続不能な状態,若しくは監視端末側からの情報が前記管理コンピュータ側に送信されてこない状態が,前記管理コンピュータ側で確認された時に,所定の異常通知をアクセスした利用者に送信できるようになっている請求項1に記載の通信回線を用いた情報供給システム。」イ 本件発明1(2)を構成要件に分説すると,以下のとおりである。1(2)A 前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,前記管理コンピュータ側がインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけ,前記管理コンピュータが,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末側によって得られた情報を入手するステップ時,1(2)B 監視端末側に接続不能な状態,若しくは監視端末側からの情報が前記管理コンピュータ側に送信されてこない状態が,前記管理コンピュータ側で確認された時に,所定の異常通知をアクセスした利用者に送信できるようになっている1(2)C 請求項1に記載の通信回線を用いた情報供給システム。本件特許権2に記載された発明ア 本件特許2の請求項1の記載は以下のとおりである(以下,同請求項に記載された発明を「本件発明2」といい,本件発明1(1)及び同1(2)並びに本件発明2を「本件各発明」と総称する。。)「インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置されている管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって,前記管理コンピュータ側には,監視目的に応じて適宜選択される監視手段を有する監視端末側に対して付与されたIPアドレスおよび監視端末IDを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベースを備え,前記監視端末は前記管理コンピュータ側と前記通信回線網を介して接続可能とされており,前記管理コンピュータ側は,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号,ID番号,アドレスデータ,パスワード,さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つからなる利用者IDである特定情報を入手する手段と,この入手した特定情報が,前記利用者データベースに予め登録された監視端末情報に対応するか否かの検索を行う手段と,前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけていく手段と,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末によって得られた情報を入手する手段と,この監視端末から入手した情報を,インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスした利用者に供給する手段と,管理コンピュータ側と監視端末側との回線再接続時,特定できる監視端末側からのIPアドレス登録要求を受け付け,前記利用者データベースの前記監視端末情報であるIPアドレスを登録処理する手段と,を備え,前記監視端末側は,内部にメモリーされた管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理する自己接続機能と,前記自己接続機能を使って,登録された前記監視端末IDを管理コンピュータ側に送り,前記監視端末側のIPアドレスを登録するように要求する手段と,を備えていることを特徴とする通信回線を用いた情報供給システム。」イ 本件発明2を構成要件に分説すると,以下のとおりである。2A インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置されている管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって,2B 前記管理コンピュータ側には,監視目的に応じて適宜選択される監視手段を有する監視端末側に対して付与されたIPアドレスおよび監視端末IDを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベースを備え,2C 前記監視端末は前記管理コンピュータ側と前記通信回線網を介して接続可能とされており,2D 前記管理コンピュータ側は,ⅰ インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号,ID番号,アドレスデータ,パスワード,さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つからなる利用者IDである特定情報を入手する手段と,ⅱ この入手した特定情報が,前記利用者データベースに予め登録された監視端末情報に対応するか否かの検索を行う手段と,ⅲ 前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけていく手段と,ⅳ インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末によって得られた情報を入手する手段と,ⅴ この監視端末から入手した情報を,インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスした利用者に供給する手段と,ⅵ 管理コンピュ-タ側と監視端末側との回線再接続時,特定できる監視端末側からのIPアドレス登録要求を受け付け,前記利用者データベースの前記監視端末情報であるIPアドレスを登録処理する手段と,を備え,2E 前記監視端末側は,ⅰ 内部にメモリーされた管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理する自己接続機能と,ⅱ 前記自己接続機能を使って,登録された前記監視端末IDを管理コンピュータ側に送り,前記監視端末側のIPアドレスを登録するように要求する手段と,2F を備えていることを特徴とする通信回線を用いた情報供給システム。被告は,平成27年2月頃から,インテリジェントホームゲートウェイ及びサーバーと,各種のデバイスのうち利用者が選択したデバイスを組み合わせた情報供給システムを用いて「インテリジェントホーム」と称するサービスを業として提供している(以下,上記の情報供給システムを「被告システム」という。。利用者が選択できるデバイスには,ドア・窓センサー,広域モーション)センサー,狭域モーションセンサー(以下,これらのセンサーを「各種センサー」と総称することがある。,スマートロック,スマートライト,家電コント)ローラー,IPカメラ等)があり,被告システムを利用する際は,インテリジェントホームゲートウェイを必ず使用する必要があるが,上記の各デバイスは利用者の選択により,その種類及び数を自由に組み合わせることができる。(甲7ないし12)被告システム(ただし,家電コントローラーを使用するものを除く。 の概要)は別紙「被告システムの説明図」のとおりであり,その具体的な内容は以下のとおりである。ア デバイスの種類,内容(甲7ないし11)ドア・窓センサーは,窓や扉に設置し,それらの開・閉を感知して,それを知らせるものである。モーションセンサー(広域・狭域)は,人体から発する赤外線を感知して人の動きを知らせるものである。スマートロックは,玄関ドアに取り付けることで,オートロックにすることや暗証番号の入力等により解錠することを可能にするとともに,外出先からスマートフォンやタブレット端末を用いて玄関の鍵の施錠状態を確認して外出先から解錠,施錠を可能とするものである。スマートライトは,外出先から,スマートフォンやタブレット端末を用いて遠隔操作により点灯や消灯,調光ができる照明器具(LED電球)である。IPカメラは,カメラと赤外線LEDを一体化した監視カメラであり,ドア・窓センサーやモーションセンサーと連動して映像を記録したり,中継されたリアルタイムに近い映像をスマートフォンやタブレット端末に送信することにより,外出先から留守中の自宅内の監視と記録を可能にしたりするものである。家電コントローラーは,外出先から,スマートフォンやタブレット等を用いてエアコンや照明のコントロールを可能とするものである。イ ログイン時の操作及びその後に表示される画面(甲10,11)利用者は,スマートフォンやタブレット端末から,アプリケーションやパソコンのブラウザを利用して外出先から被告システムを使用できる。アプリケーションを起動したりアドレスを入力してブラウザを開いたりすると,会員専用のログイン画面が表示され,その画面を利用して,あらかじめ登録しているユーザ名・パスワードを入力してログインする。以下の記載は,アプリケーションを起動した場合の説明であるが,パソコンのブラウザを利用した場合も,基本的な動作は同じである。ログインをすると,メインページが表示される。メインページは,タイトルバー,カメラ画像,機能ボタン,ページフッターから構成されている。設置されているデバイスの種類や環境等により,表示される機能ボタンは異なる。カメラ画像は,その時点でのIPカメラの画像が一定時間で更新される静止画で表示される。その静止画をタップすると,メインページがカメラ専用画面に切り替わる。そこでは,現在の映像を動画で参照したり,写真やビデオを撮影したりすることができる。機能ボタンは,デバイスの機能を設定したり現在の状態を参照したりすることができるものである。機能ボタンの詳細は,以下のとおりである。「モーションセンサー」のボタン(アイコン)は,モーションセンサーの状態が表示され,人の動きを検知するとアイコンの色が変化する。ボタン右側に配置される白丸が右側にスライドされている場合はセンサーが有効な状態,左側にスライドされている場合はセンサーが無効な状態であり,このスライドの操作により有効/無効を切り替えられる。この部分をタップすることで,温度,バッテリーレベル(残量),信号強度(電波)の情報が数秒間表示される。「ドア・窓センサー」のボタン(アイコン)は,ドアや窓に設置されているドア・窓センサーの状態が表示され,ドアや窓が開いていると,全体の色が赤く変化して,ドアのアイコンも開いた状態になり,「開」の文字が表示される。モーションセンサーと同様に,ボタン右側に配置されたスライドの操作により有効/無効を切り替えられ,このスライド部分をタップすることで温度,バッテリーレベル(残量),信号強度(電波)の情報が数秒間表示される。「センサー」のボタン(アイコン)をタップすると,モーションセンサーやドア・窓センサーを一覧表示することができ,それぞれのセンサーの右側に配置されたスライドの操作により有効/無効を切り替えられる。無効化すると,そのセンサーを指定しているルールは機能しなくなる。「スマートロック」のボタン(アイコン)は,現在の施錠,解錠の状態を示している。施錠状態にある場合には,黄色の南京錠のアイコンがかんぬきが閉じられた状態で表示され,そのアイコンをタップすると解錠の動作が始まり,南京錠のアイコンの表示が解錠中であることを示すアニメーションに変化し,解錠されると,赤色の南京錠のアイコンがかんぬきが開いた状態で表示される。この状態で,赤色の南京錠のアイコンをタップすると,施錠の動作が始まる。「スマートライト」のボタン(アイコン)は,現在の照明の状態を示している。点灯していると,電球のアイコンの色が黄色に変化し,何パーセントの明るさで点灯しているのか,どのくらい電力消費をしているのか(ワット数)を確認することができる。電球のアイコン付近をタップすると照明のON/OFFを直接遠隔操作することができる。電球のアイコンの右側に配置されたボタンをタップすると詳細設定画面に切り替わり,調光可能なスマートライトの場合には,スライド操作により明るさを調整できる。「家電コントローラー」のボタン(アイコン)は,それをタップするとエアコンのON/OFF,冷暖房温度設定,照明の点灯や消灯を操作する画面が表示される。ウ ルールの設定(甲10,11)被告システムでは,センサーやデバイスを組み合わせることで,各種条件に応じて機器を連携,連動する様々なルールを作ることができる。ルールの作成に際しては,どのセンサーが,どのような検知をしたときに,何をさせたいのかという指定をする。ルールを一時的に動作させたくない場合には,そのルールを無効にすることができる。無効にしたルールは,後から有効に戻すことができる。被告システムにログインし,ライブ映像をパソコンの画面に表示した状態で,IPカメラの電源をOFFにした場合,約15秒間はIPカメラの電源をOFFにした時点における画像が画面に表示され,約15秒後に上記画像とともに「Connecting to cameras」という文字が表示され,約20秒後に上記画像が消えて「Connecting to cameras」という文字だけが表示され,約26秒後に「This system isunable to establish camera connections.Please try again in a few minutes.If the problem persists,ensurethe camera is within range of yourHub.」という文字だけが表示され,約37秒後に上記の文字の表示に加えてIPカメラがオフラインになった旨の表示がされた。また,被告システムにログインして,ライブ映像をパソコンの画面に表示した状態で,インテリジェントホームウェイとルータの間のLANケーブルを切断した場合,約14秒間は切断した時点における画像が画面に表示され,約14秒後に上記画像とともに「Connecting to cameras」という文字が表示され,約17秒後に上記画像が消えて「Connecting to cameras」という文字だけが表示され,約28秒後に「This system is unable to establish camera connections.Please try againin a few minutes.If the problem persists,ensure the camera is within range of your Hub.」という文字だけが表示された。(以上につき,甲18)スマートロックや各種センサーを使用している際に通信障害が発生した場合には,メインページに,「トラブル」の機能ボタンが表示され,そのボタンをタップすると,エラーメッセージとして通信障害である旨が表示される。(甲10・47ないし48頁,甲11・41ないし42頁)インテリジェントホームゲートウェイの電源をON状態からOFF状態にした後,再びON状態にすると,約177秒後にゲートウェイとインターネットが接続されたことを示すコネクションランプが全て点灯し,その後に被告システムにログインをすると,ホーム画面が表示され,被告システムを再び利用できるようになった。(甲19)被告システムの構成は,以下に記載した構成の限度では,当事者間に争いがないか, から認定できる(なお,以下の構成における丸囲みの数字は別紙「被告システムの説明図」の丸囲みの数字に対応するものである。。)ア 本件発明1(1)に対応する被告システムの構成(以下,各構成を「構成1(1)a」などと表記することがある。。)1(1)a インターネット⑤を用いた通信回線網の中に設置されているサーバー⑥における通信回線を用いた情報供給システムであって,1(1)b サーバー⑥においては,IPカメラ④,家電コントローラー,ドア・窓センサー,広域モーションセンサー,狭域モーションセンサー,スマートロック,スマートライトの全部又は一部と通信するインテリジェントホームゲートウェイ③側に対して付与されたグローバルIPアドレスと監視端末情報(インテリジェントホームゲートウェイ③の機器ID等)とが,ユーザID(ユーザ名,パスワード)に対応付けられており,1(1)c 宅内に配置されたインテリジェントホームゲートウェイ③は,ケーブルモデム①,ルータ②を経由して,サーバー⑥と通信回線網を介して接続可能とされており,1(1)dⅰ ユーザは予め登録されたユーザ名 パスワードを入力してログインす・るとともに,ユーザ名・パスワードの入力ミスがあるとログインできなくなっており,ⅱ ユーザ名・パスワードに対応する場所(ユーザ宅)の画像や情報のみがユーザに配信されるようになっており,ⅲ ユーザがグローバルIPアドレスを意識することなく使用できるものであり,ⅳ サーバー⑥においてインテリジェントホームゲートウェイ③側に付与されている最新のグローバルIPアドレスが認識されており,ⅴ メインページの静止画像部分をクリックする(リアルタイム画像を要求する)と,サーバー⑥を経由してリアルタイムに近いライブ映像がPCの画面に表示される。また,メインページの機能ボタンにおいて,以下のような画面が表示され,利用者が一定の遠隔操作をすることができる。モーションセンサーにおいては,人の動きを検知した場合に反応してアイコンの色を変化させ,センサーにおける温度,バッテリーレベルの残量,電波の信号強度が表示され,利用者はセンサーの有効/無効を切り替えることができる。

⒝ ドア・窓センサーにおいては,ドアや窓の開閉状態や,センサーにおける温度,バッテリーレベルの残量,電波の信号強度が表示され,利用者はセンサーの有効/無効を切り替えることができる。

⒞ スマートロックにおいては,現在の施錠/解錠の状態が画面に表示され,利用者が施錠/解錠の遠隔操作をすることができる。

⒟ スマートライトにおいては,現在の照明の状態(明るさ,消費電力)が画面に表示され,利用者は照明のON/OFFや,その明るさの調整についての遠隔操作をすることができる。

⒠ 家電コントローラーにおいてはエアコンのON/OFF,冷暖房温度設定,照明の点灯・消灯を操作するための画面が表示され,利用者がそれらについての遠隔操作をすることができる。ⅵ 前記の1(1)dⅰないしⅴとは別に,インテリジェントホームゲートウェイ③の電源をOFFからONにして,しばらくした後,前述の会員専用のポータルサイトにログインし被告のサービスを利用することができる。1(1)e 以上の構成を備えている情報供給システム。イ 本件発明1(2)に対応する被告システムの構成1(2)a ユーザは予め登録されたユーザ名・パスワードを入力してログインすると,ユーザ名・パスワードに対応する場所(ユーザ宅)の画像や情報のみがユーザに配信され,PCの画面に表示される。また,メインページの機能ボタンを操作することで,家電コントローラーにおいてはエアコンのON/OFF,冷暖房温度設定,照明の点灯・消灯を操作するための画面が表示され,スマートロックにおいては現在の施錠/解錠の状態が画面に表示され,スマートライトにおいては現在の照明の状態が画面に表示され,モーションセンサーにおいては人の動きを検知した場合に反応するとともにセンサーの温度,バッテリーレベルの残量,電波の信号強度が表示され,玄関・ドアセンサーにおいては開閉状態やセンサーの温度,バッテリーレベルの残量,電波の信号強度が表示される。1(2)b ユーザがPCを用いてIPカメラ④のライブ映像を視聴中にインテリジェントホームゲートウェイ③と宅内のケーブルモデム①との接続が切断されると,当該画面からライブ映像が消え画面の表示が変わる。また,スマートロック,各種センサーについても,通信障害が発生した場合には,その旨のアラートが表示される。1(2)c 以上の構成に加え,前記アの構成を備えている情報供給システム。ウ 本件発明2に対応する被告システムの構成2a インターネット⑤を用いた通信回線網の中に設置されているサーバー⑥における通信回線を用いた情報供給システムであって,2b サーバー⑥においては,IPカメラ④,家電コントローラー,ドア・窓センサー,広域モーションセンサー,狭域モーションセンサー,スマートロック,スマートライトの全部又は一部と通信するインテリジェントホームゲートウェイ③側に対して付与されたグローバルIPアドレスと監視端末情報(インテリジェントホームゲートウェイ③の機器ID等)とが,ユーザID(ユーザ名,パスワード)に対応付けられており,2c 宅内に配置されたインテリジェントホームゲートウェイ③は,ケーブルモデム①,ルータ②を経由して,サーバー⑥と通信回線網を介して接続可能とされており,2dⅰ ユーザは予め登録されたユーザ名・パスワードを入力してログインするとともに,ユーザ名・パスワードの入力ミスがあるとログインできなくなっており,ⅱ ユーザ名・パスワードに対応する場所(ユーザ宅)の画像や情報のみがユーザに配信されるようになっており,ⅲ ユーザがグローバルIPアドレスを意識することなく使用できるものであり,ⅳ サーバー⑥においてインテリジェントホームゲートウェイ③側に付与されている最新のグローバルIPアドレスが認識されており,ⅴ メインページの静止画像部分をクリックする(リアルタイム画像を要求する)と,サーバー⑥を経由してリアルタイムに近いライブ映像がPCの画面に表示される。また,メインページの機能ボタンにおいて,以下のような画面が表示され,利用者が一定の遠隔操作をすることができる。モーションセンサーにおいては,人の動きを検知した場合に反応してアイコンの色を変化させ,センサーにおける温度,バッテリーレベルの残量,電波の信号強度が表示され,利用者はセンサーの有効/無効を切り替えることができる。

⒝ ドア・窓センサーにおいては,ドアや窓の開閉状態や,センサーにおける温度,バッテリーレベルの残量,電波の信号強度が表示され,利用者はセンサーの有効/無効を切り替えることができる。

⒞ スマートロックにおいては,現在の施錠/解錠の状態が画面に表示され,利用者が施錠/解錠の遠隔操作をすることができる。

⒟ スマートライトにおいては,現在の照明の状態(明るさ,消費電力)が画面に表示され,利用者は照明のON/OFFや,その明るさの調整についての遠隔操作をすることができる。

⒠ 家電コントローラーにおいてはエアコンのON/OFF,冷暖房温度設定,照明の点灯・消灯を操作するための画面が表示され,利用者がそれらについての遠隔操作をすることができる。ⅵ 前記の2dⅰないしⅴとは別に,インテリジェントホームゲートウェイ③の電源をOFFからONにして,しばらくした後,前述の会員専用のポータルサイトにログインし被告のサービスを利用することができる。2e インテリジェントホームゲートウェイ③の電源をOFFからONにした後,前述の会員専用のポータルサイトにログインし,被告のサービスを利用することができるようになっている。2f 以上の構成を備えている情報供給システム。被告システムは,監視デバイスの種類にかかわらず,構成要件1(1)A,1(1)C,1(1)Dⅰ,1(1)E,1(2)B,2A,2C,2Dⅰ,2Fを充足する。(争いがない )また,IPカメラを使用した被告システムは,上記に加え,構成要件1(1)Dⅲないしⅴ,1(2)A,2Dⅲないしⅴを充足する。(争いがない事実,前3 争点被告システムが本件各発明の技術的範囲に属するか否か(争点1)ア 被告システム(全てのデバイスについて)の充足性(争点1-1)「IPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベース」(構成要件1(1)B及びDⅱ,2B及びDⅱ)の充足性(争点1-1-1)「接続処理を受け付け…IPアドレスを変更処理する手段」(構成要件1(1)Dⅵ)「IPアドレス登録要求を受け付け…IPアドレスを登録,処理する手段」(構成要件2Dⅵ)「自己接続機能と…IPアドレスを登,録するように要求する手段」(構成要件2E)の充足性(争点1-1-2)イ 各種センサーを使用した被告システムの「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段と…監視端末(側)から入手した情報を…利用者に供給する手段」(構成要件1

(1)Dⅲないしⅴ,1(2)A,2Dⅲないしⅴ)の充足性(争点1-2)ウ スマートロック・スマートライトを使用した被告システムの充足性(争点1-3)「監視目的に応じて適宜選択される監視手段」(構成要件1(1)B,2B)「監視端末(側)によって得られた情報」, 「監視端末(側)から入手した情報」(構成要件1(1)Dⅳ及びⅴ,2Dⅳ及びⅴ)の充足性(争点1-3-1)「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段と…監視端末(側)から入手した情報を…利用者に供給する手段」(構成要件1(1)Dⅲないしⅴ, (2)1 A,2Dⅲないしⅴ)の充足性(争点1-3-2)エ 家電コントローラーを使用した被告システムの充足性(争点1-4)「監視目的に応じて適宜選択される監視手段」(構成要件1(1)B,2B)「監視端末(側)によって得られた情報」, 「監視端末(側)から入手した情報」(構成要件1(1)Dⅳ及びⅴ,2Dⅳ及びⅴ)の充足性(争点1-4-1)「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段と…監視端末(側)から入手した情報を…利用者に供給する手段」(構成要件1(1)Dⅲないしⅴ, (2)1 A,2Dⅲないしⅴ)の充足性(争点1-4-2)本件発明1(1)に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点2)ア 無効理由1(国際公開第00/36807号(乙10。以下「乙10国際公開」という。)を主引例とする新規性・進歩性欠如)(争点2-1)イ 無効理由2(特願2002-505473号(乙12。 「乙12公報」以下という。)とのダブルパテント)(争点2-2)ウ 無効理由3(分割出願要件違反に基づく進歩性欠如)(争点2-3)エ 無効理由4(親出願の分割出願要件違反に基づく進歩性欠如)(争点2-4)オ 無効理由5(サポート要件違反)(争点2-5)カ 無効理由6(実施可能要件違反)(争点2-6)本件発明1(2)に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点3)ア 無効理由1(乙10国際公開を主引例とする新規性・進歩性欠如)(争点3-1)イ 無効理由2(分割出願要件違反に基づく進歩性欠如)(争点3-2)ウ 無効理由3(親出願の分割出願要件違反に基づく進歩性欠如)(争点3-3)エ 無効理由4(サポート要件違反)(争点3-4)オ 無効理由5(実施可能要件違反)(争点3-5)本件発明2に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点4)ア 無効理由1(乙10国際公開を主引例とする新規性・進歩性欠如)(争点4-1)イ 無効理由2(親出願の分割出願要件違反に基づく新規性・進歩性欠如)(争点4-2)ウ 無効理由3(サポート要件違反)(争点4-3)エ 無効理由4(実施可能要件違反)(争点4-4)損害発生の有無及びその額(争点5)原告の被告に対する差止等請求が権利濫用であるか(争点6)4 争点に関する当事者の主張被告システムが本件各発明の技術的範囲に属するか否か(争点1)ア 被告システム(全てのデバイスについて)の充足性(争点1-1)「IPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベース」(構成要件1(1)B及びDⅱ,2B及びDⅱ)の充足性(争点1-1-1)(原告の主張)「データベース」には,大量のデータを統一的に管理したファイルを管理するシステムも含まれる。また,本件各発明の構成要件における「利用者IDに対応付けられて登録」「予め登録」「登録されている…IPアド, ,レスを変更処理」との記載からすれば,「登録」において,記憶の追加,変更,抹消がされることが予定されている。IPアドレスが適宜割り当てられるような場合にIPアドレスが無期限に記憶されることはない。これらによれば,本件各発明において「データベース」に「登録」するということは,データベースに情報が一時的に記憶されることを意味する。被告システムは,被告の主張によっても,管理コンピュータの記憶部には「利用者ID」のみが登録され,監視端末側に対して付与されたIPアドレスは常時記憶部とは別の一時記憶(揮発性メモリー)に一時記憶されているところ,そのような被告システムにおいては,「利用者ID」と対応する相手方のIPアドレスとが統一的に管理されているといえ,監視端末に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が「利用者データベース」に「登録」されているといえる。被告が主張する構成である,被告システムにおいて常時接続が切断すると,IPアドレスのやり取りが途絶え,IPアドレスを揮発性メモリーに記憶した時点から一定時間経過後に,IPアドレスが自動的に消去されるという構成は,被告のユーザが被告システムからログオフした後,改めてログインしてもユーザ宅を監視することができる被告サービスとは合致しない。もっとも,被告が主張する上記構成を前提としても,常時接続が切断された状態となる前の状態(すなわち,常時接続の状態)では,揮発性メモリーにIPアドレスが記憶されている状態が継続していることになり,このときにサーバーから揮発性メモリーにアクセスすることでIPアドレスを取得できるのであるから,揮発性メモリーに一時的に記憶されているIPアドレスはデータベースの一部を構成するものであるといえる。(被告の主張)データベースとは,「系統的に整理・管理された情報の集まり。特にコンピュータで,様々な情報検索に高速に対応できるように大量のデータを統一的に管理したファイル。また,そのファイルを管理するシステム。 を意」味するから,構成要件1Bの「利用者データベース」は,大量の「監視端末に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報」のデータと大量の「利用者ID」のデータとが対応付けられて登録されている統一的に管理したファイルを意味する。どちらか一方の情報が不揮発性メモリーに常時記憶され,他方の情報が一定時間の経過により消去される揮発性メモリーに一時記憶されるという記憶態様を有するものについては,統一的に管理したファイルを観念できないから,構成要件1Bの「データベース」とはいえない。登録とは,「帳簿にしるしのせること」という意味である。また,構成要件1Bは,データベースにIPアドレス及び利用者IDが登録されることを定めるところ,この場合の「登録」とはIPアドレス及び利用者IDで同じ意味を有するものと解される。そして,利用者IDが「登録」されるとは,不揮発性メモリーに常時記憶されることを意味することが明らかであるから,IPアドレスの「登録」も,不揮発性メモリーに常時記憶されることを意味する。実質的にも,本件各発明の目的は,常時接続回線を利用しているにも関わらず,特定者以外の第三者が監視端末より監視情報を入手することを極めて困難にすること(第1の目的),登録された利用者には,極めて迅速に必要な監視情報を供給できるようにした通信回線を用いた情報供給システムを提供すること(第2の目的)であるところ,データベースに登録された情報が一定時間経過後に自動的に消えてしまうと,一定時間の経過により情報が欠落することになってしまい,上記の目的を達成することができない。また,本件各発明は,再接続時の認証方法として,管理コンピュータ側の利用者データベースに登録されている古いIPアドレスを利用できる発明であるところ,IPアドレスが一定時間経過後に自動的に消えてしまう構成では,再接続時に古いIPアドレスを認証のために利用することができなくなってしまう。これらによれば,構成要件1Bの「登録」には,揮発性メモリーに一時的に記憶され,一定時間経過により消去される記憶態様は含まれない。被告システムの管理コンピュータ側の記憶部には「監視端末に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報」のデータと,「利用者ID」のデータとが対応付けられて登録されている統一的に管理したファイルは存在しない。上記の記憶部には利用者IDのみが登録されており,監視端末側に対して付与されたグローバルIPアドレスは常時記憶部とは別の揮発性メモリーに一時記憶されているにすぎず,常時接続が切断したときはそのIPアドレスは消去される。したがって,被告システムは,構成要件1(1)Bの「利用者データベース」及び「登録」を充足しない。「接続処理を受け付け…IPアドレスを変更処理する手段」(構成要件1(1)Dⅵ)「IPアドレス登録要求を受け付け…IPアドレスを登録,処理する手段」(構成要件2Dⅵ)「自己接続機能と…IPアドレスを登,録するように要求する手段」(構成要件2E)の充足性(争点1-1-2)(原告の主張)構成要件1(1)Dⅳの「IPアドレスを変更処理する手段」とは,その時点からインターネット通信に利用する監視端末側のIPアドレスを最新のものに変えるという意味であり,帳簿の記載事項を書き直すという意味ではない。IPアドレスを最新のものに変える仕組みになっていれば変更の対象となるデータがデータベース上に存在している必要はない。被告システムは,IPアドレスが変更される場合でもIPアドレスを意識することなく使用できるのであるから,サーバーがインテリジェントホームゲートウェイ側のIPアドレスを最新のものに変えていることは明らかである。仮に,被告が主張するように,被告システムにおいてサーバーとインテリジェントホームゲートウェイとの接続が切断された後に一時記憶しているIPアドレスが消去されていたとしても,その後,登録されている利用者は被告のサービスを引き続き利用することができるのであるから,サーバーは,サーバーの記憶部に登録されている利用者IDに対応させて最新のIPアドレスを一時記憶している状態になっているといえる。このように,消去される前の古いIPアドレスを用いていた状態から最新のIPアドレスを用いる状態に変化する一連の動作は,IPアドレスの「変更処理」であるといえるから,被告システムは「IPアドレスを変更処理する手段」を有している。また,被告システムにおいて,サーバー側とインテリジェントホームゲートウェイ側との回線再接続時に,インテリジェントホームゲートウェイ側からサーバー側に接続されたことで,サーバー側は最新のIPアドレスを登録して利用しているといえるから,被告システムは「接続処理を受け付け…IPアドレスを変更処理する手段」(構成要件1(1)Dⅵ)「IP,アドレス登録要求を受け付け…IPアドレスを登録処理する手段」(構成要件2Dⅵ),「自己接続機能と…IPアドレスを登録するように要求する手段」(構成要件2E)を有している。(被告の主張)変更とは「変えあらためること」を意味するところ,変えるとは「事物を互いに入れちがわせる。事物の状態・質をそれまでと異なったものにする。」を意味することに鑑みれば,IPアドレスを「変更処理」するとは,利用者データベースに登録されている古いIPアドレスと新しいIPアドレスとを互いに入れ違わせることを意味する。被告システムにおいては,管理コンピュータにおけるIPアドレスは揮発性メモリーにおいて一時的に記憶されるにすぎず,監視端末側と管理コンピュータ側との接続が切断されるとIPアドレスが消去されるため,管理コンピュータ側に「監視端末情報であるIPアドレス」が存在しないことになり,「変更処理」を行う対象が存在しないことになるから,構成要件1(1)Dⅵの「変更処理」は行われない。また,被告システムにおいては,監視端末情報であるIPアドレスはサーバー側に「登録」されないし,監視端末からサーバー側にIPアドレスの登録要求が発せられることもなく,単に,監視端末側のIPアドレスを用いて常時接続を確立しているにすぎず,サーバー側は常時接続が確立している間だけ常時接続の相手方である監視端末側のIPアドレスを一時記憶に一時的に記憶しているにすぎないから,構成要件1(1)1Dⅵ,2Dⅵ,2Eを充足しない。イ 各種センサーを使用した被告システムの「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段と…監視端末(側)から入手した情報を…利用者に供給する手段」(構成要件1

(1)Dⅲないしⅴ,1(2)A,2Dⅲないしⅴ)の充足性(争点1-2)(原告の主張)本件各発明に係る特許請求の範囲には「監視目的に応じて適宜選択される監視手段」と記載されており,監視,監視目的,監視手段に格別の限定はない。本件明細書の段落【0008】【0017】【0030】の記載も同様である。また,「監視端末によって得られた情報」という文言から,監視端末側によって得られるのは文字どおり情報であり,監視情報という限定がされていないことは明らかである。本件明細書の段落【0030】【0044】に照らせば,本件各発明の「監視端末(側)によって得られた情報」には,音声情報や画像情報等の監視情報のほか,センサーの有効/無効,温度,バッテリーレベル,信号強度等の設定状態情報も含まれる。被告システムにおいて,各機能ボタンをタップすると,サーバーを介して,機能ボタンに対応する現在の状態が画面に表示される。また,有効化ボタンで機能を有効にした場合には,ルールが機能して,各種センサーの状態確認を要求して働きかけ,サーバーを経由して各機能ボタンに対応する現在の状態が画面に表示される。したがって,各種センサーは,「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段と…監視端末(側)から入手した情報を…利用者に供給する手段」(構成要件1(1)Dⅲないしⅴ,1(2)A,2Dⅲないしⅴ)を充足する。(被告の主張)構成要件1(1)Dⅳには,「情報」の文言に「監視目的に応じて適宜選択される監視手段を有する監視端末側によって得られた」との修飾が付されていることからすれば,構成要件1(1)Dⅳの情報は監視情報を意味し,監視とは関係のない情報は含まれないから,設定状態情報は上記の「情報」には該当しない。被告システムにおいて,利用者が携帯端末からサーバーに監視情報を入手するためにアクセスする場合,IPカメラ以外の各デバイスとの関係では,サーバーが利用者宅のホームゲートウェイに働きかけて,各デバイスによって得られた監視情報を入手し,利用者に供給する動作は行っていない。すなわち,各種センサーの状態が変化したとき,各種センサーからホームゲートウェイを介してサーバーに情報が送られ,サーバーに記憶されているセンサーの状態ないし監視情報が書き換えられる。また,被告システムにおいて,センサーが無効化されているとは,センサーの状態が「閉」から「開」に変化しても,これに紐づけられた動作(例えば,利用者の携帯電話に通知する)を実行しないというモードを意味しており,センサーが無効化されている状態でも,センサーの状態が「閉」から「開」に変化したとき,ホームゲートウェイを介して当該変化した後のセンサー状態を示す情報が自動的にサーバーに送られ,サーバーに記憶されている当該デバイスの状態に関する情報が書き換えられる。以上によれば,各種センサーは,「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段と…監視端末(側)から入手した情報を…利用者に供給する手段」(構成要件1(1)Dⅲないしⅴ,1(2)A,2Dⅲないしⅴ)を充足しない。ウ スマートロック・スマートライトを使用した被告システムの充足性(争点1-3)「監視目的に応じて適宜選択される監視手段」(構成要件1(1)B,2B)「監視端末(側)によって得られた情報」, 「監視端末(側)から入手した情報」(構成要件1(1)Dⅳ及びⅴ,2Dⅳ及びⅴ)の充足性(争点1-3-1)(原告の主張)本件各発明に係る特許請求の範囲には「監視目的に応じて適宜選択される監視手段」と記載されているのみであって,監視,監視目的,監視手段に格別の限定はない。スマートライトは,現在の照明の状態を表示するものであり,現在の照明の状態を表示することは監視していることにほかならない。また,スマートロックは,現在の施錠・解錠状態を表示するものであり,例えば,外出時に自宅のスマートロックが施錠・解錠状態にあることを見張るものであって,それは監視していることにほかならない。(被告の主張)監視という文言は (悪事が起こらないように)「 見張ること」という意味であるから,監視端末(手段)とは(悪事が起こらないように)見張るための端末(手段)を意味する。本件明細書中の発明の詳細な説明の記載に照らしても,本件各発明は泥棒の侵入や火気の始末等の悪事・災難・犯罪が生じた場合や,利用者が心配になった場合に,現在の自宅等の安全状況を確認できるようにするために,利用者が安全に監視端末から監視情報を入手できるようにした発明であるから,ここでいう監視情報とは,泥棒の侵入や火気の始末等の悪事,災難,犯罪が生じたか,又はそれらが生じていないという情報を意味し,監視端末(手段)とはそのような悪事等が生じたか,又はそれらが生じていないことを見張る端末を意味するといえる。スマートライトは,利用者がスマートフォン等を用いてライトを付けたり消したりできるだけであり,スマートロックも利用者がスマートフォン等を用いて自宅の錠を開けたり閉めたりできるだけであるから,泥棒の侵入や火気の始末等の悪事・災難・犯罪を見張るようなものではなく,いずれも監視端末(手段)に相当しない。「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段と…監視端末(側)から入手した情報を…利用者に供給する手段」(構成要件1(1)Dⅲないしⅴ, (2)1 A,2Dⅲないしⅴ)の充足性(争点1-3-2)(原告の主張)本件各発明に係る特許請求の範囲には「監視目的に応じて適宜選択される監視手段」と記載されており,監視,監視目的,監視手段に格別の限定はない。本件明細書の段落【0008】【0017】【0030】の記載も同様である。また,「監視端末によって得られた情報」の文言から,監視端末側によって得られるのは文字どおり情報であり,監視情報という限定がされていないことは明らかであるし,本件明細書の段落【0030】【0044】に照らせば,本件発明の「監視端末側によって得られた情報」(構成要件1(1)Dⅳ)には,音声情報や画像情報等の監視情報のほか,センサーの有効化/無効化,温度,バッテリーレベル,信号強度等の設定状態情報が含まれる。被告システムにおいて,各機能ボタンをタップすると,サーバーを介して,機能ボタンに対応する現在の状態が画面に表示される。また,有効化ボタンで機能を有効にした場合には,ルールが機能して,スマートライトやスマートロックの状態確認を要求して働きかけ,サーバーを経由して各機能ボタンに対応する現在の状態が画面に表示される。また,被告システムにおいては,スマートロックについて,正常に解錠できると,その結果が画面に表示されるところ,これは,解錠命令がサーバーから送信されるという働きかけの結果,監視端末側から入手した解錠になった情報をサーバーが受け取り,利用者の携帯端末に供給し,その情報が画面上に表示されることを示している。スマートライトについても,現在の状態を表示できる機能ボタンを用いて,利用者の携帯端末から操作した現在の調光状態を同端末で確認できるようになっており,これは,利用者の要求(ライトのON又はOFF等)という働きかけに応じ,ライトのON又はOFFの設定状況や現在のライトの照度等の情報をサーバーが取得して利用者の携帯端末に供給し,その情報が画面上に表示されることを示している。したがって,スマートロック,スマートライトを使用した被告システムが「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段と…監視端末(側)から入手した情報を…利用者に供給する手段」(構成要件1(1)Dⅲないしⅴ, (2)1 A,2Dⅲないしⅴ)を充足することは明らかである。(被告の主張)構成要件1(1)Dⅲ及び2Dⅲでいう「働きかけ」は,監視情報を得るための働きかけを意味し,監視とは関係のない働きかけは含まれない。スマートロック及びスマートライトを使用する被告システムについては,状態が変化したときに,ホームゲートウェイを介して,当該変化した後の状態を示す情報がサーバーに送られて,サーバーに記憶されている当該デバイスの状態に関する情報が書き換えられ,利用者が携帯端末から当該情報を確認するときは,サーバーに記憶されている情報を読み取るだけであり,監視情報をホームゲートウェイに働きかけて入手するということはない。したがって,スマートロック,スマートライトを使用した被告システムは「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段と…監視端末(側)から入手した情報を…利用者に供給する手段」(構成要件1(1)Dⅲないしⅴ, (2)1 A,2Dⅲないしⅴ)を充足しない。エ 家電コントローラーを使用した被告システムの充足性(争点1-4-1,1-4-2)(原告の主張)上記ウ(スマートロック・スマートライトを使用した被告システム)と同様の理由から,「監視目的に応じて適宜選択される監視手段」 構成要件1( (1)B,2B)「監視端末(側)によって得られた情報」及び「監視端末(側),から入手した情報」(構成要件1(1)Dⅳ及びⅴ,2Dⅳ及びⅴ)「監視端,末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段と…監視端末(側)から入手した情報を…利用者に供給する手段」(構成要件1(1)Dⅲないしⅴ, (2)1 A,2Dⅲないしⅴ)を充足する。(被告の主張)家電コントローラーを使用した被告システムについては,運営会社が被告ではないため詳細を把握しておらず,構成要件1(1)Dⅲないしⅴ,構成要件2Dⅲないしⅴの充足性は不知。本件発明1(1)に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点2)ア 無効理由1(乙10国際公開を主引例とする新規性・進歩性欠如)(争点2-1)(被告の主張)乙10国際公開には,以下の発明が記載されている(以下,この発明を「乙10発明1」という。。)10(1)a インターネット120/120’からなる通信回線網の中に設置されているセンサーサーバー110に於ける通信回線を用いた情報供給システムであって,10(1)b 前記センサーサーバー110側には,監視目的に応じて適宜選択されるカメラ370,371,372を有する保育所130側に対して付与されたIPアドレスを含む保育所130に関する情報及びカメラの識別子が,ユーザ名に対応付けられて登録されているセンサーサーバー110が有する記憶媒体(データストレージ362など)を備え,10(1)c 前記保育所130側は前記センサーサーバー110側と前記通信回線網を介して接続可能とされており,10(1)d 前記センサーサーバー110側は,ⅰ インターネットからなる通信回線網を利用してアクセスしてくるユーザのユーザ名,パスワード,センタコードからなるユーザのIDである特定情報を入手する手段と,ⅱ この入手した特定情報が,前記記憶媒体に予め登録されたユーザ名,パスワード,センタコードに対応するか否かの検索を行う手段と,ⅲ 前記特定情報に対応するユーザ名,パスワード,センタコードが存在する場合,インターネットからなる通信回線網を利用して,この抽出された保育所130に関する情報に基づいて,ユーザがクリックしたウエブページ上のカメラのリンクに対応する保育所130側のカメラ370,371,372にアクセスする手段と,ⅳ インターネットからなる通信回線網を経由して,保育所130側のカメラ370,371,372によって得られた画像を入手する手段と,ⅴ この保育所130側から入手した画像を,インターネットからなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスしたユーザに供給する手段と,を備えている。本件発明1(1)と乙10発明1を対比すると,「インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置されている管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって(構成要件1(1)A),前記管理コンピュータ側には,監視目的に応じて適宜選択される監視手段を有する監視端末側に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベースを備え(構成要件1

(1)B),前記監視端末側は前記管理コンピュータ側と前記通信回線網を介して接続可能とされており(構成要件1(1)C),前記管理コンピュータ側はインターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号,ID番号,アドレスデータ,パスワード,さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つからなる利用者IDである特定情報を入手する手段と(構成要件1(1)Di),この入手した特定情報が,前記利用者データベースに予め登録された監視端末情報に対応するか否かの検索を行う手段と(構成要件1(1)Dⅱ),前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけていく手段と(構成要件1(1)Dⅲ),インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末側によって得られた情報を入手する手段と(構成要件1(1)Dⅳ),この監視端末側から入手した情報を,インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスした利用者に供給する手段(構成要件1(1)Dⅴ)」である点で,両者は同一である。また,乙10国際公開には,「特定できる監視端末側から前記管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して接続する接続処理を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段(構成要件1(1)Dⅵ)」に対応する構成について,以下の開示がある。すなわち,乙10国際公開の記載によれば,保育所130におけるDSLモデムとしてADSLを用いることも想定されているところ,ADSLを用いた場合は保育所130側のIPアドレスは動的なものになる。そして,インターネットヘッダのフォーマットは送信元のIPアドレスと送信先のIPアドレスを含まなければならないとされているから,保育所130側のIPアドレスがDHCP(IPアドレスを動的に割り当てるためのプロトコルをいう。 等の機能により変更された場合には,) 保育所130側の装置は,変更されたIPアドレスを送信元IPアドレスとしてヘッダに含めてセンサーサーバー110に送信することになり,センサーサーバー110は,それ以降,保育所130側と通信するに際し,前記の送信元IPアドレスを保育所130側のIPアドレスとして用いることになる。これらによれば,センサーサーバー110において,保育所130側のグローバルIPアドレスは変更処理されているといえる。以上によれば,乙10国際公開には,構成要件1(1)Dⅵ「特定できる監視端末側から前記管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して接続する接続処理を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段」に相当する構成が開示されている。したがって,本件発明1(1)は,乙10発明1と同一のものであり,特許法29条1項3号の規定により新規性の要件を欠く。仮に,本件発明1(1)と乙10発明1との間に「特定できる監視端末側から前記管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して接続する接続処理を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段」に相当する構成(構成要件1(1)Dⅵ)の有無についての相違点があるとしても,DHCPは,本件特許1の出願当時の当業者にとって周知ないし公知の技術であり,当業者であれば乙10発明1に基づき本件発明1(1)に容易に想到できるから,本件発明1(1)は特許法29条2項の規定により進歩性の要件を欠く。これに対し,原告は,乙10国際公開には,保育所130側に対して付されたIPアドレスを含む保育所130に関する情報がユーザ名に対応付けられて登録されていることの記載もそれを示唆する記載もなく,かえって複数のユーザが特定のIPカメラを見ていても当該カメラとの接続は1つだけでよいことなどからすれば,親のユーザ名及びパスワードのそれぞれに対応してIPアドレスを記憶させる必要はないから,乙10国際公開に構成要件1(1)Bに相当する構成の開示はないと主張する。しかし,乙10国際公開においては,データベースサーバー360及びデータベース362を含むセンサーサーバー110において,センタコード,ユーザ名及びパスワードが対応付けられて登録されており,また,センタコードによりセンサーサーバー110と保育所130が対応付けされている。センサーサーバー110はインターネット通信を行うために保育所130のIPアドレスを登録しており,当該IPアドレスを保育所130のセンタコードに対応付けて登録する構成を有する。以上によれば,乙10国際公開には,IPアドレスを含む保育所130に関する情報がユーザ名に対応付けられて登録されている構成が開示されているから,原告の主張には理由がない。(原告の主張)乙10国際公開において,センサーサーバー110側に,保育所130側に対して付与されたIPアドレスが親のユーザ名及びパスワードに対応して記憶されるという構成は開示されていない。かえって,乙10国際公開においては,親ごとにアカウントが登録され,親のユーザ名及びパスワードがそれぞれ記憶されていて,親のユーザ名及びパスワードからなる利用者IDは親ごとに設けられており,また,複数のユーザが特定のカメラを見ていても特定カメラとの接続は1つだけでよく,親のユーザ名及びパスワードのそれぞれに対応してIPアドレスを記憶させる必要がないため,保育所130側に対して付与されたIPアドレスを親のユーザ名及びパスワードに対応して記憶するという構成を採用していないから,乙10国際公開において「監視端末側に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている」(構成要件1(1)B)に相当する構成が開示されているとは認定できない。したがって,上記構成の有無において,本件発明1(1)と乙10国際公開の発明は相違する。乙10国際公開において,保育所(センタ)側のIPアドレスを変更する際に,データベースサーバー360のデータベース362にアクセスすることについては記載も示唆もない。仮に,乙10国際公開の発明において,保育所130側の装置が,変更されたIPアドレスを送信元IPアドレスとしてヘッダに含めてセンサーサーバー110に送信するような構成が採られていたとしても,乙10国際公開は複数の保育所を対象としているシステムであり,DHCPの機能によるIPアドレスの変更は互いの送受信が一旦切れた後に行われることからすれば,センサーサーバー110は変更されたIPアドレスの送信元を識別することができないから,センサーサーバー110側にIPアドレスを変更する手段を有しているとはいえない。したがって,乙10国際公開には,「特定できる監視端末側から前記管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して接続する接続処理を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段」(構成要件1Dⅵ)に相当する構成が開示されていないから,上記構成の有無において本件発明1(1)と乙10国際公開の発明は相違する。以上のとおり,乙10国際公開から認定できる発明と本件発明1(1)とは相違点があるから本件発明1(1)が新規性の要件を欠くとはいえず,上記の相違点は技術的微差にすぎないともいえないから本件発明1(1)が進歩性の要件を欠くともいえない。イ 無効理由2(乙12公報に係る特許とのダブルパテント)(争点2-2)(被告の主張)本件特許1の出願は,乙12公報に係る特許を原出願とする分割出願であるから,両特許の出願日は同日出願である。この場合,両特許の請求項に係る発明が同一である場合,いわゆるダブルパテント(特許法39条2項)に該当し,どちらか一方については特許を受けることができない。乙12公報の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「乙12発明」という。)を分説すると,以下のとおりとなる。12a インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置されている管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって,12b 前記管理コンピュータ側には,監視カメラ,監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視端末に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベースを備え,12c 前記監視端末は前記管理コンピュータ側と前記通信回線網を介して接続可能とされており,12d 前記管理コンピュータは,ⅰ インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号,ID番号,アドレスデータ,パスワード,さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つからなる利用者IDである特定情報を入手する手段と,ⅱ この入手した特定情報が,前記利用者データベースに予め登録された監視端末情報に対応するか否かの検索を行う手段と,ⅲ 前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけていく手段と,ⅳ インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末によって得られた情報を入手する手段と,ⅴ この監視端末から入手した情報を,インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスした利用者に供給する手段と,ⅵ 特定できる監視端末側からのIPアドレス変更要求を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段と,を備えている12e ことを特徴とする通信回線を用いた情報供給システム。本件発明1(1)と乙12発明を対比すると,両者が相違する点は,いずれも文言上の相違であって技術的意義としては同一であるか,又は微差にすぎないものであるから,両者は同一の発明であるといえる。したがって,本件発明1(1)及び乙12発明に係る特許の少なくとも一方の特許は,特許法39条2項の規定により特許を受けることができない。(原告の主張)本件発明1(1)の「特定できる監視端末側から前記管理コンピュータ側のIPアドレスに対して接続する接続処理を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段と」(構成要件1Dⅵ)という構成は,監視端末側から管理コンピュータ側のIPアドレスに対して接続する接続処理を受け付けてIPアドレスを変更処理するものである。これに対して,乙12発明の「特定できる監視端末側からのIPアドレス変更要求を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段と」(構成12dⅵ)という構成では,接続処理を受け付ける過程が規定されていない。したがって,本件発明1(1)と乙12発明とは,少なくとも上記の接続処理の有無の構成において相違があるから,同一の発明ではなく,特許法39条2項にいうダブルパテントではない。ウ 無効理由3(分割出願要件違反に基づく進歩性欠如)(争点2-3)(被告の主張)本件各特許は,特願2002-505473号(特許3455971号,以下「本件各特許の高祖父出願」又は「3455971号特許」という。)の4世代目の分割出願である。上記の3455971号特許は,国際公開WO02/001820号として国際公開(乙24)がされている。本件発明1(1)では,管理コンピュータが「監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけていく手段」(構成要件1Dⅲ)を備えているとされている。他方,国際公開WO02/001820号では「監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけ」と記載されており,監視端末の制御部に働きかけていく構成は開示されているものの,監視端末側の制御部に働きかけていく構成は開示されていない。したがって,本件発明1(1)に係る分割出願の明細書等に記載された事項は,原出願(3455971号特許)の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内ではなく,本件特許1に係る分割出願は分割出願の要件を満たしていないから,進歩性の判断の基準日は実際の出願日(平成17年2月15日)となる。そして,国際公開WO02/001820号は当該出願日以前に公開されているから,当業者は,国際公開WO02/001820号に開示されている技術や当該出願日前の周知技術ないし公知技術に基づいて本件発明1(1)に容易に想到することができる。以上によれば,本件発明1(1)は,特許法29条2項の規定により,進歩性の要件を欠く。(原告の主張)国際公開WO02/001820号には,「この利用者DBに利用者IDに対応付けて登録されている監視端末側のIPアドレス(常時接続のISPが割り振っているアドレス)を抽出し,例えば利用者Aに対応するものが監視端末4aである場合,該当する監視端末4aを構成するここでは監視ユニット1に対して,通常常時接続状態のインターネット回線を利用して監視端末側のIPアドレスに特別な制御信号(コマンドデータ)を送信する。この制御信号は,画像等の情報を取得して管理コンピュータ側へ送るように指示する要求信号であればどのような信号でも良いが,不正アクセス防止のために暗号化され,監視端末側で復号化処理をすると好ましい。すなわち,管理コンピュータ3と監視端末4a側の通信制御部,すなわち図4のMPU65と交信し,画像を要求できるシステムになっていればよい。」と記載されており,監視端末側の制御部に働きかけていく構成が明確に開示されている。したがって,本件特許1に係る分割出願の明細書等に記載された事項は基礎出願(3455971号特許)の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であり,本件特許1に係る分割出願が分割出願の要件を満たしていることは明らかである。エ 無効理由4(親出願の分割出願要件違反に基づく進歩性欠如)(争点2-4)(被告の主張)本件各特許は,本件各特許の高祖父出願の4世代目の分割出願であり,第3世代である特願2003-419617号(乙25。以下,この公報を「乙25公報」といい,この出願を「本件各特許の親出願」という。)を原出願とする分割出願である。また,本件各特許の親出願は,第2世代である特願2003-207491号(甲38。以下,この公報を「甲38公報」といい,この出願を「本件各特許の祖父出願」という。 を原出願とする分割出願であ)る。特許出願(親出願)を原出願とする分割出願(子出願)をさらに原出願としてした分割出願(孫出願)は,①子出願が親出願に対し分割要件の全てを満たすこと,②孫出願が子出願に対し分割要件の全てを満たすこと,③孫出願が親出願に対し分割要件のうちの実体的要件の全てを満たすことという要件を全て満たすときに,孫出願は親出願の時にしたものとして取り扱われる。これを本件特許1について見ると,本件各特許の親出願の明細書等に記載された事項は,本件各特許の祖父出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内ではない。すなわち,本件各特許の親出願の請求項1に記載された手段である「監視端末側から送信されてくる情報を待つ時間を設定する情報入手待機時間設定手段」「設定された待機時間内に監視端末側からの情報,が送信されてくるか否かを管理する管理手段」及び「監視端末側から送信されてくる情報に関して監視端末側を特定する特定処理手段」の全部及び一部は,本件各特許の祖父出願の出願当初の明細書等に開示されている事項ではなく,本件各特許の親出願には新たな技術的事項が導入されている。したがって,本件各特許の親出願は,本件各特許の祖父出願に対して分割要件を満たしておらず,本件特許1の出願は現実の出願日である平成17年2月15日にしたものとして取り扱われるべきものである。そうすると,本件各特許の高祖父出願(国際公開WO02/001820号)は本件特許の出願日よりも前に公開されていたことになり,無効理由3(上記ウ)と同様,本件発明1(1)は国際公開WO02/001820号に開示された発明から当業者が容易に想到し得るものであるから,特許法29条2項の規定により無効とされるべきものである。(原告の主張)本件各特許の高祖父出願(国際公開WO02/001820号)及び本件各特許の祖父出願の公開公報(甲38公報)には,いずれにも以下の記載がある。「前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけ,前記管理コンピュータが,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末によって得られた情報を入手するステップ時,監視端末に接続不能な状態,若しくは監視端末からの情報が前記管理コンピュータに送信されてこない状態が,前記管理コンピュータで確認された時に,所定の異常通知をアクセスした利用者に送信できるようになっていると好ましい。すなわち管理コンピュータでデータを待つ時間を所定の時間と設定し,セッション管理することにより,待ち時間内にデータが得られないとき,アクセスしてきた利用者をいつまでも待たせることなく情報が取れない旨のメッセージを送ることによりサービスの向上が図れる。」「管理コンピュ-タ3側の監視端末用通信回線基板38およびCPU31は,接続されている各監視端末4の特定を行っており,管理コンピュ-タ3がコマンドデータである制御信号を送信したことにより,各監視端末4から送信されてくる画像情報などは,監視端末側に振られたIPアドレスや所定のIDとが登録された利用者データベース(DB)を利用して処理される。なお,監視端末の特定されない情報に対しては通信拒否を行う。」「前記利用者IDに対応する監視端末IDが存在する場合,前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけ,前記管理コンピュータが,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末4によって得られた情報を入手するステップ時,監視端末4に接続不能な状態,若しくは監視端末4からの情報が前記管理コンピュータに送信されてこない状態が,前記管理コンピュータ3で確認された時に,利用者との通信を一定時間で切らずに,所定の異常通知「例えば,データを取得できません」などのメッセージ(取得できない理由として,例えばインターネット通信環境が悪い,電源の入力忘れ,侵入者による切断行為などが考えられる)をアクセスした利用者に送信できるようになっている。」本件各特許の高祖父出願及び本件各特許の祖父出願の出願当初の明細書等におけるこれらの記載においては,監視端末側から送信されてくる情報に関し,監視端末側に振られたIPアドレスや監視端末IDを利用して,監視端末側を特定する「特定処理手段」と,特定された監視端末側から送信されてくる情報を待つ時間を設定するための「情報入手待機時間設定手段」と,設定された待機時間内に監視端末側からの情報が管理コンピュータに送信されてくるか否かを管理するための「管理手段」とが明確に示されているといえる。したがって,本件各特許の親出願の明細書等に記載された事項は,本件特許1の基礎である本件各特許の高祖父出願及び本件各特許の祖父出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるといえ,本件各特許の親出願は,本件各特許の祖父出願に対し分割要件を満たしている。オ 無効理由5(サポート要件違反)(争点2-5)(被告の主張)本件発明1(1)の構成要件1(1)Bでは,「監視目的に応じて適宜選択される監視手段を有する監視端末側に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベース」が特定されている。上記の構成要件に揮発性メモリー(RAM)ないしキャッシュメモリーにIPアドレスを格納する構成を含むとすると,利用者データベースを備える管理コンピュータの電源がオフとなったときや,一定時間パケットの送受信がなく常時接続が切断されたときに,揮発性メモリー(RAM)ないしキャッシュメモリーに格納された情報が自動的に消去されてしまうことになるため,「利用者ID」 「監視端末に対して付与されたIPアドとレスを含む監視端末情報」とを,これらの情報が「登録」されている「データベース」を用いて確認ないし照合することにより第三者が監視情報を入手できない仕組みを実現するという本件発明1(1)が解決しようとする課題等を解決することができない。したがって,構成要件1(1)Bにおいて,揮発性メモリー(RAM)ないしキャッシュメモリーにIPアドレスを格納する構成を含むとする場合には,本件発明1(1)は特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものとはいえないからサポート要件(特許法36条6項1号)違反の無効理由を有する。本件発明1(1)の構成要件1(1)Dⅲでは,管理コンピュータが「監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけていく手段」を備えていると特定されている。本件明細書の段落【0043】には,「前記利用者IDに対応する監視端末IDが存在する場合,前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけ」と記載されている。したがって,本件明細書には,監視端末の制御部に働きかけていく構成は開示されているといえるが,監視端末側の制御部に働きかけていく構成は開示されていない。したがって,監視端末側の制御部に働きかけていく構成は本件明細書の記載から具体的に把握できず,また,本件発明1(1)で特定された範囲にまで発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとは認められないから,本件発明1(1)はサポート要件違反の無効理由を有する。(原告の主張)一般に,揮発性メモリー(RAM)等に格納された情報は,バックアップ処理等によって情報を保護したり,停電時には補助電源に切り替えてデータの消失を防止したりしており,これらは一般常識ないし技術常識であるから,被告が主張する構成要件1(1)Bについてのサポート要件違反は認められない。本件明細書の段落【0026】には,「この利用者DBに利用者IDに対応付けて登録されている監視端末側のIPアドレス(常時接続のISPが割り振っているアドレス)を抽出し,例えば利用者Aに対応するものが監視端末4aである場合,該当する監視端末4aを構成するここでは監視ユニット1に対して,通常常時接続状態のインターネット回線を利用して監視端末側のIPアドレスに特別な制御信号(コマンドデータ)を送信する。この制御信号は,画像等の情報を取得して管理コンピュータ側へ送るように指示する要求信号であればどのような信号でも良いが,不正アクセス防止のために暗号化され,監視端末側で復号化処理をすると好ましい。すなわち,管理コンピュータ3と監視端末4a側の通信制御部,すなわち図4のMPU65と交信し,画像を要求できるシステムになっていればよい。」と記載されており,監視端末側の制御部に働きかけていく構成が明確に開示されている。また,本件明細書の図1,図2には,破線で囲われた監視領域a,b,cが示されているところ,監視端末とはこの監視領域のことであり,この領域に配置されている監視ユニットの通信制御部に監視端末側のIPアドレスを使って働きかけることが示されている。これらによれば,被告が主張する構成要件1(1)Dⅲについてのサポート要件違反は認められない。カ 無効理由6(実施可能要件違反)(争点2-6)(被告の主張)本件発明1(1)の構成要件1(1)Bでは,「監視目的に応じて適宜選択される監視手段を有する監視端末側に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベース」が特定されている。上記の構成要件に揮発性メモリー(RAM)ないしキャッシュメモリーにIPアドレスを格納する構成を含むとすると,利用者データベースを備える管理コンピュータの電源がオフとなったときや,一定時間パケットの送受信がなく常時接続が切断されたときに,揮発性メモリー(RAM)ないしキャッシュメモリーに格納された情報が自動的に消去されてしまうところ,このような場合にデータベースに格納された情報がどのようにして維持されるのか,発明の詳細な説明には記載がない。したがって,当業者が本件発明1(1)をどのように実施するかを理解することができないから,本件発明1(1)は,実施可能要件(特許法36条4項1号)違反の無効理由を有する。本件発明1(1)の構成要件1(1)Dⅲでは,管理コンピュータが「監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけていく手段」を備えていると特定されている。本件明細書の段落【0043】には,「前記利用者IDに対応する監視端末IDが存在する場合,前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけ」と記載されている。したがって,本件明細書には,監視端末の制御部に働きかけていく構成は開示されているといえるが,監視端末側の制御部に働きかけていく構成は開示されていない。したがって,監視端末側の制御部に働きかけていく構成は,本件明細書等の記載から具体的に把握できず,当業者が本件発明1(1)をどのように実施するか理解できないから,本件発明1(1)は,実施可能要件違反の無効理由を有する。(原告の主張)一般に,揮発性メモリー(RAM)等に格納された情報は,バックアップ処理等によって情報を保護したり,停電時には補助電源に切り替えてデータの消失を防止したりしており,これらは一般常識ないし技術常識であるといえ,当業者であれば実施可能であるといえるから,被告が主張する構成要件1(1)Bについての実施可能要件違反は認められない。本件明細書の段落【0026】には,「この利用者DBに利用者IDに対応付けて登録されている監視端末側のIPアドレス(常時接続のISPが割り振っているアドレス)を抽出し,例えば利用者Aに対応するものが監視端末4aである場合,該当する監視端末4aを構成するここでは監視ユニット1に対して,通常常時接続状態のインターネット回線を利用して監視端末側のIPアドレスに特別な制御信号(コマンドデータ)を送信する。この制御信号は,画像等の情報を取得して管理コンピュータ側へ送るように指示する要求信号であればどのような信号でも良いが,不正アクセス防止のために暗号化され,監視端末側で復号化処理をすると好ましい。すなわち,管理コンピュータ3と監視端末4a側の通信制御部,すなわち図4のMPU65と交信し,画像を要求できるシステムになっていればよい。」と記載されている。そして,実施例等を参酌すれば,上記記載には,監視端末4aを構成する監視ユニット1に対して,通常常時接続状態のインターネット回線を利用して監視端末側のIPアドレスに特別な制御信号(コマンドデータ)を送信し,管理コンピュータ3は監視端末4a側の通信制御部(すなわち図4に示された監視ユニット1のMPU65)と交信して画像を要求できることが開示されているといえる。したがって,被告が主張する構成要件1(1)Dⅲについての実施可能要件違反は認められない。本件発明1(2)に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点3)ア 無効理由1(乙10公報を主引例とする新規性・進歩性欠如)(争点3-1)(被告の主張)乙10公報には,以下の発明が記載されている(以下,この発明を「乙10発明2」という。。)10(2)a 前記特定情報に対応するユーザ名,パスワード,センタコードが存在する場合,前記センタサーバー110がインターネットからなる通信回線網を利用して,この抽出された保育所130に関する情報に基づいて,ユーザがクリックしたウエブページ上のカメラのリンクに対応する保育所130側のカメラ370,371,372にアクセスし,インターネットからなる通信回線網を経由して,保育所130側のカメラ370,371,372によって得られた画像を入手するステップ時,10(2)b 前記保育所130側のカメラが停止している状態又はカメラへのリンクが停止している状態が,前記センタサーバー110側で確認された時に,カメラが停止していること,又は,カメラとセンタサーバー110側との間のリンクが一時的に利用不能であることの通知をユーザに送信できるようになっている,10(2)c 通信回線を用いた情報供給システム。本件発明1(2)と乙10発明2を対比すると,「前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,前記管理コンピュータ側がインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけ,前記管理コンピュータが,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末側によって得られた情報を入手するステップ時(構成要件1(2)A),」「監視端末側に接続不能な状態,若しくは監視端末側からの情報が前記管理コンピュータ側に送信されてこない状態が,前記管理コンピュータ側で確認された時に,所定の異常通知をアクセスした利用者に送信できるようになっているインターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置されている管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システム(構成要件1(2)B)」である点で,両者は同一である。また,本件発明1(2)は,本件発明1(1)に従属する発明であるところ,本件発明1(2)の他の構成要件については,本件発明1(1)の とおり,乙10発明1と同一である。したがって,本件発明1(2)は,特許法29条1項3号の規定により新規性の要件を欠く。仮に,相違点があるとしても,それらはいずれも技術的微差にすぎず,当業者であれば乙10発明1,2に基づき,本件発明1(2)に容易に想到することができるから,本件発明1(2)は特許法29条2項の規定により進歩性の要件を欠く。(原告の主張)本件発明1(2)は,本件発明1(1)に従属する請求項であり,本件発明1(1)は,とおり,乙10発明1と相違し,それらの相違が技術的微差にすぎないものともいえない。したがって,乙10発明2が本件発明1(2)と同一の構成を有するか否かを検討するまでもなく,本件発明1(2)に新規性及び進歩性があることが明らかである。イ 無効理由2(分割出願要件違反に基づく進歩性欠如) 無効理由3, (親出願の分割出願要件違反に基づく進歩性欠如) 無効理由4, (サポート要件違反),無効理由5(実施可能要件違反)(争点3-2ないし5)(被告の主張)本件発明1(2)は,本件発明1(1)に従属するものであるから,本件発明1(1)と同様の理由により,分割出願要件違反による進歩性欠如,親出願の分割出願要件違反に基づく進歩性欠如,サポート要件違反及び実施可能要件違反の各無効理由を有する。(原告の主張)本件発明1(2)は,本件発明1(1)に従属するものであるから,本件発明1(1)と同様の理由により,被告が主張する上記の各無効理由はいずれも認められない。本件発明2に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点4)ア 無効理由1(乙10国際公開を主引例とする新規性・進歩性欠如)(争点4-1)(被告の主張)本件発明2と乙10発明1を対比すると,「インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置されている管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって(構成要件2A),前記管理コンピュータ側には,監視目的に応じて適宜選択される監視手段を有する監視端末側に対して付与されたIPアドレスおよび監視端末IDを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベースを備え(構成要件2B),前記監視端末は前記管理コンピュータ側と前記通信回線網を介して接続可能とされており(構成要件2C) 前記管理コンピュータ側は,,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号,ID番号,アドレスデータ,パスワード,さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つからなる利用者IDである特定情報を入手する手段と(構成要件2Dⅰ) この入手した特定情報が,, 前記利用者データベースに予め登録された監視端末情報に対応するか否かの検索を行う手段と(構成要件2Dⅱ),前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけていく手段と(構成要件2Dⅲ),インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末によって得られた情報を入手する手段と(構成要件2Dⅳ),この監視端末から入手した情報を,インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスした利用者に供給する手段(構成要件2Dⅴ)」である点で,両者は一致する。また,乙10国際公開の発明において,保育所130とセンサーサーバー110との間の通信及びセンサーサーバー110とモニター140における認証された視聴者との間の通信には電話アクセス装置が使用されること,電話会社へのアクセス装置388にはRavlin-4wireline暗号化装置が用いられること,電話会社へのアクセス装置388が接続されているリンク316はVPNリンクであることがそれぞれ開示されている。Ravilin-4の商品説明(乙21)は本件特許2の原出願日以前に公開されたものであるところ,これによれば,Ravlin-4は暗号化通信を行うためのプロトコルであるIP Security Standard (IPSec)の一部であるとされる。IPSecの規格書(乙22)によれば,第1のルータから第2のルータへの単方向のコネクション(セキュリティアソシエーション)を確立する技術であって,第1のルータが,コネクションの有効期限及び第2のルータのグローバルIPアドレスを記憶し,コネクションの有効期限が経過すると,記憶しているグローバルIPアドレスを用いて新たなコネクションを確立し,回線の再接続を行うための自己接続機能を有し,コネクションを確立するときに送信されるヘッダは,第1のルータのグローバルIPアドレスを含んでおり,第1のルータからの回線再接続のとき,第2のルータが,コネクションを確立するときに送信されるヘッダを受け付け,ヘッダに含まれている第1のルータのグローバルIPアドレスを記憶する技術が開示されている。乙10国際公開の発明は,上記のとおりIPsecに基づくVPN通信により実現される構成を含んでいるから,当業者であれば乙10国際公開の発明においてIPsecに関する技術である乙22記載の技術を用いることができる。また,乙10国際公開の発明のアクセス装置388,338(又は暗号化装置386,336との組み合わせ)はルータであるから,それぞれ乙22記載の技術のルータに相当する。そうすると,乙22記載の技術における「第1のルータからの回線の再接続のとき,第2のルータが,コネクションを確立するときに送信されるヘッダを受け付け,ヘッダに含まれている第1のルータのIPアドレスを記憶する」構成は,構成要件2Dⅵ「管理コンピュ-タ側と監視端末側との回線再接続時,特定できる監視端末側からのIPアドレス登録要求を受け付け,前記利用者データベースの前記監視端末情報であるIPアドレスを登録処理する手段」に相当し,乙22記載の技術における「第1のルータが,コネクションの有効期限及び第2のルータのグローバルIPアドレスを記憶し,コネクションの有効期限が経過すると,記憶しているグローバルIPアドレスを用いて新たなコネクションを確立し,回線の再接続を行うための自己接続機能を有し,コネクションを確立するときに送信されるヘッダは,第1のルータのIPアドレスを含んでいる」構成は,構成要件2E「内部にメモリーされた管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理する自己接続機能」及び「前記自己接続機能を使って,登録された前記監視端末IDを管理コンピュータ側に送り,前記監視端末側のIPアドレスを登録するように要求する手段」に相当する。したがって,乙10国際公開の発明は,乙22記載の技術を含むものであり,構成要件2Dⅵ,2Eの構成を含むといえるから,本件発明2と乙10国際公開の発明は同一のものである。したがって,本件発明2は特許法29条1項3号の規定により新規性の要件を欠く。また,アクセスルータ「MUCHO-EV」の取扱説明書(乙30),INFONET-VP100の取扱説明書(乙32)によれば,IPsecを用いた技術において送信元装置が起動した場合や送信元装置の電源が落ちた後に電源が投入された場合におけるセキュリティアソシエーションの確立が送信元装置の起動を契機とする構成が開示されており,また,IPSecの規格書(乙22)によれば,IPsecにおいては送信元装置に送信先装置のIPアドレスがあらかじめ登録されている。これらによれば,IPsecを用いた技術において,送信元装置の電源が落ちた後に電源が投入された場合にセキュリティアソシエーションの確立が送信元装置の起動を契機とする構成及びセキュリティアソシエーションの確立の前提として送信元装置があらかじめ登録されている送信先装置のIPアドレスに基づいて送信先装置との回線を再接続する構成が開示されているといえる。これらの構成は本件発明2の「自己接続機能」「管理コンピュータ側と監視端末側との回,線再接続」の構成に該当する。乙10国際公開は,IPSecを用いた技術であるところ,乙30,乙32,乙22に記載されている構成や技術もIPSecに関するものであるから両者を組み合わせる動機付けが存在し,上記の構成や技術は周知技術ないし公知技術であるからそれらを組み合わせることは容易であるといえるから,仮に相違点が存在するとしても,本件発明2は特許法29条2項の規定により進歩性の要件を欠く。(原告の主張)乙10国際公開において,センサーサーバー110側に,保育所130側に対して付与されたIPアドレスが親のユーザ名及びパスワードに対応して記憶されるという構成は開示されていない。かえって,乙10国際公開においては,親ごとにアカウントが登録され,親のユーザ名及びパスワードがそれぞれ記憶されていて,親のユーザ名及びパスワードからなる利用者IDは親ごとに設けられており,また,複数のユーザが特定のカメラを見ていても特定カメラとの接続は1つだけでよく,親のユーザ名及びパスワードのそれぞれに対応してIPアドレスを記憶させる必要がないため,保育所130側に対して付与されたIPアドレスを親のユーザ名及びパスワードに対応して記憶するという構成を採用していないから,乙10国際公開において「監視端末側に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている」(構成要件2B)に相当する構成が開示されているとは認定できない。したがって,上記構成の有無において,本件発明2と乙10国際公開の発明は相違する。被告は,乙10国際公開には乙22に記載された技術の構成が含まれるとして新規性欠如の主張をするが,公然実施をされた発明(特許法29条1項2号)は公然と実施されたひとまとまりの発明でなければならないところ,上記主張は公然実施されたひとまとまりの発明を主張するものではない。その点を措くとしても,乙22に記載された技術は,セキュリティーアソシエーションの置き換えに関するものであり,回線が接続された状態においてセキュリティーサービスを提供する暗号化情報などに有効期間を設け,その置き換えをすることを説明するにすぎないものであり,回線の再接続,自己接続機能,IPアドレスの登録処理について開示したものではないから,被告が主張する「第1のルータからの回線再接続のとき,第2のルータが,コネクションを確立するときに送信されるヘッダを受け付け,ヘッダに含まれている第1のルータのグローバルIPアドレスを記憶する構成」や,「第1のルータが,コネクションの有効期限及び第2のルータのグローバルIPアドレスを記憶し,コネクションの有効期限が経過すると,記憶しているグローバルIPアドレスを用いて新たなコネクションを確立し,回線の再接続を行うための自己接続機能を有し,コネクションを確立するときに送信されるヘッダは,第1のルータのIPアドレスを含んでいる構成」は,乙10国際公開に開示されているとはいえない。したがって,乙10国際公開には,構成要件2Dⅵ「管理コンピュ-タ側と監視端末側との回線再接続時,特定できる監視端末側からのIPアドレス登録要求を受け付け,前記利用者データベースの前記監視端末情報であるIPアドレスを登録処理する手段」,構成要件2E「内部にメモリーされた管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理する自己接続機能」及び「前記自己接続機能を使って,登録された前記監視端末IDを管理コンピュータ側に送り,前記監視端末側のIPアドレスを登録するように要求する手段」に相当する構成が開示されていないから,上記構成の有無において本件発明2と乙10国際公開の発明は相違する。また,乙30,乙32にも,被告が主張するような「送信元装置の電源が落ちた後に電源が投入されることによって,送信元装置の起動を契機として,送信元装置が予め登録されている送信先装置のIPアドレスに基づいて送信先装置との回線を再接続すること」についての開示はないから,これらの公知技術ないし周知技術を適用することにより,本件発明2に容易に想到し得るともいえない。イ 無効理由2(親出願の分割出願要件違反に基づく新規性・進歩性欠如)(争点4-2)(被告の主張)本件発明1(1)の無効理由4における被告の主張のとおり,本件特許2は,本件各特許の高祖父出願の4世代目の分割出願であり,本件各特許の親出願を原出願とする分割出願である。本件各特許の親出願は,第2世代である本件各特許の祖父出願を原出願とする分割出願であるところ,本件各特許の親出願の明細書等に記載された事項は,本件各特許の祖父出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内ではない。したがって,本件各特許の親出願は,本件各特許の祖父出願に対して分割要件を満たしておらず,本件特許1の出願は現実の出願日である平成17年2月15日にしたものとして取り扱われるべきものである。そうすると,本件各特許の高祖父出願(国際公開WO02/001820号)は,本件特許の出願日よりも前に公開されていたことになり,本件発明2は国際公開WO02/001820号に開示された発明から当業者が容易に想到し得るものであるから,本件発明2は,特許法29条1項3号又は同法29条2項の規定により無効とされるべきものである。(原告の主張)本件発明1(1)の無効理由4における原告の主張のとおり,本件特許の親出願は分割出願要件を満たしている。ウ 無効理由3(サポート要件違反)(争点4-3)(被告の主張)本件発明1(1)の無効理由5における被告の主張と同様の理由から,本件発明2はサポート要件違反の無効理由を有する。(原告の主張)本件発明1(1)の無効理由5における原告の主張と同様の理由から,本件発明2はサポート要件違反に該当しない。エ 無効理由4(実施可能要件違反)(争点4-4)(被告の主張)本件発明1(1)の無効理由6における被告の主張と同様の理由から,本件発明2は実施可能要件違反の無効理由を有する。(原告の主張)本件発明1(1)の無効理由6における原告の主張と同様の理由から,本件発明2は実施可能要件違反に該当しない。損害発生の有無及びその額(争点5)(原告の主張)ア 被告の本件各発明の実施に対する損害賠償サービス開始時期とその期間被告は,遅くても平成27年2月から令和元年10月に至るまでの57か月間,故意又は過失により,被告システムを用いた「インテリジェントホーム」なるサービスを業として提供している。サービス料単価被告システムのデバイスのレンタル料は,IPカメラが500円,家電コントローラーが700円,ドア・窓センサーが200円,広域モーションセンサーが200円,狭域モーションセンサーが200円,スマートロックが700円,スマートライトが100円と設定されており,デバイス1個の平均月額レンタル料は371円となる。2DKから3DKの一般的な住宅を考えれば,監視端末は4台ないし5台とするのが通常の使用形態であるといえる。そうすると,1世帯で5個のデバイスを利用している場合には月額サービス料は5135円(基本利用料2980円+ゲートウェイレンタル料300円+監視デバイス5個1855円)となり,1世帯で4個のデバイスを利用している場合には月額サービス料は4764円(基本利用料2980円+ゲートウェイレンタル料300円+監視デバイス5個1855円)となるから,サービス料の単価は月額4580円を下回ることはない。被告が基本利用料を割り引くなどしたからといって,原告の被った実施料相当損害額が減額されるものではない。サービス世帯数被告自身が行う被告サービスにおいて,平成27年2月から平成31年1月までの被告サービス利用者の延べ世帯数は●(省略)●世帯である。そして,同月の時点での利用者数が●(省略)●世帯であり,少なくともこの世帯数が減少することはないと推察されることから,同年2月から令和元年10月までの利用者数は●(省略)●世帯(●(省略)●世帯×9か月)となる。そうすると,平成27年2月から令和元年10月までの合計は最低でも●(省略)●世帯(●(省略)●世帯+●(省略)●世帯)となり,これを下回ることはない。また,被告がケーブルテレビ局等と共同で行う被告サービスにおいて,平成27年2月から平成31年1月までの利用者の延べ数は●(省略)●世帯(ケーブルテレビ局:●(省略)●世帯,事業者向けサービス:●(省略)●か所)である。そして,同月の時点での利用者数が●(省略)●世帯(ケーブルテレビ局:●(省略)●世帯,事業者向けサービス:●(省略)●か所)であり,少なくともこの数が減少することはないと推察されることから,同年2月から令和元年10月までの利用者数は●(省略)●世帯(●(省略)●世帯×9か月)となる。そうすると,平成27年2月から令和元年10月までの合計は最低でも●(省略)●世帯(●(省略)●世帯+●(省略)●世帯)となり,これを下回ることはない。したがって,平成27年2月から令和元年10月までの被告サービスの延べ利用世帯の総合計は最低でも●(省略)●世帯(●(省略)●世帯+●(省略)●世帯)となり,これを下回ることはない。売上総額被告サービスの通常料金はるのが相当であるから,平成27年2月から令和元年10月までの売上総額は●(省略)●円(4580円×●(省略)●世帯)を下ることはない。また,スタータキット等の売上げについては,平成27年2月から平成31年1月までの間にスタータキット●(省略)●台(6万0120円/台) IPカメラ●, (省略) (1万7820円/台)●台 が販売されており,総額●(省略)●円である。したがって,被告の売上総額は●(省略)●円(●(省略)●円+●(省略)●円)を下ることはない。実施料相当額の算定平成22年3月株式会社帝国データバンク発行「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~」本編の「Ⅱ.わが国のロイヤルティ料率」「3.ロイヤルティ料率の動向」「, ,(1)一般データ調査結果」「,(ⅰ)日本」において本件各発明に最も近いのは「電子計算機」の分野であるところ,それらのロイヤルティ料率の平均値は33.2パーセント,最頻値は50.0パーセント,中央値は40.0パーセントとされている。本件各発明では,インターネット網によって互いに通信可能な管理コンピュータ,監視端末側の各機器及び各利用者端末であるハードウェアを情報供給システムとして機能させるソフトウェアがプログラム作成の基礎となるフローチャート等を用いて開示されており,この開示されたソフトウェアに対して極めて高いロイヤルティ料率が適用されるのは当然である。また,上記報告書の「Ⅱ.我が国のロイヤルティ料率」「1.,技術分類別ロイヤルティ料率(国内アンケート調査) の技術分類には」 「電子計算機」は含まれていないことから,「電子計算機」を「器械」(ハードウェア)と「システムプログラム(システム運用管理)(ソフトウェア)」の集合体と捉えた場合,「器械」の分野では平均値3.5パーセント,最大値9.5パーセント,最小値0.5パーセントであり,「システムプログラム(システム運用管理)」の分野では平均値15.8パーセント,最大値27.5パーセント,最小値9.5パーセントであり,これらを合算すると平均値19.3パーセント,最大値37パーセント,最小値10パーセントパーセントになる。これらの事情に加え,特許法102条3項に基づく損害の算定に当たっては必ずしも当該特許権についての実施許諾契約における実施料率に基づかなければならない必然性はなく,特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき実施に対し受けるべき料率は通常の実施料率に比べて自ずと高額になること,被告自身がケーブルテレビ局や事業者向けのサービスに対するライセンス料率として約50パーセントを設定していることなどの諸般の事情を考慮すると,本件各発明の実施料率がそれぞれ14パーセントを下ることはない。以上によれば,実施料相当損害額は,最低でも●(省略)●円(●(省略)●円×0.14)となる。イ 弁護士費用及び弁理士費用本件事案の内容,認められるべき認容額,本件訴訟に至る経過等を総合すると,被告による本件各特許権の侵害と因果関係のある弁護士費用及び弁理士費用は少なくとも●(省略)●円を下らない。(被告の主張)ア 売上総額●(省略)●円である。利用料(月額単価×延べ世帯数)平成31年 1 月末時点で,月額利用料の累計は●(省略)●円であった。ホームゲートウェイを利用している世帯のうち,IPカメラを利用している世帯は約●(省略)●パーセントであるから,IPカメラを利用している加入者からの利用料の売上げは,合計●(省略)●円(=●(省略)●円×●(省略)●パーセント)である。機器レンタル料(月額単価×延べ世帯数)機器レンタル料の売上げは,以下の①から④を合計した●(省略)●円である。

① ホームゲートウェイのレンタル単価●(省略)●円(計算式)300円/月×●(省略)●(延べ世帯数)×●(省略)●パーセント=●(省略)●円

② ホームゲートウェイのレンタル単価・●(省略)●●(省略)●円(計算式)●(省略)●円/月×●(省略)●(延べ世帯数)×●(省略)●パーセント=●(省略)●円

③ IPカメラのレンタル単価●(省略)●円(計算式)500円/月×●(省略)●(延べ世帯数)=●(省略)●円

④ IPカメラのレンタル単価・●(省略)●●(省略)●円(計算式)●(省略)●円/月×●(省略)●(延べ世帯数)=●(省略)●円ライセンス料等収入(月額単価×延べ契約数)ライセンス料等収入の累積合計売上げにIPカメラを利用する割合を乗じた売上げは,以下の合計●(省略)●円である。

① ケーブルテレビ局のライセンス料●(省略)●円(計算式)●(省略)●円/月×●(省略)●(延べ契約数)×●(省略)●パーセント=●(省略)●円

② ケーブルテレビ局の加入一時金(各社合計)●(省略)●円(計算式)●(省略)●円×●(省略)●パーセント=●(省略)●万円

③ 事業者向けサービスのライセンス料●(省略)●円(計算式)●(省略)●円/月×●(省略)●(延べ契約数)×●(省略)●パーセント=●(省略)●円機器販売スタータキットのうちIPカメラを含むセット(スターターキットタイプA)及びIPカメラ単体の販売に係る売上げは, (省略)● ●円である。イ 実施料相当額の算定特許法102条3項による損害を算定する基礎となる実施に対し受けるべき料率は,①当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ,

②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能性,③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様,④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである。

①については,本件について,あえて近い分野を指摘するならば「電子・通信用部品(イニシアル無)」であるところ,同技術分野における「業界における実施料」の最頻値は1パーセントである。また,被告は,原告に対して本件各特許について他社と実施許諾契約を結ぶことができたのか否か,できたとすればその内容について任意の開示を要請するなどしたが,原告はそれらを開示しなかったのであり,そのような経緯に鑑みれば,本件各発明の実施許諾を受けるに値すると評価した企業は一社も無く,実際には実施許諾契約は存在しない。

②については,被告システムの売上げは伸びておらず,大幅な赤字を計上している。また,被告システムが本件各発明の技術的範囲に属するとしても,容易に実施可能な代替技術が存在するから,本件各発明の被告システムの売上げに寄与する貢献度は極めて小さいといえる。例えば,本件各発明において「管理コンピュータ側は…監視端末側の制御部に働きかけていく手段」(構成要件1Dⅲ,2Dⅲ)を構成要件とするところ,同構成を撤去したとしても機能としては実質的に変わらない。さらに,本件各発明はいずれも特開2002-9868号に記載の発明と実質的に同一であるから特許性が乏しいものである。

③については,被告は,ケーブルテレビサービスの会員網や東急電鉄の中刷り広告を利用し,東急沿線に住む住民に対して利用者獲得キャンペーンを大々的に行うなど,利用者獲得のために多大な努力をし,被告の親会社である東急電鉄株式会社の知名度を最大限利用し,販促努力を尽くしているものであって,それにもかかわらず被告システムに係る事業は赤字となっているのであるから,本件各発明が売上げに寄与する貢献度は低いといわざるを得ない。

④については,特許権者である原告は被告と同様のビジネスを営んでいないから競業関係にない。原告は,過去,上記のビジネスに進出したものの採算に見合うだけの利用者を獲得することができなかったために撤退したものであり,この事実からも,このようなビジネスモデルにおいて採算に見合うだけの利用者を獲得することは困難であることがうかがわれる。仮に,被告が採算に見合うだけの利用者を獲得することができたとすれば,それは特許発明の貢献ではなく,親会社である東急電鉄の知名度,宣伝広告活動,及び販促活動に依拠するものである。これらの事情を総合的に勘案すれば,本件訴訟における特許法102条3項に基づく相当な実施料率は1パーセントが妥当であり,これを大きく上回ることはない。帝国データバンクの「国内企業のロイヤルティ料率に関するアンケート結果」を考慮しても,産業分野を通信・通信装置とする特許のロイヤルティ料率(2.9パーセント)や平成16年から平成20年までの産業分野を電気とする司法決定によるロイヤルティ料率の平均値(3.0パーセント)を超えることはない。以上によれば,特許法102条3項に基づく発明の実施に対し原告が受けるべき金額は●(省略)●円(●(省略)●円×1パーセント)となる。なお,弁護士・弁理士費用として認められる金額が損害額の1割であるとすれば●(省略)●円となる。原告の差止等請求が権利濫用であるか(争点6)(被告の主張)本件各特許は登録後14年経過しており,満了まで約1年半という段階に至っている。それにもかかわらず,現在に至っても本件各特許は実施許諾されていない。原告の訴訟態度は,多数の一般需要者に公的なインフラであるスマートホームに関するサービスを提供している被告が事業を中止するとなれば,これらの需要者に迷惑が掛かることとなり,ひいては被告が極めて厳しい立場に置かれるという現状を奇貨として,本件訴訟において判決で認容される程度を桁違いに超えた3億円以上の和解金を請求するものであって,パテントトロールの訴訟態度そのものであり,発明の保護及び利用を図ることにより,発明を奨励し,もつて産業の発達に寄与することを目的とするという特許法1条所定の目的とはかけ離れたものである。したがって,原告の被告に対する差止請求は,権利濫用として許されないというべきである。(原告の主張)原告は,最先端のIT技術を有するいわゆるベンチャー企業であり,今から約18年前,本件発明のプロトタイプを完成させるとともに,それらを本件発明を含む特許群により保護するとともに,モバイル画像監視システムを事業化した。当該モバイル画像監視システムは,時代を先取りする画期的なパイオニア発明だったが,インフラ整備が十分に整っておらず,現在のようにスマートフォンのような情報端末が一般人に普及していなかったため,利用者を獲得することが難しく,維持費もかさんで赤字経営となり,モバイル画像監視システムのサービスに関する事業の継続を断念したという経緯がある。善意の研究開発をしているベンチャー企業である原告が非難されるいわれはない。原告は,被告が本件各発明を実施していることを知り,被告にライセンス契約を締結するための交渉を求めた。和解交渉の当初,原告は,被告の侵害状況を十分に把握していなかったので1億円の許諾料を提示した。しかし,被告は非充足及び無効事由の存在を理由に和解に一切応じず,原告が許諾料について1500万円に譲歩してもその態度は変わらなかった。原告は,さまざまな契約上の制約を考慮しつつ和解交渉に臨んでいたのに対し,被告は,本件訴訟前であれば廉価な対価で済んだにもかかわらず,経営判断を誤って徹底的に争った結果,訴訟において特許権侵害に当たるとされたのであるから,差止めのリスクを負うのは当然である。

第3 当裁判所の判断

1 被告システムが本件各発明の技術的範囲に属するか否か(争点1)について

本件明細書1には,本件発明1の課題及びその解決手段等について,以下の記載がある(なお,本件明細書2の【0001】ないし【0008】にも,基本的に同じ記載があり,異なるのは,特許請求の範囲に記載された構成に対応する記載のみである。。)ア 技術分野「本発明は,通信回線を用いて監視端末が設置された特定領域を,利用者が所有する電話やパソコン等の情報端末を用いて,外出先からでも監視することを可能とする通信回線を用いた情報供給システムに関する。(」【0001】)イ 背景技術「従来より,家を留守にした場合,泥棒の侵入や火気の始末を気にしなければならず,今日のような治安情勢の悪化に伴い,ますますこのような心配は増すばかりである。そのため,近年警備会社と契約を行うことにより,泥棒の侵入や火災等の発生を未然に防止する警備代行業務を行ってもらう個人宅,会社等が増加している。【0002】( )「現状の警備システムとして,所定のセンサー等を配備した家屋等に泥棒が侵入した場合,センサーの反応による警備会社への通報で警備会社の警備員がその家屋に急行するシステムがある。【0003】( )「しかし,このようなマンパワーを利用するシステムであっては,警備員の人件費が極めて高い割合を占めるため,加入契約料が一般大衆にとって多大なものとなり,これ以上の急激な増加は望めないのが現状である。 (」【0004】)「このため,通信回線(有線,無線を含む)を利用して,必要な時,また心配になった時に限らず,頻繁に断続的にでも特定領域である例えば自宅内の様子を監視できるようにしたいといった要求がある。(」【0005】)ウ 発明が解決しようとする課題「しかしながら,これら監視システムにおいては,前記監視端末に通信回線を介して特定以外の人間がアクセスして監視領域の画像等の監視情報を入手することができてしまうと,プライバシーが保護されなくなってしまうという問題があり,これら特定者以外の第三者が監視端末より監視情報を入手することが不可能なシステムが切望されていた。(」【0006】)「よって,本発明は上記した問題点に着目してなされたもので,常時接続回線を利用しているにも関わらず,特定者以外の第三者が監視端末より監視情報を入手することがきわめて困難で,かつ登録された利用者には,きわめて迅速に必要な監視情報を供給できるようにした通信回線を用いた情報供給システムを提供することを目的としている。(」【0007】)エ 課題を解決するための手段「上記目的を達成するために,本発明の情報供給システムは,インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置されている管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって,前記管理コンピュータ側には,監視目的に応じて適宜選択される監視手段を有する監視端末側に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベースを備え,前記監視端末側は前記管理コンピュータ側と前記通信回線網を介して接続可能とされており,前記管理コンピュータ側は,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号,ID番号,アドレスデータ,パスワード,さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つからなる利用者IDである特定情報を入手する手段と,この入手した特定情報が,前記利用者データベースに予め登録された監視端末情報に対応するか否かの検索を行う手段と,前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけていく手段と,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末側によって得られた情報を入手する手段と,この監視端末側から入手した情報を,インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスした利用者に供給する手段と,特定できる監視端末側から前記管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して接続する接続処理を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段と,を備えていることを特徴としている。」「前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけ,前記管理コンピュータが,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末によって得られた情報を入手するステップ時,監視端末に接続不能な状態,若しくは監視端末からの情報が前記管理コンピュータに送信されてこない状態が,前記管理コンピュータで確認された時に,所定の異常通知をアクセスした利用者に送信できるようになっていると好ましい。すなわち管理コンピュータでデータを待つ時間を所定の時間と設定し,セッション管理することにより,待ち時間内にデータが得られないとき,アクセスしてきた利用者をいつまでもも待たせることなく情報が取れない旨のメッセージを送ることによりサービスの向上が図れる。(以上につき,」 【0008】)本件明細書によれば,本件各発明の意義は,本件各発明の構成をとることによって,通信回線を利用した監視システムにおいて,常時接続回線を利用した場合に利用者以外の第三者が監視端末から監視情報を入手することを困難にするとともに,利用者には迅速に必要な監視情報を供給できるという点にあるといえる。「IPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベース」(構成要件1(1)B及びDⅱ,2B及びDⅱ)の充足性(争点1-1-1)(争点1-1-1)ア 本件明細書1には,監視時の動作及びIPアドレスの登録,変更等に関し,以下の記載がある(なお,本件明細書2の【0025】ないし【0027】【0029】【0030】【0034】ないし【0041】にも,同様の記載がある。。)「本実施例の監視システムにおける監視処理の流れについて,図7のフロー図に基づき説明すると,まず利用者Aは,外出先等において,監視端末1が設置されている自宅の様子が不安になった場合に,例えば自分が所持している携帯電話11から前記監視サービス提供者が所有する管理コンピュータ3にインターネットアクセスし,ガイダンスに従って自分の利用者IDと暗証番号とを,携帯電話11を操作して入力する。(」【0025】)「管理コンピュータ3側においては,利用者Aの前記携帯電話11より送信されてきた利用者IDと暗証番号とを,前記記憶装置35に記憶されている利用者DBの登録データと比較し,比較が一致して正規利用者と判断された場合において,管理コンピュータは,利用者に対応する監視端末または監視ユニットが複数あるか否かを検索し,複数ある場合,利用者に対してアクセス可能な監視端末または監視ユニットの種類やメニューを表示し,得たい情報の選択を促すようになっている。(」【0026】)「つづいて該利用者DBを用いて検索エンジンで検索を行い,この利用者DBに利用者IDに対応付けて登録されている監視端末側のIPアドレス(常時接続のISPが割り振っているアドレス)を抽出し,例えば利用者Aに対応するものが監視端末4aである場合,該当する監視端末4aを構成するここでは監視ユニット1に対して,通常常時接続状態のインターネット回線を利用して監視端末側のIPアドレスに特別な制御信号(コマンドデータ)を送信する。この制御信号は,画像等の情報を取得して管理コンピュータ側へ送るように指示する要求信号であればどのような信号でも良いが,不正アクセス防止のために暗号化され,監視端末側で複合化処理をすると好ましい。(」【0026】)「前記制御信号(コマンドデータ)を受けて正規な管理コンピュータからの要求であると判断した監視ユニット1は,これら起動状態にある監視用CCDカメラ55により撮影された画像データ,並びに前記集音マイク53により集音され前記PCMコーデック52によりデジタル化された音データは,前記DSP56により所定のデータ圧縮方式であるMPEG方式(JPEG方式など)により圧縮データに変換され,該圧縮データが前記通信部60よりセットトップボックス2に送られ,管理コンピュータ3にインターネット網を介して監視用通信回線基板38を通じて送られるようになっている。(」【0027】)「管理コンピュータ3側の監視端末用通信回線基板38およびCPU31は,接続されている各監視端末4の特定を行っており,管理コンピュータ3がコマンドデータである制御信号を送信したことにより,各監視端末4から送信されてくる画像情報などは,監視端末側に振られたIPアドレスや所定のIDとが登録された利用者データベース(DB)を利用して処理される。」(【0029】)「つまりは前記において管理コンピュータ3が本来呼び出した所定の監視端末4aからの画像情報などは,監視端末側に振られたIPアドレスや所定のIDに基づいて,対応するアクセス者(利用者A)にデータが送信される。(」【0030】)「始めに管理コンピュータ3と監視端末4との回線接続を行うときは,管理コンピュータ3側の監視端末用通信回線基板38は,監視端末側から送信されるIPアドレスや所定のIDを受け付け,監視端末側に振られたIPアドレスや所定のIDとが登録された利用者データベース(DB)を利用して,前記CPU31で検索し,この送信内容が正規の監視端末4aからのものであるかを確認して回線接続を完了する。(」【0034】)「ここで,前記したように監視端末側はISPからIPアドレスが割り振られているが,ISPの都合や,停電や,一時的回線切断等が生じると,ISPであるプロバイダーは次に常時接続の状態に処理する際,監視端末側に新たなIPアドレスを振り直すことが多々生じる。このような事態になると,すでに管理コンピュータ側の利用者DBに登録された監視端末の住所であるIPアドレスの変更を余技なす(注・原文ママ)されることになる。そこで監視ユニット1内の前記MPU65は,基本的に通信部71の制御を行っているわけであるが,IPアドレスの管理(図7に示されるIPアドレス管理部としての機能)も行っており,現在与えられたIPアドレスは常時メモリーされている。(」【0035】)「一時的回線切断時にあっては,このMPU65は,前述の接続開始時の処理と同様,インターネットの再接続時,必ず内部ROM66にメモリーされた管理コンピュータ3のグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理する機能が設けられており,新たなIPアドレスを登録するように要求できる自己接続機能を有している。(」【0036】)「すなわちIPアドレスが変更された場合は,この新しいIPアドレスをメモリーし,更新処理を行う。続いて管理コンピュータ3のグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理を開始する。この接続処理にあっては,利用者データベース(DB)に記録されている監視端末側に振られたIPアドレスとともに登録された所定のID,すなわち監視端末IDを接続用のパラメータとして管理コンピュータに送り,新たなIPアドレスを登録するように要求する。(」【0037】)「接続状態でIPアドレスが変更された場合は,前記MPU65は,現在のIPアドレスと新しく与えられたIPアドレスとの違いを判断し,相違する場合は,内部ROM66にメモリーされた管理コンピュータ3のグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理し,新たなIPアドレスを登録するように要求できる自己接続機能を有している。【0038】( )「すなわち図8に示されるように,MPU65の機能として,IPアドレスに変更が発生したか否かの判断をする。変更がない時には,待機状態を維持する。変更された場合は,この新しいIPアドレスをメモリーし,更新処理を行う。続いて管理コンピュータ3のグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理を開始する。この接続処理にあっては,利用者データベース(DB)に記録されている監視端末側に振られたIPアドレスとともに登録された所定のID,すなわち監視端末IDを接続用のパラメータとして管理コンピュータに送り,新たなIPアドレスを登録するように要求する。 (」【0039】)「管理コンピュータ側は,図9に示されるように,接続に際して監視端末IDである接続用のパラメータの有無を判断する。接続用のパラメータが送られてこない場合は,アクセスの拒否を行う。接続用のパラメータが送られて来ており,この監視端末IDが利用者データベース(DB)に登録されている場合は,接続処理を行う。つづいて利用者データベース(DB)から対象の監視端末を検索,抽出する。さらに利用者データベース(DB)の古いIPアドレスに代えて新たなIPアドレスを更新処理する。 (」【0040】)「また,監視端末が,常時接続状態のままIPアドレスが変更された場合,またはインターネットの再接続可能時,監視端末は,その内部にメモリーされた管理コンピュータのグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理する機能が設けられており,自己の古いIPアドレスを基にその時点手(注・原文ママ)付与されているIPアドレスを更新登録するように要求できる自己接続機能を持たせることもできる。この例の場合は,既に利用者データベース(DB) に,監視端末に対応する古いIPアドレスがメモリーされており,これによっても接続してくる監視端末の認証が可能である為,この認証でIPアドレスを更新登録要求に応じても良い。(」【0041】)イ 「データベース」とは,一般に「系統的に整理・管理された情報の集まり。特にコンピュータで,様々な情報検索に高速に対応できるように大量のデータを統一的に管理したファイル。また,そのファイルを管理するシステム。」を意味する(乙29)から,データを管理するファイルを管理するシステムそれ自体もデータベースということができる場合があると解することができる。また,「IPアドレス…を含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベース」(構成要件1(1)B,2B)や「利用者データベースに予め登録された監視端末情報」(構成要件1(1)Dⅲ,2Dⅱ)という特許請求の範囲の記載に照らせば,本件各発明における「利用者データベース」は,「監視端末情報(IPアドレス)」と「利用者ID」とが対応付けて記憶されたものを意味していると理解することができる一方,その記憶の態様や方法等についての限定はない。本件明細書には,前記アのとおり,本件各発明の実施例として,利用者は利用者IDと暗証番号とを入力し,それを受けて,管理コンピュータは利用者IDと暗証番号について利用者DBの登録データと比較して正規利用者か否かを判断し,正規利用者である場合には,利用者DBを用いて検索エンジンで検索を行い,利用者DBに利用者IDに対応付けて登録されている監視端末側のIPアドレスを抽出し,監視端末側のIPアドレスに特別な制御信号を送信して画像情報等を送るように求め,それらの画像情報等は,利用者データベース(DB)を利用して監視端末側のIPアドレスや所定のIDに対応する利用者に送信される発明が記載されている(【0025】【0026】【0027】【0029】【0030】等)。そして,このような機能等を実現するためには,監視端末の「監視端末情報(IPアドレス等)」と利用者の「利用者ID」とが利用者データベースにおいて対応付けて記憶されていれば足りる。したがって,実施例に照らしても,本件各発明における「利用者データベース」は,「監視端末情報(IPアドレス)」と「利用者ID」とが対応付けて記憶されていればよいことが理解できるといえる。また,本件明細書に,その記憶の態様や方法等が限定されることについての記載はない。被告システムは,サーバー⑥において,IPカメラ④等と通信するインテリジェントホームゲートウェイ③側に対して付与されたグローバルIPアドレスと監視端末情報(インテリジェントホームゲートウェイ③の機器ID等)とがユーザID(ユーザ名,パスワード)に対応付けられており(構成1(1)b,2b),ユーザ名・パスワードに対応する場所(ユーザ宅)の画像や情報のみがユーザに配信されるようになっている(構成1(1)dⅱ,2dⅱ) そして,。 ユーザ名・パスワードに対応する画像や情報のみがユーザに配信されるためには,利用者IDやパスワードと監視端末情報とが対応関係にある必要があるから,その画像や情報の配信時点では,利用者IDやパスワードと監視端末情報とが被告システムのメモリーに対応付けられて記憶されているといえる。したがって,被告システムでは「監視端末情報(IPアドレス)」と「利用者ID」とが対応付けて記憶されているものといえ,構成要件1(1)B,1Dⅱ,2B,2Dⅱを充足する。これに対し,被告は,構成要件1(1)B,2B等のIPアドレス及び利用者IDが「利用者データベース」に「登録」されるとは,これらの情報が統一的に管理されているファイルが常時記憶されていることを意味するところ,被告システムにおける管理コンピュータの記憶部には「利用者ID」のみが登録されており,グローバルIPアドレスは,別の一時記憶(揮発性メモリー)に一時記憶されているにすぎないから,被告システムにおいては,監視端末に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が「利用者データベース」に「登録」されているとはいえないと主張するが,上記の説示に照らして

(被告の主張)

は採用できない。「接続処理を受け付け…IPアドレスを変更処理する手段」 構成要件1( (1)Dⅵ),「IPアドレス登録要求を受け付け…IPアドレスを登録処理する手段」(構成要件2Dⅵ),「自己接続機能と…IPアドレスを登録するように要求する手段」(構成要件2E)の充足性(争点1-1-2)本件明細書には, 監視端末のIPアドレスが変更された場合,管理コンピュータ3のIPアドレスに対して自ら接続処理を開始し,その際,監視端末IDなどの接続用のパラメータを管理コンピュータに送って当該監視端末の新たなIPアドレスを登録するように要求し,管理コンピュータ側は,送付された接続用のパラメータに基づきこの監視端末が利用者データベースに登録されていると判断した場合に監視端末との間で接続処理を行い,利用者データベースから当該監視端末を検索,抽出し,利用者データベースに登録されていた古いIPアドレスに代えて新たなIPアドレスを更新処理するという本件各発明の実施例が記載されている 【0036】( ないし【0041】。)これらの一連の動作は,「接続処理を受け付け」る手段(構成要件1(1)Dⅵ)「IPアドレス登録要求を受け付け…IPアドレスを登録処理する手段」,(構成要件2Dⅵ),「自己接続機能と…IPアドレスを登録するように要求する手段」「IPアドレスを変更処理する手段」(構成要件1(1)Dⅵ)であるといえる。被告システムにおいては,インテリジェントホームゲートウェイ③の電源をOFFからONにして,一定時間が経過した後,前述の会員専用のポータルサイトにログインすると被告のサービスを利用することができる状態になる(構成1(1)1dⅵ)。この場合,インテリジェントホームでは,電源がOFFにされたことにより,古いIPアドレスが消去されて新たに割り振られたIPアドレスが記憶されていると考えられる。そして,その場合,サーバーからインテリジェントホームへの接続はできない状態にあるから,新たに割り振られたIPアドレスが記憶されたインテリジェントホームからサーバーに接続を求めることになり,その後,サーバーはその新たなIPアドレスを用いてインテリジェントホームとの間で各種動作等を行うことになり,そのような動作等の前提として,サーバーはインテリジェントホームの古いIPアドレスに代えて最新のIPアドレスを登録しているものと推認できる。これらの被告システムにおける一連の動作は,「IPアドレスを変更処理する手段」(構成要件1(1)Dⅵ)「接続処理を受け付け」る手段(構成要件1,

(1)Dⅵ)「IPアドレス登録要求を受け付け…IPアドレスを登録処理す

,る手段」(構成要件2Dⅵ)「自己接続機能と…IPアドレスを登録するよう,に要求する手段」に相当するといえるから,各構成要件を充足する。これに対し,被告は,上記の各構成要件のうち「変更処理」に関し,古いIPアドレスが消去され,そのような状態が継続していたところ,再び常時接続がされたことにより新しいIPアドレスが書き込まれる態様は,管理コンピュータ側に監視端末のIPアドレスが存在せず,変更処理を行う対象が存在しないから「変更処理」に該当しないと主張する。しかし,「変更」とは,一般に「変えあらためる」という意味であり(乙28) その文言の一般的な意味に照らし,ても,被告が主張する態様も,従前の古いIPアドレスが新しいIPアドレスに変えられる態様の一つともいえる。また,被告システムにおいて監視端末のIPアドレスが消去された場合には,データベースにはIPアドレスとして用いられないデータ(無効なIPアドレス)が登録されていることに等しいともいえるから,IPアドレスの消去後の態様のみを見たとしてもデータベースに新しいIPアドレスを登録することは無効なIPアドレスを新しいIPアドレスに「変更処理」するものであるといえないものでもない。被告システムにおいては「変更処理」が行われているといえるから,

(被告の主張)

は採用できない。各種センサーを使用した被告システムの「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段と…監視端末(側)から入手した情報を…利用者に供給する手段」(構成要件1(1)Dⅲないしⅴ,1(2)A,2Dⅲないしⅴ)の充足性(争点1-2)被告システムにおいて各種センサーを使用した場合,被告システムでは,センサーの監視対象についての状態が表示されるとともに,センサーにおける温度,バッテリーレベルの残量,電波の信号強度が表示され,利用者はセンサーの有効/無効を切り替えることができる(構成1(1)dⅴの⒜,⒝,2dⅴ)。原告は,本件各発明の「監視端末(側)によって得られた情報」には,各種センサーについての有効/無効,温度,バッテリーレベル,信号強度等の設定状態情報も含まれると主張する。本件各発明に係る特許請求の範囲には「監視端末によって得られた情報」と記載されている。その文言から,その「情報」は,監視端末「によって」得られた情報であり,対象を監視する端末を監視端末というのであるから, 「情その報」 監視端末の監視対象に関する情報であるとすることが自然といい得る。は,【0005】【0006】【0007】等)によれば,本件各発明の課題に関係して,「頻繁に断続的にでも特定領域である例えば自宅内の様子を監視できるようにしたいという要求がある。「これら監視システム」においては,前記監視端末に通信回線を介して特定以外の人間がアクセスして監視領域の画像等の監視情報を入手することができてしまうと,プライバシーが保護されなくなってしまうという問題があり,これら特定者以外の第三者が監視端末より監視情報を入手することが不可能なシステムが切望されていた。,」「特定者以外の第三者が監視端末より監視情報を入手することがきわめて困難で,かつ登録された利用者には,きわめて迅速に必要な監視情報を供給できるようにした通信回線を用いた情報供給システムを提供する」との記載がある。本件明細書における本件各発明の課題等の記載によれば,特定領域の様子を監視できるようにしたいといった要求があったところ,特定の者以外の者が監視領域の画像等の監視情報を入手できると問題であり,本件各発明では,

第三者が,監視端末からそのような監視情報を入手することが極めて困難にな

るというものである。これらからすると,本件各発明における「監視端末によって得られた情報」は,監視手段によって得られた監視対象に関する情報(「監視情報」)であることを前提としているといえる。したがって,本件各発明において,各種センサーの動作等の状態そのものを示す情報,すなわち設定状態情報は,「監視端末によって得られた情報」に当たらないと解される。以上によれば,センサーの有効/無効,温度,バッテリーレベル,信号強度等の設定状態情報が「監視端末によって得られた情報」に該当することを前提とした

(原告の主張)

には理由がない。また,各種センサーを使用した被告システムにおいて,利用者がサーバーに監視情報を入手するためにアクセスする場合,監視情報の入手の方法には技術的に様々な態様があり得るところ,被告システムにおいてサーバーがインタネットホームゲートウェイ側に働きかけて各種センサーの設定状態情報その他の情報を入手していることを認めるに足りる証拠はないといえるから,各種センサーを使用した被告システムは「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段」を充足しない。以上によれば,各種センサーを使用した被告システムは,構成要件1(1)Dⅲないしⅴ,2Dⅲないしⅴを充足しない。「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段と…監視端末(側)から入手した情報を…利用者に供給する手段」(構成要件1(1)Dⅲないしⅴ,1(2)A,2Dⅲないしⅴ)の充足性(争点1-3-2)本件各発明に係る特許請求の範囲には「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段」(構成要件1(1)Dⅲ,2Dⅲ)と記載されている。ここで,本件明細書の発明が解決しようとする課題(【0005】ないし【0007】)には,通信回線を利用して,必要な時に,頻繁に断続的にでも特定領域である例えば自宅内の様子を監視できるようにしたいといった要求があることを前提として,本件各発明は,特定者以外の第三者が監視端末より監視情報を入手することが極めて困難で,かつ登録された利用者には,極めて迅速に必要な監視情報を供給できるようにした通信回線を用いた情報供給システムを提供することを目的としたものであると記載されている。そして,具体的な構成として,利用者が管理コンピュータにアクセスした際,管理コンピュータは監視端末に対して,監視のために「画像等の情報を取得して管理コンピュータ側に送るように指示」することによって,監視端末から「画像等の情報」を入手することが記載されているといえる 【0026】。( ) 他方で,監視とは関係のない指示によって,当該「画像等の情報」を入手することに関して記載されているとはいえず,また,出願時の技術常識を参酌し,監視とは関係のない指示によって当該監視に用いるための「画像等の情報」を入手するための具体的技術事項が想定できるともいえない。これらの発明の課題等を含む本件明細書の記載からすると,「働きかけていく手段」は,監視端末により取得された監視のための情報の入手及びその情報の利用者への供給を前提とした働きかけを意味するものであると解するのが相当である。被告システムでは,スマートロックを使用すると現在の施錠/解錠の状態が画面に表示されて利用者が施錠/解錠の遠隔操作をすることができ,スマートライトを使用すると現在の照明の状態(明るさ,消費電力)が画面に表示されて利用者が照明のON/OFFや,その明るさの調整についての遠隔操作をすることができる(構成1(1)dⅴの⒞,⒟,2dⅴの⒞,⒟)。しかし,スマートロックやスマートライトにおける利用者の要求(働きかけ)は,施錠又はライトのON又はOFFという遠隔操作を目的とするものであって,そのような利用者の作為は監視端末(側)によって得られた監視のための情報を入手することを目的としていないから,本件各発明の「働きかけていく手段」に対応するとはいえない。したがって,その余の争点を判断するまでもなく,スマートライトやスマートロックを使用した被告システムは構成要件1(1)Dⅲないしⅴ,2Dⅲないしⅴを充足しない。家電コントローラーを使用した被告システムにおける「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段と…監視端末(側)から入手した情報を…利用者に供給する手段」(構成要件1(1)Dⅲないしⅴ,1(2)A,2Dⅲないしⅴ)の充足性(争点1-4-2)家電コントローラーを使用した被告システムでは,エアコンのON/OFF,冷暖房温度設定,照明の点灯・消灯を操作するための画面が表示され,利用者がそれらについての遠隔操作をすることができる(構成1(1)dⅴの⒠,構成2dの⒠)。原告は,家電コントローラーを使用した被告システムは,サーバーを経由してインテリジェントホームゲートウェイに送られる利用者の要求(エアコンのON又はOFF,温度設定等)に応じてエアコンのON又はOFF,並びに温度設定状況,加えて現在の室内温度などを取得し,インテリジェントホームゲートウェイ及びサーバーを経由してそれを利用者に提供することから,「監視端末(側)の制御部に働きかけていく手段と…監視端末(側)によって得られた情報を入手する手段」(構成要件1(1)Dⅲないしⅴ,2Dⅲないしⅴ)を充足すると主張する。しかし,本件各証拠によっても,家電コントローラーを使用した被告システムの詳細は明らかではない。家電コントローラーは,赤外線で操作できる家電をWi-Fiを利用してスマートフォン等から操作するデバイスであり,具体的には,インテリジェントホームゲートウェイが家電コントローラーに接続し,その家電コントローラーが家電に接続して,当該家電を遠隔操作するものである(乙48・7~8頁)。そうすると,インテリジェントホームゲートウェイが家電に情報を入手するための働きかけを行ったり,当該情報を入手したりすることはしていない可能性などもないわけではない。したがって,家電コントローラーを使用した被告システムは構成要件1(1)Dⅲないしⅴ,2Dⅲないしⅴを充足していると認めることはできない。結論以上によれば,IPカメラを使用した被告システムは本件発明1(1) 2),(及び本件発明2の構成要件を充足する。他方,それ以外のデバイスを使用した被告システムは本件発明1(1)(2)及び本件発明2の構成要件を充足しな,い。

2 本件発明1(1)に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争

点2)無効理由1(乙10国際公開を主引例とする新規性・進歩性欠如)(争点2-1)ア 乙10国際公開は,発明の名称を「リモートセンサーにアクセスするための暗号化されたヴァーチャル・プライベート・ネットワーク」とする国際公開であり,以下の記載がある。(甲24,乙10)「発明の分野 本発明は,一般にリモートセンサーにアクセスするためのシステムに関し,より明確には,リモートカメラからの画像にアクセスするための暗号化されたヴァーチャル・プライベート・ネットワークに関する。」(1頁4から6行)「親,保護者,または親戚がセンサーサーバーにログインし,認証されると,すべての通信がセキュリティのために暗号化される。(1頁下から2行」~最終行)「一実施例において,センタ130などのような保育所とセンサーサーバー110との間のリンク120は,公衆交換電話網(PSTN)を介して動作する暗号化されたヴァーチャル・プライベート・ネットワークからなる。ヴァーチャル・プライベート・ネットワークは,別のネットワークの上に置き換えられるが,暗号化やその他のセキュリティ手段によって分離されたネットワークである。この場合,データは,インターネットや,長距離などのために使用されるデータラインなどに沿って移動するが,データのすべてまたは一部の傍受は,暗号化によって保護されるのでデータへの不正アクセスを発生させない。センサーサーバー110と140などの遠隔センサーモニタとの間のリンク120’は,暗号化されたヴァーチャル・プライベート・ネットワークからなる。システム100は2つのリンクのみで構成され,各リンクは非常に強力な暗号化を用いたVPNであるため,システム100は,システムに不正にアクセスし,認証された以外の人によって画像を見ることを可能にすることを目的とする攻撃に強力である。(4頁20から29行)」「図1」「保育所130とセンサーサーバー110との間の通信及びセンサーサーバー110とモニター140における認証された視聴者との間の通信は,PSTNなどのようなパケット交換ネットワークの利用を介して促進される。情報は,センタ130におけるルータ,DSLモデム,ISDNモデムルータ,ケーブルモデム,及び,マルチリンクポイント-ポイントモデムなどの電話アクセス装置を使用して,PSTN上を通過し,移動する。(4頁2」9から33行)「概略的には,システム100は,認証されたユーザが現在の写真についての依頼をセンサーサーバー110に行うことを可能にし,さらに,センサーサーバー110がセンタ130におけるビデオカメラなどのセンサーからその写真を取得し,最終的に要求された画像をセンサーサーバー110からモニター140にて認証されたユーザに搬送することを可能にする。(5」頁8から10行)「本フレームワークにおいて,センサーサーバー110は,カメラとユーザとの間の中継機として動作する。(5頁12行)」「両親がアカウントを取得したい場合は,システムWebページ,ホームページ,またはハイパーリンクされたページからフォームにアクセスする。…フォームが提出されると,一時的なパスワードが提供され,アカウントが有効になったらシステムにアクセスできる。(6頁4行~8行)」「図2を参照すると,ログイン及び認証後に両親に提示される画面例200が示される。画面例は,左上ペイン210,左下ペイン220,右側に一つのペイン230がある3つのフレームウィンドウを有する。左上ペイン210は,始めに当日又は広告の情報を提示する。センサーが有効になると,フレーム210は,カメラからの画像を提示する。画像に関連する日時エリア212は,ペイン210に提示される。左下ペインは,両親が視聴可能なカメラなどのセンサーのグループをリストする。カメラは,例えば,部屋2

(222),部屋3(224),ジム(226),プレイグラインド(228)

などにある。(6頁22から27行)」「図2」「両親がカ メラのリンク,例えば222をクリックしたとき,左下ペイン220において,センサーサーバー110(図1)は,選択されたカメラから画像を取得し,画像を両親のブラウザに可能な限り即座に送信する。(7頁1から2行)」「時に,カメラは,リンクの停止又は他の技術的問題によりアクセス不能となる。これが発生したとき,両親には,一時的に利用不能であって,後ほど再度の接続を試行すべきとのメッセージが付与される。(7頁12から1」4行)「図3」「電話会社へのアクセス装置388は,Ravlin-4 wireline暗号化装置などの10-base-Tケーブルを用いた暗号化装置386に接続される」(8頁34から35行)「状態412において,ユーザは,認証を実行するのに必要なデータ,例えば,センタコードや,ユーザ名,パスワードを提供することによって応答する。データは,ライン528上でデータベースサーバー360に送信される。そして,データベースサーバー360は,そのセンタコードによりデータベース362にアクセスする。データベースサーバー360は,その特定のセンタについてのユーザ名及びパスワードの組み合わせの全てをチェックし,ユーザが入力したユーザ名を検索する。そして,判断状態414に進み,パスワードが比較される。ユーザが入力したパスワードがデータベース362にあるパスワードと一致しない場合,プロセス400は,判定状態416に進み,認証データの入力試行制限に到達しているか否かを判定する。」(12頁8から14行)「判断状態414に戻ると,ユーザ名及びパスワードがデータベース362にあるユーザ名及びパスワードと一致した場合,プロセス400が状態420に移動し,ユーザは,ウエブサイトの保護される部分について認証を行う。(12頁18から20行)」「このようにして,複数のユーザが特定のカメラを見ていても,カメラとの接続は1つだけになる。(13頁7行~8行)」「画像取得処理 図6及び図5を参照すると,画像取得処理600が説明される。画像を取得する処理600は,以下の3つを必要とする。取得に際し,取得を開始する契機,取得対象のカメラ,そして,画像を置いておくストレージ媒体。処理600に取得を開始させる契機の例は,ユーザがウエブページ上のセンサーのリンクをクリックすること,又は,時計が予め定められた時間に到達することである。画像が取得されるカメラは,コンピュータネットワーク120を介して処理がアクセス可能な遠隔地にある保育所130(図1)に配置される。画像を保存するデータストレージ362(図3及び図5)の例は,データサーバー360にあるディスクドライブである。」(15頁8から15行)「処理600は,休止又は非アクティブモードになることなく常に画像サーバー330で動作している。処理600は,開始状態602で開始し,画像取得の契機を受信する状態604に遷移する。決定状態606に進み,処理600が,カメラからの画像の取得及び預かりの契機を受信し,そのカメラが画像を取得する期限が切れていないスレッドを既に有する場合,処理600は,スレッドを複製することはしない。むしろ,処理600は,状態612において既存のスレッドの有効期限(センサーのタイマ)を延長し,状態614に進み,選択されたセンサーにアクセスする。このように,多くのユーザが特定のカメラを見ようと試みていたとしても,実際には,一つのスレッドのみが画像を転送する。状態606で決定されるように特定のカメラが既にアクティブでない場合,処理600は,状態608を持続し,センサー(1)370(図3)についてのスレッド1(550),センサー2(371)についてのスレッド2(552)及びセンサーN(372)についてのスレッドN(554)などの,契機に一致するセンサーのスレッドを開始する。センサースレッドは,カメラ/センサーのサービスを開始する。カメラ/センサーのアドレスは,契機で特定される。状態610に進み,処理600は,センサータイマに所定の時間を設定し,センサータイマを開始する。これらのアクションは,単一の画像の取得及び預かりを行うのではなく,むしろ,設定された時間の間,画像の取得及び預かりを行うことによって,契機への応答を表す。このようにして,処理は,例えば,契機(例えば,ユーザがウエブページ上のリンクをクリック)を受信し,5分間画像の取得及び預かりを行うスレッドを開始する。5分が経つと,スレッドは終了する。」(15頁19から33行)「一実施例において,画像サーバー330は,HTTPを用いて保育所のカメラにコネクションを作成する。コネクションが作成できない場合,画像サーバー330は,(簡単に変更可能な)所定の時間の間,待機し,後ほど試行を行う。画像サーバー330は,所定の回数,コネクション作成を失敗すると,カメラが停止していることを通知する画像をユーザに最初に表示した後,コネクション作成を中止する。(16頁23から26行)」「特定の保育所は,ユーザが「センタコード」を入力したときに決定される。センタは,名前によって識別されることはなく,そして,カメラの実際のネットワークアドレスは,公開されることもない。これは,不適切な意図を持つ承認されていないユーザが,保育所がどこにあるかを探すことを困難にする。(22頁22から25行)」イ 平成9年3月に作成,公開された「Dynamic Host Configuration Protocol」と題する文書(乙19)には,以下の記載がある。「Dynamic Host Configuration Protocol(DHCP)は,TCPIPネットワーク上でホストに構成情報を渡すためのフレームワークを提供する。DHCPは,the Bootstrap Protocol(BOOTP)に基づいており,再利用可能なネットワークアドレス及び追加の構成オプションの自動割当機能を追加する。DHCPは,BOOTPリレイ・エージェントの挙動を取得し,DHCP参加者はBOOTP参加者と相互運用することができる。」ウ 昭和56年9月に作成,公開された「INTERNET PROTOCOL」と題する文書(乙20)には,インターネットヘッダのフォーマットは送信元のアドレスと送信先のアドレスを含まなければならないことが記載されていた。エ 上記アの記載に照らせば,乙10国際公開には,以下の発明が記載されているといえる(以下「乙10発明1」という。。)10A インターネット120/120’からなる通信回線網の中に設置されているセンサーサーバー110に於ける通信回線を用いた情報供給システムであって,10B 前記センサーサーバー110側には,監視目的に応じて適宜選択されるカメラ370,371,372を有する保育所130側に対して付与されたIPアドレスを含む保育所130に関する情報及びカメラの識別子が,ユーザ名に対応付けられて登録されているセンサーサーバー110が有する記憶媒体(データストレージ362など)を備え,10C 前記保育所130側は前記センサーサーバー110側と前記通信回線網を介して接続可能とされており,10D 前記センサーサーバー110側は,i インターネットからなる通信回線網を利用してアクセスしてくるユーザのユーザ名,パスワード,センタコードからなるユーザのIDである特定情報を入手する手段と,ⅱ この入手した特定情報が,前記記憶媒体に予め登録されたユーザ名,パスワード,センタコードに対応するか否かの検索を行う手段と,ⅲ 前記特定情報に対応するユーザ名,パスワード,センタコードが存在する場合,インターネットからなる通信回線網を利用して,この抽出された保育所130に関する情報に基づいて,ユーザがクリックしたウエブページ上のカメラのリンクに対応する保育所130側のカメラ370,371,372にアクセスする手段と,ⅳ インターネットからなる通信回線網を経由して,保育所130側のカメラ370,371,372によって得られた画像を入手する手段と,ⅴ この保育所130側から入手した画像を,インターネットからなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスしたユーザに供給する手段と,を備えている。原告は,上記の10Bの構成は,乙10国際公開には開示されていないと主張する。しかし,乙10国際公開の記載(図1及び12頁8から14行)によれば,乙10国際公開の発明においては保育所(センタ)が複数存在することが想定されており,その場合,センタコードとユーザ情報(ユーザ名及びパスワード)との組合せがサーバーのデータベースに記憶されるのであって,これはセンタコードとユーザ情報とが対応付けられてデータベースに記憶されているに等しいといえる。また,乙10国際公開の記載(図1及び15頁19から33行)によれば,乙10国際公開の発明においては,サーバーは複数の保育所のカメラのうちの1つから画像を取得してユーザに送信しており,そのカメラにはIPアドレスが付与されていることに照らせば,サーバーは保育所側のカメラのIPアドレスと保育所を識別するセンタコードとを対応させて記憶しているといえる。以上によれば,サーバーにおいて,ユーザ情報とセンタコードとが対応付けられて記憶されるとともに,センタコードとセンタ側のIPアドレスとが対応付けられて記憶されており,センタコードを媒介としてセンタ側のIPアドレスとユーザ情報が対応付けられて登録されているといえるから,乙10国際公開の記載から10Bの構成を認定することができる。被告は,乙10国際公開の記載によれば,保育所130におけるDSLモデムとしてADSLを用いることも想定されていて,保育所130におけるDSLモデムとしてADSLを用いる場合には保育所130側のIPアドレスは動的なものになり,保育所130側のIPアドレスが変更された場合には,センサーサーバー110は,それ以降,保育所130側と通信するに際し,変更後のIPアドレスを保育所130側のIPアドレスとして用いることになるから,乙10国際公開に記載された発明は,構成要件1(1)Dⅵに対応する構成を含むと主張する。しかし,ADSL方式は,高速なデータ通信方式の規格であって,ADSLを利用するシステムにおけるIPアドレスは,動的な場合も,固定の場合もあり得る(乙18・10頁) 乙10国際公開に記載された発明において,。DSLモデムは,ルータ,ISDNモデム・ルーター,ケーブルモデム等とともに電話事業者アクセス装置の一例として挙げられているにとどまるところ,その中からDSLモデムを選択し,ADSL方式を採用した場合であっても,そのことをもって,乙10国際公開の発明で動的IPアドレスを利用しているとは断定できない。また,乙10国際公開の発明において,DHCPプロトコルを採用していたとしても,DHCPプロトコルにおいては固定IPアドレスも動的IPアドレスも利用できるから(甲62,乙19・1頁),そのことをもって,乙10国際公開の発明で動的IPアドレスを利用しているとも断定できない。これらによれば,乙10国際公開の発明において,動的IPアドレス方式が採用されているとは認められない。かえって,乙10国際公開の発明では保育所(センタ)のカメラが複数のユーザから常時アクセスされ,かつ,それがウェブページにより閲覧されることを考慮すると,技術常識に照らし,固定IPアドレスを採用している可能性も否定できないというべきである。以上によれば,乙10国際公開の発明が,構成要件1(1)Dⅵに対応する構成を含むとは認められない。オ 上記エを踏まえ,本件発明1(1)と乙10発明1を対比すると,両者の相違点は,「特定できる監視端末側から前記管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して接続する接続処理を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段(構成要件1(1)Dⅵ)」に対応する構成の有無であり,その余の構成で一致するといえる。したがって,本件発明1(1)と乙10発明1には相違点があるから,乙10国際公開を主引例とする新規性欠如の主張には理由がない。カ 被告は,本件発明1(1)と乙10発明1に相違点があったとしても,それは技術的な微差にすぎないなどと主張するが,構成要件1(1)Dⅵの構成の有無が技術的な微差とはいえないことは明らかである。その他,当業者において,乙10発明1から上記相違点に係る本件発明1(1)の構成を容易に想到できたと認めるに足りる事情は見当たらない。したがって,乙10国際公開を主引例とする進歩性欠如の主張には理由がない。キ 結論以上によれば,本件発明1(1)は,乙10国際公開により新規性・進歩性が欠如しているとはいえないから,無効理由1は認められない。無効理由2(乙12公報とのダブルパテント)(争点2-2)ア 特許法39条2項は「同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは,特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる」と規定する。イ 乙12公報は,発明の名称を「通信回線を用いた情報供給システム」とする公開特許公報であり,その特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。(乙12)特許請求の範囲「【請求項1】インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置されている管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって,前記管理コンピュータ側には,監視カメラ,監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視端末に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベースを備え,前記監視端末は前記管理コンピュータ側と前記通信回線網を介して接続可能とされており,前記管理コンピュータは,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号,ID番号,アドレスデータ,パスワード,さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つからなる利用者IDである特定情報を入手する手段と,この入手した特定情報が,前記利用者データベースに予め登録された監視端末情報に対応するか否かの検索を行う手段と,前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけていく手段と,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末によって得られた情報を入手する手段と,この監視端末から入手した情報を,インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスした利用者に供給する手段と,特定できる監視端末側からのIPアドレス変更要求を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段と,を備えていることを特徴とする通信回線を用いた情報供給システム。」発明の詳細な説明「接続状態でIPアドレスが変更された場合は,前記MPU65は,現在のIPアドレスと新しく与えられたIPアドレスとの違いを判断し,相違する場合は,内部ROM66にメモリーされた管理コンピュータ3のグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理し,新たなIPアドレスを登録するように要求できる自己接続機能を有している。(」【0039】)「すなわち図8に示されるように,MPU65の機能として,IPアドレスに変更が発生したか否かの判断をする。変更がない時には,待機状態を維持する。変更された場合は,この新しいIPアドレスをメモリーし,更新処理を行う。続いて管理コンピュータ3のグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理を開始する。この接続処理にあっては,利用者データベース(DB)に記録されている監視端末側に振られたIPアドレスとともに登録された所定のID,すなわち監視端末IDを接続用のパラメータとして管理コンピュータに送り,新たなIPアドレスを登録するように要求する。(」【0040】)「管理コンピュータ側は,図9に示されるように,接続に際して監視端末IDである接続用のパラメータの有無を判断する。接続用のパラメータが送られてこない場合は,アクセスの拒否を行う。接続用のパラメータが送られて来ており,この監視端末IDが利用者データベース(DB)に登録されている場合は,接続処理を行う。つづいて利用者データベース(DB)から対象の監視端末を検索,抽出する。さらに利用者データベース(DB)の古いIPアドレスに代えて新たなIPアドレスを更新処理する。」(【0041】)「また,監視端末が,常時接続状態のままIPアドレスが変更された場合,またはインターネットの再接続可能時,監視端末は,その内部にメモリーされた管理コンピュータのグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理する機能が設けられており,自己の古いIPアドレスを基にその時点手(注・原文ママ)付与されているIPアドレスを更新登録するように要求できる自己接続機能を持たせることもできる。この例の場合は,既に利用者データベース(DB)に,監視端末に対応する古いIPアドレスがメモリーされており,これによっても接続してくる監視端末の認証が可能である為,この認証でIPアドレスを更新登録要求に応じても良い。 【0」(042】)ウ 上記イに照らせば,乙12公報には,以下の乙12発明が記載されている。12A インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置されている管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって,12B 前記管理コンピュータ側には,監視カメラ,監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視端末に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベースを備え,12C 前記監視端末は前記管理コンピュータ側と前記通信回線網を介して接続可能とされており,12D 前記管理コンピュータは,ⅰ インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号,ID番号,アドレスデータ,パスワード,さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つからなる利用者IDである特定情報を入手する手段と,ⅱ この入手した特定情報が,前記利用者データベースに予め登録された監視端末情報に対応するか否かの検索を行う手段と,ⅲ 前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけていく手段と,ⅳ インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末によって得られた情報を入手する手段と,ⅴ この監視端末から入手した情報を,インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスした利用者に供給する手段と,ⅵ 特定できる監視端末側からのIPアドレス変更要求を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段と,を備えている12E ことを特徴とする通信回線を用いた情報供給システム。エ 本件発明1と乙12発明とは,本件発明1では「特定できる監視端末側から前記管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して接続する接続処理を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段と」(構成要件1Dⅵ)であるのに対し,乙12発明では「特定できる監視端末側からのIPアドレス変更要求を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理する手段と」(構成12Dⅵ)である点で相違する。上記の「IPアドレス変更要求」と「グローバルIPアドレスに対して接続する接続処理」とは文言上も異なっているほか,前者は変更要求という作用を特定するものであるのに対し,後者は監視端末と管理コンピュータとの接続形態を特定するものであり,その内容が直ちに同一とはいえない。また,本件明細書の【図8】(乙12公報の【図8】と同一のもの)によれば,接続処理と変更要求とは別個の行為であるとされている。これらによれば,両者は実質的に相違すると認められる。被告は,乙12発明において,監視端末からIPアドレス変更要求を受け付けている以上,監視端末から接続処理を受け付けていることは自明であるからこれらは同一のものであると主張するが,上記に照らしても,上記の接続処理と変更要求とが同一であることを認めるに足りる的確な証拠はない。したがって,本件発明1と乙12発明は,特許法39条2項にいう同一の発明には当たらない。オ 結論以上によれば,本件発明1(1)が乙12発明と同一であり特許法39条2項によって特許を受けることができないものとはいえないから,無効理由2は認められない。無効理由3(分割出願要件違反に基づく進歩性欠如)(争点2-3)ア 本件特許1は,3455971号特許の4世代目の分割出願であり,3455971号特許は,国際公開WO02/001820号として国際公開がされている。分割出願が行われた場合,新たな特許出願(分割出願)は親出願の時にしたものとみなされる(特許法44条2項)ところ,このように出願日の遡及が認められるためには,実体的要件として,①もとの出願の明細書又は図面に二以上の発明が包含されていたこと,②新たな出願に係る発明はもとの出願の明細書又は図面に記載された発明の一部であること,③新たな出願に係る発明は,もとの出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内であることを要するものと解される。イ 国際公開WO02/001820号は,発明の名称を「通信回線を用いた情報供給システム」とする国際公開であり,その請求の範囲には以下の記載がある。(乙24)「1 インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置された管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって,監視カメラ,監視ビデオ等の監視目的に応じて適宜選択される監視端末に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベースを備え,インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号,ID番号,アドレスデータ,パスワード,さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つからなる利用者IDである特定情報を入手するステップと,この入手した特定情報が,前記利用者データベースに予め登録された監視端末情報に対応するか否かの検索ステップと,前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけていくステップと,前記管理コンピュータが,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末によって得られた情報を入手するステップと,この監視端末から入手した情報を,前記管理コンピュータが,インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスした利用者に供給するステップと,前記管理コンピュータが,特定できる監視端末側からのIPアドレス変更要求を受け付け,前記利用者データベースに登録されている前記監視端末情報であるIPアドレスを変更処理するステップと,からなる通信回線を用いた情報供給システム。」「7 前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけ,前記管理コンピュータが,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末によって得られた情報を入手するステップ時,監視端末に接続不能な状態,若しくは監視端末からの情報が前記管理コンピュータに送信されてこない状態が,前記管理コンピュータで確認された時に,所定の異常通知をアクセスした利用者に送信できるようになっている請求項1または6に記載の通信回線を用いた情報供給システム。」ウ 被告は,本件発明1(1)では,管理コンピュータが「監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけていく手段」(構成要件1Dⅲ)を備えているとされているのに対し,国際公開WO02/001820号では「監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけ」と記載されていて,監視端末側の制御部に働きかけていく構成は開示されていないと主張する。しかし,国際公開WO02/001820号には「この利用者DBに利用者IDに対応付けて登録されている監視端末側のIPアドレス(常時接続のISPが割り振っているアドレス)を抽出し,例えば利用者Aに対応するものが監視端末4aである場合,該当する監視端末4aを構成するここでは監視ユニット1に対して,通常常時接続状態のインターネット回線を利用して監視端末側のIPアドレスに特別な制御信号(コマンドデータ)を送信する。この制御信号は,画像等の情報を取得して管理コンピュータ側へ送るように指示する要求信号であればどのような信号でも良いが,不正アクセス防止のために暗号化され,監視端末側で復号化処理をすると好ましい。すなわち,管理コンピュータ3と監視端末4a側の通信制御部,すなわち図4のMPU65と交信し,画像を要求できるシステムになっていればよい。」との記載がある(10頁24行~11頁4行) この記載によれば,。 国際公開WO02/001820号において,監視端末側の制御部に働きかけていく構成が開示されているといえる。したがって,本件発明1(1)に係る分割出願の明細書等に記載された事項が,3455971号特許の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内のものでない旨の

(被告の主張)

は採用できず,本件明細書1及び国際公開WO02/001820号の記載等に照らせば,分割出願の他の実体的要件を満たしているといえる。エ 結論以上によれば,本件特許1は,分割出願の要件を満たしているから,無効理由3は認められない。無効理由4(親出願の分割出願要件違反に基づく進歩性欠如)(争点2-4)ア 本件特許1は,本件特許1の高祖父出願(3455971号特許)の4世代目の分割出願であり,第3世代である特願2003-419617号(本件特許の親出願,乙25公報)を原出願とする分割出願である。この本件特許の親出願は第2世代である特願2003-207491号(本件特許の祖父出願,甲38公報)を原出願とする分割出願である。本件特許1の出願が,本件特許の高祖父出願(3455917号特許)の出願時にしたものとみなされるためには,本件特許1の出願,本件特許の親出願,本件特許の祖父出願が,それぞれ,もとの出願との関係で上記 アに記載した①ないし③の分割出願の実体的要件を満たし,かつ,本件発明1(1)が,本件特許の高祖父出願(3455971号特許)の出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内のものであるという要件を満たさなければならないものと解される。被告は,本件各特許の親出願の請求項1に記載された手段である「監視端末側から送信されてくる情報を待つ時間を設定する情報入手待機時間設定手段」「設定された待機時間内に監視端末側からの情報が送信されてくるか,否かを管理する管理手段」及び「監視端末側から送信されてくる情報に関して監視端末側を特定する特定処理手段」の全部及び一部は,本件各特許の祖父出願の出願当初の明細書等に開示されている事項ではなく,本件各特許の親出願には新たな技術的事項が導入されている旨主張する。イ 本件特許1の親出願である乙25公報は,発明の名称を「通信回線を用いた情報供給システム」とするものであり,以下の記載がある。「【請求項1】インターネット網からなる通信回線網の中に設置されている管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって,前記管理コンピュータ側には,監視目的に応じて適宜選択される監視手段を有する監視端末側に対して付与された監視端末IDを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている利用者データベースを備え,前記監視端末側は前記管理コンピュータ側と前記インターネット網からなる通信回線網を介して接続可能とされており,前記管理コンピュータ側は,インターネット網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者のID番号,アドレスデータ,パスワード,さらには暗号などの認証データの内少なくとも一つからなる利用者IDである特定情報を入手する手段と,この入手した特定情報が,前記利用者データベースに予め登録された監視端末情報に対応するか否かの検索を行う手段と,前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,インターネット網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末側のIPアドレスに対してコマンドデータを送信する手段と,前記コマンドデータが正規な管理コンピュータからの要求であると判断した前記監視端末側から送られる情報をインターネット網からなる通信回線網を経由して入手する手段と,この監視端末側から入手した情報を,インターネット網からなる通信回線網を用いて,前記特定情報を送信してアクセスした利用者に供給する手段と,前記コマンドデータを送信したことにより,監視端末側からインターネット網からなる通信回線網を経由して送信されてくる情報に関して,監視端末側に振られたIPアドレスや監視端末IDを利用して,監視端末側を特定する特定処理手段と,前記コマンドデータを送信したことにより,監視端末側からインターネット網からなる通信回線網を経由して送信されてくる情報を待つ時間を設定する情報入手待機時間設定手段と,前記監視端末によって得られた情報を入手する際,前記情報入手待機時間設定手段により設定された待機時間内に監視端末側からの情報が前記管理コンピュータに送信されてくるか否かを管理する管理手段と,前記管理手段により,前記待機時間内に監視端末側からの情報が前記管理コンピュータに送信されてこないことが判明した時,所定の情報が取れなかったことを表すメッセージをアクセスした利用者に送信するメッセージ送信手段と,を備えていることを特徴とする通信回線を用いた情報供給システム。」ウ 本件特許1の祖父出願である甲38公報は,発明の名称を「通信回線を用いた情報供給システム」とするものであり,以下の記載がある。そして,本件特許の高祖父出願である国際公開WO02/001820号にも,同様の記載がある。「前記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけ,前記管理コンピュータが,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末によって得られた情報を入手するステップ時,監視端末に接続不能な状態,若しくは監視端末からの情報が前記管理コンピュータに送信されてこない状態が,前記管理コンピュータで確認された時に,所定の異常通知をアクセスした利用者に送信できるようになっていると好ましい。すなわち管理コンピュータでデータを待つ時間を所定の時間と設定し,セッション管理することにより,待ち時間内にデータが得られないとき,アクセスしてきた利用者をいつまでもも待たせることなく情報が取れない旨のメッセージを送ることによりサービスの向上が図れる。(」【0008】)「管理コンピュータ3側の監視端末用通信回線基板38およびCPU31は,接続されている各監視端末4の特定を行っており,管理コンピュータ3がコマンドデータである制御信号を送信したことにより,各監視端末4から送信されてくる画像情報などは,監視端末側に振られたIPアドレスや所定のIDとが登録された利用者データベース(DB)を利用して処理される。なお,監視端末の特定されない情報に対しては通信拒否を行う。 【00」(30】)「前記利用者IDに対応する監視端末IDが存在する場合,前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して,この抽出された監視端末情報に基づいて監視端末の制御部に働きかけ,前記管理コンピュータが,インターネットや電話網からなる通信回線網を経由して,前記監視端末4によって得られた情報を入手するステップ時,監視端末4に接続不能な状態,若しくは監視端末4からの情報が前記管理コンピュータに送信されてこない状態が,前記管理コンピュータ3で確認された時に,利用者との通信を一定時間で切らずに,所定の異常通知「例えば,データを取得できません」などのメッセージ(取得できない理由として,例えばインターネット通信環境が悪い,電源の入力忘れ,侵入者による切断行為などが考えられる)をアクセスした利用者に送信できるようになっている。 【0044】」( )エ 被告は,上記アのとおり主張し,本件各特許の親出願の明細書等に記載された事項は,本件各特許の祖父出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内ではないと主張する。しかし,上記イによれば,本件特許1の親出願の出願当初の明細書等には「監視端末側から送信されてくる情報に関して監視端末側を特定する特定処理手段」「監視端末側から送信されてくる情報を待つ時間を設定する情報,入手待機時間設定手段」「設定された待機時間内に監視端末側からの情報が,送信されてくるか否かを管理する管理手段」についての記載があるところ,上記ウによれば,本件特許1の祖父出願及び高祖父出願の出願当初の明細書等にも,上記の各手段が示されているといえる。オ 結論以上によれば,本件特許1の親出願の明細書等に記載された事項は,本件特許の高祖父出願(3455917号特許)及び本件特許の祖父出願である甲38公報の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であり分割出願の要件を満たしており,また, 明1(1)は本件特許の高祖父出願(3455971号特許)の出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから,無効理由4は認められない。無効理由5(サポート要件違反)(争点2-5)ア 被告は,構成要件1(1)Bの構成に揮発性メモリー(RAM)ないしキャッシュメモリーにIPアドレスを格納する構成を含むとした場合には,揮発性メモリー(RAM)ないしキャッシュメモリーに格納された情報が自動的に消去されてしまうことになり,データベースを用いて情報を確認ないし照合することができないから,サポート要件違反の無効理由を有すると主張する。本件各発明の構成要件1(1)Bにおいては,IPアドレスと利用者IDとが対応付けられて記憶されていれば足り,揮発性メモリー(RAM)ないしキャッシュメモリーにIPアドレスを格納する構成を含み得るといえるが,その格納の時点で「IPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている」といえ,当業者は発明の課題を解決できるのであり,サポート要件違反はない。したがって,構成要件1(1)Bにおいて,揮発性メモリー(RAM)ないしキャッシュメモリーにIPアドレスを格納する構成を含むとする場合であっても,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるから,サポート要件違反は認められない。イ 被告は,本件発明1(1)の構成要件1(1)Dⅲでは管理コンピュータが「監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけていく手段」を備えているという特定がされているところ,本件明細書には,監視端末側の制御部に働きかけていく構成は開示されていないから,サポート要件違反の無効理由を有すると主張する。しかし,本件明細書の段落【0026】には,「この利用者DBに利用者IDに対応付けて登録されている監視端末側のIPアドレス(常時接続のISPが割り振っているアドレス)を抽出し,例えば利用者Aに対応するものが監視端末4aである場合,該当する監視端末4aを構成するここでは監視ユニット1に対して,通常常時接続状態のインターネット回線を利用して監視端末側のIPアドレスに特別な制御信号(コマンドデータ)を送信する。この制御信号は,画像等の情報を取得して管理コンピュータ側へ送るように指示する要求信号であればどのような信号でも良いが,不正アクセス防止のために暗号化され,監視端末側で復号化処理をすると好ましい。すなわち,管理コンピュータ3と監視端末4a側の通信制御部,すなわち図4のMPU65と交信し,画像を要求できるシステムになっていればよい。」と記載されており,「監視端末側の制御部に働きかけていく」構成が明らかに開示されている。したがって,本件発明1(1)の構成要件1(1)Dⅲについてのサポート要件違反は認められない。ウ 以上によれば,本件発明1(1)についてのサポート要件違反は認められないから,無効理由5は認められない。無効理由6(実施可能要件違反)(争点2-6)ア 被告は,本件発明1(1)の構成要件1(1)Bの構成に揮発性メモリー(RAM)ないしキャッシュメモリーにIPアドレスを格納する構成を含むとした場合には,揮発性メモリー(RAM)ないしキャッシュメモリーに格納された情報が自動的に消去されてしまうところ,データベースに格納された情報がどのようにして維持されるのかについて発明の詳細な説明には記載がないから,実施可能要件違反の無効理由があると主張する。本件各発明の構成要件1(1)Bにおいては,IPアドレスと利用者IDとが対応付けられて記憶されていれば足り,揮発性メモリー(RAM)ないしキャッシュメモリーにIPアドレスを格納する構成を含み得るといえるが,その格納の時点で「IPアドレスを含む監視端末情報が,利用者IDに対応付けられて登録されている」といえ,当業者は発明を実施することができるといえる。したがって,当業者が本件発明1(1)Bをどのように実施するかを理解することができないとはいえないから,実施可能要件違反は認められない。イ 被告は,本件発明1(1)の構成要件1(1)Dⅲでは管理コンピュータが「監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけていく手段」を備えているという特定がされているところ,本件明細書には,監視端末側の制御部に働きかけていく構成は開示されていないから,実施可能要件違反の無効理由があると主張する。しかし,本件明細書の段落【0026】には,「この利用者DBに利用者IDに対応付けて登録されている監視端末側のIPアドレス(常時接続のISPが割り振っているアドレス)を抽出し,例えば利用者Aに対応するものが監視端末4aである場合,該当する監視端末4aを構成するここでは監視ユニット1に対して,通常常時接続状態のインターネット回線を利用して監視端末側のIPアドレスに特別な制御信号(コマンドデータ)を送信する。この制御信号は,画像等の情報を取得して管理コンピュータ側へ送るように指示する要求信号であればどのような信号でも良いが,不正アクセス防止のために暗号化され,監視端末側で復号化処理をすると好ましい。すなわち,管理コンピュータ3と監視端末4a側の通信制御部,すなわち図4のMPU65と交信し,画像を要求できるシステムになっていればよい。」と記載されており,「監視端末側の制御部に働きかけていく」構成が明らかに開示されている。したがって,本件発明1(1)の構成要件1(1)Dⅲについての実施可能要件違反は認められない。ウ 以上によれば,本件発明1(1)についての実施可能要件違反は認められないから,無効理由6は認められない。結論本件発明1(1)についての無効理由1ないし6はいずれも認められないから,本件発明1(1)に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるとはいえない。

3 本件発明1(2)に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争

点3)無効理由1(乙10国際公開を主引例とする新規性・進歩性欠如)(争点3-1)本件発明1(2)は本件発明1(1)の構成を備えるものであるところ,本件発明1(1)について無効理由1(乙10国際公開を主引例とする新規性・進歩性欠如)が認められず,新規性及びのとおりであるから,その余を判断するまでもなく,無効理由1は認められない。無効理由2(分割出願要件違反に基づく進歩性欠如) 無効理由3, (親出願の分割出願要件違反に基づく進歩性欠如),無効理由4(サポート要件違反),無効理由5(実施可能要件違反)(争点3-2~5)被告は,本件発明1(1)と同様の理由に基づいて無効理由2ないし5を主張するところ,それらに理由がないことは本件発明1(1)の無効理由3ないは認められない。結論本件発明1(2)についての無効理由1ないし5はいずれも認められないから,本件発明1(2)に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるとはいえない。

4 本件発明2に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点4)

無効理由1(乙10国際公開を主引例とする新規性・進歩性欠如)(争点4-1)ア 平成10年10月に発行された「Ravlin4」と題する文書(乙21)には,以下の記載がある。「これらのセキュリティ基準は,Internet Engineering Task Force (IETF) IP Security Standard(IPSec)の一部である。」イ 平成10年11月に発行された「Security Architecture for the Internet Protocol」と題する文書(乙22)は,IPSecの規格書であり,以下の記載がある。「本メモは,IPsecに準拠するシステムの基本的なアーキテクチャについて定義する。このアーキテクチャの目標は,IPv4及びIPv6の両方の環境において,IP層のトラフィックに様々なセキュリティサービスを提供することである。(3頁の「1」 Introduction」の項の3から6行)「IPsecの実装は,ホストまたはセキュリティゲートウェイ環境で動作し,IPトラフィックに対する保護を提供する。(5頁の「3」 System Overview」の項の9から10行)「IPsecは,システムに,要求されるセキュリティプロトコルを選択させ,サービスに利用するアルゴリズムを決定させ,要求されるサービスの提供に必要な暗号鍵を配備させることによって,IP層におけるセキュリティサービスを提供する。IPsecは,ホスト間と,セキュリティゲートウェイ間と,およびセキュリティゲートウェイとホストとの間との1つ以上の「経路」の保護のために利用される(用語「セキュリティゲートウェイ」は,IPsecプロトコルを実装する中間システムを表すものとして,IPsec文書全体で用いられる。例えば,IPsecを実装するルータやファイアウォールはセキュリティゲートウェイである)(6頁の「3.1」 WhatIPsec Does」の項の2から11行)「本セクションでは,すべてのIPv6の実装,および AH,ESP,または両方を実装するIPv4の実装のための,セキュリティアソシエーションの管理の要件を定義する。「セキュリティアソシエーション」(SA)の概念は IPsecの基本となるものである。AHおよびESPの両方がSAを使用し,IKEの主要機能によって,セキュリティアソシエーションの確立とメンテナンスがなされる。AHまたはESPのすべての実装は,以下に示すセキュリティアソシエーションの概念をサポートしなければならない。この章の備考は,セキュリティアソシエーションの管理における様々な側面を説明し,SAポリシー管理,トラフィック処理,SA管理技術に要求される特性を定義する。(8頁の「4. Security」 Associations」の項)「セキュリティアソシエーション(SA)は,SAによって運ばれるトラフィックに対してセキュリティサービスを提供する単方向の「コネクション」である。セキュリティサービスは,AHまたはESPのいずれか(両方ではない)を使用することによってSAに提供される。AHおよびESP保護の両方がトラフィックの流れに対して適用される場合,そのトラフィックの流れを保護するために2以上のSAが生成される。2つのホスト間,または2つのセキュリティゲートウェイ間の双方向の通信を保護するために,2つのセキュリティアソシエーション(それぞれの方向に1つずつ)が必要である。」(8頁の「4.1 Definition and Scope」の項の2から9行)「IPsecの各実装において,それぞれに関するセキュリティアソシエーションデータベースが存在し,セキュリティアソシエーションデータベースにおいて,各エントリは,ある1つのSAに関連するパラメータが定義される。(21頁の「4.4.3」 Security Association Database(SAD)」の項の2から4行)「以下のパラメータがSAD内の各エントリに関連付けされる。(21頁」の「4.4.3 Security Association Database(SAD)」の項の10から11行)「セキュリティアソシエーションの有効期間:時間間隔であり,当該時間間隔の後,SAは,新しいSA(及び新しいSPI)に置き換えらえる,又は,終了する。加えて,当該時間間隔は,これらの動作のうちのどちらを行うかを表す。(22頁40から43行)」「これらの問題に対処するために,ホストまたはセキュリティゲートウェイは,ユーザ/管理者が,ホストまたはセキュリティゲートウェイの使用を要求する送信先のアドレスのセットに対するセキュリティゲートウェイのアドレスの設定ができるような管理インターフェースを有していなければならない。これは以下を設定する機能を含む。○ セキュリティゲートウェイの位置探索および認証のために必要な情報,そして送信先ホストの代理の権限がセキュリティゲートウェイに与えられていることを確認するために必要な情報」(28頁45行から29頁5行)「本章は,内側および外側IPヘッダ,拡張ヘッダ,そして,AHおよびESPトンネルのオプションの処理について説明する。これは,カプセル化(外側)IPヘッダの構築方法,内側IPヘッダ内のフィールドの処理方法,および行うべきその他のアクションを含む。一般的なアイディアは,RFC2003「IP Encapsulation with IP」で使用されているものをもとにモデル化されている。○ 外側IPヘッダの送信元アドレスと送信先アドレスは,トンネルの「終端」(カプセル化する側とカプセル化を解く側)を識別する。(31頁7から18行)」「5.1.2.1 IPv4 ―― Header Construction for Tunnel Mode(略)src address (略)dest address (略)(31頁39行から32頁8行)」ウ 平成11年5月に発行されたアクセスルータ「MUCHO」の取扱説明書(乙30)には,以下の記載がある。「6 プロトコル・宛先インターフェース・IPsec処理タイプを設定します」(302頁15から16行)「7 SA確立契機を設定します。まず起動時にSAを確立するかどうかを選択し,次に確立タイプを選択します。・[SA確立契機](起動時SA確立)起動時にSAを確立するかどうかを選択します。(303頁1から5」行)エ 平成12年9月に発行された「INFONET-VP100 VPNボックス 取扱説明書」(乙32)には,以下の記載がある。「IPsec処理タイプ:IPsec処理して中継・・・・・・IPsecによるVPN通信を行います。(6-26頁12から13行)」「SA確立契機・・・・・・・・・・・・・・・SA確立契機を起動時に行うかどうかの指定後,データ通信時,ライフタイム満了時,指定時刻時の指定をおこないます。(6-26頁18から19行)」オ 乙10国際公開原告は,10Bの構成は,乙10国際公開には開示されていないと主張するが,本件発明1(1)の無効理由1における のとおり,乙10国際公開の記載から構成要件2Bに相当する構成(10B)を認定できる。被告は,乙10国際公開の発明は,IPsecに基づくVPN通信により実現される構成を含むことから,IPsecに関する技術である乙22記載の技術を用いることができ,当該技術は構成要件2Dⅵ,2Eの構成に相当するから,乙10国際公開の発明は構成要件2Dⅵ,2Eの構成を含むものであると主張する。しかし,乙10国際公開に電話会社へのアクセス装置388にはRavlin-4wireline暗号化装置が用いられるとの記載があるとしても,Ravlin-4wireline暗号化装置はIPsec規格に準拠しない暗号モードを含んだ各種の暗号化モードを利用可能な製品である(甲63・73頁,乙21)。したがって,上記暗号化装置が用いられることが記載されているからといって,その暗号化モードがIPsecに準拠しているとはいえない。また,IPsecの規格書(乙22)には,その規格で規定されている用途に応じた複数の暗号化形式や動作モードを選択できることが記載される一方,IPsecの特定の暗号化モードを適用した場合における具体的なシステムの動作や設定について記載されているものではないから(甲63・74頁,乙22),仮に,乙10国際公開の発明において乙22記載の技術を適用するとしても,乙10国際公報に,具体的にどのような技術が適用されるかが記載されているとはいえない。以上によれば,乙10国際公開に,IPsecに基づくVPN通信により実現される構成が記載されているともいえないし,IPsecに関する技術である乙22記載の特定の技術が記載されているともいえないから,乙10国際公開の発明が,「管理コンピュ-タ側と監視端末側との回線再接続時,特定できる監視端末側からのIPアドレス登録要求を受け付け,前記利用者データベースの前記監視端末情報であるIPアドレスを登録処理する手段」(構成要件2Dⅵ)「前記監視端末側は,内部にメモリーされた管理コンピ,ュータ側のグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理する自己接続機能と,前記自己接続機能を使って,登録された前記監視端末IDを管理コンピュータ側に送り,前記監視端末側のIPアドレスを登録するように要求する手段」(構成要件2E)に対応する構成を含むとは認められない。カ 上記オを踏まえ,本件発明2と乙10発明1を対比すると,両者の相違点は,構成要件2Dⅵ「管理コンピュ-タ側と監視端末側との回線再接続時,特定できる監視端末側からのIPアドレス登録要求を受け付け,前記利用者データベースの前記監視端末情報であるIPアドレスを登録処理する手段」及び構成要件2E「内部にメモリーされた管理コンピュータ側のグローバルIPアドレスに対して自ら接続処理する自己接続機能と,前記自己接続機能を使って,登録された前記監視端末IDを管理コンピュータ側に送り,前記監視端末側のIPアドレスを登録するように要求する手段」に対応する構成の有無であり,その余の構成で一致する。したがって,本件発明2と乙10発明1には相違点があるから,乙10国際公開を主引例とする新規性欠如の主張には理由がない。キ 被告は,本件発明2と乙10発明1に上記の相違点があったとしても,乙30や乙32の取扱説明書に記載された技術や,乙22記載の技術は,いずれも周知技術ないし公知技術であり,これらを乙10国際公開に組み合わせることにより,容易に上記の相違点に係る構成に想到するから,本件発明2は進歩性が欠如すると主張する。しかし,乙30や乙32の取扱説明書は,いずれもユーザによる装置の設定手順を図とともに説明するものであり,セキュリティアソシエーションの確立の前提として送信元装置があらかじめ登録されている送信先装置のIPアドレスに基づいて送信先装置との回線を再接続する構成が開示されているとはいえない。また,乙22記載の技術は,上記のとおり,IPsecの特定の暗号化モードを適用した場合における具体的なシステムの動作や設定について記載されているものではない。これらによれば,乙30や乙32の取扱説明書に記載された技術,乙22記載の技術を乙10発明1に適用しようとしても,上記の相違点の具体的な構成に想到するとはいえない。したがって,乙10国際公開を主引例とする進歩性欠如の主張には理由がない。ク 結論以上によれば,本件発明2は,乙10国際公開により新規性・進歩性が欠如しているとはいえないから,無効理由1は認められない。無効理由2(親出願の分割出願要件違反に基づく進歩性欠如),無効理由3(サポート要件違反),無効理由4(実施可能要件違反)(争点4-2~4)被告は,本件発明1(1)におけるのと同様の理由に基づいて無効理由2ないし4を主張するところ,それらに理由がないことは本件発明1(1)の無効2ないし4は認められない。結論本件発明2についての無効理由1ないし4はいずれも認められないから,本件発明2に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるとはいえない。

5 損害発生の有無及びその額(争点5)

後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。ア 被告システムの料金体系(甲7,42,乙123,弁論の全趣旨)被告サービスの基本利用料は,月額2980円/台である。また,インテリジェントホームゲートウェイは,レンタル又は購入をする必要があり,レンタルの場合は月額300円/台,購入の場合は1万8000円/台とされている。また,被告のインターネットサービス利用者は基本利用料が月額1980円/台と設定されているほか, (省略)● ●になったり,集合住宅(アパートメント)単位の加入の場合には基本使用料が月額1280円/台に割引になったりするなど,多種多様な割引プランが用意されている。被告システムの利用者は,デバイスを用途に応じて一つ又は複数選択することができる。デバイスは,基本的にはレンタルであり,レンタル料はIPカメラが月額500円/台,各種センサーが月額200円/台,家電コントローラーが月額700円/台,スマートロックが月額700円/台,スマートライトが100円/個である。イ 被告システムは,被告が一般顧客との間で直接契約する形態のほか,以下のような形態により,被告システムを提供している。被告は,平成30年4月時点で,45社以上のケーブルテレビ局と業務提携することにより,被告システムを全国に展開し,それらのケーブルテレビ局からライセンス料を得ている。ケーブルテレビ局は,自社のサービスとして被告サービスを提供する。(甲39ないし43,乙123)被告は,平成27年5月,ニフティ株式会社との間で,被告システムに係る業務提携についての基本合意を締結した。この基本合意では,被告は被告システムをニフティ株式会社に提供し,ニフティ株式会社は独自のインターフェースとサービス仕様によりスマートホームサービスを提供することとされた。なお,現時点で上記合意は解消されている。(甲46,弁論の全趣旨)被告は,平成29年1月,被告が株主となっていて,被告システム向けのIoT機器やアプリケーションの企画開発などを行っているコネクテッドデザイン株式会社(以下「コネクト社」という。)との間で,民泊事業者向けの支援サービスの提供についての合意をした。この合意では,被告システムのデバイスを各戸に設置し,民泊事業者はコネクト社が提供する管理システムを通じてデバイスを操作してカメラでの入退出確認や鍵の受渡しなどをすることが予定されていた。(甲47)被告は,民泊事業者に対し,「みんぱくのかぎ」と称するサービスを,スマートロック,IPカメラ,ホームゲートウェイ各1台のレンタル料込みで月額3980円(税別)で提供している。(甲48)コネクト社は,平成28年8月,株式会社USENの子会社であり,ホテルや飲食店などの受付やフロントの管理システムの効率化を目的としたサービスの提供等をしている株式会社アルメックスとの間で,宿泊空間のスマート化に関する実証実験を開始することについて合意をした。なお,実際には,採算が合わないと判断されて上記の実証実験は行われず,上記の合意が解消された。(甲49,弁論の全趣旨)被告システムは,複数のWebサービスやアプリ,IoTデバイスを連携させるプラットフォームである「IFTTT(イフト)」に対応している。(甲50)被告システムは,Google Homeのスマートスピーカーと連携しており,家電の音声操作をすることができる。(乙41,49・12頁,乙86,87,122)被告システムは,LINEの公式アカウントの画面上で表示される「まとめてON」「まとめてOFF」「いつもの鍵を開ける」などのボタンにより,対象となる家電等を操作することが可能である。(乙49・13頁,乙83~85)これらのサービスは,いずれも被告システムの機能を無償で拡張するものである。(弁論の全趣旨)ウ 被告は,ホームゲートウェイ,家電コントローラー,ドア・窓センサー,IPカメラの4つがセットになった「スターターキットタイプA」を7万2144円(税込。2年間のライセンス料を含む。)で販売している。なお,上記のうちIPカメラを除いた3つがセットになった「スターターキットタイプB」 個々のデバイスについて単品での販売もしている。 乙43,や, ( 44)エ 平成31年1月末時点の被告システムに関する売上げ(乙123,弁論の全趣旨)基本利用料(月額単価×延べ世帯数)●(省略)●円機器レンタル料(月額単価×延べ世帯数)

① ホームゲートウェイのレンタル料

●(省略)●円(計算式)●(省略)●円+●(省略)●円

② IPカメラのレンタル料

●(省略)●円(計算式)●(省略)●円+●(省略)●円なお,乙123では,IPカメラのレンタル料●(省略)●は●(省略)●円とされているが,平成29年1月から12月までの台数と売上げが整合しておらず,正確な数字が記載されているとはいえないから,被告の主張である●(省略)●円をもって相当と認めた。ライセンス料等収入(月額単価×延べ契約数)

① ケーブルテレビ局からのライセンス料

●(省略)●円

② ケーブルテレビ局からの加入一時金

●(省略)●円

③ 事業者との契約によるライセンス料等

●(省略)●円被告システムの販売に係る売上げ

① IPカメラ単体

●(省略)●円

② スターターキットタイプA

●(省略)●円(計算式)6万6800円×●(省略)●個なお,被告は,スターターキットタイプAの価格は6万0120円であると主張するが,上記ウのとおり,上記価格は税込で7万2144円であると認められるから,税抜価格を消費税率8パーセントで割り戻して6万6800円と算定した。オ 原告は,過去に本件各特許を使用したサービスを事業化したが,採算が合わなかったため,撤退した。原告は,平成31年2月1日時点で,登録電気通信事業者として登録をしていない。(甲15,乙131,弁論の全趣旨)カ 原告は,本件訴訟提起前の交渉中の平成29年2月20日付け申入書において,「現在大手企業を含めて本件特許を尊重いただき実施権の許諾契約が複数進行中であります」と述べていたが,実際には,そのような許諾契約は締結されておらず,原告が,本件特許について契約を締結してその実施を許諾している企業等はない。(乙3,弁論の全趣旨)キ 先進諸国(アメリカ,カナダ,ヨーロッパ,日本,オーストラリア)の主要各社を対象とした最近のアンケート調査(有効回答数428)では,各技術分野にまたがった各種ライセンス契約(ライセンスインとライセンスアウトの双方を含む。)におけるランニングロイヤルティ率の平均は,革新的発明の場合で7~14パーセント,重要改良発明の場合で4~9パーセントとされていると判示する裁判例(東京地裁平成10年3月30日判決)がある。(甲31)平成15年9月30日に発行された社団法人発明協会「実施料率」第5版において,「図2-21-2 電子・通信用部品(イニシャル 無)の実施料率別契約件数」を参照すると,同書籍中の最新である平成4年度~平成10年度の統計によると56件のライセンス契約(年平均9.3件)における実施料率の最頻値は1パーセント,中央値は3パーセント,平均値は3.3パーセントである。(乙35)平成22年3月に公開された株式会社帝国データバンク「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~」(以下「本件報告書」という。)の「Ⅱ.わが国のロイヤルティ料率」「3.ロイヤルテ,ィ料率の動向」「,(1)一般データ調査結果」「,(ⅰ)日本」(93頁)の表Ⅲ-3,図Ⅲ-1によれば,「電子計算機」の分野のロイヤルティ料率の平均値は33.2パーセント,最頻値は50.0パーセント,中央値は40.0パーセントとされている。本件報告書の「Ⅱ.我が国のロイヤルティ料率」「2.技術分類別ロイ,ヤルティ料率(国内アンケート調査),(3)アンケート調査結果」によ」「る「②技術分類別ロイヤルティ料率の平均値」の図Ⅱ-1,表Ⅱ-3によれば,「器械」の分野のロイヤルティ料率の平均値は3.5パーセント,最大値は9.5パーセント,最小値は0.5パーセントであり,「コンピュータテクノロジー」の分野のロイヤルティ料率の平均値は3.1パーセント,最大値は7.5パーセント,最小値は0.5パーセントとされている。本件報告書の「Ⅲ.各国のロイヤルティ料率」「1.ロイヤルティ料率,の動向」の国内企業のロイヤルティ料率に関するアンケート結果には,産業分野を通信・通信装置とする特許のロイヤルティ率は2.9パーセントと記載され,「2.司法決定によるロイヤルティ料率調査結果」には,平成16年から平成20年までの産業分野を電気とする特許の司法決定によるロイヤルティ料率は平均値3.0パーセント,最大値7パーセント,最小値1パーセント(件数7件)と記載されている。(以上につき,甲60)平成31年1月末までの被告システムの売上げは上記 エのとおりであるところ,原告は令和元年10月までの売上げに基づいて損害額を主張しており(原告第12準備書面),本件における特許法102条3項の損害賠償額の基礎となる売上げは平成27年2月から令和元年10月末までの期間が対象となる。そして,被告システムは,性質上,設置後,相当程度継続的に使用されるものであると考えられること,平成31年2月以降にそれまでの契約世帯数を大きく変動させる要因を認めるに足りないことなどから,平成31年1月末時点での契約世帯数やIPカメラの利用,ライセンス料が維持されるものとして,同年2月から令和元年10月末までの9か月間の売上げを推計することが合理的であると解される。なお,ケーブルテレビ局からの加入一時金及びIPカメラやスターターキットタイプAの販売に係る売上げについては,それらが一時点のものであること,その発生の頻度等にることとする。そうすると,令和元年10月末までの被告システムに関する売上げは,以下のとおりとなる。ア 基本利用料(月額単価×延べ世帯数)●(省略)●円(計算式)●(省略)●円+●(省略)●円×9(月)+●(省略)●円×9(月)+●(省略)●円×9(月)+●(省略)●円×9(月)+●(省略)●円×9(月)+●(省略)●円×9(月)+●(省略)●円×9(月)イ 機器レンタル料(月額単価×延べ世帯数)

① ホームゲートウェイのレンタル料

●(省略)●円(計算式)●(省略)●円+●(省略)●円×9(月)+●(省略)●×9(月)

② IPカメラのレンタル料

●(省略)●円(計算式)●(省略)●円+●(省略)●円×9(月)+●(省略)●円×9(月)ウ ライセンス料等収入(月額単価×延べ契約数)ケーブルテレビ局からのライセンス料●(省略)●円(計算式)●(省略)●円+●(省略)●円×9(月)ケーブルテレビ局からの加入一時金●(省略)●円事業者との契約によるライセンス料等●(省略)●円(計算式)●(省略)●円+●(省略)●円×9(月)エ 被告システムの販売に係る売上げIPカメラ単体●(省略)●円スターターキットタイプA●(省略)●円前提事実 のとおり,被告システムは各利用者において,デバイスの種類及び数を自由に組み合わせることができるものである。そして,前記2で説示のとおり,本件各発明の技術的範囲に属するのはIPカメラを使用した被告システムだけである。このように,利用者ごとに利用する被告システムの内容やそれが本件各発明の技術的範囲に属するか否かが異なる被告システムで,IPカメラを組み合わせていない利用者が利用する被告システムが本件各発明の技術的範囲に属することはないことを考慮すると,特許発明の実施に対して受けるべき金員の算定の基礎となるのは,本件各発明の技術的範囲に属するIPカメラを組み合わせた被告システムの利用者が被告システムについて支払う金員であるといえる。そして,これには,IPカメラを組み合わせた利用者が支払う基本利用料やホームゲートウェイのレンタル料が含まれる。また,利用者がデバイスの種類及び数を自由に組み合わせられる被告システムにおいて,IPカメラを含むデバイスごとにレンタル料が定められ(甲7),IPカメラ以外の組み合わせられるデバイスの有無が特許権侵害の有無に影響しないことなどに照らせば,デバイスのレンタル料のうち,IPカメラを組み合わせた利用者が支払うIPカメラのレンタル料も特許発明の実施に対して受けるべき金員の算定の基礎とするのが相当と解される。さらに,被告が被告システムについて受け取ったライセンス料に,被告システムの利用者のうちのIPカメラの利用者の割合を乗じたものが,IPカメラを利用した被告システムについて被告が受け取ったライセンス料といえる。被告システムの利用者のうち,デバイスとしてIPカメラを使用する利用者の割合は,平成30年9月時点では約●(省略)●パーセントであり,平成31年1月時点では約●(省略)●パーセントである(弁論の全趣旨)ことに照らせば,被告システムの利用者のうちIPカメラを使用する利用者の割合は●(省略)●パーセントとすることが相当である。そうすると,IPカメラのレンタル料及び売上額並びに被告システムの基本利用料,ホームゲートウェイのレンタル料,被告が受け取ったライセンス料等のうち全体に係る売上げの●(省略)●パーセント相当額の合計をもってIPカメラに関する被告システムの売上げとすることが相当である(なお,スターターキットタイプAのIPカメラに係る売上額については,当該箇所で個別に算出する。。)そうすると,令和元年10月末時点でのIPカメラに関する被告システムの売上げは,以下のとおりとなる(小数点以下は四捨五入する。。)ア IPカメラに係る基本利用料関係(月額単価×延べ世帯数)●(省略)●円(計算式)●(省略)●万●(省略)●円×0.3(IPカメラの利用者の割合)イ IPカメラに係る機器レンタル料関係(月額単価×延べ世帯数)

① ホームゲートウェイのレンタル料

●(省略)●円(計算式)●(省略)●円×●(省略)●(IPカメラの利用者の割合)

② IPカメラのレンタル料

●(省略)●円ウ IPカメラに係るライセンス料等収入関係(月額単価×延べ契約数)ケーブルテレビ局からのライセンス料●(省略)●円(計算式)●(省略)●円×●(省略)●(IPカメラの利用者の割合)ケーブルテレビ局からの加入一時金●(省略)●万円(計算式)●(省略)●円×●(省略)●(IPカメラの利用者の割合)事業者との契約によるライセンス料等●(省略)●円(計算式)●(省略)●円×●(省略)●(IPカメラの利用者の割合)エ IPカメラに係る被告システムの売上げIPカメラ単体●(省略)●円スターターキットタイプA●(省略)●円(算出の理由)上記キットのセット価格は6万6800円であるところ,IPカメラの単価は1万7820円,ドア・窓センサーの単価は6282円であると認められる(弁論の全趣旨)から,同セットに含まれる残りの家電コントローラー及びゲートウェイの販売価格が合計4万2698円と計算できる。そして,家電コントローラーのレンタル料は月700円,ゲートウェイのレンタル料は月300円であることから,この割合で按分すると,ゲートウェイの販売単価は1万2809円(=4万2698円×300/1000)と算出される。これに,販売個数●(省略)●個を乗じると,ゲートウェイの売上げは●(省略)●円となる。オ 合計●(省略)●円(●(省略)●円)特許法102条3項による損害を算定する基礎となる実施に対し受けるべき料率に関係して, 発明の実際の実施許諾契約は存在せず,被告が本件各特許についての実施許諾契約を締結している企業等はない。そして,業界における実施料の相場については,同キのとおりの証拠がある。なお,本件報告書に「電子計算機」の分野のロイヤルティ料率の平均値が33.2パーセント,最頻値が50.0パーセント,中央値が40.0パーセントと記載されているが ,本件報告書には「電子計算機に関してはソフトウェアのロイヤルティ料率が含まれているため,全体的に高いロイヤルティ料率になっているとされている」(甲60・94頁,乙132)などと記載されていることに照らし,特許権のみのライセンス料について記載したものではないと認められる。そして,上記のような実施料の相場に関する証拠,原告が本件各特許について第三者に対する実施の許諾を拒むという方針を採用しているとは認められないところ,原告と実際に本件各特許について実施許諾契約を締結した企業等がないことその他の本件にあらわれた一切の事情を総合的に勘案すれば,本件において,特許権侵害を前提とした特許法102条3項による損害を算定する基礎となる実施に対し受けるべき料率としては●(省略)●パーセントをもって相当と認める。したがって,本件における特許法102条3項の損害賠償額は,711万8606円(●(省略)●円×●(省略)●)となる。また,本件にあらわれた一切の事情に照らせば,本件訴訟における弁護士費用としては100万円をもって相当であると認める。したがって,本件の損害額は,811万8606円であると認められる。原告は,被告はケーブルテレビ局の契約者に対しても被告サービスを提供しているところ,ケーブルテレビ局についての被告の売上高は,ライセンス料ではなく,ケーブルテレビ局が被告システムの利用者から得ている利用料等の売上高とすべきであると主張する。しかし,上記売上高はケーブルテレビ局の売上高であり,被告のものではないことは明らかであるから,原告の上記主張は採用できない。原告は,被告システムにおいては,通常の使用形態によれば,1世帯当たり月額4580円(基本利用料2980円+ゲートウェイレンタル料300円+IPカメラ1台のレンタル料500円+ドア・窓センサー3台のレンタル料600円+広域モーションセンサー1台のレンタル料200円の合計)が必要になるから,同額をもって被告の売上額を算出すべきであると主張する。しかし,被告システムは使用するデバイスを任意に選択できるものであって,原告が指摘する甲7号証によっても上記組合せが通常の実施形態であると認めることはできないし,被告システムは使用するデバイスを任意に選択できるものであり,利用者が上記の組合せをしなければならないものとはいえないから,原告の上記主張は採用できない。

6 差止め及び廃棄の範囲について

被告システムは,利用者ごとに利用者がデバイスの種類及び数を自由に組み合わせることができるものであるところ,本件各発明の技術的範囲に属するのは利用者がIPカメラを組み合わせた場合の被告システムに限られるから,原告は,別紙物件目録(2)の範囲で差止請求権を有する。また,IPカメラを組み合わせない被告システムは本件各発明の技術的範囲に属さず,それらの利用者は被告システムの利用者全体の約●(省略)●に相当する。請求の趣旨第2項及び第3項の廃棄請求は本件各発明の技術的範囲に属さない多くの被告システムの提供を不可能にするものであり,また,被告システムが本件各発明の技術的範囲に属さない態様で使用することができ,現に多くの利用者との関係でそのように使用されていることなどを考慮すると,上記の各廃棄請求は必要性,相当性を欠き,「侵害の予防に必要な行為」(特許法100条2項)に該当しないというべきであるから,原告はこれらについての廃棄請求権は有しないというべきである。

7 原告の差止請求が権利濫用であるか(争点6)

被告は,多数の一般需要者に公的なインフラであるスマートホームに関するサービスを提供している被告が事業を中止するとなれば,これらの需要者に迷惑が掛かることとなり,ひいては被告が極めて厳しい立場に置かれるという現状を奇貨として,原告が多額の和解金を請求したとして,原告の被告に対する差止請求は,権利濫用として許されないというべきである旨主張する。しかし,特許権者は侵害者に対して損害賠償請求権を有するから,原告が被告に対して特許権侵害を主張するに当たり,当初,相当額の和解金を請求したことをもって,直ちに差止請求が権利濫用になるともいえないし,システムの発明において利用者が相当数いることをもって,直ちに差止請求が権利濫用になるとはいえない。本件では,前記6のとおり,本件各発明の技術的範囲に属するIPカメラが使用される限度で被告システムの差止めが認められることや,本件各発明の技術的範囲を考慮すると,被告が指摘する事情によって,原告の請求が権利濫用となるとまでは認められない。なお,被告は,特許法83条1項に基づき原告に対して通常実施権の許諾についての協議を求め,この協議が成立せず,又は協議をすることができないときは特許庁長官の裁定を請求することができる(特許法83条2項)ところ,裁判所においても,特許庁長官であれば通常実施権の許諾を認める裁定をしたであろうことを判断することができるから,差止請求において,上記の特許法83条2項に基づく主張が抗弁となると主張する。また,被告は,特許法93条1項に基づき,原告に対して通常実施権の許諾について協議を求め,この協議が成立せず,又は協議をすることができないときは経済産業大臣の裁定を請求することができる(特許法93条2項)ところ,裁判所においても,経済産業大臣であれば通常実施権の許諾を認める裁定をしたであろうことを判断することができるから,差止請求において,上記の特許法93条2項に基づく主張が裁判上の抗弁になると主張する。しかしながら,特許法83条2項,同法93条2項は特許庁長官ないし経済産業大臣の裁定に関する規定であり,それらによる裁定がされていない場合に差止請求において抗弁になるものではない。

第4 結論

よって,原告の請求は,主文掲記の限度で理由があるからその限度で認容し(なお,主文第1項についての仮執行宣言は相当でないから付さない。,その余は理由)がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官 柴 田 義 明裁判官 棚 井 啓裁判官 佐 藤 雅 浩(別紙)物件目録(1)被告の構築する,インテリジェントホームゲートウェイ,サーバー及び監視デバイスを用いた「インテリジェントホームシステム」と称する情報供給システム以上(別紙)物件目録(2)被告の構築する,インテリジェントホームゲートウェイ,サーバー及び監視デバイスであるIPカメラを用いた「インテリジェントホームシステム」と称する情報供給システム(ただし,利用者のアクセスによりサーバーからインテリジェントホームゲートウェイに送られる要求に応じ,当該要求を受けた時の画像を取得し,その取得した画像をインテリジェントホームゲートウェイ及びサーバーを経由して利用者に提供するものに限る。)以上(別紙)被告システム説明図

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藤田特許商標事務所

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