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令和4(ワ)2551損害賠償請求事件

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裁判所 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和5年11月10日
事件種別 民事
当事者 原告エスキー工機株式会社
被告株式会社エイ・アイ・シー
法令 不正競争
不正競争防止法5条2項7回
不正競争防止法2条1項20号6回
キーワード 侵害3回
無効2回
無効審判1回
損害賠償1回
主文 1 被告は、原告に対し、9164万3940円並びにうち4928万円に
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
1 事案の要旨
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(以下、書証番号は
2500台以上」、「25年の実績」及び「日本全国の導入実績3,510
00台以上の実績」との表示
3 争点
4 争点に関する当事者の主張20
1 争点1(品質誤認表示該当性)について
0台以上が販売されているとの事実を、「ゴミサー/ゴミサポーターはその
2,300台以上が稼働しています。」との表示は、被告商品は、その処理
00台以上が販売されたとの事実を需要者に対し認識させるものである。
300台以上の導入実績」は、被告商品は、全国で2300台以上が販売
500台以上の実績」との表示は、前記アのとおり、被告商品は、全国で315
500台以上が販売されたとの事実を需要者に対して認識させるものであ
00台以上」及び「日本全国の導入実績3,500台以上の実績」の表示
2 争点2(被告の故意の有無)について
3 争点3(原告の損害発生の有無及び損害額)について
8021円であるから、不正競争防止法5条2項の適用により、原告の損害
事件の概要 1 事案の要旨 本件は、生ごみ処理機を販売する原告が、被告に対し、被告の管理するウェ25 ブサイトにおける、被告の販売する業務用生ごみ処理機に係る表示は、その品 質について誤認させるような表示であり、同表示をする行為は不正競争(不正 競争防止法2条1項20号)に該当し、これにより原告の営業上の利益が侵害 されたとして、不正競争防止法4条に基づき、同法5条2項により算定される 損害金1億3605万6823円の一部である9164万3940円並びにう ち4928万円に対する令和4年2月2日(不正競争行為の後の日)から支払5 済みまで及びうち4236万3940円に対する令和5年5月27日(令和5 年5月23日付け訴えの変更申立書送達の日の翌日)から支払済みまでそれぞ れ民法所定年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

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判決文

令和5年11月10日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和4年(ワ)第2551号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和5年9月6日
判 決
原 告 エスキー工機株式会社
同訴訟代理人弁護士 河 部 康 弘
藤 沼 光 太
同補佐人弁理士 齋 藤 昭 彦
被 告 株式会社エイ・アイ・シー
同訴訟代理人弁護士 錦 織 淳
主 文
1 被告は、原告に対し、9164万3940円並びにうち4928万円に
15 対する令和4年2月2日から支払済みまで及びうち4236万3940円
に対する令和5年5月27日から支払済みまでそれぞれ年3パーセントの
割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
20 事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要等
1 事案の要旨
25 本件は、生ごみ処理機を販売する原告が、被告に対し、被告の管理するウェ
ブサイトにおける、被告の販売する業務用生ごみ処理機に係る表示は、その品
質について誤認させるような表示であり、同表示をする行為は不正競争(不正
競争防止法2条1項20号)に該当し、これにより原告の営業上の利益が侵害
されたとして、不正競争防止法4条に基づき、同法5条2項により算定される
損害金1億3605万6823円の一部である9164万3940円並びにう
5 ち4928万円に対する令和4年2月2日(不正競争行為の後の日)から支払
済みまで及びうち4236万3940円に対する令和5年5月27日(令和5
年5月23日付け訴えの変更申立書送達の日の翌日)から支払済みまでそれぞ
れ民法所定年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(以下、書証番号は
10 特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1) 当事者
ア 原告は、生ごみを分解及び消滅させる生ごみ処理機をはじめとする、各
種ミキサーの製造及び販売を主たる業務とする株式会社である。
イ 被告は、業務用の生ごみ処理機等の各種機器の販売及び製造委託を業務
15 とする株式会社である(弁論の全趣旨)。
(2) 原告の事業
原告は、平成4年に、業務用生ごみ処理機を製品化し、現在に至るまで、
「ゴミサー」との名称で同業務用生ごみ処理機を販売している(以下、原告
販売に係る業務用生ごみ処理機を「原告商品」という。。

20 (3) 被告の事業
被告は、平成8年頃から、原告商品の販売代理店として原告商品を販売し
ていたが、令和元年頃、原告と被告との間の原告商品の販売代理店契約が終
了したことから、原告からの令和元年5月7日納入分を最後に、原告商品の
販売を停止した(甲41、弁論の全趣旨)。
25 (4) 原告と被告との取引の停止後の被告の事業(乙76、弁論の全趣旨)
株式会社テクノウェーブ(以下「テクノウェーブ」という。)は、平成14
年頃から、「イーキューブ」との名称の業務用生ごみ処理機を製造していたと
ころ、被告は、前記(3)の原告商品の販売を終了した後、テクノウェーブが製
造する上記業務用生ごみ処理機(以下「被告商品」という。)を「ゴミサー」
の名称で販売するようになり、令和元年5月8日から令和5年4月末までに、
5 合計258台の被告商品を販売した。同販売による被告の限界利益の額は1
億2368万8021円である。
(5) 被告ウェブページの表示
被告は、令和元年5月8日から、被告が管理するウェブページ(以下「被
告ウェブページ」という。)上において、被告の販売する製品の紹介等として、
10 次の広告表示(以下「被告表示」という。)をした。
ア 令和3年8月30日まで(甲4ないし6、9ないし14、弁論の全趣旨)
① 「ゴミサー」との名称を表示
② 原告商品の写真を表示
③ 「生ゴミ処理機ゴミサー製造元 エスキー工機株式会社」との表示
15 ④ 「業界1位の業務用生ごみ処理機です。、
」「全国導入実績2,500
台以上」 「ゴミサー/ゴミサポーターはその処理方法・性能が多くの

企業・施設で認められ、おかげ様で現在、全国で2,300台以上が
稼働しています。 、
」 「全国・海外での導入実績は3,500台以上。」
及び「発売開始から25年!生ゴミ処理機ゴミサーは「水になる処理
20 機」のパイオニア」との表示
イ 令和3年8月31日から令和5年3月6日頃まで(甲15、16、18、
弁論の全趣旨)
① 「ゴミサー」との名称を表示
② 原告商品の写真を表示
25 ③ 「ゴミサー/ゴミサポーターはその処理方法・性能が多くの企業・
施設で認められ、おかげ様で現在、全国で2,300台以上が稼働し
ています。 、
」 「全国・海外での導入実績は3,500台以上。」及び
「販売開始から25年!生ゴミ処理機ゴミサーは「水になる処理機」
のパイオニア」との表示
ウ 令和5年3月7日頃から同年4月30日まで(甲40、弁論の全趣旨)
5 ① 「実績紹介」として、「都道府県別実績数」及び「施設別実績数」が
掲載され、合計3049台の実績がある旨の表示
② 「全国2,300台以上の導入実績」 「ゴミサー/ゴミサポーター

はその処理方法・性能が多くの企業・施設で認められ、おかげ様で現
在、全国で2,500台以上が稼働しています。 、
」 「おかげ様で全国で
10 2500台以上」、「25年の実績」及び「日本全国の導入実績3,5
00台以上の実績」との表示
エ 被告商品の販売等実績について(甲7、乙69、76)
被告による原告商品の累計販売実績は合計956台、令和5年4月末ま
での被告商品の累計販売実績は258台であり、原告商品と被告商品を併
15 せても、前記ア④、イ③及びウの販売実績に満たない。
3 争点
(1) 品質誤認表示該当性(争点1)
(2) 被告の故意の有無(争点2)
(3) 原告の損害発生の有無及び損害額(争点3)
20 4 争点に関する当事者の主張
(1) 争点1(品質誤認表示該当性)について
(原告の主張)
不正競争防止法2条1項20号の「品質」には、商品の販売実績も含まれ
る。すなわち、業務用生ごみ処理機のような高価な機械の場合、十分な販売
25 実績があるということは、販売期間中、性能についての悪評が広まることな
く需要者に信用され続けてきたということを意味し、業務用生ごみ処理機の
性能や信頼性を示す物差しとなり、商品の「品質」の一部を構成するといえ
る。
そうすると、被告が被告ウェブページ上で、被告商品の販売実績について
虚偽の表示をする行為は、商品の品質を誤認させるような表示をする行為で
5 あるといえ、不正競争行為(不正競争防止法2条1項20号)に当たる。
被告は、被告ウェブページ掲載時に販売している被告商品の製造元があた
かも原告であるように偽り、また、原告商品の販売実績をあたかも被告商品
の販売実績のように偽っている。すなわち、本件において問題となる「品質」
とは、長年にわたって業務用生ごみ処理機を製造してきた原告が製造する商
10 品であること、又は、顧客へのアピールになるだけの十分な販売実績のある
商品であることであり、被告はこれを偽ることで、品質の誤認惹起行為を行
っている。
したがって、被告は、被告ウェブページ上に、被告商品の品質を誤認させ
るような表示をしたといえる。
15 (被告の主張)
「品質」(不正競争防止法2条1項20号)とは、一般的には、商品の用途
及び目的への適合性をいうのであり、広義においては、商品の原材料、成
分、製造、加工方法、新しい型であるか古い型であるか、製造時期、天然又
は人工の別などがこれに当たる。また、品質誤認は、商品の原産地、製造
20 者、原料の仕入先、仕入方法、創業年代などを偽ることがこれに当たる。
そして、本件において、原告商品及び被告商品の間に、性能及び機能にお
ける違いがないことに争いはないから、前提事実(5)アないしウの記載に品質
について誤認させるような表示はないといえる。
原告は、原告商品の販売実績を被告商品の販売実績と偽ったとして、これ
25 が被告商品の品質の誤認表示だと主張するが、販売実績の違いは、商品の品
質の違いを推認するものにすぎないから、上記のとおり、原告商品及び被告
商品の間に、性能及び機能における違いがない本件においては、原告商品と
被告商品の品質の違いが推認されるものではない。
また、前提事実(5)ア記載の表示は、原告と被告との間の取引が終了した
後、一時的かつ短期的に残存していたものにすぎない。その内容自体も、被
5 告が販売した原告商品の販売実績を記載したものであるから、虚偽ではなく
真実そのものである。ただ、速やかに消去すべきものであったにすぎない。
したがって、被告表示は、被告商品の品質を偽ったものではなく、品質の
誤認表示には当たらない。
(2) 争点2(被告の故意の有無)について
10 (原告の主張)
被告は、令和元年5月8日から、原告商品を購入し、販売することができ
なくなったことから、被告商品を購入し、販売するに至ったのであり、被告
商品が原告商品とは異なるものであり、また、被告商品が原告製造に係るも
のではないことや、前提事実(5)ア④、イ③及びウに係る販売実績を有してい
15 ないことも知っていた。したがって、被告は、故意により、被告ウェブペー
ジ上に被告商品の品質を誤認させる表示をしたといえる。
また、原告は、令和2年2月25日、原告と被告との間の商標登録無効審
判事件(無効2019-890054号)の審理において、被告ウェブペー
ジで被告商品の製造元が原告と表示されていることを指摘している。それに
20 もかかわらず、被告は、上記表示を1年半以上も放置していたのであるから、
故意により上記表示をしていたことは明らかである。
さらに、被告は、被告商品の販売実績でないことを知りつつも、被告ウェ
ブページに原告商品の販売実績を被告商品の販売実績として掲載し続けてい
たのであるから、故意があると認められる。
25 (被告の主張)
前記(1)(被告の主張)のとおり、被告表示は、原告と被告との間の取引が
終了した後、一時的かつ短期的に残存していたものにすぎない。被告表示の
内容も虚偽ではなく真実そのものである。ただ、速やかに消去すべきもので
あったにすぎない。
したがって、被告には、被告ウェブページに虚偽の事実を掲載したことに
5 ついて故意はない。
(3) 争点3(原告の損害発生の有無及び損害額)について
(原告の主張)
ア 原告と被告との間に競業関係があることについて
原告は、被告との間で取引が終了した後も、被告商品と同種の業務用
10 生ゴミ処理機である原告商品を製造及び販売し続けている。
また、被告の顧客層は、保育園、老人ホーム、病院、食品工場、ホテル、
官公庁、ファミレス及び船舶であり、販売エリアは全国及び海外であると
ころ、原告の顧客層も、保育園、老人ホーム、病院、食品工場、ホテル、
官公庁、飲食店チェーン及び船舶であり、販売エリアは日本全国、スリラ
15 ンカ、中国、フィリピン、香港などであり、原告と被告の顧客層及び販売
エリアは共通している。
したがって、原告と被告との間には競業関係があるといえ、不正競争防
止法5条2項の適用があるといえる。
イ 被告の限界利益額について
20 被告が被告ウェブページ上において被告商品の品質を誤認させる表示を
していた令和元年5月8日から令和5年4月末までの間、被告商品を販売
したことによる被告の限界利益の額は、1億2368万8021円である。
ウ 小括
以上によれば、原告の損害額は、1億2368万8021円と推定さ
25 れる。
(被告の主張)
ア 原告と被告との間に競業関係がないことについて
通常、不正競争が問題となるのは、単一ないし同一の市場において、
原告及び被告が互いに排斥し合う場合であるところ、原告及び被告の関係
はこれとは全く異なっている。
5 被告は、原告との取引継続中、自らの努力により市場を獲得及び拡大し
ていたのに対し、原告は、長年に渡り独自の市場を開拓していなかったの
であり、原告の市場は、被告の市場に全面依存しているという状況であっ
た。このような状況が長年続いた上で、原告と被告との間の取引が停止し
た後に、原告が独自の市場を獲得することは困難である。そうすると、原
10 告は、被告との取引停止後も、独自の市場、すなわち販路を有していない
といえ、単一ないし同一の市場において、互いに競い合い、排斥し合う関
係であるとはいえない。
以上によれば、原告と被告との間に競業関係は存在せず、不正競争防止
法5条2項の推定規定は適用されない。
15 イ 小括
以上によれば、不正競争防止法5条2項の推定規定は適用されず、原告
の損害額は立証されていないから、原告の損害額はゼロである。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(品質誤認表示該当性)について
20 (1) 不正競争防止法2条1項20号の誤認惹起行為が不正競争に該当し違法と
されるのは、事業者が商品等の品質、内容などを偽り、又は誤認を与えるよ
うな表示を行って、需要者の需要を不当に喚起した場合、このような事業者
は適正な表示を行う事業者より競争上優位に立つことになる一方、適正な表
示を行う事業者は顧客を奪われ、公正な競争秩序を阻害することになるから
25 である。
このような趣旨に照らすと、「品質」について「誤認させるような表示」に
該当するか否かを判断するに当たっては、需要者を基準として、商品の品質
についての誤認を生ぜしめることにより、商品を購入するか否かの合理的な
判断を誤らせる可能性の有無を検討するのが相当である。
(2) 被告表示が「品質」について「誤認させるような表示」に該当するかにつ
5 いて
ア 令和元年5月8日から令和3年8月30日までの表示について
前提事実(5)ア④の「全国導入実績2,500台以上」との表示は、被告
が販売している業務用生ごみ処理機、すなわち被告商品は、全国で250
0台以上が販売されているとの事実を、「ゴミサー/ゴミサポーターはその
10 処理方法・性能が多くの企業・施設で認められ、おかげ様で現在、全国で
2,300台以上が稼働しています。」との表示は、被告商品は、その処理
方法及び性能が多くの企業や施設で認められたため、全国で2300台以
上が販売されたとの事実を、「全国・海外での導入実績は3,500台以
上。」との表示は、被告商品は、全国及び海外で3500台以上が販売され
15 たとの事実を需要者に対し認識させるものであると認められる。
他方で、前提事実(5)エによれば、被告が令和元年5月8日以降販売して
いる被告商品の過去の累計販売数は2300台に達するものではないこと
が認められ、少なくとも、上記「全国導入実績2,500台以上」 「ゴミ

サー/ゴミサポーターはその処理方法・性能が多くの企業・施設で認めら
20 れ、おかげ様で現在、全国で2,300台以上が稼働しています。」及び
「全国・海外での導入実績は3,500台以上。」の表示(以下、これらを
併せて「本件誤認惹起表示①」という。)は、いずれも、実際の販売実績と
は異なるにもかかわらず、多数の被告商品が販売されており、このような
販売実績は、被告商品のごみ処理方法及びその性能が他の同種商品に比べ
25 て優れたものであることに起因することを強調するものであって、その結
果、需要者に対し、被告商品がその品質において優れた商品であるとの権
威付けがされ、また、他の需要者も購入しているという安心感を与えるこ
とになるため、需要者が商品を購入するか否かの合理的な判断を誤らせる
可能性があるというべきである。そうすると、本件誤認惹起表示①は、「品
質」について「誤認させるような表示」に該当すると認められる。
5 この点について、被告は、本件誤認惹起表示①は、原告と被告との間の
取引が終了した後、一時的かつ短期的に残存していたものにすぎず、かつ、
被告が販売した原告商品の販売実績を記載したものであるから、虚偽では
なく真実そのものであると主張する。しかし、前記のとおり、需要者は、
本件誤認惹起表示①が被告が過去に販売していた製品についての記載であ
10 ると認識することはなく、現在(被告ウェブページ掲載時)販売している
被告商品についての記載であると認識するといえるから、その表示の残存
が一時的かつ短期的であったとしても、需要者が購入するか否かを決断す
る時点において、その合理的な判断を誤らせる可能性は否定できない。し
たがって、被告の上記主張は採用することができない。
15 イ 令和3年8月31日から令和5年3月6日頃まで
前提事実(5)イ③の「ゴミサー/ゴミサポーターはその処理方法・性能が
多くの企業・施設で認められ、おかげ様で現在、全国で2,300台以上
が稼働しています。」との表示は、前記アのとおり、被告商品は、その処理
方法及び性能が多くの企業や施設で認められたため、全国で2300台以
20 上が販売されたとの事実を、「全国・海外での導入実績は3,500台以
上。」との表示は、前記アのとおり、被告商品は、全国及び海外で合計35
00台以上が販売されたとの事実を需要者に対し認識させるものである。
そして、前記アのとおり、被告商品の過去の累計販売数は2300台に
達するものではないことが認められるから、少なくとも「ゴミサー/ゴミ
25 サポーターはその処理方法・性能が多くの企業・施設で認められ、おかげ
様で現在、全国で2,300台以上が稼働しています。」及び「全国・海外
での導入実績は3,500台以上。」の表示(以下、これらを併せて「本件
誤認惹起表示②」という。)は、前記アで説示したのと同様の理由により、
いずれも、「品質」について「誤認させるような表示」に該当すると認めら
れる。
5 ウ 令和5年3月7日頃から同年4月30日まで
前提事実(5)ウ①の「実績紹介」として、「都道府県別実績数」及び「施
設別実績数」が掲載され、合計3049台の実績がある旨の表示は、被告
商品は、全国で合計3049台が販売されたとの事実を、同②の「全国2、
300台以上の導入実績」は、被告商品は、全国で2300台以上が販売
10 されたとの事実を、「ゴミサー/ゴミサポーターはその処理方法・性能が多
くの企業・施設で認められ、おかげ様で現在、全国で2,500台以上が
稼働しています。」及び「おかげ様で全国で2500台以上」との表示は、
被告商品は、その処理方法及び性能が多くの企業や施設で認められたため、
全国で2500台以上が販売されたとの事実を、「日本全国の導入実績3,
15 500台以上の実績」との表示は、前記アのとおり、被告商品は、全国で3
500台以上が販売されたとの事実を需要者に対して認識させるものであ
る。
そして、前記アのとおり、被告商品の過去の累計販売数は2300台に
達するものではないことが認められるから、少なくとも「都道府県別実績
20 数」及び「施設別実績数」が掲載され、合計3049台の実績がある旨の
表示並びに「全国2,300台以上の導入実績」 「ゴミサー/ゴミサポー

ターはその処理方法・性能が多くの企業・施設で認められ、おかげ様で現
在、全国で2,500台以上が稼働しています。、
」 「おかげ様で全国で25
00台以上」及び「日本全国の導入実績3,500台以上の実績」の表示
25 (以下、これらを併せて「本件誤認惹起表示③」という。)は、前記アで説
示したのと同様の理由により、いずれも、「品質」について「誤認させるよ
うな表示」に該当すると認められる。
(3) 被告の主張について
被告は、販売実績の違いは、商品の品質の違いを推認するものにすぎず、
原告商品及び被告商品の間に、性能及び機能における違いがない本件におい
5 ては、原告商品と被告商品の品質の違いが推認されるものではないと主張す
る。
しかし、前記(1)で説示した不正競争防止法2条1項20号の誤認惹起行為
が不正競争に該当し違法とされる趣旨に照らすと、客観的な性能及び機能に
おける違いがないとしても、前記(2)のとおり、本件誤認惹起表示①ないし③
10 は、いずれも、販売実績について事実と異なる表示をするとともに、同販売
実績が品質の優位性に起因するものであるとの表示をすることによって、そ
のような販売実績をもたらす「品質」であるとの誤解を需要者に与え、その
結果、公正な競争秩序を阻害するものである以上、同号の「品質」について
「誤認させるような表示」に該当すると認めるのが相当である。
15 よって、被告の上記主張を採用することはできない。
2 争点2(被告の故意の有無)について
(1) 弁論の全趣旨によれば、被告は、原告商品を原告の代理店として販売して
いた頃から掲載していた前提事実(5)アの被告表示を、原告との代理店契約を
中止した後もそのまま掲載し続けていたと認められることに加え、前提事実
20 (5)ア①ないし③の記載内容に照らすと、本件誤認惹起表示①は、原告商品に
係る販売実績を内容とするものであったことが認められる。
そして、被告は、本件誤認惹起表示①が、原告商品に関するものであり、
被告商品に関するものではないことを認識しつつも、被告商品の販売を開始
した令和元年5月から令和3年8月30日までこれを掲載し続け、その後も、
25 文言や販売台数を若干変更してはいるものの、本件誤認惹起表示①とほぼ同
一内容の本件誤認惹起表示②及び③を掲載しているのであるから、被告は、
同期間中、故意により、虚偽の販売実績を被告ウェブページ上に表示させて
いたものと認めるのが相当である。
(2) 被告は、本件誤認惹起表示①は、原告との取引終了後もたまたま残存して
いたにすぎず、被告が削除することを失念していたにすぎないと主張する。
5 しかし、被告が現在に至るまで本件誤認惹起表示①ないし③を掲載し続け
ていると認められること(弁論の全趣旨)に照らすと、単に削除を失念して
いただけであるとの被告の主張を採用することはできない。
3 争点3(原告の損害発生の有無及び損害額)について
(1)原告は、不正競争防止法5条2項に基づき、その受けた損害の額を主張して
10 いるところ、被告は同項の適用を争っている。
そこで検討すると、不正競争防止法5条2項の適用要件は、原告が被告の
不正競争により営業上の利益を侵害されたことであり、これは、不正競争行
為の侵害者の行為がなかったならば利益が得られたであろう事情があれば足
りるというべきである。
15 (2) 前提事実(2)及び(4)によれば、原告及び被告は、いずれも「ゴミサー」と
の名称の業務用生ごみ処理機を販売していることが認められ、販売の対象物
は同種であると認められる。
また、証拠(甲41)及び弁論の全趣旨によれば、被告の顧客層は、保育
園、老人ホーム、病院、食品工場、ホテル、官公庁、ファミレス及び船舶で
20 あり、販売エリアは全国及び海外であるところ、原告の顧客層は、保育園、
老人ホーム、病院、食品工場、社員食堂、公園等であり、販売エリアは全国、
メキシコであることが認められ、原告と被告の顧客層及び販売エリアは一部
において共通している。
このような市場の共通性を考慮すると、原告に、被告の競業行為がなかっ
25 たならば利益が得られたであろう事情があるといえるから、原告に損害が発
生していると認められ、不正競争防止法5条2項の適用要件を満たすといえ
る。
この点について、被告は、原告の市場は、被告の市場に全面依存している
という状況であったから、単一ないし同一の市場において、原告及び被告が
互いに排斥し合う場合には当たらないと主張する。しかし、証拠(甲41、
5 乙69)によれば、原告による原告商品の販売は、その多くが被告を代理店
とする販売であったことが認められる一方、同証拠によれば、被告以外を代
理店とする販売実績も一定程度あったことが認められる。したがって、被告
の上記主張は採用することができない。
(3) 前提事実(4)のとおり、本件誤認惹起表示①ないし③の掲載期間中(令和元
10 年5月8日から令和5年4月30日)の被告の限界利益は、1億2368万
8021円であるから、不正競争防止法5条2項の適用により、原告の損害
額は1億2368万8021円と推定される。
そして、被告による本件誤認惹起表示①ないし③の掲載と相当因果関係の
ある弁護士費用は、1236万円と認められる。
15 以上によれば、原告の損害額は、1億3605万6823円となる(ただ
し、原告は、その一部である9164万3940円のみを請求していること
から、この限度で原告の請求を認容する。。

第4 結論
以上によれば、原告の請求は理由があるからこれを認容することとして、主
20 文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
25 裁判長裁判官
國 分 隆 文
裁判官
間 明 宏 充
裁判官
バ ヒ ス バ ラ ン 薫

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