ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和3(行ケ)10071 審決取消請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和3年10月14日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告プーマエスイー同訴訟代理人弁理士三上真毅 被告株式会社プロ・フィットスポーティング |
| 法令 |
商標権 商標法4条1項11号6回 商標法4条1項15号5回 |
| キーワード | 審決15回 無効4回 実施2回 無効審判1回 商標権1回 |
| 主文 | 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。15 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を3 0日と定める。 |
| 事件の概要 | 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) ⑴ 被告は,以下の商標(登録第6123121号。以下「本件商標」という。) の商標権者である。25 商 標 別紙1のとおり 登録出願日 平成30年2月16日 登録査定日 平成31年1月21日 設定登録日 平成31年2月22日 指 定 商 品 第18類「折り畳み式傘,晴雨兼用傘,ビーチパラソル, 日傘」及び第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」5 ⑵ 原告は,令和2年1月31日付けで,本件商標の登録を無効とすることを 求める商標登録無効審判を請求した。 |
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令和3年10月14日判決言渡
令和3年(行ケ)第10071号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和3年8月31日
判 決
原 告 プ ー マ エ ス イ ー
同訴訟代理人弁理士 三 上 真 毅
被 告 株式会社プロ・フィットスポーティング
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を3
0日と定める。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2020-890010号事件について令和3年4月19日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)
⑴ 被告は,以下の商標(登録第6123121号。 「本件商標」以下 という。)の商標権者である。商 標 別紙1のとおり登録出願日 平成30年2月16日登録査定日 平成31年1月21日設定登録日 平成31年2月22日指定商品 第18類「折り畳み式傘,晴雨兼用傘,ビーチパラソル,
5 日傘」及び第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
⑵ 原告は,令和2年1月31日付けで,本件商標の登録を無効とすることを求める商標登録無効審判を請求した。原告において本件商標が商標法4条1項11号及び同項15号に該当するとして引用する商標は,以下の10件の登録商標(以下「引用商標1」ないし「引用商標10」といい,包括して「引用商標」という。)であって,いずれも別紙2と同様の構成からなり,現に有効に存続しているものである。
① 登録第1716371号商標(指定商品第16類及び第24類)
② 登録第1849612号商標(指定商品第9類)
③ 登録第1974801号商標(指定商品第30類及び第32類)
④ 登録第2091935号商標(指定商品第6類,第9類,第12類,
第13類,第19類及び第22類)
⑤ 登録第2400549号商標(指定商品第8類)
⑥ 登録第2428528号商標(指定商品第14類,第20類及び第24類)
⑦ 登録第2602055号商標(指定商品第18類,第21類,第25類及び第26類)
⑧ 登録第2680732号商標(指定商品第9類,第20類ないし第22類,第25類,第27類及び第28類)
⑨ 登録第2721876号商標(指定商品第3類及び第4類)
⑩ 登録第3328661号商標(指定商品第18類)
⑶ 特許庁は,前記⑵の請求を無効2020-890010号事件として審理を行い,令和3年4月19日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月30日,原告に送達された。
⑷ 原告は,令和3年6月1日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起し
5 た。2 本件審決の理由の要旨
⑴ 本件商標と引用商標は,語頭を含めた「pum(PUm)」の文字を共通にするものの,末尾における「s」の文字と「A」の文字との相違,「’」(アポストロフィ)の有無,下線のように表されたものの有無,書体が斜体であるか否か及び文字の横線が細いか否かといった点において異なることから,外観においては,相紛れるおそれはない。また,称呼においては,本件商標から生じる「パムズ」,「パムス」,「プムズ」又は「プムス」の称呼と引用商標から生じる「プーマ」の称呼とは,たとえ語頭における「プ」の音を共通にする場合があるとしても,いずれも3音という短い音数においては,2音目及び3音目における音の相違が称呼全体に与える影響は大きく,それぞれを一連に称呼しても,全体の音調,音感が異なり,相紛れるおそれはない。さらに,観念においては,本件商標からは特定の観念を生じないのに対し,引用商標からは「請求人のブランド」としての観念を生じるものであるから,観念において相紛れるおそれはない。そうすると,本件商標と引用商標とは,その外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから,本件商標は商標法4条1項11号に該当しない。
⑵ 引用商標の周知著名性の程度は極めて高く,本件商標の指定商品と原告の業務に係る商品との間の関連性の程度は高く,取引者及び需要者の共通性も高いといえるが,本件商標と引用商標との類似性の程度は極めて低く,また,引用商標の独創性の程度は低いことからすると,商標をワンポイントマークとして表示する場合があるという取引の実情を考慮したとしても,本件商標に接する取引者及び需要者が,原告又は引用商標を連想又は想起することはないというべきであり,本件商標は,これをその指定商品に使用をしても,
5 その取引者及び需要者をして,当該商品が原告の商品に係るものであると誤信させるおそれがあるものとはいえず,当該商品が原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがあるものともいえないから,商標法4条1項15号に該当しない。
第3 当事者の主張
1 取消事由1(本件商標の商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)
⑴
(原告の主張)
ア 本件審決が本件商標と引用商標の類否判断を誤っていることについて(ア) 外観についてa 本件審決は,本件商標を構成する欧文字について,「pum’s」と,全てアルファベットの小文字と認定しているが,1文字目と4文字目は,「u」「m」と比べ,フォントの大きさが明らかに異なることから,大文字「P」「S」と認識され,また,2文字目は,小文字「u」に特有の右側の縦棒が描かれていないため,大文字「U」と捉えられるから,本件商標の構成文字は,「PUm」「S」といえる。b 本件商標の「PUmS」の欧文字は,各文字が縦線を太く,横線をやや細く,角部分に丸みを持たせた独特の書体により斜体で表され,「m」と「S」の間にアポストロフィを各文字の縦線とほぼ同じ太さ・向きに配し,さらに,「S」の下端が,「P」の縦線の手前まで描かれた横線と一体に描かれており,全体をもって略横長の長方形の左右の辺をやや右斜めにした平行四辺形の枠を構成するように表して構成される。引用商標の「PUmA」の文字部分は,各文字が縦線を太く,横線を細く,各文字の線を垂直に表すようにし,角部分に丸みを持たせた
5 縦長の独特の太く四角い書体で表され,全体をもって略横長の長方形
を構成するように表して構成される。c⒜ 本件商標と引用商標は,各文字を縦線が太く,横線がやや細く,角部分に丸みを持たせた独特の書体及び欧文字4文字の構成において共通している。
⒝ 本件商標は斜体である点で引用商標と異なるが,文字(特に,欧
文字)を斜体で表すことは一般に行われており,それによって,両者の出所が異なる特徴として認識することはあり得ない。
⒞ 本件商標の最後の欧文字「S」は,下端が,左方向に長く線状に
描かれているが,スポーツやアパレル業界において,欧文字からなる商標の下や上に,構成文字とつながって線状の図形を装飾的に描くことは,ひんぱんに用いられている。
⒟ 引用商標では,「A」の文字は二本の太い縦線に挟まれた内側が
細い横線によって上下二つの空間を有するようにデザインされており,本件商標の「S」の文字も,二本の太い縦線に挟まれた上下二つの空間を有するように書されているから,近似した印象を与え,本件商標と引用商標において相違する最後の「A」と「S」の文字が相似た文字に看取される場合もある。
⒠ 本件商標は,「PUm」と「S」の間にアポストロフィが表され
ているところ,視覚上「PUm」と「S」とに分離して認識され,また,「’S」の部分は,名詞の所有格を示す語尾であるという以上に特定するものではなく,「PUm’S」の欧文字に接する取引者,需要者が,「PUm」の文字部分のみを捉え,該文字部分をもって取引に資する場合も決して少なくないから,「PUm」の欧文字部分が本件商標の要部である。
⒡ 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,冒頭部分の3文字「P
5 Um」が同一で,縦線が太く,横線がやや細く,角部分に丸みを持
たせた独特の書体により各文字が書されている態様において 引用商標と酷似しており,さらに,本件商標の「S」の文字の下端が「P」の縦線の手前まで横一の太線で延伸されていることで,本件商標の外輪がはっきりと表され,略横長の平行四辺形の枠を構成するように表した印象を看者に強く与え,略横長の長方形の枠を構成するように表した印象を看者に与える引用商標と共通する。したがって,本件商標は,引用商標の顕著な特徴を備えており,引用商標の周知著名性に係る事情をも勘案して全体的に考察すれば,両商標は,類似の商標といえる。(イ) 称呼について本件商標から需要者が認識する自然な称呼は,「プムズ」又は「プムス」,あるいは,「PUm」の要部から生ずる称呼「プム」といえる。これらと引用商標から生ずる称呼「プーマ」とを対比すると,2音(3音)又は4音という音構成において,2音目以降,長音の有無において差異を有するとしても,称呼の識別において重要な語頭音,及び,短い音構成において語尾音の子音(マ行)を共通にし,それぞれを一連に称呼した場合には,全体の語調,語感が極めて近似したものとなり,互いに聞き誤るおそれがある。本件審決は,本件商標の要部である「PUm」の欧文字部分から生ずる「プム」の称呼と引用商標から生ずる称呼とを対比しておらず,両商標の称呼の認定,及び両称呼の類否判断を誤ったものである。(ウ) 観念について本件商標からは特定の観念が生じない一方,引用商標からは周知著名な出所標識の観念が生じるものであるから,観念において比較することはできない。
5 (エ) 一般的・恒常的な取引の実情について
本件商標の指定商品は,引用商標の指定商品と同一又は,用途・目的・品質・販売場所等を同じくし,関連性の程度が極めて高く,注意力が高いとはいえない一般消費者を需要者とする点や,商標をワンポイントマークとして小さく表示する場合も少なくないという点でも共通する。その場合,商標の微細な点まで表されず,需要者が商標の全体的な印象に圧倒され,些細な相違点に気付かないことも多い。(オ) アンケートの結果原告は,令和3年6月28日(月)から30日(水)にかけて,株式会社マクロミルに登録されたリサーチモニターの中から,消費者調査を実施し,439の有効回答を得た(甲159,160。以下「本件消費者調査」という。)。本件商標から想起する内容について,「PUMA」又は「プーマ」を想起したと回答した者は,全439名のうち,31名であった。また,被告が本件商標を付して販売した帽子からどのようなスポーツブランドを想起するかについて,「PUMA」,「プーマ」又は「ピューマ」と回答したのは,49名であった。4つの質問において,本件商標から,原告のことを明らかに想起,連想したのは,全回答者439名のうち15%に当たる66名であった。さらに,被告が本件商標を付して販売した帽子の画像の横に,本件商標を引用商標に置き換えた帽子の画像を並べ,回答者がこれを見てどのような印象を受けるか,5つの選択肢の中から一つを選んで回答する質問に対して,全回答者439名のうち,「似ている」と回答した者が18%,「なんとなく似ている」と回答した者が34.6%あり,回答者のうち過半数を超える者が,本件商標と引用商標の印象について「似ている」又は「なんとなく似ている」と答えている。イ 小括
5 以上によれば,本件商標は,引用商標に類似する商標であって,その指
定商品及び指定役務は引用商標の指定商品と同一又は類似するから,商標法4条1項11号に該当する。これを否定した本件審決の判断は誤りである。
⑵
(被告の主張)
争う。
2 取消事由2(本件商標の商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)
⑴
(原告の主張)
ア 混同を生ずるおそれについて「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断すべきである。(ア) 本件商標と引用商標との類似性の程度本件商標と引用商標とは,構成文字の一部が多少異なったとしても,引用商標の周知著名性を印象付ける部分(略横長の長方形を構成するようにロゴ化して表した独特の太く四角い書体,3文字目の欧文字のみが小文字「m」と看取される態様)が共通しており,それによって両商標の印象が近似している。また,本件商標からは明確な意味合いが生じないため,両商標には観念上,明確な差異が認められない。したがって,商標全体の類似性の程度は高い。(イ) 引用商標の周知著名性及び独創性の程度引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係るスポーツ関連の商品を表すものとして需要者の間に広く認
5 識されているものであり,引用商標の周知著名性の程度は極めて高い。
引用商標は,各文字が縦線を太く,横線を細く,各文字の線を垂直に表すようにし,そして,角部分に丸みを持たせた縦長の独特の太く四角い書体で表され,全体をもって略横長の長方形を構成するように表してなる印象を与える特徴,3文字目の欧文字のみが小文字と認識される態様で書されている特徴を備えており,その独創性は高い。本件審決は,引用商標が既成の語からなることを理由に独創性が低いとしているが,「PUM」で始まる英単語自体,数多く存在しない(東京書籍株式会社発行「フェイバリット英和辞典」〔甲54〕には,「PUM」で始まる英単語は僅かに8語しかない。)点は考慮されるべきである。(ウ) 引用商標の指定商品等と原告の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度本件商標の指定商品と原告の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度は高い。(エ) 取引者及び需要者の共通性その他取引の実情本件商標の指定商品には,日常的に利用される性質の商品が含まれ,主たる需要者は,スポーツの愛好家を始めとして,必ずしも商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない一般の消費者を含むものであり,商品の購入に際し,メーカー名やハウスマーク等について常に注意深く確認するとは限らず,小売店の店頭等で短時間のうちに購入商品を決定するといえる。したがって,特に,ワンポイントマークとして使用された場合等には,引用商標と類似して認識されるとみるのが相当である。(オ) 本件消費者調査の結果本件消費者調査の結果,15%もの人が,本件商標から引用商標及び
5 原告のことを連想又は想起した。
イ 小括本件商標は,その指定商品について使用された場合,これに接する取引者,需要者は,本件商標の登録出願前から,原告の業務に係るスポーツシューズ,被服,バッグ等のスポーツ用品・スポーツウェアを表示する商標として周知著名である引用商標を連想,想起し,当該商品が原告又は原告と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがあるから,商標法4条1項15号に該当する。これを否定した本件審決の判断は誤りである。
⑵
(被告の主張)
争う。
第4 当裁判所の判断
1 引用商標について証拠(甲56ないし135〔枝番を含む。〕)によれば,原告は,1972年(昭和47年)から我が国において,日本法人であるプーマジャパン株式会社を通じて事業を展開しており,引用商標や,引用商標と動物「ピューマ」の図柄を結合させた商標は,同社のオンラインサイト及びカタログ並びに各種雑誌及び各種オンラインサイト等において,ゴルフ用シューズ等の靴,ゴルフ用シャツ等のウェア,帽子及びバッグに2005年(平成17年)頃から現在に至るまで継続して使用されており,同社の業務に係るスポーツ関連の商品について,相当程度の出荷数量及び売上高又は出荷金額があり,これらの事項についてのランキングにおいても上位に位置していることが認められる。そうすると,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,原告の業務に係るスポーツ関連の商品を表すものとして需要者の間に広く認識されているものと認められる。
2 取消事由1(本件商標の商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)につい
5 て
⑴ 本件商標と引用商標の類否判断についてア 外観(ア) 本件商標は,「pum’s」の文字を太字の斜体の書体で表し,末尾の「s」の文字の下端を語頭の「p」の文字の下部まで横一直線に延伸し,下線のように表されて構成されている。原告は,本件商標の1文字目と4文字目は,大文字「P」「S」と認識されると主張するが,1文字目の左側の縦棒が下に突き出しているのは小文字であるからなのは明らかであり,4文字目も上端が他の小文字と同じ高さに位置しているから,大文字とは認識されない。また,原告は,本件商標の2文字目は,右側の縦棒がないため,大文字「U」と捉えられると主張するが,2文字目は他の小文字と同じ大きさであって,直ちに採用できない。一方,引用商標は,「PUmA」の文字を縦線を太く垂直に,横線を細く描く書体で表し,各文字は,小文字である「m」も含めて,同じ高さで構成されている。両者は,語頭を含めた「pum(PUm)」の文字を共通にするが,末尾において本件商標が小文字の「s」であるのに引用商標が大文字の「A」であるという文字の相違,アポストロフィの有無,下線のように表されたものの有無,書体が斜体であるか否か及び文字の横線が細いか否かといった点において明らかに異なり,外観においては,相紛れるおそれはない。(イ) 原告は,第3の1⑴ア(ア)cのとおり,るる主張するが,前記(ア)で認定したとおり,本件商標と引用商標の外観上の相違は明白であり,仮に,原告が主張する個別の点につき一定の類似が認められるとしても,そのことから,外観において相紛れるおそれがあるということはできない。
5 なお,念のために判断すれば,上記c⒜については,引用商標は文字の横線が細いことが明確であるのに対し,本件商標では縦線と横線の太さの違いは子細に見なければ看取できず,逆に,本件商標では角部の丸みは明確であるが,引用商標では明らかでないし,同⒝については,本件商標が斜体であるのに対し,引用商標は各文字が垂直かつ同じ高さで,長方形の範囲に収まって全体として整然とした印象を与えるものであって,両者の印象が異なることは明らかであるし,同⒞については,いずれにしても本件商標における「s」の文字の下端の延伸された部分が引用商標との相違点として着目されないということにはならないし,同⒟については,相違する最後の「A」と「S」の文字が相似た文字に看取される場合があるとは認め難いし,同⒠については,特段の意味内容を想起させない「pum」の欧文字部分が本件商標の要部であるとは到底いえず,原告の各主張は個別にみても採用し得ない。そうすると,本件商標と引用商標の外観は大きく異なるものであって,前記1の引用商標の周知著名性を勘案しても,両者の外観が類似するとの原告の主張は採用できない。イ 称呼(ア) 本件商標からは「パムズ」,「パムス」,「プムズ」又は「プムス」の称呼が生じるのに対し,引用商標からは「プーマ」又は「ピューマ」の称呼が生じ,語頭の「pu」ないし「PU」を「プ」と読んだ場合に音を共通にする場合があるとしても,いずれも3音という短い音数においては,2音目及び3音目における音の相違,特に,3音目の「ズ」ないし「ス」(本件商標)と「マ」(引用商標)の相違は大きいものであって,相紛れるおそれはない。(イ) 原告は,前記第3の1⑴ア(イ)のとおり,本件審決が,本件商標の要部である「PUm」の欧文字部分から生ずる「プム」の称呼と引用商標
5 から生ずる称呼とを対比していないと主張するが,本件商標における「pum」の欧文字部分が要部であるという主張が到底採用できないことは前記アのとおりである上,仮に同部分を本件商標の要部とし,これを「プム」と称呼し,引用商標を「プーマ」と称呼したとしても,短音と長音の違い,「ム」と「マ」の違いは,短い標章の中では大きな差異として認識されるものというべきである。ウ 観念本件商標が造語であることから,特定の観念を生じないのに対し,引用商標が周知著名であることから,「原告のブランド」との観念を生じ,両者は明確に区別することができ,相紛れるおそれがない。エ その他原告は,前記第3の1⑴ア(エ)のとおり,本件商標と引用商標の需要者である一般消費者は,衣類や靴等に商標をワンポイントマークとして小さく表示された場合,些細な相違点に気付かないことも多いと主張する。しかし,商標が小さく表示された場合をことさら取り上げることの当否は措くとしても,そもそも本件商標と引用商標は全体的な印象においても明らかに異なることは前記アのとおりであり,小さく表示された場合でも,その相違は明白であるから,原告の主張は採用できない。また,原告は,前記第3の1⑴ア(オ)のとおり,本件消費者調査の結果を理由に,本件商標と引用商標の類似性を主張する。しかし,本件消費者調査は,本件商標の登録査定時よりも後に実施されたものであること,本件商標について助成想起(本件商標の指定商品〔スポーツ関連用品〕の出所標識という前提〔ヒント〕を与えて自由回答形式で聴取するもの)による質問について原告を連想した15%という数値は大きいとはいえない上,スポーツ関連用品というヒントを与えられれば,多少とも本件商標と共通点のあるブランドを想起しようと努めると考え
5 られることを考慮すると,この数値すらそのまま受け取ることはできないこと,本件商標と引用商標を並べた場合に両商標が類似するという回答も,このような限界のある質問の後にされたものであることを考慮すれば,本件商標と引用商標の類似性を裏付ける資料とはいえない。したがって,この点に係る原告の主張も採用し得ない。
⑵ 小括以上によれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれがなく,類似しないものと認められる。そうすると,本件商標の指定商品と同一又は類似する商品が引用商標7,8及び10の指定商品中に含まれているとしても,本件商標は,商標法4条1項11号に該当せず,本件審決の判断に誤りはない。
3 取消事由2(本件商標の商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について⑴ 混同のおそれについて「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断すべきである。これを本件につき検討するに,前記2において判断したとおり,本件商標と引用商標とは,引用商標の周知著名性を勘案しても,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,その類似性は極めて低いというべきであるから,本件商標の指定商品には「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」が含まれており,原告の業務に係る商品との間の関連性や,取引者や需要者の共通性が高く,また,そのような商品はいずれも
5 注意力が高いとはいえない一般消費者も需要者とするものであることを考慮しても,本件商標に接する取引者及び需要者が,原告又は引用商標を連想又は想起することはないというべきである。これに反する原告の主張は,前記2において判断したのと同様の理由によりいずれも採用し得ない。そうすると,本件商標は,これをその指定商品に使用をしても,その取引者及び需要者をして,当該商品が原告の商品に係るものであると誤信させるおそれがあるものとはいえない。⑵ 小括以上によれば,本件商標は,他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標とはいえない。したがって,本件商標が商標法4条1項15号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはない。
第5 結論
以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも認められず,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。したがって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
菅 野 雅 之
裁判官
本 吉 弘 行
裁判官
岡 山 忠 広
(別紙1)
(別紙2)
| 特許裁判例 実用新案裁判例 |
| 意匠裁判例 商標裁判例 |
| 不正競争裁判例 著作権裁判例 |
| 特許判例 実用新案判例 |
| 意匠判例 商標判例 |
| 不正競争判例 著作権判例 |
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11月13日(金) - 東京 千代田区
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11月9日(月) - 東京 品川区
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