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令和1(行ケ)10133審決取消請求事件

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裁判所 審決取消 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和3年3月30日
事件種別 民事
当事者 原告コンコルドバッテリーコーポレイション
被告エルジーエレクトロニクスインコーポレイティド
法令 商標権
商標法50条1項10回
商標法77条2項2回
特許法19条1回
商標法56条1項1回
キーワード 審決10回
商標権1回
優先権1回
主文 1 特許庁が取消2019-300510号事件について令和元年8月15
29日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30
1 特許庁における手続の経緯等25
2 本件審決の理由の要旨
1 原告25
2 被告
1 特許法19条の解釈の誤りについて
9条の規定を準用すべき前提を欠くというべきである。そして,商標法中には,
2 結論
事件の概要 (以下の各事実につき,被告は特に争わない。)

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判決文

令和3年3月30日判決言渡
令和元年(行ケ)第10133号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和3年2月4日
判 決
原 告 コンコルド バッテリー
コ ー ポ レ イ シ ョ ン
同訴訟代理人弁理士 木 村 達 矢
被 告 エルジー エレクトロニクス
インコーポレイティド
主 文
15 1 特許庁が取消2019-300510号事件について令和元年8月
29日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30
日と定める。
20 事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
(以下の各事実につき,被告は特に争わない。)
25 1 特許庁における手続の経緯等
⑴ 被告は,別紙記載の商標(以下「本件商標」という。)について,平成28
年7月1日に設定登録(登録第5862683号)を受けた。
⑵ 原告は,令和元年7月1日,本件商標の指定商品中,第9類「再充電可能
な電池,バッテリーチャージャー」についての登録取消しを求める不使用取
消審判請求に係る同日付け請求書(甲3)を郵送により発送し,同請求書は,
5 同月2日,特許庁に到達した。
特許庁は,上記請求を取消2019-300510号事件として審理し,
同年8月29日,
「本件審判の請求を却下する。 との審決
」 (以下「本件審決」
という。)をし(附加期間90日),その謄本は,同年9月6日,原告に送達
された。
10 ⑶ 原告は,令和元年10月8日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起
した。
2 本件審決の理由の要旨
商標法50条1項は,
「継続して3年以上(中略)登録商標の使用をしていな
いときは,
(中略)商標登録を取り消すことについて審判を請求することができ
15 る。」旨規定しているから,同項の商標登録取消の審判請求は,当該登録商標の
設定登録の日から3年を経過した後でなければできない。
本件商標の設定登録の日は,平成28年7月1日であるところ,本件審判の
請求日は,令和元年7月1日である。
そうすると,本件審判の請求は,本件商標の設定登録の日から3年の期間を
20 経過する前にされた不適法な審判請求であり,かつ,その補正をすることはで
きない。
したがって,商標法56条1項において準用する特許法135条の規定によ
り,本件審判の請求を却下する。
第3 当事者の主張等
25 1 原告
⑴ 商標法50条1項の解釈の誤り
商標法50条1項は,
「継続して3年以上日本国内において商標権者,専用
使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての
登録商標の使用をしていないとき」に商標登録取消審判を請求できると定め
る。ここで,
「とき」は,仮定的な条件,前提条件を表するから,上記文言は,
5 「継続して三年以上使用していない場合」との登録取消要件を定めたもので
あり,審判請求の期限を定めたものではない。
同条2項本文は,商標の不使用期間の3年の算定の起算点を,不使用取消
審判請求の登録の日(予告登録日)と規定しているから,審判請求が不適法
で,かつ,補正できないものとして却下されるのは,予告登録日に3年を経
10 過していない場合であって,審判請求時に3年が経過していない場合ではな
い。このように解しないと,同条1項は,審判請求時に3年の期間を経過し
ていることを要するとして,審判請求時を3年の算定の起算点としつつ,同
条2項は,予告登録時を3年の期間の算定の起算時としていることとなって,
両規定が整合しなくなる。
15 他方,審判請求時に3年が経過していなくても,予告登録時に3年を経過
していれば,商標登録取消しのための3年の不使用期間の経過との要件は充
足されることになるから,この場合に不使用取消審判の審理をすることは許
容され得る。
したがって,本件審判の請求を本件商標の設定登録の日から3年が経過し
20 ていないことを理由に不適法とすることはできない。
⑵ 特許法19条の解釈の誤り
商標法77条2項が準用する特許法19条は,「願書又はこの法律若しく
はこの法律に基づく命令の規定により特許庁に提出する書類その他の物件で
あつてその提出の期間が定められているもの」について,発信主義をとり,
25 発信日にその願書又は物件が特許庁に到達したものとみなすと規定している。
しかしながら,商標法50条1項は,上記⑴のとおり,登録取消要件を定
めたものであり,商標法は他に請求書の提出期間を定めていない。したがっ
て,商標登録取消審判の請求書は,「その提出の期間が定められているもの」
に該当しないから,本件審判の請求書が実際に特許庁に到達した日が提出の
効力発生日になると解釈すべきである。
5 そして,本件審判の請求書は,令和元年7月2日に特許庁に到達しており
(甲7) この日は本件商標の設定登録の日から3年が経過しているから,
, 本
件審判の請求は適法なものである。
2 被告
被告は適式の呼出しを受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その
10 他の準備書面を提出しなかった。
第4 当裁判所の判断
1 特許法19条の解釈の誤りについて
事案に鑑み,まず前記第3の1⑵の主張から判断する。
商標法50条1項は,
「継続して3年以上(中略)登録商標の使用をしていな
15 いときは,
(中略)商標登録を取り消すことについて審判を請求することができ
る。」としているところ,商標法は,同項以外に不使用を理由にした商標登録の
取消理由を定める規定を置いていないから,
「継続して3年以上(中略)登録商
標の使用をしていないとき」は登録取消の実体的要件であるといえる。そして,
商標の設定登録の日から3年が経過しなければ,3年以上当該登録商標を使用
20 しないという実体的要件は満たし得ない。他方で,同項は,登録商標が3年以
上使用されていないときは,取消審判の請求ができるとしており,審判請求権
の行使時期も併せて規定しているものといえる。以上からすると,同項は,そ
の文言上,不使用取消の審判請求が商標の設定登録の日から3年が経過してか
らされなければならないことを定めるものと解される。
25 本件審判の請求書は,本件商標の設定登録の日から3年が経過する前の日で
ある令和元年7月1日に発信され,同設定登録の日から3年が経過した日であ
る同月2日に特許庁に到達したところ,本件審決は,商標法50条1項の商標
登録取消審判の請求についても発信主義を定める特許法19条が適用されると
して,本件審判の請求が本件商標の設定登録の日から3年経過前にされたもの
として,本件審判の請求を不適法であると判断し,これを却下した。
5 しかしながら,上記本件審決の判断は是認することができない。
商標法77条2項が準用する特許法19条は,特許庁に提出する書類その他
の物件であつて,
「その提出の期間が定められているもの」について,発信の日
をもって特許庁に到達したものとみなすとしている。同条は,その規定内容か
ら明らかなとおり,書類等が所定の期間内に提出すべき場合を念頭にした規定
10 である。この規定の趣旨は,所定の期間内に特許庁に提出されるべき書類等に
ついて,当事者の居住地と特許庁との間の地理的間隔の差異に基づく不平等を
排除するため,地理的間隔の差異によっては左右されない書類等の発信の日を
もって特許庁に到達した日とみなすこととして,これによって,期間遵守の責
めが果たされたかどうかを,当事者の居住地の相違によって生じる書類等の到
15 達期間の長短に影響されないようにしたものと解される。
これに対して,商標法50条1項は,前記判示のとおり,3年という所定の
期間が経過してから審判の請求をすべきことを定めるものであり,所定の期間
内に審判の請求をすべきことを定めるものではないから,期間遵守の責めが果
たされたどうかにつき当事者の地理的間隔の差異に基づく不平等を排除すると
20 の要請はない。したがって,商標法50条1項に係る審判の請求は,特許法1
9条の規定を準用すべき前提を欠くというべきである。そして,商標法中には,
そのほかに商標法50条1項に係る審判の請求書の提出期間を定める規定は見
当たらない。
以上によれば,商標法50条1項に係る審判の請求については,意思表示の
25 原則規定である民法97条1項の到達主義の規定が適用されるべきであり,そ
の請求は,相手方である特許庁に請求書が到達した日を基準としてその効力を
判断するのが相当というべきである。そうすると,本件審判の請求書は,本件
商標の設定登録の日から3年が経過した日に特許庁に到達しているから,本件
審判の請求は,商標法50条1項の規定を理由に不適法ということはできない
ものである。
5 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件審判の請求を不
適法とした本件審決の判断には,誤りがあるというべきである。
2 結論
以上のとおり,原告の請求は理由があるから,本件審決を取り消すこととし
て,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
15 菅 野 雅 之
裁判官
20 本 吉 弘 行
裁判官
25 中 村 恭
(別紙)
商標
5 登録番号 商標登録第5862683号
出 願 日 平成27年10月9日
優先権主張 2015年7月23日(韓国)
登 録 日 平成28年7月1日
指定商品 商標登録原簿に記載のとおり。
10 (以上)

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