令和4(ネ)10008特許権侵害差止等請求控訴事件
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裁判所 |
控訴棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
|
裁判年月日 |
令和4年11月29日 |
事件種別 |
民事 |
対象物 |
情報提供装置、システム及びプログラム |
法令 |
特許権
特許法29条1項3号5回 特許法104条の31回 特許法102条1項1回 特許法101条2号1回 特許法101条1号1回 特許法100条1項1回 民事訴訟法297条1回
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キーワード |
実施32回 無効26回 新規性20回 侵害13回 特許権9回 間接侵害6回 進歩性6回 差止2回 分割1回 損害賠償1回 ライセンス1回
|
主文 |
1 本件控訴を棄却する。25
2 訴訟費用は控訴人らの負担とする。 |
事件の概要 |
本件は、発明の名称を「情報提供装置、システム及びプログラム」とする特
許(特許第6538097号。以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下10
「本件特許権」という。)を共有する控訴人らが、被控訴人による原判決別紙製
品目録記載のプログラム(以下「被告プログラム」という。)の生産、譲渡等が
本件特許権の侵害又は間接侵害に当たる旨主張して、被控訴人に対し、特許法 |
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判決文
令和4年11月29日判決言渡
令和4年(ネ)第10008号 特許権侵害差止等請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和元年(ワ)第25121号)
口頭弁論終結日 令和4年9月22日
5 判 決
控 訴 人 株 式 会 社 R E V O
10 控 訴 人 X
控 訴 人 株式会社アイピーシー
15 被 控 訴 人 S E L F 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 萬 幸 男
同訴訟復代理人弁護士 山 内 久 光
同補佐人弁理士 水 野 勝 文
20 井 出 真
須 澤 洋
久 松 洋 輔
冨 所 剛
主 文
25 1 本件控訴を棄却する。
2 訴訟費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、原判決別紙製品目録記載のプログラムを生産し、使用し、譲渡
5 し、貸し渡し、又は電気通信回線を通じて提供してはならない。
3 被控訴人は、控訴人らに対し、333万3333円及びこれに対する令和元
年10月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要(略称は、特に断りのない限り、原判決に従う。)
本件は、発明の名称を「情報提供装置、システム及びプログラム」とする特
10 許(特許第6538097号。以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下
「本件特許権」という。)を共有する控訴人らが、被控訴人による原判決別紙製
品目録記載のプログラム(以下「被告プログラム」という。)の生産、譲渡等が
本件特許権の侵害又は間接侵害に当たる旨主張して、被控訴人に対し、特許法
100条1項に基づき、被告プログラムの生産、譲渡等の差止めを求めるとと
15 もに、特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償として333万3333円及び
これに対する不法行為の後である令和元年10月11日(訴状送達日の翌日)
から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の
割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は、本件特許には特開2015-102994号公報(乙8)を主引用
20 例とする新規性欠如(特許法29条1項3号違反)の無効理由があり、特許無
効審判により無効とされるべきものであるから、特許法104条の3第1項の
規定により、控訴人らは本件特許権を行使することができないと判断して、控
訴人らの請求をいずれも棄却した。
そこで、控訴人らは、原判決を不服として、本件控訴を提起した。
25 1 前提事実
以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の1記載のと
おりであるから、これを引用する。
⑴ 原判決3頁1行目から4頁7行目までを次のとおり改める。
「⑵ 本件特許
ア 控訴人らは、平成28年1月15日にした特許出願(特願2016
5 -6690号)の一部を分割して、平成29年2月7日、発明の名称
を「情報提供装置、システム及びプログラム」とする発明について特
許出願(特願2017-20738号。以下「本件出願」という。)を
し、令和元年6月14日、本件特許権の設定登録を受けた(甲1)。
イ 本件特許の特許請求の範囲は、請求項1ないし5からなり、請求項
10 1及び5の記載は、次のとおりである(以下、請求項1に係る発明を
「本件発明1」、請求項5に係る発明を「本件発明5」という。 。
)
【請求項1】
ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受け付ける第1
受付手段と、
15 前記第1受付手段によって受け付けていない個人情報に対応する属
性の質問を行う質問手段と、
前記質問手段による質問に対する返答である個人情報を受け付ける
第2受付手段と、
前記第1及び第2受付手段によって受け付けられた個人情報と当該
20 個人情報に対応する属性とが紐付けた状態で格納される格納媒体と、
前記第1又は第2受付手段によって受け付けられた個人情報に基づ
いて前記ユーザに対して提案を行う提案手段と、を備え、
前記提案手段は、
前記個人情報に基づいてウェブサイトから前記ユーザに対して提案
25 すべき情報を取得する手段と、
前記個人情報に基づいてユーザに注意を促す手段と、を有する情報
提供装置。
【請求項5】
ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受け付けるス
テップと、
5 受け付けていない個人情報に対応する属性の質問を行うステップと、
前記質問に対する返答である個人情報を受け付けるステップと、
前記受け付けられた個人情報と当該個人情報に対応する属性とを紐
付けた状態で格納するステップと、
前記受け付けた個人情報に基づいて前記ユーザに対して提案を行う
10 ステップと、を含み、
前記個人情報に基づいてウェブサイトから前記ユーザに対して提案
すべき情報を取得するステップと、
前記個人情報に基づいてユーザに注意を促すステップと、を更に有
する
15 を情報提供装置に実行させる情報提供プログラム。」
(2) 原判決5頁19行目の「本件スマートフォン」を「被告プログラムをイン
ストールしたスマートフォン(以下「本件スマートフォン」という。 」と改
)
める。
(3) 原判決6頁5行目の「といい、」から6行目末尾まで、同頁7行目の「とい
20 い、」から8行目末尾まで、同頁9行目の「といい、」から10行目末尾まで
を、それぞれ「という場合がある。 」と改める。
)
2 争点
⑴ 本件発明1に係る間接侵害(特許法101条2号)の成否(争点1)
ア 本件スマートフォンは構成要件1Dを充足するか(争点1-1)
25 イ 本件スマートフォンは構成要件1Eないし1Gを充足するか(争点1-
2)
ウ 間接侵害の成否(争点1-3)
⑵ 本件発明5の技術的範囲の属否(争点2)
ア 文言侵害の成否(争点2-1)
(ア) 被告プログラムは構成要件5Fを充足するか(争点2-1-1)
5 (イ) 被告プログラムは構成要件5Gを充足するか(争点2-1-2)
イ 均等侵害の成否(争点2-2)
⑶ 本件発明5に係る間接侵害(特許法101条1号)の成否(争点3)
⑷ 無効の抗弁(特許法104条の3第1項)の成否(争点4)
ア 無効理由1(乙8を主引用例とする新規性の欠如)(争点4-1)
10 イ 無効理由2(乙5を主引用例とする新規性の欠如)(争点4-2)
ウ 無効理由3(乙8を主引用例とする進歩性の欠如)(争点4-3)
エ 無効理由4(乙5を主引用例とする進歩性の欠如)(争点4-4)
⑸ 控訴人らの損害額(争点5)
3 争点に関する当事者の主張
15 ⑴ 争点1-1(本件スマートフォンは構成要件1Dを充足するか)について
原判決7頁10行目の「本件明細書」を「本件出願の願書に添付した明細
書(以下、図面を含めて「本件明細書」という。甲1)」と改めるほか、原判
決の「事実及び理由」の第2の3⑴記載のとおりであるから、これを引用す
る。
20 ⑵ 争点1-2(本件スマートフォンは構成要件1Eないし1Gを充足するか)
について
原判決の「事実及び理由」の第2の3⑵記載のとおりであるから、これを
引用する。
⑶ 争点1-3(間接侵害の成否)について
25 原判決の「事実及び理由」の第2の3⑶記載のとおりであるから、これを
引用する。
⑷ 争点2-1-1(被告プログラムは構成要件5Fを充足するか)について
原判決の「事実及び理由」の第2の3⑷記載のとおりであるから、これを
引用する。
⑸ 争点2-1-2(被告プログラムは構成要件5Gを充足するか)について
5 原判決の「事実及び理由」の第2の3⑸記載のとおりであるから、これを
引用する。
⑹ 争点2-2(均等侵害の成否)について
原判決の「事実及び理由」の第2の3⑹記載のとおりであるから、これを
引用する。
10 ⑺ 争点3(本件発明5に係る間接侵害(特許法101条1号)の成否)につ
いて
原判決の「事実及び理由」の第2の3⑺記載のとおりであるから、これを
引用する。
⑻ 争点4-1(無効理由1(乙8を主引用例とする新規性の欠如))について
15 原判決18頁13行目の「発明」の次に「(以下「乙8発明」という。 」を
)
加え、当審における当事者の補充主張を付加するほか、原判決の「事実及び
理由」の第2の3⑻記載のとおりであるから、これを引用する。
【当審における被控訴人の補充主張】
ア 本件発明1の新規性の欠如
20 (ア) 乙8の記載(【0019】【0021】【0024】ないし【002
、 、
7】 【0033】 【0036】ないし【0038】 【0043】 【00
、 、 、 、
48】【0049】
、 【0119】等)によれば、乙8には、次のとおりの
構成(以下、符号に応じて、「構成1a」などという。)を有する学習・
生活支援サーバの発明(以下「乙8発明1」という。 が記載されている。
)
25 1a ユーザに対してユーザ情報の入力を求めるとともに、入力された
ユーザ情報を分類して、記憶する処理を実施する制御部(ユーザ情
報管理部22)
1b 1aのユーザ情報の入力後に、ユーザ端末を介して入力されたユ
ーザコメントからユーザに関心のあるキーワードを抽出し、当該キ
ーワードに対応するアバターコメントをユーザ端末に出力する制御
5 部(アバター管理部21)
1c アバターコメントに対する回答であるユーザの嗜好情報や学習目
標を記憶する処理を実施する制御部(ユーザ情報管理部22)
1d 学習・生活支援システム1が立ち上げられたときに入力された個
人情報であるユーザ情報と、当該入力の後に入力されたアバターコ
10 メントに対する回答(ユーザの嗜好情報、学習目標)とを記憶する
記憶部
1e ユーザによる入力情報から抽出したキーワードに基づき収集した
ウェブサイトのリンク情報をユーザ端末に出力する制御部(アバタ
ー管理部21)
15 1f ユーザによる入力情報から抽出されたキーワードに基づいて、ウ
ェブ上からキーワードに関連するウェブページ及びウェブサイトの
リンク情報を収集する制御部(情報収集部24)
1g スケジュールの修正を依頼するアバターコメントを出力する制御
部(アバター管理部21)
20 1h 上記1aないし1gを有する学習・生活支援サーバ2
(イ) 乙8発明1の構成1aないし1hは、本件発明1の構成要件1Aな
いし1Hの構成にそれぞれ相当する。
このうち、乙8発明1の構成1aの「ユーザ情報管理部22」、構成1
fの「情報収集部24」及び構成1hの「学習・生活支援サーバ2」が、
25 本件発明1の構成要件1A、1F及び1Hの構成にそれぞれ相当するこ
とは、以下のとおりである。
a 構成要件1Aについて
乙8記載の学習・生活支援サーバ2の「ユーザ情報管理部22」は、
ユーザの生年月日、性別、職業、ニックネーム、住所、起床・就寝時
間、趣味、行きたい場所、習慣等のユーザ情報の入力を求めるととも
5 に、入力されたユーザ情報を分類して、記憶する処理を実施する(【0
036】等)から、構成1a(「ユーザに対してユーザ情報の入力を
求めるとともに、入力されたユーザ情報を分類して、記憶する処理を
実施する制御部(ユーザ情報管理部22)」)を有している。
そして、構成1aの「ユーザ情報」は、ユーザの属性や生活情報
10 などに関する情報であるから、本件発明1の構成要件1Aの「個人情
報」であり、構成1aの「入力されたユーザ情報を分類して、記憶す
る処理を実施する」との構成は、構成要件1Aの「ユーザから取得し
たい個人情報のうち幾つかを予め受け付ける」ことであるといえる。
そうすると、乙8発明1の構成1aは、本件発明1の構成要件1
15 A(「ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受け付ける
第1受付手段」)の構成に相当する。
b 構成要件1Fについて
(a) 乙8発明1の構成1fの「ユーザによる入力情報から抽出された
キーワード」は、ユーザによる入力情報に基づくものであるから、
20 本件発明1の構成要件1F(「前記個人情報に基づいてウェブサイ
トから前記ユーザに対して提案すべき情報を取得する手段」 の
) 「個
人情報」に相当する。
⒝ 「リンク」とは、
「特定のファイルやフォルダーの分身のように機
能するアイコン」を意味するものであり(乙38)、
「ウェブページ」
25 の分身のことであるから、
「ウェブページ」と実質的に同一である。
そして、
「リンク」の提供は「ウェブページの閲覧を勧める」とい
う意味で「提案」に当たるから、
「ウェブページ」及び「リンク」は、
構成要件1Fの「ユーザに対して提案すべき情報」に相当する。
しかるところ、乙8発明1の構成1fの「ウェブページ」は、リ
ンクの形態でユーザ端末に提供されること(乙8の【0049】)か
5 らすると、構成1fの「ウェブページ」及び「リンク」は、構成要
件1Fの「ユーザに対して提案すべき情報」に相当する。
また、構成要件1fの「ウェブ上からキーワードに関連するウェ
ブページ及びウェブサイトのリンク情報を収集する」との構成は、
構成要件1Fの「ウェブサイトから前記ユーザに対して提案すべき
10 情報を取得する」との構成に相当する。
⒞ そうすると、乙8発明1の構成1fは、構成要件1Fの構成に相
当する。
c 構成要件1Hについて
乙8発明1の「学習・生活支援サーバ2」は、ユーザ端末にリンク
15 情報を提供し(構成1e) スケジュールの修正を依頼するアバターコ
、
メントをユーザ端末に出力する(構成1g)など、ユーザ端末に対し
て種々の情報を提供しているから、情報提供装置そのものである。
したがって、乙8発明の構成1hの「学習・生活支援サーバ2」は、
本件発明1の構成要件1Hの「情報提供装置」に相当する。
20 (ウ) 以上によれば、乙8発明1は、本件発明1の構成要件1Aないし1
Hの構成を全て有するから、本件発明1は、乙8発明1と同一の発明で
ある。
したがって、本件発明1に係る本件特許には、新規性欠如の無効理由
がある(特許法29条1項3号、123条1項2号)。
25 イ 本件発明5の新規性の欠如
(ア) 前記ア(ア)の乙8の記載によれば、乙8には、次のとおりの構成(以
下、符号に応じて、「構成5a」などという。)を有するプログラムの発
明(以下「乙8発明5」という。)が記載されている。
5a ユーザ端末を介して入力されたユーザ情報を分類して、記憶する
処理を制御部(ユーザ情報管理部22)に実行させるステップ
5 5b 構成5aの受け付けるステップが行われた後、アバターコメント
をユーザ端末に出力する処理を制御部(アバター管理部21)に実
行させるステップ
5c アバターコメントに対する回答を受け付けて、記憶する処理を制
御部(ユーザ情報管理部22)に実行させるステップ
10 5d 学習・生活支援システム1が立ち上げられたときに入力された個
人情報であるユーザ情報と、当該入力の後に入力されたアバターコ
メントに対する回答(ユーザの嗜好情報、学習目標)とを記憶部に
記憶させる処理を制御部に実行させるステップ
5e ユーザによる入力情報から抽出したキーワードに基づき収集した
15 ウェブサイトのリンク情報をユーザ端末に出力する処理を制御部
(アバター管理部21)に実行させるステップ
5f ユーザによる入力情報から抽出されたキーワードに基づいて、ウ
ェブ上からキーワードに関連するウェブページ及びウェブサイトの
リンク情報を収集する処理を制御部(情報収集部24)に実行させ
20 るステップ
5g スケジュールの修正を依頼するアバターコメントを出力する処理
を制御部(アバター管理部21)に実行させるステップ
5h 上記5aないし5gに係るステップを学習・生活支援サーバ2に
実行させるプログラム
25 (イ) 乙8発明5の構成5aないし5hは、本件発明5の構成要件5Aな
いし5Hの構成にそれぞれ相当する。
乙8発明5の構成1aが本件発明5の構成要件5A 「ユーザから取得
(
したい個人情報のうち幾つかを予め受け付けるステップ」 の構成に、
) 構
成5fが構成要件5F 「前記個人情報に基づいてウェブサイトから前記
(
ユーザに対して提案すべき情報を取得するステップ」 の構成に相当する
)
5 ことは、前記ア(イ)で述べたところと同様である。
そして、乙8発明5の構成5hの「プログラム」は、「情報提供装置」
である「学習・生活支援サーバ2」に構成5aないし5gに係るステッ
プを実行させるプログラムであるから、本件発明5の構成要件5G 「情
(
報提供装置に実行させる情報提供プログラム)の構成に相当する。
10 (ウ) 以上によれば、乙8発明5は、本件発明5の構成要件5Aないし5
Hの構成を全て有するから、本件発明5は、乙8発明5と同一の発明で
ある。
したがって、本件発明5に係る本件特許には、新規性欠如の無効理由
がある(特許法29条1項3号、123条1項2号)。
15 【当審における控訴人らの補充主張】
ア 本件発明1の新規性の欠如の主張に対し
(ア) 乙8発明1の構成1bないし1e、1gが、本件発明1の構成要件
1Bないし1E、1Gの構成にそれぞれ相当することは争わないが、以
下のとおり、構成1a、1f及び1hが構成要件1A、1F及び1Hの
20 構成に相当するとはいえない。
a 構成要件1Aについて
本件明細書の【0029】の記載から、本件発明1の構成要件1A
の「ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受け付ける第
1受付手段」にいう「第1受付手段」 「タッチパネル114」 「制
は、 と
25 御部101」と「記憶部102」とによって実現できるものであると
解釈できる。
乙8記載の「学習・生活支援サーバ2」は、「タッチパネル114」
のようなユーザインタフェースを有しておらず、この点において、
「第
1受付手段」に相当する構成を備えていない。
したがって、乙8発明1の構成1aは、構成要件1Aの「第1受付
5 手段」に相当するものでない。
b 構成要件1Fについて
(a) 「提案」の用語の意義等(甲10、17、18) 本件明細書の
、 【0
115】 【0017】の記載及び技術常識を踏まえれば、本件発明
、
1の構成要件1Fの「提案すべき情報」とは、
「㋐ウェブサーバに蓄
10 積されているウェブサイトを構成するウェブページに記載されて
おり、㋑情報提供装置のブラウザの機能によって当該ウェブページ
に割り当てられているURLを用いて当該ウェブサーバにアクセ
スすることによって取得される、㋒ユーザに対して意見を提出する
上で妥当な情報」と解釈できる。
15 しかるところ、乙8記載の「ウェブページのリンク情報」 【00
(
27】 、
)「ウェブサイトのリンク」及び「リンク先のウェブサイト」
(【0049】)にいう「リンク」の用語は、「ハイパーリンク」(イ
ンターネットのウェブページ…において、関連付けられた他の文章
や画像を参照できるように、その所在を示した情報または文字列)
20 の略語(甲36)を意味するから、
「ウェブページ」 「リンク」
と は、
同義ではない。
そして、「ウェブページ」やその「リンク(URL)」は、上記㋐
ないし㋒のいずれも満たしていないから、
「提案すべき情報」に該当
しない。
25 したがって、乙8発明1の構成1fの「ウェブページ及びウェブ
サイトのリンク情報」は、構成要件1Fの「提案すべき情報」に相
当するものではない。
⒝ 本件明細書の【0115】 【0017】の記載及び技術常識を踏
、
まえれば、本件発明1の構成要件1Fの「提案すべき情報を取得す
る手段」とは、「食事と健康とに関する情報(提案すべき情報)」が
5 記載されているウェブページに割り当てられているURLを用い
てウェブサーバにアクセスし、それに応じて当該ウェブサーバがウ
ェブサイトから発信する「提案すべき情報」を取得する手段を意味
するものであり、ウェブに「「URL」を送信」して、それに対応す
るウェブページにある「提案すべき情報」を受信するものであると
10 理解できる。
しかるところ、乙8発明1の構成1fは、
「情報収集部」が「ユー
ザ端末3からの入力情報に基づいて、例えば抽出されたキーワード
に基づいて、ウェブ上からキーワードに関連するウェブページを収
集し、ウェブページのリンク情報を…記憶する。 (
」 【0027】)と
15 いうものである。
したがって、乙8発明1の情報収集部は、ウェブに 「キーワード」
「
を送信」して、それに関連する「「ウェブページやそのURL」を受
信」するものであると理解され、検索エンジンを利用して所望のキ
ーワードが記載されているウェブページのURL(リンク)を取得
20 するという機能を有するものである。
このように乙8発明1の学習・生活支援サーバが行う、キーワー
ドに基づきURL(リンク)を収集して「出力」するという機能と、
構成要件1Fの「提案すべき情報を取得する手段」が行う、URL
(リンク)に基づきウェブページにある情報等を受信し、これをユ
25 ーザに対して「提供」するという機能は、全く異なるから、乙8発
明1の構成1fは、構成要件1Fの「提案すべき情報を取得する手
段」に相当するものとはいえない。
c 構成要件1Hについて
本件発明1の構成要件1Hの「情報提供装置」は、
「ユーザから取得
したい個人情報のうち幾つかを予め受け付ける第1受付手段と、」と
5 いう構成要件1Aを含む、構成要件1Aないし1Gの各手段等を備え
るものである。前記aのとおり、構成要件1Aの「第1受付手段」は、
「タッチパネル114」と「制御部101」と「記憶部102」とが
協働して実現することができるものと解釈すべきであり、また、構成
要件1B、1C、1Eないし1Gの各手段も、本件明細書の【002
10 9】【0119】及び【0127】の記載から、これと同様に解釈す
、
べきである。
しかるところ、乙8発明1の構成1hの「学習・生活支援サーバ」
は、
「タッチパネル114」のようなユーザインタフェースを有してい
ないことは、前記aのとおりであり、このことは、ユーザに対する種々
15 の情報の提供の可否に直結する、本件発明1の構成要件1Hの「情報
提供装置」との実質的な相違点である。
したがって、乙8発明1の構成1hの「学習・生活支援サーバ」は、
構成要件1Hの「情報提供装置」に相当するものとはいえない。
(イ) 以上によれば、乙8発明1は、本件発明1の構成要件1A、1F及び
20 1Hの構成を有するものとはいえないから、本件発明1は、乙8発明1
と同一の発明であるとはえいない。
したがって、本件発明1に係る本件特許に乙8を主引用例とする新規
性欠如の無効理由があるとの被控訴人の主張は理由がない。
イ 本件発明5の新規性の欠如の主張に対し
25 乙8発明5の構成5bないし5e、5gが本件発明5の構成要件5Bな
いし5E、5Gの構成にそれぞれ相当することは争わないが、前記アと同
様の理由により、構成5a、5f及び5hが構成要件5A、5F及び5H
の構成に相当するとはいえない。
したがって、本件発明5は、乙8発明5と同一の発明であるとはえいな
いから、本件発明5に係る本件特許に乙8を主引用例とする新規性欠如の
5 無効理由があるとの被控訴人の主張は理由がない。
⑼ 争点4-2(無効理由2(乙5を主引用例とする新規性の欠如))について
原判決20頁25行目の「乙5発明の構成」を削り、同頁末行の「次の発
明」の次に「(以下「乙5発明」という。 」を加えるほか、原判決の「事実及
)
び理由」の第2の3⑼記載のとおりであるから、これを引用する。
10 ⑽ 争点4-3(無効理由3(乙8を主引用例とする進歩性の欠如))について
原判決25頁10行目の「開示されている乙4発明」を「記載された発明
(以下「乙4発明」という。 」と改めるほか、原判決の「事実及び理由」の
)
第2の3⑽記載のとおりであるから、これを引用する。
⑾ 争点4-4(無効理由4(乙5を主引用例とする進歩性の欠如))について
15 原判決の「事実及び理由」の第2の3⑾記載のとおりであるから、これを
引用する。
⑿ 争点5(控訴人らの損害額)について
原判決33頁9行目の「を下らない。 を
」 「を下らないから、上記利益額は、
特許法102条1項により、控訴人らの損害額と推定される。 と改めるほか、
」
20 原判決の「事実及び理由」の第2の3⑿記載のとおりであるから、これを引
用する。
第3 当裁判所の判断
1 本件明細書の記載事項について
⑴ 本件明細書(甲1)には、次のような記載がある(下記記載中に引用する
25 図1ないし5、12ないし14、16については別紙1を参照)。
ア 【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供装置、システム及びプログラムに関し、特に、ユー
ザの日常生活に対して適切な情報を提供する情報提供装置、システム及び
プログラムに関する。
5 【背景技術】
【0002】
従来、人間の健康を維持するために、様々な情報が提供されている。特
に、近年飛躍的に普及しているスマートフォンなどの携帯端末を利用した
健康に関するアプリケーションが注目されている。例えば、特許文献1に
10 開示されている発明によれば、ユーザの自宅に、通信機能付又はそれに準
じる機能が付与されている各種センサが設置され、脈拍や呼吸等の測定、
血圧、脈拍、体組成計、血糖値計、体重計等による測定を行う構成になっ
ている。これらの測定データは通信機能を介してサーバに蓄えられ、ユー
ザごとに健康管理が把握できるようになっている。
15 イ 【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている発明は、ユーザ自身が、脈拍や呼
吸等の測定、血圧、脈拍、体組成計、血糖値計、体重計等による測定を少
なくとも数日ごとに繰り返し行う必要があるため、その様々な個人情報の
20 入力のための煩雑な作業がユーザの負担になってしまう。
【0005】
特に、例えば、サラリーマンなど仕事をしている多くの人々は、いくら
自分の健康維持のためとはいえ、毎日の多忙な生活の中で面倒な個人情報
の入力を持続して行うことは困難であるという課題があった。
25 【0006】
そこで、本発明は、特許文献1とは異なるアプローチとして、情報提供
装置との擬似コミュニケーションにより適宜に追加の個人情報を入力す
ることで、情報提供装置から健康に関する情報を含む各種情報を適切なタ
イミングで提供できるようにすることを課題とする。
ウ 【課題を解決するための手段】
5 【0007】
上記課題を解決するために、本発明の情報提供装置は、
ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受け付ける第1受付
手段と、
前記第1受付手段によって受け付けていない個人情報に対応する属性
10 の質問を行う質問手段と、
前記質問手段による質問に対する返答である個人情報を受け付ける第2
受付手段と、
前記第1及び第2受付手段によって受け付けられた個人情報と当該個人
情報に対応する属性とが紐付けた状態で格納される格納媒体と、
15 を備える。
【0008】
また、本発明の情報提供システムは、
上記情報提供装置を複数有しており、
当該情報提供装置が相互にネットワークを介して接続された場合に、最
20 新の個人情報が格納されている格納媒体の内容で、他方の格納媒体の内容
を更新する。
【0009】
また、本発明の情報提供プログラムは、
ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受け付けるステップ
25 と、
受け付けていない個人情報に対応する属性の質問を行うステップと、
前記質問に対する返答である個人情報を受け付けるステップと、
前記受け付けられた個人情報と当該個人情報に対応する属性とを紐付け
た状態で格納するステップと、
を情報提供装置に実行させる。
5 エ 【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザから最初に受け付けた個人情報以外の個人情報
を取得することができるので、それらの情報に基づいて健康に関する情報
を含む各種情報を提供することができる。
10 オ 【発明の実施の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
(実施形態1)
15 図1は、本発明の実施形態1における情報提供システムの構成例を示す
図である。図1の情報提供システムは、以下説明する、ユーザ端末100
A~100E(これらの総称を「ユーザ端末100」と称する。)と、ロボ
ット200と、ウェブサーバ300と、ネットワーク400とを備えてい
る。
20 【0015】
ユーザ端末100は、例えば、電話機能及び通信機能を有するスマート
フォン100A~100D、腕時計型のリスト端末100Eなどの情報提
供装置の総称である。もっとも、ユーザ端末100は、スマートフォンや
リスト端末のみならず、パーソナルコンピュータ、タブレットなどの各種
25 の情報提供装置とすることもできる。
【0016】
ロボット200は、例えばユーザ端末100A及びリスト端末100E
を保有するユーザの家屋内に設置された情報提供装置である。ロボット2
00は、ネットワーク400を介して、ユーザ端末100A及びリスト端
末100Eとの間で後述する個人情報を共有することができる。なお、こ
5 の実施形態において、ロボット200は、家屋内の部屋においては、ユー
ザの指示に応じて移動することが可能である。このために、ロボット20
0は既知の移動手段を備えている。
【0017】
ウェブサーバ300は、例えば、健康に関する情報を含む、様々な情報
10 が蓄積されているものである。ウェブサーバ300は、ネットワーク40
0を介してアクセスされたユーザ端末100、ロボット200からの要求
に応じた情報を発信する。
【0018】
ネットワーク400は、インターネットなどで構成され、ユーザ端末1
15 00、ロボット200、ウェブサーバ300、及び、他のウェブサーバと
の間における通信を実現するものである。
【0019】
図2は、図1のユーザ端末100(100A~100E)の構成を示す
ブロック図である。図2において、ユーザ端末100は、以下説明する、
20 制御部101と、記憶部102と、通信部103と、時計部104と、温
度センサ部105と、加速度センサ部106と、操作部107と、表示部
108と、音声入力部109と、音声出力部110と、振動部111と、
位置検出部112と、バス113と、操作部107及び表示部108を含
むタッチパネル114とを備えている。
25 【0029】
操作部107及び表示部108の一部は、操作入力機能と表示機能とを
併せて備えたタッチパネル114で実現することができる。タッチパネル
114は、後述するように、制御部101、記憶部102と協働して、ユ
ーザから取得したい個人情報を予め受け付ける第1受付手段と、第1受付
手段によって受け付けていない個人情報に対応する属性の質問を表示に
5 よって行う質問手段と、質問手段による質問に対する返答である個人情報
を受け付ける第2受付手段とを実現することができる。
カ 【0038】
図3は、図2に示すユーザ端末100の初期動作を示すフローチャート
である。ここでは、以下説明する動作を実現可能なアプリケーション(以
10 下、「コンシェルジュアプリ」と称する。)が、ダウンロードされ、かつ、
インストールされている、ユーザ端末100の動作例を説明する。
【0039】
ユーザ端末100の電源がオンされている状態で、ユーザによって選択
的に既知のロック画面を通じてパスワードが入力されたことを条件に、メ
15 ニュー画面をタッチパネル114に表示するというメニュー画面表示処
理を実行する(ステップS102)。メニュー画面には、電話、メール、イ
ンターネット、カメラ、目覚まし設定、マナーモード設定などのメニュー
とともに、コンシェルジュアプリのメニューが表示される。
【0040】
20 この状態で、タッチパネル114に表示コンシェルジュアプリのアイコ
ンを、ユーザがタッチするなどして起動を選択すると、制御部101は、
このことを特定して(ステップS103) ユーザの個人情報のうち以下の
、
基本情報が、ユーザから入力済みであるか否かを判別する(ステップS1
04) 基本情報が入力済みでない場合には、
。 基本情報入力画面をタッチパ
25 ネル114に表示するという入力画面表示処理を実行する(ステップS1
05)。
【0041】
なお、ステップS102の実行により表示されるメニュー画面で、ステ
ップS103に示すコンシェルジュアプリが選択されず、他のアプリが選
択された場合には、その選択されたメニューの処理が実行される(ステッ
5 プS108)。例えば、目覚まし設定のメニューが選択された場合には、設
定時刻や目覚まし有効曜日などの設定操作に応じて、その内容を記憶部1
02の不揮発性メモリにストアされる。
【0042】
図5~図9は、図3に示すステップS105の入力画面表示処理を実行
10 することによってユーザ端末100のタッチパネル114に表示される
基本情報入力の画面例を示す図である。
【0043】
図5に示すように、タッチパネル114には、基本情報として、例えば、
ユーザの氏名、性別、及び、年齢だけといった極めてわずかな情報の入力
15 又は選択を促す旨が表示される。なお、ここで重要なのは、当初入力等さ
せる情報が少ないということである。したがって、基本情報を構成する情
報は、必ずしも、ユーザの氏名等に限定されるものではないし、これらを
必ず用いなければわけではない点に留意されたい。
【0051】
20 ユーザ端末100の動作としては、その後に、基本情報の入力が完了す
ると、制御部101は、入力された基本情報を記憶部102の不揮発性メ
モリにストアするといったストア処理を実行する(ステップS106)。
【0052】
その後、温度センサ部105で検出された現在の温度情報、加速度セン
25 サ部106で検出された変位情報、音声入力部109で検出されたユーザ
の周囲音の情報、位置検出部112で検出されたユーザ端末100の位置
情報などの各種情報(以下、「環境情報」と称する。)を取得するために、
後述するサブルーチンを例えば10分ごとにコールできるようにするセ
ット処理を実行する(ステップS107)。
【0053】
5 こうして、図3に示す処理が終了する。以上の処理により、ユーザの氏
名・性別・年齢といった基本的な情報が、コンシェルジュアプリと紐づけ
られることになる。なお、ここで入力される氏名等の情報は、必ずしも真
のものでなくてもよく、例えば氏名の情報であれば、ユーザが任意に、架
空の人物のもの、ニックネーム或いはハンドルネームなどとすることもで
10 きる。
キ 【0058】
図4は、図3に示す初期動作が完了した後にコンシェルジュアプリによ
ってなされる制御部101の動作例を示すフローチャートである。制御部
101は、ステップS107でセットされた時間が到来すると、各種セン
15 サ部105等をオンする。各種センサ部105等は、これによって環境情
報を取り込み、それらを記憶部102のRAMに一時的にストアするとい
った環境情報ストア処理を実行する(ステップS110)。
【0059】
この処理は、全てのセンサ部からの情報を同時刻にセンシングして一度
20 に取り込んでもよいし、順次、所定時間内に取り込んでもよい。また、例
えば、温度センサ部105によって得られる温度情報などは、頻繁に変化
しないと考えられるので、この種のセンサ部については、例えば1時間ご
とにオンすることとしてもよい。
【0060】
25 つぎに、例えば、ユーザ端末100のカレンダーアプリを通じて新たな
イベント情報が登録されたか否かを判別する(ステップS111) 判別の
。
結果、新たなイベント情報が登録されていない場合には、図4に示す処理
を終了する。一方、新たなイベント情報が登録された場合には、当該情報
を抽出して、記憶部102のRAMに一時的にストアするといったイベン
ト情報ストア処理を実行する(ステップS112)。
5 【0061】
その後、当該イベント情報に関連する質問の発生要因があるか否かを判
別する(ステップS113)。具体的には、例えば、カレンダーアプリを通
じて「今週末の18:00から飲み会」といった旨のイベント情報がユー
ザ端末100に入力された場合には、
「お酒は好きですか?」、
「ビール党で
10 すか?」 「週にどのくらいお酒を飲みますか?」などの質問の発生原因が
、
あるという判別結果が得られるようにしている。
【0063】
判別の結果、発生要因がない場合には、図4に示す処理を終了する。一
方、発生要因がある場合には、これらの質問を既に行っていないことを確
15 認した場合には、発生要因に基づく質問画面作成して、タッチパネル11
4に表示といった質問画面表示処理を実行する(ステップS114) こう
。
して、質問画面を通じて、ステップS105の実行によって取得する基本
情報とは異なるユーザの詳細情報の入力をユーザに促す。
【0071】
20 また、予め用意している一又は複数の質問に対する回答がなされ、ユー
ザからの詳細情報の入力の完了がされると、ユーザから回答された詳細情
報を記憶部にストアするといった詳細情報ストア処理を実行して、図4に
示す処理を終了する(ステップS115)。
ク 【0094】
25 (実施形態2)
図16は、本発明の実施形態2における情報提供システムの制御部10
1の動作を示すフローチャートであり、図4に示すものに対応する。本実
施形態では、ユーザに対する健康管理の提案をする場合の動作について説
明する。なお、本実施形態の情報提供システム及びユーザ端末100の構
成は、図1及び図2に示したものと同様である。また、図16に示す処理
5 を実行するタイミングは、例えば、1週間に1度とすることができ、この
場合には図3のステップS107でセットする時間を1週間とすればよ
い。
【0095】
本実施形態では、まず、ユーザの生活パターン(予測によるものを含む)
10 を示すパターン情報につき作成済みであるか否かを判別する(ステップS
117) パターン情報につき作成済みである場合には、
。 それに従ったアド
バイスをすることが考えられ、ステップS120に移行する。
【0096】
なお、ここでいうパターン情報が作成済みという状況は、例えば、既述
15 の趣味に関する情報、嗜好情報などを含む、予め用意されているユーザに
関する質問事項に対する全ての回答をもって情報が作成された状態をい
う。もっとも、本システムの管理者は、新たに質問を増やしたり、既存の
質問内容を新たな質問内容に更新したりといった、コンシェルジュアプリ
のバージョンアップをすることも考えられるので、一度、ステップS11
20 7からステップS120に移行したからといって、その後にステップS1
17からステップS118に移行することがないわけではない。
【0097】
一方、パターン情報につき作成済みでない場合には、例えば平日及び休
日におけるユーザの具体的な生活習慣を、以下に示す経験則から導出され
25 る判断指針に基づいて予測する(ステップS118)。
【0114】
ユーザが12:00頃に昼食を、18:30頃に夕食を、それぞれ外食
で採る習慣があることを把握していることを把握している場合には、これ
らの時刻頃に、音声入力部109をアクティブにして、ユーザがどのよう
な料理を注文しているかを音声認識機能によって把握することができる。
5 【0115】
仮に、ユーザが同じような料理ばかりを摂取していることを把握した場
合には、制御部101は、ネットワーク400を介して、該当するウェブ
サーバ300にアクセスし、食事と健康とに関する情報を、ユーザがニュ
ース等をチェックするタイミングでアドバイスをすることもできる。
10 【0116】
制御部101は、平日におけるユーザの生活習慣を予測した後は、図1
6のフローチャートにおいて、ユーザの生活パターンを示すパターン情報
を作成して、記憶部102の不揮発性メモリにストアする(ステップS1
19)。例えば、平日におけるユーザの生活習慣に従って、横軸を時間に取
15 り、縦軸を行動の内容に取った生活パターンを示すパターン情報を作成し
てストアする。
【0117】
ユーザがこのストアされたパターン情報と対比して、これと大きく異な
る行動をした場合、又は、その恐れがある場合には、生活のリズムが崩れ
20 たり、不規則な生活となったりしがちなので、それを是正するような表示
を行うことができる。係る場合の例としては、例えば、翌日が仕事であろ
うと予想される前日に、24:00を過ぎてもニュース等をチェックして
いる、或いは、そうしそうだということを把握したときは、
「夜更かしは良
いことではないので早く寝ましょう」といったメッセージを表示すること
25 ができる。
【0118】
図16のフローチャートのステップS119においてパターン情報が
ストアされた場合には、制御部101は、例えば健康のアドバイスといっ
た各種アドバイスが必要かどうかを判別する(ステップS120) 例えば、
。
図3のフローチャートのステップS112において、飲み会の情報を一時
5 的にストアした場合において、例えば、昼休みのニュース等のチェックの
タイミングを見計らって、健康のアドバイスをすることができる。
【0119】
図12は、図2のタッチパネル114に表示されたイベント通知情報の
画面例を示す図である。図12に示すように、飲み会のイベント情報を表
10 示するとともに、
「飲みすぎないように!」とアドバイスのメッセージを出
力してユーザの注意を促す(ステップS121)。
【0120】
次に、種々のアドバイスの出力に対して、所定時間内にユーザから了解
の応答があるか否かを判別する(ステップS122) 所定時間内に応答が
。
15 ない場合には、アドバイスを閲覧していない可能性もあるので、メッセー
ジの表示だけでなく、例えば、音声出力部110による音声でのメッセー
ジを出力することもできる(ステップS121)。
【0127】
図13は、図2のタッチパネル114に表示されたアドバイス情報の画
20 面例を示す図である。図13に示すように、コーヒーを飲むことを勧める
アドバイスを表示しながら、さりげなくコーヒーが好きかどうかの質問を
行う。ここで、ユーザがYESボタン114a又はNOボタン114bを
オン操作すると、広く愛好されている一般的な飲み物であるコーヒーにつ
いてのユーザの個人情報を把握することができる。
25 【0128】
この後は、さらに、ユーザの嗜好情報についての細かい質問を用意する
ことができる。図14は、図2のタッチパネル114に表示された嗜好情
報質問の画面例を示す図である。図13の画面において、ユーザがYES
ボタン114aをオン操作したときは、図14に示すように、ユーザの詳
細な個人情報を知るために、さりげなく詳細情報の入力を促す流れにユー
5 ザを誘う。
【0129】
さらに、この自然な流れの中で、コーヒー、紅茶、酒、タバコなどの嗜
好品の種類や頻度といったユーザの嗜好情報に関する質問を表示して、広
範で且つ細かい個人情報について取得することができる。
10 【0133】
さらに、休日であることから、ユーザが文字入力を煩雑であると感じる
ことも考慮して、音声入力部109をアクティブして、音声での入力がで
きる旨の音声入力アイコン114gを表示することもできる。
【0134】
15 したがって、制御部101は、ユーザとの間で音声による自然な流れの
擬似コミュニケーションを行う中で、ユーザの生活情報に関連する詳細な
個人情報を取得することができる。
【0135】
ユーザから入力される個人情報は、上記した例示以外にも多く存在する
20 ので、制御部101は、ストアする個人情報の蓄積に応じて、ユーザのパ
ターン情報をより精度を高める必要がある。
ケ 【0137】
以上説明したように、本発明の各実施形態における情報提供装置によれ
ば、タッチパネル114を構成する操作部107若しくは音声入力部10
25 9又はその双方は、ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受
け付ける第1受付手段を構成する。また、タッチパネル114を構成する
表示部108若しくは音声出力部110又はその双方は、第1受付手段に
よって受け付けていない個人情報に対応する属性の質問を行う質問手段
を構成する。そして、操作部107若しくは音声入力部109又はその双
方は、質問手段による質問に対する返答である個人情報を受け付ける第2
5 受付手段を構成する。さらに、記憶部102の不揮発性メモリは、第1及
び第2受付手段によって受け付けられた個人情報と当該個人情報に対応
する属性とが紐付けた状態で格納される格納媒体を構成する。
【0138】
また、本発明の各実施形態における情報提供システムによれば、上記情
10 報提供装置を複数有しており、当該情報提供装置が相互にネットワーク4
00を介して接続された場合に、最新の個人情報が格納されている格納媒
体の内容で、他方の格納媒体の内容を更新する。
【0139】
さらに、上記実施形態によれば、ユーザ端末100は、外部メモリ又は
15 ネットワーク400を介して、健康情報に関するウェブサーバ300から
情報提供プログラムをインストール又はダウンロードすることができる。
【0140】
すなわち、情報提供プログラムは、
ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受け付けるステップ
20 と、
受け付けていない個人情報に対応する属性の質問を行うステップと、
前記質問に対する返答である個人情報を受け付けるステップと、
前記受け付けられた個人情報と当該個人情報に対応する属性とを紐付け
た状態で格納するステップと、
25 を情報提供装置に実行させる。
⑵ 前記⑴の記載事項によれば、本件明細書には、本件発明1に関し、次のよ
うな開示があることが認められる。
ア ユーザの自宅に通信機能又はそれに準じる機能が付与されている各種セ
ンサが設置され、脈拍や呼吸等の測定、血圧、脈拍、体組成計、血糖値計、
体重計等による測定を行う構成の従来の情報提供装置は、測定データは通
5 信機能を介してサーバに蓄えられ、ユーザごとに健康管理が把握できるよ
うになっているが、ユーザ自身が測定を少なくとも数日ごとに繰り返し行
う必要があるため、その様々な個人情報の入力のための煩雑な作業がユー
ザの負担になっており、毎日の多忙な生活の中で面倒な個人情報の入力を
持続して行うことは困難であるという課題があった 【0001】
( 、
【000
10 2】 【0004】 【0005】 。
、 、 )
「本発明」は、情報提供装置との擬似コミュニケーションにより適宜に
追加の個人情報を入力することで、情報提供装置から健康に関する情報を
含む各種情報を適切なタイミングで提供できるようにすることを課題と
するものである(【0006】 。
)
15 イ 「本発明」の情報提供装置は、前記課題を解決するための手段として、
ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受け付ける第1受付
手段と、前記第1受付手段によって受け付けていない個人情報に対応する
属性の質問を行う質問手段と、前記質問手段による質問に対する返答であ
る個人情報を受け付ける第2受付手段と、前記第1及び第2受付手段によ
20 って受け付けられた個人情報と当該個人情報に対応する属性とが紐付け
られた状態で格納される格納媒体とを備える構成を採用したものであり、
「本発明」によれば、ユーザから最初に受け付けた個人情報以外の個人情
報を取得することができるので、それらの情報に基づいて、ユーザに対し、
健康に関する情報を含む各種情報を提供することができるという効果を
25 奏する(【0007】 【0010】 。
、 )
2 争点4-1(無効理由1(乙8を主引用例とする新規性の欠如))について
本件の事案に鑑み、被控訴人主張の無効の抗弁(争点4)の無効理由1から
判断する。
⑴ 乙8の記載事項
ア 乙8(特開2015-102994号公報)には、次のような記載があ
5 る(下記記載中に引用する図1ないし5については別紙2を参照)。
(ア) 【技術分野】
【0001】
本発明は、学習・生活支援システムに関する。さらに詳しくは、独自
の意欲喚起指導(EMS:Educational Method of Self-motivation)が
10 可能な学習・生活支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータやタブレットなどを用いて、コンピュ
ータ上で講師による講義を視聴することにより、受講生・生徒が学習し
15 たり、講師と受講生・生徒とが、または受講生・生徒同士がコミュニケ
ーションを取る方法が基調となっている(たとえば、特許文献1参照)。
このようなシステムを用いることにより、受講生・生徒は学習に対する
モチベーションを高めて、学習効率を上げている。
(イ) 【発明が解決しようとする課題】
20 【0004】
一方、講師と受講生・生徒とが、または受講生・生徒同士がコミュニ
ケーションを取っている最中のモチベーションの向上だけでなく、受講
生・生徒個人が一人だけでコンピュータ上で学習をする場合にも、学習
への意欲を高めることが求められている。
25 【0005】
そこで、コンピュータ上に本システムのインターフェイスとなるアバ
ター(ユーザを象徴するキャラクタ)を表示し、受講生・生徒、すなわ
ち本システムに加入している一般・社会人等のユーザが、独自(一人)
での学習時だけでなく、日常生活時においても役立つ学習・生活支援シ
ステムを提供することを目的とする。たとえば、ユーザが学生の場合、
5 アバターから送られたメッセージメール等は、単なるアラーム機能では
なく、目標、行動内容に即したアバターコメントとして送られ、ユーザ
本人が、目標達成するための短期長期の設定目標の乖離や進捗具合の管
理ツールとしてシステムを活用し、ユーザは、計画、実践、検証、振り
返り、動機付けを手軽にでき、ユーザ自身が設定したスケジュールの達
10 成に向けての学習意欲を維持向上させることが可能な学習・生活支援シ
ステムの提供を目的とする。一方では、各種学校、通信講座等、社内教
育等を含む、資格やライセンス取得を目指すために自らが「なりたい自
己像」「めざす姿」「プラス思考イメージの形成」を前述と同様の方法を
用いて動機付けし、これらを段階的に具現化することにより「自己成長」
15 を促進向上させる学習 生活支援システムを提供することを目的とする。
・
(ウ) 【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の学習・生活支援システムは、ネットワークを介して接続され
た学習・生活支援サーバとユーザ端末とを備え、アバターとユーザとの
20 対話によりユーザの学習を支援する学習・生活支援システムであって、
該学習・生活支援サーバが、前記アバターを管理し、前記ユーザ端末へ
前記アバターからのアバターコメントを出力するアバター管理部と、ユ
ーザ端末から入力されたユーザ情報を管理するユーザ情報管理部と、入
力された前記ユーザ情報を分析し、ユーザ情報に応じてキーワードを抽
25 出するテキスト分析部とを備え、前記アバター管理部により出力された
アバターコメントに対するユーザコメントが、前記ユーザ情報管理部に
より、前記学習・生活支援サーバに設けられたユーザ情報記憶部に記憶
され、前記ユーザ情報記憶部に記憶されたユーザコメントが、前記テキ
スト分析部により分析および抽出され、キーワードとして前記ユーザ情
報記憶部に記憶され、記憶された前記キーワードに基づいて、前記アバ
5 ター管理部により、前記学習・生活支援サーバのアバターコメント記憶
部に予め記憶された複数のアバターコメントのうちの1つのアバターコ
メントが選択され、前記キーワードに応じたアバターコメントが前記ユ
ーザ端末に出力され、前記ユーザ端末から入力されたユーザ情報、また
は、アバターコメントに対するユーザコメントに、ユーザのスケジュー
10 ルが含まれている場合に、前記アバター管理部が前記ユーザ端末に前記
アバターを介してスケジュール確認を行うことを特徴とする。
【0007】
また、前記アバター管理部が、前記ユーザ端末に、前記キーワードに
関連するウェブサイトのリンクを出力し、前記リンク先のウェブサイト
15 が前記ユーザ端末において閲覧された場合には、前記ウェブサイト上の
テキストを前記テキスト分析部が分析し、新たなキーワードを抽出し、
該抽出された新たなキーワードが、前記ユーザ情報記憶部に記憶される
ことが好ましい。
【0011】
20 また、前記ユーザ情報記憶部が、前記長期的学習目標および前記短期
的学習目標を含むユーザ目標情報記憶部と、前記ユーザコメントおよび
前記ユーザコメントから抽出されたキーワードが記憶されるユーザコメ
ント記憶部とを備え、前記ユーザコメント記憶部に記憶される前記ユー
ザ端末から抽出されたキーワードが、ユーザ端末により入力されたユー
25 ザの嗜好情報に関するキーワードを含み、前記ユーザの嗜好情報に関す
るキーワードに基づいて、前記アバター管理部が嗜好情報に関するアバ
ターコメントを前記ユーザ端末に出力することが好ましい。
【0015】
また、前記学習・生活支援システムが複数のユーザ端末を備え、前記
ユーザ情報記憶部に複数のユーザ端末のユーザ情報が記憶され、一のユ
5 ーザ端末により入力されたユーザ情報と他のユーザ端末により入力され
たユーザ情報とが関連する場合、前記アバター管理部が、前記一のユー
ザ端末に、前記他のユーザ端末に関するアバターコメントを出力するこ
とが好ましい。
(エ) 【発明の効果】
10 【0016】
本発明によれば、学習・生活支援システムにおいて、学習・生活支援
システムのユーザに特有のアバターコメントが各ユーザに向かって出さ
れるため、 ・
学習 生活支援システムを定期的に利用する動機付けとなる。
さらに、ユーザのスケジュールがユーザから入力された情報に含まれて
15 いる場合は、そのスケジュールの内容に基づいて、アバターからスケジ
ュール確認が行われ、単なるアラーム機能ではなく、スケジュールの内
容に即してアバターからアバターコメントが送られる。したがって、ユ
ーザは、自己が設定したスケジュールの達成に向けての学習意欲が高ま
る。
20 (オ) 【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の学習・生活支援システム1は、図1に示されるように、ネッ
トワークNを介して接続された学習・生活支援サーバ2とユーザ端末3
とを備え、図2に示すアバター4とユーザとの対話によりユーザの学習
25 を支援するシステムである。アバター4は、図2においては、ユーザ端
末3の一部にユーザ端末3のユーザのものだけが示されているが、アバ
ター4は、他のユーザのアバターと同じ仮想空間内に位置するようにし
てもよい。また、アバター4は、ユーザを象徴するキャラクタとして他
のユーザと仮想空間内で会話できるように構成してもよい。また、アバ
ター4は、ユーザの設定により、服装や髪形などの容姿を変更すること
5 ができるようにしても構わない。
【0020】
ユーザ端末3は、図2に示した実施形態では、通信が可能なタブレッ
ト型端末として示しているが、ユーザ端末3は、ネットワークNを介し
て学習・生活支援サーバ2と接続することができるものであれば特に限
10 定されるものではなく、他の通信端末、たとえば携帯電話、スマートフ
ォン、ノート型パソコンなどの携帯型端末であってもよいし、家庭用パ
ソコンなど携帯型ではない端末を用いてもよい。なお、本発明における
ユーザ端末3は、ユーザが家にいるときには家庭用パソコンを用い、外
出時にはタブレット型端末を持ち出して、外出先からログインして使用
15 する場合など、使用状態によって端末自体が変更される場合も含む。
【0021】
なお、学習・生活支援システム1は、図1においては2つのユーザ端
末3がネットワークNを介して学習・生活支援サーバ2に接続されてい
るが、接続されるユーザ端末3の数は特に限定されるものではない。つ
20 ぎに、図3に示されるように、学習・生活支援サーバ2は、アバター4
を管理し、ユーザ端末3へアバター4からのアバターコメントを出力す
るアバター管理部21と、ユーザ端末3から入力されたユーザ情報を管
理するユーザ情報管理部22と、入力されたユーザ情報を分析し、ユー
ザ情報に応じてキーワードを抽出するテキスト分析部23とを備えてい
25 る。図3に示す実施形態では、さらにネットワークNを介して情報を収
集するための情報収集部24と、 ・
学習 生活支援システム1の他の機能、
たとえば、学習にあたって授業等を配信する講師と受講生・生徒との間
での双方向の教育システムなど、学習に関するコンテンツを管理するコ
ンテンツ管理部25とを備え、アバター管理部21、ユーザ情報管理部
22、テキスト分析部23、情報収集部24、コンテンツ管理部25と
5 が制御部として構成されている。制御部は、少なくとも1つのCPU等
を備え、ROM等に予め記憶されたプログラムを読み込んで実行するこ
とにより、アバター管理部21、ユーザ情報管理部22、テキスト分析
部23、情報収集部24、コンテンツ管理部25等の機能を実行するこ
とが可能である。なお、制御部としては、ユーザ端末3に他の機能を提
10 供することが可能な他の機能を持たせてもよい。また、図3に示した実
施形態では、1つの学習・生活支援サーバ2に複数の機能を持たせてい
るが、各機能を別々のサーバに持たせて、サーバの負荷を分散させても
よい。
【0022】
15 また、図3に示されるように、学習・生活支援サーバ2は、ユーザ端
末3とネットワークNを介して接続するために、通信制御部26を備え
ている。また、学習・生活支援サーバ2は、1つのユーザ端末3だけで
なく、複数のユーザ端末と双方向で通信することができる。また、詳細
は後述するが、学習・生活支援サーバ2は、記憶部を備えている。記憶
20 部は、たとえばRAMやフラッシュメモリ、ハードディスク等の記憶装
置により構成され、各種情報を記憶することができる。図示した実施形
態では、学習・生活支援サーバ2内に各種情報が記憶されるように構成
されているが、外部メモリ等により、学習・生活支援サーバ2の外部で
記憶してもよいし、ユーザ端末3に各種情報を記憶してもよい。本実施
25 形態では、図3に示されるように、記憶部は、ユーザ基本情報記憶部U
1、ユーザ嗜好情報記憶部U2、ユーザ目標情報記憶部U3、ユーザコ
メント記憶部U4を含むユーザ情報記憶部27aと、アバター情報記憶
部27bと、アバターコメント記憶部27c、収集情報記憶部27dと、
コンテンツ記憶部27eとを備えている。これらの記憶部については後
述する。
5 【0024】
アバター管理部21は、アバター4の動作、容姿、アバター4からユ
ーザに対するコメントであるアバターコメントのユーザ端末3への出力
など、アバター4に関する制御部として機能する。ユーザ端末3からア
バター4の容姿などの変更の指令があった場合には、アバター管理部2
10 1により、アバター4の容姿などが変更され、変更後のアバター4の容
姿などは、記憶部のアバター情報記憶部27bに記憶される。アバター
4は、あるユーザ端末3のユーザの分身として仮想空間上など、ユーザ
端末3の表示部上に表示される。アバター4は、アバター管理部21に
より管理され、アバター4を介して他のユーザ等とのコミュニケーショ
15 ンを取ることができるが、本発明では、主にアバター4は分身の元とな
る自己のユーザ自身にコメントし、会話をすることを主題としている。
なお、コメントおよび会話は、テキストで行ってもよいし、音声により
行ってもよい。アバター4とユーザ自身との会話は、アバターコメント
記憶部27cに予め記憶された複数のアバターコメントをベースとして
20 行われ、アバター管理部21がアバターコメント記憶部27cにアクセ
スし、後述するようにユーザ端末3に入力された情報に応じてアバター
管理部21により選択され、ユーザ端末3に出力される。
【0025】
ユーザ情報管理部22は、ユーザ情報記憶部27aに記憶されるユー
25 ザの基本情報、ユーザの嗜好情報、ユーザの目標情報、ユーザ端末から
のコメントであるユーザコメントなど、ユーザに関する情報を管理する。
より具体的には、ユーザ情報管理部22は、ユーザ端末3から入力され
た情報を、ユーザ基本情報、ユーザ嗜好情報、ユーザ目標情報、ユーザ
コメントのいずれかを判断して分類し、ユーザ基本情報記憶部U1、ユ
ーザ嗜好情報記憶部U2、ユーザ目標情報記憶部U3、ユーザコメント
5 記憶部U4に分類して記憶する。分類は、たとえば、ユーザ端末3にお
いて行われた操作や、アバター4からのアバターコメントの内容に基づ
いて分類することができる。この分類は、情報の内容に応じてさらに細
分化しても構わない。なお、上記情報の記憶は、ユーザ情報管理部22
が情報の内容を判別できる方法で記憶することができれば、特に情報毎
10 に分類する必要はない。
【0026】
テキスト分析部23は、ユーザ端末3から入力されたテキストまたは
音声を分析し、そのテキストまたは音声によるユーザコメントや、ユー
ザ端末3からの入力情報から、キーワードを抽出する。テキスト分析部
15 23により、ユーザ端末3から入力された情報、すなわち、ユーザの学
習における目標、ユーザが興味を持っている内容、ユーザが考えている
内容などが情報として把握され、キーワードにより把握された内容に基
づいて、アバター4からユーザ端末3に出力されるアバターコメントが
選択される。なお、テキスト分析部23は、ユーザ端末3により入力さ
20 れたテキストや音声などを分析し、その中から単語などのキーワードを
抽出することができるものであればよく、公知のテキスト解析アプリケ
ーションまたは音声解析アプリケーションなどを用いることができる。
たとえば、キーワードの抽出は形態素解析により名詞等の品詞を判別し
て抽出する公知の形態素解析エンジンを用いることができる。テキスト
25 分析部23により抽出されたキーワードは、たとえばユーザコメント記
憶部U4などに記憶される。なお、ユーザ端末3により入力されたテキ
スト、音声などは、一度ユーザコメント記憶部U4に記憶されてからキ
ーワードが抽出されてもよいし、キーワードが抽出されてからユーザコ
メント記憶部U4に記憶されてもよい。また、ユーザコメントの全てと
キーワードの両方をユーザコメント記憶部U4に記憶してもよい。
5 【0027】
情報収集部24は、ユーザへ様々な情報を提供するために、情報を収
集し、収集情報記憶部27dに記憶される。収集される情報としては、
ユーザ端末3からの入力情報に基づいて、たとえば抽出されたキーワー
ドに基づいて、ウェブ上からキーワードに関連するウェブページを収集
10 し、ウェブページのリンク情報を収集情報記憶部27dに記憶する。な
お、情報収集部24により収集情報記憶部27dに記憶される情報は、
通信制御部26、ネットワークNを介してインターネット上のウェブペ
ージから収集してもよいし、学習・生活支援システム1のコンテンツ提
供者が自ら収集したものであってもよいし、他のユーザから提供された
15 情報であってもよい。
【0028】
コンテンツ管理部25は、ユーザへ様々なコンテンツを提供するため
に、コンテンツ記憶部27e等に記憶されたコンテンツを提供する。本
実施形態では、コンテンツとしては、各種学校、通信講座等、社内教育
20 等、学習システム一般において用いられる双方向通信学習システムに用
いられるコンテンツがあげられる。より具体的には、学習の指導側、た
とえば講師の端末(図示せず)と、受講生・生徒との端末(ユーザ端末
3)がネットワークNを介して接続され、ユーザ端末3の表示部3a(図
2参照)に、講師および複数の受講生・生徒の映像またはアバターを表
25 示して、双方向でリアルタイムの講義を行うことができるコンテンツな
どが提供される。また、そのような双方向でのリアルタイムでの講義以
外に、ユーザが個人で学習するときの学習コンテンツなどがコンテンツ
記憶部27eに記憶することもでき、様々な学習コンテンツを記憶して、
コンテンツ管理部25によりユーザが学習することができる。また、学
習以外の連絡事項や、情報交換のためのチャットなどのコミュニケーシ
5 ョンツールや、ウェブログなどを動作させるアプリケーションをコンテ
ンツ記憶部27eに記憶して、コンテンツ管理部25により動作させて
も構わない。
【0029】
本発明の学習・生活支援システム1は、上述したように、アバター管
10 理部21により出力されたアバターコメントに対するユーザコメントが、
ユーザ情報管理部22により、学習・生活支援サーバ2に設けられたユ
ーザ情報記憶部27aに記憶され、ユーザ情報記憶部27aに記憶され
たユーザコメントが、テキスト分析部23により分析および抽出され、
キーワードとしてユーザ情報記憶部27aに記憶される。そして、記憶
15 されたキーワードに基づいて、アバター管理部21により、学習・生活
支援サーバ2のアバターコメント記憶部27cに予め記憶された複数の
アバターコメントのうちの1つのアバターコメントが選択され、キーワ
ードに応じたアバターコメントがユーザ端末3に出力され、ユーザ端末
3から入力されたユーザ情報、または、アバターコメントに対するユー
20 ザコメントに、ユーザのスケジュールが含まれている場合に、アバター
管理部21がユーザ端末3にアバター4を介してスケジュール確認を行
う。学習・生活支援システム1が、このように構成されていることによ
り、ユーザにより入力された情報に基づいて、学習・生活支援サーバ2
がユーザに関心のあるキーワードを抽出して、その関心のあるキーワー
25 ドに応じて、さらにアバター4からユーザ端末3に対して、すなわちユ
ーザに対してさらに質問(アバターコメント)をなげかける。これによ
り、アバター4からのアバターコメントは、ユーザに関心のある事項に
対するものとなり、さらにユーザとアバター4との継続した会話(アバ
ターコメントとユーザコメント)を続けるにつれて、アバター4からの
アバターコメントは、そのユーザの関心のある事項や、ユーザの目標な
5 どに応じて変化する。したがって、単に機械から同じような質問がされ
るといったことはなくなり、自己の分身であるかのように、ユーザによ
って特有のアバターコメントが出されるようになり、学習・生活支援シ
ステム1を定期的に利用する動機付けとなる。さらに、ユーザのスケジ
ュールがユーザコメントに含まれている場合は、そのスケジュールの内
10 容に基づいて、アバター4からスケジュール確認が行われ、単なるアラ
ーム機能ではなく、スケジュールの内容に即したアバターコメントが送
られる。したがって、ユーザは、自己が設定したスケジュールの達成に
向けての学習意欲も高まる。
【0033】
15 また、本実施形態では、ユーザ情報記憶部27aが、長期的学習目標
および前記短期的学習目標を含むユーザ目標情報記憶部U3と、ユーザ
コメントおよびユーザコメントから抽出されたキーワードが記憶される
ユーザコメント記憶部U4とを備え、ユーザコメント記憶部U4に記憶
されるユーザ端末3から抽出されたキーワードが、ユーザ端末3により
20 入力されたユーザの嗜好情報に関するキーワードを含み、ユーザの嗜好
情報に関するキーワードに基づいて、アバター管理部21が嗜好情報に
関するアバターコメントをユーザ端末3に出力してもよい。すなわち、
本実施形態では、学習のための意欲を喚起するために、学習内容に沿っ
たアバターコメントだけでなく、趣味や習慣、交友関係などについても
25 アバター4からユーザに話しかけることにより、学習・生活支援システ
ム1に飽きることがなく、学習・生活支援システム1を利用する方向へ
の意識付けを行う。これにより、学習への意欲喚起を含め、学習システ
ムを用いることへの意欲喚起も行うことができ、より学習への効果が高
まる。なお、本明細書における「嗜好情報」とは、ユーザの趣味、行き
たい場所、習慣、家族・友人などの交友関係など、ユーザの日常生活に
5 関連する情報をいうが、上述した例に限定されるものではない。なお、
この嗜好情報は、ユーザ嗜好情報記憶部U2に記憶される。
(カ) 【0036】
図4は、本発明の学習・生活支援システム1の全体的な動作を示すフ
ローチャートである。まず、学習・生活支援システム1をユーザ端末3
10 において立ち上げると、学習・生活支援サーバ2のユーザ情報管理部2
2からユーザ端末3に対してユーザ情報の入力を求められる。具体的に
は、ユーザの生年月日、性別、職業(学年)、ニックネーム、住所、起床・
就寝時間、趣味、行きたい場所、習慣などのユーザ情報の入力が求めら
れる。ユーザ端末3により、ユーザ情報が入力されると(S1)、それぞ
15 れの内容に応じて、入力された内容がユーザ基本情報記憶部U1、ユー
ザ嗜好情報記憶部U2、ユーザ目標情報記憶部U3に分類されて記憶さ
れる。また、このユーザ情報の入力(S1)の前または後に、ユーザ端
末3によりアバター4が作成され、そのアバター4の容姿等の情報がア
バター情報記憶部27bに記憶される。
20 【0037】
つぎに、アバター管理部21により、ユーザ端末3へアバター4を介
してアバターコメントが出力される(S2)。具体的には、「AAさん、
おはよう」といったようなアバターコメントがユーザ端末3に出力され
る。このアバターコメントは、一方向のコメントであっても、双方向を
25 意図した質問形式のもののいずれであってもよい。また、アバターコメ
ントを出すタイミングとしては、前回のログイン時から所定の時間が経
過した後や、ユーザにより入力されたユーザ情報から把握することがで
きる日時に送るようにすることができる。たとえば、初期状態では、ユ
ーザから入力されるユーザ情報は限られているので、初期に入力された
起床・就寝時間や、習慣として入力された「歯を磨く(朝8時)、
」「英語
5 の教科書の音読(夜8時) といったようなユーザ基本情報に記載された
」
時間をもとに、その時間にアバターコメントを出力することができる。
【0038】
つぎに、ユーザ端末3からユーザの学習目標についての目標設定が入
力される(S3)。ここでは、上述した長期的学習目標が入力された場合
10 について説明する。本実施形態では、目標設定の入力は、1)日時、2)
場所、3)目標の3項目の入力が求められる。ユーザの長期的学習目標
として、1)日時:1ヶ月後、2)場所:学校、3)目標:英語のテス
トで90点以上とる、と入力されたとする。その場合、これらの長期的
学習目標は、ユーザ情報管理部22によりユーザ目標情報記憶部U3に
15 記憶される。アバター管理部21は、ユーザ目標情報記憶部U3および
アバターコメント記憶部27cを参照し、ユーザに対して、スケジュー
ルについて質問するアバターコメントをユーザ端末3に出力する(S4)。
具体的には、アバターコメント記憶部27cのうち、長期的学習目標が
設定された場合の基本コメントを用いて、長期的学習目標としてユーザ
20 目標情報記憶部U3に記憶された情報を抜き出し、 英語のテストで90
「
点以上とるために、スケジュールを入力してください」というアバター
コメントがアバター管理部21によりアバター4を介して出される。な
お、この場合、「3)目標」だけが引用されているが、「1)日時」も引
用して、
「1ヶ月後に英語のテストで90点以上とるために、スケジュー
25 ルを入力してください」というアバターコメントを出すようにしてもよ
い。
【0039】
このアバターコメントに対して、ユーザ端末3からスケジュールが入
力される(S5)。具体的には、長期的学習目標を達成するためのユーザ
のスケジュールとなる、短期的学習目標がユーザ端末3から入力される。
5 ここでは、1)日時、2)場所、3)学習内容の入力が求められたとし、
ユーザにより、1)日時:毎日夜10時~10時半、2)場所:家、3)
学習内容:教科書1頁分、覚える英単語と英文をノートに書き出すと入
力されたとする。この場合、短期的学習目標は、ユーザ情報管理部22
によりユーザ目標情報記憶部U3に記憶される。なお、長期的学習目標
10 と短期的学習目標は、ユーザ目標情報記憶部U3内でそれぞれ別々の場
所に分類して記憶することができる。また、長期的学習目標および短期
的学習目標は、それぞれ1つずつの目標であってもよいし、それぞれ複
数の目標であってもよい。
【0040】
15 つぎに、アバター管理部21は、現在の日時を計時装置などにより把
握し、ユーザ情報記憶部27aを参照して、所定期間内にスケジュール
があるか否かを確認する(S6)。ここでは、長期的学習目標、短期的学
習目標以外に、日常的なスケジュール(たとえば、「歯を磨く」)を含め
てスケジュールを確認することができる。スケジュールがある場合には、
20 S7においてアバター管理部21により、アバターがユーザ端末3にお
いてスケジュール確認のためのアバターコメントを出し(S7) スケジ
、
ュールが特にない場合には、何もアバターコメントを出さずに、S6を
繰り返すか、またはスケジュールに関連しない他のアバターコメントを
出すことができる。スケジュール確認のアバターコメントとしては、
「も
25 うすぐ夜10時です。教科書1頁分、覚える英単語と英文をノートに書
き出す、を実行しましょう」などのアバターコメントを、アバターコメ
ント記憶部27cと、ユーザ目標情報記憶部U3を参照して作成して、
ユーザ端末3に出力する。
【0041】
また、S7においては、スケジュールの予定時間の前には確認をせず
5 に、スケジュールの予定時間の経過後に確認をしてもよいし、予定時間
の前および後の両方で確認をしてもよい。スケジュールの予定時間の経
過後に確認をする場合、たとえば、
「夜10時半になりました。教科書1
頁分、覚える英単語と英文をノートに書き出す、は完了しましたか」な
どのアバターコメントを、アバターコメント記憶部27cと、ユーザ目
10 標情報記憶部U3を参照して作成して、ユーザ端末3に出力する。ユー
ザはユーザ端末3から、「完了したよ」や、「終わった」などスケジュー
ルが完了したことを示すユーザコメントを入力する(S8)。または、ユ
ーザ端末3からのユーザコメントが未入力のままであるか、
「まだ」、
「で
きてないよ」など、スケジュールが完了していないユーザコメントが入
15 力される。
【0042】
S8において、ユーザコメントが入力されるか、またはユーザコメン
トが未入力の場合、アバター管理部21により、スケジュールが実行さ
れたか否かの確認がされる(S9)。具体的には、予めスケジュールが完
20 了したことを示す用語についての類語のリストをデータベース内に格納
しておき、スケジュールが完了したことを示す用語がユーザ端末3に入
力された場合に、スケジュールが完了したことが確認される。一方、予
めスケジュールが完了していないことを示す用語についての類語のリス
トをデータベース内に格納しておいき、スケジュールが完了していない
25 ことを示す用語がユーザ端末3に入力された場合に、スケジュールが未
完了であることが確認される。また、ユーザ端末3からのユーザコメン
トが未入力の場合も、スケジュールが未完了であると確認するか、再度
アバターコメントにより確認する。
【0043】
スケジュールの実行が確認された場合には、S10において、
「よくが
5 んばったね」とか、「明日もがんばってね」などのアバターコメントが、
アバター4を介してユーザ端末3に出力される。一方、スケジュールが
未完了であることが確認されると、アバター4から「スケジュールが未
完了だよ。代わりのスケジュールを入力してね」など、スケジュールの
修正を依頼するアバターコメントが出される(S11)。これに対して、
10 ユーザは、その日の分の修正したスケジュールを出力する(S12)。た
とえば、「じゃあ、今からやるよ」とか、「あと、30分たったらやる」
とか出力された場合には、ユーザ目標情報記憶部U3内で短期的学習目
標が更新され、更新された短期的学習目標に基づいて、再度アバター管
理部21が、所定の時間経過後に再度ユーザにスケジュールの確認を行
15 う(S9)。
(キ) 【0046】
つぎに、図5のフローチャートを用いて、アバター4からのアバター
コメントの選択プロセスについて説明する。アバター4からのアバター
コメントは、基本的には予めアバターコメント記憶部27cに記憶され
20 たアバターコメントを用いて出されるが、ユーザからのユーザコメント
に応じて、制御部により、どの文面のアバターコメントをベースとする
かが決定される。これにより、ユーザからのユーザコメントが蓄積され
ていくに従い、アバターコメントは、ユーザの学習内容や、嗜好に沿っ
た内容となる。なお、図5のフローチャートの各工程についても、図4
25 と同様に一例を示したものであり、各工程の順序などは変更が可能であ
る。また、図5の工程のうちの一部を省略したり、他の工程を追加する
ことも可能である。
【0047】
まず、ユーザの基本情報など、ユーザ情報が入力される(S101)。
S101で入力されたユーザ情報に基づいて、アバターコメントが出さ
5 れる(S102)。このアバターコメントに対して、ユーザからユーザコ
メントが出されると(S103)、出されたユーザコメントは、ユーザコ
メント記憶部U3に記憶される。記憶されたユーザコメントは、テキス
ト分析部23により分析され、キーワードが抽出される(S104)。テ
キスト分析部23による分析は、上述したように、形態素解析により名
10 詞等の品詞を判別して抽出する形態素解析エンジンを用いることができ、
キーワードがユーザコメント記憶部U4に、アバターコメントの内容と
関連付けて記憶され、蓄積される(S105)。また、そのキーワードを
抽出した日時についても記憶される。
【0048】
15 抽出されたキーワードに基づいて、さらにアバターコメントを出すこ
ともできるが、ユーザの関心のある内容を正確に把握するために、キー
ワードが所定数蓄積された後に、キーワードに基づくアバターコメント
を出すようにしてもよい(S106、S107)。すなわち、アバターコ
メントを複数回ユーザ端末3に出力した後、所定数、たとえばキーワー
20 ドが10個以上蓄積されたかどうかを判断し(S106) キーワードが
、
10個以上蓄積されている場合に、一番数の多いキーワードに関連する
アバターコメントを選択するようにすることができる(S107) これ
。
により、ユーザがその時点で一番関心のある事項に関連するアバターコ
メントを出すことができ、ユーザがアバター4との会話を楽しんだり、
25 学習への関心をより高めたりできる。なお、キーワードはユーザの入力
の仕方により様々な表現となる可能性があるため、予めデータベース内
に類語として登録された(または手動・自動での更新がされた)分類に
より、同じ分類に属するキーワードは同じキーワードとして扱うことが
できる。たとえば、
「スマートフォン」と「スマホ」は同じキーワードと
して扱われ、
「PC」 「パソコン」
と は同じキーワードで扱うようにする。
5 【0049】
また、アバター管理部21により、ユーザ端末3に、キーワードに関
連するウェブサイトのリンクを出力することもできる(S107) そし
。
て、リンク先のウェブサイトが閲覧されたかを判断し(S108)、リン
ク先のウェブサイトがユーザ端末3において閲覧された場合には、ウェ
10 ブサイト上のテキストをテキスト分析部23が分析し、新たなキーワー
ドを抽出し、抽出された新たなキーワードが、ユーザ情報記憶部27a
(ユーザコメント記憶部U4またはユーザ嗜好情報記憶部U2など)に
記憶されるようにしてもよい(S109)。同様に、キーワードに基づく
アバターコメントにユーザから回答があったか否かを判断し(S108)、
15 回答があった場合に、新たなキーワードの抽出を行うことができる(S
109)。新たなキーワードは、ユーザコメント記憶部U4に記憶され、
次のアバターコメント、リンクの表示に用いることができる(S110)。
【0050】
なお、ユーザコメント記憶部U4に記憶されるキーワードのうち、現
20 在から所定期間内のキーワードを用いるようにキーワードが更新され、
更新後のキーワードに基づいてアバターコメントがユーザ端末3に出力
されるようにしても構わない。たとえば、用いるキーワードを現在の日
時から3ヶ月以内のものだけを用いるようにすれば、半年以上前のキー
ワードは用いられないため、既に関心がなくなったキーワードが用いら
25 れることがなく、最近のユーザに関心のあるアバターコメントを送るよ
うにすることができる。
【0051】
なお、学習・生活支援システム1は、複数のユーザ端末3を備え、ユ
ーザ情報記憶部27aに複数のユーザ端末3のユーザ情報が記憶され、
一のユーザ端末3により入力されたユーザ情報と他のユーザ端末3によ
5 り入力されたユーザ情報とが関連する場合、アバター管理部21が、一
のユーザ端末に、他のユーザ端末に関するアバターコメントを出力する
ように構成してもよい。たとえば、一のユーザ端末3のユーザであるA
君が、長期的学習目標として、
「英語のテストで90点以上をとる」と入
力しており、他のユーザ端末3のユーザであるB君が、ユーザコメント
10 として「英語のテストで94点だったよ」と入力した場合に、A君のユ
ーザ端末3において、アバター4から「B君が英語のテストで94点だ
ったらしいよ」というアバターコメントをだすようにすることもできる。
このようにすることにより、同じ目標を共有したり、ライバル意識によ
り学習意欲の向上を図ることができる。
15 イ 前記アによれば、乙8には、次のような開示があることが認められる。
(ア) 近年、受講生・生徒が、パーソナルコンピュータ、タブレット等を用
いて、コンピュータ上で講師による講義を視聴することにより学習した
り、講師と受講生・生徒又は受講生・生徒同士がコミュニケーションを
取る方法を基調とするシステムを用いることにより、受講生・生徒は、
20 学習に対するモチベーションを高めて、学習効率を上げているが、一方
で、そのようなコミュニケーションを取っている最中のモチベーション
の向上だけでなく、受講生・生徒個人が一人だけでコンピュータ上で学
習する場合にも、学習への意欲を高めることが求められている(【000
2】 【0004】 。
、 )
25 「本発明」は、インターフェイスとなるアバター(ユーザを象徴する
キャラクタ)を表示し、受講生・生徒(システムに加入している一般・
社会人等のユーザ)が、一人で学習する時だけでなく、日常生活時にお
いても役立つ学習 生活支援システムを提供することを目的とし、
・ また、
ユーザ自身が設定したスケジュールの達成に向けて学習意欲を維持向上
させることを可能にしたり、ユーザの「自己成長」を促進向上せる学習・
5 生活支援システムを提供することを目的とするものである 【0005】。
( )
(イ) 「本発明」の学習・生活支援システムは、ネットワークを介して接続
された学習・生活支援サーバとユーザ端末とを備え、アバターとユーザ
との対話によりユーザの学習を支援する学習・生活支援システムであり
(【0006】 、ユーザに特有のアバターコメントが各ユーザに向かっ
)
10 て出されるため、ユーザが定期的に同システムを利用する動機付けとな
り、さらに、ユーザから入力された情報にスケジュールが含まれている
場合は、アバターから、スケジュールの確認とともにスケジュールの内
容に即したアバターコメントが送られることによって、スケジュールの
達成に向けてユーザの学習意欲を高めることができるという効果を奏
15 する(【0016】 。
)
⑵ 乙8を主引用例とする本件発明1の新規性の欠如について
ア 乙8発明1について
被控訴人は、乙8には、構成1aないし1hを有する乙8発明1(学習・
生活支援サーバの発明)の記載がある旨主張する。
20 乙8記載の学習・生活支援サーバ2が構成1bないし1e、1gを有す
ることは、当事者間に争いがない。
そこで、乙8の学習・生活支援サーバ2が、構成1a、1f、1hを有
するかについて、以下、検討する。
(ア) 構成1aについて
25 乙8の「まず、学習・生活支援システム1をユーザ端末3において立
ち上げると、学習・生活支援サーバ2のユーザ情報管理部22からユー
ザ端末3に対してユーザ情報の入力を求められる。具体的には、ユーザ
の生年月日、性別、職業(学年)、ニックネーム、住所、起床・就寝時間、
趣味、行きたい場所、習慣などのユーザ情報の入力が求められる。ユー
ザ端末3により、ユーザ情報が入力されると(S1)、それぞれの内容に
5 応じて、入力された内容がユーザ基本情報記憶部U1、ユーザ嗜好情報
記憶部U2、ユーザ目標情報記憶部U3に分類されて記憶される。(
」【0
036】)との記載及び図4によれば、乙8記載の学習・生活支援サーバ
2は、構成a(ユーザに対してユーザ情報の入力を求めるとともに、入
力されたユーザ情報を分類して、記憶する処理を実施する制御部(ユー
10 ザ情報管理部22))を有することが認められる。
(イ) 構成1fについて
乙8には、学習・生活支援サーバ2に関し、「図3に示されるように、
学習・生活支援サーバ2は、アバター4を管理し、ユーザ端末3へアバ
ター4からのアバターコメントを出力するアバター管理部21と、ユー
15 ザ端末3から入力されたユーザ情報を管理するユーザ情報管理部22と、
入力されたユーザ情報を分析し、ユーザ情報に応じてキーワードを抽出
するテキスト分析部23とを備えている。図3に示す実施形態では、さ
らにネットワークNを介して情報を収集するための情報収集部24と、
学習・生活支援システム1の他の機能、たとえば、学習にあたって授業
20 等を配信する講師と受講生 生徒との間での双方向の教育システムなど、
・
学習に関するコンテンツを管理するコンテンツ管理部25とを備え、ア
バター管理部21、ユーザ情報管理部22、テキスト分析部23、情報
収集部24、コンテンツ管理部25とが制御部として構成されている。
制御部は、少なくとも1つのCPU等を備え、ROM等に予め記憶され
25 たプログラムを読み込んで実行することにより、アバター管理部21、
ユーザ情報管理部22、テキスト分析部23、情報収集部24、コンテ
ンツ管理部25等の機能を実行することが可能である。 (
」 【0021】 、
)
「テキスト分析部23は、ユーザ端末3から入力されたテキストまたは
音声を分析し、そのテキストまたは音声によるユーザコメントや、ユー
ザ端末3からの入力情報から、キーワードを抽出する。 (
」 【0026】 、
)
5 「情報収集部24は、ユーザへ様々な情報を提供するために、情報を収
集し、収集情報記憶部27dに記憶される。収集される情報としては、
ユーザ端末3からの入力情報に基づいて、たとえば抽出されたキーワー
ドに基づいて、ウェブ上からキーワードに関連するウェブページを収集
し、ウェブページのリンク情報を収集情報記憶部27dに記憶する。な
10 お、情報収集部24により収集情報記憶部27dに記憶される情報は、
通信制御部26、ネットワークNを介してインターネット上のウェブペ
ージから収集してもよい」 【0027】 、
( ) 「アバター管理部21により、
ユーザ端末3に、キーワードに関連するウェブサイトのリンクを出力す
ることもできる(S107)。そして、リンク先のウェブサイトが閲覧さ
15 れたかを判断し(S108) リンク先のウェブサイトがユーザ端末3に
、
おいて閲覧された場合には、ウェブサイト上のテキストをテキスト分析
部23が分析し、新たなキーワードを抽出し、抽出された新たなキーワ
ードが、ユーザ情報記憶部27a(ユーザコメント記憶部U4またはユ
ーザ嗜好情報記憶部U2など)に記憶されるようにしてもよい(S10
20 9) 」 【0049】
。( )との記載がある。
上記記載と図3及び5によれば、乙8記載の学習・生活支援サーバ2
は、構成1f(ユーザによる入力情報から抽出されたキーワードに基づ
いて、ウェブ上からキーワードに関連するウェブページ及びウェブサイ
トのリンク情報を収集する制御部(情報収集部24))を有することが
25 認められる。
(ウ) 構成1hについて
以上によれば、乙8記載の学習・生活支援サーバ2は、構成1aない
し1gを有するから、構成1hを有することが認められる。
したがって、乙8には、乙8発明1が記載されていることが認められ
る。
5 イ 本件発明1と乙8発明1の対比
乙8発明1の構成1bないし1e、1gが、本件発明1の構成要件1B
ないし1E、1Gの構成にそれぞれ相当することは、当事者間に争いがな
い。
そこで、乙8発明1の構成1a、1f、1hが本件発明1の構成要件1
10 A、1F、1Hの構成にそれぞれ相当するかについて、以下、検討する。
(ア) 構成要件1Aについて
a 乙8発明1の構成1aの「ユーザ情報」は、ユーザの属性や生活情
報などに関する情報であるから、本件発明1の構成要件1Aの「個人
情報」であり、構成1aの「入力されたユーザ情報を分類して、記憶
15 する処理を実施する」との構成は、構成要件1Aの「ユーザから取得
したい個人情報のうち幾つかを予め受け付ける」ことであるといえる。
そうすると、乙8発明1の構成1aは、本件発明1の構成要件1
A(「ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受け付ける
第1受付手段」)の構成に相当することが認められる。
20 b これに対し、控訴人らは、①本件明細書の【0029】の記載か
ら、本件発明1の構成要件1Aの「ユーザから取得したい個人情報の
うち幾つかを予め受け付ける第1受付手段」にいう「第1受付手段」
は、「タッチパネル114」と「制御部101」と「記憶部102」
とによって実現できるものであると解釈できる、②乙8記載の「学
25 習・生活支援サーバ2」は、「タッチパネル114」のようなユーザ
インタフェースを有しておらず、この点において、「第1受付手段」
に相当する構成を備えていない、したがって、乙8発明1の構成1a
は、構成要件1Aの「第1受付手段」に相当するものでない旨主張す
る。
しかしながら、本件特許の特許請求の範囲(請求項1)には、本件
5 発明1の「ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受け付
ける第1受付手段」を「タッチパネル」のようなユーザインタフェー
スを有するものに限定する記載はないから、控訴人らの上記主張は、
その前提において採用することができない。
(イ) 構成要件1Fについて
10 a 乙8発明1において、ウェブサイトのリンク情報は、ユーザ端末に
出力されるもの(構成1e)であり、構成要件1Fの「ユーザに対し
て提案すべき情報」に該当する。そして、当該リンク情報は、
「個人情
報」であるユーザによる入力情報から抽出されたキーワードに基づい
て、ウェブ上からキーワードに関連するリンク情報として収集される
15 ものであるから、構成要件1Fの「前記個人情報に基づいてウェブサ
イトから前記ユーザに対して提案すべき情報」に該当する。また、乙
8発明1の制御部は、当該リンク情報を収集するものであるから、構
成要件1Fの「提案すべき情報を取得する手段」に該当する。
したがって、乙8発明1の構成1fは、構成要件1Fの構成に相当
20 する。
b これに対し、控訴人らは、①「提案」の用語の意義等(甲10、1
7、18)、本件明細書の【0115】【0017】の記載及び技術常
、
識を踏まえれば、本件発明1の構成要件1Fの「提案すべき情報」と
は、㋐ウェブサーバに蓄積されているウェブサイトを構成するウェブ
「
25 ページに記載されており、㋑情報提供装置のブラウザの機能によって
当該ウェブページに割り当てられているURLを用いて当該ウェブサ
ーバにアクセスすることによって取得される、㋒ユーザに対して意見
を提出する上で妥当な情報」と解釈できるところ、構成1fの「ウェ
ブページ」やその「リンク(URL)」は、上記㋐ないし㋒のいずれも
満たしていないから、構成要件1Fの「提案すべき情報」に該当しな
5 い、②本件明細書の【0115】 【0017】の記載及び技術常識を
、
踏まえれば、本件発明1の構成要件1Fの「提案すべき情報を取得す
る手段」とは、「食事と健康とに関する情報(提案すべき情報)」が記
載されているウェブページに割り当てられているURLを用いてウェ
ブサーバにアクセスし、それに応じて当該ウェブサーバがウェブサイ
10 トから発信する「提案すべき情報」を取得する手段を意味するもので
あり、ウェブに「「URL」を送信」して、それに対応するウェブペー
ジにある「提案すべき情報」を受信するものであると理解できるとこ
ろ、乙8発明1の学習・生活支援サーバが行う、キーワードに基づき
URL(リンク)を収集して「出力」するという機能と、構成要件1
15 Fの「提案すべき情報を取得する手段」が行う、URL(リンク)に
基づきウェブページにある情報等を受信し、これをユーザに対して「提
供」するという機能は、全く異なるから、乙8発明1の構成1fは、
構成要件1Fの「提案すべき情報を取得する手段」に相当するものと
はいえない旨主張する。
20 しかしながら、①については、本件特許の特許請求の範囲の請求項
1の記載によれば、本件発明1の構成要件1Fの「前記ユーザに対し
て提案すべき情報」は、構成要件1Eの「受け付けられた個人情報に
基づいて前記ユーザに対して提案を行う提案手段」を受けて規定され
ているものであり、ユーザに対して提案される何らかの情報を指すも
25 のと理解されるが、請求項1には、その情報の種類や内容を限定する
記載はない。
次に、本件明細書には、上記「提案すべき情報」について定義する
記載や、これを限定して解釈する根拠となる記載は見当たらない。な
お、控訴人らが指摘する【0017】 【0115】の記載は、ウェブ
、
サーバから情報を取得する一実施例を説明したものにすぎず、 「提
上記
5 案すべき情報」を限定して解釈する根拠となるものではない。
そして、乙8発明1のウェブサイトのリンク情報は、ユーザ端末に
出力されることによって提案される(構成1e)情報であるから、上
記「提案すべき情報」に該当するものといえる。
次に、②については、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載
10 によれば、本件発明1の構成要件1Fの「提案すべき情報を取得する
手段」については、上記「提案すべき情報」を取得する手段であるこ
と以上の限定はなく、本件明細書の記載を見ても、これを限定して解
釈する根拠となる記載は見当たらない。また、控訴人らが指摘する【0
017】 【0115】の記載は、上記のとおり、ウェブサーバから情
、
15 報を取得する一実施例を説明したものにすぎず、上記「手段」を限定
して解釈する根拠となるものではない。
そして、乙8発明1の構成1fの制御部は、上記のとおり「提案す
べき情報」に該当するウェブサイトのリンク情報を収集するものであ
るから、「提案すべき情報」を取得する手段であるといえる。
20 以上によれば 控訴人らの上記主張は、理由がない。
(ウ) 構成要件1Hについて
a 乙8発明1の学習・生活支援サーバ2は、本件発明1の構成要件1
Hの「情報提供装置」に相当するものである。
b これに対し、控訴人らは、本件発明1の構成要件1Hの「情報提供
25 装置」 「ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受け付
は、
ける第1受付手段と、 という構成要件1Aを含む各手段等を備えるも
」
のであり、本件明細書の【0029】の記載から、構成要件1Aの「第
1受付手段」は、
「タッチパネル114」と「制御部101」と「記憶
部102」とが協働して実現することができるものと解釈すべきであ
るところ、乙8発明1の構成1hの「学習・生活支援サーバ」は、
「タ
5 ッチパネル114」のようなユーザインタフェースを有していないか
ら、本件発明1の構成要件1Hの「情報提供装置」と、乙8発明1の
構成1hの「学習・生活支援サーバ」は、ユーザインタフェースの有
無という点で相違すると主張する。
しかるところ、本件発明1の構成要件Hの「情報提供装置」は、構
10 成要件1Aの「第1受付手段」を備えるものであるが、前記(ア)bの
とおり、本件特許の特許請求の範囲(請求項1)には、本件発明1の
「ユーザから取得したい個人情報のうち幾つかを予め受け付ける第1
受付手段」を「タッチパネル」のようなユーザインタフェースを有す
るものに限定する記載はないから、控訴人らの上記主張は、その前提
15 において採用することができない。
したがって、控訴人らの上記主張は、理由がない。
ウ まとめ
以上によれば、乙8発明1は、本件発明1の構成要件1Aないし1Hの
構成を全て有するから、本件発明1は、乙8発明1と同一の発明であるも
20 のと認められる。
したがって、本件発明1に係る本件特許には、新規性欠如の無効理由(特
許法29条1項3号、123条1項2号)がある。
(3) 乙8を主引用例とする本件発明5の新規性の欠如について
ア 乙8発明5について
25 被控訴人は、乙8には、構成5aないし5hを有する乙8発明5(プロ
グラムの発明)の記載がある旨主張する。
乙8記載のプログラムが構成5bないし5e、5gを有することは、当
事者間に争いがない。
そこで、乙8記載のプログラムが、構成5a、5f、5hを有するかに
ついて、以下、検討する。
5 (ア) 構成5a及び5fについて
乙8の学習・生活支援サーバ2が構成1a及び1fを有することは、
前記(2)ア(ア)及び(イ)のとおりである。
そして、乙8の【0021】の「制御部は、少なくとも1つのCPU
等を備え、ROM等に予め記憶されたプログラムを読み込んで実行する
10 ことにより、アバター管理部21、ユーザ情報管理部22、テキスト分
析部23、情報収集部24、コンテンツ管理部25等の機能を実行する
ことが可能である。」との記載によれば、乙8記載のプログラムは、構成
5a(ユーザ端末を介して入力されたユーザ情報を分類して、記憶する
処理を制御部(ユーザ情報管理部22)に実行させるステップ)及び構
15 成5f(ユーザによる入力情報から抽出されたキーワードに基づいて、
ウェブ上からキーワードに関連するウェブページ及びウェブサイトのリ
ンク情報を収集する処理を制御部(情報収集部24)に実行させるステ
ップ)を有することが認められる。
(イ) 構成5hについて
20 以上によれば、乙8記載のプログラムは、構成5aないし5gを有す
るから、構成5hを有することが認められる。
したがって、乙8には、乙8発明5が記載されていることが認められ
る。
イ 本件発明5と乙8発明5の対比
25 乙8発明5の構成5bないし5e、5gが、本件発明5の構成要件5B
ないし5E、5Gの構成にそれぞれ相当することは、当事者間に争いがな
い。
そこで、乙8発明5の構成5a、5f、5hが本件発明5の構成要件5
A、5F、5Hの構成にそれぞれ相当するかについて、以下、検討する。
(ア) 構成要件5Aについて
5 前記(2)イ(ア)と同様の理由により、乙8発明5の構成5aは、本件発
明5の構成要件5Aの構成に相当することが認められる。
これに反する控訴人らの主張は理由がない。
(イ) 構成要件5Fについて
乙8発明5において、ウェブサイトのリンク情報は、ユーザ端末に出
10 力されるもの(構成5e)であり、構成要件5Fの「ユーザに対して提
案すべき情報」に該当する。そして、当該リンク情報は、
「個人情報」で
あるユーザによる入力情報から抽出されたキーワードに基づいて、ウェ
ブ上からキーワードに関連するリンク情報として収集されるものである
から、構成要件5Fの「前記個人情報に基づいてウェブサイトから前記
15 ユーザに対して提案すべき情報」に該当する。また、乙8発明5の構成
5fのステップは、当該リンク情報を収集する制御部にその収集する処
理を実行させるステップであるから、構成要件5Fの「提案すべき情報
を取得するステップ」に該当する。
したがって、乙8発明5の構成5fは、本件発明5の構成要件5Fの
20 構成に相当することが認められる。
これに反する控訴人らの主張は理由がない。
(ウ) 構成要件5Hについて
乙8発明5の構成5hは、「上記5aないし5gに係るステップを学
習・生活支援サーバ2に実行させるプログラム」であるところ、
「学習・
25 生活支援サーバ2」は本件発明5の「情報提供装置」に相当するもので
あり、構成5hのプログラムは、これに実行させるプログラムであるか
ら、本件発明5の構成要件5Hの「情報提供装置に実行させる情報提供
プログラム」に相当することが認められる。
これに反する控訴人らの主張は理由がない。
ウ まとめ
5 以上によれば、乙8発明5は、本件発明5の構成要件5Aないし5Hの
構成を全て有するから、本件発明5は、乙8発明5と同一の発明であるも
のと認められる。
したがって、本件発明5に係る本件特許には、新規性欠如の無効理由(特
許法29条1項3号、123条1項2号)がある。
10 (4) 控訴人らによる訂正の再抗弁の主張について
当裁判所は、令和4年9月22日の当審第1回口頭弁論期日において、控
訴人らが同月5日付け控訴人ら第4準備書面に基づいて提出した訂正の再抗
弁の主張について、被控訴人の申立てにより、時機に後れた攻撃防御方法に
当たるものとして却下したが、その理由は、以下のとおりである。
15 ア 一件記録によれば、①被控訴人は、令和元年12月19日の原審第1回
弁論準備手続期日において、本件発明5に係る本件特許に乙8を主引用例
とする新規性欠如及び進歩性欠如の無効理由(本件の争点4-1及び4-
3)等が存在するとして無効の抗弁を主張し、令和3年7月20日の原審
第3回弁論準備手続期日において、本件発明1に係る本件特許に乙8を主
20 引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如の無効理由が存在するとして無
効の抗弁を追加して主張したこと、②その上で、控訴人らが、同年9月2
9日の原審第4回弁論準備手続期日において、他に主張、立証はない旨陳
述した後、同日、原審が、口頭弁論を終結し、同年12月9日、被控訴人
が主張する上記無効の抗弁を認めて控訴人らの請求を棄却する原判決を
25 言い渡したこと、③その後、控訴人らは、当審において、令和4年7月2
1日に書面による準備手続が終結するまで、訂正の再抗弁の主張をしなか
ったことが認められる。
イ 以上を前提に検討するに、本件特許権の侵害論に関する抗弁の主張は、
本来、原審において適時に行うべきものであるところ、控訴人らは、原審
において、令和3年9月29日の原審第4回弁論準備手続期日において、
5 他に主張、立証はない旨陳述するまでの間に、当審で主張する訂正の再抗
弁の主張をしなかったものである。加えて、控訴人らは、原審が原判決に
おいて被控訴人が主張する上記無効の抗弁を認めた判断をしたにもかか
わらず、当審における争点整理手続においても、書面による準備手続が終
結するまで、訂正の再抗弁の主張をしなかったものであることからすると、
10 当審における上記訂正の再抗弁の主張は、控訴人らの少なくとも重大な過
失により時機に後れて提出された攻撃防御方法であるというべきである。
そして、当審において、控訴人らに訂正の再抗弁の主張を許すことは、
被控訴人に対し、上記主張に対する更なる反論の機会を与える必要が生じ、
これに対する控訴人らの再反論等も想定し得ることから、これにより訴訟
15 の完結を遅延させることとなることは明らかである。
そこで、当審は、民事訴訟法297条において準用する同法157条1
項に基づき、控訴人らの訂正の再抗弁の主張を却下したものである。
(5) 小括
よって、被控訴人主張の無効理由1は理由があるから、特許法104条の
20 3第1項の規定により、控訴人らは、被控訴人に対し、本件発明1及び5に
係る本件特許権に基づいて、権利行使をすることができない。
第4 結論
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、控訴人らの請求は、
理由がない。
25 したがって、控訴人らの請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理
由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
5 裁判長裁判官 大 鷹 一 郎
裁判官 小 川 卓 逸
裁判官 遠 山 敦 士
(別紙1)
【図1】 【図2】
【図3】 【図4】
【図5】 【図12】
【図13】 【図14】
【図16】
(別紙2)
【図1】 【図2】
15 【図3】
【図4】 【図5】
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