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令和4(ワ)9716特許権侵害差止請求事件

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裁判所 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和5年7月28日
事件種別 民事
当事者 原告neoALA株式会社
被告株式会社東亜産業
法令 特許権
特許法29条1項3号1回
特許法29条1項1回
特許法2条3項1号1回
民事訴訟法61条1回
キーワード 実施37回
刊行物15回
無効8回
新規性7回
特許権6回
無効審判4回
審決4回
差止2回
侵害2回
主文 1 被告は、別紙1被告製品目録記載の各製品を、いずれも製造し、譲渡し、又
2 被告は、被告の占有する前項記載の各製品をいずれも廃棄せよ。20
3 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要 本件は、原告が、被告による別紙1被告製品目録記載の各製品の製造、譲渡 及び譲渡の申出は、原告の有する特許権を侵害すると主張して、被告に対し、 特許法100条1項2項に基づき、上記各製品の製造、譲渡及び譲渡の申出の 差止め及び廃棄を求める事案である。

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判決文

令和5年7月28日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
令和4年(ワ)第9716号 特許権侵害差止請求事件
口頭弁論終結日 令和5年4月28日
判 決
原 告 neo ALA株式会社
同 訴 訟代 理 人 弁 護 士 佐 藤 慧 太
同訴訟復代理人弁護士 河 合 哲 志
10 同 訴 訟代 理 人 弁 理 士 今 村 玲 英 子
被 告 株 式 会 社 東 亜 産 業
同 訴 訟 代 理 人 弁 護士 高 橋 雄 一 郎
15 阿 部 実 佑 季
同訴訟復代理人弁護士 金 森 毅
主 文
1 被告は、別紙1被告製品目録記載の各製品を、いずれも製造し、譲渡し、又
は譲渡の申出をしてはならない。
20 2 被告は、被告の占有する前項記載の各製品をいずれも廃棄せよ。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求等
主文同旨
25 第2 事案の概要
本件は、原告が、被告による別紙1被告製品目録記載の各製品の製造、譲渡
及び譲渡の申出は、原告の有する特許権を侵害すると主張して、被告に対し、
特許法100条1項2項に基づき、上記各製品の製造、譲渡及び譲渡の申出の
差止め及び廃棄を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証
5 拠等は括弧で付記した。なお、書証は特記しない限り枝番を全て含み、英文と
翻訳文とを区別しない。また、西暦で表記されている場合も含めすべて和暦で
記載する。以下同じ。)
⑴ 当事者(争いがない事実)
原告は、医薬品、化粧品、食品及び農業用製品における研究開発や販売等
10 を業とする株式会社である。
被告は、新型コロナウイルスの検査キットや衛生用品、食品等の製造販売
を業とする株式会社である。
⑵ 本件特許権(甲1)
原告は、以下の特許権(以下「本件特許権」という。)を有する。
15 登録番号 第4417865号
発明の名称 5-アミノレブリン酸リン酸塩、その製造方法及びその用途
優 先 日 平成16年3月30日(以下「本件優先日」という。)、
同年11月30日
出 願 日 平成17年2月25日
20 登 録 日 平成21年12月4日
⑶ 特許請求の範囲の記載(甲2)
本件特許権に係る特許(以下「本件特許」といい、本件特許の願書に添付
した明細書及び図面を「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項
1(以下、同請求項記載の発明を「本件発明」という。)の記載は次のとお
25 りである。
下記一般式⑴
HOCOCH2 CH2COCH2NH 2・HOP(O)(OR 1)n(OH)2-n-⑴
(式中、R 1 は、水素原子又は炭素数1~18のアルキル基を示し;nは0~
2の整数を示す。)で表される5-アミノレブリン酸リン酸塩。
⑷ 被告の行為等について
5 ア 被告は、遅くとも令和3年3月から現在まで、別紙1被告製品目録記載
1のアミノ酸含有加工食品(以下「イ号製品」という。)を日本国内で製
造し、譲渡し、譲渡の申出をしている(甲3)。
また、被告は、遅くとも令和3年3月から現在まで、別紙1被告製品目
録記載2のアミノ酸含有加工食品(以下、「ロ号製品」といい、イ号製品
10 と併せて「各被告製品」という。)を日本国内で製造し、譲渡し、譲渡の
申出をしている(甲4)。
イ 各被告製品の構成は、以下のとおりである(甲5、弁論の全趣旨)。各
被告製品中のアミノ酸粉末の5-ALAホスフェートの化学式は、上記⑶
の一般式⑴のうちR 1 を水素原子とし、nを1としたものであり、また、
15 5-ALAホスフェートは、5-アミノレブリン酸リン酸塩である。
(ア) イ号製品について
イ号製品は、原材料としてデキストリン及び5-ALAホスフェート
(5-アミノレブリン酸リン酸塩)が含まれるアミノ酸粉末(ただし、
当該5-アミノレブリン酸リン酸塩の純度には争いがある。)を含み、
20 また、添加物としてHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、
クエン酸第一鉄Na、微粒二酸化ケイ素及び二酸化チタンを含むアミノ
酸含有加工食品である。
(イ) ロ号製品について
ロ号製品は、原材料としてデンプン及び5-ALAホスフェート(5
25 -アミノレブリン酸リン酸塩)が含まれるアミノ酸粉末(ただし、当該
5-アミノレブリン酸リン酸塩の純度には争いがある。)を含み、また、
添加物としてHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、クエ
ン酸第一鉄Na、微粒二酸化ケイ素及び二酸化チタンを含むアミノ酸含
有加工食品である。
⑸ 引用例等
5 ア 平成15年9月9日公開の特表2003-526637号公報(以下
「本件引用例」という。)には、別紙2「本件引用例」記載のとおりの記
載がある(乙2)。
イ 平成13年11月17日にオンライン公開され、平成14年に刊行され
たケー・サカイ、エム・ワタナベ、ティー・タナカ、ティー・タナカによ
10 る「5-アミノレブリン酸の生合成、バイオテクノロジーによる生産とそ
の応用」と題する外国語論文(以下「乙16論文」という。)には、別紙
3「技術常識に関する文献」記載1のとおりの記載がある(乙16)。
ウ 平成15年に刊行され、同年7月9日にオンライン公開された、エル・
シー、ディー・ホール、エム・エー・エイテマン、イー・アルトマンによ
15 る「要因設計を用いたEscherichia coliにおける組換え
アミノレブリン酸合成酵素産生の最適化」と題する外国語論文(以下「乙
17論文」という。)には、別紙3「技術常識に関する文献」記載2のと
おりの記載がある(乙17)。
エ 平成13年に刊行された、セイジ・ニシカワ、ヨシカツ・ムロオカによ
20 る「5-アミノレブリン酸:発酵による生産、ならびに農業および生物医
学的応用」と題する外国語論文(以下「乙18論文」という。)には、別
紙3「技術常識に関する文献」記載3のとおりの記載がある(乙18)。
オ 平成12年に刊行された上山宏輝ほか「光合成細菌変異株による5-ア
ミノレブリン酸の工業的生産」(生物工学会誌第78巻第2号48ないし
25 55頁。以下「甲13の1文献」という。)には、別紙3「技術常識に関
する文献」記載4のとおりの記載がある(甲13の1)。
カ 平成12年に刊行された「5-アミノレブリン酸の劣化機構と安定性」
と題する外国語論文(以下「乙1文献」という。)には、別紙3「技術常
識に関する文献」記載5のとおりの記載がある(乙1)。
⑹ 無効審判請求
5 被告は、令和3年9月、特許庁長官に対し、本件発明に係る特許について
無効審判請求(以下「本件審判請求」という。)をした。原告は、本件審判
請求において、令和4年1月24日付け審判事件答弁書のほか、同年4月4
日付け上申書(以下「本件上申書」という。)及び同月22日付け口頭審理
陳述要領書(以下「本件口頭審理陳述要領書」という。)を提出して、特許
10 が無効である旨の被告の主張に対して反論した(乙4、5、8、9、19)。
なお、原告が提出した本件上申書及び本件口頭審理陳述要領書の記載の要旨
は、別紙4「原告が提出した本件審判請求における主張書面の記載の要旨」
記載のとおりである。
特許庁は、令和4年7月15日、本件審判請求が成り立たない旨の審決を
15 したところ、被告は、同年8月23日、知的財産高等裁判所に対し、当該審
決の取消しを求める訴えを提起した(以下、当該訴えに係る訴訟を「本件審
決取消訴訟」という。)。知的財産高等裁判所は、令和5年3月22日、被
告の請求を棄却する旨の判決をした(甲12、乙20,24)。
2 争点及び争点に関する当事者の主張の要旨
20 本件の争点及びこれに関する当事者の主張の要旨は次のとおりである
⑴ 争点①(各被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか。)
(原告の主張)
ア 本件発明は、「下記一般式⑴…で表される5-アミノレブリン酸リン酸
塩」であり、5-アミノレブリン酸リン酸塩が含有される製品である限り、
25 本件発明の技術的範囲に属する。各被告製品は、いずれも5-アミノレブ
リン酸リン酸塩を含有するから、各被告製品は、本件発明の技術的範囲に
属する。
イ 被告は、各被告製品がいずれもアミノ酸含有加工食品であって、5-ア
ミノレブリン酸リン酸塩そのものではないことから、各被告製品が本件発
明の技術的範囲に属さない旨主張するようであるが、化学物質特許につい
5 て、当該物質を単独で用いる場合にしか権利が及ばないというのでは、物
質特許制度は無意味に期することになり、妥当でない。
ウ 被告は、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」について、単離
された高純度のものと解釈すべき旨主張する。
しかしながら、本件発明に記載された「5-アミノレブリン酸リン酸塩」
10 は文言上化合物の名称として一義的に明確であり、文言はもちろん、本件
明細書中の発明の詳細な説明における背景技術や課題解決手段、発明の効
果の記載にも、「5-アミノレブリン酸リン酸塩」が単離された高純度の
ものであるとの記載はない。
また、本件発明は、従来塩酸塩としてのみ製造法が知られていた5-ア
15 ミノレブリン酸について、5-アミノレブリン酸塩酸塩よりも低刺激性の
5-アミノレブリン酸の塩が求められていたという課題に対して、5-ア
ミノレブリン酸リン酸塩の製造方法を見出したことにより、5-アミノレ
ブリン酸の新規な塩を提供して上記課題を解決したのであり、新規な化学
物質発明である。そして、5-アミノレブリン酸リン酸塩がその使用時に
20 他の物質と混合されているか否かは、本件発明の技術的特徴とは無関係で
あり、他の物質と共に使用したとしても,本件発明の意義は損なわれるも
のではない。
なお、被告は、原告が、本件審判請求において、本件発明が「単離され
た5-アミノレブリン酸リン酸塩である」と主張したとするが、原告はそ
25 のような主張はしていない。原告は、本件審判請求において、本件引用例
及び乙1文献には、新規な物質である5-アミノレブリン酸リン酸塩につ
いて、製造し、単離(5-アミノレブリン酸リン酸塩を取り出すこと)す
る方法が記載されておらず、5-アミノレブリン酸のリン酸塩を提供する
ことが、当業者にとって容易にできることではないとの趣旨を主張したに
すぎない。また、被告が指摘する本件上申書及び本件無効審判事件陳述要
5 領書の記載は、いずれも、本件引用例又は乙1文献について述べたものか、
本件特許の請求項3及び明細書の発明の詳細な説明【0017】に記載さ
れた5-アミノレブリン酸リン酸塩の水溶液の解釈について述べたものに
すぎない。
したがって、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」の意義につ
10 いては、単離された高純度のものと限定解釈すべきではない。
(被告の主張)
ア 各被告製品は、以下の理由から、いずれも本件発明の技術的範囲に属し
ない。
イ 本件発明は5-アミノレブリン酸リン酸塩そのものである。各被告製品
15 は、5-ALAホスフェート(5-アミノレブリン酸リン酸塩)を原材料
として含むものであるが、いずれも、アミノ酸含有加工食品であり、5-
アミノレブリン酸リン酸塩そのものではないから、各被告製品は、本件発
明を充足しない。
ウ 本件明細書において、5-アミノレブリン酸リン酸塩の製造の実施例1
20 の記載(【0034】)においては、5-アミノレブリン酸塩酸塩をリン
酸に加え、濃縮し、析出させることで5-アミノレブリン酸リン酸塩を単
離している。また、単離された5-アミノレブリン酸リン酸塩は核磁気共
鳴装置(NMR)による実測値と理論値がほぼ一致しており(【003
5】)、極めて高純度の5-アミノレブリン酸リン酸塩が得られている。
25 「単離」の意義としては、「化合物や混合物から純粋な化学物質を分離す
ること。たとえば,蒸留,沈殿,吸収など。」、「混合物中から一つの物
質だけを純粋な形で取り出すこと。」、「混合物から、ある化合物を純粋
な物質として取り出すこと。」、「混合物中から目的物質だけを、純粋な
物質として分離し、取り出すこと。」などとされている。これらによれば、
本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」とは、単離した高純度のも
5 のをさすと解すべきである。
また、被告は、本件審判請求において、本件引用例や乙1文献を引用例
とする無効の主張について、本件引用例や乙1文献には、5-ALAのリ
ン酸塩を製造し単離する方法は記載されていないと主張するなどし、繰り
返し「5-アミノレブリン酸リン酸塩」は「単離」したものであると主張
10 して乙1文献や本件引用例との相違点を強調していた。加えて、本件審決
取消訴訟においても、「5-ALA(5-アミノレブリン酸)は化学的に
不安定で単体として取り出すことはできない」とか、本件引用例について
も「ALA」を物質として取り出しているわけではない等と主張しており、
リン酸塩になる前の「5-ALA」について「単体として取り出す」とか
15 「物質として取り出す」などといった処理が必要である旨主張していて、
これを前提として知的財産高等裁判所において判断がされている。したが
って、原告が、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」が単離され
た高純度のものに限られないと主張することは信義則に反し、許されない。
各被告製品は、5-アミノレブリン酸リン酸塩を含んでいるものの、単
20 離されておらず、かつその濃度も6%であって高純度のものではないから、
本件発明を充足しない。
⑵ 争点②(本件発明の新規性)について
(被告の主張)
ア 本件引用例には、作用物質の特に有利な例として「5-アミノレブリン
25 酸またはその塩またはエステル」とあり、複数列挙されている5-アミノ
レブリン酸の塩の「有利な例」の一つに「5-ALAホスフェート」が明
記されている。そうすると、引用発明は、本件発明と同一であり、新規性
を欠く。
イ 原告は、新規な化学物質については、大前提として、①物質の構成が開
示されていること、とりわけ、刊行物に多数の選択肢が列挙されている場
5 合には、特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択す
べき事情が存在することが必要であるところ、本件引用例に記載の「5-
ALAホスフェート」は、【0012】に塩及びエステルとして多数列挙
された物質の一例に過ぎず、この多数の物質の中から、5-ALAホスフ
ェートを積極的あるいは優先的に選択すべき事情は存在しない旨、②-A
10 当該刊行物において、当業者が当該物質の製造方法を理解し得る程度の記
載があること、又は②-B製造方法を理解し得る程度の記載がない場合に
は、刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するま
でもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方
法を見いだすことができることも必要であるところ、5-アミノレブリン
15 酸リン酸塩の製造方法は、本件優先日前に知られていなかったのであるか
ら、本件引用例に接した当業者が、本件優先日の技術常識に基づいて、
「HOCOCH 2CH 2COCH2 NH2 ・HOP(O)(OH) 2 で表され
る5-アミノレブリン酸リン酸塩」の製造方法その他の入手方法を見いだ
すことができると認められる事情もない旨主張する。
20 しかしながら、当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され、当該一
般式が膨大な数の選択肢を有する場合に優先的に選択すべき事情が要求さ
れるにすぎず、一義的に確定できる唯一の化合物である5-ALAホスフ
ェートが記載されている本件では、刊行物に多数の選択肢が列挙されてい
る場合には、特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選
25 択すべき事情は必要とされない。
また、乙16文献から乙18文献には、5-ALA(5-アミノレブリ
ン酸)単体は特定の菌を用いて量産できることが明示されており、5-A
LAの単体の製造方法は本件特許の優先日においても周知である。加えて、
5-ALA(5-アミノレブリン酸)をリン酸溶液に溶解すれば、弱塩基
と強酸の組合せとなり、5-アミノレブリン酸リン酸塩(ホスフェート)
5 が得られることも技術常識である。
そうすると、本件発明が、単離されておらず、高純度でもなく、「物質
として取り出された」ものでもない「5-ALAホスフェート」を含むと
いう主張を前提とする限り、本件引用例には「5-ALAホスフェート」
という発明は、明示的に記載されているもので、製造も極めて容易である。
10 なお、原告は、乙17文献についても、発酵液中に培地成分と混合した
状態で存在する「ALA」の濃度を示すものにすぎず、「ALA」を物質
として取り出しているわけではない旨主張するが、発酵液中に培地成分と
混合した状態で存在していても5-ALAであることに変わりはなく、培
地成分と混合した状態であってもよい。
15 (原告の主張)
ア 特許法29条1項3号の「特許出願前に‥‥頒布された刊行物に記載さ
れた発明」に該当するかどうかの判断に当たって、新規な化学物質につい
ては、大前提として、①物質の構成が開示されていること、とりわけ、刊
行物に多数の選択肢が列挙されている場合には、特定の選択肢に係る技術
20 的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情が存在することが必要で
あり、そして、②-A当該刊行物において、当業者が当該物質の製造方法
を理解し得る程度の記載があること、又は②-B製造方法を理解し得る程
度の記載がない場合には、刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の
創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその製
25 造方法その他の入手方法を見いだすことができることも必要である。
イ 本件引用例に記載されている「5-ALAホスフェート」は、上記第2
の1⑸アのとおり記載されているにすぎず、この多数の物質の中から、5
-ALAホスフェートを積極的あるいは優先的に選択すべき事情は存在し
ない(上記要件①)。また、本件引用例には5-ALAホスフェート(5
-ALAのリン酸塩)の製造方法についての記載が全く存在しない(上記
5 要件②-A)。加えて、本件明細書に「5-アミノレブリン酸は塩酸塩と
してのみ製造法が知られて」いた(【0003】)と記載されているとお
り、5-アミノレブリン酸リン酸塩の製造方法は、本件優先日前に知られ
ていなかったのであるから、本件引用例に接した当業者が、特許出願時
(本件優先日)の技術常識に基づいて、「HOCOCH2CH 2COCH2
10 NH 2 ・HOP(O)(OH) 2 で表される5-アミノレブリン酸リン酸
塩」の製造方法その他の入手方法を見いだすことができると認められる事
情もない(上記要件②-B)。そうすると、②-Aまたは②-Bのいずれ
の要件も充たさない。
ウ したがって、本件発明は新規性を欠如しない。
15 第3 当裁判所の判断
1 本件発明
本件明細書には、別紙5「本件明細書の記載」のとおりの記載がある。
本件明細書によれば、本件発明の技術的意義は、次のとおりであると認め
られる。
20 ア 本件発明は、微生物・発酵、動物・医療、植物等の分野において有用な
5-アミノレブリン酸リン酸塩に関する発明である。(【0001】)
イ 5-アミノレブリン酸は、微生物・発酵分野、動物・医療分野及び植物
分野における様々な用途に有用であることが知られ、また、塩酸塩とし
てのみその製造方法が知られていた。しかしながら、5-アミノレブリ
25 ン酸塩酸塩は塩酸を含んでいるため、医薬分野においては、5-アミノ
レブリン酸塩酸塩よりも低刺激性の5-アミノレブリン酸の塩が求めら
れていたものであり、また、植物分野においては、5-アミノレブリン
酸塩酸塩を利用すると噴霧器のノズルが詰まったり、果実の着色が十分
でなかったりするという問題が指摘されていた。(【0002】ないし
【0005】)
5 ウ 本件発明は、低刺激性の5-アミノレブリン酸の新規な塩を提供する
ことを目的とする発明であり、陽イオン交換樹脂に吸着した5-アミノ
レブリン酸を溶出させ、その溶出液をリン酸類と混合することにより、
5-アミノレブリン酸リン酸塩を製造し、上記の課題を解決しようとす
る発明である。(【0006】及び【0007】)
10 エ 本件発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、臭気が感じられない上、
皮膚や舌に対して低刺激性であり、皮膚等への透過性も良好であること
から、これを含有する組成物は光力学的治療又は診断用薬として有用で
あるほか、水溶液にした場合の塩化物イオン濃度が低いため、植物への
投与において塩素被害が生じにくくなるという効果を奏する。(【00
15 13】)
2 争点①(各被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか。)について
本件発明は、特許請求の範囲の記載及び前記1 のとおりの本件明細書記
載の技術的意義からしても、従前知られていた5-アミノレブリン酸に比べ
て有利な効果を有する新規な化学物質の発明である。
20 各被告製品は、原材料として5-ALAホスフェート(5-アミノレブリ
ン酸リン酸塩)が含まれるアミノ酸粉末を用いるアミノ酸含有食品であり
(第2の1の )、各被告製品には、本件発明の一般式⑴のうちR 1 を水素
原子とし、nを1とした5-アミノレブリン酸リン酸塩が含まれていると認
められる(甲5)。すなわち、各被告製品には、新規な化学物質である本件
25 発明のアミノレブリン酸リン酸塩そのものが含まれている。
以上によれば、各被告製品は、本件発明の技術的範囲に属する。
被告は、各被告製品が、アミノ酸含有食品であること、5-アミノレブリ
ン酸リン酸塩が単離されておらず、その純度が低いことを挙げて、各被告製
品が本件発明の技術的範囲に属さない旨主張する。
しかし、本件発明は新規な化学物質の発明であり、本件発明の目的は、新
5 規な化学物質としての5-アミノレブリン酸リン酸塩を提供することであっ
て、5-アミノレブリン酸リン酸塩の純度を向上させることにあるのではな
い。本件発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩であれば、それが単離されて
いなくとも、また、それを含む製品においてそれが高い濃度でなくとも、発
明の効果を奏するといえる。本件明細書には、実施例として、5-アミノレ
10 ブリン酸リン酸塩の製造例が具体的に記載され、また、製造された物質の融
点、1H-NMR、 13C-NMR、元素分析値、イオンクロマトグラフィーによる PO43-
の含有率が同定データとして記載されているが(【0034】、【003
5】)、これらの記載は、新規な化学物質の発明が特許されるために必要と
される化学物質の同定データとして記載されたものであって、そこに記載の
15 数値等が本件発明の技術的範囲を限定する根拠となるものとは解されない。
各被告製品に本件発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩が含まれている
本件において、被告の上記主張には理由がない。
被告は、本件審判請求や本件審決取消訴訟においてされた特許無効の主張
に対し、原告が乙1文献や本件引用例には、5-ALAのリン酸塩を製造し
20 単離する方法は記載されていないと主張するなどしたことなどをもって、原
告が、本件発明の「5-アミノレブリン酸リン酸塩」が単離された高純度の
ものに限られないと主張することは信義則に反し、許されない旨主張する。
しかしながら、原告が提出した本件審判上申書や本件審判口頭審理陳述要
旨書の記載は上記第2の1⑹(別紙4)のとおりであり、それらにおいて、
25 原告は、本件引用例や乙1文献には、5-アミノレブリン酸リン酸塩の製造
方法や入手方法が記載されていない旨を述べる趣旨で、それを単離すること
について記載がないと述べているか、本件特許の請求項3の「水溶液」の解
釈に関連する主張をしたにすぎない。そして、原告の上記主張は引用例の記
載に対するものであり、本件明細書の記載や本件発明の構成要件に言及した
ものではないから、原告が、上記において、本件発明の構成要件を限定する
5 趣旨の主張をしたとは認められず、信義則違反の主張はその前提を欠く。
⑸ 以上によれば、各被告製品は本件発明の技術的範囲に属し、被告による各
被告製品の製造並びに譲渡及び譲渡の申出は、特許法2条3項1号の生産並
びに譲渡及び譲渡の申出に当たる。
3 争点②(本件発明の新規性)について
10 ⑴ 引用発明について
ア 本件引用例における5-ALAホスフェートの記載
第2の1⑸ア(別紙2の1)によれば、本件引用例には「非水性液体中
に溶解または分散した5-アミノレブリン酸および/またはその誘導体か
ら選択される作用物質を含有する組成物」及び「誘導体が5-ALAの塩
15 およびエステルから選択される請求項1記載の組成物」の発明が記載され
ている。
また、第2の1 ア(別紙2の2)によれば、本件引用例の【0012】
には、本件引用例の組成物が5-アミノレブリン酸の誘導体を作用物質と
して含有する旨、この作用物質として特に有利には「5-アミノレブリン
20 酸またはその塩またはエステルである」旨が記載され、この「塩またはエ
ステル」の有利な例として22種類の化合物が列挙され、その列挙された
化合物の中には、5-ALAホスフェートが含まれている。
イ 5-ALAホスフェートを引用発明として認定できるか
(ア) 特許法29条1項は、同項3号の「特許出願前に」「頒布された刊
25 行物」については特許を受けることができない旨規定する。当該規定の
「刊行物」に物の発明が記載されているというためには、同刊行物に発
明の構成が開示されているだけでなく、発明が技術的思想の創作である
こと(同法2条1項参照)にかんがみれば、当該刊行物に接した当業者
が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の
技術常識に基づいてその技術的思想を実施し得る程度に、当該発明の技
5 術的思想が開示されていることを要するというべきである。
特に、当該物が新規の化学物質である場合には、新規の化学物質は製
造方法その他の入手方法を見出すことが困難であることが少なくないか
ら、刊行物にその技術的思想が開示されているというためには、一般に、
当該物質の構成が開示されていることにとどまらず、その製造方法を理
10 解し得る程度の記載があることを要するというべきである。そして、刊
行物に製造方法を理解し得る程度の記載がない場合には、当該刊行物に
接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、
特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見出
すことができることが必要であるというべきである。
15 ここで、5-ALAホスフェートは、新規の化合物であり、上記アの
とおり、本件引用例には、列挙された化合物の中に5-ALAホスフェ
ートが含まれているものの、本件引用例にその製造方法に関する記載は
見当たらない(乙2)。
したがって、5-ALAホスフェートを引用発明として認定するため
20 には、本件引用例に接した本件優先日当時の当業者が、思考や試行錯誤
等の創作能力を発揮するまでもなく、本件優先日当時の技術常識に基づ
いて、5-ALAホスフェートの製造方法その他の入手方法を見出すこ
とができたといえることが必要である。
(イ) 被告は、乙16文献から乙18文献の記載からすれば、本件優先日
25 当時、5-アミノレブリン酸単体の製造方法は周知であった上、5-ア
ミノレブリン酸をリン酸溶液に溶解すれば、弱塩基と強酸の組合せとな
り、5-アミノレブリン酸リン酸塩を得ることができることは技術常識
であり、このことからすれば、本件優先日当時の当業者は、5-ALA
ホスフェートの製造を容易になし得た旨主張する。
確かに、上記第2の1⑸イ及びエのとおり、乙16文献及び乙18文
5 献には、甲13の1文献を引用しつつ、「ALA生産が確立されてい
る」、「ALAの産生に成功した」、「発酵の下流では、イオン交換樹
脂を使用するALA精製プロセスも確立されて」いるなどと記載されて
いる。しかしながら、甲13の1文献には、同オのとおり、「発酵液か
らのALAの精製」の項において、ALAが塩基性水溶液中では非常に
10 不安定であり、種々の検討の結果、5-アミノレブリン酸塩酸塩結晶を
得るプロセスを確立することに成功した旨が記載されているにすぎない。
そうすると、乙16文献及び乙18文献においては、細菌を培養して発
酵液中にALA(5-アミノレブリン酸)を産生させる技術は開示され
ているものの、5-アミノレブリン酸単体を得る技術は開示されていな
15 いといえる。
また、上記第2の1⑸ウのとおり、乙17文献には、発酵液中に培地
成分と混合した状態で存在するALAの濃度が開示されているにすぎな
い。そうすると、乙17文献においても、5-アミノレブリン酸単体を
得る技術は開示されていないといえる。
20 以上のとおり、乙16文献から乙18文献までにおいて、5-アミノ
レブリン酸単体を得る技術が開示されているとはいえない。これに加え、
上記第2の1⑸アのとおり、本件引用例においても「5-ALAは・・
・化学的にきわめて不安定な物質である」、「5-ALAHClの酸性
水溶液のみが充分に安定であると示される」と記載されていて(【00
25 07】)、これらの事項が本件優先日当時の技術常識であったと認めら
れることも考慮すると、本件優先日当時において、5-アミノレブリン
酸単体を得る技術が周知であったとは認められない。
この点に関し、原告は、5-アミノレブリン酸リン酸塩を製造する上
で、5-ALAが物質として取り出されている必要はなく、発酵液中に
培地成分等と混合した状態であってもよい旨主張する。
5 しかしながら、本件優先日当時、種々の成分を含む混合液に酸又は塩
基を添加するという方法が、化合物である塩の製造方法として技術常識
であったとは認められないことからすれば、本件引用例に接した本件優
先日当時の当業者が、化合物である5-アミノレブリン酸リン酸塩を製
造する方法として、培地成分等と混合した状態で5-アミノレブリン酸
10 が存在する発酵液にリン酸を添加する方法(又はこの発酵液をリン酸溶
液に添加する方法)を、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮することな
く見出すことができたとはいえない。
また、上記第2の1⑸ウのとおり、乙17文献において、培地に酵母
抽出物やトリプトン等が含まれることが記載されていることからも明ら
15 かなように、培地成分等と混合した状態にある発酵液には種々のイオン
が夾雑物として含まれているのであるから、このような発酵液にリン酸
を添加したとしても、等しい物質量の酸及び塩基の中和反応によって5
-アミノレブリン酸リン酸塩という化合物が製造されたと評価すること
はできないというべきである。
20 したがって、原告の上記各主張はいずれも採用することができない。
そして、このほか、本件優先日当時の当業者が、5-ALAホスフェー
トの製造方法その他の入手方法を見出すことができたというべき事情は
存しない。
(ウ) 以上によれば、本件引用例に接した本件優先日当時の当業者が、思
25 考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、本件優先日当時の技
術常識に基づいて、5-ALAホスフェートの製造方法その他の入手方
法を見出すことができたとはいえない。
したがって、本件引用例から5-ALAホスフェートを引用発明とし
て認定することはできない。
ウ 本件引用例から認定することができる引用発明の内容
5 (ア) 上記第2の1⑸アによれば、本件引用例には、「非水性液体に溶解
または分散した5-アミノレブリン酸および/またはその誘導体を含有
する組成物」の発明が記載されている(請求項1に係る特許請求の範囲、
【0001】)。この発明は、化学的に不安定な5-ALAを特定の条
件で非水性液体中に溶解または分散させることにより、化学的安定性及
10 び改良された膜透過性を有する5-アミノレブリン酸を含有する組成物
の提供を解決課題とするものであり(【0009】)、5-アミノレブ
リン酸及び/又はその誘導体から選択される作用物質を25℃で80よ
り小さい誘電率 ε を有する、非水性液体中に溶解又は分散させた組成
物とすることにより、当該課題を解決するものである(【0010】及
15 び【0011】)。
そして、本件引用例には、この発明に係る実施例として、「1、2-
プロピレングリコールおよびグリセリン中の5-ALAの10%(質量
%/容積%)溶液」が記載されている(【0047】ないし【004
9】)。
20 (イ) 以上によれば、本件引用例から、「1、2-プロピレングリコール
およびグリセリン中の5-ALAの10%(質量%/容積%)溶液」を
引用発明として認定することができる。
⑵ 本件発明の引用発明に対する新規性の有無
ア 本件発明と引用発明との対比
25 上記第2の1⑶で認定した本件発明と上記⑴で認定した引用発明とを対
比する。
引用発明における「5-ALA」が5-アミノレブリン酸を意味するこ
とは技術常識であるところ、本件発明と引用発明は、「5-アミノレブリ
ン酸に関する物」である点で一致するものと認められる。
他方、引用発明は、「1、2-プロピレングリコールおよびグリセリン
5 中の5-ALAの10%(質量%/容積%)溶液」であり、本件発明のよ
うに化合物である5-アミノレブリン酸リン酸塩ではないから、本件発明
及び引用発明は、以下の点において相違するものと認められる。
「本件発明は、『下記一般式(1)HOCOCH 2 CH 2COCH 2 NH 2
・HOP(O)(OR 1)n(OH) 2-n(1)(式中、R 1は、水素原子
10 又は炭素数1~18のアルキル基を示し;nは0~2の整数を示す。)で
表される5-アミノレブリン酸リン酸塩。』であるのに対して、引用発明
は『1、2-プロピレングリコールおよびグリセリン中の5-ALAの1
0%(質量%/容積%)溶液』である点。」
イ 新規性の有無
15 上記アのとおり、本件発明と引用発明とを対比すると、両発明には相違
する点があるところ、この相違点は、実質的な相違点であるというべきで
ある。したがって、本件発明は、引用発明と一致するものとはいえないか
ら、引用発明に対して新規性を欠くものとはいえず、本件発明に係る特許
が特許無効審判により無効にされるべきものとはいえない。
20 第4 結論
以上によれば、原告の各請求はいずれも理由があるから、訴訟費用の負担に
つき民事訴訟法61条を適用し、仮執行宣言は相当でないからこれを付さない
こととして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴 田 義 明
裁判官 杉 田 時 基
裁判官 仲 田 憲 史
別紙1
被告製品目録
1 パッケージに以下の記載のあるアミノ酸含有加工食品
「5-ALA SUPPLEMENT
5 ALA SHIELD」
2 パッケージに以下の記載のあるアミノ酸含有加工食品
「5-アミノレブリン酸配合
5-ALA」
別紙2
本件引用例
1 特許請求の範囲(請求項の数26)
⑴ 請求項1
5 25℃で80より小さい誘電率 ε を有する、非水性液体中に溶解または分
散した5-アミノレブリン酸(5-ALA)および/またはその誘導体から選
択される作用物質を含有する組成物。
⑵ 請求項2
誘導体が5-ALAの塩およびエステルから選択される請求項1記載の組成
10 物。
2 発明の詳細な説明
「本発明は、非水性液体に溶解または分散した5-アミノレブリン酸および/
またはその誘導体を含有する組成物および第1室に非水性5-アミノレブリン酸
製剤を有し、第2室に水性担持剤系を有する二重室系に関する。」【0001】
15 光力学的治療は細胞増殖に関係する種々の前悪性および悪性の病気を治療する
ための新規のおよび将来性のある方法である。光力学的治療の原理は、いわゆる
光増感剤を腫瘍組織に導入し、これを適当な波長の光で照らすことにより細胞毒
の活性な作用物質に変換し、作用物質が最後に細胞の破壊を引き起こすことに基
づく。この方法の選択性は通常の組織に比べて急速に増殖する腫瘍細胞での増感
20 剤の激しい蓄積に基づく。位置的に制限された光の照射により腫瘍細胞に含まれ
る増感剤は意図的に活性化することができ、これによりガン細胞が破壊し、健全
な組織が十分に保護される。【0002】
従来は光増感剤として多くの場合に静脈内投与可能なヘマトポルフィリン誘導
体の混合物が使用された。しかしこのヘマトポルフィリン誘導体は種々のガン種
25 類の際に元気づける臨床的結果にもかかわらず、種々の欠点を有する。第1に低
い腫瘍選択性および緩慢な体外への除去により通常の組織でかなり高い作用物質
濃度が生じる。その結果として照射の際に健全な組織での好ましくない光化学的
反応が行われる。第2にこの処理は一般的な感光性で生じ、従って患者は約4週
間の間日光にさらしてはならない。【0003】
通常の組織での高い作用物質濃度の減少および好ましくない副作用の減少は、
5 所定の場合に、特に皮膚病および婦人病の適用の際に、公知の全身的製剤の代わ
りに局所的に適用可能な作用物質製剤の開発により達成することができる。WO
95/05813号は、例えば皮膚の適用のための5-ALAを浸透したプラス
ターを記載する。感光性を減少するために、更に光化学的に不活性であり、目的
細胞の内部ではじめて光増感剤に変換する光増感剤の前駆物質を使用することが
10 試みられる。【0004】
5-アミノレブリン酸はグリシンおよびスクシニル-CoAから合成される身
体に特有の物質である。血液生合成の枠内で5-アミノレブリン酸(5-ALA)
から多くの急速に進行する反応工程で高度に光活性のプロトポルフィリンIXが
形成され、これを引き続き緩慢な反応で血液に変換する。天然の一般のメカニズ
15 ムは高すぎる血液濃度で5-ALAの身体特有の合成およびプロトポルフィリン
IXの分解を阻害する。【0005】
合成により製造した5-ALAの外部投与によりこの一般的メカニズムは回避
され、プロトポルフィリンIXの高い生産性を生じる。この分解は天然の制御メ
カニズムにより更に阻害されるので、細胞中にプロトポルフィリンIXが蓄積さ
20 れる。プロトポルフィリンIXは光の照射の際に光化学的酸化反応を開始し、従
って光増感剤として作用する。増感剤分子による光量の吸収の際に、これはまず
電子的に励起された状態(一重項状態)に転移し、この状態は比較的短命であり、
過剰のエネルギーがナノ秒の内部で蛍光光子の放出により再び放出し、または比
較的寿命の長い三重項状態に移行する。この三重項状態からエネルギーを細胞に
25 存在する酸素分子に移送することができる。その際生じる一重項酸素は、特に増
殖した細胞に細胞毒性に作用し、これは酸素分子が細胞成分、例えば細胞膜およ
びミトコンドリアと反応し、または細胞障害ラジカルの形成を引き起こすからで
ある。更に光増感剤の照射は特徴的な蛍光線を生じ、これは検出反応に、例えば
増殖細胞の検出に使用することができる。【0006】
5-ALAは分解反応の幅広いスペクトルにもとづく化学的にきわめて不安定
5 な物質である(例えばGranick und Mauzerall、J.Bi
ol.Chem.232(1958)1119-1140、Franck un
d Stratmann Heterocycles 15(1991)919
-323、Jaffe und Rajagopalan Bioorg.Ch
em.18(1990)381-394、Butler und Georg
10 e Tetrahedron 48(1992)、7879-7886、Nov
o等、J.Photochem.Photobiol.B:Biol、34(19
96)143-148、Scott、Biochem.J62(1955)6P、
Dalton等、PharmRes.16(1999)285-295参照)。
この分解反応は図1に示される。α-アミノケトンとして5-ALAはダイマー
15 のシッフ塩基(DHPY)を形成し、これは容易に酸化して芳香族化合物PYを
生じる。副反応として、ポルホビリノーゲンまたはプソイドポルホビリノーゲン
への反応が生じることがある。すべての分解工程の第1反応段階、図1に示され
る不安定な中間段階を介したシッフ塩基の形成は強いpH依存性平衡であり、そ
の際例えばpH5より高い、より高いpH値は5-ALA分解を促進する。5-
20 ALAHClの酸性水溶液のみが充分に安定であると示される。しかしpH値の
最適化は薬剤として5-ALAを安定化する剤として適してなく、それというの
も強い酸性媒体は治療に使用できないからである。【0007】
5-ALAの不安定性のほかにその際立ったイオン特性が生体利用可能性に関
する問題である。5-ALAは生理的に認容されるpH範囲(pH5~8)で両
25 性イオンとして、すなわち解離したカルボキシル基およびプロトン化したアミノ
基を有して存在する。知られているように、この種の荷電した物質は膜透過性が
悪く、すなわち少ない規模でのみ上皮および細胞膜を通過して運ばれる。従って
生体利用可能性が低い。これは、5-ALAが従来の臨床的適用できわめて高い
用量で使用しなければならないことを示す。【0008】
従って本発明の課題は、技術水準から公知の欠点が少なくとも部分的に除去さ
5 れ、特に改良された化学的安定性および改良された膜透過性を有する5-ALA
を含有する組成物を提供することである。【0009】
前記課題は、5-ALAおよび/またはその誘導体を、25℃で80より小さ
い誘電率 ε を有する非水性液体に導入することにより解決され、その際この液
体は有利には生理的に認容性であり、水と混合可能である。この液体の例は1,
10 2-プロピレングリコールおよびグリセリンである。【0010】
従って本発明の対象は、25℃で80より小さい誘電率 ε を有する非水性液
体中に溶解または分散した5-ALAおよび/またはその誘導体から選択される
作用物質を含有する組成物である。【0011】
本発明により、組成物は5-アミノレブリン酸および/またはその誘導体から
15 選択される作用物質を含有する。誘導体は、特に塩、エステル、錯体および付加
化合物であると理解される。作用物質は、特に有利には5-アミノレブリン酸ま
たはその塩またはエステルである。塩およびエステルの有利な例は5-ALAヒ
ドロクロリド、5-ALAスルフェート、5-ALAニトレート、5-ALAホ
スフェート、5-ALAボラート、5-ALAタンネート、5-ALAラクテー
20 ト、5-ALAグリコラート、5-ALAスクシネート、5-ALAシトレート、
5-ALAタルトレート、5-ALAエンボネート、5-ALAメチラート、5
-ALAエチラート、5-ALAプロピオネート、5-ALAブチレート、5-
ALAヘキサノエート、5-ALAオクタノエート、5-ALAデカノエート、
5-ALAミリステート、5-ALAパルミテート、5-ALAオレエートであ
25 る。【0012】
非水性液体中の溶解または分散により作用物質5-ALAは有利には少なくと
も部分的にエノール形で存在し、水に比べて極性の少ない液体中で増加して形成
される。エノール形の存在は組成物の黄色の着色を生じるが、これは5-ALA
の図1に示される分解生成物への分解に由来するものでない。エノール形の形成
は5-ALAの安定化を生じ、これにより図1によるシッフ塩基の形成およびこ
5 れに続く他の分解生成物への反応を遅らせることができる。更にケト形と比較し
て少ない極性の5-ALAのエノール形は生理的膜により良好に吸収される。従
って化学的安定性のほかに改良された生体利用可能性を達成することができる。
【0013】
作用物質を溶解または分散するために使用する非水性液体の有利な例は、アル
10 コール、例えば高級アルコール、例えばC 1 ~C 20 -アルコール、エーテルおよ
びエステル、多価アルコール、例えば二価または三価のアルコールおよびそのエ
ステル、例えばグリセリンおよびそのC 1~C 20 -カルボン酸を有するモノエス
テル、ジエステルおよびトリエステル、1,2-プロピレングリコール、1,3
-プロピレングリコールおよびそのC 1 ~C 20-カルボン酸を有するモノエステ
15 ル、およびジエステル、ポリ(アルキレンオキシド)、特に1000個までのア
ルキレン単位を有するポリ(エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシ
ド)およびそのエステル、燐脂質、高級カルボン酸のエステル、スルホキシド、
例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、N-ビニルピロリドン、およびN,
N-ジメチルアセトアミドのような製薬的に適合性の溶剤である。2種以上の上
20 記物質の混合物も同様に適している。若干の実施例において、非水性液体がアル
カンジオール、アルカントリオールまたは有機酸でない場合が有利である。【0
014】
本発明を以下の図面および実施例により説明する。【0044】
図1は5-アミノレブリン酸(5-ALA)が受ける分解反応の図である。
25 【0045】
図2は無水グリセリン中の10%5-ALA溶液のUV-VISスペクトルの
時間に依存した変化を示す図である(希釈していないものと0.2分の間隔を置
いて水で1:1の比に希釈した後のものを記録した)。【0046】
実施例
1.非水性5-ALA組成物の製造
5 1、2-プロピレングリコールおよびグリセリン中の5-ALAの10%(質
量%/容積%)溶液を製造した。完全に溶解した後に黄色い着色が見出されたが、
これは5-ALAから図1に示される分解生成物への分解に帰因しない。従って
毛管電気泳動の際にDHPY、PYも、ポルホビリノーゲンも検出できなかった。
【0047】
10 従って溶液の変色は5-ALAのエノール形の形成に帰因した。これはUV-
VIS測定により確認された。グリセリン中でおよび1、2-プロピレングリコ
ール中で447nmで吸収バンドが見出され、これは光学的に認識される黄色の
着色の原因であった。このスペクトルの移動は、5-ALAのエノール化に帰因
し、これはすでにアルカリ性水溶液中で認められた(Monteiro等、Ar
15 ch.Biochem.Biophys.271(1989)206-207)。
【0048】
無水の10%5-ALA溶液に水を1:1の比で添加した場合に、数分以内に
溶液の黄色の着色の消失が認められた。これは447nmでの吸光の減少の測定
により理解できる(図2)。引き続き水で1:100に希釈した溶液中で5-A
20 LAのUVスペクトルを副生成物の存在なしに観察した。【0049】
3 図面
⑴ 図1
5-アミノレブリン酸(5-ALA)の分解反応の図である。
⑵ 図2
5 無水グリセリン中の10%5-ALA溶液のUV-VISスペクトルの時
間に依存した変化を示す図である。
以上
別紙3
技術常識に関する文献の要旨
1 乙16文献
5 ⑴ 「最近まで、ALAの大量生産は、その化学合成に必要な多数の工程のた
めに非常に困難であった(Takeyaら、1997)。生物学的ALA形
成に関して、いくつかの報告は、ALA脱水酵素(ALAD)の競合的阻害
剤であるレブリン酸(LA)の添加を記載している。しかし、細菌および藻
類による細胞外ALA蓄積は非常に低かったため、実用的使用は除外された
10 (SasikalaおよびRamana、1995)。」
⑵ 「しかし、比較的大量の細胞外ALAがLAを断続的に添加することによ
って、およびテトラピロール化合物をハイレベルで合成する光合成細菌、ロ
ドバクター・スフェロイデスを使用することによって蓄積することが観察さ
れた(Sasakiら、1987、1990)。このアプローチに従って、
15 光合成細菌の変異株を使用するALA生産が確立されている(Nishik
awaら、1999;Kamiyamaら、2000)。」
2 乙17文献
⑴ 「成長条件 全ての最適化研究は、25mlの培地を含む125mlの振
盪フラスコ中で行った。使用した複合培地は、(リットル当たり):5.00g
20 の酵母抽出物、10.00gのトリプトン、10.00gのNaClを含有
するLuriaBertani(LB)培地であった。」
⑵ 「MG1655/pTrc99A-hemAにおけるALAの産生 完全
な要因設計実験から得られた結果に基づいて、最初に10.0g/lのコハ
ク酸塩、グルコースなし、および0.05mMのIPTGを添加したLB培
25 地中で、MG1655/pTrc99A-hemAを用いて発酵を行った。
10g/lコハク酸塩および1.88g/lグリシンの追加用量を6.0時
間で添加して、消費されたこれらの炭素源を再供給し、発酵を12.0時間
で終了した。最大のALA合成酵素活性は296mU/mgタンパク質であ
り、ALAの最終濃度は5.2g/1であり、39mMに相当する(図5)。
興味深いことに、フマル酸塩は発酵の過程で出現し、約7時間で約1.0g
5 /lの最大濃度に達した。」
3 乙18文献
⑴ 「多くのALA製造方法が開発されている。ALAは、アシルシアニドの
選択的還元(PfalzおよびAnwar、1984)またはN-フルフリ
ルフタルイミドの色素増感型酸素化(Takeyaら、1989)を介して
10 化学的に合成されている(図7.2)。しかしながら、ALAの化学合成は
少なくとも4つの反応ステップを必要とし、収率は60%未満である。AL
Aの高い製造コストは、これまで、その商業的利用を制限してきた。クロス
トリダム・サーモアセチカム(Koesnandarら、1989)、メタ
ン生成菌(Linら、1989)、クロレラ属菌(Sasakiら、199
15 5;Anoら、1999、2000)、光合成細菌 (van der Mar
ietおよびZeikus、1996;Sasakiら、1989、199
0、1993、1995; Tanakaら、1991、1994a、b)。
しかしながら、光合成細菌によるALA産生は光照射を必要とし、曝気に敏
感であることが見出されている。ALA合成酵素をコードするヘムA遺伝子
20 を含む組換え大腸菌由来の粗抽出物はALAを高収率で合成することが示さ
れているが、大量の高価なATPを必要とする(van der Marie
tおよびZeikus、1996)。これらの問題は、工業的規模でのAL
Aの生産に対して著しい障壁を提供してきた。これに対処するために、Ni
shikawaら(1999)は、光照射の不存在下でのALAの産生のた
25 めのロドバクター・スフェロイドの順次突然変異誘発に基づく代謝工学的ア
プローチを導入した:このようにして、これらの研究者は工業規模でのAL
Aの産生に成功した(Kamiyamaら、2000)。」
⑵ 「発酵の下流では、イオン交換樹脂を使用するALA精製プロセスも確立
されており、経済的に微生物産生ALAの供給を促進することができると予
想される(Kamiyamaら、2000)。」
5 4 甲13の1文献
「発酵液からのALAの精製 発酵で得られた化合物の生産性は、しばしば
その精製工程が左右する。ALAは、塩基性水溶液中では非常に不安定である。
また、水溶液中でのALAはFig.8のように、Shiff base形成
を介して2量体を生成することが知られている。ALAの精製は、これらを考
10 慮し、イオン交換樹脂処理と結晶化工程の条件を定める検討を中心に行った。
種々検討の結果、実用的な収率でALAを塩酸塩結晶として得るプロセスを確
立することに成功した。」
5 乙1文献
「確かに、0.3mgL -1 のALAが強酸(HCl、H2 SO 4 、H 3 PO 4 、
15 HClO 4、;全て1N)に溶解すると、40℃6週間で顕著な劣化は見られな
かった。同一の保管条件の水においては5%のALA劣化が測定された。」
別紙4
原告が提出した本件審判請求における主張書面の記載の要旨
1 上申書の記載の要旨
5 ⑴ 「第2の2⑶ 通知書に記載された甲2発明(引用発明を指す。以下同じ。)
から本件発明が容易想到ではないこと」欄の記載について
5-ALAホスフェート(リン酸塩)を製造し単離する方法について甲第2
号証(本件引用例をさす。以下同じ。)に記載がないこと、本件優先日当時の
技術常識でもなかったことは、答弁書16頁に記載したとおりです。
10 甲2発明を通知書に記載されたとおり、「1,2-プロピレングリコール中、
及びグリセリン中の5-ALAの10%(質量%/容積%)溶液」と認定した
場合であっても、当業者が本件優先日当時に入手可能であった5-ALAのヒ
ドロクロリドに代えてリン酸塩を得ようとするはずはありません。万が一、5
-ALAのリン酸塩を得ようと考えたとしても、上記のとおり、リン酸塩を製
15 造し単離する方法は甲第2号証に開示されておらず、本件優先日当時の技術常
識でもなかったのですから、「1,2-プロピレングリコール中、及びグリセ
リン中の5-ALAの10%(質量%/容積%)溶液」から5-ALAのリン
酸塩を得ることは容易ではありません。
⑵ 「第3の5⑴本件特許明細書(本件明細書を指す。以下同じ。)の記載につ
20 いて」欄の記載について
通知書で指摘された本件特許明細書段落【0017】における「一般式⑴で
表わされる本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、固体でも溶液でもよい。
溶液とは水をはじめとする溶媒に溶解又は分散した状態を示す」との記載は、
製造・単離した「5-アミノレブリン酸リン酸塩」が、溶媒に溶解又は分散さ
25 れることを意味します。
そして、製造・単離した「5-アミノレブリン酸リン酸塩」が溶媒に溶解又
は分散すると、溶液中の5-アミノレブリン酸リン酸塩は解離して別々に存在
しますが、そのモル比は、5-アミノレブリン酸リン酸塩の構造式から明らか
なように、理論上1:1になります。
2 口頭審理陳述要領書の記載について
5 ⑴ 「第1の3⑵ 動機付けがないこと」欄の記載について
甲第1号証(乙1文献をさす。以下同じ。)は、水溶液中でのALAの分
解メカニズムとその安定性を改善する可能性を調べたものであって(甲第1
号証翻訳文1頁概要4~5行)、甲1発明の「0.3gmL -1 の5-アミノ
レブリン酸塩酸塩が強酸(HCl、H 2 SO 4、H3PO 4、HClO4(全て1
10 N)のいすれか)に溶解された、溶液」から5-アミノレブリン酸のリン酸
塩を得ようとする動機付けは、全く存在しません。しかも、甲1発明の溶液
から、5-アミノレブリン酸のリン酸塩を製造し単離する方法は、甲第1号
証に一切記載されていませんから、5-アミノレブリン酸のリン酸塩を提供
することは、当業者にとって容易にできることではありません。
15 ⑵ 「同⑶ 阻害要因が存在すること」欄の記載について
甲第1号証の翻訳の6頁の請求人が赤枠で囲んだ記載の直後には、以下の
通りの記載があります。
「しかし、最も明らかに、このような強酸性ALA溶液は、臨床的使用に関
連性がなく、そのために安定化のための他の方法が見いだされる必要がある。
20 さらに、pH調整機構なしの単純なALA水溶液中での5%ALA分解は、
市販の投薬形態には許容できないであろう。」
すなわち、「0.3gmL -1のALAが強酸(HCl、H 2SO4、H3PO
4 、HClO 4 ;全て1N)に溶解」することで生じる甲1発明の溶液は、臨
床的に用いることができないという内容であり、ALAの安定化のために他
25 の方法が見いだされる必要があるとまで記載されています。したがって、当
業者が甲1発明の溶液から5-アミノレブリン酸の強酸塩を製造・単離する
という改良を加え、臨床的に使用可能な物質を得ることは甲第1号証の記載
によって排斥されています。そうすると、相違点に係る甲1発明の構成を本
件発明1の構成とすることには阻害要因が存在します。
⑶ 「第2の3の⑵ 上記相違点に係る構成が容易に想到し得ないこと」欄の記
5 載について
本件発明1と甲2発明との間の相違点が上記⑴ア、イのいずれであっても、
5-ALAのリン酸塩を製造し単離する方法について、甲第2号証には全く
記載がないのですから、当業者は、「 5-ALAヒドロクロリド」または
「1,2-プロピレングリコール中、及びグリセリン中の5-ALA(5-
10 アミノレブリン酸ヒドロクロリド)の10%(質量%/容積%)溶液」に代
えて、5-ALAリン酸塩を得ようとするはずがありません。万一、5-A
LAリン酸塩を得ようと考えたとしても、「5-ALAヒドロクロリド」ま
たは「1,2-プロ ピレングリコール中、及びグリセリン中の 5-ALA
(5-アミノレブリン酸ヒドロクロリド)の10%(質量%/容積%)溶液」
15 から5-ALAのリン酸塩を得ることは容易ではありません。
別紙5
本件明細書
1 発明の詳細な説明
⑴ 技術分野
5 本発明は、微生物・発酵、動物・医療、植物等の分野において有用な5-アミ
ノレブリン酸リン酸塩、その製造方法、これを含有する医療用組成物及びこれを
含有する植物活力剤組成物に関する。【0001】
⑵ 背景技術
5-アミノレブリン酸は、微生物・発酵分野においては、VB12 生産、ヘム酵素
10 生産、微生物培養、ポルフィリン生産など、動物・医療分野においては、感染症
治療(非特許文献1)、殺菌、ヘモフィラス診断、誘導体原料、除毛、リウマチ
治療(非特許文献2)、がん治療(非特許文献3)、血栓治療(非特許文献4)、
癌術中診断(非特許文献5)、動物細胞培養、UV カット、ヘム代謝研究、育毛、
重金属中毒ポルフィリン症診断、貧血予防などに、植物分野においては農薬など
15 に有用なことが知られている。【0002】
一方、5-アミノレブリン酸は塩酸塩としてのみ製造法が知られており、原料
として馬尿酸(特許文献1参照)、コハク酸モノエステルクロリド(特許文献2
参照)、フルフリルアミン(例えば、特許文献3参照)、ヒドロキシメチルフル
フラール(特許文献4参照)、オキソ吉草酸メチルエステル(特許文献5参照)、
20 無水コハク酸(特許文献6参照)を使用する方法が報告されている。【0003】
しかしながら、5-アミノレブリン酸塩酸塩は塩酸を含んでいるため、製造過
程、調剤・分包過程で気化した塩化水素により、装置腐食や刺激性を発生するこ
とを考慮する必要があり、これらを防止する措置を講ずることが望ましい。また、
5-アミノレブリン酸塩酸塩を、直接、ヒトへの経口投与や皮膚への塗布の場合、
25 舌や皮膚に灼熱感を感じるような刺激性がある。よって、医薬の分野で利用する
5-アミノレブリン酸として、5-アミノレブリン酸塩酸塩よりも低刺激性の5
-アミノレブリン酸の塩が求められていた。【0004】
また、5-アミノレブリン酸塩酸塩は植物の分野に利用されている(特許文献
7参照)が、植物に対して一般的に使用されている殺菌剤成分の硝酸銀等と混合
して使用すると、5-アミノレブリン酸塩酸塩と硝酸銀が反応して塩化銀の沈殿
5 が発生する場合があり、噴霧器のノズルが詰まって噴霧できなくなる可能性があ
り、操作上、注意を要した。
また、5-アミノレブリン酸塩酸塩水溶液を果実へ直接噴霧をした場合、塩化
物イオンが存在すると、果実の着色が十分ではない場合があった。【0005】
⑶ 発明が解決しようとする課題
10 従って、本発明は低刺激性の5-アミノレブリン酸の新規な塩、その製造方法、
これを含有する医療用組成物及びこれを含有する植物活力剤組成物を提供するこ
とにある。【0006】
⑷ 課題を解決するための手段
本発明者らは、かかる実情に鑑み鋭意検討を行った結果、陽イオン交換樹脂に
15 吸着した5-アミノレブリン酸を溶出させ、その溶出液をリン酸類と混合するこ
とにより、上記要求が満たされる5-アミノレブリン酸リン酸塩が得られること
を見出し、本発明を完成させた。【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)【0008】
HOCOCH2CH2COCH2NH2・HOP(O)(OR1)n(OH)2-n (1)【0009】
20 (式中、R1 は、水素原子又は炭素数1~18 のアルキル基を示し;nは0~2の整
数を示す。)で表される5-アミノレブリン酸リン酸塩を提供するものである。
【0010】
⑸ 発明の効果
本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、臭気が感じられず、そのため取り
25 扱いやすい物質である。しかも、皮膚や舌に対して低刺激性であり、また皮膚等
への透過性も良好であることからこれを含有する組成物に光力学的治療又は診断
用薬として有用である。本発明の製造方法によれば、簡便かつ効率よく5-アミ
ノレブリン酸リン酸塩を製造することができる。また、水溶液にした場合の塩化
物イオン濃度が低いため、植物への投与において、塩素被害が生じにくい。【0
013】
5 ⑹ 発明を実施するための最良の形態
一般式(1)で表わされる本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、固体で
も溶液でもよい。固体とは、結晶を示すが、水和物でもよい。溶液とは、水をは
じめとする溶媒に溶解又は分散した状態を示すが、その pH が pH 調整剤等によっ
て調整されたものでもよい。また、水をはじめとする溶媒は、2 種以上を混合し
10 て使用してもよい。pH 調整剤としては、リン酸、ホウ酸、フタル酸、クエン酸、
コハク酸、トリス、酢酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フタル酸、マレイン酸やそ
れらの塩などを用いた緩衝液又はグッドの緩衝液が挙げられる。【0017】
溶液形態の5-アミノレブリン酸リン酸塩としては、水溶液が好ましい。該水
溶液中の5-アミノレブリン酸リン酸塩濃度は0.01wt ppm~10wt%、さら
15 に0.1wt ppm~5wt%、特に1wt ppm~1wt%が好ましい。また、この水溶液
の pH は3~7、さらに3.5~7、特に4~7が好ましい。また、この水溶液
中には、5-アミノレブリン酸リン酸塩以外の塩が含まれていてもよく、その場
合塩化物イオン濃度は5-アミノレブリン酸リン酸塩の50モル%以下、さらに
10モル%以下、特に3モル%以下が好ましい。【0018】
20 本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、陽イオン交換樹脂に吸着した5-
アミノレブリン酸をイオン含有水溶液で溶出させ、その溶出液をリン酸類と混合
することにより製造することができる。また、その混合液に貧溶媒を加えて結晶
化させることにより、5-アミノレブリン酸リン酸塩を固体として得ることがで
きる。陽イオン交換樹脂に吸着させる5-アミノレブリン酸としては、特に制限
25 されず、純度なども制限されない。すなわち、特開昭 48-92328 号公報、特開昭
62-111954 号公報、特開平 2-76841 号公報、特開平 6-172281 号公報、特開平 7-
188133 号公報等、特開平 11-42083 号公報に記載の方法に準じて製造したもの、
それらの精製前の化学反応溶液や発酵液、また市販品なども使用することができ
る。尚、好ましくは、5-アミノレブリン酸塩酸塩が用いられる。【0019】
陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂又は弱酸性陽イオン交換
5 樹脂のいずれでもよい。また、キレート樹脂も好適に使用できる。これらのうち
で、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。強酸性陽イオン交換樹脂の種類として
は、ポリスチレン系樹脂にスルホン酸基が結合したものが好ましい。【0020】
5-アミノレブリン酸の陽イオン交換樹脂への吸着は、適当な溶媒に溶解した
5-アミノレブリン酸溶液を陽イオン交換樹脂に通液することにより実施できる。
10 このような溶媒としては、5-アミノレブリン酸が溶解すれば特に制限されない
が、水;ジメチルスルホキシド;メタノール、エタノール、プロパノール、イソ
プロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール系;N,N-ジメチルホ
ルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系;ピリジン系などが挙げら
れ、水、ジメチルスルホキシド、メタノール又はエタノールが好ましく、水、メ
15 タノール又はエタノールが特に好ましい。また、2種以上の溶媒を混合して用い
てもよい。また、精製前の化学反応溶液や発酵液を使用する場合には、反応溶媒
の除去や適当な溶媒による希釈を行ってもよい。なお、上記溶媒、精製前の化学
反応溶液や発酵液は、上記 pH 調整剤により、pH 調整してもよい。【0021】
溶出に用いられるイオン含有水溶液としては特に限定されないが、リン酸、ア
20 ルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩、アンモニア、アミ
ン、アミノ基を有する化合物を水に溶解したものが好ましく、水酸化リチウム、
水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、
水酸化セシウム、水酸化バリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、
炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カリウムナトリウム、
25 炭酸水素カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルア
ミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンを水に溶解したものが
より好ましく、アンモニアを水に溶解したものが特に好ましい。これらの水溶液
は2種以上を組み合わせて使用してもよい。アンモニア水の濃度は、0.01~10N
が好ましく、0.1~3N が特に好ましい。【0022】
5-アミノレブリン酸の溶出液と混合されるリン酸類としては、一般式:
5 HOP(O)(OR1)n(OH)2-n (2)〔R1 及びnは上記定義のとおりである。〕で表わされ
る化合物を使用することができる。このようなリン酸類としては、例えば、リン
酸;メチルリン酸、エチルリン酸、n-ブチルリン酸、2-エチルヘキシルリン酸、
ヘキサデシルリン酸、ベンジルリン酸、オレイルリン酸、フェニルリン酸等のリ
ン酸モノエステル;ジメチルリン酸、ジエチルリン酸、ジ n-ブチルリン酸、ジ
10 (2-エチルヘキシル)リン酸、ジヘキサデシルリン酸、ジベンジルリン酸、ジオ
レイルリン酸、ジフェニルリン酸等のリン酸ジエステルが挙げられ、メチルリン
酸、エチルリン酸、オレイルリン酸、フェニルリン酸、ジメチルリン酸、ジエチ
ルリン酸、ジ n-ブチルリン酸、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸、ジヘキサデシ
ルリン酸、ジベンジルリン酸、ジオレイルリン酸又はジフェニルリン酸が特に好
15 ましい。また、次亜リン酸又は亜リン酸も好適に使用できる。【0023】
リン酸類は、水和物又は塩のいずれでもよく、また適当な溶媒に溶解又は分散
したものも好適に使用できる。リン酸類の混合量は、吸着した5-アミノレブリ
ン酸量から想定される5-アミノレブリン酸溶出量に対して、1~5000 倍モル量
が好ましく、より好ましくは 1~500 倍モル量、特に 1~50 倍モル量が好ましい。
20 なお、吸着した5-アミノレブリン酸量から想定される5-アミノレブリン酸溶
出量は、陽イオン交換樹脂や溶出液の種類、溶出液の通流量によっても異なるが、
通常、吸着した5-アミノレブリン酸量に対し、90~100%である。【0024】
このような溶媒としては、水;ジメチルスルホキシド;メタノール、エタノー
ル、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアル
25 コール系;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系
;ピリジン系などが挙げられ、水、ジメチルスルホキシド、メタノール又はエタ
ノールが好ましく、水、メタノール又はエタノールが特に好ましい。また、2 種
以上の溶媒を混合して用いてもよい。【0025】
貧溶媒としては、固体が析出するものであれば特に制限されないが、このよう
な溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、
5 n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系;ジエチルエーテル、ジイソプ
ロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエー
テル系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、γ-ブチ
ロラクトン等のエステル系;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系;アセ
トニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系などが挙げられ、酢酸メチル、酢酸
10 エチル、γ-ブチロラクトン、アセトン又はアセトニトリルが好ましく、酢酸メ
チル、γ-ブチロラクトン、アセトン又はアセトニトリルが特に好ましい。また、
2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。【0026】
イオン含有水溶液による溶出及び溶出液とリン酸類との混合の温度は、溶出液
及びリン酸類が固化しない状態において、-20~60℃が好ましく、-10~30℃が特
15 に好ましい。【0027】
本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、5-アミノレブリン酸のアミノ基
がアシル基で保護されたものや、アミノ基に 1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソ
インドール-2-イル型分子骨格となるような保護基が結合したもののように、ア
ミノ基が加水分解可能な保護基で保護された5-アミノレブリン酸から製造して
20 もよい。また、本発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩は、本発明以外の製造方
法、すなわち、2-フェニル-4-(β-アルコキシカルボニル-プロピオニル)-オキ
サゾリン-5-オンを所望のリン酸を用いて加水分解する方法や5-アミノレブリ
ン酸塩酸塩等のリン酸塩以外の塩を溶媒中で所望のリン酸類と接触させる方法に
よっても得てもよい。リン酸類としては上記一般式(2)のもの、反応溶媒とし
25 ては上記記載のものを使用することができる。【0028】
5-アミノレブリン酸リン酸塩(1)は、後記実施例に示すように、5-アミ
ノレブリン酸塩酸塩に比べて、臭気は感じられず、皮膚や舌に対する刺激性が弱
く、更に変異原性が認められない。更に、動物の皮膚及び植物の表皮への透過性
に優れている。従って、5-アミノレブリン酸リン酸塩は、5-アミノレブリン
酸塩酸塩と同様に、ヒトを含む動物における光力学的治療又は光力学的診断剤と
5 して有用である。光力学的治療又は診断剤としては、癌、感染症、リウマチ、血
栓、にきび等の治療又は診断剤が挙げられる。【0029】
5-アミノレブリン酸リン酸塩の光力学的治療剤又は診断剤としての使用に際
しては、公知の条件で使用すればよく、具体的には、特表2001-50197
0号公報、特表平4-500770号公報、特表2005-501050号公報、
10 特表2004-506005号公報、特表2001-518498号公報、特表
平8-507755号公報に開示されている処方、方法で使用すればよい。【0
030】
5-アミノレブリン酸リン酸塩を含有する光力学的治療又は光力学的診断用組
成物は、皮膚外用剤、注射剤、経口剤、坐剤等の剤形にすることができる。これ
15 らの剤形にするにあたっては、薬学的に許容される担体を用いることができる。
当該担体としては、水、結合剤、崩壊剤、溶解促進剤、滑沢剤、充填剤、賦形剤
等が用いられる。【0031】
また、5-アミノレブリン酸リン酸塩を例えば、植物用途に使用する場合、一
般的に使用される肥料成分等を含有してもよい。肥料成分としては、特許文献7
20 に開示されている物質が挙げられる。
5-アミノレブリン酸リン酸塩は、植物活性化剤としても有用である。植物活
性化剤としての使用に際しては、公知の条件で使用すればよく、具体的には、特
許文献7に開示されている方法で植物に対して使用すればよい。【0032】
⑺ 実施例
25 以下実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定さ
れるものではない。【0033】
実施例1 5-アミノレブリン酸リン酸塩の製造
強酸性イオン交換樹脂(AMBERLITE IR120B Na、オルガノ(株)製) 180 mL を
カラムに詰めた。イオン交換樹脂は、塩酸処理してナトリウムイオン型から水素
イオン型に変換してから使用した。次いで、当該カラムに、5-アミノレブリン
5 酸塩酸塩 20.00 g(119 mmol)をイオン交換水 1000 mL に溶解したものを通液
した後、イオン交換水 1000 mL を通液した。次に、1N アンモニア水をゆっくり
と通液し、黄色の溶出液 346 mL を採取した。採取した溶出液を 85% リン酸
16mL(H3PO4 238 mmol)に加え、エバポレータで濃縮した。濃縮液にアセトン 400
mL を加え、スタラーで激しく攪拌してから 4 ℃で 16 時間静置した。析出した固
10 体を吸引ろ過で回収し、アセトン 500 mL で洗浄した。得られた固体を 12 時間
減圧乾燥し、目的物 23.04 g(101 mmol)を得た。その物性データを以下に示す。
【0034】
融点:108~109 ℃
1 H-NMR(D2O, 400 MHz) δ ppm: 2.67 (t, 2H, CH 2), 2.86 (t, 2H, CH2), 4.08 (s,
15 2H, CH2) 13C-NMR(D2O, 100 MHz) δ ppm: 30 (CH2), 37 (CH2), 50 (CH2), 180 (CO),
207 (COO)元素分析値:C5H9NO3・H3PO4 として
理論値:C 26.21%;H 5.28%;N 6.11%
実測値:C 25.6% ;H 5.2% ;N 6.1%
イオンクロマトグラフィーによる PO43-の含有率:
20 理論値:41.45%
実測値:43%
イオンクロマトグラフィー分析条件;分離カラム:日本ダイオネクス製
IonPac AS12A、溶離液:Na2CO3 と NaHCO3 を含有する水溶液(Na2CO3:3.0 mmol/L、
NaHCO3:0.5 mmol/L)、流速:1.5 mL/min.、試料導入量:25 μL、カラム温度:
25 35℃、検出器:電気伝導度検出器。【0035】
実施例2 5-アミノレブリン酸(リン酸ジ-n-ブチル)塩の製造
強酸性イオン交換樹脂(AMBERLITE IR120B Na、オルガノ(株)製) 180 mL を
カラムに詰めた。イオン交換樹脂は、塩酸処理してナトリウムイオン型から水素
イオン型に変換してから使用した。次いで、当該カラムに、5-アミノレブリン
酸塩酸塩 20.00 g(119 mmol)をイオン交換水 1000 mL に溶解したものを通液
5 した後、イオン交換水 1000 mL を通液した。次に、1N アンモニア水をゆっくり
と通液し、黄色の溶出液 321 mL を採取した。採取した溶出液をリン酸ジ-n-
ブチル 50.00g (238 mmol)に加え、エバポレータで濃縮した。濃縮液にアセトン
400 mL を加え、スタラーで激しく攪拌してから-25 ℃で 16 時間静置した。析出
した固体を吸引ろ過で回収した。得られた固体を 12 時間減圧乾燥し、目的物
10 14.67 g(43 mmol)を得た。その物性データを以下に示す。
1 H-NMR(D2O, 400MHz)δppm: 0.75(6H, CH 3), 1.23(4H, CH2), 1.41(4H, CH2),
2.46(2H, CH2), 2.59(2H, CH2), 3.66(4H, CH2), 3.80(2H, CH2)
13 C-NMR(D2O, 100MHz)δppm: 14(CH 3), 20(CH2), 29(CH2), 34.2(CH2),
34.3(CH2),36(CH2), 67(CH2O), 176(COO), 204(CO) 【0036】
15 実施例3 5-アミノレブリン酸リン酸塩の臭気測定
5 人の被験者が、実施例1で製造した5-アミノレブリン酸リン酸塩の水溶液
(カラムからの溶出液とリン酸の混合液)及びその固体の臭気を直接嗅ぎ、下記
の基準に従って臭気を評価した。結果を表 1 に示す。【0037】
・評価基準
20 ○:臭いが感じられない。
△:臭いはするが不快ではない。
×:不快な臭いがする。【0038】
比較例1
5-アミノレブリン酸塩酸塩の水溶液及び固体を使用する以外は実施例3と同
25 様にして、臭気を評価した。なお、5-アミノレブリン酸塩酸塩の水溶液は、実
施例1の5-アミノレブリン酸塩リン酸塩の水溶液の、5-アミノレブリン酸及
びリン酸イオン濃度と、5-アミノレブリン酸及び塩化物イオン濃度とが、それ
ぞれ同モル濃度となるように、5-アミノレブリン酸塩酸塩の固体と塩酸とイオ
ン交換水により、調製した。結果を表1に示す。【0039】
【表1】
【0040】
実施例4
5-アミノレブリン酸リン酸塩 0.5g を水 1mL に溶解した水溶液を使用する以
外は実施例3と同様にして、臭気を評価した。結果を表2に示す。【0041】
10 比較例2
5-アミノレブリン酸塩酸塩 0.5g を水 1mL に溶解した水溶液を使用する以外
は実施例3と同様にして、臭気を評価した。結果を表2に示す。【0042】
【表2】
15 【0043】
表1、2より、5-アミノレブリン酸リン酸塩の水溶液は、5-アミノレブリ
ン酸塩酸塩の水溶液に比較して臭気が認められなかった。5-アミノレブリン酸
塩酸塩の水溶液の製造に必要な臭気対策や腐食性ガス対策が簡略化され、取り扱
いがより簡便であった。また、5-アミノレブリン酸リン酸塩の固体も、5-ア
20 ミノレブリン酸塩酸塩の固体と比べると臭気が認められず、秤量、分封等の取り
扱いがより簡便であった。【0044】
実施例5 5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液の酸性度測定
濃度1~1000mM の5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液、5-アミノレブリ
ン酸塩酸塩水溶液を各々調製し、その酸性度を 25℃にて pH メーターで測定した。
結果を図1に示す。図1から明らかなように、同一濃度の場合、5-アミノレブ
リン酸リン酸塩水溶液の酸性度は、5-アミノレブリン酸塩酸塩水溶液よりも低
5 かった。【0045】
実施例6 5-アミノレブリン酸リン酸塩の刺激試験
5 人の被験者が、実施例1で得た5-アミノレブリン酸リン酸塩の固体 5mg を
直接舌にのせ、下記の基準に従って味覚を評価した。結果を表3に示す。【00
46】
10 ・評価基準
○:刺激が感じられない。
△:刺激はあるが弱い。
×:強い刺激がある。【0047】
比較例3
15 5-アミノレブリン酸塩酸塩の固体 5mg を使用する以外は実施例6と同様に
して、味覚を評価した。結果を表3に示す。【0048】
【表3】
【0049】
20 表3より、5-アミノレブリン酸リン酸塩は、5-アミノレブリン酸塩酸塩と
比較して強い刺激が認められなかった。【0050】
実施例7 微生物(細菌)を用いる変異原性試験(復帰突然変異試験)
試験は、「微生物を用いる変異原性試験の基準」(昭和 63 年労働省告示第 77
号)(平成 9 年労働省告示第 67 号による一部改正)及び「新規化学物質等に係
25 る試験の方法について」(平成 15 年 11 月 21 日付け:薬食発 1121002 号、平成
15・11・13 製局第 2 号、環保企発第 031121002 号)の「細菌を用いる復帰突然変
異試験」に準拠して行った。5-アミノレブリン酸リン酸塩を蒸留水(和光純薬
工業)に 5%(w/v)溶解した溶液 0.1mL に 0.1M ナトリウム-リン酸緩衝液(pH7.4)
0.5mL(代謝活性化試験では S9mix0.5mL)を加え、更に各試験菌液(ヒスチジン
5 要求性の Salmonella typhimurium TA100,TA98,TA1535 及び TA1537 ならびにト
リプトファン要求性の Escherichia coli WP2 uvrA の 5 種類の菌株を使用(日本
バイオアッセイ研究センター))0.1mL を加え、37℃で 20 分間振盪しながら、
プレインキュベーションした。培養終了後,あらかじめ 45℃に保温したトップ
アガーを 2.0mL を加え、最小グルコース寒天平板培地に重層した。また、最小グ
10 ルコース寒天平板培地は、各用量 2 枚設けた。ただし、溶媒対照(陰性対照)は
3 枚設けた。37℃で 48 時間培養した後、テスト菌株の生育阻害の有無を実体顕
微鏡を用いて観察し、出現した復帰変異コロニー数を計数した。計測に際しては
自動コロニーアナライザー(CA-11:システムサイエンス(株))を用い 86mm 径プレ
ート(内径 84mm)の約 80mm 径内を計測し面積補正及び数え落とし補正をパーソ
15 ナルコンピューターで行い算出した。ただし、コロニー数が 1500 以上では、自
動コロニーアナライザーの信頼性が落ちるため、実体顕微鏡にてプレート内 5 点
をマニュアル測定し平均値に面積補正を行った。用量設定試験は、ガイドライン
上定められた最高用量である用量 5000 μg/plate を最高とし公比 4 で希釈した
7 用量を実施した。その結果、S9 mix の有無によらず、いずれの菌株においても
20 溶媒対照と比較して 2 倍以上の復帰変異コロニー数の増加は認められなかった。
本被験物質の菌に対する生育阻害は認められなかった。本被験物質の沈殿も認め
られなかった。従って,本試験はガイドライン上定められた最高用量である用量
5000 μg/plate を最高とし公比 2 で希釈した 5 用量を設定した。その結果、代謝
活性の有無によらず、いずれの菌株においても溶媒対照と比較して 2 倍以上の復
25 帰変異コロニー数の増加は認められなかったことから(表4)、5-アミノレブ
リン酸リン酸塩は、突然変異誘発能を有さないことが確認された。【0051】
【表4】
【0052】
実施例8 急性経口毒性試験
試験は、OECD ガイドライン No.423「急性経口毒性-急性毒性等級法」(2001
年 12 月 17 日採択)に準拠して行った。一群 3 匹の絶食させた雌のラット
(Sprague-Dawley CD 種)に5-アミノレブリン酸リン酸塩を体重1kg 当たり
300mg の投与量で処理した。更に別の絶食させた複数郡の雌ラットを体重 1kg 当
5 たり 2000mg の投与量で処理した。投与後 2 週間連続し
て観察した。その結果、いずれのラットにおいても死亡が確認されず(表5)、
全身毒性の徴候もなく、全てのラットで通常の体重増加が示され(表6)、急性経
口半数致死量(LD50)は、体重1kg 当たり 2500mg より大きいと推定された。
【0053】
10 【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
実施例9 急性皮膚刺激性試験
試験は、OECD ガイドライン No.404「急性皮膚刺激性/腐蝕性試験」(1992 年
5 7 月 17 日採択)及び EU 委員会指令 92/69/EEC B4 法 急性毒性(皮膚刺激性)
に準拠して行った。ニュージーランド白ウサギ 3 匹(雄)を用い、毛をそった
2.5cm 四方の無傷な皮膚に5-アミノレブリン酸リン酸塩 0.5g を蒸留水 0.5mL に
溶解したもの(pH3.1)を 4 時間塗布し、1、24、48、72 時間まで観察を行った。
その結果、24 時間以内でごく軽度な赤斑が観察されたが、48 時間後の観察では
10 正常となった(表7、8)。また、ニュージーランド白ウサギ 1 匹(雄)を用い
て、毛をそった 2.5cm 四方の無傷な皮膚に5-アミノレブリン酸リン酸塩 0.5g
を蒸留水 0.5mL に溶解したもの(pH3.1)を 3 分、1 時間塗布し、1、24、48、72
時間まで観察を行った結果では、何の皮膚刺激性も観察されなかった(表7、8)。
このことより、P.I.I 値(一次皮膚刺激性指数)は 0.5 であり、現行の国連勧告
15 GHS での刺激性分類では分類外で刺激性物質には当てはまらないことが確認され
た。なお、対照として5-アミノレブリン酸塩酸塩 0.5g を蒸留水 0.5mL に溶解
したものは、pH が 2.0 以下で OECD ガイドラインより腐蝕性ありと判断されるた
め、行わなかった。【0056】
【表7】
【0057】
【表8】
【0058】
実施例10 動物表皮透過性試験
透析セル(有効面積 1.13cm2 、図2)を用い、受容層に pH6.8 の生理食塩水
17mL を攪拌しながら 37℃に保った。前処理した豚皮全層(表皮+真皮)をメン
10 ブランフィルターにのせ、透析セルに設置した。供与層には、1mM の5-アミノ
レブリン酸リン酸塩水溶液を 0.5mL 添加した。所定時間毎に受容層の溶液を
0.2mL 採取し、新たに生理食塩水を補充した。採取した試料又は標準液それぞれ
0.05mL と A 液(アセチルアセトン/エタノール/水=15/10/75(v/v/v)の混合溶
液 1L に塩化ナトリウム 4g 含む)3.5mL と B 液(ホルマリン 85mL を水で1L に希
5 釈した溶液)0.45mL を混合し 30 分間加熱処理し、30 分後水冷して5-アミノレ
ブリン酸濃度をHPLCで測定し(分析条件は、蛍光検出器:励起波長 473nm、
蛍光波長 363nm を用い、溶離液はメタノール/2.5%酢酸水溶液=40/60(v/v)溶液
を用い、カラムは Wakosil-II 5C18HG、4.6mφ×150mm を用い、流速は 1.0mL/min、
温度 25℃で行った。)、標準液のピーク面積から各濃度を算出した。
10 次に、豚皮の替わりにタマネギの表皮を使用して、供与層の5-アミノレブリ
ン酸リン酸塩水溶液の濃度を 0.1mM にして同様に行った。その結果を図3、4に
示す。図3、4から解るように、豚皮、タマネギ表皮において5-アミノレブリ
ン酸塩酸塩と5-アミノレブリン酸リン酸塩は、同様の透過性を示した。【00
59】
15 比較例4
5-アミノレブリン酸リン酸塩の代わりに5-アミノレブリン酸塩酸塩を使用
する以外は、実施例10と同様にして、透過性を測定した。【0060】
このことより、実施例9で示したように、5-アミノレブリン酸塩酸塩を直接、
皮膚に塗布した場合、刺激性があるが、5-アミノレブリン酸リン酸塩では、皮
20 膚刺激性は感じられず、皮膚への透過性が同等であり、5-アミノレブリン酸リ
ン酸塩は、5-アミノレブリン酸塩酸塩以上に医療(光線力学治療や光力学的診
断剤)や植物に有効な塩であることが確認できた。【0061】
実施例11 (塩化銀の沈殿発生実験)
5-アミノレブリン酸リン酸塩 0.5 g と硝酸銀 0.5 g をイオン交換水 10 mL に
25 溶解し、5分静置し液の様子を観察した。沈殿の発生は認められなかった。
なお、5-アミノレブリン酸塩酸塩 0.5 g と硝酸銀 0.5 g をイオン交換水 10 mL
に溶解し、5分静置し液の様子を観察した。沈殿の発生が認められた。【006
2】
実施例12(りんごの着色実験)
実施例1で得られた、5-アミノレブリン酸リン酸塩をイオン交換水に溶解さ
5 せ、表の所定濃度とした。その液に展着剤(丸和バイオケミカル(株)社製「ア
プローチ BI」)を濃度が 0.1 重量%となるように加えた。pH はリン酸を用いて
調整した。
上記の5-アミノレブリン酸リン酸塩を5-アミノレブリン酸塩酸塩として、
また pH 調整のリン酸を塩酸とする以外は同様にして5-アミノレブリン酸塩酸
10 塩水溶液を調製した。
りんご「ふじ」の子実が着果し、未だ赤色に着色していない主枝3本に対し、
調製した液を1枝当たり 2L 噴霧した(9 月 15 日)。約 2 ヵ月後(11 月 6 日)に
りんごを収穫し、着色度を調べた。着色の測定にはミノルタ社製、色彩度計 CR
-200 を用いた。結果を表9に示す。【0063】
15 【表9】
【0064】
表9中の Lab 値では、L は明るさ、a は赤、b は黄を表す。従って a の値が高い
ほど赤が濃いことになる。5-アミノレブリン塩酸塩よりも5-アミノレブリン酸
リン酸塩の方が赤の着色が濃かった。【0065】
実施例13(植物活力効果)
内径12cmの磁気製ポットに火山灰土壌が 600 g 充填されかつ、1つのポッ
5 トに高さ 15 cm まで育ったツユクサが1本植えられているものを12個ずつ用意
して 20℃の恒温環境におき、1日1回下記散布液による茎葉散布処理を行った。
21日後の葉の様子を観察した。その結果を表10にまとめた。【0066】
【表10】
10 【0067】
表10の結果より、5-アミノレブリン酸リン酸塩に、5-アミノレブリン酸
塩酸と同等以上の植物の活力効果が認められた。【0068】
実施例14(植物生長調節効果)
イネ種(アキニシキ)をベンレート(住化タケダ園芸(株)製)(200 倍)水
15 溶液に一昼夜浸漬し、その後、暗条件、30℃にてインキュベートし催芽した。ハ
ト胸期のステージのそろった種子を選び、カッターナイフで溝をつけた発泡ポリ
エチレンシートに、ピンセットを用いて 1 シート当たり10粒挟み込み、表11
に示す各濃度の5-アミノレブリン酸リン酸塩150mL を満たした腰高シャー
レにこのシートを浮かべ、25℃、5,000ルクス連続光照射下で24時間イ
ンキュベートした。反復数は各濃度3反復とした。3日後、調査を行い各区の第
一葉鞘長、及び種子根長を測定し無処理区に対する比を算出し、それらの平均値
5 を算出した。その結果を表11に示す。【0069】
【表11】
【0070】
5-アミノレブリン酸リン酸塩は5-アミノレブリン酸塩酸塩と同等以上の植
10 物生長促進効果を示した。【0071】
実施例15(耐塩性向上効果)
内径12cmの排水穴のない磁気製ポットに畑土壌を600g充填し、ワタの
種子(品種;M-5 Acala)を7~8粒播種して1cm覆土し、温室内で育
成させた。その後通常の管理を行い、子葉展開時に、表12に示す濃度の供試化
15 合物と展着剤(ネオエステリン:クミアイ化学社製)を0.05%(v/v)含
有する耐塩性向上剤を調製し、10アール当たり100リットルの散布水量で茎
葉に散布処理した。各々の供試化合物は表12の濃度とした。4日後、表12に
示すように土壌重量当たり0~1.5重量%に相当する量の塩化ナトリウムを3
0mLの水に溶解させて土壌に滴下処理した。更に通常の栽培を続け、23日後
20 に調査を行った。調査は目視観察によって行い、結果は塩害を以下に示す6段階
で評価した。結果を表12に示す。【0072】
(評価段階)
0:全く塩害が見られない。
1:極弱い塩害が見られる。
5 2:弱い塩害が見られる。
3:明らかな塩害が見られる。
4:強い塩害が見られる。
5:植物体は塩害により枯死した。【0073】
【表12】
【0074】
表12に示したように、5-アミノレブリン酸リン酸塩は5-アミノレブリン
酸塩酸塩と同等以上の耐塩性向上効果を示した。【0075】
上記実施例で用いた5-アミノレブリン酸リン酸塩水溶液中の塩化物イオン濃
15 度を、以下の条件のイオンクロマト法で測定した結果、いずれも検出限界(0.
1ppm)以下であった。
測定条件は、A.分離カラム(日本ダイオネクス製 IonPac AS12A)、B.ガード
カラム(日本ダイオネクス製 IonPac AG12A)、C.溶離液(Na2CO3:3.0mmol/L、
NaHCO3:0.5mmol/L からなる水溶液)、D.流量(1.5mL/min)、E.サプレッサ
(ASRS(リサイクルモード、電流値 50mA))、F.試料導入量(25μL)、G.恒温
槽温度(35 度)、H.検出器(電気伝導度検出器)による。【0076】
5 2 図面
⑴ 図1
5-アミノレブリン酸塩水溶液の濃度と pH との関係を示す図である。
⑵ 図2
透析セル概略図である。
⑶ 図3
5 5-アミノレブリン酸のリン酸塩と塩酸塩の豚皮透過性結果を示す図である。
⑷ 図4
5-アミノレブリン酸のリン酸塩と塩酸塩のタマネギ表皮透過性結果を示す図であ
る。
以上

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