令和3(行ケ)10055審決取消請求事件
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裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
|
裁判年月日 |
令和4年3月28日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
原告ファーストフェイスカンパニーリミテッド 被告AppleJapan合同会社
|
対象物 |
移動通信端末機の活性化時に、特定動作が行われるようにするための方法、システム及び移動通信端末機 |
法令 |
特許権
特許法29条1項2号2回 特許法29条2項1回
|
キーワード |
実施130回 審決45回 進歩性15回 無効5回 特許権1回 無効審判1回 分割1回 優先権1回
|
主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。25
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期 |
事件の概要 |
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)
(1) 原告は、2012年(平成24年)10月17日を国際出願日とする特許
出願(特願2014-536982号。パリ条約による優先権主張外国庁受10
理2011年10月19日、韓国。以下、この日付を「本件優先日」という。)
の一部を分割して、平成29年9月22日、発明の名称を「移動通信端末機
の活性化時に、特定動作が行われるようにするための方法、システム及び移
動通信端末機」とする特許出願をし(特願2017-182392)、平成
30年8月17日、特許権の設定登録(特許第6386646号。請求項の15
数9。)を受けた(以下、この特許を「本件特許」という。)。
(2) 被告は、平成31年1月30日、特許庁に対し、本件特許の請求項1ない
し4、7及び8について特許無効審判(無効2019-800007号)を
請求した。 |
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判決文
令和4年3月28日判決言渡
令和3年(行ケ)第10055号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和4年1月31日
判 決
原 告 ファーストフェイス カンパ ニ ー
リミテッド
同訴訟代理人弁護士 城 山 康 文
同 後 藤 未 来
同訴訟代理人弁理士 金 山 賢 教
同 市 川 祐 輔
被 告 Apple Japan合同 会 社
20 同訴訟代理人弁護士 北 原 潤 一
同 米 山 朋 宏
同 梶 並 彰 一 郎
主 文
1 原告の請求を棄却する。
25 2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期
間を30日と定める。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2019-800007号事件について令和2年12月24
5 日にした審決中、「特許第6386646号の請求項1ないし4、7及び8に
記載された発明についての特許を無効とする。」との部分を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)
(1) 原告は、2012年(平成24年)10月17日を国際出願日とする特許
10 出願(特願2014-536982号。パリ条約による優先権主張外国庁受
理2011年10月19日、韓国。以下、この日付を「本件優先日」という。)
の一部を分割して、平成29年9月22日、発明の名称を「移動通信端末機
の活性化時に、特定動作が行われるようにするための方法、システム及び移
動通信端末機」とする特許出願をし(特願2017-182392)、平成
15 30年8月17日、特許権の設定登録(特許第6386646号。請求項の
数9。)を受けた(以下、この特許を「本件特許」という。)。
(2) 被告は、平成31年1月30日、特許庁に対し、本件特許の請求項1ない
し4、7及び8について特許無効審判(無効2019-800007号)を
請求した。
20 原告は、令和2年5月20日、請求項1ないし8について訂正する旨の訂
正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。
特許庁は、令和2年12月24日、本件訂正請求を認めた上で、「特許第
6386646号の請求項1ないし4、7及び8に記載された発明について
の特許を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その
25 謄本は同年12月28日原告に送達された。
⑶ 原告は、令和3年4月26日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起
した。
2 特許請求の範囲の記載
訂正後の請求項1ないし4、7及び8の特許請求の範囲の記載は、次のとお
りである(下線部が本件訂正請求による訂正〔以下「本件訂正」という。〕が
5 された部分。以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」、請求項2に係る発
明を「本件発明2」、請求項3に係る発明を「本件発明3」、請求項4に係る
発明を「本件発明4」、請求項7に係る発明を「本件発明5」、請求項8に係
る発明を「本件発明6」といい、包括して「本件各発明」という。)。
【特許請求の範囲】
10 【請求項1】
使用者による操作を受け付けるとともに所定の表示を行うタッチスクリーン
ディスプレイ部と、
外部装置と通信可能な状態であるが前記タッチスクリーンディスプレイ部の
表示がオフである非活性状態から前記タッチスクリーンディスプレイ部の表示
15 をオンにしてロック画面が表示された活性状態に切り替えるための活性化ボタ
ンと、
前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基
づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態に切り替
えるとともに、前記使用者の操作が第1の操作であった場合には第1動作を、
20 前記使用者の操作が前記第1の操作よりも前記活性化ボタンに対して長い時間
継続してなされた第2の操作であった場合には前記第1動作とは異なる第2動
作を、前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく、実行するための制
御部と、
を含む移動通信端末装置であって、
25 前記各動作は、カメラ活性化機能、健康情報伝送機能、使用者識別機能、位
置情報伝送機能、ハンズフリー機能、または広告表示機能のいずれかを含む、
移動通信端末装置。
【請求項2】
前記第1の操作がなされた場合には、前記非活性状態から前記活性状態に切
り替えるとともに、前記タッチスクリーンディスプレイ部へのロック画面の表
5 示と、前記第1動作の実行をし、
前記ロック画面には、現在の時間を表示することができる、請求項1に記載
の移動通信端末装置。
【請求項3】
前記第2の操作がなされた場合には、前記非活性状態から前記活性状態に切
10 り替えるとともに、前記タッチスクリーンディスプレイ部へのロック画面の表
示し、前記第2動作の実行をする、請求項1又は2に記載の移動通信端末装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に
15 基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態に切り
替えるとともに、前記使用者の操作が前記第1の操作であった場合には前記第
1動作を、前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく、実行し、
前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に
基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態に切り
20 替えるとともに、前記使用者の操作が前記第1の操作よりも前記活性化ボタン
に対して長い時間継続してなされた前記第2の操作であった場合には前記第1
動作とは異なる前記第2動作を、前記使用者の操作以外の追加の操作をするこ
となく、実行し、
前記使用者識別機能は、前記使用者があらかじめ登録された使用者であると
25 識別された場合にはロック状態を解除し、前記使用者があらかじめ登録された
使用者でないと識別された場合には前記ロック状態を維持する機能である、請
求項1~3のいずれか一項に記載の移動通信端末装置。
【請求項7】
前記使用者識別機能は、指紋認識を利用した機能であり、前記使用者識別機
能による認証の結果、前記使用者が正当な使用者と認証されなければ、前記デ
5 ィスプレイ部にメッセージを表示するよう構成される、請求項1~5のいずれ
か一項に記載の移動通信端末装置。
【請求項8】
前記使用者識別機能は、顔認識を利用した機能である、請求項1~5のいず
れか一項に記載の移動通信端末装置。
10 3 本件審決の理由の要旨
⑴ 本件審決の理由の要旨は、本件各発明は、本件特許出願の優先日前に公然
実施されていたiOS4.2又は4.3を搭載したiPhone4である発
明(以下「公然実施発明」という。)、iOS4.3を搭載したiPhon
e4について公然実施された発明(以下「公然実施発明2」という。)及び
15 特表2010-541046号公報(甲3。以下「甲3文献」という。)に
記載された2つの発明(以下「甲3発明1」及び「甲3発明2」という。)
に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、被告主張
の進歩性欠如(特許法29条2項違反)の無効理由は理由があるというもの
である。
20 各論点に関する理由の要旨は、以下のとおりである。
⑵ 本件発明1の進歩性について
ア(ア) 公然実施発明の内容について
使用者による操作を受け付けるとともに所定の表示を行うタッチスク
リーンディスプレイと、
25 外部装置と通信可能な状態であるがロックしてタッチスクリーンデ
ィスプレイをオフにしたスリープ状態からタッチスクリーンディスプ
レイの表示をオンにしてロック画面が表示されたスリープ解除状態に
切り替えるためのホームボタンと、
スリープ状態において、使用者がホームボタンを押すと、スリープ状
態からスリープ解除状態に切り替えるとともに、タッチスクリーンディ
5 スプレイにロック画面を表示する一方で、使用者がホームボタンを長い
時間継続して押した場合には、スリープ状態からスリープ解除状態に切
り替えるとともに、タッチスクリーンディスプレイにロック画面を表示
し、その後音声コントロールの画面を表示して、音声コントロール機能
を、追加の操作をすることなく、実行し、
10 加えて、パスコードを入力することによる使用者識別機能として、ス
リープ状態においてホームボタンを押して、ロック画面においてスライ
ダをドラッグした後、4ケタのパスコードを入力したときに、認証を行
う制御部と、
を含むスマートフォン。
15 (イ) 本件発明1と公然実施発明の一致点及び相違点について
<一致点>
使用者による操作を受け付けるとともに所定の表示を行うタッチ
スクリーンディスプレイ部と、
外部装置と通信可能な状態であるが前記タッチスクリーンディスプ
20 レイ部の表示がオフである非活性状態から前記タッチスクリーンディ
スプレイ部の表示をオンにしてロック画面が表示された活性状態に切
り替えるための活性化ボタンと、
前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の
操作に基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記
25 活性状態に切り替えるとともに、前記使用者の操作が第1の操作より
も前記活性化ボタンに対して長い時間継続してなされた第2の操作で
あった場合には第2動作を、前記使用者の操作以外の追加の操作をす
ることなく、実行するための制御部と、
を含む移動通信端末装置であって、
前記第2動作は、カメラ活性化機能、健康情報伝送機能、使用者識
5 別機能、位置情報伝送機能、ハンズフリー機能、または広告表示機能
のいずれかに含まれるハンズフリー機能である、移動通信端末装置。
<相違点1>
使用者の操作が第1の操作であった場合、本件発明1では、「第1
動作を」「前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく、実行
10 する」ものであって、「第1動作」は「カメラ活性化機能、健康情報
伝送機能、使用者識別機能、位置情報伝送機能、ハンズフリー機能、
または広告表示機能のいずれか」の動作であり、かつ、「第2動作」
である「カメラ活性化機能、健康情報伝送機能、使用者識別機能、位
置情報伝送機能、ハンズフリー機能、または広告表示機能のいずれか」
15 とは異なる動作であるのに対し、公然実施発明では、「カメラ活性化
機能、健康情報伝送機能、使用者識別機能、位置情報伝送機能、ハン
ズフリー機能、または広告表示機能のいずれか」の動作であり、かつ、
「第2動作」である「カメラ活性化機能、健康情報伝送機能、使用者
識別機能、位置情報伝送機能、ハンズフリー機能、または広告表示機
20 能のいずれか」と異なる動作である「第1動作を」「前記使用者の操
作以外の追加の操作をすることなく、実行する」ものではない点。
イ 相違点1の容易想到性について
(ア) 甲3発明1の内容について
ユーザをシームレスに認証するための、ユーザに可視表示を提供する
25 ディスプレイ回路とホームボタンとを備える携帯電話であって、
ユーザが押下したことを受信する前記ホームボタンと、
前記ホームボタンの背後に配置されたセンサであって、ユーザが前記
ホームボタンを押下したことを受信した時、ユーザからの明示的な入力
を要求することなく、ユーザの指紋の特徴を検出するセンサと、
ライブラリに格納された指紋の情報と検出した前記ユーザの指紋の特
5 徴とを比較することで、前記ユーザの指紋の特徴がライブラリに格納さ
れた指紋の情報に適合するか、適合しないかが判定され、適合する、す
なわち、ユーザが許可されていると判定した場合は、ユーザに制限され
たリソースへのアクセスを提供し、適合しない、すなわち、ユーザが許
可されていないと判定した場合は、認証を行うようユーザに指示するプ
10 ロセッサと、
を備えること。
(イ) 公然実施発明のスマートフォンも甲3発明1の携帯電話も携帯通
信端末機であるといえる。そして、公然実施発明は、「スリープ状態に
おいてホームボタンを押して、ロック画面においてスライダをドラッグ
15 した後、4ケタのパスコードを入力したときに、認証を行う」ものであ
るところ、公然実施発明の「スリープ状態においてホームボタンを押」
すことは、スリープ状態にあるスマートフォンのホームボタンを押して
「デバイス機能を有効にする前、または、デバイスリソースにアクセス
する前」に「起動する」ことといえ、公然実施発明の「4ケタのパスコ
20 ードを入力したときに、認証を行う」ことは、甲3発明1が技術課題の
前提として例示する「デバイスのホームスクリーンまたはメニューを表
示する前に、4つの数字または4つの文字のPINを入力するよう、ユ
ーザに要求すること」に該当する。
そうすると、甲3文献に接した当業者であれば、公然実施発明には、
25 スリープ状態においてホームボタンを押してから認証を経てデバイスに
アクセスできるまでの一連の動作に関して、甲3発明1と共通の技術課
題(デバイスのホームスクリーンまたはメニューを表示する前に、4つ
の数字または4つの文字のPINを入力するよう、ユーザに要求するこ
とは、パスコードが知られると、制限メカニズムの効果がなくなり、パ
スワードまたはパスコードを忘れて、許可ユーザがデバイスにアクセス
5 できなくなる場合もある。)が存在することを想起するものといえ、公
然実施発明には、許可されていない人物がユーザの個人情報にアクセス
し閲覧することを防ぐため、デバイス機能を有効にする前またはデバイ
スリソースにアクセスする前の起動する時に、デバイスが迅速かつシー
ムレスにユーザを認証することを目的とした甲3発明1を適用する動機
10 付けがある。
(ウ) 甲3発明1は、ユーザがホームボタンを押下したことを受信した時、
ユーザによる追加の操作なしに、指紋認識による使用者識別機能が行わ
れる構成を有する。
公然実施発明に甲3発明1を適用する動機付けはあるから、「ユーザ
15 がホームボタンを押下したことを受信した時、ユーザによる追加の操作
なしに、指紋認識による使用者識別機能が行われる」ために、公然実施
発明において、「スリープ状態において、使用者がホームボタンを押」
したことを受信した時、「ロック画面においてスライダをドラッグした
後、4ケタのパスコードを入力」することなしに、指紋認証による「使
20 用者識別機能」を実行するように構成することは、当業者であれば容易
に想到し得る。
(エ) 被請求人(本件原告)は、本件発明1におけるロック画面に関する
構成が甲3文献に開示されていないから、公然実施発明に甲3発明1を
組み合わせても、相違点1に係る本件発明1の構成を容易に想到するこ
25 とができない旨主張するが、ロック画面について本件各発明の明細書は
明確に定義しておらず、本件発明1で特定されるロック画面は、「前記
非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基
づいて」
「表示され」る画面のことであり、「起動する時に、デバイスが
迅速かつシームレスにユーザを認証する」ために「ユーザがホームボタ
ンを押下したことを受信した時、ユーザによる追加の操作なしに、指紋
5 認識による使用者識別機能」を行う甲3発明1は、「ユーザがホームボ
タンを押下したことを受信した時」に「ロック画面」が表示されている
か否かにかかわらず適用できるものである。
⑶ 本件発明2の進歩性について
ア 本件発明2と公然実施発明の相違点について
10 相違点1に加えて、以下の相違点がある。
<相違点2>
本件発明2では、「前記ロック画面には、現在の時間を表示することが
できる」のに対し、公然実施発明ではこの点が特定されていない点。
イ 相違点2の容易想到性について
15 スマートフォンにおいて、スリープ時にホームボタンが押された際、使
用者が設定した背景画面に、現在時間などの非常に簡単な情報だけが表示
されている画面は「ロック画面」であるから、公然実施発明において、ス
リープ状態にあるときに、ユーザがホームボタンを押すと表示されるロッ
ク画面に現在の時間が表示できるようにすることは、当業者が適宜になし
20 得る。
⑷ 本件発明3の進歩性について
本件発明3と公然実施発明とは、相違点1で相違し、その余の点で一致す
るところ、本件発明1について検討したのと同様の理由により、公然実施発
明及び甲3発明1に基づいて当業者が容易に発明することができた。
25 ⑸ 本件発明4の進歩性について
ア 本件発明4と公然実施発明1の相違点について
相違点1に加え、以下の相違点がある。
<相違点3>
本件発明4では、「前記使用者識別機能は、前記使用者があらかじめ登
録された使用者であると識別された場合にはロック状態を解除し、前記使
5 用者があらかじめ登録された使用者でないと識別された場合には前記ロ
ック状態を維持する機能である」と特定しているのに対し、公然実施発明
はこの特定がない点。
イ 相違点3の容易想到性について
甲3発明1の「携帯電話」は、使用者識別機能について、使用者があら
10 かじめ登録された使用者であると識別された場合は、ユーザに制限された
リソースへのアクセスを提供し、使用者があらかじめ登録された使用者で
ないと識別された場合、使用者に制限されたリソースへのアクセスを提供
しない構成、すなわち、相違点3に係る構成を備えるといえる。
したがって、相違点3に係る構成は、公然実施発明において、甲3発明
15 1を採用することに付随して得られる構成であって、格別のものとはいえ
ない。
⑹ 本件発明6の進歩性について
ア 本件発明6と公然実施発明の相違点について
<相違点4>
20 相違点1と同じ。
<相違点5>
使用者識別機能について、本件発明6では、「顔認識を利用した機能」
であるのに対し、公然実施発明では、
「パスコードを入力することによる」
機能である点。
25 イ 相違点4及び相違点5の容易想到性について
(ア) 甲3文献には、請求項15及び17に記載された発明に関連して、
次の発明(以下「甲3発明2」という。)が記載されている。
ユーザをシームレスに認証するための、ユーザに可視表示を提供する
ディスプレイ回路とホームボタンとを備える携帯電話であって、
ユーザが押下したことを受信する前記ホームボタンと、
5 ユーザが電子デバイスリソースに対して閲覧またはアクセスを行うた
めにディスプレイの方を向いた時に、ユーザの顔の特徴が視野内に位置
が合いうるように配置されたセンサであって、ホームボタンをユーザが
押下したことを受信した時、ユーザの顔の特徴を検出するセンサと、
前記検出されたユーザの顔の特徴に基づいて、許可ユーザが検出され
10 た場合、制限されたコンテンツをディスプレイに表示したり、コンテン
ツへのアクセスを提供するプロセッサと、
を備えること。
(イ) 甲3発明2は、「ユーザがホームボタンを押下したことを受信した
時、ユーザによる追加の操作なしに、顔認識による使用者識別機能が行
15 われる」構成を有するといえる。
本件発明1について判断したところと同様に、公然実施発明に甲3発
明2を適用する動機付けはあるから、「ユーザがホームボタンを押下し
たことを受信した時、ユーザによる追加の操作なしに、顔認識による使
用者識別機能」が行われるために、公然実施発明において、「スリープ
20 状態において、使用者がホームボタンを押」したことを受信した時、「ロ
ック画面においてスライダをドラッグした後、4ケタのパスコードを入
力」することなしに、「顔認識による使用者識別機能」を実行するよう
に構成することは、当業者であれば容易に想到し得る。
⑺ 本件発明5の進歩性について
25 ア 公然実施発明2について
使用者による操作を受け付けるとともに所定の表示を行うタッチスク
リーンディスプレイと、
外部装置と通信可能な状態であるがロックしてタッチスクリーンディ
スプレイをオフにしたスリープ状態からタッチスクリーンディスプレイ
の表示をオンにしてロック画面が表示されたスリープ解除状態に切り替
5 えるためのホームボタンと、
スリープ状態において、使用者がホームボタンを押すと、スリープ状態
からスリープ解除状態に切り替えるとともに、タッチスクリーンディスプ
レイにロック画面を表示する一方で、使用者がホームボタンを長い時間継
続して押した場合には、スリープ状態からスリープ解除状態に切り替える
10 とともに、タッチスクリーンディスプレイにロック画面を表示し、その後
音声コントロールの画面を表示して、音声コントロール機能を、追加の操
作をすることなく、実行し、
加えて、パスコードを入力することによる使用者識別機能として、スリ
ープ状態においてホームボタンを押して、ロック画面においてスライダを
15 ドラッグした後、4ケタのパスコードを入力したときに、認証を行い、
さらに、パスコードを入力することによる使用者識別機能による認証の
結果、使用者が正当な使用者と認証されれば、ロックが解除されて、ホー
ム画面が表示される一方で、認証されなければ、ロック状態を維持すると
ともに、ディスプレイに「パスコードが違います もう一度試してくださ
20 い」というメッセージ(エラーメッセージ)を表示する制御部と、
を含むスマートフォン。
イ 本件発明5と公然実施発明2の一致点及び相違点について
<一致点>
使用者による操作を受け付けるとともに所定の表示を行うタッチスク
25 リーンディスプレイ部と、
外部装置と通信可能な状態であるが前記タッチスクリーンディスプレ
イ部の表示がオフである非活性状態から前記タッチスクリーンディスプ
レイ部の表示をオンにしてロック画面が表示された活性状態に切り替え
るための活性化ボタンと、
前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操
5 作に基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性
状態に切り替えるとともに、前記使用者の操作が第1の操作よりも前記活
性化ボタンに対して長い時間継続してなされた第2の操作であった場合
には第2動作を、前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく、実
行するための
10 制御部と、
を含む移動通信端末装置であって、
前記第2動作は、カメラ活性化機能、健康情報伝送機能、使用者識別機
能、位置情報伝送機能、ハンズフリー機能、または広告表示機能のいずれ
かに含まれるハンズフリー機能であり、
15 前記使用者識別機能は、前記使用者識別機能による認証の結果、前記使
用者が正当な使用者と認証されなければ、前記ディスプレイ部にメッセー
ジを表示するように構成される、移動通信端末装置。
<相違点6>
相違点1と同じ。
20 <相違点7>
使用者識別機能について、本件発明5では、
「指紋認識を利用した機能」
であるのに対し、公然実施発明2では、「パスコードを入力することによ
る」機能である点。
ウ 相違点6及び相違点7の容易想到性について
25 本件発明1について判断したところと同様に、公然実施発明2に甲3発
明1を適用する動機付けはあるから、「ユーザがホームボタンを押下した
ことを受信した時、ユーザによる追加の操作なしに、指紋認識による使用
者識別機能」が行われるために、公然実施発明2において、「スリープ状
態において、使用者がホームボタンを押」したことを受信した時、「ロッ
ク画面においてスライダをドラッグした後、4ケタのパスコードを入力」
5 することなしに、「指紋認識による使用者識別機能」を実行するように構
成することは、当業者であれば容易に想到し得る。
第3 当事者の主張
1 取消事由1(本件発明1の進歩性の判断の誤り)
⑴ 原告の主張
10 ア 相違点の認定に誤りがあることについて
(ア) 本件発明1と公然実施発明の相違点は、以下のとおりに認定される
べきである。
「前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の
操作に基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活
15 性状態に切り替えるとともに、前記使用者の操作が第1の操作であった
場合には第1動作を、前記使用者の操作が前記第1の操作よりも前記活
性化ボタンに対して長い時間継続してなされた第2の操作であった場合
には前記第1動作とは異なる第2動作を、前記使用者の操作以外の追加
の操作をすることなく、実行する」ものであり、当該各動作は「カメラ
20 活性化機能、健康情報伝送機能、使用者識別機能、位置情報伝送機能、
ハンズフリー機能、または広告表示機能のいずれかを含む」という構成
(イ)a 公然実施発明の「ロック画面」は、使用者識別機能(認証)を行う
のに先立ち、使用者識別機能を行うのに必要となる「スライダに対す
るドラッグの操作」を受け付けるという特徴を有する。これによって、
25 公然実施発明では、ユーザ認証におけるユーザの誤操作(意図せざる
操作等)による誤動作を防止するという技術的意義がある。
これに対し、本件発明1では、そのようなスライダのドラッグ操作
なしに、非活性状態から活性状態に切り替えるための操作入力により
使用者識別機能が行われる。
b また、本件発明1において、第1動作(又は第2動作)が使用者識
5 別機能である場合においては、単なる使用者識別機能ではなく、「前
記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作
に基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性
状態に切り替えるとともに、・・・前記使用者の操作以外の追加の操
作をすることなく」実行される「使用者識別機能」である。
10 c そのため、相違点1に係る本件発明1の構成は、「前記非活性状態
の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前
記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態に切り替
えるとともに」前記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく」
「
との技術要素を含む形で認定されるべきである。この点を看過した本
15 件審決の認定は誤りである。
イ 相違点の容易想到性の判断に誤りがあることについて
(ア) 甲3文献が、相違点1に係る本件発明1の構成を開示しないことに
ついて
a 甲3文献において、検出した指紋を登録された指紋と照合して適合・
20 不適合を判定する処理について記載しているのは、【0065】であ
るが、そこにおいては、当該判定処理を「ユーザからの明示的な入力
を要求することなく」行うことについては、何ら開示されていない。
本件審決は、甲3文献の請求項15に「ユーザをシームレスに認証
するための電子デバイス」と記載されていることに依拠して、あたか
25 も相違点1に係る本件発明1の構成が開示されているかのように判断
するが、同項の当該記載は具体的な認証処理の方法や手段を開示する
ものではない。
b 指紋認識による使用者識別機能が非活性状態から活性状態に切り替
えるための操作入力に応じて行われる点についても、甲3文献には、
開示されていない。
5 この点、本件審決は、一般にスマートフォンを「起動する時」には
スリープ状態からスリープ解除状態に移行する時も含まれるなどと認
定している。しかし、甲3文献には、移動通信端末を「起動する」こ
とが何を意味するのかについて、具体的な記載はない。一般的な用語
における「起動」とは、「コンピューターなどの機器の電源を入れて、
10 操作できる状態にすること」を意味するものであり(甲42)、相違
点1に係る本件発明1の構成が規定する、非活性状態(移動通信端末
機が通信可能な状態ではあるが、ディスプレイ画面がオフの状態)か
ら、活性状態(移動通信端末機のディスプレイ画面がオンの状態)に
切り替える操作とは異なるものである。
15 (イ) 公然実施発明を改変して本件発明1に想到する動機付けがないこ
とについて
公然実施発明では、使用者識別機能の実行は、ディスプレイが活性化
された後、更にディスプレイ上のスライダをドラッグする操作が行われ
た場合に、パスコードを入力することによって初めて行われるものであ
20 る。そこにおいては、上記相違点1に係る本件発明1のように、使用者
識別機能を、使用者の操作(非活性状態の際になされた活性化ボタンに
対する使用者の操作)以外の追加の操作をすることなく、実行するとい
う技術思想は全くない。
また、公然実施発明において、ディスプレイがオンにされた後に、更
25 にディスプレイ上のスライダをドラッグすることで初めて認証を実行す
ることには、ユーザの誤操作(意図せざる操作等)による誤動作を防止
するという意義があることは前記ア(イ)aのとおりである。これをあえ
て改変して、本件発明1のように構成しようとすることは、公然実施発
明の技術的意義・機能を損なうものといえ、当業者がそのような改変を
試みるよう動機付けられることはない。
5 (ウ) 公然実施発明に甲3発明1を適用したとしても、本件発明1の構成
に容易に想到しないことについて
a 甲3文献の【0045】や図6の画面においても、ロックを解除す
るために画面上のスライダのドラッグ操作を受け付ける構成となって
いる。したがって、公然実施発明に甲3発明1を組み合わせた場合に
10 は、当業者は、公然実施発明と甲3発明1の共通の技術思想をなす上
記構成を残しつつ甲3発明1の指紋認証を行うことを想到するもので
ある(別紙3の1図)。そうすると、上記の組み合わせによって得ら
れる構成は、ディスプレイが活性化された後にスライダのドラッグと
いう追加の操作がなされて初めて、使用者識別機能が行われるもので
15 あり、これは、使用者による追加の操作なしに指紋認識による使用者
識別機能を行う本件発明1の構成とは異なる。
b 仮に、公然実施発明の使用者識別機能に係る手順のうち前記aのス
ライダのドラッグ操作を排除することができたと仮定しても、ロック
状態の画面の表示だけは残す、という組み合わせを想到することはあ
20 り得ない。なぜなら、公然実施発明の構成においては、ロック状態の
画面を表示させ、その画面上に表示されるスライダがドラッグされた
ときに初めて、次のパスコードの入力画面に移行し、パスコードを入
力させて認証を行う、という一連の認証操作を行わせるものであるか
ら、認証に先立って表示されるロック画面は、認証画面に移行する前
25 のスライダのドラッグを受け付けるための技術的意義を有するもので
あり、ロック画面のみが単体で意義を持つものではないからである。
さらに、公然実施発明における上記のような一連の認証操作におい
て、スライダのドラッグ操作は、認証処理の開始のためにユーザの意
図した入力を受け付けるインターフェースを提供するという意義・機
能をも有するものである。そして、甲3文献においても、その図6に
5 示されるように、ロック状態の画面について開示された構成は、ロッ
ク状態の画面上でスライダのドラッグを受け付けて認証を開始すると
いう構成のみである。したがって、仮に公然実施発明に甲3発明1を
組み合わせることができたとして、更に公然実施発明のスライダのド
ラッグ操作を排除する場合においては、公然実施発明のホームボタン
10 の押下というユーザの操作が既に行われた上で認証が開始されている
のであるから、更に重ねて認証を開始するためのユーザの意図した入
力を受け付ける必要はなく、公然実施発明のロック状態の画面がその
意義・機能を発揮する場面は想定され得ないことになり、当業者とし
ては、スライダのドラッグを受け付けるためのロック画面も用いない
15 構成(別紙3の2図)しか容易には想到できないものである。これは、
本件発明1の構成(「前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタ
ンに対する使用者の操作に基づいて前記非活性状態から前記ロック画
面が表示された前記活性状態に切り替え」)とは異なる。
c 甲3発明1における「シームレス」な認証が、使用者の追加操作な
20 しに使用者識別機能を行うものだと解し得たとしても、公然実施発明
のロック画面はパスコードの入力における意図せぬ誤操作を防止する
意義・機能及び認証手続きのためのユーザの意図した入力を受け付け
るインターフェースを提供し、このようなユーザの意図した入力を保
証する意義・機能を有するものであるから、甲3発明1の「シームレ
25 ス」に使用者識別機能を行う構成とは両立しない。
d 被告は、後記⑵イ(ウ)bのとおり、公然実施発明に甲3発明1を組
み合わせることで、公然実施発明のホームボタンの背後にセンサを設
け、ホームボタンを押下すると、ロック画面が表示されるとともに、
指紋認証を行うという構成を得ることができ(別紙4のA図)、この
構成において、指紋認証に成功した場合には、認証成功後に直ちにホ
5 ーム画面に遷移する構成(別紙4のB図1)及び認証成功後にスライ
ダのドラッグ操作を経て、ホーム画面に遷移する構成(別紙4のB図
2)を得ることができる旨主張する。
しかし、被告が主張する認証成功後の構成である別紙4のB図1左
にはスライダが表示されているところ、指紋認証に成功した場合に「当
10 該成功後に直ちにホーム画面に遷移する構成」であるとされる以上、
スライダをドラッグすることによって次の画面に遷移するという、ス
ライダの機能は利用されない。公然実施発明や甲3発明1において、
そのように「利用されないスライダを表示する」という技術思想は何
ら開示されておらず、当業者がそのように何ら機能を発揮しないスラ
15 イダをあえて表示させる構成に容易に想到し得たとはいえない。それ
を考え付くとすれば、本件発明1を見た上での後知恵である。
また、別紙4のB図2のような、「認証の成功後に、更にスライダ
のドラッグ操作を経て、ホーム画面に遷移する」という構成は、公然
実施発明にも、甲3文献にも何ら開示がない。
20 ウ 小括
以上によれば、本件発明1についての容易想到性に関する本件審決の判
断には誤りがある。
⑵ 被告の主張
ア 相違点の認定に誤りがあるとの主張について
25 原告は、前記⑴アのとおり、相違点1に係る本件発明1の構成は、「前
記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に
基づいて前記非活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態
に切り替えるとともに」「前記使用者の操作以外の追加の操作をすること
なく」との技術要素を含む形で認定されるべきである旨主張する。
原告の上記主張が、本件発明1の(使用者識別機能を含む)「第1動作」
5 が、「・・・切り替えるとともに」実行するものである点を強調する趣旨
であるとしても、その点は、本件審決の相違点において、「公然実施発明
では、・・・「第1動作を」「前記使用者の操作以外の追加の操作をする
ことなく、実行する」ものではない点」との部分において、実質的に取り
込まれていることから、原告の主張は無意味な主張である。
10 イ 相違点の容易想到性の判断に誤りがあるとの主張について
(ア) 甲3文献が、原告主張の相違点1に係る本件発明1の構成を開示し
ないとすることについて
a 原告は、前記⑴イ(ア)a のとおり、甲3文献には、検出された指紋
を記録された指紋と照合して適合・不適合を判定する処理についてま
15 で、ユーザからの明示的な入力を要求することなく行われることは開
示されていない旨主張する。
しかし、甲3文献の請求項15には、ユーザによってホームボタン
が押下された時に(ユーザからの入力を受信した時に)、当該ユーザ
の識別特徴を検出し、当該識別特徴に基づいて、当該ユーザを認証す
20 る電子デバイス、つまり、ユーザをシームレスに認証する電子デバイ
スが開示され、当該検出及び認証は、ホームボタンの押下により、ユ
ーザからの明示的な入力を要求することなく、行われている。
b 原告は、前記⑴イ(ア)bのとおり、本件発明1における非活性状態
から活性状態に切り替える操作は、甲3文献のいう「起動」には含ま
25 れない旨主張する。
しかし、甲3文献の【0003】は、「デバイスをオンにする」、
「(デバイスを)ロック解除する」及び「(デバイスを)起動する」
を並列的に記載していることから、当業者は、
「デバイスを起動する」
は、「デバイスをオンにする」及び「デバイスをロック解除する」と
は異なる意味を含むものであると理解する。そして、スリープ状態に
5 あるスマートフォンをスリープ解除状態に移行する意味で、「起動す
る」という用語を用いている例は、多数存在する(乙5の1ないし1
0)。
(イ) 動機付けについて
原告は、前記⑴イ(イ)のとおり、公然実施発明の技術思想は本件発明
10 1とは大きく異なり、公然実施発明を改変して本件発明1に想到する動
機付けがない旨主張する。
しかし、公然実施発明と甲3発明1に基づく本件発明1の容易想到性
は、公然実施発明と甲3発明1を組み合わせることができるかの問題で
あって、当該容易想到性をいうために、本件発明1の技術思想と公然実
15 施発明の技術思想が共通である必要はない。
(ウ) 公然実施発明に甲3発明1を適用したとしても、本件発明1の構成
に容易に想到しないとする主張について
a 原告主張の第1の構成
原告が前記⑴イ(ウ)a で甲3発明1と主張するのは、ディスプレイ
20 内にセンサを設け、スライダのドラッグをすることで指紋認証を行う
構成であるのに対し、本件審決が公然実施発明に組み合わせる構成と
して認定している構成(甲3発明1)は、ホームボタンの背後にセン
サを配置し、ユーザが当該ホームボタンを押下した時に、ユーザから
の明示的な入力を要求することなく、指紋による認証を行う構成で、
25 これについても甲3文献に開示されたものであり、原告の主張は前提
を誤るものである。
b 原告は、前記⑴イ(ウ)bのとおり、公然実施発明に甲3発明1を組
み合わせた場合に、公然実施発明のロック画面上でのスライダのドラ
ッグ操作を排除しておきながら、ロック画面の表示だけは残す、とい
う組み合わせを想到することはあり得ない旨主張する。
5 仮に、「スライダのドラッグ操作を排除」したとしても、当該排除
によって「ロック画面の表示」を残してはならないということにはな
らない。公然実施発明における「ロック画面の表示」には、原告が主
張する誤操作防止の技術的意義・機能以外にも、例えば、ホーム画面
に入らないで日時や電波状態、電池残量を確認することができるとい
10 った技術的意義・機能がある。
また、公然実施発明においては、パスコード認証の設定がされない
場合があり、その場合でも、ホームボタンの押下により、スリープ状
態からスリープ解除状態に切り替わった時に、ロック画面は表示され、
スライダのドラッグ操作により、ホーム画面に遷移する。そうすると、
15 公然実施発明に甲3発明1を組み合わせることで、公然実施発明のホ
ームボタンの背後にセンサを設け、ホームボタンを押下すると、ロッ
ク画面が表示されるとともに、指紋認証を行うという構成を得ること
ができる(別紙4のA図)。そして、この構成において、指紋認証に
成功した場合には、認証成功後に直ちにホーム画面に遷移する構成(別
20 紙4のB図1)及び認証成功後にスライダのドラッグ操作を経て、ホ
ーム画面に遷移する構成(別紙4のB図2)を得ることができる。
c 原告は、前記⑴イ(ウ)cのとおり、公然実施発明のロック画面はパ
スコードの入力における意図せぬ誤操作を防止する意義・機能がある
とした上で、公然実施発明のロック画面の表示と、甲3発明1の「シ
25 ームレス」に使用者識別機能を行う構成とは両立しない旨主張する。
しかし、公然実施発明への甲3発明1の組み合わせは、原告が主張
する公然実施発明のロック画面の技術的意義・機能(パスコード認証
における誤操作の防止)を損なうものではない。
ウ 小括
以上のとおりであって、本件発明1についての容易想到性に関する本件
5 審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2(本件発明2ないし4の進歩性の判断の誤り)
⑴ 原告の主張
本件発明2ないし4は、本件発明1の構成を含むものであるところ、前記
1⑴で論じたとおり、本件発明1の容易想到性に関する審決の判断には誤り
10 があるから、同様の点において、本件発明2ないし4の容易想到性に関する
審決の判断にも誤りがある。
⑵ 被告の主張
前記1⑵のとおり、本件発明1についての容易想到性に関する審決の判断
には誤りはないから、本件発明2ないし4の容易想到性に関する審決の判断
15 にも誤りはない。
3 取消事由3(本件発明6の進歩性の判断の誤り)
⑴ 原告の主張
ア 本件発明6は、本件発明1の構成を含むものであるところ、前記1⑴で
論じたとおり、本件発明1の容易想到性に関する審決の判断には誤りがあ
20 るから、同様の点において、本件発明6のうち、本件発明1と共通する構
成についての容易想到性に関する審決の判断にも誤りがある。
イ 本件発明6は、「前記非活性状態の際になされた前記活性化ボタンに対
する使用者の操作に基づいて」、「前記使用者の操作以外の追加の操作を
することなく」「顔認識を利用した機能である使用者識別機能」を実行す
25 る点においても公然実施発明と相違するところ、甲3文献には、顔の特徴
を検出するのは、「ユーザの顔がセンサと向かい合うように配置された時」
(【0056】)との記載しかなく、検出した顔の特徴を用いた使用者識
別機能を実行するタイミング(本件発明6のように、非活性状態の際にな
された前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて、追加の操作な
しに、顔認識による使用者識別機能を実行すること)については、何ら開
5 示されていない。
したがって、甲3発明2を、どのように公然実施発明に組み合わせたと
しても、本件発明6に容易に想到することはない。
ウ 小括
以上によれば、本件発明6についての容易想到性に関する本件審決の判
10 断には誤りがある。
⑵ 被告の主張
ア 前記1⑵のとおり、本件発明1についての容易想到性についての審決の
判断には誤りはないから、本件発明6のうち、本件発明1と共通する構成
についての容易想到性に関する審決の判断にも誤りはない。
15 イ 甲3文献の請求項15、17及び18を併せ読むと、ユーザをシームレ
スに認証するための電子デバイスであって、ホームボタンがユーザからの
入力を受信する時、すなわち、ユーザがホームボタンを押下する時に、ユ
ーザの顔の特徴を検出するカメラにより検出された顔の特徴に基づいて、
ユーザを認証するプロセッサを備えた電子デバイスが開示されている。
20 さらに、甲3文献の【要約】【解決手段】に「センサは、生体情報を提
供するためのステップを実行するようユーザに要求することなく、ユーザ
がデバイスを操作した時に、センサが適切な生体情報を検出できるように、
デバイスに配置されてよい」と記載されているように、甲3文献には、顔
を検出するセンサがデバイスに備えられており、ユーザがデバイスを操作
25 した時に、顔情報を提供するための追加の操作を実行するようユーザに要
求することなく、センサが顔情報を検出できる構成が開示されている。
そして、【0004】に「電子デバイスは、検出した識別情報を、デバ
イスのライブラリに格納されている識別情報と比較することによって、ユ
ーザを認証してよい。」と記載されているように、センサが検出した顔情
報をデバイスのライブラリに格納されている顔情報と比較することによ
5 って、ユーザを認証するプロセスである顔認識による使用者識別機能が行
われる構成が開示されている。
以上のとおり、甲3文献の記載に触れた当業者は、甲3文献に開示され
た顔認識による使用者識別機能が、ユーザがホームボタンを押下したこと
を受信した時に、ユーザによる追加操作なしに行われるものと理解するこ
10 とができる。
ウ 小括
以上のとおりであって、本件発明6についての容易想到性に関する本件
審決の判断に誤りはない。
4 取消事由4(本件発明5の進歩性の判断の誤り)
15 ⑴ 原告の主張
本件発明5は、本件発明1の構成を含むものであるところ、公然実施発明
2と本件発明5の相違点は、公然実施発明と本件発明1の相違点と同様のも
のであり、前記1⑴で論じたとおり、本件発明1の容易想到性に関する審決
の判断には誤りがあるから、同様の点において、本件発明5の容易想到性に
20 関する審決の判断にも誤りがある。
⑵ 被告の主張
前記1⑵のとおり、本件発明1についての容易想到性に関する審決の判断
には誤りはないから、本件発明5の容易想到性に関する審決の判断にも誤り
はない。
25 第4 当裁判所の判断
1 明細書の記載事項について
⑴ 本件各発明の明細書(甲50。以下「本件明細書」という。)の発明の詳
細な説明には、別紙1の記載がある。
⑵ 前記⑴の記載事項によれば、本件明細書には、本件発明に関し、次のよう
な開示があることが認められる。
5 ア 本件各発明は、移動通信端末機の活性化時に、特定動作が行われるよう
にするための移動通信端末機に関する(【0001】)。
イ 最近、スマートフォン等、通信機能だけでなく、他の多様な機能を有す
る各種端末機が普及しているが、該当機能を実行させるためには端末機が
活性化状態、すなわち、ディスプレイがオンの状態で常に操作を行わなけ
10 ればならず、ある機能を追加するためには端末機に該当機能を実行するた
めのインターフェースまたはボタンを更に追加しなければならなかった。
また、これらの端末機には、ディスプレイがオフの状態の非活性化状態か
ら活性化状態に切り替えるボタンが備えられているのが一般的であり、使
用者は活性化切り替えボタンを意識的または無意識的に数回押す動作を
15 行うことになるが、通常的な端末機では、活性化切り替えボタンが押され
た際、使用者が設定した背景画面に、現在時間などの非常に簡単な情報だ
けが表示されるのが一般的であり、使用者は端末機の活性化ボタンを押し
た場合、いかなる情報及び興味も得ることができずに、端末機は再び非活
性化状態に切り替わることとなるという問題があった(【0002】、【0
20 003】、【0005】)。
ウ 本件各発明は、端末機に備えられた活性化ボタンに多様な動作を組み合
わせ、習慣的に押していた活性化ボタンを、単純に押す操作だけで有益な
機能を活用することとし、簡単な手続だけで保安が強化された使用者認証
プロセスを動作させることを目的とする(【0006】、【0008】)。
25 エ 本件各発明の構成を採ることにより、端末機が非活性状態の際に、活性
化ボタンを押すだけで、多様な動作が行われるので、端末機使用の興味を
更に向上させることができ、また、簡単に保安が強化された使用者認証プ
ロセスを動作することができるという効果を奏する(【0014】、【0
016】)。
2 取消事由1(本件発明1の進歩性の判断の誤り)について
5 ⑴ 公然実施発明について
証拠(甲6ないし9、17)によれば、被告は、本件特許の優先日前にお
いて、iOS4.2又はiOS4.3を搭載したスマートフォンを販売して
いたものであるところ、同スマートフォンに係る発明は、日本国内において
公然実施をされた発明(特許法29条1項2号)に当たり、その構成は、本
10 件審決が公然実施発明として認定したとおりのものであると認められる。
⑵ 相違点1の認定に誤りがあるとの主張について
ア 本件発明1の構成及び前記⑴認定の公然実施発明の構成によれば、本件
発明1と公然実施発明は、公然実施発明が、使用者の操作が第1の操作で
ある場合、「第2動作」である「カメラ活性化機能、健康情報伝送機能、
15 使用者識別機能、位置情報伝送機能、ハンズフリー機能、または広告表示
機能のいずれか」と異なる動作である「第1動作を」「前記使用者の操作
以外の追加の操作をすることなく、実行する」ものではない点において異
なるものであり、本件審決の相違点1の認定に誤りはない。
イ(ア) 原告は、前記第3の1ア(イ)a のとおり、公然実施発明のロック画面
20 は使用者識別機能を行うに先立ち、同機能を行うのに必要となるスライ
ダのドラッグの操作を受け付けるという特徴があるのに対し、本件発明
1ではそのような操作なしに使用者識別機能が行われる旨主張し、これ
は、本件発明1と公然実施発明とでは、ロック画面の技術的意義を異に
するという趣旨と解される。しかし、本件発明1のロック画面について
25 は、ロックが解除されていない状態を表示する機能以外の特定がなく、
この機能において、公然実施発明のロック画面は本件発明1のロック画
面と共通するから、原告が相違点である旨主張する「前記非活性状態の
際になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前記非
活性状態から前記ロック画面が表示された前記活性状態に切り替えると
ともに」に係る部分は、一致点というべきである。
5 (イ) 原告は、前記第3の1⑴ア(イ)bのとおり、本件発明1では、第1
操作(あるいは第2操作)が使用者識別機能である場合においては、単
なる使用者識別機能でなく、「前記非活性状態の際になされた前記活性
化ボタンに対する使用者の操作に基づいて前記非活性状態から前記ロッ
ク画面が表示された前記活性状態に切り替えるとともに、・・・前記使
10 用者の操作以外の追加の操作をすることなく」実行される「使用者識別
機能」であるとして、本件審決の相違点1の認定が誤りである旨主張す
る。
しかし、本件審決においても、公然実施発明では、「第1動作を」「前
記使用者の操作以外の追加の操作をすることなく、実行する」ものでは
15 ない点が相違点として認定されているから、本件審決に誤りがあるとは
いえず、原告の主張は採用できない。
⑶ 相違点の判断に誤りがあるとの主張について
以下、本件審決認定の相違点1を基準として判断する。
ア 甲3発明1について
20 (ア) 甲3文献には、別紙2の記載がある。
(イ) (ア)によれば、甲3文献には、以下の開示があることが認められる。
a 電子デバイス、特に携帯型電子デバイスにおいて、許可されていな
い人物がユーザの個人情報にアクセスし閲覧することを防ぐため、パ
スワードまたはパスコードを提供する方法、付属デバイスをデバイス
25 に接続することによって、承認された指紋または網膜を最初に示す方
法があるが、前者は、パスワードまたはパスコードを知っている他の
ユーザがいない限りは、効果的であるが、パスワードまたはパスコー
ドを忘れると許可ユーザがデバイスにアクセスできなくなり、後者は、
ユーザがデバイスにアクセスできるまでに求めるステップを増やすた
め時間がかかり、ユーザにとって煩わしい場合があるという課題があ
5 った(【0002】、【0003】)。
b そこで、甲3発明1は、携帯電話のホームボタン812の背後に、
ユーザの指紋の特徴を検出する少なくとも1つのセンサ720を配置
し、ロック解除する、または、起動する時に指紋によるユーザ認証を
行う使用者識別機能を採用した(【0003】、【0049】、【0
10 050】)。
イ 甲3文献が、相違点1に係る本件発明1の構成を開示するかについて
(ア) 指紋認識による使用者識別機能が、非活性状態から活性状態に切り
替えるための操作入力に応じて、ユーザからの明示的な入力を要求する
ことなく行われる点について
15 a 甲3発明1は、指紋による認証を行う上で「ユーザがデバイスにア
クセスできるまでに求めるステップを増やすため、時間がかかり、ユ
ーザにとって煩わしい場合があ」ることを課題とするものであり 【0
(
003】)、この点からすれば、ホームボタンへの操作入力が、指紋
の特徴を検出するための使用者識別機能を兼ねることは当然に想定さ
20 れ、その場合には、ホームボタンの背後に配置されたセンサにより検
出した指紋を、検出した指紋を登録された指紋と照合して適合・不適
合を判定する処理を使用者による追加操作なしで行うことになる。
原告は、前記第3の1⑴イ(ア)a のとおり、甲3文献には、検出し
た指紋を登録された指紋と照合して適合 不適合を判定する処理を
・ 「ユ
25 ーザからの明示的な入力を要求することなく」行うことについては、
開示されていない旨主張するが、上記に説示したところに加え、甲3
文献の請求項1の「前記入力メカニズムに隣接したセンサを用いて、
前記入力を受信する時に前記ユーザの識別情報を検出する工程と、前
記検出した情報に基づいて前記ユーザを認証する工程」との記載と、
請求項7の「請求項1に記載の方法であって、前記識別情報は、指紋、
5 掌紋、・・・の内の少なくとも1つを含む、方法。」との記載を併せ
読めば、ホームボタンの操作入力による指紋を検出する工程と認証工
程との間に操作は不要であるから、甲3文献には、ホームボタンへの
操作入力以外の追加の操作なしで、ユーザが認証されることが開示さ
れているということができる。
10 b 原告は、前記第3の1⑴イ(ア)bのとおり、甲3文献のいう「起動」
には、本件発明1が規定する、非活性状態から活性状態に切り替える
操作は含まれないから、指紋認識による使用者識別機能が、非活性状
態から活性状態に切り替えるための操作入力に応じて行われる点につ
いても、甲3文献には開示されていない旨主張する。
15 しかし、一般的に「起動する」の意味としては、「コンピューター
などの機器の電源を入れて、操作できる状態にすること」と解されて
いる(甲42)ものの、甲3文献は、「例えば、ユーザがデバイスを
オンにする、ロック解除する、または、起動する時に、」として、デ
バイスをオンにすること、デバイスをロック解除すること、デバイス
20 を起動することを並列して記載している。そして、この記載に対応す
る原文(甲11)には、「for example as the us
er turns on, unlocks or wakes the d
evice.」との記載があり([0004])、「turns on」と
「wakes」とが別に例示されているところ、wakeがslee
25 pの対義語であることに鑑みると、甲3文献における「起動する(w
akes)」がスリープ状態であったものを操作できる状態にするこ
とを意味することは明らかであり、甲3文献の「(デバイスを)起動
する」との記載は、本件発明1の「非活性状態」から「活性状態」へ
の切り替えを意味するものである。
また、公然実施発明に係る、iPhoneユーザガイド(甲1)の
5 12頁「iPhoneのロックを解除する」の「ホームボタン、また
はスリープ/スリープ解除のオン/オフボタンを押して、スライダを
ドラッグします。 との記載や、
」 iPhoneパーフェクトガイド(甲
2)の22頁「スリープとロックの解除」の「スリープ時に電源ボタ
ンかホームボタンを押すと、スリープから復帰してロックを解除でき
10 るようなる」との記載によれば、甲3文献の図8Bに示される一般的
なスマートフォンである「携帯電話のホームボタン(図8Bのボタン
812)」も、スリープ時の操作入力によりスリープ状態を解除する
機能を有することは明らかである。そして、甲3文献には、スリープ
時のホームボタンに対する操作入力に基づく指紋によるユーザ認証を
15 排除する記載はない。
以上によれば、原告の主張はいずれも採用できない。
(イ) まとめ
よって、甲3文献は、相違点1に係る本件発明1の構成を開示するも
のといえる。
20 ウ 動機付けについて
(ア) 公然実施発明と甲3発明1は、技術分野や作用機能を共通にし、甲
3文献に接した当業者であれば、公然実施発明には、スリープ状態にお
いてホームボタンを押してから認証を経てデバイスにアクセスできるま
での一連の動作に関して、デバイスのホームスクリーン又はメニューを
25 表示する前に、本人認証のためにパスコードの入力を要求することは、
パスコードが知られたり、パスワードを忘れたりするという、甲3発明
1と共通の技術課題が存在することを想起するものといえ、公然実施発
明において、許可されていない人物がユーザの個人情報にアクセスし、
閲覧することを防ぐため、デバイス機能を有効にする前又はデバイスリ
ソースにアクセスする前の起動時に、デバイスが迅速にユーザを認証す
5 ることを目的とした甲3発明1を適用する動機付けがあるといえる。
(イ) 原告は、前記第3の1⑴イ(イ)のとおり、公然実施発明では、本件
発明1のように、使用者識別機能を、使用者の操作以外の追加の操作を
することなく、実行するという技術思想は全くない旨主張するが、前記
(ア)のとおり、甲3発明1に接した当業者であれば、公然実施発明が有
10 する技術課題及び甲3発明1の適用を想起するものといえ、原告の主張
する当初の技術思想の相違は、その後の技術適用の動機付けの有無と直
接関係するものとはいえないから、原告の上記主張は当を得ないという
べきである。
また、原告は、公然実施発明において、ディスプレイがオンにされた
15 後に、更にディスプレイ上のスライダをドラッグすることで初めて認証
を実行することには、ユーザの誤操作(意図せざる操作等)による誤動
作を防止するという意義があるから、これを改変して本件発明1のよう
に構成することは、公然実施発明の技術的意義・機能を損なう旨の主張
もするが、甲3発明1の使用者識別機能を採用し、指紋によるユーザ認
20 証をしても、認証に係る誤操作は防止できるから、公然実施発明の技術
的意義・機能を損なうことにはならない。なお、仮に、原告がホーム画
面の誤作動防止に係る機能をも指摘しているとしても、そもそも本件発
明1においては、ロック画面からホーム画面への移行の仕方については
何ら規定していないから、操作入力を行った使用者が正当な使用者と認
25 証された場合に、ディスプレイ上のスライダをドラッグすることで初め
てホーム画面に移行する構成も本件発明1の構成に含まれることにな
り(現に本件明細書の図1等においてもスライダが表示されているとこ
ろである。)、スライダを取り除く改変をしなければ本件発明 1 の構成
に至らないわけではないから、原告の主張は前提を誤るものといえる。
したがって、原告の主張は、いずれにしても採用できない。
5 エ 公然実施発明に甲3発明1を適用した場合に、本件発明1の構成に容易
に想到するかについて
(ア) 甲3発明1において、指紋による認証の結果を得るには一定の時間
を要することは、明らかである。また、公然実施発明に甲3発明1を適
用することで、ホームボタンを押下すると、起動によりディスプレイが
10 オンになり、それと同時に指紋認証を行い(別紙4のA図右及びB図1
左)、認証が成功すれば、追加の操作を要することなく、更にホーム画面
に移行するという構成を得ることが可能である(別紙4のB図1右)。
そして、本件発明1で特定されるロック画面は、
「前記非活性状態の際
になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて」 表示さ
「
15 れ」るものであって、ロックが解除されていない状態を表示する機能以
外は特定されていない。そうすると、公然実施発明に甲3発明1を適用
したものにおいて、ホームボタンの押下後、オンになったディスプレイ
にホーム画面に移行する前に表示される画面も、客観的にロックが解除
されていない状態を表示するものであり、これを「ロック画面」という
20 ことができる。
したがって、公然実施発明に甲3発明1を適用した場合、使用者によ
る追加の操作なしに、指紋認識による使用者識別機能が、非活性状態か
らロック画面が表示された活性状態への切り替えのための操作入力によ
り行われるという、本件発明1の構成に容易に想到するということがで
25 きる。
(イ) 原告は、前記第3の1⑴イ(ウ)aのとおり、甲3発明1においても、
ロックを解除するために画面上のスライダのドラッグ操作を受け付け
る構成となっているから、公然実施発明に甲3発明1を組み合わせた場
合には、当業者は、公然実施発明と甲3発明1の共通の技術思想をなす
上記構成を残しつつ甲3発明1の指紋認証を行うことを想到すること
5 になり、ディスプレイが活性化された後にスライダのドラッグという追
加の操作を要することになるから、本件発明1の構成とはならない旨主
張する。
しかし、前記イ(ア)aのとおり、甲3文献からは、ホームボタンの背
後にセンサを配置し、ユーザが当該ホームボタンを押下した時に、ユー
10 ザからの明示的な入力を要求することなく、指紋による認証を行う構成
も、甲3発明1として認定することができるのであるから、原告の主張
は採用できない。
(ウ) 原告は、前記第3の1⑴イ(ウ)bのとおり、公然実施発明の構成に
おいては、ロック状態の画面を表示させ、その画面上に表示されるスラ
15 イダがドラッグされたときに初めて、次のパスコードの入力画面に移行
し、パスコードを入力させて認証を行う、という一連の認証操作を行わ
せるものであるから、公然実施発明の使用者識別機能に係る手順のうち
ロック状態の画面上でのスライダをドラッグする処理を排除 するので
あれば、ロック画面も用いない構成しか想到できない旨主張する。
20 しかし、前記(ア)のとおり、「ロック画面」自体は、ロックが解除さ
れていない状態を示す画面であり、スライダのドラッグ操作とロック画
面の表示を不可分一体のものとして捉えなければならない理由はない
から、原告の主張は採用できない。
(エ) 原告は、前記第3の1⑴イ(ウ)cのとおり、公然実施発明のロック
25 画面は、パスコードの入力における意図せぬ誤操作を防止する意義・機
能があるとした上で、甲3発明1の「シームレス」に使用者識別機能を
行う構成とは両立しない旨主張する。しかし、公然実施発明において、
甲3発明1の使用者識別機能を採用し、ロック解除する時に指紋による
ユーザ認証をしても、偶発的な誤操作等は防止できることは前記ウ(イ)
のとおりであって、原告の主張は採用できない。
5 (オ) 原告は、前記第3の1⑴イ(ウ)dのとおり、別紙4のB図1左には
スライダが表示されているところ、指紋認証に成功した場合に「当該成
功後に直ちにホーム画面に遷移する構成」であるとされる以上、スライ
ダの機能は利用されず、当業者がそのように何ら機能を発揮しないスラ
イダをあえて表示させる構成を考え付くとすれば、本件発明1を見た上
10 での後知恵である旨主張する。
原告の主張の真意は判然としないが、そもそも本件発明1においては、
ロック画面からホーム画面への移行の仕方については何ら規定してい
ない(したがって、この場面におけるスライダの表示の有無やその利用
の有無等についても何も限定はない)ことは前記ウ(イ)において説示し
15 たとおりであるところ、被告の主張如何にかかわらず、公然実施発明に
甲3発明1を組み合わせた場合に、正当な使用者と認証されたときに、
スライダを利用しようとしなかろうと、どちらにしてもロック画面から
ホーム画面へ移行させることが可能であること自体は明らかであるか
ら、原告の主張は失当というほかない。
20 ⑷ 小括
その他原告がるる主張する点は、いずれもその前提に誤りがある、あるい
は理由がないものであり、採用できない。
以上によれば、相違点1についての容易想到性を認めた本件審決の判断に
誤りはないから、原告主張の取消事由1は理由がない。
25 3 取消事由2(本件発明2ないし4の進歩性の判断の誤り)について
前記2において判示したとおり、相違点1についての容易想到性に関する本
件審決の判断には誤りはないところ、原告は、この点以外の点について審決取
消事由を主張しておらず、また、その判断に誤りがあるとは認められないから、
本件発明2ないし4についての容易想到性に関する本件審決の判断について
も誤りはない。
5 4 取消事由3(本件発明6の進歩性の誤り)について
⑴ 本件発明6と公然実施発明の相違点について
本件発明6の構成及び前記2⑴認定の公然実施発明の構成によれば、本件
発明6と公然実施発明は、相違点4(相違点1と同じ。)のほか、使用者識
別機能について、本件発明6では、「顔認識を利用した機能」であるのに対
10 し、公然実施発明では、「パスコードを入力することによる」機能である点
(相違点5)において異なるものといえる。
⑵ 相違点の容易想到性の判断に誤りがあるとの主張について
ア 甲3発明2について
甲3文献には別紙2のような記載があり、これによれば、甲3文献には、
15 以下の開示があることが認められる。
(ア) 電子デバイス、特に携帯型電子デバイスにおいて、許可されていな
い人物がユーザの個人情報にアクセスし閲覧することを防ぐため、デバ
イス機能を有効にする前、または、デバイスリソースにアクセスする前
に、パスワード又はパスコードを提供する方法、具体的には、デバイス
20 のホームスクリーン(例えば、スプリングボード)またはメニューを表
示する前に、4つの数字または4つの文字のPINを入力する方法があ
り、他方、付属デバイスをデバイスに接続することによって、承認され
た指紋又は網膜を最初に示す方法があるが、前者は、パスワードまたは
パスコードを知っている他のユーザがいない限りは、効果的であるが、
25 パスワードまたはパスコードを忘れると許可ユーザがデバイスにアク
セスできなくなり、後者は、ユーザがデバイスにアクセスできるまでに
求めるステップを増やすため時間がかかり、ユーザにとって煩わしい場
合があるという課題があり、ユーザがデバイスをオンにする、ロック解
除する、または、起動する時に、デバイスが迅速かつシームレスにユー
ザを認証するように、生体認証および他の認証メカニズムを実装した電
5 子デバイスを提供することが望ましい(【0002】、【0003】)。
(イ) 甲3発明2は、ユーザ識別機能として、デバイスの検知素子に対し
て位置合わせするようユーザに案内することなく、前記ユーザが前記検
知素子に対して位置合わせされていることを決定する工程と、前記決定
工程に応答して、前記検知素子を用いて前記ユーザの顔の特徴を検出す
10 る工程と、前記検出工程に応答して、前記ユーザを認証する工程とによ
り行う顔認証を使用する(請求項11、13、【0056】)。
イ 容易想到性の判断について
(ア) 相違点4(相違点1と同じ。)について
前記2において判示したとおり、相違点1についての容易想到性に関
15 する本件審決の判断には誤りはなく、相違点4の容易想到性に関する本
件審決の判断にも誤りはない。
(イ) 相違点5について
a 甲3文献には「例えば、認証システムは、ユーザの顔がセンサと向
かい合うように配置された時に、ユーザの顔の1または複数の顕著な
20 特徴によって放射または反射される放射線を検出するセンサを備えて
よい。」(【0056】)と記載されているところ、前記ア(ア)のと
おり、同文献には、「ユーザがデバイスをオンにする、ロック解除す
る、または、起動する時に、デバイスが迅速かつシームレスにユーザ
を認証するように、生体認証および他の認証メカニズムを実装した電
25 子デバイスを提供することが望ましい」との記載があることからすれ
ば、ユーザがホームボタンを押下してデバイスを起動する際、ユーザ
の顔がセンサと向かい合うように配置された時に、顔の特徴を用いた
使用者識別機能が作用することも開示されているものということがで
きる。
b 原告は、前記第3の3⑴イのとおり、甲3文献には、顔の特徴を検
5 出するのは、 ユーザの顔がセンサと向かい合うように配置された時」
「
(【0056】)との記載しかなく、検出した顔の特徴を用いた使用
者識別機能を実行するタイミングについては、何ら開示されていない
旨主張する。
しかし、甲3の【0003】の記載を併せて参照すれば、「起動す
10 る時」にデバイスが迅速かつシームレスにユーザを認証することが想
定されているというべきであるから、原告の主張は採用できない。
⑶ 小括
以上によれば、相違点4及び相違点5についての容易想到性を認めた本件
審決の判断に誤りはないから、原告主張の取消事由3は理由がない。
15 5 取消事由4(本件発明5の進歩性の判断の誤り)について
⑴ 公然実施発明2について
証拠(甲6ないし9、16、17)によれば、被告は、本件特許の優先日
前において、iOS4.2又はiOS4.3を搭載したスマートフォンを販
売していたものであるところ、同スマートフォンに係る発明は、日本国内に
20 おいて公然実施をされた発明(特許法29条1項2号)に当たり、その構成
は、本件審決が公然実施発明2として認定したとおりのものであると認めら
れる。
⑵ 容易想到性の判断について
本件審決が認定したとおり、相違点6は相違点1と同じであり、相違点7
25 は、使用者識別機能について,本件発明5では,「指紋認識を利用した機能」
であるのに対し,公然実施発明2では、
「パスコードを入力することによる」
機能である点である。
当業者がこのような相違点について容易に想到することができたことは、
相違点1の容易想到性について、前記2において説示したとおりである。
⑶ 小括
5 以上によれば、相違点6及び相違点7についての容易想到性を認めた本件
審決の判断に誤りはないから、原告主張の取消事由4は理由がない。
6 結論
以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも理由がないから、本件審決を
取り消すべき違法は認められない。
10 したがって、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
菅 野 雅 之
裁判官
本 吉 弘 行
裁判官
岡 山 忠 広
(別紙1)
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信端末機の活性化時に、特定動作が行われるようにするための
5 方法、システム及び移動通信端末機に関し、より詳細には、非活性化状態から活性
化状態に切り替えるボタンの押す回数及び時間に応じて多様な機能が実行されるよ
うにするための方法、システム及び移動通信端末機に関する。
【背景技術】
【0002】
10 最近、通信機能だけでなく、他の多様な機能を有する各種端末機、例えば、スマ
ートフォン、携帯電話、PDA、及びウェブパッドなどの端末機が多く普及されて
いる。このような端末機は、いつどこでもデスクトップパソコンと同一または類似
の環境を実現させるだけでなく電話機能も有していて、急速に普遍化される実情で
ある。
15 【0003】
このような端末機には、各種機能が含まれているが、現在は、該当機能を実行さ
せるためには端末機が活性化状態、すなわち、ディスプレイがオンの状態で常に操
作を行わなければならなかった。また、ある機能を追加するためには端末機に該当
機能を実行するためのインターフェースまたはボタンをさらに追加しなければなら
20 なかった。例えば、緊急状況に対処するための非常ボタンを別途に追加し、該当ボ
タンを押すことで、非常状況を知らせて救助信号を伝送することができた。
【0005】
具体的に、端末機には、ディスプレイがオフの状態の非活性化状態からディスプ
レイがオン状態の活性化状態に切り替えるボタンが備えられているのが一般的であ
25 るが、現在多くの使用者はこのような活性化切り替えボタンを意識的または無意識
的に数回押す動作を行う。通常的な端末機では、活性化切り替えボタンが押された
際、使用者が設定した背景画面に、現在時間などの非常に簡単な情報だけが表示さ
れるのが一般的であった。よって、使用者は端末機の活性化ボタンを押した場合、
いかなる情報及び興味も得ることができずに、端末機は再び非活性化状態に切り替
わることとなる。
5 【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、端末機に備えられた活性化ボタンに多様な動作を組み合わせ、
習慣的に押していた活性化ボタンを、単純に押す操作だけで有益な機能を活用する
10 ことにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、簡単な手続きだけで保安が強化された使用者認証プ
ロセスを動作させることにある。
【0011】
15 本発明の一実施形態によれば、ディスプレイ部と、前記ディスプレイ部がオフ状
態の非活性化状態から前記ディスプレイ部がオン状態の活性化状態に切り替える活
性化ボタンとを含み、前記活性化ボタンが押されることで、前記活性化状態に切り
替えるとともに、所定の動作が行われる移動通信端末機が提供される。
【0012】
20 本発明の他の実施形態によれば、移動通信端末機の活性化時に、特定動作が行わ
れるようにするための方法であって、ディスプレイ部がオフ状態の非活性化状態か
ら前記ディスプレイ部がオン状態の活性化状態に切り替える活性化ボタンが押され
ることを感知する段階と、前記非活性化状態において前記活性化ボタンが押された
ことが感知されると、前記活性化状態に切り替えるとともに前記移動通信端末機内
25 で所定の動作が行われるようにする段階とを含む方法が提供される。
【0014】
本発明によれば、端末機が非活性状態の際に、活性化ボタンを押すだけで多様な
動作が行われるので、端末機をより有益に活用することができ、端末機使用の興味
をさらに向上させることができる。
【0016】
5 本発明によれば、簡単な手続きだけで保安が強化された使用者認証プロセスを動
作することができる。
【0023】
本明細書において、「非活性状態」とは、移動通信端末機が通信可能な状態では
あるが、ディスプレイ画面がオフ(off)の状態を意味する。ディスプレイ画面
10 がオフの状態であっても、所定の機能(例えば、音楽再生機能など)は動作し得る。
このように、本明細書において「非活性状態」という用語は移動通信端末機が所定
の動作をしているか否かを問わず、ディスプレイ画面がオフの状態を包括する概念
である。しかし、移動通信端末機が完全にオフされた状態を除く。
【0024】
15 本明細書において、「活性状態」とは、移動通信端末機のディスプレイ画面がオ
ン(on)状態の場合を意味する。「非活性状態」から「活性状態」への転換とは、
ディスプレイ画面がオフの状態からディスプレイ画面をオン状態に切り替えること
を意味することであって、オン状態のディスプレイ画面にどのような情報が表示さ
れるかは問わない。例えば、単にロック画面だけが表示される場合であっても、こ
20 れは移動通信端末機の「活性状態」といえる。
【0029】
活性化ボタン120は移動通信端末機100の非活性状態を活性状態に切り替え
るようにする手段である。すなわち、移動通信端末機100が非活性状態の際に、
使用者が活性化ボタン120を押すと活性状態に切り替わる。図1は、移動通信端
25 末機100が非活性状態の際に、活性化ボタン120を押すことで、ディスプレイ
部110にロック画面が表示された状態を例示する。しかし、活性化ボタン120
は、これとは異なる動作のための手段(例えば、ディスプレイ部110にある動作
状態が表示される間に待機画面に移動するための手段、現在動作中のプログラムリ
ストを表示する手段)として機能することができる。
3.使用者識別機能
5 移動通信端末機100が非活性状態の際に活性化ボタン120を押すことで保安
のための使用者認証プロセスが進行される。
【0049】
図4A及び図4Bは、このような機能を説明するための移動通信端末機100の
ブロック図を示す。図4Aを参照すると、活性化感知部410、使用者識別部42
10 0を含むことができる。
【0050】
活性化感知部410は、移動通信端末機100が非活性状態の際に、活性化ボタ
ン120が使用者によって押されたか否かを感知する。
【0051】
15 使用者識別部420は活性化感知部410によって活性化ボタン120が押され
たものと感知した場合に動作を行い、多様な方法で使用者を識別する機能を実行す
る。
【0052】
図4Bは、使用者識別部420の一例を示すブロック図である。図4Bを参照す
20 ると、使用者識別部420は、カメラ活性部421、虹彩検出部422、使用者識
別部423を含むことができる。
【0053】
カメラ活性部421は、移動通信端末機100に備えられたカメラ130を活性
化させる。カメラ130の活性化によってディスプレイ部110にはカメラ130
25 によって現在照らされた映像が表示される。使用者が自分の目または顔をカメラ1
30に照らすと、虹彩検出部422は使用者の眼球のうちの虹彩を認識し、これを
抽出する機能を実行する。虹彩を認識するためには通常的な虹彩検出アルゴリズム
を用いることができる。使用者識別部423は、虹彩検出部422を介して検出さ
れた虹彩と既に保存されている使用者の虹彩情報を比較して、マッチングされた場
合に現在使用者を正当な使用者として認証する機能を実行する。そのために、使用
5 者識別部423はデータベース(図示せず)に保存されている使用者の虹彩情報を
利用することができる。使用者の虹彩情報は、最初にカメラ130を用いて撮影し
た正当な使用者の映像を利用して虹彩検出部422により検出される虹彩に対する
情報登録によって保存されることができる。登録された本当な使用者の虹彩情報変
更のためには所定の識別情報(例えば、ID、パスワード、住民登録番号など)が
10 入力されないとならない。使用者識別部423により本当な使用者であると認証さ
れると、移動通信端末機100のロック状態が解除されてすべての機能を使用する
ことができる状態となり、本当な使用者であると認証されないと、警告メッセージ
表示とともにロック状態が持続される。
【0054】
15 上記説明した動作、すなわち、虹彩検出及び使用者識別、認証などの機能は所定
のアプリケーションのインストールによって可能となる。すなわち、該当のアプリ
ケーションには、虹彩検出アルゴリズム、虹彩比較を介する認証アルゴリズムなど
が含まれていて、移動通信端末機100にインストールされることで、上記のよう
な動作を行うことができる。このようなアプリケーションは、使用者によってダウ
20 ンロードされた後に移動通信端末機100にインストールされることができる。使
用者は、設定メニューを介して活性化ボタン120が移動通信端末機100の非活
性状態で押された場合、該当のアプリケーションが直ちに動作されるように設定す
ることで、上記のような機能を利用することができる。
【0055】
25 これによれば、保安に脆弱な地域において、移動通信端末機100を使用する際
には、別途の設定、すなわち、活性化ボタン120を押し、前記使用者認証プロセ
スが進行されるようにする設定をすることで、効率的に保安危険性を低減させるこ
とができる。
【0056】
上記説明では虹彩認識を介する認証方法について例として説明したが、これとは
5 異なる方式の認証方法、例えば、認識キーマッチング方法、パスワードマッチング
方法、顔面認識方法、指紋認識方法などが用いられる。すなわち、活性化ボタン1
20を押すことで、多様な使用者認証方法のうちのいずれか1つ、または複数の認
証方法のうちの任意の方法が行われる。
10 【図1】
【図4A】
【図4B】
(別紙2)
【要約】
【解決手段】本発明は、デバイスリソースへのアクセスを制限するための内蔵認証
システムを備えた電子デバイスに関する。認証システムは、ユーザの生体情報を検
5 出する1または複数のセンサを備えてよい。センサは、生体情報を提供するための
ステップを実行するようユーザに要求することなく、ユーザがデバイスを操作した
時に、センサが適切な生体情報を検出できるように、デバイスに配置されてよい
(例えば、デバイス筐体の別個の部分に指紋センサを設けるのではなく、入力メカ
ニズム内に指紋センサを組み込む)。一部の実施形態において、認証システムは、
10 ユーザを認証するために視覚的または時間的な入力パターンを検出するよう動作し
てよい。認証に応答して、ユーザは、制限されたファイル、アプリケーション(例
えば、ユーザが購入したアプリケーション)、または、設定(例えば、連絡先また
は保存したゲームプロファイルなどのアプリケーション設定)にアクセスできるよ
うになる。
15 【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスのユーザをシームレスに認証するための方法であって、
前記電子デバイスの入力メカニズムを用いて、ユーザからの入力を受信する工程
と、
20 前記入力メカニズムに隣接したセンサを用いて、前記入力を受信する時に前記ユ
ーザの識別情報を検出する工程と
前記検出した情報に基づいて前記ユーザを認証する工程と、
を備える、方法。
【請求項7】
25 請求項1に記載の方法であって、前記識別情報は、
指紋、掌紋、手紋、指関節紋、血管パターン、網膜パターン、虹彩パターン、外
耳道パターン、および、DNA配列の内の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項11】
電子デバイスのユーザを認証するための方法であって、
前記デバイスの検知素子に対して位置合わせするよう前記ユーザに案内すること
5 なく、前記ユーザが前記検知素子に対して位置合わせされていることを決定する工
程と、
前記決定工程に応答して、前記検知素子を用いて前記ユーザの生体属性を検出す
る工程と、
前記検出工程に応答して、前記ユーザを認証する工程と、
10 を備える、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記検出工程は、さらに、前記ユーザの顔の
特徴および前記ユーザの眼の特徴の内の少なくとも1つを検出する工程を備える、
方法。
15 【請求項15】
ユーザをシームレスに認証するための電子デバイスであって、
ユーザから入力を受信する入力メカニズムと、
前記入力が受信される時に、前記ユーザの識別特徴を検出する検知素子と、
前記検出された識別特徴に基づいて、前記ユーザを認証するプロセッサと、
20 を備える、電子デバイス。
【請求項16】
請求項15に記載の電子デバイスであって、前記検知素子は、前記入力メカニズ
ムに内蔵されている、電子デバイス。
【請求項17】
25 請求項15に記載の電子デバイスであって、前記検知素子は、前記検知素子の視
野が、前記入力メカニズムに入力を提供するユーザの少なくとも1つの識別特徴を
捉えるよう配置される、電子デバイス。
【請求項18】
請求項15に記載の電子デバイスであって、前記入力メカニズムは、キーボード
と、ボタンと、マウスと、タッチパッドと、タッチスクリーンと、スクロールホイ
5 ールと、の内の少なくとも1つを備える、電子デバイス。
【請求項19】
請求項15に記載の電子デバイスであって、前記検知素子は、前記ユーザの皮膚
の特徴およびユーザの皮下の特徴の少なくとも一方を検出する、電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
10 【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵認証システムを備えた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
15 電子デバイス、特に携帯型電子デバイスは、個人情報を格納するために用いられ
る。例えば、ユーザは、ユーザが用いる連絡先、電子メール、カレンダー情報、文
書、および、その他の情報を格納するために、携帯電話、PDA、スマートフォン、
または、その他の電子デバイスを用いてよい。この情報は、必ずしも秘密にしなく
てもよいが、ユーザは、情報の少なくとも一部を他人に利用できなくするよう望ん
20 でもよい。許可されていない人物がユーザの個人情報にアクセスし閲覧することを
防ぐ方法の1つとして、デバイス機能を有効にする前、または、デバイスリソース
にアクセスする前に、パスワードまたはパスコードの提供を電子デバイスのユーザ
に要求する方法が挙げられる。例えば、電子デバイスは、デバイスのホームスクリ
ーン(例えば、スプリングボード)またはメニューを表示する前に、4つの数字ま
25 たは4つの文字のPINを入力するよう、ユーザに要求してよい。別の例として、
ユーザの指紋を検出するためまたはユーザの網膜を走査するための付属デバイスを
デバイスに接続することによって、ユーザが、デバイスへのアクセス権を受ける前
に、承認された指紋または網膜を最初に示さなければいけないようにしてもよい。
【0003】
これらの方法は両方とも有効でありうるが、パスワードまたはパスコードに基づ
5 くアクセス制限は、パスワードまたはパスコードを知っている他のユーザがいない
限りは、効果的である。パスワードまたはパスコードが知られると、制限メカニズ
ムは、効果がなくなりうる。また、パスワードまたはパスコードを忘れて、許可ユ
ーザがデバイスにアクセスできなくなる場合もある。さらに、ユーザに指紋を提供
するまたは網膜スキャンを受けるよう要求することは、ユーザがデバイスにアクセ
10 スできるまでに求めるステップを増やすため、時間がかかり、ユーザにとって煩わ
しい場合がある。この方法は、パスワードまたはパスコードの入力よりも安全であ
るが、ハードウェア(例えば、必要なスキャナ、検出器、または、リーダ)のコス
トと時間がかかる。したがって、例えば、ユーザがデバイスをオンにする、ロック
解除する、または、起動する時に、デバイスが迅速かつシームレスにユーザを認証
15 するように、生体認証および他の認証メカニズムを実装した電子デバイスを提供す
ることが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
電子デバイスのユーザを認証するための方法、電子デバイス、および、コンピュ
20 ータ読み取り可能な媒体が提供されている。一部の実施形態において、電子デバイ
スは、ユーザをシームレスに認証しうる。電子デバイスは、ユーザから入力を受信
してよく、その入力は、電子デバイスの入力メカニズムによって提供される。電子
デバイスは、ユーザが、入力メカニズムの中またはその近傍に組み込まれた1また
は複数のセンサから入力を提供する時に、識別情報を検出してよい。電子デバイス
25 は、検出した識別情報を、デバイスのライブラリに格納されている識別情報と比較
することによって、ユーザを認証してよい。例えば、センサは、ユーザの皮膚の特
長、または、ユーザの皮下の特長を検出するためのセンサを含んでよい。センサは、
タッチスクリーン、ボタン(例えば、キーボードまたはマウスのボタン)、入力メ
カニズム近傍のデバイスの筐体(例えば、キーボードの近くのラップトップ筐体)、
または、任意の他の適切な位置の少なくとも一カ所に組み込まれてよい。
5 【0005】
一部の実施形態において、電子デバイスは、デバイスの検知素子に対して位置合
わせするようユーザに指示することなく、ユーザが検知素子に対して位置合わせさ
れていることを決定してよい。例えば、検知素子は、センサの検知領域が、電子デ
バイスを操作する際に予期されるユーザの位置を含むように配置されてよい。セン
10 サは、検知素子を用いて、ユーザの1または複数の生体属性(例えば、顔または眼
の特長)を検出してよい。例えば、センサは、デバイスのディスプレイに隣接した
カメラまたは光学センサを備えてよい。次いで、ユーザは、検出された生体属性を、
電子デバイスに格納された、または、電子デバイスがアクセスできる生体属性のラ
イブラリと比較することによって認証されてよい。
15 【発明を実施するための形態】
【0032】
ディスプレイスクリーン400は、デバイスリソースにアクセスする前に、認証
を受けるようユーザに指示する通知420を含んでよい(例えば、情報およびアプ
リケーションを起動するホームスクリーン)。通知420は、例えば、ポップアッ
20 プ、オーバーレイ、新たなディスプレイスクリーン、または、ユーザに指示を提供
するための任意の他の適切なタイプのディスプレイなど、任意の適切なタイプの通
知を含みうる。電子デバイスは、例えば、ユーザがデバイスのスイッチを入れた時
(例えば、その後ディスプレイスクリーン400を見る時)、第1の認証なしにユ
ーザがデバイスリソースへのアクセスを試みたことに応じて(例えば、エラーメッ
25 セージとして)、ユーザによるヘルプの要求に応じて、または、任意のその他の適
切な時点など、任意の適切な時に通知420を表示してよい。通知420は、例え
ば、ユーザが認証を行う方法、許可ユーザのリスト、または、任意のその他の適切
な情報など、任意の適切な指示を含んでよい。
【0045】
センサは、電子デバイス内の任意の適切な位置に配置されてよい。一部の実施形
5 態において、センサは、ユーザが電子デバイスを操作する時または操作し始める時
に、ユーザの皮膚の適切な部分を検出するよう動作できるように配置されてよい。
センサの位置は、検出すべきユーザの皮膚の部分(例えば、指、手、または、掌)
によって異なってよい。図6は、本発明の一実施形態に従って、ユーザの指紋を検
出するための電子デバイスのディスプレイの一例を示す概略図である。ディスプレ
10 イ600は、電子デバイスのロックを解除するようユーザに指示するスクリーン6
02を備えてよい。例えば、スクリーン602は、ブロック610に指を置いてト
ラック612に沿って指をドラッグすることによって、トラック612に沿ってブ
ロック610をスライドさせて電子デバイスのロックを解除するよう、ユーザに指
示する矢印を有するブロック610を備えてよい。
15 【0049】
リソースへの安全なアクセスを提供するために、電子デバイス700は、ユーザ
を特定するためにユーザの指紋の特徴を検出する少なくとも1つのセンサ720を
備えてよい。シームレスなユーザ体験を提供するために、センサ720は、入力メ
カニズム710および712の少なくとも一方の中または下に組み込まれてよい。
20 一部の実施形態において、入力メカニズム710は、ユーザが電子デバイス700
に入力を提供するために押下しうる複数の別個のキーを備えうるため、1または複
数のキーに内蔵されたセンサ720を備えてよい。例えば、光学または容量センサ
は、ユーザが指をキーに置いた(例えば、ユーザの人差し指を「F」または「J」
キーに置いた)時に、センサがユーザを認証するためにユーザの指先の特徴を検出
25 できるように、キーの上面に配置されてよい。ユーザの指がキーの上に置かれてい
る間にユーザを認証するために、二次元すなわち移動センサが、用いられ得る。
【0050】
センサ720は、電子デバイスにおいてユーザが押下しうる任意のボタンまたは
その他の物理的入力の中、近傍、または、裏側に配置されてもよい。例えば、セン
サ720は、携帯型メディアプレーヤまたは携帯電話のホームボタン(例えば、図
5 8Bのボタン812)の背後に配置されてよい。センサ720は、外部のカバーま
たは表面(例えば、ガラスまたはプラスチック表面)と、スイッチまたは電子回路
に作用する機械的構成要素との間に配置されてよい。例えば、指紋検知メカニズム
が、透明な表面の下に組み込まれてよく、そうすれば、検知メカニズムは、その表
面を介して、ユーザの指紋の隆線および谷線を検出することができる。一部の実施
10 形態においては、透明な表面を追加しなくてもよい(例えば、検知メカニズムが、
ユーザが指を置くことのできる表面を備える場合)。
【0056】
一部の実施形態において、認証システムは、代替的または追加的に、ユーザの顔
の特徴を検出するセンサを備えてもよい。例えば、認証システムは、ユーザの顔が
15 センサと向かい合うように配置された時に、ユーザの顔の1または複数の顕著な特
徴によって放射または反射される放射線を検出するセンサを備えてよい。センサは、
任意の適切な種類の放射線を検出するよう動作してよい。例えば、センサは、光セ
ンサ(例えば、カメラ)、赤外線センサ、紫外線センサ、スキャニングレーザ、超
音波センサ(例えば、ソナー)、または、所望の放射線(例えば、特定の範囲の放
20 射線周波数または周期を持つもの)を検出する任意の他の適切なセンサを含みうる。
【0065】
電子デバイスは、任意の適切な方法を用いて、許可ユーザを反映する生体情報を
取得してよい。例えば、ユーザが特定のデバイスリソースに対して用いるよう認証
システムを選択すると、電子デバイスは、ライブラリに格納すべき生体情報(例え
25 ば、指紋、眼の走査結果、または、DNA配列)を提供するようユーザに指示して
よい。電子デバイスは、例えば、視覚的な合図、聴覚的な合図を用いる方法、およ
び、認証システムのセンサの位置を強調または特定する方法など、任意の適切な方
法を用いて、生体情報入力を提供するようユーザに指示してよい。取得されてライ
ブラリに格納された生体情報は、ユーザが認証を試みる時に取り出され、ユーザに
よって提供された生体情報と比較されてよい。提供された生体認証情報がライブラ
5 リに格納された情報(例えば、要求されたリソースに関連づけられた情報)と適合
する場合、電子デバイスは、制限されたリソースへのアクセスを提供してよい。一
部の実施形態において、同様の方法を用いて、非生体認証情報を受信してもよい。
【0078】
図15は、本発明の一実施形態に従って、ユーザを認証するための方法の一例を
10 示すフローチャートである。処理1500は工程1502で始まる。工程1504
で、電子デバイスは、デバイスのユーザを特定してよい。例えば、電子デバイスは、
ユーザに関連づけられたユーザ名またはパスワードを受信してよい。別の例として、
電子デバイスは、認証システムを用いて認証情報を受信し、受信した認証システム
からユーザを特定してもよい。電子デバイスは、例えば、ユーザがデバイスを操作
15 する時に認証情報をシームレスに取得できるように認証システムのセンサを配置す
ることによって、ユーザからの明示的な入力を要求することなく、認証情報を自動
的に受信しうる。別の例として、センサは、ユーザがセンサの視野すなわち検知領
域内に入るとすぐに、ユーザの属性の特徴を検出するよう動作してもよい。一部の
実施形態において、処理1500は、工程1502から工程1506に直接移行し
20 てもよい。
【0079】
工程1506で、電子デバイスは、制限されたリソースへのアクセス要求が受信
されたか否かを判定してよい。例えば、電子デバイスは、ユーザが、特定のユーザ
に関連づけられたデータ(例えば、連絡先リストまたは他の個人情報)にアクセス
25 するための命令を提供したか否かを判定してよい。別の例として、電子デバイスは、
ユーザが、制限されたアプリケーション(例えば、管理者などの特定の階層のユー
ザに制限されたアプリケーション、または、特定のユーザが購入したアプリケーシ
ョン)にアクセスするための命令を提供したか否かを判定してもよい。制限された
リソースにアクセスするための命令を受信していないと、電子デバイスが判定した
場合、処理1500は、工程1506に戻って、ユーザから受ける入力を監視し続
5 けてよい。
【0080】
一方、工程1506で、制限されたリソースにアクセスするための命令を受信し
たと、電子デバイスが判定した場合、処理1500は、工程1508に進んでよい。
工程1508で、電子デバイスは、特定されたユーザがリソースへのアクセスを許
10 可されているか否かを判定してよい。例えば、電子デバイスは、ユーザが、制限さ
れたリソースにアクセスするのに適切な認証情報を提供したか否かを判定してよい。
電子デバイスは、例えば、通常の使用中に認証情報を取得できるように、デバイス
に認証センサを内蔵することによって、ユーザの知るところなく、適切な認証情報
を取得してよい。特定されたユーザが許可されていないと、電子デバイスが判定し
15 た場合、処理1500は、工程1510に進んでよい。工程1510で、電子デバ
イスは、認証を行うようユーザに指示してよい。例えば、電子デバイスは、認証シ
ステム(例えば、上述の認証システムのいずれか)に認証情報を提供するようユー
ザに指示してよい。一部の実施形態において、電子デバイスは、ユーザによる複数
の入力を検出し、それらの入力が、許可ユーザに関連づけられたパターンを有して
20 いるか否か、または、許可ユーザに関連づけられた属性を共有しているか否かを判
定してよい(例えば、ユーザが、許可ユーザの属性またはパターンに対応する適切
な入力を提供したか否かを判定する、または、入力の属性またはパターンが、許可
ユーザに関連づけられた属性またはパターンと適合するか否かを判定する)。次い
で、処理1500は、ユーザが適切な認証情報を提供したか否かを判定する工程1
25 508に戻ってよい。
【0081】
一方、工程1508で、ユーザが許可されていると、電子デバイスが判定した場
合、処理1500は、工程1512に進んでよい。工程1512で、電子デバイス
は、要求された制限されたリソースへのアクセスをユーザに提供してよい。例えば、
電子デバイスは、個人データへのアクセスまたはユーザに固有のアプリケーション
5 へのアクセスをユーザに提供してよい。次いで、処理1500は、工程1514で
終了してよい。
【図6】
10 【図8B】
【図15】
(別紙3)
1図
5 2図
(別紙4)
A図
B図1
B図2
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