令和3(ネ)10057損害賠償等請求控訴事件
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裁判所 |
控訴棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
令和3年11月17日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被控訴人三菱電機株式会社
|
法令 |
特許権
|
キーワード |
損害賠償2回 実施2回 侵害2回 職務発明1回 特許権1回
|
主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。15 |
事件の概要 |
1 本件は,控訴人が,被控訴人の有する特許権に係る特許発明に関し,控訴人
が被控訴人に在職中にその発明者の1人として発明したものであるにもかかわ
らず,被控訴人が当該発明に係る特許を受ける権利の承継を控訴人から受けな
いまま,控訴人を発明者として記載せずに出願したため,職務発明について被25
控訴人に特許を受ける権利を取得させたことにより控訴人が受けるべき利益に
相当する額の損害及び発明者名誉権侵害による精神的損害を被ったとして,被
控訴人に対し,不法行為に基づき,1000万円の損害賠償(一部請求)及び
これに対する不法行為の日(上記出願の日)である平成24年3月9日から支
払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分
の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。5
原判決が控訴人の請求を棄却したため,控訴人が控訴した。 |
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判決文
令和3年11月17日判決言渡
令和3年(ネ)第10057号 損害賠償等請求控訴事件
(原審 大阪地方裁判所 令和元年(ワ)第5059号)
口頭弁論終結の日 令和3年9月22日
5 判 決
控 訴 人 X
被 控 訴 人 三 菱 電 機 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 大 野 聖 二
同 木 村 広 行
主 文
1 本件控訴を棄却する。
15 2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,1000万円及びこれに対する平成24年3月
20 9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
1 本件は,控訴人が,被控訴人の有する特許権に係る特許発明に関し,控訴人
が被控訴人に在職中にその発明者の1人として発明したものであるにもかかわ
らず,被控訴人が当該発明に係る特許を受ける権利の承継を控訴人から受けな
25 いまま,控訴人を発明者として記載せずに出願したため,職務発明について被
控訴人に特許を受ける権利を取得させたことにより控訴人が受けるべき利益に
相当する額の損害及び発明者名誉権侵害による精神的損害を被ったとして,被
控訴人に対し,不法行為に基づき,1000万円の損害賠償(一部請求)及び
これに対する不法行為の日(上記出願の日)である平成24年3月9日から支
払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分
5 の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原判決が控訴人の請求を棄却したため,控訴人が控訴した。
2 前提事実
前提事実は,次のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」第2の2(原
判決2頁5行目から4頁1行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用
10 する。
⑴ 原判決2頁13行目の「本件出願」を「特許出願(以下「本件出願」とい
う。」に改める。
)
⑵ 原判決2頁26行目の「本件発明に係る特許請求の範囲の記載は,以下の
とおりである。また,」を「本件発明に係る特許請求の範囲の記載並びに」と
15 改める。
⑶ 原判決3頁3行目から19行目までを次のとおり改める。
「本件発明に係る特許請求の範囲は,次のとおり構成要件に分説することが
できる。
『A 流体の流れ方向に直交する方向に積層され,流体の上流側に延びる切
20 欠部を有する板状フィンと,
前記板状フィンの切欠部に挿入された扁平伝熱管とを備え,
前記板状フィンは,前記切欠部より流体の上流側の部分に平らなフラ
ット部を有し,さらに,前記切欠部に隣接する領域に流体の流れ方向と
直交する方向に切り起こされた複数の切り起こし片を有し,
25 B 前記切欠部は,前記板状フィンに複数設けられ,前記フラット部側
の先端が前記扁平伝熱管の短尺側の側面形状に合わせて半円形状,も
しくは楕円形状に形成され,前記フラット部は,前記半円形の中心点
から前記フラット部の端部までの長さが,半円形の直径以上長く,も
しくは前記扁平伝熱管の短軸幅以上長くなるように,また,前記切欠
部に挿入された隣接の前記扁平伝熱管の中心間の長さの半分よりも短
5 くなるように形成され,
C 前記切欠部は,前記扁平伝熱管から前記切り起こし片までの長さ
(Dp-D-Ls)と管中心線から前記切り起こし片までの段方向長さ
(Dp-Ls)の比率(Dp-D-Ls)/(Dp-Ls)が,フィン
端部から前記扁平伝熱管までの長さ(h-0.5D)と前記切欠部の中
10 心点Cからフィン端部までの距離hとの比率(h-0.5D)/hより
も小さくなるように形成されることを特徴とするフィンチューブ型熱交
換器。」
』
3 争点及び争点に関する当事者の主張
本件における争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり補正し,後
15 記4のとおり,当審における補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理
由」第2の3,4(原判決4頁2行目から10頁22行目まで)に記載のとお
りであるから,これを引用する。
⑴ 原判決4頁9行目の後に行を改めて次のとおり加える。
「イ エアコン室外機の扁平管熱交換機のフィンには,次の形状のものがあ
20 り得た。
① 後記図1に記載された形状のフィン(以下,この形状のフィンを「当
初フィン」といい,この形状を「当初フィン形状」という。)
② 当初フィン形状の3本のスリットのうち1番上(風上側)のスリッ
ト(以下,この位置にあるスリットを「風上側のスリット」という。)
25 をなくした,後記図2に記載された形状のフィン(以下「2本スリッ
トフィン」といい,その形状を「2本スリットフィン形状」という。)
③ 当初フィンの3本のスリットを風下側に移動し,風上側にフラット
部を設けた,後記図3に記載された形状のフィン(以下,この形状の
フィンを「3本スリットフィン」といい,この形状を「3本スリット
フィン形状」という。)
5 扁平管熱交換機のフィンにおいては,座屈強度の向上と伝熱性能の両
立を実現する必要があるところ,2本スリットフィンと3本スリットフ
ィンは,座屈強度及び伝熱性能を総合的に見れば大きな差はなく,2本
スリットフィンは,座屈強度の向上と伝熱性能の両立を実現するもので
あり,本件発明の特徴的部分に当たり,それを着想したことは,本件発
10 明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したことになる。したがって,2
本スリットフィンを着想した控訴人は,本件発明の発明者である。」
⑵ 原判決4頁10行目冒頭の「イ」を「ウ」と改める。
⑶ 原判決4頁17行目の「当初のフィン」から19行目の「フィン形状』と
いう。」までを「当初フィン形状」と改める。
)
15 ⑷ 原判決4頁23行目の「当初フィン形状」から24行目の「『風上側のスリ
ット』という。」までを「風上側のスリット」と改める。
)
⑸ 原判決5頁2行目の「風上側の」から4行目の 『2本スリットフィン形状』
「
という。」までを「2本スリットフィン」に改める。
)
⑹ 原判決5頁9行目の「そのフィン形状は」から11行目の「う。 までを
」 「3
20 本スリットフィン」と改める。
⑺ 原判決5頁21行目(頁左端の行数による。)冒頭の「ウ」を「エ」と改め
る。
⑻ 原判決6頁1行目冒頭の「エ」を「オ」と改める。
⑼ 原判決6頁4行目冒頭の「オ」を「カ」と改める。
25 ⑽ 原判決6頁22行目,25行目,7頁1行目の「Eら報告書」を●(省略)
●と改める。
⑾ 原判決9頁4行目の後に行を改めて次のとおり加える。
「(ア) 本件発明に係る特許請求の範囲には,風上側のスリットをなくすこ
と自体を特定した構成が記載されているわけではないから,2本スリッ
トフィンを着想したことは,本件発明の特徴的部分を着想したことにな
5 らない。
控訴人の主張は,2本スリットフィンを着想したことは,構成要件A
の「前記板状フィンは,前記切欠部より流体の上流側の部分に平らなフ
ラット部を有し,さらに,前記切欠部に隣接する領域に流体の流れ方向
と直交する方向に切り起こされた複数の切り起こし片を有し,を着想し
」
10 たという主張とも考えられるが,そもそも構成要件Aは周知技術であり,
構成要件B及びCが補正により追加されて請求項1に係る本件発明が特
許査定されたのであるから,2本スリットフィンを着想したことは,本
件発明の特徴的部分を着想したことにならない。」
⑿ 原判決9頁5行目冒頭の「(ア)」を「(イ)」と改める。
15 ⒀ 原判決10頁3行目から6行目までを削る。
4 当審における補充主張(控訴人の発明者性(争点1)について)
〔控訴人の主張〕
⑴ ●(省略)●の日付について
310 ファイル(乙18),329 ファイル(乙20)及び 525 ファイル(乙1
20 9)は,全て日付を改ざんされた偽造証拠であるから,証拠として採用すべ
きでない。
⑵ Eが平成22年6月24日午前11時09分から同月25日午前8時4
3分までの間に控訴人に送信したメール(甲19の下側のメール。以下「E
メール」という。)について
25 ア Eが●(省略)●2本スリットにより座屈強度と伝熱性能の両立を図れ
ることを知っていたのであれば,EがEメールにおいてそのことを報告し
たはずであり,Eが,Eメールにおいて,●(省略)●をアピールしてい
ることからすると,Eは,Eメールを送信したときに初めて,2本スリッ
トにより座屈強度と伝熱性能の両立が図れることを知ったものである。
イ Eメールに●(省略)●と記載されていることから,控訴人がフラット
5 フィン及び2本スリットフィンの計算をEに指示したことが裏付けられる。
ウ ●(省略)●Eメールの送信よりも先に行われていたのであれば, (省
●
略)●の報告もEメールで行われて然るべきであるが,それが行われてい
ないことから,●(省略)●はEメールの送信よりも先に行われていなか
った。
10 エ ●(省略)●のメール(甲7の下側に記載されたメール)を控訴人がE
に送信しているのであるから,●(省略)●Eメールの送信よりも先に行
われていたのならば,Eは,同日中に,●(省略)●にもかかわらず,そ
れが行われていないことから,●(省略)●はEメールの送信よりも先に
行われていなかった。
15 オ 強度解析が得意なF(Eとともに住環研に所属していた。)であれば,フ
ラットフィン及び2本スリットフィンの解析は2時間もあればできるから,
控訴人が平成22年6月24日午前11時09分にメール(甲7。 「控
以下
訴人メール1」という。)を送信した後,EがFに依頼して解析を行えば,
EはEメールにより解析の結果の数値を控訴人に送信できる。●(省略)
20 ●
カ ●(省略)●その作成日付は改ざんされたものである。
キ 住環研においてEらが2本スリットに着想していたのであれば,●(省
略)●も記載されて然るべきであるにもかかわらず,それが行われていな
いことから,住環研において2本スリットに着想していたものではない。
25 Eらが●(省略)●2本スリットが座屈強度向上の一番簡単な方法であ
ることを理解していたのであれば,●(省略)●控訴人が同月24日に座
屈強度を向上させる方法に着想し,解析を指示することもない。
●(省略)●理由がない。
●(省略)●しなければ,住環研の責任問題になるから,●(省略)●
は不自然である。
5 ⑶ 平成29年(2017年)2月3日の控訴人とEの会話の録音と反訳(甲
11の1,2。以下「平成29年2月3日の控訴人とEの会話(甲11)」と
いう。
)について
平成29年2月3日の控訴人とEの会話(甲11)の中には次の箇所があ
る(甲11の2,1頁)。
10 ●(省略)●Eが2本スリットフィンを着想したのであれば,着想に至る
まで苦労した経緯を覚えており,控訴人が着想した発明であると言われれば
反論して然るべきであるが,それが行われていないことから,Eは2本スリ
ットフィンを着想していない。
⑷ 本件意匠(意匠登録第1485172号,甲3)について
15 控訴人は本件意匠(意匠登録第1485172号,甲3)の創作者である
から,本件発明の発明者である。
⑸ 平成22年12月9日を作成日とする●(省略)●(甲8),平成23年6
月8日を作成日とする●(省略)●(甲9),及び平成24年6月14日付け
の●(省略)●(甲10,15)について
20 平成22年12月9日を作成日とする●(省略)●(甲8),平成23年6
月8日を作成日とする●(省略)●(甲9),及び平成24年6月14日付け
の●(省略)●(甲10,15)により,控訴人が本件発明をしたことが裏
付けられる。
⑹ 平成29年(2017年)2月2日の控訴人と冷電製管部開発課のG課長
25 との交渉の録音と反訳(甲20の1,2。以下「平成29年2月2日の控訴
人とG課長の交渉(甲20)」という。)について
平成29年2月2日の控訴人とG課長の交渉(甲20)において,控訴人
が,本件発明が冒認出願であることについて●(省略)●の回答がないこと
に対して抗議したところ,G課長が●(省略)●(甲20の2の6枚目)と
回答したのは,法的責任を免れるために回答を放棄したものであり,本件発
5 明が冒認出願であることの証左である。
〔被控訴人の主張〕
⑴ 上記〔控訴人の主張〕⑴について
●(省略)●
329 ファイル(乙20),525 ファイル(乙19)は,それらの記載内容に
10 照らし,それらの更新日付までに作成されたとすることに不自然な点はない。
⑵ 上記〔控訴人の主張〕⑵について
控訴人の主張に対する反論は以下のとおりである。
ア 上記〔控訴人の主張〕⑵アについて
Eは,控訴人が控訴人メール1において●(省略)●と思う旨の説明を
15 加えたものであり,Eがその旨をEメールで述べたことをもって,Eがそ
の時に初めてそのことを知ったとはいえない。
イ 同イについて
Eは,Eメールにおいて,●(省略)●ことを理由として,控訴人がフ
ラットフィン及び2本スリットフィンの計算をEに指示したことが裏付
20 けられるとはいえない。
ウ 同ウについて
控訴人は控訴人メール1で,●(省略)●Eメールの送信よりも先に行
われていなかったということはできない。
エ 同エについて
25 Eは,控訴人が平成22年6月23日にEに送信したメール(甲7の下
側のメール)により,●(省略)●から,Eが控訴人に対して●(省略)
●しなかったとしても,不自然な点はなく,●(省略)●Eメールの送信
よりも先に行われていなかったということはできない。
オ 同オについて
Fは,●(省略)●そのため,2時間でフラットフィン及び2本スリッ
5 トフィンの解析ができたとはいえない。
カ 同カについて
●(省略)●
キ 同キについて
●(省略)●
10 ⑶ 上記〔控訴人の主張〕⑶について
平成29年2月3日の控訴人とEの会話(甲11)が行われたのは, (省
●
略)●さらに,控訴人は,平成29年2月3日の控訴人とEの会話(甲11)
において,本件発明が控訴人の着想によるものであることを明確に述べてい
ない。そのため,平成29年2月3日の控訴人とEの会話(甲11)は,控
15 訴人の主張を裏付けるものではない。
⑷ 上記〔控訴人の主張〕⑷について
意匠の創作者であることと発明者であることは,意味合いが異なるもので
あり,本件意匠のうちに,本件発明の実施品の形状等が含まれていたとして
も,本件意匠の創作者であることから,直ちにその者が本件発明の発明者で
20 あるということはできない。
⑸ 上記〔控訴人の主張〕⑸について
平成22年12月9日を作成日とする●(省略)●(甲8),平成23年6
月8日を作成日とする●(省略)●(甲9),及び平成24年6月14日付け
の●(省略)●(甲10,15)は,控訴人が本件発明が完成したと主張す
25 る平成22年7月下旬頃よりかなり後に作成されたものであり,●(省略)
●よりもかなり後に作成されたものであるから,控訴人が本件発明をしたこ
とを裏付けるものではない。
⑹ 上記〔控訴人の主張〕⑹について
平成29年2月2日の控訴人とG課長の交渉(甲20)において,控訴人
が,本件発明が冒認出願であることについて●(省略)●の回答がない旨述
5 べたところ,G課長が●(省略)●(甲20の2の6枚目)と回答したのは,
本件特許が冒認であるかどうかは,●(省略)●旨を述べたものであり,そ
のことをもって,本件発明が冒認であることが裏付けられることはない。
第3 当裁判所の判断
1 控訴人の発明者性(争点1)について
10 ⑴ 主張立証責任について
原判決「事実及び理由」第3の1⑴(原判決10頁25行目から11頁7
行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
⑵ 発明者について
原判決11頁17行目の「これをなくす」の次に「(2本スリットフィン形
15 状とする)」を加えるほか,原判決「事実及び理由」第3の1⑵(原判決11
頁8行目から21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
⑶ 事実認定について
原判決「事実及び理由」第3の1⑶(原判決11頁23行目から20頁1
4行目まで)を以下のとおり改める。
20 前提事実(前記第2の2),証拠(各項掲記のもの。なお,枝番号のある証
拠で枝番号の記載のないものは全ての枝番号を含む。 及び弁論の全趣旨によ
)
れば,以下の事実が認められる。
ア 本件開発の経緯
本件発明者は,●(省略)●
25 控訴人は,平成21年から冷電に所属し,同年秋頃又は平成22年6月
頃,本件開発に関与するようになったが,●(省略)●会議のいずれにも
出席しなかった。他方,E及びFは住環研に所属していた。
(以上につき,乙3,4)
イ ●(省略)●までの経緯
本件開発は,●(省略)●
5 ウ ●(省略)●における検討
●(省略)●
エ ●(省略)●
(ア) ●(省略)●
(イ)a ●(省略)●の順で記載された。
10 b ●(省略)●として示された。
c ●(省略)●が掲載された。
d ●(省略)●が示されていた。
e これに加え,●(省略)●は含まれていなかった。
f また,●(省略)●との記載があった。
15 オ ●(省略)●における検討
●(省略)●
カ ●(省略)●
(ア) ●(省略)●にまとめられた。
(イ) ●(省略)●が示されていた。
20 キ ●(省略)●における検討
●(省略)●
ク ●(省略)●
(ア) ●(省略)●が含まれていた。
このうち, ●(省略)●
25 (イ) ●(省略)●
ケ 控訴人とEらの間で交換されたメール
(ア) 控訴人が属していた冷電では,●(省略)●
控訴人は,同月23日,住環研の空デ技のE,H及びIに対し,●(省
略)●などと記載したメールを送信した(甲7の下側に記載されたメー
ル)。
5 また,控訴人は,平成22年6月24日午前11時09分,住環研の
空デ技のE,H及びIに対し,●(省略)●などと記載したメール(甲
7の上側に記載されたメール,控訴人メール1)を送信した。
(イ) Eは,控訴人メール1を受信した平成22年6月24日午前11時
09分から同月25日午前8時43分までに間に,控訴人に対し,次の
10 ような内容のEメールを送信した(甲19)。
●(省略)●
上記メールの●(省略)●という記載は,●(省略)●に記載したも
のであった。
(ウ) 控訴人は,平成22年6月25日午前8時43分,E,H,Iその他
15 の者に対し,●(省略)●と記載したメール(甲19の上側に記載され
たメール,以下「控訴人メール2」という。)を送信した。
⑷ 検討
原判決「事実及び理由」第3の1⑷ア及びイ(原判決20頁16行目から
21頁22行目まで)を以下のとおり改める。
20 ア(ア) 前記⑶の経過に鑑みると,●(省略)●
しかし,●(省略)●(前記⑶カ)。さらに,●(省略)●ことはなか
ったが,冷電の控訴人らに送られた(前記⑶ク(イ))。
(イ) フィンの開発において,座屈強度と伝熱性能の向上を図ることは,
フィンの性質から当然に要請される課題であり(本件明細書の段落【0
25 007】にも課題として示されている。,住環研で,●(省略)●2本
)
スリットフィンによって,伝熱性能を確保しつつ座屈強度の向上を図る
という課題を解決できるかどうかを確かめるためであったと認められる。
そして,2本スリットフィン●(省略)●座屈強度を維持しつつ,ある
程度の伝熱性能が得られることは,容易に理解し得ることであった。そ
うすると,仮に,伝熱性能を確保しつつ座屈強度を向上させるために2
5 本スリットフィンとすることが本件発明の特徴的部分に当たり,それを
着想したことが,本件発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したこと
になるとすれば,既に住環研のEらが,遅くとも,2本スリットフィン
を含む各種のフィンについて●(省略)●までに,2本スリットフィン
を着想していたものと認められる。
10 イ(ア) 控訴人は,①平成22年6月24日,3本スリットフィンの風上側
のスリットをなくすことにより座屈強度の向上を図ることができること
を着想し,同日,Eに対し,フラットフィンの強度計算をFにしてもら
うように指示し,その後,2本スリットフィンの座屈強度計算もFにし
てもらうように指示したこと,②その結果,2本スリットフィンの座屈
15 強度は当初フィンの2.5倍で,フラットフィンとほぼ同一であったが,
Eは,2本スリットでは伝熱性能が低下するとして,3本のスリットを
風下側に押し込めることを提案し,控訴人はこれを承諾したこと,③そ
の後,控訴人及びEによる試験を経て,同年7月下旬頃,本件発明が完
成したことを主張する(本判決による補正後の原判決4頁21行目から
20 5頁20行目まで)。
(イ) そこで,前記(ア)の控訴人の主張について検討する。
控訴人は,控訴人メール1において,Eに対し,フラットフィンの座
屈強度の解析を指示し,Eは,Eメールにより,●(省略)●を報告し
た。しかし,それらの●(省略)●に記載されていたものであり(前記
25 ⑶ケ(イ)),このうち●(省略)●に提出されたものであり(前記キ),E
らが住環研において●(省略)●を示すものであった。
また,控訴人は,Eメールに対して返信した控訴人メール2において,
●(省略)●と記述したが,これは,Eメールに示された●●を見て,
控訴人がその時に,●(省略)●と認識したというにとどまるものと認
められ,それをもって,控訴人が,Eらに先んじて,当初フィンを2本
5 スリットフィンに変えることを着想したとはいえない。
さらに,控訴人がEに対して2本スリットフィンの座屈強度計算を指
示したことを認めるに足りる証拠はなく,Eが3本のスリットを風下側
に押し込めることを提案し,控訴人がこれを承諾したこと,その後,控
訴人及びEによる試験を経て,平成22年7月下旬頃,本件発明が完成
10 したことなどの控訴人の主張に係る事実を認めるに足りる証拠もない。
そうすると,仮に,伝熱性能を確保しつつ座屈強度を向上させるため
に2本スリットフィンとすることが本件発明の特徴的部分に係る着想で
あるとしても,控訴人がそれを着想したとは認められず,控訴人は,本
件発明の発明者とは認められない。
15 ⑸ 控訴人の主張について
控訴人の主張に対する判断は,次のとおり補正し,後記⑹のとおり当審に
おける補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」第
3の1⑷ウ(原判決21頁24行目から22頁20行目まで)に記載のとお
りであるから,これを引用する。
20 ア 原判決21頁24行目,26行目ないし22頁1行目,5行目,6行目,
11行目の「Eら報告書」を●(省略)●と改める。
イ 原判決22頁1行目の「原告メール2」 「控訴人メール2」
を と改める。
ウ 原判決22頁2行目,3行目の「原告メール1」を「控訴人メール1」
と改める。
25 エ 原判決22頁9行目,12行目の「310 ファイル」の後に「(乙18)」
をそれぞれ加える。
オ 原判決22頁10行目の「本件WG」を「本件ワーキンググループ」と
改める。
カ 原判決22頁12行目の「329 ファイル」の後に (乙20) を加える。
「 」
キ 原判決22頁13行目の「525 ファイル」の後に (乙19) を加える。
「 」
5 ⑹ 当審における補充主張に対する判断
ア 前記第2,4〔控訴人の主張〕⑴について
控訴人は,310 ファイル(乙18),329 ファイル(乙20)及び 525 フ
ァイル(乙19)は全て日付を改ざんされた偽造証拠であると主張する。
しかし,●(省略)●(乙6)には,●(省略)●記載されており,ま
10 た,●(省略)●(乙6)に記載された●(省略)●行われている。そし
て●(省略)●(乙8)に記載された●(省略)●同様に,●(省略)●
が行われている。他方,●(省略)●(乙6)●(省略)●310 ファイル
(乙18),●(省略)●(乙5)には,●(省略)●記載されていない。
このように,310 ファイル(乙18)は,その記載内容に鑑みると,●(省
15 略)●作成されたと解されるものであり,310 ファイル(乙18)の更新
年月日である●(省略)●までに作成されたものと認められる。
また,本件開発の経過は前記⑶のとおりであり, (省略)
● ●を受けて,
Eらが所属する住環研の空デ技のグループにより, ●(省略)●310 ファ
イル(乙18)に,●(省略)●ものであり(前記⑶エ),住環研は,310
20 ファイル(乙18)●(省略)●ものであり(前記⑶オ)
,310 ファイル(乙
18)がその更新年月日である●(省略)●までに作成されたということ
は,このような本件開発の経緯にも合致するものである。
329 ファイル(乙20)は,更新日付が●(省略)●のファイルであり,
525 ファイル(乙19)は,更新日付が●(省略)●のファイルであるが,
25 それらは,それらの記載内容に照らし,更新日付までに作成されたとする
ことに不自然な点はない。そして,310 ファイル(乙18),329 ファイル
(乙20)及び 525 ファイル(乙19)が,日付を改ざんされた偽造証拠
であることを裏付ける具体的な証拠はない。
そうすると,310 ファイル(乙18),329 ファイル(乙20)及び 525
ファイル(乙19)は,いずれもそれらの更新日付までに作成されたもの
5 と認められ,これらが日付を改ざんされた偽造証拠であるという控訴人の
主張は,採用することができない。
イ 前記第2,4〔控訴人の主張〕⑵について
(ア) 〔控訴人の主張〕⑵アについて
控訴人は,Eが●(省略)●2本スリットにより座屈強度と伝熱性能
10 の両立を図れることを知っていたのであれば,EはEメールにおいてそ
のことを報告したはずであり,Eが,Eメールにおいて,●(省略)●
ことをアピールしていることからすると,Eは,Eメールを送信したと
きに初めて,2本スリットフィンにより座屈強度と伝熱性能の両立が図
れることを知ったものであると主張する。
15 しかし,Eは,控訴人から,平成22年6月24日午前11時09分
の控訴人メール1で,フラットフィンについての座屈強度の検討を依頼
されたことから,Eメールに,●(省略)●送信したものである。そし
て,控訴人が,控訴人メール1において,●(省略)●旨述べていたこ
とから,Eは,●(省略)●旨述べたものと認められる。フィンの開発
20 において,座屈強度と伝熱性能の向上を図ることを目指して開発を行う
ことは,フィンの性質から当然に要請される課題であり,●(省略)●
座屈強度を維持しつつ,ある程度の伝熱性能が得られることは,容易に
理解し得ることであり, (省略)
● ●従前に得られていたものであった。
そうすると,Eが,Eメールにおいて,●(省略)●旨述べたことをも
25 って,Eがその時に初めてそのことを知ったとは認められない。
したがって,控訴人の上記主張を採用することはできない。
(イ) 同イについて
控訴人は,Eメールには●(省略)●と記載されているから,控訴人
がフラットフィン及び2本スリットフィンの計算をEに指示したことが
裏付けられると主張する。
5 しかし,Eメールにおいて,Eは,●(省略)●に当たり,●(省略)
●ことを述べるために,●(省略)●と記載したものと認められ,●●
●と記載されていることにより,控訴人がフラットフィン及び2本スリ
ットフィンの計算を指示したことが裏付けられるとは認められない。
(ウ) 同ウについて
10 控訴人は,●(省略)●が,Eメールの送信よりも先に行われていた
のであれば,●(省略)●行われて然るべきであるが,それが行われて
いないことから,●(省略)●Eメールの送信よりも先に行われていな
かったと主張する。
しかし,Eメールに先立つ控訴人メール1は,●(省略)●をEに要
15 請しているから,これに対する回答として,Eが,Eメールに,●(省
略)●を記載することは自然であり,●(省略)●を記載しなかったこ
とをもって,●(省略)●がEメールの送信よりも先に行われていなか
ったということはできず,控訴人の上記主張は,採用することができな
い。
20 (エ) 同エについて
控訴人は,平成22年6月23日,●(省略)●旨のメール(甲7の
下側に記載されたメール)を控訴人がEに送信しているのであるから,
●(省略)●がEメールの送信よりも先に行われていたのならば,Eは,
同日中に,●(省略)●を控訴人に報告して然るべきであるにもかかわ
25 らず,それが行われていないことから,●(省略)●はEメールの送信
よりも先に行われていなかったと主張する。
しかし,控訴人が平成22年6月23日にEに送信したメール(甲7
の下側に記載されたメール)は,●(省略)●ように要請するという趣
旨のものである。Eは,●(省略)●から,●(省略)●おいてどのよ
うな理由で●(省略)●のかは把握しておらず,控訴人が同月23日に
5 Eに送信したメール(甲7の下側に記載されたメール)においては,●
(省略)●ように要請されていたにとどまるから,Eがそれに対して,
●(省略)●に記載された,●(省略)●を控訴人に報告しなかったと
しても,不自然な点はなく,その報告が行われていないことから, (省
●
略)●がEメールの送信よりも先に行われていなかったということはで
10 きない。
(オ) 同オについて
控訴人は,強度解析が得意なF(Eとともに住環研に所属していた。)
であれば,フラットフィン及び2本スリットフィンの解析は2時間もあ
ればできるから,控訴人が平成22年6月24日午前11時09分に控
15 訴人メール1を送信した後,EがFに依頼して解析を行えば,EはEメ
ールにより解析の結果の数値を控訴人に送信できると主張し,(省略)
●
●と主張する。
しかし,Eメールに記載された●(省略)●にも記載されていたもの
である。また,Fは,●(省略)●わけではなく,●(省略)●もので
20 あり(甲11の2,4頁20行目ないし22行目),仮に●(省略)●で
きたとは考え難い。実際上も,●(省略)●とするものであり,●(省
略)●ことからすれば,2時間でフラットフィン及び2本スリットフィ
ンの解析ができたとは認められない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
25 (カ) 同カについて
控訴人は,●(省略)●(乙8)は,●(省略)●であるにもかかわ
らず●(省略)●その作成日付は改ざんされたものであると主張する。
しかし,●(省略)●(乙8)が,●(省略)●それによって直ちに
その作成日付が改ざんされたものであるとはいえず,その他に,●(省
略)●(乙8)の作成日付が改ざんされたことを裏付ける証拠はない。
5 住環研では,●(省略)●更新に係る 310 ファイル(乙18)に記載
されていたこと(前記⑶エ),さらに,●(省略)●(乙6)にまとめら
れたこと(前記⑶カ),●(省略)●(乙8)に記載された●(省略)●
であったこと(前記ア) 同年6月24日の控訴人メール1によるフラッ
,
トフィンの強度解析の要請に対し,Eが,●(省略)●Eメールに記載
10 して返信し,そこに記載された●(省略)●であったこと(前記⑶ケ(イ))
に照らせば,●(省略)●(乙8)は,その日付のとおり●(省略)●
付けで作成されたものと認められ,その作成日付が改ざんされたという
控訴人の主張は,採用することができない。
(キ) 同キについて
15 控訴人は,①住環研において,2本スリットフィンに着想していたの
であれば,●(省略)●しているはずであり,Eメールに●(省略)●
も記載されて然るべきであるにもかかわらず,それが行われていないこ
とから,住環研において2本スリットフィンに着想していたものではな
い旨,②Eらが●(省略)●2本スリットフィンが座屈強度向上の一番
20 簡単な方法であることを理解していたのであれば,●(省略)●ことは
なく,控訴人が同月24日に座屈強度を向上させる方法に着想し,解析
を指示することもない旨,③●(省略)●理由はなく,●(省略)●と
する理由がない旨,④住環研において●(省略)●2本スリットに着想
していたのであれば,●(省略)●しなければ,住環研の責任問題にな
25 るから,そのような●●がないことは不自然である旨主張する。
しかし,前記⑶の経過によれば,●(省略)●という前提で検討が進
められており,●(省略)●されていたことはなく,●(省略)●とは
なっていなかった。他方,●(省略)●(310 ファイル(乙18),●(省
略)●(乙6),●(省略)●(乙8)。しかし,住環研は,●(省略)
)
●ものであり,●(省略)●という前提で検討が進められており,●(省
5 略)●とはなっていなかったから,●(省略)●ことはなかった。この
ような経緯に鑑みれば,2本スリットフィンについて●(省略)●とし
ても不自然ではなく,また,それらの事実から,住環研のEらが●(省
略)●2本スリットフィンを着想していたことが否定されることはない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
10 ウ 前記第2,4〔控訴人の主張〕⑶について
(ア) 平成29年2月3日の控訴人とEの会話(甲11)の中には,前記第
2,4〔控訴人の主張〕⑶において控訴人が指摘する会話の内容が記載
されている。
(イ) 控訴人は,前記(ア)の会話に関し,Eが2本スリットフィンを着想し
15 たのであれば,着想に至るまで苦労した経緯を覚えており,控訴人が着
想した発明であると言われれば反論して然るべきであるが,それが行わ
れていないことから,Eは2本スリットフィンを着想していないと主張
する。
しかし,Eらが2本スリットフィンとすることを着想した時期は,●
20 (省略)●平成29年2月3日に甲11の会話が行われた時に,着想に
至った経緯を詳しく覚えていないとしても不自然ではない。また,前記
のとおり,Eらは,住環研において,●(省略)●が,310 ファイル(乙
18)に記載されたものである(前記⑶エ)。そのため,2本スリットフ
ィンの着想は,通常の業務において,検討課題を順当に処理する過程で
25 行われたものであり,その着想に際して,記憶に鮮明に残るような顕著
な出来事があったとは認められない。さらに,控訴人は,甲11の会話
において,本件発明が控訴人の着想によるものであってEらの着想によ
るものでないことを確認する旨を明確に述べて回答を求めているとは
いえない。そうすると,Eの応答は,Eらが2本スリットフィンを着想
したことと矛盾するものではなく,Eの応答から,Eが2本スリットフ
5 ィンを着想していないということはできない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
エ 前記第2,4〔控訴人の主張〕⑷について
控訴人は,控訴人が本件意匠(意匠登録第1485172号,甲3)の
創作者であるから,本件発明の発明者である旨主張する。
10 しかし,前記⑵で説示したとおり,発明者とは,特許請求の範囲に記載
された発明の構成のうち,従来技術に見られない課題解決手段を基礎づけ
る部分を着想し,それを具体化して完成させるための過程において創作的
に寄与した者をいうのに対し,意匠とは,物品の形状,模様若しくは色彩
若しくはこれらの結合,建築物の形状等又は画像であって,視覚を通じて
15 美感を起こさせるものをいい,意匠の創作者とは,形状等の創造,作出の
過程に,その意思を直接的に反映し,実質上その形態の形成に参画した者
をいう。そのため,意匠の創作者であることと発明者であることは,意味
合いが異なるものであり,本件意匠のうちに,本件発明の実施品の形状等
が含まれていたとしても,本件意匠の創作者であることから,直ちにその
20 者が本件発明の発明者であるということはできない。そして,前記⑷のと
おり,Eらが2本スリットフィンを着想したものと認められ,控訴人が2
本スリットフィンを着想したとは認められず,控訴人が本件意匠の創作者
であることによってこれらの認定を覆すことはできない。
オ 前記第2,4〔控訴人の主張〕⑸について
25 控訴人は,平成22年12月9日を作成日とする●(省略)●(甲8),
平成23年6月8日を作成日とする●(省略)●(甲9),及び平成24年
6月14日付けの●(省略)●(甲10,15)により,控訴人が本件発
明をしたことが裏付けられると主張する。
確かに,これらは,いずれもそれらの日付に作成されたと認められる。
しかし,控訴人は,平成22年6月24日,当初フィン形状の風上側の
5 スリットをなくすことにより座屈強度の向上が可能であることを着想し,
同年7月下旬頃,3本スリットフィン形状により本件発明が完成したと主
張するところ,上記の甲8ないし10,15は,控訴人が本件発明が完成
したと主張する同年7月下旬頃よりかなり後に作成されたものである。ま
た,住環研においては,●(省略)●(乙8)に記載されたが,甲8ない
10 し10,15は,●(省略)●(乙8)よりもかなり後に作成されたもの
である。そのため,甲8ないし10,15により,控訴人が本件発明をし
たことが裏付けられるものではない。
カ 前記第2,4〔控訴人の主張〕⑹について
控訴人は,平成29年2月2日の控訴人とG課長の交渉(甲20)にお
15 いて,控訴人が,本件発明が冒認出願であることについて●(省略)●の
回答がないことに対して抗議したところ,G課長が●(省略)●(甲20
の2の6枚目)と回答したのは,法的責任を免れるために回答を放棄した
ものであり,本件発明が冒認出願であることの証左であると主張する。
しかし,甲20及び弁論の全趣旨によれば,G課長は,本件特許が冒認
20 であるかどうかは,●(省略)●ので回答する意思はない旨を述べたもの
と認められ,そのことをもって,本件発明が冒認であることが裏付けられ
るとは認められず,控訴人の上記主張を採用することはできない。
キ その他の控訴人の主張について
控訴人は種々主張するが,その主張は,いずれも採用することができな
25 い。
⑺ 請求の成否
以上のとおり,控訴人は,本件発明の発明者とは認められないから,被控
訴人が本件発明に係る特許を受ける権利の承継を控訴人から受けず,控訴人
を発明者として記載せずに,本件出願をしたとしても,それによって,控訴
人の権利又は法律上保護される利益は何ら侵害されることはない。
5 したがって,その余の点につき判断するまでもなく,控訴人の請求は理由
がない。
2 結論
よって,控訴人の請求は理由がないから棄却すべきところ,これと同旨の原
判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとお
10 り判決する。
知的財産高等裁判所第3部
15 裁判長裁判官
東 海 林 保
20 裁判官
上 田 卓 哉
25 裁判官
中 平 健
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