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令和2(ネ)10032特許権侵害行為差止等請求控訴事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和4年7月20日
事件種別 民事
対象物 医薬品相互作用チェック装置
法令 特許権
特許法102条2項8回
特許法36条6項1号1回
特許法36条4項1号1回
特許法100条1項1回
キーワード 侵害26回
損害賠償22回
差止11回
特許権9回
実施8回
進歩性5回
間接侵害2回
ライセンス2回
新規性1回
主文 1 一審原告らの各控訴に基づき、原判決主文2項、3項及び4項(一審
2 一審被告は、一審原告湯山製作所に対し、1604万8683円及び
202万9656円に対する同年9月23日から、うち178万82
59円に対する平成29年1月31日から、うち84万4334円に
3 一審被告は、一審原告システムヨシイに対し、1604万8683円
8259円に対する平成29年1月31日から、うち84万4334
4 一審原告らの当審におけるその余の拡張請求をいずれも棄却する。
5 一審被告の各控訴をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを10分し、その7を一審原告
7 この判決は、1項から3項までに限り、仮に執行することができる。
8 なお、原判決主文1項及び4項(一審原告らの差止請求及び廃棄請求
事件の概要 1 本件は、発明の名称を「医薬品相互作用チェック装置」とする特許に係る特 許権及び発明の名称を「医薬品相互作用チェックシステム」とする特許に係る特許 権を共有する一審原告らが、一審被告が製造し、販売する原判決別紙「被告製品目 録」記載の物件(以下「被告製品」という。)は上記各特許に係る特許発明の技術 的範囲に属すると主張し、一審被告に対して、特許法100条1項に基づき、被告 製品の製造、販売、販売の申出及び販売のための展示並びに被告製品にインストー ル又は適用することが可能な医薬品の相互作用に関するデータの頒布の差止めを求 め、同条2項に基づき、被告製品及び半製品(被告製品の構造を具備しているが、 いまだ製品として完成に至らないもの)並びに被告製品の製造に供する製造設備の 廃棄を求め、民法709条に基づき、損害賠償金各5000万円(一部請求)及び これに対する不法行為の日の後である平成28年8月30日(訴状送達の日の翌日) から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合 による遅延損害金の支払を求めた事案である。

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判決文

令和4年7月20日判決言渡
令和2年(ネ)第10032号 特許権侵害行為差止等請求控訴事件
(原審・大阪地方裁判所平成28年(ワ)第7678号)
口頭弁論終結日 令和4年3月23日
判 決
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
主 文
1 一審原告らの各控訴に基づき、原判決主文2項、3項及び4項(一審
原告らの損害賠償請求を棄却した部分に限る。)を次のとおり変更す
る。
(1) 一審被告は、一審原告湯山製作所に対し、5000万円及びこれ
に対する平成28年8月30日から支払済みまで年5分の割合によ
る金員を支払え。
(2) 一審被告は、一審原告システムヨシイに対し、5000万円及び
これに対する平成28年8月30日から支払済みまで年5分の割合
による金員を支払え。
2 一審被告は、一審原告湯山製作所に対し、1604万8683円及び
うち1138万6434円に対する平成28年8月30日から、うち
202万9656円に対する同年9月23日から、うち178万82
59円に対する平成29年1月31日から、うち84万4334円に
対する同年12月22日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合によ
る金員を支払え。
3 一審被告は、一審原告システムヨシイに対し、1604万8683円
及びうち1138万6434円に対する平成28年8月30日から、
うち202万9656円に対する同年9月23日から、うち178万
8259円に対する平成29年1月31日から、うち84万4334
円に対する同年12月22日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合
による金員を支払え。
4 一審原告らの当審におけるその余の拡張請求をいずれも棄却する。
5 一審被告の各控訴をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを10分し、その7を一審原告
らの負担とし、その余を一審被告の負担とする。
7 この判決は、1項から3項までに限り、仮に執行することができる。
8 なお、原判決主文1項及び4項(一審原告らの差止請求及び廃棄請求
を棄却した部分に限る。)は、一審原告らの訴えの取下げにより、失
効している。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 一審原告ら
(1) 原判決主文2項、3項及び4項(一審原告らの損害賠償請求を棄却した部
分に限る。)を次のとおり変更する。
ア 一審被告は、一審原告湯山製作所に対し、2億円及びこれに対する平成28
年8月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(一審原告湯山製
作所は、当審において、原審における5000万円及びこれに対する同旨の遅延損
害金の支払を求める損害賠償請求をこのように拡張した。)。
イ 一審被告は、一審原告システムヨシイに対し、2億円及びこれに対する平成
28年8月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(一審原告シ
ステムヨシイは、当審において、原審における5000万円及びこれに対する同旨
の遅延損害金の支払を求める損害賠償請求をこのように拡張した。)。
(2) 訴訟費用は、第1、2審とも一審被告の負担とする。
(3) 仮執行宣言
(4) なお、一審原告らは、当審において、原審で求めていた原判決別紙「被告
製品目録」記載の物件の製造、販売、販売の申出及び販売のための展示の差止請求、
同目録記載の物件及び半製品(同目録記載の物件の構造を具備しているが、いまだ
製品として完成に至らないもの)の廃棄請求、同目録記載の物件の製造に供する製
造設備の廃棄請求並びに同目録記載の物件にインストール又は適用することが可能
な医薬品の相互作用に関するデータの頒布の差止請求につき、訴えを取り下げた。
2 一審被告
(1) 原判決主文2項及び3項を取り消す。
(2) 上記取消しに係る部分につき、一審原告らの請求をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は第1、2審とも一審原告らの負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は、発明の名称を「医薬品相互作用チェック装置」とする特許に係る特
許権及び発明の名称を「医薬品相互作用チェックシステム」とする特許に係る特許
権を共有する一審原告らが、一審被告が製造し、販売する原判決別紙「被告製品目
録」記載の物件(以下「被告製品」という。)は上記各特許に係る特許発明の技術
的範囲に属すると主張し、一審被告に対して、特許法100条1項に基づき、被告
製品の製造、販売、販売の申出及び販売のための展示並びに被告製品にインストー
ル又は適用することが可能な医薬品の相互作用に関するデータの頒布の差止めを求
め、同条2項に基づき、被告製品及び半製品(被告製品の構造を具備しているが、
いまだ製品として完成に至らないもの)並びに被告製品の製造に供する製造設備の
廃棄を求め、民法709条に基づき、損害賠償金各5000万円(一部請求)及び
これに対する不法行為の日の後である平成28年8月30日(訴状送達の日の翌日)
から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合
による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原審は、一審原告らの請求を被告製品の製造、販売、販売の申出及び販売のため
の展示の差止め並びに各1822万6796円及びうち1688万8608円に対
する平成28年8月30日から、うち48万2719円に対する同年9月23日か
ら、うち55万1102円に対する平成29年1月31日から、うち30万436
7円に対する同年12月22日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による遅延
損害金の支払を求める限度で認容し、その余をいずれも棄却したところ、一審原告
ら及び一審被告は、それぞれ自己の敗訴部分を不服として本件各控訴を提起した。
上記各控訴の提起の後、一審原告らは、上記差止請求及び廃棄請求に係る訴えを
取り下げ、その後、一審被告は、原判決中、被告製品の製造、販売、販売の申出及
び販売のための展示の差止めを命じる部分に対する各控訴を取り下げ、更にその後、
一審原告らの上記訴えの取下げに対する同意擬制が成立した。
また、一審原告らは、当審において、上記損害賠償請求につき、各2億円(一部
請求)及びこれに対する平成28年8月30日から支払済みまで年5分の割合によ
る遅延損害金の支払を求めて請求を拡張した。
2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張
次のとおり改め、後記3のとおり当審で追加された争点及び争点に関する当事者
の主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の第2の2及び3並びに第
3(差止請求及び廃棄請求のみに関する部分を除く。)に記載のとおりであるから、
これを引用する。
(1) 原判決3頁25行目から26行目にかけて及び4頁2行目の各「会社であ
る。」をいずれも「会社である(甲43)。」と改める。
(2) 原判決4頁8行目の「共有している」を「共有しており、その共有割合に
ついて、自ら1:1と定めている」と改める。
(3) 原判決4頁8行目及び22行目の各「願書に添付された」をいずれも「設
定登録時の」と改める。
(4) 原判決4頁26行目の「本件特許1」の次に「に係る出願」を加える。
(5) 原判決8頁23行目の「EDIS 発明」を「医療用添付文書情報サービス「E
DIS」により公然実施されていた発明(乙3、7、8。以下「EDIS発明」と
いう。)」と改める。
(6) 原判決9頁4行目の「乙14発明」を「特開平11-195078号公報
(乙14。以下「乙14文献」という。)に記載された発明(以下「乙14発明」
という。)」と改める。
(7) 原判決11頁4行目及び15頁24行目の各「包袋禁反言に反する」をい
ずれも「包袋禁反言の法理に反する」と改める。
(8) 原判決15頁9行目及び10行目の各「他の」の次にいずれも「一の」を
加える。
(9) 原判決17頁8行目の「記憶装置」を「記憶手段」と改める。
(10) 原判決20頁8行目から9行目にかけての「本件特許」を「本件特許1」
と改める。
(11) 原判決20頁19行目から21行目までを以下のとおり改める。
「ア EDIS発明の構成は、次のとおりである。」
(12) 原判決21頁21行目及び22行目の各「他の」の次にいずれも「一の」
を加える。
(13) 原判決22頁5行目の「このような」を「この点に関する」と改める。
(14) 原判決27頁19行目の「本件発明1-9及び2-9は」の次に「、本件
発明1-1及び2-1の構成要件に加えて」を加える。
(15) 原判決29頁17行目から19行目までを以下のとおり改める。
「ア 乙14発明の構成は、次のとおりである。」
(16) 原判決30頁25行目の「乙9文献」を「「開局薬局での薬物間相互作用
に関する服薬指導の問題点と解決策」(月刊薬事38巻3号(平成8年))(乙9。
以下「乙9文献」という。)」と改める。
(17) 原判決30頁26行目から31頁1行目にかけての「「開局薬局での薬物
間相互作用に関する服薬指導の問題点と解決策」(月刊薬事 Vol.38,No.3(1996)。
乙9。以下「乙9文献」という。)」を「乙9文献」と改める。
(18) 原判決35頁18行目の「一般的な課題であった」を「自明であった」と
改める。
(19) 原判決37頁3行目の「本件特許は,実施可能要件を欠き(特許法36条
4項1号)」を「本件明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件(平成14年法
律第24号による改正前の特許法36条4項)を欠き、本件特許は」と改める。
(20) 原判決37頁26行目の「本件特許は,サポート要件を欠き(特許法36
条6項1号)」を「本件特許に係る特許請求の範囲の記載は、サポート要件(平成
14年法律第24号による改正前の特許法36条6項1号)を欠き、本件特許は」
と改める。
(21) 原判決38頁21行目の「付加的表示」を「一審原告ら主張の②及び④の
ような付加的表示」と改める。
(22) 原判決40頁1行目から3行目までを削る。
(23) 原判決41頁22行目の「仕入れ」から23行目の「インストールするこ
ともあるが」までを「仕入れることもあるが」と改める。
(24) 原判決42頁4行目から10行目までを削る。
(25) 原判決44頁9行目から48頁21行目までを以下のとおり改める。
「(2) 本件特許権の侵害による一審被告の売上げ
ア 本件特許権の侵害による一審被告の売上げとしては、①本件ソフト及びハー
ドウェアの売上げ、②導入作業料(本件ソフトのハードウェアへのインストールに
係るもの)及びその他のシステム接続料に係る売上げ並びに③月次利用料に係る売
上げ(いずれも消費税相当額を含む。)が含まれ、その具体的な額等は、別紙「被
告システム売上額一覧(一審原告)」に記載のとおりである。その合計は、8億4
807万4441円となる。
イ 一審被告は、被告システムの販売において、導入時の初期費用を低く設定し、
その後に徴収する月次利用料を高額にする価格体系を採用している。そうすると、
月次利用料の実態は、被告システムの譲渡の対価の延べ払いや更新データの対価で
あって、直接侵害行為又は間接侵害行為の対価であるといえるから、特許法102
条2項にいう「利益」の額を算定するに当たって考慮されるべきである。
ウ 本件において一審原告らが一審被告から支払を受ける損害賠償金は、「無体
財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠
償金」として「資産の譲渡等」(消費税法4条1項)の対価に該当するから、消費
税の課税対象となる。そのため、一審原告らが一審被告の本件特許権の侵害により
被った損害のてん補を受けるためには、一審原告らに課税されるであろう消費税に
相当する金員も損害として受領することが必要である。
したがって、本件において、特許法102条2項にいう「利益」の額を算定する
に当たっては、消費税相当額を加算すべきである。」
(26) 原判決49頁16行目の「以外に」の次に「電子カルテ等の各製品が」を
加える。
(27) 原判決50頁5行目の「同項の適用について競合品の製造,販売で足りる
としても」を「競合品の製造及び販売があれば同項が適用されるとしても」と改め
る。
(28) 原判決51頁4行目の「作業割合」を「作業費の割合」と改める。
(29) 原判決51頁7行目及び8行目を削る。
(30) 原判決51頁10行目の「使用対価」を「使用の対価」と改める。
(31) 原判決51頁12行目末尾に改行して以下のとおり加える。
「 一審被告は、被告システムの販売等に関し、顧客から受領した消費税に相当
する金員を国庫に納付したから、顧客から受領した消費税に相当する金員は、特許
法102条2項にいう「利益」に当たらない。なお、一審原告らが受領する損害賠
償金は、これが特許法102条2項によって算定されたものである場合には、消費
税の課税対象取引に該当しないと解すべきである。」
(32) 原判決178頁11行目の「更新されさる」を「更新される」と改める。
(33) 原判決189頁の表中の「甲44」を「乙44」と改める。
3 当審で追加された争点及び争点に関する当事者の主張
争点7(特開平11-47238号公報(乙104。以下「乙104文献」とい
う。)を主引用例とする本件発明1-1、1-2、1-4、1-9、2-1、2-
2、2-4及び2-9の進歩性欠如)について
(一審被告の主張)
(1) 本件発明1-1及び2-1について
ア 乙104文献に記載された発明(以下「乙104発明」という。)
乙104文献には、次の発明が記載されている
相互作用チェックシステムに搭載される医薬品の相互作用を定義するルールデー
タベースであって、一の医薬品の添付文書を参照してルールデータベース作成装置
を用いて選択入力された他の一の医薬品との相互作用に関するルールと、前記他の
一の医薬品の添付文書を参照してルールデータベース作成装置を用いて選択入力さ
れた前記一の医薬品との相互作用に関するルールの2通りで、相互作用が発生する
組み合わせを、各医薬品の効能を定めた薬価基準収載用医薬品コードの先頭7桁の
薬効コード同士の組み合わせとして個別に格納するルールデータベース。
イ 本件発明1-1及び2-1と乙104発明との対比
本件発明1-1と乙104発明は、次の相違点A及びBで相違し、本件発明2-
1と乙104発明は、次の相違点AないしCで相違する。
(相違点A)
本件発明1-1及び2-1が、「相互作用マスタを記憶する記憶手段」と、「入
力された新規処方データの各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とし、自己医薬品
と相手医薬品の組み合わせが、前記相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせ
と合致するか否かを判断することにより、相互作用チェック処理を実行する制御手
段」を有するシステムであるのに対し、乙104発明は、そのような記憶手段と制
御手段を有するシステムでない点
(相違点B)
本件発明1-1及び2-1が、「対象となる自己医薬品の名称と、相互作用チェ
ック処理の対象となる相手医薬品の名称とをマトリックス形式の行又は列にそれぞ
れ表示し、前記制御手段による自己医薬品と相手医薬品の間の相互作用チェック処
理の結果を、前記マトリックス形式の該当する各セルに表示する表示手段」を有す
るシステムであるのに対し、乙104発明は、そのような表示手段を有するシステ
ムでない点
(相違点C)
本件発明2-1が、「記憶手段」、「制御手段」及び「表示手段」を備えた機器
がネットワーク接続されているシステムであることを特定するのに対し、乙104
発明は、これらの手段を備えた機器がネットワーク接続されているシステムでない

ウ 相違点についての容易想到性
(ア) 相違点Aについて
周知技術(乙3、5、7、8、13、14)及び技術常識(乙3、110)に照
らすと、乙104発明のルールデータベースを、周知技術である双方向チェックを
行う制御手段を有する相互作用チェックシステムに搭載し、相互作用チェック装置
を構成することは極めて容易であったから、当業者は、相違点Aに係る本件発明1
-1及び2-1の構成に容易に想到し得たものである。
(イ) 相違点Bについて
乙104発明と上記アの周知技術を組み合わせて相互作用チェックシステムを構
成するに当たり、相違点Bに係る本件発明1-1及び2-1の構成を採用すること
は極めて容易であったから、当業者は、相違点Bに係る本件発明1-1及び2-1
の構成に容易に想到し得たものである。
(ウ) 相違点Cについて
相互作用チェックに必要な各手段を備えた機器であるコンピュータがネットワー
ク接続されることは周知技術であるから、当業者は、乙104発明に周知技術を適
用して、機器をネットワーク接続することに容易に想到し得たものである。
(2) 本件発明1-2及び2-2について
ア 本件発明1-2及び2-2と乙104発明との対比
本件発明1-2と乙104発明は、相違点A及びBで相違し、本件発明2-2と
乙104発明は、相違点AないしCで相違する。
イ 相違点についての容易想到性
前記(1)ウと同じ。
(3) 本件発明1-4及び2-4について
ア 本件発明1-4及び2-4と乙104発明との対比
本件発明1-4と乙104発明は、相違点A及びB並びに次の相違点Dで相違し、
本件発明2-4と乙104発明は、相違点AないしC及び次の相違点Dで相違する。
(相違点D)
本件発明1-4及び2-4が、「前記記憶手段は、患者データを含む過去の処方
データを蓄積した蓄積処方データをさらに記憶し」、「前記相手医薬品は、蓄積処
方データの各医薬品を含む」のに対し、乙104発明は、そのような構成を有しな
い点
イ 相違点についての容易想到性
(ア) 相違点AないしCについて
前記(1)ウと同じ。
(イ) 相違点Dについて
過去の処方データを蓄積し、これも含めて相互作用チェックをすることは周知技
術であるから、当業者は、乙104発明に周知技術を適用して、相違点Dに係る本
件発明1-4及び2-4の構成に容易に想到し得たものである。
(4) 本件発明1-9及び2-9について
ア 本件発明1-9及び2-9と乙104発明との対比
本件発明1-9と乙104発明は、相違点A及びB並びに次の相違点Eで相違し、
本件発明2-9と乙104発明は、相違点AないしC及び次の相違点Eで相違する。
(相違点E)
本件発明1-9及び2-9が、「前記記憶手段は、…相互作用共通マスタとは別
に、各医療施設に応じて作成した相互作用個別マスタを記憶し」、「前記制御手段
は、前記相互作用共通マスタに優先して、前記相互作用個別マスタに基づく相互作
用チェック処理を実行する」のに対し、乙104発明は、そのような構成を有しな
い点
イ 相違点についての容易想到性
(ア) 相違点AないしCについて
前記(1)ウと同じ。
(イ) 相違点Eについて
周知技術(乙3、105)も考慮すると、当業者は、乙104発明に、共通マス
タとは別に個別マスタを記憶し、個別マスタの処理を優先させるとの技術事項(乙
18、105)を適用して、相違点Eに係る本件発明1-9及び2-9の構成に容
易に想到し得たものである。
(一審原告らの主張)
(1) 乙104発明の認定について
乙104文献は、ルールデータベースの具体的構成について開示するものではな
いから、一審被告が主張する乙104発明は、全面的に否認する。
特に、乙104文献は、相互作用情報を「2通りの主従関係で」「個別に格納す
る」との構成を開示するものではない。
(2) 周知技術について
相互作用情報を「2通りの主従関係で」「個別に格納する」との構成を有しない
乙104発明を主引用発明とする場合、データ構造に関する周知技術ではなく、コ
ンピュータを用いた双方向チェックに関する周知技術の存在を立証しただけでは、
それによって「相互作用マスタ」の構成が明らかになるものではないから、当該周
知技術によっても、当業者は、本件発明1-1、1-2、1-4、1-9、2-1、
2-2、2-4及び2-9の構成に想到することはできない。
なお、乙14文献に開示されたデータベースは、本件発明1-1等の「相互作用
マスタ」とは技術的思想を異にするものである。また、乙13の文献は、相互作用
情報を格納するデータベースの構造を開示するものではない。
(3) 相違点の認定及び容易想到性について
本件発明1-1と乙104発明との間には、「相互作用チェックに用いるための
もの」であるとの点を除き、何ら一致点は存在せず、一致しない各構成は、全て相
違点となるものである。そして、乙104発明と組み合わせることが可能であって、
これらの相違点に相当する構成を開示する文献は、一切提出されていない。したが
って、本件発明1-1は、当業者が乙104発明に基づいて容易に発明をすること
ができたものではない。そうすると、本件発明1-2、1-4、1-9、2-1、
2-2、2-4及び2-9についても、当業者が乙104発明に基づいて容易に発
明をすることができたものではない。
第3 当裁判所の判断
当裁判所は、一審原告らの原審における損害賠償請求は全部理由があり、一審原
告らの当審における拡張請求は各1604万8683円及びこれに対する遅延損害
金(1138万6434円に対する平成28年8月30日から支払済みまで年5分
の割合による遅延損害金、202万9656円に対する同年9月23日から支払済
みまで年5分の割合による遅延損害金、178万8259円に対する平成29年1
月31日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金、84万4334円に対
する同年12月22日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金)の支払を
求める限度で理由があり、その余はいずれも理由がないものと判断する。その理由
は、次のとおりである。
1 自白の撤回について
原判決54頁9行目及び10行目を削るほかは、原判決54頁1行目から12行
目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
2 争点1(被告システムは本件発明1-1、1-2、1-4、1-9、2-1、
2-2、2-4及び2-9の技術的範囲に属するか)について
次のとおり改めるほかは、原判決54頁15行目から83頁8行目までに記載の
とおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決55頁23行目の「不可能である(【0009】)」を「不可能で
あり、また、全医薬品について相互作用をチェックすると、併用注意の組合せが多
数発生し、表示は非常に見づらいものとなる(【0009】)」と改める。
(2) 原判決56頁2行目の「本件発明1」を「本件発明1-1」と改める。
(3) 原判決60頁2行目の「コード」から3行目の「コード」までを「コード
(薬効、有効成分及び投与経路を特定することができるもの)」と改める。
(4) 原判決60頁19行目の「他の」を「B医薬品から見たA医薬品に関する」
と改める。
(5) 原判決60頁20行目の「他の」を「A医薬品から見たB医薬品に関する」
と改める。
(6) 原判決60頁21行目の「データとして」の次に「個々別々に」を加える。
(7) 原判決60頁22行目から25行目までを削る。
(8) 原判決61頁2行目の「コードや」から「コードの」までを「コード(薬
効、有効成分及び投与経路を特定することができるもの)の」と改める。
(9) 原判決61頁5行目の「格納され」から8行目の「格納される」までを
「格納される」と改める。
(10) 原判決61頁11行目から12行目にかけての「包袋禁反言に反する」を
「包袋禁反言の法理に反する」と改める。
(11) 原判決63頁20行目の「手順」の次に「(検索方法)」を加える。
(12) 原判決64頁11行目の「構成要件1Bを」の次に「2度にわたって検索
がされる場合に」を加える。
(13) 原判決67頁11行目の「【0019】で」を「【0019】によると」
と改める。
(14) 原判決68頁15行目から16行目にかけての「登録することができる。」
の次に「これにより、ユーザは、薬価未収載薬品や、治験薬、院内製剤等、「薬品
マスタ」に登録のない薬品を追加登録することが可能になり、こうした薬品であっ
ても、相互作用の判断が可能となる。」を加える。
(15) 原判決69頁21行目から22行目にかけての「医薬品マトリックス部に
表示される」を「医薬品マトリックス表示部に表示される(【0034】)」と改
める。
(16) 原判決70頁25行目の「構成」を「構成中」と改める。
(17) 原判決71頁10行目の「最高裁平成6年10年2月24日第三小法廷判
決」から11行目の「参照」までを「最高裁平成6年(オ)第1083号同10年
2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照」と改める。
(18) 原判決73頁2行目の「理由とはならない」の次に「(知財高裁平成27
年(ネ)第10014号同28年3月25日特別部判決・判時2306号87頁参
照)」を加える。
(19) 原判決78頁10行目及び11行目の各「情報」をいずれも「個人情報」
と改める。
(20) 原判決79頁6行目から8行目までを削る。
(21) 原判決80頁26行目の「可能となる」を「可能とする」と改める。
(22) 原判決82頁3行目の「本件発明1」から4行目から5行目にかけての
「行うために」までを「本件発明1-9が、各医療施設が適切な設定を行えるよう
にすることを目的とすることに照らせば」と改める。
(23) 原判決82頁14行目の「本件発明1-9」から16行目末尾までを「当
業者が従来技術から被告システムを容易に想到し得たものと認めるに足りる的確な
証拠はない。」と改める。
3 争点2-5及び2-6(乙14発明を主引用例とする本件発明1-1、1-
2、1-9、2-1、2-2及び2-9の進歩性欠如)について
次のとおり改めるほかは、原判決83頁12行目から93頁4行目までに記載の
とおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決86頁2行目の「情報を」を「情報が」と改める。
(2) 原判決87頁4行目から5行目にかけての「コード」から同行目の「コー
ド」までを「コード(薬効、有効成分及び投与経路を特定することができるもの)」
と改める。
(3) 原判決87頁8行目の「格納され」から11行目の「格納される」までを
「格納される」と改める。
(4) 原判決88頁9行目の「他の」の次に「一の」を加える。
(5) 原判決91頁5行目の「458(878)」を「458(878)頁」と
改める。
(6) 原判決91頁11行目の「表示結果」の次に「のみ」を加える。
(7) 原判決92頁21行目の「前記認定」を「前記第2の(2)イ」と改める。
4 争点2-1、2-2及び2-4(EDIS発明による本件発明1-1及び2
-1の新規性欠如並びにEDIS発明を主引用例とする本件発明1-1、1-2、
1-9、2-1、2-2及び2-9の進歩性欠如)について
次のとおり改めるほかは、原判決93頁10行目から110頁17行目までに記
載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決93頁16行目末尾に「(「相互作用チェック機能を有する市販ソ
フト(システム)の紹介」(薬局49巻1号(平成10年)))」を加える。
(2) 原判決93頁20行目の「医療用添付文書情報サービス『EDIS』」を「医
療用医薬品添付文書情報サービス(EDIS)」と改める。
(3) 原判決94頁5行目から6行目にかけて及び7行目の各「医療用添付文書
情報サービス」をいずれも「医療用医薬品添付文書情報サービス」と改める。
(4) 原判決95頁11行目から12行目にかけての「通常であることは,」の
次に「甲25、甲26及び乙28並びに」を加える。
(5) 原判決97頁22行目の「乙13文献」を「乙13(特開平9-9903
9号公報。以下「乙13文献」という。)」と改める。
(6) 原判決98頁5行目の「その発明の詳細な説明には,次のとおりの記載が
ある」を「発明の詳細な説明及び図面には、次のとおりの記載及び図示がある」と
改める。
(7) 原判決102頁3行目の「「処方支援(相互作用チェック)システム」月
刊薬事 Vol.8,No.2(1996)」を「処方支援(相互作用チェック)システム」(月刊
薬事38巻2号(平成8年))」と改める。
(8) 原判決105頁9行目の「発明の詳細な説明には,次のとおりの記載があ
る」を「発明の詳細な説明及び図面には、次のとおりの記載及び図示がある」と改
める。
(9) 原判決109頁4行目の「組み合わせることができ」を「組み合わせがで
き」と改める。
5 争点2-7(実施可能要件・サポート要件違反)について
次のとおり改めるほかは、原判決110頁19行目から112頁14行目までに
記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決110頁24行目の「一致しない構成は」を「一致しない態様の本
件発明につき、本件明細書の発明の詳細な説明は」と改める。
(2) 原判決111頁6行目の「図6」から8行目の「記載されていないものの」
までを「図6には、新規処方データの医薬品と新規処方データの医薬品及び蓄積処
方データの医薬品との相互作用チェックの結果並びに新規処方データの医薬品及び
蓄積処方データの医薬品と新規処方データの医薬品との相互作用チェックの結果を
どのようにマトリックス形式で表示するかが記載されていないものの」と改める。
(3) 原判決111頁13行目の「基づいて」の次に「、過度の試行錯誤を要す
ることなく」を加える。
(4) 原判決111頁21行目の「相当である」の次に「(知財高裁平成17年
(行ケ)第10042号同年11月11日特別部判決・判時1911号48頁参
照)」を加える。
(5) 原判決111頁22行目の「原告ら主張の②、③及び④のような態様」の
次に「(前記第3の8(被告の主張)(1)の第1段落の②、③及び④のとおり、マ
トリックス形式で表示すること)」を加える。
(6) 原判決112頁2行目の「新規処方データ」から3行目の「行うこと」ま
でを「新規処方データを自己医薬品、新規処方データ及び蓄積処方データを相手医
薬品として相互作用チェックを行うこと、新規処方データ及び蓄積処方データを自
己医薬品及び相手医薬品として相互作用チェックを行うこと並びに新規処方データ
及び蓄積処方データを自己医薬品、新規処方データを相手医薬品として相互作用チ
ェックを行うこと」と改める。
(7) 原判決112頁11行目の「以上より」を「以上によると、本件発明は、
本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であり」と改める。
6 争点7(乙104文献を主引用例とする本件発明1-1、1-2、1-9、
2-1、2-2及び2-9の進歩性欠如)について
(1) 本件発明1-1について
ア 乙104文献の記載
乙104文献には、次の記載がある。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医薬品の相互作用や副作用を、その医薬品と
併用する医薬品又は患者の体質等との組み合わせにより検査する装置に係り、検査
用のルールデータベースを作成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一人の患者が複数の薬を飲み合わせたとき、患者の体内で出会った
薬が時に一方の薬効を強めたり、弱めたり、別の効果を生じたりすることがある。
その結果、治療効果が薄くなったり、逆に強すぎて中毒症状を起こしたりするが、
このような現象を「薬物の相互作用」と呼ぶ。また、患者の体質や服用時の状況に
より悪い影響が発生することがあり、これを「副作用」と呼んでいる。
【0003】ただ、複数の薬を飲み合わせると必ず相互作用が発生するわけではな
く、発生する組み合わせ、発生しない組み合わせがある。そのために、相互作用が
発生する特定の薬の組み合わせとその作用、また、副作用が発生する特定の体質や
アレルギーと薬の組み合わせ及びその作用をルール表現し、データベース化してお
いて、医薬品の投与前に相互作用や副作用の検査を行うことが行われている。
【0004】例えば、aという薬とbという薬を飲み合わせたら、cという相互作
用が現れるならば、次のようにルール表現して検査に用いている。
IF a AND b THEN c
副作用の場合も同様にルール表現することができるが、いずれにしてもaやbの薬
は、特定の薬剤名あるいは銘柄を用いて表現されている。
【0005】尚、これら相互作用や副作用の情報は、医薬品に添付されてくる「添
付文書」に記載されている。ルールはこの添付文書の記載に基づいて作成する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、現在、医療機関で扱われる医薬品は数
万種類あり、市販薬はさらに多くの種類があるので、相互作用を起こす特定の医薬
品(銘柄)どうしのすべての組み合わせをルール表現した場合、膨大な組み合わせ
が存在してデータベースが巨大なものになってしまう。
【0007】そこで、特定の薬剤名あるいは銘柄ではなく、それらが持つ特有の薬
効を組み合わせてルール表現することが行われる。同じ薬効を持つ様々な薬をその
薬効でくくることで、ルール表現する組み合わせの数が減り、データベースがコン
パクトになって検索速度も向上する。この場合、薬効をあらわすデータとしては、
厚生省が定めた医薬品の管理用コード「薬価基準収載用医薬品コード」が利用され
る。このコードは、図8に示すように12桁の英数字で構成され、先頭7桁がその
医薬品の成分を表わしている。医薬品の相互作用や副作用は「成分」に特有のもの
であり、異なる銘柄の医薬品でも、成分が同じであれば発生する作用は同じになる。
そこで、この先頭7桁を「薬効コード」としてルール表現する際に利用する。即ち、
上で述べたaやbのところにこの薬効コードを記述するのである。
【0008】しかし、薬効コードは単なる文字、記号の並びであり、人間が直感的
にそのコードと薬効とを連想することは難しい。薬品名であれば、実際にその医療
機関や調剤薬局で使用する医薬品の現物があるので簡単にわかるが、薬効コードの
場合はそれができない。
【0009】そこで、本発明は、個々の医療機関や調剤薬局で検査用のデータベー
スを作成する際に、薬効コードを簡単に入力することができるようにした医薬品相
互作用ルールの作成方法を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、医薬品の相互作用を検査する為のルール
データベースに検査対象として医薬品の薬効を登録したシステムにおいて、医薬品
名とその薬効とを少なくとも記憶する医薬品データベースと、データベースから読
み出した医薬品名を一覧表示する表示手段と、表示された医薬品名を選択する選択
手段と、選択された医薬品名の薬効を医薬品データベースから読み出し、その薬効
をルールデータベースに登録する登録手段とを設け、医薬品を選択することでルー
ルデータベースに薬効を登録するようになして上記課題を解決するものである。
【0011】
【実施例】図2は、相互作用検査や副作用検査を行う装置において、ルールデータ
ベースに納めるルールを作成するチェックルール作成画面20の実施例である。そ
して、図1は、図2の画面における作業手順を示すフローチャートである。先ず、
チェックルール作成画面20の左上には、相互作用のルール作成又は副作用のルー
ル作成を選択するボタン21が有り、これをマウス(図示せず)等の位置指示装置
で指示することで、相互作用と副作用が交互に選択できるものである。その下は対
象項目ボタン22で、前述したIF文の薬aに相当する医薬品名を入力する際に指
示する。このボタン22が指示されると、装置はあらかじめ用意している医薬品デ
ータベース30(後述)から医薬品の名称を読み出して、ウインドウ19に一覧表
示する(図1ステップS101)ので、所望の医薬品を指示、選択すればよい(同
S102)。装置は、選択された医薬品の薬効コードを医薬品データベース30か
ら読み出して、医薬品名とともに表示欄23に表示する(同S103)。図では、
「ドロビット錠250」という医薬品を選択した結果、それが「1149028」
という薬効コードと共に表示欄23に表示された例を示す。尚、図中、DBはデー
タベースを表わす。
【0012】比較項目ボタン24は、上で選択した対象項目の医薬品と飲み合わせ
る医薬品を入力するボタンであり、この医薬品は前記IF文の薬bに相当する。こ
のボタン24を指示すると、上で述べたのと同様に、医薬品データベース30から
読み出された医薬品名がウインドウ19に一覧表示され(同S104)、選択に応
じてその医薬品名が薬効コードと共に表示欄25に表示される(同S106)。ま
た、この比較項目に限って複数の医薬品名を選択、入力することができる。
【0013】チェック結果ボタン26は、前記IF文のcに相当する、相互作用や
副作用として現れる作用を入力するためのものである。これを指示することで装置
は、あらかじめ用意しているチェック結果データベース40から格納されている文
章を読み出し、ウインドウ19に一覧表示する(同S107)。そこで、所望の文
章を選択すればそれが表示欄27に表示されるものである(同S109)。同様に、
理由ボタン28を指示すれば、装置があらかじめ用意している理由データベース5
0から文章を読み出し、ウインドウ19に一覧表示する(同S110)ので、それ
を選択して表示欄29に表示させることができる(同S112)。この理由文章は
前記IF文には出てこないが、チェック結果、即ち相互作用や副作用を補足して説
明するために用意されている。
【0014】図3は、実施例の医薬品データベース30の内容を示す。ここには、
薬価基準で定められたすべての医薬品のうち、当該医療機関又は調剤薬局で実際に
使用する医薬品を内部コード31の順に格納している。内部コードとは、診療報酬
を算定する際に医療事務会計機の窓口業務で入力するコードであり、その医療機関
で定めた固有のコードである。医薬品名32は薬の銘柄であり、医薬品コード33
は、薬効コード7桁を含むその薬の薬価基準収載用医薬品コード12桁である。
【0015】図4は、チェック結果データベース40の内容を示す。チェック結果
文章42とメッセージ番号41とを対にしてメッセージ番号41の順番に格納して
おり、ステップS108で選択された文章は、そのメッセージ番号でルールデータ
ベースに登録される。また、図5は、理由データベース50の内容を示し、理由文
章52とメッセージ番号51とをメッセージ番号順に格納している。ステップS1
11で選択された文章は、同様にこのメッセージ番号51でルールデータベースに
登録される。
【0016】尚、チェック結果データベース40と理由データベース50に格納し
ている文章は、すべて「添付文書」の内容から抽出した文章である。同じようなこ
とでも添付文書によって表現が異なるので、取り扱う医薬品それぞれの添付文書か
らそのままの表現を抽出してデータベースに格納している。例えば、一方の薬の作
用を強める場合でも、「作用が増強」、「作用が増強かつ延長」、「作用が増強又
は減弱」、「作用に影響」、「作用の増強」などいろいろに表現されているので、
それらすべてをデータベースに格納しておき、ルール作成時には、その医薬品の添
付文書を参照して、添付文書に記載されている表現を選択する。
【0017】ここで具体的な入力例を図6、7に示す。図6は相互作用のルール作
成例であり、対象項目と比較項目はそれぞれ「ドロビット錠250」と「インダシ
ンR25mg」、チェック結果は「併用しない」、そして、その理由は「胃腸出血」
を入力している。このルールは、登録指示されると、実施例装置によって例えば図
9(a)のような形でルールデータベースに格納される。
【図2】
【図4】
【図6】
イ 乙104発明の認定
(ア) 上記アによると、乙104文献には、次の発明(乙104発明)が記載さ
れているものと認められる。
(乙104発明)
医薬品の相互作用チェックシステムに搭載される医薬品の相互作用を定義するル
ールデータベースであって、一の医薬品と他の医薬品との関係で、相互作用が発生
する組合せを格納するルールデータベース。
(イ) この点に関し、一審被告は、乙104文献には、一の医薬品と他の一の医
薬品との相互作用に関するルールと、他の一の医薬品と一の医薬品との相互作用に
関するルールの「2通りで」、相互作用が発生する組合せを「個別に格納」するル
ールデータベースが開示されている旨主張する。しかしながら、本件発明1-1に
いう「2通りの主従関係で」や「個別に格納」の意義は、補正して引用する原判決
第4の2(3)ア(ウ)において説示したとおりであるところ、上記アの記載及び乙1
04文献のその余の記載によっても、乙104発明が、相互作用が発生する組合せ
を「2通りの主従関係で」「個別に格納」するものであると認めることはできない。
したがって、一審被告の上記主張を採用することはできない。
ウ 本件発明1-1と乙104発明との対比
上記イのとおりであるから、本件発明1-1と乙104発明との間には、少なく
とも次の相違点aが存在するものと認められる。
(相違点a)
相互作用が発生する医薬品の組合せを記憶する記憶手段に関し、本件発明1-1
が「一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と、前記他の一の医薬品から見た前
記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で、相互作用が発生する組み合わせを個別
に格納する相互作用マスタを記憶する」ものであるのに対し、乙104発明は「一
の医薬品と他の医薬品との関係で、相互作用が発生する組合せを格納する」もので
ある点
エ 相違点aについての判断
(ア) 一審被告は、当業者は乙104発明に周知技術(乙3、5、7、8、13、
14)及び技術常識(乙3、110)を適用して、本件発明1-1の「相互作用マ
スタを記憶する記憶手段」の構成に容易に想到し得たとの趣旨の主張をするので、
以下検討する。
a 乙3、7及び8の各文献について
補正して引用する原判決第4の4(2)のとおり、乙3、7及び8の各文献は、い
ずれもEDIS発明を開示するものであるところ、EDIS発明が相違点aに係る
本件発明1-1の構成を備えるものでないことは、同第4の4(2)において説示し
たとおりである。その他、乙3、7及び8の各文献が相違点aに係る本件発明1-
1の構成を開示するものと認めることはできない。
b 乙5の文献(「医薬品相互作用情報検索システムの開発」(第14回医療情
報学連合大会(平成6年)))について
乙5の文献には、「このシステムの薬剤双方向からのチェック機能により、特に、
一方の薬剤の添付文書では相互作用情報が示されていて、相手方の薬剤では存在し
ないようなケースについては、相互チェックという意味でも、このシステムは大変
有用であると考えている。」との記載(228頁右欄)があるが、この記載及び乙
5の文献のその余の記載によっても、乙5の文献に開示された医薬品相互作用情報
検索システムが、相互作用が発生する組合せを本件発明1-1にいう「2通りの主
従関係で」「個別に格納」するものであると認めることはできないから、乙5の文
献は、相違点aに係る本件発明1-1の構成を開示するものではない。
c 乙13文献
乙13文献が相違点aに係る本件発明1-1の構成を開示するものでないことは、
補正して引用する原判決第4の4(4)において説示したとおりである。
d 乙14文献
乙14文献は、乙14発明を開示するものであるところ、乙14発明が相違点a
に係る本件発明1-1の構成を備えるものでないことは、補正して引用する原判決
第4の3(3)において説示したとおりである。その他、乙14文献が相違点aに係
る本件発明1-1の構成を開示するものと認めることはできない。
e 乙110の文献(「調剤と情報」11月号(平成11年))
乙110の文献には、「キヤノピアスリム(保険薬局請求システム)」に関する
広告が掲載され、その中に相互作用データに関する記載があるが、この記載及び乙
110の文献のその余の記載によっても、乙110の文献が相違点aに係る本件発
明1-1の構成を開示するものと認めることはできない。
f 以上のとおり、一審被告が指摘する乙3、5、7、8、13、14及び11
0の各文献は、いずれも相違点aに係る本件発明1-1の構成を開示するものでは
ないから、当業者は、乙104発明に、これらの文献に開示された発明ないし技術
を適用しても、相違点aに係る本件発明1-1の構成を得ることはできないと認め
るのが相当である。
(イ) その他、当業者が相違点aに係る本件発明1-1の構成に容易に想到し得
たものと認めるに足りる証拠はない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1-1が当業者において乙104発明に基づ
き容易に発明をすることができたものであると認めることはできない。
(2) 本件発明1-2、1-9、2-1、2-2及び2-9について
ア 本件発明1-2及び1-9は、いずれも本件発明1-1を直接又は間接に引
用する発明であるから、本件発明1-2及び1-9と乙104発明との間には、少
なくとも相違点aが存在する。したがって、本件発明1-1において説示したのと
同様、本件発明1-2及び1-9についても、これらの発明が当業者において乙1
04発明に基づき容易に発明をすることができたものであると認めることはできな
い。
イ 本件発明2-1、2-2及び2-9は、本件発明1-1、1-2及び1-9
と対比すると、装置であるかシステムであるかという相違はあるものの、相違点a
に係る構成を含め、構成要件が実質的に共通している。したがって、本件発明1-
1、1-2及び1-9の場合と同様、本件発明2-1、2-2及び2-9について
も、これらの発明が当業者において乙104発明に基づき容易に発明をすることが
できたものであると認めることはできない。
(3) 以上のとおりであるから、乙104文献を主引用例として本件発明1-1、
1-2、1-9、2-1、2-2及び2-9が進歩性を欠くとの一審被告の主張は、
理由がない。
なお、一審原告らは、一審被告の上記主張は時機に後れて提出した攻撃又は防御
の方法であって却下すべきであるとの申立てをするが、上記主張が当審の審理の冒
頭で追加されたこと、その後の当審における審理の経過等に照らすと、上記主張の
提出により訴訟の完結を遅延させることとなるとは認められないから、一審原告ら
の上記申立てを却下するのが相当である。
7 争点3(被告システムの製造・販売等による直接侵害の成否、本件ソフトの
製造・販売等及び被告システム用データの頒布による間接侵害の成否)について
次のとおり改めるほかは、原判決112頁19行目から116頁18行目までに
記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決113頁15行目末尾に「(本件ソフトの販売時の直接侵害の成
否)」を加える。
(2) 原判決113頁16行目を削る。
(3) 原判決114頁11行目から26行目までを削る。
8 争点5(本件特許権の侵害による一審原告らの損害額)について
次のとおり改めるほかは、原判決117頁17行目から140頁21行目までに
記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決118頁5行目の「平成18年10月時点で」を「平成20年4月
時点で」と改める。
(2) 原判決118頁11行目の「医薬品/OTC/飲食物相互チェック等」を「医
薬品/OTC/飲食物相互作用チェック等」と改める。
(3) 原判決118頁16行目の「原告湯山製作所」から2行目の「販売してい
る」までを「一審原告らは、平成16年頃以前に、薬剤業務支援システム「YUN
iCOM」を共同開発し、同月頃から、一審原告湯山製作所がその子会社に対して
これを販売し、その子会社が医療機関等に販売している」と改める。
(4) 原判決118頁24行目の「原告湯山製作所及びその子会社」を「一審原
告湯山製作所の子会社」と改める。
(5) 原判決118頁26行目の「「PharmaRoad」等」を「「PharmaRoad」(一
審原告らが共同開発したもの)等」と改める。
(6) 原判決118頁26行目から119頁1行目にかけての「平成18年10
月」を「平成28年10月」と改める。
(7) 原判決119頁11行目の「原告湯山製作所の販売に係る」を「一審原告
湯山製作所の子会社が販売する」と改める。
(8) 原判決121頁3行目の「金額」を「0円以外の金額」と改める。
(9) 原判決122頁11行目末尾に「そうすると、本件ソフトに係る売上額は、
原判決別紙「本件ソフト・ハード機器の売上額(裁判所の認定)」に記載のとおり、
合計1億4529万2837円となる。」を加える。
(10) 原判決122頁19行目の「内容や,」の次に「これらの作業が」を加え
る。
(11) 原判決123頁1行目の「乙44の2」の次に「の添付資料1」を加える。
(12) 原判決123頁5行目末尾に改行して以下のとおり加える。
「c 取引1205
乙44の2の添付資料1によると、取引1205の売上表には「ライセンス+初
期導入費 1,670,820」としか記載されていないところ、前記aと同様、この金額
の8割に相当する133万6656円をもって本件ソフトに係る売上額と認めるの
が相当である。」
(13) 原判決123頁6行目の「c」を「d」と改める。
(14) 原判決123頁7行目の「乙44の2」の次に「の添付資料1」を加える。
(15) 原判決123頁20行目の「d」を「e」と改める。
(16) 原判決123頁21行目の「乙44の2」の次に「の添付資料6」を加え
る。
(17) 原判決123頁22行目及び24行目から25行目にかけての各「上位シ
ステム接続費」を「システム接続費」と改める。
(18) 原判決125頁5行目から19行目までを以下のとおり改める。
「 乙44の2の添付資料2によると、取引1307の「別紙」と題する書面に
は、商品を「薬剤管理指導業務サポートシステム スーパーサポートシステム 一
式」、価格を770万円(消費税込み)、支払期日につき第1回支払予定を525
万円(消費税込み)、第2回支払予定を252万円(消費税込み)とする旨の記載
があり、売上表には、「(第1回支払)5,000,000」との記載がある。この点につ
き、一審被告は、第1回の支払はライセンス料、電子カルテとの接続作業費及び導
入作業費の合計であり、第2回の支払はシステムテスト及び本格稼働に係る料金で
ある旨主張するところ、前記aと同様、第1回の支払額の8割に相当する400万
円については、これを本件ソフトに係る売上額に含めるのが相当である。他方、第
2回の支払については、一審被告の主張を覆すに足りる証拠はないから、第2回の
支払分を本件ソフトに係る売上額に含めるのは相当でない。」
(19) 原判決125頁22行目末尾に改行して以下のとおり加える。
「エ 月次利用料
(ア) 原判決別紙「本件ソフト・ハード機器の売上額(裁判所の認定)」のとお
り、本件において一審被告が受けた利益として認められる本件ソフト及びハードウ
ェアの売上額が合計2億5714万4027円であるのに対し、後記のとおり、本
件において一審被告が受けた利益として認められる月次利用料(被告システムない
し本件ソフトの導入後5年以内に支払われるもの。以下同じ。)に係る売上額は、
合計3億9531万1537円であり、月次利用料に係る売上額は、本件ソフト及
びハードウェアの売上額の約1.5倍にも及ぶ高額のものであって、これを単なる
データベースの更新費用等であるとみることは困難であること、一般に被告システ
ムないし本件ソフトのように内容の更新が絶対に必要なデータベースを用いるシス
テムないしソフトウェアにおいては、適時のデータベースの更新がなければシステ
ムないしソフトウェアとしての意味をなさないから、当該システムないしソフトウ
ェアを導入する際に、更新があることを当然の前提にしてこれを含んだ価格設定を
することには十分な合理性があること、弁論の全趣旨によると、一審被告は、被告
システムないし本件ソフトを導入した医療機関が月次利用料を3か月間支払わない
ときは、被告システムないし本件ソフトが起動しないような措置を執っているもの
と認められること(一審被告第3準備書面5~7頁)などの事情に照らすと、甲2
0及び48に月次利用料について「データベース更新料等」の記載があるとしても、
月次利用料に係る売上げは、被告システムないし本件ソフトの譲渡の対価(譲渡代
金の延べ払い)の性質を持つものとして、これを一審被告が得た利益に含めるのが
相当である。
(イ) 証拠(乙151、調査嘱託)及び弁論の全趣旨によると、本件において一
審被告が受けた利益に含まれる月次利用料に係る売上額は、別紙「被告システム売
上額一覧(一審原告)」の「月次利用料小計(乙151)」欄のとおり、合計3億
9531万1537円であると認められる。
オ 消費税相当額について
(ア) 消費税は、国内において事業者が行った資産の譲渡等に課されるものであ
るところ(消費税法4条1項)、消費税法基本通達(5-2-5)において、「損
害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受けるものは、
資産の譲渡等の対価に該当しないが、例えば、次に掲げる損害賠償金のように、そ
の実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは資産の譲渡等の対価に
該当することに留意する。(2) 無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該
無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」とされていることにも照らすと、特許
権を侵害された者がその侵害者から不法行為に基づく損害賠償金の支払を受けた場
合、これに対して消費税が課税されると解されるのであるから、特許権を侵害され
た者としては、損害賠償金のほか、これに対して課される消費税に相当する額の金
員の支払を受けるのでなければ、その損害が十分にてん補されたとはいえない。し
たがって、特許法102条2項にいう「利益」には、消費税に相当する金員も含ま
れると解するのが相当である。
(イ)a 本件ソフト及びハードウェアに係る売上額に、これに対して課される消
費税額を加えた額は、別紙「被告システム売上額一覧(一審原告)」の「消費税相
当額加算」欄に記載のとおり、合計2億7280万5156円となる。
b 本件ソフトのインストールに係る売上額に、これに対して課される消費税額
を加えた額は、次のとおり、合計178万0800円となる。
(a) 4万円×1.05×28回=117万6000円(平成26年3月31日
まで)
(b) 4万円×1.08×14回=60万4800円(平成26年4月1日から)
c 月次利用料に係る売上額に、これに対して課される消費税額を加えた額は、
別紙「被告システム売上額一覧(一審原告)」の「消費税相当額加算(乙205)」
欄に記載のとおり、合計4億2454万9311円となる。
d 合計 6億9913万5267円」
(20) 原判決125頁23行目の「エ」を「カ」と改める。
(21) 原判決126頁3行目の「発注書等」を「注文書等」と改める。
(22) 原判決126頁4行目の「ことに加え」から5行目の「考えると」までを
「ことに照らすと」と改める。
(23) 原判決126頁7行目の「成約には至らなかった取引に関する」を「商談
の初期段階で提出された」と改める。
(24) 原判決126頁11行目の「他の成約取引の売上額」及び14行目の「成
約取引の売上額」をいずれも「本件ソフトに係る売上額」と改める。
(25) 原判決126頁26行目の「前記6(1)イ(ア)」を「前記6(1)イ」と改め
る。
(26) 原判決127頁7行目の「,月次利用料」を削る。
(27) 原判決127頁15行目から26行目までを削る。
(28) 原判決128頁25行目末尾に改行して以下のとおり加える。
「 なお、上記9305万6061円に関して一審被告が仕入先等に支払ったも
のと認められる消費税相当額も、一審被告が侵害品を製造・販売することにより、
その製造・販売に直接関連して追加的に必要となった経費であると認められるから、
一審被告の経費の額を算定するに当たっては、これを加算するのが相当である。上
記9305万6061円に関して一審被告が仕入先等に支払った消費税相当額は、
次のとおり、合計559万2368円となり、これと上記9305万6061円を
合算した額は、9864万8429円となる。
(ア) 平成25年5月31日まで 207万6900円((1930万2000
円+1069万3000円+1154万3000円)×0.05)
(イ) 平成25年6月1日から平成26年3月31日まで 100万9961円
((2324万4061円+99万5000円)×10か月÷12か月×0.05)
(ウ) 平成26年4月1日から同年5月31日まで 32万3187円((23
24万4061円+99万5000円)×2か月÷12か月×0.08)
(エ) 平成26年6月1日から 218万2320円((1382万9000円
+728万6000円+580万2000円+36万2000円)×0.08)
(オ) 合計 559万2368円」
(29) 原判決128頁26行目から129頁1行目にかけての「9305万60
61円」を「9864万8429円」と改める。
(30) 原判決129頁2行目から3行目にかけての「1億6576万7966円」
を「6億0048万6838円」と改める。
(31) 原判決129頁24行目から25行目にかけての「薬歴簿」を「「服薬指
導記録」」と改める。
(32) 原判決130頁25行目の「可能であった」の次に「(乙85の2)」を
加える。
(33) 原判決131頁2行目の「,85の2」を削る。
(34) 原判決131頁7行目の「増やさずに」を「増やさず」と改める。
(35) 原判決134頁9行目の「提供する」の次に「医療の」を加える。
(36) 原判決136頁2行目の「医療用調剤機器」を「医療用調剤機器等」と改
める。
(37) 原判決138頁12行目の「被告製品」から13行目の「あることなどか
ら」までを「本件発明の構成や被告製品の構成等に照らすと」と改める。
(38) 原判決139頁18行目から140頁21行目までを以下のとおり改める。
「(5) 一審原告らの損害額
ア 特許法102条2項に基づく一審原告らの損害額
以上によると、特許法102条2項に基づく一審原告らの損害額は、1億200
9万7367円(6億0048万6838円×(1-0.8))であると認められ
る。
イ 弁護士費用
事案の難易、請求額、認容額、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、一
審被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、1200万円と認められる。
ウ 合計 1億3209万7367円
エ 遅延損害金の起算日
(ア) 一審原告らが請求する遅延損害金の起算日は、訴状送達の日の翌日である
平成28年8月30日である。しかしながら、原判決別紙「本件ソフト・ハード機
器の売上額(裁判所の認定)」によると、取引1801、1802及び1901に
ついては、同日までに侵害行為がされたと認めることはできず、同別紙によると、
これらの取引に係る侵害行為の日は、遅くともそれぞれ平成28年9月23日、平
成29年1月31日及び同年12月22日であると認めるのが相当であるから、こ
れらの取引に係る損害賠償債務は、遅くともそれぞれこれらの日に遅滞に陥ったと
いえる。
(イ) 上記(ア)によると、上記アの損害賠償債務(特許法102条2項に基づく
もの)に係る遅延損害金の起算日は、次のとおりとなる。
a 別紙「被告システム売上額一覧(一審原告)」記載の取引1201から17
03まで(12期から17期まで) 平成28年8月30日(侵害行為の日の後で
ある訴状送達の日の翌日)
(a) 本件ソフト及びハードウェアに係る売上額(消費税を含む。以下同じ。)
2億5241万2028円(同別紙記載のとおり)
(b) 本件ソフトのインストールに係る売上額(消費税を含む。以下同じ。)
165万1200円(補正して引用する前記(2)オ(イ)b(a)のとおりの平成26年
3月31日までの取引の消費税込みのインストールに係る売上額117万6000
円+同年4月1日から平成28年3月29日までの取引のインストールに係る消費
税込みの売上額(4万円×1.08×11回))
(c) 月次利用料に係る売上額(消費税を含む。以下同じ。) 3億9602万
7711円(同別紙記載のとおり)
(d) 小計 6億5009万0939円
(e) 一審被告の経費(ハード機器仕入高及び販売手数料(消費税相当額を含
む。)に限る。以下同じ。) 9199万1309円(補正して引用する前記(3)
アのとおりの平成28年5月31日までの消費税込みの一審被告の経費額である1
930万2000円+1069万3000円+1154万3000円+2324万
4061円+99万5000円+1382万9000円+728万6000円+2
07万6900円+100万9961円+32万3187円+(1382万900
0円+728万6000円)×0.08)
(f) 上記(d)から上記(e)を控除した額 5億5809万9630円
(g) 特許法102条2項の推定の覆滅後の額 1億1161万9926円
b 別紙「被告システム売上額一覧(一審原告)」記載の取引1801(18期)
平成28年9月23日(侵害行為の日)
(a) 本件ソフト及びハードウェアに係る売上額 809万6760円(同別紙
記載のとおり)
(b) 本件ソフトのインストールに係る売上額 4万3200円(4万円×1.
08)
(c) 月次利用料に係る売上額 1364万4000円(同別紙記載のとおり)
(d) 小計 2178万3960円
(e) 一審被告の経費 333万1177円(580万2000円×1.08×
2178万3960円÷(2178万3960円+1919万3077円(後記c
(d))))
(f) 上記(d)から上記(e)を控除した額 1845万2783円
(g) 特許法102条2項の推定の覆滅後の額 369万0556円
c 別紙「被告システム売上額一覧(一審原告)」記載の取引1802(18期)
平成29年1月31日(侵害行為の日)
(a) 本件ソフト及びハードウェアに係る売上額 924万9877円(同別紙
記載のとおり)
(b) 本件ソフトのインストールに係る売上額 4万3200円(4万円×1.
08)
(c) 月次利用料に係る売上額 990万円(同別紙記載のとおり)
(d) 小計 1919万3077円
(e) 一審被告の経費 293万4983円(580万2000円×1.08×
1919万3077円÷(2178万3960円(前記b(d))+1919万30
77円))
(f) 上記(d)から上記(e)を控除した額 1625万8094円
(g) 特許法102条2項の推定の覆滅後の額 325万1619円
d 別紙「被告システム売上額一覧(一審原告)」記載の取引1901(19期)
平成29年12月22日(侵害行為の日)
(a) 本件ソフト及びハードウェアに係る売上額 304万6491円(同別紙
記載のとおり)
(b) 本件ソフトのインストールに係る売上額 4万3200円(4万円×1.
08)
(c) 月次利用料に係る売上額 497万7600円(同別紙記載のとおり)
(d) 小計 806万7291円
(e) 一審被告の経費 39万0960円(36万2000円×1.08)
(f) 上記(d)から上記(e)を控除した額 767万6331円
(g) 特許法102条2項の推定の覆滅後の額 153万5266円
(ウ) また、上記(イ)によると、上記イの損害賠償債務(弁護士費用)に係る遅
延損害金の起算日は、次のとおりとなる。
a 別紙「被告システム売上額一覧(一審原告)」記載の取引1201から17
03までに対応するもの 平成28年8月30日(侵害行為の日の後である訴状送
達の日の翌日)
金額 1115万2943円(1200万円×1億1161万9926円÷1億
2009万7367円)
b 別紙「被告システム売上額一覧(一審原告)」記載の取引1801に対応す
るもの 平成28年9月23日(侵害行為の日)
金額 36万8757円(1200万円×369万0556円÷1億2009万
7367円)
c 別紙「被告システム売上額一覧(一審原告)」記載の取引1802に対応す
るもの 平成29年1月31日(侵害行為の日)
金額 32万4898円(1200万円×325万1619円÷1億2009万
7367円)
d 別紙「被告システム売上額一覧(一審原告)」記載の取引1901に対応す
るもの 平成29年12月22日(侵害行為の日)
金額 15万3402円(1200万円×153万5266円÷1億2009万
7367円)
(エ) 以上をまとめると、上記ウの損害賠償債務(全損害)に係る遅延損害金の
起算日は、次のとおりとなる。
a 1億2277万2869円につき 平成28年8月30日
b 405万9313円につき 平成28年9月23日
c 357万6517円につき 平成29年1月31日
d 168万8668円につき 平成29年12月22日
オ 一審原告ら各自の損害額
前記(1)エのとおりであるから、一審原告らは、一審被告に対し、それぞれ2分
の1である6604万8683円及び次の遅延損害金の支払を求めることができる。
(ア) 6138万6434円に対する平成28年8月30日から支払済みまで年
5分の割合による遅延損害金
(イ) 202万9656円に対する平成28年9月23日から支払済みまで年5
分の割合による遅延損害金
(ウ) 178万8259円に対する平成29年1月31日から支払済みまで年5
分の割合による遅延損害金
(エ) 84万4334円に対する平成29年12月22日から支払済みまで年5
分の割合による遅延損害金」
9 争点6(消滅時効の成否)について
原判決141頁6行目末尾に改行して以下のとおり加えるほかは、原判決140
頁23行目から141頁6行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
「 なお、一審被告は、一審原告らの総額1億5000万円を超える損害賠償請
求権につき、本件訴えの提起から3年が経過したことを理由として消滅時効を援用
するが、一審原告らに総額1億5000万円を超える損害が発生したものと認める
に足りる証拠はないから、一審被告の上記主張は、判断の必要がない。」
10 結論
そうすると、一審原告らの原審における損害賠償請求は、全部理由があるから、
これらを全部認容すべきところ、当裁判所のこの判断と一部異なる原判決は、一部
不当であるから、一審原告らの各控訴に基づき、原判決主文2項、3項及び4項
(一審原告らの損害賠償請求を棄却した部分に限る。)を主文1項のとおり変更し
た上、一審被告の各控訴をいずれも棄却し、一審原告らの当審における拡張請求は、
各1604万8683円及びこれに対する遅延損害金(1138万6434円に対
する平成28年8月30日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金、20
2万9656円に対する同年9月23日から支払済みまで年5分の割合による遅延
損害金、178万8259円に対する平成29年1月31日から支払済みまで年5
分の割合による遅延損害金、84万4334円に対する同年12月22日から支払
済みまで年5分の割合による遅延損害金)の支払を求める限度で理由があり、その
余はいずれも理由がないから、その限度で認容し、その余をいずれも棄却するのが
相当である。なお、一審原告らは、当審において、原審で求めていた被告製品の製
造、販売、販売の申出及び販売のための展示並びに被告製品にインストール又は適
用することが可能な医薬品の相互作用に関するデータの頒布の差止請求と被告製品
及び半製品(被告製品の構造を具備しているが、いまだ製品として完成に至らない
もの)並びに被告製品の製造に供する製造設備の廃棄請求につき、訴えを取り下げ
たので、原判決主文1項及び4項(一審原告らの差止請求及び廃棄請求を棄却した
部分に限る。)は、当然にその効力を失っているから、その旨を明らかにすること
として、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
本 多 知 成
裁判官
浅 井 憲
裁判官中島朋宏は、差し支えのため、署名押印することができない。
裁判長裁判官
本 多 知 成
(別紙)
当 事 者 目 録
控訴人兼被控訴人 株 式 会 社 湯 山 製 作 所
(以下「一審原告湯山製作所」という。)
控訴人兼被控訴人 株式会社システムヨシイ
(以下「一審原告システムヨシイ」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 飯 島 歩
藤 田 知 美
上 田 亮 祐
同訴訟代理人弁理士 横 井 知 理
被控訴人兼控訴人 株式会社アイシーエム
(以下「一審被告」という。)
同訴訟代理人弁護士 深 井 俊 至
平 井 佑 希
同訴訟代理人弁理士 辻 田 朋 子
以 上
●((別紙)被告システム売上額一覧(一審原告)省略)●

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