令和5(ネ)10030特許権移転登録手続請求控訴事件
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裁判所 |
控訴棄却 知的財産高等裁判所知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
令和5年6月22日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被控訴人コギトケミカル株式会社
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法令 |
特許権
特許法35条3項2回 特許法74条1項1回 特許法34条1項1回 特許法123条1項6号1回
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キーワード |
職務発明33回 特許権7回 進歩性1回 新規性1回
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主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 |
事件の概要 |
1 事案の要旨
本件は、控訴人が、被控訴人に対し、別紙特許権目録記載1ないし3の特許権
(本件各特許権)に係る各発明(本件各発明)は、かつて控訴人の従業員であった
被控訴人代表者が、控訴人の従業員であった当時に完成させた職務発明であって、
控訴人が特許を受ける権利を有しているにもかかわらず、被控訴人代表者が控訴人
を退職した後に、被控訴人が出願して特許を受けたものであり、特許法123条1
項6号に規定する要件に該当すると主張して、同法74条1項に基づき、本件各特
許権の各移転登録を求める事案である。 |
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判決文
令和5年6月22日判決言渡
令和5年(ネ)第10030号 特許権移転登録手続請求控訴事件
(原審・大阪地方裁判所令和4年(ワ)第1848号)
口頭弁論終結日 令和5年6月1日
判 決
控 訴 人 サ ン シ ー ド 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 拾 井 美 香
被 控 訴 人 コギトケミカル株式会社
同訴訟代理人弁護士 藤 川 義 人
尾 倉 隆 景
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
用語の略称及び略称の意味は、本判決で付するもののほかは、原判決に従い、原
判決に「原告」とあるのを「控訴人」と、「被告」とあるのを「被控訴人」とそれ
ぞれ読み替える。また、原判決の引用部分の「別紙」を全て「原判決別紙」と改め
る。
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、別紙特許権目録記載1ないし3の特許権につき、
特許法74条1項を原因とする移転登録手続をせよ。
3 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
本件は、控訴人が、被控訴人に対し、別紙特許権目録記載1ないし3の特許権
(本件各特許権)に係る各発明(本件各発明)は、かつて控訴人の従業員であった
被控訴人代表者が、控訴人の従業員であった当時に完成させた職務発明であって、
控訴人が特許を受ける権利を有しているにもかかわらず、被控訴人代表者が控訴人
を退職した後に、被控訴人が出願して特許を受けたものであり、特許法123条1
項6号に規定する要件に該当すると主張して、同法74条1項に基づき、本件各特
許権の各移転登録を求める事案である。
原判決は、被控訴人代表者が控訴人を退職する前に、控訴人において、職務発明
について控訴人が原始取得する旨を定めた職務発明規程を制定していたとは認めら
れず、控訴人が、本件各発明に係る特許を受ける権利を取得したとは認められない
として、控訴人の請求をいずれも棄却し、控訴人が控訴した。
2 前提事実、争点及び争点に対する当事者の主張
以下のとおり訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概
要」の1及び2並びに「第3 争点に関する当事者の主張」に記載するとおりであ
るから、これを引用する。
(1) 原判決2頁6行目の「合成樹脂加工並に」を「合成樹脂加工、」と改める。
(2) 原判決2頁21行目冒頭から同頁22行目末尾までを次のとおり改める。
「(2) 控訴人と被控訴人代表者との間に、本件各発明についての特許を受ける権
利を控訴人に取得させる旨の黙示の合意が存在したか(争点2)
(3) 遡って控訴人に特許を受ける権利を取得させることを定めた職務発明取扱
規程(甲12。以下「甲12規程」という。)が存在し、その効力を有するか(争点
3)」
(3) 原判決3頁4行目の「の企画提案があり」を「についての企画提案をしてほ
しい旨の依頼があり」と、同頁5行目の「被告代表者が」を「被控訴人代表者らが」
とそれぞれ改め、同頁10行目の「提案」を削る。
(4) 原判決3頁11行目冒頭から5頁2行目末尾までを次のとおり改める。
「2 争点2(控訴人と被控訴人代表者との間に、本件各発明についての特許を
受ける権利を控訴人に取得させる旨の黙示の合意が存在したか)について
(控訴人の主張)
(1) 控訴人とその従業員との間においては、職務発明に関する特許を受ける権利
は当然に会社である控訴人に帰属するとの共通認識を有していたから、控訴人と被
控訴人代表者との間には、本件各発明に係る特許を受ける権利を控訴人に原始的に
帰属させる旨の黙示の合意があった。
(2) このことは、次の各事実から明らかである。
ア 控訴人の就業規則84条によれば、従業員が職務発明等を行った場合、会社
から要求があれば、特許等を受ける権利は、発明者及び会社が協議のうえ定めた額
を会社が発明者である社員に支払うことにより、会社に譲渡又は承継されることに
なっている。
しかし、控訴人では、従前から、従業員が職務発明を行った場合、労使間で協議
を行うことなく、控訴人名義で特許出願を行うことが当然の運用となっており、会
社の方から従業員に対し、特許を受ける権利を会社に譲渡又は承継するように要求
するという手続や、発明者と会社が協議のうえ定めた額を会社が発明者である社員
に支払うという手続が行われたことはなかった。
したがって、就業規則84条はいわば空文化した規定であり、会社と従業員間の
明示の合意と評価し得るものではない。
イ 被控訴人代表者は、平成29年頃に行った職務発明について、平成29年7
~8月頃に、控訴人を出願人として特許出願する手続を西原国際特許事務所に依頼
した(甲32、36の2等)が、このとき、控訴人が被控訴人代表者に対し、当該
発明について特許を受ける権利を移転するよう要求した事実はなく、また控訴人と
被控訴人代表者との間で承継対価の額について協議したことはなく、控訴人が対価
の支払をした事実もない。
控訴人と被控訴人代表者との間に黙示の合意が存在していたからこそ、被控訴人
代表者は控訴人との間で何ら協議等を行うことなく、西原国際特許事務所に控訴人
名義での特許出願の依頼を行ったのである。
ウ 控訴人は、本社移転後に各種社内規程の整備をしていたところ、控訴人の経
営企画部の担当者が、各種規程の整備についての助言指導を受けていた社会保険労
務士から、従前の取扱いを確認する形で、職務発明に関する規程も整備した方がよ
いとの助言を受けたことから、同担当者が文案を作成し、控訴人代表者が確認した
後、控訴人の労働者代表との協議を経て、平成30年9月3日に職務発明に係る規
程(サンプラスチックス株式会社職務発明取扱規定(甲12規程)。なお、控訴人
は、令和4年1月13日、商号をサンプラスチックス株式会社から現在のものに変
更した。)が制定された。
甲12規程は、従前の取扱いを確認するものとして制定されたものであり、その
適用日については、控訴人が研究開発センターを開設した翌年の「平成26年1月
1日」にするのが相当と判断し、経営企画部の担当者が労働者代表に対し、甲12
規程の適用を同日に遡らせる理由等を説明し、承諾を得て、甲12規程の第10条
に「この規程は、2014年1月1日以降に完成した発明に適用する。」という規
定を設けた。
エ 本件各発明は被控訴人代表者が単独で行ったものではなく、開発チームの構
成員(営業担当者であった被控訴人代表者の外、控訴人従業員のA、B及びC)が
共同で行ったものであるが、他の共同発明者は、特許を受ける権利が控訴人に原始
的に帰属することを認めている(甲49、50、52)。
オ 控訴人が、本件各発明について新規性・進歩性を欠くと考えていたために特
許出願をしていなかったところ、被控訴人代表者が、控訴人から大王製紙との取引
関係を奪うことを目的として、被控訴人において本件各発明に係る特許出願を行っ
た。このことは、被控訴人代表者が、控訴人退職後に、本件各発明に係る特許出願
を盾に、大王製紙に対し、ビジネスの提案を行っていることから明らかである。
(被控訴人の主張)
(1) 控訴人とその従業員との間に、控訴人の主張するような黙示の合意は存在し
ない。控訴人においては、職務発明について、就業規則上、「社員が自己の現在又
は過去における職務に関連して発明、考案をした場合、会社の要求があれば、特許
法、実用新案法、意匠法等により特許、登録を受ける権利又はその他の権利は、発
明者及び会社が協議のうえ定めた額を会社が発明者である社員に支払うことにより、
会社に譲渡又は継承されるものとする。」と明文化されていた(乙1・84条)。控
訴人の従業員が、職務発明について、控訴人を出願人とする特許出願をしていたと
しても、それは、従業員が原始取得した特許を受ける権利を、控訴人が承継したと
いうものであり、控訴人が就業規則に定められている対価の支払を怠っていたとい
うにすぎない。
(2) 控訴人は、本件各発明が共同発明であると主張するが、被控訴人代表者以外
の者は、技術的な開発に関わっておらず、そもそも本件各発明は平成30年5月頃
には完成していない。また、本件各発明が共同発明であるか否かは、黙示の合意の
成否には関係がなく、結論に影響しない。
3 争点3(遡って控訴人に特許を受ける権利を取得させることを定めた甲12
規程が存在し、その効力を有するか)について
(控訴人の主張)
前記2(控訴人の主張)(2)ウのとおり、甲12規程は、被控訴人代表者が控訴
人を退職した平成30年10月15日よりも前に適法に制定されたものであり、甲
12規程の適用日より後である同年5月頃に完成した本件各発明も甲12規程の適
用を受ける。甲12規程は、被控訴人代表者による本件各発明の特許出願を受けて
後付けで制定したものなどではない。
なお、甲12規程は、控訴人の従業員が日常的に使用している社内掲示板(社内
ポータル)に掲載されており、被控訴人代表者は、甲12規程が制定されてから控
訴人を退職するまでの1か月半の間に、甲12規程を確認していた。
(被控訴人の主張)
(1) 職務発明について、使用者に特許を受ける権利を帰属させるには、あらかじ
めその旨の定めが必要である(特許法35条3項)。
甲12規程は被控訴人代表者が控訴人を退職する前に有効に制定されたものでは
なく、本件各発明は被控訴人代表者が控訴人を退職した後に完成したものであるが、
それは措くとしても、控訴人の主張を前提とするならば、本件各発明の完成後に甲
12規程が制定され、それが遡及して本件各発明に適用されるということになると
ころ、「特許法第35条第6項に基づく発明を奨励するための相当の金銭その他の
経済上の利益について定める場合に考慮すべき使用者等と従業者等との間で行われ
る協議の状況等に関する指針」(平成28年4月22日経済産業省告示第131号)
には、「職務発明に係る権利が使用者等に帰属した時点で相当の利益の請求権が当
該職務発明をした従業者等に発生するため、その時点以後に改定された基準は、改
定前に使用者等に帰属した職務発明について、原則として適用されない。ただし、
使用者等と従業者等との間で、改定された基準を改定前に使用者等に帰属した職務
発明に適用して相当の利益を与えることについて、別途個別に合意している場合に
は、改定後の基準を実質的に適用することは可能であると考えられる。」とされて
おり、改定された基準を改定前に使用者等に帰属した職務発明に適用して相当の利
益を与えることについて、個別の合意が必要である。そして、本件においては、控
訴人と被控訴人代表者との間で個別の合意がされていないことについて争いがない。
したがって、甲12規程を被控訴人代表者に遡及的に適用することはできない。
(2) なお、仮に甲12規程が遡及的に適用されるとしても、特許を受ける権利が
譲渡されるにすぎないところ、本件では、既に、被控訴人が、被控訴人代表者から
本件各発明についての特許を受ける権利の譲渡を受けて出願しているから、特許法
34条1項により、控訴人は被控訴人に対し、上記譲渡の効果を対抗できない。
(3) 控訴人は、本件各発明が共同発明であると主張するが、前記2(被控訴人の
主張)(2)のとおり、被控訴人代表者以外の者は、技術的な開発に関わっていない
上に、本件各発明が共同発明であるか否かは、甲12規程の成立には関係がなく、
結論に影響しない。」
第3 当裁判所の判断
当裁判所も、控訴人の請求には理由がないものと判断する。理由は次のとおりで
ある。
1 争点2(控訴人と被控訴人代表者との間に、本件各発明についての特許を受
ける権利を控訴人に取得させる旨の黙示の合意が存在したか)について
(1) 特許法35条3項は「従業者等がした職務発明については、契約、勤務規則
その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを
定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から当該使用者等に帰属
する。」と規定する。同項は、使用者が、職務発明についての特許を受ける権利を
原始取得するために、発明がされる前に、あらかじめ契約等によりその旨の意思表
示がされていることを要件とする旨定めるものであり、契約等にはあらゆる形式の
合意が含まれるものと解される。
本件では、控訴人は、上記「契約等」について、控訴人と被控訴人代表者との間
に黙示の合意があったと主張する。
(2) ところで、控訴人の主張を前提とすると、本件各発明が完成したのは平成3
0年5月頃ということになるが、証拠(乙1)によると、同年5月時点において、
控訴人には就業規則(平成25年4月1日施行)が存在しており、職務発明につい
て次のとおり規定されていた。
「(特許、発明、考案等の取扱い)
第84条 社員が自己の現在又は過去における職務に関連して発明、考案をした
場合、会社の要求があれば、特許法、実用新案法、意匠法等により特許、登録を受
ける権利又はその他の権利は、発明者及び会社が協議のうえ定めた額を会社が発明
者である社員に支払うことにより、会社に譲渡又は継承されるものとする。」
上記規定からすると、平成30年5月頃、控訴人とその従業員との間には、職務
発明について、控訴人の要求があるときに、控訴人が発明者である従業員に対し、
協議して定めた額の金員を支払うことにより、特許を受ける権利が発明者から控訴
人に移転する旨の合意があったものと認めるのが相当であり、控訴人とその従業員
の間に、職務発明についての特許を受ける権利を、控訴人が原始取得する旨の合意
があったと認めることはできない。
(3) 控訴人は、前記(2)の就業規則の規定は空文化されており、控訴人と従業員
との間で、職務発明について控訴人に原始取得する旨の黙示の合意があり、そのこ
とは、①控訴人において、就業規則の規定にのっとった手続が行われたことがなか
ったこと、②被控訴人代表者が、平成29年7~8月に控訴人を出願人として職務
発明について特許出願をしたが、控訴人は特許を受ける権利の移転を要求しておら
ず、また、承継対価の額についての協議や対価の支払を行わなかったこと、③従前
からの取扱いを確認する形で平成30年9月3日に甲12規程が制定されたこと、
④本件各発明の共同発明者が、本件各発明についての特許を受ける権利が控訴人に
原始的に帰属する旨認めていること、⑤被控訴人代表者が大王製紙と控訴人との間
の取引を奪うことを目的として、控訴人において本件各発明についての特許出願を
したことから、明らかであると主張する。
ア しかしながら、控訴人の就業規則の附則(4)により、同就業規則の改廃は
社員(従業員)の代表者の意見を聴いて行うものとされているところ(乙1)、控
訴人において、就業規則の規定を変更するための手続が執られたことはなく、控訴
人とその従業員との間で、職務発明について就業規則の規定にかかわらず、特許を
受ける権利を控訴人に原始取得させることについての協議がされた等の事情もうか
がえないのであるから、控訴人と従業員との間で上記黙示の合意が成立していたも
のと認めることはできず、控訴人と被控訴人代表者との間でも、控訴人の主張する
黙示の合意がされたことを認めるに足りる証拠はないというほかない。職務発明に
係る特許を受ける権利を使用者である控訴人に原始取得させることは、従業員にと
って、就業規則を不利益に変更するものであるところ、控訴人において、職務発明
の出願に関して、就業規則の規定にのっとった手続が行われたことがなかったこと
をもって、何らの協議を経ることもなく、直ちに、就業規則が変更されたとか、控
訴人と従業員らとの間で、就業規則とは異なる内容の合意が成立したなどと認める
ことはできない(上記①)。
イ また、被控訴人代表者が、職務発明について、特許事務所に対して、控訴人
を出願人とする特許出願手続を依頼したことがあったという事実については、控訴
人を出願人とする特許出願手続を依頼することにより、被控訴人代表者が、控訴人
に対して、特許を受ける権利を移転する旨の意思表示をしたとみることもできるの
であって、上記事実をもって、控訴人と被控訴人代表者との間に、職務発明につい
ての特許を受ける権利を控訴人が原始取得する旨の黙示の合意があったと認めるこ
とはできない(上記②)。
ウ そして、甲12規程には、「職務発明については、その発明が完成した時に、
会社が特許を受ける権利を取得する。」との規定があり(第4条)、職務発明につい
ての特許を受ける権利が控訴人に原始的に帰属する旨定められているものの、甲1
2規程が適法に制定されたものであったとしても、控訴人の主張する本件各発明の
完成日(平成30年5月頃)よりも後の同年9月3日に制定されたものであるとい
うのであるから(甲12)、同日までに既に発生している特許を受ける権利の帰属
を原始的に変更することができるものではなく、このことは、甲12規程において、
平成26年1月1日以降に完成した発明に適用する旨規定されていることを考慮し
ても変わりはない(上記③)。
エ さらに、共同発明者であるとされる控訴人従業員の現時点における認識や、
被控訴人代表者の本件各発明の特許出願時の意図について、仮に控訴人の主張する
とおりであったとしても、これらの事項は、本件各発明の特許を受ける権利の帰属
に影響しない(上記④及び⑤)。
そうすると、控訴人の主張はいずれも採用できない。
2 争点3(遡って控訴人に特許を受ける権利を取得させることを定めた甲12
規程が存在し、その効力を有するか)について
前記1(3)ウのとおり、仮に甲12規程が適法に制定されたものであったとして
も、同規程制定前に生じたとされる本件各発明に係る特許を受ける権利の帰属を、
原始的に変更することができるものではない。
したがって、控訴人の甲12規程に基づく本件各特許権の取得を理由とする移転
登録手続請求は認められない。
3 結論
以上の次第で、その余の争点について判断するまでもなく、控訴人の請求はいず
れも理由がなく、控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であって、本件控
訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
本 多 知 成
裁判官
浅 井 憲
裁判官
勝 又 来 未 子
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