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令和5(ワ)70006発信者情報開示請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和5年9月21日
事件種別 民事
当事者 原告有限会社プレステージ
被告KDDI株式会社
法令 著作権
著作権法2条1項9号1回
キーワード 侵害40回
分割3回
実施2回
損害賠償1回
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。15
事件の概要 本件は、原告が、被告に対し、氏名不詳者ら(以下「本件各発信者」という。)20 がファイル交換共有ソフトウェアであるBitTоrrent互換ソフトウェ ア(以下「BitTоrrent」という。)を使用して、別紙著作物目録記載 の動画(以下「本件動画」という。)に係る原告の送信可能化権を侵害したと主 張して、令和3年法律第27号による改正前の特定電気通信役務提供者の損害賠 償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下、特に改正前後を区別す25 る必要のない限り、改正後も含めて「プロバイダ責任制限法」という。)4条1 項又は同号による改正後のプロバイダ責任制限法5条1項に基づき、別紙発信者 情報目録記載の各情報の開示を求める事案である。

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判決文

令和5年9月21日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和5年(ワ)第70006号 発信者情報開示請求事件
口頭弁論終結日 令和5年7月20日
判 決
5 原 告 有限会社プレステージ
同訴訟代理人弁護士 戸 田 泉
角 地 山 宗 行
同訴訟復代理人弁護士 新 英 樹
被 告 KDDI株式会社
10 同訴訟代理人弁護士 今 井 和 男
小 倉 慎 一
山 本 一 生
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
15 2 訴訟費用は、原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
第2 事案の概要
20 本件は、原告が、被告に対し、氏名不詳者ら(以下「本件各発信者」という。)
がファイル交換共有ソフトウェアであるBitTоrrent互換ソフトウェ
ア(以下「BitTоrrent」という。)を使用して、別紙著作物目録記載
の動画(以下「本件動画」という。)に係る原告の送信可能化権を侵害したと主
張して、令和3年法律第27号による改正前の特定電気通信役務提供者の損害賠
25 償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下、特に改正前後を区別す
る必要のない限り、改正後も含めて「プロバイダ責任制限法」という。)4条1
項又は同号による改正後のプロバイダ責任制限法5条1項に基づき、別紙発信者
情報目録記載の各情報の開示を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨に
より認められる事実をいう。)
5 ⑴ 当事者(弁論の全趣旨)
ア 原告は、ビデオソフト、DVDビデオソフトの制作及び販売等を目的とす
る有限会社である。
イ 被告は、一般利用者に向けて広くインターネット接続サービスを提供して
いるアクセスプロバイダであり、プロバイダ責任制限法2条3号にいう特定
10 電気通信役務提供者に該当する。
⑵ 原告の著作権(甲1、弁論の全趣旨)
原告は、本件動画の著作権を有している。
⑶ BitTоrrentの仕組み(甲2、甲10、弁論の全趣旨)
BitTоrrentは、いわゆるP2P形式のファイル共有に係るソフト
15 であり、その概要や利用の手順は、以下のとおりである。
ア BitTоrrentにおいては、ファイルを小さいデータに分割し(以
下、分割されたファイルの一部を「ピース」という。)、BitTоrre
ntネットワークにつながっているユーザーに分散して保有させる。
イ ユーザーがBitTоrrentを通じてファイルをダウンロードする
20 ためには、まず、BitTоrrentを自己の端末にインストールした上
で、インターネット上においてダウンロードしたいファイルの在りかなどの
情報が記載されたトレントファイルを取得する。
ウ 次に、トレントファイルをBitTоrrentに読み込ませ、ファイル
の提供者を管理するトラッカーサーバーに接続し、特定のファイルの提供者
25 のリストを要求すると、トラッカーサーバーは、ユーザーに対して、自身に
アクセスしている提供者のIPアドレス等が記載されたリストを返信する。
エ リストを受け取ったユーザーは、ダウンロードしたい特定のファイルを持
つ他のユーザーに接続して、ダウンロードを開始する。
オ 全てのピースのダウンロードが完了すると、分割前と同じ一つのファイル
が完成する。
5 カ 完全な状態のファイルを有するユーザーは、「シーダー」と呼ばれる。ま
た、目的のファイルにつきダウンロードが完了する前のユーザーは「リーチ
ャー」と呼ばれ、ネットワークに参加しているコンピューター全てを併せて
「ピア」と呼ばれる。
⑷ 原告による著作権侵害調査(甲3ないし6)
10 ア 原告は、本件訴訟の提起に先立って、株式会社HDR(以下「本件調査会
社」という。 に対し、本件動画に係る著作権侵害についての調査(以下「本

件調査」という。)を依頼した。そして、本件調査会社は、同社が開発した
著作権侵害検出システム(以下「本件ソフトウェア」という。)を使用し、
本件調査を実施した。
15 イ 本件調査会社は、本件調査を踏まえ、原告に対し、別紙発信者情報目録記
載の日時頃、同目録記載のIPアドレスの割当てを受けた本件各発信者が、
本件動画に係るファイル(以下「本件ファイル」という。)を保有し、応答
確認(以下「Handshake」という。)をした旨報告した。
⑸ 被告による発信者情報の保有
20 被告は、本件各発信者に係る発信者情報を保有している。
2 争点
本件の争点は、権利侵害の明白性及びHandshakeに係る発信者情報が
「権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか否かである。
第3 争点に関する当事者の主張
25 1 争点1(権利侵害の明白性)について
(原告の主張)
⑴ 本件各発信者による送信可能化権侵害
本件調査において、本件ソフトウェアがトラッカーサーバーに接続し、本件
動画に係るファイルの提供者のリストを要求したところ、トラッカーサーバー
から、別紙発信者情報目録記載のIPアドレス等が記載されたリストが送信さ
5 れた。したがって、本件各発信者は、BitTоrrentのネットワークに
アクセスした上で、本件動画を複製した動画のファイルをアップロードできる
状態にしていたのであり、これにより本件動画に係る原告の送信可能化権を侵
害した。
⑵ 本件調査の信用性について
10 本件調査においては、本件調査会社が本件ソフトウェアを用いて本件各発信
者を特定している。そして、本件ソフトウェアについては、同一性確認試験(甲
6、甲10)において、正常にプログラムが動作することが確認されているた
め、本件調査は信用できるものである。
これに対し、被告は、別件の発信者情報開示請求訴訟の判決において指摘さ
15 れている事情が本件調査の信用性を疑わせる根拠になる旨主張しているもの
の、これらの判決における指摘は、本件調査の信用性を左右するものではない。
すなわち、①発信者においては、身に覚えがない旨虚偽回答をする動機がある
上、インターネット上の掲示板においても意見照会に対して具体的拒否事由を
捏造して回答することが推奨されているから、たとえ身に覚えがない旨の具体
20 的回答があったとしても本件システムの正確性を疑わせる事情とはいえない。
また、②通信自体が存在しない調査結果については、ISPのログ記録の欠落
や不正確さ、セッション情報の更新遅延、IPアドレスのリース・サブリース
等の原因が考えられるし、技術仕様上契約者に割り当てていない送信元ポート
番号が示されていた点は、当時のシステムにおいて、他のピアからの接続リク
25 エストも受け付けており、これについては送信元ポート番号が分からないため
にデータベース上では、送信元ポート番号としては、暫定的に0か1として記
録されていたことによるものである。
さらに、本件各発信者においても、照会に対して虚偽回答をする動機がある
から、全く身に覚えがない旨の回答(乙1)をもって本件調査の信用性を疑わ
せる事情とはいえない。
5 以上によれば、本件調査について信用性を疑わせる事情は存在しない。
⑶ 本件各発信者がファイルのアップロードをしていない可能性について
被告は、本件各発信者が本件動画のファイルをアップロードしていない可能
性があると主張している。確かに、BitTоrrentにおいてダウンロー
ドした後に、当該動画を共有状態から解除設定した場合にはアップロードされ
10 た状態にはならないものの、上記場合には、そもそも本件ソフトウェアにおい
て検出できないことになるから、被告の主張は失当である。
⑷ ピースのみであっても送信可能化権侵害が認められること
BitTоrrentで動画をダウンロードする目的は、動画の閲覧である
ことから、再生不能なピースのみを保持している状態は考え難い。また、ピー
15 スについても、少なくとも1パーセントの保有率であれば、動画の一部を再生
することができる(甲16)。したがって、本件各発信者は、原告の送信可能
化権を侵害している蓋然性が高い。また、本件は、BitTоrrent利用
者間でピースを融通し合い共同で送信可能化権侵害を行うという不法行為類
型である以上、電子データの一部のみの保有であっても、電子データ全体につ
20 いての共同不法行為が成立する。
(被告の主張)
⑴ 本件調査の信用性について
本件ソフトウェアについては、別件の発信者情報開示請求訴訟において、①
プロバイダによる意見照会に対して発信行為を否定する契約者が相当程度多
25 い、②本件ソフトウェアの正確性を裏付ける証拠として提出された報告書は、
本来検出されるべきではない通信が検出されたり又はそもそも存在しない通
信が記録されたりする可能性がなかったことまで示すものではないとして、請
求棄却が言い渡されたものや、③本件ソフトウェアの調査結果には、通信自体
が存在しないものや技術仕様上契約者に割り当てていない送信元ポート番号
が示されたものが相当数含まれており、その理由について原告から合理的な理
5 由が説明されていないとして、請求棄却が言い渡されたものがある。本件調査
においても、これらの裁判例において信用性が否定されたソフトウェアと同一
の本件ソフトウェアが使用されているのであるから、その正確性には大きな疑
義がある。
これに対し、原告は同一性確認試験(甲6)により本件ソフトウェアの正確
10 性が証明されている旨主張するが、同実験はごく短時間のうちに、他に流通し
ていないと思われる試験ファイルについて、極めて少ない台数のコンピュータ
ーのみで共有を試みたものにすぎず、BitTоrrentに接続して反復継
続して動作させたものではないことからすると、本件調査によって本来検出す
べきではない通信が検出された可能性を排斥できるものではない。
15 また、被告による本件各発信者への意見照会に対しては、7名が発信者では
ないと回答しており、その回答内容は、相当に具体的かつ説得的で信用できる
ことからすると、このことも、本件調査で発信者ではない者による通信が検出
されたことを相当程度うかがわせるといえる。
⑵ 本件調査を前提としても、送信可能化権侵害が認められないこと
20 万が一原告の主張のとおり、Handshakeを行ったピアが本件動画に
係る電子データをダウンロードしていたとしても、他のピアにアップロードす
る直前に当該ピアの端末がオフラインになれば当該ピアから本件動画のアッ
プロードは行われないはずである。また、ダウンロードだけを行うピアが存在
する可能性があるから、本件各発信者が本件動画の電子データのアップロード
25 を行ったかどうかは明らかではない。したがって、仮に本件調査が正確なもの
であるとしても、送信可能化権侵害が発生しているということはできない。
⑶ ピースのみでは送信可能化権侵害が認められないこと
BitTоrrentにおいては、電子データを保有しているピアが、ダウ
ンロードを希望するピアに対して、ピースのみを送信することが前提となって
いるが、一つのピースのみではダウンロード側のピアにおいて動画を再生する
5 ことはできない。このような再生できないファイルは著作物ともいえず、本件
動画の一部であるともいえない。
これに対し、原告は、少なくとも1パーセントのファイル保持率で8秒間の
動画を再生できる旨主張するが、本件調査におけるHandshake時点で
本件各発信者が本件動画の電子データをどの程度保有していたのか具体的な
10 立証をしていない。
したがって、本件各発信者によって本件動画に係るファイルが送信可能な状
態に置かれたことが明らかとはいえない。
2 争点2(Handshakeに係る発信者情報が「権利の侵害に係る発信者情
報」に該当するか否か)について
15 (原告の主張)
別紙動画目録記載の各発信時刻は、本件調査において、トラッカーサーバーか
らIPアドレス等が記載されたリストが返信された後、実際に、本件ソフトウェ
アが当該リストに載っていた各ユーザーに接続をして、各ユーザーとHands
hakeを行った日時を指すものである。このことは、本件各発信者が、遅くと
20 も別紙動画目録記載の各発信時刻までに、本件動画に係るファイルの全部又は一
部を取得して端末に保存し、かつ、これと同時に、BitTоrrentのネッ
トワークを介して他のピアからの要求に応じて当該ファイルをアップロードで
きる状態にしていたことを示すものである。そうすると、いわば尿鑑定で覚醒剤
反応が出たことから覚醒剤の使用を推認するのと同様に、各発信時刻における発
25 信者情報が、「権利の侵害に係る発信者情報」に該当する。
仮に上記主張が認められないとしても、被害者救済の見地から、①侵害情報の
データ容量が大きく、かつ、②侵害者の数が膨大であり、③容易に当該侵害情報
の更なる拡散が現実的具体的に予見され、④また、被侵害利益の程度が大きく、
⑤その為、侵害情報そのものの流通の確認を都度開示請求者に要求することが困
難である場合には、⑥侵害情報に関連する情報に限定して発信者情報開示請求を
5 認めるべきである。
(被告の主張)
Handshakeは応答確認にすぎないから、同発信時刻において送信可能
化権の侵害になり得る行為は行われておらず、Handshakeに係る発信者
情報は「権利の侵害に係る発信者情報」に該当しない。
10 これに対し、原告は、一定の事情がある場合には被害者救済の見地から発信者
情報開示請求が認められるべきであると主張しているが、独自の見解である。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(権利侵害の明白性)について
⑴ 認定事実
15 前提事実、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ
る。
ア 本件調査の内容(甲4、5)
本件調査会社は、本件調査会社が開発した「著作権侵害検出システム」
(本
件ソフトウェア)を使用して、本件調査を実施したところ、本件ソフトウェ
20 アは、トラッカーサイトから、本件動画を侵害する動画ファイルに係るハッ
シュ値を取得し、これを登録した。そして、本件ソフトウェアは、上記動画
ファイルを送受信するために、トラッカーサイトに公開されているトレント
ファイルを取得した後、トラッカーサーバーに対してダウンロードリクエス
トを送信したところ、トラッカーサーバーから上記動画ファイルをダウンロ
25 ードできるピアの一覧が返答された。
その後、本件ソフトウェアは、上記一覧に掲載されている各ピアに接続し
て、別紙動画目録記載の各発信時刻において、各ピアとの間で、各ピアが応
答することの確認を行った(Handshake)。
イ 本件調査の信用性
本件調査会社代表者の陳述書(甲14)
5 本件調査会社の代表取締役は、陳述書において、本件ソフトウェアにつ
いて別件の訴訟で示された疑義に対して、インターネットサービスプロバ
イダ(以下「ISP」という。)が該当する通信がないと主張しているこ
とについては、①ISPのログ記録の欠落や不正確さ、②セッション情報
の更新遅延、③IPアドレスのリース・サブリース等の原因をもって説明
10 することができる旨述べている。また、技術仕様上契約者に割り当ててい
ない送信元ポート番号が示されていた点については、当時のシステムにお
いて、他のピアからの接続リクエストについて送信元ポート番号が分から
ないために、データベース上では送信元ポート番号を0か1として記録さ
れていたためであると述べている。
15 同一性確認実験(甲6)
本件ソフトウェアについて、原告代理人事務所の事務員が同一性確認試
験を行った。同試験においては、BitTоrrentネットワーク上に
おいて試験用ファイルの交換を行っているクライアントのIPアドレス
と、本件ソフトウェアが試験用ファイルの交換を行っていると検知したI
20 Pアドレスが、同一であることが確認された。
意見照会の回答(乙1)
被告が本件各発信者に対して行った意見照会に対して、「全く身に覚え
がありません。指摘されている作品名にも全く心当たりがなく、パソコン
の中も探してみたのですが見つけることができませんでした。」との回答
25 がなされた。
インターネット掲示板における書き込み(甲13−1、13−2)
インターネット掲示板である「5ちゃんねる」においては、プロバイダ
からの意見照会がされた場合には、発信者ではない旨の回答をするべきこ
とや、具体的な解答例が複数書き込まれている。
⑵ 権利侵害の明白性
5 原告は、ピアが少なくとも本件動画のファイルの1%を保有していた場合
には、これを再生できることが確認されている旨主張して、本件各発信者は、
原告の送信可能化権を侵害している蓋然性が高い旨主張する(原告準備書面
(4)1頁参照)。
しかしながら、原告は、当裁判所による再度の釈明にかかわらず、本件各
10 発信者が1%以上のピースを現に保有していた事実を立証することができ
ない旨主張するに至ったのであるから(第1回弁論準備手続調書参照)、仮
に本件各発信者が本件動画のファイルを保有していたとしても、原告は、こ
れが再生可能であることを立証するに足りない。そうすると、原告の主張は、
そもそも送信可能化権侵害をいうに足りず、その前提を欠くものとして、失
15 当というほかない。
のみならず、送信可能化権侵害とは、大要、著作権法2条1項9号の5イ
にいう情報記録入力型と、同ロにいう装置接続型に区分されるところ、前記
認定事実によれば、原告主張に係るHandshakeに係る通信は、単に
ピアの応答を確認するものにすぎないのであるから、本件動画に係るデータ
20 をダウンロード又はアップロードする通信(情報記録入力型)でもなく、侵
害情報に係るトラッカーへの最初の通知に係る通信(装置接続型)でもない。
そうすると、原告主張に係る上記通信は、侵害情報の流通によって直接的に
権利侵害をもたらすものとはいえず、その情報の開示を請求することはでき
ない。
25 これに対し、原告は、いわば尿鑑定で覚醒剤反応が出たことから覚醒剤の
使用を推認するのと同様に、各発信時刻における発信者情報が、「権利の侵
害に係る発信者情報」に該当すると主張する。しかしながら、プロバイダ責
任制限法は、侵害情報の流通によって、直接的に権利侵害をもたらした情報
の限度で開示請求を認めるにすぎないことは、上記説示のとおりである。そ
うすると、原告が開示を求める情報は、原告の主張を前提としても、いわば
5 覚醒剤の使用に係るものではなく、これとは時点を異にする尿鑑定に係るも
のにすぎないのであるから、プロバイダ責任制限法の規定に照らし、その情
報の開示を求めることができないことは明らかである。したがって、原告の
尿鑑定に係る論旨は、プロバイダ責任制限法の規定を正解するものではなく、
採用の限りではない。
10 その他に、原告の立証内容を改めて精査しても、肝心の再生可能性に係る
立証が足りず、原告の主張内容を改めて検討しても、共同不法行為者間の具
体的行為を特定することなく抽象的に共同不法行為を主張する点を含め、原
告の主張は、プロバイダ責任制限法及び著作権法を正解するものとはいえず、
侵害情報の流通による権利侵害をいうに足りない。したがって、原告の主張
15 は、いずれも採用することができない。
⑶ 小括
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、本件各発信者にお
いて原告の権利を侵害したことが明らかであると認めることはできない。
2 その他の争点について
20 以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、原告の本件発信者
に係る発信者情報開示請求権を認めることはできない。
第5 結論
よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして、
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
5 中 島 基 至
裁判官
10 古 賀 千 尋
裁判官
15 尾 池 悠 子
(別紙)
発 信 者 情 報 目 録
5 別紙動画目録記載の各IPアドレスを、同目録記載の各発信時刻頃に被告から割り当
てられていた契約者に関する以下の情報
① 氏名又は名称
② 住所
③ 電子メールアドレス
以上
(別紙著作物目録省略)
(別 紙 動 画 目 録 省 略)

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