令和1(ワ)20286等不当利得返還請求事件
判決文PDF
▶ 最新の判決一覧に戻る
裁判所 |
請求棄却 東京地方裁判所東京地方裁判所
|
裁判年月日 |
令和4年6月30日 |
事件種別 |
民事 |
対象物 |
片手支持可能な表示装置 |
法令 |
特許権
特許法126条1項37回 特許法126条5項11回 特許法104条の33回 特許法44条1項2回 特許法126条6項2回 特許法29条1項3号2回 特許法17条の21回 特許法123条1項2号1回 特許法123条1項1号1回 特許法126条1項4号1回
|
キーワード |
実施69回 無効46回 新規性26回 進歩性18回 刊行物13回 審決10回 分割10回 無効審判7回 特許権6回 訂正審判3回
|
主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
1 第1事件
2 第2事件25
1 事案の要旨
36号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(平成23年8月305
10億円の合計110億円の不当利得返還請求権の一部として、110万円15
2 前提事実(当事者間に争いがない事実又は後掲の証拠(以下、書証番号は特
5262号。以下「本件原々々出願」という。)の一部を分割して新たな特10
1A 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んで
1B 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、
1C 前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左
1D ユーザーから見て左右方向に見開きにされたときの前記「2つの
1E 前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
1F 前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
1G を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
2A 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んで
2B 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、
2C 前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とし15
2D 前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とし
70度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するた
2E 前記「2つの表示板」の、「ユーザーから見て縦方向の線を境とし
2F を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
3A 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んで
3B 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、
3C 前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右10
3D 前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにさ
3E を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
4A 画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示板」を含んでおり、
4B 前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」
4C 前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」
4D を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
5E 次の(a)~(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持可能
5A (a)画面をそれぞれ出力する「複数の表示板」が、それぞれが
5B (b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがそ
5C (c)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示
5D (d)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示
6E 次の(a)~(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持可能5
6A (a)画面をそれぞれ出力する複数個の表示板が、それぞれが表
6B (b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがそ10
6C (c)ユーザーから見て縦方向の線を境にして、その右側部分と
6D (d)ユーザーから見て縦方向の線の右側部分と左側部分とを、
10A 請求項1から9までのいずれかにおいて、さらに、
10B 前記表示板に「ユーザーによるデータ入力のために使用される、
10C を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
2次訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2及び10は、別紙
2-2特許請求の範囲(第2次訂正後)記載のとおりである(甲21)。
1A’ 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であっ
1B’ 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態に
1H’ 「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の各平面10
1C’ 前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左15
1D’ 「前記2つの表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにさ
1E’ 前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
1F’ 前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
1I’ 「電車の中で、戸外で若しくは外出先で使用する、立ったまま
1つの角度」になったときは、前記中間左右見開きストッパにより、
1G’ ことを特徴とする情報入力機能付き画面の表示機能をも備えた
2A’ 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であっ25
2B’ 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態に5
2C’ 前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境と
2D’ 「前記2つの表示板の、ユーザーから見て縦方向の線を境とし15
2E’ 前記「2つの表示板」の、「ユーザーから見て縦方向の線を境と
2G’ 「電車の中で、戸外で、外出先で、又は立ったままで使用する
2F’ ことを特徴とする情報入力機能付き画面の表示機能をも備えた
10E’ 次の(a)~(g)の内容を含むことを特徴とする情報入力
10A’ (a)画面をそれぞれ出力する「2つの表示板」であって、
10B’ (b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザー25
10C’ (c)前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれ
10F’ (d)「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の
10G’ (e)「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の
10D’ (f)前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に
120度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの
10H’ (g)「電車の中で、戸外で若しくは外出先で使用する、立っ
020-800098号。以下「本件無効審判」という。)を請求し、原告
1A” 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であっ10
1B” 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態に
1H” 「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の各平面
1C” 前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左
1D” 「前記2つの表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにさ
1E” 前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
1F” 前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
1I” ユーザーが、「前記2つの表示板の前記各平面の間の見開き角度」
1G” ことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にし
2A” 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であっ15
2B” 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態に
2C” 前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境と
2D” 「前記2つの表示板の、ユーザーから見て縦方向の線を境とし5
2E” 前記「2つの表示板」の、「ユーザーから見て縦方向の線を境と
2G” 「電車の中で、戸外で、外出先で、又は立ったままで使用する
2F” ことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にし
3A” 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含ん10
3B” 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態に
3F” 前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約1820
0度の角度で見開きにされた状態へと向かうように前記2つの表示
3C” 前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左
3D” 前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きに5
3G” 前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表10
3H” 前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が前記2つの表示
170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」になったとき、
3E” を備えたことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ
4A” 画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユ
4B” 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態に
4E” 「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の
4C” 前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境と
0度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約150
4F” 前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表
4D” を備えたことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ
5E” 次の(a)~(g)の内容を含むことを特徴とする2つの表示15
5A” (a)画面をそれぞれ出力する「2つの表示板」が、それぞれ
5B” (b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーが
5C” (c)前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた
5F” (d)前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに5
5G” (e)「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平
5D” (f)前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見
50度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」
5H” 前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表
5I” (g)前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2
0度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」に
6E” 次の(a)~(g)の内容を含むことを特徴とする2つの表示
6A” (a)画面をそれぞれ出力する2つの表示板が、それぞれが表
6B” (b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーが25
6C” (c)ユーザーから見て縦方向の線を境にして、その右側部分
6F” (d)前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに
6G” (e)「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平
6D” (f)ユーザーから見て縦方向の線の右側部分と左側部分とを、20
6H” 前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表
6I” (g)前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2
3 争点
1 争点1(被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか)について
2つの表示板の間には「回動中心(回転軸)を中心とする角度」は存在
180度の完全見開きの状態になった際には2つの表示板が略水平面で
1及び92ないし107及び108の、それぞれ画面が表示される
2つの「表示板」の「画面が表示される側」の面と面とが、「左右見5
105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるよう
2 争点2(無効の抗弁(特許法104条の3第1項)の成否)について
0)による補正(以下「本件補正1」という。)は、以下の(イ)ないし(エ)
1つの画面を構成できる」(請求項2)ようにすることで、上記課題を解
180度」との記載はあるものの「120度から170度」との記載は
1月10日となる。
5】)、「この第2実施例では、前記枠体11~20が、図3(正面図)お
5aには1チャンネルの番組を表示させるとともに、LCD画面7aに
20度から180度」との記載はあるものの、「約105度から約175
70度」という数値範囲についてはなんら記載がなく、また固定手段の
0度」で固定することについての記載はない。そして、本件原出願の当
70度」とすることの効果が特に強調されていることも踏まえれば(【0
040】)、これらの点は、本件原出願の当初明細書等の記載から自明と
2(b)の折り曲げ状態」に対応する「90度から175度までの間
20度から170度までの範囲内の任意の角度」を形容し限定するも
6/13頁第1段落)等に接した当業者等が、技術常識又は周知の事
175度までの範囲内」に数値限定したものにすぎない。10
037】)に全て記載されている。
30日まで遡及したとしても、乙1文献は、同日より前の平成3年4月1
8日に頒布されているから、本件出願前に頒布された刊行物(特許法29
14とが互いに折り畳まれた折り畳み状態(図2)へと自在に折り曲げ
4)を経て、見開き状態(図1)にすることができること(図1、図2、
1a’ 略長方形の液晶ディスプレイで情報を表示できる第1のパネル
12と略長方形の液晶ディスプレイで情報を表示できる第2のパ
1b’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、それらが互いに折10
1c’ 蝶番16に設けられたロッキング機構であって、第1のパネル
12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て左右方向に見開
1d’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て
1e’ 第1のパネル12と第2のパネル14とが互いに折り畳まれた
1f’ 第1のパネル12と第2のパネル14との間の角度がユーザー
1g’ を備えた片手で使用することができるコンピュータノート10。
2a’ 略長方形の液晶ディスプレイで情報を表示できる第1のパネル
12と略長方形の液晶ディスプレイで情報を表示できる第2のパ
2b’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、それらが互いに折
2c’ 蝶番16に設けられたロッキング機構であって、第1のパネル10
12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て左右方向に見開
2d’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て
2e’ 第1のパネル12と第2のパネル14とが互いに折り畳まれた
2f’ を備えた片手で使用することができるコンピュータノート10。
3a’ 略長方形の液晶ディスプレイで情報を表示できる第1のパネル
12と略長方形の液晶ディスプレイで情報を表示できる第2のパ
3b’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、それらが互いに折
3c’ 蝶番16に設けられたロッキング機構であって、第1のパネル
12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て左右方向に見開5
3d’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て
3e’ を備えた片手で使用することができるコンピュータノート10。
4a’ 液晶ディスプレイで情報を表示できる第1のパネル12と液晶
4b’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、それらが互いに折
4c’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て20
4d’ を備えた片手で使用することができるコンピュータノート10。25
5e’ 次の(a)~(d)の内容を含む片手で使用することができる
5a’ (a)液晶ディスプレイで情報を表示できる第1のパネル12
5b’ (b)コンピュータノート10は、片手で使用することができ
5c’ (c)第1のパネル12と第2のパネル14とを、それらが互
5d’ (d)各液晶ディスプレイ間の角度がユーザーから見て左右方
14とを、各液晶ディスプレイ間の角度が0度から360度の間
6e’ 次の(a)~(d)の内容を含む片手で使用することができる
6a’ (a)液晶ディスプレイで情報を表示できる第1のパネル1220
6b’ (b)コンピュータノート10は、片手で使用することができ
6c’ (c)ユーザーから見て右側部分の第1のパネル12と左側部
6d’ (d)ユーザーから見て右側部分の第1のパネル12と左側部
1b’)、③「ロッキング機構」(同1c’ないし1f’)は、それぞれ、
1Cの「完全左右見開き固定手段」に相当することは明らかであるが、
714号)のマイクロフィルム(乙3。以下「乙3文献」という。)、
11号公報(乙5。以下「乙5文献」という。)に開示されているよう
1等に開示されていることは明らかである。
1文献に記載された発明であるから、新規性を欠く。
7号)に係るPCT出願は、日本国へも平成2年10月5日付けで特願平
2-515540号として国内移行されている(特表平5-501023
38を中心に回動する第2パネル14」とは、互いに独立に回動するも
38)を回転中心として、①それぞれが互いに独立に回動し(前記(イ)参
2と第1軸36との間を何らかの角度で「自動的に『固定』する機能又25
1パネルの回動又は第2パネルの回動を「ユーザーの手作業によること
2つのパネルを互いに『背中合わせ』に折り畳めるようにする」という
1つの角度」になったときは、前記中間左右見開きストッパにより、
0、押圧体90、バネ100等)を設け、機器本体20と表示装置3
0との間の角度を、90度から140度の間の角度で固定する(回動
80、押圧体90、バネ100等)を適用することにより解決し、「耐25
1発明は技術分野が共通する。また、乙4発明は、「表示板2をある傾
1のパネル12を第2のパネル14に対してある傾斜角度で開いて停15
1発明において、本件発明1の構成要件1Dないし1Fの「ストッパ」
9-221725号公報(乙20)、特開昭62-92025号公報(乙
21)、特開平1-282587号公報(乙22)、特開平2-2303
60号公報(乙23)、実願昭58-14518号(実開昭59-122
524号)のマイクロフィルム(乙24)及び実開昭61-46640
3とを電気的に接続する信号線13を通すことができるようになってい
1等)、2つのパネル間で電気通信を可能とする手段(乙1文献7頁35
1項3号)に当たる。
1a 略長方形の画面を表示できるLCDパネル5を設けた枠体1と略
1b 枠体1と枠体2とを、それらが互いに折り畳まれた状態にも、そ
1c 丁番9および丁番10(接続手段)に設けられたストッパであっ
80度となるように固定でき、
1d 枠体1と枠体2とを、ユーザーから見て左右方向に見開きにされ
0度となるように固定でき、
1e 枠体1のLCDパネル5と枠体2のLCDパネル7とが互いに折
1f 枠体1のLCDパネル5と枠体2のLCDパネル7との角度がユ
1g を備えた片手で使用することができるCD-ROM再生専用装置
2a 略長方形の画面を表示できるLCDパネル5を設けた枠体1と略15
2b 枠体1と枠体2とを、それらが互いに折り畳まれた状態にも、そ
2c 丁番9および丁番10(接続手段)に設けられたストッパであっ
80度となるように固定でき、25
2d 枠体1と枠体2とを、ユーザーから見て左右方向に見開きにされ
0度となるように固定でき、
2e 枠体1のLCDパネル5と枠体2のLCDパネル7とが互いに折
2f を備えた片手で使用することができるCD-ROM再生専用装置
3a 略長方形の画面を表示できるLCDパネル5を設けた枠体1と略
3b 枠体1と枠体2とを、それらが互いに折り畳まれた状態にも、そ
3c 丁番9および丁番10(接続手段)に設けられたストッパであっ
80度となるように固定でき、
3d 枠体1と枠体2とを、ユーザーから見て左右方向に見開きにされ20
0度となるように固定できるストッパと、
3e を備えた片手で使用することができるCD-ROM再生専用装置
4a 画面を表示できるLCDパネル5を設けた枠体1と画面を表示で
4b 枠体1と枠体2とを、それらが互いに折り畳まれた状態にも、そ
4c 枠体1と枠体2とを、ユーザーから見て左右方向に見開きにされ
0度となるように固定するためのストッパと、
4d を備えた片手で使用することができるCD-ROM再生専用装置
5e 次の(a)~(d)の内容を含む片手で使用することができるC
5a (a)画面を表示できるLCDパネル5を設けた枠体1と画面を
5b (b)CD-ROM再生専用装置は、片手で使用することができ
5c (c)枠体1と枠体2とを、それらが互いに折り畳まれた状態に20
5d (d)LCDパネル5とLCDパネル7との間の角度がユーザー
6e 次の(a)~(d)の内容を含む片手で使用することができるC
6a (a)画面を表示できるLCDパネル5を設けた枠体1と画面を
6b (b)CD-ROM再生専用装置は、片手で使用することができ
6c (c)ユーザーから見て右側部分の枠体1と左側部分の枠体2と10
6d (d)ユーザーから見て右側部分の枠体1と左側部分の枠体2と
9年11月10日よりも前に遡及することはないから、本件出願には旧特許
8】及び【図9】)を追加するものである。
23条1項1号に該当し、無効とすべきものである。
3 争点3(訂正の再抗弁の成否(第2次訂正))について
075】中の「片手で持つときに、…容易に安定して持ち続けること
1-2は本件明細書に記載した事項の範囲内のものである。
2が「それら(2つの表示板1、2)が互いに接続されている部分」
1】中の「…電子ペン等を操作…ユーザーが指先でデータを入力で5
18】中の「また本実施例においては、…2つの枠体1と枠体2の
7】には、「…またこのような「任意の角度…」自由にその「固定
15・広辞苑第五版)ことなどからみて、前記(e)の「2つの表示板25
2-9は本件明細書に記載した事項の範囲内のものである。
2、4-7、5-1、6-1及び10-2について
8、4-2、4-7、5-1、6-1及び10-2についても、上述の
2-9、3-4ないし3-7、4-5、4-6、5-4ないし5-6、
6-5、6-6及び10-5ないし10-7について
0、2-4、2-5、2-7、2-9、3-4、3-5、3-6、3-
7、4-5、4-6、5-4、5-5、5-6、6-5、6-6、10
0-7
6及び10-7についても、上述の点が同様に当てはまる。
0度から180度の範囲を超えて、180度から360度までの範囲も25
0度までの範囲も含むことは明示的に記載されておらず、それは本件明
4、5-6、6-6、10-5及び10-7についても、上述の点が同
18】の「ストッパがかかって固定できるように構成するようにしても
5度から約170度まで(又は、約110度から約170度)までの間
18】の記載から、「摩擦力により任意の角度で保持できる構成」と、
10-6及び10-7は、上記各訂正事項と同様の訂正事項を含むもの
0度までの範囲も含むことになるところ、そのような角度で2つの表示板
5-6、6-6、10-5及び10-7についても、上述の点が同様に当
4 争点4(訂正の再抗弁の成否(第3次訂正))について
70度までの範囲内のいずれかの角度」の限定又は下位概念化、「中間左
1つの角度」に固定する構成」は、訂正前の請求項2全体との関係で、
4全体との関係で構成要件の直列的付加であるから、特許請求の範囲の
170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」は、訂正前の「約
105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」の限定又は下10
2つの表示板間を固定する中間左右見開きストッパ」は、訂正前の「摩
6全体との関係において構成要件の直列的付加であるから、特許請求の20
1-3においては、「ユーザーの任意の角度」、「任意の角度」、「ユーザ5
60度までの範囲も含むことになる。しかしながら、本件明細書の記
80度から360度までの範囲も含むようなかかる訂正は、新規事項
05度から約170度までの間のいずれかの角度に折り曲げられている
2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の
3次訂正前の上記構成から当然得られる構成であって、表示装置の手段
105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度』となるように10
3次訂正前の上記構成から当然得られる構成であって、表示装置の手段15
126条1項ただし書きのその他の目的にも該当しない。したがって、
5】の記載を参照すれば、訂正事項5-7における「画面が表示され5
5】の記載を参照すれば、訂正事項6-7における「画面が表示され
170度までの間のいずれかの角度に折り曲げられている部分)とそ
5 争点5(本件各発明の実施についての不当利得返還義務の有無及び返還すべ15
1 本件明細書の記載事項等25
889号公報)。
1-(1)-1.略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」
1-(1)-2.略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」
80度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約120度か
1-(1)-3.略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」
1-(2).画面をそれぞれ表示できる「少なくとも2つの表示板」を含20
0度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範
2-(1).画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の(複数の)表示板
5度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約1
55度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの
2-(2).画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示板」を含んでお
3-(1).次の(a)~(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持20
3-(2).次の(a)~(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持
105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から
3-(3).次の(a)~(d)のような内容を含むことを特徴とする表
0度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、摩擦力やストッパや
4-(1).本願発明(上記1、2又は3などに記載の発明)において、
4-(2).上記3の発明は、「次の(e)(f)(g)のいずれか1つ、
4-(3).上記1、2又は3の発明の表示装置であって、「偶数個の表
5.上記1、2、3又は4において、前記左右見開き固定手段は、前記
6.上記1、2、3又は4において、前記左右見開き固定手段は、前記
7.上記1から6までのいずれかにおいて、前記左右見開き固定手段は、
8.上記1から6までのいずれかにおいて、前記左右見開き固定手段は、
9.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記表示板に、「ユ
10.上記1から8のいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可能な
11.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、テレビ放送局か
12.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可
13.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可
14.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、テレビ放送局か
15.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可
05度から約170度まで(又は、約110度から約170度まで)の間
1.本発明の基本的効果.
2.上記の本発明の効果を図8を参照して説明すると、次の(1)~
2の表示画面側(ユーザーに対向する側)の何処かの場所に当てることに
93により各表示板91、92を容易且つ安定的に支持することはできな
92の裏面側も全体として約180度の角度の略水平面となっており、「そ
92の接続部分の表示画面側(ユーザーに対向している側)に当てること25
93の存在により、前記各表示板91、92は、「図示左右方向に、ぶれる
0度の角度のままで一定ということではなく)常にブラブラ・グラグラと
91、92をユーザーが自分の手で約130度の角度に保持し続けなくて
2つの表示板(2つの表示パネル)91、92が、約180度の完全見開
2が、約130度の角度で見開かれた状態で固定されている場合」である。20
3.次に、本発明の効果について、さらに、図9を参照して説明する。15
5aを表示するための表示パネル105とを、互いに折り畳み・見開き自
8を安定的に支持するためにユーザーの親指106を掛けるための「取っ
2つの表示板を見開き状態とすることを提案するだけであるが(【000
5】)、携帯情報端末(PDA)や携帯電話等の移動体通信機器に使用する
2 争点2-2-1(本件各発明についての乙1文献を引用例とする新規性欠如10
4は液晶ディスプレイを有する第2平坦な表面24と液晶ディスプレイ
37の拡開端39を嵌合させ(図6B)、ねじ切りされた端部41を第4
30 and third hinge bracket 32 and is secured by another fastening
14 can hold second panel 14 as rigidly as desired. Each hinge
2はパネル12及び14を保持するのに必要とされる摩擦を増加するた
14 are juxtaposed face to face providing protection 5 to the panel
10 side. In a folded position shown in Fig. 3 the first panel 12
4に示され、かつかなり従来のラップトップ携帯用コンピュータに似た
2のパネル14と、第1のパネル12及び第2のパネル14上の書くた
0、第3の蝶番ブラケット32及び第4の蝶番ブラケット34を含み、
39を嵌合させ(図6B)、
9と第1のパネル12との嵌合をきつくするようにされ、
0度の間の角度、120度から170度の間の角度等)で固定するよ
1と乙1文献に記載された発明との間に相違点(訂正拒絶理由通知に
14が回転」する点。」である。
9Bを形成する。上記圧接部9Aで保持される回転軸止めシャフト1
0の高さ位置は、第2図の側面略図に示すように、回転軸8の軸心8
11は脚部が二又状の可動部固定用ブラケットで、ネジ穴11Aを有25
1と表示板2に実施した要部の斜視外観図である。図面に示すように、
4行)
3頁5行)
12を設けることで、表示体ケース2を任意の位置で停止させることが
14が蝶番手段16によって接続され、ユーザーが座ったり、立ったり、
6を中心とした多数の角度において配向する」場合に、本件周知技術の
9条1項3号)。
1のパネル12及び第2のパネル14上の書くためのスタイラス18を含む
0は、本件発明1及び2と同様に進歩性を欠くものであり、本件発明3ない
3 争点3-1(第2次訂正が訂正要件を満たすか)について
2次訂正後の請求項1には特定がされていないことから、「任意」との用語
80度を超えて360度までの範囲を含むことについては記載されておら20
0度までの範囲が含まれるものと理解でき、「ユーザーの任意の角度」が1820
0度を超えて360度までの範囲を含むことについては、本件明細書に記載
10についての第2次訂正は不適法である。5
4 争点4-1(第3次訂正が訂正要件を満たすか)について
80度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、)中の
80度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、)中の
4と同様の理由で、本件発明3の構成要件3Cにおける「前記各表示板の
70度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、摩擦力やストッパ
4と同様の理由で、本件発明4の構成要件4Cにおける「前記『2つの表15
4と同様の理由で、訂正前の構成要件5C「前記『2つの表示板』のそれ
5度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、摩擦
5 結論
104条の3第1項により、被告に対し本件特許権を行使することができない。
80度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
80度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
70度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト
05度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、摩擦力やス
0度までの範囲内の予め決められた1つの角度」に変化させられたとき、前記回動25
120度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」に変化させら
0度までの範囲内の予め決められた1つの角度」に変化させられたとき、前記回動5
2つの表示板の使用」を可能にする構成であって、ユーザーが、「前記2つの表示板25
80度となったとき、前記2つの表示板の間を前記角度で固定する完全見開き固定
180度となったとき、前記2つの表示板の間を前記角度で固定する完全見開き固
1つの角度」となるように、固定するための中間左右見開きストッパであって、前
180度となったとき、前記2つの表示板の間を前記角度で固定する完全見開き固
1つの角度」になったとき、前記中間左右見開きストッパにより、前記ユーザーに
1 請求項1の訂正事項
2 請求項2の訂正事項25
80度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約120度から5
3 請求項10に係る訂正事項
2つの表示板の間を「ユーザーの任意の角度」で摩擦力により保持するよう
1 請求項1の訂正事項
0度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」に変化させ
2 請求項2の訂正事項
80度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、」を、次の
1つの角度」になったとき、前記中間左右見開きストッパにより、前記ユー
3 請求項3の訂正事項
0度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するための中間左
170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」になったとき、前記中
4 請求項4の訂正事項5
5 請求項5の訂正事項
6 請求項6の訂正事項
1 第2次訂正について
60度」の角度の状態で固定する構成について
160度の折り曲げ状態で固定される。5
80度までの間において、ユーザーの任意の角度で折曲げ且つ見開き状
0度から360度のあらゆる角度から無作為に選択し得る角度を意
1のパネル12)が回動されて「ユーザーの任意の角度」に変化させら
2つの表示板の間を「ユーザーの任意の角度」で摩擦力により保持するよ
1つの角度」になったときは、ストッパにより、前記回動をストップさせ
2 第3次訂正について
80度」(互いにほぼ平行)での見開きの状態で、固定される。
160度の折り曲げ状態で固定される。
1H”、1I”等)について
0度の角度で見開きにされた状態』から挟められて行く動作、をスト
80度未満となる状態のことを意味すると解され、「山状」とは、225
1つの角度」を成すこともなく、被告各製品は構成要件4C”を充足
80度未満となる状態のことを意味すると解され、「山状」とは、2
80度未満となる状態のことを意味すると解され、「山状」とは、2
1つの角度」を成すこともなく、被告各製品は構成要件6D”を充足15
0度の範囲までの範囲内」の角度も当然含まれる))に変化させられたと
6」)及びその近傍部分に形成された「谷状部分」及び「山状部分」:25
1個の回転軸(1軸)に接続されていることなどから)ユーザーが2つの
10が「ラップトップ型パソコン」の態様としても使用され得ることが
10が「ラップトップ型パソコン」の態様としても使用され得ることが
1’ないし4’があったとしても、これらの相違点に係る構成は、乙5
1発明に乙4発明を適用することで、本件原々々出願の出願日におい
2文献ないし乙4文献から上記の具体的構成をまとめた周知技術なる |
事件の概要 |
1 事案の要旨
本件は、発明の名称を「片手支持可能な表示装置」とする特許第33829
36号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(平成23年8月305
日存続期間満了により消滅。以下「本件特許権」という。)の特許権者であった
原告が、別紙1被告製品目録記載の各製品(以下、併せて「被告各製品」とい
う。)が本件特許に係る発明の技術的範囲に属するものであり、被告による被告
各製品の製造、販売が上記発明の実施に当たると主張して、被告に対して、以
下の不当利得返還請求をする事案である。10
(1) 第1事件の請求
被告が平成21年8月5日から平成23年8月30日までの期間における
被告各製品の製造、販売による前記発明の実施料相当額の支払を免れたこと
につき、当該期間の実施料相当額100億円及びこれに対する消費税相当額 |
▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 特許権に関する裁判例
本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。
判決文
令和4年6月30日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和元年(ワ)第20286号 不当利得返還請求事件(第1事件)
令和元年(ワ)第20835号 不当利得返還請求事件(第2事件)
口頭弁論終結日 令和4年2月14日
5 判 決
第1事件・第2事件原告 有限会社コロンブスの卵たち
(以下「原告」という。)
第1事件・第2事件被告 任 天 堂 株 式 会 社
(以下「被告」という。)
10 同訴訟代理人弁護士 塩 月 秀 平
岡 田 誠
上 野 さ や か
松 本 陸
同 補 佐 人 弁 理 士 大 石 幸 雄
15 髙 村 和 宗
佐 藤 宏 樹
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
20 事実及び理由
第1 請求
1 第1事件
被告は、原告に対し、110万円及びこれに対する令和元年8月2日から支
払済みまで、年5分の割合による金員を支払え。
25 2 第2事件
被告は、原告に対し、1億円及びこれに対する令和元年8月20日から支払
済みまで、年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
本件は、発明の名称を「片手支持可能な表示装置」とする特許第33829
5 36号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(平成23年8月30
日存続期間満了により消滅。以下「本件特許権」という。)の特許権者であった
原告が、別紙1被告製品目録記載の各製品(以下、併せて「被告各製品」とい
う。)が本件特許に係る発明の技術的範囲に属するものであり、被告による被告
各製品の製造、販売が上記発明の実施に当たると主張して、被告に対して、以
10 下の不当利得返還請求をする事案である。
(1) 第1事件の請求
被告が平成21年8月5日から平成23年8月30日までの期間における
被告各製品の製造、販売による前記発明の実施料相当額の支払を免れたこと
につき、当該期間の実施料相当額100億円及びこれに対する消費税相当額
15 10億円の合計110億円の不当利得返還請求権の一部として、110万円
及びこれに対する第1事件の訴状送達の日の翌日である令和元年8月2日か
ら支払済みまでの平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正
前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求。
(2) 第2事件の請求
20 被告が平成21年2月4日から同年8月4日までの期間における被告各製
品の製造、販売による前記発明の実施料相当額の支払を免れたことにつき、
当該期間の実施料相当額25億2000万円の不当利得返還請求権の一部と
して、1億円及びこれに対する第2事件の訴状送達の日の翌日である令和元
年8月20日から支払済みまでの改正前民法所定の年5分の割合による遅延
25 損害金の支払請求。
2 前提事実(当事者間に争いがない事実又は後掲の証拠(以下、書証番号は特
記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1) 当事者
ア 原告は、電気・通信・電子並びに照明器械器具等の企画、開発、設計、
製造及び販売等を目的とする特例有限会社である。
5 イ 被告は、ゲーム等のコンテンツの制作、製造及び販売、ゲーム等のコン
テンツに係る電子応用機器及び装置の開発、製造及び販売等を目的とする
株式会社である。
(2) 本件特許
ア 原告は、平成3年8月30日を出願日とする特許出願(特願平3-24
10 5262号。以下「本件原々々出願」という。)の一部を分割して新たな特
許出願をした特願平9-325299号(以下「本件原々出願」という。)
の一部を更に分割して新たな特許出願をした特願2000-31495号
(以下「本件原出願」という。)の一部を分割して、平成14年7月5日、
本件特許に係る新たな特許出願(特願2002-196984号。以下
15 「本件出願」という。)をし、同年12月20日、本件特許権の設定登録
(請求項の数12)を受けた(甲1、2、4)。
イ 本件特許権は、平成23年8月30日に存続期間満了により消滅した。
(3) 第1次訂正
ア 原告は、平成22年3月2日、本件出願の願書に添付した明細書におけ
20 る特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を訂正することを求める旨の訂正
審判請求(訂正2010-390023号。以下、この訂正審判請求に係
る訂正を「第1次訂正」という。)をし、同年5月17日、第1次訂正を認
める旨の審決がされ、同審決は同月28日に確定した(甲1、3。以下、
第1次訂正後の明細書と本件出願の願書に添付した図面(甲2)を併せて
25 「本件明細書」という。また、明細書の発明の詳細な説明に記載された段
落番号及び図面については、単に【0001】 【図1】などと記載する。 。
、 )
イ 本件特許の第1次訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし6及び10
は、別紙2-1特許請求の範囲(第1次訂正後)記載のとおりである。
ウ 本件特許の第1次訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし6(以下、
これらの請求項に係る発明を順に「本件発明1」 「本件発明2」などとい
、
5 う。)は、次の(ア)ないし(カ)のとおり構成要件に分説することができる。
また、第1次訂正後の特許請求の範囲の請求項10(以下、この請求項
に係る発明を「本件発明10」といい、本件発明1ないし6と併せて「本
件各発明」という。)は、次の(キ)のとおり構成要件に分説することができ
る。
10 (ア) 請求項1(本件発明1)
1A 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んで
おり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片
手支持可能な表示装置であって、
1B 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、
15 それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもでき
るように、接続するための左右見開き接続手段と、
1C 前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左
右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が
表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するた
20 めの完全左右見開き固定手段と、
1D ユーザーから見て左右方向に見開きにされたときの前記「2つの
表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される
側の間の角度」が「約120度から約170度までの範囲内のいず
れかの角度」となるように、ストッパにより固定するための中間左
25 右見開き固定手段であって、
1E 前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
される側の間の角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」
から広げられて行く動作、をストップする機能と、
1F 前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
される側の間の角度」が「ユーザーから見て左右方向に約180度
5 の角度で見開きにされた状態」から狭められて行く動作、をストッ
プする機能と、を有する中間左右見開き固定手段と、
1G を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
(イ) 請求項2(本件発明2)
2A 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んで
10 おり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片
手支持可能な表示装置であって、
2B 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、
それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもでき
るように、接続するための左右見開き接続手段と、
15 2C 前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とし
た、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が約180度となる
ように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
2D 前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とし
た、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに
20 折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度
で見開きにされた状態との間の角度であって、約120度から約1
70度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するた
めの中間左右見開き固定手段であって、
2E 前記「2つの表示板」の、「ユーザーから見て縦方向の線を境とし
25 た、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「前記各表示板が
互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をストップす
る機能を有する中間左右見開き固定手段と、
2F を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
(ウ) 請求項3(本件発明3)
3A 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んで
5 おり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片
手支持可能な表示装置であって、
3B 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、
それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもでき
るように、接続するための左右見開き接続手段と、
10 3C 前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右
方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表
示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するため
の完全左右見開き固定手段と、
3D 前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにさ
15 れたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれ
ぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約120度から約170
度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するための
中間左右見開き固定手段と、
3E を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
20 (エ) 請求項4(本件発明4)
4A 画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示板」を含んでおり、
ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持
可能な表示装置であって、
4B 前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」
25 を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから
見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するた
めの左右見開き接続手段と、
4C 前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」
を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』
の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザ
5 ーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との
間の角度であって、約105度から約170度までの範囲内のいず
れかの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその
他の手段により固定するための左右見開き固定手段と、
4D を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
10 (オ) 請求項5(本件発明5)
5E 次の(a)~(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持可能
な表示装置。
5A (a)画面をそれぞれ出力する「複数の表示板」が、それぞれが
表示する各画面がユーザーに対向することができるように、接続さ
15 れている、
5B (b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがそ
の片手のみでも支持することができるような小型のサイズに構成さ
れている、
5C (c)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示
20 板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザー
から見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続す
るための左右見開き接続手段を備えている、
5D (d)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示
板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされているとき、前記
25 「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示
される側の間の角度」が「約105度から約170度までの範囲内
のいずれかの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構
やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段、を備え
ている。
(カ) 請求項6(本件発明6)
5 6E 次の(a)~(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持可能
な表示装置。
6A (a)画面をそれぞれ出力する複数個の表示板が、それぞれが表
示する各画面がユーザーに対向することができるように、接続され
ている、
10 6B (b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがそ
の片手のみでも支持することができるような小型のサイズに構成さ
れている、
6C (c)ユーザーから見て縦方向の線を境にして、その右側部分と
左側部分とを、互いに折り畳み可能で且つユーザーから見て左右方
15 向に見開き可能に接続するための左右見開き接続手段を備えている、
6D (d)ユーザーから見て縦方向の線の右側部分と左側部分とを、
「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記右側部分と左側部
分との間の見開き角度」が「約105度から約170度までの範囲
内のいずれかの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト機
20 構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段、を備
えている。
(キ) 請求項10(本件発明10)
10A 請求項1から9までのいずれかにおいて、さらに、
10B 前記表示板に「ユーザーによるデータ入力のために使用される、
25 データ入力用画面」を表示するためのデータ入力用手段、
10C を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
(4) 第2次訂正
ア 原告は、令和2年2月28日、本件出願の願書に添付した明細書におけ
る特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を訂正することを求める旨の訂正
審判請求(訂正2020-390019号。以下、この訂正審判請求に係
5 る訂正を「第2次訂正」という。)をした(甲21、71、乙14、30)。
令和3年2月4日、第2次訂正のうち、特許請求の範囲の請求項11及
び12を削除する訂正及び発明の詳細な説明の訂正を認め、それ以外の訂
正事項に係る訂正を認めない旨の審決がされ、当該審決のうち訂正を認め
る部分は同月15日に確定した(乙30)。
10 原告は、上記審決に対して、審決取消訴訟を提起しており、口頭弁論終
結時において、上記確定した部分を除いて第2次訂正に係る審決は確定し
ていない(弁論の全趣旨)。
イ 第2次訂正(令和2年2月25日付け審判請求書に記載されたものをい
う。以下同じ。)における本件特許の特許請求の範囲請求項1、2及び10
15 に係る訂正事項は、別紙3第2次訂正の訂正事項記載のとおりであり、第
2次訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2及び10は、別紙
2-2特許請求の範囲(第2次訂正後)記載のとおりである(甲21)。
ウ 第2次訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2及び10(以
下、これらの請求項に係る発明を順に「第2次訂正発明1」 「第2次訂正
、
20 発明2」及び「第2次訂正発明10」といい、これらを併せて「第2次各
訂正発明」という。)は、次の(ア)ないし(ウ)のとおり構成要件に分説するこ
とができる。
(ア) 請求項1(第2次訂正発明1)
1A’ 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であっ
25 て、少なくともいずれか一方の表示板が「情報入力機能を有する画
面」を表示させるものである「2つの表示板」を含んでおり、ユー
ザーがその片手だけでも支持することができるような情報入力機能
付き画面の表示機能をも備えた片手持ち用且つ片手支持型の表示装
置であって、
1B’ 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態に
5 も、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にも
できるように、且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の
表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表示板と他方の表示
板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として相
対的に回動できるように接続するための左右見開き接続手段と、
10 1H’ 「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の各平面
の間の見開き角度」が、ユーザーによる少なくともいずれか一方の
表示板の回動により「ユーザーの任意の角度」に変化させられたと
き、摩擦力により、前記2つの表示板の間を前記「任意の角度」で
保持する任意角度保持手段と、
15 1C’ 前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左
右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が
表示される側の各平面の間の見開き角度」が約180度となるよう
に、固定するための完全左右見開き固定手段と、
1D’ 「前記2つの表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにさ
20 れているときの、前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各
平面の間の見開き角度」が、ユーザーによる少なくともいずれか一
方の表示板の回動により「約120度から約170度までの範囲内
の予め決められた1つの角度」に変化させられたとき、前記回動を
ストップさせて、前記「2つの表示板」の間を前記「予め決められ
25 た1つの角度」で固定する中間左右見開きストッパであって、
1E’ 前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
される側の各平面の間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折
り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をストップする機能と、
1F’ 前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
される側の各平面の間の見開き角度」が「ユーザーから見て左右方
5 向に約180度の角度で見開きにされた状態」から狭められて行く
動作、をストップする機能と、を有する中間左右見開きストッパと、
を備え、
1I’ 「電車の中で、戸外で若しくは外出先で使用する、立ったまま
で使用する、又は画面を介してデータを入力するなどの様々な状況
10 若しくは用途に応じた、前記2つの表示板の使用」を可能にする構
成であって、ユーザーが、「前記2つの表示板の前記各平面の間の
見開き角度」が広がるように前記「2つの表示板」の少なくともい
ずれか一方を回動させて前記見開き角度を任意に変化させるとき、
前記2つの表示板の間を「ユーザーの任意の角度」で摩擦力により
15 保持するようにしながら、前記見開き角度が前記「予め決められた
1つの角度」になったときは、前記中間左右見開きストッパにより、
前記回動をストップさせて、前記2つの表示板のそれらが互いに接
続されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側に「谷状
の部分」を、且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されてい
20 る部分及びその近傍部分の画面が表示されない側に「山状の部分」
を固定的に形成する構成を備えた、
1G’ ことを特徴とする情報入力機能付き画面の表示機能をも備えた
片手持ち用且つ片手支持型の表示装置。
(イ) 請求項2(第2次訂正発明2)
25 2A’ 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であっ
て、少なくともいずれか一方の表示板が「情報入力機能を有する画
面」を表示させるものである「2つの表示板」を含んでおり、ユー
ザーがその片手だけでも支持することができる情報入力機能付き画
面の表示機能をも備えた片手持ち用且つ片手支持型の表示装置であ
って、
5 2B’ 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態に
も、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にも
できるように、且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の
表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表示板と他方の表示
板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として相
10 対的に回動できるように接続するための左右見開き接続手段と、
2C’ 前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境と
した、前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の各平
面の間の見開き角度」が約180度となるように、固定するための
完全左右見開き固定手段と、
15 2D’ 「前記2つの表示板の、ユーザーから見て縦方向の線を境とし
たときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間
の見開き角度」が、ユーザーによる少なくともいずれか一方の表示
板の回動により、「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーか
ら見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の
20 角度であって、約120度から約170度までの範囲内の予め決め
られた1つの角度」に変化させられたとき、前記回動をストップさ
せて、前記「2つの表示板」の間を前記「予め決められた1つの角
度」で固定する中間左右見開きストッパであって、
2E’ 前記「2つの表示板」の、「ユーザーから見て縦方向の線を境と
25 したときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の
間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」か
ら広げられて行く動作、をストップする機能を有する中間左右見開
きストッパと、を備え、
2G’ 「電車の中で、戸外で、外出先で、又は立ったままで使用する
のに適した、前記2つの表示板の使用」を可能にする構成であって、
5 ユーザーが、「前記2つの表示板の前記各平面の間の見開き角度」
が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から広がるように、
前記「2つの表示板」の少なくともいずれか一方を回動させて、前
記見開き角度を任意に変化させる場合において、前記見開き角度が
前記「予め決められた1つの角度」になったとき、前記中間左右見
10 開きストッパにより、前記回動をストップさせて、前記2つの表示
板のそれぞれ画面が表示される側の各表示板の間を前記「予め決め
られた1つの角度」に固定する構成を備えた、
2F’ ことを特徴とする情報入力機能付き画面の表示機能をも備えた
片手持ち用且つ片手支持型の表示装置。
15 (ウ) 請求項10(第2次訂正発明10)
10E’ 次の(a)~(g)の内容を含むことを特徴とする情報入力
機能付き画面の表示機能をも備えた片手持ち用且つ片手支持型
の表示装置。
10A’ (a)画面をそれぞれ出力する「2つの表示板」であって、
20 少なくともいずれか一方の表示板に「ユーザーによるデータ入
力のために使用される、データ入力用画面」を表示するための
データ入力手段が備えられている「2つの表示板」が、それぞ
れが表示する各画面がユーザーに対向することができるように、
接続されている、
25 10B’ (b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザー
がその片手のみでも支持することができるような小型のサイズ
に構成されている、
10C’ (c)前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれ
た状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにさ
れた状態にもできるように、且つ前記2つの表示板の少なくと
5 もいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方
の表示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている
部分」を回動中心として相対的に回動できるように接続するた
めの左右見開き接続手段を備えている、
10F’ (d)「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の
10 各平面の間の見開き角度」が、ユーザーによる少なくともいず
れか一方の表示板の回動により、「ユーザーの任意の角度」に変
化させられたとき、摩擦力により、前記2つの表示板の間を前
記「任意の角度」で保持する任意角度保持手段、を備えている、
10G’ (e)「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の
15 各平面の間の見開き角度」が約180度になったとき、前記
「2つの表示板」の間を前記角度で固定する完全見開き固定手
段、を備えている、
10D’ (f)前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に
見開きにされているときであって、「前記2つの表示板の、それ
20 ぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が、ユー
ザーによる少なくともいずれか一方の表示板の回動により「約
120度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの
角度」に変化させられたとき、前記回動をストップさせて、前
記「2つの表示板」の間を前記「予め決められた1つの角度」
25 で固定する中間左右見開きストッパ、を備えている、
10H’ (g)「電車の中で、戸外で若しくは外出先で使用する、立っ
たままで使用する、又は画面を介してデータを入力するなどの
様々な状況若しくは用途に応じた、前記2つの表示板の使用」
を可能にする構成であって、ユーザーが、「前記2つの表示板の
前記各平面の間の見開き角度」が広がるように前記「2つの表
5 示板」の少なくともいずれか一方を回動させて前記見開き角度
を任意に変化させるとき、前記2つの表示板の間を「ユーザー
の任意の角度」で摩擦力により保持するようにしながら、前記
見開き角度が前記「予め決められた1つの角度」になったとき
は、前記中間左右見開きストッパにより、前記回動をストップ
10 させて、前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部
分及びその近傍部分の画面が表示される側に「谷状の部分」を、
且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及
びその近傍部分の画面が表示されない側に「山状の部分」を固
定的に形成する構成を備えている。
15 (5) 無効審判と第3次訂正
ア 被告は、令和2年10月9日、本件特許について特許無効審判(無効2
020-800098号。以下「本件無効審判」という。)を請求し、原告
は、本件無効審判の手続において、令和3年5月24日付け訂正請求書に
よって、本件特許の特許請求の範囲を訂正することを求める訂正請求(以
20 下、この訂正請求に係る訂正を「第3次訂正」という。)をした(甲79、
乙28)。
本件口頭弁論終結時において、本件無効審判に係る審決はされていない。
イ 第3次訂正(令和3年5月24日付け訂正請求書に記載されたものをい
う。以下同じ。)における本件特許の特許請求の範囲請求項1ないし6に係
25 る訂正事項は別紙4第3次訂正の訂正事項記載のとおりであり、第3次訂
正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし6は、別紙2-3特許
請求の範囲(第3次訂正後)記載のとおりである(甲79)。原告が第3次
訂正による訂正の再抗弁を主張するのは、請求項1ないし6に係る発明に
基づく請求についてのみである(したがって、本件発明10に基づく請求
については、第3次訂正による訂正の再抗弁の主張はされていない。。
)
5 ウ 第3次訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし6(以下、
これらの請求項に係る発明を順に「第3次訂正発明1」ないし「第3次訂
正発明6」といい、これらを併せて「第3次各訂正発明」という。)は、次
の(ア)ないし(カ)のとおり構成要件に分説することができる。
(ア) 請求項1(第3次訂正発明1)
10 1A” 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であっ
て、少なくともいずれか一方の表示板が「情報入力機能を有する画
面」を表示させるものである「2つの表示板」を含んでおり、ユー
ザーがその片手だけでも支持することができるような2つの表示板
を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用するこ
15 とができる表示装置であって、
1B” 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態に
も、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にも
できるように、且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の
表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表示板と他方の表示
20 板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として相
対的に回動するように、接続するための左右見開き接続手段と、
1H” 「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の各平面
の間の見開き角度」が、ユーザーによる少なくともいずれか一方の
表示板の回動により「ユーザーの任意の角度」に変化させられたと
25 き、摩擦力により、前記2つの表示板の間を前記「任意の角度」で
保持する任意角度保持手段であって、前記2つの表示板が互いに折
り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態
へと向かうように前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表
示板がユーザーにより回動される場合において、ユーザーが前記回
動をユーザーの任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板
5 間が前記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保
持されるように、前記ユーザーによる回動が為されるようにする、
任意角度保持手段と、
1C” 前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左
右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が
10 表示される側の各平面の間の見開き角度」が約180度となるよう
に、固定するための完全左右見開き固定手段と、
1D” 「前記2つの表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにさ
れているときの、前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各
平面の間の見開き角度」が、ユーザーによる少なくともいずれか一
15 方の表示板の回動により「約150度から約170度までの範囲内
の予め決められた1つの角度」に変化させられたとき、前記回動を
ストップさせて、前記「2つの表示板」の間を前記「予め決められ
た1つの角度」で固定する中間左右見開きストッパであって、
1E” 前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
20 される側の各平面の間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折
り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をストップする機能と、
1F” 前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
される側の各平面の間の見開き角度」が「ユーザーから見て左右方
向に約180度の角度で見開きにされた状態」から狭められて行く
25 動作、をストップする機能と、を有する中間左右見開きストッパと、
を備え、
1I” ユーザーが、「前記2つの表示板の前記各平面の間の見開き角度」
が広がるように前記「2つの表示板」の少なくともいずれか一方を
回動させて前記見開き角度を任意に変化させるとき、前記2つの表
示板の間を「ユーザーの任意の角度」で摩擦力により保持するよう
5 にしながら、前記見開き角度が前記「予め決められた1つの角度」
になったときは、前記中間左右見開きストッパにより、前記回動を
ストップさせて、前記2つの表示板のそれらが互いに接続されてい
る部分及びその近傍部分の画面が表示される側に「谷状の部分」を、
且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びそ
10 の近傍部分の画面が表示されない側に「山状の部分」を固定的に形
成する構成を備えた
1G” ことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にし
て片手だけで持ちながら使用することができる表示装置。
(イ) 請求項2(第3次訂正発明2)
15 2A” 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であっ
て、少なくともいずれか一方の表示板が「情報入力機能を有する画
面」を表示させるものである「2つの表示板」を含んでおり、ユー
ザーがその片手だけでも支持することができる2つの表示板を見開
き且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用することがで
20 きる表示装置であって、
2B” 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態に
も、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にも
できるように、且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の
表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表示板と他方の表示
25 板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として相
対的に回動するように、接続するための左右見開き接続手段と、
2C” 前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境と
した、前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の各平
面の間の見開き角度」が約180度となるように、固定するための
完全左右見開き固定手段と、
5 2D” 「前記2つの表示板の、ユーザーから見て縦方向の線を境とし
たときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間
の見開き角度」が、ユーザーによる少なくともいずれか一方の表示
板の回動により、「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーか
ら見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の
10 角度であって、約150度から約170度までの範囲内の予め決め
られた1つの角度」に変化させられたとき、前記ユーザーによる回
動をストップさせて、前記「2つの表示板」の間を前記「予め決め
られた1つの角度」で固定する中間左右見開きストッパであって、
2E” 前記「2つの表示板」の、「ユーザーから見て縦方向の線を境と
15 したときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の
間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」か
ら広げられて行く動作、をストップする機能を有する中間左右見開
きストッパと、を備え、
2G” 「電車の中で、戸外で、外出先で、又は立ったままで使用する
20 のに適した、前記2つの表示板の使用」を可能にする構成であって、
ユーザーが、「前記2つの表示板の前記各平面の間の見開き角度」
が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から広がるように、
前記「2つの表示板」の少なくともいずれか一方を回動させて、前
記見開き角度を任意に変化させる場合において、ユーザーが前記回
25 動をユーザーの任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板
間が前記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保
持されるように前記ユーザーによる回動が為されるようにしながら、
前記見開き角度が前記「約150度から約170度までの範囲内の
予め決められた1つの角度」になったとき、前記中間左右見開きス
トッパにより、前記ユーザーによる回動をストップさせて、前記2
5 つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各表示板の間を前記
「予め決められた1つの角度」に固定する構成を備えた
2F” ことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にし
て片手だけで持ちながら使用することができる表示装置。
(ウ) 請求項3(第3次訂正発明3)
10 3A” 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含ん
でおり、ユーザーが前記2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態に
して片手だけで持ちながら使用することができる表示装置であって、
3B” 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態に
も、それらがユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開
15 きにされた状態にもできるように、且つ前記2つの表示板の少なく
ともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の
表示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」
を回動中心として相対的に回動するように、接続するための左右見
開き接続手段と、
20 3F” 前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約18
0度の角度で見開きにされた状態へと向かうように前記2つの表示
板の少なくともいずれか一方の表示板がユーザーにより回動される
場合において、ユーザーが前記回動をユーザーの任意の折り曲げ角
度で止めたとき前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の折り曲
25 げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように、前記ユーザーに
よる回動が為されるようにする、摩擦力保持手段と、
3C” 前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左
右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が
表示される側の各平面の間の角度」が約180度となるように、固
定するための完全左右見開き固定手段と、
5 3D” 前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きに
されたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』の
それぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が「約150度
から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」となる
ように、固定するための中間左右見開きストッパであって、
10 3G” 前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表
示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開
きにされた状態へと向かうように、ユーザーにより回動されている
場合において、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側
の各平面の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内
15 の予め決められた1つの角度」となったとき、前記ユーザーによる
回動をストップし且つ前記2つの表示板間を固定する中間左右見開
きストッパと、
3H” 前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が前記2つの表示
板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開き
20 にされた状態へと向かうようにユーザーにより回動されている場合
であって、ユーザーが前記回動をユーザーの任意の折り曲げ角度で
止めたとき前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の折り曲げ角
度でそのまま摩擦力により保持されるように前記ユーザーによる回
動が為されている場合において、「前記2つの表示板のそれぞれ画
25 面が表示される側の各平面の間の角度」が前記「約150度から約
170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」になったとき、
前記中間左右見開きストッパにより、前記ユーザーによる回動をス
トップさせて、前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている
部分及びその近傍部分の画面が表示される側に「ユーザーの親指が
当接され得る谷状部分」を、且つ前記2つの表示板のそれらが互い
5 に接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示されない側に
「ユーザーの親指以外の複数の指が当接され得る山状部分」を固定
的に形成する構成と、
3E” を備えたことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ
状態にして片手だけで持ちながら使用することができる表示装置。
10 (エ) 請求項4(第3次訂正発明4)
4A” 画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユ
ーザーが前記2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だ
けで持ちながら使用することができる表示装置であって、
4B” 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態に
15 も、それらがユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開
きにされた状態にもできるように、且つ前記2つの表示板の少なく
ともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の
表示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」
を回動中心として相対的に回動するように、接続するための左右見
20 開き接続手段と、
4E” 「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の
間の角度」が約180度となったとき、前記2つの表示板の間を前
記角度で固定する完全見開き固定手段と、
4C” 前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境と
25 した、前記『2つの表示板』の各平面の間の見開き角度」が「それ
らが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約18
0度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約150
度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」とな
るように、固定するための中間左右見開きストッパであって、
4F” 前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表
5 示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開
きにされた状態へと向かうように、ユーザーにより回動されている
場合において、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側
の各平面の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内
の予め決められた1つの角度」となったとき、前記ユーザーによる
10 回動をストップし且つ前記2つの表示板間を固定する中間左右見開
きストッパと、
4D” を備えたことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ
状態にして片手だけで持ちながら使用することができる表示装置。
(オ) 請求項5(第3次訂正発明5)
15 5E” 次の(a)~(g)の内容を含むことを特徴とする2つの表示
板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用する
ことができる表示装置。
5A” (a)画面をそれぞれ出力する「2つの表示板」が、それぞれ
が表示する各画面がユーザーに対向することができるように、接続
20 されている、
5B” (b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーが
その片手のみでも支持することができるような小型のサイズに構成
されている、
5C” (c)前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた
25 状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に約180度の角度
で見開きにされた状態にもできるように、且つ前記2つの表示板の
少なくともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該
一方の表示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている
部分」を回動中心として相対的に回動するように、接続するための
左右見開き接続手段を備えている、
5 5F” (d)前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに
約180度の角度で見開きにされた状態へと向かうように前記2つ
の表示板の少なくともいずれか一方の表示板がユーザーにより回動
される場合においてユーザーが前記回動をユーザーの任意の折り曲
げ角度で止めたとき、前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の
10 折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように、前記ユー
ザーによる回動が為されるようにする、摩擦力保持手段、を備えて
いる、
5G” (e)「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平
面の間の角度」が約180度となったとき、前記2つの表示板の間
15 を前記角度で固定する完全見開き固定手段、を備えている、
5D” (f)前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見
開きにされているとき、前記「2つの表示板」を、「前記2つの表
示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が「約1
50度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」
20 となるように、固定するための中間左右見開きストッパであって、
5H” 前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表
示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開
きにされた状態へと向かうように、ユーザーにより回動されている
場合において、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側
25 の各平面の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内
の予め決められた1つの角度」となったとき、前記ユーザーによる
回動をストップし且つ前記2つの表示板間を固定する中間左右見開
きストッパ、を備えている、
5I” (g)前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2
つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度
5 で見開きにされた状態へと向かうようにユーザーにより回動されて
いる場合であって、ユーザーが前記回動をユーザーの任意の折り曲
げ角度で止めたとき前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の折
り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように、前記ユーザ
ーによる回動が為されている場合において、「前記2つの表示板の
10 それぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が前記「約15
0度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」に
なったとき、前記中間左右見開きストッパにより、前記ユーザーに
よる回動をストップさせて、前記2つの表示板のそれらが互いに接
続されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側に「谷状
15 の部分」を、且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されてい
る部分及びその近傍部分の画面が表示されない側に「山状の部分」
を固定的に形成する構成、を備えている。
(カ) 請求項6(第3次訂正発明6)
6E” 次の(a)~(g)の内容を含むことを特徴とする2つの表示
20 板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用す
ることができる表示装置。
6A” (a)画面をそれぞれ出力する2つの表示板が、それぞれが表
示する各画面がユーザーに対向することができるように、接続さ
れている、
25 6B” (b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーが
その片手のみでも支持することができるような小型のサイズに構
成されている、
6C” (c)ユーザーから見て縦方向の線を境にして、その右側部分
と左側部分とを、互いに折り畳み可能で且つユーザーから見て左
右方向に約180度の角度で見開き可能に接続し、且つ前記2つ
5 の表示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザーが回動さ
せたとき当該一方の表示板と他方の表示板とが「それらが互いに
接続されている部分」を回動中心として相対的に回動するように
接続するための左右見開き接続手段を備えている、
6F” (d)前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに
10 約180度の角度で見開きにされた状態へと向かうように前記2
つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板がユーザーにより
回動される場合において、ユーザーが前記回動をユーザーの任意
の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間が前記ユーザー
の任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように、
15 前記ユーザーによる回動が為されるようにする、摩擦力保持手段、
を備えている、
6G” (e)「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平
面の間の角度」が約180度となったとき、前記2つの表示板の
間を前記角度で固定する完全見開き固定手段、を備えている、
20 6D” (f)ユーザーから見て縦方向の線の右側部分と左側部分とを、
「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記右側部分と左側
部分とのそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」
が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1
つの角度」となるように、固定するための中間左右見開きストッ
25 パであって、
6H” 前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表
示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見
開きにされた状態へと向かうように、ユーザーにより回動されて
いる場合において、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示され
る側の各平面の間の角度」が「約150度から約170度までの
5 範囲内の予め決められた1つの角度」となったとき、前記ユーザ
ーによる回動をストップし且つ前記2つの表示板間を固定する中
間左右見開きストッパ、を備えている、
6I” (g)前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2
つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角
10 度で見開きにされた状態へと向かうようにユーザーにより回動さ
れている場合であって、ユーザーが前記回動をユーザーの任意の
折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間が前記ユーザーの
任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように前
記ユーザーによる回動が為されている場合において、「前記2つの
15 表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が前
記「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1
つの角度」になったとき、前記中間左右見開きストッパにより、
前記ユーザーによる回動をストップさせて、前記2つの表示板の
それらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表
20 示される側に「ユーザーの親指が当接され得る谷状部分」を、且
つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びそ
の近傍部分の画面が表示されない側に「ユーザーの親指以外の複
数の指が当接され得る山状部分」を固定的に形成する構成、を備
えている。
25 (6) 被告の行為
被告は、被告各製品を、それぞれ、少なくとも別紙1被告製品目録記載の
「日本国内での発売日」以降の期間において、日本国内で販売していた。な
お、被告が被告各製品を日本国内で製造していたかどうかは争いがある。
3 争点
(1) 被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1)
5 (2) 無効の抗弁(特許法104条の3第1項)の成否(争点2)
ア 出願日遡及の有無(争点2-1)
イ 出願日遡及を前提とする無効理由(争点2-2)
(ア) 本件各発明についての国際公開91/05327号(以下「乙1文献」
という。)を引用例とする新規性欠如(争点2-2-1)
10 (イ) 本件各発明についての乙1文献を主引用例とする進歩性欠如(争点2
-2-2)
ウ 出願日繰り下がりを前提とする無効理由(争点2-3)
(ア) 本件各発明についての特開平5-61423号公報(以下「乙11文
献」という。)を引用例とする新規性欠如(争点2-3-1)
15 (イ) 本件各発明についての平成14年(2002年)8月5日付けの手続
補正書(以下「乙12補正書」という。)に係る補正の補正要件違反(争
点2-3-2)
(3) 訂正の再抗弁の成否(第2次訂正)(争点3)
ア 第2次訂正が訂正要件(独立特許要件を除く)を満たすか(争点3-1)
20 イ 被告各製品が第2次各訂正発明の技術的範囲に属するか(争点3-2)
ウ 第2次訂正による無効理由の解消の可否(争点3-3)
(ア) 出願日遡及を前提とする無効理由
a 第2次各訂正発明についての乙1文献を引用例とする新規性欠如
(争点3-3-1)
25 b 第2次各訂正発明についての乙1文献を主引用例とする進歩性欠如
(争点3-3-2)
(イ) 出願日繰り下がりを前提とする無効理由
a 第2次各訂正発明についての乙11文献を引用例とする新規性欠如
(争点3-3-3)
b 第2次各訂正発明についての乙12補正書に係る補正の補正要件違
5 反(争点3-3-4)
(4) 訂正の再抗弁の成否(第3次訂正)(争点4)
ア 第3次訂正が訂正要件を満たすか(争点4-1)
イ 被告各製品が第3次各訂正発明の技術的範囲に属するか(争点4-2)
ウ 第3次訂正による無効理由の解消の可否(争点4-3)
10 (ア) 出願日遡及を前提とする無効理由
a 第3次各訂正発明についての乙1文献を引用例とする新規性欠如
(争点4-3-1)
b 第3次各訂正発明についての乙1文献を主引用例、周知慣用技術を
副引用例とする進歩性欠如(争点4-3-2)
15 (イ) 出願日繰り下がりを前提とする無効理由
a 第3次各訂正発明についての乙11文献を引用例とする新規性欠如
(争点4-3-3)
b 第3次各訂正発明についての乙12補正書に係る補正の補正要件違
反(争点4-3-4)
20 (5) 本件各発明の実施についての不当利得返還義務の有無及び返還すべき利得
の額(争点5)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか)について
(原告の主張)
25 (1) 被告各製品の構成等
ア 被告各製品が備える構成
被告各製品は、いずれも、以下の構成を備えている(以下、符号に対応
させて「構成a」などという。。
)
a 「2つのパネル」を備えかつ片手支持が可能な小型サイズの装置であ
ること
5 a-2 前記表示板に「ユーザーによるデータ入力のために使用される、
データ入力用画面」を表示するためのデータ入力用手段、を備えている
こと
b 「2つの表示パネル」を、任意の角度に見開き可能に接続する手段を
備えていること
10 c 「2つの表示パネル」を、それらの間の表示面側の角度(又は、それ
らをユーザーから見て縦方向の線を境としたときの右側部分と左側部分
との間の表示面側の角度)が「約180度のパネル間角度」となるよう
に、固定する構成を備えていること
d 「2つの表示パネル」を、それらの間の各表示面側の角度(又は、そ
15 れらをユーザーから見て縦方向の線を境としたときの右側部分と左側部
分との間の表示面側の角度)が「『中間的見開き状態』である約160度
のパネル間角度」となるようにストッパにより一時的に固定する構成を
備えていること
e 「2つの表示パネル」が開かれる方向の回動動作をストップする機能
20 f 「2つの表示パネル」が閉じられる方向の回動動作をストップする機
能
g 片手支持可能な表示装置
イ 構成aないしgの補足説明
(ア) 構成a及びa-2について
25 a 構成aについて
被告各製品では、並ぶように配置された「2つのパネル」に、それ
ぞれ、文字及び画像等を表示できるディスプレイが配置されている。
また、被告各製品は、エンドユーザーがその全体を片手で持つこと
ができるような小型のサイズに構成されている。
b 構成a-2について
5 被告各製品では、使用するソフトにより、被告各製品の2つの表示
板の一方に、電子ペン等で入力操作が可能な入力用画面が表示される
ことがある。
(イ) 構成bについて
被告各製品では、「2つの表示パネル」は、互いのディスプレイ側(表
10 示面側)の角度が約0度となる折り畳まれた状態にも、また同角度が少
なくとも約20度から180度までの任意の角度で見開きにされた状態
にもできるように、互いの各端部がヒンジ部(蝶番に相当する)により
互いに接続されている。
なお、被告各製品においては、前記「2つの表示パネル」は、互いを
15 接続する部分に生じる摩擦力により、任意の角度で「半固定」できるよ
うに構成されている(なお、ここで、上記「半固定」とは、比較的弱い
力又は所定量の力を加えることにより容易に回動させることができる状
態、すなわち、2つのパネルが任意の角度で一応保持されている状態を
いう。。
)
20 (ウ) 構成cについて
被告各製品においては、例えば「2つの表示パネル」間の各表示面側
の角度(又は、それらをユーザーから見て縦方向の線を境としたときの
右側部分と左側部分との間の表示面側の角度)が互いに拡大して行くよ
うに各表示パネルがヒンジ部を支点として互いに回動(相対的に回動)
25 されている場合において、上記角度が約180度となったとき一方のパ
ネルの端部が他方のパネルの端部に当接してそれ以上回動できなくなる
構成を採用することなどにより、「2つの表示パネル」の各表示面側の間
が「約180度のパネル間角度」となったとき、上記各表示面側の間が
上記角度を超えないように当該回動を停止し、「2つの表示パネル」を、
それらの各表示面側の間が上記「約180度のパネル間角度」となるよ
5 うに固定する構成を備えている。
(エ) 構成dについて
被告各製品では、前記「2つの表示パネル」は、(ⅰ)例えば互いに折
り畳まれた状態からそれらが開かれる方向に回動されて行く場合、又は
(ⅱ)例えば互いに約180度に見開きにされた状態からそれらが閉じら
10 れる方向に回動されて行く場合において、「2つの表示パネル」間の各表
示面側の角度(又は、それらをユーザーから見て縦方向の線を境とした
ときの右側部分と左側部分との間の表示面側の角度)が「約160度」
になったとき、ストッパ部品により、各回動動作をクリック音・クリッ
ク感を伴って停止させ、前記各パネルの表示面側の間の角度が一時的に
15 固定される。
(オ) 構成eについて
被告各製品に内蔵されている「ストッパ部品」は、「2つの表示パネル」
の、それらが互いに折り畳まれた状態から開かれる方向に回動する動作
を、当該動作の途中でストップする機能を有している。
20 (カ) 構成fについて
被告各製品に内蔵されている「ストッパ部品」は、「2つの表示パネル」
の、それらが互いに約180度で見開きにされた状態から閉じられる方
向に狭められていく方向に回動する動作を、当該動作の途中でストップ
する機能を有している。
25 (キ) 構成gについて
被告各製品は、いずれも、ゲームを始めとする「多種様々な用途」に
使用することができ、かつエンドユーザーがその全体を片手で支持でき
る程度の小型のサイズに構成された装置である。
(2) 被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属すること
ア 本件発明1ないし6に係る構成要件の充足性
5 被告各製品の構成a及び構成bないしgは、本件発明1の構成要件1A
ないし1G、本件発明2の構成要件2Aないし2F、本件発明3の構成要
件3Aないし3E、本件発明4の構成要件4Aないし4D、本件発明5の
構成要件5Aないし5E及び本件発明6の構成要件6Aないし6Eをいず
れも充足する。
10 イ 本件発明10に係る構成要件の充足性
被告各製品の構成a-2は本件発明10の構成要件10Bを充足する。
また、前記アのとおり、被告各製品は本件発明1ないし6の構成要件をい
ずれも充足するので、本件発明10の構成要件10A及び10Cも充足す
る。
15 ウ 本件各発明における、「2つの表示板」の「それぞれ画面が表示される側
の間の角度」等の「角度」の意義について(被告の主張に対する反論)
(ア) 被告は、本件発明1における「2つの表示板」の「それぞれ画面が表
示される側の間の角度」(構成要件1Cないし1F)、本件発明2におけ
る「2つの表示板の間の見開き角度」(構成要件2Cないし2E)、本件
20 発明3における「2つの表示板」の「それぞれ画面が表示される側の間
の角度」(構成要件3C及び3D)、本件発明4における「2つの表示板
の間の見開き角度」(構成要件4C)、本件発明5における「前記『2つ
の表示板』の、『前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角
度』 (構成要件5D)及び本件発明6における「前記右側部分と左側部
」
25 分との間の見開き角度」(構成要件6D)について、いずれの「角度」に
ついても、2つの表示板が左右見開き接続手段における「回転軸を中心
に形成する角度」を指すと主張する。
しかしながら、本件各発明に係る特許請求の範囲には、被告主張に係
る「回転軸を中心に形成する角度」という文言は用いられておらず、こ
のような文言は本件明細書においても存在していない。クレーム解釈に
5 おいては、クレームの記載文言に基づいて認定されるべきことが原則で
あり、本件発明1に係る特許請求の範囲の「2つの表示板」の「それぞ
れ画面が表示される側の間の角度」等については、「2つの表示板のそれ
ぞれ画面が表示される側の平面と平面との間の角度」と読むのが、通常
人の立場からの素直な読み方である。
10 そして、被告が指摘するような、表示装置において、接続された2つ
の「表示板」の一方の「表示板」の「画面が表示される側」の面①と、
他方の「表示板」の「画面が表示される側」の面②とがあり、2つの
「表示板」が見開かれる際の回転中心となる回転軸が一方の面上にはな
い場合であっても、例えば、一方の平面を仮想的に延長すること、又は、
15 一方の平面を他方の平面と同一平面上となるように平行移動させること
などにより、「それぞれ画面が表示される側の平面と平面との間の角度」
を観念することが社会通念上可能である。
(イ) 本件原々々出願当時を含め、最近のノートパソコン、折り畳み式携帯
電話などの電子機器においては、ほとんどの機器で、昔から存在する
20 「金具の蝶番」と比較して大型の長尺筒状部材を含むヒンジ部が採用さ
れている。そのようなヒンジにおいては、1つのヒンジ部中に「2つの
表示板を互いに回動させるときの回動中心(回転軸)」は存在するが、当
該「回動中心(回転軸)」は「2つの表示板」中の一方の表示板の端部
(ヒンジ部側の端部)とはズレた位置に配置されており、2つの表示板
25 の各平面が互いに直接交わるように接続されておらず、その結果として、
2つの表示板の間には「回動中心(回転軸)を中心とする角度」は存在
しないこととなる。
このような実情を踏まえるならば、現実の電子機器においては、「各平
面が実際に交差する角部」はそもそも存在しないので、本件各発明の構
成要件における前記の「角度」とは、「各平面が仮想的に交差する角部」
5 の角度であると理解するのが常識的な通常人の読み方であり、社会通念
及び技術常識に沿った解釈である。
以上のような考察に照らしても、本件発明1の「角度」に関して、被
告主張のように「回転軸を中心とする角度」と限定解釈することが、最
近の技術の実態、その1つである被告各製品の実態に即していないこと
10 は、明らかである。
(ウ) 被告は、本件各発明の作用効果に鑑みると、同発明が想定する2つの
表示板の「それぞれ画面が表示される側の間の角度」は、当該角度が約
180度の完全見開きの状態になった際には2つの表示板が略水平面で
「取っ掛かり」の無い状態になることを前提とする角度として規定され
15 ており、本件発明1の「角度」を「回転軸を中心とする角度」と限定解
釈しないと、2つの表示板の各平面間が180度の場合にも2つの表示
板の各平面間に段差構成という取っ掛かりが存在し得ることになって、
上記の前提が欠けることになる旨を主張する。
しかしながら、本件各発明の作用効果の1つは、ユーザーがその片手
20 の親指を安定的に載置できるような角度(例えば160度の角度)を有
する谷状の部分(本件明細書の【図2】(b)参照)を固定的に形成でき
ることにあり、2つの表示板の各平面間に「段差構成という取っ掛かり」
が存在するかどうかは、本件各発明の作用効果の存否には関係がない。
(エ) したがって、上記の各構成要件における「角度」については、「2つ
25 の表示板のそれぞれ画面が表示される側の平面と平面との間の角度」と
解すべきであり、被告が主張するように「回転軸を中心に形成する角度」
という限定解釈を行うべきではない。
(被告の主張)
(1) 被告各製品の構成等について
被告各製品が、構成a、a-2及びgを備えることはおおむね認める。
5 しかしながら、被告各製品においては、本件各発明の「2つの表示板」に
相当する下パネルと上パネルとが、本件各発明の「それぞれ画面が表示され
る側の間の角度」を成さないため、構成bないしfに関して原告が主張する
「角度」 「角度が約0度」 「同角度が少なくとも約20度から180度まで
( 、
の任意の角度」等)をいずれも有しない。
10 したがって、被告各製品は、構成bないしfを備えない。
(2) 被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属しないこと
ア 本件発明1に係る構成要件の充足性について
(ア) 構成要件1Cないし1Fについて
a 本件発明1における「2つの表示板」の「それぞれ画面が表示され
15 る側の間の角度」(構成要件1Cないし1F)の意義
(a) 構成要件1Cないし1Fのいずれにおいても「2つの表示板」の
「それぞれ画面が表示される側の間の角度」に係る構成が規定され
ている。
「2つの表示板」の「それぞれ画面が表示される側の間の角度」
20 とは、字義通り、2つの「表示板」の「画面が表示される側」の面
と面とが形成する角度をいうものと理解される。そして、本件各発
明は、「2つの表示板」が、「左右見開き接続手段」により「それら
が互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方
向に見開きにされた状態にもできるよう」(構成要件1B)、回転可
25 能に接続された表示装置であるから、構成要件1Cないし1Fにお
ける「2つの表示板」の「それぞれ画面が表示される側の間の角度」
も当然、2つの「表示板」の「画面が表示される側」の面と面とが、
「左右見開き接続手段」における回転軸を中心に形成する角度をい
うものと解される。
それゆえ、表示装置において、接続された2つの「表示板」の一
5 方の「表示板」の「画面が表示される側」の面①と、他方の「表示
板」の「画面が表示される側」の面②とがあり、2つの「表示板」
が見開かれる際の回転中心となる回転軸が一方の面上にはない場合、
かかる表示装置においては一方の「表示板」の「画面が表示される
側」の面は、他方の「表示板」の「画面が表示される側」の面との
10 間で、「左右見開き接続手段」における回転軸を中心とする角度を形
成しておらず、本件各発明の規定する「それぞれ画面が表示される
側の間の角度」を備えないものと解される。
(b) このような解釈は、構成要件1Bから1Fを通じた文言との整合
性に照らして妥当であるだけでなく、本件明細書の記載からも裏付
15 けられる。
すなわち、本件明細書の【図2】(a)及び(b)は、それぞれ、
本件発明1の表示装置の「左右完全見開き状態」及び「左右半見開
き状態」であり、ここにおいて構成要件1Cの「前記各表示板のそ
れぞれ画面が表示される側の間の角度」及び構成要件1Dの「前記
20 『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」に相
当する角度は、「左右見開き接続手段」である蝶番10における回転
軸を中心に表示板1及び2のそれぞれ画面が表示される側の面が形
成する角度として説明されている。
また、発明の効果を説明する本件明細書の【図8】及び【図9】
25 においても、2つの表示板91と92(【図8】 、107と108
)
(【図9】)の「それぞれ画面が表示される側の間の角度」に相当す
る角度は、「左右見開き接続手段」における回転軸を中心に表示板9
1及び92ないし107及び108の、それぞれ画面が表示される
側の面が形成する角度として示されている。
さらに、このことは、発明が想定する作用効果の観点からも妥当
5 する。すなわち、本件明細書によれば、2つの表示板の「それぞれ
画面が表示される側の間の角度」が約180度の角度での完全見開
きにされた状態(【図8】(a)【0049】
、 )では、ユーザーは各表
示板裏面側(ユーザーに対向しない側)が略水平面になるため「親
指以外の指又は掌を当てたときの、『取っ掛かり』になってくれる部
10 分」が存在しないため、「図示左右方向に、ぶれやすく、移動しやす
い」状態となり、強く安定的に支持できず(【0050】)ユーザー
が表示装置全体を片手だけで支持する時は極めて不安定な支持しか
できない(【0052】)という問題があるところ、本件各発明にお
いては「前記各表示板の左右見開き接続部分の表面側(ユーザー側)
15 の断面略V字状の凹状部分」を「約105度から約170度までの
間のいずれかの角度に折り曲げられている」構成とできることによ
って、「ユーザーの片手だけで極めて容易且つ安定的に支持しながら
使用することができる」という効果が得られる(【0045】)とす
るものである。かかる発明の効果に鑑みると、本件発明1が想定す
20 る2つの表示板の「それぞれ画面が表示される側の間の角度」は、
当該角度が約180度の完全見開きの状態になった際には、2つの
表示板が略水平面で“取っ掛かり”の無い状態になることを前提と
する角度として規定されているものと解される。このように、発明
が想定する作用効果の観点からしても、「2つの表示板」の「それぞ
25 れ画面が表示される側の間の角度」は2つの「表示板」の「画面が
表示される側」の面と面とが、「左右見開き接続手段」における回転
軸を中心に形成する角度をいうものと解することが妥当である。
b 被告各製品の構成の当てはめ
(a) 構成要件1Cについて
「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」とは、
5 2つの「表示板」の「画面が表示される側」の面と面とが、「左右見
開き接続手段」における回転軸を中心に形成する角度をいうものと
解されるところ、被告各製品では、回転中心となるヒンジ部が下パ
ネルのディスプレイ側の面の同一面上には無いため、下パネルのデ
ィスプレイ側の面と上パネルのディスプレイ側の面とは、ヒンジ部
10 の回転軸を中心とする角度をそもそも形成していない。したがって、
被告各製品において、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に
見開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示され
る側の間の角度」が180度を成すことはなく、被告各製品は構成
要件1Cを充足しない。
15 なお、被告各製品においては、下パネルのディスプレイ側の面よ
りも上部にヒンジの回転中心を設置し、完全見開き状態においても
上パネルと下パネルの間に段差が生じる非平板上の構成とすること
により、完全見開き状態においても当該段差を“取っ掛かり”とし
て被告各製品を保持し得るだけでなく、下パネルの当該段差部分の
20 端部の両角に、「Rボタン」及び「Lボタン」を設置し、両画面を見
開きの状態にした場合にも、これらのボタンを操作することができ
る仕組みとしている。
このように、被告各製品はまさに、両画面を完全見開き状態にし
た場合にも、2つの表示板が同一水平面上に配置されないことを特
25 徴とする製品であり、本件発明1が想定する表示装置とは、その構
造が大きく異なるものといえる。
(b) 構成要件1Dについて
前記(a)のとおり、被告各製品はそもそも「前記『2つの表示板』
のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」を備えない。したがっ
て、被告各製品は、 『前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示
「
5 される側の間の角度』が『約120度から約170度までの範囲の
いずれかの角度』となるように、ストッパにより固定するための中
間左右見開き固定手段」を備えず、構成要件1Dを充足しない。
(c) 構成要件1Eについて
前記(a)のとおり、被告各製品は、そもそも「前記『2つの表示板』
10 の、『前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度』」を
備えないから、構成要件1Eを充足しない。
(d) 構成要件1Fについて
前記(a)のとおり、被告各製品は、そもそも「前記『2つの表示板』
の、『前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度』」を
15 備えず、当該角度が「ユーザーから見て左右方向に約180度の角
度」になることもない。したがって、被告各製品は構成要件1Fを
充足しない。
(イ) 構成要件1Gについて
前記(ア)のとおり、被告各製品は、構成要件1Cないし1Fを充足しな
20 いため、構成要件1Gを充足しない。
(ウ) 小括
したがって、被告各製品は、本件発明1の技術的範囲に属さない。
イ 本件発明2に係る構成要件の充足性について
(ア) 構成要件2Cないし2Eについて
25 a 本件発明2における「2つの表示板の間の見開き角度」(構成要件2
Cないし2E)の意義
構成要件2Cないし2Eのいずれにおいても「2つの表示板の間の
見開き角度」に係る構成が規定されている。
前記ア(ア)aと同様の理由で、構成要件2Cないし2Eにおける「2
つの表示板の間の見開き角度」とは、「2つの表示板」が「左右見開き
5 接続手段」における回転軸を中心に形成する角度をいうものと解され
る。
b 被告各製品の構成の当てはめ
(a) 構成要件2Cについて
「2つの表示板の間の見開き角度」とは、「2つの表示板」が「左
10 右見開き接続手段」における回転軸を中心に形成する角度であると
ころ、被告各製品では、回転中心となるヒンジ部が下パネルと同一
面上にはないため、下パネルと上パネルとは、ヒンジ部の回転軸を
中心とする角度をそもそも形成していない。
したがって、被告各製品は、「2つの表示板の間の見開き角度」を
15 備えず、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表
示板』の間の見開き角度」が約180度となることもないため、構
成要件2Cを充足しない。
(b) 構成要件2Dについて
前記(a)のとおり、被告各製品は、そもそも「2つの表示板の間の
20 見開き角度」を備えず、「前記『2つの表示板』の間の見開き角度」
が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向
に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、
約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となる
ように、固定するための中間左右見開き固定手段を備えないため、
25 構成要件2Dを充足しない。
(c) 構成要件2Eについて
前記(a)のとおり、被告各製品は、そもそも「2つの表示板の間の
見開き角度」を備えないから、構成要件2Eを充足しない。
(イ) 構成要件2Fについて
前記(ア)のとおり、被告各製品は、構成要件2Cないし2Eを充足しな
5 いため、構成要件2Fを充足しない。
(ウ) 小括
したがって、被告各製品は、本件発明2の技術的範囲に属さない。
ウ 本件発明3に係る構成要件の充足性について
(ア) 構成要件3C及び3Dについて
10 a 本件発明3における「2つの表示板」の「それぞれ画面が表示され
る側の間の角度」(構成要件3C及び3D)の意義
構成要件3C及び3Dにおける「2つの表示板」の「それぞれ画面
が表示される側の間の角度」の意義は、前記ア(ア)aと同様である。
b 被告各製品の構成の当てはめ
15 (a) 構成要件3Cについて
前記ア(ア)bのとおり、被告各製品は、そもそも「前記『2つの表
示板』の、『前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角
度』」を備えない。したがって、被告各製品は、「前記各表示板のそ
れぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、
20 固定するための完全左右見開き固定手段を備えず、構成要件3Cを
充足しない。
(b) 構成要件3Dについて
前記ア(ア)bのとおり、被告各製品は、そもそも「前記『2つの表
示板』の、『前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角
25 度』」を備えない。したがって、被告各製品は、「前記『2つの表示
板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約120度か
ら約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定
するための中間左右見開き固定手段を備えず、構成要件3Dを充足
しない。
(イ) 構成要件3Eについて
5 前記(ア)のとおり、被告各製品は、構成要件3C及び3Dを充足しない
ため、構成要件3Eを充足しない。
(ウ) 小括
したがって、被告各製品は、本件発明3の技術的範囲に属さない。
エ 本件発明4に係る構成要件の充足性について
10 (ア) 構成要件4Cについて
a 本件発明4における「2つの表示板の間の見開き角度」(構成要件4
C)の意義
構成要件4Cにおける「2つの表示板の間の見開き角度」の意義は、
前記イ(ア)aと同様である。
15 b 被告各製品の構成の当てはめ
前記イ(ア)bのとおり、被告各製品はそもそも「2つの表示板の間の
見開き角度」を備えない。したがって、被告各製品は、前記『2つの
表示板』の間の見開き角度」が約105度から約170度までの範囲
内のいずれかの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構
20 やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段を備えず、
構成要件4Cを充足しない。
(イ) 構成要件4Dについて
前記(ア)のとおり、被告各製品は、構成要件4Cを充足しないため、構
成要件4Dを充足しない。
25 (ウ) 小括
したがって、被告各製品は、本件発明4の技術的範囲に属さない。
オ 本件発明5に係る構成要件の充足性について
(ア) 構成要件5Dについて
a 本件発明5における「前記『2つの表示板』の、『前記各表示板のそ
れぞれ画面が表示される側の間の角度』(構成要件5D)の意義
」
5 構成要件5Dにおける「前記『2つの表示板』の、『前記各表示板の
それぞれ画面が表示される側の間の角度』」の意義は、前記ア(ア)aと
同様である。
b 被告各製品の構成の当てはめ
前記ア(ア)bのとおり、被告各製品はそもそも「前記『2つの表示板』
10 の、『前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度』」を備
えない。したがって、被告各製品は、前記「2つの表示板」を、「前記
『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約
105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるよう
に、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定するた
15 めの左右見開き固定手段を備えず、構成要件5Dを充足しない。
(イ) 構成要件5Eについて
前記(ア)のとおり、被告各製品は、構成要件5Dを充足しないため、構
成要件5Eを充足しない。
(ウ) 小括
20 したがって、被告各製品は、本件発明5の技術的範囲に属さない。
カ 本件発明6に係る構成要件の充足性について
(ア) 構成要件6Dについて
a 本件発明6における「前記右側部分と左側部分との間の見開き角度」
(構成要件6D)の意義
25 構成要件6Dにおける「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、
前記右側部分と左側部分との間の見開き角度」における「見開き角度」
が、「左右見開き接続手段」における回転軸を中心に形成する角度をい
うものと解されることは、前記イ(ア)aと同様である。
b 被告各製品の構成の当てはめ
前記イ(ア)bのとおり、被告各製品は、そもそも「ユーザーから見て
5 縦方向の線を境とした、前記右側部分と左側部分との間の見開き角度」
を備えない。したがって、被告各製品は、「前記右側部分と左側部分と
の間の見開き角度」が「約105度から約170度までの範囲内のい
ずれかの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその
他の手段により固定するための左右見開き固定手段を備えないから、
10 構成要件6Dを充足しない。
(イ) 構成要件6Eについて
前記(ア)のとおり、被告各製品は、構成要件6Dを充足しないため、構
成要件6Eを充足しない。
(ウ) 小括
15 したがって、被告各製品は、本件発明6の技術的範囲に属さない。
キ 本件発明10に係る構成要件の充足性について
被告各製品が構成要件10Bを充足することは認める。
前記アないしカのとおり、被告各製品は本件発明1ないし6の構成要件
を充足しないので、本件発明10の構成要件10A及び10Cもいずれも
20 充足しない。
2 争点2(無効の抗弁(特許法104条の3第1項)の成否)について
(1) 争点2-1(出願日遡及の有無)について
(被告の主張)
ア 本件原々々出願の出願日(本件原々々出願についての補正要件違反)
25 (ア) 本件原々々出願に係る平成10年6月16日付けの手続補正書(乙1
0)による補正(以下「本件補正1」という。)は、以下の(イ)ないし(エ)
のとおり、要旨変更に該当するから、平成5年法律第26号による改正
前の特許法(以下「旧特許法」という。)40条の規定により、本件
原々々出願は、同手続補正書を提出した平成10年6月16日にされた
ものとみなされる。
5 (イ) 本件原々々出願の願書に最初に添附した明細書又は図面(乙6。以下
「本件原々々出願の当初明細書等」という。)には、「携帯の便利さ(コ
ンパクト化)と使用時のディスプレー画面の見やすさ(画面の大きさの
ある程度の確保)という2つの要請を同時に満た」す「ディスプレー装
置」を提供することを課題とし、表示装置において、「第1の画面および
10 第2の画面を、それぞれ出力する第1のディスプレーおよび第2のディ
スプレーと、 「第1のディスプレーの端部と第2のディスプレーの端部
」
を、互いに折り曲げ自在に接続する接続手段」を含む(請求項1)よう
にし、また、この「第1の画面および第2の画面」が「互いに協働して
1つの画面を構成できる」(請求項2)ようにすることで、上記課題を解
15 決する発明が記載されている。
これに対して、本件補正1は、本件原々々出願の当初明細書等におけ
る請求項1について、(g)の記載により「前記中心線を中心として折り曲
げられた前記の右半分と左半分とを任意の角度で固定するための固定手
段であって、前記の右半分と左半分とが前記中心線を中心にして互いに
20 近づく方向に折り曲げられたとき、…ユーザーが前記の右半分の画面と
左半分の画面との両者を同時に見易いような角度の範囲である120度
から170度までの範囲内の任意の角度で、固定するための固定手段」
を新たに特定するものである。
この点、本件原々々出願の当初明細書等には、「2つのディスプレー」
25 の画面の間の角度を固定する手段として「摩擦力」と「ストッパ」の開
示はあるものの、「任意の角度」で固定する手段としては「摩擦力」以外
の開示はなく(補正後の請求項1の固定手段は「摩擦力」による固定に
ついての限定はない)、また固定する角度の範囲としては「120度から
180度」との記載はあるものの「120度から170度」との記載は
ない上、この範囲が「ユーザーが前記の右半分の画面と左半分の画面と
5 の両者を同時に見易いような角度の範囲である」ことについての記載も
一切ない。そして、これらの点が本件原々々出願の当初明細書等の記載
から自明であるということもできない。
よって、本件補正1は、当業者によって、本件原々々出願の当初明細
書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係に
10 おいて、新たな技術的事項を導入するものであり、本件原々々出願の当
初明細書等に記載した事項の範囲内でするものではなく、要旨変更に該
当する。
(ウ) 本件補正1は、本件原々々出願の当初明細書等における請求項1の
「表示装置」に関し、構成(a)により「複数のディスプレー」を備え
15 るとした上で、 (f)表示装置の前記中心線に相当する部分は、表示装
「
置の全体をユーザーがその手で支持しやすいように又はユーザーがその
手の上に載置し易いように且つユーザーが前記の右半分の画面と左半分
の画面との両者を同時に見易いように、前記中心線を中心にして、前記
の右半分の画面と左半分の画面とが互いに近づく方向に折り曲げ自在と
20 なっている」ことを新たに特定するものである。
しかしながら、本件原々々出願の当初明細書等は、表示装置の中心線
で右半分の画面と左半分の画面を互いに近づく方向に折り曲げて使用す
る「2つのディスプレー」について記載しているのみであり、表示装置
の中心線を中心にして、右半分の画面と左半分の画面とが互いに近づく
25 方向に折り曲げ自在となっている3つ以上の「ディスプレー」(上記のと
おり、補正後の請求項1の表示装置は、「複数のディスプレー」を備える
ものであり、「2つのディスプレー」に限られない)についての記載は一
切ない。
よって、本件補正1による補正後の請求項1の構成(f)は、当業者
によって、本件原々々出願の当初明細書等の全ての記載を総合すること
5 により導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入
するものであるから、本件補正1は、本件原々々出願の当初明細書等に
記載した事項の範囲内でするものではなく、要旨変更に該当する。
(エ) 本件補正1では、請求項1に係る発明の効果に関し、明細書の発明の
詳細な説明の【0038】ないし【0041】において、大幅な追加が
10 されており、かかる補正は、本件原々々出願の当初明細書等に記載した
事項の範囲内でするものではなく、要旨変更に該当する。
イ 本件原々出願の出願日
前記アのとおり、本件原々々出願は、平成10年6月16日にされたも
のとみなされるから、本件原々出願の出願日は、本件原々々出願の出願日
15 である平成3年8月30日まで遡及せず、現実の出願日である平成9年1
1月10日となる。
ウ 本件原出願の出願日(本件原出願についての分割要件違反)
(ア) 本件原出願に係る発明の技術事項
本件原出願の願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲に記載さ
20 れた発明は、平成14年7月8日付け手続補正書(乙13)により補正
されているが、補正後の請求項1ないし3に記載された発明に関し、少
なくとも次の①ないし④に係る技術事項は、以下の(イ)ないし(オ)のとお
り、本件原々出願の願書に最初に添附した明細書又は図面(乙7。以下
「本件原々出願の当初明細書等」という。)に記載されておらず、またそ
25 の記載から自明ということもできない。
①「見開き型表示装置」に係る技術事項(請求項1ないし3)
請求項1ないし3の「前記の『2つの表示板』を、それらがユーザ
ーから見て上下方向又は左右方向に見開きにされた状態にも、それら
が折り畳まれた状態にもできるように、互いに接続するための見開き
接続手段と、
5 前記の『2つの表示板』を、それらの間の角度が、『ユーザーから見
て上下方向又は左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態と
互いに折り畳まれた状態との間の角度…』となるように、…固定する
ための中間固定手段と…を備えたことを特徴とする見開き型表示装置」
に係る技術事項(以下「本件技術事項1」という。)
10 ②「テレビ番組情報表示手段」と「情報入力用画面表示手段」に係る技
術事項(請求項1及び2)
請求項1及び2の「前記テレビ番組情報無線受信手段により受信さ
れたテレビ番組情報を前記『2つの表示板』の双方又は一方の表示板
が出力する画面の全部又は一部に表示させるためのテレビ番組情報表
15 示手段と、
前記「2つの表示板」の中の少なくとも一方の表示板が出力する画
面の全部又は一部に、「ユーザーが情報を入力し記録するために使用す
る、情報入力用画面」を表示するための情報入力用画面表示手段」に
かかる技術事項(以下「本件技術事項2」という。)
20 ③「中間固定手段」に係る技術事項(請求項1ないし3)
請求項1ないし3の「『…約105度から約175度までの範囲内の
角度』となるように、摩擦力やストッパやその他の手段により固定す
るための中間固定手段」に係る技術事項(以下「本件技術事項3」と
いう。)
25 ④「外部情報無線受信手段」に係る技術事項(請求項2及び3)
請求項2及び3の「見開き型表示装置とは離れた場所に在る磁気デ
ィスク装置などの情報記録装置から送信されてくる外部情報であって
テレビ番組情報以外の外部情報を、無線を介して受信するための外部
情報無線受信手段」(以下「本件技術事項4」という。)
(イ) 本件技術事項1について
5 本件原々出願の当初明細書等には、使用時においてユーザーから見て
左右方向に見開きにされた状態になる見開き型表示装置について記載さ
れているのみであり、上下方向に見開きされた状態になる見開き型表示
装置については記載も示唆も一切ない。
すなわち、本件原々出願の当初明細書等の特許請求の範囲の請求項1
10 においては、「表示装置の使用時の全体の形状は、ユーザーの視線が延び
る方向とほぼ平行な中心線を中心として、ユーザーから見たときの前記
中心線の右半分の平面の面積と同左半分の平面の面積とが、ハードウェ
アとしてはほぼ左右対称となる」「表示装置の使用時の全体の形状は、前
記中心線の右半分の厚さ寸法と同左半分の厚さ寸法とが、ハードウェア
15 としてはほぼ左右均等となる」「ユーザーが前記の右半分の画面と左半分
の画面との両者を同時に見易いような角度」として、使用時においてユ
ーザーから見て左右方向に見開きにされた状態になる見開き型表示装置
が特定されており、また発明の詳細な説明及び図面に記載された見開き
型表示装置も「ユーザーは、このCD-ROM再生装置をあたかも本を
20 見開き状態にして本を読んでいるのと同じ感覚で使用できる。(
」【001
5】、
)「この第2実施例では、前記枠体11~20が、図3(正面図)お
よび図4(平面図)に示すように、その互いに隣合う枠体の平面同士の
角度が約180度となるような見開き状態にされ」【0026】 、
( )「また
この第4実施例の変形として、…各LCD画面5aと7aを合わせた1
25 つの横長の(パノラマの)画面が実現できる」【0033】
( )等、すべて、
使用時にユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態になることを
前提としている。そして、【発明の効果】において、ハードウェアとして
その平面や厚さ寸法がほぼ左右均等になることによる見開き型表示装置
の持ちやすさ、及び、画面全体が左右均等に分けられることによる画面
の見易さが特に強調されていることからすれば、本件原々出願の当初明
5 細書等に記載された見開き型表示装置は、使用時にユーザーから見て左
右方向に見開きにされることを必須の前提とするものであるということ
ができる。
以上のとおりであるから、本件技術事項1は、本件原々出願の当初明
細書等には記載されておらず、またこれらの記載から自明であるという
10 ことはできない。
(ウ) 本件技術事項2について
本件原々出願の当初明細書等には、①テレビ番組情報を一方の表示板
が出力する画面の一部に表示させるテレビ番組情報表示手段、②情報入
力用画面を一方の表示板が出力する画面の一部に表示する情報入力用画
15 面表示手段、及び、③これらの手段を1つの装置で併用することについ
ての記載も示唆も一切ない。
すなわち、本件原々出願の当初明細書等においては、実施例4に携帯
用TV(テレビ)が記載されているところ、「LCD画面5aには1チャ
ンネルの番組を表示させるとともに、LCD画面7aには3チャンネル
20 の番組を表示させる」
「LCD画面5aおよび7aを合わせた1つの大き
な画面に1つの番組を表示させる」 【0032】
( 【0033】)とあるの
みであり、テレビ番組情報を一方の表示板の画面の一部に表示させるこ
とについては記載も示唆もない。また情報入力用画面表示手段について
は、「本発明の表示装置は、単にCD-ROM等の記録媒体からの情報を
25 表示するために使用するだけでなく、例えば入力ペン等により情報を入
力するためにその入力ペンを操作するための操作画面の表示のために使
用するディスプレー、つまり入力装置としても使用できるディスプレー
を含む」【0035】
( )と記載されているのみであり、情報入力用画面を
一方の表示板の画面の一部に表示させることについては記載も示唆もな
い上、かかる入力装置を実施例4の携帯用TV(テレビ)と併用するこ
5 とについては記載も示唆もない。かえって、実施例4では、「LCD画面
5aには1チャンネルの番組を表示させるとともに、LCD画面7aに
は3チャンネルの番組を表示させることにより、2つの番組を同時に視
聴することができるようになる」「各LCD画面5aと7aを合わせた1
つの横長の(パノラマの)画面が実現できる」【0032】【0033】
( 、 )
10 として2つの画面の双方をテレビ番組情報用の「ディスプレー」とする
ことの効果が記載されていることからすれば、実施例4において、一方
の「ディスプレー」を入力装置として用いる「ディスプレー」にするこ
とはできないというべきである。
以上のとおりであるから、本件技術事項2は、本件原々出願の当初明
15 細書等には記載されておらず、またこれらの記載から自明であるという
ことはできない。
(エ) 本件技術事項3について
本件原々出願の当初明細書等には、「120度から170度」又は「1
20度から180度」との記載はあるものの、「約105度から約175
20 度」という数値範囲についてはなんら記載がなく、また固定手段の具体
例としては、「摩擦力」によるものと「ストッパ」が挙げられているのみ
である。
よって、本件原々出願の当初明細書等には、その他の手段を含む中間
固定手段により、「約105度から約175度」で固定することについて
25 の記載はない。そして、本件原々出願の当初明細書等の【発明の効果】
において固定角度の範囲を「120から170度」とすることの効果が
特に強調されていることも踏まえれば(【0040】、これらの点は、本
)
件原々出願の当初明細書等の記載から自明ということもできない。
(オ) 本件技術事項4について
本件原々出願の当初明細書等には「また特に図1に示した第1実施例
5 では、CD-ROM駆動装置3は枠体1に内蔵させているが、本発明で
は、これを枠体1および2から分離させて別個のユニットとし、この別
個のユニットであるCD-ROM駆動装置から無線電波により枠体1内
の信号処理装置4に信号を送るようにしてもよい」【0037】
( )と記載
されているのみである。
10 よって、本件原々出願の当初明細書等には、「CD-ROM駆動装置」
以外の情報記録装置から(テレビ番組情報以外の)外部情報を無線によ
り受信する手段についての記載はなく、またこの点が上記記載から自明
であるということもできない。
(カ) 以上のとおり、本件原出願は、旧特許法44条1項が適用されるとし
15 ても、同項の要件を充足する適法な分割出願ではないから(改正後の特
許法においても同様である。 、本件原出願の出願日は、現実の出願日で
)
ある平成12年2月9日とすべきである。
エ 本件出願の出願日(本件出願についての分割要件違反)
(ア) 本件出願に係る発明の技術的事項
20 本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明のうち、少なくと
も次の①及び②に係る技術事項は、本件原出願の願書に最初に添附した
明細書又は図面(乙8。以下「本件原出願の当初明細書等」という。)に
記載されておらず、またその記載から自明ということはできない。
①「左右見開き固定手段」に係る技術事項(請求項4ないし6)
25 請求項4ないし6の「…約105度から約170度までの範囲内の
いずれかの角度』となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やそ
の他の手段により固定するための左右見開き固定手段」に係る技術事
項(以下「本件技術事項5」という。)
②「外部情報無線受信手段」に係る技術事項(請求項12)
請求項12の「前記片手支持可能な表示装置から離れた場所に存在
5 する外部の情報記録装置に記録されている外部情報を無線を介して受
信するための外部情報無線受信手段」に係る技術事項(以下「本件技
術事項6」という。)
(イ) 本件技術事項5について
本件原出願の当初明細書等には、「約110度から約170度」又は
10 「120度から180度」との記載はあるものの、「約105度から約1
70度」という数値範囲についてはなんら記載がなく、また固定手段の
具体例としては、摩擦力によるものとストッパが挙げられているのみで
ある。
よって、本件原出願の当初明細書等には、少なくとも、チルト機構や
15 その他の手段を含む左右見開き固定手段により、「約105度から約17
0度」で固定することについての記載はない。そして、本件原出願の当
初明細書等の【発明の効果】において固定角度の範囲を「110から1
70度」とすることの効果が特に強調されていることも踏まえれば(【0
040】 、これらの点は、本件原出願の当初明細書等の記載から自明と
)
20 いうこともできない。
(ウ) 本件技術事項6について
本件原出願の当初明細書等には、「また特に図1に示した第1実施例で
は、CD-ROM駆動装置3は枠体1に内蔵させているが、本発明では、
これを枠体1および2から分離させて別個のユニットとし、この別個の
25 ユニットであるCD-ROM駆動装置から無線電波により枠体1内の信
号処理装置4に信号を送るようにしてもよい。 (
」 【0037】)と記載さ
れているのみである。
よって、本件原出願の当初明細書等には、CD-ROM駆動装置以外
の情報記録装置から外部情報を無線により受信する手段についての記載
はなく、またこの点が上記記載から自明であるということもできない。
5 (エ) 以上のとおり、本件出願は、旧特許法44条1項の要件を充足する適
法な分割出願ではないから、本件出願の出願日は、現実の出願日である
平成14年7月5日となる。
オ 小活
以上によれば、本件原々々出願の出願日は、本件補正1にかかる手続補
10 正書を提出した日である平成10年6月16日となり、本件原々出願の出
願日は、現実の出願日である平成9年11月10日となり、本件原出願の
出願日は、現実の出願日である平成12年2月9日となり、本件出願の出
願日は、現実の出願日である平成14年7月5日となる。
(原告の主張)
15 ア 本件原々々出願の出願日(本件原々々出願についての補正要件違反がな
いこと)
(ア)a 本件原々々出願の当初明細書等には「…ユーザーは、例えば通勤電
車の中で使用する場合、両手のうち一方の手で吊り革をつかんで他方
の手のみでディスプレー装置を支えているときはこれを支えやすいよ
20 うに150度の角度に見開いた状態で使用し、また電車の中が混雑し
てきたら120度の角度に見開いた状態で使用する等、周囲の状況に
さらに即応したきめ細かい使用が可能になる。 (7/13頁第2段落)
」
などの記載があり、本件補正1に係る「(g)表示装置は、…前記の右
半分と左半分とが前記中心線を中心にして互いに近づく方向に折り曲
25 げられたとき、表示装置の全体をユーザーがその片手で支持し易いよ
うな又はユーザーがその片手の上に載置し易いような…」という部分
は、本件原々々出願の当初明細書等から当業者に自明の事項である。
b 本件原々々出願の当初明細書等には、「また本実施例では、…枠体1
と枠体2とは、…図2の(a)の見開き状態から、同(b)の半見開
き状態を経て、さらに同(c)の折り畳み状態へと、自在に折り曲げ
5 ることができるようになっている。」(4/13頁第5段落) 「また本
、
実施例では、…摩擦力により、枠体1および枠体2との間は、任意の
角度で…一時的に固定した状態(例えば図2の(b)の状態)で使用
できるようになっている。 (4/13頁最終段落)という記載及び
」
【図2】の記載がある。
10 この「図2(b)の状態」(折り曲げ状態)とは、「図2(a)の見
開き状態」(180度)でも「図2(c)の折り畳み状態」(0度)で
もない状態ということは明らかである。そこで、「図2(c)の状態」
(0度)及び「図2(a)の状態」(180度)との間で、実際上十分
に実質的に区別できる状態であることを考慮し、また、2つの表示板
15 間が90度未満であるとき、ユーザーにとって、2つの表示板の各画
面を見るのに大きな不都合があることは、通常人(当業者を含む)の
経験則・技術常識上、明らかであるから、上記図2(b)の状態とは、
「2つの表示板間が90度から175度までの間での見開き状態」で
あると解するのが自然・妥当であり当業者の通常の読み方であるとい
20 うことができる。
したがって、「120度から170度までの範囲内の任意の角度で、
固定する」とした本件補正1は、上記の「ユーザーが使用できる、図
2(b)の折り曲げ状態」に対応する「90度から175度までの間
での見開き状態」を「120度から170度までの間での見開き状態」
25 に数値限定したものにすぎない。
また、本件原々々出願の当初明細書等には「本発明では、…両者の
ディスプレーの画面の間の角度が120度から180度の間の任意の
角度で固定されるように、摩擦力により固定する手段をさらに含むの
がよい。(3/13頁第2段落)という記載があり、
」 「120度から…」
という数値が記載されているから、本件補正1中の「120度から…」
5 は当業者に自明の事項だといえる。
そして、本件補正1による上記「120度から170度までの範囲
内の任意の角度で、固定する」という数値限定は、本件原々々出願の
当初明細書等から把握される「周囲の状況に即応したきめ細かい使用
を可能にする」という発明の作用効果・技術的意義に対し影響を与え
10 るものではない。
c 本件補正1に係る「ユーザーが前記の右半分の画面と左半分の画面
との両者を同時に見易いような角度の範囲である」という文言は、「1
20度から170度までの範囲内の任意の角度」を形容し限定するも
のにすぎず、また「120度から170度までの範囲内の任意の角度」
15 で折り曲げた場合は「ユーザーが(CD-ROM再生装置などの表示
装置を)あたかも本を見開き状態にして本を読んでいるのと同じ感覚
で使用できる」こと、すなわち、「ユーザーがCD-ROM再生装置な
どの右半分の画面と左半分の画面との両者を同時に見易いように使用
できる」ことは、「あたかも本を見開き状態にして本を読んでいるのと
20 同じ感覚で使用できる」との記載(本件原々々出願の当初明細書等の
6/13頁第1段落)等に接した当業者等が、技術常識又は周知の事
実(知識)に基づいて、当該記載等から即座に理解・認識する内容に
すぎなかった。
そして、上記「120度から170度までの範囲内の任意の角度」
25 を上記「(2つの表示板を)同時に見易いような角度の範囲である」に
限定に関する補正は、上記発明の作用効果・技術的意義に対し影響を
与えるものではない。
(イ) 本件原々々出願の当初明細書等には、「計10個の表示板(【図3】、
【図4】の枠体11ないし20)が、見開き状態(「約180度だけ」に
限定されない)にされたとき、各LCD21ないし30の各画面が互い
5 に協働して1つの大きな画面を構成するような表示装置」が開示されて
いた。
また、「3つ以上又は4つ以上のディスプレー(表示板)を互いに折り
畳み可能に接続、組み合わせる技術」は、当該技術の属する技術分野に
おいて周知の技術的事項であった。
10 したがって、「表示装置の中心線を中心にして、左半分の画面と右半分
の画面とが互いに近づく方向に折曲げ自在となっている、複数の(3つ
以上の、を含む)表示板(ディスプレー)を備える表示装置」は、本件
原々々出願の当初明細書等中に開示されていた。また、仮に、これが開
示されていなかったとしても、上記のとおり、「3つ以上又は4つ以上の
15 ディスプレー(表示板)を互いに折り畳み可能に接続、組み合わせる技
術」は、当該技術分野において周知の技術的事項であったから、本件
原々々出願の当初明細書等中の【図2(b)】に示す「2つの表示板」を
「3つ以上又は4つ以上のディスプレー(表示板)」とすることは、当業
者であれば、その発明の目的からみて当然にその発明において用いるこ
20 とができると容易に判断することができ、その技術的事項が明細書に記
載されているのと同視できるものであった。
(ウ) 被告は、本件補正1において、明細書中の請求項1に係る発明の効果
についての記載が大幅に追加されており、これが要旨変更に該当すると
主張する。
25 しかしながら、本件補正1において追加された発明の効果を示す記載
の内容は、いずれも、請求項1の発明を具体化した1つの実施例又は1
つの実施形態に相当する形態を採用した場合に生じる作用効果を述べた
記載、すなわち、本件原々々出願の当初明細書等の記載から当業者なら
ば当然に予測できる範囲内の作用効果であって、当業者に自明の事項を
述べた記載にすぎず、明細書の要旨、すなわち特許請求の範囲に記載し
5 た技術的事項を実質的に変更等させるものではないから、要旨変更とは
ならないことは明らかである。
(エ) 以上より、本件補正1は、本件原々々出願の当初明細書等に記載され
た事項から自明な事項であって、新たな技術的事項を導入するものでは
ないというべきである。
10 したがって、本件原々々出願の出願日繰り下げについての被告の主張
は理由がない。
イ 本件原々出願の出願日
本件原々々出願の出願日繰り下げに関する被告の主張が成り立たないこ
とは前記アのとおりであるから、当該主張を前提とする本件原々出願の出
15 願日繰下げに関する被告の主張は、その根拠を欠き、失当である。
ウ 本件原出願の出願日(本件原出願についての分割要件違反がないこと)
(ア) 本件技術事項1について
本件原々出願の当初明細書等において、2つの表示板をユーザーが片
手のみで持つ(支持する)態様としては、解釈上、(ⅰ)「ユーザーから
20 見て左右方向に見開いた状態だけしかない」場合と、(ⅱ)「ユーザーか
ら見て左右方向又は上下方向に見開いた状態がある」場合との2つがあ
り得る。
そして、本件原々出願の当初明細書等においては、「ユーザーが、本発
明による表示装置を、ユーザーから見て上下方向に見開いた状態で、片
25 手のみで持つ(支持する)ようにした場合」を除くことを明記し又は示
唆した記載は全く存在していない。
しかも、「左右方向見開きで片手で持つ状態」と「上下方向見開きで片
手で持つ状態」とは、当該ユーザーの片手の手首を約90度だけ曲げる
か捻ることだけで相互に容易にかつ一瞬で移行可能である。
本件原々出願の当初明細書等から把握される発明の目的及び作用効果
5 は、周囲の状況に即応したきめ細かい使用を可能にすること及び片手で
も表示装置の全体を安定的に支持することを可能にすることであるとこ
ろ、ユーザーが「2つの表示板」を左右方向見開きの状態で持つか上下
方向見開きの状態で持つかは、上記のような発明の目的及び作用効果等
とは関係のない事項である。よって、「上下方向」に係る事項に係る補正
10 が発明の作用効果・技術的意義等に与える影響はない。
したがって、本件技術事項1は、出願時において、当業者が明細書又
は図面の記載からみて自明である技術的事項に当たるといえる。
(イ) 本件技術事項2について
本件原々出願の当初明細書等から把握される発明の目的及び作用効
15 果・技術的意義は、(2つの表示板から成る表示装置の)周囲の状況に即
応したきめ細かい使用を可能にすること(【0021】)及び片手でも表
示装置の全体を安定的に支持することを可能にすること(【0038】)
であると認められる。
そして、テレビ番組又は入力用画面等の情報を、「画面の全部にのみ」
20 表示させるか、「画面の一部にのみ」表示させるか又は「画面の全部又は
一部に」表示させるかは、上記発明の作用効果・技術的意義にとって関
係のない事項である。
上記の発明の目的から見るならば、テレビ番組又はデータ入力用画面
等の情報を「画面の一部」に表示する技術は、本件原々出願の当初明細
25 書等から把握される発明において当業者が特別な工夫を要することなく
当然に用いることができるものであった。これは、表示装置の技術分野
において本件原々々出願前から当業者に周知の技術的事項であり、当業
者が適宜選択できる設計的事項に属するものであるということができる。
以上より、本件技術事項2は、出願時において、当業者が本件原々出
願の当初明細書等の記載からみて自明である技術的事項に当たるといえ
5 る。
(ウ) 本件技術事項3について
本件技術事項3に係る補正は、本件原々出願の当初明細書等における
「ユーザーが使用できる、図2(b)の折り曲げ・半見開き状態」に対
応する「約90度から約175度までの範囲内」を、「約105度から約
10 175度までの範囲内」に数値限定したものにすぎない。
本件技術事項3中の「約105度から約175度までの範囲内の角度」
に係る補正は、本件原々出願の当初明細書等から把握される周囲の状況
に即応したきめ細かい使用を可能にする(【0021】)という「任意の
角度」【0011】
( )に係る部分の発明の作用効果・技術的意義に対し、
15 影響等を与えるものではない。
摩擦力等利用型チルト機構、ネジ式ダイヤル等は、本件原々々出願前
から周知又は公知の技術及び設計的事項であり、これらを、摩擦力だけ
を利用する摩擦機構等の具体化等又は代替等のための手段中の1つとし
て、本件原々出願の当初明細書等から把握される発明に適用しても、発
20 明の目的や作用効果に対し変更等を加えるものではないから 、 本 件
原々々出願時において当業者にとって自明の技術的事項である。
(エ) 本件技術事項4について
本件原々出願の当初明細書等から把握される発明の目的・作用効果は、
前記(イ)のとおりであるが、このような発明の目的・作用効果を達成する
25 ために、構成の一部にCD-ROM駆動装置を採用するか磁気ディスク
装置(ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブなど)を
採用するかは、当業者が適宜選択できる設計事項にすぎなかった。
本件技術事項4中の「テレビ番組情報以外の外部情報を、無線を介し
て受信するための外部情報受信手段」は、本件原々出願の当初明細書等
の「本発明では、これを枠体1および2から分離させて別個のユニット
5 とし、この別個のユニットであるCD-ROM駆動装置から無線電波に
より枠体1内の信号処理装置4に信号を送るようにしてもよい。」(【0
037】)に全て記載されている。
(オ) したがって、本件原出願の出願日繰り下げについての被告の主張は理
由がない。
10 エ 本件出願の出願日(本件出願についての分割要件違反がないこと)
(ア) 本件技術事項5について
本件原出願の当初明細書等には、本件原々出願の当初明細書等におけ
る本件技術事項3に係る記載と同様の記載があり、本件技術事項5の
「約105度から約170度まで」 「摩擦力やストッパやチルト機構や
、
15 その他の手段」及び「左右見開き固定手段」は、いずれも、本件原出願
の特許明細書等の記載及び本件原々々出願前の周知技術及び技術常識な
どから、当業者にとって自明の技術的事項に該当する。
(イ) 本件技術事項6について
本件原出願の当初明細書等には、本件原々出願の当初明細書等におけ
20 る本件技術事項4に係る記載と同様の記載があり、本件技術事項6は、
当業者にとって自明の技術的事項に該当する。
(ウ) したがって、本件出願についての被告の分割要件違反の主張は理由が
ない。
オ 小活
25 以上によれば、本件出願の出願日は、本件原々々出願の出願日である平
成3年8月30日に遡ると解すべきである。
(2) 争点2-2-1(本件各発明についての乙1文献を引用例とする新規性欠
如(出願日遡及を前提とする無効理由))について
(被告の主張)
ア 乙1文献が本件出願前に頒布された刊行物に当たること
5 仮に、本件出願の出願日が本件原々々出願の出願日である平成3年8月
30日まで遡及したとしても、乙1文献は、同日より前の平成3年4月1
8日に頒布されているから、本件出願前に頒布された刊行物(特許法29
条1項3号)に当たる。
イ 乙1文献に記載された発明
10 (ア) 乙1文献に開示されている内容
乙1文献には、①コンピュータノート10は、情報表示用の液晶ディ
スプレイ(画面)を有する略長方形の第1のパネル12と、情報表示用
の液晶ディスプレイ(画面)を有する略長方形の第2のパネル14と、
を備え、第1のパネル12と第2のパネル14とは、その端部同士が蝶
15 番16により折り曲げ自在に接続(連結)されていること(図1、図6
A)、②これにより、第1のパネル12と第2のパネル14とは、各液晶
ディスプレイ間の角度が左右方向に180度となる見開き状態(図1)
から、半見開き状態(図4)を経て、第1のパネル12と第2のパネル
14とが互いに折り畳まれた折り畳み状態(図2)へと自在に折り曲げ
20 ることができ、また逆に、折り畳み状態(図2)から半見開き状態(図
4)を経て、見開き状態(図1)にすることができること(図1、図2、
図4)、③蝶番16にロッキング機構を設け、第1のパネル12と第2の
パネル14との間の角度を、0度から360度の間の任意の角度で固定
した選択位置とすることができること(図6Aないし図6D)、④これに
25 より、例えば、ユーザーが座っているか、立っているか、又は歩いてい
る姿勢の時、そのような選択位置の何れかで片手で保持することができ
ることの開示があることが認められる。
したがって、乙1文献には、以下の(イ)ないし(キ)の発明(以下、順に
「乙1発明1」「乙1発明2」などといい、併せて「乙1発明」という。
、 )
が記載されている。
5 (イ) 乙1発明1
1a’ 略長方形の液晶ディスプレイで情報を表示できる第1のパネル
12と略長方形の液晶ディスプレイで情報を表示できる第2のパ
ネル14とを備え、片手で使用することができるコンピュータノ
ート10であって、
10 1b’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、それらが互いに折
り畳まれた状態にも、それらが左右方向に見開きにされた状態に
もできるように接続するための蝶番16と、
1c’ 蝶番16に設けられたロッキング機構であって、第1のパネル
12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て左右方向に見開
15 きにされているときの各液晶ディスプレイ間の角度が180度と
なるように固定でき、
1d’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て
左右方向に見開きにされているときの各液晶ディスプレイ間の角
度が0度から360度の間の任意の角度(120度から170度
20 の間の角度を含む)となるように固定でき、
1e’ 第1のパネル12と第2のパネル14とが互いに折り畳まれた
状態から広げられていく動作をストップする機能と、
1f’ 第1のパネル12と第2のパネル14との間の角度がユーザー
から見て左右方向に180度の角度で見開きにされた状態から狭
25 められていく動作をストップする機能とを有するロッキング機構
と、
1g’ を備えた片手で使用することができるコンピュータノート10。
(ウ) 乙1発明2
2a’ 略長方形の液晶ディスプレイで情報を表示できる第1のパネル
12と略長方形の液晶ディスプレイで情報を表示できる第2のパ
5 ネル14とを備え、片手で使用することができるコンピュータノ
ート10であって、
2b’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、それらが互いに折
り畳まれた状態にも、それらが左右方向に見開きにされた状態に
もできるように接続するための蝶番16と、
10 2c’ 蝶番16に設けられたロッキング機構であって、第1のパネル
12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て左右方向に見開
きにされているときの各液晶ディスプレイ間の角度が180度と
なるように固定でき、
2d’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て
15 左右方向に見開きにされているときの各液晶ディスプレイ間の角
度が0度から360度の間の任意の角度(120度から170度
の間の角度を含む)となるように固定でき、
2e’ 第1のパネル12と第2のパネル14とが互いに折り畳まれた
状態から広げられていく動作をストップする機能を有するロッキ
20 ング機構と、
2f’ を備えた片手で使用することができるコンピュータノート10。
(エ) 乙1発明3
3a’ 略長方形の液晶ディスプレイで情報を表示できる第1のパネル
12と略長方形の液晶ディスプレイで情報を表示できる第2のパ
25 ネル14とを備え、片手で使用することができるコンピュータノ
ート10であって、
3b’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、それらが互いに折
り畳まれた状態にも、それらが左右方向に見開きにされた状態に
もできるように接続するための蝶番16と、
3c’ 蝶番16に設けられたロッキング機構であって、第1のパネル
5 12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て左右方向に見開
きにされているときの各液晶ディスプレイ間の角度が180度と
なるように固定でき、
3d’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て
左右方向に見開きにされているときの各液晶ディスプレイ間の角
10 度が0度から360度の間の任意の角度(120度から170度
の間の角度を含む)となるように固定できるロッキング機構と、
3e’ を備えた片手で使用することができるコンピュータノート10。
(オ) 乙1発明4
4a’ 液晶ディスプレイで情報を表示できる第1のパネル12と液晶
15 ディスプレイで情報を表示できる第2のパネル14とを備え、片
手で使用することができるコンピュータノート10であって、
4b’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、それらが互いに折
り畳まれた状態にも、それらが左右方向に見開きにされた状態に
もできるように接続するための蝶番16と、
20 4c’ 第1のパネル12と第2のパネル14とを、ユーザーから見て
左右方向に見開きにされているときの各液晶ディスプレイ間の角
度が0度から360度の間の任意の角度(105度から170度
の間の角度を含む)となるように固定するためのロッキング機構
と、
25 4d’ を備えた片手で使用することができるコンピュータノート10。
(カ) 乙1発明5
5e’ 次の(a)~(d)の内容を含む片手で使用することができる
コンピュータノート10。
5a’ (a)液晶ディスプレイで情報を表示できる第1のパネル12
と液晶ディスプレイで情報を表示できる第2のパネル14とが、
5 各液晶ディスプレイがユーザーに対向することができるように接
続されている、
5b’ (b)コンピュータノート10は、片手で使用することができ
る大きさに構成されている、
5c’ (c)第1のパネル12と第2のパネル14とを、それらが互
10 いに折り畳まれた状態にも、それらが左右方向に見開きにされた
状態にもできるように接続するための蝶番16を備えている、
5d’ (d)各液晶ディスプレイ間の角度がユーザーから見て左右方
向に見開きにされているとき、第1のパネル12と第2のパネル
14とを、各液晶ディスプレイ間の角度が0度から360度の間
15 の任意の角度(105度から170度の間の角度を含む)となる
ように固定するためのロッキング機構を備えている。
(キ) 乙1発明6
6e’ 次の(a)~(d)の内容を含む片手で使用することができる
コンピュータノート10。
20 6a’ (a)液晶ディスプレイで情報を表示できる第1のパネル12
と液晶ディスプレイで情報を表示できる第2のパネル14とが、
各液晶ディスプレイがユーザーに対向することができるように接
続されている、
6b’ (b)コンピュータノート10は、片手で使用することができ
25 る大きさに構成されている、
6c’ (c)ユーザーから見て右側部分の第1のパネル12と左側部
分の第2のパネル14とを、それらが互いに折り畳まれた状態に
も、それらが左右方向に見開きにされた状態にもできるように接
続するための蝶番16を備えている、
6d’ (d)ユーザーから見て右側部分の第1のパネル12と左側部
5 分の第2のパネル14とを、各液晶ディスプレイ間の角度が0度
から360度の間の任意の角度(105度から170度の間の角
度を含む)となるように固定するためのロッキング機構を備えて
いる。
ウ 本件各発明と乙1発明との対比
10 (ア) 本件発明1と乙1発明1との対比
a 乙1発明1と本件発明1とを対比すると、乙1発明1の①「コンピ
ュータノート10」(構成要件1a’及び1g’ 、②「蝶番16」
) (同
1b’ 、③「ロッキング機構」
) (同1c’ないし1f’)は、それぞれ、
本件発明1の①「表示装置」(構成要件1A及び1G)、②「左右見開
15 き接続手段」(同1B)、③「完全左右見開き固定手段」(同1C)及び
「中間左右見開き固定手段」(同1Dないし1F)に相当する。
b 前記aの③について補足すると、乙1発明1の「ロッキング機構」
は、一次軸36の両端部39及び41とセラミックジャケット40と
の間に生じる摩擦力及び二次軸38と半硬質ゴムワッシャ46との間
20 に生じる摩擦力により、所定のトルク量を支持してブラケットに対す
るパネル(第1のパネル12及び第2のパネル14)の回転を阻止す
ることにより、第2のパネル14に対して第1のパネル12を任意の
傾斜角度(180度、105度から170度の間の角度、120度か
ら170度の間の角度等)で固定するように機能するものである。し
25 たがって、乙1発明の「ロッキング機構」は、本件発明1の構成要件
1Cの「完全左右見開き固定手段」に相当することは明らかであるが、
本件発明1の「ストッパ」により固定するための中間左右見開き固定
手段」に相当することも次のとおり自明である。すなわち、ヒンジ構
造を有する電子機器においてヒンジに「ストッパ」(回動を阻止する機
構)を備えることは、特開平2-275108号公報(乙2。以下
5 「乙2文献」という。 、実願平1-125015号(実開平3-67
)
714号)のマイクロフィルム(乙3。以下「乙3文献」という。 、
)
実願昭63-171245号(実開平2-91874号)のマイクロ
フィルム(乙4。以下「乙4文献」という。)及び特開平2-2683
11号公報(乙5。以下「乙5文献」という。)に開示されているよう
10 に、本件原々々出願の出願日時点における周知の技術であり、乙1発
明1の「ロッキング機構」に係る記載に接した当業者にとって当然に
想起できる事項であるから、本件発明1の構成要件1Dないし1Fの
「ストッパ」により固定するための「中間左右見開き固定手段」は、
乙1発明1の「ロッキング機構」から自明な事項であるといえる。
15 c よって、乙1発明1は、本件発明1と同一である。
(イ) 本件発明2と乙1発明2との対比
乙1発明2と本件発明2とを対比すると、乙1発明2の①「コンピュ
ータノート10」(構成要件2a’及び2f’ 、②「蝶番16」
) (同2
b’ 、③「ロッキング機構」
) (同2c’ないし2e’)は、それぞれ、本
20 件発明2の①「表示装置」(構成要件2A及び2F)、②「左右見開き接
続手段」(同2B)、③「完全左右見開き固定手段」(同2C)及び「中間
左右見開き固定手段」(同2D及び2E)に相当する。
よって、乙1発明2は、本件発明2と同一である。
(ウ) 本件発明3と乙1発明3との対比
25 乙1発明3と本件発明3とを対比すると、乙1発明3の①「コンピュ
ータノート10」(構成要件3a’及び3e’ 、②「蝶番16」
) (同3
b’ 、③「ロッキング機構」
) (同3c’及び3d’)は、それぞれ、本件
発明3の①「表示装置」(構成要件3A及び3E)、②「左右見開き接続
手段」(同3B)、③「完全左右見開き固定手段」(同3C)及び「中間左
右見開き固定手段」(同3D)に相当する。
5 よって、乙1発明3は、本件発明3と同一である。
(エ) 本件発明4と乙1発明4との対比
乙1発明4と本件発明4とを対比すると、乙1発明4の①「コンピュ
ータノート10」(構成要件4a’及び4d’ 、②「蝶番16」
) (同4
b’ 、③「ロッキング機構」
) (同4c’)は、それぞれ、本件発明4の①
10 「表示装置」(構成要件4A及び4D)、②「左右見開き接続手段」(同4
B)、③「左右見開き固定手段」(同4C)に相当する。
よって、乙1発明4は、本件発明4と同一である。
(オ) 本件発明5と乙1発明5との対比
乙1発明5と本件発明5とを対比すると、乙1発明5の①「コンピュ
15 ータノート10」(構成要件5e’、②「
) (a)」及び「(b)」にかかる構
成(同5a’及び5b’、③「蝶番16」
) (同5c’、④「ロッキング機
)
構」(同5d’)は、それぞれ、本件発明5の①「表示装置」(構成要件5
E)、②「(a)」及び「(b)」にかかる構成(同5A及び5B)、③「左
右見開き接続手段」(同5C)、④「左右見開き固定手段」(同5D)に相
20 当する。
よって、乙1発明5は、本件発明5と同一である。
(カ) 本件発明6と乙1発明6との対比
乙1発明6と本件発明6とを対比すると、乙1発明6の①「コンピュ
ータノート10」(構成要件6e’、②「
) (a)」及び「(b)」にかかる構
25 成(同6a’及び6b’、③「蝶番16」
) (同6c’、④「ロッキング機
)
構」(同6d’)は、それぞれ、本件発明6の①「表示装置」(構成要件6
E)、②「(a)」及び「(b)」にかかる構成(同6A及び6B)、③「左
右見開き接続手段」(同6C)、④「左右見開き固定手段」(同6D)に相
当する。
よって、乙1発明6は、本件発明6と同一である。
5 (キ) 本件発明10と乙1発明との対比
乙1発明と本件発明10とを対比すると、構成要件10A及び10C
に係る構成は、前記(イ)ないし(カ)のとおり、乙1発明における構成と同
じである。また、構成要件10Bに係る構成についても、乙1文献の図
1等に開示されていることは明らかである。
10 よって、乙1発明は、本件発明10と同一である。
エ 小括
以上のとおり、本件各発明は、本件出願前に頒布された刊行物である乙
1文献に記載された発明であるから、新規性を欠く。
(原告の主張)
15 ア 乙1文献に記載された発明について乙1文献(国際公開91/0532
7号)に係るPCT出願は、日本国へも平成2年10月5日付けで特願平
2-515540号として国内移行されている(特表平5-501023
号公報(甲20の1)を参照)。
一般に、PCT出願の指定国への国内移行のために提出する翻訳文は、
20 PCT出願明細書等の原文を忠実に翻訳したものでなければならないとさ
れていることは、周知の事実である。よって、乙1文献の正確・忠実な和
訳の内容は、特表平5-501023号公報(甲20の1)に記載された
内容である。なお、被告は、乙1文献の抄訳を提出しているが、これには、
特表平5-501023号公報(甲20の1)と比較した結果、多数の箇
25 所において極めて不正確な箇所又は誤りが多数存在するので、被告提出に
係る乙1文献の抄訳は、乙1文献の内容を示すものではない。
そして、乙1文献の記載及びそれから当業者が読み取れる事実は、次の
(ア)から(コ)までのとおりである。
(ア) 「2つの互いに離れた位置にある回転軸(回転中心)」が存在するこ
と、
5 すなわち、(1)第1軸36は第1パネル12が回転する軸を提供しかつ
第2軸38は第2パネル14が回転する軸を提供すること、及び、(2)
「2つの回転軸」である第1軸36と第2軸38とは互いに所定距離を
介して配置されていること、
(イ) 2つのパネルが互いに独立に回動すること、
10 すなわち、「第1軸36を中心に回動する第1パネル12」と「第2軸
38を中心に回動する第2パネル14」とは、互いに独立に回動するも
のであること、
(ウ) 2つのパネルが互いに独立に固定されること、
すなわち、(ⅰ)第1の固定手段が第1軸36と第1パネル12とを固
15 定し、(ⅱ)第2の固定手段が第2軸38と第2パネル14とを固定する
こと、
すなわち、第1パネル12は第1軸36を回転中心として、第2パネ
ル14は第2軸38(上記第1軸36とは所定の距離だけ離れた第2軸
38)を回転中心として、①それぞれが互いに独立に回動し(前記(イ)参
20 照)、②それぞれが互いに独立にユーザーにより締め付けられ(後記(エ)
参照)、③それぞれが互いに独立に固定されること、
(エ) 「第1パネル12を第1軸36に自動的に『固定』する機能又は構成」
がないこと、
すなわち、乙1文献に記載された発明に係る装置には、第1パネル1
25 2と第1軸36との間を何らかの角度で「自動的に『固定』する機能又
は構成」は存在していないこと、
すなわち、第1パネル12と第1軸36とを固定するためには、 『つ
「
まみ42』を指でつまんで回すというユーザーの手作業」によるしかな
いこと、
(オ) 「第2パネル14を第2軸38に自動的に『固定』する機能又は構成」
5 がないこと、
すなわち、乙1文献に記載された発明に係る装置には、(上記(エ)で述
べた「第1パネル12を第1軸36との固定」におけると同様に)第2
パネル14と第2軸38との間を何らかの角度で「自動的に固定する機
能又は構成」は存在していないこと、
10 すなわち、第2パネル14と第2軸38とを固定するためには、 『つ
「
まみ42』を指でつまんで回すというユーザーの手作業」によるしかな
いこと、
(カ) 第1パネルと第2パネルとは『360度の回動・配向』が可能だが、
その『360度の回動・配向』を自動的に『ストップ』させる機能がな
15 いこと、
すなわち、乙1文献に記載された発明に係る装置のヒンジ部には、第
1パネルの回動又は第2パネルの回動を「ユーザーの手作業によること
なく自動的に『ストップ』させる機能」がないこと、
(キ) 「任意の角度で『保持』(摩擦力などにより保持)する機能」がない
20 こと、
すなわち、乙1文献に記載された発明に係る装置には、第1パネルと
第2パネルとの間を任意の角度で「保持」(摩擦力などにより保持)する
機能がないこと、
(ク) 「『背中合わせ』に折り畳むこと」が技術思想とされていること、
25 すなわち、乙1文献に記載された発明は、「ユーザーが立ちながら又は
歩きながらでの2つのパネルの使用を可能にするという課題・目的のた
めの技術思想としては、(後記(ケ)の「『互いに所定距離だけ離れた2つの
回転軸36、38』を備えたヒンジ部の構成」を採用することにより)
2つのパネルを互いに『背中合わせ』に折り畳めるようにする」という
技術思想だけしか提示されていないこと、
5 (ケ) 「2つの回転軸による、互いに独立の回動」が本質的な構成要素であ
ること、
すなわち、乙1文献に記載された発明において「『第1パネル12の回
転中心となる第1軸36』と、これと互いに所定距離だけ離れた『第2
パネル14の回転中心となる第2軸38』との2つの回転軸を含むヒン
10 ジ部」を採用する構成は、乙1文献に記載された発明の「技術思想(『背
中合わせ』の折り畳み)」において不可欠でかつ本質的な構成要素とされ
ていたこと、
(コ) 「周知又は自明の課題・目的」ではなかったこと、
すなわち、乙1から乙5までの全ての引用文献を見る限り、乙1中に
15 僅かに記載されている「ユーザーが立ちながら又は歩きながらでの2つ
のパネルの使用を可能にするという課題・目的」は、少なくとも本件
原々々出願の出願当時において「周知又は自明の課題・目的」ではなか
ったこと、
イ 本件各発明と乙1文献に記載された発明との対比
20 前記アによれば、本件各発明は、いずれも乙1文献に記載された発明と
同一ではないので、乙1文献を引用例とする新規性欠如の主張は理由がな
い。
(3) 争点2-2-2(本件各発明についての乙1文献を主引用例とする進歩性
欠如(出願日遡及を前提とする無効理由))について
25 (被告の主張)
ア 本件各発明と乙1発明との相違点
前記(2)(被告の主張)のとおり、本件各発明と乙1発明との間には相違
点はないが、以下の点を仮に相違点と捉えたとしても、これらはいずれも
本件原々々出願の出願日において、当業者が容易に想到し得るものである。
(ア) 「ストッパ」により固定するための「中間左右見開き固定手段」に係
5 る構成について
本件発明1は、構成要件1Dないし1Fの「ストッパ」により固定す
るための「中間左右見開き固定手段」を備えている。
前記(2)(被告の主張)ウのとおり、当該構成は乙1発明の「ロッキン
グ機構」から自明であり、本件発明1と乙1発明1との間には相違点は
10 ないが、以下では、次の点を、本件発明1と乙1発明1との相違点(以
下「被告主張の相違点」という。)として主張する。
(被告主張の相違点)
本件発明1は、「ストッパ」により固定するための「中間左右見開き固
定手段」に係る構成を備えるが、乙1発明1は備えないこと。
15 (イ) 第2次訂正に係る審決で認定された相違点について
a 第2次訂正に対する訂正拒絶理由通知(乙17)において、審判合
議体は、第2次訂正発明1と乙1文献に記載された発明との間に、次
の3つの相違点があると認定した(以下、順に「訂正拒絶理由通知に
おける相違点1」等という。。
)
20 (訂正拒絶理由通知における相違点1)
「左右見開き接続手段」により「前記2つの表示板の少なくともい
ずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき」、第2次訂正発明1
では、「当該一方の表示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続さ
れている部分」を回動中心として相対的に回動する」(構成要件1B’)
25 のに対して、乙1文献に記載された発明では、「第1の軸36」を回動
中心として「第1のパネル12が回転」し、「第2の軸38」を回動中
心として「第2のパネル14が回転」する点。
(訂正拒絶理由通知における相違点2)
第2次訂正発明1は、「前記2つの表示板がユーザーから見て左右方
向に見開きにされているときの、前記各表示板のそれぞれ画面が表示
5 される側の各平面の間の見開き角度」が、ユーザーによる少なくとも
いずれか一方の表示板の回動により「約120度から約170度まで
の範囲内の予め決められた1つの角度」に変化させられたとき、前記
回動をストップさせて、前記「2つの表示板」の間を前記「予め決め
られた1つの角度」で固定する中間左右見開きストッパであって、前
10 記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側
の各平面の間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた
状態」から広げられて行く動作、をストップする機能と、前記「2つ
の表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面
の間の見開き角度」が「ユーザーから見て左右方向に約180度の角
15 度で見開きにされた状態」から狭められて行く動作、をストップする
機能と、を有する中間左右見開きストッパ」(構成要件1D’ないし1
F’)を備えているのに対して、乙1文献に記載された発明は、そのよ
うな構成を備えていない点。
(訂正拒絶理由通知における相違点3)
20 「電車の中で、戸外で若しくは外出先で使用する、立ったままで使
用する、又は画面を介してデータを入力するなどの様々な状況若しく
は用途に応じた、前記2つの表示板の使用」を可能にする構成」が、
第2次訂正発明1では、「ユーザーが、「前記2つの表示板の前記各平
面の間の見開き角度」が広がるように前記「2つの表示板」の少なく
25 ともいずれか一方を回動させて前記見開き角度を任意に変化させると
き、前記2つの表示板の間を「ユーザーの任意の角度」で摩擦力によ
り保持するようにしながら、前記見開き角度が前記「予め決められた
1つの角度」になったときは、前記中間左右見開きストッパにより、
前記回動をストップさせて、前記2つの表示板のそれらが互いに接続
されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側に「谷状の部
5 分」を、且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分
及びその近傍部分の画面が表示されない側に「山状の部分」を固定的
に形成する構成」(構成要件1I’)でもあるのに対して、乙1文献に
記載された発明では、第1のパネル12と第2のパネル14が「図3
の背中合わせで折畳まれた位置では、片手で装置を運び、もう片方の
10 手でデータを入力することが容易になる」としている点。
b 被告は上記各相違点の存在を認めるものではないが、本件各発明と
乙1文献との間に、訂正拒絶理由通知における相違点1及び2と同様
の相違点があると仮定して以下主張する。
なお、訂正拒絶理由通知における相違点3については、本件各発明
15 と乙1文献との相違点でないことが明らかである。
イ 被告主張の相違点に係る構成の容易想到性
(ア) 特開平2-275108号公報(乙2文献。)に記載された発明との
組合せ
a 乙2文献に記載された発明
20 乙2文献には、以下の発明が記載されている(以下、この発明を
「乙2発明」という。。
)
①電子機器1は、機器本体2とディスプレイを有する回転部品3と
を備え、機器本体2と回転部品3とがヒンジ装置4により折り曲げ自
在に接続されていること、②回転部品3は、機器本体2の上にほぼ重
25 ね合わせられる閉位置(図7:ⓐ)から、上方に約90°開いた直立
位置(図7:ⓑ)を経て、直立位置から約50°後傾した後傾位置
(図7:ⓒ)へと自在に折り曲げることができ、また逆に、後傾位置
から直立位置を経て閉位置にすることができること、③ヒンジ装置4
にフリーストップ機構及びダンパー手段を設け、機器本体2と回転部
品3との間の角度を、90°から140°の間の角度で固定する(回
5 動を阻止する)ことができること、④電子機器1のヒンジ装置4は、
従来の摩擦抵抗を利用したヒンジ装置であると耐久性に乏しく回転体
の角度調整が困難であるという問題点を解決したものであること。
b 乙1発明と乙2発明の組合せ
乙2発明に開示された電子機器1は、乙1発明のコンピュータノー
10 ト10と同様に折り畳み可能な電子機器であるから、乙2発明と乙1
発明は技術分野が共通する。また、乙2発明は、「従来の電子機器に用
いていたヒンジ装置は、いずれも摩擦抵抗を利用していたので、耐久
性に乏しく、又、摩擦力が絶えず作用していたので、回転体の角度調
節が困難であるという問題点」を、フリーストップ機構やダンパー手
15 段を適用することにより解決し、「耐久性及び信頼性に富み、しかも回
転体の角度調節が容易で…電子機器に好適なヒンジ装置を提供」する
ものであるから、同様に摩擦抵抗を利用した蝶番16を有する乙1発
明の問題点を解決して回転体の角度調節を容易にするために、乙2発
明に開示されたフリーストップ機構やダンパー手段(回動を阻止する
20 機構)を乙1発明に適用することは、当業者が積極的に動機づけられ
るというべきである。したがって、乙1発明を、本件発明1の構成要
件1Dないし1Fの「ストッパ」により固定するための「中間左右見
開き固定手段」に係る構成とすることは、本件原々々出願の出願日に
おいて当業者が容易に想到することができたことである。
25 (イ) 実願平1-125015号(実開平3-67714号)のマイクロフ
ィルム(乙3文献)に記載された発明との組合せ
a 乙3文献に記載された発明
乙3文献には、以下の発明が記載されている(以下、この発明を
「乙3発明」という。。
)
①電子機器10は、機器本体20と回転体としての表示装置30と
5 を備え、機器本体20と表示装置30とがヒンジ装置40により折り
曲げ自在に接続されていること、②表示装置30は、機器本体20の
上面にほぼ重ね合わせられる重合位置から、上方に約90度開いた直
立位置を経て、直立位置から約50度後傾した後傾位置へと自在に折
り曲げることができ、また逆に、後傾位置から直立位置を経て重合位
10 置にすることができること、③ヒンジ装置4にストッパ機構(カム8
0、押圧体90、バネ100等)を設け、機器本体20と表示装置3
0との間の角度を、90度から140度の間の角度で固定する(回動
を阻止する)ことができること、④電子機器1のヒンジ装置40は、
従来の摩擦抵抗を利用したヒンジ装置では耐久性に乏しく、シャフト
15 を回転する際のスムーズさに欠けてしまう等の問題点を解決したもの
であること。
b 乙1発明と乙3発明の組合せ
乙3発明の電子機器10は、乙1発明のコンピュータノート10と
同様に折り畳み可能な電子機器であるから、乙3発明と乙1発明は技
20 術分野が共通する。また、乙3発明は、「従来のヒンジ装置は、いずれ
も摩擦抵抗を利用してシャフトの回転を阻止していたので、長期間使
用すると、摩擦面が摩耗し易く、耐久性に乏しいという問題点」及び
「摩擦力のみでシャフトの回転を阻止すると、シャフトを回転する際
のスムーズさに欠けてしまうという問題点」を、ストッパ機構(カム
25 80、押圧体90、バネ100等)を適用することにより解決し、「耐
久性及び信頼性が高く、しかも回転体の傾斜角度調節がスムーズに行
えるようにしたヒンジ装置…を提供」するものであるから、同様に摩
擦抵抗を利用した蝶番16を有する乙1発明の問題点を解決して回転
体の傾斜角度調節がスムーズに行えるようにするために、乙3発明に
開示されたストッパ機構(カム80、押圧体90、バネ100等から
5 なる回動を阻止する機構)を乙1発明に適用することは、当業者が積
極的に動機づけられるというべきである。したがって、乙1発明にお
いて、本件発明1の構成要件1Dないし1Fの「ストッパ」により固
定するための「中間左右見開き固定手段」に係る構成とすることは、
本件原々々出願の出願日において当業者が容易に想到することができ
10 たことである。
(ウ) 実願昭63-171245号(実開平2-91874号)のマイクロ
フィルム(乙4文献)に記載された発明との組合せ
a 乙4文献に記載された発明
乙4文献には、以下の発明が記載されている(以下、この発明を
15 「乙4発明」という。。
)
①小型電子機器は、操作板1と表示板2とを備え、表示板2が回転
軸8を中心に操作板1に対して回転可能に構成されていること、②表
示板2は、操作板1上に折畳まれた折畳位置から、上方に約90°開
いた直立位置(図5:Ⅱ)を経て、直立位置から約60°後傾した後
20 傾位置(図5:Ⅴ)へと自在に折り曲げることができ、また逆に、後
傾位置から直立位置を経て折畳位置にすることができること、③回転
軸8に形成した複数の溝aないしe、回転軸止め用シャフト10、圧
接部9A等から構成されるチルト機構により、操作板1と表示板2と
の間の角度を、約90°から約150°の間の溝aないしeに対応す
25 る所定の角度で固定することができること、④操作板1と表示板2と
の間の所定の角度は任意に選定できること、⑤小型電子機器の上記チ
ルト機構は、操作板に対して表示板をある傾斜角度で開いて停止させ
た状態において、衝撃や振動等によって停止位置がずれるという従来
の小型電子機器の表示板における問題点を解決したものであること。
b 乙1発明と乙4発明の組合せ
5 乙4発明に開示された小型電子機器は、乙1発明のコンピュータノ
ート10と同様に折り畳み可能な電子機器であるから、乙4発明と乙
1発明は技術分野が共通する。また、乙4発明は、「表示板2をある傾
斜角度で開いた状態において、小さな衝撃、振動等があると……停止
位置がずれることがある」という問題点を、操作板1と表示板2との
10 間の角度を溝aないしeに対応する所定の角度で固定することができ
るチルト機構(複数の溝aないしe、回転軸止め用シャフト10、圧
接部9A等)を適用することにより解決し、「表示板の…必要な傾斜角
度において、確実に固定保持できるクリック感を持たせた小型電子機
器等のチルト機構を提供」するものであるから、乙1発明において第
15 1のパネル12を第2のパネル14に対してある傾斜角度で開いて停
止させた状態において、衝撃や振動等によって停止位置がずれるとい
う問題点を解決するために、乙4発明に開示された上記チルト機構
(複数の溝aないしe、回転軸止め用シャフト10、圧接部9A等か
らなり操作板1と表示板2との間の角度を溝aないしeに対応する所
20 定の角度で固定することができる機構)を乙1発明に適用することは、
当業者が積極的に動機づけられるというべきである。したがって、乙
1発明において、本件発明1の構成要件1Dないし1Fの「ストッパ」
により固定するための「中間左右見開き固定手段」に係る構成とする
ことは、本件原々々出願の出願日において当業者が容易に想到するこ
25 とができたことである。
(エ) 乙2文献ないし乙4文献及び特開平2-268311号公報(乙5文
献)に記載された周知技術との組合せ
a 乙2文献ないし乙5文献に記載された周知技術
乙2文献には、①ヒンジ装置4のプレート21の当接部22がコイ
ルバネ11の一端11aに引っかかることで、回転部品3が直立位置
5 ⓑ(90度)において静止すること、及び、②ヒンジ装置4に「スト
ッパ」を設けて、回転部品3が傾斜位置ⓒ(140度)からさらに回
転することを規制してもよいことが記載されている。
また、乙3文献には、ヒンジ装置4の押圧体9がカム面121の窪
部126にはまり込むように構成することで、表示装置30を機器本
10 体20に対して直立位置(90度)で静止させることが記載されてい
る。
さらに、乙4文献には、従来の小型電子機器の表示板では操作板に
対して表示板をある傾斜角度で開いて停止させた状態において衝撃や
振動等によって停止位置がずれるという問題点を解決するためにチル
15 ト機構(複数の溝aないしe、回転軸止め用シャフト10、圧接部9
A等)を設け、操作板1と表示板2との間の角度を溝a~eに対応す
る所定の角度で固定することが記載されている。
以上によれば、ヒンジ構造を有する電子機器において表示板の回動
を所定の角度で静止するストッパを設けることは、本件原々々出願の
20 出願日における周知技術であるといえる。
なお、乙1発明のコンピュータノートのような二軸ヒンジ構造を有
する電子機器において、所定角度で回動を阻止する機構についても、
例えば乙5文献等に記載されているように、本件原々々出願の出願日
における周知技術である。
25 b 乙1発明への適用
ヒンジ構造(蝶番16)を有する電子機器である乙1発明において、
前記aの周知技術を適用することは当業者が当然に行い得るというべ
きであり、そうすると、乙1発明において、本件発明1の構成要件1
Dないし1Fの「ストッパ」により固定するための「中間左右見開き
固定手段」に係る構成とすることは、本件原々々出願の出願日におい
5 て当業者が容易に想到することができたことである。
ウ 訂正拒絶理由通知における相違点1に係る構成の容易想到性
(ア) 実願昭60-27223号(実開昭60-170858号)のマイク
ロフィルム(乙18。以下「乙18文献」という。)等に記載されている
周知技術
10 乙18文献には、蓋体3の円筒部9を本体2の軸受部7、7の間に位
置させた状態で、円筒10を軸受部7の外側から円筒部9内に回転自在
に嵌合させると共に、円筒10と軸受部7とをねじ11によって一体的
に固定することにより、本体2と蓋体3とが相対的に自由に回動させ、
折畳むことができる小型電子機器が記載されている。この小型電子機器
15 の本体2と蓋体3は、左右に見開くものであり(第3図参照)、円筒10
を介して互いに接続されており、蓋体3を本体2に対して回動させたと
き、円筒10を回動中心として相対的に回動するものであるといえる。
そうすると、小型の電子機器において、相対的に自由に回動させ、折
畳むことができる2つの部材の少なくともいずれか一方をユーザーが回
20 動させたとき、当該一方の部材と他方の部材とが「それらが互いに接続
されている部分」を回動中心として相対的に回動するように、接続する
ための左右見開き接続手段を設けることは、乙18文献に記載されてい
るように周知の技術である(以下「周知技術1」という。。
)
なお、乙18文献の他にも、例えば、実願昭56-185981号
25 (実開昭58-90437号)のマイクロフィルム(乙19)、特開昭5
9-221725号公報(乙20)、特開昭62-92025号公報(乙
21)、特開平1-282587号公報(乙22)、特開平2-2303
60号公報(乙23)、実願昭58-14518号(実開昭59-122
524号)のマイクロフィルム(乙24)及び実開昭61-46640
号公報(乙25)など、周知技術1を示す多数の文献が挙げられる。
5 (イ) 乙1発明への適用
乙1発明は小型の電子機器に係る発明であり、乙18文献に記載され
た技術と共通するから、乙1発明に周知技術1を採用することにより、
訂正拒絶理由通知における相違点1の構成とすることは当業者ならば容
易にできたことである。
10 補足すると、乙18文献は、「左右開き」の構成を有する小型電子機器
を開示するものであり(第3図等)、この小型電子機器は、左右に配置さ
れる本体2と蓋体3とを回動自在に接続するための回動機構(軸受部7、
円筒部9、円筒10等)を備えており、この回動機構は、本体2と蓋体
3とを電気的に接続する信号線13を通すことができるようになってい
15 る。乙1発明のコンピュータノートもまた「左右開き」であり(FIG.
1等)、2つのパネル間で電気通信を可能とする手段(乙1文献7頁35
行ないし8頁1行)としてリボンコンピュータケーブル(同8頁3行な
いし4行)が例示されているが、このリボンコンピュータケーブル(い
わゆるフレキシブルプリント基板)を信号線に代えるために乙18文献
20 の回動機構を採用し、その結果、訂正拒絶理由通知における相違点1に
係る構成とすることは、当業者にとってきわめて容易なことである。
そもそも、乙1発明は、連携した2つの別個のデジタイザの使用を可
能にし、ユーザーが一方のデジタイザを入力し、それをディスプレイと
しても使用される第2のデジタイザ上で見ることができ、2つのパネル
25 を様々な選択位置に開けるようにした携帯用コンピュータを提供するこ
とを目的としており(乙1文献の3頁12行ないし21行)、2つのパネ
ルを接続する蝶番手段はこれらのなす角度を複数の角度に配向すること
を可能とするものであればよく、必ずしも2軸である必要はない。乙1
文献における2つのパネルを「背中合わせ」に折り畳む態様はあくまで
も「特定の実施形態」にすぎないものである(同4頁27行ないし29
5 行)。むしろ、乙1文献には、一方のパネルに対して他方のパネルが、一
次軸36(又は二次軸38)を回動中心として相対的に回動することが
記載されており、一次軸36(又は二次軸38)は、「それら(一方のパ
ネル及び他方のパネル)が互いに接続されている部分」に他ならない。
よって、訂正拒絶理由通知における相違点1に係る構成は、そもそも周
10 知技術1を採用するまでもなく、乙1文献に基づいて当業者がきわめて
容易に想到できるものであるといえる。
エ 訂正拒絶理由通知における相違点2に係る構成の容易想到性
(ア) 乙4文献及び実願昭59-104166号(実開昭61-19832
号)のマイクロフィルム(乙26。以下「乙26文献」という。)に記載
15 されている周知技術
乙4文献には、使用時に表示板2を見易い傾斜角度に開くことができ
る折畳み式の小型電子機器において、表示板2を手で回転させると、回
転軸8の溝aないしeに回転軸止め用シャフト10が弾性的に圧入され、
例えば回転軸8の溝d、eのところでは、それぞれクリック音を感触さ
20 せながら位置Ⅳ、Vで停止し表示板2を固定させることが開示されてい
る。
ここで、乙4文献の第5図からみて、位置Ⅳや位置Vは、それぞれ傾
斜角度が約120度から約170度までの範囲内の予め決められた1つ
の傾斜角度に対応した位置であると認められる。
25 そうすると、折り畳み式の小型電子機器において、表示板2を含む2
つの部材のなす角度が、ユーザーによる表示板2の回動により約120
度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度に変化させ
られたとき、前記回動をストップさせて、前記2つの部材の間を前記予
め決められた1つの角度で固定する中間ストッパであって、前記2つの
部材のなす角度が折り畳まれた状態から広げられて行く動作をストップ
5 する機能と、約180度の角度にされた状態から狭められて行く動作を
ストップする機能を有する中間ストッパを設けることは、乙4文献に記
載されているように周知の技術である(以下「周知技術2」という。。
)
なお、乙4文献の他にも、例えば、乙26文献などが周知技術2を示
す文献として挙げられる。
10 (イ) 乙1発明への適用
乙1発明は小型の電子機器であり、乙4文献に開示された技術と共通
するから、乙1発明に周知技術2を採用することにより、訂正拒絶理由
通知における相違点2に係る構成とすることは当業者ならば容易に想到
し得たことである。
15 補足すると、乙4文献は、「表示板2をある傾斜角度で開いた状態にお
いて、小さな衝撃、振動等があると…停止位置がずれることがある」(3
頁4行ないし7行)という問題点を、操作板1と表示板2との間の角度
を溝aないしeに対応する所定の角度で固定することができるチルト機
構(複数の溝aないしe、回転軸止め用シャフト10、圧接部9A等)
20 を適用することにより解決し、「表示板の……必要な傾斜角度において、
確実に固定保持できるクリック感を持たせた小型電子機器等のチルト機
構を提供」(3頁13行ないし17行)するものである。よって、乙1発
明において第1のパネル12を第2のパネル14に対してある傾斜角度
で開いて停止させた状態で衝撃や振動等によって停止位置がずれるとい
25 う問題点を解決するために、乙4文献に記載された上記チルト機構(複
数の溝aないしe、回転軸止め用シャフト10、圧接部9A等からなり
操作板1と表示板2との間の角度を溝aないしeに対応する所定の角度
で固定することができる機構)を乙1発明に適用することは、当業者が
積極的に動機づけられるというべきであり、乙1発明に周知技術2を適
用することによって相違点2に係る構成とすることは当業者ならば容易
5 に想到し得たことである。
オ 小活
以上によれば、本件各発明と乙1発明との間に、被告主張の相違点並び
に訂正拒絶理由通知における相違点1及び2と同様の相違点があるとして
も、これらはいずれも本件原々々出願の出願日において、当業者が容易に
10 想到し得るものであるから、本件各発明はいずれも進歩性を有しない。
(原告の主張)
ア 被告主張の相違点の容易想到性について
(ア) 乙2文献に記載された発明との組合せについて
a 乙2文献に記載された発明について
15 「フリーストップ機構」は、あくまで「表示板などを、ユーザーの
任意の角度・位置でユーザーの任意の行為(表示板から任意に手を離
すなどの行為)により、任意の位置に無段階で静止・保持する装置と
しての、チルト機構」に含まれる一要素であり、「表示板の回動を所定
角度でユーザーの任意とは関係なく停止(ストップ)させ、かつ表示
20 板間を所定角度でユーザーの任意とは関係なく固定する装置である、
ストッパ」とは全く関係がない概念である。
また、「ダンパー手段」とは、一般的に、チルト機構における回転力
(摩擦力などを利用して回転部材・回転軸等に加えられる力)を制
御・調整するものであるから、同様に「ストッパ」とは全く関係がな
25 い部品である。
したがって、乙2文献中には、「所定角度でストップさせ、所定角度
で固定するという2つの構成を有する、ストッパ」については、全く
記載も示唆もない。
b 乙1文献に記載された発明と乙2文献に記載された発明の組合せに
ついて
5 前記aのとおり、乙1文献に記載された発明に乙2文献に記載され
た発明を組み合わせても、被告主張の相違点に係る構成に至らない。
また、「2つの表示パネルを接続させて成る」乙1文献に記載された
発明と「机上に載置して使用するキーボード部とこのキーボード部に
対し傾斜させて使用するディスプレイ部とから成る」乙2文献に記載
10 された発明との間では、(ⅰ)その技術分野、及び装置の用途・使用方
法が大きく異なっていること、(ⅱ)乙1文献に記載された発明が「立
っているか歩いているときでもデータ入力ができるようにするという
課題・目的」(乙1文献の3頁21行ないし28行)のため、2つのパ
ネルを互いに「背中合わせ」(back to back)で並置でき
15 るようにする構成(同10頁10ないし13行、FIG.3)を、その
課題解決手段としているのに対して、乙2文献に記載された発明は
「単にキーボード部を机上に載置して使用する場合にディスプレイ部
のキーボード部に対する傾斜角度の調整保持を適切にするための発明」
に過ぎないから、両者はその課題・目的、並びに機能・作用及び技術
20 思想が大きく異なっていること、(ⅲ)乙2文献に記載された発明に使
用されている「机上に載置して使用するキーボード部とこのキーボー
ド部に対し傾斜させて使用するディスプレイ部とから成る、ダンパー、
カム、スプリングなどを含むヒンジ装置」を、これとは大きく異なる
構成、すなわち、もともとユーザーが「つまみ」(乙 1 文献のFIG.6
25 Cの符号42)を指でつまんで回して締め付けるという手作業を行う
ことにより2つの各表示パネル(同FIG.5の符号12、14)を2
つの各回転軸(同FIG.6Dの符号36、同FIG.6Dの符号38)
にそれぞれ固定する構成を採用している乙1文献に記載された発明に
対し適用するためには格別の努力と試行錯誤が必要となること、など
から、乙1文献に記載された発明に乙2文献に記載された発明を組み
5 合わせることは、当業者にとって動機付けがない。
よって、被告主張の相違点は、乙1文献に記載された発明に乙2文
献に記載された発明を組み合わせることで、容易に想到できたもので
はない。
(イ) 乙3文献に記載された発明との組合せについて
10 a 乙3文献に記載された発明について
乙3文献には、「手を離した任意の位置で静止するという構成のため
の、カム80、押圧体90、バネ100等」が記載されているだけで
あり、回動を予め決められた角度で、ユーザーの「任意」とは関係な
く、ストップする構成に相当するものについて、全く記載も示唆もな
15 い。
したがって、乙3文献中には、「所定角度でストップさせ、所定角度
で固定するという2つの構成を有する、ストッパ」について、全く記
載も示唆もないというべきである。
b 乙1文献に記載された発明と乙3文献に記載された発明の組合せに
20 ついて
前記aのとおり、乙1文献に記載された発明に乙3文献に記載され
た発明を組み合わせても、被告主張の相違点に係る構成に至らない。
また、「2つの表示パネルを接続させて成る」乙1文献に記載された
発明と「机上に載置して使用するキーボード部とこのキーボード部に
25 対し傾斜させて使用するディスプレイ部とから成る」乙3文献に記載
された発明との間では、(ⅰ)その技術分野及び装置の用途・使用方法
が大きく異なっていること、(ⅱ)乙1文献に記載された発明が「立っ
ているか歩いているときでもデータ入力ができるようにするという課
題・目的」のため、2つのパネルを互いに「背中合わせ」(back
to back)で並置できるようにする構成を、その課題解決手段
5 としているのに対して、乙3文献に記載された発明は「単にキーボー
ド部を机上に載置して使用する場合にディスプレイ部のキーボード部
に対する傾斜角度の調整保持を適切にするための発明」にすぎないか
ら、両者はその課題・目的並びに機能・作用及び技術思想が大きく異
なっていること、(ⅲ)乙3発明に使用されている「机上に載置して使
10 用するキーボード部とこのキーボード部に対し傾斜させて使用するデ
ィスプレイ部とから成る、カム、スプリングなどを含むヒンジ装置」
を、これとは大きく異なる構成、すなわち、もともとユーザーが「つ
まみ」を指でつまんで回して締め付けるという手作業を行うことによ
り2つの各表示パネルを2つの各回転軸にそれぞれ固定する構成を採
15 用している、乙1文献に記載された発明に対し適用するためには、格
別の努力と試行錯誤が必要となることなどから、乙1文献に記載され
た発明に乙3文献に記載された発明を組み合わせることは、当業者に
とって動機付けがない。
よって、被告主張の相違点は、乙1文献に記載された発明に乙3文
20 献に記載された発明を組み合わせることで、容易に想到できたもので
はない。
(ウ) 乙4文献に記載された発明との組合せについて
a 乙4文献に記載された発明について
乙4文献には、「ポップアップ機構を備えた、チルト機構」の発明で
25 あると明記されている。
したがって、乙4文献に記載された発明は、(ⅰ)「従来型の、摩擦
力を利用したフリーストップ型(無段階型)のチルト機構」ではない、
(ⅱ)「複数個の溝(乙4文献では溝bないしe)を利用したポップア
ップ型(有段階型)のチルト機構」であるとしても、いずれにせよ
「チルト機構」である以上は、「回転中の表示板2を、ユーザーにとっ
5 て任意の角度・位置(ユーザーが希望する角度・位置)で保持する機
構」、乙4文献に記載の溝bないしeにより、「各溝b、c、d、eの
任意のところ」で保持する機構であることは、明らかである。
このように、乙4文献中には、被告主張の相違点に係る構成、すな
わち、①回動中の表示板を、予め決められた角度(所定の角度)で、
10 ユーザーの「任意」とは関係なく(すなわち、ユーザーが自分の手で
回動中の表示板に対し「任意に回動を止める」又は「任意に手を離す」
などのユーザー側の「任意」の行為によることなく、たとえユーザー
の任意に反していても、自動的に)ストップさせ、かつ、②各表示板
間を、予め決められた角度(所定の角度)で、ユーザーの「任意」と
15 は関係なく、動かないように固定するという構成を有するストッパに
ついて、全く記載も示唆もない。
b 乙1文献に記載された発明と乙4文献に記載された発明の組合せに
ついて
前記aのとおり、乙1文献に記載された発明に乙4文献に記載され
20 た発明を組み合わせても、被告主張の相違点に係る構成に至らない。
また、「2つの表示パネルを接続させて成る」乙1文献に記載された
発明と「机上に載置して使用するキーボード部とこのキーボード部に
対し傾斜させて使用するディスプレイ部とから成る」乙4文献に記載
された発明との間では、(ⅰ)その技術分野、及び装置の用途・使用方
25 法が大きく異なっていること、(ⅱ)乙1文献に記載された発明が「立
っているか歩いているときでもデータ入力ができるようにするという
課題・目的」のため、2つのパネルを互いに「背中合わせ」(back
to back)で並置できるようにする構成を、その課題解決手段
としているのに対して、乙4文献に記載された発明は「単にキーボー
ド部を机上に載置して使用する場合にディスプレイ部のキーボード部
5 に対する傾斜角度の調整保持を適切にするための発明」に過ぎないか
ら、両者はその課題・目的、並びに機能・作用及び技術思想が大きく
異なっていること、(ⅲ)「机上に載置して使用するキーボード部とこ
のキーボード部に対し傾斜させて使用するディスプレイ部とから成る、
乙4文献に記載された発明に使用されている、スプリングなどを含む
10 ヒンジ装置」を、これとは大きく異なる構成、すなわち、もともとユ
ーザーが「つまみ」を指でつまんで回して締め付けるという手作業を
行うことにより2つの各表示パネルを2つの各回転軸にそれぞれ固定
する構成を採用している乙1文献に記載された発明に対し適用するた
めには格別の努力と試行錯誤が必要となること、などから、乙1文献
15 に記載された発明に乙4文献に記載された発明を組み合わせることは、
当業者にとって動機付けがない。
よって、被告主張の相違点は、乙1文献に記載された発明に乙3文
献に記載された発明を組み合わせることで、容易に想到できたもので
はない。
20 (エ) 乙2文献ないし乙5文献に記載された周知技術との組合せについて
a 乙2文献ないし乙5文献に記載された周知技術について
乙2文献ないし乙4文献からは、ヒンジ構造を有する電子機器にお
いて表示板の回動を所定の角度で静止するストッパという周知技術は
認定できない。
25 また、乙5文献において第3図の状態(表示用ケース2の開き方向
への回動が中間的角度で「阻止(すなわち当該角度で保持)」された状
態)にある表示用ケース2は、(ⅰ)開く方向の回動に関しては、「回動
を阻止する程度に『保持』できる状態」となっているだけであるから、
「回動を阻止する程度に『保持』する」構成が開示されているだけで、
「動かないように固定する構成」までは開示されていない、他方、
5 (ⅱ)閉じる方向の回動に関しては、「回動を阻止する程度の『保持』さ
えもできない状態」(すなわち、実質的にフリーの状態)となっている
と記載されている。したがって、乙5文献から、二軸ヒンジ構造を有
する電子機器において所定角度で回動を阻止する機構という周知技術
を認定することもできない。
10 したがって、被告が乙2文献ないし乙5文献から認定できると主張
する周知技術の存在は認められない。
b 乙1文献に記載された発明への周知技術の適用について
「2つの表示パネルを接続して成る」、乙1文献に記載された発明に、
「机上に載置して使用するキーボード部とこのキーボード部に対し傾
15 斜させて使用するディスプレイ部とから成る」、乙2文献ないし乙5文
献により認定されると被告が主張する周知技術を適用することには、
前記(ア)ないし(ウ)で乙2文献ないし乙4文献について述べたのと同様
の理由により、格別の努力と試行錯誤が必要となる。
したがって、乙1文献に記載された発明に被告が主張する周知技術
20 を適用することは、当業者にとって動機付けがなく、被告主張の相違
点は、乙1文献に記載された発明に被告が主張する周知技術を組み合
わせることで、容易に想到できたものではない。
イ 訂正拒絶理由通知における相違点1ないし3に係る構成の容易想到性に
ついて
25 訂正拒絶理由通知における相違点1ないし3に係る構成は当業者が容易
に想到し得るものであったとの主張は争う。
ウ 小活
以上によれば、本件各発明についての乙1文献を主引用例とする進歩性
欠如の主張は理由がない。
(4) 争点2-3-1(本件各発明についての乙11文献を引用例とする新規性
5 欠如(出願日繰り下がりを前提とする無効理由))について
(被告の主張)
ア 乙11文献が本件出願前に頒布された刊行物に当たること
前記(1)(被告の主張)のとおり、本件出願の出願日は、現実の出願日で
ある平成14年7月5日となり、少なくとも、本件原々出願の出願日であ
10 る平成9年11月10日よりも前に遡及することはない。
よって、平成5年3月12日を公開日とする本件原々々出願の特許公開
公報である乙11文献は、本件出願前に頒布された刊行物(特許法29条
1項3号)に当たる。
イ 乙11文献に記載された発明
15 乙11文献には、以下の(ア)ないし(カ)の発明(以下、順に、それぞれ
「乙11発明1」 「乙11発明2」などといい、併せて「乙11発明」と
、
いう。)が記載されている。
(ア) 乙11発明1
1a 略長方形の画面を表示できるLCDパネル5を設けた枠体1と略
20 長方形の画面を表示できるLCDパネル7を設けた枠体2とを備え、
片手で使用することができるCD-ROM再生専用装置(表示装置)
であって、
1b 枠体1と枠体2とを、それらが互いに折り畳まれた状態にも、そ
れらが左右方向に見開きにされた状態にもできるように接続するた
25 めの丁番9および丁番10(接続手段)と、
1c 丁番9および丁番10(接続手段)に設けられたストッパであっ
て、枠体1と枠体2とを、ユーザーから見て左右方向に見開きにさ
れているときのLCDパネル5とLCDパネル7との間の角度が1
80度となるように固定でき、
1d 枠体1と枠体2とを、ユーザーから見て左右方向に見開きにされ
5 ているときのLCDパネル5とLCDパネル7との間の角度が12
0度となるように固定でき、
1e 枠体1のLCDパネル5と枠体2のLCDパネル7とが互いに折
り畳まれた状態から広げられていく動作をストップする機能と、
1f 枠体1のLCDパネル5と枠体2のLCDパネル7との角度がユ
10 ーザーから見て左右方向に180度の角度で見開きにされた状態か
ら狭められていく動作をストップする機能とを有するストッパと、
1g を備えた片手で使用することができるCD-ROM再生専用装置
(表示装置)。
(イ) 乙11発明2
15 2a 略長方形の画面を表示できるLCDパネル5を設けた枠体1と略
長方形の画面を表示できるLCDパネル7を設けた枠体2とを備え、
片手で使用することができるCD-ROM再生専用装置(表示装置)
であって、
2b 枠体1と枠体2とを、それらが互いに折り畳まれた状態にも、そ
20 れらが左右方向に見開きにされた状態にもできるように接続するた
めの丁番9および丁番10(接続手段)と、
2c 丁番9および丁番10(接続手段)に設けられたストッパであっ
て、枠体1と枠体2とを、ユーザーから見て左右方向に見開きにさ
れているときのLCDパネル5とLCDパネル7との間の角度が1
25 80度となるように固定でき、
2d 枠体1と枠体2とを、ユーザーから見て左右方向に見開きにされ
ているときのLCDパネル5とLCDパネル7との間の角度が12
0度となるように固定でき、
2e 枠体1のLCDパネル5と枠体2のLCDパネル7とが互いに折
り畳まれた状態から広げられていく動作をストップする機能を有す
5 るストッパと、
2f を備えた片手で使用することができるCD-ROM再生専用装置
(表示装置)。
(ウ) 乙11発明3
3a 略長方形の画面を表示できるLCDパネル5を設けた枠体1と略
10 長方形の画面を表示できるLCDパネル7を設けた枠体2とを備え、
片手で使用することができるCD-ROM再生専用装置(表示装置)
であって、
3b 枠体1と枠体2とを、それらが互いに折り畳まれた状態にも、そ
れらが左右方向に見開きにされた状態にもできるように接続するた
15 めの丁番9および丁番10(接続手段)と、
3c 丁番9および丁番10(接続手段)に設けられたストッパであっ
て、枠体1と枠体2とを、ユーザーから見て左右方向に見開きにさ
れているときのLCDパネル5とLCDパネル7との間の角度が1
80度となるように固定でき、
20 3d 枠体1と枠体2とを、ユーザーから見て左右方向に見開きにされ
ているときのLCDパネル5とLCDパネル7との間の角度が12
0度となるように固定できるストッパと、
3e を備えた片手で使用することができるCD-ROM再生専用装置
(表示装置)。
25 (エ) 乙11発明4
4a 画面を表示できるLCDパネル5を設けた枠体1と画面を表示で
きるLCDパネル7を設けた枠体2とを備え、片手で使用すること
ができるCD-ROM再生専用装置(表示装置)であって、
4b 枠体1と枠体2とを、それらが互いに折り畳まれた状態にも、そ
れらが左右方向に見開きにされた状態にもできるように接続するた
5 めの丁番9および丁番10(接続手段)と、
4c 枠体1と枠体2とを、ユーザーから見て左右方向に見開きにされ
ているときのLCDパネル5とLCDパネル7との間の角度が12
0度となるように固定するためのストッパと、
4d を備えた片手で使用することができるCD-ROM再生専用装置
10 (表示装置)。
(オ) 乙11発明5
5e 次の(a)~(d)の内容を含む片手で使用することができるC
D-ROM再生専用装置(表示装置)。
5a (a)画面を表示できるLCDパネル5を設けた枠体1と画面を
15 表示できるLCDパネル7を設けた枠体2とが、LCDパネル5と
LCDパネル7とがユーザーに対向することができるように接続さ
れている、
5b (b)CD-ROM再生専用装置は、片手で使用することができ
る大きさに構成されている、
20 5c (c)枠体1と枠体2とを、それらが互いに折り畳まれた状態に
も、それらが左右方向に見開きにされた状態にもできるように接続
するための丁番9および丁番10(接続手段)を備えている、
5d (d)LCDパネル5とLCDパネル7との間の角度がユーザー
から見て左右方向に見開きにされているとき、枠体1と枠体2とを、
25 LCDパネル5とLCDパネル7との間の角度が120度となるよ
うに固定するためのストッパを備えている。
(カ) 乙11発明6
6e 次の(a)~(d)の内容を含む片手で使用することができるC
D-ROM再生専用装置(表示装置)。
6a (a)画面を表示できるLCDパネル5を設けた枠体1と画面を
5 表示できるLCDパネル7を設けた枠体2とが、LCDパネル5と
LCDパネル7とがユーザーに対向することができるように接続さ
れている、
6b (b)CD-ROM再生専用装置は、片手で使用することができ
る大きさに構成されている、
10 6c (c)ユーザーから見て右側部分の枠体1と左側部分の枠体2と
を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらが左右方向に見
開きにされた状態にもできるように接続するための丁番9および丁
番10(接続手段)を備えている、
6d (d)ユーザーから見て右側部分の枠体1と左側部分の枠体2と
15 を、LCDパネル5とLCDパネル7との間の角度が120度とな
るように固定するためのストッパを備えている。
ウ 本件各発明と乙11発明との対比
以下のとおり、本件各発明は乙11発明と同一である。
(ア) 本件発明1と乙11発明1との対比
20 乙11発明1の①「CD-ROM再生専用装置(表示装置) (構成要
」
件1a及び1g)、②「丁番9および丁番10(接続手段) (同1b)
」 、
③「ストッパ」(同1cないし1f)は、それぞれ、本件発明1の①「表
示装置」(構成要件1A及び1G)、②「左右見開き接続手段」(同1B)、
③「完全左右見開き固定手段」(同1C)及び「中間左右見開き固定手段」
25 (同1Dないし1F)に相当する。
よって、乙11発明1は、本件発明1と同一である。
(イ) 本件発明2と乙11発明2との対比
乙11発明2の①「CD-ROM再生専用装置(表示装置) (構成要
」
件2a及び2f)、②「丁番9および丁番10(接続手段) (同2b)
」 、
③「ストッパ」(同2cないし2e)は、それぞれ、本件発明2の①「表
5 示装置」(構成要件2A及び2F)、②「左右見開き接続手段」(同2B)、
③「完全左右見開き固定手段」(同2C)及び「中間左右見開き固定手段」
(同2D及び2E)に相当する。
よって、乙11発明2は、本件発明2と同一である。
(ウ) 本件発明3と乙11発明3との対比
10 乙11発明3の①「CD-ROM再生専用装置(表示装置) (構成要
」
件3a及び3e)、②「丁番9および丁番10(接続手段) (同3b)
」 、
③「ストッパ」(同3c及び3d)は、それぞれ、本件発明3の①「表示
装置」(構成要件3A及び3E)、②「左右見開き接続手段」(同3B)、
③「完全左右見開き固定手段」(同3C)及び「中間左右見開き固定手段」
15 (同3D)に相当する。
よって、乙11発明3は、本件発明3と同一である。
(エ) 本件発明4と乙11発明4との対比
乙11発明4の①「CD-ROM再生専用装置(表示装置) (構成要
」
件4a及び4d)、②「丁番9および丁番10(接続手段) (同4b)
」 、
20 ③「ストッパ」(同4c)は、それぞれ、本件発明4の①「表示装置」
(構成要件4A及び4D)、②「左右見開き接続手段」(同4B)、③「左
右見開き固定手段」(同4C)に相当する。
よって、乙11発明4は、本件発明4と同一である。
(オ) 本件発明5と乙11発明5との対比
25 乙11発明5の①「CD-ROM再生専用装置(表示装置) (構成要
」
件5e)、②「(a)」及び「(b)」にかかる構成(同5a及び5b)、③
「丁番9および丁番10(接続手段) (同5c)
」 、④「ストッパ」(同5
d)は、それぞれ、本件発明5の①「表示装置」(構成要件5E)、②
「(a)」及び「(b)」にかかる構成(同5A及び5B)、③「左右見開き
接続手段」(同5C)、④「左右見開き固定手段」(同5D)に相当する。
5 よって、乙11発明5は、本件発明5と同一である。
(カ) 本件発明6と乙11発明6との対比
乙11発明6の①「CD-ROM再生専用装置(表示装置) (構成要
」
件6e)、②「(a)」及び「(b)」にかかる構成(同6a及び6b)、③
「丁番9および丁番10(接続手段) (同6c)
」 、④「ストッパ」(同6
10 d)は、それぞれ、本件発明6の①「表示装置」(構成要件6E)、②
「(a)」及び「(b)」にかかる構成(同6A及び5B)、③「左右見開き
接続手段」(同6C)、④「左右見開き固定手段」(同6D)に相当する。
よって、乙11発明6は、本件発明6と同一である。
(キ) 本件発明10と乙11発明との対比
15 前記(ア)ないし(オ)からすれば、本件発明10は乙11発明と同一であ
る。
エ 小括
よって、本件各発明は、本件出願前に頒布された刊行物である乙11文
献に記載された発明であるから、新規性を欠く。
20 (原告の主張)
前記(1)(原告の主張)のとおり、本件出願の出願日は、本件原々々出願の
出願日である平成3年8月30日に遡ると解すべきであるから、乙11文献
を引用例とする新規性欠如の主張は理由がない。
(5) 争点2-3-2(本件各発明についての乙12補正書に係る補正の補正要
25 件違反(出願日繰り下がりを前提とする無効理由))について
(被告の主張)
前記(1)(被告の主張)のとおり、本件出願の出願日は、少なくとも、平成
9年11月10日よりも前に遡及することはないから、本件出願には旧特許
法は適用されず、平成5年法律第26号による改正後の特許法(補正の要件
が厳格化され、いわゆる新規事項追加の禁止が導入されている。)が適用され
5 る。
そして、本件出願に係る平成14年8月5日付けの手続補正書(乙12補
正書)による補正(以下「本件補正2」という。)は、明細書の全文を変更し、
例えば、次の①ないし④を新たに追加するとともに、2つの新たな図面(【図
8】及び【図9】)を追加するものである。
10 ① 本件明細書の【0006】
② 本件明細書の【0010】及び【0011】
③ 本件明細書の【0012】のうち「7.」及び「8.」
④ 本件明細書の【0058】ないし【0063】
しかしながら、本件出願の願書に最初に添附した明細書又は図面(乙9。
15 以下「本件出願の当初明細書等」という。)には、少なくとも、上記①ないし
④並びに図8及び図9についての記載はなく、これら追加された事項の示唆
もない。
例えば、本件補正2により、「本願発明の一実施形態」として「互いに厚さ
寸法の異なる2つの表示板(2つの表示パネル)91、92」が追加される
20 とともに(上記④)【図8】
、 (c)が追加されているが、本件出願の当初明細
書等には、互いに厚さ寸法の異なる表示板を用いることについての記載も示
唆もない。また、例えば、本件補正2により、「タッチパネル式の表示画面を
指先でタッチして操作」する場合の課題(上記①)や「タッチパネル式画面
への指先の操作などの『入力操作』が大変に安定的に且つ容易にできる」(上
25 記④)という効果が追加されているが、本件出願の当初明細書等にかかる記
載はない上、そもそも「入力装置としてのディスプレー」として「タッチパ
ネル式画面」を用いることの記載も示唆もない(本件出願の当初明細書等の
【0035】には、「入力装置としても使用できるディスプレー」として、
「入力ペン等により情報を入力するためにその入力ペンを操作するための操
作画面の表示のために使用するディスプレー」が記載されているのみであ
5 る。 。本件補正2が、当初明細書等の全ての記載を総合して導かれる技術的
)
事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであることは明白
である。
よって、本件補正2は、本件出願の当初明細書等に記載された事項の範囲
内においてしたものではなく、新規事項を追加するものであるから、本件特
10 許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正を行っ
た特許出願に対してされたものである。したがって、本件特許は、特許法1
23条1項1号に該当し、無効とすべきものである。
(原告の主張)
前記(1)(原告の主張)のとおり、本件出願の出願日は、本件原々々出願の
15 出願日である平成3年8月30日に遡ると解すべきであるから、被告の補正
要件違反による無効主張は、その前提を欠き、理由がない。
3 争点3(訂正の再抗弁の成否(第2次訂正))について
(1) 争点3-1(第2次訂正が訂正要件(独立特許要件を除く)を満たすか)
について
20 (原告の主張)
以下のとおり、請求項1、2及び10に係る第2次訂正はいずれも独立特
許要件以外の訂正要件を満たす。
ア 請求項1の訂正事項(別紙3第2次訂正の訂正事項記載1)について
(ア) 訂正事項1-1について
25 a 訂正事項1-1の訂正目的は、「特許請求の範囲の減縮」(構成要件
の直列的付加)である。
また、訂正事項1-1は、発明の目的等を変更するものではないか
ら、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。
b 訂正事項1-1が本件明細書に記載した事項の範囲内のものである
理由は、次のとおりである。
5 (a) 訂正事項1-1中の「「情報入力機能を有する画面」を表示させ
る」ことは、本件明細書の【0007】及び【0041】に記載さ
れている。
(b) さらに、訂正事項1-1中の「少なくともいずれか一方の表示板」
については、(ⅰ)そもそも本件明細書に「2つの表示板の双方のみ」
10 に情報入力機能が備えられている旨(すなわち、「2つの表示板の一
方のみ」に情報入力機能が備えられることはない旨)を示す記載及
び示唆は全く存在していないこと、(ⅱ)本件明細書の【図8】(b)
ないし(d)の記載には「いずれか一方の表示板92に情報入力用
画面が表示されている」ことが示唆されていることなどから、当業
15 者に自明の事項であるといえる。
(イ) 訂正事項1-2について
a 訂正事項1-2の訂正目的は、「特許請求の範囲の減縮」(構成要件
の直列的付加)である。
また、訂正事項1-2は、発明の目的等を変更するものではないか
20 ら、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。
b 訂正事項1-2中の「片手持ち用」については、本件明細書の【0
075】中の「片手で持つときに、…容易に安定して持ち続けること
ができる。」という記載等から、当業者に自明の事項であり、訂正事項
1-2は本件明細書に記載した事項の範囲内のものである。
25 (ウ) 訂正事項1-3について
a 訂正事項1-3の訂正目的は、「特許請求の範囲の減縮」(構成要件
の直列的付加)である。
また、訂正事項1-3は、発明の目的等を変更するものではないか
ら、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。
b 訂正事項1-3が本件明細書に記載した事項の範囲内のものである
5 理由は、次のとおりである。
(a) 本件明細書の【図2】(a)ないし(c)には、2つの表示板1、
2が「それら(2つの表示板1、2)が互いに接続されている部分」
(符号10で示す蝶番・ジヨイント、すなわちヒンジ部)を回動中
心として回動する様子が記載されており、かつ、この【図2】につ
10 いて【0016】に説明がある。
(b) また、【図2】に示すような1つの蝶番(ヒンジ部)10に互い
に接続されている2つの表示板1、2において、「少なくともいずれ
か一方を回動させたら、論理的には、当該一方についても、また他
方についても、相対的に回動していることになる」ということは、
15 本件原々々出願前からの技術水準・技術常識であり、本件明細書の
記載から当業者にとって自明である。
(エ) 訂正事項1-4について
a 訂正事項1-4の訂正目的は、「特許請求の範囲の減縮」(構成要件
の直列的付加)である。
20 また、訂正事項1-4は、発明の目的等を変更するものではないか
ら、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。
b 本件明細書の【0017】の記載などから、訂正事項1-4は当業
者に自明であり、本件明細書に記載した事項の範囲内のものである。
(オ) 訂正事項1-5について
25 a 訂正事項1-5の訂正目的は、「特許請求の範囲の減縮」(下位概念
への変更又は構成要件の直列的付加)である。
また、訂正事項1-5は、発明の目的等を変更するものではないか
ら、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。
b 訂正事項1-5が本件明細書に記載した事項の範囲内のものである
理由は、次のとおりである。
5 本件各発明のように「2つの表示板」が接続されている場合におけ
る「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」(特に
「各表示板の間の角度」)は、「角度」が「角部(平面又は直線が交わ
る部分)の大きさ」を意味する(甲16・広辞苑第五版)ことから、
「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き
10 角度」(特に「前記各表示板の各平面の間の見開き角度」)と表現する
ことが、より正確である。
次に、「見開き角度」については、本件明細書の特許請求の範囲の請
求項2などの中に「見開き角度」という文言が既に複数存在している。
よって、訂正事項1-5は、本件明細書の記載から当業者に自明の
15 事項である。
(カ) 訂正事項1-6について
a 訂正事項1-6の訂正目的は、「特許請求の範囲の減縮」(下位概念
への変更又は構成要件の直列的付加)である。
また、訂正事項1-6は、発明の目的等を変更するものではないか
20 ら、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。
b 訂正事項1-6が本件明細書に記載した事項の範囲内のものである
理由は、次のとおりである。
(a) 本件発明1に係る特許請求の範囲(請求項1)の「…画面が表示
される側の間の角度が「約120度から約170度までの範囲内の
25 いずれかの角度」となるように、ストッパにより固定する…」とい
う記載及び本件明細書の【0017】中の「…ユーザーは、所定量
以上の力を加えることにより自由にその「固定(半固定)の角度」
を変化させることができるようになっている。」という記載からみて、
訂正事項1-6中の「「約120度から約170度までの範囲内の予
め決められた1つの角度」に変化させられたとき、…前記「予め決
5 められた1つの角度」で固定する」は、当業者に自明の事項である。
なお、上記の本件発明1に係る特許請求の範囲(請求項1)中の
「…画面が表示される側の間の角度が「約120度から約170度
までの範囲内のいずれかの角度」となるように…」における「いず
れかの角度」及び本件明細書の【0026】中の「…「約105度
10 から約170度まで(又は、約110度から約170度まで)の間
の所定の角度(任意の角度)」で固定できる(例えば摩擦力やストッ
パやチルト機構により)ようにしている。」における「所定の角度」
は、訂正事項1-6中の「予め決められた1つの角度」に相当する。
(b) また、本件発明1に係る特許請求の範囲(請求項1)中の「…広
15 げられて行く動作、をストップする機能と、…」という記載及び
「ストッパ」とは「動きを止めるもの」及び「ドアや機械などの停
止・固定装置」を意味すること(甲15・広辞苑第五版)からみて、
訂正事項1-6中の「「…角度」に変化させられたとき、前記回動を
ストップさせて、「…角度」で固定する」は、当業者に自明の事項で
20 ある。
(キ) 訂正事項1-7について
a 訂正事項1-7の訂正目的は、「特許請求の範囲の減縮」(下位概念
への変更又は構成要件の直列的付加)である。
また、訂正事項1-7は、発明の目的等を変更するものではないか
25 ら、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。
b 訂正事項1-7が本件明細書に記載した事項の範囲内のものである
理由は、訂正事項1-5について述べたものと同じである。
(ク) 訂正事項1-8について
a 訂正事項1-8の訂正目的は、「特許請求の範囲の減縮」(下位概念
への変更又は構成要件の直列的付加)である。
5 また、訂正事項1-8は、発明の目的等を変更するものではないか
ら、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。
b 訂正事項1-8が本件明細書に記載した事項の範囲内のものである
理由は、訂正事項1-5について述べたものと同じである。
(ケ) 訂正事項1-9について
10 訂正事項1-9の訂正理由は、訂正事項1-6のうち「中間左右見開
きストッパ」に関する部分と同様であるから、訂正事項1-9が訂正要
件を満たす理由は、訂正事項1-6について述べたものと同じである。
(コ) 訂正事項1-10について
a 訂正事項1-10の訂正目的は、「特許請求の範囲の減縮」(構成要
15 件の直列的付加)である。
また、訂正事項1-10は、発明の目的等を変更するものではない
から、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。
b 訂正事項1-10が本件明細書に記載した事項の範囲内のものであ
る理由は、次のとおりである。
20 (a) 本件明細書の【0007】中の「本発明は…「…外出先(戸外)
などで、例えば立ったままでも、その一方の片手だけを使って…表
示装置」を提供することを課題(目的)とするものである。」という
記載、【0041】中の「…ユーザーが指先でデータを入力できるよ
うにしたディスプレー、などでもよい。」という記載などから、訂正
25 事項1-10中の「戸外で若しくは外出先で使用する、立ったまま
で使用する、又は画面を介してデータを入力する」は、当業者に自
明の事項である。
(b) また、本件明細書の【0026】中の「…周囲の状況に応じた使
用ができるようになる。」という記載、【0027】中の「周囲の状
況に即応したきめ細かい使用が可能になる。」という記載、【004
5 1】中の「…電子ペン等を操作…ユーザーが指先でデータを入力で
きる」という記載などから、訂正事項1-10中の「「様々な状況若
しくは用途に応じた、…使用」を可能にする構成」は、当業者に自
明の事項である。
(c) 本件明細書の【0017】中の「また本実施例では、枠体1と枠
10 体2との間は…摩擦力により、任意の角度で一時的に固定(半固定)
でき、…るようになっている。」という記載、この記載に続く【00
18】中の「また本実施例においては、…2つの枠体1と枠体2の
間が…いずれかの角度で、ストッパがかかって固定できる…ように
してもよい。」という記載などから、訂正事項1-10中の「「ユー
15 ザーの任意の角度」で摩擦力により保持するようにしながら…スト
ッパにより、前記回動をストップさせて…「谷状の部分」…「山状
の部分」を固定的に形成する」は、当業者に自明の事項である。
このような【0017】及び【0018】の記載に接した当業者
は、それらの記載がともに本件明細書中の連続した段落中に記載さ
20 れている事実などから、文脈上、「摩擦力により任意の角度で保持で
きる構成」と「ストッパにより所定角度で固定できる構成」とがと
もに1つの実施例中で両立・並存し得ることが示唆されていると読
み取るはずであり、それが通常人(当業者を含む)の読み方である。
(d) 本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)などには「ストッパ」
25 という用語が使用されているところ、この「ストッパ」とは「動き
を止めるもの」及び「ドアや機械などの停止・固定装置」を意味す
る(甲15・広辞苑第五版)。
また、本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には「…画面が
表示される側の間の角度が「約120度から約170度までの範囲
内のいずれかの角度」となるように、ストッパにより固定するため
5 の中間左右見開き固定手段であって、前記「2つの表示板」の、「前
記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「前記各
表示板が互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をス
トップする機能と、…」という記載があり、本件明細書の【001
7】には、「…またこのような「任意の角度…」自由にその「固定
10 (半固定)の角度」を変化させることができるようになっている。」
という記載が、【0026】には、 「…所定の角度(任意の角度)
「 」
で固定できる(例えば摩擦力やストッパやチルト機構により)よう
にしている。」という記載があるから、訂正事項1-10中の「「…
見開き角度」が広がるように…任意に変化させるとき…見開き角度
15 が前記「予め決められた1つの角度」になったときは、前記中間左
右見開きストッパにより、前記回動をストップさせ…る構成」は、
当業者に自明の事項である。
(e) 訂正事項1-10中の「前記2つの表示板のそれらが互いに接続
されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側に「谷状の
20 部分」を、且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている
部分及びその近傍部分の画面が表示されない側に「山状の部分」を
…形成する構成」は、本件明細書の【図2】(b)の記載などから、
当業者に自明の事項である。
(f) ストッパが「ドアや機械などの停止・固定装置」を意味する(甲
25 15・広辞苑第五版)ことなどからみて、前記(e)の「2つの表示板
が折り曲げられた場合」に現出される「谷状の部分」及び「山状の
部分」が、訂正事項1-10中の「固定的に形成する構成」(一定の
位置・状態にあって動かないように、形成されるもの)となること
は、当業者に自明の事項である。
(サ) 訂正事項1-11について
5 a 訂正事項1-11の訂正目的は、「特許請求の範囲の減縮」(下位概
念への変更又は構成要件の直列的付加)である。
また、訂正事項1-11は、発明の目的等を変更するものではない
から、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。
b 訂正事項1-11が本件明細書に記載した事項の範囲内のものであ
10 る理由は、訂正事項1-1について述べたものと同じである。
イ 請求項2の訂正事項(別紙3第2次訂正の訂正事項記載2)について
(ア) 訂正事項2-1について
訂正事項1-1について述べたものと同じである。
(イ) 訂正事項2-2について
15 訂正事項1-2について述べたものと同じである。
(ウ) 訂正事項2-3について
訂正事項1-3について述べたものと同じである。
(エ) 訂正事項2-4について
訂正事項1-5について述べたものと同じである。
20 (オ) 訂正事項2-5について
訂正事項1-6について述べたものと同じである。
(カ) 訂正事項2-6について
訂正事項1-9中の「中間左右見開きストッパ」に関する部分につい
て述べたものと同じである。
25 (キ) 訂正事項2-7について
訂正事項2-7は、訂正事項1-10の一部から成るものである。し
たがって、訂正事項1-10が訂正要件を満たすなら当然に訂正事項2
-7も訂正要件を満たす。
(ク) 訂正事項2-8について
訂正事項1-11中の「情報入力機能付き画面の表示機能をも備えた
5 片手持ち用且つ片手支持型の表示装置」に関する部分について述べたも
のと同じである。
(ケ) 訂正事項2-9について
a 訂正事項2-9の訂正目的は、「特許請求の範囲の減縮」(下位概念
への変更又は構成要件の直列的付加)である。
10 また、訂正事項2-9は、発明の目的等を変更するものではないか
ら、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。
b 2つの表示板を「ユーザーから見て縦方向の線を境としたときの前
記各表示板の、それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角
度」で保持又は固定することは、例えば、本件明細書の【0017】、
15 【0018】 【図8】 【図9】などに記載されているから、訂正事項
、 、
2-9は本件明細書に記載した事項の範囲内のものである。
ウ 請求項10の訂正事項(別紙3第2次訂正の訂正事項記載3)について
(ア) 訂正事項10-1について
従属項の引用関係を解消して独立請求項とする目的による訂正は、特
20 許法上、認められている(特許法126条1項4号)
(イ) 訂正事項10-2について
a 訂正事項10-2のうち、「次の(a)~(d)」を「次の(a)~
(g)」と訂正する目的は、「特許請求の範囲の減縮」(下位概念への変
更又は構成要件の直列的付加)である。
25 当該訂正は、発明の目的等を変更するものではないから、実質上特
許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。また、当該訂正は、
請求項の構成要素の数の変更に対応して「次の(a)~(d)」を「次
の(a)~(g)」に変更するだけであるから、当業者に自明の事項で
ある。
b 訂正事項10-2のうち「片手支持可能な表示装置」を「情報入力
5 機能付き画面の表示機能をも備えた片手持ち用且つ片手支持型の表示
装置。」に訂正する部分は、訂正事項1-2と同様であるから、同部分
が訂正要件を満たす理由は、訂正事項1-2について述べたものと同
じである。
(ウ) 訂正事項10-3について
10 訂正事項10-3のうち、 「ユーザーによるデータ入力のために使用
「
される、データ入力用画面」を表示するためのデータ入力手段」の部分
は、本件発明10に係る特許請求の範囲(請求項10)中に「データ入
力用画面」を表示するためのデータ入力手段」などの記載があることか
ら、当業者に自明の事項であり、本件明細書に記載した事項の範囲内で
15 ある。
訂正事項10-3のうち、それ以外の部分が訂正要件を満たす理由は、
訂正事項1-1について述べたものと同じである。
(エ) 訂正事項10-4について
訂正事項10-4が訂正要件を満たす理由は、訂正事項1-3につい
20 て述べたものと同じである。
(オ) 訂正事項10-5について
a 訂正事項10-5の「(d)」に関する訂正が訂正要件を満たす理由
は、訂正事項1-4について述べたものと同じである。
b 訂正事項10-5の「(e)」中の「画面が表示される側の各平面の
25 間の見開き角度」に関する訂正について
(a) 当該訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」(構成要件の直列的
付加)である。
また、当該訂正は、発明の目的等を変更するものではないから、
実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。
(b) 当該訂正は、本件明細書の【0026】の記載から、本件明細書
5 に記載した事項の範囲内のものであることが明らかである。
c 訂正事項10-5の「(e)」中の「約180度になったとき、前記
「2つの表示板」の間を前記角度で固定する完全見開き固定手段」に
関する部分は、本件明細書の【0026】中の「…枠体1、2の各L
CDパネル5、7間の角度が「約180度の角度」で固定できる…」
10 という記載などから、当業者に自明の事項である。
(カ) 訂正事項10-6について
訂正事項10-6が訂正要件を満たす理由は、訂正事項1-6につい
て述べたものと同じである。
(キ) 訂正事項10-7について
15 訂正事項10-7が訂正要件を満たす理由は、訂正事項1-10につ
いて述べたものと同じである。
エ 被告の主張に対する反論
被告は、第2次訂正において、「任意角度保持手段」を「中間左右見開き
ストッパ」と併用する構成を採ることが新規事項の追加に当たると主張す
20 る。
しかしながら、本件明細書の【0017】及び【0018】の記載から
は、ユーザーの任意の角度で摩擦力による保持ができるように、ユーザー
が、所定量以上の力を加え自由に各表示板間の角度を回動、変化させるこ
とができるようにする手段(摩擦力保持手段)が存在する実施例を前提と
25 した上で、当該実施例において各表示板間がストッパがかかって固定され
るように構成するようにしてもよいことは、当業者に自明の事項である。
したがって、「任意角度保持手段」を「中間左右見開きストッパ」と併用
する構成を採ることは本件明細書の記載の範囲内の事項であり、被告の上
記の主張は採用することができない。
(被告の主張)
5 以下のとおり、請求項1、2及び10に係る第2次訂正は訂正要件を満た
さない。
ア 訂正の目的に合致しないこと(特許法126条1項ただし書違反)
(ア) 訂正事項1-2、1-11、2-2、2-8、3-2、3-8、4-
2、4-7、5-1、6-1及び10-2について
10 訂正事項1-2についてみるに、「片手持ち用」であることと「片手支
持型」であることの間に構成上どのような差異があるのか不明であり、
また、「片手支持型」として「型」という表現を用いていることから、何
らかの類型化されたものを特定しようとしていると思われるが、それが
どのようなものであるのかも不明である。
15 そうすると、訂正事項1-2の訂正は、訂正前の「片手支持可能な表
示装置」という構成を意味が不明な事項により特定しようとするもので
あり、この訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」に該当するとはいえ
ない。
また、訂正前の「片手支持可能な表示装置」に誤記や明瞭でない記載
20 があるとは認められないから、この訂正が「誤記の訂正」や「明瞭でな
い記載の釈明」を目的とすると考えることもできないし、「他の請求項の
記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないもの
とすること。」にも該当しない。
したがって、訂正事項1-2の訂正は、特許法126条1項ただし書
25 の規定に適合せず、訂正事項1-11、2-2、2-8、3-2、3-
8、4-2、4-7、5-1、6-1及び10-2についても、上述の
点が同様に当てはまる。
(イ) 訂正事項1-4ないし1-8、1-10、2-4、2-5、2-7、
2-9、3-4ないし3-7、4-5、4-6、5-4ないし5-6、
6-5、6-6及び10-5ないし10-7について
5 訂正事項1-5についてみるに、訂正前の「2つの表示板」は「それ
らが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向
に見開きにされた状態にもできる」から、訂正前の「2つの表示板」が
それぞれ平面であることは自明であり、訂正前の「前記各表示板のそれ
ぞれ画面が表示される側の間の角度」が「各表示板」のそれぞれの平面
10 の間の見開き角度を意味することは、自明である。
そうすると、訂正事項1-5の訂正は、当該訂正前に自明であった内
容を単に言い換えたものにすぎず、訂正前の構成を限定したり下位概念
で特定したりするものではないから、この訂正の目的は「特許請求の範
囲の減縮」に該当するとはいえない。
15 また、訂正前の「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の
角度」に誤記や明瞭でない記載があるとは認められないから、この訂正
が「誤記の訂正」や「明瞭でない記載の釈明」を目的とすると考えるこ
ともできないし、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の
請求項の記載を引用しないものとすること。」にも該当しない。
20 したがって、訂正事項1-5の訂正は、特許法126条1項ただし書
の規定に適合せず、訂正事項1-4、1-6、1-7、1-8、1-1
0、2-4、2-5、2-7、2-9、3-4、3-5、3-6、3-
7、4-5、4-6、5-4、5-5、5-6、6-5、6-6、10
-5、10-6及び10-7についても、上述の点が同様に当てはまる。
25 (ウ) 訂正事項1-6、1-9、2-5及び2-6について
訂正事項1-6についてみるに、訂正前の「中間左右見開き固定手段」
は「ストッパにより固定するための中間左右見開き固定手段」であるか
ら、当該「固定手段」は「ストッパ」そのものであると解するのが自然
であり、訂正前の「中間左右見開き固定手段」を「中間左右見開きスト
ッパ」とするのは、当該訂正前の内容を単に言い換えたものにすぎず、
5 訂正前の構成を限定したり下位概念で特定したりするものではないから、
この訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」に該当するとはいえない。
また、訂正前の「ストッパにより固定するための中間左右見開き固定
手段」に誤記や明瞭でない記載があるとは認められないから、この訂正
が「誤記の訂正」や「明瞭でない記載の釈明」を目的とすると考えるこ
10 ともできないし、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の
請求項の記載を引用しないものとすること。」にも該当しない。
したがって、訂正事項1-6の訂正は、特許法126条1項ただし書
の規定に適合せず、訂正事項1-9、2-5及び2-6についても、上
述の点が同様に当てはまる。
15 (エ) 訂正事項1-10、2-7、3-7、4-6、5-6、6-6及び1
0-7
訂正事項1-10についてみるに、 「電車の中で、戸外で若しくは外
「
出先で使用する、立ったままで使用する、又は画面を介してデータを入
力するなどの様々な状況若しくは用途に応じた、前記2つの表示板の使
20 用」を可能にする構成」という特定事項の「様々な状況若しくは用途」
とは、「電車の中で、戸外で若しくは外出先で使用する、立ったままで使
用する又は画面を介してデータを入力する」という状況や用途の他に、
どのような状況や用途が考えられるのか、過度に漠然として不明であり、
そのような不明な状況や用途「に応じた、前記2つの表示板の使用」を
25 可能にする構成とは、具体的にどのような構成を意味するのか明らかで
ない。
また、「前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びそ
の近傍部分の画面が表示される側に「谷状の部分」を、且つ前記2つの
表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が
表示されない側に「山状の部分」を固定的に形成する構成」とは、訂正
5 前の「中間左右見開き固定手段」により「2つの表示板」を固定した場
合の状態を記述しているにすぎず、表示装置の手段として新たなものを
特定していない。
そうすると、訂正事項1-10の訂正は、訂正前の「表示装置」を、
意味が不明な事項により特定しようとするものであり、また、「表示装置」
10 の手段として新たなものを特定していないから、この訂正の目的は「特
許請求の範囲の減縮」に該当するとはいえない。
また、この訂正が「誤記の訂正」や「明瞭でない記載の釈明」を目的
とすると考えることもできないし、「他の請求項の記載を引用する請求項
の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」にも該当
15 しない。
したがって、訂正事項1-10の訂正は、特許法126条1項ただし
書の規定に適合せず、訂正事項2-7、3-7、4-6、5-6、6-
6及び10-7についても、上述の点が同様に当てはまる。
イ 新規事項の追加に当たること(特許法126条5項違反)
20 (ア) 訂正後の任意角度保持手段における「ユーザーの任意の角度」が、0
度から180度の範囲を超えて、180度から360度までの範囲も含
むことについて
訂正事項1-4の訂正では、「ユーザーによる少なくともいずれか一方
の表示板の回動により」「変化させられ」る「ユーザーの任意の角度」が、
25 0度から180度の範囲を超えて、180度から360度までの範囲も
含むことになるところ、本件明細書の【0017】の記載のみならずそ
の他の記載を参照しても、「ユーザーの任意の角度」が180度から36
0度までの範囲も含むことは明示的に記載されておらず、それは本件明
細書等の記載から自明な事項でもない。
なお、本件発明1に係る特許請求の範囲(請求項1)の「約180度
5 となるように、固定するための完全左右見開き固定手段」の「完全」と
いう文言は、左右見開き状態が完全に成立したこと(すなわち、2つの
表示板が平行になること)を特定するものであって、左右見開きの角度
の上限が180度であることを特定するものではないから、「完全」とい
う文言があるからといって、訂正事項1-4の「ユーザーの任意の角度」
10 が0度から180度の範囲に限られると解することはできない。
そうすると、「ユーザーの任意の角度」が、0度から180度の範囲を
超えて、180度から360度までの範囲も含むような訂正は、本件明
細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係に
おいて新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえず、いわゆる
15 新規事項を追加する訂正である。
したがって、訂正事項1-4の訂正は、特許法126条5項の規定に
適合せず、訂正事項1-10、2-7、3-4、3-7、4-6、5-
4、5-6、6-6、10-5及び10-7についても、上述の点が同
様に当てはまる。
20 (イ) 「任意角度保持手段」を「中間左右見開きストッパ」と併用する構成
を追加する点について
訂正事項1-4、1-6及び1-10は、本件発明1に係る特許請求
の範囲(請求項1)に、2つの表示板の間を「摩擦力」により「任意の
角度」で保持する「任意角度保持手段」を追加し、この「任意角度保持
25 手段」を、2つの表示板の間を「約120度から約170度までの範囲
内の予め決められた1つの角度」で固定する「中間左右見開きストッパ」
と併用する構成を新たに特定するものである。
しかしながら、本件明細書においては、摩擦力やチルト機構による
「半固定」と、ストッパによって「一時的に固定」することとは、分け
て定義され(【0010】 、実施例においても、摩擦力により任意の角度
)
5 で「半固定」する構成についての記載の直後で「ストッパがかかって固
定できるように構成するようにしてもよい。」とされ(【0017】及び
【0018】、また、固定手段としての摩擦力及びストッパは、
) 「摩擦力
やストッパやチルト機構」として、全体を通して並列的に記載されてい
る(【0012】及び【0026】。
)
10 本件明細書の上記記載に接した当業者は、「摩擦力による任意の角度で
の固定(半固定)」と、「ストッパによる所定の角度での固定(一時的に
固定)」とは、固定手段として互いに代替する並列的な手段であると理解
するのが自然であり、かかる記載から両者を併用することができるなど
と理解することはない。
15 よって、「任意角度保持手段」と「中間左右見開きストッパ」とを併用
する構成を新たに特定する上記の訂正事項は、本件明細書に記載した事
項の範囲内でするものではない。
原告は、本件明細書の【0017】中の摩擦力により任意の角度で保
持できる旨の記載及び【0018】中の「本実施例においては、…スト
20 ッパがかかって固定できるように構成するようにしてもよい。」との記載
に接した当業者は、それらの記載がともに本件明細書等の連続した段落
中に記載されている事実などから、文脈上、「摩擦力により任意の角度で
保持できる構成」と、「ストッパにより所定角度で固定できる構成」とが、
ともに1つの実施例中で両立・併存し得ることが示唆されているなどと
25 主張する。しかしながら、上記のとおり、本件明細書においては、スト
ッパによる一時的な固定と摩擦力による半固定とは一貫して並列的に記
載されており、他方、【0018】には、摩擦力とストッパとを両立・併
存させるための具体的構成や手段の記載等がないことからすれば、【00
18】の「ストッパがかかって固定できるように構成するようにしても
よい。」との記載は、【0017】の「摩擦力による任意の角度での固定
5 (半固定)」の代替手段としてのストッパについて述べていると解するの
が相当である。実際、【0018】には、2つの枠体間の角度を「約10
5度から約170度まで(又は、約110度から約170度)までの間
の5段階の角度」でストッパにより固定することが記載されており、こ
の場合の各段階の角度幅はせいぜい15度ないし16度程度であるから、
10 このような小さな角度幅において更に摩擦力によって固定する合理的な
理由は想定し難い。したがって、本件明細書の【0017】及び【00
18】の記載から、「摩擦力により任意の角度で保持できる構成」と、
「ストッパにより所定角度で固定できる構成」とが、両立・併存し得る
ことが示唆されているとはいえず、原告の上記主張は理由がない。
15 以上のとおり、訂正事項1-4、1-6及び1-10の上記訂正は、
本件明細書に記載した事項の範囲内でするものではなく、新規事項を追
加するものであり、特許法126条5項の規定に適合しない。また、訂
正事項3-4、3-6、3-7、5-4、5-5、5-6、10-5、
10-6及び10-7は、上記各訂正事項と同様の訂正事項を含むもの
20 であり、これらの訂正事項の訂正も同様に特許法126条5項の規定に
適合しない。
ウ 特許請求の範囲の実質拡張又は変更に当たること(特許法126条6項
違反)
訂正事項1-4の訂正では、前記イ(ア)のとおり、「ユーザーによる少な
25 くともいずれか一方の表示板の回動により」「変化させられ」る「ユーザー
の任意の角度」が、0度から180度の範囲を超えて、180度から36
0度までの範囲も含むことになるところ、そのような角度で2つの表示板
を保持できる表示装置は、本件各発明の技術的範囲外のものも含むことに
なるから、訂正事項1-4の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張又は変
更するものである。
5 したがって、訂正事項1-4の訂正は、特許法126条6項の規定に適
合せず、訂正事項1-10、2-7、3-4、3-7、4-6、5-4、
5-6、6-6、10-5及び10-7についても、上述の点が同様に当
てはまる。
(2) 争点3-2ないし3-3-4について
10 当事者の主張は別紙5訂正の再抗弁の成否についての当事者の主張(訂
正要件を除く)記載1のとおり。
4 争点4(訂正の再抗弁の成否(第3次訂正))について
(1) 争点4-1(第3次訂正が訂正要件を満たすか)について
(原告の主張)
15 以下のとおり、請求項1ないし6に係る第3次訂正はいずれも訂正要件を
満たす。
ア 請求項1の訂正事項(別紙4第3次訂正の訂正事項記載1)について
(ア) 訂正事項1-1について
訂正事項1-1中の「少なくともいずれか一方の表示板が「情報入力
20 機能を有する画面」を表示させるものである「2つの表示板」」は、訂正
前の「2つの表示板」の限定又は下位概念化であり、「2つの表示板を見
開き且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用することができ
る表示装置」は、訂正前の「片手支持可能な表示装置」の限定又は下位
概念化であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
25 (イ) 訂正事項1-2について
訂正事項1-2中の「前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の
表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表示板と他方の表示板と
が「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として相対的に回
動するように、」は、訂正前の「左右見開き接続手段」への直列的付加又
は限定若しくは下位概念化であるから、特許請求の範囲の減縮を目的と
5 する訂正である。
(ウ) 訂正事項1-3について
訂正事項1-3中の「「前記2つの表示板の…任意角度保持手段と」は、
訂正前の請求項全体との関係において構成要件の直列的付加であるから、
特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
10 (エ) 訂正事項1-4について
訂正事項1-4中の「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の
各平面の間の見開き角度」は、訂正前の「前記各表示板のそれぞれ画面
が表示される側の間の角度」の限定又は下位概念化であるから、特許請
求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
15 (オ) 訂正事項1-5について
訂正事項1-5中、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各
平面の間の見開き角度」は、訂正前の「前記『2つの表示板』のそれぞ
れ画面が表示される側の間の角度」の限定又は下位概念化、「約150度
から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」は、訂正前
20 の「約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」の限定
又は下位概念化、「中間左右見開きストッパ」は、訂正前の「中間左右見
開き固定手段」の限定又は下位概念化であるから、訂正事項1-5は、
全体として、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(カ) 訂正事項1-6について
25 訂正事項1-6中の「を備え、ユーザーが、…を固定的に形成する構
成」は、訂正前の請求項全体との関係において構成要件の直列的付加で
あるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(キ) 訂正事項1-7について
訂正事項1-7中の「2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして
片手だけで持ちながら使用することができる表示装置」は、訂正前の
5 「片手支持可能な表示装置」の限定又は下位概念化であるから、特許請
求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 請求項2の訂正事項(別紙4第3次訂正の訂正事項記載2)について
(ア) 訂正事項2-1について
訂正事項2-1中、「少なくともいずれか一方の表示板が「情報入力機
10 能を有する画面」を表示させるものである「2つの表示板」」は、訂正前
の「2つの表示板」の限定又は下位概念化、「2つの表示板を見開き且つ
折り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用することができる表示装
置」は、訂正前の「片手支持可能な表示装置」の限定又は下位概念化で
あるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
15 (イ) 訂正事項2-2について
訂正事項2-2中の「且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一
方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表示板と他方の表示
板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として相対的
に回動するように、」は、訂正前の「左右見開き接続手段」に対する構成
20 要件の直列的付加であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正
である。
(ウ) 訂正事項2-3について
訂正事項2-3中の「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示さ
れる側の各平面の間の見開き角度」は、訂正前の「前記『2つの表示板』
25 の間の見開き角度」の限定又は下位概念化であるから、特許請求の範囲
の減縮を目的とする訂正である。
(エ) 訂正事項2-4について
訂正事項2-4中、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各
平面の間の見開き角度」は、訂正前の「前記『2つの表示板』の間の見
開き角度」の限定又は下位概念化、「約150度から約170度までの範
5 囲内の予め決められた1つの角度」は、訂正前の「約120度から約1
70度までの範囲内のいずれかの角度」の限定又は下位概念化、「中間左
右見開きストッパ」は、訂正前の「中間左右見開き固定手段」の限定又
は下位概念化であるから、訂正事項2-4は、全体として、特許請求の
範囲の減縮を目的とする訂正である。
10 (オ) 訂正事項2-5について
訂正事項2-5中の「を備え、「電車の中で、…前記「予め決められた
1つの角度」に固定する構成」は、訂正前の請求項2全体との関係で、
構成要件の直列的付加であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする
訂正である。
15 (カ) 訂正事項2-6について
訂正事項2-6中の「2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして
片手だけで持ちながら使用することができる表示装置」は、訂正前の
「片手支持可能な表示装置」の限定又は下位概念化であるから、特許請
求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
20 ウ 請求項3の訂正事項(別紙4第3次訂正の訂正事項記載3)について
(ア) 訂正事項3-1について
訂正事項3-1中の「2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして
片手だけで持ちながら使用することができる表示装置」は、訂正前の
「片手支持可能な表示装置」の限定又は下位概念化であるから、特許請
25 求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(イ) 訂正事項3-2について
訂正事項3-2中の「且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一
方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表示板と他方の表示
板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として相対的
に回動するように」は、訂正前の「左右見開き接続手段」との関係で、
5 「左右見開き接続手段」の限定若しくは下位概念化又はそれへの構成要
件の直列的付加であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正で
ある。
(ウ) 訂正事項3-3について
訂正事項3-3中の「前記2つの表示板が…摩擦力保持手段と」は、
10 訂正前の請求項3全体との関係で、構成要件の直列的付加であるから、
特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(エ) 訂正事項3-4について
訂正事項3-4中の「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の
各平面の間の角度」は、訂正前の「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
15 される側の間の角度」の限定又は下位概念化であるから、特許請求の範
囲の減縮を目的とする訂正である。
(オ) 訂正事項3-5について
訂正事項3-5中、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各
平面の間の角度」は、訂正前の「前記各表示板のそれぞれ画面が表示さ
20 れる側の間の角度」の限定又は下位概念化、「約150度から約170度
までの範囲内の予め決められた1つの角度」は、訂正前の「約120度
から約170度までの範囲内のいずれかの角度」の限定又は下位概念化、
「「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」
が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角
25 度」となったとき、前記ユーザーによる回動をストップし且つ前記2つ
の表示板間を固定する中間左右見開きストッパ」は、訂正前の「固定す
るための中間左右見開き固定手段」の限定又は下位概念化であるから、
訂正事項3-5は全体として、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正
である。
(カ) 訂正事項3-6について
5 訂正事項3-6につき、「前記2つの表示板の…を固定的に形成する構
成」は、訂正前の請求項3全体との関係において構成要件の直列的付加
であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(キ) 訂正事項3-7について
訂正事項3-7中の「2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして
10 片手だけで持ちながら使用することができる表示装置」は、訂正前の
「片手支持可能な表示装置」の限定又は下位概念化であるから、特許請
求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
エ 請求項4の訂正事項(別紙4第3次訂正の訂正事項記載4)について
(ア) 訂正事項4-1について
15 訂正事項4-1中、「2つの表示板」は、訂正前の「2つ以上の表示板」
の限定又は下位概念化、「2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして
片手だけで持ちながら使用することができる表示装置」は、訂正前の
「片手支持可能な表示装置」の限定又は下位概念化であるから、特許請
求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
20 (イ) 訂正事項4-2について
訂正事項4-2中の「ユーザーから見て左右方向に約180度の角度
で見開きにされた状態」は訂正前の「ユーザーから見て左右方向に見開
きにされた状態」の限定又は下位概念化、「且つ前記2つの表示板の少な
くともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表
25 示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動
中心として相対的に回動するように」は訂正前の「左右見開き接続手段」
に対する構成要件の直列的付加であるから、特許請求の範囲の減縮を目
的とする訂正である。
(ウ) 訂正事項4-3について
訂正事項4-3中の「「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される
5 側の各平面の間の角度」が約180度となったとき、前記2つの表示板
の間を前記角度で固定する完全見開き固定手段と」は、訂正前の請求項
4全体との関係で構成要件の直列的付加であるから、特許請求の範囲の
減縮を目的とする訂正である。
(エ) 訂正事項4-4について
10 訂正事項4-4中、「前記『2つの表示板』の各平面の間の見開き角度」
は、訂正前の「前記『2つの表示板』の間の見開き角度」の限定又は下
位概念化、「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1
つの角度」は、訂正前の「約105度から約170度までの範囲内のい
ずれかの角度」の限定又は下位概念化、「前記ユーザーによる回動をスト
15 ップし且つ前記2つの表示板間を固定する中間左右見開きストッパ」は、
訂正前の「摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定す
るための左右見開き固定手段」の限定又は下位概念化であるから、訂正
事項4-4は、全体として、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正で
ある。
20 (オ) 訂正事項4-5について
訂正事項4-5中の「2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして
片手だけで持ちながら使用することができる表示装置」は、訂正前の
「片手支持可能な表示装置」の限定又は下位概念化であるから、特許請
求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
25 オ 請求項5の訂正事項(別紙4第3次訂正の訂正事項記載5)について
(ア) 訂正事項5-1について
訂正事項5-1中の「2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして
片手だけで持ちながら使用することができる表示装置」は、訂正前の
「片手支持可能な表示装置」の限定又は下位概念化であるから、特許請
求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
5 (イ) 訂正事項5-2について
訂正事項5-2中の「2つの表示板」は、訂正前の「複数の表示板」
の限定又は下位概念化であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする
訂正である。
(ウ) 訂正事項5-3について
10 訂正事項5-3中、「ユーザーから見て左右方向に約180度の角度で
見開きにされた状態」は、訂正前の「ユーザーから見て左右方向に見開
きにされた状態」の限定又は下位概念化、「且つ前記2つの表示板の少な
くともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表
示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動
15 中心として相対的に回動するように」は、訂正前の「左右見開き接続手
段」に対する構成要件の直列的付加であるから、特許請求の範囲の減縮
を目的とする訂正である。
(エ) 訂正事項5-4について
訂正事項5-4中の「(d)前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状
20 態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態へと向かうように
前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板がユーザーにより
回動される場合においてユーザーが前記回動をユーザーの任意の折り曲
げ角度で止めたとき、前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の折り
曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように、前記ユーザーによ
25 る回動が為されるようにする、摩擦力保持手段、を備えている、」は、訂
正前の請求項5全体との関係において構成要件の直列的付加であるから、
特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(オ) 訂正事項5-5について
訂正事項5-5中の「(e)「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示
される側の各平面の間の角度」が約180度となったとき、前記2つの
5 表示板の間を前記角度で固定する完全見開き固定手段、を備えている、」
は、訂正前の請求項5全体との関係において構成要件の直列的付加であ
るから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(カ) 訂正事項5-6について
訂正事項5-6中、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側
10 の各平面の間の角度」は、訂正前の「前記『2つの表示板』のそれぞれ
画面が表示される側の間の角度」の限定又は下位概念化、「約150度か
ら約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」は、訂正前の
「約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」の限定又
は下位概念化、「中間左右見開きストッパ」は、訂正前の「左右見開き固
15 定手段」の限定又は下位概念化、 「約150度から約170度までの範
「
囲内の予め決められた1つの角度」となったとき、前記ユーザーによる
回動をストップし且つ前記2つの表示板間を固定する中間左右見開きス
トッパ」は、訂正前の「「約105度から約170度までの範囲内のいず
れかの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の
20 手段により固定するための左右見開き固定手段」の限定又は下位概念化
であるから、訂正事項5-6は、全体として、特許請求の範囲の減縮を
目的とする訂正である。
(キ) 訂正事項5-7について
訂正事項5-7中の「(g)前記2つの表示板の少なくともいずれか一
25 方が、…固定的に形成する構成、を備えている。」は、訂正前の請求項5
全体との関係において構成要件の直列的付加であるから、特許請求の範
囲の減縮を目的とする訂正である。
カ 請求項6の訂正事項(別紙4第3次訂正の訂正事項記載6)について
(ア) 訂正事項6-1について
訂正事項6-1中の「2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして
5 片手だけで持ちながら使用することができる表示装置」は、訂正前の
「片手支持可能な表示装置」の限定又は下位概念化であるから、特許請
求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(イ) 訂正事項6-2について
訂正事項6-2中の「2つの表示板」は訂正前の「複数個の表示板」
10 の限定又は下位概念化であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする
訂正である。
(ウ) 訂正事項6-3について
訂正事項6-3中、「ユーザーから見て左右方向に約180度の角度で
見開き可能に接続」は、訂正前の「ユーザーから見て左右方向に見開き
15 可能に接続」の限定又は下位概念化、「且つ前記2つの表示板の少なくと
もいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表示板
と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心
として相対的に回動するように接続する」は、訂正前の「左右見開き接
続手段」の限定又は下位概念化又は構成要件の直列的付加であるから、
20 特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(エ) 訂正事項6-4について
訂正事項6-4中の「(d)前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状
態から…摩擦力保持手段、を備えている、」は、訂正前の請求項6全体と
の関係において構成要件の直列的付加であるから、特許請求の範囲の減
25 縮を目的とする訂正である。
(オ) 訂正事項6-5について
訂正事項6-5中の「(e)「前記2つの表示板の…完全見開き固定手
段、を備えている、」は、訂正前の請求項6全体との関係において構成要
件の直列的付加であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正で
ある。
5 (カ) 訂正事項6-6について
訂正事項6-6中、「前記右側部分と左側部分とのそれぞれ画面が表示
される側の各平面の間の見開き角度」は、訂正前の「前記右側部分と左
側部分との間の見開き角度」の限定又は下位概念化、「約150度から約
170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」は、訂正前の「約
10 105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」の限定又は下
位概念化、「中間左右見開きストッパ」は訂正前の「左右見開き固定手段」
の限定又は下位概念化、「前記ユーザーによる回動をストップし且つ前記
2つの表示板間を固定する中間左右見開きストッパ」は、訂正前の「摩
擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右
15 見開き固定手段」の限定又は下位概念化であるから、訂正事項6-6は、
全体として、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(キ) 訂正事項6-7について
訂正事項6-7中の「(g)前記2つの表示板の少なくともいずれか一
方が、…を固定的に形成する構成、を備えている。」は、訂正前の請求項
20 6全体との関係において構成要件の直列的付加であるから、特許請求の
範囲の減縮を目的とする訂正である。
キ 新規事項の追加の有無等について
(ア) 第3次訂正における前記アないしカの訂正事項は、本件明細書の記載
等から当業者に自明の事項であるから、いずれについても新規事項の追
25 加はない。
また、これらの訂正事項は、本件各発明による作用効果、特にその特
徴的部分(中間左右見開きストッパ)による「ユーザーが2つの表示板
を片手だけで容易に且つ安定的に支持しながら使用できるようにするな
どの作用効果」に影響を与えないから、いずれも実質上特許請求の範囲
を拡張又は変更するものではない。
5 (イ) 「任意角度保持手段」を「中間左右見開きストッパ」と併用する構成
を採ることが新規事項の追加に当たらないことは、前記3(1)(原告の主
張)エと同様である。
(被告の主張)
以下のとおり、請求項1ないし6に係る第3次訂正は訂正要件を満たさな
10 い。
ア 請求項1の訂正事項について
(ア) 訂正事項1-1について
第3次訂正前の請求項1には、「前記『2つの表示板』を…ユーザーか
ら見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するため
15 の左右見開き接続手段」「
、『前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示
される側の間の角度』が『約120度から約170度までの範囲内のい
ずれかの角度』となるように、ストッパにより固定するための中間左右
見開き固定手段」 「ユーザーがその片手だけでも支持することができる
、
ような片手支持可能な表示装置」等の記載がある。
20 そうすると、「2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけ
で持ちながら使用することができる表示装置」とは、第3次訂正前の上
記構成から当然得られる構成であって、表示装置の手段として新たなも
のを特定していないから、訂正事項1-1の訂正の目的は、「特許請求の
範囲の減縮」に該当するとはいえず、特許法126条1項ただし書きの
25 その他の目的にも該当しない。したがって、訂正事項1-1の訂正は同
ただし書きに違反する。
(イ) 訂正事項1-3について
a 「ユーザーの任意の角度」 「任意の角度」及び「ユーザーの任意の
、
折り曲げ角度」のそれぞれの用語の意味については、そもそも本件明
細書には明示的に定義されておらず、明確ではない。また、訂正事項
5 1-3においては、「ユーザーの任意の角度」 「任意の角度」「ユーザ
、 、
ーの任意の折り曲げ角度」等の用語が混在していることからも、尚更、
それぞれの用語の意味が明確ではない。
そうすると、訂正事項1-3は、訂正前の構成を意味が不明な事項
により特定しようとするものであって、かかる構成を限定したり下位
10 概念で特定したりするものではないから、この訂正の目的は、「特許請
求の範囲の減縮」に該当するとはいえず、特許法126条1項ただし
書きのその他の目的にも該当しない。したがって、訂正事項1-3の
訂正は、同ただし書きに違反する。
b 「ユーザーの任意の角度」がどのような角度を意味するかについて
15 は、本件明細書において明示的に定義されておらず、「ユーザー」が
「任意」に「変化させ」ることのできる「角度」という程度の意味に
解すべきものであり、その角度は0度から360度までの範囲にある
ことになるから、0度から180度の範囲を超えて、180度から3
60度までの範囲も含むことになる。しかしながら、本件明細書の記
20 載を参照しても、180度から360度まで回動可能であることは明
示的に記載されておらず、それは本件明細書の記載から自明な事項で
もない。
したがって、「ユーザーの任意の角度」が180度の範囲を超えて1
80度から360度までの範囲も含むようなかかる訂正は、新規事項
25 を追加する訂正であるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張又は変
更するものであって、特許法126条5項及び6項の規定に適合しな
い。
c さらに、訂正事項1-3の訂正を含む第3次訂正後の請求項1は、
「任意角度保持手段」と「中間左右見開きストッパ」とを併用するよ
うな記載となっているが、本件明細書にはこれらの両方を実現させる
5 ための構成は一切開示されていないから、訂正事項1-3は、この点
でも、新規事項を追加する訂正であって、特許法126条5項の規定
に適合しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する
ものであって、同法126条6項の規定に適合しない。
(ウ) 訂正事項1-4について
10 「板」との表現には平面が存在することの意味が含まれており、第3
次訂正前の「2つの表示板」は、「それらが互いに折り畳まれた状態にも、
それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできる」
から、第3次訂正前の「2つの表示板」の「画面が表示される側」がそ
れぞれ平面を含むことは自明であるし、また、そもそも「前記各表示板
15 のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が定義されるためには、「前
記各表示板のそれぞれ画面が表示される側」にそれぞれ平面が存在する
必要がある。
したがって、第3次訂正前の「前記各表示板のそれぞれ画面が表示さ
れる側の間の角度」が「各表示板」の「画面が表示される側」のそれぞ
20 れの平面の間の見開き角度を意味することは、自明である。
そうすると、訂正事項1-4は、第3次訂正前の内容を単に言い換え
たものにすぎず、訂正前の構成を限定したり下位概念で特定したりする
ものではないから、この訂正の目的は、「特許請求の範囲の減縮」に該当
するとはいえず、特許法126条1項ただし書きのその他の目的にも該
25 当しない。したがって、訂正事項1-4の訂正は同ただし書きに違反す
る。
(エ) 訂正事項1-5について
訂正事項1-4の訂正と同様、訂正事項1-5の訂正は特許法126
条1項ただし書きに違反する。
(オ) 訂正事項1-6について
5 本件明細書の【0045】の記載を参照すれば、訂正事項1-6にお
ける「画面が表示される側」の「谷状の部分」や、「画面が表示されない
側」の「山状の部分」とは、断面略V字状の凹状部分(すなわち、約1
05度から約170度までの間のいずれかの角度に折り曲げられている
部分)とその反対側の部分を指すと解するのが相当であり、2つの表示
10 板を見開き状態で使用するときの、当該2つの表示板の折り曲げ角度に
よって規定されるものである。
そうすると、「前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分
及びその近傍部分の画面が表示される側に『谷状の部分』を、且つ前記
2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の
15 画面が表示されない側に『山状の部分』を固定的に形成する構成」とは、
第3次訂正前の「中間左右見開き固定手段」により「2つの表示板」を
固定した場合の折り曲げられた状態を記述しているにすぎず、表示装置
の手段として新たなものを特定していない。
したがって、訂正事項1-6は、「表示装置」の手段として新たなもの
20 を特定していないから、この訂正の目的は、「特許請求の範囲の減縮」に
該当するとはいえず、特許法126条1項ただし書きのその他の目的に
も該当しないから、訂正事項1-6の訂正は同ただし書きに違反する。
(カ) 訂正事項1-7について
訂正事項1-1の訂正と同様、訂正事項1-7の訂正は特許法126
25 条1項ただし書きに違反する。
イ 請求項2の訂正事項について
(ア) 訂正事項2-1について
第3次訂正前の請求項2には、「前記『2つの表示板』を…ユーザーか
ら見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するため
の左右見開き接続手段」「
、『前記『2つの表示板』の間の見開き角度』が
5 『…約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度』となる
ように、固定するための中間左右見開き固定手段」 「ユーザーがその片
、
手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置」等の
記載がある。
そうすると、「2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけ
10 で持ちながら使用することができる表示装置」とは、第3次訂正前の上
記構成から当然得られる構成であって、表示装置の手段として新たなも
のを特定していないから、訂正事項2-1の訂正の目的は、「特許請求の
範囲の減縮」に該当するとはいえず、特許法126条1項ただし書きの
その他の目的にも該当しない。したがって、訂正事項2-1の訂正は同
15 ただし書きに違反する。
(イ) 訂正事項2-3について
訂正事項1-4について述べたとおり、第3次訂正前の「2つの表示
板」がそれぞれ平面を含むことは自明であることに加え、「前記『2つの
表示板』の間の見開き角度」が定義されるためには、「前記『2つの表示
20 板』」にはそれぞれ平面が存在する必要があるから、第3次訂正前の「前
記『2つの表示板』の間の見開き角度」が、「2つの表示板」の「それぞ
れ画面が表示される側」の各平面の間の見開き角度を意味することは、
自明である。
そうすると、訂正事項2-3は、第3次訂正前の内容を単に言い換え
25 たものにすぎず、訂正前の構成を限定したり下位概念で特定したりする
ものではないから、この訂正の目的は、「特許請求の範囲の減縮」に該当
するとはいえず、特許法126条1項ただし書きのその他の目的にも該
当しない。したがって、訂正事項2-3の訂正は同ただし書きに違反す
る。
(ウ) 訂正事項2-4について
5 訂正事項2-3の訂正と同様、訂正事項2-4の訂正は特許法126
条1項ただし書きに違反する。
(エ) 訂正事項2-5について
a 「電車の中で」「使用するのに適した、前記2つの表示板の使用」、
「戸外で」「使用するのに適した、前記2つの表示板の使用」 「外出先
、
10 で」「使用するのに適した、前記2つの表示板の使用」 「立ったままで
、
使用するのに適した、前記2つの表示板の使用」とは、いずれも具体
的にどのような状況であれば「適した」「使用」であるといえるのか明
確ではない。また、訂正事項2-5には「ユーザーの任意の折り曲げ
角度」という用語が含まれるが、訂正事項1-3について述べたとお
15 り、かかる用語の意味も不明確である。
そうすると、訂正事項2-5は、訂正前の構成を意味が不明な事項
により特定しようとするものであって、かかる構成を限定したり下位
概念で特定したりするものではないから、この訂正の目的は「特許請
求の範囲の減縮」に該当するとはいえず、特許法126条1項ただし
20 書きのその他の目的にも該当しない。したがって、訂正事項2-5の
訂正は同ただし書きに違反する。
b さらに、訂正事項2-5の訂正を含む第3次訂正後の請求項2は、
あたかも「摩擦力」と「中間左右見開きストッパ」とを併用するよう
な記載となっているが、本件明細書にはこれらの両方を実現させるた
25 めの構成は開示されていないから、訂正事項2-5の訂正は、新規事
項を追加する訂正であって、特許法126条5項の規定に適合しない
ものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであって、
特許法126条6項の規定に適合しない。
(オ) 訂正事項2-6について
訂正事項2-1の訂正と同様、訂正事項2-6の訂正は特許法126
5 条1項ただし書きに違反する。
ウ 請求項3の訂正事項について
(ア) 訂正事項3-1について
第3次訂正前の請求項3には、「前記『2つの表示板』を…ユーザーか
ら見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するため
10 の左右見開き接続手段」「
、『前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示
される側の間の角度』が『約120度から約170度までの範囲内のい
ずれかの角度』となるように、固定するための中間左右見開き固定手段」、
「ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可
能な表示装置」等の記載がある。
15 そうすると、「ユーザーが前記2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態
にして片手だけで持ちながら使用することができる表示装置」とは、第
3次訂正前の上記構成から当然得られる構成であって、表示装置の手段
として新たなものを特定していないから、訂正事項3-1の訂正の目的
は、「特許請求の範囲の減縮」に該当するとはいえず、特許法126条1
20 項ただし書きのその他の目的にも該当しない。したがって、訂正事項3
-1の訂正は同ただし書きに違反する。
(イ) 訂正事項3-3について
訂正事項3-3を含む第3次訂正発明3は、あたかも「摩擦力保持手
段」と「中間左右見開きストッパ」とを併用するような記載となってい
25 るが、本件明細書にはこれらの両方を実現させるための構成は一切開示
されていないから、訂正事項3-3は、新規事項を追加する訂正であっ
て、特許法126条5項の規定に適合しないものであり、実質上特許請
求の範囲を拡張し、又は変更するものであって、特許法126条6項の
規定に適合しない。
(ウ) 訂正事項3-4について
5 訂正事項1-4について述べたとおり、第3次訂正前の「2つの表示
板」がそれぞれ平面を含むことは自明であることに加え、「前記各表示板
のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が定義されるためには、「前
記各表示板のそれぞれ画面が表示される側」にはそれぞれ平面が存在す
る必要があるから、第3次訂正前の「前記各表示板のそれぞれ画面が表
10 示される側の間の角度」が「各表示板」の「画面が表示される側」のそ
れぞれの平面の間の見開き角度を意味することは、自明である。
そうすると、訂正事項3-4は、第3次訂正前の内容を単に言い換え
たものにすぎず、訂正前の構成を限定したり下位概念で特定したりする
ものではないから、この訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」に該当
15 するとはいえず、特許法126条1項ただし書きのその他の目的にも該
当しない。したがって、訂正事項3-4の訂正は同ただし書きに違反す
る。
(エ) 訂正事項3-5について
訂正事項3-4について述べたのと同様に、第3次訂正前の「前記
20 『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「2つ
の表示板」の「画面が表示される側」のそれぞれの平面の間の見開き角
度を意味することは、自明である。
そうすると、訂正事項3-4と同様に、訂正事項3-5の訂正の目的
は「特許請求の範囲の減縮」に該当するとはいえず、特許法126条1
25 項ただし書きのその他の目的にも該当しない。したがって、訂正事項3
-5の訂正は同ただし書きに違反する。
(オ) 訂正事項3-6について
訂正事項1-6について述べたのと同様に、本件明細書の【0045】
の記載を参照すれば、訂正事項3-6における「画面が表示される側」
の「ユーザーの親指が当接され得る谷状部分」や、「画面が表示されない
5 側」の「ユーザーの親指以外の複数の指が当接され得る山状部分」とは、
断面略V字状の凹状部分(すなわち、約105度から約170度までの
間のいずれかの角度に折り曲げられている部分)とその反対側の部分を
指すと解するのが相当であり、2つの表示板を見開き状態で使用すると
きの、当該2つの表示板の折り曲げ角度によって規定されるものである。
10 そうすると、訂正事項3-6の「前記2つの表示板のそれらが互いに
接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側に『ユーザ
ーの親指が当接され得る谷状部分』を、且つ前記2つの表示板のそれら
が互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示されない側
に『ユーザーの親指以外の複数の指が当接され得る山状部分』を固定的
15 に形成する構成」とは、第3次訂正前の「中間左右見開き固定手段」に
より「2つの表示板」を固定した場合の折り曲げられた状態を記述して
いるにすぎず、表示装置の手段として新たなものを特定していない。
したがって、訂正事項3-6は、「表示装置」の手段として新たなもの
を特定していないから、この訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」に
20 該当するとはいえない。また、第2次訂正の訂正事項に含まれていない
「ユーザーの親指が当接され得る」 「ユーザーの親指以外の複数の指が
、
当接され得る」という文言についても、何ら新たなものを特定するもの
ではなく、いずれにしてもこの訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」
に該当するものではない。
25 また、訂正事項3-6の訂正の目的は特許法126条1項ただし書き
のその他の目的にも該当しないから、この訂正は同ただし書きに違反す
る。
(カ) 訂正事項3-7について
訂正事項3-1の訂正と同様、訂正事項3-7の訂正は特許法126
条1項ただし書きに違反する。
5 エ 請求項4の訂正事項について
(ア) 訂正事項4-1について
第3次訂正前の請求項4には、 『2つの表示板』を…ユーザーから見
「
て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左
右見開き接続手段」「
、『前記『2つの表示板』の間の見開き角度』が『約
10 105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度』となるように
…固定するための左右見開き固定手段」 「ユーザーがその片手だけでも
、
支持することができるような片手支持可能な表示装置」等の記載がある。
そうすると、「ユーザーが前記2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態
にして片手だけで持ちながら使用することができる表示装置」とは、第
15 3次訂正前の上記構成から当然得られる構成であって、表示装置の手段
として新たなものを特定していないから、訂正事項4-1の訂正の目的
は、「特許請求の範囲の減縮」に該当するとはいえず、特許法126条1
項ただし書きのその他の目的にも該当しない。したがって、訂正事項4
-1の訂正は同ただし書きに違反する。
20 (イ) 訂正事項4-4について
訂正事項1-4について述べたとおり、第3次訂正前の「2つの表示
板」がそれぞれ平面を含むことは自明であることに加え、「前記『2つの
表示板』の間の見開き角度」が定義されるためには、「前記『2つの表示
板』」にはそれぞれ平面が存在する必要があるから、第3次訂正前の「前
25 記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「2つの表示板」のそれぞれ
の平面の間の見開き角度を意味することは、自明である。
そうすると、訂正事項4-4は、第3次訂正前の内容を単に言い換え
たものにすぎず、訂正前の構成を限定したり下位概念で特定したりする
ものではないから、この訂正の目的は、「特許請求の範囲の減縮」に該当
するとはいえず、特許法126条1項ただし書きのその他の目的にも該
5 当しない。したがって、訂正事項4-4の訂正は同ただし書きに違反す
る。
(ウ) 訂正事項4-5について
訂正事項4-1の訂正と同様、訂正事項4-5の訂正は特許法126
条1項ただし書きに違反する。
10 オ 請求項5の訂正事項について
(ア) 訂正事項5-1について
第3次訂正前の請求項5には、 『2つの表示板』を…それらがユーザ
「
ーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続する
ための左右見開き接続手段」「
、『前記『2つの表示板』のそれぞれの画面
15 が表示される側の間の角度』が『約105度から約170度までの範囲
内のいずれかの角度』となるように…固定するための左右見開き固定手
段」「片手支持可能な表示装置」等の記載がある。
、
そうすると、「2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけ
で持ちながら使用することができる表示装置。」とは、第3次訂正前の上
20 記構成から当然得られる構成であって、表示装置の手段として新たなも
のを特定していないから、訂正事項5-1の訂正の目的は、「特許請求の
範囲の減縮」に該当するとはいえず、特許法126条1項ただし書きの
その他の目的にも該当しない。したがって、訂正事項5-1の訂正は同
ただし書きに違反する。
25 (イ) 訂正事項5-4について
a 訂正事項5-4の訂正を含む第3次訂正後の請求項5は、あたかも
「摩擦力保持手段」と「中間左右見開きストッパ」とを併用するよう
な記載となっているが、本件明細書にはこれらの両方を実現させるた
めの構成は開示されていない。したがって、訂正事項5-4は、新規
事項を追加する訂正であって、特許法126条5項の規定に適合しな
5 いものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するもので
あって、特許法126条6項の規定に適合しない。
b 訂正事項5-4には「ユーザーの任意の折り曲げ角度」という用語
が含まれるが、訂正事項1-3について述べたとおり、かかる用語の
意味は不明確である。そうすると、訂正事項5-4は、訂正前の構成
10 を意味が不明な事項により特定しようとするものであって、かかる構
成を限定したり下位概念で特定したりするものではないから、この訂
正の目的は、「特許請求の範囲の減縮」に該当するとはいえず、特許法
126条1項ただし書きのその他の目的にも該当しない。したがって、
訂正事項5-4の訂正は同ただし書きに違反する。
15 (ウ) 訂正事項5-6について
訂正事項1-4について述べたとおり、第3次訂正前の「2つの表示
板」がそれぞれ平面を含むことは自明であることに加え、「前記『2つの
表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が定義されるため
には、「前記『2つの表示板』」にはそれぞれ平面が存在する必要がある
20 から、第3次訂正前の「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示さ
れる側の間の角度」が「2つの表示板」のそれぞれの平面の間の見開き
角度を意味することは、自明である。
そうすると、訂正事項5-6は、第3次訂正前の内容を単に言い換え
たものにすぎず、訂正前の構成を限定したり下位概念で特定したりする
25 ものではないから、この訂正の目的は、「特許請求の範囲の減縮」に該当
するとはいえず、特許法126条1項ただし書きのその他の目的にも該
当しない。したがって、訂正事項5-6の訂正は同ただし書きに違反す
る。
(エ) 訂正事項5-7について
a 訂正事項1-6について述べたのと同様に、本件明細書の【004
5 5】の記載を参照すれば、訂正事項5-7における「画面が表示され
る側」の「谷状の部分」や、「画面が表示されない側」の「山状の部分」
とは、断面略V字状の凹状部分(すなわち、約105度から約170
度までの間のいずれかの角度に折り曲げられている部分)とその反対
側の部分を指すと解するのが相当であり、2つの表示板を見開き状態
10 で使用するときの、当該2つの表示板の折り曲げ角度によって規定さ
れるものである。
そうすると、訂正事項5-7の「前記2つの表示板のそれらが互い
に接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側に『谷
状の部分』を、且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されてい
15 る部分及びその近傍部分の画面が表示されない側に『山状の部分』を
固定的に形成する構成」とは、第3次訂正前の「左右見開き固定手段」
により「2つの表示板」を固定した場合の折り曲げられた状態を記述
しているにすぎず、表示装置の手段として新たなものを特定していな
いから、この訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」に該当するとは
20 いえず、特許法126条1項ただし書きのその他の目的にも該当しな
い。したがって、訂正事項5-7の訂正は同ただし書きに違反する。
b 訂正事項5-7には「ユーザーの任意の折り曲げ角度」という用語
が含まれるが、訂正事項1-3について述べたとおり、かかる用語の
意味は不明確である。そうすると、訂正事項5-7は、訂正前の構成
25 を意味が不明な事項により特定しようとするものであって、かかる構
成を限定したり下位概念で特定したりするものではないから、この点
からしても、この訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」に該当する
とはいえない。
カ 請求項6の訂正事項について
(ア) 訂正事項6-1について
5 第3次訂正前の請求項6には、「ユーザーから見て縦方向の線を境にし
て、その右側部分と左側部分とを…ユーザーから見て左右方向に見開き
可能に接続するための左右見開き接続手段」 「ユーザーから見て縦方向
、
の線の右側部分と左側部分とを…『約105度から約170度までの範
囲内のいずれかの角度』となるように…固定するための左右見開き固定
10 手段」「片手支持可能な表示装置」等の記載がある。
、
そうすると、「2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけ
で持ちながら使用することができる表示装置。」とは、第3次訂正前の上
記構成から当然得られる構成であって、表示装置の手段として新たなも
のを特定していないから、訂正事項6-1の訂正の目的は、「特許請求の
15 範囲の減縮」に該当するとはいえず、特許法126条1項ただし書きの
その他の目的にも該当しない。したがって、訂正事項6-1の訂正は同
ただし書きに違反する。
(イ) 訂正事項6-4について
訂正事項5-4の訂正と同様、訂正事項6-4の訂正は特許法126
20 条1項ただし書きに違反する。
(ウ) 訂正事項6-6について
訂正事項1-4について述べたのと同様に、第3次訂正前の「前記右
側部分と前記左側部分」(これらが「複数個の表示板」に相当することは
自明である。)がそれぞれ平面を含むことは自明であるし、そもそも「前
25 記右側部分と前記左側部分との間の見開き角度」が定義されるためには、
「前記右側部分と前記左側部分」にはそれぞれ平面が存在する必要があ
る。したがって、第3次訂正前の「前記右側部分と前記左側部分との間
の見開き角度」が「2つの表示板」のそれぞれ画面が表示される側の各
平面の間の角度を意味することは、自明である。
そうすると、訂正事項6-6は、第3次訂正前の内容を単に言い換え
5 たものにすぎず、訂正前の構成を限定したり下位概念で特定したりする
ものではないから、この訂正の目的は、「特許請求の範囲の減縮」に該当
するとはいえず、特許法126条1項ただし書きのその他の目的にも該
当しない。したがって、訂正事項6-6の訂正は同ただし書きに違反す
る。
10 (エ) 訂正事項6-7について
a 訂正事項1-6について述べたのと同様に、本件明細書の【004
5】の記載を参照すれば、訂正事項6-7における「画面が表示され
る側」の「ユーザーの親指が当接され得る谷状部分」や、「画面が表示
されない側」の「ユーザーの親指以外の複数の指が当接され得る山状
15 部分」とは、断面略V字状の凹状部分(すなわち、約105度から約
170度までの間のいずれかの角度に折り曲げられている部分)とそ
の反対側の部分を指すと解するのが相当であり、2つの表示板を見開
き状態で使用するときの、当該2つの表示板の折り曲げ角度によって
規定されるものである。
20 そうすると、「前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部
分及びその近傍部分の画面が表示される側に『ユーザーの親指が当接
され得る谷状部分』を、且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続
されている部分及びその近傍部分の画面が表示されない側に『ユーザ
ーの親指以外の複数の指が当接され得る山状部分』を固定的に形成す
25 る構成」とは、第3次訂正前の「左右見開き固定手段」により「右側
部分と左側部分」を固定した場合の折り曲げられた状態を記述してい
るにすぎず、表示装置の手段として新たなものを特定していないした
がって、訂正事項6-7の訂正の目的は、「特許請求の範囲の減縮」に
該当するとはいえず、特許法126条1項ただし書きのその他の目的
にも該当しないから、この訂正は同ただし書きに違反する。
5 b 訂正事項6-7には「ユーザーの任意の折り曲げ角度」という用語
が含まれるが、訂正事項1-3について述べたとおり、かかる用語の
意味は不明確である。そうすると、訂正事項6-7は、訂正前の構成
を意味が不明な事項により特定しようとするものであって、かかる構
成を限定したり下位概念で特定したりするものではないから、この点
10 からしても、この訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」に該当する
とはいえない。
(2) 争点4-2ないし4-3-4について
当事者の主張は別紙5訂正の再抗弁の成否についての当事者の主張(訂正
要件を除く)記載2のとおり。
15 5 争点5(本件各発明の実施についての不当利得返還義務の有無及び返還すべ
き利得の額)について
(原告の主張)
(1) 被告は、被告各製品を、それぞれ少なくとも別紙1被告製品目録記載の
「日本国内での発売日」以降の期間において、日本国内で製造、販売してお
20 り、これは本件各発明の実施に当たる。
(2) 平成21年2月4日から同年8月4日までの期間について
ア 当該期間における被告各製品の製品単価はおおむね金1万2000円を
下らず、その販売個数はおおむね300万個を下らない。したがって、当
該期間の被告各製品の売上高は360億円を下らない。
25 イ 本件各発明によるストッパ機能が、被告各製品において不可欠な中核的
な機能であり、代替不可能な技術であったことを考慮すれば、本件各発明
を被告各製品のために実施するときの実施料率は、被告各製品の分野にお
ける平均的な実施料率(3ないし7%)の上位とすることが妥当である。
したがって、被告各製品において望ましい本件各発明の実施料率は7%で
ある。
5 ウ 以上によれば、当該期間における被告各製品の製造、販売に対する本件
各発明の実施料相当額は、売上高360億円に実施料率7%を乗じた25
億22000万円を下らず、被告は、この支払を行うべきであるのに、そ
れを免れることで同額の利得を得ており、原告は同額の損害を被っている
から、被告は原告に対し同額の不当利得返還義務を負う。
10 (3) 平成21年8月5日から平成23年8月30日までの期間について
当該期間における被告各製品の製造、販売に対する本件各発明の実施料相
当額は100億円を下らず、被告は、これに対する消費税相当額10億円を
含めた110億円の支払を行うべきであるのに、それを免れることで同額の
利得を得ており、原告は同額の損害を被っているから、被告は原告に対し同
15 額の不当利得返還義務を負う。
(被告の主張)
被告が、被告各製品を、それぞれ別紙1被告製品目録の「日本国内での発売
日」以降の期間において、日本国内で販売していたことは認めるが、被告が被
告各製品を日本国内で製造したとの事実は否認する。被告各製品は、被告から
20 製造委託を受けた海外の企業が海外で製造していたものであり、被告自身が国
内で製造していたものではない。
被告各製品の製造販売に関して、被告が原告に対して不当利得返還義務を負
うとの原告の主張は否認ないし争う。
第4 当裁判所の判断
25 1 本件明細書の記載事項等
(1) 本件明細書(甲2、3)には、以下のような記載がある(下記記載中に引
用する【図1】 【図2】 【図8】及び【図9】については、別紙6本件明細
、 、
書の図面参照)。
ア 【0001】
【産業上の利用分野】
5 本発明は、複数の表示板を備えた表示装置に係り、特に携帯時には携帯
に便利なコンパクト・サイズでありながら使用時には比較的大きな見やす
い表示画面を提供できる、あるいは使用時に複数の表示画面を提供できる、
片手支持可能な表示装置に関する。
イ 【0002】
10 【従来の技術】
近年の情報化の進展に伴い、携帯用のコンパクト・サイズの電子情報機
器、例えばCD-ROM再生専用装置(例えばソニー株式会社の商品名
「データディスクマン」、VTR(ビデオテープレコーダー)
) 、TV(テレ
ビ)、A4版ファイル・サイズのノートブックパソコン(パーソナルコンピ
15 ュータ)、電子手帳、などの携帯型電子情報機器が続々と製品化されている。
【0003】
これらの携帯型電子情報機器においては、その画面の出力のためのディ
スプレーパネルとしてLCD(液晶ディスプレー)パネルなどを使用した
薄型ディスプレーが使用されている。そして、従来のノート型パソコンな
20 どにおいては、一般に、この薄型ディスプレーとキーボードとが、周知の
手段により、互いに折り曲げ自在に、且つ折り畳み自在に接続されている。
そしてユーザーは、携帯時には、前記薄型ディスプレーとキーボードとを
折り畳んだ状態で持ち運び、使用時には、これらのディスプレーとキーボ
ードとを互いに上下方向に見開き状態にして使用するのが一般である。
25 ウ 【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の携帯型電子情報機器においては、携帯の便利さを追求
すればディスプレー装置などのサイズは小さいほどよいが、他方、ユーザ
ーが使用するときの便宜を考えればディスプレー画面のサイズは見ずらく
ならない程度には大きくしておく必要がある、という二律背反の問題があ
5 った。そして、近年、このような二律背反の課題に着目して、携帯の便利
さ(コンパクト化)と使用時のディスプレー画面の見やすさ(画面の大き
さのある程度の確保)という2つの要請を同時に満たし、前記の二律背反
の問題を一挙に解決することができる表示装置として、2つの表示板を接
続し、不使用時には2つの表示板を収納又は携帯しやすいように折り畳み
10 状態とし、使用時には2つの表示板を見開き状態とするような「折り畳
み・見開き型の表示装置」が提案されている(例えば、特開平3-103
889号公報)。
【0005】
しかしながら、このような従来から提案されている「折り畳み・見開き
15 型の表示装置」においては、単に、不使用時には2つの表示板を収納又は
携帯しやすいように折り畳み状態とし、使用時には2つの表示板を見開き
状態とすることを提案するだけであり、「ユーザーが、外出先(戸外)など
で、例えば立ったままで、その一方の片手だけを使って表示装置全体を容
易且つ安定的に支持しながら、その他方の片手は、表示装置を支持するこ
20 と以外の他の様々な動作を行うために(例えば電車の吊り革を掴むために)
使用することができるようにできないか。」という問題意識(ニーズ)は、
全く窺うことができない(前記公報などの先行技術文献には、このような
問題意識については、何らの記載も示唆も無い)。
【0006】
25 携帯情報端末(PDA)や携帯電話などの移動体通信機器に使用するた
めの表示装置を考えるときは、ユーザーが、外出先(戸外)などで、例え
ば立ったままで、その両手の一方の片手だけで容易且つ安定的に表示装置
を支持しながら使用できること、そして、表示装置を支持していない他方
の片手は、例えば、ユーザーが、電子ペンで表示画面に文字を手書き入力
したり、タッチパネル式の表示画面を指先でタッチして操作したり、テン
5 キーを押して数字や文字を入力したり、トラックボール・マウス・パッ
ド・ジョイスティクなどのポインティングデバイスを操作したり、他の操
作キーやジョグ・ダイヤルなどを操作したり、通勤電車の吊り革を掴んだ
り、隣の人と握手したり、などのような様々な動作を行うために使用でき
るようにすることが、極めて重要なはずである。
10 【0007】
本発明は、このような従来技術に関する問題意識から構想されたもので
あって、「ユーザーが、例えば外出先(戸外)などで、例えば立ったままで
も、その一方の片手だけを使って表示装置全体を極めて容易且つ安定的に
支持することができる、片手支持可能な表示装置」を提供することを課題
15 (目的)とするものである。さらに、本発明は、「ユーザーが、例えば外出
先(戸外)などで、例えば立ったままでも、その一方の片手だけを使って
表示装置全体を極めて容易且つ安定的に支持しながら、その他方の片手は、
(例えば文字入力動作や電車の吊り革を掴む動作などのような)表示装置
を支持すること以外の他の様々な動作を行うために使うことができる、片
20 手支持可能な表示装置」を提供することを課題(目的)とするものである。
【0008】
このような本発明の課題は、従来の先行技術文献の中には全く記載も示
唆も無く、従来技術からは容易に予想・認識することができない「新規な
課題」である。
25 エ 【0010】
【課題を解決するための手段】
(用語説明)本明細書において、「固定」には、(a)摩擦力やチルト機構
などにより「半固定」する場合(ここで、「半固定」とは、「固定」の一形
態であって、ユーザーがある程度強めの所定量以上の力を加えることによ
り状態を変更させる(すなわち、固定状態を解除して、前記各表示板(各
5 表示パネル)間の角度を変更させる)ことができるような状態、を言う)
や、(b)ストッパ(例えば、2つの表示板を接続する蝶番の回動を所定の
角度でストップさせるもの)などを使用して「一時的に固定」する場合、
なども含まれる。
【0011】
10 なお、上記の「固定手段」の一例としての「チルト機構」とは、2つの
部材を接続するヒンジ部(蝶番)に装着・固定した軸とその軸に装着した
コイルスプリングとにより前記2つの部材を任意の回転角度で保持できる
ようにした機構である。このような「チルト機構」は、従来より、例えば
キーボードと薄型ディスプレイとを接続するノート型(ブック型)電子機
15 器のヒンジ部(蝶番)などに設けられている周知の技術であって、例えば、
実願平1-54228号(実開平2-145423号公報)のマイクロフ
ィルム(この中の明細書の第4ページの第7-14行及び第4図参照)に
は、キーボードが備えられた本体側の固定金具と薄型ディスプレイが備え
られた蓋体側の固定金具との間に装着された軸にコイルスプリングを装着
20 すること等により、前記蓋体を前記本体に対して任意の回転角度で保持で
きるようにしたチルト機構が開示されている。
【0012】(本発明の内容)
1-(1)-1.略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」
を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような
25 片手支持可能な表示装置であって、前記「2つの表示板」を、それらが互
いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開き
にされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、
前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見
開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間
の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定
5 手段と、ユーザーから見て左右方向に見開きにされたときの前記「2つの
表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の
角度」が「約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」と
なるように、ストッパにより固定するための中間左右見開き固定手段であ
って、前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示され
10 る側の間の角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から広げ
られて行く動作、をストップする機能と、前記「2つの表示板」の、「前記
各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「ユーザーから見
て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態」から狭められて行
く動作、をストップする機能と、を有する中間左右見開き固定手段と、を
15 備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
1-(1)-2.略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」
を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような
片手支持可能な表示装置であって、前記「2つの表示板」を、それらが互
いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開き
20 にされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、
前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記
『2つの表示板』の間の見開き角度」が約180度となるように、固定す
るための完全左右見開き固定手段と、前記「2つの表示板」を、「ユーザー
から見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」
25 が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約1
80度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約120度か
ら約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するた
めの中間左右見開き固定手段であって、記「2つの表示板」の、「ユーザー
から見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」
が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、
5 をストップする機能を有する中間左右見開き固定手段と、を備えたことを
特徴とする片手支持可能な表示装置。
1-(1)-3.略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」
を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような
片手支持可能な表示装置であって、前記「2つの表示板」を、それらが互
10 いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開き
にされた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、
前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見
開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間
の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定
15 手段と、前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにさ
れたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画
面が表示される側の間の角度」が「約120度から約170度までの範囲
内のいずれかの角度」となるように、固定するための中間左右見開き固定
手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
20 1-(2).画面をそれぞれ表示できる「少なくとも2つの表示板」を含
んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手
支持可能な表示装置であって、前記「2つの表示板」を、それらがユーザ
ーから見て左右方向に見開きにされた状態にも、それらが互いに折り畳ま
れた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、前記
25 「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2
つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態と
ユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との
間の角度であって、約105度から約170度までの範囲内のいずれかの
角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角
度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105
5 度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約15
0度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範
囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のい
ずれかの角度)」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の
手段により固定するための左右見開き固定手段と、を備えたことを特徴と
10 する片手支持可能な表示装置。
2-(1).画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の(複数の)表示板
(2つ以上の表示パネル)」を含んでおり、ユーザーがその片手の上に載せ
てその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置
であって、前記の「2つ以上の(複数の)表示板」の中の「2つの表示板」
15 を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左
右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左右見開
き接続手段と、前記「2つ以上の(複数の)表示板」の中の「2つの表示
板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表
示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角
20 度」が「約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(ある
いは、約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約10
5度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約1
55度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの
範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいず
25 れかの角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角
度)」となるように、固定するための左右見開き固定手段と、を備えたこと
を特徴とする片手支持可能な表示装置。
2-(2).画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示板」を含んでお
り、ユーザーがその片手だけでも支持することができるような片手支持可
能な表示装置であって、前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である
5 「2つの表示板」を、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされ
た状態にも、それらが互いに折り畳まれた状態にもできるように、接続す
るための左右見開き接続手段と、前記「2つ以上の表示板」の全部又は一
部である「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、
前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれ
10 た状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた
状態との間の角度であって、約105度から約170度までの範囲内のい
ずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの範囲内のいず
れかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいずれかの角度、
約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、約105度か
15 ら約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約145度
までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約140度までの範
囲内のいずれかの角度)」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構や
その他の手段により固定するための左右見開き固定手段と、を備えたこと
を特徴とする片手支持可能な表示装置。
20 3-(1).次の(a)~(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持
可能な表示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する「複数の表示板」が、それぞれが表示す
る各画面がユーザーに対向することができるように、接続されている、
(b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手
25 のみでも支持することができるような小型のサイズに構成されている、
(c)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、
それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にも、それらが
互いに折り畳まれた状態にもできるように、接続するための左右見開き接
続手段を備えている、
(d)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」が
5 ユーザーから見て左右方向に見開きにされているとき、前記「2つの表示
板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」
が「約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、
約105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度か
ら約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度
10 までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内
のいずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの
角度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」と
なるように、固定するための左右見開き固定手段、を備えている。
3-(2).次の(a)~(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持
15 可能な表示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する「複数の表示板」が、それぞれが表示す
る各画面がユーザーに対向することができるように、接続されている、
(b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手
のみでも支持することができるような小型のサイズに構成されている、
20 (c)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、
折り畳み可能で且つユーザーから見て左右方向に見開き可能に接続するた
めの左右見開き接続手段を備えている、
(d)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、
「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の
25 見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左
右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、
約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角度(あるいは、約
105度から約165度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から
約160度までの範囲内のいずれかの角度、約105度から約155度ま
での範囲内のいずれかの角度、約105度から約150度までの範囲内の
5 いずれかの角度、約105度から約145度までの範囲内のいずれかの角
度、又は約105度から約140度までの範囲内のいずれかの角度)」とな
るように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定する
ための左右見開き固定手段、を備えている。
3-(3).次の(a)~(d)のような内容を含むことを特徴とする表
10 示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する複数個の表示板が、それぞれが表示する
各画面がユーザーに対向することができるように、接続されている、
(b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手
のみでも支持することができるような小型のサイズに構成されている、
15 (c)表示装置は、ユーザーから見て縦方向の線を境にして、その右側
部分と左側部分とが、折り曲げ・折り畳み可能で且つユーザーから見て左
右に見開き可能となっている、
(d)表示装置は、その使用時に、ユーザーから見て縦方向の線の右側
部分と左側部分とを、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記右側
20 部分と左側部分との間の見開き角度」が「約105度から約170度まで
の範囲内のいずれかの角度(あるいは、約105度から約165度までの
範囲内のいずれかの角度、約105度から約160度までの範囲内のいず
れかの角度、約105度から約155度までの範囲内のいずれかの角度、
約105度から約150度までの範囲内のいずれかの角度、約105度か
25 ら約145度までの範囲内のいずれかの角度、又は約105度から約14
0度までの範囲内のいずれかの角度)」となるように、摩擦力やストッパや
チルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段、を
備えている。
4-(1).本願発明(上記1、2又は3などに記載の発明)において、
前記左右見開き固定手段が固定する「2つの表示板のそれぞれ画面が表示
5 される側の間の角度」又は「ユーザーから見て縦方向の線の右側部分と左
側部分との間の角度」は、表示装置の全体をユーザーがその片手で支持し
易いような角度又はユーザーがその片手の上に載置し易いような角度であ
ることが望ましい。
4-(2).上記3の発明は、「次の(e)(f)(g)のいずれか1つ、
10 いずれか2つ、又は、全て」を含むことが望ましい。
(e)表示装置の使用時の表示画面は、ユーザーから見て縦方向の線か
ら右側部分の画面の形状(又は、画面の面積及び形状)と、同左側部分の
画面の形状(又は、画面の面積及び形状)とが、ユーザーから見たときに
ほぼ左右均等で且つほぼ左右対称となるように、構成されている。
15 (f)表示装置の使用時の全体の形状は、ユーザーから見て縦方向の線
の右側部分の平面の面積と同左側部分の平面の面積とが、ハードウェアと
してほぼ左右均等となるように、構成されている。
(g)表示装置を構成する表示板は偶数個であり、表示装置の使用時の
全体の形状は、ユーザーから見て縦方向の線の右側部分の厚さ(又は、厚
20 さ及び平面の面積)と同左側部分の厚さ(又は、厚さ及び平面の面積)と
が、ハードウェアとしてほぼ左右均等となるように、構成されている。
4-(3).上記1、2又は3の発明の表示装置であって、「偶数個の表
示板」から構成されており、この「偶数個の表示板」の全部である偶数個
の表示板又はその一部である偶数個の表示板が左右見開き状態で使用され
25 る場合における表示装置の全体は、その全体のほぼ中央部の「ユーザーか
ら見て縦方向の線」を境として、ユーザーから見たときの前記線の右側部
分の平面の面積及び厚さ寸法と、同左側部分の平面の面積及び厚さ寸法と
が、ハードウェアとしてほぼ左右均等となるように構成されている、こと
を特徴とする片手支持可能な表示装置。
5.上記1、2、3又は4において、前記左右見開き固定手段は、前記
5 の「2つの表示板」の接続部分に、「ユーザーがその片手の親指を安定的に
置くことを可能にするための、断面略V字状の凹状(谷状)部分」を形成
する作用を有している、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
6.上記1、2、3又は4において、前記左右見開き固定手段は、前記
の「2つの表示板」の接続部分に、「ユーザーが、前記表示装置を、その片
10 手の親指以外の指又は掌の上に安定的に載置することを可能にするための、
断面略V字状の凸状(山状)部分」を形成する作用を有している、ことを
特徴とする片手支持可能な表示装置。
7.上記1から6までのいずれかにおいて、前記左右見開き固定手段は、
前記左右見開き接続手段と一体的に構成されている(ハードウェア的に一
15 体化されている)、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
なお、本発明において、「左右見開き固定手段が、左右見開き接続手段と
一体的に構成されている(ハードウェア的に一体化されている)」ような場
合とは、例えば、(1)前記左右見開き接続手段を構成する「ヒンジ部(蝶
番)」の各部材に摩擦係数の高い素材を使用することにより、ヒンジ部(蝶
20 番。接続部分)の摩擦係数を高めて、2つの表示板の間の角度が一時的に
固定できるようにする場合(蝶番の接続面の摩擦係数を高くして、2つの
表示板の間が所定の折り曲げ角度で一時的に固定できるようにしたもの、
など) (2)前記左右見開き固定手段を構成するストッパ部分と前記左右
、
見開き接続手段とをプラスチック素材や金属素材などで一体成形する場合、
25 などである。
8.上記1から6までのいずれかにおいて、前記左右見開き固定手段は、
前記左右見開き接続手段又は前記表示板と容易に分離できないように構成
されている、ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
なお、本発明において、「左右見開き固定手段が、左右見開き接続手段又
は表示板と容易に分離できないように構成されている」ような場合とは、
5 例えば、(1)前記左右見開き固定手段と前記左右見開き接続手段(又は前
記表示板)とが、プラスチック素材や金属素材などで一体成型されてハー
ドウェア的に一体化されている場合(この場合は当然に「容易に分離でき
ない」状態である) (2)接着剤や溶接や係止用フックなどの手段を使用
、
して、前記左右見開き固定手段を構成するストッパ部分を、前記左右見開
10 き接続手段(又は前記表示板)に対して、容易に分離できないように固定
している場合、(3)前記チルト機構(軸及びコイルスプリングなど)を2
つの表示板の接続部分(ヒンジ部)に内蔵させた場合、などである。
9.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記表示板に、「ユ
ーザーによるデータ入力のために使用される、データ入力用画面」すなわ
15 ち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を表示するた
めのデータ入力用画面表示手段、を備えたことを特徴とする片手支持可能
な表示装置。
10.上記1から8のいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可能な
表示装置から離れた場所に在る外部の情報記録装置に記録されている外部
20 情報を無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、前記外部情
報無線受信手段が受信した外部情報を前記表示板に表示させるための外部
情報表示手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
11.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、テレビ放送局か
ら電波又は有線により送信されるテレビ番組情報を無線を介して受信する
25 ためのテレビ番組情報無線受信手段と、前記テレビ番組情報無線受信手段
により受信されたテレビ番組情報を前記表示板に表示させるためのテレビ
番組情報表示手段と、を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
12.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可
能な表示装置から離れた場所に在る外部の情報記録装置に記録されている
外部情報を無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、前記外
5 部情報無線受信手段が受信した外部情報を前記表示板に表示させるための
外部情報表示手段と、テレビ放送局から電波又は有線により送信されるテ
レビ番組情報を無線を介して受信するためのテレビ番組情報無線受信手段
と、前記テレビ番組情報無線受信手段により受信されたテレビ番組情報を
前記表示板に表示させるためのテレビ番組情報表示手段と、を備えたこと
10 を特徴とする片手支持可能な表示装置。
この場合、ユーザーは、前記表示装置に、受信した「テレビ番組」と前記
無線受信手段からの「外部情報」を表示させることができる。
13.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可
能な表示装置から離れた場所に在る外部の情報記録装置に記録されている
15 外部情報を無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、前記外
部情報無線受信手段が受信した外部情報を前記表示板に表示させるための
外部情報表示手段と、前記表示板に、「ユーザーによるデータ入力のために
使用される、データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)と
しても使用され得る画面」を表示するためのデータ入力用画面表示手段と、
20 を備えていることを特徴とする片手支持可能な表示装置。
この場合、ユーザーは、前記表示装置に、「離れた場所にある情報記録装置
からの情報(外部情報)」と「データ入力用画面」すなわち「データ入力装
置(の一部)としても使用され得る画面」を表示させることができる。
14.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、テレビ放送局か
25 ら電波又は有線により送信されるテレビ番組情報を無線を介して受信する
ためのテレビ番組情報無線受信手段と、前記テレビ番組情報無線受信手段
により受信されたテレビ番組情報を前記表示板に表示させるためのテレビ
番組情報表示手段と、前記表示板に、「ユーザーによるデータ入力のために
使用される、データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)と
しても使用され得る画面」を表示するためのデータ入力用画面表示手段と、
5 を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
この場合、ユーザーは、前記表示装置に、受信した「テレビ番組」と、
様々な情報を入力するための「データ入力用画面」すなわち「データ入力
装置(の一部)としても使用され得る画面」を、表示することができる。
15.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記片手支持可
10 能な表示装置から離れた場所に在る外部の情報記録装置に記録されている
外部情報を無線を介して受信するための外部情報無線受信手段と、前記外
部情報無線受信手段が受信した外部情報を前記表示板に表示させるための
外部情報表示手段と、テレビ放送局から電波又は有線により送信されるテ
レビ番組情報を無線を介して受信するためのテレビ番組情報無線受信手段
15 と、前記テレビ番組情報無線受信手段により受信されたテレビ番組情報を
前記表示板に表示させるためのテレビ番組情報表示手段と、前記表示板に、
「ユーザーによるデータ入力のために使用される、データ入力用画面」す
なわち「データ入力装置(の一部)としても使用され得る画面」を表示す
るためのデータ入力用画面表示手段と、を備えたことを特徴とする片手支
20 持可能な表示装置。
この場合、ユーザーは、前記表示装置に、「テレビ番組」と「外部情報」と
「データ入力用画面」すなわち「データ入力装置(の一部)としても使用
され得る画面」を、表示させることができる。
オ 【0013】
25 【発明の実施の形態】
(第1実施例)図1は本発明の第1実施例に係る、CD-ROM再生専用
装置を示す概略正面図である。なおこの図1には、本発明に強く関連する
部分のみを示してあり、従来公知の部分、例えば電源を入れるためのキー
や再生・停止・早送り・巻戻し・検索等を指示するためのキー、検索のた
めのキーワードを入力するためのキーなどは、図示を省略している。
5 【0014】
図1において、符号1は枠体(筐体)である。この枠体1の中には、C
D-ROM駆動装置3、このCD-ROM駆動装置3からの信号を処理す
る信号処理装置4、前記信号処理装置4からの信号を受けてLCD(液晶
ディスプレイ)画面を表示するためのLCD駆動装置6、電源などが収納
10 されている。またこの枠体1は、前記LCD駆動装置6によりLCD画面
が出力されるLCDパネル(表示板)5(本明細書では、符号5を、LC
DパネルとLCD画面との両者を示すために用いている)を備えている。
なお図1では、図示の便宜上CD-ROM駆動装置3は枠体1の外側に記
載されているが、実際には枠体1の中の例えばLCD画面5を出力するL
15 CDパネル5の裏側に収納されている。
【0015】
また符号2も枠体(筐体)で、この枠体2には、LCD画面7を表示す
るためのLCD駆動装置8などが収納され、またこのLCD駆動装置8に
よりLCD画面が出力されるLCDパネル(表示板)7(本明細書では、
20 この符号7を、LCDパネルとLCD画面との両者を示すために用いてい
る)が備えられている。
【0016】
また本実施例では、前記の枠体1と枠体2とは、図示のように、その端
部同士が、3つの比較的小さい蝶番9と1つの比較的大きい蝶番10とに
25 より、折り曲げ自在に接続(連結)されている。これにより、枠体1と枠
体2とは、本実施例の平面図である図2に示すように、図2の(a)に示
す約180度に見開かれた「左右完全見開き状態」から、図2(b)のよ
うな「左右半見開き状態」(図2(a)のように約180度に見開きにされ
た状態と、図2(c)のように各枠体1、2がそれぞれ画面が表示される
側が互いに向き合うように折り畳まれた状態との間の状態)を経て、さら
5 に図2(c)の「折り畳み状態」へと、自在に折り曲げることができるよ
うになっている。また本実施例では、上記と逆に、図2(c)の状態から
図2(b)の状態を経て図2(a)の状態にすることもできる。
【0017】
また本実施例では、枠体1と枠体2との間は、蝶番9及び10を構成す
10 る部材間の摩擦力により、任意の角度で一時的に固定(半固定)でき、そ
の一時的に固定(半固定)した状態(例えば図2の(b)に示す状態で固
定(半固定)した状態)で使用できるようになっている。またこのような
「任意の角度での固定(半固定)」が前述のように単に摩擦力によるもので
あるときは、ユーザーは、所定量以上の力を加えることにより自由にその
15 「固定(半固定)の角度」を変化させることができるようになっている。
なお本実施例での前記蝶番9及び10については、従来周知のもの(例え
ばノート型パソコンのキーボードとディスプレイとを折り畳み・折り曲げ
自在に接続する蝶番であって、摩擦力などにより、前記のキーボードとデ
ィスプレイとが「両者間の角度が少し折れ曲がっている状態」となるよう
20 に保持できるようになっている蝶番など)を使用できる。
【0018】
また本実施例においては、蝶番9及び10の構造を従来周知の方法で工
夫すること(例えば、ストッパを設けること等)により、2つの枠体1と
枠体2の間が、例えば約105度から約170度まで(又は、約110度
25 から約170度まで)の間の5段階の角度のいずれかの角度で、ストッパ
がかかって固定できるように構成するようにしてもよい。
【0019】
また本実施例では、図1に示すように、LCD画面5と枠体1の図示右
側の端部との間隔、及びLCD画面7と枠体2の図示左側の端部との間隔
は、極めて小さいものとなっている。そして、枠体1と枠体2を接続する
5 蝶番のうち、2つのLCD5及び7に対向する端部の間を接続する3つの
蝶番9は、比較的小さいものを使用している。したがって、本実施例にお
いては、LCD画面5とLCD画面7との間の間隔は、「極めて小さいもの」
となっている。そのため、ユーザーにとっては、LCD画面5とLCD画
面7との間の間隔は「ほとんど無視できるもの」となっており、ユーザー
10 にとっては、この「2つのLCD画面5及び7が合わさった、あたかも一
つの大きな画面」として見ることができるようになっている。
【0020】
なお前記枠体2内のLCD駆動装置8と枠体1内の信号処理装置4とは、
比較的大きい蝶番(ジョイント)10の中を通る信号線により接続されて
15 いる(なお、このような、蝶番の中を通る信号線を介してLCD駆動装置
と信号処理装置とを接続するという構成は、市販のノート型パソコン等に
おいて既に周知である)。そのため、1枚のCD-ROMを再生するとき、
この再生信号は、信号処理装置4から2つのLCD駆動装置6及び8の双
方に送られるので、2つのLCD画面5及び7は、互いに協働して1つの
20 画面を表示できるようになっている。つまり、例えば、ユーザーがある百
科事典を記録したCD-ROMを使用して「鯛」という魚を調べようとす
るとき、この鯛を検索して、鯛の写真をLCD画面5及び7に表示させる
ときは、一つの鯛の写真の映像がLCD画面5及び7の両方にまたがって
大きく表示されることになる。
25 【0021】
また本実施例のLCD画面5及び7によって表示できる情報は、前述の
鯛の写真のような映像だけでなく、文字などのデータでもよい。例えば、
本などの書籍のそれぞれの1ページ分の文字データを一つの情報ブロック
としてCD-ROMに記憶させておき、ある1ページ分の文字データの情
報ブロックをLCD画面5に表示するとともに、その次のページの1ペー
5 ジ分の文字データの情報ブロックをLCD画面7に表示するようにしても
よい。こうすれば、ユーザーは、このCD-ROM再生装置をあたかも本
を見開き状態にして本を読んでいるのと同じ感覚で使用できる。
【0022】
以上のように、本実施例においては、2つのLCD画面5及び7を、一
10 つの信号処理装置4からの信号が入力されるLCD駆動装置6及び8によ
りそれぞれ駆動されるようにして、この2つのLCD画面5及び7が協働
して「合わせて一つの大きな画面」を形成できるようにすると共に、2つ
のLCD画面5及び7をそれぞれ含む枠体1及び2を、互いに折り曲げ・
折り畳み自在に接続するようにしている。
15 【0023】
したがって、ユーザーは、このCD-ROM再生装置を使用するときは、
図1及び図2(a)に示すように、2つの枠体1及び2を見開きの状態に
して、LCD画面5及び7の2つの画面を合わせた大きな面積の画面に、
情報を表示させることができる。
20 【0024】
またユーザーは、例えば通勤電車の中などにおいて、立ったまま、片手
でこのCD-ROM再生装置を使用しようとするときは、図2の(b)に
示すように、2つの枠体1及び2の間の角度を例えば約150度程度に折
り曲げた状態(「半折り曲げ状態=半見開き状態」)でLCD画面5、7を
25 見るようにすることもできる。また混雑した通勤電車内では、この2つの
枠体1及び2の間の角度をさらに例えば約120度程度に折り曲げた状態
(「半折り曲げ状態=半見開き状態」)に保持して使用することもできる。
【0025】
さらにユーザーは、このCD-ROM再生装置を戸外の移動時に携帯し
ようとするときは、図2の(c)に示すように、2つの枠体1及び2を折
5 り畳み状態にすることにより、全体として、使用時の正面の面積の約半分
であるコンパクトなサイズにして持ち運ぶことができる。
【0026】
また、この実施例においては、前記第1の枠体1と第2の枠体2を見開
き状態にしたとき、これらの2つの枠体を、その両者の枠体1、2の各L
10 CDパネル5、7の間の角度が「約180度の角度」で固定できるだけで
なく、その両者の枠体1、2の各LCDパネル5、7の間の角度が「約1
05度から約170度まで(又は、約110度から約170度まで)の間
の所定の角度(任意の角度)」で固定できる(例えば摩擦力やストッパやチ
ルト機構により)ようにしている。よって、ユーザーは、本実施例による
15 表示装置を、例えば、会社のデスクの上では約180度の角度に見開いた
「完全見開き状態」で使用し、混雑している通勤電車の中では(他人に本
実施例の装置が当たって迷惑がかかることのないように)例えば約105
度~約120度の角度に見開いた「半見開き状態」で使用する等、周囲の
状況に応じた使用ができるようになる。
20 【0027】
また、さらに、ユーザーは、例えば、通勤電車の中で立ったまま、本実
施例の表示装置を使用する場合、両手のうち一方の手で電車の吊り革を掴
みながら他方の手のみで表示装置を支持するときは、本実施例の表示装置
を片手のみでも支えやすいように例えば約150度の角度に見開いた「半
25 見開き状態=半折り曲げ状態」で使用し、また電車の中が混雑してきたら
(他人に本実施例の表示装置が当たって迷惑がかかることのないように)
例えば約105度~120度の角度に見開いた「半見開き状態=半折り曲
げ状態」で使用する等、周囲の状況に即応したきめ細かい使用が可能にな
る。
【0041】
5 また本発明の表示装置は、単にCD-ROM等の記録媒体からの情報を
表示するために使用するだけでなく、「ユーザーが情報を入力するときに使
用する、情報入力用画面」を表示することができるディスプレー、例えば、
「ユーザーが電子ペン等を使用して手書き文字などの情報を入力するため
の、電子ペン等を操作するための操作画面」を表示することができるディ
10 スプレー、タッチパネル機能を備えたディスプレー(タッチパネルを兼ね
るディスプレー)であってユーザーが指先でデータを入力できるようにし
たディスプレー、などでもよい。以上のように、本発明の表示装置は、「入
力装置(入力装置の一部)としても使用できるディスプレー」をも含むも
のである。
15 カ 【0044】
【発明の効果】
1.本発明の基本的効果.
本発明では、「少なくとも2つの表示板(2つの表示パネル)を約105
度から約170度までの間のいずれかの角度で固定するための左右見開き
20 固定手段」を備えている。したがって、本発明では、ユーザーが、表示装
置全体をその一方の片手のみで支持しようとするとき、前記左右見開き固
定手段により形成される「断面略V字状の凹状部分(裏側から見ると、凸
状部分)」又はその近傍の部分を、前記片手による支持の「取っ掛かり」と
することができる。よって、本発明によれば、ユーザーは、外出先(戸外)
25 などで、例えば立ったままでも、2つの表示板を含む表示装置全体を、そ
の一方の片手のみで容易且つ安定的に支持することができるようになる。
【0045】
すなわち、本発明では、前記の「ユーザーが、その片手の上に載せて、
その片手だけで支持しながら使用できる(あるいは、小型の表示装置であ
る)」という構成と、前記の「左右見開き固定手段」という構成とにより、
5 「少なくとも2つ以上の表示板を見開き状態で使用するとき、ユーザーが、
その片手の親指を、前記各表示板の左右見開き接続部分の表面側(ユーザ
ー側)の断面略V字状の凹状部分(すなわち、約105度から約170度
までの間のいずれかの角度に折り曲げられている谷状部分)に当てること
により、又は/及び、その片手の親指以外の指又は掌を、前記各表示板の
10 見開き接続部分の裏面側(ユーザーに対向していない側)の山状の部分に
当てることにより、ユーザーは、前記の表示板の全体を、ユーザーの片手
だけで極めて容易且つ安定的に支持しながら使用することができる」とい
う効果が得られる。
【0046】
15 また、本発明において、2つの表示板を含む表示装置がユーザーから見
て左右見開き状態にされているときの、ユーザーから見て縦方向の線から
左側の部分と右側の部分とのそれぞれの表示画面の形状をほぼ左右均等・
左右対称に構成するようにしたとき(又は、ユーザーから見て縦方向の線
から左側の部分と右側の部分とのそれぞれの平面の面積をほぼ左右均等に
20 構成するようにしたとき)は、ユーザーは、前記左側部分の画面(又はそ
の平面)と右側部分の画面(又はその平面)との全体を、その両眼からほ
ぼ左右均等に見渡すことができるので、前記の2つの表示板による左右見
開きの画面の全体が、ユーザーにとって大変に見やすいものとなる。
【0047】
25 さらに、本発明の「偶数個の表示板を備えた表示装置」において、前記
の各表示板が左右見開き状態にされたときの、ユーザーから見て縦方向の
線から見て左側の部分と右側の部分とのそれぞれの平面の面積と厚さ寸法
をハードウェアとしてほぼ左右均等に構成するようにしたときは、ユーザ
ーがその片手の親指を前記各表示板の接続部分の表面側(ユーザーに対向
している側)すなわち断面略V字状の凹状部分(約105度から約170
5 度までの間のいずれかの角度に折り曲げられている谷状部分)に当てた場
合、又は/及び、その片手の親指以外の指又は掌を前記各表示板の接続部
分の裏面側(ユーザーに対向していない側)の山状部分及びその周辺部分
に当てるようにした場合、表示装置全体が、「前記線近傍の谷状部分又は/
及び山状部分」を支点として(前記線の位置を支点として)、左右の均衡
10 (バランス)が取れた状態(「ヤジロベエ」のような状態)となるので、片
手だけでも極めて容易且つ安定的に各表示板を支持できるようになる。
【0048】
2.上記の本発明の効果を図8を参照して説明すると、次の(1)~
(4)のとおりである。
15 【0049】
(1)図8(a)の場合の作用
図8(a)は、「互いに厚さ寸法が同一ではない2つの表示板(2つの表示
パネル)91、92を、約180度の角度での完全見開きの状態に固定し
て成る表示装置を、ユーザーが片手で支持している場合」(本発明の範囲外)
20 を示している。
【0050】
この場合は、ユーザーは、片手の親指93を前記2つの表示板91、9
2の表示画面側(ユーザーに対向する側)の何処かの場所に当てることに
なるが、その表示画面側は全体として約180度の水平面となっており、
25 「親指を当てるときの、『取っ掛かり』となってくれるような部分(例えば、
本発明における前記「断面略V字状の凹状部分」のような谷の部分)」が存
在しないため、前記親指93の存在にも拘わらず前記各表示板91、92
は「図示左右方向に、ぶれやすく、移動しやすい」状態となり、前記親指
93により各表示板91、92を容易且つ安定的に支持することはできな
い。
5 【0051】
また、前記の片手の親指以外の指又は掌は、前記各表示板91、92の
裏面側(ユーザーに対向しない側)に当てられるが、前記各表示板91、
92の裏面側も全体として約180度の角度の略水平面となっており、「そ
の親指以外の指又は掌を当てたときの、『取っ掛かり』になってくれる部分」
10 が存在しないので、前記各表示板91、92は「図示左右方向に、ぶれや
すく、移動しやすい」状態となり、前記親指以外の指又は掌により各表示
板91、92を強く安定的に支持することはできない。
【0052】
以上より、この図8(a)の場合は、ユーザーが表示装置全体を片手だ
15 けで支持するときは、極めて不安定な支持しかできない。
【0053】
(2)図8(b)の場合の作用
次に、図8(b)は、「互いに厚さ寸法が異なる2つの表示板(2つの表示
パネル)91、92を、ユーザーが自分の手で約130度くらいの角度で
20 見開き状態にした(但し、前記2つの表示板を『前記約130度の左右見
開き状態で固定(半固定を含む)すること』は、為されていない)まま、
ユーザーが片手で支持している場合」(本発明の範囲外)を示している。
【0054】
この場合は、ユーザーは、片手の親指93を前記2つの表示板91及び
25 92の接続部分の表示画面側(ユーザーに対向している側)に当てること
になるので、この「断面略V字状の凹状の谷状部分(図8(b)の矢印A
で示す部分)」が「親指93を当てるときの、『取っ掛かり』のような部分」
に一応はなってくれる。そのため、この「取っ掛かり」に当てられる親指
93の存在により、前記各表示板91、92は、「図示左右方向に、ぶれる
こと、移動すること」が少しは防止されるようになる。
5 【0055】
また、前記各表示板91、92の裏面側(ユーザーに対向していない側)
は、前記各表示板91及び92が約130度の角度に突出する山状になっ
ており、この「山状部分」が「前記親指以外の指又は掌を当てるに際して
の『取っ掛かり』のような部分」に一応はなってくれるので、前記各表示
10 板91、92が「図示左右方向に、ぶれること、移動すること」が、少し
は防止されるようになっている。
【0056】
しかし、この図8(b)の場合は、前記の各表示板91と92との間の
約130度くらいの角度での見開き状態が「固定(半固定を含む)」されて
15 はいない(ユーザーが自分の手の力だけで約130度くらいの角度になる
ように支持しているだけである)。したがって、この図8(b)の場合は、
各表示板91と92との間の角度は、図の矢印Bで示すように、 (約13
「
0度の角度のままで一定ということではなく)常にブラブラ・グラグラと
不安定に変動してしまう状態」にある。よって、この図8(b)の場合は、
20 各表示板91、92は、ユーザーが片手で支持している間、ずっと、図の
矢印Bのように互いの接続部分の角度がブラブラと不安定に変動してしま
う(前記の「各表示板91と92との間の角度(約130度)」が固定され
ておらず、一定していない)ので、ユーザーは、到底、片手のみで各表示
板91、92を容易且つ安定的に支持することはできない。
25 【0057】
よって、ユーザーが各表示板91、92に表示された情報を見ようとし
ても、各表示板91、92が図の矢印Bのように常にブラブラ・グラグラ
と動いてしまうので、大変に見難く読み難くなってしまう(目も疲れてし
まう)。また、本来的にブラブラと前記角度が変動してしまう2つの表示板
91、92をユーザーが自分の手で約130度の角度に保持し続けなくて
5 はならないので、ユーザーは手に不自然な力を入れ続ける必要があり、疲
れてしまう。また、電子ペン94(図8(b)参照)を使用して文字を手
書き入力するなどのペン入力操作や指先入力操作(タッチパネル方式での
入力操作)をしようとする場合でも、入力操作時に発生するペン先又は指
先からの押圧力により表示板92の位置が図の矢印Bのようにブラブラと
10 大きく変動してしまい、大変に不安定であるため、手書き入力などのペン
入力操作やタッチパネル式画面への指先の押圧操作などの「入力操作」が
極めて難しくなってしまう。
【0058】
(3)図8(c)の場合の作用
15 次に、図8(c)は、本願発明の一実施形態で、「互いに厚さ寸法の異なる
2つの表示板(2つの表示パネル)91、92が、約180度の完全見開
き状態と折り畳み状態との間の、例えば約130度の角度で固定されてい
る場合」である。
【0059】
20 この場合は、ユーザーは、片手の親指93を、前記2つの表示板91及
び92の接続部分の表示画面側(ユーザーに対向している側)の「(2つの
表示板91、92の接続部分の)断面略V字状の凹状に固定された谷状部
分」 (図8(c)の矢印A参照)に当てることになるので、この「断面略
(
V字状の凹状に固定された谷状部分」が「親指93を当てるときの、『取っ
25 掛かり』のような部分」となってくれる。そのため、この「取っ掛かりの
ような部分(谷状部分)」に当てられた親指93の存在により、前記各表示
板91、92は、「図示左右方向に、ぶれること、移動すること」がほぼ完
全に防止される。
【0060】
また、この場合は、ユーザーの前記片手の親指以外の指又は掌は、前記
5 各表示板91、92の裏面側(ユーザーに対向していない側)に当てられ
るが、この裏面側は、前記各表示板91及び92が約130度の角度で固
定されているため、「断面略V字状に突出・固定された山状部分」となって
いる(2つの表示板の接続部分のユーザーに対向する側が断面略V字状の
凹状の谷状部分となっている場合は、その反対側(裏側)は、当然に、断
10 面が略V字状の突状の山状部分となる)。そこで、この場合は、この裏面側
の「断面が略V字状の突状に固定された山状部分」が、「前記の片手の親指
以外の指又は掌を当てるときの『取っ掛かり』のような部分」となってく
れる。そのため、前記の親指93の存在によるだけでなく、この「取っ掛
かりのような部分(山状部分)」に当てられた親指以外の指又は掌の存在に
15 よっても、前記各表示板91、92が「図示左右方向に、ぶれること、移
動すること」が、ほぼ完全に防止される。
【0061】
そして、この場合は、各表示板91、92が約130度の角度で見開き
「固定(半固定を含む)」されているため、各表示板91、92の裏面側
20 (ユーザーに対向しない側)の全体形状が、ユーザーの片手の「掌(手の
ひら)」の自然な形にフィットしやすい状態となる(なぜなら、人間の手を
リラックスさせたときの自然な形とは、ちょうど「卵をつかむ」ときのよ
うな形であるが、このときの「掌(手のひら)」の形は、ちょうど「断面が
略V字状の凹状」となるから)。
25 【0062】
そして、前記谷状部分を「取っ掛かり」として表面側(ユーザーに対向
している側)に掛けられたユーザーの親指94と、その裏側の前記山状部
分を「取っ掛かり」として裏面側(ユーザーに対向していない側)に掛け
られたユーザーの親指以外の指又は掌とが、前記2つの表示板91、92
を、その表面側と裏面側とからそれぞれ強固に安定的に支持するようにな
5 るので、表示装置をユーザーの片手の上に載せれば、ユーザーの片手のみ
でも、表示装置が全体として極めて容易且つ安定的に支持されるようにな
る。
【0063】
特に、電子ペン94による文字の手書き入力や指先による入力(タッチ
10 パネル方式)などの入力操作をするときでも、前記のように、2つの表示
板91と92の間の角度が固定(半固定を含む)されているので、ペン先
や指先から所定の押圧力を表示板92に与えても、表示板92が「ブラブ
ラ・グラグラとぐらつく」ことはなく、入力ペンによる手書き入力などの
入力操作やタッチパネル式画面への指先の操作などの「入力操作」が大変
15 に安定的に且つ容易にできるようになる。
【0064】
(4)図8(d)の場合の作用
次に、図8(d)は、本願発明の一実施形態を示すもので、「互いに平面の
面積と厚さ寸法がほぼ同一の2つの表示板(2つの表示パネル)91、9
20 2が、約130度の角度で見開かれた状態で固定されている場合」である。
【0065】
この場合も、図8(c)で前述したのと同様に、ユーザーは、片手のみ
でも極めて容易且つ安定的に表示装置を支持することができる。さらに、
特に、この例では、前記各表示板91と92は、それらの各平面の面積と
25 各厚さ寸法とが互いにハードウェアとしてほぼ左右均等となっているので、
図8(d)に示すように、ユーザーが片手の親指を前記表面側の「断面略
V字状の凹状部分=谷状部分=デルタ状部分(図の矢印Aで指示する部分)」
に当てて、親指以外の指又は掌を各表示板91、92の裏面側の「断面略
V字状に突出した山状部分」に当てたとき、表示装置全体が、前記の谷状
部分と山状部分とを支点として、その左右の均衡(バランス)が保たれた
5 「ヤジロベエ」のような状態になり、その結果、片手だけでも極めて「左
右に安定した状態」で支持できるようになる。
【0066】
すなわち、この図8(d)の場合は、前記「断面略V字状の凹状部分=
谷状部分(図の矢印Aで指示する部分)」を通る線(ユーザーから見て縦方
10 向の線)を境として、表示装置の右側部分と左側部分とが、ハードウェア
としてその平面や厚さ寸法がほぼ左右均等にバランスするように構成され
ているので、ユーザーが片手のみでも大変に左右にバランス良く支持でき
るようになる。
【0067】
15 3.次に、本発明の効果について、さらに、図9を参照して説明する。
図9(a)に示すように、従来より、「キーボード104と、表示画面10
5aを表示するための表示パネル105とを、互いに折り畳み・見開き自
在に接続したノート型パソコン」が販売されている。図9(a)は、この
従来のノート型パソコンを元に、それをユーザーの片手の「掌(手のひら)」
20 だけで支持できるように小型化したものを、本発明との比較のために特別
に仮想的に用意して、それをユーザーが一方の片手だけで支持したときの
動作を仮想的に示したものである。
【0068】
この場合は、ユーザーの親指101と小指102と掌103とにより、
25 キーボード104の左右両側面と下面とを、それぞれ左右両側から及び下
方向から支持することになる。そして、ユーザーは、他方の片手で、キー
ボード104を操作することができる。
【0069】
しかし、このような小型のノート型パソコンは、キーボード104と表
示板105とが「ユーザーから見て左右方向(横方向)の線(図9(a)
5 の一点鎖線Q参照)」を境にして折り曲げられている点で、2つの表示板が
「ユーザーから見て上下方向(縦方向)の線(図9(b)の一点鎖線R参
照)」を境にして折り曲げられている本発明とは、根本的に、その課題・構
成・作用・効果を異にしている。
【0070】
10 すなわち、本発明では、図9(b)に示すように、2つの表示板(表示
パネル)107、108が、「ユーザーから見て上下方向(縦方向)の線
(図9(b)の一点鎖線R参照)」を境にして折り曲げ固定されている。
【0071】
そして、本発明では、この「ユーザーから見て上下方向(縦方向)の線
15 R」に沿って、前記「断面略V字状の凹状部分(谷状部分)」が形成されて
いる(図9(b)及び図9(c)の符号P参照)。そして、この「断面略V
字状の凹状の谷状部分」Pが、ユーザーが前記2つの表示板107、10
8を安定的に支持するためにユーザーの親指106を掛けるための「取っ
掛かり」となってくれている。また、本発明では、前記「断面略V字状の
20 凹状の谷状部分」Pの裏側の「山状部分」が、ユーザーが前記2つの表示
板107、108の裏面(ユーザーと対向していない側)にユーザーの親
指以外の指又は掌を当てるための「取っ掛かり」となってくれている。
【0072】
以上のように、本発明では、図9(b)の符号Rで示す「ユーザーから
25 見て上下方向(縦方向)の線」を境として、表示装置の右側部分と左側部
分とを、前記の折り曲げられた任意の角度で(すなわち、断面が略V字状
になった状態で)固定することが、可能になっている。
【0073】
したがって、本発明では、ユーザーがその片手で表示装置全体を支持す
るとき(又は、ユーザーが表示装置全体を片手の上に載置するとき)、ユー
5 ザーは、前記の折り曲げられた部分(「ユーザーから見て上下方向(縦方向)
の線」又はその近傍の部分)に形成される「断面略V字状の凹状の谷状部
分」に親指を掛けてそこを「取っ掛かり」にして表示装置を支持すること
(又は、前記の断面略V字状の凹状の谷状部分の反対側の山状部分を「取
っ掛かり」にして、表示装置を片手の親指以外の指又は掌の上に置くこと)
10 により、前記表示装置の全体を極めて容易且つ安定的に支持することが可
能になる。
【0079】
以上のように、本発明によれば、前記左右見開き固定手段により、ユー
ザーが表示装置の全体を片手だけで支持すること又は片手の掌の上に載置
15 することが、極めて容易になる。よって、本発明によれば、ユーザーが、
外出中(戸外で)、例えば通勤電車内や路上などの様々な場所で、立ったま
までも、表示装置を片手だけで支持しながら、又は表示装置を片手の掌の
上に載置・支持しながら、安定的に使用し続けることが極めて容易になる。
(2) 前記(1)の記載事項及び本件各発明に係る特許請求の範囲(別紙2-1)
20 によれば、本件明細書には、本件各発明に関し、次のとおりの開示があるこ
とが認められる。
ア 本件各発明は、複数の表示板を備えた表示装置に係り、特に携帯時には
携帯に便利なコンパクト・サイズでありながら使用時には比較的大きな見
やすい表示画面を提供できる、あるいは使用時に複数の表示画面を提供で
25 きる片手支持可能な表示装置に関するものである(【0001】。
)
従来の携帯型電子情報機器において、携帯の便利さ(コンパクト化)と
使用時のディスプレー画面の見やすさ(画面の大きさのある程度の確保)
という2つの要請を同時に満たすよう、2つの表示板を接続し、不使用時
には2つの表示板を収納又は携帯しやすいように折り畳み状態とし、使用
時には2つの表示板を見開き状態とするような表示装置が提案されている
5 (【0004】。
)
このような従来から提案されている表示装置は、単に、不使用時には2
つの表示板を収納又は携帯しやすいように折り畳み状態とし、使用時には
2つの表示板を見開き状態とすることを提案するだけであるが(【000
5】 、携帯情報端末(PDA)や携帯電話等の移動体通信機器に使用する
)
10 ための表示装置を考えるときは、ユーザーが、外出先(戸外)等で、一方
の片手だけで容易かつ安定的に表示装置を支持しながら使用できること、
そして、表示装置を支持していない他方の片手は、電子ペンで表示画面に
文字を手書き入力する等、様々な動作を行うために使用できるようにする
ことが重要である(【0006】。
)
15 イ 本件各発明は、このような従来技術に関する問題意識から構想されたも
のであって、ユーザーが、外出先(戸外)等で、その一方の片手だけを使
って表示装置全体を極めて容易かつ安定的に支持することができる片手支
持可能な表示装置を提供することを課題(目的)とするものである。さら
に、本件各発明は、ユーザーが、他方の片手が表示装置を支持すること以
20 外の他の様々な動作を行うために使うことができる片手支持可能な表示装
置を提供することを課題(目的)とするものである(【0007】。
)
そして、本件各発明は、前記課題を解決するために、別紙2-1特許請
求の範囲(第1次訂正後)記載の構成を採った(【0012】。
)
その結果、本件各発明では、ユーザーが、表示装置全体をその一方の片
25 手のみで支持しようとするとき、左右見開き固定手段により形成される断
面略V字状の凹状部分(裏側から見ると、凸状部分)又はその近傍の部分
を、片手による支持の取っ掛かりとすることができ、ユーザーは、外出先
(戸外)等で、2つの表示板を含む表示装置全体を、その一方の片手のみ
で容易かつ安定的に支持することができ、また、電子ペンによる文字の手
書き入力や指先による入力(タッチパネル方式)等の入力操作をするとき
5 でも、2つの表示板の間の角度が固定(半固定を含む。)されているので、
ペン先や指先から所定の押圧力を表示板に与えても、表示板がブラブラ・
グラグラとぐらつくことはなく、入力ペンによる手書き入力等の入力操作
やタッチパネル式画面への指先の操作等の入力操作が安定的にかつ容易に
できるようになるという効果を奏する(【0044】及び【0063】。
)
10 2 争点2-2-1(本件各発明についての乙1文献を引用例とする新規性欠如
(出願日遡及を前提とする無効理由))及び争点2-2-2(本件各発明につい
ての乙1文献を主引用例とする進歩性欠如(出願日遡及を前提とする無効理由))
について
事案に鑑み、争点2-2-1及び2-2-2から判断する。
15 (1) 乙1文献の記載事項等
ア 本件原々々出願の出願日である平成3年8月30日より前に頒布された
刊行物である乙1文献には次のような記載がある(下記記載中に引用する
【図1】 【図2】 【図8】及び【図9】については、別紙7乙1文献の図
、 、
面参照)。なお、乙1文献の日本語訳については、第2次訂正に係る審決
20 (乙30)において、審判合議体が乙1文献の日本語ファミリー文献であ
る特表平5-501023号公報(甲20の1)を参考にして作成した訳
文を使用していることに照らし、当該訳文を使用するのが相当であると判
断した。
(ア) 3頁21ないし28行
25 「Another objective of the present invention is to provide a system
that allows one digitizer to be rotated with respect to the second
so that the computer aided notebook can be opened to a variety of
selected positions and where one of such positions allows a user
to hold the computer in one hand while data is entered with the
other while the user is in a sitting, standing or walking position.」
5 (日本語訳)
「この発明の別の目的は、コンピュータ援助ノートブックが様々な選択
された位置に開かれ得るように1つのデジタイザが第2のデジタイザを
基準にして回転することを許容し、かつこのような位置の1つは、ユー
ザが座ったり、立ったり、又は、歩いたりする位置にあるときに、片手
10 でコンピュータを保持し、もう片方の手でデータを入力することを許容
するシステムを提供することである。」
(イ) 5頁10行ないし6頁6行
「Brief Description of the Drawings:
Fig.1 illustrates a portable computer according to the invention
15 in a flat open position;
Fig. 2 is a perspective view of a portable computer according to
the invention in a closed position;
Fig. 3 is a perspective view of a portable computer according to
the invention in a compact open position folded back to back having
20 a screen orientation upside down as compared to Fig. 1;
Fig. 4 is a perspective view of a portable computer according to
the invention in a partially folded open position having a screen
orientation oriented sideways as compared to Fig. l;
Fig. 5 is a top plan view of a portable computer according to the
25 invention in a position separated at the hinge;
Fig. 6A is an exploded illustration of a hinge in accordance with
the invention;
Fig. 6B is an exploded illustration of the hinge showing the primary
axis in accordance with the invention;
Fig. 6C is another exploded illustration of the hinge showing the
5 primary axis in accordance with the invention;
Fig. 6D is an exploded illustration of the hinge showing the
secondary axis in accordance with the invention;
Fig. 6E is an exploded illustration of the hinge showing the
anchoring means in accordance with the invention;」
10 (日本語訳)
「図面の簡単な説明
図1は平坦な開いた位置におけるこの発明に従った携帯用コンピュータ
を示す。
図2は閉じた位置におけるこの発明に従った携帯用コンピュータの斜視
15 図である。
図3は図1と比較するとスクリーンの配向が逆さまである、背中合わせ
で折畳まれたコンパクトな開いた位置にあるこの発明に従った携帯用コ
ンピュータの斜視図である。
図4は、図1と比較すると横に配向されたスクリーン配向を有する部分
20 的に折畳まれた開いた位置におけるこの発明に従った携帯用コンピュー
タの斜視図である。
図5は蝶番で分離された位置におけるこの発明に従った携帯用コンピュ
ータの上面図である。
図6Aはこの発明に従った蝶番の分解図である。
25 図6Bはこの発明に従った第1の軸を示す蝶番の分解された図である。
図6Cはこの発明に従った第1の軸を示す蝶番の別の展開された図であ
る。
図6Dはこの発明に従った第2の軸を示す蝶番の分解図である。
図6Eはこの発明に従った保留手段を示す蝶番の分解図である。」
(ウ) 6頁32行ないし7頁4行
5 「Description of the Specific Embodiments:
Fig. 1 shows a perspective view of a computer notebook 10 according
to the present invention. Notebook 10 includes a first panel 12, a
second panel 14 connected to first panel 12 by a hinge means 16
that allows both first panel 12 and second panel 14 to orient in a
10 multitude of angles about hinge means 16, and a stylus 18 for
writing on first panel 12 and second panel 14.」
(日本語訳)
「好ましい実施例の説明
図1はこの発明に従ったコンピュータノートブック10の斜視図を示す。
15 ノートブック10は第1のパネル12と、第1のパネル12及び第2の
パネル14の両方が蝶番手段16を中心とした多数の角度において配向
することを許容する蝶番手段16によって第1のパネル12に接続され
る第2のパネル14と、第1のパネル12及び第2のパネル14上に書
くためのスタイラス18を含む。」
20 (エ) 7頁5ないし16行
「First panel 12 has a first flat surface 20 with an opaque first
digitizer tablet 22 and allows placement of standard templates,
pads of single-sheet hard copy forms or a thin pad of forms. A
digitizer tablet includes a digitizer and the backing for mounting
25 the digitizer; hereinafter, "digitizer" will be used instead of
digitizer tablet. First panel 12 also has selected liquid-crystal
displays for acknowledging data entered upon first digitizer 22.
Second panel 14 includes a second flat surface 24 with a liquid
crystal display and includes a transparent second digitizer 26
overlaying the liquid crystal display.」
5 (日本語訳)
「第1のパネル12は不透明な第1のデジタイザタブレット22を有す
る第1の平坦な表面20を有し、かつ標準のテンプレート、単一シート
ハードコピーフォームのパッド又は書式の薄いパッドの配置を許容する。
デジタイザタブレットはデジタイザとデジタイザを装着するための裏当
10 てとを含み、これ以降、「デジタイザ」がデジタイザタブレットの代わり
に使用されるであろう。
第1のパネル12はまた第1のデジタイザ22上へ入力されるデータに
応答するための選択された液晶ディスプレイを有する。第2のパネル1
4は液晶ディスプレイを有する第2平坦な表面24と液晶ディスプレイ
15 の上に置かれる透明な第2のデジタイザ26を含む。」
(オ) 7頁17行ないし8頁5行
「First panel 12 is primarily the data entry panel and houses the
major electronics of the invention, namely the logic, memory, and
power supply, as well as peripheral ports for a printer, modem, and
20 other like peripheral devices. Second panel 14 serves primarily as
a display panel and doubles as a secondary data entry panel. Each
panel is connected to the other by means of hinge 16. Hinge 16
allows one panel to be set at any angle position relative to the
other. In one specific embodiment, the panels will have at least
25 four distinct settings including closed (Fig. 2), initial or
partially opened (Fig. 4), flat (Fig, 1), and folded (Fig. 3)
positions that will allow each panel to support a nominal amount
of torque without movement. The configuration shown in Fig. 1 may
also be rotated 180° in the plane of the figure, and the paper
form the display correspondingly inverted with respect to the frame
5 of the computer, for the convenience of left-handed, users. Also
included is means to allow electrical communication between the two
panels, where the first panel 12 has the logic, memory, and power
supply and second panel 14 provides a display and secondary data
entry device. One such means of communication is a ribbon computer
10 cable and is well known in the art.」
(日本語訳)
「第1のパネル12は主にデータ入力パネルであり、かつこの発明の主
要な電子回路、すなわち、論理と、メモリと、電源と、プリンタ、モデ
ム、他の同様な周辺装置のための周辺ポートとを収容する。第2のパネ
15 ル14は主にディスプレイパネルとして役立ち、かつ第2のデータ入力
パネルとしても兼務する。各パネルは蝶番16によって他方に接続され
る。蝶番16は1つのパネルが他方に対していかなる角度位置において
も設定されることを許容する。1つの特定の実施例では、パネルは、各
パネルが動かずに定格のトルク量を支えることを許容するであろう、閉
20 じられた(図2)、最初の又は部分的に開かれた(図4)、平坦な(図1)、
かつ閉じられた(図3)位置を含む少なくとも4つの明確な設定を有する
であろう。図1において示されている構成は図の平面において180度
回転されてもよく、かつ左利きのユーザの便宜のために、コンピュータ
のフレームに対してディスプレイ書式が相応して反転される。また、2
25 つのパネル間の電気通信を許容する手段も含み、第1のパネル12は論
理、メモリ、電源を有するし、かつ第2のパネル14はディスプレイ及
び第2のデータ入力装置を傭える。1つのこのような通信の手段はリボ
ンコンピュータケーブルであり、技術においてよく知られている。」
(カ) 8頁6ないし31行
「Referring to Fig. 6A, hinge 16 includes a first hinge bracket 28,
5 a second hinge bracket 30, a third hinge bracket 32 and a fourth
hinge bracket 34 through which are threaded a primary axis 36 and
a secondary axis 38 for holding first panel 12 and second panel 14
together. The primary axis 36 provides the axis about which first
panel 12 revolves and secondary axis 38 provides the axis about
10 which second panel 14 revolves. Each axis has a distinctly different
locking mechanism with secondary axis 38 locking system permitting
greater ease of movement than that of primary axis 36.
The locking mechanism of primary axis 36 includes a shaft 37
threaded at one end, and flared at the other. Primary axis 36 fits
15 the flared end 39 of shaft 37 in first hinge bracket 28 (Fig. 6B)
and its threaded end 41 through fourth hinge bracket 34 as fastening
knob 42 mounts thereon (Fig. 6C). Fastening knob 42 turns to
selectively fasten primary axis 36 and the increased tension
tightens the fit of the flared end 39 on first hinge bracket 28
20 and first panel 12. In addition, a ceramic jacket 40 is used as a
spacer at both ends 39 and 41 of primary axis 36 where in contact
with first hinge bracket 28 and fourth hinge bracket 34 to provide
improved friction to allow the first panel 12 to support a nominal
amount of torque without movement and to reduce wear on the plastic
25 parts.」
(日本語訳)
「図6Aを参照して、蝶番16は第1の蝶番ブラケット28、第2の蝶
番ブラケット30、第3の蝶番ブラケット32及び第4の蝶番ブラケッ
ト34を含み、第1のパネル12及び第2のパネル14をともに保持す
るための第1の軸36及び第2の軸38がそれらを介して通る。第1の
5 軸36は第1のパネル12が回転する軸を提供し、かつ第2の軸38は
第2のパネル14が回転する軸を提供する。各軸は、第2の軸38のロ
ッキングシステムが第1の軸36のそれよりもより大きい動きのゆとり
を許容して、明らかに異なったロッキング機構を有する。第1の軸36
のロッキング機構は一方がねじ切りされ、かつ他方が拡開されたシャフ
10 ト37を含む。第1の軸36は、第1の蝶番ブラケット28にシャフト
37の拡開端39を嵌合させ(図6B)、ねじ切りされた端部41を第4
の蝶番ブラケット34に通して、締着つまみ42を装着して嵌合する
(図6C)。締着つまみ42は選択的に第1の軸36を締めるために回さ
れ、かつ増加された引張りが、第1の蝶番ブラケット28に接している
15 拡開端39と第1のパネル12との嵌合をきつくする。さらに、セラミ
ックジャケット40が第1の蝶番ブラケット28と第4の蝶番ブラケッ
ト34とに接触する第1の軸36の両端39及び41におけるスペーサ
として使用され、第1のパネル12が動かずに定格のトルク量を支持す
ることを許容する改良された摩擦を提供するため、かつ、プラスチック
20 部分における摩耗を減少させるために用いられる。」
(キ) 8頁32行ないし9頁7行
「The locking mechanism of second panel 14 includes a threaded
shaft secondary axis 38 which interacts with second hinge bracket
30 and third hinge bracket 32 and is secured by another fastening
25 knob 42(Fig. 6D). Third hinge bracket 32 is also threaded so that
as fastening knob 42 is turned clockwise, the tension between second
hinge bracket 30 and third hinge bracket 32 exerted on second panel
14 can hold second panel 14 as rigidly as desired. Each hinge
bracket 30 and 32 uses a semi-hard rubber washer 46・to increase
the friction needed to hold the panels 12 and 14.」
5 (日本語訳)
「第2のパネル14のロッキング機構は、第2の蝶番ブラケット30及
び第3の蝶番ブラケット32と相互作用するねじ切りされたシャフトの
第2の軸38を含み、かつ別の締着つまみ42によって固定する(図6
D)。第3の蝶番ブラケット32もまた、締着つまみ42が時計回りに回
10 転して、第2の蝶番ブラケット30と第3の蝶番ブラケット32との間
の第2のパネル14にかかる引張りが第2のパネル14を所望されるほ
ど堅く保持し得るようにねじ切りされる。各蝶番ブラケット30及び3
2はパネル12及び14を保持するのに必要とされる摩擦を増加するた
めに半硬のゴム座金46を使用する。」
15 (ク) 9頁32行ないし10頁13行
「This embodiment of the hinge 16 provides for first panel 12 and
second panel 14 to be oriented in any position within a 360° arc
about hinge 16. Ideally, four main positions will be preset to
allow functionability. These four positions are: closed, initial
20 or partially opened, flat and folded. The closed position is shown
in Fig. 2 and occurs when the first panel 12 and the second panel
14 are juxtaposed face to face providing protection 5 to the panel
surfaces when the apparatus is not in use. The initial position is
illustrated in Fig. 4 and has one panel approximately perpendicular
25 to the other, much like a conventional laptop portable computer.
The flat position has both panels lying in the same plane side by
10 side. In a folded position shown in Fig. 3 the first panel 12
and second panel 14 are juxtaposed back to back in order to
facilitate carrying the apparatus in one hand and entering data
with the other.」
5 (日本語訳)
「蝶番16のこの実施例は蝶番16のまわりの360度の弧内のいかな
る位置においても第1のパネル12及び第2のパネル14が配向される
ために備えられる。理想的には、4つの主たる位置が機能性を許容する
ために予め設定されるであろう。これらの4つの位置は閉じられたもの、
10 最初の、又は部分的に開かれたもの、平坦なもの及び折畳まれたもので
ある。閉じられた位置は、図2において示されており、装置が使用され
ていないときパネルの表面を保護するために第1のパネル12及び第2
のパネル14が面を合わせて並置されるときに起こる。最初の位置は図
4に示され、かつかなり従来のラップトップ携帯用コンピュータに似た
15 ような、一方のパネルがほぼ他方に対して垂直になるようになる。平坦
な位置は同一の面において並んで横たわる両方のパネルを有する。図3
において示されている折畳まれた位置では、片手で装置を運び、もう片
方の手でデータを入力することを容易にするために第1のパネル12と
第2のパネル14が背中合わせて並置される。」
20 イ 前記アの記載事項によれば、乙1文献には、次の発明(以下「乙1発明’」
という。)が記載されていると認められる。
a 主にデータ入力パネルである第1のパネル12と、主にディスプレイ
パネルとして役立ち、かつ第2のデータ入力パネルとしても兼務する第
2のパネル14と、第1のパネル12及び第2のパネル14上の書くた
25 めのスタイラス18を含むコンピュータノートブック10であって(前
記ア(ウ)、(オ))、
b ユーザーが座ったり、立ったり、又は、歩いたりする位置にあるとき
に、片手でコンピュータを保持し、もう片方の手でデータを入力するこ
とを許容するものであり(前記ア(ア))、
c 第1のパネル12と第2のパネル14は蝶番手段16によって接続さ
5 れており、蝶番手段16は1つのパネルが他方に対していかなる角度位
置においても設定されることを許容するものであり、パネルは、各パネ
ルが動かずに定格のトルク量を支えることを許容するであろう少なくと
も4つの明確な設定を有するものであり(前記ア(オ))、
d 第1のパネル12及び第2のパネル14の両方が蝶番手段16を中心
10 とした多数の角度において配向することが許容されており(前記ア(ウ))、
e 第1のパネル12は、不透明な第1のデジタイザ22を有する第1の
平坦な表面20を有し、第1のデジタイザ22上へ入力されるデータに
応答するための選択された液晶ディスプレイを有するものであり(前記
ア(エ))、
15 f 第2のパネル14は、液晶ディスプレイを有する第2平坦な表面24
と液晶ディスプレイの上に置かれる透明な第2のデジタイザ26を含み
(前記ア(エ))、
g 蝶番手段16は第1の蝶番ブラケット28、第2の蝶番ブラケット3
0、第3の蝶番ブラケット32及び第4の蝶番ブラケット34を含み、
20 第1のパネル12及び第2のパネル14をともに保持するための第1
の軸36及び第2の軸38がそれらを介して通り、
第1の軸36は第1のパネル12が回転する軸を提供し、
第2の軸38は第2のパネル14が回転する軸を提供し(前記ア(カ))、
h 第1の軸36のロッキング機構は、一方がねじ切りされ、かつ他方が
25 拡開されたシャフト37を含み、
第1の軸36は、第1の蝶番ブラケット28にシャフト37の拡開端
39を嵌合させ(図6B)、
ねじ切りされた端部41を第4の蝶番ブラケット34に通して、締着
つまみ42を装着して嵌合し(図6C)、
締着つまみ42は選択的に第1の軸36を締めるために回され、かつ
5 増加された引張りが、第1の蝶番ブラケット28に接している拡開端3
9と第1のパネル12との嵌合をきつくするようにされ、
セラミックジャケット40が第1の蝶番ブラケット28と第4の蝶番
ブラケット34とに接触する第1の軸36の両端39及び41における
スペーサとして使用され、第1のパネル12が動かずに定格のトルク量
10 を支持することを許容する改良された摩擦を提供するため、かつ、プラ
スチック部分における摩耗を減少させるために用いられ(前記ア(カ))、
i 第2のパネル14のロッキング機構は、第2の蝶番ブラケット30及
び第3の蝶番ブラケット32と相互作用するねじ切りされたシャフトの
第2の軸38を含み、別の締着つまみ42によって固定されるものであ
15 り(図6D)、
第3の蝶番ブラケット32は、締着つまみ42が時計回りに回転して、
第2の蝶番ブラケット30と第3の蝶番ブラケット32との間の第2の
パネル14にかかる引張りが第2のパネル14を所望されるほど堅く保
持し得るようにねじ切りされ、各蝶番ブラケット30及び32にはパネ
20 ル12及び14を保持するのに必要とされる摩擦を増加するために半硬
のゴム座金46が使用され(前記ア(キ))、
j 蝶番手段16は、蝶番手段16のまわりの360度の弧内のいかなる
位置においても第1のパネル12及び第2のパネル14が配向されるた
めに備えられ(前記ア(ク))、
25 k 4つの主たる位置(閉じられた位置(図2)、一方が他方に対してほぼ
垂直になる位置(図4)、平坦な位置(図1)、背中合わせで折畳まれた
位置(図3))が、機能性を許容するために予め設定され、背中合わせで
折畳まれた位置では、片手で装置を運び、もう片方の手でデータを入力
することが容易になる(前記ア(ク))、
l コンピュータノートブック10。
5 (2) 本件発明1の進歩性について
ア 本件発明1と乙1発明’との対比
(ア) 一致点
本件発明1と乙1発明’を対比すると、「略長方形の画面をそれぞれ表
示できる「2つの表示板」であって、ユーザーがその片手だけでも支持
10 することができるような片手支持可能な表示装置であって、前記「2つ
の表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザ
ーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように接続するた
めの左右見開き接続手段と、前記「2つの表示板」を、「前記各表示板が
ユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板の
15 それぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、
固定するための完全左右見開き固定手段と、を備えた片手支持可能な表
示装置」である点で一致する。
(イ) 相違点
本件発明1と乙1発明’を対比すると、次の相違点(以下「本件相違
20 点」という。)が認められる。
(本件相違点)
本件発明1は、「2つの表示板」の「前記各表示板のそれぞれ画面が表
示される側の間の角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」
から広げられて行く動作をストップする機能と、前記「2つの表示板」
25 の「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「ユー
ザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態」から
狭められて行く動作をストップする機能を有する、「ストッパ」により固
定するための「中間左右見開き固定手段」を備えるが、乙1発明’は当
該構成を備えないこと。
(ウ) 相違点の認定についての補足説明
5 a 被告の主張について
被告は、前記第3の2(2)(被告の主張)ウのとおり、乙1発明の
「ロッキング機構」は、一次軸36の両端部39及び41と、セラミ
ックジャケット40と、の間に生じる摩擦力、及び、二次軸38と半
硬質ゴムワッシャ46との間に生じる摩擦力により、所定のトルク量
10 を支持してブラケットに対するパネル(第1のパネル12及び第2の
パネル14)の回転を阻止することにより、第2のパネル14に対し
て第1のパネル12を任意の傾斜角度(180度、105度から17
0度の間の角度、120度から170度の間の角度等)で固定するよ
うに機能するものであるから、本件発明1の「ストッパ」により固定
15 するための「中間左右見開き固定手段」に相当すると主張する。
しかしながら、本件明細書の【0010】の記載によれば、「固定」
には、摩擦力やチルト機構などによりユーザーがある程度強めの所定
量以上の力を加えることにより状態(角度)を変更させることができ
るような状態である「半固定」と、ストッパ(例えば、2つの表示板
20 を接続する蝶番の回動を所定の角度でストップさせるもの)などを使
用して「一時的に固定」する場合があるとされ、両者が区別されてい
るところ、被告が指摘する乙1発明における「ロッキング機構」の作
用は、摩擦力によって、第2のパネル14に対して第1のパネル12
を任意の傾斜角度で固定するように機能するというものであり、これ
25 は、摩擦力による「半固定」としての「固定」をする手段には当たる
としても、本件発明1の「ストッパ」により固定するための「中間左
右見開き固定手段」に該当するとは認められない。
したがって、本件発明1と乙1発明’との間には本件相違点が存在
すると認めるのが相当である。
b 訂正拒絶理由通知における相違点1について
5 第2次訂正に対する訂正拒絶理由通知においては、第2次訂正発明
1と乙1文献に記載された発明との間に相違点(訂正拒絶理由通知に
おける相違点1)があると認定されているので、本件発明1と乙1発
明’との間において同様の相違点が存在するか否かについて検討する。
訂正拒絶理由通知における相違点1は、 「左右見開き接続手段」に
「
10 より「前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザ
ーが回動させたとき」、第2次訂正発明1では、「当該一方の表示板と
他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心
として相対的に回動する」(構成要件1B’)のに対して、乙1文献に
記載された発明では、「第1の軸36」を回動中心として「第1のパネ
15 ル12が回転」し、「第2の軸38」を回動中心として「第2のパネル
14が回転」する点。」である。
しかしながら、第2次訂正発明1の構成要件1B’とは異なり、本
件発明1の構成要件1Bにおいては、2つの表示板を接続する左右見
開き接続手段について、「それらが互いに接続されている部分」を回動
20 中心として相対的に回動できるように接続するとの特定はないから、
本件発明1は、左右見開き接続手段で接続された2つの表示板がそれ
ぞれ異なる軸を中心として回動する場合も含み得るものである。した
がって、本件発明1と乙1発明’との間に訂正拒絶理由通知における
相違点1が存在するとは認められない。
25 イ 相違点に係る構成の容易想到性について
(ア) 乙4文献の記載事項
本件原々々出願の出願日である平成3年8月30日より前に頒布され
た刊行物である乙4文献には、以下の記載がある(下記記載中に引用す
る第1図ないし第6図は、別紙8乙4文献の図面参照)。
a 考案の属する技術分野
5 「本考案は、小型電子機器等に用いられるチルト機構に関し、特にポ
ップアップ機構を備えたものである。 (明細書1頁14行ないし16
」
行)
b 従来の技術
「ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ等の小型電子機器等に
10 おいては、全体を小体積とするため、表示パネル部(表示板と略す)
と入力キーボード部(操作板と略す)のカバー構成を折畳み式にして
いる。そして、使用時に表示板を見易い傾斜角度に開いたり、或いは
開いた状態でスライドしうるようにして、機器全体の小型化をはかっ
ている。(明細書1頁18行ないし2頁7行)
」
15 「例えば、第6図は、…上記スプリング5は、矢印A方向に締めつけ
るように巻回されているので、表示板2を操作板1から引き起こして
開くと、どの回動位置でもスプリングで締めつけられ、止めることが
できるフリーストップ型となっている。 (明細書2頁8行ないし20
」
行)
20 c 考案が解決しようとする課題
「しかしながら、表示板2をある傾斜角度で開いた状態において、小
さな衝撃、振動等があると、スプリング5の弾性力に打勝って停止位
置がずれることがある。(明細書3頁4行ないし7行)
」 。
「本考案は、このような従来の不具合いを解消し、表示板のポップア
25 ップ段階および必要な傾斜角度において、確実に固定保持できるクリ
ック感を持たせた小型電子機器等のチルト機構を提供することを目的
とする。(明細書3頁13行ないし17行)
」
d 構成及び作用
「本考案は、ロック機構を外し、操作板上に折畳まれた表示板を引き
起こすと、これに取付けられた可動部固定用ブラケットとともに回転
5 軸が回転し、この回転軸に刻まれた最初の溝に沿って回転軸止め用シ
ャフトが摺動し、その凹みのところで弾性部材により圧接され、この
ポップアップ機構によりある傾斜角度で一旦止まる。さらに表示板を
引き起こすと、例えば等間隔に刻まれた任意の回転軸の溝に回転軸止
め用シャフトが弾性部材の圧接力で圧接され、クリック感を持たせて
10 固定される。つまり、表示板は見易い傾斜角度を持った位置に確実に
固定保持され、外部からの衝撃や振動により位置がずれることがない。」
(明細書4頁8行ないし20行)
e 実施例
「第1図は本考案の一実施例の斜視外観図を示し、図において、8は
15 回転軸で、第2図の側面略図に示すように、回転軸の相対向する周縁
に溝a~eが軸方向へ数条刻まれている。この溝a~eは、この回転
軸を支軸に回転する表示板を見易い位置(傾斜角度)になるように複
数刻まれている。9は該回転軸受けベースで、その凹形突縁部が回転
軸止め用シャフト10を保持するため、弾性部材でなる圧接部9Aを
20 形成し、また、底面部の切り起こしプレートが回転軸8の両端支持部
9Bを形成する。上記圧接部9Aで保持される回転軸止めシャフト1
0の高さ位置は、第2図の側面略図に示すように、回転軸8の軸心8
Aとほぼ同じ高さにあって、回転軸8の対向周縁部から軸心に向って
挟むようにA矢印方向から圧接するよう凹形突縁部が形成されている。
25 11は脚部が二又状の可動部固定用ブラケットで、ネジ穴11Aを有
し、ここにネジ等を通して表示板2が固定される。
第3図は、回転軸8に可動部固定用ブラケット11を取付ける一例
の拡大斜視図を示し、回転軸8の軸心に突起した角軸80に可動部固
定用ブラケット11の脚部角穴11Bを嵌込み、両端支持部9Bの丸
穴9bに段付ネジ12を挿入し、前記角軸80のネジ穴に螺定するこ
5 とで、可動部固定用ブラケット11の脚部が固定される。
このような取付機構により、表示板2が取付けられた可動部固定用
ブラケット11は、回転軸8を支軸に回転が可能であり、回転軸止め
用シャフト10は、圧接部9Aにより回転軸8の溝a~eに弾性的に
圧入される。上記において、回転軸止め用シャフト10は、回転軸受
10 けベース9と別体で形成された場合を例にとって示しているが、一体
に成形しても同じ機能を持たせることができる。
第4図は、上記第1図ないし第3図に説明したチルト機構を操作板
1と表示板2に実施した要部の斜視外観図である。図面に示すように、
操作板1(アンダーカバー)上の突起1Aに、回転軸受けベース9の
15 ネジ穴9Cを通してネジ13で螺着固定される。また、表示板2(ア
ンダーカバー)上の突起2Aに、可動部固定用ブラケット11のネジ
穴11Aを通してネジ14で螺着固定される。
次に、表示板の開閉動作を説明すると、例えば第5図に示すように、
操作板1上に折畳まれた状態の表示板2を矢印方向へ引き起こす時、
20 図示せざるロック機構を外すと、回転軸8の溝aに沿って表示板2は
Iの位置までポップアップ回動する。以後、表示板2を見易い傾斜位
置まで手で回転軸8を支軸に回転すると、該回転軸の各溝b、c、d、
eの任意のところで夫々クリック音を感触させながらⅡ、Ⅲ、Ⅳ、V
の位置で停止し、確実に固定させることができる。
25 上記実施例は、小型電子機器の操作板と表示板のチルト機構につい
て述べたが、これに限定されるものでなく、他の部材間の結合機構部
にも実施可能である。また、回転軸に刻む溝の間隔、数等は、開閉す
る部材の使用目的により任意に選定すればよい。 (明細書5頁1行な
」
いし7頁18行)
(イ) 乙26文献の記載事項
5 本件原々々出願の出願日である平成3年8月30日より前に頒布され
た刊行物である乙26文献には、以下の記載がある(下記記載中に引用
する第3図及び第4図は、別紙9乙26文献の図面参照)。
a 実用新案登録請求の範囲
「(1) 本体ケースに配設され、バネを付属し、かつ凸凹部を有する回
10 転軸と、前記凸凹部と係合するクリックバネのついたクリック爪と、
表示体ケースに結合された前記回転軸と嵌合する回転止めを有するレ
バーとから構成されることを特徴とする電子機器。 (明細書1頁4行
」
ないし9行)
b 技術分野
15 「本発明は小型の電子機器の表示体のケースの開閉を制御するヒンジ
機構を有する電子機器に関するものである。 (明細書2頁1行ないし
」
4行)
c 目的
「本考案はこのような欠点を除去する為、表示体ケースと本体との結
20 合を容易にし、表示体ケースのトルク制御を開閉角度全体に行ない、
さらに、任意の角度の位置で停止出来るヒンジ機構を有する電子機器
を提供することを目的としたものである。 (明細書2頁19行ないし
」
3頁5行)
d 実施例
25 「第3図はヒンジ部4の側面図である。(明細書3頁19行)
」
「回転軸6はさらに、クリックツメ12によって押えられているので、
凸凹10によって間欠的にトルクの制御を受けている。これによって、
表示体ケース2を任意の位置で停止させたり、開閉の際にクリック感
を与える作用がある。
以上が本考案の1つの実施例であるが、第4図のようにクリックツ
5 メ12を取り付けても同様の作用をする。又、クリックツメを2ヶ所
につけても同様の作用をする。この場合、回転軸6の凸凹10が広範
囲につけられないときに特に有効な手段となる。 (明細書5頁3行な
」
いし14行)
e 効果
10 「以上説明をして来たように、バネ9とクリックツメ12によって、
表示体ケース2が軽い力で開閉が出来、任意の位置で停止することも
出来る。(明細書5頁16行ないし18行)
」
(ウ) 中間ストッパに関する周知技術の認定
前記(ア)のとおり、乙4文献には、使用時に表示板2を見易い傾斜角度
15 に開くことができる折畳み式の小型電子機器において、表示板2を手で
回転させると、回転軸8の溝aないしeに回転軸止め用シャフト10が
弾性的に圧入され、回転軸8の溝b、c、d、eのところで、夫々クリ
ック音を感触させながら位置Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴで停止して表示板2を固定
させることが開示されており、第5図からは、傾斜角度が約120度か
20 ら約170度までの範囲内の予め決められた1つの傾斜角度に対応した
位置で固定可能なことも理解できる。
また、前記(イ)のとおり、乙26文献においても、表示体ケース2を開
閉可能な小型の電子機器において、回転軸6の凸凹10とクリックツメ
12を設けることで、表示体ケース2を任意の位置で停止させることが
25 できることが開示されている。
そうすると、乙4文献及び乙26文献により、折り畳み式の小型電子
機器において、表示板を含む2つの部材のなす角度が、ユーザーが行う
表示板の回動により約120度から約170度までの範囲内の予め決め
られた1つの角度に変化させられたとき、前記回動をストップさせて、
前記2つの部材の間を前記予め決められた1つの角度で固定する中間ス
5 トッパであって、前記2つの部材のなす角度が折り畳まれた状態から広
げられて行く動作をストップする機能と、広げられた状態から角度を狭
めて行く動作をストップする機能を有する中間ストッパを設けることは、
周知の技術(以下「本件周知技術」という。)であると認めることができ
る。
10 (エ) 本件相違点への本件周知技術の適用
乙1発明’は、前記(1)イのとおり、第1のパネル12と第2のパネル
14が蝶番手段16によって接続され、ユーザーが座ったり、立ったり、
又は、歩いたりする位置にあるときに、片手でコンピュータを保持し、
もう片方の手でデータを入力することを許容するコンピュータノートブ
15 ック10の発明であり、これは、折り畳み式の小型電子機器に関する技
術であるという点で、本件周知技術と共通する。したがって、乙1発明’
において、「第1のパネル12及び第2のパネル14の両方が蝶番手段1
6を中心とした多数の角度において配向する」場合に、本件周知技術の
中間ストッパを採用することにより、本件相違点に係る本件発明1の構
20 成とすることは、当業者において容易に想到し得たことである。
(3) 本件発明2の進歩性について
ア 本件発明2と乙1発明’との相違点について
本件発明2の構成要件には、中間左右見開き固定手段について「ストッ
パにより固定する」との文言はないものの、構成要件2Eにおいて「前記
25 『2つの表示板』の間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折り畳ま
れた状態」から広げられて行く動作、をストップする機能を有する中間左
右見開き固定手段」と構成要件1Eと同様の構成が設けられていることか
ら、本件発明2と乙1発明’との間にも、本件相違点と同様の相違点があ
るが、その余の点は一致すると認めるのが相当である。
イ 相違点に係る構成の容易想到性について
5 前記(2)イのとおり、本件相違点に係る構成は、本件原々々出願の出願日
において、当業者が容易に想到し得たものというべきであるから、本件発
明2と乙1発明’との相違点に係る構成についても、本件周知技術の中間
ストッパを採用することにより、当業者が容易に想到し得たものというべ
きである。
10 (4) 本件発明3ないし6の新規性について
本件発明3においては、中間左右見開き固定手段について、角度を固定す
る手段の限定はなく、本件発明4ないし6においては、「摩擦力やストッパや
チルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段」(構成
要件4C、5D及び6D)として、摩擦力により固定する手段がこれに含ま
15 れることが明示されているから、本件発明3ないし6と乙1発明’との間に
は、本件相違点と同様の相違点は存在せず、その他の相違点があるとも認め
られない。
したがって、本件発明3ないし6は、いずれも、本件原々々出願の出願日
である平成3年8月30日より前に頒布された刊行物に記載された発明であ
20 る乙1発明’と同一の発明であるから、新規性を欠くものである(特許法2
9条1項3号)。
(5) 本件発明10の進歩性について
本件発明10と乙1発明’とを対比すると、本件発明10の構成要件10
B(「前記表示板に「ユーザーによるデータ入力のために使用される、データ
25 入力用画面」を表示するためのデータ入力用手段、 )及び構成要件10Cの
」
うち「片手支持可能な表示装置」に係る構成は、乙1発明’の「主にデータ
入力パネルである第1のパネル12と、主にディスプレイパネルとして役立
ち、かつ第2のデータ入力パネルとしても兼務する第2のパネル14と、第
1のパネル12及び第2のパネル14上の書くためのスタイラス18を含む
コンピュータノートブック10であって、ユーザーが座ったり、立ったり、
5 又は、歩いたりする位置にあるときに、片手でコンピュータを保持し、もう
片方の手でデータを入力することを許容するものであり」との構成と一致す
るものと認められる。
そして、本件発明10の構成要件10Aが「請求項1から9までのいずれ
かにおいて、」と規定されていることから、本件発明10に係る請求項10は
10 本件発明1ないし6に係る各請求項(請求項1ないし6)の従属項となって
いる。
したがって、本件発明1及び2(請求項1及び2)を引用する本件発明1
0は、本件発明1及び2と同様に進歩性を欠くものであり、本件発明3ない
し6(請求項3ないし6)を引用する本件発明10は、本件発明3ないし6
15 と同様に新規性を欠くものである。
(6) 小括
よって、本件各発明は、いずれも新規性ないし進歩性を欠くものであるか
ら、その余の無効理由について判断するまでもなく、本件各発明に係る特許
は特許法123条1項2号に基づいて特許無効審判において無効とされるべ
20 きものであるから、無効の抗弁(特許法104条の3第1項)が成立する。
3 争点3-1(第2次訂正が訂正要件を満たすか)について
(1) 訂正事項1-4について
事案に鑑み、第2次訂正の訂正要件の充足については、訂正事項1-4の
訂正による新規事項の追加の有無から判断する。
25 ア 本件発明1は、「2つの表示板」(構成要件1A等) 「左右見開き接続手
、
段」(構成要件1B) 「完全左右見開き固定手段」
、 (構成要件1C) 「中間
、
左右見開き固定手段」(構成要件1Dないし1F)を備える片手支持可能な
表示装置の発明であるところ、訂正事項1-4は、これらの構成要素のほ
かに、第2次訂正発明1の構成要件1H’に係る「「前記2つの表示板の、
それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が、ユーザーに
5 よる少なくともいずれか一方の表示板の回動により「ユーザーの任意の角
度」に変化させられたとき、摩擦力により、前記2つの表示板の間を前記
「任意の角度」で保持する任意角度保持手段」を設けるとするものである。
ここで上記の「ユーザーの任意の角度」の「任意の角度」について、第
2次訂正後の請求項1には特定がされていないことから、「任意」との用語
10 の意義に照らし、任意角度保持手段の「任意の角度」には0度から360
度までの範囲が含まれるものと理解すべきものである。
そして、「ユーザーの任意の角度」が180度を超えて360度までの範
囲を含むことについては、本件明細書(前記1参照)に明示的に記載され
ておらず、本件明細書の記載から自明な事項ともいえない。
15 イ 原告は、訂正事項1-4について、本件明細書の【0017】の記載な
どから自明であると主張する。
しかしながら、【0017】においては、「枠体1と枠体2との間」を
「蝶番9及び10を構成する部材間の摩擦力により、任意の角度で一時的
に固定(半固定)」することが記載されているものの、その任意の角度が1
20 80度を超えて360度までの範囲を含むことについては記載されておら
ず、【0017】が参照する【図2】においても、任意の角度が180度を
超え得ることは示されていない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
ウ 以上からすると、訂正事項1-4の訂正は、本件発明1について、2つ
25 の表示板の間を、180度を超えて360度までの範囲を含む「ユーザー
の任意の角度」において一時的に固定するものを含む構成となるように訂
正するものとなるところ、このような構成は本件明細書に記載されていな
い。
したがって、訂正事項1-4の訂正は、訂正前の明細書の全ての記載を
総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事
5 項を導入しないものであるとはいえないから、新規事項を追加する訂正と
して、特許法126条5項の規定に違反するものである。
(2) 訂正事項10-5について
訂正事項10-5は、第1次訂正後の請求項10について、請求項5のみ
に従属する請求項とするとともに独立項の型式に改めること(訂正事項10
10 -1)を前提に、(d)
「 「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側
の各平面の間の見開き角度」が、ユーザーによる少なくともいずれか一方の
表示板の回動により、「ユーザーの任意の角度」に変化させられたとき、摩擦
力により、前記2つの表示板の間を前記「任意の角度」で保持する任意角度
保持手段、を備えている、(e)「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示
15 される側の各平面の間の見開き角度」が約180度になったとき、前記「2
つの表示板」の間を前記角度で固定する完全見開き固定手段、を備えている、」
を加えるものである。
そして、「第2次訂正後の請求項10においても、「ユーザーの任意の角度」
の「任意の角度」は特定されておらず、この角度については、0度から36
20 0度までの範囲が含まれるものと理解でき、「ユーザーの任意の角度」が18
0度を超えて360度までの範囲を含むことについては、本件明細書に記載
されていない。
そうすると、前記(1)と同様に、このような「任意の角度」で保持する「任
意角度保持手段」を加えることは、訂正前の明細書の全ての記載を総合する
25 ことにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入し
ないものであるとはいえないから、新規事項追加に該当する。
したがって、訂正事項10-5についても、新規事項を追加する訂正とし
て、特許法126条5項の規定に違反するものである。
(3) 小括
前記(2)のとおり、訂正事項10-5は訂正要件を満たさないから、請求項
5 10についての第2次訂正は不適法である。
そうすると、請求項10を別の訂正単位とする訂正(訂正事項10-1)
は認められず、その結果、請求項10は請求項1ないし9を引用するままで
あって、請求項1ないし10は一群の請求項を構成するから、当該一群の請
求項1ないし10の訂正はいずれも不適法となる。
10 したがって、請求項1、2及び10に係る第2次訂正はいずれも訂正要件
を満たさないから、その余の点について判断するまでもなく、第2次訂正に
係る原告の訂正の再抗弁は理由がない。
4 争点4-1(第3次訂正が訂正要件を満たすか)について
(1) 請求項1の訂正について
15 ア 訂正事項1-4について
訂正事項1-4の訂正は、本件発明1の構成要件1C(前記「2つの表
示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされてい
るときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約1
80度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、)中の
20 「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」を、第3次訂
正発明1の構成要件1C”のとおり「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
される側の各平面の間の見開き角度」と訂正するものである。
原告は、上記の訂正について、第3次訂正発明1の「前記各表示板のそ
れぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」は、本件発明1の
25 「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」を限定し、又
は、下位概念化したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする
訂正である旨主張する。
しかしながら、「板」との表現には平面が存在することの意味を含んでい
ること及び本件発明1の「2つの表示板」は「それらが互いに折り畳まれ
た状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態に
5 もできる」(構成要件1B)ものであることに照らし、本件発明1の構成要
件1Cの「2つの表示板」の「画面が表示される側」がそれぞれ平面を含
むことは自明である。また、そもそも、構成要件1Cの「前記各表示板の
それぞれ画面が表示される側の間の角度」を定義するためには、「前記各表
示板のそれぞれ画面が表示される側」にそれぞれ平面が存在する必要があ
10 るといえる。
したがって、訂正前の「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の
間の角度」が各表示板のそれぞれ画面が表示される側の「各平面の間の」
見開き角度を意味することは自明であり、訂正事項1-4の訂正は、当該
訂正前の内容を単に言い換えたものにすぎず、訂正前の構成を限定したり
15 下位概念で特定したりするものではないから、この訂正の目的が「特許請
求の範囲の減縮」に該当するとはいえない。
さらに、訂正前の「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の
角度」に誤記や明瞭でない記載があるとは認められないから、訂正事項1
-4の訂正は「誤記の訂正」や「明瞭でない記載の釈明」を目的とするも
20 のであるともいえず、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他
の請求項の記載を引用しないものとすること。」にも該当しない。
以上によれば、訂正事項1-4の訂正は、特許法126条1項ただし書
きの目的に該当しないものであり、同ただし書きの規定に違反する。
イ 小括
25 したがって、請求項1についての第3次訂正は、その余の訂正事項につ
いて判断するまでもなく、訂正要件を満たさない。
(2) 請求項2の訂正について
ア 訂正事項2-3について
訂正事項2-3の訂正は、本件発明2の構成要件2C(前記「2つの表
示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』
5 の間の見開き角度」が約180度となるように、固定するための完全左右
見開き固定手段と、)中の「前記『2つの表示板』の間の見開き角度」を、
第3次訂正発明2の構成要件2C”のとおり「前記『2つの表示板』のそ
れぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」と訂正するもので
ある。
10 原告は、上記の訂正について、第3次訂正発明2の「前記『2つの表示
板』のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」は、本件
発明2の「前記『2つの表示板』の間の見開き角度」を限定し、又は、下
位概念化したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正で
ある旨主張する。
15 しかしながら、「板」との表現には平面が存在することの意味を含んでい
ること及び本件発明2の「2つの表示板」は、「それらが互いに折り畳まれ
た状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態に
もできる」(構成要件2B)ものであることに照らし、本件発明2の構成要
件2Cの「2つの表示板」が平面を含むことは自明である。
20 そして、2つの表示板は、「略長方形の画面をそれぞれ表示できる」(構
成要件2A)ものであり、「ユーザから見て左右方向に見開きにされた状態
にもできる」(構成要件2B)ことから、構成要件2Cの「前記『2つの表
示板』の間の見開き角度」が2つの表示板の「それぞれ画面が表示される
側」の「各平面の間の」見開き角度を意味することは自明である。
25 したがって、訂正事項2-3の訂正は、当該訂正前の内容を単に言い換
えたものにすぎず、訂正前の構成を限定したり下位概念で特定したりする
ものではないから、この訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」に該当す
るとはいえない。
さらに、訂正前の「前記『2つの表示板』の間の見開き角度」に誤記や
明瞭でない記載があるとは認められないから、訂正事項2-3の訂正は
5 「誤記の訂正」や「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるとも
いえず、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記
載を引用しないものとすること。」にも該当しない。
以上によれば、訂正事項2-3の訂正は、特許法126条1項ただし書
きの目的に該当しないものであり、同ただし書きの規定に違反する。
10 イ 小括
したがって、請求項2についての第3次訂正は、その余の訂正事項につ
いて判断するまでもなく、訂正要件を満たさない。
(3) 請求項3の訂正について
ア 訂正事項3-4について
15 訂正事項3-4の訂正は、本件発明3の構成要件3C(前記「2つの表
示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされてい
るときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約1
80度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、)中の
「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」を、第3次訂
20 正発明3の構成要件3C”のとおり「前記各表示板のそれぞれ画面が表示
される側の各平面の間の角度」と訂正するものである。
原告は、上記の訂正について、第3次訂正発明3の「前記各表示板のそ
れぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」は、本件発明3の「前記
各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」を限定し、又は、下
25 位概念化したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正で
ある旨主張する。
しかしながら、本件発明3の「2つの表示板」は「それらが互いに折り
畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた
状態にもできる」(構成要件3B)ものであり、前記(1)アの訂正事項1-
4と同様の理由で、本件発明3の構成要件3Cにおける「前記各表示板の
5 それぞれ画面が表示される側の間の角度」が各表示板のそれぞれ画面が表
示される側の「各平面の間の」角度を意味することは自明である。
したがって、訂正事項3-4の訂正は、当該訂正前の内容を単に言い換
えたものにすぎず、訂正前の構成を限定したり下位概念で特定したりする
ものではないから、この訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」に該当す
10 るとはいえない。
さらに、訂正前の「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の
角度」に誤記や明瞭でない記載があるとは認められないから、訂正事項3
-4の訂正は「誤記の訂正」や「明瞭でない記載の釈明」を目的とするも
のであるともいえず、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他
15 の請求項の記載を引用しないものとすること。」にも該当しない。
以上によれば、訂正事項3-4の訂正は、特許法126条1項ただし書
きの目的に該当しないものであり、同ただし書きの規定に違反する。
イ 小括
したがって、請求項3についての第3次訂正は、その余の訂正事項につ
20 いて判断するまでもなく、訂正要件を満たさない。
(4) 請求項4の訂正について
ア 訂正事項4-4について
訂正事項4-4の訂正は、本件発明4の構成要件4C(前記「2つ以上
の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、「ユーザーから見て
25 縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「そ
れらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度
の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約105度から約1
70度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、摩擦力やストッパ
やチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段と、)
中の「前記『2つの表示板』の間の見開き角度」を、第3次訂正発明4の
5 構成要件4C”のとおり「前記『2つの表示板』の各平面の間の見開き角
度」と訂正することを、訂正内容として含むものである。
原告は、上記の訂正内容について、第3次訂正発明4の「前記『2つの
表示板』の各平面の間の見開き角度」は、本件発明4の「前記『2つの表
示板』の間の見開き角度」を限定し、又は、下位概念化したものであると
10 主張し、訂正事項4-4の訂正は全体として特許請求の範囲の減縮を目的
とする訂正である旨主張する。
しかしながら、本件発明4の「2つの表示板」は「それらが互いに折り
畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた
状態にもできる」(構成要件4B)ものであり、前記(1)アの訂正事項1-
15 4と同様の理由で、本件発明4の構成要件4Cにおける「前記『2つの表
示板』の間の見開き角度」が2つの表示板の「各平面の間の」見開き角度
を意味することは自明である。
したがって、訂正事項4-4中の上記訂正は、当該訂正前の内容を単に
言い換えたものにすぎず、訂正前の構成を限定したり下位概念で特定した
20 りするものではないから、この訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」に
該当するとはいえない。
さらに、訂正前の「前記『2つの表示板』の間の見開き角度」に誤記や
明瞭でない記載があるとは認められないから、訂正事項4-4中の上記訂
正は「誤記の訂正」や「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである
25 ともいえず、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項
の記載を引用しないものとすること。」にも該当しない。
以上によれば、訂正事項4-4の訂正は、特許法126条1項ただし書
きの目的に該当しないものであり、同ただし書きの規定に違反する。
イ 小括
したがって、請求項4についての第3次訂正は、その余の訂正事項につ
5 いて判断するまでもなく、訂正要件を満たさない。
(5) 請求項5の訂正について
ア 訂正事項5-6について
訂正事項5-6の訂正は、本件発明5の構成要件5D((d)前記「複数
の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」がユーザーから見て左
10 右方向に見開きにされているとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つ
の表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約105度か
ら約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、摩擦力やス
トッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定
手段、を備えている。)中の「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示
15 される側の間の角度」を、第3次訂正発明5の構成要件5D”のとおり
「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」
と訂正することを、訂正内容として含むものである。
原告は、上記の訂正内容について、第3次訂正発明5の「前記2つの表
示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」は、本件発明5
20 の「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」を
限定し、又は、下位概念化したものであると主張し、訂正事項5-6の訂
正は全体として特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である旨主張する。
しかしながら、本件発明5の「2つの表示板」は「それらが互いに折り
畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされた
25 状態にもできる」(構成要件5C)ものであり、前記(1)アの訂正事項1-
4と同様の理由で、訂正前の構成要件5C「前記『2つの表示板』のそれ
ぞれ画面が表示される側の間の角度」が2つの表示板のそれぞれ画面が表
示される側の「各平面の間の」角度を意味することは自明である。
したがって、訂正事項5-6中の上記訂正は、当該訂正前の内容を単に
言い換えたものにすぎず、訂正前の構成を限定したり下位概念で特定した
5 りするものではないから、この訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」に
該当するとはいえない。
さらに、訂正前の「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される
側の間の角度」に誤記や明瞭でない記載があるとは認められないから、訂
正事項5-6中の上記訂正は「誤記の訂正」や「明瞭でない記載の釈明」
10 を目的とするものであるともいえず、「他の請求項の記載を引用する請求項
の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」にも該当し
ない。
以上によれば、訂正事項5-6の訂正は、特許法126条1項ただし書
きの目的に該当しないものであり、同ただし書きの規定に違反する。
15 イ 小括
したがって、請求項5についての第3次訂正は、その余の訂正事項につ
いて判断するまでもなく、訂正要件を満たさない。
(6) 請求項6の訂正について
ア 訂正事項6-6について
20 訂正事項6-6の訂正は、本件発明6の構成要件6D((d)ユーザーか
ら見て縦方向の線の右側部分と左側部分とを、「ユーザーから見て縦方向の
線を境とした、前記右側部分と左側部分との間の見開き角度」が「約10
5度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、摩擦
力やストッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開
25 き固定手段、を備えている。)中の「前記右側部分と左側部分との間の見開
き角度」を、第3次訂正発明6の構成要件6D”のとおり「前記右側部分
と左側部分とのそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」
と訂正することを、訂正内容として含むものである。
原告は、上記の訂正内容について、第3次訂正発明6の「前記右側部分
と左側部分とのそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」
5 は、本件発明6の「前記右側部分と左側部分との間の見開き角度」を限定
し、又は、下位概念化したものであると主張し、訂正事項6-6の訂正は
全体として特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である旨主張する。
しかしながら、本件発明6の表示装置は、「画面をそれぞれ出力する複数
個の表示板が、それぞれが表示する各画面がユーザーに対向することがで
10 きるように、接続され」(構成要件6A)「ユーザーから見て縦方向の線を
、
境にして、その右側部分と左側部分とを、互いに折り畳み可能で且つユー
ザーから見て左右方向に見開き可能」(構成要件6C)なものであり、加え
て、「板」との表現には平面が存在するという意味が含まれていることから
すれば、本件発明6の構成要件6Dにおける「前記右側部分と左側部分と
15 の間の見開き角度」が「前記右側部分と左側部分とのそれぞれ画面が表示
される側の各平面の間の見開き角度」を意味することは自明である。
したがって、訂正事項6-6中の上記訂正は、当該訂正前の内容を単に
言い換えたものにすぎず、訂正前の構成を限定したり下位概念で特定した
りするものではないから、この訂正の目的は「特許請求の範囲の減縮」に
20 該当するとはいえない。
さらに、訂正前の「前記右側部分と左側部分との間の見開き角度」に誤
記や明瞭でない記載があるとは認められないから、訂正事項6-6中の上
記訂正は「誤記の訂正」や「明瞭でない記載の釈明」を目的とするもので
あるともいえず、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請
25 求項の記載を引用しないものとすること。」にも該当しない。
以上によれば、訂正事項6-6の訂正は、特許法126条1項ただし書
きの目的に該当しないものを含むものであり、同ただし書きに違反する。
イ 小括
したがって、請求項6についての第3次訂正は、その余の訂正事項につ
いて判断するまでもなく、訂正要件を満たさない。
5 (7) 小活
以上によれば、請求項1ないし6に係る第3次訂正はいずれも訂正要件を
満たさないから、その余の要件について判断するまでもなく、第3次訂正に
係る原告の訂正の再抗弁は理由がない。
5 結論
10 前記2のとおり、本件各発明に係る特許については無効の抗弁が成立すると
ころ、前記3及び4のとおり、これに対する訂正の再抗弁は理由がないから、
本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものであり、原告は、特許法
104条の3第1項により、被告に対し本件特許権を行使することができない。
よって、その余の点について判断するまでもなく、被告が本件各発明の実施
15 について原告に対して不当利得返還義務を負うことはなく、原告の請求はいず
れも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
20 裁判長裁判官
國 分 隆 文
裁判官矢野紀夫及び裁判官佐々木亮は、転補につき、署名押印するこ
25 とができない。
裁判長裁判官
國 分 隆 文
別紙一覧
別紙1 被告製品目録
別紙2-1 特許請求の範囲(第1次訂正後)
5 別紙2-2 特許請求の範囲(第2次訂正後)
別紙2-3 特許請求の範囲(第3次訂正後)
別紙3 第2次訂正の訂正事項
別紙4 第3次訂正の訂正事項
別紙5 訂正の再抗弁の成否についての当事者の主張(訂正要件を除く)
10 別紙6 本件明細書の図面
別紙7 乙1文献の図面
別紙8 乙4文献の図面
別紙9 乙26文献の図面
以上
別紙1 被告製品目録
製品名称 日本国内での発売日
被告製品1 ニンテンドーDS 平成 16 年(2004 年)12 月 2 日
被告製品2 ニンテンドーDS Lite 平成 18 年(2006 年)3 月 2 日
被告製品3 ニンテンドーDSi 平成 20 年(2008 年)11 月 1 日
被告製品4 ニンテンドーDSi LL 平成 21 年(2009 年)11 月 21 日
被告製品5 ニンテンドー3DS 平成 23 年(2011 年)2 月 26 日
以上
別紙2-1 特許請求の範囲(第1次訂正後)
【請求項1】
略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザー
5 がその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、
前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユー
ザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左
右見開き接続手段と、
前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きに
10 されているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約1
80度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
ユーザーから見て左右方向に見開きにされたときの前記「2つの表示板」を、「前
記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約120度か
ら約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、ストッパにより固定
15 するための中間左右見開き固定手段であって、
前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角
度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をス
トップする機能と、
前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角
20 度」が「ユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態」か
ら狭められて行く動作、をストップする機能と、を有する中間左右見開き固定手段
と、
を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
【請求項2】
25 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザー
がその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、
前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユー
ザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左
右見開き接続手段と、
前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つ
5 の表示板』の間の見開き角度」が約180度となるように、固定するための完全左
右見開き固定手段と、
前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つ
の表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーか
ら見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、
10 約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定す
るための中間左右見開き固定手段であって、
前記「2つの表示板」の、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つ
の表示板』の間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から
広げられて行く動作、をストップする機能を有する中間左右見開き固定手段と、
15 を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
【請求項3】
略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザー
がその片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、
前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユー
20 ザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続するための左
右見開き接続手段と、
前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きに
されているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が約1
80度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
25 前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記
「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の
角度」が「約120度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるよう
に、固定するための中間左右見開き固定手段と、
を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
【請求項4】
5 画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示板」を含んでおり、ユーザーがその
片手だけでも支持することができるような片手支持可能な表示装置であって、
前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、それらが
互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされ
た状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、
10 前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、「ユーザー
から見て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「そ
れらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で
見開きにされた状態との間の角度であって、約105度から約170度までの範囲
内のいずれかの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手
15 段により固定するための左右見開き固定手段と、
を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
【請求項5】
次の(a)~(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する「複数の表示板」が、それぞれが表示する各画面
20 がユーザーに対向することができるように、接続されている、
(b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手のみでも
支持することができるような小型のサイズに構成されている、
(c)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」を、それら
が互いに折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにさ
25 れた状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段を備えている、
(d)前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」がユーザー
から見て左右方向に見開きにされているとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2
つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約105度から約1
70度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト
機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段、を備えている。
5 【請求項6】
次の(a)~(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する複数個の表示板が、それぞれが表示する各画面が
ユーザーに対向することができるように、接続されている、
(b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手のみでも
10 支持することができるような小型のサイズに構成されている、
(c)ユーザーから見て縦方向の線を境にして、その右側部分と左側部分とを、
互いに折り畳み可能で且つユーザーから見て左右方向に見開き可能に接続するため
の左右見開き接続手段を備えている、
(d)ユーザーから見て縦方向の線の右側部分と左側部分とを、「ユーザーから見
15 て縦方向の線を境とした、前記右側部分と左側部分との間の見開き角度」が「約1
05度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、摩擦力やス
トッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定手段、を
備えている。
【請求項10】
20 請求項1から9までのいずれかにおいて、さらに、
前記表示板に「ユーザーによるデータ入力のために使用される、データ入力用画
面」を表示するためのデータ入力用手段、
を備えたことを特徴とする片手支持可能な表示装置。
以上
別紙2-2 特許請求の範囲(第2次訂正後)
別紙2-1の特許請求の範囲(第1次訂正後)からの訂正箇所は下線部である。
【請求項1】
5 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であって、少なくともい
ずれか一方の表示板が「情報入力機能を有する画面」を表示させるものである「2
つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるよ
うな情報入力機能付き画面の表示機能をも備えた片手持ち用且つ片手支持型の表示
装置であって、
10 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユー
ザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、且つ前記2つの表
示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表
示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として
相対的に回動できるように接続するための左右見開き接続手段と、
15 「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」
が、ユーザーによる少なくともいずれか一方の表示板の回動により「ユーザーの任
意の角度」に変化させられたとき、摩擦力により、前記2つの表示板の間を前記
「任意の角度」で保持する任意角度保持手段と、
前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きに
20 されているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開
き角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
「前記2つの表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの、
前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が、ユー
ザーによる少なくともいずれか一方の表示板の回動により「約120度から約17
25 0度までの範囲内の予め決められた1つの角度」に変化させられたとき、前記回動
をストップさせて、前記「2つの表示板」の間を前記「予め決められた1つの角度」
で固定する中間左右見開きストッパであって、前記「2つの表示板」の、「前記各表
示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が「前記各表示板
が互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をストップする機能と、前
記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間
5 の見開き角度」が「ユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされ
た状態」から狭められて行く動作、をストップする機能と、を有する中間左右見開
きストッパと、を備え、
「電車の中で、戸外で若しくは外出先で使用する、立ったままで使用する、又は画
面を介してデータを入力するなどの様々な状況若しくは用途に応じた、前記2つの
10 表示板の使用」を可能にする構成であって、ユーザーが、「前記2つの表示板の前記
各平面の間の見開き角度」が広がるように前記「2つの表示板」の少なくともいず
れか一方を回動させて前記見開き角度を任意に変化させるとき、前記2つの表示板
の間を「ユーザーの任意の角度」で摩擦力により保持するようにしながら、前記見
開き角度が前記「予め決められた1つの角度」になったときは、前記中間左右見開
15 きストッパにより、前記回動をストップさせて、前記2つの表示板のそれらが互い
に接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側に「谷状の部分」を、
且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画
面が表示されない側に「山状の部分」を固定的に形成する構成を備えた、
ことを特徴とする情報入力機能付き画面の表示機能をも備えた片手持ち用且つ片手
20 支持型の表示装置。
【請求項2】
略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であって、少なくともい
ずれか一方の表示板が「情報入力機能を有する画面」を表示させるものである「2
つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができる情
25 報入力機能付き画面の表示機能をも備えた片手持ち用且つ片手支持型の表示装置で
あって、
前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユー
ザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、且つ前記2つの表
示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表
示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として
5 相対的に回動できるように接続するための左右見開き接続手段と、
前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つ
の表示板』のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が約180
度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
「前記2つの表示板の、ユーザーから見て縦方向の線を境としたときの前記各表
10 示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が、ユーザーによ
る少なくともいずれか一方の表示板の回動により、「それらが互いに折り畳まれた状
態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の
角度であって、約120度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角
度」に変化させられたとき、前記回動をストップさせて、前記「2つの表示板」の
15 間を前記「予め決められた1つの角度」で固定する中間左右見開きストッパであっ
て、前記「2つの表示板」の、「ユーザーから見て縦方向の線を境としたときの前記
各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が「前記各表
示板が互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をストップする機能を
有する中間左右見開きストッパと、を備え、
20 「電車の中で、戸外で、外出先で、又は立ったままで使用するのに適した、前記2
つの表示板の使用」を可能にする構成であって、ユーザーが、「前記2つの表示板の
前記各平面の間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から
広がるように、前記「2つの表示板」の少なくともいずれか一方を回動させて、前
記見開き角度を任意に変化させる場合において、前記見開き角度が前記「予め決め
25 られた1つの角度」になったとき、前記中間左右見開きストッパにより、前記回動
をストップさせて、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各表示板の
間を前記「予め決められた1つの角度」に固定する構成を備えた、
ことを特徴とする情報入力機能付き画面の表示機能をも備えた片手持ち用且つ片手
支持型の表示装置。
【請求項10】
5 次の(a)~(g)の内容を含むことを特徴とする情報入力機能付き画面の表示
機能をも備えた片手持ち用且つ片手支持型の表示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する「2つの表示板」であって、少なくともいずれか一
方の表示板に「ユーザーによるデータ入力のために使用される、データ入力用画面」
を表示するためのデータ入力手段が備えられている「2つの表示板」が、それぞれ
10 が表示する各画面がユーザーに対向することができるように、接続されている、
(b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手のみでも支
持することができるような小型のサイズに構成されている、
(c)前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらが
ユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、且つ前記2つ
15 の表示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方
の表示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心と
して相対的に回動できるように接続するための左右見開き接続手段を備えている、
(d)「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角
度」が、ユーザーによる少なくともいずれか一方の表示板の回動により、「ユーザー
20 の任意の角度」に変化させられたとき、摩擦力により、前記2つの表示板の間を前
記「任意の角度」で保持する任意角度保持手段、を備えている、
(e)「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角
度」が約180度になったとき、前記「2つの表示板」の間を前記角度で固定する
完全見開き固定手段、を備えている、
25 (f)前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされていると
きであって、「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見
開き角度」が、ユーザーによる少なくともいずれか一方の表示板の回動により「約
120度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」に変化させら
れたとき、前記回動をストップさせて、前記「2つの表示板」の間を前記「予め決
められた1つの角度」で固定する中間左右見開きストッパ、を備えている、
5 (g)「電車の中で、戸外で若しくは外出先で使用する、立ったままで使用する、又
は画面を介してデータを入力するなどの様々な状況若しくは用途に応じた、前記2
つの表示板の使用」を可能にする構成であって、ユーザーが、「前記2つの表示板の
前記各平面の間の見開き角度」が広がるように前記「2つの表示板」の少なくとも
いずれか一方を回動させて前記見開き角度を任意に変化させるとき、前記2つの表
10 示板の間を「ユーザーの任意の角度」で摩擦力により保持するようにしながら、前
記見開き角度が前記「予め決められた1つの角度」になったときは、前記中間左右
見開きストッパにより、前記回動をストップさせて、前記2つの表示板のそれらが
互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側に「谷状の部分」
を、且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分
15 の画面が表示されない側に「山状の部分」を固定的に形成する構成を備えている。
以上
別紙2-3 特許請求の範囲(第3次訂正後)
別紙2-1の特許請求の範囲(第1次訂正後)からの訂正箇所は下線部である。
【請求項1】
5 略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であって、少なくともい
ずれか一方の表示板が「情報入力機能を有する画面」を表示させるものである「2
つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるよ
うな2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用する
ことができる表示装置であって、
10 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユー
ザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、且つ前記2つの表
示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表
示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として
相対的に回動するように、接続するための左右見開き接続手段と、
15 「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」
が、ユーザーによる少なくともいずれか一方の表示板の回動により「ユーザーの任
意の角度」に変化させられたとき、摩擦力により、前記2つの表示板の間を前記
「任意の角度」で保持する任意角度保持手段であって、前記2つの表示板が互いに
折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態へと向かうよ
20 うに前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板がユーザーにより回動さ
れる場合において、ユーザーが前記回動をユーザーの任意の折り曲げ角度で止めた
とき前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力に
より保持されるように、前記ユーザーによる回動が為されるようにする、任意角度
保持手段と、
25 前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きに
されているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開
き角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
「前記2つの表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの、
前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が、ユー
ザーによる少なくともいずれか一方の表示板の回動により「約150度から約17
5 0度までの範囲内の予め決められた1つの角度」に変化させられたとき、前記回動
をストップさせて、前記「2つの表示板」の間を前記「予め決められた1つの角度」
で固定する中間左右見開きストッパであって、前記「2つの表示板」の、「前記各表
示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が「前記各表示板
が互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をストップする機能と、前
10 記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間
の見開き角度」が「ユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされ
た状態」から狭められて行く動作、をストップする機能と、を有する中間左右見開
きストッパと、を備え、
ユーザーが、「前記2つの表示板の前記各平面の間の見開き角度」が広がるように
15 前記「2つの表示板」の少なくともいずれか一方を回動させて前記見開き角度を任
意に変化させるとき、前記2つの表示板の間を「ユーザーの任意の角度」で摩擦力
により保持するようにしながら、前記見開き角度が前記「予め決められた1つの角
度」になったときは、前記中間左右見開きストッパにより、前記回動をストップさ
せて、前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の
20 画面が表示される側に「谷状の部分」を、且つ前記2つの表示板のそれらが互いに
接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示されない側に「山状の部分」を
固定的に形成する構成を備えた
ことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちな
がら使用することができる表示装置。
25 【請求項2】
略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であって、少なくともい
ずれか一方の表示板が「情報入力機能を有する画面」を表示させるものである「2
つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができる2
つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用することが
できる表示装置であって、
5 前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユー
ザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、且つ前記2つの表
示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表
示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として
相対的に回動するように、接続するための左右見開き接続手段と、
10 前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つ
の表示板』のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が約180
度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
「前記2つの表示板の、ユーザーから見て縦方向の線を境としたときの前記各表
示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が、ユーザーによ
15 る少なくともいずれか一方の表示板の回動により、「それらが互いに折り畳まれた状
態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の
角度であって、約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角
度」に変化させられたとき、前記ユーザーによる回動をストップさせて、前記「2
つの表示板」の間を前記「予め決められた1つの角度」で固定する中間左右見開き
20 ストッパであって、前記「2つの表示板」の、「ユーザーから見て縦方向の線を境と
したときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」
が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をストッ
プする機能を有する中間左右見開きストッパと、を備え、
「電車の中で、戸外で、外出先で、又は立ったままで使用するのに適した、前記
25 2つの表示板の使用」を可能にする構成であって、ユーザーが、「前記2つの表示板
の前記各平面の間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」か
ら広がるように、前記「2つの表示板」の少なくともいずれか一方を回動させて、
前記見開き角度を任意に変化させる場合において、ユーザーが前記回動をユーザー
の任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の折
り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように前記ユーザーによる回動が為
5 されるようにしながら、前記見開き角度が前記「約150度から約170度までの
範囲内の予め決められた1つの角度」になったとき、前記中間左右見開きストッパ
により、前記ユーザーによる回動をストップさせて、前記2つの表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各表示板の間を前記「予め決められた1つの角度」に固定す
る構成を備えた
10 ことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちな
がら使用することができる表示装置。
【請求項3】
略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザー
が前記2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用す
15 ることができる表示装置であって、
前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユー
ザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態にもできるように、
且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させた
とき当該一方の表示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」
20 を回動中心として相対的に回動するように、接続するための左右見開き接続手段と、
前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開
きにされた状態へと向かうように前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表
示板がユーザーにより回動される場合において、ユーザーが前記回動をユーザーの
任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の折り
25 曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように、前記ユーザーによる回動が為
されるようにする、摩擦力保持手段と、
前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見開きに
されているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」
が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、
前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、前記
5 「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の各平
面の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1つ
の角度」となるように、固定するための中間左右見開きストッパであって、前記2
つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表示板が互いに折り畳まれた
状態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態へと向かうように、ユーザ
10 ーにより回動されている場合において、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示さ
れる側の各平面の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の予め決
められた1つの角度」となったとき、前記ユーザーによる回動をストップし且つ前
記2つの表示板間を固定する中間左右見開きストッパと、
前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が前記2つの表示板が互いに折り畳
15 まれた状態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態へと向かうようにユ
ーザーにより回動されている場合であって、ユーザーが前記回動をユーザーの任意
の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の折り曲げ
角度でそのまま摩擦力により保持されるように前記ユーザーによる回動が為されて
いる場合において、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間
20 の角度」が前記「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの
角度」になったとき、前記中間左右見開きストッパにより、前記ユーザーによる回
動をストップさせて、前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及び
その近傍部分の画面が表示される側に「ユーザーの親指が当接され得る谷状部分」
を、且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分
25 の画面が表示されない側に「ユーザーの親指以外の複数の指が当接され得る山状部
分」を固定的に形成する構成と、
を備えたことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけ
で持ちながら使用することができる表示装置。
【請求項4】
画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーが前記2つ
5 の表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用することがで
きる表示装置であって、
前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらがユー
ザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態にもできるように、
且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させた
10 とき当該一方の表示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」
を回動中心として相対的に回動するように、接続するための左右見開き接続手段と、
「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が約1
80度となったとき、前記2つの表示板の間を前記角度で固定する完全見開き固定
手段と、
15 前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記『2つ
の表示板』の各平面の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態とユ
ーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との間の角度で
あって、約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」と
なるように、固定するための中間左右見開きストッパであって、前記2つの表示板
20 の少なくともいずれか一方が、前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互
いに約180度の角度で見開きにされた状態へと向かうように、ユーザーにより回
動されている場合において、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各
平面の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1
つの角度」となったとき、前記ユーザーによる回動をストップし且つ前記2つの表
25 示板間を固定する中間左右見開きストッパと、
を備えたことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけ
で持ちながら使用することができる表示装置。
【請求項5】
次の(a)~(g)の内容を含むことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折
り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用することができる表示装置。
5 (a)画面をそれぞれ出力する「2つの表示板」が、それぞれが表示する各画面が
ユーザーに対向することができるように、接続されている、
(b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手のみでも支
持することができるような小型のサイズに構成されている、
(c)前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それらが
10 ユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態にもできるよ
うに、且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザーが回動
させたとき当該一方の表示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されている
部分」を回動中心として相対的に回動するように、接続するための左右見開き接続
手段を備えている、
15 (d)前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で
見開きにされた状態へと向かうように前記2つの表示板の少なくともいずれか一方
の表示板がユーザーにより回動される場合においてユーザーが前記回動をユーザー
の任意の折り曲げ角度で止めたとき、前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の
折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように、前記ユーザーによる回動
20 が為されるようにする、摩擦力保持手段、を備えている、
(e)「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が約
180度となったとき、前記2つの表示板の間を前記角度で固定する完全見開き固
定手段、を備えている、
(f)前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされていると
25 き、前記「2つの表示板」を、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の
各平面の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた
1つの角度」となるように、固定するための中間左右見開きストッパであって、前
記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表示板が互いに折り畳ま
れた状態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態へと向かうように、ユ
ーザーにより回動されている場合において、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表
5 示される側の各平面の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の予
め決められた1つの角度」となったとき、前記ユーザーによる回動をストップし且
つ前記2つの表示板間を固定する中間左右見開きストッパ、を備えている、
(g)前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表示板が互いに
折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態へと向かうよ
10 うにユーザーにより回動されている場合であって、ユーザーが前記回動をユーザー
の任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の折
り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように、前記ユーザーによる回動が
為されている場合において、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各
平面の間の角度」が前記「約150度から約170度までの範囲内の予め決められ
15 た1つの角度」になったとき、前記中間左右見開きストッパにより、前記ユーザー
による回動をストップさせて、前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている
部分及びその近傍部分の画面が表示される側に「谷状の部分」を、且つ前記2つの
表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示されな
い側に「山状の部分」を固定的に形成する構成、を備えている。
20 【請求項6】
次の(a)~(g)の内容を含むことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折
り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用することができる表示装置。
(a)画面をそれぞれ出力する2つの表示板が、それぞれが表示する各画面がユー
ザーに対向することができるように、接続されている、
25 (b)表示装置の使用時の全体の大きさは、それをユーザーがその片手のみでも支
持することができるような小型のサイズに構成されている、
(c)ユーザーから見て縦方向の線を境にして、その右側部分と左側部分とを、互
いに折り畳み可能で且つユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開き可
能に接続し、且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザー
が回動させたとき当該一方の表示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続され
5 ている部分」を回動中心として相対的に回動するように接続するための左右見開き
接続手段を備えている、
(d)前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で
見開きにされた状態へと向かうように前記2つの表示板の少なくともいずれか一方
の表示板がユーザーにより回動される場合において、ユーザーが前記回動をユーザ
10 ーの任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の
折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように、前記ユーザーによる回動
が為されるようにする、摩擦力保持手段、を備えている、
(e)「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が約
180度となったとき、前記2つの表示板の間を前記角度で固定する完全見開き固
15 定手段、を備えている、
(f)ユーザーから見て縦方向の線の右側部分と左側部分とを、「ユーザーから見て
縦方向の線を境とした、前記右側部分と左側部分とのそれぞれ画面が表示される側
の各平面の間の見開き角度」が「約150度から約170度までの範囲内の予め決
められた1つの角度」となるように、固定するための中間左右見開きストッパであ
20 って、前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表示板が互いに
折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態へと向かうよ
うに、ユーザーにより回動されている場合において、「前記2つの表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の角度」が「約150度から約170度までの範
囲内の予め決められた1つの角度」となったとき、前記ユーザーによる回動をスト
25 ップし且つ前記2つの表示板間を固定する中間左右見開きストッパ、を備えている、
(g)前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表示板が互いに
折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態へと向かうよ
うにユーザーにより回動されている場合であって、ユーザーが前記回動をユーザー
の任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の折
り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように前記ユーザーによる回動が為
5 されている場合において、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平
面の間の角度」が前記「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた
1つの角度」になったとき、前記中間左右見開きストッパにより、前記ユーザーに
よる回動をストップさせて、前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部
分及びその近傍部分の画面が表示される側に「ユーザーの親指が当接され得る谷状
10 部分」を、且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近
傍部分の画面が表示されない側に「ユーザーの親指以外の複数の指が当接され得る
山状部分」を固定的に形成する構成、を備えている。
以上
別紙3 第2次訂正の訂正事項
1 請求項1の訂正事項
(1) 訂正事項1-1
5 第1次訂正後の請求項1の「略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つ
の表示板」」の次に、「であって、少なくともいずれか一方の表示板が「情報
入力機能を有する画面」を表示させるものである「2つの表示板」」を挿入す
る。
(2) 訂正事項1-2
10 第1次訂正後の請求項1の「ユーザーがその片手だけでも支持することが
できるような片手支持可能な表示装置であって」中の「片手支持可能な表示
装置」を、「情報入力機能付き画面の表示機能をも備えた片手持ち用且つ片手
支持型の表示装置」に訂正する。
(3) 訂正事項1-3
15 第1次訂正後の請求項1の「それらがユーザーから見て左右方向に見開き
にされた状態にもできるように、」の次に、「且つ前記2つの表示板の少なく
ともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表示板と
他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として
相対的に回動するように、」を挿入する。
20 (4) 訂正事項1-4
第1次訂正後の請求項1の「左右見開き接続手段と、」の次に、「前記2つ
「
の表示板の、それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が、
ユーザーによる少なくともいずれか一方の表示板の回動により「ユーザーの
任意の角度」に変化させられたとき、摩擦力により、前記2つの表示板の間
25 を前記「任意の角度」で保持する任意角度保持手段と、」を挿入する。
(5) 訂正事項1-5
第1次訂正後の請求項1中の「前記「2つの表示板」を、「前記各表示板が
ユーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれ
ぞれ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定する
ための完全左右見開き固定手段と、」中の「前記各表示板のそれぞれ画面が表
5 示される側の間の角度」を、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の
各平面の間の見開き角度」に訂正する。
(6) 訂正事項1-6
第1次訂正後の請求項1の「ユーザーから見て左右方向に見開きにされた
ときの前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表
10 示される側の間の角度」が「約120度から約170度までの範囲内のいず
れかの角度」となるように、ストッパにより固定するための中間左右見開き
固定手段」を、 「前記2つの表示板がユーザーから見て左右方向に見開きに
「
されているときの、前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の
間の見開き角度」が、ユーザーによる少なくともいずれか一方の表示板の回
15 動により「約120度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの
角度」に変化させられたとき、前記回動をストップさせて、前記「2つの表
示板」の間を前記「予め決められた1つの角度」で固定する中間左右見開き
ストッパ」に訂正する。
(7) 訂正事項1-7
20 第1次訂正後の請求項1の「「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側
の間の角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から」中の「前
記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」を、「前記各表示板の
それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」に訂正する。
(8) 訂正事項1-8
25 第1次訂正後の請求項1の「「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側
の間の角度」が「ユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きに
された状態」から」中の「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間
の角度」を、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見
開き角度」に訂正する。
(9) 訂正事項1-9
5 第1次訂正後の請求項1の「中間左右見開き固定手段」を、「中間左右見開
きストッパ」に訂正する。
(10) 訂正事項1-10
第1次訂正後の請求項1の「中間左右見開き固定手段と、を備え」の次に、
「、「電車の中で、戸外で若しくは外出先で使用する、立ったままで使用する、
10 又は画面を介してデータを入力するなどの様々な状況若しくは用途に応じた、
前記2つの表示板の使用」を可能にする構成であって、ユーザーが、「前記2
つの表示板の前記各平面の間の見開き角度」が広がるように前記「2つの表
示板」の少なくともいずれか一方を回動させて前記見開き角度を任意に変化
させるとき、前記2つの表示板の間を「ユーザーの任意の角度」で摩擦力に
15 より保持するようにしながら、前記見開き角度が前記「予め決められた1つ
の角度」になったときは、前記中間左右見開きストッパにより、前記回動を
ストップさせて、前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及
びその近傍部分の画面が表示される側に「谷状の部分」を、且つ前記2つの
表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示
20 されない側に「山状の部分」を固定的に形成する構成を備えた、」を挿入する。
(11) 訂正事項1-11
第1次訂正後の請求項1の「ことを特徴とする片手支持可能な表示装置」
中の「片手支持可能な表示装置」を、「情報入力機能付き画面の表示機能をも
備えた片手持ち用且つ片手支持型の表示装置」に訂正する。
25 2 請求項2の訂正事項
(1) 訂正事項2-1
第1次訂正後の請求項2の「略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つ
の表示板」」の次に、「であって、少なくともいずれか一方の表示板が「情報
入力機能を有する画面」を表示させるものである「2つの表示板」」を挿入す
る。
5 (2) 訂正事項2-2
第1次訂正後の請求項2の「ユーザーがその片手だけでも支持することが
できるような片手支持可能な表示装置であって」中の「ような片手支持可能
な表示装置」を、「情報入力機能付き画面の表示機能をも備えた片手持ち用且
つ片手支持型の表示装置」に訂正する。
10 (3) 訂正事項2-3
第1次訂正後の請求項2の「それらがユーザーから見て左右方向に見開き
にされた状態にもできるように、」の次に、「且つ前記2つの表示板の少なく
ともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表示板と
他方の表示板とが「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として
15 相対的に回動するように、」を挿入する。
(4) 訂正事項2-4
第1次訂正後の請求項2中の「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、
前記『2つの表示板』の間の見開き角度」中の「前記『2つの表示板』の間
の見開き角度」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の
20 各平面の間の見開き角度」に訂正する。
(5) 訂正事項2-5
第1次訂正後の請求項2の「前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て
縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それ
らが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角
25 度で見開きにされた状態との間の角度であって、約120度から約170度
までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するための中間左右見
開き固定手段」を、 「前記2つの表示板の、ユーザーから見て縦方向の線を
「
境としたときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の
見開き角度」が、ユーザーによる少なくともいずれか一方の表示板の回動に
より、「それらが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約1
5 80度の角度で見開きにされた状態との間の角度であって、約120度から
約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」に変化させられたと
き、前記回動をストップさせて、前記「2つの表示板」の間を前記「予め決
められた1つの角度」で固定する中間左右見開きストッパ」に訂正する。
(6) 訂正事項2-6
10 第1次訂正後の請求項2の「広げられて行く動作、をストップする機能を
有する中間左右見開き固定手段」中の「中間左右見開き固定手段」を、「中間
左右見開きストッパ」に訂正する。
(7) 訂正事項2-7
第1次訂正後の請求項2の「中間左右見開き固定手段と、を備え」の次に、
15 「、「電車の中で、戸外で、外出先で、又は立ったままで使用するのに適した、
前記2つの表示板の使用」を可能にする構成であって、ユーザーが、「前記2
つの表示板の前記各平面の間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折り
畳まれた状態」から広がるように、前記「2つの表示板」の少なくともいず
れか一方を回動させて、前記見開き角度を任意に変化させる場合において、
20 前記見開き角度が前記「予め決められた1つの角度」になったとき、前記中
間左右見開きストッパにより、前記回動をストップさせて、前記2つの表示
板のそれぞれ画面が表示される側の各表示板の間を前記「予め決められた1
つの角度」に固定する構成を備えた、」を挿入する。
(8) 訂正事項2-8
25 第1次訂正後の請求項2の「ことを特徴とする片手支持可能な表示装置」
中の「片手支持可能な表示装置」を、「情報入力機能付き画面の表示機能をも
備えた片手持ち用且つ片手支持型の表示装置」に訂正する。
(9) 訂正事項2-9
第1次訂正後の請求項2の「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前
記『2つの表示板』の間の見開き角度」を、「ユーザーから見て縦方向の線を
5 境としたときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の
見開き角度」に訂正する。
3 請求項10に係る訂正事項
(1) 訂正事項10-1
第1次訂正後の請求項10を、第1次訂正後の請求項5のみに従属する請
10 求項に訂正するとともに、請求項5との引用関係を解消して独立請求項とす
る訂正を行う。
(2) 訂正事項10-2
前記(1)の訂正事項10-1の訂正が認められた場合の請求項10の「次の
(a)~(d)の内容を含むことを特徴とする片手支持可能な表示装置。」を、
15 「次の(a)~(g)の内容を含むことを特徴とする情報入力機能付き画面
の表示機能をも備えた片手持ち用且つ片手支持型の表示装置。」に訂正する。
(3) 訂正事項10-3
前記(1)の訂正事項10-1の訂正が認められた場合の請求項10の「(a)
画面をそれぞれ出力する「複数の表示板」」を、(a)画面をそれぞれ出力す
「
20 る「2つの表示板」であって、少なくともいずれか一方の表示板に「ユーザ
ーによるデータ入力のために使用される、データ入力用画面」を表示するた
めのデータ入力手段が備えられている「2つの表示板」」に訂正する。
(4) 訂正事項10-4
前記(1)の訂正事項10-1の訂正が認められた場合の請求項10の「それ
25 らがユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、」の
次に、「且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザー
が回動させたとき当該一方の表示板と他方の表示板とが「それらが互いに接
続されている部分」を回動中心として相対的に回動するように、」を挿入する。
(5) 訂正事項10-5
前記(1)の訂正事項10-1の訂正が認められた場合の請求項10の「左右
5 見開き接続手段を備えている、」の次に、 (d)
「 「前記2つの表示板の、それ
ぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が、ユーザーによる少
なくともいずれか一方の表示板の回動により、「ユーザーの任意の角度」に変
化させられたとき、摩擦力により、前記2つの表示板の間を前記「任意の角
度」で保持する任意角度保持手段、を備えている、
10 (e)「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の各平面の間の
見開き角度」が約180度になったとき、前記「2つの表示板」の間を前記
角度で固定する完全見開き固定手段、を備えている、」を挿入する。
(6) 訂正事項10-6
前記(1)の訂正事項10-1の訂正が認められた場合の請求項10の「(d)
15 前記「複数の表示板」の全部又は一部である「2つの表示板」がユーザーか
ら見て左右方向に見開きにされているとき、前記「2つの表示板」を、「前記
『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約105
度から約170度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、摩擦力や
ストッパやチルト機構やその他の手段により固定するための左右見開き固定
20 手段、を備えている。」を、(f)前記「2つの表示板」がユーザーから見て
「
左右方向に見開きにされているときであって、「前記2つの表示板の、それぞ
れ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が、ユーザーによる少な
くともいずれか一方の表示板の回動により「約120度から約170度まで
の範囲内の予め決められた1つの角度」に変化させられたとき、前記回動を
25 ストップさせて、前記「2つの表示板」の間を前記「予め決められた1つの
角度」で固定する中間左右見開きストッパ、を備えている、」に訂正する。
(7) 訂正事項10-7
前記(1)の訂正事項10-1の訂正が認められた場合の請求項10の「(d)
…左右見開き固定手段、を備えている。」の次に、 (g)
「 「電車の中で、戸外
で若しくは外出先で使用する、立ったままで使用する、又は画面を介してデ
5 ータを入力するなどの様々な状況若しくは用途に応じた、前記2つの表示板
の使用」を可能にする構成であって、ユーザーが、「前記2つの表示板の前記
各平面の間の見開き角度」が広がるように前記「2つの表示板」の少なくと
もいずれか一方を回動させて前記見開き角度を任意に変化させるとき、前記
2つの表示板の間を「ユーザーの任意の角度」で摩擦力により保持するよう
10 にしながら、前記見開き角度が前記「予め決められた1つの角度」になった
ときは、前記中間左右見開きストッパにより、前記回動をストップさせて、
前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の
画面が表示される側に「谷状の部分」を、且つ前記2つの表示板のそれらが
互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示されない側に「山
15 状の部分」を固定的に形成する構成を備えている。」を挿入する。
以上
別紙4 第3次訂正の訂正事項
1 請求項1の訂正事項
(1) 訂正事項1-1
5 第1次訂正後の請求項1の「略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つ
の表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができ
るような片手支持可能な表示装置であって、」を、次のとおり訂正する。
「略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であって、少なく
ともいずれか一方の表示板が「情報入力機能を有する画面」を表示させるも
10 のである「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持
することができるような2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手
だけで持ちながら使用することができる表示装置であって、」
(2) 訂正事項1-2
第1次訂正後の請求項1中の「前記「2つの表示板」を、それらが互いに
15 折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされ
た状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、」を、次の
とおり訂正する。
「前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それら
がユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、且つ
20 前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させ
たとき当該一方の表示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されてい
る部分」を回動中心として相対的に回動するように、接続するための左右見
開き接続手段と、」
(3) 訂正事項1-3
25 第1次訂正後の請求項1中の「左右見開き接続手段と、」の次に、次の一文
を挿入する。
「「前記2つの表示板の、それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き
角度」が、ユーザーによる少なくともいずれか一方の表示板の回動により
「ユーザーの任意の角度」に変化させられたとき、摩擦力により、前記2つ
の表示板の間を前記「任意の角度」で保持する任意角度保持手段であって、
5 前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で
見開きにされた状態へと向かうように前記2つの表示板の少なくともいずれ
か一方の表示板がユーザーにより回動される場合において、ユーザーが前記
回動をユーザーの任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間が前
記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように、
10 前記ユーザーによる回動が為されるようにする、任意角度保持手段と、」
(4) 訂正事項1-4
第1次訂正後の請求項1の「前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユ
ーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞ
れ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するた
15 めの完全左右見開き固定手段と、」を、次のとおり訂正する。
「前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見
開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平
面の間の見開き角度」が約180度となるように、固定するための完全左右
見開き固定手段と、」
20 (5) 訂正事項1-5
第1次訂正後の請求項1の「ユーザーから見て左右方向に見開きにされた
ときの前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表
示される側の間の角度」が「約120度から約170度までの範囲内のいず
れかの角度」となるように、ストッパにより固定するための中間左右見開き
25 固定手段であって、前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面
が表示される側の間の角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」
から広げられて行く動作、をストップする機能と、前記「2つの表示板」の、
「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「ユーザーか
ら見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態」から狭められて
行く動作、をストップする機能と、を有する中間左右見開き固定手段と、」を、
5 次のとおり訂正する。
「「前記2つの表示板がユーザーから見て左右方向に見開きにされているとき
の、前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」
が、ユーザーによる少なくともいずれか一方の表示板の回動により「約15
0度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」に変化させ
10 られたとき、前記回動をストップさせて、前記「2つの表示板」の間を前記
「予め決められた1つの角度」で固定する中間左右見開きストッパであって、
前記「2つの表示板」の、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各
平面の間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折り畳まれた状態」から
広げられて行く動作、をストップする機能と、前記「2つの表示板」の、「前
15 記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が
「ユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態」か
ら狭められて行く動作、をストップする機能と、を有する中間左右見開きス
トッパと、」
(6) 訂正事項1-6
20 第1次訂正後の請求項1の「を備えた」(第1次訂正後の請求項1中の「こ
とを特徴とする片手支持可能な表示装置。」の直前の部分)を、次のとおり訂
正する。
「を備え、
ユーザーが、「前記2つの表示板の前記各平面の間の見開き角度」が広がるよ
25 うに前記「2つの表示板」の少なくともいずれか一方を回動させて前記見開
き角度を任意に変化させるとき、前記2つの表示板の間を「ユーザーの任意
の角度」で摩擦力により保持するようにしながら、前記見開き角度が前記
「予め決められた1つの角度」になったときは、前記中間左右見開きストッ
パにより、前記回動をストップさせて、前記2つの表示板のそれらが互いに
接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側に「谷状の部分」
5 を、且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近
傍部分の画面が表示されない側に「山状の部分」を固定的に形成する構成を
備えた」
(7) 訂正事項1-7
第1次訂正後の請求項1の「ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。」
10 を、次のとおり訂正する。
「ことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけ
で持ちながら使用することができる表示装置。」
2 請求項2の訂正事項
(1) 訂正事項2-1
15 第1次訂正後の請求項2の「略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つ
の表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができ
るような片手支持可能な表示装置であって、」を、次のとおり訂正する。
「略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」であって、少なく
ともいずれか一方の表示板が「情報入力機能を有する画面」を表示させるも
20 のである「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持
することができる2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけで
持ちながら使用することができる表示装置であって、」
(2) 訂正事項2-2
第1次訂正後の請求項2中の「前記「2つの表示板」を、それらが互いに
25 折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされ
た状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、」を、次の
とおり訂正する。
「前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それら
がユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、且つ
前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板をユーザーが回動させ
5 たとき当該一方の表示板と他方の表示板とが「それらが互いに接続されてい
る部分」を回動中心として相対的に回動するように、接続するための左右見
開き接続手段と、」
(3) 訂正事項2-3
第1次訂正後の請求項2中の「前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見
10 て縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が約1
80度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、」を、次の
とおり訂正する。
「前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記
『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」
15 が約180度となるように、固定するための完全左右見開き固定手段と、」
(4) 訂正事項2-4
第1次訂正後の請求項2の「前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て
縦方向の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それ
らが互いに折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角
20 度で見開きにされた状態との間の角度であって、約120度から約170度
までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するための中間左右見
開き固定手段であって、前記「2つの表示板」の、「ユーザーから見て縦方向
の線を境とした、前記『2つの表示板』の間の見開き角度」が「前記各表示
板が互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をストップする機
25 能を有する中間左右見開き固定手段と、」を、次のとおり訂正する。
「「前記2つの表示板の、ユーザーから見て縦方向の線を境としたときの前記
各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が、ユ
ーザーによる少なくともいずれか一方の表示板の回動により、「それらが互い
に折り畳まれた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開
きにされた状態との間の角度であって、約150度から約170度までの範
5 囲内の予め決められた1つの角度」に変化させられたとき、前記ユーザーに
よる回動をストップさせて、前記「2つの表示板」の間を前記「予め決めら
れた1つの角度」で固定する中間左右見開きストッパであって、前記「2つ
の表示板」の、「ユーザーから見て縦方向の線を境としたときの前記各表示板
のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」が「前記各表示
10 板が互いに折り畳まれた状態」から広げられて行く動作、をストップする機
能を有する中間左右見開きストッパと、」
(5) 訂正事項2-5
第1次訂正後の請求項2の「を備えた」を、次のとおり訂正する。
「を備え、
15 「電車の中で、戸外で、外出先で、又は立ったままで使用するのに適した、
前記2つの表示板の使用」を可能にする構成であって、ユーザーが、「前記2
つの表示板の前記各平面の間の見開き角度」が「前記各表示板が互いに折り
畳まれた状態」から広がるように、前記「2つの表示板」の少なくともいず
れか一方を回動させて、前記見開き角度を任意に変化させる場合において、
20 ユーザーが前記回動をユーザーの任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つ
の表示板間が前記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保
持されるように前記ユーザーによる回動が為されるようにしながら、前記見
開き角度が前記「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた
1つの角度」になったとき、前記中間左右見開きストッパにより、前記ユー
25 ザーによる回動をストップさせて、前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示
される側の各表示板の間を前記「予め決められた1つの角度」に固定する構
成を備えた」
(6) 訂正事項2-6
第1次訂正後の請求項2の「ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。」
を、次のとおり訂正する。
5 「ことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけ
で持ちながら使用することができる表示装置。」
3 請求項3の訂正事項
(1) 訂正事項3-1
第1次訂正後の請求項3の「略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つ
10 の表示板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができ
るような片手支持可能な表示装置であって、」を、次のとおり訂正する。
「略長方形の画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユ
ーザーが前記2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ち
ながら使用することができる表示装置であって、」
15 (2) 訂正事項3-2
第1次訂正後の請求項3中の「前記「2つの表示板」を、それらが互いに
折り畳まれた状態にも、それらがユーザーから見て左右方向に見開きにされ
た状態にもできるように、接続するための左右見開き接続手段と、」を、次の
とおり訂正する。
20 「前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それら
がユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態にも
できるように、且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板を
ユーザーが回動させたとき当該一方の表示板と他方の表示板とが「それらが
互いに接続されている部分」を回動中心として相対的に回動するように、接
25 続するための左右見開き接続手段と、」
(3) 訂正事項3-3
第1次訂正後の請求項3中の「左右見開き接続手段と、」の次に、次の一文
を挿入する。
「前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度
で見開きにされた状態へと向かうように前記2つの表示板の少なくともいず
5 れか一方の表示板がユーザーにより回動される場合において、ユーザーが前
記回動をユーザーの任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間が
前記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるよう
に、前記ユーザーによる回動が為されるようにする、摩擦力保持手段と、」
(4) 訂正事項3-4
10 第1次訂正後の請求項3の「前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユ
ーザーから見て左右方向に見開きにされているときの前記各表示板のそれぞ
れ画面が表示される側の間の角度」が約180度となるように、固定するた
めの完全左右見開き固定手段と、」を、次のとおり訂正する。
「前記「2つの表示板」を、「前記各表示板がユーザーから見て左右方向に見
15 開きにされているときの前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平
面の間の角度」が約180度となるように、固定するための完全左右見開き
固定手段と、」
(5) 訂正事項3-5
第1次訂正後の請求項3の「前記「2つの表示板」がユーザーから見て左
20 右方向に見開きにされたとき、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示
板』のそれぞれ画面が表示される側の間の角度」が「約120度から約17
0度までの範囲内のいずれかの角度」となるように、固定するための中間左
右見開き固定手段と、」を、次のとおり訂正する。
「前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされたとき、
25 前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示され
る側の各平面の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の予
め決められた1つの角度」となるように、固定するための中間左右見開きス
トッパであって、前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つ
の表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開きに
された状態へと向かうように、ユーザーにより回動されている場合において、
5 「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が
「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」と
なったとき、前記ユーザーによる回動をストップし且つ前記2つの表示板間
を固定する中間左右見開きストッパと、」
(6) 訂正事項3-6
10 第1次訂正後の請求項3の「を備えた」を、次のとおり訂正する。
「前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が前記2つの表示板が互いに
折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態へと向
かうようにユーザーにより回動されている場合であって、ユーザーが前記回
動をユーザーの任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間が前記
15 ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるように前
記ユーザーによる回動が為されている場合において、「前記2つの表示板のそ
れぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が前記「約150度から約
170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」になったとき、前記中
間左右見開きストッパにより、前記ユーザーによる回動をストップさせて、
20 前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の
画面が表示される側に「ユーザーの親指が当接され得る谷状部分」を、且つ
前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の
画面が表示されない側に「ユーザーの親指以外の複数の指が当接され得る山
状部分」を固定的に形成する構成と、
25 を備えた」
(7) 訂正事項3-7
第1次訂正後の請求項3の「ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。」
を、次のとおり訂正する。
「ことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけ
で持ちながら使用することができる表示装置。」
5 4 請求項4の訂正事項
(1) 訂正事項4-1
第1次訂正後の請求項4の「画面をそれぞれ表示できる「2つ以上の表示
板」を含んでおり、ユーザーがその片手だけでも支持することができるよう
な片手支持可能な表示装置であって、」を、次のとおり訂正する。
10 「画面をそれぞれ表示できる「2つの表示板」を含んでおり、ユーザーが前
記2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用
することができる表示装置であって、」
(2) 訂正事項4-2
第1次訂正後の請求項4中の「前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部
15 である「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それら
がユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続
するための左右見開き接続手段と、」を、次のとおり訂正する。
「前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それら
がユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態にも
20 できるように、且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板を
ユーザーが回動させたとき当該一方の表示板と他方の表示板とが「それらが
互いに接続されている部分」を回動中心として相対的に回動するように、接
続するための左右見開き接続手段と、」
(3) 訂正事項4-3
25 第1次訂正後の請求項4中の「左右見開き接続手段と、」の次に、次の一文
を挿入する。
「「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が
約180度となったとき、前記2つの表示板の間を前記角度で固定する完全
見開き固定手段と、」
(4) 訂正事項4-4
5 第1次訂正後の請求項4の「前記「2つ以上の表示板」の全部又は一部で
ある「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記
『2つの表示板』の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳まれた状態
とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態との
間の角度であって、約105度から約170度までの範囲内のいずれかの角
10 度」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段により固
定するための左右見開き固定手段と」を、次のとおり訂正する。
「前記「2つの表示板」を、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記
『2つの表示板』の各平面の間の見開き角度」が「それらが互いに折り畳ま
れた状態とユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた
15 状態との間の角度であって、約150度から約170度までの範囲内の予め
決められた1つの角度」となるように、固定するための中間左右見開きスト
ッパであって、前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの
表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開きにさ
れた状態へと向かうように、ユーザーにより回動されている場合において、
20 「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が
「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」と
なったとき、前記ユーザーによる回動をストップし且つ前記2つの表示板間
を固定する中間左右見開きストッパと、」
(5) 訂正事項4-5
25 第1次訂正後の請求項4の「ことを特徴とする片手支持可能な表示装置。」
を、次のとおり訂正する。
「ことを特徴とする2つの表示板を見開き且つ折り曲げ状態にして片手だけ
で持ちながら使用することができる表示装置。」
5 請求項5の訂正事項
(1) 訂正事項5-1
5 第1次訂正後の請求項5の「次の(a)~(d)の内容を含むことを特徴
とする片手支持可能な表示装置。」を、次のとおり訂正する。
「次の(a)~(g)の内容を含むことを特徴とする2つの表示板を見開き
且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用することができる表示装
置。」
10 (2) 訂正事項5-2
第1次訂正後の請求項5中の「(a)画面をそれぞれ出力する「複数の表示
板」が、それぞれが表示する各画面がユーザーに対向することができるよう
に、接続されている、」を、次のとおり訂正する。
「(a)画面をそれぞれ出力する「2つの表示板」が、それぞれが表示する各
15 画面がユーザーに対向することができるように、接続されている、」
(3) 訂正事項5-3
第1次訂正後の請求項5中の「(c)前記「複数の表示板」の全部又は一部
である「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、それら
がユーザーから見て左右方向に見開きにされた状態にもできるように、接続
20 するための左右見開き接続手段を備えている、」を、次のとおり訂正する。
「(c)前記「2つの表示板」を、それらが互いに折り畳まれた状態にも、そ
れらがユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きにされた状態
にもできるように、且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示
板をユーザーが回動させたとき当該一方の表示板と他方の表示板とが「それ
25 らが互いに接続されている部分」を回動中心として相対的に回動するように、
接続するための左右見開き接続手段を備えている、」
(4) 訂正事項5-4
第1次訂正後の請求項5の「(c)…左右見開き接続手段を備えている、」
の次に、次の一文を挿入する。
「(d)前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の
5 角度で見開きにされた状態へと向かうように前記2つの表示板の少なくとも
いずれか一方の表示板がユーザーにより回動される場合においてユーザーが
前記回動をユーザーの任意の折り曲げ角度で止めたとき、前記2つの表示板
間が前記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持される
ように、前記ユーザーによる回動が為されるようにする、摩擦力保持手段、
10 を備えている、」
(5) 訂正事項5-5
第1次訂正後の請求項5の「(c)…左右見開き接続手段を備えている、」
の後の、上記訂正事項5-4に係る「(d)…摩擦力保持手段、を備えてい
る、」の次に、次の一文を挿入する。
15 「(e)「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角
度」が約180度となったとき、前記2つの表示板の間を前記角度で固定す
る完全見開き固定手段、を備えている、」
(6) 訂正事項5-6
第1次訂正後の請求項5の「(d)前記「複数の表示板」の全部又は一部で
20 ある「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされていると
き、前記「2つの表示板」を、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面が表示
される側の間の角度」が「約105度から約170度までの範囲内のいずれ
かの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他の手段に
より固定するための左右見開き固定手段、を備えている。」を、次のとおり訂
25 正する。
「(f)前記「2つの表示板」がユーザーから見て左右方向に見開きにされて
いるとき、前記「2つの表示板」を、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表
示される側の各平面の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲
内の予め決められた1つの角度」となるように、固定するための中間左右見
開きストッパであって、
5 前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表示板が互いに
折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態へと向
かうように、ユーザーにより回動されている場合において、「前記2つの表示
板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が「約150度から
約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」となったとき、前記
10 ユーザーによる回動をストップし且つ前記2つの表示板間を固定する中間左
右見開きストッパ、を備えている、」
(7) 訂正事項5-7
第1次訂正後の請求項5の「(d)…左右見開き固定手段、を備えている。」
の次に、次の一文を挿入する。
15 「(g)前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表示板が
互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態
へと向かうようにユーザーにより回動されている場合であって、ユーザーが
前記回動をユーザーの任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間
が前記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるよ
20 うに、前記ユーザーによる回動が為されている場合において、「前記2つの表
示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が前記「約150
度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」になったとき、
前記中間左右見開きストッパにより、前記ユーザーによる回動をストップさ
せて、前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍
25 部分の画面が表示される側に「谷状の部分」を、且つ前記2つの表示板のそ
れらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示されない側
に「山状の部分」を固定的に形成する構成、を備えている。」
6 請求項6の訂正事項
(1) 訂正事項6-1
第1次訂正後の請求項6の「次の(a)~(d)の内容を含むことを特徴
5 とする片手支持可能な表示装置。」を、次のとおり訂正する。
「次の(a)~(g)の内容を含むことを特徴とする2つの表示板を見開き
且つ折り曲げ状態にして片手だけで持ちながら使用することができる表示装
置。」
(2) 訂正事項6-2
10 第1次訂正後の請求項6中の「(a)画面をそれぞれ出力する複数個の表示
板が、それぞれが表示する各画面がユーザーに対向することができるように、
接続されている、」を、次のとおり訂正する。
「(a)画面をそれぞれ出力する2つの表示板が、それぞれが表示する各画面
がユーザーに対向することができるように、接続されている、」
15 (3) 訂正事項6-3
第1次訂正後の請求項6中の「(c)ユーザーから見て縦方向の線を境にし
て、その右側部分と左側部分とを、互いに折り畳み可能で且つユーザーから
見て左右方向に見開き可能に接続するための左右見開き接続手段を備えてい
る、」を、次のとおり訂正する。
20 「(c)ユーザーから見て縦方向の線を境にして、その右側部分と左側部分と
を、互いに折り畳み可能で且つユーザーから見て左右方向に約180度の角
度で見開き可能に接続し、且つ前記2つの表示板の少なくともいずれか一方
の表示板をユーザーが回動させたとき当該一方の表示板と他方の表示板とが
「それらが互いに接続されている部分」を回動中心として相対的に回動する
25 ように接続するための左右見開き接続手段を備えている、」
(4) 訂正事項6-4
第1次訂正後の請求項6の「(c)…左右見開き接続手段を備えている、」
の次に、次の一文を挿入する。
「(d)前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の
角度で見開きにされた状態へと向かうように前記2つの表示板の少なくとも
5 いずれか一方の表示板がユーザーにより回動される場合において、ユーザー
が前記回動をユーザーの任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板
間が前記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持される
ように、前記ユーザーによる回動が為されるようにする、摩擦力保持手段、
を備えている、」
10 (5) 訂正事項6-5
第1次訂正後の請求項6の「(c)…左右見開き接続手段を備えている、」
の後の上記訂正事項6-4の「(d)…摩擦力保持手段と、を備えている、」
の次に、次の一文を挿入する。
「(e)「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角
15 度」が約180度となったとき、前記2つの表示板の間を前記角度で固定す
る完全見開き固定手段、を備えている、」
(6) 訂正事項6-6
第1次訂正後の請求項6の「(d)ユーザーから見て縦方向の線の右側部分
と左側部分とを、「ユーザーから見て縦方向の線を境とした、前記右側部分と
20 左側部分との間の見開き角度」が「約105度から約170度までの範囲内
のいずれかの角度」となるように、摩擦力やストッパやチルト機構やその他
の手段により固定するための左右見開き固定手段、を備えている。」を、次の
とおり訂正する。
「(f)ユーザーから見て縦方向の線の右側部分と左側部分とを、「ユーザー
25 から見て縦方向の線を境とした、前記右側部分と左側部分とのそれぞれ画面
が表示される側の各平面の間の見開き角度」が「約150度から約170度
までの範囲内の予め決められた1つの角度」となるように、固定するための
中間左右見開きストッパであって、前記2つの表示板の少なくともいずれか
一方が、前記2つの表示板が互いに折り畳まれた状態から互いに約180度
の角度で見開きにされた状態へと向かうように、ユーザーにより回動されて
5 いる場合において、「前記2つの表示板のそれぞれ画面が表示される側の各平
面の間の角度」が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められ
た1つの角度」となったとき、前記ユーザーによる回動をストップし且つ前
記2つの表示板間を固定する中間左右見開きストッパ、を備えている、」
(7) 訂正事項6-7
10 第1次訂正後の請求項6の「(d)…左右見開き固定手段、を備えている。」
の次に、次の一文を挿入する。
「(g)前記2つの表示板の少なくともいずれか一方が、前記2つの表示板が
互いに折り畳まれた状態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態
へと向かうようにユーザーにより回動されている場合であって、ユーザーが
15 前記回動をユーザーの任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間
が前記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持されるよ
うに前記ユーザーによる回動が為されている場合において、「前記2つの表示
板のそれぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」が前記「約150度
から約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度」になったとき、
20 前記中間左右見開きストッパにより、前記ユーザーによる回動をストップさ
せて、前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍
部分の画面が表示される側に「ユーザーの親指が当接され得る谷状部分」を、
且つ前記2つの表示板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部
分の画面が表示されない側に「ユーザーの親指以外の複数の指が当接され得
25 る山状部分」を固定的に形成する構成、を備えている。」
以上
別紙5 訂正の再抗弁の成否についての当事者の主張(訂正要件を除く)
1 第2次訂正について
(1) 争点3-2(被告各製品が第2次各訂正発明の技術的範囲に属するか)に
ついて
5 (原告の主張)
ア 小型サイズの2つの表示板(一方の表示板は入力用画面表示機能付き)
を「相対的回動」可能に接続する構成について
(ア) 被告各製品の構成
被告各製品はいずれも以下の構成を備える。
10 a 被告各製品は、その全体をユーザーがその片手のみで支持できる小
型のサイズである。
b 被告各製品は、2つの表示板が(ⅰ)互いに約180度に(互いの各
平面間がほぼ平行に)見開き可能、(ⅱ)互いに折り畳み(互いの各平
面間の角度が約0度)可能、及び互いに折り曲げ状態(上記(ⅰ)と
15 (ⅱ)の間の状態)での見開き可能に接続されている。
c 被告各製品においては、各表示板は、ヒンジ部(各表示板の接続部
分)を回動中心として、双方を同時に回動することも、一方のみを回
動することもできる。
d 被告各製品においては、各表示板の一方はそのままにして他方を回
20 動したときでも、当該一方ではない他方をそのままにして当該一方を
回動したときでも、回動後の状態は同じであり、その意味で各表示板
はヒンジ部を回動中心として相対的に回動可能に接続されている。
e 使用するソフトにより、被告各製品の2つの表示板の一方に、電子
ペン等で入力操作が可能な入力用画面が表示されることがある。
25 (イ) 構成要件の充足性
被告各製品における前記(ア)の各構成は、次の各構成要件を充足する。
第2次訂正発明1の構成要件1A’、1B’及び1G’
第2次訂正発明2の構成要件2A’、2B’及び2F’
第2次訂正発明10の構成要件10E’、10A’、10B’及び10
C’
5 イ 2つの表示板間を摩擦力により任意の角度で保持する任意角度保持手段
について
(ア) 被告各製品の構成
被告各製品は、2つの表示板が折り曲げ状態にあるとき、摩擦力(摩
擦機構)により、任意の角度で保持される。
10 (イ) 構成要件の充足性
被告各製品における前記(ア)の構成は、次の各構成要件を充足する。
第2次訂正発明1の構成要件1H’
第2次訂正発明10の構成要件10F’
ウ 2つの表示板を「各平面間が約180度(互いにほぼ平行)の状態」で
15 固定する完全見開き固定手段について
(ア) 被告各製品の構成
被告各製品では、「2つの表示板」の各画面が表示される側の各平面の
間の角度が「約180度」(互いにほぼ平行)の状態になったとき、ヒン
ジ部の構成により、上記「約180度」を超える角度への見開きが阻止
20 (ストップ)され、「2つの表示板」が、上記「約180度」(互いにほ
ぼ平行)での見開きの状態で、固定される。
(イ) 構成要件の充足性
被告各製品における前記(ア)の構成は、次の各構成要件を充足する。
訂正請求項1の構成要件1C’
25 訂正請求項2の構成要件2C’
訂正請求項10の構成要件10G’
エ 2つの表示板を「各平面間が約160度の折り曲げ状態」で固定する中
間見開き固定ストッパについて
(ア) 被告各製品の構成
被告各製品では、例えば「2つの表示板」が、それらの各画面が表示
5 される側の各平面の間の角度が上記各平面(画面が表示される側)間を
広げるように回動されている過程において、上記各平面間が約160度
の折り曲げ状態になったとき、ヒンジ部に内蔵されたストッパにより、
上記回動はストップされて、上記「2つの表示板」間は上記約160度
の折り曲げ状態で固定される。
10 (イ) 構成要件の充足性
被告各製品における前記(ア)の構成は、次の各構成要件を充足する。
第2次訂正発明1の構成要件1D’
第2次訂正発明2の構成要件2D’
第2次訂正発明10の構成要件10D’
15 オ 2つの表示板の各平面間の角度が広げられて行く回動動作をストップす
る機能について
(ア) 被告各製品の構成
被告各製品では、「2つの表示板」が、例えば、折り畳み状態から各平
面(画面が表示される側)間の角度が広げられて行くように回動してい
20 る過程で、上記各平面間の角度が約160度の折り曲げ状態まで回動し
た(状態が変化した)とき、ヒンジ部に内蔵されたストッパにより、上
記回動はストップされて、上記「2つの表示板」間は上記約160度の
折り曲げ状態で固定される。
(イ) 構成要件の充足性
25 被告各製品における前記(ア)の構成は、次の各構成要件を充足する。
第2次訂正発明1の構成要件1E’
第2次訂正発明2の構成要件2E’
カ 2つの表示板の各平面間の角度が狭められて行く回動動作をストップす
る機能について
(ア) 被告各製品の構成
5 被告各製品では、「2つの表示板」が、例えば、それらの各平面(画面
が表示される側)間の角度が約180度見開きの状態から狭められて行
くように回動している過程で、上記各平面間の角度が約160度の折り
曲げ状態まで回動した(状態が変化した)とき、ヒンジ部に内蔵された
ストッパにより、上記回動はストップされて、上記「2つの表示板」間
10 は上記約160度の折り曲げ状態で固定される。
(イ) 構成要件の充足性
被告各製品における前記(ア)の構成は、第2次訂正発明1の構成要件1
F’を充足する。
キ 摩擦力により「2つの表示板」の各平面間の角度を「任意の角度」で保
15 持するようにしながら、「2つの表示板」が互いに回動されている過程にお
いて上記各平面間の角度が「約160度」になった(変化した)とき、上
記状態で上記回動をストップさせて上記「2つの表示板」間を上記「約1
60度」の角度の状態で固定する構成について
(ア) 被告各製品の構成
20 被告各製品はいずれも以下の構成を備える。
a 被告各製品は、例えば、(ⅰ)電車の中、戸外、又は外出先で使用す
る、(ⅱ)立ったまま使用する、及び(ⅲ)画面を介してデータ入力する
などの様々な状況、態様、用途で使用できる。
b ユーザーが被告各製品の各表示板をその各平面間の角度が変化する
25 ように回動させたとき、2つの表示板は、摩擦力により各平面間の角
度が任意の角度で保持される。
c ユーザーが被告各製品の「2つの表示板」をその各平面間の角度が
変化するように回動させる過程で、上記各平面間の角度が「約160
度」になった(変化した)ときは、ヒンジ部に内蔵されたストッパに
より、上記回動はストップされて、上記「2つの表示板」間は上記約
5 160度の折り曲げ状態で固定される。
d 前記「2つの表示板」の各平面間の角度が「約160度」になった
(変化した)ときは、ヒンジ部に内蔵されたストッパにより、上記回
動はストップされて、上記「2つの表示板」間が上記約160度の折
り曲げ状態で固定されるが、そのとき、上記「2つの表示板」の各画
10 面が表示される側には「ユーザーが片手の親指を載置する取っ掛かり
となり得る『谷状部分』」が形成されると共に、画面が表示されない側
には「ユーザーが当該片手の他の指及び掌に被告各製品を載置し易い
『山状部分』」が形成される。
e 前記『谷状部分』と『山状部分』は、ヒンジ部に内蔵されたストッ
15 パにより、容易に動かないように(固定的に)形成される。
(イ) 構成要件の充足性
被告各製品における前記(ア)の各構成は、次の各構成要件を充足する。
第2次訂正発明1の構成要件1I’
第2次訂正発明2の構成要件2G’
20 第2次訂正発明10の構成要件10H’
ク 小括
前記アないしキによれば、被告各製品は、第2次各訂正発明の各構成要
件の全てを充足している。
ケ 被告の主張に対する反論
25 (ア) 「2つの表示板」の「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見
開き角度」(構成要件1C’ないし1F’、1H’、1I’等)について
本件発明1についての第3の1(原告の主張)(2)ウと同様に、被告が
主張するような「回転軸を中心に形成する角度」という限定解釈を行う
べきではない。
(イ) 「ユーザーの任意の角度」(構成要件1H’、1I’等)について
5 被告は、「ユーザーの任意の角度」とは、0度から360度のあらゆる
角度から無作為に選択し得る角度を意味すると主張しているが、そもそ
も、第2次各訂正発明は「2つの表示板を、ユーザーが『本を開いて読
むとき』のように折曲げ且つ見開き状態にして片手だけで安定的に支持
できるようにする」ことを課題とするものであるから、「2つの表示板を、
10 本を開いて読むときのように、例えば約0度(折り畳み状態)から約1
80度までの間において、ユーザーの任意の角度で折曲げ且つ見開き状
態」にできれば十分であり、それを超えて「約180度から約360度
まで回動させる」必要性は、全くない。
「任意」の一般的・辞書的な意味、「任意」に関する本件明細書中の記
15 載、「2つの表示板を回動させる構成」に関する本件明細書中の記載、本
件原々々出願当時における当業者の技術常識などからは、「ユーザーの任
意の角度」とは、任意角度保持手段又は摩擦力保持手段が適用される電
子機器がもともと有している「約180度から約360度の範囲内は回
動できないという構造」を当然の前提とした、すなわち当該電子機器の
20 構造上回動が可能とされている範囲内(例えば、約0度から約180度
までの回動範囲内)における、「ユーザーの自由意思に基づく角度、すな
わちユーザーがその自由意思により変化させることのできる所望の角度」
を意味する。
(ウ) 「谷状の部分」及び「山状の部分」(構成要件1I’等)について
25 本件明細書中で発明の作用効果に関して説明されている「中間ストッ
パにより形成される取っ掛かり」とは、「回動される2つの表示板の間が
『予め決められた1つの角度』で回動がストップされて固定されたとき
に固定的に作出・形成される取っ掛かりであって、2つの表示板をユー
ザーが片手だけで安定的に持って使用することを容易にできるように、
ユーザーがその指等を安定的に当接する際の取っ掛かり」であり、中間
5 ストッパにより固定的に作出・形成される「谷状部分」又は「山状部分」
を意味する。
そして、被告各製品においては、このような「谷状部分」及び「山状
部分」が存在している。
(被告の主張)
10 ア 被告各製品の構成について
(ア) 小型サイズの2つの表示板(一方の表示板は入力用画面表示機能付き)
を「相対的回動」可能に接続する構成について
a (原告の主張)ア(ア)aは概ね認める。
b (原告の主張)ア(ア)bは否認する。
15 被告各製品においては、そもそも「2つの表示板」に相当する下パ
ネルと上パネルとが、本件訂正発明の規定する「前記各表示板のそれ
ぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を成さないため、
原告の主張(「約180度」 「角度が約0度」等)における「角度」を
、
備えない。
20 c (原告の主張)ア(ア)cについて、被告各製品における各表示板は、
双方を同時に回動することも、一方のみを回動することもできる点に
ついては認めるが、その余は否認する。
被告各製品はヒンジ部の回転軸を中心とする構成を採用していない。
d (原告の主張)ア(ア)dは否認する。
25 被告各製品はヒンジ部の回転軸を中心とする構成を採用していない。
e (原告の主張)ア(ア)eは概ね認める。
(イ) 2つの表示板間を摩擦力により任意の角度で保持する任意角度保持手
段について
(原告の主張)イ(ア)は否認する。
被告各製品は、原告の主張における「角度」を備えない。また、被告
5 各製品においては、各表示パネルが一定の相対的位置関係にある場合に
は摩擦力による固定が働かず、「摩擦力により任意の角度で保持」する手
段を備えない。
(ウ) 2つの表示板を「各平面間が約180度(互いにほぼ平行)の状態」
で固定する完全見開き固定手段について
10 (原告の主張)ウ(ア)は否認する。
被告各製品は、原告の主張における「角度」を備えない。
(エ) 2つの表示板を「各平面間が約160度の折り曲げ状態」で固定する
中間見開き固定ストッパについて
(原告の主張)エ(ア)のうち、被告各製品が、第1パネル(一方の表示
15 板)側に固定される部分と、第2パネル(他方の表示板)側に固定され
る部分とが、相対的に回動可能に組み合わされて構成されているストッ
パ部品を備える事実、当該ストッパ部品がヒンジ部に内蔵されているこ
とについては認めるが、その余は否認する。
被告各製品は、原告の主張における「角度」を備えない。
20 (オ) 2つの表示板の各平面間の角度が広げられて行く回動動作をストップ
する機能について
(原告の主張)オ(ア)のうち、被告各製品において、第1パネル(一方
の表示板)側に固定される部分と、第2パネル(他方の表示板)側に固
定される部分とが、相対的に回動可能に組み合わされて構成されている
25 ストッパ部品を備える事実、当該ストッパ部品がヒンジ部に内蔵されて
いることについては認めるが、その余は否認する。
被告各製品は、原告の主張における「角度」を備えない。
(カ) 2つの表示板の各平面間の角度が狭められて行く回動動作をストップ
する機能について
(原告の主張)カ(ア)のうち、被告各製品において、第1パネル(一方
5 の表示板)側に固定される部分と、第2パネル(他方の表示板)側に固
定される部分とが、相対的に回動可能に組み合わされて構成されている
ストッパ部品を備える事実、当該ストッパ部品がヒンジ部に内蔵されて
いることについては認めるが、その余は否認する。
被告各製品は、原告の主張における「角度」を備えない。
10 (キ) 摩擦力により「2つの表示板」の各平面間の角度を「任意の角度」で
保持するようにしながら、「2つの表示板」が互いに回動されている過程
において上記各平面間の角度が「約160度」になった(変化した)と
き、上記状態で上記回動をストップさせて上記「2つの表示板」間を上
記「約160度」の角度の状態で固定する構成について
15 a (原告の主張)キ(ア)aは概ね認める。
b (原告の主張)キ(ア)bないしeについて、第1パネル(一方の表示
板)側に固定される部分と、第2パネル(他方の表示板)側に固定さ
れる部分とが、相対的に回動可能に組み合わされて構成されているス
トッパ部品を備える事実、当該ストッパ部品がヒンジ部に内蔵されて
20 いることについては認めるが、その余は否認する。
被告各製品は、原告の主張における「角度」を備えない。また、被
告各製品においては、各表示パネルが一定の相対的位置関係にある場
合には摩擦力による固定が働かず、「摩擦力により」「任意の角度で保
持」することができない。さらに、被告各製品においては、「谷状部分」
25 及び「山状部分」が形成されない。
イ 構成要件充足性について
(ア) 第2次訂正発明1に係る構成要件の充足性について
a 構成要件の文言の解釈について
(a) 「2つの表示板」の「それぞれ画面が表示される側の各平面の間
の見開き角度」(構成要件1C’ないし1F’、1H’及び1I’)の
5 意義
特許請求の範囲の文言上、「各平面」は「表示板」の構成要素とし
て規定されており、表示板の画面が表示される側の物理的な平面部
分のみを指すのであって、かかる表示板の平面を更に延長して観念
される仮想的な延長平面については含まれない。
10 そして、本件発明1についての第3の1(被告の主張)(2)ア(ア)
aと同様の理由で、「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見
開き角度」については、画面が表示される実際の面同士が交わるこ
とで形成される角度のことを指すと理解される。
したがって、表示装置において、接続された2つの「表示板」の
15 一方の「表示板」における「画面が表示される側」の平面と、他方
の「表示板」の「画面が表示される側」の平面とが回動中に接触し
ない場合においては、「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の
見開き角度」を備えない。
(b) 「ユーザーの任意の角度」(構成要件1H’及び1I’)の意義
20 「任意の」とは、無作為に選ばせることを意味する用語である。
この点、第2次訂正発明1の特許請求の範囲の文言上、「ユーザーの
任意の角度」を特定の範囲内での角度とする旨の限定は何ら設けら
れていない以上、「ユーザーの任意の角度」とは、その字義どおり、
0度から360度のあらゆる角度から無作為に選択し得る角度を意
25 味すると解される。
(c) 「谷状の部分」及び「山状の部分」(構成要件1I’)の意義
「谷状」とは、谷の地形を形容する用語であるから、一般的な解
釈に基づけば、2つの面の形成する角度が180度未満となる凹状
態のことを意味すると解される。また、「山状」についても、山の地
形を形用する用語であるから、一般的な解釈に従えば、2つの面の
5 形成する角度が180度を超える凸状態のことを意味すると解され
る。
b 構成要件1H’の充足性について
被告各製品では、下パネルの画面が表示される側の面と上パネルの
画面が表示される側の面同士が回動中に交わることは無いため、下パ
10 ネルの画面が表示される側の面と上パネルの画面が表示される側の面
同士が交わることで形成される角度は存在しない。
また、被告各製品においては、下パネルを置いた地面に対する上パ
ネルの角度によっては、摩擦力によって上パネルと下パネルを任意の
相対的位置関係に固定しておくことができない場合がある。また、被
15 告各製品においては、上パネルと下パネルの形成する角度は180度
を超えて360度までとなるように、上パネルと下パネルを回動する
ことはできず、この範囲内においても摩擦力により任意の角度で固定
することはできない。
したがって、被告各製品は構成要件1H’を充足しない。
20 c 構成要件1C’の充足性について
前記bのとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。
したがって、被告各製品において、「前記各表示板のそれぞれ画面が
表示される側の各平面の間の見開き角度」が約180度を成すことは
25 なく、被告各製品は構成要件1C’を充足しない。
d 構成要件1D’の充足性について
前記bのとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。
したがって、被告各製品は、「ユーザーによる少なくともいずれか一
方の表示板の回動により『約120度から約170度までの範囲内の
5 予め決められた1つの角度』」を成すことはなく、被告各製品は構成要
件1D’を充足しない。
e 構成要件1E’の充足性について
前記bのとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。
10 したがって、被告各製品は、 『前記各表示板のそれぞれ画面が表示
「
される側の各平面の間の見開き角度』が『前記各表示板が互いに折り
畳まれた状態』から広げられて行く動作、をストップする機能」を備
えず、被告各製品は構成要件1E’を充足しない。
f 構成要件1F’の充足性について
15 前記bのとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。
したがって、被告各製品は、 『前記各表示板のそれぞれ画面が表示
「
される側の各平面の間の見開き角度』が『ユーザーから見て左右方向
に約180度の角度で見開きにされた状態』から挟められて行く動作、
20 をストップする機能と、を有する中間左右見開きストッパ」を備えず、
被告各製品は構成要件1F’を充足しない。
g 構成要件1I’の充足性について
前記bのとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えないため、当
25 該角度が前記「予め決められた1つの角度」になることもない。
また、前記bのとおり、被告各製品は、摩擦力により2つの表示板
をユーザーの任意の角度で保持する構成を備えない。
さらに、被告各製品において「2つの表示板のそれらが互いに接続
されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側」があり得る
とすれば、当該部分は山状を形成しており、「谷状の部分」を固定的に
5 形成しない。また同様に、被告各製品における「2つの表示板のそれ
らが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示されな
い側」があり得るとすれば、当該部分は谷状を形成しており、「山状の
部分」を固定的に形成しない。
したがって、被告各製品は構成要件1I’を充足しない。
10 h 構成要件1G’の充足性について
被告各製品は、構成要件1C’ないし1F’、1H’及び1I’を充
足しないため、構成要件1G’を充足しない。
(イ) 第2次訂正発明2に係る構成要件の充足性について
a 構成要件の文言の解釈について
15 第2次訂正発明2における「2つの表示板」の「それぞれ画面が表
示される側の各平面の間の見開き角度」(構成要件2C’ないし2E及
び2G’)の意義は、前記(ア)aと同様である。
b 構成要件2C’の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
20 画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。
したがって、被告各製品は、「前記『2つの表示板』のそれぞれ画面
が表示される側の各平面の間の見開き角度」が約180度を成すこと
はなく、構成要件2C’を充足しない。
c 構成要件2D’の充足性について
25 前記(ア)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えないため、当
該角度が「ユーザーから見て左右方向に約180度の角度で見開きに
された状態との間の角度であって、約120度から約170度までの
範囲内の予め決められた1つの角度」を成すこともなく、被告各製品
は、構成要件2D’を充足しない。
5 d 構成要件2E’の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。
したがって、被告各製品は、「前記各表示板のそれぞれ画面が表示さ
れる側の各平面の間の見開き角度が『前記各表示板が互いに折り畳ま
10 れた状態』から広げられて行く動作、をストップする機能を有する中
間左右見開きストッパ」を備えず、被告各製品は構成要件2E’を充
足しない。
e 構成要件2G’の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
15 画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えないため、当
該角度が「予め決められた1つの角度」になることもなく、被告各製
品は構成要件2G’を充足しない。
f 構成要件2F’の充足性について
被告各製品は、構成要件2C’ないし2E’及び2G’を充足しな
20 いため、構成要件2F’を充足しない。
(ウ) 第2次訂正発明10に係る構成要件の充足性について
a 構成要件の文言の解釈について
第2次訂正発明10における、「2つの表示板」の「それぞれ画面が
表示される側の各平面の間の見開き角度」(構成要件10D’、10F’
25 ないし10H’)の意義、「ユーザーの任意の角度」(構成要件10F’
及び10H’)の意義及び「谷状の部分」及び「山状の部分」(構成要
件10H’)の意義は、前記(ア)aと同様である。
b 構成要件10F’の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。
5 また、前記(ア)のとおり、被告各製品は「摩擦力により」2つの表示
板を「ユーザーの任意の角度」で保持する手段を備えず、被告各製品
は「摩擦力により、前記2つの表示板の間を前記『任意の角度』で保
持する任意角度保持手段」を備えない。
したがって、被告各製品は、 『前記2つの表示板の、それぞれ画面
「
10 が表示される側の各平面の間の見開き角度』が、ユーザーによる少な
くともいずれか一方の表示板の回動により『ユーザーの任意の角度』
に変化させられたとき、摩擦力により、前記2つの表示板の間を前記
『任意の角度』で保持する任意角度保持手段」を備えず、被告各製品
は構成要件10F’を充足しない。
15 c 構成要件10G’の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えないため、当
該角度が約180度を成すこともなく、被告各製品は構成要件10G’
を充足しない。
20 d 構成要件10D’の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。
したがって、被告各製品は、「ユーザーによる少なくともいずれか一
方の表示板の回動により『約120度から約170度までの範囲内の
25 予め決められた1つの角度』」を備えず、被告各製品は構成要件10D’
を充足しない。
e 構成要件10H’の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えないため、当
該角度が「予め決められた1つの角度」を成すこともない。
5 また、前記(ア)のとおり、被告各製品は「2つの表示板のそれらが互
いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側」が
あるとしても「谷状の部分」を固定的に形成せず、また、「2つの表示
板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表
示されない側」があるとしても「山状の部分」を固定的に形成しない。
10 また、前記(ア)のとおり、被告各製品は2つの表示板を「ユーザーの
任意の角度」で「摩擦力により保持するように」する構成を備えず、
「摩擦力により、前記2つの表示板の間を前記『任意の角度』で保持
する任意角度保持手段」を備えない。
したがって、被告各製品は構成要件10H’を充足しない。
15 f 構成要件10E’の充足性について
被告各製品は、10D’、10F’ないし10H’を充足しないため、
構成要件10E’を充足しない。
(2) 争点3-3-1(第2次各訂正発明についての乙1文献を引用例とする新
規性欠如の解消(出願日遡及を前提とする無効理由))について
20 (被告の主張)
ア 第2次各訂正発明と乙1発明との対比
(ア) 後記(原告の主張)アの原告相違点1について
乙1文献には、2つのパネルの少なくともいずれか一方(例えば第1
のパネル12)をユーザーが回動させたとき、その一方のパネル(第1
25 のパネル12)と他方のパネル(第2のパネル12)とがそれらが互い
に接続されている部分(蝶番16の一次軸36又は二次軸38)を回動
中心として相対的に回動するように、2つのパネルを接続する接続手段
(蝶番16)を備えていることが開示されている。
よって、原告相違点1は第2次各訂正発明との乙1発明との相違点で
はない。
5 (イ) 後記(原告の主張)アの原告相違点2等について
乙1文献には、①2つのパネルの少なくともいずれか一方(例えば第
1のパネル12)が回動されて「ユーザーの任意の角度」に変化させら
れたとき、摩擦力により2つのパネルの間を当該「任意の角度」で保持
する任意角度保持手段(蝶番16の「ロッキング機構」 、②2つのパネ
)
10 ルの各平面の間の見開き角度が約180度(図1の「平坦位置」)となっ
たとき、2つのパネルの間を当該角度で固定する完全見開き固定手段
(蝶番16の「ロッキング機構」 、③2つのパネルが回動されてそれら
)
の各平面の間の見開き角度が「約120度から約170度までの範囲内
の予め決められた1つの角度」(図4の「部分的に開いた位置」)となっ
15 たとき、当該回動をストップさせて、2つのパネルの間を当該角度で固
定する中間見開きストッパ(蝶番16の「ロッキング機構」)及び④電車
の中で、戸外で若しくは外出先で使用する、立ったままで使用する、又
は画面を介してデータを入力するなどの様々な状況若しくは用途に応じ
た、2つのパネルの使用を可能にするため、2つのパネルの少なくとも
20 一方が回動されているとき、2つのパネルの間を「ユーザーの任意の角
度」で蝶番16の「ロッキング機構」の摩擦力により保持するようにし
ながら、2つのパネルの各表面間の見開き角度が「予め決められた1つ
の角度」になったときは、ストッパ(蝶番16の「ロッキング機構」)に
より、前記回動をストップさせて、2つのパネル間を前記角度で固定し、
25 さらに、2つのパネルの各画面が表示される側に「谷状の部分」を、且
つ2つのパネルの各画面が表示されない側に「山状の部分」を固定的に
形成すること(図4の「部分的に開いた位置」)が開示されている。
よって、原告相違点2、原告相違点3、原告相違点4、原告相違点5
-1及び原告相違点5-2は、第2次各訂正発明と乙1発明との相違点
ではない。
5 イ 小括
したがって、第2次各訂正発明は、本件原々々出願より前に頒布された
刊行物である乙1文献に記載された発明であるから、いずれも新規性を欠
く。
(原告の主張)
10 ア 第2次各訂正発明と乙1文献に記載された発明との対比
乙1文献に記載された発明は、前記第3の2(2)(原告の主張)アのとお
りであり、第2次各訂正発明との間には、以下の相違点がある。
(原告相違点1)
第2次各訂正発明においては、「2つの表示板の少なくともいずれか一方
15 の表示板をユーザーが回動させたとき、当該一方の表示板と他方の表示板
とがそれらが互いに接続されている部分を回動中心として相対的に回動す
るように、2つの表示板を接続する接続手段」を備えている点(これに対
し乙1文献に記載された発明にはこのような構成は記載も示唆もない)。
(原告相違点2)
20 第2次訂正発明1及び10においては、「2つの表示板の少なくともいず
れか一方の表示板が回動されて「ユーザーの任意の角度」に変化させられ
たとき、摩擦力により2つの表示板の間を当該「任意の角度」で保持する
任意角度保持手段」を備えている点(これに対し乙1文献に記載された発
明にはこのような構成は記載も示唆もない)。
25 (原告相違点3)
第2次各訂正発明においては、「2つの表示板の各平面の間の見開き角度
が約180度となったとき、又は2つの表示板の各平面が互いにほぼ平行
な状態となったとき、2つの表示板の間を当該角度又は状態で固定する完
全見開き固定手段」を備えている点(これに対し乙1文献に記載された発
明にはこのような構成は記載も示唆もない)
5 (原告相違点4)
第2次各訂正発明においては、「2つの表示板が回動されてそれらの各平
面の間の見開き角度が「約120度から約170度までの範囲内の予め決
められた1つの角度」となったとき、当該回動をストップさせて、2つの
表示板の間を当該角度で固定する中間見開きストッパ」を備えている点
10 (これに対し乙1文献に記載された発明にはこのような構成は記載も示唆
もない)
(原告相違点5-1)
第2次訂正発明1及び10においては、「電車の中で、戸外で若しくは外
出先で使用する、立ったままで使用する、又は画面を介してデータを入力
15 するなどの様々な状況若しくは用途に応じた、前記2つの表示板の使用」
を可能にするため、2つの表示板の少なくとも一方が回動されているとき、
2つの表示板の間を「ユーザーの任意の角度」で摩擦力により保持するよ
うにしながら、2つの表示板の各表面間の見開き角度が「予め決められた
1つの角度」になったときは、ストッパにより、前記回動をストップさせ
20 て、2つの表示板間を前記角度で固定し、さらに、2つの表示板の各画面
が表示される側に「谷状の部分」(図2(b)参照)を、且つ2つの表示板
の各画面が表示されない側に「山状の部分」(図2(b)参照)を固定的に
形成するという構成」を備えている点(これに対し乙1文献に記載された
発明にはこのような構成は記載も示唆もない)。
25 (原告相違点5-2)
第2次訂正発明2においては、「電車の中で、戸外で、外出先で、又は立
ったままで使用するのに適した、前記2つの表示板の使用」を可能にする
ため、2つの表示板の少なくとも一方が回動されている場合において、2
つの表示板の各表面間の見開き角度が「予め決められた1つの角度」にな
ったとき、ストッパにより、前記回動をストップさせて、2つの表示板間
5 を前記角度で固定する〔その結果として、2つの表示板の各画面が表示さ
れる側に「谷状の部分」(図2(b)参照)が、且つ2つの表示板の各画面
が表示されない側に「山状の部分」(図2(b)参照)が固定的に形成され
る〕という構成」を備えている点(これに対し乙1文献に記載された発明
にはこのような構成は記載も示唆もない)。
10 イ 小括
以上のとおり、原告相違点1ないし5-2の内容は、乙1文献には全く
記載も示唆もないから、第2次各訂正発明には、新規性欠如の無効理由は
存在しない。
(3) 争点3-3-2(第2次各訂正発明についての乙1文献を主引用例とする
15 進歩性欠如の解消(出願日遡及を前提とする無効理由))について
(被告の主張)
ア 第2次各訂正発明と乙1発明との相違点
前記(2)(被告の主張)のとおり、第2次各訂正発明と乙1発明との間に
は相違点はない。
20 訂正拒絶理由通知における相違点1ないし3(前記第3の2(3)(被告の
主張)ア(イ))を仮に相違点と捉えたとしても、以下のとおり、これらはい
ずれも本件原々々出願の出願日において、当業者が容易に想到し得るもの
である。
イ 訂正拒絶理由通知における相違点1に係る構成の容易想到性
25 前記第3の2(3)(被告の主張)ウのとおり。
ウ 訂正拒絶理由通知における相違点2に係る構成の容易想到性
前記第3の2(3)(被告の主張)エのとおり。
なお、訂正拒絶理由通知における相違点2における「ユーザーによる少
なくともいずれか一方の表示板の回動により「約120度から約170度
までの範囲内の予め決められた1つの角度」に変化させられたとき、前記
5 回動をストップさせて、前記「2つの表示板」の間を前記「予め決められ
た1つの角度」で固定する」という事項は、例えば、本件原々々出願の出
願日より前に頒布された刊行物である英国特許出願公開第2052389
号明細書(乙27)に記載されており、周知である。
エ 訂正拒絶理由通知における相違点3に係る構成の容易想到性
10 乙1発明において、周知技術1を採用することにより訂正拒絶理由通知
における相違点1に係る構成とするとともに、周知技術2を採用すること
により訂正拒絶理由通知における相違点2に係る構成とした場合には、訂
正拒絶理由通知における相違点3に係る構成は当然得られるものにすぎな
い。
15 オ 小活
以上によれば、第2次各訂正発明と乙1発明との間に、訂正拒絶理由通
知における相違点1ないし3があるとしても、これらはいずれも本件
原々々出願の出願日において当業者が容易に想到し得るものであるから、
第2次各訂正発明はいずれも進歩性を欠く。
20 (原告の主張)
ア 第2次各訂正発明と乙1発明との相違点
前記(2)(原告の主張)のとおり、第2次各訂正発明と乙1発明との間に
は原告相違点1ないし5-2がある。
イ 原告相違点1に係る構成の容易想到性について
25 乙2文献ないし乙5文献に記載された発明又はこれらの文献によって認
められる周知技術の「『机上に動かないように載置される操作板(キーボー
ド部)』と『机上に載置された操作板(キーボード部)に対して斜め方向に
配置される表示板(ディスプレイ部)』とを、相対的に回動可能に接続する
ヒンジ装置」を乙1文献に記載された発明に適用して、原告相違点1の構
成に到達することには、動機付けがない。
5 ウ 原告相違点2に係る構成の容易想到性について
乙2文献ないし乙5文献に記載された発明又はこれらの文献によって認
められる周知技術の「『机上に動かないように載置された操作板(キーボー
ド部)』に対して、ユーザーが表示板を回動させているときに、所定の角度
範囲内で、ユーザーがその『任意』で表示板の回動を止めた(例えば表示
10 板から任意で『手』を離した)ときの角度(すなわち、ユーザーにとって
任意の角度)で静止・保持できるようにした、ヒンジ装置」を乙1文献に
記載された発明に適用して、原告相違点2の構成に到達することには、動
機付けがない。
エ 原告相違点3に係る構成の容易想到性について
15 乙2文献ないし乙5文献に記載された発明又はこれらの文献によって認
められる周知技術の「『机上に動かないように載置された操作板(キーボー
ド部)』に対して、ユーザーにより回動させられている表示板(ディスプレ
イ部)を、その最大後傾角度(最大限後傾できる範囲の角度。操作板との
関係で約180度が多い)で、回動停止させるようにした、ヒンジ装置」
20 を乙1文献に記載された発明に適用して、原告相違点2の構成に到達する
ことには、動機付けがない。
オ 原告相違点4に係る構成の容易想到性について
前記第3の2(3)(原告の主張)アと同様に、原告相違点4は、乙1文献
に記載された発明に、乙2文献ないし乙5文献に記載された発明又はこれ
25 らの文献により認められる周知技術から、容易に想到できたものではない。
カ 原告相違点5-1及び5-2に係る構成の容易想到性について
原告相違点4の構成は、原告相違点5-1及び5-2の構成にも含まれ
ているから、前記オは、原告相違点5-1及び5-2の容易想到性につい
ても同様に当てはまる。
キ 小活
5 以上によれば、第2次各訂正発明について、乙1文献を主引用例とする
進歩性欠如の無効理由は存在しない。
(4) 争点3-3-3(第2次各訂正発明についての乙11文献を引用例とする
新規性欠如の解消(出願日繰り下がりを前提とする無効理由))について
(被告の主張)
10 第2次各訂正発明は、本件各発明と同様に、乙11文献に記載された発明
であって新規性を欠くものであるから、第2次訂正によってこの点の無効理
由は解消されない。
(原告の主張)
被告の主張は争う。
15 (5) 争点3-3-4(第2次各訂正発明についての乙12補正書に係る補正の
補正要件違反の解消(出願日繰り下がりを前提とする無効理由))について
(被告の主張)
第2次訂正は、本件補正2による新規事項の追加を治癒するものではない
から、第2次訂正によっても、この点の無効理由は解消しない。
20 (原告の主張)
被告の主張は争う。
2 第3次訂正について
(1) 争点4-2(被告各製品が第3次各訂正発明の技術的範囲に属するか)に
ついて
25 (原告の主張)
ア 小型サイズの2つの表示板(一方の表示板は入力用画面表示機能付き)
を「相対的に回動」可能に接続する構成について
(ア) 被告各製品の構成
被告各製品はいずれも以下の構成を備える。
a 被告各製品は、2つの表示板の全体を、「本を開いて読むとき」のよ
5 うに見開きかつ折り曲げ状態にして、ユーザーがその片手のみで安定
的に支持できる小型のサイズの電子機器である。
b 被告各製品は、2つの表示板が(ⅰ)互いに約180度に(互いの各
平面間がほぼ平行に)見開き可能、(ⅱ)互いに折り畳み(互いの各平
面間の角度が約0度)可能、及び互いに折り曲げ状態(上記(ⅰ)と
10 (ⅱ)の間の状態)での見開き可能に接続されている。
c 被告各製品においては、各表示板は、ヒンジ部(各表示板の接続部
分)を回動中心として、双方を同時に回動することも、一方のみを回
動することもできる。
d 被告各製品においては、各表示板の一方はそのままにして他方を回
15 動したときでも、当該一方ではない他方をそのままにして当該一方を
回動したときでも、回動後の状態は同じであり、その意味で各表示板
はヒンジ部を回動中心として相対的に回動できるように接続されてい
る。なお、このような相対的回動は、被告各製品における、2つの表
示板が1個の回転軸のみで互いに接続されており(2個の接続軸でそ
20 れぞれ接続されているのではない)かつ当該接続部分においては各表
示板の端部同士間で摩擦力が作用しているという構成から導かれる機
能である。
(イ) 構成要件の充足性
被告各製品における前記(ア)の各構成は、次の各構成要件を充足する。
25 第3次訂正発明1の構成要件1A”、1B”及び1G”
第3次訂正発明2の構成要件2A”、2B”及び2F”
第3次訂正発明3の構成要件3A”、3B”及び3E”
第3次訂正発明4の構成要件4A”、4B”及び4D”
第3次訂正発明5の構成要件5E”、5A”、5B”及び5C”
第3次訂正発明6の構成要件6E”、6A”、6B”及び6C”
5 イ 2つの表示板間をユーザーが回動を任意に止めたときの折り曲げ角度で
そのまま摩擦力により保持する摩擦力保持手段について
(ア) 被告各製品の構成
被告各製品では、2つの表示板の少なくとも一方をユーザーが回動さ
せている過程において、ユーザーが当該回動を任意の折り曲げ角度でス
10 トップしたとき、「2つの表示板の間」が、当該の「ユーザーが任意に回
動をストップしたときの折り曲げ角度」でそのまま摩擦力(接続部分に
おける、各表示板の端部同士の間の摩擦力)により保持されるように、
前記ユーザーによる回動がされる。
(イ) 構成要件の充足性
15 被告各製品における前記(ア)の構成は、次の各構成要件を充足する。
第3次訂正発明1の構成要件1H”
第3次訂正発明3の構成要件3F”
第3次訂正発明5の構成要件5F”
第3次訂正発明6の構成要件6F”
20 ウ 2つの表示板を「各平面間が約180度(互いにほぼ平行)の状態」で
固定する完全見開き固定手段について
(ア) 被告各製品の構成
被告各製品では、「2つの表示板」の各画面が表示される側の各平面の
間の角度が「約180度」(互いにほぼ平行)の状態になったとき、ヒン
25 ジ部(甲12、甲13の2等参照)の構成により、すなわち2つの表示
板の互いの各端部(一方の表示板と一体に成形されたヒンジ部の一部を
含む)とが互いに当接することにより、上記「約180度」を超える角
度への見開きが阻止(ストップ)され、「2つの表示板」が、上記「約1
80度」(互いにほぼ平行)での見開きの状態で、固定される。
(イ) 構成要件の充足性
5 被告各製品における前記(ア)の構成は、次の各構成要件を充足する。
第3次訂正発明1の構成要件1C”
第3次訂正発明2の構成要件2C”
第3次訂正発明3の構成要件3C”
第3次訂正発明4の構成要件4E”
10 第3次訂正発明5の構成要件5G”
第3次訂正発明6の構成要件6G”
エ 2つの表示板を「各平面間が約160度の折り曲げ状態」で固定する中
間見開き固定ストッパ(又は中間見開き固定手段)について
(ア) 被告各製品の構成
15 被告各製品では、例えば「2つの表示板」が、それらの各画面が表示
される側の各平面の間の角度が上記各平面(画面が表示される側)間を
折り畳み状態から広げるように回動されている過程において、上記各平
面間が約160度の折り曲げ状態になったとき、ヒンジ部に内蔵された
ストッパ部品により、上記回動はストップされかつ上記「2つの表示板」
20 間は上記約160度の折り曲げ状態で固定される。
また、被告各製品では、「2つの表示板」が、それらの各平面(画面が
表示される側)間の角度が約180度見開きの状態から狭められて行く
ように回動している過程で、上記各平面間の角度が約160度の折り曲
げ状態まで回動した(状態が変化した)とき、上記と同様に、ヒンジ部
25 に内蔵されたストッパ部品により、上記回動はストップされかつ上記
「2つの表示板」間は上記約160度の折り曲げ状態で固定される。
(イ) 構成要件の充足性
被告各製品における前記(ア)の構成は、次の各構成要件を充足する。
第3次訂正発明1の構成要件1D”、1E”及び1F”
第3次訂正発明2の構成要件2D”及び2E”
5 第3次訂正発明3の構成要件3D”及び3G”
第3次訂正発明4の構成要件4C”及び4F”
第3次訂正発明5の構成要件5D”及び5H”
第3次訂正発明6の構成要件6D”及び6H”
オ ユーザーが回動を任意に止めたときは、2つの表示板の間が、前記ユー
10 ザーが回動を任意に(ユーザーの自由意思で)止めたときの折り曲げ角度
のまま摩擦力により保持されるように、ユーザーによる回動がされている
場合において、2つの表示板の各平面間の角度が約160度になったとき、
ユーザーによる回動をストップさせて、2つの表示板中のそれらが互いに
接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側に「見開き使
15 用時にユーザーの親指が当接され得る谷状部分」を形成し、かつ、2つの
表示板中のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が
表示されない側に「見開き使用時にユーザーの親指以外の複数の指が当接
され得る山状部分」を固定的に形成する構成について
(ア) 被告各製品の構成
20 被告各製品はいずれも以下の構成を備える。
a ユーザーが被告各製品の各表示板をその各平面間の角度が変化する
ように回動させたとき、2つの表示板は、摩擦力により各平面間の角
度が任意の角度で保持される。
b ユーザーが被告各製品の「2つの表示板」をその各平面間の角度が
25 変化するように回動させる過程で、上記各平面間の角度が「約160
度」になった(変化した)ときは、ヒンジ部に内蔵されたストッパに
より、上記回動はストップされて、上記「2つの表示板」間は上記約
160度の折り曲げ状態で固定される。
c 前記「2つの表示板」の各平面間の角度が「約160度」になった
(変化した)ときは、ヒンジ部に内蔵されたストッパ部品により、上
5 記回動はストップされて、上記「2つの表示板」間が上記約160度
の折り曲げ状態で固定されるが、そのとき、上記「2つの表示板」の
各画面が表示される側には「ユーザーが片手の親指を載置する取っ掛
かりとなり得る『谷状部分』」が形成されると共に、画面が表示されな
い側には「ユーザーが当該片手の他の指(及び/又は掌)の上に被告
10 各製品を載置(当接)し易い『山状部分』」が形成される。
d 前記『谷状部分』と『山状部分』は、ヒンジ部に内蔵されたストッ
パ部品により、容易に動かないように(すなわち固定的に)形成され
る。
e 前記aないしdの構成は、ユーザーが電車の中で、戸外で、外出先
15 で、又は立ったまま使用する場合に、ユーザーが2つの表示板を片手
だけで安定的に支持しながら、他方の片手では電車の吊革を持つ、タ
ッチパネルに指を接触させてデータ入力をするなどの他の動作をする
ことを容易にするものである(よって、前記aないしdの構成は、上
記各場合におけるユーザーの使用に適したものである。。
)
20 (イ) 構成要件の充足性
被告各製品における前記(ア)の各構成は、次の各構成要件を充足する。
第3次訂正発明1の構成要件1I”
第3次訂正発明2の構成要件2G”
第3次訂正発明3の構成要件3H”
25 第3次訂正発明5の構成要件5I”
第3次訂正発明6の構成要件6I”
カ 小括
前記アないしオによれば、被告各製品は、第3次各訂正発明の各構成要
件の全てを充足している。
キ 被告の主張に対する反論
5 (ア) 「2つの表示板の各平面の間の角度」(構成要件1C”ないし1F”、
1H”、1I”等)について
「2つの表示板の画面が表示される側の各平面の間の角度」としては、
「画面が表示される側の実際の面同士が交わることで形成される角度」
だけではなく、「2つの表示板の各平面の一方が仮想的に延長(又は仮想
10 的に平行移動)されたときにできる仮想的な角度」をも含めて、観念す
ることが社会通念上可能であり、かつ、そのような「2つの表示板の各
平面の一方が仮想的に延長(又は仮想的に平行移動)されたときにでき
る仮想的な角度」を想定して議論することは当業者の間で通常に行われ
ている。
15 よって、被告各製品には「各平面の間の角度(上記のような仮想的な
角度をも含む)」が存在する。
(イ) 「ユーザーの任意の角度」(構成要件1H”、1I”等)について
第2次訂正発明についての前記1(1)(原告の主張)ケ(イ)と同様であ
ある。
20 (ウ) 「谷状の部分」及び「山状の部分」ないし「谷状部分」及び「山状部
分(構成要件1I”、1G”等)について
第2次訂正発明についての前記1(1)(原告の主張)ケ(ウ)と同様であ
ある。
(被告の主張)
25 ア 被告各製品の構成について
(ア) 小型サイズの2つの表示板(一方の表示板は入力用画面表示機能付き)
を「相対的に回動」可能に接続する構成について
a (原告の主張)ア(ア)aは概ね認める。
b (原告の主張)ア(ア)bは否認する。
被告各製品においては、そもそも「2つの表示板」に相当する下パ
5 ネルと上パネルとが、第3次各訂正発明の規定する「前記2つの表示
板」の「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」及
び「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」を成さないた
め、原告の主張(「2つの表示板が(ⅰ)互いに約180度に」「互い
、
の各平面間の角度が約0度」等)における「角度」をいずれも有しな
10 い。
c (原告の主張)ア(ア)cについて、被告各製品において、「各表示板」
に相当する上パネルと下パネルの双方を同時に回動し得ること、及び、
一方のみを回動することもできることについては認めるが、その余は
否認ないし争う。
15 被告各製品では、ヒンジ部が下パネルのディスプレイ側の面の同一
面上には無いため、下パネルのディスプレイ側の面と上パネルのディ
スプレイ側の面がヒンジ部の回転軸を中心とする構成を採用しておら
ず、「ヒンジ部(各表示板の接続部分)」を回動中心としていない。
d (原告の主張)ア(ア)dは否認する。
20 被告各製品では、ヒンジ部が下パネルのディスプレイ側の面の同一
面上には無いため、下パネルのディスプレイ側の面と上パネルのディ
スプレイ側の面がヒンジ部の回転軸を中心とする構成を採用しておら
ず、「ヒンジ部(各表示板の接続部分)」を回動中心としていない。
e (原告の主張)ア(ア)eは概ね認める。
25 (イ) 2つの表示板間をユーザーが回動を任意に止めたときの折り曲げ角度
でそのまま摩擦力により保持する摩擦力保持手段について
(原告の主張)イ(ア)は否認する。
被告各製品においては、各表示パネルが一定の相対的位置関係にある
場合には摩擦力による固定が働かず、「2つの表示板」に相当する下パネ
ルと上パネルとを「摩擦力により」「任意の角度」又は「任意の折り曲げ
5 角度」で保持する手段を備えない。
(ウ) 2つの表示板を「各平面間が約180度(互いにほぼ平行)の状態」
で固定する完全見開き固定手段について
(原告の主張)ウ(ア)は否認する。
被告各製品においては、そもそも「2つの表示板」に相当する下パネ
10 ルと上パネルとが、第3次各訂正発明の規定する「前記2つの表示板」
の「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」及び「そ
れぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」を成さないため、原告
の主張における「角度」をいずれも有しない。
(エ) 2つの表示板を「各平面間が約160度の折り曲げ状態」で固定する
15 中間見開き固定ストッパ(又は中間見開き固定手段)について
(原告の主張)エ(ア)は否認する。
被告各製品においては、そもそも「2つの表示板」に相当する下パネ
ルと上パネルとが、第3次各訂正発明の規定する「前記2つの表示板」
の「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」及び「そ
20 れぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」を成さないため、原告
の主張における「角度」をいずれも有しない。
(オ) ユーザーが回動を任意に止めたときは、2つの表示板の間が、ユーザ
ーが回動を任意に(ユーザーの自由意思で)止めたときの折り曲げ角度
のまま摩擦力により保持されるように、ユーザーによる回動が為されて
25 いる場合において、2つの表示板の各平面間の角度が約160度になっ
たとき、ユーザーによる回動をストップさせて、2つの表示板中のそれ
らが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側
に「見開き使用時にユーザーの親指が当接され得る谷状部分」を形成し、
かつ、2つの表示板中のそれらが互いに接続されている部分及びその近
傍部分の画面が表示されない側に「見開き使用時にユーザーの親指以外
5 の複数の指が当接され得る山状部分」を固定的に形成する構成について
a (原告の主張)オ(ア)aは否認する。
被告各製品においては、そもそも「2つの表示板」に相当する下パ
ネルと上パネルとが、第3次各訂正発明の規定する「前記2つの表示
板」の「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」及
10 び「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」を成さないた
め、原告の主張における「角度」をいずれも有しない。また、被告各
製品においては、各表示パネルが一定の相対的位置関係にある場合に
は摩擦力による固定が働かず、「2つの表示板」に相当する下パネルと
上パネルとを「摩擦力により」「任意の角度」又は「任意の折り曲げ角
15 度」で保持する手段を備えない。
b (原告の主張)オ(ア)bは否認する。
被告各製品においては、そもそも「2つの表示板」に相当する下パ
ネルと上パネルとが、第3次各訂正発明の規定する「前記2つの表示
板」の「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」及
20 び「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」を成さないた
め、原告の主張における「角度」をいずれも有しない。
c (原告の主張)オ(ア)cは否認する。
被告各製品においては、そもそも「2つの表示板」に相当する下パ
ネルと上パネルとが、第3次各訂正発明の規定する「前記2つの表示
25 板」の「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」及
び「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」を成さないた
め、原告の主張における「角度」をいずれも有しない。また、被告各
製品は、「上記『2つの表示板』の各画面が表示される側」に「谷状」
部分を形成せず、「画面が表示されない側」に「山状」部分を形成しな
い。
5 d (原告の主張)オ(ア)dは否認する。
被告各製品は、「上記『2つの表示板』の各画面が表示される側」に
「谷状」部分を形成せず、「画面が表示されない側」に「山状」部分を
形成しない。
イ 構成要件充足性について
10 (ア) 第3次訂正発明1に係る構成要件の充足性について
a 構成要件の文言の解釈について
(a) 「2つの表示板」の「それぞれ画面が表示される側の各平面の間
の見開き角度」(構成要件1C”ないし1F”、1H”及び1I”)の
意義
15 第2次訂正発明1についての前記1(1)(被告の主張)イ(ア)a(a)
と同様の理由で、第3次訂正発明1における「各平面」とは画面が
表示される実際の物理的な平面部分のみを指し、かつ、「それぞれ画
面が表示される側の各平面の間の見開き角度」とは画面が表示され
る実際の面同士が交わることで形成される角度を指すことは明らか
20 である。
(b) 「ユーザーの任意の角度」及び「ユーザーの任意の折り曲げ角度」
(構成要件1H”及び1I”)の意義
「任意の」とは、無作為に選ばせることを意味する用語である。
また、「ユーザーの任意の角度」については、本件明細書には明示的
25 に定義されておらず、せいぜい「ユーザーによる少なくともいずれ
か一方の表示板の回動により」「ユーザー」が「任意」に「変化させ」
ることのできる「角度」という程度の意味に解すべきものである。
そして、「ユーザー」が「任意」に「変化させ」ることのできる「角
度」の任意性に着目すると、その角度は0度から360度までの範
囲にあることになるから、構成要件1H”及び1I”における「ユ
5 ーザーの任意の角度」とは、0度から360度のあらゆる角度から
無作為に選択し得る角度を意味すると解される。
他方で、構成要件1H”の「ユーザーの任意の折り曲げ角度」に
ついては、構成要件1H”は「前記2つの表示板が互いに折り畳ま
れた状態から互いに約180度の角度で見開きにされた状態へと向
10 かうように前記2つの表示板の少なくともいずれか一方の表示板が
ユーザーにより回動される場合において、ユーザーが前記回動をユ
ーザーの任意の折り曲げ角度で止めたとき前記2つの表示板間が前
記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持され
る」という事項を含む。かかる事項は、2つの表示板の少なくとも
15 いずれか一方の表示板を「(0度から360度までの範囲のうち)0
度から180度まで」において回動させる場合に2つの表示板の間
を「ユーザーの任意の折り曲げ角度」で摩擦力により保持すること
を規定するものである。すると、「ユーザーの任意の折り曲げ角度」
とは、(0度から360度までの範囲のうち)0度から180度まで
20 の範囲にあることになるから、0度から180度のあらゆる角度か
ら無作為に選択し得る角度を意味すると解される。
(c) 「谷状の部分」及び「山状の部分」(構成要件1I”及び1G”)
の意義
第2次訂正発明1についての前記1(1)(被告の主張)イ(ア)a(c)
25 と同様の理由で、一般的な解釈に基づけば、「谷状」とは2つの面の
形成する角度が180度未満となる凹状態のことを意味すると解さ
れ、「山状」とは2つの面の形成する角度が180度を超える凸状態
のことを意味すると解される。
b 構成要件1H”の充足性について
被告各製品では、下パネルの画面が表示される側の面と上パネルの
5 画面が表示される側の面同士が回動中に交わることはないため、下パ
ネルの画面が表示される側の面と上パネルの画面が表示される側の面
同士が交わることで形成される角度は存在しない。
また、被告各製品においては、下パネルを置いた地面に対する上パ
ネルの角度によっては、摩擦力によって上パネルと下パネルを任意の
10 相対的位置関係に固定しておくことができない場合がある。また、被
告各製品においては、上パネルと下パネルの形成する角度は180度
を超えて360度までとなるように、上パネルと下パネルを回動する
ことはできず、この範囲内においても摩擦力により任意の角度で固定
することはできない。
15 したがって、被告各製品は構成要件1H”を充足しない。
c 構成要件1C”の充足性について
前記bのとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。したが
って、被告各製品においては、当該角度が約180度を成すことはな
20 く、被告各製品は構成要件1C”を充足しない。
d 構成要件1D”の充足性について
前記bのとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。したが
って、被告各製品においては、当該角度が「約150度から約170
25 度までの範囲内の予め決められた1つの角度」を成すことはなく、被
告各製品は構成要件1D”を充足しない。
e 構成要件1E”の充足性について
前記bのとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。したが
って、被告各製品は、 『前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側
「
5 の各平面の間の見開き角度』が『前記各表示板が互いに折り畳まれた
状態』から広げられて行く動作、をストップする機能」を備えず、被
告各製品は構成要件1E”を充足しない。
f 構成要件1F”の充足性について
前記bのとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
10 画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。したが
って、被告各製品は、 『前記各表示板のそれぞれ画面が表示される側
「
の各平面の間の見開き角度』が『ユーザーから見て左右方向に約18
0度の角度で見開きにされた状態』から挟められて行く動作、をスト
ップする機能と、を有する中間左右見開きストッパ」を備えず、被告
15 各製品は構成要件1F”を充足しない。
g 構成要件1I”の充足性について
前記bのとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えないため、当
該角度が「前記『予め決められた1つの角度』」になることもない。
20 また、前記bのとおり、被告各製品は「摩擦力により」2つの表示
板を「ユーザーの任意の角度」で保持する構成を備えない。
さらに、被告各製品においては、「2つの表示板のそれらが互いに接
続されている部分及びその近傍部分の画面が表示される側」があると
しても「谷状の部分」を形成せず、また、「2つの表示板のそれらが互
25 いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示されない側」
があるとしても「山状の部分」を形成しない。
したがって、被告各製品は構成要件1I”を充足しない。
h 構成要件1G”の充足性について
被告各製品は、構成要件1C”ないし1F”、1H”及び1I”を充
足しないため、構成要件1G”を充足しない。
5 (イ) 第3次訂正発明2に係る構成要件の充足性について
a 構成要件の文言の解釈について
第3次訂正発明2における、「2つの表示板」の「それぞれ画面が表
示される側の各平面の間の見開き角度」(構成要件2C”ないし2E”
及び2G”)の意義、「ユーザーの任意の折り曲げ角度」(構成要件2
10 G”)の意義は、前記(ア)aと同様である。
b 構成要件2C”の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。したが
って、被告各製品においては、当該角度が約180度を成すことはな
15 く、被告各製品は構成要件2C”を充足しない。
c 構成要件2D”の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。したが
って、被告各製品においては、当該角度が「約150度から約170
20 度までの範囲内の予め決められた1つの角度」を成すことはなく、被
告各製品は構成要件2D”を充足しない。
d 構成要件2E”の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えない。したが
25 って、被告各製品は、 『…前記各表示板のそれぞれ画面が表示される
「
側の各平面の間の見開き角度』が『前記各表示板が互いに折り畳まれ
た状態』から広げられて行く動作、をストップする機能」を備えず、
被告各製品は構成要件2E”を充足しない。
e 構成要件2G”の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
5 画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えないため、当
該角度が「前記『予め決められた1つの角度』」になることもない。
また、前記(ア)のとおり、被告各製品は、「摩擦力により」2つの表
示板を「ユーザーの任意の角度」又は「任意の折り曲げ角度」で保持
する手段を備えず、「前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の折り
10 曲げ角度でそのまま摩擦力により保持」する構成を備えていない。
したがって、被告各製品は構成要件2G”を充足しない。
f 構成要件2F”の充足性について
被告各製品は、構成要件2C”ないし2E”及び2G”を充足しな
いため、構成要件2F”を充足しない。
15 (ウ) 第3次訂正発明3に係る構成要件の充足性について
a 構成要件の文言の解釈について
(a) 「2つの表示板」の「それぞれ画面が表示される側の各平面の間
の角度」(構成要件3C”、3D”、3G”及び3H”)の意義
前記(ア)aの「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の見開き
20 角度」と同様に、「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」
も画面が表示される実際の面同士が交わることで形成される角度を
指すと解釈される。
(b) 「谷状部分」及び「山状部分」(構成要件3H”)の意義
前記(ア)aのとおり、「谷状」とは、2つの面の形成する角度が1
25 80度未満となる状態のことを意味すると解され、「山状」とは、2
つの面の形成する角度が180度を超える状態のことを意味すると
解される。
なお、構成要件3H”においては、第3次訂正により新たに「ユ
ーザーの親指が当接され得る」 「ユーザーの親指以外の複数の指が
、
当接され得る」との文言が追加されているが、「谷状部分」及び「山
5 状部分」の意義は、ユーザーの指が当接され得るか否かにより左右
されるものではないため、「ユーザーの親指が当接され得る」及び
「ユーザーの親指以外の複数の指が当接され得る」との文言の存在
は、「谷状部分」及び「山状部分」の上記解釈を何ら妨げるものでは
ない。
10 (c) 「ユーザーの任意の折り曲げ角度」(構成要件3F”及び3H”)
の意義
前記(ア)aと同様の理由で、「ユーザーの任意の折り曲げ角度」と
は、0度から180度のあらゆる角度から無作為に選択し得る角度
を意味すると解される。
15 b 構成要件3F”の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品は、「摩擦力により」2つの表示板を
「ユーザーの任意の折り曲げ角度」で保持する手段を備えない。した
がって、被告各製品は、「前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の
折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持」する構成を備えておらず、
20 構成要件3F”を充足しない。
c 構成要件3C”の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品では、下パネルの画面が表示される側
の面と上パネルの画面が表示される側の面同士が回動中に交わること
はないため、下パネルの画面が表示される側の面と上パネルの画面が
25 表示される側の面同士が交わることで形成される角度は存在しない。
したがって、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ画面
が表示される側の各平面の間の角度」を備えないため、被告各製品に
おいて、当該角度が約180度を成すことはなく、被告各製品は構成
要件3C”を充足しない。
d 構成要件3D”及び3G”の充足性について
5 前記cのとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の角度」を備えないため、当該角度
が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの
角度」を成すこともなく、被告各製品は構成要件3D”及び3G”を
充足しない。
10 e 構成要件3H”の充足性について
前記cのとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の角度」を備えないため、当該角度
が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの
角度」を成すこともない。
15 また、前記(ア)のとおり、被告各製品においては「2つの表示板のそ
れらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示され
る側」があるとしても「谷状部分」を形成せず、また、「2つの表示板
のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示
されない側」があるとしても「山状部分」を形成しない。
20 さらに、前記(ア)のとおり、被告各製品は「摩擦力により」2つの表
示板を「ユーザーの任意の折り曲げ角度」で保持する手段を備えず、
「前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのま
ま摩擦力により保持」する構成を備えていない。
したがって、被告各製品は構成要件3H”を充足しない。
25 f 構成要件3E”の充足性について
被告各製品は、構成要件3C”、3D”、3F”、3G”及び3H”を
充足しないため、構成要件3E”を充足しない。
(エ) 第3次訂正発明4に係る構成要件の充足性について
a 構成要件の文言の解釈について
前記(ア)aと同様の理由で、構成要件4E”及び4F”の「それぞれ
5 画面が表示される側の各平面の間の角度」とは画面が表示される実際
の面同士が交わることで形成される角度を指すと解釈される。また、
構成要件4C”の「2つの表示板」の「各平面の間の見開き角度」も
画面が表示される実際の面同士が交わることで形成される角度を指す
ことは明らかである。
10 b 構成要件4E”の充足性について
前記(ウ)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の角度」を備えないため、被告各製
品において、当該角度が約180度を成すことはなく、被告各製品は
構成要件4E”を充足しない。
15 c 構成要件4C”の充足性について
前記(ウ)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えないため、当
該角度が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた
1つの角度」を成すこともなく、被告各製品は構成要件4C”を充足
20 しない。
d 構成要件4F”の充足性について
前記(ウ)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の角度」を備えないため、当該角度
が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの
25 角度」を成すこともなく、被告各製品は構成要件4F”を充足しない。
e 構成要件4D”の充足性について
被告各製品は、構成要件4C”、4E”及び4F”を充足しないため、
構成要件4D”を充足しない。
(オ) 第3次訂正発明5に係る構成要件の充足性について
a 構成要件の文言の解釈について
5 (a) 「2つの表示板」の「それぞれ画面が表示される側の各平面の間
の角度」の意義
前記(ウ)aのとおり、「それぞれ画面が表示される側の各平面の間
の角度」とは画面が表示される実際の面同士が交わることで形成さ
れる角度を指す。
10 (b) 「谷状の部分」及び「山状の部分」の意義
前記(ア)aのとおり、「谷状」とは、2つの面の形成する角度が1
80度未満となる状態のことを意味すると解され、「山状」とは、2
つの面の形成する角度が180度を超える状態のことを意味すると
解される。
15 (c) 「ユーザーの任意の折り曲げ角度」の意義
前記(ア)aと同様の理由で、「ユーザーの任意の折り曲げ角度」と
は、0度から180度のあらゆる角度から無作為に選択し得る角度
を意味すると解される。
b 構成要件5F”の充足性について
20 前記(ア)のとおり、被告各製品は、「摩擦力により」2つの表示板を
「ユーザーの任意の折り曲げ角度」で保持する手段を備えない。した
がって、被告各製品は、「前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の
折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持」する構成を備えておらず、
構成要件5F”を充足しない。
25 c 構成要件5G”の充足性について
前記(ウ)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の角度」を備えないため、当該角度
が約180度を成すこともなく、被告各製品は構成要件5G”を充足
しない。
d 構成要件5D”及び5H”の充足性について
5 前記(ウ)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の角度」を備えないため、当該角度
が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの
角度」を成すこともなく、被告各製品は構成要件5D”及び5H”を
充足しない。
10 e 構成要件5I”の充足性について
前記(ウ)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の角度」を備えないため、当該角度
が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの
角度」を成すこともない。
15 また、前記(ア)のとおり、被告各製品においては「2つの表示板のそ
れらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示され
る側」があるとしても「谷状の部分」を形成せず、また、「2つの表示
板のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表
示されない側」があるとしても「山状の部分」を形成しない。
20 さらに、前記(ア)のとおり、被告各製品は「摩擦力により」2つの表
示板を「ユーザーの任意の角度」又は「ユーザーの任意の折り曲げ角
度」で保持する手段を備えない。したがって、被告各製品は「前記2
つの表示板間が前記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのまま摩擦力
により保持」する構成を備えていない。
25 したがって、被告各製品は構成要件5I”を充足しない。
f 構成要件5E”の充足性について
被告各製品は、構成要件5D”、5F”ないし5H”及び5I”を充
足しないため、構成要件5E”を充足しない。
(カ) 第3次訂正発明6に係る構成要件の充足性について
a 構成要件の文言の解釈について
5 (a) 第3次訂正発明6における「2つの表示板」の「それぞれ画面が
表示される側の各平面の間の見開き角度」及び「それぞれ画面が表
示される側の各平面の間の角度」の意義
前記(ア)aと同様の理由で、構成要件6D”における「それぞれ画
面が表示される側の各平面の間の見開き角度」とは、画面が表示さ
10 れる実際の面同士が交わることで形成される角度をいうものと解さ
れる。また、前記(ウ)aと同様の理由で、構成要件6G”ないし6I”
における「それぞれ画面が表示される側の各平面の間の角度」とは
画面が表示される実際の面同士が交わることで形成される角度を指
す。
15 (b) 「谷状部分」及び「山状部分」の意義
前記(ウ)aのとおり、「谷状」とは、2つの面の形成する角度が1
80度未満となる状態のことを意味すると解され、「山状」とは、2
つの面の形成する角度が180度を超える状態のことを意味すると
解される。なお、「ユーザーの親指が当接され得る」及び「ユーザー
20 の親指以外の複数の指が当接され得る」との文言の存在は「谷状部
分」及び「山状部分」の上記解釈を妨げるものではない。
(c) 「ユーザーの任意の折り曲げ角度」の意義
前記(ア)aと同様の理由で、「ユーザーの任意の折り曲げ角度」と
は、0度から180度のあらゆる角度から無作為に選択し得る角度
25 を意味すると解される。
b 構成要件6F”の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品は、「摩擦力により」2つの表示板を
「ユーザーの任意の折り曲げ角度」で保持する手段を備えない。した
がって、被告各製品は、「前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の
折り曲げ角度でそのまま摩擦力により保持」する構成を備えておらず、
5 構成要件6F”を充足しない。
c 構成要件6G”の充足性について
前記(ウ)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の角度」を備えないため、被告各製
品において、当該角度が約180度を成すことはなく、被告各製品は
10 構成要件6G”を充足しない。
d 構成要件6D”の充足性について
前記(ア)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の見開き角度」を備えないため、当
該角度が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた
15 1つの角度」を成すこともなく、被告各製品は構成要件6D”を充足
しない。
e 構成要件6H”の充足性について
前記(ウ)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
画面が表示される側の各平面の間の角度」を備えないため、被告各製
20 品において、当該角度が「約150度から約170度までの範囲内の
予め決められた1つの角度」を成すこともなく、被告各製品は構成要
件6H”を充足しない。
f 構成要件6I”の充足性について
前記(ウ)のとおり、被告各製品はそもそも「前記各表示板のそれぞれ
25 画面が表示される側の各平面の間の角度」を備えないため、当該角度
が「約150度から約170度までの範囲内の予め決められた1つの
角度」を成すこともない。
また、前記(ア)のとおり、被告各製品においては「2つの表示板のそ
れらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示され
る側」があるとしても「谷状部分」を形成せず、また、「2つの表示板
5 のそれらが互いに接続されている部分及びその近傍部分の画面が表示
されない側」があるとしても「山状部分」を形成しない。
さらに、前記(ア)のとおり、被告各製品は「摩擦力により」2つの表
示板を「ユーザーの任意の折り曲げ角度」で保持する手段を備えず、
「前記2つの表示板間が前記ユーザーの任意の折り曲げ角度でそのま
10 ま摩擦力により保持」する構成を備えていない。
したがって、被告各製品は構成要件6I”を充足しない。
g 構成要件6E”の充足性について
被告各製品は、構成要件6D”及び6F”ないし6I”を充足しな
いため、構成要件6E”を充足しない。
15 (2) 争点4-3-1(第3次各訂正発明についての乙1文献を引用例とする新
規性欠如の解消(出願日遡及を前提とする無効理由))について
(被告の主張)
ア 第3次各訂正発明と乙1発明との対比
(ア) 後記(原告の主張)アの原告相違点1’について
20 第3次訂正後の特許請求の範囲の各請求項には、「一方の表示板と他方
の表示板とが『それらが互いに接続されている部分』を回動中心として
相対的に回動する」としか記載されていない。そして、ここでいう「そ
れらが互いに接続されている部分」とは、「複数の回転軸」を含む広い意
味を有する構成である。
25 乙1文献には、「一方の表示板(第1のパネル12)と他方の表示板
(第2のパネル14)とが『それらが互いに接続されている部分』(蝶番
手段16)を回動中心として相対的に回動する」という技術的事項が記
載されている。蝶番手段16は一次軸36及び二次軸38を有している
が、一方の表示板(第1のパネル12)は、他方の表示板(第2のパネ
ル14)に対して、一次軸36を回動中心としても、二次軸38を回動
5 中心としても、何れにしても相対的に回動するように構成されている。
したがって、原告相違点1’は第3次各訂正発明と乙1発明との相違
点ではない。
(イ) 後記(原告の主張)アの原告相違点2’について
乙1文献においては、ユーザーが回動している2つの表示板の一方
10 (「第1のパネル12」)からユーザーが任意に(ユーザーの自由意思に
より)手指を離したとき、当該ユーザーが任意に(ユーザーの自由意思
により)手指を離した位置・角度で2つの表示板(「第1のパネル12」
及び「第2のパネル14」)の間がそのまま摩擦力により保持されるよう
に、前記ユーザーによる回動が為されるようにする摩擦力保持手段(又
15 は任意角度保持手段)(蝶番16の「ロッキング機構」」を備えている。
)
したがって、原告相違点2’は第3次各訂正発明と乙1発明との相違
点ではない。
(ウ) 後記(原告の主張)アの原告相違点3’について
そもそも、第3次訂正後の特許請求の範囲の各請求項には、「2つの表
20 示板」の「見開き角度」がユーザーによる少なくともいずれか一方の表
示板の回動により「1つの角度」に変化させられたとき、「回動をストッ
プ」させるとしか記載されておらず、「ユーザーが2つの表示板の一方を
回動させている過程において、2つの表示板間が『……1つの角度』に
なったとき、ユーザーの任意に(ユーザーの自由意思)にかかわらず、
25 当該ユーザーによる回動をストップさせ」ることは、どこにも記載され
ていない。原告は、第3次訂正後の特許請求の範囲の各請求項に記載さ
れていない内容に基づいて原告相違点3’の主張を行っており、そもそ
もこの点において失当である。
また、乙1文献では、2つの表示板(「第1のパネル12」及び「第2
のパネル14」)の見開き角度が、ユーザーによる少なくともいずれか一
5 方の表示板(例えば「第2のパネル14」)の回動により「1つの角度」
(「任意の角度」「360度の弧内」であるから「約150度から約17
(
0度の範囲までの範囲内」の角度も当然含まれる))に変化させられたと
き、中間ストッパ(蝶番16の「ロッキング機構」)により「回動をスト
ップ」させることが開示されている。
10 したがって、原告相違点3’は第3次各訂正発明と乙1発明との相違
点ではない。
(エ) 後記(原告の主張)アの原告相違点4’について
乙1文献には、2つの表示板(「第1のパネル12」及び「第2のパネ
ル14」)中の一方(例えば「第2のパネル14」)をユーザーが回動し
15 ている場合において、ユーザーが当該一方の表示板から任意に手指を離
したときは2つの表示板間が当該任意の角度でそのまま蝶番16の「ロ
ッキング機構」の摩擦力により保持されるように当該ユーザーによる回
動が為されるようにしながら、当該2つの表示板間が『約150度から
約170度までの範囲内の予め決められた1つの角度』 「任意の角度」
(
20 (「360度の弧内」であるから「約150度から約170度の範囲まで
の範囲内」の角度も当然含まれる))になったときは蝶番16の「ロッキ
ング機構」の摩擦力により当該2つの表示板間の接続部分及びその近傍
部分に『ユーザーの手指を当接することができる谷状部分及び山状部分』
(「第1のパネル12」と「第2のパネル14」との接続部分(「蝶番1
25 6」)及びその近傍部分に形成された「谷状部分」及び「山状部分」:
「FIG._4」参照)を固定的に形成する構成が開示されている。
したがって、原告相違点4’は第3次各訂正発明と乙1発明との相違
点ではない。
イ 小括
したがって、第3次各訂正発明は、本件原々々出願より前に頒布された
5 刊行物である乙1文献に記載された発明であるから、いずれも新規性を欠
く。
(原告の主張)
ア 第3次各訂正発明と乙1文献に記載された発明との対比
乙1文献に記載された発明と第3次各訂正発明との間には、以下の相違
10 点がある。
(原告相違点1’)
第3次各訂正発明においては「(2つの表示板が摩擦力が介在するように
1個の回転軸(1軸)に接続されていることなどから)ユーザーが2つの
表示板の一方を回動させるとき、2つの表示板を当該回転軸(接続部分)
15 を回転中心として互いに相対的に回動させる接続手段」を備えているのに
対し、乙1文献に記載された発明においては「(2の表示板が少なくとも回
動時には摩擦力が介在することがないように2個の回転軸(2軸)にそれ
ぞれ接続されていることなどから)、ユーザーが2つの表示板の一方を回動
させるとき、2つの表示板が互いにそれぞれ独立に回動する接続手段」し
20 か備えていない点。
(原告相違点2’)
第3次訂正発明1、3、5及び6においては「(2つの表示板が摩擦力が
介在するように1個の回転軸(1軸)に接続されていることなどから)、ユ
ーザーが回動している2つの表示板中の一方からユーザーが任意に(ユー
25 ザーの自由意思により)手指を離したとき、当該ユーザーが任意に(ユー
ザーの自由意思により)手指を離した位置・角度で2つの表示板の間がそ
のまま摩擦力により保持されるように、前記ユーザーによる回動が為され
るようにする摩擦力保持手段(又は任意角度保持手段)」を備えているのに
対し、乙1文献に記載された発明においては「(2の表示板が少なくとも回
動時には摩擦力が介在することがないように2個の回転軸(2軸)にそれ
5 ぞれ接続されていることなどから)、ユーザーが回動している2つの表示板
中の一方からユーザーが任意に(ユーザーの自由意思により)手指を離し
たとき、2つの表示板の間がそのまま摩擦力などにより保持させる構成」
は記載も示唆もない点。
(原告相違点3’)
10 第3次各訂正発明においては「ユーザーが2つの表示板中の一方を回動
させている過程において、2つの表示板間が『約150度から約170度
までの範囲内の予め決められた1つの角度』になったとき、ユーザーの任
意に(ユーザーの自由意思)にかかわらず、当該ユーザーによる回動をス
トップさせ且つ当該2つの表示板間を当該角度で固定する中間ストッパ」
15 を備えているのに対し、乙1文献に記載された発明においては「少なくと
もユーザーが2つの表示板中の一方を回動させている過程においては、ユ
ーザーの任意に(ユーザーの自由意思)にかかわらず、当該ユーザーによ
る回動をストップさせ、又は当該2つの表示板間を当該角度で固定する構
成」は記載も示唆もない点。
20 (原告相違点4’)
第3次各訂正発明1ないし3、5及び6においては「2つの表示板中の
一方をユーザーが回動している場合において、ユーザーが当該一方の表示
板から任意に手指を離したときは2つの表示板間が当該任意の角度でその
まま摩擦力により保持されるように当該ユーザーによる回動が為されるよ
25 うにしながら、当該2つの表示板間が『約150度から約170度までの
範囲内の予め決められた1つの角度』になったときは当該2つの表示板間
の接続部分及びその近傍部分に『ユーザーの手指を当接することができる
谷状部分及び山状部分』を固定的に形成する構成」を備えているのに対し、
乙1文献に記載された発明においてはそのような構成は記載も示唆もない
点。
5 イ 小括
以上のとおり、原告相違点1’ないし4’に係る構成は、乙1文献には
全く記載も示唆もないから、第3次各訂正発明には、新規性欠如の無効理
由は存在しない。
(3) 争点4-3-2(第3次各訂正発明についての乙1文献を主引用例とする
10 進歩性欠如の解消(出願日遡及を前提とする無効理由))について
(被告の主張)
ア 原告相違点1’ないし4’に係る構成の容易想到性
(ア) 乙2発明との組合せ
乙2発明の電子機器は、乙1発明のコンピュータノート10と同様に
15 「折り畳み可能な電子機器」であるから、乙2発明と乙1発明は技術分
野が明らかに共通する。乙1文献には、乙1発明のコンピュータノート
10が「ラップトップ型パソコン」の態様としても使用され得ることが
明確に開示されており、この点において特に乙2発明の技術分野と共通
する。
20 また、乙1発明のコンピュータノート10は2つの回動軸を有するも
のであり、「ロッキング機構」も2つ存在する。これら2つの「ロッキン
グ機構」のそれぞれに乙2発明の「(ダンパー手段とコイルバネ等からな
る)チルト機構」を追加するか、若しくは、何れか一方の「ロッキング
機構」を乙2発明の「チルト機構」で置換することにより、任意角度保
25 持手段と中間左右見開きストッパとの双方を備える単一の表示装置を構
築することは容易である。
したがって、仮に第3次訂正発明と乙1発明との間に原告相違点1’
ないし4’があったとしても、これらの相違点に係る構成は、乙1発明
に乙2発明を適用することで、本件原々々出願の出願日において当業者
が容易に想到することができたものである。
5 (イ) 乙3発明との組合せ
乙3発明の電子機器は、乙1発明のコンピュータノート10と同様に
「折り畳み可能な電子機器」であるから、乙3発明と乙1発明は技術分
野が明らかに共通する。乙1文献には、乙1発明のコンピュータノート
10が「ラップトップ型パソコン」の態様としても使用され得ることが
10 明確に開示されており、この点において特に乙3発明の技術分野と共通
する。
また、乙1発明のコンピュータノート10は2つの回動軸を有するも
のであり、「ロッキング機構」も2つ存在する。これら2つの「ロッキン
グ機構」のそれぞれに乙3発明の「(カム手段とコイルバネ等からなる)
15 チルト機構」を追加するか、若しくは、何れか一方の「ロッキング機構」
を乙3発明の「チルト機構」で置換することにより、任意角度保持手段
と中間左右見開きストッパとの双方を備える単一の表示装置を構築する
ことは容易である。
したがって、仮に第3次訂正発明と乙1発明との間に原告相違点1’
20 ないし4’があったとしても、これらの相違点に係る構成は、乙1発明
に乙3発明を適用することで、本件原々々出願の出願日において当業者
が容易に想到することができたものである。
(ウ) 乙4発明との組合せ
a 動機付けについて
25 乙4発明は、「小型電子機器」に係るものであり、なおかつ、乙1発
明のコンピュータノート10と同様に「折り畳み可能な電子機器」に
係るものであるから、乙4発明と乙1発明は技術分野が明らかに共通
する。乙1文献には、乙1発明のコンピュータノート10が「ラップ
トップ型パソコン」の態様としても使用され得ることが明確に開示さ
れており、この点において特に乙4発明の技術分野と共通する。
5 原告は、乙1発明に乙4発明を適用するためには、乙1文献の請求
項15に記載された「第1及び第2の固定手段」を実現するための具
体的構成として唯一記載された「第1及び第2のロッキング機構」と
いう主たる構成を除外すること(又は主たる構成を大幅に変更するこ
と)が必要になる等と主張するが、乙1発明の内容は請求項15に記
10 載された内容に限定されるものではないから、そもそもこの点におい
て原告の主張は適切ではない。
また、乙1発明における「ロッキング機構」は、乙4文献の図6に
示される従来の折り畳み式小型電子機器と同様にフリーストップ型の
機構であり、そのような機構においては、乙4文献に記載されたよう
15 な、パネルを「ある傾斜角度で開いた状態」において「小さな衝撃、
振動」等があると「停止位置がずれる」という技術的課題は当然発生
し得る。乙4発明は、まさにかかる技術的課題を解決するためにされ
たものであるから、乙1発明におけるフリーストップ型の「ロッキン
グ機構」の上記技術的課題を解決するために、乙4発明を適用するこ
20 とは、何ら困難なことではない。
そして、乙1発明のコンピュータノート10は2つの回動軸を有す
るものであり、「ロッキング機構」も2つ存在する。これら2つの「ロ
ッキング機構」のそれぞれに乙4発明の「ポップアップ機構」を追加
するか、若しくは、何れか一方の「ロッキング機構」を乙4発明の
25 「ポップアップ機構」で置換することは充分にあり得ることである。
よって、乙1発明に乙4発明を適用するためには乙1発明の「第1及
び第2のロッキング機構」を除外する(又は大幅に変更する)必要が
ある、という原告の主張は失当である。
したがって、当業者において乙1発明に乙4発明を適用する動機付
けがある。
5 b 阻害要因について
乙1発明のコンピュータノート10における「背中合わせ」の態様
は、あくまでも、4つの代表的な態様のうちの1つにすぎないもので
ある。仮に、乙1発明に乙4発明のポップアップ機構を適用した結果、
「背中合わせ」の態様が実現できなくなったとしても、乙1発明の目
10 的である「2つのパネルの表示部」(デジタイザ)を「連携」させて
「ユーザーが同時に」見ることができるようにすることは達成される。
したがって、乙1発明に乙4発明のポップアップ機構を適用すると
「背中合わせ」の並置ができなくなるから当該適用について阻害要因
があるとの原告の主張は失当である。
15 また、原告は、乙1発明に乙4発明を適用すると装置全体が大型化
するから、当該適用については阻害要因があると主張している。しか
し、この主張も、乙1発明のコンピュータノート10を「360度」
回転させて「背中合わせ」にすることを前提としたものであるから、
そもそもこの前提が誤っている上、乙1発明に乙4発明を組み合わせ
20 ても回転軸が手持ちできなくなるほど大径となることはあり得ない。
そして、前記aのとおり、乙1発明のコンピュータノート10は2
つの回動軸を有するものであり、「ロッキング機構」も2つ存在する。
これら2つの「ロッキング機構」のそれぞれに乙4発明の「ポップア
ップ機構」を追加するか、若しくは、何れか一方の「ロッキング機構」
25 を乙4発明の「ポップアップ機構」で置換することにより、任意角度
保持手段と中間左右見開きストッパとの双方を備える装置を想到する
ことは容易である。
したがって、当業者において乙1発明に乙4発明を適用することに
阻害要因はない。
c 以上のとおり、仮に第3次訂正発明と乙1発明との間に原告相違点
5 1’ないし4’があったとしても、これらの相違点に係る構成は、乙
1発明に乙4発明を適用することで、本件原々々出願の出願日におい
て当業者が容易に想到することができたものである。
(エ) 乙2文献ないし乙4文献に記載された周知技術との組合せ
前記(ア)ないし(ウ)のとおり、乙2文献ないし乙4文献に開示されてい
10 る電子機器は、乙1発明のコンピュータノート10と同様に「折り畳み
可能な電子機器」であるから、乙2文献ないし乙4文献に開示されてい
る電子機器と乙1発明は技術分野が明らかに共通する。
また、乙1発明のコンピュータノート10は2つの回動軸を有するも
のであり、「ロッキング機構」も2つ存在する。これら2つの「ロッキン
15 グ機構」のそれぞれに、乙2文献又は乙3文献の「チルト機構」や乙4
文献の「ポップアップ機構」を追加するか、若しくは、何れか一方の
「ロッキング機構」を上記の「チルト機構」や「ポップアップ機構」で
置換することにより、任意角度保持手段と中間左右見開きストッパとの
双方を備える単一の表示装置を構築することは容易である。
20 したがって、仮に第3次訂正発明と乙1発明との間に原告相違点1’
ないし4’があったとしても、これらの相違点に係る構成は、乙1発明
に乙2文献ないし乙4文献に記載されている周知技術を適用することで、
本件原々々出願の出願日において当業者が容易に想到することができた
ものである。
25 イ 小活
以上によれば、第3次各訂正発明と乙1発明との間に原告相違点1’な
いし4’があるとしても、これらはいずれも本件原々々出願の出願日にお
いて当業者が容易に想到し得たものであるから、第3次各訂正発明はいず
れも進歩性を有しない。
(原告の主張)
5 ア 原告相違点1’ないし4’に係る構成の容易想到性について
(ア) 乙2文献に記載された発明との組合せについて
乙2文献に記載された発明は、机上に据え置いて使用するキーボード
側本体に対して、ユーザーが手指で表示パネルを持ち上げて回動させる
とき、所定角度範囲内において、ユーザーが任意に(ユーザーの自由意
10 思で)表示パネルから手指を離したとき、当該手指を離した位置・角度
で、表示パネルが静止・保持できるようにするチルト機構を、ダンパー
手段とコイルバネ等により構成したものであるから、仮に乙1文献に記
載された発明に乙2文献に記載された発明を適用しても、原告相違点3’
に係る構成(中間ストッパ)に到達しない。
15 また、乙1文献に記載された発明と乙2文献に記載された発明とは、
その技術分野、課題及び作用効果が大きく異なっており、乙1文献には
乙2文献に記載された発明のような摩擦力を利用したチルト機構を適用
できることを示唆する記載もない。よって、当業者において乙1文献に
記載された発明に乙2文献に記載された発明を適用する動機付けはなく、
20 前者に後者を適用することによって当業者が原告相違点1’ないし4’
に係る構成を容易に想到できたとはいえない。
(イ) 乙3文献に記載された発明との組合せについて
乙3文献に記載された発明は、机上に据え置いて使用するキーボード
側本体に対して、ユーザーが手指で表示パネルを持ち上げて回動させる
25 とき、所定角度範囲内において、ユーザーが任意に(ユーザーの自由意
思で)表示パネルから手指を離したとき、当該手指を離した位置・角度
で、表示パネルが静止・保持できるようにするチルト機構を、カム手段
とコイルバネ等により構成したものであるから、仮に乙1文献に記載さ
れた発明に乙3文献に記載された発明を適用しても、原告相違点3’に
係る構成(中間ストッパ)に到達しない。
5 また、乙1文献に記載された発明と乙3文献に記載された発明とは、
その技術分野、課題及び作用効果が大きく異なっており、乙1文献には
乙3文献に記載された発明のような摩擦力を利用したチルト機構を適用
できることを示唆する記載もない。よって、当業者において乙1文献に
記載された発明に乙3文献に記載された発明を適用する動機付けはなく、
10 前者に後者を適用することによって当業者が原告相違点1’ないし4’
に係る構成を容易に想到できたとはいえない。
(ウ) 乙4文献に記載された発明との組合せについて
a 副引用発明を適用しても相違点に到達できないこと
乙4文献に記載された発明は、机上に据え置いて使用するキーボー
15 ド側本体に対して、ユーザーが手指で表示パネルを持ち上げて回動さ
せるとき、所定角度範囲内において、外周面に形成された複数個(例
えば5個)の溝の位置で、表示パネルが静止・保持できるようにする
ポップアップ型チルト機構を備えたヒンジ部(蝶番手段)であるから、
仮に乙1文献に記載された発明に乙4文献に記載された発明を適用し
20 ても、原告相違点3’に係る構成(中間ストッパ)に到達しない。
b 動機付けについて
乙1文献に記載された発明と乙4文献に記載された発明とは、その
技術分野、課題、及び作用効果が大きく異なっており、乙1文献中に
は乙4文献に記載された発明のようなポップアップ型チルト機構を備
25 えたヒンジ部(蝶番手段)を適用できることを示唆する記載もなく、
乙1文献に記載された発明に乙4文献に記載された発明を適用するた
めには、乙1文献に記載された発明において、請求項15に記載され
た「第1及び第2の固定手段」を実現するための具体的構成として唯
一記載された「第1及び第2のロッキング機構」という主たる構成を
除外すること又はそのような主たる構成を大幅に変更することが必要
5 になってしまう。
よって、当業者において乙1文献に記載された発明に乙4文献に記
載された発明を適用する動機付けはなく、前者に後者を適用すること
によって当業者が原告相違点1’ないし4’に係る構成を容易に想到
できたとはいえない。
10 c 阻害要因について
仮に乙1文献に記載された発明の「第1及び第2のロッキング機構」
に乙4文献に記載された発明の「ポップアップ型チルト機構」を適用
(置換等)すると、「360度の回動」及び「背中合わせの並置」がで
きなくなり、また、装置全体を「薄型かつ軽量」にすることができず、
15 「片手でコンピュータを保持しもう片方の手でデータを入力する」と
いう目的に反する結果となる。
さらに、原告相違点3’については、上記「第1及び第2のロッキ
ング機構」に対して「ポップアップ型チルト機構」を適用すると、「任
意角度保持手段」に当たると被告が主張する「第1及び第2のロッキ
20 ング機構」が失われることになる。
このように、乙1文献に記載された発明に乙4文献に記載された発
明を適用すると、前者の課題及び作用効果を損なう結果になってしま
うから、前者に後者を適用することには阻害要因がある。
(エ) 乙2文献ないし乙4文献に記載された周知技術との組合せについて
25 a 周知技術の認定について
乙2文献ないし乙4文献においては、机上に据え置いて使用するキ
ーボード側本体と表示パネルとを、ユーザーが表示パネルを手指で掴
んでキーボード側本体に対し回動できるように、互いに接続した机上
据置型の電子機器において、ユーザーが回動途中で表示パネルから任
意に(ユーザーの自由意思で)手指を離したとき、そのユーザーが表
5 示パネルから任意に(ユーザーの自由意思で)手指を離した位置・角
度で表示パネルを静止させ保持(半固定)されるようにしたヒンジ部
(蝶番)が記載されているが、その具体的な構成は、互いに全く異な
る内容であるから、当業者は、本件原々々出願の出願日において、乙
2文献ないし乙4文献から上記の具体的構成をまとめた周知技術なる
10 ものを導き出すことはできなかった。
b 乙1文献に記載された発明への周知技術の適用について
乙2文献ないし乙4文献から抽出される周知技術なるものは、机上
に据え置いて使用するキーボード側本体に対して、ユーザーが手指で
表示パネルを持ち上げて回動させるに際し、所定角度範囲内において、
15 ユーザーが任意に(ユーザーの自由意思で)表示パネルから手指を離
したとき、当該手指を離した位置・角度で、表示パネルが静止・保持
できるようにする、ダンパー手段、カム手段などによる摩擦力による
チルト機構又は外周面に複数個の溝を形成した大径回転軸を備えたポ
ップアップ型チルト機構を有するヒンジ部に係るものであるから、仮
20 に乙1文献に記載された発明にこのような周知技術を適用しても、原
告相違点3’に係る構成(中間ストッパ)に到達しない。
また、乙1文献に記載された発明と上記の周知技術とは、その技術
分野、課題及び作用効果が大きく異なっており、乙1文献中には上記
の周知技術に係るチルト機構を適用できることを示唆する記載もない。
25 よって、当業者に乙1文献に記載された発明に上記の周知技術を適用
する動機付けはなく、前者に後者を適用することによって当業者が原
告相違点1’ないし4’に係る構成を容易に想到できたとはいえない。
イ 小活
以上によれば、第3次各訂正発明について、乙1文献を主引用例とする
進歩性欠如の無効理由は存在しない。
5 (4) 争点4-3-3(第3次各訂正発明についての乙11文献を引用例とする
新規性欠如の解消(出願日繰り下がりを前提とする無効理由))について
(被告の主張)
第3次各訂正発明は、本件各発明と同様に、乙11文献の記載に基づいて
新規性を欠くものであるから、第3次訂正によってこの点の無効理由は解消
10 しない。
(原告の主張)
被告の主張は争う。
(5) 争点4-3-4(第3次各訂正発明についての乙12補正書に係る補正の
補正要件違反の解消(出願日繰り下がりを前提とする無効理由))について
15 (被告の主張)
第3次訂正は、本件補正2による新規事項の追加を治癒するものではない
から、第3次訂正によっても、この点の無効理由は解消しない。
(原告の主張)
被告の主張は争う。
20 以上
別紙6 本件明細書の図面
【図1】
【図2】
【図8】
【図9】
別紙7 乙1文献の図面
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
別紙8 乙4文献の図面
第1図
第2図
第3図
第4図
第5図
第6図
別紙9 乙26文献の図面
第3図
第4図
最新の判決一覧に戻る