令和3(ワ)4061特許権侵害行為差止等請求事件
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裁判所 |
請求棄却 大阪地方裁判所大阪地方裁判所
|
裁判年月日 |
令和5年10月31日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
原告カード-モンローコーポレイション 被告道下鉄工株式会社
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対象物 |
ヤーン色配置システム |
法令 |
特許権
特許法104条の33回 特許法100条1項1回
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キーワード |
無効33回 進歩性23回 特許権12回 新規性11回 実施9回 差止5回 無効審判3回 侵害3回
|
主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 |
事件の概要 |
本件は、発明の名称を「ヤーン色配置システム」等とする3件の特許(以下「本
件各特許」という。)に係る特許権(以下「本件各特許権」という。)を有する原15
告が、被告が本件各特許の特許請求の範囲記載の各発明の技術的範囲に属する被告
製品を製造し、販売等することは本件各特許権の侵害に当たると主張して、被告に
対し、特許法100条1項及び2項に基づき、被告製品の製造、販売等の差止め並
びに被告製品等及びその製造設備の廃棄を求めるとともに、不法行為(民法709
条)に基づき、損害金10億円のうち1億円及びこれに対する不法行為の日の後(本20
訴状送達の日の翌日)である令和3年5月28日から支払済みまで平成29年法律
第44号による改正前の民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事
案である。 |
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判決文
令和5年10月31日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官
令和3年(ワ)第4061号 特許権侵害行為差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和5年9月1日
判 決
原 告 カード-モンローコーポレイション
同 代 表 者
同訴訟代理人弁護士 山 本 健 策
同 上 米 良 大 輔
10 同 福 永 聡
同 三 坂 和 也
同 本 田 輝 人
同 補 佐 人 弁 理 士 橋 本 卓 行
同 飯 田 貴 敏
15 同 田 中 宏 樹
被 告 道 下 鉄 工 株 式 会 社
同代表者代表取締役
同訴訟代理人弁護士 牧 野 知 彦
20 同 髙 山 和 也
同訴訟代理人弁理士 田 村 啓
同 中 嶋 宣
同 奥 西 祐 之
同 補 佐 人 弁 理 士 稲 葉 和 久
25 主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
5 1 被告は、別紙「被告製品目録」記載1及び2の製品(以下、順に「被告製品
1」及び「被告製品2」といい、これらを「被告製品」と総称する。)の製造、譲
渡、輸入、輸出及び譲渡の申出をし、譲渡のための展示をしてはならない。
2 被告は、被告製品及びその半製品(被告製品の構造を具備しているが、未だ
製品として完成に至らないもの)を廃棄せよ。
10 3 被告は、被告製品の製造に供する製造設備を廃棄せよ。
4 被告は、原告に対し、1億円及びこれに対する令和3年5月28日から支払
済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は、発明の名称を「ヤーン色配置システム」等とする3件の特許(以下「本
15 件各特許」という。)に係る特許権(以下「本件各特許権」という。)を有する原
告が、被告が本件各特許の特許請求の範囲記載の各発明の技術的範囲に属する被告
製品を製造し、販売等することは本件各特許権の侵害に当たると主張して、被告に
対し、特許法100条1項及び2項に基づき、被告製品の製造、販売等の差止め並
びに被告製品等及びその製造設備の廃棄を求めるとともに、不法行為(民法709
20 条)に基づき、損害金10億円のうち1億円及びこれに対する不法行為の日の後(本
訴状送達の日の翌日)である令和3年5月28日から支払済みまで平成29年法律
第44号による改正前の民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事
案である。
1 前提事実(証拠等を掲げていない事実は争いのない事実又は弁論の全趣旨に
25 より容易に認められる事実である。)
(1) 当事者
原告は、マットやカーペットを製造する機械(タフティングマシン)を製造、販
売、輸出すること等を目的とする米国法人である。
被告は、各種織物機械及び設備の製造を目的とする株式会社である。
(2) タフティングマシン
5 タフティングマシンとは、マットやカーペットの基布(バッキング材料)に毛房
(タフト)を植え付ける機械であり、マット又はカーペットの基布の裏側から表側
に糸(ヤーン)を伴った針を通し、表側で毛房を形成し、フック(ゲージ部品)を
用いてタフトを引っ掛けることで、当該毛房を保持し、基布に毛房を植え付ける機
械である。
10 (3) 本件各特許権
原告は、次の本件各特許(以下、順に「本件特許1」などという。)に係る本件
各特許権(以下、順に「本件特許権1」などという。)を有している。本件特許権
1~3の特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、明細書及び図面を順に「本件明
細書1」などという。)の記載は、それぞれ別紙「特許公報(甲2の1)」、同「特
15 許公報(甲2の2)」及び同「特許公報(甲2の3)」のとおりである。
ア 本件特許権1
(ア) 特許番号 特許第5745724号
(イ) 発明の名称 ヤーン色配置システム
(ウ) 出願日 平成25年10月9日
20 (エ) 登録日 平成27年5月15日
(オ) 優先日 平成20年2月15日
イ 本件特許権2
(ア) 特許番号 特許第5389467号
(イ) 発明の名称 ヤーン色配置システム
25 (ウ) 出願日 平成21年2月13日
(エ) 登録日 平成25年10月18日
(オ) 優先日 平成20年2月15日
ウ 本件特許権3
(ア) 特許番号 特許第5622876号
(イ) 発明の名称 タフティング機のためのステッチ分布制御システム
5 (ウ) 出願日 平成25年2月12日
(エ) 登録日 平成26年10月3日
(オ) 優先日 平成21年2月23日
(4) 構成要件
本件各特許の各特許請求の範囲請求項1記載の各発明(以下、順に「本件発明1」
10 などといい、これらを「本件発明」と総称する。)の構成要件は、別紙「被告製品
の構成」の「構成要件」欄記載のとおり分説される。
(5) 被告製品の構成
被告製品1では、形成されたタフトがカットされることはないのに対し、被告製
品2では同タフトがカットされるという点が相違しているものの、その他の仕様は
15 同一であるから、本件発明との関係において、被告製品1と被告製品2の構成に相
違はない。
被告製品の構成については当事者間に争いがあるが、別紙「被告製品の構成」の
「被告製品の構成」欄記載のとおり、被告製品がb~e、g及びhの構成を有して
おり、本件発明1の構成要件1B~1E、1G及び1Hを充足すること、本件発明
20 2の構成要件2B~2E及び2Iを充足すること、本件発明3の構成要件3B~3
D、3F、3F1及び3Gを充足することは当事者間に争いがない。
(6) 被告の行為
被告は、平成27年6月頃から、被告製品の製造及び輸出を行っている(甲7、
8(各枝番号)、21の1・2~23、弁論の全趣旨)。
25 2 争点
(1) 本件発明の技術的範囲への属否(争点1)
(2) 無効理由の有無(争点2)
ア 本件発明1及び2の明確性要件違反の有無(争点2-1)
イ 公表特許公報(特表2006-524753号。平成18年11月2日公表。
乙4。以下「乙4公報」という。)記載の発明(以下「乙4発明」という。)に基
5 づく本件発明3の新規性欠如の有無(争点2-2)
ウ 乙4発明に基づく本件発明3の進歩性欠如の有無(争点2-3)
エ 乙4発明に基づく本件発明1の進歩性欠如の有無(争点2-4)。なお、特
許公報(特許第3013306号。平成11年12月17日登録。乙5。以下「乙
5公報」という。)記載の発明を、以下「乙5発明」という。
10 オ 乙4発明に基づく本件発明2の進歩性欠如の有無(争点2-5)
(3) 損害の発生及びその額(争点3)
(4) 差止め及び廃棄の必要性の有無(争点4)
第3 争点についての当事者の主張
1 本件発明の技術的範囲への属否(争点1)
15 被告製品の構成及び本件発明に係る構成要件充足性に関する当事者の主張は、別
紙「被告製品の構成」の「被告製品の構成」、同「構成要件充足性(本件発明1)」、
同「構成要件充足性(本件発明2)」及び同「構成要件充足性(本件発明3)」の
各「原告の主張」欄及び「被告の主張」欄記載のとおりである。
2 無効理由の有無(争点2)
20 当事者の主張は、別紙「無効主張(本件発明1及び2・明確性要件違反)」、同
「無効主張(本件発明3・新規性欠如)」、同「無効主張(本件発明3・進歩性欠
如)」、同「無効主張(本件発明1・進歩性欠如)」及び「無効主張(本件発明2・
進歩性欠如)」の各「被告の主張」欄及び「原告の主張」欄記載のとおりである。
3 損害の発生及びその額(争点3)
25 (原告の主張)
被告は、遅くとも平成27年6月頃から、中華人民共和国又はタイ王国に所在す
る顧客に向けて、被告製品を製造、販売及び輸出している。これによって、被告は、
少なくとも10億円の利益を得ているから、原告が被った損害は10億円をくだら
ない。
原告は、被告に対し、その一部である1億円の支払を求める。
5 (被告の主張)
争う。
4 差止め及び廃棄の必要性の有無(争点4)
(原告の主張)
被告は本件各特許権を侵害しているから、原告は、被告に対し、被告による被告
10 製品の製造等の差止め並びに被告製品等及びその製造設備の廃棄を求める必要性が
ある。
(被告の主張)
争う。
第4 当裁判所の判断
15 1 本件明細書1~3の記載
本件明細書1~3には次の記載がある。
(1) 本件明細書1及び2(以下につき、本件明細書1及び2の記載は、 【0011】
段落 、
【0049】、【0050】、【0053】及び【0062】において、本件明細書1では「1イン
チ(2.54cm)」とあるのが、本件明細書2では「1インチ」とされているほ
20 かは、同じである。)
ア 技術分野
「(発明の分野)本発明は概して、タフティングマシン(tufting ma
chine)に関し、特に、タフティングマシンを通るバッキング材料内に様々な
色のヤーンの配置を給送することを制御し、タフティングされた物品内に自由に流
25 れる模様を形成することを可能にするためのシステムに関する。」(【0002】)
イ 技術背景
「(発明の背景)カーペットおよび他の同様な物品のタフティングにおいて、変
化する消費者の好みおよび市場での高まる競争と伍する試みのために、新規で目に
映える模様の開発がかなり強調されている。特に、織機で形成された布の外観およ
び感じを複製するカーペットの形成が、多年にわたり強調されている。例えば特許
5 文献1に開示されたもののようなタフティングマシンに対するコンピュータ制御の
導入によって、タフティングされる模様カーペットを設計、生産する際のより大き
な精度および多様性、ならびに高められた生産スピードが可能となった。さらに、
デザイナが模様のより広い多様性を設計、作成することを助けるために、コンピュ
ータ化されたデザインセンタが開発され、例えばヤーンの給送、パイルの高さなど
10 の要件が、デザインセンタのコンピュータによって自動的に計算、生成されている。」
(【0003】)
「さらに、様々に異なる色のヤーンが、バッキング材料の中に挿入され得るタフ
ティングマシンを開発する試みがなされ、より自由に流れる模様を作成することが
試みられている。例えば、専用機械が開発され、その専用機械は、異なる色のヤー
15 ンの端が針に個々に給送され、選択された位置でバッキング材料の中に挿入される
単一で中空の針を運ぶ動くヘッドを含む。より従来型のタフティングマシン構成で
複数の針を有し、バッキング材料を前方および後方に動かしてバッキング材料に複
数の色を配置する他のマシンも開発された。しかしながら、個々にヤーンを配置す
るためのかかる専用タフティングマシンには問題が存在する。その問題とは、ヤー
20 ンが単一の針によってバッキング材料に個々に配置されるので、またはバッキング
材料の給送の方向が変更されるので、かかるマシンの生産速度は概して制限される
という点である。結果として、かかる専用の色模様つけマシンは通常、例えば限定
または低減された大きさの模様のある敷物またはカーペットの形成のような特別の
用途に限定される。」(【0004】)
25 ウ 発明が解決しようとする課題
「従って、当技術分野におけるこれらの問題ならびに他の関連する問題および関
連しない問題に取り組むシステムおよび方法に対するニーズが存在する。 【0006】
(
」 )
エ 課題を解決するための手段
「端的に述べると、本発明は概して、タフティングマシンのためのヤーン色配置
システムに関し、タフティングマシンは、織られた外観または織機で形成された外
5 観を有する実質的に自由に流れる模様および/またはカーペットの形成を含み、模
様がつけられタフティングされた物品、例えばカーペットを形成することに使用さ
れる。本発明のヤーン色配置システムを備えるタフティングマシンは通常、このタ
フティングマシンの動作的要素を制御するためのタフティングマシン制御システム
と、それに沿って間隔が置かれた一連の針を有する1つ以上のシフティング針棒と
10 を含む。タフティングゾーンは、針の往復経路に沿って画定され、タフティングゾ
ーンを通してバッキング材料が、給送スティッチ速度または所望のスティッチ速度
の、プログラムされたかまたは規定された速度で給送される。バッキング材料がタ
フティングゾーンを通して給送されるとき、針がバッキング材料に出入りして往復
させられ、ヤーンのループをバッキング材料に形成する。」(【0007】)
15 「ヤーン色配置システムはさらに概して、タフティングされる物品に対してプロ
グラムされた模様のシフトプロファイルと連係して、ヤーンをそれぞれの針に給送
することを制御するための、模様ヤーン給送メカニズムまたはアタッチメントを含
む。模様ヤーン給送模様メカニズムは、様々なロール、スクロール、サーボスクロ
ール、シングルエンド、またはダブルエンドヤーン給送アタッチメント、例えばC
20 ard-Monroe Corp.によって製造されたYarntronics T
M
またはInfinity T M またはInfinity IIE T M ヤーン給送アタ
ッチメントを含み得る。プログラムされた模様命令に従ってヤーンをそれらの選択
された針に給送することを制御し、それによってバッキング材料からこれらのヤー
ンを引いて低くするか、またはバックロブ(backrob)して、そのとき縫わ
25 れている模様フィールドに隠されるようにするために、他のタイプのヤーン給送制
御メカニズムも使用され得る。タフティングマシンのシステム制御はさらに通常、
プログラムされた反復模様命令に従うシフトメカニズムとヤーン給送メカニズムと
の協働動作を含む、タフティングマシンの動作機能を制御する。」(【0009】)
「さらに、例えばカットパイルフック、ループパイルルーパ、レベルカットルー
パまたはフックおよび/またはかかるゲージ部品の様々な組み合わせのようなゲー
5 ジ部品を含む、ルーパまたはフックアセンブリは概して、タフティングゾーンの下
に提供され、針がバッキング材料を貫通するとき針と係合し、それによって針から
ヤーンのループをつまみかつ/またはこれらを引くように適合される位置にある。
一実施形態において、形成される模様スティッチおよび、従ってシフトプロファイ
ルステップに基づき、一連のレベルカットループルーパは、各スティッチの間、タ
10 フティングマシンのシステム制御によって個々に制御され、それによって形成され
るヤーンのループが後に引かれるかもしくはバックロブされるかに従って、つまり
模様の各スティッチの形成に際して隠されるか、ループパイルタフトとして維持さ
れるか、またはレベルカットループルーパに保持されてカットパイルタフトを形成
するか、に従って、各スティッチに対して選択的に作動または発射される。 【0010】
(
」 )
15 「本発明の原理によるヤーン色配置システムはさらに概して、従来のタフティン
グプロセスよりも高められたまたはより密なスティッチ速度で動作される。通常、
ヤーン配置システムによって走らせられる動作または有効スティッチ速度は、プロ
グラムされた模様において走らせられる色の数倍の所望のまたは規定されたスティ
ッチ速度または1インチ(2.54cm)当たりのスティッチの数にほぼ相当し、
20 所望のまたは規定されたスティッチ速度または1インチ(2.54cm)当たりの
スティッチの数は、バッキング材料が給送される速度とタフティングマシンのゲー
ジとに基づく。結果として、針棒が、模様スティッチの形成の間にシフトされると
き、各色が取り出されるか、またはバックロブされ、従って完成された模様がつけ
られた物品では隠されるために、高められた1インチ(2.54cm)当たりのス
25 ティッチの数は、完成された模様がつけられタフティングされた物品の高いタフト
と低いタフトとの間に十分に高められた密度を提供し、模様がつけられタフティン
グされた物品において色の抜けもしくは空隙の露見または他の出現を避ける。 」
(【0011】)
「(摘要)タフティングマシンのためのヤーン色配置システムであって、該タフ
ティングマシンは、ヤーン給送メカニズムによって該タフティングマシンの針に給
5 送される一連の異なる色のヤーンを含む、システム。針が、プログラムされた模様
ステップに従ってシフトされるので、バッキング材料は、高められたスティッチ速
度でタフティングマシンを通して給送される。一連のレベルカットループルーパま
たはフックが、ヤーンのループと係合し、これらを針からつまみ、レベルカットル
ープルーパまたはフックのクリップが選択的に作動させられ、カットパイルタフト
10 を形成し、一方、残りのヤーンのルーパは、バックロブされ、完成した模様がつけ
られタフティングされた物品においては視野から隠され得る。」(【0039】)
オ 発明を実施するための形態
「(発明の詳細な説明)ここで図面を参照するが、幾つかの図を通して同様な数
字は同様な部品を示す。概して、図1~図5に例示されるように、本発明のヤーン
15 色配置システムの一例の実施形態に従って、バッキング材料Bの所望の位置に、様々
な色のヤーンY1~Y4などを配置することを制御し、バッキング材料Bの中で
様々に変化する、または様々な自由に流れる色のついた模様効果を有するタフティ
ングされた物品を形成するために、タフティングマシン10が提供される。4つの
ヤーン/色が示されているが、本発明のヤーン色配置システムにおいては、より多
20 くの、またはより少ない異なる色のヤーン(すなわち、図6A~図6Dに例示され
るように、2色、3色、5色、6色、など)も利用され得ることは、理解される。」
(【0042】)
「図6A~図6Dは、針棒に対する様々なシフトまたはステッピング模様を例示
し、3つ、4つ、5つまたは6つの異なる色のヤーンが模様に利用される場合の、
25 針棒のシフティングを反映している。図6A~図6Dは、既に縫われたタフトを重
ね縫いすることを避けるために、後に続く様々な例のシングルステップセグメント
およびダブルステップセグメントまたはジャンプセグメントを例示する。例えば、
図6Aに示されているように、3つの異なる色のヤーンを利用するステップする模
様を走らせるために、初めのステップまたはシフトが、右へ為され得、この後にダ
ブルゲージシフトまたはジャンプが続き、シングルゲージシフトで終わる。同様に、
5 図6B~図6Dに示されるように、4つ、5つおよび/または6つの色に対して、
シングルゲージまたはダブルゲージのジャンプいずれかの、右への初めのシフトの
後、模様は、既に縫われたタフトを重ね縫いまたは重ねタフティングすることを避
けるために、シングルゲージおよびダブルゲージのジャンプまたはシフトを使用し
て、左へシフトして戻る。さらに、図6A~図6Bにおいては、初めのシフトまた
10 はジャンプは、右へ行くとして示されているが、シフトステップを左へ開始するこ
とも可能である。さらに、針棒がシフトされるとき、バッキング材料も概して、早
められたまたはより密なスティッチ速度でタフティングマシンによって給送され、
より密な模様、または模様の特定のフィールドに対して選択された色のフィルイン
を達成する。」(【0048】)
15 「一部の従来のタフティングシステムにおいては、その速度によって走らせられ
るタフティング模様に対するスティッチ速度は概して、タフティングマシンのゲー
ジと一致し、タフティングマシンのゲージは概して、縦糸方向の1インチ(2.5
4cm)当たりの針数に相当し(すなわち、8分の1ゲージに対しては、1/8'
'間隔で1インチ(2.54cm)当たり8針、10分の1ゲージに対しては1/
20 10''間隔で1インチ(2.54cm)当たり10針、など)、縦糸方向の1イ
ンチ(2.54cm)当たりの針数は概して、タフト列が形成される横糸方向の1
インチ(2.54cm)当たりのスティッチの数に等しい。従って、例えば10分
の1ゲージタフティングマシンに対しては、所望されるまたは規定されるスティッ
チ速度は通常、1インチ(2.54cm)当たり約10スティッチであり、一方、
25 8分の1ゲージマシンに対しては、スティッチ速度は、1インチ(2.54cm)
当たり約8スティッチである。本発明においては、ヤーン色配置システムによって
運転される動作または有効スティッチ速度は、通常所望されるスティッチ速度より
もかなり高いか、または速く、従って、バッキング材料に形成されるタフトの、高
められた、または増加した密度を提供する。通常、本発明のヤーン色配置システム
では、この高められた有効スティッチ速度は、模様において走らせられる異なる色
5 の数倍の所望のスティッチ速度(概して、タフティングマシンのゲージに基づく)
に相当する。」(【0049】)
「従って、本発明のヤーン色配置システムに関しては、1インチ(2.54cm)
当たりほぼ10スティッチの所望のスティッチ速度を使用して概して運転される1
0分の1ゲージマシンに対して、模様の中に3色ある場合、ヤーン色配置システム
10 によって運転される動作または有効スティッチ速度は、色の数(3)倍の所望のス
ティッチ速度(1インチ(2.54cm)当たり10スティッチ)によって決定さ
れ、有効スティッチ速度は、1インチ(2.54cm)当たりほぼ30スティッチ
である。4色に対して、4色模様に対する動作または有効スティッチ速度は、1イ
ンチ(2.54cm)当たりほぼ40スティッチであり得、5色に対しては、1イ
15 ンチ(2.54cm)あたり50スティッチであり得る。同様に、8分の1ゲージ
マシンに対して、所望のスティッチ速度が1インチ(2.54cm)当たり8ステ
ィッチであり、2色~6色が走らせられる場合、有効スティッチ速度は、走らせら
れる色の数に依存して、1インチ(2.54cm)当たり約16スティッチ~約4
8スティッチの間であり得る。一方、16分の1ゲージマシンに対して、2色~6
20 色である場合、有効スティッチ速度は、1インチ(2.54cm)当たり約52ス
ティッチ~約96スティッチの間であり得る。」(【0050】)
「図1~図4に示されるように、バッキング材料Bは、マシン制御システム25
に連結され、これによって制御される駆動モータ51の動作によって、バッキング
ロール29(図1および図2)によって、矢印33の方向にフィードまたは経路に
25 沿って、タフティングゾーンを通して給送される。バッキング材料Bは、針36に
よって係合され、該針は、ヤーンY1~Y4を挿入して、本発明のヤーン色配置シ
ステムによって形成される模様に対して有効スティッチ速度(すなわち、パターン
の色の数によって乗じられる、例えば1インチ(2.54cm)当たりの8、10、
16その他スティッチのような所望のスティッチ速度)でバッキング材料の中にヤ
ーンのタフト38を形成する。針がバッキング材料を貫通するとき、ルーパ/フッ
5 クアセンブリ32によって係合され、それによってヤーンのループを形成し、該ヤ
ーンのループは、カット-パイルタフトを形成するためにカットされ得るか、また
は各模様ステップに従ってループとして残され得る。解放されたヤーンのループは、
そのステップで縫われている模様の色フィールドに示されず、視覚的に存在しない
さらなる色つきヤーンのループの高さを変えるために必要に応じて、模様ヤーン給
10 送アタッチメント27/28の動作によって、バックロブされ得るか、または引い
て低くするか、もしくはバッキングから引き抜かれ得る。」(【0053】)
「針が、その往復運動の間に、矢印37'(図2)の方向にバッキング材料から
引込められるとき、模様ヤーン給送アタッチメントまたはヤーン給送メカニズム2
7/28(図1)によるヤーンの給送も、針をシフトして各模様フィールドにおい
15 て選択された位置でヤーンの高いタフトを選択的に形成し、かつヤーンの低いタフ
トを形成すること連携して、ステップ107(図7)で示されるように制御される。
選択されない色(隠される色、従ってそのステップで縫われている模様の特定の色
フィールドにおいて見えない色)のヤーンの給送は、これらのヤーンの各々を供給
するヤーン給送メカニズムによって制御され、これらのヤーンが、バックロブされ
20 るか、もしくは引かれて低くされるか、またはバッキング材料から引抜かれ、それ
によってバッキング材料の裏で「フロート(float)」して、低いタフトを形
成する。さらなる結果として、高いタフト(タフティングされた完成品において見
える色)の数は概して、タフティングマシンに対する所望のスティッチ速度と一致
し得る。すなわち、10分の1ゲージマシンなどに対して、1インチ(2.54c
25 m)当たり10の高いスティッチとなる。シフトプロファイルと連携して、本発明
のヤーン色配置システムによって運転される高められた有効スティッチ速度の運転
は、スティッチまたはタフトのより密なフィールドの提供を助け、ヤーンは、引か
れて低くされるか、またはバックロブされ、従ってバッキング材料に形成された残
りの(高い)カットおよび/またはループパイルタフトによって効果的に隠される。」
(【0062】)
5 「各シフトメカニズムならびにレベルカットループルーパまたはフックおよび/
もしくはカットパイルフックならびにループパイルフックと連携して、唯一マシン
のゲージにのみ基づいたスティッチ速度よりもかなり早められるかまたはより密な
有効または動作スティッチ速度で走らせられるバッキング材料と共に、様々に異な
る色のヤーンの給送を制御するためのヤーン給送模様アタッチメントによるヤーン
10 給送の制御は、従って、本発明のヤーン色配置システムが、より様々に自由に流れ
る模様を生み出すことを可能にし、かつ/または織機で形成された外観を備える模
様が、バッキング材料に形成されることを可能にする。かかる模様はさらに通常、
結果として生じる模様がつけられタフティングされた物品の各直線状の/長手方向
のタフト列に、実質的に同一のまたは同等の数の高いタフトを形成し、所望のまた
15 は充分な模様密度を提供し得、各色は、バッキング材料に沿って、所望の位置また
は点に配置され得る。図7のステップ108に示されるように、ヤーン色配置シス
テムの動作は継続し、模様が完成するまで、模様の各スティッチに対して反復され
る。」(【0063】)
(2) 本件明細書3
20 ア 技術分野
「(発明の分野)本発明は、概して、タフティング機に関し、具体的には、タフ
ト状物品内に自由に流れるパターンを形成することを可能にするように、タフティ
ング機を通過する裏打ち材料内の種々の異なる色、パイル、および/または高さの
糸の所望の配置を含む、個々の糸またはステッチの供給および配置を制御するため
25 のシステムに関する。」(【0002】)
イ 背景技術
「カーペットおよび他の同様の物品のタフティングでは、消費者の好みの変化お
よび市場での高まる競争に遅れないようにするために、新鮮で、より人目をひくパ
ターンの開発がかなり重視されている。具体的には、長年にわたり、織機で形成さ
れた織物の見た目と感触を複製するカーペットの形成が重視されてきた。例えば、
5 特許文献1等に開示される、タフティング機用のコンピュータ制御の導入によって、
タフト状パターンカーペットをデザインおよび生産する際のより高い正確さおよび
多様性、ならびに向上された生産速度が可能となった。加えて、デザイナが、より
幅広い種類のパターンをデザインおよび作成することを補助するために、コンピュ
ータ化されたデザインセンターがつくられ、糸の供給、パイル高さ等の要件が、デ
10 ザインセンターのコンピュータによって自動的に計算および生成される。 【0003】
(
」 )
「加えて、より流れるように動くパターンの作成を試みるために、様々な異なる
色の糸およびテクスチャ効果を裏打ち材料に挿入することができるタフティング機
を開発する試みがなされている。例えば、選択された場所での裏打ち材料への挿入
のために、異なる色の糸の端部が針に個々に供給される単一の中空針を運ぶ移動ヘ
15 ッドを含む、特殊な機械が開発された。比較的従来のタフティング機構成の中に複
数の針を有し、また、裏打ち材料を前方および側方に移動させて裏打ち材料の中に
複数の色を配置する、他の機械も開発された。しかしながら、個々に糸を配置する
ためのそのような特殊なタフティング機の場合、糸が単一の針によって裏打ち材料
の中に個々に配置されるので、または裏打ちの供給方向が変化するので、そのよう
20 な機械の生産速度が概して制限される、という問題が存在する。結果として、その
ような専用の色パターン化機は、一般的に、限定または低減されたパターン化ラグ
またはカーペットの形成等の特別な用途に限定される。」(【0004】)
「したがって、従来技術におけるこれらの、ならびに他の関連する、および無関
連の問題に対処する、システムおよび方法に対する必要性が存在することが分かる。」
25 (【0005】)
ウ 課題を解決するための手段
「簡潔に説明すると、本発明は、概して、タフティング機用の糸ステッチまたは
色分布制御システムに関し、この機械は、編みまたは織り形成された外観を有する
実質的に自由に流れる多色のパターンおよび/またはカーペットの形成を含む、
様々なパターン効果および/または色を有するカーペット等の、パターン化され、
5 タフト状物品の形成を可能にするように、高められた選択性を有する糸またはステ
ッチの配置および密度を制御する際に使用される。本発明のステッチ分布制御シス
テムを有するタフティング機は、一般的に、タフティング機の操作要素を制御する
ための、ならびに所望のスキャンおよび/またはデザインしたパターンを形成する
ための、本発明によるステッチ分布制御システムを操作するための、タフティング
10 機コントローラを含む。パターンは、異なるパイル高さ、種々のタフト列の中のカ
ットおよび/またはループパイルタフト、および他のテクスチャ効果を含む、所望
のパターン効果、ならびに、裏打ちを横断して選択された場所で見ることができ、
したがって、平方インチ当たりの保持された色/ステッチの所望の密度を提供する
ように、種々の色の糸の配置を含むことができる。例えば、パターンは、種々のパ
15 イル高さのタフトおよび他の彫刻またはパターンテクスチャ効果を含む、全てのル
ープパイルタフト、全てのカットパイルタフト、および/またはカットとループパ
イルタフトとの組み合わせを含有することができる。」(【0007】)
「タフティング機はさらに、それに沿って離間している一連の針を有する1つ以
上の針棒を含み、タフティング区画が、針の往復運動の経路に沿って画定される。
20 裏打ち材料は、その中での糸のタフティングのために、プログラムされた速度で、
または所定の供給速度でタフティング区画を通して供給される。その結果、裏打ち
材料がタフティング区画を通して供給されるとき、その中で糸のループを形成する
ように、針が裏打ち材料の内外に往復運動させられる。」(【0008】)
「本発明によるステッチ分布制御システムは、タフティング機のタフティング操
25 作を制御するようにだけ操作するのではなく、さらに、ステッチ分布制御システム
が、入力パターン命令を受信することに加えて、パイル高さ、ループおよび/また
はカットパイルタフト配置、図面、写真等のテクスチャ情報を伴う完成カーペット
デザインを含む、スキャンおよび/またはデザインされたパターン画像を読み込ん
で認識することを可能にするように、画像認識ソフトウェアを含むことができる。
ステッチ分布制御システムは、スキャンおよび/またはデザインされたパターンの
5 糸/ステッチに対するパターン画素またはタフト/ステッチ場所のマップまたは領
域を含む、パターンプログラムファイルを自動的に発生させることができ、ならび
に、所望のスキャンおよび/またはデザインされたパターンで形成するために、糸
の供給、裏打ちの供給、およびタフティング機の他の操作要素を制御するためのス
テップまたはパラメータを計算することができる。ステッチ分布制御システムはさ
10 らに、クリールの使用を最適化するために、パターン色を識別し、そして針棒の色
のスレッドアップに基づいて、タフティング機用のクリールの中の対応する位置に
相関させることができ、加えて、カム/移行プロファイルを自動的に計算(または、
必要に応じて、予めプログラムされたカムプロファイルを選択)し、また、完成タ
フト状物品の中に所望の織物ステッチレートまたはパターン密度の外観を達成する
15 ようにパターンが実行される、効果的または有効プロセスステッチレートを計算す
る。」(【0009】)
「移行機構は、タフティング区画を横断して針棒を横方向に移行させるために提
供することができ、タフティング機が2つ以上の移行針棒を含む場合には、一般的
に、複数の移行機構が利用される。移行機構は、1つ以上のカム、サーボモータ制
20 御のシフター、またはCard-Monroe Corp.によって製造されてい
るような「SmartStep」移行機構等の他のシフターを含むことができ、ス
キャンおよび/またはデザインされたパターン移行ステップに従って針棒を移行さ
せる。代替として、移行機構は、裏打ち材料または、針棒の移行の有無に関わらず、
裏打ち材料を移行させるためのジュートシフターも含むことができる。スキャンお
25 よび/またはデザインされたパターンに対する移行ステップは、タフティング機シ
ステムコントローラの中への所望のパターン外観のスキャンおよび/またはデザイ
ンされたパターンの入力および読み取りの際に、ステッチ分布制御システムによっ
てパターンに対して計算または選択される、カムまたは移行プロファイルに従って
達成される。カムまたは移行プロファイルはさらに、形成されているスキャンおよ
び/またはデザインされたパターンで使用される色の数に基づいて変化させること
5 ができる。例えば、3色、4色、5色、またはそれ以上の色の場合、3色、4色、
5色、またはそれ以上の色のカムまたはカム/移行プロファイルを、各針棒を移行
させるためにデザインおよび/または利用することができる。」(【0010】)
「タフティング機はさらに、概して、それらのそれぞれの針への糸の供給を制御
するための、少なくとも1つのパターン糸供給機構または装置を含む。少なくとも
10 1つのパターン糸供給制御機構または装置は、所望のカーペットパターン外観のス
キャンおよび/またはデザインされた画像に基づいて、ステッチ分布制御システム
によって作成または策定されたパターン命令に従って、それらの選択された針への
糸の供給を選択的に制御するように操作される。その結果、タフト状物品の表側ま
たは表面上に示されるべき糸は、概して、所望の高さのカットまたはループタフト
15 を形成するのに十分な量が供給され、一方で、タフト状領域の中には示されるべき
ではない、出現しない糸は、低く引っ張られる、もしくはバックロブされるか、ま
たは裏打ち材料から除去される。各画素またはステッチ場所に対しては、概して、
一連の糸が提示され、そのような画素においてはいかなる糸も外観に対して選択さ
れないか、またはステッチ場所が引き戻される、および/または除去される。した
20 がって、一般的に、特定のステッチ場所または画素に配置されるべき所望の、また
は選択された糸/色のみ、そのようなステッチ場所または画素に保持され、一方で、
残りの糸/色は、裏打ち材料の表面に浮き上がらせるように裏打ちから糸を引き出
すことを含み、その時点で縫われているパターン領域の中に埋め込まれ、または隠
される。パターン糸供給パターン機構は、例えば、Card-Monroe Co
25 rp.によって製造されているような、Yarntronics(商標)、Inf
inity(商標)、またはInfinity IIE(商標)糸供給装置等の、
種々のロール、スクロール、サーボスクロール、シングルエンド、またはダブルエ
ンドの糸供給装置を含むことができる。他のタイプの糸送り制御機構も使用するこ
とができる。ステッチ分布制御システムはさらに、一般的に、ステッチ分布システ
ムの中に入力されるスキャンおよび/またはデザインされたパターン画像に基づい
5 て、それによって策定されたパターン命令に従って、移行機構および糸供給機構の
操作を制御する。」(【0011】)
「加えて、糸のループをその上に選択的に保持するための、カットパイルフック、
ループパイルルーパ、レベルカットルーパもしくはフック、および/またはカット
/ループフックの本体に取り付けられる付勢されたクリップをそれぞれが有するカ
10 ット/ループフック等の、ゲージ部品を含むルーパまたはフック組立体は、概して、
糸をそこから摘み取る、および/または引っ張るために、針が裏打ち材料を貫通す
る時に針を係合するような位置の、タフティング領域の下に提供される。一実施形
態では、一連のレベルカットループルーパは、それによって形成される糸のループ
を、引き戻し、またはバックロブし、したがって、スキャンおよび/またはデザイ
15 ンされたパターンでの各ステッチの形成時に隠して、ループパイルタフトとして維
持するか、またはカットパイルタフトを形成するためにレベルカットループルーパ
上に保持すべきか、に従って、各ステッチに対して選択的に作動または始動される
よう、形成されているパターンステッチおよびその結果の移行プロファイルステッ
プに基づいて、各ステッチ中に、ステッチ分布制御システムによって個々に制御す
20 ることができる。他の実施形態では、他の構成、および/またはループパイルルー
パ、パイルフック、カット/ループフック、および/またはレベルカットループル
ーパの組み合わせも使用することができる。」(【0012】)
「本発明の原理によるステッチ分布制御システムはさらに、概して、従来のタフ
ティングプロセスよりも増大した、もしくは高密度な、効果的または有効プロセス
25 ステッチレートで操作される。一般的に、ステッチ分布制御システムによって実行
される有効または効果的プロセスステッチレートは、所望または所定の織物ステッ
チレート、1インチ当たりの保持ステッチ数、または1インチ当たり8ステッチ、
1インチ当たり10ステッチ等の、タフト状物品の表側に現れることが望まれるパ
ターン密度を乗じた、プログラムされたパターンで実行されている、所望のパイル
の種類および/または高さの色またはタフトの数にほぼ同等になる。その結果、2
5 -4以上の色を伴うパターンの場合、実行される効果的ステッチレートは現れない
か、または選択されていない糸を隠しながら、裏打ちの表面に見せるべきタフトに
ついて、1インチ当たりの保持される所望の数のステッチの外観を達成するように、
1/8ゲージ機の場合は、1インチ当たり約16、24、32、またはそれ以上の
ステッチ、1/10ゲージ機の場合は、1インチ当たり20、30、40、または
10 それ以上のステッチ等とすることができる。したがって、完成タフト状物品は、例
えば、所望の色領域の中に1インチ当たり8-10ステッチの外観を有し得るが、
実際には、スキャンおよび/またはデザインされたパターンの中の色の数、および
裏打ち材料が供給される1インチ当たりのステッチの所望または所定の数に基づい
て、16、24、40、またはそれ以上のステッチが縫われ得る。さらなる結果と
15 して、針棒がパターンステッチの形成中に移行させられるとき、取り出され、また
はバックロブされ、したがって、表面の糸またはタフトによって完成タフト状物品
の中に隠される各色またはタフトについて、増大された1インチ当たりのステッチ
の数は、色の欠落または隙間が完成パターン化物品に示されるか、あるいは現れる
ことを回避するために十分高められた密度を完成パターン化タフト状物品に提供す
20 る。…」(【0013】)
エ 発明を実施するための形態
「…ステッチ分布制御システムはさらに、概して、パターン領域またはマッピング
を作成することができ、撮像されたパターンを形成するように、種々の色の糸およ
び/またはカット/ループパイルタフトが選択的に配置されるスペースまたは場所
25 を識別する、一連のパターン画素またはタフト/ステッチ配置場所を含む。完成パ
ターン化タフト状物品の表側に現れる所望のパターン密度、すなわち1インチ当た
りのステッチの所望の数もまた解析され、スキャンおよび/またはデザインされた
パターンの所望の織物ステッチレートの外観を達成するように計算されたパターン
に対する効果的または有効なプロセスステッチレートとなる。」(【0019】)
「本発明のステッチ分布制御システムはさらに、種々のカムまたは移行プロファ
5 イルのプログラミングを含むことができるか、または、スキャンされた、もしくは
入力されてデザインされたパターン画像に基づいて、提案されるカムまたは移行プ
ロファイルを計算することができる。加えて、操作者は、パターンが、2色、3色、
4色、5色、もしくはそれ以上の色を有するか、または所望のパターンの数を繰り
返すのかを示す等によって、所望のカムプロファイルを選択すること、または計算
10 されたカムプロファイルを修正することができ、またはシステムが、計算されたカ
ムプロファイルで自動的に進行できるようにすることができる。操作者はまた、必
要に応じて手動オーバーライド制御/プログラミングを介して、色分布制御システ
ムによって作成されたクリールの割り当て、または糸の色マッピングを、手動で計
算、入力、および/または調整もしくは変更することができる。効果的に、一実施
15 形態では、操作者は単純に、デザインされたパターン画像、写真、図面等を、タフ
ティング機で直接的にスキャンあるいは入力することができ、本発明のステッチ分
布制御システムは、糸の供給、所望のパターン密度を達成する効果的ステッチレー
ト、ならびにスキャンおよび/またはデザインされたパターン画像に合致する糸の
配色を含む、パターンステップ/パラメータを自動的に読み取り、認識、および計
20 算することができ、その後に、このスキャンおよび/またはデザインされたパター
ンを形成するためにタフティング機の操作を制御する。」(【0020】)
「一実施形態では、図6A-6Dは、3つ、4つ、5つ、または6つの異なる色
の糸がパターンの中で利用される場合の針棒の移行を反映する、針棒に対する種々
の移行またはステッピングパターンを示し、また、以前に縫われたタフトの重ね縫
25 いを回避するための、その後に続くシングルおよびダブルステップ、またはジャン
プセグメントを示す。例えば、図6Aに示されるように、3つの異なる色の糸を利
用したステッピングパターンを実行する場合、最初のステップまたは移行は右方に
行われ、次いで、ダブルゲージ移行またはジャンプがその後に続き、シングルゲー
ジ移行で終了する。同様に、図6B-6Dに示される、4色、5色、および/また
は6色の場合、シングルまたはダブルのいずれかのゲージジャンプの右方への最初
5 の移行の後、パターンは、次いで、以前に縫われたタフトの重ね縫いまたはタフト
の重なりを回避するために、シングルおよびダブルゲージジャンプを使用して、左
方に移行させて戻す。加えて、最初の移行またはジャンプは、図6A-6Bでは右
方に進むように示されているが、移行ステップを左方に開始することも可能である。
さらに、針棒が移行されるとき、概して、裏材料も、タフティング機を通して増大
10 された、またはより高密度なステッチレートで供給され、パターンの特定の領域に
対する選択された色のより高密度なパターンまたはフィルインを達成する。さらな
る代替として、ダブルまたはより大きいジャンプは、糸の提示を、いかなる糸も挿
入に対して選択されていない場所等の、選択されたステッチ場所までスキップまた
はバイパスするために使用されることができる。」(【0024】)
15 「さらに、それによって実行されるタフティングパターンの織物ステッチレート
が、概して、タフティング機のゲージに合致している、すなわち、1/10タフテ
ィング機の場合、織物ステッチレートが、一般的に、1インチ当たりほぼ10ステ
ッチであり、一方で、1/8ゲージの機械の場合、織物ステッチレートが、1イン
チ当たりほぼ8ステッチである、いくつかの従来のタフティングシステムとは対照
20 的に、本発明では、ステッチ分布制御システムによって実行される有効または効果
的プロセスステッチレートは、そのような標準的な従来の所望の織物ステッチレー
トより実質的に高くなる。本発明によるステッチ分布制御システムによって、この
高められた有効または効果的プロセスステッチレートは、概して、完成タフト状物
品に対する所望の織物ステッチレートまたは密度にほぼ同等になり、すなわち、物
25 品は、その表側に1インチ当たり8、10、12ステッチ等の外観を有することに
なり、これには、パターンの中で走らせている異なる色の数が乗じられる。したが
って、本発明によるステッチ分布制御システムによって、タフト状物品の中に現れ
る、1インチ当たりほぼ10ステッチの所望の織物ステッチレートを達成するよう
に概して実行される1/10ゲージ機械について、例えば、パターンの中に3つの
色が存在する場合、ステッチ分布制御システムによって計算および実行される有効
5 または効果的プロセスステッチレートは、所望のステッチレート(1インチ当たり
10ステッチ)に色の数(3)を乗じることによって決定され、1インチ当たりほ
ぼ30ステッチの有効または効果的プロセスステッチとなり、一方で、4色の場合、
4色パターンの有効または効果的プロセスステッチレートは、1インチ当たりほぼ
40ステッチとなり、5色の場合は、1インチ当たり50ステッチ等となる。 」
10 (【0027】)
「図1-5Cに示されるように、裏打ち材料Bは、ステッチ分布制御システムに
連結され、かつそれによって制御される駆動モータ51(図3)の操作によって、
供給方向に沿ってタフティング領域を通して、または裏打ちロール29(図1、2
A、および3)によって矢印33で示される経路を通して供給される。裏打ち材料
15 Bは、概して、本発明のステッチ分布制御システムによって形成されているパター
ンに対する、有効または効果的プロセスステッチレート(すなわち、パターンの色
の数を乗じた所望の速度)で供給され、糸Y1-Y4(図1および3)を(タフト
38を形成するように)裏打ち材料の中に挿入する針36によって係合される。裏
打ち材料Bの供給は、ステッチ分布制御システムによって様々な方法で制御するこ
20 とができる。例えば、タフティング機裏打ちロール29は、針棒のステッチまたは
サイクルの所定の数に対して裏打ち材料を適所に保持するように制御することがで
き、またはステッチの所望の数当たり漸増的に裏打ち材料を移動させること、すな
わち、4つの色を伴い、1インチ当たり40ステッチの効果的ステッチレートの場
合、1ステッチ挿入して1インチの1/40移動させる、または4ステッチ走らせ
25 て1インチの1/10移動させることができる。さらに、裏打ち材料の漸増移動は、
有効または効果的プロセスステッチレートの計算した漸増移動に実質的に合致する、
サイクルにわたる全てのステッチの平均移動によりステッチ単位で変動させる、ま
たは操作することができる。例えば、図7Bに示されるような4色サイクルの場合、
1つのステッチを1インチの1/80で、次の2つを1インチの1/40で、そし
て、4つ目を1インチの1/20で走らせることができ、4ステッチサイクル全体
5 にわたる裏打ちの平均漸増移動は、所望のステッチ/色配置を達成するために、必
要に応じて、平均で1インチの1/40となる。」(【0031】)
「101で示されるように、ステッチ分布制御システムはさらに、パターンに対
する所望の織物ステッチレートまたは密度を、すなわち、1/10ゲージ機械の場
合は1インチ当たり10ステッチ、1/8ゲージ機械の場合は1インチ当たり8ス
10 テッチ等といった機械のゲージに基づいて、自動的に計算または決定することがで
き、および/または完成パターンの外観に対する計算された所望の織物ステッチレ
ートまたは密度(すなわち、完成タフト状物品の表側に示される織物の1平方イン
チ当たり8-12ステッチ) に関して、操作者から入力を受信することができる。
図10Aに102で示されるように、タフトされる物品に対するパターンおよび所
15 望の織物ステッチレートが、システムコントローラによって入力または決定/選択
されると、ステッチ分布制御システムはまた、図10Bに103で示されるように、
糸供給制御ステップ等の付加的なパターンパラメータを決定するために、スキャン
および/またはデザインされたパターン画像の色、および/または色の変化、ルー
プまたはカットパイルタフトが形成されているか否か、パイル高さの差等といった
20 テクスチャ特徴を読み取って認識することができる。操作者は加えて、スキャンお
よび/またはデザインされたパターンで実行される、色の数および/またはパイル
高さの差等といった他のパターンもしくはテクスチャ効果に関して問い合わせるこ
とができる。」(【0044】)
「…上述のように、この効果的または有効プロセスステッチレートは、一般的に、
25 従来の織物ステッチレートよりも実質的に高く、これは概して、機械ゲージに基づ
くが、操作者は、所望の密度の織物重量を得るために、必要に応じてそれを調整す
ることができる。本発明によって、例えば、操作者が、1インチ当たり所望の数、
すなわち8、10、12ステッチ等の外観を有するパターンを望む場合、タフト状
物品に対する所望の/従来の織物ステッチレートまたは密度は、外観の中に十分増
大された密度を提供するために、および/または保持する、もしくは現されるべき
5 ではない糸を隠すようにパターン領域の中に形成されているタフトに対する1平方
インチ当たりの保持されたステッチを提供するために、16、24、30、40、
60、またはそれ以上の増大された有効または効果的プロセスステッチレートを作
成するよう、タフトされている色の数、例えば2色、3色、4色、5色等にほぼ同
等の数だけ増大させることができる。」(【0047】)
10 「各移行機構およびレベルカットループルーパまたはフック、カットパイルフッ
ク、ループパイルルーパ、および/ またはカット/ループフックと連動して、およ
び単に機械のゲージに基づいて、織物ステッチレートよりも実質的に増大した、ま
たは高密度である、有効または効果的プロセスステッチレートで走らせている裏打
ち材料と連動して、種々の異なる色の糸を針に供給する糸供給パターン装置による
15 糸の供給の制御は、本発明のステッチ分布制御システムが、より多くの様々な自由
に流れるパターンおよび/または裏打ち材料の中に形成される、織機で形成された
外観を有するパターンを提供することを可能にする。…」(【0055】)
2 本件発明の技術的範囲への属否(争点1)について
(1) 被告製品の構成
20 被告製品が、別紙「被告製品の構成」の「被告製品の構成」欄記載のb~e、g
及びhの構成を有し、本件発明1に係る構成要件1B~1E、1G及び1Hを、本
件発明2に係る構成要件2B~2E及び2Iを、本件発明3に係る構成要件3B~
3D、3F、3F1及び3Gを充足することは当事者間に争いがない。争いのある、
構成要件1A、1F、1G1~1G3、2A、2F~2H、3A、3E及び3F2
25 の充足性につき検討する。
(2) 構成要件1A、2A及び3Aの充足性
ア 構成要件1Aについて
(ア) 被告製品において、「異なる色のヤーンを内部に含む」構成を有するかが争
われている。
構成要件1Aは、「異なる色のヤーンを内部に含む、模様を有するタフティング
5 された物品を形成するためのタフティングマシンであって」と規定しており、「異
なる色のヤーンを内部に含む」は、「タフティングされた物品」を修飾すると解す
るのが自然である。
また、本件明細書1には、「本発明は概して、…タフティングマシンを通るバッ
キング材料内に様々な色のヤーンの配置を給送することを制御し、タフティングさ
10 れた物品内に自由に流れる模様を形成することを可能にするためのシステムに関す
る。」(【0002】)、「バッキング材料Bの所望の位置に、様々な色のヤーンY1
~Y4などを配置することを制御し、バッキング材料Bの中で様々に変化する、ま
たは様々な自由に流れる色のついた模様効果を有するタフティングされた物品を形
成するために、タフティングマシン10が提供される。」(【0042】)との記載が
15 あり、【図6】は、異なる色のヤーンがタフティングされた物品を形成する際の模
様を図示している。これらによれば、本件発明1は、概要、バッキング材料の所望
の位置に様々な色のヤーンを配置することを制御する発明であると認められる。
以上によれば、「異なる色のヤーンを内部に含む」とは、タフティングされた物
品が異なる色のヤーンを含むことを特定するものと認められる。
20 そうであるところ、被告製品が多色のタフティングされた物品を形成することが
可能なタフティングマシンであることは当事者間に争いがないから、被告製品は、
「異なる色のヤーンを内部に含む」構成を有するものと認められる。
(イ) これに対し、被告は、「異なる色のヤーン」を含むのはタフティングマシン
の「内部」であるとの解釈を前提に、被告が出荷する段階において、被告製品はヤ
25 ーンを備えていないこと、また、仮に、「異なる色のヤーンを内部に含む」対象が
「タフト状物品の内部」と解釈したとしても、被告製品にセットする複数のヤーン
について、操作者が単色か複色かを任意に構成することができることから、複数の
色を前提とする構成要件1Aを充足しない旨を主張する。
しかし、「異なる色のヤーンを内部に含む」のは「タフティングされた物品」で
あって「タフティングマシン」ではないことは前記(ア)のとおりである。また、被告
5 製品が単色のタフティングされた物品を形成することが可能であったとしても、複
色のタフティングされた物品を形成することができる以上、構成要件1Aの充足性
に影響を与えるものではない。被告の前記主張は採用することができない。
(ウ) したがって、被告製品は構成要件1Aを充足する。
イ 構成要件2A及び3Aについて
10 構成要件2Aの「異なる色のヤーンを含む…タフティングされた物品」及び3A
の「異なる糸を含むパターン化タフト状物品」の文言も、構成要件1Aと同様に、
タフティングされた物品が異なる色のヤーンを含むことを特定する又はそのような
ことを含むものであると認められる。
したがって、被告製品は、構成要件2A及び3Aを充足する。
15 (3) 構成要件1F、2F及び3Eの充足性
ア 構成要件1Fについて
(ア) 被告製品において、LOOPERがNEEDLEと「係合する位置」にある
かが争われている。
構成要件1Fは、「該一連のゲージ部品は、該タフティングゾーンの下に取り付
20 けられ、該針が該バッキング材料の中に往復して該バッキング材料にヤーンのタフ
トを形成するとき、該少なくとも1つの針棒の該針と係合する位置にある」と規定
しており、構成要件1Fは、ゲージ部品が、針の往復運動中に、針と係合する位置
にあることを特定している。
「係合」の字義は、「クラッチの作動によって、トルクの伝達があること」(J
25 IS用語大辞典第5版)や「係わりあうこと」(特許技術用語集第3版)であり、
必ずしも物理的に接触することに限定されるものではない。
また、本件明細書1には、「ルーパまたはフックアセンブリは概して、タフティ
ングゾーンの下に提供され、針がバッキング材料を貫通するとき針と係合し、それ
によって針からヤーンのループをつまみかつ/またはこれらを引くように適合され
る位置にある。」(【0010】)、「一連のレベルカットループルーパまたはフック
5 が、ヤーンのループと係合し、これらを針からつまみ、レベルカットループルーパ
またはフックのクリップが選択的に作動させられ、カットパイルタフトを形成し」
(【0039】)、「針がバッキング材料を貫通するとき、ルーパ/フックアセンブリ
32によって係合され、それによってヤーンのループを形成し」(【0053】)との
記載がある。これらによれば、ルーパ又はフックアセンブリが針と係合する位置に
10 あるのは、針がバッキング材料を貫通するときに形成されたヤーンのループをつま
み(受け取り)、ヤーンのループを引くことができるようにするためであると解さ
れる。
以上によれば、「ゲージ部品は…針と係合する位置にある」とは、ルーパ又はフ
ックアセンブリ等のゲージ部品と針が必ずしも物理的に接触する位置にあることを
15 指すものではなく、針に形成されたヤーンのループを、ルーパ等に受け取らせるこ
とが可能な程度に、相互に近接した位置にあることを特定するものであると認めら
れる。
そうであるところ、被告製品のLOOPERは、針に形成されたヤーンのループ
に対応する位置に設けられていることは当事者間に争いがないから、被告製品のL
20 OOPERは、針と係合する位置にあると認められる。
(イ) これに対し、被告は、被告製品において、一連なりのLOOPERが係合す
るのは糸であって、針とは係合しない旨を主張するが、前記(ア)のとおり、構成要件
1Fは、ゲージ部品が針と物理的に接触することを要求するものではない。被告の
前記主張は採用することができない。
25 (ウ) したがって、被告製品は構成要件1Fを充足する。
イ 構成要件2F及び3Eについて
構成要件2F及び3Eの「係合する位置」の文言についても、構成要件1Fと同
様に、ゲージ部品は、針に形成されたヤーンのループを、ルーパ等に受け取らせる
ことが可能な程度に、相互に近接した位置にあることを特定するものであると認め
られる。
5 したがって、被告製品は、構成要件2F及び3Eを充足する。
(4) 構成要件1G1及び2Gの充足性
ア 構成要件1G1について
(ア) 被告製品において、「針棒シフターと協働して…選択された高さのヤーンの
タフトを形成」する構成を有するかが争われている。
10 構成要件1G1は、「該制御システムは…針棒シフターと協働して…ヤーンを該
針に給送することを制御することによって、選択された高さのヤーンのタフトを形
成し、」と規定しており、制御システムが、針棒シフターと協働して、ヤーンの給
送速度を制御して、選択された高さのヤーンを形成することを特定している。そし
て、構成要件1Eは、「針棒を該タフティングゾーンを横切って横方向にシフトす
15 るための少なくとも1つの針棒シフター」と規定しており、針棒シフターは、針棒
を横方向に移動させる機構であることを特定している。
また、本件明細書1には、「ヤーン色配置システムはさらに概して、タフティン
グされる物品に対してプログラムされた模様のシフトプロファイルと連係して、ヤ
ーンをそれぞれの針に給送することを制御するための、模様ヤーン給送メカニズム
20 またはアタッチメントを含む。」(【0009】)、「針が、その往復運動の間に、矢
印37'(図2)の方向にバッキング材料から引込められるとき、模様ヤーン給送
アタッチメントまたはヤーン給送メカニズム27/28(図1)によるヤーンの給
送も、針をシフトして各模様フィールドにおいて選択された位置でヤーンの高いタ
フトを選択的に形成し、かつヤーンの低いタフトを形成すること連携して、ステッ
25 プ107(図7)で示されるように制御される。選択されない色(隠される色、従
ってそのステップで縫われている模様の特定の色フィールドにおいて見えない色)
のヤーンの給送は、これらのヤーンの各々を供給するヤーン給送メカニズムによっ
て制御され、これらのヤーンが、バックロブされるか、もしくは引かれて低くされ
るか、またはバッキング材料から引抜かれ、それによってバッキング材料の裏で「フ
ロート…」して、低いタフトを形成する。」(【0062】)などの記載がある。これ
5 らによれば、ヤーン色配置システムは、プログラムされた模様のシフトプロファイ
ルと連係し、ヤーンの給送を制御して、各模様フィールドにおいて、選択された色
のヤーンが所定の高さのタフトを形成し、選択されない色のヤーンが引き下げられ
るか引き抜かれるものと認められる。
以上によれば、「該システムは…針棒シフターと協働して…選択された高さのヤ
10 ーンのタフトを形成」とは、針棒シフターがヤーン(タフト)の高さを制御するの
ではなく、制御システムが、横方向に動く針棒シフターと連携して、所定の色のヤ
ーンが選択され、選択された色のヤーンを所定の位置で所定の高さのタフトとなる
よう、ヤーンの給送を制御することを特定するものであると認められる。
そうであるところ、被告製品の制御システムは、選択された色のヤーンが所定の
15 位置で所定の高さのタフトを形成し、選択されない色のその他のヤーンは引き抜か
れる又は引き下げられることで模様を形成するように制御する際に、一連のNEE
DLEを備えたNEEDLE BARを横方向にスライドさせる動作、すなわち、
「針棒シフターと協働」することを伴うものであることが認められる(甲5~8(各
枝番号)、乙8、弁論の全趣旨)。
20 (イ) これに対し、被告は、被告製品において、タフトを形成する高さを制御する
のはヤーンの給送速度であって「シフターと協働」するものではない旨を主張する
が、前記(ア)のとおり、構成要件1G1は、シフターがタフトの高さを制御すること
を規定するものではないから、タフトの高さがシフターによって制御されることを
前提とする被告の前記主張は採用することができない。
25 (ウ) したがって、被告製品は、構成要件1G1を充足する。
イ 構成要件2Gについて
構成要件2Gの「該制御システムは…針棒シフターと協働して…該ヤーンの高い
タフトを形成」との文言についても、構成要件2Hの文言と併せると、構成要件1
G1と同様に、制御システムが、横方向に動く針棒シフターと連携して、所定の色
のヤーンが所定の位置で高いタフトとなるよう、ヤーンの給送を制御することを特
5 定するものであると認められる。
したがって、被告製品は、構成要件2Gを充足する。
(5) 構成要件1G2、2H及び3F2の充足性
ア 構成要件1G2について
(ア) 被告製品において、「規定されたスティッチ速度よりも大きな有効スティッ
10 チ速度で…バッキング給送ロールを制御」する構成を有するかが争われている。
構成要件1G2は、「該ヤーンのタフトが、該タフティングされた物品の模様の
外観が該模様の規定されたスティッチ速度で形成されるように該タフティングされ
た物品を形成するのに十分なだけ該タフティングされた物品の模様の該規定された
スティッチ速度よりも大きな有効スティッチ速度で該バッキング材料において形成
15 されるように、該バッキング材料を給送するために該バッキング給送ロールを制御 」
することを規定し、構成要件1G3は、「該規定されたスティッチ速度は、該タフ
ティングマシンのゲージに従って決定される」ことを規定しているが、「規定され
たスティッチ速度」がゲージと一致することに限定される旨の記載はない。これら
によれば、「有効スティッチ速度」でバッキング給送ロールが制御されるものであ
20 り、「有効スティッチ速度」が実際に打ち込まれるスティッチの密度に関する概念
であること、「規定されたスティッチ速度」がタフティングされた模様の外観を形
成する「スティッチ速度」であること、「有効スティッチ速度」は「規定されたス
ティッチ速度」よりも大きいこと、「規定されたスティッチ速度」がタフティング
マシンのゲージに従って決定されることが、それぞれ特定されているといえる。
25 また、本件明細書1には、「通常、ヤーン配置システムによって走らせられる動
作または有効スティッチ速度は、プログラムされた模様において走らせられる色の
数倍の所望のまたは規定されたスティッチ速度または1インチ(2.54cm)当
たりのスティッチの数にほぼ相当し、所望のまたは規定されたスティッチ速度また
は1インチ(2.54cm)当たりのスティッチの数は、バッキング材料が給送さ
れる速度とタフティングマシンのゲージとに基づく。」(【0011】)、「一部の従
5 来のタフティングシステムにおいては、その速度によって走らせられるタフティ ン
グ模様に対するスティッチ速度は概して、タフティングマシンのゲージと一致し、
タフティングマシンのゲージは概して、縦糸方向の1インチ(2.54cm)当た
りの針数に相当し…、縦糸方向の1インチ(2.54cm)当たりの針数は概して、
タフト列が形成される横糸方向の1インチ(2.54cm)当たりのスティッチの
10 数に等しい。…通常、本発明のヤーン色配置システムでは、この高められた有効ス
ティッチ速度は、模様において走らせられる異なる色の数倍の所望のスティッチ速
度(概して、タフティングマシンのゲージに基づく)に相当する。」(【0049】)、
「本発明のヤーン色配置システムに関しては、1インチ(2.54cm) 当たりほ
ぼ10スティッチの所望のスティッチ速度を使用して概して運転される10分の1
15 ゲージマシンに対して、模様の中に3色ある場合、ヤーン色配置システムによって
運転される動作または有効スティッチ速度は、色の数(3)倍の所望のスティッチ
速度(1インチ(2.54cm)当たり10スティッチ)によって決定され、有効
スティッチ速度は、1インチ(2.54cm)当たりほぼ30スティッチである。」
(【0050】)、「さらなる結果として、高いタフト(タフティングされた完成品に
20 おいて見える色)の数は概して、タフティングマシンに対する所望のスティッチ速
度と一致し得る。」(【0062】)などの記載がある。これらによれば、「スティッ
チ速度」は単位長さ(例えば1インチ)当たりのスティッチ数(針数)をいい、「規
定されたスティッチ速度」は、タフティングマシンのゲージに基づき決定され、「有
効スティッチ速度」は、「規定されたスティッチ速度」より大きく、使用されるタ
25 フトの色の数倍となることが認められる。一方、本件明細書1には、「規定された
スティッチ速度」がゲージと一致することに限定される旨の記載はない。
以上の構成要件1G2及び1G3の文言並びに本件明細書1の記載によれば、 有
「
効スティッチ速度」は実際に打ち込まれるタフトの密度であり、「規定されたステ
ィッチ速度」は所望の模様として見える単位長さ当たりのスティッチ数(タフトの
密度)であること、「有効スティッチ速度」は、「規定されたスティッチ速度」よ
5 り大きいことが認められ、構成要件1G2は、タフティングされた物品の外観が所
望の模様となるように、模様として見えるタフトよりも実際に打ち込むタフトが多
くなるようにバッキング給送ロールを制御することを特定するものであると認めら
れる。
そうであるところ、被告製品が、タフティングされた物品の外観が、実際に打ち
10 込むスティッチ数から、引き下げるヤーンのスティッチ数を除いた単位長さ当たり
のスティッチ数、すなわち、規定されたスティッチ速度となるようにバッキング給
送速度を制御していることは当事者間に争いがなく、このような被告製品の制御方
法は、タフティングされた物品の外観が所望の模様となるように、それよりも多く
のタフトを実際に打ち込むものであると認められる。
15 (イ) これに対し、被告は、「規定されたスティッチ速度」はゲージの密度と一致
するカーペットに残すべきタフトのことであり、本件発明1は、作成される模様に
おけるスティッチ方向の単位長さ当たりのスティッチ数がゲージ通りになるように
バッキング給送速度を制御する発明である旨を主張するが、「規定されたスティッ
チ速度」がゲージの密度と一致するカーペットに残すべきタフトのことであるとは
20 解されない。被告の前記主張は採用することができない。
また、被告は、被告製品がゲージに基づくスティッチレートの制御を行っていな
いから、「規定されたスティッチ速度」や「有効スティッチ速度」の構成を有しな
い旨主張するが、後記(6)アのとおり、被告製品は、規定されたスティッチ速度をゲ
ージに従って決定することが可能といえるから、被告の主張は認められない。
25 (ウ) したがって、被告製品は、構成要件1G2を充足する。
イ 構成要件2Hについて
(ア) 構成要件2Hの「有効処理スティッチ速度」及び「所望のスティッチ速度」
はそれぞれ同1G2の「有効スティッチ速度」及び「規定されたスティッチ速度」
と同義であると考えられる(当事者もこの点は争っていない。)。構成要件2Hに
ついても、その文言から、同1G2と同様に、タフティングされた物品の外観が所
5 望の模様となるように、模様として見えるタフトよりも実際に打ち込むタフトが多
くなるようにバッキング給送ロールを制御することを特定するものであると認めら
れる。
(イ) また、構成要件2Hは、「該高められた有効処理スティッチ速度は、該模様
を形成する異なる色のヤーンを乗じた」ものであることを規定し、有効処理スティ
10 ッチ速度は模様の形成に使用されるヤーンの色の数を乗じたものであることを特定
している。そして、前記ア(ア)と同様に、本件明細書2の記載によれば、「有効ステ
ィッチ速度」は、「規定されたスティッチ速度」より大きく、使用されるタフトの
色の数倍となることが認められる。これらによれば、構成要件2Hの「該高められ
た有効処理スティッチ速度は、該模様を形成する異なる色のヤーンの数を乗じた」
15 とは、有効処理スティッチ速度は、模様の形成に使用されるヤーンの色の数を乗じ
た単位長さ当たりスティッチ数であることを特定するものであると認められる。
そうであるところ、証拠(甲12の1、13、乙8)及び弁論の全趣旨によれば、
被告製品は、4色のヤーンを使用した場合において、1インチ当たりに打ち込むス
ティッチ数を16、24、32、40に設定することが可能であることが認められ、
20 有効処理スティッチ速度が使用されるヤーンの色の数を乗じたスティッチ数となっ
ていることが認められる。
(ウ) したがって、被告製品は、構成要件2Hを充足する。
ウ 構成要件3F2
構成要件3F2の「効果的ステッチレート」及び「所望の織物ステッチレート」
25 はそれぞれ同1G2の「有効スティッチ速度」及び「規定されたスティッチ速度」
と同義であると考えられる(当事者もこの点は争っていない。)。構成要件3F2
についても、その文言及び本件明細書3(【0013】【0027】等)の記載から、同1
G2と同様に、タフティングされた物品の外観が所望の模様となるように、模様と
して見えるタフトよりも実際に打ち込むタフトが多くなるようにバッキング給送ロ
ールを制御することを特定するものであると認められる。
5 したがって、被告製品は、構成要件3F2を充足する。
(6) 構成要件1G3の充足性
ア 被告製品において、規定されたスティッチ速度が「ゲージに従って決定され
る」構成を有するかが争われている。
構成要件1G3は、「該規定されたスティッチ速度は、該タフティングマシンの
10 ゲージに従って決定される」と規定しており、規定されたスティッチ速度がゲージ
に従って決定されることを特定している。
また、前記(5)アのとおり、本件明細書1には、規定されたスティッチ速度は、バ
ッキング材料が給送される速度とタフティングマシンのゲージとに基づくこと
(【0011】)、一部の従来のタフティングシステムにおいては、有効スティッチ速
15 度は概してタフティングマシンのゲージと一致し、タフティングマシンのゲージは
縦糸方向の1インチ(2.54cm)当たりの針数に相当し、縦糸方向の1インチ
当たりの針数は概して横糸方向の1インチ当たりのスティッチの数に等しく、通常、
本発明のヤーン色配置システムでは、この高められた有効スティッチ速度は、模様
において走らせられる異なる色の数倍の規定されたスティッチ速度(概して、タフ
20 ティングマシンのゲージに基づく)に相当すること(【0049】)が記載されている。
以上によれば、構成要件1G3は、規定されたスティッチ速度がゲージ(針同士
の間隔)に従って決定されることを特定するものであると認められる。
そうであるところ、証拠(乙8)及び弁論の全趣旨によれば、1/8ゲージ(1
インチ当たり8つの針があるゲージを有するもの)の被告製品において、4色のタ
25 フトを使用して、1インチ当たりに打ち込むスティッチ数が16、24、32、4
0、作成される模様における1インチ当たりのスティッチ数が4、6、8、10と
なるように、すなわち、ゲージに対し、作成される模様の1インチ当たりのスティ
ッチ数が一定数となるように設定することが可能であることが認められ、被告製品
は、規定されたスティッチ速度をゲージに従って決定することが可能であるものと
認められる。
5 イ したがって、被告製品は、構成要件1G3を充足する。
(7) 以上から、被告製品は、構成要件1A、1F、1G1~1G3、2A、2F
~2H、3A、3E及び3F2を充足し、本件発明の技術的範囲に属する。
3 乙4発明に基づく本件発明3の新規性欠如の有無(争点2-2)について
事案に鑑み、争点2-2から検討する。
10 (1) 乙4公報は、発明の名称を「タフト作製機械のための糸送りシステム」とす
る公表特許公報であり、次の記載がある。
ア 技術分野
「(発明の分野)本発明は、一般的には、カーペットのタフト作製機に関し、具
体的には、タフト作製機の針に対する個々の糸送りを制御する糸送りシステムまた
15 はパターン取付具に関する。」(【0002】)
イ 背景技術
「従来、パターン取付具を有するタフト作製機の針に対して、選択された糸のグ
ループの送りを制御するため、パターン取付具、たとえば、ロールまたはスクロー
ル・パターン取付具が使用されてきた。そのようなロールおよび/またはスクロー
20 ル・パターン取付具は一連の糸送りロールを含み、これらの糸送りロールは、選択
された糸のグループを、選択された針へ送る。これらの送りロールの動作を制御す
ることによって、針に対する糸の送りレートが制御され、タフト作製機を通過する
基材に形成される糸のタフトのパイルの高さが変更され、隣接するタフトによって
幾つかの糸のタフトがバックロブおよび隠され、異なったパターン・リピートが基
25 材の幅を横切って形成されることが可能になる。」(【0004】)
ウ 課題を解決するための手段
「(要旨)簡単に述べれば、本発明は、一般的に、タフト作製機へ取り外し可能
に取り付けられ、タフト作製機の各々の針へ一連の糸を個々に送るように構成され
た糸送りシステムまたはパターン糸送り取付具に関する。個々の糸の各々の針への
送りは、糸送りシステムによって独立に制御され、必要または所望に応じて向上し
5 た精度および制御を提供し、プログラムされたカーペット・パターン命令に従って
タフト作製機を通過する基材に糸のタフトを形成する。本発明の糸送りシステムは、
一般的に、タフト作製機へ解放可能に取り付けられ、および/または、除去される
ことのできる標準化された自立型ユニットまたは取付具として構成可能な糸送りユ
ニットを含み、タフト作製機の針の数に依存して必要な複数の糸送りユニットを順
10 次にタフト作製機へ取り付けることを可能にする。」(【0008】)
エ 発明を実施するための最良の形態
「(発明の詳細な説明)ここで図面を詳細に参照すると、同様の数字は幾つかの
図面を通して同様の部品を示す。図1~図6は、本発明の糸送り制御システムまた
は糸送りパターン取付具10を示す。装置10はタフト作製機11(図1および図
15 2)へ解放可能に取り付けられ、個々の糸12がタフト作製機11の針13へ送ら
れるのを制御する。本発明の糸送りシステムは、プログラムまたは所望されるカー
ペット パターンを形成するため、
・ 各々の針への個々の糸の送りを独立に制御して、
タフト作製機を通り針13の下を通過する基材14に、より大きな精度および制御
で糸のタフトが形成されることを可能にする。」(【0015】)
20 「図2で示されるように、タフト作製機11は、一般的に、米国特許第5,97
9,344号で開示されるような従来型タフト作製機を含む。このタフト作製機は、
間隔を空けられた列で取り付けられた針13を保有する少なくとも1つの往復針棒
17を往復駆動する機械駆動または主駆動シャフト(図示されず)が支持されるフ
レーム16、タフト作製機の針13の下に画定されるタフト作製領域を通して、矢
25 印21によって示された送り方向へ基材14を送るスパイクロール19を含む基材
送りロール18、および針13へ糸を直接引っ張って送る引っ張りロール22を有
する。本発明は、横方向でシフト可能なシングルおよびデュアルのシフト可能針棒
17を有する機械、および複数の列形または食い違い針行を取り付けられた単一の
往復針棒を有する機械を含む本質的に任意のタフト作製機11で利用できることが
理解されるであろう。針棒が往復するにつれて、針13は、通過する基材14と係
5 合しない上昇位置と、基材の中に糸のループまたはタフトを形成するため基材を通
して延長され、タフト作製機のベッド板24の下に取り付けられた一連のルーパ(l
ooper)23またはフックと係合する下降係合位置との間を、垂直に移動する。」
(【0016】)
「図2で示されるように、タフト作製機11は、さらに、一般的に、米国特許第
10 5,979,344号で開示されるようなタフト作製機コントローラまたは制御ユ
ニット26を含む。制御ユニット26は、タフト作製機の様々な動作要素、たとえ
ば、針棒の往復、基材の送り、針棒のシフト、ベッド板の位置などをモニタおよび
制御する。機械コントローラ26は、典型的には、制御コンピュータまたはプロセ
ッサ28を格納するキャビネットまたはワークステーション27、およびユーザ・
15 インタフェース29を含む。ユーザ・インタフェース29は、モニタ31および入
力装置32、たとえば、キーボード、マウス、キーパッド、描画タブレット、また
は当業者によって認識される類似の入力装置またはシステムを含むことができる。
さらに、モニタ31は、タフト作製機コントローラへの作業者入力を可能にするタ
ッチ・スクリーン型モニタであってよい。」(【0017】)
20 「タフト作製機コントローラ26は、一般的に、タフト作製機の様々な動作また
は駆動要素からのフィードバックを制御およびモニタし、たとえば、主軸駆動モー
タ34を制御して針の往復を制御するため主軸エンコーダ33からフィードバック
を受け取り、また基材送りロールの駆動モータ37を制御して基材のステッチ・レ
ートまたは送りレートを制御するため基材送りエンコーダ36からのフィードバッ
25 クをモニタする。さらに、針に関してさらなる位置フィードバックを提供するフレ
ーム位置に、針センサまたは近接スイッチ(図示されず)を取り付けることができ
る。さらに、シフト可能針棒タフト作製機については、コントローラ26は、さら
に、一般的に、プログラムされたパターン命令に従って針棒17をシフトするため、
針棒シフト機構38(図2)の動作をモニタおよび制御する。」(【0018】)
「作業者は、デザイン・センターのコンピュータ41で、パターン・データ・フ
5 ァイル、および可能性として、所望のカーペット・パターンのグラフィック表現を
作成することができる。コンピュータ41は、そのようなカーペット・パターンを
タフト作製機でタフトにするために要求される様々なパラメータを計算する。その
ような計算には、糸送りレート、パイル高、基材の送りまたはステッチ・レート、
およびパターンをタフトにするために要求される他のパラメータの計算が含まれる。
10 これらのパターン・データ・ファイルは、典型的には、機械コントローラ、フロッ
ピー(登録商標)ディスクまたは類似の記録メディアへダウンロードまたは転送さ
れるか、デザイン・センターまたはネットワーク・サーバでメモリに記憶されて、
後でタフト作製機コントローラへ転送および/またはダウンロードされることがで
きる。さらに、デザイン・センターに機械が置かれ、および/または機械コントロ
15 ーラがデザイン・センターの機能またはプログラムされた構成要素を有する場合、
必ずしも要求されないが、デザイン・センター40および/または機械コントロー
ラ26が普通のインターネット・プロトコル(即ち、ウェブ・ブラウザ、FTPな
ど)をプログラムされてそれを使用し、モデム、インターネット、またはネットワ
ーク接続を有して、リモート・アクセスおよびトラブル・シューティングを可能に
20 することが好ましい。」(【0020】)
「図1および図2で示されるように、本発明の糸送りシステム10は、一般的に、
実質的に標準化された自立型ユニットまたは取付具として構成可能な糸送りユニッ
トまたは取付具50を含む。この取付具は、1部品ユニットまたは取付具としてタ
フト作製機フレーム16へ解放可能に取り付けられ、そこから取り外すことができ
25 る。したがって、本発明は、タフト作製機の所定数またはセットの針への個々の糸
の送りを制御できる実質的に標準化された糸送りユニットの製作を可能にする。そ
の結果、本発明の糸送り取付具またはシステムが、タフト作製機と一緒に製作され、
次に分解され、運搬され、顧客の工場または現場で再び組み立てられる特注デザイ
ン・ユニットまたはシステムとして構成される代わりに、本発明は標準化された実
質的に均一の糸送りユニットの構成を可能にし、この糸送りユニットは、取り付け
5 られるタフト作製機とは独立に製作され、貯蔵され、出荷されることができる。本
発明の糸送りユニットは、さらに、新しい機械構成の一部分として、または現場で
の改良部品または変換部品として、タフト作製機に取り付けることができる。その
場合、一連の糸送りユニットは、タフト作製機の針の数に依存して、在庫品から選
択および取り除き、タフト作製機へ順次に取り付けることができる。」(【0021】)
10 「図1~図3で示されるように、糸送りユニット50は、さらに、一連の糸送り
装置70を含む。糸送り装置70は、糸送りユニットのハウジング56の中に受け
取られ、取り外し可能に取り付けられる。糸送り装置は、一般的に、個別または単
一端の糸送り制御のため、個々の糸と係合してタフト作製機の関連する針へ送るが、
ある構成では、さらに、針の選択されたセットまたはグループへ複数の糸を送るた
15 め糸送り装置を使用することができる。たとえば、2,000本の針を有する機械
では、各々の糸送りユニットは2つ以上の糸を制御することができ、針へ糸を送る
ため1,000個以下の糸送りユニットを使用することができる。糸送りユニット
は、典型的には、所定数または一連の糸送り装置を設けられ、これらの糸送り装置
は、典型的には、タフト作製機のある複数の針に対応する。たとえば、糸送りユニ
20 ットは、典型的には、取り外し可能に取り付けられる約192個の糸送り装置70
を有するように製作されることができる(もっとも、より大きいか少ない糸送り装
置を有する他の構成も使用することができる)。このようにして、糸送りユニット
は、実質的に標準的な取付具またはユニットとして製作されることができ、必要に
応じて使用される在庫品として製作および貯蔵され、タフト作製機の構成と一緒に
25 本発明の糸送りユニットを特注で製作および組み立てることを必要としない。した
がって、タフト作製機のパターン糸送り取付具が必要とされるとき、本発明に従っ
た一連の糸送りユニットまたは取付具が在庫品から取り除かれて、タフト作製機の
幅を横切って順次に取り付けられる。糸送りユニットの数は、タフト作製機の針の
数、および糸送り装置によって制御される糸の数に依存して選択される。 【0024】
(
」 )
「図2で示されるように、本発明の糸送り制御システム10は、一般的に、シス
5 テム・コントローラ165を含む。システム・コントローラ165はワークステー
ション166(図2で示される)を含むことができる。ワークステーション166
はPC型コンピュータ167を有し、コンピュータ167は、典型的には、モニタ
168およびユーザ入力169、たとえば、キーボード、マウス、描画パッド、キ
ーパッド、または類似の入力機構を有する。…」(【0041】)
10 「…システム・コントローラは、さらに、そのような通信パッケージまたはシス
テムによって、遠隔で、またはLAN/WAN接続を介してデザイン・センター・
コンピュータ40へアクセスまたは接続されることができ、デザイン・センター 自
身に保存されたパターンまたはデザインをシステム・コントローラへダウンロード
または転送させ、本発明の糸送りユニットを動作させることができる。システム・
15 デザイン・センター・コンピュータは、さらに、描画またはパターン・デザイン機
能または能力に加えて動作制御を有し、この動作制御によって、システム・デザイ
ン・センター・コンピュータは、糸送りモータを動作可能または動作不可能にし、
糸送りパラメータを変更し、エラー条件をチェックおよびクリアし、糸送りモータ
を案内することができる。前述したように、パターンを描画またはプログラム/作
20 成する能力を含むそのようなデザイン・センター構成要素は、さらに、プログラム
されたパターン命令をシステム・コントローラへ通信するタフト作製機コントロー
ラ26に設けるか、さらにシステム・コントローラ自身の上にプログラムまたは設
置することができる。したがって、システム・コントローラはデザイン・センター
能力を提供され、作業者はシステム・コントローラで所望のカーペット・パターン
25 を直接描画および作成することができる。」(【0048】)
「さらに、糸送りユニット・システム・コントローラは、別個のワークステーシ
ョンを含むように開示されたが、さらに、全体的な動作制御システムの一部分とし
て、タフト作製機コントローラ26を有するシステム・コントローラを含めること
ができ、糸送りユニット・システム・コントローラおよび/またはタフト作製機コ
ントローラの制御機能は、単一の作業者インタフェースを有するそのような動作制
5 御システムによってプログラムおよび作動されることが、当業者によって理解され
るであろう。その結果、本発明は、さらに、タフト作製機制御によって糸送りユニ
ットの直接制御を可能にし、タフト作製機および糸送りユニットの全ての局面を制
御する単一のワークステーションまたは制御システムを提供する。このような制御
システムは、さらに、タフト作製機で所望のカーペット・パターンを直接デザイン、
10 作成、およびプログラムする能力を含み、パターン命令は、タフト作製機および糸
送りユニットの動作の全体的制御の一部分としてタフト作製機コントローラによっ
て実行され、所望のパターンが生成される。」(【0049】)
「代替的に、パターンまたはパターン・データ・ファイルは、ステップ207で
示されるようにデザイン・センターで作成され、タフト作製機、またはタフト作製
15 機のシステム・コントローラへダウンロードまたは入力される。前述したように、
デザイン・センターが独立形または遠隔デザイン・センター40(図2)を含むか、
タフト作製機および/またはシステム・コントローラ26および165が、それぞ
れ、デザイン・センターの構成要素または機能を設けられることができる。デザイ
ン・センターの構成要素または機能には、パターンを描画または作成するデザイン・
20 センター・ソフトウェアおよびツール、たとえば、描画タブレット、マウス、およ
び他の入力装置が含まれる。207(図8)で示されるように、デザイン・センタ
ーで作成および/またはダウンロードされるパターンについては、ステップ208
で、デザイナまたは作業者は新しいパターンをデザインするか、メモリに前もって
記憶されたパターンを呼び出すかを選択することができる。もし作業者またはデザ
25 イナが、図209で示されるように、新しいパターンのデザインを望むならば、デ
ザイナは所望のパターン要件またはエフェクトを入力する。入力は、たとえば、デ
ザイン・センターのモニタで表示される所望のパターンを描画することによって行
われるか、および/または、パイルの高さ、ステッチ・レート、シフトまたはステ
ップ・シーケンスなどを含む様々なカーペット・パターン・パラメータをプログラ
ムすることによって行われる。」(【0054】)
【図2】
(2) 乙4発明の構成
10 乙4公報の発明の詳細な説明や【図2】の記載内容に照らすと、乙4公報は、本
件発明3に対応して、別紙「無効主張(本件発明3・新規性欠如)」の「被告の主
張」の「乙4発明の構成」欄記載の各構成を有する乙4発明を開示しているものと
認められる。
(3) 本件発明3と乙4発明との相違点
15 本件発明3と乙4発明を対比すると、次の相違点を認めることができる。
ア 相違点3-1
構成要件3Aにおいて、本件発明3は「複数の異なる糸」とされているのに対し、
乙4発明は「複数の糸」が使用されているが、それが「異なる糸」であるか否かは
明示されていない点
イ 相違点3-2
5 構成要件3F1において、本件発明3は「一連の糸の中の糸を選択的に保持する」
とされているのに対し、乙4発明はこのような構成が明示されていない点
ウ 相違点3-3
構成要件3F2において、本件発明3は「該パターン化タフト状物品を形成する
ように該パターン化タフト状物品に対する所望の織物ステッチレートよりも増大し
10 た、もしくは高密度な効果的ステッチレートで該裏打ち材料の供給を制御するため
に、該裏打ち供給ロールを制御し、該パターン化タフト状物品の表側は、該所望の
織物ステッチレートの外観を有する、ステッチ分布制御システムとを備える、」と
されているのに対し、乙4発明は「ユーザの所望するカーペット・パターンをタフ
トするために要求される基材の送りまたはステッチレートを計算したパターン・デ
15 ータにしたがって基材の供給を制御するために、該基材送りロール18を制御し、
ユーザの所望するカーペット・パターンを生成する、制御システムとを備える、」
(構成3f2)点
(4) 本件発明3の新規性の有無
ア 相違点3-1について
20 乙4発明では「複数の糸」とされているところ、複数である以上、「異なる糸」
を使用することが含まれているものと認められる。
したがって、相違点3-1は、実質的な相違点であるとはいえない。
イ 相違点3-2について
構成要件3F1の「一連の糸の中の糸を選択的に保持する」とは、概要、所望の
25 箇所に模様に表したい色のヤーンを高いタフトで残し、残りのヤーンを引き下げる
か引き抜く意義であると解される(当事者間に争いがない。)。そうであるところ、
証拠(乙2、10~14)及び弁論の全趣旨によれば、本件特許3の優先日前にお
いて、タフティングマシンにハイロー制御が用いられることは技術常識であったこ
とが認められる(なお、乙4公報にも、従来技術として「これらの送りロールの動
作を制御することによって、針に対する糸の送りレートが制御され、タフト作製機
5 を通過する基材に形成される糸のタフトのパイルの高さが変更され、隣接するタフ
トによって幾つかの糸のタフトがバックロブおよび隠され、異なったパターン・リ
ピートが基材の幅を横切って形成されることが可能になる。」(【0004】)との記
載がある。)。また、乙4公報には、「本発明は、…タフト作製機の各々の針へ一
連の糸をここに送るように構成された糸送りシステムまたはパターン糸送り取付具
10 に関する。個々の糸の各々の針への送りは、糸送りシステムによって独立に制御さ
れ、必要または所望に応じて向上した精度および制御を提供し、プログラムされた
カーペット・パターン命令に従ってタフト作製機を通過する基材に糸のタフトを形
成する」(【0008】)、「作業者は、デザイン・センターのコンピュータ41で、
…所望のカーペット・パターンのグラフィック表現を作成することができる。コン
15 ピュータ41は、そのようなカーペット・パターンをタフト作製機でタフトにする
ために要求される様々なパラメータを計算する。そのような計算には、糸送りレー
ト、パイル高、基材の送りまたはステッチ・レート、およびパターンをタフトにす
るために要求される他のパラメータの計算が含まれる。」(【0020】)との記載が
ある。前記技術常識及びこれらの乙4公報の記載に照らすと、乙4発明は、ハイロ
20 ー制御により所望の箇所に模様に表したい色のヤーンを高いタフトで残し、残りの
ヤーンを引き下げるか引き抜く構成を備えることを開示しているものと認められる。
したがって、相違点3-2は、実質的な相違点とはいえない。
これに対し、原告は、乙4公報の段落【0004】の記載は背景技術に関するもので
あり、その他の乙4公報の記載にも、構成要件3F1の構成は開示されていない旨
25 主張する。しかし、前記のとおり、本件特許3の優先日前の前記技術常識及び乙4
公報の前記記載内容によれば、乙4発明は構成要件3F1の構成を備えているとい
うことができ、原告の主張は採用することができない。
ウ 相違点3-3について
構成要件3F2は「所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度
な効果的ステッチレートで該裏打ち材料の供給を制御する」ものであるが、乙4公
5 報は、かかる「所望の織物ステッチレート」や「高密度な効果的ステッチレート」
の構成を明示していないから、相違点3-3は相違点である。
エ 以上から、本件発明3と乙4発明には相違点3-3があるから、本件発明3
は新規性を有する。
4 乙4発明に基づく本件発明3の進歩性欠如の有無(争点2-3)について
10 (1) 容易想到性
ア 前記3(4)ア及びイのとおり、本件発明3と乙4発明との相違点3-1及び
3-2は、実質的な相違点とはいえない。
イ 相違点3-3について
前記2(5)ウのとおり、構成要件3F2は、タフティングされた物品の外観が所望
15 の模様となるように、模様として見えるタフトよりも実際に打ち込むタフトが多く
なるようにバッキング給送ロールを制御することを特定するものである。
乙4発明は、「ユーザの所望するカーペット・パターンをタフトするために要求
される基材の送りまたはステッチレートを計算したパターン・データにしたがって
基材の供給を制御するために、該基材送りロール18を制御」する構成(3f2)
20 を有しており、バッキング材料の給送速度を任意に変更し得る発明であるから、乙
4発明は、模様として見えるタフトよりも実際に打ち込むタフトが多くなるように
バッキング給送ロールを制御することを含むものである。また、後記5(3)ア及び前
記3(4)イのとおり、乙4発明は複数の色の糸を使用することを含むところ、複数の
色の糸を使用する場合、ユーザーの所望するカーペット・パターンをタフトするに
25 は、本件特許3の優先日前における技術常識であるハイロー制御により、所望の色
の糸以外は引き下げるなどするのであるから、模様として見えるタフトよりも実際
に打ち込むタフトの方が多くなることは当然である。したがって、乙4発明は、実
際に打ち込むタフトの密度が、模様として見えるタフトの密度よりも大きくなるよ
うにバッキング材料の給送速度を制御することを含むものであることが認められる。
そうすると、本件発明3と乙4発明は、かかる制御方法について相違するものでは
5 なく、本件発明3が「所望の織物ステッチレート」や「高密度な効果的ステッチレ
ート」という概念を導入して、かかる制御方法を説明したことのみが相違するにす
ぎないところ、乙4公報に接した当業者は、かかる相違点について容易に想到し得
るものと認められる。
これに対し、原告は、本件発明の技術的特徴は、引き抜かれる(または引き下げ
10 られる)ヤーンのタフトを考慮に入れた十分なスティッチを打つことで、カーペッ
トの模様が規定されたスティッチ速度等の外観を備えるように、タフティングマシ
ンに有効スティッチ速度等という考え方を導入し、有効スティッチ速度等を規定さ
れたスティッチ速度等よりも大きくするようにバッキング材料の供給速度を制御す
ることであり、これによってスティッチ方向のタフトの密度を高めた際に所望の模
15 様より縮んだ模様が作成されるという従来技術の課題を解決するものである旨を主
張する。しかし、本件発明3に係る特許請求の範囲及び本件明細書3の記載から理
解される「効果的ステッチレート」、「所望の織物ステッチレート」の意義や両者
の関係は前記2(5)のとおりであり、乙4発明は、模様として見えるタフトよりも実
際に打ち込むタフトが多くなるようにバッキング給送ロールを制御することを含む
20 のであるから、これらが乙4発明に含まれるものであることは前示のとおりである。
また、原告の主張を前提としても、本件発明3の制御システムが制御をする対象は、
バッキング材料の給送速度に限られるところ、かかる制御は、本件特許3の優先日
前における技術常識である(乙2、11、13)し、その制御方法も、一連のパタ
ーンステップに従って裏打ち材料に沿って選択されたステッチ場所において提示さ
25 れた一連の糸の中の糸を選択的に保持するように針への糸の供給を制御するもので
あって(例えば、本件明細書3【図6-1】記載の異なる色を利用したステッピン
グパターンでは、一升(例えば「A」)に一つのタフトを打ち込み、選択された糸
/色のみステッチ場所に保持され、残りの糸/色は、裏打ちから糸を引き出すこと
を含み、パターン領域の中に埋め込まれ、または隠される(本件明細書3【0011】 。 、
))
本件特許3の優先日前における技術常識であったハイロー制御とニードルシフトを
5 組み合わせた制御(乙2、10~14)を行う乙4発明と実質的に異なるものでは
ない。したがって、本件発明3は、乙4発明に新たな技術事項を導入したものとは
いえないし、これによって従来技術にはみられなかった効果が生じるものともいえ
ない。以上から、原告の前記主張は採用することができない。
(2) 顕著な効果の有無
10 原告は、本件発明3は、所望の位置に所望のヤーンをスティッチすることが可能
であり、織物の見た目がずれることなく正確なゲージ範囲の模様となるという顕著
な効果を奏する旨を主張する。しかし、前記(1)イのとおり、本件発明3は実質的に
乙4発明に含まれるものであり、その効果についても顕著な効果があるとは認めら
れない。
15 (3) 以上から、本件発明3は、乙4発明から容易に発明することができたといえ
るから、本件特許3は特許無効審判により無効にされるべきものと認められ、原告
は被告に対してその権利を行使することができない(特許法104条の3第1項、
123条1項2項、29条2項)。
5 乙4発明に基づく本件発明1の進歩性欠如の有無(争点2-4)について
20 (1) 乙4発明の構成
乙4公報の発明の詳細な説明や【図2】の記載内容に照らすと、乙4公報は、本
件発明1に対応して、別紙「無効主張(本件発明1・進歩性欠如)」の「被告の主
張」の「乙4発明の構成」欄記載の各構成を有する乙4発明を開示しているものと
認められる。
25 (2) 本件発明1と乙4発明の相違点
本件発明1と乙4発明を対比すると、次の相違点を認めることができる。
ア 相違点1-1
構成要件1Aにおいて、本件発明1は「異なる色のヤーン」とされているのに対
し、乙4発明は「複数の糸」が使用されているが、それが「異なる色のヤーン」で
あるか否かは明示されていない点
5 イ 相違点1-2
構成要件1G1において、本件発明1は「選択された高さのヤーンのタフトを形
成し、各模様ステップについて該ヤーンのうちの選択されたヤーンを引き下げるか
または該バッキング材料の外に引き出す」とされているのに対し、乙4発明はこの
ような構成が明示されていない点
10 ウ 相違点1-3
構成要件1G2において、本件発明1は「該制御システムは、該バッキング給送
ロールとリンクされ、該制御システムは、該ヤーンのタフトが、該タフティングさ
れた物品の模様の外観が該模様の規定されたスティッチ速度で形成されるように該
タフティングされた物品を形成するのに十分なだけ該タフティングされた物品の模
15 様の該規定されたスティッチ速度よりも大きな有効スティッチ速度で該バッキング
材料において形成されるように、該バッキング材料を給送するために該バッキング
給送ロールを制御し、」とされているのに対し、乙4発明は「該制御システムは、
該基材送りロール18を駆動する駆動モータを制御し、該制御システムは、該糸の
タフトが、該タフティングされたカーペットにユーザの所望するカーペット・パタ
20 ーンが形成されるように該基材の送りまたはステッチレートを計算したパターン・
データにしたがって該基材送りロール18を制御し、」とされる点
エ 相違点1-4
構成要件1G3において、本件発明1は「該規定されたスティッチ速度は、該タ
フティングマシンのゲージに従って決定される、」とされているのに対し、乙4発
25 明は「該ユーザの所望するカーペット・パターンは、ユーザの入力に基づく」とさ
れる点
(3) 容易想到性
ア 相違点1-1について
前記3(4)アのとおり、「複数の糸」であれば「異なる糸(ヤーン)」を使用する
ことが含まれると解され、また、乙4公報(【0008】【0020】)によれば、乙4発
5 明はプログラムされたカーペット・パターン命令に従ってタフト作製機を通過する
基材に糸のタフトを形成するものであるところ、所望のカーペット・パターンのグ
ラフィック表現を作成することができるのであるから、「異なる色のヤーン」が使
用されることが含まれると解される。したがって、相違点1-1は実質的な相違点
であるとはいえない。
10 イ 相違点1-2について
前記3(4)イと同様の理由で、相違点1-2は実質的な相違点とはいえない。
ウ 相違点1-3について
「有効スティッチ速度」及び「規定されたスティッチ速度」は、本件発明3の構
成要件3F2の「効果的ステッチレート」及び「所望の織物ステッチレート」と、
15 それぞれ同義と解され(前記2(5)ウ)、構成要件1G2は、タフティングされた物
品の模様の外観が所望の模様となるように、模様として見えるタフトよりも実際に
打ち込むタフトが多くなるようにバッキング給送ロールを制御することを特定する
のであるから(前記2(5)ア(ア))、前記4(1)イと同様の理由で、乙4公報に接した
当業者は、乙4発明から相違点1-3にかかる本件発明1の構成について容易に想
20 到し得ると認められる。
エ 相違点1-4について
前記2(6)アのとおり、構成要件1G3は、規定されたスティッチ速度がゲージに
従って決定されることを特定するものである。
証拠(乙2、13)及び弁論の全趣旨によれば、本件特許1の優先日前において、
25 ゲージは、カーペット構造を制御する必須のパラメータの一つであり、タフティン
グ機の単位当たりのニードル本数のことでもある。また、本件明細書1(【0049】)
には、一部の従来のタフティングシステムにおいては、タフティング模様に対する
スティッチ速度は概してタフティングマシンのゲージと一致し、タフティングマシ
ンのゲージは縦糸方向の1インチ(2.54cm)当たりの針数に相当し、縦糸方
向の1インチ当たりの針数は概して横糸方向の1インチ当たりのスティッチの数に
5 等しい旨が記載されている。これらによれば、本件特許1の優先日前において、ゲ
ージと模様として見えるタフトの密度を一致させること、すなわち、タフティング
された物品の模様の外観において、横糸方向と縦糸方向の密度を一致させるように
バッキング給送速度を制御することは、従来技術として存在したものと認められる。
そして、前記4(1)イのとおり、乙4発明は、バッキング材料の給送速度を任意に
10 変更し得る発明であることに照らすと、乙4公報に接した当業者は、乙4発明から、
規定されたスティッチ速度が、少なくともゲージに従って決定されることを容易に
想到し得るものと認められる。
(4) 顕著な効果の有無
原告は、本件発明1は、所望の位置に所望のヤーンをスティッチすることが可能
15 であり、織物の見た目がずれることなく正確なゲージ範囲の模様となるという顕著
な効果を奏する旨を主張する。しかし、前記4(1)イと同様の理由で、タフティング
された物品の外観が所望の模様となるように、模様として見えるタフトよりも実際
に打ち込むタフトが多くなるようにバッキング給送ロールを制御する技術である 本
件発明1は、実質的に乙4発明に含まれるものであり、その効果についても顕著な
20 効果があるとは認められない。
(5) 以上から、本件発明1は、乙4発明から容易に発明することができたといえ
るから、本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものと認められ、原告
は被告に対してその権利を行使することができない(特許法104条の3第1項、
123条1項2項、29条2項)。
25 6 乙4発明に基づく本件発明2の進歩性欠如の有無(争点2-5)について
(1) 乙4発明の構成
乙4公報の発明の詳細な説明や【図2】の記載内容に照らすと、乙4公報は、本
件発明2に対応して、別紙「無効主張(本件発明2・進歩性欠如)」の「被告の主
張」の「乙4発明の構成」欄記載の各構成を有する乙4発明を開示しているものと
認められる。
5 (2) 本件発明2と乙4発明の相違点
本件発明2と乙4発明を対比すると、次の相違点を認めることができる。
ア 相違点2-1
構成要件2Aにおいて、本件発明2は「複数の異なる色のヤーン」とされている
のに対し、乙4発明では「複数の糸」が使用されているが、それが「異なる色のヤ
10 ーン」であるか否かは明示されていない点
イ 相違点2-2
構成要件2Gにおいて、本件発明2は「該ヤーンの高いタフトを形成し、該ヤー
ンのうちの選択されたヤーンを引き下げるかまたは該バッキング材料の外に引き出
す」とされているのに対し、乙4発明はこのような構成が明示されていない点
15 ウ 相違点2-3
構成要件2Hにおいて、本件発明2は「該ヤーンのタフトは、高められた有効処
理スティッチ速度で該バッキング材料において形成され、該高められた有効処理ス
ティッチ速度は、…形成される該模様がつけられタフティングされた物品の所望の
スティッチ速度に基づいており、該模様がつけられた物品の密度を実質的に維持す
20 る、」とされているのに対し、乙4発明は「該糸13のタフトは、ユーザが所望す
るカーペット・パターンをタフトするために要求される基材の送りまたはステッチ
レートで該基材において形成され、できあがる模様はユーザが所望する密度になっ
ている」とされている点
エ 相違点2-4
25 構成要件2Hにおいて、本件発明2は「該模様を形成する異なる色のヤーンの数
を乗じた、」とされているのに対し、乙4発明はこのような構成が明示されていな
い点
(3) 容易想到性
ア 相違点2-1について
前記5(3)アと同様の理由で、相違点2-1は実質的な相違点であるとはいえな
5 い。
イ 相違点2-2について
相違点2-2にかかる本件発明2の構成は、構成要件2Hの文言とも併せると、
模様を形成する所定の色のヤーンが所定の位置で高いタフトを形成し、他のヤーン
を引き下げるかバッキング材料の外に引き出すことを特定するものと解されるから、
10 前記3(4)イと同様の理由で、相違点2-2は実質的な相違点とはいえない。
ウ 相違点2-3について
「有効処理スティッチ速度」及び「所望のスティッチ速度」は、本件発明3の構
成要件3F2の「効果的ステッチレート」及び「所望の織物ステッチレート」と、
それぞれ同義と解され(前記2(5)イ及びウ)、相違点2-3にかかる本件発明2の
15 構成は、構成要件2Gの文言をも踏まえ、タフティングされた物品の外観が所望の
模様となるように、模様として見えるタフトよりも実際に打ち込むタフトが多くな
るようにすることを特定するのであるから、前記4(1)イと同様の理由で、乙4公報
に接した当業者は、乙4発明から相違点2-3にかかる本件発明2の構成を容易に
想到し得ると認められる。
20 エ 相違点2-4について
前記2(5)イ(イ)のとおり、構成要件2Hの「該高められた有効処理スティッチ速
度は、該模様を形成する異なる色のヤーンを乗じた」とは、有効処理スティッチ速
度は、使用されるヤーンの色の数を乗じた密度であることを特定するものである。
前記4(1)イのとおり、乙4発明は、バッキング材料の給送速度を任意に変更し得
25 る発明であり、また、ユーザーの所望するカーペット・パターンをタフトするには、
模様として見えるタフトの密度よりも実際に打ち込むタフトの密度の方が多くなる
ことは技術常識であるといえる。さらに、本件明細書2(【0011】)には、「通常、
ヤーン配置システムによって走らせられる動作または有効スティッチ速度は、プロ
グラムされた模様において走らせられる色の数倍の所望のまたは規定されたスティ
ッチ速度または1インチ当たりのスティッチの数にほぼ相当」するとの記載がある
5 ように、異なる色のヤーンを使用してユーザーの所望するカーペット・パターンを
タフトするには、所定の位置に所定の色のタフトをスティッチする必要があるから、
実際に打ち込むタフトの密度は、使用されるヤーンのタフトの色の数を乗じたもの
となることもまた技術常識であるといえる。
したがって、乙4公報に接した当業者は、実際に打ち込むタフトの密度が使用さ
10 れるヤーンの色の数を乗じた密度である構成とすることを容易に想到し得るものと
認められる。
(4) 顕著な効果の有無
原告は、本件発明2は、所望の位置に所望のヤーンをスティッチすることが可能
であり、織物の見た目がずれることなく正確なゲージ範囲の模様となるという顕著
15 な効果を奏する旨を主張する。しかし、前記4(1)イと同様の理由で、タフティング
された物品の外観が所望の模様となるように、模様として見えるタフトよりも実際
に打ち込むタフトが多くなるようにバッキング給送ロールを制御する技術である 本
件発明2は、乙4発明に実質的に含まれるものであり、その効果についても顕著な
効果があるとは認められない。
20 (5) 以上から、本件発明2は、乙4発明から容易に発明することができたといえ
るから、本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものと認められ、原告
は被告に対してその権利を行使することができない(特許法104条の3第1項、
123条1項2項、29条2項)。
第5 結論
25 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも
理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
5 裁判長裁判官
武 宮 英 子
裁判官
阿 波 野 右 起
裁判官
峯 健 一 郎
(別紙)
被 告 製 品 目 録
1 品名 アンドロイド-ILループ(ANDROID-IL(LOOP))
5 ゲージ 5/64”GG、1/10”GG、1/8”GG、5/32”GG等
働幅 1M-5M
回転数 800rpm、1200rpm等
糸送り ステッピングモーター又はサーボモーター
10 2 品名 アンドロイド-ICLカット&ループ(ANDROID-IL(CUT&LOOP))
ゲージ 5/64”GG、1/10”GG、1/8”GG、5/32”GG等
働幅 1M-5M
回転数 700rpm等
糸送り ステッピングモーター又はサーボモーター
15 以上
25 別紙特許公報省略
構成要件 被告製品の構成
本件発明1 本件発明2 本件発明3 原告の主張 被告の主張
被告製品を購入した使用者は、複数のヤーンを被告製品にセットす
ることができる(該複数のヤーンは単色で構成してもよいし、複数
異なる色のヤーンを内部に含む、模様を有するタフティ 複数の異なる色のヤーンを含む、模様がつけられタフ 複数の異なる糸を含むパターン化タフト状物品を形成 異なる色の糸を用いた模様を有するタフティングされたカー
の色でも使用者の任意に構成してもよい。)。また、複数の異なる
1A ングされた物品を形成するためのタフティングマシンで 2A ティングされた物品を形成するためのタフティングマ 3A するためのタフティング機であって、該タフティング a ペットを形成するためのタフティングマシンであって、該タ
色のヤーンを用いた場合には、異なる色のヤーンを用いた模様を有
あって、該タフティングマシンは、 シンであって、該タフティングマシンは、 機は、 フティングマシンは、
するタフティングされたカーペットを形成するためのタフティング
マシンであって、該タフティングマシンは、
少なくとも1つの針棒であって、該少なくとも1つの
少なくとも1つの針棒であって、該針棒に沿って取り付 少なくとも1つの針棒であって、該針棒に沿って取り NEEDLE BARに沿って取り付けられた一連のNEEDLEを有す
1B 2B 3B 針棒に沿って一連の針が載置されている、少なくとも b 争わない。
けられた一連の針を有する、針棒と、 付けられた一連の針を有する、針棒と、 る、NEEDLE BARと、
1つの針棒と、
該タフティングマシンのタフティングゾーンを通して 該タフティングマシンのタフティングゾーンを通して
該タフティング機のタフティング区画を通して裏打ち 該タフティングマシンのタフティング区画にバッキング材料
1C バッキング材料を給送するためのバッキング給送ロール 2C バッキング材料を給送するためのバッキング給送ロー 3C c 争わない。
材料を供給するための裏打ち供給ロールと、 を給送するBACKING FEED ROLLSと、
と、 ルと、
一連のヤーンを該針に給送するための模様ヤーン給送メ 一連のヤーンを該針に給送するための模様ヤーン給送 一連なりのヤーンを該NEEDLEに供給するためのYarn Feed
1D 2D 3D 一連の糸を該針に供給するための糸供給機構と、 d 争わない。
カニズムと、 メカニズムと、 と、
該少なくとも1つの針棒を該タフティングゾーンを横 該少なくとも1つの針棒を該タフティングゾーンを横
該NEEDLE BARを該タフティング区画を横切って横方向にシ
1E 切って横方向にシフトするための少なくとも1つの針棒 2E e 争わない。
フトするためのシフター機構と、
シフターと、 棒シフターと、
一連のゲージ部品であって、該一連のゲージ部品は、 一連のゲージ部品であって、該一連のゲージ部品は、
一連のゲージ部品であって、該一連のゲージ部品は、該
該タフティングゾーンの下に取り付けられ、該針が該 該針が該裏打ち材料の中において糸のタフトを形成す 該NEEDLEと係合して該NEEDLEからヤーンのループを引っ ヤーンのループと係合してヤーンのループを引っ掛けるための一連
タフティングゾーンの下に取り付けられ、該針が該バッ
バッキング材料の中に往復して該バッキング材料に るように該裏打ち材料の中へ往復運動させられると 掛けるための一連なりのLOOPERを備え、該LOOPERは、該 なりのLOOPERを備え、該LOOPERは、該NEEDLEが該バッキング
1F キング材料の中に往復して該バッキング材料にヤーンの 2F 3E f
ヤーンのタフトを形成するとき、該少なくとも1つの き、該少なくとも1つの針棒の該針と係合する位置に NEEDLEが該バッキング材料の裏側から表側に通ったときの 材料の裏側から表側に通ったときに形成されるヤーンのループと係
タフトを形成するとき、該少なくとも1つの針棒の該針
針棒の該針と係合する位置にある、一連のゲージ部品 おいて、該タフティング区画の下に載置される、一連 対応する位置に設置されており、 合する位置に設置されており、
と係合する位置にある、一連のゲージ部品と、
と、 のゲージ部品と、
1G 制御システムであって、 3F ステッチ分布制御システムであって、 g タフティングマシンの制御システムであって、 争わない。
制御システムであって、該制御システムは、該バッキ
該制御システムは、該制御システムによって受け取られ ング材料を給送する該バッキング給送ロールを制御
る一連の模様ステップに従って該少なくとも1つの針棒 し、該制御システムは、該少なくとも1つの針棒シフ 該ステッチ分布制御システムは、一連のパターンス 該制御システムは、模様ステップに従って、該シフター機構 該制御システムは、模様データに従って、該Yarn Feedを通して
シフターと協働して該ヤーン給送メカニズムを制御して ターと協働して該ヤーン給送メカニズムを制御して該
2G テップに従って、該裏打ち材料に沿って選択されたス と協働することで、該Yarn Feedを通してNEEDLEへの該 NEEDLEへの該ヤーンの供給を制御し、かかる制御によって、選択
必要に応じて該ヤーンを該針に給送することを制御する ヤーンを該針に給送することを制御することによっ
1G1 3F1 テッチ場所において提示された一連の糸の中の糸を選 g1 ヤーンの供給を制御し、かかる制御によって、選択された されたヤーンのループを形成し、保持して、所望のパイル高さのタ
ことによって、選択された高さのヤーンのタフトを形成 て、該ヤーンの高いタフトを形成し、該ヤーンのうち 択的に保持するように該針への該糸の供給を制御する ヤーンのループを形成し、保持して、所望のパイル高さのタ フトを形成する一方で、その他のヤーンを引き下げており、
し、各模様ステップについて該ヤーンのうちの選択され の選択されたヤーンを引き下げるかまたは該バッキン ために、該糸供給機構を制御し、かつ、 フトを形成する一方で、その他のヤーンを引き抜いており、 (ただし、3F1の充足性については争わない。)
たヤーンを引き下げるかまたは該バッキング材料の外に グ材料の外に引き出す、制御システムとを備え、
引き出す、制御システムとを備え、
該制御システムは、該バッキング給送ロールとリンクさ 該制御システムは、バッキング給送速度で決まる単位長さ当たりの
れ、該制御システムは、該ヤーンのタフトが、該タフ ステッチ数(すなわち、ステッチ方向に実際に打ち込むステッチ
ティングされた物品の模様の外観が該模様の規定された 数)から、引き下げるヤーンのステッチ数を除いた単位長さ当たり
該ヤーンのタフトは、高められた有効処理スティッチ 該パターン化タフト状物品を形成するように該パター 該制御システムは、有効スティッチ速度を規定されたス
スティッチ速度で形成されるように該タフティングされ のステッチ方向のステッチ数が、作成される模様のステッチ方向の
速度で該バッキング材料において形成され、該高めら ン化タフト状物品に対する所望の織物ステッチレート ティッチ速度よりも十分に大きくさせるために、該BACKING
1G2 た物品を形成するのに十分なだけ該タフティングされた g2 単位長さ当たりのステッチ数となるようにバッキング給送速度を制
れた有効処理スティッチ速度は、該模様を形成する異 よりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチ FEED ROLLSを用いて該タフティング区画への該バッキング
物品の模様の該規定されたスティッチ速度よりも大きな 御している。該制御システムは、作成されるステッチ方向の模様の
2H なる色のヤーンの数を乗じた、形成される該模様がつ 3F2 レートで該裏打ち材料の供給を制御するために、該裏 材料の供給速度を制御しており、
有効スティッチ速度で該バッキング材料において形成さ 単位長さ当たりのステッチ数をゲージに基づいて決定する制御を
けられタフティングされた物品の所望のスティッチ速 打ち供給ロールを制御し、該パターン化タフト状物品
れるように、該バッキング材料を給送するために該バッ 行っておらず、作成される模様のステッチ方向の単位長さ当たりの
度に基づいており、該模様がつけられた物品の密度を の表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有す
キング給送ロールを制御し、 ステッチ数は使用者の任意である。
実質的に維持する、 る、ステッチ分布制御システムとを備える、
該規定されたスティッチ速度は、該タフティングマシン 該規定されたスティッチ速度は、ゲージに従って決定され
1G3 g3 争う。
のゲージに従って決定される、 る、
1H タフティングマシン。 2I タフティングマシン。 3G タフティング機。 h タフティングマシン。 争わない。
構成要件 原告の主張 被告の主張
構成要件1Aは、タフティングマシンが模様を有するタフティングされた物品を形成するもので、当該物品が異なる
被告が出荷する段階において、被告製品はヤーンを備えておらず、被告製品を購入した顧客におい
色のヤーンを内部に含むことを発明特定事項とするものである。このことは、構成要件1Aの記載や本件特許1の特
て、ヤーン及びヤーンを設置するための装置(クリールスタンド)を調達し、タフティングマシンの
異なる色のヤーンを内部に含む、模 許請求の範囲請求項10が「複数の異なる色のヤーンのタフトを含む物品」と定め、「異なる色のヤーン」を含むの
外部に別装置として設けるものであるから、被告製品は「異なるヤーンを内部に含む」ものではな
様を有するタフティングされた物品 は、タフティングマシンが形成する物品であることが示されていること、本件明細書1の【図6】が、A、B及びC
く、構成要件1Aを充足しない。
1A を形成するためのタフティングマシ という3種類の異なるヤーンがタフティングされた物品を形成する際の制御を図示していることからも明らかであ
また、仮に、「異なる色のヤーンを内部に含む」対象が「タフト状物品の内部」と解釈したとして
ンであって、該タフティングマシン る。
も、操作者は、被告製品にセットする複数のヤーンについて、単色で構成してもよいし、複数の色と
は、 そうであるところ、被告製品は、多色のタフティングマシンであるから、構成要件1Aを充足する。
してもよく、操作者が任意に構成することができることから、複数の色を前提とする構成要件1Aを
なお、仮に被告製品が単色の模様を製造できるものであったとしても、異なる色のヤーンを含む物品を形成すること
充足しない。
ができる以上、構成要件1Aの充足性は否定されない。
構成要件1Fは、一連なりのゲージ部品が一つの針棒の該針と係合する位置にあることを発明特定事項とするもので
あるところ、「係合する位置」とは、針がバッキング材料を貫通し、針からヤーンのループをつまみまたはこれを引
一連のゲージ部品であって、該一連
くように係合される位置を意味する。すなわち、「係合する」とは一般的に係り合うことを意味し、さらに、本件明
のゲージ部品は、該タフティング
細書1の段落【0010】【0054】の記載からすると、本件発明1のゲージ部品(ルーパ)は、針がバッキング材料を貫 被告製品のLOOPERは、NEEDLEとは係合せず、ヤーンのループと係合する。また、LOOPERは、
ゾーンの下に取り付けられ、該針が
通するとき針と係合し、それによって針からヤーンのループをつまみまたはこれを引くように適合される位置にある NEEDLEと対応する位置にも設置されておらず、形成されるヤーンのループに対応する位置に設けら
該バッキング材料の中に往復して該
1F ことが説明される。つまり、本件発明1のゲージ部品(ルーパ)は、針が引き連れてきたヤーンをつまみまたはひっ れている。
バッキング材料にヤーンのタフトを
かけるものであることがわかる。また、タフティングマシンの技術分野において、ゲージ部品は、針が引き連れてき 被告製品において、一連なりのLOOPERが係合するのは糸であって、針とは係合しないから、被告製
形成するとき、該少なくとも1つの
たヤーンをつまみまたはひっかけるものであることを当業者は当然に理解する(甲5、7、20(図22))。 品は構成要件1Fを充足しない。
針棒の該針と係合する位置にある、
そうであるところ、NEEDLEがバッキング材料にヤーンのタフトを形成するときに、被告製品のLOOPERがヤーンの
一連のゲージ部品と、
ループと係合し、ヤーンのループを引っ掛ける(つまむ)ことは当事者間に争いがない。
したがって、被告製品のLOOPERは構成要件1Fの「係合する位置」にあり、同構成要件を充足する。
該制御システムは、該制御システム
構成要件1G1は、模様ステップに従って、針棒シフターと協働して、ヤーン給送メカニズムを制御して、針への
によって受け取られる一連の模様ス
ヤーンの給送を制御することで、一連なりのヤーンをスティッチ場所に提示し、バッキング材料において一連なりの
テップに従って該少なくとも1つの
ヤーンのループを形成すること、及び選択されたヤーンのループを引き下げるか、又は引き出し、選択された高さの
針棒シフターと協働して該ヤーン給
ヤーンのタフトを形成するために保持されたヤーンのループを残すように制御することを発明特定事項としている。
送メカニズムを制御して必要に応じ
被告製品は、「Pile Height」すなわちタフトの高さを4~18mmの範囲で設定することが可能な構成を有している
て該ヤーンを該針に給送することを 被告製品において、タフトを形成する高さはヤーンの給送速度のみを制御することで調整しているの
1G1 ことから、制御システムが各スティッチ場所においてヤーンの給送する量を調整していることが明らかである。ま
制御することによって、選択された であって、「シフターと協働」するものではなく、構成要件1G1を充足しない。
た、当該制御システムは、一定のリズムで横方向にスライドする一連のNEEDLEを備えたNEEDLE BARと協働して、
高さのヤーンのタフトを形成し、各
選択されたヤーンのタフトのみが選択された高さで形成される一方で、その他のヤーンはバッキング材料の外に引き
模様ステップについて該ヤーンのう
出されている。さらに、被告も、被告製品のタフティングマシンでは、手動ではなく、制御システム(ソフトウェ
ちの選択されたヤーンを引き下げる
ア)が、様々な模様を作成できることを認めている。
かまたは該バッキング材料の外に引
したがって、被告製品は構成要件1G1を充足する。
き出す、制御システムとを備え、
構成要件 原告の主張 被告の主張
本件明細書1~3には共通して、①従来技術では実際に打ち込むスティッチレートがタフティングマシンのゲージと概して一
該制御システムは、該バッキン 本件明細書1の段落【0007】【0011】の記載やタフティングマシンの技術分野における技術水準から、「スティッチ
致していたこと、②カーペットに望まれる「所望の又は規定されたスティッチレート」もタフティングマシンのゲージとほぼ
グ給送ロールとリンクされ、該 速度」は、例えば1インチ(2.54cm)当たりのスティッチの数を意味し、「規定されたスティッチ速度」は、例
一致しており、③本件発明では、実際に打ち込むスティッチレートである「有効スティッチレート」を、ゲージとほぼ一致す
制御システムは、該ヤーンのタ えば1インチ(2.54cm)当たりの所定のスティッチ数を意味すると解される。また、構成要件1G2の記載によ
る「所望の又は規定されたスティッチレート」のヤーンの色の数倍とすることが記載されている。このような本件明細書1~
フトが、該タフティングされた れば、同構成要件は、タフティングされた物品の外観が規定されたスティッチ速度(例えば1インチ当たりの所定の
3の記載事項を踏まえると、本件発明は、「効果的又は有効スティッチレート(速度)」を「所望の又は規定されたスティッ
物品の模様の外観が該模様の規 スティッチ数)で形成するために、有効スティッチ速度が規定されたスティッチ速度よりも大きくなるようバッキン
チレート(速度)」のヤーンの色の数倍にすることで、基布の送り方向(スティッチ方向)でみてゲージとほぼ同一の長さ
定されたスティッチ速度で形成 グ材料の給送を制御することを発明特定事項としているから、「有効スティッチ速度」は、タフティングされた物品
と、ゲージ方向での1ゲージ分とで形成される領域の中にすべての色のヤーンを打ちこみ (実際のカーペットを形成するタフ
されるように該タフティングさ の外観が規定されたスティッチ速度で形成されるのに有効なスティッチの数、すなわち、例えば1インチ当たり実際
トはそのうちの1色)、それによって「高いタフトの間に埋め込まれた低いタフトが視認されて、ぼやけた印象になる」とい
れた物品を形成するのに十分な に形成されるヤーンのタフトの数を意味する。したがって、「有効スティッチ速度」から引き抜かれる(又は引き下
1G2 う従来技術の問題を解決しようとしたものと理解される。すなわち、本件発明は、従来よりも実際に打ち込む単位長さ当たり
だけ該タフティングされた物品 げられる)ヤーンのタフトの数を引くと「規定されたスティッチ速度」になる。
のスティッチ数(スティッチレート)を密にしたことによって、作成される模様における単位長さ当たりのスティッチ数が
の模様の該規定されたスティッ そうであるところ、被告製品の制御システムが、バッキング給送速度で決まる単位長さ当たりのステッチ数(すなわ
ゲージ通りになるように制御した発明となっている。
チ速度よりも大きな有効ス ち、ステッチ方向に実際に打ち込むステッチ数)から、引き下げるヤーンのステッチ数を除いた単位長さ当たりのス
本件明細書1(【0011】【0039】【0049】【0050】【0053】【0060】【0062】【0063】)にも同様の記載があるところ、
ティッチ速度で該バッキング材 テッチ方向のステッチ数が、作成される模様のステッチ方向の単位長さ当たりのステッチ数となるようにバッキング
「規定されたスティッチ速度」とは、ゲージの密度と一致するカーペットに残すべきパイルタフト(つまり、模様として見え
料において形成されるように、 給送速度を制御していることは当事者間に争いがないから、被告製品は、有効スティッチ速度等の概念を導入してお
るタフト)の密度のことであり、「有効スティッチ速度」とは、ゲージの密度の色の数倍のスティッチレート(実際に打ち込
該バッキング材料を給送するた り、被告製品によってタフティングされた物品の模様が規定されたスティッチ速度等の外観を有するようにバッキン
まれるスティッチレート)のことである 。
めに該バッキング給送ロールを グ材料の給送速度をバッキング給送ロールで制御しているといえる。
被告製品の構成は、g2の被告の主張のとおり、ゲージに基づくスティッチレートの制御は何も行っていないから、「規定さ
制御し、 したがって、被告製品は構成要件1G2を充足する。
れたスティッチ速度」も「有効スティッチ速度」も存在しない。したがって、構成要件1G2及び1G3を充足しない。
構成要件1G3は「規定されたスティッチ速度」を実質的に限定するものではなく、本来ゲージを基準とした規定されたス
構成要件1G3は、規定されたスティッチ速度がタフティングマシンのゲージ(針棒に沿った単位長さ当たりの針の
ティッチレートを確認的に規定したにすぎない。
数)に従って決定されることを発明特定事項としている。
被告製品には10分の1ゲージのものがある。そして、甲7別紙6Aに示されるように、同被告製品には
なお、被告製品の「Manualモード」は、マシンを構成する各部品の動作確認をするための試運転に係るモードであって、運転
「Automatic」(自動モード)があることがわかる。この自動モードが選択されると、「針/10cm(針密)」
のスイッチを手で押している間だけ当該各部品が動作するもので、模様データに基づいたなんらかのカーペットを作成するた
該規定されたスティッチ速度 (Stitch Rate)は37.5に固定され、設定を変更できないものになっていると考えられる。そして、「針/10c
めに使用されるものではない。
1G3 は、該タフティングマシンの m(針密)」(Stitch Rate)の37.5は、1インチ当たり10スティッチに相当し、10分の1ゲージのゲージ密
一方、「Autoモード」は、入力された模様のデータに従って自動でタフティングが行われるモードであり、一度スイッチを入
ゲージに従って決定される、 度とも一致している。そうすると、被告製品は自動モードを備えており自動モードに設定することで、パターン化タ
れれば、あとは模様のデータのカーペットが完成するまでは自動で各部品が動作し続けることになる。被告製品では、外観に
フトテッドカーペットは規定されたスティッチ速度に一致するスティッチ速度で形成され、これにより厳密なゲージ
表れるタフト(高いタフト)の基布送り方向の密度(「規定されたスティッチ速度」等に対応)に関係なく、使用者が任意に
密度が与えられる。
入力した数値によって決定される。「Autoモード」において、ステッチレートは、タフトの高さ、完成されるカーペットの全
したがって、被告製品は、タフティングマシンのゲージに従って設定され得る規定されたスティッチ速度となるパ
長といった使用者が任意に設定する各条件の一つであり、タフティングの際に使用者が任意の数値を手入力するものであっ
ターン化タフテッドカーペットを形成するように動作していることから、構成要件1G3を充足する。
て、原告が主張するようになんらかの数値に自動的に固定されるのではない。
構成要件 原告の主張 被告の主張
複数の異なる色のヤーンを内部に含む、模様
がつけられタフティングされた物品を形成す
2A 1Aに関する原告の主張と同様であり、被告製品は構成要件2Aを充足する。 1Aに関する被告の主張と同様であり、被告製品は構成要件2Aを充足しない。
るためのタフティングマシンであって、該タ
フティングマシンは、
一連のゲージ部品であって、該一連のゲージ
部品は、該タフティングゾーンの下に取り付
けられ、該針が該バッキング材料の中に往復
2F して該バッキング材料にヤーンのタフトを形 1Fに関する原告の主張と同様であり、被告製品は構成要件2Fを充足する。 1Fに関する被告の主張と同様であり、被告製品は構成要件2Fを充足しない。
成するとき、該少なくとも1つの針棒の該針
と係合する位置にある、一連のゲージ部品
と、
制御システムであって、該制御システムは、
該バッキング材料を給送する該バッキング給
送ロールを制御し、該制御システムは、該少 構成要件2Gの制御システムは、バッキング材料を給送するバッキング給送ロールを制御し、針棒シフ
なくとも1つの針棒シフターと協働して該 ターと協働して、ヤーン給送メカニズムを制御して、針へのヤーンの給送を制御することで、ヤーンの高
ヤーン給送メカニズムを制御して該ヤーンを いタフトを形成し、ヤーンのうちの選択されたヤーンを引き下げるか又はバッキング材料の外に引き出す
2G 1G1に関する被告の主張と同様であり、被告製品は構成要件2Gを充足しない。
該針に給送することを制御することによっ ものであることを発明特定事項としている。
て、該ヤーンの高いタフトを形成し、該ヤー 被告製品は、「被告製品の構成」の「g1」の「原告の主張」欄記載の構成を有するところ、「シフター
ンのうちの選択されたヤーンを引き下げるか 機構」は「針棒シフター」に相当するから、被告製品は構成要件2Gを充足する。
または該バッキング材料の外に引き出す、制
御システムとを備え、
「有効処理スティッチ速度」は、1G2の「有効スティッチ速度」を意味し、「所望のスティッチ速度」
は、1G2の「規定されたスティッチ速度」を意味するから、これらの意味については、1G2に関する原
該ヤーンのタフトは、高められた有効処理ス 告の主張のとおりである。
構成要件2Hにおける「所望のスティッチ速度」と「有効処理スティッチ速度」は、本件発明1におけ
ティッチ速度で該バッキング材料において形 また、被告製品の技術担当者が被告製品の作動状況を撮影した動画等(甲12-1、甲13の各枝番号)によれ
る「規定されたスティッチ速度」と「有効スティッチ速度」と、それぞれ同義と考えられるから、本件
成され、該高められた有効処理スティッチ速 ば、赤色、灰色、白色、黒色の4種類のヤーンを被告製品に用いた場合、各色のヤーンに注目すると、
発明1の構成要件1G2と1G3で述べたことと同様の理由により、被告製品は構成要件2Hを充足し
度は、該模様を形成する異なる色のヤーンの バッキング材料が非常にゆっくり動く間に針が一方向に4ステップ移動し、その後、他方向に4ステップ
2H ない。
数を乗じた、形成される該模様がつけられタ 移動して戻り、かつ各ステップ毎に針はバッキング材料を貫通していることが確認でき、各スティッチ場
なお、「有効処理スティッチ速度は…異なる色のヤーンの数を乗じた」との文言は、ハイローとニード
フティングされた物品の所望のスティッチ速 所において4色のヤーンが提示されている。そうすると、被告製品では、ヤーンの数の分だけ針が左右に
ルシフトを組み合わせたタフティングマシンにおいて当然のことを規定した「有効処理スティッチ速
度に基づいており、該模様がつけられた物品 シフトし、各スティッチ場所において、選択された1色のヤーンが保持され、残りのヤーンは引き抜かれ
度」を実質的に限定するものではない。
の密度を実質的に維持する、 ていると考えられ、高められた有効スティッチ速度(有効処理スティッチ速度)は、異なる色のヤーンの
数を乗じたものとなっており、このような制御を行うことにより、物品の密度を実質的に維持している。
したがって、被告製品は構成要件2Hを充足する。
構成要件 原告の主張 被告の主張
被告製品のタフティングマシンは、模様を有するタフティングされたカーペット
複数の異なる糸を含むパターン化タフト状物品を形成するためのタ
3A を形成するものであり、タフトによる模様は異なる色のヤーンを含むから、被告 1Aに関する被告の主張と同様であり、被告製品は構成要件3Aを充足しない。
フティング機であって、該タフティング機は、
製品は構成要件3Aを充足する。
1Fに関する原告の主張と同様であり、被告製品のLOOPERは、針からヤーンの
一連のゲージ部品であって、該一連のゲージ部品は、該針が該裏打
ループを引っ掛けることができるようにNEEDLEがバッキング材料(裏打ち材
ち材料の中において糸のタフトを形成するように該裏打ち材料の中
料)の裏側から表側に通ったときの対応する位置に設けられているから、被告製
3E へ往復運動させられるとき、該少なくとも1つの針棒の該針と係合 1Fに関する被告の主張と同様であり、被告製品は構成要件3Eを充足しない。
品のLOOPERは、糸のタフトを形成するとき、NEEDLE BARと係合する位置に設
する位置において、該タフティング区画の下に載置される、一連の
けられている。そうすると、被告製品の一連なりのLOOPERは、構成要件3Eの
ゲージ部品と、
「一連のゲージ部品」に相当し、被告製品は同構成要件を充足する。
「効果的ステッチレート」は、1G2の「有効スティッチ速度」を意味し、「所望 構成要件3F2における「所望の織物ステッチレート」や「効果的ステッチ
の織物ステッチレート」は、1G2の「規定されたスティッチ速度」を意味するか レート」は、本件発明1における「規定されたスティッチ速度」と「有効ス
ら、これらの意味については、1G2に関する原告の主張のとおりである。 ティッチ速度」と、それぞれ同義と考えられるから、本件発明1の構成要件1
該パターン化タフト状物品を形成するように該パターン化タフト状
構成要件3F2は、ステッチ分布制御システムが裏打ち供給ロールを制御するこ G2と1G3で述べたことと同様の理由により、被告製品は構成要件3F2を
物品に対する所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは
とで、効果的ステッチレートを、パターン化タフト状物品に対する所望の織元ス 充足しない。
高密度な効果的ステッチレートで該裏打ち材料の供給を制御するた
3F2 テッチレートよりも増大、もしくは高密度にすることで、所望の織物ステッチ また、本件発明3は「ゲージ=織物ステッチレート」とすることに特化したタ
めに、該裏打ち供給ロールを制御し、該パターン化タフト状物品の
レートの物品のパターン化タフト状物品を形成することを発明特定事項とする。 フティングマシンにかかる発明であるところ、被告製品は、ゲージに基づいて
表側は、該所望の織物ステッチレートの外観を有する、ステッチ分
被告製品の制御システムは、「有効スティッチ速度」を「規定されたスティッチ 織物ステッチレート(外観に表れる何らかのタフトの数)が自動的に決定する
布制御システムとを備える、
速度」よりも増大させるために、BACKING FEED ROLLSを用いてタフティング 制御手段を備えるものではなく、被告製品によって形成される物品は「織物ス
区画へのバッキング材料(裏打ち材料)へ供給速度を制御している。 テッチレート」の外観を備えないから、被告製品は、構成要件3F2を充足し
したがって、被告製品は構成要件1G2を充足する。 ない。
無効理由 被告の主張 原告の主張
本件発明1及び2では、「スティッチ速度」と
の用語が用いられているが、「速度」との記載
では不明確である。仮に「スティッチ速度」が 「スティッチ速度」は、例えば1インチ(2.
用語「stich rate」の訳であれば、「レート」を 54cm)当たりのスティッチの数を意味す
「速度」と誤訳したものであり、明確性要件違 る。
反を否定する理由にならない。 すなわち、特許請求の範囲の用語の意義は、明
原告は、「スティッチ速度」は「1インチ 細書の記載等を考慮して解釈されるところ、本
(2.54cm)当たりのスティッチ数をいうこ 件明細書1の段落【0007】【0011】【0049】
とは明らかである」と述べるが、「スティッチ 【0053】に「スティッチ速度」に関する記載
速度」の字義からして、「(単位時間当たり) があり、「スティッチ速度」が、例えば1イン
スティッチ数」の意味と理解されるし、「速 チ(2.54cm)当たりのスティッチの数の
度」という用語からしても、「速度」に関連し 意味として使われている。「速度」を英訳する
明確性要 た用語としか理解できないから、原告の主張は 際に「rate」の訳があてられることがあり、
件違反 字義に反する。原告が主張の根拠とする、甲7、 「スティッチ速度」が「stich rate」に対応す
甲10、本件明細書1の段落【0007】【0011】 ると考えることに特に無理はない。さらに、
は、「stich rate」の用語を説明するにすぎず、 「スティッチ速度」に関する上記解釈は、本件
1インチ当たりのステッチ数であることを示す 発明1及び2の特許請求に範囲の記載(構成要
ものとはいえない。さらに、乙7の文献では、 件1A、1G2、2H)とも整合する。したがっ
「ステッチ速度」との用語を用いて、針棒 て、「スティッチ速度」の記載は、明確性要件
(ニードルバー)の往復運動の速度を意味する に反するものではない。
ものとされており、この分野において「ステッ なお、被告の指摘する乙7に係る発明は、針棒
チレート」とは異なる意味で「速度」と規定す を往復運動する「針スティッチ速度」に関する
ることはあり得るなど、「スティッチ速度」と 発明であり、針棒の往復運動それ自体に特に特
いう用語を「スティッチレート」という確立し 徴のない本件発明1とは関連がない。
た別の技術用語の意味で使用するという無理な
解釈を採用する余地はない。
無効理由 被告の主張 原告の主張
本件発明3の構成は、乙4公報に全て記載されている。 乙4公報は、少なくとも構成要件3F1及び3F2の構成を開示していない。
3a 複数の糸を送る糸送りユニットを備え、所望のカーペット・パターンを持つカーペット形成するためのタフト作製機であって、該タフト
作製機は、
3b 少なくとも1つの往復針棒17であって、該少なくとも1つの往復針棒17に沿って一連の針13が載置されている、少なくとも1つの
針棒と、
3c 該タフト作製機の針13の下に画定されるタフト作製領域を通して基材14(=裏打ち材料)を供給するための基材送りロール18と、
3d 一連の糸を該針に供給するための糸送りユニット50と、
3e 一連のルーパ23であって、該一連のルーパ23は、該針が基材の中において糸のループまたはタフトを形成するように基材14の中を
乙4発明 上昇、下降させられるとき、該針のつくるループと係合する位置において、タフト作製領域の下に載置される、一連のルーパ23と、
の構成
3f 制御システムであって、
3f1 該制御システムは、ユーザの所望するカーペット・パターンをタフトするために要求される糸送りレートを計算したパターン・データに
したがって、タフト作製機を通過する基材に所望のパターンが形成されるように個々の針13への該糸の供給を独立に制御するために、該糸送り
ユニット50を制御し、かつ、
3f2 ユーザの所望するカーペット・パターンをタフトするために要求される基材の送りまたはステッチレートを計算したパターン・データに
したがって基材の供給を制御するために、該基材送りロール18を制御し、ユーザの所望するカーペット・パターンを生成する、制御システムと
を備える、
3g タフト作製機。
従来技術と本件発明3との関係
本件各特許の優先日当時、ハイ・アンド・ロー(隠したい色のヤーンを引き戻し、その色のタフトの高さを他のタフトよりも低くする技術。以下「ハイロー
被告が提出する各証拠をみても、本件各特許の優先日前において、被告が主張する各技術常識があったとはいえな
制御」という。)とニードルシフト(シフターを用いて針棒を左右に動かすこと)を組み合わせたタフティングマシンは技術常識であり(乙2、10~1
い。
4)、ハイロー制御では、一部のヤーンを引き戻してロータフトにする結果、絨毯の表にみえる高いタフトの密度が下がり、図形模様が不鮮明になり易いと
また、従来のタフティングマシンにおいて、バッキング給送速度を遅くし、ステッチ方向のタフトの密度を高めただ
いった問題が生じることもよく知られていた(乙5公報の段落【0003】、乙10)。また、ステッチレートが基布を送る速度で調整され、任意の密度で設定
けでは、単に縮んだ模様が作成されるだけであり、ユーザが所望する模様を作成することはできない。本件発明は、
乙4発明に基づ されていたことや、ゲージと同時にステッチ数を考慮することも、一般的な計算を行う前提として利用されている程度の技術常識であった(乙10、11、 有効スティッチ速度等という考え方を導入することによって、このような課題を解決したものである。すなわち、升
2 13)。
く新規性欠如 目を用いて説明されるように、本件発明によれば、それぞれの色の糸が各スティッチ場所に保持されることを可能に
「所望の織物ステッチレート」をゲージとほぼ一致するものではなく、原告が主張するように単に作りたいステッチレートという意味で解釈してしまうと、
し、かつ、所望の色の糸だけが模様の各スティッチ場所に保持されることで、正確なゲージ範囲のカーペットを作成
上記技術常識を踏まえた従来技術であっても本件発明3であっても、例えば3色のタフトがなされた後に1色のみが残されるというだけのことであって、実
することが可能となる。
際に打つステッチの数(=効果的ステッチレート)が残された色のステッチの数(=所望の織物ステッチレート)の「色の数倍」になっている点では変わら
ないから、本件発明と従来技術の区別がつかない。
構成要件3A~3E
いずれもタフティングマシンを構成する部材に係る記載であり、乙4発明と構成を同じくすることに争いはない。
構成要件3A
構成要件3F1
3A中の「異なる糸」は、「複数の糸」が使用されている乙4発明との関係において、実質的な相違点とはならない。
3F1は所望の箇所に所望の色のヤーンのみをタフトすることで保持し、その他の色のヤーンを引き下げるか、引き
構成要件3F1
抜くことを発明特定事項とするものである。乙4公報の段落【0004】は背景技術に関する記載であり、【0004】の
3F1中の「一連の糸の中の糸を選択的に保持する」は、乙4発明との間の相違点になり得ない。すなわち、当該構成要件の意味は、選択されたステッチ場
記載から乙4発明の構成を認定することはできないし、被告が引用するその他の乙4公報の記載内容をみても、前記
所において、模様に表したい色のヤーンを選択的に高いタフトで残し、残りの色のヤーンを引き抜けるように針への糸供給量を糸供給機構が制御することで
技術的意義を有する3F1の構成を開示するものではない。
あるところ 、本件特許3の優先日当時のハイロー制御とニードルシフトを組み合わせたタフティングマシンにおいては、任意の模様を作成できたのであるか
構成要件3F2
ら、このようなことは、これらの機械が備える当然の前提にすぎない。また、乙4公報の段落【0004】及び【0013】にも、「一連の糸の中の糸を選択的に
本件発明の技術的特徴の一つは、引き抜かれる(または引き下げられる)ヤーンのタフトを考慮に入れた十分なス
保持する」ことが開示されていると解される。
テッチを打つことで、カーペットの模様が規定されたスティッチ速度等の外観を備えるように、タフティングマシン
構成要件3F2
に有効スティッチ速度等という考え方を導入し、有効スティッチ速度等を規定されたスティッチ速度等よりも大きく
3F2における「所望の織物ステッチレート」とは、「タフティングマシンを用いて実際に作成された模様にかかるステッチレート」のことであり、「所望
するようにバッキング材料の供給速度を制御することである。本件発明3の「効果的ステッチレート」は、引き抜か
の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレート」というのは、「所望の織物ステッチレート」×「ヤーンの数」を含んでい
れる(または引き下げられる)ヤーンのタフトを考慮に入れた、タフティングされた物品の模様が「所望の織物ス
る。そうであるところ、乙4公報の段落【0015】ないし【0018】の記載によれば、3f2は、「ユーザの所望するカーペット・パターンをタフトするため
テッチレート」の外観を有するための効果的なステッチレートを意味する。乙4公報の段落【0018】は、ステッチ
に要求される基材の送りまたはステッチレートを計算したパターン・データにしたがって基材の供給を制御するために、該基材送りロール18を制御」する
レートをバッキング給送速度によって制御することを開示するものにすぎず、上記技術的意義を有する「効果的ス
ことにより、「ユーザの所望するカーペット・パターン」を得ている。また、「複数の糸」を使用する乙4発明においては複数の色の糸が使用されていると
ティッチレート」でタフティングするためにバッキング給送速度を制御することを何ら開示するものではない。
理解されるところ、ニードルシフトとハイロー制御とを組み合わせた多色のタフティングマシンは、例えば、3色のタフトをすれば所望の1色以外は引き抜
く(あるいは引き下げる)のであるから 、実際のステッチレート(「所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレー
ト」)は、自ずと「所望の織物ステッチレート」×「ヤーンの数」になる。したがって、3F2と3f2は一致する。
無効理由 被告の主張 原告の主張
本件発明3は、乙4発明に技術常識又は設計的事項を適用することで容易に想到できる。 乙4公報は、少なくとも構成要件3F1及び3F2の構成を開示していない。
本件発明3
本件発明3と乙4発明とは、以下の点で相違し、その他の点で一致する。
との対比
構成要件3Aにおいて、本件発明3では「複数の異なる糸」とされているのに対し、乙4発明では「複数の糸」が使用
相違点1
されているが、それが「異なる糸」であるか否かは明示されていない点。
構成要件3F2において、本件発明3は「該パターン化タフト状物品を形成するように該パターン化タフト状物品に対
する所望の織物ステッチレートよりも増大した、もしくは高密度な効果的ステッチレートで該裏打ち材料の供給を制御
するために、該裏打ち供給ロールを制御し、該パターン化タフト状物品の表側は、該所望の織物ステッチレートの外観
相違点2 を有する、ステッチ分布制御システムとを備える、」とされているのに対し、乙4発明は「ユーザの所望するカーペッ
ト・パターンをタフトするために要求される基材の送りまたはステッチレートを計算したパターン・データにしたがっ
て基材の供給を制御するために、該基材送りロール18を制御し、ユーザの所望するカーペット・パターンを生成す
る、制御システムとを備える、」点。
相違点1に関し
無効主張(本件発明3・新規性欠如)の被告の主張のとおり、相違点1は実質的な相違点とはならない。
乙4発明に基
無効主張(本件発明3・新規性欠如)の原告の主張のとおり、乙4公報は、ステッチ
3 づく進歩性欠
相違点2に関し レートをバッキング給送速度によって制御することを開示するものにすぎず、本件発明
如
無効主張(本件発明3・新規性欠如)の被告の主張のとおり、相違点2は、いずれもハイロー制御とニードルシフトを 3の技術的特徴である、「所望の織物ステッチレート」の外観を有する物品を製造する
組み合わせた際の自明な事柄にすぎず、乙4発明に技術常識ないしは設計的事項を適用したにすぎないから、容易想到 ために、「効果的ステッチレート」を「所望の織物ステッチレート」よりも大きくなる
である。 ようにバッキング給送速度を制御することを何ら開示するものではなく、被告が提出す
る証拠をみても、これを開示するものはない。
容易想到性 構成要件3F1は、特定の箇所にスティッチされた例えば3色のヤーンのうち、所望の色
のヤーンのみを保持し、その他の色のヤーンを引き下げるなどすることを発明特定事項
仮に「一連の糸の中の糸を選択的に保持する」構成が相違点とされたとしても、乙4発明に基づく新規性欠如で前述し とするものであるが、乙4発明には有効スティッチ速度等という考え方が導入されてお
た事情や多色の色を用いることは技術常識であることを加味すると、極めて容易想到であるといえる。 らず、所望のパターンを形成するための糸送りユニット50による糸の供給の制御は特
定の箇所におけるヤーンを引き下げ、または引き抜く制御にすぎないことから、構成要
件3F1を開示するものではない。
顕著な効果の有無 従来のタフティングマシンでは、必ずしも所望の位置に所望のヤーンをがスティッチさ
本件発明3によれば、「高いタフトの間に埋め込まれた低いタフトが視認されて、ぼやけた印象になる」という本件発 れなかったが、本件発明3では、所望の位置に所望のヤーンをスティッチすることが可
明の課題さえ解消できていないのであって、その効果は従来技術と変わるものではない(要するに、作成者の主観的な 能であり、織物の見た目がずれることなくぼやけた印象にならないという効果を奏す
意図にしたがい、ぼやけた印象にも密な印象にもできるというだけのことである。)。 る。
無効理由 被告の主張 原告の主張
本件発明1は、乙4発明に技術常識又は設計的事項、若しくは乙5発明を適用することで容易に想到できる。
1a 複数の糸を送る糸送りユニットを備え、所望のカーペット・パターンを持つカーペット形成するためのタフト作製機であって、該タフト作製機は、
1b 少なくとも1つの往復針棒17であって、該少なくとも1つの往復針棒17に沿って一連の針13が載置されている、少なくとも1つの針棒と、
1c 該タフト作製機の針13の下に画定されるタフト作製領域を通して基材14(=裏打ち材料)を供給するための基材送りロール18と、
1d 一連の糸を該針に供給するための糸送りユニット50と、
1e 該少なくとも1つの往復針棒17を横方向でシフト可能にするための往復駆動する主駆動シャフトと、
1f 一連のルーパ23であって、該一連のルーパ23は、該タフト作製領域の下に取り付けられ、該針が基材の中において糸のループまたはタフトを形成するよ
うに基材14の中を上昇、下降させられるとき、該針のつくるループと係合する位置にある、一連のルーパ23と、
乙4発明の 1g 制御システムであって、
構成 1g1 該制御システムは、ユーザーの所望するカーペット・パターンをタフトするために要求される糸送りレートを計算したパターン・データに従って該少なくと
も1つの往復針棒17と該一連の糸を該針に供給するための糸送りユニット50とを制御して、基材に形成される糸の高さを変更し、幾つかの糸のタフトをバックロ
ブして隠す、制御システムとを備え、
1g2 該制御システムは、該基材送りロール18を駆動する駆動モータを制御し、該制御システムは、該糸のタフトが、該タフティングされたカーペットにユーザ
の所望するカーペット・パターンが形成されるように該基材の送りまたはステッチレートを計算したパターン・データにしたがって該基材送りロール18を制御し、
1g3 該ユーザの所望するカーペット・パターンは、ユーザの入力に基づく
1h タフト作製機。
本件発明1
本件発明1と乙4発明とは、以下の点で相違し、その他の点で一致する。 乙4発明は、少なくとも構成要件1G1及び1G2を開示しない。
との対比
構成要件1Aにおいて、本件発明1では「異なる色のヤーン」とされているのに対し、乙4発明では「複数の糸」が使用されているが、それが「異なる
相違点1
色のヤーン」であるか否かは明示されていない点。
構成要件1G2において、本件発明1は「該制御システムは、該バッキング給送ロールとリンクされ、該制御システムは、該ヤーンのタフトが、該タフ
ティングされた物品の模様の外観が該模様の規定されたスティッチ速度で形成されるように該タフティングされた物品を形成するのに十分なだけ該タフ
乙4発明に
ティングされた物品の模様の該規定されたスティッチ速度よりも大きな有効スティッチ速度で該バッキング材料において形成されるように、該バッキン
4 基づく進歩 相違点2
グ材料を給送するために該バッキング給送ロールを制御し、」とされているのに対し、乙4発明は「該制御システムは、該基材送りロール18を駆動す
性欠如
る駆動モータを制御し、該制御システムは、該糸のタフトが、該タフティングされたカーペットにユーザが所望するカーペット・パターンが形成される
ように該基材の送りまたはステッチレートを計算したパターン・データにしたがって該基材送りロール18を制御し、」とされる点。
構成要件1G3において、本件発明1は「該規定されたスティッチ速度は、該タフティングマシンのゲージに従って決定される、」とされているのに対
相違点3
し、乙4発明は「該ユーザの所望するカーペット・パターンは、ユーザの入力に基づく」とされる点。
相違点1に関し 無効主張(本件発明3・進歩性欠如)の相違点1における被告の主張のとおり、相違点1は実質的な相違点とはならない。
相違点2に関し 無効主張(本件発明3・進歩性欠如)の相違点2における被告の主張と同様の理由で、構成要件1G2は、乙4発明に技術常識又は
無効主張(本件発明3・進歩性欠如)の相違点2における原告の主張と
設計的事項を適用することにより容易想到である。なお、本件発明1の構成要件1G2における「規定されたスティッチ速度」とは、「タフティングマ
同様の理由で、乙4公報は構成要件1g2を開示しないし、構成1g2
シンを用いて実際に作成された模様にかかるステッチレート」のことであり、「規定されたスティッチ速度よりも大きな有効スティッチ速度」というの
は構成要件1G2に相当しない。
は、「規定されたスティッチ速度」×「ヤーンの数」を含んでいる。
乙5公報の記載(【0003】【0005】)によれば、乙5発明は、第1パイ
相違点3に関し 構成要件1G3における「規定されたスティッチ速度は、該タフティングマシンのゲージに従って決定される、」とは、実際にでき ル群と、第1パイル群のバックステッチ面の上に重ねてジグザグにタフ
あがったカーペットのステッチ方向の高いタフトの密度が、ゲージと等しくなることを意味している。乙4発明では、ユーザの入力に基づいて、ユーザ テイングされた第2パイル群とによってパイル層を形成し、2種類のパ
容易想到性 の所望するカーペット・パターンが形成されるところ、できあがったカーペットのステッチ方向における高いタフトの密度をどのようにするかは、ユー イル群を特定の態様で順次重ねることにより課題を解決するものであ
ザが所望するカーペットに応じて、適宜設計しうる事項であり、本件明細書1によれば、従来からゲージを基準にしていたというのであるから(本件明 る。乙5公報記載の第2の特徴も、同様の方法により課題を解決するも
細書1の段落【0049】)、容易想到であることは明らかである。 のであり、「効果的スティッチレート(有効スティッチ速度)」でタフ
また、乙5公報には2色でタフティングする場合、ステッチレートをゲージの約2倍にする乙5発明が開示されているのであり、乙4発明にこれを組み ティングするためにバッキング給送速度を制御することを開示するもの
合わせることで当業者が容易に想到する構成である。 ではないから、乙4発明と乙5発明の組合せに基づく被告の容易想到性
の主張は理由がない。
顕著な効果の有無 ステッチレート(1インチあたりに打ち込むステッチ数)を種々変更して作成した織物のステッチレートがゲージ通りであって
無効主張(本件発明3・進歩性欠如)の顕著な効果の有無における原告
も、ゲージ通りではなくても、パイル密度が高くなることで外観の印象が多少変わることや、それによる質感の向上という従来技術による効果以外、特
の主張のとおりである。
別の効果が生じるものではない。 149
無効理由 被告の主張 原告の主張
本件発明2は、乙4発明に技術常識又は設計的事項、若しくは乙5発明を適用することで容易に想到できる。
2a 複数の糸を送る糸送りユニット50を備え、所望のカーペット・パターンを持つカーペット形成するためのタフト作製機であって、該タフト作製機は、
2b 少なくとも1つの往復針棒17であって、該少なくとも1つの往復針棒17に沿って一連の針13が載置されている、少なくとも1つの針棒17と、
2c 該タフト作製機の針13の下に画定されるタフト作製領域を通して基材14(=裏打ち材料)を供給するための基材送りロール18と、
2d 一連の糸を該針に供給するための糸送りユニット50と、
2e 該少なくとも1つの往復針棒17を横方向でシフト可能にするための往復駆動する主駆動シャフト、
乙4発明の 2f 一連のルーパ23であって、該一連のルーパ23は、該タフト作製領域の下に取り付けられ、該針が基材の中において糸のループまたはタフトを形成するよ
構成 うに基材14の中を上昇、下降させられるとき、該針のつくるループと係合する位置にある、一連のルーパ23と、
2g 制御システムであって、
2g 該制御システムは、該基材を給送する該基材送りロール18を制御し、該制御システムは、該少なくとも1つの往復針棒17と該一連の糸を該針13に供給
するための糸送りユニット50とを制御して、基材に形成される糸の高さを変更し、幾つかの糸のタフトをバックロブして隠す、制御システムとを備え、
2h 該糸13のタフトは、ユーザが所望するカーペット・パターンをタフトするために要求される基材の送りまたはステッチレートで該基材において形成され、
できあがる模様はユーザが所望する密度になっている
2i タフト作製機。
乙4発明に基 本件発明2
本件発明2と乙4発明とは、以下の点で相違し、その他の点で一致する。 乙4発明は、構成要件2G及び2Hを開示しない。
5 づく進歩性欠 との対比
如
構成要件2Aにおいて、本件発明2では「複数の異なる色のヤーン」とされているのに対し、乙4発明では「複数の糸」が使用されているが、それが「異なる色の
相違点1
ヤーン」であるか否かは明示されていない点。
構成要件2Hにおいて、本件発明2は「該ヤーンのタフトは、高められた有効処理スティッチ速度で該バッキング材料において形成され、該高められた有効処理ス
ティッチ速度は、該模様を形成する異なる色のヤーンの数を乗じた、形成される該模様がつけられタフティングされた物品の所望のスティッチ速度に基づいており、
相違点2
該模様がつけられた物品の密度を実質的に維持する、」とされているのに対し、乙4発明は「該糸13のタフトは、ユーザが所望するカーペット・パターンをタフト
するために要求される基材の送りまたはステッチレートで該基材において形成され、できあがる模様はユーザが所望する密度になっている」とされている点。
相違点1に関し
無効主張(本件発明3・進歩性欠如)の相違点1における被告の主張のとおり、相違点1は実質的な相違点とはならない。
無効主張(本件発明3・進歩性欠如)の相違点2における原告
相違点2に関し の主張と同様の理由で、乙4公報は構成要件2Hを開示しない
無効主張(本件発明3・進歩性欠如)の相違点2における被告の主張と同様の理由で、構成要件2Hは、乙4発明に技術常識又は乙5発明を適用することにより容易 し、構成2hは構成要件2Hに相当しない。
容易想到性 想到である。なお、構成要件2Hには「異なる色の糸の数倍」との記載があり、仮にこの点が相違点になるとしても、自明な事項にすぎず、乙4発明に技術常識又は また、無効主張(本件発明1・進歩性欠如)の相違点3におけ
設計的事項を適用したにすぎない。 る原告の主張と同様、乙4発明と乙5発明の組合せに基づく被
告の容易想到性の主張は理由がない。
顕著な効果の有無
無効主張(本件発明3・進歩性欠如)の顕著な効果の有無にお
本件発明2によれば、「高いタフトの間に埋め込まれた低いタフトが視認されて、ぼやけた印象になる」という課題さえ解消できていないのであって、その効果は従
ける原告の主張のとおりである。
来技術と変わるものではない
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