令和4(ワ)6619損害賠償請求事件
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裁判所 |
請求棄却 東京地方裁判所東京地方裁判所
|
裁判年月日 |
令和4年12月23日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
原告株式会社サーナ
A 被告有限会社セキトバ
B
|
対象物 |
人体用加圧バンド |
法令 |
著作権
著作権法114条3項2回 著作権法21条1回 著作権法2条1項1号1回
|
キーワード |
損害賠償8回 侵害5回 許諾4回 特許権1回 実施1回
|
主文 |
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、原告らの負担とする。15 |
事件の概要 |
1 事案の要旨
本件は、原告らが、被告らに対し、被告セキトバの運営するオンラインスト
アにおいて、別紙原告画像目録記載の画像(以下「本件原告画像」という。)を
複製した画像を掲載し、同画像に係る加圧ベルトを販売した行為について、次
の各請求(原告サーナの被告セキトバに対する(1)ないし(3)及び(5)の各請求は25
選択的併合)をする事案である(なお、原告らは、第1審第3回口頭弁論期日
において、請求の趣旨は前記第1記載のとおりであると訂正したが、その後の
争点整理手続において請求及び主張が追加、変更されたことに伴って齟齬が生
じている。)。
(1) 原告サーナが、被告セキトバに対し、著作権(複製権及び公衆送信権)侵
害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求として、信用毀損による損害、5
営業機会を喪失したことによる損害及び著作権法114条3項により算定さ
れる使用料相当額である損害金110万円の支払を求めるもの
(2) 原告サーナが、被告セキトバに対し、不正競争防止法(以下「不競法」と
いう。)2条1項1号所定の不正競争(主位的)及び同項21号所定の不正競 |
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判決文
令和4年12月23日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和4年(ワ)第6619号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和4年10月31日
判 決
5 原 告 株 式 会 社 サ ー ナ
(以下「原告サーナ」という。)
原 告 A
(以下「原告A」という。)
被 告 有 限 会 社 セ キ ト バ
10 (以下「被告セキトバ」という。)
被 告 B
(以下「被告B」という。)
主 文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
15 2 訴訟費用は、原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告らは、原告サーナに対し、連帯して、110万円を支払え。
2 被告らは、原告Aに対し、連帯して、30万円を支払え。
20 第2 事案の概要
1 事案の要旨
本件は、原告らが、被告らに対し、被告セキトバの運営するオンラインスト
アにおいて、別紙原告画像目録記載の画像(以下「本件原告画像」という。)を
複製した画像を掲載し、同画像に係る加圧ベルトを販売した行為について、次
25 の各請求(原告サーナの被告セキトバに対する(1)ないし(3)及び(5)の各請求は
選択的併合)をする事案である(なお、原告らは、第1審第3回口頭弁論期日
において、請求の趣旨は前記第1記載のとおりであると訂正したが、その後の
争点整理手続において請求及び主張が追加、変更されたことに伴って齟齬が生
じている。。
)
(1) 原告サーナが、被告セキトバに対し、著作権(複製権及び公衆送信権)侵
5 害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求として、信用毀損による損害、
営業機会を喪失したことによる損害及び著作権法114条3項により算定さ
れる使用料相当額である損害金110万円の支払を求めるもの
(2) 原告サーナが、被告セキトバに対し、不正競争防止法(以下「不競法」と
いう。)2条1項1号所定の不正競争(主位的)及び同項21号所定の不正競
10 争(副位的)を理由とする不競法4条に基づく損害賠償請求として、信用毀
損による損害及び営業機会を喪失したことによる損害である損害金110万
円の支払を求めるもの
(3) 原告サーナが、被告セキトバ及び被告Bに対し、原告サーナになりすまし
て加圧ベルトを販売したことを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求と
15 して、信用毀損による損害及び営業機会を喪失したことによる損害である損
害金110万円の連帯支払を求めるもの
(4) 原告Aが、被告Bに対し、前記(1)ないし(3)の被告セキトバ及び被告Bの
行為に係る不法行為に基づく損害賠償請求として、交通費、弁護士費用及び
営業機会を喪失したことによる損害である損害金30万円の支払を求めるも
20 の
(5) 原告サーナが、被告セキトバに対し、不当利得返還請求として、被告セキ
トバの売上相当額である利得金110万円の返還を求めるもの
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨に
より容易に認められる事実)
25 当事者
ア 原告サーナは、健康器具等の企画、製造、販売及び輸出入などを目的と
する株式会社であり、原告Aは、原告サーナの代表取締役である(甲1)。
イ 被告セキトバは、一般建築工事業及び一般土木工事業に関する請負事業、
健康機器・福祉用具の事業並びに不動産の所有、管理、賃貸、売買、仲介
の事業などを目的とする特例有限会社であり、被告Bは、被告セキトバの
5 代表取締役である(甲2)。
(2) 原告サーナによる加圧ベルトの販売
原告Aは、発明の名称を「人体用加圧バンド」とする発明に係る特許(特
許第5567788号)の特許権者である(甲4)。
原告サーナは、原告Aから上記発明の実施許諾等を受けて、平成26年4
10 月から、販売代理店である株式会社Sosoft(以下「Sosoft」と
いう。)を通じ、インターネット上のオンラインストア「Trend Hon
po」において、本件原告画像に表示された加圧ベルト(以下「本件商品」
という。)を販売している(甲5、6、15、16、18)。
(3) オンラインストア「マキシマムショップ」における本件画像の掲載及び本
15 件商品の販売
インターネット上のオンラインストア「マキシマムショップ」のウェブサ
イト(以下「本件サイト」という。)において、別紙画像目録記載の画像(以
下「本件画像」という。)が掲載されるとともに、本件商品が7525円(消
費税込み)で販売された。
20 本件サイトには、問合せ先として次の記載がされていた。
お問い合わせ窓口 C
住所 (省略)
お問い合わせ メール:(省略)
(以上、甲3)
25 3 争点
(1) 本件サイトにおいて本件画像を掲載し、本件商品を販売した者は誰か(争
点1)(請求(1)ないし(5)関係)
(2) 被告セキトバによる著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請
求の当否(争点2)(請求(1)関係)
(3) 被告セキトバによる不正競争を理由とする不競法4条に基づく損害賠償請
5 求の当否(請求(2)関係)
ア 被告セキトバによる不競法2条1項1号の不正競争の成否(争点3-1)
イ 被告セキトバによる不競法2条1項21号の不正競争の成否(争点3-
2)
(4) 原告サーナに対し被告らが不法行為責任を負うか否か(争点4)(請求(3)
10 及び(4)関係)
(5) 原告サーナに生じた損害の有無及びその額(争点5)(請求(1)ないし(3)関
係)
(6) 原告Aに対する不法行為の成否並びに原告Aに生じた損害の有無及びその
額(争点6)(請求(4)関係)
15 (7) 被告セキトバによる不当利得の有無及び利得額(争点7)(請求(5)関係)
4 争点に関する当事者の主張
(1) 争点1(本件サイトにおいて本件画像を掲載し、本件商品を販売した者は
誰か)について
(原告らの主張)
20 本件サイトには責任者が「C」であると記載されていたことから、原告ら
は、被告訴人を「C」、告訴事実を不競法2条1項1号及び同項21号の不正
競争を行ったこととして告訴した。その後、警察から犯人が特定されたとの
連絡があり、「C」は架空人物であって、主犯格は株式会社アリシア(以下
「アリシア」という。)を経営するD(以下「D」という。)であると報告さ
25 れるとともに、被告B及び被告セキトバの氏名及び名称が報告された。
そして、本件サイトに問合せ先として記載されているメールアドレスには、
「セキトバ」と読むことができる文字列があるし、住所も被告らの本店所在
地ないし住所地と同一である。
また、アリシアが開設していたオンラインストア「アリシアストア」(以下、
単に「アリシアストア」という。)でも、本件サイトと同様に、本件商品が販
5 売されていた。アリシアの代表者であるDは、被告Bの友人でヨット仲間で
もあり、当時、アリシアの本店所在地は被告セキトバの本店所在地と同一で
あった。このように、被告らとD及びアリシアとは深い関係にある。
さらに、被告セキトバは、「健康機器・福祉用具の事業」も目的としている
ことから、本件商品を健康、福祉に利用できるとして本件サイトにおいて転
10 売していたと思われる。
加えて、上記のとおり、被告らの名称及び氏名は、警察の調査によって判
明したものであるが、仮に被告らが本件に関係がないのであれば、警察は原
告らに被告らの名称及び氏名を報告しないはずである。
以上の事実関係に鑑みれば、本件サイトにおいて、本件画像を掲載し、本
15 件商品を販売していたのは、被告セキトバというべきである。
(被告らの主張)
ア 被告らは、本件画像の掲載や本件商品の販売に一切関与していない。
イ メールアドレスはどのようにも作成できるものであるし、「sekitoba」、
「セキトバ」という呼称も三国志に登場する著名な馬の名前であるから、
20 被告らと関連があるとするのは、強引な理由づけにすぎない。
ウ 確かに、被告BとDとは知り合いである。しかし、Dは、200名以上
の会員がいるヨットクラブの仲間うちの一人にすぎない。被告らは、本件
の問題が生じるまで、アリシアとの名称の会社があることを知らなかった。
また、被告らは事務所の建物の部屋をシェアオフィスとして提供してお
25 り、当該シェアオフィスの住所地がいくつかの会社の本店所在地として登
記されていることがある。もっとも、被告らは、当該会社に対し、当該シ
ェアオフィスの住所地を本店所在地として登記するときは、被告らの承諾
を得るよう求めている。被告らは、Dに対し、シェアオフィスとして部屋
を貸したこともない。
エ 被告らが警察に照会したところ、被告らは原告らの主張する告訴に係る
5 犯罪捜査の対象となっていないことが確認できている。
(2) 争点2(被告セキトバによる著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損
害賠償請求の当否)について
(原告らの主張)
ア 本件原告画像の著作物性
10 本件原告画像中の本件商品の写真は、原告Aの指示を受けたSosof
tのスタッフ2名が撮影し、原告Aと同社スタッフとの間でデータを交互
にやり取りして作成したものである。
また、本件原告画像中の文言は、原告Aが考案したものをSosoft
のスタッフが加工し、原告Aがそのフォントや色を変更して作成したもの
15 である。
このように、本件原告画像は、原告Aの個性が多様に盛り込まれて表現
されたものであるから、著作権法2条1項1号所定の著作物に当たる。
イ 本件原告画像の著作権者
本件原告画像は、原告サーナが、本件商品を販売する目的で、その発意
20 に基づき、代表取締役である原告A及びその指示を受けたSosoftに
作成させたものである。
したがって、原告サーナは、本件原告画像の著作権者である。
ウ 著作権侵害行為
被告セキトバは、本件原告画像を複製して本件画像を作成し、遅くとも
25 平成31年1月頃から令和元年6月末頃まで、本件サイトにおいて本件画
像を掲載した。
この行為は、本件原告画像に係る原告サーナの複製権(著作権法21条)
及び公衆送信権(同法23条)を侵害するものである。
エ 被告セキトバの故意
本件サイトの責任者とされた「C」が架空人物である以上、前記ウの複
5 製及び掲載行為が被告セキトバの故意によってされたものであることは明
らかである。
(被告セキトバの主張)
否認ないし争う。
(3) 争点3-1(被告セキトバによる不競法2条1項1号の不正競争の成否)
10 について
(原告らの主張)
ア 「株式会社サーナ」は、商品等表示として需要者の間で広く認識されて
いる。
原告サーナは、本件原告画像を複製して利用することを正規の販売代理
15 店にしか認めていないから、需要者は、本件原告画像が掲載されているウ
ェブサイトを、原告サーナが許諾した正規の販売代理店が運営するものと
認識するのが通常である。そうすると、本件サイトに掲載されている本件
画像を見た需要者は、「マキシマムショップ」が原告サーナの正規の販売代
理店であると誤認する。
20 したがって、被告セキトバが本件サイトに本件画像を掲載した行為は、
不競法2条1項1号の不正競争に当たる。
イ 前記(2)(原告らの主張)エにおいて主張したところと同様に、本件サイ
トの責任者とされた「C」が架空人物である以上、前記アの不正競争が被
告セキトバの故意によってされたものであることは明らかである。
25 (被告セキトバの主張)
否認ないし争う。
(4) 争点3-2(被告セキトバによる不競法2条1項21号の不正競争の成否)
について
(原告らの主張)
ア 原告サーナは、本件商品を定価4980円で販売していた。
5 しかし、被告セキトバは、本件サイトで本件商品を販売するに当たり、
販売主体を原告サーナであると偽ってなりすまし、原告サーナがあたかも
二つの店舗において同一商品を異なる価格で販売しているような虚偽の外
観を作った。これにより、原告サーナの営業上の信用が毀損された。
したがって、被告セキトバが、本件サイトにおいて、本件画像を掲載し、
10 本件商品を販売した行為は、原告サーナに対する不競法2条1項21号の
不正競争に当たる。
イ 前記(2)(原告らの主張)エにおいて主張したところと同様に、本件サイ
トの責任者とされた「C」が架空人物である以上、前記アの不正競争が被
告セキトバの故意によってされたものであることは明らかである。
15 (被告セキトバの主張)
否認ないし争う。
(5) 争点4(原告サーナに対し被告らが不法行為責任を負うか否か)について
(原告らの主張)
ア 被告Bは、自らの利益を得るために、被告セキトバを利用し、前記(4)
20 (原告らの主張)のとおり、原告サーナになりすまして本件商品を販売し
た。
前記(2)(原告らの主張)エにおいて主張したところと同様に、本件サイ
トの責任者とされた「C」が架空人物である以上、被告Bに故意があった
ことは明らかである。
25 したがって、被告Bの上記行為は、不法行為に当たる。
イ 本件において、被告BがDとつながりがあることは明らかであるものの、
実際に本件画像の掲載や本件商品の販売を行ったのが、被告セキトバであ
るのか被告Bであるのかは必ずしも明らかでなく、不明というほかない。
このように不法行為者が被告セキトバか被告Bかが不明である以上、被
告らは、原告らに生じた損害を連帯して賠償する責任がある。
5 (被告らの主張)
否認ないし争う。
(6) 争点5(原告サーナに生じた損害の有無及びその額)について
(原告サーナの主張)
ア 信用毀損による損害
10 被告セキトバは、本件商品の注文が入るたびに、Sosoftから定価
で購入し、2545円を上乗せして再販売していた。本件商品の需要者か
らすると、原告サーナが、特定の販売代理店に、いわゆる「ぼったくり販
売」を認めているようにしか見えない。実際、原告サーナ及びSosof
tに対し、同じ商品を異なる店舗でより高く売っていると苦情の連絡が何
15 件も寄せられている。このように、被告セキトバの行為によって、原告サ
ーナが有する本件商品のブランド価値は大きく毀損した。
原告サーナにおける本件商品の売上げは、月額約100万円ないし15
0万円程度である。この売上額の水準に照らせば、信用毀損によって原告
サーナに生じた損害の額は110万円を下らない。
20 イ 営業機会喪失による損害
前記(2)ないし(5)において原告らが主張した被告らの行為により、原告
らは混乱に陥った。そのため、原告Aは、刑事告訴や民事訴訟などにより
対応したり、弁護士の事務所に何度も出向いて相談したりすることを余儀
なくされ、原告サーナには、その間の営業機会の喪失による損害が生じた。
25 この損害の額は30万円を下らない。
ウ 著作権法114条3項により算定される損害
原告サーナは、仮に第三者に本件原告画像を利用させるとしても、保有
する知的財産権を含めた全ての事業を譲渡すること以外の方法によって利
用させることを予定していない。
したがって、本件原告画像の使用料相当額は、原告サーナの全ての事業
5 を譲渡する代金相当額であって、その額は110万円を下らない。
(被告らの主張)
否認ないし争う。
(7) 争点6(原告Aに対する不法行為の成否並びに原告Aに生じた損害の有無
及びその額)について
10 (原告Aの主張)
ア 前記(6)(原告サーナの主張)イのとおり、原告Aは、刑事告訴や民事訴
訟などにより対応したり、弁護士の事務所に何度も出向いて相談したりす
ることを余儀なくされ、これに伴う交通費、弁護士費用及びその間の営業
機会の喪失による損害が生じた。
15 また、前記(2)ないし(5)において主張したとおり、被告Bにおいても故
意があったことは明らかである。
したがって、前記(2)ないし(5)において原告らが主張した被告らの行為
は、被告Bによる原告Aに対する不法行為に当たる。
イ 被告Bの不法行為によって原告Aに生じた損害は30万円を下らない。
20 (被告Bの主張)
否認ないし争う。
(8) 争点7(被告セキトバによる不当利得の有無及び利得額)について
(原告サーナの主張)
ア 本来、本件商品を販売するためには、原告Aから知的財産権の使用許諾
25 を得なければならない。被告セキトバがこの許諾を得ることなく本件商品
を販売して得た売上げは、被告セキトバが不当に得た利益であり、原告サ
ーナはこれにより損失を被った。
したがって、被告セキトバは、原告サーナに対し、上記売上相当額を不
当利得として返還する義務がある。
イ 前記アの利益ないし損失の額は110万円を下らない。
5 (被告セキトバの主張)
否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件サイトにおいて本件画像を掲載し、本件商品を販売した者は誰
か)について
10 (1) 前提事実(3)のとおり、本件サイトにおいて問合せ先として記載されている
住所は、被告セキトバの本店所在地及び被告代表者の住所地と同一であるこ
と、同メールアドレスのローカル部(@の左側の部分)には、被告セキトバ
の名称の英語表記と解し得る文字列が使用されていることが認められる。
他方で、上記問合せ先の窓口欄に記載されている「C」は、架空人物であ
15 ると認められ(弁論の全趣旨)、本件画像の掲載及び本件商品の販売のみなら
ず、本件サイトの開設及び運営自体についても、被告Bや被告セキトバの従
業員が行っていたと認めるに足りる証拠はない。また、被告セキトバが、上
記メールアドレスを実際に使用していたと認めるに足りる証拠はない上、そ
れを取得していたことを認めるに足りる証拠もない。
20 さらに、会社の名称や本店所在地は、当該会社の登記事項証明書を取得す
ることによって誰もが知ることができるから、当該会社と関係のない者であ
っても、その名称や本店所在地を容易に騙ることができるし、メールアドレ
スのローカル部も、そのドメイン(@の右側の部分)との組合せで既に使用
されているものでない限り、自由に選択できるものである。そうすると、本
25 件サイトの問合せ先欄に被告セキトバの本店所在地及び被告代表者の住所地
と同一の住所が記載されていたり、被告セキトバの名称の英語表記と解し得
る文言がローカル部に使用されているメールアドレスが記載されていたとの
事情をもって、被告Bや被告セキトバの従業員が、本件サイトに本件画像の
掲載及び本件商品の販売をしたと認めることは困難である。
(2) 原告らは、アリシアストアにおける本件商品の転売行為の主犯格とされる
5 Dと被告らとが深い関係にあることを指摘するところ、被告BとDとが、ヨ
ットクラブの仲間うちの一人であることは当事者間に争いがない。
しかし、このような事情があるからといって、被告Bや被告セキトバの従
業員が本件サイトにおいて本件画像の掲載及び本件商品の販売をしたといえ
ないことは明らかである。
10 かえって、アリシアストアにおいても、本件商品が本件サイトと同一の価
格で販売されており、その問合せ先として記載されていたメールアドレスと
本件ストアの問合せ先として記載されていたメールアドレスとにいずれも同
一のドメインが使用されていたと認められること(甲3、11)からは、ア
リシアストアの運営者が別の販売経路として本件サイトを開設していた可能
15 性がうかがわれ、本件サイトが被告らではなくDによって運営されていた可
能性を否定することはできないというべきである。
(3) また、原告らは、被告らの名称及び氏名は警察の調査によって判明したも
のであるところ、被告らが本件と無関係なのであれば、警察は原告らに被告
らの名称及び氏名を報告しないはずであると主張する。
20 しかし、仮に被告らの名称及び氏名が警察の調査によって判明したもので
あるとしても、警察が原告らにどのような趣旨で被告らの名称及び氏名を報
告したのかは本件全証拠によっても明らかではないから、この事情をもって
しても、被告Bや被告セキトバの従業員が、本件サイトに本件画像の掲載及
び本件商品の販売をしたと認めることはできない。
25 (4) 以上検討したところによれば、被告セキトバ及び被告Bが、本件サイトにお
いて、本件画像を掲載し、本件商品を販売したと認めることはできないとい
うべきであり、他にこれを認めるに足りる証拠はないから、この点について
の原告らの主張は採用できない。
2 小括
原告らの請求は、被告セキトバ又は被告Bが、本件サイトにおいて、本件画
5 像を掲載し、本件商品を販売したことを前提としているところ、前記1におい
て説示したとおり、当該事実を認めることができない以上、原告らの請求はい
ずれも理由がない。
第4 結論
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告らの被告らに
10 対する請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとして、主文のと
おり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
國 分 隆 文
裁判官
小 川 暁
裁判官
間 明 宏 充
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