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令和3(行ケ)10052審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和3年12月20日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社トミーズ・スター
被告特許庁長官
対象物 カット手法を分析する方法
法令 特許権
特許法2条1項8回
特許法2条1回
キーワード 審決26回
実施22回
分割10回
特許権1回
拒絶査定不服審判1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。20
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。) (1) 原告は,令和元年9月3日,発明の名称を「カット手法を分析する方法」 とする発明について,特許出願(特願2019-160189号。「以下「本 願」という。」)をした。

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判決文

令和3年12月20日判決言渡

令和3年(行ケ)第10052号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 令和3年11月25日

判 決

原 告 株式会社トミーズ・スター

同訴訟代理人弁理士 郡 山 順

同 柴 田 和 雄

同 岩 﨑 孝 治

同訴訟復代理人弁理士 田 口 滋 子

被 告 特 許 庁 長 官

同 指 定 代 理 人 高 瀬 勤

同 中 村 則 夫

同 溝 本 安 展

同 吉 田 誠

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が不服2020-12930号事件について令和3年2月25日付けでした審決を取り消す。

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)

(1) 原告は,令和元年9月3日,発明の名称を「カット手法を分析する方法」とする発明について,特許出願(特願2019-160189号。「以下「本願」という。 )をした。」

(2) 原告は,令和元年12月10日付けで拒絶理由通知を受けたため,令和2

5 年1月31日付けで特許請求の範囲及び明細書の記載について手続補正をしたが,同年6月5日付けで拒絶査定を受けた。

(3) 原告は,令和2年9月15日付けで,拒絶査定不服審判(不服2020-12930号)を請求するとともに,同日付けで,特許請求の範囲及び明細書の記載について手続補正(以下「本件補正」という。)をした。特許庁は,令和3年2月25日,本件補正を認めた上で,「本件審判の請求は成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年3月16日,原告に送達された。

(4) 原告は,令和3年4月14日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。2 特許請求の範囲の記載本件補正後の特許請求の範囲は,請求項1ないし9からなり,その請求項1の記載は次のとおりである(以下,本件補正後の請求項1を「本願補正発明」という。)【請求項1】分析対象者の写真,画像,イラストまたはデッサンから,正面,側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する

第1のステップ,

次いで,分析対象セクションを複数のセクションの中から選択する第2のステップ,次いで,第2のステップで選択したセクションに対して,第1のステップで推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルに基づきA アウトラインの形成または表情分析B カットライン分析C ボリューム位置またはボリュームライン分析D シルエット形状または表情分析

5 E パート(分け目)の位置または有無分析F セクションの幅または形状分析G フェイスラインとセクション間の継がり方またはセクション間の継がり方分析の中から,前記選択されたセクションに適した少なくとも1つの分析項目の分析を行い,分析結果を得る第3のステップ,次いで,前記分析結果から,前記カット手法に関する情報を導出する第4のステップによる,前記選択されたセクションに対して採用されているカット手法分析方法。3 本件審決の要旨

(1)ア 第1のステップについて本願の願書に添付した明細書(以下,図面を含めて「本願明細書」という。)の【0026】ないし【0037】,図1ないし図3によると,本願補正発明における「第1のステップ」は,本願明細書に記載された「予備分析」に対応し,分析者が「分析対象者の正面の写真,画像,イラストまたはデッサン」から「自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときの前シルエット線」を推定し,また,「分析対象者の側面の写真,画像,イラストまたはデッサン」から「自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときの横シルエット線」を推定し,また,「分析対象者の背面の写真,画像,イラストまたはデッサン」から「自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときの後シルエット線」を推定するものであり,美容に携わる者であれば,パーマネントがかかっている写真からでも自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときのシルエット線のおおよその位置を容易に推定できるものである。本願明細書には,各シルエット線を推定するにあたり,耳の位置,耳横印,頭頂点等を補助的に描くと,より正確に推定で

5 きることが記載されているが,必須のものではなく,美容に携わる者であれば,容易に推定できるものである。したがって,本願補正発明の「第1のステップ」は,分析者が,「分析対象者の正面,側面および背面の写真,画像,イラストまたはデッサン」を自分の目で見て,「正面,側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイル」を自分の頭で推定することを特定したものであって,人間の視覚による認識及び認識結果からの推定であり,人間の精神活動そのものであるから,自然法則を利用したものではない。イ 第2のステップについて本願明細書の【0018】 【0040】 【0041】 【0044】 【0, , , ,047】 【0049】 【0057】 【0078】 【0105】によると,, , , ,

第2のステップは,分析者が,分析対象者の推定された自然乾燥状態のナ

チュラルストレートのヘアスタイルに基づいて,分析対象者のヘアスタイルの単純さ,複雑さ等によって,セクション分けを行い,カット手法を分析する対象となる頭部の領域を選択するものであるから,分析者である人間の精神活動そのものであって,自然法則を利用したものではない。ウ 第3のステップについて

第2のステップで「耳上以下のバックサイドセクションおよびバックセ

ンターセクション」を選択した場合,当該セクションに適した分析項目は,「A アウトラインの形状または表情分析」である 【0023】 ところ,( )当該セクションの当該分析項目の分析についての記載 【0041】( ,【0042】,図4)によると,第3のステップは,分析者が,第1のステップで推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを,第2のステップで選択されたセクションについて,当該セクションに適した分析項目により,類型に分類することであり,分析者である人間の精神活動そのものであって,自然法則を利用したものではない。

5 エ 第4のステップについて

第4のステップは,第3のステップの分析結果から,カット手法に関す

る情報を導出するものであるところ,上記ウの「耳上以下のバックサイドセクションおよびバックセンターセクション」の分析結果に関する第4のステップについての記載(【0024】 【0043】, )によると,第4のステップは,第3のステップで分類された類型の組合せに対して,カット手法が対応付けられており,第2のステップにおいて選択されたセクションについてどのようなカット手法でカットされたかを導出できるというものである。そうすると,第4のステップは,分析者が,第3のステップにおいて分類された類型にしたがって,どのようなカット手法が採用されていたのかを推定するという,分析者である人間の精神活動そのものであって,自然法則を利用したものではない。

(2) 本願補正発明の発明該当性についてのまとめ以上のとおり,第1ステップないし第4ステップの各ステップは,いずれも人間の精神活動そのものであるから,第1ステップないし第4ステップからなる本願補正発明の「カット手法を分析する方法」は,人間の精神活動そのものであり,自然法則を利用したものではない。したがって,本願補正発明は,特許法2条で定義される「発明」に該当せず,同法29条1項柱書に規定する「産業上利用することができる発明」に該当しないから,特許を受けることができない。4 取消事由本願補正発明の発明該当性

第3 当事者の主張

1

(原告の主張)

(1) 第1のステップについて

ア(ア) 本願補正発明の第1のステップは,「分析対象者の正面,側面および

5 背面の写真,画像,イラストまたはデッサン」を分析して,自然乾燥状

態のナチュラストレートのヘアスタイル(以下「自然乾燥ヘアスタイル」と略する。)を推定するものである。「分析対象者の正面,側面および背面の写真,画像,イラストまたはデッサン」に対して正しい自然乾燥ヘアスタイルは必ず1つであり,正しい自然乾燥ヘアスタイルが複数存在することはあり得ない。第1のステップは,これに続く第2のステップ以降の分析の妨げとなるノイズ(カール,ウェーブ等)をなくすことを目的するものであり,こうした「ノイズをなくす」ことは純粋に自然科学的な目的であって,そのために行う自然乾燥ヘアスタイルの推定は,頭頂点等の生物学的な特徴を利用し,毛髪に付けられた物理的なウェーブやカールを元に戻すという物理的な処理であり,人が行っているとしても自然法則を利用していることは明らかである。分析対象者のイラストやデッサンを使う場合には誤差は大きくなるが自然法則を利用していることに変わりがなく,また,カールやウェーブの程度が大きくなるほど推定された自然乾燥ヘアスタイルの誤差が大きくなるが,「分析対象者の正面,側面および背面の写真,画像,イラストまたはデッサン」という出発点からみれば多少なりともノイズを減らすことができることから,その目的を達成することができるし,自然乾燥ヘアスタイルに近い分析対象者であれば,ノイズとなるウェーブやカールが少なく,誰でも誤差の少ない分析が可能である。分析対象者のヘアスタイルに対応する自然乾燥ヘアスタイルは1つに定まるものであり,学生や一般人が検証しようとすれば,カットマネキンを推定した自然乾燥ヘアスタイルにカットし,カールやウェーブを付けて分析対象者のヘアスタイルになるかどうかを物理的に検証することが可能である。こうした物理的検証が可能であることは,自然法則を利用していることにほかならない。

5 (イ) これに対し,本件審決は,前記第2の3(1)アのとおり,第1のステ

ップは「人間の視覚による認識及び認識結果からの推定であり,人間の精神活動そのものである。 旨判断するが,」 特許法2条1項の「発明」は,自然法則の利用を人が行うことを排除しておらず,発明特定事項である分析工程そのものに自然法則が利用されていれば,人が行うか否かにかかわらず「発明」に該当するから,上記判断は誤りである。また,本件審決は,頭蓋骨の内側に前シルエット線がくることはなく,頭蓋骨を基準として自然乾燥ヘアスタイルとなった時の厚みが加えられた位置が前シルエット線の位置となる知識を利用して自然乾燥ヘアスタイルを推定しているにすぎず,自然法則を利用したものではない,毛髪の物理的な性質を知識として利用しているのであって自然法則を利用したものではない旨判断するが,生物学的特徴や物理的性質を知識として利用しようが手段として自然法則を利用していることには違いはないから,ノイズを除去する第1のステップは,その目的及び手段からして自然法則を利用しているものであって,特許法2条1項の「発明」に該当するものであり,上記判断は誤りである。イ 本願明細書には,多種多様なヘアスタイルとその自然乾燥ヘアスタイルをセットしたデータベースを構築することの記載があり 【0123】( ,【0127】 ,データベースから分析対象者のヘアスタイルに似たデータを取)り出し,データに付された自然乾燥ヘアスタイルを手本に分析対象者の自然乾燥ヘアスタイルを推定することは一般人でも難なくでき,こうしたデータベースから分析しようとする分析対象者のヘアスタイルに類似した候補を自動抽出することは本件出願時の技術水準からすれば可能であり,

第1のステップはほぼ完全自動化もできるから,「人間の視覚による認識

及び認識結果からの推定であり,人間の精神活動そのものである」ことを理由に発明該当性を否定した本件審決の判断は誤りである。

5 また,本願明細書には,AI化(完全機械化)できる発明も記載されて

いる(【0127】 【0128】, )から,第1のステップを人が行うことを前提として判断すること自体誤りがある。ウ 以上によれば,第1のステップは,ノイズを除去するという純粋に物理的な技術的目的を達成するために,カールやウェーブ等を元に戻すという物理法則を利用した工程であるから,「自然法則を利用した技術的思想の創作」に当たるものであり,これと異なる本件審決の判断は誤りである。また,本願補正発明は,人が行うとは規定しておらず,一部機械化又は完全機械化も可能であるから,人が行うことを前提とする本件審決の判断も誤りである。

(2) 第2のステップないし第4のステップについて

ア 第2のステップないし第4のステップは,互いに関連するステップであるから,これらの各ステップをまとめて総合的に判断すべきであるところ,

第2のステップから始まる本願補正発明の分析は,第3のステップで,カ

ット手法と対応する本願補正発明のAないしGで規定される自然乾燥ヘアスタイルの特徴を分析し,第4のステップで,選択したセクションに対して採用されている当該特徴に対応するカット手法を導くという一連の分析で終わる。この分析は,自然乾燥ヘアスタイルの特徴がカット手法と1対1で対応していることを利用するものである。カット手法は,物理的に髪を切るという自然法則を利用した手法であり,本願補正発明のAないしGに示されている物理的な特徴 「A( アウトラインの形状や表情」等)を自然乾燥ヘアスタイル(物理的な状態)にもたらす。カット手法に関する情報を導出する第4のステップは,自然乾燥ヘアスタイル(物理的な状態)という結果をもたらしたカット手法(前記物理的な状態を造った手段)をその対応関係から導くものである。そして,第2のステップないし第4のステップで得られた分析結果は,

5 カットマネキンを使って分析結果どおりのカットを行うという物理的な

検証をもって正しいか否かを確かめることができる。こうした物理的な検証ができることは,自然法則を利用しているからにほかならない。このように,第2のステップないし第4のステップは,物理的な結果(自然乾燥ヘアスタイル)とその結果をもたらした物理的な手段(カット手法)という対応関係を利用するものであり,人が行うか否かにかかわらず,本願補正発明は,自然法則を利用したものであるということができる。イ これに対して,本件審決は,人が本願補正発明の分析を行う場合が含まれるから,全体として自然法則を利用した発明ではないとするが,本願補正発明には人が分析を行うという発明特定事項は含まれない。また,本願明細書の【0123】 【0124】の記載によれば,第3の,ステップのAないしGで分析すべき特徴をデータベースから取り出し,分析の助けとすることは可能であるし,図1から図3のような写真と予備分析を含めた自然乾燥ヘアスタイルを対応づけてデータベースが構築され,理想的な教師データ付きの写真がデータベース化されており,また,本願補正発明はAI化(完全機械化)することも可能であるから,第2のステップないし第4のステップを人が行うことを前提として全体として自然法則を利用した発明ではない旨の本件審決の判断は誤りである。ウ 以上によれば,第2のステップないし第4のステップは,自然法則を利用したものであるということができ,これと異なる本件審決の判断は誤りである。また,第2のステップないし第4のステップは,人が行うとは規定しておらず,一部機械化又は完全機械化も可能であるから,人が行うことを前提とする本件審決の判断も誤りである。

(3) まとめ

以上によれば,本願補正発明は,自然法則を利用した発明であるといえるから,特許法2条1項に規定する「発明」に該当するものである。したがっ

5 て,これと異なる本件審決は取り消されるべきである。

2

(被告の主張)

(1) 第1のステップが自然法則を利用しているとの点について

ア 本願補正発明における自然乾燥ヘアスタイルの推定は,「パーマネントがかかっている写真においては,撮影された髪型そのものを分析するのではなく,パーマネントが解けて自然乾燥状態のナチュラルストレートとなったヘアスタイルを分析者が推定して,分析を開始する」【0026】( )と記載されているように,人である分析者が自らの頭の中で行うことが想定されているから,第1のステップは,自然法則に関する知識を利用していたとしても,人の精神活動そのものである。前記第2の3(1)アのとおり,本願補正発明の「第1のステップ」は,分析者が,「分析対象者の正面,側面および背面の写真,画像,イラストまたはデッサン」を自分の目で見て,「正面,側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイル」を自分の頭で推定することを特定したものであって,人間の視覚による認識及び認識結果からの推定であり,人間の精神活動そのものであるから,自然法則を利用したものではないと本件審決が判断したとおりであり,その判断に誤りはない。イ(ア) 原告は,前記1(1)ア(イ)のとおり,生物学的特徴や物理的性質を知識として利用していようが,手段として自然法則を利用していることには違いはないから,ノイズを除去する第1のステップは,その目的及び手段からして自然法則を利用しているものであって,特許法2条1項の「発明」に該当する旨主張する。しかし,第1のステップは,「分析対象者の正面,側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する」ものであり,ノイズを除去するものではないから,原告の上記主張はその前提において誤りがある。仮に,第1のステップがノイズを除去する

5 ステップであるとしても,そのノイズの除去は,何らかの物理的手段に

よって自然法則を利用して行われるものではなく,専ら人が頭の中で行うのであるから,人の精神活動そのものであり,自然法則を利用するものではない。分析者は,パーマネント,アイロン,くせ毛等によりかかった毛髪のウェーブを解いて伸ばして自然乾燥すると,自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルが得られるという毛髪の物理的な性質を知識として利用しているのであって,毛髪のウェーブを解いて伸ばして自然乾燥させるという物理的な操作を行うものではない。(イ) 原告は,前記1(1)ア(ア)のとおり,物理的な検証をもって正しい推定か否かを検証することができることは自然法則を利用しているにほかならない旨主張するが,人が頭の中での思考のみにより行われた分析の結果が正しいか否かを物理的に検証することは,当該思考のみにより行われた分析に自然法則が利用されているか否かに関係がない。原告が主張する検証は,分析自体に自然法則が利用されているか否かにかかわらず,分析の結果得られたカット手法を用いて物理的にカットしたことに対する検証にすぎず,カット手法の分析自体に自然法則を利用していることの根拠にならない。(ウ) 原告は,前記1(1)イのとおり,データベースから分析対象者のヘアスタイルに似たデータを取り出し,データに付された自然乾燥ヘアスタイルを手本に分析対象者の自然乾燥ヘアスタイルを推定することは一般人でも難なくできることであるとか,第1のステップの一部機械化や完全機械化が可能であると,本願明細書の【0121】ないし【0127】の実施例2や【0128】の実施例3を根拠として主張する。しかし,本願補正発明にはステップ1の自然乾燥ヘアスタイルの推定に当たってデータベースを手本にすることは何ら特定されておらず,原告の上記主張は特許請求の範囲に基づかないものであり,仮にデータベ

5 ースを手本にするとしても,分析対象者の自然乾燥ヘアスタイルを推定

することは専ら人の頭の中で行われているから,自然法則を利用したものではない。また,本願補正発明の特許請求の範囲には,いずれのステップについても機械等が介在することは特定されていない。本願明細書の【0026】ないし【0119】の実施例1には,本願補正発明の4つのステップを人である分析者が機械等を用いることなく自分の頭だけで行うことが記載されているから,本願明細書の【0121】ないし【0127】にサーバーを用いた実施例や【0128】にカット手法自動分析装置に関する実施例が記載されていたとしても,本願補正発明に,その4つのステップを人である分析者が自身の頭だけで行うことが含まれていることは明らかであって,本願補正発明の第1のステップを人が行うとした本件審決の判断に誤りはない。原告の上記主張は,特許請求の範囲に係る発明に拒絶理由がないものが含まれていれば特許になるということを前提としているが,失当であり,これとは逆に,発明に拒絶理由があるものが含まれていれば特許にならないことはいうまでもない。

(2) 第2のステップないし第4のステップが自然法則を利用しているとの点

についてア 前記(1)アのとおり,第1のステップが自然法則を利用したものではないのと同様に,第2のステップないし第4のステップも人が自身の頭の中で思考することのみによって行うものである。仮に,その思考過程において自然乾燥ヘアスタイルとカット手法との対応関係という知識を利用していたとしても,人の頭の中で完結している以上,人の精神活動そのものであって,自然法則を利用したものとはいえない。第2のステップないし第4のステップのそれぞれのステップがいずれも自然法則を利用したものとはいえない以上,第2のステップないし第4のステップを総合的に判断

5 しても,これらが自然法則を利用したものとはいえず,これと同旨の本件

審決の判断に誤りはない。イ これに対し,原告は,前記1(2)イのとおり,本願補正発明には人が分析を行うという発明特定事項は含まれておらず,本件審決の判断は誤りである旨主張するが,前記(1)イ(ウ)のとおり理由がない。また,原告は,前記1(2)アのとおり,第2のステップないし第4のステップで得られた分析結果は,カットマネキンを使って分析結果どおりのカットを行うという物理的な検証をもって正しいか否かを確かめることができ,こうした物理的な検証ができることは,自然法則を利用しているからにほかならない旨主張するが,人が頭の中での思考のみにより行われた分析の結果が正しいか否かを物理的に検証することは,当該思考のみにより行われた分析に自然法則が利用されているか否かとは関係がない。

(3) まとめ

本件審決は,ヘアスタイルやカット自体を自然法則を利用したものではないと判断したのではなく,人の頭の中で自然法則に関する知識を利用するだけでは自然法則を利用したことにならないと判断したのであり,原告は,本件審決の趣旨を正解していない。以上によれば,本願補正発明が自然法則を利用したものではなく,特許法2条1項の「発明」に該当せず,同法29条1項柱書に規定する「産業上利用することができる発明」に該当しない旨の本件審決の判断に誤りはない。

第3のステップは,分析対象者の背面写真から推定された自然乾燥ヘ

アスタイルの下側アウトラインについて,A「 アウトラインの形状または表情分析」の分析項目について,その形状と表情を分類するステップである(【0041】 【0042】, )ことが開示されている。しかし,前記のとおり,第1のステップ及び第2のステップが,分析者である人の頭の中で自然乾燥ヘアスタイルを推定し,分析の対象となる頭部の領域を選択することを含むものであり,第3のステップは,こうしたステップを前提として,人である分析者が,頭の中で,毛髪の知識や経験を踏まえて,第2のステップで選択したセクションに適した分析項目の中から分析者が推定した分析対象者の自然乾燥ヘアスタイルを分類することを含むものであるから,第3のステップも人の精神活動そのものであって,自然法則を利用したものとはいえない。

5 (ウ) 次に,第4のステップは,第3のステップの分析の結果から,

「前記カット手法に関する情報を導出する」との発明特定事項であり,本願明細書には,分析対象をアウトラインとするカット手法分析 【00(40】 における) 「耳上以下のバックサイドセクションおよびバックセンターセクションに対するアウトライン分析」(【0041】 の例に関)する記載があり,この例では,第3のステップでそれぞれ分類された下側アウトラインの表情と形状に基づいて,それぞれの分類に対応するカット手法の情報が導出されることが開示されている【0043】 。( )しかし,前記のとおり,第1のステップないし第3のステップが,分析者である人の頭の中で自然乾燥ヘアスタイルを推定し,分析の対象となる頭部の領域を選択し,セクションに適した分類項目の中から分析者が推定した分析対象者の自然乾燥ヘアスタイルを分類することを人の頭の中で行うことを含むものである以上,こうしたステップを前提として,人である分析者が,その推定した自然乾燥ヘアスタイルの分析項目による分類に対応するカット手法に関する知識を利用してカット手法の分析を行うことは,分析者である人の精神活動そのものであって,自然法則を利用したものとはいえない。イ これに対し,原告は,前記第3の1(2)アのとおり,第2のステップないし第4のステップの分析は,自然乾燥ヘアスタイルの特徴がカット手法と1対1で対応することを利用するものであり,本願補正発明の分析項目の物理的な特徴から自然乾燥ヘアスタイルという結果をもたらしたカット手法をその対応関係から導くものであり,第2のステップないし

第4のステップから得られた分析結果は,カットマネキンを使って検証

可能であるから,自然法則を利用したものである旨主張する。しかし,本願補正発明は,分析対象者の自然乾燥ヘアスタイルの推定(第1のステップ),分析対象セクションの推定(第2のステップ),選

5 択したセクションに対して,推定した自然乾燥状態のヘアスタイルを分

析項目による分類(第3のステップ) この分類に対応するカット手法に,対応するカット手法の分析(第4のステップ)のすべてを分析者である人が,毛髪の知識や経験等を利用して頭の中で分析することを含むものである以上,それは人の精神的活動そのものであって,カットマネキンでその分析結果の検証が可能であることは上記判断を左右するものではないことは,前記(2)イ(ア)の場合と同様である。なお,原告は,前記第3の1(2)イのとおり,本願明細書には,予備分析を含め,分析すべき特徴をデータベース化し,また,完全機械化も可能であることが開示されているから,第2のステップないし第4のステップを人が行うことを前提として全体として自然法則を利用した発明ではない旨の本件審決の判断は誤りである旨主張するが,前記(1)のとおり,本願補正発明においては,人がこうした分析を行うことは排除されておらず,人がこれらのステップに従って分析を行うことは人の精神活動そのものであることは既に繰り返し説示したとおりであるから,上記主張は当を得ない。

(4) 小括

以上によれば,本願補正発明の第1のステップないし第4のステップは,全体として考察すると,分析者が,頭髪の知識等を利用して自然乾燥ヘアスタイルを推定し(第1のステップ) 分析の対象となる頭部の領域を選択,し(第2のステップ) セクションに適した分類項目の中から分析者が推定,した分析対象者のヘアスタイルを分類し(第3のステップ),この分類に対応するカット手法の分析を導出する(第4のステップ)ことを,頭の中ですべて行うことが含まれるものである以上,仮に,分析者が頭の中で行う分析の過程で利用する頭髪の知識や経験に自然法則が含まれているとしても,専ら人の精神的活動によって前記1(1)で認定した課題の解決すること

5 を発明特定事項に含むものであって, 自然法則を利用した技術的思想の創

「作」であるとはいえないから,特許法2条1項に規定する「発明」に該当するものとはいえない。

4 結論

以上によれば,その他の点について判断するまでもなく,本願補正発明は,特許法2条1項に規定する「発明」に該当するものとはいえず,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないから,原告の請求は棄却されるべきである。よって,主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官菅 野 雅 之裁判官中 村 恭裁判官岡 山 忠 広(別紙)【発明の詳細な説明】【技術分野】

5 【0001】

本発明は,分析対象者のヘアスタイルで採用されているカット手法を分析する方法に関する。【背景技術】【0002】美容学校では,学生に複数の代表的なヘアスタイルにするのに使われるカット手法を教えている。しかしながら,無数にあるヘアスタイルの一部を教えているにすぎない。卒業後は,美容室に勤めながら先輩美容師から,様々なヘアスタイルにするためのカット手法を学びながら応用ができるようにスキルアップを図っている。【0003】美容室では,顧客から「このようなヘアスタイルにして欲しい」と写真を渡されることがあるが,経験の浅い美容師にとってどのようなカット手法を施せばそのヘアスタイルにすることができるのかわからないことが多い。【0004】ヘアスタイルをバング,トップセクションなどのセクションに分け,各々のセクションに対してどのようなカット手法を用いるかにより,ヘアスタイルは2億通りを超え,経験の浅い美容師や学生が写真通りのヘアスタイルにすることは簡単なことではない。また,ヘアスタイルデザインロジックに基づいた体系的な学習法や分析方法はこれまで存在せず,美容師育成に時間がかかっていた。【0005】特許文献1のように,展開図を用いて数値や符号でヘアデザインを設計する方法が提案されているが,顧客が持参する写真から展開図を作り上げる手法については何ら開示していない。また,カッティングについて特許文献1に記載はあるが,実際にどのようなヘアスタイルに対してどのようなカッティング手法を用いるのかについては全く記載がなく,作成された展開図どおりのヘアスタイルに仕上げること

5 ができるというだけのものであった。

【0006】また,写真から自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定して,分析を試みることも行われてこなかった。【0007】ベテランの美容師は,過去に学んだ様々なヘアスタイルから経験的にカット手法を導き出しているだけであり,経験の浅い美容師にとってカット手法を写真から導き出すことは容易なことではなかった。【先行技術文献】【特許文献】【0008】【特許文献1】 特開2004-209284号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0009】本発明は,分析対象者のヘアスタイルの正面写真,側面写真および背面写真を分析し,当該分析対象者に使用されているカット手法分析方法を提供することを目的とする。【課題を解決するための手段】【0010】分析対象者の写真,画像,イラストまたはデッサンから,正面,側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定して分析を行うこと自体,これまで行われたことはなかった。そこで,本発明は,分析対象者の写真,画像,イラストまたはデッサンから,正面,側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する第1のステップ,次いで,分析対象セクションを複数のセクションの中から

5 選択する第2のステップ,次いで,前記選択したセクションに対して,前記推定さ

れた自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルに基づきA アウトラインの形状または表情分析B カットライン分析C ボリューム位置またはボリュームライン分析D シルエット形状または表情分析E パート(分け目)の位置または有無分析F セクションの幅または形状分析G フェイスラインとセクション間の継がり方またはセクション間の継がり方分析の中から,前記選択されたセクションに適した少なくとも1つの分析項目の分析を行い,分析結果を得る第3のステップ,次いで,前記分析結果から,カット手法に関する情報を導出する第4のステップによる,前記選択されたセクションに対して採用されているカット手法分析方法とすることで,課題を解決した。【発明の効果】【0011】本発明により,分析対象者の写真,イラストまたはデッサンから採用されているカット手法分析ができるようになった。また,前記カット手法分析は体系化されているため,学生や経験の浅い美容師であっても容易にカット手法を分析できるようになった。【発明を実施するための形態】【0013】<定義>以下の定義は,明細書の理解を深めるために述べるものであって,一般的な美容用語の定義から外れるものではない。(シルエット線)シルエット線とアウトラインは共にヘアスタイルの輪郭を意味し,

5 同義である。本発明では,予備分析に際して写真にシルエット線を描くことから,

外界または顔とヘアスタイル輪郭の境界となる輸郭線について強調したい場合はシルエット線という。美容用語では,単にシルエット,シルエットラインなどともいう。【0014】(アウトライン)シルエット線のようにヘアスタイル輪郭と外界との境界が明確な線もあるが,ヘアスタイルの輪郭は3次元であり,図2のイヤートゥ線やボリュームラインのように,ヘアスタイルの輪郭を構成するが2次元の写真からは外界との境界としては写っていない輪郭線もある。また,自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルの裾など毛先がばらついて,明確なラインが取れない輪郭線もある。そのような輪郭線であることを強調したい場合はアウトラインという。ヘアスタイルの下側のライン(輪郭線) ヘアスタイルの裾のアウトラインなどのように,使う。いずれにせよ,美容用語では,アウトラインとシルエット線は同義であり,本明細書でも,アウトラインとシルエット線を読み替えても記載内容が変わることはない。本明細書においては,説明を分かりやすくするために,ヘアスタイル輪郭と外界との境界を強調したい場合に,シルエット線という用語を使用する。【0015】(パネル)パネルとはカットするための毛髪の束であり,板状に取り出されることからパネルと呼ばれる。【0016】(スライス)カットするために,パネルを分けとること。床に対して垂直にパネルを取る縦スライス,床に対して水平にパネルを取る横スライス,斜めにスライスをとる斜めスライスなどがある。【0017】(カットライン)カットして出来たパネルの切り口をカットラインという。レイヤ

5 ー,グラデーション,ワンレングス,セイムなど,カットラインの角度によりヘア

スタイルは様々に変わる。【0018】(セクション)毛髪の生えた頭部をカットするために一定の範囲に分けた領域をいう。二つのセクションに分けて切る場合はツーセクションカット,三つ以上はスリーセクションカット,さらに細かく分ける場合はマルチセクションカットなどと呼ばれる。美容用語では,各セクションには,サイドクション,トップセクション,オーバーセクションミドルセクション,アンダーセクションなどと命名がなされており,各セクションは所定のカット手法を行うための単位領域となる。本明細書では,下記「(本分析)」の「2 分析対象を前シルエットとするカット手法分析」のように,2分割にする場合と3分割にする場合に分けて分析を行う例示もある。このように,セクションをどの程度分割するかは,推定された自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルから適宜決めることができるものであって,以下の実施例のセクション分けは,一例を示すに過ぎない。【0019】(イヤートゥ線)イヤートゥイヤー線とも呼ばれ,本発明においては左右の耳5の先端と頭頂点aを通過する線をいう。【0020】(ステム)ステムとは,パネルを取り出すときの角度を言いう。頭皮に対して垂直に取り出すことをオンベースといい,基本となるパネルの取り出し方である。上下ステムとは,パネルを上に持ち上げてパネルを取り出すことや,下に下げてパネルを取り出すことをいう。アップステムとは,パネルを頭皮に対して垂直な状態より上(天井側)に向けて取り出すことをいう。ダウンステムとは,パネルを頭皮に対して垂直な状態より下(床側)に向けて取り出すことをいう。前後ステムの内,ステムを前に引くとは,頭皮に対して垂直な状態より前(顔側)

5 に向けてパネルを取り出すことをいい,ステムを後ろに引くとは,頭皮に対して垂

直な状態より後ろ(後頭部側)に向けてパネルを取り出すことをいう。また,所定の領域,例えばサイドミドルセクションからパネルを取り出すとき,所定の厚さの複数のパネル(複数の板状の毛束)を取り出しカットすることになる。パネルをオンベースで複数取り出すと,パネルは頭皮の丸みに従い方向を次第に変えてゆく。例えば,縦スライス(床と垂直)にパネルを頭の外周に沿って1周取り出した時は,取り出された複数のパネルは頭を中心に放射状になる。一面でパネルを取り出すとは,パネル面の角度を決め,頭皮の丸みとは無関係にその角度のままパネルを取り出すことを言い,頭皮に沿って複数取り出されたパネルは,すべて同じ方向,すなわち,互いに平行に取り出される。【0021】(分割面)分けられた個々のセクション面であって,各セクションを平面とした面をいう。例えば,バングセクションは,オデコより上の頭皮に沿って湾曲したセクションであるが,バングセクションの分割面というときは,バングセクションの境界を各々の辺とする平面をいう。バングセクションにオンベースにパネルを水平方向に取った場合,パネルはバングセクションの頭皮に対して垂直にパネルが取られることになるから,やや扇形に開いたパネルになる。しかし,バングセクションの分割面に垂直にパネルを水平方向に取る場合は,平面としたバングセクション(分割面)から垂直にパネルが取られる。バングセクションの両端部も中央部も同じ方向に毛髪が取られるので,水平方向に方形の板状パネルとなる。誤解のないように説明するが,パネルを垂直方向に取り,バングセクションの分割面に垂直にパネルを取るというときは,パネルは方形(分割面の両端すなわちパネルの両端が直角)の板状パネルとなる。【0022】(頭頂点)頭蓋骨骨格の一番高い点,すなわち,正面から分析対象者を観たとき最

5 も高い正中線上の点をいう。分析対象者が顔を傾けて撮影した正面写真などにおい

ては,頭蓋骨骨格の一番高い点と写真に写った分析対象者の頭の一番高い点は,ずれることがある。そのような正面写真においては,写真から頭蓋骨骨格の一番高い点を推定することになる。【0023】(分析項目)本明細書でいう「分析項目」とは,分析する対象をいい,例えば,シルエット線の形状からカットラインが分析結果として得られる場合,分析項目は「シルエット形状または表情分析」となる。本発明で行われる分析項目はA アウトラインの形状または表情分析B カットライン分析C ボリューム位置またはボリュームライン分析D シルエット形状または表情分析E パート(分け目)の位置または有無分析F セクションの幅または形状分析G フェイスラインとセクション間の継がり方またはセクション間の継がり方分析の7つの分析項目のいずれかである。【0024】(カット手法)一般的なカットは,頭皮から毛髪を特定のスライスでパネルにして取り出し,特定の角度(ステム)で引いて,特定のカットライン(レイヤー,グラデーション,コンケーブ等)でカットするという,一連の動作を含む。また,パート(分け目)もヘアスタイルの印象に大きな影響を与え,分け目を考慮してカットが行われる。さらに,頭を複数のセクション(トップセクション,バックアンダーセクションなどの領域)に分け,それぞれのセクションから取り出したパネルに対して異なるカ

5 ット手法を採用することで,多様なヘアスタイルが生まれる。

本発明でカット手法として導き出される(A)スライス(B)ステム(C)グラデーション,セイム,レイヤー,スクエア,コンケーブ等のカットライン(D)パート(分け目)(E)セクションの分け方と幅は,ヘアスタイルの外形,表情に大きな影響を与える要素である。この他にも,カット手法には毛先のカット手法(セニング,シャギーなど)などもあり,上記(A)~(E)のカット手法に加え,更なるカット手法と紐づけすることを妨げるものではない。【0026】<実施例>アウトライン,前シルエット,後シルエットおよび内側シルエットを分析対象とする分析(以下,「本分析」という。)を開始する前に,分析対象者の正面写真,側面写真および背面写真について,予備分析をする。パーマネントがかかっている写真においては,撮影された髪型そのものを分析するのではなく,パーマネントが解けて自然乾燥状態のナチュラルストレートとなったヘアスタイルを分析者が推定して,分析を開始する。美容に携わる者であれば,パーマネントがかかっている写真からでも自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときのシルエット線のおおよその位置を容易に推定できる。なお,実施例の以下の分析は,特に断りがなくとも,分析者により推定された自然乾燥状態のナチュラルストレートとなったヘアスタイルを用いて行われる。【0027】

5 (予備分析)

1 正面写真を用いた予備分析方法

図1を参照されたい。分析対象者の正面写真を用意し,耳5が毛髪で隠れている場合は,耳5を描く。耳5を描くことは必須ではないが,耳5の位置は前シルエット線3等を描く際に目安となるため,耳5を描くことが好ましい。分析対象者の正面写真から,自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定し,前記正面写真に次のように処理を行う。【0028】ア 前シルエット線3を描く。前シルエット線3を描くに当たり,前シルエット線3が通過すると推定される耳5の横の位置に,耳横印bを描くと,前シルエット線3が正確に描ける。前シルエット線3は,耳の横を必ず通過するからである。顧客がカットの参考のために持ち込むモデル等の正面写真の中には,やや顔を傾けた正面写真であることがあり,前シルエット線3を正確に描くために,補助的に耳横印bを描いた方が正確に前シルエット線3を描ける。なお,当然のことであるが,自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときの前シルエット線3の推定するに当たり,頭蓋骨の内側に前シルエット線3が来ることはない。頭蓋骨を基準として自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなった時の毛の厚みが加えられた位置が前シルエット線3の位置となる。【0029】イ 正中線1を描く。正中線1は,顎の頂点,鼻の頂点,頭頂点aを通り後頭部に至る頭部を二分する顔の中心線である。頭頂点aは,正中線1上に存在するため,特に印をつける必要はないが,前述したように顧客がカットの参考のために持ち込む正面写真の中には,やや顔を傾けたものがある。頭頂点aに印を描いた方が,正中線1を正確に描け,

5 分析が楽に進む。

【0030】ウ サイドの下側アウトラインの傾きにより,(ア)または(イ)の場合に分けて,レングス補助線2を描く。サイドの下側アウトラインの傾きが正面写真から明瞭に分からない場合は,側面写真を参照して,サイドの下側アウトラインの傾きを調べてもよい。【0031】(ア) サイドの下側アウトラインが真っ直ぐまたは前上がりの場合は,目尻から正中線1と平行にレングス補助線2を描く。図2に示す実施例1の分析対象者においては,サイドの下側アウトラインは,前上がりであり,レングス補助線2は,図1のようの目尻から描かれる。【0032】(イ) サイドの下側アウトラインが前下がりの場合,頬骨外から正中線1と平行にレングス補助線2を描く。【0033】エ 前記レングス補助線2と前記前シルエット線3の一番幅のある前記前シルエット線3上の位置を,前ボリューム位置Bとし,印を描く。【0034】オ 前記前ボリューム位置Bを超えて髪の流れが内側に入り出し方向が安定したら,その方向のまま前記レングス補助線2を交わるまで直線を引き,その交点をイヤートゥレングス点Aとして印を描く。以上の点や線は,後述する本分析に使用される。【0035】

2 側面写真を用いた予備分析方法

分析対象者の側面写真から,自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定し,前記側面写真に次のような処理を行う。

5 ア 横シルエット線4を描く。

側面写真の顔が傾いており,正確な側面写真となっていないときには,補助的に頭頂点aに印をつけて,横シルエット線4を描く助けとしてもよい。イ イヤートゥ線7を描く。イヤートゥ線7は,上記定義でも述べたように,左右の耳5の先端と頭頂点aを通過する線をいう。耳5が毛に隠れているときは耳5を描く。また,頭頂点aを補助的に描くと,イヤートゥ線7を描くときの参考になる。ウ 後ボリューム位置Cを描くエ ボリュームライン9を描く。当然のことながら,ボリュームライン9は,前ボリューム位置Bと後ボリューム位置Cを必ず通過する。ボリュームライン9の位置が分かりにくいときは,前シルエット予備分析方法で得た前ボリューム位置Bを参考にして,側面写真の相当位置に前ボリューム位置Bを付すとボリュームライン9を引きやすくなる。なお,分析対象者のヘアスタイルによって,推定された自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルにおけるボリューム位置(B,C)やボリュームライン9は大きく変わる。【0036】

3 背面写真を用いた後シルエット予備分析

分析対象者の背面写真から,自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを想定し,前記背面写真に次のような処理を行う。ア 後シルエット線8を描く。正面写真や側面写真の予備分析方法と同様,背面写真の分析対象者が傾いて撮影されている等の場合には,頭頂点aを描くなどして,後シルエット線8を描く助けとしてもよい。イ 後ボリューム位置Cを描く後ろボリューム位置Cが分かりにくいときは,前記側面写真を用いた予備分析方

5 法で得た後ボリューム位置Cを参考に描いてもよい。

ウ ボリュームライン9を描くボリュームライン9の位置が分かりにくいときは,前記正面写真を用いた予備分析方法で得た前ボリューム位置Bや前記側面写真を用いた予備分析方法で得た後ボリューム位置Cを参考に描いてもよい。【0037】予備分析方法に使用する写真は,好ましくは分析対象者の正面写真,側面写真,背面写真のすべてがあるのが望ましいが,すべての方向の写真がない場合は,一部写真から分析を行うことも可能である。その場合,以下の本分析の一部の分析項目だけを分析する。また,例えば正面写真しかない場合,正面写真から把握されるヘアスタイルに似合う,側面写真と背面写真に代わるイラストを描いて,以下の本分析のすべての分析項目を分析することも可能であり,これも本発明に含まれる。さらに,写真を用いず,すべてイラストやデッサンであっても,本発明に含まれる。写真,イラストまたはデッサンは紙媒体として存在する必要はなく,タブレット端末のようにディスプレイに表示された画像であってもよい。【0038】(本分析)(i)レイヤー,グラデーション,スクエア,セイムなどのカットライン(ii)スライス(iii)パネルを取り出す角度(ステム)(iv)コンケーブなどの特殊なカット(v)セクションの分け方などの複数のカット手法に関する情報が組み合わされてカット手法が定まり,カットがなされる。カット手法は,自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルの形状に影

5 響を与えるため,写真から推定されたナチュラルストレートのヘアスタイルを分析

することで,どのようなカット手法が採用されているのか知ることが可能となる。【0039】以上の予備分析が終了した後,本分析に移る。本分析は,大きく分けて,アウトライン,前シルエット,後シルエットおよび内側シルエットを分析対象として,分析対象者の写真を分析する。本分析は,分析対象者の写真から,如何なるカット手法が採用されているのかを導き出す分析手法である。導き出されたカット手法を用いれば,分析対象者のヘアスタイルを再現できる。以下,分析対象であるアウトライン,前シルエット,後シルエットおよび内側シルエットについて,順に説明する。以下の分析はすべて,分析対象者の写真から自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定して分析するものである。【0040】

1 分析対象をアウトラインとするカット手法分析

アウトラインの分析は,ヘアスタイルを次の(1)~(4)のセクションに分けて分析を行う。分析対象者のヘアスタイルの複雑さにより,セクションをさらに細かく分けてもよいし,ヘアスタイルが単純であればより大雑把にセクション分けすることも可能である。【0041】

(1)耳上以下のバックサイドセクションおよびバックセンターセクションに対す

るアウトライン分析ア バックの下側アウトラインの形状,表情分析図4(A)背面から観た下側アウトラインの形状の説明図である。分析領域は,網掛で示した耳上以下のバックサイドおよびバックセンターであり,

5 この領域から取り出したパネルに対してなされたカット手法を分析するものである。

分析対象は,背面写真から推定された自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイル下側アウトラインの外形である。この分析項目は,本発明の「A アウトラインの形状または表情分析」に相当する分析項目である。なお,図4(A)のシルエット線は,説明のために簡略化したものである。図4(C)に示すように,下側アウトラインの表情を分類する。a)下側アウトライン外形がきれいに出ているb)下側アウトライン外形がぼやけてラフに出ているc)下側アウトラインに重み(インレイヤー)があるという3つに分類する。【0042】次いで,背面から観た下側アウトラインの形状を図4(A)の1)~4)で示したように1)ラウンド2)前上がり3)真っ直ぐ4)前下がりの4つに分類する。【0043】この分析結果から,次のようなステムの角度に関するカット手法の情報を導出できる。パネルを取るスライスは水平とし,分析結果[1]:a)であって1)ラウンドまたは2)前上がりの場合,パネルを下に傾けて自然に落ちる位置でカットする手法が採用されていると分析される。分析結果[2]:a)であって3)真っ直ぐまたは4)前下がりの場合,パネルを下に傾けて一面でカットする手法が採用されていると分析される。

5 分析結果[3]:b)であって3)真っ直ぐの場合,自然に落ちる位置から上にパネル

を少し持ち上げてカットする手法が採用されていると分析される。分析結果[4]:b)であって1)ラウンドまたは2)前上がりの場合,ステムを前に引いてカットする手法が採用されていると分析される。分析結果[5]:b)であって4)前下がりの場合,ステムを後ろに引いてカットする手法が採用されていると分析される。分析結果[6]:c)であって3)真っ直ぐの場合,ステムをはえ癖方向に引いてカットする手法が採用されていると分析される。分析結果[7]:c)であって1)ラウンドまたは2)前上がりの場合,ステムをバックのセンターライン(図4参照)より後ろにオーバーダイレクションしてカットする手法が採用されていると分析される。分析結果[8]:c)であって4)前下がりの場合,ステムをバックのセンターライン(図4参照)より前にオーバーダイレクションしてカットする手法が採用されていると分析される。【0044】

(2) サイドのアウトラインのカット手法分析(耳上,モミアゲからコメカミにか

けて)ア サイドの下側アウトラインの形状分析図5は,耳上からモミアゲにかけての下側アウトライン分析の説明図である。分析領域は,図5に示した網掛で示した領域であり,この領域から取り出したパネルに対するカット手法を分析する。分析対象は推定された自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルにおいて,前記領域から生える毛髪の下端のアウトラインの形状である。具体的には,図5に図示した分析対象アウトラインの外形について,図5において1)~4)で示したように次の4つに分類する。1)ラウンド

5 2)前上がり

3)真っ直ぐ4)前下がり【0045】次いで,網掛けで図示された分析領域について次の3つに分類する。a)ラインがきれいに出ているb)バックサイドとの継がり部10から生える毛髪にコンケーブの凹みがあるc)ラインがぼけていて,段差がある【0046】この分析結果から,次のようなステムに関するカット手法の情報を導出できる。分析結果[1]:a)の場合,パネルが自然に落ちる位置で,1)~4)の下側アウトラインの形状分析結果の形状に合わせてカットする手法が採用されていると分析される。分析結果[2]:b)の場合,パネルが自然に落ちる位置から前に引いて,1)~4)の下側アウトラインの形状分析結果の形状に合わせてカットする手法が採用されていると分析される。分析結果[3]:c)の場合,自然に落ちる位置から少し上に前後ステムを持ち上げて,1)~4)の下側アウトラインの形状分析結果の形状に合わせてカットする手法が採用されていると分析される。【0047】

(3) フェイスラインのカット手法分析その1(モミアゲからコメカミまでのフロ

ントコーナーにかけて)ア フェイスライン周りの下側アウトラインの形状分析フェイスラインとは,顔周りの髪の生え際をいう。フェイスライン周りから生える毛髪が下に流れてできた下側アウトラインの横からの表情を分析対象とし,分析結果から次のようなステムに関するカット手法が導

5 出される。この分析項目は,本発明の「A アウトラインの形状または表情分析」に

相当する分析項目である。分析結果から,ステムに関するカット手法の情報が導出できる。【0048】分析結果[1]:モミアゲからコメカミまでのフロントコーナーにかけて,フェイスライン周りから生える毛髪の下側アウトラインが真っ直ぐの場合(図6参照) 自然に,落ちる位置でカットする手法が採用されていると分析される。分析結果[2]:モミアゲからコメカミまでのフロントコーナーにかけて,フェイスライン周りから生える毛髪の下側アウトラインに丸み,マイナスカーブ(中央部が上に盛り上がったカーブ)がある場合(図6の点線参照),自然に落ちる位置から上にステムを少し持ち上げて(図6の一点鎖線参照)カットする手法が採用されていると分析される。図6では,カット時にステムを少し持ち上げて図示された直線的なカットラインでカットし,毛髪を自然に落ちる位置に戻すと,マイナスカーブ(中央部が上に盛り上がったカーブ)になることが図示されている。【0049】

(4) フェイスラインのカット手法分析その2(イヤートゥ線からみつ襟にかけ

て)以下の,3つの分析で構成される。【0050】ア コンケーブの有無分析分析対象は,イヤートゥ線からみつ襟にかけて,前から観た前ボリューム位置B下の下側アウトラインに凹みが有るか無である。コンケーブはカットラインの一種であり,この分析項目は,本発明の「B カットライン分析」に相当する分析項目である。図示はしないが,分析結果から,カットライン(コンケーブ)に関するカット手法の情報が得られる。

5 【0051】

分析結果[1]:イヤートゥ線からみつ襟にかけての下側アウトラインにコンケーブがある場合,ステムを前に引き出してコンケーブを付けるカット手法が採用されていると分析される。コンケーブ(凹み)があることにより,前から観たとき,後ろの毛髪が見える度合いが増え,バックの毛髪の長さが強調されると共に,アウトラインやフェイスラインの毛先の軽さも強調されるようになる。分析結果[2]:コンケーブがない場合,コンケーブを付けないでカットするカット手法が採用されていると分析される。【0052】イ コンケーブのカット開始位置分析分析領域は,図7に図示した網掛部になる。分析対象は,背面から観た下側アウトライン(バックアウトライン)になる。また,バックアウトラインの自然な流れの幅が狭いか広いかを分析対象とするが,その程度によりコンケーブのカット開始位置が決まることとなる。この分析項目は,本発明の「A アウトラインの形状または表情分析」に相当する分析項目である。分析結果からカットライン(コンケーブ)の開始位置に関係する,パネルの取り出し位置(スライス位置)に関するカット手法の情報が得られる。バックアウトラインにコンケーブが付けられると,バックアウトラインにくびれができ,バックアウトラインの自然な流れが途絶することとなり,コンケーブの開始位置が特定できる。【0053】分析結果[1]:バックアウトラインの自然な流れの幅が狭い場合,すなわち,図7のa)で示されているような幅の場合,パネルの引き出し開始位置をみつ襟位置14から引き出すものとし,ステムを前に引き出してカットするカット手法が採用されていると分析される。分析結果[2]:バックアウトラインの自然な流れの幅が広い場合,すなわち,図7の

5 b)で示されているような幅の場合,パネルの取り出し開始位置を耳の下から2/

3位置15から取り出すものとし,ステムを前に引き出してカットするカット手法が採用されていると分析される。【0054】分析結果[1]と分析結果[2]は二者択一ではない。また,分析対象者における推定された自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルによっては,分析結果幅[2]よりさらに幅が広いと分析される場合がある。そのような場合,パネルの取り出し開始位置をイヤートゥ線7から取り出すこともあり得る。バックアウトラインの自然な流れの幅が,狭いa)場合と幅が広い場合b)の中間の場合,その程度応じてパネルの取り出し開始位置をみつ襟位置14からイヤートゥ線7の間に決め,ステムを前に引き出してカットする。図8を参照されたい。バックアウトラインの自然な流れの幅が狭い場合は,コメカミを起点してみつ襟までパネルを引き出す。バックアウトラインの自然な流れの幅が広がるにつれ,コメカミを起点として,耳下位置,耳2/3位置,耳1/2位置,耳2/3位置,頭頂点aを通るイヤートゥ線7位置まで次第にパネルの幅を狭める。どのようにパネルを取り出すにせよ,カット時には前にステムを引き出してカットされる。【0055】ウ コンケーブのカットライン分析イヤートゥ線からみつ襟にかけてのバックアウトラインの傾斜角度を分析対象とする。この分析項目は,本発明の「A アウトラインの形状または表情分析」に相当する分析項目である。図7には,幅が狭いa)の場合と幅が広いb)の双方について,傾斜角度が小さい場合を1)で示している。傾斜角度が小さい場合は1)として図示している。また,傾斜角度が大きい場合は2)として図示している。

5 分析結果から,次のようなカットラインに関するカット手法の情報が導出される。

分析結果[3]:図7の1)のように傾斜角度が小さい場合,グラデーションにしたカット手法が採用されていると分析される。分析結果[4]:図7の2)のように傾斜角度が大きい場合,レイヤーにしたカット手法が採用されていると分析される。なお,角度の程度により,グラデーションからレイヤーに徐々に変化させるようにする。【0056】以上のように,カット開始位置に関する分析結果[1]または分析結果[2]とカットラインに関する分析結果[3]または分析結果[4]の組み合わせによりカット手法が決定される。・・・【0121】(実施例2)実施例2は,実施例1のカット手法分析方法を教えるため,または,マニュアルとなる教示媒体や教示システムに関する発明である。ヘアスタイルは,ボブなどのショートのヘアスタイルから,ロングのヘアスタイルなど多様性に富む上に,パーマネントがかかることにより,自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定することは,美容に精通した当業者にとっては容易なことでも,美容学校の学生などには困難なことが多い。また,分析項目の分析方法についても学生などにとって,理解が困難なことが多い。分析対象者の正面,側面および背面の写真から自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する推定手法や,前記推定手法により得られた自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルに基づき,分析対象セクションごとに採用されているカット手法分析方法を表しているディスプレイなどの教示媒体を用

5 意して,学生などに教えることになる。

【0122】しかし,ヘアスタイルは多種多様であり,すべての実例写真を掲載することは困難であるし,多くの実例写真を掲載すればするほど膨大な情報量の教示媒体なり,かえって,教えるべき内容の理解を損ねることになりかねない。教示媒体には,せいぜい,典型例となる実例写真だけが表示されるものとなる。また,美容室に来店する顧客が写真を持ち込み,「この写真のようなヘアスタイルにして欲しい」と要望されることもある。持ち込まれたヘアスタイルが,典型例から外れたものであると,経験の浅い美容師にとって分析が困難となることがある。【0123】そこで,実施例2の教示システムには,実例写真や実例動画を多数記憶させたサーバー等の記憶媒体が用意されている。【0124】実例写真は,分析対象者の正面,側面および背面の写真から自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定した実例写真や実例動画でもよいし,実施例1で示したカット手法を分析する際に使用した実例写真や実例動画でもよい。そして,教示媒体には,実施例1で示した分析のぞれぞれの説明箇所に近接して,ハイパーリンクや,実例写真にアクセスするための二次元バーコードなどのリンクを張る。例えば,学生などが,スマートフォンなどで二次元バーコードを読み込みサーバー(記憶媒体)に蓄積された実例写真にアクセスすることで,学習のスピードが向上する。また,教示媒体がタブレット端末等の端末である場合には,実施例1で示した分析のぞれぞれの説明箇所に近接して,ソフトキーなどの実例写真にアクセスするためリンクを張ることで,サーバーなどの記憶媒体に蓄積された前記説明箇所と対応した多数の実例写真にアクセスできるようになっている。

5 【0125】

上記例では,記憶媒体をネットワーク上に配置したが,記憶容量が大きい場合は,タブレット端末等の端末自体の記憶媒体に実例写真を蓄積してもよい。【0126】教示媒体に接した美容師等が,自身が作成した実例写真を記憶媒体に次々を追加して,オリジナルの実例集を作成することもできるし,ネットと接続しサーバーに追加された実例写真を管理者が選んで公開できるようにすることで,実例写真のバリエーションを豊かにできる。さらに,追加された実例写真を管理者が分析し,次々と開発される新たなヘアスタイルに対応した新たな分析項目や分析手法を開発することも可能となる。【0127】また,自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定したシルエット線が加えられた複数の分析対象者の少なくとも正面,側面または背面からの,写真,画像,イラストまたはデッサンを記憶させたデータベースを構築してもよい。【0128】(実施例3)分析対象者の写真データを入力する手段を有し,前記写真データから実施例1のカット手法分析方法を自動的に行うニューラルネットワークシステムを構築する。前記ニューラルネットワークシステムに,教師ありの学習を行うことでカット手法自動分析装置を完成させる。カット手法自動分析装置に対する学習は,分析対象者の写真から自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する写真の予備分析方法について行ってもよく,分析対象者の写真を入力すれば,自動的に自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する。そして,各セクションに対して採用されているカット手法を導き出し,ディスプレイに表示する。自動分析装置はネットワーク化されていてもよく,スマートフォンで分析対象者の写真をクラウド化されたカット手法自動分析装置に送ると,実施例1で示したカット手法分析法を自動的に行い,分析結果をスマートフォンに返信してくれるようなシステムも構築できる。【図2】

第4 当裁判所の判断

1 本願明細書(甲1)には,別紙のとおりの記載があり,この記載事項によれば,本願補正発明に関し,次の事項が開示されている。

(1) 「本発明」は,分析対象者のヘアスタイルで採用されているカット手法を分析する方法に関するものである(【0001】 。)美容室では,顧客から「このようなヘアスタイルにして欲しい」と写真を

5 渡されることがあるが,経験の浅い美容師にとってどのようなカット手法を施せばそのヘアスタイルにすることができるのか分からないことが多く,ヘアスタイルをバング,トップセクションなどのセクションに分け,各々のセクションに対してどのようなカット手法を用いるかにより,ヘアスタイルは2億通りを超えるため,経験の浅い美容師や学生が写真通りのヘアスタイルにすることは簡単ではなく,また,ヘアスタイルデザインロジックに基づいた体系的な学習方法や分析方法はこれまで存在しないため,美容師育成に時間がかかっており,さらには,写真から自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定して分析を試みることも行われてこず,ベテランの美容師は,過去に学んだ様々なヘアスタイルから経験的にカット手法を導出しているだけであり,経験の浅い美容師にとってカット手法を写真から導き出すことは容易なことではなかった 【0003】( ,【0004】,【0006】,【0007】 。)

(2) 「本発明」は,分析対象者のヘアスタイルの正面写真,側面写真及び背面写真を分析し,当該分析対象者に使用されているカット手法分析方法を提供することを目的とするものであり,分析対象者の写真,画像,イラストまたはデッサンから,正面,側面及び背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する第1のステップ,次いで,分析対象セクションを複数のセクションの中から選択する第2のステップ,次いで,前記選択したセクションに対して,前記推定された自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルに基づき,「A アウトラインの形状または表情分析」 「B, カットライン分析」 「C, ボリューム位置またはボリュームライン分析」 「D, シルエット形状または表情分析」 「E, パート(分け目)の位置または有無分析」 「F, セクションの幅または形状分析」 「G, フェイスラインとセクション間の継がり方またはセクション間の継がり方分析」の中から前記選択されたセクションに適した少なくとも1つの分析項目の分析

5 を行い,分析結果を得るステップ,次いで,前記分析結果から,カット手法に関する情報を導出する第4のステップによる,前記選択されたセクションに対して採用されているカット手法分析方法とすることで,前記(1)の課題を解決した(【0009】 【0010】 。, )

(3) 「本発明」により,分析対象者の写真,イラスト,またはデッサンから採用されているカット手法分析ができるようになり,また,前記カット手法分析は体系化されているため,学生や経験の浅い美容師であっても,容易にカット手法を分析できるようになった(【0011】 。)

2 特許法2条1項の「発明」の意義について特許制度は,新しい技術である発明を公開した者に対し,その代償として一定の期間,一定の条件の下に特許権という独占的な権利を付与し,他方,第三者に対してはこの公開された発明を利用する機会を与えるものであり,特許法は,このような発明の保護及び利用を図ることにより,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とする(特許法1条)。また,特許の対象となる「発明」とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」であり(同法2条1項),一定の技術的課題の設定,その課題を解決するための技術的手段の採用及びその技術的手段により所期の目的を達成し得るという効果の確認という段階を経て完成されるものである。そうすると,請求項に記載された特許を受けようとする発明が,同法2条1項に規定する「発明」といえるか否かは,前提とする技術的課題,その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らし,全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かによって判断すべきものである。そして,上記のとおり,「発明」が「自然法則を利用した技術的思想の創作」であることからすれば,単なる人の精神活動,意思決定,抽象的な概念や人為的な取り決めは自然法則とはいえず,また,自然法則を利用するものでもない

5 から,直ちには「自然法則を利用した」とものとはいうことはできない。したがって,請求項に記載された特許を受けようとする発明に何らかの技術的手段が提示されているとしても,その技術的意義に照らして全体として考察した結果,その課題解決に当たって,専ら,人の精神活動,意思決定,抽象的な概念や人為的な取り決めそれ自体に向けられ,「自然法則を利用した」ものといえない場合には,同法2条1項の「発明」に該当するとはいえない。以下,これを前提として判断する。

3 本願補正発明の「発明該当性」について(1) 本願補正発明におけるカット手法分析方法における「分析者」について前記第2の2のとおり,本願補正発明は,「分析対象者の写真,画像,イラストまたはデッサンから,正面,側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する第1のステップ」 「分析対象,セクションを複数のセクションの中から選択する第2のステップ」 「第2の,ステップで選択したセクションに対して,第1のステップで推定した自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルに基づき,『A アウトラインの形成または表情分析』 『B, カットライン分析』 『C, ボリューム位置またはボリュームライン分析』 『D, シルエット形状または表情分析』 『E,パート(分け目)の位置または有無分析』 『F, セクションの幅または形状分析』 『G, フェイスラインとセクション間の継がり方またはセクション間の継がり方分析』の中から,前記選択されたセクションに適した少なくとも1つの分析項目の分析を行い,分析結果を得る第3のステップ」 「前記分析,結果から,前記カット手法に関する情報を導出する第4のステップ」によって,前記選択されたセクションに対して採用されているカット手法を分析する方法の発明である。このように,本願補正発明は,こうした第1のステップないし第4のステップを順次経ることにより,特定のセクションに採用されているカット手法

5 を分析する方法であり,本願補正発明の発明特定事項には,分析の主体が特定されていないことから,人がこうした分析を行うことは排除されていない。ちなみに,本願明細書の実施例1(【0026】ないし【0120】)には,「自然乾燥状態のナチュラルストレートとなったヘアスタイルを分析者が推定して,分析を開始する。美容に携わる者であれば,パーマネントがかかっている写真からでも自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときのシルエット線のおおよその位置を容易に推定できる。なお,実施例の以下の分析は,特に断りがなくとも,分析者により推定された自然乾燥状態のナチュラルストレートとなったヘアスタイルを用いて行われる。」(【0026】)との記載があり,人がこうした分析を行うことが想定されているといえる。(2) 「第1のステップ」についてア 前記のとおり,第1のステップは,「分析対象者の写真,画像,イラストまたはデッサンから,正面,側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する」ことを発明特定事項とするものであるところ,前記(1)のとおり,第1のステップを人が行うことは排除されておらず,また,分析者が分析対象者の「写真,画像,イラストまたはデッサンから,正面,側面および背面から観た自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイル」を具体的な技術的手段を用いて「推定する」ことを特定するものではない。次に,本願明細書の記載についてみると,第1のステップに関し,「アウトライン,前シルエット,後シルエットおよび内側シルエットを分析対象とする分析(以下,「本分析」という。)を開始する前に,分析対象者の正面写真,側面写真および背面写真について,予備分析をする。 パーマネントがかかっている写真においては,撮影された髪型そのものを分析するのではなく,パーマネントが解けて自然乾燥状態のナチュラルストレートと

5 なったヘアスタイルを分析者が推定して,分析を開始する。」(【0026】)との記載から,第1のステップは,本分析を開始する前の予備分析に当たるものであり,【0027】【0028】【0035】【0036】には,, , ,写真に耳の位置,耳の横印,頭頂点等を描いてこれらの位置を参照しつつ自然乾燥状態のナチュラルヘアスタイルの「シルエット線」を推定することが開示されているが,「美容に携わる者であれば,パーマネントがかかっている写真からでも自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルとなったときのシルエット線のおおよその位置を容易に推定できる。」(【0026】)と記載されていることからしても,これらの補助的手段は必須のものではなく,また,本願補正発明にはこうした推定の手段に関する特定がないことからすると,分析者の毛髪の知識や経験から分析対象者の写真等を見て自然乾燥ヘアスタイルを推定することになるといえる。そうすると,本願補正発明には,人である分析者が,分析対象者の正面,側面及び背面の写真を見て,分析者の毛髪の知識や経験を踏まえて,自然乾燥ヘアスタイルを分析者の頭の中で推定することを発明特定事項に含むものであり,こうした推定を含む第1のステップは,仮に,分析者の頭の中で行う分析の過程で利用する毛髪の知識や経験に自然法則が含まれているとしても,分析者の頭の中で完結するステップである以上,分析者の精神的活動そのものであって,自然法則を利用したものであるとはいえない。イ(ア) これに対し,原告は,前記第3の1(1)ア(ア)のとおり,本願補正発明の第1のステップは,これに続く第2のステップ以降の分析の妨げとなるノイズ(カール,ウェーブ等)をなくすことを目的とするものであり,純粋に自然科学的な目的であって,そのために行う自然乾燥ヘアスタイルの推定は,頭頂点等の生物学的な特徴を利用し,毛髪につけられた物理的なウェーブやカールを元に戻すという物理的な処理であり,人が行

5 っているとしても自然法則を利用している旨主張する。しかし,前記アのとおり,本願補正発明には,分析対象者の写真等から具体的な技術的手段を用いて自然乾燥ヘアスタイルを推定することを特定するものではない。また,頭頂点等の生物学的な特徴を利用するものであるとしても,それは,自然法則に関連する「知識」を頭の中で利用するにすぎず,分析者である人の精神活動として完結するものである。そして,当該推定は,分析者の外部的環境に何らかの物理的作用を及ぼすものではなく,専ら人の精神活動それ自体に向けられたものである。したがって,第1のステップは,物理法則等の「自然法則を利用した」ものとはいえないから,原告の上記主張は理由がない。なお,原告は,前記第3の1(1)ア(ア)のとおり,分析対象者のヘアスタイルに対応する自然乾燥ヘアスタイルは1つに定まるものであり,カットマネキンを推定した自然乾燥ヘアスタイルにカットし,カールやウェーブを付けて分析対象者のヘアスタイルになるかどうかを物理的に検証可能である旨主張するが,仮にそうであるとしても,前記アのとおり,本願補正発明が自然乾燥ヘアスタイルを分析者の頭の中で推定することを含むものであり,こうした推定が人の精神活動そのものであって自然法則を利用したものではない以上,人の精神活動によって得られた結果が検証可能であることは,上記判断を左右するものではない。(イ) また,原告は,前記第3の1(1)イのとおり,本願明細書には,第1のステップは,当時の技術水準からすると,データベースから分析対象者のヘアスタイルに似たデータを自動抽出することによりほぼ完全自動化でき,また,完全機械化ができるといったことも記載されているから,第1のステップを人間の精神活動そのものであるとした本件審決の判断は誤りである旨主張するが,前記アのとおり本願補正発明は,人である分析者が,分析対象者の正面,側面及び背面の写真を見て,分析者

5 の毛髪の知識や経験を踏まえて,自然乾燥ヘアスタイルを分析者の頭の中で推定することを発明特定事項に含むものである以上,本願明細書に

第1のステップが自動化ないし機械化が可能であると開示されていた

としても,上記判断を左右するものではない。(3) 第2のステップないし第4のステップについてア(ア) 第2のステップは,「分析対象セクションを複数のセクションの中から選択する」との発明特定事項であり,本願明細書には,第2のステップに関して,「セクションをどの程度分割するかは,推定された自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルから適宜決めることができるものであって,以下の実施例のセクション分けは,一例を示すに過ぎない。 (」 【0018】,) 「分析対象者のヘアスタイルの複雑さにより,セクションをさらに細かく分けてもよいし,ヘアスタイルが単純であればより大雑把にセクション分けすることも可能である。」(【0040】 との記載があり,) これらの記載は,第2のステップは,分析者が,第1のステップで推定された分析対象者の「自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイル」に応じてセクションを適宜分け,カット手法を分析する頭部の領域を選択することを意味するものである。そして,本願補正発明の各ステップを人である分析者が行うことは排除されておらず,上記のとおり,第2のステップは,第1のステップで行われた自然乾燥ヘアスタイルに基づいて分析が行われるものであるところ,第1のステップが人である分析者が分析対象者の正面,側面及び背面の写真を見て,分析者の毛髪の知識や経験を踏まえて,自然乾燥ヘアスタイルを分析者の頭の中で推定することを発明特定事項に含むことは前記のとおりであるから,第2のステップも,分析者である人の頭の中で,分析する頭部の領域を選択することを含むこと

5 になり,こうした選択は,人の精神活動そのものであって,自然法則を利用したものであるとはいえない。(イ) また,第3のステップは,「第2のステップで選択したセクションに対して,第1のステップで推定した自然乾燥状態のナチュラルヘアストレートのヘアスタイルに基づき」,分析項目の中から,「選択されたセクションに適した少なくとも1つの分析項目の分析を行い,分析結果を得る」との発明特定事項である。すなわち,第3のステップは,

第2のステップで選択したセクションに対して,第1のステップで推

定した自然乾燥ヘアスタイルを,そのセクションに適した分析項目の中から分析を行うステップであり,本願明細書には,分析対象をアウトラインとするカット手法分析(【0040】)における「耳上以下のバックサイドセクションおよびバックセンターセクションに対するアウトライン分析」(【0041】 の例に関する記載があり,) この例では,

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