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平成29(ワ)7384特許権侵害差止等請求事件

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裁判所 請求棄却 大阪地方裁判所大阪地方裁判所
裁判年月日 令和4年9月15日
事件種別 民事
当事者 原告ファミリーイナダ株式会社
被告株式会社フジ医療器
対象物 マッサージ機
法令 特許権
特許法100条1項1回
民法703条1回
キーワード 実施25回
特許権21回
侵害20回
審決11回
無効7回
分割6回
無効審判5回
差止2回
損害賠償2回
進歩性2回
拒絶査定不服審判1回
刊行物1回
主文 1 被告は、原告に対し、27億7983万1907円並びにうち14億733
1万0911円に対する平成29年8月17日から支払済みまで年5分の割合によ
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを2分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担5
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事件の概要 1 本件は、発明の名称を「マッサージ機」等とする3件の特許(以下「本件各 特許」という。)に係る特許権(以下「本件各特許権」という。)を有する原告が、 被告が本件各特許の特許請求の範囲請求項記載の各発明の技術的範囲に属する製品20 を製造し、販売等することは本件各特許権の侵害に当たると主張して(本件各特許 権と被疑侵害品とされる被告の製品の対応関係は、別紙2「特許権・対象被告製品 目録」記載のとおりである。)、特許法100条1項及び2項に基づき、別紙1「被 告製品目録」記載の各製品の製造、譲渡等の差止め及び廃棄を求めるとともに、主 位的に、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償のうち50億円に弁護士費用25 を加えた55億円並びにうち26億5000万円に対する訴状送達の日の翌日であ る平成29年8月17日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の 民法(以下「改正前民法」という。)所定年5分の割合による遅延損害金及びうち 28億5000万円に対する令和3年2月26日付け請求の趣旨拡張の申立書送達 の日の翌日である令和3年3月2日から支払済みまで民法所定年3分の割合による 遅延損害金の支払を求め、主位的請求のうち消滅時効が認められた部分について、5 予備的に、不当利得返還請求権(民法703条、704条)に基づき、前同様の不

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判決文

令和4年9月15日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官
平成29年(ワ)第7384号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和4年4月28日
判 決
原 告 ファミリーイナダ株式会社
同 代 表 者 代 表 取 締 役
同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 三 山 峻 司
同 矢 倉 雄 太
10 同 訴 訟 代 理 人 弁 理 士 北 村 修 一 郎
同 森 俊 也
同訴訟復代理人弁護士 西 川 侑 之 介
被 告 株 式 会 社 フ ジ 医 療 器
15 同 代 表 者 代 表 取 締 役
同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 重 冨 貴 光
同 古 庄 俊 哉
同 石 津 真 二
同 手 代 木 啓
20 同 杉 野 文 香
同 本 希 世 士
同 本 良 和
同 松 田 さ と み
同 補 佐 人 弁 理 士 丸 山 英 之
25 主 文
1 被告は、原告に対し、27億7983万1907円並びにうち14億733
1万0911円に対する平成29年8月17日から支払済みまで年5分の割合によ
る金員及びうち13億0652万0996円に対する令和3年3月2日から支払済
みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5 3 訴訟費用は、これを2分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担
とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
10 1 被告は、別紙1「被告製品目録」記載の各製品を製造し、販売し、輸出し、
又は販売の申出をしてはならない。
2 被告は、別紙1「被告製品目録」記載の各製品を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、55億円及びうち26億5000万円に対する平成2
9年8月17日から支払済みまで年5分の割合による金員並びにうち28億500
15 0万円に対する令和3年3月2日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払
え。
第2 事案の概要
1 本件は、発明の名称を「マッサージ機」等とする3件の特許(以下「本件各
特許」という。)に係る特許権(以下「本件各特許権」という。)を有する原告が、
20 被告が本件各特許の特許請求の範囲請求項記載の各発明の技術的範囲に属する製品
を製造し、販売等することは本件各特許権の侵害に当たると主張して(本件各特許
権と被疑侵害品とされる被告の製品の対応関係は、別紙2「特許権・対象被告製品
目録」記載のとおりである。)、特許法100条1項及び2項に基づき、別紙1「被
告製品目録」記載の各製品の製造、譲渡等の差止め及び廃棄を求めるとともに、主
25 位的に、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償のうち50億円に弁護士費用
を加えた55億円並びにうち26億5000万円に対する訴状送達の日の翌日であ
る平成29年8月17日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の
民法(以下「改正前民法」という。)所定年5分の割合による遅延損害金及びうち
28億5000万円に対する令和3年2月26日付け請求の趣旨拡張の申立書送達
の日の翌日である令和3年3月2日から支払済みまで民法所定年3分の割合による
5 遅延損害金の支払を求め、主位的請求のうち消滅時効が認められた部分について、
予備的に、不当利得返還請求権(民法703条、704条)に基づき、前同様の不
当利得の返還を求める事案である。
2 前提事実(全体に関するもの。争いのない事実)
(1) 原告は、電気マッサージ器、美容体育機器、家庭用電気用品等の製造販売等
10 を目的とする株式会社である。
(2) 被告は、医療機器、健康機器、家庭用電気機械器具等の製造販売等を目的と
する株式会社である。
(3) 原告は、次の3件の特許(本件各特許。以下、次のアないしウの各特許を順
に「本件特許Ⅰ」ないし「本件特許Ⅲ」といい、それぞれの特許に係る特許権を「本
15 件特許権Ⅰ」ないし「本件特許権Ⅲ」という。)を有している。
ア 登録番号 特許第5209091号
出願日 平成23年7月19日
分割の表示 特願2008-21138の分割
原出願日 平成14年6月3日
20 公開日 平成23年10月13日
登録日 平成25年3月1日
発明の名称 マッサージ機
イ 登録番号 特許第4617275号
出願日 平成18年5月18日
25 分割の表示 特願平11-138809の分割
原出願日 平成11年5月19日
公開日 平成18年8月17日
登録日 平成22年10月29日
発明の名称 椅子型マッサージ機
ウ 登録番号 特許第5009445号
5 出願日 平成24年3月19日
分割の表示 特願2009-275966の分割
原出願日 平成14年4月19日
公開日 平成24年6月14日
登録日 平成24年6月8日
10 発明の名称 マッサージ機
第3 本件各特許権に係る各請求の前提事実、当事者の主張及び当裁判所の判断(損
害論を除く)
1 本件特許権Ⅰ関係
本件特許権Ⅰに係る前提事実、当事者の主張及び当裁判所の判断は、別紙Ⅰ記載
15 のとおり。
2 本件特許権Ⅱ関係
本件特許権Ⅱに係る前提事実、当事者の主張及び当裁判所の判断は、別紙Ⅱ記載
のとおり。
3 本件特許権Ⅲ関係
20 本件特許権Ⅲに係る前提事実、当事者の主張及び当裁判所の判断は、別紙Ⅲ記載
のとおり。
第4 損害論に係る前提事実、当事者の主張及び当裁判所の判断
別紙Ⅳ記載のとおり。
第5 結論
25 原告の請求は、本件特許権Ⅱ及びⅢの侵害に係る損害賠償金等27億7983万
1907円並びにうち14億7331万0911円に対する平成29年8月17日
から支払済みまで改正前民法所定年5分の割合による遅延損害金及びうち13億0
652万0996円に対する令和3年3月2日から支払済みまで民法所定年3分の
割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由
がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
10 裁判長裁判官
武 宮 英 子
裁判官
杉 浦 一 輝
裁判官
峯 健 一 郎
(別紙1)
被告製品目録
番 製品名 機種・型番 製造販売開始時期
号 (遅くとも)
1 CYBER- RELAX AS- 1000 H27.11 頃
2 CYBER- RELAX AS- 970 H26.11 頃
3 CYBER- RELAX AS- 960 H25.8 頃
4 CYBER- RELAX AS- 870 H27.11 頃
5 CYBER- RELAX AS- 860 H26.2 頃
6 CYBER- RELAX AS- 850 H24.3 頃
7 CYBER- RELAX AS- 845 H24.10 頃
8 CYBER- RELAX AS- 840 H22.2 頃
9 CYBER- RELAX AS- 830 H20.7 頃
10 Relax Solution SKS- 6700 H26.10 頃
11 Relax Solution SKS- 6600 H25.9 頃
12 Relax Solution SKS- 4600 H22.9 頃
13 Relax Solution SKS- 7000 H25.4 頃
14 Relax Solution SKS- 5600 H27.4 頃
15 Relax Solution SKS- 5500 H24.6 頃
16 Relax Solution SKS- 5500(Z) H27.2 頃
17 Relax Solution SKS- 3800 H25.11 頃
18 Relax Solution SKS- 3800(S) H26.3 頃
19 Relax Solution AN- 60 H25.9 頃
20 Solution Premium VP- 3000 H24.5 頃
21 Relax Solution OH- 5500 H25.3 頃
22 Relax Pro SKS- 70 H25.10 頃
23 SUPER RELAX JT- FJ60 H25.9 頃
24 SUPER RELAX OH- 670 H27.12 頃
25 RELAX MASTER AS- 680 H28.5 頃
26 CYBER- RELAX AS- 780 H28.5 頃
27 CYBER- RELAX AS- 770 H27.1 頃
28 CYBER- RELAX AS- 760 H25.11 頃
comforpit
29 CYBER- RELAX AS- 760(S) H27.12 頃
comforpit
30 CYBER- RELAX AS- 750 H23.10 頃
comforpit
31 CYBER- RELAX AS- 740 H22.3 頃
32 CYBER- RELAX AS- 730 H20.7 頃
33 RELAX MASTER AS- 670 H26.12 頃
34 RELAX MASTER AS- F60 H25.12 頃
35 Relax Solution SKS- 3100 H26.10 頃
36 Relax Pro SKS- 2900 H27.6 頃
37 Relax Solution SKS- 2800 H25.4 頃
38 SUPER RELAX SKS- 2000 H27.5 頃
39 SUPER RELAX SKS- 900 H26.2 頃
40 TRADDY SKS- 800 H23.10 頃
42 Relax Solution JTR‐ 150 H27.4 頃
44 TRADDY TR- 200 H27.12 頃
45 TRADDY TR- 100 H26.11 頃
46 CYBER- RELAX AS- 1100 H29.7.1 頃
47 RELAX MASTER AS- 690 H29.7.1 頃
48 Relax Solution SKS- 6900
49 CYBER- RELAX JP- 1000 H28.3 頃
50 Premium4S H27.11 頃
51 4D- 970
52 CYBER- RELAX JP- 870
53 Premium4.0
54 CYBER- RELAX EC- 3900
55 Premium4D
56 TC- 900
57 CYBER- RELAX EC- 3800
58 CYBER- RELAX EC- 3850
59 CYBER- RELAX EC- 3700 H22.12 頃
60 CYBER- RELAX EC- 2700
61 CYBER- RELAX JP- 1100 H29.11 頃
62 CYBER- RELAX EC- 2800
以上
(別紙2) 特許権・被告製品目録
特許権 請求項 被告製品
1 1~6、8~21、49~59
2 6、15~18、20、21、57、58

3 6、8、9、12、13、15~18、20、21、57~59
4 6、15~18、20、21、57、58
1 1、8、9、12、13、22~24、46、48~50、59、61
Ⅱ 2 1、8、9、12、13、22~24、46、48~50、59、61
3 1、8、9、12、13、22~24、46、48~50、59、61
1 7~9、12、13、25~40、42、44、45、47、59、60、62
2 7~9、12、13、25~40、42、44、45、47、59、60、62
3 7~9、12、13、25~40、42、44、45、47、59、60、62

4 7~9、12、13、25~40、42、44、45、47、59、60、62
5 7~9、12、13、25~40、42、44、45、47、59、60、62
6 7、25~30、33~40、42、44、45、47、60、62
以上
別 紙 Ⅰ
(別紙Ⅰ)
第1 前提事実
1 本件特許権Ⅰ
原告は、本件特許権Ⅰを有している。
5 なお、後記2の本件訂正前の本件特許Ⅰの特許請求の範囲、明細書及び図面(以
下、明細書及び図面を「本件明細書Ⅰ」という。)の記載は、別紙「特許公報(甲
第4号証)」のとおりである。
2 訂正請求等
原告は、被告が本件特許Ⅰの特許請求の範囲請求項1~4についての無効審判請
10 求をしたことに対し、平成26年2月13日付けの訂正請求書において、同請求項
1~4につき訂正請求を行ったところ、特許庁は、同年5月27日、原告の訂正請
求を認めた上で、被告の無効審判請求は成り立たないとの審決をし、その後、同審
決は確定した(以下「本件訂正」という。甲A4、乙A20、弁論の全趣旨)。
3 構成要件
15 本件訂正後の本件特許Ⅰの特許請求の範囲請求項1~4(以下、項順に「本件発
明Ⅰ-1」などといい、これらを併せて「本件発明Ⅰ」と総称する。)の構成要件
は次のとおり分説される。なお、下線部は、本件訂正による訂正部分である。
(1) 請求項1(本件発明Ⅰ-1)
A 座部と、
20 B マッサージ機能を有する複数の脚保持部材を脚の長さ方向に並べて成り、
最先端の脚保持部材には足裏の押し当て面が設けられている脚載せ部と、
C 前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記脚載せ部に付与する
抵抗付与手段と、を備え、
D 前記脚載せ部は、前記座部の前部に対して回動自在であり、
25 E 前記最先端の脚保持部は、
E1 前記押し当て面と、
E2 足の側部に対向させる足側面と、
E3 左右方向における中央部に区画壁と、
E4 前記押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエアセ
ルと、
5 E5 前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセ
ルと、を有し、
F 他の脚保持部材は、
F1 脚の側部に対向させる脚側面と、
F2 前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施すエアセ
10 ルと、を有し、
G 前記脚載せ部は、前記最先端の脚保持部材および前記他の脚保持部材のそ
れぞれが前記座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能、かつ、前記最先端の脚
保持部材の前記足側面に設けられた前記エアセルと前記他の脚保持部材の前記脚側
面に設けられた前記エアセルとの距離が変化するように、脚の長さ方向に伸縮可能
15 であり、
H 前記抵抗付与手段は、前記脚の力に抗する方向に前記最先端の脚保持部材
を付勢する付勢手段であることを特徴とする
I マッサージ機。
(2) 請求項2(本件発明Ⅰ-2)
20 J 座部と、
K マッサージ機能を有する少なくとも3つの脚保持部材を脚の長さ方向に並
べて成り、最先端の脚保持部材には足裏の押し当て面が設けられている脚載せ部と、
L 前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記脚載せ部に付与する
抵抗付与手段と、を備え、
25 M 前記脚載せ部は、前記座部の前部に対して回動自在であり、
N 隣り合う前記脚保持部材の各離隔距離を脚の長さ方向にそれぞれ変更可能
であり、
O 前記最先端の脚保持部材は、
O1 前記押し当て面と、
O2 足の側部に対向させる足側面と、
5 O3 左右方向における中央部に区画壁と、
O4 前記押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエアセ
ルと、
O5 前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセ
ルと、を有し、
10 P 他の脚保持部材は、それぞれ
P1 脚の側部に対向させる脚側面と、
P2 前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施すエアセ
ルと、を有し、
Q 前記脚載せ部は、前記最先端の脚保持部材の前記足側面に設けられた前記
15 エアセルと前記他の脚保持部材の前記脚側面に設けられた前記エアセルとの距離が
変化するように、脚の長さ方向に伸縮可能であり、
R 前記抵抗付与手段は、前記脚の力に抗する方向に前記最先端の脚保持部材
を付勢する付勢手段であることを特徴とする
S マッサージ機。
20 (3) 請求項3(本件発明Ⅰ-3)
T 前記脚載せ部の脚先側下端には、下向き状態にある前記脚載せ部が伸長す
ると床に接地する車輪が設けられ、
U 前記脚載せ部は、伸長しながら上方へ回動可能であることを特徴とする
V 請求項1又は2に記載のマッサージ機。
25 (4) 請求項4(本件発明Ⅰ-4)
W 前記他の脚保持部材は、左右方向における中央部に区画壁を有することを
特徴とする
X 請求項2に記載のマッサージ機。
4 被告製品Ⅰ
本件特許権Ⅰとの関係で、その被疑侵害品である被告の製品は、構成上の相違か
5 ら次のとおりⅠ-A、Ⅰ-B、Ⅰ-D及びⅠ-Eに分類することができる(以下、
これらを「被告製品Ⅰ」と総称し、各分類に属する被告製品を「被告製品Ⅰ-A」
などと総称する。被告製品の番号は別紙1「被告製品目録」の「番号」欄記載の番
号による(以下同じ)。)。被告製品Ⅰの具体的な構成については、当事者間に争
いがある。原告は、被告製品Ⅰ-Aとの関係で本件発明Ⅰ-1の充足を、被告製品
10 Ⅰ-Bとの関係で本件発明Ⅰ-1の充足を、被告製品Ⅰ-Dとの関係で本件発明Ⅰ
-1~Ⅰ-4の充足を、被告製品Ⅰ-Eとの関係で本件発明Ⅰ-1及びⅠ-3の充
足を主張している。
分類 代表被告製品 同様の構成を有する被告製品 侵害主張
(本件発明)
Ⅰ-A 1 2、3、10、11、19、49~51 Ⅰ-1
Ⅰ-B 5 4、14、52~56 Ⅰ-1
Ⅰ-D 6 15~18、20、21、57、58 Ⅰ-1~Ⅰ-4
Ⅰ-E 8 9、12、13、59 Ⅰ-1、Ⅰ-3
次のとおり、被告製品Ⅰ-Aが本件発明Ⅰ-1に係る構成要件A、B、D~E3
及びE5~Iを充足すること、被告製品Ⅰ-Bが本件発明Ⅰ-1に係る構成要件A
15 ~E3、E5~F2、H及びIを充足すること、被告製品Ⅰ-Dが、本件発明Ⅰ-
1に係る構成要件A、B、D~E3、E5~F2、H及びI、本件発明Ⅰ-2に係
る構成要件J、K、M、O~O3、O5~S、本件発明Ⅰ-3に係る構成要件T及
びU、本件発明Ⅰ-4に係る構成要件Wを充足すること、被告製品Ⅰ-Eが、本件
発明Ⅰ-1に係るA、B、D~E3及びE5~I、本件発明Ⅰ-3に係る構成要件
20 T及びUを充足することは当事者間に争いがない(下表で、「○」は構成要件充足
性に争いがないことを示し、「争」は構成要件充足性に争いがあることを示す。構
成要件V及びXは、他の請求項を引用しているために争いがあるとしたものであり、
独立の争点ではない。)。
被告製品
本件発明 構成要件 Ⅰ-A Ⅰ-B Ⅰ-D Ⅰ-E
A、B、D~E3及び
○ ○ ○ ○
E5~F2、H、I
Ⅰ-1 C 争 ○ 争 争
E4 争 争 争 争
G ○ 争 争 ○
J、K、M、O~O

3、O5~S
Ⅰ-2 L 争
N 争
O4 争
T及びU ○ ○
Ⅰ-3
V 争 争
W ○
Ⅰ-4
X 争
5 被告の行為
5 被告は、被告製品Ⅰにつき、別紙1「被告製品目録」の各「製造販売開始時期」
欄記載の時期から、その製造販売を開始した。
6 争点
(1) 本件発明Ⅰの技術的範囲への属否(文言侵害の成否。争点1)
(2) 本件発明Ⅰ-1の技術的範囲への属否(均等侵害の成否。争点2)
第2 争点についての当事者の主張
1 本件発明Ⅰの技術的範囲への属否(文言侵害の成否。争点1)
(原告の主張)
(1) 被告製品Ⅰの構成
5 被告製品Ⅰの構成は、別紙「被告製品Ⅰ-A説明書(原告)」、同「被告製品Ⅰ
-B説明書(原告)」、同「被告製品Ⅰ-D説明書(原告)」及び同「被告製品Ⅰ
-E説明書(原告)」記載のとおりである。
(2) 被告製品Ⅰ-A、I-D及びI-Eは「前記押し当て面に付与される脚の力
に抗する力を前記脚載せ部に付与する抵抗付与手段」の構成を有するか(被告製品
10 Ⅰ-A、Ⅰ-D及びⅠ-Eの構成要件Cの充足性、並びに、被告製品Ⅰ-Dの構成
要件Lの充足性)
ア 構成要件C及びLにおいては、「脚載せ部に付与する抵抗付与手段」と特定
されているのみで、複数の脚保持部のそれぞれ全てに付与するとまで限定して記載
されているわけではなく、脚載せ部の何れかの箇所に抵抗付与手段の機能が備わっ
15 ていれば足りる。また、構成要件Hを参照すると、抵抗付与手段は「前記脚の力に
抗する方向に最先端の脚保持部材を付勢する付勢手段である」として、付勢方向が
記載されているに留まる。
本件明細書Ⅰの記載(【0004】~【0006】【0011】【0034】)を参酌すれば、「抵
抗付与手段」の技術的意義は、押し当て面に足裏を押し当てることで抵抗付与手段
20 の付与する力に抗して脚載せ部を伸長させれば、当該脚載せ部は脚の長さに対応し
た位置に達するという点にある。
このような構成要件の文言や本件明細書Ⅰに示される「抵抗付与手段」の技術的
意義からすれば、「抵抗付与手段」は最先端の脚保持部材の押し当て面に付与され
る脚の力に抗する力を脚の力に抗する方向に付勢するものと解するのが相当であ
25 る。
イ 被告は、請求項や本件明細書Ⅰにおける「脚載せ部」の文言、本件発明Ⅰの
作用効果や出願経過を指摘するなどして、構成要件C及びLの「前記押し当て面に
付与される脚の力に抗する力を前記脚載せ部に付与する抵抗付与手段」は、「押し
当て面に付与される脚の力に抗する力」を「脚載せ部」を構成する複数の脚保持部
材のそれぞれに加えることにより、複数の脚保持部材から構成される脚を載せるユ
5 ニット全体に脚の力に抗する方向に付勢する部材であると解すべきであると主張す
る。
しかし、本件明細書Ⅰの実施の形態において、脚が押し当て面を押している時の
付勢手段である「ばね」の復元力は、複数の脚保持部材である、第2脚保持部材及
び第1脚保持部材には作用していない。また、本件明細書Ⅰには、抵抗付与手段が
10 復元力を必須としていない旨の記載があるから、本件発明Ⅰが、脚載せ部から脚を
降ろすだけで自動的に脚載せ部が元の位置(収縮状態)に復帰するという作用効果
を有するとの被告主張は誤りである。
また、本件訂正前の特許請求の範囲請求項1に係る発明は、「脚載せ部」が複数
の脚保持部材から構成されることに限定せず、一つしか存在しない脚保持部材が「脚
15 載せ部」である場合も含めていたところ、原告が出願経過で述べた意見等は、これ
を前提としたものであって、抵抗付与手段の脚の力に抗する力を、全ての脚保持部
材に付与することを認めていたものでないことは明らかであり、むしろ最先端の脚
保持部材にこの力を付与することを企図していたものといえる。
さらに、構成要件H及びRの「前記抵抗付与手段」の「前記」は、構成要件C及
20 びLの「抵抗付与手段」であり、構成要件H及びRの「前記脚の力」の「前記」は、
構成要件C及びL「前記押し当て面に付与される脚の力」のことを示している。本
件明細書Ⅰでは、「ばね24に代えて、何らかの抵抗付与手段を設けて適度の抵抗
負荷を伴って伸縮するように構成することもできる。」、「但し、元の収縮状態に
戻すにあたっては、手で押し戻す等の操作が必要になる。」と記載されていること
25 から、「ばね24」のような「付勢手段」で無い何らかの「抵抗付与手段」を用い
た場合に「自動的に収縮することができない」ことが記載されている。そうすると、
構成要件C及びLの「抵抗付与手段」と構成要件H及びRの「付勢手段」の関係は、
構成要件C及びLの「抵抗付与手段」が上位の包括概念で、構成要件H及びRの「付
勢手段」が下位の被包括概念の関係にあるといえる。実施形態についてみるに、「付
勢手段」たる「ばね24」の復元力は最先端の第3脚保持部材に作用しており、第
5 2脚保持部材及び第1脚保持部材の位置が定まるのはリンク装置の機能によるもの
であって、これを上位の包括概念的に表現をしているのが構成要件Cである。この
ように特許請求の範囲の記載では、構成要件Cの「前記押し当て面に付与される脚
の力に抗する力を前記脚載せ部に付与する」という「抵抗付与手段」は、「前記脚
の力に抗する方向に前記最先端の脚保持部材を付勢する」という「付勢手段」によ
10 り達成されると記載されており、「抵抗付与手段」は、構成要件H及びRにより最
先端の脚保持部材に脚の力に抗する力を付勢するものであると限定されている。
したがって、付勢手段は、他の脚保持部材にまで力を付与するものではない。
ウ 被告製品Ⅰ-A、Ⅰ-D及びⅠ-Eの充足性について
被告製品Ⅰ-Aは、「スプリング」の一端が第1スライドに取り付けられ、他端
15 が底面保持部の後方端に取り付けられている。被施療者が押し当て面に足裏を押し
当てて脚の力により押圧すると、A部材が脚の長さ方向に移動し、抵抗付与手段で
ある「スプリング」が脚の力に抗する力を脚載せ部に付与するものである。この点
については、被告製品Ⅰ-D及びⅠ-Eも同様の構成である。
したがって、被告製品Ⅰ-A及びⅠ-Eは構成要件Cを充足し、被告製品Ⅰ-D
20 は構成要件C及びLを充足する。
(3) 被告製品Ⅰは「足裏に押圧マッサージを施すエアセル」の構成を有するか
(被告製品Ⅰの構成要件E4の充足性及び被告製品Ⅰ-Dの構成要件O4の充足
性)
ア 構成要件E4及びO4の文言からは、押し当て面に設けられたエアセルの作
25 用により、被施療者の足裏に押圧マッサージを施すということが読み取れるに留ま
り、エアセルが足裏に当接して押圧することに限定されることはない。
本件明細書Ⅰの記載(【0020】)からも、エアの給排によってエアセルが膨張収
縮して押圧マッサージを施すエアセルを有しており、被施療者の足に押圧マッサー
ジを施すということが読み取れるに留まり、エアセルが足裏に当接することまでを
求める記載やその示唆は存在しない。
5 したがって、「足裏に押圧マッサージを施すエアセル」とは、その字義どおり解
するのが相当である。
イ 被告製品Ⅰは、押し当て面の足裏にエアセルを備えており、かかるエアセル
が膨張収縮することにより、突起物が上下することで被施療者の足裏に対し押圧マ
ッサージを施すものである。
10 したがって、被告製品Ⅰ―A、Ⅰ-B及びⅠ-Eは構成要件E4を充足し、被告
製品Ⅰ-Dは構成要件E4及びO4を充足する。
(4) 被告製品Ⅰ-B及びⅠ-Dは「前記最先端の脚保持部材および前記他の脚
保持部材のそれぞれが…脚の長さ方向に移動可能、かつ、…脚の長さ方向に伸縮可
能」の構成を有するか(被告製品Ⅰ-B及びⅠ-Dの構成要件Gの充足性)
15 ア 本件発明Ⅰ-Bとの関係について
(ア) 本件明細書Ⅰ(【0002】~【0006】)によれば、本件特許Ⅰでは、抵抗付与
手段を設け、さらに「最先端の脚保持部材」が移動可能で、これと「他の脚保持部
材」の少なくとも一部が移動可能と構成することにより、脚載せ部に脚を載せて押
し当て面に脚の力を付与することで、脚の長さに合わせた装置側の長さを施療器と
20 ともに移動するとの構成を採用し、施療器の調節を簡単に安定して行う技術が提供
されている。かかる技術的意義を達成するためには、構成要件Gにいう「移動可能」、
「伸縮可能」とは、最先端の脚保持部の押し当て面に脚の力を付与することで、被
施療者の脚が脚の長さ方向に伸びるような機構を有するように「最先端の脚保持部
材」が移動、伸縮すれば足り、最先端及び他の脚保持部材が「直線的に」伸縮(伸
25 び縮み)することに限定されることはない。
また、「伸縮」とは、「伸びたり縮んだりすること。また、伸ばしたり縮めたり
すること。」であり、「伸縮する布地」「伸縮自在」「伸縮性」というように使用
され、「直線的に伸び縮みさせる」というように物体が一直線上を動く直線運動に
限定して使用される用語ではない。
したがって、「前記最先端の脚保持部材および前記他の脚保持部材のそれぞれが
5 …脚の長さ方向に移動可能、かつ、…脚の長さ方向に伸縮可能」(構成要件G)と
は、最先端の脚保持部の押し当て面が回動する構成を含むと解するのが相当である。
(イ) 被告は、本件明細書Ⅰの記載から「伸縮」に「回動」は含まれないなどとし
て、構成要件Gは、各脚保持部材それぞれを脚の長手方向に直線的に移動させるこ
とができ、これにより、脚載せ部を脚の長手方向に直線的に伸び縮みさせることが
10 できることを意味すると解すべきである旨を主張する。
しかし、被告が指摘する本件明細書Ⅰの記載部分における「回動」は、「回動」
自体の動作が問題となっているが、構成要件Gでは、請求項の記載に即すると、「エ
アセルの距離」との関係で、「脚の長さ方向に伸縮可能」として、エアセルの距離
が変化するかが問われているのであって、「最先端の脚保持部材」の「押し当て面」
15 が踵の下方を回動軸芯として回動するかどうか自体が、充足論で問題となっている
わけではない。また、構成要件Dの「最先端の脚保持部材」が「移動」する構成に
おいて、「移動」には、「脚保持部材」の直線的な移動だけでなく、円弧軌跡で疑
似直線上を移動する構成も含まれる。
(ウ) 被告製品Ⅰ-Bについて
20 被告製品I-Bは、第2スプリングの一端が第2可動部の踵側に取り付けられ、
他端が第1可動部の第2スライダの左右両端から略垂直に延びる突起部に取り付け
られている。これにより、踵を載せる部分を軸に、A部材の押し当て面のつま先側
が上方又は下方に動く。かかる動作により、被告製品I-Bは、A部材とB部材と
の間に間隙を作り、脚載せ部に脚を載せて押し当て面に脚の力を付与することで、
25 脚の長さに合わせた装置側の長さを施療器とともに移動するとの構成を採用してい
る。このように、被告製品I-Bは、踵を載せる部分を軸にA部材のつま先側を上
方又は下方に動かすことで、脚載せ部を「伸縮」させている。
イ 被告製品Ⅰ-Dとの関係について
(ア) 構成要件Gにおいて、「それぞれが」との文言は「最先端の脚保持部材およ
び前記他の脚保持部材」にかかっており、「他の脚保持部材」に関しては少なくと
5 も一つの「他の脚保持部材」が移動可能であれば足りるとの記載であって、「他の
脚保持部材」全てが移動可能であることは明記されていない。
本件明細書Ⅰ(【0034】)によれば、移動しない脚保持部材の存在する構成が明
確に示唆されており、すべての脚保持部材が移動する必要はない。また、前記ア(ア)
の本件特許Ⅰの技術的意義や本件明細書Ⅰの記載に照らすと、すべての脚保持部材
10 を移動させずともその作用効果を奏することが可能である。
以上から、構成要件Gは、すべての脚保持部材が脚の長さ方向に移動可能である
ことを要すると解する必要はなく、「最先端の脚保持部材」及び少なくとも一つの
「他の脚保持部材」が移動可能であれば足りると解すべきである。
(イ) 被告は、前記ア(イ)のとおり主張するが、構成要件D~Fに照らすと、「脚
15 載せ部」は、「最先端の脚保持部材」と「他の脚保持部材」から構成され、「最先
端の脚保持部材」が、構成要件E1~E5の構成を有し、「他の脚保持部材」が、
構成要件F1及びF2の構成を有する。本件明細書Ⅰには「また、上記実施形態で
は脚載せ部5が3つの脚保持部材51~53を備えた構造としたが、脚保持部材の
数は3に限定されるものではなく、2つ又は4つ等であってもよい。」(【0033】)
20 とされていることから、「脚保持部材」が二つの場合、一つの「最先端の脚保持部
材」と一つの「他の脚保持部材」でもよく、「脚保持部材」が四つの場合、一つの
「最先端の脚保持部材」と三つの「他の脚保持部材」でもよい。構成要件Gの「そ
れぞれ」は、「最先端の脚保持部材」と「他の脚保持部材」にかかっているから、
少なくとも「最先端の脚保持部材」と「他の脚保持部材」との双方の「脚保持部材」
25 との関係で、「それぞれ」の関係が認められれば、請求項1は充足する。
(ウ) 被告製品Ⅰ-Dについて
被告製品I-DのC部材は、座部の前部に固定されており、座部の前部との距離
が変化しないものの、A部材及びB部材については、脚の長さ方向に移動可能であ
り、かつ、「最先端の脚保持部材」であるA部材と「他の脚保持部材」であるB部
材に設けられたエアセルの距離が変化するように伸縮可能である。
5 ウ 以上から、被告製品Ⅰ-B及びI-Dは構成要件Gを充足する。
(5) 被告製品Ⅰ-Dは「隣り合う前記脚保持部材の各離隔距離を脚の長さ方向
にそれぞれ変更可能」の構成を有するか(被告製品Ⅰ-Dの構成要件Nの充足性)
ア 前記(4)イ(ア)と同様の理由により、「隣り合う前記脚保持部材の各離隔距離
を脚の長さ方向にそれぞれ変更可能」とは、「最先端の脚保持部材」及び少なくと
10 も一つの「他の脚保持部材」が移動可能であれば足りると解すべきである。
イ 構成要件Ⅰ-Dについて
被告製品Ⅰ-DのA部材及びB部材については、脚の長さ方向に移動可能であり、
かつ、「最先端の脚保持部材」であるA部材と「他の脚保持部材」であるB部材に
設けられたエアセルの距離が変化するように伸縮可能である。
15 ウ 以上から、被告製品Ⅰ-Dは構成要件Nを充足する。
(6) 前記のとおり、被告製品Ⅰ-Dは、本件発明Ⅰ-1及びⅠ-2の構成要件
を充足する以上、構成要件V及びXも充足する。
(被告の主張)
(1) 被告製品Ⅰの構成について
20 被告製品Ⅰの構成は、別紙「被告製品Ⅰ-A説明書(被告)」、同「被告製品Ⅰ
-B説明書(被告)」、同「被告製品Ⅰ-D説明書(被告)」及び同「被告製品Ⅰ
-E説明書(被告)」記載のとおりである。
(2) 被告製品Ⅰ-A、Ⅰ-D及びⅠ-Eは「前記押し当て面に付与される脚の力
に抗する力を前記脚載せ部に付与する抵抗付与手段」の構成を有するか(被告製品
25 Ⅰ-A、Ⅰ-D及びⅠ-Eの構成要件Cの非充足性、並びに、被告製品Ⅰ-Dの構
成要件Lの非充足性)
ア 構成要件C及びLにおける「抵抗付与手段」は「押し当て面に付与される脚
の力に抗する力を前記脚載せ部に付与する」ものであり、その文言上、抵抗付与手
段が抵抗力を付与する対象は「前記脚載せ部」である。構成要件C及びLの「前記
脚載せ部」とは、構成要件B及びKの「脚載せ部」を指していることは明らかであ
5 るところ、構成要件B及びKでは、「脚載せ部」とは「マッサージ機能を有する複
数の脚保持部材を脚の長さ方向に並べて成り、最先端の脚保持部材には足裏の押し
当て面が設けられている」部材等とされているから、「脚載せ部」とは、複数の脚
保持部材から構成される脚を載せるユニット全体(構成要件Lについては、少なく
とも三つの脚保持部材から構成される脚を載せるユニット全体。以下同じ)を指す
10 ものである。また、「脚載せ部」の伸縮態様を示す構成要件G及びQの文言からも、
最先端の脚保持部材及び他の脚保持部材が「脚載せ部」を構成すること、すなわち、
「脚載せ部」は、複数の脚保持部材から構成される脚を載せるユニット全体を意味
することは明白である。
また、本件明細書Ⅰの記載(【0006】【0011】【0031】【0032】)を参酌すると、
15 「抵抗付与手段」には2つの作用効果、すなわち、①被施療者が「抵抗付与手段」
の抵抗力に抗して最先端の脚保持部材の足裏の押し当て面を足裏で押すことによ
り、他の脚保持部材の位置調節を行うことなく簡単に脚載せ部を脚の長さに対応し
た位置に調節できること、②「抵抗付与手段」の抵抗力により、被施療者が脚載せ
部から脚を降ろすだけで自動的に脚載せ部が元の位置(収縮状態)に復帰すること
20 がある。しかし、「抵抗付与手段」の抵抗力が「脚載せ部」を構成する複数の脚保
持部材の一部にしか付与されない場合には、「抵抗付与手段」の有する前記作用効
果①②を奏功しないことから、「抵抗付与手段」による抵抗力は「脚載せ部」を構
成する複数の脚保持部材のそれぞれに及び、これにより「脚載せ部」(脚を載せる
ユニット全体)が脚の力に抗する方向に付勢されている必要がある。
25 さらに、本件明細書Ⅰの実施の形態では、複数の脚保持部材である、第1脚保持
部材、第2脚保持部材及び第3脚保持部材がリンク装置で連動して移動するよう構
成されており、付勢手段である「ばね」とリンク装置により、第1脚保持部材及び
第2脚保持部材にも押し当て面に付与される脚の力に抗する力が付与されている。
そして、本件特許Ⅰの出願経過において、原告は、本件発明Ⅰ-1には「脚載せ
部から脚を下ろすことにより、自動的に足載せ部を元の位置に復帰させることがで
5 きる」効果がある旨を述べるなどしていることから、原告が、脚載せ部の自動復帰
という作用効果を奏することを否定するのは、禁反言の観点から許されない。
以上から、構成要件C及びLの「抵抗付与手段」は、「押し当て面に付与される
脚の力に抗する力」(抵抗力)を「脚載せ部」を構成する複数の脚保持部材(構成
要件Lについては、少なくとも三つの脚保持部材)のそれぞれに加え、これにより
10 「脚載せ部」、すなわち複数の脚保持部材から構成される脚を載せるユニット全体
を脚の力に抗する方向に付勢する部材であると解すべきである。
イ(ア) 被告製品Ⅰ-A及びⅠ-Eについて
被告製品Ⅰ-A及びⅠ-Eの「スプリング」は、一端が第1スライダに取り付け
られ、他端が底面保持部の後方端に取り付けられている。被施療者が押し当て面に
15 足裏を押し当てて脚の力により押圧すると、A部材のみが脚の長さ方向に移動し、
被施療者の脚の力が除去されると、A部材はスプリングの付勢力(スプリングが短
くなって自然長に戻ろうとする力)により、B部材に引き付けられ、同部材の方向
に移動する。一方、B部材は、電力供給によりモータを駆動させ、ねじ軸が回転し、
その回転方向に従ってナットが先端側又は基端側に移動するのに伴って脚の長さ方
20 向に移動するものであり、モータが駆動していないときは、ねじ軸を介して保持部
に固定されていることから、被施療者がA部材の押し当て面に足裏を押し付けて脚
の力により押圧し、又は加えられていた被施療者の脚の力を除去しても移動しない。
被告製品Ⅰ-A及びⅠ-Eでは、被施療者がA部材の押し当て面に足裏を押し付
けて脚の力で押圧した場合に、脚の長さ方向に移動するのはA部材のみであり、B
25 部材を含むオットマン(「脚載せ部」に相当する。)を脚の長さに対応した位置に
移動させることはできないし、被施療者が脚載せ部から脚を降ろした際に復帰する
のはA部材のみで、自動的にオットマン全体を元の位置(収縮状態)に戻すことは
できない。
(イ) 被告製品Ⅰ-Dについて
被告製品Ⅰ-Dの「スプリング」は、一端が第1スライダに取り付けられ、他端
5 が底面保持部の後方端に取り付けられている。被施療者が押し当て面に足裏を押し
当てて脚の力により押圧すると、A部材のみが脚の長さ方向に移動し、被施療者の
脚の力が除去されると、A部材はスプリングの付勢力によりB部材に引き付けられ、
同部材の方向に移動する。一方、B部材は、電力供給によりモータを駆動させるこ
とにより、ねじ軸が回転し、その回転方向に従ってB部材が先端側又は基端側に移
10 動する。B部材は、モータが駆動していないときは、ねじ軸を介して保持部に固定
されていることから、被施療者がA部材の押し当て面に足裏を押し付けて脚の力に
より押圧し、又は加えられていた被施療者の脚の力を除去しても移動しない。また、
C部材は、座部に対して回動可能に接続されているものの、脚の長さ方向に移動す
るための機構を有しておらず、回動支点を介して座部に固定されている。C部材は、
15 被施療者がA部材の押し当て面に足裏を押し付けて脚の力により押圧し、又は加え
られていた被施療者の脚の力を除去しても移動しない。
被告製品Ⅰ-Dでは、被施療者がA部材の押し当て面に足裏を押し付けて脚の力
で押圧した場合に、脚の長さ方向に移動するのはA部材のみであり、B部材及びC
部材を含むオットマンを脚の長さに対応した位置に移動させることはできず、また、
20 被施療者が脚載せ部から脚を降ろした際に復帰するのはA部材のみで、自動的にオ
ットマン全体を元の位置(収縮状態)に戻すことはできない。
ウ 以上から、被告製品Ⅰ-A、Ⅰ-D及びⅠ-Eは、構成要件Cを充足しない。
(3) 被告製品Ⅰは「足裏に押圧マッサージを施すエアセル」の構成を有するか
(被告製品Ⅰの構成要件E4の非充足性及び被告製品Ⅰ-Dの構成要件O4の非充
25 足性)
ア 請求項の「押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエ
アセル」との文言から、被施療者の足裏にマッサージを施す施療部材は押し当て面
に設けられた「エアセル」であることは明らかである。
本件明細書Ⅰ(【0020】)によれば、被施療者の足裏に対するマッサージは、足
裏の押し当て面に配置されたエアセルに空気が給排されて膨張・収縮し、エアセル
5 自体が足裏を押圧する方法によりなされ、足裏に対する押圧マッサージを行う施療
部材としては、足裏に配置されたエアセル以外には示されていない。
以上のとおり、特許請求の範囲の記載、本件明細書Ⅰの記載を参酌すると、「足
裏に押圧マッサージを施すエアセル」とは、押し当て面に配置されたエアセルが足
裏に押圧マッサージを施す施療部材であることを意味すると解すべきである。
10 イ 被告製品Ⅰについて
被告製品Ⅰ-A及びⅠ-Bについて、被施療者の足裏に押圧マッサージを施す施
療部材は、突起物であるところ、押し当て面のエアバッグは、突起物のみを通す穴
の開いた硬質な素材であり底面保持部に固定された押し当て面底板面により全体を
覆われていることから、エアバッグは被施療者の足裏に当接して押圧する施療部材
15 ではない。
被告製品Ⅰ-D及びⅠ-Eについて、被施療者の足裏に押圧マッサージを施す施
療部材は、2個の突起物であるところ、押し当て面のエアバッグは、突起物を通す
穴の開いた硬質な素材であり底面保持部に固定された押し当て面底板面により全体
を覆われていることから、エアバッグは被施療者の足裏に当接して押圧する施療部
20 材ではない。
したがって、被告製品Ⅰ-A、Ⅰ-B及びⅠ-Eは構成要件E4を充足せず、被
告製品Ⅰ-Dは構成要件E4及びO4を充足しない。
(4) 被告製品Ⅰ-B及びⅠ-Dは「前記最先端の脚保持部材および前記他の脚
保持部材のそれぞれが…脚の長さ方向に移動可能、かつ、…脚の長さ方向に伸縮可
25 能」の構成を有するか(被告製品Ⅰ-B及びⅠ-Dの構成要件Gの非充足性)
ア 構成要件Gの文言によれば、本件発明Ⅰ-1では、複数の脚保持部材のそれ
ぞれが「脚の長さ方向に移動」することで、脚載せ部が「脚の長さ方向に伸縮」す
ることになる。「脚の長さ方向」とは、一般的かつ常識的に考えれば、人体の脚の
長手方向、すなわち、脚を伸ばした場合の太腿から足首を結ぶ直線の方向を意味す
ることから、構成要件Gに係る特許請求の範囲の文言上、「脚の長さ方向」の「移
5 動」及び「伸縮」の態様は、脚の長手方向への直線的な「移動」及び「伸縮」を意
味する。
本件明細書Ⅰの記載(【0025】~【0028】、【図4】及び【図8】)によれば、
脚の長さ方向とは、「第1ガイドレール61の案内方向」、【図4】の右方であり、
この方向に、各脚保持部材のそれぞれが移動することで脚載せ部が伸縮する。本件
10 明細書Ⅰには、最先端の脚保持部材及び他の脚保持部材のそれぞれが被施療者の脚
の長手方向に直線的に(「第1ガイドレール61の案内方向」、【図4】の右方に)
移動し、脚載せ部が被施療者の脚の長手方向に直線的に伸び縮みする態様のみが開
示されており、脚載せ部の移動及び伸縮の態様に関して他の態様を示す記載はない。
また、本件明細書Ⅰにおいては、円運動である「回動」と直線的な移動である「伸
15 縮」は異なる動作として使い分けられていることから、「伸縮」に「回動」は含ま
れない。
以上から、「前記最先端の脚保持部材および前記他の脚保持部材のそれぞれが…
脚の長さ方向に移動可能、かつ、…脚の長さ方向に伸縮可能」とは、被施療者の脚
の長さに合わせた施療要所に脚保持部材を調節できるように、各脚保持部材それぞ
20 れを脚の長手方向に直線的に移動させることができ、これにより、脚載せ部を脚の
長手方向に直線的に伸び縮みさせることができることを意味すると解すべきであ
る。
イ(ア) 被告製品Ⅰ-Bについて
被告製品Ⅰ-Bの第2スプリングは、その一端が第2可動部の踵側に取り付けら
25 れ、他端が第1可動部の第2スライダの左右両端から略垂直に延びる突起部に取り
付けられている。被施療者がA部材の押し当て面のつま先側を脚の力により押圧す
ると、第2スプリングが伸長し、A部材のつま先側が踵を載せる部分を軸に上方又
は下方に動く。このA部材の動きは、回動軸を軸に下方又は上方に動く円運動であ
り、回動である。被告製品Ⅰ-BのA部材は回動するのみであり、脚を伸ばした被
施療者の足首が窮屈とならず自然な形になるようにするために、足首を開く構成で
5 あり、長さ調節を行うものではない。
(イ) 被告製品Ⅰ-Dについて
被告製品Ⅰ-DのC部材は、座部の前部に固定されており、座部の前部とC部材
との距離を変えることはできない。
ウ 以上から、被告製品Ⅰ-B及び1-Dは、構成要件Gを充足しない。
10 (5) 被告製品Ⅰ-Dは「隣り合う前記脚保持部材の各離隔距離を脚の長さ方向
にそれぞれ変更可能」の構成を有するか(被告製品Ⅰ-Dの構成要件Nの非充足性)
ア 構成要件Nの文言からは「前記脚保持部材の各離隔距離」をいかなる方法で
「脚の長さ方向にそれぞれ変更可能」であるのかは明らかではないところ、前記(2)
アのとおり、本件発明Ⅰ-2においては、「抵抗付与手段」は、抵抗力を「脚載せ
15 部」を構成する少なくとも三つの脚保持部材のそれぞれに加え、これにより「脚載
せ部」、すなわち、少なくとも三つの脚保持部材から構成される脚を載せるユニッ
ト全体を脚の力に抗する方向に付勢しているから(構成要件L)、「脚載せ部」を
構成する少なくとも三つの脚保持部材がそれぞれ脚の長さ方向に移動可能であるこ
とが「隣り合う前記脚保持部材の各離隔距離を脚の長さ方向にそれぞれ変更可能」
20 であることの前提となっている。
本件明細書Ⅰの記載及び出願経過に鑑みれば、本件発明Ⅰ-2は、被施療者の脚
の長さにかかわらず、各脚保持部材を移動させることで、被施療者のふくらはぎ、
くるぶしの周辺、その中間の3箇所における適切な施療要所をマッサージすること
が可能になるという作用効果を有し、かかる作用効果を奏するには、脚載せ部を構
25 成する少なくとも三つの脚保持部材それぞれが移動可能でなければならない。
以上から、構成要件Nにおける「隣り合う前記脚保持部材の各離隔距離を脚の長
さ方向にそれぞれ変更可能」とは、「脚載せ部」を構成する少なくとも三つの脚保
持部材をそれぞれ脚の長さ方向に移動可能とすることで、隣り合う脚保持部材の各
離隔距離をそれぞれ変更可能とする構成であると解すべきである。
イ 被告製品Ⅰ-Dについて
5 被告製品Ⅰ-Dのオットマンは、A部材、B部材及びC部材の三つの部材で構成
されるところ、A部材及びB部材は脚の長さ方向に移動可能であるが、C部材は座
部の前部に固定されており、脚の長さ方向に移動しない。
ウ 以上から、被告製品Ⅰ-Dは構成要件Nを充足しない。
2 本件発明Ⅰ-1の技術的範囲への属否(均等侵害の成否。争点2)
10 (原告の主張)
(1) 被告製品Ⅰ-Bについて
ア 仮に、被告製品Ⅰ-Bの構成が本件発明Ⅰ-1に係る構成要件Gを充足しな
いとして文言侵害が成立しないとしても、次のとおり、被告製品Ⅰ-Bの構成は構
成要件Gの構成と均等なものとして、本件特許Ⅰの技術的範囲に属する。
15 イ 相違部分は非本質的部分であること(第1要件)
本件発明Ⅰ-1は、「従来の脚マッサージ装置では、脚の長さに合わせてねじ1
04の調節を行う必要があり、使用者が代わると、脚の長さも変わるので、その都
度調節が必要となり、面倒である。」等の課題を解決すべく、「本発明は、脚の長
さに合わせた装置側の長さ調節が簡単なマッサージ機を提供することを目的とす
20 る。」発明である。
本件発明Ⅰ-1と被告製品Ⅰ-Bとは、被告製品Ⅰ-BのA部材が脚の長さ方向
に移動可能でa面(最先端の脚保持部材であるA部材の押し当て面に相当する。以
下同じ)が踵の下方を回動軸芯として回動し、脚を伸ばした場合の太腿から足首を
結ぶ直線的な移動をしない点で相違部分を有する。しかし、A部材が脚の長さ方向
25 に移動可能でa面が踵の下方を回動軸芯として回動するか、それとも脚を伸ばした
場合の太腿から足首を結ぶ直線的な移動をするかという違いは、A部材が座部の前
部に対して脚の長さ方向に移動可能である点で相違がない上、A部材の足側面に設
けられたエアバッグとB部材の脚側面に設けられたエアバッグとの距離が変化する
ように、A部材のa面が踵の下方を回動軸芯として回動するので、上記の課題解決
手段を基礎づける特徴的部分は、そのままA部材とB部材の構成が実現している。
5 そうすると、前記の相違は、前記の課題解決手段を基礎づける特徴的部分ではなく、
本件発明Ⅰ-1の非本質的部分である。
したがって、本件発明Ⅰ-1と被告製品Ⅰ-BのA部材のa面の踵の下方を回動
軸芯として回動するという構成の相違部分は、本件発明Ⅰ-1の本質的部分ではな
い。
10 ウ 置換可能性があること(第2要件)
前記イのとおり、本件発明Ⅰ-1は「脚の長さに合わせた装置側の長さ調節が簡
単なマッサージ機を提供することを目的とする。」発明である。
また、本件発明Ⅰ-1の作用効果は「押し当て面に足裏を押し当てることにより、
抵抗付与手段の付与する力に抗して脚載せ部を伸長させれば、当該脚載せ部は脚の
15 長さに対応した位置に達する。従って、脚の長さに合わせた装置側の長さ調節が簡
単である。また、脚載せ部から脚を降ろすことにより自動的に、脚保持部材が元の
位置に復帰するので便利である。」というものである。被告製品Ⅰ-Bは、A部材
のa面が踵の下方を回動軸芯として回動すれば、A部材の足側面に設けられたエア
バッグとB部材の脚側面に設けられたエアバッグとの距離が変化し、脚の長さに合
20 わせた装置側の長さ調節を簡単に行うことができる。なお、被告製品Ⅰ-Bが本件
発明Ⅰ-1と同様の作用効果を奏することは、被告自身が認めるところである。
したがって、相違部分を被告製品Ⅰ-Bにおけるものと置き換えても、本件発明
Ⅰ-1と同一の目的を達することができ、同一の作用効果を奏し、置換可能性が認
められる。
25 エ 置換容易性(第3要件)
被告製品Ⅰ―Bの製造時(2014年2月発売)において、相違部分を被告製品
Ⅰ-Bの構成に置換することは、当業者にとって容易に想到できたものである。
オ 公知技術から容易に推考できないこと(第4要件)
被告製品Ⅰ-Bに係る構成は、公知技術と同一でなく、当業者が出願時に容易に
推考できたものではない。
5 カ 意識的除外等の特段の事情の不存在(第5要件)
出願手続において、被告製品Ⅰ-Bに係る構成を特許請求の範囲から意識的に除
外した等の特段の事情は存在しない。
(2) 被告製品Ⅰ-Dについて
ア 仮に、被告製品Ⅰ-Dの構成が本件発明Ⅰ-1に係る構成要件Gを充足しな
10 いとして文言侵害が成立しないとしても、次のとおり、被告製品Ⅰ-Dの構成は構
成要件Gの構成と均等なものとして、本件特許Ⅰの技術的範囲に属する。
イ 相違部分は非本質的部分であること(第1要件)
本件発明Ⅰ-1は、「従来の脚マッサージ装置では、脚の長さに合わせてねじ1
04の調節を行う必要があり、使用者が代わると、脚の長さも変わるので、その都
15 度調節が必要となり、面倒である。」等の課題を解決すべく、「本発明は、脚の長
さに合わせた装置側の長さ調節が簡単なマッサージ機を提供することを目的とす
る。」発明である。
本件発明Ⅰ-1と被告製品Ⅰ-Dは、被告製品Ⅰ-DのA部材とB部材はそれぞ
れ脚の長さ方向に移動するがC部材は移動しないとの相違部分を有する。しかし、
20 C部材の移動の有無にかかわらず、A部材とB部材は、座部の前部に対して脚の長
さ方向にそれぞれ移動可能で、A部材の脚側面に設けられたエアバッグとB部材の
脚側面に設けられたエアバッグとの距離が変化するように、A部材は、その押し当
て面を脚の長さ方向に伸縮可能である。そうすると、上記の課題解決手段を基礎づ
ける特徴的部分は、そのままA部材とB部材の構成が実現しており、C部材が座部
25 前部に固定され脚の長さ方向に移動しないという相違は、前記の課題解決手段を基
礎づける特徴的部分ではなく、本件発明Ⅰ-1の非本質的部分である。
したがって、本件発明Ⅰ-1と被告製品Ⅰ-DのC部材固定という構成の相違部
分は、本件発明Ⅰ-1の本質的部分ではない。
ウ 置換可能性があること(第2要件)
前記イのとおり、本件発明Ⅰ-1は「脚の長さに合わせた装置側の長さ調節が簡
5 単なマッサージ機を提供することを目的とする。」発明である。
また、本件発明Ⅰ-1の作用効果は、「押し当て面に足裏を押し当てることによ
り、抵抗付与手段の付与する力に抗して脚載せ部を伸長させれば、当該脚載せ部は
脚の長さに対応した位置に達する。従って、脚の長さに合わせた装置側の長さ調節
が簡単である。また、脚載せ部から脚を降ろすことにより自動的に、脚保持部材が
10 元の位置に復帰するので便利である。」というものである。被告製品Ⅰ-Dは、A
部材の押し当て面に足裏を押し当てることにより脚保持部材を伸長させれば、A部
材の脚保持部材は脚の長さに対応した位置に達し、脚の長さに合わせた装置側の長
さ調節を簡単に行うことができ、また、A部材の脚保持部材から脚を降ろすことに
より自動的にA部材を元の位置に復帰させることができる。
15 したがって、相違部分を被告製品Ⅰ-Dにおけるものと置き換えても、本件発明
Ⅰ-1と同一の目的を達することができ、同一の作用効果を奏し、置換可能性が認
められる。
エ 置換容易性(第3要件)
被告製品Ⅰ-Dの製造時において、相違部分を被告製品Ⅰ-Dの構成に置換する
20 ことは、当業者にとって容易に想到できたものである。
オ 公知技術から容易に推考できないこと(第4要件)
被告製品Ⅰ-Dに係る構成は、公知技術と同一でなく、当業者が出願時に容易に
推考できたものではない。
カ 意識的除外等の特段の事情の不存在(第5要件)
25 出願手続において、被告製品Ⅰ-Dに係る構成を特許請求の範囲から意識的に除
外した等の特段の事情は存在しない。
(被告の主張)
(1) 被告製品Ⅰ-Bについて
ア 構成要件Gの「前記最先端の脚保持部材および前記他の脚保持部材のそれぞ
れが前記座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能」との充足性判断において検
5 討すべきは、A部材及びB部材の「それぞれが」「座部の前部に対して脚の長さ方
向に移動可能」であるか、すなわち、構成要件Gへのあてはめでは、A部材の移動、
B部材の移動のそれぞれを検討する必要がある。原告は、A部材とB部材が一体と
して移動する態様を捉えて、「A部材とB部材は、座部の前部に対して脚の長さ方
向に移動可能」であると主張しているようであるが、そのような態様は、A部材と
10 B部材「それぞれ」の移動ではない。
また、「脚の長さ方向」とは、人体の脚の長手方向、すなわち脚を伸ばした場合
の太腿から足首を結ぶ直線方向を意味するところ、被告製品Ⅰ-BのA部材は、回
動軸を軸として回動するよう構成されており、A部材を回動させても、被施療者の
脚の施療箇所が脚の長手方向に直線的に変化することはなく、被告製品Ⅰ-BのA
15 部材は「脚の長さ方向」に「移動」しない。
したがって、被告製品Ⅰ-BのA部材が「座部の前部に対して脚の長さ方向に移
動可能」であることを前提とする原告の均等侵害の主張は、その前提自体において
誤っており、そもそも失当である。
イ 第1要件を充足しないこと
20 本件発明Ⅰ-1が克服すべき従来技術は、被施療者が代わる度にその脚の長さに
合わせてねじの調節を手動で行う必要のあるマッサージ装置であり、本件発明Ⅰ-
1はこのような課題を解決するために、①被施療者が抵抗付与手段の抵抗力に抗し
て最先端の脚保持部材の足裏の押し当て面を足裏で押すことにより、他の脚保持部
材の位置調整を行うことなく簡単に脚載せ部を脚の長さに対応した位置で調節でき
25 ること、及び②脚載せ部から脚を降ろすことにより自動的に、脚載せ部が元の位置
に復帰することを作用効果とする。また、本件明細書Ⅰの記載及び出願経過に係る
原告意見書の記載に鑑みれば、本件発明Ⅰ-1の技術的意義は、複数の脚保持部材
がそれぞれ移動可能に構成されている(構成要件G)ことにより、マッサージ機を
使用する被施療者の脚の長さによって施療要所の位置が微妙に異なっている場合で
あっても、脚保持部材が単に比例伸縮する場合と比べて、より正確に脚の施療要所
5 に脚保持部材の位置を合致させることが可能となり、エアセルを適切ないし好適に
配置させることができる点にある。
以上の本件発明Ⅰ-1の作用効果、技術的意義は、脚載せ部を構成する複数の脚
保持部材が脚の長さ方向に移動可能であることを前提にするものであり、脚載せ部
を構成する全ての脚保持部材が脚の長さ方向に移動可能であるという構成は、本件
10 発明Ⅰ-1の本質的部分である。
したがって、被告製品Ⅰ-BのA部材が回動するのみで脚を伸ばした場合の太腿
から足首を結ぶ直線方向への移動をしない構成は、本件発明Ⅰ-1と本質的部分に
おいて相違しているから、被告製品Ⅰ-Bは、均等の第1要件を充足しない。
ウ 第2要件を充足しないこと
15 被告製品Ⅰ-BのA部材の回動は、脚を伸ばした被施療者の足首が窮屈とならず
自然な形になるようにするために、足首を開く構成であり、長さ調節を行うもので
はない。被告製品Ⅰ-BのA部材を回動させても被施療者の脚の施療箇所は変化し
ないのであるから、被告製品Ⅰ-BのA部材が回動する構成では本件発明Ⅰ-1の
作用効果、技術的意義が達成されなくなる。
20 したがって、置換可能性がなく、被告製品Ⅰ-Bは均等の第2要件を充足しない。
エ 第3要件を充足しないこと
前記ウのとおり、被告製品Ⅰ-BのA部材は、バネの抵抗力により被施療者が足
首に窮屈さを感じるのを解消する目的で回動する設計が採用されたものであり、被
告製品Ⅰ-BのA部材を回動させても被施療者の脚の施療箇所が脚の長手方向に変
25 化することはない以上、A部材の回動は「装置側の長さ調節」をする構成ではない。
このように被告製品Ⅰ-Bの相違点に係る構成は、本件発明Ⅰ-1とは全く異な
る作用効果を奏するために設けられたものであるから、被告製品Ⅰ-Bの製造時に
おいて、本件発明Ⅰ-1のA部材を脚の長手方向に移動・伸縮せず回動する構成に
置換することは、当業者において想到し得ない。
したがって、置換容易性がなく、被告製品Ⅰ-Bは均等の第3要件を充足しない。
5 オ 第5要件を充足しないこと
構成要件Gは、原告が、平成26年2月13日付け訂正請求書によって訂正をし
て加えられた文言である。原告は、同訂正請求書において、訂正の目的について、
前記訂正事項(構成要件G等の加入)は「『脚載せ部』が『前記最先端の脚保持部
材および前記他の脚保持部材のそれぞれが前記座部の前部に対して脚の長さ方向に
10 移動可能、かつ、前記最先端の脚保持部材の前記足側面に設けられた前記エアセル
と前記他の脚保持部材の前記脚側面に設けられた前記エアセルとの距離が変化する
ように、脚の長さ方向に伸縮可能』であることを限定するものであ」り、前記訂正
事項は、「特許請求の範囲を減縮したものである」と述べている。原告は、本件明
細書Ⅰ中の【図8】及び【図9】を訂正の根拠として挙げ、「本件図8および図9
15 によれば、脚載せ部が、最先端の脚保持部材および他の脚保持部材のそれぞれが座
部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能…であることが理解できる」と説明して
いる。
このように、原告は、前記訂正請求書において、特許請求の範囲を減縮する目的
で、脚載せ部を構成する全ての脚保持部材(51~53)が脚の長さ方向に移動可
20 能、かつ、脚の長さ方向に伸縮可能であることを端的に示している前記【図8】及
び【図9】を根拠に、「前記最先端の脚保持部材および前記他の脚保持部材のそれ
ぞれが前記座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能、かつ、前記最先端の脚保
持部材の前記足側面に設けられた前記エアセルと前記他の脚保持部材の前記脚側面
に設けられた前記エアセルとの距離が変化するように、脚の長さ方向に伸縮可能」
25 という文言を特許請求の範囲に追加する訂正を行っている。このことに鑑みれば、
客観的・外形的にみて、原告は、当該訂正請求において、脚保持部材の一部が脚の
長さ方向に移動しない構成が本件発明Ⅰ-1の技術的範囲に属しないことを承認し
たものであり、かような構成を特許請求の範囲から意識的に除外していることが明
らかである。
したがって、均等の第5要件を充足しない。
5 (2) 被告製品Ⅰ-Dについて
ア 第1要件を充足しないこと
前記(1)イのとおり、脚載せ部を構成する全ての脚保持部材が脚の長さ方向に移
動可能であるという構成は、本件発明Ⅰ-1の本質的部分である。
したがって、被告製品Ⅰ-DのC部材が座部の前部に固定されていて脚の長さ方
10 向に移動しないことは、本件発明Ⅰ-1の本質的部分に係る相違点であるから、被
告製品Ⅰ-Dは均等の第1要件を充足しない。
イ 第2要件を充足しないこと
本件発明Ⅰ-1の相違部分を被告製品Ⅰ-Dにおけるものと置き換える、すなわ
ち最も座部に近い他の脚保持部材を座部の前部に固定すると、本件発明Ⅰ-1の作
15 用効果、技術的意義が達成されなくなる。
したがって、置換可能性もなく、被告製品Ⅰ-Dは均等の第2要件を充足しない。
ウ 第5要件を充足しないこと
前記(1)オのとおり、原告は、平成26年2月13日付けの訂正請求書において、
脚保持部材の一部が脚の長さ方向に移動しない構成が本件発明Ⅰ-1の技術的範囲
20 に属しないことを承認したものであり、かような構成を特許請求の範囲から意識的
に除外していることが明らかである。
したがって、C部材が座部の前部に固定されて移動不可能な被告製品Ⅰ-Dの構
成は均等の第5要件を充足しない。
第3 当裁判所の判断
25 1 本件明細書Ⅰには次の記載がある。
(1) 技術分野
「本発明は、マッサージ機に関する。」(【0001】)
(2) 背景技術
「図10は、特許文献1に記載された従来の脚マッサージ装置を示す斜視図であ
る。これは、椅子型マッサージ機の座部前端に取り付けられる装置である。当該脚
5 マッサージ装置は、脹ら脛を入れる溝101aを有する第1のケース101と、足
首を伸ばした状態で足を載せる溝102aを有する第2のケース102とを備えて
いる。第2のケース102は、第1のケース101に差し込まれた摺動軸103を
有し、この部分での摺動により、軸方向に位置調節が可能である。使用者は、ねじ
104を回すことにより摺動軸103を移動させて、溝102aを足に合わせるこ
10 とができる。このようにして、自分の脚の長さに合わせて装置側の長さを調節する。」
(【0002】)
(3) 発明が解決しようとする課題
「上記のような従来の脚マッサージ装置では、脚の長さに合わせてねじ104の
調節を行う必要があり、使用者が代わると、脚の長さも変わるので、その都度調節
15 が必要となり、面倒である。」(【0004】)
「上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、脚の長さに合わせた装置側の長
さ調節が簡単なマッサージ機を提供することを目的とする。」(【0005】)
(4) 課題を解決するための手段
「本発明のマッサージ機は、座部と、マッサージ機能を有し、足裏の押し当て面
20 が設けられている脚載せ部と、前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前
記脚載せ部に付与する抵抗付与手段と、を備え、前記脚載せ部は、前記座部の前部
に対して回動自在、且つ、脚の長さ方向に伸縮可能であり、前記脚載せ部は、前記
押し当て面と、足の側部に対向させる足側面と、その脚先側であって左右方向にお
ける中央部に区画壁と、前記押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサー
25 ジを施すエアセルと、前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージ
を施すエアセルと、を有し、前記抵抗付与手段は、前記脚の力に抗する方向に前記
脚載せ部を付勢する付勢手段であることを特徴とする。上記のように構成されたマ
ッサージ機では、押し当て面に足裏を押し当てることにより、抵抗付与手段の付与
する力に抗して脚載せ部を伸長させれば、当該脚載せ部は脚の長さに対応した位置
に達する。また、脚載せ部から脚を降ろすことにより自動的に、当該脚保持部材が
5 元の位置に復帰する。」(【0006】)
「また、本発明のマッサージ機は、座部と、マッサージ機能を有する少なくとも
3つの脚保持部材を脚の長さ方向に並べて成り、最先端の脚保持部材には足裏の押
し当て面が設けられている脚載せ部と、前記押し当て面に付与される脚の力に抗す
る力を前記最先端の脚保持部材に付与する抵抗付与手段と、を備え、前記脚載せ部
10 は、前記座部の前部に対して回動自在であり、隣り合う前記脚保持部材の各離隔距
離を脚の長さ方向にそれぞれ変更可能であり、前記最先端の脚保持部材は、前記押
し当て面と、足の側部に対向させる足側面と、左右方向における中央部に区画壁と、
前記押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエアセルと、前
記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアセルと、を有
15 し、他の脚保持部材は、それぞれ被施療者の脚に押圧マッサージを施すエアセルを
有し、前記抵抗付与手段は、前記脚の力に抗する方向に前記最先端の脚保持部材を
付勢する付勢手段であることを特徴とする。上記のように構成されたマッサージ機
では、押し当て面に足裏を押し当てることにより、抵抗付与手段の付与する力に抗
して最先端の脚保持部材を移動させれば、当該脚保持部材は脚の長さに対応した位
20 置に達する。また、脚載せ部から脚を降ろすことにより自動的に、最先端の脚保持
部材が元の位置に復帰する。」(【0007】)
「また、上記マッサージ機において、前記脚載せ部の脚先側下端には、下向き状
態にある前記脚載せ部が伸長すると床に接地する車輪が設けられ、前記脚載せ部は、
伸長しながら上方へ回動可能であることが好ましい。」(【0008】)
25 「この場合、脚載せ部を伸長させるとき車輪が床についても、車輪の転動によっ
て脚載せ部が円滑に伸長する。」(【0009】)
「また、前記他の脚保持部材は、被施療者の脚の側部に対向させる脚側面と、左
右方向における中央部に区画壁と、を有することが好ましい。」(【0010】)
(5) 発明の効果
「以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。
5 請求項1のマッサージ機によれば、押し当て面に足裏を押し当てることにより、
抵抗付与手段の付与する力に抗して脚載せ部を伸長させれば、当該脚載せ部は脚の
長さに対応した位置に達する。従って、脚の長さに合わせた装置側の長さ調節が簡
単である。また、脚載せ部から脚を降ろすことにより自動的に、脚保持部材が元の
位置に復帰するので便利である。」(【0011】)
10 「請求項2のマッサージ機によれば、押し当て面に足裏を押し当てることにより、
抵抗付与手段の付与する力に抗して最先端の脚保持部材を移動させれば、当該脚保
持部材は脚の長さに対応した位置に達する。従って、脚の長さに合わせた装置側の
長さ調節が簡単である。また、脚載せ部から脚を降ろすことにより自動的に、最先
端の脚保持部材が元の位置に復帰するので便利である。」(【0012】)
15 (6) 発明を実施するための形態
「脚載せ部5は、マッサージ機能を有する3つの脚保持部材(第1脚保持部材5
1、第2脚保持部材52、第3脚保持部材53)を、脚の長さ方向に並べて、全体
として両脚を囲むような形態を成している。各脚保持部材51~53の両側部及び
中央部にはそれぞれマッサージ用のエアセル15a、15b及び16a、16bが
20 配置されている。また、第3脚保持部材53は足裏の押し当て面53aを有してお
り、ここにもエアセル17a、17bが配置されている。これらのエアセル(15
a、15b、16a、16b、17a、17b)は、エアの給排によって膨脹・収
縮し被施療者の脚に押圧マッサージを施すものである。なお、中央部のエアセル1
6a、16bは、特殊な形状に膨出するようになっており、これにより、左右のエ
25 アセル15a、15bとの間に脚を挟み込むようにして、押圧マッサージを施すこ
とができる。」(【0020】)
「第1脚保持部材51及び第2脚保持部材52はそれぞれ、可動体64及び66
に取り付けられており、これによって、第1ガイドレール61の案内方向すなわち、
人の脚の長さ方向にスライド可能である。なお、可動体64、66の前後に車輪6
3、65が設けられていることによって、第1脚保持部材51及び第2脚保持部材
5 52を第1ガイドレール61に対して垂直に支持することができる。一方、第3脚
保持部材53は第2ガイドレール62に直接取り付けられており、第2ガイドレー
ル62が第1ガイドレール61に対してスライド可能であることによって、第3脚
保持部材53も第1ガイドレール61に対してスライド可能である。こうして、支
持装置6は、各脚保持部材51~53を、脚の長さ方向にそれぞれ移動可能に支持
10 している。なお、図示の状態では、3つの脚保持部材51~53が互いに最も接近
して、脚載せ部5及び支持装置6は最も短い状態である。」(【0025】)
「一方、3つの脚保持部材51~53は、リンク機構23によって互いに接続さ
れている。このリンク機構23は、上から見た形態が図4の(b)に示すように、
8本のアーム231(2本)、232(2本)、233(2本)、234(2本)
15 を用いて、4点接続の四角形リンクを3段に接続したものであり、各四角形リンク
を脚の長さ方向に屈伸させることにより伸縮するものである。一対のアーム232
は、直線状ではなく折れ曲がっており、四角形リンクとしての開き角において、第
1段(θ1)より第2段(θ2)の方が小さくなるように構成されている。また、
一対のアーム233も、直線状ではなく折れ曲がっており、四角形リンクとしての
20 開き角において、第2段(θ2)より第3段(θ3)の方が大きくなるように構成
されている。」(【0026】)
「上記リンク機構23は、原点P0が支持装置6に固定され、第1節点P1が脚
保持部材51に、第2節点P2が脚保持部材52に、第3節点P3が脚保持部材5
3に、それぞれ接続されている。従って、リンク装置23は、その伸縮動作により、
25 脚保持部材51~53を、脚の長さ方向に所定の関係で相互に連動させる「連動装
置」としての機能を有している。また、原点P0と第3節点P3との間には、ばね
24が装着されており、これによって、リンク装置23は、収縮方向に常に付勢さ
れている。ばね24の力は、人の足の力によって容易に伸ばすことができる程度に
設定されている。」(【0027】)
「マッサージ機本体1(図1)に被施療者が着座して脚を脚載せ部5に入れ、押
5 し当て面53aに足裏を載せて、ばね24に抗して脚を伸ばすと、第3脚保持部材
53が図4の(a)及び(b)における右方に駆動される。これにより、リンク装
置23は伸長動作し、第1~第3節点P1~P3が右方へ移動する。従って、支持
装置6によってスライド可能に保持されている脚保持部材51~53は、それぞれ
右方(すなわち脚の長さ方向)へ移動する。図6は、支持装置6及び脚載せ部5が
10 最も伸長した状態を示す図である。」(【0028】)
「図7は、リンク装置23の伸縮動作を原理的に示す図である。図示のように、
伸縮に伴う第1節点P1、第2節点P2及び第3節点P3の位置変化を見ると、一
定の勾配が形成されており、原点P0から各節点までの距離L1、L2、L3は、
L1:L2:L3が概ね一定比となるように比例的に伸縮する。従って、原点P0
15 から脚の長さ方向における脚保持部材51~53までの各距離も比例的に伸縮す
る。このように比例的に伸縮する構成を採用しているのは、脚の部位は脚の長短に
よりその絶対位置は異なるが、相対的な位置関係はほぼ同じであり、原点P0から
見た脚の施療部位までの距離は、脚の長さに応じて比例的に変化するという経験的
事実に基づいている。」(【0029】)
20 「図8の(a)は、本マッサージ機1の使用対象の身長範囲から想定して最も脚
の短い人が脚載せ部5に脚を入れ、足裏が第3脚保持部材53の底面に当接した状
態である。この場合の施療箇所は、例えば、ふくらはぎ、くるぶしの周辺、その中
間の3箇所であり、各脚保持部材は、それぞれが施療要所(例えば「つぼ」)を押
圧できるように配置されている。一方、(b)は、想定される最も脚の長い人が脚
25 載せ部5に脚を入れ、足裏で第3脚保持部材53の底面を押して脚載せ部5及び支
持装置6を伸長させた状態である。このとき、前述のように、各脚保持部材51~
53は、原点P0を基準として比例的にその位置を移動させるので、各脚保持部材
51~53は、(a)の場合と同様に、施療要所を押圧する。なお、(a)と(b)
との間の任意の伸長状態でも同様に、施療要所を押圧することができることはいう
までもない。すなわち、このような脚マッサージ装置を使用することにより、脚の
5 長さに関わらず、脚を脚載せ部5に入れて第3脚保持部材53を押すだけで、他の
脚保持部材51、52の位置調節を行うことなく、極めて簡単に施療要所にマッサ
ージを行うことができる。」(【0031】)
「また、上記実施形態では、ばね24を用いて脚載せ部5及び支持装置6が自動
的に収縮する構成としたが、ばね24に代えて、何らかの抵抗付与手段を設けて適
10 度の抵抗負荷を伴って伸縮するように構成することもできる。この場合には、抵抗
に対して足で最下段の脚保持部材を押し下げることにより、同様に、脚の長さに合
わせて脚載せ部5及び支持装置6を伸長させることができる。但し、元の収縮状態
に戻すにあたっては、手で押し戻す等の操作が必要になる。さらに、この場合には、
連動装置としてのリンク装置23を省略して、第1脚保持部材51及び第2脚保持
15 部材52に関しては手動で位置調節を行うようにしてもよい。
また、ばね24と併せてラチェットで戻りロックし、ロック解除操作で元に戻す
ように構成してもよい。
なお、連動装置としてのリンク装置23を省略する場合には、移動する脚保持部
材は足裏の押し当て面を有する脚保持部材(第3脚保持部材53)のみとして、他
20 の脚保持部材は固定するか若しくは設けない構成も可能である。」(【0034】)
2 本件発明Ⅰの技術的範囲への属否(文言侵害の成否。争点1)
(1) 被告製品Ⅰの構成について
被告製品Ⅰ-Aが、別紙「被告製品Ⅰ-A説明書(原告)」記載の構成ⅠAa~
ⅠAe3及びⅠAe5~ⅠAiを備えること、被告製品Ⅰ-Bが、別紙「被告製品
25 Ⅰ-B説明書(原告)」記載の構成ⅠBa~ⅠBa3、ⅠBe5~ⅠBf2、ⅠB
h及びⅠBiを備えること、被告製品Ⅰ-Dが、「被告製品Ⅰ-D説明書(原告)」
記載の構成ⅠDa~ⅠDf2、ⅠDh、ⅠDi、ⅠDj~ⅠDm、ⅠDо~ⅠDs、
ⅠDt、ⅠDu及びⅠDwを備えること、被告製品Ⅰ-Eが、別紙「被告製品Ⅰ-
E説明書(原告)」記載のⅠEa~ⅠEi、ⅠEt及びⅠEuを備えることは当事
者間に争いがない(ただし、被告は、被告製品Ⅰ-Dにつき、別紙「被告製品Ⅰ-
5 D説明書(被告)」記載のⅠDe4’及びⅠDo4’の各下線部の構成を備えるこ
と、被告製品Ⅰ-Eにつき、別紙「被告製品Ⅰ-E説明書(被告)」記載のⅠEe
4’の下線部の構成を備えることを主張している。)。また、被告製品Ⅰ-Aの外
観は、別紙「被告製品Ⅰ-A説明書(原告)」の図1~3のとおりであり、被告製
品Ⅰ-Dの外観は、別紙「被告製品Ⅰ-D説明書(原告)」の図1~3のとおりで
10 あり、被告製品Ⅰ-Eの外観は、別紙「被告製品Ⅰ-D説明書(原告)」の図1~
3のとおりであることに争いはなく、証拠(甲18、19)及び弁論の全趣旨によ
れば、被告製品Ⅰ-Bの外観は、別紙「被告製品Ⅰ-B説明書(被告)」の図1~
3のとおりであることが認められる。
前記第1の4の表のとおり、被告製品Ⅰ-Aが、本件発明Ⅰ-1に係る構成要件
15 A、B、D~E3、E5~Iを充足すること、被告製品Ⅰ-Bが、本件発明Ⅰ-1
に係る構成要件A~E3、E5~F2、H及びIを充足すること、被告製品Ⅰ-D
が、本件発明Ⅰ-1に係る構成要件A、B、D~E3、E5~F2、H及びI、本
件発明Ⅰ-2に係る構成要件J、K、M、O~O3、O5~S、本件発明Ⅰ-3に
係る構成要件T及びU、本件発明Ⅰ-4に係る構成要件Wを充足すること、被告製
20 品Ⅰ-Eが、本件発明Ⅰ-1に係る構成要件A、B、D~E3、E5~I、本件発
明Ⅰ-3に係る構成要件T及びUを充足することは当事者間に争いがない。したが
って、被告製品Ⅰ-Aに関しては構成要件C及びE4の、被告製品Ⅰ-Bに関して
は構成要件E4及びGの、被告製品Ⅰ-Dに関しては構成要件C、E4、G、L、
N、O4、V及びXの、被告製品Ⅰ-Eに関しては構成要件C、E4及びVの各充
25 足性が争点(ただし、構成要件V及びXについては独立の争点ではない。)となる
ところ、事案に鑑み、被告製品Ⅰ-A、Ⅰ-D及びⅠ-Eの構成要件Cの充足性(被
告製品Ⅰ-Dの構成要件Lの充足性)、並びに、被告製品Ⅰ-Bの構成要件Gの充
足性について、以下検討する。
(2) 被告製品Ⅰ-A、Ⅰ-D及びⅠ-Eは「前記押し当て面に付与される脚の力
に抗する力を前記脚載せ部に付与する抵抗付与手段」の構成を有するか(被告製品
5 Ⅰ-A、Ⅰ-D及びⅠ-Eの構成要件Cの充足性、並びに、被告製品Ⅰ-Dの構成
要件Lの充足性)について
ア(ア) 本件発明Ⅰ-1に係る請求項の記載をみると、構成要件Bは、「マッサー
ジ機能を有する複数の脚保持部材を脚の長さ方向に並べて成り、最先端の脚保持部
材には足裏の押し当て面が設けられている脚載せ部」と規定していることから、
「脚
10 載せ部」は、マッサージ機能を有する複数の脚保持部材が、脚の長さ方向に並べら
れて構成されるものであり、そのうち、最先端の脚保持部材には、足裏の押し当て
面が設けられているものであると解される。これを受けて、構成要件Cは、「前記
押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記脚載せ部に付与する抵抗付与手
段」と規定していることから、構成要件Cの「前記脚載せ部」は、構成要件Bの「複
15 数の脚保持部材」を指すものと認められるものの、「抵抗付与手段」が「抗する力」
を付与する対象が「複数の脚保持部材」の全てであるか一部であるかは明らかでな
い。また、構成要件Hは、「前記抵抗付与手段は、前記脚の力に抗する方向に前記
最先端の脚保持部材を付勢する付勢手段である」と規定していることから、「抵抗
付与手段」は、「最先端の脚保持部材」を前記脚の力に抗する方向に付勢する「付
20 勢手段」であると認められるものの、それ以上の特定はなされておらず、他の脚保
持部材に対し、「抗する力」の伝達が行われるか否かについては明らかでない。
一方、構成要件Gは、「前記脚載せ部は、前記最先端の脚保持部材および前記他
の脚保持部材のそれぞれが前記座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能、かつ、
前記最先端の脚保持部材の前記足側面に設けられた前記エアセルと前記他の脚保持
25 部材の前記脚側面に設けられた前記エアセルとの距離が変化するように、脚の長さ
方向に伸縮可能であり」と規定している。そうすると、「脚載せ部」は、最先端の
脚保持部材及び他の脚保持部材のそれぞれが、脚の長さ方向に移動可能、かつ、伸
縮可能であると認められ、他の構成要件の記載を併せて考慮すると、「脚載せ部」
を構成するそれぞれの脚保持部材は、脚の長さ方向に移動するための機構を備える
とともに、脚の長さ方向に伸びたり縮んだりする変位態様をするための機構を備え
5 ており、前記変位態様は、「付勢手段」である「抵抗付与手段」により行われるも
のと解される。もっとも、「最先端の脚保持部材」の位置が変化すれば、「前記最
先端の脚保持部材の前記足側面に設けられた前記エアセルと前記他の脚保持部材の
前記脚側面に設けられた前記エアセルとの距離」は変化するから、構成要件Gは、
「最先端の脚保持部材」の位置が変化すれば、それに合わせて「他の脚保持部材」
10 の位置も変化することまでを特定するものとはいえない。
(イ) 本件明細書Ⅰの記載によれば、従来の脚マッサージ装置では、脚の長さに合
わせてねじの調節を行う必要があり、使用者が代わると、脚の長さも変わるので、
その都度調節が必要となり面倒であるとの課題があったところ(【0004】)、本件
発明Ⅰは、脚の長さに合わせた装置側の長さ調節が簡単なマッサージ機を提供する
15 ことを目的とするものであり(【0005】)、座部と、マッサージ機能を有し、足裏
の押し当て面が設けられている脚載せ部と、前記押し当て面に付与される脚の力に
抗する力を前記脚載せ部に付与する抵抗付与手段とを備え、前記脚載せ部は、前記
座部の前部に対して回動自在、且つ、脚の長さ方向に伸縮可能であり、前記脚載せ
部は、前記押し当て面と、足の側部に対向させる足側面と、その脚先側であって左
20 右方向における中央部に区画壁と、前記押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押
圧マッサージを施すエアセルと、前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧
マッサージを施すエアセルとを有し、前記抵抗付与手段は、前記脚の力に抗する方
向に前記脚載せ部を付勢する付勢手段であることを特徴とするものである
(【0006】)。かかる構成をとることで、本件発明Ⅰでは、押し当て面に足裏を押
25 し当てることにより、抵抗付与手段の付与する力に抗して脚載せ部を伸長させれば、
当該脚載せ部は脚の長さに対応した位置に達し、また、脚載せ部から脚を降ろすこ
とにより、自動的に当該脚保持部材が元の位置に復帰するという効果を奏する
(【0006】【0011】【0012】)。また、発明を実施するための形態では、脚載せ部
5は、第1脚保持部材51、第2脚保持部材52、第3脚保持部材53が脚の長さ
方向に並べられて構成されており、リンク機構(装置)23によって互いに接続さ
5 れ、最先端の脚保持部材である第3脚保持部材53(P3)と支持装置6の端部(P
0)との間には、付勢手段であり、抵抗付与手段であるばね24が装着されている
(【0020】【0026】【0027】)。リンク機構23は、その伸縮動作により、脚保持
部材51~53を、脚の長さ方向に所定の関係で相互に連動させる「連動装置」と
しての機能を有しており、また、ばね24によって、リンク装置23は収縮方向に
10 常に付勢されている(【0027】)。これによって、脚の長さに関わらず、脚を脚載
せ部5に入れて第3脚保持部材53を押すだけで、他の脚保持部材51、52の位
置調節を行うことなく、極めて簡単に施療要所にマッサージを行うことができる
(【0031】)。
以上から、本件発明Ⅰは、使用者が代わると、その都度、手動で脚のマッサージ
15 部の位置調節をする必要があって面倒であるとの従来技術の課題に対し、抵抗付与
手段を備えた脚載せ部を備えることにより、脚の長さに合わせた装置側の長さ調節
が簡単なマッサージ機を提供することを目的とするものであって、押し当て面に足
裏を押し当て、抵抗付与手段の付与する力に抗して脚載せ部を伸長させれば、当該
脚載せ部は脚の長さに対応した位置に達し、脚載せ部から脚を降ろすことにより、
20 自動的に当該脚載せ部全体が元の位置に復帰するという効果を奏するものである。
そして、脚載せ部を構成する複数の脚保持部材は、リンク機構によって互いに接続
されており、付勢手段である「ばね」により生ずる脚の力に抗する力は、最先端の
脚保持部材だけではなく、リンク機構によって、他の脚保持部材にも付与されてい
る。このような本件明細書Ⅰに示される従来技術の課題、本件発明Ⅰの目的、作用
25 効果等に照らすと、最先端の脚保持部材を除くその他の脚保持部材は、最先端の脚
保持部材の移動、伸縮に合わせて、全てがそれぞれ移動、伸縮するものと解するの
が相当である。
(ウ) 出願経過に関する事実関係について検討するに、原告は、平成24年12月
22日付け意見書(乙A7)において、「モータ等の駆動手段によらず、脚の力に
抗する方向に付勢する付勢手段を利用して、被施療者自身が足裏で押して移動させ
5 る脚載せ部には…」と記載していることから、「脚載せ部」が「脚の長さ方向に伸
縮可能」であることは、モータ等の駆動手段によらず、「付勢手段」である「抵抗
付与手段」により行われるものと解される。
また、証拠(甲A4、乙A9、A20)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本
件発明Ⅰを含む4件の発明に関する特許無効審判手続の中で、特許庁から、当初の
10 発明は、刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明する
ことができたものである旨の無効理由通知を受けたことに対し、本件訂正により構
成要件B及びGを付加修正するとともに、平成26年2月13日付け意見書(乙A
9)において、当初の発明は、構成要件B及びGを追加したことによって「足裏の
押し当て面を有する最先端の脚保持部材および他の脚保持部材のそれぞれが脚の長
15 さ方向に伸縮することで、足の側部に押圧マッサージを施すエアセルと、脚の側部
に押圧マッサージを施すエアセルとの距離が変化することが明確となった。」この
ような構成を備えることにより、訂正後の発明は、「最先端の脚保持部材を被施療
者の脚の長さに合わせて伸長させた際に、当該最先端の脚保持部材の足側面に設け
られ足の側部に押圧マッサージを施すエアセルを被施療者の足の側部に好適に位置
20 させることができる上に、被施療者の脚の長さに応じて脚の側部(例えばふくらは
ぎ)の適切な位置に他の脚保持部材の脚側面に設けられ脚の側部に押圧マッサージ
を施すエアセルを位置させるという特有の効果を奏する。」と記載したことが認め
られる。このような本件訂正の経緯や前記意見書の内容に照らすと、原告は、訂正
後の発明が無効とされることを避ける目的で、脚載せ部の脚の長さ方向の伸縮可能
25 動作に関し、最先端の脚保持部材の伸長動作に合わせて、他の脚保持部材の位置を
適切な位置に位置させることを特定したものと認められる。
(エ) 以上の請求項や本件明細書Ⅰの記載内容、出願経過に関する事実関係に照
らすと、本件発明Ⅰ-1において、脚載せ部が脚の長さ方向に伸縮動作するに際し、
抵抗付与手段により抗する力が伝達される対象は、最先端の脚保持部材のみではな
く、他の脚保持部材を含めた全ての脚保持部材であると解するのが相当である。ま
5 た、複数の「脚保持部材」からなる「脚載せ部」が、「脚の長さ方向に伸縮可能」
であることは、「付勢手段」である「抵抗付与手段」によって行われることを考慮
すると、全ての「脚保持部材」は「抵抗付与手段」によって伸縮動作を行うものと
解するのが相当である。
したがって、「前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記脚載せ部に
10 付与する抵抗付与手段」(構成要件C)とは、「最先端の脚保持部材」及び「他の
脚保持部材」の全体に対し、伸縮動作を行わせる手段であると解するのが相当であ
る(本件発明Ⅰ-2に係る構成要件Lについても同様である。)。
イ 被告製品Ⅰ-A及びⅠ-Eについて、スプリングが脚の力に抗する力をA部
材(最先端の脚保持部材)に付与する構成を有することは当事者間に争いがないと
15 ころ、証拠(甲10、11、24、25)及び弁論の全趣旨によれば、B部材(他
の脚保持部材)は、モータによって伸縮することが認められる。
また、被告製品Ⅰ-Dについて、スプリングが脚の力に抗する力をA部材(最先
端の脚保持部材)に付与する構成を有することは当事者間に争いがないところ、証
拠(甲20、21)及び弁論の全趣旨によれば、B部材(他の脚保持部材)はモー
20 タによって伸縮し、C部材(他の脚保持部材)は座部に固定されていて移動しない
ことが認められる。
したがって、被告製品Ⅰ-A及びⅠ-Eは構成要件Cを充足せず、被告製品Ⅰ-
Dは構成要件C及びLを充足しない。
ウ 原告は、構成要件H及びRの文言や本件明細書Ⅰの記載を指摘して、構成要
25 件C及びLの「抵抗付与手段」と構成要件H及びRの「付勢手段」の関係は、構成
要件C及びLの「抵抗付与手段」が上位の包括概念で、構成要件H及びRの「付勢
手段」が下位の被包括概念の関係にあり、付勢手段は、他の脚保持部材にまで力を
付与するものではない旨を主張する。
しかし、前記ア(ア)のとおり、構成要件H(及びR)は、「抵抗付与手段」が「最
先端の脚保持部材」を前記脚の力に抗する方向に付勢する「付勢手段」であること
5 は規定するものの、「他の脚保持部材」に「抗する力」の伝達が行われないことま
で規定するものではない。そして、構成要件Gは、「前記最先端の脚保持部材およ
び前記他の脚保持部材のそれぞれが前記座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可
能」と規定していることから、「最先端の脚保持部材」及び「他の脚保持部材」の
それぞれが「脚の長さ方向に移動可能」であると解され、構成要件の文言上、「最
10 先端の脚保持部材」と「他の脚保持部材」とを別異に扱う合理的理由はない。また、
本件明細書Ⅰには、確かに、ばね24に代えて、何らかの抵抗付与手段を設けて適
度の抵抗負荷を伴って伸縮するように構成することも可能で、この場合は、抵抗に
対して足で最下段の脚保持部材を押し下げることにより、同様に、脚の長さに合わ
せて脚載せ部5及び支持装置6を伸長させることができるが、元の収縮状態に戻す
15 にあたっては、手で押し戻す等の操作が必要になるとの記載や、連動装置としての
リンク装置23を省略する場合には、移動する脚保持部材は足裏の押し当て面を有
する脚保持部材(第3脚保持部材53)のみとして、他の脚保持部材は固定するか
若しくは設けない構成も可能であるとの記載(【0034】)がある。しかし、前記ア
(ウ)のとおり、本件訂正により付加された構成要件Gは、「最先端の脚保持部材」及
20 び「他の脚保持部材」のそれぞれが「脚の長さ方向に移動可能」である旨を規定し
ており、原告は、出願経過において、脚載せ部の脚の長さ方向の伸縮可能動作に関
し、最先端の脚保持部材の伸長動作に合わせて、他の脚保持部材の位置を適切な位
置に位置させることを特定したのであるから、本件訂正前の本件明細書Ⅰに前記記
載があるからといって、抵抗付与手段が最先端の脚保持部材のみを対象として付勢
25 するものであると解することはできない。その他、本件明細書Ⅰに他の脚保持部材
の一部のみを固定し、「最先端の脚保持部材」に加えて他の脚保持部材の残りも移
動可能とする記載や示唆はない。
したがって、原告の前記主張は採用できない。
(3) 被告製品Ⅰ-Bは「前記最先端の脚保持部材および前記他の脚保持部材の
それぞれが…脚の長さ方向に移動可能、かつ、…脚の長さ方向に伸縮可能」の構成
5 を有するか(被告製品Ⅰ-Bの構成要件Gの充足性)について
ア(ア) 前記(2)ア(ア)のとおり、構成要件Bの規定から、「脚載せ部」は、マッサ
ージ機能を有する複数の脚保持部材が、脚の長さ方向に並べられて構成されるもの
であると解され、構成要件Gの規定から、「脚載せ部」を構成するそれぞれの脚保
持部材は、脚の長さ方向に移動するための機構を備えるとともに、脚の長さ方向に
10 伸びたり縮んだりする変位態様をするための機構を備えており、かかる変位態様は、
「付勢手段」である「抵抗付与手段」により行われるものと解される。そうすると、
構成要件の記載から、脚載せ部を構成する全ての脚保持部材が、脚の長さ方向に移
動可能であり、かつ、脚載せ部を構成する全ての脚保持部材が、脚の長さ方向に伸
縮可能であることを意味すると解するのが相当である。
15 (イ) 本件明細書Ⅰによれば、本件発明Ⅰを実施するための形態は、第1脚保持部
材51、第2脚保持部材52、第3脚保持部材53が脚の長さ方向に並べられてお
り(【0020】)、第1ガイドレール61及び第2ガイドレール62によって、その
案内方向である人の脚の長さ方向にスライド可能で、リンク機構23によって互い
に接続され、リンク機構及びばね24によって、伸縮動作をするというものである
20 (【0025】~【0029】)。したがって、本件発明Ⅰの実施の形態では、脚載せ部を
構成する各脚保持部材は、脚の長さ方向に移動可能であり、伸縮可能であるものの
みが記載されている。
(ウ) 以上によれば、「前記最先端の脚保持部材および前記他の脚保持部材のそれ
ぞれが…脚の長さ方向に移動可能、かつ、…脚の長さ方向に伸縮可能」(構成要件
25 G)とは、その字義どおり、最先端の脚保持部材及び他の脚保持部材がそれぞれ、
脚の長さ方向に移動可能であり、かつ、伸縮可能であることを意味すると解するの
が相当である。
イ 証拠(甲18、19、甲A3、乙A26)及び弁論の全趣旨によれば、被告
製品Ⅰ-BのA部材は、踵部分に存在する回動軸を軸にした回動を行うものであり、
少なくとも、同回動軸の周辺部分は脚の長さ方向に移動等するものではないから、
5 A部材は全体として脚の長さ方向に移動等するものではない。
したがって、被告製品Ⅰ-Bは構成要件Gを充足しない。
ウ 原告は、本件明細書Ⅰの記載や伸縮の字義から、被施療者の脚が脚の長さ方
向に伸びるような機構を有するように「最先端の脚保持部材」が移動、伸縮すれば
足り、最先端及び他の脚保持部材が「直線的に」伸縮すると限定されることはない
10 から、構成要件Gには、最先端の脚保持部の押し当て面が回動する構成を含むと解
するのが相当であると主張する。
しかし、構成要件Gは、脚保持部材のそれぞれが「脚の長さ方向に」伸縮等する
と明記しているところ、「伸縮」とは「伸びたり縮んだりすること。のびちぢみ」
の意味であること(甲A2、乙A4)に照らすと、構成要件Gは、全ての脚保持部
15 材が脚の長さ方向という一次元方向に伸び縮みすることを規定していると解するの
が相当である。また、前記ア(イ)のとおり、本件明細書Ⅰには、本件発明Ⅰの実施の
形態として、脚載せ部を構成する各脚保持部材は、脚の長さ方向に移動可能であり、
伸縮可能であるもののみが記載されており、その他、脚の長さ方向という一次元方
向以外に伸縮動作等を行う機構は記載も示唆もされていない。さらに、前記(2)ア
20 (イ)のとおり、本件発明Ⅰは、脚の長さに合わせた装置側の長さ調節が簡単なマッサ
ージ機を提供することを目的とするものであり、押し当て面に足裏を押し当てるこ
とにより、抵抗付与手段の付与する力に抗して脚載せ部を伸長させれば、当該脚載
せ部は脚の長さに対応した位置に達し、また、脚載せ部から脚を降ろすことにより
自動的に、当該脚保持部材が元の位置に復帰するという効果を奏するものである。
25 このような本件発明Ⅰの目的や効果に照らしても、脚の長さ方向以外の方向に脚保
持部材の移動や伸縮を行わせる必要性は認められず、構成要件Gに最先端の脚保持
部材の押し当て面が回動する構成を含むものとはいえない。
また、原告は、被告製品Ⅰ-Bについて、被施療者がA部材の押し当て面のつま
先側が踵を載せる部分を軸に上方又は下方に動くことから、かかる動作により、A
部材とB部材との間に間隙を作り、脚載せ部に脚を載せて押し当て面に脚の力を付
5 与することで、脚の長さに合わせた装置側の長さを施療器とともに移動するとの構
成を採用していることを指摘し、被告製品I-Bは、踵を載せる部分を軸にA部材
のつま先側を上方又は下方に動かすことで、脚載せ部を「伸縮」させている旨を主
張する。
しかし、前記イのとおり、被告製品Ⅰ-BのA部材は、踵部分に存在する回動軸
10 の周辺部分は脚の長さ方向に移動等するものではないことに加え、A部材の同部分
以外の部分についての略円弧状の動きを捉えて「伸縮」すると考えるとしても、そ
れは、脚の長さ方向に対して斜め方向に伸縮する態様であって、脚の長さ方向に伸
縮するものとはいえない。
したがって、原告の主張はいずれも採用できない。
15 (4) 以上から、被告製品Ⅰは本件発明Ⅰ-1の技術的範囲に属さず、被告製品Ⅰ
-Dは本件発明Ⅰ-2の技術的範囲に属さないところ、本件発明Ⅰ-3は本件発明
Ⅰ-1又はⅠ-2の従属項であり、本件発明Ⅰ-4は本件発明Ⅰ-2の従属項であ
るから、被告製品Ⅰ-D及びⅠ-Eは本件発明Ⅰ-3の技術的範囲に属さず、被告
製品Ⅰ-Dは本件発明Ⅰ-4の技術的範囲に属さない。
20 3 本件発明Ⅰ-Bの技術的範囲への属否(均等侵害の成否。争点2)
(1) 被告製品Ⅰ-Bが本件発明Ⅰ-1の構成と均等なものであるかについて
ア 第1要件について
原告は、本件発明Ⅰ-1と被告製品Ⅰ-Bとは、A部材が脚の長さ方向に移動可
能でa面(押し当て面に相当)が踵の下方を回動軸芯として回動し、脚を伸ばした
25 場合の太腿から足首を結ぶ直線的な移動をしない点で相違部分を有するが、A部材
が脚の長さ方向に移動可能でa面が踵の下方を回動軸芯として回動するか、それと
も脚を伸ばした場合の太腿から足首を結ぶ直線的な移動をするかという違いは、A
部材が座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能である点で相違がない上、A部
材の足側面に設けられたエアバッグとB部材の脚側面に設けられたエアバッグとの
距離が変化するように、A部材のa面が踵の下方を回動軸芯として回動するので、
5 上記の課題解決手段を基礎づける特徴的部分は、そのままA部材とB部材の構成が
実現している旨を指摘して、前記の相違は、前記の課題解決手段を基礎づける特徴
的部分ではなく、本件発明Ⅰ-1の非本質的部分であると主張する。
しかし、前記(2)ア(イ)のとおり、本件発明Ⅰは、使用者が代わると、その都度、
手動で脚のマッサージ部の位置調節をする必要があって面倒であるとの従来技術の
10 課題に対し、抵抗付与手段を備えた脚載せ部を備えることにより、脚の長さに合わ
せた装置側の長さ調節が簡単なマッサージ機を提供することを目的とするものであ
る。また、本件訂正後の構成要件B及びGの内容、原告の平成26年2月13日付
け意見書(乙A9)の内容及び本件発明Ⅰを実施するための形態に関する本件明細
書Ⅰの記載(【0025】~【0031】)に照らすと、本件発明Ⅰは、前記従来技術の課
15 題に対し、最先端の脚保持部材及び他の複数の脚保持部材を脚の長さ方向に並べて
成る脚載せ部と、脚の力に抗する方向に脚載せ部を付勢する付勢手段である抵抗付
与手段とを備え、脚載せ部が、最先端の脚保持部材及び他の脚保持部材のそれぞれ
が座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能、かつ、最先端の脚保持部材の脚側
面に設けられたエアセルと他の脚保持部材の脚側面に設けられたエアセルとの距離
20 が変化するように、脚の長さに関わらず、脚を脚載せ部に入れて最先端の脚保持部
材を押すだけで、他の脚保持部材の位置調節を行うことなく、最先端の脚保持部材、
他の脚保持部材のそれぞれに設けられたエアセルを脚の長さ方向に存在する施療箇
所に適切に位置させることにより、前記目的を達しようとするものと認められる。
そうすると、本件発明Ⅰの従来技術にみられない特有の技術的思想を構成する特徴
25 的部分は、使用者が脚を脚載せ部に入れて最先端の脚保持部材を押すだけで最先端
の脚保持部材の脚側面に設けられたエアセルと他の脚保持部材の脚側面に設けられ
たエアセルとの距離が変化するように、最先端の脚保持部材及び他の脚保持部材が
連動して脚の長さ方向に伸縮可能とした点にあるものと認められる。
したがって、本件発明Ⅰ-1(構成要件G)では、使用者が脚を脚載せ部に入れ
て最先端の脚保持部材を押すだけで、他の脚保持部材も連動して足の長さ方向に伸
5 縮可能とする構成であるのに対し、被告製品Ⅰ-Bは、足を伸ばした場合にA部材
が太腿から足首を結ぶ直線的な移動をしないという、原告主張の構成要件Gの構成
と被告製品Ⅰ-Bとの相違部分は、本質的部分でないということはできず、被告製
品Ⅰ-Bは均等の第1要件を充足しない。
イ 第5要件について
10 前提事実2及び3並びに前記アのとおり、原告は、本件訂正により構成要件B及
びGを付加修正することによって、「脚載せ部」に関し、従前の「脚載せ部は…脚
の長さ方向に伸縮可能」であるとの範囲から、本件訂正後の「脚載せ部」が「最先
端の脚保持部材」及び「他の脚保持部材」から成り、「前記脚載せ部は、前記最先
端の脚保持部材および前記他の脚保持部材のそれぞれが前記座部の前部に対して脚
15 の長さ方向に移動可能、かつ、前記最先端の脚保持部材の前記足側面に設けられた
前記エアセルと前記他の脚保持部材の前記脚側面に設けられた前記エアセルとの距
離が変化するように、脚の長さ方向に伸縮可能」であるとの範囲に限定した。また、
前記2(3)ア及びウのとおり、「前記最先端の脚保持部材および前記他の脚保持部材
のそれぞれが前記座部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能」とは、「最先端の
20 脚保持部材」及び全ての「他の脚保持部材」が「脚の長さ方向」という一次元方向
に移動可能であることを意味し、「脚載せ部」が「脚の長さ方向に伸縮可能」とは、
「脚の長さ方向」という一次元方向において伸縮可能であることを意味している。
以上から、原告は、A部材が脚の長さ方向に移動せず、A部材が脚の長さ方向に
伸縮動作を行うものとはいえない構成は、特許請求の範囲から意識的に除外したも
25 のと認められる。
そうであるところ、被告製品Ⅰ-BのA部材は、全体として脚の長さ方向に移動
等するものではない。
したがって、被告製品Ⅰ-Bは、均等の第5要件を充足しない。
ウ 以上から、被告製品Ⅰ-Bは、他の要件を検討するまでもなく、本件発明Ⅰ
-1の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとはいえず、本件発明Ⅰ-1
5 の技術的範囲に属するとは認められない。
(2) 被告製品Ⅰ-Dが本件発明Ⅰ-1の構成と均等なものであるかについて
ア 第1要件について
原告は、本件発明Ⅰ-1と被告製品Ⅰ―Dとの相違部分であるC部材の移動の有
無については、C部材の移動の有無にかかわらず、A部材とB部材の構成が課題解
10 決手段を基礎づける特徴的部分を実現していることから、前記相違は、本件発明Ⅰ
の非本質的部分である旨を主張する。
しかし、前記(1)アのとおり、本件発明Ⅰの従来技術にみられない特有の技術的思
想を構成する特徴的部分は、使用者が脚を脚載せ部に入れて最先端の脚保持部材を
押すだけで最先端の脚保持部材の脚側面に設けられたエアセルと他の脚保持部材の
15 脚側面に設けられたエアセルとの距離が変化するように、最先端の脚保持部材及び
他の脚保持部材が連動して脚の長さ方向に伸縮可能とした点にある。
したがって、本件発明Ⅰ-1(構成要件G)では、使用者が脚を脚載せ部に入れ
て最先端の脚保持部材を押すだけで、他の脚保持部材も連動して足の長さ方向に伸
縮可能とする構成であるのに対し、被告製品Ⅰ-Dは、最先端の脚保持部材(A部
20 材)の伸縮動作に連動して他の脚保持部材であるC部材が伸縮しないという、原告
主張の構成要件Gの構成と被告製品Ⅰ-Dとの相違部分は、本質的部分でないとい
うことはできず、被告製品Ⅰ-Dは均等の第1要件を充足しない(なお、被告製品
Ⅰ-DのB部材はモータにより移動するから、被告製品Ⅰ-Dには、A部材の伸縮
動作に連動して伸縮可能な他の脚保持部材は存在しない。)。
25 イ 第5要件について
前記(1)イの事実関係に照らすと、C部材が脚の長さ方向に移動しない構成は特
許請求の範囲から意識的に除外されているものと認められる。
したがって、被告製品Ⅰ-Dは均等の第5要件を充足しない。
ウ 以上から、被告製品Ⅰ-Dは、他の要件を検討するまでもなく、本件発明Ⅰ
-1の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとはいえず、本件発明Ⅰ-1
5 の技術的範囲に属するとは認められない。
4 結論
以上のとおり、被告製品Ⅰは、文言侵害が成立しないから、本件発明Ⅰの技術的
範囲に属さず、被告製品Ⅰ-B及びⅠ-Dは、均等侵害も成立しない。
以上
(別紙)
被告製品Ⅰ-A説明書(原告)
製品名 「マッサージチェア」
5 型式番号 「AS-1000」(被告製品1)
1 図面の説明
図1 被告製品1の外観斜視図
図2 被告製品1のオットマンの拡大斜視図
10 図3 被告製品1のオットマンのエアバッグの位置を示す拡大斜視図
図4 被告製品1のオットマンの内部構成を表す概略図
2 被告製品1の構成と作用の説明
図 1 に 示 す よ う に 、被 告 製 品 1 は 、マ ッ サ ー ジ チ ェ ア で あ り 、「 座 部 」を
15 備え、さらに、脹脛から足部にかけてエアバッグの膨縮によるマッサージ
を行うオットマン 本件発明Ⅰの 脚載せ部」 相当) 備えている。 1、
( 「 に を 図
図 2 か ら 分 か る よ う に 、オ ッ ト マ ン は 足 部 を マ ッ サ ー ジ す る A 部 材(「 最 先
端 の 脚 保 持 部 材 」に 相 当 )と 脚 部 を マ ッ サ ー ジ す る B 部 材(「 他 の 脚 保 持 部
材 」に 相 当 )と に 分 か れ て い る 。A 部 材 と B 部 材 と は 被 施 療 者 が 着 座 し た と
20 き に 、「 脚 の 長 さ 方 向 に 並 」ん で い る 。ま た 、A 部 材 は 被 施 療 者 の 足 裏 が 当
接する「押し当て面」を有している。
オットマンは、「座部の前部に対して回動自在」である。
A 部 材 は 、図 2 か ら 分 か る よ う に 、 足 の 側 部 に 対 向 さ せ る 足 側 面 」と 、

「 左 右 方 向 に お け る 中 央 部 に 区 画 壁 」を 備 え て い る 。ま た 、図 3 か ら 分 か る
25 ように、押し当て面と足側面にはエアバッグがそれぞれ設けられており、
被施療者の足裏と足の側部に押圧マッサージを施す。
B 部 材 は 、図 2 か ら 分 か る よ う に 、 脚 の 側 部 に 対 向 さ せ る 脚 側 面 」を 備

え て い る 。ま た 、図 3 か ら 分 か る よ う に 、脚 側 面 に は エ ア バ ッ グ が 設 け ら れ
ており、被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施す。
「 オ ッ ト マ ン は 、A 部 材 お よ び B 部 材 の そ れ ぞ れ が 座部の前部に対して脚の
5 長さ方向に移動可能、かつ、A部材の足側面に設けられたエアバッグとB部材の脚側
面に設けられたエアバッグとの距離が変化するように、脚の長さ方向に伸縮可能」で
ある。座部の前部に対しては、A部材、B部材共にモータの駆動力で脚の長さ方向に
移動可能である。B部材に対して、A部材は引張スプリング(「抵抗付与手段」、「付
勢手段」に相当。以下、「スプリング」という)により伸縮する。以下、これらの構成
10 を具体的に説明する。
図4において、緑色の箇所は座部及び座部に回動支点を介して接続されている箇所
(以下、「保持部」という)である。赤色の箇所はB部材、黒色の箇所はA部材を表
す。保持部は、回動支点を介して基端側が座部に接続された一対のシャフトと、一対
のシャフトの間に亘って設けられた二本のフレーム、二本のフレームに亘って設けら
15 れたボールねじのねじ軸、先端側のフレームに設けられ、ねじ軸を回転させるモータ
を備えている。保持部は、A部材、B部材を保持している。
B部材は、ボールねじのナット、ナットから左右方向に延在する第1スライダ、第
1スライダから先端側に離間した位置にあり、第1スライダと共にスライドする第2
スライダ、第1スライダと第2スライダとを繋ぎシャフトと平行に延出するスライダ
20 保持フレームを備える。スライダ保持フレームは、シャフトに間接的に取り付けられ
ているガイドローラに挟まれており、ガイドローラに案内されてシャフトの延在方向
に沿って第1スライダ、第2スライダと一体となって移動可能に構成されている。シ
ャフトの先端側はフレームにより支持されている。B部材は、ナットがねじ軸に沿っ
て移動すると、それに連動して先端側、若しくは、基端側に移動するように構成され
25 ている。
A部材は、B部材の第1スライダから延在する一対の管にそれぞれ内装されたスプ
リングを備える。スプリングの一端は第1スライダに取り付けられ、他端はA部材に
取り付けられている。A部材の押し当て面に被施療者の脚の力が作用していないとき
は、スプリングの付勢力(スプリングが短くなって自然長に戻ろうとする力)により、
A部材はB部材に引き付けられ、密接して一体となっている。
5 電力供給によりモータを駆動させると、ねじ軸が回転し、その回転方向
に 従 っ て ナ ッ ト が 先 端 側 、若 し く は 、基 端 側 に 移 動 す る 。こ れ に よ り 、B 部
材 が 座 部 に 対 し て 先 端 側 、若 し く は 、基 端 側 に 移 動 す る 。上 述 し た よ う に 、
A部材の押し当て面に脚の力が作用しないときには、スプリングを介してA部材とB
部材とは座部に対して一体となっているので、B部材が移動するとA部材も同じ距離
10 だけ移動する。一方、 施 療 者 が A 部 材 の 押 し 当 て 面 に 足 裏 を 押 し 付 け て 脚 の

力 に よ り 押 圧 す る と 、ス プ リ ン グ が 伸 長 し 、脚 の 力 に 抗 す る 方 向( スプリン
グが短くなる方向)に A 部 材 を 付 勢 す る 。こ の 結 果 、B 部 材 に 対 し て A 部 材 が
離 間 す る( 先 端 側 に 移 動 す る )。そ し て 、脚 の 力 が 除 去 さ れ る と 、A 部 材 は
スプリングの付勢力により再度B部材に密接する。
3 被告製品1の構成の分説(本件発明Ⅰ-1との関係。下線部は被告主張との相
違点)
ⅠAa 座部と、
ⅠAb マッサージ機能を有する2つの脚保持部材(A部材、B部材)を脚の長
20 さ方向に並べて成り、最先端の脚保持部材(A部材)には足裏の押し当て面が設けら
れているオットマンと、
ⅠAc 押し当て面に付与される脚の力に抗する力をオットマンを構成するA部
材に付与するスプリングと、を備え、
ⅠAd オットマンは、座部の前部に対して回動自在であり、
25 ⅠAe A部材は
ⅠAe1 押し当て面と、
ⅠAe2 足の側部に対向させる足側面と、
ⅠAe3 左右方向における中央部に区画壁と、
ⅠAe4 押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施すエアバッ
グと、
5 ⅠAe5 足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアバッ
グと、を有し、
ⅠAf 他の脚保持部材(B部材)は、
ⅠAf1 脚の側部に対向させる脚側面と、
ⅠAf2 脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施すエアバッ
10 グと、を有し、
ⅠAg オットマンは、A部材およびB部材のそれぞれが座部の前部に対して脚
の長さ方向に移動可能、かつ、A部材の足側面に設けられたエアバッグとB部材の脚
側面に設けられたエアバッグとの距離が変化するように、脚の長さ方向に伸縮可能で
あり、
15 ⅠAh スプリングは、脚の力に抗する方向にA部材を付勢する付勢手段である
ことを特徴とする
ⅠAi マッサージ機。
(被告製品1)
図1
図2
図3
図4
以上
(別紙)
被告製品Ⅰ-B説明書(原告)
製品名 「マッサージチェア」
5 型式番号 「AS-860」(被告製品5)
被告製品5の構成の分説(下線部は被告主張との相違点)
ⅠBa 座部と、
ⅠBb マッサージ機能を有するA部材およびB部材を脚の長さ方向に
10 並 べ て 成 り 、A 部 材 に は 足 裏 の 押 し 当 て 面 が 設 け ら れ て い る オ ッ ト マ ン と 、
ⅠBc 前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記オットマ
ンを構成するB部材に付与する第1スプリング及びオットマンを構成する
A部材に付与する第2スプリングと、を備え、
ⅠBd 前記オットマンは、前記座部の前部に対して回動自在であり、
15 ⅠBe 前記A部材は、
ⅠBe1 前記押し当て面と、
ⅠBe2 足の側部に対向させる足側面と、
ⅠBe3 左右方向における中央部に区画壁と、
ⅠBe4 前記押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを
20 施すエアバッグと、
ⅠBe5 前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを
施すエアバッグと、を有し、
ⅠBf B部材は、
ⅠBf1 脚の側部に対向させる脚側面と、
25 ⅠBf2 前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを
施すエアバッグと、を有し、
ⅠBg 前記オットマンのうち、前記A部材及びB部材は前記座部の前部に対し
て脚の長さ方向に移動可能、かつ、前記A部材の足側面に設けられたエアバッグと前
記B部材の脚側面に設けられたエアバッグとの距離が変化するように、脚の長さ方向
に伸縮可能であり、
5 ⅠBh 前 記 第 2 ス プ リ ン グ は 、前 記 脚 の 力 に 抗 す る 方 向 に A 部 材 を 付
勢する付勢手段であることを特徴とする
ⅠBi マッサージ機。
以上
(別紙)
被告製品Ⅰ-D説明書(原告)
製品名 「マッサージチェア」
5 型式番号 「AS-850」(被告製品6)
1 図面の説明
図1 被告製品6の外観斜視図
図2 被告製品6のオットマンの拡大斜視図
10 図3 被告製品6のオットマンのエアバッグの位置を示す拡大斜視図
図4 被告製品6のオットマンの内部構成を表す概略図
図5 被告製品6のオットマンの脚先側下端の裏面を表す写真
図6 被告製品6のオットマンの脚先側下端の車輪を表す写真
15 2 被告製品6の構成と作用の説明
図1に示すように、被告製品6は、マッサージチェアであり、「座部」を
備え、さらに、脹脛から足部にかけてエアバッグの膨縮によるマッサージを
行 う オ ッ ト マ ン( 本 件 特 許 1 請 求 項 2 の「 脚 載 せ 部 」に 相 当 )を 備 え て い る 。
図1から分かるように、オットマンは足部をマッサージするA部材(「最先
20 端 の 脚 保 持 部 材 」に 相 当 )と 、脚 部 を マ ッ サ ー ジ す る B 部 材 及 び C 部 材(「 他
の脚保持部材」に相当)に分かれている。A部材、B部材、C部材は被施療
者が着座したときに、「脚の長さ方向に並」んでいる。また、A部材は被施
療者の足裏が当接する「押し当て面」を有している。
オットマンは、「座部の前部に対して回動自在」である。
25 A部材は、図2から分かるように、「足の側部に対向させる足側面」と、
「左右方向における中央部に区画壁」を備えている。また、図3から分かる
ように、押し当て面と足側面にはエアバッグがそれぞれ設けられており、被
施療者の足裏と足の側部に押圧マッサージを施す。
B部材とC部材は、図2から分かるように、「脚の側部に対向させる脚側
面」をそれぞれ備えている。また、図3から分かるように、それぞれの脚側
5 面にはエアバッグが設けられており、被施療者の脚の側部に押圧マッサージ
を施す。
オットマンは、「A 部 材 と B 部 材 、 及 び 、 B 部 材 と C 部 材 の 各 離 隔
距 離 を 脚 の 長 さ 方 向 に そ れ ぞ れ 変 更 可 能 」で あ る 。具 体 的 に は 、A 部 材 、
B部材共にモータの駆動力で脚の長さ方向に移動可能である。また、B部材
10 に対して、A部材は引張スプリング(「抵抗付与手段」、「付勢手段」に相
当。以下、「スプリング」という)により伸縮する。以下、これらの構成を
具体的に説明する。
図4において、緑色の箇所は座部及び座部に回動支点を介して接続されて
いる箇所(以下、「保持部」という)である。保持部の一部がC部材となっ
15 ている。赤色の箇所はB部材、黒色の箇所はA部材を表す。保持部は、回動
支点を介して基端側が座部に接続された一対のシャフトと、一対のシャフト
の間に亘って設けられた三本のフレーム、三本のフレームの内、先端側に位
置する二本のフレームに亘って設けられたボールねじのねじ軸、最先端側の
フレームに設けられ、ねじ軸を回転させるモータを備えている。C部材は、
20 三本のフレームの内、基端側に位置する二本のフレームを備えている。保持
部は、A部材、B部材を保持している。
B部材は、ボールねじのナット、ナットから左右方向に延在する第1スラ
イダ、第1スライダから先端側に離間した位置にあり、第1スライダと共に
スライドする第2スライダ、第1スライダと第2スライダとを繋ぎシャフト
25 と平行に延出するスライダ保持フレームを備える。スライダ保持フレーム
は、シャフトに間接的に取り付けられているガイドローラに挟まれており、
ガイドローラに案内されてシャフトの延在方向に沿って第1スライダ、第2
スライダと一体となって移動可能に構成されている。シャフトの先端側はフ
レームにより支持されている。B部材は、ナットがねじ軸に沿って移動する
と、それに連動して先端側、若しくは、基端側に移動するように構成されて
5 いる。
A部材は、B部材の第1スライダから延在する一対の管にそれぞれ内装さ
れたスプリングを備える。スプリングの一端は第1スライダに取り付けら
れ、他端はA部材に取り付けられている。A部材の押し当て面に被施療者の
脚の力が作用していないときは、スプリングの付勢力(スプリングが短くな
10 って自然長に戻ろうとする力)により、A部材はB部材に引き付けられ、密
接して一体となっている。
電力供給によりモータを駆動させると、ねじ軸が回転し、その回転方向に
従ってナットが先端側、若しくは、基端側に移動する。これにより、B部材
が座部に対して先端側、若しくは、基端側に移動する。上述したように、A
15 部材の押し当て面に脚の力が作用しないときには、スプリングを介してA部
材とB部材とは座部に対して一体となっているので、B部材が移動するとA
部材も同じ距離だけ移動する。C部材は、座部に対して回動可能に接続され
ているものの、脚の長さ方向には伸縮せずに固定されている。一方、被施療
者がA部材の押し当て面に足裏を押し付けて脚の力により押圧すると、スプ
20 リングが伸長し、脚の力に抗する方向(スプリングが短くなる方向)にA部
材を付勢する。この結果、B部材に対してA部材が離間する(先端側に移動
する)。そして、脚の力が除去されると、A部材はスプリングの付勢力によ
り再度B部材に密接する。A部材、B部材、C部材はそれぞれエアバッグを
備えているので、A部材がB部材に対して脚の長さ方向へ伸縮すると、オッ
25 トマンは、A部材のエアバッグと、B部材のエアバッグ、C部材のエアバッ
グの距離が変化するように脚の長さ方向に伸縮する。
図5、図6に示すように、A部材の底面の裏側には2つの車輪が設けられ
ている。A部材の底面の裏側が床面に対向している状態(下向き状態)にお
いて、オットマンのA部材、及び/又は、B部材が伸長すると、この車輪が
床面に当接する。被告製品6は、車輪が床面を転がることにより、オットマ
5 ンを伸縮させつつ回動支点を中心に回動させて、オットマンを前後方向に移
動させることができるように構成されている。
3 被告製品6の構成の分説(本件発明Ⅰ-1との関係。下線部は被告主
張との相違点)
10 ⅠDa 座部と、
ⅠDb マッサージ機能を有する3つの脚保持部材(A部材、B部材、
C部材)を脚の長さ方向に並べて成り、最先端の脚保持部材(A部材)には
足裏の押し当て面が設けられているオットマンと、
ⅠDc 押し当て面に付与される脚の力に抗する力をオットマンを構
15 成するA部材に付与するスプリングと、を備え、
ⅠDd オットマンは、座部の前部に対して回動自在であり、
ⅠDe A部材は、
ⅠDe1 押し当て面と、
ⅠDe2 足の側部に対向させる足側面と、
20 ⅠDe3 左右方向における中央部に区画壁と、
ⅠDe4 押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施
すエアバッグと、
ⅠDe5 足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施
すエアバッグと、を有し、
25 ⅠDf 他の脚保持部材(B部材、C部材)は、
ⅠDf1 脚の側部に対向させる脚側面と、
ⅠDf2 脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施
すエアバッグと、を有し、
ⅠDg オットマンは、A部材およびB部材のそれぞれが座部の前部に
対して脚の長さ方向に移動可能、かつ、A部材の足側面に設けられたエアバ
5 ッグとB部材の脚側面に設けられたエアバッグとの距離が変化するように、
脚の長さ方向に伸縮可能であり、
ⅠDh スプリングは、脚の力に抗する方向にA部材を付勢する付勢手
段であることを特徴とする
ⅠDi マッサージ機。
4 被告製品Ⅰ-Dの構成の分説(本件発明Ⅰ-2との関係。下線部は被
告主張との相違点)
ⅠDj 座部と、
ⅠDk マッサージ機能を有する3つの脚保持部材(A部材、B部材、
15 C部材)を脚の長さ方向に並べて成り、最先端の脚保持部材(A部材)には
足裏の押し当て面が設けられているオットマンと、
ⅠDl 押し当て面に付与される脚の力に抗する力をオットマンを構
成するA部材に付与するスプリングと、を備え、
ⅠDm オットマンは、座部の前部に対して回動自在であり、
20 ⅠDn A部材とB部材、及び、B部材とC部材の各離隔距離を脚の長
さ方向にそれぞれ変更可能であり、
ⅠDо A部材は、
ⅠDо1 前記押し当て面と、
ⅠDо2 足の側部に対向させる足側面と、
25 ⅠDо3 左右方向に中央部に区画壁と、
ⅠDо4 押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施
すエアバッグと、
ⅠDо5 足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施
すエアバッグと、を有し、
ⅠDp 他の脚保持部材(B部材、C部材)は、それぞれ
5 ⅠDp1 脚の側部に対向させる脚側面と、
ⅠDp2 脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施
すエアバッグと、を有し、
ⅠDq オットマンは、A部材の足側面に設けられたエアバッグとB部
材、C部材の脚側面に設けられたエアバッグとの距離が変化するように、脚
10 の長さ方向に伸縮可能であり、
ⅠDr スプリングは、脚の力に抗する方向にA部材を付勢する付勢手
段であることを特徴とする
ⅠDs マッサージ機。
15 5 被告製品Ⅰ-Dの構成の分説(本件発明Ⅰ-3との関係。下線部は被
告主張との相違点)
ⅠDt オットマンの脚先側下端には、下向き状態にあるオットマンが
伸長すると床に接地する車輪が設けられ、
ⅠDu オットマンは、伸長しながら上方へ回動可能であることを特徴
20 とする
ⅠDv マッサージ機(請求項1および請求項2のいずれにも記載され
ている)。
6 被告製品Ⅰ-Dの構成の分説(本件発明Ⅰ-4との関係。下線部は被
25 告主張との相違点)
ⅠDw B部材及びC部材は、それぞれ、左右方向における中央部に区
画壁を有することを特徴とする
ⅠDx 請求項2に記載のマッサージ機。
(被告製品6)
図1
5 図2
図3
図4
図5
図6
5 以上
(別紙)
被告製品Ⅰ-E説明書(原告)
製品名 「マッサージチェア」
5 型式番号 「AS-840」(被告製品8)
1 図面の説明
図1 被告製品8の外観斜視図
図2 被告製品8のオットマンの拡大斜視図
10 図3 被告製品8のオットマンのエアバッグの位置を示す拡大斜視図
図4 被告製品8のオットマンの内部構成を表す概略図
2 被告製品8の構成と作用の説明
図1に示すように、被告製品8は、マッサージチェアであり、「座部」を
15 備え、さらに、脹脛から足部にかけてエアバッグの膨縮によるマッサージを
行うオットマン(本件発明Ⅰの「脚載せ部」に相当)を備えている。図1、
図2から分かるように、オットマンは足部をマッサージするA部材(「最先
端の脚保持部材」に相当)と脚部をマッサージするB部材(「他の脚保持部
材」に相当)とに分かれている。A部材とB部材とは被施療者が着座したと
20 きに、「脚の長さ方向に並」んでいる。また、A部材は被施療者の足裏が当
接する「押し当て面」を有している。
オットマンは、「座部の前部に対して回動自在」である。
A部材は、図2から分かるように、「足の側部に対向させる足側面」と、
「左右方向における中央部に区画壁」を備えている。また、図3から分かる
25 ように、押し当て面と足側面にはエアバッグがそれぞれ設けられており、被
施療者の足裏と足の側部に押圧マッサージを施す。
B部材は、図2から分かるように、「脚の側部に対向させる脚側面」を備
えている。また、図3から分かるように、脚側面にはエアバッグが設けられ
ており、被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施す。
このように、被告製品8のオットマンのA部材とB部材の構成は、被告製
5 品1と同様である。
「オットマンは、A部材およびB部材のそれぞれが座部の前部に対して脚
の長さ方向に移動可能、かつ、A部材の足側面に設けられたエアバッグとB
部材の脚側面に設けられたエアバッグとの距離が変化するように、脚の長さ
方向に伸縮可能」である。座部の前部に対しては、A部材、B部材共にモー
10 タの駆動力で脚の長さ方向に移動可能である。また、B部材に対して、A部
材は引張スプリング(「抵抗付与手段」、「付勢手段」に相当。以下、「ス
プリング」という)により伸縮する。
図4において、緑色の箇所は座部及び座部に回動支点を介して接続されて
いる箇所(以下、「保持部」という)である。赤色の箇所はB部材、黒色の
15 箇所はA部材を表す。保持部は、回動支点を介して基端側が座部に接続され
た一対のシャフトと、一対のシャフトの間に亘って設けられた二本のフレー
ム、二本のフレームに亘って設けられたボールねじのねじ軸、先端側のフレ
ームに設けられ、ねじ軸を回転させるモータを備えている。保持部は、A部
材、B部材を保持している。
20 B部材は、ボールねじのナット、ナットから左右方向に延在する第1スラ
イダ、第1スライダから先端側に離間した位置にあり、第1スライダと共に
スライドする第2スライダ、第1スライダと第2スライダとを繋ぎシャフト
と平行に延出するスライダ保持フレームを備える。スライダ保持フレーム
は、シャフトに間接的に取り付けられているガイドローラに挟まれており、
25 ガイドローラに案内されてシャフトの延在方向に沿って第1スライダ、第2
スライダと一体となって移動可能に構成されている。シャフトの先端側はフ
レームにより支持されている。B部材は、ナットがねじ軸に沿って移動する
と、それに連動して先端側、若しくは、基端側に移動するように構成されて
いる。
A部材は、B部材の第1スライダから延在する一対の管にそれぞれ内装さ
5 れたスプリングを備える。スプリングの一端は第1スライダに取り付けら
れ、他端はA部材に取り付けられている。A部材の押し当て面に被施療者の
脚の力が作用していないときは、スプリングの付勢力(スプリングが短くな
って自然長に戻ろうとする力)により、A部材はB部材に引き付けられ、密
接して一体となっている。
10 電力供給によりモータを駆動させると、ねじ軸が回転し、その回転方向に
従ってナットが先端側、若しくは、基端側に移動する。これにより、B部材
が座部に対して先端側、若しくは、基端側に移動する。上述したように、A
部材の押し当て面に脚の力が作用しないときには、スプリングを介してA部
材とB部材とは座部に対して一体となっているので、B部材が移動するとA
15 部材も同じ距離だけ移動する。一方、被施療者がA部材の押し当て面に足裏
を押し付けて脚の力により押圧すると、スプリングが伸長し、脚の力に抗す
る方向(スプリングが短くなる方向)にA部材を付勢する。この結果、B部
材に対してA部材が離間する(先端側に移動する)。そして、脚の力が除去
されると、A部材はスプリングの付勢力により再度B部材に密接する。
20 このように、オットマンにおけるA部材とB部材の伸縮を可能にする構成
も、被告製品1と同様である。
更に、被告製品8は、被告製品6と同様に、A部材の底面の裏側に2つの
車輪を備えている。A部材の底面の裏側が床面に対向している状態(下向き
状態)において、オットマンのA部材、及び/又は、B部材が伸長すると、
25 こ の 車 輪 が 床 面 に 当 接 す る 。被 告 製 品 8 は 、車 輪 が 床 面 を 転 が る こ と に よ り 、
オットマンを伸縮させつつ回動支点を中心に回動させて、オットマンを前後
方向に移動させることができるように構成されている。
以上をまとめると、被告製品8は、被告製品1のオットマンの構成(A部
材とB部材の二部材からなる)に、被告製品6の2つの車輪を追加した構成
を有している。
3 被告製品8の構成の分説(本件発明Ⅰ-1との関係)
ⅠEa 座部と、
ⅠEb マッサージ機能を有する2つの脚保持部材(A部材、B部材)
を脚の長さ方向に並べて成り、最先端の脚保持部材(A部材)には足裏の押
10 し当て面が設けられているオットマンと、
ⅠEc 押し当て面に付与される脚の力に抗する力をオットマンを構
成するA部材に付与するスプリングと、を備え、
ⅠEd オットマンは、座部の前部に対して回動自在であり、
ⅠEe A部材は、
15 ⅠEe1 押し当て面と、
ⅠEe2 足の側部に対向させる足側面と、
ⅠEe3 左右方向における中央部に区画壁と、
ⅠEe4 押し当て面に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施
すエアバッグと、
20 ⅠEe5 足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施
すエアバッグと、を有し、
ⅠEf 他の脚保持部材(B部材)は、
ⅠEf1 脚の側部に対向させる脚側面と、
ⅠEf2 脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施
25 すエアバッグと、を有し、
ⅠEg オットマンは、A部材およびB部材のそれぞれが座部の前部に
対して脚の長さ方向に移動可能、かつ、A部材の足側面に設けられたエアバ
ッグとB部材の脚側面に設けられたエアバッグとの距離が変化するように、
脚の長さ方向に伸縮可能であり、
ⅠEh スプリングは、脚の力に抗する方向にA部材を付勢する付勢手
5 段であることを特徴とする
ⅠEi マッサージ機。
4 被告製品8の構成の分説(本件発明Ⅰ-3との関係。下線部は被告主
張との相違点)
10 ⅠEt オットマンの脚先側下端には、下向き状態にあるオットマンが
伸長すると床に接地する車輪が設けられ、
ⅠEu オットマンは、伸長しながら上方へ回動可能であることを特徴
とする
ⅠEv マッサージ機(請求項1に記載されている)。
(被告製品8)
図1
5 図2
図3
図4
以上
(別紙)
被告製品Ⅰ-A説明書(被告)
製品名 「マッサージチェア」
5 型式番号 「AS-1000」(被告製品1)
1 図面の説明
図1 被告製品1の外観斜視図
図2 被告製品1のオットマンの拡大斜視図
10 図3 被告製品1のオットマンのエアバッグの位置を示す拡大斜視図
図4 被告製品1のオットマンの内部構成を示す正面図
図5 被告製品1のオットマンの内部構成を示す斜視図
図6 被告製品1の押し当て面の内部構成を示す断面図
15 2 被告製品1の構成と作用の説明
図1に示すように、被告製品1は、マッサージチェアであり、座部を備え、さ
らに、脹脛から足部(足裏を除く)に対してエアバッグの膨縮によるマッサージ
を行い、足裏に対しては突起物による押圧によるマッサージを行うオットマンを
備えている。図1、図2から分かるように、オットマンは足部をマッサージする
20 A部材と脚部をマッサージするB部材とから構成されている。A部材とB部材と
は被施療者が着座したときに、脚の長さ方向に並んでいる。また、A部材は被施
療者の足裏が当接する押し当て面を有している。
オットマンは、座部の前部に対して回動自在である。
A部材は、図2から分かるように、足の側面に対向させる足側面と、左右方向
25 における中央部に区画壁を備えている。また、図3から分かるように、押し当て
面と足側面にはエアバッグがそれぞれ設けられているが、エアバッグによる押圧
マッサージは足側面にのみ施される。図6から分かるように、押し当て面に設け
られたエアバッグの上部(足裏側)にはエアバッグとは別部材の突起物が配設さ
れており、エアバッグの膨張収縮により突起物が上下することで被施療者の足裏
の 一部 に対し 突 起物によるマッサージが施される。押し当て面のエアバッ グ は 、
5 突起物のみを通す穴の開いた硬質な素材であり底面保持部に固定された押し当
て面底板面により全体を覆われている。
B部材は、図2から分かるように、脚の側部に対向させる脚側面を備えている。
また、図3から分かるように、脚側面にはエアバッグが設けられており、被施療
者の脚の側部に押圧マッサージを施す。
10 オットマンは、A部材及びB部材のそれぞれが座部の前部に対して脚の長さ方
向に移動可能、かつ、A部材の足側面に設けられたエアバッグとB部材の脚側面
に設けられたエアバッグとの距離が変化するように、脚の長さ方向に伸縮可能で
ある。座部の前部に対しては、A部材、B部材が一体としてモータの駆動力で脚
の長さ方向に移動可能である。また、B部材に対して、A部材は引張スプリング
15 (以下「スプリング」という。)により伸縮する。以下、これらの構成を具体的
に説明する。
図4、5において、緑色の箇所は座部に回動支点を介して接続されている箇所
(以下「保持部」という。)である。保持部は、回動支点を介して基端側が座部
に接続された一対のシャフト、一対のシャフトの間に亘って設けられた三本のフ
20 レーム、三本のフレームのうち基端側のフレームに設けられたボールねじのねじ
軸、三本のフレームのうち先端側の二本のフレームに亘って設けられ、ねじ軸を
回転させるモータを備えている。
図4、5において、黄色の箇所は、B部材が固定され、モータの駆動力により
脚の長さ方向に移動可能な箇所(以下「第1可動部」という。)である。第1可
25 動部は、シャフトに平行して脚の長さ方向に延在する一対のスライダ保持フレー
ム、一対のスライダ保持フレームの間に亘って設けられた三本のスライダ(最も
基端側に設けられたスライダから先端側にかけて順に「第1スライダ」、「第2
スライダ」及び「第3スライダ」という。)、第2スライダの延在方向における
中央部に設けられたボールねじのナットを備えている。スライダ保持フレームは、
保持部に取り付けられているガイドローラに挟まれており、ガイドローラに案内
5 されて脚の長さ方向に沿って第1乃至第3スライダと一体となって移動可能に
構成されている。B部材は第1可動部がねじ軸に沿って移動すると、それに連動
して先端側、若しくは、基端側に移動するように構成されている。
図4、5において紫色の箇所は、A部材が固定され、スプリングにより脚の長
さ方向に移動可能な箇所(以下「第2可動部」という。)である。第2可動部は、
10 シャフト及びスライダ保持フレームに平行して脚の長さ方向に延在する一対の
管にそれぞれ内装されたスプリング、A部材の底面の四辺に位置する底面保持部
を備える。スプリングの一端は第1スライダに取り付けられ、他端は底面保持部
の後方端に取り付けられている。A部材の押し当て面に被施療者の脚の力が作用
していないときは、スプリングの付勢力(スプリングが短くなって自然長に戻ろ
15 うとする力)により、A部材はB部材に引き付けられ、密接して一体となってい
る。
電力供給によりモータを駆動させると、ねじ軸が回転し、その回転方向に従っ
てナットが先端側、若しくは、基端側に移動する。これにより、B部材が座部に
対して先端側、若しくは、基端側に移動する。上述したように、A部材の押し当
20 て面に脚の力が作用しないときには、スプリングを介してA部材とB部材とは座
部に対して一体となっているので、B部材が移動するとA部材も座部に対して同
じ距離だけ移動する。一方、被施療者がA部材の押し当て面に足裏を押し付けて
脚の力により押圧すると、スプリングが伸長し、脚の力に抗する方向(スプリン
グが短くなる方向)にA部材を付勢する。この結果、B部材に対してA部材が離
25 間する(先端側に移動する)。そして、脚の力が除去されると、A部材はスプリ
ングの付勢力により再度B部材に密接する。B部材は、モータが駆動していない
ときは、ねじ軸を介して保持部に固定されていることから、被施療者がA部材の
押し当て面に足裏を押し付けて脚の力により押圧し、又は加えられていた被施療
者の脚の力を除去しても移動することはなく、被施療者の脚の力の有無によって
座部とB部材との距離は変化しない。
3 被告製品1の構成の分説(本件発明Ⅰ-1との関係。下線部は原告主張と
の相違点)
ⅠAa’ 座部と、
Ⅰ A b’ マ ッ サ ージ 機 能を 有する A 部 材お よび B部 材 を 脚の 長さ 方 向 に並 べ
10 て成り、A部材には足裏の押し当て面が設けられているオットマンと、
Ⅰ A c’ 前 記 押 し当 て 面に 付与さ れ る 脚の 力に 抗す る 力 を前 記A 部 材 に付 与
するスプリングと、を備え、
ⅠAd’ 前記オットマンは、前記座部の前部に対して回動自在であり、
ⅠAe’ 前記A部材は、
15 ⅠAe1’ 前記押し当て面と、
ⅠAe2’ 足の側部に対向させる足側面と、
ⅠAe3’ 左右方向における中央部に区画壁と、
ⅠAe4’ 前記押し当て面に設けられたエアバッグと、エアバッグの上部(足裏
側)に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施す突起物と、
20 ⅠAe5’ 前 記 足 側面 に 設け られ被 施 療 者の 足の 側部 に 押 圧マ ッサ ー ジ を施 す
エアバッグと、を有し、
ⅠAf’ B部材は、
ⅠAf1’ 脚の側部に対向させる脚側面と、
ⅠAf2’ 前 記 脚 側面 に 設け られ被 施 療 者の 脚の 側部 に 押 圧マ ッサ ー ジ を施 す
25 エアバッグと、を有し、
ⅠAg’ 前記オットマンは、前記A部材および前記B部材のそれぞれが前記座
部の前部に対して脚の長さ方向に移動可能、かつ、前記A部材の前記足側面に設
けられた前記エアバッグと前記B部材の前記脚側面に設けられた前記エアバッ
グとの距離が変化するように、脚の長さ方向に伸縮可能であり、
5 ⅠAh’ 前記スプリングは、前記脚の力に抗する方向に前記A部材を付勢する
付勢手段であることを特徴とする
ⅠAi’ マッサージ機。
(被告製品1)
図1
図2
図3
回動支点 シャフト スライダ保持フレーム
保持部
第1可動部
第1スライダ
ねじ軸
第2スライダ
フレーム
ナット
ガイドローラ
モータ
スプリング 第3スライダ
(管に内装)
底面保持部
第2可動部 図4
シャフト スライダ保持フレーム
回動支点
保持部
第1可動部
第1スライダ
ねじ軸
フレーム
ガイドローラ
第2スライダ
スプリング
(管に内装) ナット
第2可動部 モータ
第3スライダ
底面保持部
図5
押し当て面底板面
A部材
突起物
底面保持部
エアバッグ
図6
以上
(別紙)
被告製品Ⅰ-B説明書(被告)
製品名 「マッサージチェア」
5 型式番号 「AS-860」(被告製品5)
1 図面の説明
図1 被告製品5の外観斜視図
図2 被告製品5のオットマンの拡大斜視図
10 図3 被告製品5のオットマンのエアバッグの位置を示す拡大斜視図
図4 被告製品5のオットマンの内部構成を示す正面図
図5 被告製品5のオットマンの内部構成を示す斜視図
図6 被告製品5の第2可動部の回動前後の比較図
図7 被告製品5の押し当て面の内部構成を示す断面図
2 被告製品5の構成と作用の説明
図1に示すように、被告製品5は、マッサージチェアであり、座部を備え、更に、脹脛か
ら足部(足裏を除く)に対してエアバッグの膨縮によるマッサージを行い、足裏に対しては
突起物による押圧によるマッサージを行うオットマンを備えている。図1、図2から分かる
20 ように、オットマンは足部をマッサージするA部材と脚部をマッサージするB部材とから構
成されている。A部材とB部材とは被施療者が着座したときに、脚の長さ方向に並んでいる。
また、A部材は被施療者の足裏が当接する押し当て面を有している。
オットマンは、座部の前部に対して回動自在である。
A部材は、図2から分かるように、足の側面に対向させる足側面と、左右方向における中
25 央部に区画壁を備えている。また、図3から分かるように、押し当て面と足側面にはエアバ
ッグがそれぞれ設けられているが、エアバッグによる押圧マッサージは足側面にのみ施され
る。図7から分かるように、押し当て面に設けられたエアバッグの上部(足裏側)にはエア
バッグとは別部材の突起物が配設されており、エアバッグの膨張収縮により突起物が上下す
ることで被施療者の足裏の一部に対し突起物によるマッサージが施される。押し当て面のエ
アバッグは、突起物のみを通す穴の開いた硬質な素材であり第2可動部底面に固定された押
5 し当て面底板面により全体を覆われている。
B部材は、図2から分かるように、脚の側部に対向させる脚側面を備えている。また、図
3から分かるように、脚側面にはエアバッグが設けられており、被施療者の脚の側部に押圧
マッサージを施す。
座部の前部に対して、B部材は引張スプリング(以下「第1スプリング」という。)によ
10 り伸縮する。これに対し、後述のとおり、A部材は第1スプリングとは別のスプリング(以
下「第2スプリング」という。)により被施療者が踵を載せる部分を軸に、つま先を載せる
部分を上方又は下方に動かすことができるのみで、「座部の前部に対して脚の長さ方向に移
動可能」ではなく、「A部材の足側面に設けられたエアバッグとB部材の脚側面に設けられ
たエアバッグとの距離が変化する」こともない。以下、これらの構成を具体的に説明する。
15 図4、図5において、緑色の箇所は座部に回動支点を介して接続されている箇所(以下「保
持部」という。)である。保持部は、回動支点を介して基端側が座部に接続された一対のシ
ャフト、一対のシャフトの間に亘って設けられた三本のフレームを備えている。
図4、図5において、黄色の箇所は、B部材が固定され、スプリングにより脚の長さ方向
に移動可能な箇所(以下「第1可動部」という。)である。第1可動部は、シャフトに平行
20 して脚の長さ方向に延在する一対のスライダ保持フレーム、一対のスライダ保持フレームの
間に亘って設けられた二本のスライダ(基端側に設けられたスライダを「第1スライダ」、
先端側に設けられたスライダを「第2スライダ」という。)を備えている。第1可動部に固
定されたB部材には第1スプリングの一端が取り付けられ、他端は保持部に取り付けられて
いる。A部材の押し当て面に被施療者の脚の力が作用していないときは、スプリングの付勢
25 力(スプリングが短くなって自然長に戻ろうとする力)により、B部材は座部の前部に引き
付けられ、密接して一体となっている。
図4、図5において紫色の箇所は、A部材が固定され、スプリングにより回動可能な箇所
(以下「第2可動部」という。)である。第2可動部は、A部材の底面の四辺に位置してお
り、その踵側には第2スプリングの一端が取り付けられ、他端は第1可動部の第2スライダ
の左右両端から略垂直に延びる突起部に取り付けられている。
5 被施療者がA部材の押し当て面に足裏を押し付けて脚の力により押圧すると、第1スプリ
ングが伸長し、座部の前部に対してB部材が離間する(先端側に移動する)。そして、脚の
力が除去されると、B部材はスプリングの付勢力により再度座部の前部に密接する。また、
図6に示すとおり、被施療者がA部材の押し当て面のつま先側を脚の力により押圧すると、
第2スプリングが伸長し、A部材が回動軸を軸に下方に回動する。そして、脚の力が除去さ
10 れると、A部材はスプリングの付勢力により上方に回動して再度B部材に密接する。A部材
は回動軸を軸とする回動のみ可能であり、被施療者がA部材の押し当て面を押圧してもA部
材は脚の長さ方向には移動しない。
3 被告製品5の構成の分説(本件発明Ⅰ-1との関係。下線部は原告主張の相違点)
15 ⅠBa’ 座部と、
ⅠBb’ マッサージ機能を有するA部材およびB部材を脚の長さ方向に並べて成り、A
部材には足裏の押し当て面が設けられているオットマンと、
ⅠBc’ 前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記B部材に付与する第1
スプリングと、前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記A部材に付与する第2
20 スプリングと、を備え、
ⅠBd’ 前記オットマンは、前記座部の前部に対して回動自在であり、
ⅠBe’ 前記A部材は、
ⅠBe1’ 前記押し当て面と、
ⅠBe2’ 足の側部に対向させる足側面と、
25 ⅠBe3’ 左右方向における中央部に区画壁と、
ⅠBe4’ 前記押し当て面に設けられたエアバッグと、エアバッグの上部(足裏側)に設
けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施す突起物と、
ⅠBe5’ 前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエアバッ
グと、を有し、
ⅠBf’ B部材は、
5 ⅠBf1’ 脚の側部に対向させる脚側面と、
ⅠBf2’ 前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施すエアバッ
グと、を有し、
ⅠBg’ 前記オットマンのうち、前記B部材のみが前記座部の前部に対して脚の長さ方
向に移動可能である一方、前記A部材は回動軸を軸にした回動のみ可能であり、
10 ⅠBh’ 前記第1スプリングは、前記脚の力に抗する方向に前記A部材を付勢する付勢
手段であることを特徴とする
ⅠBi’ マッサージ機。
(被告製品5)
座部
B部材
A部材
オットマン
図1
脚側面
B部材
区画壁
足側面
A部材
押し当て面
図2
※グレーの箇所はエ
アバッグ
図3
回動支点 シャフト スライダ保持フレーム
保持部
第1可動部
第1スライダ
フレーム
突起部
第1スプリング
第2可動部
第2スライダ
第2スプリング
回動軸
図4
シャフト
回動支点 保持部
スライダ保持フレーム
第1可動部
フレーム
第1スライダ
第1スプリング
突起部
第2可動部
第2スプリング
第2スライダ
回動軸
図5
第2スプリング 第2スプリング
第2可動部
第2可動部
回動軸
図6
A部材
押し当て面底板面
突起物
エアバッグ
図7
以上
(別紙)
被告製品Ⅰ-D説明書(被告)
製品名 「マッサージチェア」
5 型式番号 「AS-850」(被告製品6)
1 図面の説明
図1 被告製品6の外観斜視図
図2 被告製品6のオットマンの拡大斜視図
10 図3 被告製品6のオットマンのエアバッグの位置を示す拡大斜視図
図4 被告製品6のオットマンの内部構成を示す正面図
図5 被告製品6のオットマンの内部構成を示す斜視図
図6 被告製品6のオットマンの脚先側下端の裏面を表す写真
図7 被告製品6のオットマンの脚先側下端の車輪を表す写真
15 図8 被告製品6の押し当て面の内部構成を示す断面図
2 被告製品6の構成と作用の説明
図1に示すように、被告製品5は、マッサージチェアであり、座部を備
え、さらに、脹脛から足部(足裏を除く)に対してエアバッグの膨縮によ
20 るマッサージを行い、足裏に対しては突起物による押圧によるマッサージ
を行うオットマンを備えている。図1から分かるように、オットマンは足
部をマッサージするA部材と、脚部をマッサージするB部材及びC部材と
から構成されている。A部材、B部材、C部材は被施療者が着座したとき
に、脚の長さ方向に並んでいる。また、A部材は被施療者の足裏が当接す
25 る押し当て面を有している。
オットマンは、座部の前部に対して回動自在である。
A部材は、図2から分かるように、足の側面に対向させる足側面と、左
右方向における中央部に区画壁を備えている。また、図3から分かるよう
に、押し当て面と足側面にはエアバッグがそれぞれ設けられているが、エ
アバッグによる押圧マッサージは足側面にのみ施される。図8から分かる
5 ように、押し当て面に設けられたエアバッグの上部(足裏側)にはエアバ
ッグとは別部材の2個の突起物が配設されており、エアバッグの膨張収縮
により突起物が上下することで被施療者の足裏の一部に対し突起物による
マッサージが施される。押し当て面のエアバッグは、2個の突起物を通す
穴の開いた硬質な素材であり底面保持部に固定された押し当て面底板面に
10 より全体を覆われている。
B部材とC部材は、図2から分かるように、脚の側部に対向させる脚側
面をそれぞれ備えている。また、図3から分かるように、それぞれの脚側
面にはエアバッグが設けられており、被施療者の脚の側部に押圧マッサー
ジを施す。
15 オットマンは、A部材とB部材、及び、B部材とC部材の各距離を脚の
長さ方向にそれぞれ変更可能である。具体的には、B部材とC部材の距離
は、モータの駆動力で脚の長さ方向に移動可能である。また、A部材は、
B部材に対して引張スプリング(以下「スプリング」という)により伸縮
する。これに対し、C部材は座部の前部に固定されており、座部の前部と
20 C部材の距離は変更することができない。以下、これらの構成を具体的に
説明する。
図4、5において、緑色の箇所は座部に回動支点を介して接続されてい
る箇所(以下「保持部」という)である。C部材は保持部に固定されてい
る。保持部は、回動支点を介して基端側が座部に接続された一対のシャフ
25 ト、一対のシャフトの間に亘って設けられた板金状のフレームを備えてい
る。
図4、図5において、黄色の箇所は、B部材が固定され、モータの駆動
力により脚の長さ方向に移動可能な箇所(以下「第1可動部」という)で
ある。第1可動部は、シャフトに平行して脚の長さ方向に延在する一対の
スライダ保持フレーム、一対のスライダ保持フレームの間に亘って設けら
5 れた二本のスライダ(基端側に設けられたスライダを「第1スライダ」、
先端側に設けられたスライダを「第2スライダ」という)、第1スライダ
と保持部のフレームに亘って設けられたボールねじのねじ軸、ねじ軸の下
端に設けられ、ねじ軸を回転させるモータを備えている。スライダ保持フ
レームは、保持部に取り付けられているガイドローラに挟まれており、ガ
10 イドローラに案内されて脚の長さ方向に沿って第1及び第2スライダと一
体となって移動可能に構成されている。B部材は第1可動部がねじ軸に沿
って移動すると、それに連動して先端側、若しくは、基端側に移動するよ
うに構成されている。
図4、図5において紫色の箇所は、A部材が固定され、スプリングによ
15 り脚の長さ方向に移動可能な箇所(以下「第2可動部」という)である。
第2可動部は、シャフト及びスライダ保持フレームに平行して脚の長さ方
向に延在する一対の管にそれぞれ内装されたスプリング、A部材の底面の
四辺に位置する底面保持部を備える。スプリングの一端は第1スライダに
取り付けられ、他端は底面保持部の後方端に取り付けられている。A部材
20 の押し当て面に被施療者の脚の力が作用していないときは、スプリングの
付勢力(スプリングが短くなって自然長に戻ろうとする力)により、A部
材はB部材に引き付けられ、密接して一体となっている。
電力供給によりモータを駆動させると、ねじ軸が回転し、その回転方向
に従ってB部材が座部に対して先端側、若しくは、基端側に移動する。上
25 述したように、A部材の押し当て面に脚の力が作用しないときには、スプ
リングを介してA部材とB部材とは座部に対して一体となっているので、
B部材が移動するとA部材も座部に対して同じ距離だけ移動する。 かし、

B部材は、モータが駆動していないときは、ねじ軸を介して保持部に固定
されていることから、被施療者がA部材の押し当て面に足裏を押し付けて
脚の力により押圧し、又は加えられていた被施療者の脚の力を除去しても
5 移動することはなく、被施療者の脚の力の有無によってC部材とB部材と
の距離は変化しない。C部材は、座部に対して回動可能に接続されている
ものの、脚の長さ方向には伸縮せずに固定されている。一方、被施療者が
A部材の押し当て面に足裏を押し付けて脚の力により押圧すると、スプリ
ングが伸長し、脚の力に抗する方向(スプリングが短くなる方向)にA部
10 材を付勢する。この結果、B部材に対してA部材が離間する(先端側に移
動する)。そして、脚の力が除去されると、A部材はスプリングの付勢力
により再度B部材に密接する。A部材、B部材、C部材はそれぞれエアバ
ッグを備えているので、A部材がB部材に対して脚の長さ方向に伸縮する
と、A部材のエアバッグとB部材のエアバッグの距離は変化し、B部材が
15 C部材に対して脚の長さ方向に伸縮すると、B部材のエアバッグとC部材
のエアバッグの距離は変化する。しかし、C部材は、脚の長さ方向には伸
縮せずに固定されているので、座部の前部とC部材のエアバッグとの距離
は変化しない。
図6、図7に示すように、A部材の底面の裏面には2つの車輪が設けら
20 れている。A部材の底面の裏面が床面に対向している状態(下向き状態)
において、オットマンのA部材、及び/又は、B部材が伸長すると、この
車輪が床面に当接する。被告製品6は、車輪が床面を転がることにより、
オットマンを伸縮させつつ回動支点を中心に回動させて、オットマンを前
後方向に移動させることができるように構成されている。
3 被告製品6の構成の分説(本件発明Ⅰ-1との関係。下線部は原告
主張との相違点)
ⅠDa’ 座部と、
ⅠDb’ マ ッ サ ー ジ 機 能 を 有 す る A 部 材 、B 部 材 お よ び C 部 材 を 脚 の 長
さ方向に並べて成り、A部材には足裏の押し当て面が設けられているオッ
5 トマンと、
ⅠDc’ 前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記A部材
に付与するスプリングと、を備え、
ⅠDe’ 前記オットマンは、前記座部の前部に対して回動自在であり、
前記A部材は、
10 ⅠDe1’ 前記押し当て面と、
ⅠDe2’ 足の側部に対向させる足側面と、
ⅠDe3’ 左右方向における中央部に区画壁と、
ⅠDe4’ 前 記 押 し 当 て 面 に 設 け ら れ た エ ア バ ッ グ と 、エ ア バ ッ グ の 上 部
(足裏側)に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施す2つの突起
15 物と、
ⅠDe5’ 前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージ
を施すエアバッグと、を有し、
ⅠDf’ B部材およびC部材は、
ⅠDf1’ 脚の側部に対向させる脚側面と、
20 ⅠDf2’ 前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージ
を施すエアバッグと、を有し、
ⅠDg’ 前 記 オ ッ ト マ ン の う ち 、前 記 A 部 材 が 前 記 B 部 材 に 対 し て 脚 の
長さに移動可能、かつ、前記B部材が前記C部材に対して脚の長さ方向に
移動可能である一方、前記C部材を前記座部に対して脚の長さ方向に移動
25 させることはできず、
ⅠDh’ 前 記 ス プ リ ン グ は 、前 記 脚 の 力 に 抗 す る 方 向 に 前 記 A 部 材 を 付
勢する付勢手段であることを特徴とする
ⅠDi’ マッサージ機。
4 被告製品6の構成の分説(本件発明Ⅰ-2との関係。下線部は原告
5 主張との相違点)
ⅠDj’ 座部と、
ⅠDk’ マ ッ サ ー ジ 機 能 を 有 す る A 部 材 、B 部 材 お よ び C 部 材 を 脚 の 長
さ方向に並べて成り、A部材には足裏の押し当て面が設けられているオッ
トマンと、
10 ⅠDl’ 前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記A部材
に付与するスプリングと、を備え、
ⅠDm’ 前記オットマンは、前記座部の前部に対して回動自在であり、
ⅠDn’ 前記A部材および前記B部材を脚の長さ方向に移動させるこ
とにより、前記A部材および前記B部材、並びに、前記B部材および前記
15 C部材の各離隔距離を脚の長さ方向に変更可能である一方、前記C部材を
脚の長さ方向に移動させて前記B部材および前記C部材の各離隔距離を脚
の長さ方向に変更することはできず、
ⅠDо’ 前記A部材は、
ⅠDо1’ 前記押し当て面と、
20 ⅠDo2’ 足の側部に対向させる足側面と、
ⅠDo3’ 左右方向における中央部に区画壁と、
ⅠDo4’ 前 記 押 し 当 て 面 に 設 け ら れ た エ ア バ ッ グ と 、エ ア バ ッ グ の 上 部
(足裏側)に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施す2つの突起
物と、
25 ⅠDo5’ 前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージ
を施すエアバッグと、を有し、
ⅠDp’ B部材およびC部材は、それぞれ
ⅠDp1’ 脚の側部に対向させる脚側面と、
ⅠDp2’ 前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージ
を施すエアバッグと、を有し、
5 ⅠDq’ 前 記 オ ッ ト マ ン は 、前 記 A 部 材 の 前 記 足 側 面 に 設 け ら れ た 前 記
エアバッグと前記B部材および前記C部材の前記脚側面に設けられた前記
エアバッグとの距離が変化するように、脚の長さ方向に伸縮可能であり、
ⅠDr’ 前 記 ス プ リ ン グ は 、前 記 脚 の 力 に 抗 す る 方 向 に 前 記 A 部 材 を 付
勢する付勢手段であることを特徴とする
10 ⅠDs’ マッサージ機。
5 被告製品6の構成の分説(本件発明Ⅰ-3との関係。下線部は原告
主張との相違点)
ⅠDt’ 前 記 オ ッ ト マ ン の 脚 先 側 下 端 に は 、下 向 き 状 態 に あ る 前 記 オ ッ
15 トマンが伸長すると床に接地する車輪が設けられ、
ⅠDu’ 前 記 オ ッ ト マ ン は 、伸 長 し な が ら 上 方 へ 回 動 可 能 で あ る こ と を
特徴とする
ⅠDv’ マ ッ サ ー ジ 機( 請 求 項 1 又 は 請 求 項 2 に 記 載 さ れ て い る も の で
はない)。
6 被告製品6の構成の分説(本件発明Ⅰ-4との関係。下線部は原告
主張との相違点)
ⅠDw’ 前 記 B 部 材 お よ び C 部 材 は 、左 右 方 向 に お け る 中 央 部 に 区 画 壁
を有することを特徴とする
25 ⅠDx’ マッサージ機(請求項2に記載されているものではない)。
(被告製品6)
図1
図2
図3
回動支点 シャフト スライダ保持フレーム
第1可動部 保持部
ねじ軸
第1スライダ
モータ
フレーム
ガイドローラ
第2スライダ
第2可動部
底面保持部
スプリング
(管に内装)
図4
回動支点 シャフト スライダ保持フレーム
第1可動部
保持部
ねじ軸
モータ
第1スライダ
ガイドローラ
フレーム
第2可動部
第2スライダ
スプリング
底面保持部
(管に内装)
図5
図6
図7
A部材
押し当て面底板面
突起物
エアバッグ 底面保持部
図8
以上
(別紙)
被告製品Ⅰ-E説明書(被告)
製品名 「マッサージチェア」
5 型式番号 「AS-840」(被告製品8)
1 図面の説明
図1 被告製品8の外観斜視図
図2 被告製品8のオットマンの拡大斜視図
10 図3 被告製品8のオットマンのエアバッグの位置を示す拡大斜視図
図4 被告製品8のオットマンの内部構成を示す正面図
図5 被告製品8のオットマンの内部構成を示す斜視図
図6 被告製品8の押し当て面の内部構成を示す断面図
15 2 被告製品8の構成と作用の説明
図1に示すように、被告製品8は、マッサージチェアであり、座部を備え、更に、
脹脛から足部(足裏を除く)に対してエアバッグの膨縮によるマッサージを行い、
足裏に対しては突起物による押圧によるマッサージを行うオットマンを備えている。
図1、図2から分かるように、オットマンは足部をマッサージするA部材と脚部を
20 マッサージするB部材とから構成されている。A部材とB部材とは被施療者が着座
したときに、脚の長さ方向に並んでいる。また、A部材は被施療者の足裏が当接す
る押し当て面を有している。
オットマンは、座部の前部に対して回動自在である。
A部材は、図2から分かるように、足の側面に対向させる足側面と、左右方向に
25 おける中央部に区画壁を備えている。また、図3から分かるように、押し当て面と
足側面にはエアバッグがそれぞれ設けられているが、エアバッグによる押圧マッサ
ージは足側面にのみ施される。図6から分かるように、押し当て面に設けられたエ
アバッグの上部(足裏側)にはエアバッグとは別部材の2個の突起物が配設されて
おり、エアバッグの膨張収縮により突起物が上下することで被施療者の足裏の一部
に対し突起物によるマッサージが施される。押し当て面のエアバッグは、2個の突
5 起物のみを通す穴の開いた硬質な素材であり底面保持部に固定された押し当て面底
板面により全体を覆われている。
B部材は、図2から分かるように、脚の側部に対向させる脚側面を備えている。
また、図3から分かるように、脚側面にはエアバッグが設けられており、被施療者
の脚の側部に押圧マッサージを施す。
10 オットマンは、A部材及びB部材のそれぞれが座部の前部に対して脚の長さ方向
に移動可能、かつ、A部材の足側面に設けられたエアバッグとB部材の脚側面に設
けられたエアバッグとの距離が変化するように、脚の長さ方向に伸縮可能である。
座部の前部に対しては、A部材、B部材が一体としてモータの駆動力で脚の長さ方
向に移動可能である。また、B部材に対して、A部材は引張スプリング(以下「ス
15 プリング」という)により伸縮する。以下、これらの構成を具体的に説明する。
図4、図5において、緑色の箇所は座部に回動支点を介して接続されている箇所
(以下「保持部」という)である。保持部は、回動支点を介して基端側が座部に接
続された一対のシャフト、一対のシャフトの間に亘って設けられた四本のフレーム
を備えている。
20 図4、図5において、黄色の箇所は、B部材が固定され、モータの駆動力により
脚の長さ方向に移動可能な箇所(以下「第1可動部」という)である。第1可動部
は、シャフトに平行して脚の長さ方向に延在する一対のスライダ保持フレーム、一
対のスライダ保持フレームの間に亘って設けられた二本のスライダ(基端側に設け
られたスライダを「第1スライダ」、先端側に設けられたスライダを「第2スライ
25 ダ」という)、第1スライダと保持部のフレームに亘って設けられたボールねじの
ねじ軸、ねじ軸の下端に設けられ、ねじ軸を回転させるモータを備えている。スラ
イダ保持フレームは、保持部に取り付けられているガイドローラに挟まれており、
ガイドローラに案内されて脚の長さ方向に沿って第1及び第2スライダと一体とな
って移動可能に構成されている。B部材は第1可動部がねじ軸に沿って移動すると、
それに連動して先端側、若しくは、基端側に移動するように構成されている。
5 図4、図5において紫色の箇所は、A部材が固定され、スプリングにより脚の長
さ方向に移動可能な箇所(以下「第2可動部」という)である。第2可動部は、シ
ャフト及びスライダ保持フレームに平行して脚の長さ方向に延在する一対の管にそ
れぞれ内装されたスプリング、A部材の底面の四辺に位置する底面保持部を備える。
スプリングの一端は第1スライダに取り付けられ、他端は底面保持部の後方端に取
10 り付けられている。A部材の押し当て面に被施療者の脚の力が作用していないとき
は、スプリングの付勢力(スプリングが短くなって自然長に戻ろうとする力)によ
り、A部材はB部材に引き付けられ、密接して一体となっている。
電力供給によりモータを駆動させると、ねじ軸が回転し、その回転方向に従って
ナットが先端側、若しくは、基端側に移動する。これにより、B部材が座部に対し
15 て先端側、若しくは、基端側に移動する。上述したように、A部材の押し当て面に
脚の力が作用しないときには、スプリングを介してA部材とB部材とは座部に対し
て一体となっているので、B部材が移動するとA部材も座部に対して同じ距離だけ
移動する。一方、被施療者がA部材の押し当て面に足裏を押し付けて脚の力により
押圧すると、スプリングが伸長し、脚の力に抗する方向(スプリングが短くなる方
20 向)にA部材を付勢する。この結果、B部材に対してA部材が離間する(先端側に
移動する)。そして、脚の力が除去されると、A部材はスプリングの付勢力により
再度B部材に密接する。B部材は、モータが駆動していないときは、ねじ軸を介し
て保持部に固定されていることから、被施療者がA部材の押し当て面に足裏を押し
付けて脚の力により押圧し、又は加えられていた被施療者の脚の力を除去しても移
25 動することはなく、被施療者の脚の力の有無によって座部とB部材との距離は変化
しない。
被告製品8は、被告製品6と同様に、A部材の底面の裏面には2つの車輪が設け
られている。A部材の底面の裏面が床面に対向している状態(下向き状態)におい
て、オットマンのA部材、及び/又は、B部材が伸長すると、この車輪が床面に当
接する。被告製品8は、車輪が床面を転がることにより、オットマンを伸縮させつ
5 つ回動支点を中心に回動させて、オットマンを前後方向に移動させることができる
ように構成されている。
3 被告製品8の構成の分説(本件発明Ⅰ-1との関係。下線部は原告主張との
相違点)
10 ⅠEa’ 座部と、
ⅠEb’ マッサージ機能を有するA部材およびB部材を脚の長さ方向に並べて
成り、A部材には足裏の押し当て面が設けられているオットマンと、
ⅠEc’ 前記押し当て面に付与される脚の力に抗する力を前記A部材に付与す
るスプリングと、を備え、
15 ⅠEd’ 前記オットマンは、前記座部の前部に対して回動自在であり、
ⅠEe’ 前記A部材は、
ⅠEe1’ 前記押し当て面と、
ⅠEe2’ 足の側部に対向させる足側面と、
ⅠEe3’ 左右方向における中央部に区画壁と、
20 ⅠEe4’ 前記押し当て面に設けられたエアバッグと、エアバッグの上部(足裏側)
に設けられ被施療者の足裏に押圧マッサージを施す突起物と、
ⅠEe5’ 前記足側面に設けられ被施療者の足の側部に押圧マッサージを施すエ
アバッグと、を有し、
ⅠEf’ B部材は、
25 ⅠEf1’ 脚の側部に対向させる脚側面と、
ⅠEf2’ 前記脚側面に設けられ被施療者の脚の側部に押圧マッサージを施すエ
アバッグと、を有し、
ⅠEg’ 前記オットマンは、前記A部材および前記B部材のそれぞれが前記座部
の前部に対して脚の長さ方向に移動可能、かつ、前記A部材の前記足側面に設けら
れた前記エアバッグと前記B部材の前記脚側面に設けられた前記エアバッグとの距
5 離が変化するように、脚の長さ方向に伸縮可能であり、
ⅠEh’ 前記スプリングは、前記脚の力に抗する方向に前記A部材を付勢する付
勢手段であることを特徴とする
ⅠEi’ マッサージ機。
10 4 被告製品8の構成の分説(本件発明Ⅰ-3との関係。下線部は原告主張との
相違点)
ⅠEt’ 前記オットマンの脚先側下端には、下向き状態にある前記オットマンが
伸長すると床に接地する車輪が設けられ、
ⅠEu’ 前記オットマンは、伸長しながら上方へ回動可能であることを特徴とす
15 る
ⅠEv’ マッサージ機(請求項1又は請求項2に記載されているものではない)。
(被告製品8)
図1
図2
図3
回動支点 シャフト スライダ保持フレーム
保持部
第1可動部
ナット
ねじ軸
第1スライダ
モータ
フレーム
ガイドローラ
第2スライダ
第2可動部
底面保持部
スプリング
(管に内装)
図4
回動支点 スライダ保持フレーム
シャフト
保持部
第1可動部
第1スライダ
ねじ軸
フレーム
ガイドローラ
ナット
モータ
第2スライダ
第2可動部
底面保持部
スプリング
(管に内装)
図5
A部材
押し当て面底板面
突起物
エアバッグ
底面保持部
図6
以上
別 紙 Ⅱ
(別紙Ⅱ)
第1 前提事実
1 本件特許権Ⅱ
原告は、本件特許権Ⅱを有している。
5 なお、本件特許Ⅱの特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、明細書及び図面を
「本件明細書Ⅱ」という。)の記載は、別紙「特許公報(甲第7号証)」のとおり
である。
2 構成要件
本件特許Ⅱの特許請求の範囲請求項1~3(以下、項順に「本件発明Ⅱ-1」な
10 どといい、これらを併せて「本件発明Ⅱ」と総称する。)の構成要件は次のとおり
分説される。
(1) 請求項1(本件発明Ⅱ-1)
A 座部と、
B 前記座部の後部に設けられた背凭れ部と、
15 C マッサージ用モータの回転動力で叩き動作軸が回転することで、左右の施療
子が交互に前後揺動する叩き動作を行う機械式のマッサージ器と、を備え、
D 前記マッサージ器が前記背凭れ部内で昇降自在に設けられ、
E 前記背凭れ部は、機械式の前記マッサージ器の左右両側に位置するとともに、
前記背凭れ部にもたれた使用者よりも左右方向外側に位置するように、前記背凭れ
20 部の左右両側部からそれぞれ前方突出し、両突起体の間に前記背凭れ部にもたれた
使用者の両腕及び両腕の間の胴体をまとめてはめ込める左右間隔を有する左右一対
の突起体を備え、
F 前記左右一対の突起体は、両突起体の間にはめ込まれた使用者の両腕の外側
に対向する内側面をそれぞれ備え、
25 G 前記左右一対の突起体の前記内側面には、それぞれ、使用者の両腕の左右外
側に対向するとともに、空気の給排気によって膨張収縮する空気式マッサージ具が
設けられ、
H 前記空気式マッサージ具が、左右方向内方に膨張して、前記左右の施療子の
前方かつ左右方向外側位置において使用者の両腕の外側を押圧して、使用者の胴体
を両腕の外側から左右に挟みつつ、それと同時に、前記左右の施療子によって使用
5 者の背中に対して左右交互に叩き動作行う
I ことを特徴とする椅子型マッサージ機。
(2) 請求項2(本件発明Ⅱ-2)
J 前記空気式マッサージ具が、左右方向内方に膨張して、前記左右の施療子の
前方かつ左右方向外側位置において使用者の両腕の外側を押圧して、使用者の胴体
10 を両腕の外側から左右に挟みつつ、それと同時に、機械式の前記マッサージ器を昇
降させながら前記左右の施療子によって使用者の背中に対して左右交互に叩き動作
行う
K 請求項1記載の椅子型マッサージ機。
(3) 請求項3(本件発明Ⅱ-3)
15 L 前記座部は、空気の給排気によって使用者を押圧する空気式のマッサージ具
を備え、
M 前記左右一対の突起体の前記内側面に設けられた前記空気式マッサージ具は、
前記左右の施療子による叩き動作と前記座部の空気式マッサージ具からの押圧とを
受ける人体の腕の外側から左右に挟むものである
20 N 請求項1又は2記載の椅子型マッサージ機。
3 被告製品Ⅱの構成
本件特許権Ⅱとの関係で、その被疑侵害品である被告の製品は、構成上の相違か
ら次のとおりⅡ-A、Ⅱ-B、Ⅱ-C及びⅡ-Dに分類することができる(以下、
これらを「被告製品Ⅱ」と総称する。)。被告製品Ⅱの具体的な構成については、
25 当事者間に争いがある。原告は、被告製品Ⅱ-A~Ⅱ-Dのいずれに対しても、本
件発明Ⅱ-1~Ⅱ-3の充足を主張している。
分類 代表被告製品 同様の構成を有する被告製品 侵害主張(本件発明)
Ⅱ-A 1 46、48~50、61 Ⅱ-1~Ⅱ-3
Ⅱ-B 8 9、12、13、59 Ⅱ-1~Ⅱ-3
Ⅱ-C 22 23 Ⅱ-1~Ⅱ-3
Ⅱ-D 24 Ⅱ-1~Ⅱ-3
被告製品Ⅱ-A~Ⅱ-Dが、いずれも本件発明Ⅱ-1に係る構成要件A~G及び
Iを充足することは当事者間に争いがない。
4 被告の行為
被告は、被告製品Ⅱにつき、別紙1「被告製品目録」の各「製造販売開始時期」
5 欄記載の時期から、その製造販売を開始した。
5 無効審判請求等
被告は、本件特許Ⅱの無効審判請求を行ったところ、特許庁は、平成31年4月
2日、被告の審判請求は成り立たないとの審決をした(甲B21)。被告は、同審
決の取消しを求めて訴えを提起したが、知的財産高等裁判所は、令和2年1月28
10 日、被告の請求を棄却する判決を言い渡し、同判決は、令和2年9月3日、確定し
た(甲100、弁論の全趣旨。以下、これらの審決等を「本件審決等」という。)。
6 争点
本件の主要な争点は、被告製品Ⅱの本件発明Ⅱの技術的範囲への属否である。
第2 争点(被告製品Ⅱの本件発明Ⅱの技術的範囲への属否)についての当事者の
15 主張
(原告の主張)
1 被告製品Ⅱの構成
被告製品Ⅱの構成については、別紙「被告製品Ⅱ-A説明書(原告)」、同「被
告製品Ⅱ-B説明書(原告)」、同「被告製品Ⅱ-C説明書(原告)」及び同「被
20 告製品Ⅱ-D説明書(原告)」記載のとおりである。
2 「前記空気式マッサージ具が、…膨張して、…押圧して、…挟みつつ、それ
と同時に、前記左右の施療子によって…左右交互に叩き動作行う」(構成要件H)
の充足性
(1)ア 本件発明Ⅱ-1に係る構成要件全体を合わせて構成要件Hを理解すれば、
構成要件Hの「空気式マッサージ具」及び「(左右の)施療子」が有している機能
5 や性能等、これらが設けられている位置、他の部位との関係、あるいは動作態様は、
構成要件H以外の他の構成要件によって特定され、明らかにされている。このよう
な場合、構成要件H中に機能、特性等を用いて「空気式マッサージ具」と「(左右
の)施療子」を特定する記載があっても、その記載は、「空気式マッサージ具」と
「左右の施療子」自体を意味するものであるから、構成要件Hの「…膨張して…押
10 圧して…挟みつつ、それと同時に、…」は、その文言どおり、膨張して押圧し挟む
という空気式マッサージ具の動作と施療子による叩き動作が、その各動作の先後を
問わず、同時に発現することを意味することは明らかである。
また、構成要件Hの文言中の「挟みつつ」における「つつ」とは、「二つの動作・
作用が同時に並行して行われること」である。また「挟みつつ」とは、「○○(動
15 作)しつつ」「○○(動作)しながら」、あるいは「○○する一方で」という意味
であり、「○○するのと一緒に」「○○しながら」「○○するのと同時に」「○○
するのと並行して」と言い換えることもできる。このように「挟みつつ」の意味は、
その語義上明らかであり明確である。
さらに、本件明細書Ⅱ(【0027】)をみると、「施療子」による「叩き動作」や
20 「揉み動作」によってマッサージできると同時に「空気式マッサージ具」に空気を
給排することによってマッサージすることができることが、本件特許Ⅱに係る特許
請求の範囲請求項1の内容に即して明確に説明されている。
以上から、「前記空気式マッサージ具が、…膨張して、…押圧して、…挟みつつ、
それと同時に、前記左右の施療子によって…左右交互に叩き動作行う」とは、空気
25 式マッサージ具が膨張して押圧して挟む動作と施療子による叩き動作が、その各動
作の先後を問わず、同時に発現する動作態様が実現されるものであれば足りると解
される。
イ 被告は、構成要件Hは一連のステップに係る動作態様を特定しており一連の
ステップの手順が必須要素であること、本件明細書Ⅱや出願経過に係る原告の説明
内容を指摘して、構成要件Hは、一連のステップに係る動作態様の手順、順序、順
5 番を必須要素としている旨を主張する。
しかし、前記アのとおり、本件特許Ⅱに係る特許請求の範囲請求項1は、構成要
件Hのみから成り立っているのではないから、同請求項1全体から理解すべきであ
る。また、本件特許Ⅱは椅子型マッサージ機という物の発明であるところ、その中
で動作的表現が含まれるからといって、短絡的に限定解釈することは相当でない。
10 本件明細書Ⅱの記載については、被告は、段落【0027】の一部を根拠に「挟み(固
定)→「叩き動作」との動作態様や、一定の時間継続して固定状態を維持すること
を要するかのように主張するが、その前後や他の記載をみると、固定状態は要求さ
れず、空気式マッサージ具の膨張し押圧して挟む動作と施療子による叩き動作が、
各動作の先後を問わず、同時に発現すれば足りることは明らかである。
15 さらに、出願経過に係る原告の説明内容(手続補正書とともに提出された意見書
の説明及び参考図1及び2)をみるに、膨張して押圧して挟むという空気式マッサ
ージ具の動作と施療子による叩き動作が、その各動作の先 後 を問わず、同時に発現
すれば足りることが自然と理解できる。
なお、被告は、令和3年11月22日付け準備書面43において、本件審決等の
20 内容を踏まえ、被告製品Ⅱ-A及びⅡ-Bの充足論に関する主張を行っているが、
これは侵害論に関する主張の蒸し返しに他ならず、時機に後れた攻撃防御方法とし
て却下されるべきである。
(2) 前記1のとおり、被告製品Ⅱは、いずれも、「(a ) エ ア バ ッ グ が 、左 右 方
向内方に膨張して、左右のもみ玉の前方かつ左右方向外側位置において
25 使用者の両腕の外側を押圧して、使用者の胴体を両腕の外側から左右に
挟 む 。( b )機 械 式 の マ ッ サ ー ジ 器 が 昇 降 す る 。(c) 左 右 の も み 玉 に よ っ て 使
用 者 の 背 中 に 対 し て 左 右 交 互 に 叩 き 動 作 行 う 。」と い う 動 作 を 、各 動 作 の
先後を問わず、同時に発現する構成を具備している。
し た が っ て 、被 告 製 品 Ⅱ は 、い ず れ も「前記空気式マッサージ具が、…膨張
して、…押圧して、…挟みつつ、それと同時に、前記左右の施療子によって…左右
5 交互に叩き動作行う」の構成を有する。
3 「使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ」(構成要件H)の充足性
(1)ア 前記2(1)のとおり、本件発明Ⅱ-1に係る構成要件全体の理解、「挟み
つつ」「それと同時に」の語義、本件明細書Ⅱの記載内容に照らすと、「使用者の
胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ」とは、その字義どおり、使用者の胴体を「左
10 右に挟みつつ」という動作があれば足りると解するのが相当である。
イ 被告は、本件発明Ⅱ-1に係る特許請求の範囲請求項1において「押圧」と
「挟みつつ」という二つの文言が使い分けられていること、本件明細書Ⅱの記載内
容や出願経過に係る原告の説明内容から、「使用者の胴体を両腕の外側から左右に
挟みつつ」とは、機械式マッサージ器による叩き動作が継続している一定の時間中、
15 空気式マッサージ具により使用者を両腕の外側から固定する動作態様である旨を主
張する。
しかし、「押圧」や「挟みつつ」の意味は、請求項1全体や明細書の記載内容か
ら明らかにされなければならないのであって、椅子型マッサージ機における物(製
品)との関係を切り離して解釈すべきではない。また、本件明細書Ⅱの記載内容
20 (【0027】)については、被告の主張を根拠付けるものではないし、出願経過に係
る原告の説明内容についても、被告が指摘する箇所は、空気式のマッサージ具41
によって、腕A、Aの外側から人体を左右に挟んで、マッサージを受ける人体Mが
動かないようにすることができるなどという説明であって、「挟み(固定)」→「叩
き動作」というステップを規定するような説明ではない。
25 (2) 前記1のとおり、被告製品Ⅱは、いずれも、エ ア バ ッ グ が 、 左 右 方 向 内
方に膨張して、左右のもみ玉の前方かつ左右方向外側位置において使用
者の両腕の外側を押圧して、使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟む
という動作を具備している。
し た が っ て 、 被 告 製 品 Ⅱ は 、 「使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつ
つ」の構成を有する。
5 (被告の主張)
1 被告製品Ⅱの構成
(1) 被告製品Ⅱ-Aについて
手動コースにおいて、手動でもみ玉の叩き動作のON/OFFの切り替え・位置
の変更、肩エアバッグの動作のON/OFFの切り替え・モードの設定(パルス、
10 手もみ、オプション無し)を行うことは可能である。●(省略)●
自動コースにおいて、もみ玉は、検出された肩位置を基準に首、首下、肩下、肩
甲骨などの施療部位を算出して、施療部位を特定し、各コース所定の動作を行うよ
う設定されている。使用者の体型が異なれば算出される施療部位が異なるが、もみ
玉が施療部位間を移動する速度は一定であることから、当該施療部位に対する所定
15 の動作の開始時間は使用者の体型により異なることになる。●(省略)●
(2) 被告製品Ⅱ-Bについて
●(省略)●
なお、被告製品Ⅱ-AとⅡ-Bとの構成上の相違は、手動コースにおいて、被告
製品Ⅱ-Aは、エアバッグの動作が三つのモードから選択可能であるのに対し、被
20 告製品Ⅱ-Bは、パルス及びオプション無しの二つのモードから設定可能である点
と、手動・自動コースとも、被告製品Ⅱ-Bには背エアバッグが備えられており、
肩エアバッグの動作時に背エアバッグも動作する点である。
(3) 被告製品Ⅱ-Cについて
●(省略)●
25 (4) 被告製品Ⅱ-Dについて
●(省略)●
2 「前記空気式マッサージ具が、…膨張して、…押圧して、…挟みつつ、それ
と同時に、前記左右の施療子によって…左右交互に叩き動作行う」(構成要件H)
の非充足性
(1)ア 構成要件Hの「空気式マッサージ具が、…膨張して、…押圧して、…挟み
5 つつ、それと同時に、…左右の施療子によって…叩き動作行う」という文言は、次
の一連のステップに係る動作態様、すなわち、空気式マッサージ具が「膨張」→「押
圧」→「挟み」という動作を行い、空気式マッサージ具の「挟み」動作と同時に左
右の施療子が「叩き動作」を行う、という一連の動作手順を規定し、これらを必須
要素として含んでいる。
10 (ア) 空気式マッサージ具が左右方向内方に膨張する。
(イ) 空気式マッサージ具が左右の施療子の前方かつ左右方向外側位置において
使用者の両腕の外側を押圧する。
(ウ) 空気式マッサージ具が使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟む。
(エ) 空気式マッサージ具が使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ、そ
15 れと同時に、左右の施療子によって使用者の背中に対して左右交互に叩き動作を行
う。
イ 本件明細書Ⅱの段落【0027】の第1段落では、施療子9の動作が説明されて
いる。続いて、第2段落及び第3段落でマッサージ具41の動作と効果、すなわち、
空気式マッサージ具45、46からの押圧を受けることができる人体Mが動かない
20 ように固定しつつ、人体Mを両腕の外側から左右に挟むように押圧してマッサージ
することが説明されている。そして、第4段落で、空気式マッサージ具により人体
を固定することで機械式マッサージ器の叩き動作によるマッサージ効果を高めると
いう作用効果が説明されている。そのうえで、第5段落には、冒頭に「つまり」と
記載したうえで、構成要件Hと同じ文言で、第1段落~第4段落において説明され
25 ている空気式マッサージ具と機械式マッサージ器の動作態様と作用効果を言い換え
ている。以上の記載を参酌すれば、本件発明Ⅱ-1は、「左右一対のマッサージ具
41によって人体が左右に動かないように固定することができ、これによって、マ
ッサージ器8によるマッサージ効果を高める」という作用効果を奏するべく、空気
式マッサージ具による人体の挟み(固定)動作と機械式マッサージ器の左右の施療
子による叩き動作との有機的な関係を技術的思想とする発明であり、かかる技術的
5 思想を具体的な構成として規定したのが、構成要件Hであると解される。そして、
上記作用効果を奏するための空気式マッサージ具による人体の挟み(固定)動作と
機械式マッサージ器の左右の施療子による叩き動作の有機的な関係として、①挟み
(固定)動作→叩き動作という動作手順、及び、②叩き動作が継続している間の挟
み(固定)状態の維持という二つの動作態様が本件発明Ⅱの構成要素であると優に
10 理解できる。
さらに、原告は、本件特許Ⅱの出願手続に係る平成20年12月26日付け意見
書(乙B2)及び拒絶査定不服審判請求事件に係る平成21年6月11日付け手続
補正書(乙B5)において、本件発明Ⅱの「特有の効果」として、本件発明Ⅱの構
成により、「左右の施療子9、9によって使用者の背中に対して左右交互に前後の
15 叩き動作が繰り返されることで、身体は左右方向の叩きを受けることができる」こ
とを説明している。そうであるところ、かかる本件発明Ⅱの「特有の作用効果」を
実現するためには、単に空気式マッサージ具の膨張と左右の施療子の叩き動作とが
同時発現するだけでは足りず、空気式マッサージ具と左右の施療子が有機的な関係、
すなわち、①挟み(固定)→叩き動作という動作手順、及び②叩き動作が継続して
20 いる間の挟み(固定)状態の維持という2つの動作態様を実現することが必要であ
る。
そして、本件審決等の内容を踏まえると、「使用者の胴体を両腕の外側から左右
に挟みつつ」とは、空気式のマッサージ具により人体が左右に動かないように固定
することを意味し、「それと同時に、前記左右の施療子によって使用者の背中に対
25 して左右交互に叩き動作を行う」とは、空気式マッサージ具により人体が左右に動
かないように固定された状態で、施療子によって使用者の背中に対して左右交互の
叩き動作が行われることを意味すると解される。
以上から、「前記空気式マッサージ具が、…膨張して、…押圧して、…挟みつつ、
それと同時に、前記左右の施療子によって…左右交互に叩き動作行う」とは、空気
式マッサージ具が人体を挟んだ状態(固定した状態)で、機械式マッサージ器の左
5 右の施療子による叩き動作を行うという手順による動作態様を構成要素として規定
したものと解すべきである。
ウ 原告は、本件発明Ⅱ-1に係る特許請求の範囲請求項1全体を合わせて構成
要件Hの意義を理解すべきこと、本件明細書Ⅱの他の箇所の記載を考慮すべきこと
を指摘して、構成要件Hの意義を主張する。
10 しかし、構成要件C及びG等の記載は、機械式マッサージ器の施療子、空気式マ
ッサージ具の構成・動作をそれぞれ特定したものである一方、構成要件Hの「前記
空気式マッサージ具が…膨張して…押圧して…挟みつつ、それと同時に、前記左右
の施療子によって…左右交互に叩き動作を行う」という文言は、空気式マッサージ
具と機械式マッサージ器の施療子が関係性をもって動作することを特定したもので
15 ある。構成要件C及びG等の空気式マッサージ具や機械式マッサージ器の施療子の
それぞれの構成に関する記載は、構成要件Hが規定する空気式マッサージ具と機械
式マッサージ器の施療子の動作の関係性を導く論拠とはならない。構成要件C及び
G等の記載を参酌しても、構成要件Hの前記文言を、空気式マッサージ具の挟み動
作と左右の施療子の叩き動作が「その動作の先後を問わず、同時に発現する」こと
20 を意味すると解釈することはおよそできない。
また、原告が指摘する本件明細書Ⅱの記載部分は、施療子9による叩き動作や揉
み動作による「背中の中央部」のマッサージと空気式マッサージ具による「背中の
両側部」のマッサージが同時に行われることを説明するものや、機械式マッサージ
具単独の構成・動作について説明するものであって、いずれも本件発明Ⅱ-1を前
25 提とした説明ではない。
なお、原告は、本件特許Ⅱの審査過程において、押圧態様に関する特定の現象が
生じることを指摘し、公知例にはない作用効果を奏すると主張したにもかかわらず、
本件訴訟においては、当該現象を度外視して本件特許Ⅱの技術的範囲について論じ
ており、これは包袋禁反言の法理等により禁止される。
(2)ア 被告製品Ⅱ-Aについて
5 ●(省略)●よって、被告製品Ⅱ-Aは、本件発明Ⅱのような「挟み(固定)→
叩き動作」という手順による動作態様を実現しない。
●(省略)●「挟み(固定)→叩き動作」という手順による動作態様を実現する
ものではない。
イ 被告製品Ⅱ-Bについて
10 被告製品Ⅱ-Bが、手動コース、自動コースのいずれにおいても、「挟み(固定)
→叩き動作」という手順による動作態様を実現しないことは、被告製品Ⅱ-Aと同
様である。
ウ 被告製品Ⅱ-Cについて
前記1のとおり、被告製品Ⅱ-Cは、手動コースにおいて、もみ玉による叩き動
15 作と肩エアバッグの動作を同時設定できない。
同様に、自動コースにおいて、肩エアバッグと叩きモーターが同時に駆動するこ
とはない。
エ 被告製品Ⅱ-Dについて
被告製品Ⅱ-Dが構成要件Hを充足することは否認する。
20 オ 以上から、被告製品Ⅱは、「前記空気式マッサージ具が、…膨張して、…押
圧して、…挟みつつ、それと同時に、前記左右の施療子によって…左右交互に叩き
動作行う」の構成を有しない。
3 「使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ」(構成要件H)の非充足

25 (1) 前記2(1)アのとおり、構成要件Hは一連のステップに係る動作態様を構成
要素としているところ、構成要件上、「押圧」と「挟みつつ」という二つの文言が
使い分けられていることから、本件発明Ⅱ-1は、空気式マッサージ具が単に使用
者の両腕の外側を「押圧」するのみならず、それを超えて使用者の胴体を両腕の外
側から左右に「挟みつつ」との動作態様を実現することを内容としている。このこ
とは、「挟む」とは、一般的に「物と物との間にさし入れ両側から固定する。物と
5 物との間に入れて落ちないようにする。」等の意味であり、「圧して押さえ付ける」
という意味の「押圧」とは異なることからも明らかである。そして、「挟みつつ」
とは、空気式マッサージ具が、一定の時間において継続して、使用者の両腕の外側
から固定する動作態様を備えることを意味するものと解される。
また、「空気式マッサージ具が、…挟みつつ、それと同時に、…左右の施療子に
10 よって…叩き動作行う」という文言は、空気式マッサージ具が人体を押圧するのみ
ならず、「挟み」動作を行うものであること、及び、空気式マッサージ具による「挟
み」動作を行いながら左右の施療子による叩き動作を行うこと、言い換えると、空
気式マッサージ具の「挟み」動作と左右の施療子の叩き動作の一定の時間における
同時継続を規定している。このことは、「挟みつつ、それと同時に」との文言から
15 して、「挟みつつ」には一定の時間が継続することを意味していると解されること、
及び、「叩き動作」は左右の施療子が交互に動くことによる叩き動作であり、その
動作には一定の時間を要することからも裏付けられる。
さらに、前記2(1)のとおり、本件明細書Ⅱの段落【0027】には、「左右一対のマ
ッサージ具41によって人体が左右に動かないように固定することができ、これに
20 よって、マッサージ器8によるマッサージ効果を高めることもできる」ことが本件
発明Ⅱ-1の作用効果であることが記載されている。このような作用効果を奏する
ためには、空気式マッサージ具が人体を瞬間的に「押圧」するのみでは足りず、少
なくとも、空気式マッサージ具により使用者を両腕の外側から固定する動作態様と
いう動作が、左右一対のマッサージ具による叩き動作の間継続する必要がある。
25 加えて、原告は、本件特許Ⅱの出願手続に係る平成18年9月12日付け上申書
(乙B18)において、本件発明Ⅱ-1の作用効果について、「空気式のマッサー
ジ具41によって、腕A、Aの外側から人体を左右に挟んで、マッサージ器8から
のマッサージを受ける人体Mが動かないようにすることができる。」又は「揉み動
作又は叩き動作によって、背凭れ部に凭れている使用者が前方へ逃げることを防止
できる。」と述べている。かかる作用効果を実現するためには、空気式マッサージ
5 具が使用者を単に「押圧」するのみならず、使用者の人体が施療子の動作により前
方に逃げることを防止することができるよう空気式マッサージ具により使用者を両
腕の外側から固定する動作を行うこと、及び、機械式マッサージ器による叩き動作
が継続している一定の時間中、空気式マッサージ具により使用者を両腕の外側から
固定する動作が継続していなければならないことは明らかである。
10 以上から、「使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ」とは、機械式マッ
サージ器による叩き動作が継続している一定の時間中、空気式マッサージ具により
使用者を両腕の外側から固定する(叩き動作が継続している間、挟み(固定)状態
を維持する)動作態様であると解される。
(2)ア 被告製品Ⅱ-Aについて
15 被告製品Ⅱ-Aのエアバッグの動作を、パルス、手もみ、オプション無しという
3つのモードのいずれに設定しても、肩エアバッグは、単に膨張し続けるのではな
く、膨張と収縮の動作を繰り返すよう制御されている。●(省略)●
したがって、被告製品Ⅱ-Aにおいては、揉み玉による叩き動作が継続している
一定の時間中、肩エアバッグにより使用者を両腕の外側から固定する動作態様は実
20 現されていない。
イ 被告製品Ⅱ-Bについて
被告製品Ⅱ-Aと同様に、被告製品Ⅱ-Bにおいても、揉み玉による叩き動作が
継続している一定の時間中、肩エアバッグにより使用者を両腕の外側から固定する
動作態様は実現されていない。
25 特に、被告製品Ⅱ-Bでは、●(省略)●人体が背凭れ部側から前方に押し出さ
れる。これにより、肩エアバッグの動作時にはもみ玉の叩き動作の背中に対する押
圧力が低下する。
したがって、被告製品Ⅱ-Bでは、もみ玉による叩き動作が継続している一定の
時間中、肩エアバッグにより使用者を両腕の外側から固定する動作態様が実現され
ていないことは明らかである。
5 ウ 被告製品Ⅱ-Cについて
●(省略)●
したがって、被告製品Ⅱ-Cは、もみ玉による叩き動作が継続している一定の時
間中、肩エアバッグにより使用者を両腕の外側から固定する動作態様を実現し得な
い。
10 エ 被告製品Ⅱ-Dについて
被告製品Ⅱ-Dにおいて、もみ玉による叩き動作が継続している一定の時間中、
肩エアバッグにより使用者を両腕の外側から固定する動作態様が実現されることは
否認する。
オ 以上から、被告製品Ⅱは「使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ」
15 の構成を有しない。
第3 当裁判所の判断
1 本件明細書Ⅱには次の記載がある。
(1) 技術分野
「本発明は、椅子型マッサージ機に関するものである。」(【0001】)
20 (2) 背景技術
「背凭れ部を有する従来の椅子型マッサージ機には、背凭れ部に施療子を有する
マッサージ器を昇降自在に設け、マッサージ器を人体の背中に沿って移動させなが
ら、モータの回転動力によって施療子を揉み動作及び叩き動作させて、使用者の背
中の中央部を施療子で広範囲にマッサージするようにしたものがある。この場合、
25 使用者の背中の中央部をマッサージするには、比較的強く揉んだり叩いたりする必
要から、施療子を激しく動かすことのできるモータ等を備えた機械式その他のマッ
サージ器を使用し、これを昇降自在にしている。」(【0002】)
(3) 発明が解決しようとする課題
「本発明は、使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ、それと同時に、使
用者の背中に対して叩き動作を行えるようにする。」(【0003】)
5 (4) 課題を解決するための手段
「本発明は、座部と、前記座部の後部に設けられた背凭れ部と、マッサージ用モ
ータの回転動力で叩き動作軸が回転することで、左右の施療子が交互に前後揺動す
る叩き動作を行う機械式のマッサージ器と、を備え、前記マッサージ器が前記背凭
れ部内で昇降自在に設けられ、前記背凭れ部は、機械式の前記マッサージ器の左右
10 両側に位置するとともに、前記背凭れ部にもたれた使用者よりも左右方向外側に位
置するように、前記背凭れ部の左右両側部からそれぞれ前方突出し、両突起体の間
に前記背凭れ部にもたれた使用者の両腕及び両腕の間の胴体をまとめてはめ込める
左右間隔を有する左右一対の突起体を備え、前記左右一対の突起体は、両突起体の
間にはめ込まれた使用者の両腕の外側に対向する内側面をそれぞれ備え、前記左右
15 一対の突起体の前記内側面には、それぞれ、使用者の両腕の左右外側に対向すると
ともに、空気の給排気によって膨張収縮する空気式マッサージ具が設けられ、前記
空気式マッサージ具が、左右方向内方に膨張して、前記左右の施療子の前方かつ左
右方向外側位置において使用者の両腕の外側を押圧して、使用者の胴体を両腕の外
側から左右に挟みつつ、それと同時に、前記左右の施療子によって使用者の背中に
20 対して左右交互に叩き動作行うことを特徴とするマッサージ機である。 (
」 【0004】)
「前記空気式マッサージ具が、左右方向内方に膨張して、前記左右の施療子の前
方かつ左右方向外側位置において使用者の両腕の外側を押圧して、使用者の胴体を
両腕の外側から左右に挟みつつ、それと同時に、機械式の前記マッサージ器を昇降
させながら前記左右の施療子によって使用者の背中に対して左右交互に叩き動作行
25 うのが好ましい。」(【0005】)
「前記座部は、空気の給排気によって使用者を押圧する空気式のマッサージ具を
備え、
前記左右一対の突起体の前記内側面に設けられた前記空気式マッサージ具は、前
記左右の施療子による叩き動作と前記座部の空気式マッサージ具からの押圧とを受
ける人体の腕の外側から左右に挟むものであるのが好ましい。」(【0006】)
5 (5) 発明の効果
「本発明によれば、背凭れ部に設けられた左右一対の突起体の内側面に空気式マ
ッサージ具を設けたので、使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ、それと
同時に、前記左右の施療子によって使用者の背中に対して左右交互に叩き動作行う
ことができる。」(【0007】)
10 (6) 発明を実施するための最良の形態
「…叩き動作軸20がA方向に回転すると、該叩き動作軸20の偏心軸部20A
は連結アーム31、ボールジョイント29、駆動アーム25及び支持アーム26を
介して施療子9をA1方向に往復動せしめる。これにより施療子9は叩き運動を行
う。なお、一方の偏心軸部20Aは他方の偏心軸部20Aに対して互いに反対方向
15 に偏心しているので、左右に対応する施療子9は交互に叩き動作をする。次に、揉
み動作軸19が回転動力を受けると、傾斜軸部19Aは、円錐面を描くように回転
するので、駆動アーム25はボールジョイント29を支点にして往復揺動運動を行
い、その結果、左右に対応する施療子9は互いに接離するようにB1方向に往復揺
動し、揉み動作をする。」(【0013】)
20 「図1及び図3に示すように、前記背凭れ部4の両側部に、人体の背中の両側部
をマッサージするための空気式のマッサージ具41が左右一対設けられている。左
右一対の各マッサージ具41は、袋体により構成した複数(図例では二個)のエア
セル42を備え、エアセル42に空気を供排することによりエアセル42は空気圧
によって膨張収縮し、空気を供給して膨張させたときに使用者の背中の両側部を押
25 圧するように構成されている(図7及び図8参照)。このマッサージ具は、前記マ
ッサージ器8の両側方に位置して、長く配置されており、人体の背中の両側部を広
範囲にマッサージできるようになっている。」(【0018】)
「前記エアセル42、47、49 、54 、59の膨張・収縮は、座部3の下方
に配置したコンプレッサー61からの給排気により行われ、コンプレッサー61か
らの給気・排気の切り替えは図示省略の制御部により制御されるバルブによって
5 夫々別個に行われるように構成されている。上記実施の形態によれば、マッサージ
器8を昇降させながら、施療子9による叩き動作や揉み動作によって人体の背中の
中央部を比較的強くマッサージできると同時に、マッサージ具41に空気を給排す
ることにより、背中の両側部を指圧動作等によってソフトにマッサージすることが
できる。しかも、マッサージ具41によって、人体の背中の中央部以外の背中の両
10 側部を広範囲にマッサージすることができる。」(【0021】)
「なお、前記エアセル42、71,72,81,82の膨張・収縮は、座部3の
下方に配置されたコンプレッサ(図示省略)によって行われ、コンプレッサからの
給気・排気の切り替えは制御部(図示省略)によって制御される電磁弁(図示省略)
によって行われる。その他の点は前記実施の形態の場合と同様の構成であり、前記
15 実施の形態の場合と同様に、マッサージ器8を昇降させながら、施療子9による叩
き動作や揉み動作によって人体の背中の中央部を比較的強くマッサージできると同
時に、マッサージ具41に空気を給排することにより、背中の両側部を指圧動作等
によってソフトにマッサージすることができる。しかも、マッサージ具41によっ
て、人体の背中の中央部以外の背中の両側部を広範囲にマッサージすることができ
20 る。」(【0025】)
「図11は本発明の実施の形態を示し、背凭れ部4の両側部に、前方突出した左
右一対の突起体91を設け、この突起体91間に使用者の腕を含めた人体Mをはめ
込めるようにしている。
すなわち、背凭れ部4は、機械式の前記マッサージ器8の左右両側に位置すると
25 ともに、背凭れ部4にもたれた使用者よりも左右方向外側に位置するように、背凭
れ部4の左右両側部からそれぞれ前方突出し、両突起体91,91の間に背凭れ部
4にもたれた使用者の両腕及び両腕の間の胴体をまとめてはめ込める左右間隔を有
する左右一対の突起体91,91を備えている。
また、前記参考発明の実施の形態の場合と同様に、マッサージ器8が、マッサー
ジ機の背凭れ部4の左右中央部に昇降自在に設けられ、前記空気式のマッサージ具
5 41が、マッサージ器8の両側方に位置するように、左右一対の突起体91の内側
面側に対向するように設けられている。この空気式のマッサージ具41は、前記参
考発明の実施の形態の場合と同様に人体の背中の両側部を広範囲にマッサージでき
るように、上下に長く配置されている。」(【0026】)
「その他の点は前記図1~図6の参考発明の実施の形態の場合と同様の構成であ
10 り、前記実施の形態の場合と同様に、マッサージ器8を昇降させながら、施療子9
による叩き動作や揉み動作によって人体の背中の中央部を比較的強くマッサージで
きる。特に、マッサージ機8は、マッサージ用モータ10の回転動力で叩き動作軸
20が回転することで、左右の施療子9,9が交互に前後揺動する叩き動作を行う
ことができる。
15 また、マッサージ具41を左右方向内方に膨張させて、マッサージ具41によっ
て、人体Mの背中の両側部(両脇乃至両腕)を左右に挟むように押圧しながらソフ
トにマッサージすることができる。
すなわち、空気式のマッサージ具41は、収縮状態から左右方向内方に膨張する
と、人体の背中の中央部をマッサージする施療子9の前方かつ左右方向外側位置に
20 おいて腕の外側を押圧して、マッサージ器8からのマッサージと座部3の空気式マ
ッサージ具45,46からの押圧を受けることができる人体Mが、動かないように
固定しつつ、人体Mを両腕の外側から左右に挟むように押圧してマッサージするこ
とができる。
この場合、左右一対のマッサージ具41によって人体が左右に動かないように固
25 定することができ、これによって、マッサージ器8によるマッサージ効果を高める
こともできる。
つまり、前記空気式マッサージ具41,41が、左右方向内方に膨張して、前記
左右の施療子9,9の前方かつ左右方向外側位置において使用者の両腕の外側を押
圧して、使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ、それと同時に、前記左右
の施療子9,9によって使用者の背中に対して左右交互に叩き動作行うことができ
5 る。」(【0027】)
2 被告製品Ⅱの本件発明Ⅱの技術的範囲への属否(争点)
(1) 被告製品Ⅱの構成について
ア 被告製品Ⅱ-A
被告製品Ⅱ-Aの外観上の構成は別紙「被告製品Ⅱ-A説明書(原告)」記載2
10 のとおりであり、その外観は同図1~4のとおりである(被告は争うことを明らか
にしない。)。
また、被告製品Ⅱ-Aが、本件発明Ⅱ-1に係る構成要件A~G及びIを充足す
ることは当事者間に争いがない。
イ 被告製品Ⅱ-B
15 被告製品Ⅱ-Bの外観上の構成は別紙「被告製品Ⅱ-B説明書(原告)」記載2
のとおりであり、その外観は同図1及び2のとおりである(被告は争うことを明ら
かにしない。)。
また、被告製品Ⅱ-Bが、本件発明Ⅱ-1に係る構成要件A~G及びIを充足す
ることは当事者間に争いがない。
20 ウ 被告製品Ⅱ-C
被告製品Ⅱ-Cの外観上の構成は別紙「被告製品Ⅱ-C説明書(原告)」記載2
のとおりであり、その外観は同図1及び2のとおりである(被告は争うことを明ら
かにしない。)。
また、被告製品Ⅱ-Cが、本件発明Ⅱ-1に係る構成要件A~G及びIを充足す
25 ることは当事者間に争いがない。
エ 被告製品Ⅱ-Dについて
被告製品Ⅱ-Dの外観上の構成は別紙「被告製品Ⅱ-D説明書(原告)」記載2
のとおりであり、その外観は同図1及び2のとおりである(被告は争うことを明ら
かにしない。)。
また、被告製品Ⅱ-Dが、本件発明Ⅱ-1に係る構成要件A~G及びIを充足す
5 ることは当事者間に争いがない。
オ 以上から、被告製品Ⅱが、本件発明Ⅱ-1に係る構成要件A~G及びIを充
足することは当事者間に争いがないから、被告製品Ⅱが構成要件Hを充足するかに
ついて検討する。
(2) 「前記空気式マッサージ具が、…膨張して、…押圧して、…挟みつつ、それ
10 と同時に、前記左右の施療子によって…左右交互に叩き動作行う」(構成要件H)
の充足性について
ア(ア) 構成要件Hは、「前記空気式マッサージ具が、…膨張して…押圧して…挟
みつつ、それと同時に、前記左右の施療子によって…左右交互に叩き動作行う」と
規定していることから、「空気式マッサージ具」が膨張して押圧して挟む動作を行
15 い、「施療子」が叩き動作を行うと解するのが相当である。また「…つつ」とは、
「…しながら」、「二つの動作・作用が同時に並行して行われること」という意味
があること(甲B4の1~B4の3)に照らすと、構成要件Hは、空気式マッサー
ジ具の挟み動作と施療子の叩き動作が同時に行われることを規定していると解する
のが相当である。
20 (イ) 本件明細書Ⅱによれば、従来、背凭れ部を有する椅子型マッサージ機には、
背凭れ部に施療子を有するマッサージ器を昇降自在に設け、マッサージ器を人体の
背中に沿って移動させながら、モータの回転動力によって施療子に揉み動作及び叩
き動作をさせて、使用者の背中の中央部を施療子で広範囲にマッサージするように
したものがあったところ(【0002】)、本件発明Ⅱは、背凭れ部の左右両側部から
25 それぞれ前方突出し、両突起体の間に前記背凭れ部にもたれた使用者の両腕及び両
腕の間の胴体をまとめてはめ込める左右間隔を有する左右一対の突起体を備え、そ
の前記内側面には、それぞれ、使用者の両腕の左右外側に対向するとともに、空気
の給排気によって膨張収縮する空気式マッサージ具を設け、同空気式マッサージ具
が、左右方向内方に膨張して、使用者の両腕の外側を押圧して、使用者の胴体を両
腕の外側から左右に挟みつつ、それと同時に、前記左右の施療子によって使用者の
5 背中に対して左右交互に叩き動作を行うという構成を備えることにより、使用者の
胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ、それと同時に、使用者の背中に対して叩き
動作を行えるようにすることを目的としている(【0003】【0004】)。背凭れ部に
設けられた左右一対の突起体の内側面に空気式マッサージ具を設けたことにより、
本件発明Ⅱによれば、使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ、それと同時
10 に、前記左右の施療子によって使用者の背中に対して左右交互に叩き動作を行うこ
とが可能となる(【0007】)。
発明を実施するための最良の形態のうち、参考発明に関するものは、マッサージ
具41が背凭れ部4の両側部に設けられているものであって、マッサージ器8を昇
降させながら、施療子9による叩き動作や揉み動作によって人体の背中の中央部を
15 比較的強くマッサージできると同時に、マッサージ具41に空気を給排することに
より、背中の両側部を指圧動作等によってソフトにマッサージすることができると
されているところ(【0018】【0021】【0025】)、本件発明Ⅱの実施の形態も、マ
ッサージ具41の設置位置の他は同様の構成であるとされているので、本件発明Ⅱ
の実施の形態における作用効果も、機械式マッサージ器8による強いマッサージ動
20 作と、空気式マッサージ具41によるソフトなマッサージ動作とが同時発現するこ
とにより、両者のマッサージ効果を同時に受けることができることにあるものと認
められる(【0027】)。
(ウ) 構成要件Hの記載内容、本件発明Ⅱの目的や効果、本件明細書Ⅱ中の実施の
形態に係る記載内容に照らすと、「前記空気式マッサージ具が、…膨張して、…押
25 圧して、…挟みつつ、それと同時に、前記左右の施療子によって…左右交互に叩き
動作行う」とは、空気式マッサージ具が膨張して押圧して挟む動作と左右の施療子
による叩き動作が、同時に発現する動作態様を意味しているものと解するのが相当
である。
イ(ア) 被告は、構成要件Hの規定から、空気式マッサージ具が「膨張」→「押圧」
→「挟み」という動作を行い、空気式マッサージ具の「挟み」動作と同時に左右の
5 施療子が「叩き動作」を行う、という一連の動作手順を規定し、これらを必須要素
として含んでいる旨を主張する。
しかし、空気式マッサージ具が「使用者の両腕の外側」から「挟む」動作を行う
ためには、空気式マッサージ具が着座している使用者の両腕に接するべく左右方向
内方に十分膨張し、「使用者の両腕の外側」を押圧する状態になっている必要があ
10 ることから、「…膨張して…押圧して…挟み」との記載は、「挟み」動作を実現す
る態様を表していると解するのが自然であり、「膨張」→「押圧」→「挟み」とい
う時系列の各動作順序を必須要素としているとまでは認め難い。また、「挟みつつ、
それと同時に、…叩き動作行う」と規定していることから、同時に並行して行われ
る動作の対象は、「挟み」と「叩き」動作というべきであって、「膨張」や「押圧」
15 動作がこれに含まれることにはならない。
(イ) 被告は、本件明細書Ⅱの段落【0027】の記載内容を指摘して、①挟み(固定)
動作→叩き動作という動作手順、及び、②叩き動作が継続している間の挟み(固定)
状態の維持という二つの動作態様が本件発明Ⅱの構成要素であると理解できる旨を
主張する。
20 本件明細書Ⅱの段落【0027】には「空気式のマッサージ具41は、収縮状態から
左右方向内方に膨張すると、人体の背中の中央部をマッサージする施療子9の前方
かつ左右方向外側位置において腕の外側を押圧して、マッサージ器8からのマッサ
ージと座部3の空気式マッサージ具45,46からの押圧を受けることができる人
体Mが、動かないように固定しつつ、人体Mを両腕の外側から左右に挟むように押
25 圧してマッサージすることができる。この場合、左右一対のマッサージ具41によ
って人体が左右に動かないように固定することができ、これによって、マッサージ
器8によるマッサージ効果を高めることもできる。」と記載される部分がある。し
かし、前記ア(イ)のとおり、段落【0027】を含めた本件明細書Ⅱには、本件発明Ⅱの
作用効果として、機械式マッサージ器8による強いマッサージ動作と、空気式マッ
サージ具41によるソフトなマッサージ動作とが同時発現することにより、両者の
5 マッサージ効果を同時に受けることができる旨が記載されているところ、段落
【0027】の前記部分の内容は、「マッサージすることができる。」「マッサージ効
果を高めることもできる。」などというものであり、前記の基本的な作用効果に加
えて、付加的に発生し得る作用効果について記載されたものであると解するのが相
当である。
10 (ウ) 被告は、本件特許Ⅱの出願経過に係る、本件発明Ⅱ特有の作用効果に関する
原告の説明内容(乙B2、B5)を指摘して、同効果を実現するためには、単に空
気式マッサージ具の膨張と左右の施療子の叩き動作とが同時発現するだけでは足り
ず、空気式マッサージ具と左右の施療子が有機的な関係(①挟み(固定)→叩き動
作という動作手順等)をもって動作しなければならない旨を主張する。
15 しかし、証拠(甲B14、乙B2、B5、B20、B21)及び弁論の全趣旨に
よれば、平成20年12月26日付け意見書(乙B2)及び平成21年6月11日
付け手続補正書(乙B5)は、それぞれ平成20年10月20日付け拒絶理由通知
書(乙B20)及び平成21年2月3日付け拒絶査定(乙B21)において、特許
庁から本件発明Ⅱの進歩性が欠如している旨の指摘を受けたことに対して提出され
20 たものであるところ、原告は、進歩性が認められることを主張するため、前記意見
書等において、参考図1及び2を指摘して、右側(左側)の施療子9が叩きのため
に前進すると、左側(右側)の空気式マッサージ具42が左側外側を押圧する力が
瞬間的に強くなる一方、右側(左側)の空気式マッサージ具42が右腕(左腕)外
側を押圧する力が瞬間的に弱くなり、これにより左腕(右腕)外側は右(左)方向
25 への叩きを受けるという特有の効果がある旨を説明したことが認められる。そうで
あるところ、「叩く」は、「つづけて打つ」「(平手や道具で)打ちつける」等の
意味であり(広辞苑第七版)、瞬間的に所定部位に力が加わる事象をいうことに照
らすと、前記原告の説明内容は、左右の施療子9、9の動きにより、左右の腕の外
側に対して叩き動作(瞬間的に力が加わること)が生じること、すなわち、挟み動
作と叩き動作が同時発現することによる効果を説明したものと解するのが相当であ
5 って、それを超えて、空気式マッサージ具と左右の施療子が「挟み(固定)→叩き
動作等」という動作手順までをも説明したものとは認めるに足りない。
(エ) 被告は、本件審決等の内容を踏まえて構成要件Hの意義を解釈し、また、本
件特許Ⅱの審査過程に係る原告の主張内容を指摘して、本件訴訟において当該主張
を度外視して本件特許2の技術的範囲について論じることは包袋禁反言の法理等に
10 より禁止される旨を主張する(なお、原告は、被告の本件審決等を踏まえた主張は
時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである旨を主張するが、被告の前
記主張は、時機に後れたものでも訴訟の完結を遅延させるものでもないから、原告
の主張は採用できない。)。
しかし、前記アのとおり、構成要件Hの記載内容、本件発明Ⅱの目的や効果、本
15 件明細書Ⅱ中の実施の形態に係る記載内容に照らして構成要件Hの意義を解釈する
と、空気式マッサージ具が膨張して押圧して挟む動作と左右の施療子による叩き動
作が、同時に発現する動作態様を意味しているものと解するのが相当であり、本件
審決等の内容を踏まえても、かかる認定は左右されない。
また、本件全証拠によっても、原告が本件特許Ⅱの技術的範囲について論じるこ
20 とが包袋禁反言の法理等により禁止されるような事情はうかがえない。
(オ) 以上から、被告の前記主張はいずれも採用できない。
ウ 被告製品Ⅱについて
(ア) 被告製品Ⅱ-A
証拠(甲B8、乙B24、B27)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1を実
25 際に使用した際、手動コースにおいて、肩エアバッグによる挟む動作ともみ玉によ
る叩き動作とが同時発現する時間帯が存在したこと、●(省略)●もみ玉の叩き動
作が継続して行われることが認められ、被告製品Ⅱ-Aは、肩エアバッグによる挟
む動作ともみ玉による叩き動作が同時に発現する現象が一定の頻度で発生するもの
と考えられるところ、これを覆すに足りる証拠はない。また、被告製品1を実際に
使用した際、自動コース(全身コース)のいずれにおいても、●(省略)●このよ
5 うな事実関係に照らすと、被告製品Ⅱ-Aは、自動コースにおいて、もみ玉の動作
する時間帯、周期等が使用者の体型等の条件により変動することがあったとしても、
もみ玉が叩き動作をする期間と肩エアバッグが挟み動作をする期間が重なる現象
が、工程中のいずれかのタイミングにおいて発生するものと認められる。したがっ
て、被告製品Ⅱ-Aは、肩エアバッグによる挟む動作ともみ玉による叩き動作が同
10 時に発現するものと認められる。
被告は、手動コースについて、もみ玉と肩エアバッグの動作を手動で設定したと
しても、●(省略)●それらが同時に発現することが否定されるものではない。
また、被告は、自動コースについて、●(省略)●もみ玉の叩き動作と肩エアバ
ッグの動作のタイミングは、使用者の体型等の使用条件によって無限に変動し得る
15 旨を主張する。しかし、前記認定のとおり、両動作の周期が異なるとしても、両動
作の期間が重なる現象が発生するものと認められるから、被告の主張は理由がない。
(イ) 被告製品Ⅱ-B
証拠(甲10、11、24、25、乙B27)及び弁論の全趣旨によれば、被告
製品Ⅱ-AとⅡ-Bの構成上の相違は、エアバッグの動作モードの設定可能数と背
20 エアバッグの有無であることが認められ、もみ玉の叩き動作と肩エアバッグの挟み
動作に係る構成は共通しているものと認められる。
したがって、被告製品Ⅱ-Bは、被告製品Ⅱ-A同様、手動コース及び自動コー
スのいずれにおいても、肩エアバッグによる挟み動作ともみ玉による叩き動作が同
時に発現するものと認められる。
25 被告は、被告製品Ⅱ-Aと同様に、被告製品Ⅱ-Bにおいても、揉み玉による叩
き動作が継続している一定の時間中、肩エアバッグにより使用者を両腕の外側から
固定する動作態様は実現されていない旨を主張するが、後記(3)のとおり、動作が一
定の時間継続していることは要しないと解されるから、被告の主張は理由がない。
(ウ) 被告製品Ⅱ-C
証拠(乙B25、B26)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品23の手動コー
5 スでは、もみ玉の叩き動作と肩エアバッグの挟み動作を同時設定することができな
いこと、●(省略)●その他、被告製品Ⅱ-Cにおいて、肩エアバッグによる挟み
動作ともみ玉による叩き動作が同時に発現するものと認めるに足りる証拠はない。
(エ) 被告製品Ⅱ-D
被告製品Ⅱ-Dにおいて、肩エアバッグによる挟み動作ともみ玉による叩き動作
10 が同時に発現するものと認めるに足りる証拠はない。
(オ) 以上から、被告製品Ⅱ-A及びⅡ-Bは、「前記空気式マッサージ具が、…
膨張して、…押圧して、…挟みつつ、それと同時に、前記左右の施療子によって…
左右交互に叩き動作行う」の構成を有する。
(3) 「使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ」(構成要件H)について
15 ア 前記(2)アのとおり、「使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ」の部
分を含め、構成要件Hは、空気式マッサージ具が膨張して押圧して挟む動作と左右
の施療子による叩き動作が、同時に発現する動作態様を意味しているものと解する
のが相当である。
イ(ア) 被告は、構成要件上、「押圧」と「挟みつつ」という二つの文言が使い分
20 けられていること、「挟みつつ」は一定の時間が継続することを意味していること
を指摘するなどして、「使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ」とは、空
気式マッサージ具が、一定の時間において継続して、使用者の両腕の外側から固定
する動作態様を備えることを意味するものと解されると主張する。
しかし、「…つつ」とは、「…しながら」、「二つの動作・作用が同時に並行し
25 て行われること」という意味であるから(甲B4の1~B4の3)、「左右に挟み
つつ、それと同時に、…叩き動作を行う」とは、その字義どおり、左右に挟むのと
同時に叩き動作を行うことを規定していると解するのが相当であり、それを超えて、
一定の継続した時間、使用者の両腕を固定することを規定しているとは認めるに足
りない。
(イ) 被告は、原告が、本件特許Ⅱの出願手続に係る平成18年9月12日付け上
5 申書(乙B18)において説明した作用効果を実現するためには、空気式マッサー
ジ具が使用者を単に「押圧」するのみならず、使用者を両腕の外側から固定する動
作を行うこと等が必要である旨を主張する。
証拠(乙B18、B19)及び弁論の全趣旨によれば、被告が指摘する同日付け
上申書(乙B18)は、同日付けの手続補正書(乙B19)と同時に提出され、前
10 記補正書による特許請求の範囲及び明細書についての補正の根拠を示すこと等を目
的とするものであって、作用効果について「空気式のマッサージ具41によって、
腕A、Aの外側から人体を左右に挟んで、マッサージ器8からのマッサージを受け
る人体Mが動かないようにすることができる。」、「揉み動作又は叩き動作によっ
て、背凭れ部に凭れている使用者が前方へ逃げることを防止できる。」との記載が
15 あることが認められる。しかし、かかる記載は、同手続補正書提出時における請求
項の記載である「前記空気式のマッサージ具は、…施療子による揉み動作又は叩き
動作を受ける人体が動かないように固定しつつ、腕の外側を左右に挟むように押圧
してマッサージする」との記載に対応する作用効果であって、その後、「…固定し
つつ、…挟むように押圧してマッサージする」との構成は「挟みつつ、それと同時
20 に…叩き動作を行う」との構成に補正され、構成要件Hの文言となったものである
(甲B9~B15)。そうすると、前記上申書の記載は、補正前の請求項の記載に
基づく作用効果を述べたにすぎず、構成要件Hに対応するものとはいえないから、
被告の主張はその前提を欠く。この点を措くとしても、前記上申書の記載は、使用
者の人体が動かないようにすることによって、揉みや叩きの動作を十分な力で使用
25 者に与えることができ、マッサージ効果が高まることを説明するものであるが、当
該状態が一定の時間継続しなければ効果が発揮されないことは記載されておらず、
その示唆もない。そうであれば、使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟む動作と
叩き動作が同時発現すれば、発現している期間において叩き動作を十分な力で使用
者に与えられることが理解されるから、前記上申書(乙B18)の作用効果に関す
る記載は、「使用者の胴体を両腕の外側から挟みつつ」(構成要件H)の文言を前
5 記アのとおりに解釈することを妨げるものではない。
(ウ) 以上から、被告の前記主張はいずれも採用できない。
ウ 被告製品Ⅱについて
前記(2)ウのとおり、被告製品Ⅱ-A及びⅡ-Bは、手動コース及び自動コースの
いずれにおいても、肩エアバッグによる挟み動作ともみ玉による叩き動作が同時に
10 発現するものと認められ、「使用者の胴体を両腕の外側から左右に挟みつつ」の構
成を有する。
3 以上から、被告製品Ⅱ-A及びⅡ-Bは、本件発明Ⅱ-1の技術的範囲に属
するものと認められる。
被告は、被告製品Ⅱが、本件発明Ⅱ-2に係る構成要件J、本件発明Ⅱ-3に係
15 る構成要件L及びMを充足することついて争うことを明らかにしないものと認めら
れるところ、本件発明Ⅱ-2及びⅡ-3は、本件発明Ⅱ-1の従属項であるから、
被告製品Ⅱ-A及びⅡ-Bは、本件発明Ⅱ-2及びⅡ-3の技術的範囲に属するも
のと認められる。
以上
(別紙)
被告製品Ⅱ-A説明書(原告)
製品名 「マッサージチェア」
5 型式番号 「AS-1000」(被告製品1)
1 図面の説明
図1 被告製品1の外観及び各部位の説明図
図2 被告製品1のエアバッグの位置及びもみ玉のマッサージ領域を表す斜視図
10 図3 被告製品1の側壁とエアバッグの位置を表す側面図
図4 被告製品1のもみ玉の位置を示す外観斜視図
図5 被告製品1のリモコン全体を表わす図
2 被告製品1の構成の説明
15 図1に示すようにマッサージチェアであり、 座部」 座部の後部に 背
「 と 「
も た れ 部 」が 設 け ら れ て い る 。ま た 、図 2 に 示 す よ う に 、「 座 部 」に は 座
部エアバッグ(「座部の空気式マッサージ具」に相当)を備えている。
「 背 も た れ 部 」の 内 部( 背 パ ッ ド の 裏 側 )に は 、「 機 械 式 の マ ッ サ ー ジ
器 」を 備 え て い る 。「 機 械 式 の マ ッ サ ー ジ 器 」は 、マ ッ サ ー ジ 用 モ ー タ の
20 回転動力によりもみ玉駆動軸 「叩き動作軸」 相当) 回転することで、
( に が
左 右 の も み 玉(「 施 療 子 」に 相 当 )が 交 互 に 前 後 に 揺 動 す る 叩 き 動 作 を 行
う。 のマッサージ器は、 背もたれ部」 で昇降自在に設けられている。
こ 「 内
「 背 も た れ 部 」は 、「 機 械 式 の マ ッ サ ー ジ 器 」の 左 右 両 側 に 位 置 す る と
と も に 、 背 も た れ 部 」に も た れ た 使 用 者 よ り も 左 右 方 向 外 側 に 位 置 す る

25 よ う に 、 背 も た れ 部 」の 左 右 両 側 部 か ら そ れ ぞ れ 背 も た れ 部 と 連 続 し た

湾 曲 形 状 で 前 方 へ 突 出 し 、両 側 壁(「 突 起 体 」に 相 当 )の 間 に「 背 も た れ
部」にもたれた使用者の両腕及び両腕の間の胴体をまとめてはめ込める
左 右 間 隔 を 有 す る 左 右 一 対 の 側 壁 を 備 え て い る 。左 右 一 対 の 側 壁 は 、両 側
壁の間にはめ込まれた使用者の両腕の外側に対向する内側面をそれぞれ
備えている。
5 図 1 、図 2 に 示 す よ う に 、左 右 一 対 の 側 壁 の 内 側 面 に は 、そ れ ぞ れ 使 用
者の両腕の左右外側に対向するとともに、空気の給排気によって膨張収
縮 す る エ ア バ ッ グ(「 空 気 式 マ ッ サ ー ジ 具 」に 相 当 )が 設 け ら れ て い る 。
該 エ ア バ ッ グ は 、全 て が 側 壁 の 内 側 面 に 収 ま っ て い る の で は な く 、エ ア バ
ッグの下部は側壁の下端より下方に突出している(図3参照)。
3 被告製品1のリモコン操作
(1 ) 「自動コース」と「手動コース」
動作は予め仕様により決められた手順に沿ってマッサージを行う「自
動 コ ー ス 」と 、使 用 者 が マ ッ サ ー ジ 箇 所・マ ッ サ ー ジ 方 法 等 を 選 択 し て マ
15 ッサージを行う「手動コース」とに分かれる。
リ モ コ ン の 電 源 を オ ン に し 、リ モ コ ン の 画 面 に 表 わ れ た「 自 動 コ ー ス 」
の コ ー ス メ ニ ュ ー 選 択 画 面 か ら「 30 分 専 門 」 全 身 」 ス ト レ ッ チ 」 首・
「 「 「
肩」「腰」を選択して「自動コース」に進む。
「 手 動 コ ー ス 」を 選 択 し て 進 む に は 、コ ー ス メ ニ ュ ー の 中 か ら「 手 動 選
20 択」を選択する。
(2 ) 自動コース
「 自 動 コ ー ス 」中 の「 全 身 コ ー ス 」に は 次 の 各 コ ー ス が 存 在 し 、各 コ ー
スでの動作態様は次のとおりである。
ア 「全身『極』疲労回復」コース
25 別 紙「「 背 メ カ 」と「 肩 エ ア 」の 各 動 作 タ イ ム チ ャ ー ト 」に 示 す よ う に
同 コ ー ス 中 に「 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 が 同 時 発 現 す る よ
うに組み込まれている。
ま た 、 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 の 同 時 発 現 と 同 時 に「 背

メカ」は昇降する。
イ 「全身疲労回復」コース
5 別 紙「「 背 メ カ 」と「 肩 エ ア 」の 各 動 作 タ イ ム チ ャ ー ト 」に 示 す よ う に
同 コ ー ス 中 に「 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 が 同 時 発 現 す る よ
うに組み込まれている。
ま た 、 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 の 同 時 発 現 と 同 時 に「 背

メカ」は昇降する。
10 ウ 「全身リフレッシュ」コース
別 紙「「 背 メ カ 」と「 肩 エ ア 」の 各 動 作 タ イ ム チ ャ ー ト 」に 示 す よ う に
同 コ ー ス 中 に「 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 が 同 時 発 現 す る よ
うに組み込まれている。
ま た 、 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 の 同 時 発 現 と 同 時 に「 背

15 メカ」は昇降する。
エ 「全身ソフト」コース
別 紙「「 背 メ カ 」と「 肩 エ ア 」の 各 動 作 タ イ ム チ ャ ー ト 」に 示 す よ う に
同 コ ー ス 中 に「 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 が 同 時 発 現 す る よ
うに組み込まれている。
20 (3 ) 手動コース
別 紙 「「 背 メ カ 」 と「 肩 エ ア 」の 各 動 作 タ イ ム チ ャ ー ト 」の と お り 、次
の3種類のパターンを示した。
ア ①肩エア→②背メカ(たたき動作)
イ ①背メカ(たたき動作)→②肩エア
25 ウ ①肩エア→②背メカ(たたき動作)→③背メカ(昇降動作)
「 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 は 各 動 作 の 先 後 を 問 わ ず 、同
時 に 発 現 し て い る 。ま た 、「 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 の 同
時発現と同時に「背メカ」は昇降する。
(4 ) 被告製品1は、手動コースと自動コースのいずれの場合も、次の
(a)(b)(c)という動作を、その各動作の先後を問わず、同時に発現する構成を具備する。
5 (a) エアバッグが、左右方向内方に膨張して、左右のもみ玉の前方か
つ左右方向外側位置において使用者の両腕の外側を押圧して、使用者の
胴体を両腕の外側から左右に挟む。
(b ) 機械式のマッサージ器が昇降する。
(c) 左右のもみ玉によって使用者の背中に対して左右交互に叩き動作
10 を行う。
(5 ) 被告製品Ⅱ-Aが備える、手動コース及び自動コース(全身)の
分 類 は 、別 紙「 特 許 2 の 被 告 製 品 の 手 動 ・ 自 動 コ ー ス( 全 身 )分 類 」記 載
のとおりである。
た だ し 、被 告 製 品 4 9 及 び 5 0 は 被 告 製 品 1 と 同 じ で あ り 、被 告 製 品 6
15 1は被告製品46と同じである。
図1
図 2
図3
図 4
「自動コース」中
の「全身」ボタン
手動選択ボタン
電源スイッチ
図5
以上
(別紙)
被告製品Ⅱ-B説明書(原告)
製品名 「マッサージチェア」
5 型式番号 「AS-840」(被告製品8)
1 図面の説明
図1 被告製品8の外観及び部位の説明図
図2 被告製品8のエアバッグの位置及びもみ玉のマッサージ領域を表す斜視図
10 図3 被告製品8のリモコン全体を表す図
2 被告製品8の構成の説明
図1に示すようにマッサージチェアであり、 座部」 座部の後部に 背
「 と 「
も た れ 部 」が 設 け ら れ て い る 。ま た 、図 2 に 示 す よ う に 、「 座 部 」に は 座
15 部エアバッグ(「座部の空気式マッサージ具」に相当)を備えている。
「 背 も た れ 部 」の 内 部( 背 パ ッ ド の 裏 側 )に は 、「 機 械 式 の マ ッ サ ー ジ
器 」を 備 え て い る 。「 機 械 式 マ ッ サ ー ジ 器 」は 、マ ッ サ ー ジ 用 モ ー タ の 回
転動力によりもみ玉駆動軸(「叩き動作軸」に相当)が回転することで、
左 右 の も み 玉(「 施 療 子 」に 相 当 )が 交 互 に 前 後 に 揺 動 す る 叩 き 動 作 を 行
20 う 。こ の マ ッ サ ー ジ 器 は 、 背 も た れ 部 」内 で 昇 降 自 在 に 設 け ら れ て い る 。

「 背 も た れ 部 」は 、「 機 械 式 の マ ッ サ ー ジ 器 」の 左 右 両 側 に 位 置 す る と
と も に 、 背 も た れ 部 」に も た れ た 使 用 者 よ り も 左 右 方 向 外 側 に 位 置 す る

よ う に 、「 背 も た れ 部 」の 左 右 両 側 部 か ら そ れ ぞ れ 前 方 へ 突 出 し 、両 側 壁
(「 突 起 体 」に 相 当 )の 間 に「 背 も た れ 部 」に も た れ た 使 用 者 の 両 腕 及 び
25 両腕の間の胴体をまとめてはめ込める左右間隔を有する左右一対の側壁
を 備 え て い る 。左 右 一 対 の 側 壁 は 、両 側 壁 の 間 に は め 込 ま れ た 使 用 者 の 両
腕の外側に対向する内側面をそれぞれ備えている。
図 1 に 示 す よ う に 、左 右 一 対 の 側 壁 の 内 側 面 に は 、そ れ ぞ れ 使 用 者 の 両
腕の左右外側に対向するとともに、空気の給排気によって膨張収縮する
エ ア バ ッ グ(「 空 気 式 マ ッ サ ー ジ 具 」に 相 当 )が 設 け ら れ て い る 。該 エ ア
5 バッグは、全てが側壁の内側面に収まっている。
3 被告製品8のリモコン操作
(1) 「自動コース」と「手動コース」
動作は予め仕様により決められた手順に沿ってマッサージを行う「自
10 動 コ ー ス 」と 、使 用 者 が マ ッ サ ー ジ 箇 所・マ ッ サ ー ジ 方 法 等 を 選 択 し て マ
ッサージを行う「手動コース」とに分かれる。
リ モ コ ン の 電 源 を オ ン に し 、「 自 動 」ボ タ ン を 押 す か 、又 は リ モ コ ン に
表 れ た 画 面 か ら「 自 動 」を 選 択 し て 、「 決 定 」ボ タ ン を 押 し て 、「 首 ・ 肩 」
「全身」「腰」「ストレッチ」を選択して「自動コース」に進む。
15 「手動コース」を選択するには、リモコンの「メカ」ボタンを押すか、
又はリモコンに表われた画面から「メカ」を選択して手動操作に進む。
(2) 自動コース
「自動コース」中の「全身コース」には次の各コースが存在し、各コ
ースでの動作態様は、被告製品Ⅱ-A同様、次のとおりである。
20 ア 「全身『極』疲労回復」コース
別 紙「「 背 メ カ 」と「 肩 エ ア 」の 各 動 作 タ イ ム チ ャ ー ト 」に 示 す よ う に
●(省略)●
ま た 、 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 の 同 時 発 現 と 同 時 に「 背

メカ」は昇降する。
25 イ 「全身疲労回復」コース
別 紙「「 背 メ カ 」と「 肩 エ ア 」の 各 動 作 タ イ ム チ ャ ー ト 」に 示 す よ う に
●(省略)●
ま た 、 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 の 同 時 発 現 と 同 時 に「 背

メカ」は昇降する。
ウ 「全身リフレッシュ」コース
5 別 紙「「 背 メ カ 」と「 肩 エ ア 」の 各 動 作 タ イ ム チ ャ ー ト 」に 示 す よ う に
●(省略)●
ま た 、 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 の 同 時 発 現 と 同 時 に「 背

メカ」は昇降する。
(3) 手動コース
10 被告製品Ⅱ-A同様、次の3種類のパターンを示す。
ア ①肩エア→②背メカ(たたき動作)
イ ①背メカ(たたき動作)→②肩エア
ウ ①肩エア→②背メカ(たたき動作)→③背メカ(昇降動作)
「 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 は 各 動 作 の 先 後 を 問 わ ず 、同
15 時 に 発 現 し て い る 。ま た 、「 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 の 同
時発現と同時に「背メカ」は昇降する。
(4) 被告製品8は、手動コースと自動コースのいずれの場合も、次の
(a)(b)(c)という動作を、その各動作の先後を問わず、同時に発現する構成を具備す
る。
20 (a) エ ア バ ッ グ が 、左 右 方 向 内 方 に 膨 張 し て 、左 右 の も み 玉 の 前 方 か
つ左右方向外側位置において使用者の両腕の外側を押圧して、使用者の
胴体を両腕の外側から左右に挟む。
(b) 機械式のマッサージ器が昇降する。
(c) 左右のもみ玉によって使用者の背中に対して左右交互に叩き動
25 作を行う。
(5) 被 告製品 Ⅱ- Bが備え る、手動 コース及 び自動 コ ース(全身)の
分 類 は 、別 紙「 特 許 2 の 被 告 製 品 の 手 動 ・ 自 動 コ ー ス( 全 身 )分 類 」記 載
のとおりである。
ただし、被告製品59は被告製品9と同一である。
図1
図2
電源スイッチ
手動コースの「メ
カ」ボタン
「自動コース」のボタン
図3
以上
(別紙)
被告製品Ⅱ-C説明書(原告)
製品名 「マッサージチェア」
5 型式番号 「SKS-70」(被告製品22)
1 図面の説明
図1 被告製品22の外観及び各部位の説明図
図2 被告製品22のエアバッグの位置及びもみ玉のマッサージ領域を表す斜視
10 図
図3 被告製品22のリモコン全体を表す図
2 被告製品22の構成の説明
図 1 ( a) に 示 す よ う に 、被 告 製 品 2 2 は 、マ ッ サ ー ジ チ ェ ア で あ り 、 座

15 部」を備え、更に、座部の後部に「背もたれ部」(「背凭れ部」に相当)
を 備 え て い る 。図 2 に 示 す よ う に 、座 部 に は 座 部 エ ア バ ッ グ(「 座 部 の 空
気式マッサージ具」に相当)を備えている。
図 1 ( b) に 示 す よ う に 、背 も た れ 部 の 内 部( 背 パ ッ ド の 裏 側 )に は 、 機

械 式 マ ッ サ ー ジ 器 」を 備 え て い る 。こ の「 機 械 式 マ ッ サ ー ジ 器 」は 、マ ッ
20 サージ用 モータ の 回転動力 により も み玉駆動 軸(「叩 き動作軸」に相当)
が 回 転 す る こ と で 、左 右 の も み 玉(「 施 療 子 」に 相 当 )が 交 互 に 前 後 に 揺
動 す る 叩 き 動 作 を 行 う 。こ の マ ッ サ ー ジ 器 は 、背 も た れ 部 内 で 昇 降 自 在 に
設けられている。
背 も た れ 部 は 、機 械 式 の マ ッ サ ー ジ 器 の 左 右 両 側 に 位 置 す る と と も に 、
25 背もたれ部にもたれた使用者よりも左右方向外側に位置するように、背
も た れ 部 の 左 右 両 側 部 か ら そ れ ぞ れ 前 方 へ 突 出 し 、両 側 壁(「 突 起 体 」に
相当)の間に背もたれ部にもたれた使用者の両腕及び両腕の間の胴体を
まとめてはめ込める左右間隔を有する左右一対の側壁を備えている。左
右一対の側壁は、両側壁の間にはめ込まれた使用者の両腕の外側に対向
する内側面をそれぞれ備えている。
5 図 1 ( a) に 示 す よ う に 、 左 右 一 対 の 側 壁 の 内 側 面 に は 、 そ れ ぞ れ 、 使 用
者の両腕の左右外側に対向するとともに、空気の給排気によって膨張収
縮するエアバッグ(「空気式マッサージ具」に相当)が設けられている。
該エアバッグは、全てが側壁の内側面に収まっている。
10 3 被告製品22のリモコン操作
(1) 「 自 動 コ ー ス 」 と 「 手 動 コ ー ス 」
動作は予め仕様により決められた手順に沿ってマッサージを行う「自
動 コ ー ス 」と 、使 用 者 が マ ッ サ ー ジ 箇 所・マ ッ サ ー ジ 方 法 等 を 選 択 し て マ
ッサ―ジを行う「手動コース」とに分かれる。
15 リ モ コ ン の「 自 動 コ ー ス 」ボ タ ン の 中 か ら「 全 身 コ ー ス 」「 肩 コ ー ス 」
「腰コース」「ストレッチ」を選択して「自動コース」に進む。
「 手 動 コ ー ス 」は リ モ コ ン の「 手 動 選 択 」ボ タ ン の 中 か ら 好 み に 応 じ た
選択ボタンを選択する。
(2) 自動コース
20 ア 「 自 動 コ ー ス 」 の 中 に は 、「 全 身 コ ー ス 」 、「 肩 コ ー ス 」 、「 腰 コ
ー ス 」、 ス ト レ ッ チ コ ー ス 」の 選 択 画 面 が あ り 、こ の う ち「 全 身 コ ー ス 」

をさらに細分化したコースは存在しない。
イ い ず れ の 選 択 を 行 っ て も エ ア バ ッ グ が 、左 右 方 向 内 方 に 膨 張 し て 、
左右のもみ玉の前方かつ左右方向外側位置において使用者の両腕の外側
25 を 押 圧 し て 、使 用 者 の 胴 体 を 両 腕 の 外 側 か ら 左 右 に 挟 み つ つ 、機 械 式 の マ
ッサージ器を昇降させながら左右のもみ玉によって使用者の背中に対し
て左右交互に叩き動作を同時に行うことができる。
(3) 手動コース
被告製品Ⅱ-A同様、次の3種類のパターンを示す。
ア ①肩エア→②背メカ(たたき動作)
5 イ ①背メカ(たたき動作)→②肩エア
ウ ①肩エア→②背メカ(たたき動作)→③背メカ(昇降動作)
「 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 は 各 動 作 の 先 後 を 問 わ ず 、同
時 に 発 現 し て い る 。ま た 、「 背 メ カ 」の 叩 き 動 作 と「 肩 エ ア 」の 動 作 の 同
時発現と同時に「背メカ」は昇降する。
10 (4) 被 告 製 品 2 2 は 、手 動 コ ー ス と 自 動 コ ー ス の い ず れ の 場 合 も 、次
の(a)(b)(c)という動作を、その各動作の先後を問わず、同時に発現する構成を具備
する。
(a) エ ア バ ッ グ が 、左 右 方 向 内 方 に 膨 張 し て 、左 右 の も み 玉 の 前 方 か
つ左右方向外側位置において使用者の両腕の外側を押圧して、使用者の
15 胴体を両腕の外側から左右に挟む。
(b) 機械式のマッサージ器が昇降する。
(c) 左右のもみ玉によって使用者の背中に対して左右交互に叩き動
作を行う。
(5) 被 告製品 Ⅱ- Cが備え る、手動 コース及 び自動 コ ース(全身)の
20 分 類 は 、別 紙「 特 許 2 の 被 告 製 品 の 手 動 ・ 自 動 コ ー ス( 全 身 )分 類 」記 載
のとおりである。
図1
図2
図3
以上
(別紙)
被告製品Ⅱ-D説明書(原告)
製品名 「マッサージチェア」
5 型式番号 「OH-670」(被告製品24)
1 図面の説明
図1 被告製品24の外観及び各部位の説明図
図2 被告製品24のエアバッグの位置及びもみ玉のマッサージ領域を表す斜視
10 図
図3 被告製品24のリモコン全体を表す図
2 被告製品24の構成の説明
図 1 ( a) に 示 す よ う に 、被 告 製 品 2 4 は 、マ ッ サ ー ジ チ ェ ア で あ り 、 座

15 部 」 を 備 え 、更 に 、 座 部 の 後 部 に 背 も た れ 部( 「 背 凭 れ 部 」 に 相 当 )を 備
え て い る 。図 2 に 示 す よ う に 、「 座 部 」に は 座 部 エ ア バ ッ グ(「 座 部 の 空
気式マッサージ具」に相当)を備えている。
図 1 ( b) に 示 す よ う に 、背 も た れ 部 の 内 部( 背 パ ッ ド の 裏 側 )に は 、 機

械 式 マ ッ サ ー ジ 器 」を 備 え て い る 。こ の「 機 械 式 マ ッ サ ー ジ 器 」は 、マ ッ
20 サージ用 モータ の 回転動力 により も み玉駆動 軸(「叩 き動作軸」に相当)
が 回 転 す る こ と で 、左 右 の も み 玉(「 施 療 子 」に 相 当 )が 交 互 に 前 後 に 揺
動 す る 叩 き 動 作 を 行 う 。こ の マ ッ サ ー ジ 器 は 、背 も た れ 部 内 で 昇 降 自 在 に
設けられている。
背 も た れ 部 は 、機 械 式 の マ ッ サ ー ジ 器 の 左 右 両 側 に 位 置 す る と と も に 、
25 背もたれ部にもたれた使用者よりも左右方向外側に位置するように、背
も た れ 部 の 左 右 両 側 部 か ら そ れ ぞ れ 前 方 へ 突 出 し 、両 側 壁(「 突 起 体 」に
相当)の間に背もたれ部にもたれた使用者の両腕及び両腕の間の胴体を
まとめてはめ込める左右間隔を有する左右一対の側壁を備えている。左
右一対の側壁は、両側壁の間にはめ込まれた使用者の両腕の外側に対向
する内側面をそれぞれ備えている。
5 図 1 ( a) 、図 2 に 示 す よ う に 、左 右 一 対 の 側 壁 の 内 側 面 に は 、そ れ ぞ れ 、
使用者の両腕の左右外側に対向するとともに、空気の給排気によって膨
張 収 縮 す る エ ア バ ッ グ(「 空 気 式 マ ッ サ ー ジ 具 」に 相 当 )が 設 け ら れ て い
る。該エアバッグは、全てが側壁の内側面に収まっている。
10 3 被告製品24のリモコン操作
(1) 予 め 仕 様 に よ り 決 め ら れ た 手 順 に 沿 っ て マ ッ サ ー ジ を 行 う「 自 動
コ ー ス 」を 備 え て い る 。な お 、使 用 者 が マ ッ サ ー ジ 箇 所 ・ マ ッ サ ー ジ 方 法
等を選択してマッサージを行うメカ(もみ玉)の「手動コース」はない。
リ モ コ ン の 電 源 を「 入 」に し 、リ モ コ ン の「 自 動 コ ー ス 」の 中 か ら「 全
15 身 」 、「 肩 」 、「 腰 」 を 選 択 し て 自 動 コ ー ス に 進 む 。 こ の う ち 「 全 身 コ ー
ス」をさらに細分化したコースは存在しない。
(2) いずれの選択を行っても、エアバッグが左右方向内方に膨張し
て、左右のもみ玉の前方かつ左右方向外側位置において使用者の両腕の
外 側 を 押 圧 し て 、使 用 者 の 胴 体 を 両 腕 の 外 側 か ら 左 右 に 挟 み つ つ 、機 械 式
20 のマッサージ器を昇降させながら左右のもみ玉によって使用者の背中に
対して左右交互に叩き動作を同時に行うことができる。
(3) 被 告 製 品 2 4 は 、 次 の(a)(b)(c)という動作を、その各動作の先後を問
わず、同時に発現する構成を具備する。
(a) エ ア バ ッ グ が 、左 右 方 向 内 方 に 膨 張 し て 、左 右 の も み 玉 の 前 方 か
25 つ左右方向外側位置において使用者の両腕の外側を押圧して、使用者の
胴体を両腕の外側から左右に挟む。
(b) 機械式のマッサージ器が昇降する。
(c) 左右のもみ玉によって使用者の背中に対して左右交互に叩き動
作を行う。
図1
図2
図3
以上

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