知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和5(ワ)70273 発信者情報開示請求事件

この記事をはてなブックマークに追加

令和5(ワ)70273発信者情報開示請求事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 認容 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和5年9月29日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社A&T
被告株式会社NTTドコモ
法令 著作権
著作権法2条1項1号1回
著作権法15条1項1回
著作権法15条1回
キーワード 侵害13回
損害賠償4回
実施1回
主文 1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要 1 事案の要旨 本件は、原告が、電気通信事業を営む被告に対し、氏名不詳者ら(以下「本 件各氏名不詳者」という。)が、P2P方式のファイル共有プロトコルである20 BitTorrent(以下「ビットトレント」という。)を利用したネット ワーク(以下「ビットトレントネットワーク」という。)を介して、原告が著 作権を有する別紙動画目録記載の各作品(以下「本件各動画」という。)を複 製して作成した電子データ(以下「本件各複製ファイル」という。)を、本件 各氏名不詳者が管理する端末にダウンロードし、公衆からの求めに応じて自動25 的に送信し得る状態とするとともに、本件各複製ファイルを自動公衆送信した ことによって、本件各動画に係る原告の公衆送信権を侵害したことが明らかで あり、本件各氏名不詳者に対する損害賠償請求等のため、被告が保有する別紙 発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を受 けるべき正当な理由があると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責 任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」5 という。)5条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求める事案である。

▶ 著作権に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

令和5年9月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

令和5年(ワ)第70273号 発信者情報開示請求事件

口頭弁論終結日 令和5年8月23日

判 決

原 告 株 式 会 社 A & T

同訴訟代理人弁護士 杉 山 央

被 告 株式会社NTTドコモ

同訴訟代理人弁護士 桑 原 秀 明

主 文

1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

主文同旨

第2 事案の概要等

1 事案の要旨本件は、原告が、電気通信事業を営む被告に対し、氏名不詳者ら(以下「本件各氏名不詳者」という。)が、P2P方式のファイル共有プロトコルであるBitTorrent(以下「ビットトレント」という。)を利用したネットワーク(以下「ビットトレントネットワーク」という。)を介して、原告が著作権を有する別紙動画目録記載の各作品(以下「本件各動画」という。)を複製して作成した電子データ(以下「本件各複製ファイル」という。)を、本件各氏名不詳者が管理する端末にダウンロードし、公衆からの求めに応じて自動的に送信し得る状態とするとともに、本件各複製ファイルを自動公衆送信したことによって、本件各動画に係る原告の公衆送信権を侵害したことが明らかであり、本件各氏名不詳者に対する損害賠償請求等のため、被告が保有する別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を受けるべき正当な理由があると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責

5 任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

⑴ 当事者ア 原告はアダルトビデオの企画、制作及び販売をその業務とする株式会社である(弁論の全趣旨)。イ 被告は、電気通信事業を営む株式会社である。

⑵ 本件各動画の著作物性本件各動画は、いずれも、著作権法2条1項1号の「著作物」である。

⑶ ビットトレントの仕組み(甲4ないし6、9)ア ビットトレントは、P2P方式のファイル共有プロトコル又はこれを利用するためのソフトウェアであって、ビットトレントを利用したファイル共有は、その特定のファイルに係るデータをピースに細分化した上で、ピア(ビットトレントネットワークに参加している端末)同士の間でピースを転送又は交換することによって実現される。上記ピアのIPアドレス及びポート番号などは、「トラッカー」と呼ばれるサーバーによって保有されている。共有される特定のファイルに対応して作成される「トレントファイル」には、トラッカーのIPアドレスや当該特定のファイルを構成する全てのピースに係る情報などが記載されている。そして、一つのトレントファイルを共有するピアによって、一つのビットトレントネットワークが形成される。イ ビットトレントを利用して特定のファイルをダウンロードしようとする利用者は、インターネット上のウェブサーバー等において提供されている当該特定のファイルに対応するトレントファイルを取得する。端末にイン

5 ストールしたクライアントソフトウェアに当該トレントファイルを読み込ませると、当該端末はビットトレントネットワークにピアとして参加し、定期的にトラッカーにアクセスして、自身のIPアドレス及びポート番号等の情報を提供するとともに、他のピアのIPアドレス及びポート番号等の情報のリストを取得する。ピアは、トラッカーから提供された他のピアに関する情報に基づき、他のピアとの間で通信を行い、当該他のピアに対して当該他のピアが保有するピースの送信を要求し、当該ピースの転送を受ける(ダウンロード)。また、ピアは、他のピアから、自身が保有するピースの転送を求められた場合には、当該ピースを当該他のピアに転送する(アップロード)。このように、ビットトレントネットワークを形成しているピアは、必要なピースを転送又は交換し合うことで、最終的に共有される特定のファイルを構成する全てのピースを取得する。

⑷ 株式会社utsuwa(以下「本件調査会社」という。)による調査(甲2の2、2の3、5、9)本件調査会社は、ビットトレントネットワーク上で共有されているファイルの中から、本件各動画の品番等に基づいて、本件各動画と同一であることが疑われる動画ファイルに対応するトレントファイルを入手した。本件調査会社は、ビットトレントクライアントソフトウェアである「μTorrent」(以下「本件ソフト」という。)に、入手したトレントファイルを読み込ませ、当該トレントファイルに対応する動画ファイルをダウンロードし、本件ソフトの実行画面に表示されたピアのIPアドレス等の情報を、端末のタスクバーに表示された時刻及び時刻表示ソフトウェアを用いて画面の右上に表示させた時刻とともに、スクリーンショットにより撮影した(以下、同スクリーンショットにより撮影された画像(甲2の2、2の3)を「本件各スクリーンショット」という。。)

5 本件調査会社は、ダウンロードした上記動画ファイルを再生し、本件各動画と比較して、その同一性を確認した。

⑸ 本件発信者情報の保有被告は、本件発信者情報を保有している。3 争点

⑴ 本件各氏名不詳者により原告の権利が侵害されたことが明らかであるか(争点1)

⑵ 原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか(争点2)

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点1(本件各氏名不詳者により原告の権利が侵害されたことが明らかであ

るか)について

(原告の主張)

⑴ 原告が本件各動画の著作権を有していることについて

原告代表者は、原告の従業員に本件各動画の制作を指示し、同従業員に本件各動画を撮影させたものであり、また、本件各動画は原告名義で公表されているから、著作権法15条 1 項により、職務著作として本件各動画の著作者は原告とされ、原告にその著作権が帰属する。

⑵ 原告の調査方法に信用性があることについて

本件調査会社の調査結果には、次のとおり信用性が認められる。ア 本件各複製ファイルをアップロードした端末に割り当てられていたIPアドレスの正確性について本件ソフトは、ビットトレントをより効率的に利用するためのソフトウェアであって、違法アップロードをした者(以下「侵害者」という。)を特定することを目的として開発されたものではない。しかし、本件ソフトには、侵害者がファイルをダウンロードしつつ、同ファイルをアップロードしている状態を監視することができる機能が備わっており、侵害者のI

5 Pアドレスを解明することができる仕組みとなっている。

本件調査会社は、トレントファイルをダウンロードした上、本件ソフト上にて対象ファイルのダウンロードを開始して、侵害者が対象ファイルをアップロードしていることが判明した場合に、侵害者のIPアドレスを把握し、実際にダウンロードしたファイルを開いて被侵害動画と比較して、その同一性を確認するという方法により、侵害者のIPアドレスを特定している。本件においても同様の方法で調査が実施されており、本件各氏名不詳者の管理するピアが本件各複製ファイルを不特定多数の者からの求めに応じてダウンロードできる状態にしていた際又は本件各複製ファイルを本件調査会社の使用する端末からダウンロードした際に割り当てられたIPアドレスに係る調査結果の正確性に疑義はない。イ 本件各複製ファイルをアップロードした時刻の正確性について本件各スクリーンショットは、本件調査会社が、本件ソフトを利用して、本件各氏名不詳者から本件各複製ファイルをダウンロードしている状況を撮影したものであるところ、本件各スクリーンショットの右上に記載の時刻は、時刻表示ソフトウェアである「TVClock」というアプリケーションを用いて表示させているものである。同アプリケーションの表示時刻の更新頻度は32768秒毎と設定されており、本件調査会社の使用する端末がWi-Fiに接続されている限り、定期的に時刻の更新がされるから、本件スクリーンショットの右上に表示された時刻表示は正確なものである。したがって、本件各氏名不詳者が本件各複製ファイルをアップロードした時刻に係る調査結果の正確性に疑義はない。ウ 小括よって、本件各氏名不詳者は、別紙発信者情報目録記載の日時において、

5 本件各動画を送信可能化又は自動公衆送信したといえる。

⑶ 違法性阻却事由がないことについて

本件各氏名不詳者が本件各動画を自動公衆送信したことに関し、違法性阻却事由に該当する事実は存在しない。

⑷ 小括

以上によれば、本件各氏名不詳者により、別紙発信者情報目録記載の日時において、本件各動画に係る原告の公衆送信権が侵害されたことが明らかである(プロバイダ責任制限法5条1項1号)。

(被告の主張)

⑴ 原告が本件各動画の著作権を有していることについて

争う。

⑵ 本件調査会社の調査結果の信用性について

本件においては、本件調査会社が利用したとする本件ソフトが、具体的にどのようにしてその時点でビットトレントを利用して本件各複製ファイルをダウンロード又はアップロードしている者のIPアドレス及び本件各複製ファイルの名前を検知しているのかに関する客観的証拠が提出されていない。また、本件各スクリーンショットには、日付等が写っているものの、その正確性を担保する証拠も提出されていない。したがって、本件調査会社の調査結果の信用性に疑義がある。

2 争点2(原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか)

について

(原告の主張)

原告は、本件各氏名不詳者に対し不法行為に基づく損害賠償請求等をする予定であるが、そのためには、被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要があり、正当な理由があるといえる。

(被告の主張)

5 事実については不知。法的主張については争う。

第4 当裁判所の判断

1 争点1(本件各氏名不詳者により原告の権利が侵害されたことが明らかであるか)について

⑴ 本件各動画に係る著作権の帰属について証拠(甲2の2、2の3、20の1、20の2、21)によれば、本件各動画は、原告の決定に基づいて、原告代表者が自ら又は原告の従業員に指示して企画制作したものであること、本件各動画は、原告の名義が制作者としてパッケージに記載された状態で販売されていることが認められる。したがって、本件各動画は、「法人その他使用者の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物」であり、原告の「著作の名義の下に公表」されたものといえる(著作権法15条1項)から、本件各動画の著作者は原告であり、本件各動画に係る著作権は原告に帰属すると認められる。

⑵ 本件調査会社の調査結果の信用性についてア 前提事実⑷のとおり、本件調査会社は、本件各複製ファイルに係るトレントファイルをダウンロードした上、本件ソフトに同トレントファイルを読み込ませ、当該トレントファイルに対応する動画ファイルをダウンロードし、実際にダウンロードした動画ファイルを再生し、本件各動画と比較することにより、これらが同一の内容を有していることを確認したことが認められる。そして、本件全証拠によっても、このような本件調査会社による調査結果に特段の問題は認められない。イ 被告は、原告主張に係る本件各複製ファイルがアップロードされた時刻の正確性に疑義がある旨主張するが、証拠(甲19)によれば、本件各スクリーンショットの右上に表示された時刻は、時刻表示ソフトウェアである「TVClock」というアプリケーションを用いて表示させているも

5 のであり、同アプリケーションの時刻の表示の正確性を否定し得る証拠は存在しない。ウ したがって、本件調査会社による調査結果には信用性が認められるというべきである。

⑶ 違法性阻却事由の不存在本件各氏名不詳者の行為について、違法性阻却事由が存在することは全くうかがわれない。

⑷ 小括以上によれば、別紙発信者情報目録記載の各日時において、同目録記載のIPアドレス等が割り当てられていた端末により、本件各動画がそれぞれ自動公衆送信されたと認められるから、同端末を管理する本件各氏名不詳者によって、本件各動画に係る原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかといえる(プロバイダ責任制限法5条1項1号)。

2 争点2(原告が本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由を有するか)について弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各氏名不詳者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求等をする予定であり、そのためには、被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要があることが認められる。したがって、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるといえる(プロバイダ責任制限法5条1項2号)。

3 結論以上の次第で、原告の請求は理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部

裁判長裁判官

國 分 隆 文

裁判官

バ ヒ ス バ ラ ン 薫

裁判官

木 村 洋 一

別紙

発信者情報目録以下のIPアドレスを、以下の日時に被告から割り当てられていた契約者に関す

5 る情報であって、次に掲げるもの1 氏名又は名称2 住所3 電話番号令和4年(2022年)12月28日日時20時44分03秒2 IPアドレス (IPアドレスは省略)ポート番号 (ポート番号は省略)令和4年(2022年)12月31日日時11時14分48秒3 IPアドレス (IPアドレスは省略)ポート番号 (ポート番号は省略)以上

(別紙動画目録-省略)

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

来週の知財セミナー (11月2日~11月8日)

11月5日(木) - オンライン

第69回東北大学知財セミナー

11月5日(木) - 東京 港

研究開発戦略と知的財産

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

特許業務法人 浅村特許事務所 (東京都品川区)

〒140-0002 東京都品川区東品川2丁目2番24号 天王洲セントラルタワー21F・22F 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

かもめ特許事務所

横浜市中区本町1-7 東ビル4階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

弁理士法人 牛木国際特許事務所

〒105-0001 東京都港区虎ノ門1丁目14番1号 郵政福祉琴平ビル 3階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング