ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和4(行ケ)10017 審決取消請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和4年11月21日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告プラス株式会社 被告コクヨ株式会社 |
| 対象物 | 感圧転写式粘着テープ及び転写具 |
| 法令 |
特許権 特許法36条6項2号1回 特許法29条2項1回 特許法123条1項4号1回 特許法123条1項2号1回 |
| キーワード | 実施60回 審決26回 無効8回 進歩性3回 特許権3回 無効審判1回 分割1回 |
| 主文 | 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 特許庁における手続の経緯等 被告は、平成17年1月25日に出願した特許出願(特願2005-1725 537号)の一部を分割して、平成23年4月25日、発明の名称を「感圧 転写式粘着テープ及び転写具」とする発明について新たな出願(特願201 |
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令和4年11月21日判決言渡
令和4年(行ケ)第10017号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和4年9月26日
判 決
原 告 プ ラ ス 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 江 森 史 麻 子
同訴訟代理人弁理士 角 田 成 夫
同 長 内 行 雄
被 告 コ ク ヨ 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 大 野 聖 二
同訴訟代理人弁理士 松 野 知 紘
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2020-800084号事件について令和4年1月18日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等被告は、平成17年1月25日に出願した特許出願(特願2005-17537号)の一部を分割して、平成23年4月25日、発明の名称を「感圧転写式粘着テープ及び転写具」とする発明について新たな出願(特願2011-97032号。以下「本件出願」という。)をし、平成25年8月16日、特許権の設定登録(特許第5339475号。請求項の数7。以下、この特許を「本件特許」という。)を受けた。
5 原告は、令和2年9月30日、本件特許について特許無効審判(無効2020-800084号事件)を請求した。その後、特許庁は、令和4年1月18日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月28日、原告に送達された。原告は、令和4年2月25日、本件審決の取消しを求める本訴を提起した。2 特許請求の範囲特許請求の範囲の請求項1ないし7の記載は、次のとおりである(以下、請求項の番号に応じて、請求項1に係る発明を「本件発明1」などという。 。)【請求項1】封筒の封緘などの紙類同士を止着するために用いられるパターン塗工に適したアクリル系粘着剤を有してなる粘着剤層と、前記粘着剤を支持してなるプラスチックフィルムからなる基材とを有し、前記基材に前記粘着剤層を剥離可能に設け、前記粘着剤層を介して少なくとも紙類同士を止着させ得る送出機構部品に巻回保持された転写具用の感圧転写式粘着テープであって、前記粘着剤層の厚み寸法を10~100μmに設定し、前記粘着剤層が前記アクリル系粘着剤からなる粘着剤部と当該粘着剤部の間に介在する空隙部とを有するものであり、前記粘着剤部が占有する塗布面積率を53~75%に設定することにより前記粘着剤層を前記基材の表面に前記粘着剤を間欠的に配置してなるものとし、前記粘着剤部が複数の粘着剤ブロックを有するものであり、各粘着剤ブロックの占有面積を0.05~75平方ミリに設定し、前記粘着剤ブロックが転写される方向である前記基材の長手方向で最も近接する前記粘着剤ブロック同士を、前記基材の短寸方向に相対的に偏位した状態で相互に接触することなく配置し、
5 前記粘着剤部が、前記基材の短寸方向の端縁に沿って一部が切り欠かれた形状をなす前記粘着剤ブロックを備えたものであり、紙破現象を起こし得るように構成していることを特徴とする感圧転写式粘着テープ。【請求項2】封筒の封緘などの紙類同士を止着するために用いられるパターン塗工に適したアクリル系粘着剤を有してなる粘着剤層と、前記粘着剤を支持してなるプラスチックフィルムからなる基材とを有し、前記基材に前記粘着剤層を剥離可能に設け、前記粘着剤層を介して少なくとも紙類同士を止着させ得る送出機構部品に巻回保持された転写具用の感圧転写式粘着テープであって、前記粘着剤層の厚み寸法を10~100μmに設定し、前記粘着剤層が前記アクリル系粘着剤からなる粘着剤部と当該粘着剤部の間に介在する空隙部とを有するものであり、前記粘着剤部が占有する塗布面積率を53~75%に設定することにより前記粘着剤層を前記基材の表面に前記粘着剤を間欠的に配置してなるものとし、前記粘着剤部が複数の粘着剤ブロックを有するものであり、各粘着剤ブロックの占有面積を0.05~75平方ミリに設定し、前記粘着剤ブロックが転写される方向である前記基材の長手方向で最も近接する前記粘着剤ブロック同士を、前記基材の短寸方向に相対的に偏位した状態で相互に接触することなく配置し、前記粘着剤部が、円形状をなす前記粘着剤ブロックと、一部が前記基材の短寸方向の端縁に沿って切り欠かれた部分円形状をなす前記粘着剤ブロックとからなるものであり、紙破現象を起こし得るように構成していることを特徴とする感圧転写式粘着テープ。【請求項3】
5 前記粘着剤層の厚み寸法を15~80μmに設定している請求項1又は2記載の感圧転写粘着テープ。【請求項4】前記粘着剤層の厚み寸法を30~60μmに設定している請求項1、2又は3記載の感圧転写粘着テープ。【請求項5】スクリーン印刷又はグラビア印刷により前記粘着剤層は、前記基材の表面に前記アクリル系粘着剤を間欠的に配置してなるものである請求項1、2、3又は4記載の感圧転写粘着テープ。【請求項6】前記基材は、前記アクリル系粘着剤に対して剥離可能なポリエチレンテレフタレートフィルムからなるものである請求項1又は2記載の感圧転写粘着テープ。【請求項7】請求項1、2、3、4、5又は6記載の感圧転写粘着テープを具備してなる転写具。3 本件審決の要旨無効理由2(明確性要件違反)「紙破現象」とは、本件出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0090】の記載からみて、本件明細書で定義された用語であるから、本件発明1の記載が明確であるかどうかは、本件明細書の記載を参照する必要があるところ、本件発明1の「紙破現象を起こし得るように構成している」との発明特定事項は、本件明細書の【0090】による試験を行ったときに「紙破現象」が発生する可能性があるということを示しており、これが不明確であるということはできない。また、本件発明1の「紙破現象を起こし得るように構成している」という発明特定事項は、紙破現象を起こし得ないものが除かれているということもできるところ、紙破現象を起こし
5 得ない程度の粘着力がどの程度かは当業者にとって明確であるといえる。したがって、本件発明1の「紙破現象を起こし得るように構成している」という発明特定事項は、第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確とはいえないから、本件発明に係る特許は、特許法123条1項4号の規定により無効とすべきものということはできない。無効理由1(進歩性欠如)ア 本件審決が認定した特開2001-192625号公報(甲1。以下、「甲1文献」という。)に記載された発明(以下「甲1発明」という。 、本)件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。甲1発明「感圧転写粘着テープを巻き付け、保持する送出リール2と粘着剤層を転写使用した後に残った基材を巻き取り、収納する巻回リール3とを感圧転写具の本体となる器体1に装備し、粘着剤層を基材から剥離しながら被転写体に転写させる転着ヘッド4を被転着体に当接できるよう容器の先端からその一部を露出して備える転写具において用いられる、基材上に粘着剤層を有する感圧転写粘着テープであって、前記粘着剤層は粘着剤が不連続な島模様状に塗布されており、しかもその粘着剤の1つの島の大きさが1~100mm 2、かつ隣接する島相互の間隔が0.1~4mmである島模様状の粘着剤層を基材上に積層した感圧転写式粘着テープ」一致点「粘着剤層と、前記粘着剤を支持してなる基材とを有し、送出機構部品に巻回保持された転写具用の感圧転写式粘着テープであって、前記粘着剤層が粘着剤部と当該粘着剤部の間に介在する空隙部とを有するものであり、前記粘着部が占有する塗布面積率を設定することにより前記粘着剤層を前記基材の表面に前記粘着剤を間欠的に配置して
5 なるものとした感圧転写式粘着テープ。」相違点(相違点1)本件発明1は「前記粘着剤部が複数の粘着ブロックを有するものであ」って、前記粘着剤ブロックが転写される方向である前記基材の長手方向「で最も近接する前記粘着剤ブロック同士を、前記基材の短寸方向に相対的に偏位した状態で相互に接触することなく配置し」ているのに対して、甲1発明はそのように特定されていない点(相違点2)本件発明1は、「前記粘着剤部が、前記基材の短寸方向の端縁に沿って一部が切り欠かれた形状をなす前記粘着剤ブロックを備えたもの」であるのに対して、甲1発明はそのように特定されない点(相違点3)本件発明1は、「前記粘着剤層の厚み寸法を10~100μm」としたものであるのに対して、甲1発明は、粘着剤層の厚み寸法を特定していない点(相違点4)本件発明1は、前記粘着剤部が占有する塗布面積率を53~75%に「設定する」ものであるのに対して、甲1発明はそのようになっているか不明である点(相違点5)本件発明1は、「各粘着剤ブロックの専有面積を0.05~75平方ミリに設定」されるのに対して、甲1発明においては、「粘着剤のひとつの島の大きさが1~100mm 2 」となっており、両者の数値範囲が異なる点(相違点6)
5 本件発明1は「封筒の封緘などの紙類同士を止着するために用いられ」、「紙破現象を起こし得るように構成している」ものであるのに対して、甲1発明は「封筒の封緘などの紙類同士を止着するために用いられ」 紙、「破現象を起こし得るように構成」することが明記されていない点(相違点7)本件発明1は粘着剤層が「アクリル系粘着剤を有してなるもの」に特定されているのに対して、甲1発明は粘着剤層がアクリル系粘着剤を有してなるものに特定されていない点(相違点8)本件発明1は粘着剤を支持してなる基材が「プラスチックフィルムからなる」ものに特定されたものであるのに対して、甲1発明は基材が特定されていない点(相違点9)本件発明1は、アクリル系粘着剤が「パターン塗工に適した」ものに特定されているのに対し、甲1発明はそのような特定を備えていない点(相違点10)本件発明1は、「基材に粘着剤層を剥離可能に設け、前記粘着剤層を介して少なくとも紙類同士を止着させ得る」ものに特定されているのに対し、甲1発明はそのような特定を備えていない点イ 本件審決の無効理由1に関する判断の要旨は、以下のとおりである。本件発明1についてa 相違点6について甲1文献には、甲1発明において「紙破現象を起こし得るように構成」することや、母材の引張強さと接着剤の凝集力との関係を、紙破現象を起こし得るような関係となるように限定することを動機付けるような記載や示唆はなく、他に当業者がこのような限定をすることが
5 容易に想到し得ることであると認めるに足りる証拠はない。b 相違点1ないし5について仮に、甲1文献に接した当業者が、甲1発明の接着力を保持しつつ良好なのり切れ性を向上させることを試みるとしても、特開2005-15736号公報(甲2。以下、この文献を「甲2文献」という。 、)実願昭51-103224号(実開昭53-21157号公報)のマイクロフィルム(甲3。以下、この文献を「甲3文献」という。 、特)開平8-333556号公報(甲4。以下、この文献を「甲4文献」という。 、久保亮五ら編集、岩波化学辞典(第4版)) (1987年)693頁(甲5) 欧州特許出願公開第0860489号明細書、 (甲7(その和訳は甲8)。以下「甲7文献」という。)に記載された技術事項を精査しても、甲1発明の粘着部材をどのような配置にするか、また、粘着剤層の厚み寸法、占有する塗布面積、占有面積をいかなる量とするかは示唆がなく、相違点1ないし5に係る事項を備えるものとすることを想到できるということはできない。c 発明の効果について本件発明1は、相違点1ないし10に係る全ての構成を備えることで、剥離動作により粘着剤が紙類から剥がされた際には紙破現象が起「こることによって紙類が厚み方向に破断された修復不可能な状態となるため、当該粘着製品が止着された痕跡を必然的に紙類に残す」との格別の効果を奏するものといえる。d 小括以上によれば、相違点7ないし10について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2文献等に記載された技術事項等に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものに該
5 当するものとはいえない。本件発明2ないし7について本件発明2ないし7は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、更に限定したものであるところ、本件発明1は、甲1発明及び甲2文献等に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2ないし7も、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。まとめ以上によれば、無効理由1は理由がなく、本件発明1ないし7は、いずれも特許法123条1項2号の規定により無効とすべきものとはいえない。4 取消事由明確性要件違反の判断の誤り(取消事由1)進歩性欠如の判断の誤り(取消事由2)ア 本件発明1の容易想到性の判断の誤り(取消事由2-1)イ 本件発明2ないし7の容易想到性の判断の誤り(取消事由2-2)
第3 当事者の主張
1 取消事由1(明確性要件違反の判断の誤り)について
(原告の主張)
ア 本件発明1の「紙破現象を起こし得るように構成している」との発明特定事項は不明確であること「紙破」の用語は、広辞苑等の一般的な辞書にはなく、当業者が一般的に用いる語ではないから、その意義は、明細書における定義によるところ、本件明細書には、「以下本件明細書において、このような紙類の表面を損傷した状態を紙破と記載する。 (」 【0011】)とあり、ここでいう「このような紙類の表面を損傷した状態」とは、「例えば被着体を紙類
5 とした場合、粘着製品或いは粘着剤を紙類から剥がそうとする剥離動作
を行った際に、紙の表層を確実に損傷させることが要求される場合がある。 (」 【0009】 、) 「個人情報の保護や機密保持といったセキュリティ上の観点から、送付先の人物に当該封筒が第三者によって開封されたか否かを明確に識別できるように封緘する必要がある。詳細には、粘着剤層を剥がそうとすれば封筒の表面が損傷する様に封筒を止着・封緘することが絶対条件となる。・・・製本後頁と頁とが分離されたという痕跡を頁すなわち紙類に残しておけば偽造や捏造を防止し得るものとなる。」(【0010】 との記載があり、) これらの記載からすると、「紙破」とは、単に広く「紙が破れる」ということを指すのではなく、「紙の表層を確実に損傷させ」「開封されたか否かを明確に識別でき」「封筒の表面が損傷することが絶対条件」であり、「分離されたという痕跡が残る」というものを指すものであるから、通常の利用者が視認可能な態様で紙が破れることを指すというべきである。また、「紙破現象」について、本件明細書には、「粘着製品の粘着剤層を剥離させた際に紙類の表層が粘着剤に付着し紙類が厚み方向に破断することを紙破現象と記載することとする」(【0011】 との記載があ)り、剥離させたときに「紙類の表層が粘着剤に付着する」のみでは十分ではなく「紙類が厚み方向に破断する」ことが必要であり、また、上記のとおり「紙破」とは、通常の利用者が視認可能な態様で紙が破れることを指すものであるから、「紙破現象」とはこうした「紙破」が起こる現象を指すものというべきである。a 次に、本件発明1は「『紙破現象』を起こし得る」ように構成されている」との発明特定事項を含むが、「起こし得る」というだけでは、いかなる条件の下でどのくらいの割合で紙破現象が起これば技術的範囲に属するのか不明確である。本件明細書には、確実に損傷させる」「 (【0
5 009】 、
)「明確に識別できるように封緘する」、「粘着剤層を剥がそうとすれば封筒の表面が損傷する様に封筒を止着・封緘することが絶対条件」 【0010】 、( ) 「痕跡を紙類に明確に残す」 【0012】( )との記載があるから、剥離したときに紙破現象が起こることもあるという程度では課題を解決することができず、紙破現象は「必然的に」起こるものでなければ発明の効果を奏さない 【0048】 と解されるし、( )紙、木材、プラスチック等それ自体の引っ張りの強さの小さな材料では、接着が完全に行われると、多くの場合、被着剤の破断する母材破断となることが本件出願時の技術常識である(甲9)から、これらの本件明細書の記載及び技術常識によれば、 『紙破現象』を『起こし得「る』」とは、ほぼ確実に「紙破現象を起こすものでなければならないと解すべきであるが、いかなる条件の下でほぼ確実に紙破現象が起こるのかは不明確である。b この点、被告は、後記 イ のとおり、①本件発明1は紙破現象を「起こし得」ればよいから、ほぼ確実に起こすものと解する余地はない、②紙破現象の条件について任意の条件で紙破現象を起こし得れば本件発明1の技術的範囲に属するのであり、仮に、条件を特定する必要があるとしても、本件明細書の【0092】に試験方法が記載されており、この条件の下で試験を行って紙破現象を起こし得るものであれば技術的範囲に含まれる旨主張する。しかし、①については、上記のとおり、本件明細書には「送付先の人物に当該封筒が第三者によって開封されたか否かを明確に識別できる」(【0010】 、)「製本後頁の入れ替えや挿入などの操作が不可能なものとする」という紙破及び紙破現象が果たすべき機能は、紙破現象が起きる可能性だけで果たされるとはいえないし、一般に請求項に「し得る」という用語が用いられる場合、何回かに1回程度の可能性があ
5 るものが含まれるとは解されておらず(一例として、被告が出願人の
1人である特開2020-39649(甲47) 、
(被告の主張)
どおり)であるとすれば、それでは何回実験したうちの1回起きればよいのか不明確である。また、②については、母材破断するかどうかは条件により異なる(後記イのとおりのほか、温度、湿度も母材破断が起きるかどうか影響を与える因子である。 から、) 条件を特定しなければ紙破現象を起こし得るかどうか不明確であり、被告が指摘する【0092】には、母材破断が起こるかどうかに影響を与える温度、湿度は特定されておらず、本件明細書に開示されている実験により本件発明1の技術的範囲に属するか確認しようとしても一義的に定まらない。したがって、
(被告の主張)
は理由がない。本件発明1は「紙破現象を起こし得る『ように構成している』」との発明特定事項を含むが、この構成要件以外の他の構成要件は、「紙破現象」の発現に貢献しないものであり、本件発明1の作用効果に対する意味をなさないから、これらの構成要件を全て充たしたとしても、これにより「紙破現象」が起きやすくなると当業者には理解できず、本件明細書を参照しても、「紙破現象を起こし得る」構成については具体的な記載はない。そうすると、本件発明1の「紙破現象を起こし得るように構成している」との構成要件は、不明確であるといえる。イ 技術常識について同一の接着剤を同一の被着剤に用いて剥離試験をするとしても、「接着時における因子」、すなわち、①接着及び養生時の温度、湿度、②接着剤塗布後、張り合わせるまでの時間、③張り合わせてから圧締するまでの時間、
④圧締圧力(荷重、方法)、⑤圧締時間、解圧放置養生期間・条件により、
5 結果は異なるし、「強度測定時の因子」、すなわち、①荷重方向、荷重速度
等、②試験片の形状、③試験片の接着(接合)面積、④試験時の温度、湿度等で結果は異なることは、当業者の技術常識であり、また、接着破壊するかどうかは、速度、接着剤の弾性率や粘性係数、緩和時間、接着剤層の厚さ等が影響すること、剥離強さと剥離速度により破壊様式が転換すること、剥離角も影響することを示す文献もある。さらに、JIS規格には、粘着テープの粘着力を試験するための厳密な条件が定められており、母材破断と関係する「10 粘着力」の試験では、試験片の形状、貼り付ける試験板の材質、大きさや洗浄方法、圧着ローラの重さや形状、温度、湿度、引き剥がし角度、引き剥がし速度等により異なることが示されている。これらの技術常識に照らせば、「紙破現象」が起こるかどうかは、これらの条件によるところが大きいものであり、「紙破現象が起こし得るように構成している」かどうかについても、いかなる条件の下であるかを特定しなければ不明確である。ウ 本件明細書に開示されている試験結果について本件明細書の【0091】ないし【0094】には、実物剥離試験の結果が開示されている。しかし、原告は、株式会社DJKに依頼して、本件発明1の実施品である被告製品ドットライナースタンダード及びドットライナーノックについて、条件A(本件明細書の【0092】に記載された条件である、
①試験品をステンレス板に転写した後、基材を剥離させ、②市販の白封
筒(商品名:オキナ株式会社製ホワイト封筒WP2270(角形2号A4版) を短冊状に裁断した紙片を取り付け、) ③10mm/sの速度で1kgのローラを1往復させ、④40分後に、⑤0.8mm/s(=48mm/s)の速さで、⑥180度の方向に紙片を引っ張る、剥離動作の
5 試験)と、条件B(圧着するローラーの重さを2倍とし、引っ張り速度
を300mm/min)の下で、試験条件ごとに5つのサンプルを用いて「紙破現象」が起きるか追実験(甲11)をしたところ、いずれも「ナキワカレ」となり「紙破現象」は生じなかった。また、被告が審判において提出した「事実実験公正証書」(甲26)によれば、「被請求人の実験結果」について「目視では十分に確認できなかった」と記載されており、「紙破」とは、前記ア のとおり、本件明細書の記載からすると、視認可能な態様で母材である紙を破断するものと解するべきであるから、「紙破」現象が生じたとはいえない。なお、同公正証書では、50倍の顕微鏡を見つつ立会人の説明を受けたら「繊維状のもの又は繊維状の塊が付着」していることが分かった旨の記述があるが、繊維であるのか埃であるのか分からず、また、剥離した紙の繊維であるか分からず、もとより、通常の利用者が視認可能な態様で紙が破れたとはいえないから、「紙破」が起きたとはいえない。以上のとおり、原告による追実験(甲11)及び被告による「事実実験公正証書」(甲26)の各試験結果からすると、本件明細書の試験結果は信用することができない。なお、被告は、後記 イ のとおり、原告による追実験で確認できなかったことが明確性要件とどう関係するのか意味不明である旨主張するが、「紙破現象」は本件明細書で被告が定義した用語であるが、先行技術と比較したときに本件発明が紙破現象につながるのか本件明細書の記載全体からは読み取れず、このため、本件明細書に開示されている実験結果が「紙破現象」を起こすかどうかを実証的に説明していると理解するほかないところ、上記のとおり、本件明細書の試験結果は信用することができないから、結局のところ、本件発明の技術的範囲が不明確であり、
第三者に不測の不利益を及ぼすものである。
5 エ 小括
以上によれば、本件発明1の「紙破現象を起こし得るように構成している」との発明特定事項は、本件明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の技術常識を踏まえても、具体性がなく、その他の発明特定事項の構成要件を全て充たしても「紙破現象」が起こるかどうか分からないから、発明の技術的範囲が不明確であり、明確性要件を満たさない。また、本件発明2ないし7は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明2ないし7も、明確性要件を満たさない。したがって、これと異なる本件審決の判断は誤りであり、取り消されるべきである。
(被告の主張)
ア 本件発明1の「紙破現象を起こし得るように構成している」との発明特定事項は第三者に不測の不利益を及ぼすものではないこと「紙破現象」という用語は、本件明細書の【0011】に「粘着製品の粘着剤層を剥離させた際に紙類の表層が粘着剤に付着し紙類が厚み方向に破断することを紙破現象と記載することとする。 と定義されており、」 何ら不明確ではない。本件発明1は、「紙破現象を起こし得るように構成している」とされているため、紙破現象を起こし得れば本件発明1の技術的範囲に属し、紙破現象を起こし得なければ技術的範囲に属しないことは明らかであって、第三者に不測の不利益を及ぼすものではない。イ
(原告の主張)
について原告は、前記 ア のとおり、「紙破」とは通常の利用者が視認可能な態様で紙が破れることを指す旨主張するが、本件明細書には、「製本後頁と頁とが分離された痕跡を頁すなわち紙類に残しておけば偽造や捏造を防止し得る」(【0010】 、)「紙類の表面を損傷した状態を紙破と記載する。 (」 【0011】)と記載されているように、痕跡を残すことで偽造や
5 捏造を防止し得るというのが本件発明1の技術的思想であり、
「紙破」は紙類の表面が損傷した痕跡が残るものであれば足り、視認可能であるか否かを問うものではないから、原告の上記主張は誤りである。原告は、前記 ア のとおり、本件明細書の記載及び技術常識からすると、『紙破現象』を『起こし得る』「 」とは、ほぼ確実に「紙破現象を起こす」ものでなければならないと解すべきであるが、いかなる条件の下でほぼ確実に「紙破現象」が起こるのかは不明確である旨主張して、紙破現象が起こる「割合」 「条件」と を問題にするが、「割合」に関しては、クレーム上、紙破現象を「起こし得」ればよいから、「ほぼ確実に起こすもの」などと解する余地はなく、また、「条件」に関して、クレーム上、「いかなる条件の下」であるかを特定していないから、任意の条件で紙破現象を起こし得れば本件発明1の技術的範囲に属する。仮に「いかなる条件の下」を特定する必要があるとしても、本件明細書の【0092】に試験方法が記載されており、少なくとも、同段落に記載された条件の下で試験を行って紙破現象を起こし得るのであれば技術的範囲に含まれるから、いずれにせよ、第三者に不測の不利益を及ぼすものではなく、原告の上記主張は誤りである。原告は、前記 ア のとおり、「紙破現象を起こし得る」構成以外の他の構成要件は「紙破現象」の発現に貢献しないものであり、特許請求の範囲にも本件明細書にも「紙破現象を起こし得る」構成について記載がない旨主張するが、本件発明1は、その他の構成要件を満たす感圧転写式粘着テープのうち「紙破現象を起こし得るように構成している」ものを指すから、何ら明確性を欠くものではない。なお、発明の作用効果は、明確性要件とは無関係である。原告は、前記 ウのとおり、原告において本件明細書に記載された条件下で追実験を行った結果、「紙破現象」は生じなかったから、本件明細
5 書の試験結果は信用できない旨主張するが、原告による追実験で確認で
きなかったことが明確性要件とどう関係するのか意味不明な主張であり、その点を措くとしても、原告は、「紙破」を通常の利用者が視認可能な態様で紙が破れることとの誤った理解を前提にして「紙が破れたことを視認できなかった」としているのであって、「紙破」が起きなかったということではない。なお、原告は、被告による「事実実験公正証書」(甲26)記載の実験について繊維であるのか埃であるか分からないし、仮に、繊維であるとしても、剥離した紙の繊維であるか分からない旨難癖をつけているが、上記実験は、エタノール液でステンレス板を洗浄した後に行ったものであり、実験前に埃があったとしても確実に拭き取られた状態で行われたものであるから、実験後に確認された繊維は、紙に由来するものである。ウ 小括以上によれば、本件発明1の「紙破現象を起こし得るように構成している」との発明特定事項は、第三者に不測の不利益を及ぼすものではなく、明確性要件を満たすものであり、また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2ないし7も明確性要件を欠くものではない。したがって、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2-1(本件発明1の容易想到性の判断の誤り)について
(原告の主張)
ア 相違点6について相違点6のうち、「封筒の封緘などの紙類同士を止着するために用いられ」との点については、甲1文献には、従来技術として、「主に事務用途向けとしてこれらを小巻にして転写装置に装着した転写具が「テープのり」などの名称で上市されている」(【0002】 との記載があるから、)甲1発明は、「事務用途向け」の「テープのり」に関する発明である。そ
5 して、
「事務用途向け」の「テープのり」は、紙類同士を付けるために用いられるから、上記の点は相違点ではない。相違点6のうち、「紙破現象を起こし得るように構成している」との点については、前記1 のとおり、構成要件の内容は甚だ不明確であり、それ自体何を意味するのか明らかではないから、実質的に相違するものと評価することはできない。なお、従来の製品でも、封緘後に手でしっかり圧力を掛けた後、急いで剥離すれば、痕跡が視認可能な母材破断、すなわち、「紙破現象」を起こすことは明らかであり(甲46の1。甲9・75頁左欄3~5行目にも「紙・・・など、それ自体の引張強さの小さな材料では、接着が完全に行われると、多くの場合に被着剤の破断する母材破断となる」との記載がある。 、上市されている「永久接着タイプ」のテープ糊は全て「紙)破現象を起こし得る」といえるから、この点からも実質的な相違点ではない。これに対し、被告は、後記 アのとおり、相違点は主引用例である甲1文献に記載されているか、記載されているに等しい事項により認定されるべきところ、「従来の製品」は甲1発明ではなく、原告が主張する「従来の製品」は「強粘着タイプ」(甲46の1)であって永久接着タイプであるか不明であるし、上市されている「永久接着タイプ」のテープ糊が実在するかも不明であり、実在するとしても永久接着タイプにおいて紙破現象が起こり得るか不明である旨主張する。しかし、事務用品としての感圧式粘着テープには、永久接着タイプと再剥離可能タイプがあり、永久接着タイプは条件により紙破現象を起こし得ることは、上記 のとおりである。甲1発明は、永久接着タイプも含まれることが明示されており 【0008】 、( ) 甲1発明のうち永久接着タイプのものは、条件により紙破現象を起こし得る。また、甲第48号
5 証の3記載の原告製品は、市場では「強粘着」として販売されているが、
永久接着タイプであって、被告の指摘は当たらない。イ 相違点1ないし5について相違点1a 相違点1の「前記粘着剤部が複数の粘着剤ブロックを有するものであ」る点は、甲1文献には、請求項1に「粘着剤が不連続な島模様状に塗布されており」 「島相互の間隔」 「島模様状の感圧粘着剤層」と、 、表現されており、また、発明の詳細な説明には「島模様状とは粘着剤が点々とアトランダムに、或いは規則的な配列をなしてパターン状に存在することを意味し、個々の島の形状については任意の形状でよく、また個々の島は完全に独立分断されていることが好ましい。 との記載」があることから、甲1発明にいう「島」は、本件発明1にいう「ブロック」と同義であり、また、甲1発明は「不連続な島模様」を構成要件としているから、「複数の粘着剤ブロックを有する」ことは明らかである。したがって、この点は相違点ではなく、また、粘着剤層をドット状やブロック状にすることは周知技術である。次に、相違点1の「前記粘着剤ブロックが転写される方向である前記基材の長手方向で最も近接する前記粘着剤ブロック同士を、前記基材の短寸方向に相対的に偏位した状態で相互に接触することなく配置」している点については、甲3文献の第1図(d)(f)(g)、 、 、甲4文献の図1、図5、図6、甲7文献の図1、図2に開示されているから、甲1文献に接した当業者であれば容易に想到し得るものである。また、ドット状のパターン製品は従来から広くみられるものであり(例えば、本件明細書の【0094】の比較例6) 糊面積を広く取ろうとすれば、、相対的に偏位した状態で配置することになるから、この点の構成についても当業者であれば容易に想到し得る。
5 b これに対し、被告は、後記 イ のとおり、①認定された相違点を
更に細かく分けた構成が複数の文献に開示されているとしても、相違点1に係る構成が開示されていることにならない、② 甲3文献及び甲7文献には粘着剤が基材から転写されることは開示されていないし、甲4文献には転写方向が開示されていないから、相違点1に係る構成のうち、少なくとも「転写される方向である前記基材の長手方向」との構成は開示されていない旨主張する。しかし、①については、当業者であれば、「前記粘着剤部が複数の粘着剤ブロックを有するものであ」って「前記粘着剤ブロックが転写される方向である前記基材の長手方向において最も近接する前記粘着剤ブロック同士を、前記基材の短寸方向に相対的に偏位した状態で相互に接触することなく噛み合うように配置」することは、甲3文献等に開示された周知技術を組み合わせることで容易に想到し得る。
② については、粘着剤が基材から転写されるもの(テープ糊)に
係る当業者と、粘着剤が基材から転写されないもの(粘着テープ)に係る当業者は同じであるから、当業者は、いわゆる粘着テープにおける技術をテープ糊に用いることができる。 については、「長手方向において」 「前記基材の短寸方向に」という構成は、本件明細書を参照、してもその技術的意義は開示されていないから、そもそも特段の技術的意義はないというべきである。相違点2通常の粘着テープの製造過程では、全面に粘着剤が塗工された幅の広い粘着原反を細く切ってからケースに収納されるから、パターン塗工の場合、カットされる縁、すなわち、基材の短寸方向の端縁には、ブロックの一部が切り欠かれたものとなる。そうすると、短寸方向の端縁に沿って一部の切り欠かれた形状であることは、この製造過程から来る制約
5 の一種であって、本件発明の技術的思想の一部をなすものではなく、本
件明細書にも、こうした短寸方向の端縁に沿って一部が切り欠かれた形状であることについて何らかの作用効果を奏することや他の構成要件と組み合わさって技術的特徴をなすことについての開示はない。なお、ブロックの一部が切り欠かれた形状は、甲2文献の図2、図7にもある。したがって、相違点2は、製造上の制約を言語化したにすぎず、本件発明の技術的思想の一部をなすものではない。相違点3「テープのり」の厚みには自ずから制約があるところ、本件発明1は、それを「10~100μm」と広くとらえただけで、何らの限定となっていない。甲1文献には、通常1~50μm、「 好ましくは2~30μm」(【0008】 、甲2文献の「請求項4」には、) 「5μm以上」、甲4文献には「好ましくは5μm~4mm、より好ましくは7μm~2mmで、特に好ましくは10μm~1mm」(【0012】 との記載があるとおり、)厚み寸法10μm~100μmは、これらの周知技術の範囲内で、特段の意味を持たない任意に選択された数値範囲であるにすぎない。また、本件明細書の【0096】ないし【0098】で実測した範囲は、16.1μm~71.4μmであり(「平格子」「イチョウ」「レン、 、ガ」 「細六角」 「タイヤ」及び「大波」は参考例である(、 、 【0096】)から、除外される。 、本件発明1の特許請求の範囲に記載された「10)~100μm」の数値範囲は、それを超えるものであり、本件発明1の厚み寸法が10μm~100μmと特定した根拠は本件明細書には記載はない。したがって、相違点3は、周知技術の範囲内で任意に選択された数値範囲であるにすぎない。相違点4
5 パターン塗工を行う際の塗布面積率には一定の制約があるところ、本
件発明1は、周知技術のうちの任意の数値を述べるだけで、何らの限定となっていない。甲2文献の「請求項2」には、「55~93%」、甲3文献の請求の範囲6には「20%~70%」との記載がある。また、甲1文献には、塗布面積率の数値はないが、「島の大きさは1~100m㎡・・・隣接する島相互間の間隔は0.1~4mm」【0007】( )との記載があり、個々の島を矩形として塗布面積率を算出すると、4~98%となるから、本件発明1の「18~94%」は、周知技術の範囲内である。次に、本件明細の【0043】には、「75%」紙破現象」のためには塗布面積率が18%以下だと問題がある一方で「糊切れ性能」のためには94%以上だと問題があるとし、「53~75%」の塗布面積率が好ましいとあるが、具体的な根拠ないし実験結果は示されておらず、また、【0077】にも、「粘着剤100を間欠的に塗工することによって粘着剤部11と空隙部13とが形成されるが、フィルム12の表面積に対する粘着剤部11が占める塗布面積率を53~75%に設定すれば、感圧転写テープ1は紙破現象を実現しつつ糊切れ性能の高いものとなるが、紙破し得る止着力と糊切れ性能を担保するための塗布面積率として、18~94%に設定することができる。」との記載があるが、ここでも「53%~75%」という数字の根拠が示されていない。したがって、相違点4には技術的根拠はなく、周知技術の範囲内で任意に選択された数値範囲にすぎない。相違点5甲1文献には、「粘着剤層の個々の1つの島の大きさは1~100m㎡、好ましくは3~36m㎡」との記載があり、また、甲2文献の請求項3には「接着剤のドッドは、0.5m㎡以上の面積を有する」、甲3文
5 献の4頁下から3行目以下には「点状・・・の表面粘着部の・・・大き
さは点の直径が0.5~5mm程度(円の面積に換算すると0.785~78.5m㎡)、甲4文献の請求項2には「各独立単位区域の寸法範囲が約0.1~30mm、好ましくは約0.2~約10mm、更に好ましくは約0.4mm~約5mm」との記載がそれぞれあり、本件発明1の「各粘着剤ブロックの占有面積を0.05~75平方ミリに設定」は、周知技術の技術的範囲内である。また、本件明細書の【0044】には、「粘着剤層の厚みを均一化し且つ粘着剤層を紙類或いは他の部材に対して押圧する際の応力を集中させ、好適に止着させるためには、粘着剤部を複数の粘着剤ブロックを有するものとし、各粘着剤ブロックの占有面積を0.05~75平方ミリとしている。ここで、粘着剤ブロックの面積が0.05平方ミリ以下であると基材上に設けることが困難となり、75平方ミリ以上であると、使用時の糊切れ性能が劣るものとなってしまう。」との記載があり、0.05平方ミリという下限は製造技術上の制約であることが示されており、 0【100】には、「占有面積についてはフィルム巾を25mmに設定した場合、75平方ミリまで面積の広い粘着剤ブロックに関しても塗布しうるということが分かった。 との記載があり、」 幅25mmのテープには75平方ミリの面積まで塗布できたことが示されているが、これらの記載は、0.05~75平方ミリならば技術上可能というだけで、数値限定に技術的思想があるとはいえない。したがって、相違点5は、周知技術の範囲内で任意に選択された数値範囲にすぎない。各文献で開示された技術的事項を甲1発明に適用する動機付けについて被告は、後記 イのとおり、甲1発明に甲2文献ないし甲4文献、甲
5 7文献に開示された技術的事項を適用する動機付けについて言及がない
旨主張するが、これらの文献は、甲1文献の課題である「糊切れ」と「接着力」という課題を共通するものであるから、これらに開示されている技術的事項については、甲1発明に適用する動機付けがある。ウ 顕著な効果を奏するものとはいえないこと前記第2の3 イ cのとおり、本件審決は、本件発明1は相違点1ないし10に係る構成を備えることで隔離動作により粘着剤が紙類から剥がされた際には紙破現象が起こることによって紙類が厚み方向に破断された修復不可能な状態となるため当該粘着製品が止着された痕跡を必然的に紙類に残すとの格別の効果を奏する旨判断したが、「紙破現象を起こし得る」というだけでは紙破現象が必ず起きるとはいえないから、「当該粘着製品が止着された痕跡を必然的に紙類に残す」という格別の効果が生じるとはいえないし、また、従来の両面テープでも、「紙破現象」は起きており(本件明細書の【0094】【表2】の比較例8。なお、原告による甲第46号証の1記載の実験も同じ。 、本件発明1に係る構成によって「紙破)現象」が起きたとはいえない。したがって、本件発明1について「格別の効果」がある旨判断した本件審決の判断は誤りである。エ 小括以上によれば、相違点1ないし5は、周知技術の範囲内で任意に選択された数値範囲であるにすぎないか、本件発明の技術的思想の一部をなすものではなく、また、相違点6は実質的な相違点ではなく、本件発明1にはその構成を備えることで顕著な効果を奏するものとはいえないから、これと異なる本件審決の判断は誤りである。
(被告の主張)
ア 相違点6について
5 原告は、前記 ア のとおり、
「紙破現象を起こし得るように構成している」との構成要件の内容は甚だ不明確であることを理由として実質的に相違するものと評価することはできない旨主張するが、不明確であるから実質的な相違点ではないという
(原告の主張)
は意味不明である。もとより、前記1 のとおり、「紙破現象を起こし得るように構成している」との点は不明確ではないから、
(原告の主張)
は失当である。また、原告は、前記 ア のとおり、従来の製品でも、封緘後に手でしっかりと圧力を掛けた後、急いで剥離すれば、痕跡が視認可能な母材破断、すなわち、「紙破現象を起こし得る」といえ、この意味では、上市されている「永久接着テープ」のテープ糊は全て「紙破現象を起こし得る」ものといえる旨主張するが、相違点は主引用例である甲1文献に記載されているか、又は記載されているに等しいか否かにより認定されるものであり、「従来の製品」は甲1発明ではない(甲1発明は、粘着剤層が島模様状であるが、少なくとも「従来の製品」がそのようになっていることは示されていない。)から、甲1文献に記載されているに等しいとはいえない。原告が指摘する「従来の製品」は強粘着タイプ(甲46の3)であって、永久接着タイプであるかは不明であり、上市されている「永久接着タイプ」が実在するかすら不明であるし、仮に実在するとしても、永久接着タイプで紙破現象が起こるのか不明である。なお、原告は、本件発明1の実施品ではない「ドットライナースティック」では紙破現象が起こらないことを認めており(甲11) この点からも、、「すべて紙破現象を起こし得る」という
(原告の主張)
は理由がない。したがって、相違点6は実質的相違点ではないとの
(原告の主張)
は理由がなく、本件審決の判断に誤りはない。イ 相違点1ないし5について相違点1
5 原告は、前記 イ のとおり、相違点1に係る構成は、関連文献記載
の周知技術に照らせば、甲1文献に接した当業者であれば容易に想到する旨主張するが、相違点はまとまりのある構成を単位として認定されるものであるから、認定された相違点を更に細かく分けた構成が複数の文献に開示されているからといって、相違点1に係る構成が開示されていることにはならず、
(原告の主張)
は当を得ない。また、甲2文献、甲3文献及び甲7文献には、粘着剤が基材から転写されることは開示されておらず、甲4文献には転写方向が開示されていないから、相違点1に係る構成のうち、少なくとも「転写される方向である前記基材の長手方向」との構成は開示されておらず、これらの文献に開示された事項を甲1発明に適用したとしても、相違点1に係る構成には想到し得ないし、また、原告は、これらに開示された事項について甲1発明に適用する動機付けについては言及していない。なお、原告は、ドット状のパターン製品は従来から広く見られたものであり、糊面積を広く取ろうとすれば相対的に偏位した状態にした上で噛み合うように配置するので容易想到である旨主張するが、まさに後知恵というべきである。相違点2ないし5原告は、各公知文献に相違点2ないし5に係る構成の開示があると指摘するのみで、各公知文献に記載された事項を甲1発明に適用する動機付けについては何ら言及していない。ウ 小括以上によれば、相違点6は実質的相違点であり、相違点1ないし6は、当業者であっても容易に想到し得たものではないから、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
3 取消事由2-2(本件発明2ないし7の容易想到性の判断の誤り)について
5
(原告の主張)
本件審決は、本件発明2ないし7は本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1は当業者が甲1発明に基づいて容易に想到し得たものとはいえないことを理由として、本件発明2ないし7も当業者が容易に想到し得たものとはいえない旨判断した。しかし、本件発明1の容易想到性に関する本件審決の判断に誤りがあることは前記2 のとおりであるから、本件発明2ないし7に関する本件審決の判断も誤りである。
(被告の主張)
本件発明1の容易想到性に関する本件審決の判断に誤りはないから、原告の主張はその前提を欠くものである。
第4 当裁判所の判断
1 本件明細書の記載事項について本件明細書(甲28)には、別紙1のとおりの記載があり、同記載事項によれば、本件明細書には、本件発明1に関し、次のような開示があることが認められる。ア 従来から事務用途において多く用いられている基材に粘着剤層を設けた粘着製品は、基材と粘着剤層とが予め止着された状態として、基材を支持材として紙類等に貼り付ける態様の粘着製品(例えば、粘着テープ、シール)と、基材が粘着剤層に対して剥離可能に設けられるように構成し、粘着剤層を介して二つの被着体を止着し得るもの(例えば、感圧転写式粘着テープであり、一般にロール状に巻かれた状態で転写具に装着され、所望の長さのみ好適に転写し得る状態で取り扱われる。 とがあり、) どちらの粘着製品においても、止着力とともに糊切れ性能が最も重要な要素として挙げられ、糊切れ性能を向上させる有効な手法として、粘着剤層を基材上に間欠的に塗布する、いわゆるパターン塗工の手法が特に感圧転写式粘着テ
5 ープで広く用いられており、また、パターン塗工の長所として、粘着剤層を転写する際に粘着剤の隙間から空気が逃げることにより粘着剤層と被着体の間に空気が入り気泡や皺となって見た目が悪くなることを効果的に回避することができるが、パターン塗工の欠点としては、基材上に粘着剤を全面塗布したものと比べて粘着剤の塗布面積率及び塗布量が低下することによる止着性能が低下しまうという問題があった 【0002】( ないし【0004】 。)このため、粘着剤を基材に全面塗布しつつ糊切れ性能を向上させる方法(基材上に全面塗布された粘着剤層を凹凸を有するエンボス状とすることにより粘着剤層の厚みの薄い部分において糊切れをしやすく構成しているもの)がある(【0005】 。)イ 他方、粘着製品に対して求められる性能は、粘着製品の用途によって大きく異なり、粘着剤を被着体に全く残さず、かつ、被写体を損傷せずに隔離させるという性能を満たす粘着製品も多く開発されているが、例えば、被着体を紙類とした場合、粘着製品又は粘着剤を紙類から剥がそうとする剥離動作を行なった際に、紙の表層を確実に損傷させることが要求される場合がある(【0006】【0009】。具体的には、個人情報に関する書、 )類等、重要な書類を封筒に入れて送付する場合、個人情報の保護や機密保持といったセキリュティの観点から、送付先の人物に当該封筒が第三者によって開封されたか否かを明確に識別できるように封緘するする必要があり、粘着剤層を剥がそうとすれば、封筒の表面が損傷するように封筒を止着、封緘することが必要となる。また、ノート、日記帳、出版物等の製本の際に粘着製品を用いて各頁を綴じているが、製本後頁と頁が分離された痕跡を紙類に残し、製本後の頁の入れ替えや挿入等による内容の偽造や捏造を防止し得ることも必要である。 【0010】( )こうした紙類の表面を損傷した状態を本件明細書上では「紙破」と、粘
5 着製品の粘着剤層を剥離させた際に紙類の表層が粘着剤に付着し紙類が厚み方向に破断することを「紙破現象」とそれぞれ記載する 【0011】。( )ウ 粘着製品が被着体に止着された後に剥離動作によって剥がされたという痕跡を紙類に明確に残すための性能として紙破という考え方を新たに挙げることができるところ、従来の粘着製品は、強度に乏しい紙を紙破し得ることはあるものの、通常使用する種々の紙類を紙破することは想定されておらず、特に重要な書類を保管する際に用いられるような上質紙や上質紙よりもさらに表面強度が高い白封筒のような厚手の紙を確実に紙破し得る視点で止着力を設定しているものではないため、重要な書類を封筒に入れて封緘する用途等には使用者が安心して使用することができない現状であり、また、重要な書類を封緘する場合は、その見た目についても、例えば、止着・封緘箇所に皺や気泡が形成されることなく好適に仕上げるために、粘着製品には、紙破させるに足りる止着性能や糊切れ性能だけでなく、止着箇所に気泡や皺を形成し難いといった性能も要求される(【0012】ないし【0014】 。)「本発明」は、こうした不具合に着目したものであり、セキュリティ性を有効に維持しつつ、糊切れ性能や止着箇所の仕上がりを良好なものとし得る感圧転写式粘着テープを提供するものである(【0015】 。)エ 「本発明」によれば、粘着剤層を基材上に間欠的に配置することにより、粘着剤層を紙類同士の所望の箇所のみ止着させる際の糊切れ性能を向上させるのみならず、粘着剤層が紙類同士間に間欠的に配置されることにより紙類同士を止着する際に粘着剤が存在しない箇所から余分な空気を含ませることなく好適に止着を行うことができ、剥離動作により粘着剤が紙類から剥がされた際には紙破現象が起こることによって紙類が厚み方向に破断された修復不可能な状態になるため、当該感圧転写式粘着テープが止着された痕跡を必然的に紙類に残すことができる。こうした感圧転写式
5 粘着テープを封筒の封緘等に用いれば、見た目良く、かつ、正確に封筒を封緘し得ることができるとともに、封筒が開封された痕跡を残し得るセキュリティ性の高い封緘を行うことができ、また、製本用途に使用すれば、製本後頁と頁とが分離された痕跡を頁(紙類)に必然的に残し得るものとなるため、製本後の偽造や捏造を有効に発見し得るか、あるいは未然に防止することができる。 【0048】( )前記 の開示事項によれば、本件発明1は、基材に粘着剤層を剥離可能に設け、粘着剤層を介して紙類同士を止着させ得る巻回保持された転写用具用の感圧転写式粘着テープにおいて、①余分な空気を含ませることなく、好適に止着を行うことができること、②被着体に止着された後に剥離動作を行った際に「紙破現象」を起こし得るものであること、③糊切れ性能を有することの3つの機能をいずれも備えたものであるという点に技術的意義を見出すことができる。
2 甲1文献の記載事項について甲1文献には、別紙2のとおりの記載があり、この記載事項によれば、甲1文献には、次のような開示があることが認められる。ア 「本発明」は、テープ基材上に粘着剤層を設けた感圧転写粘着テープに関するものである(【0001】 。)イ 最近、主として事務用途向けに上市されている転写具は、感圧転写粘着テープを巻きつける送出リールと、この送出リールにより供給される感圧転写粘着テープの粘着剤層を基材から剥離しながら被転写体へ転写させる転着ヘッドと、転写使用後に残った基材を巻き取る巻回リールとを片手で把持可能な器体内に装備しているが、粘着剤層を切断する際、粘着剤層の粘着剤が連続状に塗布されているため、切断時に粘着剤が糸を引くように伸びてしまい円滑に切断できない、いわゆる「糊切れ」が悪いという問題があり、こうした問題を回避するために、従来、粘着剤層を細かいドッ
5 ト状としたり、間隔を大きく開けてブロック状に配するという方法が考えられているものの、これらの方法では連続状に塗工した場合に比べ接着力が低下するという欠点があった(【0002】ないし【0004】 。)「本発明」の目的は、十分な接着力を保持しつつ良好な糊切れ性を有する感圧転写粘着テープを提供するものである(【0004】 。)甲1文献の「特許請求の範囲」の「請求項1」「発明の詳細な説明」の【0、005】 【0007】 【0009】の記載によれば、甲1発明は、本件審決、 、が認定した前記第2の3 ア のとおりであると認められる。
3 取消事由1(明確性要件違反の判断の誤り)について特許出願における特許請求の範囲の記載については、「特許を受けようとする発明が明確である」(特許法36条6項2号)との要件に適合することが求められている。その趣旨は、特許制度が、発明を公開した者に独占的な権利である特許権を付与することによって、特許権者についてはその発明を保護し、一方で第三者については特許に係る発明の内容を把握させることにより、その発明の利用を図ることを通じて、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とするものであることを踏まえたものであると解される。こうした趣旨からすると、同号の要件の適合性については、特許請求の範囲の記載、本件明細書の記載及び出願当時の技術常識を踏まえ、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の損害を被らせない程度に明確に記載されているかという観点から判断されるべきである。以下、これを前提として判断する。ア 本件発明1は、「紙破現象を起こし得るように構成している」との発明特定事項を有しているところ、「紙破」又は「紙破現象」とは一般的な用語ではなく、その意義を特定するためには、本件明細書の記載を参照することになる。そこで、本件明細書の記載についてみると、本件明細書には、「・・・例
5 えば被着体を紙類とした場合、粘着製品或いは粘着剤を紙類から剥がそうとする剥離動作を行った際に、紙の表層を確実に損傷させることが要求される場合がある。 (」【0009】、) 「以下本明細書において、このような紙類の表面を損傷した状態を紙破と記載する。また、粘着製品の粘着剤層を剥離させた際に紙類の表層が粘着剤に付着し紙類が厚み方向に破断することを紙破現象と記載することとする。 (」 【0011】 、) 「・・・「紙破」:粘着剤層の表面に紙片の表層部分を付着させて剥離(図12(a) 、)「界面剥離」:粘着剤層と紙片との界面において剥離(同図(b) 、)「凝集剥離」:粘着剤が紙類とステンレス板との両方に付着した状態で剥離(同図(c) 、)「ナキワカレ」粘着剤層が紙類とステンレス板との両方に付着した状態で剥離(同図(d) 、の何れかに分類して行った。 () 」 【0092】)との記載があり、【0092】で引用されている図12は、以下のとおりであり、図12の(a)には、ステンレス板上の粘着剤層の表面に紙類が厚み方向に破断した紙片の一部が付着した状態が描かれている。上記で指摘した本件明細書の記載及び図面を総合すると、本件発明1における「紙破現象」とは、粘着製品の粘着剤層を剥離させた際に紙類の表層が粘着剤に付着し、紙類が厚み方向に破断する現象をいうものであると
5 理解することができる。そして、本件発明1の「紙破現象を起こし得るように構成している」との発明特定事項は、その他の構成要件を充足する「感圧転写式粘着テープ」のうち、「紙破現象を起こし得る」ように構成されているものと解することができ、「紙破現象を起こし得ない」構成は、本件発明1の技術的範囲に含まれないものと理解することができる。そうすると、「紙破現象」の発生割合や発生条件について本件発明1に係る請求項1には特定されていないとしても、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の損害を被らせるほど不明確な記載であるとはいえない。イ これに対して、原告は、前記第3の1 のとおり、①「紙破」は、通常の利用者が視認可能な態様で紙が破れることを指すものであり、「紙破現象」とはこうした「紙破」が起こる現象を指すべきものである、②本件明細書の記載及び技術常識からすると、「紙破現象を起こし得る」とは、ほぼ確実に「紙破現象を起こすもの」でなければならないが、いかなる条件の下で起こるのか不明確であり、同一の接着剤を同一の被着剤に用いた剥離試験に関する技術常識に照らせば、「紙破現象が起こし得るように構成している」かどうかは条件が特定されなければ不明確である、③原告による追実験(甲11)及び被告による「事実実験公正証書」(甲26)の各試験結果からすると、本件明細書の試験結果は信用することができない旨主張
5 する。しかし、前記アのとおり、本件明細書には、「以下本明細書において、このような紙類の表面を損傷した状態を紙破と記載する。また、粘着製品の粘着剤層を剥離させた際に紙類の表層が粘着剤に付着し紙類が厚み方向に破断することを紙破現象と記載することとする。 【0011】 とあり、」( )粘着製品の粘着剤層を剥離させたときに紙類の表層が粘着剤に付着し、厚み方向に紙類が破断していることを示す図(図12(a) があることから、)「紙破現象」とは、上記段落で記載されたとおりに解釈されるべきであり、「通常利用者が視認可能な状態」で紙が破れることという条件を付加して解釈する必要はない。また、原告による追実験(甲11)は、紙類の表層が粘着剤に付着したかどうかの確認作業について言及がない(むしろ、視認によって判断している可能性が高い。 ため、) この追実験で本件明細書の実物剥離試験の結果が信用できないものであると判断することはできないし、被告による「事実実験公正証書」(甲26)の試験結果において、「目視では十分に確認できなかった」との記載があるとしても、そのことが「紙破現象」が起きていないことを意味するものではないことについては前示のとおりであるから、上記①及び③の各主張は理由がない。次に、上記②について検討するに、本件発明1においては、粘着剤層を介して紙類同士を止着させた後、粘着剤層を剥離させたときの条件及び方法は発明特定事項には含まれておらず、他の構成要件を充足する「感圧転写式粘着テープ」のうち、「紙破現象を起こし得る」ように構成されているものが本件発明1として特定されているのであるから、任意の条件及び方法で「紙破現象」が生じ得る構成であれば、本件発明1の技術的範囲に属するものといえ、他方、「紙破現象を起こし得ない」構成は技術的範囲に属さないことが明らかにされている。したがって、少なくとも上記 記載の明確性要件との関係においては、剥離試験における条件や方法等について
5 の特定がないとしても、第三者に不測の不利益を及ぼすものとはいえないから、上記②の主張も理由がない。その他、原告がるる主張する点は、いずれも本件結論を左右し得ない。
4 取消事由2-1(本件発明1の容易想到性の判断の誤り)について前記1及び2において判示したところに照らせば、本件発明1と甲1発明は、本件審決が認定した一致点で一致するが、本件審決が認定した相違点1ないし10の点で相違するものと認められる。相違点3、4及び6について本件発明1の技術的意義は、前記1 のとおりであるところ、本件明細書には、「紙破現象」を起こし得る構成について、「・・・本発明に係る感圧転写式粘着テープを製造する過程において、・・・紙破現象を起こし得るように構成しつつ粘着剤を基材に、より正確且つ効率的に塗工するためには、粘着剤層の厚み寸法を10~100μmに設定している。ここで、厚み寸法が10μm以下であると基材に確実に塗工し難いものとなり、厚み寸法が100μm以上となると、粘着剤の塗布量が嵩んでしまいコストが高いものとなってしまうか場合によっては粘着剤の凝集力が低下することによって剥離動作の際に粘着剤が凝集破壊を起こして紙破し得ないものとなってしまう。 【0」(042】、)「・・・紙破現象を起こしつつ糊切れ性能を良好なものとするためには、前記粘着剤層を前記アクリル系粘着剤からなる粘着剤部と当該粘着剤部の間に介在する空隙部とを有するものとしている。ここで、塗布面積率が18%以下であると紙類を止着する力が弱まり、紙破現象を起こすことができず例えば界面剥離を起こしてしまうものとなり、塗布面積率が94%以上であると空隙部を介して離間している粘着剤部同士が互いに接しやすくなり、十分な糊切れ性能が得られないものとなってしまう。そして本発明では、上述した止着力並びに糊切れ性能をさらに考慮すると、好ましい塗布面積率としては53~75%に設定している。 (」 【0043】、) 「表3に示すように、
5 「タイヤ」パターンで14.8μmの厚み寸法で粘着剤を塗布したものにおいて紙破現象を示した一方で、「レンガ」パターンで79.9μmの厚み寸法においても紙破を示した。よって、本実施例において、粘着剤層が15~80μmの範囲で塗布されたものについては白封筒を紙破し得るこということが表3から示すことができる。加えて、表3に示した以外の塗工パターンについては、実施例1及び実施例2に示した粘着剤を用いれば、他の塗工パターンについて、10~100μm程度の厚み寸法の範囲において白封筒を紙破し得る粘着製品を構成し得るものと考えられる。 (」 【0098】 、) 「表4に示した各塗工パターンは実施例1及び実施例2に係る粘着剤を用いて塗布することが可能なパターンであるが、「タイヤ」パターンの面積率から、塗布面積率が18%以上の塗工パターンであれば、紙破し得る粘着製品を構成し得るということが分かった。また、同じく「タイヤ」パターンから、主たる粘着剤ブロックの占有面積が0.05平方ミリ以上で有れば確実に塗工でき且つ紙破し得るということも分かった。・・・」【0100】( )との記載がある。これらの記載からすると、本件発明1の発明特定事項のうち、「紙破現象」を起こし得る構成に関連するものは、少なくとも、「粘着剤層の厚み寸法を10~100μmに設定」し、「前記粘着剤部が占有する塗布面積率を53~75%に設定する」ことであるといえる。そして、上記のとおり、「粘着剤層の厚み寸法を10~100μmに設定」し、「前記粘着剤部が占有する塗布面積率を53~75%に設定する」という構成を備えていることにより「紙破現象を起こし得る」のであるから、粘着剤層の厚みに関連する相違点3及び粘着剤部が占有する塗布面積率に関連する相違点4と、「紙破現象を起こし得る」に関する相違点6は、それぞれ別々に容易想到性の判断をするのではなく、一つの相違点として判断されるべきである(なお、本件審決は、相違点6と、相違点1ないし5の、それぞれについて容易想到性の判断をしているが、上記で説示したところからすれば適
5 切であるとはいえない。 。)相違点3、4及び6の容易想到性についてア 前記2 のとおり、甲1発明は、もっぱら十分な接着力を保持しつつ良好な糊切れ性を有することをその目的としており、甲1文献には、粘着剤層の厚み寸法及び粘着剤部が占有する塗布面積率に着目して、基材に剥離可能に設けられた粘着剤層を介して紙類を止着させた後に「紙破現象」を起こし得るように構成することについての記載も示唆もなく、また、感圧転写式粘着テープの分野で「紙破現象」を起こし得るようにすることが当業者にとって周知の課題であると認めるに足りる証拠もないから、甲1発明を相違点3、4及び6の構成とする動機付けはない。仮に、そうした動機付けがあるとしても、原告が本件出願時当時の周知技術として提出する甲2文献等の各文献には、「紙破現象を起こし得る」ことに関係する粘着剤層の厚みや塗布面積率に関する開示はなく、また、相違点3及び4の構成が設計的事項であると認めるに足りる証拠もない。したがって、相違点3、4及び6は、甲1発明及び周知技術によって当業者が容易に想到し得たものとはいえない。イ これに対し、原告は、前記第3の2 アのとおり、相違点6に関し、
①「紙破現象を起こし得るように構成している」との点は不明確であるから、実質的な相違点ではない、②上市されている「永久接着タイプ」のテープ糊は全て「紙破現象を起こし得る」のであって、相違点6は実質的相違点ではない旨主張する。しかし、構成要件が不明確であるから実質的相違点ではないという主張は当を得ないものというほかないし(明確性要件違反と進歩性要件はそれぞれ別の取消事由として判断されるべきである。 、) 前記2のとおり、「紙破現象を起こし得るように構成している」との点は、その他の各構成要件を満たす感圧転写式粘着テープのうち、「紙破現象を起こし得る」
5 ものととらえれば技術的範囲として明確であるから、上記①の主張は理由がない。また、上記②の点については、上市されている「永久接着タイプ」のテープ糊は全て「紙破現象を起こし得る」ものであることを裏付ける証拠がないことは措くとしても、従来の製品でも条件を満たせば視認可能な「紙破現象」を起こし得ることをもって、相違点3、4及び6の構成は設計的事項であるにすぎない旨の主張として善解する余地はあるので検討すると、本件発明1は、その請求項のとおり「パターン塗工」が前提となっているところ、本件明細書の【0091】ないし【0094】によれば、パターン塗工を施した比較例の中で紙破し得る特性を示したものはなかったとされており、比較例の中には、比較例9として「粘着剤/プラス」 「印刷方法/パターン」が、比較例10として「粘着剤/、プラス」 「印刷方法/ベタ」が含まれており、比較例9等の「印刷方法、/パターン」のものについては、「パターン塗工適性試験に採用された塗工パターンにおける粘着剤の配置と略同様の部位に位置する粘着剤のみが粘着力を示すように粘着剤層を部分的に不活性化させた」ことが明らかにされている。これに対し、甲第46号証の1記載の実験は、比較例9のような部分不活性化処理を施していないものであるから(令和4年8月2日の書面による準備手続調書参照) 比較例9のようなパターン塗、工を施したものを対象にするのではなく、比較例10のような印刷方法がベタであるものを対象にするものといえる。そうすると、上記実験による結果は、本件発明1のパターン塗工と異なる構成の下で母材破断が起き得ることを示しているにすぎないから、これをもって、相違点3、4及び6の構成は設計的事項であるにすぎないことを示すものとはいえない。また、原告は、前記第3の2 イ 及び のとおり、相違点3及び4
5 について、原告主張の各文献記載の数値範囲と重なることから、周知技術の範囲内といえる旨主張するが、各文献に記載された数値範囲が紙破現象との関係で有意な数値として開示されているものではないことは前記アのとおりであって、当を得ない主張である。小括以上によれば、その他の点について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び周知技術等により当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、これと同旨の本件審決の判断は結論において相当であり、原告主張の取消事由2-1は理由がない。その他、原告がるる主張する点は、いずれも本件結論を左右し得ない。
5 取消事由2-2(本件発明2ないし7の容易想到性の判断の誤り)について本件発明2ないし7に係る請求項2ないし7は、本件発明1に係る請求項1を直接又は間接的に引用するものであるところ、本件発明1は、甲1発明及び周知技術等に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえないことは前記4のとおりであるから、本件発明2ないし7も、甲1発明及び周知技術等に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、本件審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由2-2は理由がない。
6 結論以上によれば、原告が主張する取消事由はいずれも理由がなく、本件審決は結論において相当であるから、原告の請求は棄却されるべきである。よって、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
菅 野 雅 之
裁判官
中 村 恭
裁判官
岡 山 忠 広
(別紙1)
【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】
5 本発明は、封筒などの紙類を止着するための感圧転写式粘着テープに関するものである。【背景技術】【0002】従来、事務用途において基材に粘着剤層を設けた粘着製品が多く用いられている。このような粘着製品は大きく二つの種類のものに分かれている。一方のものは、基材と粘着剤層とが予め止着された状態として、基材を支持体として紙類等に貼り付ける態様の粘着製品である。このようなものの具体例として、粘着テープやシールといったものを挙げることができる。他方のものは、基材が粘着剤層に対して剥離可能に設けられたように構成し、粘着剤層を介して二つの被着体を止着し得るものである。このようなものの具体例として、いわゆる「テープ糊」として市販されている感圧転写式粘着テープを挙げることができる。このような感圧転写式粘着テープは一般にロール状に巻かれた状態で転写具に装着され、所望の長さのみ好適に転写し得る状態で取り扱われる。【0003】上述したどちらの粘着製品についても、止着力とともに最も重要な要素として大きく挙げられる事は、取り扱う際の糊切れ性能である。この糊切れ性能を向上させる有効な手法としては、粘着剤層を基材上に間欠的に塗布する、所謂パターン塗工といった手法が、特に感圧転写式粘着テープにおいて広く用いられている。またパターン塗工のさらなる長所として、粘着剤層を転写する際に粘着剤の隙間から空気が逃げることにより粘着剤層と被着体との間に空気が入り気泡や皺となって見た目が悪くなるということを効果的に回避しているという点が挙げられる。【0004】しかし、このパターン塗工の欠点として、基材上に粘着剤を全面塗布したものに比べて粘着剤の塗布面積率並びに塗布量が低下するため止着性能が低下してしまう事が挙げられる。5 【0005】そのため、粘着剤を基材に全面塗布しつつ、糊切れ性能を向上させる方法も開発されている。例えば、基材上に全面塗布された粘着剤層を凹凸を有するエンボス状とすることにより、粘着剤層の厚みの薄い部分において糊切れし易く構成しているものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。【0006】一方、粘着製品に対して求められる性能は、粘着製品の用途によって大きく異なる。これまで、粘着剤を被着体に全く残さず且つ被写体を損傷せずに隔離させるという性能を満たす粘着製品も多く開発されている(例えば、非特許文献1参照)。【先行技術文献】【特許文献】【0007】【特許文献1】 特開2001-271041号公報 (例えば、表1、表2を参照)【非特許文献】【0008】【非特許文献1】「コクヨ 2005オフィスサプライズ編」、コクヨ株式会社、平成16年12月、p.674【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0009】しかしながら、上述のような被着体を損傷させないことを目的とする場合とは全く別の考え方として、例えば被着体を紙類とした場合、粘着製品或いは粘着剤を紙類から剥がそうとする剥離動作を行った際に、紙の表層を確実に損傷させることが要求される場合がある。【0010】具体的に例を挙げて説明すると、個人情報に関する書類等、重要な書類を封筒に入5 れて送付する場合、個人情報の保護や機密保持といったセキュリティ上の観点から、送付先の人物に当該封筒が第三者によって開封されたか否かを明確に識別できるように封緘する必要がある。詳細には、粘着剤層を剥がそうとすれば封筒の表面が損傷する様に封筒を止着・封緘することが絶対条件となる。加えて、ノートや日記帳、或いは出版物などの製本においても粘着製品を用いて各頁を綴じているが、製本後頁の入れ替えや挿入などの操作が不可能なものとすることが内容の偽造や捏造を防止するという観点から重要である。このような場合においても製本後頁と頁とが分離されたという痕跡を頁すなわち紙類に残しておけば偽造や捏造を防止し得るものとなる。【0011】以下本明細書において、このような紙類の表面を損傷した状態を紙破と記載する。また、粘着製品の粘着剤層を剥離させた際に紙類の表層が粘着剤に付着し紙類が厚み方向に破断することを紙破現象と記載することとする。【0012】すなわち、粘着製品が被着体に止着された後に剥離動作によって剥がされたという痕跡を紙類に明確に残すための性能として、紙破という考え方を新たに挙げることができる。【0013】しかし、上述したような従来の粘着製品では強度に乏しい紙を紙破し得ることはあるものの、通常使用する種々の紙類を紙破することは想定しておらず、特に、重要な書類を保管する際に用いられるような上質紙や、上質紙よりもさらに表面強度が高い白封筒のような厚手の紙を確実に紙破し得るという視点に立って止着力を設定しているものではないため、上述のような重要な書類を封筒に入れて封緘する用途等には使用者が安心して使用できないのが現状である。【0014】加えて、通念上重要な書類を封緘する場合はその見た目についても、例えば止着・5 封緘箇所に皺や気泡が形成されることなく好適に仕上げるという考え方から、粘着製品には紙破させるに足る止着性能や糊切れ性能の他に、止着箇所に気泡や皺を形成し難いといった性能も要求される。【0015】そこで本発明は、このような不具合に着目したものであり、セキュリティ性を有効に維持しつつ糊切れ性能や止着箇所の仕上がりを良好なものとし得る感圧転写式粘着テープを提供する。【課題を解決するための手段】【0016】本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち、本発明に係る感圧転写式粘着テープは、封筒の封緘などの紙類同士を止着するために用いられるパターン塗工に適したアクリル系粘着剤を有してなる粘着剤層と、前記粘着剤を支持してなるプラスチックフィルムからなる基材とを有し、前記基材に前記粘着剤層を剥離可能に設け、前記粘着剤層を介して少なくとも紙類同士を止着させ得る送出機構部品に巻回保持された転写具用の感圧転写式粘着テープであって、前記粘着剤層の厚み寸法を10~100μmに設定し、前記粘着剤層が前記アクリル系粘着剤からなる粘着剤部と当該粘着剤部の間に介在する空隙部とを有するものであり、前記粘着剤部が占有する塗布面積率を53~75%に設定することにより前記粘着剤層を前記基材の表面に前記粘着剤を間欠的に配置してなるものとし、前記粘着剤部が複数の粘着剤ブロックを有するものであり、各粘着剤ブロックの占有面積を0.05~75平方ミリに設定し、前記粘着剤ブロックが転写される方向である前記基材の長手方向で最も近接する前記粘着剤ブロック同士を、前記基材の短寸方向に相対的に偏位した状態で相互に接触することなく配置し、前記粘着剤部が、前記基材の短寸方向の端縁に沿って一部が切り欠かれた形状をなす前記粘着剤ブロックを備えたものであり、紙破現象を起こし得るように構成していることを特徴とする。5 【0018】このようなものであれば、粘着剤層が紙類同士の間に間欠的に配置されることにより、紙類と他の部材とを止着される際に粘着剤が存在しない箇所から余分な空気を含ませることなく好適に止着を行うことができる。そして剥離動作により粘着剤が紙類から剥がされた際には紙破現象が起こることによって紙類が厚み方向に破断された修復不可能な状態となるため、当該感圧転写式粘着テープが一旦は止着されたという痕跡を必然的に紙類に残すことができる。そしてこのような感圧転写式粘着テープを例えば封筒の封緘等に用いれば、見た目良く且つ正確に封筒を封緘し得るものとなるとともに、封筒が開封された痕跡を確実に残し得るセキュリティ性の高い封緘を行うことができる。また当該感圧転写式粘着テープを製本用途に使用すれば、製本後の偽造や捏造を有効に防止し得るものとなる。【0019】そして、本発明に係る感圧転写式粘着テープは、封筒の封緘などの紙類同士を止着するために用いられるパターン塗工に適したアクリル系粘着剤を有してなる粘着剤層と、前記粘着剤を支持してなるプラスチックフィルムからなる基材とを有し、前記基材に前記粘着剤層を剥離可能に設け、前記粘着剤層を介して少なくとも紙類同士を止着させ得る送出機構部品に巻回保持された転写具用の感圧転写式粘着テープであって、前記粘着剤層の厚み寸法を10~100μmに設定し、前記粘着剤層が前記アクリル系粘着剤からなる粘着剤部と当該粘着剤部の間に介在する空隙部とを有するものであり、前記粘着剤部が占有する塗布面積率を53~75%に設定することにより前記粘着剤層を前記基材の表面に前記粘着剤を間欠的に配置してなるものとし、前記粘着剤部が複数の粘着剤ブロックを有するものであり、各粘着剤ブロックの占有面積を0.05~75平方ミリに設定し、前記粘着剤ブロックが転写される方向である前記基材の長手方向で最も近接する前記粘着剤ブロック同士を、前記基材の短寸方向に相対的に偏位した状態で相互に接触することなく配置し、前記粘着剤部が、円形状をなす前記粘着剤ブロックと、一部が前記基材の短寸方向の端5 縁に沿って切り欠かれた部分円形状をなす前記粘着剤ブロックとからなるものであり、紙破現象を起こし得るように構成していることを特徴とする。【0042】そして上述の通り、本発明に係る感圧転写式粘着テープを製造する過程において、上述したアクリル系粘着剤を基材上へ塗工する上述した種々の印刷方法のうち、何れの方法を採用するにせよ、紙破現象を起こし得るように構成しつつ粘着剤を基材に、より正確且つ効率的に塗工するためには、粘着剤層の厚み寸法を10~100μmに設定している。ここで、厚み寸法が10μm以下であると基材に確実に塗工し難いものとなり、厚み寸法が100μm以上となると、粘着剤の塗布量が嵩んでしまいコストが高いものとなってしまうか場合によっては粘着剤の凝集力が低下することによって剥離動作の際に粘着剤が凝集破壊を起こして紙破し得ないものとなってしまう。そして、上述した塗布の容易性並びに製造コストを考慮すると、好ましい厚み寸法としては15~80μmに、最も好ましい厚み寸法としては30~60μmに設定することが望ましい。【0043】また上述の通り、紙破現象を起こしつつ糊切れ性能を良好なものとするためには、前記粘着剤層を前記アクリル系粘着剤からなる粘着剤部と当該粘着剤部の間に介在する空隙部とを有するものとしている。ここで、塗布面積率が18%以下であると紙類を止着する力が弱まり、紙破現象を起こすことができず例えば界面剥離を起こしてしまうものとなり、塗布面積率が94%以上であると空隙部を介して離間している粘着剤部同士が互いに接しやすくなり、十分な糊切れ性能が得られないものとなってしまう。そして本発明では、上述した止着力並びに糊切れ性能をさらに考慮すると、好ましい塗布面積率としては53~75%に設定している。【0044】そして感圧転写式粘着テープを使用する際に紙類と粘着剤層との間に皺や気泡が形成されてしまうことを有効に回避するためには、空隙部を前記粘着剤層の略全面5 に亘って当該粘着剤層の側面に開放するように構成することが望ましい。また、粘着剤層の厚みを均一化し且つ粘着剤層を紙類或いは他の部材に対して押圧する際の応力を集中させ、好適に止着させるためには、粘着剤部を複数の粘着剤ブロックを有するものとし、各粘着剤ブロックの占有面積を0.05~75平方ミリに設定することが望ましい。ここで、粘着剤ブロックの面積が0.05平方ミリ以下であると基材上に設けることが困難となり、75平方ミリ以上であると、使用時の糊切れ性能が劣るものとなってしまう。そして、望ましく設けた粘着剤ブロックの具体例として、粘着剤ブロックを格子形状としたものや、円形状のドット状としたもの等、種々の形状を設定することができる。【0045】また本発明に係る粘着製品は、スクリーン印刷又はグラビア印刷により前記粘着剤層は、前記基材の表面に前記アクリル系粘着剤を間欠的に配置してなるものであることが望ましい。【0047】特に、本発明に係る粘着製品は、基材に対して粘着剤層を剥離可能に設けることにより、感圧転写粘着テープ等として好適に使用することができる。ここで、粘着剤層を剥離可能に設けるためには、基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)を採用したものを挙げることができる。そして、上述の感圧転写式粘着テープを、転写具に採用することにより使用者にとって好適に使用し得るものとすることができる。【発明の効果】【0048】本発明によれば、粘着剤層を基材上に間欠的に配置することにより、粘着剤層を紙類同士の所望の箇所のみ止着させる際の糊切れ性能を向上させるのみならず、粘着剤層が紙類同士間に間欠的に配置されることにより、紙類同士を止着する際に粘着剤が存在しない箇所から余分な空気を含ませることなく好適に止着を行うことがで5 きる。そして剥離動作により粘着剤が紙類から剥がされた際には紙破現象が起こることによって紙類が厚み方向に破断された修復不可能な状態となるため、当該感圧転写式粘着テープが止着された痕跡を必然的に紙類に残すことができる。そしてこのような感圧転写式粘着テープを封筒の封緘等に用いれば、見た目良く且つ正確に封筒を封緘し得るものとなるとともに、封筒が開封された痕跡を確実に残し得るセキュリティ性の高い封緘を行うことができる。また当該感圧転写式粘着テープを製本用途に使用すれば、製本後頁と頁とが分離されたという痕跡を頁すなわち紙類に必然的に残し得るものとなるため、製本後の偽造や捏造を有効に発見し得るか或いは未然に防止し得るものとなる。【0049】そして当該感圧転写式粘着テープを具備する転写具であれば、使用者にとって信頼性の高い粘着性品並びに当該粘着製品を具備するものとすることができる。【発明を実施するための形態】【0051】以下、本発明の一実施の形態に係る粘着製品たる感圧転写式粘着テープ(以下、感圧転写テープと記す)1を具備する転写具Aについて図面を参照して説明する。【0052】この転写具Aは、図1及び図2に示すように、感圧転写テープ1を収納するカートリッジCと、カートリッジCを装着し、感圧転写テープ1を好適に送出し得る転写具本体A1と、後述する粘着剤100を白封筒に転写する際に転写具本体A1との間に白封筒Fを把持し得るアームA2とを具備しているものである。そして図1は、転写具本体A1とアームA2とによって白封筒Fの折返し片F1を把持しながら、例えば白封筒Fをスライド移動させることにより、後述する基材たるフィルム12の表面上にドット形状に塗布された後述する粘着剤100を折返し片F1の端辺に沿って転写している状況を示している。なお、粘着剤100が折返し片F1に押圧転写された後は、折返し片F1を白封筒Fの開口端を介して折返し、粘着剤1005 が折返し片F1と破線で示す開口端付近F2との間に介在した状態でさらに押圧することによって折返し片F1と開口端付近F2とが止着され、白封筒Fが確実に封緘された状態となる。【0053】ここで、転写具Aに装着されている本実施形態に係る粘着製品たる感圧転写テープ1は、粘着剤100を有する後述する粘着剤層10を介して紙類と他の部材たる折返し片F1と開口端付近F2とを止着させた状態から折返し片F1と開口端付近F2とを剥離させる剥離動作を行った際に、紙類たる折返し片F1と開口端付近F2の何れか一方の表層部を前記粘着剤層の表面に付着させ前記一方を厚み方向に破断する紙破現象を起こし得るように構成していることを特徴とするものである。また白封筒Fは、通常事務用途において使用されている上質紙P(図示せず)よりも表面強度が優れているものであるため、感圧転写テープ1は勿論上質紙P(図示せず)に対しても確実に紙破現象を起こし得るものである。【0054】以下、感圧転写テープ1の具体的な構造並びに構成について転写具Aの構造を踏まえて詳述する。【0055】転写具Aにおいては図2に示すように、転写具本体A1とカートリッジCは概ね半割構造をなしており、カートリッジCの一部が露出することによってカートリッジCのみを好適に取り替え得る構造となっている。すなわち、カートリッジCは、消耗部品である感圧転写テープ1と、送出機構部品の一部である巻き出しスプールSP1、巻き取りスプールSP2、転写ヘッドH等を交換部品として、当該詰め替えカートリッジCに付帯させた状態で新品と交換するようにしている。なお転写具本体A1は、送出機構部品の一部である非交換部品を保持している。【0056】感圧転写テープ1は、図3及び図4に示すように、後に詳述するアクリル系粘着剤5 たる粘着剤100を有してなる粘着剤層10と、粘着剤10を支持してなる基材たるフィルム12とを有し、前記粘着剤層10をフィルム12の表面に粘着剤100を間欠的に配置してなるものとしている。そして、図3はフィルム12の表面上に図1並びに図6に対応した例えば直径1.5mmの平面視円形状のドットたる後述するドットブロック110によって構成される「ドット」パターンに塗工した態様を模式的に示し、図4は図7に対応した例えば1辺が1.3mmの平面視正方形の後述する格子ブロック111によって構成される「格子」パターンに塗工した態様を模式的に示している。なお、フィルム12上に塗工し得る他のパターンについては後に詳述する(図6、図7、図8及び図9)。【0057】フィルム12は、本実施形態において例えば粘着剤100に対して剥離可能なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなるものであるが、当該ポリエチレンテレフタレートに限定されるものではなく、アクリル系粘着剤たる粘着剤100に対して剥離し得るものであればよい。なお、アクリル系粘着剤に対して剥離性を有するものとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチックフィルム、グラシン紙等の紙、金属箔等を挙げることができる。また、剥離効果を有さないものの表面に剥離効果を付与するためシリコン樹脂やフッ素樹脂等からなる剥離層を設けたものを挙げることができる。【0058】粘着剤層10は、紙破現象を起こすに足る止着力を有しつつ本発明に係る紙類及び他の部材すなわち本実施形態に係る折返し片F1と開口部近傍F2との間に皺や気泡を形成することを有効に回避するため、フィルム12の表面上に粘着剤100を間欠的に配置することによって構成されている。詳細には、粘着剤100からなる粘着剤部11と、当該粘着剤部11の間に介在する空隙部13とを構成するように、フィルム12の表面上に粘着剤100をパターン塗工してなるものである。本実施形態において、フィルム12の表面上に塗工される粘着剤層10の厚みを305 μmに設定している。また、当該厚み寸法において、粘着剤部11が占有する塗布面積率を53~75%に設定している。そして、粘着剤層の厚み寸法は例えば60μmに設定したものであっても同様の特性を示すものとすることができる。なお、フィルム12の表面上に図3、図4のようにパターン塗工を施す方法としては、スクリーン印刷やグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷やグラビア印刷等の既存の印刷方法を用いることができる。【0059】粘着剤部11は、図3においては円形状の粘着剤ブロックたるドットブロック110から、図4においては格子形状の粘着剤ブロックたる格子ブロック111から構成している。また粘着剤部11において、フィルム12に接している側の面を底面11aとし、白封筒Fの折返し片F1に接する側の面を頂面11bと設定している。そして、個々のドットブロック110、格子ブロック111の底面110a、111aの面積を頂面110b、111bの面積よりも大きく設定することにより、粘着剤部11の底面11aの面積を頂面11bの面積よりも広く設定している。【0060】ドットブロック110、格子ブロック111についてそれぞれ詳述すると、図3に示すドットブロック110は底面110aの面積を例えば0.05~9平方ミリの平面視形状に設定することにより、止着箇所に凹凸が形成されることを有効に回避しつつ押厚時に好適に応力集中させて均等に粘着剤層10を押圧し得るようにしている。また、図4に示す格子ブロック111は、感圧転写テープ1が実際に転写される方向、即ち、フィルム12の長手方向に対して傾斜する方向に、底面111a並びに頂面111bを構成する各辺が延びるように構成することにより、個々の格子ブロック111が斜め方向から剥離され、好適に転写され得るように構成しているものである。【0061】空隙部13は、図3及び図4に示すように、各粘着剤ブロックたるドットブロック5 110、格子ブロック111の間に介在する空間を示しており、同図に示すように、粘着剤層10の略全面に亘って当該粘着剤層10の側面に開放するように空隙部13を構成している。言い換えれば、粘着剤層10の略全面を側面に対して連通させて構成している。【0062】ここで、本実施形態に係る感圧転写テープ1において、上述の通り粘着剤部11の底面11aの面積を頂面11bの面積よりも大きく設定することにより、粘着剤層10の止着力を向上させたものとしている。以下、感圧転写テープ1を転写する過程を図5に模式的に示しながら具体的に説明する。図5(a)、図5(b)及び図5(c)は、転写具Aを用いて白封筒Fの折返し片F1の端辺に沿って粘着剤100を転写し、白封筒Fを封緘する一連の過程を示している。詳述すると、転写具Aによって粘着剤100を転写する際、折返し片F1に粘着剤100が転写されるとともにドットブロック110の頂面110bが折返し片F1に付着した状態で転写ヘッドHにより押圧される1回目の押圧動作が行われる(図5(a) 。そして頂面1)10bが折返し片F1に付着した状態で折り返されて(図5(b) 、図示下側に位)置する開口部近傍F2と底面110aが接し、例えば図示上側から2回目の押圧動作がなされる(図5(c) 。このとき、既に折返し片F1に付着していた頂面11)0bは再び押圧されることによりさらに確実に折返し片F1に付着するとともに、各ドットブロック110が圧縮されることにより空隙部13の体積が減少するが空隙部13は粘着剤層10の側面に対して開放されて構成しているため、圧縮された空隙部13に存在する空気は粘着剤層10の側方から流れ出すことにより、当該空気が粘着剤層10と折返し片F1或いは開口部近傍F2との間に残され気泡や皺が形成させることを有効に回避している。そして、ドットブロック110の底面110aは、この一連の動作によって1回しか押圧されないこととなるが、上述の通り底面110aの面積を頂面110bの面積より大きく設定することにより、予め底面110aすなわち粘着剤部11の底面11a側の止着力が大きくなるように設定5 しているため、粘着剤部11の底面11a側と頂面11b側とが折返し片F1並びに開口部近傍F2にバランス良く止着し、折返し片F1と開口部近傍F2とを確実に止着し得るものとなっている。なお、図5においてドットブロック110を図示して説明したが勿論、格子ブロック111についても同様の効果を奏し得るものとなっている。【0063】そして、このように確実に折返し片F1と開口部近傍F2とを止着し得るアクリル系粘着剤たる粘着剤100をフィルム12の表面上に塗工する塗工パターンを図
6、図7、図8及び図9に挙げる。なお同図に挙げる各パターンについて、枠線を除いて黒色で示した部分を粘着剤部11とし、白色となっている箇所を空隙部13とする。そして、図示上下方向から上下方向が感圧転写テープ1の長手方向すなわち転写具Aによって転写される方向とする。なお、以下に示す塗工パターンにおける塗布面積率は18~94%である。【0064】図6は、図1並びに図3に示した直径1.5mmの円形状のドットからなる「ドット」パターンのほか、当該「ドット」パターンと同様の作用を示す直径1mmの円形状ドットからなる「ドット細」 直径2mmの円形状ドットからなる、 「ドット φ2」及び直径2mmの円形状のドットの周囲を例えば面積0.017平方ミリの微細なドットで覆う「ドット φ2+メッシュ」パターンを示している。これらのパターンは塗布面積率を高く設定しているにも拘わらず高い糊切れ性を実現し得るものである。【0065】図7は、図4に示した「格子」パターンのほか、各粘着剤ブロックの成す角度が異なる一辺が1.3mmの菱形のドットが0.3mm間隔に整列した「平格子」パターンを示している。これらのパターンは各粘着剤部11がフィルム12から良好に剥離され得る特性を有している。「平格子」は、参考例である。5 【0066】図8は、格子パターンの変形パターンとして、巾2mmのイチョウ型ドットからなる「イチョウ」 寸法1×1.、 7mmの長方形が0.3mm間隔に整列した「レンガ」、対向辺の寸法が1mmの正六角形からなる「細六角」パターンを示している。このように格子パターンに変形を加えることにより高い意匠性を有するパターンを構成することも可能である。なお、「レンガ」「細六角」パターンは格子ブロック111、を小さく設定することにより上述の「ドット」パターンのように高い糊切れ性能を実現している。「イチョウ」 「レンガ」 「細六角」は、参考例である。、 、【0067】図9では、「ドット」パターン及び「格子」パターンの特性を併せ持つように粘着剤部11を構成する主たる粘着剤ブロック当たりの面積を本実施形態において最小限である0.05平方ミリに設定し、各粘着剤ブロックを格子状に近い形状に配列させた「タイヤ」パターン、そして粘着剤部11を構成する各粘着剤ブロック当たりの面積を最大限に設定した「大波」パターン及び「横スジ」パターンを示している。ここで、「大波」パターン及び「横スジ」パターンにおける転写具Aによって転写される方向すなわち図示縦方向における粘着剤ブロックの寸法を2mm、としそれぞれ1mm間隔に設定しており、「横スジ」に至っては同寸法を3mmとし、それぞれ0.2mm間隔に設定している。そのため、例えば感圧転写テープ1の巾寸法を例えば25mmに設定した場合の各粘着剤ブロックの底面の面積は75平方ミリとなる(表4(後述))が、勿論、本実施形態は感圧転写テープ1の巾寸法を限定するものではない。なお、「タイヤ」 「大波」及び「横スジ」は、参考例である。、【0068】続いて、本実施形態において粘着剤100として採用しているアクリル系粘着剤の組成について図10(a)、図10(b)及び図10(c)に模式的に図示して説明する。【0069】5 粘着剤100は、図10(a)に模式的に示すように、ジブロック共重合体101:100重量部と、トリブロック共重合体102:100重量部と、第一粘着付与剤103:40~60重量部と、第二粘着付与剤104:200重量部とを混合したホットメルト系の粘着剤である。【0070】ジブロック共重合体101は、図10(b)に示すように、例えば炭素数1~5のアルキル基又は環構造を有するアルキル基を有するメタクリル酸エステルを重合させてなる硬質ブロック101aと、炭素数が1~20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル又は炭素数が5~20のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを重合させてなる軟質ブロック101bとを重合させてなるアクリル系ジブロック共重合体であるが、本実施形態においてはクラレ社製LAポリマー#1114を採用している。【0071】トリブロック共重合体102は、図10(c)に示すように、軟質ブロック102bの両端に硬質ブロック102aをそれぞれ重合させたものである。硬質ブロック102aはメタクリル酸アルキルエステルを重合させてなるものであり、軟質ブロック102bはアクリル酸アルキルエステルを重合させてなるものである。そして、本実施形態においてはクラレ社製LAポリマー#2140を採用している。【0072】第一粘着付与剤103及び第二粘着付与剤104としては例えば、ロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステルなどのロジン誘導体;テルペンフェノール樹脂、α-ピネン、β-ピネン、リモネンなどを主体とするテルペン系樹脂;(水添)石油樹脂、クマロン-インデン系樹脂、水素化芳香族コポリマー、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等を挙げることができ、これらは1種または2種以上でも使用することができる。本実施形態において、第一粘着付与剤103としてはアクリル系粘5 着付与剤である東亜合成社製アルフォンUP-1000を採用している。また、第二粘着付与剤としてはロジンエステル系粘着付与剤である荒川化学社製スーパーエステルA115を採用している。【0073】以上のように、本実施形態に係る粘着製品たる感圧転写テープ1は、基材たるフィルム12の表面に粘着剤100を間欠的に配置してなる所謂パターン塗工を施すことにより粘着剤層10を構成しているため、折返し片F1へ粘着剤層10を転写する際の糊切れ性能を向上させているのみならず、白封筒Fに対して皺や気泡を形成せず好適に止着・封緘を行うことができる。そして剥離動作を行った際に白封筒Fの表層部を粘着剤層10の表面に付着させ白封筒Fを厚み方向に破断する紙破現象を起こし得るように構成しているため、剥離動作により粘着剤100が紙類から剥がされた際には紙破現象が起こることによって白封筒Fが厚み方向に破断された修復不可能な状態となるため、感圧転写テープ1によって白封筒Fが一旦は止着されたという痕跡を必然的に白封筒Fに残すことができる。すなわち、見た目にも良く且つ正確に白封筒Fを封緘して、セキュリティ性の高い封緘を行い得るものとすることができる。勿論、本実施形態に用いた白封筒Fは、一般に事務用として広範に使用される上質紙よりも表面強度が高いものであるため上質紙P(図示せず)に対しても好適に紙破現象を行い得るものとすることができる。【0074】勿論、粘着剤100としては種々のものを用いることができるが、当該粘着製品たる感圧転写テープ1の製造工程において粘着剤層10をフィルム12上に塗工する方法として、スクリーン印刷やグラビア印刷等の一般的な印刷方法を採用することを考えると、紙破現象を確実に起こし得るのみならず、正確且つ効率的な塗工を可能にするために、粘着剤100にアクリル系粘着剤を採用している。【0075】アクリル系粘着剤の具体的な構成として、クラレ社製LAポリマー#1114:15 00重量部と、クラレ社製LAポリマー#2140:100重量部と、東亜合成社製アルフォンUP-1000:40~60重量部と、荒川化学社製スーパーエステルA115:200重量部とを混合したアクリル系粘着剤を採用しており、製造工程において上述した一般的な印刷方法によって好適にフィルム12上に粘着剤100を塗工し得るホットメルト型粘着剤としての特性も有している。【0076】そして上述のようなアクリル系粘着剤を採用することにより粘着剤100を塗工することによる粘着剤層10の厚み寸法を30~60μmとしているが、15~80μmであれば好適に塗工することができ、白封筒Fを紙破するための厚み寸法としては10~100μmであればよい。【0077】そして、粘着剤100を間欠的に塗工することによって粘着剤部11と空隙部13とが形成されるが、フィルム12の表面積に対する粘着剤部11が占める塗布面積率を53~75%に設定すれば、感圧転写テープ1は紙破現象を実現しつつ糊切れ性能の高いものとなるが、紙破し得る止着力と糊切れ性能を担保するための塗布面積率として、18~94%に設定することができる。【0078】また空隙部13を粘着剤層10の略全面に亘って当該粘着剤層10の側面に開放するように、言い換えれば空隙部13が粘着剤層10の側方に連通するように構成しているため、粘着剤層10と白封筒Fとの間に気泡や皺が構成されることをより有効に回避し得るものとなっている。【0079】粘着剤部11の具体的な構成として複数の粘着剤ブロックたるドットブロック110並びに格子ブロック111を有するものとし、フィルム12の表面に占める占有面積を感圧転写テープ1の巾寸法を25mmとした場合、それぞれ0.05~75平方ミリに設定している塗工パターンを採用することにより、止着箇所に粘着剤5 層10による凹凸が形成されることを有効に回避しつつ好適に応力集中させて確実に白封筒Fを止着し得るものとしている。【0080】また、本実施形態に係る感圧転写テープ1において、粘着剤部11を構成する粘着剤ブロックたるドットブロック110並びに格子ブロック111の形状を、底面110a、111aの面積を頂面110b、111bの面積よりも広く設定した形状としているため、粘着剤層10によって白封筒Fを止着する一連の動作において、通常は1回目の止着動作によって止着される側すなわち折返し片F1と粘着剤層10とが強く止着されることとなるが、2回目の止着動作で止着される底面110a、111aの面積をより広く設定したものとすれば底面110a、111aと開口部近傍F2との止着力を向上させ、ひいては粘着製品たる感圧転写テープ1の止着力を向上させることができる。【0081】以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。【0082】ここで、例えば上記実施形態においては基材たるフィルム12は粘着剤層10に対して剥離し得るように構成することにより、本発明に係る粘着製品を感圧転写テープ1として転写具Aに用い得る構成としていたが、粘着剤層に対して基材を剥離不能に設けたものを、本発明には含まれない参考例として挙げることができる。【0083】すなわち、基材が本発明に係る他の部材を兼ねることにより、参考例である粘着製品を例えば図11(a)に示すシール2や同図(c)に示す粘着テープ3として利用することも可能である。【0084】詳述すると、図11(a)は基材たるシール本体22の裏面に粘着剤層20を剥離5 不能に設けたシール2を示している。そしてシール2は通常粘着剤層20に対して剥離可能に構成されるシール台紙Dに支持されており、使用する際にはシール台紙Dからシール2を剥離させて使用するものである。そして、粘着剤層20は複数のドットブロック210からなる粘着剤部21と空隙部23とによって構成されているため上記実施形態と同様、止着箇所に気泡や皺を形成し難いものとなっている。そして、シール2は台紙Dから剥離する際、周辺部22aの裏面に配置された粘着剤層21とシール本体22の裏面に配置された粘着剤層とを好適に離間させ得ることにより、糊切れ性能の高いシール2とすることができる。【0085】また、粘着テープ3は、例えば事務用途や製本用途に好適に使用し得るものである。当該粘着テープ3についても粘着剤層30によって、上述したように止着箇所に皺や気泡を形成し難いものとなるとともに、所望の長さのみ粘着テープ本体32を裁断する際の糊切れ性能が高いものとなる。このようなものであれば、粘着テープ3を製本用途に採用した場合、製本後の頁の入れ替え等の偽造や捏造が行われた場合に、頁を紙破することによってその痕跡を確実に残し得るものとなるため、当該偽造や捏造を有効に発見或いは未然に防ぐことができる。【0086】その他、各部の具体的構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。【実施例】【0087】続いて、本発明を実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。【0088】1:パターン塗工適性試験まず本発明の実施例及び比較例に係る粘着剤を用いてグラビア印刷或いはスクリー5 ン印刷によるパターン塗工適性を調査した。以下、実施例及び比較例について説明する。実施例1、2上記実施形態において示したアクリル系粘着剤のうち、クラレ社製LAポリマー#2140:100重量部と、東亜合成社製アルフォンUP-1000:50重量部と、クラレ社製LAポリマー#1114:100重量部と、荒川化学社製スーパーエステルA115:200重量部とを混合したアクリル系粘着剤を採用した。そしてスクリーン印刷及びグラビア印刷によるパターン塗工によって製造された感圧転写テープをそれぞれ実施例1及び実施例2とした。比較例1粘着剤としてSIS(新田ゼラチン株式会社製 H2155-01)を用い、グラビア印刷によるパターン塗工によって製造された感圧転写テープを比較例1とした。比較例2~5粘着剤としてアクリル系エマルジョン型粘着剤(サイデン化学株式会社製 サイビノール AT-21)、アクリル溶剤系粘着剤(綜研化学株式会社製 SKダイン701) SIS粘着剤、 (比較例1と同様のSIS系粘着剤35重量部をトルエン65重量部に溶解させたもの、塗工後に乾燥・製膜)並びにUVシロップ(帝国インキ製造株式会社製 UV TAC-00326)を用い、スクリーン印刷によるパターン塗工によって製造された感圧転写テープをそれぞれ比較例2、比較例3、比較例4並びに比較例5とした。【0089】<試験方法>以上に示した粘着剤並びに印刷方法により、粘着剤の塗布厚30μm及び60μm、塗布面積率が約63%である「ドット」パターン(図6)に塗工し、塗工後の仕上がりを目視によって判断した。なお、グラビア印刷及びスクリーン印刷の詳細については既存の方法を採用しているため詳細な説明は省略するものとする。5 【0090】<試験結果>パターン塗工適性試験の結果を表1に示す。同表に示すように、アクリル系粘着剤を用いた実施例ではスクリーン印刷及びグラビア印刷を問わず、実施例1及び実施例2についてパターン塗工適性が認められた。また、比較例についても、比較例1、比較例2、比較例5についてパターン塗工適性が認められた。そして、上記各実施例並びに比較例について、粘着剤の塗布厚を30μmで上記試験を行ったものについても、塗布厚を60μmに設定して上記試験を行ったものについても、結果に差異が表れることなく表1と同じ結果を示した。【0091】【表1】2:実物剥離試験次に、上述のパターン塗工適性試験によってパターン塗工適性が認められた実施例及び比較例に係る感圧転写テープに加え、現在市販されている転写具に採用されている感圧転写テープを用いて比較例6~12とし、紙類に対する剥離試験、すなわち紙類に対する紙破現象の有無を調査した。以下、比較例6~12について説明す5 る。比較例6ヘルマ社製転写具(商品名:HERMA Transfer Permanent Glue Dispenser)に装着されている感圧転写テープを用いた。なお、当該感圧転写テープは基材に対してパターン塗工がされているものである。比較例7、8トンボ社製転写具(商品名:テープのり ピットテープMS12)に装着されている感圧転写テープを用いた。ここで、当該感圧転写テープは基材に対して粘着剤が粘面塗布されているものであり、全面塗布された状態で供試したものを比較例7とした。また、上記パターン塗工適性試験に採用された塗工パターンにおける粘着剤の配置と略同様の部位に位置する粘着剤のみが粘着力を示すように粘着剤層を部分的に不活性化させた(以下、部分不活化と記す)ものを比較例8とした。比較例9、10プラス社製転写具(商品名:テープのり テープグルーR 強粘着タイプ TG-210)に装着されている感圧転写テープを用いた。ここで、当該感圧転写テープは基材に対して粘着剤が粘面塗布されているものであり、全面塗布された状態で供試したものを比較例9とした。また、当該比較例9に部分不活化処理を施したものを比較例10とした。比較例11、12コクヨ株式会社製転写具(商品名:プリットローラー タ-M460)に装着されている感圧転写テープを用いた。ここで、当該感圧転写テープは基材に対して粘着剤が粘面塗布されているものであり、全面塗布された状態で供試したものを比較例11とした。また、当該比較例11に部分不活化処理を施したものを比較例12とした。【0092】<試験方法>5 上述した実施例及び比較例をまずステンレス板に転写した後、基材を剥離させ、この状態において比較例8、10、12に対して部分不活化処理を施した。部分不活化処理後、各実施例及び比較例に対し市販の白封筒(商品名:オキナ株式会社製ホワイト封筒WP2270(角形2号A4判) を短冊状に裁断した紙片を貼)り付け、さらに10mm/sの速度で1Kgローラを1往復させ、40分後に0.8mm/sの速さで180°の方向に紙片を引っ張ることにより剥離動作を行った。そして結果の評価は、「紙破」:粘着剤層の表面に紙片の表層部分を付着させて剥離(図12(a)、)「界面剥離」:粘着剤層と紙片との界面において剥離(同図(b) 、)「凝集剥離」:粘着剤が紙類とステンレス板との両方に付着した状態で剥離(同図(c) 、)「ナキワカレ」粘着剤層が紙類とステンレス板との両方に付着した状態で剥離(同図(d) 、の何れかに分類して行った。)【0093】<試験結果>【0094】【表2】実物剥離試験の結果を表2に示す。同表に示すように、実施例1及び実施例2並びに比較例8のみが白封筒からなる紙片を紙破し得るものであった。しかし、比較例8に部分不活化処理を施した比較例9については紙破を示さなかったため、パター5 ン塗工を施したものの中で紙破し得る特性を示したものは実施例1及び実施例2のみであった。なお、紙破を示さなかったものについては何れも界面剥離を示した。そして、実施例1、実施例2及び比較例1、比較例2、比較例5について、粘着剤の塗布厚を30μmで上記試験を行ったものについても、塗布厚を60μmに設定して上記試験を行ったものについても、結果に差異が表れることなく表2と同じ結果を示した。【0095】3:紙破可能塗布厚測定試験上述の実施例1及び実施例2に用いた粘着剤を上記実施形態に示した各塗工パターンにおいて紙破現象を起こし得る塗布厚の範囲を調査した。【0096】<試験方法>5 上述した実施例1及び実施例2に用いた粘着剤を図6、図7、図8及び図9に示した塗工パターンである「ドット」「ドット φ2」、 「ドット φ2+メッシュ」、 、「格子」、「平格子」 「イチョウ」 「レンガ」 「細六角」 「タイヤ」及び「大波」パターンで、 、 、 、種々の厚み寸法に塗工したものをそれぞれ上記実物剥離試験と同様の試験方法により剥離試験を行い、各塗工パターンについて、紙破(図12(a))を示した厚み寸法の上限並びに下限を図3に示した。なお、「平格子」「イチョウ」「レンガ」「細、 、 、六角」 「タイヤ」及び「大波」は、参考例である。、【0097】<試験結果>【0098】【表3】表3に示すように、「タイヤ」パターンで14.8μmの厚み寸法で粘着剤を塗布したものにおいて紙破現象を示した一方で、「レンガ」パターンでは79.9μmの厚み寸法においても紙破を示した。よって、本実施例において、粘着剤層が15~80μmの範囲で塗布されたものについては白封筒を紙破し得るということが表3から示すことができる。加えて、表3に示した以外の塗工パターンについては、実施例1及び実施例2に示した粘着剤を用いれば、他の塗工パターンについて、105 ~100μm程度の厚み寸法の範囲において白封筒を紙破し得る粘着製品を構成し得るものと考えられる。そして、白封筒を紙破するための最適な厚み寸法は、例えば表3において大部分の塗工パターンにおいて紙破を示している30~60μmの範囲であると考えることができる。【0099】4:各塗工パターンの面積率並びに占有面積測定次に、図6、図7、図8及び図9に示した塗工パターンである「ドット」 「ドット、細」「ドット φ2」「ドット φ2+メッシュ」「格子」「平格子」「イチョウ」「レ、 、 、 、 、 、ンガ」 「細六角」 「タイヤ」 「大波」及び「横スジ」パターンに「格子」パターン、 、 、の変形パターンとして一辺が3mmの正方形を0.1mm間隔で配置した「格子大」パターン(図示せず)を加えて、粘着剤部が占める単位面積当たりの面積率(%)と、感圧転写テープの巾寸法を25mmとした場合における、粘着剤部を構成する主たる粘着剤ブロックが基材上に占める面積、すなわち占有面積を調査し、表4に示した。なお、「格子大」「平格子」「イチョウ」「レンガ」「細六角」「タイヤ」、 、 、 、 、 、「大波」及び「横スジ」は、参考例である。【0100】【表4】表4に示した各塗工パターンは実施例1及び実施例2に係る粘着剤を用いて塗布することが可能なパターンであるが、「タイヤ」パターンの面積率から、塗布面積率が18%以上の塗工パターンであれば、紙破し得る粘着製品を構成し得るというこ5 とが分かった。また同じく「タイヤ」パターンから、主たる粘着剤ブロックの占有面積が0.05平方ミリ以上で有れば確実に塗工でき且つ紙破し得るということも分かった。さらに、実施例及び参考例に示した粘着剤は「格子大」(93.7%)や「横スジ」(93.8%)といった高い面積率を有する塗工パターンであっても隣接する粘着剤ブロック同士を独立させて塗工し得るということが分かった。そして、占有面積についてはフィルム巾を25mmに設定した場合、75平方ミリまで面積の広い粘着剤ブロックに関しても塗布しうるということが分かった。なお、具体的なデータは示していないが「ドット細」 「格子大」 「横スジ」といった塗工パター、 、ンにおいても、表3に示した結果から十分に白封筒を紙破し得る塗工パターンであると考えることができる。【図3】【図4】【図10】
(別紙2)
【特許請求の範囲】【請求項1】 基材上に粘着剤層を有する感圧転写粘着テープであって、前記粘着剤層は粘着剤が不連続な島模様状に塗布されており、しかもその粘着剤の1つの島の5 大きさが1~100mm 2、かつ隣接する島相互の間隔が0.1~4mmであることを特徴とする島模様状の感圧粘着剤層を基材上に積層した感圧転写式粘着テープ。【発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、テープ基材上に粘着剤層を設けた感圧転写粘着テープに関するものである。【0002】【従来技術】両面粘着テープの一つに支持体(芯材)を有さず粘着剤層のみを被着材に転写する無支持体両面粘着テープがあり、感圧転写粘着テープとして様々な分野・用途で使用されている。その構造としては剥離ライナーあるいは剥離性基材の片面に粘着剤層を設けてロール状に巻いたものが多く、最近では主に事務用途向けとしてこれらを小巻にして転写装置に装着した転写具が「テープのり」などの名称で上市されている。【0003】この転写具は感圧転写粘着テープを巻き付ける送出リールと、この送出リールより供給される感圧転写粘着テープの粘着剤層を基材から剥離しながら被転写体へ転写させる転着ヘッドと、転写使用後に残った基材を巻き取る巻回リールとを片手で把持使用が可能な器体内に装備したことを特徴とする。これらは、紙の接着において一般に用いられている液体のりや固形のりとは異なり、手を汚すことなく簡単に粘着剤を被着材へと転写でき、接着するまでの乾燥時間が不要である、被着材である紙がしわにならないなどの利点がある。さらにこれらは、必要長さの粘着剤を被着材に転写した後に転写具を被着材から垂直に持ち上げたり横に払うなどすることによって粘着剤層を切断できるので、支持体を有する一般的な両面テープのようにあらかじめテープを必要な長さに切断しておく必要がなく、また、粘着剤層を転写し終えた剥離性基材は転写具内のリールに巻き取られるので使用時にごみが発生しないなど、非常に便利な接着用品である。【0004】5 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらにおいては粘着剤層を切断する際、粘着剤層の粘着剤がが連続状に塗布されているため切断時に粘着剤が糸を引くように伸びてしまい円滑に切断できない、いわゆる「のり切れ」が悪いという問題があった。この問題を回避するため、従来、粘着剤層を細かいドット状にしたり、間隔を大きく開けてブロック状に配するといった方法が考案されているが、これらの方法では連続状に塗工した場合に比べ接着力が低下するという欠点がある。そこで、本発明者は上記の点を改良すべく種々検討した結果本発明を完成したもであって、本発明の目的は十分な接着力を保持しつつ良好なのり切れ性を有する感圧転写粘着テープを提供するものである。【0005】【課題を解決するための手段】本願の発明は基材上に粘着剤層を有する感圧転写粘着テープであって、前記粘着剤層は粘着剤が不連続な島模様状に塗布されており、しかもその粘着剤の1つの島の大きさが1~100mm 2、かつ隣接する島相互の間隔が0.1~4mmであることを特徴とする島模様状の粘着剤層を基材上に積層した感圧転写式粘着テープである。【0006】【発明の実施の形態】本発明における感圧転写粘着テープの粘着剤層は剥離性基材上に粘着剤を島模様状に塗布した層である。粘着剤としては従来知られている粘着剤がいずれも使用できる。たとえばアクリル系、ゴム系、シリコン系、ロジン系などのものがあげられ、さらに必要に応じてフィラーや保存剤、着色剤などの各種添加剤を配合することができる。基材としては粘着剤に対して剥離効果さえあれば適宜のものを使用できる。例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム、グラシン紙等の紙、金属箔等であり、剥離効果を付与するために必要に応じて片面もしくは両面にシリコン樹脂やフッ素樹脂などからなる剥離層が設けられる。基材の厚さは10~60μmが適当である。また、不連続な島模様状に粘着剤を塗布する方法としては、シルク5 スクリーン、グラビア、インクジェット等何れの手段も用いることができる。【0007】上記島模様状に塗布した粘着剤層の個々の島の大きさは1~100mm2、好ましくは3~36mm 2 で、隣接する島相互の間隔は0.1~4mm、好ましくは0.3~2.5mmである。個々の島の大きさを100mm 2 以上にすると粘着剤層を切断する位置の自由度がなくなり、1mm 2 以下だと粘着剤の被着材への接触が「面」ではなく「点」に近くなることから十分な接着力が得られない。また隣接する島相互の間隔を4mm以上にすると被着面に対する有効粘着剤面積が低下し十分な接着力を得られない。間隔が0.1mm以下では粘着剤がもつ流動性ゆえに隣り合った区画の粘着剤層どうしが接触してしまうため、粘着剤を基材上に意図した模様で塗布することが難しく良好なのり切れ性が得られない。【0008】ここでいう島模様状とは粘着剤が点々とアトランダムに、或いは規則的な配列をなしてパター状に存在することを意味し、個々の島の形状については任意の形状でよく、また個々の島は完全に独立分断されていることが好ましい。粘着剤層の厚みは通常1~50μm、好ましくは2~30μmである。これら粘着剤の種類や塗布厚さなどを変えることにより、永久接着タイプ、再剥離可能タイプなど用途に合わせて特性の異なった粘着剤層を得ることができる。【0009】次に本発明の感圧転写粘着テープを使用する際に用いる転写具について説明する。図1(a)はかかる感圧転写具一例を示す正面断面図、同図(b)は該転写具の側面図である。この転写具は、上で説明した感圧転写粘着テープ5を巻き付け、保持する送出リール2と粘着剤層を転写使用した後に残った基材を巻き取り、収納する巻回リール3とを片手で把持可能な感圧転写具の本体となる器体1に装備し、粘着剤層を基材から剥離しながら被転写体に転写させる転着ヘッド4を被転着体に当接できるよう容器の先端からその一部を露出して備えるものである。…【0012】【発明の効果】本発明の感圧転写粘着テープは、粘着剤層の粘着剤を不連続な島模様状に塗布し、しかもその粘着剤の1つの島の大きさが1~100mm 2、かつ隣接する島相互の間隔が0.1~4mmと特定することによって、十分な接着力を維持しつつ粘着剤層の糸引きによる切断不良を回避することができる。
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