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令和2(行ケ)10038審決取消請求事件

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裁判所 審決取消 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和3年9月28日
事件種別 民事
当事者 原告沢井製薬株式会社同訴訟代理人弁護士森本純
被告旭化成ファーマ株式会社同訴訟代理人弁理士細田芳徳
対象物 骨粗鬆症治療剤ないし予防剤
法令 特許権
特許法134条の23回
キーワード 実施103回
審決21回
無効10回
進歩性7回
無効審判3回
特許権1回
優先権1回
主文 1 特許庁が無効2018-800066号事件について令和2年2月15
18日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要 本件は,特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。

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判決文

令和3年9月28日判決言渡

令和2年(行ケ)第10038号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 令和3年7月20日

判 決

原 告 沢 井 製 薬 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 森 本 純

被 告 旭化成ファーマ株式会社

同訴訟代理人弁理士 細 田 芳 徳

同 亀 ヶ 谷 薫 子

主 文

1 特許庁が無効2018-800066号事件について令和2年2月

18日にした審決を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

主文同旨

第2 事案の概要

本件は,特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)

⑴ 被告は,平成29年3月27日,その名称を「骨粗鬆症治療剤ないし予防剤」とする発明について特許出願(特願2017-061093号。平成22年9月8日(優先権主張 平成21年9月9日・特願2009-208039号)を国際出願日とする特願2011-530844号の一部を平成27年5月25日に新たな特許出願とした特願2015-105265号の一部を,さらに平成28年4月18日に新たな特許出願とした特願2016-082589号の一部を,またさらに平成28年11月10日に新たな特許

5 出願とした特願2016-219323号の一部を,その上さらに新たな特許出願として行われたもの。以下「本件出願」という。)をし,平成30年3月9日,その設定登録(特許第6301524号,請求項の数1)を受けた(以下,この登録に係る特許を「本件特許」という。 。)

⑵ 原告は,平成30年5月24日,本件特許について特許無効審判請求(無効2018-800066号)をした。特許庁が令和元年8月6日に本件特許を無効にするとの審決の予告をしたところ,被告は,同年10月11日付けで本件特許の特許請求の範囲を訂正する訂正請求を行った(以下,この訂正を「本件訂正」という。 。)特許庁は,令和2年2月18日,「特許第6301524号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正することを認める。本件無効審判の請求は成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月28日,原告に送達された。

⑶ 原告は,令和2年3月25日,本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。2 特許請求の範囲の記載本件訂正前の本件特許についての発明(以下「本件発明」という。)及び本件訂正後の本件特許についての発明(以下「本件訂正発明」という。)に係る各特許請求の範囲の記載は,次のとおりである。なお,本件訂正発明中の下線部は,本件訂正により訂正された部分(以下「本件訂正事項」という。)であり,本件発明中の下線部は,本件訂正事項に対応する部分である。

⑴ 本件発明1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする,PTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する,骨粗鬆症治療剤ないし予防剤であって,下記(1)~(3)の全ての

5 条件を満たす骨粗鬆症患者であり,かつ,骨粗鬆症治療薬として,L-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,塩酸ラロキシフェン,エルカトニン,メナテトレノン,及び乳酸カルシウムからなる群より選択される1以上の薬剤の服薬歴を有する骨粗鬆症患者を対象とする,骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤ないし予防剤。

(1)年齢が65歳以上である

(2)既存の骨折がある

(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である

⑵ 本件訂正発明1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする,PTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する,骨粗鬆症治療剤ないし予防剤であって,下記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者であり,かつ,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がL-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,及び塩酸ラロキシフェンからなる群より選択される1つの薬剤である骨粗鬆症患者を対象とする,骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤ないし予防剤。

(1)年齢が65歳以上である

(2)既存の骨折がある

(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である3 本件審決の理由の要旨本件審決は,①本件訂正は訂正の要件を全て満たす,②本件訂正発明の「200単位のPTH(1-34)」は明確であるから,本件訂正発明は明確性要件に違反しない,③当業者は本件特許に係る明細書(以下,図面を含めて「本件明細書」という。 の記載及び出願時の技術常識に基づいて本件訂正発明を実施)

5 することができるから,本件訂正発明の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に違反しない,④本件明細書は,当業者の技術常識も考慮すると,本件訂正発明の課題が解決できると認識できるように記載されているから,サポート要件に違反しない,⑤本件訂正発明は,甲第7号証「ヒト副甲状腺ホルモン(1-34)の骨粗鬆症に対する間欠週1回投与の効果:3種類の投与量を用いた無作為化二重盲検前向き試験」(Osteoporosis International,Vol.9,p.296-306,1999)(以下「甲7文献」という。)に記載された発明(以下「甲7発明」という。)及び本件発明の特許要件判断の基準日(平成22年9月8日。以下「本件基準日」という。)当時の技術常識を踏まえても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない旨判断した。それぞれの論点に関する本件審決の理由の要旨は,以下のとおりである。

⑴ 本件訂正についてア 訂正の目的本件訂正事項は,概念的に,より下位の態様に特定し,限定するものであるから,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。イ 新規事項の追加の有無本件明細書(【0061】【0062】【0080】【0098】, , , )には,

(1)年齢が65歳以上である,(2)既存の骨折がある,(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である骨粗鬆症患者のうち,他の骨粗鬆治療薬である,L-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,塩酸ラロキシフェン等の「単独」の服薬歴がある患者に対して投与をすることが記載されているから,本件訂正事項は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。

5 ウ 特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無本件訂正事項は,概念的に,より下位の態様に特定するものであり,発明のカテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上,特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないから,特許法134条の2第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。

⑵ 明確性要件違反(無効理由1)の有無について本件明細書の段落【0034】に「非特許文献9」を引用して記載されているPTHの単位の測定法は,PTHの生物活性の測定法としてごく一般的なラット腎アデニルシクラーゼ法である。上記「非特許文献9」である甲第4号証「ラット腎臓からのアデニルシクラーゼの安定な調製による,in Vitroの副甲状腺ホルモンのバイオアッセイ」(Endocrinology,Vol.85p.801-810,1969)(以下「甲4文献」という。)では,ラット腎皮質をホモジナイズ,精製等して得られたアデニルシクラーゼ酵素調製物(以下「本32件酵素調製物」という。)とAT Pを添加した酵素反応用液に,測定目的のPTH試料と,生物活性既知の標準品であるMRC67/342(以下「本32件標準品」という。)をそれぞれ添加し,両者のcAM P産生量を比較することにより,PTH試料の生物活性の結果を得ている(以下,甲4文献に記載された測定方法を「甲4方法」という。 。したがって,PTH試料とし)て,本件訂正発明のPTH(1-34)を用いたときにも,甲4方法又はこれと同じ結果を再現できる同等の方法を用いることにより,「200単位のPTH(1-34)」の量を当業者は特定できる。

⑶ 実施可能要件違反(無効理由2)の有無について「200単位のPTH(1-34)」は当業者が明確に理解できるものであり,また,本件標準品が入手できないようなことがあった場合にも,例えば「ヒトPTH注(東洋) 又は」 「テリパラチド酢酸塩静注用100「旭化成」」(以下, 「テリパラチド酢酸塩静注用100この 「旭化成」 を」 「本件代替品」

5 という。)を標準品として用いることにより,200単位量のPTH(1-34)を測定することができる。

⑷ サポート要件違反(無効理由3)の有無について本件訂正発明の解決課題は,(1)年齢が65歳以上である,「 (2)既存の骨折がある,

(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である」との条件を満たし,かつ,「L-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,及び塩酸ラロキシフェンからなる群より選択される1つの薬剤」の服薬歴を有する骨粗鬆症患者に対する,1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする,PTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する,骨折抑制のための骨粗鬆症治療薬ないし予防剤を提供することと認められる。本件訂正発明が休薬(ウォッシュアウト)期間を経た患者とウォシュアウト期間を経ていない患者との両方を含むのに対し,本件明細書に記載の試験(【0119】ないし【0122】)は,前治療薬の8週(56日)以上のウォッシュアウト期間を経た患者の結果を示すにとどまり,ウォッシュアウト期間を経ていない患者についての結果を示すものではないとしても,上記3薬剤は,いずれも骨粗鬆症治療薬なのであるから,それらの服薬時期とPTH(1-34)の投与開始の時期が近接しても,本件明細書に記載のPTH(1-34)の骨粗鬆症治療の効果を失わせるようなことはないと合理的に推認することができる。また, 本件明細書の記載(【表23】)は,上記3薬剤のいずれかの服薬歴がある患者について,PTH(1-34)投与群とプラセボ投与群との間で新規椎体骨折の発生の有無を比較した試験結果であるとしても,上記3薬剤の服薬歴を有する患者において,PTH(1-34)投与群がプラセボ投与群よりも新規椎体骨折の発生率が低いことが示されていれば,上記課題が解

5 決できることを認識するに十分である。さらに,本件明細書の記載(【表21】)では「前治療薬」の具体的な種類が不明であり,また,本件明細書の記載(【表23】)では,複数の服薬歴を有する患者を併せて評価し,その評価例数も少ないとしても,上記3薬剤のいずれの服薬歴を有する患者においても,プラセボ投与群との対比においてPTH(1-34)投与群の新規椎体骨折発生率が低いことが理解でき,症例数を増やしていっても同じ傾向であろうことを合理的に推認することができる。

⑸ 進歩性欠如(無効理由4)の有無についてア 甲7発明の認定ヒトPTH(1-34)の200単位を毎週皮下注射する,ヒトPTH(1-34)を有効成分として含有する骨粗鬆症治療剤であって,厚生省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された,年齢範囲が45歳から95歳の被検者のうち,複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し,スコアの合計が4以上の場合の患者であって,試験開始3ヶ月前から試験期間を通して,骨代謝及び骨粗鬆症の経過に影響を及ぼす可能性のある薬剤(エストロゲン類,カルシトニン類,活性型ビタミンD,ビタミンK 2 ,イプリフラボン,ビスホスホネート類及びアナボリックステロイド類を含む。 の使用を控えさせた患者に対し,) 投与される,骨粗鬆症治療剤。イ 本件訂正発明と甲7発明との一致点1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする,PTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する,骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,特定の骨粗鬆症患者に投与されることを特徴とする,骨粗鬆症治療剤ないし予防剤。ウ 本件訂正発明と甲7発明との相違点

5 (ア) 相違点1特定の骨粗鬆症患者が,本件訂正発明では「下記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者であり,かつ,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がL-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,及び塩酸ラロキシフェンからなる群より選択される1つの薬剤である骨粗鬆症患者

(1)年齢が65歳以上である

(2)既存の骨折がある

(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である」であるのに対し,甲7発明では,「厚生省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された,年齢範囲が45歳から95歳の被検者のうち,複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し,スコアの合計が4以上の場合の患者であって,試験開始3ヶ月前から試験期間を通して,骨代謝及び骨粗鬆症の経過に影響を及ぼす可能性のある薬剤(エストロゲン類,カルシトニン類,活性型ビタミンD,ビタミンK 2 ,イプリフラボン,ビスホスホネート類及びアナボリックステロイド類を含む。 の使用を控えさせ)た患者」である点。(イ) 相違点2骨粗鬆症治療剤ないし予防剤が,本件訂正発明では,「骨折抑制のための」ものであることが特定されているのに対し,甲7発明では,そのような特定がない点。エ 相違点1の容易想到性下記(ア)に示すいずれの引用文献にも,本件訂正発明の「(1)年齢が6

5 5歳以上である」 「, (2)既存の骨折がある」 「,(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である」及び「他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がL-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,及び塩酸ラロキシフェンからなる群より選択される1つの薬剤である」との全ての条件(以下「本件4条件」といい,このうち,同(1)ないし(3)の条件を「本件3条件」といい,各条件を番号に従い「本件条件(1)」のようにいい,「他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がL-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,及び塩酸ラロキシフェンからなる群より選択される1つの薬剤である」を「本件条件(4)」といい,「L-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,及び塩酸ラロキシフェン」を「本件3薬剤」といい,本件3薬剤及び「エルカトニン,メナテトレノン,及び乳酸カルシウム」を併せて「本件訂正前薬剤」という。 を満たす骨粗鬆症患者に対して投与をすることは記)載も示唆もされておらず,また,下記(イ)のとおり,本件4条件の全てを満たす患者において,顕著な骨折抑制効果が奏されることを当業者が予測し得たとは認められない。よって,相違点1に係る,本件4条件の全てを満たす患者に甲7発明の骨粗鬆症治療薬を投与することを,本件基準日において当業者が容易に想到し得たと認めることはできないから,相違点2の容易想到性について検討するまでもなく,本件訂正発明に進歩性が認められる。(ア)a 甲7文献には,「試験開始3ヶ月前から試験期間を通して,骨代謝及び骨粗鬆症の経過に影響を及ぼす可能性のある薬剤(エストロゲン類,カルシトニン類,活性型ビタミンD,ビタミンK2 ,イプリフラボン,ビスホスホネート類及びアナボリックステロイド類を含む。 の使)用を控えさせたこと」が記載されているが,本件3薬剤の服薬歴がある者に投与することは記載されておらず,また,本件4条件の全てを

5 満たす骨粗鬆症患者が,本件3薬剤の服薬歴のない患者よりも優れた骨折抑制効果が期待されることの記載や示唆はない。b 甲第22号証「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版」(2006年)及び甲第89号証「PTH(1-34)毎週皮下投与製剤」(CLINICAL CALCIUM17巻1号56ないし62頁,2007)のいずれにも,本件条件(4)を満たす患者に甲7発明の骨粗鬆症治療薬を投与することは記載されておらず,本件4条件の全てを満たす骨粗鬆症患者に甲7発明の治療薬を投与したときに,本件3薬剤の服薬歴のない患者よりも優れた骨折抑制効果が期待されることの記載や示唆はない。c 甲第91号証「骨粗鬆症 診断・予防・治療ガイド」(2007年)には,「ラロキシフェンと骨形成促進効果のあるPTHの併用でも,有望な結果が得られている。」との記載があるが,これは「併用」を示すものであり,服薬歴に関するものではない。上記文献には,「PTHによる治療にはカルシウムとビタミンDの併用が必要であることを示唆している。PTHにカルシトリオールを併用すると,その骨形成促進効果が増強され,1~2年間の治療で10~30%の骨密度増加が得られる。骨折率にも大幅な低下が認められる。」との記載があるが,これは,カルシウムとビタミンDがPTHの薬理効果の発揮において必要であることが記載されているに留まるものであって,L-アスパラギン酸カルシウムやアルファカルシドールの服薬歴を有する患者を選択して,PTHを投与することは記載も示唆もされていない。d 甲第92号証「各種治療薬の併用療法」(日本臨床,Vol.67,No.5p.975-979,2009)には,「骨吸収抑制剤(塩酸ラロキシフェン,ビスホスホネート)を投与した後,骨形成促進剤(PTH)を連鎖的に

5 投与すると,骨吸収抑制剤投与後から更にBMDの増加が得られている。」との記載があるが,これは,塩酸ラロキシフェンを投与し続けるよりもPTHを連鎖的に投与した方がBMDの増加が見られたことを示すに留まるものであって,塩酸ラロキシフェンの服薬歴を有さない患者よりも服薬歴を有する患者の方が優れた骨折抑制効果を示すことを示唆するものではない。また,上記文献において参照されている甲第53号証「Differential Effects of Teriparatide on BMD After Treatment With Raloxifene or Alendronate」(Journal of Bone and Mineral Research,Vol.19,No.5 p.745-751,2004)においても,ラロキシフェンの服薬歴を有する患者が,服薬歴を有さない患者と同程度の骨代謝マーカーとBMDの増加が見られたことが記載されているだけであり,ラロキシフェンの服薬歴を有する患者が,服薬歴のない患者よりも優れた骨折抑制効果を奏することは記載も示唆もされていない。e 甲第80号証「骨吸収抑制剤による前治療がある場合とない場合における,重症骨粗鬆症の閉経後女性のBMDに及ぼす2年間のテリパラチド連日投与の効果」(Journal of Bone and Mineral Research,Vol.23,No.10 p.1591-1600,2008)(以下「甲80文献」という。)には,「ラロキシフェンを以前に服用したこと,または同時に服用したことによって,テリパラチドが導く脊椎または股関節BMDの増加が減じることはなかった。」との記載があるが,これは,ラロキシフェンによる前治療が,PTHがもともと発揮するBMDの増加効果を減じなかったことを示すに留まり,ラロキシフェンの服薬歴があることによって,服薬歴のない患者よりも優れた骨折抑制効果が発揮されることは記載も示唆もされていない。(イ)a 本件訂正発明の治療薬を投与した場合の新規椎体骨折の骨折相対

5 リスク減少率(RRR)は,下記のとおりである(本件明細書の【表21】 。)

① 本件3条件の全てを満たすが,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴のない患者群 約76%

② 本件3条件の全てを満たし,かつ,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者群 約83%b 本件3条件を満たし,かつ,本件3薬剤の服薬歴がある場合の新規椎体骨折のRRRは,下記のとおりであり(本件明細書の【表23】 ,)前記a①の約76%よりも大きい。

① L-アスパラギン酸カルシウム 約82%

② アルファカルシドール 約92%

③ 塩酸ラロキシフェン 100%c 前記bには当該骨粗鬆症治療薬以外の複数種類の骨粗鬆症治療薬の服薬歴を有する患者も含まれているが,実験成績証明書D(以下「甲86証明書」という。)によると,本件4条件の全てを満たす患者のRRRは,下記のとおりであり,前記a①の約76%よりもいずれも極めて大きい。

① L-アスパラギン酸カルシウム 100%

② アルファカルシドール 100%

③ 塩酸ラロキシフェン 100%d 【表23】 個々の骨粗鬆症治療薬の服薬歴毎にそれぞれ分けて,が,被験薬(PTH)投与群と対照薬(プラセボ)投与群における新規椎体骨折発生の有無の比較の結果を示していることからすると,本件明細書は,個々の骨粗鬆症治療薬1剤ずつの服薬歴毎に治療効果を提示するものであったと認められる。したがって,骨粗鬆症治療薬の服薬歴が1剤のみの者に対する治療効果を示す甲86証明書を,本件訂正

5 発明の効果の評価において参酌することは許される。4 取消事由

⑴ 本件訂正に関する判断の誤り(取消事由1)

⑵ 明確性要件に関する判断の誤り(取消事由2)

⑶ 実施可能要件に関する判断の誤り(取消事由3)

⑷ サポート要件に関する判断の誤り(取消事由4)

⑸ 進歩性に関する判断の誤り(取消事由5)

第3 当事者の主張

1 取消事由1(本件訂正に関する判断の誤り)の有無について

⑴ 原告

本件訂正は,新規事項を追加するものである。本件明細書には,本件発明が骨粗鬆症治療薬1剤のみの服薬歴を有する患者を対象とする発明であることを示した記載は全くない。これに対し,本件訂正発明は,服薬歴を本件3薬剤のいずれか1つとするものであるが,①本件訂正前薬剤の服薬歴があれば顕著な骨折抑制効果を奏するとの発明と②本件3薬剤のうちのいずれか1剤で顕著な骨折抑制効果を奏するとの発明とは,技術的意義を全く異にしており,本件訂正は,新たな技術的事項を導入するものである。したがって,本件訂正を訂正要件に適合するとした本件審決の判断には,誤りがある。

⑵ 被告

本件訂正は,本件訂正前薬剤をその下位概念である本件3薬剤に限定するものにすぎない。本件発明の「骨粗鬆症治療薬として,L-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,塩酸ラロキシフェン,エルカトニン,メナテトレノン,及び乳酸カルシウムからなる群より選択される1以上の薬剤の服薬歴を有する」の「1以上」には「1つ」の態様も含まれ,また,本

5 件明細書の【0062】には,

「他の骨粗鬆症治療薬は単独または併用して投薬実績があってもよい。 と,」 1剤のみの服薬歴の態様も所望の効果を奏するとの記載がある。以上のとおり,本件訂正は,新規事項の追加には当たらないから,本件訂正を訂正要件に適合するとした本件審決の判断には,誤りはない。

2 取消事由2(明確性要件に関する判断の誤り)の有無について

⑴ 原告

本件訂正発明のPTHの生物学的活性は甲4方法によって測定されるところ,甲4方法は,①活性が既知であるウシ甲状腺ホルモンから部分的に精製

32 32

した本件標準品と,本件酵素調製物と,AT P( Pは放射標識体)とを混合し,本件標準品中のPTHがアデニルシクラーゼを活性化させ,これ

32 32 32

によりAT PがcAM Pに変換され,反応終了後にcAM Pの生成量を測定し,用量反応曲線を作成し,②同様に,活性が未知のPTHであ32るサンプルと本件酵素調製物とAT Pとを混合して用量反応曲線を作成し,③次に,サンプルの用量反応曲線と本件標準品の用量反応曲線とを対比して,生物学的活性が既知の標準品に対するサンプルの生物活性の比から,サンプルの生物活性を導くバイオアッセイ法である。しかし,以下のアないしエの4つの観点からみて,本件訂正発明の「200単位」は明確ではない。ア 明確性要件違反その1甲4方法は,①本件標準品が甲4方法を阻害する不純物を含んでいたこと(甲4,36ないし38),②本件酵素調製物中のラット由来の腎皮質細胞膜によりウシPTHが急速に分解されること(甲40,41),③本件酵素調製物におけるラットの個体差・酵素の純度の相違に基づく試験間の差を平準化する指標が定められていないことにより,生物学的活性の測定法として再現性・普遍性を欠くものであり,その測定結果には信頼性がない。

5 イ 明確性要件違反その2

ヒトPTH(1-34)は,ラット腎皮質細胞膜で分解されるため(甲40,41),甲4方法において十分な用量反応曲線を得ることができず(甲4,40) 甲4方法で生物学的活性の測定を行うことが困難である。,すなわち,ヒトPTHはウシPTHよりも分解速度が速いこと,また,ヒトPTH(1-34)はヒトPTH(1-84)よりも分解速度が速く,ヒトPTH(1-84)に比して約10分の1の生物学的活性しかみられない。そうすると,ラット腎皮質を調製したものを酵素調製物として使用した場合,ウシPTHである標準品の用量反応曲線とヒトPTHであるサンプルの用量反応曲線の傾きが異なってしまったり,また,両曲線が平行になったとしてもそれら用量反応曲線の傾きが小さくなりすぎて誤差が大きくなってしまったりする。このようなことから,甲4方法ではヒトPTH(1-34)の生物学的活性の測定が困難であるため,ラット以外の他の種由来の酵素を使用することが提案されていたのである(甲40)。したがって,本件訂正発明のPTHの1単位量は,薬剤の投与量を定める単位として明確性に欠ける。ウ 明確性要件違反その3(ア) 本件基準日当時には,国際標準品として別の製品が用いられるようになっていて,本件標準品は入手が不能ないし困難となっており,甲4方法によりPTH1単位量を定めることは,現実に行うことができないか,少なくとも著しく困難になっていた。(イ) 次のとおり,本件代替品(生物学的活性は,被告の測定によると,テリパラチド酢酸塩として3300単位/mg)を標準品として測定してPTH1単位量を定めることはできない。a 本件明細書には,甲4方法と同じ測定結果を再現することができる代替可能な他の方法についての記載も,他の標準品で代替することが

5 できる旨の記載もない。

b 被告が本件代替品について行った測定結果は,甲4方法ではなく,これとは異なる甲第74号証に記載の方法(以下「甲74方法」という。)によってされたものである。しかしながら,酵素的分析法では,酵素の精製法や精製段階が違えば,純度や比活性が当然に異なり,酵素反応時の温度・pH等の微妙な変化でも酵素の変性・失活が生じてしまって試験結果に影響することから,試験条件の変化が仮に微妙であっても注意が必要であることは,本基準日当時の技術常識である(甲42) したがって,。 甲4方法と甲74方法の試験方法及び試験条件の相違(甲100)は,技術常識に照らし,生物学的活性の測定結果に看過できない程度の影響を生じさせる。したがって,本件代替品の「3300単位/mg」自体が甲4方法とは異なる測定方法によって定めた値であるから,甲74方法を用いても甲4方法と同一の結果を再現することはできない。エ 明確性要件違反その4ウシPTHとヒトPTHとは,アミノ酸配列を異にする上(甲3),構造的及び立体配座的な相違により生物学的活性が異なるから,ウシPTHの生物学的活性について規定された単位を,何らの換算方法等の規定もないままにヒトPTHに適用できるという技術常識はない。

⑵ 被告

ア 前記⑴ア(明確性要件違反その1)について

①については,仮に,本件標準品が不純物を含んだりするとしても,本

件標準品の用量反応曲線はそれらの影響も含めて測定されたものであり,不純物の割合が測定の度に変わるわけではないから,平行線検定法が前提とするサンプルの用量反応曲線との平行性を満たしている限り,測定の信頼性は否定されない。

5 ②については,ラット由来の腎皮質細胞膜がウシPTHを急速に分解す

るとしても,それゆえ,甲4方法が再現性が得られない方法とする文献はない。仮に,PTHの種類によって分解速度が異なるとしても,本件標準品の用量反応曲線とサンプルの用量反応曲線が平行であることを確認した上で生物活性を測定するのが甲4方法であるから,両者の用量反応曲線が平行にならなければ,その測定結果はただ単に採用されないだけである。

③については,当業者であれば,甲4文献に技術常識に関わるような詳

細の記載がなくとも,甲4方法における試験間の差の平準化や測定結果の再現性を高めるために通常工夫する実験手法や統計学的手法を適用し,測定結果の開きや誤差を最小限にした測定を行うことができる。イ 前記⑴イ(明確性要件違反その2)について甲4文献には,ヒトPTHについて甲4方法が使用できないといった記載はない。原告主張の関係文献(甲40等)も,見かけの活性が低いとしているだけであって,ヒトPTH(1-34)を測定できないとの記載はない。甲4方法がPTHの最も代表的な信頼できる測定法であることに変わりはない。標準品とサンプルの用量反応曲線の勾配が,測定条件間で異なる傾きになる可能性があることに被告も異論はないが,勾配が異なっても,その影響は標準品とサンプルのそれぞれに等しく及ぶのであるから,各曲線間の距離,すなわち効力比は変わらない。ウ 前記⑴ウ(明確性要件違反その3)について(ア) 本件明細書の【0034】には,「PTHの1単位量は,自体公知の活性測定方法により測定可能である(非特許文献9)」と記載され,活性測定方法として非特許文献9(甲4)を引用して公知の「ラット腎アデニルシクラーゼ法」を用いることが記載されている。標準品として,甲4文献では本件標準品が記載されているが,上記【0034】には,標

5 準品に関する格別の記載はなく,本件標準品でもよく,あるいはその後

に提案されたものでもよく,本件出願当時に技術常識となっていれば,他の標準品を使用することを排除するものではない。そして,本件基準日当時には,本件代替品のように,ラット腎アデニルシクラーゼ法による生物活性が100単位であって,同測定による比活性がテリパラチド酢酸塩として3300単位/mgであるものが流通し,当業界では容易に入手し得たものである。したがって,本件基準日当時の技術常識に照らせば,活性測定方法は,ラット腎アデニルシクラーゼ法を用いていて,本件標準品に紐付いた測定結果が得られるものであればよく,本件標準品を用いる甲4方法で測定しなければならないと論ずること自体が的外れである。(イ) 多少の測定条件の差違はあっても,甲4方法も甲74方法もいずれも同一の測定原理に基づく「ラット腎アデニルシクラーゼ法」であり,標準品に対する相対的な活性を平行線検定法で測定するものであるから,測定条件の相違は測定結果に影響を与えない。甲74方法も本件標準品から生物活性を紐付けされた方法であるから,甲4方法と同一の測定結果が得られるものであり,試験結果に影響を与えない。原告は,測定条件や調製法が同一でなければ看過できない影響が出ると主張するが,何ら具体的な根拠に基づいて主張しているものではなく,単なる憶測にすぎない。エ 前記⑴エ(明確性要件違反その4)に対してヒトPTHの生物活性を測定する際に,ウシPTHの生物活性から換算することはしておらず,平行線検定法により相対的に測定したそのままの値をヒトPTHの生物活性(単位)として用いればよく,

(原告の主張)

する「換算」は意味不明であり,その主張は失当である。

3 取消事由3(実施可能要件に関する判断の誤り)の有無について

5 ⑴ 原告

本件明細書の【0034】には「ここでPTHの1単位量は,自体公知の活性測定方法により測定可能である(非特許文献9) とだけ記載されており,」具体的な測定方法や手順は記載されていない。前記2⑴のとおり,本件標準品は,本件基準日当時に入手が不能ないし困難となっていて,「非特許文献9」による測定方法,すなわち甲4方法による生物学的活性の測定は,現実に行うことができないか,著しく困難になっていた。その上,本件明細書には,甲4方法と同じ測定結果を再現することができる代替可能な測定方法について何らの記載もされていない。また,甲74方法は甲4方法とは異なり,その測定方法の相違は,技術常識に照らし,看過することができない程度の試験結果の相違をもたらす。したがって,本件訂正発明の「200単位」に係るPTH1単位量は,測定すること自体が不能ないし著しく困難であって,当業者は本件訂正発明を実施することができない。そうすると,本件訂正発明は,発明の詳細な説明の記載が当業者が本件訂正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから,実施可能要件を欠く。

⑵ 被告

前記2⑵と同旨である。

4 取消事由4(サポート要件に関する判断の誤り)の有無について

⑴ 原告

ア 特許請求の範囲の記載本件訂正発明は,「他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がL-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,及び塩酸ラロキシフェンからなる群より選択される1つの薬剤である骨粗鬆症患者を対象とする」とのみ特定するものであるから,ウォッシュアウトの有無にかかわらず,すなわち,

5 本件3薬剤から直ちにPTHに切り替えた患者も含めて,服薬歴が本件3

薬剤のうち1種類のみである患者を投与対象とするものである。イ 本件明細書の記載(ア) 本件訂正発明の課題は,本件3条件の全てを満たし,かつ,本件3薬剤の服薬歴を有する骨粗鬆症患者に対する,1回当たり200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする,PTHを有効成分として含有する,骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤ないし予防剤を提供することである。(イ) 前記(ア)の課題に係る実施例2の試験につき,本件明細書には,骨粗鬆症治療薬である「カルシトニン製剤,活性型ビタミンD 3 製剤,ビタミンK製剤,イプリフラボン製剤,エストロゲン製剤,SERM製剤,蛋白同化ホルモン製剤」の投与を受けている患者を除外するか,8週以上のウォッシュアウトを求める旨の記載があり 【0100】 ,( ) 実施例2は前治療薬についてウォッシュアウトがされた上での臨床試験であり(【0119】 ,) 本件明細書には,ウォッシュアウトを経ていない患者に対する効果は何ら示されていない。一方で,前治療薬についてウォッシュアウトがされた上での臨床試験であるにもかかわらず,前治療薬の服薬歴のある患者について優れた骨折抑制効果があると確認されていることは(【0120】【表21】【0, ,121】【表22】【0122】, , 【表23】 ,それ自体不可思議なもので)あり,技術常識とは異なる。被告が主張する「生体に何らかの影響が残り」というのは科学的根拠を欠いた願望論にすぎない。このような技術常識とは異なる記載しかないのに,当業者が,本件明細書の記載から,本件明細書には記載されていないウォッシュアウトを経ていない場合にも上記同様の骨折抑制効果が生ずると認識することはできない。「生体に何らかの影響が残り」という不明な影響がウォッシュ

5 アウトを経ていないことによってより増強するなどと推論できるはずも

ない。(ウ) また,本件明細書には,本件3薬剤のうちの1剤の服薬歴があることによって効果が生じるとしながら,服薬歴がその1剤のみである患者に対する効果は示されていない。すなわち,【表21】では,個々の前治療薬ごとに集計がされているわけではなく,個々の前治療薬の服薬歴のある患者ごとの骨折発生率が不明である。そして,【表23】では,個々の前治療薬の服薬歴のある患者ごとの集計はされているが,その個別の集計の中には当該前治療薬以外の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者が相当数含まれている。これは,【表23】に記載の各前治療薬の被験薬投与群の評価例数の合計が219例,各前治療薬の対照薬投与群の評価例数の合計が228例であるのに対し, 表【21】に記載の「骨粗鬆症の前治療薬(有) (前治療薬の服薬歴のある」患者)の「被験薬投与群」の評価例数が122例,「対照薬投与群」の評価例数が139例であることから明らかである。さらに,【表23】は,個々の前治療薬ごとに,当該治療薬の服薬歴がある患者と当該治療薬の服薬歴がない患者とで対照試験を行ったものではない。【表23】からでは,個々の前治療薬の服薬歴がある患者について,PTHの投与が,プラセボの投与と比較して,新規椎体骨折を抑制する可能性があることまでしか理解することができない。(エ) 以上のとおり,本件明細書の記載では,当業者は,特許請求の範囲に記載された本件3薬剤について,発明の課題が解決できると認識することができないから,本件審決の判断には,誤りがある。

⑵ 被告

ア 特許請求の範囲の記載本件訂正発明がウォッシュアウトを経ていない患者も投与対象としてい

5 ることは,前記⑴アにて原告が主張するとおりである。

イ 本件明細書の記載(ア) 本件訂正発明の課題は,前記⑴イ(ア)にて原告が主張するとおりである。(イ) ウォッシュアウト期間を設けることで,PTHの投与を開始する時点において,患者の体内から他の骨粗鬆症治療薬は消失して薬理効果はなくなるが,他の骨粗鬆症治療薬の生体への影響,骨への影響は直ちに消失するものではなく生体に残るから,ウォッシュアウト期間を設けたことによって他の骨粗鬆症治療薬の影響が消失した患者になるわけではない。本件訂正発明は,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がない場合でも,プラセボに対して骨折抑制効果を示すものの,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある場合には,PTHによる骨折抑制効果が一段と優れたものとなるというものである。また,一般に前治療薬の影響は,投薬の中止時点がもっとも強く,時間の経過と共に影響が徐々に減少していくとみるのが自然であり,骨粗鬆症治療薬の場合はそうではないという特段の技術常識はない。したがって,ウォッシュアウト期間を更に短くするとか,あるいはウォッシュアウト期間を設けなかった場合,前治療薬の生体への影響がより大きなものであると合理的に推論できる。換言すれば,ウォッシュアウト期間を設けても前治療薬の服薬歴があることによる効果があるのであれば,ウオッシュアウト期間を設けなければ当然にその効果があるとみることが相当である。(ウ) 本件明細書の【表23】の個別の前治療薬の服薬歴のある患者ごとのの集計の中に当該前治療薬以外の治療薬の服薬歴を有する者が含まれていることは,前記⑴イ(ウ)にて原告が主張するとおりである。本件訂正発明は,元来,服薬歴の有無のみを問題としており,それが単独であ

5 ろうが併用されていたのであろうが骨粗鬆症治療薬を服薬していた点に

おいては違いはないため,薬剤の重複を問題としていなかったからである。すなわち,本件訂正発明は,前治療薬の薬理効果を利用するものではなく,前治療薬の服薬歴があることによる生体への影響を利用するものであるから,前治療薬が併用されていることは何ら問題になることではない。なぜなら,骨粗鬆症治療薬を併用することで,ある骨粗鬆症治療薬の服薬による生体への影響が別な骨粗鬆症治療薬の服薬により損なわれるといった技術常識はないからである。そして,課題の解決という観点からは,所定の他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴のある患者に対して本件訂正発明が効果を奏することが示されれば十分であって,それを超えて,その効果が所定の他の骨粗鬆症治療薬の服薬による影響を受けた結果であることまで示す必要はない。したがって,所定の前治療薬の服薬歴がある者について,プラセボ投与との対比によってPTHが骨粗鬆症に対して効果を奏することが示されていれば十分である。(エ) 以上のとおり,当業者は,本件明細書の記載により,本件訂正発明の課題を解決できることを認識できるから,本件審決の判断には,誤りはない。

5 取消事由5(進歩性に関する判断の誤り)の有無について

⑴ 原告

ア 相違点1の容易想到性(ア) 本件4条件の各条件についてa 本件条件(1)について骨粗鬆症は加齢とともに有病率が上昇する疾病であること,椎体骨折及び大腿骨頚部骨折発生率が年齢とともに指数関数的に増加すること,高齢であることが骨粗鬆症による骨折の重要な危険因子であるこ

5 と,年齢が骨密度とは独立した骨粗鬆症による骨折の危険因子である

ことは,本件基準日当時の技術常識であった(甲8,88)。そして,「65歳以上」というのは,高齢者の医療の確保に関する法律32条で65歳以上が高齢者とされていることに相応するだけである。したがって,本件条件(1)は,単に,骨粗鬆症の発症率が高いこと及び骨折のリスクが増大した状態の患者群であることの一要素でしかなく,これ自体,何ら格別の技術上の意義を有するものではない。b 本件条件(2)について既存骨折の有無は,骨粗鬆症の診断において,重要な診断の要素の一つとされていたものである(甲8,9,88)。さらに,男女とも,部位にかかわらず,既存骨折があると将来の骨折リスクは約2倍になり,特に,既存椎体骨折があると将来の椎体骨折は約4倍に高まるとされていた(甲88)。したがって,本件条件(2)は,骨粗鬆症の患者群を特定する条件の一つとして,ごく一般的なものにすぎず,これ自体,何ら格別の技術上の意義を有するようなものではない。c 本件条件(3)について本件条件(3)の骨密度・骨萎縮度に関する条件は,骨粗鬆症の診断基準の一要素とされていたものである(甲9,88)。したがって,本件条件(3)も,骨粗鬆症の患者群を特定する条件の一つとして,ごく一般的なものにすぎず,これ自体,何ら格別の技術上の意義を有するものではない。d 本件条件(4)について本件基準日当時,以下の表のとおり,本件3薬剤は骨粗鬆症治療薬として知られていた (甲22,23)。なお,表中の「評価」は,骨密度の増加及び骨折の防止についてのものである。甲 23 の表 効能・効果 証拠 評価L-アスパラギン酸 カルシウム 骨粗鬆症・骨軟化症の 甲 24 Cカルシウム 製剤 代謝性骨疾患におけるカルシウム補給アルファカルシド 活性型ビタ 骨粗鬆症 甲 26 Bール ミンD 3製剤塩酸ラロキシフェ ラロキシフ 閉経後骨粗鬆症 甲 27 Aン ェン塩酸塩したがって,本件3薬剤は,いずれも,本件基準日当時,骨粗鬆症

5 治療薬の種類に限りがある中で,骨粗鬆症治療薬として通常選択が検

討される薬剤であった。(イ) 本件4条件の容易想到性についてa(a) 甲7発明における骨粗鬆症患者の年齢範囲は「45歳から95歳」であるが,骨粗鬆症は,加齢とともに有病率が上昇する疾病であるから,本件条件(1)を満たす患者は,甲7発明が当然に投与対象として予定していたものである。また,甲7発明は,「退行期骨粗鬆症の診断基準(1989年) (甲8)に記載の診断基準により」骨粗鬆症と診断された患者を投与対象とするものであるところ,本件条件(2)の既存の骨折があることは,スコアの合計において重要な因子となっているから,本件条件(2)を満たす患者も,甲7発明が当然に投与対象として予定していたものである。さらに,甲7発明が対象とする患者は,上記診断基準(甲8)を改訂した「原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版) (甲9)の診断基」準に含まれる本件条件(3)も満たしている蓋然性が高いから,本件条件(3)を満たす患者も,甲7発明が当然に投与対象として予定していたものである。そして,甲7発明は,「試験開始3ヶ月前から試験期間を通して,

5 骨代謝及び骨粗鬆症の経過に影響を及ぼす可能性のある薬剤(エス

トロゲン類,カルシトニン類,活性型ビタミンD,ビタミンK 2 ,イプリフラボン,ビスホスホネート類及びアナボリックステロイド類を含む。)の使用を控えさせた患者」を対象としており,これは,甲7発明の対象患者の中に骨代謝及び骨粗鬆症の経過に影響を及ぼす可能性のある他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者 が含まれていることを前提としたものである。すなわち,アルファカルシドールは「活性型ビタミンD」の一つであるから,上記に含まれる(甲50の87頁表1)。また,上記括弧内で挙げられた薬剤は,「骨代謝及び骨粗鬆症の経過に影響を及ぼす可能性のある薬剤」として記載されたものであるから,これらは例示にすぎず,塩酸ラロキシフェンも当然に含まれる。他方,L-アスパラギン酸カルシウムは,単なるカルシウム補給のためのカルシウム製剤であるから(甲110),甲7発明においてウオッシュアウトの対象とされていたとは考えにくいが,少なくとも,骨粗鬆症患者にはカルシウム補強が必須であるため,甲7発明において,汎用されているL-アスパラギン酸カルシウムの服薬歴のある患者が投与対象に含まれていることも,当然に予定されている。したがって,本件3薬剤の服薬歴を有する患者についても,甲7発明は,これを投与対象に含むことを当然に予定していた。以上から,本件4条件は,甲7発明において,その投与対象患者が満たすことを当然に予定していたものである。

⒝ 甲7発明の対象患者は,「退行期骨粗鬆症の診断基準(1989

年) (甲8)で「4点(ほぼ確実)以上の患者」である。上記診断」基準において,「年齢」のスコアは,「女性55歳未満 -1」及び「男性75歳未満 -1」であるから,本件条件(1)を満たした

5 だけでは,甲7発明の対象患者(骨粗鬆症患者)には選定されない。

他方,本件条件(2)は,スコア+1~+3,本件条件(3)は,スコア+3であるが,本件条件(2)及び本件条件(3)以外でスコアが加点となる因子は,「腰背痛あり 1」 「血清カルシウム,及びリン,AL-P値 正常 1」しかない。したがって,甲7発明の対象患者(合計4点(ほぼ確実)以上)と診断されるためには,年齢以外の複数の因子をも満たしている必要があり,そのなかでも,本件3条件の全てを満たしている患者は,「確実」(合計5点以上)あるいは「ほぼ確実」(合計4点)に骨粗鬆症と診断される患者の典型といえる。このように,甲7発明の対象患者は,本件3条件の全てを満たしている蓋然性が高い。b(a) 前記aのとおり,本件3条件は,骨粗鬆症の発症や骨折の危険因子あるいは骨粗鬆症の一般的な診断要素にすぎないから,骨粗鬆症について特殊な患者群を画する意義は認められない。甲第90号証「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版」には,臨床的骨折危険因子として合計8個の因子が確認されている中で「低骨密度」 「既存骨折」及び「年齢」に関しては,骨折の危,険因子としてエビデンスがあるが,その他の臨床的骨折危険因子については,相対危険度と,それらの年齢との関係性などのデータが十分ではない旨明記され(51頁),また,本件3条件が骨折の危険因子として筆頭に挙げられていて,「骨折の重要な危険因子である」(女性,高齢)「骨折を強く予測する」, (低骨密度)「男女とも部位,にかかわらず既存骨折があると将来の骨折リスクは約2倍になる。特に,既存椎体骨折があると将来の椎体骨折は約4倍に高まる」(既存骨折)との記載がされている(34頁)。また,PTHが骨折の危

5 険性の高い骨粗鬆症患者に有効な薬剤であることは,本件基準日当

時,技術常識となっていた。すなわち,効能・効果を「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」とするPTH製剤である「フォルテオ」(一般名「テリパラチド」)は,年齢,既存骨折,低骨密度の3要素により骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者を定義しており,甲第112号証「骨折抑制のための薬剤選択 閉経後女性」(CLINICAL CALCIUM17巻7号86ないし92頁,2007)の図3(91頁)には,PTHが,年齢が高くなり,より骨折の危険性の高い患者に対し有効な薬剤であることが示されている。そして,甲7発明は,48週という比較的短期間で腰椎骨密度(BMD)を8.1%増加させた治療薬であり,骨密度の増加が骨折予防に寄与するものであること,中手骨骨密度を減少させることなく腰椎BMDを比較的短期間で用量依存的に増加したことにより,極めて将来有望であると思われる骨粗鬆症治療薬とされていた。したがって,甲7発明に接した当業者は,本件3条件を全て満たす患者に対して甲7発明を適用することを,当然に検討する。甲7文献には,各サブ群間においてPTHの骨密度への応答が同程度であった旨記載されているが(300頁左欄11行ないし右欄6行目) 各サブ群で骨密度増加効果が確認されたのであるから,, 特定の患者群に対する甲7発明の適用を妨げる事情ではない。

⒝ 本件3薬剤がいずれも骨粗鬆症及び骨折抑制の治療効果が弱いも

のであるのに対し,PTHは,本件基準日当時の既存治療薬の中でも,トップクラスの骨量増加作用及び骨折抑制効果を奏し,既存薬にはない強力な骨形成促進作用を有するため,特に骨折リスクが高い患者に対する期待が大きいとされていた薬剤であり,それゆえ,PTHは,これらの前治療薬について治療効果が上がらない場合に,

5 あるいは,骨粗鬆症がより重篤になった場合に投与を検討する薬剤

とされていた。すなわち,本件3薬剤の骨密度の増加及び骨折の防止の効果の評価は,単なるカルシウム補給を目的とするL-アスパラギン酸カルシウムが「C」 アルファカルシドールが, 「B」であり,塩酸ラロキシフェンについては「A」とされていた(甲23)ものの,PTHに比すれば骨密度増強作用は弱く,骨折抑制効果の期待も低く(甲22,90),閉経後比較的早期の女性の椎体骨折の抑制を対象とするものとして,PTHより効果が低いものであった。したがって,PTHを投与する際に本件3薬剤の服薬歴がある患者に投与することは当然に検討する事項である。

⒞ PTHは,通常,骨折のリスクの高い重症骨粗鬆症の閉経後女性と

男性の治療として用いられる薬剤であり,PTHを投与されている多くの患者が,骨吸収抑制剤(塩酸ラロキシフェン,ビスホスホネート等)の服薬歴があるとされ,エストロゲン又はラロキシフェンによる前治療はPTHの脊椎又は股関節のBMDの増加を減少させなかったことが報告されている(甲80文献の1591頁左欄1行ないし1592頁左欄8行目,1597頁左欄10行ないし右欄7行目)。したがって,上記結果は,甲7発明を他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴を有する患者に適用することについて動機付けが存することを基礎付ける。これに対し,被告は,骨吸収剤など他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴があるとPTHの効果が減衰することが技術常識であった旨主張するが,甲80文献の試験は,本件3薬剤ではないアレンドロン酸(アレンドロネート)又はビスホスホネートによる前治療がテリパラチドの骨形成に影響する旨を示したものにすぎず(甲53ないし

5 56),あらゆる骨粗鬆症治療薬についてその服薬歴があるとPT

Hの効果が減衰するとしているものではない。仮に,骨粗鬆症治療薬の服薬歴を有する患者の骨密度増加は服薬歴がない患者よりも骨密度増加率が低かったとの甲80文献の記載に依るとしても,逆に言えば,服薬歴があっても骨密度増加効果がみられることは否定できないことになる。

⒟ 甲第82号証「Effects of Previous Antiresorptive Therapy

on the Bone Mineral Density Response to Two Years ofTeriparatide Treatment in Postmenopausal Women withOsteoporosis」(J Clin Endocrinol Metab, March 2008,93

(3), 852-860)

(以下「甲82文献」という。)には,ビスホスホネートの1つであるエチドロネートの治療歴のある患者群について,治療歴のない患者群に比してBMDの増加が阻害されていないこと(857頁右欄10ないし15行目),ラロキシフェン,エストロゲン,カルシトニン及びビタミンD代謝物の前治療歴がある患者群であるNon-bisphosphonate群(NON-BP)でも,試験開始時から6月後,12月後,18月後,24月後に,それぞれ,BMDが4.0%,5.3%,8.2%,9.3%増加していて十分に治療効果が上がっていることが示され,その上で,BMD増加率が低いアレンドロン酸及びリセドロン酸の治療歴のある患者群を含めて,治療歴のない患者群に比してPTHによるBMD増加の効果が少なかったものの,骨粗鬆症治療薬を使用後の重度の骨粗鬆症患者に対する効果的な治療オプションとして,テリパラチドの使用を支持するとの結論が示されている(859頁左欄9ないし19行目)。c 甲7発明において,投与された患者に重篤な副作用はみられず,かつ,生じた副作用は一時的なものにとどまっており(甲7の298頁

5 左欄25行ないし299頁左欄9行目,表5)200単位週1回投与

が安全でないと予測すべき理由はない。d PTHは,年齢が高くなり,より骨折の危険性の高い患者に対して有効に薬剤であるから(甲112) 高齢者に効きにくいという技術常,識はない。仮にそのような技術常識が存するとしても,それはPTHを連日投与するからであり,甲7発明の200単位週1回投与については,連日投与と比較して高いBMD(骨密度)の増加作用が確認されているから,当業者は,PTH200単位週 1 回投与を高齢者に適用することを動機付けられる。e 以上のとおり,甲7発明に接した当業者において,甲7発明の骨粗鬆症治療薬を本件4条件の全てを満たす患者に適用することは,技術常識に基づき,当業者が当然に検討する事項である。イ 効果について(ア) 本件明細書には,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴を有する骨粗鬆症患者の骨折発生率について,【0119】ないし【0122】【表21】な,いし【表23】の記載しかない。(イ)a 本件明細書は,骨折抑制効果が本件3条件により奏するとしながら,200単位投与群について,本件3条件を全て満たす患者と本件3条件の全部又は一部を満たさない患者とを比較した試験結果は何ら示していない。仮に,本件3条件を満たした場合に100単位の投与によってPTHの骨折抑制効果を強く発現させることができるとしても,本件訂正発明のように用法・用量を限定したところに格別の効果を奏する特殊な患者群を見出したという発明において,当該用法・用量を変更しても,その特殊な患者群において変更前の用法・用量と同様に格別な効果を奏するなどという技術常識はなく,また,そのような推論ができる根拠はない。実際,本件明細書に記載の実施例1の結

5 果は,100単位投与群では,本件3条件の全てを満たすとする高リ

スク患者の骨折発生率が6%(=3÷52,【表2】及び【表8】 ,本)件3条件を満たさないとする低リスク患者の骨折発生率が9%であり(=1÷11,【表3】及び【表9】 ,高リスク患者の方が低リスク患)者よりも骨折発生率が低いが,5単位投与群では,高リスク患者の骨折発生率が28%(=18/64,【表2】及び【表8】 ,低リスク患)者の骨折発生率が10%(=1÷10,【表3】及び【表9】)であり,低リスク患者の方が高リスク患者よりも骨折発生率が低くなっている。b 本件訂正発明が対象とする「高リスク患者」とは,本件条件(1)と,「既存骨折がある」(本件条件(2))と,本件条件(3)の全てを満たす者であるところ(【請求項1】 ,本件明細書の実施例の「高リス)ク患者(高リスク者)」は,本件条件(1)と,「既存の椎体骨折がある」と,本件条件(3)の全てを満たす患者としており(本件明細書【0079】 ,) 「既存の椎体骨折がある」は「既存骨折がある」(本件条件(2))に含まれるから,実施例の「高リスク者」は,本件3条件を満たす者である。他方,実施例では,「高リスク者」以外の者を全て「低リスク者」としているから(本件明細書【0079】【0080】 ,本件条件(1), )と,「既存の『非』椎体骨折がある」と,本件条件(3)の全てを満たす患者は,実施例においては「低リスク者」であるが,本件3条件は満たしていることになり,本件訂正発明は実施例にいう「低リスク者」をも含んでいる。そして,骨粗鬆症患者では,男女とも,部位にかかわらず,既存骨折があると将来の骨折リスクは約2倍になり,特に,既存椎体骨折があると将来の椎体骨折は約4倍に高まるとされていて(甲88),本件条件(2)の「既存の骨折がある」と実施例の「既存の椎体骨折がある」とでは,骨折リスクが約2倍相違する。そうする

5 と,骨折リスクの高い「既存の椎体骨折がある」患者を対象とした実

施例1の結果をもってしては,それより骨折のリスクの低い「既存の『非』椎体骨折がある」患者をも含む本件3条件が特殊な患者群を画することの根拠となり得ない。また,低リスク患者の類型は7通り(3種の条件を組み合わせた8通りの場合から,全ての条件を満たす場合―すなわち,高リスク患者―を控除する。)存在するが,実施例1の「低リスク患者」かつ「100単位投与群」の例数は,わずか11例しかなく,7通りの組合せに対しては少なすぎ,その結果をもってしては,確率の低い事象が偶然生じた可能性を排除することができず,そのような試験結果に信頼性を認めることは困難である。また,実施例1の100単位投与群における低リスク患者の患者背景は,全員が年齢65歳未満で本件条件(1)を満たさないが,本件条件(2)及び本件条件(3)のいずれも満たす者とうかがわれ(本件明細書【表3】 ,) 実施例1の「低リスク患者」かつ「100単位投与群」の結果は,本件条件(1)のみを満たさない患者群についての結果であって,ここから低リスク患者全般について客観的な評価を導くことは困難である。c 前記4(1)イ(ウ)と同旨。すなわち,本件3条件の全てを満たし,かつ,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が本件3薬剤のうち1種類のみである患者について,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴のない患者よりも優れた骨折抑制効果を示すことを本件訂正発明の顕著な効果とするのであれば,PTH投与群のなかで,本件3薬剤のそれぞれについて,「他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が当該薬剤の1種類のみである患者群の骨折発生率」と「他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴のない患者群の骨折発生率」とを比較した試験結果が示される必要があるが,本件明細書において,そのような比較はさ

5 れていない。すなわち,

【表21】では,個々の前治療薬ごとに集計がされているわけではなく,個々の前治療薬ごとの骨折発生率が不明である。そして,表23】【 では,個々の前治療薬ごとの集計はされているが,その個別の集計の中に当該前治療薬以外の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者が相当数含まれている。これは,【表23】に記載の各前治療薬の被験薬投与群の評価例数の合計が219例,各前治療薬の対照薬投与群の評価例数の合計が228例であるのに対し,【表21】に記載の「骨粗鬆症の前治療薬(有)(前治療薬の服薬歴のある患者)の「被」験薬投与群」の評価例数が122例,「対照薬投与群」の評価例数が139例であることから明らかである。さらに,【表23】は,個々の前治療薬ごとに,当該治療薬の服薬歴がある患者と当該治療薬の服薬歴がない患者とで対照試験を行ったものではない。これでは,個別の骨粗鬆症治療薬の服用歴があることによって効果が奏されたのか,使用された他の骨粗鬆症の服薬歴もあることによって奏されたものであるかを把握することができない。 表2【3】からでは,個々の前治療薬の服薬歴がある患者について,PTH200単位週1回の投与が,プラセボの投与と比較して,新規椎体骨折を抑制する可能性があることまでしか理解することができない。(ウ) 甲86証明書についてa(a) 本件訂正発明では,他の骨粗鬆症治療薬として本件訂正前薬剤が挙げられていたが,本件審判中,被告が改めて実施例2の試験データを見返しても,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が1種類のみである患者について「優れた骨折抑制効果」なるものを確認できたのは,本件3薬剤のみであった。すなわち,特許権者である被告ですら,本件審判に至るまで,本

5 件3薬剤が「優れた骨折抑制効果」を奏するとは認識していなかっ

たのである。そうであれば,本件明細書の記載から,本件3薬剤に「優れた骨折抑制効果」が認められるとの推論が成り立つ余地もなく,本件明細書に発明の効果を認識できる程度の記載がある場合やこれを推論できる記載がある場合には該当しない。

⒝ 甲86証明書の評価例数と本件明細書の【表23】の評価例数と

を比較すると,本件3薬剤のみの服薬歴を有する患者は,【表23】に記載の患者のほんの一部でしかなく,このように数の差があるのに,【表23】が,個々の骨粗鬆症治療薬の服薬歴ごとに治療効果を提示するものであるはずがない。[L-アスパラギン酸カルシウムの評価例数]本件明細書【表23】 甲86証明書被験薬投与群 38 8対照薬投与群 34 8[アルファカルシドールの評価例数]本件明細書【表23】 甲86証明書被験薬投与群 79 15対照薬投与群 73 19[塩酸ラロキシフェンの評価例数]本件明細書【表23】 甲86証明書被験薬投与群 29 11対照薬投与群 37 10

⒞ そうすると,甲86証明書は,本件明細書に記載されていない発

5 明の効果を,出願後に実験結果等を提出して主張又は立証するもの

であり,出願人と第三者との公平を害する結果を招来するものであるから,これを参酌することは許されない。b 仮に,甲86証明書を参酌することが許されるしても,以下の理由から,甲86証明書は,本件訂正発明の効果の顕著性を基礎付けるものではない。

(a) 相対リスク減少率によって評価することは誤りであること

相対リスク減少率は,症例数が少ない場合には,わずか1件症例数が違っただけで大きな数字に置き換えられてしまい,評価を誤る危険性がある。症例数が少ない試験結果については,相対リスク減少率による評価を正当とする技術常識はない。例えば,被験薬投与群における骨折発生例数を0件とする甲86証明書において,それぞれの前治療薬について,被験薬投与群で打ち切りになっている患者から1件でも骨折が発生すると,相対リスク減少率は,L-アスパラギン酸カルシウムで50%,アルファカルシドールで68.3%,塩酸ラロキシフェンで9.1%となり,甲86証明書から算定される相対リスク減少率100%から大幅に減少するばかりか,前治療薬の服薬歴がない患者群における相対リスク減少率約76%をも下回ってしまう。したがって,甲86証明書や本件明細書の【表23】から算定される相対リスク減少率によってPTHの薬理効果を評価することは誤りである。

⒝ 評価例数が少なすぎること

新規椎体骨折発生率は,PTH投与群全体でみて,たかだか3.1%程度であるところ(本件明細書の【0131】,【表34】参照),甲86証明書は,PTH投与群の評価例数をわずか8件ないし15件(打切りを除けば6件ないし12件である。 とする中で骨折発生)

5 件数が0件であったというものでしかない。評価例数が最も多い1

5例でみても,骨折発生の期待値は,15例×3.1%=0.465件と1件を下回るのであり,このようなわずかな評価例数においてたまたま骨折が発生しなかったとしても何ら不思議はない。

⒞ 事後解析により母集団を限定したこと

前記a⒝のとおり,甲86証明書の結果は,実施例2の臨床試験において主要評価項目とされていなかった評価項目について,事後解析をして導いたものである。事後解析は,いわゆる「後付け解析」であり,一般的にその結果の信頼性が低いことは,臨床試験における常識である(甲114)。特に,本件明細書の【表23】では,合計7種類もの前治療薬が対象となっているため,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が所定の薬剤の1種類のみである患者に絞る など母集団を細切れにすると,評価例数は自ずと僅少となってしまい,試験結果にバラツキが生じる。そのような僅少でバラツキのある評価例数の下での試験結果に信頼性を認めることは困難である。数ある前治療薬の中のいずれかについて,あたかも骨折発生率が低減されたかのような結果が見られたとしても,本件訂正発明の効果を実証するものではない。(エ) 以上からすると,本件訂正発明は予測できない顕著な効果を奏するといえるものではない。ウ 小括以上のとおり,相違点1は当業者において容易に想到することができるから,本件審決の判断には,誤りがある。

⑵ 被告

ア 相違点1の容易想到性の主張について(ア) 本件4条件の各条件について

5 高齢の骨粗鬆症患者であれば,本件4条件を満たすとの技術常識はな

い。患者の要件は,一つ一つに分解できるものではなく,それらが有機的に結合して患者の要件を構成するものであるから,本件4条件を一体として,その技術的意義が判断されなければならない。(イ) 本件4条件の容易想到性についてa 骨粗鬆症と診断された患者が本件4条件の全てを満たすとは限らないし,本件4条件以外の因子の重要度が低いことを意味しない(甲88)。それゆえ,甲7発明における対象患者の選定においても,複数の因子をスコア化して評価してそのスコアの合計数で診断したものであって,その対象患者が本件4条件を全て満たすことは予定されていない。甲7文献の臨床試験は,後期第Ⅱ相試験であり,その主な目的は,骨粗鬆症患者を対象として用量反応関係を明らかにし,第Ⅲ相比較試験のための用法 用量を決定することであり,・ PTH50単位(L群),100単位(M群),200単位(H群)を比較する試験にすぎず,骨粗鬆症患者の中から特殊な患者群を取り出して薬効を評価するというものではない。仮に,本件4条件の個々の条件自体は甲7発明が対象範囲として予定するものであるとしても,本件4条件全体は一般的な指標ではなく,甲7発明が当然に対象範囲として予定していたものではない。甲7文献には,本件4条件に着目して患者群をとらえた記載はないし,骨折抑制のための骨粗鬆症治療薬に関し,本件4条件を満たす患者を選択してその対象とすることが一般的であるとの証拠も存在しない。本件4条件との着想を得たのは本件訂正発明が初めてである。b(a) 本件3条件の個々の条件自体は一般的な指標であったとしても,本件3条件全体は一般的な指標ではない。「骨折リスクの増大」ということであれば,他にも骨折リスク因子は多数あり(甲90),本件

5 3条件を選択する蓋然性はない。骨折しやすい患者が骨折抑制効果

を得られやすい患者という技術常識はないところ,本件3条件は,PTH100単位週1回投与の第Ⅲ層試験の層別解析により初めて,本件3条件を組み合わせるとPTHの骨折抑制効果が高いという新規な知見を得られたことに基づいて設定されたものであり,これを甲7文献の開示事項から導くことはできない,むしろ, 甲7文献には,サブグループ間で薬物に対する応答は同程度であった旨の記載があり,甲7発明の投与対象患者を区分して投与対象をサブ群に限定しても効果は変わらないことが推論されるから,甲7発明から本件3条件を選択する動機付けは否定される。

⒝ 甲7文献の試験は,他の骨粗鬆症治療薬の効果が見られない患者

を対象とした試験ではないし,そのような患者を対象とした旨の記載も甲7文献にはない。甲7発明は,単に,「試験開始3か月前以降に骨代謝及び骨粗鬆症の経過に影響を及ぼす可能性のある薬剤を使用した患者」を試験から除外したのであり,これまで薬剤を使用していない患者も当然に試験に組み込まれている。したがって,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者を含むことを前提としてはいない。また,甲7文献には,実際にどの程度の人数の被験者が他の骨粗鬆治療薬の服薬を控えたのか,その中で本件3薬剤の服薬が控えられた者がいたのか全く分からない。仮に,本件3薬剤の服薬が控えられた患者がいたとしても,その患者が本件3条件を充足していたか否かは不明である。そして,甲7文献の試験は,日本において実施された臨床試験であるところ,塩酸ラロキシフェンの日本での販売開始は甲7文献頒布後の2004年であり(甲27) 甲7,文献の試験当時,同治療薬が使用される状況にはなく,甲7文献の試験において服薬が控えられた薬剤であるはずがない。したがって,

5 甲7発明の投与対象患者が本件条件(4)を充足しているか否かは,

甲7文献の開示事項からは全く不明である。次に,原告は,PTHを投与する際に本件3薬剤の服薬歴がある患者に投与することは当然に検討される事項であると主張するが,そのようなことはいえない。本件3薬剤は,骨粗鬆症治療薬として選択が検討される薬剤の一つではあるが,一人ひとりの患者に対する最適な治療法の選択は,患者の症状,状態に照らして医師が最も適切な治療薬を選択するものであり,本件3薬剤が骨粗鬆症治療薬として必ず選択されるというものではないし,骨密度の増加及び骨折の防止の効果の評価が「C」のものよりも「B」を使用すべきとか,「B」よりも「A」を使用すべきというように薬剤の選択がされるものではない。したがって,L-アスパラギン酸カルシウムは単なるカルシウム製剤でしかないから治療薬として投薬に意味がないとか,アルファカルシドールや塩酸ラロキシフェンは,効果が弱いから治療薬として適切でないということにはならないし,これら薬剤とPTHを並べて評価して,どちらが推奨されているかを論じる意味もない。

⒞ 甲80文献には,骨粗鬆症の治療において,骨吸収抑制剤など他

の骨粗鬆症治療薬を使用しても効果が不十分な患者などに対し,PTHを連日投与すると,服薬歴のない患者群に比べて効果の減衰を招くことが報告されており(図2A),このことは,本件出願当時,技術常識となっていた。甲80文献によれば,骨吸収抑制剤であるカルシトニン,ラロキシフェン,エストロゲン(ET/EPT:estrogen therapy/estrogen progestagens therapy)のほか,骨吸収抑制剤ではないビタミンD類縁物質を含む前治療歴がある患者群について,服薬歴のある患者(「AR-PRE TREATED」)と服薬歴

5 なしの患者(「NAIVE」)との対比においては,「A p<0.001 vs

NAIVE,B p<0.01 vs NAIVE」とする「A」又は「B」が付されているように,有意な差をもって服薬歴なしの患者でBMD増加効果が優れていること,換言すれば,服薬歴があると有意な差をもってBMD増加効果が劣る結果となっていることが示されている(表2,図2A)。甲80文献には,前治療剤が1剤のみを服用していた患者ごとの試験結果はないが,少なくとも,上記薬剤の服薬歴があるとPTHの効果が減衰してしまうことは認識できるのであるから,これらの薬剤の服薬歴がある患者をPTHの投与対象として選択する積極的な動機付けはないというべきである。

⒟ 甲82文献には,ビスホスホネートの前治療歴がある患者群に限

らず,ラロキシフェン,エストロゲン,カルシトニン等の骨吸収抑制剤や骨吸収抑制剤ではないビタミンD代謝物の前治療歴がある患者群においてもテリパラチドの効果が減衰することが 記載されている(表1,脚注)。また,エチドロネートの前治療歴がある患者のテリパラチド投与によるBMD増加率は前治療のない患者と同等であることが示されているところ,ビスホスホネート以外の前治療のある患者群であるNon-bisphosphonate群(NON-BP)はエチドロネートの前治療歴がある患者群(ETI)よりも,BMD増加率が低いことが示されている(857頁右欄10ないし15行目,図2A)。以上のとおり,前治療歴のない患者群に比べると,PTHによるBMDの増加効果とその増加の程度は弱く,骨吸収抑制剤の前治療によるPTH治療効果の減衰が示されている。そうであれば,あえて本件条件(4)所定のような,PTHの効果が低くなるような服

5 薬歴を有する患者をPTHの投与対象として選択する積極的な動

機付けはないというべきである。c 甲第60号証「治療前及び治療1年後の腸骨梁の組織形態計測及び微細構造解析によって評価される原発性骨粗鬆症患者におけるヒト副甲状腺ホルモン1-34の毎週間歇投与の効果及び安全性」(Journalof Bone and Mineral Metabolism Vol.22,p.569-576,2004)では,甲7文献に接した当業者が,200単位の投与には非常に頻繁な副作用が認められたため,臨床使用には不適当である旨の認識に至ったことが記載されている。甲7発明が将来有望であると思われる骨粗鬆症治療剤とされていたとの甲7文献の記載は,週1回投与という新たな用法の可能性に関して述べたものであり,200単位投与という点に特化して将来有望と記載されたものではない。また,甲7発明では高い頻度(42%)で副作用が発現しており,少なくとも,PTHが短時間でアミノ酸に分解されることと長期投与において観察される副作用面で安全であることとは直接関係するものとはいえない。d テリパラチド20μg投与群又は40μg投与群のプラセボ投与群に対する骨折相対リスク減少率は,患者が75歳以上の場合には,65歳以上75歳未満の場合よりも低くなっているなど,PTH製剤が高齢者には効きにくいということは技術常識であり(乙28,29),PTHを高齢者に特に使用しようとする積極的な動機付けは生じないから,年齢に関する本件条件(1)を含む本件3条件の動機付けは生じない。e 以上のとおり,本件4条件は,本件訂正発明の発明者が初めて見出した条件であり,甲7文献に開示,示唆されておらず,技術常識を踏まえても着想し得ない。

5 イ 効果について

(ア)a 本件訂正発明の効果は,本件3条件を満たすことにより高い骨折抑制効果が得られること,及び,本件条件(4)の服薬歴がある患者に投与すると,本件条件(4)の服薬歴のない患者に対するよりも骨折抑制効果がより増強され,優れた骨折抑制効果が奏されることである。すなわち,本件明細書の【表21】から算定される,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴のない患者の骨折相対リスク減少率(RRR:1-(被験薬投与群の骨折発生率(%)/対照薬投与群の骨折発生率(%))) は,75.8%である(なお,被験薬(PTH)投与群と対照薬(プラセボ)投与群の各骨折発生率は,本件明細書の【表23】のRRRの算定と同様の算定方法によって両者を連動させるため,新規椎体骨折発生率「(%)」欄の数値ではなく,「評価例数」と「骨折発生例数」欄の数値から算出した。 。)一方で,本件3薬剤の服薬歴のある患者について,本件明細書の【表23】から算定されるプラセボ投与群に対する骨折相対リスク減少率(RRR)は,上記75.8%を超える。

① L-アスパラギン酸カルシウム(単独+併用) 82.1%

② アルファカルシドール(単独+併用) 91.6%

③ 塩酸ラロキシフェン(単独+併用) 100%

本件3薬剤について,単独での服薬歴を有する患者に絞って再解析したデータである甲86証明書によると,本件3薬剤のRRRはいずれも100%である。b 本件明細書には,骨折抑制効果に関し,本件3条件についての具体的な対比データ自体は記載されていない。しかしながら,試験データ自体が常に明細書に記載されていることが必要とされるのではなく,

5 明細書において,効果を認識し,これを推論できる記載がある場合に

は,出願後に実験成績証明書を提出してその効果を説明することは許容されている。この点,本件条件(4)については,本件明細書の【表23】に本件3薬剤その他の骨粗鬆症治療薬ごとに被験薬(PTH)投与群と対照薬(プラセボ)投与群における新規椎体骨折発生の有無の比較の結果が示されており,本件明細書にも「他の骨粗鬆症治療薬は単独または併用して投薬実績があってもよい」【0062】( )と「単独の投薬実績」を前提とする記載があり,本件明細書では,個々の骨粗鬆症治療薬ごとに治療効果を提示することが意図されていた。したがって,本件明細書の【表21】及び【表23】で複数の骨粗鬆症治療薬の服薬歴を有する患者が含まれた試験結果が提示されていただけとしても,甲86証明書は,【表23】の患者のデータを詳細に解析し,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が1剤のみの者の治療効果を示すものであるから,本件訂正発明の効果の評価において参酌することは許される。(イ)a 本件明細書において,PTH週1回投与について,本件3条件の全てを満たす患者(高リスク患者)と,本件3条件の全部又は一部を満たさない患者(低リスク患者)とを比較した試験結果が,PTH100単位週1回投与の試験で示されている(実施例1)。そして,高リスク患者では,低リスク患者と対比して,骨折抑制効果に優れることの結果も示されている(【表6】【表7】【0086】 。本件明細書の, , )実施例2は,この100単位週1回投与の高リスク患者での顕著な骨折抑制効果を200単位週1回投与について実証したという関係になる。実施例2では,低リスク患者は試験の対象とされていないが,実施例1と実施例2とは,100単位と200単位との用量の相違に過ぎないので,実施例2に低リスク患者を対象に含めた試験データの記

5 載がなくとも,実施例1の結果からみて,200単位週1回投与につ

いても高リスク患者に対して顕著な効果を奏することは十分に推論できる。なお,本件訂正発明においては,5単位投与群はプラセボ相当の対照群として扱っているから,5単位投与群において,低リスク患者の方が高リスク患者よりも骨折発生率が低くなるのは,骨折をしやすい者を高リスク患者として定義付けている以上,骨折をしにくい者の骨折発生率が骨折をしやすい者の骨折発生率よりも低いという当然の結果が示されたにすぎない。b 本件明細書が定義する「高リスク患者」は,「既存骨折がある」であり 【0068】 ,( ) 本件3条件を満たす者である。「低リスク患者」は,高リスク患者以外のものであるから,本件3条件を満たさない患者である。実施例1及び2では,骨折リスクが高い典型例である既存椎体骨折を有する患者を対象として「高リスク者」と「低リスク者」を区分したが,本件訂正発明が,「既存の『非』椎体骨折がある」患者を「高リスク者」から除外しているわけではない。実施例は既存椎体骨折の有無に着目したものであるが,既存骨折を有することにより骨折リスクが高くなることは,既存骨折の部位 種類に関わらず共通するから,・既存骨折が『非』椎体骨折である高リスク患者においても,既存骨折が椎体骨折である高リスク患者と同様にPTH製剤が高い骨折抑制効果を奏すると推定するのが自然である。実施例1の「低リスク者」かつ「100単位投与群」の例数が11例であっても,その結果を偶然とする根拠はないし,本件3条件を満たさない類型が種々あり,その全ての類型についての試験結果がないとしても,それら類型には本件3条件を満たさないという共通点はあるし,たとえ本件条件(1)だけの相違しかないとしても,高リスク

5 者と低リスク者として相違するものであることに変わりはない。した

がって,比較対象となる低リスク者の例が一つでもあればよく,あらゆる類型の低リスク者と対比した試験結果がなければならないものではない。c 本件明細書の【表21】によって,骨粗鬆症治療の前治療薬の服薬歴がない場合とある場合とを比較できることから,これと個々の前治療薬の服薬歴がある場合のPTH投与群とプラセボ投与群とを対比する【表23】のデータとを併せ鑑みれば,本件条件(4)の服薬歴のある患者に対する骨折抑制効果がより増強されていることが認識又は推論できる。そして,【表23】の患者は本件4条件の全てを満たす患者群であり,【表21】における「骨粗鬆症の前治療薬(無)」の患者は本件3条件の全てを満たし,かつ本件条件(4)を満たさない患者群であるから,本件4条件の全てを満たす患者群と,これらの条件の全部又は一部を満たさない患者群との比較はされている。(ウ) 甲86証明書について甲86証明書によると,本件訂正発明の顕著な効果が裏付けられる。この点に関する

(原告の主張)

に対する反論は,以下のとおりである。a 前記⑴イ(ウ)aについて本件明細書の【表23】において,単独,併用を区別することなく服薬歴有りの例を集計しているのは,本件訂正発明は,元来,服薬歴の有無のみを問題としており,それが単独であろうが併用されていたのであろうが骨粗鬆症治療薬を服薬していた点においては違いはないため,薬剤の重複を問題としていなかったからである。もっとも,本件明細書には「〔9〕下記(1)~(6)の少なくともいずれか1つの骨粗鬆症治療薬の投与歴がある骨粗鬆症患者に投与するための,〔1〕~〔6〕のいずれか1に記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤」 【001(

5 4】)と「1つ」の服薬歴の場合を含む記載や,「他の骨粗鬆症治療薬

は単独または併用して投薬実績があってもよい。 【0062】 と」( ) 「単独」の服薬歴の場合を含む記載があり,他の骨粗鬆症の服薬歴が1剤の場合を排除してはおらず,被告が本件審判に至ってから初めて本件訂正発明の顕著な効果を認識したということはない。b 前記⑴イ(ウ)b(a)について骨折相対リスク減少率(RRR)は,本件明細書の段落【0132】で説明されているものであるところ,骨粗鬆症における骨折抑制効果を評価する場合は,プラセボ投与群との相対的な効果で評価する相対リスク減少率で評価することが慣例となっており(甲90の78頁の表45,80頁の表46,82頁の表47,94頁の表52,96頁の表53のそれぞれ「骨折」の項の「成績」の欄を参照。なお,骨折相対リスク(RR)と表記されているが,相対リスク(RR)は,被験薬投与群の骨折発生率(%)/プラセボ投与群の骨折発生率(%)で算出されるので,RRRと同意義である。 ,絶対リスク減少率で評)価されている例はない。したがって,本件訂正発明の効果は,当業界の慣例に従って,相対リスク減少率で評価する方が適切である。症例数が少ない試験結果が科学的に評価できないとする根拠はなく,また,本件3薬剤の服薬歴がある者について実際に骨折は生じなかったのであるから,仮想の結果を持ち出して論難しても関係のない議論にすぎない。そして,プラセボ投与群では骨折が発生しているのに対し,PTH投与群では骨折が全く発生していないから,顕著な効果は一目瞭然である。c 前記⑴イ(ウ)b⒝について本件明細書に記載されたPTH投与群の新規椎体骨折発生率が3.

5 1%との数値は,本件明細書で初めて明らかになった事項であり,こ

の結果は,本件出願当時,いまだ公知となっていないので,この数値を元に当業者が本件訂正発明の効果を予測することはできない。甲86証明書の評価例数が15例程度であったとしても,対照薬投与群では骨折が発生しているのに対し,被験薬投与群では骨折が発生しておらず,明らかな差が見てとれ,これは予測できない効果である。d 前記⑴イ(ウ)b⒞について甲86証明書の結果が,実施例2の臨床試験の主要評価項目とされていたか否かや,その解析が事後的なものであるか否かは,本件訂正発明の効果を認定するに当たって全く関係のないことである。原告がその主張の根拠とする甲第114号証においても,事後解析が信頼できないとは記載されていないところ,甲86証明書は,一つの前治療薬で完全に骨折が抑制されているという結果を示すものではなくても,本件3薬剤という複数の前治療薬で完全に骨折を抑制する効果が確認できているから,偶然とはいえず,十分に信頼できる結果である。(エ) 以上からすると,本件訂正発明は予測できない顕著な効果を奏するものといえる。ウ 小括以上のとおり,相違点1は当業者において容易に想到することはできないから,本件審決の判断には,誤りはない。

第4 当裁判所の判断

1 本件訂正発明について本件明細書(甲106)には,別紙1「本件明細書の記載事項(抜粋)」のとおりの記載があり,この記載によると,本件訂正発明について,次のような開示があると認められる。

5 ⑴ 技術分野本件訂正発明は,PTH(Parathyroid Hormone: パラサイロイドホルモン〔副甲状腺ホルモン〕)を有効成分として含有する骨粗鬆症の治療剤ないし予防剤に関するものであり,また,PTHを有効成分として含有する骨折抑制ないし予防剤に関するものである(【0001】 【0018】 。, )⑵ 背景技術骨粗鬆症は,骨強度の低下を特徴とし,骨折のリスクが増大している疾患であり,治療剤の1つとしてPTH製剤が知られている(【0002】 。)従来技術として,1週間に1回の頻度で26週間の投与期間にわたり,1回の投与当たり「100又は200単位」のPTHを皮下投与する骨粗鬆症の治療方法があるが,この方法が,骨強度を増大させること又は骨折のリスクを軽減させることが可能な治療方法であるか否かについては明示されていない(【0004】 【0005】 。, )また,従来技術として,PTHを連日投与するものがあるが,高カルシウム血症の副作用事例等があり,安全性の面から十分ではないことから,安全性が高くかつ効能・効果の面で優れたPTHによる骨粗鬆症治療方法が求められていた(【0006】ないし【0009】 。)⑶ 発明が解決しようとする課題本件訂正発明の課題は,安全性が高くかつ効能・効果の面で優れたPTHによる骨粗鬆症治療ないし予防方法を提供すること,さらに,安全性の高いPTHによる骨折抑制ないし予防方法を提供することである(【0012】 。)⑷ 課題を解決するための手段等前記課題を解決するため,PTHの投与量・投与間隔を限定すること,具体的には1回当たり「100ないし200単位」のPTHを週1回投与することにより,効能・効果及び安全性の両面で優れた骨粗鬆治療ないし予防方法となること並びに安全性の高い骨折抑制又は予防方法となることが見出さ

5 れ,それらの方法において,骨折の高リスク者に対して特に効果を奏することが見出された(【0013】【0015】【0018】【0034】【00, , , ,35】 。)1年以内の他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がPTHの有効性に与える影響を評価した結果,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある原発性骨粗鬆症患者は服薬歴のない患者よりもPTHの有効性が高いことが明らかになった(【0061】 。他の骨粗鬆症治療薬として,L-アスパラギン酸カルシウム,アル)ファカルシドール,塩酸ラロキシフェン,エルカトニン,メナテトレノン,乳酸カルシウムが例示され,好ましくは,L-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,エルカトニンが例示され,これら他の骨粗鬆症治療薬は単独または併用して投薬実績があってもよい(【0062】 。)骨粗鬆症における骨折の危険因子としては,年齢,性,低骨密度,骨折既往,喫煙,アルコール飲酒,ステロイド使用,骨折家族歴,運動,転倒に関連する因子,骨代謝マーカー,体重,カルシウム摂取などが挙げられるところ,本件訂正発明においては,(1)年齢が65歳以上である,(2)既存骨折がある,(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,及び/又は,骨萎縮度が萎縮度I度以上であるとの3条件を満たす骨粗鬆症患者を「高リスク患者」として定義する(【0068】 。)⑸ 実施例1退行期骨粗鬆症(閉経後骨粗鬆症及び老人性骨粗鬆症),特発性骨粗鬆症(妊娠後骨粗鬆症,若年性骨粗鬆症など)が例示される原発性骨粗鬆症の男女の患者を,高リスク患者及び低リスク患者(高リスク患者ではない患者)に区分して,それぞれ,「5あるいは100単位」のPTH製剤であるテリパラチド酢酸塩をそれぞれ週に1回間欠的に皮下投与した 【0037】( ,【0077】 【0079】 。, )高リスク患者においては,「100単位」投与群は,「5単位」投与群に比

5 べ,有意に高い骨密度の増加,有意に低い新規椎体骨折発生,及び,有意に低い椎体以外の骨折発生が認められ,テリパラチド酢酸塩の週1回「100単位」投与は,高リスク患者に対し,有用な骨粗鬆症治療剤及び骨折抑制ないし予防剤となり得ることが確認されたが,低リスク患者においては,骨密度,新規椎体骨折発生及び椎体以外の骨折発生のいずれについても,「100単位」投与群と「5単位」投与群との間で有意差は認められなかった(【0083】ないし【0094】 【表4】ないし【表11】 。, )⑹ 実施例2原発性骨粗鬆症と診断された男女の高リスク患者に対して,テリパラチド酢酸塩「200単位」(被験薬)又はプラセボ(対照薬)を,72週間,週1回,皮下投与した(【0098】 。)投与72週後における被験薬投与群と対照薬投与群それぞれにおける椎体多発骨折(新規の2箇所以上の椎体骨折)の発生比率(例数)を比較したところ,対照薬投与群は2.1%(6例),被験薬投与群 は0.8%(2例)であり,被験薬は椎体多発骨折に対して抑制ないし予防効果を有することが示された(【0109】【表12】 。また,増悪骨折に対しても被験薬は有効で, )ある(【0118】 【表20】 。, )患者の対象からは,治療開始までに8週(56日)以上の休薬(ウォッシュアウト)がない限り,カルシトニン製剤,活性型ビタミンD 3 製剤,ビタミンK製剤,イプリフラボン製剤,エストロゲン製剤,SERM製剤,蛋白同化ホルモン製剤の投与を受けている者が除かれた(【0100】 。)被験薬投与後72週時において,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者について被験薬投与群の骨折率が2.9%であり,対照薬投与群の骨折率が16.1%であったが,服薬歴のない患者について被験薬投与群の骨折率が3.2%であり,対照薬投与群の骨折率が12.9%であり,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者は服薬歴のない患者よりも被験薬有効性が高いこと

5 が明らかになった(【0120】 【表21】 。, )他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者において,被験薬投与後48週で当該骨密度の増加が顕著になっており,特に,他の骨粗鬆症治療薬がL-アスパラギン酸カルシウム,エルカトニン,アルファカルシドール,メナテトレノン及びカルシトリオールである被験薬投与群においては,投与後24週という早期段階での腰椎骨密度の顕著な増加が見られた(【0121】 【表2,2】 。)カルシトリオール以外の骨粗鬆症治療薬服用歴のある患者において,被験薬投与による新規骨折の顕著な抑制が見られた(【0122】 【表23】 。, )

2 取消事由1(本件訂正に関する判断の誤り)の有無について

⑴ 検討原告は,本件訂正が新規事項の追加に当たり訂正要件を満たさないと主張するところ,本件訂正の内容は,前記第2の2⑴及び⑵のとおり,本件条件(4)に係る,服薬歴を有する骨粗鬆症治療薬を,本件訂正前薬剤の6剤のうちいずれか1つ又は複数の組合せとしていたものを,本件訂正前薬剤に含まれる本件3薬剤の3剤のうちいずれか1つと限定したものである。ここで,本件明細書には,以下の記載がある。「【0061】本発明者らは,1年以内の他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が本剤有効性に与える影響を評価した。・・・本発明においては,骨粗鬆症患者として,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある骨粗鬆症患者への適用を好ましく例示でき,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある原発性骨粗鬆症患者への適用をさらに好ましく例示できる。【0062】また,他の骨粗鬆症治療薬として,L-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,塩酸ラロキシフェン,エルカトニン,メナテトレノン,乳酸カルシウム,が例示され,好ましくは,L-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,エルカトニンが例示される。他の骨粗鬆

5 症治療薬は単独または併用して投薬実績があってもよい。」このように,本件明細書には,服薬歴に係る他の骨粗鬆症治療薬について,本件訂正前薬剤が例示された上で,「他の骨粗鬆症治療薬は単独または併用して投薬実績があってもよい」(【0062】)として,他の骨粗鬆症治療薬が1剤のみであってもよいと記載されているから,本件訂正は,当初から開示されていた,本件3薬剤を除く薬剤の服薬歴及び本件3薬剤の併用態様による服薬歴を有する患者を対象とする部分を単純に除外するものにすぎず,本件明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,新規事項を追加するものとはいえない。原告は,第3の1(1)のとおり主張するが,上記のとおり,本件明細書には,他の骨粗鬆症治療薬が1剤のみであってもよいと記載されているのであり,そうである以上,本件訂正により本件訂正発明と本件発明の技術的意義が異なることにもならないから,上記原告の主張を採用することはできない。

(2) 小括以上のとおり,本件訂正は新規事項追加には該当しないから,本件訂正を訂正要件に適合するとした本件審決の判断には,誤りはない。

3 取消事由5(進歩性に関する判断の誤り)の有無について本件では,本件訂正発明における「PTH1単位量」の測定方法について,明確性要件及び実施可能要件の充足の有無(取消事由2及び3)が,本件訂正発明についてサポート要件の充足の有無(取消事由4)が争われているところではあるが,事案に鑑み,取消事由5から,まず判断する。⑴ 甲7発明甲7文献(訳は乙2)には,別紙2「甲7文献の記載事項(抜粋)」のとおりの記載がある。この記載によると,本件審決が認定するとおりの甲7発明を認定することができ,この点は,当事者間にも争いがない。なお,甲7発明の「厚生省による委員会が提唱した診断基準」とは,厚生

5 省シルバーサイエンス骨粗鬆症研究班の定める「退行期骨粗鬆症の診断基準(1989年)」(甲8,68)(以下「1989年診断基準」という。)である(甲65)。⑵ 相違点1の容易想到性についてア 本件4条件の技術的意義(ア) 前記1のとおり,本件明細書には,本件訂正発明が,従来の骨粗鬆症薬であるPTHについて,安全性が高くかつ効能・効果の面で優れた骨粗鬆症治療ないし予防方法を提供すること及び安全性の高い骨折抑制ないし予防方法を提供することを課題とすること 【0012】 ,( ) 骨粗鬆症における骨折の危険因子を多く持つ骨粗鬆症患者に対して本件訂正発明の骨粗鬆症治療剤ないし予防剤を投与することが望ましいこと及び骨粗鬆症における骨折の危険因子としては,年齢,性,低骨密度,骨折既往,喫煙,アルコール飲酒,ステロイド使用,骨折家族歴,運動,転倒に関連する因子,骨代謝マーカー,体重,カルシウム摂取等が挙げられることが記載され,その上で,本件3条件を全て満たす骨粗鬆症患者を「高リスク患者」として定義することが記載されている(【0068】 。)そして,実施例1においては,本件3条件の全てを満たす高リスク患者について,PTHの週1回100単位投与群は,同5単位投与群に比べ,有意に高い骨密度の増加,有意に低い新規椎体骨折発生及び有意に低い椎体以外の骨折発生が認められたこと,実施例2においては,本件3条件の全てを満たす高リスク患者について,PTHの週1回200単位投与群は,対照薬(プラセボ)投与群に比べ,新規椎体多発骨折及び増悪骨折の抑制効果が認められたこと,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者のプラセボ投与群に対する骨折発生率の割合が,これら薬剤の服薬歴のない患者のプラセボ投与群に対する骨折発生率の割合よりも低かったこと 【表21】 ,( ) カルシトリオールを除く上記骨粗鬆症治療薬の

5 服用歴のある患者において新規骨折の抑制が見られたことが記載されている。(イ) 前記(ア)によれば,本件3条件は,骨折の危険性の高まった骨粗鬆症において,骨折の危険因子を多く持つ骨粗鬆症患者に対して治療剤ないし予防剤を投与することが望ましいとの認識の下,当該危険因子を多く持つ骨粗鬆症患者を特定する条件として設定されたものというべきである。また,本件条件(4)は,他の骨粗鬆量治療薬の服薬歴がある患者の骨折抑制効果がその服薬歴のない患者の骨折抑制効果よりも高いことが観察されたことを踏まえ,更なる骨折抑制効果を図ることを目的として設定されたものであると認められ,本件条件(4)を加えたことによって初めて骨折抑制効果が奏されるとするものではないし,本件4条件の全てを満たす者と本件3条件の全部又は一部を満たさないが本件条件(4)を満たす者との間での骨折抑制効果の対比はされておらず,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴があると,当該服薬歴がない患者より骨折抑制効果が増強されるのは,本件3条件の全てを満たす患者のみであるとの記載もないから,本件3条件と本件条件(4)の結合関係については明らかでないというほかない。したがって,本件条件(4)は,本件3条件に単純に追加された条件であると理解することが相当である。被告は,本件4条件が有機的に結合した一体のものである旨主張するが,上記のとおりであるから,その主張を採用することはできない。(ウ) 本件明細書には,「他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある原発性骨粗鬆症患者は服薬歴のない患者よりも被験薬有効性が高いことが明らかになった(実施例2) 」との記載(。 【0061】)があり,また,本件3条件の全てを満たす高リスク患者に対して,被験薬(PTH)200単位又は対照薬(プラセボ)を,72週間にわたり週 1 回の頻度で間欠的に皮下投与した(【0098】)実施例2には,新規椎体骨折発生率につい

5 て「他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者は服薬歴のない患者よりも被験薬有効性が高いことが明らかになった」との記載(【0120】【表,21】)があることからすれば,本件条件(4)は,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者は,当該服薬歴のない患者よりもPTHの骨折抑制の有効性が増強されるとの知見が得られたので,投与対象を,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある者とし,その際,他の骨粗鬆症治療薬を,例示された複数の骨粗鬆症治療薬のうち,本件3薬剤のうちいずれか1剤と限定することにより設定されたものとしたかのように読み取れる。そして,被告も,本件訂正発明の効果として,他の骨粗鬆症服薬歴のない患者の骨折相対リスク減少率(RRR)は75.8%(1-(4÷139)/(17÷142)【表21】。 )であるのに対し,①L-アスパラギン酸カルシウムの服薬歴のある患者のRRRは,82.1%(1-(1÷38)/(5÷34) ,②アルファカルシドールの服薬歴のある患者のRRR)は91.6%(1-(1÷79)/(11÷73) ,③塩酸ラロキシフェ)ンの服薬歴がある患者のRRRは,100%(1-(0÷29)/(5÷37))であって(【表23】 ,いずれも上記75.8%を上回るから,)本件条件(4)の服薬歴がある患者に投与すると,服薬歴のない患者に対するよりも骨折抑制効果がより増強されることが確認できる旨主張している。そこで検討するに,本件明細書には,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者において他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴のない患者におけるよりもPTHによる骨折抑制の有効性が高いことを説明する作用機序について,何ら記載がなく,被告も「何らかの生体への影響,骨への影響」と主張するだけであり,本件訂正前薬剤あるいは本件3薬剤に共通する,あるいは,それぞれが有するPTHの骨折抑制の増強作用なるものの内実は不明である。

5 次に,本件明細書の【表21】をみると,72週後の新規椎体骨折発生率は,「骨粗鬆症の前治療薬(無)」の場合,対照薬(プラセボ)投与群で12.9%であったものが,被験薬(PTH)投与群では3.2%であり,「骨粗鬆症及び前治療薬(有)」の場合,対照薬投与群で16.1%であったものが,被験薬投与群では2.9%であったので,一見,「骨粗鬆症治療薬(有)」の方が,より強く骨折が抑制されたかのようにみえる(なお,【表21】の「新規椎体骨折発生率(%)」は,生存時間解析の一般的な手法であるカプラン・マイヤー法を用いて算出されているので〔甲96の7頁参照〕 単に,, 骨折発生例数を評価例数で除した値とは若干異なっている。 。)しかしながら,「骨粗鬆症の前治療薬(有)」の被験薬投与群の骨折発生率2.9%と「骨粗鬆症の前治療薬(無)」の被験薬投与群の骨折発生率3.2%とは,たかだか0.3%しか相違せず,各評価例数(122人,139人)からみれば,骨折1件に相当する値にも達していない。また,「骨粗鬆症の前治療薬(有)」の対照薬投与群の骨折発生率16.1%と,「骨粗鬆症の前治療薬(無)」の対照薬投与群の骨折発生率12.9%についても,前者においては,139人中骨折発生例数が20人であったのに対して,後者においては,142人中骨折発生例数が17人であったことから導き出された値であるところ(上記のとおり,カプラン・マイヤー推定法により算定された骨折発生率は,骨折発生例数を評価例数で除した値とは若干異なる。 ,本件明細書には,上記のとおり,)前治療薬の服薬歴の有無とPTH投与による骨折抑制の有効性とを説明する作用機序について何ら記載がなく,本件明細書にはまた,前治療薬の服薬歴の有無が対照薬投与群における骨折発生率に影響する要因であるか否かの説明もないのであって,「骨粗鬆症の前治療薬(有)」の対照薬投与群と「骨粗鬆症の前治療薬(無)」の対照薬投与群との間の100

5 人当たりの骨折者の人数差は3人未満にとどまっていることにも鑑みると,「骨粗鬆症の前治療薬(有)」の対照薬投与群が,前治療薬の服薬歴があることによって「骨粗鬆症の前治療薬(無)」の対照薬投与群よりも骨折が生じやすい群であることが示されているとは直ちにいえない。そうすると,「骨粗鬆症の前治療薬(有)」の対照薬投与群が骨折の発生率のより高い群であり,「骨粗鬆症の前治療薬(無)」の対照薬投与群が骨折発生率のより低い群であって,PTHの投与が,骨折率のより高い群の骨折発生率を,骨折発生率のより低い群の骨折発生率と同等の程度まで抑制したともいえない。これらの事情に照らせば,【表21】は,他の骨粗鬆治療薬の服薬歴があることによって骨折抑制効果が増強されることを示すに足りるものではない。さらに,本件明細書の【表22】及び【表23】には,個別の骨粗鬆症治療薬ごとの骨密度変化率や新規椎体骨折発生数について示されているが,これらは,各個別の骨粗鬆症治療薬の服薬歴のある患者同士で被験薬を投与された場合と対照薬を投与された場合との骨密度変化率や新規椎体骨折発生数を対比しているにすぎず,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者と他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がない患者との間で,被験薬を投与された場合の骨密度変化率や新規椎体骨折発生数を対比したものではない。その上,【表21】の「骨粗鬆症の前治療薬(有)」で被験薬を投与された患者の評価例数が122例,同対照薬を投与された患者の評価例数が139例であるのに対し,【表23】の各個別の前治療薬のある被験薬を投与された患者の評価例数合計が219例,同対照薬を投与された患者の評価例数合計が228例であって,【表21】の評価例数を大幅に超えているから,前治療薬が投与された患者は複数の骨粗鬆症治療薬の投与を受けていることが明らかであり,【表23】に掲記された

5 個別の前治療薬の投与を受けた患者は,当該個別の前治療薬以外の投与も受けているのであって,当該個別の前治療薬による効果を計ることもできない。以上からすると,その他の点につき判断するまでもなく,本件明細書をみても,本件3薬剤の服薬歴があることによって,骨折抑制効果が増強することは理解できない。確かに,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある場合であってもない場合であっても,あるいは,他の骨粗鬆症治療剤が併用されたものであっても,いずれにせよ,被験薬投与群が対照薬投与群に比して新規椎体骨発生率が低いことが示されており,また,他の骨粗鬆症治療薬に本件3薬剤が含まれることは認められるが,これらから推認できることは,本件3薬剤の服薬歴がある患者に本件訂正発明の骨粗鬆症治療薬を投与しても同一条件のプラセボ投与群に比して骨折抑制効果がある,すなわち同一条件のプラセボ投与群に比して生じる骨折抑制効果の発現が妨げられていないことにすぎない。したがって,本件条件(4)には,所定の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある者を投与対象者としたという以上の格別の技術的意義を見出すことはできない。イ 本件基準日(平成22年9月8日)における骨粗鬆症に関する技術常識について(ア) 下記文献には,以下に引用する記載がある。a 「退行期骨粗鬆症の診断」(1990年。甲8)① 「本症の発生頻度は加齢とともに増加するので,本症は骨の生理的加齢現象にすぎないと考える人もあるが,そうではない。加齢に伴い,生理的にも骨のなかの蛋白およびCa,Pが減少するが,このような骨の生理的加齢を基盤に,さまざまな要因が加わって発症し,腰背痛や,病的骨折を伴うものを骨粗鬆症とよぶべきである。」

5 (288頁左欄13ないし18行目)② 「骨粗鬆症の骨病変は通常胸椎および腰椎に認められるので,退行期骨粗鬆症の診断にさいしてまず必要なことは,胸椎および腰椎の側面X線写真撮影を行うことである。ついでこの胸椎および腰椎の側面X線写真を用いて骨密度の減少あるいは圧迫骨折の有無をチェックする。・・・胸椎・腰椎の骨密度の減少を判定する方法としては慈恵大の方式が一般に用いられている。骨粗鬆症ではまず椎体の密度が減少するために椎体のX線透過度が増大し,ついで縦の骨梁がめだつようになり,さらに進行すると上下面が陥没し・・・ついには椎体が崩れて圧迫骨折の像を呈するに至る。慈恵大方式では,このような骨X線像をもとにして骨粗鬆症の程度をI~Ⅲ度に分類している。・・・最近,厚生省骨粗鬆症研究班では,これをより簡略化したものとして表2に示すような骨萎縮度の基準を提唱しており,今後はこの方法が広く用いられることが期待される。 (288頁右欄7行ないし289頁左欄17行目)」

③ 「表2 骨萎縮度の基準Ⅰ度 縦の骨梁がめだち,また椎体終板もめだつ。Ⅱ度 縦の骨梁が粗となり,また椎体終板も淡くなる。Ⅲ度 縦の骨梁が不明瞭となり,全体としてぼやけた感じを示す。」(289頁)

④ 「1988年度から,厚生省シルバーサイエンスプロジェクトとして「老人性骨粗鬆症の予防および治療法に関する総合的研究班」(班長:折茂 肇)が結成されたが,この研究班ではこのような立場から本症において認められる自・他覚所見をスコア化し,そのスコアに応じて,①確実,②ほぼ確実,③疑いあり,④否定的,の4つに分類する診断基準を提唱している(表3) (290頁左欄20」ないし26行目)

⑤ 「表3 退行期骨粗鬆症の診断基準1) 骨量の減少(+) 3 確実合計5点以上2) 骨折あり 脊椎1個 1 ほぼ確実≧2個 2 合計4点大腿骨頚部 3 疑いあり橈骨 1 合計3点否定的3) 年齢 女性55歳未満 -1 合計2点以下男性75歳未満 -14) 腰背痛あり 1 除外疾患…5) 血清カルシウム,リン,AL-P値正常 11項目の異常 02項目以上の異常 -1…」(289頁)b 「原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版)」(2001年。甲9,35)「表1 原発性骨粗鬆症の診断基準(1996年度改訂版)Ⅰ X線上椎体骨折を認める場合低骨量(骨萎縮度Ⅰ度以上,あるいは骨密度値が若年成人平均値(YAM)の80%以下)で非外傷性椎体骨折のある症例を骨粗鬆症とする。Ⅱ X線上椎体骨折を認めない場合脊椎X線像 骨密度値正常 骨萎縮なし骨量減少 骨萎縮度Ⅰ度 YAMの80~70%骨粗鬆症 骨萎縮度Ⅱ度以上 YAMの70%未満YAM:若年成人平均値(20~44歳)(注)骨密度値は原則として腰椎の骨密度値とし,腰椎骨密度値評価が困難である場合にのみ橈骨,第二中手骨,大腿骨頸部,踵骨の骨密度値を用いる。骨萎縮とは radiographic osteopenia に相当する。…」(77頁)c 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2006年版」 2006年。(

5 甲90)① 「骨量測定方法の進歩と普及を背景に,1991年の国際骨粗鬆症会議において,骨粗鬆症は低骨量と骨組織の微細構造の破綻によって特徴づけられる疾患であり,骨の脆弱性亢進と骨折危険率の増大に結びつく疾患と定義された。この定義に従った診断基準がわが国でも整備され,1996年の日本骨代謝学会診断基準をもとに,2000年に改訂版が作成されて今日に至っている(表21)。」(31頁左欄3ないし10行目)② 「表21 原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版)低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患または続発性骨粗鬆症を認めず,骨評価の結果が下記の条件を満たす場合,原発性骨粗鬆症と診断する。(注1)Ⅰ 脆弱性骨折 ありⅡ 脆弱性骨折なし(注2) (注3)骨密度値 脊椎エックス線像での骨粗鬆化正常 YAMの 80%以上 なし骨量減少 YAMの 70~80% 疑いあり骨粗鬆症 YAMの 70%未満 ありYAM:若年成人平均値(20~44 歳)注1 脆弱性骨折:低骨量(骨密度がYAMの80%未満,あるいは脊椎エックス線像で骨粗鬆化がある場合)が原因で,軽微な外力によって発生した非外傷性骨折,骨折部位は脊椎,大腿骨頸部,橈骨遠位端,その他。注2 骨密度は原則として腰椎骨密度とする。…注3 脊椎エックス線像での骨粗鬆化の評価は,従来の骨萎縮度判定基準を参考にして行う。脊椎エックス線像での骨粗鬆症 従来の骨萎縮度判定基準なし 骨萎縮なし疑いあり 骨萎縮度Ⅰ度あり 骨萎縮度Ⅱ度以上」(31頁)③ 「Ⅲ 骨粗鬆症による骨折の危険因子・・・骨折の危険因子は,「骨密度低下」「骨質低下」「外力(転倒など)」に影響を与える因子である。骨折高リスク患者を判定するには,骨密度測定に加えて,「骨質」「外力」に関連する危険因子を評価する必要があり,骨密度とは独立した骨折危険因子が何であるかを知っておくことがポイントとなる。

5 年齢,性 ・・・低骨密度 ・・・骨折既往 ・・・・・・」(34頁)。④ 「表22 骨折の危険因子(メタアナリシス,システマティック・レビューによる結果〔エビデンスレベルⅠ〕のみ表示)危険因子 文献 成績低骨密度 … …骨密度とは独立 既存骨折* … …した危険因子 …… …」(35頁)⑤ 「現在,骨粗鬆症治療開始は骨密度を基準に行われているが,同じ骨密度を示していても年齢が高いほど,表22の危険因子*をもつほど,骨折リスクは高くなる。骨密度,年齢,危険因子を総合的に考慮に入れることで,骨折リスクの高い人をより効果的に判別できる。 (35頁)」

⑥ 「表30 骨粗鬆症治療についての基本的な考え方1.骨粗鬆症治療は骨折危険性を抑制し,QOLの維持改善をはかることを目的とする。2.脆弱性骨折予防のための薬物治療開始基準は,骨粗鬆症診断基準とは別に定める。3.わが国では骨折危険因子として,低骨密度,既存骨折,年齢に関するエビデンスがあり,WHOのメタアナリシスでは過度のア

5 ルコール摂取(1日2単位以上),現在の喫煙,大腿骨頸部骨折の家族歴が確定している。4.骨粗鬆症の薬物治療開始は上記の骨折危険因子を考慮して決定する。 (53頁)」d 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版」(2006年。甲115)「NIHコンセンサス会議では,骨粗鬆症の定義を「骨強度の低下を特徴とし,骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患・・・」に修正した。さらに,「骨強度」は骨密度と骨質の二つの要因からなり,BMDは骨強度のほぼ70%を説明するとした。残りの30%の説明要因を“骨質”という用語に集約し,その内容には,構造,骨代謝回転,微細損傷の集積,骨組織のミネラル化などをあげた」(2頁右欄27ないし36行目)(イ) 前記(ア)の各記載によると,本件基準日において,①骨粗鬆症は,骨強度の低下を特徴とし,骨折の危険性が増大した骨疾患であり,その治療の目的は,骨折を予防し,QOLの維持改善を図ることである,②骨粗鬆症は,加齢とともに発生が増加する,③骨粗鬆症による骨折の複数の危険因子の中で,わが国では,低骨密度,既存骨折,年齢に関するエビデンスがある,④骨粗鬆症の診断基準に関して,1990年当時,厚生省シルバーサイエンスプロジェクト「老人性骨粗鬆症の予防および治療に関する総合的研究班」により提唱された診断基準(1989年診断基準。甲8,68)があったが,1996年に診断基準が整備され(甲9,35。以下,この診断基準を「1996年診断基準」という。 ,そ)の後,2000年に改訂版が作成された(甲90。以下,この基準を「2000年診断基準」という。 ,⑤骨強度は骨密度と骨質の2つの要因か)らなり,骨密度が骨強度のほぼ70%を,骨質が残りの30%を説明す

5 ることが当時の技術常識であったことが認められる。ウ 本件基準日(平成22年9月8日)における骨粗鬆症の治療に関する技術常識について(ア)a 甲80文献には,別紙3-1「甲80文献の記載事項(抜粋)」のとおりの,甲82文献には,別紙3-2「甲82文献の記載事項(抜粋」のとおりの記載がある。b ①「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版」 2006年。(甲22)には,骨粗鬆症の薬物治療において,薬物に対する応答性の観点から,治療薬を変更し得ることが(57頁),②「~かかりつけ医でみる~骨粗鬆症 Q&A」(2010年1月15日。甲50)には,年齢や骨折リスクに応じて骨粗鬆症治療薬を使い分けることが(89頁,図2),③「骨折抑制のための薬剤選択 閉経後女性」(2007年。甲112)には,骨折リスクや病期に応じて骨粗鬆症治療薬を使い分けること,PTHは高齢の病期が進んだ骨密度の低い女性に選択されることが(86頁,91頁,図3),④「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2006年版」(2006年。甲90)には,カルシウム製剤であるL-アスパラギン酸カルシウム,活性型ビタミンD3 製剤であるアルファカルシドール及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)である塩酸ラロキシフェンが「骨粗鬆症治療薬一覧」に含まれていることが(120頁),⑤「骨粗鬆症 診断・予防・治療ガイド」(2007年。甲91)には,ラロキシフェンと骨形成促進効果のあるPTHの併用で有望な効果が得られていること,ラロキシフェンによる治療を受けた患者は,PTHに対して速やかな反応を示したことが(159頁) ⑥, 「各種治療薬の併用療法」(2009年。甲92)には,骨吸収抑制剤である塩酸ラロキシフェン,ビスホスホネートを投与した後,骨形成促進剤であるPTHを連鎖的に投与する

5 と,骨吸収抑制剤投与後から更にBMDの増加が得られていること,このBMD増加には骨吸収抑制剤間で差があり,塩酸ラロキシフェン,リセドロネートを投与していた群ではアレンドロネートを投与していた群に比してPTHへ連鎖的に変更後早期より反応し,より大きなBMD増加がみられていること,塩酸ラロキシフェンとPTHを同時併用すると,塩酸ラロキシフェンでは単剤以上の効果が得られるが,アレンドロネートでは単剤以上の効果が得られていないことが(977ないし978頁)それぞれ記載されている。(イ) 前記(ア)の各記載によると,①PTHは,高齢の骨折リスクの高い女性に他の骨粗鬆症治療薬に変えて選択されること,逆に言えば,PTHを投与する患者は他の骨粗鬆症治療薬を投与されている蓋然性があること,PTHを投与された患者の多くが骨折抑制剤を投与されたことがあること,②本件3薬剤は一般的に使用される骨粗鬆症治療薬であること,③骨吸収抑制剤である塩酸ラロキシフェンと骨形成促進剤であるPTHを併用すると更にBMDの増加効果が上昇すること,④甲80文献の試験は,骨吸収抑制剤(アレンドロネート,リセドロネート,エチドロネート,ビスホスホネート,カルシトニン,ラロキシフェン,エストロゲン治療/エストロゲン プロゲスチン治療,ビタミンD類縁物質を含む)の服薬歴のある患者(反応が十分でなかった患者とそれ以外の患者の2群)及び当該服用歴のない患者に対する24か月のテリパラチドの投与によるBMDの反応を試験したものであるが,その試験結果によると,いずれの患者群についてもBMDの有意な増加がみられものの,骨吸収抑制剤の服薬歴がある患者についてはBMDの変化を鈍くしたこと,⑤甲82文献は,アレンドロネート,リセドロネート,エチドロネートの服薬歴のある患者群並びにラロキシフェン(22例) ET/EP,T(20例),カルシトニン(6例)及びビタミンD代謝物(1例)の服

5 薬歴のある「NON―BP群」の患者の24か月のテリパラチドの投与によるBMDの反応を骨粗鬆症治療薬ごとに報告するものであるが,エチドロネートの服薬歴のある患者は骨粗鬆症治療薬の服薬経験のない患者とBMD増加の程度が同程度で,「NON―BP群」はBMDの増加がエチドロネートの服薬歴のある患者群よりも効力が少なかったものの,結論として,テリパラチドは,骨吸収抑制剤の治療後,そのタイプや治療期間に関わらずBMDの増加に効果があったとの所見が記載されていることが認められる。なお,甲第91号証及び甲第92号証の各記載は,PTHと他の骨粗鬆症治療薬を併用する場合に関するものであり,甲80文献の試験では,骨吸収抑制剤の治療歴があってもウォッシュアウト期間を置かないで試験への組込みがされており(1592頁右欄1ないし53行目) 甲82,文献には,前治療薬を中止してからテリパラチド投与を開始するまでの期間が,1か月未満である患者が全体の59%,1ないし6か月である患者が全体の37%を占めており(甲82の855頁表1の「Total」の列の「Lag time」の欄及び欄外注の1行目参照),本件明細書の実施例2に記載されるような8週(2月)のウォッシュアウト期間を置かない患者も含まれていると推認できる。しかしながら,前記ア(ウ)のとおり,本件条件(4)の技術的意義は,本件3薬剤の服薬歴のある患者に本件訂正発明の骨粗鬆症治療薬を投与しても同一条件のプラセボ投与群との対比における骨折抑制効果は妨げられないことであるところ,他の骨粗鬆治療薬と併用した患者やウォッシュアウト期間を設定しない患者に対するPTHの効果が妨げられないならば,ウォッシュアウト期間を設定した患者に対する効果はなおのこと妨げられないと合理的に推認できるから,甲第91号証及び甲第92号証の併用に係る試験結果や,甲80文献及び甲82文献のウォッシュアウト期間を置かない患者を含む試験

5 結果であったとしても,これを参酌することができるというべきである。エ 本件4条件についての検討(ア) 本件3条件についてa 甲7発明と本件訂正発明とは,「1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする」との用量の点において一致するが,その投与の対象となる骨粗鬆症患者の範囲を一応異にする。b 甲7発明で投与対象とされた患者は,前記⑴のとおり,1989年診断基準で骨粗鬆症と診断された患者であるところ,甲7発明に接した当業者が,甲7発明のPTH200単位週1回投与の骨粗鬆症治療剤を投与する対象患者を選択するのであれば,より新しい基準を参酌しながらその患者を選別することは,当業者がごく普通に行うことであるから,1989年診断基準とともに,より新しい,1996年診断基準又は2000年診断基準を参酌するといえる。そして,前記イ(ア)b及びcのとおり,1996年診断基準で骨粗鬆症と診断される者は,①骨萎縮度I度以上又は骨密度値がYAMの80%以下の低骨量で非外傷性椎体骨折を有する者か,②X線上椎体骨折を認めないが,骨萎縮度Ⅱ度以上,又は,骨密度値がYAMの70%未満である者であり,2000年診断基準で骨粗鬆症と診断される者は,③骨萎縮度Ⅱ度以上又は骨密度がYAMの80%未満の低骨量で,軽微な外力による非外傷性椎体骨折等(脆弱性骨折)を有する者か,④脆弱性骨折がないものの,骨萎縮度Ⅱ度以上,又は,骨密度値がYAMの70%未満の者である。本件条件(2)及び本件条件(3)は,上記①と同じであるから 「既(存の骨折」は「非外傷性骨折」を含む。 ,当業者が甲7発明の200)単位週1回投与の骨粗鬆症治療剤を投与する骨粗鬆症患者を本件条件

5 (2)及び本件条件(3)で選別するのには何ら困難を要しない。また,前記イ(イ)のとおり,骨粗鬆症は,加齢とともに発生が増加するとの技術常識があり,高齢者は加齢を重ねた者であるのは明らかであるところ,高齢者として65歳以上の者を選択するのは常識的なことであり,高齢者の医療の確保に関する法律32条で65歳以上が高齢者とされている。したがって,これらを参酌し,骨粗鬆症による骨折の複数の危険因子として,低骨密度及び既存骨折に並んで年齢が掲げられていることに着目して投与する骨粗鬆症患者を65歳以上として,本件条件(2)及び本件条件(3)に加えて本件条件(1)のように設定することはごく自然な選択であって,何ら困難を要しない。そうすると,甲7発明に接した当業者が,投与対象患者を本件3条件を全て満たす患者と特定することは,当業者に格別の困難を要することではない。(イ) 本件条件(4)についてa 甲7文献には,「閉経後および退行期の骨粗鬆症を治療するためには,主にエストロゲン,ビスホスホネートおよびカルシトニンなどの骨吸収抑制剤に頼っている」 296頁右欄10行ないし297頁左欄(25行目)と記載された上で,他の薬物の効果とPTHの効果を取り違えないようにするため,投与対象患者に対し,試験開始3か月前から試験期間を通して,骨代謝及び骨粗鬆症の経過に影響を及ぼす可能性のある薬剤の使用を控えさせたこと,そのような薬剤として,「エストロゲン,カルシトニン,活性型ビタミンD,ビタミンK 2 ,イプリフラボン,ビスホスホネートおよび同化ステロイド」(297頁左欄27行ないし右欄42行目)が例示されることが記載されている。また,前記ウ(イ)のとおり,PTHは,高齢の骨折リスクの高い女性に他の骨粗鬆症治療薬に変えて選択され,PTHを投与される患者

5 の多くが他の骨粗鬆症治療剤,特に骨折抑制剤を投与されたことがあることは技術常識であるところ,甲7文献の試験は,71の医療施設で骨粗鬆症治療中の患者を対象とした多施設試験であり(297頁左欄27行ないし右欄42行目,298頁左欄25行ないし299頁左欄9行目),甲7発明の200単位(H群)の投与対象患者群は,平均年齢が71.7±10.78歳,平均閉経後年数が20.6±9.43年であって(表3),閉経後の年数も長い,比較的高齢の女性が多いと推認される。これらの事項を併せ考えると,試験開始3か月前からは骨代謝及び骨粗鬆症の経過に影響を及ぼす可能性のある薬剤の使用を控えさせたと明記された甲7文献の記載に接した当業者であれば,甲7発明の投与対象患者は試験開始3か月より前にはこれらの薬剤の服薬歴を有する患者が相当程度含まれていると認識することは明らかといえる。さらに,前記ウ(イ)のとおり,骨形成促進剤であるPTHについて他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある場合や同治療薬の併用がされた場合の効果の確認をした先行試験があることからすると,甲7発明に接した当業者が,投与対象患者の他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴に着目することは,当業者が自然に行うべきことと理解できる。b 前記ウ(イ)のとおり,本件3薬剤はいずれも一般的な骨粗鬆症治療薬である。そのうちのL-アスパラギン酸カルシウムはカルシウム製剤であり,カルシウムを補給する効果を有する薬剤であるところ(甲22の77頁,甲24,甲90の77頁,甲110の59頁),甲7文献の試験では試験期間中の非処方カルシウム製剤の使用が記録されることになっており(298頁左欄25行ないし299頁左欄9行目参照) 甲80文献の試験でもカルシウム製剤が補充投与されている, (1592頁左欄31ないし52行目) 次に,。 アルファカルシドールにつ

5 いてみると,同剤は活性型ビタミンD 3 製剤であり,活性型ビタミンD3 製剤はビタミンD受容体を介して副甲状腺に作用して副甲状腺ホルモンの合成・分泌を抑制し,小腸からのカルシウムの吸収を促進する薬剤であるところ(甲22の81ないし82頁,甲23の1633頁,甲26,90の81ないし82頁,甲110の59頁,甲111),甲7文献にはその併用によってPTHの効果を増強することが検討されている旨の記載があり(301頁右欄第5行ないし303頁右欄23行目),また,前述のとおり,甲7文献に骨代謝及び骨粗鬆症の経過に影響を及ぼす可能性のある薬剤として使用を控えさせた旨が明記されているものである。さらに,塩酸ラロキシフェンについてみると,同剤は,選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であり,女性ホルモンであるエストロゲン受容体(ER)にエストロゲンとほぼ同等の親和性で結合し,受容体の構造を特異的に変化させ,骨等に対してエストロゲン様の作用を発揮させる,骨吸収抑制作用が主な作用である薬剤であるところ(甲22の93頁,甲23の1635頁,甲27,50の87頁,甲90の93頁,甲111),前記ウ(イ)のとおり,塩酸ラロキシフェンとPTHを併用するとBMDの増加効果が上昇するとの試験結果や,塩酸ラロキシフェンを含む骨吸収抑制剤の服薬歴のある患者群についてテリパラチドを投与してもBMDの有意な増加効果は見られるとの試験結果が知られていたと認められる(なお,甲80文献及び甲82文献は,テリパラチド投与群同士で特定の前治療薬の服薬歴がある場合と前治療薬の服薬歴がない場合の効果を対比すると前者の反応が鈍いとしたものであり,前治療薬の服薬歴がある患者に対する骨折抑制効果が同一条件のプラセボ投与群と対比した場合の効果としても減弱することを記載するものではない。 。)そうすると,甲7発明の投与対象患者について,他の骨粗鬆症治療

5 薬の服薬歴に着目し,上記の記載や示唆等に基づき,L-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール及び塩酸ラロキシフェンの服薬歴のある患者を甲7発明の骨粗鬆症治療薬の投与対象とすることは,当業者であれば何ら困難を要しないものである。c 以上のとおりであるから,甲7発明の骨粗鬆症治療剤の投与対象患者を本件条件(4)を満たす者とすることは,当業者にとって格別困難を要することとはいえない。(ウ) 被告の主張についてa 被告は,前記第3の5⑵ア(ア)のとおり,本件4条件を一体として,その技術的意義が判断されなければならないとし,同(イ)a及びb(a)のとおり,仮に,本件4条件の個々の条件自体は甲7発明が対象範囲として予定するものであるとしても,本件4条件全体は一般的な指標ではなく,甲7発明が当然に対象範囲として予定していたものではないし,本件3条件は,層別解析により初めて,本件条件(1)ないし本件条件(3)を組み合わせるとPTHの骨折抑制効果が高いという新規な知見を得たことに基づくものであり,本件3条件全体といえども一般的な指標ではなく,甲7文献の開示事項からは導かれず,むしろ甲7文献にはサブグループ間で薬物に対する応答は同程度であった旨の記載があり,甲7発明から本件3条件を選択する動機付けは否定される旨主張する。しかしながら,前記ア(イ)において判示したとおり,本件3条件と本件条件(4)とはその目的を異にする独立の条件であると理解するのが相当であるし,前記エ(ア)及び(イ)において判示したように,本件基準日における技術常識に照らせば,甲7発明に接した当業者が投与対象患者をこれらの条件を全て満たす患者とすることに格別の困難はない。また,本件3条件の組み合わせについても,客観的観点から

5 その選択において格別なものである,あるいは,他の骨折リスク因子等も含めた様々な組み合わせが想定される中で,本件3条件を組み合わせること自体に特別の意味合いがあると認めるに足りる証拠はない(被告が主張する層別解析は,後述するように,あくまで本件3条件の全てを満たす患者(高リスク患者)のグループと,本件3条件の全部又は一部を満たさない患者(低リスク患者)のグループのうちごく一部のグループとを比較するものにすぎず,また,その結果自体も被告主張の顕著な効果が認められると即断できるものではない。 。)そして,確かに甲7文献には,別紙2のとおり,「年齢が64歳以下と65歳以上,体重が49㎏以下と50㎏以上,閉経後10年未満,10から20年,20年以上,および脊椎骨折が0,1および2箇所以上を有するサブグループに被験者を分類して比較したところ,サブグループ間で薬物に対する応答は同程度であった。 との記載があるこ」とは認められるものの(300頁左欄11行ないし右欄6行目) 当該,記載は,上記記載中の条件によってサブグループ化されたサブグループ間の薬物効果の比較について述べているにすぎず,当該記載により,甲7発明の投与対象患者をサブグループ化すること全般が阻害されるとはいえない。したがって,被告の上記主張は,いずれも採用することができない。b(a) 次に,被告は,前記第3の5⑵ア(イ)b⒝のとおり,甲7発明には他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴のない患者も組み入れられること,甲7文献には骨粗鬆症治療薬の服薬歴について具体的な記載はないこと,塩酸ラロキシフェンについては甲7文献の試験当時国内では販売されていなかったのでその服薬歴のある患者はいないことから,甲7発明の対象患者が本件4条件の全てを満たしているかは,甲7文献の開示事項からは全く不明である旨主張し,また,骨粗鬆

5 症治療薬は患者の症状,状態に照らして最適なものが選択されるのであり,まず本件3薬剤が選択され,しかる後にPTHが投与されるとは限らない旨主張する。確かに,甲7文献には投与対象患者が骨粗鬆症治療薬を服薬しているのか,又は服薬している骨粗鬆症治療薬の種類は記載されてはおらず,甲7文献からは,その試験当時に販売されていなかった(甲27)塩酸ラロキシフェンは当然として,その他の骨粗鬆症治療薬についても投与対象患者の服薬歴の有無は不明であり,また,PTHを投与する対象患者が必ず本件3薬剤の服薬歴があるということもできない。しかしながら,前記(イ)において判示したように,甲7文献の記載事項や技術常識を踏まえれば,甲7発明の骨粗鬆症治療薬の投与対象患者が他の骨粗鬆症治療薬の服用を受けている蓋然性があることは当業者には直ちに判明するのであり,甲7発明に接した当業者が,投与対象患者の他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴に着目することは,当業者が自然に行うべきことと理解できるのであるから,甲7文献の試験において骨粗鬆症治療薬を投与した対象患者が服薬していた具体的な骨粗鬆治療薬が不明であるからといって,甲7文献に接した当業者が甲7発明の骨粗鬆症治療薬の投与対象患者について,その服薬していた骨粗鬆治療薬を特定しようとする動機付けがなくなるという関係にあるわけではない。そして,PTHを投与する患者の前治療薬が本件3薬剤に限らないからといって,服薬歴とする骨粗鬆症治療薬の中から骨粗鬆症治療薬として一般的な本件3薬剤を選択することができなくなるという関係にあるわけでもない。そうすると,前記(イ)において判示したように,本件基準日において(塩酸ラロキシフェンは既に販売が開始されている〔甲

5 27〕 ) 甲7発明の骨粗鬆症治療薬について,。, 甲7文献の記載や技術常識を踏まえて,本件3薬剤の服薬歴のある患者を投与対象患者とすることは困難なこととはいえない(結局のところ,前記ア(ウ)において判示したとおり,本件条件(4)には,同一条件のプラセボ投与群に比して生じる骨折抑制効果の発現が妨げられない骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある者を投与対象者としたという以上の格別の技術的意義を見出すことはできないのであるから,従来は,本件3薬剤の服薬歴のある患者については同一条件のプラセボ 投与群に比して生じる骨折抑制効果の発現が妨げられると考えられていたなどといった事情が認められない限りは,本件条件(4)を加えたことに進歩性が認められる余地はないともいえる。 。)なお,本件4条件は,本件3条件と本件条件(4)に分けて容易想到性を論ずべきものであるところ,本件3条件の全てを満たす患者を投与対象患者とすることが困難でないことは,前記(ア)において判示したとおりである。したがって,被告の上記主張はいずれも採用することができない。⒝ 次に,被告は,前記第3の5⑵ア(イ)b⒞及び⒟のとおり,本件訂正発明は所定の服薬歴がある患者にPTH200単位を週1回投与すると,連日投与の場合とは異なり,PTHの効果が,服薬歴のない患者よりも強く発現し,骨折抑制効果がより増強されるところ,甲80文献及び甲82文献には,骨吸収抑制剤など他の骨粗鬆症治療薬を使用しても効果が不十分な患者などに対してPTHを連日投与すると,服薬歴のない患者群に比べて効果の減衰を招くことが報告されていたから,あえて本件条件(4)のような効果が低くなる服薬歴を有する患者を選択する積極的な動機付けはない旨主張する。

5 しかしながら,前記ア(ウ)において判示したとおり,本件訂正発明の技術的意義が,本件訂正発明の骨粗鬆症治療薬を投与した場合に,所定の他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴があるとその効果が増強される点にあるとは認められないものであるから,このような効果の存在を前提にして動機付けの不存在を指摘する被告の上記主張は失当である。前示のとおり,本件訂正発明の技術的意義は,所定の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある者に対してもプラセボ投与群に比して生じる骨折抑制効果の発現が妨げられないとして,これら患者を骨粗鬆治療薬を投与対象患者にするというものであるところ,この場合他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴があるPTH投与群とその服薬歴のないPTH投与群との間で前者の効果が鈍くなったからといって,同一条件のプラセボ投与群との関係において効果が妨げられたと結論付けることはできないから(むしろ,甲80文献によれば,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴があるPTH投与群についても,一定の効果が認められることが前提にされていると解される。 ,他)の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者にPTHを投与することを妨げられることはない。c また,被告は,前記第3の5⑵ア(イ)cのとおり,甲7発明における200単位投与群には,副作用が多発しており,200単位は副作用脱落率が高い用量と認識されているから,当業者はこれを試みない旨主張する。確かに,別紙2のとおり,甲7文献には,PTH200単位週1回投与のH群の副作用発生率は42%であり,72人のうち16人(約22%)が副作用により脱落していて,副作用発生率及び副作用による脱落率は,50単位を投与したL群(副作用発生率19%)及び100単位を投与したM群(副作用発生率19%)のいずれと比べても

5 高いことが記載されており(表6) 骨粗鬆症の治療は長期間にわたる,ため,臨床使用において患者の症状や治療継続意思に直接に影響する副作用が起こることは望ましくはないから(甲60ないし62,87),甲7文献の上記記載に接した当業者は,この点に限っていえば,200単位の投与よりも100単位の投与の方がより適当であると認識することが考えられる。しかしながら,他方,甲7文献には,重篤な有害事象は認められないと記載されており(301頁左欄1行ないし右欄4行目),さらに,200単位の投与が腰椎骨密度を48週間後に8.1%増加させたこと,及び,その増加の程度は,100単位投与の3.6%,及び,50単位投与の0.6%のいずれよりも高いことが記載され,PTHは腰椎骨密度を48週という比較的短期間で用量に依存して増加させる極めて有望なものと評価されている(300頁左欄11行ないし右欄6行目,301頁右欄5行ないし303頁23行目。有望とされた対象から200単位の投与のみが排除されているとは理解し難い。 。) そして,前記イ(イ)のとおり,骨粗鬆症の治療の目的は骨折を予防することであるところ,骨密度が低いことは,既存骨折,年齢とともに,わが国でエビデンスがある骨折危険因子であり,骨密度は骨強度のほぼ70%を説明するとの技術常識がある。以上によれば,甲7文献に接した当業者は,200単位週1回投与と100単位週1回投与とを対比した場合に,副作用の面と効果の面を総合考慮して,いずれを選択するか判断するものと考えられ,200単位週1回投与がその選択が排除されるほど劣位したものと見られるとはいえず,これを選択することもまた十分に動機付けられているというべきである。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。

5 d さらに,被告は,前記第3の5⑵ア(イ)dのとおり,PTH製剤が高齢者には効きにくいということは技術常識であったから,PTHを高齢者に特に使用しようとする積極的な動機付けは生じない旨主張する。被告は,関係文献(乙28,29)を挙げて,PTH製剤が高齢者には効きにくいということは技術常識であるとするが,「The Skeletal Response to Teriparatide Is Largely Independent of Age,Initial Bone Mineral Density, and Prevalent Vertebral Fractures in Postmenopausal Women With Osteoporosis」(Journal of bone and mineral research, vol.18, No.1,p18-23,2003)(乙28)における記載(21頁FIG.2)及び「フォルテオ皮下注キット600μg フォルテオ皮下注カート600μg「2.7.3臨床的有効性の概要」 (乙29)における記載(213頁)と」して,プラセボ投与群,テリパラチド20μg投与群(連日投与)及びテリパラチド40μg投与群(連日投与)に分けてフォルテオを投与をした際の新規椎体骨折発生率の結果が示されているところ,65歳以上75歳未満の患者,及び,75歳以上の患者いずれに対しても,テリパラチド投与群における椎体骨折発生率は,プラセボ投与群の椎体骨折発生率より低くなっているから,これらの記載をもって,フォルテオが高齢者,すなわち65歳以上の患者に効きにくいなどとはいえない。また,被告は,20μg投与群又は40μg投与群のプラセボ投与群に対する骨折相対リスク減少率は,患者が75歳以上の場合には,65歳以上75歳未満の場合よりも低くなっている旨を指摘するが,75歳以上の患者群の骨折相対リスク減少率が65歳以上75歳未満の患者群の骨折相対リスク減少率よりも低いとしても,それは,投与

5 対象を75歳以上の高齢者とすることの動機付けの有無の問題にはなるとしても,投与対象を65歳以上の高齢者とすることの動機付けには何らの影響を与えない。したがって,上記各文献をもって,200単位のPTH製剤を65歳以上の高齢者に投与することが妨げられ,動機付けが生じないとはいえない。e 以上のとおり,前記被告の各主張は,いずれも採用することができず,そのほか被告がるる主張するところも,前記(ア)及び(イ)の認定を左右するものではない。オ 効果についての検討前示のとおり,本件訂正発明の構成は容易想到であるが,これに対し,被告は,前記第3の5⑵イのとおり,本件訂正発明は,本件3条件を全て満たす患者に対する顕著な骨折抑制効果(以下「効果①」という。 ,②本)件条件(4)の服薬歴がある患者に投与すると,本件条件(4)の服薬歴のない患者に対するよりも骨折抑制効果がより増強される効果(以下「効果②」という。)を奏し,これらの効果は,当業者が予測をすることができなかった顕著な効果を奏するものである旨主張する。以下,これらの効果について検討する。(ア) 効果①についてa 前記イ(イ)のとおり,骨粗鬆症は,骨強度の低下を特徴とし,骨折の危険性が増大した骨疾患であり,骨粗鬆症の治療の目的は骨折を予防することであり,「骨強度」は骨密度と骨質の2つの要因からなり,骨密度は骨強度のほぼ70%を説明するとの技術常識があったから,当業者は,骨密度の増加は,骨折の予防に寄与すると理解するところ,甲7文献には,「ここに挙げた薬剤を投与することによって骨密度(BMD)が増加するため,骨折予防は飛躍的に進歩した」(296頁右欄

5 10行ないし297頁左欄25行目)と骨密度の増加が骨折予防に寄与することが記載され,その上で,48週で骨密度を8.1%増大させたことが開示されている(300頁左欄11行ないし右欄6行目) そ。うすると,甲7発明の骨粗鬆症治療剤が骨折を抑制する効果を奏していることは,当業者において容易に理解できる。b 効果①の骨折抑制効果とは,単なる骨折発生率の低減ではなく,プラセボ投与群の骨折発生率と対比した場合の骨折発生率の低下割合を指すものであるが,本件明細書の記載からでは,本件3条件を全て満たす患者と定義付けられる高リスク患者に対する骨折抑制効果が,本件3条件の全部又は一部を欠く者と定義付けられる低リスク患者に対する骨折抑制効果よりも高いということを理解することはできない。すなわち,効果①を確認するためには,高リスク患者に対する骨折抑制効果と低リスク患者に対する骨折抑制効果とを対比する必要があるが,前記1のとおり,本件明細書には,実施例1において,高リスク患者では,100単位週1回投与群における新規椎体骨折及び椎体以外の部位の骨折発生率は,いずれも実質的なプラセボである5単位週1回投与群における発生率に対して有意差が認められるが,低リスク患者では,100単位週1回投与群における新規椎体骨折及び椎体以外の部位の骨折の発生率は,いずれも,5単位週1回投与群における発生率に対して有意差が認められなかったと記載されているのにとどまる(【0086】ないし【0096】 【表6】ないし【表11】 。, )そして,低リスク患者の新規椎体骨折についていえば,100単位週1回投与群11人と5単位週1回投与群10人(令和3年1月15日付け被告第1準備書面33頁における再解析の数値による。について,)それぞれ,ただ1人の骨折例数があったというものであり,また,椎体以外の部位の骨折は,上記5単位週1回投与群について,ただ1人

5 の骨折例数があったというものであって,有意差がなかったことが,症例数が不足していることによることを否定できない。このように,低リスク患者において,100単位週1回投与群の新規椎体骨折及び椎体以外の部位の骨折の発生率が5単位週1回投与群のそれらの発生率に対して有意差がなかったとの結論が,上記のような少ない症例数を基に導かれたことからすると,高リスク患者における骨折発生の抑制の程度を低リスク患者における骨折発生の抑制の程度と比較して,前者が後者よりも優れていると結論付けることはできない。したがって,実施例1をみても,高リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果が,低リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高いということを理解することはできず,さらに,本件明細書のその他の部分をみても,高リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果が,低リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高いということを理解することはできない。以上によれば,効果①は,本件明細書の記載に基づかないものというべきである。c 被告は,効果①を明らかにするものとして,別紙4の実験成績証明書(甲79)を提出する。しかしながら,本件明細書の記載から,高リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果が,低リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高いということを理解することができず,また,これを推認することもできない以上,効果①は対外的に開示されていないものであるから,上記実験成績証明書を採用して,効果①を認めることは相当でない。仮に,上記実験成績証明書を参酌するにしても,本件3条件の全てを満たす患者(高リスク患者)のグループと,本件3条件の全部又は

5 一部を満たさない患者(低リスク患者)のグループのうちごく一部のグループとを比較しているものにすぎないから,本件3条件の効果が明らかになっているとはいえない。また,上記実験成績証明書には,本件条件(1)を満たし,本件条件(2)又は本件条件(3)のいずれかを満たさない患者とされる「非3条件充足患者」につき,「非3条件充足患者においてもPTH投与群ではコントロール群よりも骨折の発生が抑制されたが,3条件充足患者においては,PTH投与群ではコントロール群よりも骨折の発生が『有意に』抑制された。」旨が記載されているだけである。すなわち,本件3条件を満たさない患者については,PTH投与群においてコントロール群よりも骨折発生が抑制されたものの有意差がなかったことが理解できるのみであり,それら有意差がなかったとの結論も症例数が少ないことによるものと推認されることからすると,本件3条件の全てを満たす患者の骨折発生の抑制の程度が本件3条件を満たさない患者に対する骨折発生の抑制の程度より優れていると結論付けることはできない。そうすると,上記実験成績証明書をみても,本件3条件を全て満たす患者に対するPTHの骨折抑制効果が,本件3条件を満たさない患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高いということを理解することはできない。d 以上によれば,いずれにしても効果①を認めることはできないから,その他の点について判断するまでもなく,効果①を予測することのできない顕著な効果という余地はない。(イ) 効果②について前記ア(ウ)のとおり,効果②は本件明細書からうかがうことのできない効果である。被告は,骨粗鬆症治療薬の服薬歴が本件3薬剤のいずれか1剤のみの場合における新規椎体骨折発生数が記載された甲86証明書により本件

5 訂正発明の顕著な効果が裏付けられると主張する。仮に,上記実験成績証明書を参酌するにしても,甲86証明書は,本件3薬剤それぞれについて,服薬歴のある患者につき被験薬(PTH)を投与された場合と対照薬(プラセボ)を投与された場合との骨密度変化率や新規椎体骨折発生数を対比しているにすぎず,本件3薬剤のいずれかの服薬歴がある患者と当該薬剤の服薬歴がない患者との間で,被験薬を投与された場合の骨密度変化率や新規椎体骨折発生数を対比したものではないから,プラセボ投与との対比による被験薬の骨粗鬆症治療に対する効果しか示されていない。しかも,各薬剤についての評価例数があまりにも僅少で,そのようなデータから算出される骨折相対リスク減少率は,骨折例数が1件増減するだけで大きくその値を変えることは明らかであり,骨折相対リスク減少率を対比してその効果を論じることも相当ではない。以上によれば,いずれにせよ,効果②を認めることはできないし,ましてや,予測することのできない顕著な効果が認められるなどといった余地はない。カ 以上のとおりであるから,相違点1に係る本件発明1の構成は当業者が容易に想到し得たものである。⑶ 小括前記⑵のとおり,相違点1が容易に想到できないと認定した本件審決の判断には誤りがあるから,相違点1が容易に想到できないことから相違点2について検討するまでもなく本件発明1の進歩性を認めた本件審決の判断にも,誤りがあり,取消事由5は,理由がある。

4 結論以上のとおり,取消事由5には理由があるから,その他の点について判断するまでもなく,本件審決を取り消すこととして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官

菅 野 雅 之

裁判官

本 吉 弘 行

裁判官

中 村 恭

(別紙1)

本件明細書の記載事項(抜粋)(表は末尾に一括して掲記した。)

5 【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明はPTHを有効成分として含有する骨粗鬆症の治療剤ないし予防剤に関する。また,本発明はPTHを有効成分として含有する骨折抑制ないし予防剤に関する。特に本発明は,1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする,前記薬剤に関する。【背景技術】【0002】骨粗鬆症は「骨強度の低下を特徴とし,骨折のリスクが増大している疾患」である。現在,骨粗鬆症の治療剤の一つとしてPTH(Parathyroid Hormone; パラサイロイドホルモン)製剤が知られている。【0003】PTHは,カルシトニン類やビタミンD類とともに,血中カルシウム濃度の調節に関与するホルモンである。例えば,PTHは,生体内において,腎臓における活性型ビタミン D3生成を増加させることにより,腸管でのカルシウム吸収を促進する作用を有することも知られている(非特許文献1)。【0004】特許文献1は,骨粗鬆症患者に対して1週間に1回の頻度で26週間の投与期間にわたり1回の投与あたり100又は200単位のPTHを皮下投与することにより,当該骨粗鬆症患者の海面骨の骨密度を増加させかつ皮質骨の骨密度を減少させない骨粗鬆症の治療方法を開示している。【0005】このように,特許文献1は,これらの治療方法が単に骨密度の増加を誘導することを開示する一方,骨粗鬆症患者の骨強度を増大させること又は骨折のリスクを軽減させることが可能な治療方法であるか否かについて明示していない。また,PT5 Hを単独使用したのみで,カルシウム剤を併用していない。【0006】非特許文献1は,PTHによる骨粗鬆症治療に関する臨床試験において,患者にPTH(20μg/ay)投与後4~6時間後採血した際に高カルシウム血症がその患者の11%にみられ,持続性の高カルシウム血症はその3%に観察されたことを開示している。 さらに,非特許文献1は,次ぎのPTH投与前には血清カルシウムが殆ど全ての患者において正常に戻ったものの541人の患者の中で1名については持続性の血清カルシウム上昇が観察された為治療中止に至った旨も開示している。【0007】非特許文献2は,カルシウム剤を併用下でPTHの連日皮下投与製剤に関して,本剤投与後の血清カルシウムは臨床的に問題ないと開示するものの,投与後の血清カルシウムが上昇したことも報告している。非特許文献3は,非特許文献2に開示の連日皮下投与製剤の添付文書である。本文書は,臨床試験において,当該製剤投与後の様々な有害事象を開示する中で該製剤投与後の一過性の高カルシウム血症が観察された旨を報告している。さらに,非特許文献3は,当該製剤の市販後調査において,高カルシウム血症の副作用報告があった旨を開示している。【0008】このように,非特許文献1~3は,PTHの骨粗鬆症治療における高カルシウム血症の副作用事例等を開示しており,これらに開示の治療方法は安全性の面から十分ではないといえる。【0009】このような背景の下,安全性が高くかつ効能・効果の面で優れたPTHによる骨粗鬆症治療方法が求められていた。【先行技術文献】【非特許文献】5 【0011】【非特許文献9】Marcus.& Aurbach,G.D,Endocrinology 85,801-810,1969【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0012】本発明の課題は,安全性が高くかつ効能・効果の面で優れたPTHによる骨粗鬆症治療ないし予防方法を提供することである。さらに,本発明の課題は,安全性の高いPTHによる骨折抑制ないし予防方法を提供することである。【課題を解決するための手段】【0013】前記課題を解決するために,本発明者らは鋭意研究開発を重ねた結果,驚くべきことに,PTHの投与量・投与間隔を限定することにより,効能・効果及び安全性の両面で優れた骨粗鬆治療ないし予防方法となることを見出した。また,PTHの投与量・投与間隔を特定することにより,安全性の高い骨折抑制/予防方法となることを見出した。さらに,それらの方法において,高リスク患者に対して特に効果を奏することも見出した。【0014】すなわち,本発明は,以下に関するものである。〔1〕カルシウム剤と併用され,かつ,1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする,PTHを有効成分として含有する骨粗鬆症治療ないし予防剤。〔2〕併用されるカルシウム剤が週1回以上投与されることを特徴とする, 〔1〕前記の骨粗鬆症治療ないし予防剤。〔3〕併用されるカルシウム剤が,カルシウムとして1日あたり200~800mg投与されることを特徴とする,前記〔1〕または〔2〕の骨粗鬆症治療ないし予5 防剤。〔4〕前記PTHがヒトPTH(1-34)である,前記〔1〕~〔3〕のいずれかである骨粗鬆症治療ないし予防剤。〔5〕24週または48週を超過する期間にわたり投与するための,前記〔1〕~〔4〕いずれかに記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤。〔6〕下記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者を治療するための,前記〔1〕~〔5〕のいずれかである骨粗鬆症治療ないし予防剤;(1)年齢が65歳以上である(2)既存の骨折がある(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である。〔7〕ステロイドを起因とする続発性骨粗鬆症,あるいは,糖尿病性骨粗鬆症を治療ないし予防するための,前記〔1〕~〔6〕のいずれか1に記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤 。〔8〕 下記(1)~(8)の少なくともいずれか1の疾病を合併症として有する骨粗鬆症を治療ないし予防するための,〔1〕~〔6〕のいずれか1に記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤;(1)糖尿病,(2)高血圧,(3)高脂血症,(4)関節痛,(5)変形性脊椎症,(6)変形性腰痛症,(7)変形性股関節症,(8)変形性顎関節症。〔9〕 下記(1)~(6)の少なくともいずれか1つの骨粗鬆症治療薬の投与歴5 がある 骨粗鬆症患者に投与するための,〔1〕~〔6〕のいずれか1に記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤;(1)L-アスパラギン酸カルシウム(2)アルファカルシドール,(3)エルカトニン,(4)塩酸ラロキシフェン,(5)メナテトレノン,(6)乳酸カルシウム〔10〕 軽度腎障害または中程度腎障害を有する骨粗鬆症患者に投与するための,〔1〕~〔6〕のいずれか1に記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤。〔11〕前記PTHがヒトPTH(1-34)である,前記〔6〕~〔10〕のいずれか1の骨粗鬆症治療ないし予防剤。〔12〕前記PTHを有効成分として含有する骨粗鬆症治療剤が皮下注射剤である,前記〔6〕~〔11〕のいずれかに記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤。〔13〕 前記〔1〕~〔12〕のいずれか1に記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤と下記 (1)~(6)の少なくともいずれか1つの薬剤からなる合剤または医療用キット。(1)メトクロプラミド,(2)ドンペリドン,(3)ファモチジン,(4)クエン酸モサプリド,(5)ランソプラゾール,(6)六神丸。〔14〕1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする, PTHを有効成分として含有する骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,下記(1)~(3 )の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者を治療するための,骨粗鬆症治5 療ないし予防剤;(1)年齢が65歳以上である(2)既存の骨折がある(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度 I度以上である。〔15〕1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする, PTHを有効成分として含有する,骨折の危険性の高い骨粗鬆症治療ないし予防剤。〔16〕1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする, PTHを有効成分として含有する骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,ステロイドを起因とする続発性骨粗鬆症,あるいは,糖尿病性骨粗鬆症を治療ないし予防するための,骨粗鬆症治療ないし予防剤。〔17〕1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする, PTHを有効成分として含有する骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,軽度腎障害または 中程度腎障害を有する骨粗鬆症患者に投与するための,骨粗鬆症治療ないし予防剤。〔18〕カルシウム剤と併用され,かつ,1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする,PTHを有効成分として含有する骨折抑制ないし予防剤 。〔19〕併用されるカルシウム剤が週1回以上投与されることを特徴とする,前記〔18〕の骨折抑制ないし予防剤。〔20〕併用されるカルシウム剤が,カルシウムとして1日当たり200~800mg投与されることを特徴とする,前記〔18〕または〔19〕の骨折抑制ないし予防剤。〔21〕前記PTHがヒトPTH(1-34)である,前記〔18〕~〔20〕のいずれかである骨折抑制剤。5 〔22〕下記(1)~(3)の全ての条件を満たす対象者に投与するための,前記〔18〕~〔21〕のいずれかである骨折抑制ないし予防剤;(1)年齢が65歳以上である(2)既存の骨折がある(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である。〔23〕前記PTHがヒトPTH(1-34)である,前記〔22〕の骨折抑制ないし予防剤。〔24〕前記PTHを有効成分として含有する骨折抑制ないし予防剤が皮下注射剤である,前記〔22〕または〔23〕の骨折抑制ないし予防剤。〔25〕骨折抑制ないし予防剤が多発骨折抑制ないし多発骨折予防剤である,前記〔18〕~〔24〕のいずれか1に記載の骨折抑制ないし予防剤。〔26〕骨折抑制ないし予防剤が増悪骨折抑制ないし増悪骨折予防剤である,前記〔18〕~〔25〕のいずれか1に記載の骨折抑制ないし予防剤。〔27〕前記〔14〕または〔15〕の骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,ステロイド を起因とする続発性骨粗鬆症,あるいは,糖尿病性骨粗鬆症を治療ないし予防するための,骨粗鬆症治療ないし予防剤。〔28〕前記〔14〕または〔15〕の骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,軽度腎障害または中程度腎障害を有する骨粗鬆症患者に投与するための,骨粗鬆症治療ないし予防剤 。〔29〕前記〔27〕の骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,軽度腎障害または中程度腎 障害を有する骨粗鬆症患者に投与するための,骨粗鬆症治療ないし予防剤。〔30〕前記〔16〕の骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,軽度腎障害または中程度腎障害を有する骨粗鬆症患者に投与するための,骨粗鬆症治療ないし予防剤。〔31〕上記〔1〕~〔30〕のいずれかに記載の治療剤,予防剤,薬剤,合剤,または キットを用いる,予防または治療方法。5 【発明の効果】【0015】本発明の骨粗鬆症治療剤は,安全性が高くかつ効能・効果の面で優れている。また,本発明の骨折抑制ないし予防剤は,安全性が高く,有用である。【図面の簡単な説明】【0016】【図1】図1は,投与群(高リスク者,低リスク者)別での血清カルシウム濃度推移の結果を示すグラフである。【図2】新規椎体骨折発生率の経時変化に対する被験薬投与の影響を示す。被験薬投与群を「PTH200群」,対照薬投与群を「P群」と表記した。【図3】新規椎体骨折発生率の経時変化に対する被験薬投与の影響を示す。被験薬投与群 を「PTH200群」,対照薬投与群を「P群」と表記した。【図4】被験薬(「PTH200群」)または対照薬(「P群」)を週1回の頻度で72週間患者に投与した際の尿中カルシウム値の変動について試験した結果を示す。尿中カルシウム値/尿中クレアチン値の比を投与開始前と観察週で比較した。尿中カルシウムの測定は,開始時,12週後,24週後,48週後,72週後に実施した。標準併用薬(カルシウム 610mg,ビタミンD3 400IU,及びマグネシウム 30mg)を同意取得時から治験終了まで1日1回夕食後服用した。【図5】被験薬(「PTH200群」)または対照薬(「P群」)を週1回の頻度で72週間患者に投与した際の補正血清カルシウム値の変動について試験した結果を示す。血清カルシウムの測定は,開始時,12週後,24週後,48週後,72週後に実施した。血清カルシウム基準値:8.4-10.4mg/dL。標準併用薬(カルシウム 610m g,ビタミンD3 400IU,及びマグネシウム 30mg)を同意取得時から治験終了まで1日1回夕食後服用した。【発明を実施するための形態】【0017】5 本発明について,具体的に説明する。【0018】本発明は,1回当たり100~200単位のPTHが週1回(以下,「週1回」を「隔週」と称することもある。)投与されることを特徴とする,PTHによる骨粗鬆症治療ないし予防方法又は骨折抑制ないし予防方法を提供する。また,本発明は,1回当たり100~200単位のPTHが隔週投与されることを特徴とする,PTHを有効成分とする骨粗鬆症治療ないし予防剤又は骨折抑制ないし予防剤を提供する。さらに,本発明は,前記骨粗鬆症治療ないし予防剤又は前記骨折抑制ないし予防剤の製造のためのPTHの使用を提供する。【0019】I 有効成分本発明の有効成分であるPTH(以下,単に「PTH」ということもある。)は,ヒト副甲状腺ホルモンであるヒトPTH(1-84) 及び,, ヒトPTH(1-84)と同等又は類似の活性を有する分子量約4,000~10,000程度のペプチド類を包含する。【0020】PTHは,天然型のPTH,遺伝子工学的手法により製造されたPTH,及び化学合成法により合成されたPTHのいずれをも含む。PTHは,自体公知の遺伝子工学的手法により製造され得る(非特許文献8)。あるいは,PTHは,自体公知のペプチド合成法により合成されることができ(非特許文献11),例えば,不溶性の高分子担体上でペプチド鎖をC末端から伸長していく固相法(solid phase method)によっても合成され得る(非特許文献4)。なお,本発明のPTHの由来は,ヒトに限られず, ラット,ウシ,ブタ等であってもよい。【0021】本願明細書において,ヒトPTH(n-m)というときには,ヒトPTH(1-84)のアミノ酸配列第n番目から第m番目までからなる部分アミノ酸配列で示さ5 れるペプチドを意味する。例えば,ヒトPTH(1-34)は,ヒトPTH(1-84)のアミノ酸配列第1番目から第34番目からなる部分アミノ酸配列で示されるペプチドを意味する。【0022】本発明の有効成分であるPTHは,1種又は2種以上の揮発性有機酸と形成した塩でもあってもよい。揮発性有機酸として,トリフルオロ酢酸,蟻酸,酢酸などが例示され,好ましくは酢酸を挙げることができる。フリー体のPTHと揮発性有機酸が塩を形成する際の両者の比率は,当該塩を形成する限りにおいて特に限定されない。例えば,ヒトPTH (1-34)は,その分子中に9分子の塩基性アミノ酸残基と4分子の酸性アミノ酸残基を有するため,それらの分子内における塩形成を考慮に入れると,塩基性アミノ酸5残基 を酢酸の化学当量とすることができる。例えば,酢酸量に酢酸重量×100(%)/ヒトPTH(1-34)のペプチド重量,で表される酢酸含量を用いれば,一つの理論として,フリー体であるヒトPTH(1-34)に対する酢酸の化学当量は約7.3%(重量%)となる。本願明細書において,フリー体であるヒトPTH(1-34)はテリパラチド ,テリパラチドの酢酸塩はテリパラチド酢酸塩と,それぞれ称されることもある。テリパラチド酢酸塩における酢酸含量は,テリパラチドと酢酸が塩を形成する限りにおいて特に限定されず,例えば,前記の理論化学等量である7.3%以上であってもよく,0~1%でもよい。より具体的には,テリパラチド酢酸塩における酢酸含量として,1~7%,好ましくは2~6%を例示され得る。これらの塩は自体公知の方法(特許文献4~5)に従って製造可能である。【0023】PTHとして,ヒトPTH(1-84),ヒトPTH(1-34),ヒトPTH(18,- 38),hPTH(非特許文献5),ヒトPTH(1-34)NH 2 ,〔Nle18 8,18 34〕ヒトPTH(1-34) 〔Nle, ,Tyr 〕ヒトPTH(1-38,18 8,184) 〔Nle, 〕ヒトPTH(1-34)NH 2 ,〔Nle ,Tyr345 〕 ヒトPTH(1-34)NH 2 ,ラットPTH(1-84),ラットPTH(1-34) ,ウシPTH(1-84),ウシPTH(1-34),ウシPTH(1-34)NH2 等 が例示される。好ましいPTHとして,ヒトPTH(1-84),ヒトPTH(1-38 ),ヒトPTH(1-34),ヒトPTH(1-34)NH 2 が例示される(特許文献3等)。特に好ましいPTHとして,ヒトPTH(1-34)が挙げられる。さらに好ましいPTHとして,化学合成により得られたヒトPTH(1-34),最も好ましいPTH として,テリパラチド酢酸塩(実施例1)が挙げられる。【0024】II 他の薬剤との併用本発明者らは,カルシウム剤併用下でのPTHに関し,骨折発生を主要評価項目とした 二重盲検比較臨床試験を実施した結果,その効果は24または26週後という早期から発現され,さらに,有害事象として高カルシウム血症が確認されなかった(実施例1~2)。従って,本発明に係る骨粗鬆症治療剤又は骨折抑制/予防剤は,他の薬剤と併用することを一つの特徴とする。ここで,他の薬剤との併用とは,本発明に係る骨粗鬆症治療剤又は骨折抑制/予防剤と本剤とは別のある薬剤(他の薬剤)を併用することを意味する。【0025】本発明の他の薬剤としてはカルシウムを好適に例示できる。但し,本発明において他の薬剤との併用というときには,当該他の薬剤以外の別の薬剤のさらなる併用を排除するものでない。従ってカルシウムとの併用として,例えば,カルシウムのみとの併用,カルシウムならびにビタミンD(その誘導体を含む)および/またはマグネシウムのみとの併用,も好ましく例示できる。よって,他の薬剤の具体的様態として,カルシウム剤を例示でき,好ましくは,5 (1)カルシウムを薬効成分として含むカルシウム剤,(2)カルシウム,ビタミンD(その誘導体を含む)およびマグネシウムをそれぞれ薬効成分として含むカルシウム剤を好ましく例示できる。【0026】上記の本発明に係る骨粗鬆症治療剤又は骨折抑制/予防剤と他の薬剤との併用の形態(投与頻度,投与経路,投与部位,投与量等)は,特に限定されず,患者に応じた医師の処方等により適宜決定することができる。【0027】たとえば,上記他の薬剤としてカルシウム剤を併用する場合,当該カルシウム剤は,PTHを有効成分とした本発明に係る骨粗鬆症治療剤又は骨折抑制/予防剤と同時に投与されてもよいし(すなわち週1回) それ以上の頻度で投与されても差し,支えはなく,1日1回ないし数回の頻度で投与されてもよい。従って,上記の他の薬剤は,本発明に係る骨粗鬆症治療/予防剤又は骨折抑制/予防剤と組合せてなる合剤としてもよく,本発明に係 る骨粗鬆症治療剤/予防又は骨折抑制/予防剤と他の薬剤とが別々の製剤であってもよい。このようなカルシウム剤として,「新カルシチュウ(商標)D3 」(販売元:第一三共 ヘルスケア,製造販売元:日東薬品工業株式会社)を例示できる。【0028】また,他の薬剤は,発明に係る骨粗鬆症治療/予防剤又は骨折抑制/予防剤と一緒に又は逐次に(すなわち別々の時間に) 同一の又は異なる投与経路で投与され得,る。従って ,他の薬剤の剤形も特に限定されないが,例えば,錠剤,カプセル剤,細粒剤等を例示できる。他の薬剤がカルシウム剤の場合,単位剤形あたり100~400(好ましくは150~350)mgをカルシウムとして含むカルシウム剤であることが好ましい。しかして ,単位剤形あたりカルシウムとして100~400mgを含むカルシウム錠剤を,たとえ ば本発明の実施例に従って1日あたり2錠投与するとすれば,カルシウムとして200~ 800mgが一日あたり投与され5 ることになるが,これに限定されない。【0029】上記の他の薬剤の具体的な例としては,カルシウム剤の場合,たとえば沈降炭酸カルシウム,乳酸カルシウム,炭酸カルシウム,塩化カルシウム,グルコン酸カルシウム,アスパラギン酸カルシウム,燐酸カルシウム,燐酸水素カルシウム,クエン酸カルシウム等を有効成分とする公知の薬剤が例示できる。沈降炭酸カルシウムを含む薬剤が好ましい。なお,当該他の薬剤には,賦形剤,結合剤,崩壊剤,滑沢剤,制酸剤等が適宜含まれていてもよい。【0030】PTH投与患者のある一定の割合に,嘔吐,悪心,嘔気,胃もたれ,胃部不快感,胸焼けなどの消化器症状が一過的に観察されることが知られている(特許文献6)。【0031】本発明者らは,被験薬投与に伴う一過性の悪心・嘔吐に対する様々な制嘔剤の投与時期と有効性について試験した結果,プリンペラン(その薬効成分の一般名はメトクロプラミド),ナウゼリン(その薬効成分の一般名はドンペリドン),ガスターD(その薬効成分の一般名はファモチジン),ガスモチン(その薬効成分の一般名はクエン酸モサプリド) タケプロンOD, (その薬効成分の一般名はランソプラゾール)および六神丸がPTH投与に伴う悪心または嘔吐に対して有効であることを確認した(実施例2)。従って,更なる他の薬剤としてこれらの制嘔剤を好ましく,ナウゼリン(その薬効成分の一般名はドンペリドン),ガスモチン(その薬効成分の一般名はクエン酸モサプリド)および/または 六神丸をより好ましく,挙げることができる。これらの制嘔剤の用法用量は患者の症状等に応じて医師等が適宜設定することができる。【0032】III 投与期間本発明に係る骨粗鬆症治療/予防剤又は骨折抑制/予防剤の投与期間は特に限定5 されず,患者に応じた医師の処方等により適宜決定することができる。本発明者らは,投与期間 を156または72週間として,骨折発生を主要評価項目とした二重盲検比較臨床試験を実施した。本試験において,当該投与による有意な骨折抑制効果を確認でき,その効果は24または26週後という早期から発現した(実施例1~2) さらに,。 投与後48週を 超えてからの新規椎体骨折は認められなかった(実施例2)。従って,投与期間として,24週以上,26週以上,48週以上,52週以上,72週以上,または78週以上を例示することができ,最も好ましくは78週以上である。また,本試験において,有害事象 として高カルシウム血症は確認されなかった(実施例1)。【0033】IV 投与量本発明者らは,1回当たり100または200単位のPTHを用いた二重盲検比較臨床試験を実施した結果,当該投与による有意な骨折抑制効果と24または26週後という早期からの効果の発現を認め,一方で有害事象としての高カルシウム血症は確認されなかった(実施例1~2)。【0034】従って,本発明は,その投与量として,1回当たり100~200単位であることを特徴の一つとする。ここでPTHの1単位量は,自体公知の活性測定方法により測定可能である(非特許文献9)。投与量として,好ましく1回当たり100又は200単位,最も好ましく1回当たり200単位が例示される。【0035】V 投与間隔本発明者らは,1週間に1回の頻度でPTH投与する二重盲検比較臨床試験を実施した結果,当該投与による有意な骨折抑制効果と24または26週後という早期からの効果の発現を認め,一方で有害事象としての高カルシウム血症は確認されなかった(実施例1~ 2)。従って,本発明は,その投与間隔を隔週とすることを特5 徴の一つとする。【0036】VI 投与経路本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤は,その製剤形態に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば,本発明の骨粗鬆症治療ないし予防剤或いは骨折抑制ないし予防剤が注射剤の場合には,静脈,動脈,皮下,筋肉内などに投与され得る。本発明者らは,PTHを皮下注射した結果,優れた効能・効果及び安全性を示すことを立証し た(実施例1~2)。従って,本発明は,その投与経路として皮下投与経路を好ましく例示可能である。【0037】VII 対象疾患本発明に係る骨粗鬆症は特に限定されず,原発性骨粗鬆症及び続発性骨粗鬆症のいずれをも含む。原発性骨粗鬆症としては,例えば,退行期骨粗鬆症(閉経後骨粗鬆症及び老人性骨粗鬆症) 特発性骨粗鬆症, (妊娠後骨粗鬆症,若年性骨粗鬆症など)が例示される。 続発性骨粗鬆症は,特定の疾病や特定の薬剤等の原因により誘発される骨粗鬆症であり,例えば,特定の薬剤,関節リウマチ,糖尿病,甲状腺機能亢進症,性機能異常,不動性,栄養性,その他先天性疾患などが原因として挙げられる。特定の薬剤として,例えば,ステロイドが例示される。本発明に係る骨粗鬆症として骨折の危険性の高い骨粗鬆症を好ましく例示できる。骨折の危険性の高い骨粗鬆症への本発明の適応は下記の高リスク患者への本発明の適応を意味する。【0038】本発明者らは,原発性骨粗鬆症の患者を対象とした臨床試験において,本発明の効果・効能や安全性を確認した(実施例1~2)。従って,本発明に係る骨粗鬆症として好ましく原発性骨粗鬆症を例示でき,最も好ましく退行期骨粗鬆症を例示できる。【0039】5 本発明者らは,続発性骨粗鬆症を誘発するステロイドを服用する原発性骨粗鬆症患者を対象とした臨床試験において,本発明の効果を確認した(実施例2) 従って,。本発明に係る原発性骨粗鬆症患者として,続発性骨粗鬆症を誘発するステロイドを服用する原発性 骨粗鬆症患者を好ましく例示できる。【0040】本発明者らは,合併症(糖尿病,高血圧,または高脂血症)を有する原発性骨粗鬆症患者を対象にした臨床試験において,本発明の効果を確認した(実施例2)。従って,本発明に係る骨粗鬆症患者として,糖尿病,高血圧および高脂血症の少なくともいずれか1の合併症を有する骨粗鬆症患者を好ましく例示でき,糖尿病,高血圧および高脂血症の少なくともいずれか1の合併症を有する原発性骨粗鬆症患者をさらに好ましく例示できる。【0041】糖尿病は骨粗鬆症性骨折リスク要因である可能性が高いことが知られている(非特許文献16)。【0042】糖尿病性骨粗鬆症とPTHの関係については動物実験において次の報告が認められる。1) 糖尿病性の骨減少症示すsreptozotocin処理ラットに対してhPT Hを投与することによって,cancelous enveropeにおいて『骨量』『骨梁幅』『類骨表面』『石灰化面』『骨石灰化速度』『骨形成速度』, , , , ,の増加が見られ,さらに,endocortical envelopeでは『類骨表面』 『石灰化面』 『骨石灰化速度』 『皮質骨厚』の増加が見られたことが報告, , ,されている(非特許文献21)。ただし,本ラットは,他の原因による骨減少症ラットと異なり,吸収面の顕著な減少は見られていない。2) sreptozotocin処理ラットに対して8週間に渡ってPTHを投与した結果,海面骨量とターンオーバーの回復を認めたことが報告されている(非5 特許文献22)。3) 培養細胞における実験では高濃度のグルコースに曝露されるとhPTH(1-34)に対する反応が落ちる(PTHの効きが悪くなる)ことが報告されている(非特許文献20)。【0043】発明者は,糖尿病性骨粗鬆症ヒト患者へのPTH投与の効果を期待する医師等の多くの見解が存在している(例:http://www.richbone.com/kotsusoshosho/basic_shindan/tonyo.htm)ことを理解している一方で,その効果を実証した論文を見出せなかった。【0044】従って,本発明の骨粗鬆症治療剤・骨折抑制/予防剤により,原発性骨粗鬆症と糖尿病の合併症患者に対しての椎体骨折リスクが低減されることを,本願試験で実証したことは重要な知見である。【0045】本発明に係る骨折は特に限定されず,椎体骨折及び非椎体骨折のいずれをも含み(実施例1) 骨粗鬆症・骨形成不全・骨腫瘍などを原因とする病的骨折,, 交通事故・打撲などを原因とする外傷性骨折のいずれをも含む。好ましくは,骨粗鬆症を原因とする骨折,さらに好ましくは骨粗鬆症を原因とする椎体骨折への適用を例示可能である。骨折の部位も特に限定されないが,典型的には,脊椎圧迫骨折,大腿骨頸部骨折,大腿骨転子間部骨折 ,大腿骨骨幹部骨折,上腕骨頸部骨折,橈骨遠位端骨折を挙げることもでき,特に脊椎圧迫骨折が例示され得る。【0046】本発明に係る骨折の回数は特に限定されず,単発骨折及び多発骨折のいずれをも含む。単発骨折とは,骨が1箇所だけ折れるまたは亀裂が入る病状を意味し,多発骨折とは,骨が2箇所以上折れるまたは亀裂が入る病状を意味する。多発骨折における骨折数は特に限定されないが,2個~4個へ適用される場合が好ましい。5 【0047】本発明に係る椎体骨折は新規骨折および増悪骨折のいずれをも含む。例えば,椎体全体の形態をみてその変形の程度はGrade分類されることができ,Grade0(正常),Grade1(椎体高約20~25%減少,かつ,椎体面積10~20%減少) Grade2, (椎体高約25~40%減少,かつ,椎体面積20~40%減少),Grade3(椎体高約40%以上減少,かつ,椎体面積40%以上減少)とすることが一般的である。新規・増悪の区分はGenantの判定基準に従いGradeの増加パターンに沿って実施可能である。具体的には,Grade0からGrade1,2,または3への変化が認められた場合には新規骨折と診断され,Grade1からGrade2または3,Grade2からGrade3への変化が認められた場合には増悪骨折とみなすことができる。さらにGradeの変化を正確に判断するために,井上ら(非特許文献35)の方法,および林ら(非特許文献36)の方法に従って,椎体高の計測を行った。【0048】本発明者らは,既存骨折を有する患者を対象とした臨床試験において,本発明の増悪骨折抑制効果を確認した(実施例2)。従って,本発明においては,骨粗鬆症患者として, 好ましく既存骨折を有する患者,さらに好ましく既存骨折およびその増悪骨折の可能性を有する患者への適用を例示できる。【0049】PTHの骨強度増強作用のメカニズムについては未だ不明な点が多い。骨強度は骨密度のみならず骨質の状態を反映するが,これは骨密度のみならず骨微細構造や石灰化など骨質要因が骨強度を規定することを意味する(非特許文献17) 本発明。者は,骨質は骨強度のみならず骨粗鬆症とは異なる疾病の発症リスクやその合併症の治癒成績に影響を及ぼす可能性があると考える。本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤は,従前の治療剤(特許文献2)と比較してこれらの点で優位である可能性が示唆された。5 【0050】特許文献2は,rhPTH(1-34)を骨粗鬆症患者に投与した結果,骨塩含有量(BMC)や骨塩密度(BMD)のみならず,腰椎や大腿骨等の骨面積を増加させたことを開示する。骨面積の増加は骨が外側に向かって肥厚することを意味する。【0051】ところが,本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤を骨粗鬆症患者に投与した結果,皮質骨厚が骨の外側ではなく骨の内側に増加した。すなわち,骨全体の厚さは殆ど変化が認められなかった。本メカニズムは例えば下記に示される重要な臨床的意義を示すと考えられる。【0052】(1)長管骨肥厚による関節破壊がない長管骨(四肢を構成する長形状の骨)の一つである大腿骨は,その骨端が関節軟骨と接触してその他滑膜や半月板とともに膝関節を形成している。その接触面は厚さ数ミリ程度の軟骨に覆われる関節面と称される。膝関節痛の原因となる疾病として例えば変形性膝関節症が例示される。【0053】一方,プレドニゾン(prednisone)誘発骨粗鬆症と関節痛の合併症患者に対してフォサマック(Fosamax)と比較してフォルテオ(Forteo;毎日投与のPTH)がより強い骨強化作用を示したことが知られている(非特許文献23~24)。【0054】しかし,このフォルテオ投与は特許文献2に記載のPTH投与と実質的に同等の従来の治療方法であり,先に述べたように本従来方法は骨の外側に肥厚させる治療方法である。 大腿骨の外側への肥厚は関節面の面積増大を意味し,軟骨細胞数は骨の肥厚と比して増加しない為,この従前治療法に起因する大腿骨の外側への肥厚は,5 関節面の増大で惹起または増悪される軟骨細胞の損傷を介して関節の破壊を促進する可能性がある。【0055】ところが,本発明のように大腿骨の内側への肥厚は,関節面増大がなく,軟骨をより安定化させ,結果として,軟骨への負担を増やさずに関節破壊を実質的に促進させない可能性があると発明者は考えている。本剤による骨粗鬆症治療が前記従来法による骨粗鬆治療と比較して関節に優しい治療である可能性を示唆するものである。【0056】(2)椎体肥厚による変形性脊椎症の増悪または発症がない加齢等の何らかの原因によって正常な椎体骨量が減少すると椎体が不安定化する。不安定化は終板の変形によって始まる。椎体の不安定化とは,具体的には,終盤の薄化や終盤孔(ハバース管)の拡大である。その不安定化が進むと,椎間板の終盤孔への進入や椎間板狭小化が見られる。さらに症状が進めば,椎骨同士の衝突による骨棘(こつきょく)生成にいたる。このような脊椎の変性が変形性脊椎症といわれる疾病である。変形性脊椎症になると,椎間が安定化して椎間板の進入に起因する痛みや周辺の筋肉膨張による痛みなどが生じることになる。【0057】しかし,特許文献2に記載のようにPTHを毎日投与して骨の外側に肥厚させる場合, 終盤孔の拡大に対して十分な抑制作用が見られない可能性がある。あるいは,椎体と椎間板の接触面積の増大によって,椎体間の距離が縮小し,椎体の不安定化が進み,結果として,変形性脊椎症の発症や増悪リスクが高くなる可能性もある。【0058】一方,本発明の骨粗鬆症治療剤・骨折抑制/予防剤投与により,皮質骨厚が骨の外側ではなく骨の内側に増加していくため,終盤孔の拡大や椎間板の終盤孔への進入に対して十分に抑制できる可能性がある。5 【0059】(3)変形性股関節症・変形性顎関節症を増悪または発症促進させない変形性股関節症は,関節に対する血流不良や極度の加重や酷使を理由として,股関節を形成している臼蓋と大腿骨頭の接触面の関節軟骨が摩耗,変性,不可逆性の変化を起こした状況である。変形性股関節症患者の大腿骨皮質骨面積は健常者のそれと比較して有意に大きい(非特許文献18)。大腿骨皮質骨面積の増大は,大腿骨の外側への肥大化を意味し,従ってこれが変形性股関節症の発症または増悪に関与している可能性がある。本発明のように大腿骨の内側への肥厚化をさせる場合には,大腿骨の外側への肥大化をさせることはないので,変形性股関節症の発症または増悪リスクを増大させない可能性がある。変形性顎関節症は顎関節の変形を主徴候とするものであるが,皮質骨の肥厚が診断所見の一つとなっている(非特許文献19)。従って,皮質骨のさらなる外側への肥大化が症状を悪化または発症させる可能性がある。本発明のように骨の内側へ肥厚させる場合には,このような変形性顎関節症の発症または増悪リスクを増大させない可能性が推定される。【0060】以上,(1)~(3)を纏めると,関節痛,変形性脊椎症,変形性腰痛症,変形性股関節症,および変形性顎関節症の少なくともいずれか1の疾病を合併症として有する骨粗鬆症患者(好ましくはそのうち原発性骨粗鬆症患者)を本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤の適応患者として好ましく例示できる。【0061】本発明者らは,1年以内の他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が本剤有効性に与える影響を評価した。その結果,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある原発性骨粗鬆症患者は服薬歴のない患者よりも被験薬有効性が高いことが明らかになった(実施例2)。従って,本発明においては,骨粗鬆症患者として,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある骨粗鬆症患者への適用を好ましく例示でき,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある原発性骨粗鬆症患者への適用をさらに好ましく例示できる。5 【0062】また,他の骨粗鬆症治療薬として,L-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,塩酸ラロキシフェン,エルカトニン,メナテトレノン,乳酸カルシウム,が例示され,好ましくは,L-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,エルカトニンが例示される。他の骨粗鬆症治療薬は単独または併用して投薬実績があってもよい。【0063】他の骨粗鬆症治療薬の投与歴のある骨粗鬆症患者に対して,本発明の骨粗鬆症治療剤・骨折抑制/予防剤を24週~72週またはそれ以上にわたり投与することが好ましい。特にそのうち腰椎の骨折リスクの高い患者に対しては24週またはそれ以上にわたり投与することが好ましく,大腿骨頚部または大腿骨近位部の骨折リスクの高い患者に対しては72週またはそれ以上投与することが好ましい。【0064】骨粗鬆症および腎障害は加齢とともにその有病率が上昇する。女性の骨粗鬆症患者の85%は軽度~中程度の腎障害を有しているという大規模な疫学研究報告もある(非特許文献32)。従って,腎障害を有する骨粗鬆症患者に対して有効かつ安全な薬剤を提供することは重要である。【0065】本発明者らは,腎機能正常の骨粗鬆症患者群,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群,中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群いずれに対しても本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤が有効であることを示した(実施例2)。さらに加えて,血清カルシウムに関する安全性において全ての群に対して本発明の骨粗鬆症治療剤・骨折抑制/予防剤は同等であることが明らかとなった。【0066】腎機能正常,障害,および障害の程度は,クレアチニンクリアランスに基づき区別可能である。具体的には,クレアチニンクリアランスが80ml/min以上を5 腎機能正常, 50以上80未満ml/minを軽度腎機能障害,30以上50未満ml/minを中等度腎機能障害と判定可能である。【0067】一般的には,血清カルシウムの正常上限濃度は10.6mg/mlでありこれを超える11.0mg/mlはやや高値といえる。従前のPTH毎日投与では,中程度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群の11.76%の患者に投与後にやや高値である11.0mg/mlを超える血清カルシウムが認められていた(非特許文献32)。ところが,本発明においては,中程度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群に本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤を投与した結果,11.0mg/mlを超える血清カルシウムが認められる患者は投与開始~最終時まで全ての検査時において一人も見出すことができなかった(実施例2)。すなわち,有効性のみならず安全性の面でも,本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤が優れていると考えられる。従って,本発明の適用対象患者として,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者および/または中等度腎機能障害を有する骨粗 鬆症患者を好ましく例示でき,さらに好ましくは軽度腎機能障害を有する原発性骨粗鬆症患者および/または中等度腎機能障害を有する原発性骨粗鬆症患者を例示できる。【0068】本発明に係る薬剤投与ないし治療方法が適用されるべき対象者の人種・年齢・性別・身長・体重等は特に限定されないが,当該対象者として,骨粗鬆症患者が例示され,或いは骨粗鬆症における骨折の危険因子を多くもつ骨粗鬆症患者に対して本発明の方法を適用し,或いは本発明の骨粗鬆症治療剤又は骨折抑制ないし予防剤を投与することが望ましい。骨粗鬆症における骨折の危険因子としては,年齢,性,低骨密度,骨折既往,喫煙,アルコール飲酒,ステロイド使用,骨折家族歴,運動,転倒に関連する因子,骨代謝マーカー,体重,カルシウム摂取などが挙げられている(非特許文献10)。しかして,本発明においては,下記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者(ないし対象者)を「高リスク患者」として定義する。5 (1)年齢が65歳以上である(2)既存骨折がある(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である。【0069】ここで,骨密度とは,典型的には腰椎の骨塩量を指す。但し,腰椎骨塩量の評価が困難な場合では,橈骨,第二中手骨,大腿骨頸部,踵骨の骨塩量値により当該骨密度を示すことができる。また,若年成人平均値とは20~44歳の骨密度の平均値を意味する。骨密度は,例えば,二重エネルギーX線吸収測定法,photodensitometry法 ,光子吸収測定法,定量的CT法,定量的超音波法など自体公知の方法により測定可能で ある。また,本発明において骨萎縮度とはX線上骨量減少度を意味する。骨萎縮度は,骨萎縮なし,骨萎縮度I度,骨萎縮度II度,及び骨萎縮度III度に分類される。当該骨 萎縮度における骨萎縮なしとは,正常状態を指し,具体的には,縦・横の骨梁が密である ため骨梁構造を認識することができない状態を意味する。骨萎縮度I度とは,縦の骨梁が目立つ状態を意味し,典型的には,縦の骨梁は細くみえるがいまだ密に配列しており,椎体終板も目立ってくる状態を意味する。当該骨萎縮度における骨萎縮度II度とは,縦の 骨梁が粗となり,縦の骨梁は太くみえ,配列が粗となり,椎体終板も淡くなる状態を意味する。当該骨萎縮度における骨萎縮度III度とは,縦の骨梁も不明瞭となり,全体として椎体陰影はぼやけた感じを示し,椎間板陰影との差が減少する状態を意味する(骨粗鬆 症治療,5/3,2006年7月号,「単純X線写真による骨粗鬆症の診断」 。)骨萎縮度は,例えば,腰椎側面X線像から判定可能である。本発明でいう椎体骨折数は,例えば ,Genantらの方法(非特許文献14)により容易に計測可能である。椎体以外の部位の骨折は,例えば,レントゲンフィルムを用いて容易に確認され得る。【0070】5 本発明においては,特に高リスク患者に対して本発明の方法を適用し,或いは本発明の骨粗鬆症治療ないし予防剤又は骨折抑制ないし予防剤を投与することが特に好ましい(実施例1)。【0071】一方,一般的に,下記(1)~(6)の少なくともいずれかに該当する患者(対象者) に対しては本発明の方法を適用すること,及びそれに従う本発明の骨粗鬆症治療ないし予防剤又は骨折抑制ないし予防剤の投与を避けることも好ましい。(1)気管支喘息,発疹(紅班,膨疹等)などの過敏症を起こしやすい体質の患者(2)高カルシウム血症患者(3)妊婦または妊娠している可能性のある婦人(4)甲状腺機能低下症または副甲状腺機能亢進症の患者(5)過去に薬物過敏症を呈したことのある患者(6)心疾患,肝疾患,腎障害など重篤な合併症を有する患者従って,本発明においては,上記高リスク患者であって,かつ, (1) (6)上記 ~全てに該当しない骨粗鬆症患者等を適用対象とすることが好ましい。【0072】VIII 製剤本発明に係る骨粗鬆症治療/予防剤又は骨折抑制/予防剤(以下,単に「本剤」ということもある。)は,種々の製剤形態をとり得る。一般的には,本剤は,PTH単独又は慣用の薬学的に許容される担体とともに注射剤等とされ得る。本剤の剤形として注射剤が好 ましい。【0073】例えば,本剤が注射剤の場合,PTHを適当な溶剤(滅菌水,緩衝液,生理食塩水等)に溶解した後,フィルター等で濾過および/またはその他適宜の方法にて滅菌して,次いで無菌的な容器に充填することにより調製され得る。その際にPTHとともに必要な添加物(例えば,賦形剤,安定化剤,溶解補助剤,酸化防止剤,無5 痛化剤,等張化剤,pH調整剤,防腐剤等)を添加しておくことが好ましい。このような添加物として,例えば, 類,糖 アミノ酸,又は食塩等を挙げることができる。添加剤として糖類を用いる場合には, 糖類として,マンニトール,グルコース,ソルビトール,イノシトール,シュークロース ,マルトース,ラクトース,トレハロースをPTH1重量に対して1重量以上(好ましくは50~1000重量)添加することが好ましい。添加剤として糖類及び食塩を用いる場合には,糖類1重量に対して1/1000~1/5重量(好ましくは1/100~1/10重量)の食塩を添加することが好ましい。【0074】例えば,本剤が注射剤の場合,本剤は凍結乾燥等の手段により固形化されたもの(凍結乾燥製剤等)でもよく,用時に適当な溶剤で溶解すればよい。あるいは,本剤が注射剤の場合,本剤は予め溶解されてなる液剤であってもよい。【0075】また,好ましくは,本剤は,骨粗鬆症治療剤及び骨折抑制/予防剤として,1回当たり 100~200単位のヒトPTH(1-34)を隔週で投与すべき旨を記載したパッケージに収容されるか,そのような旨を記載した添付文書とともにパッケージに収容された薬剤とすることができる。【0076】なお,本願発明の有用性は,実施例に示される臨床試験の結果を慣用の方法で統計処理等することによっても容易に確認することができる。また,以下,本発明を実施例により本発明をさらに具体的に説明するが,本発明の範囲は以下の実施例に限定されることはない。【実施例】【0077】(実施例1)原発性骨粗鬆症と診断された男女の患者(非特許文献12)に対して,Taka5 iの方法(特許文献4~5,非特許文献11)により調製した,5あるいは100単位のテリパラチド酢酸塩をそれぞれ週に1回間欠的に皮下投与した(それぞれを5あるいは100単位投与群とする) なお,。 テリパラチド酢酸塩の活性測定はMarcusらの論文(非特許文献9)に従った。【0078】5または100単位投与群は,1バイアル中にテリパラチド酢酸塩を5または100単位含有する凍結乾燥製剤を生理食塩水1mLに用時溶解してその溶液全量を投与した。さらに,5または100単位投与群共に,カルシウム剤(1錠中に沈降炭酸カルシウムを500mg[カルシウムとして200mg]含有)を1日1回2錠投与した。【0079】骨粗鬆症患者は,非特許文献13に示された,骨折の危険因子の保有状況により,表-1に示す条件で区分して比較した。高リスク患者(以下,単に高リスク者と称することもある)は,年齢,既存の椎体骨折,骨密度あるいは骨萎縮度の3因子をすべて有するものと定義し,低リスク者はそれ以外のものとした。【0080】【表1】(後記)患者背景は表-2,3に示す通りであり,両群の背景に統計学的な有意差は認められなかった(p<0.05)。【0081】【表2】(後記)【表3】(後記)【0082】投与期間中はカルシトニン製剤,活性型ビタミンD3製剤,ビタミンK製剤,イプリフラボン製剤,ビスホスホン酸塩製剤,エストロゲン製剤,蛋白同化ホルモン製剤,医師の処方によるカルシウム製剤(ただし,上記の1日1回2錠投与される5 カルシウム剤は除く),その他骨代謝に影響を及ぼすと考えられる薬剤の併用は禁止した。骨評価としては, 腰椎骨密度と骨折の発生の確認を実施した。腰椎骨密度は,二重エネルギーX線吸収測定 法(DXA法)を用いて第2~第4腰椎骨密度の測定を開始時と以降6ヶ月毎に実施した。骨折発生頻度は,椎体では,第4胸椎から第5腰椎までの正面,側面のX線撮影を開始時と以降6ヶ月毎に実施し,Genantらの方法(非特許文献14)を参考に,開始時と以降の時点のレントゲンフィルムを比較して,新規椎体骨折を評価した。また椎体以外 の部位では,レントゲンフィルムでの確認で評価した。また,全症例において投与開始時 および投与期間中に採血を行い,カルシウム濃度を含む一般臨床検査値を測定した。(DXA,新規椎体骨折は中央で一括判定し,椎体以外の骨折は担当医師がレントゲンフィルムにより判定)高リスク者における投与期間は,5単位投与群で85.1±20.8週,100単位投与群で83.7±19.8週であり両群間で有意な差は認められなかった(p<0.05)。また低リスク者は,5単位投与群で72.7±19.4週,100単位投与群で88.3±21.3週であり両群間で有意な差は認められなかった(p<0.05)。【0083】表-4,5に高リスク者,低リスク者の別での,投与群別の腰椎骨密度の推移を示した 。高リスク者においては,100単位投与群の骨密度は投与開始時に比較し有意に高い骨密度の増加が認められ,5単位投与群と比較しても有意に高い値を示した(p<0.05)。一方低リスク者においては,投与開始時との比較および群間での比較において有意差は認められなかった(p>0.05)。【0084】【表4】(後記)【0085】【表5】(後記)【0086】5 表-6,7に高リスク者,低リスク者の別での,投与群別の新規椎体骨折発生の結果を示した。高リスク者においては,100単位投与群は5単位投与群に比べ骨折発生は有意に低かった(p<0.05)。一方低リスク者においては,群間で有意差は認められなかった(p>0.05)。【0087】【表6】(後記)【0088】【表7】(後記)【0089】表-8,9に高リスク者,低リスク者の別での,投与群別の26週毎の新規椎体骨折発生の結果を示した。高リスク者においては,100単位投与群は5単位投与群に比べ,26週後から骨折発生を抑制した。一方,低リスク者においては群間の差は認められなかった。【0090】【表8】(後記)【0091】【表9】(後記)【0092】表-10,11に高リスク者,低リスク者の別での,投与群別の椎体以外の部位での骨折発生の結果を示した。高リスク者においては,100単位投与群は5単位投与群に比べ骨折発生は有意に低かった。一方低リスク者においては,群間で有意差は認められなかった。【0093】【表10】(後記)【0094】【表11】(後記)5 【0095】図1に高リスク者,低リスク者の別での,投与群別の血清カルシウム濃度推移の結果を示した。実施した採血サンプルを用いた臨床検査値の結果のうち,低リスク者の5単位投与群において薬剤投与開始前より高値であった1症例を除き,全例で高カルシウム血症は認められず,また,血清カルシウムが上昇する傾向も認められなかった。【0096】以上の表から分かる通り,原発性骨粗鬆症患者のうち,新規骨折の危険因子を有する患者において,テリパラチド酢酸塩を週1回100単位間欠的に皮下投与することによって,有意な腰椎の骨密度の増加が認められ,さらに新規椎体骨折の抑制が認められた。即ち,本発明の新規骨折の高リスク患者に対する,テリパラチド酢酸塩の週1回100単位投与は,有用な骨粗鬆症治療剤及び骨折抑制ないし予防剤となり得ることが確認された。【0097】また,投与期間中,本発明テリパラチド酢酸塩の週1回投与では,いずれの投与量においても高カルシウム血症の発症はなく,既に知られているテリパラチド酢酸塩の連日投与に比較し,有用であるものと考えられた。【0098】(実施例2)原発性骨粗鬆症と診断された男女の高リスク患者に対して,Takaiの方法(特許文献4~5,非特許文献11)により調製した被験薬(1バイアル;1バイアルにテリパラチド酢酸塩200単位を含む注射用凍結乾燥製剤)または対照薬(1バイアル;1バイアルにテリパラチド酢酸塩を実質的に含まないプラセボ製剤)をそれぞれ生理的食塩水1mLで用時溶解して72週間にわたり週に1回の頻度で間欠的に皮下投与した。【0099】5 上記患者は,併せて,カルシウム剤2錠を1日1回夕食後に服薬した。本カルシウム剤は,2錠中にカルシウム610mg,ビタミンD3400IU及びマグネシウム30mgを含有するソフチュアブル製剤であり,成分として,沈降炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,コレカルシフェロール(ビタミンD3)等を含み,「新カルシチュウ(商標)D 3 」(販売元:第一三共ヘルスケア,製造販売元:日東薬品工業株式会社)の商品名として市販されているものである。【0100】なお,上記患者は全て自立歩行可能な外来患者であり,かつ,以下の(1)~(19)いずれの基準にも該当しない患者である。(1) 所定の原因により続発性骨粗鬆症と診断された患者。ここで所定の原因とは,内分泌性(甲状腺機能亢進症,性腺機能不全,Cushing症候群),栄養性(壊血病,その他(タンパク質欠乏,ビタミンAまたはD過剰) ,薬物(副腎皮質)ホルモン,メトトレキサート(MTX),へパリン,アロマターゼ阻害剤,GnRHアゴニスト) 不動性, (全身性(臥床安静,対麻痺,宇宙飛行) 局所性, (骨折後等) ,)先天性(骨形成不全症,Marfan症候群等),その他(関節リウマチ,糖尿病,肝疾患,消化器疾患(胃切除)等)を意味する。(2)骨粗鬆症以外の骨量減少を呈する所定の疾患を有する患者。ここで所定の疾患とは ,各種の骨軟化症,原発性,続発性副甲状腺機能亢進症,悪性腫瘍の骨転移,多発性骨髄腫,脊椎血管腫,脊椎カリエス,化膿性脊椎炎,その他を意味する。(3)椎体の強度に影響を及ぼすと考えられる所定のX線所見を有する患者。ここで所定とは6個以上の連続した椎体が架橋を形成している,椎体周辺の靱帯に著しい骨化が認められる,脊椎に著しい脊柱変形を有する,椎体の手術が施行されている,ことを意味する。(4)胸腰椎体全体を覆うコルセットを装着している患者。(5)同意取得前52週(364日)以内にビスホスフォネート製剤の投与を受けた患者。5 (6)同意取得日に以下の骨粗鬆症治療薬の投与を受けている患者(ただし,治療開始までに8週(56日)以上の休薬(ウォッシュアウト)が可能ならば,対象として選択可とする) カルシトニン製剤,。 活性型ビタミンD3製剤,ビタミンK製剤,イプリフラボン 製剤,エストロゲン製剤,SERM製剤,蛋白同化ホルモン製剤。(7)気管支喘息,発疹(紅斑,膨疹等)等の過敏症状を起こしやすい体質の患者。(8)PTH製剤に対して過敏症の既往歴のある患者。(9)骨バジェット病の患者。(10)悪性骨腫瘍の既往または過去5年以内に悪性腫瘍の既往のある患者。(11)多発性外骨腫症の患者。(12)骨格への放射線外照射療法歴または放射線組織内照射療法歴を有する患者。(13)血清カルシウム値が11.0mg/dL以上の患者。(14)アルカリフォスファターゼ値が基準値上限の2倍以上の患者。(15)重篤な腎疾患,肝疾患または心疾患を有する患者。各疾患の基準は次の通り。腎疾患:血清クレアチニン値が2mg/dL以上肝疾患:AST(GOT)またはALT(GPT)値が基準値上限の2.5倍以上または100IU/L以上心疾患:「医薬品の副作用の重篤度分類基準について(平成4年6月29日薬安発第80号)」に示すグレード2を参考に判断する。(16)問診の信頼性が低いと判断された患者(少なくとも認知症の患者は必ず除外する )。(17)他の治験薬を同意取得前26週(182日)以内に投与された患者。(18)過去に治験でPTH製剤の投与を受けた患者。(19)その他,治験責任(分担)医師が本治験の実施にあたり不適当と判断した患者。5 【0101】また,上記患者は,治験への同意時から治験終了時までの間,以下の(1) (6)~いずれの薬剤の投与が禁止された。(1) テリパラチド酢酸塩以外の骨粗鬆症治療薬(具体的には,ビスホスフォネート製剤,カルシトニン製剤,活性型ビタミンD3製剤,カルシウム製剤(ただし,上記の1日1回 夕食後に服薬するカルシウム製剤は除く),ビタミンK製剤,イプリフラボン製剤,エストロゲン製剤,SERM製剤,蛋白同化ホルモン製剤)(2) 副腎皮質ホルモン製剤(ただし,筋注,静注または経口投与,ブレドニゾロン換算で,1週間平均として5mg/日を超える場合,1日投与量として10mg/日を超える場合,または総投与量が450mgを超える場合)(3) アロマターゼ阻害剤(4) GnRHアゴニスト(5) 他の治験薬【0102】被験薬および対照薬の投与例数は,それぞれ,290例(実施例において被験薬投与群と称することもある)および288例(実施例において対照薬投与群と称することもある)であり,投与総症例数は578例であった。ただし,試験の種類に応じてそれぞれの投与群の例数が異なることがあり,例えば(n=**)や評価例数等の表現で示すことがある。【0103】骨評価としては,骨密度と骨ジオメトリー,骨折の発生の確認を実施した。【0104】腰椎骨密度は,二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)を用いて第2~第4腰椎骨 密度の測定を開始時と以降24週毎に実施した。【0105】大腿骨骨密度は,二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)を用いて大腿骨近5 位部を 20度内旋し,左側のみの測定を開始時と以降24週毎に実施した。【0106】DXAジオメトリーは担当医が測定した開始時と以降24週毎の大腿骨骨密度データで 評価した。【0107】CTジオメトリーはマルチスライスCTを用いて大腿骨近位部の測定を開始時,48週後,72週後に実施した。【0108】骨折発生頻度は,椎体では,第4胸椎から第4腰椎までの正面,側面のX線撮影を開始時と以降24週毎に実施し,Genantらの方法(非特許文献14)を参考に,開始時と以降の時点のレントゲンフィルムを比較して,新規および増悪椎体骨折を評価した。また椎体以外の部位では,レントゲンフィルムでの確認で評価した(DXA,骨ジオメトリー,新規および増悪椎体骨折は中央で一括判定し,椎体以外の骨折は担当医がレントゲン フィルムにより判定)。【0109】(A)椎体多発骨折に対する被験薬の有効性ここで椎体多発骨折を新規の2箇所以上の椎体骨折と定義して,投与72週後における被験薬投与群(n=261)と対照薬投与群(n=281)それぞれにおける椎体多発骨折発生比率(例数)を比較したところ,対照薬投与群は2.1%(6例),被験薬投与群 は0.8%(2例)であった。すなわち,被験薬は椎体多発骨折に対して抑制ないし予防効果を有することが示された。骨折発生個数別の症例数を下記表に示す。【表12】(後記)【0110】(B)ステロイドを服用する原発性骨粗鬆症患者に対する被験薬の有効性ステロイドを服用する原発性骨粗鬆症患者に対する被験薬投与の効果を試験した。5 その結果,下記の表のとおり,ステロイドを服用する原発性骨粗鬆症患者に対して被験薬が有効であることが示された。【0111】【表13】(後記)【表14】(後記)【0112】ステロイドは続発性骨粗鬆症の原因となる薬剤であることから,上記の結果は,ステロイドの続発性骨粗鬆症を誘発する薬剤に起因する続発性骨粗鬆症に対して被験薬が効果を奏する可能性を示唆するものであると考えられる。【0113】(C)大腿骨3部位に対する被験薬の有効性大腿骨3部位(大腿骨頚部,大腿骨転子間部,大腿骨骨幹部)に対する被験薬の効果を一般的なCT法に準じて試験した。その結果,下記の表のように,大腿骨各部位に対して 被験薬は有効であることが示された。【表15】(後記)【表16】(後記)【表17】(後記)【0114】(D)被験薬投与に伴う悪心・嘔吐に対する処方検討被験薬投与に伴う悪心・嘔吐に対する様々な処置薬の投与時期と有効性について試験した。【表18】(省略)【0115】上記の通り,プリンペラン,ナウゼリン,ガスターD,ガスモチン,タケプロンOD, 六神丸が有効であった。特に,ナウゼリン,又はガスモチン,六神丸が好ましかった。5 【0116】(E)合併症の種類またはその有無が被験薬効果に与える影響評価上記患者の中には合併症を有している者もいる。そこで,合併症の種類(糖尿病,高血圧,高脂血症)やその有無が被験薬効果に与える影響を評価した。その結果,下記の表の通り,これら合併症の種類や有無に関わらず,さらに投与後24週時点以降において,被験薬は新規椎体骨折発生を抑制することが明らかになった。【表19】(後記)【0117】糖尿病を原疾患とする糖尿病性骨粗鬆症は続発性骨粗鬆症の一つであるが,糖尿病を合併症として有する原発性骨粗鬆症患者に被験薬効果が認められたことは,被験薬が糖尿病性骨粗鬆症に対しても治療効果を示す可能性を示唆するものと考えられる。【0118】(F)増悪骨折に対する被験薬の有効性増悪骨折に対する被験薬の有効性を試験した。その結果,下記の表のように,増悪骨折に対して被験薬は有効であることが示された。【表20】(後記)【0119】(G)他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が被験薬有効性に与える影響の評価前述のように,上記患者に対して,治験への同意時から治験終了時までの間,テリパラチド酢酸塩以外の骨粗鬆症治療薬の投与は原則的に禁止された。しかし,治験への同意時以前においては,所定の条件の下,他の骨粗鬆症治療薬の服薬を受けている患者も存在していた。そこで,当該他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が被験薬有効性に与える影響を,新規椎体骨折発生率および骨密度変化率の観点から評価した。【0120】新規椎体骨折発生率に関する評価結果を下表に示す。該表中,被験薬投与後725 週時において,当該他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者について被験薬投与群の骨折率が2.9%であり対照薬投与群の骨折率が16.1%であったが,服薬歴のない患者について 被験薬投与群の骨折率が3.2%であり対照薬投与群の骨折率が12.9%であった。すなわち,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者は服薬歴のない患者よりも被験薬有効性が高いことが明らかになった。【表21】(後記)【0121】次に骨密度変化率についての評価結果を下表に示した。該表中,腰椎骨密度に関しては ,いずれの他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者においても,被験薬投与後48週で当該骨密度の増加が顕著になっており,特に,他の骨粗鬆症治療薬がL-アスパラギン酸カルシウム,エルカトニン,アルファカルシドール,メナテトレノン及びカルシトリオールである被験薬投与群においては,投与後24週という早期段階での腰椎骨密度の顕著な増加が見られた。更に注目されるのは,他の骨粗鬆症治療薬がL-アスパラギン酸カルシウム及びエルカトニンの場合,被験薬投与後72週時点の大腿骨頚部及び近位部骨密度の顕著な増加がみられ,特に,他の骨粗鬆症治療薬がエルカトニンの場合では,大腿骨近位部 骨密度が被験薬投与後24週時点から既に大幅に増加している点は特筆に値するであろう。【表22】(後記)【0122】また,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が被験薬有効性に与える影響を,個別の当該他の骨粗鬆症治療薬について,新規椎体骨折発生率の観点から詳しく評価した結果を下表に示したが,その表からわかるとおり,カルシトリオール以外の骨粗鬆症治療薬服用歴のある患者において,被験薬投与による新規骨折の顕著な抑制が見られた。【表23】(後記)【0123】5 (H)腎機能障害を有する骨粗鬆症患者への被験薬の有効性及び安全性腎機能正常の骨粗鬆症患者群,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群,および中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群に対する被験薬の有効性及び安全性を試験した。【0124】(H-1)各患者群の背景因子の分布(詳細)腎機能正常の骨粗鬆症患者群を「Normal(80≦) ,軽度腎機能障害を有」する 骨粗鬆症患者群を「Mild impairment(50≦<80) ,中等」度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群を「Moderate impairment(<50) と表記した。また,被験薬投与群を「PTH200群」」 ,対照薬投与群を「P群」と表記 した。また,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群と中度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群を併せて「Abnormal (<80)」と表記することもある。各患者はその 患者のクレアチニンクリアランスをもとに上記群に分類した。具体的には,クレアチニン クリアランスが80ml/min以上を腎機能正常,50以上80未満ml/minを軽度腎機能障害,30以上50未満ml/minを中等度腎機能障害とみなした。【0125】(H-1)各患者群の背景因子の分布各患者群の背景因子の分布は次のようになる。【表24】(後記)【0126】(H-2)各患者群に対する被験薬の有効性(骨折抑制)腎機能正常の骨粗鬆症患者群および腎機能障害(軽度・中程度)を有する骨粗鬆症患者群いずれに対しても被験薬が新規椎体骨折抑制効果を有することが明らかとなった。【表25】(後記)5 【0127】(H-3)各患者群に対する被験薬の有効性(骨密度増加)腎機能正常の骨粗鬆症患者群,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群,中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群いずれに対しても被験薬が腰椎骨密度増加効果を有することが明らかとなった。【表26】(後記)【0128】(H-4)各患者群に対する被験薬の安全性(補正血清カルシウム)腎機能正常の骨粗鬆症患者群,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群,中等度腎機能障 害を有する骨粗鬆症患者群いずれに対しても被験薬を投与した結果,どの群に対しても被験薬と対照薬間で有意差は認められなかった。すなわち,血清カルシウムに関する安全性において全ての群に対して被験薬は同等であることが明らかとなった。【表27】【0129】(H-5)各患者群に対する被験薬の安全性(有害事象発現率)腎機能正常の骨粗鬆症患者群,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群,中等度腎機能障 害を有する骨粗鬆症患者群それぞれに被験薬を投与した後の有害事象発現率を試験した。【表28】(後記)【表29】(後記)【表30】(後記)【0130】(H-6)各患者群に対する被験薬の安全性(副作用発現率)腎機能正常の骨粗鬆症患者群,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群,中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群いずれに対しても被験薬を投与した結果,どの群5 に対しても被験薬は対照薬の約2倍の発現率を示した。すなわち,副作用発現率に関する安全性において全ての群に対して被験薬は同等であることが明らかとなった。【表31】(後記)【表32】(後記)【表33】(後記)【0131】(I)新規椎体骨折発生率の経時変化に対する被験薬投与の影響被験薬投与群を「PTH200群」,対照薬投与群を「P群」と表記した。【表34】(後記)【表35】(後記)【0132】上記の表が示すように,半年ごとの新規椎体骨折発生率は,P群では,いずれの区間も約5%でほぼ一定であった。それに対して,PTH200群では,投与期間が長くなるにつれて区間毎の発生率が低下しており,48週を超えてからの新規椎体骨折の発生はなかった。また,PTH200群の新規椎体骨折発生率は,24週以内,24週~48週,48週~72週のいずれの区間でもP群より低く,プラセボに対する相対リスク減少率(R elative Risk Reduction;RRR)は投与を継続するにつれて増加した。このように,本剤200単位の週1回投与は,新規椎体骨折の発生を早期から抑制し,24週後には既に骨折発生リスクをプラセボに対して53,9%低下させた。また ,本剤による骨折抑制効果は,投与とともに増強する傾向が認められた。【0133】その他,骨折試験のFASにおいて,Kaplan-Meier推定法による72週後の椎体骨折(新規+増悪)発生率は,PTH200群3.5%,P群が16.3%であり,本剤200単位の発生率はプラセボ群より低かった(logrank検定,p<0,0001)。また,本剤200単位は,72週後には,椎体骨折(新5 規+増悪)の発生リス クをプラセボに比べて78.6%低下させた。半年毎の椎体骨折(新規増悪)発生率を群 間で比較すると,24週以内,24週~48週,48週~72週のいずれの区間でも,PTH200群の発生率はP群より低かつた。【0134】(J)骨粗鬆症患者の尿中カルシウムおよび血清カルシウムに与える被験薬投与の影響被験薬投与群を「PTH200群」,対照薬投与群を「P群」と表記した。被験薬あるいは対照薬を週1回の頻度で72週間患者に投与した際の尿中カルシウム値および補正血清カルシウム値の変動について試験した結果を示す(図4~5)。尿中カルシウム値変化率の平均値(および中央値)は,開始時に比較72週後でPTH200群3.2%(-14.7%),P群23.6%(1.6%)で,P群に比べPTH 200群で減少傾向が見られた。補正血清カルシウム値は,両群共に平均9.3~9.6mg/dLの範囲で推移した。 PTH200群の投与後の補正血清カルシウムは最小値で8.5mg/dI(48および72週後) 最大値で11., 6mg/dl(4週後)であり,P群では,最小値で8.5 mg/dL(4週後),最大値で12.lmg/dI(12週後)であつた。両群共に,大きな変動は認められなかつた。本試験で血清カルシウム上昇および低下の有害事象は認められなかった。本試験でPTH200群はP群と比較して高Ca血症および高Ca尿症のいずれの発現も認められなかった。【産業上の利用可能性】【0135】本発明の骨粗鬆症治療/予防及び骨折抑制/予防方法は効能・効果及び安全性の両面で優れ,本発明の骨折抑制方法は安全性が高く,いずれも骨粗鬆症等治療や骨折抑制/予防のために大きく貢献する画期的な医療技術である。従って,当該目的のための本発明の骨粗鬆症治療/予防剤及び骨折抑制/予防剤は,医薬品産業において極めて有用である。

(別紙2)

甲7文献の記載事項(抜粋)(表及び図は末尾に一括して掲記した。)5 [296頁左欄1行ないし右欄7行目]要約ヒト副甲状腺ホルモンのアミノ末端ペプチド1-34(hPTH(1-34))の骨粗鬆症治療に対する効果を検討するために,71施設にて骨粗鬆症患者220名を対象として無作為に二重盲検下にて3群に割り付け,hPTH(1-34)の50単位(L群),100単位(M群)または200単位(H群)を,毎週皮下注射し,骨形成促進剤としての可能性について検討した。二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)で測定したところ,投与後48週目には,腰椎骨密度(BMD)はL,MおよびH群でそれぞれ,0.6%,3.6%および8.1%増加した。また,MとH群での薬物への応答はL群より有意に高かった(p<0.05,マン・ホイットニーのU検定)。腰椎測定の変動係数が1~2.5%に留まることから,3.6%および8.1%の増加は有意であると思われる。ラジオグラメトリによる中手骨のBMDと皮層の厚さの測定では,有意な変化はみられなかった。血清カルシウムはそれぞれの群で減少し,血清リンはMとH群で減少した。尿中カルシウム/クレアチニンが,H群では治療後12週目に,MとL群では治療後24と48週目に減少した。それぞれの群で,血清25(OH)ビタミンDと1,25(OH)2ビタミンDが治療48週目に減少した(p<0.05)。血清中の骨型アルカリホスファターゼが,HとM群で4週目に増加し,H群では48週目に減少した。尿中のヒドロキシプロリン,ピリジノリンおよびデオキシピリジノリンはそれぞれの群で有意に減少した。各群の30~40%で,背部痛の改善がみられた。試験期間中を通じて,重篤な副作用はみられなかった。hPTH(1-34)の間欠的毎週投与によって,骨粗鬆症で腰椎のBMDが増加し,骨粗鬆症治療に有用であることを示唆していた。[296頁右欄10行ないし297頁左欄25行目]序説閉経後および退行期の骨粗鬆症を治療するためには,主にエストロゲン,ビスホ5 スホネートおよびカルシトニンなどの骨吸収抑制剤に頼っている。ここに挙げた薬剤を投与することによって骨密度(BMD)が増加するため,骨折予防は飛躍的に進歩したことから,骨形成の刺激によって,幾つかの骨吸収抑制剤の迅速かつ時には一時的な効果が補完されることが考えられ,骨吸収抑制剤の骨同化効果が長期間にわたり,退行期骨粗鬆症,特に低回転型の疾患に対して注目すべき有効な治療となり得ることが期待できる。副甲状腺ホルモン(PTH)が骨形成促進作用を有することが動物とヒトで示されており,特に間欠的投与でその効果が認められている。しかし,原発性副甲状腺機能亢進症でみられるように,骨が大量のPTHに持続的に曝されることによって線維性骨炎を発症する懸念がある。ヒトPTHのアミノ末端ペプチド1-34(hPTH(1-34))の100または200単位を皮下注射で単回投与した予備試験の結果によると,血清リンの下降,血清サイクリックAMPの上昇,尿中のカルシウムとサイクリックAMP排泄の増加をはじめとする重要な代謝系に対する効果が示された。100または200単位を毎週投与すると,治療後26週目で腰椎BMDが有意に増加したが,5単位毎週投与では効果がなかった。この結果を踏まえて本試験では,骨粗鬆症患者220名を対象として,hPTH(1-34)の50,100または200単位を毎週投与した時の効果をみるために,無作為化,前向き,二重盲検,多施設試験を実施した。主要評価項目は,二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)を用いた腰椎BMDの評価とし,ラジオグラメトリによる中手骨皮質のBMD,および骨代謝回転の生化学的マーカーを副次評価項目とした。ここに挙げた濃度のhPTH(1-34)の1週1回投与が―これまでに検討されたことがない低濃度の間欠的投薬計画を意味するものだが―骨粗鬆症治療に便益性をもたらすかどうかを検討した。[297頁左欄27行ないし右欄42行目]試験対象5 71施設が参加した多施設試験を実施した。試験は,厚生省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された年齢範囲が45から95歳の被験者220名を対象として実施した。このシステムは,単に骨粗鬆症を非外傷性脊椎骨折が存在する,または脊椎骨折が2箇所に存在するものとして定義するのではなく,複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義するものである。スコアの計が4より高い場合(骨粗鬆症と定義)をこの治験への組み入れ基準とした。日本の大部分で,医療関係者が骨粗鬆症の診断に使用できる方法が未だに脊椎のX線撮影に限られていることから,X線撮影は骨粗鬆症の診断基準として実施せざるを得なかった。X線上の骨減少は,腰椎の側面X線写真で骨梁の菲薄化,つまり(1)横骨梁欠損による縦骨梁の明瞭化,(2)縦骨梁が粗となるおよび(3)縦骨梁の減少が認められた場合とした。X線上の骨減少は,BMDで若年成人の平均値から20%または2.5SDの減少に相当する。本試験では,たとえば,腰椎BMDの平均値がLunar社製DPXデンシトメーターで測定した時に0.736g/cm2,Hologic社製QDRデンシトメーターで測定した時に0.694g/c2m ,Norland社製XRデンシトメーターで測定した時に0.624g/c2m を示す者を試験対象に含めた。なお,この基準は現在用いられている他の基準と一致している。X線上の骨減少度がグレード1から3,またはBMDが若年成人の平均値から2.5SD未満の場合はスコア3とした。椎体骨折が1箇所の場合はスコア1,骨折が2箇所以上の場合はスコア2とした。大腿骨頸部骨折がある場合はスコア3とし,橈骨遠位端骨折がある場合はスコア1とした。骨量減少の原因となる骨軟化症,原発性副甲状腺機能亢進症および腎性骨異栄養症などを除外するために,骨粗鬆症の診断を支持する因子として,正常血清カルシウム,リンおよびアルカリホスファターゼ値がスコア1であることとした。ただし,ひとつ以上の異常がある場合にスコア1を差し引いた。同様に,被験者が閉経前である場合には,スコア1を差し引いた。血清クレアチニンが2mg/dlより高いかまたはBUNが30mg/dlより5 高い値を示し,腎機能の低下が示唆される被験者,過敏症の既往歴がある被験者または自覚症状の自己評価の信頼性が疑われる被験者は除外した。今後の試験参加予定者それぞれに,0.003単位のhPTH(1-34)の皮内試験を実施した。15分後に紅斑部が直径10mmを超える陽性結果を示した被験者は除外した。他の薬物の効果とhPTH(1-34)の効果との混同を避けるために,骨代謝および骨粗鬆症の進行に影響すると思われる薬剤は試験開始3ヵ月前から自粛し,試験期間中も投与をさし控えた。このような薬剤には,エストロゲン,カルシトニン,活性型ビタミンD,ビタミンK 2 ,イプリフラボン,ビスホスホネートおよび同化ステロイドがある。担当医師の判断によって必要な場合には,鎮痛薬および筋弛緩薬を投与した。理学療法および合併症に対する薬物は,患者の状態が許す限り,試験前も試験後も変えることなく引き続き投与した。試験開始に先立ち,hPTH(1-34)製剤の特質と起こりうる副作用を含む試験の重要性を参加予定者に詳細に説明し,口頭または書面にて被験者の同意を得た。本臨床試験は,それぞれの参加施設の施設内治験審査委員会から承認されたものである。[297頁右欄43行ないし298頁左欄24行目]hPTH(1-34)(テリパラチド酢酸塩)の調製と投与方法旭化成工業株式会社により合成されたhPTH(1-34)の純度と生物学的効果を,国際標準のウシPTH(1-84)に対するラット腎臓の皮質膜によるサイクリックAMPの生成を指標として評価したところ,3300単位/mgを得た。各バイアルは50,100および200単位のテリパラチド酢酸塩を含むものとした。なお,これは約15,30および60μgのペプチドに相当した。1回のバッチから3個のロットを調整し,50,100および200単位を含むバイアルを作成した。このようにして調整することで,1種類の濃度を含む5000本のバイア5 ルには,常にひとつのロットから由来するものを用いた。製剤は25℃で3年間安定であった。バイアルの内容物は,無作為に抽出したサンプルについて中立機関で測定され,コントローラ(清水直容医師と山本浩一医師)によって3バイアルが識別不能であることを確認された。使用直前に,バイアル内容物を生理食塩水1mlで溶解したものを,48週間にわたり1週1回皮下注射した。本試験のコントローラは,50,100および200単位のサンプルを102セット準備し,セット内で無作為に割付け(1,2および3と番号を割り付けた),それぞれのセットを参加施設に先着順に送付した。各セットは施設で開かれ,サンプル番号1,2および3を逐次患者に経時的に投与した。試験の二重盲検性を確実にするために,コードは試験終了まで鍵をかけて保管した。予備試験の結果によると,hPTH(1-34)を100または200単位,2

6週間,1週1回投与したところ腰椎BMDが増加していた。そこで,試験期間を48週間に設定した。この期間は,骨折の危険性と不安が常にある患者を対象として通常の骨測定,血液と尿の採取を行っても脱落率が過度とならずに,十分な制御下で多施設試験を実施できる限界であると思われた。Schwietertらは,ヒトに対するPTH(1-84)5μg/kg投与の安全性についても報告している。[298頁左欄25行ないし299頁左欄9行目]集積データ治療開始前のデータ。年齢,性別,閉経時の年齢,身長,体重,入院の有無または歩行状況,一般病歴,hPTH(1-34)の抗原性の皮内テストの結果,骨粗鬆症診断のためのスコア,既往歴,治験前の骨粗鬆症の治療および骨粗鬆症の合併症,試験期間中に投与された試験薬剤以外の薬物,非処方カルシウム製剤および乳製品について記録した。5 自覚症状。骨粗鬆症による痛みを休息時の自発性疼痛と運動時の痛みに分類して,治療後0,2,4,12,24および48週間目または試験終了時に以下に示すグレードに従って評価した。休息時の痛みは,以下のとおりのグレードで表示した。1:痛みなし,2:中等度の痛み,3:無視できないが耐えられる痛み,4:重度の耐え難い痛み。運動時の痛みは以下のとおりのグレードで表示した。1:痛みなし,2:中等度の痛み,3:運動を妨げる無視できない痛み,4:動けないほどの重度の痛み。患者は,自身の痛みの度合いをアナログ尺度で自己評価した。骨所見。(a)腰椎BMDの測定。治療後0,12,24および48週目または試験終了時に,骨塩量,腰椎(L2-4)の骨面積およびBMDをDXA(QDR(Hologic社),DPX(Lunar社)またはXR(Norland社))を用いて前後方向を撮影することによって測定した。多数の参加施設で,適切な精度管理を維持するのが困難であった。各施設では,装置に付随の推奨に従って,BMD測定を日常的に毎日ファントムを用いて実施した。その結果,変動係数(CV)を1%から2.5%の範囲で維持できた。患者の年齢が高いことから,脊椎BMDの前後方向の測定上,圧迫骨折とそれに伴う変化に加えて,脊椎の退行性変化が重大な支障となった。この理由から,L2,L3またはL4の骨棘や圧迫変形などの脊椎の退行性変化を有する被験者全員を,薬物の効果の根拠となるデータから除外した。このため,脊椎BMD測定における組み入れ前の脱落率が高くなった。(b)中手骨BMDの測定。非利き手側の第2中手骨のラジオグラメトリを実施するために,前後方向の手のX線写真をファントムと一緒に,治療0,12,24および48週後または試験終了時に撮影した。試験終了時に,71施設で撮影されたすべてのフィルムをコンピューター化されたデジタル画像処理を用いて,東洋検査センターにて測定した。ひとりの観察者が中手骨BMD(∑GS/D)を同一フィルムを用いて10回連続で測定した場合のデジタル画像処理法の精度は,CVが0.5 59であり,同一処理を3人の観察者で実施した場合は1.47であった。同一被験者の手のフィルムを4枚撮影した場合,測定は個々に実施され,CVは1.72であった。(c)椎体骨折の評価。腰椎および胸部脊椎の側面X線写真は,それぞれL3とT8に焦点を合わせ,ひとりの放射線科医が椎体の圧迫骨折や変形を評価した。前縁高/後縁高の比率が25%以上減少および中央高/後縁高の比率が20%以上減少した場合を,有意な変形と定義した。生化学的パラメーター。治療開始前および治療後2,4,12,24および48週目または試験終了時に,血清中のカルシウム(Ca),リン(P),25(OH)ビタミンD(競合タンパク結合分析による測定),1.25(OH)2ビタミンD(ラジオリセプターアッセイによる測定),オステオカルシン,中間部PTH(ラジオイムノアッセイによる測定),総アルカリホスファターゼと骨型アルカリホスファターゼ,アルブミンおよび尿中のCa,P,ヒドロキシプロリン,ピリジノリン,デオキシピリジノリン(HPLCによる測定)とクレアチニンを日本最大の臨床検査会社SRLにて測定した。各施設で治療後0,12,24,36および48週目または試験終了時に,血球算定(RBC,WBCと血球分画,ヘマトクリット,ヘモグロビンおよび血小板),血清生化学的試験(GOT,GPT,A/G,BUN,クレアチニン,総コレステロール,CPK,Na,K,Clおよびグルコース)および尿検査(潜血,タンパク質,糖,ウロビリノーゲン,ビリルビンおよびpH)を実施した。副作用と有害事象の調査。試験期間中の有害事象を記録し,詳細を検査した。総合的な経過の評価,重症度,治療および転帰に基づいて,有害事象を以下に示すグレードに分類した。(1)試験薬剤が原因のもの,(2)試験薬剤が原因と考えられるもの,(3)試験薬剤が原因とは考えにくいもの,(4)試験薬剤が原因ではないも5 の。副作用は暫定的に(1)から(3)を含むものとした。統計解析患者群の背景は,カイ二乗検定にて,両側検定の危険率10%で評価した。測定値はマン・ホイットニーのU検定およびフィッシャーの直接確率法にて,両側検定の危険率5%で検定した。[299頁10行ないし300頁左欄3行目]結果表1は,試験への参加が許可された被験者における治験組み入れ基準の詳細をまとめたものである。試験に当初登録した被験者220名を無作為に二重盲検下で割り付け[50単位投与群(L)に73名,100単位投与群(M)に75名および200単位投与群(H)に72名],そのうち41名は骨粗鬆症の診断基準に適合せず,また試験前に投与されていた薬の休薬期間が不十分であったため不適格とした。正確なBMD測定を阻害する腰椎の退行性変化と圧迫変化を有する患者および指定時間以外に測定した患者を除外したところ,不適格者にはさらに64名が含まれた。このため,腰椎BMDに及ぼす効果の分析は被験者115名で実施した。内訳はL群で39名,M群で38名およびH群で38名であった(表2)。被験者61名が,副作用,中途での心変わりにより試験を拒絶,合併症の悪化などの理由で試験を完了できなかったが,最初の3ヵ月以内に脱落しない限り,分析グループに含むものとした。被験者の治療開始時の特徴を各グループで比較したものを表3に示した。3群とも被験者が一様に分布していることを確認した。[300頁左欄4ないし10行目]5 自覚症状主として背部痛からなる自覚症状は,L群で被験者52名中21名(40%),M群で被験者60名中18名(30%)およびH群で被験者47名中17名(36%)に,中等度またはやや改善がみられた。群間に有意な差は認められなかった(表4)。[300頁左欄11行ないし右欄6行目]骨測定試験期間48週間中の腰椎BMDにおける変化を図1に示した。腰椎BMDは,試験開始時と比較して,治療後24と48週目に用量依存的に増加し,L,MおよびH群でそれぞれ0.6%,3.6%および8.1%であった。24週目と48週目でMとH群で増加の程度がL群より大きく,48週目ではM群よりH群の方が大きかった(p<0.05)。年齢が64歳以下と65歳以上,体重が49kg以下と50kg以上,閉経後10年未満,10から20年,20年以上,および脊椎骨折が0,1および2箇所以上を有するサブグループに被験者を分類して比較したところ,サブグループ間で薬物に対する応答は同程度であった。第2中手骨(皮質骨からなる)のX線写真上の骨密度には有意な差は何ら認められず,皮質骨と各群のX線写真上の骨量減少度が変化せずに一定に保たれていることを示していた。L群で被験者3名,M群で5名およびH群で0名に椎体骨折が発生したが,各群間の差は有意ではなかった。[301頁左欄1行ないし右欄4行目]生化学的パラメーター図2に示すように,血清Caは治療後2週目から減少し始め,4週目以降は治療開始前の基準値より有意に低かった。血清Pも治療後2週目に減少した。尿中Caは2週目から減少し,試験期間中を通じて基準値より低いままであった。尿中Pも減少した。血清25(OH)ビタミンDと1.25(OH)2 ビタミンD値は,図35 に示すように,各群で48週目に治療開始時よりやや減少した。図4に示すように,骨型アルカリホスファターゼは,治療開始後4週目で治療開始時の値より高く,24週目と48週目ではH群のみ低かった。尿中へのピリジノリン,デオキシピリジノリンおよびヒドロキシプロリン排泄は,図5に示すようにL群とH群で24週目と48週目に治療開始時の値より減少した。表5に示すように,各群で試験期間中,異常な試験結果が出現したが,いずれも明白ではないか一過性のものであり,試験薬剤が原因であるとは明示できなかった。表6は治療中に発生した副作用をまとめたものである。29例で,被験者が幾つかの症状のため試験から脱落した。副作用の総数はhPTH(1-34)の用量が増加するのに合致して増加したものの,重篤な有害事象は認められなかった。[301頁右欄5行ないし303頁右欄23行目]考察原発性副甲状腺機能亢進症では過剰量のPTHが持続的に分泌され,著明な骨,特に皮質骨の欠損を特徴とするものの,組織形態計測の結果によると海綿骨は比較的,良く保存されている。PTHはおそらく骨芽細胞活性と骨形成も刺激し,骨に対して同化作用を及ぼすものと思われる。動物試験で,PTHの同化作用が頻繁に確認されており,骨質の物理的な改善をすることが報告されている。このような同化作用は,N末端からアミノ酸をひとつ除去するだけで効果がほとんど消失することから,PTHのN末端部アミノ酸の全長に依存していると思われる。海綿骨が増加することについては,一貫して報告されているが,皮質骨の応答は不良である。間欠投与は,PTHの骨同化作用を生成に対してより効果的であると思われる。これまで,骨粗鬆症の治療には,主にエストロゲン,カルシトニンとビスホスホネートのような骨吸収抑制剤が投与されており,骨吸収を刺激する骨形成促進剤は低回転型骨粗鬆症に有効であると思われている。BMDの増加を予想をは5 るかに上回る程度に誘導する活性があるにも拘わらず,フッ化物に問題がない訳ではない。つまり,骨折発生率を減少させることができずに骨痛などの副作用を惹き起こす。しかし,PTHは依然として骨形成促進剤の候補として有望視されている。PTHを大量に投与すると,ヒトでもBMDの増加がみられたが,ヒトで好ましい効果を奏する間歇投与法は未解決の課題である。Reeveらが,骨粗鬆症患者12名を対象として多施設試験を実施したところ,hPTH(1-34)を7日間投与し21日間休薬するというサイクルを16回繰り返す間欠投与によって,全身のCaがやや増加したがさまざまな部位のBMDでは有意な増加はみられなかったと報告している。連日投与は,持続点滴に比べると間欠的であり,好ましい影響がみられた。Reeveらによると,hPTH(1-34)約250単位を患者21名に6から24ヵ月間,連日投与したところ,重篤な副作用もみられず,血清アルカリホスファターゼが15%増加し,著明な骨増加がみられた。Lindsayらは,ホルモン補充療法を受けている閉経後の女性17名を対象として,hPTH(1-34)25μgを連日皮下注射投与する3年の無作為化対照試験を実施し,その結果をコントロールとしてホルモン補充療法単独を投与した女性17名と比較した。脊椎のBMDはPTH投与群で13.0%増加したが,コントロール群では有意な増加はみられなかった。PTHは他の試験では,エストロゲンと共に投与して効果があった。ビタミンD誘導体と併用してPTHの効果を増強することも検討されている。実際に,400-500単位のhPTH(1-34)を0.25μgの1,25(OH)2 ビタミンD3 と一緒に投与すると,海綿骨で増加がみられた。カルシトニンとの併用投与も実施されている。Heschらは,hPTH(1-37)720-750単位を8週間連日投与し,同時にカルシトニンを2〜4,6〜8および8〜10日目に鼻腔内投与し,このサイクルを4回繰り返した。Hodsmanらは,800単位のPTHを連日,2ヵ月の間隔を置いて1ヵ月間投与するサイクルを繰り返し,この投薬サイクルを2年間続けたところ,腰椎BMDが8〜10%増加した5 ことを認めている。hPTH(1-34)の単位体重当たりの生物学的活性は試験間でばらつきがあるようである。Lindsayらの試験では,たとえば,hPTH(1-34)400単位(25μg)が使用されている。試験に用いられている調製法が異なっているため,hPTH(1-34)の投与量について本試験の結果を他の試験のものと比較することは容易ではないが,これまでの試験の多くに比べると,本試験で用いられた週1回の間欠投与の方が,hPTH(1-34)の総投与量を明らかに少なく抑えられる。hPTH(1-34)が中手骨(ほとんどが皮質骨からなる)の骨密度を減少させることなく,腰椎BMD(主に海綿骨からなる)を,48週という比較的短期間で有意に用量依存性に増加させたことから,hPTH(1-34)による骨粗鬆症治療はきわめて将来有望であると思われる。表 1 本試験の参加者における組み入れ基準の詳細組み入れ基準 L群(50単位) M群(100単位) H群(200単位)骨密度減少骨萎縮グレード1 31 26 18グレード2 19 29 26グレード3 21 19 27不明 2 1 1DXADPX ≥0.831 5 7 3<0.831 17 14 18QDR ≥0.711 25 17 11<0.711 15 23 27不明 1 0 0XR ≥0.701 2 4 1<0.701 7 10 12不明 1 0 0椎体骨折数0 32 30 291 14 18 15≥2 27 26 28不明 0 1 0大腿骨骨折数0 65 72 69≥1 8 3 3橈骨遠位端骨折数0 72 71 69≥1 1 4 3総スコア=<2 0 2 03 2 2 14 14 13 13≥5 57 58 58表 2 本試験における各評価項目別の症例数群 総症例数 脱落 症状評価 腰椎BMD評価 中手骨BMD評価(副作用による)L (50単位) 73 12 (3) 62 39 60M (100単位) 75 25 (10) 65 38 58H (200単位) 72 24 (16) 56 38 50合計 220 61 (29) 183 115 168表 3 各群の治療開始時の背景比較L 群(50 単位) M 群(100 単位) H 群(200 単位) χ2 検定年齢(歳) 70.2±9.84 (73) 70.1±9.64 (75) 71.7±10.78 (72) NS体重(kg) 47.7±7.49 (73) 49.2±7.54 (75) 45.8±8.21 (72) NS身長(cm) 148.2±8.01 (73) 148.9±7.77 (75) 147.3±6.97 (72) NS閉経後年数 19.0±8.52 (73) 18.8±8.35 (75) 20.6±9.43 (72) NS椎体骨折数 1.86±2.65 (62) 1.62±1.89 (61) 1.82±2.65 (55) NS腰椎BMD (g/cm )DPX 0.746±0.123 (13) 0.753±0.089 (10) 0.711±0.159 (11) NSQDR 0.719±0.103 (19) 0.723±0.140 (17) 0.640±0.132 (19) NSXR 0.637±0.115 (7) 0.680±0.130 (11) 0.556±0.064 (8) NS中手骨 BMD (∑GS/D)1.875±0.350 (60) 1.917±0.404 (58) 1.850±0.446 (50) NSデータは平均値±標準偏差、カッコ内は症例数表 4 自覚症状群 症例数 中等度 軽度 不変 悪化 U-検定 Fisher の以上改善 改善 検定中等度以上L (50単位) 52 21 (40) 16 (31) 14 (27) 1 (2)M (100単位) 60 18 (30) 28 (47) 14 (23) 0 (0) NS NSH (200 単位) 47 17 (36) 21 (45) 9 (19) 0 (0)カッコ内の数値はパーセント図 1 治療週数と腰椎 BMD の変化率(平均±標準偏差)。□は L 群(50 単位)、●は M 群(100 単位)、○は H 群(200 単位)のデータ。aL 群の値との比較で p<0.05 の有意差、bM 群の値との比較で p<0.05 の有意差、マンホイットニーの U 検定による*治療開始時との比較で p<0.05 の有意差の有意な増加、マンホイットニーの U 検定による図 2 治療週数と血清カルシウム(左)とリン(右)(平均±標準偏差)。□は PTH50 単位(L 群)、●は PTH100 単位(M 群)、○は PTH200 単位(H 群)のデータ。*治療開始時との比較で p<0.05 の有意差、マンホイットニーの U 検定による図 3 治療週数と血中 25(OH)ビタミン D(左)と 1,25(OH)2 ビタミン D(右) (平均±標準偏差)。シンボルの表記は図 2 と同様。図 4 治療週数と血中骨型アルカリフォスファターゼ(平均±標準偏差)。シンボルの表記は図 2 と同様。表 5 被験者における治療期間中の臨床検査値異常L群(50単位) M群(100単位) H群(200単位)総症例数 73 75 72臨床検査異常例数(%) 8 4 12(11%) (5%) (17%)異常データ数 16 7 22赤血球数の低下 1 1分節核球上昇 1 1リンパ球減少 1 2好酸球減少 1好塩基球減少 1ヘマトクリット低下 2 1ヘモグロビン低下 2 1血小板数減少 1GOT上昇 1 1GPT上昇 1A/G低下 1BUN上昇 2総コレステロール上昇 2 1 2CPK上昇 1 2 2Naの下降 2Kの上昇 2Kの下降 1Clの上昇 1Clの下降 1血糖上昇 1尿潜血 1 2尿蛋白 1尿ビリルビン 1図 5 治療週数とクレアチニン補正後の尿中ピリジノリン(a)、デオキシピリジノリン(b)、ヒドロキシプロリン(c)血中骨型アルカリフォスファターゼ(平均±標準偏差)。シンボルの表記は図 2 と同様。表 6 被験者における治療期間中の副作用L群(50単位) M群(100単位) H群(200単位)総症例数 73 75 72a b b副作用発現例数 (%) 14 (3 ) 14 (10 ) 30 (16b)(19%) (19%) (42%)重症度と件数 軽度 中等度 計 軽度 中等度 計 軽度 中等度 計8 6 14 13 10 23 19 18 37皮下出血 1 1全身潮紅 1 1顔面潮紅 1 1湿疹 1 1そう痒 1 1腰痛 1 1 1 1頭痛 1 1 2 3 3 2 2 4めまい 1 1 1 1 2 1 1悪心 3 1 4 5 2 7 9 6 15嘔吐 1 1 2 2 4腹痛 1 1 1 1おくび 1 1あくび 1 1口渇 1 1食欲不振 1 1熱感 1 1 1 1 2 1 1発熱 1 1 3 3脱力感 1 1 1 1全身倦怠感 1 1 1 1 1 2 3悪寒 1 1眠気 1 1a臨床検査値異常を含むb副作用による脱落症例数

(別紙3-1)

甲80文献の記載事項(抜粋)5 [1591頁上段1ないし16行目]要旨:骨吸収抑制剤(AR)の前治療は,テリパラチドヘの反応に影響を及ぼす可能性がある。我々は,24ヶ月間,テリパラチド投与を受けた骨粗鬆症の閉経後女性503名のサブグループにおいて,BMDの反応と安全性を調査した。患者はARの前治療に基づいて,3群に分類された:治療経験なし(n=84);前治療があり,治療反応が不十分であったエビデンスなし(n=134);前治療があり,AR投与に対して不十分な反応を示した(n=285),不十分な反応については,治療中に,骨折,持続的に低いBMD,及び/または,明らかかBMDの喪失の発生により,あらかじめ定義された。ベースラインからのBMDの変化は混合モデルの反復測定を用いて解析した。腰椎BMDは3群すべてで,ベースラインから6,12,18,24ヶ月目に,有意に増加した。24ヶ月にわたる脊椎BMDの平均の増加2は,治療経験なし群(0.095g/cm ;13.1%)において,AR前治療あり2群(0.074g/cm ;10.2%;p<0.005)と不十分なAR反応患者(0.2071g/cm ;9.8%;p<0.001)よりも,大きかった。股関節BMDは,同様の増加であり,それぞれ,3.8%,2.3%及び2.3%であった。不十分なAR反応患者における股関節BMDの早期の低下は,投与18ヶ月後までには逆転した。18ヶ月目と24ヶ月目の間におけるBMDの増加は,大きく有意なものであった。・・・24ヶ月のテリパラチド治療は,ARの使用歴がある患者およびない患者において,BMDの有意な増加に関与する。AR全治療はテリパラチドに対するBMDの反応をわずかに鈍くした。安全性は,現在処方されている添付文書と一致するものであった。[1591頁左欄1行ないし1592頁左欄8行目]序論遺伝子組み換えヒトPTH[1-34](テリパラチド)の連日の皮下注射による治療は,骨代謝速度,小柱骨の結合性,皮質骨厚を増加することにより新しい骨形5 成を導く。テリパラチドは骨の生体力学的特徴を改善し,骨粗鬆症の閉経後女性における椎体及び非椎体脆弱性骨折の割合を減少させる。テリパラチドは通常,骨折のリスクの高い重症骨粗鬆症の閉経後女性と男性の治療として用いられる。骨粗鬆症治療に使った他の薬剤,特にビスホスホネートに反応しなかったか,忍容性のなかった患者の代替治療でもある。故に,テリパラチドを投与されている多くの患者が,以前に骨吸収抑制剤(AR)を投与されたことがある。重要な医学的疑問は,ARの前治療がテリパラチドに対する骨形成反応を変化させるかどうかである。卵巣切除ラットでは,アレンドロン酸,エストロゲン,又はラロキシフェンに前もって長期間暴露されているにも関わらず,テリパラチドは新たに骨形成を導いた。しかしながら,いくつかの臨床試験で,AR,特にビスホスホネートによる前治療が,テリパラチドの骨形成効果に影響する可能性があることを示唆している。Ettingerらは,平均28ヶ月間のアレンドロン酸による連日の前治療が,腰椎のテリパラチドに対するBMDの早期の反応遅延と,股関節のBMDにおける早期の一時的減少を伴った事を報告した。しかしながら,エストロゲンまたはラロキシフェンによる前治療あるいは併用は,テリパラチドが導く脊椎または股関節BMDの増加を減少させなかった。[1592頁左欄31ないし52行目]試験デザインEUROFORSは,骨粗鬆症と確定診断された閉経後女性868名の,2年間の前向きコントロール無作為化非盲検臨床試験であった。試験は,2つのサブスタディ(1と2)と,2つの治療フェーズからなり,欧州の10カ国の95施設で行われた。患者の組み入れ適格性を判断する1ヶ月のスクリーニング期間後,両方のサブスタディの全患者は,治療1年目の間,テリパラチド(20μg/日)を1日1回の5 自己注射で皮下投与された。12ヶ月目,サブスタディ1の患者は,テリパラチド群(20μg/日),ラロキシフェン群(60mg/日),あるいは積極的なAR治療なしの群にランダムに割り付けられた(3:1:1)。サブスタディ2は,もっぱら不十分なAR反応の患者(以下に定義する)のみを含み,試験を通してランダムに割り付けられることなく,非盲検でテリパラチドを継続するオプションが与えられた。すべての患者は,試験を通して,カルシウム(500mg/日)とビタミンD(400―800IU/日)を補充投与された。これらの解析は,24ヶ月間連日テリパラチド注射を受けた患者からのデータを用いて行われた(すなわち,サブスタディ1でテリパラチド群にランダムに割付けされた患者と,サブスタディ2の全患者は合わせられた。 。)[1592頁右欄1ないし53行目)患者・・・いずれのAR(ビスホスホネート,ラロキシフェン,エストロゲンとエストロゲン/プロゲスチン療法,カルシトニン,ビタミンD類似体)の前使用は,単剤も併用も,制限やウォッシュアウト期間なしで許可されたが,これらの薬剤はベースライン時点では中止しなければならなかった。各患者の医学的既往と薬剤使用の詳細は,投与量,前のARの開始日と中止日,BMD評価歴の結果,正確な骨折歴を含めて,記録された。患者は,試験組み入れ前のAR治療に基づき,3群に振り分けられた:(1)治療経験がない(すなわち,試験組み入れ前に何の骨粗鬆症治療も受けたことがない)(2)骨吸収抑制剤による前治療がある(AR前治療あり)(3)臨床的に不十分な結果となったAR前治療がある(不十分なAR反応患者) 次の基準の内1つ以上に。当てはまる女性は,不十分なAR反応患者として分類された:(1)先に少なくとも12ヶ月間のAR治療の処方があったにもかかわらず,1つ以上の新規椎体または非椎体の脆弱性骨折が生じた;(2)少なくとも24ヶ月間のARの前治療歴の後,5 腰椎,股関節または大腿骨頚部BMDのTスコアが-3.0以下であった;および/または(3)前述の24ヶ月間に,AR治療薬の継続的な処方歴があったにもかかわらず,測定した骨部位のいずれか一つのBMDにおいて,2年間で3.5%を超える減少があった。以前AR治療を受けており,これらの基準のいずれにも当てはまらない,他の全女性は,2つめの群(AR治療歴あり)に割り付けられた。[1595頁左欄9ないし58行目]ベースラインからのBMD変化腰椎BMDはテリパラチド投与患者の各サブグループにおいて,すべてのフォローアップ時点で,AR前治療に関わらず,ベースラインから有意に増加した,(図2A) テリパラチド投与患者のすべての群において,。 ベースラインから24ヶ月後までの腰椎の%変化は,平均10.5%であった。ベースラインからの腰椎BMDの絶2対的変化量(平均±SE)は,AR前治療あり(0.074±0.004g/cm ;10.2%;p=0.003)と,不十分なAR反応患者(0.071±0.003g2/cm ;9.8%;p<0.001)のサブグループよりも,治療経験なしのサブ2グループ(0.095±0.006g/cm ;13.1%)で,有意に大きかった(図2A,表3)。24ヶ月時点で,股関節BMDは,患者の3つのサブグループにおいて,ベースラインから有意に増加した(図2B);平均±SEの変化は,治療経験なしサブグループにおいて,不十分なAR反応患者サブグループと比較して,有意に大きかった2(0.026±0.004対0.016±0.002g/cm ;p<0.05)。股関節BMDのベースラインから24ヶ月後の変化率は,テリパラチドを投与されたすべての患者で2.6%であり,治療経験なし,AR前治療あり,不十分なAR反応患者のサブグループにおいては,それぞれ,3.8%,2.3%及び2.3%であった(図2B) 不十分なAR反応患者のサブグループにおいて,。 テリパラチド治療の最初の6ヶ月間に,股関節BMDは有意に減少したが,この減少は18ヶ月後までに逆転5 した。 ・・ ・同様に,不十分なAR反応患者のサブグループにおいて,治療6ヶ月後,大腿骨頚部BMDは減少した(表3)。大腿骨頚部BMDの,治療経験なしと不十分なAR反応患者のサブグループの差は,12ヶ月後なお有意であった・・・。しかしながら,24ヶ月後,大腿骨頚部BMDは患者のすべての3つのサブグループにおいて,ベースラインから有意に増加し(図2C),変化の平均はこれら3つの前治療に関するサブグループを通じて,有意差がなかった。大腿骨頚部BMDのベースラインから24ヶ月後の変化率は平均で,テリパラチドを投与されたすべての患者で3.9%であり,治療経験なし,AR前治療あり,不十分なAR反応患者のサブグループにおいては,それぞれ4.8%,3.4%及び3.9%であった(図2C)。脊椎,股関節,大腿骨頚部のBMD値の比較は,全グループの患者において,連日テリパラチド投与を受けた18ヶ月目と24ヶ月目で統計学的に有意な増加を示した(表3)。2つのAR前治療グループでは,股関節と大腿骨頚部のBMDにおける24ヶ月の増加が,治療18ヶ月後に見られたものと比べて,おおよそ2倍であった(表3)。[1597頁左欄10行ないし右欄7行目]考察本試験の結果は,骨粗鬆症で最近脆弱性骨折のあった閉経後女性において,24ヶ月のテリパラチドの治療が,AR治療の有無にかかわらず,BMDの有意な増加を伴うことを示した。BMDの増加は,過去に治療を経験していない患者で,最も大きかった。不十分なAR反応患者群における,股関節と大腿骨頚部のBMDの一時的な減少は,連日のテリパラチド治療18ヶ月後と24ヶ月後に逆転し,最後の6ヶ月間に最もBMDが増加した。[1598頁右欄45ないし56行目]結論として,24ヶ月間のテリパラチド治療は,ARの前治療がある患者とない5 患者において,腰椎,股関節,大腿骨頚部のBMDにおける有意な増加を伴う。AR前治療は,テリパラチドに対するBMDの反応をわずかに鈍くした。24ヶ月間の連日のテリパラチド治療は18ヶ月間の治療と比較して,BMDを有意に大きく増加させる結果となり,18ヶ月間の治療である既報の試験と一致する患者の完全性プロファイルであった。さらなる研究により,AR前治療の後に観察されたBMDの変化が,テリパラチドの骨折抑制効果に影響するかどうか明らかにするべきである。[1594頁表2][1595頁図2]3つの前治療サブグループと,全集団における,ベースラインからの調整した平均BMDの変化。(A)腰椎,(B)股関節,(C)大腿骨頸部における,ベースラインから治療の6,12,18および24ヶ月後のBMD(g/cm 2)の絶対変化量。縦棒の頂点の数字は,ベースラインからの変化率を示す。エラーバーはSEを示す。AR前治療群と不十分なAR応答患者の間では,いずれの部位,いずれの時点においても統計学的に有意な差はなかった。

(別紙3-2)

甲82文献の記載事項(抜粋)5 [857頁右欄10ないし15行目]24ヶ月間治療された84人の未治療患者では,腰椎,全腿骨頸近位部,大腿骨頸部でBMDの増加はそれぞれ13.5,3.9,4.6%であった。全体として,この群では,以前に骨吸収抑制剤で治療された患者よりもBMDの増加が高く,エチドロネートで前治療された患者と同様でした。[859頁左欄9ないし19行目]結論として,テリパラチドは,骨吸収抑制剤の治療後,そのタイプや治療期間に関わらず,骨形成マーカーとBMDの増加に効果的であったが,BMD増加は,アレンドロン酸,リセドロン酸による治療歴のある患者群においては,治療経験のない群よりも効力が少なかった。・・・これらの知見は,長時間のアレンドロン酸,リセドロン酸による治療歴を含めて,従前の骨吸収抑制剤使用後の重度骨粗鬆症の女性患者に,効果的な治療オプションとしてのテリパラチドの使用を支持するものである。[855頁表1][脚注a]主治療:ラロキシフェン22例,ET/EPT20例,カルシトニン6例,ビタミンD代謝物1例[856頁図2A]

(別紙4)

(別紙5)

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