ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和1(ワ)5620等 特許権侵害差止等請求事件、不正競争行為差止等請求事件
| 裁判所 | 一部認容 大阪地方裁判所大阪地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和4年3月24日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 対象物 | 発電制御装置及びそれを用いた発電制御システム |
| 法令 |
特許権 特許法101条1号5回 特許法123条1項3回 特許法101条2号3回 特許法29条1項2号1回 |
| キーワード | 侵害42回 特許権28回 実施20回 間接侵害13回 無効11回 差止11回 進歩性10回 新規性8回 損害賠償5回 無効審判4回 |
| 主文 | 1 原告は、被告フィールドロジックが別紙「被告製品目録」記載の製品を販売5 2 原告は、被告フィールドロジックに対し、313万2800円及びこれに対 3 原告の請求をいずれも棄却する。10 4 被告フィールドロジックのその余の請求を棄却する。 5 訴訟費用は、①事件及び②事件を通じ、原告に生じた費用の21分の1、被 6 この判決は、1項及び2項に限り、仮に執行することができる。 |
| 事件の概要 | ①事件は、発明の名称を「発電制御装置及びそれを用いた発電制御システム」と5 する特許(以下「本件特許」という。)に係る別紙「特許権目録」記載の特許権(以 下「本件特許権」という。)を有する原告が、被告らが本件特許の特許請求の範囲 の請求項2、3及び6の各発明(後記1の(2)の訂正後のもの)の技術的範囲に属す る被告製品を製造し、販売し、又は販売の申出をすることは、本件特許権の侵害(直 接侵害)に当たる、予備的に、同行為は上記請求項2及び3の各発明に関し、本件10 特許権の間接侵害(特許法101条1号、2号)に当たると主張して、被告らに対 し、特許法100条1項及び2項に基づき被告製品の製造等の差止め(前記第1の |
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令和4年3月24日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官
令和元年(ワ)第5620号 特許権侵害差止等請求事件(①事件)
令和2年(ワ)第10046号 不正競争行為差止等請求事件(②事件)
口頭弁論終結日 令和4年1月24日
判 決
①事件原告・②事件被告 株式会社ラプラス・システム
(以下「原告」という。)
同 代 表 者 代 表 取 締 役
同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 五 島 洋
同 吉 田 尚 平
同 三 島 大 樹
同 訴 訟 代 理 人 弁 理 士 森 脇 正 志
①事件被告・②事件原告 株式会社フィールドロジック
(以下「被告フィールドロジック」という。)
同 代 表 者 代 表 取 締 役
① 事 件 被 告 株式会社フィールドロジック
データサービス
(以下「被告データサービス」という。)
同 代 表 者 代 表 取 締 役
① 事 件 被 告 株式会社インタープローブ
(以下「被告インタープローブ」という。)
同 代 表 者 代 表 取 締 役
上記3名訴訟代理人弁護士 冨 宅 恵
同 藤 原 誠
同補佐人弁理士(②事件を除く) 髙 山 嘉 成
主 文
5 1 原告は、被告フィールドロジックが別紙「被告製品目録」記載の製品を販売
することが、原告の別紙「特許権目録」記載の特許権を侵害する旨を被告フィール
ドロジックの取引先その他の第三者に告知し、流布してはならない。
2 原告は、被告フィールドロジックに対し、313万2800円及びこれに対
する令和2年10月21日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
3 原告の請求をいずれも棄却する。
4 被告フィールドロジックのその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は、①事件及び②事件を通じ、原告に生じた費用の21分の1、被
告フィールドロジックに生じた費用の7分の1を被告フィールドロジックの負担と
し、原告及び被告フィールドロジックに生じたその余の費用、被告データサービス、
被告インタープローブに生じた費用を原告の負担とする。
6 この判決は、1項及び2項に限り、仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 ①事件
(1) 被告らは、別紙「被告製品目録」記載の小型計測端末(以下「被告製品」という。)を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸出し、又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
(2) 被告らは、被告製品を廃棄せよ。
(3) 被告らは、原告に対し、連帯して、1億1000万円及びこれに対する令和元年7月5日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。2 ②事件
(1) 主文1項と同旨
(2) 原告は、被告フィールドロジックに対し、1100万円及びこれに対する令和2年10月21日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
5 ①事件は、発明の名称を「発電制御装置及びそれを用いた発電制御システム」とする特許(以下「本件特許」という。)に係る別紙「特許権目録」記載の特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が、被告らが本件特許の特許請求の範囲の請求項2、3及び6の各発明(後記1の(2)の訂正後のもの)の技術的範囲に属する被告製品を製造し、販売し、又は販売の申出をすることは、本件特許権の侵害(直接侵害)に当たる、予備的に、同行為は上記請求項2及び3の各発明に関し、本件特許権の間接侵害(特許法101条1号、2号)に当たると主張して、被告らに対し、特許法100条1項及び2項に基づき被告製品の製造等の差止め(前記第1の1の(1))及び廃棄を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償として1億1000万円及びこれに対する不法行為の日の後である令和元年7月5日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定年5%の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
②事件は、被告フィールドロジックが、令和2年10月21日に原告が被告フィールドロジックの取引先に被告製品が本件特許権を侵害する旨の虚偽の事実を告知した不正競争行為(不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項21号)により被告フィールドロジックの営業上の利益を侵害したと主張し、原告に対し、同法3条1項に基づき被告フィールドロジックが被告製品を販売することが本件特許権を侵害する旨を被告フィールドロジックの取引先その他の第三者に告知すること等の差止めを求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償の一部請求として1100万円及びこれに対する不正競争行為の日である同日から支払済みまで民法所定年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。1 前提事実(証拠等を掲げていない事実は、争いのない事実又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。なお、特に明記しない場合は①事件の証拠番号を指す。)
(1) 当事者ア 原告は、太陽光発電計測・表示システム等の製造、販売等を目的とする株式
5 会社である。イ 被告フィールドロジックは、太陽光発電計測・表示システム等の販売等を目的とする株式会社である。ウ 被告データサービスは、ソフトウェアの企画、設計、製作、販売等を目的とする株式会社である。エ 被告インタープローブは、ソフトウェアの企画、設計、製作、販売等を目的とする株式会社である。オ 被告らの代表取締役は、少なくとも平成19年3月31日まで、原告において就業していた。
(2) 本件特許権ア 原告は、別紙「特許権目録」記載の本件特許権を有している。本件特許権の特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、明細書及び図面を「本件明細書」という。)の記載は、別紙「特許公報」のとおりである(甲2、②事件甲2)。イ 高山嘉成氏(①事件被告ら補佐人弁理士)は、平成31年1月9日、本件特許についての特許異議の申立てをしたところ、原告は、令和元年12月20日、本件特許に係る特許請求の範囲の訂正を求める訂正請求書を提出した。これに対し、特許庁は、令和2年2月12日、原告の訂正請求を認め、特許異議の申立てを却下する決定をした(甲16、17、乙1)。ウ 訂正後の請求項(以下、請求項の順に「訂正後請求項2」などといい、同訂正後請求項記載の各発明を「本件訂正発明2」などといい、これらの発明を併せて「本件各訂正発明」という。)は次のとおりである(下線部が訂正部分)。請求項1削除訂正後請求項2太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、負荷に接続された受変電部と、前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力を
5 制御する発電制御装置と、を備え、前記発電制御装置は、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、前記出力指令値に基づいて前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避することを特徴とする発電制御システム。訂正後請求項3前記発電制御システムは、さらに蓄電池を備えることを特徴とする請求項2記載の発電制御システム。訂正後請求項6太陽電池の発電電力及び負荷の消費電力を取得すると共に、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し、前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する発電制御装置。
(3) 本件各訂正発明の構成要件は、次のとおり分説される。ア 本件訂正発明22A 太陽電池の発電電力を制御するパワーコンディショナと、2B 負荷に接続された受変電部と、2C 前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンディショナの出力を制御する発電制御装置と、を備え、2D 前記発電制御装置は、前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、2E 前記出力指令値に基づいて前記パワーコンデ ィショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避することを特徴とする2F 発電制御システム
5 イ 本件訂正発明33A 前記発電制御システムは、さらに蓄電池を備えることを特徴とする請求項2記載の発電制御システムウ 本件訂正発明66A 太陽電池の発電電力及び負荷の消費電力を取得すると共に、6B 前記発電電力の上限値を、前記発電電力の上限値と前記消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定してパワーコンディショナの出力指令値を算出し、6C 前記パワーコンディショナは前記発電電力が前記上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する6D 発電制御装置
(4) 被告製品被告製品には、①系統連系型システムに用いられるもの、②自家消費型発電制御システムに用いられるもの、③計測のみに用いられるものがある(以下、順に「本件仕様①」などという。)。被告製品は、①系統連系型システムにおいては、各電力会社の仕様(制御スケジュール)に応じて太陽電池と接続されたパワーコンディショナ(以下「PCS」と表記することがある。)の出力制御を行い、②自家消費型発電制御システムにおいては、消費電力と発電電力を比較し、PCS に対して発電電力が消費電力を上回らないよう出力制御命令を行う。本件仕様①~③のうち、本件仕様②に限り、受変電設備からの買電データ計測と PCS からの発電計測とに基づいて、消費電力を計測し、消費電力に基づいて PCS を制御する機能を有している。被告製品には、本件仕様①~③に係るプログラムが全てインストールされており、その筐体、ハードウェア、ソフトウェア等も同一であるが、本件仕様①~③に係るプログラムに対してキッティング作業を行うことで当該プログラムが解放されて稼働することになる。被告製品の設定は、内蔵されている Web 画面などでは行えず、被告フィールドロジックが所有する特殊ツールを用いてのみ行うことができるため、被告
5 フィールドロジック以外の者が現地で設定を変更することは不可能であり、仕様変更を行う場合は、被告フィールドロジックが機器にキッティング作業を行って、再設定済みの機器を現地に送付する。(以上につき、甲14、15、乙4、5、11、14、25、54、弁論の全趣旨)
(5) 被告フィールドロジックの行為被告フィールドロジックは、被告製品を販売している(甲3、弁論の全趣旨)。2 争点
(1) ①事件についてア 本件各訂正発明の技術的範囲への属否(争点1)イ 直接侵害及び間接侵害の成否(争点2)ウ 無効理由の有無(争点3)公然実施発明に基づく本件訂正発明2及び6の新規性欠如及び本件訂正発明3の進歩性欠如の有無(争点3-1)公開実用新案公報(実開昭 61-58834 号。昭和61年4月21日公開。乙57。以下「乙57考案」という。)記載の発明に基づく本件各訂正発明の進歩性欠如の有無(争点3-2)エ 先使用権の成否(争点4)オ 原告の損害の発生及びその額(争点5)
(2) ②事件についてア 虚偽事実の告知による不正競争該当性及び差止めの要否(争点6)イ 被告フィールドロジックの損害の発生及びその額(争点7)
第3 争点についての当事者の主張
1 本件各訂正発明の技術的範囲への属否(争点1)
(原告の主張)
(1) 被告製品について
被告製品には、全て本件仕様②に係るプログラムがインストールされていること
5 から、同プログラムに対するキッティング作業の有無にかかわらず、全ての被告製
品は、以下のとおり本件各訂正発明の構成要件を充足するし、また、被告製品に同プログラムをインストールすることは容易であるから、同プログラムがインストールされる前の被告製品も同様である。
(2) 本件訂正発明2について
ア 構成要件 2A被告製品は、太陽電池に PCS が接続され、その制御が PCS との通信によって行われており、太陽電池の発電電力を制御する PCS を備えているから、構成要件 2A を充足する。イ 構成要件 2B被告製品は、オフィスや工場などの負荷に受変電設備が接続されており、負荷に接続された受変電部を備えているから、構成要件 2B を充足する。ウ 構成要件 2C被告製品は、負荷の消費電力を取得するために発電電力及び受電電力の計測を行い、消費電力の取得は発電制御装置に発電制御を行わせるためになされるから、被告製品の発電制御装置は、負荷の消費電力を取得している。また、被告製品は、PCSに出力制御指令を出力しているところ、同指令は発電制御装置が行っているから、構成要件 2C を充足する。エ 構成要件 2D被告製品は、「発電電力≦消費電力×制御閾値」の式により発電電力を制御しており、発電電力の上限は「消費電力×制御閾値」である。ここで、発電電力上限値を P(t)、消費電力を S(t)、制御閾値を a(0≺a≺1)とすると、S(t)-P(t)=(1-a)S(t)と変形でき、被告製品の発電制御装置は、発電電力の上限値を、発電電力の上限値と消費電力との差分が消費電力の関数となるよう設定して出力指令値を算出している。したがって、構成要件 2D を充足する。オ 構成要件 2E、2F
5 被告製品は、発電電力を制御して逆潮流を防止するものであり、その制御は、前
記エの方法によって算出された出力指令値を PCS に通信することによって行うことから、構成要件 2E 及び 2F を充足する。
(3) 本件訂正発明3について
構成要件 3A被告製品は、蓄電池付き太陽光発電システムを採用しており、蓄電池を備えることを特徴とする前記ア~オの構成をもつ発電制御システムであることから、構成要件 3A を充足する。
(4) 本件訂正発明6について
ア 構成要件 6A前記(2)ウ記載のとおり、被告製品は、太陽光発電の発電電力及び負荷の消費電力を計測し、取得しているから、構成要件 6A を充足する。イ 構成要件 6B前記(2)エ、オ記載のとおり、被告製品は、発電電力の上限値を発電電力の上限値と消費電力との差分が消費電力の一次関数となるよう設定して PCS の出力指令値を算出していることから、構成要件 6B を充足する。ウ 構成要件 6C、6D前記(2)オ記載のとおり、被告製品は、PCS が発電電力が上限値以下となるよう制御することで逆潮流を回避する発電制御装置であることから、構成要件 6C 及び 6Dを充足する。(被告らの主張)
(1) 被告製品について
被告製品には、本件仕様①~③があるところ、キッティング作業によって、これらのうちいずれかに係るプログラムのみが解放されて納品されることから、被告製品のうちキッティング作業が未了である在庫品は、本件仕様②に係るプログラムの機能を発揮しない。また、購入者は、自らプログラムを解放することができないか
5 ら、納品時において、本件仕様②以外のプログラムが解放されたものは、本件仕様
②のプログラムを使用することができない。
したがって、少なくとも本件仕様②のプログラムが解放されていない被告製品が本件各訂正発明の構成要件を充足することはない。
(2) 被告製品の構成
被告製品(本件仕様②)の構成は次のとおりである。すなわち、太陽光発電システム、風力発電システム、及び小水力発電システムにおける PCS を制御するための小型計測端末であって、負荷の消費電力を取得すると共に前記 PCS の出力を制御する発電制御装置を備え、前記発電制御装置は、予め制御閾値を設定しており、消費電力×制御閾値が PCS 定格電力よりも小さい場合には、消費電力×制御閾値/PCS定格電力を制御指令値として算出し、消費電力×制御閾値が PCS 定格電力以上の場合には、発電電力の上限値が PCS 定格電力となる制御指令値を用いるようにして、前記 PCS を制御し、前記制御指令値に基づいて、前記 PCS を制御することで、発電電力≦消費電力×制御閾値を実現して、逆潮流を回避する小型計測端末である。
(3) 本件訂正発明2について
ア 構成要件 2A、2B被告製品は、PCS 及び受変電部を備えていないから、構成要件 2A 及び 2B をいずれも充足しない。イ 構成要件 2C被告製品のうち、本件仕様②が「負荷の消費電力を取得すると共にパワーコンディショナの出力を制御する発電制御装置」を備えていることは認める。しかし、本件仕様①は PCS の出力を制御する発電制御装置を備えているものの、負荷からの消費電力を取得しておらず、本件仕様③は PCS の出力を制御する発電制御装置を備えていないから、いずれも構成要件 2C を充足しない。ウ 構成要件 2D、2E被告製品のうち、本件仕様①は出力制御スケジュールに基づいて PCS の出力
5 を制御しているものであり、発電電力の上限値を、発電電力の上限値と消費電力と
の差分が消費電力の一次関数となるように設定して出力指令値を算出しておらず、本件仕様③は出力指令値を算出していないから、構成要件 2D 及び 2E を充足しない。被告製品のうち本件仕様②について本件各訂正発明は、従来技術である等差制御との比較で、発電効率を高めることを前提に一次係数を設定した場合、それによって発生する逆潮流の問題をゼロ次係数を正の値に設定することで回避し、一方で、逆潮流を回避することを前提に一次係数を設定した場合、それによって発生する発電効率の低下の問題をゼロ次係数を負の値に設定することで回避して、発電効率の向上と逆潮流の回避という目的を達成している。したがって、本件各訂正発明は、発電電力の上限値を「発電電力の上限値と消費電力との差分が消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出」するものであり、これを式で表現すると、S(t)-P(t)=aS(t)+b となるところ、ゼロ次係数「b」は、前記作用効果を達成する上で「0」に設定される時間帯があることは否定されないものの、基本的には正の値又は負の値が設定されることになる。一方、被告製品は、「消費電力×制御閾値<PCS 定格電力」の場合は、「消費電力×制御閾値/PCS 定格電力」によって算出される制御指令値を消費電力に乗じたものが PCS の出力となることから、ゼロ次係数は常に「0」であり、「消費電力×制御閾値≧PCS 定格電力」の場合は、PCS 定格電力が PCS の出力となることから、ゼロ次係数は常に「0」である。以上から、本件各訂正発明と被告製品との技術思想は根本的に異なるものであり、被告製品のうち本件仕様②は構成要件 2D 及び 2E を充足しない。エ 構成要件 2F被告製品は発電制御システムではないから、構成要件 2F を充足しない。
(4) 本件訂正発明3について
構成要件 3A被告製品は、蓄電池を備えていないこと、前記(3)のとおり、訂正後請求項2を充
5 足していないこと、発電制御システムではないことから、構成要件 3A を充足しな
い。
(5) 本件訂正発明6について
ア 構成要件 6A被告製品のうち、本件仕様①及び③が負荷の消費電力を取得することは否認し、本件仕様②が負荷の消費電力を取得することは認める。しかし、被告製品は、いずれも PCS の出力を取得するものであり、太陽電池の発電電力を取得するものではないから、構成要件 6A を充足しない。イ 構成要件 6B、6C前記(3)ウのとおり、被告製品は、構成要件 6B 及び 6C を充足しない。ウ 構成要件 6D被告製品が構成要件 6D を充足することは認める。
2 直接侵害及び間接侵害の成否(争点2)
(原告の主張)
(1) 被告らの行為について
被告らは、平成30年5月頃から、業として、被告製品を製造し、販売し、又は販売の申出をしている。
(2) 直接侵害について
被告らが、被告製品と PCS の接続作業等を行っている場合は、当該接続作業等をもってシステム全体の「製造」行為を行っているというべきである。被告らは、太陽光発電システムの構築等はシステムインテグレーター及び電気工事士が行っている旨を主張する。しかし、被告フィールドロジックは、システムインテグレーターに対し、被告製品に適合する PCS の情報を提供し、システムインテグレーターが PCSの選定を行っているから、被告フィールドロジックは、PCS の選定に関与しているといえるし、システムインテグレーターは、被告らが提供する PCS に関する情報に基づき選定された PCS を設置するサービスを提供する業務を行っていることから、
5 単なる被告らの補助者というべきである。また、被告らが接続作業に必要な端子配
線図を提供していること、被告フィールドロジックが被告製品を正常に稼働させるための最終的な調整を行い、又は、必要な情報を電気工事士に提供してこれを行わせていることから、電気工事士は、被告らに代替して作業をしているにすぎず、被告らの補助者であるといえる。したがって、被告らが、被告製品と PCS の接続作業等を行うことによってシステム全体の製造行為を行っているといえることから、本件訂正発明6のみならず、本件訂正発明2及び3についても直接侵害が成立する。
(3) 間接侵害について(予備的主張)
ア 特許法101条1号被告製品は、PCS に接続され、逆潮流が起こらない範囲で従来よりも発電電力を最大化するよう制御する機器として製造されたものであるから、本件訂正発明2及び3の実施のためにのみ用いられるものであるといえる。被告は、被告製品が蒸気タービン発電システムの計測器として使用されている例があること、被告製品のメイン基板を拡張ボードと組み合せることにより種々の用途に使用できることを指摘して、いわゆる「のみ使用」に該当しない旨を主張する。しかし、前者は、被告製品が、あくまで計測器として使用されていることを指摘するもので、自家消費型発電制御システムに関するものではないし、後者は、被告製品のメイン基板に他の用途があることを指摘するもので、「のみ使用」の要件とは無関係である。イ 特許法101条2号被告製品は、自家消費に用いられる太陽光発電システムにおいて、電力会社への逆潮流を回避しつつ利用可能な発電電力を最大化するよう制御するために製造されたものであるから、本件各訂正発明の技術的課題を解決するために不可欠なものである。また、被告らは、本件各訂正発明の存在や被告製品は本件訂正発明2及び3の実施に用いられることを知っていた。
5 (被告らの主張)
(1) 被告らの行為について
ア 被告フィールドロジックは、本件仕様①~③に係るプログラムを制作し、筐体製造メーカに対し、同プログラムを提供する。筐体製造メーカは、被告フィールドロジックから交付された要求仕様に基づき被告製品を製造し、被告フィールドロジックから提供された前記プログラムをインストールする。被告フィールドロジックは、各事業者から直接又は被告インタープローブを介して、被告製品、USB メモリ、買電データ計測機器、気象データ計測機器及び表示機器を購入し、システムインテグレーターの指示に基づき、設定用ツールを用いて、前記被告製品の各仕様に係るプログラムのいずれかを解放するキッティング作業を行って、被告製品を納品する。イ 被告インタープローブは、令和元年6月30日までは、被告製品等を各事業者から購入して、被告フィールドロジックに対して販売しており、同日以降は、被告フィールドロジック等に対し、倉庫等を賃貸している。ウ 被告データサービスは、各事業者からモバイルルーターを購入し、発電事業者に賃貸し、発電事業者が、被告製品等を使用して取得された発電量等のデータを確認することができるサービスを提供している。
(2) 直接侵害について
太陽電池、分電盤及び発電制御システムによって構成される太陽光発電システムの構築を行っているのはシステムインテグレーターであり、これらの電気的な接続は、システムインテグレーターが選定した電気工事士が行うのであり、被告フィールドロジックは、システムインテグレーターの指示に従って、本件仕様①~③に係るプログラムのうちの1つを解放した被告製品を納品し、発電制御システムに設置された被告製品の稼働状況を確認するのみである。したがって、本件訂正発明2及び3について直接侵害は成立しない。
(3) 間接侵害について
5 ア 特許法101条1号
被告製品には、本件仕様②のみならず、本件仕様①及び③がある。また、被告製品は蒸気タービン発電システムの計測器として使用されているし、被告製品のメイン基板として使用されているコンピュータは汎用的な小型コンピュータであることから、拡張ボードと組み合わせることにより、例えば「見守り・監視ソリューション」、「災害監視・インフラ測定・異常探知」、「ビル管理・設備監視ソリューション」等の種々の用途に使用することができる。したがって、いわゆる「のみ使用」に該当しない。イ 特許法101条2号「発明による課題の解決に不可欠なもの」とは、それを用いることによって課題を解決することができるものをいう。前記1(3)ウのとおり、被告製品は、本件各訂正発明のように発電電力の上限値と消費電力との差分が消費電力の一次関数となるように設定して出力指令値を算出するという構成をとっていないから、「発明による課題の解決に不可欠なもの」には当たらない。また、主観的要件も充たさない。
3 公然実施発明に基づく本件訂正発明2及び6の新規性欠如及び本件訂正発明
3の進歩性欠如の有無(争点3-1)(被告らの主張)
(1) 被告フィールドロジックの従業員であったP1は、自家消費型太陽光発電
制御に対応可能なシステムの開発を行っていたところ、平成30年1月5日の時点で、次の発明(以下「P1発明」という。)をした。すなわち、太陽光発電システムにおける PCS を制御するための制御装置であって、DataCube2(以下「DC2」という。)及び PLC から構成されており、負荷の消費電力を取得すると共に前記 PCS の出力を制御し、予め制御閾値を設定しており、消費電力×制御閾値が PCS 定格よりも小さい場合には、消費電力×閾値/PCS 定格電力を制御指令値として算出し、消費電力×制御閾値が PCS 定格以上の場合には、発電電力の上限値が PCS 定格電力となる制御指令値を用いて、前記 PCS を制御し、前記制御指令値に基づいて、前記 PCS
5 を制御することで、発電電力≦消費電力×制御閾値を実現して、逆潮流を回避する
制御装置を発明した。P1氏は、同年2月13日、納品先であった株式会社ヤクルト食品工業(以下「ヤクルト」という。)に対し、DC2 及び PLC を設置する作業を行い、被告フィールドロジックは、第三者を介してヤクルトに対し、必要な機器を納品し、請負業者は、太陽光電気設備工事を完了して、同月19日、ヤクルトに対し、これを引き渡した。以上によれば、ヤクルトは、同月13日、本件訂正発明2を公然と実施し、被告フィールドロジックは、同日、本件訂正発明6を公然と実施した。
(2) また、平成27年11月9日に特許出願された発明の公開特許公報(乙21)
の明細書には、従来の太陽光発電システムにおいて、蓄電池が使用されることが開示されており、太陽光発電システムにおいて、蓄電池を備える構成とすることは周知技術である。そうすると、P1発明及び前記周知技術により本件訂正発明3を想到することは容易である。
(3) 以上から、本件訂正発明2及び6は新規性の欠如を理由として、本件訂正発
明3は進歩性の欠如を理由として、特許無効審判により無効にされるべきものである(特許法123条1項、29条1項2号、2項)。
(原告の主張)
P1発明を構成する制御装置は DC2 及び PLC であり、被告製品とは異なるし、被告らがヤクルトに提供したプログラムのソースコードの形式は、被告製品に実装されたプログラムのソースコードと全く異なる。このように、P1発明と被告製品とは、ハードウェアの構成やプログラムのソースコードなどが相違する上、当該プログラム自体が事後的に改変された可能性を排除できない。また、公然実施といえるためには、不特定多数の者の前で実施をしたことにより当該発明の内容を知り得る状況になったことを要するところ、DC2 は、そのソースコードを解析してはじめて制御の方法がわかるものであり、外部から一見してその制御の方法がわかるものではないから、当該制御方法を搭載した製品が1社に納品
5 され、使用されたからといって、公然実施発明となるものではない。
4 乙57考案記載の発明に基づく本件各訂正発明の進歩性欠如の有無(争点3
-2)(被告らの主張)
(1) 乙57考案は、太陽光発電セル10による直流電力を交流電力に交換する
インバータ12と、負荷16と系統14とを接続する遮断器34、漏電遮断器36、計器用変流器38、及び変流器42を有する給電路と、負荷16の供給電力を取得すると共に、インバータ12の出力を制御する出力電力制御手段とを、備え、出力電力制御手段は、インバータ12の出力電力の上限値(予備的主張として「インバータ12の出力電力」)が前記供給電力の所定比率分(例えば90%)となるように制御し、出力制御手段によるインバータ12の出力電力が前記供給電力の所定比率分(例えば90%)以下となるように制御されることで、インバータ12から系統14へ電力が逆流することを回避する、太陽光発電の連係装置に係る発明(以下「主引用発明」という。)を開示している。
(2) 本件訂正発明2について
ア 相違点相違点2-1本件訂正発明2では、太陽電池からの直流電力を交流電力に変換するための交換回路として、PCS を用いているのに対し、主引用発明では、インバータ12を用いている点(相違点2-1)が相違している。相違点2-2変換回路を制御するに際して、本件訂正発明2では、発電制御装置が出力指令値を用いて PCS を制御しているのに対し、主引用発明では、出力電力制御手段がインバータ12を制御するに際して、出力指令値を用いていないという点(相違点2-2)が相違している。イ 容易想到性
5 相違点2-1について
主引用発明は逆潮流を防止することを目的とした発明であるところ、太陽光発電システムにおいて、PCS を制御して逆潮流を回避し、PCS を用いて太陽電池からの直流を交流に変換することは、いずれも出願時において周知技術であり、また、PCS の内部にインバータ機能が備わっていることも同様に周知技術であった。したがって、主引用発明と本件各訂正発明は目的及び課題を共通にしており、主引用発明におけるインバータ12を PCS に置き換えることは、当業者にとって、動機付けが存在し、当該置換えに何らの阻害要因は存在しない。相違点2-2についてPCS を制御して逆潮流を回避すること、PCS を制御する際に出力指令値を用いること、発電電力の上限値を示す値として、定格電力の何%まで PCS が出力してもよいかという出力制御値(出力指令値)を用いることは、いずれも出願時において周知技術であった。したがって、相違点2-1において、インバータ12を PCS に置き換える際、電力制御手段が、置き換えられた PCS を制御するに際して、出力制御値を用いることは、当業者にとって、動機付けが存在し、何ら阻害要因は存在しない。
(3) 本件訂正発明3について
ア 相違点3相違点2-1及び2-2に加えて、本件訂正発明3は蓄電池を備えているのに対し、主引用発明は蓄電池を備えていないという点(相違点3)が相違している。イ 容易想到性本件訂正発明3では、逆潮流防止との関係で、どのように蓄電池に電力が蓄えられるのかは特定されておらず、蓄電池を備えることのみが記載されているところ、太陽光発電システムにおいて、蓄電池を備えることは周知技術にすぎないし、乙57考案においても、太陽光発電において蓄電池を用いることが記載されている。
(4) 本件訂正発明6について
5 主引用発明は、本件訂正発明6との関係で、負荷16の供給電力を取得すると共
に、インバータ12の出力電力の上限値が前記供給電力の所定比率分(たとえば90%)となるようにインバータ12を制御し、インバータ12の出力電力が前記上限値以下となるように制御することで逆潮流を回避する出力電力制御手段と特定することができる。ア 相違点相違点6-1本件訂正発明6は、制御対象を PCS としているのに対し、主引用発明における出力電力制御手段は、制御対象をインバータ12としている点(相違点6-1)で相違している。相違点6-2本件訂正発明6は、出力指令値を算出して、PCS を制御しているのに対し、主引用発明における出力電力制御手段では、インバータ12を制御するに際して、出力指令値を用いていないという点(相違点6-2)で相違している。イ 容易想到性前記(2)イで記載したとおり、太陽光発電システムにおいて、太陽電池からの直流を交流に変換するために、PCS を用いることは周知技術にすぎないので、主引用発明におけるインバータ12を PCS に置き換えることは、当業者にとって、動機付けが存在し、当該置換えに何らの阻害要因も存在せず、また、PCS を制御するに際して、出力指令値を用いることは、周知技術に過ぎない。
(5) 以上から、本件各訂正発明は、主引用発明及び周知技術に基づいて、容易に
発明することができた発明であるから、本件特許は、特許無効審判により無効にされるべきものである(特許法123条1項、29条2項)。
(原告の主張)
(1) 主引用発明の構成について
被告らが主張する主引用発明の構成のうち、出力電力制御手段は、インバータ1
5 2の出力電力の上限値が前記供給電力の所定比率分(例えば90%)となるように
制御し、出力制御手段によるインバータ12の出力電力が前記供給電力の所定比率分(例えば90%)以下となるように制御されることで、という部分は否認し、その余は認める。主引用発明が採用する出力制御の対象は、「インバータ12の出力電力の上限値」ではなく、「インバータ12の出力電力(そのもの)」である。
(2) 本件各訂正発明との相違点
本件各訂正発明は、発電可能な発電電力の上限値を負荷の消費電力の一次関数として計算し、時々刻々と変化する消費電力に追随して、その上限値を、その上限値と消費電力との差分が前記消費電力の一次関数となるよう設定する技術であるのに対し、主引用発明は、現に負荷が消費している消費電力そのものに対して、発電装置と系統との比率を定める技術である点が、本質的に相違している。そもそも、主引用発明は、昭和59年に出願された発明であり、本件各訂正発明と比べると、その時代背景や技術レベルがあまりにも異なることから、同列に扱うことには無理がある。
(3) 本件訂正発明2
ア 相違点被告が主張する相違点2-1及び2-2は認める。これらに加え、次の相違点がある。相違点2-3本件訂正発明2では、出力指令値によって制御される PCS の出力電力は「上限値」を決定するのに対し、主引用発明では、供給電力のうちの所定比率分が上記インバータ出力を制御する出力制御手段によって設定される「所定比率分」である点(相違点2-3)が相違している。相違点2-4本件訂正発明2では、負荷の消費電力がゼロになった場合、消費電力の一次関数として算出される制御指令値に基づいて、PCS の出力(発電出力)が制御される(連
5 続的に減少していく)のに対し、主引用発明では、負荷への印加電圧が検出されな
くなるとリレー32が開路し、瞬間的にインバータからの電力供給が停止する点(相違点2-4)が相違している。相違点2-5本件訂正発明2では、発電電力の上限値と消費電力との差分が消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出し、それによって発電出力が制御されるため、接続される PCS の種類によっては系統が停電しても出力指令値に直接影響を及ぼすことはないのに対し、主引用発明では、系統が停電した場合、系統からの電力がゼロになると、インバータの出力電力で負荷の消費電力の90%しか負担できないため、インバータ出力は例外なく次第に落ち込み、最終的には負荷への給電は停止する点(相違点2-5)が相違する。相違点2-6本件訂正発明2では、発電出力の制御にリレーを用いることはないのに対し、主引用発明では、電圧検出回路を用いて負荷への印加電圧をレベル弁別し、所定以上の電圧が印加されているときにはリレーを閉路し、その電圧が検出されなくなるとリレー32を開路することから、リレーが発電出力の制御に必須の構成要素である点(相違点2-6)が相違する。相違点2-7本件訂正発明2では、PCS の出力が、消費電力の一次関数として計算により求められるため、消費電力の変動に追随して発電電力の上限値が変化するが、実際の発電量が上限値に満たない場合、系統からの電力供給によってシステムが停止することはないのに対し、主引用発明では、予め設定した所定比率分の発電電力をインバータが出力できないときは、システムが所定比率を維持できなくなる結果、リレーが作動してシステムが停止する点(相違点2-7)が相違する。イ 容易想到性PCS とインバータとは、基本的な機能において本質的に相違する点があることか
5 ら、相違点2-1及び2-2はいずれも本質的なものであり、相違点2-3から2
-7が存在することをも考慮すれば、いかに当業者といえども上限値を消費電力に基づく計算によって求め、設定するという本件訂正発明2に通じる技術思想を容易に想到し得たとはいえない。また、相違点2-3として、主引用発明では、「負荷への供給電力を測定し、その供給電力のうちの所定比率分が上記インバータの出力電力になるように上記インバータ出力を制御する」のであって、当業者といえども、「上限値」を消費電力に基づく計算によって求め、設定するという本件各訂正発明に通じる技術的思想を想到し得たということはできない。
5 先使用権の成否(争点4)
(被告らの主張)本件各訂正発明の出願日は平成30年3月9日であるところ、P1氏は、同年1月5日、本件各訂正発明の内容を知らないで、P1発明を自ら発明した。被告フィールドロジックは、P1氏からP1発明を知得し、前記3(1)のとおり、同年2月13日、これを実施した。したがって、被告フィールドロジックは、本件訂正発明6に係る特許権の通常実施権を有するから、本件訂正発明6に係る本件特許権を侵害しないし、本件訂正発明2及び3に係る本件特許権の間接侵害が成立することもない。
(原告の主張)
被告らが平成30年2月13日にヤクルトに納品したとする制御装置は DC2 であり、被告製品とは異なるし、被告らがヤクルトに対し提供した実施形式は、DC2 と
第三者が製造した PLC を併用したものであって、そのうち発電制御機能を発揮して
いるのは PLC であると考えられるが、これは DC2 と LAN ケーブルで接続された筐体も異なる独立した装置である。DC2 は単に PLC からデータを取得し、発電制御とは関係ない部分で使用されるものである。また、ヤクルトに提供された装置の PLC に実装されたプログラムは被告製品(DC3)に実装されたプログラムでも、その旧製品である DC2 に実装されたプログラムでもない。
5 したがって、被告製品とヤクルトに対して提供したものが同一であるとはいい難
く、被告らに先使用権が認められる余地はない。
6 原告の損害の発生及びその額(争点5)
(原告の主張)
被告らは、平成30年5月頃から被告製品を販売しており、それにより被告らが利益を受けた額は1億円をくだらない。また、本件訴訟追行に要した弁護士費用1000万円は、被告らの販売行為と相当因果関係のある損害に含まれる。よって、原告は、被告らに対し、連帯して、1億1000万円の損害賠償を求める。(被告らの主張)争う。
7 虚偽事実の告知による不正競争該当性及び差止めの要否(争点6)
(被告フィールドロジックの主張)原告は、被告フィールドロジックと、太陽光発電計測・表示システム等の製造、販売において競争関係にあるところ、令和2年10月21日、被告フィールドロジックの取引先である株式会社NTTスマイルエナジー(以下「スマイルエナジー」という。)に対し、「弊社特許技術及び本知財を応用した製品につきましては、弊社のような中小企業が血のにじむような努力と、なけなしの投資の結果生み出されたかけがえのない財産であり、弊社にとってそれを侵害されることは死活問題です。従業員の生活もかかっており、それを貴社のような超大企業グループに属する企業が一方的に安易に侵害するような行為は断じて容認できませんので、貴社が弊社特許権の侵害を認識しながら貴社商品の販売を続ける場合は、弊社としてはあらゆる手段を講じて、貴社の行為の責任を追及する所存ですので、ここに改めて強く警告致します。」と記載された「ご通知書」と題する書面(②事件甲3)を送付した(以下「本件告知行為」という。)。したがって、本件告知行為は不正競争に該当する。
5 スマイルエナジーは、同月22日、被告フィールドロジックに対し、前記書面の
内容の真偽を確認するとともに、同被告との取引を継続するか否かを判断する上で、同被告の弁護士の意見を踏まえた詳細な説明を求め、本件告知行為により、同被告の営業上の利益が侵害された。また、原告は、複数の弁護士及び弁理士に依頼して
①事件の主張立証を行っており、前記弁護士らから、被告製品は本件各訂正発明を
充足しないと判断される見通しであるとの報告を受けているにもかかわらず、本件告知行為を行っているところ、①事件がさらに進行するとスマイルエナジー以外の被告フィールドロジックの取引先に同様の告知を行う可能性、あるいは、多数の業者に向けて本件告知行為と同内容の虚偽事実を流布する可能性が極めて高く、差止めの必要性がある。
(原告の主張)
原告と被告フィールドロジックが競争関係にあること、及び、原告が、スマイルエナジーに対し、本件告知行為をしたことは認め、その余は否認し又は争う。前記2ないし4のとおり、被告製品は本件特許権の技術的範囲に属するものであり、本件特許権には無効とされるべき事由が存在しないことから、本件特許権を侵害するものである。原告の本件告知行為は、その時点においては、内容ないし態様において社会通念上著しく不相当であるとはいえず、正当な権利行使の一環として違法性が阻却されるし、また、原告には故意又は過失がない。差止めの必要性は争う。
8 被告フィールドロジックの損害の発生及びその額(争点7)
(被告フィールドロジックの主張)
(1) 逸失利益585万2000円
被告フィールドロジックは、令和2年9月、スマイルエナジーから被告製品及び周辺機器40セットを受注し、1セット当たり15万4000円(消費税込)で納品したところ、令和2年下期から令和5年下期までの間に、前記40セットを含め合計230セットを販売する見込みであった。しかし、原告による本件告知行為に
5 より、スマイルエナジーは、その後予定していた被告製品等の発注を見合わせるこ
ととなり、被告フィールドロジックは、スマイルエナジーから、①事件の結論が出るまでは取引を再開しない旨の通告を受けた。被告製品及びその周辺機器の1セット当たりの被告製品の利益率は概ね20%であることから、原告の本件告知行為による逸失利益は585万2000円(=154,000円×190 セット×20%)を下らない。
(2) スマイルエナジーの弁護士費用165万円
スマイルエナジーは、本件告知行為を受けて、被告製品の製造、販売等を継続すべきか否かを検討するため、法律事務所に対し、リーガルリサーチを依頼して合計265万2100円を支払った。被告フィールドロジックは、スマイルエナジーに対し、やむを得ず、その一部である165万円を支払った。
(3) 信用棄損300万円
原告の本件告知行為に基づく被告フィールドロジックの信用棄損による損害は300万円を下らない。
(4) よって、被告フィールドロジックは、原告に対し、損害賠償金1050万2
000円の一部である1000万円に弁護士費用を加えた1100万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。
(原告の主張)
否認又は争う。
第4 当裁判所の判断
1 本件明細書の記載本件明細書には次の記載がある。
(1) 技術分野【0001】「本発明は、発電制御装置及びそれを用いた太陽光発電の発電制御システムに関する。」
5 (2) 背景技術【0002】「従来、太陽光発電システムは、電力会社との売買契約に従って、余剰電力は商用電力線に逆潮流させ電力会社に売電されていた。しかし、太陽光発電のような分散電源が増加するにともない、逆潮流による電力系統の電圧変動という弊害が生じることとなった。そのため、現在では太陽光発電システムから電力会社への逆潮流を回避する必要が生じている。逆潮流を抑制し、太陽電池が発電する電力(発電電力)を制御する方法として、例えば…特許文献1には、消費電力に対する発電電力の差分値が閾値以下になると太陽電池の発電電力を制御するシステムが、特許文献2には、消費電力に対する発電電力の不足分である受電電力が閾値以下になると太陽電池の発電電力を制御するシステムが開示されている。」(3) 発明が解決しようとする課題【0004】「しかしながら、いずれのシステムにおいても、消費電力に対する発電電力の差分値と閾値とを比較判定し、太陽電池の発電電力を制御するものであった。このようなシステムでは、過剰に発電電力を抑制する結果、太陽電池の発電可能な電力を十分に活用できない。本発明は、商用電力線への逆潮流を回避しながら太陽電池の発電効率を向上させることができる自家消費型の発電制御システム、及びそれに使用する発電制御装置を提供することを課題とする。」(4) 課題を解決するための手段【0005】「本発明に係る発電制御システムは、発電電力を制御するパワーコンデショナと、負荷に接続された受変電部と、前記負荷の消費電力を取得すると共に前記パワーコンデショナの出力を制御する発電制御装置と、を備え、前記発電制御装置は、発電電力の上限値を消費電力の関数として出力指令値を算出し、前記出力指令値に基づ
5 いて前記パワーコンディショナの出力が制御されることを特徴とする。」【0006】「また、本発明に係る発電制御システムは、前記関数は、一次関数であることを特徴とする。」【0007】「このような発電制御システムとすることにより、逆潮流を回避するために、太陽電池の発電電力を制御しながら、太陽電池の発電効率を向上させることができる。特にパワーコンデショナによる太陽電池の発電電力を制御するためのパラメータである出力指令値を、消費電力についての関数、特に一次関数により算出することにより、容易に、従来過剰に抑制されていた太陽電池の発電電力を有効に利用することが可能となる。」(5) 発明の効果【0017】「本発明によれば、逆潮流を回避しながら太陽電池の発電効率を向上させることができる自家消費型の発電制御システム及びそれに使用する発電制御装置を提供することができる。」
2 本件各訂正発明の技術的範囲への属否(争点1)について(1) 被告製品について前提事実(4)記載のとおり、被告製品には、本件仕様①~③があり、このうち本件仕様②に限り、受変電設備からの買電データ計測と PCS からの発電計測とに基づいて、消費電力を計測して、消費電力に基づいて PCS を制御する機能を有しているのであるから、被告製品のうち本件仕様②に係るプログラムが稼働しないものは、本件各訂正発明の構成要件を全て充足するとはいえないことは明らかである(構成要件 2D、2E、3A、6B、6C を充足しない。)。したがって、被告製品のうち本件仕様②に係るプログラムが現に稼働するものについての本件各訂正発明の技術的範囲の属否について検討する(以下、本件仕様②
5 に係るプログラムが現に稼働する被告製品を「被告製品②」という。)。
(2) 被告製品②の構成ア 証拠(甲4、5、14、15、乙4~8、25)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品②の構成は、次のとおり認められる。a 太陽電池の発電電力及び負荷の消費電力を取得すると共に PCS の出力を制御する発電制御装置を備え、b 前記発電制御装置は、「消費電力×制御閾値<PCS 定格電力」の場合は、「消費電力×制御閾値/PCS 定格電力」を制御指令値として算出し、「消費電力×制御閾値≧PCS 定格電力」の場合は、発電電力の上限値が PCS 定格電力となる制御指令値を算出し、c 前記制御指令値に基づいて、前記 PCS を制御することで、「発電電力≦消費電力×制御閾値」を実現して逆潮流を回避することを特徴とするd 小型計測端末イ これに対し、被告らは、構成aに関し、被告製品②が太陽電池の発電電力を取得することはない旨を主張する。しかし、前提事実(4)記載のとおり、被告製品は、自家消費型発電制御システムにおいて、消費電力と発電電力を比較し、PCS に対して消費電力を上回らないよう出力制御命令を行っているのであり、太陽電池の発電電力を取得していることを前提としている。また、証拠(甲4、5、14、15、乙4、5、25)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品のパンフレットやウェブサイトには、「発電電力の計測 PCS との通信(RS485 もしくは Ethernet 通信)で計測」との記載や「計測端末の小型モニタで発電・制御状況の確認が可能です。ディスプレイと組み合わせ、 用途にもご利用いただけます。 と記載された付近にPR 」 「発電電力 62.5kw」や「現在の発電電力 8.6kw」と記載された計測端末の画面や大型ディスプレイの画面が表示されていることが認められ、被告製品②は太陽電池の発電電力を取得しているものと認められる。したがって、被告らの主張は採用できない。
(3) 本件訂正発明2及び3について
5 本件訂正発明2及び3に係る発電制御システムは、PCS、受変電部及び発電制御装置を備えた装置によって構成されているところ、被告製品②は、このうち発電制御装置を備えた端末に該当するものであって、被告製品②自体は PCS 及び受変電部を備えていない。したがって、被告製品②は、構成要件 2A、2B 及び 3A をいずれも充足しない。
(4) 本件訂正発明6についてア 構成要件 6A被告製品②の構成 a は構成要件 6A を充足する。イ 構成要件 6B、6C前記(2)記載のとおり、被告製品②は、「消費電力×制御閾値<PCS 定格電力」の場合は、「消費電力×制御閾値/PCS 定格電力」を制御指令値として算出し、「消費電力×制御閾値≧PCS 定格電力」の場合は、発電電力の上限値が PCS 定格電力となる制御指令値を算出し、前記制御指令値に基づいて、前記 PCS を制御することで、「発電電力≦消費電力×制御閾値」を実現して逆潮流を回避することを特徴としており、これは、発電電力の上限値が「消費電力×制御閾値」であることを示している。ここで発電電力上限値を「P(t)」、消費電力を「S(t)」、制御閾値を a(0≺a≺1)とすると、被告製品②の前記式は P(t)=aS(t)と表記され、S(t)-P(t)= S(t)-aS(t)、S(t)-P(t)=(1-a)S(t)と順次変形することができるから、被告製品②は、発電電力の上限値と消費電力との差分が消費電力の一次関数となるよう設定して出力指令値を算出しているものと認められる。したがって、被告製品②の構成 b 及び c は、構成要件 6B 及び 6C を充足する。これに対し、被告らは、本件訂正発明6のゼロ次係数「b」は、作用効果を達成する上で、基本的には正の値又は負の値が設定されることになるところ、被告製品②はこれが常に「0」であるから、構成要件 6B 及び 6C を充足しない旨を主張する。しかし、訂正後請求項6では、単に「一次関数」とのみ記載されており、ゼロ次係数については特段の限定はされていない。一方、本件明細書によれば、ゼロ次係数
5 は、蓄電池の蓄電可能量や時間、消費電力、発電性能、設置箇所、季節、時刻等に応じて変化させ、発電電力を有効に利用することができる旨の記載 【0011、( 0034、0053、0060 等】)があり、種々の事情により b の値を変化させることが予定されているとはいえるものの、このことから b を0で固定することを排除しているとはいえないし、その他、これをうかがわせる本件明細書上の記載はない。したがって、被告らの主張は採用できない。ウ 被告製品②の構成 d が構成要件 6D を充足することに争いがない。エ 以上から、被告製品②は、本件訂正発明6の各構成要件を充足する。
3 直接侵害及び間接侵害の成否(争点2)について(1) 被告らの行為原告は、被告らが、平成30年5月頃から、業として、被告製品を製造、販売し、又は販売の申出をしている旨を主張することから、この点について検討する。前提事実(5)記載のとおり、被告フィールドロジックは、被告製品を販売しており、証拠(乙9)及び弁論の全趣旨によれば、被告インタープローブは、少なくとも令和元年6月30日までは、被告フィールドロジックに対し、被告製品を販売していたことが認められる。しかし、これを超えて、被告らが、被告製品を販売等していたことを認めるに足りる証拠はない。(2) 直接侵害について原告は、被告らが、被告製品②と PCS の接続作業等を行っており、当該接続作業等をもってシステム全体の「製造」行為を行っているといえるから、本件訂正発明2及び3について直接侵害が成立する旨を主張する。しかし、原告の主張を前提としても、被告製品②がシステム全体の一部を構成することに変わりはなく、このことから、被告らの行為が本件訂正発明2及び3の直接侵害を構成することにはならない。したがって、原告の主張は採用できない。(3) 間接侵害について
5 ア 被告らの自家消費出力制御システムについて証拠(甲4、14、15、乙4、5、25)及び弁論の全趣旨によれば、被告フィールドロジックは、被告製品のパンフレットやウェブサイトにおいて、被告製品を使用した被告フィールドロジックの自家消費出力制御システム(以下「被告システム」という。)の構成例として、被告製品②が PCS に対し出力制御命令を送り、PCS が被告製品②に対し発電計測の結果を送ると共に、太陽電池及び受変電設備とも連携し、受変電設備が、電力会社やオフィス、工場等と連携している旨を記載していることが認められ、被告システムの構成は次のとおり認められる。a’ 太陽電池の発電電力を制御する PCS と、b’ 負荷に接続された受変電設備とc’ 前記負荷の消費電力を取得すると共に前記 PCS の出力を制御する発電制御装置とを備え、d’ 前記発電制御装置は、「消費電力×制御閾値<PCS 定格電力」の場合は、「消費電力×制御閾値/PCS 定格電力」を制御指令値として算出し、「消費電力×制御閾値≧PCS 定格電力」の場合は、発電電力の上限値が PCS 定格電力となる制御指令値を算出し、e’ 前記制御指令値に基づいて、前記 PCS を制御することで、「発電電力≦消費電力×制御閾値」を実現して逆潮流を回避するf’ 自家消費出力制御システムそして、証拠(甲5)及び弁論の全趣旨によれば、被告フィールドロジックは、蓄電池付き太陽光発電システムを販売していることが認められ、これを踏まえると次のとおり認められる。g’ 前記システムは、さらに蓄電池を備えることを特徴とする自家消費出力制御システム以上によれば、被告システムの構成 a’~c'及び f’は、構成要件 2A~2C 及び 2Fを充足し、前記2(4)イと同様に構成 d’及び e'は、構成要件 2D 及び 2E を充足す
5 る。また、構成 g'は、構成要件 3A を充足する。したがって、被告システムは、本件訂正発明2及び3の各構成要件を充足する。イ 特許法101条1号について間接侵害について検討するに、特許法101条1号の「その物の生産にのみ用いる物」とは、抽象的ないし試験的な使用の可能性では足らず、社会通念上、経済的、商業的ないしは実用的観点からみて、特許発明に係る物の生産に使用する以外の他の用途がないことをいうと解するのが相当である。被告製品②には、被告システムに使用される以外に、社会通念上、経済的、商業的ないしは実用的であると認められる他の用途があるとはいえないから、被告製品②は「その物の生産にのみ用いる物」に該当する。被告らは、被告製品には、本件仕様②のみならず、本件仕様①及び③があること、被告製品は蒸気タービン発電システムの計測器として使用されていること、被告製品のメイン基板として使用されているコンピュータは汎用的な小型コンピュータであることから、拡張ボードと組み合わせることにより種々の用途に使用することができることを指摘して、被告製品には他の用途がある旨を主張する。しかし、被告システムに使用され、本件特許権侵害が問題となるのは被告製品のうち本件仕様②に係るプログラムが現に稼働したものに限られるところ、前提事実(4)及び前記2(1)のとおり、被告製品にインストールされている本件仕様①~③に係るプログラムに対してキッティング作業を行うことでいずれかのプログラムが解放されて稼働することになるが、同作業は被告フィールドロジック以外の者が行うことができず、いったん設定された仕様の変更も、被告フィールドロジックが特殊ツールを使って同作業を行い、再設定済みの機器を現地に送付するほかないのである。そうであれば、本件仕様②が稼働していない被告製品(本件仕様①ないし③のいずれも稼働していない製品も含む。 に関しては、) 被告システムに使用されるとはいえないから、「その物の生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)ないし「その物の生産に用いる物」(同条2号)に該当するとはいえない。また、本件仕様①ないし③のい
5 ずれも稼働していない被告製品について、顧客の要望に応じて被告フィールドロジックが本件仕様①又は③に係るプログラムを解放する可能性はあり、そのような態様での被告製品の使用が、社会通念上、経済的、商業的ないしは実用的な用途でないとも認められない。一方、本件仕様②に係るプログラムが現に稼働した被告製品②については、前記のとおり、被告システムに使用されるものと認められるところ、被告製品②の使用を続けながら、本件仕様①又は③に係るプログラムが稼働する使用を行うことはできないから、かかる使用を被告製品②の他の用途ということはできないし、その他、被告らが指摘する用途は、いずれも被告製品②の用途以外のものであるから、被告らの主張は採用できない。なお、被告らは、被告製品のうち本件仕様②を稼働させた場合、太陽光発電システムのほかにも風力発電システム及び小水力発電システムにも使用される旨を主張するが、これを裏付ける証拠はなく、実用的な用途であるとは認められない。ウ 前記イのとおり、本件仕様②が稼働していない被告製品は、特許法101条2号の「その物の生産に用いる物」に該当しない。また、本件仕様②が稼働している被告製品②については、同号に基づく間接侵害の成否を検討するまでもなく、前記イのとおり、同条1号に基づく間接侵害が成立するものと認められる。(4) 小括以上から、被告フィールドロジックについて、本件訂正発明6に係る本件特許の直接侵害、本件訂正発明2及び3に係る本件特許の間接侵害が成立するものと解され、被告インタープローブについて、令和元年6月30日までの間、本件訂正発明6に係る本件特許の直接侵害、本件訂正発明2及び3に係る本件特許の間接侵害が成立するものと解される。
4 公然実施発明に基づく本件訂正発明2及び6の新規性欠如及び本件訂正発明3の進歩性欠如の有無(争点3-1)について(1) 証拠(乙26~38、40~48、53、56、69、70、73、80、81、証人P1)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。なお、乙2
5 6,28,31,39,40ないし42はいずれも真正に成立したものと認められる(乙72、73、証人P1、弁論の全趣旨)。ア 被告フィールドロジックの従業員であったP1氏は、自家消費型太陽光発電制御システムの開発を行っており、システム仕様書(乙26。以下「本件仕様書」という。)を作成した。イ P1氏は、本件仕様書に次の記載をした。平成29年9月1日作成(同年11月14日更新)a 自家消費型太陽光発電制御システムには、逆潮流を生じさせないために、逆電力継電器(RPR)が系統側に設置されており、これが逆潮流を探知すると PCS を停止させることから、自家消費の場合は、RPR を動作させないために消費電力の最小閾値が PCS の定格基準となっていた旨b これに対し、消費電力を見ながら発電を制御できれば、工場などの大規模な施設において、工場の不稼働時の消費電力を考慮することなく規模の大きな発電システムを構築できる旨c 発電の制御方法として、発電電力が消費電力を超えないように制御しなければならないが、プログラム処理や PCS の動作にはタイムラグがあるから、ある程度条件の判定に余裕を持たせる必要があり、現地の発電状況や消費状況を見ながら適切な幅を見つける必要がある旨d DC3(被告製品)のリリースより早く自家消費型太陽光発電制御に対応するため、DC2 と PLC の構成によって実現方法を検討する旨PLC は、PCS の計測、消費電力の計測、電力比較、出力制御を行い、DC2 は、AI/DI計測に加えて、PCS の計測情報、制御情報を取得し、また、制御閾値の変更を可能にする旨e 消費電力×閾値>発電電力の場合は、制御値を100%として制御を行わず、消費電力×閾値≦発電電力の場合は、(消費電力×閾値)/PCS 定格を出力制御値とする旨
5 平成29年12月25日作成a RPR を動作させないため、制御装置が消費電力を計測することにより発電電力を適切な値に制御する必要がある旨及びその自家消費型太陽光発電制御システムにおける出力制御の模式図b 発電電力と需要電力を比較しながら、需要電力×指定%≧発電電力となるよう制御ユニットから PCS へ制御値を送信し、需要電力より発電が一定値以上低い場合は制御を行わない旨c 制御閾値が高い場合、発電電力の利用率(消費率?)は高くなり、需要電力を超えて発電してしまい、RPR が動作して PCS が停止する可能性が高くなる旨制御閾値が低い場合、需要電力を超えて発電し、RPR が動作して PCS が停止する可能性は低くなるが、発電電力の利用率は下がる旨ウ 被告フィールドロジックは、平成29年12月、第三者から、ヤクルトが自家消費型太陽光発電制御システムの構築を検討しており、そこで使用する制御装置を納品することの打診を受け、第三者との間で仕様等について協議を行った。エ P1氏は、本件仕様書に基づき、ヤクルト向けの仕様書(乙28、31)を作成するなどした。また、P1氏は、平成30年1月5日時点で、発電電力を制御するプログラムのうち、制御値を算出する次のプログラムを制作した。従前、本件仕様書(前記イe)では、「発電電力」と「消費電力×閾値」を比較して制御指令値を算出していたのに対し、ここでは、「PCS 定格電力」と「消費電力×閾値」を比較して制御指令値を算出するようになった。消費電力×制御閾値<PCS 定格電力の場合、発電電力の上限値が消費電力×制御閾値となるように、消費電力×制御閾値/PCS 定格電力を制御指令値として算出する。消費電力×制御閾値≧PCS 定格電力の場合、発電電力の上限値が PCS 定格電力となる制御指令値を算出する。
5 オ 被告フィールドロジックは、平成30年1月29日、第三者との間で、ヤクルト向けの仕様書を確定させ、DC2、PLC、その他関係機器一式を譲渡する契約を締結した。カ P1氏は、平成30年2月13日、ヤクルトにおいて、DC2 等の関係機器を設置し、委託を受けた請負業者は、同月19日、ヤクルトにおいて、PCS 等の関係機器を設置して太陽光発電設備工事を完了させ、ヤクルトに対し、自家消費型太陽光発電制御システム(以下「ヤクルト向けシステム」という。)を引き渡した。(2) P1発明の構成等前記認定のとおり、P1氏は、平成30年1月5日時点で、P1発明、すなわち、DC2 及び PLC で構成されており、太陽電池の発電電力及び負荷の消費電力を取得すると共に、PCS の出力を制御し、「消費電力×制御閾値<PCS 定格電力」の場合は、「消費電力×制御閾値/PCS 定格電力」を制御指令値として算出し、「消費電力×制御閾値≧PCS 定格電力」の場合は、発電電力の上限値が PCS 定格電力となる制御指令値を算出し、前記制御指令値に基づいて、前記 PCS を制御することで、「発電電力≦消費電力×制御閾値」を実現して逆潮流を回避する制御装置を考案し、同年2月13日、納品先のヤクルトに対し、DC2 及び PLC を設置する作業を行った。また、被告フィールドロジックは、P1氏からP1発明を知得し、第三者を介して、ヤクルトに対し必要な機器を納品し、委託を受けた請負業者は、太陽光発電設備工事を完了させ、ヤクルト向けシステム、すなわち、太陽電池の発電電力を制御するPCS と、負荷に接続された受変電部(電力会社からの電力供給を受けるために備えられる(乙47)。)と、前記負荷の消費電力を取得すると共に前記 PCS の出力を制御する発電制御装置とを備え、前記発電制御装置は、「消費電力×制御閾値<PCS定格電力」の場合は、「消費電力×制御閾値/PCS 定格電力」を制御指令値として算出し、「消費電力×制御閾値≧PCS 定格電力」の場合は、発電電力の上限値が PCS 定格電力となる制御指令値を算出し、前記制御指令値に基づいて、前記 PCS を制御することで、「発電電力≦消費電力×制御閾値」を実現して逆潮流を回避する自家消
5 費型太陽光発電制御システムを構築して、同月19日、ヤクルトに対し、これを引き渡した。以上によれば、P1発明は、本件訂正発明6の各構成要件を充足し、ヤクルト向けシステムは、本件訂正発明2の各構成要件を充足する。(3) 公然実施について特許法29条1項2号所定の「公然実施」とは、発明の内容を不特定多数の者が知り得る状況でその発明が実施されることをいうところ、前記認定のとおり、被告フィールドロジックは、本件特許出願前の平成30年2月19日までの間に、第三者及びヤクルトに対し、P1発明及びヤクルト向けシステムを納品し、これを実施した。ア 本件訂正発明2及び6について本件訂正発明2及び6は、特許出願前に日本国内において公然実施された発明であるから、新規性を欠く。イ 本件訂正発明3について本件訂正発明3とヤクルト向けシステムとを比較すると、本件訂正発明3は、蓄電池を備えているのに対し、ヤクルト向けシステムでは、蓄電池を備えていない点が相違している。証拠(乙20、21、49、50)及び弁論の全趣旨によれば、本件特許の出願時において、特許公報において、太陽光発電システムに蓄電池を備える構成とすることが公開されており、太陽電池による発電電力を補完するものとして蓄電池を備えた太陽光発電システムは産業用・住宅用として一般的に設置されていたことが認められるから、このような構成は周知の技術であったと認められる。そうすると、当業者にとって、ヤクルト向けシステムに蓄電池を備える構成とすることの動機付けが存在し、蓄電池からの電力が太陽電池による発電電力を補完する構成とすることに阻害要因が存在することをうかがわせる事情はないから、当業者は、ヤクルト向けシステムに蓄電池を備えることを容易に想到し得たといえる。したがって、本
5 件訂正発明3は進歩性を欠く。(4) 原告の主張についてア これに対し、原告は、P1発明と被告製品②とは、ハードウェアの構成やプログラムのソースコードなどが相違する上、当該プログラム自体が事後的に改変された可能性を排除できない旨を主張する。しかし、本件各訂正発明の新規性及び進歩性の有無は、本件各訂正発明について検討すべきものであって、被告製品②との相違点の有無が本件各訂正発明の新規性及び進歩性の判断に直接的に影響するものではない。なお、この点を措くとしても、証拠(乙39、52、73、証人P1)及び弁論の全趣旨によれば、被告フィールドロジックでは、開発中のプログラムに対する修正や改変が行われた場合、その履歴を保存しているところ、P1発明の納品後、現場で制御値を設定するなどの調整を行ったほか、プログラムの修正等が加えられた履歴は残っていないことが認められる。その他、P1発明の開発経過やヤクルトとの取引経過等に関する関係証拠をみても、P1発明のプログラムに事後的な改変が加えられたことをうかがわせる事情は見当たらない。イ また、原告は、DC2 は、外部から一見してその制御の方法がわかるものではないから、当該制御方法を搭載した製品が1社に納品されて使用されたからといって、公然実施となるものではない旨を主張する。しかし、前記認定のとおり、被告フィールドロジックは、第三者に対しP1発明を譲渡し、最終的にヤクルトに納品されているところ、当該第三者やヤクルトがP1発明の内容等について守秘義務を負っていることやその解析を禁止されていることをうかがわせる事情はない。そうすると、少なくともヤクルトに対する納品をもって、P1発明は公然と実施されたと認めるのが相当である。したがって、原告の主張は採用できない。
(5) 以上から、本件特許は、新規性又は進歩性が欠如していることから、無効審判により無効とされるべきものであり、原告は、被告らに対し、本件特許権を行使
5 することができない(特許法123条1項、104条の3第1項、29条1項2号、2項)。
5 虚偽事実の告知による不正競争該当性及び差止めの要否(争点6)について原告と被告フィールドロジックが競争関係にあること、及び、原告が、令和2年10月21日、被告フィールドロジックの取引先であるスマイルエナジーに対し、被告製品が本件特許権を侵害する旨等を記載した書面を送付した本件告知行為をしたことについて当事者間に争いがない。前記4のとおり、本件特許は無効審判により無効とされるべきものであり、被告製品が本件特許権を侵害するとは認められないにもかかわらず、本件告知行為は、被告製品が本件特許権を侵害する旨等を指摘するもので、原告と競争関係にある被告フィールドロジックの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知等する行為である。したがって、本件告知行為は、被告フィールドロジックに対する不正競争(不競法2条1項21号)に該当する。そして、原告は、①事件の訴訟係属中であり、被告製品の本件各訂正発明の技術的範囲への属否や本件各訂正発明の無効理由の有無等が争われている中で本件告知行為をしたのであり、原告には、この点について少なくとも過失が認められる。また、原告は、本訴訟係属中に本件告知行為を行っていること等に照らすと、被告フィールドロジックには、被告フィールドロジックが被告製品を販売することが本件特許権を侵害する旨を被告フィールドロジックの取引先その他の第三者に告知及び流布することの差止めを求める必要性が認められる。
6 被告フィールドロジックの損害の発生及びその額(争点7)について(1) 逸失利益 184万8000円証拠(②事件甲4、乙74~76、83、証人P2)及び弁論の全趣旨によれば、スマイルエナジーは、令和2年10月5日から、自家消費型太陽光発電制御システムにおいて逆潮流の発生等を防止する商品の販売を開始することになり、スマイルエナジーの実際の受注状況によるものの、被告フィールドロジックから、被告製品
5 を、同年下期に30セット、令和3年上期及び下期に各30セット、令和4年上期に32セット、下期に28セット、令和5年上期に32セット、下期に38セットを購入する計画を立て、令和2年9月頃には、同年下期分として、計画より10セット多い40セットを購入し、被告フィールドロジックはこれを納品したが、本件告知行為によって、それ以降、被告フィールドロジックとスマイルエナジーとの取引は中断していることが認められる。前記認定のとおり、被告製品の販売計画は、スマイルエナジーの受注状況によってその実効性が左右されるものの、同計画の販売予定数によって被告製品の販売価格が決定され(証人P2)、現に令和2年下期は同計画を上回る数量を販売していることに照らすと、本件告知行為がなければ、令和3年下期までについては、同計画に沿った販売ができたものと推認され、これを覆す事情はない。また、証拠(乙74、83、証人P2)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、スマイルエナジーに対し、被告製品及び周辺機器を諸経費込みで1セット当たり15万4000円(税込み)で販売しており、被告製品の販売による利益率は概ね20%であることが認められる。したがって、本件告知行為と相当因果関係のある逸失利益は、184万8000円(=154,000 円×60 セット×20%)であると認められる。(2) スマイルエナジーの弁護士費用スマイルエナジーが支払った弁護士費用の一部を被告フィールドロジックが負担したものであり、本件告知行為との間に相当因果関係があるとは認められない。(3) 信用棄損による損害 100万円本件告知行為の内容、送付先、送付回数のほか、現に被告フィールドロジックとスマイルエナジーとの取引が中断していること等の諸般の事情に照らすと、被告フィールドロジックには無形の損害が発生しているものと認めるのが相当であるところ、前記諸事情に加え、取引中断による積極損害については逸失利益で評価されていることその他本件に顕われた一切の事情を考慮すると、その額は、100万円と
5 認めるのが相当である。(4) 弁護士費用 28万4800円本件告知行為と相当因果関係のある弁護士費用は、28万4800円と認めるのが相当である。
7 結論以上から、その余の争点について判断するまでもなく、原告の被告らに対する請求には理由がなく、被告フィールドロジックの原告に対する請求は、損害賠償金313万2800円及びこれに対する不正競争行為の日である令和2年10月21日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払並びに差止めを求める限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官
武 宮 英 子
裁判官
杉 浦 一 輝
裁判官
峯 健 一 郎
(別紙)
被 告 製 品 目 録製品名を「DataCube3」とする小型計測端末以上
(別紙)
特 許 権 目 録登 録 番 号 特許第6364567号
5 発明の名称 発電制御装置及びそれを用いた発電制御システム出 願 日 平成30年3月9日出 願 番 号 特願2018-42951号登 録 日 平成30年7月6日以上
(別紙特許公報省略)
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