令和3(行ケ)10139審決取消請求事件
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裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
令和4年12月19日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
原告シャープ株式会社 被告株式会社DAPリアライズ
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対象物 |
携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用したパーソナルコンピュータシステム |
法令 |
特許権
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キーワード |
審決55回 実施25回 進歩性11回 訂正審判10回 無効3回 分割3回 無効審判2回 特許権1回 優先権1回
|
主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。15 |
事件の概要 |
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)
⑴ 被告は、平成17年12月21日(優先日平成16年12月24日及び平
成17年7月28日、優先権主張国日本)を出願日とする特許出願(特願2
005-367373号)の一部を分割して出願した特許出願(特願200
6-277062号)の一部を更に分割して、平成20年6月23日、発明25
の名称を「携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用したパーソナルコ
ンピュータシステム」とする発明について新たに特許出願(特願2008- |
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判決文
令和4年12月19日判決言渡
令和3年(行ケ)第10139号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和4年10月31日
判 決
原 告 シ ャ ー プ 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 生 田 哲 郎
同 佐 野 辰 巳
被 告 株 式 会 社 D A P リ ア ラ イ ズ
主 文
1 原告の請求を棄却する。
15 2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2020-800032号事件について令和3年10月12
日にした審決を取り消す。
20 第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)
⑴ 被告は、平成17年12月21日(優先日平成16年12月24日及び平
成17年7月28日、優先権主張国日本)を出願日とする特許出願(特願2
005-367373号)の一部を分割して出願した特許出願(特願200
25 6-277062号)の一部を更に分割して、平成20年6月23日、発明
の名称を「携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用したパーソナルコ
ンピュータシステム」とする発明について新たに特許出願(特願2008-
162678号。以下「本件出願」という。)をし、平成22年7月30日、
特許権の設定登録(特許第4555901号。請求項の数4。)を受けた(以
下、この特許を「本件特許」という。)。
5 本件特許については平成30年4月9日付けで訂正審判請求(訂正201
8-390070号)がなされ、この審判(以下「別件訂正審判」という。)
において、同年7月25日付けで訂正を認める旨の審決がされて、同審決は、
同年8月2日に確定した。
⑵ 原告は、令和2年3月31日、特許庁に対し、本件特許の請求項1につい
10 て特許無効審判(無効2020-800032号)を請求した。
被告は、令和3年3月22日、請求項1について訂正する旨の訂正請求(以
下「本件訂正請求」という。)をした。
特許庁は、令和3年10月12日、本件訂正請求を認めた上で、「本件審
判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、
15 その謄本は同月22日、原告に送達された。
⑶ 原告は、令和3年11月29日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提
起した。
2 特許請求の範囲の記載
本件訂正前の本件特許の請求項1の発明(以下「本件発明」という。)及び
20 本件訂正後の本件特許の請求項1の発明(以下「本件訂正発明」という。)に
係る特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
⑴ 本件発明
【請求項1】
ユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し、該入力データを後記中
25 央演算回路へ送信する入力手段と;
無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記中央演算回路に送信する
とともに、後記中央演算回路から受信したデジタル信号を無線信号に変換し
て送信する無線通信手段と;
後記中央演算回路を動作させるプログラムと後記中央演算回路で処理可能な
データファイルとを格納する記憶手段と;
5 前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムと
に基づき、前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、
リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデ
ータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出した上で処理
する中央演算回路と、該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAM
10 に対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出した
ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表
示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信す
るグラフィックコントローラと、から構成されるデータ処理手段と;
画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプ
15 レイパネルと、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信
号に基づき前記ディスプレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレイ制
御手段とから構成されるディスプレイ手段と;
外部ディスプレイ手段を備えるか、又は、外部ディスプレイ手段を接続する
かする周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記グラフィックコントロ
20 ーラから受信したデジタル表示信号に基づき、外部表示信号を送信するイン
ターフェース手段と;
を備える携帯情報通信装置において、
前記グラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が「本来解像度が
ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して画像を
25 表示する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面
解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該
読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該
デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一
のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を
有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマッ
5 プデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前
記インターフェース手段に送信する機能と、を実現し、
前記インターフェース手段は、前記グラフィックコントローラから受信した
「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を、デジタルRGB、
TMDS、LVDS(又はLDI)及びGVIFのうちのいずれかの伝送方
10 式で伝送されるデジタル外部表示信号に変換して、該デジタル外部表示信号
を前記周辺装置に送信する機能を有する、
ことにより、
前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より
大きい解像度を有する画像」を表示できるようにした、
15 ことを特徴とする携帯情報通信装置。
⑵ 本件訂正発明(下線部が本件訂正により変更された部分。なお、分説は、
本件無効審判に基づくものである。構成G’に係る訂正を「訂正事項1」、
構成H’に係る訂正を「訂正事項2」という。)
【請求項1】
20 A ユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し、該入力データを後
記中央演算回路へ送信する入力手段と;
B 無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記中央演算回路に送信
するとともに、後記中央演算回路から受信したデジタル信号を無線信号に変
換して送信する無線通信手段と;
25 C 後記中央演算回路を動作させるプログラムと後記中央演算回路で処理可
能なデータファイルとを格納する記憶手段と;
D 前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラ
ムとに基づき、前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を
行い、リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可
能なデータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出した上
5 で処理する中央演算回路と、該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のV
RAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み
出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジ
タル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に
送信するグラフィックコントローラと、から構成されるデータ処理手段と;
10 E 画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディ
スプレイパネルと、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表
示信号に基づき前記ディスプレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレ
イ制御手段とから構成されるディスプレイ手段と;
F 外部ディスプレイ手段を備えるか、又は、外部ディスプレイ手段を接続
15 するかする周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記グラフィックコン
トローラから受信したデジタル表示信号に基づき、外部表示信号を送信する
インターフェース手段と;
を備え、
G’ 前記無線通信手段が「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解
20 像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号を受信してデジタル信号に
変換の上、前記中央演算回路に送信し、前記中央演算回路が該デジタル信号
を受信して、該デジタル信号が伝達する画像データを処理し、前記グラフィ
ックコントローラが、該中央演算回路の処理結果に基づき、前記単一のVR
AMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出
25 したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタ
ル表示信号を前記ディスプレイ制御手段又は前記インターフェース手段に送
信して、前記ディスプレイ手段又は前記外部ディスプレイ手段に画像を表示
する機能(以下、「高解像度画像受信・処理・表示機能」と略記する)を有
する、
携帯情報通信装置において、
5 H’ 前記グラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が前記高解
像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に、前記単一のVRAMから
「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビット
マップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達する
デジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御
10 手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネル
の画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み
出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を
生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と、
を実現し、
15 I 前記インターフェース手段は、前記グラフィックコントローラから受信
した「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を、デジタルRG
B、TMDS、LVDS(又はLDI)及びGVIFのうちのいずれかの伝
送方式で伝送されるデジタル外部表示信号に変換して、該デジタル外部表示
信号を前記周辺装置に送信する機能を有する、
20 J ことにより、
前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度よ
り大きい解像度を有する画像」を表示できるようにした、
K ことを特徴とする携帯情報通信装置。
3 本件審決の理由の要旨
25 ⑴ 本件審決の理由の要旨は、①訂正事項1及び2に係る訂正は、特許請求の
範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許の願書に添付した明細書及び
特許請求の範囲又は図面(以下これらを併せて「本件明細書等」という。)
に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の
範囲を拡張し又は変更するものでもないから、訂正要件違反はない、②本件
訂正発明は、特開2000-66649号公報(甲1。以下「甲1文献」と
5 いう。)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)に周知技術を適用
することにより、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない、③
本件訂正発明は、特開2004-214766号公報(甲6。以下「甲6文
献」という。)に記載された発明(以下「甲6発明」という。)、甲1発明、
特開平9-090919号公報(甲7。以下「甲7文献」という。)に記載
10 された発明(以下「甲7発明」という。)及び周知技術に基づいて、当業者
が容易に発明をすることができたとはいえない、④別件訂正審判における特
許請求の範囲に「単一のVRAM」との語句を追加する訂正は、本件明細書
等に記載した事項の範囲内においてしたものである、⑤本件訂正発明の請求
項1の「単一のVRAM」は、ディスプレイに表示する画像データを記憶す
15 るために使われる半導体RAMが、1つ存在することを意味するものと理解
できるから、「単一のVRAM」という語句の意義は明確であり、本件訂正
発明は明確である、⑥本件訂正発明は、本件明細書等の発明の詳細な説明の
記載により当業者が本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のも
のであるといえるから、本件明細書等の発明の詳細な説明に記載したもので
20 あると認められる、というものである。
⑵ 本件審決が認定した甲1発明、本件訂正発明と甲1発明の一致点及び相違
点、相違点についての容易想到性の判断の要旨は、次のとおりである。
ア 甲1発明
携帯機器2は、CPU10、システムメモリ(DRAM)12、ROM
25 14、入力装置16、表示メモリ18、表示コントローラ20、及び内部
表示装置22を有して構成されており、
携帯機器2は、表示コントローラ20を介して、外部表示装置24を接
続して表示させることができ、
CPU10は、システムメモリ12やROM14に格納されたプログラ
ム、例えば表示制御に関係するOS、表示描画プログラム、デバイスドラ
5 イバ等に従って各種の制御を実行し、
システムメモリ12は、プログラムやデータ等の一時使用の記憶領域と
して使用され、
ROM14は、プログラム等の本体の記憶領域として使用され、
入力装置16は、画面の座標位置等入力するペン(タブレット)やマウ
10 ス等のポインティングデバイス、文字等を入力するキーボードなどにより
構成され、
表示メモリ18は、内部表示装置22及び外部表示装置24において表
示させる表示データの記憶領域として使用され、
表示コントローラ20は、内部表示装置22及び外部表示装置24にお
15 ける表示を制御するものであり、
内部表示装置22は、携帯機器2に予め内蔵されたLCD等によって構
成される表示デバイスであり、
外部表示装置24は、携帯機器2にケーブル等を介して任意に接続され
るCRT等によって構成される表示デバイスであり、
20 表示コントローラ20には、メモリコントローラ20a、レジスタ20
b、内部表示用回路20c、外部表示用回路20dを含んで構成されてお
り、
メモリコントローラ20aは、CPU10からの指示に応じて表示制御
を行なうもので、表示データのリード/ライトが指示された場合には、こ
25 の指示に応じて表示メモリ18に対して表示データをリード/ライトし、
またレジスタ20bに設定されたアドレスをもとに表示メモリ18から
表示データをリードし、内部表示用回路20cを介して内部表示装置22
へ、また外部表示用回路20dを介して外部表示装置24へ出力し、
キーボードやペン等の入力装置16からの入力待ちの状態であるシステ
ム定常状態となり、このシステムの定常状態において入力装置16から入
5 力があるとOS31により割り込み処理が実行され、
アプリケーションプログラム35の実行により提供される機能によって、
ユーザからの指示を入力装置16から指定させ、
アプリケーション35によって出力方法の指定が入力されると、OS3
8の制御のもとで、内部表示用と外部表示用のそれぞれの描画プログラム
10 に従って、表示コントローラ20に対してユーザからの指定の設定、すな
わち内部表示と外部表示に用いる表示データ(描画イメージ)を示すアド
レスを表示コントローラ20内のレジスタ20bに設定し、
一方、アプリケーションプログラム35は、内部表示装置22と外部表
示装置24において描画させるイメージ、すなわち内部表示イメージと外
15 部表示イメージの2種類を、それぞれの表示装置の解像度に合わせて、表
示メモリ18上にライトし、
表示コントローラ20は、アプリケーションプログラム35によってラ
イトされた内部表示イメージと外部表示イメージに応じて、内部表示装置
22と外部表示装置24に対して、それぞれに応じた描画イメージを表示
20 させ、
内部表示装置22が640×240の解像度、外部表示装置24が64
0×480の解像度を持ち、内部と外部でメモリの一部を共有するといっ
た環境の装置において、外部表示エリアに内部・外部共有表示エリアの表
示データをコピーすることによって、外部表示装置24において参照した
25 い画面を一時的に表示させ、
表示内容に関しては、内部表示及び外部表示の何れについても上位のア
プリケーションによって指定され、
通信媒体を介してプログラムを受信する、
携帯機器2。
イ 本件訂正発明と甲1発明の一致点及び相違点
5 一致点
ユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し、該入力データを
後記中央演算回路へ送信する入力手段と;後記中央演算回路を動作させ
るプログラムと後記中央演算回路で処理可能なデータファイルとを格納
する記憶手段と;前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格
10 納されたプログラムとに基づき、デジタル信号に必要な処理を行い、リ
アルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能な
データファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出した上
で処理する中央演算回路と、該中央演算回路の処理結果に基づき、単一
のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、
15 「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生
成し、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インタ
ーフェース手段に送信するグラフィックコントローラと、から構成され
るデータ処理手段と;画面を構成する各々の画素が駆動されることによ
り画像を表示するディスプレイパネルと、前記グラフィックコントロー
20 ラから受信したデジタル表示信号に基づき前記ディスプレイパネルの
各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段とから構成されるディスプ
レイ手段と;外部ディスプレイ手段を備えるか、又は、外部ディスプレ
イ手段を接続するかする周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記
グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき、外
25 部表示信号を送信するインターフェース手段と;を備え、前記中央演算
回路が画像データを処理し、前記グラフィックコントローラが、該中央
演算回路の処理結果に基づき、前記単一のVRAMに対してビットマッ
プデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデ
ータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前
記ディスプレイ制御手段又は前記インターフェース手段に送信して、前
5 記ディスプレイ手段又は前記外部ディスプレイ手段に画像を表示する機
能を有する、携帯装置において、前記グラフィックコントローラは、前
記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解
像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出した
ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタ
10 ル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一の
VRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度
を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビッ
トマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表
示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と、を実現する、こ
15 とにより、前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの
画面解像度より大きい解像度を有する画像」を表示できるようにした、
ことを特徴とする携帯装置。
相違点
a 相違点1
20 本件訂正発明は、「無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、
後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信し
たデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段」を備え
ているのに対し、甲1発明では、「無線通信手段」について特定され
ていない点。
25 b 相違点2
本件訂正発明の「中央演算回路」 「無線通信手段から受信した」
は、
デジタル信号を処理しているのに対し、甲1発明の「CPU10」は、
「表示データ」をどこから受信したかについて特定されていない点。
c 相違点3
本件訂正発明は「携帯情報通信装置」についての発明であるが、甲
5 1発明は「携帯機器」であって、「情報通信」を行う点について特定
されていない点。
d 相違点4
本件訂正発明は、「高解像度画像受信・処理・表示機能」と略記さ
れる機能を有し、グラフィックコントローラは、「携帯情報通信装置
10 が前記高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に」、ディ
スプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマッ
プデータから、所定のデジタル表示信号を生成し、これをディスプレ
イ制御手段に送信する機能と、ディスプレイパネルの画面解像度より
大きい解像度を有する画像のビットマップデータから、所定のデジタ
15 ル表示信号を生成し、これをインターフェース手段に送信する機能を
実現するのに対して、甲1発明は、無線通信手段を有さず、また、「本
来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像デー
タ」を伝達する無線信号を受信するものではないため、この「本来解
像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」
20 を基に、ディスプレイ制御手段やインターフェース手段に送信するデ
ジタル表示信号を生成する機能を有さないところ、「高解像度画像受
信・処理・表示機能」と略記される機能を有さず、グラフィックコン
トローラも、本件訂正発明の上記送信機能と同様の機能は実現可能で
あるものの、この送信機能で送信されるデジタル表示信号は、「高解
25 像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に」生成、送信される
ものではない点。
e 相違点5
本件訂正発明の「インターフェース手段」は、「前記グラフィック
コントローラから受信した「ビットマップデータを伝達するデジタル
表示信号」を、デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)
5 及びGVIFのうちのいずれかの伝送方式で伝送されるデジタル外部
表示信号に変換して、該デジタル外部表示信号を前記周辺装置に送信
する機能を有する」のに対し、甲1発明では、表示信号の「伝送方式」
について特定されていない点。
ウ 相違点の容易想到性についての判断理由の要旨
10 相違点4に関し、甲1発明において、「無線通信手段」を設け、「無
線通信手段」で受信した「画像データ」を処理して画像を表示するよう
に構成することは、当業者が容易に想到し得たことと認められたとして
も、甲1発明にそのような構成を採用した上で、さらに、無線通信手段
が「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像
15 データ」を伝達する無線信号を受信して、この「本来解像度が前記ディ
スプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を基に、ディスプ
レイ制御手段やインターフェース手段に送信するデジタル表示信号を生
成する構成までは、いずれの甲号証にも開示されておらず、本願の優先
日前において周知技術であるともいえない。また、この点を単なる設計
20 事項とする理由も見い出せない。
したがって、相違点4に係る本件訂正発明の構成は、当業者が容易に
想到し得たものとはいえず、その他の相違点について検討するまでもな
く、本件訂正発明は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易
に発明をすることができたものであるとはいえない。
25 ⑶ 本件審決が認定した甲6発明、本件訂正発明と甲6発明の一致点及び相違
点、相違点についての容易想到性の判断の要旨は、次のとおりである。
ア 甲6発明
携帯電話機1は、制御部10と、送受信部11と、表示部12と、操作
部14と、記憶部16と、画像出力部17と、を有して成り、
制御部10は、CPU[Central Processing Un
5 it]等から成り、装置全体の動作を制御し、
送受信部11は、送信回路と受信回路を有して成り、アンテナ11aを
介して電波を送受信することで、基地局との双方向通信を行い、
表示部12は、液晶ディスプレイ等から成る情報表示手段であり、
操作部14は、ダイヤルキーやブラウザ操作キー等を備えた入力デバイ
10 スであり、
記憶部16は、ROMやRAMから成る情報格納手段であり、
画像出力部17は、入力された情報(静止画や動画、文字など)を外部
表示装置2で読取可能な画像信号形式(例えば、ビデオ信号形式)に変換
して出力するインターフェイス部であり、
15 記憶部16の格納情報を外部表示装置2に出力する場合、制御部10は、
記憶部16から所望の情報を読み出して画像出力部17に送出し、該情報
を外部出力するように要求し、該要求を受けた画像出力部17は、制御部
10からの入力情報に所定の信号処理を施して外部表示装置2に出力し、
閲覧中のWebコンテンツ情報を外部表示装置2に出力する場合、制御
20 部10は、送受信部11を介して指定サーバから所望のWebコンテンツ
情報を取得して画像出力部17に送出し、該情報を外部出力するように要
求し、該要求を受けた画像出力部17は、制御部10からの入力情報に所
定の信号処理を施して外部表示装置2に出力し、
外部表示装置2には、閲覧中のWebコンテンツ情報が表示され、
25 外部表示装置2として表示部12より大型のモニタ装置を用い、
携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコンテンツについても、
表示部12のサイズや解像度に依存することなく正常に表示することが
可能となる、
携帯電話機1。
イ 本件訂正発明と甲6発明の一致点及び相違点
5 一致点
ユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し、該入力データを
後記中央演算回路へ送信する入力手段と;無線信号を受信してデジタル
信号に変換の上、後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算
回路から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信
10 手段と;後記中央演算回路を動作させるプログラムと後記中央演算回路
で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と;前記無線通信手
段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、処理する中央演算回
路と、から構成されるデータ処理手段と;画面を構成する各々の画素が
駆動されることにより画像を表示するディスプレイパネルと、デジタル
15 表示信号に基づき前記ディスプレイパネルの各々の画素を駆動するディ
スプレイ制御手段とから構成されるディスプレイ手段と;外部ディスプ
レイ手段を備えるか、又は、外部ディスプレイ手段を接続するかする周
辺装置を接続し、該周辺装置に対して、デジタル表示信号に基づき、外
部表示信号を送信するインターフェース手段と;を備え、前記無線通信
20 手段が無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、前記中央演算回路
に送信し、前記中央演算回路が該デジタル信号を受信して、該デジタル
信号が伝達する画像データを処理する機能を有する、携帯情報通信装置
において、前記インターフェース手段は、受信した「ビットマップデー
タを伝達するデジタル表示信号」を、伝送されるデジタル外部表示信号
25 に変換して、該デジタル外部表示信号を前記周辺装置に送信する機能を
有する、ことにより、前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレ
イパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像」を表示できるよ
うにした、ことを特徴とする携帯情報通信装置。
相違点
a 相違点6
5 本件訂正発明の「中央演算回路」は、「前記無線通信手段から受信
したデジタル信号」に対して、「前記入力手段から受信したデータと
前記記憶手段に格納されたプログラムとに基づき」、「リアルタイム
でデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータフ
ァイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出」すという手
10 順を踏んで処理するのに対し、甲6発明の「制御部10」は、受信し
た信号に対する具体的な処理手段について記載されていない点。
b 相違点7
本件訂正発明の「ディスプレイ手段」は、「グラフィックコントロ
ーラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作するのに対し、甲
15 6発明の「表示部12」は、「デジタル表示信号」が「グラフィック
コントローラから受信した」ものである点が特定されていない点。
c 相違点8
本件訂正発明の「インターフェース手段」は、「グラフィックコン
トローラから受信したデジタル表示信号に基づき」動作するのに対し、
20 甲6発明の「画像出力部17」は、「グラフィックコントローラから
受信したデジタル表示信号に基づき」動作することについて特定され
ていない点。
d 相違点9
本件訂正発明は、「高解像度画像受信・処理・表示機能」と略記さ
25 れる機能を有し、グラフィックコントローラは、「携帯情報通信装置
が前記高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に」、ディ
スプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマッ
プデータから、所定のデジタル表示信号を生成し、これをディスプレ
イ制御手段に送信する機能と、ディスプレイパネルの画面解像度より
大きい解像度を有する画像のビットマップデータから、所定のデジタ
5 ル表示信号を生成し、これをインターフェース手段に送信する機能を
実現するのに対して、甲6発明は、送受信部11が、「本来解像度が
ディスプレイパネル(表示部12)の画面解像度より大きい画像デー
タ」を伝達する無線信号を受信するものではないため、「本来解像度
がディスプレイパネル(表示部12)の画面解像度より大きい画像デ
10 ータ」を基に、表示部12で画像を表示するための信号と外部表示装
置2で画像を表示するための信号との両方を生成するものではなく、
また、グラフィックコントローラや単一のVRAMも備えないところ、
「高解像度画像受信・処理・表示機能」と略記される機能を有さず、
表示部12や外部表示装置2で画像を表示するための信号は、「高解
15 像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に」生成、送信される
ものではない点。
e 相違点10
本件訂正発明の「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」
は、「デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)及びGV
20 IFのうちのいずれかの伝送方式」で伝送されるのに対し、甲6発明
では、「伝送方式」について特定されていない点。
ウ 相違点の容易想到性についての判断理由の要旨
相違点9に関し、甲6発明において、甲1発明や甲7発明を適用して、
「グラフィックコントローラ」及び「単一のVRAM」を備えるように
25 構成し、これを本件訂正発明のグラフィックコントローラと同様に機能
させることは、当業者が容易に想到し得たことであるとしても、甲6発
明にそのような構成を採用した上で、さらに、送受信部11で「本来解
像度がディスプレイパネル(表示部12)の画面解像度より大きい画像
データ」を伝達する無線信号を受信して、この「本来解像度がディスプ
レイパネル(表示部12)の画面解像度より大きい画像データ」を基に、
5 表示部12及び外部表示装置2に画像を表示するための信号を生成する
構成までは、いずれの甲号証にも開示されておらず、本願の優先日前に
おいて周知技術であるともいえない。また、この点を単なる設計事項と
する理由も見い出せない。
したがって、相違点9に係る本件訂正発明の構成は、当業者が容易に
10 想到し得たものとはいえず、その他の相違点について検討するまでもな
く、本件訂正発明は、甲6発明、甲1発明、甲7発明及び周知技術に基
づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえな
い。
4 取消事由
15 本件訂正に関する訂正要件判断の誤り
甲 1 発明を主引用例とする進歩性判断の誤り
甲6発明を主引用例とする進歩性判断の誤り
別件訂正審判に係る訂正についての訂正要件判断の誤り
明確性要件判断の誤り
20 サポート要件判断の誤り
第3 当事者の主張
1 取消事由1(本件訂正に関する訂正要件判断の誤り)
⑴ 原告の主張
訂正事項1は、新規事項を追加するものであり、これを否定する本件審決
25 の判断は誤りである。
ア 無線通信手段について
本件訂正後の請求項1には「無線信号を受信してデジタル信号に変換の
上、後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信し
たデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段」(構成要件
B)及び「前記無線通信手段が「本来解像度が前記ディスプレイパネルの
5 画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号を受信し」(構成
要件G’)と記載されており、これらの記載における「無線通信手段」は
同一の手段であることが明らかなところ、本件明細書等に記載された「テ
レビ受信用アンテナ112A」は、【0117】に記載の「通信用アンテ
ナlllA」(図1によれば、「111B RF送受信部」と信号接続さ
10 れている。)とは異なり、無線信号を送信する機能を有さないから(図1
によれば、「112A テレビ受信用アンテナ」は、「112B テレビ
チューナ」と信号接続されており、無線信号であるテレビ電波信号を受信
する機能を備えているが、無線信号を送信する機能は備えていない。)、
本件明細書等には、無線受信機能と無線送信機能とを有する無線通信手段
15 を高解像度画像受信の手段とすることは記載されておらず、訂正事項1に
係る訂正は、訂正要件を満たさない。
この点、本件審決は、本件明細書等に記載された「通信用アンテナ11
1A」、「RF送受信部111B」、「ベースバンドプロセッサ11」、
「テレビ受信用アンテナ112A」、「テレビチューナ112B」、及び
20 「AD/DA変換部1_112C」は、いずれも無線通信を行うための機
能手段であり、「無線通信手段」を構成するものであるといえると判断す
る。
しかし、通信用アンテナ111Aによる無線信号の受信は、「公衆ネッ
トワークに送信された画像(動画)データは通信用アンテナ111Aで受
25 信され、RF送受信部111B及びベースバンドプロセッサ11を経由す
ることによりデジタル信号に変換された上で、中央演算回路1_10A1
に送信される。」(【0115】)というかたちで無線信号を受信して処
理されるのに対し、「テレビ受信用アンテナ112A」による無線信号の
受信は、「テレビ受信用アンテナ112Aで受信したテレビ放送信号は、
テレビチューナ112B及びAD/DA変換部1_112Cでデジタル
5 動画信号及びデジタル音声信号に変換され、バス19を経由して中央演算
回路1_10A1に送信される。」(【0118】)という流れで無線信
号を受信しており、使用する回路が明確に異なり、信号処理手順も全く異
なっており、これらを同一視することはできない。
イ 「本来解像度」の用語の意義について
10 本件明細書等の【0032】において、「「本来解像度」とは「本来
画像」の解像度を意味する。」と定義され、「本来画像」については「表
示信号等の「本来画像」とは、十分な大きさの画面解像度を有するディ
スプレイ手段、又は、データ処理手段と十分な大きさの画面解像度を有
するディスプレイ手段とが、該表示信号等を受信して適切に処理するこ
15 とにより表示される本来の画像を意味し」と定義されており、両者を総
合すると、「本来解像度」とは「十分な大きさの画面解像度を有するデ
ィスプレイ手段、又は、データ処理手段と十分な大きさの画面解像度を
有するディスプレイ手段とが、該表示信号等を受信して適切に処理する
ことにより表示される本来の画像の解像度」となるが、その意味すると
20 ころは不明瞭である。そして、本件明細書等の「本来画像」に関する他
の記載も、「携帯テレビ電話」か、「テレビ番組の画像」か、「携帯電
話の被写体の画像」に関するもので、構成要件G’とは無関係である。
そうすると、本件明細書等には、構成要件G’における「本来解像度」
の意義を理解するための記載が一切ないことになる。よって、訂正事項
25 1は訂正要件を満たしていない。
仮に、「本来の解像度」の意味が被告の主張するとおり「無線信号が
伝達する画像データ」が本来有している解像度であるとすると、「大画
面外部ディスプレイにおいては、その本来の解像度のままの全体画像と
して表示できるようになる」(本件明細書等の【0022】)ためには、
グラフィックコントローラが、単一のVRAMにビットマップデータを
5 書き込む際、「本来の解像度」の情報を保持したビットマップデータが
書き込まれる必要がある。そうでなければ、「単一のVRAM」からビ
ットマップデータを読み出してデジタル表示信号を生成したときに、そ
のデジタル表示信号は元の「本来の解像度」の情報を保持できないため
である。そのためには中央演算回路が「物理的な現実化にあたって画素
10 を間引いて表示画像の解像度を小さくしたり、画素を補間して表示画像
の解像度を大きくしたりしない」処理を行う必要がある。
他方で、本件審決が新規事項の追加がないとする根拠とした本件明細
書等の【0118】では、「この際、テレビ放送における本来画像の水
平・垂直画素数は、縦長画面、横長画面のいずれの場合でも、LCDパ
15 ネル15Aの水平・垂直画素数よりも大きいため、描画命令の生成にあ
たっては、AD/DA変換部1_112Cから送信されるデジタル動画
信号を一部間引くことによって、解像度の低い画像の全体画像の描画命
令を生成する。」とあるように、画素の間引きを行っていることから、
本来解像度の画像を外部ディスプレイ手段に表示することができず、0
【
20 022】に記載されている「大画面外部ディスプレイ手段に本来解像度
の画像を表示する」という作用効果を奏することができない。
そうすると、訂正事項1は、新規事項を追加するものである。
ウ 小括
以上のとおりであって、本件審決の訂正要件違反に関する判断には誤り
25 がある。
⑵ 被告の主張
ア 無線通信手段について
①通信用アンテナ111A、②RF送受信部111B、③ベースバンド
プロセッサ11、④テレビ受信用アンテナ112A、⑤テレビチューナ1
12B、⑥AD/DA変換部1_112Cを併せたものが「無線通信手段」
5 に該当する。インターネットプロトコルに準拠した電波信号に係る通信を
行う場合は、①ないし③が、無線信号の受信、デジタル信号への変換、変
換後のデジタル信号のデータ処理手段への送信、データ処理手段からのデ
ジタル信号の受信、受信したデジタル信号の無線信号への変換、変換後の
無線信号の送信の機能を行う。
10 イ 「本来解像度」について
本件訂正発明の構成要件G’の「前記無線通信手段が「本来解像度が
前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を伝達す
る無線信号」との記載からして、「本来解像度」は、「無線信号が伝達
する画像データ」が本来有している解像度である。本件訂正発明は、「携
15 帯電話機をはじめとする携帯情報通信装置」に係る発明であり、無線信
号が伝達する画像データが本来的に重要であることは明らかである。ま
た、一般に、「画像の解像度」とは、「画像の水平・垂直画素数」を意
味する(本件明細書等の【0118】、【0119】)。その他、本件
明細書等の【0032】の記載も参酌すれば、本件訂正発明の構成要件
20 G’にいう「本来解像度」は、「データ処理手段と十分な大きさの画面
解像度を有するディスプレイ手段とが、該画像データを、画素を間引い
て表示画像の解像度を小さくしたり、画素を補間して表示画像の解像度
を大きくしたりせずに、ディスプレイ手段の画面を構成する物理的な画
素の色表示として過不足なく現実化することによって表示される画像」
25 の水平・垂直画素数を意味するものというべきである。
構成要件G’では、「本来解像度」という用語は、「「本来解像度が
前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を伝達す
る無線信号」という文言の中で使用されており、無線信号が伝達する画
像データが有している属性であって、構成要件Bの無線通信手段が受信
する、しないにかかわらず、定まっている。
5 原告は、前記⑴イ のとおり、本件訂正発明が画素の間引きを行って
いる以上、本件明細書等の【0022】記載の作用効果を奏しないから、
本件訂正事項が新規事項を追加するものである旨主張する。
しかし、明細書の「発明の詳細な説明」には、多様な発明の実施形態
が記載されるものであり、作用効果についても、全ての実施形態で奏さ
10 れる作用効果から、特定の実施形態においてだけ奏される作用効果まで、
多様な内容が記載される。【0022】に記載される作用効果は、特定
の実施形態だけで奏される作用効果である。本件訂正発明の構成要件G’
では、「前記無線通信手段が「本来解像度が前記ディスプレイパネルの
画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号を受信して」と
15 特定されているが、「ディスプレイ手段における画像の表示」について
は、「前記ディスプレイ手段又は前記外部ディスプレイ手段に画像を表
示する」とだけ特定されており、「ディスプレイ手段に本来画像を表示
する」とは特定されていないから、本件明細書等に、ディスプレイ手段
に表示された画像が画素の補間や間引きを行った実施形態が開示され
20 たとしても、本件訂正発明の作用効果とは無関係である。
しかも、本件明細書等の【0129】には、本件訂正発明が原告の主
張する作用効果を奏することも示されている。
ウ 小括
以上のとおりであって、本件訂正に訂正要件違反はないとした本件審決
25 の判断に誤りはない。
2 取消事由2(甲1発明を主引用例とする進歩性判断の誤り)
⑴ 原告の主張
ア 相違点4の認定に誤りがあることについて
本件審決は、甲1発明が無線通信手段を有しないことを前提に、相違
点4を認定している。
5 甲1文献には無線通信手段が特定されていないが、それが無線通信手
段を有しないことを意味するわけではない。
甲1文献の【0103】には、「通信媒体を介してプログラムを受信
し」と記載されており、その具体的な記載は省略されているが、このよ
うに記載が省略又は簡略化された記載は「特定されていない」と認定さ
10 れるべきであり、「有さない」と認定されるべきではない。
イ 相違点4の容易想到性の判断に誤りがあることについて
本件審決は、甲1文献に無線通信手段の記載がないことを理由に、相
違点4の容易想到性を否定するが、本件訂正発明における「無線通信手
段」は本件訂正発明の効果と関係がない。
15 本件訂正発明では、「高解像度画像無線信号」で送信される「付属デ
ィスプレイの画面解像度より解像度が大きい画像」を、携帯情報通信装
置に「付属ディスプレイに画像を表示するためにもともと必要である表
示データ生成手段(付属表示データ生成手段)とは別個に大画面外部デ
ィスプレイ手段向けの表示データ生成手段を用いることなく(すなわち、
20 二重投資をしないで)、上記のような周辺装置との間のインターフェー
ス手段の追加と付属表示データ生成手段への若干の機能追加だけで実現
する」ことを発明の作用効果としており、無線通信手段がいかなる構成
を有しているか、ましてや、「無線信号が伝達する画像データが本来的
に重要である」などということはおよそ関係のないことである。
25 本件明細書等では、本来解像度の画像データをインプットする手段が
無線信号であるか、それ以外の手段であるかは重要視されておらず、解
像度の大きい画像データの入力手段として無線通信手段を用いてみるこ
とは、単なる設計事項にすぎない。
本件審決も認めるとおり、甲1文献の【0103】及び【0083】
の記載から、甲1発明において、「無線通信手段」を設け、「無線通信
5 手段」で受信した「画像データ」を処理して画像を表示するように構成
することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、甲1文献の【0005】ないし【0007】には、「内蔵し
た表示デバイスの解像度よりも高解像度の外部表示機器を利用すること
で生じる、より広い画面表示サイズを有効に利用することができなかっ
10 た」課題を解決して「外部表示機器における表示を有効に活用する」こ
とが解決課題である旨が記載されているところ、内蔵した表示デバイス
の解像度よりも高解像度の画像データを外部表示機器に表示させること
が、「より広い画面表示サイズを有効に利用する」ことの典型的な事例
であることは当業者が容易に想到できたことである。
15 また、内蔵した表示デバイスの解像度よりも高解像度の画像データ」
「
を外部表示装置に表示させるという課題及び解決手段は、以下のとおり
優先日当時の周知技術であったから、相違点4は上記周知技術に基づい
て当業者が容易に想到できたものである。
a 特開2001-197167号公報(甲21。以下「甲21文献」
20 という。)には、【0004】、【0005】、【0013】、【0
014】により、外部から取り込んだ画像情報等、表示すべきデータ
量が多く、簡易型液晶表示パネル(内蔵した表示デバイス)では明瞭
に表示できない表示データを外部接続されたCRT等の大型ディスプ
レイなどに表示させることが記載されている。
25 b 特開2003-108472号公報(甲22。以下「甲22文献」
という。)には、【0003】、【0047】、【0058】により、
携帯電話端末の小型画面(内蔵した表示デバイス)での表示が困難な
大きなサイズの画像データを携帯情報端末(外部表示機器)に表示さ
せることが記載されている。
c 特開2002-116843号公報(甲23。以下「甲23文献」
5 という。)には、【0004】、【0007】、【0008】により、
画像を見るのに十分な表示機能を備えていない携帯情報端末(携帯電
話機を含む)で受信した画像データを画像表示装置のディスプレイ上
に画像を表示することにより、高画質の画像を大画面で表示すること
が記載されている。
10 d 特開2001-352373号公報(甲24。以下「甲24文献」
という。)には、【0003】、【0004】、【0011】により、
携帯電話機の液晶画面が非常に小さく、画面が見にくいことから、携
帯電話機の液晶表示器に表示すべき画像をテレビなどの大画面に表示
することができ、見やすい画像を得ることが記載されている。なお、
15 甲24文献には、高解像度の画像とは明記されていないが、高解像度
の画像は、大画面に表示される見やすい画像の典型例である。
ウ 小括
以上によれば、甲1文献を主引用例とした場合に本件訂正発明の進歩性
を認めた本件審決の判断には誤りがある。
20 ⑵ 被告の主張
ア 相違点4の認定に誤りがあるとする点について
甲1文献には、「通信」に係る記載としては、【0103】における「通
信媒体を介してプログラムを受信し」との記載があるだけで、本件訂正発
明における「無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記中央演算
25 回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信したデジタル信号を
無線信号に変換して送信する」(構成要件B)と特定される機能を有する
無線通信手段は記載されていないから、本件審決の相違点4の認定に誤り
はない。
また、仮に、甲1発明では無線通信手段が特定されていないと認定され
るべきであるとしても、無線通信手段を設けるように構成することの容易
5 想到性を判断する必要があるが、本件審決はこれを容易想到であると仮定
した上で、相違点4中の他の相違部分について容易想到でないと判断して
いるのであるから、原告主張の相違点4の認定の誤りは、本件審決の結論
に影響を及ぼすものではない。
イ 相違点4の容易想到性の判断に誤りがあるとする点について
10 原告は、前記⑴イ のとおり、無線通信手段の構成は本件訂正発明の
作用効果とは関係がなく、解像度の大きい画像データの入力手段として
無線通信手段を用いることは、単なる設計事項にすぎない旨主張する。
しかし、本件訂正発明の技術的意義は、「携帯情報通信装置の無線通
信手段が「本来解像度が付属ディスプレイの画面解像度より大きい画像
15 データ」を伝達する無線信号」を受信し、データ処理手段が「無線信号
が伝達する「本来解像度が付属ディスプレイの画面解像度より大きい画
像データ」を処理する場合において、本件訂正発明の作用効果を奏しせ
しめる技術的な手段を提供することにあり、そのためには無線通信手段
の構成を具体的に考案する必要があるから、インプット手段である無線
20 通信手段が「単なる設計手段」にすぎないということはあり得ない。
仮に、相違点4のうち、解像度の大きい画像データの入力手段として
無線通信手段を用いてみることが設計事項にすぎないとしても、相違点
4のうちその他の部分が容易想到でなければ、本件訂正発明の進歩性は
否定されないところ、原告はこの点について主張立証しない。
25 ウ 小括
以上のとおりであって、甲1文献を主引用例とした場合に本件訂正発明
の進歩性を認めた本件審決の判断に誤りはない。
3 取消事由3(甲6発明を主引用例とする進歩性判断の誤り)
⑴ 原告の主張
ア 相違点9の認定に誤りがあることについて
5 本件審決は、相違点9の認定において、甲6発明は、「グラフィック
コントローラや単一のVRAMも備えない」としている。
しかし、「特定されていない」と「備えない」とは意味が大きく異な
ることは前記2⑴ア のとおりである。甲6文献では、「画像出力部1
7」、「記憶部16」のように各部位を機能で表現しているため、「グ
10 ラフィックコントローラ」や「単一のVRAM」とは特定されていない
が、それらを「備えない」と認定することはできない。
イ 相違点9の容易想到性の判断に誤りがあることについて
本件審決は、「送受信部11で「本来解像度がディスプレイパネル(表
示部12)の画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号を
15 受信して、この「本来解像度がディスプレイパネル(表示部12)の画
面解像度より大きい画像データ」を基に、表示部12及び外部表示装置
2に画像を表示するための信号を生成する構成」が甲6文献及び他の甲
号証に開示されていないとする。
しかし、本件明細書等には構成要件G’における「本来解像度」の意
20 義を理解するための記載がない。
仮に、当業者が技術常識に基づいて「本来解像度」の意義が理解できる
というのであれば、同じ技術常識に基づいて甲6発明に「グラフィック
コントローラ」及び「単一のVRAM」を備えた場合に「高解像度画像受
信・処理・表示機能」を機能させることを当業者が容易に想到できたはず
25 である。
甲6文献には「本体の携帯性を考慮して表示部の設置面積を大きくと
れないため、表示内容の視認性や臨場感が乏しい上、ユーザの視力低下
を招くおそれがあった。また、携帯電話機での閲覧が意図されていない
Webコンテンツについては、正常に表示することすらできなかった。」
(【0005】)という課題を解決するために、「入力された情報を外
5 部表示装置で読取可能な画像信号形式に変換して出力する画像出力部
を有して成り、前記外部表示装置への情報出力を行う構成としている」
(【0008】)という手段を採ることが記載されている。
携帯電話機の内蔵ディスプレイ装置の画面解像度より大きい画像デー
タを含むコンテンツが甲6文献の【0005】でいう「携帯電話機での
10 閲覧が意図されていないWebコンテンツ」の典型的な事例である。そ
のため、甲6発明を、「携帯電話機の内蔵ディスプレイ装置の画面解像
度より大きい画像データを含むコンテンツ」を外部表示装置に情報出力
する場合に適用することは当業者が容易に想到できたことである。
また、内蔵した表示デバイスの解像度よりも高解像度の画像データ」
「
15 を外部表示装置に表示させるという課題及び解決手段は本件優先日当時
の周知技術(甲21文献ないし甲24文献)であったから、相違点9は
本件優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたもので
ある。
ウ 小括
20 以上によれば、甲6文献を主引用例とした場合に本件訂正発明の進歩性
を認めた本件審決の判断には誤りがある。
⑵ 被告の主張
ア 相違点9の認定に誤りがあるとする点について
甲6文献には、データ処理に関する手段としてはグラフィックコント
25 ローラや単一のVRAMに相当する手段は一切記載されていないのであ
るから、甲6発明はグラフィックコントローラや単一のVRAMを備え
ておらず、したがって、本件審決における相違点9の認定に誤りはない。
たとえ甲6発明ではグラフィックコントローラや単一のVRAMが特
定されていないと認定されるべきであったとしても、本件審決は、甲6
発明にグラフィックコントローラや単一のVRAMを設けるように構成
5 することが容易であると仮定した上で、相違点9中の他の相違部分につ
いて容易想到でないと判断しているのであり、原告主張の相違点9の認
定の誤りは、本件審決の結論に影響を及ぼすものではない。
イ 相違点9の容易想到性の判断に誤りがあるとする点について
原告は、前記⑴イ のとおり、当業者が技術常識に基づいて「本来解
10 像度」の意義が理解できるというのであれば、同じ技術常識に基づいて
甲6発明に「グラフィックコントローラ」及び「単一のVRAM」を備
えた場合に「高解像度画像受信・処理・表示機能」を機能させることを
当業者が容易に想到できる旨主張する。
しかし、原告の主張は、「技術常識」を特定しておらず、失当である。
15 原告の前記⑴イ における主張は、甲6発明を、「携帯電話機の内部
ディスプレイ装置の画面解像度より大きい画像データを含むコンテンツ
を外部表示装置に情報出力する」場合に適用することが容易想到である
こと及び「内蔵した表示デバイスの解像度よりも高解像度の画像データ
を外部表示させる」という課題及び解決手段は周知技術であることを主
20 張するだけに留まっており、甲6発明において、「高解像度画像受信・
処理・表示機能 を実現する場合に、表示部12や外部表示装置2で画像
を表示するための信号を生成する構成」を採用し、同機能を有せしめる
ことの容易想到性については何ら主張・立証されていない。
ウ 小括
25 以上によれば、甲6文献を主引用例とした場合に本件訂正発明の進歩性
を認めた本件審決の判断に誤りはない。
4 取消事由4(別件訂正審判に係る訂正についての訂正要件判断の誤り)
⑴ 原告の主張
ア 本件明細書等には「単一のVRAM」なる技術的事項が記載されていな
いから、別件訂正審判による訂正は訂正要件を充たしておらず、また、本
5 件訂正後も同訂正要件違反は解消されていない。
イ 本件明細書等には、VRAMの個数については具体的に特定されていな
いのであるから、その個数を「単一」と具体的に特定することは、本件明
細書等に特定されていない技術的事項を新たに追加するものである。
⑵ 被告の主張
10 ア たとえ、本件明細書等にはVRAMの個数が1つであることを明記した
記載はないとしても、VRAMの個数が1つであるという技術的事項が、
本件明細書等の全ての記載を総合することによって導かれるのであるの
なら、「単一のVRAM」という語句を追加した訂正は、「願書に添付し
た明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」す
15 るものと解される。
イ 本件審決は本件明細書等の【0115】、【0117】、【0127】
や図1における「VRAM」に関する記載と、本件明細書等には「VRA
M」が物理的に複数存在する必要があることを示すような記載も見られな
いことを総合することにより、「「VRAM」の個数が1つである」とい
20 う技術的事項を導いており、その判断に誤りはない。
5 取消事由5(明確性要件判断の誤り)
⑴ 原告の主張
「単一のVRAM」について、本件明細書等に何の説明もないため、単一
の数え方が、RAMのメモリエリアの個数で数えるのか半導体基板の個数で
25 数えるのか不明である。
そうすると、本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は、明確性要件に反す
る。
⑵ 被告の主張
本件訂正発明の特許請求の範囲にいう「単一のVRAM」については、「ハ
ードウェアとしてのVRAM(ディスプレイに表示する画像データを一時的
5 に蓄積するメモリ)が1つであることを意味するものと認めるのが相当であ
り、明確性要件に反するところはない。
6 取消事由6(サポート要件判断の誤り)
⑴ 原告の主張
ア 「単一のVRAM」との記載について
10 「単一のVRAM」との記載について、本件明細書等には何の説明もな
いため、サポート要件に反する。
イ 「処理する」との記載について
本件訂正発明の構成要件Dには、「必要な処理を行い」との要件が含ま
れるが、本件明細書等には、【0032】に記載されている「適切に処理
15 する」以外の処理が記載されていないから、本件訂正発明はサポート要件
を満たさない。
なお、本件審決は、本件明細書等の【0118】を摘示して「適切に処
理する」以外の処理が記載されている旨を述べてサポート要件違反ではな
いと判断している。しかし、前記1⑴アのとおり、本件訂正発明では無線
20 通信手段が無線受送信手段に限定されていることから、無線受送信手段で
はない単なる無線受信手段に関する記載は、本件訂正発明の説明ではない
と解すべきであり、無線受信手段の説明である【0118】の記載をもっ
て本件訂正発明がサポートされているとする本件審決の判断は誤りであ
る。
25 ⑵ 被告の主張
ア 「単一のVRAM」との記載について
「単一のVRAM」について本件明細書等に記載があることは本件審
決が正当に判示するとおりである。
イ 「処理する」との記載について
原告が主張する、無線通信手段が無線受送信手段に限定されていると
5 の前提が誤りであることは、前記1⑵アのとおりである。
第4 当裁判所の判断
1 明細書の記載事項について
⑴ 本件明細書等には、別紙1の記載がある。
⑵ 前記⑴の記載事項によれば、本件明細書等には、本件訂正発明に関し、次
10 のような開示があることが認められる。
ア 本件訂正発明は、携帯電話機等の携帯情報通信装置、携帯情報通信装置
とともに用いる接続ユニット、及び携帯情報通信装置とともに用いる外部
入出力ユニットに関する(【0001】)。
イ 携帯電話機をはじめとする移動情報通信装置では、携帯性が重視される
15 ため、大画面のディスプレイを付属させることができない。そのため、メ
ールの読解やウェブページの閲覧に支障を来し、テレビ視聴の際も解像度
の低い画質の劣った画像しか表示できないという問題があった(【000
4】ないし【0008】)。
そのため、携帯電話に加えてパソコンを所有することも行われていたが、
20 パソコンは高価であり、上記の不便さを解消するためだけに別途パソコン
を所有することは、経済的に不合理である一方、携帯情報通信装置のデー
タ処理手段は、付属ディスプレイに画像を表示するための表示データ処理
機能については、表示画面が小さいということを除けば、パソコンにおけ
るCPU等のプロセッサの機能に匹敵するものであり、上記のようなパソ
25 コンと携帯情報通信装置との使い分けを行うとすれば、同種のものに二重
投資を行うことになり、一方の稼働率の低下を招くため資源の効率的な利
用の観点からも好ましくない(【0009】ないし【0013】)。
これを避けるため、携帯情報通信装置と大画面外部ディスプレイ装置を
何らかの接続ユニットを介して接続することや、携帯情報通信装置と、携
帯情報通信装置から受信した表示データに各種の処理を施す機能を有す
5 る大画面外部ディスプレイ装置を直接的に接続するという従来技術があ
ったが、これらにおいても、画像や文字を表示するための表示データ処理
機能については、携帯情報通信装置側と接続ユニット側で、表示する画面
のサイズが異なるということを除けばほぼ同等の機能を有する表示デー
タ処理手段を二重に保有することになる。携帯情報通信装置とテレビモニ
10 タ等の汎用ディスプレイを直接接続する従来技術もあったが、これは、不
合理な二重投資と非効率な資源利用の程度は低いものの、汎用ディスプレ
イに表示される画像の解像度は、付属ディスプレイの画面解像度と同じも
のにとどまるという問題があった(【0014】ないし【0021】)。
ウ 本件訂正発明は、前記のイの課題を解決するために、構成要件Aないし
15 Iの構成を採用し、携帯情報通信装置の付属ディスプレイに画像を表示さ
せるために必要な表示データ生成手段とは別個に、専用の表示データ生成
手段を二重に備えることなく、携帯電話等に接続される外部ディスプレイ
に対し、前記付属ディスプレイの画面解像度よりも大きい解像度を有する
画像データを表示させるためのデジタル信号を送信する機能を実現する
20 という作用効果を奏する(【0078】)。
2 取消事由1(本件訂正に関する訂正要件判断の誤り)について
⑴ 新規事項の追加の有無について
本件明細書等の【0118】には、以下の記載がある。
「また、携帯電話機1がテレビ番組の視聴用に使用される場合、テレビ受
25 信用アンテナ112Aで受信したテレビ放送信号は、テレビチューナ112
B及びAD/DA変換部1_112Cでデジタル動画信号及びデジタル音声
信号に変換され、バス19を経由して中央演算回路1_10A1に送信され
る。携帯電話機1においては、テレビ番組の画像を、LCDパネル15Aを
縦置きにして表示する(→縦長画面(水平画素数×垂直画素数=240×3
20画素))か、横置きにして表示する(→横長画面(水平画素数×垂直画
5 素数=320×240画素))かを、キー操作部16Aを操作することによ
って選択することができ、中央演算回路1_10A1は、この選択に対応し
た入力信号及び前記デジタル動画信号に基づき、LCDパネル15Aに表示
される画面イメージ(ただし、縦長画面の場合、上部及び/又は下部に非表
示領域が生じた画面イメージ)のビットマップデータを作成する描画命令を
10 生成し、該描画命令をグラフィックコントローラ1_10Bに送信する。こ
の際、テレビ放送における本来画像の水平・垂直画素数は、縦長画面、横長
画面のいずれの場合でも、LCDパネル15Aの水平・垂直画素数よりも大
きいため、描画命令の生成にあたっては、AD/DA変換部1_112Cか
ら送信されるデジタル動画信号を一部間引くことによって、解像度の低い画
15 像の全体画像の描画命令を生成する。」
そうすると、「無線通信手段」である「テレビ受信用アンテナ112A」
が「LCDパネル15Aの水平・垂直画素数より大きい」本来画像を伝達す
るテレビ放送用信号を受信し、同信号がテレビチューナ112B及びAD/
DA変換部1_112Cでデジタル動画信号及びデジタル音声信号に変換さ
20 れ、バス19を経由して中央演算回路1_10A1に送信され、同中央演算
回路ではLCDパネル15Aに表示される画面イメージのビットマップデー
タを作成する描画命令を生成することが開示されているから、訂正事項1に
係る「前記無線通信手段」が「「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画
面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号を受信してデジタル信
25 号に変換の上、前記中央演算回路に送信し」、「前記中央演算回路」が「該
デジタル信号を受信して、該デジタル信号が伝達する画像データを処理し」
とすることは、本件明細書等の記載の範囲内のものである。
⑵ 原告の主張について
ア 原告は、前記第3の1⑴アのとおり、本件明細書等に記載された「テレ
ビ受信用アンテナ112A」は、無線信号を送信する機能を有さないから、
5 本件明細書等には、無線受信機能と無線送信機能とを有する無線通信手段
を高解像度画像受信の手段とすることは記載されておらず、訂正事項1に
係る訂正は、訂正要件を満たさない旨主張する。
しかし、本件明細書等には、⑴に引用した【0118】の記載のほか、
【0116】に、「次に、携帯電話機1がデータ通信・処理用に使用され
10 る場合、・・・キー操作部16Aを操作することによって入力され、キー
入力コントローラ16Bでデジタル信号に変換されたデータ、及び/又は、
インターネットプロトコルに準拠した電波信号を公衆ネットワークから通
信用アンテナ111Aで受信し、RF送受信部111B及びベースバンド
プロセッサ11を経由することによりデジタル信号に変換されたデータが、
15 バス19を経由して中央演算回路1_10A1に転送される。中央演算回
路1_10A1では、フラッシュメモリ14Aに格納されたプログラムに
基づいて必要な処理を行い、処理されたデータは、バス19を経由して、
フラッシュメモリ14A及びRAM(Random Access Me
mory)14Bや、グラフィックコントローラ1_10Bや、ベースバ
20 ンドプロセッサ11に転送される。そして、最終的には、LCDパネル1
5Aに画像が表示されたり、スピーカ18Bから音声が出力されたり、通
信用アンテナ111Aから電波信号が送信されたり、フラッシュメモリ1
4Aにデータが保存されたりする。・・・」との記載がある。
そうすると、本件明細書等の【0116】からは「通信用アンテナ11
25 1A」が、無線信号の受信及び送信を行うものであること、【0118】
からは「テレビ受信用アンテナ112A」が、無線信号の受信を行うもの
であることが理解できるところ、本件訂正発明には、無線信号の種類を限
定する記載がないこと、図1には、「テレビ受信用アンテナ112A」、
「テレビチューナ112B」及び「AD/DA変換部1_112C」 「通
と
信用アンテナ111A」、「RF送受信部111B」及び「ベースバンド
5 プロセッサ11」とを備えた実施例の記載があることからすれば、「通信
用アンテナ111A」、「RF送受信部111B」、「ベースバンドプロ
セッサ11」、「テレビ受信用アンテナ112A」、「テレビチューナ1
12B」、及び「AD/DA変換部1_112C」は、いずれも無線通信
を行うための機能手段であり、合わせて構成要件Bにいう「無線通信手段」
10 を構成するものというべきである。
また、本件明細書等の【0056】には、「携帯情報通信装置に係る第
25の発明は、第1乃至第24のいずれか1つの発明の携帯情報通信装置
において、前記無線通信手段は、アナログテレビ放送信号、デジタルテレ
ビ放送信号、携帯テレビ電話信号、インターネットプロトコルに準拠した
15 無線ストリーミング信号のうちの少なくとも1つの無線信号(以下、無線
動画信号と略記する)を受信し、デジタル動画信号に変換の上、前記デー
タ処理手段に転送する機能を有し、」との記載があるから、「無線通信手
段」が、インターネットプロトコルに準拠した無線信号による無線通信と
テレビ放送信号による無線通信との両方を行うことも当然に想定されて
20 いるというべきである。
したがって、原告の上記主張は採用できない。
イ 原告は、前記第3の1⑴イ のとおり、本件明細書等には構成要件G’
における「本来解像度」の意義を理解するための記載がないから、訂正事
項1は訂正要件を満たしていない旨主張する。
25 しかし、本件訂正発明の構成要件G’の「前記無線通信手段が「本来解
像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を伝
達する無線信号を受信して」との記載からすると、「本来解像度」は、受
信の対象となる「無線信号が伝達する画像データ」が本来有している解像
度と理解することができる。
また、本件明細書等の【0129】の「ただし、外部ディスプレイ装置
5 5として、上記のようにフルハイビジョンテレビモニタのような高解像度
ディスプレイ装置を採用している場合には、外部ディスプレイ装置 5 に表
示される画像は、以下のように変わる。まず、ウェブページを閲覧してい
る場合には、上記の理由により、ほとんどのウェブページのページ画像は
その水平方向の全体が表示され、水平スクロールすることなく閲覧でき
10 る。」との記載によれば、閲覧しているウェブページに画像データが含ま
れていた場合、当該画像が本来解像度で表示されることは技術的に明らか
であり、本件明細書等には構成要件G’における「本来解像度」の意義を
理解するための記載はあるといえる。
ウ 原告は、前記第3の1⑴イ のとおり、「本来解像度」を前記イのとお
15 りに解するとしても、「大画面外部ディスプレイにおいては、その本来の
解像度のままの全体画像として表示できるようになる」(本件明細書等の
【0022】)ためには、グラフィックコントローラが、単一のVRAM
にビットマップデータを書き込む際、「本来の解像度」の情報を保持した
ビットマップデータが書き込まれる必要があるのに、本件明細書等の【0
20 118】では、画素の間引きを行っていることから、本来解像度の画像を
外部ディスプレイ手段に表示することができず、【0022】に記載され
ている作用効果を奏することができないから、訂正事項1は新規事項を追
加するものである旨主張する。
しかし、構成要件G’においては、表示される画像が「本来解像度」で
25 あることまでは特定されておらず、構成要件Jにおいても、「外部ディス
プレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度
を有する画像」を表示できるようにした」とされているのにとどまり、さ
らに、【発明が解決しようとする課題】【0031】においても、「外部
ディスプレイ手段において、付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度
が大きい画像を表示すること」等の記載がされており、本来の解像度がそ
5 のまま維持されることまで記載されているわけではない。原告が主張する
本件明細書等の【0118】は、テレビ放送に関する一例であって、この
ような場合には【0022】記載の効果が生じないとしても、そのことを
もって、本件明細書等に、構成要件G’における「本来解像度」の意義を
理解するための記載が一切ないといえないことは明らかであるから、この
10 点に関する原告の主張は採用できない。
⑶ 小括
以上のとおりであって、本件訂正が新規事項を追加するものでないとした
本件審決の判断に誤りはない。
したがって、原告主張の取消事由1は理由がない。
15 3 取消事由2(甲1発明を主引用例とする進歩性判断の誤り)について
⑴ 甲1文献について
ア 甲1文献には別紙2の記載がある。
イ 前記アの記載事項によれば、甲1文献には以下の開示があるものと認め
られる。
20 従来の携帯情報処理装置では、外部表示機器を接続した場合には、内
蔵した表示デバイスと同じ描画イメージを表示させており、内蔵した表
示デバイスの解像度よりも高解像度の外部表示機器を利用することで生
じる、より広い画面表示サイズを有効に利用することができなかった
(【0002】ないし【0006】)。
25 そこで、甲1発明は、外部表示機器における表示を有効に活用するこ
とが可能な携帯情報処理装置及び外部表示出力の制御方法を提供するこ
とを目的として、本件審決が前記第2の3⑵アに認定する構成を採用し
た(【請求項1】、【0007】、【0037】ないし【0039】)。
甲1発明は、内部表示装置における内部表示用の表示データを格納す
るための領域と、内部表示装置よりも高解像度の外部表示装置における
5 外部表示用の表示データを格納するための領域を表示メモリに確保し、
内部表示用の表示データを選択的に外部表示用の領域に格納することで、
解像度の違いによる外部表示装置における表示領域を有効に利用するこ
とが可能となるという効果を奏する(【0104】)。
⑵ 相違点4の認定に誤りがあるとする点について
10 ア 原告は、前記第3の2⑴ア のとおり、甲1文献には無線通信手段が特
定されていないが、それが無線通信手段を有しないことを意味するわけで
はないとして、相違点4の認定に誤りがある旨主張する。
イ しかし、甲1文献には、表示データを無線通信で取得することについて
の記載がそもそもないのであるから、本件審決の判断に誤りはない。
15 また、本件審決は、甲1文献に通信媒体を介して「プログラム」を「受
信」するための「通信手段(有線及び無線)」の存在は示唆されているこ
とを前提に判断しているのであるから、いずれにしても原告の主張する点
は、審決の結論に影響を及ぼすものではない。
ウ その他、本件審決が認定した相違点に誤りは見当たらない。
20 ⑶ 相違点4の容易想到性の判断に誤りがあるとする点について
ア 甲1文献には、「データ」や「プログラム」の受信に際して無線を利用
することについては、そもそも一切記載はない。もっとも、甲1文献の【0
103】の「本装置を実現するコンピュータは、記録媒体に記録されたプ
ログラムを読み込み、または通信媒体を介してプログラムを受信し、この
25 プログラムによって動作が制御されることにより、上述した処理を実行す
る。」との記載に照らせば、無線を含む通信媒体を「プログラム」を「受
信」するために利用することは示唆されているといえる。また、甲1文献
の【0083】では、表示内容を上位のアプリケーションが処理すること
も記載されているから、甲1発明において、「無線通信手段」を設け、「無
線通信手段」で受信した「画像データ」を処理して画像を表示するように
5 構成することまでは、当業者が容易に想到し得たことということも可能と
考えられる。
しかし、甲1文献には、表示装置の解像度に関する記載はあっても、プ
ログラムやデータに関する解像度の記載はなく、無線通信手段が「本来解
像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を伝
10 達する無線信号を受信して、この「本来解像度が前記ディスプレイパネル
の画面解像度より大きい画像データ」についてディスプレイ制御手段やイ
ンターフェース手段に送信するデジタル表示信号を生成する具体的な構
成については、何らの開示や示唆もない。そうすると、結局、当業者が相
違点4に係る構成を容易に想到することができたとはいえないというべ
15 きである。
イ 原告は、前記第3の2⑴イ のとおり、本件訂正発明の効果との関係で
は、無線通信手段がいかなる構成を有しているかは関係がない旨主張する。
しかし、本件訂正発明の効果を奏する前提として、データをどのように
受信し、処理するかの具体的な構成は意味があるというべきであるから、
20 原告の主張は採用できない。
ウ 原告は、前記第3の2⑴イ 及び のとおり、内蔵した表示デバイス
の解像度よりも高解像度の画像データを外部表示機器に表示させること
は、甲1発明の解決課題である「より広い画面表示サイズを有効に利用
する」ことの典型的な事例であることは当業者が容易に想到でき、また、
25 「内蔵した表示デバイスの解像度よりも高解像度の画像データ」を外部
表示装置に表示させるという課題及び解決手段は優先日当時の周知技術
(甲21文献ないし甲24文献)であったから、相違点4は上記周知技
術に基づいて当業者が容易に想到できた旨主張する。
そこで、以下、原告主張の周知技術について検討する。
まず、甲21文献の【0004】、【0005】、【0013】及び【0
5 014】によれば、甲21文献には、CPU11は、データを表示制御回
路21へ出力し、表示制御回路21はこれらのデータをいったん画像メ
モリ22に記憶させた後、表示すべき表示データのコンテンツが簡易型
液晶表示パネル23に対応する場合には簡易型液晶表示パネル23に表
示させ、外部から取り込んだ画像情報等の、表示すべき表示データのコン
10 テンツが簡易型液晶表示パネル23に対応しない場合には、画面表示領
域の大きいCRT表示器24に表示できるように、その表示データ(ドッ
トデータ)をモニタ端子25へ同期信号と共に送出する携帯電話機が開
示されているといえる。
また、甲22文献の【0003】、【0047】、【0050】、【0
15 058】及び【0101】によれば、甲22文献には、携帯電話端末20
0での処理に適さない(難しい)データの場合には、それを検出し、携帯
情報端末100に処理を委譲する携帯電話機が開示されているといえる。
次に、甲23文献の【0004】、【0007】、【0008】及び【0
020】によれば、甲23文献には、携帯電話機10で受信されて携帯電
20 話機10のデータフォーマットで外部端子26に出力された画像データ
が、画像表示装置30内に取り込まれて、フォーマット変換部37で画像
表示装置30のデータフォーマットに変換され、さらに、そのフォーマッ
ト変換された画像データにつき、高精細変換部38で補間処理や解像度
変換が行われて、高精細変換部38から高精細化された画像データが得
25 られ、その画像データが画像入力端子41を介して表示処理部42に供
給される画像表示装置が開示されているといえる。
さらに、甲24文献の【0003】、【0004】、【0008】及び
【0011】によれば、甲24文献には、液晶ディスプレイを備えた携帯
端末(携帯電話機) 携帯端末が着脱自在に装着される変換アダプタと、
と、
変換アダプタに接続されるテレビモニタとからなり、携帯端末は、液晶デ
5 ィスプレイに表示するための画像データを記憶する画像データ記憶手段
と、少なくとも画像データ記憶手段に記憶されている画像データを処理
して画像表示データを発生し、変換アダプタに供給する処理手段とを備
え、変換アダプタは、処理手段によって供給された画像表示データをビデ
オ信号に変換してテレビモニタに出力する信号変換手段を備える携帯端
10 末を用いた表示処理システムが開示されているといえる。
以上の各文献における開示事項によれば、携帯電話機において、携帯電
話機のディスプレイによりそのままでは表示できないデータを外部の表
示装置に表示する技術は、周知技術であるといえる。
しかし、前示のとおり、甲1文献には、「データ」や「プログラム」
15 の受信に際して無線を利用することについて一切記載はないものの、こ
の点については想到可能であるとしても、表示装置の解像度に関する記
載はあっても、プログラムやデータの解像度に関する記載は一切なく、
甲1発明の「画像データ」が「本来解像度が前記ディスプレイパネルの
画面解像度より大きい画像データ」であることについて、何らの開示や
20 示唆もない。
また、前記 認定の周知技術も、携帯電話機において、携帯電話機の
ディスプレイによりそのままでは表示できないデータを外部の表示装置
に表示する技術を開示するのにとどまり、「本来解像度が前記ディスプ
レイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号を
25 受信するとの点や、グラフィックコントローラは、携帯情報通信装置が
前記高解像度画像受信・処理・表示機能を実現する場合に、「前記ディ
スプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマ
ップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達す
るデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフ
ェース手段に送信する機能を実現するとの点まで具体的に示唆するもの
5 ではないから、前記 認定の周知技術を加味しても、当業者が相違点4
に係る構成を容易に想到できたとはいえないし、この点に係る構成が単
なる設計事項であるということもできない。
よって、この点に係る原告の上記主張は採用できない。
小括
10 以上のとおりであって、本件審決における本件訂正発明と甲1発明の相違
点4の認定及びその容易想到性の判断に誤りはないから、その他の点につい
て判断するまでもなく、本件訂正発明は、甲1発明を主引用例として、当業
者が容易に発明をすることができたものとはいえないとした本件審決の判断
に誤りはない。
15 したがって、原告主張の取消事由2は理由がない。
4 取消事由3(甲6発明を主引用例とする進歩性判断の誤り)について
⑴ 甲6発明について
ア 甲6文献には別紙3の記載がある。
イ アによれば、甲6文献には以下の開示があることが認められる。
20 従前の携帯電話機では、本体の携帯性を考慮して表示部の設置面積を
大きくとれないため、表示内容の視認性や臨場感が乏しい上、ユーザの
視力低下を招くおそれがあった。また、携帯電話機での閲覧が意図され
ていないWebコンテンツについては、正常に表示することができない
という問題があった(【0002】、【0005】)。
25 そこで、甲6発明は、本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視
認性や臨場感を向上させることが可能な携帯電話機を提供することを目
的として、本件審決が前記第2の3⑶アに認定する構成を採用した 【0
(
007】、【0008】、【0015】、【0016】、【0018】、
【0020】)。
このような構成とすることにより、甲6発明に係る携帯電話機は、本
5 体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性や臨場感を向上させる
ことが可能となるという作用効果を奏する(【0026】)。
⑵ 相違点9の認定に誤りがあるとの点について
原告は、前記第3の3⑴ア のとおり、本件審決が、相違点9に関し、甲
6発明は、「グラフィックコントローラや単一のVRAMも備えない」とし
10 た点を誤りである旨主張する。
しかし、甲6文献にグラフィックコントローラや単一のVRAMの記載が
ないことは本件審決が認定するとおりである。また、本件審決は、甲6発明
に甲1発明や甲7発明を適用して「グラフィックコントローラ」及び「単一
のVRAM」を備えるように構成し、これを本件訂正発明のグラフィックコ
15 ントローラと同様に機能させることは、当業者が容易に想到し得たことであ
るとしているのであるから、いずれにしても原告主張の点は審決の結論に影
響を及ぼすものではない。
⑶ 相違点9の容易想到性の判断に誤りがあるとする点について
ア 甲6文献には、送受信部11で「本来解像度がディスプレイパネル(表
20 示部12)の画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号を受
信して、この「本来解像度がディスプレイパネル(表示部12)の画面解
像度より大きい画像データ」を基に、表示部12及び外部表示装置2に画
像を表示することや、これを実現するための具体的な構成(信号の生成)
の記載も示唆もない。そして、このような構成が周知技術であるとは認め
25 られず、設計事項であるともいえないことは前記3⑶において判示したと
おりである。
そうすると、相違点9は、当業者が容易に想到し得たものではないとい
うべきである。
イ 原告は、前記第3の3⑴イ のとおり、仮に、当業者が技術常識に基づ
いて構成要件G’における「本来解像度」の意義が理解できるというので
5 あれば、同じ技術常識に基づいて甲6発明に「グラフィックコントローラ」
及び「単一のVRAM」を備えた場合に「高解像度画像受信・処理・表示
機能」を機能させることを容易に想到できた旨主張する。
しかし、「本来解像度」の意味が受信データの有する解像度であること
を理解したとしても、そのことと「高解像度画像受信・処理・表示機能」
10 を機能させることとは次元を異にする事柄であって、直ちに結びつくもの
ではないから、原告の主張は採用できない。
ウ 原告は、前記第3の3⑴イ のとおり、携帯電話機の内蔵ディスプレイ
装置の画面解像度より大きい画像データを含むコンテンツが甲6文献の
【0005】でいう「携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコン
15 テンツ」の典型的な事例であるから、甲6発明を、「携帯電話機の内蔵デ
ィスプレイ装置の画面解像度より大きい画像データを含むコンテンツ」を
外部表示装置に情報出力する場合に適用することは当業者が容易に想到
できたことである旨主張するが、甲6文献には「携帯電話機の内蔵ディス
プレイ装置の画面解像度より大きい画像データを含むコンテンツ」を受信
20 することや、これを基に、表示部12及び外部表示装置2に画像を表示す
るための信号を生成することについては何ら記載されていない。
また、原告は、前記第3の3⑴イ のとおり、「内蔵した表示デバイス
の解像度よりも高解像度の画像データ」を外部表示装置に表示させるとい
う課題及び解決手段は優先日当時の周知技術(甲21文献ないし甲24文
25 献)であったから、相違点9は当該周知技術に基づいて当業者が容易に想
到できたものである旨主張するが、この主張が採用できないことは、前記
3⑶ウ と同様である。
小括
以上のとおりであって、本件審決における本件訂正発明と甲6発明の相違
点9の認定及びその容易想到性の判断に誤りはないから、その他の点につい
5 て判断するまでもなく、本件訂正発明は、甲6発明を主引用例として、当業
者が容易に発明をすることができたものとはいえないとした本件審決の判断
に誤りはない。
したがって、原告主張の取消事由3は理由がない。
5 取消事由4(別件訂正審判に係る訂正についての訂正要件判断の誤り)につ
10 いて
⑴ 原告は、前記第3の4⑴のとおり、本件明細書等には、「単一のVRAM」
なる技術的事項が記載されていないから、別件訂正審判における特許請求の
範囲に「単一のVRAM」との語句を追加する訂正は、訂正要件を満たして
おらず、本件訂正後もこの訂正要件違反は解消されていない旨主張する。
15 しかし、本件発明の請求項1には、「前記グラフィックコントローラは、
前記携帯情報通信装置が「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度よ
り大きい画像データ」を処理して画像を表示する場合に、前記単一のVRA
Mから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像の
ビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝
20 達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレ
イ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイ
パネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」
を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信
号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する
25 機能と、を実現し、」との記載があり、「該デジタル表示信号を前記ディス
プレイ制御手段に送信する機能」及び「デジタル表示信号を前記インターフ
ェース手段に送信する機能」を実現する際の、信号の生成において、両機能
ともに「前記単一のVRAM」からビットマップデータを読み出すものと認
められる。
そうすると、本件発明における「単一のVRAM」とは、携帯情報通信装
5 置において、上記両機能それぞれに専用のVRAMがあるのではなく、1つ
のVRAMが存在することと、これにより両機能において共に前記1つのV
RAMからのビットマップデータの読出しを行うことを意味すると解釈でき
る。
そして、本件明細書等においては、第1の実施形態を示す図1、第2の実
10 施形態を示す図6、第3の実施形態を示す図8には、それぞれVRAMとし
てVRAM1(10C)のみが記載され、第1の実施形態に関する【011
7】には「LCDパネル15Aの画面解像度と同じ解像度を有する画像を記
述するビットマップデータをVRAM1_10Cから切り出してLCDドラ
イバ15Bに送信する」ことが、【0123】には「中央演算回路1_10
15 A1は、上記の描画命令とともに、VRAM1_10Cから切り出したビッ
トマップデータを、LCDドライバ15Bに送信する替わりに、TMDSト
ランスミッタ13Aに送信するように命令する送信命令を生成し、該送信命
令をグラフィックコントローラ1_10Bに送信する。」ことが、第3の実
施形態に関する【0153】には、「グラフィックコントローラ1_10B
20 は、中央演算回路1_10A1から受信した描画命令に基づき、仮想画面に
おけるビットマップデータを生成しVRAM1_10Cに書き込むとともに、
LCDパネル15Aの画面解像度又は外部入出力ユニット4における外部L
CDタッチパネル456の画面解像度に対応する部分をVRAM1_10C
から切り出し、それぞれLCDドライバ15B又はTMDSトランスミッタ
25 13Aに送信する。」ことが記載され、上記「単一のVRAM」に関する事
項が記載されている。
以上によれば、別件訂正審判による訂正は、本件特許の願書に添付した明
細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内での訂正であるとい
うべきであるから、原告の上記主張は採用できない。
⑵ 小括
5 以上のとおりであって、別件訂正審判に係る訂正が新規事項を追加するも
のでないとした本件審決の判断に誤りはない。
したがって、原告主張の取消事由4は理由がない。
6 取消事由5(明確性要件判断の誤り)について
⑴ 原告は、前記第3の5⑴のとおり、「単一のVRAM」について、本件明
10 細書等に何の説明もないため、単一の数え方が、RAMのメモリエリアの個
数で数えるのか半導体基板の個数で数えるのか不明である旨主張する。
しかし、「単一のVRAM」が、本件明細書等も参酌すれば、「該デジタ
ル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能」及び「デジタル表
示信号を前記インターフェース手段に送信する機能」の両方において1つの
15 VRAMによってされることを意味すると理解できることは前記5のとおり
であって、本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は明確であるから、原告の
上記主張は採用できない。
⑵ 小括
以上のとおりであって、本件訂正発明が明確であるとした本件審決の判断
20 に誤りはない。
したがって、原告主張の取消事由5は理由がない。
7 取消事由6(サポート要件判断の誤り)について
⑴ 「単一のVRAM」との記載について
原告は、前記第3の6⑴アのとおり、本件訂正発明の特許請求の範囲の記
25 載は、「単一のVRAM」について、本件明細書等に何の説明もないため、
サポート要件に反する旨主張する。
しかし、本件訂正発明における「単一のVRAM」について本件明細書等
において十分な説明がされていることは前記5のとおりである。
また、本件明細書等の【0014】ないし【0022】には、携帯情報通
信装置に、該携帯情報通信装置の付属ディスプレイよりも画面が大きい外部
5 ディスプレイ装置を接続することにより、大画面外部ディスプレイ装置で画
像を表示する従来技術が、「不合理な二重投資」や「非効率な資源利用」を
するものであると記載され、【発明が解決しようとする課題】【0031】
には、本件発明が解決しようとする課題として、付属ディスプレイの画面解
像度よりも解像度が大きい画像を表示することを、大画面ディスプレイ手段
10 向けの専用の表示データ生成手段を、付属ディスプレイにもともと必要であ
る表示データ生成手段とは別個に使用することなく、大画面ディスプレイ手
段が接続される周辺装置と間のインターフェース手段の追加と表示データ生
成手段への若干の機能追加だけで実現することが記載されている。
そうすると、当業者は、本件訂正発明において、グラフィックコントロー
15 ラがビットマップデータの書き込み及び読み出しをする対象を「単一のVR
AM」とする構成を採用することによって、上記の課題が解決されることを
認識し得たことは明らかである。
⑵ 「処理する」との記載について
原告は、前記第3の6⑴イのとおり、本件訂正発明の構成要件D中の「必
20 要な処理を行い」につき、本件明細書等には、【0032】に記載されてい
る「適切に処理する」以外の処理が記載されていないから、本件訂正発明は
サポート要件を満たさない旨主張する。
確かに、本件明細書等の【0032】には、「適切に処理する」について、
「そして、表示信号、画像データファイル又は動画信号(以下、表示信号等
25 と略記する)を「適切に処理する」とは、ディスプレイ手段、又は、データ
処理手段及びディスプレイ手段が、表示信号等に含まれている画素ごとの論
理的な色情報を、ディスプレイ手段の画面を構成する物理的な画素の色表示
として過不足なく現実化することを意味しており、より具体的には、物理的
な現実化にあたって画素を間引いて表示画像の解像度を小さくしたり、画素
を補間して表示画像の解像度を大きくしたりしないことを意味している。」
5 との記載があるところ、
「適切に処理する」ための具体的な方法については、
特段の記載はない。しかし、本件訂正発明の構成要件Dにおいては、あくま
で「前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、リア
ルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータ
ファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出した上で処理する」
10 と構成されており、「適切に処理する」と構成されているわけではないし、
前記【発明が解決しようとする課題】【0031】においても、「外部ディ
スプレイ手段において、付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大き
い画像を表示すること」等の記載がされており、本来の解像度がそのまま維
持されることまで記載されているわけではないから、本件訂正発明において、
15 「適切に処理する」場合以外の課題解決方法が排除されているとはいえない。
そして、本件明細書等には、上記【0032】の「適切に処理する」場合に
係る記載のほか、前記2⑴において認定したとおり、【0118】に「AD
/DA変換部1_112Cから送信されるデジタル動画信号を一部間引くこ
とによって、解像度の低い画像の全体画像の描画命令を生成する」ことが記
20 載され、また、【0120】に「逆にデータファイルを読み出して必要な処
理を行うことにより、描画命令をグラフィックコントローラ1_10Bに出
力」することが記載されているところ、これら【0118】や【0120】
に記載された処理によっても、上記⑴の課題が解決することは明らかである。
原告は、本件訂正発明では無線通信手段が無線受送信手段に限定されてい
25 ることから、無線受信手段の説明である【0118】の記載をもって本件訂
正発明がサポートされているとする本件審決の判断は誤りである旨主張する
が、「テレビ受信用アンテナ112A」、「テレビチューナ112B」、及
び「AD/DA変換部1_112C」も「無線通信手段」を構成するもので
あることは前記2⑵アにおいて判示したとおりであるから、これに関する【0
118】の記載を参酌できることは当然であり、原告の主張は採用できない。
5 ⑶ 小括
以上のとおりであって、本件訂正発明が本件明細書等の発明の詳細な説明
に記載したものであるとした本件審決の判断に誤りはない。
したがって、原告主張の取消事由6は理由がない。
8 結論
10 以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも理由がないから、本件審決を
取り消すべき違法は認められない。
したがって、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
菅 野 雅 之
裁判官
本 吉 弘 行
25 裁判官
岡 山 忠 広
(別紙1)
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機などの携帯情報通信装置、携帯情報通信装置とともに用い
5 る接続ユニット、及び携帯情報通信装置とともに用いる外部入出力ユニットに関す
る。
【背景技術】
【0002】
最近の電子・情報技術及び通信技術の進歩によって、無線通信によってデータを
10 送受信する機能を有する、PHS(Personal Handyphone S
ystem)を含む携帯電話用端末装置(以下、PHSを含む携帯電話用端末装置」
「
を「携帯電話機」と略記する)やPDA(Personal Digital A
ssistants)をはじめとする携帯情報通信装置は多機能化し、電子メール
の送受信機能はもちろん、インターネットに接続したウェブサーバからHTML(H
15 yper Text Markup Language) XML
、 (eXtensi
ble Markup Language)又はそれらをベースとするマークアッ
プ言語で記述された文書ファイル(以下、マークアップ文書ファイルと略記する)
及びそのリンクファイルを取得し、適切にレイアウトした上で、通常は液晶ディス
プレイである付属ディスプレイに文字や画像を表示することによってウェブページ
20 を閲覧するブラウザ機能を標準的に有するようになってきている。
【0003】
また、ウェブサーバからゲームプログラムをダウンロードしてフラッシュメモリ
等の記憶手段に格納した上で、付属するキー操作部を操作することによって該プロ
グラムを作動させるとともに必要なデータをマニュアル入力することにより、付属
25 ディスプレイに表示される画像の変化を楽しむゲーム機能についても、多くの携帯
電話機が保有するようになってきている。さらに、一部の携帯電話機については、
テレビジョン放送の電波信号(以下、テレビ放送信号と略記する)を受信し、テレ
ビ番組の映像を付属ディスプレイに表示するためのテレビチューナ機能をも有する
ようになっている。特に、テレビチューナ機能については、携帯情報通信装置向け
の地上デジタル放送の開始が予定されており、このデジタルテレビチューナ機能と
5 上述のブラウザ機能を携帯電話機上で結合することにより、携帯電話機ユーザーに
対して、一斉性のある電波放送と、パーソナル性、インタラクティブ性を持つイン
ターネット通信の双方の特性を活かしたサービスを提供することが可能になると期
待されている。
【0004】
10 このような事情により、携帯電話機を中心とする携帯情報通信装置において、文
字や映像を含む画像の表示機能は、今後、ますます重要性を増していくものと考え
られる。ところが、携帯電話機をはじめとする携帯情報通信装置においては、その
携帯性が重視されるため大きいサイズのディスプレイを付属させることができない。
このため、携帯電話機の場合、画面サイズは最大でも2.5インチ程度であり、ま
15 た、画面解像度は最大でもQVGA(Quarter Video Graphi
cs Array)サイズ(携帯電話機においては、通常、縦長画面であるため、
水平画素数×垂直画素数=240×320画素)となっている。
【0005】
このような画面上の制約のため、携帯情報通信装置で電子メールを受信した場合、
20 それが長文である場合には、文章が表示画面内におさまらず、何行にもわたって表
示されるため、垂直スクロールを何度も繰り返さなければならず、結果として、そ
の内容を円滑に理解できないことが起こる。一方、電子メールの発信者は、たとえ
自分自身が十分な大きさの表示画面を有するデスクトップタイプやノートブックタ
イプのパーソナルコンピュータシステム(以下、
「デスクトップタイプやノートブッ
25 クタイプのパーソナルコンピュータシステム」を「パソコン」と略記する)を用い
ており、したがって、長文を画面に表示するのに支障がない場合であっても、その
ような受信者側の制約を考慮すれば、携帯情報通信装置向けには自ずと短いメール
とせざるを得ない。
【0006】
さらに、携帯情報通信装置でウェブページを閲覧する際の制約は、電子メールの
5 読解する場合よりも大きい。通常、パソコンで閲覧されることを想定して作成され
るウェブページ(以下、パソコン向けウェブページと略記する)は、HTMLで記
述された文書ファイル(以下、HTMLファイルと略記する)及びそのリンクファ
イルで構成される。ところが、多くの携帯電話機では、付属ディスプレイの画面サ
イズ・画面解像度が小さいことを理由の一つとして、フルスペックのHTMLで記
10 述されたウェブページを適切に閲覧することはできず、閲覧できるのはパソコン向
けウェブサイトとは別個に構築されたいわゆる「ケータイ向けサイト」のウェブペ
ージであって、CHTML(Compact HTML)、HDML(Handhe
ld Device Markup Language)又はWML(Wirel
ess Markup Language)等の携帯情報通信装置向けに特化した
15 マークアップ言語で記述されたウェブページだけとなっている。このため、特に解
像度の大きい画像ファイルにリンクしたHTMLファイルで記述されたウェブペー
ジは、ほとんどの場合正しく表示できず、また、画面を複数のフレームに分割し、
各フレームに異なるURL(Uniform Resource Locator)
を有するファイルを割り当てるフレーム表示のウェブページを含むウェブサイトな
20 どでは、そもそも管理者側が携帯電話機からのアクセス自体を拒否することもある。
【0007】
最近は、パソコン向けウェブページを閲覧できる「フルブラウザ機能」又は「P
C(Personal Computer)サイトビュー機能」を有する携帯電話
機が発売されているが、多くの場合、画像を付属ディスプレイの画面水平解像度(縦
25 長QVGAの場合、240画素)に合わせて縮小したり、テキスト部分を画面幅で
改行したり、フレーム表示のウェブページについてはフレーム単位での画面イメー
ジを表示したりするなど特殊なレンダリングモードを採用しており、ウェブページ
の作成者が本来意図したはずの、パソコンの画面イメージとして実現されるレイア
ウトで表示されるわけではない。
また、携帯電話機によっては、パソコンでの画面イメージに近いレイアウトで表
5 示するレンダリングモードを有する場合もあるが、通常、パソコン向けウェブペー
ジは、最低でもVGA(Video Graphics Array)サイズ(水
平画素数×垂直画素数=640×480画素)の画面で閲覧されることを想定して
作成するため、このレンダリングモードでは、水平スクロールを何度も繰り返さな
ければウェブページの全体を閲覧することができず、したがって、ウェブページの
10 全容を理解することに支障が生じる。
【0008】
一方、携帯情報通信装置でゲームを楽しむ場合でも、そのゲームはグラフィック
スがサイズの小さな付属ディスプレイに表示できる程度の比較的単純なゲームに限
定される。このため、
「ケータイ向けサイト」からダウンロードされる、いわゆる「ケ
15 ータイアプリ」のゲームは、ゲーム専用機向けやパソコン向けのゲームの世界では
一世代から数世代前のゲームが大半であり、結果として、短時間の暇つぶしに楽し
まれるケースがほとんどである。
また、付属ディスプレイの画面解像度が最大でもQVGAである携帯電話機でテ
レビ番組を視聴する場合、できる限り大きな画面で視聴するために横置き(水平画
20 素数×垂直画素数=320×240画素)とすることが通常であるが、その場合で
も、テレビ放送が前提とする有効走査線の数(=垂直画素数。アナログテレビ放送
の場合、480本)は付属ディスプレイの画面垂直解像度(240画素)より大き
いため、画素を間引いて表示する必要がある。特に、デジタルテレビ放送において
は、有効走査線数(垂直画素数)に加えて、有効水平画素数も規定されているが、
25 最も解像度の小さい480i方式の場合でも水平画素数×垂直画素数=720×
480画素、いわゆる「フルハイビジョン方式」である1080i方式においては
1920×1080画素であって、いずれにせよ、付属ディスプレイの画面解像度
が最大でもQVGAである携帯電話機では、十分なテレビチューナ機能及び表示機
能を有するテレビジョン受像機(以下、テレビ受像機と略記する)によってテレビ
放送信号を適切に処理した場合に表示される本来の解像度を有する画像(以下、テ
5 レビ放送における本来画像と略記する)を全画面表示することはできず、それより
解像度の低い画質の劣った画像しか表示できない。
【0009】
このような事情から、携帯情報通信装置のユーザーは、携帯情報通信装置ととも
にパソコンを所有することも多い。そのような場合には、長いメールを送受信した
10 り、パソコン向けウェブページを閲覧したり、あるいはグラフィックスが大きなサ
イズの画面でなければ表示できないような複雑なゲームを楽しんだりする際にはパ
ソコンを利用し、携帯情報通信装置は、短いメールを送受信したり、
「ケータイ向け
サイト」にアクセスしてウェブページを閲覧したりするためだけに携帯情報通信装
置を利用するという使い分けが行われる。あるいはまた、パソコンと携帯情報通信
15 装置を接続し、ネットワークへの接続のためだけに携帯情報通信装置の無線通信手
段を使用し、該無線通信手段によって取得されたデータの処理は、もっぱらパソコ
ンによって行うというような使い方がなされる。
また、最近では、テレビチューナを内蔵しディスプレイでテレビ番組が視聴でき
る機能を有する、いわゆる「AV(Audio Visual)パソコン」が販売
20 されるようになってきているが、このようなパソコンとテレビチューナ付き携帯電
話機を併用する場合、外出時や移動時にはテレビチューナ付き携帯電話機でテレビ
番組を視聴し、自宅や自室では「AVパソコン」で視聴するという使い分けが行わ
れる。
【0010】
25 ところが、このような方法において使用されるパソコンは、通常は、携帯情報通
信装置で行われる電子メールの送受信やウェブページの閲覧等に限定されない汎用
的な用途に使用できるように設計されているため、携帯情報通信装置自体のデータ
処理手段よりも高機能であるCPU(Central Processing U
nit)等のプロセッサを有している。その上、ハードウェアを起動させるために
は、別途、OS(Operating System)等のソフトウェアも準備し
5 なければならないため、パソコンを所有するために要するコストは、携帯電話機を
はじめとする携帯情報通信装置自体を所有するために要するコストより、通常は大
きい。
このため、データ通信やデータ処理のニーズが電子メールの送受信やウェブペー
ジの閲覧等に限られるような多数のユーザーにとって、上記のように、長文の電子
10 メールを読んだり、パソコン向けウェブページを閲覧したりする際の、付属ディス
プレイの画面サイズ・解像度が小さいことに起因する不便さを解消するためだけに
別途パソコンを所有することは、経済的に不合理である。
一方、携帯情報通信装置のデータ処理手段は、汎用的な用途には必ずしも向いて
いないとは言え、付属ディスプレイに画像を表示するための表示データ処理機能に
15 ついては、表示画面が小さいということを除けば、パソコンにおけるCPU等のプ
ロセッサの機能に匹敵する。それにもかかわらず、上記のようなパソコンと携帯情
報通信装置との使い分けを行うとすれば、同種のものに二重投資を行うことになり、
結果として少なくとも一方の稼働率の低下をもたらすため、資源の効率的な利用の
観点からも好ましくない。
20 【0011】
同様の「不合理な二重投資」と「非効率的な資源利用」という問題は、携帯情報
通信装置がテレビチューナ機能を有する場合についても生じる。すなわち、テレビ
番組の映像や音声を楽しむためには、テレビ放送信号を受信し、テレビ番組の映像
をディスプレイやテレビモニタに表示するためのテレビチューナ回路を必要とする。
25 一方、通常の携帯情報通信装置のユーザーは、携帯情報通信装置の付属ディスプレ
イの画面サイズが小さく表示される画質も劣るため、該携帯情報通信装置とは別に
画面の大きいテレビ受像機又は「AVパソコン」を有するのが通常である。このた
め、ユーザーは、携帯情報通信装置におけるテレビチューナ回路とテレビ受像機又
は「AVパソコン」におけるテレビチューナ回路の双方を所有することを強いられ、
結果として少なくとも一方のテレビチューナ回路の稼働率は低下せざるを得ない。
5 【0012】
地上デジタル放送においては、一つのチャンネルを構成する13セグメントのう
ち、12セグメント(ハイビジョン放送)又は4セグメント(通常画質の放送)が
通常のテレビ受像機向けの放送に割り当てられるのに対し、携帯情報通信装置向け
には1セグメントのみが割り当てられる予定であり、この場合、テレビ受像機にお
10 けるテレビチューナと携帯情報通信装置におけるテレビチューナは異なる仕様とな
るため、単純な二重投資は発生しないと考えられる。しかし、電子・情報技術の進
歩の結果、携帯情報通信装置の内部に、通常のテレビ受像機が受信すると想定され
ている12セグメント又は4セグメント放送を受信できるテレビチューナが納めら
れるように可能性も大きく、そのような場合には、現状の技術の延長上では、高価
15 なデジタルテレビチューナに対して、同様の「不合理な二重投資」と「非効率的な
資源利用」の問題が生じる。
【0013】
このような事情から、携帯情報通信装置の携帯性を損なわないために付属ディス
プレイのサイズを現状通りに維持したままで、しかもパソコンを併用することなく、
20 長文の電子メールやパソコン向けウェブページ、娯楽性の高いゲーム、さらにはテ
レビ番組の映像などを大きな画面で表示すること、特に、長文の電子メールについ
ては、垂直スクロールを繰り返すことなく読めること、パソコン向けウェブページ
については、パソコンでの画面イメージに近いレイアウトで表示し、しかも水平ス
クロールを繰り返すことなく閲覧できること、テレビ番組については、テレビ放送
25 における本来画像を全画面表示することが課題とされている。
【0014】
このような課題を解決するため、携帯情報通信装置に、該携帯情報通信装置の付
属ディスプレイよりも画面が大きい外部ディスプレイ装置(以下、大画面外部ディ
スプレイ装置と略称する)を接続することにより、大画面外部ディスプレイ装置で
画像を表示する技術がいくつか開示されており、そして、それらの技術は、以下の
5 3つのタイプに分類される。
第一種:携帯情報通信装置と大画面外部ディスプレイ装置を何らかの接続ユニッ
トを介して接続するタイプ
第二種:携帯情報通信装置と大画面外部ディスプレイ装置は直接的に接続される
が、その代わり、大画面外部ディスプレイ装置としては、携帯情報通信装置から受
10 信した表示データに各種の処理を施す機能を有する画像表示装置が使用されるタイ
プ
第三種:携帯情報通信装置と大画面外部ディスプレイ装置は直接的に接続され、
しかも、大画面外部ディスプレイ装置としては、携帯情報通信装置との間での何ら
かのインターフェース手段は備えていることを除けば、テレビモニタ等の汎用的な
15 ディスプレイが用いられるタイプ
【0015】
このうち、第一種の技術は、例えば、特許文献1、・
・ ・において開示されている。・
・・
【0016】
しかしながら、この場合においても、画像や文字を表示するための表示データ処
20 理機能に限って考えれば、携帯情報通信装置側と接続ユニット側で、表示する画面
のサイズが異なるということを除けばほぼ同等の機能を有する表示データ処理手段
を二重に保有することになる。・・・
【0017】
一方、第二種の技術は、例えば、特許文献5、・・・において開示されている。
25 【0018】
さて、上記で説明した通り、第二種の技術においても、携帯情報通信装置側と大
画面外部ディスプレイ装置側でほぼ同等の機能を有する表示データ処理手段を二重
に有することになり、結果的に「不合理な二重投資」や「非効率な資源利用」の問
題が生じる。また、このような表示データ処理手段を備えた画像表示装置の購入費
は、汎用的なCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置や液
5 晶ディスプレイ装置と比較して確実に高くなるため、この追加コストを考慮すれば、
パソコンとの併用や第一種の技術の場合に生じるのと同様の、本来であれば回避す
べき不合理な経済的負担が生じる。
【0019】
それに対して、第三種の技術は、接続ユニットや特殊な画像処理装置を使用せず、
10 携帯情報通信装置と汎用的な大画面外部ディスプレイ装置だけで構成される。この
ため、一般的にいって、
「不合理な二重投資」や「非効率な資源利用」の問題が、少
なくとも第一種の技術や第二種の技術よりは少ないと考えられる。
【0020】
この第三種の技術として既に実用化されているものに、いわゆる「テレビ(TV)
15 出力機能」又は「AV出力機能」を有する携帯電話機がある。このような携帯電話
機においては、携帯電話機とテレビモニタを、携帯電話機側は携帯電話機に固有の
接続端子とし、テレビモニタ側はビデオ端子とするケーブルで接続することにより、
該携帯電話機に付属するデジタルカメラ機能を用いて撮影した静止画や動画、ある
いは一部のゲームを、携帯電話機の付属ディスプレイよりも大画面であるテレビモ
20 ニタに表示することができる。しかし、その場合にテレビモニタに表示される画像
の解像度は、付属ディスプレイの画面解像度(最大でもQVGA)と同じであるた
め、該画像は、テレビモニタの中央部に小さく表示されるか、画質の粗い拡大画像
が全画面に表示されるかのいずれかである。
【0021】
25 現在のところ、
「TV出力機能」又は「AV出力機能」によってテレビモニタに表
示されるのは、撮影した静止画や動画、又は一部のゲームに限られているが、仮に、
これらの携帯電話機が「フルブラウザ機能」又は「PCサイトビュー機能」を有し、
閲覧したパソコン向けウェブページをテレビモニタで閲覧できるようになったとし
ても、それはあくまでも付属ディスプレイに表示される画面イメージを拡大表示す
るだけであって、画面イメージの解像度が増えるわけではない。したがって、ウェ
5 ブページの作成者が本来意図したはずの、パソコンの画面イメージとして実現され
るレイアウトでの表示が、テレビモニタにおいて実現できるわけではない。また、
仮に、これらの携帯電話機がテレビチューナ機能を有し、受信した映像をテレビモ
ニタに出力できたとしても、テレビ放送における本来画像がテレビモニタに表示さ
れるわけではない。
10 【0022】
したがって、上記の課題を解決するためには、
「TV出力機能」又は「AV出力機
能」を有する携帯電話機のように、ただ単に付属ディスプレイに表示される画像を
大画面外部ディスプレイ装置に拡大表示するという機能を有するに留まらず、付属
ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を大画面外部ディスプレイ装
15 置に表示する機能を有する携帯情報通信装置を提供することが必要である。
これにより、付属ディスプレイでは自らの画面解像度に相当する部分だけを切り
出した部分画像しか表示できなかったり、画素を間引くことによって画質を落とし
た全体画像しか表示できなかったりした画像を、大画面外部ディスプレイにおいて
は、その本来の解像度のままの全体画像として表示できるようになる。また、特に、
20 水平方向の画素数が付属ディスプレイの画面水平解像度より大きい画像を大画面外
部ディスプレイ装置に表示する機能を有する場合には、一行あたりに表示できる文
字数を増やすことができ、その結果、長文の電子メールであっても、何行にもわた
って表示され、垂直スクロールを何度も繰り返さなければならないということはな
くなる。また、それらの効果が総合されることにより、パソコン向けウェブページ
25 も、大画面外部ディスプレイ装置において、パソコンの画面イメージとして実現さ
れるレイアウトで閲覧できるようになる。
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、
携帯電話機やPDAをはじめとする携帯情報通信装置に大画面外部ディスプレイ装
5 置を接続することにより、より一般的には、携帯情報通信装置に大画面ディスプレ
イ手段を含む周辺装置、及び/又は、大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装
置を接続することにより、該大画面外部ディスプレイ手段において、付属ディスプ
レイの画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示すること、特に、長文の電子メ
ールについては、垂直スクロールを繰り返すことなく読めること、パソコン向けウ
10 ェブページについては、パソコンでの画面イメージに近いレイアウトで表示し、し
かも水平スクロールを繰り返すことなく閲覧できること、テレビ番組については、
テレビ放送における本来画像を表示することを、該大画面外部ディスプレイ手段向
けの専用の表示データ生成手段を、付属ディスプレイに画像を表示するためにもと
もと必要である表示データ生成手段(以下、付属表示データ生成手段と略記する)
15 とは別個に使用することなく、大画面ディスプレイ手段を含む周辺装置、及び/又
は、大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置と間のインターフェース手段の
追加と、付属表示データ生成手段への若干の機能追加だけで実現する携帯情報通信
装置を提供する点にある。また、携帯情報通信装置及び大画面外部ディスプレイ装
置とともに用いられ、該大画面外部ディスプレイ装置の画面に、付属ディスプレイ
20 の画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示するための接続ユニットを提供する
点にある。さらに、携帯情報通信装置とともに用いられ、自らに付属する大画面外
部ディスプレイパネルに、該携帯情報通信装置の付属ディスプレイの画面解像度よ
りも解像度が大きい画像を表示する外部入出力ユニットを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
25 【0032】
上記目的を達成するために、携帯情報通信装置に係る第1の発明は、ユーザーが
マニュアル操作によって入力したデータを後記データ処理手段に送信する入力手段
と、無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記データ処理手段に送信する
とともに、後記データ処理手段から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送
信する無線通信手段と、後記データ処理手段を動作させるプログラムと後記データ
5 処理手段で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と、前記入力手段から
送信されたデータ及び前記記憶手段に格納されたプログラムに基づき、前記無線通
信手段から受信したデジタル信号及び/又は前記記憶手段から読み出したデータに
必要な処理を行って、デジタル表示信号及びその他のデジタル信号を生成して送信
するデータ処理手段と、画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を
10 表示するディスプレイパネルAと、前記データ処理手段から受信したデジタル表示
信号に基づき前記ディスプレイパネルAの各々の画素を駆動するディスプレイ制御
手段Aとから構成されるディスプレイ手段とを備える携帯情報通信装置であって、
外部ディスプレイ手段を含む周辺装置、又は、外部ディスプレイ手段が接続される
周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記データ処理手段から受信したデジタ
15 ル表示信号に基づき、外部表示信号を送信するインターフェース手段A1と、前記
データ処理手段で生成されたデジタル表示信号の送信先として、前記ディスプレイ
制御手段Aと前記インターフェース手段A1の少なくともいずれか一方を選択して
指定する送信先指定手段とを備えるとともに、前記データ処理手段と前記インター
フェース手段A1とが相俟って、前記送信先指定手段がデジタル表示信号の送信先
20 として前記インターフェース手段A1を指定した場合には、該インターフェース手
段A1から、高解像度外部表示信号を送信する機能を実現するようにしたものであ
る。
なお、本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「デジタル表示信号」には、
後で詳述する「ビットマップデータ」等のデジタル画像データに直接対応した信号
25 だけでなく、デジタル画像データの生成(描画)を命令する描画命令のデジタル信
号も含む。
また、本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「外部表示信号」とは、周辺
装置における外部ディスプレイ手段がそれを受信して適切に処理することにより画
像を表示することが可能であるような信号を意味する。そして、表示信号、画像デ
ータファイル又は動画信号(以下、表示信号等と略記する)を「適切に処理する」
5 とは、ディスプレイ手段、又は、データ処理手段及びディスプレイ手段が、表示信
号等に含まれている画素ごとの論理的な色情報を、ディスプレイ手段の画面を構成
する物理的な画素の色表示として過不足なく現実化することを意味しており、より
具体的には、物理的な現実化にあたって画素を間引いて表示画像の解像度を小さく
したり、画素を補間して表示画像の解像度を大きくしたりしないことを意味してい
10 る。
さらに、本「明細書」及び「特許請求の範囲」でいう「高解像度」とは、表示信
号等の本来解像度が前記ディスプレイパネルAの画面解像度(水平画素数×垂直画
素数)より大きいことを意味し、特に、
「高解像度外部表示信号」とは、本来解像度
が前記ディスプレイパネルAの画面解像度より大きい外部表示信号を意味する。ま
15 た、表示信号等の「本来画像」とは、十分な大きさの画面解像度を有するディスプ
レイ手段、又は、データ処理手段と十分な大きさの画面解像度を有するディスプレ
イ手段とが、該表示信号等を受信して適切に処理することにより表示される本来の
画像を意味し、「本来解像度」とは「本来画像」の解像度を意味する。
さらに、本「明細書」及び「特許請求の範囲」においては、
「周辺装置における~
20 手段」という表記によって、
「周辺装置に含まれた~手段又は周辺装置に接続された
~手段」を意味する。
【0056】
また、携帯情報通信装置に係る第25の発明は、第1乃至第24のいずれか1つ
の発明の携帯情報通信装置において、前記無線通信手段は、アナログテレビ放送信
25 号、デジタルテレビ放送信号、携帯テレビ電話信号、インターネットプロトコルに
準拠した無線ストリーミング信号のうちの少なくとも1つの無線信号(以下、無線
動画信号と略記する)を受信し、デジタル動画信号に変換の上、前記データ処理手
段に転送する機能を有し、前記データ処理手段は、該デジタル動画信号を処理する
ことによってリアルタイムでデジタル表示信号を生成する機能、及び/又は、該デ
ジタル動画信号を自らが処理可能な画像データファイルとして前記記憶手段に一旦
5 格納し、その後読み出した上で処理することによってデジタル表示信号を生成する
機能を有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0078】
第1乃至第15の発明の携帯情報通信装置においては、携帯情報通信装置のイン
10 ターフェース手段A1に高解像度外部ディスプレイ手段を含む周辺装置、及び/又
は、外部ディスプレイ手段が接続される周辺装置を接続して高解像度外部表示信号
を送信することにより、該高解像度外部ディスプレイ手段の画面において、携帯情
報通信装置に付属するディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する
高解像度画像を表示することができる。これにより、付属ディスプレイパネルにお
15 いては、その画面解像度に相当する部分だけを切り出した部分画像しか表示できな
かったり、画素を間引くことによって画質を落とした全体画像しか表示できなかっ
たりしたような画像を、高解像度外部ディスプレイ手段においては、その本来の解
像度のままの全体画像として表示できるようになる。特に、水平方向の本来の画素
数がディスプレイパネルの画面水平解像度より大きい高水平解像度外部表示信号を
20 送信する機能が実現されることにより、該高解像度外部ディスプレイ手段の画面に
おける一行あたりの表示文字数を、付属ディスプレイパネルにおける表示文字数よ
りも増やすことができる。これにより、例えば、長文の電子メールを読むような場
合でも、付属ディスプレイパネルにおけるように何行にもわたって表示され、垂直
スクロールを何度も繰り返さなければならないため、理解に困難が伴うというよう
25 なことはなくなる。
しかも、そのような高解像度外部表示信号の送信は、付属ディスプレイパネルに
おいて画像を表示するためにもともと必要であるデータ処理手段と、外部ディスプ
レイ手段を含む周辺装置、及び/又は、外部ディスプレイ手段が接続される周辺装
置を接続するために不可欠のインターフェース手段だけによって実現されている。
このため、従来の技術のように、携帯情報通信装置に備えられた表示データ処理手
5 段とは別に、外部ディスプレイ手段を含む周辺装置向けの専用の表示データ生成手
段を設ける必要はなく、
「不合理な二重投資」や「非効率な資源利用」の問題は回避
できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0111】
10 (第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る携帯情報通信装置、携帯情報通信装置用
接続ユニット、及び両者を接続した上で該接続ユニットに外部ディスプレイ装置及
び外部入力装置を接続することによって構成した情報通信システムの構成及び機能
を説明するためのブロック図であり、特に、該携帯情報通信装置が携帯電話機であ
15 る場合について説明している。
【0112】
この実施形態においては、携帯電話機1は、それ単独として、音声通話用、携帯
テレビ電話でのコミュニケーション用、データ通信・処理用、テレビ放送番組の視
聴用、被写体の撮影用、又は、画像データ及び/又は音声データの保存・再生用と
20 して使用することができ、音声通話以外の用途で使用する場合には、各種の画像が、
付属ディスプレイパネルであるLCD(Liquid Crystal Disp
lay)パネル15Aに表示される。
以下では、LCDパネル15AはQVGAサイズの画面解像度を有し、通常は縦
長画面(水平画素数×垂直画素数=240×320画素)で使用するものとして説
25 明するが、それ以外の解像度であってもよい。
【0114】
次に、携帯電話機1が携帯テレビ電話でのコミュニケーション用に使用される場
合には、上で説明した音声データのやり取りに加えて、以下のような画像(動画)
データのやり取りが加わる。
すなわち、通常は携帯電話機1のユーザー自身である被写体から反射又は放射さ
5 れる光信号は、光学レンズ等で構成される光学系部12Aを経由してCCD12B
に入射し、CCD12Bにおいて画素ごとの電気信号に変換された上で、AD/D
A変換部2_12Cでデジタル動画信号に変換され、バス19を経由して中央演算
回路1_10A1に送信される。該デジタル動画信号は中央演算回路1_10A1
において必要な処理を施され、上記の音声データと同じく、ベースバンドプロセッ
10 サ11及びRF送受信部111Bを経由し、通信用アンテナ111Aから電波信号
として公衆ネットワークに送信される。
なお、以下では、CCD12Bの解像度はSXGAサイズ(水平画素数×垂直画
素数=1280×1024画素)であるものとして説明するが、それ以外の解像度
であってもよい。
15 【0115】
一方、コミュニケーションの相手先から電波信号(無線動画信号)として公衆ネ
ットワークに送信された画像(動画)データは通信用アンテナ111Aで受信され、
RF送受信部111B及びベースバンドプロセッサ11を経由することによりデジ
タル信号に変換された上で、中央演算回路1_10A1に送信される。中央演算回
20 路1_10A1では、フラッシュメモリ14Aに格納されたプログラムに基づいて
必要な処理を行い、該デジタル信号に対応した描画命令をグラフィックコントロー
ラ1_10Bに送信する。
グラフィックコントローラ1_10Bは、該描画命令に基づき、あらかじめ十分
な大きさ(以下では、QUXGAWide(Quad Ultra XGA Wi
25 de)サイズ(水平画素数×垂直画素数=3840×2400画素)として説明す
る)の論理解像度を有するように設定された仮想画面におけるビットマップデータ
を生成し、必要に応じてVRAM(Video RAM)1_10Cへの書き込み
/読み出しを行いつつ、該ビットマップデータをLCDドライバ15Bに送信する。
なお、VRAM1_10Cは、
[特許請求の範囲]でいうところのビットマップメモ
リ1にあたる。
5 LCDドライバ15Bは、該ビットマップデータに基づいて、ソース・ドライバ
部とゲート・ドライバ部とを作動させることによりLCDパネル15Aの画面を構
成する各々の画素を駆動し、最終的にコミュニケーションの相手からの無線動画信
号に対応した画像がLCDパネル15Aに表示される。
この際、携帯テレビ電話において送受信される無線動画信号の本来画像の解像度
10 は、通常、LCDパネル15Aの画面解像度を上回らないため、LCDパネル15
Aには、該本来画像が全画面表示されるか、本来画像がLCDパネル15Aの画面
の一部に表示されるか、又は本来画像の解像度はそのままで全画面に拡大表示され
る。
なお、携帯テレビ電話における電波信号(音声信号及び動画信号)の送受信は、
15 音声通信の場合と同様に、各種の通信方式によって実現できるが、特に、セルラー
ネットワークにおいてCDMA方式を採用した場合には、通信規格として3G-3
24Mを採用することができる。
【0116】
次に、携帯電話機1がデータ通信・処理用に使用される場合、通常は20個前後
20 の小型のキーからなるキー操作部16Aを操作することによって入力され、キー入
力コントローラ16Bでデジタル信号に変換されたデータ、及び/又は、インター
ネットプロトコルに準拠した電波信号を公衆ネットワークから通信用アンテナ11
1Aで受信し、RF送受信部111B及びベースバンドプロセッサ11を経由する
ことによりデジタル信号に変換されたデータが、バス19を経由して中央演算回路
25 1_10A1に転送される。中央演算回路1_10A1では、フラッシュメモリ1
4Aに格納されたプログラムに基づいて必要な処理を行い、処理されたデータは、
バス19を経由して、フラッシュメモリ14A及びRAM(Random Acc
ess Memory)14Bや、グラフィックコントローラ1_10Bや、ベー
スバンドプロセッサ11に転送される。そして、最終的には、LCDパネル15A
に画像が表示されたり、スピーカ18Bから音声が出力されたり、通信用アンテナ
5 111Aから電波信号が送信されたり、フラッシュメモリ14Aにデータが保存さ
れたりする。
なお、インターネットプロトコルに準拠した電波信号の送受信は、音声通信の場
合と同様に、各種の通信方式によって実現できる。その際、通信用アンテナ111
A、RF送受信部111B及びベースバンドプロセッサ11を複数帯域の電波信号
10 に対応できるようにすることによって、例えば、屋内等の無線LANの基地局・ア
クセスポイントに近い箇所では高速の無線LAN方式で通信を行い、それ以外の箇
所ではCDMA方式等の第3世代移動体通信(セルラーシステム)で通信を行うよ
うなことが実現できる。
【0117】
15 特に、携帯電話機1が、インターネットに接続したウェブサイトにアクセスし、
該ウェブサイトを構成するウェブページを閲覧している場合には、中央演算回路1
_10A1は、フラッシュメモリ14Aに格納されたブラウザプログラムに従って、
通信用アンテナ111A、RF送受信部111B、ベースバンドプロセッサ11及
びバス19を経由して、ウェブページを構成するマークアップ文書ファイル及びそ
20 のリンクファイルを取得し、ウェブページのレイアウト形式に応じて以下のように
描画命令を生成・送信する。すなわち、ウェブページがリキッドレイアウト、又は
LCDパネル15Aの画面水平解像度(240画素)よりも狭い固定幅レイアウト
を採用していれば、LCDパネル15Aの画面水平解像度と同じ水平画素数を有す
るページ画像の描画命令を、ウェブページがLCDパネル15Aの画面水平解像度
25 よりも広い固定幅レイアウトを採用していれば、該固定幅と同じ水平画素数を有す
るページ画像の描画命令を、それぞれ生成し、該描画命令をグラフィックコントロ
ーラ1_10Bに送信する。
グラフィックコントローラ1_10Bは、該描画命令に基づき仮想画面における
ビットマップデータを生成しVRAM1_10Cに書き込むとともに、LCDパネ
ル15Aに表示され、LCDパネル15Aの画面解像度と同じ解像度を有する画像
5 を記述するビットマップデータをVRAM1_10Cから切り出してLCDドライ
バ15Bに送信する。LCDドライバ15Bは、該ビットマップデータに基づいて
LCDパネル15Aの画面を構成する各々の画素を駆動し、最終的に前記ウェブペ
ージに対応したページ画像の全部又は一部に、必要に応じて画面の上部・下部に表
示されるメニュー表示等を組み合わせた全画面画像がLCDパネル15Aに表示さ
10 れる。
この際、ページ画像の解像度がLCDパネル15Aの画面解像度より大きい場合
には、キー操作部16Aにおいて画面スクロール機能を担うキーを操作することに
よって入力されるデータに応じて、中央演算回路1_10A1が描画命令を変更す
ることにより、VRAM1_10Cから切り出されるビットマップデータは仮想画
15 面上を徐々に遷移し、その結果として、LCDパネル15Aにおいてページ画像が
スクロール表示される。
【0118】
また、携帯電話機1がテレビ番組の視聴用に使用される場合、テレビ受信用アン
テナ112Aで受信したテレビ放送信号は、テレビチューナ112B及びAD/D
20 A変換部1_112Cでデジタル動画信号及びデジタル音声信号に変換され、バス
19を経由して中央演算回路1_10A1に送信される。
携帯電話機1においては、テレビ番組の画像を、LCDパネル15Aを縦置きに
して表示する(→縦長画面(水平画素数×垂直画素数=240×320画素))か、
横置きにして表示する(→横長画面(水平画素数×垂直画素数=320×240画
25 素))かを、キー操作部16Aを操作することによって選択することができ、中央演
算回路1_10A1は、この選択に対応した入力信号及び前記デジタル動画信号に
基づき、LCDパネル15Aに表示される画面イメージ(ただし、縦長画面の場合、
上部及び/又は下部に非表示領域が生じた画面イメージ)のビットマップデータを
作成する描画命令を生成し、該描画命令をグラフィックコントローラ1_10Bに
送信する。この際、テレビ放送における本来画像の水平・垂直画素数は、縦長画面、
5 横長画面のいずれの場合でも、LCDパネル15Aの水平・垂直画素数よりも大き
いため、描画命令の生成にあたっては、AD/DA変換部1_112Cから送信さ
れるデジタル動画信号を一部間引くことによって、解像度の低い画像の全体画像の
描画命令を生成する。
グラフィックコントローラ1_10B、VRAM1_10C及びLCDドライバ
10 15Bの動作は、キー操作部16Aの操作に従った画像のスクロールがないことを
除けば、ウェブページのページ画像を表示する場合と同様であり、結果として、L
CDパネル15Aにテレビ放送の動画がリアルタイムで表示される。・・・
【0119】
また、携帯電話機1が被写体の撮影用に使用される場合、被写体から反射又は放
15 射される光信号は、携帯テレビ電話でのコミュニケーションの場合と同じ経路でデ
ジタル動画信号に変換され中央演算回路1_10A1に送信される。また、中央演
算回路1_10A1、グラフィックコントローラ1_10B、VRAM1_10C
及びLCDドライバ15Bは、テレビ放送番組を視聴する場合と同様に動作し、結
果として、LCDパネル15Aに被写体の映像(動画)がリアルタイムで表示され
20 る。
この際、CCD12Bによって撮像される本来画像の水平・垂直画素数は、縦長
画面、横長画面のいずれの場合でも、LCDパネル15Aの水平・垂直画素数より
も大きいため、中央演算回路1_10A1が描画命令を生成する際には、AD/D
A変換部2_12Cから送信されるデジタル動画信号を一部間引くことによって、
25 解像度の低い画像の全体画像の描画命令を生成する。
【0120】
一方、携帯電話機1においては、上記のようにデジタル音声信号に基づいてスピ
ーカ18Bから音声をリアルタイムに出力したり、デジタル動画信号に基づいてL
CDパネル15Aに動画をリアルタイムに表示したりするだけでなく、デジタル音
声信号及び/又はデジタル動画信号をデータファイルに変換して保存したり、該保
5 存したデータファイルを読み出して必要な処理を行うことにより、音声を出力した
り、画像を表示したり、あるいは両者を組み合わせたムービーとして再生すること
ができる。
このような画像データ及び/又は音声データの保存・再生用に使用される場合、
中央演算回路1_10A1は、キー操作部16Aを操作することにより入力された
10 データに基づきフラッシュメモリ14Aにアクセスして、デジタル動画信号を変換
したビットマップデータやデジタル音声信号を変換したデジタル音声データを必要
に応じて圧縮したデータファイルとして書き込んだり、逆にデータファイルを読み
出して必要な処理を行うことにより、描画命令をグラフィックコントローラ1_1
0Bに出力したり、デジタル音声信号をベースバンドプロセッサ11経由でCOD
15 EC18Cに出力したりする。
なお、画像データファイル及び/又は音声データファイルは、ウェブサイトにア
クセスし、通信用アンテナ111A、RF送受信部111B、ベースバンドプロセ
ッサ11を経由して受信・変換されたデジタル信号を、バス19経由で中央演算回
路1_10A1が受信し、必要な変換を行ってフラッシュメモリ14Aに書き込む
20 ことによっても保存することができる。ただし、フラッシュメモリ14Aの容量に
は限界があるため、例えば、長時間のムービー等を保存することには制約が生じる。
また、動画である画像データを保存する場合には、MPEG(Moving P
icture Experts Group)-1、MPEG-2、MPEG-4
等のMPEG規格のフォーマットで保存され、静止画である画像データを保存する
25 場合には、BMP、TIFF、JPEG、GIF及びPNG等のフォーマットで保
存される。また、音声データについては、WAVE形式や、MP3(MPEG A
udio Layer3) AIFF
、 (Audio Interchange Fi
le Format) ATRAC3
、 (Adaptive TRansform A
coustic Coding 3)等のフォーマットで保存される。
【0121】
5 以上が携帯電話機1をそれ単独として使用する場合の機能の概略であるが、携帯
電話機1は、接続ユニット3と接続するための外部接続端子部A_13Dを備えて
おり、外部接続端子部A_13Dと、接続ユニット3に備えられたインターフェー
ス部B_33を構成する外部接続端子B_33Dとを接続ケーブル2を介して接続
することにより、携帯電話機1と接続ユニット3を一体的な情報通信システムとし
10 て動作させることができるようになる。
【0122】
一方、接続ユニット3は、周辺装置と接続するためのインターフェース部C1_
35とインターフェース部C2_36を備えており、インターフェース部C1_3
5には、LCDである外部ディスプレイ装置5が、インターフェース部C2_36
15 には、フルキーボードである外部キーボード61とマウス62が、それぞれ接続さ
れている。また、接続ユニット3はHDD34及び充電池B_37Aとを備えてお
り、それぞれインターフェース部B_33に接続している。また、充電池B_37
Aには、AC/DC回路37B及び商用電源プラグ37Cが接続されており、接続
ユニット3は、それらを経由して一旦充電池B_37Aに蓄えられた直流電力によ
20 って作動する。なお、接続ユニット3の充電池B_37Aに蓄えられた直流電力は、
外部接続端子部B_33D及び外部接続端子部A_13Dを経由して携帯電話機1
の内蔵充電池17に供給され、一旦蓄えられた上で、携帯電話機1の作動に使われ
る。
以下では、原則として、外部ディスプレイ装置5(LCD)の画面解像度は、V
25 GAサイズ(水平画素数×垂直画素数=640×480画素)であるものとして説
明するが、それ以上の解像度であってもよい。
【0123】
さて、作動中の携帯電話機1と、インターフェース部C1_35に外部ディスプ
レイ装置5が接続しており作動中の接続ユニット3(以下では、
「インターフェース
部C1_35に外部ディスプレイ装置5が接続しており作動中」のことを「作動中」
5 と略記する)を接続した場合、作動中の携帯電話機1を接続ユニット3に接続し、
接続ユニット3を起動させた場合、あるいは携帯電話機1を作動中の接続ユニット
3に接続し、携帯電話機1を起動させた場合に、携帯電話機1の中央演算回路1_
10A1は、接続ユニット3から、接続ユニット3が接続していることを検知する
信号(以下、接続検知信号と略記)、及び接続ユニット3のインターフェース部C1
10 _35に接続された外部ディスプレイ装置5の画面解像度データを、外部接続端子
部B_33D、接続ケーブル2、外部接続端子部A_13D及びバス19を経由し
て受信する。
そして、携帯電話機1の中央演算回路1_10A1が前記接続検知信号を受信し
た場合、中央演算回路1_10A1は、LCDパネル15Aの画面水平解像度又は
15 画面解像度に対応した画像の描画命令に替えて、以下で説明するように、LCDパ
ネル15Aの画面解像度より大きな解像度を有する画像の描画命令を生成し、グラ
フィックコントローラ1_10Bに対して送信する。また、中央演算回路1_10
A1は、上記の描画命令とともに、VRAM1_10Cから切り出したビットマッ
プデータを、LCDドライバ15Bに送信する替わりに、TMDSトランスミッタ
20 13Aに送信するように命令する送信命令を生成し、該送信命令をグラフィックコ
ントローラ1_10Bに送信する。
【0124】
まず、インターネットに接続したウェブサイトにアクセスし、該ウェブサイトを
構成するウェブページを閲覧している場合には、中央演算回路1_10A1は、フ
25 ラッシュメモリ14Aに格納されたブラウザプログラムに従い、ウェブページのレ
イアウト形式に応じて以下のように描画命令を生成・送信する。すなわち、ウェブ
ページがリキッドレイアウト、又は外部ディスプレイ装置5の画面水平解像度(6
40画素)よりも狭い固定幅レイアウトを採用していれば、外部ディスプレイ装置
5の画面水平解像度と同じ水平画素数を有するページ画像の描画命令を生成・送信
し、ウェブページが外部ディスプレイ装置5の画面水平解像度よりも広い固定幅レ
5 イアウトを採用していれば、該固定幅と同じ水平画素数を有するページ画像の描画
命令を生成・送信する。
一方、テレビ放送を視聴している場合及び被写体を撮影している場合には、それ
ぞれAD/DA変換部1_112C及びAD/DA変換部2_12Cから送信され
るデジタル動画信号における本来画像の解像度は、外部ディスプレイ装置5におけ
10 る画面解像度より依然として大きいため、中央演算回路1_10A1は、該デジタ
ル動画信号を一部間引くことによって、解像度を外部ディスプレイ装置5の画面解
像度に合わせた低画質の全体画像の描画命令が生成・送信される。
【0125】
なお、携帯テレビ電話でのコミュニケーションを行っている場合には、携帯テレ
15 ビ電話における無線動画信号の本来画像の解像度は、LCDパネル15Aの画面解
像度を上回らないため、携帯電話機1を接続ユニット3と接続した場合でも、中央
演算回路1_10A1からの描画命令が描画を命令する画像の解像度は変わらない。
ただし、フラッシュメモリ14Aが画像の補間プログラムを格納しており、中央演
算回路1_10A1がそれに従って作動する場合には、外部ディスプレイ装置5の
20 画面解像度(無線動画信号の本来画像の解像度より大きい)と同じ解像度を有する
画像の描画命令を生成・送信することができる。
【0126】
ところで、外部ディスプレイ装置5として、画面解像度がVGAサイズであるよ
うなものに替えて、フルハイビジョンテレビモニタ(水平画素数×垂直画素数=1
25 920×1080画素)のように、画面解像度が十分に大きい(ただし、あらかじ
め設定された仮想画面の論理解像度(3840×2400画素)よりも小さい)も
のを使用する場合には、中央演算回路1_10A1が生成・送信する描画命令は、
以下のように変わる。
まず、ウェブページを閲覧している場合には、ほとんどのウェブページは、仮に
固定幅レイアウトを採用している場合でも該固定幅が外部ディスプレイ装置5の画
5 面水平解像度を超えることはないため、中央演算回路1_10A1においては、外
部ディスプレイ装置5の画面水平解像度と同じ水平画素数を有するページ画像の描
画命令が生成・送信される。
次に、テレビ放送を視聴している場合、又は被写体を撮影している場合にも、デ
ジタル動画信号における本来画像の解像度は、外部ディスプレイ装置5の画面解像
10 度を超えることはないため、中央演算回路1_10A1においては、デジタル動画
信号における本来画像の描画命令が生成・送信される。
その際、視聴しているテレビ放送がアナログテレビ放送である場合や、この説明
で想定しているようにCCD12Bの解像度(1280×1024画素)がフルハ
イビジョンサイズ(1920×1080画素)より小さい場合には、描画命令が生
15 成される本来画像の解像度は外部ディスプレイ装置5の画面解像度より小さくなる
が、フラッシュメモリ14Aが画像の補間プログラムを格納しており、中央演算回
路1_10A1がそれに従って作動する場合には、外部ディスプレイ装置5の画面
解像度(デジタル動画信号の本来画像の解像度より大きい)と同じ解像度を有する
画像の描画命令を生成することができる。
20 【0127】
グラフィックコントローラ1_10Bは、中央演算回路1_10A1から受信し
た描画命令に基づき、あらかじめ設定された仮想画面上においてビットマップデー
タを生成し、VRAM1_10Cに書き込む。さらに、グラフィックコントローラ
1_10Bは、中央演算回路1_10A1から入手した外部ディスプレイ装置5の
25 画面解像度データに基づき、外部ディスプレイ装置5の画面解像度と同じ解像度を
有し、外部ディスプレイ装置5の画面に表示される画像を記述するビットマップデ
ータをVRAM1_10Cから切り出す。その上で、中央演算回路1_10A1か
ら受信した送信命令に基づき、該ビットマップデータをTMDSトランスミッタ1
3Aに送信し、TMDSトランスミッタ13Aは、該ビットマップデータを、外部
接続端子部A_13Dを経由して接続ユニット3のインターフェース部B_33に
5 TMDS伝送方式で送信する。
【0128】
接続ユニット3においては、インターフェース部B_33で受信・転送されたビ
ットマップデータを、TMDSレシーバ機能を有するインターフェース部C1_3
5で受け入れて、必要な処理を行った上で外部ディスプレイ装置5に送信し、結果
10 として、外部ディスプレイ装置5の画面において、その画面解像度に対応した解像
度を有する画像が表示される。その際、リキッドレイアウト、又は外部ディスプレ
イ装置5の画面水平解像度よりも狭い固定幅レイアウトを採用しているウェブペー
ジを閲覧している場合には、ページ画像の水平方向の全体が表示され、水平方向の
スクロールを行う必要はないが、外部ディスプレイ装置5の画面水平解像度よりも
15 広い固定幅レイアウトを採用しているウェブページを閲覧している場合には、外部
ディスプレイ装置5の画面には、ページ画像は水平方向の一部だけが表示されるこ
とになり、水平スクロールを行うことによってページ画像の全体が閲覧できる。一
方、テレビ放送を視聴している場合、又は被写体を撮影している場合には、デジタ
ル動画信号の本来画像よりも解像度の低い画像が全画面表示される。
20 【0129】
ただし、外部ディスプレイ装置5として、上記のようにフルハイビジョンテレビ
モニタのような高解像度ディスプレイ装置を採用している場合には、外部ディスプ
レイ装置5に表示される画像は、以下のように変わる。
まず、ウェブページを閲覧している場合には、上記の理由により、ほとんどのウ
25 ェブページのページ画像はその水平方向の全体が表示され、水平スクロールするこ
となく閲覧できる。
次に、テレビ放送を視聴している場合、被写体を撮影している場合には、又は携
帯テレビ電話でのコミュニケーションを行っている場合には、上記のように、通常
のケースでは、中央演算回路1_10A1においてデジタル動画信号における本来
画像の描画命令が生成・送信されることに対応して、外部ディスプレイ装置5の画
5 面には本来画像が表示される。その際、外部ディスプレイ装置5又は接続ユニット
3におけるインターフェース部C1_35がアップスキャンコンバート機能を有す
る場合には、該本来画像が外部ディスプレイ装置5の画面全体にわたって表示され、
そうでない場合には、画面の中央部分、又は四隅のいずれかに偏った部分だけが表
示領域となって、それ以外の部分は非表示領域となるような形態で表示される(た
10 だし、ハイビジョンテレビ放送を視聴し、外部ディスプレイ装置5がフルハイビジ
ョンモニタである場合には、インターフェース部C1_35がアップスキャンコン
バート機能を有しない場合でも、本来画像が外部ディスプレイ装置5の画面全体に
表示される)。いずれの場合も外部ディスプレイ装置5の画面に表示される画像の
解像度は本来解像度のままで変わらない。
15 一方、フラッシュメモリ14Aが画像の補間プログラムを格納しており、中央演
算回路1_10A1がそれに従って作動しているケースでは、外部ディスプレイ装
置5の画面解像度と同じ解像度を有する画像の描画命令を生成 送信する場合には、
・
本来解像度よりも解像度の大きい画像が、外部ディスプレイ装置5の画面全体にわ
たって表示される。
20 【0130】
なお、画像データを外部ディスプレイ装置5の画面で再生する場合にも、中央演
算回路1_10A1、グラフィックコントローラ1_10B及びTMDSトランス
ミッタ13A等の機能は、基本的には他の用途における機能と同じである。
画像データの本来画像の解像度と外部ディスプレイ装置5の解像度の大小関係、
25 補間プログラムの有無、さらには外部ディスプレイ装置5又は接続ユニット3がマ
ルチスキャン機能を有しているか否かと等に応じて、本来画像、本来画像から画素
が間引かれることによって低解像度となった画像、又は本来画像に画素が補間され
ることによって高解像度となった画像が、外部ディスプレイ装置5の画面全体にわ
たって表示されたり、画面の中央部分、又は四隅のいずれかに偏った部分の表示領
域に表示されたりする。
5 【0132】
また、携帯電話機1の中央演算回路1_10A1は、外部キーボード61又はマ
ウス62を操作することによって入力されたデータに基づき、上記のようにフラッ
シュメモリ14Aにアクセスするかわりに、バス19、外部接続端子部A_13D、
接続ケーブル2及び接続ユニット3のインターフェース部B_33を経由してHD
10 D34にアクセスすることにより、ビットマップデータやデジタル音声データを必
要に応じて圧縮したデータファイルとして書き込んだり、逆にデータファイルを読
み出して必要な処理を行うことにより、描画命令をグラフィックコントローラ1_
10Bに出力したり、デジタル音声信号をベースバンドプロセッサ11経由でCO
DEC18Cに出力したりする。また、中央演算回路1_10A1は、フラッシュ
15 メモリ14Aに格納されたデータファイルを読み出して、バス19、外部接続端子
部A_13D、及び接続ユニット3のインターフェース部B_33を経由して、H
DD34に保存することができる。
この際、HDD34の容量は、フラッシュメモリ14Aよりもはるかに大きくで
きるため、例えば、長時間のムービーの保存や数多くの音楽ファイルの保存を制約
20 なく行うことができる。
【0133】
なお、グラフィックコントローラ1_10Bで生成されたビットマップデータの
送信先の指定(切り替え)や、中央演算回路1_10A1に対するデータの入力元
の指定(切り替え)は、上記のように、受信した接続検知信号に基づいて自動的に
25 行われるだけでなく、例えば、携帯電話機1のキー操作部16Aのマニュアル操作
によって行うような構成とすることも可能である。また、外部ディスプレイ装置5
に出力されるビットマップデータが記述する画像の解像度の指定は、上記のように、
受信した外部ディスプレイ装置5の画面解像度データに基づいて自動的に行われる
だけでなく、例えば、LCDパネル15A又は外部ディスプレイ装置5の画面に解
像度の選択肢を示す画像を表示し、外部キーボード61又はマウス62によって外
5 部ディスプレイ装置5の画面解像度に適合した解像度を選択する仕方で行うような
構成とすることもできる。あるいは、そのような選択手段は設けず、外部ディスプ
レイ装置5に出力されるビットマップデータが記述する画像の解像度を、例えばV
GAサイズに固定することも可能である。
【0146】
10 (第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る携帯情報通信装置と携帯情報通信装置用
外部入出力ユニットとを接続することによって構成した情報通信システムの構成及
び機能を説明するためのブロック図であり、特に、該携帯情報通信装置が携帯電話
機である場合について説明している。
15 【0151】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態に係る携帯情報通信装置と携帯情報通信装置用
外部入出力ユニットとを接続することによって構成したナビゲーションシステムの
構成を説明する外観図であり、特に、該携帯情報通信装置が携帯電話機である場合
20 を説明している。
【0153】
その際、中央演算回路1_10A1は、外部入出力ユニット4が接続しているこ
とを検知する接続検知信号に基づき、グラフィックコントローラ1_10Bに対し
て、生成したビットマップデータを、LCDドライバ15BとTMDSトランスミ
25 ッタ13Aのいずれかに送信することを命じる送信命令も合わせて送信する。
これに基づき、グラフィックコントローラ1_10Bは、中央演算回路1_10
A1から受信した描画命令に基づき、仮想画面におけるビットマップデータを生成
しVRAM1_10Cに書き込むとともに、LCDパネル15Aの画面解像度又は
外部入出力ユニット4における外部LCDタッチパネル456の画面解像度に対応
する部分をVRAM1_10Cから切り出し、それぞれLCDドライバ15B又は
5 TMDSトランスミッタ13Aに送信する。そして、このビットマップデータを必
要なインターフェースを介して受信することにより、携帯電話機1のLCDパネル
15A 又は外部入出力ユニット4の外部LCDタッチパネル456に、自らの現在位
置が中心部に示された地図画像に、必要に応じて画面の上部・下部に表示されるメ
ニュー表示等を組み合わせた全画面画像が表示される。
【図1】
【図6】
【図8】
(別紙2)
【特許請求の範囲】
【請求項1】内蔵された内部表示装置における表示以外に、外部表示装置を接続し
て表示させることが可能な携帯情報処理装置において、
5 前記内部表示装置と、前記内部表示装置よりも高解像度の前記外部表示装置に表示
させる表示データを格納する表示メモリと、
前記内部表示装置による内部表示と、前記外部表示装置による外部表示とをそれぞ
れ制御して、前記表示メモリに格納された表示データに応じた画面を表示させる表
示コントローラと、
10 前記前記内部表示装置による内部表示の内容を選択的に前記外部表示装置に表示さ
せる表示制御手段とを具備したことを特徴とする携帯情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【0002】
【従来の技術】一般に、携帯情報処理装置は、携帯性を確保するために装置の小型
15 化が要求され、それに伴って出力装置として内蔵した表示デバイスの表示サイズも
小さくなってしまうため、例えば特開平8-115063号に開示されているよう
に、大きな表示サイズでの表示を可能とするために外部表示機器であるCRTを接
続可能な機能が設けられている。
【0003】携帯情報処理装置は、外部表示機器を接続した場合、内蔵した表示デ
20 バイスにおいて表示する描画イメージと同じ描画イメージを外部表示機器において
表示させる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように従来の携帯情報処理装置では、外部表
示機器を接続した場合には、内蔵した表示デバイスでの描画イメージと同じ描画イ
25 メージを、外部表示機器において表示させていた。
【0005】従って、外部表示機器を用いた場合には、画面の物理的な表示サイズ
が大きくなるだけであって、外部表示機器の解像度が内蔵した表示デバイスの解像
度よりも高く、より多くの情報を表示可能であったとしても、同じ情報を提供する
だけとなっていた。
【0006】つまり、従来の携帯情報処理装置では、内蔵した表示デバイスの解像
5 度よりも高解像度の外部表示機器を利用することで生じる、より広い画面表示サイ
ズを有効に利用することができなかった。
【0007】本発明は前記のような事情を考慮してなされたもので、外部表示機器
における表示を有効に活用することが可能な携帯情報処理装置及び外部表示出力の
制御方法を提供することを目的とする。
10 【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、内蔵された内部表示装置における表示以
外に、外部表示装置を接続して表示させることが可能な携帯情報処理装置において、
内部表示装置における内部表示用の表示データを格納するための領域と、内部表示
装置よりも高解像度の外部表示装置における外部表示用の表示データを格納するた
15 めの領域を表示メモリに確保し、内部表示用の表示データを選択的に外部表示用の
領域に格納することで、解像度の違いによる外部表示装置における表示領域を有効
に利用できるようにしている。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
20 はじめに、本実施形態における携帯情報処理装置(携帯機器2)の基本構成、及び
動作の概略について説明する。
【0011】図2は、図1に示す携帯機器2のシステム構成を示すブロック図であ
る。・・・
【0012】図1に示すように、本実施形態における携帯機器2は、CPU10、
25 システムメモリ(DRAM)12、ROM14、入力装置16、表示メモリ18、
表示コントローラ20、及び内部表示装置22を有して構成されている。また、携
帯機器2は、表示コントローラ20を介して、外部表示装置24(図1中に示す外
部表示デバイス4)を接続して表示させることができる。
【0013】CPU10は、システム全体の制御を司るもので、システムメモリ1
2やROM14に格納されたプログラム、例えば表示制御に関係するOS(オペレ
5 ーティングシステム)、表示描画プログラム、デバイスドライバ等に従って各種の
制御を実行する。
【0014】システムメモリ12は、プログラムやデータ等の一時使用の記憶領域
として使用される。ROM14は、プログラム等の本体の記憶領域として使用され
る。
10 【0015】入力装置16は、画面の座標位置等入力するペン(タブレット)やマ
ウス等のポインティングデバイス、文字等を入力するキーボードなどにより構成さ
れる。表示メモリ18は、内部表示装置22及び外部表示装置24において表示さ
せる表示データの記憶領域として使用される。表示メモリ18の記憶領域の制御に
ついては後述する。
15 【0016】表示コントローラ20は、内部表示装置22及び外部表示装置24に
おける表示を制御するもので、表示メモリ18に格納された表示データに応じて、
内部表示装置22と外部表示装置24に対して異なる画面を表示させることができ
る。
【0017】内部表示装置22は、携帯機器2に予め内蔵されたLCD等によって
20 構成される表示デバイスであり、携帯機器2の筐体のサイズに応じて比較的、表示
サイズが小さい表示装置である。・・・
【0018】外部表示装置24は、携帯機器2にケーブル等(無線等による接続も
可能)を介して任意に接続されるCRT等によって構成される表示デバイスであり、
本実施形態では内部表示装置22よりも表示サイズが大きく、かつ高解像度である
25 ものが用いられるものとする。
【0033】次に、内部表示装置22及び外部表示装置24における描画の動作に
ついて説明する。図6は、内部表示装置22及び外部表示装置24で描画を行なう
ための簡単な流れの仕組みを示す図である。
【0034】ここでは、システムは定常状態であり、通常の表示、すなわち内部表
示装置22における内部表示が行われているものとし、さらに外部表示装置24に
5 よる外部表示を行わせる。
【0035】まず、外部表示装置24において外部表示させるために、ユーザによ
って外部表示装置24への表示データ(描画イメージ)の出力方法を指定させる。
この出力方法の指定は、例えばアプリケーションプログラム35の実行により提供
される機能によって、ユーザからの指示を入力装置16から指定させる。出力方法
10 の指定の内容としては、例えば「内部表示と同じ描画イメージを表示する」、「内
部表示と異なった描画イメージを表示する」といった指定があるものとする。
【0036】アプリケーション35によって出力方法の指定が入力されると、OS
38の制御のもとで、内部表示用と外部表示用のそれぞれの描画プログラム(以下、
内部表示ドライバ36、外部表示ドライバ37)に従って、表示コントローラ20
15 に対してユーザからの指定の設定、すなわち内部表示と外部表示に用いる表示デー
タ(描画イメージ)を示すアドレスを表示コントローラ20内のレジスタ20bに
設定する。
【0037】一方、アプリケーションプログラム35は、内部表示装置22と外部
表示装置24において描画させるイメージ、すなわち内部表示イメージと外部表示
20 イメージの2種類を、それぞれの表示装置の解像度に合わせて、表示メモリ18上
にライトする。
【0038】表示コントローラ20は、アプリケーションプログラム35によって
ライトされた内部表示イメージと外部表示イメージに応じて、内部表示装置22と
外部表示装置24に対して、それぞれに応じた描画イメージを表示させる。
25 【0039】図7は、前述のようにして内部表示イメージと外部表示イメージがラ
イトされる、表示メモリ18の使用方式の一例を示す図である。図7(a)に示す
例は、解像度の異なる内部表示装置22(低解像度)と外部表示装置24(高解像
度)に対して、表示メモリ18の表示エリアの一部を共有させることを示している。
【0083】表示描画プログラムは、外部表示用の領域に関する情報(例えば開始
アドレス、メモリサイズなど)をシステムメモリ12へ記憶することでOSへ渡す。
5 また、表示コントローラ20に表示を開始するアドレスを設定して表示を行う(ス
テップE15)。なお、表示内容に関しては、内部表示及び外部表示の何れについ
ても上位のアプリケーションによって指定される。
【0103】・・・本装置を実現するコンピュータは、記録媒体に記録されたプロ
グラムを読み込み、または通信媒体を介してプログラムを受信し、このプログラム
10 によって動作が制御されることにより、上述した処理を実行する。
【0104】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、内部表示装置における内部表
示用の表示データを格納するための領域と、内部表示装置よりも高解像度の外部表
示装置における外部表示用の表示データを格納するための領域を表示メモリに確保
15 し、内部表示用の表示データを選択的に外部表示用の領域に格納することで、解像
度の違いによる外部表示装置における表示領域を有効に利用することが可能となる。
【図1】
【図2】
5 【図6】
【図7】
(別紙3)
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話機(通信機能搭載のパームトップPCやPDA[Person
5 al Digital/Data Assistant]などの携帯電子機器を含
む)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、携帯電話機の多くは、各種情報(静止画や動画、文字など)を表示する
10 手段として、数インチの表示部(液晶ディスプレイなど)を有して成る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
確かに、上記構成から成る携帯電話機は、アドレス帳や電子メールの内容、或いは
携帯電話機での閲覧を目的として作成されたWebコンテンツ等を表示部に出力す
15 ることができるので、ユーザにとって非常に便利である。
【0005】
しかしながら、上記構成から成る携帯電話機では、本体の携帯性を考慮して表示部
の設置面積を大きくとれないため、表示内容の視認性や臨場感が乏しい上、ユーザ
の視力低下を招くおそれがあった。また、携帯電話機での閲覧が意図されていない
20 Webコンテンツについては、正常に表示することすらできなかった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑み、本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認
性や臨場感を向上させることが可能な携帯電話機の提供を第1の目的と・・・す
る。
25 【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る携帯電話機は、入力された情報を外部表
示装置で読取可能な画像信号形式に変換して出力する画像出力部を有して成り、前
記外部表示装置への情報出力を行う構成としている。このような構成とすることに
より、本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性や臨場感を向上させるこ
5 とが可能となる。
【0012】
また、上記構成から成る携帯電話機において、前記外部表示装置に出力される情報
は、サーバから取得されたWebコンテンツ情報とすればよい。このような構成と
することにより、外部表示装置には、閲覧中のWebコンテンツ情報が表示される
10 ことになるので、携帯電話機本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性を
向上させることが可能となる上、携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコ
ンテンツについても、正常に表示することが可能となる。また、ユーザは、外部表
示装置を通してWebコンテンツ情報を閲覧しながら、携帯電話機本体で良好な音
声通話を行うことが可能となる。
15 【0013】
また、上記構成から成る携帯電話機において、前記外部表示装置に出力される情報
は、サーバから取得されたストリーミング情報に含まれる画像情報とすればよい。
このような構成とすることにより、外部表示装置には、再生中のストリーミング画
像が表示されることになるので、携帯電話機本体の携帯性を損なうことなく、表示
20 内容の視認性及び臨場感を向上させることが可能となる。また、ユーザは、外部表
示装置を通して再生中のストリーミング画像を見ながら、携帯電話機本体で良好な
音声通話を行うことが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
25 図1は本発明に係る携帯電話機の要部構成を示すブロック図である。本図に示すよ
うに、本発明に係る携帯電話機1は、制御部10と、送受信部11と、表示部12
と、音声部13と、操作部14と、撮像部15と、記憶部16と、画像出力部17
と、を有して成る。
【0016】
制御部10は、CPU[Central Processing Unit]等か
5 ら成り、上記各部11~17を含む装置全体の動作を制御する。送受信部11は、
送信回路と受信回路を有して成り、アンテナ11aを介して電波を送受信すること
で、基地局(不図示)との双方向通信を行う。なお、アンテナ11aとしては、携
帯性や格納性に優れたロッドアンテナを用いるとよい。表示部12は、液晶ディス
プレイ等から成る情報表示手段である。音声部13は、マイク13aやスピーカ1
10 3bを制御する音声入出力手段である。操作部14は、ダイヤルキーやブラウザ操
作キー等を備えた入力デバイスである。撮像部15は、CCDカメラやCMOSカ
メラから成る画像撮影手段である。記憶部16は、ROMやRAMから成る情報格
納手段である。本発明の特徴部分である画像出力部17は、入力された情報(静止
画や動画、文字など)を外部表示装置2で読取可能な画像信号形式(例えば、ビデ
15 オ信号形式)に変換して出力するインターフェイス部である。
【0018】
第1の具体例は、記憶部16の格納情報(アドレス帳や電子メールの内容等)を外
部表示装置2に出力する場合である。この場合、制御部10は、記憶部16から所
望の情報を読み出して画像出力部17に送出し、該情報を外部出力するように要求
20 する。該要求を受けた画像出力部17は、制御部10からの入力情報に所定の信号
処理を施して外部表示装置2に出力する。このような動作により、外部表示装置2
には、携帯電話機1の記憶部16から読み出された情報が表示されることになる。
従って、外部表示装置2として表示部12より大型のモニタ装置を用いれば、携帯
電話機1本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性を向上させることが可
25 能となる。
【0020】
第3の具体例は、閲覧中のWebコンテンツ情報を外部表示装置2に出力する場合
である。この場合、制御部10は、送受信部11を介して指定サーバから所望のW
ebコンテンツ情報を取得して画像出力部17に送出し、該情報を外部出力するよ
うに要求する。該要求を受けた画像出力部17は、制御部10からの入力情報に所
5 定の信号処理を施して外部表示装置2に出力する。このような動作により、外部表
示装置2には、閲覧中のWebコンテンツ情報が表示されることになる。従って、
外部表示装置2として表示部12より大型のモニタ装置を用いれば、携帯電話機1
本体の携帯性を損なうことなく、表示内容の視認性を向上させることが可能とな
る。また、携帯電話機での閲覧が意図されていないWebコンテンツについても、
10 表示部12のサイズや解像度に依存することなく正常に表示することが可能とな
る。
【0026】
【発明の効果】
上記したように、本発明に係る携帯電話機であれば、本体の携帯性を損なうことな
15 く、表示内容の視認性や臨場感を向上させることが可能となる。・・・
【図1】
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