ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成31(ネ)10007 特許権侵害差止請求控訴事件
| 裁判所 | 控訴棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和4年8月8日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 対象物 | プログラマブル・コントローラにおける異常発生時にラダー回路を表示する装置 |
| 法令 |
特許権 特許法102条1項18回 特許法101条2号17回 特許法102条2項12回 特許法102条3項5回 特許法29条の22回 特許法102条4項1回 特許法123条1項8号1回 特許法101条1号1回 特許法101条1回 特許法100条1項1回 |
| キーワード | 侵害210回 特許権108回 実施91回 間接侵害64回 無効24回 許諾12回 審決12回 進歩性7回 差止5回 損害賠償5回 無効審判4回 ライセンス4回 新規性3回 刊行物2回 |
| 主文 | 1 一審原告の控訴に基づいて原判決主文第4項及び第5項を次のとお 2 一審被告の控訴を棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを10分し、その1を一審被 4 この判決は、第1項⑴に限り仮に執行することができる。 5 原判決主文第1項ないし第3項は、一審原告の訴えの取下げにより5 |
| 事件の概要 | (以下、略称は、特に断りのない限り、原判決に従う。) |
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令和4年8月8日判決言渡
平成31年(ネ)第10007号 特許権侵害差止等請求控訴事件
(原審・大阪地方裁判所平成27年(ワ)第8974号)
口頭弁論終結日 令和4年6月8日
判 決
控訴人兼被控訴人 株式会社ジェイテクト
(以下「一審原告」という。)
同訴訟代理人弁護士 速 見 禎 祥
被控訴人兼控訴人 三 菱 電 機 株 式 会 社
(以下「一審被告」という。)
同訴訟代理人弁護士 近 藤 惠 嗣
同 前 田 将 貴
主 文
1 一審原告の控訴に基づいて原判決主文第4項及び第5項を次のとお
り変更する。
⑴ 一審被告は、一審原告に対し、5562万9205円及びこれに
対する、うち1230万2476円については平成27年9月26
日から、うち別紙10「各月の損害額一覧表」記載の「販売期間」
欄5ないし14までの各欄の「各月の損害額」欄記載の各金額につ
いては、これに対応する上記各欄の「遅延損害金起算日」欄記載の
各日から、各支払済みまで、年5分の割合による金員を支払え。
⑵ 一審原告のその余の請求を棄却する。
2 一審被告の控訴を棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを10分し、その1を一審被
告の、その余を一審原告の各負担とする。
4 この判決は、第1項⑴に限り仮に執行することができる。
5 5 原判決主文第1項ないし第3項は、一審原告の訴えの取下げにより
失効した。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 一審原告
⑴ 原判決中一審原告敗訴部分を取り消す。
⑵ 一審被告は、一審原告に対し、5億5000万円及びこれに対する平成27年9月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2 一審被告
⑴ 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。
⑵ 一審原告の請求を棄却する。
第2 事案の概要等
(以下、略称は、特に断りのない限り、原判決に従う。)1 事案の概要
⑴ 本件は、①発明の名称を「プログラマブル・コントローラにおける異常発生時にラダー回路を表示する装置」とする特許(本件第1特許)の請求項1に係る発明(本件発明1)についての特許権(本件特許権1)、②発明の名称を「PLC用の操作盤及び同操作盤における異常表示方法」とする特許(本件第2特許)の請求項1に係る発明(本件発明2-1)についての特許権(本件特許権2-1)、③本件第2特許の請求項3に係る発明(本件発明2-3)についての特許権(本件特許権2-3)、④発明の名称を「動作制御操作盤」とする特許(本件第3特許)の請求項1に係る発明(本件発明3)についての特許権(本件特許権3)、及び⑤発明の名称を「操作盤の画面定義装置」とする特許(本件第4特許)の請求項1の発明(本件発明4)についての特許権(本件特許権4)を有する一審原告が、一審被告に対し、①原判決別紙被告製品目録記載1ないし3及び5ないし7の表示装置(被告製品
5 1-1ないし3、被告製品2-1ないし3。被告表示器)、②同目録記載4及び8の、パソコンを画面操作装置として機能させるソフトウェアのライセンスキー(被告製品1-4及び2-4)、③同目録記載9及び10の、被告表示器用のOSやプロジェクトデータ作成等のためのソフトウェア(被告製品3-1及び2。両者を併せて被告製品3。 、並びに④同目録記載11の被)告表示器用のプロジェクトデータ作成支援ツール(被告製品4)を生産、譲渡等することが本件特許権1ないし4の直接侵害又は間接侵害に当たるとして、特許法100条1項及び2項に基づいて、被告各製品の生産、譲渡、貸渡し等の差止めを求めるとともに、特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償として、内金5億5000万円及びこれに対する本件訴状送達日の翌日である平成27年9月26日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
⑵ 原判決は、被告製品3をインストールした被告製品1-1、被告製品1-2、被告製品2-1及び被告製品2-2(被告表示器A)が本件発明1の技術的範囲に属するとした上で、被告製品3の生産、譲渡等が本件特許権1に対する特許法101条2号の間接侵害に当たるとして、一審被告に対し、被告製品3の生産、譲渡の差止め、被告製品3に係るプログラムの使用許諾の差止め、及び被告製品3の廃棄を命じるとともに、損害賠償として4702万8368円及びこれに対する遅延損害金の支払を命じ、その余の一審原告の請求をいずれも棄却した。
⑶ 一審原告及び一審被告の双方が、原判決を不服として、原判決中の各敗訴部分全部の取消しを求めて、それぞれ本件各控訴を提起した。当審係属中、一審原告は、本件特許権1ないし4に係る差止め及び廃棄の請求を取り下げた。2 前提事実次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」第2の2(「前提事
5 実」)に記載されたとおりであるから、これを引用する。
⑴ 5頁1行目から2行目にかけての「請求のとおり訂正することを認めるとの審決がされ」の次に「(以下、この審決による訂正を「前件訂正」という。」を加え、同2行目末尾に行を改めて次のとおり加える。)「 なお、前件訂正により、本件明細書1【0012】は、次のように訂正された(下線部が訂正部分。甲19の2。 。)【0012】【課題を解決するための手段と作用】この発明に係る表示装置は、機械・装置・設備等の制御対象を制御するプログラマブル・コントローラにおいて用いられるものであり、制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムと、そのプログラムで異常現象の発生がモニタされたときにモニタされた異常現象に対応する異常種類を表示する手段と、表示された1又は複数の異常種類から1の異常種類をタッチパネル上でタッチして指定する手段と、異常種類が指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段と、を有する。」
⑵ 6頁6行目の「本件発明1」を「訂正前発明1」と、「これに係る特許」を「これ(後記本件訂正後は本件発明1)に係る特許」とそれぞれ改め、12頁26行目末尾に行を改めて次のとおり加える。「⑹ 本件訂正ア 一審被告は、平成30年11月22日、本件発明1についての特許について特許無効審判請求(無効2018-800131号)をした(甲62)。イ 一審原告は、令和元年7月9日、訂正前発明1についての特許を無効とする旨の審決の予告を受けたので、同年9月17日、訂正請求をした(以下、この訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。甲56、
5 57、乙32)。ウ 特許庁は、令和2年3月30日、本件訂正を認め、一審被告の無効審判請求は成り立たない旨の審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年4月13日、一審被告に送達された(甲62、乙71)。エ 一審被告は、令和2年4月27日、本件審決の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所令和2年(行ケ)第10059号。以下「別件訴訟」という。)を提起した(乙71)。オ 知的財産高等裁判所は、令和3年5月31日、別件訴訟における一審被告の請求を棄却する判決をし、これに対して、一審被告は上告受理申立てをしたが(最高裁判所令和3年(行ヒ)第237号)、最高裁判所は、令和3年10月12日、上告不受理決定をし、本件審決は確定した(甲70、乙71)。
⑺ 本件発明1の構成要件の分説本件訂正後の本件第1特許の請求項1の発明(以下「本件発明1」という。)の構成要件は、次のとおり分説される(下線部は、本件訂正による訂正部分)。1A 機械・装置・設備等の制御対象を制御するプログラマブル・コントローラにおいて用いられる表示装置であって、1B′前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムであって、当該異常現象が発生したのに対応して、前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラムと、1C そのプログラムで異常現象の発生がモニタされたときにモニタされた異常現象に対応する異常種類を表示する手段と、1D 表示された1又は複数の異常種類から1の異常種類に係る異常名
5 称をタッチして指定するタッチパネルと、1E 異常種類が当該タッチにより指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段と、を有し、1F 前記ラダー回路を表示する手段は、表示されたラダー回路の入出力要素のいずれかをタッチして指定する前記タッチパネルと、表示されたラダー回路の入力要素が当該タッチにより指定されたときにその入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示し、表示されたラダー回路の出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する手段を含む1G ことを特徴とする表示装置。なお、本件訂正により、本件明細書1【0012】は、次のように訂正された(下線部が訂正部分。甲57。。)【0012】【課題を解決するための手段と作用】この発明に係る表示装置は、機械・装置・設備等の制御対象を制御するプログラマブル・コントローラにおいて用いられるものであり、制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムであって、当該異常現象が発生したのに対応して、前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラムと、そのプログラムで異常現象の発生がモニタされたときにモニタされた異常現象に対応する異常種類を表示する手段と、表示された1又は複数の異常種類から1の異常種類をタッチパネル上でタッチして指定する手段と、異常種類が指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段と、を有する。」3 争点
5 次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」第2の3(「争点」)に記載されたとおりであるから、これを引用する。
⑴ 13頁23行目の冒頭から末尾までを次のとおり改める。「ア 本件特許1の無効理由-乙第28号証を引用例とする拡大先願(争点5-1A)本件特許1の無効理由-訂正要件違反(争点5-1B)
⑵ 13頁25行目の「本件特許1及び2-1」を「本件特許2-1」と改め、14頁7行目末尾に行を改めて次のとおり加える。「ケ 本件特許4の無効理由-乙第6号証を主引用例とする進歩性欠如(争点5-9)」
⑶ 14頁9行目冒頭から10行目末尾までを次のとおり改める「⑺ 本件特許権1に関する権利行使阻害事由及び訴訟上の信義則違反の有無(争点7)」4 争点に関する当事者の主張次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」第3(「争点に関する当事者の主張」)に記載されたとおりであるから、これを引用する。
⑴ 15頁22行目及び23行目の各「構成要件1B」をいずれも「構成要件1B′」と改め、16頁1行目末尾に行を改めて次のとおり加える。「 一審被告が主張するように、前件訂正や本件訂正によって構成要件1B又は1B′の対象となるプログラムが異なるものになったということはない。構成要件1Bの「異常現象の発生をモニタするプログラム」は、構成要件1Gに「・・・ことを特徴とする表示装置」と記載されていることから、前件訂正の前から表示装置が有する構成であることは明白であった。本件明細書1【0031】にも、「操作盤10は、所定のタイムインターバル(例えば100ミリ秒間隔)で、プログラマブル・コントローラ本体20の、異常時に動作状態が切換えられる電磁リレー等に対応するRAM
5 23のアドレスの内容を読み込むようにプログラムされており、異常現象が発生したのに対応して対応するアドレスのデータが変化したことを認識する」と記載されており、「異常現象の発生をモニタするプログラム」(構成要件1B)は、異常現象を認識するため操作盤(表示装置)が備えるプログラムとされている。前件訂正は、訂正前発明1が構成要件1Gに記載されているとおりの「表示装置」の発明であるのにもかかわらず、構成要件1Aに「プログラマブル・コントローラにおいて、」となっていたという明白な誤記を訂正したものにすぎない。被告製品3のOSがインストールされた被告表示器Aにおいてアラームが表示されるのは、ユーザがアラーム検出用として指定したデバイスの条件が成立した時、すなわち、ビットがOFFからONになった時等である。そして、一審被告も、被告製品3のOSがインストールされた被告表示器Aにプログラマブル・コントローラからのビット変化(プロジェクトデータで指定されたビットデバイスの値の変化)をモニタするプログラムが格納されていることは認めているところ、ビット(デバイスの値)の変化があった場合に、表示器(表示装置)においてそれをアラームとして表示するためには、表示器自体においてもプログラマブル・コントローラにおけるビットの変化を異常現象の発生と位置付けることが必要であるから、上記プログラムは異常現象の発生をモニタするものである。」
⑵ 17頁1行目末尾に行を改めて次のとおり加え、同2行目冒頭の「カ」を「キ」と改める。「カ 要因検索についてワンタッチ回路ジャンプ機能をインストールする際、回路検索モードを「要因検索」としてインストールした場合でも、異常現象の発生をモニタした回路ブロック(異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路)は、検索結果が列記されて表示されている複数の回路ブ
5 ロックの中に含まれているから、画面に表示されているといえる。異常現象の発生をモニタした回路ブロックにたどり着くために、画面表示された回路図の経路をスクロールして遡ることが介在するとしても、構成要件1Fの充足には支障がない。」
⑶ 19頁2行目末尾に行を改めて次のとおり加える。「 構成要件1B′の「異常現象の発生をモニタするプログラム」は、①構成要件1Eに「異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する」とされているから、異常現象の発生をモニタするプログラムが「ラダー回路」であることが明記されているといえること、②本件明細書1でも「プログラマブル・コントローラには、前記した種々の異常現象の発生をモニタするモニタ用のラダープログラムが用意されている。この異常モニタ用のラダープログラムは所定のタイムインターバルで繰り返し実行される。プログラマブル・コントローラがこの異常モニタ用のラダープログラムを実行して異常現象の発生を検出すると、各種異常現象に割当てられている異常表示ランプ類を点灯させる。 (」 【0009】 、) 「異常モニタ用ラダープログラム」 【0027】 【0029】( 、 )と記載されていることからすると、異常現象を検出する検出装置からの信号をモニタして異常現象を認識するプログラムである異常モニタ用ラダープログラム(以下「モニタプログラム」という。)であると解するほかない。他方、本件訂正によって、構成要件1B′は、モニタプログラムであるとともに、「当該異常現象が発生したのに対応して、前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラム」(以下「変化認識プログラム」という。)であるとされたから、結局、構成要件1B′のプログラムは、モニタプログラムと変化認識プログラムが一体となった複合的なプログラムと解される。そして、前件訂正によって、「異常現象の発生をモニタするプログラム」を含めて、全ての構成要件が表示装置に関する構成要
5 件であることが明らかにされているから、構成要件1B′は、上記の複合的な機能を備えたプログラムが表示装置に存在することを規定すると解釈せざるを得ない。したがって、「異常現象の発生をモニタするプログラム」(モニタプログラム)がプログラマブル・コントローラに含まれていて表示装置には含まれていない構成は、本件発明1の技術的範囲には属しない。そうであるところ、被告製品3のOSがインストールされた被告表示器Aは、「プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラム」(変化認識プログラム)が備わってはいるものの、「異常現象の発生をモニタするプログラム」(モニタプログラム)は備わってはいない。」
⑷ 19頁26行目の「構成要件1B」を「構成要件1B′」と改め、同行目末尾に行を改めて次のとおり加える。「オ 要因検索について構成要件1Eの「異常現象の発生をモニタしたラダー回路」とは、異常現象の発生によって信号の状態を切り換えるものを入力要素とし、異常の種類ごとにあらかじめ割り当てられている出力要素の作動状態を切り換えるラダー回路であって、本件発明1は、表示された異常種類が指定されたときに、当該ラダー回路を表示する手段を有していなければならない。しかしながら、被告製品3のOSをインストールした被告表示器Aにおけるワンタッチ回路ジャンプ機能では、「コイル検索」を指定してプロジェクトデータを作成してインストールを行わない限り、構成要件1Eに相当する構成を具備することはない。すなわち、「要因検索」を指定してインストールをした場合、異常発生時において要因となっている回路ブロックを遡って検索し、検索過程で利用した回路ブロック図が列記される状態を表示するため、ユーザは、これら経路を戻ることによっ
5 て当初の異常現象の発生をモニタした回路ブロックにたどり着くことができるにすぎない。したがって、要因検索を指定してワンタッチ回路ジャンプ機能をインストールした被告表示器Aは、「異常現象の発生によって信号の状態を切り換えるものを入力要素とし、異常の種類毎に予め割り当てられている出力要素の作動状態を切り換える」ラダー回路を表示するものではないから、構成要件1Eを充足しない。」
⑸ 21頁18行目冒頭から22頁10行目末尾までを次のとおり改める。「イ 特許法101条2号の間接侵害課題解決不可欠品の意義従来技術ないし従来技術から容易想到なものが特許法101条2号に定める「その発明による課題の解決に不可欠なもの」(以下「課題解決不可欠品」ということがある。)に該当し得ないとする根拠はない。本件発明1の課題、作用効果a 本件発明1が従来技術を上回る点は、構成要件1F中の、入出力要素に対応するラダー回路を検索するに当たり、出力要素をタッチするようにした点だけではない。本件発明1の構成要件1Eの「異常種類が当該タッチにより指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段」は、乙第2号証(6-16頁ないし6-17頁参照)にも、乙第3号証(6-4頁ないし6-5頁参照)にも、乙第11号証(1・1頁)にも開示されておらず、従来技術より優れた点である。b 構成要件1Fの作用効果としても、本件明細書1には、構成要件1Fの構成をとることによって、「真の原因を特定できるまで次々にラダー回路を読み出していくことができる。しかもその操作は、
5 タッチパネルに手を触れるだけですみ、極めて簡単である」 【00(16】 、) 「作業者はこの機能を使って真の原因を探求する為にラダー回路を上流に遡行していくことができ、因果関係の連鎖をシステムによってガイドされながら的確に原因を追求することができる」(【0040】 、) 「因果関係の連鎖が複数のラダー回路に亘る場合に、作業者がタッチパネルにタッチするだけで次々に関連するラダー回路を表示させることが可能となり、異常現象が複雑な場合の原因探索を極めて有効に支援することができ、原因探索時間が効果的に短縮化される」 【0045】( )と記載されている。構成要件1Fの作用効果を「遡及しすぎた場合に元の回路に戻る」と限定して解釈する必要はない。いずれにせよ、被告製品3のOSをインストールした被告表示器Aでは、タッチ検索によって出力要素を入力要素とするラダー回路を検索(接点検索)した結果、複数のラダー回路が検索された場合、検索された複数のラダー回路の全てを表示させることができる(甲6の3-67頁)。これらの表示されたラダー回路の中には、当然、元のラダー回路が含まれており、接点検索によって、遡及しすぎた場合に元のラダー回路に戻ることができる。c 構成要件1Fの接点検索には、「検索戻り」ボタンにはないメリットがあり、接点検索を用いて回路を戻るユーザは多いと思われる。すなわち、①接点検索は、ラダー回路の遡及手段であるコイル検索(入力要素を出力要素とするラダー回路を検索)と同様の操作内容であるため、ユーザにとっては、マニュアルに頼らなくても直観的に操作できることや、②例えば、コイル検索によりラダー回路を遡及してある接点の異常を特定して異常の原因究明をした後に、接点検索により当該接点の異常の影響が遡及経路上のコイル以外の出力
5 要素にも及んでいないか確認し、究明された異常原因によって設備に他にどのような影響があるかを確認することができる(甲69)。このように、接点検索は、本件明細書1【0042】に記載されている、「遡及しすぎた場合」に「戻ることができ」、したがって、「この操作盤は極めて使いやすく、異常時の復旧処理を効果的に実施することを可能とする」との本件発明1の作用効果を奏し、メリットを享受できる機能なのである。d 本件特許1の出願過程では、「元のラダー回路に戻る」という作用効果は、特定の文献と対比した場合の効果として主張がされただけであり、当該効果が本件発明1の必須の効果であるとか、このような効果を奏して初めて先行技術と差別化されるといった限定的陳述がされたわけでもなく、この主張に基づいて特許査定に至ったとの事情もない。したがって、本件は、包袋禁反言による限定解釈がされなければならない事案ではない。直接侵害品が生産される条件被告表示器Aを使用するためにはプロジェクトデータをインストールする行為が不可欠であるが、回路モニタ機能が設定されたプロジェクトデータを被告表示器Aに転送する際には、基本機能ОSと拡張/オプション機能OS内に組み込まれている回路モニタ機能部分が他の部分と一緒に転送対象として自動的に選択される。すなわち、画面上に拡張機能スイッチ(たとえば「回路モニタ」)を配置する設定をすると、被告製品3中の必要なプログラムであるシステムアプリケーション(拡張機能)が、ユーザが当該機能を使用するか、しないかにかかわらず選択される。そして、ユーザによる除外、すなわち自動選択された回路モニタ機能のチェックを外す行為が介在しない限り、回路モニタ機能部分は被
5 告表示器Aに自動的に転送されて、被告表示器Aに書き込まれる(甲52の4-55頁)。ユーザは、必ず被告製品3のOSをインストールしなければ被告表示器Aを使用できないのであるから、一審被告による被告表示器Aの販売は、回路モニタ機能を含む被告製品3のOSがプレインストールされた表示器(直接侵害品)の販売と変わるところがない。以上からすると、被告表示器Aは、被告製品3が揃った時点で、被告製品3のOSがプレインストールされた表示器と実質的に何ら変わらない状態になると評価されるか、少なくとも、回路モニタ機能が使用可能な状態となれば、直接侵害品として生産されたといえる。そして、回路モニタ機能を実際に使用するか否か等のユーザによる選択行為は、被告表示器Aが本件発明1の直接侵害品が生産される条件には含まれない。被告表示器Aの課題解決不可品該当性被告表示器Aは、本件発明1の課題解決、すなわち、「作業者はこの機能を使って真の原因を探求する為にラダー回路を上流に遡行していくことができ、因果関係の連鎖をシステムによってガイドされながら的確に原因を追求することができる」 【0040】 、( ) 「因果関係の連鎖が複数のラダー回路に亘る場合に、作業者がタッチパネルにタッチするだけで次々に関連するラダー回路を表示させることが可能となり、異常現象が複雑な場合の原因探索を極めて有効に支援することができ、原因探索時間が効果的に短縮化される」 【0045】( )との効果を享受するために、タッチパネルのタッチにより異常種類や異常表示を指定し、入出力要素をタッチすることによりこれに対応するラダー回路を表示するために不可欠である。一審被告が本件特許1の存在を知った時期
5 一審被告は、被告表示器Aの販売当初から、本件発明1を知り、ユーザにより被告表示器Aが同発明の実施に用いられることを知って、その生産、譲渡を行っていた。本件発明1に係る特許請求の範囲は訂正されたものであるが、訂正前の特許請求の範囲を知っていた場合には、訂正後の発明についても悪意を認定するのが妥当である。一審被告は、前件訂正前にはいかなる物も課題解決不可欠品に該当することはあり得ないと主張しているが、訂正前後において、本件発明1が解決しようとする課題が本件明細書1【0011】記載のとおりであることに変わりはなく、一貫して、異常現象が生じたときに直ちにラダー回路を表示し、操作者が容易かつ確実に故障原因を遡及的に明らかにしていくことをその課題としていた。一審被告において被告表示器Aが本件発明1の実施に用いられることを知っていたか否か被告表示器Aが本件発明1の実施に用いられることの悪意は、ユーザが実際に実施しているか否かではなく、本件発明1の機能がユーザにより用いられ得ることの認識で足りると解すべきであり、その可能性について一審被告が悪意であることは、一審被告の宣伝広告や取扱説明書の記載内容から明らかである。小括以上のとおり、被告表示器Aの生産、譲渡は、本件特許権1の間接侵害(特許法101条2号)に該当する。」
⑹ 23頁20行目冒頭から25頁9行目までを次のとおり改める。「⑶ 特許法101条2号の間接侵害についてア 課題解決不可欠品の意義について課題解決不可欠品とは、従来技術の問題点を解決するための方法として、当該発明が新たに開示する、従来技術にみられない特徴的技術
5 手段について、当該手段を特徴づけている特有の構成ないし成分を直接もたらす、特徴的な部材、原料、道具等をいう。イ 本件発明1の課題、作用効果について接点検索(出力要素を入力要素とするラダー回路を検索)は、本件審決において、引用発明との対比において相違点とされた部分であるが、そのことから、この部分を本件発明1による課題の解決に不可欠な部分とすることはできない。間接侵害の規定は、直接侵害を惹起する蓋然性の高いものを間接侵害としたものであるところ、相違点は、単に無効論において従来技術と異なる部分とされる部分にすぎず、直接侵害を惹起する蓋然性の高いものとは限らない。「異常現象の発生時に、その異常をもたらしたラダー回路を表示する」(本件明細書1【0011】)との本件発明1の課題の解決に寄与しているのは、構成要件1Dの「表示された1又は複数の異常種類から1の異常種類に係る異常名称をタッチして指定するタッチパネル」と構成要件1Eの「異常種類が当該タッチにより指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段」との構成であり、構成要件1Fの検索機能は含まれない。仮に、前記 のようにいえないとしても、「真の異常原因を特定する」(本件明細書1【0011】)ためには接点から回路上流側に遡るコイル検索をする必要があるとはいえても、回路下流側に下る接点検索をする必要はないから、構成要件1Fの「表示されたラダー回路の出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示」する接点検索は、異常原因の特定のために必要な手段とはいえない。接点検索は、戻る手段を提供しないのみならず、元来た回路とは全く別のラダー回
5 路に迷い込んでしまうこともあるから、むしろ有害である。本件明細書1には、「図12のステップS55とS51によってラダー回路を遡及側へ追求することができ、ステップS57とS58によって遡及しすぎた場合には戻ることができるために、この操作盤は極めて使いやすく、異常時の復旧処理を効果的に実施することを可能とする。 (」 【0042】)との記載があるが、接点検索によって回路を戻れるとは限らないから、この記載は誤解に基づくものである。一審原告は、接点検索によるメリットが「究明された異常原因によって、設備に他にどのような影響があるかを確認することが可能になることにある」と主張しているが、このような作用効果は本件明細書1に記載されていない。接点検索は、ラダー回路編集装置でなければ必要ではない機能といえ、異常発生時のラダー回路表示という本件発明1の目的との関係では有用ではない接点検索を、ラダー回路編集という本件発明1の目的とは別の目的のために有用であるからといって、接点検索が本件発明1による課題の解決に不可欠なものということもできない。一審原告は、本件特許1の出願過程において、接点検索が「元のラダー回路に戻る」ことについて有利な点があると記載された意見書を提出して特許査定を得ている(乙25の4頁10ないし20行目)。禁反言の原則によれば、構成要件1Fに含まれている「出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する手段」については、「元のラダー回路」を検索して表示する手段に限定して解釈されなければならない。ウ 課題解決不可欠品該当性について被告表示器Aは、タッチパネル、プログラマブル・コントローラ
5 とのデータの入出力インターフェース等の汎用性のある機能を提供しているだけであり、回路モニタ機能をインストールして実行するための特別な構成を有しているわけではない。被告製品3の回路モニタ機能は異常の発生とは独立した機能であるから、アラームリスト機能を経由せずにラダー回路が表示されている状態でも、ラダー図の接点又はコイルをタッチすることによって接点又はコイルを指定することができ、これは汎用的な機能として提供されている。エ 直接侵害品が生産される条件について被告表示器Aを使用する際には、シーケンサに接続するためのOSとして被告製品3が必須ではあるが、一審原告が主張する回路モニタ機能を利用しているユーザは一部である上、回路モニタ機能を利用しているユーザであっても、本件発明1の構成要件の一部としての態様であるワンタッチ回路ジャンプ機能を利用している蓋然性は更に低い。すなわち、被告表示器A及び被告製品3によって直接侵害品が生産される条件は、①被告表示器Aが特定のシーケンサ(プログラマブル・コントローラ)に接続されること、②当該シーケンサ等のプログラム中に「異常モニタ用ラダープログラム」(本件明細書1【0020】参照)が存在すること、③プロジェクトデータ中に、異常現象が発生したのに対応して、前記異常モニタ用プログラムの特定のアドレスのデータが変化したときに異常種類を示すテキストを表示するプロジェクトデータが存在すること、④回路モニタ機能がインストールされていること、⑤ワンタッチ回路ジャンプ機能がインストールされていること、が必要である。上記①の条件に関して、被告表示器Aは、一審被告製のものに限られず、他社製のものに接続して使用することが可能であるが、一審被
5 告製の特定のシーケンサに接続されなければ、ラダー回路の表示すらできないか、ラダー回路の表示ができてもタッチ検索を実行できない。また、シーケンサの異常モニタ用ラダープログラムをプログラムするのも、被告表示器Aのプロジェクトデータを作成するのもユーザであって、これに一審被告は一切関与していない。一審被告は、異常現象の発生をモニタするラダー回路をプログラマブル・コントローラにインストールしているユーザの存在を否定するわけではないが、その数は限られている。被告表示器Aに回路モニタ機能を含むプロジェクトデータをインストールする場合、被告製品3の基本機能OSに加えて、ユーザの設定条件に依存して拡張/オプション機能OSのうち回路モニタ機能がインストール項目として選択され、ユーザが任意に解除しない限り、回路モニタ機能がインストールされるのであって、必ず回路モニタ機能がインストールされるわけではなく、むしろ、被告表示器Aのユーザのうち、回路モニタ機能を利用しているユーザはごく一部にすぎない(乙17、乙18)。さらに、被告製品1-2においては、オプション機能ボードがなければ上記④の条件を充足させることはできないが、オプション機能ボードを必要とする理由は回路モニタ機能のインストールには限られないから、オプション機能ボートを購入した者が必ず回路モニタ機能をインストールしているとはいえない。また、被告表示器Aでは、ユーザが回路モニタ機能を利用するプロジェクトデータを作成した場合には、回路モニタ機能がインストールされるように自動設定されるが、ユーザが回路モニタ機能を利用しないプロジェクトデータを作成した場合には、そのような自動設定は行われない。これは、ワンタッチ回路ジャンプ機能も同様である。被告製品3のOSをインストールされた被告表示器Aにおいて、「遡及しすぎた場合には戻ること」 【0042】( )をする際には、「検
5 索戻」ボタンが使用される(乙45の3-39頁、3-40頁)。この「検索戻」ボタンは、検索履歴の記憶を利用するものであり、接点検索とは明らかに異なるものである。しかも、被告製品3のOSをインストールした被告表示器Aにおいて、回路を遡及しすぎたとして接点検索をしても、あらかじめ指定されているルールに従って、経路のいずれかが検索結果表示に関する優先順位に従って表示されるだけであり、元のラダー回路に戻ることはできない。したがって、被告製品3のOSをインストールした被告表示器Aが本件発明1の実施品として現に利用されることは非現実的である。オ 一審被告が本件特許1の存在を知った時期一審被告が訂正前発明1に係る訂正審決(甲20)を知ったのは、一審原告から同訂正審決書の写しの送付を受けた平成28年11月16日であり、一審被告が本件特許1の存在を知ったのも同日である。特許法101条2号の文言上、主観的要件は譲渡等の行為時に具備されていなければならず、訂正前の行為についてこれを具備することはあり得ない。そして、主観的要件の存在は事実の問題であるから、訂正の遡及効を理由としてその存在を擬制することはできない。さらにいえば、本件では訂正前発明1に係る訂正前の発明は従来技術そのものであり、それとの関係ではいかなる物も課題解決不可欠品に該当することはあり得ないから、間接侵害が成立する余地はない。なお、一審被告が訂正前発明1に係る訂正前の発明を現実に認識した時期は、一審原告からの警告書を受領した平成25年4月2日である。カ 一審被告において被告表示器Aが本件発明1の実施に用いられることを知っていたか否かについて被告表示器A及び被告製品3には本件発明1を実施しない実用的他
5 用途が存在するし、一審被告は基本的に販売代理店に対して被告表示器A及び被告製品3を販売しており、各販売代理店から被告表示器A及び被告製品3を購入する設備メーカーやエンドユーザが回路モニタ機能を使用するのかはもちろん、被告表示器Aをどのような機器に接続して使用するのかも全く知らない。したがって、一審被告は、被告表示器A及び被告製品3が本件発明1の実施に供されるかどうかを全く知らない。」
⑺ 37頁19行目の「②と③」を「①と②」と改める。
⑻ 38頁21行目から22行目にかけての「画面定義装置をPC上に作成する画面作成プログラム」を「画面定義装置」と、同23行目の「前記操作盤」を「前記表示操作装置」と、39頁12行目冒頭から13行目末尾までを「f3 前記表示操作装置のための画面定義装置」とそれぞれ改める。
⑼ 44頁15行目冒頭から48頁2行目末尾までを次のとおり改める。「9 争点5-1について
⑴ 争点5-1A(本件特許1の無効理由-乙第28号証を引用例とする拡大先願)について(一審被告の主張)ア 乙28発明の認定乙第28号証「特開2000-357003号公報」(平成11年6月15日特許出願、平成12年12月26日公開。以下「乙28文献」という。)の記載(【0023】 【0026】 【0028】、 、 、【0030】 【0032】 【0033】【0040】ないし【00、 、 、43】 【0045】 【0046】 【0049】 【0053】 【00、 、 、 、 、55】)によると、次の発明(以下「乙28発明」という。)が認められる。1a″機械・装置・設備等の制御対象を制御するプログラマブル・
5 コントローラにおいて用いられる表示装置であって、1b″プログラマブルコントローラ10が前記制御対象の異常現象の発生を検出した場合に当該情報が供給され、1c″エラー(アラーム状態)が発生した場合に発生したエラー(アラーム状態)に対応する表示シンボルを表示する手段と、1d″アラーム表示された特定の表示シンボルにタッチするタッチパネルと、1e″表示シンボルがタッチされた場合にタッチされた表示シンボルに関連付けられたラダー回路を表示する手段と、を有し、1f″前記ラダー回路を表示する手段は、表示されたラダー回路の入出力要素のいずれかをタッチして指定する前記タッチパネルと、表示されたラダー回路の接点がタッチによって選択された状態でタッチされたときにその接点をコイルとするラダー回路を検索して表示し、「戻る」シンボルをタッチすることによって元のラダー回路図に戻る手段を含む、1g″表示器。イ 本件発明1との実質同一性対比本件発明1と乙28発明とは、①本件発明1では「異常名称」をタッチすることによってラダー回路を表示する(構成要件1D及び1E)のに対し、乙28発明では「表示シンボル」をタッチすることによってラダー回路を表示する点(以下「相違点①」という。 、②本件発明1では出力要素をタッチすることによって当)該出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する(構成要件1F)のに対し、乙28発明では、コイルにタッチしてもリレーアドレスをコメント文とともに表示するのみで、元の回路
5 図に戻るためには「戻る」シンボルをタッチする点(以下「相違点②」という。)で形式的に相違し、その余の点で一致する。相違点①について乙28発明では、制御対象12にはリミットスイッチ、操作スイッチ、油圧バルブ、気圧バルブ、モータ、操作パネル等があり、これらの各リレーアドレスに対して表示シンボルが対応付けられており、各制御対象12についてエラー(アラーム状態)の発生が表示される(乙28文献【0026】 【0028】 【003、 、2】 【0033】 。したがって、表示シンボルを見れば、利用者、 )はどの制御対象12についてエラー(アラーム状態)が発生したかを認識できるから、これを「リミットスイッチ異常」 「操作ス、イッチ異常」等という異常名称によって表示するか否かは単純な設計事項にすぎず、相違点①は実質的な相違点ではない。相違点②について本件発明1で、「出力要素をタッチすることで当該出力要素を入力要素とするラダー回路を表示する構成」は、本件明細書1に記載された、遡及しすぎた場合に元のラダー回路に戻るとの課題を解決する上では無意味な構成であり、このような無意味な構成の付加は、特許法29条の2における発明の同一性認定において実質的な相違点とはならない。仮に、無意味な構成の付加ではなかったとしても、指定したコイルを接点とするラダー回路を検索する構成は周知技術であり(乙1ないし3、5、7、20、31)、新たな効果を奏するものではない。小括以上のとおりであるから、本件発明1と乙28発明は実質同一であり、本件特許1には特許法29条の2違反の無効理由がある。
5 (一審原告の主張)ア 乙28発明の認定について乙28文献には、元の回路に戻るのに「戻る」スイッチを押下する記載があるのみであり(【0054】 、本件発明1の構成要件1)Fである「前記ラダー回路を表示する手段は、表示されたラダー回路の入出力要素のいずれかをタッチして指定する前記タッチパネルと、表示されたラダー回路の入力要素が当該タッチにより指定されたときにその入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示し、表示されたラダー回路の出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する手段を含む」構成についての記載を欠く。入出力要素をタッチしながら故障原因を遡及して究明する本件発明1と、元の回路に戻る乙28発明とは、全く異なる発明である。イ 本件発明1との実質同一性について対比a 一審被告が周知技術の立証のために提出する書証について、乙第1号証ないし乙第3号証には、タッチ検索によるラダー回路の遡及について開示がない。また、乙第7号証は、「シーケンスプログラム中の接点を指定することにより、その接点と同じI/O番号・・・のコイルを自動的に検索したり、或いはシーケンスプログラム中のコイルを指定して、そのコイルと同じI/O No.の接点を自動的に検索する」ことが記載されているのみであり(【0003】 、コイルのI/O番号を検索す)ることをかろうじて示唆するものの、タッチパネル上で接点やコイルを指定して当該接点あるいはコイルを出力要素又は入力要素とするラダー回路に遡行することを開示してはない。そし
5 て、乙第5号証、乙第20号証、乙第31号証はプログラマブル表示器の発明ですらない。b 本件発明1は、「真の原因を特定できるまで次々にラダー回路を読み出していくことができる。しかもその操作は、タッチパネルに手を触れるだけですみ、極めて簡単である」(本件明細書1【0016】 、) 「因果関係の連鎖が複数のラダー回路に亘る場合に、作業者がタッチパネルにタッチするだけで次々に関連するラダー回路を表示させることが可能となり、異常現象が複雑な場合の原因探索を極めて有効に支援することができ、原因探索時間が効果的に短縮化される」 【0045】( )との特有の効果を奏する。小括以上のとおり、本件発明1と乙28発明とが実質同一であるとはいえない。
⑵ 争点5-1B(本件特許1の無効理由-訂正要件違反)について(一審被告の主張)ア 前件訂正について前件訂正によって、「異常現象の発生をモニタするプログラム」が「表示装置」に含まれていることが明確になったが、本件明細書1の記載を参酌すれば、異常現象が発生した場合にRAM23内のアドレスに記憶されているデータを書き換えるプログラム(【0029】)が「異常現象の発生をモニタするプログラム」(モニタプログラム)であり、RAM23のアドレスの内容を読み込み、データが変化したことを認識するプログラム(【0031】)が本件訂正に係る「前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラム」(変化認識プログラム)
5 であるから、プログラムの所在箇所を明らかにするだけであった前件訂正によっては、「異常現象の発生をモニタするプログラム」自体の内容が変更されたものではない。イ 本件訂正について本件訂正は、「異常現象の発生をモニタするプログラム」(モニタプログラム)と「前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラム」(変化認識プログラム)とが同一のものとするものであり、本件審決においては、「異常現象の発生をモニタするプログラム」は、「操作盤10のRAM13内の異常データテーブルを更新する処理手順を含む図10のプログラムに対応するもの」であり、「プログラマブル・コントローラのRAM23に記憶された異常モニタ用ラダープログラムではない」と認定されている。ウ 訂正要件違反前件訂正時の「異常現象の発生をモニタするプログラム」は、本件訂正によって、全く異なるプログラムを意味することとなってしまった。そうすると、前件訂正は、事後的にされた本件訂正によって、特許請求の範囲を実質的に変更したことになるものであり、特許請求の範囲の減縮、誤記若しくは誤訳の訂正、又は明瞭でない記載の釈明のいずれにもあたらない。したがって、前件訂正は、特許法126条1項及び6項に違反し、本件特許は、特許法123条1項8号の規定により、特許無効審判により無効とされるべきものである。(一審原告の主張)特許請求の範囲の記載に「異常現象の発生をモニタしたラダー回路
5 を表示する手段」(構成要件1E)とあるとおり、前件訂正前から「異常現象の発生をモニタするプログラム」は表示装置が有する構成であり、前件訂正は、誤記の訂正にすぎない。そして、前件訂正前から「異常現象の発生をモニタするプログラム」はビットの変化を認識するプログラムであったのだから、変化認識プログラムにほかならず、本件訂正によりその意味が変わったこともない。一審被告の主張は失当である。」
⑽ 51頁13行目の「本件特許1及び2-1」を「本件特許2-1」と改め、同21行目から22行目にかけてと、52頁14行目の各「本件発明1及び2-1」をいずれも「本件発明2-1」と改め、同17行目冒頭から53頁5行目末尾まで及び同6行目の「イ」をいずれも削る。
⑾ 69頁26行目末尾に行を改めて次のとおり加える。「17 争点5-9(本件特許4の無効理由-乙第6号証を主引用例とする進歩性欠如)について(一審被告の主張)本件発明4が複数の区画に操作キー及びランプの絵を表示することができるのに対し、乙第6号証「特開平4-139503号公報」(以下「乙6文献」という。)に記載された発明(乙6発明)では操作キー及びランプの絵を表示することができない点が相違点であるとしても、当該相違点は容易に想到できる。乙6発明の目的は「ディスプレイ操作盤上の各表示要素の表示形態を希望通りに的確に変更することができる操作盤のデータ設定方法を提供すること」(乙6文献の2頁右上欄4ないし7行目)であるところ、本件特許4の出願日(平成8年4月26日)前の平成7年11月に頒布された刊行物である乙第55号証「GOT800-シリーズカタログ」(以下「乙55文献」という。)には、タッチスイッチを用いた操作盤の表
5 示画面において、ランプとスイッチが異なった絵を用いて表示されていることが記載されているから(12頁)、このランプとスイッチの絵を乙6発明に組み合わせて本件発明4の上記相違点に係る構成とすることは容易である。(一審原告の主張)乙6文献には「操作キーやランプの絵」も「プログラマブルコントローラのアドレス」も開示されておらず、これらの技術要素を導入することで本件発明4と同様の効果を得ることを示唆する記述も存在しない。したがって、乙55文献に「タッチスイッチを用いた操作盤の表示画面において、ランプとスイッチが異なった絵を用いて表示されている」ことの記載があっても、その技術事項を乙6発明の装置に導入する動機付けはなく、そのほかに乙6発明と乙55文献の装置との間に課題目的あるいは作用機能の共通性、乙55文献の技術事項を乙6発明に導入する内容上の示唆を認めるに足りる技術常識も立証されていない以上、本件発明4は容易に発明できるとはいえない。」
⑿ 70頁1行目冒頭の「17」を「18」と改め、同2行目末尾に行を改めて次のとおり加える。「⑴ 本件特許権1の侵害による損害についてア 特許法102条1項に基づく損害適用関係a 間接侵害にも特許法102条1項が適用される。そして、一審原告は、表示装置にOS及び各機能を実行するためのプログラムがあらかじめインストールされている製品(原告の製品)を製造、販売しており、一審被告による特許権侵害に伴ってその売上げ及び利益獲得の機会を逸失している。仮に、本件特許権1に関し被告製品3のみを間接侵害品と考えたとしても、一審被告は、被告
5 製品3を廉価で販売しつつ、被告表示器Aを桁違いに高価な価格で販売し、被告製品3を同一工場内ならほぼ無制限にインストールできるとするビジネスモデルを採用しており、一審被告が被告表示器Aと被告製品3の実質セット販売によって得た利益と、原告の製品の売上げ及び利益獲得の機会の逸失という一審原告の逸失利益との間には関連性が存在することは明らかである。被告表示器Aと被告製品3が実質的に一体不可分であることからしても、被告表示器Aの売上げ及び利益を考慮すべきである。したがって、被告表示器A及び被告製品3を販売することで得られた利益について、特許法102条1項の損害推定が働くと解するべきである。b 令和元年法律第3号により改正された特許法102条1項については、附則に経過措置がないことから、本件に適用されると解するのが妥当である。侵害行為がなければ販売することができた物原告の製品は、被告表示器Aと競合する製品であるから、特許法102条1項1号の「その侵害の行為がなければ販売することができた物」である。特許法102条1項1号の「その侵害の行為がなければ販売することができた物」とは、その機能において競合すれば足りるから、原告の製品が一審被告製シーケンサと接続することはできないとしても、被告表示器Aとは競合関係に立つ。さらに、市場の実態を踏まえると、一審被告製シーケンサと接続可能な被告表示器Aの販売がなければ、一審原告から、一審原告製プログラマブル・コントローラと原告の製品をセットで購入し、使用するユーザもいたことは明らかであるから、やはり、被告表示器Aと原告の製品とは競合し
5 得る。被告製品3のOSに係る部分は、被告表示器Aにインストールされることによって、本件発明1の機能を発揮するから、その限りで被告製品3と原告の製品とは競合関係に立つと解釈できる。単位当たりの利益の額平成25年度の原告の製品1台当たりの限界利益の額は、別紙1-1⑴のとおりである(争いがない。。)「その侵害の行為を組成した物」の譲渡数量等a 「その侵害の行為を組成した物」特許法102条1項の適用により売上機会を回復されなければならない原告の製品(その侵害の行為がなければ販売することができた物)は、本件特許1の実施品そのもの(本件発明1の機能がプレインストールされた物)である。そうである以上、その売上機会喪失による損害を回復するためには、被告製品3と実質的にセット販売され、同製品のOSが実質的にプレインストールされているのと何ら変わるところがない被告表示器Aの販売数量を「その侵害の行為を組成した物」の譲渡数量と捉えるべきである。b 販売数量等被告製品1、被告製品2、被告表示器A及び被告製品3の平成25年4月から令和2年3月までの販売数量、金額は、それぞれ、別紙3ないし6(被告製品3については月ごとに、その他の製品については半期ごとに販売数、販売額を集計したものである。)に記載のとおりである(争いがない。。)c 直接侵害品の生産に用いられた被告表示器Aの数量に関する一審被告の主張について一審被告製シーケンサ等に接続する利用態様の割合的算出の
5 主張について廉価な、下位機種や他社製表示器があるにもかかわらず、ただでさえ高額な被告表示器Aをその顧客誘引力の源泉である回路モニタ機能を利用しない態様で使用することは不自然である。また、そのような高価格な被告表示器Aを回路モニタ機能の実現が利用できない他社製シーケンサに接続して使用するユーザが多数いると考えるのも不自然である。プログラマブル表示器の選定条件にプログラマブル・コントローラとの親和性が挙げられているということは、プログラマブル・コントローラと表示器の双方の機能を十分に発揮できることが重視されているのであり、表示器を他社製のプログラマブル・コントローラに接続する利用態様は僅少である。なお、一審原告が、一審被告より1台のプログラマブル・コントローラと29台の回路モニタ機能に対応する表示器を購入したのは、日常的に頻繁にタッチパネルが操作される表示器については耐用期間が短く、故障が生じる頻度が高いことから、交換・保全用として購入したものである(甲25)。
⒝ 対応シーケンサ等に接続する利用態様の割合的算出の主張についてこの点につき一審被告が主張する別紙7の4は、信ぴょう性がなく割合算出の基礎とすべきではないが、仮に、参酌するとしても次のとおりである。すなわち、「MELSEC QnAシリーズ」 「MELSEC Aシ、リーズ」及び「MELDAS C6/C64」は、被告製品2Aと、「MELSEC iQ-Lシリーズ」及び「CNC C80シリーズ」は、被告製品1Aと接続できないから、これらシーケンサ等を購入したユー
5 ザが被告表示器2A又は1Aを購入するはずはなく、算定の分母からは除外すべきである(そのほかのシーケンサが被告表示器Aと接続できることは認める。 。また、) 「MELSEC iQ-Fシリーズ」及び「MELSEC-Fシリーズ」は、比較的単純な使用態様で用いられるスタンドアローン向けのシーケンサであるから、このようなシーケンサ等を購入したユーザは、回路モニタ機能等の付加的な機能を備えることで高額となっている被告表示器Aではなく、廉価な、一審被告製の別の表示器又は他社製表示器を選定するから、実質的に被告表示器Aを接続するユーザはいない。したがって、「iQ-Fシリーズ」や「Fシリーズ」も算定の基礎に含めるべきではない。
⒞ 回路モニタ機能の利用割合の主張について現実の回路モニタの利用割合は、別紙1-1⑵のとおり、一審被告が保管しているユーザのプロジェクトデータの総数(乙73)のうち、回路モニタ機能が実現し得る表示器のプロジェクトデータの数(乙72)が占める割合に近いものと考えられる。
⒟ ワンタッチ回路ジャンプ機能を用いるプロジェクトデータの作成割合に関する主張について一審被告は、アラームリスト表示画面を含むプロジェクトデータの数と、そのうち、アラームリスト表示画面から回路モニタを起動すること(ワンタッチ回路ジャンプ機能を用いることになる。)のできるプロジェクトデータの数の割合から、本件発明1の実施品として生産された被告表示器Aの数を推定できるとするが(別紙2-2)、一方で、「複雑なプロジェクトデータを用いるユーザから提供されたものとなるから、市場におけ
5 る被告表示器の利用形態の割合を反映していない」と自認するとおり(一審被告準備書面(14)4頁参照)、その数値は特殊な条件のプロジェクトデータのみに偏った数値であり、根拠にならない。また、その数値の根拠となる一審被告従業員の陳述書(乙72)には何らの客観的な裏付けがなく、信用できない。販売することができないとする事情(特定数量)被告表示器Aの譲渡数量のうち、少なくとも59/60が特許法102条1項1号の「特定数量」に該当することを認める。また、原告の製品においては、メニュー表示から接点検索をすることができるものの、コイルタッチから接点検索をする機能は備えておらず、原告の製品が本件発明1の実施品ではないことは認める。相当実施料率上記特定数量については特許法102条1項2号の適用がある。2009年11月から2010年2月までを調査実施期間とし、通常実施権によるライセンス・アウトを想定し(ライセンスの付与する側での立場を想定)、特殊な事情を捨象し、一時払いやイニシャルペイメント付きランニングロイヤルティ等をいずれもランニングロイヤルティと想定して実施したアンケート結果(器械部門)によると、実施料率は平均3.5%であったから(甲67〔ロイヤルティ料率データハンドブック〕9頁表Ⅰ-3)、本件においての相当実施料率は、特許法102条4項も踏まえれば、少なくとも7%は下らない。損害額以上から、被告表示器A及び被告製品3の販売を理由とする1項損害の額は、別紙1-2に記載のとおりとなる。
5 一審被告の主張について被告製品3には描画ソフトも含まれているが、プログラマブル表示器用の描画ソフトは被告製品3の販売当時、既に公知慣用のものであったから、その部分の被告製品3の売上げに対する寄与度は低く評価されるべきである。また、一審被告は一審原告のシェアを指摘しているが、本件発明1の機能は他者の追随を許さない差別化要因であり、本件発明3の機能も特許の存在ゆえに他社は採用を回避しているか、潜在的に侵害者として原告による権利行使の対象となっている。本件発明1の機能を備えたプログラマブル表示器は一審原告と一審被告の製品のほかには存在しない。したがって、シェアを考慮する上での市場画定は一審被告と一審原告においてのみされるべきである。一審被告は、被告製品3を購入した者の全てが回路モニタ機能を使用しているわけではない、回路モニタ機能を使用するのにオプション機能ボードの設置が必要な被告製品1-2を購入した者のうち、オプション機能ボードを購入したのは約4分の1にとどまり、実際に回路モニタ機能等を使用していないユーザは更に多く存在する旨主張するが、特許法102条1項の「販売することができないとする事情」について、その程度が明らかでない場合には、その考慮は極めて限定的になし得るにとどまる。一審被告は、回路モニタ機能には非侵害用途がある旨主張するが、回路モニタ機能が使用可能な状態となれば、被告表示器Aは本件発明1の技術的範囲に含まれるのであり、上記の点は、一審原告の損害を減額する理由とはならない。そして、需要者、スペック、価格等において、原告の製品と一審被告の製品との間には大差がないから、特許法102条1項の「販
5 売することができないとする事情」は、むしろ、ないというべきである。イ 特許法102条2項に基づく損害等適用関係間接侵害にも特許法102条2項が適用される。そして、一審原告は、表示装置にOS及び各機能を実行するためのプログラムが予めインストールされている製品を製造、販売しており、一審被告による特許権侵害に伴ってその売上げ及び利益獲得の機会を逸失している。仮に、本件特許1に関し被告製品3のみを間接侵害品と考えたとしても、一審被告は被告製品3を廉価で販売しつつ、被告表示器Aを桁違いに高価な価格で販売し、被告製品3を同一工場内ならほぼ無制限にインストールできるビジネスモデルを採用しており、一審被告が被告表示器Aと被告製品3の実質セット販売によって得た利益と、原告の逸失利益との間に同質性が存在することは明らかである。被告表示器Aと被告製品3が実質的に一体不可分であることからしても、被告表示器Aの売上げ及び利益も考慮すべきである。したがって、被告表示器A及び被告製品3を販売することで得られた利益について、特許法102条2項の損害推定が働くと解するべきである。被告表示器Aの製造販売を理由とする損害a 2項損害販売額平成25年4月から令和2年3月までの被告表示器Aの売上高は、別紙5に記載されたとおりである(争いがない。。)被告表示器Aについての限界利益率は、少なくとも20%は下らない。
5 ⒝ 推定覆滅被告表示器Aの販売による利益のうち、59/60について、推定が覆滅されることを認める。被告製品3と実質的にセット販売されている被告表示器Aのカタログや取扱説明書における宣伝や説明内容等からすれば、大半のユーザはワンタッチ回路ジャンプ機能を使用しているとの推定が働くというべきであって、これを使用しないユーザがいるということは、一審被告が主張立証責任を負う推定覆滅事由である。一審被告は、被告製品1-2について約4分の3のユーザが回路モニタ機能を使用していないと主張し、従業員の陳述書を提出しているが、客観的根拠を伴っておらず、にわかに措信し難い。一審被告による被告表示器Aの拡販活動においては、回路モニタ機能等を強調し(甲5、34)、同機能を第三者も評価していることに加え、回路モニタ機能を作動させるために別途オプション機能ボードを用意しなければならない被告製品1-2(定価価格帯12万8000円ないし42万0000円。甲5の80頁)よりも、高価でかつ回路モニタを作動させるのに特別なオプション等を要しない被告製品1-1(定価価格帯25万0000円ないし52万0000円。甲5の80頁)の方が圧倒的に多く販売されていることも、回路モニタ機能等が被告表示器Aのユーザの大半により使用されていることの裏付けとなる。さらに、被告製品2では、回路モニタ(シーケンスプログラムモニタ)機能の実現には被告製品1-2におけるオプション
5 機能ボードのような特別なオプションを要しないところ、平成26年前後を境に、被告製品2は着実に販売台数を伸ばし、被告製品1と置き換わっている。回路モニタ機能がインストール対象として選択されるのが殊更に例外的場合であることはなく、回路モニタというスイッチをあえて配置しないで被告表示器Aを使用するユーザの方が例外であるといえる。b 特許法102条3項の重畳適用前記a⒝の覆滅部分については特許法102条3項が併用されると解釈すべきである。前記ア のとおり、相当実施料率は、102条4項も踏まえれば、少なくとも7%は下らない。c 損害額以上から、被告表示器Aの販売を理由とする特許法102条2項の損害及び3項の損害の額は、別紙1-3の第1のとおりとなる。被告製品3の販売を理由とする損害a 2項損害販売額平成25年4月から令和2年3月までの被告製品3の売上高は、別紙6に記載されたとおりである(争いがない。。)被告製品3についての限界利益率は、原判決別紙「被告の変動費の内訳、加重平均値及び限界利益率」の⑶のとおりである。
⒝ 推定覆滅一審被告は、被告製品3では利益を上げないビジネスモデルをとっていたのであり、被告製品3は1枚当たり約60台の被告表示器Aにインストールされたといえるから、被告製品3に
5 ついては、推定覆滅事情は無い。b 損害額以上から、被告製品3の販売を理由とする特許法102条2項の損害の額は、別紙1-3の第2とおりとなる。特許法102条2項等の損害の合計以上から、被告表示器A及び被告製品3の販売による本件特許権1の侵害に係る損害は、別紙1-3の第3のとおりとなる。ウ 予備的主張(特許法102条3項)仮に、本件において特許法102条1項又は2項のいずれの適用もないとすれば、一審原告は、同条3項の規定に基づく損害を主張する。」
⒀ 70頁3行目冒頭から末尾までを「⑵ 本件特許権3の侵害による損害について」と、同7行目の「本件特許1及び3」を「本件特許3」とそれぞれ改め、同9行目の「本件特許1に関し」と、同21行目の「本件第1特許の」から22行目の「売り上げ、」までと、同25行目の「本件第1特許の」から同26行目の「8月末までに、」までをいずれも削る。
⒁ 71頁7行目の「本件発明1及び3」を「本件発明3」と、同10行目の「本件特許権1及び3」を「本件特許権3」とそれぞれ改め、同9行目の「特に、」から10行目の「(甲31) 」までと、同15行目から16行目に。かけての「ワンタッチ回路モニタ機能や」と、同19行目冒頭から21行目末尾までと、同頁26行目の「本件第1特許」から72頁1行目の「●●●●●●円、」までをいずれも削る。
⒂ 72頁9行目の「本件特許1及び3」を「本件特許3」と、同10行目の「本件発明1及び3」を「本件発明3」とそれぞれ改め、同15行目冒頭から19行目の「これに対し、」までと、73頁6行目冒頭から18行目末尾までをいずれも削り、同22行目の「本件発明1の機能」を「機能」と、7
5 4頁1行目の「本件発明1の機能は」から2行目の「本件発明3の機能も」を「本件発明3の機能は」と、同3行目から4行目にかけての「本件発明1及び3」を「本件発明3」と、同9行目の「⑵」を「⑶」と、同24行目の「⑶」を「⑷」とそれぞれ改める。75頁2行目冒頭から80頁6行目末尾までを次のとおり改める。「(一審被告の主張)
⑴ 本件特許権1の侵害による損害についてア 特許法102条1項に基づく損害適用関係a 特許法102条1項を間接侵害に適用することはできない。仮に、特許法102条1項を間接侵害に適用できるとしても、間接侵害が成立し得るのは、一審被告が主観的要件を具備して行った被告製品3の生産、譲渡等のみである。そして、主観的要件を具備することは一審原告に立証責任があるが、何ら立証されていない。b 令和元年法律第3号による改正前の特許法102条1項(以下「旧1項」という。)及び特許法102条2項は、物の製造、販売の機会を逸したことによる逸失利益の額の計算を容易にすることを目的とするものであり、同条3項は、実施許諾の機会を逸したことによる逸失利益の損害が常に認められることを規定したものであるが、上記旧1項及び2項の、製造、販売の機会を逸したとの逸失利益と、上記3項の、実施許諾の機会を逸したという逸失利益とは両立しない。なぜなら、特許権者が実施許諾を行ったと仮定した場合には、被許諾者が製造、販売を行うことはその実施許諾において予定された結果であり、被許諾者の製造、販売による損害を観念できなくなるからである。特許権者は、上記各項
5 のいずれかの逸失利益の損害を選択的に主張することができるが、他方、その各項のいずれかによって特許権者の損害は余すことなく把握される以上、各項を重複して適用する主張をすることはできない。上記改正に先立つ平成10年法律第51号による改正においては、旧1項が新設されたが、この改正は、損害概念を拡大させるものではなく、逸失利益の立証について立証責任を転換したものにすぎない。したがって、同改正については、旧1項を改正施行日前の侵害行為によって生じた損害の損害額の審理に適用できるとする解釈の余地があった。これに対して、特許法102条1項2号は、旧1項と同趣旨の特許法102条1項1号による逸失利益に加えて、実施相応数量を超える数量と特定数量について実施料相当額を損害額とするものであるが、前述のとおり、特許法102条1項1号の額が、同条3項の損害額を上回っていれば、本来、それによって特許権侵害による損害は尽きているのであり、同条1項1号の損害額に加えて同項2号の損害額をも損害額とすることは、現実には発生していない損害について損害額を算出するものである。そうすると、特許法102条1項は、立法によって、特許法上の新たな損害賠償制度を創設したものであり、立証方法に関する手続法とはいえず、明らかな実体法である。したがって、同項2号を施行日以前の行為に遡及して適用する余地はない。侵害行為がなければ販売することができた物「侵害の行為がなければ販売することができた物」とは、侵害品と市場において競合関係にある権利者の製品と解されているところ、被告製品3はソフトウェアであるのに対し、一審原告はハードウェ
5 アとソフトウェアを別個に販売していないから、原告の製品とは競合関係になく、原告の製品が被告表示器Aを代替することもできないから、一審原告の主張は主張自体失当である。直接侵害品たる被告製品3のOSをインストールした被告表示器Aは、回路モニタ機能が行使できるということであるから、必ず一審被告製の特定のシーケンサに接続されているという条件を充足しているが、一方、原告の製品は一審原告製のプログラマブル・コントローラにしか接続できない(乙75ないし77)。したがって、直接侵害品と原告の製品とは全く交換不可能であって市場における競合関係にないから、原告の製品は直接侵害品の競合品ではない。そうすると、直接侵害品がなければ原告の製品を販売することができたとはいえず、原告の製品は、「その侵害の行為がなければ販売することができた物」には該当しない。単位数量当たりの利益の額a 平成25年度の原告の製品1台当たりの限界利益の額が別紙1-1⑴のとおりであることは認める。b 仮に、被告製品3が原告の製品と市場で競合するとしても、被告製品3に相当するのは、原告の製品の販売価格のうちソフトウェアが占める割合であるから、一審被告の製品の方をハードウェアとソフトウェアを一体として販売したと仮定して販売価格を算定し、その販売価格全体に占めるソフトウェアの割合を上記の額に乗じて算定することになる。「その侵害の行為を組成した物」の譲渡数量等a 「その侵害の行為を組成した物」について「その侵害の行為を組成した物」は、直接侵害品であり、間接侵害品ではないところ、被告表示器A及び被告各製品を購入した
5 者の全てが本件発明1の実施品(直接侵害品)を生産しているのではない。b 販売数量等について被告製品1、被告製品2、被告表示器A及び被告製品3の平成25年4月から令和2年3月までの販売数量、金額が、別紙3ないし6に記載のとおりであることは認める。c 直接侵害品の生産に用いられた被告表示器Aの数量について一審被告が現状把握している資料等に基づいて可能な限り正確に本件発明1の実施品の生産に用いられた被告表示器Aの数を推計する方法を、以下のとおり提示する。輸出の除外一審被告が国内で販売した被告表示器Aのうち一定数は、その後、販売代理店を介して国外へ輸出されている。
⒝ プログラマブル・コントローラに接続しない利用態様の除外被告表示器Aを用いて本件発明1の実施品を生産するためには、一審被告製シーケンサ等に接続する必要がある。しかし、プログラマブル表示器はプログラマブル・コントローラ(シーケンサ)以外に接続して用いることが可能であり、被告表示器Aも、インバータ、センサレスサーボ、サーボアンプ、ロボットコントローラ、電力管理機器、モーションコントローラ、安全コントローラ、温度調節器/その他制御機器、マイコン等に接続して用いられている(乙66、67)。一審被告はユーザにおける利用態様を把握していないが、流通している被告表示器Aの少なくとも●●%程度はこれらの機器に接続して使用されており、本件発明1の実施とは無関係である。
⒞ 一審被告製シーケンサ等に接続する利用態様の割合的算出
5 被告表示器Aの販売台数から、前記 及び⒝で述べた台数を除外した台数が、国内でプログラマブル・コントローラに接続して使用されている台数と推測できる。したがって、これに一審被告製シーケンサ等のシェアを乗じれば、一審被告製シーケンサ等に接続されている利用割合を算出することができる。各社のプログラマブル・コントローラのシェアとプログラマブル表示器のシェアをみると、両者は一致しておらず、表示器において26.0~29.8%という高いシェアを維持する一方でプログラマブル・コントローラにおいてはわずかなシェアしか有しない社も存在し(乙58ないし64、74)、プログラマブル・コントローラとプログラマブル表示器の市場は独立しており、相互に関連性はない。むしろ、プログラマブル表示器シェア上位の一審被告らは、多くの他社製機器へ接続可能なプログラマブル表示器を製造販売することによって、高いシェアを維持している。なお、一審原告自身、一審被告の制御機器を計7台(回路モニタ機能に対応しているものは1台)購入し、表示器を計106台購入しているが(回路モニタ機能に対応しているものは29台。以上、乙17。 、通常、1つの制御機器に数十台もの表)示器を接続することはないから、上記表示器は上記7台の一審被告の制御機器とは異なる制御機器に接続されているはずであり、このことからすると、一審原告が自ら、被告表示器Aを購入しながら一審被告製シーケンサと接続しない例を具現しているといえる。
⒟ 対応シーケンサ等に接続する利用態様の割合的算出被告表示器Aを使って本件発明1の実施品を生産するために
5 は、一審被告製シーケンサ等の中でも、更に特定の種類のシーケンサ等に接続しなければならない。したがって、前記⒞の結果に一審被告製シーケンサ等の販売数に占める当該特定の種類のシーケンサ等の割合を乗じることで、回路モニタ機能を利用できる機器の数を推計することができる。オプション機能ボードを購入した割合被告製品1-1及び被告製品2は、オプション機能ボードを装着しなくても、全機種が回路モニタ機能を実行することが可能である。これに対して、被告製品1-2は、型名GT15-FNB以外のオプション機能ボードを装着する必要がある。したがって、本件発明1の実施品を直ちに生産可能な被告製品1-2の算定に当たっては、型名GT15-FNB以外のオプション機能ボードの販売台数を考慮しなければならない。さらに、被告製品1-2のうち、GT1555-QTBD、GT1555-QSBD及びGT1550-QLBDは、型名GT15-FNB以外のオプション機能ボードを装着することができるものの、当該オプション機能ボードを装着しても回路モニタ機能を実行できず、本件発明1の実施品を生産することはできない。また、一審被告が販売したオプション機能ボードの一部は輸出された被告製品1-2に装着されているはずである。しかし、一審被告は、販売された型名GT15-FNB以外のオプション機能ボードがどの表示器に装着されているかを把握していない。もっとも、販売された型名GT15-FNB以外のオプション機能ボードの全てが上記回路モニタ機能が実行できない機種以外の機種に装着されたと仮定すれば、型名GT15-FNB以外のオプション機能ボードの販売数をもって、本
5 件発明1の実施品が直ちに生産可能な被告製品1-2の最大数を算出することができる。
⒡ 本件発明1の実施品の生産に用いられた被告表示器Aの数ⅰ 回路モニタ機能を利用できる被告表示器Aの数一審被告が把握している輸出された表示器Aの台数は、別紙7の1のとおりであり、平成25年から令和元年までの一審被告のプログラマブルコントローラ国内市場シェアは、別紙7の3のとおりであり、平成25年4月から令和2年3月までの一審被告製シーケンサ販売実績、回路モニタ機能の実行が可能なシーケンサ等の割合は、別紙7の4のとおりであり、被告製品1-2に装着可能なオプション機能ボードの販売台数は、別紙7の5のとおりである。これらを考慮すると、回路モニタ機能が利用できる被告表示器Aの数(被告製品1-2については、最大数)は、別紙2-1のとおりである。なお、オプション機能ボードを装着することで利用可能になる機能は、回路モニタ機能だけではなく、「漢字圏」 「ド、キュメント表示」 「かな漢字変換」 「かな漢字変換(機能拡、 、張版) 、」 「ヒストリカルデータリスト表示」 「ヒストリカル、トレンドグラフ」 「操作ログ機能」 「ロギング機能」 「レシ、 、 、ピ機能」 「拡張レシピ機能」 「オブジェクトスクリプト」、 、 、「マルチチャンネル機能」 「ゲートウェイ機能」 「MESイ、 、ンターフェース機能」 「Aリスト編集」 「FXリスト編集」、 、 、「インテリジェントユニットモニタ」 「ネットワークモニ、タ」 「Qモーションモニタ」 「サーボアンプモニタ」 「CN、 、 、Cモニタ」 「SFCモニタ」 「ラダー編集」 「モーションS、 、 、
5 FCモニタ」 「メンテナンス時期通知」があり(乙65の1、-8頁ないし1-10頁)、単純に操作画面が多く、メモリの増設が必要になる場合に、メモリと一体化したオプション機能ボード(型名末尾が「(数字)M」のもの)を装着することがある。したがって、別紙7-5記載のオプション機能ボードの販売台数のうち、実際に回路モニタ機能を利用するために購入されたオプション機能ボードは少数にとどまると推測される。一審被告は、この割合を約1/8と推計している(乙18)。ⅱ ワンタッチ回路ジャンプ機能を利用できる被告表示器Aの数本件発明1の実施品を生産するためには、回路モニタ機能をインストールするだけでなく、ワンタッチ回路ジャンプ機能もインストールしなければならず、そのためにはワンタッチ回路ジャンプ機能を用いるプロジェクトデータを作成しておかなければならない。ワンタッチ回路ジャンプ機能を用いるプロジェクトデータの作成割合は、一審被告が、ユーザからの不具合調査や技術支援の依頼への対応に応じてユーザから取得して保管しているプロジェクトデータのうち、回路モニタ機能に対応しているシーケンサに接続されている被告製品2のプロジェクトデータの数と、そのうちアラームリストを表示する画面から回路モニタを起動する(ワンタッチ回路ジャンプ機能を用いることになる。)ことのできるプロジェクトデータの数とから算出することができ、この割合は、別紙2-2第1に記載のとおりである。
5 そして、この割合に回路モニタ機能を利用できる被告表示器Aの数を乗じれば、ワンタッチ回路ジャンプ機能を利用できる被告表示器Aの数を算出することができ、その数は、別紙2-2第2に記載のとおりである。なお、一審原告が主張するように、一審被告が保管しているユーザのプロジェクトデータの総数と、回路モニタ機能が実現し得るプロジェクトデータの数とを対比しても本件発明1の実施品の生産に用いられる被告表示器Aの数を推定することはできない。なぜなら、一審被告が技術支援等のためユーザからプロジェクトデータを入手するのは、当該ユーザが一審被告製シーケンサ―等に接続して複雑なプロジェクトデータを使用している場合が多く、その総数は表示器の総販売数の1%にも満たず、市場における被告表示器の利用態様の割合を反映していないからである。ⅲ 小括前記ⅰ及びⅱに記載した方法により、被告表示器Aの販売数量のうち、ワンタッチ回路ジャンプ機能を利用することができる被告表示器Aの数を算出することができ、この数が、本件発明1の実施品の生産に用いられた被告表示器Aの数である。販売することができないとする事情a 競合関係原告の製品は一審原告製のプログラマブル・コントローラにしか接続できないから、一審被告製のシーケンサに接続されているはずの直接侵害品の代わりに原告の製品を販売することはできない。したがって、原告の製品の譲渡数量の全部又は少なくとも9
5 9/100について、販売することができないとする事情が存在する。b 市場占有率一審原告は、プログラマブル・コントローラ用表示器の市場において意味のあるシェアを有していない(甲31の39頁に記載されたシェアにおいて「その他」に含まれているから、5%以下である。)上に、本件発明1の技術的な特徴は極めて限定的なものであるから、被告表示器A及び被告製品3と原告の製品(又はそのソフトウェア部分)の競合関係を擬制したとしても、一審被告が本件発明1の技術的範囲に属する製品を販売しなかった場合には、被告表示器A及び被告製品3の購入者のほとんどは、一審原告以外のメーカーに向かうことになり、原告の製品を購入することにはならない。c 発明の非実施原告の製品は、本件発明1の実施品ではなく(争いがない。 、)コイル検索後にコイル(出力要素)にタッチした場合には、16段の検索履歴の記憶を利用して、コイル検索前のラダー回路を表示させている(乙48の4-1頁)。原告の製品が本件発明1を実施していない理由は、本件発明1を実施する利益がないからであり、本件特許権1の侵害によって一審原告に損害が発生する余地はない。相当実施料について令和元年法律第3号による改正前の特許法102条1項(旧1項)と同3項とを重畳適用し、又は同改正後の特許法102条1項2号を適用できるとしても、その相当実施料率は、侵害プレミアムを考慮しても、通常でも、0.5%を上回ることはない。さらに、多機
5 能品である被告表示器Aにおいて、直接侵害品としての使用形態が占める割合を寄与率として乗じる必要があることを考慮して、一審被告がユーザからの不具合調査や技術支援の依頼への対応に応じてユーザから取得しているプロジェクトデータ(乙72)から求められた被告表示器Aにおいて占める直接侵害品の割合を乗じることで、最終的な相当実施料率を求めることができる。イ 特許法102条2項に基づく損害額等適用関係排他的独占権に着目した擬制を認めた特許法102条2項を、擬制の前提となる関係性を欠く間接侵害に適用することはできない。被告表示器Aの製造販売を理由とする損害a 2項損害販売額平成25年4月から令和2年3月までの被告表示器Aの売上高が別紙5に記載されたとおりであることは認める。被告表示器Aの限界利益率を20%であるとする一審原告の主張は、争わない。
⒝ 推定覆滅指定覆滅割合は、一審原告と一審被告とのシェア割合、多機能製品の一部が直接侵害態様を構成するにすぎないなどの事情を考慮すると、99.99%になる。b 特許法102条3項の重畳適用特許法102条2項と同条3項とが重畳適用できるとしても、その相当実施料率は、侵害プレミアムを考慮しても、0.007%を上回ることはない。被告製品3の販売を理由とする損害
5 a 2項損害販売額平成25年4月から令和2年3月までの被告製品3の売上高が別紙6に記載されたとおりであることは認める。被告製品3の限界利益率が原判決別紙「被告の変動費の内訳、加重平均値及び限界利益率」の⑶のとおりであることは認める。
⒝ 推定覆滅等被告製品3を使用する場合であっても、他社製のシーケンサ等に接続する表示器のプロジェクトデータを作成する場合や、回路モニタ機能に対応していない表示器のプロジェクトデータを作成する場合、回路モニタ機能を表示器にインストールしない場合には、本件発明1の実施品が生産されることはない。そして、前述したとおり、被告製品1-2におけるオプション機能ボードの購入割合は約4分の1であり、またこれを購入するユーザの約4分の3はメモリの増設を目的としていた。そして、オプション機能ボードを導入しても、一審被告製シーケンサ等と接続しなければ回路モニタ機能は利用できないところ、当時の一審被告のシーケンサのシェアは約50%であった。以上から、同製品において回路モニタ機能が利用されている割合は最大でも約32分の1であり、これはその他の製品でも同様と考えられる。また、本件発明1の特徴的技術手段は、回路モニタ機能全体ではなく、そのうち入出力要素を直接タッチして指定することによって対応する入出力要素の検索を行うことができるという点である(本件発明1は回路モニタ機能そのものの発明ではない。 。そ)うすると、特許法102条2項の推定を用いるためには、被告製品3の販売価格に適切な寄与度を乗じるべきである。
5 具体的には、被告製品3に占める回路モニタ機能のデータ量(約1万分の13)、プログラムのライン数(約1万分の15)に加え、上記特徴的技術手段の顧客への訴求力は極めて低いこと、回路モニタ機能はアラームリスト機能を経由せずに、本件発明1とは無関係に使用される場合もあること、本件発明1の価値は技術的にも商業的にも高くないことを考慮すべきである。以上を考慮すると、寄与度は多く見積もっても1万分の1を超えない。
⑵ 本件特許権2ないし4の侵害による損害について一審原告の主張を争う。
⑶ 特許法102条3項の予備的主張について一審原告の主張を争う。」
⒄ 80頁7行目冒頭から81頁10行目末尾までを次のとおり改める。「19 争点7(本件特許権1に関する権利行使阻害事由及び訴訟上の信義則違反の有無)について(一審被告の主張)
⑴ 本件特許1に関する権利行使阻害事由特許権侵害に対する損害賠償請求権が民法の不法行為の規定に基づいて発生する以上、信義則に違反して取得した特許権の行使を許すべきではないところ、一審原告は本件特許権1を不正な方法で取得したものであるから、一審原告が本件特許権1を行使することは許されない。すなわち、一審原告は、本件特許1の出願時及びその後の審査経過において、コイル検索を行った後にコイルをタッチして接点検索を行ってもコイル検索前のブロックに戻れるとは限らないことを知っていたにもかかわらず、本件明細書1には、遡及しすぎた場合には戻ることができると記載し(【0042】 、意見書(乙25)で重ねて上記不実の主張)
5 を繰り返し、その結果、審査官を錯誤に陥れ、本件特許1の進歩性を誤認させ、本件特許1を取得したのである。したがって、一審原告の本件特許権1の行使は阻害される。また、仮にそうではないとしても、禁反言により、構成要件1Fは、「表示されたラダー回路の出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とする元のラダー回路を検索して表示」と解釈しなければならない。
⑵ 訴訟上の信義則違反一審原告は、当初、原告の製品は本件特許1の実施品であると主張していたが、同製品の回路モニタにおいてコイルをタッチしても接点検索は行われないから(乙48の4-1頁)、同製品は本件特許1の実施品ではなく、その点について、当事者間に争いもなくなっている。そうすると、一審原告は、原告の製品において接点検索は行われないことを知った上で同製品が本件特許1の実施品であることを主張したことになり、接点検索が本件発明1の重要部分ではないということを前提にしていたことになる。したがって、一審原告が接点検索が行われる点を本件発明1の課題の解決に不可欠なものであると主張することは、自己矛盾の主張であって、訴訟上の信義則に違反する。(一審原告の主張)一審被告の上記各主張は、いずれも争う。」
第3 当裁判所の判断
1 争点1-1(被告表示器A、被告製品3の製造、販売等の行為は本件特許権
1の直接侵害行為に該当するか)について
⑴ 本件発明1について
本件発明1の技術的意義は、原判決81頁16行目冒頭から82頁23行目末尾までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、81頁1
5 9行目の「【0001】」を「【0002】」と改める。
⑵ 被告表示器A及び被告製品3について
被告製品の概要は、次のとおり補正するほかは、原判決の95頁23行目冒頭から104頁4行目末尾までに記載のとおりであるから、これを引用する。ア 95頁23行目の「15、17、」の次に「46、52、63、74、75、」を、同行目の「18」の次に「、43ないし46、49、50、57、65ないし67、79ないし81」をそれぞれ加える。イ 103頁7行目末尾に行を改めて以下のとおり加え、同25行目の「イ」を「ウ」と改める。「 回路モニタ機能は、「コイル検索」 「接点検索」及び「要因検索」と、いう3つの検索方法を備えている。「コイル検索」は指定されたデバイスをコイル(出力要素)とする回路ブロックを検索して表示する機能であり、「接点検索」は指定されたデバイスを接点(入力要素)とする回路ブロックを検索して表示する機能である。一方、「要因検索」は、指定されたデバイスがなぜON/OFFしているのか、その原因となる接点の導通/非導通の状態を回路を遡って検索する機能である。」ウ 104頁4行目末尾に行を改めて次のとおり加える。「 ワンタッチ回路ジャンプ機能のインストールa ワンタッチ回路ジャンプ機能ワンタッチ回路ジャンプ機能は、ユーザーがプロジェクトデータで設定したデバイスが指定された状態で回路モニタ機能を起動する機能であり、異常現象を表示させるための条件としてユーザーが指定したデバイス番号を有するデバイスをコイルとする回路ブロックを検索した状態(「コイル検索」)で回路ブロックを表示させるか、又は、アラームの発生要因まで遡って検索した状態(「要因検索」)
5 で検索経路に含まれていた全ての回路ブロックを表示させるかの2
つの選択肢があり、ユーザーはこの選択肢のいずれかをプロジェクトデータによって指定する。ワンタッチ回路ジャンプ機能によって回路モニタ機能を起動した場合、起動直後に設定された特定の検索を行った状態で回路表示をすることを除いては、他の方法で回路モニタ機能を実行した場合と変わりはなく、いずれの検索方法を設定しても、いったん回路モニタ機能が起動した後は、他の方法で回路モニタ機能を起動させたときと同様に、「コイル検索」 「接点検索」、 、「要因検索」を含む全ての機能を利用できる。通常、異常現象をモニタするプログラムによってONになったデバイスを指定して接点検索をすることは意味を持たないが、例えば、要因検索の後に原因となっているデバイスを指定して接点検索をすることにより、同一の原因から波及して起きる可能性のある複数の異常現象を把握することができる。b インストール方法被告製品1-1及び1-2においては、プロジェクトデータにおける拡張機能スイッチ又は拡張ユーザアラーム表示の設定で、被告製品2-1及び2-2では、拡張機能スイッチ又はアラーム表示の設定で、いずれも「ワンタッチ回路ジャンプ機能を使用する」にチェックを入れて、検索方法として「コイル検索」又は「要因検索」いずれかの回路検索モードを選択する。」
⑶ 構成要件の充足性の検討
当裁判所も、被告製品3のOSがインストールされた被告表示器Aは、本件発明1の構成要件を全て充足すると認定する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決の104頁6行目冒頭から108頁14行目末尾までに記載のとおりであるから、これを引用する。
5 ア 104頁9行目、同25行目及び105頁25行目から26行目にかけ
ての各「構成要件1B」をいずれも「構成要件1B′」と改め、同24行目の「認められる」の次に「(以下、これらアラーム表示を「アラーム機能等」ということがある。 」を加え、同24行目末尾に行を改めて以下の)とおり加え、同25行目の「回路モニタ機能等」を「回路モニタ機能及びワンタッチ回路ジャンプ機能(以下「回路モニタ機能等」という。 」と改)める。「 また、一審被告は、前記第3の1
(被告の主張)
⑴ア(本判決第2の
4⑶において付加されたもの)のとおり、被告製品3のOSがインストールされた被告表示器Aは、構成要件1B′が規定する「異常現象の発生をモニタするプログラム」(モニタプログラム)を備えていない旨主張する。しかしながら、前記説示のとおり、操作盤10(表示装置)は、プログラマブル・コントローラ本体20のRAM23のデータの変化を認識することによって、プログラマブル・コントローラ本体20の制御対象に発生した異常現象の種類を認識するプログラムを有しており、これは、プログラマブル・コントローラ本体20が備える「異常モニタ用ラダープログラム」 【0027】ないし【0029】( )とは異なる。そして、この操作盤10(表示装置)が備えるプログラムが、プログラマブル・コントローラ本体20のRAM23のデータの変化を通じて間接的に異常現象の発生を監視することから、「異常現象の発生をモニタするプログラム」とされたにすぎず、構成要件1B及び1B′が規定するプログラムは、もともと一審
(被告の主張)
にいう「変化認識プログラム」にほかならない。そして、被告製品3のOSをインストールした被告表示器Aがこのようなプログラムを有することは一審被告も自認しているから、一審
(被告の主張)
にいう「モニタプログラム」がプログラマブル・コントローラに含まれているからといって、構成要件1B′の充足の有
5 無を左右することはない。したがって、一審被告のこの点に係る主張も、
採用することはできない。」イ 106頁11行目から12行目にかけての「(ワンタッチ回路ジャンプ機能)」を削り、108頁15行目冒頭から26行目末尾までを次のとおり改める。「カ 一審被告は、前記第3の1
(被告の主張)
⑴イのとおり、所定のプ
ロジェクトデータがインストールされていない被告表示器Aは、構成要件1Cないし1Fを充足しない旨主張する。しかしながら、本件発明1においてプロジェクトデータ自体は発明特定事項とはされていないから、被告製品3のOSをインストールした被告表示器Aが本件発明1の技術的範囲に属する物であるか否かの判断は、アラーム機能等の所定の設定をしたプロジェクトデータをインストールすれば回路モニタ機能等が使用できる表示装置であるか否かを検討するものであり、このような所定のプロジェクトデータがインストールされている状態を前提にして充足の有無を検討すれば足りる。したがって、一審被告の上記主張は、採用することができない。キ 一審被告は、前記第3の1
(被告の主張)
⑴オ(本判決前記第2の
4⑷において付加されたもの)のとおり、「要因検索」を指定したワンタッチ回路ジャンプ機能をインストールした場合、異常現象の発生した回路図を含めてその要因とされる回路図まで回路図が列記された状態で表示されるから、要因検索が指定された被告表示器Aは、構成要件1Eの「その指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段」を充足しない旨主張する。しかしながら、構成要件1Eの「その指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段」とは、当
5 該ラダー回路図を含む表示がされればよいものであって、当該ラダー
回路図のみを表示するものでなければならないとは解釈できないところ、要因検索を指定してインストールされた表示器も、異常現象の要因とされるラダー回路から異常現象の発生をモニタしたラダー回路までの履歴が全て表示され、異常現象の発生をモニタしたラダー回路の表示のために画面のスクロールが必要となる場合があるにすぎないから、構成要件1Eは充足されるものと解される。したがって、一審被告の上記主張は、採用することができない。」
⑷ 被告表示器A、被告製品3の製造、販売等の行為についての直接侵害の成
否当裁判所も、被告表示器A、被告製品3の製造、販売等の行為が本件特許権1についての直接侵害に該当するものではないと判断する。その理由は、原判決111頁8行目冒頭から14行目末尾までを削るほかは、原判決の109頁3行目冒頭から112頁19行目末尾までに記載のとおりであるから、これを引用する。
2 争点1-2(被告表示器A、被告製品3の製造、販売等の行為は本件特許権1
の間接侵害行為に該当するか)について
⑴ 特許法101条1号の間接侵害の成否
当裁判所も、被告表示器A及び被告製品3の製造、販売等の行為は、いずれも本件特許権1についての特許法101条1号の間接侵害に該当するものではないと判断する。その理由は、原判決の112頁25行目冒頭から113頁14行目末尾に記載されたとおりであるから、これを引用する。
⑵ 特許法101条2号の間接侵害の成否
ア 「生産に用いる物」について前記1において判示したところによれば、被告表示器Aや被告製品3は本件特許権1の直接侵害品(実施品)の「生産に用いる物」に当たると認
5 められるが、本件では、これらが本件発明1による「課題の解決に不可欠
なもの」(課題解決不可欠品)に当たるか否かが争いとなっている。イ 「発明による課題の解決に不可欠なもの」について課題解決不可欠品の意義特許法101条2号において、その生産、譲渡等を侵害行為とみなす物を「発明による課題の解決に不可欠なもの」とした趣旨は、同号が対象とする物が、侵害用途のみならず非侵害用途にも用いることができるものであることから、特許権の効力の不当な拡張にならないよう、譲渡等の行為を侵害行為とみなす物(間接侵害品)を、発明という観点から見て重要な部品、道具、原料等(以下「部品等」という。)に限定する点にあり、そのために、単に「発明の実施に不可欠なもの」ではなく、「発明による課題の解決に不可欠なもの」と規定されていると解される。この趣旨に照らせば、「発明による課題の解決に不可欠なもの」(課題解決不可欠品)とは、それを用いることにより初めて「発明の解決しようとする課題」が解決されるような部品等、換言すれば、従来技術の問題点を解決するための方法として、当該発明が新たに開示する特徴的技術手段について、当該手段を特徴付けている特有の構成等を直接もたらす特徴的な部品等が、これに該当するものと解するのが相当である。本件発明1の特徴的技術手段についてa 本件発明1の課題及び課題解決手段について前記 の観点から、本件発明1において、従来技術の問題点を解決するための方法として新たに開示する特徴的技術手段を検討すると、前記1⑴によれば、本件明細書1では、本件発明1は、プログラマブル・コントローラにおいて用いられる表示装置において、①異常表示をもたらしたラダー回路を探すのに、保守担当者が従来のラダー回路図を参照する方法では多大の時間を要すること、②真の異常原因を特
5 定するためにいくつかのラダー回路図を探すのでは長い時間を浪費し
やすいことという課題について、 異常種類がタッチにより指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段を有するものとすること(構成要件1D及び1E)によって、上記①の課題を解決するものとし、 ラダー回路を表示する手段が、表示されたラダー回路の入出力要素のいずれかをタッチして指定するタッチパネルと、表示されたラダー回路の入力要素がタッチにより指定されたときにその入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示し、表示されたラダー回路の出力要素がタッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する手段を含むものとすること(構成要件1F)によって、上記②の課題を解決するものとしたことが認められる。b 従来技術についてここで、本件特許1の出願前に頒布された刊行物であると認めることのできる「三菱グラフィックオペレーションターミナル MELSEC-GOT900シリーズのカタログ」(乙1。以下「乙1文献」という。)の記載(8頁、14頁、25頁) 「三菱グラフィックオペ、レーションターミナルGOT MELSEC オペレーティングマニュアル」(乙2。以下「乙2文献」という。)の記載(6-16頁ないし6-17頁)及び「三菱グラフィックオペレーションターミナルGOT MELSEC オペレーティングマニュアル(拡張機能・オプション機能編) (乙3。以下「乙3文献」という。」 )の記載(1-10頁ないし1-11頁、6-4頁ないし6-6頁、6-7頁)によると、表示された複数種類のメッセージを指で反転表示させ、タッチキーを選択すると、エラーが発生したデバイスを検索した状態で回路モニタ機能が起動され、検索されたデバイスを含む回路ブロックのみ
5 が表示される回路モニタ機能を有し、当該回路モニタ機能は、タッチ
キーをタッチにより指定し、入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力することにより、読み出した検索デバイスを含む回路ブロックが表示されるコイル検索と、タッチキーをタッチにより指定し、入力画面においてデバイス名又はデバイス番号を入力することにより、読み出した検索デバイスを含む回路ブロックが表示される接点検索ができる製品が開示されていると認められる。また、「MELSEC QnA カタログ」(乙20。以下「乙20文献」という。)の記載(2枚目、3枚目)によると、ラダー回路図上のコイル又は接点にカーソルを移動して指定すると、デバイスの接点又はコイルの位置にカーソルが移動するラダー回路編集装置が開示されていることが認められる。さらに、「特開平6-195111号公報」(乙29。以下「乙29文献」という。)の記載(【0001】 【0014】ないし【001、6】 【図2】 【図3】、 、 )によると、異常現象が発生した場合に、表示されたラダー回路の入力要素をタッチすることにより、その入力要素を出力要素とするラダー回路が表示される監視装置が開示されているものと認められる。c 検討前記bの従来技術に照らすと、本件発明1は、乙1文献ないし乙3文献の装置に対しては、入力要素又は出力要素の検索がタッチ検索である点が異なり、乙20文献の装置に対しては、コイル検索又は接点検索がタッチ検索で、かつ、異常現象が発生した場合に検索を行う点が異なり、乙29文献の装置に対しては、出力要素を入力要素とするタッチ検索ができる点で異なる。これらの点に鑑みると、本件発明1の「異常種類が当該タッチにより指定されたときにその指定された異
5 常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する
手段」(構成要件1E)が「表示されたラダー回路の入…力要素…をタッチして指定するタッチパネルと、表示されたラダー回路の入力要素が当該タッチにより指定されたときにその入力要素を出力要素とするラダー回路を検索して表示」(コイル検索)する構成は、従来技術にすぎないと認められ、本件発明1が新たに開示する特徴的技術手段は、「異常種類が当該タッチにより指定されたときにその指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路を表示する手段」(構成要件1E)が「表示されたラダー回路の…出力要素…をタッチして指定するタッチパネルと、表示されたラダー回路の出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示」(接点検索)する構成(以下「異常発生時におけるタッチによる接点検索」ということがある。)であると認められる。特徴的な部品等前記 のとおり、特許法101条2号は、間接侵害品を当該発明の特徴的部分を特徴付ける特有の構成等を直接もたらす特徴的な部品等に限定していると解されるが、「部品等」の範囲は、物理的又は機能的な一体性を有するか否かを社会的経済的な側面からの観察を含めて決定されるべきものであり、ある部材が既存の部品等であっても、当該発明の課題解決に供する部品等として用いるためのものとして製造販売等がされているような場合には、当該部材もまた当該発明による課題の解決に不可欠なものに該当すると解すべきものである。なぜならば、特徴的な部品等といえども公知の部品等が組み合わせられているにすぎない場合が多いところ、一体性を有するものも形式的に分離できるのであれば直ちに間接侵害の適用が排除されるとすると、間接侵害の規定が及ぶ範囲を
5 極度に限定することとなり、特許法が間接侵害を特許権侵害とみなして
特許権の保護を認めた趣旨に著しく反することになるからである。被告製品3について被告製品3は、拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ機能等部分を格納しており、これが被告表示器Aにインストールされることによって、被告表示器Aにおいて回路モニタ機能等の使用が可能となるものである。そして、被告製品3の回路モニタ機能等部分とこれを除く他の部分とは、物理的にかつ機能的にも一体性を有するものと認められる。そうすると、被告製品3は、全体として、本件発明1の特徴的技術手段を直接もたらす特徴的部品であると認められる。したがって、被告製品3は本件発明1の課題解決不可欠品に当たる。被告表示器Aについて本件発明1が新たに開示する特徴的技術手段である、異常発生時のタッチによる接点検索との構成は、被告表示器Aと被告製品3の双方があって初めて実現し得る構成である。そして、一審被告が自認するとおり、回路モニタ機能等を実現するために被告表示器AにインストールできるOSは被告製品3のみであり、同機能の実現のために被告製品3がインストールできる表示器は被告表示器Aのみであるから(甲5、8)、上記構成を実現するように被告表示器Aが機能し得るのは、被告製品3のOSがインストールされた場合であり、かつ、その場合に限る。その上、被告表示器Aと被告製品3は、いずれも一審被告が生産、販売するものであり、一審被告は上記のような構成を熟知し、あえてこのような構成を選択し、かつ、顧客に両者を提供しているものといえる。以上からすると、被告表示器Aと被告製品3とは、たまたま物理的に別個の製品とされたことにより、一つの機能が複数の部品に分属させられているものの、本来的には、被告表示器Aは、被告製品3と機能的一
5 体不可分の関係にあるものであって、独立した製品とされていたとして
も、本件発明1の特徴的技術手段を直接もたらす特徴的部品等を構成するものであるというべきである。したがって、被告表示器Aは本件発明1の課題解決不可欠品である。一審
(被告の主張)
についてa 一審被告は、引用に係る原判決第3の2
(被告の主張)
イ(本判決前記第2の4 において補正されたもの)のとおり、構成要件1Fの「出力要素が当該タッチにより指定されたときにその出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する」構成である接点検索は、異常原因の特定に資するものではないし、また、コイル検索をしすぎた場合に接点検索により元の回路に戻れるものではないから、一審原告の主張する「究明された異常原因によって、設備に他にどのような影響があるかを確認すること」との技術的意義を有しているとしても、本件発明1の課題を解決する手段にも特徴的技術手段にも当たらず、本件発明1と技術分野の異なる回路編集装置にしか必要とならない機能である旨主張する。b そこで、検討するに、本件明細書1には、次の記載がある。「 【0010】従来のプログラマブル・コントローラでは、異常がおきたときにその異常の種類に対応する異常表示が行なわれるために、作業者は異常がおきた事実とおきた異常現象の種類を知ることができるが、それがなぜおきたかは表示されない。そこで、従来のプログラマブル・コントローラでは、異常がおきた場合に、システムの保守担当者が予め用意されているラダー回路図面集を参照しながら、異常表示を点灯させたラダー回路を発見し、そのラダー回路にしたがって異常をもたらした原因を探求していく。
5 【0011】
【発明が解決しようとする課題】一般にラダー回路図面集は100頁以上に及ぶ分厚いものであり、異常表示をもたらしたラダー回路を探すのに多大の時間を要する。しかも、真の異常原因を特定するまでにいくつかのラダー回路を探さなければならないことが多く、ラダー回路図面集から必要なラダー回路を探し出すまでに長い時間を浪費しやすい。そこで、本発明は、異常現象の発生時に、その異常をもたらしたラダー回路を表示するようにして、上記の不具合を解消し、もって速やかに復旧処理できるようにすることを目的とする。【0015】異常表示されたときにその異常表示をもたらしたラダー回路が表示されると、その異常に至った入力要素が直ちに特定されることから、復旧処理がやりやすくなる。ここで、ある入力要素は同時に出力要素であり得ることから、その異常をもたらした入力要素が真の原因でなく、その入力要素を出力要素とする別の入力要素が真の異常原因であることがある。例えば、入力要素1が異常表示をもたらした場合に、その入力要素1(同時に出力要素1でもある)の動作状態を切換える入力要素2が真の異常原因であることがある。しかもその連鎖がさらに遡ることがある。【0016】このような事態があり得る場合に、前記の表示装置は、表示されたラダー回路の入出力要素をタッチパネルを利用して指定することができる。表示されたラダー回路の入力要素が指定されたときは、その指定された入力要素を出力要素とするラダー回路が検索されて表示される。また、表示されたラダー回路の出力要素が指定されたと
5 きは、その指定された出力要素を入力要素とするラダー回路が検索
されて表示される。このため、真の原因を特定できるまで次々にラダー回路を読み出していくことができる。しかもその操作は、タッチパネルに手を触れるだけですみ、極めて簡単である。【0040】さらに、この操作盤10では、ラダー回路を切換えていくことができる。このためには、操作者が入力要素(この場合M001)か出力要素EM600のいずれかにタッチする。入力要素にタッチすると、図12のステップS54がイエスとなり、ステップS55ではその入力要素に対応するアドレスを変数Addに記憶する。この状態で次にステップS51が実施されるために、このとき実施されるステップS51ではそれまで入力要素(M001)を出力要素とするラダー回路が検索されて表示される。図8はそれを例示しており、いままでの入力要素を出力要素とするラダー回路に置き換わる。作業者はこの機能を使って真の原因を探求する為にラダー回路を上流に遡行していくことができ、因果関係の連鎖をシステムによってガイドされながら的確に原因を追求することができる。【0041】因果関係の連鎖を遡及しすぎた場合には、出力要素をタッチする。すると、今度はステップS57とS58が実行され、今度はそれまでの出力要素を入力要素とするラダー回路に戻すことができる。例えば、図8の状態で出力要素M001にタッチすると、今度は、出力要素M001を入力要素とするラダー回路、すなわち、図7 のラダー回路に戻るのである。【0042】
5 図12のステップS55とS51によってラダー回路を遡及側へ追
求することができ、ステップS57とS58によって遡及しすぎた場合には戻ることができるために、この操作盤は極めて使いやすく、異常時の復旧処理を効果的に実施することを可能とする。【0045】【発明の効果】請求項1に記載の装置によると、異常がおきたときにその異常をもたらしたラダー回路が表示されることから、作業者は直ちに復旧処理に着手でき、いままでのように分厚いラダー回路図面集から関連するラダー回路を探し出すのに時間を浪費するといった事態を避けることができる。因果関係の連鎖が複数のラダー回路に亘る場合に、作業者がタッチパネルにタッチするだけで次々に関連するラダー回路を表示させることが可能となり、異常現象が複雑な場合の原因探索を極めて有効に支援することができ、原因探索時間が効果的に短縮化される。【図12】」c 前記bの記載によると、本件発明1の構成要件1Fの接点検索の作用効果として、コイル検索(「入力要素を出力要素とするラダー
5 回路を検索して表示する手段」)による異常原因の探求中に遡及し
すぎ た 場 合 に元 に戻 ると する 記 載部 分が ある こと が 認め られ る(【0041】 【0042】 【図12】 。接点検索によってコイル、 、 )検索でたどった回路も表示されるから、遡及しすぎた場合に戻れることが可能なのは明らかであり、元の回路に戻る最適な手段とはいい難いとしても、接点検索に元の回路に戻る機能がないわけではない。さらに、前記bの記載が接点検索の作用効果が元の回路に戻ることのみにあると限定して理解する必要性も見当たらない。本件発明1の作用効果は、「異常表示をもたらしたラダー回路を探すのに多大の時間を要する。・・・異常現象の発生時に、その異常をもたら
5 したラダー回路を表示するようにして、上記の不具合を解消し、も
って速やかに復旧処理できるようにする」こと(【0011】 、) 「因果関係の連鎖が複数のラダー回路に亘る場合に、作業者がタッチパネルにタッチするだけで次々に関連するラダー回路を表示させることが可能となり、異常現象が複雑な場合の原因探索を極めて有効に支援することができ、原因探索時間が効果的に短縮化される」こと(【0045】)にもあり、多岐にわたるラダー回路を表示することによって異常現象発生時の復旧処理を短時間化させるという復旧処理の目的を広く含めているものであるところ、ラダー回路を遡及してある接点の異常を特定して異常の原因究明をした後に、当該接点の異常の影響が遡及経路上のコイル以外の出力要素にも及んでいないか確認し、究明された異常原因によって設備に他にどのような影響があるか確認することも復旧処理における副次的な目的として存在しており、これもまた異常原因の特定に資すると認められ(甲69)、一審被告も接点検索に下流側への影響を確認するとの用途があること自体は否定していない。したがって、構成要件1Fの接点検索は、表示装置において、異常発生時の復旧処理を短時間化させるとの本件発明1の課題解決手段であると認めらるのが相当である。また、本件発明1の特徴的技術手段は、異常発生時のタッチによる接点検索機能であり、単にタッチによる接点検索機能を持たせたことではないから、従来の回路編集装置とは異なる技術分野における上記課題解決手段として有用性が認められるものである。以上のとおりであるから、一審被告の前記a記載の主張を採用することはできない。。ウ 汎用品該当性について被告表示器A及び被告製品3の機能等に照らせば、被告表示器A及び被
5 告製品3が日本国内において広く一般に流通しているものに当たると認め
ることはできない。この点に関連し、一審被告は、引用に係る原判決第3の2
(被告の主張)
⑶ウ (本判決第2の4⑹において補正されたもの)のとおり、回路モニ
タ機能は、異常の発生とは独立した機能であり、アラームリスト機能を経由せずにラダー回路が表示されている状態でも使用することができるから、この機能は汎用的な機能として提供されている旨主張する。しかし、特許法101条2号が「日本国内において広く一般に流通しているもの」を間接侵害の対象物から除く趣旨は、市場において一般に入手可能な状態にある規格品や普及品まで間接侵害の対象とするのでは取引の安定性の確保の観点から好ましくないとの点にあるところ、被告表示器A及び被告製品3がそのような規格品、普及品であるとは認められないから、回路モニタ機能が汎用的な機能であったとしても、被告表示器A及び被告製品3が汎用品に該当することはない。したがって、一審被告の上記主張を踏まえても、上記認定は左右されない。エ 直接侵害品が生産される条件について「発明の実施に用いられることを知りながら」(主観的要件②)との検討に当たり、まず、被告表示器A及び被告製品3が本件発明1の実施(生産)に用いられる条件について検討する。一審原告は、引用に係る原判決第3の2
(原告の主張)
イ (本判決前記第2の4⑸において補正されたもの)のとおり、被告表示器Aと被告製品3の販売は被告製品3のOSがプレインストールされた表示器と実質的に変わらないか、あるいは、被告表示器Aに回路モニタ機能をインストールすれば直接侵害品として生産されたといえる旨主張するところ、一審被告は、同第3の2
(被告の主張)
⑶エ(本判決前記第2の4
5 ⑹において補正されたもの)のとおり、被告表示器A及び被告製品3が
直接侵害品として生産されるには特定の種類の一審被告製のシーケンサと接続する等の前提条件を要するから、被告表示器A及び被告製品3を直接侵害品の生産に用いる蓋然性は低いし、異常現象の発生時に本件発明1の接点検索機能を用いることは、元の回路に戻るためには無意味又は非現実的な機能であるから、被告表示器A及び被告製品3が本件発明1の実施品として使用されることはない旨主張している。前記1 及び⑶において検討したとおり、被告製品3のOSをインストールした被告表示器Aが本件発明1の技術的範囲に属するのは、タッチパネルに表示された異常名称をタッチした場合にラダー回路を表示できる状態になっていなければならないが、そのためには、ユーザが被告表示器Aと被告製品3を購入等するのみならず、ユーザが被告表示器Aにおいて回路モニタ機能等を利用できる一審被告製のシーケンサを有していること、ユーザにおいて回路モニタ機能等を含むプロジェクトデータを作成することが必要と認められる。一審原告は、被告表示器A及び被告製品3の購入等又は被告表示器Aに回路モニタ機能がインストールされることによって直ちに直接侵害品が生産されたといえる旨主張するが、本件発明1の構成要件からみて、ユーザが実際にワンタッチ回路ジャンプ機能を操作することまでは直接侵害品の生産には不要であるとしても、その操作をし得る状態であることは直接侵害品の生産に必要なものといえ、一審原告の上記主張は、採用することができない。被告表示器Aを利用するためには被告製品3のOSをインストールする必要があるから、被告表示器Aを購入等するユーザであって被告製品3を購入等していないユーザはいない。そして、被告表示器Aは、工場等における設備機械を制御する制御装置であるプログラマブル・コント
5 ローラ(シーケンサ)に接続するものであるから、その性質上、被告表
示器Aを購入等したユーザが、設備機械に異常が発生したときに、その原因を確認・究明するために、ラダー回路を確認することや、その確認の際に回路モニタ機能を使用することが例外的な事象であるとは認め難い。また、引用に係る原判決第4の2⑵(本判決前記1⑵)において認定したとおり、一審被告は、被告製品1-1及び2や被告製品3-1のカタログ(甲5)の6頁で、「CASE STUDY1」という項目の冒頭にワンタッチ回路ジャンプ機能について記載して、「画面を数回タッチしていくだけで、異常の原因をサーチ可能!」などとその利点を強調しており、この頁は、「CONTENTS」等が記載された2・3頁及びGOT1000の各機種の「LINE-UP」が記載された4・5頁に続く頁で、製品の機能を最初に記載した頁であり、ワンタッチ回路ジャンプ機能はその冒頭に記載されている(甲5)。一審被告は、その12頁の汎用シーケンサとの連携について記載した箇所でも、その機能について記載しており、さらに、「GOT1000シリーズ INFORMATION№2パソコンレスで保守編①」と題する宣伝用の書面(甲35。平成25年6月作成。 の1頁においても、冒頭で「GOTにしかできな)い!!」と記載した上で、「メンテナンスに!トラブル解決に!ワンタッチ回路ジャンプ機能搭載! 大好評![ラダー編集機能]」 「現場で即、解決!」と記載し、その下の「広いアクセス範囲と便利な機能で、保守作業も効率的!」という項目で、「ワンタッチ回路ジャンプ機能にも対応しているので、故障要因の究明に役立ちます。」と記載している(甲35)。なお、一審被告は、被告製品2-1及び2や被告製品3-2においても、ワンタッチ回路ジャンプ機能を使用可能としている(甲8)。これらの事情を総合すると、一審被告がワンタッチ回路ジャンプ機能
5 を被告表示器Aや被告製品3の宣伝ポイントとしていたことは明らかで
あり、また、前記⑵のとおり、被告表示器Aは、被告の表示器の中でハイスペック機種又はミドルスペック機種であって、価格としても高額な機器であるから、ユーザはその機能を十全に利用しようとするのが自然といえる。そうすると、被告表示器A及び被告製品3の購入者等は、回路モニタ機能等を利用しようと合理的に行動するものといえる。そして、前記1⑵のとおり、ユーザが動作設定を回路モニタとする拡張機能スイッチ等が配置されたプロジェクトデータを作成した場合には、ユーザが特に除外する行動をとらない限り、被告表示器Aにプロジェクトデータが転送される際に、被告製品3の拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ機能部分が転送対象として自動的に選択され、被告表示器Aに自動的に転送される。また、ワンタッチ回路ジャンプ機能のインストールについても、引用に係る原判決第4の2⑵(本判決前記1⑵で補正されたもの)のとおり、プロジェクトデータにおける拡張機能スイッチ等の設定の際に、ボックスにチェックを入れるだけで設定が済むものであるから(甲15、37、52)、回路モニタ機能等がインストールされる可能性はかなり高いといえる。さらに、一審被告製シーケンサの国内市場の占有率が半分近くに及んでおり(乙58ないし64)、また、一審被告は、一審被告製シーケンサに中に占める、被告表示器Aと接続して回路モニタ機能等の実行が可能な一審被告製シーケンサの販売割合は別紙7の4のとおりであると主張しており、これに疑念を差し挟む理由もないから、同販売割合は相当程度高い割合に及んでいると認められる。そうすると、結局、被告表示器Aと接続して回路モニタ機能等の実行が可能な一審被告製シーケンサが国内市場に占める割合も相当な割合に及んでいるといえる。また、一審被告製のプログラマブル表示器の販売数量よりも一審被告製シーケン
5 サの販売数量の方が多いところ(乙58ないし64)、プログラマブル
表示器の選定条件では、「PLCとの親和性」が63.9%と最も多数を占めること(甲30の34頁)からみて、プログラマブル・コントローラ(シーケンサ)とプログラマブル表示器とを同一メーカのもので統一する傾向があると推認される。そうすると、被告表示器Aを購入した顧客が保有するプログラマブル・コントローラは一審被告製のプログラマブル・コントローラであって、そのうち、回路モニタ機能等を使用できるプログラマブル・コントローラである見込みがかなり高いといえる。このように、被告表示器Aを購入等するユーザは必ず被告製品3を購入等すること、回路モニタ機能がプログラマブル表示器に本来的に要請される機能であること、一審被告がワンタッチ回路ジャンプ機能を宣伝広告のポイントとしていたこと、被告表示器A及び被告製品3を購入等したユーザは回路モニタ機能等を用いることを強く動機付けられ、その機能がインストールされる可能性もかなり高いといえること、そして、回路モニタ機能等を利用できる機器環境にあるユーザの割合がかなり高く見込まれることに鑑みると、被告表示器A又は被告製品3を購入等するユーザのうち例外的とはいえない範囲の者が本件特許権1の直接侵害品の生産をする高度の蓋然性があると推認され、これを覆すに足りる主張立証はないというべきである。なお、被告表示器Aのうち被告製品1-2については、回路モニタ機能等を使用するユーザは必ずオプション機能ボードを購入する必要があり、他の被告表示器Aに比べ、回路モニタ機能等使用率が下がる可能性があるところ(甲5)、別紙3に記載の被告製品1-2の販売数と、別紙7の5のとおりと認められるオプション機能ボードの販売数を対比すると、被告製品1-2を購入等したユーザのうち回路モニタ機能等を利用できるユーザは最大でも(オプション機能ボードを購入したユーザが
5 必ず回路モニタ機能等を使用するとはいえない。)約4分の1になるが、
この割合は、被告製品1-2を購入したユーザのうち例外的とはいえない範囲の者が本件特許権1の直接侵害品の生産をする高度の蓋然性があると推認することを妨げるものではない。なお、一審被告は、異常現象の発生時に本件発明1の接点検索機能を用いることは無意味又は非現実的な機能である旨主張するが、本件発明1の接点検索機能が無意味又は非現実的な機能とはいえないことは、前記イ のとおりである。オ 主観的要件について当裁判所も、一審被告が、平成25年4月2日以降、本件発明1が「特許発明であることを知りながら」(主観的要件①)、かつ、本件特許権1の直接侵害品の生産に用いる被告表示器A及び被告製品3が本件発明1の「発明の実施に用いられることを知りながら」(主観的要件②)、それらを生産、譲渡等していたものと判断する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決の116頁19行目冒頭から125頁4行目末尾までに記載されたとおりであるから、これを引用する。117頁26行目の「被告製品3」の次に「のOSをインストールした被告表示器A」を加える。120頁22行目から125頁24行目までを次のとおり改める。「 主観的要件②についてa 一審被告は、被告表示器A及び被告製品3には本件発明1を実施しない実用的な用途が存在しており、また基本的に販売代理店に対して被告表示器A及び被告製品3を販売しているにすぎないから、被告表示器A及び被告製品3がユーザの下で本件発明1の実施に用いられることを知らないと主張している。
5 b まず、どのような場合に主観的要件②を満たすものと考えるべ
きか、すなわち、適法な用途にも使用することができる物の生産、譲渡等が「発明の実施に用いられることを知りながら」したといえるのはどのような場合かについて検討する。特許法101条2号の間接侵害は、適法な用途にも使用することができる物(多用途品)の生産、譲渡等を間接侵害と位置付けたものであるが、その成立要件として、主観的要件②を必要としたのは、対象品(部品等)が適法な用途に使用されるか、特許権を侵害する用途ないし態様で使用されるかは、個々の使用者(ユーザ)の判断に委ねられていることから、当該物の生産、譲渡等をしようとする者にその点についてまで注意義務を負わせることは酷であり、取引の安全を著しく欠くおそれがあることから、いたずらに間接侵害が成立する範囲が拡大しないように配慮する趣旨と解される。このような趣旨に照らせば、単に当該部品等が特許権を侵害する用途ないし態様で使用される一般的可能性があり、ある部品等の生産、譲渡等をした者において、そのような一般的可能性があることを認識、認容していただけで、主観的要件②を満たすと解するのでは、主観的要件②によって多用途品の取引の安全に配慮することとした趣旨を軽視することになり相当でなく、これを満たすためには、一般的可能性を超えて、当該部品等の譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋然性が高い状況が現実にあり、そのことを当該部品等の生産、譲渡等をした者において認識、認容していることを要すると解するべきである。他方、主観的要件②について、部品等の生産、譲渡等をする者において、当該部品等の個々の生産、譲渡等の行為の際に、当該
5 部品等が個々の譲渡先等で現実に特許発明の実施に用いられるこ
との認識を必要とすると解するのでは、当該部品等の譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋然性が高い状況が現実にあることを認識、認容している場合でも、個別の譲渡先等の用途を現実に認識していない限り特許権の効力が及ばないこととなり、直接侵害につながる蓋然性の高い予備的行為に特許権の効力を及ぼすとの特許法101条2号のそもそもの趣旨に沿わないと解される。以上を勘案すると、主観的要件②が認められるためには、当該部品等の性質、その客観的利用状況、提供方法等に照らし、当該部品等を購入等する者のうち例外的とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高い状況が現に存在し、部品等の生産、譲渡等をする者において、そのことを認識、認容していることを要し、またそれで足りると解するのが相当であり、このように解することは、「その物がその発明の実施に用いられることを知りながら」との文言に照らしても、不合理とはいえない。c これを本件についてみると、前記エのとおり、被告表示器A又は被告製品3を購入等するユーザのうち例外的とはいえない範囲の者が本件特許権1の直接侵害品の生産をする高度の蓋然性がある状況が現に存在すると認められ、前記エにて説示する事実関係からみて、被告表示器A及び被告製品3を生産、譲渡等している一審被告がその事実関係を知らないはずはないから、一審被告は、もその状況を認識、認容しながら被告表示器A及び被告製品3の生産、譲渡等を行ったと認めることができる。d 一審
(被告の主張)
について一審被告は、引用に係る原判決第3の2
(被告の主張)
⑶ウ
5 (本判決前記第2の4⑹で補正されたもの)のとおり、悪意を否
定する根拠として、被告製品3を販売代理店を通じて販売していたことを指摘しているが、そうであるとしても、そのことは、一審被告が個々のユーザの実際の用途を具体的に知らないということを推認させるにとどまるのであって、一審被告が間接侵害品と認められる被告表示器A又は被告製品3を生産、譲渡等するに当たり、被告表示器A又は被告製品3を購入等するユーザのうち例外的とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識、認容していたとの前記認定を左右しない。なお、一審被告は、同⑶イ(本判決前記第2の4⑹で補正されたもの)のとおり、本件では訂正前発明1に係る訂正前の発明は従来技術そのものであり、それとの関係ではいかなる物も課題解決不可欠品に該当することはあり得ないから、間接侵害が成立する余地はないと主張する。この主張は、主観的要件②を満たすためには、当該製品が「その発明による課題の解決に不可欠なもの」であることの認識を必要とするとの趣旨と解される。しかし、上記のとおり、特許法101条2号において主観的要件②が必要とされる趣旨が、対象品(部品等)が適法な用途にも使用されるものであることから、その生産、譲渡等をしようとする者の取引の安全を図る点にあることからすると、当該製品が侵害用途に用いられることについて上記の意味での悪意であれば足り、それが「その発明による課題の解決に不可欠なもの」であることの認識までは要しないと解するのが相当である。したがって、一審被告の上記主張は採用することができない。e 以上によれば、一審被告は、被告表示器A及び被告製品3が本件発明1の実施に用いられることを知りながら、その生産、譲渡
5 等をし、また、被告製品3に係るコンピュータ・プログラムを使
用許諾(プログラムにおいては、使用許諾が貸渡しに当たると解される。)したと認められる。カ 小括したがって、一審被告による平成25年4月2日以降の被告表示器A及び被告製品3の生産、譲渡等について特許法101条2号の間接侵害が成立する。
3 争点2-1(被告表示器、被告製品3の製造、販売等の行為は本件特許権2
-1の直接侵害行為に該当するか)、争点2-2(被告製品1及び2、被告製品3の製造、販売等の行為は本件特許権2-1の間接侵害行為に該当するか)、争点2-3(被告表示器、被告製品3の製造、販売等の行為は本件特許権2-3の直接侵害行為に該当するか)及び争点2-4(被告製品1及び2、被告製品3の製造、販売等の行為は本件特許権2-3の間接侵害行為に該当するか)について
⑴ 本件発明2について
本件発明2-1及び2-3の技術的意義は、原判決の126頁5行目冒頭から128頁2行目末尾までに記載のとおりであるから、これを引用する。
⑵ 構成要件2Eについて
構成要件2Eは、「前記表示板の一部であって前記ソフトランプおよび前記ソフトスイッチの表示区画とは独立して設けた異常名表示区画に前記シーケンス制御の実行中に生じる各種異常の名称を少なくとも1つ選択的に表示する異常名表示プログラムを設け」と規定し、「異常名表示区画」を、「表示板」の一部であるが、「前記ソフトランプおよびソフトスイッチの表示区画」とは独立して設けることとしている。また、本件明細書2をみると、前記⑴における認定のとおり、本件発明2-1及び2-3は、異常表示に対する対応処置において画面切替えをするこ
5 とが煩わしいとの問題に対して、表示板の一部の限定された領域に数個の異
常が優先度の高い順に表示されるようにすること、複数個の異常項目についてのランプと機械装置の動作状態を示すランプとこの機械装置に指令を与えるスイッチとが1画面中に同時に表示できるようにすることを目的として、その解決手段として本件発明2-1及び2-3の構成をとり、その結果として、異常名称の表示画面では他の表示領域をその他の情報の表示に割り当てることができ、複数の異常が同時的に発生したときに表示板上に優先順位の高いものから順に表示するようにしたので、オペレータはどの異常が重大で緊急性を要するかを認識でき、重要な異常が長時間放置されることにより生じる問題を未然に防止できるとの効果が得られるとするものである。そして、発明の実施形態においては、多数のソフトランプSLを表示する画面上段側の第1表示領域DPY1の中の4つの領域からなる区画が「異常名表示区画」と記載され(【図3】 、異常名称のみから対応することのできる熟練したオ)ペレータは、この画面に表示されるソフトランプSLによりプログラマブル・コントローラあるいは工作機械MTの運転状況を把握し、同画面に表示されるソフトスイッチSSを操作して異常原因を取り除く作業を進めることができるとされている(【0047】 。)
⑶ 被告表示器及び被告製品3について
被告製品3のOSをインストールした被告表示器による拡張アラームポップアップ表示(被告製品2については、アラームポップアップ表示。以下、両者を併せて「アラームポップアップ表示等」ということがある。)は、アラーム表示オブジェクトを画面に配置していなくても、アラーム発生時のみアラームを表示でき、アラームの表示位置に他のオブジェクトが配置されていても、表示画面に関係なくアラームを表示することができるものであり、他のオブジェクトが拡張アラームポップ表示により隠れてしまうことが当然に想定されている(甲7の11-8頁、11-9頁、11-240頁)。
5 そうすると、被告表示器のアラームポップアップ表示等は、アラーム表示
オブジェクトを配置せず、そして、ソフトランプ及びソフトスイッチの上に重なった状態で表示を行うものであるから、ソフトランプおよびソフトスイッチの表示区画と区画が独立した「異常名表示区画」に表示するものとはいえない。
⑷ 一審
(原告の主張)
について一審原告は、アラームポップアップ表示等も外縁が仕切られた領域であるから、「独立して設けた異常名表示区画」である旨主張するが、前記⑵のとおり、構成要件2Eが異常名を表示する「区画」を「独立して」設けたのは、異常名表示が他のソフトランプやソフトスイッチと重ならないためであるから、単に異常名表示の区画として成立していれば足りるというものではなく、アラーム表示オブジェクトがソフトランプ及びソフトスイッチの上に重なった状態となるアラームポップアップ表示等と構成要件2Eは、全く相容れない技術思想にある。なお、拡張アラームポップアップの表示位置は、画面上部、画面中央、画面下部に切り換えることができ(甲7の11-240頁)、ソフトランプ及びソフトスイッチの表示画面への配置はユーザが任意に設定可能であるから(乙33の6頁参照)から、甲第11号証の写真13及び14のように、ソフトランプ及びソフトスイッチの表示位置をあえて拡張アラームポップアップが表示される画面下部と重ならないような位置に設定すること自体は確かに可能であるが、ポップアップ表示というものは、表示画面に何が表示されているかに関係なく、別ウィンドウにより表示画面の上から後で重ねて表示することにより、当該表示を目立たせるとともに、ポップアップ表示がされていないときには当該表示画面部分がポップアップ表示以外の画面表示に利用できるとするものであり、被告表示器のアラームポップアップ表示等も、区画そのもの(アラーム表示オブジェクト)を設定する必要がないことを特
5 徴とするものであるから、ユーザがわざわざソフトランプ及びソフトスイッ
チの表示される区画をポップアップによるアラームが表示される位置と重ならないように設定するのは、本来の目的とは正反対の方向に向けたものとなり、およそ実用的・実際的な利用方法ではない。したがって、このような正常ではない使用によって構成要件を形式的に充足するとしても、それはユーザにおいて本来の用法を超えた改変又は改造を加えたものとみるべきであり、これをもって、アラームポップアップ表示等が利用可能となった被告表示器が本件発明2-1及び2-3の技術的範囲に属するとはいい難い。以上のとおりであるから、一審原告の上記主張を採用することはできない。
⑸ 小括
以上によれば、被告製品3のOSをインストールしてアラームポップアップ表示等が利用可能となった被告表示器は構成要件2Eを充足せず、本件発明2-1及び2-3の技術的範囲に属さないから、一審原告主張の被告表示器及び被告各製品の生産、譲渡等が本件特許権2-1及び2-3を直接侵害又は間接侵害する余地はない。
4 争点3(被告表示器A、被告製品3、被告製品4の製造、販売等の行為は本
件特許権3の間接侵害行為に該当するか)について
⑴ 本件発明3について
本件発明3の技術的意義は、原判決145頁26行目冒頭から147頁6行目末尾までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、147頁5行目の「【0008】」の前に「【0006】」を加える。、
⑵ 被告表示器A、被告製品3及び4について
被告製品3及び4の機能並びに被告表示器Aにおいて画面を表示する方法は、原判決152頁6行目冒頭から155頁10行目末尾までに記載のとおりである。
⑶ 本件特許権3の直接侵害が成立する条件について
5 前記⑴によると、本件発明3は、異常停止時の復旧等の各個動作が熟練の
作業者でなければ行うことができないという課題を解決するために、動作制御盤のタッチパネル上の操作ボタンについて、①「運転条件」を満たさない時、②「運転条件」は満たすが「起動条件」を満たさない時、③「運転条件」及び「起動条件」の双方を満たす時の3つの状態をそれぞれ視覚的に区別して表示をすることによって、いま操作できない操作ボタンと、いま操作できる操作ボタンと、次に操作すべき操作ボタンの3種類の状態を視覚的に知ることができるようにするというものである。一方、前記⑵によると、被告製品3及び被告表示器A自体には、画面表示が本件発明3の定める操作ボタン表示になるように誘導する機能は見当たらず、本件発明3に定める操作ボタン表示になるのは、被告製品4により作成されるプロジェクトデータがインストールされることによるから、結局、被告表示器Aに被告製品3のOSと共に被告製品4により作成されたプロジェクトデータがインストールされなければ、直接侵害は生じ得ない。
⑷ 本件特許権3の間接侵害の成否について
一審被告が被告製品4を製造、頒布した時期については、原判決158頁8行目冒頭から162頁2行目末尾までに記載のとおりであり(ただし、161頁1行目の「11.1」を「11.4」と改める。 、一審被告が本件発明)3の特許登録を知った時期については、同162頁4行目冒頭から24行目末尾までに記載のとおりであるから、これらを引用する。そうすると、一審被告が被告製品4を製造、頒布した時点(平成23年2月まで)で、一審被告が本件発明3が登録された発明であることを知っていたとは認められず(特許登録を知ったのは平成25年4月2日)、一審被告が本件発明3が登録された発明であることを知ってからは被告製品4は製造、頒布されていないのであるから、その他の点につき判断するまでもなく、いずれにせよ、本件特許権3の特許法101条2号の間接侵害が成立する余地
5 はないことになる。
5 争点5-1A(本件特許1の無効理由-乙第28号証を引用例とする拡大先
願)及び争点5-1B(訂正要件違反)について一審被告は、本件特許1の無効理由につき、原審における乙1文献ないし乙3文献を引用例とする進歩性欠如の主張を当審において撤回し、新たに、前記
第2の4 のとおり主張するので、以下、これらの点につき判断する。
⑴ 争点5-1A(本件特許1の無効理由-乙第28号証を引用例とする拡大
先願)についてア 乙28文献の記載乙28文献には、次の記載がある。「【0023】また、プログラマブルコントローラ10には、表示パネル14が接続されている。この表示パネル14においては、ラダープログラムの実行による制御対象12の動作状態が表示される。・・・【0026】ここで、制御対象12としては、リミットスイッチ、操作スイッチ、油圧バルブ、気圧バルブ、モータ、操作パネルなどがあり、通常はこれらがそれぞれ複数存在し、プログラマブルコントローラ10がこれらの動作を制御する。従って、これら各制御対象についてその動作状態を示す表示シンボルがディスプレイ26に表示される。【0028】ここで、制御対象12を特定するデータは、制御対象12についてのラダープログラムにおいて使用している制御対象12を特定するアドレス(リレーアドレス)が採用されている。そして、表示パネル14のメモリ24は、このリレーアドレスに対応して、その制御対象12の表示を行うための関連づけデータを記憶している。すなわち、各リレーアドレスに対し、その制御対象12の表示シンボルが対応づけられている。例えば、制御対象12があり、ランプであれば、オン状態のランプとオフ状態のランプの表示シンボルが、そのリレーアドレスに対
5 し関連づけられており、動作状態信号に応じてオンまたはオフの表示シ
ンボルが選択される。【0030】ここで、ディスプレイ26に動作状態の表示が行われているときに、各接点またはコイルをタッチすると、その接点またはコイル上にカーソルが移動する。これによって、その接点またはコイルが選択された状態になり、その接点またはコイルに対応したコメント文が表示される。そこで、ユーザは知りたい接点またはコイルについて随時タッチしてその内容を知ることができる。この接点またはコイルが選択されたときに、リレーアドレスを制御対象12の内容を説明するコメント文とともに表示するようにしてもよい。【0032】このようなシステムにおいて、制御対象12のいずれかにおいてエラー(アラーム状態)が発生した場合には、制御対象12からの動作状態信号からプログラマブルコントローラ10がこれを検出する。そこで、該当する制御対象12(リレーアドレス)についての動作状態をアラーム発生状態として、これを表示パネル14に供給する。そこで、ディスプレイ26には、該当表示シンボルについてアラーム表示がなされる。【0033】そして、本実施形態のシステムでは、この状態において、ユーザがディスプレイ26上のアラーム表示された表示シンボルをタッチすると、この表示シンボルに関連づけられたラダー回路が表示される。なお、アラーム発生状態でなくても表示シンボルにタッチすることで、対応するラダー回路が表示される。【0040】次に、本実施形態のシステムにおいては、ラダー回路図表示の際に、表示されている接点シンボルをタッチすることにより、その接点シンボルについてのラダーを表示し、また戻るというシンボルにタッチした場合に、前の表示に戻ることができる。このラダー探索の処理
5 について、図5に基づいて説明する。
【0041】まず、ラダー回路図の表示が開始された場合には、ラダー回路図表示における探索の回数を示すポインタを初期化して、ゼロにセットする(S21)。次に、接点シンボルまたは戻るシンボルがタッチされたかを判定する(S22)。【0042】この判定で、接点シンボルがタッチされた場合には、タッチされた接点と同一の接点番号を持つコイル(OUT命令)を検索するコマンドを発行する(S23)。このコマンドはプログラマブルコントローラ10に送信され、プログラマブルコントローラ10が同一の接点番号を持つコイルを検索し、これについてのラダープログラムを送信(アンサーバック)する。従って、このプログラマブルコントローラ10からのアンサーバックを受信することで、タッチされた接点シンボルで特定されるコイルについてのラダープログラムを取得することができる。なお、ラダープログラムも通常は、上述の場合と同様に16語単位で取得し、必要な場合はこれを繰り返す。【0043】そして、ラダープログラムを取得した場合には、これに基づいてラダー回路図を表示する(S24)。次に、この表示したラダー回路のコイルについてのリレーアドレスを表示アドレスとし、これをポインタに対応づけて記憶する(S25)。そして、ポインタに+1して(S26)、S22の判定に戻る。【0045】また、S22において、戻るへのタッチが検出された場合には、ポインタがゼロであるかを判定する(S27)。この判定でYESであれば、戻る画面がないため、このタッチを無効にして(S28)、S22に戻る。S27の判定において、NOであれば、ポインタを-1して(S29)、得られたポインタの値に対応して記憶されているリレーアドレスをコイルとするラダープログラムをプログラマブルコントロ
5 ーラ10から取得し、このラダー回路図を表示する(S30)。そして、
S22の判定に戻る。各ラダー回路図の表示の際には、上述のように、リレーの状態についてのデータも取得して、その表示も行う。そこで、ユーザは、各リレーの状態をみて、どのリレーについて探索するべきかを決定することができる。なお、図示は省略したが、ラダー回路の表示終了の指令によって、この図5の処理を終了する。【0046】このようにして、ラダー回路図の表示を行っている場合には、そのラダー回路図における接点シンボルにタッチすることによって、その接点に対応するコイルについてのラダー回路図の表示を行うことができる。そこで、順次接点シンボルにタッチすることで、アラーム発生に関連すると思われるラダー回路図を順次表示でき、ユーザが容易にアラーム発生の原因を調査することができる。さらに、戻るシンボルへのタッチによって、表示を元に戻せるため、1つの接点についてその上位のラダー回路について調べ、原因でないと分かった場合に、元のラダー回路図に戻り、異なるリレーについて、アラーム発生の原因探求の処理を行うことができる。【0049】このように、本実施形態のシステムによれば、表示パネルにおいて、表示シンボルにタッチすることによって、表示シンボルについてのラダープログラムを取得して、これをラダー回路図として表示することができる。そこで、アラーム発生時などにその表示にタッチすることで、必要とするラダー回路図を容易に得ることができる。特に、ラダープログラム自体は、書き換える必要はなく、ラダープログラムの作成が困難になることはない。【0053】また、ラダー回路図が表示された状態で、接点シンボルにタッチすることで、この接点シンボルに対応するコイルについてのラダー回路図を表示することができる。従って、この操作を順次行うことで、
5 上位のコイルのラダーの表示を順次行うことができ、容易にアラーム発
生原因を探索することができる。【0054】さらに、戻るシンボルのタッチにより、表示を元に戻すことができる為、異なる道筋の探索を容易にやり直すことができる。【0055】また、接点およびコイルへのタッチで、カーソルを移動させて、シンボルの選択を行うことができ、選択した状態でその接点およびコイルについてのコメント文が表示される。そこで、各接点およびコイルについての内容を容易に理解できる。また、常に表示されているわけではないため、表示が全体として見にくくなることも無い。さらに、カーソルによって接点が選択されている場合、その接点にタッチすることによって、その接点に対応するコイルについてラダー回路図の表示に移行するため、ラダー回路図の表示のための操作も非常に簡単で良い。」イ 乙28発明の認定前記アの記載によると、乙28文献には、一審被告が主張する以下の発明(以下「乙28発明」という。)が記載されていると認められる。1a″機械・装置・設備等の制御対象を制御するプログラマブル・コントローラにおいて用いられる表示装置であって、1b″プログラマブルコントローラ10が前記制御対象の異常現象の発生を検出した場合に当該情報が供給され、1c″エラー(アラーム状態)が発生した場合に発生したエラー(アラーム状態)に対応する表示シンボルを表示する手段と、1d″アラーム表示された特定の表示シンボルにタッチするタッチパネルと、1e″表示シンボルがタッチされた場合にタッチされた表示シンボルに関連付けられたラダー回路を表示する手段と、を有し、1f″前記ラダー回路を表示する手段は、表示されたラダー回路の入出力
5 要素のいずれかをタッチして指定する前記タッチパネルと、表示された
ラダー回路の接点がタッチによって選択された状態でタッチされたときにその接点をコイルとするラダー回路を検索して表示し、「戻る」シンボルをタッチすることによって元のラダー回路図に戻る手段を含む、1g″表示器。ウ 本件発明1との実質同一性について本件発明1と乙28発明とを対比すると、本件発明1では、出力要素をタッチすることによって当該出力要素を入力要素とするラダー回路を検索して表示する(構成要件1F)のに対し、乙28発明では、コイルにタッチしてもリレーアドレスをコメント文とともに表示するのみで(乙28文献【0030】 【0055】 、元の回路図に戻るためには「戻る」シンボ、 )ルをタッチする(構成1f″)点が、少なくとも相違する。そして、前記ア記載のとおり、乙28文献の【0045】によれば、乙28発明は、「戻る」シンボルをタッチすると、記憶されたアドレスに基づき、ラダー探索において辿ってきた一つ前の回路図を表示するものである。一方、本件発明1は、当該出力要素を入力するラダー回路を検索して表示するものであるから、コイル検索により辿ってきたラダー回路のみが表示されるものではない。したがって、本件発明1の「出力要素を入力要素とするラダー回路を検索すること」と乙28発明の「戻るシンボルをタッチすること」とは全く異なる手段をいうのであって、その作用としても「元のラダー回路図」のみが表示されるか否かの点において異なるのであるから、上記相違点が実質的同一とはいえないことは明らかである。一審被告は、本件発明1の上記接点検索の構成が無意味な構成の付加である旨主張するが、前記2⑵イ において説示するとおり、本件発明1の接点検索も異常原因の特定に資すると認められるから、その主張を採用す
5 ることはできない。そして、その機能の相違からみて、接点検索と「戻る」
シンボルのタッチが、同一効果を奏する周知慣用技術の置き換えにすぎないものでないことも明らかである。エ 小括以上のとおりであるから、乙28文献を引用例とする拡大先願の無効事由は、理由がない。争点5-1B(訂正要件違反)について本件明細書1には「【0027】工作機械MTがラダープログラムに従って制御されている間、プログラマブル・コントローラ本体20はRAM23に記憶されている異常モニタ用ラダープログラムを所定のタイムインターバル・・・で繰り返し実行しつづける」 「、 【0029】異常モニタ用ラダープログラムには、上記の異常現象が起こったときに、その異常現象の発生によって信号の状態を切換えるものを入力要素とし、異常の種類毎に予め割当てられている出力要素の作動状態を切換えるラダー回路が用意されており、このラダー回路により、・・・その出力要素に対して予め割当てられているRAM23内のアドレスに記憶されているデータが書き換えられる」との記載がある。この記載によると、プログラマブル・コントローラ本体はRAM23に「異常モニタ用ラダープログラム」を備えており、「異常モニタ用ラダープログラム」は、制御対象(工作機械MT)の異常現象の発生をモニタしているといえる。一方、本件明細書1【0031】には、「操作盤10は、・・・プログラマブル・コントローラ本体20の・・・RAM23のアドレスの内容を読み込むようにプログラムされており、異常現象が発生したのに対応して対応するアドレスのデータが変化したことを認識する。すなわち、・・・異常データテーブルが、RAM13にも記憶される。・・・このデータテーブルから操作盤10は発生した異常現象の種類を認識する。」との記載がある。この記
5 載によると、操作盤10は、プログラマブル・コントローラ本体のRAM2
3のデータの変化を認識することによって、制御対象(工作機械MT)に発生した異常現象の種類を認識するプログラムを備えており、その機能は、制御対象の異常現象の発生を、プログラマブル・コントローラ本体のRAM23のデータの変化を通じて、モニタすることであると理解される。このように、本件明細書1には、表示装置が有するプログラムとして、制御対象の異常現象の発生を、プログラマブル・コントローラ本体のRAM23のデータの変化を通じてモニタするプログラムが開示されている。そうすると、前件訂正及び本件訂正の前後を通じて、本件明細書1に接した当業者は、前件訂正前の「前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラム」も、前件訂正後の「前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラム」(構成要件1B)も、本件訂正後の「前記制御対象の異常現象の発生をモニタするプログラムであって、当該異常現象が発生したのに対応して、前記プログラマブル・コントローラの対応するアドレスのデータが変化したことを認識するプログラム」(構成要件1B′)も、表示装置がもともと有している同一のプログラムを指すものと理解するというべきである。したがって、「制御機器の異常現象の発生をモニタするプログラム」が本件訂正によって、全く異なるプログラムとなった旨の一審
(被告の主張)
を採用することはできない。以上のとおりであるから、訂正要件違反に係る一審被告の無効事由は、理由がない。
6 争点5-8(本件特許4の無効理由-乙6による新規性欠如)及び争点5-
9(本件特許4の無効理由-乙第6号証を主引用例とする進歩性欠如)について
⑴ 本件発明4について
本件発明4の技術的意義は、原判決163頁11行目冒頭から164頁1
5 7行目末尾までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、16
4頁10行目の「【0007】」の前に「【0005】」を加える。、
⑵ 乙6発明の認定
特開平4-139503号公報(乙6。以下「乙6文献」という。)の記載によると、乙6発明は、次のようなものと認められる。4a″生産ラインの設備に対して、各設備が順次行うべき動作についてシーケンス制御を行うシーケンス制御部と接続され、動作モニタ表示を行う表示要素(スイッチ等の操作要素を含む)としての複数のセルCが配列された操作画面をフェースプレート部に表示し、フェースプレート部に表示された各セルCの位置とタッチパネル上の位置との対応関係が設定された操作盤における、各表示要素の表示形態を変更できる操作盤のデータ設定装置であって、(2頁右下欄18行目ないし3頁左上欄9行目、3頁右上欄20行目から左下欄16行目、6頁左上欄6行目ないし右上欄17行目、第1図、
第3図)
4b″前記操作盤の画面上に表示する内容をセルCのセルNo.に対応させて設定された操作盤データマップ(表-A)と、(3頁右下欄4ないし13行目、4頁表-A、4頁左下欄1ないし14行目、第3図)4c″前記操作盤データマップ(表-A)には、各セルCに設定される名称(表示事項)、属性(表示かスイッチ)、表示色(ON色、OFF色)、デバイス名(動作DEV、表示DEV)からなる複数の情報項目が並べられ、ハードディスク装置77に記憶され、(3頁右下欄4ないし13行目、4頁表-A、4頁左下欄1ないし14行目)4d″この操作盤データマップに指定される前記複数の情報項目について
5 それぞれを選択入力するデータ設定ウインド(W1、W2、W3)と、
(2頁右下欄18行目ないし3頁左上欄9行目、4頁左下欄15行目ないし右下欄15行目、第3図)4e″前記操作盤データマップに設定されたセルCとデータ設定ウインド(W1、W2、W3)により前記操作盤データマップに入力された情報項目とに基づいて、CRT78のフェースプレート部に、各セルCに名称(表示事項)と表示色を表示すると共に、シーケンス制御部のデバイスとを対応付けする画面定義を行う(6頁左上欄6行目ないし右上欄17行目、図3)4f″操作盤。(3頁右上欄20行目から左下欄16行目)
⑶ 本件発明4と乙6発明との対比
前記 の認定によると、乙6文献には、 “データ編集”がタッチ入力によ「り選択された場合には、キーボード79によってセル編集処理(コピー、移動、挿入処理等)が可能となる一方(P6) “データ設定”が第1ウインド、Wlにおいてタッチ入力によって選択された場合には、第2ウインドW2がオンライン操作画面上に開き、名称、動作デバイス、属性、表示色(ON色、OFF色)等の操作盤データのうち、どれについて表示形態を変更するのかの判断が求められる(P7、8、9等) 」。 (6頁左上欄19行ないし右上欄8行目)と記載され、その「表示要素」は、「名称、動作デバイス名、属性、表示色」とされ、第3図にも、「名称」 「動作DEV」 「表示色」と、色と、 、テキストのみが表示されることが記載されているのみであるが、本件発明4における「操作キーやランプの絵」は、「形状、大きさ、色等を定義してランプ、操作キー、カウンタ等を示す図形または絵」を指すものである(本件明細書4【0003】 【図5】。、 )そうすると、本件発明4と乙6発明とは、本件発明4の構成要件Bの区画
5 設定手段は「操作キーやランプの絵」とこれを表示する複数の区画を特定す
る情報が予め設定されており、構成要件4Cの画面定義マトリックス記憶手段は、「操作キーやランプの絵」を特定する複数の情報項目を記憶しており、構成要件4Eの画面定義手段は「操作キーやランプの絵」とこれを特定する複数の情報項目を組み合わせて作画するのに対し、乙6発明では、データ設定や表示が「操作キーやランプの絵」ではなく、色と事項のみである点(相違点4-1)が相違し(以下「相違点4-1」という。 、その他の点で一致)する。これに対して、一審原告は、乙6文献には、乙6発明の装置が画面定義装置であるとの開示や作画機能の開示がないので、構成要件4A及び4Eの開示がない旨主張するところ、乙6文献には、CRT操作盤装置53には操作盤データマップが格納されるハードディスク装置77が備えられており、当該操作盤データマップの項目を設定することで任意の画面を作成できることが記載されているから(3頁右下欄4行目から4頁左下欄14行目)、乙6発明の装置が画面定義装置でもあることは明らかであり、乙6発明の装置が操作盤であることは本件発明4の操作盤の画面定義装置との間で実質的な相違点を構成しない。新規性について前記 のとおり、本件発明4と乙6発明との間には相違点4-1があると認められるから、本件発明4は新規性がある。進歩性についてア 乙55技術事項の認定乙55文献には、以下の図面とともに、次の記載がある。「 基本モニタ電子操作盤としての基本機能スイッチやランプの機能、数値データやメッセージの表示など、電子操
5 作盤としての基本機能を充実しました。タッチスイッチを含むスプライ
トは1ドット単位のフリーロケーション設定なので画面上の配置も自由自在です。」「」上記記載及び図面によると、乙55文献には、電子操作盤としてのスイッチやランプの機能を、絵を付したタッチスイッチとして表示する技術(以下「乙55技術事項」という。)が記載されていると認められる。イ 相違点4-1の容易想到性について前記アのとおり、乙55文献には、電子操作盤としてのスイッチやランプの機能を、絵を付したタッチスイッチとして表示する技術である乙55技術事項が記載されているところ、これを乙6発明に適用し、表示事項の表示に加え、前記操作キーやランプの絵を表示するものとし、相違点4-1に係る本件発明4の構成とすることは、分野の共通性から組み合わせの
5 動機付けが認められ、加えて何ら阻害要因も認められないから、当業者が
容易に想到することができたものである。一審原告は、乙55技術事項を乙6発明に適用する動機付けがない旨主張するが、乙6発明と乙55技術事項は、技術分野が極めて近接するから、「ディスプレイ操作盤上の各表示要素の表示形態を希望通りに的確に変更することができる操作盤のデータ設定方法を提供すること」(乙6の2頁右上欄4ないし7行目)を課題とする乙6発明に、スイッチやランプの絵を画面設定する乙55技術事項を取り入れて、それに対応させることは、当業者にとって十分な動機付けが認められ、容易に想到することができたものである。小括以上のとおりであるから、本件発明4は特許無効審判により無効とされるべきものであると認められる。したがって、一審原告は、一審被告に対し、本件特許権4を行使することができない(よって、争点4について判断する必要はない。 。)
7 争点7(本件特許権1に関する権利行使阻害事由及び訴訟上の信義則違反の
有無)について一審被告は、新たに、前記第2の4⒄の(一審
(被告の主張)
のとおり、一審原告が接点検索について虚偽の説明をして本件特許1を取得したからその権利行使は阻害される、あるいは、当該虚偽の説明に沿った特許請求の範囲を解釈しなければならない旨や、一審原告において原告の製品が本件発明1の実施品ではないのに実施品であると主張したのは接点検索が重要部分でないとの態度を示すものであるから、信義則上、接点検索を本件発明1による課題解決に不可欠なものと主張することはできない旨を主張する。しかしながら、前記2⑵イ において説示するとおり、本件発明1の接点検索も異常原因の特定に資すると認められ、元のラダー回路に戻る機能もある。
5 そして、一審原告が、元のラダー回路に戻るために戻る機能を有する先行技術
との相違点として、本件発明1の接点検索では元の回路に戻るには元のラダー回路を記憶するための記憶容量を確保する必要がないとの一面を強調した(乙25)からといって、それが、特許を不正に取得するに足りる手段とはいい得ないし、その主張によって審査官を錯誤に陥れて進歩性を誤認させたと評価できるような事実関係も認め難く、特許請求の範囲を限定して解釈する根拠とはいえない。また、原告の製品が本件発明1の実施品であるとした一審
(原告の主張)
は、単純なる錯誤にすぎないと認められ、これを殊更にあげつらって信義則違反とする根拠は乏しい。したがって、一審被告の上記各主張は、いずれも当を得ないというべきである。
8 争点6(一審被告の本件各特許権の侵害による一審原告の損害額)につい
て前記各争点の判断によれば、一審被告による被告表示器A及び被告製品3の生産、譲渡及び被告製品3に係るコンピュータ・プログラムの使用許諾(貸渡し)について、本件特許権1の間接侵害(特許法101条2号)が成立するところ、以下、同間接侵害による一審原告の損害額について検討する。
⑴ 原告の製品について
原告の製品に関連する認定事実は、原判決173頁13行目冒頭から176頁19行目末尾までに記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、176頁5行目の「セット」を「リセット」と改める。
⑵ 被告表示器A及び被告製品3について
平成25年4月1日から令和2年3月末までの被告製品1、被告製品2及び被告製品3の販売数量、販売額等は、別紙3ないし6に記載のとおりである(争いがない。。)
5 ⑶ 特許法102条1項に基づく損害について
ア 適用関係令和元年法律第3号による改正について存続期間の満了により、本件特許権1の侵害行為は令和2年3月31日までに終了しているところ、令和元年法律第3号による改正後の特許法102条1項は令和2年4月1日から施行されたものであるが、改正法附則には経過措置がないことから、本件特許権1の侵害行為には、上記改正後の特許法102条1項が適用される。一審被告は、改正法を遡及適用せずに旧1項を適用すべきであると主張するが(前記第2の4⒃参照)、改正後の特許法102条1項2号は、実施相応数量を超える数量又は特定数量(通常実施権を許諾し得た場合に限る)に応じた実施料相当額を損害の額とするものであるところ、その実施相当額の損害が実体法上生じ得ないものとはいえないから、改正法が実体法上の請求権を新たに創設したものとはいえない。したがって、同号は、客観的には改正前から損害を構成するといえた実体法上の損害を推定する規定にとどまるものといえるから、一審被告の上記主張を採用することはできない。間接侵害への特許法102条1項の適用の可否一審被告は、間接侵害には特許法102条1項は適用されないと主張する(前記第2の4⒃参照)ので、以下、この点につき検討する。特許法102条1項本文は、侵害者が「侵害の行為を組成した物」を「譲渡した…数量」に、特許権者等が「その侵害行為がなければ販売することができた物」の「単位数量当たりの利益の額」を乗じて得た額を、特許権者等が受けた損害の額とすることができる旨を定める。この規定は、侵害行為がなければ特許権者等が利益を得たであろうという関係があり、そのために特許権者等に損害が発生したと認められることを前提
5 に、特許権者等の損害額の立証負担を軽減する趣旨に基づくものである
が、そこに定める損害額の算定方法からすると、これにより算定される損害の額は、特許権者等の「その侵害行為がなければ販売することができた物」の逸失利益に係る損害の額であることを前提にしており、さらに、侵害者の「侵害の行為を組成した物」の譲渡行為と特許権者等の「その侵害行為がなければ販売することができた物」の販売行為とが同一の市場において競合する関係にあることも前提としているものと解される。他方、物の発明に係る間接侵害が対象とするのは、実施品の「生産に用いる物」の譲渡等であり、実施品を構成する部品だけでなく、実施品を生産するための道具や原料等の譲渡等もこれに含まれるから、必ずしも侵害者の間接侵害品の譲渡行為と特許権者等の製品(部品等のこともあれば完成品のこともある)の販売行為とが同一の市場において競合するとは限らない。そして、本件のように間接侵害品が部品であり、特許権者等が販売する物が完成品である場合には、前者は部品市場、後者は完成品市場を対象とするものであるから、両者の譲渡・販売行為が、直接的には、同一の市場において競合するわけではない。しかし、この場合も、間接侵害品たる部品を用いて生産された直接侵害品たる実施品と、特許権者等が販売する完成品とは、間接的には、同一の完成品市場の利益をめぐって競合しており、いずれにも同じ機能を担う部品が包含されている。そうすると、完成品市場における部品相当部分の市場利益に関する限りでは、間接侵害品たる部品の譲渡行為は、それを用いた完成品の生産行為又は譲渡行為を介して、特許権者等の完成品に包含される部品相当部分の販売行為と競合する関係にあるといえるから、その限りにおいて本件のような間接侵害行為にも特許法102条1項を適用することができる。
5 したがって、一審被告の上記主張を採用することはできない。
イ 「その侵害の行為がなければ販売することができた物」について「その侵害の行為がなければ販売することができた物」とは、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者又は専用実施権者(以下「特許権者等」という。)の製品、すなわち、侵害品と市場において競合関係に立つ特許権者等の製品であれば足りると解すべきである。そして、前記アで説示したところからすると、本件のような間接侵害の場合の「侵害の行為がなければ販売することができた物」とは、特許権者等が販売する完成品のうちの、侵害者の間接侵害品相当部分をいうものと解するのが相当である。これを本件についてみると、前記⑴において認定したとおり、原告の製品と被告製品3のOSをインストールした被告表示器Aは、その用途が同一である同等の代替品といえるから、原告の製品のソフトウェア部分に相当する部分は、被告製品3の生産等の「侵害の行為がなければ販売することができた物」といえ、原告の製品のハードウェア部分に相当する部分は、被告表示器Aの生産等の「侵害の行為がなければ販売することができた物」といえる。結局、本件においては、原告の製品全体が、「その侵害の行為がなければ販売することができた物」と認められる。一審被告は、被告製品3のOSをインストールした被告表示器Aは、一審被告製シーケンサと接続した場合にのみ本件発明1の実施品となるところ、原告の製品は一審被告製シーケンサには接続できないから、被告表示器Aが販売されなければ原告の製品が販売されるという関係がなく、両者は市場で競合しない製品である旨主張する(前記第2の4⒃参照)。しかしながら、「侵害の行為がなければ販売することができた物」に該当するためには、市場全体の構成からみて、侵害品と競合関係に立ち
5 得る特許権者等の製品であれば足りるのであり、特定の顧客を念頭に置
いて、仮に、当該侵害品がなければ当該顧客が権利者製品を代替として購入したとの関係までもが求められているものではない。プログラマブル・コントローラとプログラマブル表示器との間の適合性が限定されているとしても、いまだプログラマブル・コントローラを保持していない者、表示器に適合するプログラマブル・コントローラを既に保持している者ら(これらの者は原告の製品を購入するに支障を有していない。)も潜在的な顧客に含めて市場での競合関係を検討することで足りるから、原告の製品に適合するプログラマブル・コントローラを保持している者のみを対象として市場での競合関係を論ずべきものではない。したがって、一審被告の上記主張を採用することはできない。ウ 「単位数量当たりの利益の額」原告の製品の1台当たりの限界利益の額が別紙1-1⑴のとおりであることは、当事者間に争いがない。エ 「その侵害の行為を組成した物」の譲渡数量等について販売数本件では、一審被告による被告表示器A及び被告製品3の生産、譲渡等の行為について間接侵害の成立が認められるが、被告製品3は、被告表示器AにOSを提供することによって被告表示器Aと原告の製品と同等なものを生産するという限度において侵害行為を組成しているものであるから、特許法102条1項の損害を算定するに当たり、被告表示器Aと独立にその譲渡数量を論じる必要はない。したがって、特許法102条1項の損害算定に当たっては、被告表示器Aの譲渡数量のみを算定基礎とすれば足りる。そして、平成25年4月1日から令和2年3月31日までの被告表示器Aの販売数が別紙5に記載のとおりであることは、当事者間に争いが
5 ない(なお、被告表示器Aについては、各月ごとの販売数は明らかでは
ないので、別紙5のとおり半期ごとの販売数量に基づき、以下、損害額の算定を行うものとする。また、前記2⑵オのとおり、本件特許権1の間接侵害が成立するのは平成25年4月2日以降であるところ、同月1日の被告表示器Aの販売数の有無又はその数量が不明であるが、同日の譲渡等が7年にわたる期間の損害額全体に影響するのはごくわずかであり、この1日分を含めるか否かの相違は以下の算定の中で吸収され、何らかの影響を及ぼすことは想定し難いから、同日の販売数を改めて算定することはせず、別紙5に記載の販売数をそのまま用いることとする。 。)譲渡数量一審被告は、「その侵害の行為を組成した物」は直接侵害品であるところ、被告表示器A及び被告製品3を購入した者の全てが本件発明1の実施品(直接侵害品)を生産しているのではないと主張する(前記第2の4⒃参照)。しかしながら、間接侵害行為は特許権を「侵害するものとみなす」(特許法101条)とされており、そして、特許権侵害の損害の額について、「その侵害の行為を組成した物」(同法102条1項)とされているところ、前記ア のとおり、間接侵害にも同法102条の適用があると解する以上、「侵害の行為を組成した物」とは間接侵害品を指すものと解するべきである。もっとも、特許法101条2号に係る間接侵害品たる部品等は、特許権を侵害しない用途ないし態様で使用することができるものである。そして、そのような部品等の譲渡は、当該部品等の譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋然性が高いと認められる場合には、譲渡先での使用用途ないし態様のいかんを問わず、間接侵害行為を構成するが、実際に譲渡先で特許権を侵害する用途ないし態様で使用されていない場合には、
5 結果的には、間接侵害品の売上げに当該特許権が寄与していない。そう
すると、そのような譲渡先については、間接侵害行為がなければ特許権者の製品が販売できたとはいえないことになり、特許権者等に特許発明の物の譲渡による得べかりし利益の損害は発生しないので、当該物の譲渡によって得た利益の額を特許権者等が受けた損害の額と推定することはできないというべきである。そして、このような場合は同法102条1項1号の「販売することができないとする事情」に該当するものと解するのが相当である。一審
(被告の主張)
は、仮に、直接侵害品の生産に用いられた数量のみを損害算定の基礎とすべき主張が採用されない場合には、同一の事情を「販売することができないとする事情」として主張するとの趣旨も含むものと解され、その限度で採用することができる。したがって、特許権者等の損害額の算定に当たっては、そのような販売数量は、特許法102条1項の「譲渡数量」から控除されると解するのが相当である。オ 「販売することができないとする事情」について販売することができないとする事情(その1)一審被告は、①原告の製品が一審原告製のプログラマブル・コントローラにしか接続できないこと、②一審原告がプログラマブル・コントローラ用表示器の市場において意味のあるシェアを有しておらず、本件発明1の技術的特徴による販売への貢献も極めてわずかであるから、被告表示器A及び被告製品3の購入者のほとんどは、一審原告以外のメーカーの製品を購入する、③原告の製品は本件発明1の実施品ではないから本件特許権1の侵害によって一審原告に損害が発生する余地はない旨を主張する(以下、この主張に係る事情を「販売することができないとする事情(その1)」という。 。)特許法102条1項1号の「販売することができないとする事情」と
5 は、侵害行為と特許権者の製品の販売減少との相当因果関係を阻害する
事情をいうものである。本件発明1の特徴的技術手段は、異常発生時におけるタッチによる接点検索にすぎず、回路モニタ機能全体ではないことや、従来製品として、モニタ上に表示される異常種類のうち特定のものをタッチして指定すると、その指定された異常種類に対応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路が表示され、異常種類の原因となるコイルの指定や接点の指定をタッチパネル上の入力画面でデバイス名又はデバイス番号を入力して行う製品が存在していたことは、前記2⑵イ において認定したとおりである。そうすると、本件発明1に係る機能を全て使用することができる製品が原告の製品以外に存在していなかったとしても、コイルの指定や接点の指定をタッチパネル上の入力画面でデバイス名又はデバイス番号を入力して行う製品は存在しており、そのような製品でも、異常現象の発生時にラダー回路図面集を参照しなくても真の異常原因を特定したり、原因の特定のために次々にラダー回路を読み出していったりすること自体は可能であり、それほど複雑な操作を要するものではないといえる。さらに、本件発明1の技術的範囲に含まれないものであっても、異常発生時においてコイル検索のみを実施できるようにし、回路を戻る場合には検索機能を用いずに戻る機能を有する表示装置であれば、異常現象の発生時にラダー回路図面集を参照しなくても真の異常原因を特定したり、原因の特定のために次々にラダー回路を読み出していったりするという目的を達することに支障があるとは考えにくい。加えて、本件発明1の特徴的技術手段である接点検索は、原告の製品にですら実施されていないものであり、この特徴的技術手段が原告の製品の販売に貢献していないことは明らかである。しかも、この特徴的手段である接点検索は、被告表示器A及び被告製品3の多数の機能のうち、わずか一点に関
5 するものであって、その機能の極めて僅少な部分しか占めない。
以上からすると、本件発明1の技術的特徴部分が被告表示器A及び被告製品3の販売数に大きく寄与したものとはおよそ想定し難い。また、一審原告のプログラマブル表示器(表示装置)における市場シェアは、別紙7-2の「その他」に含まれるにすぎない僅少なものである(甲31)上に、原告の製品は、一審原告製のプログラマブル・コントローラにしか接続できない(争いがない。)のであるから、被告表示器A及び被告製品3が本件発明1の特徴的技術部分を備えないことによってわずかに販売数が減少したとしても、その減少数分を埋め合わせる需要が、全て一審原告の方に向かうとも想定し難い。したがって、本件では、被告表示器A及び被告製品3が本件特許1を侵害したことによって原告の製品が販売減少したとの相当因果関係は、著しい程度で阻害されると認めるべきであり、被告表示器Aの販売数の99%について販売することができないとする事情があると認めるのが相当である。販売することができないとする事情(その2)前記エ のとおり、一審被告が直接侵害品の生産に用いられた被告表示器Aの数量として主張するところは、「販売することができないとする事情」の一要素として考慮することができるところ、一審被告は、前記第2の4⒃(原判決第3の18
(被告の主張)
⑴ア c)のとおり、
①輸出の除外、②プログラマブル・コントローラに接続しない利用態様
の除外、③一審被告製シーケンサ等に接続する利用態様の割合から算出される事情、④対応シーケンサ等に接続する利用態様の割合から算出される事情、⑤被告製品1-2についてオプション機能ボートを購入した割合から算出される事情、⑥ワンタッチ回路ジャンプ機能を用いるプロジェクトデータを有する被告表示器Aの割合から算出される事情を主張
5 する(前記第2の4⒃参照。以下、この主張に係る事情を「販売するこ
とができないとする事情(その2)」という。 。)そこで、検討するに、まず、一審被告が把握している被告表示器Aの輸出台数は、別紙7の1に記載したとおりであること、平成25年の一審被告製のプログラマブル表示器の販売数量、販売金額、国内市場シェアは、同7の2に記載したとおりであること、平成25年から令和2年までの一審被告のプログラマブル・コントローラの国内総販売数、国内市場シェアは、同7の3に記載したとおりであること、一審被告製シーケンサ(プログラマブル・コントローラ)の販売実績、回路モニタ機能の実行が可能なシーケンサ等の割合は、同7の4に記載のとおりであること、GT15(被告製品1-2)に装着可能なオプション機能ボードの販売台数は、別紙7の5に記載のとおりであることが認められ(甲31、乙58ないし64、弁論の全趣旨)、これに反する証拠はない。上記認定事実を前提に更に検討すると、①国外に輸出された被告表示器Aについては、本件発明1が実施されるのが日本国外となり、属地主義の原則から本件特許権1の侵害は生じ得ないから、一審被告から開示された輸出台数は控除するのが相当であるが、その輸出台数を一審被告は別紙7の1のとおり把握しているとし、これに疑念を差し挟む理由もないところ、その台数が全体の販売数に占める割合は僅少である。②プログラマブル・コントローラに接続しない被告表示器Aについても本件特許権1の侵害が生じないところ、その数量は、一審被告すらおおよその割合でしか示し得ていないものの(別紙2-1)、前記2⑵エ のとおり、ユーザは高額な機器である被告表示器Aの機能を十全に利用するため回路モニタ機能等を利用しようと合理的に行動するものといえるから、被告表示器Aをプログラマブル・コントローラに接続する割合は非常に高くなるものと推認される。③一審被告製シーケンサ等に接続する
5 利用態様の割合については、前記2⑵エのとおり、プログラマブル・コ
ントローラとプログラマブル表示器とを同一メーカのもので統一する傾向があると推認されることから、一審被告製シーケンサの国内市場シェア割合(別紙7-3)に従った割合で被告表示器Aが一審被告製シーケンサに接続されるものとするのは不自然であり、当該シェア割合よりは一定程度高い割合で一審被告製シーケンサと接続されるものと推認するのが相当であるが、他社の製品との組み合わせが僅少であるとまでは認め難い。④対応シーケンサ等に接続する利用態様の割合については、被告表示器Aがその仕様・機能等からみて特定のシーケンサに用いられるとする特別な傾向があることまでもを認めるに足りる証拠はないから、回路モニタ機能を利用できないシーケンサの販売割合(別紙7-4)はその割合のまま考慮することが相当である。⑤被告製品1-2についてオプション機能ボートを購入したユーザの割合(最大で約4分の1)については、一定の考慮をするものとするが、そもそも被告表示器Aに占める被告製品1-2の割合は約●パーセントにすぎないから、いずれにしても、被告表示器A全体の中ではほとんど影響を及ぼさない。最後に、
⑥ユーザがワンタッチ回路ジャンプ機能を用いるプロジェクトデータを
作成する割合については、引用に係る原判決第4の2⑵(本判決前記1
⑵にて補正されたもの)において認定したとおり、一審被告がワンタッ
チ回路ジャンプ機能を宣伝のポイントとしていたことや、被告表示器A及び被告製品3を購入等したユーザは回路モニタ機能等を用いることを強く動機付けられ、その機能がインストールされる可能性もかなり高いといえること等に照らせば、ワンタッチ回路ジャンプ機能を用いようとする者は相応の数に上るものと考えられるものの、具体的な割合を確定するに足りる資料はない。以上の観点から検討するところ、上記①、②、⑤については、直接侵
5 害品の生産に用いられる被告表示器Aの数量に与える影響はわずか、あ
るいは少ないが、上記④及び⑥については直接侵害品の生産に用いられる被告表示器Aの数量に与える影響はかなり大きく、③についても少なからぬ影響があるというべきである。なお、ここまでにおいて、これらの事情を独立の要素として考慮したが、例えば、ワンタッチ回路ジャンプ機能を用いるプロジェクトデータを作成するユーザは回路モニタ機能等を使用できる機器を有しているなど、これらの要素は相互に関連性を有する場合もあり得る。そこで、このような点も加味して、上記事情を総合考慮すると、被告表示器Aの販売数の●●%が直接侵害品の生産には用いられなかったものと推認することが相当である。したがって、この限度において、「販売することができないとする事情」があると認める。一審
(被告の主張)
について一審被告は、ユーザからの不具合調査や技術支援の依頼への対応に応じてユーザから取得しているプロジェクトデータから、本件発明1の実施品の生産に用いられる被告表示器Aの数が推定できると主張する(前記第2の4⒃参照)が、これらのプロジェクトデータは、一審被告に対して技術支援を求めるユーザ、不具合品として製品を返却してきたユーザ、他社製表示器から一審被告製品に乗り換えたユーザから取得してきたプロジェクトデータというのであって(乙72)、全くランダム化されていないものであり、それらユーザが一審被告の製品を用いるユーザの平均的な技術水準にあるとは認め難く、その主張を採用することはできないそのほか一審被告がるる主張するところも、前記 及び の認定を左右しない。一審
(原告の主張)
について
5 一審原告は、前記 ③の事情につき、引用に係る原判決第3の18⑴
ア c(本判決前記第2の4⑿で補正されたもの)のとおり、プログラマブル表示器を他社製のプログラマブル・コントローラに接続する利用態様は僅少である旨主張する。しかしながら、プログラマブル・コントローラの市場シェアでは下位を占めるが、プログラマブル表示器のシェアでは上位を占める社があり(乙58ないし64)、そのような社のプログラマブル表示器は他社製のプログラマブル・コントローラに接続されることを前提にされていると考えられる。このような点に鑑みると、異なる社が製造するプログラマブル表示器とプログラマブル・コントローラとを組み合わせることも、当業界としてあり得る対応と推認される。そうすると、プログラマブル表示器とプログラマブル・コントローラの親和性が好まれるといっても、他社製のものとの組み合わせることが僅少であるとまでは認められないから、一審原告の上記主張を採用することができない。また、一審原告は、同c⒝(本判決前記第2の4⑿で補正されたもの)のとおり、①被告表示器Aと接続できない場合がある「MELSEC QnAシリーズ」 「MELSEC Aシリーズ」 「MELDAS C6/C64」 「MELSE、 、 、C iQ-Lシリーズ」及び「CNC C80シリーズ」などのシーケンサを購入したユーザが被告表示器Aを購入するはずがない、②単純な使用態様であるスタンドアローン向けのシーケンサに回路モニタ機能等を有する高額な被告表示器Aを接続するユーザはいない旨主張するが、上記①についていえば、仮に、一審原告の指摘するシーケンサが被告表示器Aと接続できないとしても、別紙7の4のとおり、一審被告製シーケンサ全体に占めるその販売割合は●ないし●●●%と極めて僅少であって全体的な傾向を全く左右させないものであるし、上記②についていえば、一審被告が主張するように言い切ることができることを認めるに足りる証拠
5 はない。
そのほか一審原告がるる主張するところも、前記 及び の認定を左右しない。以上のとおり「販売することができないとする事情(その1)」として、主に本件発明1の売上げへの貢献に関する観点からの99%の控除と「販売することができないとする事情(その2)」として、直接侵害品の生産に用いられていないとの観点からの●●%の控除が認められ、両者は独立して考慮できる控除要素であるから、結局、別紙8に記載のとおり、被告表示器Aの譲渡数量から、99%の譲渡数量を控除し、更にその数量から●●%の譲渡数量を控除した数量(控除数量は、●●●●%となる。)について「販売することがのできないとする事情」を認めるのが相当である(この数値は、一審原告が自認する59/60≒0.983を下回るものではない。。)カ 特許法102条1項1号の損害前記イないしオの判断を踏まえると、特許法102条1項1号に基づく一審原告の損害額は、別紙8のとおり、5062万9205円と認めるのが相当である。キ 特許法102条1項2号の損害特許法102条1項2号は、特定数量がある場合、その数量に応じた実施料に相当する額を損害の額とすることができると定める一方で、同号括弧書きは、特許権者等が当該特許権者等の特許権について実施権の許諾をし得たと認められない部分を除く部分を除外しているから、侵害者の侵害行為により特許権者がライセンスの機会を喪失したとはいえない場合には実施料に相当する額の逸失利益が生じるものではないことが規定されている。前記オのとおり、本件において認められた特定数量は本件発明1の特徴
5 的技術部分が被告表示器A及び被告製品3の販売量に貢献しているとは認
められない数量、機能上の制約あるいは一審原告のシェア割合からみてユーザの需要が原告の製品に向かず、一審原告以外の他社への購入に振り向けられる数量、直接侵害品の生産に向けられず本件発明1の技術的範囲に属しない表示器となる数量を合わせたものであるから、そのように本件発明1が販売数量に貢献し得ていない製品や一審被告以外の他社が販売する製品について、一審原告が一審被告に本件発明1をライセンスし得るとは認められない。そうすると、特許法102条1項2号の損害を認めることはできない。
⑷ 特許法102条2項に基づく損害について
ア 本件の間接侵害への特許法102条2項の適用の可否特許法102条2項は、侵害者が侵害行為により受けた利益の額を特許権者等が受けた損害の額と推定すると定めるところ、この規定の趣旨は先に同条1項について述べたのと同様であると解される。したがって、先に同条1項について述べたのと同様の考え方の下に、本件において同条2項の適用を肯定するのが相当である。イ 侵害者が侵害の行為により受けた利益の額平成25年4月から令和2年3月までの被告表示器A及び被告製品3の販売額が別紙3ないし6に記載されたとおりであること、被告表示器Aの限界利益率が20パーセントを下らないこと、被告製品3の限界利益率が原判決別紙「被告の変動費の内訳、加重平均値及び限界利益率」に記載されたとおりであることは、当事者間に争いがない。ウ 推定覆滅事由について特許法102条2項は推定規定であるから、侵害者の側で、侵害者が得た利益の一部又は全部について、特許権者が受けた損害との相当因果関係が欠けることを主張立証した場合には、その限度で上記推定は覆滅
5 されるものと解される。
ここで、特許法101条2号の間接侵害品が実際には直接侵害品の生産に用いられることがなかった場合には、結果的にみれば、当該間接侵害品の譲渡行為がなければ特許発明の物を譲渡することができたという関係にはなく、特許権者に特許発明の物の譲渡により得べかりし利益の損害は発生しないので、当該物の譲渡によって得た利益の額を特許権者が受けた損害の額と推定することはできないというべきであるから、このような場合は同法102条2項の推定を覆す事情に該当するものと解するのが相当である。そうすると、先に特許法102条1項1号について述べた事情(前記⑶オ 。以下「推定覆滅事由(その1)」という。)は、特許法102条2項の推定覆事由として捉えることができるから、被告表示器A及び被告製品3の利益の99%について覆滅事由があると認めるのが相当である。さらに、被告表示器A及び被告製品3のうち、直接侵害品の生産に用いられなかった分については一審原告の受けた損害額であるとの推定を覆す事情(以下「推定覆滅事由(その2)」という。)があるというべきであるところ、直接侵害品の生産に用いられなかった被告表示器Aの数は、前記⑶オ と同旨の理由により、全体の●●%に及ぶと認められるから、●●%の利益について推定が覆滅されるものと認めるのが相当である。また、被告製品3についても、直接侵害品の生産に用いられたものと、そうではないものとが生じるが、特にどちらかに偏るべき事情はうかがわれないから、そのインストール先の表示器Aと同様の割合で、その●●%の利益について推定が覆滅されるものと認めるのが相当である。以上のとおりであり、推定覆滅事由(その1)として、主に本件発明1の売上げへ貢献に関する観点から導いた99%の減額と推定覆滅事由(その2)として、直接侵害品の生産に用いられているかの観点から導
5 いた●●%の減額が認められ、両者は独立して考慮できる減額要素であ
るから、結局、受けた利益のうち、●●●●%の額について推定覆滅事由を認めるのが相当である(この数値は、一審原告が自認する59/60≒0.983を下回るものではない。 。)エ 特許法102条2項の損害前記イ及びウの判断を踏まえると、特許法102条2項に基づく一審原告の損害額は、別紙9のとおり、合計2424万7080円と認めるのが相当である。オ 特許法102条3項の重畳適用について仮に、特許法の解釈上、特許法102条2項と3項の重畳適用が排除されていないとしても、その適用は同条1項2号の趣旨にかなったものとなるのが相当と思料されるべきところ、本件においては、同条2項の覆滅事由は前記ウ 及び のとおり、そもそも同条1項2号の適用のない場合であるから、同条3項を重畳適用できる事案ではない。したがって、いずれにせよ、一審原告の上記主張を採用することはできないものである。
⑸ 小括
前記⑶及び⑷の判断を踏まえると、前記⑶にて認定の特許法102条1項に基づく原告の損害額(5062万9205円)の方が高いことから、その額を一審原告の損害と認める。
⑹ 弁護士費用
一審原告は本件訴訟の追行等を原告訴訟代理人に委任したところ(当裁判所に顕著な事実)、一審被告の特許権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は、500万円と認めるのが相当である。
⑺ 総括
以上より、一審原告の損害額は、合計5562万9205円となる。
5 9 結論
よって、一審原告の請求は、本件特許権1の侵害の不法行為に基づく損害賠償として5562万9205円及びこれに対する、うち1230万2476円(別紙「各月の損害金一覧表」の「販売期間」欄1ないし4)については不法行為後の日で本件訴状送達日の翌日である平成27年9月26日から、うち別紙10「各月の損害金一覧表」記載の「販売期間」欄5ないし14までの各欄の「各月の損害額」欄記載の各金額については、これに対応する上記各欄の「遅延損害金起算日」欄記載の各日から、各支払済みまで、平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求を求める限度で理由があり、本件特許権1の侵害の不法行為に基づくその余の請求及び本件特許権2ないし4の侵害に基づく請求はいずれも理由がないから、これを棄却すべきものである。したがって、一審原告の控訴に基づいて原判決を変更し、一審被告の控訴は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官菅 野 雅 之裁判官
5 本 吉 弘 行
裁判官中 村 恭別紙1-1ないし10省略
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