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令和1(ワ)18374損害賠償請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和3年12月23日
事件種別 民事
当事者 原告ジェイシード株式会社
被告株式会社ベアーメディック A 株式会社ステラ医療企画 B
法令 不正競争
不正競争防止法2条1項1号4回
不正競争防止法2条1項3号3回
不正競争防止法2条4項1回
キーワード 損害賠償16回
侵害4回
差止1回
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。10
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 事案の概要 本件は,原告が, ①被告らに対し, ㋐被告ベアー及び被告ステラによる別紙被告商品目録記載1から4の各商品25 (以下,番号に応じて「被告商品1」などといい,被告商品1から4を併せて 「各被告商品」という。)の製造及び販売等は,原告の商品等表示として需要 者の間に広く認識されている別紙原告商品目録記載の各商品(以下,番号に応 じて「原告商品1」等といい,原告商品1から4を併せて「各原告商品」とい う。)の形態と同一若しくは類似の商品等表示を使用して原告の商品又は営業 と混同を生じさせる行為(不正競争防止法2条1項1号)であり,又は,各原5 告商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為(同項3号)であって,原告の 営業上の利益を侵害し,被告ベアーの代表取締役である被告A及び被告ステラ の代表取締役である被告Bには,それぞれその職務を行うについて悪意又は重 大な過失があると主張して,被告ベアー及び被告ステラに対しては不法行為に よる損害賠償請求権(民法709条,719条,不正競争防止法4条)に基づ10

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判決文

令和3年12月23日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

令和元年(ワ)第18374号 損害賠償請求事件

口頭弁論終結日 令和3年10月15日

判 決

原 告 ジェイシード株式会社

同 訴 訟代 理 人 弁 護 士 寺 田 正 主

中 村 優 紀

同訴訟復代理人弁護士 白 石 裕 俊

被 告 株式会社ベアーメディック

(以下「被告ベアー」という。)

被 告 A

(以下「被告A」という。)

上記2名訴訟代理人弁護士 馬 渕 泰 至

増 尾 知 恵

藤 井 俊 輔

山 田 ま ど か

被 告 株式会社ステラ医療企画

(以下「被告ステラ」という。)

被 告 B

(以下「被告B」という。)

上記2名訴訟代理人弁護士 小 宮 清

熊 崎 誠 実

多 田 津 雪

小 宮 司

小 宮 憲

小 宮 圭 香

主 文

1 原告の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求等

1 被告らは,原告に対し,連帯して1億1994万6010円並びにこれに対する被告ベアー,被告A及び被告ステラについては令和元年7月20日から,被告Bについては同月22日から支払済みまで(各起算日からの限度で連帯して)年5分の割合による金員を支払え。2 被告ベアー及び被告Aは,原告に対し,連帯して4400万円及びこれに対する令和元年7月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。3 仮執行宣言

第2 事案の概要等

1 事案の概要本件は,原告が,

①被告らに対し,㋐被告ベアー及び被告ステラによる別紙被告商品目録記載1から4の各商品(以下,番号に応じて「被告商品1」などといい,被告商品1から4を併せて「各被告商品」という。)の製造及び販売等は,原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されている別紙原告商品目録記載の各商品(以下,番号に応じて「原告商品1」等といい,原告商品1から4を併せて「各原告商品」という。)の形態と同一若しくは類似の商品等表示を使用して原告の商品又は営業

5 と混同を生じさせる行為(不正競争防止法2条1項1号)であり,又は,各原告商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為(同項3号)であって,原告の営業上の利益を侵害し,被告ベアーの代表取締役である被告A及び被告ステラの代表取締役である被告Bには,それぞれその職務を行うについて悪意又は重大な過失があると主張して,被告ベアー及び被告ステラに対しては不法行為による損害賠償請求権(民法709条,719条,不正競争防止法4条)に基づき,被告A及び被告Bに対しては会社法429条1項による損害賠償請求権に基づき,連帯して1億1994万6010円並びにこれに対する不法行為より後の日又は請求の日の翌日である被告ベアー,被告A及び被告ステラについて令和元年7月20日(訴状送達の日の翌日),被告Bについて同月22日(同前)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,㋑選択的に,ⓐ被告ベアー及び被告Aは,商慣習及び信義則により原告に対して負っている各原告商品に係る秘密保持義務に違反し,原告の営業秘密を利用して各被告製品を製造し,被告Bを通じて被告ステラから入手した原告の営業秘密を利用して原告の顧客に対し各被告製品を販売して,原告の取引を妨害し,

ⓑ被告ステラ及び被告ステラと実質的に同一である被告Bは,各被告製品の製造が違法であることを知りながら各被告製品を購入し,各原告商品に係る秘密保持義務に違反し原告の営業秘密を利用して原告の顧客に対し各被告製品を販売するなどして,原告の取引を妨害し,ⓒ被告Bと実質的に同一である被告ステラ及び被告Bは,原告に対する競業避止義務に違反して原告と競業する各被告製品の販売を行っているところ,被告ベアー及び被告Aの秘密保持義務違反及び取引妨害(前記ⓐ),被告ステラ及び被告Bの秘密保持義務違反及び取引妨害(前記ⓑ)並びに競業避止義務違反(前記ⓒ)は一連一体のものであり,被告ベアーの代表取締役である被告Aには,その職務を行うについて悪意又は重大な過失があり,これによって原告は損害を被ったと主張して,被告らに対

5 し不法行為による損害賠償請求権(民法709条,719条)に基づき,被告Aに対しては選択的に会社法429条1項による損害賠償請求権に基づき,前記同様の支払を求め,

②さらに,被告ベアー及び被告Aに対し,被告ベアーが,信義則に反して原告との間の製品の継続的な供給に係る契約の更新を一方的に拒絶し,被告Aは,被告ベアーの代表取締役としてその職務を行うについて悪意又は重大な過失により上記違法行為を積極的に推進したと主張して,被告ベアーに対しては不法行為による損害賠償請求権(民法709条,719条)に基づき,被告Aに対しては不法行為による損害賠償請求権(同前)又は会社法429条1項による損害賠償請求権に基づき,連帯して4400万円及びこれに対する不法行為より後の日又は請求の日の翌日である令和元年7月20日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで前記同様の遅延損害金の支払を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証拠は文末に括弧で付記した。なお,書証は特記しない限り枝番を全て含む。以下同じ。)

⑴ 当事者原告は,医療器具,器械の製造販売及び輸出入等を目的とする株式会社である。被告ベアーは,医療機械器具の輸出,輸入,販売等を目的とする株式会社である。被告Aは,被告ベアーの代表取締役である。被告ステラは,医療器具,医療器械及び医療用具の製造,販売及び輸出入等を目的とする株式会社である。被告Bは,被告ステラの代表取締役である。

⑵ 事実経過

5 ア 原告は平成23年6月8日に設立され,被告Bが代表取締役に就任した。(丙23)イ 原告及び被告ベアーは,平成23年8月5日,被告ベアーが原告に対し鎖骨骨折の治療に用いるチタン製のインプラント(以下「鎖骨プレート」という。)を販売することとして,契約の有効期間を1年とし,期間満了の1か月前までに書面による更新しない旨の申出がないときは更に1年延長されること等を内容とする取引基本契約(以下「本件鎖骨プレート契約」という。)を締結し,鎖骨プレートの取引を開始した。その後,上記の取引において,原告から被告ベアーに対する代金の支払は,前月21日から当月20日までの販売について翌々月末日までにすることとされ,本件鎖骨プレート契約に従い,被告ベアーは,原告に鎖骨プレートを販売していた。(本項につき,甲5,弁論の全趣旨)ウ 日本メディカルネクスト株式会社(以下「メディカルネクスト」という)は,平成22年頃には,アメリカ合衆国のアキュメッド社が製造する,骨折の治療の際等に骨の固定に用いるピンを販売していた。このピンは,一方の先端がとがっている直径1.6mmの細長い形状の金属製のピンであり,その中間にワイヤーを通すための中空を有する円形の部分(以下「リング部」という。)があるもので,とがっている先端からリング部までの部分(以下「埋没部」という。)を骨に打ち込み,リング部の中空の部分にワイヤーを通してワイヤーによって複数のリングピンや骨を固定し,リング部より持ち手方向の部分(以下「把持部」という。)をリング部から切断するものである(以下,このような形状のピン(ただしワイヤーを通すための中空を有する部分の形状が厳密な円形でないものも含む。)を「リングピン」という。)。原告は,上記メディカルネクスト社が販売していたリングピンを既に製

5 造販売の承認を与えられている医療機器である既承認医療機器とし,その後発医療機器として「JSピン」と名付けた骨治療用のリングピンを製造販売することについて,平成26年7月31日,厚生労働大臣の承認を受けた(以下,原告が厚生労働大臣の承認を得て製造販売元として販売したリングピンを「JSピン」ということがある。なお,その開発を誰が行ったかについては,後記のとおり争いがある。)。被告ベアーは,JSピンを製造して原告に供給し,原告は,同年9月以降,JSピンを医療機関等に販売した。JSピンの把持部は,当初,2cmであった。(本項につき,当事者間に争いがない事実のほか,甲1,17,乙1,2,12,丙6,4,弁論の全趣旨)エ 原告は,平成27年2月3日,把持部を5cmに変更したJSピンである原告商品2から4の製造販売に関し,承認事項の軽微な変更について厚生労働大臣に届出をし,原告商品2から4は,同年4月1日保険適用となり,原告は,原告商品2から4を販売した。原告商品2から4の埋没部,把持部,ピン直径等は,別紙原告商品目録記載2から4の各当該欄のとおりであり,また,その形状はおおよそ別紙原告商品図面のとおりである。(甲18,19,43,弁論の全趣旨)オ 被告Bは,平成29年2月13日に被告ステラを設立し,代表取締役に就任した。被告Bは,平成29年2月28日,原告の代表取締役を退任して取締役を辞任した。原告と被告Bは,被告Bが得た秘密の保持や,被告Bが将来行うことができる業務等についての競業避止について合意をしなかった。(原告と被告ステラ及び被告Bの間で争いがない事実のほか,丙22,23,弁論の全趣旨)

5 カ 原告は,平成29年3月9日,埋没部を3cm,把持部を6cmに変更したJSピンである原告商品1の製造販売に関し,承認事項の一部変更について厚生労働大臣の承認を受け,原告商品1は,同年5月1日保険適用となり,原告は,原告商品1を販売した。原告商品1の埋没部,把持部,ピン直径等は,原告商品目録記載1の各当該欄のとおりである。(甲20,21,45,弁論の全趣旨)キ 被告ベアーは,平成29年,自らが製造販売元となってリングピンを製造販売することとし,同年5月8日,その製造販売について厚生労働大臣の承認を受け,同年6月から,「STRピン」と名付けた各被告商品を含むその製造や,被告ステラに対する販売を開始した。(原告と被告ベアー及び被告Aの間で争いがない事実のほか,丙19,弁論の全趣旨)被告商品1から4の埋没部,把持部,ピン直径等は,被告商品目録記載1から4の各当該欄のとおりであり,その本体の形態は,刻印されている文字を除き原告商品1から4の本体の形態とそれぞれ同じである。各被告商品は1本ずつ包装されているのに対し,各原告商品は2本1組で包装されている。(当事者間に争いがない事実)ク 本件鎖骨プレート契約は6回にわたり更新された。被告ベアーは,平成30年6月29日,原告に対し,本件鎖骨プレート契約を更新しない旨の申出をし,本件鎖骨プレート契約は同年8月4日,期間満了により終了した。原告と被告ベアーは,その後も,鎖骨プレートについて,現金で決済する取引を継続したが,原告は,平成30年11月30日,被告ベアーとの間の鎖骨プレートの取引を中止した。(本項につき,原告と被告ベアー及び被告Aとの間で争いがない事実のほか,甲6,乙7,弁論の全趣旨)

⑶ 関係法令等

5 医療機器の製造販売をしようとする者は,品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない(医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律23条の2の5第1項)。厚生労働大臣は,上記承認の申請があった場合において,申請に係る医療機器が,既に承認を与えられている医療機器と構造,使用方法,効果,性能等が明らかに異なるときは,上記承認について,あらかじめ,薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない(同第11項)。上記承認を受けた者は,当該品目について承認された事項の一部を変更しようとするときは,当該変更が厚生労働省令で定める軽微な変更であるときを除き,その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければならず(同第15項),上記軽微な変更については,厚生労働大臣にその旨届け出なければならない(同第16項)。後発医療機器とは,既承認医療機器と構造,使用方法,効果及び性能が同一性を有すると認められる医療機器,すなわち,既承認医療機器と構造,使用方法,効果及び性能が実質的に同等であるものをいう(平成26年11月20日厚生労働省医薬食品局長通知「医療機器の製造販売承認申請について」(薬食発1120第5号))。3 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は,次のとおりである。(不正競争(混同惹起行為及び形態模倣行為)に係る不法行為による損害賠償請求等(前記1①㋐)について)

①各原告商品の形態が原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されているか。

②被告ベアー及び被告ステラが各原告商品の形態と同一又は類似の商品等表示を使用して原告の商品又は営業と混同を生じさせる行為をしているか。

5 ③各被告商品は他人の商品である各原告商品の形態を模倣したものであるか。

④各原告商品の形態は商品の機能を確保するために不可欠な形態か。

⑤各原告商品が日本国内において最初に販売された日から3年が経過したか。

⑥被告Aに被告ベアーの代表取締役としての職務を行うについて,被告Bに被告ステラの代表取締役としての職務を行うについて,それぞれ悪意又は重大な過失があるか。

⑦被告らの不正競争等により原告が被った損害及び額(秘密保持義務違反,取引妨害,競業避止義務違反の不法行為に係る損害賠償請求等(前記1①㋑)について)

⑧被告ベアー及び被告Aが,各原告商品に係る秘密保持義務に違反し,また,原告の取引を妨害したか。被告Aに被告ベアーの代表取締役としての職務を行うについて悪意又は重大な過失があるか。

⑨被告ステラ及び被告Bが,各原告商品に係る秘密保持義務等に違反し,また,原告の取引を妨害したか。

⑩被告ステラ及び被告Bが競業避止義務に違反し各被告商品を販売しているか。

⑪被告らの秘密保持義務違反,取引妨害及び競業避止義務違反が一連一体のものか。

⑫被告らの秘密保持義務違反等により原告が被った損害及び額(被告ベアー及び被告Aによる本件鎖骨プレート契約の更新拒絶に係る不法行為による損害賠償請求(前記1②)について)

⑬被告ベアー及び被告Aが信義則に反し,また,被告Aが被告ベアーの代表取締役としての職務を行うについて悪意又は重大な過失により,本件鎖骨プレート契約を更新せず原告の権利を侵害したか。

5 ⑭被告ベアー及び被告Aの本件鎖骨プレート契約の更新拒絶により原告が被った損害及び額

⑴ 争点①(各原告商品の形態が原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されているか。)について(原告の主張)各原告商品は,特に,把持部の長さが5cm以上である点,埋没部直径より把持部直径が細く外観が優れている点,リング部の形状がドーナツ型である点,リング部の内径が1.8mmである点,材料としてステンレス鋼316L-VMが使用されている点に特徴があり,さらに,原告商品1は,埋没部の長さが3cmと極めて短く,バランス最適化のため把持部の長さが6cmに設定されている点に,原告商品4は,埋没部の長さが9cmと極めて長い点に特徴があり,これらの点に識別力を備えている。各原告商品は,これらの特徴により,従来品よりも骨から露出するリング部分の大きさが小さく,肘や鎖骨などより小さな部位の施術にも適用が可能であり,3割以上も強度を強め,施術中の破損を減らし補助具を使用せずに施術を行うことを可能にする。原告は,各原告商品の販売開始前から宣伝に力を入れ,その後も営業活動を続けた結果,各原告商品は医学専門誌に掲載され,その市場占有率も平成28年には約10%を獲得するなど,需要者である医師の間で補助具を使用せずに施術を行うことができる唯一のリングピンとして広く認識されるに至った。(被告ベアー及び被告Aの主張)各原告商品の形態は原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されているとはいえない。各原告商品と同じ形状のリングピンは従前から多数存在していたところ,形状が同じであるにもかかわらず,長さ,直径,内径を多少変更することにより他社商品と識別できる独自の特徴があるということに

5 はならないし,購読数が不明な医学専門誌に掲載されたからといって周知性が認められるとはいえない。なお,把持部が6cmのリングピンは,各原告商品が販売される前から販売されていた。また,材料,規格の微妙な違いは外観からは判別できない。被告ベアーは,各原告商品の開発に当たり,強度を出すための材料選定に費用と労力を費やしたが,形態はアキュメッド社のテンションバンドピンを模倣しており,その設計に費用も労力も費やしていない。(被告ステラ及び被告Bの主張)各原告商品の形態は原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されているとはいえない。すなわち,リングピンは,埋没部,リング部及び把持部から構成される非常に単純な形態の医療機器であり,各原告商品の把持部,埋没部の長さ,直径,リング部の内径,リング部形状の組合せが,従来品と多少異なるからといって,同種の商品と識別し得る独自の特徴を有しているとはいえないし,材料は不正競争防止法の形状には含まれない。なお,人体に使用可能な金属の種類は,概ねチタン合金,ステンレス鋼,純チタンに限定されている。埋没部が3cmのリングピンも従前から存在した。各原告商品は後発医療機器として従来品を模倣して製造したものであり,各原告商品に自他識別機能ないし出所表示機能はない。

⑵ 争点②(被告ベアー及び被告ステラが各原告商品の形態と同一又は類似の商品等表示を使用して原告の商品又は営業と混同を生じさせる行為をしているか。)について(原告の主張)各被告商品は,1本ずつ販売しており販売態様は各原告商品とは異なるものの,製品番号の刻印を除き各原告商品と同一の商品であり,各原告商品と同様に,被告ベアーが各原告商品と同じ大きさ,仕様,原材料等で製造していることから,被告ベアー及び被告ステラによる各被告商品の販売は,原告

5 の商品又は営業と混同を生じさせるものである。JSピンを開発したのは原告であり,被告ベアーは原告の製造受注会社としての役割を果たしたにすぎず,仮に被告ベアーが費用の一部を負担していたとしても開発後の製造受注により回収済みのはずである。原告は,JSピンの開発に当たり,医師に対する調査を行って材料を選定し,強度試験費用や承認申請費用として500万円以上を負担した。(被告ベアー及び被告Aの主張)各原告商品を含むJSピンは,被告ベアーが費用と労力を負担し,約1年をかけて,企画設計(形状),材料選定(強度),包装のデザインと形状(ピンの先端が包装を突き破らない工夫)などの全ての研究開発を行って開発したものであり,原告は,上記開発に対し費用負担や寄与を一切していない。被告ベアーがその開発したリングピンを販売できることは,原告及び被告ベアーの共通認識であった。JSピンについて何らかの権利が発生ずるとすれば全て被告ベアーに帰属するものであり,被告ベアーは,自ら開発した自己の商品について,従前は原告を通じて販売していたが,被告ステラを通じて販売することにしたにすぎない。(被告ステラ及び被告Bの主張)各原告商品及び各被告商品はいずれも後発医療機器であり,後発医療機器は既承認医療機器と構造,使用方法,効能,効果及び性能が同一性を有すると認められるものをいうから,一定の類似は避けられない。もっとも,リングピンは手術により患部に挿入するものであり,完全密封の状態で手術室に持ち込まれ手術室において開封されるところ,需要者である医療関係者は包装態様で各リングピンを識別するから,包装態様も考慮して類似の商品等表示を用いているかなどを判断すべきである。そして,各原告商品と各被告商品は包装態様が異なっているから,各被告商品が各原告商品と類似する等とはいえない。また,従前から各原告商品と実質的に同一の規格のリングピン

5 が販売されていたという取引の実情に照らし,各被告商品が原告の商品等であると混同を生じさせるともいえない。

⑶ 争点③(各被告商品は他人の商品である各原告商品の形態を模倣したものであるか。)について(原告の主張)各被告商品と各原告商品の形態は同じであり,各被告商品は,各原告商品の形態を模倣したものである。(被告ベアー及び被告Aの主張)各原告商品は被告ベアーが費用を負担して開発したものであり,被告ベアーがその開発したリングピンを販売できることは,原告及び被告ベアーの共通認識であった。被告ベアーが開発したリングピンについて何らかの権利が発生するとすれば全て被告ベアーに帰属するものであり,被告ベアーは,自ら開発した自己の商品について,従前は原告を通じて販売していたが,被告ステラを通じて販売することにしたにすぎず,被告ベアーは,各原告商品を模倣していない。各原告商品と同じ形状のリングピンは従前から多数存在しており,把持部が6cmのリングピンも原告商品1が販売される前から販売されていたのであって,被告ベアーが各原告商品を模倣した各被告商品を譲渡したことはない。(被告ステラ及び被告Bの主張)各原告商品を含むJSピンは,被告ベアーが費用と労力を負担し,約1年をかけて開発したものであるから,被告ベアー及び被告ステラは,被告ベアーが開発した商品を販売しているにすぎず,各原告商品を模倣していない。各原告商品及び各被告商品はいずれも後発医療機器であり,後発医療機器は既承認医療機器と構造,使用方法,効能,効果及び性能が同一性を有すると認められるものをいうから,後発医療機器を製造することは不正競争防止

5 法2条1項3号所定の形態模倣に該当しない。そもそも,各原告商品も従来品を模倣して製造したものであって,原告は各原告商品の開発に資本や労力を投下しておらず,同種の商品は多数存在しているのであるから,原告による各原告商品の販売等は同号による法的保護に値しない。なお,人体に使用可能な金属の種類は限定されている。

⑷ 争点④(各原告商品の形態は商品の機能を確保するために不可欠な形態か。)について(被告ベアー及び被告Aの主張)リングピンは,折れた骨にワイヤーを固定するためのピンであり,骨に打ち込む埋没部,ワイヤーを通すリング部,把持部の3部から構成されており,これらの構成が商品の機能を確保するために不可欠な形態であることは明らかである。なお,上記各構成の長さや太さに微妙な違いがあることによって商品の特徴とはならない。(被告ステラ及び被告Bの主張)各原告商品は後発医療機器であって従来品を模倣して製造したものであって,同じ形態の商品も多数存在しており,その形態は商品の機能を確保するために不可欠なものである。なお,人体に使用可能な金属の種類は限定されている。(原告の主張)各原告商品の埋没部の長さ及び把持部の長さと異なるリングピンが販売されているから,各原告商品の形態は商品の機能を確保するために不可欠な形態ではない。後発医療機器であるからといってその形態が商品の機能を確保するために不可欠な形態であるとはいえない。

⑸ 争点⑤(各原告商品が日本国内において最初に販売された日から3年が経過したか。)について(被告ベアー及び被告Aの主張)

5 被告ステラ及び被告Bの主張(後記)と同じ。(被告ステラ及び被告Bの主張)各原告商品は,遅くとも平成26年4月11日に日本国内において最初に販売された。すなわち,被告ベアーは,同日,原告に対し,JSピンのサンプルを出荷した。なお,原告は,その後,把持部分の長さを5cm以上に変更したが,把持部分の長さが5cm以上であるリングピンは従前から存在しており,同変更は,原告が上記日までに販売したJSピンの使用を若干変更したにすぎず,各原告商品が遅くとも上記日に日本国内で最初に販売されたことに変わりはない。(原告の主張)原告商品2から4は平成27年4月13日に,原告商品1は平成29年4月26日に,それぞれ日本国内で最初に販売された。

⑹ 争点⑥(被告Aに被告ベアーの代表取締役としての職務を行うについて,被告Bに被告ステラの代表取締役としての職務を行うについて,それぞれ悪意又は重大な過失があるか。)について(原告の主張)被告Aには被告ベアーの代表取締役としての職務を行うについて,被告Bには被告ステラの代表取締役としての職務を行うについて,それぞれ悪意又は重大な過失がある。(被告Aの主張)否認する。(被告Bの主張)否認する。

⑺ 争点⑦(被告らの不正競争等により原告が被った損害及び額)について(原告の主張)ア 機会損失に係る損害 1億0904万1828円

5 各原告商品の売上げは,各被告商品の販売により増加速度が鈍化し,更に減少に転じたものであり,原告は,平成29年7月から平成31年3月31日まで,各被告商品の販売により1億5577万4040円相当の各原告商品の売上機会を喪失した。各被告商品の利益率は70%程度と想定されるところ,被告ステラが上記の期間に得た利益は少なくとも1億0904万1828円であり,同額が原告の損害となる。(155,774,040×70%=109,041,828円)仮に,上記損害が認められないとしても,原告は,平成29年7月から平成31年3月31日まで,各被告商品の販売により1億0955万1690円相当の各原告商品の売上機会を喪失した。各原告商品の利益率は70%程度と想定されるところ,原告の逸失利益は7668万6183円であり,同額が原告の損害となる。(109,551,690×70%=76,686,183円)イ 弁護士費用 1090万4182円原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち上記額は,被告らの不法行為と相当因果関係がある損害として,被告らが負担すべきである。ウ 合計 1億1994万6010円(被告ベアー及び被告Aの主張)否認ないし争う。(被告ステラ及び被告Bの主張)否認ないし争う。複数の会社が同種のリングピンを販売しており,被告らが各被告商品を販売しなければ各原告商品が購入されていたという関係は認められない。

⑻ 争点⑧(被告ベアー及び被告Aが,各原告商品に係る秘密保持義務に違反し,また,原告の取引を妨害したか。被告Aに被告ベアーの代表取締役とし

5 ての職務を行うについて悪意又は重大な過失があるか。)について(原告の主張)被告ベアー及び被告Aは,商慣習及び信義則により原告との間で秘密保持義務を負っているにもかかわらず,原告と取引関係にあった際に知り得た原告の営業秘密である各原告商品に係る製品情報を利用して,各被告商品を製造販売し,原告の取引を妨害した。また,被告Aには,被告ベアーの代表取締役としての職務を行うについて悪意又は重大な過失がある。(被告ベアー及び被告Aの主張)被告ベアー及び被告Aは,原告に対し何らの秘密保持義務を負っていないし,被告Aが何らかの義務に違反したこともない。そもそも,原告及び被告ベアーは各原告商品をありふれた後発医療機器という認識で開発していたのであるし,各原告商品の形状はありふれた単純なもので計測すれば簡単にデータを取得できるのであって,各原告商品の商品情報に秘密性などない。

⑼ 争点⑨(被告ステラ及び被告Bが,各原告商品に係る秘密保持義務等に違反し,また,原告の取引を妨害したか。)について(原告の主張)被告Bは,信義則上,被告Bが原告の代表取締役であった際に知り得た原告の営業秘密をみだりに漏洩,利用してはならない義務,原告に不利益を与えない義務を負うにもかかわらず,被告ステラ及び被告Bは,原告の営業秘密である各原告商品に係る製品情報(具体的には設計の基礎となった医師の意見)及び原告の顧客情報を利用し,被告ベアーをして各被告商品を製造し,これを販売したほか,原告の従業員であるC(以下「C」という。)及びD(以下「D」という。)を被告ステラに引き抜いて,原告の取引を妨害した。被告ステラ及び被告Bは,原告の顧客である株式会社E以下「E」という。)に対し,各原告商品から各被告商品への切替えを勧めており,したがって,

5 その他の原告の顧客も同様に略奪したことは確実である。(被告ステラ及び被告Bの主張)各原告商品に係る製品情報,原告の顧客情報は保護されるべき営業秘密とはいえず,被告Bが,その他原告の重要な情報等を持ち出して利用した事実もない。また,被告Bが,原告と第三者との取引について,契約の成立の阻止,不履行の誘因をしたことはなく,原告と第三者の取引を不当に妨害した事実はない。被告ステラが,C及びDを引き抜いた事実もない。

⑽ 争点⑩(被告ステラ及び被告Bが競業避止義務に違反し各被告商品を販売しているか。)について(原告の主張)被告Bは,原告の代表取締役であった平成29年2月13日に被告ステラを設立し,同年6月頃,各被告商品の販売を開始し,さらに,平成30年4月,原告の従業員であったC及びDを伴ってEを訪問し,Eの担当者に対し,原告の承諾を得ている虚偽の事実を告げて各原告商品から各被告商品への切替えを依頼して,原告の顧客を略奪しようとし,その後,C及びDを原告から被告ステラに引き抜いた。被告B及び被告Bが代表取締役である被告ステラは,競業避止義務に違反し,自由競争を逸脱した態様で各被告商品を販売している。(被告ステラ及び被告Bの主張)役員,従業員が退職後に使用者と競業する行為をしてはならないとの一般的な社会通念等は存在しない。退職者の職業選択の自由,営業の自由との関係から,退職後の競業行為は,社会通念上自由競争の範囲を逸脱した場合にのみ違法となる。本件において,被告Bは,原告を退職するに当たり,原告との間で競業避止に係る合意をしておらず,退職後に,自由競争の範囲を逸脱した競業行為を行っていない。すなわち,被告Bによる被告ステラの設立行為は取引行為ではないから競

5 業避止義務に違反しない。また,原告に営業秘密はなく,被告Bが,その他原告の重要な情報等を持ち出して利用したり,原告の顧客に対し虚偽の事実を告知し,又は,原告の顧客を略奪したりしたことはなく,被告ステラが,Eと取引を行ったこともない。被告ステラは,C及びDを引き抜いていない。Cは,原告代表者の嫌がらせに耐えかね,自己の意思で原告を退職し,被告ステラに転職を希望したにすぎないし,Dは,原告を退職した後,別の会社に雇用されている。

⑾ 争点⑪(被告らの秘密保持義務違反,取引妨害及び競業避止義務違反が一連一体のものか。)について(原告の主張)被告ベアー及び被告ステラは,互いに相手方の違法な行為を利用し利益を得ているから,被告らの秘密保持義務違反,取引妨害及び競業避止義務違反は一連一体のものである。(被告ベアー及び被告Aの主張)被告ベアー及び被告Aが,被告ステラ及び被告Bによる秘密保持義務違反,取引妨害及び競業避止義務違反について連帯責任を負う根拠はない。(被告ステラ及び被告Bの主張)被告ステラ及び被告Bが,被告ベアー及び被告Aによる秘密保持義務違反及び取引妨害について連帯責任を負う根拠はない。

⑿ 争点⑫(被告らの秘密保持義務違反等により原告が被った損害及び額)(原告の主張)ア 機会損失に係る損害 1億0904万1828円原告は,平成29年7月から平成31年3月31日まで,被告らの秘密保持義務違反等による各被告商品の販売により各原告商品の売上機会を喪失し,少なくとも1億0904万1828円又は7668万6183円の損害を被った(前記⑺(原告の主張ア))。

5 イ 弁護士費用 1090万4182円原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち上記額は,被告らの不法行為と相当因果関係がある損害として,被告らが負担すべきである。ウ 合計 1億1994万6010円(被告ベアー及び被告Aの主張)否認ないし争う。(被告ステラ及び被告Bの主張)否認ないし争う。複数の会社が同種のリングピンを販売しており,被告らが各被告商品を販売しなければ各原告商品が購入されていたという関係は認められない。

⒀ 争点⑬(被告ベアー及び被告Aが信義則に反し,また,被告Aが被告ベアーの代表取締役としての職務を行うについて悪意又は重大な過失により,本件鎖骨プレート契約を更新せず原告の権利を侵害したか。)について(原告の主張)本件鎖骨プレート契約は期間の定めのない継続的取引契約であり,約7年にわたって継続してきたものであるから,商品の供給者という優越した地位にある被告ベアーは,やむを得ない特段の事由がなければ,相当の予告期間を設けるか相当の損失補償をしない限り,一方的に取引を中止することは許されない。被告ベアーは,原告の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず,原告に対する意趣返しで,信義則に反して一方的に本件鎖骨プレート契約の更新を拒絶したものである。また,被告Aは,原告ベアーの代表取締役であるにもかかわらず,その職務を行うについて悪意又は重大な過失により,積極的に被告ベアーの上記行為を推進した。(被告ベアー及び被告Aの主張)

5 被告ベアーは,本件鎖骨プレート契約に基づき適法に更新しない通知をしたにすぎない。なお,本件鎖骨プレート契約に基づく取引は掛取引であったところ,被告ベアーは,原告から各被告商品について損害賠償を請求するなどの通知を受け,原告に鎖骨プレート代金債権を相殺されてしまう危険性が生じたことから,原告との間で掛取引を継続することができないと判断して,本件鎖骨プレート契約を更新しないこととしたものである。実際,被告ベアーは,本件鎖骨プレート契約の終了後も,原告との間で鎖骨プレートの現金取引を行っていたのであり,結局,決済方法を変更したにすぎないといえる。そして,最終的に鎖骨プレートの現金取引を中止したのは原告である。

⒁ 争点⑭(被告ベアー及び被告Aの本件鎖骨プレート契約の更新拒絶により原告が被った損害及び額)について(原告の主張)ア 鎖骨プレート等の在庫品の価値相当額 4000万円被告ベアー及び被告Aにより本件鎖骨プレート契約の更新拒絶により,原告は鎖骨プレートの取扱を中止することを余儀なくされ,平成30年11月30日時点で保有していた2000万円相当の鎖骨プレート及び関連部品並びに2000万円相当の貸出用専用工具90セットの在庫品が価値を失い,原告は4000万円の損害を被った。イ 弁護士費用 400万円原告が本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち上記額は,被告ベアー及び被告Aの不法行為と相当因果関係がある損害として,被告ベアー及び被告Aが負担すべきである。ウ 合計 4400万円(被告ベアー及び被告Aの主張)否認ないし争う。

5 第3 当裁判所の判断1 認定事実前提事実,証拠(各項末尾に掲記のほか,甲42,乙17,丙29,証人F,原告代表者,被告B。ただし,いずれも後記認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。

⑴ G(以下「G」という。)は,平成23年2月に,東京ベイテック株式会社(以下「東京ベイテック」という。)を設立し代表取締役に就任した。Gは,東京ベイテックの株式の70%以上を保有していた。原告は,平成23年6月8日に,東京ベイテックの完全子会社として設立され,被告Bが代表取締役に就任した。なお,東京ベイテックは,原告のほかにも完全子会社を有していた。

⑵ 原告及び被告ベアーは,平成23年8月5日,期間1年の本件鎖骨プレート契約を締結し,鎖骨プレートの取引を開始した。被告ベアーは,被告ベアーが製造販売元として医療機器承認を受けていた鎖骨プレートを,原告に販売した。上記の原告から被告ベアーに対する鎖骨プレートの代金支払は,その後,前月21日から当月20日までの販売について翌々月末日までにすることとされた。原告は,被告ベアーから購入した数種類の鎖骨プレートを箱に収めて一式とし,取引先病院には原告の在庫であるこの一式を備え置き,このうち実際に施術に使用された鎖骨プレートを使用された段階で売り上げ,新しいものを再び原告の在庫として補充する等という態様で販売していた。

⑶ 原告は,平成25年6月頃,被告ベアーに対し,メディカルネクストが販売するアキュメッド社の製品を参考にして,後発医療機器であるリングピンを開発する話を持ち掛けた。原告は,当時,自社で医療機器を製造する能力を有していなかったが,リ

5 ングピンについて自らが製造販売元としての承認を得て販売することを考え,新たなリングピンの製造販売についての承認は原告が受け,被告ベアーがリングピンを製造するという前提で被告ベアーに上記の話を持ち掛けた。被告ベアーは,製造したリングピンを原告に販売することによって利益が見込めると判断し,上記開発を行うこととした。その際,原告から被告ベアーに対し,原告が開発費用を負担するとの話はされなかった。(乙18)

⑷ アキュメッド社製リングピンは,埋没部,ドーナツ型の形状のリング部,把持部から構成されており,平成25年当時,埋没部が5cm,7cm,9cmで,いずれも,把持部が1.91cm,ピン直径が1.6mm,リング部の内径が1.8mmのものが販売されていた。なお,アキュメッド社製リングピンは,リングピンを骨面に打ち込む際や把持部を切断する際に用いるピンスナッパーが同梱されて販売されている。(甲3,39,乙1,丙4,6,19,21)被告Bは,原告の取引先の医師から,アキュメッド社製リングピンは埋没部のピン直径が1.6mmであるためワイヤー等で張力をかけたときに折損することがあるとして,埋没部直径を2mmにした方がよいとの助言を受け,これを被告ベアーに伝えた。被告ベアーは,自ら費用と労力を負担して,アキュメッド社製リングピンを入手し,材料の選定等を専ら行うほか,製造のための具体的な設計図を作成するなどして,約1年をかけて,埋没部,ドーナツ型の形状のリング部,把持部によって構成され,埋没部がそれぞれ5cm,7cm,9cmであり,いずれも,把持部が2cm,埋没部直径が2mm,把持部直径が1.6mmのJSピンを開発した。材料選定に当たっては,アキュメッド社製リングピンに使用されている材料が分からず,当初選定した材料では必要な強度が得られなかったなど,材料の選定に試行錯誤を重ねたが,平成26年3月頃には,ステンレス鋼316L-VMを使用することとして開発を進め,同年4

5 月11日,原告に対して試作品を出荷した。なお,同月21日,アキュメッド社が承認事項と異なる内容で商品を製造していた旨が公表された際の発表文から,アキュメッド社製リングピンにも上記ステンレス鋼が使用されていることが判明した。また,JSピンにおいては,強度を保つために,埋没部を骨に打ち込んだ後のリングピンの切断箇所として設計されている把持部とリング部の接合部分の溝を,アキュメッド社製リングピンと比較して浅く短くするとともに,切断部分によって周囲の組織を傷つけないようにする工夫が施された。(甲39,乙2の1,5,丙10,11,26)なお,平成26年4月に,アキュメッド社製リングピンとして,従前の仕様からピン直径が変更された,埋没部がそれぞれ5cm,7cm,9cm,把持部が1.91cm,ピン直径が2mm,リング部の内径が1.8mmのものの販売が開始された。(丙4,6)

⑸ 被告ベアーは,前記⑷のとおりJSピンの開発を行ったところ,原告がJSピンの製造販売の承認を受けるに当たっては,被告ベアーがその負担において予備試験を行った上,原告が,承認申請に必要な試験をその費用において行って,承認申請を行った。原告は,平成26年7月31日,JSピンの製造販売について厚生労働大臣の承認を受けた。被告ベアーは,JSピンを製造して原告に供給し,原告は,同年9月以降,JSピンを医療機関等に販売した。JSピンの開発に当たっては,前記⑶のとおり被告ベアーにも費用の負担等が生じたところ,原告及び被告ベアーが,原告がJSピンの被告ベアーの開発費用を負担するとの合意をしたことはない。原告と被告ベアーの間で,開発したリングピンを原告が被告ベアーから購入するとの話はされていたが,それに関する契約書は締結されず,また,リングピンの購入元や購入数量について原告が被告ベアーに対して何らかの義務を負うとの合意を明示的にしたことはなく,被告ベアーが原告に対し,原告以外の者に対するリングピン

5 の販売やJSピンの内容の保持について何らかの義務を負う合意をしたこともない。

⑹ 原告は,平成27年1月頃,取引先病院の医師から,JSピンは同病院で使用している電動工具(ジンマー社製「ワイヤーコレット」)で確実に把持できないから把持部を長くしてほしいという要望を受けた。なお,上記電動工具は,他の多くの病院でも使用されていた。上記電動工具を使用してリングピンを確実に把持するためには把持部の長さを3.5cm以上にする必要があることやJSピンの包装の大きさを考慮して,原告は,把持部の長さを5cmに変更したJSピンである原告商品2から4を製造販売することとした。(甲22の1)被告ベアーは,平成27年1月には原告商品2から4の具体的な設計図を作成した。原告は,同年2月3日,承認事項の軽微な変更について厚生労働大臣に届出をして,原告商品2から4は,同年4月1日保険適用となった。(乙2の2)被告ベアーは,上記設計図に基づき原告商品2から4を製造してこれを原告に販売し,原告は,これを医療機関等に販売した。原告商品2から4の埋没部,把持部,ピン直径等は,別紙原告商品目録記載2から4の各当該欄のとおりであり,おおよその形状は別紙原告商品図面のとおりである。(甲19,43)

⑺ 原告は,東京ベイテックの完全子会社であるところ,株式会社フォレストホールディングスが,平成28年5月頃,東京ベイテックに対し,同社を買収したいとの提案をした。

⑻ 原告は,平成28年9月頃,取引先病院の医師から,骨折部位によっては埋没部が短いリングピンを使用する必要がありJSピンの先端部を切断して対応している状況にあるから,埋没部3cmのJSピンを製造してほしいという要望を受けた。

5 そこで,被告ベアーは,埋没部を3cm,把持部を6cmとする原告商品1の具体的な設計図を作成した。(甲22の2,乙2の3)

⑼ 株式会社フォレストホールディングスは,平成28年11月,東京ベイテックを買収した。被告ベアーは,上記買収を知り,株式会社フォレストホールディングスが自社の工場も持っていることなどから,費用と労力を負担して開発したJSピンを被告ベアーが独占的に製造して原告に販売することができなくなるのではないかと危惧し,自社でリングピンについての製造販売の承認を受けることとした。被告Bは,平成28年7月には,原告が東京ベイテックに対し顧問料の支払を継続的に行っていたことや東京ベイテックの債務の返済のため原告において金融機関から借入れをして東京ベイテックに貸付けをするよう求められたことなどから,東京ベイテックの代表者であるGに対し,原告の代表取締役を退任する意向があることを伝えるなどしていたところ,上記の東京ベイテックの買収やこれに伴う組織再編についてGから何らの相談も受けなかったことや,東京ベイテック,原告,東京ベイテックの他の完全子会社の財務状況等を精査し改めて失望したことなどから,原告の代表取締役を退任する意向を固め,平成29年1月,Gに対しその意向を伝え,最終的にその了解を得た。(丙25)被告Bは,平成29年2月13日に被告ステラを設立し,代表取締役に就任した。被告Bは,平成29年2月28日,原告の代表取締役を退任して取締役を辞任し,Gが原告の代表取締役に就任した。原告と被告Bは,被告Bの上記退任に当たって,被告Bが得た秘密の保持や,被告Bが将来行うことができる業務等についての競業避止に関する特段の合意をしなかった。

⑽ 原告は,平成29年3月9日,埋没部を3cm,把持部を6cmに変更し

5 たJSピンである原告商品1の製造販売に関し,承認事項の一部変更について厚生労働大臣の承認を受け,遅くとも同年4月26日には,被告ベアー製造供給に係る原告商品1の販売を開始し,原告商品1は,同年5月1日保険適用となった。原告商品1の埋没部,把持部,ピン直径等は,別紙原告商品目録記載1の各当該欄のとおりである。原告は,平成30年4月には,原告商品1を900万円以上販売した。

⑾ 被告ベアーは,前記⑼のとおり,自らリングピンの製造販売の承認を得ることを考えるようになり,そのリングピンを「STRピン(Sterilized Ringpin)」という名称とすることとして,製造販売する準備をしていた。被告ベアーは,平成29年,被告Bが原告の代表取締役を辞任して被告ステラを設立したことを知り,被告ステラに対し被告ベアーが製造したSTRピンを被告ステラが販売することを提案し,被告ステラはこれを了解した。被告ベアーは,平成29年5月8日,STRピンの製造販売について厚生労働大臣の承認を受け,同年6月からその製造を行い,また,被告ステラに対する販売を開始した。被告ステラは,医療機器販売会社2社に対しSTRピンの取扱を依頼し,被告ベアーから供給を受けたSTRピンを同2社に販売しているほか,被告Bが原告の代表取締役であった当時に付き合いのあった医師から求められ,同医師の勤務する2病院に対しSTRピンを販売した。上記医療機器販売会社の販売先のうち1病院及び上記医師の勤務する上記2病院は,従前はJSピンを取り扱っていた。STRピンは,埋没部,ドーナツ型の形状のリング部,把持部により構成され,各被告商品があるほか,埋没部3cm,把持部6cm,ピン直径が埋没部を含め1.6mmのものがあり,また,付属品としてピンスナッパーがある。被告商品1から4の埋没部,把持部,ピン直径部等は,別紙被告商品目録記載1から4の各当該欄のとおりであり,それらの本体の形態は,刻印

5 されている文字を除き原告商品1から4の本体の形態とそれぞれ同じである。各被告商品は1本ずつ包装されているのに対し,各原告商品は2本1組で包装されている。(甲4,丙1)

⑿ 原告は,平成30年4月,東京ベイテックを吸収合併した。原告の従業員であるCは,従前からGがCに対してCの気持ちを考えない言動をしていると感じていて,被告Bに対し,原告から被告ステラに転職したい旨相談をし,被告Bはこれを了承した。Cは,同様に原告を退職することを考えていたDと共に,担当していた取引先病院のEに対し,JSピンからSTRピンへの取扱の変更の話を持ち掛けた。しかし,この話を知った被告Bは,平成30年4月17日,C及びDと共にEを訪問し,Eの担当者に対し,取扱を変更した場合には原告との間で紛争が生じるおそれがある旨伝え,その結果,上記の話は実現せずに終わった。(丙15,16)C及びDは,平成30年4月30日,原告を退職し,その後,Cは被告ステラに雇用され,Dは他の会社に雇用された。

⒀ 原告訴訟代理人寺田正主弁護士及び中村優紀弁護士(以下「寺田弁護士等」という。)は,原告から委任を受けて,平成30年5月15日,被告ベアー,被告ステラ及び被告Bに対し,STRピンの製造販売につき差止め等を求めるとともに損害賠償を請求し,寺田弁護士等に対し面談の申入れをするよう求め,原告は上記被告らの刑事責任の追及のため監督諸官庁に対する通報もする予定である旨の通知をした。(乙3)被告ベアーは,被告ベアー及び被告A訴訟代理人馬渕泰至弁護士(以下「馬渕弁護士」という。)に委任し,原告の請求には理由がなく面談の申入れはしない旨返信した。(乙4)本件鎖骨プレート契約は6回にわたり更新されていたものの,被告ベアーは,原告から損害賠償を請求する旨の通知を受けたことから,本件鎖骨プレート契約に係る売掛金債権を相殺されることを恐れ,また,信頼関係の喪失

5 から契約を継続することは難しいと判断して,平成30年6月29日,原告に対し,約定に基づき本件鎖骨プレート契約を更新しない旨の申出をした。原告は,平成30年7月19日,被告ベアーに対し,寺田弁護士等を窓口とした本件鎖骨プレート契約についての協議を求めた。これに対し,被告ベアーは,寺田弁護士等が同席すればリングピンに係る紛争を含めた交渉になるおそれがあると考え,代理人弁護士が同席しないのであれば鎖骨プレートの取引に係る事業上の協議は可能である旨回答した。寺田弁護士等は,鎖骨プレートの取引の終了にはリングピンの問題の影響がある等として,代理人弁護士が同席した協議を求める旨通知した。被告ベアーは,鎖骨プレートの取引に係る事業上の協議に代理人弁護士の同席は認めないこと,他方で,現金取引による鎖骨プレートの取引は継続できること,原告の販売先に対する対応は適切に行うことを伝えた。これに対し,寺田弁護士等は,改めて,鎖骨プレートの取引に関し代理人弁護士同席の上での包括的な協議を申し入れた。(甲7~16,乙8~11)本件鎖骨プレート契約は,平成30年8月4日,期間満了により終了した。寺田弁護士等と馬渕弁護士は,平成30年8月9日及び同月10日に,鎖骨プレートの取引に関して電話及び面談により協議を行った。この中で,原告は被告ベアーに原告の保有する鎖骨プレートの在庫及び専用工具等の買取り等を依頼したが,両者の条件(金額)は折り合わなかった。原告は,その後も,平成30年8月31日,同年9月25日,同年10月18日に,被告ベアーに対し鎖骨プレートを発注し,被告ベアーは,代金が支払われたことを確認した上で,原告に対し鎖骨プレートを納品した。(乙7)その後,原告は,平成30年11月30日,被告ベアーとの間の鎖骨プレートの取引を中止した。原告は,この間,被告ベアーからJSピンが購入できなくなることを危惧

5 して他の製造所を探していたところ,平成30年12月20日に製造所の変更について厚生労働大臣の承認を得て,以降,被告ベアーとは異なる者が製造したJSピンを販売している。

⒁ リングピンは,メディカルネクスト,原告,被告ステラのほか,帝人ナカシマメディカル株式会社(平成27年の変更前の商号はナカシマプロペラ株式会社。以下,商号変更の前後を問わず「ナカシマメディカル」という。),株式会社Aimedic MMT(以下「アイメディック」という。),ネオメディカル株式会社(以下「ネオメディカル」という。),株式会社ホムズ技研等が販売していた。その一部について,一般財団法人医療情報システム開発センターが運営する医療機器データベースシステムへの登録日,埋没部,把持部の長さや直径,リング部の形状等は,別紙リングピン一覧表のとおりである。このうちナカシマメディカルのリングピンは,埋没部,ドーナツ型の形状のリング部,把持部から構成されている。ナカシマメディカルは,平成9年にリングピンの製造販売を開始し,遅くとも平成17年には,埋没部がそれぞれ3cm,5cm,6cm,7cm,8cmで,把持部が6cm,埋没部の直径が2mm,把持部の直径が3mm,リング部の内径が2mmのリングピンを販売していた。(乙13,丙8,12)また,アイメディックのリングピンは,埋没部,眼鏡型(2穴)又は逆三角の形状のリング部,把持部から構成されている。アイメディックは,平成17年には,少なくとも,埋没部がそれぞれ5cm,7cm,リング部の形状が眼鏡型,把持部が5.8cm,埋没部の直径が2mm,把持部の直径が2.4mmのリングピンを,平成26年には,埋没部が9cm,埋没部の直径が3mm,リング部の形状が眼鏡型のリングピンを,平成28年には,少なくとも,埋没部がそれぞれ3cm,5cm,7cm,9cmで,リング部の形状が眼鏡型,把持部が3.5cm,埋没部の直径が2mm,把持部の直

5 径が2.4mm,リング部の内径が1.35mmのリングピンを販売していた。アイメディックは,このほか,リング部の形状が眼鏡型で把持部が5.8cmのリングピンとして,埋没部がそれぞれ4cm,4.5cm,6cm,10cmのもの,リング部の形状が眼鏡型で把持部が3.5cmのリングピンとして,埋没部がそれぞれ3cm,4cm,4.5cm,6cm,10cmのものも販売しており,また,リング部の形状が逆三角形で,埋没部がそれぞれ5cm,7cm,9cmで,把持部が3.5cm,埋没部の直径が2mm,把持部の直径が2.4mm,リング部の内径が1.35mm×2mmのリングピンも販売している。(甲40,丙7)ネオメディカルのリングピンは,埋没部,ドーナツ型の形状のリング部,把持部の3部から構成されている。ネオメディカルは,平成27年に,埋没部がそれぞれ7cm,9cm,把持部が4cm,埋没部の直径が1.8mm,把持部の直径が3mmのリングピンを,平成28年に,少なくとも,埋没部がそれぞれ5cm,7cm,9cmで,把持部が4cm,埋没部の直径が2mm,把持部の直径が3mm,リング部の内径が1.85mmのリングピンを販売しており,埋没部直径2mmのリングピンとしては,このほか,埋没部がそれぞれ6cm,8cmのものも販売している。(本項につき,一部の段落末尾に掲記のほか,甲3,乙13~16,丙7,8,12,13,17~20)2 争点①(各原告商品の形態が原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されているか。)について

⑴ 商品の形態は本来的には商品の出所を表示する機能を有するものではないが,商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有し,かつ,それが特定の者の商品に長期間独占的に使用され,又は,極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等が存在することなどにより,その形態を有する商品が特定の者の商品であることを表示するものとして需要者の間に広く認識

5 されるに至っている場合には,不正競争防止法2条1項1号にいう商品等表示として需要者の間に広く認識されているものに該当するというべきである。

⑵ア 原告は,各原告商品を販売している(原告商品1について前記1⑽,原告商品2ないし4について同⑹)ところ,リングピンである各原告商品について,①把持部の長さが5cm以上である点,②埋没部直径より把持部直径が細く外観が優れている点,③リング部の形状がドーナツ型である点,

④リング部の内径が1.8mmである点,⑤材料としてステンレス鋼316L-VMが使用されている点等に特徴があり,さらに,原告商品1は,

⑥埋没部の長さが3cmと極めて短く,これに対し把持部の長さが6cmでバランスが最適化されている点に,原告商品4は,⑦埋没部の長さが9cmと極めて長い点に特徴(以下,番号に応じて「特徴①」などという。)があり,これらの特徴が,原告の商品であることを表示する商品等表示(不正競争防止法2条1項1号)として周知となっていると主張する(前記第2の3⑴(原告の主張))。イ ここで,各原告商品の販売以前から,少なくとも,ナカシマメディカルが,埋没部が3cmのものを含め,把持部が6cm,リング部の形状がドーナツ型のリングピンを,アイメディックが,把持部が5.8cmのリングピンを販売しており(前記1⒁),また,メディカルネクストが,埋没部が9cmのものを含め,リング部の形状がドーナツ型,リング部の内径1.8mmのアキュメッド社製リングピンを販売していた(同⑷)。したがって,各原告商品の販売前から,把持部の長さが5cm以上(特徴①),リング部の形状がドーナツ型(特徴③),リング部の内径が1.8mm(特徴④),埋没部の長さが3cm,把持部の長さが6cm(特徴⑥),埋没部の長さが9cm(特徴⑦)等の特徴を備えたリングピンが存在していた。また,各原告商品の販売から数年以内のうちには,アイメディックやネ

5 オメディカルなどにより,リング部の形状がドーナツ型(特徴③),埋没部の長さが3cm,9cm(特徴⑥,⑦)等の特徴を備えたリングピンが販売された(前記1⒁)。特徴②である埋没部直径より把持部直径が細い点について,各原告商品の埋没部直径は2.0mmで,把持部直径は1.6mmであり,差はあるもののその差は相当に小さいほか,各社のリングピンの直径が1.6mmから3mmの範囲で設定され(前記1⒁),アキュメッド社製リングピンは,平成25年頃にはピン直径が1.6mmのものが販売され,平成26年4月にはピン直径が2mmのものが販売されるなどし(同⑷),埋没部直径2mmのピンも複数の会社から販売されていた(同⒁)。ウ 材料としてステンレス鋼316L-VMが使用されている点(特徴⑤)について,材料そのものは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる形態(不正競争防止法2条4項)とはいえない。なお,その色彩,光沢,質感が金属製である他の同種商品と異なる顕著な特徴を有していたと認めるに足りる証拠はない。JSピンを開発するに当たって参考にされたアキュメッド社製リングピンにも同じ材料が使用されていて,かつ,その材料が何であるかは外観からは判明しなかった(前記1⑷)。エ 以上によれば,原告が,各原告商品の商品等表示として主張する各点のうち,特徴①,③,④,⑥及び⑦は,同様の特徴を有する他の商品が存在した(前記イ)。特徴⑤は,商品等表示となる特徴ではない。特徴②についても,埋没部と把持部の直径の違いは相当に小さく,また,各原告商品の埋没部の直径(2mm)と同じ直径のリングピンや把持部の直径(1.6mm)と同じ直径のリングピン自体は従前から知られていた。そして,複数の会社が,リングピンについて,その長さや直径,リング部の形状などの点に関しそれぞれ複数の仕様のものを販売していて,短

5 期間でその仕様の追加,変更等を行ったりもしていた(前記1⑷,⒁)。この状況や原告が主張する各特徴と同じ形状を有する他社の販売する同種商品が存在したことから,原告が主張する各特徴は,需要者にとり,変更されることもあり得る複数の仕様のうちの一つと認識されるといえるものであり,原告自身も,埋没部,把持部の長さ(特徴①,⑥,⑦)により区別される複数の種類の製品(各原告商品)を販売していた。さらに,原告が主張する各特徴には,骨折部位との関係(特徴⑥,⑦ 前記1⑻),把持のための機器との関係(特徴① 同⑹),強度の関係(特徴② 同⑷)によって選択されたものがあり,これらはいずれも機能的観点から選択された形状といえるものであった。原告が主張する各特徴は,需要者にとって,上記観点から選択された一つの仕様と認識され得る状況があったといえ,特に,他社が販売する同種商品に原告が主張する各特徴と同じ特徴(その一部であるものも含む。)を有するものがあったとの事情は,上記状況の下で,原告が主張する各特徴を商品の出所を識別する根拠となるものであると需要者が認識することを,より困難にするものであった。以上を総合的に考慮すると,原告が主張する各原告商品の特徴は,同種の商品における複数の仕様のうちの一つと認識されるようなありふれたものであり,いずれも,他の同種商品との関係で,商品の出所を識別する根拠となり得る顕著な特徴とは認められないとするのが相当である。また,その特徴の性質,内容から,それらの組合せによっても,複数の仕様が単に組み合わされたものであることを超える特段の意匠的効果を奏するとは認められないものであり,それらの組合せをもって他の同種商品に対して出所を識別する根拠となり得る顕著な特徴であるということはできない。

⑶ 以上から,原告が主張する各原告商品の特徴は,ありふれたといえるもの

5 で出所を識別する根拠となり得る他の同種商品と異なる顕著な特徴とはいえないから,その他の点を考慮するまでもなく,商品等表示とは認められない。したがって,これが商品等表示であることを前提とする原告の主張には理由がない。3 争点③(各被告商品は他人の商品である各原告商品の形態を模倣したものであるか。)について被告商品1から4の本体の形態は,原告商品1から4の本体の形態とそれぞれ同じである(前記1⑾。ただし,刻印されている文字が異なり,各被告商品は1本ずつ包装されているのに対し,各原告商品は2本1組で包装されている。)。また,各原告商品が遅くとも平成29年4月頃までにそれぞれ販売が開始されたのに対し,各被告商品は同年6月以降に販売を開始したものである。ここで,各原告商品は,原告が得た情報に基づき,被告ベアーが,新たに具体的な設計図を作成した上で,それに基づいて新たな形態の製品の商品化をしてこれを製造したといえるものであり(前記1⑹,⑻, ),その際に原告は特段の費用負担をしていない(同⑸)。また,もともと,当初開発されたJSピンについて,原告が被告ベアーに対して話を持ち掛けたことから開発が開始され,原告は自ら製造販売の承認を受ける関係で一定の費用を負担するなどしたものであるが,当時,原告は医療機器を製造する能力を有しておらず,JSピンの開発は,基本的には,被告ベアーが,上記の原告からの話を受けて,自ら費用と労力を負担して,アキュメッド社製リングピンを入手した上で,新しい製品についての具体的な設計図を作成し,また,材料についての試行錯誤を繰り返すなどして約1年をかけて開発し,製造したものであった(同⑶,⑷)。被告ベアーがその開発に関して負担した上記の費用と労力について,原告が負担する旨の合意がされたことはないし,被告ベアーがその開発した商品について原告に対して何らかの義務を負うことが合意されたこともない(同⑶,⑸)。各原告商品は,当初開発されたJSピンと埋没部直径,把持部直径,リング部

5 の形状等が同じであり,当初のJSピンの開発を前提として開発されたものと認められるものであった。以上によれば,当初のJSピンから各原告商品への変更は原告が得た情報を契機とするものであるが,被告ベアーは,各原告商品の形態の開発について,自ら費用,労力等を負担したといえるのであって,各原告商品について,少なくとも共同開発者であったというべきである。なお,JSピンは,アキュメッド社製リングピンを参考として開発されたもので,同製品を既承認医療機器とする後発医療機器である。もっとも,不正競争防止法2条1項3号においては商品全体の形態が問題となるところ,アキュメッド社製リングピンと各原告商品は,埋没部直径が異なり,JSピンはアキュメッド社製リングピンよりも把持部とリング部の接合部分の溝が浅く短い(前記1⑷)などの違いがあるだけでなく,把持部の長さが大きく異なるなど,異なる形状のものといえるのであり,被告ベアーは,少なくとも各原告商品を開発,製品化した共同開発者であると認められる。以上のとおり,被告ベアーは各原告商品の少なくとも共同開発者であるところ,このような場合,不正競争防止法2条1項3号の適用に当たっては,各原告商品は被告ベアーにとり「他人」の商品ではなく,被告ベアーが製造販売した各被告商品は「他人の商品の形態を模倣した商品」(同号)とはいえない。したがって,原告は,被告ベアーによる各被告商品の販売等に対し,同号の不正競争行為を主張することはできないというべきである。そして,被告ステラも,被告ベアーが適法に販売した商品を医療機器販売会社等に販売したにすぎない。したがって,被告らに同号の不正競争行為が成立することはない。4 争点⑥(被告Aに被告ベアーの代表取締役としての職務を行うについて,被告Bに被告ステラの代表取締役としての職務を行うについて,それぞれ悪意又は重大な過失があるか。)について被告ベアー及び被告ステラが混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)

5 及び形態模倣行為(同項3号)の不正競争を行ったとは認められず(前記2,3),この点に関し,被告Aに被告ベアーの代表取締役の職務を行うについて,被告Bに被告ステラの代表取締役としての職務を行うについて,それぞれ悪意又は重大な過失があったとも認められない。5 争点⑧(被告ベアー及び被告Aが,各原告商品に係る秘密保持義務に違反し,また,原告の取引を妨害したか。被告Aに被告ベアーの代表取締役としての職務を行うについて悪意又は重大な過失があるか。)について被告ベアーは,各原告商品について少なくとも共同開発者の立場にあったものであり,自ら費用と労力を負担して行った上記の開発に基づいて,各被告商品を製造販売しているにすぎないといえる(前記3)し,上記の開発における秘密の保持やその後の製造販売等について,原告と被告ベアーとの間に特段の合意はなかった(前記1⑸)。したがって,被告ベアー及び被告Aが,原告の営業秘密である各原告商品に係る製品情報を利用して各被告商品を製造販売しているとは認められないし,原告の取引を違法に妨害しているとは認められない。そうすると,この点に関し,被告Aに,被告ベアーの代表取締役としての職務を行うについて悪意又は重大な過失があったとも認められない。6 争点⑨(被告ステラ及び被告Bが,各原告商品に係る秘密保持義務等に違反し,また,原告の取引を妨害したか。)及び争点⑩(被告ステラ及び被告Bが競業避止義務に違反し各被告商品を販売しているか。)について被告ステラは,被告ベアーから,被告ベアーが自ら費用と労力を負担して行った開発に基づいて製造販売している各被告商品(前記3)を購入しているにすぎない。また,被告ステラは,従前JSピンを取り扱っていた2病院に対し各被告商品を含むSTRピンを販売したものの,同病院に勤務する医師に求められたためであり,基本的には,医療機器販売会社2社に対してSTRピンの取扱を依頼して,同2社に対してこれを販売しているにすぎない(前記1⑾)。

5 そして,上記各医療機器販売会社の販売先には従前JSピンを取り扱っていた1病院が含まれる(同前)ものの,被告ステラ及び被告Bが,上記各医療機器販売会社の営業に関与したことを認めるに足りる証拠はない。このほか,被告ステラ又は上記各医療機器販売会社が,上記JSピンを取り扱っていた病院に対し,STRピンを販売していることを認めるに足りる証拠はない。なお,原告の従業員であったC等が,原告の取引先病院であるEに対し,JSピンからSTRピンへの取扱の変更の話を持ち掛けたことがあったが,この話を知った被告Bが,Eの担当者に対し,取扱を変更した場合には原告との間で紛争が生じるおそれがあると伝えた結果,上記の話は実現せずに終わった(同⑿)。これらの事情からは,被告ステラ及び被告Bが,原告の営業秘密である各原告商品に係る製品情報及び顧客情報を利用し,又は,社会通念上自由競争の範囲を逸脱して,各被告商品を製造販売しているとはいえず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。また,原告従業員であったCは,原告内部での扱い等を理由として被告Bに相談し,原告から被告ステラに転職し,同Dは他の会社に転職したものであって(前記1⑿),被告ステラ及び被告Bが不当にC及びDを被告ステラに引き抜いたとは認められない。このほか,被告ステラ及び被告Bが,社会通念上自由競争の範囲を逸脱して,原告の取引を妨害したと認めるに足りる証拠はない。そして,原告及び被告Bは,被告Bが原告を退職するに当たり競業避止について特段の合意もしていないのであり(前記1⑼),被告Bが,被告ステラを設立し,また,原告退職後に,同種の事業を営んだとしても,社会通念上自由競争の範囲を逸脱するとはいえない。7 争点⑬(被告ベアー及び被告Aが信義則に違反し,また,被告Aが被告ベアーの代表取締役としての職務を行うについて悪意又は重大な過失により,本件鎖骨プレート契約を更新せず原告の権利を侵害したか。)について

5 本件鎖骨プレート契約は,平成23年8月5日に期間1年の約定で締結され,その後,原告及び被告ベアーのいずれからも更新しない旨の申出がされずに継続していたところ,被告ベアーが平成30年6月29日に約定に基づき更新しない旨の申出をしたことから,同年8月4日に期間満了により終了した(前記

第2の2⑵イ,前記1⑵,⒀)。

原告と被告ベアーの間においては,本件鎖骨プレート契約が締結されていたところ,様々な商品を扱っていることがうかがわれる原告における特定の一つの商品の供給契約について,契約期間の定め及び更新しない旨の申出がされることがあることを前提とした条項があるにも関わらず,契約の更新しない旨の申出をすることが信義則に違反する事情があるとは直ちには認められない。原告は,被告ベアーから購入した鎖骨プレートについて,取引先病院に原告の在庫一式を備え置き,このうち施術に使用されたものについて売り上げて新しいものを補充するという態様で販売していて(前記1⑵),そのために相当数の在庫を抱えていた一方,使用されたものに関し取引先病院に対する対応を継続的に求められる等の状況にあったなどの事情があった。しかし,それは原告の販売態様に起因する事情である。また,本件においては,被告ベアーは,原告に対し,本件鎖骨プレート契約を更新しない旨の申出をする一方で,現金取引による販売は継続することや,原告の販売先に対する対応は適切に行うことも伝え,不当に協議を拒絶したこともなく,実際,本件鎖骨プレート契約終了後も数か月にわたり取引を継続していた(平成30年11月にこれを中止したのは原告の側であった。同⒀)。このことからすると,原告の販売態様等が上記のとおりであったとしても,原告は本件鎖骨プレート契約の期間満了による終了後も直ちに取引先病院との取引ができなくなるということはなく,上記販売態様等によって被告ベアーによる更新しない旨の申出が信義則に反することになるとはいえない。なお,本件鎖骨プレート契約における原告から被告ベアーに対する代金支払は前月21日から当月20日までの販売について翌々月

5 末日までにすることとされていて(同⑵),被告ベアーは,常時原告に対し約2ないし3か月分の売掛金債権を有する状態にあった。被告ベアーは,平成30年5月に原告からSTRピンの販売に関して損害賠償を請求する旨の通知を受けたことから,上記売掛金債権を相殺されることを恐れて,本件鎖骨プレート契約を更新しない旨の申出をしたものであり(同⒀。なお,原告の損害賠償の請求は理由がないものであった。前記2,3,5),上記申出が,原告を害するなどの不当な目的でされたともいえない。以上によれば,本件鎖骨プレート契約は7年にわたって継続していたが,被告ベアーが約定に基づき契約を更新しない旨の申出をすることが信義則に反するとは認められず,したがって,この点に関し,被告Aに,原告に対する信義則違反や,被告ベアーの代表取締役としての職務を行うについて悪意又は重大な過失があったとも認められない。

第4 結論

以上の次第で,原告の請求はいずれも理由がないから棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官 柴 田 義 明裁判官 佐 伯 良 子裁判官 棚 井 啓別紙被告商品目録販売名 STRピンシステム製品名 STRピン製品番号 埋没部 把持部 ピン直径 リング部内径

1 STR203060 30mm 60mm 埋没部 1.8mm

2 STR205050 50mm 50mm 2.0mm

3 STR207050 70mm 50mm 把持部

4 STR209050 90mm 50mm 1.6mm以 上別紙原告商品目録販売名 JSピンシステム製品名 JSピン製品番号 埋没部 把持部 ピン直径 リング部

(L2) 内径

1 JTBT30-3L 30mm 60mm 埋没部 1.8mm

2 JTBT50-3L 50mm 50mm 2.0mm

3 JTBP70-3L 70mm 50mm 把持部

4 JTBP90-3L 90mm 50mm 1.6mm以 上別紙原告商品図面以 上(別紙一覧表 省略)

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