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令和2(行ケ)10103行政訴訟 特許権

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裁判所 審決取消 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和3年10月6日
事件種別 民事
当事者 原告ターンオン有限会社
被告株式会社ルイファン・ジャパン
対象物 多色ペンライト
法令 特許権
特許法29条2項11回
キーワード 審決177回
無効70回
実施19回
進歩性3回
無効審判3回
特許権1回
主文 1 特許庁が無効2019-800025号事件について令和2年7月
28日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 原告は,名称を「多色ペンライト」とする発明に係る特許(特許第560 8827号。平成26年1月27日出願,同年9月5日設定登録。請求項の 数2。以下「本件特許」という。)の特許権者である(甲25)。 ⑵ 被告は,平成31年3月19日,特許庁に本件特許について無効審判請求 をし,特許庁は無効2019-800025号事件として審理した(以下「本 件無効審判」という。)。 原告は,令和2年3月23日付け訂正請求書に基づき,請求項1及び2に ついて訂正請求をした。

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判決文

令和3年10月6日判決言渡
令和2年(行ケ)第10103号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和3年7月26日
判 決
原 告 タ ー ン オ ン 有 限 会 社
同訴訟代理人弁護士 川 崎 清 隆
同 高 畑 豪 太 郎
同 田 中 瑞 紀
同訴訟代理人弁理士 飯 田 伸 行
同 飯 田 和 彦
被 告 株式会社ルイファン・ジャパン
同訴訟代理人弁護士 溝 田 宗 司
同 二 木 一 平
同 知 念 竜 之 介
同訴訟復代理人弁理士 鬼 頭 優 希
主 文
1 特許庁が無効2019-800025号事件について令和2年7月
28日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等
⑴ 原告は,名称を「多色ペンライト」とする発明に係る特許(特許第560
8827号。平成26年1月27日出願,同年9月5日設定登録。請求項の
数2。以下「本件特許」という。)の特許権者である(甲25)。
⑵ 被告は,平成31年3月19日,特許庁に本件特許について無効審判請求
をし,特許庁は無効2019-800025号事件として審理した(以下「本
件無効審判」という。。

原告は,令和2年3月23日付け訂正請求書に基づき,請求項1及び2に
ついて訂正請求をした。
特許庁は,令和2年7月28日,結論を「特許第5608827号の特許
請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり,訂正後の請
求項〔1,2〕について訂正することを認める。特許第5608827号の
請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は,被請
求人の負担とする。」とする審決(以下「本件審決」という。本件審決は別紙
審決(写し)のとおりである。)をし,その謄本は,同年8月6日,原告に送
達された(本件審決により認められた訂正を,以下「本件訂正」という。。

⑶ 原告は,令和2年9月4日,本件審決の取消しを求めて本訴を提起した。
2 特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1,2の記載は次のとおりである(以
下,本件訂正後の請求項1記載の発明を「本件発明1」といい,本件訂正後の
請求項2記載の発明を「本件発明2」といい,本件発明1と本件発明2を併せ
て「本件発明」という。)。
⑴ 請求項1
発光色を照らすカバーで覆われた発光部と,把持部とを有し,
前記把持部は,
赤色発光ダイオード,緑色発光ダイオード,青色発光ダイオード,黄色発
光ダイオード及び白色発光ダイオードを備える光源部と,
前記光源部の各発光ダイオードの発光を個別に制御する制御手段を有し,
前記制御手段により前記各発光ダイオードを単独で又は複数発光させるこ
とで特定の発光色が得られるように構成し,
前記特定の発光色は複数得られ,
前記複数得られる特定の発光色には,少なくとも,前記白色発光ダイオー
ドから単独で発せられる光により得られる発光色,前記白色発光ダイオード
から発せられる光とそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオードから発せられ
る光とを混合して得られる発光色,前記黄色発光ダイオードから単独で発せ
られる光により得られる発光色,及び,前記黄色発光ダイオードから発せら
れる光とそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオードから発せられる光とを混
合して得られる発光色,の全ての発光色が含まれ,
前記白色発光ダイオードから得られる発光色は,前記白色発光ダイオード
が単独で発光することにより得られる白色の発光色,及び,前記白色発光ダ
イオードとそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオードから発せられる光が混
合することにより得られる発光色であり,
前記黄色発光ダイオードから得られる発光色は,前記黄色発光ダイオード
が単独で発光することにより得られる黄色の発光色,及び,前記黄色発光ダ
イオードとそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオードから発せられる光が混
合することにより得られる発光色であり,
前記各発光ダイオードから発せられる光を集光,混色し,これにより得ら
れた発光色で前記カバーの側面及び上部の全体を照らすための発光色補助手
段が前記光源部の近くに該光源部を覆うように設けられ,
乾電池又はボタン電池を電源とすることを特徴とする多色ペンライト。
⑵ 請求項2
前記光源部が前記発光ダイオード以外の色の発光ダイオードを更に備える
請求項1に記載の多色ペンライト。
3 本件審決の要旨
⑴ 無効理由
本件無効審判において,被告は,次のような無効理由を主張した(本件審
決第4,1⑴~⑷〔本件審決7~8頁〕)。
ア 無効理由1
本件発明1は,甲1に記載された発明及び甲2ないし20に記載された
技術事項に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたも
のであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができな
いものであり,その特許は同法123条1項2号に該当し,無効とすべき
である。
イ 無効理由2
本件発明1は,甲1に記載された発明に基づいて,あるいは,甲1に記
載された発明及び甲21,22に記載された技術事項に基づいて,出願前
に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条
2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同
法123条1項2号に該当し,無効とすべきである。
ウ 無効理由3
本件発明2は,甲1に記載された発明及び甲2ないし20に記載される
技術に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたもので
あるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないも
のであり,その特許は同法123条1項2号に該当し,無効とすべきであ
る。
エ 無効理由4
本件発明2は,甲1に記載された発明に基づいて,あるいは,甲1に記
載された発明及び甲21,22に記載された技術事項に基づいて,出願前
に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条
2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同
法123条1項2号に該当し,無効とすべきである。
⑵ 引用発明の認定と本件発明との対比
ア 甲1発明
本件審決が認定した甲1記載の発明(以下「甲1発明」という。)は,
次のとおりである(本件審決第6,1⑴ウ〔本件審決25~26頁〕)。
発色を行う筒と持ち手を有し,筒を持ち手に装着するものであって,
持ち手は,
R(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の三原色に加えてWhit
e(白色)が搭載されている4つのLEDを備える光源と,
長押しすることにより,ライトON及びライトOFFすること,及び,
押すたびに発色がレッドからエンジレッド,ブルー,ライトブルー,アク
アブルー,イエロー,ライトイエロー,オレンジ,グリーン,ライトグリ
ーン,エメラルドグリーン,ピンク,ピーチ,サクラピンク,バイオレッ
ト,ラベンダーパープル,ホワイト(白色)の順に変わりその次にレッド
に戻ること,ができる持ち手の側面に配置されたプッシュスイッチを有し,
白色はR(レッド),G(グリーン),B(ブルー),White(白色)全
色点灯であり,他にWhite(白色)のLEDが点灯するのはライトブ
ルー,アクアブルー,ライトイエロー,ライトグリーン,エメラルドグリ
ーン,ピーチ,サクラピンクであり,
発色をブレンドする際には,少なくともレッドの発色においてはR(レ
ッド)のLED,グリーンの発色においてはG(グリーン)のLED,ブ
ルーの発色においてはB(ブルー)のLEDを他のLEDに比して明るく
点灯させるものであり,ホワイト(白色)の発色においては4つのLED
を点灯させるものであって,
4つのLEDの光を集光,混色する,レンズ及び拡散シートで光源を覆う
よう構成し,
ボタン電池を電源として用いる,
ボタン電池式ペンライト。
イ 本件発明1と甲1発明との対比
本件審決が認定した本件発明1と甲1発明の一致点,相違点は,次のと
おりである(本件審決第6,2,2-1⑴〔本件審決45~46頁〕)。
(ア) 一致点
発光色を照らすカバーで覆われた発光部と,把持部とを有し,
前記把持部は,
赤色発光ダイオード,緑色発光ダイオード,青色発光ダイオード及び
白色発光ダイオードを備える光源部と,
前記光源部の各発光ダイオードの発光を個別に制御する制御手段を有
し,
前記制御手段により前記各発光ダイオードを単独で又は複数発光させ
ることで特定の発光色が得られるように構成し,
前記特定の発光色は複数得られ,
前記複数得られる特定の発光色には,少なくとも,前記白色発光ダイ
オードから発せられる光とそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオードか
ら発せられる光とを混合して得られる発光色が含まれ,
前記白色発光ダイオードから得られる発光色は,前記白色発光ダイオ
ードとそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオードから発せられる光が混
合することにより得られる発光色であり,
前記各発光ダイオードから発せられる光を集光,混色し,これにより
得られた発光色で前記カバーを照らすための発光色補助手段が前記光源
部の近くに該光源部を覆うように設けられ,
乾電池又はボタン電池を電源とする多色ペンライト。
(イ) 相違点1
本件発明1は,
「赤色発光ダイオード,緑色発光ダイオード,青色発光
ダイオード,黄色発光ダイオード及び白色発光ダイオード」を備え,複
数得られる特定の発光色として,
「少なくとも,前記白色発光ダイオード
から単独で発せられる光により得られる発光色,前記白色発光ダイオー
ドから発せられる光とそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオードから発
せられる光とを混合して得られる発光色,前記黄色発光ダイオードから
単独で発せられる光により得られる発光色,及び,前記黄色発光ダイオ
ードから発せられる光とそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオードから
発せられる光とを混合して得られる発光色,の全ての発光色が含まれ」
るものであり,
「前記白色発光ダイオードから得られる発光色は,前記白
色発光ダイオードが単独で発光することにより得られる白色の発光色,
及び,前記白色発光ダイオードとそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオ
ードから発せられる光が混合することにより得られる発光色であり,前
記黄色発光ダイオードから得られる発光色は,前記黄色発光ダイオード
が単独で発光することにより得られる黄色の発光色,及び,前記黄色発
光ダイオードとそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオードから発せられ
る光が混合することにより得られる発光色であり」として構成されてい
るのに対し,
甲1発明は,
「R(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の三原色に
加えてWhite(白色)が搭載されている4つのLEDを備え」「発

色がレッドからエンジレッド,ブルー,ライトブルー,アクアブルー,
イエロー,ライトイエロー,オレンジ,グリーン,ライトグリーン,エ
メラルドグリーン,ピンク,ピーチ,サクラピンク,バイオレット,ラ
ベンダーパープル,ホワイト(白色)の順に変わり」「白色はR(レッ

ド) G
, (グリーン) (ブルー) White
,B , (白色)全色点灯であり,
他にWhite(白色)のLEDが点灯するのはライトブルー,アクア
ブルー,ライトイエロー,ライトグリーン,エメラルドグリーン,ピー
チ,サクラピンクであり,発色をブレンドする際には,少なくともレッ
ドの発色においてはR(レッド)のLED,グリーンの発色においては
G(グリーン)のLED,ブルーの発色においてはB(ブルー)のLE
Dを他のLEDに比して明るく点灯させるものであり,ホワイト(白色)
の発色においては4つのLEDを点灯させる」として構成されている点。
(ウ) 相違点2
カバーを照らすための発光色補助手段について,本件発明1は,カバ
ーの「側面及び上部の全体」を照らすように構成されているのに対し,
甲1発明はそのように特定されていない点。
ウ 本件発明2と甲1発明との対比
本件審決が認定した本件発明2と甲1発明の一致点,相違点は,次のと
おりである(本件審決第6,2,2-3⑴〔本件審決58~59頁〕)
本件発明2は,本件発明1の発明特定事項を全て含み,さらに他の発明
特定事項を付加して発明を特定したものであるから,本件発明2と甲1発
明とを対比すると,両者は,前記イ(ア)の一致点で一致し,前記イ(イ)の相
違点1,前記イ(ウ)の相違点2に加え,次の相違点3で相違する。
相違点3
光源部に関して,本件発明2は,
「前記光源部が前記発光ダイオード以外
の色の発光ダイオードを更に備える」のに対して,甲1発明は,
「R(レッ
ド),G(グリーン),B(ブルー)の三原色に加えてWhite(白色)
が搭載されている4つのLED」を備えるものである点。
⑶ 本件審決の理由の要旨
ア 無効理由1について
本件発明1は,甲1発明,甲2に記載された技術事項及び周知の課題(甲
10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,
特許法29条2項の規定により特許を受けることができない(本件審決第
6,2,2-1⑶〔本件審決52頁〕。

イ 無効理由2について
本件発明1は,甲1発明に基づいて,あるいは,甲1発明,甲21及び
甲22に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすること
ができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けるこ
とができない(本件審決第6,2,2-2⑶〔本件審決58頁〕。

ウ 無効理由3について
本件発明2は,甲1発明,甲2に記載された技術事項及び周知の課題(甲
10)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるか
ら,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない(本件審
決第6,2,2-3⑷〔本件審決60頁〕。

エ 無効理由4について
本件発明2は,甲1発明に基づいて,あるいは,甲1発明,甲21及び
甲22に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすること
ができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けるこ
とができない(本件審決第6,2,2-4⑶〔本件審決62頁〕。

4 原告主張の取消事由
⑴ 取消事由1
無効理由1に関する相違点1についての判断の誤り(無効理由1関係)
⑵ 取消事由2
甲1の引用文献としての不適格性及び甲1発明の主引用例としての不適格
性(無効理由1,2関係)
⑶ 取消事由3
甲1発明と本件発明1の相違点の認定の誤り(無効理由1,2関係)
⑷ 取消事由4
無効理由1に関する相違点2についての判断の誤り(無効理由1関係)
⑸ 取消事由5
無効理由2に関する判断の誤り(無効理由2関係)
⑹ 取消事由6
無効理由3,4に関する判断の誤り(無効理由3,4関係)
第3 当事者の主張
1 取消事由1(無効理由1に関する相違点1についての判断の誤り(無効理由
1関係))について
⑴ 原告の主張
ア 本件審決の認定判断
(ア) 甲1発明の課題
a 黄色の発色
本件審決は,甲1発明には,
「イエロー」及び「ライトイエロー」の
各発色の色の違いを明確に識別することができないとの問題があり,
言い換えれば,少なくとも「イエロー」とされる黄色の発色自体に問
題が内在しているという課題があると認定した(本件審決第6,2,
2-1⑵(2-1)ア(ア)〔本件審決47頁〕。

b 演色性
また,本件審決は,甲1発明は,電源(電池)の電圧が下がると発
色のバランスが崩れ,全体が綺麗に光らないことが指摘されており,
要するに,甲1発明は,演色性を向上させる,という課題も内在して
いることが明らかであるとし,甲10(段落【0012】)に「フルカ
ラーとは,単色,二色の混色,三色或いは七色等も含み,
(中略)即ち
三色の場合でも七色の場合でも,非常に多くの色彩の選択肢を提供す
ることができるのである。」と記載されているように,少なくとも,赤
色,緑色,青色の三色のLEDを用いた照明装置において,演色性を
向上させることは,このような技術分野の周知の課題といえると認定
した(本件審決第6, 2-1⑵
2, (2-1)ア(ウ) 本件審決48頁〕。
〔 )
c 純白性
また,本件審決は,甲1発明は,
「R(レッド),G(グリーン),B
(ブルー)の三原色に加えてWhite(白色)が搭載されている4
つのLED」を備えているところ,
「ホワイト(白色)の発色において
は4つのLEDを点灯させるもの」であるがため,
「白色」の純白性に
問題があることが指摘されるとともに,
「白色LED単体で点灯」させ
ることで「明るさを犠牲にしてでも純白を追求」し得ることが示唆さ
れているといえると認定した(本件審決第6,2,2-1⑵(2-1)
ア(イ)〔本件審決47頁〕。

(イ) 甲2に記載された技術事項
本件審決は,甲2(段落【0065】【0189】
, )には,「LED照
明装置」において,光の三原色をなす赤(Red),緑(Green),
青(Blue)の発光ダイオードに加え,さらに白色及び黄色の発光ダ
イオードを含めてLED照明装置を構成するという公知の技術事項が記
載されていると認定した(本件審決第6,2,2-1⑵(2-1)イ(ア)
a〔本件審決49頁〕。

さらに,本件審決は,甲2(段落【0081】)に記載された技術事項
は演色性の向上をも企図した構成ということができるとした(本件審決
第6,2,2-1⑵(2-1)イ(ア)a〔本件審決49頁〕。

(ウ) 相違点1に係る本件発明1の構成のうちの「黄色発光ダイオード」
及びその「発光色」の容易想到性
本件審決は,相違点1に係る本件発明1の構成のうちの「黄色発光ダ
イオード」の採用,及びその「発光色」に関して,次のとおり判断した。
「イエロー」及び「ライトイエロー」の各発色の色の違いを明確に識
別することができず,少なくとも「イエロー」とされる黄色の発色自体
に問題が内在している甲1発明において,その演色性の向上を企図して,
甲2に記載された技術事項を参考とし,R
「 (レッド),G
」 (グリーン),
「 」
「B(ブルー),
」「White(白色)」の「4つのLED」に加え,さ
らに,黄色の発光ダイオードを設けることは,当業者にとって格別困難
なことではない(本件審決第6,2,2-1⑵(2-1)イ(ア)a〔本件
審決49頁〕。

また,甲1発明において,黄色の発光ダイオードを設けるに際し,黄
色発光ダイオードから発せられる光と,少なくともそれ以外の1つの発
光ダイオードから発せられる光とを混色して発色させることは,演色性
の向上を企図した当業者が通常の創作能力の発揮において行い得るもの
といえる(本件審決第6,2,2-1⑵(2-1)イ(ア)c〔本件審決5
0頁〕。

(エ) 無効理由1に関する進歩性の判断
その上で,本件審決は,無効理由1について,本件発明1は,甲1発
明,甲2に記載された技術事項及び周知の課題(甲10)に基づいて当
業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2
項の規定により特許を受けることができない(本件審決第6,2,2-
1⑶〔本件審決52頁〕)と判断した。
イ 認定判断の誤り
(ア) 認定判断の誤りの有無
しかし,本件審決の前記アの認定判断は誤りである。その理由は,以
下のとおりである。
(イ) 甲1発明の課題
a 黄色の発色
仮に甲1に「イエロー」と「ライトイエロー」の区別がつきにくい
という問題が記載されていたとしても,本件審決のいうように,その
問題を,黄色の発色の問題と言い換えることはできない。
b 演色性
演色性とは,物の色がどれだけ自然に見えるかという性質を指し(甲
40)甲2に記載された技術のような照明器具等に関して用いられる

概念である。甲1発明のようなコンサート用ペンライトについては,
所望の発光色を発光部で得ることが重要であり,演色性は問題となら
ない。本件審決が,甲10により,多くの色彩の選択肢を提供するこ
とを演色性の向上と述べているのは,演色性の概念を正しく捉えてい
ない。
c 純白性
本件審決は純白性の意味内容については何ら明らかにしておらず,
仮に,
「ペンライトにおいてカバー(筒)から発色する光に白色以外の
有色が混じらないこと」を意味するのだとしても,甲1発明において,
4つのLEDを点灯させたことによって,カバー(筒)から発色する
光に白色以外の有色が混じっているという記載はどこにも存在せず,
甲1発明は純白性に問題があるという認定をすることはできない。
d 発明の課題の認定
前記aないしcによれば,本件審決による甲1発明の課題の認定は
誤っている。
(ウ) 甲2に記載された技術事項
甲2に記載された課題は,高密度化,放熱性,光利用効率を同時に解
決できるLED照明光源及びLED照明装置を提供することであって
(甲2の段落【0021】,演色性の向上自体は発明の解決課題とされ

ていない。
したがって,本件審決による甲2に記載された技術事項の認定は誤っ
ている。
(エ) 相違点1に係る本件発明1の構成のうちの「黄色発光ダイオード」及
びその「発光色」の容易想到性
a 技術分野の関連性
無効理由1に関して本件発明1の容易想到性を認めた本件審決の判
断は,甲1発明,甲2に記載された技術事項及び周知の課題(甲10)
に基づいているが,甲1発明と,甲2及び甲10に記載された技術事
項は,それぞれ異なる技術分野に属するものであって,技術分野の関
連性を欠く。甲1発明は,筒(カバー)に所望の有色光を得る発光器
具に関するものであるのに対して,甲2は,空間を明るくするための
「照明」に関するものであり,白色光(有色光ではない)のみを対象
とし,かつ,照らされた物体が如何に自然光で見た場合に近くなるよ
うにするかという技術についてのものであるし,甲10も照明に関す
る技術分野に属するものであるから,技術分野が関連していない。
b 阻害事由
コンサート用ペンライトに関しては,製造コストを抑え,軽量にす
ることが要請されるから,白色のダイオードが追加搭載されている甲
1発明に更に黄色のダイオードを追加することは想定し難い。また,
甲2(段落【0192】には昇圧回路を用いることが記載されている。

そのため,黄色のダイオードを追加することには阻害事由がある。
c 容易想到性
本件審決による甲1発明の課題の認定は誤っており,甲2に記載さ
れた技術事項の認定も誤っているから,相違点1に係る本件発明1の
構成のうちの「黄色発光ダイオード」及びその「発光色」の容易想到
性に関する本件審決の判断も誤っている。
(オ) 甲1発明と周知技術に基づく容易想到性
本件特許出願前において,テレビジョン等の製品におけるディスプレ
イを,赤,緑,青に黄を加えた4つの原色,又は赤,緑,青に白を加え
た4つの原色から構成することは知られていた(乙5の1~9,乙6の
1~13)。
しかし,ペンライトとテレビジョン等の製品とは,その混色の原理が
全く異なる。ペンライトは,三原色の光を同時に物理的に(現実に)重
ねて混色することで,所望の発光色を得る同時加法混色であるのに対し
て,テレビジョン等の製品は,ディスプレイ上の多数の画素(ピクセル)
において赤色と緑色と青色の多数の小さな光が点灯及び消灯することで
映像を表示する並置混色である。
テレビジョン等の製品は,映像を表示することを目的とし,画素にお
ける多数の小さな光が絶え間なく点灯及び消灯し,点灯中にも光の強弱
を自在に変化させ,利用者は光源を直接視認する。ペンライトでは,カ
バー(筒)の部分において特定の発光色を得ることを目的とし,光源の
点灯と消灯を繰り返したり,光の強弱を変化させたりする必要はなく,
照度が極めて高く,光源を直視することは禁止される。テレビジョン等
の製品とペンライトとでは,製品の目的に相違があり,発光の態様や利
用者への光の入射の仕方などが大きく異なっており,ペンライトに関す
る当業者が,テレビジョン等の製品に関する技術を参照することはない。
本件発明1の課題は,RGB(赤,緑,青)の3色のLEDを用いた
コンサート用ペンライトにおいて,電池の消耗による電圧の低下によっ
て色崩れが生じるという課題を,コンサート用ペンライトに課された製
造コスト等の制限に服しつつ,解決するものであり,課題解決の手法は,
テレビジョン等の製品とは異なる。
したがって,甲1発明と周知技術に基づいて本件発明1を容易に想到
することはできなかった。
⑵ 被告の主張
ア 本件審決の認定判断
本件審決に,原告が引用する記載が存在することは争わない。
イ 認定判断の誤り
(ア) 認定判断の誤りの有無
原告の主張は争う。本件審決の認定判断に誤りはない。
(イ) 甲1発明の課題
a 黄色の発色
原告の主張は争う。
本件審決が述べるように,甲 1 発明においては,
「イエロー」と「ラ
イトイエロー」の違いを明確に識別することができないとの問題があ
ったこと,すなわち,黄色系の色の発色に問題があったことが認めら
れる。
b 演色性
原告の主張は争う。
本件審決が述べる「演色性」や「演色性の向上」とは,
「多様な色の
発光色の中から所望の発光色を安定的に得られるようにすること」と
いう意味であると解釈される。このような課題は,甲1,甲10から
認定可能であるから,
「演色性」の本来の意味はともかく,本件審決に
よる課題の認定には誤りはない。
c 純白性
原告の主張は争う。
一般に純白とは,まじりけのない白色を意味する。甲1の記載から
は,RGBW(赤,緑,青,白)全色点灯により白色の発色を得た場
合,電源の電圧の低下により発色のバランスが崩れること,すなわち,
電源の電圧低下により,一定の順番でLEDが光らなくなり,これに
よりRGBWの発色のバランスが崩れ,特定のLEDの発色が強くな
って白色の発色に混じりけが生じることが問題視されていることは明
らかである。
d 発明の課題の認定
原告の主張は争う。
本件審決による甲1発明の課題の認定に誤りはない。
(ウ) 甲2に記載された技術事項
原告の主張は争う。
本件審決による甲2に記載された技術事項の認定に誤りはない。
甲2の段落【0065】【0080】【0081】及び【0189】
, ,
は,いずれも,LED照明装置において,青,赤,緑,黄といった複数
の色の発光色を安定して得るための構成について記述したものであり,
このことから,甲2は,LED照明装置において,
「多様な色の発光色の
中から所望の発光色を安定的に得られるようにすること」を課題とする
ものといえる。したがって,甲1発明と甲2に記載された技術事項とは,
いずれも多様な色の発光色を安定して得るという点で課題を共通にする
ものといえる。
(エ) 相違点1に係る本件発明1の構成のうちの「黄色発光ダイオード」及
びその「発光色」の容易想到性
a 技術分野の関連性
原告の主張は争う。
所望の発光色を得ることは,ペンライトの光源の技術に関連するか
ら,甲1発明は,ペンライトに用いられる光源そのものの技術に関わ
るものということができる。他方,甲2は,カード型LED照明に関
するものであるが,原告が主張するような「照明」技術に限定されず,
段落【0002】の記載に照らせば,甲2の光源は,看板にも使用さ
れるもので,段落【0080】の「LED照明装置の発光光色を切り
替えや制御することができる」との記載と看板の目的に鑑みれば,所
望の発光色で発光させることにより人々の注目を集めるといった用途
を有するもので,「白色光」に関する技術に限定されるものではない。
このように,甲1発明と甲2に記載された技術事項は,いずれも多様
な色の光を安定して得るという点で課題を共通にするものであるから,
本件審決の認定判断に誤りはない。
b 阻害事由
LEDを5つに増やしても製造コストが著しく増加することはない
し,需要者のニーズを把握し,製造コストを多少犠牲にしても性能向
上を図る選択肢は当然あり得るから,製造コストの増加は,阻害要因
にならない。
c 容易想到性
「イエロー」及び「ライトイエロー」の各発色の色の違いを明確に
識別することができず,少なくとも「イエロー」とされる黄色の発色
自体に問題が内在している甲1発明において,その演色性の向上を企
図して,甲2に記載された技術事項を参考とし,「R(レッド),
」「G
(グリーン),
」「B(ブルー),
」「White(白色)」の「4つのLE
D」に加え,さらに,黄色の発光ダイオードを設けることは,当業者
にとって格別困難なことではないという本件審決の判断に誤りはない。
また,甲1発明において,黄色の発光ダイオードを設けるに際し,
黄色発光ダイオードから発せられる光と,少なくともそれ以外の1つ
の発光ダイオードから発せられる光とを混色して発色させることは,
演色性の向上を企図した当業者が通常の創作能力の発揮において行い
得るものといえるという本件審決の判断に誤りはない。
(オ) 甲1発明と周知技術に基づく容易想到性
乙5の1ないし9に示されたとおり,液晶表示装置において,赤色,
緑色,青色の三原色に加えて,黄色を光源として設け,これらの組み合
わせにより混色を行う技術は,本件特許出願時点において,色彩工学の
分野における周知の技術であり,また,乙6の1ないし13に示された
とおり,液晶表示装置において,赤色,緑色,青色の三原色に加えて,
白色を光源として設け,これらの組み合わせにより混色を行う技術は,
本件特許出願時点において,色彩工学の分野における周知の技術であっ
たといえる。
産業や技術が高度化した現代において,発明は性格の異なる複数の技
術を組合せて成り立つものである。コンサート用ペンライトに関する甲
1発明とテレビジョン等の製品は,表現可能な色のバリエーションを広
げるという課題を共通にしている。また,並置混色も同時加法混色も色
の組合せによって所望の発光色を得る点で共通している。
そして,例えば,赤色,緑色,青色及び黄色を原色として使用できる
場合に,黄色と青色を混色すること,あるいは赤色,緑色,青色及び白
色を原色として使用できる場合に,赤色と白色を混色することは当然生
じる選択肢である。このように,ペンライトの光源について,RGB(赤,
緑,青)に加えて,黄色及び白色のLEDが光源として設けられている
状況において,本件発明1の混色方法は,当業者としては適宜採用し得
る設計的事項であることは明白である。
したがって,赤色,緑色,青色の三原色に加えて黄色を光源として設
け,これらの組み合わせにより混色を行う技術,及び赤色,緑色,青色
の三原色に加えて白色を光源として設け,これらの組み合わせにより混
色を行う技術が周知技術であったことに照らせば,本件発明1は進歩性
を有するものではない。
2 取消事由2(甲1の引用文献としての不適格性及び甲1発明の主引用例とし
ての不適格性(無効理由1,2関係))について
⑴ 原告の主張
ア 引用文献としての不適格性
甲1はウェブサイト上のブログ(以下「甲1サイト」という。)の記事で
あ り , 甲 1 の ヘ ッ ダ ー に は 「 2 0 1 8 / 1 2 / 1 2 」 「 chrome-

extension://(中略)/edit.html」と印字されている。
「edit.html」との
記載は,WordPressにより作成された甲1サイトを事後に編集し
ようとする際にしか表示されないから,甲1サイトに何らかの改変を加え
たことを疑わせる。仮に改変が加えられていなかったとしても,甲1から
は,平成30年12月12日時点において甲1サイトで表示されていた内
容が認定できるにすぎず,それが本件特許出願前に表示されていたことま
では認定することができない。
イ 甲1発明の主引用例としての不適格性
被告と甲1の作成者とされるAと称する人物(以下「訴外A」という。)
とは,甲1が作成されたと被告が主張する日よりも1年以上前の時点から,
被告が訴外Aにレビュー用のペンライト製品の提供という利益を与え,宣
伝目的でのレビューを依頼する関係にあったから,訴外Aは,客観的・中
立的な第三者の立場にあったとはいえず,被告の製品をより高く評価し,
被告以外のペンライト製造業者の製品を実際よりも低く評価しようとす
る動機があった。
甲36によっても,また,甲35(11頁)に掲載されている発光色一
覧画像においても,甲1における批評の対象となった原告の「カラフルプ
ロ110」というペンライト(以下「甲1製品」という。)のイエローとラ
イトイエローは明確に区別でき,かつ,オレンジがかった色でもないこと
は明らかであり,甲1(甲52は,甲1を拡大したものである。)の写真は
甲1製品の性能を正しく反映したものではない。
甲1製品は消灯時に黄色で視認されるものではないのに対し,甲1の4
頁の上から5番目のイエロー系の比較写真で甲1製品と比較されている
他社製品は,いずれも筒(カバー)自体が鮮やかな蛍光イエローで着色さ
れており,消灯時においても蛍光イエローで視認されるものであるから
(甲51の1~3) 上記の写真は,
, 実際の発光色を正しく反映していない。
⑵ 被告の主張
ア 引用文献としての不適格性
ウェブサイトの過去の状態を記録し閲覧可能にしている「インターネッ
トアーカイブ」のサービスによれば,遅くとも本件特許出願前の2013
年(平成25年)7月1日時点で,甲1サイトがWEB上で公開されてい
たことは明らかであり(乙4の1~4) 甲1には何らの改変も加えられて

いない。
イ 甲1発明の主引用例としての不適格性
仮に訴外Aが,被告からペンライトのレビューを依頼されたことにより,
被告の製造する製品について好ましい評価をする動機を得たとしても,甲
1を作成した時点では,原被告間において本件発明に関する紛争は生じて
いないから,甲1製品(原告の製造する製品)について低い評価をする動
機にはならない。
甲1と甲36とでは,掲載された画像が撮影された時点に約7年の隔た
りがあるから,甲36に比べて甲1の方が発色の再現性において劣るとし
ても,それはカメラの性能の差異によるものであり,甲1製品を不当に低
く評価しようとする訴外Aの意図によるものではない。
各社製品の発光色の比較においては,実際に使用した際に得られる発光
色が問題であって,カバー自体に着色があるかどうかは問題ではない。
甲1製品のイエロー系の発光色が他社製品と比較してややオレンジがか
っていることは,例えば甲36掲載の各画像と,甲41の3頁目において
みられる黄色を比較すると明らかであり,何ら虚偽あるいは誤認ではない。
本件審決が認定した甲1発明には,LEDの発光色の評価が問題となる
ような部分はなく,甲1のうち,少なくとも甲1発明の認定に用いられた
部分については客観性がある。甲1は,ペンライトに精通した人物が作成
した信用性の高い証拠である。
3 取消事由3(甲1発明と本件発明1の相違点の認定の誤り(無効理由1,2
関係)
)について
⑴ 原告の主張
本件審決は,甲1発明には「4つのLEDの光を集光,混色する,レンズ
及び拡散シート」があり,本件発明1の「前記各発光ダイオードから発せら
れる光を集光,混色」する「発光色補助手段」に相当すると認定している(本
件審決第6,2,2-1⑴キ〔本件審決44頁〕。

甲 1 の5頁の「RGB+W LEDについて」という記載の下の写真に示さ
れているとおり,甲1発明においては,各LEDの発光体を封止する樹脂が
乳白色状の曇りを有しており,各LEDの光はこの曇りにより拡散され,レ
ンズを通過する前に混色する仕組みとなっているから,甲1発明においては,
シートではなく,LED自体が拡散と混色の機能を営んでいる。したがって,
甲1発明は,4つのLED自体がその発光を混色するための構成を備えてお
り,4つのLEDの光を「混色する拡散シート」は設けられていないから,
本件発明1と甲1発明の相違点として,「カバーを照らすための発光色補助
手段について,本件発明1は,各光源部から発せられる光を混色する手段が
前記光源部の近くに該光源部を覆うように設けられているのに対し,甲1発
明は,各光源部自体に光を拡散・混色する手段が設けられている点」を認定
すべきであったにもかかわらず,本件審決はこれを看過しているから,相違
点の認定に誤りがある。
⑵ 被告の主張
甲1の7頁から8頁にかけて掲載された写真と8頁の「レンズと光拡散シ
ートです」との記載から,甲1発明の光源部にレンズと拡散シートが取り付
けられていることが分かり,また,甲1の3頁の上から5枚目の中央の写真
によれば,光源部の光色がより拡散して混ざり合っているから,甲1発明の
レンズ及び拡散シートにおいて拡散と混色の機能を営んでいることは明ら
かである。
甲1発明のLEDの発光体を封止する樹脂が乳白色を有しており,仮にL
ED自体において一定の拡散と混色の機能を営んでいるとしても,そのこと
から直ちに甲1発明のシートが混色と拡散の機能を営んでいないとはいえ
ない。
4 取消事由4(無効理由1に関する相違点2についての判断の誤り(無効理由
1関係)
)について
⑴ 原告の主張
本件審決は,相違点2(カバーを照らすための発光色補助手段について,
本件発明1は,カバーの「側面及び上部の全体」を照らすように構成されて
いるのに対し,甲1発明はそのように特定されていない点。)について,実質
的な相違点ではないとし,仮に実質的な相違点であったとしても,発光補助
手段について,カバーの側面及び上部の全体を照らすように構成することは
当業者が容易になし得るものと判断した(本件審決第6,2,2-1⑵(2
-2)ア,イ〔本件審決51~52頁〕。

しかし,甲1の2頁の上から4番目の写真の下には,
「このようにBasi
cの筒だと光量が足りず,全体が綺麗に光らないのですね。カラプロの光量
がギリギリ届く範囲がMタイプ(12.5cm)だったのでしょう。」との記
載があり,甲1発明にBasicタイプの筒を装着すると全体が光らないと
いう事実が明らかにされており,その理由は,甲1発明における「発光色補
助手段」に相当する部分が,カバー(筒)の側面及び上部の全体を照らすよ
うに構成されていないからであり,この点は本件発明1との実質的な相違点
である。
カバー(筒)の全体を光らせるための方法は,甲1には示唆されておらず,
本件審決は,これを発光色補助手段で補うとしたが,その理由や具体的な方
法は示されていない。甲1の4頁の上から2番目の写真の上下には,筒の根
元に原色が見える現象が指摘されており,甲1製品には十分に混色されてい
ない部分が存在するから,光量の増加によって相違点2の問題を解決するこ
とはできない。したがって,本件審決の上記判断は誤りである。
⑵ 被告の主張
相違点2に係る本件発明1の構成は,発光色補助手段がカバーの側面及び
上部の全体を照らすように構成されていることであり,発光色により照らさ
れるカバーの大きさは限定されていない。甲1によれば,甲1発明において,
カバー(筒)の側面及び上部の全体が明るく照らされていることは明らかで
あるから,相違点2に関する本件審決の判断に誤りはない。
5 取消事由5(無効理由2に関する判断の誤り(無効理由2関係))について
⑴ 原告の主張
本件審決は,無効理由2について,本件発明1は,甲1発明に基づいて,
あるいは,甲1発明,甲21及び甲22に記載された技術事項に基づいて当
業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の
規定により特許を受けることができないと判断した(本件審決第6,2,2
-2⑶〔本件審決58頁〕。

しかし,本件審決には,甲1発明の課題の認定,黄色の発光ダイオードを
設けて単体で点灯させることの動機付けの認定,及び,白色の発光ダイオー
ドを設けて単体で点灯させることの動機付けの認定について誤りがあり,更
に相違点2に係る認定の誤り,並びに,本件発明1の効果に関する認定の誤
りがある。また,甲21における「半永久単一色カラー電球」「半永久単一

色カラー電球管」の意味内容は全くもって不明であり,甲21は,単に多く
の色のLED等を挙げているものに過ぎず,仮に,甲1発明に黄色の発色の
問題があり,そのような状況下において当業者が甲21を参照したとしても,
甲1発明に黄色の発光ダイオードを追加することの動機付けは何ら与えら
れない。甲22に開示されている内容は,
「ウォールウォッシャーやスポット
ライト等として好適な照明装置に関するもの」【0001】,であり,甲2
( )
に開示されている「照明」の技術に近いものであって,甲22と甲1発明に
は,何の課題の共通性もなく,その作用及び機能においても共通するところ
はないから,コンサート用ペンライトに関する当業者が甲22を参照するこ
とはない。したがって,本件審決の上記判断は誤りである。
⑵ 被告の主張
相違点1に係る本件発明1の構成は,いずれも当業者において適宜選択し
得た設計事項であるから,当業者は,甲1発明に基づき本件発明1を容易に
発明することが可能であった。
本件審決は,多様な色の発光色の中から所望の発光色を安定して得られる
ようになるという本件発明1の効果を十分考慮したものであって,本件審決
の認定に誤りはない。甲21には,赤色,緑色,青色の3色の発光ダイオー
ドのみならず,黄色の発光ダイオードを用いて電球管を構成することが開示
されており,甲22には,ウォールウォッシャーやスポットライト等として
好適な照明装置が開示されている。甲1発明と甲21や甲22記載の照明装
置は,いずれも所望の発光色を得るという点で作用機能を共通にしていると
いえる。
そうすると,当業者にとっては,甲1発明に黄色の発色の問題があり,そ
のような状況下で甲21及び甲22を参照した場合には,甲1発明に黄色L
EDを追加的に設けることの動機付けが与えられるといえる。したがって,
本件審決の判断に誤りはない。
6 取消事由6(無効理由3,4に関する判断の誤り(無効理由3,4関係))に
ついて
⑴ 原告の主張
本件審決は,無効理由3について,本件発明2は,甲1発明,甲2に記載
された技術事項及び周知の課題(甲10)に基づいて,当業者が容易に発明
をすることができたものであると判断し(本件審決第6,2,2-3⑷〔本
件審決60頁〕,
) 無効理由4について,本件発明2は,甲1発明に基づいて,
あるいは,甲1発明,甲21及び甲22に記載された技術事項に基づいて当
業者が容易に発明をすることができたものであると判断した(本件審決第6,
2,2-4⑶〔本件審決62頁〕。

前記1⑴のとおり,無効理由1について,本件審決の認定判断には誤りが
あり,当業者は本件発明1を容易に想到することができなかった。本件発明
2は,本件発明1の内容を全て含むから,当業者は,本件発明2も容易に想
到することができなかったものであり,本件審決の無効理由3,4について
の判断にも誤りがある。
⑵ 被告の主張
本件審決が原告主張のとおりに判断したことは争わないが,その余の原告
の主張は争う。
前記1⑵のとおり,無効理由1について,本件発明1を無効とする本件審
決の認定判断に誤りはないから,本件発明1を無効とする本件審決の認定判
断に誤りがあることを前提とする原告の主張に理由はない。
本件審決の無効理由3,4についての判断に誤りはない。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(無効理由1に関する相違点1についての判断の誤り(無効理由
1関係))について
⑴ 甲2に記載された技術事項
相違点1については,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用するこ
とにより相違点1に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたか
否かが問題になるので,甲2に記載された技術事項について検討する。
ア 甲2の記載
甲2には,別紙1の記載がある。
イ 甲2に記載された技術事項
別紙1の記載によると,甲2には次の技術事項が記載されていると認め
られる。なお,本件審決第6,2,2-1⑵(2-1)イ(ア)a〔本件審
決49頁〕には,LED照明装置において,光の三原色をなす赤(Red),
緑(Green),青(Blue)の発光ダイオードに加え,さらに白色及
び黄色の発光ダイオードを含めてLED照明装置を構成するという公知
の技術事項が「甲2に記載された技術事項」という略語の内容として記載
されているが(後記⑶イ(ア)),ここで認定する甲2に記載された技術事項
は,次のとおり,本件審決に記載された上記の事項を含み,それより広い
ものである。
甲2は,複数のLEDが実装されたカード型LED照明光源を用いるL
ED照明装置と,このLED照明装置に好適に用いられるカード型LED
照明光源とに関するものである(段落【0001】。
) LEDは,白熱電球,
蛍光ランプ,高圧放電ランプなどと比べて寿命が長いという優れた利点が
あるが,1個のLED素子では光束が小さいため,白熱電球,蛍光ランプ
と同程度の光束を得るためには,複数のLED素子を配置してLED照明
光源を構成する必要がある(段落【0002】)ところ,各LEDベアチッ
プの光束をできる限り増加させるために,照明以外の通常用途における電
流よりも大きな電流を各LEDベアチップ22に流すと,LEDベアチッ
プからの発熱量が大きくなり,LEDベアチップ22の温度(ベアチップ
温度)が高温に上昇し,LEDベアチップの寿命に大きな影響をもたらす
上,発熱量の増加に伴ってベアチップ温度が高くなると,LEDベアチッ
プの発光効率も低下するという課題がある(段落【0011】~【001
3】。そのため,甲2に記載されたLED照明装置とそのカード型LED

照明光源は,素子基板上に発光部を有するLEDベアチップを放熱基板上
に設け,LEDベアチップの発光部は,放熱基板に配置され,LEDベア
チップの素子基板の光出射表面は,辺縁部が中央部に比べて低背である傾
斜面状として形成し(段落【0022】,また,照明装置の光源部分を着

脱可能なカード状構造物によって構成し,各LEDで発生した熱をスムー
ズに放熱させる効果を高めるとともに,寿命の尽きた光源だけを新しい光
源と取替え可能とすることにより,LED照明装置の光源以外の構造体を
長期間使用できるようにしている(段落【0059】)ものであることが認
められる。
そして,甲2の実施の形態1として,カード型LED照明光源10に実
装されるLEDを,相関色温度が低い光色用又は相関色温度が高い光色用
や青,赤,緑,黄など個別の光色を有するものとすることができること(段
落【0080】,2種の光色を用いた2波長タイプのときには演色性は低

いが高効率な光源が実現可能であり,相関色温度が低いときには赤と青緑
(緑)発光の組合せ,相関色温度が高いときには青と黄(橙)発光の組合
せを採用することが望ましいこと,3種の光色を用いた3波長タイプの場
合は青と青緑(緑)と赤発光の組合せ,4種の光色を用いた4波長タイプ
の場合は青と青緑(緑)と黄(橙)と赤発光の組合せが望ましく,特に4
波長タイプのときには平均演色評価数が90を超える高演色な光源を実
現できること(段落【0081】)が記載されていると認められる。
また,甲2の実施の形態2として,図3の照明装置に好適に用いられ(段
落【0089】,青色光を発するLEDベアチップ,赤色光を発するLE

Dベアチップ,緑色光を発するLEDベアチップ又は黄色光を発するLE
Dベアチップの4種のLED素子を混在配置させ,それらの発色光を配光
制御して白色光や可変色光を提供する白色カード型LED照明光源(段落
【0125】)が記載されていると認められる。
さらに,甲2の実施の形態3として,定電流駆動用に,同数のアノード
側電極及びカソード側電極を設ける場合,青,緑(青緑),黄(橙),赤,
及び白の各々に給電電極に割り当てた上で,6個(3経路)の予備端子を
設けることが可能となること(段落【0189】
)と認められる。
他方,甲2記載のカード型LED光源及びLED照明装置を用い,青,
緑(青緑),黄(橙),赤,白のLEDを個別に駆動することによって照明
を行うこと(段落【0065】)や上記のとおり各々に給電電極を割り当て
ること(段落【0189】 の記載はあるものの,
) 段落【0065】及び【0
189】には,5色のLEDを搭載した光源により,白色光を提供するの
か,可変色光を提供するのかについての記載はなく,各色LEDを単独発
光させることも明記されていない。
ウ 演色性の意味
(ア) 甲2の段落【0081】には「演色性」という語が用いられている。
演色性については,一般的に,次のように説明されている。
「光源が放射する光の分光分布が異なれば,照明された物体の色は異な
って見える。この性質を光源の演色性という。たとえば食肉のような暖
色系の物体は,赤黄色光の多い白熱電球で照明すれば鮮かに見え,青色
光の多いケイ光灯で照明すればどす黒く見える。したがって,演色性の
度合いを示すのに平均演色評価数という数値が用いられ,照明用光源の
性能を示す一つの指標になっている」ブリタニカ国際大百科事典小項目

事典,甲40)
「照明による物体の色の見え方の特性。色が自然光で見た場合に近いほ
ど,演色性がよいという。(デジタル大辞泉,甲40)

(イ) 甲2の段落【0081】には,
「2種の光色を用いた2波長タイプの
ときには演色性は低いが高効率な光源が実現可能であり」「4種の光色

を用いた4波長タイプの場合は青と青緑(緑)と黄(橙)と赤発光の組
合せが望ましく,特に4波長タイプのときには平均演色評価数が90を
超える高演色な光源を実現できる。なお,実装されるLEDベアチップ
が単色または紫外線を放射する場合や,LEDベアチップで蛍光体や燐
光材を励起することによって白色発光する場合にも本発明を適用でき
る。 と記載されており,
」 これらの記載に照らすと,甲2に記載された「演
色性」とは,照明された物体の色が自然光で見た場合に近いか否かとい
う,演色性という用語の一般的な意味(前記(ア))で用いられていると認
められる。
⑵ 技術分野相互の関係と採用の動機付け
甲1の1頁の上から2番目の写真は,筒全体が17色の各色で発光してい
るペンライトの写真であり,その写真の上下には,
「カラフルプロ1本で,,

「全17色もの色を持ち歩くことができます。 という記載があり,
」 5頁の上
から5番目の写真の下には「カラプロのLEDはRGBの三原色に加えて
White が搭載されています。計4LEDです。」と記載されており,甲1の7
頁の一番上の写真の上には「※分解及び改造行為を行ったペンライトは安全
性が保証できないためライブ会場に持ち込まないでください。」という記載
があることから,甲1発明は,ライブ(コンサート)会場に持ち込むフルカ
ラーペンライトに係るもので,光源として,赤,緑,青(RGB)の三原色
に加えて白色の4LEDが搭載されたものであり,筒全体が様々な色で発光
する技術に関するものであることが認められる。
他方,甲2に記載された技術事項は,前記⑴のとおりであり,物に光を照
射してその物が見えるようにするための照明にかかわるものであり,複数の
LEDが実装されたカード型LED照明光源を用いるLED照明装置と,こ
のLED照明装置に好適に用いられるカード型LED照明光源とに係るもの
で,白色光又は可変色光を提供する技術に関するものである。
ところで,進歩性の判断においては,請求項に係る発明と主引用発明との
間の相違点に対応する副引用発明又は周知の技術事項があり,かつ,主引用
発明に副引用発明又は周知の技術事項を適用する動機付けないし示唆の存在
が必要であり,そのためには,まず主引用発明と副引用発明又は周知の技術
事項との間に技術分野の関連性があることを要するところ,主引用発明と副
引用発明又は周知の技術事項の技術分野が完全に一致しておらず,近接して
いるにとどまる場合には,技術分野の関連性が薄いから,主引用発明に副引
用発明又は周知の技術事項を採用することは直ちに容易であるとはいえず,
それが容易であるというためには,主引用発明に副引用発明又は周知の技術
事項を採用することについて,相応の動機付けが必要であるというべきであ
る。この点,甲1発明と甲2に記載された技術事項は,いずれもLEDを光
源として光を放つ器具に関するものである点で共通するものの,甲1発明は
筒全体が様々な色で発光するペンライトに係るものであるのに対して,甲2
に記載された技術事項は,白色光又は可変色光を提供する照明装置に係るも
のである点で相違するから,近接した技術であるとはいえるとしても,技術
分野が完全に一致しているとまではいえない。そのため,甲1発明に甲2に
記載された技術事項を採用して新たな発明を想到することが容易であるとい
うためには,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用することについて,
相応の動機付けが必要である。
⑶ 本件審決の認定判断
ア 甲1発明の課題の認定
(ア) 本件審決は,甲1発明の課題として,黄色の発色について,
「イエロ
ー」と「ライトイエロー」の各発色の色の違いを明確に識別することが
できないとの問題があり,これは,『イエロー』とされる黄色の発色自

体に問題が内在している,ということもできる。(本件審決第6,2,

2-1⑵(2-1)ア(ア)〔本件審決47頁〕)と認定し,これを,演色
性の向上を企図して黄色の発光ダイオードを設ける前提としての課題と
位置付けた(本件審決第6,2,2-1⑵(2-1)イ(ア)a〔本件審決
49頁の17~23行目〕。

(イ) 本件審決は,甲1発明の課題に関して,「甲1発明は,電源(電池)
の電圧が下がると発色のバランスが崩れ,全体が綺麗に光らないことが
指摘されており,要するに,甲1発明は,演色性を向上させる,という
課題も内在していることが明らかである。(本件審決第6,2,2-1

⑵(2-1)ア(ウ) 〔本件審決48頁〕)と述べており,この記述によれ
ば,本件審決は,発色のバランスを崩れないようにすることや,全体が
綺麗に光るようにすることを,
「演色性」を向上させることと認定してい
るものと認められ,甲1発明の課題は,そのような意味での「演色性」
を向上させることにあると認定しているものと認められる。
(ウ) 本件審決は,甲1発明の課題に関して,
「甲10(上記『1(10))

には,(中略)即ち三色の場合でも七色の場合でも,非常に多くの色彩

の選択肢を提供することができるのである。(段落【0012】
』 )と記載
されているように,少なくとも,赤色,緑色,青色の三色のLEDを用
いた照明装置において,演色性を向上させることは,かかる技術分野の
周知の課題といえる。 (本件審決第6,2,2-1⑵(2-1)ア(ウ)

〔本件審決48頁〕)と述べており,ここでは,多くの色彩の選択肢を提
供することをもって,演色性を向上させることと認定しているものと認
められ,甲1発明の課題は,そのような意味での「演色性」を向上させ
ることにあると認定しているものと認められる。
イ 本件審決による甲2に記載された技術事項の認定
(ア) 本件審決は,甲2に記載された技術事項について,甲2の段落【0
065】【0189】に記載されているように,『LED照明装置』に
, 「
おいて,光の三原色をなす赤(Red),緑(Green),青(Blu
e)の発光ダイオードに加え,さらに白色及び黄色の発光ダイオードを
含めてLED照明装置を構成することは,かかる技術分野における公知
の技術事項である(以下「甲2に記載された技術事項」ということもあ
る。。(本件審決第6,2,2-1⑵(2-1)イ(ア)a〔本件審決49
)」
頁〕)と認定した。前記⑴によれば,本件審決の上記認定は相当と認めら
れる。
(イ) また,本件審決は,
「甲2には,
『更に,多発光色(2種以上の光色)
のLEDをカード型LED照明光源10に実装することにより,相関色
温度が低い光色から相関色温度が高い光色まで,1枚のカード型のカー
ド型LED照明光源10によって発光光色を制御できる。この場合,2
種の光色を用いた2波長タイプのときには演色性は低いが高効率な光源
が実現可能であり,相関色温度が低いときには赤と青緑(緑)発光の組
合せ,相関色温度が高いときには青と黄(橙)発光の組合せを採用する
ことが望ましい。(段落【0081】
』 )とも記載されているように,上記
甲2に記載された技術事項は,演色性の向上をも企図した構成というこ
とができる。(本件審決第6,2,2-1⑵(2-1)イ(ア)a〔本件審

決49頁〕)と認定したところ,前記⑴によれば,本件審決の上記認定は
相当と認められる。前記⑴によれば,上記のとおり甲2に記載された技
術事項として認定された「演色性」は,照明された物体の色が自然光で
見た場合に近いか否かという,一般的な意味での「演色性」であるもの
と認められる。
ウ 相違点1に係る本件発明1の構成のうちの「黄色発光ダイオード」及び
その「発光色」の容易想到性についての判断
(ア) 本件審決は,相違点1に係る本件発明1の構成のうちの「黄色発光
ダイオード」及びその「発光色」の容易想到性について,「してみると,
『イエロー』及び『ライトイエロー』の各発色の色の違いを明確に識別
することができず,少なくとも『イエロー』とされる黄色の発色自体に
問題が内在している甲1発明において,その演色性の向上を企図して,
上記の甲2に記載された技術事項を参考とし,『R(レッド),
』『G(グ
リーン),
』『B(ブルー),
』『White(白色)』の『4つのLED』に
加え,さらに,黄色の発光ダイオードを設けることは,当業者にとって
格別困難なことではない。 と判断した
」 (本件審決第6, 2-1⑵
2, (2
-1)イ(ア)a〔本件審決49頁〕。

(イ) 前記(ア)によれば,本件審決は,甲1発明に,「イエロー」とされる
黄色の発色自体に問題が内在しているという課題があり(前記ア(ア)),
演色性を向上させるという課題も内在しており(前記ア(イ)),甲2に白
色及び黄色の発光ダイオードを含めてLED照明装置を構成するという
公知の技術事項が記載されており(前記イ(ア)),甲2には演色性を向上
させるという技術事項が記載されていることから(前記イ(イ)),甲1発
明に甲2に記載された技術事項を採用する動機付けがあり,甲1発明に
甲2に記載された技術事項を採用して,黄色発光ダイオードを設けるこ
とを容易に想到することができたと判断したものと認められる。
⑷ 本件審決の認定判断の誤りの有無
ア 甲1発明の課題の認定について
(ア) 黄色の発色
甲1には,
「イエロー系」,
「イエローとライトイエローの違いが分かり
づらいです。(4頁の上から5枚目の写真の上下)と記載されていると

ころ,この記載からは,甲1製品において,
「イエロー」と「ライトイエ
ロー」の色の相違が判別し難いという問題があることは認められる。し
かし,上記の記載の前提として,
「イエロー」は,色票等ではなくペンラ
イトの「ライトイエロー」との比較がされているにとどまる上(上記写
真)色の相対的な判別の問題と,
, 一般的に各色の基準とされている色(色
票の該当色)にどれだけ近い色を出しているかという発色の問題は異な
るから,
「イエロー」と「ライトイエロー」の色の相違が判別し難いとい
う上記の問題は,
「イエロー」が一般的に黄色の基準とされている色にど
れだけ近い色を出しているかという発色の問題とは異なる。
本件審決は,
「それら『イエロー』及び『ライトイエロー』の各発色に
ついて検討するに,p.4-5 写真には,写真中央に位置する4本のペンライ
トの他に,その左側に2本 『亜美・真美』 『小鳥』,
( 及び ) 右側に2本 『ル

ミスティック』及び『大電光改』)の計4本の他のペンライトが色比較の
ために配置されているところ,上記写真中央の4本(甲1発明)の『イ
エロー』の発色は,上記他の4本のペンライトの黄色の発色とは異なり,
むしろ p.4-6 写真((摘示(1q))示されるオレンジ系の色に近い発色
となっている。(本件審決第6,2,2-1⑵(2-1)ア(ア) 〔本件

審決47頁〕 と述べ,
) 甲1の写真を根拠として,甲1製品の「イエロー」
とされる黄色の発色自体に問題があるという認定をしている。本件審決
が,甲1サイトのアドレスにアクセスの上,ディスプレイ上に表示され
た写真(画像)に基づいて上記認定をしたのか,又は用紙に印刷された
写真に基づいて上記認定をしたのかは,本件審決の記載からは直ちには
明らかでないが,仮に,前者であるとした場合,ディスプレイに表示さ
れる色の発色は,ディスプレイ自体の性能や調整に依存するものである
し,また,後者であるとした場合でも,紙に印刷される色の発色は,紙
の品質やプリンタの性能や調整に依存するものであり,さらにいえば,
写真を撮影したカメラの性能や調整によっても発色は相違するものであ
るから,いずれにしても,実際の甲1製品の発色とディスプレイ上の表
示又は印刷されたものの発色は,必ずしも同じとは限らない。また,甲
1製品と対比された他社のペンライトが,甲1製品よりも,一般的に黄
色の基準とされている色に近いことを裏付ける客観的な証拠はない。そ
のため,甲1の写真に基づいて,
「イエロー」が一般的に黄色の基準とさ
れている色にどれだけ近い色を出しているかを判断することはできず,
甲1の写真を根拠に,
「イエロー」とされる黄色の発色自体に問題がある
と認定することはできない。
その他の甲1の記載によっても,甲1に,
「イエロー」とされる黄色の
発色自体に問題が内在しているという課題が示されていると認めること
はできない。
そうすると,
「イエロー」と「ライトイエロー」の各発色の色の違いを
明確に識別することができないという問題は,
「イエロー」とされる黄色
の発色自体に問題が内在しているということもできるとする本件審決の
判断(前記⑶ア(ア))は誤りである。
(イ) 演色性
本件審決が甲1発明の課題に関して認定する「演色性」は,発色のバ
ランスを崩れないようにすることや,全体が綺麗に光るようにすること
(前記⑶ア(イ)),多くの色彩の選択肢を提供すること(前記⑶ア(ウ)。
本件審決は,第6,2,2-1⑵(2-1)ア(ウ) 本件審決48頁〕
〔 で,
甲10に記載されているように周知の課題といえると認定する。であり,

甲2に記載された技術事項として認定された「演色性」,すなわち,照明
された物体の色が自然光で見た場合に近いか否かという,一般的な意味
での「演色性」(前記⑶イ(イ))とは異なる。
イ 甲2に記載された技術事項の認定
前記⑶イ(イ)のとおり,甲2に記載された技術事項として認定された「演
色性」は,照明された物体の色が自然光で見た場合に近いか否かという,
一般的な意味での「演色性」であるものと認められる。
ウ 相違点1に係る本件発明1の構成のうちの「黄色発光ダイオード」及び
その「発光色」の容易想到性
前記⑵のとおり,甲1発明と甲2に記載された技術事項は,技術分野が
完全に一致しているとまではいえず,近接しているにとどまるから,甲1
発明に甲2に記載された技術事項を採用して本件発明1を想到すること
が容易であるというためには,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採
用するについて,相応の動機付けが必要であるというべきである。
本件審決は,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用する動機付け
があり,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用して本件発明1を容
易に想到することができたと判断する前提として,甲1発明に,
「イエロー」
とされる黄色の発色自体に問題が内在しているという課題があり(前記⑶
ア(ア)),甲1発明に,演色性を向上させるという,甲2と共通の課題があ
ると認定した(前記⑶ア(イ),(ウ))。しかし,前記ア(ア)のとおり,甲1発
明に,
「イエロー」とされる黄色の発色自体に問題が内在しているという課
題があるとする本件審決の認定は誤りであるし,また,本件審決が甲1発
明の課題に関して認定する「演色性」
(本件審決が第6,2,2-1⑵(2
-1)ア(ウ)〔本件審決48頁〕で,甲10に記載されているように周知の
課題といえると認定する事項を含む。 は,
) 甲2に記載された技術事項とし
て認定された「演色性」,すなわち,照明された物体の色が自然光で見た場
合に近いか否かという,一般的な意味での「演色性」とは異なる(前記ア
(イ))。
そうすると,本件審決は,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用
する動機を基礎づける甲1発明の課題の認定を誤っているものであり,ま
た,甲2に記載された技術事項の内容(前記⑴),甲1発明と甲2に記載さ
れた技術事項の技術分野相互の関係(前記⑵)を考慮すると,甲1発明に
は,甲2に記載された技術事項と共通する課題があるとは認められず,そ
のため,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用する動機付けがある
とは認められない。
したがって,甲1発明に甲2に記載された技術事項及び周知の課題(甲
10)を採用して,黄色発光ダイオードを設けることを容易に想到するこ
とができたとは認められず,これを容易に想到することができたとする本
件審決の判断(前記⑶ウ(ア))は誤りである。
本件審決は,甲1発明に甲2に記載された技術事項及び周知の課題(甲
10)を採用して,黄色発光ダイオードを設けることを容易に想到するこ
とができた(前記⑶ウ(ア))という判断を前提として,甲1発明に甲2に記
載された技術事項及び周知の課題(甲10)を採用し,本件発明1の構成
のうちの「黄色発光ダイオード」及びその「発光色」を容易に想到するこ
とができた(本件審決第6,2,2-1⑵(2-1)イ(ア)〔本件審決48
~50頁〕)と判断するところ,その前提とする判断が誤っているから,本
件発明1の構成のうちの「黄色発光ダイオード」及びその「発光色」を容
易に想到することができたという判断も誤りである。
エ 黄色発光ダイオードの単独発光色及び混合発光色の容易想到性
前記ウのとおり,甲1発明と甲2に記載された技術事項との間には課題
の共通性がなく,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用する動機付
けがあるとは認められないが,念のため,仮にそのような動機付けがある
として,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用することにより,黄
色発光ダイオードが単独で発光することにより得られる黄色の発光色,及
び前記黄色発光ダイオードとそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオード
から発せられる光が混合することにより得られる発光色という,相違点1
に係る本件発明1の構成を容易に想到することができたかについて検討
する。
甲2には,前記⑴認定のとおり,カード型LED照明光源10に実装さ
れるLEDを,相関色温度が低い光色用又は相関色温度が高い光色用や青,
赤,緑,黄など個別の光色を有するものとすることができること(段落【0
080】 が記載されているが,
) 当該事項に係る実施の形態1に関連する段
落【0076】ないし【0080】の記載全体をみても,青,赤,緑,黄
など個別の光色のうちからいずれか1色の単色LEDのみを搭載したLE
D光源により青,赤,緑,黄などいずれかの個別の光色を発光するという
意味なのか,複数色のLED光源を搭載して青,赤,緑,黄などの個別の
光色となるように制御するという意味なのか必ずしも判然としない。段落
【0080】に続いて,段落【0081】の前半において「更に,多発光
色(2種以上の光色)のLEDをカード型LED照明光源10に実装する
ことにより,・
・ ・この場合,2種の光色を用いた2波長タイプのときには」
との記載が続くことに照らせば,段落【0080】の上記記載は,前者の
意味,すなわち,1種の光色を用いた1波長タイプを意味し,黄色の単色
LEDを搭載したLED光源により黄色の光色を有するという意味と解す
ることはできる。しかし,本件発明1は,赤色発光ダイオード,緑色発光
ダイオード,青色発光ダイオード,黄色発光ダイオード及び白色発光ダイ
オードを備え,複数得られる特定の発光色として,少なくとも,黄色発光
ダイオードから単独で発せられる光により得られる発光色の他に,黄色発
光ダイオードから発せられる光とそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオー
ドから発せられる光とを混合して得られる発光色が得られなければならな
いところ(相違点1),前者の意味であるとすれば,上記の混合して得られ
る発光色が容易想到であるとはいえない。他方,仮に後者の意味だとして
も,甲2には,複数色のLED光源に黄色のLEDを含んでいるとの直接
的な記載はないから,黄色以外のLED光源によって黄色の光色を得てい
る可能性も否定できず,黄色のLEDの単独発光が容易想到であるとはい
えない。
さらに,前記⑴イで認定したとおり,甲2には,3種の光色を用いた3
波長タイプの場合は青と青緑(緑)と赤発光の組合せ,4種の光色を用い
た4波長タイプの場合は青と青緑(緑)と黄(橙)と赤発光の組合せが望
ましく,特に4波長タイプのときには平均演色評価数が90を超える高演
色な光源を実現できること(段落【0081】)が記載されており,演色性
を向上させるためにRGBY(赤,緑,青,黄)4種類のLEDを用いる
ことが記載されているが,これらの記載は,一般的な意味での演色性の向
上に関するものであるから,これらの記載からは,RGBY4種類のLE
Dを用いた照明装置において,黄色のLEDを単独発光させることが客観
的かつ具体的に把握できるものとは認められない。
また,甲2には,RGBWY(赤,緑,青,白,黄)の5種類のLED
を用いることが,段落【0065】や【0189】に記載されているが,
具体的な記載としては電源に関する説明があるのみで,これらの記載から
は,RGBWYの5種類のLEDを用いた照明装置において,黄色LED
を単独で発光させることやその他の色と混ぜて発光色を制御することは,
客観的かつ具体的に把握することはできない。
そうすると,仮に甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用する動機
付けがあり,甲2に記載された技術事項を甲1発明において採用し,甲1
発明において黄色発光ダイオードを備えたとしても,黄色発光ダイオード
が単独で発光することにより得られる黄色の発光色,及び,前記黄色発光
ダイオードとそれ以外の1つ又は2つの発光ダイオードから発せられる
光が混合することにより得られる発光色という,相違点1に係る本件発明
1の構成を容易に想到することができたとは認められない。
なお,本件発明1は,黄色LEDを追加した上で,白色LEDとそれ以
外の1つ又は2つのLEDから発せられる光が混合して発光色を得,黄色
LEDとそれ以外の1つ又は2つのLEDから発せられる光が混合して
発光色を得るとの構成をとることによって,電圧が低下した状態において
も発色のバランスを保つことができるもの(本件特許の明細書の段落【0
007】【0009】【0010】【0013】~【0017】【002
, , , ,
1】【0033】【0034】
, , )であり,このような発明の効果は,甲1発
明及び甲2に記載された技術事項から予測できるものとはいえないから,
この点からしても,甲1発明に甲2に記載された技術事項を採用すること
によって本件発明1を容易に想到することができたとは認められない。
⑸ 被告の主張について
ア 甲1発明と甲2に記載された技術事項の課題の共通性について
被告は,甲1発明と甲2に記載された技術事項は,いずれも多様な色の
発光色を安定して得るという点で課題を共通にするものであると主張す
る(前記第3,1⑵イ(エ)a)。
しかし,前記のとおり,甲1発明に「イエロー」とされる黄色の発色自
体に問題が内在しているという課題があるとする本件審決の認定は誤りで
あるし(前記⑷ア(ア)),また,本件審決が甲1発明の課題に関して認定す
る「演色性」は,甲2に記載された技術事項として認定される「演色性」,
すなわち,照明された物体の色が自然光で見た場合に近いか否かという,
一般的な意味での「演色性」とは異なるから(前記⑷ア(イ)),甲1発明の
課題に関する本件審決の認定は誤りである(前記⑷ウ)。また,甲2に記載
された技術事項の内容(前記⑴) 甲1発明と甲2に記載された技術事項の

技術分野相互の関係(前記⑵)を考慮すると,甲1発明には,甲2に記載
された技術事項と共通する課題があるとは認められない。
したがって,被告の上記主張を採用することはできない。
イ 甲1発明と周知技術に基づく容易想到性について
また,被告は,相違点1に係る本件発明1の構成は,甲1発明及び乙5
の1ないし9,乙6の1ないし13記載の周知技術に基づいて容易に想到
することができたと主張するので(前記第3,1⑵イ(オ)) 以下検討する。

(ア) 乙5の1ないし4
a 本件特許出願前に頒布された乙5の1ないし4には,テレビジョン
等の製品に関して次のとおりの記載がある。
(a) 乙5の1(特開2001-209047)
「【請求項1】 液晶パネルと,
入力されたカラー映像信号を前記液晶パネルの駆動信号に変換す
る信号処理部と,
前記液晶パネルを照射して像を生成する照射ライトと,
前記液晶パネルの画素に対応した4色以上の微細フィルターから
構成され,前記液晶パネルによる形成像を加法混色によりフルカラ
ー化するカラーフィルターとを備えた液晶表示装置であって,
前記微細フィルターは,人間の視覚特性である反対色を反映したR
-G軸とB-Y軸に対応した4色を有するものであり,
前記照射ライトは,前記微細フィルターの波長領域にピークをもっ
た白色光を照射するものであり,
前記信号処理部は,入力カラー映像信号を前記微細フィルターの色
成分信号に変換するものであることを特徴とする液晶表示装置。」
「【0020】本発明は,
(中略)
(1)広い色再現範囲を表示可能
な液晶表示装置を供給する,
(中略)
(4)更に白色を一定して出力
することが可能である,液晶表示装置を提供するものである。」
(b) 乙5の2(『AQUOSクアトロン』は一体何がすごいのか」と

題するWEBページを印刷した書面)
「『黄色』を加えた革新的な4原色液晶技術『クアトロン』とは」
(1頁)
「4原色液晶技術『クアトロン』の核をなすものは,バックライ
トの透過光を各色に分離するカラーフィルターにイエロー(Y)フ
ィルターが追加されたことである。人の目に見える色は光の3原色
とも呼ばれる『赤』『緑』『青』に対応するRGBの混色により作り
出す方法が一般的だ。こうした3原色の混色によって作り出される
色はカラーチャートとして示される形でR,G,Bの各色を頂点と
した三角形の範囲で表されるが,必ずしも従来型の液晶テレビでは,
あらゆる色の再現範囲をカバーできていたわけではなかった。(1

頁)
「『クアトロン』 RGBにイエロー
は, (Y)を加えることにより,
黄色を中心に3原色では表現できない領域をカバーするとともに,
緑の原色点を若干シフトすることによって,シアンの領域を拡大す
ることにも成功」(2頁)
(c) 乙5の3(特開2001-306023)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,複数色のサブ画素からなる画
素をマトリクス状に配列して画像表示領域を構成し,各サブ画素か
ら射出される色光を,該画像表示領域上で加法混色法により組み合
わせてカラー画像を形成する画像表示装置に関し,例えば,CRT,
液晶等のディスプレイ装置,フロントプロジェクタ,リアプロジェ
クタ等の投写型のディスプレイ装置に利用することができる。」
「【0006】本発明の目的は,広範な色を表示することができ,
特に,印刷物相当の色を表示することのできる画像表示装置を提供
することにある。」
「【0009】また,所定の色を表示する画素は,赤,緑,青の各
色光を射出する3種類のサブ画素を少なくとも備え,さらに色度図
上の赤色,緑色,青色の各点を結んで形成される三角形状の領域以
外の色度図上の点として規定される色の色光を射出するサブ画素
を少なくとも1つ以上含む,4種類以上のサブ画素から構成されて
いることが好ましい。さらに,他の色のサブ画素は,減法混色法に
おける三原色,シアン,マゼンダ,黄色のいずれかであるのが好ま
しく,特に,少なくともシアンを含むのが好ましい。」
(d) 乙5の4(特表2004-529396)
「【請求項1】
少なくとも4つの相異なる原色を使用してカラーイメージを表示
するカラー液晶ディスプレイ(LCD)装置であって,・・・
前記少なくとも4つの原色の光をそれぞれ透過する少なくとも4
つのタイプのカラー・サブピクセル・フィルタ素子を含むカラー・
サブピクセル・フィルタ素子のアレイとを備える装置。
【請求項2】
前記少なくとも4つの原色が,赤,緑,青,および黄を含む請求項
1に記載の装置。」
「【0008】
人間の見る多くの色は,標準的な赤-緑-青(RGB)モニタ上で
は認識することができない。4つ以上の原色を用いるディスプレイ
装置を使用することにより,ディスプレイの再現可能な色域は拡張
される。」
b 前記aの乙5の1ないし4の記載によれば,本件特許出願前におい
て,テレビジョン等の製品における液晶のディスプレイを,赤,緑,
青に加えて黄の4つの原色から構成することが知られていたものと認
められる(被告が乙5の1ないし9により認められると主張する周知
技術は,上記の限度で認められる。。

(イ) 乙6の1,2
a 本件特許出願前に頒布された乙6の1,2には,テレビジョン等の
製品に関して次のとおりの記載がある。
(a) 乙6の1(特開平2-118521)
「2.特許請求の範囲
それぞれ電極が形成されてなる一対の基板,該一対の基板間
に挟持されてなる液晶層及び複数のカラーフイルタを有して
なる液晶表示装置において,該複数のカラーフイルタは赤フイ
ルタ,緑フイルタ,青フイルタ及び白フイルタの4種類のカラ
ーフイルタからなり,該4種類のカラーフイルタで1つのブロ
ックを構成し,該ブロックを複数個マトリックス状に配置した
ことを特徴とする液晶表示装置。」
(b) 乙6の2(特開平4-355722)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】以下に従来例の説明をする。図5
は4つの各画素を2値駆動して16色の表示とする従来の絵素の
構成図であり,レッド(R)画素1,グリーン(G)画素2,ブル
ー(B)画素3およびホワイト(W)画素4はそれぞれ同一の表示
面積をもっている。図4は各色の分光透過率を示したものである。
この場合,各画素の透過,不透過の状態の組み合わせと表示される
色との関係は表1に示すようになる。」
「【0004】
【表1】
表1において,〇印は「透過」状態であることを示す。」
b 前記aの乙6の1,2の記載によれば,本件特許出願前において,
テレビジョン等の製品における液晶のディスプレイを,赤,緑,青に
加えて白の4つの原色から構成することが知られていたものと認めら
れる(被告が乙6の1ないし13により認められると主張する周知技
術は,上記の限度で認められる。。

(ウ) 前記(ア),(イ)のとおり,本件特許出願前において,テレビジョン等
の製品における液晶のディスプレイを,赤,緑,青に加えて黄色の4つ
の原色から構成することや,赤,緑,青に加えて白の4つの原色から構
成することは,周知であったものと認められる。
甲1発明のペンライトも,カラー液晶に係る周知技術(前記(ア),(イ))
も,複数色で構成される光源からの光について同時加法混色を行う点で
は共通し,近接した分野であるとはいえるものの,加色を行う具体的な
構造,発光装置の使用の態様などが相違しており,技術分野が同じとは
いえないから,甲1発明に上記周知技術を採用するに当たっては,具体
的な示唆等が必要であるというべきである。
ところが,甲1発明には,前記⑷ア(ア)のとおり,黄色自体の発色の
問題が課題として示されているとは認められないから,黄色の光源を追
加する動機付けはない。また,甲1には,「電源電圧による色の変化」,
「フルカラーペンライトはRGB LEDの合成によって色を表現して
いるため,電源(電池)の電圧が下がると発色のバランスが崩れます。
(昇圧回路でも入っていない限り避けては通れない問題です)(5頁の

下から2番目の写真の上)という記載があることから,電源電圧の低下
によって発色のバランスが崩れるという課題が示されていると認められ
るが,テレビジョン等の製品の電源は安定しており,電源電圧低下とい
う課題自体が存在しないから,この観点からみても,甲1発明に,テレ
ビジョン等の製品について周知技術である,黄色の原色を追加するとい
う技術事項を採用する動機付けはない。
したがって,相違点1に係る本件発明1は,甲1発明及び乙5の1な
いし9,乙6の1ないし13記載の周知技術に基づいて容易に想到する
ことができたという被告の前記主張は,採用することができない。
⑹ 小括
以上のとおり,相違点1に係る本件発明1の構成は,甲1発明,甲2に記
載された技術事項及び周知の課題(甲10)に基づいて,又は甲1発明及び
乙5の1ないし9,乙6の1ないし13記載の周知技術に基づいて,当業者
が容易に発明をすることができたとは認められず,本件審決の,無効理由1
の相違点1についての判断には誤りがある。そのため,本件審決が,無効理
由1について,本件発明1は,甲1発明,甲2に記載された技術事項及び周
知の課題(甲10)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもの
であるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと
した判断には誤りがある。したがって,取消事由1は理由がある。
2 取消事由5(無効理由2に関する判断の誤り(無効理由2関係))について
⑴ 本件審決は,無効理由2に関し,相違点1に係る本件発明1の構成のうち
の「黄色発光ダイオード」及びその「発光色」について,(2-1)甲1発

明に基く容易想到性について」の項目においては,
「甲1発明は,上記『2-
1⑵』で述べたとおり,
『イエロー』及び『ライトイエロー』の各発色の色の
違いを明確に識別することができないとの問題,要するに,
『イエロー』とさ
れる黄色の発色自体に問題が内在しているものということもできるから,か
かる問題を解決し,黄色の発色における演色性を向上させるために,追加的
に黄色発光ダイオードを設けることは当業者にとって格別困難なことではな
い。」と判断し(本件審決第6,2,2-2⑵(2-1)ア(ア)a〔本件審決
53頁〕,
)このような判断に基づいて,相違点1に係る本件発明1の構成は,
甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものといえると判断した(本
件審決第6,2,2-2⑵(2-1)ア(ウ)〔本件審決54頁〕。また,(2
) 「
-2)甲1発明,甲21及び甲22に記載された技術的事項に基く容易想到
性について」の項目においては,
「甲1発明は,上記『2-1⑵』で述べたと
おり,
『イエロー』及び『ライトイエロー』の各発色の色の違いを明確に識別
することができないとの問題,要するに,
『イエロー』とされる黄色の発色自
体に問題が内在しているものということもできるから,黄色の発色における
演色性向上のために,追加的に黄色発光ダイオードを設けることは,上記甲
21や甲22に記載された技術事項に接した当業者にとって格別困難なこと
ではない。(本件審決第6,2,2-2⑵(2-2)ア(ア)a〔本件審決56

頁〕
)と判断し,このような判断に基づいて,本件発明1(相違点1に係る本
件発明1の構成を含む。)は,甲1発明,甲21及び甲22に記載された技術
事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると判断し
た(本件審決第6,2,2-2⑵(2-2)エ〔本件審決56頁〕。

⑵ しかし,前記1⑷ア(ア)のとおり,甲1発明に,
「イエロー」とされる黄色
の発色自体に問題が内在しているという課題があるとする本件審決の認定は
誤りであるから,そのような認定を前提とする前記⑴の本件審決の無効理由
2についての判断には誤りがある。したがって,取消事由5は理由がある。
3 取消事由6(無効理由3,4に関する判断の誤り(無効理由3,4関係))に
ついて
本件発明2は本件発明1を含み,本件発明2と甲1発明を対比すると,少な
くとも相違点1において異なる。
本件審決は,無効理由3の相違点1についての判断には,無効理由1の相違
点1についての判断を引用し(本件審決第6,2,2-3,⑵ア〔本件審決5
9頁〕,無効理由4の相違点1についての判断には,無効理由2の相違点1に

ついての判断を引用する(本件審決第6,2,2-4,⑵(2-1)ア〔本件
審決60頁〕(2-2)ア〔本件審決61頁〕。
, )
しかし,前記1のとおり,無効理由1の相違点1についての判断には誤りが
あり,前記2のとおり,無効理由2の相違点1についての判断には誤りがある
から,無効理由3,4に関する本件審決の上記判断も誤りである。
したがって,本件審決には無効理由3,4の判断に誤りがあり,取消事由6
は理由がある。
4 結論
以上によれば,取消事由2,3及び4について判断するまでもなく,本件審
決には,これを取り消すべき違法がある。
よって,原告の請求を認容することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
東 海 林 保
裁判官
上 田 卓 哉
裁判官
中 平 健
別紙1 (甲2の記載事項)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,LED照明装置およびカード型LED照明光源に関する。より詳細に
は,複数のLEDが実装されたカード型LED照明光源を用いるLED照明装置と,
このLED照明装置に好適に用いられるカード型LED照明光源とに関している。
【背景技術】
【0002】
照明器具や看板の光源として,従来から白熱電球,蛍光ランプ,高圧放電ランプ
などが使用されている。これらの光源に変わる新しい照明光源として,LED照明
光源の研究が進められている。このLED照明光源は,上記の光源と比べて寿命が
長いという優れた利点があり,次世代の照明光源としての期待は大きい。しかし,
1個のLED素子では,光束が小さいため,白熱電球,蛍光ランプと同程度の光束
を得るためには,複数のLED素子を配置してLED照明光源を構成する必要があ
る。
【0003】
以下,図面を参照しながら,従来のLED照明光源を説明する。
【0004】
図1(a)および(b)は,従来のLED照明光源の構成を示し,図2(a)お
よび(b)は,そのLED照明光源におけるLEDの断面構成を示している。
【0005】
このLED照明光源は,図1(a)および(b)に示すように,基板21を備え
ており,その基板21の上に複数のLEDベアチップ22が実装されている。本明
細書において,「LEDベアチップ」とは,基板21に実装する前の段階において,
LEDが樹脂などによってモールドされていないものを意味するものとする。また,
実装前の段階でLEDがモールドされており,発光部などが露出していない状態に
あるLEDを「LED素子」と呼んで区別することにする。図1(a)に示す基板
21の上には,LEDベアチップ22から出た光を透過する孔23aが開けられ板
23が設けられている。一方,図1(b)に示す基板21の上には,LEDベアチ
ップ22から出た光を透過する層状の樹脂24が形成されており,LEDベアチッ
プ22は樹脂24で覆われている。」

【0007】
図1(a)および図2(a)に示される構成において,LEDベアチップ22で
発生した光は,板23に設けられた孔(開口部)23bの内周面に相当する反射面
23aで反射され,素子外へ出射する。板23の孔23bには,LEDベアチップ
22とワイヤ41および42とをモールドするように樹脂24が充填されている。
また,図1(b)および図2(b)に示される構成においては,LEDベアチップ
22で発生した光はモールド樹脂24を介して素子外へ出射する。
【0008】
LEDベアチップ22におけるn型半導体層32の電極32aとp型半導体層3
4の電極34aとの間に順方向のバイアス電圧を印加すると,電子および正孔が半
導体層内に注入され,再結合する。この再結合により,活性層33で光が発生し,
活性層33から光が出射される。LED照明光源では,基板上に実装された複数の
LEDベアチップ22から出射された光を照明光として利用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら,上記構成のLED照明光源では,発光に伴ってLEDベアチップ
22が多量の熱を発生する。発生した熱は,素子基板31を介して基板21から放
散することが意図されている。しかし,このようなLED照明装置の実用化にあた
っては,以下のような解決すべき課題が残っている。
【0010】
上述したように,各LEDベアチップ22からの光束は小さいため,所望の明る
さを得るためには,相当な数のLEDベアチップ22を基板21上に配列する必要
がある。このため,多数のLEDベアチップ22を設けても基板のサイズが大型化
しないように,実装するLEDベアチップ22の高密度化を図らなければならない。
【0011】
また,各LEDベアチップ22の光束をできる限り増加させるために,照明以外
の通常用途における電流(例えば20mA程度;0.3mm角のLEDベアチップ
を想定すると単位面積当たりの電流密度は約222.2[mA/mm 2])よりも大
きな電流(過電流:例えば40mA程度;前記に同じく単位面積当たりの電流密度
は約444.4[mA/mm2])を各LEDベアチップ22に流す必要がある。各
LEDベアチップ22に大きな電流を流した場合には,LEDベアチップ22から
の発熱量が大きくなるため,LEDベアチップ22の温度(ベアチップ温度)が高
温に上昇する。ベアチップ温度はLEDベアチップの寿命に大きな影響をもたらす。
具体的には,ベアチップ温度が10℃上昇すると,LEDベアチップ22を組み込
んだLED装置の寿命は半減するといわれている。
【0012】
このため,一般にLEDの寿命は長いと考えられているが,LEDを照明用途に
用いる場合は,その常識は通用しなくなる。また,発熱量の増加に伴ってベアチッ
プ温度が高くなると,LEDベアチップ22の発光効率も低下するという問題もあ
る。
【0013】
以上の理由から,多数のLEDベアチップ22を高密度で実装したLED照明装
置を実用化するには,従来以上に高い放熱性を実現し,ベアチップ温度を低く抑え
なければならない。また,LEDベアチップ22から発する光をできる限り無駄な
く照明光として使用できるように,光の利用効率を高くする必要もある。
【0014】
このような課題を解決するため,従来から種々のLEDベアチップを集積したL
ED照明光源の提案がなされてはいるが,それらのすべての課題に十分に対応でき
るLED照明光源の出現は見られていない。
【0015】
以下,図1(a)および(b)や図2(a)および(b)を参照しながら,従来
のLED照明光源の問題を説明する。まず,LEDの連続した点灯により,集積さ
れた多数のLED基板の中央部が熱くなり,LED基板の周辺部との温度差が大き
くなるという問題がある。例えば,図1(a)および図2(a)に示す構成は,L
EDのドットマトリクスディスプレイに採用されている。LEDディスプレイでは,
板23が各LEDの発光と非発光の部分のコントラストを上げるように機能する。
ディスプレイの場合,全てのLEDが常に大出力で点灯状態になることはなく,発
熱は大きな問題にならないが,照明装置として使用する場合には,全LEDが長時
間点灯状態を維持するため,発熱の問題が顕在化する。
【0016】
上記従来の構成例では,基板21および板23の材料に樹脂が用いられ,一体化
される。このため,基板21および板23の各熱膨張率は略等しいが,通常の樹脂
材料の熱伝導率は低く,熱がこもりやすくなるので,大出力で常時点灯される照明
装置には適していない。
【0017】
また,一体化される基板21と板23の基板中央部と周囲部には温度差があるた
め,材質の熱膨張率差により基板周囲部に大きな応力が発生する。照明装置にLE
Dを応用する場合,LEDの点灯・消灯を繰り返すたびに加熱による応力が発生す
るため,ついにはLEDの電極32aや電極34aの断線につながる。」

【0021】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり,これらのすべての課題(高密
度化,放熱性,光利用効率)を同時に解決できるLED照明光源およびLED照明
装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明のLED照明光源は,素子基板上に発光部を有するLEDベアチップが放
熱基板上に設けられているLED照明光源であって,前記LEDベアチップの前記
発光部は,前記放熱基板に配置され,前記LEDベアチップの前記素子基板の光出
射表面は,辺縁部が中央部に比べて低背である傾斜面状として形成している。」

【発明の効果】
【0056】
本発明のLED照明光源によれば,発光部から発せられた大部分の光が,光出射
側表面の周縁部にあっても全反射されることなく外部に出射されるため,光取り出
し効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
本発明のLED照明装置は,着脱可能なカード型LED照明光源に電気的に接続
されるコネクタと,このコネクタを介してカード型LED照明光源と電気的に接続
される点灯回路とを備えており,カード型LED照明光源を装着することにより,
照明光を放射することができる。カード型LED照明光源は,後に詳しく説明する
ように,複数のLEDが放熱性に優れた基板の片面に実装された構成を有している。
【0058】
従来のLED照明光源について説明したように,多数のLED素子を基板上に高
密度で実装し,かつ,各LED素子に大きな電流を流した場合,LEDの発熱量が
過大なレベルに達し,LEDの寿命が短縮されるという問題があり,このことがL
ED照明装置の実用化を阻んでいた。
【0059】
本発明では,照明装置の光源部分を着脱可能なカード状構造物によって構成し,
各LEDで発生した熱をスムーズに放熱させる効果を高めるとともに,寿命の尽き
た光源だけを新しい光源と取替え可能とすることにより,LED照明装置の光源以
外の構造体を長期間使用できるようにしている。
【0060】
放熱性向上の観点からは,LEDはベアチップとして基板の片面に実装されてい
る方が好ましい。これは,LEDで発生した熱が基板に直接的に伝達され,より高
い放熱性が発揮されるからである。」

【0065】
後述するように,本発明のカード型LED光源およびLED照明装置を用い,青,
緑(青緑)
,黄(橙),赤,白のLEDを個別に駆動することによって照明を行う場
合は,各色のLEDについて2つの電極(計10個の電極)を設けることが好まし
い。


【0070】
(実施形態1)
図3(a)は,本発明によるLED照明装置の一部を示す斜視図であり,着脱可
能な複数のカード型LED照明光源10が嵌め込まれるヒートシンク19を示して
いる。
【0071】
カード型LED照明光源10は,ヒートシンク19の側面に設けられたスロット
を通じて所定位置まで挿入される。ヒートシンク19は,装着されたカード型LE
D照明光源10の裏面と熱的に接触し,カード型LED照明光源10の基板裏面か
ら熱を外部に放散する。」

【0076】
次に,図3(b)を参照する。
【0077】
図3(b)に示すLED照明装置は,公知の白熱電球と置き換え可能な照明装置
であり,カード型LED照明光源を着脱可能に支持するアダプタ20と,装着され
た状態のカード型LED照明光源を覆う光透過カバー20aとを備えている。アダ
プタ20の内部には不図示の点灯回路が設けられている。アダプタ20の下部には,
外部から内部の点灯回路に電気エネルギーを供給するための給電ソケット(スクリ
ューソケット)が設けられている。この給電ソケットの形状およびサイズは,通常
の白熱電球に設けられた給電ソケットの形状およびサイズと等しい。このため,図
3(b)のLED照明装置は,白熱電球がはめ込まれる既存の電気器具にそのまま
装着されて使用され得る。なお,スクリュー型ソケットに代えて,ピン型ソケット
を採用してもよい。
【0078】
図3(b)に示されているLED照明装置のアダプタ20には,カード型LED
照明光源10を挿入するためのスロットが設けられている。スロットの奥には,不
図示のコネクタが配置されており,このコネクタを介してカード型LED照明光源
10と点灯回路との電気的接続が行われる。なお,図示されている例では,アダプ
タ20にスロットが設けられ,このスロットを介してカード型LED照明光源10
の着脱が行われるが,着脱の形式はこれに限定されない。スロットを設けないタイ
プの実施形態については,後に説明する。上述のように,図3(b)のカード型L
ED照明光源10は,コネクタに対して簡単に抜き差しが行える機構を有している
ため,照明器具との間で容易に取り外し交換が可能となる。このようにカード型L
ED照明光源10の取り外しが容易なため,以下に述べる利点がある。
【0079】
まず,第1に,LEDの実装密度が異なるカード型LED照明光源10を差し替
えることにより,発光光量が異なる照明器具を容易に提供できる。第2に,カード
型LED照明光源10が短期間で劣化して光源としての寿命は短くなっても,通常
の電球,蛍光灯の交換と同様に,カード型LED照明光源10のみを差し替えるだ
けで光源部のみの交換を行うことができる。
【0080】
第3に,カード型LED照明光源10に実装されるLEDを,相関色温度が低い
光色用または相関色温度が高い光色用や青,赤,緑,黄など個別の光色を有するも
のとすることができる。このようなカード型LED照明光源10から適切なものを
選択すれば,対応するLED照明装置に装着すれば,LED照明装置の発光光色を
切り替えや制御することができる。
【0081】
更に,多発光色(2種以上の光色)のLEDをカード型LED照明光源10に実
装することにより,相関色温度が低い光色から相関色温度が高い光色まで,1枚の
カード型のカード型LED照明光源10によって発光光色を制御できる。この場合,
2種の光色を用いた2波長タイプのときには演色性は低いが高効率な光源が実現可
能であり,相関色温度が低いときには赤と青緑(緑)発光の組合せ,相関色温度が
高いときには青と黄(橙)発光の組合せを採用することが望ましい。なお,青と赤
との発光のLEDの組合せに青で励起されこの中間の波長に発光ピークのある蛍光
体(例えば,YAG蛍光体など)を加えた場合は,高効率かつ平均演色評価数が8
0以上の光源を実現できる。更に,3種の光色を用いた3波長タイプの場合は青と
青緑(緑)と赤発光の組合せ,4種の光色を用いた4波長タイプの場合は青と青緑
(緑)と黄(橙)と赤発光の組合せが望ましく,特に4波長タイプのときには平均
演色評価数が90を超える高演色な光源を実現できる。なお,実装されるLEDベ
アチップが単色または紫外線を放射する場合や,LEDベアチップで蛍光体や燐光
材を励起することによって白色発光する場合にも本発明を適用できる。また,蛍光
体や燐光材を基板に含有させてもよい。更に,青発光のLEDと青色光で励起され
る蛍光体や燐光材と赤発光LEDを組み合わせ,高効率・高演色を同時に満足させ
ることもできる。


【0088】
(実施形態2)
次に,本発明によるカード型LED照明光源の実施形態を説明する。
【0089】
図4(a)および(b)は,本実施形態におけるカード型LED照明光源の構成
を示している。本実施形態のカード型LED照明光源は,図3の照明装置に対して
好適に用いられる。」

【0125】
上述した例では,GaN系半導体層/サファイア素子基板構成で青色光を発する
LEDベアチップ2を用いた青色光のカード型LED照明光源について説明したが,
他の赤色光を発するLEDベアチップ,緑色光を発するLEDベアチップまたは黄
色光を発するLEDベアチップを用いるカード型LED照明光源であっても,本発
明を同様に適用できることは勿論である。また,これらの4種のLED素子を混在
配置させ,それらの発色光を配光制御して白色光や可変色光を提供する白色カード
型LED照明光源でも,本発明が適用可能であることは勿論である。」

【0136】
(実施形態3)
次に,本発明によるカード型LED照明光源の他の実施形態を説明する。
【0137】
まず,図12を参照しながら,本実施形態のカード型LED照明光源を説明する。
【0138】
本実施形態のカード型LED照明光源は,図12に示すように,金属板50と,
多層配線基板51と,金属製の光学反射板52とを備えている。金属板50および
多層配線基板51は,全体として1つの「カード型LED照明光源」を構成してい
る。


【0140】
金属板50の裏面は,平坦であり,熱伝導性に優れた部材(不図示)の平坦な面
と接触することができる。」

【0188】
本実施形態において,給電電極は,コネクタ電極との接触についての機械的誤差
や,ビアの製造誤差を考慮し,略四角形の形状を持つように設計し,幅0.8mm,
長さ2.5mm,給電電極間の中心と中心の距離1.25mmに設定している。カ
ード型LED照明光源の基板上において,できるだけ多くの独立した回路を形成す
るには,給電電極の数は多い方が好ましい。本実施形態の構成例では,16個の給
電電極を設けることが可能である。
【0189】
定電流駆動用に,同数のアノード側電極およびカソード側電極を設ける場合,青,
緑(青緑)
,黄(橙),赤,および白の各々に給電電極に割り当てた上で,6個(3
経路)の予備端子を設けることが可能となる。」

【0192】
図16は,LED点灯回路の構成例を示すブロック図である。図示されている構
成例では,カード型LED照明光源の点灯回路70が整流/平滑回路71,電圧降
下回路72,および定電流回路73を備えている。整流/平滑回路71は,AC1
00Vの電源に接続され,交流を直流化する機能を有する公知の回路である。なお,
電源はAC100Vに限られず,DC電源を用いても良い。DC電源を用いる場合,
平滑回路と降圧回路の組み合わせた整流/平滑回路71を用いる代わりに,電圧変
換回路(降圧・昇圧回路)を用いれば良い。」
「【0213】
以上説明してきたように,本実施形態では,カード型LED照明光源の金属板の
裏面に給電電極が存在せず,金属板裏面が平坦である。このため,この金属板と熱
伝導性に優れる部材(照明装置に設けられる)との接触面積を広く確保し,カード
型LED照明光源から外部への熱の放散を促進することができる。この接触面積は,
LEDが配列された領域(光出射領域またはLEDクラスタ領域)の面積以上の大
きさをもつことが好ましい。
【0214】
本実施形態では,1つの基板上に異なる波長の光を発する4種類のLEDベアチ
ップを配列しているが,本発明はこれに限定されない。発する光の色(波長帯域)
は,1〜3種類でも5種類以上であってもよい。また,各々が複数の光を発するL
EDベアチップや,蛍光体を添加することで白色光を発するLEDベアチップを用
いてもよい。なお,白色光を放射するLEDベアチップを用いない限り,一般的に
は,白色発光のためにLEDベアチップの周囲を蛍光体で覆う必要がある。この場
合,基板と反射板とによって形成される空間内に蛍光体を封入すれば,LEDによ
る蛍光体励起を実現できる。このようにする代わりに,蛍光体を分散させたシート
を反射板の上面に張りつけてもよい。また,前記蛍光体を分散させたシート自体を
更に透明な樹脂材料でカード型LED光源と一体に形成しても良い。」
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図12】 【図16】
(別紙審決書の写し省略)

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