令和4(ワ)15678特許権侵害差止等請求事件
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裁判所 |
請求棄却 東京地方裁判所東京地方裁判所
|
裁判年月日 |
令和5年8月30日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
原告株式会社ニード 被告ヴィレップス合同会社
|
対象物 |
折畳み式テント |
法令 |
特許権
特許法36条6項2号1回 特許法36条6項1号1回 特許法36条4項1号1回 特許法29条1項3号1回 特許法17条の21回 特許法104条の31回 特許法102条2項1回 特許法100条1項1回
|
キーワード |
実施19回 無効16回 分割10回 特許権8回 新規性8回 進歩性5回 無効審判5回 侵害3回 差止2回 損害賠償1回
|
主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
1 被告は、別紙被告製品目録記載の各製品を製造し、譲渡し、輸入し、輸出し、
2 被告は、前項の各製品及びその半製品(前項の各製品の構造を具備している
3 被告は、原告に対し、373万4500円及びこれに対する令和4年3月2
5日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によ
37、47が付設されて1枚の板状体10、20、30、40(以下、
5a並びに対向部35b及び45aのそれぞれが、相互に折り畳み可能
2 争点20
1 争点1(構成要件Bの充足性)について
15bと25a、対向部25bと35a及び対向部35bと45a)が、相
5b及び45a)が、分離・開放不可能で、相互に折畳み可能に順次連続し
032】では「接合」と表現していることからすると、両者は同義であ
15a、対向部15bと25a、対向部25bと35a及び対向部35bと
45a)のそれぞれが、他の壁面の側縁と該側縁の延伸方向に沿ってつらな5
2 争点2-1(乙2文献を主引用例とする新規性又は進歩性欠如)について
607446号明細書(以下「乙9文献」という。)に記載の発明(以
2発明に乙9発明を組み合わせることにより本件発明を発明することは容
1枚を接合手段の着脱により開閉自在とすることで、テント外周縁のフレー25
3 争点2-2(補正要件違反)について
23が設けられていると記載されているにすぎず、「互いに対応する側縁」が
4 争点2-3(サポート要件違反)について
4号)が存在し、特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。
5 争点2-4(実施可能性要件違反)について
6 争点2-5(明確性要件違反)について
7 争点5(原告の損害及び損害額)について5
0円の損害が生じているといえる。
33万9500円となる。
1 本件明細書の記載事項等
4枚の壁面部の左右両側縁がそれぞれ折畳み可能に相互に結合されて425
4枚の略矩形状壁面の内、相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する
5の各両側縁2a、2b、3a、3b、4a、4b、5a、5bの内、25
3が設けられている。図7に図示されるように、正壁面2の右側縁2a
0、下閉塞面19でもってこの上下の空隙部は閉塞されるようになって25
2 争点1(構成要件Bの充足性)について
4b、5a、5bの内、側縁3aと4b、4aと5b、5aと2bとを相互
40の対向部15a及び45bを除外した他の側縁、すなわち、第1板状体
10の左右の側縁を構成する対向部15b、第2板状体20の左右の側縁を
3 争点2-1(乙2文献を主引用例とする新規性又は進歩性欠如)について
1 つのフレームに取り付けられた布材を含む。少なくとも 2 つのサイド
2~45行)25
22及び24を含む。…2つのサイドパネル22、24は、長方形状の5
4、5の側縁上下端部は、…三角形に近い形状の上閉塞面20、下閉
1 被告製品1
2 被告製品2
1
25
3
4
5
6
7 |
事件の概要 |
本件は、発明の名称を「折畳み式テント」とする特許第5595570号の25
特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)
を有する原告が、被告による別紙被告製品目録記載の各製品(以下「被告各製
品」という。)の製造、譲渡等が本件特許権の侵害に当たると主張して、被告
に対し、特許法100条1項に基づき被告各製品の製造、譲渡等の差止めを、
同条2項に基づき被告各製品及びその半製品等の廃棄を、特許権侵害の不法行
為に基づく損害賠償として373万4500円及びこれに対する不法行為の日
である令和4年3月25日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合
による遅延損害金の支払を、それぞれ求める事案である。5 |
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判決文
令和5年8月30日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和4年(ワ)第15678号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和5年6月7日
判 決
原 告 株 式 会 社 ニ ー ド
同訴訟代理人弁護士 田 仲 剛
同 補 佐 人 弁 理 士 神 澤 淳 子
被 告 ヴィレップス合同会社
10 同訴訟代理人弁護士 服 部 謙 太 朗
同 補 佐 人 弁 理 士 富 永 浩 司
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
15 事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告は、別紙被告製品目録記載の各製品を製造し、譲渡し、輸入し、輸出し、
譲渡の申出をし、又は譲渡のために展示してはならない。
2 被告は、前項の各製品及びその半製品(前項の各製品の構造を具備している
20 が製品として完成するに至らないもの)及び前項の各製品の製造に供する金型
を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、373万4500円及びこれに対する令和4年3月2
5日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
25 本件は、発明の名称を「折畳み式テント」とする特許第5595570号の
特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)
を有する原告が、被告による別紙被告製品目録記載の各製品(以下「被告各製
品」という。)の製造、譲渡等が本件特許権の侵害に当たると主張して、被告
に対し、特許法100条1項に基づき被告各製品の製造、譲渡等の差止めを、
同条2項に基づき被告各製品及びその半製品等の廃棄を、特許権侵害の不法行
為に基づく損害賠償として373万4500円及びこれに対する不法行為の日
である令和4年3月25日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合
5 による遅延損害金の支払を、それぞれ求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によ
り容易に認められる事実)
(1) 当事者
ア 原告は、避難用パーティション等の防災用品の開発、製造、販売等を目
10 的とする株式会社であり、本件特許権を有している。
イ 被告は、コロナ対策関連商品や防災商品の製造、販売、卸等を目的とす
る合同会社である。
(2) 本件特許
ア 原告は、平成25年9月4日、本件特許に係る特許出願(特願2013
15 -183512。以下「本件出願」という。)をし、平成26年8月15
日、本件特許権の設定登録(請求項の数4)を受けた(甲1、2。以下、
本件出願の願書に添付された明細書及び図面を併せて「本件明細書」とい
う。また、本件明細書の発明の詳細な説明中の段落番号を【0001】な
どと記載し、図を「図1」などという。。
)
20 イ 本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである(以
下、同請求項に係る発明を「本件発明」という。。
)
【請求項1】
角部が湾曲した略矩形状可撓性幕の外周縁に弾性に富んだ無端フレー
ムが付設されて1枚の略矩形状壁面が形成され、4枚の略矩形状壁面の
25 内、相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く他の側縁が
相互に折畳み可能に順次連続して連結されるとともに、前記相隣る2枚
の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な接合手段を介して
接合されることにより、前記4枚の略矩形状壁面でもって筒状周壁部が
構成され、
前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面の
内、いずれか一方の略矩形状壁面には開閉自在な扉部が形成され、
前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面に
5 より開閉自在な両壁面開口部が設けられたことを特徴とする折畳み式テ
ント。
ウ 本件発明を構成要件に分説すると、次のとおりである(以下、分説した
構成要件を符号に対応させて、「構成要件A」などという。。
)
A 角部が湾曲した略矩形状可撓性幕の外周縁に弾性に富んだ無端フレー
10 ムが付設されて1枚の略矩形状壁面が形成され、
B 4枚の略矩形状壁面の内、相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応す
る側縁を除く他の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結されると
ともに、
C 前記相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可能な
15 接合手段を介して接合されることにより、前記4枚の略矩形状壁面でも
って筒状周壁部が構成され、
D 前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面の
内、いずれか一方の略矩形状壁面には開閉自在な扉部が形成され、
E 前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略矩形状壁面に
20 より開閉自在な両壁面開口部が設けられたことを特徴とする
F 折畳み式テント。
(3) 被告の行為等
ア 被告は、遅くとも平成29年7月28日から、業として、被告各製品を
譲渡し、譲渡の申出をし、譲渡のために展示をしている。
25 イ 被告各製品の構成は、次のとおりである(ただし、下線部の構成には争
いがある。。
)
a 角部が湾曲した略矩形状の可撓性幕の平面部18(別紙写真目録の写
真1ないし7参照。同写真において被告各製品の説明のために付された
付番について以下同じ。、28、38、48の外周縁に枠体17、27、
)
37、47が付設されて1枚の板状体10、20、30、40(以下、
順に「第1板状体10」 「第2板状体20」などという。
、 )が形成され、
b 接合部60により連結される第4板状体40及び第1板状体10の対
5 向部45b及び15a、対向部15b及び25a、対向部25b及び3
5a並びに対向部35b及び45aのそれぞれが、相互に折り畳み可能
に順次連続して連結されるとともに、
c 第1板状体10ないし第4板状体40が、一方向に延びる側面シート
体とされている場合において、第4板状体40及び第1板状体10の間
10 の連結が着脱可能な接合部60を介して「OFF」状態から「ON」状
態に遷移させられ、第4板状体40及び第1板状体10が接合部60に
より接合されることにより、第1板状体10ないし第4板状体40は筒
状体とされ、
d 第1板状体10の平面部18に、開閉自在な扉部19が形成され、
15 e 接合部60を介して接続される対向部45b、15aを有する第4板
状体40及び第1板状体10により開閉自在な開口65が設けられたこ
とを特徴とする
f テント1
ウ 被告各製品は、構成要件A、CないしFを充足する。
20 2 争点
(1) 構成要件Bの充足性(争点1)
(2) 本件特許に対する無効の抗弁の成否(争点2)
ア 米国特許第6782905号明細書(乙2。以下「乙2文献」という。)
を主引用例とする新規性又は進歩性欠如(争点2-1)
25 イ 補正要件違反(争点2-2)
ウ サポート要件違反(争点2-3)
エ 実施可能性要件違反(争点2-4)
オ 明確性要件違反(争点2-5)
(3) 原告の損害及び損害額(争点3)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(構成要件Bの充足性)について
(原告の主張)
5 (1) 「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く」の意義につい
て
構成要件Bの「除く」は、一般的には「加えない。除外する。別にする。」
(広辞苑 第七版)という意味を有している。このような「除く」の通常の
用いられ方に照らせば、「除く」の文言は、構成要件Bの「相隣る2枚の略
10 矩形状壁面の互いに対応する側縁」の部分にかかっていると解釈するのが合
理的である。
被告は、「他の側縁」が、「相互に折り畳み可能」であることを「除く」、
「順次連続して」いることを「除く」「連結され」ていることを「除く」と
、
解釈すべきと主張するが、そのような解釈は本件明細書の発明の詳細な説明
15 及び図面のどこからも読み取ることはできないし、「~を除く」の通常の用
いられ方からしても不合理である。
(2) 「連続して連結される」の意義について
構成要件Bの構成は、本件明細書の【0021】及び【0022】並びに
図7及び図8(図7及び図8は、別紙図面目録1記載の図面参照。以下同
20 じ。)に詳細に説明されている。例えば、本件明細書の【0021】には、
「筒状周壁部1では、図7に図示されるように、4枚の壁面2、3、4、5
の各両側縁2a、2b、3a、3b、4a、4b、5a、5bの内、側縁3
aと4b、4aと5b、5aと2bとを相互に折畳み可能に連結し、側縁2
aと3bとを後述する接合手段23で接合することで筒状周壁部1が構成さ
25 れている。」と記載されているし、【0022】には、「図7に図示されるよ
うに、正壁面2の右側縁2aと右壁面3の左側縁3bとは前記接合手段23
により、一体に接合され、または分離される。」と記載されている。
また、図7は、接合手段23が接合されて筒状周壁部1が構成された状態
を、図8は、接合手段23が分離されて両壁面開口部24が開放された状態
をそれぞれ示しているところ、図7にも図8にも、接合手段23を備えた側
縁2aと3b以外の側縁(側縁3aと4b、4aと5b、5aと2b)部分
が分離・開放された状態は図示されていない。
5 このように、本件明細書の【0021】及び【0022】並びに図7及び
図8の記載を考慮すれば、本件発明は、接合手段23を備えた側縁2aと3
b以外の側縁(すなわち、側縁3aと4b、4aと5b、5aと2b)が分
離できない構成を採用していることが明らかであるから、構成要件Bの「連
続して連結され」るという文言は、分離が不可能に連結している構成を意味
10 しているといえる。
以上によれば、構成要件Bは、分離が可能な構成である「互いに対応する
側縁(面ファスナー設置部)」を「除く(加えない。除外する。別にする)」
他の側縁については分離が不可能に連結しているという構成を示していると
いえる。
15 (3) 被告各製品について
被告各製品は、各部が湾曲した略矩形状ナイロン生地の外周縁に無端スチ
ールスプリングフレームが付設されて1枚の略矩形状壁面が形成されており、
この略矩形状壁面4枚により、筒状周壁部が構成されている。接合部60に
より連結される第1板状体10と第4板状体40の対向部45bと15a
20 (面ファスナー設置部)は分離及び開放可能であり、「連続して連結され」
ていない一方、対向部45bと15aを除く他の対向部(すなわち、対向部
15bと25a、対向部25bと35a及び対向部35bと45a)が、相
互に折畳み可能に順次連続して連結されている。
したがって、被告製品の構成bは、「第1及び第4板状体40、10の対
25 向部45b及び15a(面ファスナー設置部)が分離・開放可能で「連続し
て連結され」ていない一方、対向部45b及び15aを除く他の対向部(す
なわち、対向部15b及び25a、対向部25b及び35a並びに対向部3
5b及び45a)が、分離・開放不可能で、相互に折畳み可能に順次連続し
て連結されている」と認められるから、分離が可能な「互いに対応する側縁
(面ファスナー設置部)」を「除く(加えない。除外する。別にする)」他の
側縁については分離が不可能に連結しているという構成(前記(2))を有し
ているといえ、被告各製品は、構成要件Bを充足する。
5 (被告の主張)
(1) 「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く」の意義につい
て
本件明細書の実施例では、「除く」という文言を用いて本件発明の実施例
を説明した記載はない。このため、本件明細書からは「除く」という語句の
10 意義は一義的には明確ではない。
そこで、「除く」の通常の用法を参照すると、「除く」という語句は一般的
に、「加えない。除外する。別にする。」と説明されており、その用例として
「二人を―・いて誰も知らない」といったものなどが示されている(広辞苑
第七版)。上記の「二人を―・いて誰も知らない」という用例では、二人は
15 知っているが、それ以外の者は知らないという意味となるように、「別にす
る」もの(上記の用例だと「二人」)と「別にされない」もの(上記の用例
だと二人「以外の者」)とでは、異なる性質・構成を有する(上記の用例だ
と「知らない」)ことを意味すると解すべきである。
そうすると、構成要件Bは、除かれた側縁、すなわち「相隣る2枚の略矩
20 形状壁面の互いに対応する側縁」は、「相互に折り畳み可能に」 「順次連続
、
して」「連結され」るという構成を、いずれも有していてはならないという
、
ことを規定していることになる。
(2) 「連続して連結される」の意義について
ア 構成要件Bの「連続」とは、「つらなりつづくこと。切れ目がなくつづ
25 くこと。」という意味であるから、「他の側縁」が「連続して連結される」
とは、「他の側縁」が、他の壁面の側縁と該側縁の延伸方向に沿ってつら
なりつづいた状態であることを意味する。
原告は、上記「連続して連結」の意義について、分離が不可能に連結
している構成を意味していると主張するが、「連続」が上記のような意味
を有していることからすると、「連続して連結される」を、「分離が不可
能に連結される」と解釈することはできない。
イ 原告は、【0021】及び【0022】並びに図7及び図8の記載を根
5 拠として上記原告の主張を採用すべきであると主張する。
しかし、本件発明は、4枚の壁面のうち、特定の壁面の両側縁の構成
について特定しているのではなく、4枚の壁面全ての側縁が本件発明で
特定されている構成を有することを規定しているといえる。原告は、「相
隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」は側縁2aと側縁3b
10 に限定され、他の側縁はすべて「他の側縁」となることを前提として、
「連続して連結」の意義について主張しているが、特許請求の範囲には、
構成要件Bの「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」を、
特定の壁面の両側縁に限定するといった記載はない。原告の主張は、「相
隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」が、実施例の側縁2a
15 と側縁3bに限定されることを前提としている点で誤りがあるから、実
施例の記載を根拠とした原告主張の解釈は採り得ない。
また、原告が主張する【0021】及び【0022】並びに図7及び
図8には、側縁3aと4b、4aと5b、5aと2bが分離不可能であ
るといった明示的な記載はなく、分離可能であったとしても発明として
20 成り立つものである。
さらに、【0021】では、「連結」と表現していた構成について、【0
032】では「接合」と表現していることからすると、両者は同義であ
るといえ、原告の主張を前提とすると、「接合」も分離可能ということに
なるはずである。そして、【0032】では「4枚の壁面2、3、4、5
25 の各両側縁2a、2b、3a、3b、4a、4b、5a、5bを相互に
折畳み可能に接合する」と記載されているから、側縁2aと3b以外の
側縁も分離可能となり、原告の主張と整合しない。
よって、原告の上記主張は理由がない。
(3) 被告各製品について
被告各製品は、「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」(すな
わち、互いに対応する側縁(以下「対向部」ということがある。)45bと
15a、対向部15bと25a、対向部25bと35a及び対向部35bと
5 45a)のそれぞれが、他の壁面の側縁と該側縁の延伸方向に沿ってつらな
りつづいた状態となっており、「相互に折り畳み可能に順次連続して連結さ
れ」ているのだから、前記(1)及び(2)の解釈を前提とすると、構成要件Bを
充足しない。
2 争点2-1(乙2文献を主引用例とする新規性又は進歩性欠如)について
10 (被告の主張)
本件発明は、以下のとおり、乙2文献に記載された発明と同一であるか、同
発明に基づき、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであ
って、特許法29条1項3号又は2項の規定により特許を受けることができな
いものであるから、本件特許は、同法123条1項2号に該当し、特許無効審
15 判により無効とされるべきものと認められ、同法104条の3第1項により本
件特許権の行使は認められない。
(1) 乙2文献に記載された発明の認定について
本件特許の出願日より前である平成16年8月31日に公開された乙2
文献には、次の構成を有する発明(以下「乙2発明」という。)が記載され
20 ていると認められる(以下、乙2発明の構成を「乙2a」などという。。
)
乙2a 角部が湾曲した略矩形状布材の外周縁に弾性に富んだフレームが付
設されて1枚の略矩形状壁面が形成され
乙2b サイドパネル及びエンドパネルからなる4枚の略矩形状壁面の内、
エンドパネルとサイドパネルの着脱部となる側縁を除く他の側縁が相
25 互に折畳み可能に順次連続して連結されるとともに、
乙2c エンドパネルとサイドパネルの着脱部となる側縁は、ジッパーや紐
等の手段を介して取り付けられることにより、前記4枚のサイドパネ
ル及びエンドパネルでもって筒状周壁部が構成され、
乙2d 前記手段を介して取り付けられる側縁を有する2枚の略矩形状のサ
イドパネル及びエンドパネルの内、エンドパネルには開閉自在な扉部
が形成され、
乙2e 前記手段を介して取り付けられる側縁を有する2枚の略矩形状のサ
5 イドパネル及びエンドパネルにより開閉自在な両壁面開口部が設けら
れたことを特徴とする
乙2f 折畳み式テント
(2) 本件発明と乙2発明の対比について
ア 構成要件Aについて
10 構成要件Aは「角部が湾曲した略矩形状可撓性幕の外周縁に弾性に富ん
だ無端フレームが付設されて1枚の略矩形状壁面が形成され、」であるの
に対し、乙2aは「角部が湾曲した略矩形状布材の外周縁に弾性に富んだ
フレームが付設されて1枚の略矩形状壁面が形成され」である。そして、
乙2発明のフレームが無端フレームに相当することは、乙2文献の図面等
15 から明らかである。
よって、本件発明と乙2発明は、構成要件Aに係る構成を備える点にお
いて一致する。
イ 構成要件Bについて
構成要件Bは「4枚の略矩形状壁面の内、相隣る2枚の略矩形状壁面の
20 互いに対応する側縁を除く他の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して
連結されるとともに、」であるのに対し、乙2bは「サイドパネル及びエ
ンドパネルからなる4枚の略矩形状壁面の内、エンドパネルとサイドパ
ネルの着脱部となる側縁を除く他の側縁が相互に折畳み可能に順次連続
して連結されるとともに、」であり、両者は一致する。
25 よって、本件発明と乙2発明は、構成要件Bに係る構成を備える点にお
いて一致する。
ウ 構成要件Cについて
構成要件Cは「前記相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、
着脱可能な接合手段を介して接合されることにより、前記4枚の略矩形状
壁面でもって筒状周壁部が構成され、」であるのに対し、乙2cは「エン
ドパネルとサイドパネルの着脱部となる側縁は、ジッパーや紐等の手段を
介して取り付けられることにより、前記4枚のサイドパネル及びエンドパ
5 ネルでもって筒状周壁部が構成され、」である。
そして、乙2発明において、エンドパネルとサイドパネルは、短いジッ
パーや紐により取り付けられるのであるから、構成要件Cの「接合」に相
当する。
よって、本件発明と乙2発明は、構成要件Cに係る構成を備える点にお
10 いて一致する。
エ 構成要件Dについて
構成要件Dは「前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略
矩形状壁面の内、いずれか一方の略矩形状壁面には開閉自在な扉部が形
成され、」であるのに対し、乙2dは「前記手段を介して取り付けられる
15 側縁を有する2枚の略矩形状のサイドパネル及びエンドパネルの内、エ
ンドパネルには開閉自在な扉部が形成され、」であり、本件発明と乙2発
明は、構成要件Dに係る構成を備える点において一致する。
オ 構成要件Eについて
構成要件Eは「前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚の略
20 矩形状壁面により開閉自在な両壁面開口部が設けられたことを特徴とする」
であるのに対し、乙2eは「前記手段を介して取り付けられる側縁を有す
る2枚の略矩形状のサイドパネル及びエンドパネルにより開閉自在な両壁
面開口部が設けられたことを特徴とする」であり、本件発明と乙2発明は、
構成要件Eに係る構成を備える点において一致する。
25 カ 構成要件Fについて
構成要件Fは「折畳み式テント」であるのに対し、乙2fは「折畳み式
テント」であり、本件発明と乙2発明は、構成要件Fに係る構成を備え
る点において一致する。
(3) 一致点及び相違点について
前記(2)のとおり、本件発明と乙2発明は、本件発明の各構成を備える点
において一致する。
原告は、本件発明と乙2発明は、次のア及びイの点で相違すると主張す
5 るが、原告の主張は、次のとおり理由がない。
ア 原告は、仮に、構成要件Bの「除く」について前記1(被告の主張)
(1)の解釈を前提としたとしても、本件発明は、「相隣る2枚の略矩形状壁
面の互いに対応する側縁を除く他の側縁」すなわち4か所の側縁のうち3
か所が分離不可能に連結し、「相隣る略矩形状壁面の互いに対応する側面」
10 すなわち4か所の側縁のうち1か所においてのみ分離可能となっているの
に対し、乙2発明の「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」
は、4か所の側縁のうち2か所において分離可能となっており、4か所の
側縁のうち1か所が分離可能となっているわけではないとの点において相
違する(以下、「相違点1」ということがある。)と主張する。
15 しかし、前記1(被告の主張)(2)のとおり、「連続して連結される」と
いう意義が、分離不可能であることを意味するとの解釈をとることは相当
ではなく、「他の側縁」が「連続して連結される」とは、「他の側縁」が、
他の壁面の側縁と該側縁の延伸方向に沿ってつらなりつづいた状態である
ことを意味するにすぎない。
20 そして、乙2発明は、4枚のサイドパネル及びエンドパネルでもって筒
状周壁部が構成されており、これらのサイドパネルとエンドパネルの側
縁はつらなりつづいた状態となっているのだから、「連続して連結」との
構成の点で、本件発明と一致している。
また、乙2文献では、「上記のように完全に着脱可能なエンドパネルに
25 加えて、エンドパネルが、底部パネルおよび一方のサイドパネルから着
脱可能であり、他方のサイドパネルにヒンジ結合されていることも可能
である。」と記載されているように、乙2発明のエンドパネルは、完全に
着脱可能である必要はなく、他のサイドパネルから一方の側縁のみを着
脱可能とすることは可能である。
さらに、乙2文献では、「少なくとも1つの着脱式側部パネル」(すなわ
ちエンドパネル)と特定されているため、乙2発明において、2枚ある
エンドパネルのうち、いずれかのエンドパネルだけを着脱可能とするこ
5 とも可能である。
これらの記載からすると、乙2発明では、2枚のサイドパネルと1枚の
エンドパネルを分離不可能に連続して連結する一方で、1枚のエンドパ
ネルについては、一方の側縁はサイドパネルから着脱可能(すなわち接
合されている状態)な構成とし、他の側縁についてはサイドパネルにヒ
10 ンジ結合(すなわち、分離不可能に連続して連結されている状態)する
構成、すなわち「互いに対応する側縁を除く他の側縁」が分離不可能に
連結される構成も含まれる。
したがって、構成要件Bの「連続して連結される」という意義について、
いずれの解釈を採用したとしても、乙2発明は「相隣る2枚の略矩形状
15 壁面の互いに対応する側縁を除く他の側縁」(すなわち、4か所の側縁の
うち3か所)が分離不可能に連結している構成を含んでいるから、本件
発明と一致している。
イ 原告は、構成要件Eにおける「開閉自在な両壁面開口部」という文言
は、壁面の開放部分にフレームやファスナー等が存在しない構成を意味
20 しているから、本件発明は、「開閉自在な両壁面開口部」の底面にはフレ
ームやファスナー等が存在しない構成を有しているのに対し、乙2発明
は、壁面開口部の底面にファスナー等の取付手段が存在するから、本件
発明と乙2発明はこの点において本件発明と相違する(以下、「相違点2」
ということがある。)と主張する。
25 しかし、「開閉自在な両壁面開口部」の文言の解釈の点においては、そ
のような限定は存在しておらず、原告の主張は理由がない。
また、乙2発明のエンドパネルは、底部パネルと紐等により「着脱可能」
であれば足り、必ず底部と接続されている必要はない。この点、エンドパ
ネルが底部パネルと接続状態にない場合、側縁に設けられている接合手段
を外すことにより、2枚の略矩形状壁面により開閉自在な両壁面開口部と
して機能することは自明である。
さらに、乙2文献には、「実施例ではジッパーが使用され、エンドパネ
5 ルをボトムパネル及びサイドパネルに取り付けるための好ましい手段であ
るが、単純な紐や布の長さなどの他の取り付け手段を使用してサイドパネ
ルを結び付けてもよいことは明らかである」との記載があり、乙2発明の
開放部分にファスナーに代えて紐を用いることも可能である。その場合、
同開放部分にはファスナーもテントのフレームも存在しないことになり、
10 本件発明と乙2発明は、壁面開口部の底面の開放部分にファスナー等の取
付手段が存在しない点において一致するから、この点は相違点とならない。
(4) 当業者は相違点に係る本件発明の構成を容易に想到できることについて
ア 相違点1について
(ア) 本件発明において、一つの側縁を分離可能とし、この側縁を使用し
15 て開閉自在な壁面開口部を設けることについては一定の技術的意義はあ
るかもしれないが、他の側縁について分離不可能な構成とすることにつ
いては、何ら技術的意義はない。
そして、ある側縁を分離不可能とするか分離可能とするかは設計事
項である以上、仮に相違点1があるとしても、乙2発明においてこの点
20 を分離不可能とすることは容易想到である。
(イ) また、乙2発明に、平成21年10月27日に公開された米国特許7
607446号明細書(以下「乙9文献」という。)に記載の発明(以
下「乙9発明」という。)を組み合わせることによって、一つの側縁を
分離可能とし、他の側縁を分離不可能とすることは容易である。
25 すなわち、乙9文献には、乙9発明の実施例として、折り畳み可能な
構造物の4か所の側縁のうち、2か所が分離している構成の変形例とし
て、3か所が分離不可能に連続して連結される構成が紹介されており、
乙2発明に乙9発明を組み合わせることによって、相違点1に係る本件
発明の構成を得ることができる。
そして、乙9文献には、乙9発明と関連する発明として、乙2発明が
挙げられており、また、乙9発明の先行技術について、「最近、折りた
たみ可能なオブジェクトが非常に人気があります。そのような折りたた
5 み可能な物体の例は…に記載されている、折り畳み可能な構造物の形態
である。これらの構造体は、特に、遊戯構造体、シェルター、テント、
および貯蔵構造体として使用することができる。」と記載されているこ
とに照らすと、乙9発明はテントに関連する発明であるといえ、乙2発
明と乙9発明は、同じ技術分野に属する発明であるといえる。さらに、
10 乙2発明の課題は「改良された折り畳み可能な構造を提供することを目
的とする」ことであるのに対し、乙9発明の課題は「収納や運搬に便利
なように小さく折り畳むことができるカバーやシェードを提供する」こ
とであり、課題も共通している。したがって、当業者であれば、乙2発
明に乙9発明を組み合わせる動機付けがあるとも認められる。
15 以上によれば、仮に相違点1が認められるとしても、当業者であれば、
乙2発明に乙9発明を組み合わせ、相違点1に係る本件発明の構成を想
到することは容易であるといえる。
イ 相違点2について
前記(3)イのとおり、乙2文献には、構成要件Eの構成の開示があるか
20 ら、相違点2は存在しない。
ウ 原告の主張に対する反論
原告は、本件発明と乙2発明及び本件発明と乙9発明の技術分野の相違
等を指摘して、動機付けがないと主張するが、動機付けの有無に際して
考慮すべきなのは、主引用例である乙2発明と副引用例である乙9発明
25 の技術分野の同一性や課題の共通性であり、原告の主張は考慮すべき対
象を誤っているから理由がない。
(5) 小括
よって、本件発明の構成は乙2発明の構成と同一であって、本件発明は新
規性を欠いており、仮に相違点が認められるとしても、当業者にとって乙
2発明に乙9発明を組み合わせることにより本件発明を発明することは容
易であるといえ、本件発明は進歩性を欠いている。
(原告の主張)
5 (1) 本件発明と乙2発明の相違点について
ア 相違点1
本件発明の構成要件Bの、「連続して連結され」るという文言は、分離
が不可能に連結している構成を意味しており、分離可能な「相隣る2枚の
略矩形状壁面の互いに対応する側縁」は、1か所のみであり、分離不可能
10 な「他の側縁」は、3か所であることを規定している。すなわち、本件発
明に係る折り畳み式テントは、災害時に体育館等の避難所に設置されて利
用されることを想定しており、そのような場所では短時間かつ少人数で設
置できることが求められるところ、複数の側縁が分離できてしまうと設置
するのが難しくなるから、設置の利便性や強度を考慮し、あえて1か所の
15 みを分離可能とし、その余を分離不可能としたものである。
これに対し、乙2文献には、様々なサイドパネルを相互交換することを
可能にしたり、テントを容易に折り畳めたりすることができるよう、対向
する2枚のエンドパネル(第1及び第2のサイドパネル)が2枚とも取り
外し可能な構成、又は、2枚とも一端がサイドパネルにヒンジ結合された
20 構成が開示されているのみである。
したがって、本件発明は、「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応す
る側縁を除く他の側縁」、すなわち、4か所の側縁のうち3か所が分離不
可能に連結しているのに対し、乙2発明の「相隣る2枚の略矩形状壁面の
互いに対応する側縁を除く他の側縁」は、4か所の側縁のうち2か所以上
25 において分離可能となっており、4か所の側縁のうち3か所が分離不可能
に連結しているわけではないとの点において、両者は相違する。
イ 相違点2
本件明細書の【0022】及び図8の記載を考慮すると、構成要件Eは、
接合手段を介して接合される側縁(両壁面開口部)に設けられている接合
手段を外すことにより、接合手段が設けられているいずれか一方の壁面を
外方に向かって開放することができるという構成を示したものであると認
定できる。
5 また、本件明細書の【0014】や【0028】には、壁面の開放部分
にテントのフレーム等が存在しないために、車椅子等がテント内外に出入
する際にフレームやファスナー等の変形・破れ・土砂の付着等を阻止でき
る旨が記載されており、当該明細書の記載を考慮すると、構成要件Eにお
ける「開閉自在な両壁面開口部」という文言が壁面の開放部分にフレーム
10 やファスナー等が存在しない構成を意味していることは明らかである。
これに対し、乙2発明は、第1及び第2のサイドパネル(着脱式エンド
パネル)を分離・開放した後の壁面の開放部分に、ボトムパネルの取付手
段(ファスナー等)が存在する構成である。そのため、乙2発明は、車椅
子等がテント内外に出入する際に当該取付手段(ファスナー等)を乗り越
15 えなければならず、壁面の開放部分が車椅子等の出入を容易にするものと
して機能していないことから、壁面の開放部分にフレームやファスナー等
が存在しない構成である「開閉自在な両壁面開口部」を備えているとはい
えない。
したがって、本件発明は、「開閉自在な両壁面開口部」の底面にはフレ
20 ームやファスナー等が存在しない構成を有しているのに対し、乙2発明は、
壁面開口部の底面の開放部分にファスナー等の取付手段が存在するから、
本件発明と乙2発明は、この点において相違する。
(2) 本件発明と乙2発明の技術的思想及び作用効果が異なること
本件発明の技術的思想は、筒状に構成された4枚の略矩形状壁面のうちの
25 1枚を接合手段の着脱により開閉自在とすることで、テント外周縁のフレー
ムや幕を乗り越えることなくテント内に車椅子等の車両を出入させることが
でき、車両の出入が容易なうえにフレームの変形や幕の破れが防止できると
いう点にある。
これに対し、乙2発明の技術的意義は、互いに対向する位置にある第1及
び第2のサイドパネル(着脱式エンドパネル)をボトムパネルとサイドパネ
ルから着脱可能とすることで、様々なサイドパネルを相互交換することを可
能にしたり、テントを容易に折り畳めるようにしたりするというものであっ
5 て、テント内外へ車椅子等が出入する際の利便性には一切着目していないし、
乙2発明では、テント内外に車椅子等が出入する際に車椅子等がボトムパネ
ルのファスナー等の取付手段を乗り越えるために変形や破れを防止できず、
本件発明が解決しようとする課題を解決することができない。
したがって、本件発明と乙2発明は、技術的思想及び作用効果を異にして
10 おり、本件発明の新規性欠如の主引用例とすることは相当ではない。
(3) 特許庁の審査官が乙2文献を引用文献として採用していないこと
本件出願の審査段階において通知された拒絶理由通知には、特許庁の審査
官が調査・採用した引用文献が掲載されているところ、乙2文献は引用文献
として採用されていないのであって、本件出願の担当審査官が、乙2文献の
15 存在を認識したうえで、本件出願の拒絶・無効理由を構築する引用例として
不適当であると判断したために、あえて引用文献として採用しなかったと考
えるのが合理的かつ自然である。
このように、乙2文献を、本件発明の新規性欠如の主引用例とすることは
相当ではない。
20 (4) 乙2発明に乙9発明を組み合わせても本件発明の構成とはならないこと
乙2発明に乙9発明を組み合わせると、乙2発明の4枚のパネルの各側縁
のうちの1か所が分離可能な構成となる。
しかし、乙2発明も、乙9発明も、「構造体を小さく折り畳むことに係る
技術」しか着目していないから、どの側縁が分離可能となるかは、構造体を
25 小さく折り畳めるかどうかによって決まることとなる。そのため、乙2発明
に乙9発明を適用しただけでは、人が出入りする扉部が形成されたパネルが
外方に向かって開放できる構成が特定できないから、構成要件Bの構成を備
えるに至ったとしても、構成要件D及びEの構成を備えないことになる。
したがって、乙2発明に乙9発明を組み合わせても本件発明の構成とはな
らない。
(5) 乙2発明に乙9発明を組み合わせる動機付けがないこと
本件発明と乙2発明は、その技術分野が異なっている上、解決しようとす
5 る課題も異なっている。
また、本件発明と乙9発明も、その技術分野が異なっている上、作用・機
能も異なっている。
したがって、本件発明が解決しようとする課題の解決を目的として、当業
者が乙2発明に乙9発明を適用する動機付けはない。
10 (6) 小括
以上によれば、本件発明には新規性又は進歩性が欠如しているとの被告の
主張に理由はない。
3 争点2-2(補正要件違反)について
(被告の主張)
15 本件特許の出願当初の請求項1のうち、構成要件Bに対応する記載は、「4
枚の略矩形状壁面の内、相隣る2枚の略矩形状壁面を除く他の側縁が相互に折
畳み可能に順次連続して連結されると共に、 (下線部は変更部)とされていた
」
ところ、原告は、拒絶理由通知を受け、構成要件Bのとおりに変更する旨補正
した。
20 上記補正について、原告は、「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する
「
側縁を除く他の側縁…」という補正事項は、出願当初、「相隣る2枚の略矩形
状壁面を除く他の側縁が…」と記載されていて、文理上辻褄が合わなかったの
で、「の互いに対応する側縁」を補充することで、記載を明瞭化したものであ
り、」本件明細書の【0022】及び図8の記載に基づくものである旨主張し
25 ていた。
しかし、本件明細書の【0022】及び図8には右側縁2aと右壁面3の左
壁面3の左側縁3bには、接合・分離が可能な面ファスナーのような接合手段
23が設けられていると記載されているにすぎず、「互いに対応する側縁」が
「相互に折り畳み可能に」「順次連続して」 「連結され」ているか否かという
、 、
点、特に「相互に折り畳み可能」であるか否かについて何ら記載はない。この
ため、上記補正は出願当初の特許請求の範囲にない「相隣る2枚の略矩形状壁
面の互いに対応する側縁が折り畳み可能に順次連続して連結しない」という新
5 たな技術的事項を導入するものであり、「明細書又は図面に記載した事項の範
囲内において」するものといえない。
したがって、本件特許には、補正要件違反の無効理由(特許法17条の2
第3項、123条1項1号)が存在する。
(原告の主張)
10 前記1(原告の主張)(1)のとおり、被告の構成要件Bの解釈は誤っており、
構成要件Bに係る補正は、特許請求の範囲、願書に最初に添付した明細書又は
図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、補正要件に違反しな
い。
4 争点2-3(サポート要件違反)について
15 (被告の主張)
本件発明は、「4枚の略矩形状壁面の内、相隣る2枚の略矩形状壁面の互い
に対応する側縁を除く他の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結される」
と特定されていること及び「除く」という語句の意義からすると、「互いに対
応する側縁」は「相互に折畳み可能に順次連続して連結される」構成を含まな
20 いと解釈されるべきである。
しかし、本件明細書には、「互いに対応する側縁」が「相互に折畳み可能に
順次連続して連結される」構成を含まない旨の記載も示唆もないから、本件特
許には、サポート要件違反の無効理由(特許法36条6項1号、123条1項
4号)が存在し、特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。
25 (原告の主張)
構成要件Bは、分離が可能な「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する
側縁を除く他の側縁」が分離不可能に連結しているという構成を示しているこ
とは明らかであるし、このような構成は、本件明細書の段落【0021】及び
【0022】並びに図7及び図8に記載されているから、本件発明は、本件明
細書の「発明の詳細な説明」に記載されたもので、サポート要件に違反しない。
5 争点2-4(実施可能性要件違反)について
(被告の主張)
5 原告の、前記1(原告の主張)のとおりの本件発明の構成要件の解釈を前提
とすると、「連続して連結」(構成要件B)と、「接合」(構成要件C)は、異な
る意味を有することになるが、各側縁はどの壁面との関係を考慮するかによっ
て、「対応する側縁」にも「他の側縁」にもなり得るのだから、互いに両立し
得ない構成(「連続して連結」と「接合」)を同時に満たす必要があることにな
10 る。
したがって、原告の主張を前提とすると、本件特許には、実施可能性要件違
反の無効理由(特許法36条4項1号、123条1項4号)が存在し、特許無
効審判により無効にされるべきものと認められる。
(原告の主張)
15 「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」は、接合手段が設けら
れた側縁であり(構成要件C)「連続して連結され」ているのは、接合手段が
,
設けられていない3つの側縁である(構成要件B)ことは特許請求の範囲の記
載から明らかである。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施を
20 することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、被告の主張
は理由がない。
6 争点2-5(明確性要件違反)について
(被告の主張)
前記5(被告の主張)のとおり、原告の解釈を前提とすると、各側縁は、互
25 いに両立し得ない構成(「連続して連結」と「接合」)を同時に満たす必要があ
ることになり、当業者は、このような記載を理解することはできない。したが
って、原告の主張を前提とすると、本件特許には、明確性要件違反の無効理由
(特許法36条6項2号、123条1項4号)が存在し、特許無効審判により
無効にされるべきものと認められる。
(原告の主張)
前記5(原告の主張)のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は明確で
あるから、被告の主張は理由がない。
5 7 争点5(原告の損害及び損害額)について
(原告の主張)
被告は、現在まで少なくとも679張の被告各製品の譲渡等を行っており、
被告が得る被告各製品の1張当たりの利益は、5000円を下らないと考えら
れるから、被告の得た利益の額は、5000円×679張=339万5000
10 円となる。
よって、特許法102条2項により、原告には、少なくとも339万500
0円の損害が生じているといえる。
また、本件訴訟追行に必要な弁護士費用相当額は上記損害額の10%である
33万9500円となる。
15 以上のことから、原告の損害額は373万4500円となる。
(被告の主張)
争う。
第4 当裁判所の判断
1 本件明細書の記載事項等
20 (1) 本件明細書(甲2)には、次のような記載がある(下記記載中に引用する
図7及び8については別紙図面目録1を参照)。
ア 【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時やアウトドアに用いられる折畳み式テントであって、
25 4枚の壁面部の左右両側縁がそれぞれ折畳み可能に相互に結合されて4
角筒状に形成された周壁部の頂縁に、屋根が結合される折畳み式テント
に関するものである。
【背景技術】
【0002】
災害時等やアウトドアで夜を過す場合に用いられる特許文献1(判決
注:意匠登録第1301096号公報)、特許文献2および特許文献3に
示された折畳み式テントがあった。
5 【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1記載の折畳み式テントでは、角部が湾曲した4枚の矩
形状の合成樹脂製幕の外周縁挿通部に図示されない鋼製無端ベルトを挿
入して4枚の壁面を形成し、4枚の壁面の両側縁を相互に折畳み可能に
10 連結することにより、4角筒状周壁部が形成され、該4角筒状周壁部の
上縁に合成樹脂製幕の屋根を一体に結合することにより、折畳み式テン
トが構成されている。
【0005】
前記特許文献1記載の折畳み式テントにおいて、前記4角筒状周壁部の
15 正面の壁面には、矩形状の開口部が形成され、該矩形状開口部のテント
内側にカーテン台座が配設されている。このカーテン台座にカーテンが
左右に移動可能に吊下げられているため、強風時、カーテンが捲上げら
れることで、テント内の状況が外部から容易に視認されて、テント内の
プライバシーが確保できない不具合があった。しかも、カーテンが開か
20 れた状態を示す斜視図や、カーテンが閉じられた状態を内部から見上げ
た参考図から明らかなように、カーテン台座は、鋼製パイプを多数組上
げて立体的に構成されているので、テントの筒状周壁部と屋根とをコン
パクトに折畳んでも、カーテン台座をコンパクトに折畳むことができず、
テントの設置個所の移動を簡単に行うことができない不具合があった。
25 【0006】
また、前記特許文献2記載の折畳み式テントでは、正面の壁面にU字の
開放端が左右いずれか一方に向いたU字状ファスナー切断縁が形成され
て開閉扉部が構成されている。このU字状ファスナー切断縁に設けられ
たファスナーには、1対のスライダーが相互に離隔または接近可能に取
付けられている。折畳み式テントの利用者は、この1対のスライダーを
相互に離隔させることにより、開閉扉部を開放でき、折畳み式テントへ
の出入が自由にできるようになっていた。
5 車椅子に搭乗した人が、特許文献2記載の折畳み式テントを利用する場
合、開閉扉部が開放された正面の壁面の開口部を通過することとなる。
その際、車椅子のタイヤがU字状ファスナー切断縁上を乗越えるため、
ファスナー切断縁に大きな荷重がかかってファスナー切断縁が変形し、
または、ファスナー切断縁に土砂が付着することがある。その結果、ス
10 ライダーが円滑に移動できなくなる不具合が生ずる惧れがあった。また、
車椅子や運搬車等がテントに出入する際に、テントのフレームやフレー
ムに付設された幕を乗越える必要があり、テントへの出入が容易ではな
く、フレームの変形や幕の破れという不具合が生ずる惧れがあった。
しかも、正面以外の壁面は密閉されているため、1対のスライダーを相
15 互に一体に接近させて開閉扉部を閉じた状態にすると、テント内は略完
全に密閉される結果、テント内の換気が行われず、また、テント外部の
光がテント内に入射しないため、照明器具でテント内を明るくする必要
が生じ、居住性が良くない不具合があった。
【0007】
20 さらに、前記特許文献3記載の折畳み式テントでは、4枚の壁面の開口
部下縁にファスナー切断縁が形成され、このファスナー切断縁に設けられ
たスライダーが移動できるようになっているため、前記特許文献2記載の
折畳み式テントと同様な不具合があった。
【0008】
25 本発明の目的は、車椅子に搭乗した人が、折畳み式テントの開口部に設
けられているファスナー切断縁上を通過せずに、折畳み式テント内への
出入りが可能である折畳み式テントを提供することにある。
イ 【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、角部が湾曲した略矩形状可撓性幕の外周縁に
弾性に富んだ無端フレームが付設されて1枚の略矩形状壁面が形成され、
4枚の略矩形状壁面の内、相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する
5 側縁を除く他の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結されるとと
もに、前記相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁は、着脱可
能な接合手段を介して接合されることにより、前記4枚の略矩形状壁面
でもって筒状周壁部が構成され、前記接合手段を介して接合される側縁
を有する2枚の略矩形状壁面の内、いずれか一方の略矩形状壁面には開
10 閉自在な扉部が形成され、前記接合手段を介して接合される側縁を有す
る2枚の略矩形状壁面により開閉自在な両壁面開口部が設けられたこと
を特徴とする折畳み式テントである。
ウ 【発明の効果】
【0014】
15 請求項1記載の発明によれば、該両壁面開口部に設けられている接合
手段を外すことにより、該接合手段が設けられているいずれか一方の壁
面を外方に向かって開放することができる。この開放部分にはテントの
フレームや前記フレームに付設された幕が存在しないため、車椅子や運
搬車等がテント内に出入する際に、前記略矩形状壁面の外周縁を構成す
20 る前記無端フレームを乗越えることがない結果、前記無端フレームの変
形や前記無端フレームに付設された幕の破れを生じない。
エ 【発明を実施するための形態】
【0021】
筒状周壁部1では、図7に図示されるように、4枚の壁面2、3、4、
25 5の各両側縁2a、2b、3a、3b、4a、4b、5a、5bの内、
側縁3aと4b、4aと5b、5aと2bとを相互に折畳み可能に連結
し、側縁2aと3bとを後述する接合手段23で接合することで筒状周
壁部1が構成されている。また、4枚の壁面2、3、4、5では、角部
にて湾曲した略矩形状の可撓性幕6の外周縁にベルト挿通部7が形成さ
れ、そのベルト挿通部7に、図示されない弾性に富んだ無端フレームに
相当する厚さが1~2mm、幅が5~10mm 程度の鋼製帯状無端ベルトが
挿入されることによって、前記角部が湾曲した壁面2、3、4、5が構
5 成されている。しかも、4枚の壁面2、3、4、5の側縁上部には、ル
ープ状係止片37がそれぞれ付設されている。なお、前記可撓性幕6は、
合成樹脂製シートであるが、炭素繊維で補強された合成樹脂製シートや、
防水処理が施された布であってもよい。
【0022】
10 また、この筒状周壁部1における正壁面2の右側縁2aと右壁面3の
左側縁3bには、接合・分離が可能な面ファスナーのような接合手段2
3が設けられている。図7に図示されるように、正壁面2の右側縁2a
と右壁面3の左側縁3bとは前記接合手段23により、一体に接合され、
または分離される。前記分離された接合手段23によって、図8に示さ
15 れるように、両壁面開口部24が構成される。この両壁面開口部24に
設けられている接合手段23を外すことにより、該接合手段23が設け
られているいずれか一方の壁面23を外方に向かって開放することがで
きる。
なお、前記接合手段23は、面ファスナーであるが、線ファスナーや
20 接合テープであってもよい。
【0023】
壁面2、3、4、5の側縁上下端部は、壁面2、3、4、5の角部が
湾曲した形状に形成されているため、壁面2、3、4、5の各隣接する
側縁の上下端部に空隙部が存在するが、三角形に近い形状の上閉塞面2
25 0、下閉塞面19でもってこの上下の空隙部は閉塞されるようになって
いる。なお、正壁面2の右側縁2aと右壁面3の左側縁3bとの上下端
部を塞ぐ二等辺三角形状の分割上閉塞面20a、分割下閉塞面19aは、
三角形の頂角を通る中心線を境に2分割される。左右に分割された分割
上閉塞面20a、分割下閉塞面19aは、前記接合手段23と同様な上
閉塞面接合手段22、下閉塞面接合手段21によって、接合または分離
可能に接合される。
(2) 前記(1)の記載事項によれば、本件明細書には、本件発明に関し、次のよ
5 うな開示があることが認められる。
ア 従来の折畳み式テントは、正面の壁面にU字の開放端が左右いずれか一
方に向いたU字状ファスナー切断縁が形成されて開閉扉部が構成され、
当該U字状ファスナー切断縁に設けられたファスナーには、一対のスラ
イダーが設けられており、この一対のスライダーを相互に離隔させるこ
10 とにより、開閉扉部を開放でき、折畳み式テントへの出入が自由にでき
るようになっていたが、車椅子に搭乗した人が、開口部を通過する際、
車椅子のタイヤがU字状ファスナー切断縁上を乗越えるため、ファスナ
ー切断縁に大きな荷重がかかってファスナー切断縁が変形し、又は、フ
ァスナー切断縁に土砂が付着することがあり、その結果、スライダーが
15 円滑に移動できなくなるおそれがあり、また、車椅子や運搬車等がテン
トに出入する際に、テントのフレームやフレームに付設された幕を乗越
える必要があるため、テントへの出入が容易ではなく、フレームの変形
や幕の破れが生ずるおそれがあった(【0006】及び【0007】。
)
イ 「本発明」は、前記アの課題を解決するため、車椅子に搭乗した人が、
20 折畳み式テントの開口部に設けられているファスナー切断縁上を通過せ
ずに、折畳み式テント内への出入りが可能である折畳み式テントを提供
することを目的とするものであり、「本発明」の折畳み式テントは、角部
が湾曲した略矩形状可撓性幕の外周縁に弾性に富んだ無端フレームが付
設されて1枚の略矩形状壁面が形成され、4枚の略矩形状壁面の内、相
25 隣る2枚の略矩形状壁面を除く他の側縁が相互に折畳み可能に順次連続
して連結されると共に、前記相隣る2枚の略矩形状壁面の側縁は、着脱
可能な接合手段を介して接合されることにより、前記4枚の略矩形状壁
面でもって筒状周壁部が構成され、前記接合手段を介して接合される側
縁を有する2枚の略矩形状壁面の内、いずれか一方の略矩形状壁面には
開閉自在な扉部が形成され、前記接合手段を介して接合される側縁を有
する2枚の略矩形状壁面により開閉自在な両壁面開口部が設けられたこ
とを特徴とする(【0008】及び【0009】。
)
5 「本発明」によれば、前記両壁面開口部に設けられている接合手段を外
すことにより、該接合手段が設けられているいずれか一方の壁面を外方に
向かって開放することができ、この開放部分にはテントのフレームや前記
フレームに付設された幕が存在しないため、車椅子や運搬車等がテント内
に出入する際に、前記略矩形状壁面の外周縁を構成する前記無端フレーム
10 を乗越えることがない結果、前記無端フレームの変形や前記無端フレーム
に付設された幕の破れを生じないとの効果を奏する(【0014】 。
)
2 争点1(構成要件Bの充足性)について
(1) 「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁を除く」の意義につい
て
15 構成要件Bの「4枚の略矩形状壁面の内、相隣る2枚の略矩形状壁面の
互いに対応する側縁を除く他の側縁が相互に折畳み可能に順次連続して連結
されるとともに、」との記載から、本件発明の折り畳み式テントには、「4枚
の略矩形状壁面」が設けられていること、その内の「相隣る2枚の略矩形状
壁面」において「互いに対応する側縁」が存在すること、この「互いに対応
20 する側縁」を「除く」「他の側縁」が存在し、この「他の側縁」が「相互に
折り畳み可能に順次連続して連結され」ていることが理解できる。
また、構成要件Cの「前記相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する
側縁は、着脱可能な接合手段を介して接合されることにより、前記4枚の略
矩形状壁面でもって筒状周壁部が構成され、」との記載からは、構成要件B
25 の「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」が、「着脱可能な接
合手段」を備えていること、この「接合手段を介して接合されることによ
り」「前記4枚の略矩形状壁面でもって筒状周壁部が構成される」ことが理
、
解できる。また、このような解釈は、本件明細書の、「また、この筒状周壁
部1における正壁面2の右側縁2aと右壁面3の左側縁3bには、接合・分
離が可能な面ファスナーのような接合手段23が設けられている。図7に図
示されるように、正壁面2の右側縁2aと右壁面3の左側縁3bとは前記接
合手段23により、一体に接合され、または分離される。前記分離された接
5 合手段23によって、図8に示されるように、両壁面開口部24が構成され
る。(
」【0022】)との記載及び「筒状周壁部1では、図7に図示されるよ
うに、4枚の壁面2、3、4、5の各両側縁2a、2b、3a、3b、4a、
4b、5a、5bの内、側縁3aと4b、4aと5b、5aと2bとを相互
に折畳み可能に連結し、側縁2aと3bとを後述する接合手段23で接合す
10 ることで筒状周壁部1が構成されている」 【0021】
( )との記載とも整合
する。
そして、構成要件Bの「除く」の通常の語義は、「加えない。除外する。
別にする。(広辞苑第七版)であると認められる。
」
加えて、上記「除く」は、その直前の「他の側縁」に限定を付す趣旨で
15 あると理解するのが自然であることを踏まえると、構成要件Bは、「4枚の
略矩形状壁面」が有する「側縁」から、「着脱可能な接合手段を介して接合
される」ことになる「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」を
除外又は別にした「他の側縁」が、「相互に折り畳み可能に順次連続して連
結される」ことを規定するものであると解するのが相当である。
20 (2) 被告各製品が構成要件Bを充足するか否かについて
前記(1)のとおり、構成要件Bの、「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対
応する側縁」とは、構成要件Cにおいて規定された、「着脱可能な接合手段
を介して接合される」「側縁」であると解するのが相当である。
前提事実(3)イのとおり、被告各製品には、第1板状体10ないし第4板
25 状体40の4枚の板状体が形成されているところ、本件において、各板状体
が構成要件Bの「略矩形状壁面」に該当する。
また、前提事実(3)イのとおり、被告各製品の第1板状体10と第4板状
体40は、その対向部15a及び45bが、着脱可能な接合部60を介して
接合されるから、対向部15a及び45bは、構成要件Bにおいて除外又は
別にするとされ、かつ、構成要件Cにおいて「着脱可能な接合手段を介して
接合され」ると規定される、「前記相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応
する側縁」に該当する。
5 そうすると、構成要件Bにおいて、「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに
対応する側縁を除く他の側縁」は、被告製品の第1板状体10と第4板状体
40の対向部15a及び45bを除外した他の側縁、すなわち、第1板状体
10の左右の側縁を構成する対向部15b、第2板状体20の左右の側縁を
構成する対向部25a及び25b、第3板状体30の左右の側縁を構成する
10 対向部35a及び35b、第4板状体40の左右の側縁を構成する45aが
これに該当するものと解される。
そして、証拠(甲6、乙1)によれば、これらの側縁は、相互に折り畳み
可能に順次連続して連結される構成を有していると認められ、構成要件Bの
「他の側縁が相互に折り畳み可能に順次連続して連結される」に該当する。
15 (3) 被告の主張について
被告は、「除く」の「別にする」との語義に着目して、「別にする」もの
と「別にされない」ものとでは、異なる性質・構成を有していることに照ら
すと、構成要件Bは、「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」
が、「相互に折り畳み可能」ではなく、「順次連続して」おらず、「連結され」
20 てもいないことを規定するものと解すべきであり、被告各製品は、互いに対
応する側縁が相互に折り畳み可能に順次連続して連結されるから、構成要件
Bを充足しない旨主張する。
しかし、仮に、「除く」を「別にする」との意味であると解釈したとして
も、「別」とは、「①わけること。…②異なること。そのものではないこと」
25 (広辞苑第七版)の意味を有するにすぎないから、別にされた「相隣る2枚
の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」と「他の側縁」とが、一部でも同じ
性質・構成を有していてはならないということにはならない。そして、「相
隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」の構成は、構成要件Cによ
り要件が付加されているのであるから、これにより、「相隣る2枚の略矩形
状壁面の互いに対応する側縁」と「他の側縁」は、異なる構成を有している
といえる。
したがって、被告の上記主張を採用することはできない。
5 (4) 小括
以上によれば、被告各製品は本件発明の構成要件Bを充足するものと認め
られる。
3 争点2-1(乙2文献を主引用例とする新規性又は進歩性欠如)について
(1) 乙2文献の記載事項について
10 ア 平成16年8月31日に公開された乙2文献(乙2)には、次のよう
な記載がある(下記記載中に引用する図1A及び1Cについては別紙図
面目録2を参照)。
(ア) 本発明は、テントやプレイハウスなどの折り畳み可能な玩具構造物
に関するものである。(第1欄5~6行)
15 (イ) 本発明は、底部パネルと複数のサイドパネルとを含む、携帯可能で
可逆的に折り畳み可能な構造体を提供する。サイドパネルの各々は、各
フレームが展開位置と巻き戻し位置との間で折り畳み可能な少なくとも
1 つのフレームに取り付けられた布材を含む。少なくとも 2 つのサイド
パネルは、ボトムパネルの対向する側面に蝶番で接続されています。少
20 なくとも 1 つの着脱可能なサイドパネルが、ボトムパネルにさらに取り
付けられ、対向するサイドパネルの間にある位置にある。着脱式サイド
パネルとボトムパネルとの間の接続は、ユーザーによって可逆的に着脱
可能である。着脱式サイドパネルと対向するサイドパネルの一方との間
の接続も、ユーザーのニーズに応じてリバーシブルである。(第1欄3
25 2~45行)
(ウ) 本発明の明確な利点は、本発明による折り畳み可能な構造体が、サ
イズ及び形状の点で極めて柔軟であることである。長辺が短辺よりも実
質的に長い長方形の構造体は、従来技術で提供されていた正三角形の形
状と同様に、容易に折りたたみ可能な構造体を作ることができる。…
(第2欄4~14行)
(エ) 図1A~図1Eを参照すると、本発明の一実施形態は、長方形状の
底部布26によって互いに接続されている 2 つの対向するサイドパネル
5 22及び24を含む。…2つのサイドパネル22、24は、長方形状の
ボトムパネルの対向する辺に縫い合わされている。…ボトムパネルに対
する2つのサイドパネルの移動方向は、典型的には、各サイドパネルの
底面によって定義される軸を中心に、矢印で示すような方向に回転移動
し、以下、ヒンジ接続と称する。…この実施形態では、2つの長いハー
10 フジッパー28、30が、ボトムパネル26を挟んでサイドパネル24
の両側に、サイドパネル22、24の側面22d、22bにそれぞれ沿
ってずっと縫い付けられて、1 つのハーフが設けられている。…(第3
欄3~43行)
…エンドパネル32および34は、それぞれハーフジッパー28お
15 よび30との相補的なジッピングに適合された他のハーフジッパー32
aおよび34aを含む。図1Cに示すように、端部パネル34は、サイ
ドパネル24のフラップ24a及びサイド24bにパネルを取り付ける
ことを可能にするジッパー34aを含む。…ジッパー34aは、最終的
に、サイドパネル22の上部の角から延びる延長フラップ22cからジ
20 ッパーアップする。サイドパネルが取り付けられると、…長方形状の開
放構造が画定される。…(第3欄44~59行)
(オ) 実施例ではジッパーが使用され、エンドパネルをボトムパネル及び
サイドパネルに取り付けるための好ましい手段であるが、単純な紐や布
の長さなどの他の取付手段を使用してサイドパネルを結び付けてもよい
25 ことは明らかである。…(第4欄53行~第5欄11行)
上記のように完全に着脱可能なエンドパネルに加えて、エンドパネル
が、底部パネルおよび一方のサイドパネルから着脱可能であり、他方の
サイドパネルにヒンジ結合されていることも可能である。この具体的な
実施形態は、都合よくエンドパネルの変更可能性を可能にしないが、各
エンドパネルが依然として連結されたサイドパネルと一緒に折り畳むこ
とができるので、サイドパネルが様々な長さおよび形状を取ることを可
能にするであろう。これは、短いジッパーに変更し、エンドパネルの一
5 辺をサイドパネルの一辺に永久的に縫い付けることによって容易に行う
ことができる。(第5欄12~22行)
イ 前記アの記載事項によれば、前記第3の2(被告の主張)(1)のとおり、
乙2文献には乙2aないし乙2fの構成を有する乙2発明が記載されて
いると認められる。
10 乙2b「サイドパネル及びエンドパネルからなる4枚の略矩形状壁面の
内、エンドパネルとサイドパネルの着脱部となる側縁を除く他の側縁が相
互に折畳み可能に順次連続して連結されるとともに、」について補足して
説明すると、乙2文献には、前記ア(オ)のとおり、「エンドパネルが、底部
パネルおよび一方のサイドパネルから着脱可能であり、他方のサイドパネ
15 ルにヒンジ結合されていることも可能である」と記載されていることから、
一対のサイドパネルのうち「他方」とされたサイドパネルの両側縁にヒン
ジ結合が形成され、これらの両側縁がエンドパネルと順次連続して連結さ
れている構成を含むものと理解することができ、また、前記ア(エ)のとお
り、「ボトムパネルに対する2つのサイドパネルの移動方向は、典型的に
20 は、各サイドパネルの底面によって定義される軸を中心に、矢印で示すよ
うな方向に回転移動し、以下、ヒンジ接続と称する。」と記載されている
ことから、ヒンジ結合は、結合部を軸として回転可能な構成であって、
「他方」とされたサイドパネルの両側縁は、エンドパネルと、相互に折り
畳み可能に連結されているものと理解することができる。
25 したがって、乙2発明が乙2bの構成を有すると認めることができる。
ウ 本件発明と乙2発明の対比
乙2発明の構成乙2a、乙2c、乙2d及び乙2fが本件発明の構成要
件A、C、D及びFの構成にそれぞれ相当することは、当事者間に争い
がない。
以下、争いがある構成について検討する。
(ア) 構成要件Bについて
a 前記2(1)で説示したとおり、構成要件Bは、「着脱可能な接合手
5 段を介して接合される」ことにより、「前記4枚の略矩形状壁面でも
って筒状周壁部」を構成する「側縁」を除外した「他の側縁」が、
「相互に折畳み可能に」「順次連続して」「連結」されることを規定し
ている。
そして、乙2発明においては、エンドパネルとサイドパネルの着脱
10 部となる側縁は、ジッパーや紐等の取付手段を介して取り付けられ
(乙2c)ていることから、構成要件Bの「他の側縁」に相当する側
縁は、上記「エンドパネルとサイドパネルの着脱部となる側縁」を除
外した側縁(乙2c)であるところ、乙2発明においては、この側縁
が、相互に折畳み可能に順次連続して連結されている(乙2b)。
15 したがって、乙2発明と本件発明は、構成要件Bの構成の点におい
て一致するものと認められる。
b これに対し、原告は、本件発明の「着脱可能な接合手段を介して接
合される」「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応する側縁」が一
組のみであるのに対し、乙2発明では、テントを容易に折り畳めたり
20 することができるよう、対向する2枚のエンドパネルが2枚とも取外
し可能な構成又は2枚とも一端がサイドパネルにヒンジ結合された構
成のみが開示されているから、本件発明と乙2発明は、構成要件Bの
点で一致しないと主張する。
しかし、本件特許の特許請求の範囲において、「相隣る2枚の略矩
25 形状壁面の互いに対応する側縁」の組数を限定する記載はない上、本
件明細書において、【0022】及び図8には「相隣る2枚の略矩形
状壁面の互いに対応する側縁」が一組である構成についての記載があ
るものの、これは一実施例にすぎず、そのような構成に限定する旨の
記載は存在しないから、「相隣る2枚の略矩形状壁面の互いに対応す
る側縁」が、一組に限定されると解釈することはできない。
また、原告は、本件発明に係る折り畳み式テントは、災害時に体育
館等の避難所に設置されて利用されることを想定していることなどか
5 ら、設置の利便性や強度を考慮し、あえて一組のみを分離可能とした
と主張する。
しかし、本件明細書には、原告の主張する課題や作用効果について
の記載はない。
以上によれば、原告の主張はいずれも採用することができない。
10 (イ) 構成要件Eについて
a 本件発明は、「前記接合手段を介して接合される側縁を有する2枚
の略矩形状壁面により開閉自在な両壁面開口部が設けられたことを特
徴とする」との構成(構成要件E)を有しており、乙2発明は、「前
記手段を介して取り付けられる側縁を有する2枚の略矩形状のサイド
15 パネル及びエンドパネルにより開閉自在な両壁面開口部が設けられた
ことを特徴とする」との構成(乙2e)を有している。
そして、本件特許の特許請求の範囲の記載において、「接合手段」
につき特段の限定は付されていないことから、壁面と壁面を接合する
手段であれば足りると解されるところ、前記(1)ア(オ)のとおり、乙2
20 文献においては、乙2発明の「取付手段」は、ジッパーが好ましい手
段であるが、単純な紐や布などの他の取付手段を使用してもよいとさ
れており、それらはいずれも壁面と壁面を接合する手段であるといえ
る。
したがって、本件発明と乙2発明は、構成要件Eの構成の点で一致
25 するものと認められる。
b 原告は、本件明細書の【0014】や【0028】には、壁面の開
放部分にテントのフレーム等が存在しないために、車椅子等がテント
内外に出入する際にフレームやファスナー等の変形・破れ・土砂の付
着等を阻止できる旨が記載されており、これらの記載に照らすと、構
成要件Eの「開閉自在な両壁面開口部」は、壁面の開放部分にフレー
ムやファスナー等が存在しない構成であると解されると主張する。
しかし、本件特許の特許請求の範囲の記載において、4枚の略矩形
5 状壁面と床面との間の連結手段の有無を含め、「開閉自在な両壁面開
口部」が、底面にフレームやファスナー等が存在しない構成に限定さ
れる旨の記載はない。
また、本件明細書の【0014】は、本件発明の効果に関する記載
であり、同【0028】は、本件発明の実施例の効果に関する記載で
10 あって、本件発明の両壁面開口部の構成を限定するものとは認められ
ないから、構成要件Eの文言を原告主張のとおり限定解釈する根拠と
はならない。
また、仮に、構成要件Eが、底面にフレームやファスナー等が存在
しない構成に限定されるとしても、乙2文献には、ファスナーを紐に
15 変更することも可能である旨が記載されているから(前記(1)ア(オ))、
乙2発明は、底面にフレームやファスナー等が存在しない構成を含む
ものであるといえる。
よって、原告の主張は理由がない。
c 原告は、本件明細書の【0022】及び図8の記載を考慮すると、
20 構成要件Eは、壁面開口部に設けられている接合手段を外すことのみ
により、接合手段が設けられているいずれか一方の壁面を外方に向か
って開放することができるという構成を示したものであると主張する。
しかし、本件明細書には、本件発明の実施例について「壁面2、3、
4、5の側縁上下端部は、…三角形に近い形状の上閉塞面20、下閉
25 塞面19でもってこの上下の空隙部は閉塞されるようになっている。
なお、正壁面2の右側縁2aと右壁面3の左側縁3bとの上下端部を
塞ぐ二等辺三角形状の分割上閉塞面20a、分割下閉塞面19aは、
三角形の頂角を通る中心線を境に2分割される。左右に分割された分
割上閉塞面20a、分割下閉塞面19aは、前記接合手段23と同様
な上閉塞面接合手段22、下閉塞面接合手段21によって、接合また
は分離可能に接合される。(
」【0023】)との記載があるところ、こ
の記載に照らすと、同実施例は、正壁面2の右側縁2aと右壁面3の
5 左側縁3bに設けられた接合手段に加え、上閉塞面接合手段22、下
閉塞面接合手段21を外すことによって初めて、壁面を外方に向かっ
て解放することができる構成を有しているといえる。したがって、上
記【0022】及び図8の実施例の記載を根拠として、構成要件Eが、
両壁面開口部について、壁面開口部に設けられている接合手段を外す
10 ことのみにより、接合手段が設けられているいずれか一方の壁面を外
方に向かって開放することができるという構成を規定していると解釈
することはできない。
また、上記【0023】の記載によれば、「壁面2、3、4、5」
と、「三角形に近い形状の上閉塞面20、下閉塞面19」は別部材で
15 あることは明らかであるから、構成要件Eが、接合手段について、
「2枚の略矩形状壁面」のみに設けられていることにより、「両壁面
開口部」が「開閉自在」となることを規定したと解釈することもでき
ない。
以上によれば、原告の上記主張を採用することはできない。
20 (2) 小括
その他、原告が種々主張するところを検討しても、前記(1)の結論を左右
するものとはいえず、本件発明は、乙2発明と同一の構成を有しているから、
新規性を欠いており、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきもの
と認められ、原告は被告に対してその権利を行使することができない(特許
25 法104条の3第1項、123条1項2項、29条1項)。
第5 結論
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいず
れも理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
國 分 隆 文
裁判官
間 明 宏 充
裁判官
バ ヒ ス バ ラ ン 薫
(別紙)
被告製品目録
以下の製品名及び写真で特定される折畳み式テント
1 被告製品1
製品名 「パーテーション VB-003」
2 被告製品2
製品名 「ヴィレップス スプリングポップターンテント VB-003」
(別紙)
写真目録
1
5 2
3
4
5
6
7
(別紙)
図面目録1
【図7】
【図8】
(別紙)
図面目録2
図1A
図1C
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